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1968-05-08 第58回国会 参議院 物価等対策特別委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年五月八日(水曜日)   午後一時六分開会     —————————————  出席者は左のとおり。    委員長          大森 久司君    理 事                 岡本  悟君                 櫻井 志郎君                 村田 秀三君                 田代富士男君    委 員                 木村 睦男君                 林田悠紀夫君                 木村美智男君                 田中寿美子君                 中沢伊登子君    衆議院議員        発 議 者    砂田 重民君        発 議 者    武部  文君        発 議 者    和田 耕作君        発 議 者    有島 重武君    国務大臣        通商産業大臣   椎名悦三郎君        国務大臣     宮澤 喜一君    政府委員        公正取引委員会        委員長      山田 精一君        経済企画庁調整        局長       赤澤 璋一君        経済企画庁国民        生活局長     八塚 陽介君        厚生省薬務局長  坂元貞一郎君    事務局側        常任委員会専門        員        宮出 秀雄君    説明員       通商産業省企業       局次長       下山 佳雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○当面の物価等対策樹立に関する調査  (物価問題に関する件) ○消費者保護基本法案衆議院提出)     —————————————
  2. 大森久司

    委員長大森久司君) それでは、ただいまから物価等対策特別委員会を開会いたします。  これより、当面の物価等対策樹立に関する調査中、物価問題に関する件を議題といたします。  本件に関し質疑のある方は順次御発言を願います。木村君。
  3. 木村美智男

    木村美智男君 きょうは通産大臣、からだのぐあいが悪いようですから、短時間で簡単にひとつ御質問したいと思います。  当委員会消費者保護基本法の問題が山にさしかかってきておるわけですが、直接この質問に入る前に、大臣に、大型合併の問題についてぜひ伺っておきたい。これは私、第一番に、この問題の進行いかんによっては、いま審議をしておる消費者保護基本法というやつが、何の消費者保護かという事態にもなりかねない、こういう意味で実は伺うわけです。  特に、通産大臣が、八幡富士鉄合併問題が、社長会談というか、新聞発表になるや、待ってましたとばかりに、経済企画庁長官も、通産大臣も、あるいは山本次官も、積極的に賛成の意思を表明する、そうして、ただそれだけじゃなしに、もうすでにこれを認めたような立場に立って、次の監視機構といった問題について、管理価格という心配もあれば監視機構といったようなことについて言及をされている。こういうことについては、私は、従来政府がとってきた態度からいっても、どうも理解ができない。たとえば、汚職や贈賄問題等政府見解を聞けば、それは目下検察庁が調査中でございますと、こういうようなことを言っている政府として、本来この問題は独占禁止法関係のある問題で、公正取引委員会——つまり行政委員会分野の問題だと、それを、事前にそういう態度政府首脳である閣僚が表明をするということは行政委員会中立性を侵すものだと、私はそういうふうに考える。しかも、すでに認めたような印象を与える合併後の監視機構といったようなことに触れているということについては、これはまことに不公正な態度で、私はこの点はきわめて遺憾だと、こう思うのですが、この点について、大臣、どういうふうにお考えになられますか。
  4. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 私は、あの当時、新聞発表した——したって、その質問に答えたのが新聞に出ただけなんです。こっちから新聞に会見を申し入れて、それで私の見解を申し述べたというのではない。そのときのことが新聞に出ておりますが、今日の資本自由化の情勢に対処して、日本は、企業の大小を問わず、大は大でまた過当競争の面があり、小は小でまた同じ過当競争、そうしてしかも国際的に自由化されるということになれば、対外的な競争力がきわめて脆弱であると、まあそういったようなことが、程度の差はございますけれども、共通しておるのではないかと思うのであります。そういう意味において、この企業集約化ということは、基本的にはこれは好ましいことであるという見解を述べたのであります。ただ、もちろん、その問題については、こまかい論議は、当然その発表のときに私は予想しておりまして、そのことは多少述へたが、新聞ではそれを扱っておらない、このことだけまず申し上げておきます。  それから、いま御指摘大型合併の問題は、合併そのものが、公正取引立場から、合併するそのことが対象になる——直ちに対象になるというふうに私は解釈できないと思うのであります。結局、合併によって経済的な独占力が高まって、この独占力というものを用いて、そしていわゆる企業エゴイズムといいますか、独占の利を乱用して、そして排他的に利益独占しようとする傾向がとかく出てくる、であるからして、そういうことに対しては、もうこれはどうしても取り締まらなきゃならぬ、これはもう言うまでもないことであって、日本公正取引委員会の使命もまさにそこにあるので、私は国民利益を守る上においてこれはぜひとも必要な存在であると、こう考えております。考えておりますが、合併そのものがすでにいかぬのだと、こういうことにはならない。でありますから、ある犯罪が行なわれて、それが裁判の問題になっておる、そういう場合にはもうすでに事司直の手にかかっているんだからこれはとやかく言うべきじゃないというのと違いまして、合併そのもの独占力を直ちに乱用するということにはならないので、ただそういう傾向にある、そういう危険性があるというので、これに対して相当の警戒信号を出すということは、そこまでは私はいいと思うのでありますが、直ちに、市場占拠率が三〇%をこすものはこれはもうすでに経済的に一つの罪悪であるというような前提のもとにこれに対処するということは、これは間違いであると私は考えております。
  5. 木村美智男

    木村美智男君 大臣、進んで大臣新聞発表したというふうには言っていない。私もそうは受け取っていない。しかし、大臣が答えられたということについての、まあマスコミの取り上げ方も一つは悪いんだと大臣言うのかもしらぬけれども、しかし、その原因をつくったのは、大臣が言ったんだから、確かにね。そこから見れば、やはり、言っていること自体——私は、合併そのものがいかぬとか、それは大臣がどうこう言うべき筋のものではないとか、そんなことは言ってはいない。大臣は、それじゃ一体、独占禁止法の第十五条というものをどういうふうに考えているのか。そういう十五条に抵触するおそれのある今回の具体的な八幡富士鉄の問題が出ているときの発言だから。一般論として大臣が述べられる分には何も私はどうこうと言う筋合いのものではない。ここを間違えないように。したがって、大臣が言っているようなそのことを聞いているわけではない。つまり、合併そのものがいかぬのだということを私が言っているのではない。この具体的な富士八幡合併が少なくとも独占禁止法十五条に抵触する可能性のある問題であるから、疑いのある問題であるから、したがって、それはそれなりその判断行政委員会である公正取引委員会が認めるとか認めないとかという判断をすべきものなんだから、合併後の監視機構なんと言うことは、すでに認めたという前提に立っているように受け取れるではないか、そういう態度というものは決して公正な態度ではございませんよということを申し上げている。その点を言っているのですよ。  それからもう一つ大臣も、その危険性ということについて全くないとは考えていないと思う。私はここで一番問題だと思うのは、これは寡占状態にいま産業界があらゆる分野でなってきているこの趨勢というのは、私も現実に認識しております。問題は、今度の場合のように、少なくともこれは一位と二位の合併。今日までの、三菱重工業に至るまでの合併というものは、これは大体、何というか、今回の八幡富士あるいは王子三社の合併とは全く質的に違う。この点を大臣はどういうふうに理解をされているのか。そしてそれは、何も私はシェアだけを問題にしているのではない。市場占拠率と同時に、企業格差を私はやっぱり問題にしているわけですよ。それが、八位と十位あたりが合併をしたとか、七位と九位あたりが合併したという問題は今日まである関係であって、これは、言われるような危険性というものはある程度防止もできるし、合併する理由もそれなりに成り立つ。しかし、今度のいわゆる八幡富士の問題は、それとは全く違ったもので、そういう企業間格差二つ合併によってぐんと群を抜く。いままでの寡占状態は、言ってみれば、大企業のドングリの背比べだった。今度はそうじゃない。その中で八幡富士鉄合併がぐんと群を抜いて一つ先に出るというところに問題点があるのだ。これが大体、市場シェアの問題も含め、やがて管理価格あるいはプライスリーダーシップができ上がってくるきわめて大きな可能性を含んでいるから、十五条に照らして十分独禁法に抵触する疑いがある、こう私は申し上げているわけです。そういう問題について、ああいう大臣のものの言い方というものは、これは今日やっぱり公正な態度とは言われない。それは、通産省内部議論をされるのもいいでしょう。そういうことならかまわないし、一般論としてやられるのならいいけれども、たまたまこの問題が出ているときに、天下あげて何か合併でき上がって認めたような、そういう雰囲気なり既成事実をつくっていくようなことを政府音頭とりになって太鼓をたたき笛を鳴らすというふうな、こういう関係は、これは決してよくないではないかと、こう言っているわけです。  それから国際競争力の問題についても、事鉄鋼に関する限り、国際競争力は十分ですよ。時間がありませんからその議論あと次長のほうと十分したいと思いますが、鉄鋼に関しては国際競争力は十分ある。現に、きのう八幡製鉄社長ヒルトンホテルで講演した中にも、合併目的国際競争力のためといったようなことは私は言っていない、競争力はあると思っている、こういうことを言っていますよ。現に、何というか、ケースをあげて説明するまでもないのですが、十分いまアメリカの鉄鋼業をしのいで国際競争力に勝っているわけです。だから、そういう意味では、国際競争力という問題は、これは私はそういう関係理屈にならないというふうに考えている。しかも今度の合併について合併当事者自身が言っておることをよく聞いてみれば、私がこの前の委員会企画庁長官質問をしたと全く同じことを当事者が言っている。つまり、八幡製鉄富士製鉄合併構想は、行き過ぎた鋼材価格競争を押えて、それで生まれる利潤で企業内部の蓄積をふやし、体質を改善するのがねらいである、合併によってあがる利益の分配をよく聞かれるが、それをすぐに値下げという形で消費者に返すのは理屈に合わない——明確に言っているわけなんです。価格安定、これが目的なんですから、だんだんこれはプライスリーダーシップを形成することはもう目に見えていることです。そういうものであるにもかかわらず、大臣がいま言われた趣旨とは少し実質の内容が違うじゃないか、だから、もうちょっと慎重に政府首脳部態度をとってほしいということが私の言わんとするところです。大臣、どう考えますか。
  6. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 一々私は新聞をそう丁寧に見ているわけじゃございませんので、何か、当然これはもう許されてしかるべきものであって、もう既成事実としてこれを是認して、その前提に立って私がものを言ったというような印象新聞紙上から得られたとすれば、これはもう全然私の真意を伝えるものではございません。具体的にどういうことばの表現でございますか存じません。私は一々それを丁寧に読んでおりませんから。ただ概括的に、これは当然いいことなんだ、是認さるべきことなんだというようなことを前提にして何かものを言ったとすれば、それは、私はそのつもりでものを言った覚えがないので、真意を伝えるものではないということをお断わり申し上げておきたいと思います。  それから十五条の問題は、私も条文の趣旨理解しております。この二つ会社の合同によって、ほとんど鋼材に関してフェアコンペティション余地がもうなくなったというようなところまでいっておるとすれば、これはもう合併そのものが問題になるのでありまして、公正取引委員会も、成り行きを見てというような、そういうことでなしに、直ちにこの問題に対して委員会のほうの判断というものが一応そこに出てこなければならぬ。事柄はそうでないのでありまして、この両社合併によって鋼材全体としては三五、六%のものであって、このほかに一一%を占めるものが三社あり、六、七%のものが一社あるということでありまして、まだフェアな競争をする余地は十分に残されておるのみならず、今日におきましてはいわゆる国際競争というものも非常にしやすくなっておるのでありまして、三〇%をこえて三五、六%になった段階においても、国内においてはいま申し上げたとおり、そうして国際的には門戸が開放されておるというようなことでございまして、私は、それ自体直ちに問題があるということではないと思うのでございまして、まあ、新聞のいうように、基本的には好ましい方向である、こういうふうに判断して新聞記者質問に答えたような次第であります。ちょっとこのことだけを申し上げて御了解を得たいと思います。
  7. 木村美智男

    木村美智男君 大臣が、かりにそれじゃ新聞印象を与えられているようなものが私の真意じゃない、つまり、認めるような前提でものを言った覚えもないし、したがって大綱的には好ましい方向だと、この程度立場質問に答えたんだ、こういうことでこれは了解をしておきます。  ただ、後段のほうの鉄鋼の問題については、国際的に見ても国内的に見ても、大臣の認識では、この二社合併ができても十分自由競争が行なわれる、そういう条件にある、こういうふうにおっしゃられたわけですが、これは私は少しく問題があるというふうに思う。というのは、これは、第十五条の解釈あとでいろいろ公権解釈も伺わなければいけませんけれども、「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」というこの条項は、私は、今度の八幡富士合併をすることによって、たとえば冷延鋼材一つとってみても、珪素鋼板については六五%になるわけです。亜鉛鉄板は六三%、あるいは鋼板広幅帯鋼の場合には四〇%、それから今度は冷やすほうじゃなくて、あっためるほうの圧延鋼材のほうを見れば、鋼矢板については九四%、それから重軌条、レールについては八七%、大形形鋼においては六〇%、薄板でも四八%です。粗鋼の三五・七%、これだけを見て、大臣、ものを言っているようだけれども、いまのような品種別に見ていっても、これはたいへんな問題だということが言えるわけなので、大体二社が九四%、八七先も占めておって、これで自由な競争が行なわれますか。少なくともここでは新会社市場支配力を発揮していく条件になっていくと私は見ているんですよ。そういう状態現実に分析をしていって、これはどういう説明をなさるんですか。これは説明を聞かしてもらわなければならぬ。粗鋼の三五・七%だけをとらえてものを見るというのは、ちょっと私は危険な見方であるし、実際にもこれはそぐわない見方だと、こういうふうに思っています。
  8. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これはこまかい議論になりますので、一応私の考え方を申し述べますが、品物別に見ると、いま御指摘のとおりであることは事実でございます。ただ、レールは、需要者がもうほとんど国鉄に限られておるというような状況、それから鋼矢板は九五%ですが、ただいま、川鉄水島あるいは福山の鋼管、この二社が大型ミルをすでに許可されて増設中でございますので、これがやがて稼働いたします。その場合には相当な能力がここに生まれるわけでございまして、その比率についていろいろ問題があると言えばありますが、そういう将来のこれに対する可能性がある。それから電気鋼板は、第二位の川鉄シェアが三三%でございまして、その間の競争関係というのはこれは成り立ち得る、こういうようなふうに考えておりますが、これらのこまかい比率の問題についてはいろいろ公正取引委員会等において御調査の結果公正な結論が生まれる、そしてそれによって是正すべきは是正する、補正すべきは補正するということになろうかと思います。
  9. 木村美智男

