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木村美智男君 これは、ぜひ経済学者やら何やら、いろいろ
意見を聞いてみたいと思うのですが、私がそういう断定をするのはうまくないかもしれないが、私は、いまの公取
委員長の答えでは、これは納得できない。なぜかというと、少なくともおとり廉売というのは将来絶無とは言えない
——それは私もそう
思いますよ。つまり、将来にわたって絶対こいつはないのだということを私は言っているわけじゃない。しかし、そういうおとり廉売といったような事態は、これはきわめて少なくて、いま予想されるのは、むしろ、不況になったようなとき、そういうときに、安売り、換金といったような問題、あるいは金利が高くて払えないで、そのために一時的に安売りをするとか、デパートやその他で年末大売り出しやなにかということで、一定期間わずかなものを出すとかというようなことがあっても、いわゆるこの制度を廃止することによって、今日の流通秩序が混乱をするような、おとり廉売が起こってくるなんていうことは私はあり得ないと思う。今日では、歴史的に見たって、そういうことはなかったのじゃないですか。当面そういうことが起こらないというのに、それが再販を存置する法益なんだということは、これはどうしても納得できない。北島
委員長の言を借りれば、おとり廉売については十九条違反としてこれは取り締まれると言っている。二十四条の二なんていうのは取っ払っても、おとり廉売がかりに起こってくるならば、十九条で取り締まれると言っているのです。私
どももそう思う。したがって、将来絶無とは言えないといったような理由でこの再販制度を残すということは、どうあっても、これは理論的にも稀薄であって、私、この問題はどうしても、これは
委員長、続けて今後まだやらなければいかぬ。
それから第二番目の、零細な商店の問題です。私も不勉強でよくわからぬけれ
どもね。公取
委員長、零細な企業の問題については、さっき言ったように、そのようなことで、もしそういう事態が起こってきたならば、こういう法律があるのだけれ
ども、独禁法の除外法令としてこういうものがあるのですが、あなたはこれは御
承知でしょうか。正確に法律の名前を言わぬと、また笑われるといかぬから。この趣旨は、要するに、商工組合をつくってやれることが法律的に認められているわけですよ。こういう法律がありますね。
昭和三十二年の十一月の二十五日に出されたやつで、中小企業団体の組織に関する法律、これは、独禁法の適用除外法規として、第十七条に、いわゆる「商工組合の事業」という規定があります。いま
委員長が言っているようなことや、企画庁
長官が言っているような事態がかりに起こるとするならば、こういうものによって、これは十分検討をする必要があると
思いますけれ
ども、救済をする手だてはあるじゃないか。これは、さっき言ったように、いわば不況カルテルみたいな性質のものなんです。大企業の場合においては、たとえば合理化カルテルがあり、不況カルテルがあり、そして、いまその小売り商店がどうかなっちゃうというときには、こういうものを適用をして、そうして救済をする道があるのだから、そういうことを理由に再販制度を存置する理由はないと、こう言っている。したがって、
委員長いみじくも答えた、二つの点に今日再販制度存置の必要性があるのだ、そういう法益があるから、今日これを置いておいて、原則的にはこれを認めておいて、そうして現在の法運用の規制をきびしくして、運用によって規制を強化していくというたてまえは間違いである。そんな独禁政策はあり得ない。原則的にはむしろこれを禁止という立場に立って、そうして、どうしても認めなきゃならぬようなことがあるならば、具体的にむしろ
委員長から伺ったらいいと思うのですけれ
ども、本来、今日再販制度を原則的に認めるという立場に立つなんていうことは、これは逆であって、こういうことで独禁法の運用をやられるなんていうことは、とんでもないことだ。こう私は考える。
いま申し上げたこの二つの点については、私もこれから十分勉強したいと
思いますけれ
ども、
委員長、これは何とかひとつ、きょうは時間がございませんが、納得のいくところまでおそらく
委員長も詰めることはできないかもしれませんけれ
ども、私は、
委員長の言われていることについては、少なくとも独禁法の運用の立場から言えば、そういうやり方はきわめて便宜主義的であって、誤りであって、今日の再販の
実態というものについて、何ら規制することにはならぬし、したがって、物懇の提案の趣旨にも沿ってなければ、
国民の期待にも沿っていない、こういう立場で、この点はどうしても了解するわけにはまいりません。したがって、次回から引き続いてやります。
時間がございませんから、最後に
長官に申し上げたいのですが、私はきょうはほんとうのことを言いたいと思うのですよ。本来、この再販問題というやつは、たまたま
公正取引委員会が手がけたから、私は公取に向かって今日までものを言ってきたのです。しかし、これは、本来のところは、行政委員会がやるべき性質のものではございませんよ、これは。
公正取引委員会は、現在の独禁法の規定の中で、これが法律にはたして合っているのかいないのかということさえやれば、最小限度の義務が果たせるのです、公取としては。こういう法改正というものは、これはやはりむしろ今日の経済企画庁
