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1968-03-15 第58回国会 参議院 物価等対策特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年三月十五日(金曜日)    午前十一時二十五分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         大森 久司君     理 事                 岡本  悟君                 村田 秀三君                 田代富士男君     委 員                 大竹平八郎君                 木村 睦男君                 高橋  衞君                 任田 新治君                 山本  杉君                 木村美智男君                 田中寿美子君                 中沢伊登子君    国務大臣        農 林 大 臣  西村 直己君        国 務 大 臣  宮澤 喜一君    政府委員        総理府統計局長  岡部 秀一君        公正取引委員会        委員長      山田 精一君        経済企画庁調整        局長       赤澤 璋一君        経済企画庁国民        生活局長     八塚 陽介君        農林省畜産局長  岡田 覚夫君    事務局側        常任委員会専門        員        坂入長太郎君    参考人        畜産振興事業団        副理事長     田中 良男君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○当面の物価等対策樹立に関する調査  (物価対策基本方針に関する件)     —————————————
  2. 大森久司

    委員長大森久司君) それでは、ただいまから物価等対策特別委員会を開会いたします。  これより、当面の物価等対策樹立に関する調査中、物価対策基本方針に関する件を議題といたします。  本件に関し質疑のある方は順次御発言を願います。田中君。
  3. 田中寿美子

    田中寿美子君 私は、宮澤経済企画庁長官に、先日の長官のごあいさつ並びに補足説明として提出されました昭和四十三年度経済見通し経済運営基本的態度の中に述べられております事柄につきまして、主として物価対策についてのいわゆる基本的な問題になりますけれどもお尋ねしたいと思います。  昭和三十五年度以降、私たち国民は、非常に物価上昇しているということについて苦しんでいるわけなんです。ところが、問題になるのは、政府の掲げます物価上昇率と、国民生活実態にあらわれております上昇の事実及び実感とのズレがあることなんでございます。そのために、国民の目は、物価上昇については何だか国会では議論しているけれども、ほんとのところで議論していないような感じがあるのでございます。まるで政府用指数で議論しているような気がするのですが、この点については宮澤長官はたいへん良心的な方でいらっしゃいますので、内心はズレのあることをよく認めていらっしゃると思うのですが、いかがでしょうか。まず最初に、その点。
  4. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この点につきましては、田中委員はそれに関連した行政にも御関係でいらっしゃいましたので、おそらく詳しく御存じであろうとは存じますけれども、ごく簡単に、最初に、いまの消費者物価指数というものの性格を申し上げておきたいと思います。  現在の消費者物価指数昭和四十年を基準にいたしております。これは、生活態様が変わりますので、五年ごとに改訂をするということで、前回は三十五年度でございましたが、今回は四十年がベースでございます。そうして、昭和四十年のある時点で、これは内閣統計局の仕事でございますが、全国八千ばかりの標準世帯調査をいたしまして、そうしてそこで、日常購入する商品サービスなどを、いわゆるマーケットバスケットの方式で選んだわけであります。そうして、それらの一つ一つ商品あるいはサービス料金なりが、その後毎月どのように現実価格が変化するかということを、調査価格数にいたしますと約十一万余り、毎月毎月、月の大体十二日を中心としたあたりでございますが、調査をしておるわけでございます。そうして、それらのものに、当然、支出全体に占めるウエートがございますから、四十年の家計調査に従ってウエートをつけて、これが指数になっておるわけでございます。  そこで、ただいま田中委員の言われました実際の生活との違和感というものは、幾つかの点から考えられると思います。私は、その中で一番顕著なものは、おそらくは——たとえば魚とか野菜とかというものは、ほとんど日常毎日主婦が買われるものであります。そうしてこれらのものは、値動きが相当激しゅうございます。年に一割とか一割五分というものは平気で動くわけであります。そうしますと、それらのものを毎日買っておられますから、それが即、物価動きであるというふうに感じやすい。きわめてありそうなことだと思います。けれども消費者物価指数のほうで申しますと、先ほど申しましたように、いろいろなそれらのウエートを持っておるわけでありまして、たとえば野菜は三〇〇くらいのウエートを持っておる。これは一万の中の三〇〇でございます。したがって、調査してまいりますと、それらがかりに二割動きましても、その二割は、一万の中の三〇〇というウエートでもって減殺されてしまう。他方、相当ウエートのあるもので動かないものもございますから、総体指数としては、毎日買うものが動いたような動きを、結論としては指数は示さない。この点が一点あると思います。  それから第二点は、四十年の調査のときにとりましたのは標準世帯でございますから、すべての世帯標準世帯ということではございません。この点についての、やはり世帯いかんによっては違和感があると思います。  それから、生活態様あるいは消費の内容が、一年とか二年という中で動いてまいります。それは、生活様式が変わってきたということもありましょうし、ものによっては、まあ青い魚を買わないで白身の魚を買うようになるといったように、やや生活改善傾向もございます。こうなりますと、それだけまた、それは支出としては高くなるわけでありますが、そういったような幾つかの要素実態生活との違和感になっておるのではないか。けれども、いわゆる物価指数調査としては、カバレージからいいましても、正確さからいいましても、また、いわゆる政治から独立しておるという点からいいましても、どうも現状よりもよりよいものというのはなかなかないのではないか、最も信頼できるものではないか、というふうに考えております。
  5. 田中寿美子

    田中寿美子君 物価指数とり方について、いま、もうすでにお触れになりましたのですが、私もそのことについて、もう少しあとでお伺いしようと思っていたことなんです。確かに、消費水準が上がってまいりますと、去年よりはことし、家計支出が多くなる、その多くなったことが、即、物価上昇率だというふうに考えやすい傾向は確かにあると思います。私は、そういうことは十分考慮に入れた上で、なおズレがあるということを申し上げたいんでございますけれども、やっぱり物価対策特別委員会を設けた以上、私は、こういう点でのズレといいますか、事実私はズレがあると思っているのですが、そういうことをなくすためには、物価上昇率とり方そのものを検討しなければならないんじゃないかと思っているわけなんです。  で、私は、政府物価上昇率そのものにいつも疑問を抱いているのですが、長官は、あいさつの中で、四十二年度上昇率を、消費者物価で四・五%、卸売り物価で一・五%という見込みを立てて、それから四十三年度見通しを、消費者物価で四・八、卸売り物価で一%にとどめる努力をするというふうにおっしゃっている。これは、事実、昭和四十二年度消費者物価上昇率ですね、これ四・五、卸売り一・五にとどまる見込みでございますか。確信をお持ちでございましょうか。
  6. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 消費者物価指数とり方について、先ほど申しましたように、私どもは、どうもこれよりいい方法はないというような考え方を持っておりますけれども、もし、しかしこういう改善方法もあるという御意見でありましたら、これは御教示をいただきたいと思っております。内閣統計局にも伝えるにやぶさかでございません。  それで、当面の問題でございますが、私ども四・五%ということを四十二年度に考えまして、これはまあ積み上げ計算ができないものでございますから、まあいろんなことから、多少努力目標も含めて経済見通しに立てたわけでございます。そこで、今日までの、ほとんど年度が終わりかけておりますが、推移としては、今年度は上期が幸いにして季節商品が安定しておりましたために、四月から九月まで前年対比で三・一%の上昇でございました。そこで、そのとき思いましたことは、上期が三・一ですから、全体を通じて四・五にとどめるためには、下期に許容される範囲が六%である。前年同期対比でございます。六%あれば、四・五というものは結果として達成できるのではないか、こう考えました。結果としては、その後、十−十二月に前年同期対比で五・六になりまして、したがって、平均として六というものを少し下回っております。ですから、いまの時点になって考えますと、今度の一−三というものが六%を多少こしても、なお総体としては四・五というものが達成できる、こう思っておりました。一月は、その中で前年同期に対比して五・三でございます。そういたしますと、よほどのことがない限り、四・五%というものの達成は、その内側でとまる、決してそれで自慢していい数字だとは思っておりませんけれども、まず見通しを達成できるというふうに考えております。  それから卸売り物価でございますが、ただいままでの動きでは、これは、昨年は非常にいろいろ乱調子のものがございましたわけですが、大体一・五というところでまずだいじょうぶである、こう考えておりますので、幸いにして、と申しますか、四十二年度は幸いと申しては語弊がありますけれども、まあ見通し内で一応おさまる、こう思っております。
  7. 田中寿美子

    田中寿美子君 過去に、毎年、当初見通し実績は違っていたと思うのですね。実績はいつも上昇率が高く出ていたと思うのです。ですから、これは四十二年度もたいへん怪しいじゃないかと思っておりましたけれども数字の上では、ただいまのような御説明で四・五におさめられるように聞こえるのですけれども、さっきも申しましたけれども家計をつけております、家計簿運動をしております主婦たちがたくさんいるのですが、家計支出が非常に高くなっているので、物価が非常に高くなったというふうに感じることが素朴な感じ方でございます。それの中で、比較的よく数字をつかんでおる、たとえば灘の生協人たち家計簿で見ますと、消費品目を一定し、量目を一定し、そうして値段を記録して、その値段上昇を出しているのですが、食品のほうでは、四十二年の十二月までですけれども、暦年で。食品平均一〇・五上がりサービス料金で九・九、そうして普通の家庭が使います品目というものは、消費者物価指数でとりますようにたくさんの品目ではなくて、一番頻度の高いもの四十四品目でとっているのですが、そういたしますと九・七%になるというのが一年間の平均で出ているわけですね。事実、家庭で買い入れるものが一番重要なんでございますので、そういう点を考えますと、政府統計が必ずしも生活実態をあらわさない、非常に平均的に出してありますからあらわさないと、こう考えるのですけれども、そういう点は、どうお思いになりますか。
  8. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、おそらく、いま御指摘になったことは一応そのとおりではないかと思います。先ほど申し上げましたように、統計局標準世帯調査いたしました八千世帯、このマーケットバスケットに入りました品数、サービスの数、三百六十幾つでございます。そのウエートから申しますと、いま田中委員の言われましたような一番よく買うもの、たとえば魚が三〇〇とか、野菜がやはり三〇〇であるとか、果物が二〇〇幾つであるとかというようなもののほかに、住居費が一、〇〇〇であったり、光熱費が五〇〇であったり、被服費が一、二〇〇余りであったり、いわゆる雑費というものが三、〇〇〇近いウエートを持っておりますので、そこで、現実マーケットバスケットというものを四十年の段階でとって、そうしてそれにウエートをかけた統計局数字のほうが、より包括的でありますし、正確と言えば正確でございましょうと思います。ただ、そう、しょっちゅう変わらないものもございますわけでございますから、しょっちゅう買うもの、ことに季節商品上がりが大きいがゆえに、いま言われましたような品目に限れば、そういったようなことになる。おそらく私は事実であろうと思います。
  9. 田中寿美子

    田中寿美子君 正確であるということ自体はどういうことを意味するのか、これは政治家として私は問題だと思うのですが、消費者物価指数とり方については、もう少しあとお尋ねしますけれども、四十三年度の四・八%という数字ですね、この可能性なんですけれども長官は、最近の物価の動向から見て、この目標を達成することは決して容易ではないというふうにおっしゃっておられまして、そういうところは非常に良心的でいらっしゃると思っているわけですが、はたしてそれは可能でありましょうか。それは希望的な比率か、それとも政治目標ということじゃないでしょうかということなんですけれども
  10. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 四十二年度がかりに四・五、あるいはその内側であって、四十三年度が四・八というふうに申し上げますと、これは田中委員よく御承知でいらっしゃいますけれども、一般的には、何か前年度より上昇率が多くて、それでいてなお容易でないということは奇異な感じを受けられる方があるようであります。しかし、これは、御承知のとおり、四十二年度動きが前半が低うございまして、後半に高くなりまして、そして四十三年度に受け継ぐ時点、つまり、今年の三月末でございますが、その時点で、まあてっぺんに近いところで翌年へ引き継ぐわけでございます。翌年度はそこからスタートいたします。そうしますと、両年度平均をとって比べるのが消費者物価上昇でございますから、いわば縁側を上がったようなところから明年度がスタートをいたします。今年度は、その下の地べたのようなところでございますので、縁側を上がったときに、すでにはいているげたの歯みたいないものが、かなり高うございます。それは、おそらく四・八のうちで三・四とか、どうやらその前後のところだと思うのでございます。そういたしますと、そのことは、四十三年度が、全く縁側から畳の奥座敷へずっと水平に歩きましても、四十二年度対比するとそれだけ上がるということでございますので、水平に歩くということは、なかなか経験上ございません。やはり、四十三年度に入って何がしか上がるということが普通でございます。そうしますと、いまの数字で申しますと、四・八の中で、三・四は縁側を上がったところでございますから、四・八にとめるためには、引き算をすると一・四くらいになりますが、四十三年度年度内ではつま先上がりにいけないということになって、非常に許容量が狭い、実際天井裏を歩くような感じがいたすのでございます。  そこで、いま考えられております公共料金関係でございますと、まあ指数の上ではたいしたことはございません。しかし、それらが公共料金であるだけに、やはり便乗を誘いやすいと思いますし、なかなか、一・四という天井裏の狭いところでこの年度内動きがとまるかどうかということは、過去の経験で申しますと、そう容易なことではございません。私どもせっかく努力して、何とかここでとめようではないかという気持ちでおります。そういう意味では、これにはかなり努力目標的な要素がございます。それはなぜかと言えば、繰り返して申しますように、その縁側の高いところから歩き出すからでございますが、ことに四十三年度は米の消費者米価を据え置くというふうに考えてこの数字を算定しておりますから、このことが破れますと相当の影響があるというふうに考えておるわけでございます。
  11. 田中寿美子

    田中寿美子君 いま私がお伺いしようと思っていたことを先におっしゃいましたわけなんで、つまり四・八というのは、前年度から押してきている分を考えると、持ち越しの分で三・四になるというようなことを衆議院予算委員会長官お答えになっています。ですから、これを四十三年度四・八に押えるということは私は非常にむずかしいだろう、もうすでにいろいろの数字がいろいろの人から言われているわけなんですが、長官は、衆議院予算委員会横山委員に対するお答えの中で、持ち越し分三・四%、ですから、いま申し上げましたように、年度内に許容し得る幅は一・四%である、それに、酒、たばこ国鉄定期値上げ物品税なんかで合計〇・四と考えるというふうにおっしゃいましたですね。そうしますと、三・四プラス〇・四で三・八%はもうきまってしまっている。それに、四十三年度米価はそのままのつもりと考えたとおっしゃいましたけれども米価は事実上スライドさせるというのが政府方針だと思いますが、そうしますと、消費者米価を上げる場合ですね。あと、三・八ですから、四・八でしたら一%しか残っていないわけです。その一%以内で消費者米価を上げる、そういうことになるでしょうか、計算すれば。
  12. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいまの御推論は御推論で違っていないわけです。ただ、米の問題につきましては、今国会でたいへんむずかしい問題になっておりますので、私どももどうも思い切ったことを申し上げにくい点がございますけれども、やはり、新しく米価審議会を発足してもらいまして、そこで、これは長年のやはりどうかしなければならない問題であるということは皆さんがもう御存じでございますから、何か抜本的な改めかたがないものであろうかということを、私としては米価審議会に考えていただきたい、こう思っておりますので、その結論いかんによって、今年の秋に消費者米価を必ず上げなければならないということになれば——必ずしもそうとは限らない。そうでない結論の出し方もあるのではないだろうかということを気持ちの中では持っております。どうすればそうなるだろうかということになりますと、これはいろいろな影響から、なかなか申し上げにくうございますし、米価審議会がせっかく検討されようというのでありますから、私がそれを予断するようなこともよくないと思いますが、しかし、必ず秋にはまた消費者米価が上がるだろうということを前提にしなければならないとは思っておりません。ただ、もしそういうことがあった場合には、いまのような数字範囲内でなければ見通しは狂うのかとおっしゃれば、それは、数字に関する限りは、ほかの要素を同じように考えますと、そういうことにならざるを得ないと思います。
  13. 田中寿美子

    田中寿美子君 たいへん苦しいところでございますけれども、四・八でおさめようと思う場合に、あと米価を上げる場合には一%しか許容量がないとして、そうしますと、米価というのは、米価上がりますと、いわゆる波及効果といいますか、便乗値上げといいますか、みそ、しょうゆをはじめ、外食費も上がっていきますし、それからサービス料金ども続いて上がりますし、それにまた続いていろいろなものが上がっていくということが予想されますから、一体米価を何%ぐらい上げたら一%の幅でとどまるでしょうか、それは。
  14. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは非常にむずかしいお尋ねでございまして、私どもは、一応米価というものを据え置いて四・八を考えておるのでございます。これは先ほど申し上げました。もし米価が上がって、なお四・八にとどまるとすれば、その米価上昇はどの程度にとどめなければならないか、及び波及効果を含めてそれがどうかと、こういうお尋ねでございます。そういたしますと、配給米の持っておるウエートが、かりに昨年の場合を申し上げてみますと、大体五〇〇ぐらいでございまして、一四・四%上げたわけでございましたから、それが数字の上では〇・七響きまして、そして十月からでございましたから、その半年分、〇・三五、これは、数字だけは、米だけならそうでございます。しかし、これは過去毎年、このときに、御指摘のように、いろんなものが一緒について上がりますので、この〇・三五ということだけではとどまりませんということをいま申し上げました。昨年度の場合も、全国総合指数で、九月の一一〇・〇から十月には一一一・九になっております。食糧だけで申しますと、九月の一〇九・六から十月は一一三・四になっております。でございますから、〇・三五ということには、昨年度の場合も、とどまらなかったわけでございます。
  15. 田中寿美子

