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1968-04-26 第58回国会 参議院 物価等対策特別委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月二十六日(金曜日)    午後一時二十二分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         大森 久司君     理 事                 岡本  悟君                 櫻井 志郎君                 村田 秀三君     委 員                 木村 睦男君                 任田 新治君                 木村美智男君                 田中寿美子君                 藤原 道子君                 中沢伊登子君    衆議院議員        発  議  者  砂田 重民君        発  議  者  武部  文君        発  議  者  和田 耕作君        発  議  者  有島 重武君    国務大臣        農 林 大 臣  西村 直己君        国 務 大 臣  宮澤 喜一君   政府委員       経済企画庁国民       生活局長      八塚 陽介君       農林省畜産局長   岡田 覚夫君   事務局側       常任委員会専門       員         坂入長太郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○消費者保護基本法案衆議院提出) ○物価等対策樹立に関する調査  (農林水産物価格等に関する件)  (物価問題に関する件)     —————————————
  2. 大森久司

    委員長大森久司君) ただいまから物価等対策特別委員会を開会いたします。  これより、消費者保護基本法案(衆第二一号)(衆議院提出)を議題といたします。  まず、発議者砂田重民君から提案理由説明を聴取いたします。
  3. 砂田重民

    衆議院議員砂田重民君) 消費者保護基本法案について提案趣旨を御説明申し上げます。  わが国経済は、近年、急速な成長を遂げてまいりましたが、半面において、消費者利益を侵害する各種の問題が生じてまいりました。すなわち、経済発展究極において健全な国民生活発展目標としていることは言うまでもありませんが、商品役務の一部には、安全、衛生などの面で、国民消費生活危害を及ぼすおそれのあるものも残されている上に、経済発展が、一面において、商品多様化による選択困難化、不当な表示増大等を通じて、消費生活の健全な発展を阻害する面も露呈してきたのであります。  アメリカのケネディ大統領が議会に送った「消費者利益保護に関する教書」の中で、有名な消費者四つ権利を宣言いたしました。安全である権利、知らされる権利選択できる権利、意思が反映される権利四つがこれであります。消費者がこのような権利を持つことは、わが国においても全く同様でありまして、消費者の購入する商品役務が、社会的基準に照らして正常な品質内容を有し、かつ、安全、衛生などの面で危害をもたらさないようにすること、購入する商品役務価格その他の取引条件が公正かつ自由な競争によって形成されるようにすること、商品役務品質その他の取引条件について、必要にして十分な情報が提供されるようにすること、消費者意見が、国、地方公共団体並びに事業者に十分反映されるようにすることを確保しなければなりません。  もとより、従来から、消費者利益関係のある個別の法律は数多く制定されております。しかし、それらの法律は、必ずしも当初から消費者保護目的として制定されたものばかりではありませんし、また、各省庁行政が、とかくばらばらに行なわれがちであるという弊がありました。  この際、国民生活優先という姿勢をはっきりと打ち出して、国、地方公共団体消費者行政が統一的効果的に行なわれるようにすることが必要であります。  また、事業者も、良質な商品を豊富に供給することが、みずからの発展を招来するゆえんであることを自覚しなければなりませんし、消費者自身も、必要な知識の吸収につとめ、自主的合理的に行動することが、みずからの利益を守るために必要であることを認識すべきであります。  ここに提案いたします消費者保護基本法案は、消費者利益擁護とその増進に関して、国、地方公共団体事業者並び消費者の果たすべき責務役割りを明らかにし、かつ、その施策基本となる事項を示すことによって、消費者権利を守り、消費生活の健全な発展をはかろうとするものであります。  この法案では、国の責務地方公共団体責務事業者責務消費者役割りを示すとともに、危害防止計量適正化規格整備表示適正化、公正自由な競争確保等に関する施策のあるべき姿を示しておりますが、さらに消費者保護会議設置を定めております。  消費者保護会議は、内閣総理大臣を会長とし、関係行政機関の長を委員とするものでありまして、消費者保護に関する基本的な施策に関して審議し、かつ、その実施を推進してゆく役割りを持つものであります。これは、総理みずからが消費者保護を推進する姿勢を示すものであります。  最後に特に申し上げたいことは、この基本法制定によって消費者問題が解決されるということではなく、基本法制定によって消費者問題はその解決のための出発点にようやく立つことができたという点であります。したがって、こうした意味からも、すみやかに現在数多くある消費者保護関係法令について消費者利益擁護するという観点からの再検討が行なわれ、必要な改正運用強化がはかられなければなりません。  行政の最終の目的国民生活向上にあり、生産目的消費にあることは、頭で理解できても、これを行動で示すまでには時間と努力が必要でありましょう。行政に携わるすべての人々にこの考え方が定着して、消費者行政が真に実り始めることを、この基本法は要求しております。  業界経営者が高い識見と企業社会的責任を自覚しておられることをわれわれは確信しております。しかし、ごく一部分の不徳義な企業行動によって、その業界全体の信用が傷つけられ、大きな痛手を受けることも少なくありません。企業が自主的に消費者苦情や意向を聞き出す対話の機会を設けて、これを取り入れ、公正な生産販売方法を積極的に開発されることを本基本法は希望しております。  消費者が、みずからの生活向上経済全体の効率化を促進するため、きびしい選択努力するという役割りを果たしてくださることを、この基本法は期待しております。  深まった生産消費の間のギャップを埋めて、企業消費者との間に、かってはあった心のつながりを取り返さねばなりません。  御審議の上、御賛同くださいますようお願いいたしまして、提案趣旨説明を終わります。
  4. 大森久司