    木村美智男君 大臣、時間ないようですからね、おっしゃるとおり、こまかい問題については、もうこれは省略をします。  ただ、もう一つ大臣に頭に置いていただきたいと思うのは、いままでの合併と今回の合併の問題は異質のものだ、質が違うのだと申し上げている点なんですが、大臣、きょうはちょっと大きな声を出しているのは、聞き取りにくいように見えるものですから大きく言っているんですが、いままでの合併と異質だということは、合併にはいろいろな型があると思いますが、大きく分けると大体二つぐらいに考えられると思うんです。たとえば、石川島重工と播磨造船合併したというのは、大型船建造部門を拡大をするというようなことで合併をしておりますね。それから日産とプリンスがやった場合には、村山工場を吸収することによって生産能力拡充をした。あるいは住友セメント野沢石綿セメントとやった場合には、やはり彦根工場、これを獲得をし、そうして生産力拡充をはかる、こういうようなことで、大体既存の工場部門拡充をしたり、あるいは新規の部門に進出をしたり、さらに経営の多角化のために合併をするというようなことで、こういう合併の場合には、確かに規模は大規模になりますけれども、そのなった企業価格を管理するという力量まではまだ持たないです、こういう場合には。この場合には、いわば企業拡張投資一つの形態なんですから、私は、これは独占禁止法としても抵触することもないし、したがって公正取引委員会も今日までこれを認めてきたと思うんです。ところが、今回の場合は、先ほど私申し上げたようなこまかい数字あげるまでもなく、それぞれの品目別に見ても圧倒的なシェア生産量というものを、その新しい会社が、何というのですか、一社独占という形になっていくわけですから、九〇%、八〇%というようなことになれば。まさに独占ですよ、これわね。支配下関連産業、これを加えていったら、もっと比率は高くなる。したがって、競争を排除し、あるいは競争を押える、市場支配力というものを獲得をしていく、こういうねらいを持ったいわば合併の形だ。そういう意味で、従来の合併と今度の合併は質的に違うのだ。だから、今後十分プライスリーダーシップというものがそこにでき上がっていく。したがって、私どもは消費者保護基本法という法律をいまつくろうとしている。そういう立場から考えても、この合併問題は、単なる企業合併とか大型化とかという抽象的な問題としてはこれは考えられない。もっと国民生活に密着をした結果として、独占禁止法が期待をしているこの国民経済の円満な発達というかね、そういうところに消費者利益を守りつつ進めていく独禁法趣旨から言うと、これはやっぱり十分に、今回の場合は、違反疑いが濃厚だというふうに考えられるものだから、したがって、大臣には、まあ先ほどおっしゃられたことが真意だというならば、閣議でも多少申し合わせをされたようでありますが、やはりこの問題については政府は慎重な態度をとって、そうして独禁法本来の立場から、将来に向けて誤りない産業政策というものが確立をされるように大臣にもとくとひとつ御配慮を願いたい、こういうことで、私まあそれ以上大臣にこまかい議論をしようとはいたしませんから、私のいま申し上げたようなことで御理解がいただけるなら、大臣、きょうはひとつ大臣に対する質問はこれで終わりたいと思います。いかがでしょう。
  10. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) いや、よくわかりました、おっしゃることは。まあ、石川島播磨あるいは日産プリンス等々の場合と違って、各品目別にこれをしさいに検討しても圧倒的シェアではないかと、そこで、従来とよほどこれは性質が違うのだということは、確かにお説のとおりでございます。しかし、それだからといって、競争を排除する、あるいは市場独占目的のもとにやっているのだということは、これはどうも少しまだ結論を出すには早いのでありまして、少なくとも、競争排除あるいは市場独占というような違反を犯しやすい状態にあると、そこまでは私は認め得ると思います。そこで、御指摘のとおり、これに対しましては、通産省立場から言いましても、絶対に国民経済に害悪を流さぬように、あらゆる万全の取り締まり、監督を怠ってはならぬと、さように考えておる次第であります。
  11. 木村美智男

    木村美智男君 大臣、けっこうでございます。そういう立場でひとつ慎重にやっていただくように重ねて要望いたしまして、大臣に対する質問は終わります。  公正取引委員長に私はお伺いしたいのですが、この間、前回のこの委員会で、私、経済企画庁長官——いま通産大臣と少し議論をしたのですけれども、それに関係があるわけですが、実は、合併してからあと、いろいろ弊害が出てきた場合に、この企業を取り締まるということは、今日のこの独禁法自体では非常に無理があるのじゃないか、こういうふうに私質問いたしましたら、企画庁長官は、このことについて、大体現行法で十分それらのことはやれるという意味のことを言っているわけです。大体要旨を申し上げますと、寡占体制独占または半独占体制と考えるのは誤りだと——これは私もそうは考えていないのですが、この体制下でも自由競争は十分行なわれるし、大型合併コストを引き下げ、その分を消費者に還元することができる、こういうふうに言っています。このことは、稲山社長が言っていることは、全く業界がそうでないと言っているのに、一生懸命大臣はこういうことを言っているので、これはあと企画庁長官十分議論をしたいと思っておるところなんですが、何でそういうふうに、業界すら考えていないことを、一生懸命政府が先に立って言わなければならぬか。これは質問がちょっと別ですけれども。しかし、一方では弊害も生まれやすいと、さすがに弊害も生まれやすいことを、通産大臣と同じように認めています。このため、大型合併のことは、公取委に認可されたあとも、価格販売状況などの市場報告を自主的に提出をさせるようにしたい——この点は、私、そんなものはまるっきり信憑性がないというやりとりをしたところなんですが、この八幡製鉄富士鉄両社合併問題にからんで、このような自主報告をするように両社首脳公取委にも言ってあるんだ、こう言っているわけです。お聞きになられているかどうかわかりませんが。私が特に聞きたいのはこのあとなんですが、公正取引委員会合併を認める場合には各種の条件をつけることができる、たとえば管理価格が生じやすい品目公正取引委員会が指定をして、その品目について、コスト生産状況販売状況などを公取委に報告させるようにすればいいんだ、そういう条件一つつけられるということ、それから臨検や検査ができるということ——まあここら辺までは何とか理解ができるのですが、この独禁法には罰則規定もついているので法律の姿としてはこれで十分である、もし企業罰則を受けるのを覚悟で管理価格を形成した場合にどうするかということは、これは法律の運用にかかっているが、公正取引委員会価格のきめ方を是正させることもできるし、場合によっては独禁法の十七条の二によって合併後の企業に対して排除命令——合併後の企業に対してですよ、排除命令を出すこともできる、この排除命令の中に——ここが一番私問題点だと思うのですが、企業に対する分割命令も含まれていると解釈するという——これは新学説で、私の理解する限り、この排除措置の関係、少なくとも十七条の二を読んで、こういう解釈は出てこないのですが、これは宮澤長官独得の考え方です。私は、強権解釈として、公正取引委員会は、この点は認めるとか認めぬとかは別にして、これは今日直ちに、やはり解釈論としては明らかにしておく必要がある、こういうふうに思うものですから、ここひとつ委員長にお伺いしたい。
  12. 山田精一

    政府委員(山田精一君) ただいまの御指摘の点でございますが、当面問題となっております会社の名前を引用いたしますことは避けさしていただきたいと思います。ごく抽象的に申し上げたいと存じます。  十七条の二の条文につきましてのお尋ねでございますが、これは場合を限定いたさないといけないと思います。  と申しますのは、もしもAB二つ会社がございまして、それが第十五条の規定に基づきまして合併の届け出を公正取引委員会にいたしたといたします。公正取引委員会がそれに対しまして第十五条第一項に違反する疑いがあると認めまして、所定の期間、これは三十日——これは短縮も延長することもできることになっておりますが、便宜上三十日と申させていただきます。——三十日の間に公正取引委員会におきまして合併が適当でないという勧告なり、あるいは審判開始決定をいたしたと仮定いたします。その後、審判の日数が当然ある程度かかるわけでございますから、その間に、三十日の法定期間が満了いたしまして、もしAB両会社合併の手続をいたしてしまったと仮定をいたします。さような場合におきましては、審判の結果、審決に基づきまして、第十七条の二によって、そのAB合併いたしました会社を分割する排除命令は出し得るものと、かように考えます。  ただし、いま申し上げました場合と異なりまして、CDという二つ会社合併の届けをいたしたといたします。そうしてそれに対しまして公正取引委員会が第十五条の第一項に触れる疑いがないものと判断をいたしまして、三十日の法定期間が経過いたしまして、CD両会社は平穏かつ公然に合併の手続をいたします。その後において事情が変更いたしまして、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるような場合が発生いたしましたときにおいては、十七条の二による分割命令はできないものと、かように考えておる次第でございます。
  13. 木村美智男

    木村美智男君 そのあとのCDという一般論のたとえですね。これは非常にわかりやすいのですよ。だけれども、ABのほうは、私のあれかもしれませんが、要するに、スムーズにいかないので、片っ方は待ち切れずに合併の手続をやってしまった、しかし、その後審判が出た、これはだめなんだという審判の結果が出た場合には分割命令を出すことができる、こういう理解でいいですか。
  14. 山田精一

    政府委員(山田精一君) その審決の結果の排除処分といたしまして、分割をも命じ得るものと考えております。
  15. 木村美智男

    木村美智男君 そうしますと、一般論と具体的なこと、まあ宮澤長官の言ったのも、私はある意味では一般論として理解できると思うのですね。したがいまして、場合によってはという、その場合が問題だと思うのですが、大体現実の問題に当てはめるとわかるような気がするのですが、どうもこれは聞いても委員長答えそうがないので……。わかりました。それじゃ有権解釈としては、分割命令を出し得る場合と、だめな場合と、二つあるということがはっきりしましたから、一応これは一般論としては、私きょうは了解をしておきたいと思います。  ただ、この中で、もう一つは、管理価格というものがすべて独禁法に抵触するようなふうに考えておる発言があったわけです、答弁が。私は、実はこれは独禁法解釈を多少誤っているんじゃないかと思うのです。なぜかというと、現行法では管理価格というものを有効に規制することができないからこそ十五条というものが逆にあるんだ。こういうことについて、公正取引委員会としてやはり明確にする必要があるんじゃないか。なぜそういうことを言うかというと、どうも私は、最近の動きを見ますと、世界の趨勢か何かは別にしまして、独禁法なんというものはどっかへいってしまって、特に財界や業界あたりでは、全く独禁法に対する理解というものはどっかへ飛んでしまって、もっぱら合併合併といっているきらいが、言っていること、やっていることの中から出てくるものですから、したがって、私はそういう意味で、もう少し一般に独禁法理解してもらうというような意味合いを含めて、理解してもらうのは講演会だの説明会ばかりでなしに、やはりいま私が申し上げたような管理価格というようなものについて規制ができないから十五条というものがあるんだといったようなことの解釈を明確にする必要があるんじゃないか、こういうふうに思うのですが、これは委員長、どういうふうに考えられますか。
  16. 山田精一

    政府委員(山田精一君) 御指摘管理価格でございますが、管理価格というものをいかに定義いたすか、これは非常にむずかしい問題であろうと存じます。現に、アメリカの上下両院の合同委員会で、管理価格問題につきまして、たしか二年余りかかりまして調査をいたしましたが、私の見ましたところでは、あまり明快な結論というものは出なかったように考えております。したがいまして、管理価格とは何ぞやという定義はむずかしい問題でございますが、きわめて常識的に考えました場合に、管理価格の中で独禁法に明らかに抵触するものはその一部であると考えております。すなわち、独占またはカルテルによりまして管理価格が設定されております場合には、これは明らかに独禁法に抵触いたすわけでございますが、そのほかに独禁法に直ちに抵触いたさないところの管理価格分野があるように考えます。したがいまして、公正取引委員会といたしましては、いままででも管理価格調査に着手しておるのではございますけれども、まだはかばかしい進行を見ませんので、今後さらに一そう管理価格問題の調査検討につとめたい、かように考えておる次第でございます。
  17. 木村美智男