    田中寿美子君 そういうわけですから、私は、今年度見通し四・八%というのは、もう全く無理であり、破れると思います。で、長官ももう御承知でございますが、各銀行物価上昇率についていろいろ数字をあげております。都市銀行四十三年度経済見通しで、東海、大和、拓銀が六%、富士、住友、三菱、三和、第一、三井、神戸の七つの銀行が五・五%、五%以下の見通しをあげているのは協和銀行だけですけれども、これだって、みんな銀行物価上昇率をあげる場合は、やはり営業用数字といいますか、あまり高くあげたら人は預金をいたしませんから、だからそういう配慮が入っていると思いますがね。それも、たばこ国鉄定期値上げとか、それから酒の値上げ間接税の引き上げなんかは計算に入っていない数字なんです。これは昨年の十二月七日の数字ですから、それを入れると、各銀行でもやっぱりこの上昇率をもう少し上げて計算しなければならないと思うんですが、こういう数字に対しては長官はどうお思いですか。
  16. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 銀行の多くが五・五%と言っておるわけでございますが、これは、おそらく過去のトレンドというようなもので推定して、そして、きっと米のことなども考えておると思うんでございます。そうしますと、このトレンドというものには毎年公共料金も何がしか動いておりますし、米も動いておる。ことしも多いわけでございますから、そういったようなものは入らずに五・五だと言っておるわけではないと思います。トレンドですから、いろんなものが分かれないまま、未分化のまま入っていると思うのでございますが、私どもと違いまして、銀行はもう少し突っ放してものを見るわけでございましょうから、そういう立場から見ておるんだろうと思います。私ども政策当局でもございますから、それはひとつ大いに努力をして、申し上げておるような数字にしたい、また努力いかんでは低いほうへ幾らかずつでも持っていける責任と幾らかの権限も持っておりますので、そういう意味で、むずかしいけれどもやってみようというのが私ども数字であり、これをはたから見て、いろいろなことを総合して、なかなかそういくまいというのが銀行数字ではないかと、こう思っております。
  17. 田中寿美子

    田中寿美子君 政策的数字ということを長官もお認めになっておりますけれども努力目標であり、この努力いかんによって四・八におさめることはできないこともないというならば、私は公共料金を上げるべきじゃない、公共料金を上げるのはおもしろくない影響を及ぼすということばが長官あいさつにもありますのですが、そういう点で四・八を守る、政府努力目標を守ろうと思うなら、公共料金を、公共的な性格を持っているお米なんかもそうですが、そういうものを上げるべきじゃないということを、私は、物価対策をやる方は、そういうことを考えなければならないということを、意見として申し上げたいと思います。  それで次に、消費者物価指数とり方についてなんですけれども政府数字政治的目標を掲げた数字であるとしましても、それがその数字においてすら四・八が守れないということになりますと、家計への影響、あるいは生活をする者の実感では、もっともっと響いてくるわけです。ところで、消費者物価上昇率数字が私たちの実態とずれているという感じを持つということについてなんですけれども、先ほど長官もおっしゃいましたようなやり方でとっておりますことは私もよく承知しております。ただ、家計にあらわれております物価の変動を測定して、家計における貨幣購買力の変動をつかんで、そうして実質所得を明らかにして、国民生活を豊かにするというのが政治の目的であると思うのです。そこで、消費者物価指数計算する基礎となりますところの総理府の全国家計調査ですが、それに私はだいぶ疑問を持っているわけなんです。その家計の実収入の平均なんですが、それが実際の平均家計より上に出ているというふうに私は思うのです。それは、とり方によって違ってくるのではないか。総理府でとっておりますものと、それから厚生省の厚生行政基礎調査、この両方で違った数字が出てきているわけなんですね。昭和四十一年の家計調査による実収入、これは七万一千三百四十七円、これは平均で出ている。それから昭和四十年が六万五千百四十円、これは総理府の統計。ところが、厚生省のほうの大臣官房統計調査、これは四十一年が五万八千九百円、四十年五万四千五百円と出ているわけです。これはとり方が違いますけれども、こういうふうにとり方によって違って出てくるということを考えてみますと、必ずしも総理府の実態調査も、ほんとうのものをあらわさないのではないかという疑いを持っております。この辺はどうお考えですか。
  18. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほど田中委員は、本年度の、四十三年度の四・八%は、これはとうていできないことだという印象をお持ちになったようにおっしゃいました。私どもは四・八というものを達成したい、可能であろう、というふうに考えているということを申し上げておきまして、ただいまの点は、統計局長も見えておりますので、政府委員から答弁いたさせたいと思います。
  19. 岡部秀一

    政府委員(岡部秀一君) 両者の差の出てきますことは、いろいろ調査方法等によって差が出てきておるという点があると思いますので、その根本の世帯とり方、あるいはどういう世帯を除いたりするか、あるいは加えたりするか、そういう点で差が出てきていることと、こう思うのでありますけれども、総理府統計局家計調査をいたしますにつきましては、農林漁業を含む世帯は除いてございます。これは農林省のほうで調査をいたしますので、それを除いてございます。それから単身者の世帯、一人の世帯、これも除いてございます。それから料理飲食店、旅館または下宿屋、そういうものを営んでいる世帯、それから、まかないつきの同居人のいる世帯、いわゆるしろうと下宿屋、そういうところ、それから住み込みの雇用者が四人以上いる世帯、それからまた、世帯主が長期間不在をしている世帯、あるいは外国人の世帯、こういう世帯は、調査をいたしますときに、家計の上で家計費の最も重要な費目である食料費が正常な形で出ておらないという点がございますので、そういう世帯をまず除いておりますという点が出てきておると思うのであります。そういたしますと、私のほうでやっておりますのは単身者世帯が含まれていない、言いかえれば、世帯人員が二人以上の非農林漁家世帯、そういうものの世帯家計調査をしておるという点がございます。その他、そういうふうないろいろな面での差が出てきておるという点で、同じ家計といいましても差が出てきておるのではないかと思います。
  20. 田中寿美子

    田中寿美子君 ただいま説明されましたように、総理府統計局のほうは、除外がたくさんあるわけですね。特に農林漁業世帯が除外されているということは、全世帯をあらわしていないじゃないかと思います。食料費のとり方はむつかしいかもしれませんけれども、今日では農家というのは非常にたくさん消費するわけですから、その点があらわれてこないということがございます。  それから総理府の家計調査の五分位階層は、第一分位は三万八千五百六十円までですね。第五分位は八万六千六百三十八円以上。厚生省のほうは、第一分位は一万九千八百円まで、第四分位十万七千円以上の四分位の分け方なんです。私は、どちらが正しいというわけではありませんけれども、総理府の家計調査であらわれております平均家計収入というのは、普通の平均以下の世帯が大体六〇%くらいあるのですけれども平均より上のほうをあらわしているというふうに私は思います。その点、どう思われますか。
  21. 岡部秀一

    政府委員(岡部秀一君) 私のほうの五分位の、いわゆる実収入の所得をいたしておりますものを五つに分けておりますが、総理府でやっておりますのは、調査をいたしました五分位のやつは、全世帯の中で勤労者の世帯だけの五分位でございますので、約五千世帯でございます。五千世帯調査いたしましたその家庭の実収入を、左のほうから右へ、その多寡において、低いほうから高いほうへずっとただ並べていくということでございます。その間に何の作為もございません。それで、一番下から一番上までのそれを、これもまた何らの作為を用いませんで、大体千世帯になります。五千世帯ですから、一区画が一千世帯になる。それを千世帯ずつ五分位に分ける。こういう形でやっておるわけであります。そこで、その収入が非常に高くなったとき、低くなったときということによりまして、それの差がそれぞれ出てくるということでございまして、特に高いものをとっている、低いものをとっている、そういう作為的なところは全然なくて、ただそういう収入をとっておる世帯を分けていくと、第一階級、第二階級、第三、第四、第五というものになるわけで、特にその点作為というのはございません。
  22. 田中寿美子

    田中寿美子君 この前にお尋ねしましたときにも、無作為抽出であるから非常に客観的である、科学的であるという御説明があったのですけれども方法は客観的でありましても、実態を反映するかしないかという点が私は問題だと思っているわけなんです。それで、消費は、それぞれの世帯によってしかたが違いますから、パターンが違いますし、それから品目なんかも同じ銘柄でとりませんから、ほんとうの指数というものはなかなか出てこない。これはむつかしいことはよくわかるのですけれども、全所得階層別平均して一本の消費者物価指数を出すということ自体非常に網羅的であって、ほんとうの実態が出てこないということ。ですから、それぞれの階層別に出せば違ったものが出てくる。それで、平均よりも低い世帯にとっては指数はもっと高く出てくるかもしれない。だから、それは政治をしているものにとっては大切なことなんじゃないかと考えるわけなんです。  それで、厚生行政基礎調査のほうも無作為抽出です。この場合は除外がありませんから、全世帯の中、しかも世帯数は非常に多いのですね。対象世帯二万一千六百四十、それで、四百十五地区からとっているわけです。ですから、ここには住み込みとか、寮生活者、そういうのは除外してあります。それで、ここにはもっと幅広い層が代表されて出ているような気がするのですけれども、それでもこれは、平均数字で出すということは必ずしも私はほんとうのことをあらわさない。だから、家計調査をもとにして出しますところの消費者物価指数というのは、やっぱりもう少しきめこまかく所得階層別にまずとっていく必要があるのではないかと思うのですけれども、その点はいかがですか。
  23. 岡部秀一

    政府委員(岡部秀一君) 確かに、おっしゃるとおりに、こまかく見ていけば、これはもう、どの家庭、個々の家庭ごとに違って物価指数をつくる、そういうことになるのですけれども、しかし、そういうことはとても実際上にもできないのでございますので、そこで、統計というものは、ある集団というものを単位に、それがどういう動きをするかということを出すのが、これが統計ということになります。そこで、おっしゃられるように、個々の問題と、その集団、しかも、その集団を平均をしたものの数値というものと、各人の実際の家計の場合、あるいは先ほども御質問が出たような、ある小グループの集団というものから比べると、その点の実感というものは当然差がある。それは当然なんでございます。その集団をどこに置くか、その集団での平均をとるのか、どういう点をとるのかというところで差が出てくる。それを私たちとしては、統計局としまして、集団で、しかもそれを平均をしたところでとるのが、まあ平均でどうだというところの統計を出すのが、一番いいんじゃないか、一応は標準になるんじゃなかろうか。もちろん、これは利用のしかたでいろいろあると思うのです。  それから第二点の、さらにきめこまかくということになると、確かにさようでございます。収入別にさらに分けるということで、私のところでは先ほど申し上げたような五階級に分けてやる。そうすると、収入の少ないところ、高いところ——たとえば収入の少ないところでは、例のエンゲル係数、食料費が高くなっておるけれども、第一分位のほうでは食料費が高くなっておりますが、第五階級のほうでは食料費のウエートは少ないということになりまするから、食料費を上げるということになって響きはどっちに出るかということになると、低所得層のほうに出る。そういうことは当然あるのですが、そういう意味で、きめこまかくさらに階級別につくるということが日常できますれば、それはそれにこしたことはないと思います。私たちも、そういう点で、統計技術上、そういうことを何とか実現できないかという点で努力をいたしておる次第であります。
  24. 田中寿美子

    田中寿美子君 前に勤労者生計指数をとっていらっしゃいましたですね。ああいうふうに、一応所得の同じような階層のものですと、消費の型もわりあい合近い、そういうことになりますから、やはり所得階層別の指数をとっていただくということが必要なんじゃないかと思います。五年に一ぺんずつ基準年を変えられるわけですから、今後そういう方向に向かって改正されるお考えはないかどうか。つまり、私の言いたいのは、あまりに生活する者の実態や実感と、政府の発表する率とが違った感じを受けるから、なるたけそれをもっとこまかく出せるようにしてほしいという意味で申し上げているわけなんですが。
  25. 岡部秀一

    政府委員(岡部秀一君) 御趣旨の点につきまして、まことにおっしゃるとおりでございまして、階層別に物価指数をつくるということの研究でございまして、それができれば、さらにきめこまかいやり方ができて、それぞれ実感に近いものになると思います。しかし、統計上、私らの仕事の上からいきますと、品目と銘柄、ウエート、これをきめていかなきゃならぬということになりますと、非常にむずかしい問題になってくる。たとえば、家計調査の場合に、牛肉なら牛肉というものが、第一階級ではバラ肉だ、第五階級ではロースだというふうなことを一々書かなきゃならぬ。同じ洋服にいたしましても、第五階級の人は純毛、第一階級の人は混紡だとか、そういうようにこまかく書いていかなきゃならぬということになれば、非常に技術上も実際上も、ほとんどもうそういうことを書くことができない。そういう実際上の問題があるわけです。そういう面で非常にむずかしい点があって、なかなか実現ができないということはあります。しかし、私たちとしては、そういう面できめこまかくさらに見るという点で、内部関係でいろいろ研究をし、努力をしておるという状況でございます。
  26. 田中寿美子

    田中寿美子君 私は、統計を扱われる当局のほうは、そういうやり方でやるよりほかないというふうにお考えのようですけれども、やっぱりこれは国民生活に密着する方向に、なるたけ改正していっていただきたいという要望を申し上げまして、時間をとってしまいましたので、そのほかの質問を用意しておりましたのを省きまして、四十三年度経済見通しの中にあげられております政策に関連してお伺いしたいと思います。  物価対策としてあげられております中で、公共料金対策ですね。先ほども公共料金を押えれば努力目標に近くなれるんではないかというようなことがありましたけれども、私は要望申し上げたわけですけれども、この公共料金対策というのは、どういうことを意味しているのでしょうか。
  27. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは、一般的に私ども公共料金と呼んでおりますもの、すなわち、交通関係でありますとか、あるいは米もやはり入ると思いますし、政府の直接あるいは間接に関与し得る商品サービス価格全般を意味したつもりでございます。
  28. 田中寿美子

    田中寿美子君 先日、物価安定推進会議で公共料金と乳価についての提案がされましたね。その中で、国鉄については経営再建特別委員会というのを設置して、そして、抜本的な再建計画を立てなければいけない、少なくともその再建計画が立つまでの間は基本料金を上げてはならないというような提案がされておりますが、その点は、長官はどうお考えになりますか。
  29. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 仰せのような提案が物価安定推進会議の総合部会から出てまいりまして、私としては、ぜひともああいうことを推進いたしたいと思いますし、聞くところでは、運輸大臣自身もなるべく早く再建計画を立てたい、こういう考えでございます。  そこで、問題は、これはおそらくはやはり財政負担の問題になってくる部分が多いと思われますので、財政当局を含めて検討しなければいけない問題だと思います。基本料金については、私としては、したがってその検討が済んで再建着手ができるまで据え置いてもらいたい。私自身は、四十三年度定期関係の割引率の縮減ということに賛成をいたしました。これは、御承知のように、八割何分とか六割何分とかいう割引というものは、ある意味での公共負担であります。常識的にはいかがかと思われますので、それには賛成いたしましたが、基本料金という問題になりますと、やはりあの勧告のとおり、まず再建の策を立てて、そして財政負担とのにらみ合いの上で考えてもらいたい、こう思っております。
  30. 田中寿美子

    田中寿美子君 その同じ提案の中で、電気とかガスなんかは経営状態がよいので触れないということがありますが、値上げばかりが問題になっておりますけれども、値下げしてもいいんではないかと思いますけれども、電気やガスですね、その点はどうお考えですか。
  31. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その点は、私むろん審議に直接関係したわけではございませんので、どのような理由でああいう勧告になったかはつまびらかでございませんけれども、私としては、たとえばガスについて考えますと、都市のガスでありますが、やはりだんだん限界的な方面へ供給をしていかなければならない。配管にいたしましても、コストがだんだん高いほうへ配管をしていくことになると思いますし、人件費の問題もございますと思います。また、ある意味で、先行投資も土地造成の関係でやってもらいたいと思っておりますので、なかなか今後下げていってくれということは、そう簡単に言えないかと思います。電力にいたしましても同様な事情がありますし、さきざき原子力発電の問題も電力会社は踏んまえておりますので、そこで、そういう先行投資の問題がなければ、確かに下げられないかという感じはいたしますけれども、そこまで含めて考えますと、人件費の上昇も合わせて、まあ安定的な価格で供給をしてもらえばいいと、この際下げてくれとは申さないが、将来上がるような要素をつくらないで経営していってもらいたい、私はそのように考えて、いま特定の二つの料金をおあげになりましたが、それについてはそう思っております。
  32. 田中寿美子

    田中寿美子君 私は、電気、ガスはたいへんもうかっておると思います。それで、近代化、合理化が進んで、コストも下がっていますので、一つや二つ値段の下がるものがあってもいいはずだと、これは物価対策として考えるべきだというふうに思っておりますが、時間がなくなりましたので、あと二点だけにいたします。  一つは、生鮮食料品対策ですね。これは、農林、漁業及び流通の近代化という中に入っておると思うのですが、これを予算面から見ますと非常にわずかなんですけれども、一体、それで物価安定に役に立っているのかどうか。指定産地の拡充というようなことですね。それはどのような効果がいままであがっていますか。また、いまあげようとしているかを、ちょっと説明していただきたいのですが。
  33. 八塚陽介

    政府委員(八塚陽介君) 野菜価格は、非常に家計費に大きく影響いたしておりますし、先ほど問題になりました消費者物価指数の中でも、かなり寄与率の高いものでございます。野菜の問題はもちろん重要でございます。ただ、野菜の環境と申しますか、たとえば、従来供給地でありました都市近郊がさらに農地が少なくなり、あるいは比較的遠方から持ってくるために輸送費その他が高くつく、ないしは、他の米等に比べまして非常に労働力を要しますので、そういう意味で、昨今のような労働環境の中では、農家がなかなかつくりたがらないというような難点がございます。一方では、大消費地の、いわば受け口の大型化というようなことに対応しまして、野菜の立地条件も変化いたしておりますし、そういう意味野菜指定産地というものが発足しておるのでございます。ただ、先生がいま御指摘になったと思いますが、端的に、生産量は急にふえておるというふうには必ずしも私どもは見ておりません。ただ、大体、東京都の入荷量、これは、いま手元に数字がございませんが、ほぼ、年々五%ないしそれ以上の入荷量の増はございます。その意味で、指定産地の制度、その他野菜関係する生産行政というものは、それなりの供給力の増加に果たしておる役割りはあると思います。一方、需要のほうもそれ以上に強いということは事実でございますので、まだまだ十分であるというふうには考えられないと思います。
  34. 田中寿美子