    委員長大森久司君) 次に、発議者武部文君から補足説明を聴取いたします。
  5. 武部文

    衆議院議員武部文君) 消費者保護基本法案提案趣旨に関連いたしまして、若干補足して御説明申し上げます。  言うまでもなく、消費者とは、生産者販売者も一面においては消費者でありますから、国民全部を指すわけであります。わが国憲法には、健康で文化的な生活を営むことは国民権利であり、これを確保することは国の責務であることを明示しております。したがって、国のいかなる施策も、究極には、すべての国民一般消費者として充実した消費生活を営むことができるよう、その利益確保を指向するものでなければなりません。  しかしながら、わが国の明治以来の諸施策は、欧米先進国に追いつくために生産力の拡大に最重点が置かれ、生産者及び販売者が手厚く保護されてきましたが、消費者利益確保に関しては著しく配慮を欠くうらみがあったのであります。このため、安全、衛生表示量目等について消費者の不利益や危険が高まり、特に技術革新による商品及び役務多様化高度化、マスメディアの発達や大量生産大量販売方式の進展に伴う販売競争激化等によって、近時その弊害が急増し、これを放置することは許されないほど大きな政策課題となってまいったのであります。  しかも、現段階においては、国民の努力によって、経済力西欧先進国の一角に到達したのでありますから、消費者利益確保し、その増進をはかるための施策を、これ以上遅らせることはできません。  したがって、先般国民生活審議会によってなされた「消費者保護組織および消費者教育に関する答申」にも明らかなように、もはや、生活経済の犠牲になるのではなく、経済生活に奉仕すべきであるという国民生活優先の原則にのっとって一切の行政運営が行なわれるべきであります。  本法案は、このような考え方から、消費者保護の新たなあり方を明らかにし、これに関する施策基本方向を示すために提出した次第であります。  次に、本法案の概要を御説明申し上げます。  第一は、国、地方公共団体事業者消費者のそれぞれが消費者利益擁護とその増進に関して果たすべき責務役割りを明示したことであります。  すなわち、国は、経済社会発展に即応して、消費者保護に関する総合的な施策を策定し、実施する責務を有すること、地方公共団体は、国の施策に準じて施策を講ずるとともに、地域の状況に応じた施策を策定し、実施する責務を有すること、事業者は、その供給する商品役務について、危害防止、適正な計量表示実施等、必要な措置を講ずるとともに、国、地方公共団体施策に協力する責務を有すること、消費者は、必要な知識の修得及び自主的合理的行動につとめることによって、消費生活安定向上に積極的な役割りを果たすものとすることを定めております。  第二に、国の消費者保護に関する施策を明示したことであります。すなわち、商品及び役務についての危害防止、適正な計量実施確保、適正な規格整備、普及、適正な表示実施確保価格等についての公正自由な競争確保及び公共料金決定に際しての消費者利益の配慮、消費者啓発活動及び教育の推進並びに消費者意見の国の施策への反映の各項目について国の施策目標を示したのであります。  第三は、苦情処理についての事業者等責務を示したことでありまして、事業者は、消費者との間の取引に関して生じた苦情を適切かつ迅速に処理するため必要な体制整備等につとめること、市町村苦情処理あっせん等につとめること、国、都道府県は、苦情処理が適切、迅速に行なわれるよう必要な施策を講ずることを定めております。  第四は、消費者組織化についての規定でありまして、国は、消費者がその消費生活の安定及び向上をはかるための健全かつ自主的な組織活動が促進されるよう必要な施策を講ずることを定めております。  第五は、消費者保護会議設置を定めたことであります。これにつきましては、先ほど提案趣旨説明の中でも御説明のあったとおりでございます。  もちろん、この法案内容は、基本法という性格から訓示規定的でありますから、この法案だけで消費者行政が充実するものではありません。したがって、この法案を真に効果あらしめるためには、この法案の精神に照らして次の点について早急に検討し、具体策を講ずる必要があります。  それは、既存の消費者保護関係法令の改廃及び新法令制定についてでありまして、この点については、本法案の中でも特に一条を設けて、必要な関係法令制定または改正を行なわなければならないことを定めております。  消費者保護関係法令としては、厚生省所管食品衛生法栄養改善法薬事法農林省所管農林物資規格法通産省所管電気用品取締法工業標準化法家庭用品品質表示法建設省所管建築基準法宅地建物取引業法公正取引委員会所管の独禁法、不当景品類及び不当表示防止法等々、数多く制定されております。  しかし、これらの法令のほとんどは、消費者保護という立場から制定されたのではなく、公衆衛生あるいは企業生産性向上といった立場から立法されたものであります。したがって、これらの法令を真に消費者利益擁護増進をはかるものとするために、既存の法令検討し、これらの改廃あるいは規格基準引き上げ等について具体化する必要があります。また、場合によっては、新しい法令制定をはかる必要があると思います。  なお、これに関連して、基本法には明文化されておりませんが、流通機構整備近代化についての具体策を樹立することも必要であると思います。  商品及び役務消費者価格は、生産及び流通の各段階で形成されるのでありますから、その適正化をはかるためには、それぞれ近代化を進める必要があります。とりわけ、流通段階での機構複雑多岐であり、また、多くの前近代的な慣習や組織が残存し、それらに対する対策もきわめて立ちおくれている現状であります。  したがって、とりあえず、国民日常生活に直結し、特に重要性の高い商品及び役務についてその流通機構の実態を調査検討し、その改善整備策を策定する必要があると痛感するものであります。  いずれにいたしましても、消費者利益擁護増進をはかるためには、この基本法制定を契機として、次々に具体的な対策がとられることが絶対に必要な条件であることを重ねて強調して、私の補足説明を終わることといたします。  なお、本基本法実効確保するため、昨二十五日の衆議院物価問題等に関する特別委員会におきまして、自由民主党、日本社会党民主社会党及び公明党の四党一致決議を行ない、この決議を即日関係省庁の長あて送付いたしました。  審査の御参考までに、決議内容を御紹介いたします。すなわち、   本委員会は、消費者保護基本法案の審査にと  もない、各種消費者保護具体策について検討  を続けてきたが、さしあたり次の点について政  府はただちに必要な措置を講ずるよう要請する  ものである。  一、地方公共団体消費者保護に関し果たすべ   き責務を明確にするため、地方公共団体の事   務として消費者保護に関することを地方自治   法上明記するよう検討すること。   また、中央地方を通じて消費者行政が効果的   に推進されるよう、国、都道府県市町村の   消費者行政に関する責務分担を確立し、その   ための体制整備すること。  二、消費者利益関係のある各種法令につい   て再検討を行ない、必要な法令制定改正   を準備し、運用改善を行なうこと、ならび   に各種法令実効確保のため、国、公立の   試験研究機関整備をはかるとともに、監視   体制強化をはかること。   なかんずく、次に掲げる点について十分に考   慮し、所要の措置をとること。   (1) 食品衛生法については、その規定する食    品の成分規格を明確にするとともに、特殊    栄養食品標示制度改善して食品衛生法    において規定することを検討すること。ま    た、食品添加物残留農薬について、その    毒性の研究を促進し、許可品目の再点検、    規制の強化をはかること。   (2) 農林物資規格法については、輸入物資を    含めて対象品目を拡大するとともに、日本    農林規格品質基準の拡大ないし等級別基    準の設定、表示制度の充実、表示方法の明    確化をはかること。   (3) 食品衛生法栄養改善法農林物資規格    法、不当景品類及び不当表示防止法を通じ    て食品表示制度海外諸国に比しても立    ち遅れており、かつ、最近の消費生活の実    態にも適合しなくなっていることにかんが    み、統一的な観点から食品表示に関する    制度のあり方とその運用について根本的な    再検討を早急に行なうこと。   (4) 薬事法については、その規定する医薬品    について、既許可のものであっても予期せ    ざる副作用が発生した場合には、すみやか    にその情報を把握し、製造、販売停止等    必要な措置がただらに講ぜられるような体    制を整備すること。また、貯法、製造年月    日、有効期限等表示義務対象薬品を拡    大すること。   (5) 工業標準化法については、実用性能の規    定をもつた規格制定等級別規格の制    定、表示内容及び方法改善等につき検    討すること。   (6) 家庭用品品質表示法については、対象品    目を拡大し、繊維製品等使用方法その他    の表示内容を充実強化し、かつ例えば絵表    示を採用する等表示方法改善をはかるこ    と。   (7) 不当景品類及び不当表示防止法について    は、表示に関する公正競争規約に関連のあ    る業界に対し必要な場合に一定事項表示    を義務づけうるようにするとともに、都道    府県知事公正取引委員会に対し不当表示    についての処分請求を行なえるよう検討す    ること。また懸賞による景品類の提供につ    いては、商品購入条件としないものにつ    いても規制しうるようにすること。   (8) 宅地建物前払式割賦販売については、    契約解除の際の損害賠償額の制限、前受金    の安全保証措置等必要な規制を加えるこ    と。   (9) 消費者組織については、消費者自身の    自主的活動に期待する面が大きいので、消    費生活協同組合等民間消費者組織の効果    的発展をはかる方向で適切な措置検討す    ること。  三、消費者保護施策実効をはかるため、各都   道府県に、商品テストをはじめ、各種の相   談、消費者啓発活動等を総合的に推進できる   「生活センター」ともいうべき機構設置をは   かること。  四、学校教育における消費者教育を一層改善充   実すること。  五、消費生活にとって重要な公共料金の決定に   当たっては、十分に消費者意見を反映しう   るよう審議会公聴会その他を活用するこ   と。  六、消費者金融については、消費者保護立場   から、早急に調査研究を行ない、政府の統一   見解とその対策をまとめ、万全の措置を講ず   ること。  七、不良商品等によって消費者が受けた損害が   救済されるように、十分な苦情処理が行な   いうる業界体制整備することについて必   要な措置をとること。  右決議する。  以上であります。  何とぞ慎重審議の上、すみやかに御可決くださるようお願い申し上げます。
  6. 大森久司

    委員長大森久司君) 本法案につきましては、本日は提案理由説明聴取にとどめておきます。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕   〔委員長退席理事櫻井志郎君着席〕
  7. 櫻井志郎

    理事櫻井志郎君) 速記を起こして。     —————————————
  8. 櫻井志郎

    理事櫻井志郎君) これより、当面の物価等対策樹立に関する調査中、農林水産物価格等に関する件を議題といたします。  本件に関し、質問のある方は順次御発言を願います。木村君。
  9. 木村美智男

    木村美智男君 農林大臣食肉の問題で伺いたいと思うのですが、この間の委員会で、農林省のほうから、大体今日の食肉価格推移状況のお話がありました。特に、牛肉の問題が、三十九年には大体三四七であったものが、指数的に申し上げますと、四十年には四三九、そして四十一年は六 ○五となった、おそらくもう、いま四月の末ですから、四十二年についてもあるいは把握をしているのじゃないかと思うのですが、相当急速な値上がりを示していることだけは、これはもう農林省の統計をもってしても明らかなんです。したがって、最近は「牛肉は遠くなりにけり」といったようなことで、新聞でもこの事情というものをいろいろと書き立てておるわけですが、とにかく、一般家庭におきましては、まあ食べたくとも高くて食えない、この実態というものは、これはもう間違いのないところなんです。  そこで、私は、この食肉問題については、相当農林省として、この際やはり新しい観点で、ものをながめなければならないような事態に来ているのじゃないかということで、畜産局長にも前後二回にわたっていろいろ質問をしてきたわけですが、しかし、どうも事務当局では、らちがあかないわけです。これは、どうしても大臣にある程度この問題について、単に事務当局の言っているようなことをそのまま受け売りをするのじゃなしに、大臣自身がやはり今日のこの食肉問題というものを十分検討してもらって、そうして判断をされるというような立場を、まず大臣に前提として要望をしておきたいと思うのです。  私が言わむとするのは、中国からの牛肉輸入の問題なんです。何か、中国というと、すぐあるいは色めがねをかけたり、勘ぐったりというような雰囲気があるのですが、そうではなしに、純粋に、事経済の問題として、あるいは物価の問題としてこの際考えてみる必要があるのじゃないか。この問題は、私は非常に古くて新しい問題だと思う。なぜ古いかというと、これは大臣、戦争中ずっと昭和十九年ごろまで青島から日本は肉を入れていた。牛肉を入れておった。このときは、いま農林省がおっしゃるように、まさに偶蹄類に最も危険な流行病だといわれる口蹄疫が蔓延しておった。その時期に、日本が少なくともあららに検疫所を置いて、そうして青島牛をどんどん国内へ持ってきた。その当時それだけの大冒険——いまから言ったら危険きわまりないことなんです。そういう大冒険をやっても、国内口蹄疫が全然出もしなかった。今日ではどうかというと、一九六二年以来一頭の発生もないと中国側が言っておるし、それから事実そういう資料も、これは高碕事務所等を通して来ているし、それからいろいろの外交ルートを通してもそういう資料が出てきている。それなのに、なぜ……。その昔あぶなかったときに入れて、いま、もう口蹄疫がないと言われ、したがって、フランスも、イタリアも、あるいは東欧諸国中国から現に入れておるわけ。これは、「エコノミスト」じゃなくて、「朝日ジャーナル」で、畜産局長は、入れていないというようなことを言っておりましたが、それは入れております。そういう状態で、ほかも入れておる。だから、私は、もう情勢がまるっきり前と違って、よくなっているのに、これをしいて、大臣は、この間、純技術的な問題だというふうに言うから、これはちょっとおかしいじゃないか。国民の一人一人にしてみれば、これだけ肉が高いのに、その肉を扱っている農林省が、病気の心配があったときすらどんどん入れておったものを、いまはないというのに、これを全然入れようとしない。これは、素朴な国民にとっては、何としても、大臣、理解のできないことですよ。この点は、一体これはどういうふうに大臣としてお考えになられますか。
  10. 西村直己

