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1968-05-21 第58回国会 参議院 文教委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年五月二十一日(火曜日)    午前十時三十三分開会     —————————————    委員異動  五月十六日     辞任         補欠選任      楠  正俊君     奥村 悦造君      内藤誉三郎君     栗原 祐幸君      近藤 鶴代君     村上 春藏君  五月十七日     辞任         補欠選任      中山 福藏君     北畠 教真君      奥村 悦造君     楠  正俊君      栗原 祐幸君     内藤誉三郎君      村上 春藏君     近藤 鶴代君  五月二十日     辞任         補欠選任      田代富士男君     北條  浩君  五月二十一日     辞任         補欠選任      近藤 鶴代君     松平 勇雄君      久保 勘一君     岡村文四郎君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         中村喜四郎君     理 事                 楠  正俊君                 佐藤  隆君                 小野  明君                 鈴木  力君     委 員                 北畠 教真君                 久保 勘一君                 内藤誉三郎君                 中野 文門君                 岡  三郎君                 千葉千代世君                 松永 忠二君        発  議  者  鈴木  力君    国務大臣        文 部 大 臣  灘尾 弘吉君    政府委員        文部政務次官   久保田円次君        文部大臣官房長  岩間英太郎君        文部省初等中等        教育局長     天城  勲君        文部省管理局長  村山 松雄君    事務局側        常任委員会専門        員        渡辺  猛君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選の件 ○教育文化及び学術に関する調査  (昭和四十三年十勝沖地震による学校関係の被  害状況に関する件)  (福岡県における教員の人事に関する件) ○国立及び公立学校教員に対する研修手当の  支給に関する法律案鈴木力君外一名発議) ○へき地教育振興法の一部を改正する法律案(鈴  木力君外一名発議)     —————————————
  2. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) ただいまから文教委員会を開会いたします。  委員異動について報告いたします。  去る五月十七日、中山福蔵君が委員辞任され、その補欠として北畠教真君が選任されました。また、昨二十日、田代富士男君が委員辞任され、その補欠として北條浩君が選任されました。     —————————————
  3. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 理事補欠互選についておはかりいたします。  委員異動に伴い、理事に一名の欠員を生じておりますので、その補欠互選を行ないたいと思います。  互選は、投票の方法によらないで、委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 御異議ないと認め、理事楠正俊君を指名いたします。     —————————————
  5. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 教育文化及び学術に関する調査中、昭和四十三年十勝沖地震による学校関係被害状況に関する件を議題といたします。  本件に関し、灘尾文部大臣から発言を求められておりますので、これを許します。灘尾文部大臣
  6. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 先般の十勝沖地震文教関係被害状況等につきまして、御報告をいたしたいと存じます。  今回の震災は、かなり広範囲にわたりまして各方面に大きな被害を生じまして、まことにお気の毒にたえないところでございます。特に学校関係におきましては、学童の死亡四名、負傷六十五名、こういう状況でございまして、心から哀悼の意を表したいと思う次第でございます。  施設被害につきましては、ただいままで判明いたしておりますものが、金額にいたしまして約二十億三千万円という数字でございます。公立学校被害が約十二億六千四百万円、それから国立学校被害が約三億二千万円、それから社会教育施設被害が四千七百万円、私立学校施設被害が約三億五千五百万円、また文化財被害、これは特別史跡五稜郭跡被害でございますが四千万円、このような数字になっておるわけでございます。まだ調査の結果もちろん数字は変化するものと、かように存じておりますが、一応昨日の午後五時現在で文部省の入手いたしております資料に基づきまして計算いたしますと、このようなことになるわけであります。  その詳細につきましては、政府委員からなお御説明いたしたいと存じますが、文部省といたしましては、できるだけすみやかにその復旧を見ますように鋭意努力してまいりたいと存じますので、そのようにひとつ御了承いただきたいと思います。
  7. 岡三郎

    岡三郎君 何かそういう資料の印刷したのはないのかね。口頭報告もわかるけれども、簡単な資料くらい出してもらわぬと困ると思うのです。
  8. 村山松雄

    政府委員村山松雄君) 最初被害状況概要大臣から御説明申し上げたとおりでありますが、大臣の御説明にもありましたように、交通、通信がかなり混乱しておる関係で、刻々として被害状況がふえております。それで、資料につきましても、できるだけ新しいものを調製し直して御説明申し上げたいということで、実はただいま届いたような次第でございますので、御了承をお願いしたいと思います。  概要大臣説明のとおりでありますが、人的被害死亡四名、これの状況につきましては、新聞の報道にもありましたように、当時剣吉中学校は授業中でありまして、地震が起こりましたので校庭避難したところが、避難した校庭がけくずれが起こって、その土砂に巻き込まれて、うち四名が死亡した、こういう不幸な結果になっております。それから、その他負傷者は、時刻の関係もありまして、全部学校管理下における負傷という状況になっています。家庭における被害ではなくて学校管理下における死傷で、死亡四名、負傷六十五名、こういう結果に相なっております。  それから、物的の被害の点で、まず公立学校施設でありますが、そこにありますように、北海道ほか五県にわたりまして千百五十四校が大なり小なり被害をこうむっておるわけでありますが、大部分は屋根のかわらが落ちたりあるいは壁がくずれたりという比較的軽微な被害でありまして、半壊以上の被害をこうむりましたものは、その右の欄にありますとおり、北海道で一校、青森県で二十九校、岩手県で二校、計三十二校という内訳になっております。特に被害が大きかったのは青森県の三沢商業高校北海道西当別小学校岩手県の浄法寺小学校などが大きな被害をこうむっております。  それから、国立学校施設につきましては、北海道青森岩手、三県所在の学校が大なり小なり被害をこうむっておりますが、大部分はやはりかわらが落ちたり壁がくずれたりといった程度の被害でありまして、ただ八戸高専につきましては、一階の柱が折れた関係で、場合によっては建て直しをしなければならない。建て直しをするとすれば、相当な復旧費を要するということになっております。  社会教育施設につきましては、公民館、図書館等でありまして、半壊以上の著しい被害はないようでございます。  それから、私立学校施設につきましても、北海道青森で計二十六校が被害をこうむっております。これまた大部分は小被害でありますが、北海道函館大学、これは一棟がやはり柱が折れて、復旧としてはおそらく全面建て直しを必要とするという状況に相なっております。それから、青森県の八戸でやはり高等学校が一校大きな被害をこうむっております。  文化財につきましては、これは山間部にある文化財等でまだ調査が行き届いていないものもあろうかと思いますが、いまのところわかっておりますのは、五稜郭跡の石垣のくずれと、そのほかに天然記念物のウミネコ生息地の蕪島で若干土砂くずれがあるということが報ぜられております。  以上が被害の概況でございます。
  9. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 以上の御報告に対しまして質疑のある方は順次御発言を願います。
  10. 松永忠二

    松永忠二君 少しお伺いしたいのですが、これは鈴木君からも後ほどお話があると思うのですけれども、テレビなんかで見ますと、高等学校で、まあ小・中学校の木造は別ですけれども、だいぶ鉄筋校舎でひどくやられたところがあると新聞などでもいわれている。函館大学ですか、あれの倒壊の場合は非常にひどいということ、何か予想外鉄筋被害を受け過ぎているのではないかという感じがするものがいろいろ報道されているわけですが、この点についてやはり文部省としても特にこの際明確な調査をして、そうして構造的な欠陥であるとかあるいはそれのできた事情とかいうものを調査をする、こういう用意をされているのかどうか、この点をひとつお尋ねいたしたい。
  11. 村山松雄

    政府委員村山松雄君) 御指摘のとおり、今回の災害で目立ちますのは、比較的新しい鉄筋校舎について大きな被害が生じておるということでございます。そこで、文部省といたしましては、もちろん応急並びに恒久的な復旧作業予算措置等をはかるわけでありますが、技術的な問題につきましてもこの際十分調査いたしたい、かように考えまして、すでにさきの十七、十八の両日、北海道青森に派遣されました政府総合調査団にも、文部省からおのおの各班に担当の課長を参加させて調査させました。その結果、ますますその必要を感じましたので、さらに文部省独自で調査団施設部の技官を中心として編成し、特に技術的な問題もございますので、東京大学の従来学校建築について御指導を願っておった加藤助教授にも御参加願って、北海道青森鉄筋校舎被害の大きかったものを中心として調査をいたして、原因も究明し対策も講じたい、こう考えております。この調査団はあす出発して、今週一ぱいかけましてできるだけ調べて、さらに原因の究明なり対策の樹立に全力を尽くしたい、かように考えております。
  12. 松永忠二