    田中寿美子君 よく、いままで、物価対策として、コールドチェーンだとかなにかいうことが言われていたのですけれども、一向にそれは進捗しないような感じがいたしますが、まだやはり研究の段階でございますか。
  35. 八塚陽介

    政府委員(八塚陽介君) コールドチェーンにつきましては、御承知のように、二年科学技術庁で研究の段階であったわけでございます。本年度は、農林省のほうで受けまして、いわばやはり実用の手前の、経済的にどういうふうにうまくいくかという実用化の実験を行なっておるという段階でございます。コールドチェーンが、私は、比較的すぐ短期的には必ずしも物価に響くというふうな性質のものではないだろうというふうに考えております。ただ、将来次第に、先ほども申し上げましたように、産地が遠隔地にでき、かつ、まとまってまいります。一方、消費地のほうも、物理的な構造からいいまして、消費者のお手元に届くまでに、いろいろな交通上の問題、あるいは流通上の問題がございまして、その間をコールドチェーンでつなぐということは、むしろ量より質の面で物価に好影響があるのではないか、ただ、現在の段階でございますと、日本の場合には、まだ近間に生産されておりますから、すぐアメリカのように、遠隔地から青果物が運ばれるというような効果は、さしあたってはない。ただ、そういう手を打って、将来を見越してそういう研究をしておくということは必要であろうというふうに私どもは見ておるのでございます。
  36. 田中寿美子

    田中寿美子君 三年くらい前は、たいへん大々的に物価対策としてコールドチェーンというのが宣伝されたわけなんですね。その当時から、私は、日本のような条件では、アメリカ式のコールドチェーンなんというものは、そんなにすぐに役に立つなんて全然思っていなかったころ、これが物価対策の非常なきめ手であるかのように宣伝されました。そのときちょっと調べましたところでは、コールドチェーンを推進していくための、これは農林省でないかもしれないのですけれども、一種の審議会のようなものがございます中に、たとえば日通だとか大企業、将来これでもってもうけようと思うところの企業の代表者が集まっていられたのです。それで、それを優先させたような研究をされたのでは困るというふうに思っていたわけです。ただいまの御説明で、私も、農林省がどんなふうに考えていられるか一応わかりました。  たくさんあったんですが、最後に、消費者行政の中で、消費者行政のための予算としてとられている中で、消費者リーダーの養成、これはどういうことをするのですか。
  37. 八塚陽介

    政府委員(八塚陽介君) 消費者問題は、結局、いわゆるグループをつくりやすい業者あるいは企業家を相手にしないで、一般の消費者の方を養成の対象としなければならないわけでございます。一般的な啓蒙ということももちろん必要でございますが、やはり、商品の最終的な取引が行なわれます段階で一般の消費者の方をある程度リードする、あるいは相談の相手になるというような方々ができていくことが最初の手がかりではないか。そういう意味におきまして、消費者リーダーになろうというような方を消費者協会等にお願いをいたしまして、何カ月かの期間、商品のいろいろな知識、あるいは経済的な知識を含めまして、商品の知識等について御修得をいただくというふうな考え方になっております。
  38. 田中寿美子

    田中寿美子君 前に問題にしていられました消費生活懇談会というのを、中央地方を通じてたくさんつくるというようなことを言われておりましたですね。それはどうなったのですか。そして、そういうものを通じて消費者の啓蒙、啓発をするということだったですね。それはどうなりましたか。
  39. 八塚陽介

    政府委員(八塚陽介君) ちょっと私も、いまおっしゃいましたお話の固有名詞につきましては少し自信がないのでございますが、これは、いま申し上げましたように、もちろん、現在の消費者行政の問題は、消費者だけの問題ではなくて、むしろ、企業に対するいろいろな指導、あるいは国ないしは府県の姿勢の問題等もございますが、一方では、消費者の方々のいわば積極的な関心というものをどういうふうに行政に反映させていくかということが必要だというふうに考えております。そういう意味におきまして、各地方にできるだけ消費者の方々のそういう集団をしていただくという考え方は、基本的に私ども持っております。ただ、そういう消費者の方々の集団というものを、いわば政府のほうからと申しますか、上のほうから何がしか作為的に誘導するというような形ではまずいのではないか。できるだけ、そういう面では、やはりオーソドックスに、こちらのほうも啓蒙して、そして育て上げていくというふうに考えるべきだろうというふうに思っております。
  40. 田中寿美子

    田中寿美子君 私、いまおっしゃったように、上から団体をつくって指導するというのは賛成ではないんで、一体どういうふうにしてこれをやられるのかなと思っていたわけなんですが、予算もついていますので、もう少しあとで具体的に伺いたいと思っております。  で、最後に長官に、いまの消費者行政に関連してですけれども、昨年以来のものすごい景気の過熱、それはやっぱり消費者に大いに責任があるというふうに長官はお考えでしょうか。それとも、それは設備投資のほうがどんどん進んだためであるというふうにお考えなんでしょうか。その点、長官のお考えを……。消費者が、消費水準がやたらに上がってしまって、どんどん物を買った、こういうことのほうに責任があるとお考でしょうか、どうでしょうか。
  41. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、おそらく、多数の消費者が一番望んでいることは、住宅問題であろうと思います。しかし、いまの所得程度では、土地その他の関係から、住宅を持とうという夢にそれがつながらないというところに問題があると思いますので、そういう意味では消費者の責任ではなくて、政治のほうの責任だと、いわゆる消費の中で、もう少し節約し得る部分があるのではないかということは言えますけれども、その貯蓄をいかにして住宅に向けるか、持ち家に向けるかというところに政策が十分にできておりませんから、それで、より大事でない消費がときどき行なわれることがある。これはしかし、そういう住宅等を持ちたいという意欲を十分に政治あるいは行政のほうがかなえてあげることができないというところに問題がある、そういう見方をしております。
  42. 田中寿美子

    田中寿美子君 これで終わりますが、私は、消費水準が非常に上がっているということは、日本の産業がそれをむしろ強制しているように思うわけです。ですから、回りに山のように商品があって、そして買わざるを得ないような一種の社会的な強制を受けているような気がしているのです。ですから、消費者の責任だけを言うのではなくて、そういう点、行政の面で、企業に対する指導といいますか、そういうことが非常に必要ではないかということを考えていることを申し上げまして、終わります。
  43. 大森久司

    委員長大森久司君) 他に御発言のある方もあろうかと存じますが、午前中の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時三十六分休憩     —————————————    午後一時四十八分開会
  44. 大森久司

    委員長大森久司君) ただいまから物価等対策特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、当面の物価等対策樹立に関する調査中、物価対策基本方針に関する件を議題といたします。  本件に関し質疑のある方は順次御発言を願います。中沢君。
  45. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 きょうは、定価の問題について、ちょっと御質問をさしていただきたいと思います。  この間から物価対策委員会では、薬品の問題や化粧品の問題、再販売価格維持契約の問題についていろいろ質問が繰り返されてまいりましたけれども、定価についていろいろ調べてみますと、最近は、化粧品にはだいぶ定価がつけられている。しかし、薬品にはちっとも定価がついていない。それから、洗剤などというものには、まあ最近ずっと定価がついているように私聞いておりますけれども、薬品に関して、どうして定価がつけてないのか。そして、そもそも、定価というものの定義みたいなものですね。それをどうお考えになっていらっしゃるか、一ぺん聞かしていただきたい。
  46. 山田精一

    政府委員(山田精一君) 定価につきましてお尋ねでございましたが、大きく分けますと、三つになるかと存じますのでございますが、私ども公正取引委員会の立場といたしまして申し上げまするというと、消費者が購入をいたします最後の段階において、小売り商の店頭に飾られております商品に定価がついておりますことは、まことに好ましいことである、消費者の選択を誤らしめない意味合いにおきまして望ましいことであると存じます。ただ、それを二つに分けまして、だれがその定価をつけたか、値札をつけたかという問題でございますが、メーカーがつけました場合、先ごろ来御検討いただいております再販を認められておりますところの品目につきましては、これはメーカーが表示いたしまして少しも差しつかえないことであると存じますが、再販を認められておらないところの商品につきましてメーカーが価格の表示をいたしますと、これはとかく再販に似たような拘束力を持ちがちでございますので、望ましいこととは考えておらないわけでございます。外国の例を申し上げますと、たしか、ドイツであったと存じまするが、メーカーがその商品値段をつけますときには、そういう再販を認められておりません場合には、推奨価格ということを必ずはっきりと書いておかなければいけないという規定があったと記憶いたしておりますが、そういうようなことでも付記されておれば格別でございますが、定価幾らといって書かれることは困ることでございます。それから最後の場合の、小売り商が表示をいたしました場合におきましては、これは消費者の選択を誤らしめない意味合いにおいて、きわめて好ましいことと思うのでございますが、その中に、小売り商が意識的に高い値段をつけておきまして、定価百円という札を張りつけておきまして、これを八十五円で当店では売りますといって値引きをしたようなふうに見せて売る場合がございます。しかもそれは、もよりの店、近所の同じ小売り店に行きますと、九十円なり八十五円で売っておりますものを百円という値札をつけて売っております。これはまた逆の意味において二重価格の問題になりますので、私どものほうでは好ましくないことと考えております。現に、ある地方で、最近、ポータブル・テレビでございますが、普通の市中で売られますところのいわゆる定価に相当いたしますものが二万四千幾らであったのでございますが、わざわざそれを定価三万五千円というれっきとした札をつけまして、それを二万三千何百円で売ったケースがございます。私どもはそれに対して勧告の処分を行なった次第でございます。
  47. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 昔——昔といっても、戦争中にはマル公とかマル協という価格がございましたね。まあそういうのは何か統制価格のようなにおいがして、もう最近はそういうものはございませんけれども、先ほども田中委員が質問されておられましたけれども、最近は、いわゆる公共料金というものがございます。そして、公共料金は、先ほど宮澤長官からいろいろ御説明があったわけですけれども、それならば、サービス料金がございますね。たとえば散髪屋さんとか、パーマ屋さんとか、そういう人たちが何か値段をきめられておりますね。これよりも下の値段を使ってはいけない、この値段から上ならばよろしいという値段、そういう点の違いについて、ちょっと教えていただきたい。まだそういうものは残っておりますでしょうか。パーマ屋さんとか散髪屋さん。
  48. 山田精一

    政府委員(山田精一君) ただいまのお尋ねの、たとえば理髪屋でございますが、環境衛生法によりまして、幾らでございましたか私ちょっと記憶しておりませんが、非常にかけ離れて安い値段がきめられておりまして、それを割ってはいけない。これはサービスの内容を低下させない意味合いにおいて定められたことと存じます。その上で、五百円とか六百円とかいう定価表を、自分の店の名前において掲示をしておりますのが普通の例であると存じます。ただ、地方によりまして、従来からの慣習とか、あるいはわざとやっておる場合もあると存じますが、その地域における業者が価格を協定いたしまして、定価表を掲示しております例がございまして、これは、私どもの役所で一々排除の処分をいたしておるわけでございます。
  49. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 まあ、そうしたようないろいろな値段のつけ方といいますか、表示が行なわれておるわけでございますね。先ほどのお話ではございませんけれども、そのポータブルのようなものがございます。こんなのは私特別と思いますけれども、私どもが薬店に行って薬を買いますときに、たとえばビタミン剤を買いますね。そのときに、この前買ったときに百錠入りが二千四百円だったか二千二百円だったかちょっと覚えていない場合がございますね。そうすると、定価がついておりませんと、薬店に行って二千四百円ですよと言われると、そうかなと思って買ってくるのですね。なぜ薬店で定価がつけられないかというと、その定価がきめられておりますと、これから、いまおっしゃったような二割引きで売りましたとか、ほんとうはもっと高い値段をつけておいて、普通の値段でこれで二割引きですよというようなことで売られる。こういうふうなことをいろいろ言われますけれども、われわれ買いに行くときに、全部この前買った値段というものを調べて行かない場合がございますね。そうすると、ほんとうにこの店が安いのか、こっちのほうが安いのかどうなのかが、ちょっとわからないことがあるのです。それで、消費者の側にとって——公取のほうのいろいろ御説明やお考えもおありになるでしょうけれども、われわれとしては、ちょっと薬を買いに行ったときにも、ほんとうの定価が書いてないと、これがほんとうの値段か、引いてくれたのかどうか、ということがわかりにくくて、何だかだまされているというような気がするという人も相当あるわけですね。それで、一ぺん定価の問題を質問してきてくれないかと、こういうことで、いま質問させていただくことになったわけですが、そういうのは、ほかの、いまのポータブルのような特別の問題はございますけれども、やっぱり消費者としたら定価をつけてほしいな、定価を書いておいてほしいな、こういうような希望もあるわけですね。こういう点についてのお考えをちょっと伺わせていただきたい。
  50. 山田精一

    政府委員(山田精一君) ただいま御指摘の医薬品につきましては、これは御承知のように、再販品目と非再販品目と、非常に、こう入りまじっておりますわけでございまして、再販を認められております薬品につきましては、メーカーのところから出ますときに定価が印刷されておりますれば一番はっきりいたしましてよろしいかと存じますが、私どももそれを希望しておりますんですが、強制をいたすわけにもいかないかと存じます。それはなぜかと申しますと、固定価格で、たとえば定価二百円ということで再販価格を拘束しております例もございますし、二百円を一応希望価格とするけれども、一割引きまでは認めるという契約もございまするわけでありまして、そういたしますと、一割引きをいたしました百八十円が普通の売り値であるはずのものが二百円と印刷されておりまして、いかにも割引販売をしたような体裁をとりますこともいかがかと存じます。その辺なかなかむずかしいところではないか。やはり、先刻申し上げましたごとく、小売り店の段階でもって、一々の商品に値札を張りますとか、あるいは陳列してありますたなに価格を表記いたすとかいたしてほしいというのが、私ども気持ちでございます。
  51. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 それは、再販の認められているビタミン剤でも、メーカーによって認められているところもあるのですね。
  52. 山田精一

    政府委員(山田精一君) ございます。
  53. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 同じビタミン剤に。そういうのが、普通の消費者では見分けがつかないわけですね。それで非常にみな迷われるわけです。それと、もう一つは、メーカーが小売り屋さんに価格を指定しますね。希望価格とか、再販の許されているものは。しかし、それも私は、適正価格というものはあるものだと思います。たとえば、材料が幾らで、人件費がどのくらいかかって、広告費も幾らかかって、大体売る人も、それは二百円なら二百円、千円なら千円というような一応の適正な価格が私はあのずからあると思いますね。それを、やはり一割くらいはどうか知りませんが、二割引きだ、二割五分引きだとか、そのような値段がまちまちというの、こういうところに私はちょっと問題があるような感じがするのですけれども、こういうのはいかがですか。
  54. 山田精一

    政府委員(山田精一君) なるほど、ある時点におきまして、しかも特に再販を認められておりますところの商品が、あっちこっちで価格がまちまちなことは、多少消費者のほうに御不便かもしれませんでございますが、少し時期を置きまして、先月まで五百円でございました商品、それが、競争の関係、あるいはそのときの当該商品の需給の関係で、四百円に一般的に値下がりしておるというときには、それに五百円と書かれておりましても、やはり四百円で取引されることが、独禁法のたてまえから申しますれば、好ましいことでございますが、まあ、一番理想を申せば、推奨価格と申しますか、これは拘束するものではないという添え書きがございまして、推奨価格三百円、四百円とか表示いたすのが一番理想的かとは存じますが、なかなか実際上はむずかしいかと存じます。
  55. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 もう一つ例をとって伺ってみたいんですが、たとえば、テレビとか洗濯機を買うとか、大きいものがございますね。デパートならデパートに見に行きます。そうすると、大体十三万円とか、電気洗濯機の場合なんか四万円とか、書いてありますね。ところが、話し合いに応じます、と、こういうふうな添え書きがありましたり、それから普通の電気屋さんの店頭に参りますと、初めから割引値段を教えてくれるわけです。それならば、定価を全然つけてない、たとえばカラーテレビなんか十五万であるとか十七万であるとか、そういう値段が全然ついていませんと、私たちは、ほんとに十三万円のものなのか、十五万円のものなのか、そういうことわからないわけですね。それですから、ちょっと書いてくれてあると、非常に財布との相談ができるわけですね。ところが、実際の話になると、うちではこれならば二割引きます、二割五分引きますとか、いろいろあるわけですね。そうすると、それだけ引けるものならば、やっぱり初めからもう少し安い値段を書いといてもらったほうがいいんじゃないかと、こんな感じがするわけです。そういう点、非常に私どもふしぎに思うわけです。薬の場合もそうだし、大きな買い物をする電気製品なんかの場合も、そんな感じがするのですけれども、これはやっぱり、引けるんであれば、初めから原価計算をずっとしていけば、その十七万円とか十五万円とかでなしに、引ける値段くらいのところが定価として書かれれば非常にいいんじゃないか、こういうふうに、しろうと考えかもしれませんけれども、そんな感じがいたしますけれども、公取のほうは、それをどう考えていらっしゃるか、今後だんだんそういうふうになっていくものかどうか、そこら辺をひとつ教えてください。
  56. 山田精一