    木村美智男君 一般論でけっこうですが、私は、独禁法というようなものをよく読んでみますと、大体シェアは三〇%をこえるというようなことは危険であろうというようなことをいわれておりますが、そういう状態一つはあるということ。それから一定の取引分野の中に競争というものがほとんどないという状態が出てくる、あるいはそれぞれの生産品目が、今度は三〇なんというものではなしに六割をこえているというような品目がたくさんあるというような状況ですね。しかも、企業規模としては、それだけが、一つ、いまの高層ビルみたいに、大体九階十階という中に三十六階というのがどしんと出ましたが、通産大臣も答えておりましたけれども、三五・七%、ちょうど三十六階ですね。ほかのは二%、三つあると言っておりましたが、十一階のビルが三つあって、三十六階がばんとできた。ちょうどそこの霞が関ビルみたいなものだと思うのです。そういう毛のがもしできてくる場合に、いま言っているようなこういうようなものが出る場合に、一般論としてですが、独禁法というものにやはりこれはどうも抵触する、そういうものではないのかという理解をせざるを得ない。そう考えなければ、独禁法というものは何のためにあるのか、十五条というのは何のためにあるのかということになるし、逆にそうでないというなら、じゃ大体十五条なんという条文は要らないのじゃないかという疑問にもなる、戻ってくる、こういうことになるので、私はやっぱり、ビルのたとえをしちゃ悪いけれども、まあ丸ビルやら九階十階のビルのところへ三十六階ができれば、独禁法の十五条からいうとやっぱりたいへん問題であるということになるのじゃないかと思うのですが、これは一般論でけっこうですから……。
  18. 山田精一

    政府委員(山田精一君) 従来たびたび御説明申し上げましたごとく、私どもといたしましては、三〇という数字を具体的に適用するつもりもございません。従来の合併を認めましたケースで、三〇よりもはるかに高いものが多々あるわけでございます。それから霞が関ビルのたとえをお話しになりましたが、原始独禁法におきましては企業規模格差ということがはっきりと書いてあったわけでございますが、現行法におきましては、そのことばは削除されております。したがいまして、シェアでございますとか、しばしば申し上げましたごとく、競争企業との事業能力の比較、あるいは需要業界との取引状況とか、新規企業の参入の状況でございますとか、あるいは代替品関係、輸入品関係等を総合的に考え合わせまして、第十五条に申しておりまするところの、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるかいなかと、かような判断をいたすことになると、かように考えておる次第でございます。
  19. 木村美智男

    木村美智男君 だいぶ抽象的ですから、何とも申し上げられませんが、しかし、これを一応かりに認めるにしても、認めないにしても、シェアなり需要業界関係や、代替品や、輸入品の関係ですね、こういうものはもういずれにしても明らかにして、したがってイエスであり、あるいはノーであるということに公表されるわけですね。その段階で議論をしちゃ、実際はおそい問題でもありますが、やむを得ないですね、これは。そういう意味で、いまの質問の答えとしては、まあやむを得ないと思いますよ。ただ、委員長ひとつ、こういう超大型合併といったような時期には、特に私は現実にそうだとは言わぬけれども、往々にして政治的な圧力というものがやっぱりかかりやすいんですよね。そういうことが推測されるがゆえに、公正取引委員会としては、この際き然たる態度中立性というものを厳重にやはり守り抜いてもらいたい、私はこういう気持ちが一ぱいなんです。特に、もう日本における独占禁止政策というもの、独禁政策というものが、私はこの問題を契機にしてあるいは運命の分かれ道かとも思う。場合によったら公正取引委員会という行政委員会はなくなってしまうかもしれぬし、独占禁止法というものも、全く空洞なんというものじゃなくて、空文化してしまう。それはもう、どんな、ささいな食品の不当表示だとか、不当景品であるとか、そんなものを扱うのが本来の公正取引委員会じゃないと思うんですよ、使命は。したがって、財政金融政策と並んで、独禁政策がどうであるかということは、やはり日本経済にとって今後の発展にきわめてこれは大事な時点で、その意味では、公正取引委員長は、私、今日では内閣総理大臣以上の重要なポイントに立たされている、率直に言ってですよ。私そういうふうな理解をしていますから、ひとつこの独禁法を守り抜くという立場では、私も微力ですし勉強不足ですが、全面的に協力したいと思うんです。そういう意味で、委員長に、独禁政策を、とにかく公正なというか、的確に、運用を誤まらないように、この際き然たる態度を貫いてほしいという要望をしておきます。あとでお気持ちだけでもお聞かせをいただければけっこうだと思います。  それからもう一つの問題は、似かよったような問題が二つ出ておりましてね、しかし物事というのは、長引いていくと、何となく何とかなっちゃったなんというようなことは世の中によくあり得ることです。私は、やはりいろいろそれは作業をし、公正取引委員会自体としてやられていることですから、どうこう申し上げる筋合いはございませんけれども、やはりできるだけ早く結論を出していただきたい。何も拙速をする必要はないんですけれども、しかし、どうなんだろうかということで、やはりもっぱら公正取引委員会のほうを日本国じゅうが向いているわけですからね。そこにやはり一つ方向を指示するということはたいへん大事だろうと思うので、こういう、でかい問題が出ている際ですから、慎重にはしなければならぬと思いますが、やはりできるだけひとつ早い機会に方向づけをすることを、特にこれは委員長にお願いしたいと思います。  前のほうはお気持ちだけでけっこうですが、お聞かせいただければと思います。
  20. 山田精一

    政府委員(山田精一君) いつも同じことをお答え申し上げて恐縮でございますが、慎重に、かつ厳正に判断をいたしてまいる決意でございます。
  21. 木村美智男

    木村美智男君 公取の委員長ね、少し伺いたいと思うんですけれども、私、実際問題として、今日の日本鉄鋼業というのは、これは一体、世にいわれているように、国際競争力はどういう状態にあるかということについては、まあ私はさっき見解は申し上げちゃったんですけれども、公正取引委員会としてもいろいろと調査をされたり、やられていると思うんですね。そういう意味ではいかがでしょうか。鉄鋼業ということで言わぬでもいいんですが、大型企業ということがイコール国際競争力に勝つことだという、イコールになるかならぬかという、そういうことの見解でもいいんですがね。
  22. 山田精一

    政府委員(山田精一君) 抽象的にしかお答えできませんで、はなはだ要領を得ないかもしれません。具体的の問題につきましては、まだ調査に着手する段階でございますので、私の口から、あらかじめ断定的な、予断的なことを申し上げることは差し控えさしていただきたいと存ずる次第でございます。大型化することが国際競争力をつけると、これは端的にそういう方程式は成り立たないように存じます。いろいろな場合がございます。業種、またその企業の態様によりまして、大型化することが国際競争力を強化するものもございますし、しからざるものもあると私は考えております。
  23. 木村美智男

    木村美智男君 それから、大型化すると、設備投資を効率的に運用できるとか、あるいは技術開発がうまくいくとか、こういう問題については、委員長、どういうふうにお考えになりますか。  これは、なぜそういうことを聞くかというと、私は、今日の設備投資といったようなものについては、産業によっては、国民のいわば零細な郵便貯金であるとか、そういう関係を財源にした、やはり財投なり産投なりという資金が相当注入をされていっておるということを考えてみると、各企業が設備投資競争をやるような状態を何か野放しのような状態に置く、と言ってはある程度言い過ぎかもしれませんが、それに近いような状態にあることは決していい状況じゃないのじゃないか、好ましい状態じゃないのじゃないか。少なくとも投資委員会みたいなものをつくって、国家的に見ても、企業の重要度とか緊急度合いとかいうようなことを勘案をしながら順番をつけて、そして限られた資金を有効に投入をしていくというような、どういうものが今日大蔵省にもなければ銀行の側にもないというところに、私は放漫な設備投資という問題が行なわれてきて、実は景気過熱なり不況なりといった、こういう激しい波が出てきているというような関係を考えると、この設備投資というようなものについても、大型化すればそれでよろしいのだということだけで今日その大型化を手放しに歓迎をしていくということにはならぬと思う。逆に、アメリカのUSスチールなんかの例をとれば、大型化したがために、そこに安定価格を置いて、その上にあぐらをかいたから、逆な意味で言えば、技術開発もある程度おろそかになって、そこへうまいこと日本鉄鋼は発展進出をしているという余地をつくったということが言えるので、そういうことを考えたり、あるいは管理部門を縮小して大型化する場合、非常に能率的なものになるということについてだって、これはやはりよりけりなんであって、経営のスタッフをどうつくるかいかんによっては、大男総身に知恵が回りかねと昔からよく言うわね。私は、逆に、大型化することによって、この部門なんてものは、にっちもさっちもいかぬようになる場合だって考えられるから、これは日本の経済の将来にとっては、ほんとうに慎重にやはり検討していかなきゃならぬ問題のように考えるわけです。多少勉強も含めて、いろいろお教えをいただこうと思って、いま御質問を申し上げているわけですが、その辺、いかがでしょう。
  24. 山田精一

    政府委員(山田精一君) 後段の、御指摘になりました大型化と、それからその企業なり設備なりの効率との関係かと存じますが、これはやはりケースバイケースでずいぶん違うのではないかと思います。これは企業の種類によりまして非常に違いますけれども、設備が——一つのプラントの意味でございます。企業でなくて、設備が、プラントが、ある程度の大規模になりませんというと、経済的に見て不利益であるという企業はたくさんあると存じます。そういう場合に、まあこれを大型化と申してよろしいのか、中型化と申してよろしいのか、独力ではそれだけの経済規模に達するところの大型設備を建造できないというような企業が、あるいは合併をいたし、あるいは共同出資をいたしまして当該設備をつくる、これは国民経済上プラスであると考える次第でございます。しかし、これはどこまでが適正規模であるかということは、やはりケースバイケースで判断する以外にないのではないか。はなはだ不徹底ではございますけれども、そのように考える次第でございます。  それから前段の、投資につきまして、何か計画委員会的なものをつくる必要があるのではないかというお話でございましたが、これは、総理大臣なり大蔵大臣なり、国政の問題としてお考えいただくことでございまして、独禁法を運用いたす私の口から申し上げる事柄ではないように存じます。
  25. 木村美智男

    木村美智男君 あとのほうのお答えは、まことに公正な態度で、私敬服をいたしました。これは大蔵大臣なり、まあ適当なところにいずれ伺いたいと思っていますが、ただ先ほどいろいろ通産大臣と私やりとりをしておりまして、今日の段階ですから、具体的な問題について公取委員長としては言えないだろうと思うのですが、少なくともいままで扱ってきた合併問題について、これはやはり私は、結論的に独禁法というものについて抵触をしないという判断をされて認められてきたんだと思うのです。その意味は、具体的にさっき石川島の話やらあるいはセメントの話やら自動車の話を出したわけですけれども、しかし、そういうものと質的に私が違うと言った、こういう見方というもの、これは委員長、いかがですか、どういうふうにお考えですか。また別の見方もおありかと思うのですが、ひとつ、見解というか、お聞かせいただきたいと思います。
  26. 山田精一

    政府委員(山田精一君) 当面問題になってまいりそうな具体的な事案につきまして、これは従来のものと異質であるとかあるいは同質であるとかいうことを、調査に着手いたします前の段階において、先ほど申し上げましたような、あらかじめ断定するような、予断的な判断を申し上げることはぜひ差し控えさせていただきたい、かように存ずる次第でございます。ただ、きわめて重要なケースであるということは承知いたしておりますので、先般来申し上げましたごとく、慎重に、また厳正に判断を加えていきたい、かように考えております。
  27. 木村美智男

    木村美智男君 たとえば、私、一つの例として、三菱重工業の場合なんかが、大型合併の場合に特徴的なものが一つある、たしか、あの合併規模としては相当巨大なものになったわけですね。しかし、あの場合には多少緊急避難的な要素を持っておった。現に取引分野の中なんかを見ましても、公取委員長がさっき、需要業界との取引の関係と言われましたが、自動車なんかも三菱重工の場合やっていますね。しかし、自動車では圧倒的なトヨタ、日産というのがあるわけですから、これはもう、そういう意味では、企業規模はでかいけれども、何というんですか、プライスリーダーを構成するような能力は全然持たない。それから造船なんかにしても、石川島だ播磨だというのが控えておるから、何ぼ三菱重工業が船をつくっても、それが圧倒的なシェアを持つわけではなし、もちろんプライスリーダーシップというようなことにはなっていかない。産業機械なんかについてもそうです。むしろ、これは注文かなにか受けてつくるほうが主だということも考えられる。こういう場合には、大型化というのは、どんなにでかくなっても、ちっとも、何というか、心配をする必要はない。いわゆる自由競争が行なわれ、価格はその中で安定をしていく、ひいてはコストダウンというものが消費者に還元をされていくような、比較的スムーズなそういう経営なり運営が行なわれる状態になりやすい、そういう場合は。だから、こういうものであれば、あまりきわめて大事な問題だということも言わぬだろうと思うからね。そういう意味では委員長の気持ちもわかるような気がするのですが、しかし、私どもは先ほども申し上げたような心配もあるし、これは単に、国民一般としては、いまのところは、企業企業一つになってでかいものができるのだという程度にしか理解されてないかもしれません。日がたつに従って、これは実はおれたち自身の問題だという理解に変わりつつある。現に両社長さんなんかも、世論の動向を見てなんということを言っていますが、もう最近では、これはだいぶ、きょうなどは通産大臣なんかも変わりましたけれどもね。大体賛成者というのは、佐藤総理大臣通産大臣と、通産大臣というよりも通産省ですね、それから経済企画庁長官、それに業界の一部。これはもう完全に業界でも、明確に反対をしている、反対意見を述べているところもあるし、事業界はなべて、やはりもう、価格の高位硬直化ということが出てこなければいいがという心配を述べています。これがだんだん浸透してきますと、私は、そういう意味——公取委員会としても、ある程度そういう世の中の動きも見ておられるのかもしれませんがね。そういうことも含めて、ひとつ慎重に、しかも厳正な、そういうことで、やはり出すべきときには、き然たる態度で、明快に、ぱしっとやってもらいたいということを、くどいようですが、お願いをして、きょうのところは、もうこれ以上具体的な話というのは御無理なようですから、私の質問はこれで終わります。  通産省が、せっかく次長以下来ておられるので、何でおれを呼んだのだといっておこられちゃいかぬから、少し伺っておきますが、さっきああいう意味で、合併後の監視機構というような話を、それはけしからぬと言ったけれども、一応出た話としては、そういうけしかる、けしからぬの話は、これはもう一応抜きにして、少しお伺いしていきますが、何か具体的に、もう考えておられるのですか。もし、検討でもされている、あるいは内部でまとまってきているというようなことがあれば、ひとつ出してもらいたい。
  28. 下山佳雄