    松永忠二君 いま御答弁のありましたような方向でひとつ調査をされると一緒に、やはりその結果について大胆率直に、ひとつ是正すべきものは是正するというようなことで努力をいただきたいと思うわけでございます。  なお、ここには出ておりませんけれども、従来の災害で特に非常に手おくれになるのは育英資金の問題でありまして、相当被害を受けた家庭の中で高等学校なりあるいは大学等へ進学をしている生徒もあるわけで、この調査がやはり少し一般の調査よりおくれてくるというのが従来の状況でありますので、ぜひひとつ、育英資金の拡大というようなことの必要のあるものについて、そういう措置が急速に行なわれるように、ひとつぜひ配意をしていただきたい、こういう点を御要望しておきます。
  13. 鈴木力

    鈴木力君 いま報告をいただきましたけれども、私は、この被害の量の大きいというのは、もちろん復旧関係ありまするけれども、そうでない災害対策の面から若干御質問をしたいと思います。  私は青森県しか見ていないので、北海道状況はよくわかりませんけれども、青森県で発見いたしましたことにも相当な問題があるような気がするのです。それは、一つ鉄筋コンクリート校舎破壊の大きかったのが目立つのは、一期、二期、三期と、工事を一ぺんにやらないで、年次計画工事をやっていく、その一期と二期のつなぎ目のところから破壊をしていくという例が相当に多いように見受けられております。どこということは言いませんけれども、これはいつかだいぶ問題になったことがあるのですけれども。長野県かどこかで、村で農協から借金をして、そして補助金一期、二期、三期の計画だけれども、これを借金で一ぺんにコンクリート校舎を建ててしまう、そうしてあと補助金でそれを返済をしていくという計画を立てたら、何でも文部省のほうから、すでに建っている校舎には補助金を出さないというので、非常に困ったという例を昔聞いたことがある。そういうような考え方で、機械的に一期、二期、三期と予算に合わせて工事を進めていくというようなことが特に災害を生む大きな理由にもなっているんじゃないか、こういうような感じも非常にしたのです。その辺については文部省はどういうふうに考えておられるのか。地震ということをおそらくあまり配慮しないで、そういう予算との関係建築を進めておったのだろうと思うけれども、こういう事態となれば、そういう面の検討は必要だと思うのです。その点は何か検討なさったことがありますか。
  14. 村山松雄

    政府委員村山松雄君) 年次計画でやった建物の被害の問題、御質問は二点だと思います。一つは、年次計画建築年度がずれておるけれども、そのつなぎ目が技術的に問題があるのじゃないかということ、それから第二は、予算措置の問題で、そういうことが起こらないように一挙に措置できないかという御趣旨だと思うわけでありますが、第一点につきましては、これは技術的な問題でありますので、まさに技術的調査団原因を解明をしていただきたいと思います。  それから、第二点の問題は、これはまあ学校建築の場合、一つ予算のワクの問題、それからもう一つ学校教育計画の問題から、一年次で一挙にいかないような場合には年次割りにすることもあり得るわけでありますけれども、その辺は従来も機械的に措置することなく、かなり金額がかさむものであっても一挙にやったほうが技術的にも教育的にも、それから予算の執行としてもより適切であると考えられるような場合には、そのように措置しておりますし、それぞれの学校建設の実態に応じまして対処しておるわけでありまして、今後ともそのような考え方でやっていきたいと思っております。
  15. 鈴木力

    鈴木力君 そうしますと、たとえば地方自治体で何かの資金の調達をして、それで三ヵ年計画のやつを一つ一期工事として工事を進めてしまう、工事先行をしていく、そういう場合にも、補助金を打ち切るというようなことはせずに、補助金のほうは三年計画なら三年計画でやっていく、そういうこともやっていくと、こういうことですね。
  16. 村山松雄

    政府委員村山松雄君) これはまあ補助事業の場合ですと、補助事業として認定をする場合には、まずもってその校舎補助事業に該当するかどうか、つまり危険校舎の改築であるとかあるいは不足面積の充足であるとかいうようなことを認定した上で予算をつけるわけでありますので、従来何らかの事情ですでに工事が行なわれてしまったものについては、それはむしろ不足よりは保有面積という計算になりますので、そのようなものについて従来あとから予算を見るということはやっておりません。私が申し上げるのは、前もって御相談があれば、工事量が過大であるから何が何でも年次割りにするというようなことは必ずしもなく、弾力的に協議をしていくということを申し上げたわけであります。立てかえ工事あと払いということは、いままでやっておりません。
  17. 鈴木力

    鈴木力君 私の伺いたいのはそこなんですよね。すでにあるものに追加するものを、すでにあったものにまで補助金を出せということは、それは無理な話です。そこまで私は言っているわけではない。たとえば老朽校舎なら老朽校舎として認定をされて、補助事業でその校舎建築する場合は、多くの場合は三年計画ぐらいでしょう。その校舎が完成するのは三年計画校舎が完成するけれども、その市町村ではコンクリート校舎というのが、これはいままでにも何べんも経験があるわけですから、工事が切れるとその切れ目のところが非常に弱いという例は幾らもあるわけです。そこで、市町村自体のほうで何か資金手当てのできる場合、そういう場合には工事は一気に進めてしまうが、三年計画でも二年かかるかもしれませんが、そういう場合には、補助金のほうは三年計画でしかできない場合にもそういう補助金を出すと、そういうようなことまでいっておるのかいっていないのかと、こういうことを聞いておるわけです。
  18. 村山松雄

    政府委員村山松雄君) 現在のところそこまではいっておりません。
  19. 鈴木力

    鈴木力君 私の申し上げたいのはそこだったのです、前にもそういうことを私が聞いておるものですから。村で、農協から資金の割り当てができて、一気にやりたかったのだけれども、一気にやってしまうと、そのあと補助金が打ち切られるのでどうにもなりませんと、こういう話を聞いたことがあるから、いま申し上げておるわけです。  そこで、今度地震被害を見ますと、やはり私がいま申し上げたようなこと、年次計画計画切れ目工事切れ目のところから被害が起こっておるという面がどうも多いようです、継ぎ目のところが。そうしますと、一律にはいかないにしても、その自治体がそういう地震破壊というようなことを配慮した上で何らかの資金手当てがつくというような場合、それを理由補助金を打ち切るというようなことのないように、ひとつ財政的な手当て方法をこれは検討してもらいたいと思うのです。   〔委員長退席理事楠正俊君着席〕 そういうことが一つ災害対策にもなるのではないか、こういうことを考えているので、これはまあ御検討をいただくように御要望だけをしておきます。  その次に、やはり学校建築についてはむずかしいのですけれども、地方自治体責任を持ってやるわけでありますから、直接文部省責任だとかいうわけにはまいらないのです。しかし、よく災害があるたびに、学校建築場所あるいは設計等が問題になると思うのですね。災害が起こってしまってから、あの場所ではいけなかったというようなことで、いつでも反省を繰り返しておるわけです。四人の死者を出した剣吉中学校の場合ですと、これは実は前の集中豪雨のときにもこれでいいのかということがずいぶん地元で心配された問題なんです。しかし、その後何にも手当てをやっていないのですね。うしろが非常に大きながけです。そして、がけのところを削ってそこに校舎を建てて、校舎の前からすぐまた傾斜地になっておる。傾斜地の中腹を削ってそこに校舎を建てておる。しかも、そのうしろの山から来る水を出す施設も何にもない。でありますから、今度のような地震うしろの山から来る地すべりで、学校の下を通って下に流れていって、そこで避難した生徒地すべりの上で、避難の最中でありますから、そこで四人がとうとう命を失った。命を失わないまでも、腰まで土砂に埋もれてずいぶん大きな被害があった。ですから、やはり、そこの責任がどうだということを私は言うつもりはありませんけれども、非常にこの学校建築に安易な考えで、地震ということは考慮せずに、災害ということになると水害を考えてというような、そういう落ちがどうもあるような気がします。こういう点についてもひとつ御検討いただいて、今後の指導をする場合に十分に配慮してもらいたいと、こう思います。  できるだけはしょって、もう一つだけお伺いいたしたいのは、軍事基地周辺防音校舎についてお伺いしたい。あの防音校舎責任はいまどこにあるのですか。
  20. 村山松雄

