○
政府委員(
宮地茂君) 御
質問にお答えいたします。
この
東京大学の
医学部の
学生を主といたしました今回の
騒ぎでございますが、この問題の発端は、
医師法の
改正の問題についてのいろいろな問題が直接のきっかけになっておりますので、もっと根深いものがございますが、その辺から御説明いたします。
医師法改正に関連いたしまして、
学生側といたしましては次のような
要望をいたしております。まあいろいろございますが、おも立ったものを申し上げますと、今回の
医師法の
改正では、
大学の
付属病院と同時に、
厚生省が指定いたします
国立病院等の
指定病院で
臨床研修を行なう。その数はそれぞれ
国立病院なり
大学側できめて、
研修生の受け入れをするということになっておりますが、それに対しまして、そうではなくて、
自分らが好むところに
自分らが自主的に調整した
人数をそれぞれの
大学なり
国立病院で受け入れてほしいというのが一点でございます。
それから、そこで行なわれます
臨床研修の
カリキュラムにつきましては、
大学側がつくらなくて
自分たちが自主的に
カリキュラムをつくるのだ、そのつくった
カリキュラムによって
大学病院なりあるいは
国立病院は
研修をすべきであるというのが第二点でございます。
それから次は、今回のような
医師法改正案は
内容的によくないので、
大学の
教授会としては
反対をすべきである。したがって、外部に
反対声明を出すべきである。
その他いろいろございますが、そういったような問題につきまして
要望いたしております。これにつきまして、
東大の
医学部長、
病院長等は、大体新しい
臨床研修については
研修の実を十分あげることができるように
大学としても努力するので、いたずらに動揺することなく、
良識をもって行動するということを望みますとか、また、
臨床研修については、現在の
段階では具体的なことは
大学としてはきめかねる、これは
政府において、
厚生省が
中心でございますが、
文部省も関与いたしておりますが、
医師法の
改正を
提案しておるところで、したがって
大学自身がこの
研修について現
段階で具体的なことを
云々するということはできない、といったような回答をいたしておったわけですが、
学生はこれを
不満としまして、先ほど申し上げましたような要求を言い続けておりました。
これは
東京大学に限りませんで、
医科歯科大学もそうですし、新潟、京都、その他府立、
公立大学等の
医学生も、大体
学生で組織しております
医学連、
略称医学連、それから
臨床研修を行なう
インターン生の
段階でございますが、それ以上のところでは、
卒業生が
青医連といったような
団体を組織しておるようでございまして、一貫して、各
大学で多少の相違はございますが、そういった
学生側の
要望を掲げ、
大学側といろいろな
トラブルを起こしておるわけでございます。
そういうことで経過いたしまして、二月十九日の午後に
東大の
病院長が
病院構内を歩いておりますときに、先ほどのような
要望を持っておりました
東大の
医学生等が、またそこで
団体交渉をしようということで大ぜい来た。これは
病院内のことでもございますので、
病院長はそこで
団交をすることを拒みまして、通り過ぎて行こうとしたわけですが、いろいろごたごたが起こりまして、その間、身分は
助手でございますが、
医局長というポストにおります
助手に対していろいろ
学生との間で
トラブルがあったようでございますが、
学生は、そのときに
医局長が
学生に
暴行を働いたということで、その晩からあくる日の朝にかけまして
医局長を監禁した。同時に、悪いことをいたしましたという
謝罪文を無理無理書かせた。心ならずも、
謝罪文を書かないと監禁して自由にさせてくれないので、
医局長は心なく
謝罪文を書いたということでございます。
この
事件につきまして、
大学当局は非常に重視いたしまして、三月十一日に直接そのとき
医局長らに
暴行を働いた
学生に対して
処分をいたしました。この中には
学生もおりますし、またいわゆる
無給医局員といったような名称で呼ばれております、
卒業して
医局におる者ですが、そういう者を含めまして十七名の
処分をいたしました。
この
処分の
理由は、当日そのような行動を
病院内で行なった、
病院内で相当の
騒ぎをやり、
報告によりますと、そこで相当な
トラブルをやると同時に、何というのですか、シュプレヒコールというのですか、ワイワイやるようなこともやった。で、
大学といたしましては、そのような
行為が平静を守るべき
病院内において行なわれたことはきわめて重大である、
大学の中の
病院の
秩序を乱したばかりでなく、
病院内でそのようなことをやることは、もともと
医学を学ぶ者として許しがたい
行為である。
医者になるためには
学問も要りましょうし、
技術も要ると思いますが、その
前提として、
病院におる
患者のために、どのような考えがあろうとも、
患者に迷惑のかかることをしないといったようなことが、まず
学問なり
技術の
前提としてそういう心がまえが要るのだ、にもかかわらずそういうことをやるということは、もう
医学を学ぶ資格がないというくらいまでに判断したようでございます。したがって、退学とか停学とかいろいろな
処分が行なわれたわけでございます。
で、この