    国務大臣西村直己君) まあ肉牛の、——牛肉と申しますか、肉牛の根本問題につきましては、われわれのほうも、家畜導入であるとか、草地をふやすとか、畜産奨励という面から、基本的に国内生産をふやしてまいりたい、この姿勢というものは、今後も強化してまいるつもりであります。  それから、当面の措置としまして、牛肉価格が上がっているのではないかと一まあ、現在のところでは、現状では、率直に申し上げまして、私どもの調べでは、停滞ないし多少下がりぎみであるという面もあることは事実であります。しかし、いずれにしましても、国民の食糧の質が変わってきている。経済成長の結果、国民の需要というものが上がってきている。ことに、こういった方面の食料というものを求めておる。これに対して、できるだけ価格を安定していくということは、私どものほうの仕事でもあるわけであります。で、問題は、当面のこの中共の肉の問題でありますが、私どもは、入れられる条件が整えば、それは、入れるということについてかれこれ言うわけではない。経済の問題として考えていいと思います。ですから、何らこれに対して政治的なあれはございません。先般の米の問題のごときは、むしろ、私のほうは、率直に申しますというと、お米は買いたくない。いま、御存じのとおり、古米が二百五十万トン近く、二百三十五万トン、あるいはそれをこえるような古米持ち越しの際であっても、覚え書き貿易を成立させるためには、いい小站米なら入れてもいいじゃないかということにまで譲歩して、覚え書き貿易を進めたくらいでありますから、そういう意味合いから言えば、対中共貿易を拡大していくという意思にも変わりがない。ただ、事柄が、この病気の問題でございます。で、戦前には入ったとおっしゃいますが、戦前と現在とのお互いの国交なり、そういった関係がとだえておる仲だけに、それをどういうふうにして協力し合っていくかという一つの問題がある。事柄が、妥協とか、そういう問題で解決する問題でなくて、病気の問題でございますから、病気に対する見通しというか、保証というか、そういうものもはっきりさせていくということは、お互いに経済の裏打ちとしての義務ではないか。お互い同士の義務ではないか。それをはっきりさせるべく、われわれとしても求めていくわけであります。そして、まあこの間も、予算の分科会でも申し上げたのでありますが、相手の国のほうでも、この点を十分協力をするような御努力関係者がなさるべきではないか。ただ、大体いいだろうから入れろ、向こうがいいと言うから入れろ、こういう問題では私は済まされない、そういう意味で、衛生技術の問題として問題を解決していくべきだ、こういうふうに申し上げておるわけであります。事柄が、国内に入ってまいった場合において非常に大きな問題になっても困る問題であります。ですから、ことしの小站米を入れる場合でも、私は、経済ベースでやる以上は、ただ、買いましょう、売りましょうじゃ困るので、経済ベースに乗るために、きちっとした国際価格であるとか、小站米を中心にしてくれとかいう条件も、きちっとつけてやるべきであるということで、そういうふうな御要望を申し上げて、その線で、現在幸いにしまして、米のほうの輸入のほうは、もうおそらく出先の商社とあちらさんとの間で話し合いがついたのじゃないかと思います。したがって、この問題も、私は、衛生上の観点からの問題を解決をしていくという、双方の努力、これが一番大事じゃないかと思うのでございます。
  11. 木村美智男

    木村美智男君 大臣ね、いまお答えの中で、とにかく基本的に畜産奨励をして、将来はもう輸入なんということをせぬでもいいようにしていきたい、この立場は、これはもう私も同じであるし、それからその点から言うならば、いまの農林省の畜産対策なんというのは、もっともっと積極的に打ち出されてしかるべきだと、こういう意見を私持っております。四十三年度の予算を見ましても、近い将来需給関係国内で満足させるような、そういう予算のたてまえにはなっておりません。だから、まあそれはそれとして、いろいろ金のやり繰りの関係もあるのだろうから私いいと思うのです。将来畜産奨励強化して、そうして自給体制をつくっていくという基本方針は私も賛成ですから、これはけっこうだと思います。ただ、当面、大臣価格が最近停滞をしてきているというふうなことを言っていますが、これは、価格が上がるだけ上がって、そこへとまっているものを、停滞しているからいいという見方は、これは全然、国民生活消費生活とはかけ離れた、もう学者の言うことなんです。学者が統計数字をいじって、そうして今日は価格が停滞しているからいいと言う理屈は、これはいい。しかし、現実にこの肉を一つの生活のかてとしておる人たらにとっては、これはとにかく、いま申し上げたように、三十九年から見れば、まさに倍にはね上がっているわけですよ。そういう高いところにいって停滞をしているという意味は、これは消費者というものに対する、あるいは消費者行政という立場から考えれば、そういう説明では、これはもう国民も納得できないし、私の言わんとすることにも答えていることにはならない。そういう停滞ということで言うならば、それはもうまさに統計数字的な停滞であり、あるいは日常生活に全然関係を持たない立場で冷たいものの見方をするなら、そういうことは言えるだろうと思う。まあ、これはこれでいいです。  しかし、中国から入れられる条件が整えば、これは米の問題だって入れたじゃねえか。——大臣は、なるほど困難な今日の事情の中で米を入れたということは、これは農林省としては大英断かもしれない。しかし、国民立場から見れば、こんなばかな話はないのです。米が余っているのに、足らない肉のほうはこれはいやですと断わって、余っているやつをわざわざ買ってきて、けさの新聞見てごらんなさい。四百万トンだっていう……。したがって、食管制度を根本的に検討せんけりゃならぬ……。こういうばかなことをやっておって、これは国民立場に立って政治をやっているなんということにはならぬと思うよ。農林省は一体どっちを向いて仕事しているのだか、わけがわからぬ。だから、米の問題は、そういういきさつがあったのだから、いいと思うよ、いいと思うが、それが、何というか、入れられる条件があれば米だって入れたじゃないかという、そういう説明をするのには、ちょっと、そんなばかな話があるかと、こっちは言いたくなるのですよ、逆に。足らないものを入れて余っているものを出す、そうして相互有無相通ずるところに、貿易あるいは交易というものが成り立つのであって、そういう中に、やはりお互いの外交関係も、あるいは共存共栄というものの道も開けてくるわけでしょう。余っているやつを入れて、足らないやつを入れないというのは、基本的な間違いです。その他、病気の問題は、これは別ですよ。そういう点に、まず基本的に問題があるのじゃないか。いまの農林行政は、ほんとうに大臣畜産奨励に対して私がこの委員会で指摘をしたことについても、この間畜産局長から説明がありましたよ、しかし、それは将来、食肉を安定させるような、そういう予算関係にはなっていません。いないけれども、それは私はある程度了解しましょう。しかし、そうだとすれば、当面足らないその問題について、どこからどう輸入するか別にしても、いまここで輸入政策ということについて、従来の立場にとらわれずに、新しい立場でものをながめるという、そういう立場が必要じゃないのかということを実は伺っているわけです。病気の問題あとから申し上げます。
  12. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 米の点につきまして、ばかな政策をとっておられるとおっしゃられますが、これは、よく御説明申し上げますと、私ども米はむしろ求めていないのです。むしろ、中共のほうから、米を入れなければ困ると、こういう強い要望でありまして、私ども、できれば米のかわりに飼料等を扱いたいというのが強い要望なんでございますけれども、それでは全然話にならない。せっかく両国が御努力願っておる貿易でございますから、そんなような事柄で大きなことをこわしてはいけない。しかも、これには何らほかの問題はございません。牛肉の問題になりますと、なるほど中共の牛肉を入れるという問題、これはわかります。わかりますけれども、同時に、病気という問題に対する保証という問題を、やはり国際水準で解決していかなければ、かりに病気がなければいいが、誤って入った場合においては、結果においては、日本のいわゆる酪農振興といいますか、こういったものを根本的に困るような状態に追い込む、したがって、あくまでもその面を協力を願って解決をするように、ひとつ関係者にも御尽力を願いたい。先般、中共の使節団として折衝なさった方が帰ってまいりましたときにも、私はそれを申し上げたのです。そういうことで、日中間のことに御尽力なさっている方は、そういった国際的な水準でお互いに技術解決をすることが先決ではないか、こういうふうに申し上げたのでございます。米のほうは、私のほうは、なるたけ余っている現在の状態のときに入れたくはございません。むしろ、飼料等に振りかえてもらいたい。しかし、あちらさまにはあちらさまの事情がございましょうから、たって米という……。しかも米は、御存じのとおり、相当の量を要望されたのでありますが、私のほうとしてはぎりぎり決着のところを申し上げて最終妥結に至る、こういう事情でございます。
  13. 木村美智男

    木村美智男君 それは大臣、私にもそれは、しろうとなりに、こまかい数字は別にして、米は二十万トンの要求があった、しかし日本の国としてはどうしても十万トン以上は買うわけにいかぬということで、それはほしくないものを買ったといういきさつを知っています。しかし、同時に、そのときには米の問題だけじゃなしに、肉の問題も出たのです。出ていながら、しかし、代表で行った古井さんや田川さんや皆さんだって、農林省はがんとしてこのことについては、それは絶対にいかぬという態度を明らかにしているから、だから米を買わなければならぬので、これは拡大均衡の原則を向こうはとっているんだから、肉を入れれば、米はもう少し五万トンでもいいという話にもなったかもしれぬですよ。それが遺憾ながら、入れるものについては片方はだめだというから、米のほうは相当無理せんければならぬというふうになってきている。これが、ばかげているとぼくは言っているんです。国民がほんとうに望んでいるやつを入れるという立場をとりさえすれば、要らないものをよけい背負い込む必要はないのです。そこら辺を客観的に考えていったら、農林省が今日どれだけ中国との貿易関係についてもじゃまになっているか、国民としては、これは何としてもがまんならぬところなんですよ。この点は、だから米の問題について、その事情はそういうことであったということはよくわかっています。わかっていますが、それは米だけの問題でなくて、ほかにものがあるのに、買いたくない米を買っているということは決してりっぱなことじゃない、こう申し上げているわけです。この論争はいいです。  ただ、病気の問題ですけれども、何か大臣も、どうも最近やっぱり事務当局の言うなりになっているような気がするね、ぼくも、お話を聞いておって。私が聞いておることに答えてくれませんか。口蹄疫という病気は戦前からあったのだ、しかも、吉島から十九年まで入れていたときには、中国にはもうこの病気が蔓延していた。その蔓延していたときに日本は入れたのです。入れられないというのに。ビールスの型が何だとか、ワクチンは何を使っておるとか、その製造方法は何なんだ、撲滅する方法はどうなんだと、これが明らかにならなければ肉は入れられないと言っているんだ、農林省は。昔はそんなこと言わぬじゃないか、一つも。それを、いまそういうことを言っているから、あなた方が、いや肉は入れたいのだと、そういうことについてちっともじゃまするものではないのだと、こうなんぼ言っても、農林省はやっぱり反中国政策をとっているのだとかなんとかと、痛くもない腹をさぐられるようなことを言われなきゃならぬようになる。国民は素朴ですよ。だから、そこのところをもう少し国民に納得のいくように話をしたらいいじゃないですか。私は何も、これは牛肉さえこんなに高くなければ、この中国の肉問題なんということは、そう声を大にしてここでやつらやおらぬのですよ。牛肉が高い限りこの問題は言いますよ。ワクチンの型とかなんとかというけれども、あとでまた聞こうと思うのですが、それなら今度、大臣、アルゼンチンというのは口蹄疫の汚染地域ですからね。これまた、おそらく、畜産局長そばにおって、あれは煮沸しているから病気の心配はないのだ、こういうこと言うだろうと思う。汚染地域からいまや肉を持ってくるのです。すぐ隣に、病気がなく、しかも運賃が安くて新しい肉を、片方は一カ月もかかるのに、三日ぐらいで持ってこれる。こういう条件があるのにかかわらず、わざわざ汚染地域であるアルゼンチンから煮沸肉を輸入する、こういう方針をまた立てたわけだ、農林省は。素朴に考えたら、やっていることがなっちゃおらぬよ。何を考えているのか、ちっともわからない。アルゼンチンについて、大臣口蹄疫のビールスの型は何ですか、使っているワクチンの種類は何ですか、製造方法は何ですか、教えてください。
  14. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 問題は、私のほうとしては、こういう問題は貿易でございますから、国際的に解決するような条件ですべて解決していかなければならぬので、あくまでもそこに政治的なものを入れるというのではないのでございます。そこで問題は、アルゼンチンの場合にも、現在まだ最終的には決定しておりませんけれども、いろいろな設備をお互いに確認し合う方法をもって、そして煮沸肉を入れよう、こういうのでございます。したがって、その間における、どういうビールスがどうなっているか、これは専門の技術の問題でお互いに確認し合うのでございます。それから中共の場合でも、したがって、それが確認し合える方法をお互いが協力を相互にし合わなければだめだということですよ。ただ入れろ、病気が困る、こう言っておったのでは問題が前進しない。戦前の状態と今日とでは、やはりそれぞれいろいろの事情が変わってきておりますから、そして戦前には戦前なりの、おそらく日本でも相当な人が行って、そうしていろんな確認方法もとったでありましょうし、そういうようなところも技術的に明確化していかなければ、事柄が病気でございますから、そういう意味で、私どもは、間違った場合においては、やはり農林省としては、価格の問題も責任もありますけれども、家畜の衛生という問題もやはり農林省の責任であるという点もまた国民の多くはわかってくれる、こういうふうに思うのでございます。
  15. 木村美智男