    政府委員(山田精一君) 家庭用電気製品などは、大体の場合におきましては、メーカーのところでつけました、印刷しました値札と、それから自分の店の値段と二様に書きました例が、このごろはだいぶ出ておるように存じます。先ほども申し上げましたごとく、小売り商の段階で、小売り商が自分の売り値というものを明確に表示してくれることは、私どもは一番希望するところでございます。その場合に、値引きが交渉によってあるということもございますが、これはいわゆる日常毎日買う品ではございませんので、やや金がさも張りました商品でございますから、消費者のほうは御不便でも、やはり買い回り——俗なことばで買い回り品と申すそうでございますが、デパートでごらんになって、また二、三軒スーパーと、それから小売り店とごらんになって、そこで、同じ銘柄で一番安いところでお買いいただく、この程度のお骨折りはしていただかなければならないかと、かように考えます。
  57. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 その大きなものですとね、まあ、テレビ一つ買うのに、ナショナルを買うとか、ビクターを買うとか、いろんなことで、さがして歩くわけですね。しかし、薬屋さんに行って薬を買うときとか、あるいは化粧品を買うときには、向こうが言った値段で思わず買ってしまうわけですよね。三百円か五百円くらいのだったら、そう買い回ってみるとか、いろんなことをしないわけですね。それで、この間も、これはテストとしてといって私は言い置きをするのですが、いつでも使ってる化粧品を買いに行ったわけですね。そうしたら、それよりももう少し上のいいのができております——いつでも私が買うのは千円なら千円の品、今度は千四百円でもう少し中身のいいのができておりますよ、こう言われたものですから、それじゃまあ一ぺんテストとしてそれを使ってみましょうか、こういうので、千四百円なんです。何だか非常に暴利をむさぼられるような感じがするわけですね。たとえば、いままで千円、クリームもずいぶん高いと思っているのが、今度内容がよくなりましたから千四百円です、こう言われると、何だかとっても、店頭でかってに値段をつけられた、こんな感じがする。ところが、向こうに帰りまして、その商品を見せにいったら、それは千四百円ですよ、それは合ってたわけですけれども、そういう点も、非常に買うときに不安を覚えるわけですね。全然わからない。こういうこと。  それで、この間またあるところで伺いましたら、百円化粧品というのが出回っておりましてね。その方に伺ったら、口紅というものは、そのもともとの原価は、裸の値段は八十円より高いものはほとんどないんですよと。ところが、私ども口紅一本買おうと思ったら、資生堂のものなんか買うと千円ですね。そこではやっぱり口紅でも百円です。それはもちろん容器が違います。宣伝のし方も違います。それから利益もほとんど取っていないくらいなんですね。ですから、家庭を持って回るのですけれども、そのくらい値段が違っているわけです。そうすると、やはり私どもとしたら、定価をどこかにちゃんと書いておいてもらったほうがいいような感じがするのですが、しかし、再販のほうから見れば、それから先ほどからの、小売り屋さんがかってにつけてもらっても困るというような、いろいろなお話を伺いますと、それはよくわかるのですが、こんなにまちまちで、実は消費者というものは向こうが言う値段で買わされることがたくさんあるものですから、非常にその点で迷ってしまう。いまこういう感じがしております。  それに続いて、もう一つ質問をさしていただきますけれども、いまその問題について公取のほうではどうお考えですか。千円のクリームが、今度内容をよくしたから千四百円になりました。口紅は全部八十円より高いものはないはずなんですよなんていうことを言われますと、ほんとうに頭をかしげてしまうわけですが、こういうことについて、お考えがございましたら、ひとつ聞かしていただきたいと思います。
  58. 山田精一

    政府委員(山田精一君) ただいまの後段のお話のございました件につきましては、これは、私どもの立場といたしましては、できるだけそこに公正にして自由な競争を働らかせるようにいたしまして、百円の化粧品と、それから千四百円でございますか、の化粧品と、質において大差がない、それで、かりにございますならば、百円のが消費者によってもっぱら買われる、千四百円のものは売れなくなる、こういう市場における競争を通じまして、その辺の判断がつけられる、こういうふうなことを、独禁法の精神といたしましては期待しているわけでございます。
  59. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 ところが、今度、百円の化粧品というものはあまり広告費を使わないから、百円ぐらいでできるわけですね。ところが、千四百円の化粧品だったら、相当の宣伝をすることができる。そうすると、なかなか百円で内容もたいして違わないというものが普及しないわけですね。こういうものについては、何らか、推奨品とか何とか、そういう名前をつけてくださるとか、そういうふうな方法を講じていただければ、私は、これは消費者にとって非常に利益ではないか、こういうふうに思います。  それと、もう一つ、それに続いてですが、最近、高知県のほうの薬品の小売り屋さんですが、そういうところから、おそらく物価対策委員の皆さんには来たと思いますけれども、はがきで、再販を洗い直す、あんなことはやめてほしい、もしもこういうことをされると、全国で百四十万ぐらいの薬品店がみんな倒産をしてしまう、こういうふうな陳情のはがきが相当数来ていると思います。私のところにも五、六枚来ましたので、見ましたら、内容は同じでございましたけれども、それならば、定価——定価というものは、私は、その商品の価値を表示してあるのが定価だと、こういうふうに思うわけですが、そうすると、先ほどから何べんも申し上げておりますけれども、原価があって、それに、広告だの、容器代だの、さらに人件費だの、いろいろのものを含めて、大体ありますね、適正な値段というものが。それだのに、再販維持契約を洗い直して、相当ピックアップしてまいりますと小売り屋さんが倒産をしてしまう、ほんとうにそういうことがあり得るものかどうかですね。その辺のところがちょっとわからないので、返事も何も、よう書かないので、どう書いたらいいのかと思っているのですが、ほんとうにそんなことになるものですか。
  60. 山田精一

    政府委員(山田精一君) 私のところにもたくさん印刷いたしました陳情をもらっておりますが、これには過分に誤解があるように存じます。いかにも再販品目が全部一ぺんになくなってしまうようなふうに考えておりますことが一つでございます。それから第二点といたしましては、過去におきまして経済界が著しく不況であった時代に投げ売りが横行いたしまして、有力なブランドの化粧品会社が行き詰まった、その例が相当深く小売り店の方々の頭にしみ込んでおったので、そのときの経験からものを言っておられるという面があるように思います。第三点といたしましては、これは人間の通有性であるかとも存じますが、いままでやってきたしきたりの上でずっとやっていきたいというお気持ち、これはある程度あるように存じます。
  61. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 ありがとうございました。たいへん勉強が不足で申しわけないのですけれども、いま選挙の前で、切りきざんで使われているような感じで、なかなか勉強できませんので、どうもありがとうございました。
  62. 大森久司

    委員長大森久司君) 木村君。
  63. 木村美智男

    木村美智男君 この間、宮澤長官にぜひお伺いしたいと思っていたんですが、衆議院のほうの御都合があったようで、きょうは公取の山田委員長さんも出ておられるので、この間の続きになると思うのですけれども、交互にひとつお伺いしたいと思います。  第一番は、宮澤長官、この間衆議院の八日の予算委員会で、公取委員長と一緒においでになられて、お答えをした再販の問題についてのことが新聞に五段抜きで大きく出ているわけです。この間も申し上げたのですが、「再販制度で政府方針」というようなことで、「消費者保護へ転換」、これは私は、事実、実情に合わない、こういうふうに申し上げたのですけれども長官の言っているのも、大体この新聞の見出しと中身は少し違うようです。  そこで少しお伺いしたいのですが、宮澤長官は、私が去年の七月十九日に、これは再販問題で、まさに玄関の議論として、まあ不勉強ながらも相当核心をついたつもりでいるのですが、そのときの私の質問に答えまして、長官は、当時の公正取引委員会が立案をしておった再販というものについては、あまり高く評価していなかった。大体私もそういう見方をしていたのですが、それで、長官はどういうふうに答えられたかというと、再販制度について何がしかの法益が再販制度にあるにしても、弊害のほうが多くて、むしろ全面的に禁止したほうがいいのではないか、この制度によって守られる法益が全然ないとは言えないが、弊害が大き過ぎるという意味のことを答えられた。まあ私は、あるいは業者の圧力やその他で、そういうことはないだろうと思いますけれども、かりに公正取引委員会が、よしんばそういうことで幾ぶんよろめくことがあったにしても、長官の言ったこのことばだけは実はほんとうに信じておったのです、消費者の一人として、国民の一人として。これは、宮澤長官に期待した期待というのは非常に大きかったのです。そういう立場でお伺いするわけなんですが、この間山田委員長は、今度公取が新しい立法措置を講じないで、運用の強化によってやっていくのだという方針をきめるにあたっては、経済企画庁にも御相談を申し上げたのだ、そして了解を得たと言っておられるわけです。したがって、この点、まあ大体事実だろうと思うのです。で、事実であるとすれば、そういうふうに答えられておった長官が、今日、どういうことでそういうふうに変わってきたのか、ここのところを、何とも私としては理解できませんので、この点をまず長官にお伺いをいたしたい。  ついでに、そのとき、新聞の報道は不正確なので、長官は再販の必要性について、これは的確じゃないと思うのですが、ここで言っているのは、新聞では、「原則的には弊害が多い。しかし、例外的には、基準が守られれば弊害は防げる。」というようなことで、まあ再販は置くことに賛成で、現行をそのままにしておくことに賛成したのだという意味のことを言われておるので、新聞だけで判断したのじゃ申しわけないですから、長官が再販制度について、積極的にか消極的にかはわからぬが、あなたが賛成したというそのことは、どういうところにあるか、したがって、それは一体去年の私の質問に対する答えと食い違っていたらどういうところか、ひとつ長官、答えていただきたい。
  64. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 昨年の七月十九日、前の当委員会においてお答えをした部分に関するお尋ねであります。いまここに速記録がございますが、こういうふうに申し上げております。「つまり、再販価格維持契約というのはやはり例外的には認めなければならない、認めたほうが社会全体としていいのだというようなもので実際にあるのか、あるいは、それは何がしかの利益はあるだろうけれども、それから起こってくる弊害のほうがもう圧倒的に大きくて、むしろ禁止すべきものではないかと、先ほどお話のあった例は私は非常に問題のあるところだと思います。いま何らの法益を持っていないのだというふうにはなかなか断じ切れませんけれども、しかしいかにも弊害——害のほうが大きいという、かりにそういうことであれば、むしろ問題をもとから考え直すべきなのかもしれない。しかし、それはそうでないのかもしれない。」云々というのであります。つまり、ここで申し上げておったのは、再販というのは比較的新しい法の概念でございますから、独禁法の例外として一定の制限のもとにいま認めておられる——いまというのは当時であります。認めておられる。そこで、そういう問題を根本から考え直す契機として、当時法律案というものが考えられた。これからは事実問題でありますが、考えられた。それに対して関係各省がおのおのの意見を申した。私は、この意見の中には、これは当時言われておったことと私は違うと思いますのは、何も業界の圧力をそのまま代表したと、そういう意味で各省が意見を言ったとは必ずしも言えないので、やはり再販価格維持契約というものには法益があるのではないかということを各省が主張しておったように思います。そして、公取でもそういうことをお考えになりながら、いろいろに議論をしておられる。なお、意見を申した中には、何か法制局もあったように思います。それは、新しく法律を考えられるとすると、この再販価格維持契約というものの弊害と法益とをはっきり分けなければならないが、それを分ける基準は何であるかというところで、法制局も非常に法制的にむずかしい問題にぶち当たった、そういうことで、結局、昨年の場合、法律案を提案することを公取委員会が断念をされたように思います。したがって、これは圧力に屈して云々というのではなかった、私は、横からやや支援態勢をとって問題を見ておって、そうではなかったと思うのでございます。結局、ですから、去年は、再販価格維持行為というものの法的な意味合いいかんという議論がしきりに行なわれて、ついに結論を得ないままになってしまったということであったと思います。当時も申しましたように、私どもがともかく一番関心を持っておるのは、現在の再販価格維持契約が許されておる——現在というのは当時でありますが、六業種七品目の中には、どうもその最低の条件にかなわないものがあるのではないかという疑問を持っておりましたので、法改正云々はともかくとして、見直しをやっていただけないかというのが、物価問題からの私どもの願いでございます。その後、委員長がかわられまして、最近、法律の問題はともかく、これは一応この際別にしておいて、そうして指定されて十何年になりますところのこれらの品目について、いわゆる洗い直しをやろう、こういうことで、すでに作業がもうほとんど最終の段階に近いのではないかと思いますが、こういうことでありますから、私は、この委員長の御決断に対しては非常に満足をしておりまして、一日も早くその結論が出ることを願っておるわけでございます。したがって、昨年から今年まで一貫して私どもがとっておりました立場は、そういうむずかしい法の議論もさることながら、ともかく現に認められておるところの再販契約をレビューしていただきたい、こういうことであったわけでございます。
  65. 木村美智男

    木村美智男君 長官、なるほどね、あなたが速記録……私も同じものを持っているんでね、ちょっとぬるま湯に入ったようなお答えを、長官、今日のことを考えて答えておられたか知らぬよ、そのときはね。しかし、いま言ったようなことであるが、経過的に見ていくとね、そのあとのほうを読んでみてくれませんか。「今度不幸にして起案ができないことになりましたので、もう一度いま御指摘のような点についても、私どもの役所でも、再販価格維持契約というものは比較的新しい概念でございますけれども、これは一体どういうものなんだということをやはりもう一ぺん考え直してみる必要があると思います。」——これは、さっきのようなのらりくらりと違うんだからね。これはちゃんと言い切っているわけだ、長官ね。そうして最後に、「再販価格維持契約というのは一体最低どういう場合にどういう理由で必要なんだということから研究して私どもとしては見直したい、こう思っております。」、こう言っているわけです。したがって、これは長官、この点については、前のほうでは、決して私は、そういうようなことについては単に問題点を指摘をするような形でものを言ったのであって、断定したんじゃないという、こういうお答えであるけれども、これは相当、長官、積極的な、あなたは第三者、傍観的な態度じゃいかぬじゃないかという私の言ったことに対して、こういう答えをされたんであって、したがって、当時の長官としては、やはり相当私は再販規制ということについては弊害を認めて、積極的にこれを規制しようという気持ちが強かったようにこれは受け取っておったわけなんです。だからこそ、その物懇の勧告というものは、これは一応妥協の産物だと、こういうふうに言いながらも、しかし北島さんは、その妥協の産物ですら今日の現行法では取り締まれない、だから限界があるから単独立法をしようと、こう言ったんですよ。ところが、しかし長官は、「さらに何がしかの改善があるならば」という認識のところを見ると、公取が特別立法を考えたよりももう少しきびしい気持ちを私は持っていたと思う。これは、すなおにその時点のお話をすれば、長官が、これは簡単に洗い直し程度でお茶をにごすということでたいへんいいことだというふうに思ったというんでは、ちょっと私は、これは長官が変身をしたか、あるいは国民を欺瞞したか、どっちかだと、こう言いたくなるんですよね。だから、そこら辺のことについて、長官もう少し、前のほうの答弁はそのとおりでいいですが、今後のことを、長官の考え方を、いまもって再販というのはああやって放っておっていいんだという、ほんとうにそういうお気持ちであるのかどうか。
  66. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは、当時もたしか申し上げたと思いますが、こういう経緯があったわけであります。つまり、公正取引委員会が再販価格維持契約に関して法律の改正を考えられた段階がありまして、各省に意見を求められた。他の各省は、先ほど申し上げましたような観点から意見を申し述べたわけでありますけれども、私どものほうの——これは事務当局でございますが、事務当局は、もっと微温的でない改正ができないかという注文を確かにつけておったようであります。ところが、片方では、いやもうこれでもきびし過ぎるという、あるいは法的に介入すべき点があるという反論がございますし、片方では、これではやり過ぎるという反論があったのではないか、これではとても作業が進まないだろうと。そこで、私も、そうであれば、ベストのことを何も考えずとも、とにかくベターなものを考えればいいではないか、あっちこっちへふえては公取も仕事がおやりにくかろうから、方向さえいいんならば、そうやかましい注文をつけるなといって、私は事務当局に実際言ったことがございます。それはたぶんこの前に申し上げた。そこで支援態勢に入ったということを申し上げたわけであります。それでもやはり、法制局をはじめとする各省の疑義が解けませんで、北岳委員長が当時言われましたように、法律を出すことをやめるということになって、そこで、先ほどの御引用になりましたところへ帰ってくるわけでありますが、私が当時申し上げましたことは、再び、冒頭にお尋ねになりました云云、そこで一ぺんもとへ戻って、再販価格維持契約というものは、一体最低どういう場合にどういう理由で必要かというようなことから研究して見直したいと考えておりますということを申し上げて、これは結局、法律改正を一ぺんは公取がお考えになったが、いろいろな疑義があって、それができなかった。そういう疑義の中で私どもがわかったことは、やはり現に指定されておる品物の中には、最低の理由に達していないものがあるのじゃないか。そういうことだけは、公取御自身が法律を直してみようかとお考えになったことの中から明らかになったわけでありますから、そこで、いま指定されておるものが全部いけないということは速断に過ぎるけれども、少なくとも相当なものが見直される必要があるのではないかというふうに私どもも思うに至った。それが、先ほど御引用になりました、最低どういう場合にどういう理由で必要かということを研究して見直したいということになったわけであります。そうして、私どものそういう願いを現に公取委員会が間もなくかなえて、そういう方向で間もなく洗い直しを完成しようとしておられる、そういう経緯かと思います。
  67. 木村美智男