    説明員(下山佳雄君) 先ほど来先生がお話しになっておられますように、最近の大型合併について、これを認めるかどうかということは、公取の判断に待っておるわけでございます。したがいまして、私どもとして、公取の判票下るのを待っておりますけれども、もしそれが認められるということになりますならば、私どももまた、所管省といたしまして、必要な行政はやっていく必要はあるんではなかろうかということで 寄り寄り研究はいたしておりますけれども、別に省として何もきまったものはございません。ただ事務的に研究しているだけでございます。
  29. 木村美智男

    木村美智男君 事務的にというのは新聞にはもう出ている。それはこまかいことはよく私もわかりませんが、たとえば、消費者、需要家の参加した価格監視機構をつくる、こういうように一つはあるのですが、そういうものをかりにつくるとする場合は、どういう構成になって、そうしてどういうやり方で監視をしていくのかというようなことは、これはひとつ、検討をしておったら、その検討の段階の範囲でいいから……。  それから二つ目には、寡占品種について、要するに対抗的な企業を育成するということを言われているわけです。これは思いつきで言ったのではないだろうと思うので、たとえば、いま問題になっている製紙関係と鉄の関係は別として、ほかの企業でいいですから、そんなのは問題はないから、そこのところを例にとって、たとえば対抗企業というのはこういうかっこうで考えているんだと、育成というものを。そういうことを一つ例を出してもらうと、大体考え方がよくわかるような気がする。  それから三番目には、この寡占品種での価格が急に上がった、あるいは管理価格が出たというような場合には、関税定率法を改正するという、ちょっとこれは私、通産省、ある意味では画期的で、ある意味では冒険的なことをよく言い出したものだなあと思って感心したり、びっくりしているのですが、緊急に政令か何かで関税を引き下げることができる体制をつくるのだと、新制度をつくるのだと、こういうように言っているわけですがね。これはしかし、いま例外的に認めているのはあるけれども、現行法ではなかなかちょっとむずかしいのじゃないかなというように私は判断をするわけです。この点は一体どういうように考えられているのか。  大体その三つくらいについて、少し例やなんかを引いて、いま検討していることを話をしてみてくれませんか。
  30. 下山佳雄

    説明員(下山佳雄君) 先ほども申しましたように、公取がこれらの合併につきまして判断を下しました場合に、つまり認めるという判断を下しました場合には、やはり国民の間に、かかる合併が認められた場合には管理価格が形成されるのではなかろうかというような懸念があるわけでございますし、そのためには、やはり通産省としても、これに対応する何らかの行政措置をとっていかざるを得ないのじゃないか、そのような姿勢を少なくとも打ち出していかなければならないのではなかろうかということで、寄り寄り研究はしております。先ほど来先生がお述べになりましたような監視機構というようなものではございませんけれども、通産省通産省として、やはり実態を常に把握をしておく必要はあるだろうと思いますが、やはり問題が起きましたときには、これは従来からもやっておりますけれども、鉄鋼価格が非常に暴騰いたしましたような場合におきましては、これに対しまして適宜通産省としてとり得るあらゆる措置はとっております。このようなことを今後やっていく仕組みを考えることも必要であろう。  それから競争会社の育成につきましても、御承知のとおり、各業種につきまして設備調整ということをやっております。わが国の産業は、各業者とも非常に設備競争が盛んでございますので、設備調整をやっておるわけでございますが、そのような設備調整をやりますにあたりまして競争業者の育成につとめていくということが、これがいろいろ懸念されておるような管理価格の形成の弊害を除去するために役立つのではなかろうかと考えておるわけでございます。  また、関税の問題につきましても、これもいろいろ寄り寄り研究はいたしております。研究はいたしておりますけれども、当然、これは法律の問題でございますし、非常にいろいろむずかしい問題があるようでございます。したがいまして、これにつきましても、何らまだ結論が出ておるわけではございません。いろいろそういうような問題について研究いたしておることは事実でございますけれども、新聞等においてこの辺の点がちょくちょく出てはおりますけれども、別に通産省として方針をきめたというような段階ではございません。
  31. 木村美智男

    木村美智男君 冒頭に少しおこっちゃったものだから、口をつぐんで、あまり言わぬようになったから、大体その辺にしておきます。  ただ、価格の問題で、監視体制といったようなことについては、やはり従来の経験からいうと、あまり行政介入すると、やはり官僚統制的なことに受け取られて失敗をしたという過去のこともあるわけですから、そういう意味では問題がある点だろうと思うのです。これは、かりにやる場合でも相当考えていかなければならぬ問題だと思うのです。いずれにしても、公正取引委員会判断をした後においてという関係の中の話をするのは、ちょっと無理だろうと思いますから……。わかりました。  そこで、もうこれで終わりですが、せっかく次長が来ておられるので、一つだけ聞いておきたいのは、最近、ものすごい交通事故の関係で、これは、言ってみれば消費者保護立場からなんですが、何といっても去年は年間三百四十万台くらい車が新しくできた。いまや一千万台を突破をしたという状況の中での年間死者が、とにかく一万六千でしょう。けが人六十四、五万になるわけですよ。そういったような状況を見るときに、私は、今日通産省として、いまの自動車の生産という問題について野放しにしておいていいのかどうかという問題は、これは政府態度ということにもなるかもしれませんが、何かやはり考えていかなければならぬところに来ておるのじゃないかという気がするわけです。それで、言ってみれば、輸出というような関係を考えれば、どんどん輸出の車をつくっていいけれども、国内消費の関係については、やはり今日の道路の問題、あるいは交通事故の問題、人命尊重といったようなことから考えていくと、どうも狭いところに凶器がほんとうに突っ走っておるという形なんですから、そういう意味合いから言うと、通産省としても、やはり、鉄鋼も一位だから、造船も一位だから、自動車ももう一位にならなければいかぬというようなことで、そういう立場だけで今日いっておってよろしいのかどうかということについては、これは、大臣には、時間がなかったものだから……。多少、最近検討でもしておられるか、あるいはどういう方向を考えておられるか、あれば答えていただくし、そういうことはないというととならば、ひとつこれは、通産行政としても真剣に考えてみてほしい問題ということで、もし検討しておれば答えていただきたい。
  32. 下山佳雄

    説明員(下山佳雄君) たいへんに重大な、またむずかしい問題でございますが、何と申しましても、非常に需要が旺盛でございますので、そこにいわばまた生産の抑制ということになかなかいかない事情があるわけでございます。ただ、通産省といたしましても、安全対策等につきましては、できるだけ力を注いでおるというふうに私は承知いたしております。
  33. 大森久司

    委員長大森久司君) 他に御発言がなければ、本件に関する質疑はこの程度にとどめたいと思います。  ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  34. 大森久司

    委員長大森久司君) 速記を起こしてください。     —————————————
  35. 大森久司

    委員長大森久司君) それでは、これより消費者保護基本法案(衆第二一号)(衆議院提出)を議題といたします。  本案に対し質疑のある方は順次御発言を願います。田代君。
  36. 田代富士男

    田代富士男君 きょうは、ただいま委員長が申されました消費者保護基本法案のことにつきまして私は質疑をしたいと思います。きょうはお忙しい中、提出者の衆議院の武部、和田、有島の三人の先生方も御出席していただいておりますし、この問題につきまして、最初に厚生省関係、それから経企庁関係について、私は順次質問をしていきたいと思います。  この提案理由にも、「本案は、国民の消費生活の安定及び向上を確保するため、消費者利益の擁護及び増進に関して、国、地方公共団体、事業者の果たすべき責務と消費者の果たすべき役割りを明らかにし、かつ、その施策の基本となる事項を示すことによって、消費者の権利を守り、消費生活の健全な発展をはかろうとするものである。」と、このように述べてございます。ここに書いてあることが全部実現されたならば、もう何も言うことがございませんが、現実には、いまここに示されている提案理由の説明とほど遠い状態じゃないかと思うわけなんです。  その一つ一つを具体的な例の上から私は申したいと思いますが、当物価委員会におきましては、たびたび消費者立場からいろいろな問題につきまして質疑を行なってまいりました。ところが、今回消費者保護の憲法と言われるところの消費者保護基本法案がこのように議題にのぼってきたということは、一歩前進の姿とも言えるんじゃないかと思うわけなんです。しかし、私自身、現実とこの法案の趣旨説明とはかけ離れているということにつきましては、厚生省に対しまして、健康保険の赤字を根本的に改革するにはどうすればよいか、この問題につきまして種々数回の委員会におきましてやってまいりました。  その一つの例としまして、健康保険の薬の請求高が薬品の全生産量を上回るような金額にもなっている。そこにも問題があるのではないかと種々検討してまいりましに。具体的な例といたしまして、薬品が——健康保険で指定されている薬品でございますが、これが薬のメーカー、あるいは問屋、あるいはプロパーの手を通じまして医者に渡るときに、三〇%添付、あるいは五〇%添付、あるいはひどい場合には一〇〇%添付というような事態、またそのような薬品の購入に際しましていろいろ景品等をつけた販売がなされていた。この問題につきまして正常に戻すべきであるということをば、厚生省当局に対しまして私は昨年から言い続けてまいりました。それに対しまして、厚生省当局は、御趣旨に沿ってちゃんと指導してまいります、こういうことは私はたびたび聞いてまいりました。事実、一時的にはとまった場合もございますが、私もその後言いっぱなしというわけにはまいりませんから、この問題を着実に一つ一つ今日まで積み重ねてまいりました。厚生省とすれば、通達を出しました、あるいはメーカーの関係者を集めていろいろな指導もいたしました、そのようにしてきたと言われておりますが、現在、私がいままでしてきたことに対しましてどのような状態になっているか、このように好転したというならば好転したという事例、あるいは現在はこのような状態になりましたという現況につきまして、厚生省の当局から最初にお願いしたいと思います。
  37. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) 医家向けの医薬品の販売に関しまして、当委員会でたびたび御指摘を受けているわけでございます。特に、いま御指摘のような添付なり景品等の点について、過剰サービスが従来たびたび問題になったわけでございます。私ども、やはり医薬品の販売という問題については、従来から業界を指導してまいったわけでありますが、何と申しましても、販売の姿勢、あるいは販売の秩序、そういうものを正しい方向に持っていくということは、先生御指摘のとおりでございます。従来からいろいろ努力をいたしてまいったわけでございますが、残念ながら、なかなか早急に改善ができなかったという点はまことに遺憾な点だと、かように考えているわけでございます。  そこで、いま御指摘のように、販売の現状がどのようになっているかという点でございますが、私ども全国的に数多いメーカーなりあるいは販売店等に対して、機会を見まして、いろいろな通達なり、あるいは口頭の勧告なり、指示なりを今日まで繰り返しやってまいったわけでありますが、数年前に比べますと、確かに全般的な傾向としては逐次改善の兆が見えておりますが、まだ、いま申しましたように、数多いメーカーなりあるいは卸等の中には、若干、過当競争のために、われわれの意図が十分了解してもらえず、販売上いろいろな御指摘のような事実が今日まであったことも、これも認めざるを得ない点でございます。そこで、先般来私どもも、たびたびの当委員会の御指摘もございましたので、あらためてまた、本年の三月十九日、この点に関する通達を出しまして、今後医家向けの医薬品の販売については正しい販売秩序を確立できるように、早急に業界自身として自粛態勢をとってもらうということが一つ、それからいろいろな事例等については早急に改善の努力をする、このことを末端の第一線の販売店等にも十分趣旨を徹底するというような点についての指導通達を出してまいったわけでございます。今日、そのような自粛態勢というものが、業界もほんとうに真剣にようやくそういうような気持ちが出てまいったようでございまして、実は本日、医家向けメーカー五十社が集まりまして、自粛態勢というものをどのようにして早急に確立するかという点を相談いたしておるわけでございます。私どもは、そういう自粛態勢の一つの方法として、いわゆる公正競争規約というものを早急に実施の方向で検討してほしいという強い申し入れを業界にやりましたので、業界も、本日の会合等で、そういうような方向に向かって早急に医家向け医薬品の販売姿勢を是正しようという機運がようやく高まってまいりましたので、あとしばらくこのような公正競争規約等の動き、あるいはまた現実に販売秩序がどのように是正をされつつあるかという点について、今後十分監視を続けながら指導をしてまいっていきたいと、かように思っております。
  38. 田代富士男