    木村美智男君 大臣、なぜ私がアルゼンチンのことを特に気にして言うかというと、この間も畜産局長が答えられているように、イギリスで、アルゼンチンからの輸入肉で実は口蹄疫が蔓延して、まだいまも撲滅するところまでいっていないのですよ。何十万頭という牛、しかも政府は約二百億近い金を出して、そしてこれの防遏に苦慮しているという、これはイギリスの事情です。そういうアルゼンチンに対して、大臣にビールスの型がどうだというのは、その一々を聞きたいと思ったのじゃない。そういうことを農林省はきちっとつかんでいるのかどうかということだけを大臣に伺いたいと思った。それは、なぜそういうふうに言ったかというと、イギリスがそんな状態になっているやさきに、何で、あんなアルゼンチンあたりから……。しかも、国民はちっともそんな煮沸肉なんて望んでもいもしない。なまの肉をほしいと言っているのですよ。それを、わざわざああいうところから、汚染地域から入れてくる。これは  一体どういうことなんだということが……。私は、これは危険きわまりないと思う。  いま大臣は、衛生の責任を持つと言ったけれども、責任を持っている立場からこれは踏み切れないんだと言っているわけだけれども口蹄疫だってビールスだからね。ビールスというやつは、ぼくもそれは専門家ではないけれども、とにかく肉にだけついていると思っていたら大間違いなんで、どういう場面で包装に入ってくるかわからないし、人の体についてくれば衣服にもついてくる。極端な話をすれば、靴の裏までついてくるというのですよ。それは心配したらきりがないんで、だからこそ、農林省も前後三回にわたってりっぱな権威者を中国に派遣をして調査をなされたのじゃないですか。今度アルゼンチンにどういう方がいらっしたかわかりませんけれども、少なくとも中国に派遣した第三回までの人々というのは、田中良男博士を頂点として、日本のみならず、世界的な獣医学の権威者ばかりですよ。こういう人が行っているのです。私が大体いいと言っているじゃないかと言ったからといって、適当にいいと言っているのじゃないのですよ。農林省に、これくらいの、三冊、三回にわたって報告書が届いているのです、詳しい技術的な観点から、専門家の立場からやった報告書が。これを、大臣、一回お読みになってください。そういうことは、いろいろ向こうの人たちとも会いながら、あるいは衛生状態、管理状態をやった結果、まず、その大事な口蹄疫のビールスの型は何だとかということは、それはノーコメントであったけれども、総合的に判断をして大体だいじょうぶだろう、こう言っているのであって、わしらみたいなしろうとが、大体だいじょうぶだなんと言っている話とは根本的にだいじょうぶが違うのですよ。それを信用できないで、どんな人が行かれたか知らないけれども、アルゼンチンは絶対だいじょうぶだなんて断定を下すことは、これはちょっと、まともな常識で考えたら、だれが考えてもふしぎだと思いませんか。世界的な権威者がやったことが信用できないで、新聞は農林省の係り官と言っていたが、どういう方が行かれたか知らないけれども、その程度の方が行かれて、だいじょうぶだなんと言った場合には、私はそんなものは信用できませんよ。そういうことを平気でやっておる。何だか、いままでやってきたいきさつにとらわれて、農林省は、もう何が何でもがんばっているとしかぼくらにはとれないです。だから、相手国にその協力すべき態度を求めるという前に、われわれ自体のほうで、農林省自体がもう少し考えてみなければならぬのじゃないか。  この間、私は具体的に大臣提案した。あの口蹄疫がそう心配なら、中国のあの地域全部が口蹄疫になっているのじゃないんだから、まず第一番に、口蹄疫の汚染地域でないところからの牛をまず持ってくるということを考えてみたらどうですか。これを条件にしてもいいですよ、向こうに。その牛が、それでも心配だというなら、沿岸に持ってきて、そこで一週間でも十日でも係留しておけば、大体口蹄疫にかかっているかかかっていないかわかるのですから、これでまず集団的な検疫というか、これを二番目にやったらどうですか。大臣よく聞いておいてください。局長、よけいなことを言っているな。人がしゃべっているときに。それからそれでもなお心配だというなら、ワクチンを打った牛を、大体十カ月ぐらいたったものを持ってくるということを考えてみませんか。これは、ワクチンは八カ月ぐらいが効果があるといわれているわけですから、八カ月過ぎれば、これはもうそれによって、経過をすればわかるわけです、まあ十カ月ぐらいたった牛であれば。この三つぐらいをまず厳密にやっていけば、確認をされれば、これ以上の、何というか、りっぱな証拠は私ないと思う。それでも不安ならば、中国から牛肉を輸入している国もあるのですから、幸い日本は西欧諸国に対しては外交ルートをみんな持っているのですから、外交ルートを通して農林省は積極的に調査などされたらいかがでしょうか、どういう実情であるか。そうすればだんだん実情がわかってくるでしょう。それから、戦争中やっていたと同じように、私は、ある意味では、上海でもいいし天津でもいいから、日本の技術者を派遣をすることを条件にしたらいいと思うのですけれども、そうして現地でちゃんと検診、検疫をやればいい。なおかつ、日本の陸揚げの港を指定して、横浜なら横浜、神戸なら神戸、それを指定をして、厳重なる防疫態勢をそこにとったらどうか。ここまで一応手段をとって、それでもなおかつ一挙に大量に持ってくるということについて不安があるならば、私は、それは百キロでも五百キロでもいいから試験輸入をやってみたらどうでしょうか。このくらいのことをやって、しかしこういうことでやったけれども悪疫があったのだ、こういう実証が出たら、農林省、それこそ胸を張って、こういうことだからあぶなくて入れられないということを言いなさいと言うのです。ところが、そのことについては、私が不満とするのは、私も新しいのだけれども、国会に出て来て、昭和四十年からこの問題が問題になっている。その問題になっていることについて一歩でも前進をしたことがないのだ、農林省はうしろ向いて返事しているのだな。予算委員会でもやっている、この問題は。衆議院の物価委員会でもやっております。みんなやっているにもかかわらず、これは大臣そういうことを知らないわけだ。それだけやられたら、アルゼンチンまで係官を派遣をされる熱意があるなら、隣の中国へそれくらいのことの話を積極的にやってみて、いま言ったようなことをやって具体的な条件を出しても、だめだということになるなら、それは方法もまた考えなければならぬけれども、そういうことを一つもやらないで、ただ病気があるからだめだ、病気があるからだめだと言っていることは、向こう側がまるきりのめないようなことばかり言っている。大臣、その意味で、少し事務当局の話は話として、あなた自身がほんとうにこの問題を検討してみませんか。大臣、いかがでしょう。
  16. 西村直己

    国務大臣西村直己君) これは、アルゼンチンからの煮沸肉を買い付けた経過あるいは技術的な内容については、担当の衛生課長が来ておりますから、詳細御報告させてよろしいと思います。  それから問題は、しかし、技術の問題でございますから、そういうものもやはり十分われわれとしても責任を持って明らかにすることは必要だと思います。それから、そういう御提案も確かに一つのお考えでございましょう。しかしながら、同時に、農林省側からも、こういうような点とこういうような点を明らかにしてもらいたいという、結論的な、何と申しますか、専門的な検討を必要とする事項というものを御要求申し上げておるわけでございますから、やはりそういうものに対する御協力もいただかないというと、話は進まないのじゃないか、こちらだけああだこうだと言っておっても、あちらさまのほうも、これに対してはこうなんだという御協力をいただかないというと、衛生技術、そういった面が前進しない、こういうふうに私は考えるのでございまして、私としては、これは何らか国際水準において明らかになるような方法さえとれれば入ることをこばむものでない。また、必要があれば買ってよろしいじゃないか。まあ、米のごときも、だんだん買えなくなれば、私どもは、同じ穀物であるならば飼料等へぜひ転換していただきたいという考え方を強く持っておるのでございまして、そういうような点も相手方にもよくお願いし、また、関係者も、よくそういうような点からあちらさんにも御協力方をぜひお願いをしながら、こういった問題の解決に当たってまいりたいと、かように思っております。
  17. 木村美智男