    木村美智男君 長官、先ほどから、各省に疑義があったと言う。それはなるほど疑義は出されておったのですけれども、去年のことを振り返って考えてみてもらいたいと思う。厚生省は、まず、これはともかく最大の理由は、おとり、通産省は商慣習を問題にした。それで、私はさんざ厚生省と通産省と、この席上でやり合った。そうして最終的に、政府側の意見は不統一じゃないかということになって出てきたのが、各省次官が出て来まして、それはもう大体問題点というものを集約をして、そのおとり廉売については、北島委員長は、現行独禁法の十九条をもってこれは取り締まることができるということを言明し、大体そういう立場から法案作成にあたってその点の改正をすれば足りるということでこれは意見調整ができた。それから商慣習の問題については、これはいまどんどんどんどんオートメーション化し、企業が寡占化している中で——政府方針だってそうでしょう、中小企業の近代化、流通の近代化というものをどんどんはかっていかなければもうやっていけない段階になってきているときに、依然として昔からの商慣習ということを言っていることは、これは政府の政策としても逆行じゃないかとぼくは指摘をした。そういう形の中で、通産省のほうが多少文句はあったようですけれども、これは先生おっしゃるような筋道で通産省としてもけっこうですというのが、これは速記録をまた出してもいいですけれども、時間の関係で省きますが、通産次官が答えた。下山企業局次長ですか、多少その前の委員会で異論も唱えたが、最終的には通産省のほうもそういうことでこれは同意をした。長官がここで、各省の意見がと言うことは、あの法案をつくる過程において議論のあったことは認めるが、もうすでに山田委員長の段階になったときに、厚生省も通産省もあっちこっち向いておってはどうにもならないという、そういう関係じゃなかったかと私は思っているんですがね。そういうことだから、それはそれとしていいんですが、そういう意味で、そこのところを重点に答えられることについては納得ができない。  同時に私指摘しておったのは、現在の指定商品についても問題がありますよ、それは言われるまでもなく、大体この独禁法がきめておる日常使われるもの、自由な競争が行なわれているもの、こういうものにすら該当しないものまで指定してあるのだから、これは問題がある、だから、そういうことを言うよりも、制度それ自体について私は相当問題を出して、それは長官、あれは木村の好きなことばだと言うかもしれませんが、例の垂直的な、市場支配的な企業がやっているカルテルについては一体どうするんだというやつを出したでしょう。そこからこの問題が発展をしてきているのに、今度は、実は、公取委員長の言っている法の運用を強化するという中では、この間もいろいろ質疑をしたのですけれども、どうも縦のカルテルについては現行の独禁法は全くの無力だから、そこのところは考えていかなければならぬのじゃないかということで言ってきて、長官も根本的に見直すということだから私は期待したのですよ、それは。それが、公取のほうの意見を、まあ大体よろしいと、こう言われたというんで、どうもわからぬから、長官真意はどうなんだというふうに伺ったわけですよ。そこのところを、まあそういうことになっちゃったということで終わったことだからというのならいいのですが、これはあとへ残しておきます。  そこで、長官、あなたにあらためて聞きますが、再販というものの必要性をあなたが認めている理由を衆議院予算委員会お答えになった。新聞じゃうまくないからあなたから聞きたいと私さっき言ったのだが、答えていない。ちょっと答えてくれませんか。大体同じように、この間答えたのと。
  68. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、こんなふうに申し上げたと思います。  ただ物価という観点から申せば、それは、ものの値段は安いほうが消費者の観点からはいいということは一応言えるかもしれませんが、しかし、経済全体として考えると、物は安ければ安いほどいいというものではない。というのは、再生産価格ということもございましょうし、また利潤にも適正な利潤というものもございます。したがって、再生産を危うくするような価格が支配的になるということは、決して国民経済全体としてはいいことではないと思います。それから、おとり商品云々ということも確かに一つの大事な問題でございますが、他方で、消費者が日常使い、かつ自由競争が行なわれているものということになりますと、非常にそのものの値段が、いわゆるダンピングが行なわれるというような場合には、これらを販売しておるところの多くの零細企業は経営に困難を感じましょうし、またその結果は、あるいはそのような商品は店には並べない、販売しないということにすらなるでありましょう。その場合には、零細企業そのものの経営に支障があるばかりでなく、ひいては消費者に迷惑をかけることにもなる。つまり、日常使うものを売っていないということになれば、消費者に迷惑をかけるということにもなりましょうと思います。したがって、それらのことのために、再販価格維持契約が一定のきびしい条件のもとにやはり許される法益があるということになるのではないかと思われます。確かにそういうふうにお答えいたしたと思います。
  69. 木村美智男

    木村美智男君 まあ、要点だけが新聞に載っているから、多少ふえんしてお答えをされたので、少しわかってきたわけですがね。長官、いま答えられている中にも、やっぱり安売りという問題は一つの問題点だということをやっぱり考えておられるわけですね。
  70. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、再生産の価格を割ったり、あるいは適正利潤を切ったりしたような安売り、いわゆるダンピングとかりに申しますが、そういうことは、生産者にとってばかりでなく、消費者にとっても、長い目では不利益であり、また不便である場合がある。これは販売業者にとってもそうであろうと思います。
  71. 木村美智男

    木村美智男君 だから、それが再販制度とどういうことになるのかということを聞いているわけです。
  72. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) したがって、そういう場合には例外的に再販価格維持契約が認められる法益がある、こう考えられますということを申し上げたわけでございます。
  73. 木村美智男

    木村美智男君 そうすると、要するに、安売りの問題と、もう一つは経営が成り立たなくなる、ならぬというお話と、二つ——いろいろ言われているが、大体中心はそういうことじゃないですか。
  74. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それからもう一つ、その結果は、日常使う商品が、かどの店に売っていないということになれば、消費者として、ことに医薬品なんかの場合には相当不便があるのではないか。この三つでございますか……。
  75. 木村美智男

    木村美智男君 三番目はおかしいな、これは。長官、日常使われるような品物が店頭に売られていないということになったらというような、そんなことが考えられますか、現実の問題として。
  76. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、店が商品を売るのは、当然利益を得る目的で売るのでございますから、この商品が利益がないということになれば、店はそういうものを置かないということは十分考えられることだと思います。
  77. 木村美智男

    木村美智男君 これはたいへん微妙になってきたけれども、しかし、薬なんていうものを、利益がないから売らないなんていう関係が、今日の生活の中で、そういう事態が出てきますか。私は、この点は、価格の問題だけで、価格——こりゃ変な話になってきたが、もうけがなかったら、その品物がなくなっちまうという、しかも薬ですよ、私はやはり、そういうことについては、価値というものは、物の価値という問題は、もう一つあると思う。利潤という問題以外に。だから、現実の問題としては……。そりゃ長官、頭の中で想像するならばあり得るかもしれぬが、私は、そういうことは、ちょっと今日まであったためしも聞かぬし、それから現実にはそういうことはちょっと考えられぬ。  それは、まあいいとして、一応ダンピングの問題なり、中小企業が成り立たぬというような問題なんですが、かつてのこれは再販指定してあったキャラメルなり雑酒なり、えりつきワイシャツなり、これを取っ払ったときにおいても、何と言うのですか、要するに、そういうものを売っている小売り商が、もう品物を売れなくなって店をたたんだとかいう話も、一つも私聞いていませんし、現実にそういうことが起こり得るかどうかということについても、私たいへん問題だと思う。山田委員長、この間私例を引いて申し上げたのですけれども、「公正取引」という雑誌の中で、このことについてもちゃんと言っております、これは。それで、何か長官は、いまたいへんダンピングが行なわれるというようなことが現実に起こり得るようなことを言っていますけれども、私は、この点、山田委員長の分析は、これはなかなか正確に言われているのじゃないかと思う。つまり、おとり商品と申します場合に、これが開店披露とかなんとかというようなことで、五日間とか一週間とかやるならば、これはやっぱり安売りの場合と同じです、そんなにおとり商品が大量に出るものではないのじゃないですか、たとえばデパートで期末大特売とかいっても、これは実態的にどの程度のものか、なかなか把握しにくいけれども、そう業界でおっしゃるほど、おとり廉売ができるということは、その背後には必ず異常在庫があるということではないでしょうかと。要するに、異常在庫があるから、そういうものが出るのであって、経済自体一般論として、継続的にそういう安売りの状態が起こってくるなんていうことは今日ではむしろないのじゃないか、少ないのじゃないかということを山田委員長も言っておる。私も、やっぱりそういうふうな見方をしているので、これが実は再販を維持してきている従来からの亡霊であり、幽霊なんですよ。必ず、この再販問題が起こると、安売りが起こるのだ、ダンピングが起こるのだ、だから中小は店をたたまなければならぬのだ、だからこれは残しておかなきゃならぬのだ——これはだれが言っているのかというと、メーカーが言う。事業者、生産者が言っている。これはほんとうにそうなのかどうなのかということを、ちゃんとやはり現実に把握した上で、長官、これは再販制度は必要なんだ、こういう事態が起こったら必要なんだと言われれば、私は納得するというのです。歴史的に見たって、一時過去にあったその例ぐらいです。いま、経済情勢もまるっきり一変しておって、むしろ長官がいみじくもこの中で、どっちなのかといって疑問点を投げかけられた、その弊害のほうが多いということをこの前から口をすっぱくして私言っているわけでしょう。いまや安売りなんかなくなってしまっている。スーパーマーケットへ行ってごらんなさい。一年ぐらい前は安売りを相当できたのが、いまはもうちゃんと販売ルートというものがきちっと指定されて、もうそれが許されない。みなはじき出されて、そして、へたにやれば、試買員といって、試みに買う人間を使って、商品ごとにナンバーが打ってあって、どこでは安売りをやっている、したがってこの商品は認めない、こういう関係がきちっとでき上がってきているのですよ。  だから、そういうことで、今日の再販制度というものがいいのかどうかということをこの間から言っておって、それに対してちっとも取り締まる手だてがないんじゃないか。公正取引委員長は、十九条でやるのだ、不公正な取引方法だなんて言っているけれども、不当とは何ぞやという争いで、いまだに一年前の粉ミルク事件も満足に解決せぬし、松下のこれだって解決しないじゃないですか。それは、公正取引委員長は一生懸命やっている。やっていたって、法律自体が無力なんだから、これは取り締まりができっこないわけなんです、ぼくから言わせると。そこのところを根本的に今日検討をしてみてくれるのだろうと思って期待しておったのです。だから長官、この根本からぜひ私としては見直したいと、こう思っておるということについて、見直した結果、再販行為は、では独禁法上一体どういう概念として長官とらえることになったんですか。まだ結論が出ていないというのなら、ずいぶん長いことかかっているということにもなるのですけれども、もし結論が出ておるとするなら、公正取引委員会が言うように、これは法律の十九条で禁止されている不公正な取引方法ということで、いわば、二条七項ですね、これに該当する不当拘束条件づき取引だという解釈をあなたはとっていらっしゃるのか、それとも、独占禁止法本条第三条の不当な取引制限といったようなことに類する、つまり縦のカルテルは不当な取引制限のようなものとしてあなたはこれを把握しておるのか、この点、ひとつ長官、聞かせてください。その結果、公正取引委員長が言うようなことに自分もなったから、今度のあれは法改正せずに、洗い直しでよろしい、こう賛成したのかどうか。そういう意味で、根本的に考え直した結果どうなったのか、長官にその点伺いたい。
  78. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 昨年末、私は木村委員の御主張にかなりの程度同感を申し上げて実はお答えをしてきたつもりなんでございます。つまり、いまあれだけのものが指定されているけれども、ほんとうにこれが入り用なのか、この指定をやめるとほんとうにそんな困ったことになるのかと、こういう御質問に対しては、実は私もその点は疑問を持っておりますと、こういう立場でお答えをしてまいったつもりです。しかし、今度は一転して、だから全部の再販は要らないのではないかというお話にかりになるといたしますと、そんなつぶれた例なんかないではないか、最近と、こうおっしゃいますと、それは再販価格維持契約で保護しておったから、ないのでありまして、これを取ってみないことには、あるのかないのかということは、実際その議論ができないわけでございます。ですから、まずだいじょうぶだと思われるものについては、これは指定を取り消していただくということがいいということになるのだと思います。  それから後段の問題は、そしてかりに公取委員会がいわゆる洗い直しをされても、何がしかのものは再販価格維持契約を認められて残るでありましょうが、このことが、いわゆる二十四条の二というものが、公正取引、私的独占禁止法の中でどういう地位を占めるのか、その点は、ちょっと私からは正確にはお答えしにくうございまして、これは法の運用者であるところの公正取引委員会お尋ねをいただきたいと思います。
  79. 木村美智男

    木村美智男君 長官、あなたたいへんなことを言われましたね。再販で維持していたからつぶれなくて済んだんだと。これは、公正取引委員長、この点では私この間聞きましたが、あなたの言うことがちょっとけしからぬという意見になりそうだが、あなたどう考えますか。「公正取引」の中であなたが言っているのは、こういうことなんです。つまり「不況カルテルなり、合理化カルテルなりで、一時の安売りというものを押えようと、これは容認できると思うんですよ。」、ところが、「不況で購買力が急激に減退して、というときに、それをある程度のところで支えようという努力は、これはもっともだと思うんでございますが、それを再販維持契約の形でやりますとね、これはずっと続いていますからね、」——いいですか、長官、大事なところです。「不況から好況になって、購買力がどんどん上って、例えば家庭用電器製品の如き、飛ぶように売れても、依然として再販価格を維持しているというんではこれは競争維持政策の立場からしますと、どうしても容認出来ない。」と公正取引委員長は言っているんですよ。あなたは、再販で維持してきたからつぶれないのだと、こう言っているわけだ。ここは長官、うまくないです。独禁法というものをどう考えていますか、あなた。だから私は、長官がたいへん共鳴をしてくれているようだから、実は力強く思って今日まで一生懸命やってきたんだけれども、一ぺんに夢がさめるようなことは言わないでください。
  80. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ですから、いま指定されているたくさんのものの中にはやっぱり整理していいものが相当あるんではないかという立場は、私もそう思っておりますと申し上げて、しかし一転してと申し上げたのは、一転して、しかるがゆえに全部いまの再販価格維持行為というものは認めなくていいのだという御議論になって、その証拠には、かどの店がつぶれたというようなことはないではないかと言われましたので、それは従来再販価格維持契約というものが認められておった結果であるかもしれない、ただそれが過保護にわたったということは認めるわけですから、相当の大幅の整理をしていただきたいということになりますけれども、過去十年余りそういう店のつぶれたしるしがないではないかと言われることは、これは証明することは困難かもしれませんが、そういう法益を再販価格維持契約が保護しておったということになりはしませんかと、こういう意味でございます。
  81. 大森久司

    委員長大森久司君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  82. 大森久司

    委員長大森久司君) それじゃ速記を起こして。
  83. 木村美智男

    木村美智男君 きょうは、物価の問題の中で、特に最近、生鮮食料品の中でも、食肉の問題が国民生活に非常な影響を、つまり食肉の価格の値上がりという問題がちょっと想像以上になっている点もあるものですから、農林省のほうから、今日一体需給関係というものはどういうことになっているのかという現状をひとつ聞かしていただきたい。時間の関係があるようでございますから、答えを、豚、牛それからマトン、鶏、これくらいでけっこうだと思いますが、そういうことで、いまの需給状況をお聞かせいただきたい。
  84. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) それでは御説明申し上げます。  四十二年の食肉の全消費量は百十五万トン程度でございます。そのうち、牛肉について申し上げますと、生産量が十四万六千トンございまして、輸入量が約一万三千トンということで、約十六万トンでございます。それから豚肉が五十五万六千トンの生産でございまして、輸入量というのは今度ございません。それから馬肉は、生産量が一万二千トンでございまして、輸入が二万二千トン、合計三万四千トン程度でございます。それから羊肉は、生産量が約千五百トン、輸入量が九万七千トン、合計いたしまして約九万九千トンでございます。それから鶏肉につきましては、生産量が二十八万五千トン、輸出量が若干ございますが、輸出量はネグリジブルでございますから申し上げません。輸入量が約八千トンございまして、合計二十九万三千トン程度でございます。合計いたしますと、輸入量と生産量と合わせまして百十四万三千トン程度になるわけでございますが、御承知のように、豚肉につきましては、四十二年の当初は非常に価格が低落をいたしまして、事業団が買いささえをいたしておったわけでございます。そういうものを差し引いて考えますと、大体、食肉の消費量は百十五万トン程度であるというふうに考えておるわけでございます。
  85. 木村美智男

    木村美智男君 そこで、豚肉の関係で、私、去年六月ごろに局長にもお伺いしたのですが、ちょうどいまもお話ありましたように、買いささえを畜産振興事業団がやられたという時期に、大体八十五万頭分くらいということのお話がありました。で、一部腐敗のおそれがあるというので、つい最近、最近といいますか、だいぶたちましたが、放出したことがありますね。ところが、最近また逆に、豚肉が少し値上がり傾向にあると聞いているんですが、そこら辺は何か心配ない、調整ができると、こういうふうに見られていますか。それとも、何か対策をとられておるのですか。いや、そういう状態はちょっと知らない、こういうことなんですか。
  86. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) 御承知のように、四十一年三月から供給過剰で価格が低落をいたしました関係から、事業団が買いささえをいたしたわけでございますが、昨年の大体七月の中旬ごろまで買いを続けまして、供給が少なくなってまいりまして、七月末ごろから価格が騰貴をいたしました。したがいまして、事業団は七月の中旬に買いを停止いたしまして、七月の三十一日から市場に放出を始めたわけでございます。八月、九月はかなりな高水準になったわけでございますけれども、事業団の放出の効果が逐次あらわれまして、価格は漸次低落をいたしまして、十二月に入りましてなお低落をいたしておりまして、十二月の末をもって事業団の売却は停止をいたしておるわけでございますが、現在価格がおおむね三百四十円くらいのところに安定をいたしておるという状態でございます。
  87. 木村美智男

    木村美智男君 それはけっこうでございますが、ここで一つつけ加えてお伺いしておきたいのは、昨年の暮れに、衆議院のやはり物価の委員会で、牛肉の輸入のことに関連をして、農林省として、上期大体一万四千トンくらいで、下期についてはこれは目下検討中だ、こういうふうに言っておられたのですが、それがどうなったかということが一つと、もう一つは、牛肉の輸入先と数量、これもひとつ明らかにしていただきたい。
  88. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) 御承知のように、上期一万四千トンの割り当てをいたしたわけでございますが、下期は、おおむね五千トン程度の輸入をいたしたいということで、現在事務的な手続をいたしておるわけでございます。  輸入先といたしましては、大体豪州とニュージーランドでございます。
  89. 木村美智男