    政府委員村山松雄君) いま軍事基地には、日本の自衛隊の場合と駐留米軍の場合とございますが、いずれも防衛施設庁担当いたしております。
  21. 鈴木力

    鈴木力君 防衛施設庁予算で、建築設計その他はどこが責任を負っておりますか。
  22. 村山松雄

    政府委員村山松雄君) 設置者である市町村工事費負担者である防衛施設庁とで協議してやっておるようであります。
  23. 鈴木力

    鈴木力君 わかりました。そこでそうなりますと、これは文部省に伺ってもしょうがないかもしれませんけれども、今度の三沢災害でたいへんなことが実は出ておるわけです。たぶん学校の名前は岡三沢小学校だったと思いますが、これは文部省でも調査をしてもらいたい。それは避難階段が、校舎継ぎ目から割れて倒れておる。それか校舎が三つ並んでおりまして、端のやつが倒れておる。それから、まん中の避難階段は、そこに大きな亀裂を生じて、通れないまでも使いものにはならない、そういう状態です。幸いにして、教師がその避難階段生徒を誘導して出ようとしたら、倒れかかっておるので、その先生がその避難階段を避けて、校舎階段へ誘導したために死傷者は出なかった。もしあと二、三分ぐらい早く生徒避難しておったら、相当大きな生徒死傷者を出しただろうと想像される。私が行って見まして驚いたことは、そのつなぎ目避難階段コンクリートの大きな階段ですよ。はしごですよ。その避難階段本校舎との間に鉄筋でつないであるあとが見えないわけです。何かブロックのへいのつなぎ目みたいな、非常に粗末なつなぎ目でつないである。あとはセメントでくっつけてあるみたいにしか見えない。そうしてみますと、避難階段というのは、一体避難役割りになるのか人命の殺傷の役割りを果たすのかわからないような状態なんです。で、地元ではこう言っておる。どうしても予算の問題があって、この設計あとからつけてどうこうというようなことを言っておるわけです。  こういう形で、災害を配慮しないで、表から見てりっぱな校舎をつくってもらっても、非常にあぶないわけです。この点はひとつ、防衛施設庁責任の官庁だといたしますと、これは文部省に直接どうこうということは申し上げませんけれども、十分にこれはひとつ調査をしてみてもらいたいと思います。  そして私はこれを大臣にお伺いいたしたいんですが、この問題については、防衛施設庁から予算が出て、防衛施設庁担当をしておりますけれども、どうも私はこのことはよく納得できない。防音校舎であるから、自衛隊がその騒音を出すために、自衛隊責任を持って防音をしなければならぬというその気持ちはわかりますけれども、少なくとも、学校である限り、国が予算を出す場合には、私はやっぱり文部省担当すべきじゃないかという、そういう気持ちを持っております。それは視察をいたしましても、どうもこの教育施設という点から見ますと、もう少し教育の面から手の届いた設計があってもいいじゃないかと思われることが、過去においても他の例でも私はそういうことを感じたことがあるものですから、したがって、何でこの学校建築防衛施設庁責任を持たなければならないのか、同じ国から出る予算なんですから、それを文部省予算で、文部省が直接指導をして、学校という機能を果たせるような仕組みにできないものかどうか、これは大臣にお伺いしたいと思います。
  24. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) これはたぶん一つの沿革からそういうことになっておろうかと思います。つまり、そういう基地関係で、周辺の人がいろいろ迷惑をすることもある。それに対して防衛庁が何らかの施設をしなければならぬ、こういうふうなことから事柄が始まったと、こういう沿革的な理由によるものではないかと思うのであります。まあ文部省予算を持つか持たないかという問題ももちろんございますけれども、学校施設であります以上は、やはり文部省的配慮もそこに入っていかなくちゃならぬというお気持ちは、私もそのように思いますが、この問題はひとつ、今後の扱い方につきましては、検討さしていただきたいと思います。
  25. 松永忠二

    松永忠二君 関連。いま鈴木委員質問で、私はこの点は大臣にも、また管理局長にも、もう少し積極的な考え方でやってもらいたいと思うんですが、予算はついた、二年なり三年の継続で事業を認められて、最初の年にその予算のついた中で建築をやらぬで、まあ三カ年のを全部地方が金を出して一度にやると、そうやったならば、翌年からの補助金を打ち切ってしまうなんていうことは、これはおかしいと思うんです。たとえば現在道路なんかについていえば、先行投資を積極的にやってもらいたい、そうして先行投資をしたものについての利子については国がめんどうを見ていこうじゃないかという、こういうことすら行なわれている。しかも、物価が非常に上昇を示しているときであるので、経済的にも、またいま言ったような被害というようなことを考えてみても、別に何も一気に金をよこせというんじゃなくて、文部省が認めた範囲で、最初の認めたものを三年継続でやるなり、当初のときにやってそれを三年間に補助つけてもらって、それをとにかく地元が負担をして一気に建てる、しかもその利子を文部省から出せというような要求が出ているわけでもない状況の中で、それを打ち切ってしまうなんというようなことは、およそそんなことがあってはならぬと思うのですがね。どういうわけでそういうことをやられるのか。また、この点はもっとこう、むしろいまの時代ですから、三年のを二年にしてくれという要求じゃなくて、三年なら三年、二年なら二年の中で、当初ついた中を二年間に分けて補助してもらうけれども、いろいろな関係で早く建てる、翌年、補助をめんどう見ようじゃないかということは当然だと私たち思うのですがね。この点についてはやはりそういう方向で検討してもらうということをお約束できないものでしょうか。この点ひとつ大臣から……。
  26. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 検討するという意味においてのお約束なら、私はできると思います。ただ、現在そういうことになっておりますのは、常識的に考えますと、いかにもおかしな話だ、こういうふうなお感じも、私もごもっともだと思います。ただ、予算の使い方、いわば現在の制度上の制約がおそらく現行法のままではあるのではないか、このようにも考えますので、われわれから考えましても、いまおっしゃったような事例の場合には何とかしてあげたらいいじゃないか、こういう気持ちもいたしております。十分ひとつ検討さしていただきます。
  27. 松永忠二

    松永忠二君 ちょっと大臣の御答弁で、制度上そうなっているだろうというお話もわかりますがね。制度上やはり検討してもらうのだということだと思うのです。じゃほかの、たとえば公共施設についてはむしろ積極的に政府のほうでもそれを要請をして、先行投資をしたものについては、とにかく予算がついた際に利子補給をするということを決定して実施をされているわけなんですがね。したがって、制度的にできないなら制度的にできるように、ひとつ検討していただいて、いまお話しのように、結論がどういうふうに出てまいりますか知りませんけれども、災害の際に、継ぎ目から被害が起きるだろうということは、われわれも常識的には理解できることであるし、逆にいえば、物価の値上がりの際にそれだけの努力を地元がしたいということは当然の要望だと思うのです。むしろ私はもっとそういう場合には利子補給だけは何とかするように、制度的に積極的に検討してもらいたいくらいのものである。少なくも補助を打ち切ってしまうというようなことではなしに、引き続いて補助を認める中でそういうものが実施できるように、ひとつ制度的に検討してもらう。また、管理局長のほうでは、そのくらいのことは実現できるように、事務的にひとつ折衝を進めてもらうように、ぜひひとつお願いをしたい。
  28. 鈴木力

    鈴木力君 いまの松永委員から申されましたこと、私が申し上げたこと、そのとおりで、単年度予算審議ということでやはり縛られると思いますけれども、やはり行政は事実に合わしたようなゆとりのあるところに持っていくように、これはお願いしたいわけであります。  最後に、これは当然のことでございますけれども、今回の被害校舎破壊したものの復旧費なんですけれども、非常に地元が心配しているのは、たとえば木造校舎が全壊をした場合に原形復旧ということで、永久校舎になった場合にどうなるかというような心配をしておりますけれども、当然公立学校施設災害復旧費国庫負担法が適用になると思いますから、そういたしますと、これによると、木造校舎の場合に、これは鉄筋校舎復旧する場合もこの法が適用になって補助金が出るわけですね。そこを念を押しておきたいと思います。
  29. 村山松雄

    政府委員村山松雄君) 法律の規定は御指摘のとおりでありまして、そのように努力いたしたいと思います。
  30. 楠正俊

    理事楠正俊君) 他に御発言がなければ、本件に関する本日の質疑はこの程度にいたします。     —————————————
  31. 楠正俊

    理事楠正俊君) この際、委員異動について報告いたします。  本日、近藤鶴代君が委員辞任され、その補欠として松平勇雄君が選任されました。     —————————————
  32. 楠正俊

    理事楠正俊君) 教育文化及び学術に関する調査中、福岡県における教員の人事に関する件を議題といたします。  なお、政府側より灘尾文部大臣、天城初等中等教育局長が出席いたしております。  質疑の申し出がありますので、これを許します。小野君。
  33. 小野明