    木村美智男君 大臣も、やっぱり何というかね、大体局長並みの考え方だね、これは。大臣、それは国際的な水準と、なるほどいま言われておるようなね、それも一つの方法でしょう。方法でしょうけれども、その方法は、言ってみれば、それは田中団長が向こうで具体的に聞いて、そのことについてはノーコメントだと言われている問題なんですよ。まだ、だれも聞いたことがなければ、それはいいですよ。けれども、言ってみりゃ、専門家であり権威者である田中博士にすら言えないことをですよ、こちらからそういうことを問い合わせをして、答えられるはずがないじゃないですか。三歳の童子でもわかるようなそういう理屈を、それをまともに出して、返事がないからおれのほうはこの話には乗れないのだと言っているのが、いまの農林省の態度なんですよ。大臣、そういうことなんですよ。始めっから話にならぬ話を持ちかけて、返事がないからだと、こんなことでは、これはどうにもならぬですよ。私は、そういう問題は、いま言っているような試験輸入とかなんとかいう話を私が出したけれども、これは、具体的にこちら側として考えるとすれば、そういうことしか考えられないだろうと思って、まあ参考みたいなことで私申し上げたのであって、そういうことについて検討をする気があるのかないのかと言えば、そのことにも答えてくれないで、相手が返事もしない、答えてくれないことだから話にもならないと、こういう答え方というのはないじゃないですか、大臣。私申し上げているのは、少なくともこの問題は古くて新しい問題だと。国会でも三年来取り上げている問題なんだ。ところが、農林省は十年一日のごとく同じことを答えている。速記録を見ました、私。それでは全然いまの国民の要望にも沿えないし、物価対策の面からも問題があるし、したがって、大臣、新しい立場でだね、この問題について検討してくれませんか、こう言っているのですよ。その結果、やった結果が、だめだというならだめだで、そのときにはこれはもう国民に対して明確にものを言えるわけなんです。どうなんですか、大臣、それは。そうすると、もう絶対に、農林省が言っている、あるいはなんか問い合わせをしていると、こうおっしゃるのですが、それの返事がない限り、この話は話にならない、こういうことなんですか。
  18. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 私は、何回も繰り返すようですが、これが経済問題で、経済上の話がつくならけっこうですが、問題は病気の問題でございますから、そこで衛生技術上の問題です。そうすると、やはりあちらさんにも、いろいろな専門の方もおられましょうが、一応最後に煮詰まってきた問題が、何カ条かのこういう点を明らかにして、そうして病気に対する保証というものをとりつけていただきたいというわけで、農林省は門戸を閉ざしている筋ではないと思うのです。ただ問題は、その問い合わせの条項というものが非常に非常識なことを言っているのかというと、いかなる国でも国際的にこういうものを問い合わせればお示しになる。そういうものに対するお示しがないということに対しての、一まつの、何といいますか、保証にたえざるものがある、そこに一つのあれがあるのでございますから、私は、この間も、中共へ行かれた使節団の方々にも、ひとつこの問題を十分理解し得るように相手の方のほうにもお話し合いをしていただけば、私は、門戸は開けるじゃないか、こう言っておるのでありまして、国際的に言って、当然、相互の国がお話し合いの上でこういう家畜衛生上というか、やるべき事柄というものを明らかにすべきだ。これでいかなければ、ただそこで政治的に割っていこうとかという問題とは事柄が違うのではないか。こういうふうに考えておるわけであります。
  19. 木村美智男

    木村美智男君 私も別に、政治的にこの問題を解決しろと言っておりませんよ。言っておりませんけれども、ただ、農林省の態度が政治的じゃないのかということを私は言っておる。口には、これは純粋な医学、病気の問題というふうに言っているが、しかし、その背景は、これは政治的じゃないのかと、あなた方こそ……。私はちっとも政治的にこの問題を解決しろなんて言っておりません。いまの物価現状から、あるいは食肉の将来の需給の展望から、それから今日の酪農対策、増産対策という問題もあわせ考えて、これは言っているのであって、むしろ、いまいろいろの理屈をつけてだ、中国にこういうことについて回答しろということを言っていること自体が政治的じゃないのかと言っているんですよ、私は。あなた方が政治的だなんということを逆に言われる理由はない。だから、大臣にだね。この問題はよく新しい立場検討してもらいたい。  委員長から注意もありまして、大臣は本会議のほうに行かれるそうですからきょうは大臣に対する質問はこれでとどめておきます。これは大臣、お願いしておきますが、これからずっと、物価委員会が続く限り、私、大臣に御足労でも出ていただきますから。この問題は農林省が最終的にどうこうするという立場にあられるので、これは遺憾ながら大臣にやはり伺わざるを得ないんで、局長以下はもう必要ありません。これは同じことばかり言っておって、全然はしにも棒にもかかりませんから、したがって、大臣とやることにいたしますので、そういうことをひとつ了解していただいて、きょうは大臣のほうは終わります。ありがとうございました。
  20. 櫻井志郎

    理事櫻井志郎君) 他に御発言がなければ、本件に関する質疑はこの程度にとどめたいと存じます。
  21. 櫻井志郎

    理事櫻井志郎君) これより、当面の物価対策樹立に関する調査中、物価問題に関する件を議題といたします。  本件に関し質疑のある方は順次御発言を願います。木村君。
  22. 木村美智男

    木村美智男君 企画庁長官、この間、実は大型合併の問題で、時間が短かかったもんですから、きょうはあれの続きになりますけれども、少し企画庁長官に伺いたいんですが、長官は、この間は、大型合併というのはいま国際的な趨勢なんだということを言われた。で、私、趨勢というのは一つの流れだから、これは否定しませんが、しかし、ただ大型にすればいいというものではないのだと思うのです。何らかそこにやはりメリットというものがあって、したがって大型よろしいとかよろしくないとか、こういうお話。ところが、私どもの普通考える立場から言うと、大臣、企画庁長官というのは、何ぼ大臣を全部見渡してみても、いわば消費者立場に立った大臣というのは、どうも経済企画庁長官しかない。そこで、通産大臣が、趨勢だと、大型化賛成だと言ってちょうちんを持つのは、これはわかる。だけれども、企画庁長官が大体通産大臣と同じような立場をとってることについては、どうあってもわからない。この間、私、イメージがこわれそうだと、こう言ったけれどもね。ほんとに宮澤長官というものの——もののと言ってはおかしいが、長官のイメージというのは、そう言っちゃ悪いけれども、閣内においてはまさに一つのともしびがともってるようなかっこうで、今日までいろいろ再販問題もやってこられた。ところが、事、大型合併の問題については、私はほんとにまだ思い込んじゃいませんが、期待を裏切られそうな心配の気持ちで、いまいろいろ伺ってるんですよ。それは基本的に、一体、そういう判断をされるのに、大型合併についてあなたが賛成の立場をとられているメリットは何なのか。ここからまずひとつお伺いしたい。
  23. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それは、コストが下がるであろうという期待でございます。つまり、これはいろんな方面から言えることでありますが、たとえば、この両社が合併する、その結果、おそらくスクラップ・アンド・ビルドということが行なわれると思いますが、このスクラップ・アンド・ビルドということは、やはりコストを下げるということの努力であることには間違いありませんし、また、研究開発などもおのおのばらばらにする必要はないので、一緒にすることができますから、そのための投資も、したがって二重になることはない。また、それから新しい技術が生まれれば、その節約とともに、さらにコストダウンになるということも言えると思います。私は、いろんな意味で、コストが下がるであろうから、したがって、消費者にその利潤が還元されるということを期待できると、こういうふうに考えております。
  24. 木村美智男

    木村美智男君 まあ長官、コストが下がるだろうという期待ということなんですがね。私は、やっぱりこういう問題ではそう簡単にコストが下がるだろうという期待を持てない。なぜかというと、たとえば、いま世界一の鉄鋼資本であるアメリカのUSスチールの話がこの間もちらっと出たんですけれども、あれがとにかく、管理価格が形成をされて、ケネディ大統領が困ったんですね。あの処置の問題。そういう歴史的なものを、私はやっぱり、こう、ある程度ながめている。だから、ただ規模が大きくなったらコストダウンになって、それが消費者利益にはね返ってくるんだという、これはなかなか考えられないんで、もし規模をどんどん大きくして、そうしてほんとうにそこへはね返りてくるんだという理屈を押し通していくならば、むしろ、大臣、これは専売公社みたいなものにするか、あるいはイギリスの国営方式、こういうものをとるならば、大臣が言うようにある程度コストダウンの期待、それが消費者利益にはね返ってくる、こういうことが考えられますよ。しかし、事は私企業だから、これは私から申し上げるまでもないと思うのです。私企業というのは利潤の追求ですよ、究極はね。消費者に利潤を還元するために経営の主たる目標を置いてるという私企業は、見たことも聞いたこともないです。最終的にはやっぱりそういうことになるんじゃないですか。だから、これが出発した当初くらい、あるいはある程度価格を安定させるような、それを政策的にも取り入れることがあるかもしれません。しかし、長期的にながめて、はたして長官が言うように、それがコストダウンになって、消費者大衆の利益にはね返ってくるなんていうことは、私はどうしても考えられない。逆に弊害のほうが大きくなってくるのじゃないかという心配のほうが大きい。この問題で一番賛成の通産大臣が、とにかくきょう本会議で、やはり心配があると、こう言っている。その心配をなくすためにどうするかということをこれからやりますと言っているけれどもね。通産大臣といえども、心配ないなんていうことは言っていないのだからね。その意味で、これは弊害のほうがより大きくなって、たいへんな問題になるんじゃないか、そこから考えてみると、通産大臣としての宮澤さんなら別にどうとも思わなかったけれども経済企画庁長官であるだけに、ちょっとこれはたいへんなことを言ってくれた。しかし、まあやってくれそうなところにあるなという気持ちで、実はそういう意味で、どうしても大臣に、そこのところは少し突き詰めて、理屈上も納得さしてもらいたいと思うのですが……。
  25. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) よくわかりました。それでは私も、もう少し考え方を申し上げて御批判を願いたいと思うのですが、アメリカの鉄鋼業が国際競争にだんだんおくれをとったという原因は何であったかということを考えてみますと、これは、USスチールという一つの巨大な会社があって、その間に管理価格があったからだということには、どうしても私には考えられません。むしろ、かなりはげしい競争があったと考えるべきだと思います。で、それならばなぜ国際競争におくれたかということになれば、やはり、長い間アメリカの鉄鋼業というものが世界のシェアの非常な大きな部分を占めておったために、まあそれに幾らか安住したということ、技術革新、設備更新ということがなかなか行なわれなかったという事実が一つあると思います。それから、やはり労銀が世界のよその国に比べて格段に高かったということも一つかもしれません。それからもう一つは、インランドであったということ、内陸であったということ、したがって、船舶の大型化によるところの輸送のコスト軽減の利益を受ける割合が少なかった、これらのことが——ほかにあるかと思いますが、主たる理由であったと思うわけであります。  そこで、今度わが国の場合のことでありますが、私は、木村委員は二つの問題を実は提起しておったのではないか、その二つは多少別々なのではないかと思いますのは、まず、大型化することによってコストが下がるか下がらないかということが一つあります。それからまた、コストの下がるか下がらないかにかかわらず、管理価格が行なわれるかどうかということがもう一つの問題でありまして、私は、二つはやはり違う問題、関連はありますが、分けて考えることができる問題だと思います。  そこで、その企業努力によってコストが下がり得るか下がり得ないかといえば、先ほど申し上げたことを重ねて申し上げませんが、そんな理由によってコストの切り下げを期待することができる、少なくとも合理化でありますから、それを期待することは無理でないと思うのであります。  第二の問題は、それにもかかわらず、これが業界で圧倒的に大きなシェアを占めるプライスリーダーになって、そうして管理価格が行なわれるかどうかということ、これは第二の問題でありますが、私は、まあその点は、危険はあるという通産大臣の御答弁は正しいと思います。危険があるから、それに対して十分な監視なり対策なりを考えておく必要はあるが、いわゆる多数寡占ということになったからといって、管理価格がもう必然であるかのように考えるかどうかというと、私はそうは思わない。これは独占ではないし、二社のいわゆるデュオポリでもないわけでありますから、競争は十分に数個企業の間で行なわれるのではないか。のみならず、従来の他の会社の投資意欲、ビヘイビアを見ておりますと、とてもとても競争をあきらめる現況ではないというふうに私は思います。そうして、御承知のように、このごろは、高炉一本内容積二千六百立方メートルというようなものができるわけでありますから、そこを換算いたしますと、年間に二百万トンというものが一ぺんに一つ高炉が建てばできるわけでありまして、結局、今後各社どういう競争をしていくかということは、高炉をどれだけ建てるか、どれだけ建てる力があるかということにやはりかかる、生産面では、それにかかると思います。そうしますと、企業内容、経理内容で言えば、実はこの両社は経理内容は決して同業者の中でいいほうではありません。むしろ、新鋭の、いわゆる後続の各社のほうが経理内容がいい、そして仕事をやる意欲もあるわけでありますから、私は、必ずこれは追い上げてくる、生産面ではそういうふうに見ます。販売面では、同じように、御承知のように、流通機構が系列化しておりますので、各社とも自分のシェアを広げようと、非常な販売競争であります。そこで、他の各社がそれをあきらめるというようなことは、とうてい考えられないので、私は、おそらく、かりに合併になりましても、あと、生産及び販売の面で激しい競争が行なわれるのであろう、どうもそういう業界の実情であるというふうに考えますので、管理価格になってしまうと考える必要はない。ただ、絶えずそういう注意と監視は怠ってはならないというふうに思っているわけであります。
  26. 木村美智男