    田代富士男君 坂元局長の、最近の事情をあわせましての御答弁でございますが、昨年、私は、七月も、十月も、十二月末の国会の終わりまぎわも、この問題をやってまいりました。そのたびごとに、いま局長が言われたような御答弁を聞いてきました。しかし、その間に私も調べてまいりましたが、いま、数年前に比べるならば、状況というものは逐次好転をしてきているということでございますが、最近の実例を申しますと——いままで私は実例をあげてきました。御承知のとおりだと思います。私の指摘したことを厚生省としてもおつかみになったと思うのです。最近のやり方につきましては巧妙になってきておりまして、自粛じゃないのです。そのような行為をやりながら、巧妙にやりながら、やっていないようなふりをして、これは最も卑劣な行為になってきているのです。私もこういうことを言いたくはありませんが、局長は、きょうも、そういう医家向けに対する販売姿勢を是正していきたいと、そのように検討するように強く達していると言いますが、また、すぐにというわけにはいかぬけれどもそうなされていると言いますが、実情はそうでないのです。何ら変わらずに極秘のうちに、そういうものがだんだん姿を見せなくしてなされている。しかし、やっている行為はどこからともなくあらわれてきます。  その実情を私申しますと、これは、台糖ファイザーというメーカーがありまして、ここの「コサ・テトラシン」といいますか、薬の名前はむずかしくてはっきり言えませんが、広範囲の抗生物質の一種だと言われますが、二百五十ミリグラム、百カプセルの包装ですが、これが四千五百円になっております。ところが、百カプセル四千五百円の製品が、医者に渡される場合、あるいはそういう問屋から販売される場合は五〇%の添付がついております。そうしますと、買うほうは百カプセルでございます。ところが、もらうほうは五十カプセル、合計して百五十カプセルが四千五百円でありますから、一錠の単価は三十円になる。これが健康保険の薬価基準では五十四円になっています。同じく台糖ファイザーの「マトロマイシンT」、これはマクロライド、抗生物質の一つだそうでございますが、薬の内容のことにつきましては詳しく存じません、はっきり申し上げますが。物価委員会は、価格の問題、そういう大衆の立場に立ってやる問題ですから、内容までもやらなくちゃならないのですが、逐次内容までも勉強いたしますが、これが二百五十ミリ、百カプセルで七千七百円。これに対しましては八〇%の添付です。そうしますと八〇%の添付で、薬価基準が八十八円十銭。そうすると、これが百八十錠、単価で計算すると四十二円七十銭、これが八十八円十銭になる。それから山之内製薬の「ホリゾン」という精神安定剤、これは十ミリグラム五千錠、これは二十二万円でございます。これが三〇%の添付になっております。だから、一錠当たり三十三円八十銭になるわけなんです。これの健康保険の薬価は五十六円五十銭。それから中外製薬の「ソナコン」、これも同じく精神安定剤。十ミリグラム、これも五千個です。同じく二十二万円、この添付は五〇%添付です。そうしますと二十九円三十銭。薬価五十六円五十銭。同じく塩野義の「セルミン」、これも精神安定剤です。これは十ミリグラム、五千錠、二十二万。これは五〇%の添付。金額はいま申しましたから省略をいたしますけれども、一つの例をとってみましても、このくらいの例になっております。また、いままではクロマイは主として三共でつくられておりましたけれども、それはクロラムフェニコールという薬の一種らしいですが、これが東洋製薬という名前だそうですが、正式な会社の名前は東洋製薬であったか、ちょっとその点は未確認でございますが、その薬、「クロマイ」という薬ですが、二百五十ミリグラム、百錠四千五百円。これが三〇%添付。藤沢薬品の「ケミセチンS・F」、これが二百五十ミリグラム、百錠、四千五百円が三〇%添付。このような実情になっておるわけなんです。これに対しまして、厚生省としまして、そのような指導をやってまいりました、逐次改善に向かっておりますと、いまの局長の答弁ですが、私はありのままの実情を申し上げました。このような実情でも、逐次よくなった結果でありますか。局長の答弁のとおりで言うならば、これがよくなった結果であったならば、従来はもっとひどい結果であったとみなさざるを得ないわけなんですが、この事実に対して厚生省当局としていかがお考えでございますか。
  39. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) 医家向け医薬品の販売にあたりまして、過大な現品添付というものが従来非常に度を過ごした形で行なわれていた、これは事実であるわけでございます。昨年あたりから、私どもも、先般申しましたように、機会あるごとにそのような現品添付、過大な現品添付というものを極力最大限の自粛をしてほしいという指導をやってまいったわけでございます。まだ末端まで現品添付の点についてのわれわれの意図が十分徹底していないということは、はなはだ残念なわけでございます。いま数々の品目について御指摘がございました。私どもも十分な指導なり監視をやっているつもりではございますが、何ぶんにも数多いメーカーなり、あるいは数多い医療機関との商取引の裏の実態というものは完全に把握できないという面も、はなはだ残念な点であるわけでございます。機会を見て、われわれは、そのような事実を見つけ次第、厳正な措置をやってまいってきておりますが、やはり一つには、メーカーなり、卸なり、あるいは医療機関というようなものの、この関係者のモラルの問題が一つ基本的にあるかと思います。そのようなモラルの向上ということも、われわれは十分気をつけてまいらなきゃならぬ点であると思います。それからまた第二点としましては、われわれ当局の役所側としましても、そういうようなモラルに訴えた販売態度というものをとってもらうということも当然指導しなきゃならぬわけでありますが、違反の事実なり、遺憾の事実があった場合の事後措置等も十分厳正にやっていきたい、また、やっていかなきゃならぬわけでございます。そういうような両方の面を十分今後われわれ念頭に置いてこの問題に対処していく必要があるかと思います。  そこで、私どもは、毎年毎年いわゆる保険医療に使用します薬剤の薬価の調査というものを昨年からやっているわけでございますが、本年もすでに調査がほぼ終了しまして、現在集計段階にあります。そのような薬価調査というものによりまして、市場の実勢価格というものを的確に反映をさせる必要がある。そうした調査に基づきまして、薬価基準の改定も夏から秋ごろにかけてまた本年実施したい、こういうような計画を進めております。いま御指摘のような行き過ぎた事実、これは即刻調査をいたします。しかるべく措置をいたしたいと思いますが、と同時にまた、薬価調査なり、薬価基準の改定というものを定期的にやりまして、少しでも適正な医家向けの価格というものが保険薬剤の価格として反映をいたしますように、そういう面からも今後努力をいたしていきたい、かように思っているわけでございます。
  40. 田代富士男

    田代富士男君 私がいま申し上げました商品名に対しましては、きょう初めて申し上げた商品名が多いわけなんです。だから、その商品名に対しては知らなかったということはありますが、私がいままで申し上げた中で一番最初に問題にしたのは、持続性活性ビタミンB1の問題でございました。これは一番最初に取り上げた。このような諸商品の中で最初に取り上げたのは改善のあとがあるはずだと思うんですが、私がきょう声を大にして局長に言うことは、そのあとが見られないという証拠に、藤沢薬品の「ノイビタ」、これは七〇%添付ですよ。改善してきた改善してきたといいますけれども、活性ビタミン剤の問題は一番先に取り上げました。私は、こういうところで、厚生省自身が業者となれ合いじゃなかろうか、そのような考えを持たざるを得ないんです、これ。ほんとうに当局としてこのようなことに対して行政指導してきてるならば、ほかの品物ならばいざ知らず、活性ビタミン剤は一番最初に取り上げた。これがいまだにこのような状態であるということは、私は嘆かわしいんです。局長自身としては、誠意を尽くしてやったとおっしゃるけれども、事実はどうすることもできません。どうしてこのような添付がなされてきてるかといえば、ただ単に私は添付だけが悪いんじゃないと思うんです。  そこで私は、いろいろ流通段階においてそれを調べてみました。どのような流通段階になっているだろう、まあそこに問題点があることを、私は新たな動きのあることをつかみました。製薬会社というものは、御承知のとおり、株価からいきましてもいま上昇しております。内容は非常によろしいんです。その利益というものは全部に分配していくのが当然のことじゃないかと思うわけなんです。そこで、いま、メーカーから問屋、すなわち卸屋、それから薬局あるいは病院に向かって、一つの流れが、ずっと薬の流通段階がございます。その流通段階においてどのような仕組みになされているのか、いま厚生省当局がおつかみになっていらっしゃる現況について、あらあら説明していただきたいと思うのでございます。
  41. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) 医薬品の流通段階は、いま御指摘のように、非常に複雑になっているわけでございます。現在、医薬品のメーカー数というものは二千四百ぐらいございます。片一方、それに対応します卸問屋というものが三千ちょっとございます。それから小売りの薬局、薬店というようなものが現在四万軒ございます。片一方、また医療機関側のほうは、御存じのように、病院、診療所、非常に数が多くあるわけでございます。  そこで、医薬品の流通経路といたしましては、メーカーから卸、小売り、こういう世間で言われている正常の流通経路をとっているものが大部分でございますが、中には、メーカーから直接小売り等に、卸を通じないで出しているというようなものも全体の一割から一割五分ぐらいございます。その間、この問屋と言われるものについては、御案内のように、一次問屋、二次問屋、あるいは三次問屋から現金問屋というような、非常に複雑な問屋の流通形態を経まして末端の小売りまで商品が流れていく、こういうようなことになっているわけでございます。概して言いますと、メーカーから卸、小売りを経ます流通の取引経路というのが、全体のやはり八割から八割五分ぐらいでございます。残りの一割から一割五分程度が、メーカーから卸を経ないで小売り段階に直結しているというような取引の経路をやっているというのがおおよその実態であるように聞いております。
  42. 田代富士男

    田代富士男君 いま概略の説明でございますが、卸問屋を通るのが全体の八割ないし八割五分ということでございますが、その卸問屋のあり方あるいはマージンについてはどのようにお考えになっていらっしゃるか、御説明願いたいと思います。
  43. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) 卸問屋の数は全国に大体三千軒ちょっとくらいあるわけでありますが、この卸問屋の中の種別としまして、先ほど申しましたように、一次、二次、三次あるいは現金、こういうような複雑なそれぞれの種別があるわけでございますが、そこで、私どもが承知いたしております卸売りについてのマージンの実態でございますが、なかなか正確な実態の把握というのは、われわれ厚生省としてはできにくい事情もあるわけでございます。私どもの、現在そういうような正確な調査に基づかない厚生省としての客観的な把握の状況を申し上げますと、マージンというものについてはいろいろな形態のマージンがあるようでございます。定率のマージンを取っている例もございますし、あるいは値引きというようなものによるマージン形態もございますし、あるいは取り扱い高、つまり取引高の多寡によるマージンというような形態もございます。いろいろな形態がございますが、その形態のどれが全体の何%ぐらいになるかというようなしさいな点については、私どもちょっと、厚生省という立場においてその実態の詳細について把握がなかなかむずかしいという事情にあることを申し上げておきたいと思うのでございます。
  44. 田代富士男

    田代富士男君 いま定率のマージン、あるいは値引きのマージン、取引高のマージン、そのほかにもいろいろあると言われて、厚生省としては正確につかんでいないということですが、この点、公取の考えはどうでありますか。どのくらいのマージンがしかるべきであるかという点。
  45. 山田精一

    政府委員(山田精一君) 再販制度に乗っておりますところの医薬品につきましては、私どものほうでは報告をとっておりますが、今日資料を持ってきておりませんので、正確には記憶いたしておらないわけでございます。ただ、マージンのほかに非常に複雑なリベート制度がありますようでございます。
  46. 田代富士男

    田代富士男君 いま具体的な数はおわかりにならないということですが、リベート制度というのがあるというのですが、実はこれが問題なんです。これが、坂元局長、問題なんです。私もいままでは軽く見ていたんですが、ここに根本的な大きな問題が横たわっている。現在のこういう製薬業界の流通段階におけるところの一大転換期を来たしていると言っても間違いないと思うのです。それは、従来のメーカー、問屋、それから薬局、病院等の流通段階においての問屋のあり方というものは、定率のマージンをもってやるのが、これは商取引の上においては妥当な線じゃないかと思うのです。そのようにしてなされてきたわけなんですが、最近はどうであろうか。メーカー自身が多量生産で、その品物は豊富にある。つくった以上はさばかなくちゃならぬ。そうしますと、どうしてもメーカーは割り当て制度をとらざるを得ません。それぞれメーカーにはチェーン制度というものもなされておりますが、その問屋に対して、これだけの数量を売れという割り当てがなされる。そうすると、問屋はそれをさばかなくちゃならない。ここが問題なんですね。御承知のとおりに、メーカーから問題へはC価で渡される、そうすると、問屋から下部機関に対してB価で渡される、これは正常なあり方だと思いますが、現在の現実はどうかと言えば、メーカーから問屋にまいりますこのC価の価格で、卸問屋自身はその商品に対するマージンはなくして、そのままの価格で薬局なり病院に納めている。C価のままで納められている。そうすれば、問屋自身の経営で人件費などというものはどこから出てくるか。そこに、いま公取委員長が申されましたリベートの問題が振りかかってくる。百万円売ったらどれだけ、一千万円売ったらどれだけのリベートを戻す。だから、問屋自身は、従来のマージンによるところの経営からリベートによるところの経営に変わってきたということなんです。この事実。だから、C価のまま流していくならば、それは添付するのもできるでしょう。そこに、三〇%添付、五〇%添付、七〇%添付というものの発生の原因が一つあるのじゃなかろうかと思うわけなんです。三〇%添付、五〇%添付というものができるならば、それだけ価格を下げたらいいじゃないか。価格を下げて販売すれば正常になるのじゃないかと思うのです。それが、価格をそれだけにとどめて、リベートという、そういうような名前のもとに、取引高によるマージンを取る、問題はこれです。だから、そのようなC価のままでどんどん出していきながら、値はくずさない、そうして添付する、リベート制、こういうものを考えなかったならば、これはたいへんだと思うのですが、厚生省の立場として、その点に対してどのようにお考えでありますか。
  47. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) 医薬品の販売につきましても、これはやはり御案内のように商取引であるわけでございます。全然リベートを禁止することがいいかどうか、確かにいろいろ議論の分かれるところだろうと思うのであります。少なくとも、正常な商慣習に基づきました常識の範囲のリベートというものは、取引高に応じてある程度やむを得ないのじゃないかというような意見もございましょうし、また逆の意見もあろうかと思いますが、私どもは、少なくとも医療機関のほうに販売しております保険薬剤の分に関しましては、いかなる理由があろうにしましても、少なくともこのリベートというものは好ましくない、かように思っているわけでございます。したがいまして、医療機関向けのリベートというものは、先般申しました三月十九日の通達でも、今後厳禁をいたしたいということをはっきり通達でも指示をいたしているわけでございまして、いまその線に従いまして業界がどのような形でそれを実施に移すかということを、先ほど申しましたように相談中である、かような状況に相なっているわけでございます。
  48. 田代富士男