    木村美智男君 大体というのは、まだほかにあるのですか。
  90. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) ほかにはございません。
  91. 木村美智男

    木村美智男君 それからあの際に、もう一つ私は、牛肉はこれから需要もどんどんふえるだろうし、当時、物価の対策委員会として福島やら岩手のほうの畜産事業の関係を視察をしてきて、事業者からいろいろと痛切な要請を伺ったのでしたがといって、農林省に対して、そのとき、たぶん六月ごろの委員会だと思いましたが、私は、豚と比べて、牛というのは非常に経済効率が悪いので、そういう面から積極的な増産対策をとる必要があるじゃないかということで、大体三点くらいを重点にして私申し上げたつもりです。一つは、子牛が一頭五万円くらいするので、一たん病気にでもかかって死なれたら、それでもう大きな損失だという、そういう関係から、ひとつ飼育センターというものを国が大々的に助成、育成をすべきだということ。それから二つ目には、よく国有地払い下げ問題でいろいろ問題になっているようなことがあるが、まず牛を飼う草地をつくる、国有林の払い下げ、国有地の払い下げといったようなものを、これは農林省として積極的にやるべきじゃないかということを二つ目に申しました。三つ目には、何といっても外国から買ってくる飼料、食べさせるものが高いので、これを何とか国がいろいろの関係でひとつ対策を立てて、もう少し飼料を安くするような方法を講じられぬものか、そういう形でひとつ国内における肉牛の増産対策を立てて、それが国民生活改善をし、物価対策にやはり好影響をもたらす、こういうことについてぜひ努力してほしいということを特に要望しておいたのですが、四十三年度の予算の面で、こういう問題が具体的な対策として、去年との対比で、どういうことになっているのか、ちょっとひとつ聞かしていただきたい。
  92. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) まず第一に、御承知のように、昭和三十一年ごろを最高にいたしまして、わが国の肉牛は逐次減少に転じたわけでございます。これは、御承知のように、わが国の和牛と申しますか、肉牛は、使役なり採肥——肥料をとるというふうな形で飼育されておったのでございます。ところが、農業機械が非常に進展をしてまいった、もう一つは、化学肥料が非常に普及してまいった、こういうことから逐次減少をしていったわけでございます。そこで、四十一年に百五十七万頭ということでございましたが、非常に減少してまいりましたので、何とか増産をしなければならぬということで、四十一年に肉牛の増産の施策につきまして根本的な態勢を整えることにいたしたわけでございます。で、全国でほぼ千二百カ所ばかりになろうかと思いますけれども、和牛の改良地域でありますとか、あるいは増産地域でありますとか、肥育地域というふうなものを指定をいたしまして、そこで振興計画を立てまして、肉牛の増産につとめることにいたしたわけでございます。その結果、四十二年におきましては百五十五万二千頭ということでございまして、減少率は非常に少なくなってきた。約一・五%ぐらいの減少率にとどまるようになってまいりまして、いろいろな施策の効果も出てまいったと思うのでございますけれども、最近は肉牛の屠殺率が減少いたしておりますことに比べまして、子牛の生産がふえてまいっておるということで、やや上向きの方向に向かいつつあるというふうに判断をいたしておるわけでございます。  そこで、御承知のように、肉牛にしましても、乳牛でも同じでございますけれども、本来草食性の動物でございますから、できるだけ草を食わせるということが必要であり、また、濃厚飼料を購入して飼育をいたしますよりは、自給飼料作物によって飼育をするほうがはるかにコスト的にも安くつくわけでございます。そういう点から、草地改良事業を積極的に行なうというふうなたてまえでおるわけでございますが、草地改良事業につきましては、今年度、面積としましておおむね二万六千ヘクタール程度草地改良をいたしたいというふうに考えておるわけでございますが、これはもちろん肉牛だけでございません、乳牛も含まれておるわけでございまして、肉牛と乳牛を分けるということはなかなかむずかしいわけでございますが、そういうことで約四十二億の予算の計上をいたしておるわけでございます。  それから先ほど先生のお話がございました子牛を繁殖させますために繁殖育成センターというものを助成をいたしておるわけでございます。これは、計画的に毎年一定の数を認めていただいておるわけでございますが、昨年に引き続きまして四十三年度三十カ所の繁殖育成センターを設置をいたしたいというふうに考えております。  それから四十二年度におきまして、御承知のように、肉牛生産につきましては、非常に所得が低いわけでございます。そういうふうな関係から、肉牛の販売にかかります所得税の四年間の免税措置をとったわけでございます。それから四十三年度におきましては、それに加えまして、地方税の免税措置をとることにいたしているわけでございます。  それから四十三年度で、今回新たな措置をとりましたものといたしましては、里山利用の肉牛の生産施設につきまして二十カ所の助成をいたすことにいたしているわけでございます。これは、御承知のように、最近、薪炭林等がほとんど利用されないというふうな形で、国土資源の利用としてはかなりのむだもございますので、こういうところを利用いたしまして積極的に肉牛の増産をやるというふうなことで助成をいたしたいというふうに考えているわけでございます。  なお、四十三年から新しく事業が実施されることになるわけでございますが、子牛の安定基金というものを設置をいたしまして、畜産振興事業団から助成いたすということにいたしているわけでございまして、四十二年度におきまして約七カ所ばかり助成をいたしまして、それが四十三年度から事業を実施する、こういうことになるわけでございますが、今後も引き続いて必要な県に対しまして助成をいたしたいというふうに考えているわけでございます。  おおむね今回とりましたものは以上のとおりでございますが、なお、肉牛につきましては、家畜導入事業というものを実施しているわけでございますが、これは昨年度三万頭でございましたが、引き続きまして四十三年度におきましても三万頭ということの助成をいたすことにいたしているわけでございます。  えさにつきましては、御承知のように、小麦でありますとか、大麦でありますとか、というものにつきましては、これは政府が直接管理をいたしているわけでございます。その他のものにつきましては、おおむね、トウモロコシでありますとか、マイロでありますとかというものにつきましては、これは国際的に自由な流通飼料というような形になっているわけでございます。  そこで、御承知のように、飼料の需給の安定、ひいては価格の安定をはかりますために飼料需給安定法がございまして、これを運用いたしているわけでございます。小麦につきましては約三万トン、昨年度四十二年度より約三万トン、それから大麦につきましては六万トンの増加をいたしております。また、政府が需給調整として買い入れますトウモロコシにつきましても二十一万トンということで、昨年より六万トンばかり増加をいたすことにいたしているわけでございます。
  93. 木村美智男

    木村美智男君 だいぶ去年から見れば、農林省のほうでも増産対策については前よりは力を入れ始めたように……。私、感じだけで申し上げて恐縮ですが。しかし、まだまだ、いまの肉牛生産の関係からいうと不十分だと思うので、これは、ことしこれが軌道に乗ったら、さらに来年度拡大をするという方向で、ひとつ努力をしてもらうということで、きょうはちょっと時間の関係で突っ込んでおれませんから、要望だけいたしておきます。  そこで、畜産局長にお伺いしたいのは、こういう措置をとる結果、一体、今年度の需給関係というものは——肉牛のですね、あるいは牛肉の需給関係というものはどういうことになっていくのかということを、ひとつ、これはしろうとなものだから、これだけのことをやってもなおかつ、これくらいは満たせるが、これぐらいは不足であるとか、あるいは、一昨年でしたか、非常に肉牛が少なかったために乳牛の屠殺をしたでしょう。そのことがはね返って、牛乳の値段をつり上げているわけですね。こういう関係を考えてみますと、一体、いま答えられたような措置によって、ことしは、乳価の高騰は、大体値上がりはなくて済ませそうだというふうな判断になるのかどうか、値上がりはないというふうに確認をしていいのかどうか、そういう点をひとつ聞かしてください。
  94. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) 四十三年度の肉の見通しでございますか。——四十三年度につきましては、実は、いま、畜産振興審議会で御意見を聞くこともございまして、いろいろと来年度の需給計算をいたしておるわけでございまして、まだ的確に申し上げる段階になっておらないわけでございますけれども、最近の情勢は、一万四千トンの肉を輸入いたしました結果、肉の価格動きがどうなっているかというふうなことを簡単に申し上げてみたいと思うのでございますけれども、大体毎年、御承知のように、冬になりますと牛肉の需要のシーズンになるわけでございます。したがいまして、冬になりますと価格が騰貴するというふうなことが季節変動としてあるわけでございますが、一万四千トンの肉を入れました関係から、おおむね横ばい状態に推移をいたしております。特に、中肉ないしは並み肉につきましては、やや軟調であるというふうな状態でございます。したがいまして、今後も引き続いてこういう状態で推移するのではなかろうかというふうに実は考えております。  ただ、ここで先生に申し上げておきたいと思いますのは、外国から入りますのは、いまニュージーランド、豪州等から入っておりまする肉は、主としてアンガス、ヘレホードというふうな牛の肉でございます。この肉は、味だとか、そういうふうな点から比べますと、わが国の和牛から生産されます肉に比べますと、劣るというふうな点がございます。それから一方で、冷凍で来るというふうなことで格差があるわけでございます。そういうふうなこともでございますし、また、日本人は和牛の肉に対します嗜好というものは非常に強いわけでございます。したがいまして、一万四千トン割り当てをしまして、まあ大部分のものが入ってきておるわけでございますけれども、なかなか外国の肉は売れないという実態がございます。そこで、小売り業者等を中心にしまして、外国の牛の肉を食べるための特売デーであるとか、あるいはお祭りであるとかというふうなことをやりまして、相当宣伝をいたしておるわけでございますけれども、なおかつ、あまり売れないというふうな実態がございます。これは、先ほど申し上げましたように、どうもひとえに、日本人の味覚が、日本の非常にまあおいしい和牛の肉に対する特殊な嗜好を持っておるというふうなことの結果ではなかろうかというふうに考えておりまして、したがいまして、多量に外国から肉を入れたから必ず国内の肉の相場が下がるかどうか、むしろ、売れないで残るというふうな形が起こり得るということを懸念いたしておるわけでございます。しかし、今後外国の肉の食習慣がついてまいりますと、こういう事情も若干変わってまいるかと思いますけれども、現在の状態では、なかなかどうも売りにくい面がある、こういうような状態でございます。
  95. 木村美智男

    木村美智男君 その話は、あとから私もしますが、どうも畜産局長、私が言わんとしているところへ予防線を張っているみたいだけれども、そこでまあ、農林大臣いらっしゃいましたので、大臣もひとつちょっと聞いておいていただいて、あとで大臣にお伺いしますが、畜産局長が答えられたように、いまの輸入肉の状況は大体まあそういうことだというふうに私も聞いておる。実は、全体の、何といいますか、需給状況というやつは畜産審議会でいま相談をしているという。まあ、事は牛ですから、急にことし農林省が力を入れたからといって、ことし和牛の供給量がぐんとふえるなんて私考えて質問したわけじゃない。だから、それは畜産審議会にいろいろ聞かれていることはけっこうですが、まあとにかく、今日の時点で直ちに期待はできないという状況にあることだけは間違いないですね。この間私実は練馬の——東京のいなかですから、ちょっと全部がそうだとは言えませんけれども、肉屋へ行った。そうしたら、牛のロースは幾らですかと言ったら、うちに置いてありませんのでわかりませんという。ちょっとおかしいなと思ったのです。そうしたら、よくあれしましたら、結局、今日牛のロースなんていうものは、もうほんとうの話、一般家庭の食膳にのぼってこない。ということは、一つの変化がここへ出ているわけです。買いに行ったのじゃなくて、一体どのくらいしているだろうと思って値段を調べに行ったわけですが、幸いなかったので助かったようなかっこうで帰ってきたのです。ところが、その翌日、新聞に、「牛肉は遠くなりにけり」という見出しで載っている。ぼくの思っている、あるいは考えていたことがそっくりそのまま、これは全部読むつもりはないのですが、ちょっとここら辺、農林省としてほんとうに考えておられるかどうか、お聞きしたいのですが、これは大事なことです。「牛肉が高い。日曜の夜ぐらいはスキヤキを食べようと思っても、四人家族なら肉だけで千円もかかってしまう。昔はもっと気軽にスキヤキをやれたのに……」と主婦は嘆く。」と書いてある。もう一つ、もう少し次のほうに、昔から肉屋の看板は、まず牛が一番目、「牛豚鳥」となっていた。なるほど子供のときを考えてみると、牛が確かに一番上になっていたですね。ところが、近ごろは、牛の売れ行きはさっぱりで、地方の肉屋の中には、牛肉が置けないので、看板も牛なしになっている。それで、実際には牛は一番下になって、最近は「豚鳥牛」になって、看板は大体塗りかえられてきている。ここら辺がちょっと真相をいっていると思うのですが、昭和三十一年ごろには、日本人の食っていた肉の半分ぐらいは牛肉であった。あと、豚が四分の一ぐらい、あとは鶏その他だった。ところが、最近は、豚が半分以上で、牛なんというのは大体一割六分だという統計が出てきているのですね。だから、なるほど見出しに「牛肉は遠くなりにけり」と出るわけで、これは、言うまでもなく、自分たちの毎日の実際生活を考えて、ぼくらも、ちょっとどこかへ行って、一ぱいやろうかなというときは、すき焼きなんというものは、うちでごちそうになったためしはないですね。家庭主婦なんかは、けちんぼうかなにかわかりませんけれども、それがいま一般家庭では買えない実態にあると、こういうことをよく知っているならば、牛肉問題というのは相当、何というか、力を入れてもらわなければならぬ。大体生鮮食料品なんというものは、一般の最近の物価と違いまして、依然として経済原則に従って、需要と供給の関係によって値段がきまっていますよ。それは、耐久消費財だの何だのはそういうわけにいきません。さっきから問題になっている再販なんというものがあるからね。これは需要と供給の関係値段がきまらない。だけれども、大体生鮮食料品は、これは需要と供給の関係値段がきまってくるから、物価対策として考えてみれば、一面で増産対策をやるか、外国から輸入してくるかしか道はない。それを考えてみれば、大体これは、釈迦に説法だと思いますが、二十万トンから三十万トン日本は食肉不足になるということが予想されているわけです。そういうことだとすれば、いまからやっぱり、増産の問題についても、あるいは輸入の問題についても、十年先、二十年先の展望をもって私は今日取り組んでいただきたい、こう思うのです。  ところで、この輸入の問題に入っていくわけなんですが、牛肉というのは、あれですか、輸入するときには、外貨の割り当てがあって、そうしてやられておるというふうに聞いているんですが、これは具体的にどういう計算方式とっているのですか、簡単でけっこうです。
  96. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) おおむね、需要を推定いたしまして、それで国内生産の足りない分を割り当てをするというふうな考え方で行なっております。
  97. 木村美智男

    木村美智男君 需給ですか。
  98. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) さようでございます。
  99. 木村美智男

    木村美智男君 しかし、さっきのあの輸入の関係を見ると、先ほど言われましたが、今日絶対に二十万トン近い食肉の不足量の中で、今日の輸入量というのは少ない、これはきわめて寡少だというふうに私受け取っておるわけなんですが、物価の安定ということを考えてみたら、もう少しこれは入れるべきじゃないか。それに先手を打って、まずいからだめだという話をあなたはさっきされた。まずいところからだけ持って来るからまずいのであって、うまい肉だってあるんですよ、これは、端的な話。私も中国に、いまからちょうど九年前ですか、だから、最近こういうことをここで聞くのだったら、もう少しいろいろのことを、それなりに調査してくればよかったと思っているんですけれども、そこはちょっとこれからの機会に待ちますが、しかし、中国の肉は、ぼくらが食べた限りにおいて、決してまずい肉ではない。ところが、政府は、どうも中国の肉については輸入を許可しないという方針をとっておるようであります。  で、大臣、これはきわめて大事な問題ですから、大臣に、どうしてもおられる間に一回お伺いしなければいかぬのですが、しかも値段も、私の手元にある資料では、北京の市場では、牛肉ロースが三十三円、上肉が二十九円だ、百グラム。ですから、どんなにこちらへ持って来ていろいろやったにしても、大体百円前後で牛のロースが食える。しかも、今日の豪州、ニュージーランドのまずい肉というものとは、やはり鮮度も違うし、それから私の食べた限りでは、最近の輸入牛肉と比べて、私、ちょっと飼育のしかたが違うのかどうか知りませんが、これは輸入するとしないにかかわらず、うまくて安いかという話になれば、ニュージーランド、豪州の肉よりもうまくて安いということだけは、私は、自分自身の体験からもこれは確認をしているし、値段の問題については、貿易の関係でどういうことになるかわかりませんが、かりに輸送賃、関税をかけてみたところで、まあ百グラム三十三円の肉が日本に来てそれが二百円も三百円もするはずはないのであって、そういう点から考えると、やはり中国というところに、将来の食肉対策という観点から見ても、ひとつ手をつけるべきではないのか。それがどうして手をつけられない——つけられないのじゃなくて、政府が、民間業者あるいは貿易業者等が切実にその許可申請を出しているのにかかわらず、これをいかぬと、こう言っているのか、端的にこれをお話いただきたい。
  100. 大森久司