    木村美智男君 だいぶわかってきたような気がするのですが、わかるに従って、率直な話、だんだん私もがっかりしてくるのです。それは、大臣、どうしてそういうことを言うかというと、確かに、アメリカのおくれた理由は、ケネディ大統領が困った話を私はしたけれども、それはさっき大臣が言われたようなことを承知の上で言っているのですよ。つまり、大体あぐらかいて、あのUSスチールは合理化を怠っておった。そういうようなことから、これはまた日本の鉄鋼業がどんどん追いついていく要素でもあるわけです。だから、それはそういうことだけれども、将来の話で、日本だって、もさもさしておれば、大型化をやったって、またそれは追い越されていきますよ。向こうはやっきになってどんどん新しい設備を入れてやり出しますから。だから、まあその問題は、さほど重点で伺ったわけではないのですが、その大型化がコストダウンするというのは、私はたぶんそうであろうと思う。これは、それをできるだけ企業の合理化の中へ生かしていく、そして効率的に運営をしていくという、その筋は一つあるだろうと思うのです。だからこそ、通産大臣は一生懸命太鼓をたたいているわけですよ。けれども、企画庁長官がたたく必要はないのじゃないかと言っているのですよ。あなたがたたくなら、うしろの管理価格の問題でたたけばいいんですよ。要するに、これは大型化し、合併することによって価格がぐっと安くなって、消費者にたいへん利益をもたらすから、大いにこの合併はやれやれと、そう長官言っているのなら、私はこれはよくわかるというのです。ところが、これは通産大臣も心配があると言っているし、あなたも心配なんだと、そこはね、言っているのだから、心配なものがなぜ賛成のようなことを言うのかということが、やはりよくわからない。  管理価格の問題は、これはさきざきの話だから、多少想定の問題になりますけれども、じゃ一体、パルプがあんなに安いのに、紙の値段は高いでしょう。相当なものですよ。管理価格になっていることは明らかです。そうすると、この辺の事情は、一体、長官、どういうふうに説明をされるのか。要するに、いま新聞紙は、この間も公取から出した生産集中度のあの表を見ましても、三社で六三%、五社で七七%です。やはり大型化していけば、集中度というのが上がっていくに従って管理価格というものはそこに生まれてくる。必ずプライス・リーダーシップというものは生まれてくる。これは、事鉄鋼に限ってそんなことはないなんというはずは絶対ない。むしろ、鉄鋼こそ、まさに、国鉄というものをひっくり返して、鉄国という、鉄は国家なりという有名なことばがある。まさに鉄は基本産業なんです。だから私は、鉄だけを考えてもそうだし、これから、あの鉄が合同合併をやっていったあとに考えられる化学部門、自動車部門、続いて続々といきますよ。そうすると、もっと極端な話をすれば、長官を含めて日本消費者大衆は、管理価格の中にぽかぽか浮かんで歩くような事態が想像されますよ。大体そういう趨勢、まさに長官の言う趨勢ということを考えて、もしこの合併ということが認められていけば、これを契機に、とうとうと、合併への風潮の中に刺戟をされて、あらゆる産業がそうなっていきます。それを考えていったら、この管理価格という問題は必ずここにできてくる。できてきた場合には、やっぱり何といっても、長官、消費者保護という、まさにきょう消費者保護基本法提案をされた時点だから、私はこれは大事な問題として取り上げていて、本来商工委員会がやるべき問題だ、これは。だけれども消費者に全くもってたいへん重要な事案だし、消費者保護基本法が、とにかく訓示規定であろうが宣言法であろうが、出てきたんですから、その時点で、大臣にも、いままでのことについて、いやちょっとこれ考えてみなきゃならぬなんという気持ちを持たれるか、あるいは、いやいままでので間違いないということになるかわからぬが、もう少し私議論を煮詰めてみたいと思うのですよ。そういう意味で、いまの管理価格の問題については、私は、依然として心配どころか、もうまさに、ストレートとは言わぬけれども、大いにこれはプライスリーダーシップが発揮されて、そうして管理価格の形成ということは、これはもう自明の理だ、そういうふうに私は考えています。これはひとつここでおきます。  そうして、次の問題ですが、長官、事後の監視をきびしくするという。新聞に出ている。一面のトップに出たのです。「価格の独占に歯止め」、「合併後の監視強化」、トップ記事ですよ。これ、ちょっと読んでみますと、事後の監視をきびしくすると、こう言っているのです。たとえば、長官も多少鉄鋼公販制の問題をいつか座談的に問題にしておりました。管理価格ができればもう鉄鋼公販制なんというものは、これは必要なくなるわけだから、だから監視をすると。どういう方法で、どういうことでやるのか。きょうも、通産大臣に、本会議でそういう質問があったとき、私、ちょっとおとなげないけれども、やじを飛ばしたけれども、ほんとうの話。それでは、ほんとうに具体的にどういうチェックのしかたをするのか。長官、いま考えているところでけっこうですから、教えてくれませんか。
  27. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) おまえは管理価格のことを考えておればいいのであって、通産大臣のようなことをやる必要はないではないかという御指摘であったのですが、それは、管理価格がないといろ状態はけっこうな状態だと思いますが、コストが下がって、さらに管理価格がなければもっとけっこうな状態なんです。消費者にとりましても。ですから、コストが下がる方法に私が賛成をするということは、消費者立場から考えても私は別に間違っていないのだと思うのでございます。しかし、そういう大型合併がどんどん進んでいくと管理価格が起きやすいのではないかと言われることは、私はそういう危険を認めます。それは認めるにやぶさかではありません。ですからこそ、わが国よりはるかに早い時期にアメリカで公正取引という観念ができたんだと思います。それは、企業の規模が大きく、発達時期が早かったからであろうと思いますので、非常にきびしい公正取引の規則ができましたのは、やはり企業の規模が大きくなったからである。わが国もそういう時代に入っていくのだと思います。したがって、問題は、企業の規模が大きくなることが悪いのではなくて、それに伴って管理価格を排除するような行政なり観念なりがもし発達しなかったら問題があるのでありますから、それは、発達することが、さらに強化されることが望ましい。こういうふうに考えておる点では、その点は、私は木村委員と同じ考え方をしておるものというふうに思います。  それで、事前事後のチェックの点でありますけれども、公正取引法律では、法律の規定に従っていろいろ報告を徴することができます。検査もすることができます。しかし、法律の規定をさらに補う必要があれば、私は、公正取引委員会がかりに合併を許されるのなら、そのときにいろいろ条件をつけることができると思います。また、関係業者はそれを当然受けるべきだと思います。たとえば、管理価格の起こりやすいような品種を指定して、そうして、その生産状況、コストがどう変化するか、販売状況はどうであるか、というようなことを報告させるということは、これは当然できることだし、会社も応じても差しつかえない。もちろん、企業の秘密に関することがあると思いますから、これを公表するかどうかは別でありますけれども国民利益の代表である公正取引委員会に報告をしなさい、いたしますということは、私は当然期待してもいいことだと思います。そこで、その報告をもとに今度は同業の会社を調べてみれば、同じタイプの品物であれば、片方のコストがちっとも下がらない、片っ方はコストが下がっているということがわかれば、価格が硬直をしているということがわかるはずであります。そういうチェックのしかたは、私は幾らもあるであろう、こう考えております。
  28. 木村美智男