    田代富士男君 いま厚生省の見解は聞きましたが、公取委のお立場として、いま私が申すとおりに、添付の問題、リベートの問題——これは、物価を安くするために今回消費者保護の基本法案もできたわけなんですが、ここに私は問題があると思うのです。リベートの問題。このように、メーカーと問屋の不当取引から生ずるところの、発生して起こってくるところの、いま私が申しましたそういう問題点の解決をやっていくためには、リベートの問題を検討しなくちゃならない。これを検討するならば物価値下げの一つの方法にもなるのじゃないかと思うのですが、この点に対しまして、公取のお立場としてはいかがですか。
  49. 山田精一

    政府委員(山田精一君) 第一のリベートの点でございますが、厚生省のほうからも御説明がございましたが、リベートには非常にたくさん種類がございます。その一部は正常な商慣習といたしましてある程度是認されるものがあるわけでございますけれども、度をこしましたリベート、これについては、私ども、独占禁止法立場からは、二つの面から考えなければいけないと思います。一つは、異常に多額のリベートを交付することによりまして、取り扱い業者を不当に拘束するような不公正な取引方法に該当しておるかいなか。それから第二の点といたしましては、おそらく、先ほど御指摘の品は、私正確には記憶しておりませんけれども、再販に乗っておらない商品であろうと存じますけれども、もしも再販に乗っております商品でございました場合には、第二十四条の二の「一般消費者利益を不当に害することとなる場合」に該当するやいなや、この二つの点から十分に調査してみたいと思うのであります。  それから、もう一つは現品添付でございますが、現品添付が不当景品防止法にいう景品に該当いたすやいなや。もしも同じ種類の薬剤、これが常識的な範囲、これがどのくらいになりますか、正常な商慣習に照らしまして、かりに一割程度の現品を添付するものであるならば、これは値引きと実質的に同じことで、違法性はないかと思うのでありますが、これが不当に大量に添付せられました場合、これは景品に該当するのではないか、そういたしますと、不当景品防止法による制限額を超過しておるかどうか、この問題が生ずる可能性がございます。十分調査をしてみたいと、かように存ずる次第でございます。
  50. 田代富士男

    田代富士男君 いま公取のお立場としてるる御説明になった一つの中で、添付の問題について、一割程度であったならば常識としてということでございますが、私がいま申し上げたのは、三〇%、五〇%、七〇%と申し上げたわけなんです。こういう場合には、また制限金額、合計の制限金額等もあるということでございますが、私は、きょうの消費者保護の憲法ともいわれる法案を審議するにあたって、ありのままを消費者の代表として申し上げましたのですから、この点々強く公取のお立場として、ひとつ消費者のために調査をしていただきたいと思うのです。何らかの形の上におきましてこれを表明していただきたいと思うわけなんです。またこれは、商慣習である、ただ一言に、何か言えば商慣習だと逃げることはよくないと思うのです。厚生省の立場としても、商慣習である、そういうことをやっていたならば、一面には近代化をはかれと言いながら、そういうような考え方を改めない限り、この問題は根本的に解決しないのじゃないかと思うわけなんです。  そういうわけで、もう一つ考えられることは、いま公取委員長が、多額のリベートの場合に取引業者が不当に拘束されるような場合があったならば、これは一応検討する余地があるということを申されましたが、ここで問題は、現在卸問屋はメーカーに対しまして頭が上がりません。これは事実です。ここに私は、いま委員長が申された第一項にまず引っかかってくると思うのです。だから、厚生省の立場として、商慣習である……。しかし、いま坂元局長も申された点、根本的には好ましくないものを改めていくという態度を示されましたが、もうこれ以上局長には追及しませんけれども、事実は、卸問屋が、じゃそれだけのリベートをもらったといっても、全部もらっているか——リベートは積み立てをされているわけです。いま、リベートについて種類があるとおっしゃる。私、この間ちょっと調べたけれども、二十何種類ある、調べただけでも。それで、バックマージンとしてそういうことが実施されておる。それがなお積み立てられておる。製品、あるいは会社、取引高、あるいは契約の年限によりまして、それが二分の一の場合もあれば、三分の一の場合もあれば、五分の一の場合もあるが、そういうふうにメーカーの手によって積み立てられておる、こういう事実がございますが、いまの委員長の御答弁と私のいま申し上げる事実との関連性でございますが、これに対しては、いかが公取としてお考えでございましょうか。
  51. 山田精一

    政府委員(山田精一君) 積み立てました金額が卸問屋の要求によりまして適宜適宜に払い戻されるものであれば、格別問題はないかと存じます。その払い戻しのされ方いかんによりまして、不公正な取引方法に該当する疑いがあるように存じます。
  52. 田代富士男

    田代富士男君 それが、あくまで卸問屋の自主的な立場であったならば、それは認めざるを得ないと申されますが、現在は、その実情も、これは薬品メーカーだけじゃありません。きょうは薬だけを焦点にしぼっておりますが、電機にも、すべての面におきまして——私はこの前もここで再販の問題を取り上げましたときに、そのことにちょっと触れたと思いますが、そのようにメーカー自身の力においてなされておる。だから、御承知のとおりに、そのような添付も、問屋が悪いのかメーカーが悪いのか、そのように探求していきますと、そのような大きいメーカーというものは、いまチェーン制度による卸問屋がありますが、現金問屋もある。一次、二次、三次と、現金問屋、ここが問題になっているわけです。いまメーカーは多量に製品化したものをさばきたいけれども、現金問屋にすぐに出すわけにはいかぬ。そこで、一応問屋を通じて伝票だけは、品物を直送しても伝票だけはこちらで処理していく。この問屋は、要するに総売り上げによるところのリベートですから、バックマージンだけで生活しているわけです。いままでの適正なマージンによるところの経営でなくして、今日、リベートのバックマージンによってなされている問屋のあり方になっている。それは、結局はメーカーが指示している。今度競争になった、入札があった、向こうの商品は七十万である、うちの商品はこれだけだ、じゃ添付をもうちょっとやらないことには勝てない。そうするならば、問屋とメーカーとの相談で、それいけというようなわけで添付がなされるのです。添付された商品についてはどうなっているか、これは次回の物価委員会でこまかく申し上げたいと思う。添付された薬品がどのように流転をしているか、きょうはとどめておきますけれども、こういうような実態で、私は卸問屋が任意にやったというわけには考えられない。とするならば、いま委員長が申されました第一番目の御答弁にこれは関係してくるのじゃないか、そのように私は思うのですが、いかがでございましょうか。
  53. 山田精一

    政府委員(山田精一君) 十分調査をいたしてみたいと存じます。
  54. 田代富士男

    田代富士男君 で、きょうは経企庁長官もおいでになっていらっしゃいますし、時間もありませんから、厚生省に対してはいまの程度で終わりたいと思います。  次は、経企庁にお尋ねしたいと思います。  この消費者保護基本法案が今回審議されることになりましたが、この基本法案は、欧米の先進諸国によりまして、この問題は早くから手をつけられておりましたけれども、日本の国におきましては、この問題がともすれば忘れがちであったと申しますか、今日まで日の目を見ないままにやってきた。そのようなことを考えていくと同時に、われわれの立場からするならば、わが国の行政自身が消費者不在の行政であるし、大企業擁護のこのような行政であったゆがみが、今日やっと日の目を見るようになってきたんじゃなかろうか、そのような考えがしてならないわけなんです。幸いにも、今度、いままでの欠陥を補った、消費者利益を確保し、国民生活の安定をはかることが要望される法案が出てまいりました。これに対しまして、国あるいは地方公共団体あるいは事業者自身の責務と、消費者の努力を目的として、今回この法案が提出されましたけれども、この法案というものに対する消費者の期待というものは非常に大きいのじゃないかと思いますが、経企庁長官といたしまして、具体的にこの法案をどのように運営し、どのように効果あらしめるかという、最初にこれに対する希望たり決意を披瀝していただきたいと思うわけでございます。
  55. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 消費者保護基本法案がすでに衆議院で議決されまして、本院に送付されておるわけでありますが、このような法案が提出されたこと、ことにこれがいわゆる議員立法の形で提出されたこと、私、あらかじめ予測しておりませんでしたような非常に大きな効果があるというふうに考えております。と申しますのは、いろいろな点からそれは言えることでございますけれども、一つの観点を申し上げますと、かりに政府でこういう法律案を用意するといたしますと、各省が合意をしなければ、なかなかこういう法案を提出することができません。しかも、こういう消費者の問題につきましては、田代委員もよく御承知のように、従来各省の行政というのが、どうしても勢い生産者の側に立っての行政が多うございましたから、そこで、政府部内で意見を統一しようといたしましても、実際上非常に事実問題として困難であった。いままでそういうものの考え方がやはり支配的だったわけだと思います。ところが、今回こういう衆議院の、しかも超党派でありますが、の方々が、こういう法案を提出される段階で、委員会に各省の行政の関係者をお呼びになりまして、いろいろお尋ねがあったわけであります。そういたしますと、各省としても、おのずからこの法案の趣旨とするところに、あまり反対の方向で御答弁をしたり、主張したりすることが事実上国会に対してこれはやはりむずかしいわけでありまして、そこで、結果としては、この法案審議の段階で、すでにかなり行政のほうの姿勢を再検討せざるを得ないようなことが、各省について実は起こっておるわけであります。でありますから、もうすでにこの段階で非常に効果があったと私思っておりますが、これが幸いにして法律になりますと、今度は、この法律趣旨に従って、現行のいろいろな関係法律、食品関係でありましても、あるいは、たとえば規格表示関係法律でありましても、いろいろございますが、従来、これらのものが消費者という観点においてあまり考慮に入れずに法律ができておりますから、それを、この基本法の趣旨にのっとって再検討しなければならない、そういうものが相当多くなると思うのでございます。そういたしますと、この基本法を母法にいたしまして、従来の、どっちかといえは生産に重点を置いた行政——やはり行政の基本になるのはそのおのおのの業法だもんでございますから、法律が変わることによって行政の姿勢が変わっていく。従来生産生産と言っておったことにはそれなりの意味があったわけでございますけれども、この段階でやはり消費者という意識が行政全般の姿勢の中に入ってくる、やはりこれは一つの意識革命であるというふうに私は考えておりますが、したがって、こういう法律案が提出されましたことについて、私は提出者の方々に非常に感謝をしておるわけでございます。
  56. 田代富士男

    田代富士男君 いま、経企庁長官も、最初予定した以上に、もう法案が可決されない現在の審議中から、一歩いままでよりも前進した姿が見受けられるという、まあそういうわけで、いままでにない期待をしておるというような長官の御答弁を受けまして、いまの長官の期待どおりにこれが現実になってもらいたいことを私も希望し、また、そのように実現するよう努力していかなければならないと思うわけなんです。しかし、まあ国会でいろいろな基本法の制定が見られたわけなんです。ざっと考えてみるだけでも、中小企業基本法、あるいは農業、教育、公害、観光、原子力、まあこのようにいろいろ基本法が制定されてきたわけなんですが、現在のところ、まだ進行形であると言われればそれまででございますが、いままでの基本法のあり方から見れば、さほどのそのようなプラスになる結果というものが……。見方によって、違いが出ておるという見方もありますし、出てないという見方もありますが、公平に見まして、まだその実をあげてない。ことに、農業基本法、中小企業基本法にしてもそうでございますが、まだ役に立つところまでいってない。一つ取り上げれば、公害対策基本法等は、住民に一向にまだ役に立つところまでいってないわけです。そうすれば、いま長官がこのように期待していると申されるけれども、これがはたしてどこまでできるだろうか。法律が制定された以上は目的を達成しなくちゃならない、私そのように思うのですが、これは、いままでの基本法と違いまして、今回は、消費者という全国民対象としたところの基本法です。公害基本法にしましても全国民対象としたものでございますが、やはり限られた地域地域のものでございました。中小企業にしましても限られたその業界、そのようになっておりますが、今回の基本法は、おのずから性質が違うわけなんです。これがもしも中途はんぱで終わるようなことがあったならば、法そのものに対する信頼の失墜と申しますか、そういうことが起こってくることをおそれるおけなんです。いまの長官の御答弁でもけっこうですけれども、私はそういうことが心配でならないんですが、従来のこういう農業、教育、公害、観光、原子力、中小企業、そのような基本法とどのような違いがあるのか、その点について御確信のほどをお願いしたいと思うんです。
  57. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 一般に法律というものが、狭い意味では、権利義務を規定する、そうして中に強制規定があって、罰則を伴うといったようなのが昔の法律の狭い観念であったと思いますけれども、このような基本法になりますと、ものの考え方を述べているというのがその趣旨であると思うのであります。ですから、昔の権利義務の法律の観念でいきますと、これには何も書いてないじゃないかというような批評が起こりやすいのでございます。実際はそうではなくて、ものの考え方を法律で書いていただきますと、それによって行政の姿勢も拘束されますし、それから現存する法律あるいは法令と申しますか、法令がこれによって再検討されなければならない、そういうことになってまいりますので、実は罰則を伴った一つ一つの強制規定を置くよりは、もっと広い範囲で、意識の変化を導き出す、そうならざるを得ないのでありますし、実際また、行政というものがそういうものとして非常に高く評価をいたしますし、おそらく今後具体的な行政の姿勢の変化、あるいはその基本になる法令の変化になってあらわれてくる、こういう見方をいたしております。
  58. 田代富士男