    ○小野明君 前回、福岡県の高等学校長の人事につきましてトラブルがあったのでありますが、その件について質疑をいたしておりまして、政務次官からも十分大臣と協議をいたしますと、こういうお話があったわけであります。この点については大臣も御協議をなさっておると、このように私も理解をいたしておりますが、五月十一日に福岡県におきます三つの高等学校で、県教育長の要請に基づいて警察官が出動をして、その警察官に守られて高等学校長が着任をしたと、こういう事件が発生をいたしたのであります。この事件は、まことに県教育界にとりましてはゆゆしい大問題であろうかと思うのであります。で、いままでこの問題について次官なり局長とお打ち合わせをされておると思うんですが、どのような御見解をお持ちであるか、まずお伺いをしたいと思います。
  34. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 福岡県の校長の着任をめぐってのトラブルということは、私もまことに遺憾な状態だと思っております。今日なお校長の着任が完了しておらないというような実情にあるようでございますが、私としましては、こういう状況が、いまお話にもございましたが、教育界において現に存在しておるということは、教育界としましてもまことに憂慮すべき事態のように思うのでございまして、一日もすみやかに問題が解決せられ、平静な状態に復してもらうことを心から願っております。県といたしましても、この処置についていろいろ善後策を検討いたしておるところと承知いたしておりますが、私ども、この問題について具体的に格別の介入をいまいたそうとは思っておりませんけれども、願わくは、県教育界その他関係者の努力によりまして、事態の正常化についてすみやかにそれが実現するように心から期待をいたしております。  何と申しましても、いろいろトラブルが起こるについては、それぞれの事情もあろうかと思うのでありますけれども、教育委員会の発令いたしましたものが、そういう一種の実力行使というようなことでこれが遂行できないというような姿は、一日も早くひとつやめていただいて、今後の問題については、関係者がよく話し合いをして、将来こういう問題の起こらないように努力をしてもらいたいものだと念願をいたしておる次第であります。
  35. 小野明

    ○小野明君 発令をしたものが教職員の実力行使によって遂行ができない、こういうふうにおっしゃるわけでありますが、これが戦前であれば、全部校長というのは任命である、そうしていやもおうもなく、現場の教職員というのはその校長を押しつけられてしまったわけですね。ところが、戦後になりまして全くそれと変わらないような状態で校長の人事が発令をされる、これが私はトラブルの一番大きな原因であろうかと思うのであります。  それで、現場の組合の推薦をどう考慮したかという点になるわけですけれども、組合のやり方というのを聞いてみますと、それぞれ現場の教師がこの人はりっぱにわれわれの校長として推薦し得るに足る人材であるとして推薦する、こういう慣行があるようであります。それを全く無視をされ、それを拒否して発令を強行する、そしてそれが行けない場合には警察官の出動を求める、こういった姿が望ましいものであるかどうか、こういう人事の強行というもの、発令の強行というものが望ましいものであるかどうか、この辺に反省すべき点はないかと私は申し上げたいのであります。その点についてはどうですか。
  36. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) こういう問題について警察の手をわずらわすというようなことは、もちろん私は望ましい姿とは思いません。ことに教育界のことでありますだけに、そういうことが警察まで引っぱってきて何とかしなければならぬというような事態が起こるということは、いかにも残念なことだと、かように存じております。ただ、それだけの問題ではもちろんない。一面からいえば、今度は警察官の出動を求めようかというような気持を起こさせるような事態も歓迎すべからざる事態だというふうに私は思うのであります。問題についていろいろ議論があるにもせよ、そういうものについて実力的にそれを阻止するということは、私は組合としても行き過ぎではないかと、このように存じます。
  37. 小野明

    ○小野明君 組合の非を大臣は鳴らされるわけですけれども、この教育長のおやりになった人事のやり方に反省すべき点はないのか、この点を私は申し上げておるわけです。私は、戦前戦後の教育のあり方という面から考えて、現場教師の意向というものは十分その人事権の発動にあたっては顧慮すべきではないか、こういうふうに考えておりますがゆえにお尋ねをしておるわけです。とにかく組合が一方的に悪い、県教委が、教育長のやり方がよろしいと、こういうふうに聞こえるわけですが、その点はいかがですか。
  38. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 私は、この教員の人事につきましては、教育委員会が真に中正な立場に立ってそしていろいろな問題を考慮に入れて公平な人事をすべきものであろうと思います。その教育委員会の人事に対して、たとえいかなる制度であるにせよ、そういうふうなものが教育委員会の人事についてもし介入するとか圧力を加えるとかいうことがあってはならぬと思う。組合の方の意向というものも一つの意見として聞くこともけっこうでありましょうけれども、それが教育人事というものを左右する、こういうふうなことになりましては、これは私は教育人事としてはあるべからざる姿だと思うわけでございます。どこまでもやはり教育委員会が責任を持って、主体性を持って公平な人事をなすべきである、不当な勢力の介入はいかなる方面から来るにもせよこれは避けなければならぬ、こういうふうな考え方をいたしておるわけでございます。従来どういうふうな取り扱いが行なわれておったか、私は詳細は存じませんけれども、教育界の空気——その校長がそこに赴任することが適当であるかどうかというようなことは、もちろん人事をなす側において慎重に検討すべき問題だと思いますけれども、それが気に入らぬからといって、これを実力で阻止するというような態度に出られることはやはり行き過ぎじゃないか。ここらは双方、教育委員会側においてももちろん、やたらに警察官を呼んできてめちゃくちゃにやるというような姿を皆さんにお目にかけるような事態は、よほど慎重に考えなければならぬ問題だと思いますけれども、同時に、一方からいいますと、何が何でもこれを反対するんだというようなやり方もこれはとるべからざる点だと、こういうふうな感想を持っております。
  39. 小野明

    ○小野明君 戦後大きく変わった校長なりの人事のあり方としては、私は大学があると思うのです。大学の学長の選挙というのは教授会の選挙です。投票ですね。この点は大臣も御承知だろうと思うのです。なぜこういった制度がとられておるかといいますと、大臣、かなり前の委員会でもありましたが、大学の自治というものは学問研究の自由を守るものである、教授なり大学の場において学問研究の自由を守る、守らなければならぬ、それにふさわしくない学長がそこにすわるということをこれは選挙ということによってやっぱり排除をしておる、こういうのがいまの大学のあり方なんです。では、そういうあり方が高等学校において、これは任命権者が違う、制度が違うから全然とるべきではない、その校長を受け入れ、ともに一緒に仕事をしなければならぬ現場の教師の意向というものは完全にこれは無視してよろしいと、こういうことは、私はこの大学のいまのあり方から見てもとってはならぬ考え方ではないか、このように考えるわけです。そこで、この大学のあり方、それは高等学校の場合に全然そういうことを配慮すべきでない、こう言われる理由は私にはわからぬ。いかがですか。
  40. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 大学の自治の問題については、特別な沿革もあり、またその大学の性格といたしまして大学の自治を尊重すべきであるという大きな原則があることは御承知のとおりであります。それをすべての学校に及ぼすべきであるかどうかという問題になりますと、問題はおのずから別ではないかと思います。御議論としてはいろいろありましょうけれども、現在政府としては、大学の自治に相当するものを各種の学校に及ぼそうというような考え方はいたしておりません。現行制度でもってやっていきたいと思っております。  教師の意向ということでございますけれども、私はやっぱり教師の意向によって学校長がきまるというようなことは制度としての大きな変革ではないかと思うのであります。それも確かに議論の対象にはなり得ると思いますけれども、現在そういうふうな考え方をとろうとは思っておりません。現在の制度によってやっていきたいと思うのでありまして、教師の側におかれましても、自分たちが気に入らぬ人は排除するんだというふうな心持ちで教育人事というものを見ないように、ひとつお願いをしたいと存じます。もちろん、教育の場というものは、お互いに親しく、お互いに平和にやっていかなければならぬことでありますけれども、それは当然のことでありますけれども、教師の意向というものによって教育人事が行なわれるということは、現在のやり方に対する大きな変化ということに私はなると思います。そういうことを現在とる意思は持っておりません。   〔理事楠正俊君退席、委員長着席〕
  41. 小野明