    木村美智男君 一応説明としての形にはなっておりますよ、長官。ということはどういうことかというと、私、管理価格ができるというのは、競争力が弱まるからだと思うのですよ。競争力が五分で、あるいは四つか五つが互角にいっていれば、管理価格が結成されるというのは、何かの事情があって談合でもしない限り、自由競争が続けられる限りは、私は生まれないと思うのです。ところが、現実に今度の八幡と冨士鉄の場合、これは一番目と二番目が一緒になるのだから……。従来やったような、八幡とか富士鉄から見たらほんとうにごみみたいなものが幾つも一緒になった、何百件という合併がたくさんいままでやられてきております。このときは私は問題にしなかったのです。独占禁止法から言っても、まあまあと思った。だけれども、今度のはちょっと違うのですよ。さっきから言っているように、鉄は国家なり、その基本の鉄の、しかも一位と二位ですよ。それが合わさって三千億からのとにかく巨大資本になるわけですよ。USスチールに、まさにもうちょっとで追いつく、世界第二位になるわけですから、こういうでかいのが……。実際にたとえば製品の中で、テレビなんかみたいなものならば、末端である程度は、ははあテレビの値段が上げられたなということがわかるわけです。ところが、鉄は基礎資材です。レールであるとか、とにかくあらゆる基礎資材であるという点で、われわれ消費者が直接これを把握するということが、まず実態としてむずかしいことが一つ。これが一つ。  それから、取り締まると言ったって、そういう取り締まりの前に、長官が報告と言ったけれども、実際、報告なんというものは、私はこれは信憑性がそこへほんとうにおけるのか。最近、税務署が目を皿のようにして回って歩いたって、二重帳簿をつくってやっておる。それを、鉄鋼資本も社の秘密だ、会社の秘密だという話、あるいは二重帳簿だということで、そんなこしらえられた報告書なんというものは、何ぼやってみたところで、それはあなた、そこに信憑性がおけるのかどうかという問題が出てきますよ。また、こういうことをやって独占形態に持っていこうとする場合には、それはそうなりますよ。最初のうちは、あるいは多少ほんとうに近いぐらいの報告書ぐらい出すかもしれませんよ。しかし、いままでのいろいろの過去のことから考えてみると、それは届け出価格にしろ、いいかげんですよ、そういう意味では。だから、報告書を出さして、それをもってなんていうことは、長官、少しやはり甘いのじゃないか。それで今度、そういうことが、甘いならば甘いで、しかし現実に出てきた。さて何か取り締まろうかという場合に残念ながらもう合併を許したら、取り締まりの方法がないのじゃないですか。例の過度経済力集中排除法というやつ、なくしちゃったのだから。あれが生きているのならば、私はまだ救われると思いますよ。あれはこわしちゃっておいて、それで、もういまやこれ一つしかない。ところが、この独占禁止法で、シェア三五%という、あれは粗鋼だけが三五%の話で、珪素鋼板だとか、ブリキだとか、とにかくこういう中を見てみますと、三社で一〇〇%というものがざらにあります。五社一〇〇%もありますよ。だから、粗鋼生産三五。六%だけながめて、大体三〇%危険線だからなんていう議論だけやっていたのじゃ、ほんとうの実体論議じゃないのです。長官言われるように、品目ごとに、鉄の基本的なものはどういう品目であって、これがいまどういうシェアを占めておるかということをやはりきちっとつかんだ上で、そうして判断をしなかったら、これはたいへんな問題だと、そういう意味で、報告を出してもらうなんていう程度のことで具体的にチェックができるなんていうことは、私は考えられない。また、それを考えておるとすれば、それは甘過ぎます。こう指摘をせざるを得ないので、長官、この点、もう一回、ちょっと私、さっきの答弁だけでは納得できないですけれどもね。
  29. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 報告を徴することは、法律の規定によってもできるわけでありますが、さらにそれにあきたらないときは、臨検検査をすることもできます。そうして、これらについては罰則がついております。したがって、私は法律の姿としては、これはまずこの点は十分であって、罰則を受けることを覚悟の上でやったらどうなるとかなんとかいうことになりますと、これはこの法律運用の問題になるのであろうと思います。ですから、その点については手続の上で困る問題はない。そうして、さらに報告をして、非常に悪かった、そのときはどうするのかと言われるときには、これは是正をさせることもできますし、最後には排除をさせることもできるわけで、これはもうよく御承知の法律でございますから、詳しく申し上げる必要もないと思いますが、その排除命令の中には、おそらくは、これは分割命令というものが含まれるというように私ども解釈しております。なお、これ正確には公正取引委員会からお聞き取りいただきたいと思いますが、したがって、是正方法があるわけであります、まあしいて申しますと。しかし、その辺のことになると、なかなか立証その他がむずかしいし、時間もかかるであろうということは、これはあるかと思いますが、一応そういう態勢はとれておるわけであります。  それから、鉄については、家庭電機などと違って、大衆消費者になかなか価格がわからないと言われますのは、そのとおりでございますけれども、しかし、その前のユーザーというものが当然あるわけでございますから、自動車のメーカーであるとか、家庭電機関係のメーカーであるとか、かん詰めであるとか、そういうメーカーというもの、ユーザーというものがあるわけでございますから、そのユーザーにとっては、これは死活問題であって、ユーザーが管理価格に甘んじるということは、何もそう考える必要はない。ことに、一社だけではないのでございますから、そういう高い価格であれば、ユーザーは遠慮なくほかのほうに行ってしまうということになるのではなかろうか、私はそう思うのでございます。
  30. 木村美智男

    木村美智男君 大臣、いまのその合併について、合併の制限、おそらく独禁法の十五条を言われたのだと思うのですね。大臣は、単にこの十五条でもって、何か法規的にもやられるようなことを言っているけれども、これ、読んでみればわかるように、一項では、「当該合併によって一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合」というのは、これはもう、私の理解からいうと、合併をして、これからこういう事態が起こるということじゃないんですよ。もうすでに合併そのものが私はこの第一項に該当すると言っているのですよ。したがって、認めてしまってから、第一項に該当するからお前のほうもよろしくないなんていうことにはならない、この条文では。そういう理解ですからね。大臣、ここら辺は少しはっきりしておいてください。
  31. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) これは、私、この法律を主管しておりませんので、不正確なことを申し上げてはいかぬと思いますが、なお要すれば公取にお聞きいただきたいと思います。  この十七条の二は排除措置の規定でありまして、これによって、いま御指摘の十五条合併の制限でありますが、「に違反する行為があるときは、」「営業の一部の譲渡その他これらの規定に違反する行為を排除するために必要な措置を命ずることができる。」とありますので、私はこの規定が動くと読んでおるのであります。この点は、しかし、私が有権的に解釈をすることもいかがかと思いますので、またしかるべき機会に公取にお尋ねいただきたいと思います。
  32. 木村美智男

    木村美智男君 いまの十五条問題は、大臣のおっしゃるように、公正取引委員長に見解を求めることにしますが、私は、注文上はそういうことができるだろうと思います。思いますが、実質的には、もう今回の合併というものを、十五条に照らして合併を認めないという立場をとるなら別だが、認めるという立場をとった場合には、あとのこの十七条の二というものは、実際問題としては、これはもう何というか、無力な条項になっていく。見解だけきょうは申し上げておいて、あとは公正取引委員長と、しかるべき機会にやることにいたします。  大臣がさっき言われた、要するに、むだを省けるという問題、二重投資といったような、そういうよけいなことをやらぬでも済むからむだが省けるという話をしたのだが、これだって、いま私、問題がたくさんあると思うのですよ。という意味は、いまの二重投資なんていうものは、会社が二つあるから三つあるから二重投資になっている、それを一つにすればむだが省けると、こう言っているけれども、それは、企業の面だけ一面的にながめたことであって、これに融資をして金を貸しているのは国のほうなんだからね。そうでしょう。そうすれば、私は、むしろその問題は、二重投資をやっているやっていないの問題は、企業にもある程度の責任があるかもしれぬけれども、この金を扱っている大蔵省なりあるいは銀行にやはり責任があると思いますよ。投資をもっと厳密にやるべきですよ。いまなんかは、企業の意思どおりに、その意思に従ってよろしくやっておると言っては誤弊があるけれども、大体その程度でしょう。国会で財投なり財投のワクをきめるまではやかましく議論はするけれども、きまったやつをどうこうすることについては、特別法律があるわけじゃなし、大体大蔵省は見てはいるでしょうけれども、銀行の裁量によってやっておるような状態じゃないですか。そうすれば、むしろ私は、こういうものについては談合で現在大体やっているのだから、本来は二重投資なんてあるべきでないと思うのだね、ほんとうは。しかし、二つの会社がある以上、二重投資だというケースは起こり得るから、むしろこの面では、せっかくの機会だから、ちょっと議論がそれるけれども、投資委員会みたいな、ちょうど公取のような行政委員会にならったような投資委員会ぐらいつくって、そして鉄鋼に対する融資というのは全体としてどのくらいのワクというやつをきめて、鉄鋼だ、造船だ、化学だ、こういう関係について、むしろナンバーをふって優先順位くらいきめて、そして有効にこの財政投融資をするような機構をむしろつくることが問題なんであって、いま何か企業にまかせっきりにしておくから、それは競って設備投資をやる。したがって、それが過熱して、また不況だと言われるような、四十年、三十九年ころですか、ああいう状態を迎える。そういう関係が出てくるのだから、むしろそういう機構の面を考えるべきじゃないか、二重投資問題については。  それで、ぼくらがこの点について、なぜそういうことを言うかというと、単に機構的にそういうものをつくっておこうということに主眼があるのではなくて、財政投融資と言ったら、やっぱり郵便貯金、産業投資特別会計と言ったら、もう早い話が税金でしょう。みんな国民から出しておる金を、ともかく、どっかに使って、国民経済力あるいは経済発展というところに使うのだから、それがはね返ってくるような使い方をしなければならぬという意味では、私はやっぱりそういうことをする必要がある。そういうことをやらないから、何か財投をやっていく、融資を回してもらったから、じゃお礼を出そうという話になって、いまわしい、規正法とか何とか話をしなければならぬというようなことになると思うのですよ。だから、いまの大型合併問題からちょっとはずれたけれども、むしろ、私企業なんだから、そんなに無制限に言うとおりにやるのではなく、いやなら、株式を発行したり、自分で借金したり、社債を発行してやればいいのですよ。つまり、何でもかでも国がめんどうを見るということについては、これはやっぱり基本的な問題がある。郵便貯金や、あれじゃなければいいですよ、そういう金なんですから。この問題はちょっと横にはずれたからいいです。  もう一つ聞きたいのは、今度の大型合併については、国際競争力という、これはきわめて一般受けすることばなんですよ。大臣は、さっきからの答えじゃ言わなかったけれども、国際競争力ということは、前から言ないかわからぬが、衆議院ではちらっと聞いた。それはやっぱり、大臣、この国際競争力というやつ、ほんとうはそういうふうに思っておられるのじゃないですか。その点どうですか。
  33. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 実は、あっちこっちで申し上げておるものですから、重複になってはいけないと思っておりましたので、もし申し上げていないといたしましたら、それはやはり、国際的な観点から規模の利益を追求すれば大型になる趨勢になる、それから技術革新によって生産の一つのユニットの単位が大きくなる。また、技術開発投資も大きくなるばかりでありますから、しばしば設備を共同して使うということが行なわれ始めましたが、さらにまた進めていけば、ひとつ一緒になろうということになる。とれも一つの技術革新の結果の趨勢である。それからもう一つは、労働力がだんだん不足になりますから、わが国も資本集約的な企業経営をしなければならない、こういったようなことが根本にあるというふうに考えておりますので、国際競争力ということは、ことに資本自由化になりまして鉄鋼業は現実になっているわけでありますから、さように重要なものであろうと考えます。
  34. 木村美智男