    田代富士男君 いま、そのように基本法に対するお考えを言っていただきましたが、この基本法というのは、期待が大きければ大きいだけに、どうしていままで早くこういうのが出なかったか、そういう消費者の声が聞かれます。最近、あまり消費者行政、消費者教育というものに対して無関心な人々でも、われわれに、何かいいことでもあるかのように——私もいろいろな人から聞いてみますと、こんないい法案がどうして早くできなかったんですかというような、そういうような声を聞くわけなんですが、そういう人々に対しまして、消費者の味方である長官は、納得さすようにどのように指導されるでしょう。行政指導なさるでしょう。
  59. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) どうしていままでこういう法律案が出てこなかったかということについて、私は、やはり背景になります国民の意識というものがそこまで成長していなかったということがあげられるのじゃないかと思います。こういう法律ができることによって、さらに意識は高まりますから、両方が相呼応する関係になりますけれども、意識が欠けておるときにはやはり法律というものが生まれにくいのではないか。では、どうしてそういう意識が高まってきたかということになりますと、一つは、消費者物価が上昇を続けているということが、幸か不幸か、やはりどうしても原因になっておると思いますし、それからもう一つは、国会で物価等特別委員会というものが両院で設けられるようになりまして、以前にはこういうことはございませんでしたので、物価とか消費者とかいう観点から国会が国政を審議されるということが比較的少なかったのであります。ところが、近年、こういう場ができてまいりまして、私ども行政をやっております者が、そこでいろいろ御質疑を受けて、態度を表明しなければならないといったようなこと、また、それがおのずから、国会での御議論でありますから、広く報道されるようになったといったような、そういう意識を背景にしてこういう法律案が登場してきた、そういうふうに私は考えております。やはり、これは行政を含めましての国民全体を通じての意識の高まりが背景になっておったという考え方であります。
  60. 田代富士男

    田代富士男君 それで、また私はある消費者の一人に尋ねてみました。この物価の問題に対してあなたたちはだれが一番味方してくれるか知っていますかということを尋ねてみましたら、詳しいことはわからぬけれども経済企画庁というのがわれわれの味方じゃないんですかということを、その人が言っているわけなんです。それで、その長官は宮澤さんという人ですねと。特に大阪では、宮澤さんの写真が大阪一円にべたべた張られているんですよ。ポスターで男前の写真で、みごとに張られている。それで、この前大阪でも話をされたし、まあ経済観念が大阪は高いと申しますか、そういうふうにして期待しているわけですが、いま長官が最初に話されましたが、これは各省なりの関係法案がたくさんございます、全般にわたる関係法の整備もやっていかなくちゃならぬ。特に厚生省ではいま手がけられたと聞いておりますが、食品衛生法の改正だとか、あるいは通産省では家庭用品の表示やJIS規格の強化拡大、あるいは農林省ではJAS規格の基準引き上げと、そういう関係法案を整備すると同時に、今度は行政措置の適正な運営が望まれると同時に、やはり当局の行政責任が重要になってくるんじゃないかと思うわけです。  そこで、この法案が日の目を見たとしても、ないよりはましだと言われるような姿になるのか、まあ制定していただいてよかったと喜ばれるような、そういう法案となるか——これはたいへんじゃないかと思うわけなんです。ざっと考えても、関係法案など百五十、そのぐらいだったと記憶しておりますけれども、そのぐらいをまとめていかなくちゃならぬ。ところが、最近は、通産省と厚生省と公取とが、一つの再販の問題にしましても、けんけんがくがくで、うまくいかないんです。まして、これに一枚経企庁が加わってきて、国民大衆の総意のもとに機根は熟してきた、そのようになってまいりました。やはり、すべてのことをやるには、天の時、地の利、人の和という三つの条件が必要です。そのように、機根と言うか、大衆の意欲というものはそろってきた。そうするならば、あとは地の利、人の和ということになってくるわけなんですが、この中心になるのは経企庁の宮澤長官じゃないかと思うわけなんですが、このような行政指導を効果あらしめるために、各省に対して——まあ全部で政府自身として考えていかなくちゃならぬのですが、いまの再販問題一つにしても、まとまらない今日の現況です。独禁法解釈一つにしても、公取の言い分と通産省の言い分と違うというときに、この消費者保護基本法案だけがスムーズにまとまるということは、そう願いたいのですが、私は、そううまくいくだろうかということが心配でなりませんが、私におまかせ願いますという長官の、どのような決意であるか、どのような腹案をお持ちであるか、お聞きしたいと思います。
  61. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) この法律案が法律になりましたら、この御趣旨に従って各省できるだけ緊密に連係をいたしまして行政をやっていきたいと思いますが、さしあたりましては、ただいま各省に物価担当官というものを置いておりまして、私どものところで週に一ぺんぐらいは集まって会議をいたしております。そこで、この法案が法律になりましたら、物価担当官会議の場を使いまして、各省が持っている現在の法律消費者観点に著しく欠けているものについては再検討をして、これを改正する提案を国会に対していたす、政府としてはそういうふうに持ってまいりたいと思います。しかし、これは行政だけではなかなか万全というわけにはまいりませんので、願わしいことは、やはり両院におかれまして、このような委員会を少なくとも会期ごとにお設けいただいて、私ども行政府全体としてこの法律をどのように忠実に施行してきたかということを国会でも国政調査のお立場から御審議を願いたいと思っております。  それからもう一つ申し忘れましたが、物価担当官会議がその基礎になるわけでございますが、その上の上部機構と申したらいいのかどうか、消費者行政協議会というので、各省の官房長クラスをときどき集めておりますので、物価担当官会議で議論をして、それを消費者行政協議会にかけて現行法を改めていきたいというふうに考えております。
  62. 大森久司

    委員長大森久司君) 速記をとめてください。   〔速記中止〕
  63. 大森久司

    委員長大森久司君) 速記を起こしてください。
  64. 田代富士男

    田代富士男君 まあ、いまの点、私はそのように心配しておりますが、長官もいま披瀝されたわけなんですが、ひとつその事務担当の局長にもしっかりお願いしたいわけなんです。長官はいまいらっしゃいませんから、砂田先生でもよろしいですが、もしお差しつかえがあれば局長でもけっこうでございますが、私はこの法案について消費者一人一人に聞いてみました。そうして消費者の声を代表して言いますと、新聞消費者保護基本法の法案の解説が書かれていることに対しましては、全部の皆さんが読んでいるわけです。「消費者保護」ときますから、こういう固有名詞でくれば、われわれは即座に、何か守られてプラスになるという考え方を持つのはいたしかたがないと思いますが、われわれとしては、ちょっと抽象的であり、物価安定政策に結びついていないのじゃないか、そういうような声も聞くわけです。これはおもに婦人の方の声が多いのです。われわれを保護すると言っておりますけれども、どこに保護しておりますかと。物価を値下げするという安定政策なんか、このどこに書いてありますかと、そういう疑問を持っている人が多いわけなんです。そういうわけで、この問題に対するある程度のPRもやはり必要でありますが、そういう人々に対して理解を深めるのにどのようにこれをやっていくべきか、当局のお考えをひとつお願いしたいと思うんです。
  65. 八塚陽介

    政府委員(八塚陽介君) ただいまお話しになりました消費者保護という名称の問題等々は、私どもが、政府が申し上げるよりも、やはり提案者のほうから御説明いただくべき筋だと存じます。ただ、私どもといたしましては、この法律が通りました暁は、そういう消費者の方、一般大衆の方が、現実にとにかくそういう感じを抱いておられるとすれば、それに対して最も効果的なPRと申しますか、これはやはり具体的な事実でもって示す。政府が、この消費者保護基本法の基本法であるその次の段階の法律制度、基本法の次の段階である法律制度等を具体的に改善し、行政の中で実行していくことによって、かりに、もしそういう考え方を、感じ方をしておるとすれば、それに対して、そういう行動をもってそういう考え方の誤解であるゆえんを示していく必要があるというふうに考えておるのでございます。
  66. 大森久司

    委員長大森久司君) 砂田先生からひとつ聞かしていただきます。
  67. 砂田重民

    衆議院議員(砂田重民君) 私どもこの法案を作文をいたしますときから考えておりましたことは、実は私どもも、いろいろな消費者の方々からいろいろな意見を、それぞれの衆議院の物価の委員のところに寄せられておりまして、それから各省がすでに九千人ぐらいのモニターをそれぞれ持っておりますが、このモニターから、いろいろな意見なり、意向なり、苦情なりが各省にはね返ってきておりますモニターの意見、苦情、意向というものが一向解決されない。なぜだろうかということで、実はそれぞれの現行法をみな洗い直してみたわけでございます。ところが、そういったモニターの方あるいは消費者の方の意見やら苦情というのが解決されないのは当然である。いまの現行法では、お役人さんの行政は法律のワクの中でやりますから、いまの社会環境にもう全くそぐわなくなってしまっている。個々の現行法でいまの消費者の御意見をどう取り入れようと思っても、取り入れられないような法律現行法がなっております。具体的に一つ例を申し上げましたら、食品衛生法なんというものは、昭和二十二年に制定された法律で、不衛生な食品を対象にしているということが、もうまず第一に書いてある。したがって、不衛生な食品の取り締まりはできても、不良な食品の取り締まりはあの法律では一切できない。そろいう法律の体系になっておりまして、そういう法律が片方にあって、その法律のワクの中で、厚生省のお役人さんに幾ら消費者の苦情を解決しろと言ってみても、これはできない相談であります。そういった事例が、いろいろな、先ほど田代先生おっしゃった百五十の法律全部に当たったわけではありませんが、おもだったもの十五、六を洗い直してみたところ、全部の法律にそういう事態が出てまいりました。  一方、消費者保護行政というものは各省やっていると言いながら、それぞれの役所の中で消費者保護行政をやっている係なり課なりに日が当たっておりません。それぞれの役所の中で日が当たっていないのですから、これが予算などということで大蔵省に持っていったときに、もう一ぺんに日が当たらない。各担当の課長以下幾ら熱心に取り組んでみても、消費者のそういった苦情なり意向なりというものが解決されない。  そこで、政府の基本的な消費者保護に関する姿勢というものをこういった基本法でまとめて明確にしていって、この基本法の姿勢に基づいて、いろいろなモニターの方、消費者の方の意見、意向、苦情を解決するのには現行法をどうしたらいいか、そういうことを、基本法というものを制定させて、政府にそれだけの責務を負わせてやらしていきたい、こう考えて、実は提案をしたようなことでございまして、先ほど田代先生から、企画庁の長官に、どこまでやれるのかという御質問がございましたが、実は、提案者の私どもといたしましては、政府だけにやれやれと言っていたんではどうも心もとないような気がいたします。これはやはり参議院の先生方にお願いをいたしまして、両院の物価関係委員会が、ちょうど厚生省に食品衛生監視というものを強化しろと言っているように、われわれ物価の委員会が、消費者保護問題について政府を監視するわれわれの役目を拡大していかなければ、なかなかわれわれが考えていたような方向へは進みにくいのじゃなかろうか、このように考えておりますので、そういう観点から、実は衆議院の委員会議論をしましたことをどう政府が改善をしてきたか、あるいはそれの結論が出たもの、結論の出ないものの中間報告を、参議院選挙が終わりましたあとの予想される臨時国会で政府から報告をしてくれと、そういう約束を取りつけて、監視、アフターケアを続けてまいりたい、こう考えておりますので、当委員会でもひとつそういう観点からの御協力をぜひお願いを申し上げたい。かように考える次第でございます。
  68. 田代富士男

    田代富士男君 いま、提案者としての御苦心なさった点を聞かしていただきまして、両院の物価特別委員会で検討していきましょうということでございますが、物価委員会は参議院のほうがちょいとばかり先輩だものですから、先輩のほうがしっかりしなくちゃならないということで自覚を新たにしている次第なんですけれども、まあこの委員会消費者の声を、モニターの声を反映されたということでございます。私もモニターにも聞いております。で、それぞれのこのモニター制度のあり方についても検討を要する一面があります。各省ともにモニター制度をやって、ブロック体のモニターということにつきましても私の私見も持っておりますが、これは次の機会にいたしまして、この基本法案に対しまして、佐藤さん、佐藤総理大臣、そのときどきの総理大臣消費者保護会議の会長になるというようなことが載りておりますけれども、全部はあまり信用しないんですね。佐藤さんに会長になってもらっても、ことしの伊勢神宮に参ったあとに、物価は絶対上げないと言ったあとに、公共料金すぐ上げているじゃないか、そういう人が会長になったらこれはどうなるんだ、そういううそつきはこれはよくない、だからそういうわけで佐藤さん自身が会長になるというのはよくない、これはあくまで消費者保護基本法案だから何が何でも消費者の保護会議をつくるならば、われわれ自身の消費者だけの委員会なるものをもってやるべきものじゃないか、佐藤さんにそういう会長になってもらうわけにはいかぬ、そういう声がありますし、これは余談になりますけれども、ことしの予算が五兆八千数百億になっておりますが、これをごろ読みいたしますと、こまかい数字は省略しますが、ことしの予算を縦にごろ読みしますと、五兆八千億が「今夜一ぱいごくんとやれ」と、こういうのです。「今夜一ぱいごくんとやれ」。これは、佐藤総理はじめ、みな政府の当局者が、あの物価値上げで苦しんでいらっしゃる皆さんたちだろうから、たいへんだろう、今夜一ぱいごくんとやってくださいという、ことしの総予算ですよという、そういうことでございますが、今度、消費者のわれわれがそれを受けて、五兆八千のこのあれをわれわれの立場から、「いや一ぱい食わされた」ということになる。いつも値上げしない値上げしないと言いながら値上げしているじゃないか、いや一ぱい食わされたと読めるわけなんです。そういうわけで、この会長も、われわれ消費者自身がそれをやるべきだ、それから消費者保護基本法だから消費者が不良商品で損害を受けた場合はわれわれはどうしてくれるんだ、そういう補償の点に対して何ら明記していないじゃないか、それでもってどうして消費者保護基本法であるか、こういうような意見が出ているわけなんですが、こういう意見に対しましては、私は、いろいろ今後におきまして、これは砂田先生ではございませんが、経企庁の当局者といたしまして、これは考えていくべき点があるのじゃないかと思いますが、こういう声に対しまして、消費者の損害を補償するものはないという、消費者は独自でやっていかなければならない、佐藤さんが会長になるというのはいやだ——佐藤さんという固有名詞ではございませんが、総理大臣が会長になるということに対しましてそういう考え方があるのですけれども、これに対してどういうふうに、そういう人の疑いをとっていくようになされるのか、ひとつ当局から御説明願いたいと思うんです。
  69. 砂田重民