    ○小野明君 非常に割り切った御答弁をなさるわけでありますけれども、私の言っております趣旨とは少し大臣の御答弁は違うように思うのです。大臣は日教組ぎらいで有名でもありますし、特に日教組の下部団体といわれるものがやることについてはかんにさわるかもしれません。しかし、私が申し上げておるのは、教師の意向が人事を左右する、その意向をそのまま人事権に反映せよ、いわばその教師の意向が人事権に介入するというふうにおとりになっていると思うのです、ところが、私の申し上げておるのはそうではない。そういう人事権なり一つの権力を持っておる人がやっぱりこれをこういうふうにやれば、これは反発が来るのだ。現場教師の反発が来る。現場は校長と教師、あるいは主権者である父兄、県民の信頼関係の上にしか成り立たない、こういうことにあることはまあ御承知のとおりなんですが、そこで教師の意向というものが当然くみ上げられて、この校長の人事の発令、こういうことにならなければうそではないか。福岡県の場合はそれがやっぱり欠落されておる、その点が。そういうことを私は申し上げておるのです。だから、これを任命し発令するという場合にも、十分そういった意向というものはその中にくみ上げられておらなければならぬのじゃないか、こう私は申し上げておるのです。いかがですか。
  42. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 人事を行ないます際にはいろいろなことを考慮の対象として慎重に人事を行なうということは、私は必要なことだと思うのです。しかし、いまお話しになりましたように、その人事をやるのについて教師の意見というふうなものがどうであるかということは、事実問題としてはいろいろ考慮の対象にもなろうかと思いますけれども、それをそういう教師の意見の積み重ねの上に立って人事をやるということにつきましては、直ちに賛成するわけには私はまいりません。ことにまた、日教組ぎらいとおっしゃいましたが、それとこれとは無関係でございます。いずれにせよ、教員組合がそういう問題について何らかの発言権を持つというようなことが行なわれるとすれば、それは私は教員組合としては少し行き過ぎじゃないか、このように考えております。私は、教員組合がそういう人事の問題等について何か発言権を持つというふうなことは、にわかに賛成しがたい。
  43. 小野明

    ○小野明君 そうすると、現場教師の意向というものは県教委としては——特にこれは文部省から派遣されておる教育長なんですよ。派遣されておるというと語弊がありますけれども、現地に出ておる教育長であります。そうすると、現場教師の意向というものは全然くむことは要らぬのだ、こういうふうにおっしゃるわけですか。
  44. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 私は人事はきわめて慎重に公平にやってほしいと思うのでありますけれども、いま申しましたようなことは、たてまえの議論といたしますれば、現場教師の意見を徴した上で人事をするというようなことは必要はないと思います。
  45. 小野明

    ○小野明君 そうしますと、非常に私はこの混乱の責任というものが一方的に現場教師側、組合側にある、このように大臣が断定をされた、このように私は考えざるを得ぬわけですよ。そのとおりですか。
  46. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 私は先ほどたてまえの話を申し上げたのですが、教育委員会の人事について教員組合の意向というようなものを参考としてやらなければならぬというふうなたてまえではないのです。ただ、現実問題といたしまして人事をなす場合には、いろいろの要素を考えた上で適正な人事、最も適当な人事をやるという意味において、教育委員会は慎重にやっていかなければならぬということはもちろん言えると思うのであります。これは事実問題であります。たてまえ論としましては、現場の教師あるいは現場の教員組合の意見によってものをきめるというふうなことはむしろ適当でない、そのように考えております。
  47. 小野明

    ○小野明君 たてまえと本音が違うというのは、いまの政治の常道かもしれません。私が言っておりますのは、くどいようですけれども、人事権を現場教師が左右すると、こういうことを申し上げておるんじゃないんですよ。大臣が後段に言われておるそういった権力を持っている者としては、十分現場教師の意向というものをくみ上げながら、それを知りながら人事を行なうということが必要ではないか。そういうことがあれば、こういったトラブルも私は当然起こらぬで済んだんではないか。特にまた大学の例もある。あるいはILO、ユネスコの四十四項だと思いますが、当然校長の人事というものについては現場教師の、あるいは教職員団体の意向を聞くべきである、このように国際常識もなっておるわけです。それを一歩譲って、私は、いまのようにそういった教職員の意思というものも当然考慮に入れて行なうべきである、このように申し上げておるんです。これにやっぱり全面的に否定されるような感じがするんですが、再度私はお尋ねをしたいと思います。
  48. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 教育委員会としましては、現在の制度に従って行政をやっていかなきゃならない。立法論でありますとか、あるいは改善論でありますとかいうことは別の問題だと私は思います。そういう意味におきまして、現在の制度のもとにおきましては、教育委員会としましては現場教師あるいは教員組合の意見を徴して人事をやるというふうなことは必ずしも適当ではない、かように私は考えるわけでございますが、一面におきまして、かりに教育委員会の人事について不満があるにせよ、それを実力をもって着任を阻止するというようなことは、私は単なる意見の反映とかなんとかいう問題じゃない、そういうことはおよそなすべからざることだというふうに私は思います。
  49. 小野明

    ○小野明君 どうも混同があって私も理解に苦しむわけですが、結果としてはこういうあり方は好ましくないということは、これは大臣もお認めになっておる。しかし、事が教育の場でありますから、出ることはいかぬ、これはいろんな法律によって処断さるべきである、こういうことになるかもしれませんが、やはりそういった現場の意思というものを無視したことによってこういう事態を招来しておる。そうしますと、この教育長のおやりになっておることがやっぱり無理が私はあったのではないか。当然こういった権力を持っておる者はそういう現場の意思等も——これは法律条文の上にはありませんよ、そういうことは。それを載せろということじゃないんですよ。当然考慮しながら発令をすべきではないか、こう申し上げておるんですが、これはいかぬと大臣はおっしゃるわけですか。
  50. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 私は、先ほど来申しておりますように、教員人事も公平に、かつ慎重にやっていくという上におきましては、いろいろな点を考慮する必要があるかと思います。あろうかと思いますが、いずれにせよ、これは教育委員会の責任においてなすべきで、問題は、もしいけなければ教育委員会がその責任をとらなくちゃいかぬ、そういう問題だと思います。それに対して不満があるといたしましても、これを実力をもって阻止するということになりますというと、むしろ教員側の意見を強制するということすら言えるんじゃないか、かように思いますから、双方ともに穏当な態度でものごとの解決をはかっていくということでなければならぬと私は思っております。
  51. 小野明

    ○小野明君 どうもこれは、大臣が本音ということを——したてまえはたてまえかもしれませんよ。しかし、その辺の本音のところが、非常にあなたは事実関係ということをおっしゃらないわけですね。結果を見てどうたこうだと、こういうふうに言われる。結果はだれが見ても悪いことはわかっておるのです。よくない。こういった事態が相互の信頼を著しく阻害をしておるということはわかるわけです。しかし、この罪を一方的に教職員団体、教職員組合に帰するという考え方が、私はどうもあまりにも一方的過ぎる、片方の反省すべき点は全然ないように、教育長側の反省すべき点は全然ないようにうかがわれるのです。いかがですか。
  52. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 私は、この人事の取り扱いそのものにつきましては、現在までに私の承知いたしておりますところでは、教育委員会に格別に手落ちがあったとは思いません。ただ、教員の着任をめぐってのいろんな措置等につきましては、教育委員会側におきましても、無理やりに警察官まで連れてきて赴任をするということが、そういう措置をとるのが適当かどうか、こういうことになりますれば、教育委員会もなお考えるべき余地があるのではないか。同時に、いま申しておりますように、教育委員会を悪者にするという意味で申し上げておるのではないのです。しかし、責任を持って教育委員会が人事をやっておるのです。それを実力的に阻止するということは、いわば組合側の意向を押しつけてくる、こういうことにもなるわけです。私はやはり、人事の取り扱いとしましては、そういう行き方はよくない、こういうふうに申し上げただけです。
  53. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 小野君、まとめてください。
  54. 小野明

    ○小野明君 こういう事態が福岡県の教育界にとりまして不幸な事態であるということは、文部大臣もお認めであろうかと思うのです。それを大臣は、これは教員組合が一方的にやったからいかぬのだと言われる。私は、そういう事態になした教育委員会側、いわば教育長に問題があるのではないか、こういうふうに申し上げておるのです。  事態がこういうふうになってしまいますと、どうこの事態を打開するかという問題ができてくる。文部省としては、どうこれを指導していくかという問題にもなってくるわけです。事が一時の解決、いまの事態の解決と、こういうことよりも、やはり将来にわたる、この相互信頼の場をつくり出さなければならぬという私は問題に行き当たるだろうと思うのです。大臣はこの問題の解決にあたって、現実的にどう大臣ならば解決をしていくお考えですか。
  55. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 現場の当局でございませんので、現実的にどうという具体的な意見は持っておりません。ただ、問題といたしまして、このままで推移していい問題ではない。何とか解決の道を考えなければならぬということになります。私は、そういう意味におきましては、県教育委員会はもちろん、関係者皆さんの御協力によって事態を平静に戻すということについての善後策というものをしっかりやってもらわなければならぬと思うのです。  何にしましても、・ただ相互が、お互いに対立する、対決する、こういうふうな気がまえでのみおったのでは、いつまでたっても問題の解決には私はならぬと思います。やはり教師の側の諸君、県教委の側の諸君、それぞれの心持ちを十分理解し合うということが必要なことではないか。私は、教員人事についてのたてまえの変更というふうなことは、にわかに認めるわけにまいらないと思います。事態の解決のために、双方のために理解を進めていく、こういうような意味においての努力というものをしっかりやってもらいたいものと、さように考えております。
  56. 鈴木力