    委員長大森久司君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  101. 大森久司

    委員長大森久司君) 速記を始めて。
  102. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) ニュージーランド、豪州から入ります肉が非常にまずいということを私は申し上げているわけではないのであります。日本の和牛に比べますと味が劣るということを言っておるわけであります。中共の肉が非常にうまいという話もあんまり聞かないのですけれども、まあ世界的に、日本の牛が一番おいしいということは、これはもう定評でございまして、これはもう間違いない事実だろうと思います。  中共からなぜ肉を入れないかという問題でございますけれども、これは、先生も御承知思いますけれども、実は口蹄疫の問題に関係をいたしておるわけでございます。わが国としましては、現在、外国から肉を入れざるを得ないという状態にございますので、その輸入する供給源はできるだけ広いほうがいいというふうに思っております。狭くするという考え方は持っておりません。ただ、世界的に、アメリカでありますとか、豪州、ニュージーランド等以外は、口蹄疫に汚染された地域でございます。口蹄疫については、私が申し上げるまでもなく、偶蹄類——牛だとか綿羊だとか、そのほか豚だとかいう偶蹄類にのみ生じる病気で、これは非常におそろしい伝染性の激しい病気でございます。したがいまして、そういう口蹄疫のあります地域につきましては、おしなべて輸入を禁止をいたしておるのでございまして、中共のみを対象にいたしておるわけではございません。中共問題につきましては、かねてから中共から肉を輸入したいというふうな要望もございまして、それに対しまして、過去三回にわたりまして中共地区の調査が行なわれたわけでございます。報告を見ますと、かつて中国大陸は非常に口蹄疫で汚染された地域でございますけれども、中共治下になりまして非常に衛生状態がよくなっておる、想像以上によくなっておるという報告がございます。で、まあいろいろな点から判断をいたしまして、おそらく口蹄疫というものはないであろうというふうな推定が下されておるわけでございます。これは、調査をされた人が特定の所の調査をされまして、そういう判断をされておるわけでございますけれども、何といたしましても、中共の治下は非常に広い面積でございますので、われわれとしましては、単にそれだけをもって輸入の禁止を解除するということはいかがなものであろうかということで、実はかつて、中共にありました口蹄疫のビールスというものはどういう種類のものであるか——つまり、口蹄疫については非常にたくさんのビールスの種類がございまして、その一々につきましてワクチンが違うわけでございます。全部にきくというワクチンは、どうもないようでございます。したがいまして、かつて、はやっておったビールスがどういう性質のものであったのか、それからどういう過程を経て撲滅されたのであるか、また、口蹄疫がないという診断はどういう方法でされておるのか、それからまた、ワクチンが使われておるようでございますけれども、どういうワクチンがどういう場合に使われておるのかというふうなことの詳細なデータの提供を求めておるわけでございますけれども、遺憾ながら、現在までそのデータの提供を受けられないような状態にあるわけでございます。現に、世界各国から牛肉の輸入をしてほしいという申し出がしばしばあるわけでございますが、そういうふうな国からは、現在私たちが中共に要請をいたしておりますような資料の要求をいたしますと、直ちにそういうふうな詳細な資料の御送付がありますし、また、現地に出かけました場合に、当方で必要と考えるいかなる地域においても視察旅行を認めまして、詳細な説明があるわけでございますけども、遺憾ながら、中共からはそういうふうな資料の提供を求めることができない状態にあるわけです。したがいまして、口蹄疫がないであろうという推定はされておりますけれども、客観的に口蹄疫がないという判断をするに足る材料が全部集まっているというふうに私たちは判断いたしかねておるわけでございます。そこで、そういう資料の提供がありますならば、われわれとしましてはその資料を検討いたしまして、口蹄疫が完全に心配がないということであれば、この輸入の問題について検討するということになろうかと思うわけでございますけれども、残念ながら、現在そこまで進行しないというふうな状態にあるわけでございます。
  103. 木村美智男

    木村美智男君 いま畜産局長の答えられたことについては、私、大臣が帰られるというので、あとでまた大臣は局長から聞いていただくことにしまして、大臣に、農林省として、ひとつこの際、大臣もかわられたことですからね、何というか、新しい立場で、ひとつ前向きで検討してもらいたいと思います。  それは、先ほどから畜産局長にも伺っておるわけですが、とにかく日本の食肉事情というものは、もう現在で約二十万トン、将来は年間三十万トンから四十万トン近く不足するということが予想をされているわけです。したがって、将来の展望に立てば、今後やはり購入市場を広く求めておくという一つの必要性もあるし、それから、今日では物価対策という観点からも相当大事なところへ来ている。それから、日本の外貨危機といったような問題にからんで、少なくとも輸出振興対策というのはいまの政府の重点的な目標になっておる。ところが、これに対しても、この間のLT貿易交渉の経過を見ても、中国は米と牛肉くらいはもう少し買ってくれぬか——米はなるほど豊作であったということから、これは国民は納得していますが、牛肉については、これはもう全然話にならぬという関係になっておることについても、私はやっぱり、中共貿易というものを考えていくならば、これは互恵平等であり、拡大均衡という方針を相手方がとる限り、わがほうも、たとえば肥料あるいは機械部門、こういったようなものの関係が輸出としてバーター的に考えられるんですから、この食肉の問題というものは、この際ひとつ何らか新しい立場に立って検討してもらいたい。  畜産局長が言ったような、口蹄疫がおそろしいという問題については、私は、話を聞いた限りでは、専門家ではありませんが、聞いた限りで、私もこれはなるほどそのとおりだと思う。しかし、現に口蹄疫というものがあるなら別として、一九六二年以来口蹄疫は中国では発生していないと、こう言われておる。事実その後、先ほども御報告がありましたように、三回にわたる視察が行なわれておる。そういう中で、やはり日本の専門家が行って調べてきて、大体まあいいだろうというところへ来ているのに、これを、それはなかなか信用できないというようなことをいまごろ言っておるんでは、いつまでたったってこれは信用できない話です。ここはもうとにかく政治の問題だ。だいじょうぶか、だいじょうぶかということを……。たとえば、不意の火事が起こることについて、起こるぞ起こるぞと言われたとき、絶対起きないなんということは、なかなかこれは建築の責任者だって言いませんよ。それと同じです。今日は、技術者をむやみやたら痛めつけて、だいじょうぶか、だいじょうぶかと言うから、技術者だってふるえあがって、ほんとうにそうなったときはどうしようかと思って実は腹をきめかねている、こういう実情に今日あると私はこれは断言をしてはばからぬですが、問題は、政府が責任を持って、ほんとうにいままでやっている資料やなにかが足らないというなら、やる方法というものはちゃんとあるはずだ。三回行った使節団の報告というものはこれはナンセンスだというなら、それはまたあらためて使節団を出すことも考えてみたらいかがでしょう。そういうことで、この際私は、根本的に、この問題は特に農林省ですが、大臣が腹をきめられて、そうしてこの問題に前向きで取り組むことが、日本の今日の食生活改善の上から、あるいは物価対策の面から、貿易振興政策の面からも、将来の国内の食肉需要の関係からも、絶対に必要なもので、しかも国民もそう願っている。それをだめだと言うからには、だめだということをはっきり言うようなことにちゃんと材料を整えて、具体的に国民が納得するようにしなければいかぬから、大臣、ひとつこの際本腰を入れてこの問題に取り組む気持ちがあるかどうかということをひとつ大臣にお伺いして、あと、細部の問題がまだ残っておりますが、それは畜産局長とやりますので、その点だけお伺いしたい。
  104. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) まあ、一つは、LT貿易と申しますか、日中覚え書きの問題でもあるし、同時に、食肉の需給という問題でもあるわけであります。食肉需給につきましては、畜産局長が、最近の需給状況、それから多角的に輸入を促進しながら価格安定をはかっていきたい、国民の需要にこたえたいということで、説明が済んでいると思いますから、LT貿易と申しますか、日中覚え書き貿易についての牛肉の問題についてお答えしたいと思います。  実は、ここへ参りますまでも、いまこの問題で、中共から帰られました古井君、田川君等々と意見を交換してまいりました。先般、米の問題につきましては、私自体は、現在の米の需給状況から見ますと、十万トンも国内に入れるということは非常に困難な情勢ではありましたけれども、私は、これ自体は、できる限り経済ベースに乗れる限度においてならば、量をふやしてもやむを得ないということで、シャオチャン米の十万トンを、国際的に妥当な価格なら買いましょうということで十万トンまで要求を満たしたわけであります。  問題は、牛肉の問題でございます。これは、確かにそういうお説は聞いております。私も何とかして、できればそういった中共側の要望にこたえ——米のほうは、なかなかこれで、将来、あちらさんの言うような形で、そう簡単にいければいいが、むしろ、日本の国内供給というものがふえてくれば、ますます窓口は狭くなって、これを、貿易構造の点から、言いかえれば、トウモロコシであるとか、その他の部分にも少しは転換してくれなければ、なかなかいかぬじゃないか。そこで、牛肉の問題でありますが、これも私は、単なる政治判断とかという問題ではなくして、純技術でひとついってみたいということでございます。そこで、他の委員会でもずいぶんこの問題は出ましたが、われわれのほうも最小限度の要求で必要なる資料を求めるが、同時に、輸出なさるほうの国も、経済問題でありますから、あくまでもこちらとして必要な資料は出していただかないというと、技術問題として解決しない。政治の問題でこういうものを解決して、そうして、あと技術問題が国内でたいへんな騒ぎになったら、これは責任が私負えませんから、せめて衛生技術上の観点からする必要な資料だけはぜひ提供していただくという前提のもとに、これを推進していきたいというのが私の考えでございます。
  105. 木村美智男

    木村美智男君 大臣は、いま、これは純技術的な問題であって、政治的問題として解決をはかるべきでないという答えがあったのですが、私は、これは、きょうは時間がありませんから、続けて大臣にもう少し突っ込んでやりたいと思うのですが、これを、大臣の言われるように、純技術的問題だと言い切ることにも問題があるという立場なので、その点、大臣、これはそういうことだけでは了解できませんから、しかるべき機会に、もう一回やることにしたいと思います。時間の関係で、大臣のほうは終わりにしておきます。  それで、せっかく参考人として田中先生に来ていただいたので、いまの時間の関係もございまして、いろいろお伺いしたいと思っておったわけなんですが、ちょっと困りましたのですが、この前、その第三回の技術調査団という、言ってみればそういう立場であちらへ行っておられて、まあ、いま畜産局長なり大臣と私がやりとりをしたことの点等にも、多少参考になるようなことがございましたら、ひとつ御報告みたいな形でお話をいただいて、残念ながら、用意したことをお伺いしようとすると、ちょっと時間が足りませんので、たいへん恐縮ですが、お話をいただきたいと思います。
  106. 田中良男

    参考人田中良男君) お答え申し上げます。  ただいまいろいろお話がございましたとおり、第三回の調査団と申しますのは、私が実はやったわけでございます。かねて、関係の業界方面で中国の肉を入れたいという御希望が強くて、私の前に、昭和三十一年と昭和四十年の二回、調査団が向こうに行っているわけでございます。それらの報告を伺いますと、中国の家畜衛生の状態というものがすばらしく改善されておる、こういうような御報告でございます。ところが、御案内のとおり、中国というのは、戦争前におきましては、人の衛生、動物の衛生、これは世界にまあ例がないといってもいいぐらい悪い状態であるというのが常識でございました。そういたしますというと、前の二回の調査団の方々の御報告がほんとうであろうかどうであろうかという疑問が、まあ多くの方々に残っておったわけでございます。そこで、私に、まあ私が長い間家畜防疫の仕事をした関係もございまして、ひとつ行って、その信憑性はいかなるものであろうかということを調べてくれと、こういう御要請でございました。で、当初実は私はお断わりを申し上げたのでございます。と申しますことは、あの広い国を、しかもああいう政治形態の中に飛び込んで行って、一人で何をもがいてみても、たいした調査はできるものではない、われわれが納得できるように問題を一〇〇%明らかにすることは困難である、というような考えもございまして、当初実はお断りをいたしたのでございますが、まあ、いろいろすすめる方もございまして、それではお役に立つなら行ってみようかということで、一昨年の三月の下旬から四月の上旬にかけまして、約二週間中国に渡りました。そして、私はこういう態度で実は行ったのでございます。私は、まあせっかく行くんですから、何がしかお役に立ちたい、そうしますというと、前二回の方がおやりになったようなことをまた繰り返す愚はいたしたくない、時間はなるべく有効に使いたい、したがって、私の調査方法等については注文は承らない、私自身の考え方でやらしてもらいたいということで、実はお引き受けをいたしたわけでございます。  それで、参りまして、まあ私が歩きました範囲というのは、北京、上海、あるいはその周辺だけでございまして、あまり大きな地域は歩いておりません。しかしながら、その間、政府関係の要路の方々にもお目にかかり、あるいはまた、学校なり研究所なり、あるいは人民公社なり、あるいは屠場なり、私が見せてもらいたいと思うものを片っぱしから実は見せてもらいまして、その間に、いろいろ突っ込んで聞きたいと思いますことを、公にも、あるいは非公式にも、いろいろ実はやったのでございます。そして、その結論といたしまして、まあ私が向こうと渡り合っております間に、口蹄疫の問題等もございました。そして、いろいろ突っ込んでまいりますというと、たとえば、中国でいま扱っております口蹄疫の型の問題を聞きますといろと、そうしますというと、それはソ連あるいは外蒙のものと同じものでございます。あるいはまた、それじゃワクチンは生きたワクチンですか、死んだワクチンですかと聞きますと、生きたワクチンでございます。どういう種類のものでございますかと言うと、それは国の政策上申し上げるわけにはまいりませんと、こういうことでございまして、先ほど申し上げましたように、公にもやりましたし、また非公式にも、とことんまで詰めたのでございますけれども、そういう点になりますと、全然お答えがないわけでございます。しかしながら、いろいろの農業全般、あるいは畜産はもちろんのことでございますが、連中の言っておりますこと、やっておりますこと、あるいはまた過去におけるそれぞれの実績、これらは統計を教えてくれないので、はっきりわかりませんが、その伸び率等をいろいろとしんしゃくをして見ますというと、連中の言っていることは必ずしもおかしいことはないんじゃないか、かなり信用していいんではないか、こういう結論を持って実は帰ってまいったのでございます。したがいまして、口蹄疫自体につきましては、いま申し上げますように、私が参りましたときもそうでございますが、あるいはまた、ほかの方がおいでになりましても、依然としてやはり一〇〇%疑問点がなかなか解消できるようなことにはならぬのじゃないかと実は思いますが、いずれにしても、万事いろいろ総合して考えてみますというと、私どもが過去のことから連想しながら中国というものを考えます場合に、そう心配する状態ではないんじゃないだろうか、こういう結論を持って実は帰りまして、それぞれ関係の向きにそういう御報告を申し上げておるわけでございます。
  107. 木村美智男

    木村美智男君 たいへんどうもありがとうございました。  大体、今度LT貿易の交渉団で行かれた古井先生が新聞に書かれておる筋なんかを見ましてもですね、まあお隣りの中国というものに対して、やはり旧態依然たるものの見方で見ておっては間違いだという意味のことを書かれておって、私も感銘深くこれは読ましてもらったんですが、やはり、いま田中先生が第三回目でこの調査をされたという、調査団として行かれたということから、前二回、技術的に相当突っ込んで専門家がやってきたことを踏まえて、そうして二週間にわたって調査をされた結果は、いま御報告のあったようなことであるわけですから、私はもうこれ以上、田中先生以外に、もう一回派遣をしたら絶対安心とか、一〇〇%だいじょうぶだとかいう、そういう結論の出る性質のものではないと私は思う。したがって、ここら辺でやはり政府が責任ある立場でこの問題についてどう腹をきめるかという問題に実はなってきていると思うので、これは畜産局長に直ちにきょう答えを求めることも無理かと思いますが、先ほどそういう意味で農林大臣にも申し上げたわけなんです。もっと広範に、今後の中国貿易の問題なり、日本の食肉需給なり将来の展望なりを踏まえて、そうしてこの問題は処理をしていかなければならぬ問題だと、こういうふうに考えております。田中参考人には、わざわざおいでをいただいてありがとうございました。これからまたいろいろと、非公式にもですね、お知恵を拝借したいと思うのですが、よろしくお願いいたします。  それで、経済企画庁長官、これはやはり物価関係があるんでね、企画庁長官は、一体中国牛肉の輸入の問題については、どういう御見解を持っておられるのですか、ちょっと聞かしてもらいたい。
  108. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 前段の部分を伺っておりませんので、その関連はわかりませんが、私どもは、現在のわが国の食肉の需給が御存じのとおりでありますから、口蹄疫の問題さえなければ、できるだけ中国からも輸入をしたい。こういうことで、従来、幾たびか農林省と折衝をいたしておるわけであります。それに対して、農林当局の基本的な答えは、需要はともあれ、口蹄疫がないという一〇〇%の保証はないので、万一処女地のようなわが国にそういうものが入ってくると、これはゆゆしい事態であるので、需給上の事情はわかるけれども、にわかにそういう方針に踏み切るわけにはいかない、こういう答えで今日に及んでおるわけであります。
  109. 木村美智男

    木村美智男君 まあ、農林大臣と、大体言い回しは違うけれども、まあ言ってることは同じですよね。純技術的な観点からこれは検討をすべき問題で、政治的にどうこうでないと、こう言ってるんですが、私は、いままでのいろいろのいきさつその他を考えてみると、大体もうどんな技術者を持ってきて、皆さんが安心するように一〇〇%だいじょうぶだという答えを求めたって、答えを求めるほうが無理な問題だ、もうこの問題は。したがって、この辺で、まあどうしても御心配なら、その御心配な点を、今後は、次の委員会で、こういう点、ああいう点と、具体的に農林省のほうから伺いますから。私は、これは何か、これをやって損得のある問題でやってるんじゃないんで、いまの牛肉がこれだけの高さを示して、食べたくても食べられないような国民の現状を一方に放てきをしておいて、そして何だか知らぬが、十年一日のごとく同じことばっかり言ってるところに、私はちょっと納得ができないから、これは今後まだずっと、再販の問題と同じに、これ続けてやりますので、きょうは一応企画庁長官も四時十分までということなんで、牛肉の問題は一応これできょうは終わらしてもらいます。参考人田中先生ありがとうございました。  それで、長官、さっきの続きになって恐縮ですがね。長官、あなたいろいろ答えられたけれども、腹の中では、やっぱり、安売り、おとり廉売というようなことが出てきたらしようがない、それから、ものによっては、場合によっては、小売り商店というものの保護ということも法益の中にはあるんだということを、これは腹の中で思っているんじゃないかと思うのですよ。で、私も実は、一体これ、再販をはずしたときに、小売り商というのはどういうことになるんだろうかということも十分考えてみた。しかし、このことについて、さっき言った、公取委員長も座談会で言われているように、何か不況カルテルみたいなもので救うべき性質のものを、恒久的制度としての再販で救済をするなんということは、独禁政策の面からいっても誤りだし、そういうことは今日のこの物価の状態の中では許されないという立場なんです。したがって、ほんとうに小売りというものについてそういうことが考えられるのか、考えられた場合に、救済をする道はないのか、この点について、委員長長官に、簡単でけっこうですから、ひとつ聞かしていただきたい。
  110. 山田精一