    木村美智男君 国際競争力という問題をなぜ私聞きたいかというと、ほんとうの意味で国際競争力ということを考えるなら、私は、腹をきめて関税撤廃をしなければいかぬ。言わんとするところは、関税障壁をつくっておいて国際競争力なんと言ってみたって、ほんとうの競争になっていないと思う。そこまで踏み切って、ほんとうに国際競争力に勝たなければいかぬのだということなら、民族をふるい立たせることができると思うのですよ。だけど、関税障壁をそのまま置いて、そうしてやっているのじゃ、これは、ある意味じゃごまかしだ。ごまかしと言ってはおかしいかもしれませんが、さっき言ったパルプの問題がそうです。あの安いパルプが、なぜ紙になって高くなってしまうかということになれば、結局、関税をかけると同時に、さっきの集中によっての管理価格を形成するということから、やっぱり紙の値段が上がってしまう。しかし、これもある程度は、関税があるからこそ、日本の紙企業国内では一応独占的な体制を維持し、管理価格を持っていられるので、関税をとっ払ったときには、ちょっと外国資本に対抗できない。そういう面もあるから、何か、外国と競争して負けちゃいかぬのだからという、一般受けする、国民受けすることばではあるが、ほんとうの意味での国際競争力をつくるというなら、ほんとうにそれくらいの腹をきめてやるのでなければ、国際競争力というのに対応するということにならぬのじゃないか。そういうことから言うと、私は、そのことを言おうとしているのじゃなくて、要するに、何と言うのですか、大型化なるものが単に規模が大きくなればいいんだということだけではないだろう。したがって、長官としては、大型化ということは必ずコストダウンという問題があって、それがはね返ってくることも多少は考えられるけれども、むしろ逆な面で、管理価格によるところの、つまり物価の硬直化というか、こういったような関係を通して消費者に大きな弊害をもたらしてくる。それから、今度の鉄は、まさに基本であって、これに右にならえという、地すべり的な傾向にこの合併問題がなる。こういう問題であるから、そうなってくれば、きょうはまだ言っていませんが、独禁法の第一条に照らしても、明確にこれは問題じゃないかということで、これはまた公正取引委員長立場だということになるかもわかりませんからね。公取のほうに譲りますが、いずれにして毛、企画庁長官が、閣内において消費者立場にただ一人立つべき長官が、通産大臣と一緒に太鼓をたたいてふいごを鳴らしていることはよろしくないと、こういうことを、きょう実は言わんとしているわけですよ。あとまた、長官にひとつ、そこら辺の心がまえで、もうちょっと長官、勇み足をやめて、この際、おまえの言うことも一理あるから考えようというぐらいの答弁がいただければけっこうだと思うのです。
  35. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 関税は下げていけばいいじゃないかと言われますのは、私は確かに青紫に当たっていると思います。ですから、ケネディ・ラウンドというようなことを推進してきたわけでございます。そこで、ただ関税を下げたりなくしたりしてしまえばということに、なかなかまいらなかったのは、一つは、こちら側の企業がある程度太刀打ちできる強さになっていなければ、お互いに関税をやめてしまえば、これは非常にわが国に不利になるという問題と、それから日本もこれだけ下げるから君のほうもそれに見合うだけの輸出入の額で下げろと、こういう交渉をしなければ、一方的にこっちだけ出すということは損でございますから、そういうことで、ケネディ・ラウンドがああいう姿ででき上がったわけでして、かりに鉄について世界各国関税をやめようかという話がほんとうに出るなら、私は、日本はほんとうにもう喜んでやめるべきだと思っております。それで太刀打ちが、技術革新さえ怠らなければ、できるだろうと思っておるのでありますが、関税政策というのに御指摘があったのは肯繁に当たっておるというふうに思うわけでございます。  それで、先ほどから申し上げますとおり、管理価格がないということはけっこうだと、しかしその上にコストが下がればなおけっこうなことでありますから、私はそういう観点でせんだって以来申し上げておるのでありますけれども企業の数が少なくなれば管理価格ができやすいということは、これはもう御指摘のように危険があるわけでございますから、今回の問題についても、もし合併が許されるということになるといたしますと、事前事後に十分そういうことを注意していかなければなりませんし、また、わが国全体がそういう趨勢に向かっておるのでありますから、独占禁止といったような行政法令はさらに強化をしていく必要があるだろう、この点については、私は木村委員の仰せられるとおりだと思います。
  36. 木村美智男

    木村美智男君 時間がございませんから、もう一問だけお伺いしますが、いまの関税問題は付随的に出した話で、長官に何も、この時点で関税問題をこうしろといろ意味のお受け取りをなされておったら、それはそうじゃないわけで、ただ先ほどから申し上げているように、たいへんこれは大きな問題であることだけは間違いないのですよね。場合によっては、私なんかの理解によると、独禁法は、これはこれを認めれば空洞化されてしまう。これは先ほどの十五条、十七条の関係等を公正取引委員長等にも十分伺いたいと思いますが、それほどの問題であるだけに、私は、企画庁長官が、この問題をあれだけ新聞に表向き出る以上は、公正取引委員長にもある程度この問題が連絡をされていたのじゃないかというふうに考えておったんです。ところが、どうも新聞発表から見ると、公取の委員長は一向知らぬようだ、初めて聞いたような新聞発表ですがね。そうなってくると、本来このものは、要するに合併問題ですから、四角めいたものの言い方をすれば、公正取引委員会の所管事項ですよね。大臣に私は何も恨みがあって言うわけじゃないけれども、この前の再販契約の問題のときには、公取がもうああいうことに姿勢を低めちゃった以上、しようがないから、おまえさん立って、この再販を消費者保護立場から規制をするくらいのことを経済企画庁がやるべきではないのか、こう促したら、あなたは何と言ったかというと、それは独禁法の関係の問題で、公正取引委員会の所管の問題だというような言い方をしたわけです。ところが、事この問題については、今度はあなたは領域を侵して、内政干渉をしているじゃないですか。内政干渉だよ、これはね。だから、少なくとも、何もあのときの恨みを長崎で討つわけじゃないけれども、あのときはああいうふうに言われたから、今度は少し慎重に、公正取引委員長に中心を置いて問題はやはりやっていかれるべき筋のものじゃないかと、ぼくなんかは考えるわけだ。でき得れば、企画庁長官、これは少し事務当局にも検討させ、事務当局のみならず、日本のあらゆる学者、経験者を網羅して、この際日本の新しい産業の体制をどうするのかという問題だと私思う。長官、それだけの慎重さを持って十分検討に値いすべき課題だ、この問題は。それを、あれほど慎重にして、ぼくらが最も尊敬している長官が、いち早く通信大臣と一緒になって、社長が談話を発表したら、とたんに太鼓をたたいたり笛を鳴らしたりしているから、こっちは心配なんで、きょうはいろいろ失礼なことを申し上げましたが、これは本腰を入れて、とにかく今後の日本の産業をどう持っていくのかという基本問題として、ひとつこれは企画庁の権限の総力をあげて検討をしていただきたい。私らも十分それでまた勉強さしていただきたいと思っているんですがね。そのことを最後にひとつ要望しまして、時間でございますから、これで終わります。
  37. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 公正取引委員会の領域を侵すというようなつもりはさらさらございませんでしたので、ああいうふうに報道をされました結果、御存じの方は別でありますけれども、世間では、これでそういうことが実現するのではないか、すぐ実現するのではないかと思われた向きが相当あって、そうすれば管理価格というようなものが発生しないかという意見が出てまいりましたから、私は、かりに、公取がどうなさるか存じませんが、これからこの問題をお考えになる段階で、やはり消費者のそういう問題も当然のことながら考えていくべきではないか、これは消費者保護という立場から、私どもの役所の関心事でもある、こういう意味で実は申したのであります。結論を予断いたしたわけではございません。  それから、きょうは公取の委員長がおられませんので、私から申し上げやすいのですが、再販価格維持契約の問題につきましても、公正取引委員長、山田委員長のお立場というものは、私は、前委員長に劣らず、独禁法の運営について非常に前向きの積極的な立場であられるように承知しております。再販価格維持契約の問題の決定がおくれておりますのは、先般も木村委員と公取委員長との問答にもございましたような事情によるようでありまして、これは決して公取委員長立場が前向きでないという結果ではないように私は承知しております。同じ問題は、実はこの問題についてもございますので、どういうふうな決断をされますか、私どもとしてはむろん影響の及ぼしようもございませんし、そうすべきものでもないのでありますが、また、そういうものに影響される人でもないように私は承知しております。  これは、たまたまおられませんので、私の見るところを、蛇足でございますが、申し上げた次第であります。
  38. 櫻井志郎

    理事櫻井志郎君) 本件に関する質疑はこの程度にとどめ、本日はこれをもって散会いたします。    午後三時二十一分散会      —————・—————