    鈴木力君 関連。
  57. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 簡単に。
  58. 鈴木力

    鈴木力君 私は大臣に関連して伺いたいのは、いまの大臣の御答弁にもそういう表現があると思うのですけれども、教育行政に何か官僚万能というような態度がありはしないかというふうに見えてしょうがない。そのことが、教育と行政とどっちが上になるかというと、行政のかっこうをつけるために教育を犠牲にしているというようなことがありはしないか。この点を文部省が、反省というとことばが悪けりゃ検討でもいいけれども、検討をしてみる意図がないかということを伺いたい。  で、福岡県の場合でも、現象的には、校長さんが赴任をするときに、教員たちが入れないといって何かトラブルを起こした。その現象面は、大臣は、実力をもって阻止するのはけしからぬ、その気持ちはわかると思いますが、しかし、大部分の教師が反対な校長を何人も何人も押しつけるという教育行政を、それを是認して進めていったら、一体教育というものが成り立つかどうかということを、その点の検討をしたのかどうかということです。私はむしろ、実力行使というのがいい悪いはこれは別でありますけれども、はっきりとしたそういう態度をとって、はっきりしたそういう態度の上に解決をしたほうが教育は進むと思う。全体の教師があの校長ではとてもだめだと思う評価をされている校長を、教育行政の権力で無理やりに押しつけて、何年間かその教育を非常に暗いものに、沈滞したものにしてしまうという場合の教育の効果、十分に、そういう現象面からでも、なるほど間違った校長を多くやったからという反省のもとに、もう一度人事というものを考え直してみる、教師が何を考えているかということを推察をしてみる、そういうような形で教育をすべらしていくということのほうが効果があがるのか、そういう点の検討を私はやっぱり文部省はすべきではないかと、こう思うんです。  関連ですから、あまり長いこと申し上げませんが、繰り返して質問はしませんけれども、私が見聞している限りにおいても、たとえば教育事務所の所長などという人も、それは確かに教育委員会筋で権力は持っておる。ところが、その人の現場におったときの教育実績なんというものは、仲間から全くひんしゅくされておるような教育実績を持っている人がいまやそういうところに行っている人がいる。そういう人が教育について、しかも、これはどこと言うとぐあいが悪いから場所は言いませんが、ある教育事務所長は、管理行政と指導行政の行政のたてまえさえ混同して、かってなことをやっておる。こういう例がいまたくさん出ておる。それでも、行政的につじつまを合わせれば教育は進んでいると誤解したいようなことがどこにも出ておる。そのことが教師から自発的な主体的な教育に積極性を取り去ってしまって、魂の抜けたような、ふぬけたような学校、職場というものがいま出かかっておる。教育が、行政があって教育がないという批判を受けておるのはそういうところから来ている。そういう根源を文部省も——これは私は、文部省は行政系統であるから、権威を保つためにということばかり言わないで、そういう行政の乱れというものはどこにあるかということと教育とを結びつけて検討してみるべきだと私は思う。  責任論からいいますと、新聞を見ますと、群馬県の教育長さんが、何か職員があやまちをおかしたという責任をとってやめられるということを新聞で見ました。私個人は、新聞を見て、教育長さんがやめられるほど責任教育長さんに行くものかどうかという疑問さえ持ちましたけれども、しかし、ああいう態度の教育長さんのときには福岡県のようなトラブルは起きないのではないかという感じがいたします。文部省が直接教育長を送り込んで、何が何でも押し通すぞという態度が、先生たちから見れば文部省に見えるからいろいろな誤解が生じておると、こういう点をひとつ反省なり検討なりを加えてみるべき必要があると思います。先生たちが反対するのはけしからぬというけれども、地方によってはPTAの一部の人たちが騒ぎ回せば、教員を回したりしている例さえある。これなんかまさに行政の筋を誤ったことなんです。こんなこともやられておる。現場の教師が納得しない校長を押しつけて教育が成り立つというような、帳面ずらを合わせるような教育行政は、これはやっぱり私は反省すべきだと、こう思います。時間がないので一言だけ申しますけれども、そういう意味の教育行政が、ほんとうにいまの教育基本法なりそれぞれの趣旨に従って回転をさせるなら万全だと言えるのかどうか、検討してみる意図があるのかないのか、大臣に伺っておきたい。
  59. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 教育行政については常に検討を怠っちゃならぬと思っておりますが、もちろん各種各様のいろいろな問題があろうかと思います。教育行政は教育行政として正しい道を歩いていかなければならぬと思います。また、同じく現場の教師の諸君にしましても、いろいろなお考えはあろうと思いますけれども、やはりその筋道だけは間違えないような行動だけはとってもらわなければならぬ。結局、教育行政の側においても、また現場の教育者の側においても、それぞれの分を守ってその職責を果たしていくということが一番大切なことじゃないかと思います。しかも、それがお互いに離れ離れで遊離して、お互いの気持ちも通じないというのでは、もとより教育行政の成果はあがりませんし、教育の成果もあがらぬことになってくるわけでございます。その間の両者の間の心持ちの理解というような問題も、非常に必要なことだと考えられる。そういう意味から申せば、行政の側においてももとより反省すべき点が決してないとは私は申しません。しかし、この問題は双方ともによく考えて、教育の場というものが常に平和でしかも親しみを持って進んでいく、こういう姿になってほしいものと念願をいたしておりますから、私は決して、教育行政側が自分の考えだけをしゃにむに押し通して能事終われり、そういうものじゃないと思います。やはりそれが教師の側においても理解せられるような形において行政がなされなければならぬと思います。こう思いますから、同時に、教育の側におきましても、教育者としておのずから分があろうと思います。これがまた行政に介入するということになりましても、これまた考えなければならぬ点もあろうかと思います。これは双方ともに反省すべき点は反省していかなければならぬ、かように考えておる次第であります。  福岡の問題のことも、とにかくああいう事態が起こったことにつきまして、それは教育委員会の措置につきましても、考え直さなくちゃならぬ点もあるかもしれません。しかし、同時に、教員の側におきましても、ああいう行動に出るということについては、やはり反省をしてもらわなければならぬ点もあろうかと思います。この事態を何とか早く平静な状態に返してもらうということのために、関係者が積極的に前向きの協力をぜひしてほしいものと思っております。  いずれにいたしましても、双方の理解が欠けておる、お互いに信頼ができないというようなことほど不幸なことはないと思います。そういう意味におきましては、私は、問題の今後の善後措置としましては、お互いの理解を進めていく、そしてお互いにむちゃくちゃな、世間からかれこれ言われないように、行動に出ないような姿に教育界はぜひしてほしいものだと、そういうつもりで福岡県の状態を見ておるわけであります。
  60. 小野明

    ○小野明君 それでは、時間もありますから、最後に。やや大臣のお気持ちもわかったような気がするわけであります。そこで、ここまで硬直状態になっておりますから、大臣が言われるように、教育長側としても教員組合側に理解を求めるように話し合いを進める、また教員組合としてもこの意のあるところを伝える、こういう双方の協力といいますか、話し合うことによって実を結ぶ、そういう努力をすべきである、このように大臣はおっしゃるわけですね、いかがですか。
  61. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) お互いに理解すると申しますことは、お互いの立場というものを理解するということがまず第一で、そういう点なしに、ただ何とかするというようなことでは解決にはならぬと私は思うのであります。そういう意味におきまして、教育委員会の立場というものについても、教師の側において十分理解していただく必要が私はあろうかと思います。同時に、教育委員会の側におきましては、やはり人事についてとかくの批評を受けることのないように慎重公正な人事をやる意味において、いろいろな方面の意向というようなものをしんしゃくすることも大事なことでありましょう。しかし、いま申しましたように、教育人事というものが何かの力によって動かされるというようなことは避けていかなくちゃならぬものでありまして、そういう点のたてまえというものはお互いにはっきりした上で、双方の気持ち、双方の考え方というようなものについて、いたずらに無用な摩擦を起こすことなく、お互いに理解していくというような姿に早く帰ってもらいたい、こういうふうに思います。
  62. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 本件に対する本日の質疑はこの程度にいたします。     —————————————
  63. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 国立及び公立学校教員に対する研修手当の支給に関する法律案を議題といたします。  本法律案につきましては、すでに提案理由説明を聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、これを許します。楠君。
  64. 楠正俊