    政府委員(山田精一君) 私、座談会のときに申しましたのは、昭和三十九年でございますか、あのころ急に再販契約が目立ってふえてまいった現象をどういうふうに解釈したらいいかというテーマにつきまして、話し合いをいたしましたわけでございます。したがって、そのときの事情というものは、根本的には経済界の不況というものがあったのであって、おとり廉売というよりも、もっぱら不況、これに関連した問題ではなかったかということを実は申し上げました次第でございます。したがいまして、おとり廉売というものが将来絶対起こらないとは思っておりません。一昨日の当委員会の席でも、たしか申し上げたと記憶いたしておりますが、今後景況のいかんによりまして、現在は相当購買力が強うございますから、それほどのことはないと思いますけれども、将来において、おとり廉売の現象が絶無とは私は考えておりません。したがいまして、これの弊害を防ぐための最小限度の再販、これは必要であろう、こういうふうに考えておる次第でございます。したがって、現在の洗い直し作業と申しますものは、消費者の利益に沿わない部分をできるだけ削りまして、あとの純粋のおとり廉売に備えますとか、あるいは先刻企画庁長官もおっしゃいましたが、零細な小売り店が当該商品を扱わなくなってしまって、それがひいては消費者の利益に沿わないというようなことの現象が起こりませんように、最小限度において再販を存続いたしたい、かように考えておる次第でございます。
  111. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま公取の委員長の言われましたように考えております。
  112. 木村美智男

    木村美智男君 これは、ぜひ経済学者やら何やら、いろいろ意見を聞いてみたいと思うのですが、私がそういう断定をするのはうまくないかもしれないが、私は、いまの公取委員長の答えでは、これは納得できない。なぜかというと、少なくともおとり廉売というのは将来絶無とは言えない——それは私もそう思いますよ。つまり、将来にわたって絶対こいつはないのだということを私は言っているわけじゃない。しかし、そういうおとり廉売といったような事態は、これはきわめて少なくて、いま予想されるのは、むしろ、不況になったようなとき、そういうときに、安売り、換金といったような問題、あるいは金利が高くて払えないで、そのために一時的に安売りをするとか、デパートやその他で年末大売り出しやなにかということで、一定期間わずかなものを出すとかというようなことがあっても、いわゆるこの制度を廃止することによって、今日の流通秩序が混乱をするような、おとり廉売が起こってくるなんていうことは私はあり得ないと思う。今日では、歴史的に見たって、そういうことはなかったのじゃないですか。当面そういうことが起こらないというのに、それが再販を存置する法益なんだということは、これはどうしても納得できない。北島委員長の言を借りれば、おとり廉売については十九条違反としてこれは取り締まれると言っている。二十四条の二なんていうのは取っ払っても、おとり廉売がかりに起こってくるならば、十九条で取り締まれると言っているのです。私どももそう思う。したがって、将来絶無とは言えないといったような理由でこの再販制度を残すということは、どうあっても、これは理論的にも稀薄であって、私、この問題はどうしても、これは委員長、続けて今後まだやらなければいかぬ。  それから第二番目の、零細な商店の問題です。私も不勉強でよくわからぬけれどもね。公取委員長、零細な企業の問題については、さっき言ったように、そのようなことで、もしそういう事態が起こってきたならば、こういう法律があるのだけれども、独禁法の除外法令としてこういうものがあるのですが、あなたはこれは御承知でしょうか。正確に法律の名前を言わぬと、また笑われるといかぬから。この趣旨は、要するに、商工組合をつくってやれることが法律的に認められているわけですよ。こういう法律がありますね。昭和三十二年の十一月の二十五日に出されたやつで、中小企業団体の組織に関する法律、これは、独禁法の適用除外法規として、第十七条に、いわゆる「商工組合の事業」という規定があります。いま委員長が言っているようなことや、企画庁長官が言っているような事態がかりに起こるとするならば、こういうものによって、これは十分検討をする必要があると思いますけれども、救済をする手だてはあるじゃないか。これは、さっき言ったように、いわば不況カルテルみたいな性質のものなんです。大企業の場合においては、たとえば合理化カルテルがあり、不況カルテルがあり、そして、いまその小売り商店がどうかなっちゃうというときには、こういうものを適用をして、そうして救済をする道があるのだから、そういうことを理由に再販制度を存置する理由はないと、こう言っている。したがって、委員長いみじくも答えた、二つの点に今日再販制度存置の必要性があるのだ、そういう法益があるから、今日これを置いておいて、原則的にはこれを認めておいて、そうして現在の法運用の規制をきびしくして、運用によって規制を強化していくというたてまえは間違いである。そんな独禁政策はあり得ない。原則的にはむしろこれを禁止という立場に立って、そうして、どうしても認めなきゃならぬようなことがあるならば、具体的にむしろ委員長から伺ったらいいと思うのですけれども、本来、今日再販制度を原則的に認めるという立場に立つなんていうことは、これは逆であって、こういうことで独禁法の運用をやられるなんていうことは、とんでもないことだ。こう私は考える。  いま申し上げたこの二つの点については、私もこれから十分勉強したいと思いますけれども委員長、これは何とかひとつ、きょうは時間がございませんが、納得のいくところまでおそらく委員長も詰めることはできないかもしれませんけれども、私は、委員長の言われていることについては、少なくとも独禁法の運用の立場から言えば、そういうやり方はきわめて便宜主義的であって、誤りであって、今日の再販の実態というものについて、何ら規制することにはならぬし、したがって、物懇の提案の趣旨にも沿ってなければ、国民の期待にも沿っていない、こういう立場で、この点はどうしても了解するわけにはまいりません。したがって、次回から引き続いてやります。  時間がございませんから、最後に長官に申し上げたいのですが、私はきょうはほんとうのことを言いたいと思うのですよ。本来、この再販問題というやつは、たまたま公正取引委員会が手がけたから、私は公取に向かって今日までものを言ってきたのです。しかし、これは、本来のところは、行政委員会がやるべき性質のものではございませんよ、これは。公正取引委員会は、現在の独禁法の規定の中で、これが法律にはたして合っているのかいないのかということさえやれば、最小限度の義務が果たせるのです、公取としては。こういう法改正というものは、これはやはりむしろ今日の経済企画庁長官として、あなたが預かっている仕事の中から再販の弊害が出てきた。これを取り締まるのに、森永の事例を見、粉ミルク事件を見ても、どうも、今日の独禁法では不十分のようだという立場から、むしろ経済企画庁長官がこの問題について、これはやはり腹をきめて、事務当局に堂々と、どうもこれはうまくいってないようだ、これではほんとうの自由競争も行なわれないし、これがはね返って消費者の利益にもなっていない、だから……という立場で、本来これは長官が検討をし、あるいは提案をすべき性質のものだ、こう腹の中では思ってきたんですよ。ただ、公正取引委員会が手がけたから、その出てきたものについて、いいの悪いのというその批判を——いい悪いというより、実態に合っていないじゃないかという議論を今日までやってきただけです。しかし、こういう事態になり、少なくとも、もう提案を今度はやらないということで長官が了承したのですから、了承した以上は、今度は長官のほうへ私は向いてものを言いますから。  したがって、長官がほんとうに、これはこの前おっしゃられたように根本的に見直して、はたして今日の状態でいいのか……横のカルテルにはきびしい条件がついておる。それなりの罰則もある。縦のカルテルは、これは、どういうことになろうと、あやまってしまえば終わりだ。やめさえすれば、何ぼやったって、いまの状態ならば、勧告を受けてからあやまってしまえば、それで済む。それをきかないでやったときにおいてのみ、ちょっとした処分を受けるという程度。そんなことは事例はないのです。そうすれば、何回でも合法的にやみ再販が行なわれるという、そういう抜け穴があるのです。だから、現行法も、それは公取の言うように、十九条違反、「不公正な取引方法」ということで処罰しようとしたって、不当とは何だということになる。審判にかかっている問題が、ちっともあなた、結論が出ないじゃないですか。結果としては、やっただけやり得というか、もう一年半たって、そうして、松下の問題にしろ、粉ミルクの問題にしろ、被害を受けているのは消費者です。そういう今日の欠陥のある無力な独占禁止法が今日実態の中から出てきているのだから、私はやっぱり、これに根本的な検討を加えて、長官、二十四条の二というものを、この際やっぱり削除をするということを本気になって検討してみてもらいたい。それに疑問があるかどうかということは、いままで十分議論をやってきたところなんです。それでないなら、口幅ったく消費者の利益を守るのだなんということは一切言わないことにしてもらいたい。堂々と旗を掲げて、今日物価対策は重要だけれども消費者のことばかりは考えてはおられないのだ、こう政府が看板を掲げれば、ぼくはこんなことは言わない。佐藤内閣の二本の柱が、一つは、これは去年までは景気建て直しであり、片や物価安定ということでやってきたんです。それならそのようにやっぱりやってくれ。物価安定推進会議を傘下に置いたって、せっかくの提言があったからって、提案しっぱなし。それがマスコミに乗り、新聞に報道されて、どうも何かやってくれそうだという甘い期待だけは与えてくれているが、具体的な物価対策を一つもやっていないじゃないですか。  公正取引委員会についても、私は、いまの現行法ではこれからの公取が困るだろうと思うから、この法案をきちんとしなさいということを言っているので、公取を痛めつけているわけじゃないのですよ、私は。そういう独禁法がきちんとしなければ、公正取引委員会がほんとうに独禁法の趣旨どおり、そういう独禁政策がやっていけないという立場から、法案の強化をはかりなさいということを言っているのだし、経済企画庁長官には、政府物価対策ということをほんとうに考えているならば、物価対策に有効な働きをするような独禁法にしなきゃいかぬじゃないかと言っているわけですよ。これは。それでなければ、こんなに再販問題を、私、何回も言ってないです。クリーム一つがどうなった、こうなったというのも、それももちろん問題だけれども、そういうことを言っているんじゃなくて、そういう動きの中に、根本にある独禁法の法自体に問題があるんじゃないかということを今日まで言ってきたつもりですよ。だから、長官、どうですか、それ、もう一回ほんとうに考え直してみると、この前言われた、あるいは見直してみると言われたその気持ちを、独禁法がほんとうに今日これでいいのかという立場で、この際、長官が具体的に事務当局をして検討をさせるということを長官考えてみませんか。その考え方いかんによっては、またしばらくこの問題に時間を置きたいと思うし、その考えはないというなら、この次の委員会もまた再販問題で、長官、出て来てもらいます。理屈にならない理屈を言って再販を存置するということでは、私は納得できぬ。それはこういうことでやれるんじゃないか、そういうやり方で再販を存置することは間違いじゃないかと言っているんだから、それは間違いじゃないんだ、いや、そういうことじゃ小売り業者を保護することはできぬことだというような反論をしてくだされば、ああそうかと、なるほど法益があるという意味もそこら辺にあるのかということがわかるけれども、その反論が全然されずに、こういう点があるのだというだけでは、私が反論をしたことについてのやっぱり納得をするような反論が示されなければ、これは了解できない。私は、あまりないと思う。さっきの公取委員長の理屈では、私はどこの学者に出してみたって、そう、いまの論争の問題について、これはどっちにどう軍配が上がるかわからぬと思う。そういう意味では、公取委員長には、ほんとうに長いこと、それは申しわけないと思いながらやってきましたけれども、実際は、私のほんとうのねらいはそこにあったんで、そういう気持ちで、長官に、もう一言、あなたのひとつ考え方を聞かしてもらいたい。
  113. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 再販売価格維持契約の問題は独禁法上の問題でございますから、その運用及び、もし必要があれば法律改正等は、第一義的には公正取引委員会のお仕事だと思います。しかしながら、およそ法律の国会に対する提案は内閣全体の責任の問題でありますし、ともかくこの問題については昨年来非常にむずかしい議論がいろいろあったところでもあります。したがって、今回公正取引委員会がその具体的運用について新しい措置をとられるということでありますし、その後も、その結果については随時レビューをしていかれるという方針である由でありますから、それらを勘案しながら、この問題についても、なお今後とも私どもも研究を続けてまいるつもりであります。
  114. 木村美智男

    木村美智男君 最後にもう一回。  長官、独禁法それ自体がということで、それは本来公正取引委員会がということについては、私は争うつもりはございません。しかし、あなたがやっぱり物価の総元締めという立場にあることだけは間違いないんでね。その再販問題が非常に物価影響してきている。しかも、いまの内閣の政策として、物価問題を最重点の施策としてこれをやっぱりとらえてやっているわけなんですね。そうして見れば、今日出ているこの弊害について、これをどうするかということについて、取り締まるべき法規に瑕疵があって、そうしてどうもいけないという指摘があるんだから、だからこの次、いやそれはもう木村君が言っていることが間違いなんで、現行の法律で十分なんだと言うんなら、現実の審判でも、現在の処理でも、ぴちっと、だいじょうぶだというふうな現実にしてもらわなきゃ、ぼくは納得できない。それが一年も長引いているのは何かといったら、私が指摘しているように、審判の場で、不当とは何かとか、公正な取引方法でないとかという、そういうことが、そうである、そうでないという議論がごちゃごちゃにされて、いつまでもこれが引き延ばされているというのは、「不公正な取引方法」としてとらえていることが私は間違いだと、こう言っているわけです。「不当な取引制限」としてとらえれば、こんなものはきちっきちっと法的にやっていける。現実に立証ができるんです。「不公正な取引方法」をやっているから立証ができない。そうじゃないですか。だから、一年たってもこれは解決がつかない。しかも、そこが今日の再販の最大の欠陥になってきているということを考えてみれば、これだけ長官、はっきりしてきたら、やっぱり結果はどう出てもいいですよ。お前がそこまで言うなら、うるさいからやってやろう、やってみようという気持ちになりませんか。やってみようというのは、何も法案をつくるのじゃないですよ。よく本腰を入れて、それほどまでに言うなら検討してみようという立場を明らかにしてもらわぬと、またこの次から、また具体的な例をあげてやらなければならないので、これは長官の言うように、御相談の結果、公正取引委員会委員長のほうで具体的にやるとおっしゃるなら、それでもけっこう。  いずれにしても、今日の政府が、物価政策という立場から、この問題をとにかくほんとうに本気になって本腰を入れて検討に取りかかってもらわぬと、洗い直しとかなんとか言ったって、こんな新聞、知らぬ者は本気にするけれども、知っている者は、こんなものは本気にしませんよ。医家向けの薬品を今度はずします——こんなものを指定しているのが間違いなんだ、ぼくの言うのは。それから化粧品だって、三千円、五千円とするものが、日常使われている、そんなものじゃないですよ。そういうことから考えてみたら、むしろ、今度洗い直しをして残るものについてどうするのかということと、やみの再販をどうするのかということが、今後の独禁政策の中心的なものです。こんな洗い直しなんという問題は、そう言っちゃ悪いけれども、どっちかと言えば、枝か葉っぱかという問題にすれば、これは根っこの問題じゃない、少なくとも。  これは、一言ずつ、最後に、公取委員長長官からお答えをいただいて、いずれにいたしましても、時間ですから、きょうはこれで終わりますが、答えてください。
  115. 山田精一

    政府委員(山田精一君) 再販の問題につきましては、一昨日も申し上げましたごとく、再販そのものの本質につきまして私どもは引き続き検討を続けてまいりたい、こういう気持ちでおります。ただ、再販は、外国の立法例、またその運用例等を見ましても、非常にむずかしい問題でございます。決して逃げるつもりで申し上げるわけじゃございませんが、きわめて複雑なむずかしい問題でございます。私どもは、真剣にこれに取り組みまして検討を続けてまいりたい、かように考えております。
  116. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 昨年、主として木村委員が中心になられまして、この問題が問題になってまいりましたが、私ども物価の観点から関心を持っておりまして、今回御承知の、公正取引委員会が、長年の告示についていわゆる洗い直しをされるということでございますので、これは、昨年来御指摘になり、また私どもが関心を持っておりました点について相当な改善が行なわれるであろうことを期待いたしております。しかしながら、その後に残ったものに問題があるであろうという木村委員の御指摘について、ただいま公取委員長の言われましたごとく、再販価格維持契約そのものにいろいろ問題があることでございますから、私ども公正取引委員会と御一緒に、今後ともこの研究を続けてまいりたい、物価関係から私どもは関心を持ってまいりたい、こう思っているわけであります。
  117. 木村美智男

    木村美智男君 委員長も、それから長官も、真剣に検討をしたいということで、了解をいたしますが、事物価の問題は、来年、再来年の話をされていたのではいけませんので、時間的には、少なくとも、これはやっぱり途中でどういうことになっても、結論の問題についてどうだこうだということそれ自体については申し上げる気はありませんが、とにかくあまりのんびりされないで、洗い直しが終わった段階で直ちに検討を始めて、少なくとも本国会の終わりごろか、あるいは臨時国会が開かれるというような時点では、多少のやはり答えができるような、そういうことにひとつぜひしていただきたいということを要望いたしまして、私、きょうは質問を終わらせていただきます。
  118. 大森久司

    委員長大森久司君) 他に御発言がなければ、本件に関する質疑はこの程度にとどめたいと存じます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十一分散会