    衆議院議員(砂田重民君) 一部だけ私お答えしておきたいと思いますが、佐藤さんを信用なさるかなさらないか、これは、いろいろ好き好きだろうと思うのです。私自身に、おまえ信用するかと言われても、ちょっと答弁に窮するのですが、ただ、佐藤さん個人というよりは、総理にやはり責任を持たせる、預けてやらせることではなくて、やらせるのは私は国会の一つの責務だろうと考えておりまして、提案者といたしましては、引き続いて、先ほど申し上げたようなアフターケアの段階で、消費者保護会議の議長の総理をして国会のわれわれでやらせる。少なくともそういう気概だけは持っております。やるかやらないか信用できないではないかという御議論はあると思います。御議論はあると思いますが、われわれとしては、やらし得るという確信を実は持っておりますことだけをお答えしておきたいと思います。
  70. 八塚陽介

    政府委員(八塚陽介君) 苦情処理の問題につきまして、ただいまきわめて具体的な、たとえば苦情があった場合にそれを補償するというようなことが何ら具体的に書いてないが、実際問題としてどうするのかというお話があったわけでございます。消費者としての苦情は、これは実はきわめていろいろな部門で出てまいると思います。たとえば、割賦販売の場合にもそれなりの苦情があり、問題がある。あるいは衛生上の問題においてもそういう問題が出てまいる。各部門、いろいろな部門でそれぞれ苦情の態様が違うわけでございます。したがいまして、問題はむしろそういう多方面に出てまいります。しかも、きわめて日常生活の体験に即した苦情を行政としてどういうふうに受けとめるかということになりますと、第一に、やはり苦情を出される方は、何といいますか、まず、しろうと、アマチュアでございますから、できるだけ、この法律にありますように、末端の段階でいわばその苦情を受け付けるというような体制の整備をし、かつ、できるだけ末端の段階でそういう処理のあっせん等をするということが必要であろうと、そういう旨がやはり第十五条にあるのでございます。それから、具体的なものについての問題、たとえば表示と異なったものを買わされたとか、あるいはこれを買ったことによって身体上の何がしかの問題が出たというようなことにつきましては、これもやはり一括して処理する、何がしか行政機関が責任を持って一括して処理するというよりも、むしろ、取引の問題として各業界がそういう体制を整えて、そしてそれによって具体的にそれぞれ処理してもらうということが必要だろうと思います。そういう体制につきましては、正直に申しまして、現在の日本のいわばそういう業界の関心というのは薄いようでございます。そういう点につきましては、私どものほうも、あるいは所管の関係省を通じて、業界にそういう体制を整えてもらうという方向で指導をしてまいる必要があろうかというふうに考えておるわけでございます。確かに、御指摘になりましたように、苦情処理の問題につきましても、これは基本法でございますから、具体的にそういう点については書いてございませんけれども、今後われわれがこれに基づきまして行政上やっていくべきことについては方向が示されておるわけでございますから、そういう制度について今後進めていきたいというふうに考えます。
  71. 田代富士男

    田代富士男君 いま、消費者の声でございましたが、そこで、私は、消費者保護基本法案を勉強する前に、終戦後われわれの消費生活がどのようになされてきたかということを、ざっと調べてみたわけなんです。そうしますと、まあ大きくは、これは私なりの意見ですが、三つないし四つに段階を分けることができるのじゃないかと思うのですね。  その第一番目は、終戦直後から昭和二十五、六年ごろまで。これは、一口に表現するならば、赤字タケノコ生活の時代じゃないかと思うのです。これは終戦直後で国民生活の最もひどい時期じゃなかったかと思うわけなんです。消費生活も極端に低下しまして、勤労者の家計も赤字である。それと同時に、食糧難、そのために衣類すらも一枚一枚捨てていかなければならない。一枚一枚ぬぐたびに涙が出てくる。そこでタケノコ生活、あるいはタマネギ生活の時代であったといわれるのが昭和二十五年ごろまでじゃなかったかと思うわけなんです。そこで、そのときの総理府統計局の資料で東京都の勤労者の消費水準を戦前と比べてみましたら、昭和二十二年で戦前の昭和七年−十一年ごろに比べますと五五%という低い水準に落ちておるわけなんです。昭和二十一年は二十二年よりさらに低水準になっておる。四〇%前後じゃないか。食糧の消費水準はどうかといえば、二十二年でも戦前の五九%という、飢餓状態ですか、そのような数字が出てきておるわけです。そのために、有名な、判事の、配給の米しか食わないという死亡事件があったというタケノコ時代じゃなかったかと思う。  そうして、昭和二十五年から二十九年まではどうであるかといえば、戦後九カ年ぐらいでやっと戦前の消費水準まで上がってきたという時期がこの時期じゃないかと思うわけなんです。ここで特筆すべきことは、経済統制の撤廃、所得の上昇が見受けられてきておるわけなんですね。そうして生活物資の生産が増加されてきておるのです。このように戦前の水準に戻ったという時期じゃないかと思うのです。  それから、昭和二十九年から三十八年ごろまではどうであったか。さあ、ここらあたりから消費革命の時期になってきたのじゃないかと思います。だから、この時期で最も大きい役割りを示してきたのは、戦前の生活では夢同様でありました三種の神器と言われたテレビ、電気洗たく機、冷蔵庫等が手に入るようになり、耐久消費財が急速に普及してきて、消費構造が高度化してきたという時期になってきたのじゃないかと思うわけなんです。そうしまして、国民所得の統計も、一人当たり実質個人消費支出の増加を見てみますと、年率にして六・二%、これは昭和二十六年−二十八年の一〇・八%に比べると約二分の一ということになってきておるわけなんですが、このようにして消費構造の変化がなされて、耐久消費財というものがどんどん進出してきた時代になってきた。これですべてのものが改革されてきておるわけです。衣料品も、綿から化繊、ナイロン、テトロン、あるいは食糧も、いままで魚とか野菜とか乾物を主体にしてきたものが、肉、牛乳、パター、ハム、ソーセージ、このように食生活も変わってきております。また、燃料におきましても、炭から電気、石油、そのようにずっと変わってきたのがこの時期じゃないかと思います。  そうして、三十九年以降というのはどういう問題が特徴になっておるだろうか。これを調べてみますと、ここが一番問題点になってきますし、経企庁長官が長官に就任なされまして、経企庁の中期計画のあのパンフレットを読ましていただきましたところにも、るる書いてありましたところと相通ずるものがございますが、このように、消費革命がわれわれの日常生活の中におきましてだんだんとなされていくと同時に、レジャーブーム等は国際水準までもいってしまっているわけなんですが、残された問題は何かといえば、住宅問題、あるいは生活環境問題、あるいはそのような公害問題。そのように、個人の力で改善された部門につきましては、逐次そのように消費革命をしてまいりました。しかし、このような、公な、公的な生活面の本格的な改善がこのように取り残されてきたというのが、現在の一番大事な問題じゃないかと思うわけなんです。これに対しまして、やはり経企庁といたしまして、このような全般に対しましてどのようなお考えであるか。やはりこれも改革していかなければならないし、このような問題点がおくれてきたその原因はどこにあったのか。また、このおくれをどのようにして取り戻そうとしていらっしゃるのか。終戦後のこのような消費生活をざっとながめてきたところから、私は経企庁長官にお伺いしたいと思うわけなんです。
  72. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 戦後の段階的な変化につきましては、私もそういう見方でございます。仰せられましたことのように考えております。  そこで、ただいまの問題は、一つは家の問題でありますし、一つは生活環境施設でございますし、さらに公害といったような問題をおあげになりました。そのとおりであると思います。そこで、こういうことになった原因は何かと言われますと、私はやはり、まず第一の土地あるいは家という問題については、これは、理由はともあれ、原因はともあれ、大都市に人口が急速に集中をしたということに一番関係があると考えております。国全体として見て、元来土地は広いほうではございませんけれども、しかし、地方ではまだ、かなり広い土地、かなり広い家を持っている農家などは相当あるわけでございますから、やはり都市に人口が急速に集中したということがこの原因であったのではないかというふうに考えます。  で、対策といたしましては、これはもう、どういたしましても、一つは土地の問題を解決しなければならないわけですが、これはいろいろな説もございますが、結局は、土地収用の問題であるとか——これはすでに改正法を昨年御可決いただきましたので、今年度から施行されておりますが、そのほかに、やはり都市計画法——今回全面改正を目下本院で御審議願っております。これをひとつ御可決いただきまして、それによって土地利用計画というものを、公権的に、公権力でつくり上げる。多少そこには私権の制限ということを含んだ思想もございますが、これも私はやむを得ないものと思っておりますので、そういうことによって、土地利用区分、土地利用計画というものをひとつやらしていただきたいと思います。それによってある程度宅地の確保もできる、こういう考え方をしておりますので、法律万能という意味ではございませんが、やはりこれができませんと、どうもこの問題は一歩先へ進まないというふうに実は考えておりますので、この点を御提案申し上げておるわけでございます。  それからもう一つは、個人の所得がかなり上昇しながら、それが土地あるいは家屋の取得にまっすぐにつながらないというところに一つ問題がございまして、まあこのごろは、だんだん住宅ローンのようなものも出てはまいりましたが、もう一つ、なかなかそこまで一くふう要るのではないかというような現状であろうと思います。  生活環境施設につきましては、これもやはり立ちおくれておりますが、一つはやはりこれも都市化の結果であると思いますが、本来わが国の場合、この生活環境施設というものは戦前も非常におくれておりましたので、やはり国の成り立ちが古いということからでもございましょうが、道路であるとか下水道であるとかいうものは、きわめてこれは国全体にわたって立ちおくれております。これは、やはり歴史的にストックがなかったということの結果ではないかと見ているのでございます。ずいぶん毎年公共関係の投資はしておりますけれども、なお経済成長に追っついていない。しかし、これは毎年のフロー、流れの投下している度合いにおいては、世界でおそらく一番高いところの率で投下しているわけでございますが、何ぶんにもストックを欠いておったということで、まだきわめて不十分であります。  公害という問題は、戦後、しかも最近になって人々の意識にのぼるようになった問題でございますが、結局、これは先ほど申し上げました土地利用計画と、かなり密接な関係がございます。工場の立地の問題に相当密接な関係がございますことと、もう一つは、公共負担もある程度当然であろうかと思いますが、企業の側における社会的な責任というものが、やはりこの公害問題には伴っているのではないか。これも、各省の間に、いろいろ、先ほど御指摘のとおりの考え方の違いがございますけれども、しかし、やはり企業にはそういう社会的な責任があるという観念だけは、もうこれから育てていかなければならない。むろん、それに見合いますものとして、その場合に税法上の特段の措置を設けるとかいうようなことは必要かと思いますが、やはり企業に責任の一半があるという思想をこれから育てていく必要があろうかと思っております。
  73. 田代富士男

    田代富士男君 じゃ、委員長からきょうは四時までということでございますから、また次回の委員会に回すといたしまして、もう一問だけできょうは終わっておきまして、次回に回したいと思います。  いまも長官から、大都市に人口が集中したということから、いろいろ御説明をしていただきましたが、私は、一つは、今日までの経済成長の内容というものは、これまでに資本財、あるいは生産財部門の設備拡張から、中小企業あるいは農業の近代化と、住宅、道路、交通機関、いま説明されました上下水道、環境衛生の改善、そういうふうに私は向けられていくような時点になってきたのじゃないかと思うわけです。  そういう意味におきまして、私たちが望むことは、こういうことをやっていくことが福祉国家へ通ずる道になるのじゃないかと、そのようにも思いますし、これをやっていかねばならない期間がいまからの期間じゃないかと思いますし、そういう意味におきまして、住宅、生活環境の改善等も重要でございますが、そういう意味消費者の保護政策を進めていく、それが、いま申すように、社会保障や教育を含めて社会開発に進んでいくし、社会国家建設に進んでいくことになるのじゃないかと思います。いまさっきの説明からあわせて私はそのように思うわけですが、経企庁から出されたものも読みましたけれども、その点は相通ずるものがありますが、長官のお考えを聞かしていただきたいと思います。そうして、こまかい、また次の問題につきましては、次回の委員会において質疑をさしていただきたいと思います。
  74. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 御指摘の点、まことに私も同感でございます。そのようなことは、また、政府が毎年発表いたします国民生活白書でもしばしば取り上げているところでございまして、施策の重点は今後そういうところになければならないというふうに考えております。
  75. 大森久司

    委員長大森久司君) 他に御発言がなければ、本案に対する質疑はこの程度にとどめたいと存じます。本日はこれにて散会いたします。   午後四時十一分散会