    楠正俊君 研修手当のことにつきまして、二、三質問したいと思います。  最初に、文部省にお尋ねしますが、教員の研修について文部省としては、講習会の開催とか、教育研究団体に対する補助金の支出とか、教育会館、教育センターを設立するというような努力を積んできたのでありますが、これらの予算施設は一部の教員が利用し得るだけで、その努力は認めるけれども、全体的にまだ文部省の研修に対する施策が欠けておる面があるというような考えがあるようでございますが、その点についてお答え願いたい。
  65. 天城勲

    政府委員(天城勲君) 教員に研修の機会を十分与え、またその研修を充実して、いわゆる教職員の資質の向上をはかるということは、教育効果の向上のために一番大事なことであることは申し上げるまでもないわけでありまして、文部省におきましても、そういう意味で、ただいま楠先生のおっしゃったようないろいろな方法によりまして研修の機会や場を用意するという努力をいたしてきているわけでございます。と同時に、やはり研修は教員の諸君におきまして基本的な問題でございまして、教職員の各自が自己研修をするという基本的な態度を持っていただくことも一番大事だ、こういうふうに思っております。ただ、御指摘のように、それに対する措置が簡単にいって不十分じゃないかという御指摘でございますが、これにつきましては、そういう批判もあるいは受けるかもしれませんが、考え方といたしましては、教員の研修の機会や場や方法を与えることについて最善の努力をいたしたいというのがわれわれの考え方でございます。
  66. 楠正俊

    楠正俊君 教員一人当たりの予算からいくと、研修に要する費用というのは旅費が一万円程度だ、その旅費もほとんど事務職員の事務連絡旅費とか赴任旅費とかいった行政費に食われて、実際研修のための費用というものはほとんどないということについて、文部省はどういうようにお考えになっておられるか。
  67. 天城勲

    政府委員(天城勲君) いま旅費の単価一万円のお話が出ましたけれども、これは制度としては、先生御案内のとおり、義務教育国庫負担法によりまして教職員の旅費についての実績を国が出す、実績の半額を負担するという制度でございますので、これはわれわれのほうが単価をきめてこの範囲内でやれという制度でございませんので、いろいろ現場における教職員の職務について生じた旅費の実績が、四十一年度で申しますと、一万八百九十五円というものが出ているわけであります。私たちはこれを前提に置きましてまるめた一万一千円という単価を一応見ておるわけでありまして、一般の職員の旅費というものにつきましては、最近非常に予算査定上きびしくて、一般職員の増額はないわけでございますが、教職員につきましては、研修の必要もあるということで実績を認めて、毎年数字の上ではアップいたしておるわけでございます。  ただ、現場におきまして教職員の研修のための旅費が不十分ではないかということを御指摘のようでございますが、研修の旅費は研修をどういうふうにやるかということから来るわけでございまして、講習会に出ることだけが研修でもないと思いますし、方法についてはいろいろ各府県でもくふうをこらしておるところでございます。したがって、私たち研修のための旅費を押えるという考え方は毛頭持っておりませんで、いま申したように、平均いたしますと赴任旅費も入って一万一千円という姿にあらわれてきておりますが、いま事務的な旅費ということをおっしゃいましたけれども、これは事務職員の旅費は別でございますから、教育上必要な事務連絡ということも当然この中に入っておりますけれども、そのために研修を二次的に扱うというような考え方は毛頭持っておらないわけでございます。
  68. 楠正俊

    楠正俊君 提案者の鈴木委員にお伺いいたしますが、この法案を拝見しますと、教員個々に対して一律月額四千円という研修手当を支給するということになっておりますが、一律四千円を支給することによって、実際問題教員がそれをそこまで、別に教員のあれを信じないわけではございませんが、四千円やることによって実際研修にそれを用いて教育効果があがるようなことになるのか、教育効果ですね、そういうやり方がいいのか、もっと、教員の待遇をむしろ上げるといった根本的な教員の優遇措置を講ずることのほうが先決なのであるか、この辺のことはどうなんですか。
  69. 鈴木力

    鈴木力君 御質問にお答えするのに、私はどっちが先だということにはちょっとお答えいたしにくいと思います。現状では基本的に教師をもっと優遇しなければならない。これはもうきょうにでもしなければならない状態です。それを十五億を何とやら手当なんということでごまかされることでは、優遇などということは全然期待できないわけですから、そんなことじゃなしに、基本的に教師の生活を見、教師の、何といいますか、仕事の性格等を検討されると、これはもう優遇処置というものは別の面で直ちにきょうにでもしなければならない、こう思います。しかし、研修手当のほうはそのあとでいいかというと、これはやはりあとでいいということにはならない、こう思います。  提案理由でも申し上げましたけれども、研修手当が必要だというのは、もちろん待遇が悪いからだということが一つあるわけです。それからもう一つは、教師に対する研修はどうあるべきかという基本的な考え方をやはり持たなければいけない。それは教師に、先ほど局長もお答えになりましたように、研修の価値のあるものは自己研修だと私どもは考えるわけです。いかにだれかが主催した研修会を何べん繰り返してみても、自己研修の場を与えずに、それからまた自己研修の意欲を持たせずに、教育と研修というのは結びつくと私は考えていない。そういう意味で研修手当というのは、いまのその自己研修を大いにやるべきであるという趣旨を国が手当をもってまあ義務づけるというのか、もっとやるべきであるという指導性というのか、そういう性格が一つあると思います。  それから、四千円というのは、これはまあ確たる根拠がないのですけれども、私どものほうで教師の購入図書費、それからその他の自己弁償によっての研修に要している費用、そういうようなもののおよその平均がその程度であるということで、四千円ということを出したのであります。で、少なくともいま教師が、たとえば自己負担によっての研究図書の購入の状況はほとんど最低でも二千円という数字が出ておる。大部分は二千円をこえておるわけであります。が、図書購入だけが研修ではありません。理科の担当の教師は実験用具さえ自分で買って、自分の所でその実験までやっておる、あるいは観察をやっておるというような実情でもあります。そういう意味で一律の四千円、こういう提案をしておるのであります。  なお、ついででありますから、旅費の点についても申し上げますが、旅費が、局長の御答弁によりますと、実績の半額を負担しておるから、そうしてこれは研修に相当さいておるからという御答弁であったように伺いました。文部省のこの旅費と研修との関係の認識がこの程度であるから、研修手当を出さなければならないという理由にもなるわけなんです。大体、旅費につきまして私は前にもこの委員会でも申し上げましたとおり、行政職の人は一等の汽車賃が保障されておって、教育職は学校長も二等で出張しなければならない状態に置かれておる。この差を一体どう見てくれるのかということが一つ。修学旅行に生徒について歩く旅費さえ、最近は若干出るようになりましたけれども、それでもまだ自己負担というのも全然なくなったと言えない。修学旅行の付き添いは相当の自腹で、共済組合から借りたりその他の団体から借りたりという状態。とても教師が自己研修に出向く場合にこの旅費から出るというような状態では全然ないわけです。そういう認識の上に立って、そうした旅費分も含めても、自己負担をしている分をそうした点から配慮いたしますと、一律四千円というのは決して高い額ではない、こう考えております。
  70. 楠正俊

    楠正俊君 この提案理由を拝見いたしまして、国立大学の研究費のような性格を持たせてこの研修費を渡そうということのようでございますが、これは学校単位にやるということはどうなのか。しかも、学校単位でやった場合、それを一般の学校とか、それから僻地の学校とか、それから特殊教育学校というように分けて、条件を考慮して支給するというほうがいいように感ずるんですが、その点はどうでございますか。
  71. 鈴木力