処分を
不満といたしまして——その
処分は三月十一日に本人に通知すると同時に、三月十二日に
学内で
告示を
大学はいたしました。十二日にこの
告示を見ました
学生たちが、
不当処分である、
処分撤回であるということで、今度は
大学の
学長をはじめ
医学部長等にまた
交渉をしようということになりまして、で、
安田講堂に
総長室がございますが、そこの
窓ガラスをこわしたり、いろいろ乱暴を働きました。それから、十二日の
晩学士会館で
大学が
評議会をやっておりますところへ、
医学生が、
東大の
学生が大部分のようでございますが、二百名ばかりが押しかけて、それから
総長を十二日の晩から十三日の朝にかけて
かん詰めにして、いわゆる一方的な
団体交渉をやったというようなことでございます。
そのときに
学生たちが申しますのは、その
処分の
白紙撤回の
理由の
一つとして、
処分された人の中に、その二月十九日の
事件当日その場にいなかった、そのときは九州におった者が一人
処分されておるのは不当である、これは事実
誤認もはなはだしいといったような話があったようでございます。
そこで、
総長といたしましては、そういうことはないと思うけれども、事実に
誤認があったということであれば、それは十分調べてみてもよろしいという
話し合いをしたので、三月十二日から十三日の朝にかけての
総長等の
かん詰め事件は、そういうことで
かん詰めが解かれたということでございます。
その後、
総長とも
話し合いをしたいということで、
大学としても、
人数を、そう何百人も押しかけてきたり、喧騒の間にお互いに話し合うことはできないから、
人数は二十名ぐらいとかということで、静かに話し合おうということは申したようですが、そういう約束で話し合うというその日が来ますと、二十名ではなくて、それ以上の者が来ておる。それでは話が違う、あるいは
学生のほうは、そういうことを了承した覚えはないというようなことで、それに似たようなことが今日まで続いておるわけでございますが、今日まで
学生たちは、
東大の
医学部の
校舎の
中央館と呼んでおる三階建ての三階に閉じこもりまして——閉じこもると申しますか、二、三十名がたむろしまして、その二階あたりにバリケードを築いて、ほかの者を寄せつけないということで騒いでおるようでございます。
以上が今日までの経緯でございますが、特に御
質問の中にございました、
総長が一両日前に
記者会見をやったというその
前提となります
東京大学の意思が三月十六日に
大学の
告示として出ておりますので、その要点をかいつまんで申し上げます。「三月十二日午後、ヘルメットを着用した他
大学学生を含む百数十名の
医学部学生ならびに
研修生等が、
暴力行為を行なった
学生等の
処分撤回を要求して
医学部中央館に
実力により
不法侵入し、
長期占拠の体勢をとり、同所を根拠として
医学部本館、同
附属病院さらに
大学本部に示威を行ない、面会を強要し、
医学部長室および
安田講堂の
入口扉を破壊する挙に出た上、同日夜、この
異常事態の
対策を
協議中の
評議会に、制止を聞き入れず
実力で乱入し、
処分撤回を怒号し、翌払暁におよんだため
評議会の続行は不可能に陥った。」
云々ということで、その後
学内施設を
不法に
占拠して
大学の
警告を聞かないという現在、先ほど申しましたようなことは、これは
不法な
学内施設の
占拠である、
警告も聞かない、「かかる異常な
状況のもとで、
大学の研究・
教育・
一般業務の正常な
運営は著しく阻害されるに至った。」と。正常な
運営が、
大学の
自治で行なわれる
正常運営が著しく阻害されるに至ったと。こういうようなことのため、「本学は、この異常な
事態を収拾し、平静なる学園としての
秩序と正しい
大学の
自治を速かに回復したいと考える。このため、もし依然として
説得や
警告にも応じない場合は、この
不法勢力を
学内から排除するために、
東京大学は重大な決意をせざるを得ない。」
云々ということで、これはいま
楠議員のおっしゃいましたこと、
新聞等の
記者会見の
内容のもとをなすと思いますが、
大学としては基本的にこういう観点で、この
事件について毎日
協議もこらしておるようでございますし、また、先ほど
医学部長の問題に触れられましたが、私のほうもこの問題につきまして、
医学部長自身から
報告も受けておりますが、ともかく
医学部長の
所在がはっきりすればそこへ押しかけて来るとかいうことで、心ならずも
所在を明らかにし得ない。
自宅に帰れば
自宅へも押しかけますので、聞くところによりますと、
自宅へも帰れないといったような
状況でございます。
そこで、私どもも、
小野委員から本日
医学部長の御
出席の御
要望があるやにも承りましたので、できる限り
出席していただいたらとも思いましたが、そういう事情で事実上不可能であろうというふうに感じておりました。それからまた、
医学部長はそのように逃げ歩いておるわけじゃございませんで、そういう
状況は、
学生が押しかけてきて——押しかけてきても正常なる
話し合いができきばいいんですが、できないという判断で、
居所ははっきりいたしませんが、この問題については
東大学長、
医学部長らが連日
連夜対策について頭を悩ましておるというのが
実情でございます。
以上、少し長くなりましたが……。