    鈴木力君 これは教育行政のあり方と直接関係があると思います。いまのように、先ほど小野委員からの質問に対する大臣の答弁のように、教育行政という立場で行政機関が教育に優位するという考え方があるうちは、いまのような学校単位に研修費を与えて自己研修をするという保障があると私どもはいま考えていない。学校の職場はいま、教育委員会があって学校長が管理職になって、管理職は行政職的色彩が非常に強くなって、そうして教育職的色彩は非常に弱くなっている。しかも、その学校長は、学校の研修体制を強化するという任務よりも、教育委員会からの指示に基づく研修を引っぱる、命ずるという任務のほうが非常に強くなっています。この行政システムの中では、学校学校運営で研修費を与えるということは、教師の自主的な自己研修を保障していくということにはいまのところはなり得るとは考えられません。そういうことも含めて、個人支給という趣旨で提案をいたしました。  それからもう一つは、やはり教師の自己研修の場合には、学校という全体の機能の中で研修される場合と、それからもう一つはやっぱり担当する教科目なりそれから担当する一つ教育問題なりに取り組んだグループ研究というのもあります。そういう形で個人個人に支給された手当が、教師が主体的にグループを組んだり個人になったり、そう使えるという道は開くべきだと、こう思っています。  それから、その次のもう一つのこれは、やはり一般の研修手当ということではなしに、その特殊教育、あるいは僻地教育、そういう問題の研究については別途また学校運営そのものとして配慮すべきものと考えます。
  72. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 本法案に対する本日の質疑はこの程度にいたします。     —————————————
  73. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) へき地教育振興法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本法案につきましては、すでに提案理由説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、これを許します。楠君。
  74. 楠正俊

    楠正俊君 これは鈴木先生、級別指定基準を定める場合ですね、市町村の財政状況を考慮するということになっておりますが、これは文部省にお伺いしますが、いままで市町村の財政状況考慮をせずに、交通条件とかそういったものだけを条件にして級別指定基準を設けた理由はどういうわけなんですか。     —————————————
  75. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) この際委員異動について報告いたします。  本日、久保勘一君が委員辞任され、その補欠として岡村文四郎君が選任されました。     —————————————
  76. 天城勲

    政府委員(天城勲君) 御指摘のように、現在へき地教育振興法に基づきます僻地基準の考え方は、あの法律の目的にも書いてございますように、いろいろな教育上の困難な地域ということになるわけでございまして、その要素をいろいろ取り上げております。したがいまして、財政力指数というものを正面から見ておりません。なぜそうだったかということにつきましては、当時僻地の条件というものを単に貧困というだけでもってきめられない問題もございますし、まあ極端なことを申し上げますれば、財政力指数からいっては入れないような条件のところにも教育的にはかなりぐあいの悪いところもあるということで、むしろそういう点の条件を中心に考えておったわけでございます。  ただ、現時点におきまして、御質問の点にはずれているかもわかりませんが、僻地の状況が三十四年の基準制定の当時と非常に変わっておりまして、いわば変貌しておりますので、新しい基準を設定しなければならぬ、それはかなり多角的な要素で見ていかなければならぬ、こういう宿題を私たち持っておりまして、目下、僻地基準の改定の問題は進めております。そのときには従来のような要素だけでなくて、もう少し他の観点も加えなければいけないのではないか、そのように考えております。
  77. 楠正俊

    楠正俊君 昨年この僻地のことについて調査をなさったと聞いておりますが、その結果はもう出たのですか。
  78. 天城勲

    政府委員(天城勲君) これはいろいろないきさつがございまして、僻地の指定基準の改定の問題を先ほど申したように持っておるわけでございまして、そのために四十二年度に僻地の調査に入ったわけでございます。結果的には、第一段階の調査は終わったわけでございますけれども、直ちに基準改定という作業に入るには、なお調査の過程で不十分な点がございます。と申しますのは、先ほども申したように、僻地の条件が非常に昔と変わってきておりまして、考慮に入れるべき要素がたくさん出てまいりました。一応状況を調べて、その新しい基準をつくって、その基準でもう一ぺん現在の僻地を当てはめてみますと、かなり従来の級別の基準と違った実態が出てまいります。このことはある意味では、新しい基準で考えれば現在の僻地の状態が変わっても、それはしかたないことでございますけれども、現実問題として従来の僻地の持っておりましたいろいろな財政上やあるいは手当関係措置が急変するということもいかがかというような要素もございまして、かなり綿密、具体的な調査を繰り返してやっているところでございます。したがって、まとめた形としての報告書というものはまだ出ておらない段階でございます。
  79. 楠正俊

    楠正俊君 提案者にお伺いしますが、僻地手当の支給率をこの法案で引き上げているわけですね。それからいま一つ、最低保障額というのを設けておられますが、その支給率の引き上げの理由と、どういうわけで最低保障額というものを定めたのか、その二点についてお伺いいたします。
  80. 鈴木力

    鈴木力君 これはもう一言で申し上げますと、いまの僻地教育で一番困っているのは僻地に赴任する教師がいないということです。つまり、僻地に教師が進んで赴任する手だての一つとして、僻地につとめておる教師を優遇すべきである、このことが基本的な考え方でございます。したがって、僻地教育手当の支給率を上げたのも、全体としていまの支給率では待遇が必ずしも十分とは言えないということです。  それから、最低保障額を設けたいと思いましたのは、いろいろな理屈があったにしても、事実として現在僻地に勤務している教師というのは非常に若い教師が多い。これはまあ人事行政のいろいろな欠陥もあるだろうと思いますけれども、僻地に赴任することを望まないといういまの趨勢からいうとやむを得ないかもしれません。ところが、この支給率がいま一律の率になっておるものですから、若い教師にとっては非常に金額が安い。つまり、僻地手当というものの恩典というのはほとんどないということがいわれるわけです。たとえて申し上げますと、いまの教育職俸給表(三)の二等級四号、初任給でありますけれども、それでいいますと、二万六千八百円でありますから、一級地につとめておる者は二千六百八十円しか手当が出ていないわけです。こういう手当だけになりますと、若い教師がまた僻地に赴任しても実際の研修やその他の費用には何らならない。こういう点から考えますと、最低保障額というのをつくりまして、およそその僻地に勤務しておる給与の平均額ぐらいのところを基準にした保障額、それが法案にそれぞれの級によってというのを提案しておりますけれども、それによって若い教師の救済をし、僻地に赴任する教師をできるだけ優遇もし保障もしたい、こういう考え方でございます。
  81. 楠正俊

    楠正俊君 五級地を一種、二種、三種と三種類に分けた理由はどういうところにありますか。
  82. 鈴木力

    鈴木力君 特に調査をいたしますと、この五級地という高度の僻地の中にはいろんな条件がまた複雑に出てまいっております。提案理由にもありましたように、特に保健、医療、その他衛生に関する環境の程度というのが、同じ五級地の中でも非常に条件の違ったものが出てまいります。それからまた、五級地に赴任するいろいろ教師のアンケート等で調べてみましても、一番先に問題になるのはやはり衛生環境ということでございます。家族を失うとか、いろんな例があります。そこで、特に五級地を三種に分けまして、衛生環境の度合いに応じまして手当を増してやる、こういう制度で救済しよう、こういう趣旨です。
  83. 楠正俊

    楠正俊君 過密問題につきまして、本委員会からこの間福岡町等に視察に行ったのでございますが、それとまた反対に、いわゆる過疎問題ですね、これについてどういうように対処するか、教育的観点からどういうように処置をしていくのか、その点について文部省に最後に質問いたしまして、私の質問を終わります。
  84. 天城勲

    政府委員(天城勲君) いま教育行政の中で一つの大きな問題は、いわゆる過密、過疎の問題でございます。これはひとり教育行政の問題だけじゃなくして、一般行政においても同じような課題を持っているようでございまして、しかもこの過密、過疎の状況の動きがきわめて激しく急激でございます。したがって、この動いておる状態の中で、この過密と過疎に対する教育上の施策を進めることが率直にいって非常にむずかしい問題だと思っております。  なお、この過密、過疎の状況につきましては、いま申し上げましたようにきわめて激しく変動を続けておりますので、一つの方向や、それからその実態というものはかなり見きわめなければならぬと考えて、本年度さらにまとまった調査をいたそうと考えているわけでございます。もちろん、過去におきましても、たとえば産炭地域のような、ある意味では過疎化現象を示している地域に対するいろいろな措置、それから僻地もこの過疎地帯の大きな要素になっておりますが、僻地に対する施策、あるいはそれの延長としてこの周辺の地域に対します措置、たとえば宿舎の設置ですとか、あるいは通学方法の援助とか、いろんな方法をやってきておるのでございますけれども、最近私ども、全面的じゃございませんが、伺っている範囲では、意外な地域が過疎化していくというようなことで、それに対する対策をどうしても考えなければならぬと思っております。そこで、それに対する対策は、単に財政上の措置だけじゃなくて、もっと広い意味の施策を考えなきゃいけないのじゃないか、こう考えまして、本年度綿密な実態調査をいたした上で、さらにいままでやっておりました僻地とか、離島とか、あるいは産炭地等におきます措置をさらに拡大して、いわゆる過疎問題とあわせて過密問題の処置をはかりたい、かように考えております。
  85. 中村喜四郎

    委員長中村喜四郎君) 他に御発言がなければ、本案に対する本日の質疑はこの程度にいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十分散会     —————————————