長官として、あなたが預かっている仕事の中から再販の弊害が出てきた。これを取り締まるのに、森永の事例を見、粉ミルク事件を見ても、どうも、今日の独禁法では不十分のようだという立場から、むしろ経済企画庁
長官がこの問題について、これはやはり腹をきめて、事務当局に堂々と、どうもこれはうまくいってないようだ、これではほんとうの自由競争も行なわれないし、これがはね返って
消費者の利益にもなっていない、だから……という立場で、本来これは
長官が検討をし、あるいは提案をすべき性質のものだ、こう腹の中では思ってきたんですよ。ただ、
公正取引委員会が手がけたから、その出てきたものについて、いいの悪いのというその批判を
——いい悪いというより、
実態に合っていないじゃないかという議論を今日までやってきただけです。しかし、こういう事態になり、少なくとも、もう提案を今度はやらないということで
長官が了承したのですから、了承した以上は、今度は
長官のほうへ私は向いてものを言いますから。
したがって、
長官がほんとうに、これはこの前おっしゃられたように根本的に見直して、はたして今日の状態でいいのか……横のカルテルにはきびしい条件がついておる。それなりの罰則もある。縦のカルテルは、これは、どういうことになろうと、あやまってしまえば終わりだ。やめさえすれば、何ぼやったって、いまの状態ならば、勧告を受けてからあやまってしまえば、それで済む。それをきかないでやったときにおいてのみ、ちょっとした処分を受けるという程度。そんなことは事例はないのです。そうすれば、何回でも合法的にやみ再販が行なわれるという、そういう抜け穴があるのです。だから、現行法も、それは公取の言うように、十九条違反、「不公正な取引
方法」ということで処罰しようとしたって、不当とは何だということになる。審判にかかっている問題が、ちっともあなた、
結論が出ないじゃないですか。結果としては、やっただけやり得というか、もう一年半たって、そうして、松下の問題にしろ、粉ミルクの問題にしろ、被害を受けているのは
消費者です。そういう今日の欠陥のある無力な独占禁止法が今日
実態の中から出てきているのだから、私はやっぱり、これに根本的な検討を加えて、
長官、二十四条の二というものを、この際やっぱり削除をするということを本気になって検討してみてもらいたい。それに疑問があるかどうかということは、いままで十分議論をやってきたところなんです。それでないなら、口幅ったく
消費者の利益を守るのだなんということは一切言わないことにしてもらいたい。堂々と旗を掲げて、今日
物価対策は重要だけれ
ども、
消費者のことばかりは考えてはおられないのだ、こう
政府が看板を掲げれば、ぼくはこんなことは言わない。佐藤内閣の二本の柱が、一つは、これは去年までは景気建て直しであり、片や
物価安定ということでやってきたんです。それならそのようにやっぱりやってくれ。
物価安定推進会議を傘下に置いたって、せっかくの提言があったからって、提案しっぱなし。それがマスコミに乗り、新聞に報道されて、どうも何かやってくれそうだという甘い期待だけは与えてくれているが、具体的な
物価対策を一つもやっていないじゃないですか。
公正取引委員会についても、私は、いまの現行法ではこれからの公取が困るだろうと思うから、この法案をきちんとしなさいということを言っているので、公取を痛めつけているわけじゃないのですよ、私は。そういう独禁法がきちんとしなければ、
公正取引委員会がほんとうに独禁法の趣旨どおり、そういう独禁政策がやっていけないという立場から、法案の強化をはかりなさいということを言っているのだし、経済企画庁
長官には、
政府が
物価対策ということをほんとうに考えているならば、
物価対策に有効な働きをするような独禁法にしなきゃいかぬじゃないかと言っているわけですよ。これは。それでなければ、こんなに再販問題を、私、何回も言ってないです。クリーム一つがどうなった、こうなったというのも、それももちろん問題だけれ
ども、そういうことを言っているんじゃなくて、そういう
動きの中に、根本にある独禁法の法自体に問題があるんじゃないかということを今日まで言ってきたつもりですよ。だから、
長官、どうですか、それ、もう一回ほんとうに考え直してみると、この前言われた、あるいは見直してみると言われたその
気持ちを、独禁法がほんとうに今日これでいいのかという立場で、この際、
長官が具体的に事務当局をして検討をさせるということを
長官考えてみませんか。その考え方
いかんによっては、またしばらくこの問題に時間を置きたいと思うし、その考えはないというなら、この次の委員会もまた再販問題で、
長官、出て来てもらいます。理屈にならない理屈を言って再販を存置するということでは、私は納得できぬ。それはこういうことでやれるんじゃないか、そういうやり方で再販を存置することは間違いじゃないかと言っているんだから、それは間違いじゃないんだ、いや、そういうことじゃ小売り業者を保護することはできぬことだというような反論をしてくだされば、ああそうかと、なるほど法益があるという
意味もそこら辺にあるのかということがわかるけれ
ども、その反論が全然されずに、こういう点があるのだというだけでは、私が反論をしたことについてのやっぱり納得をするような反論が示されなければ、これは了解できない。私は、あまりないと思う。さっきの公取
委員長の理屈では、私はどこの学者に出してみたって、そう、いまの論争の問題について、これはどっちにどう軍配が上がるかわからぬと思う。そういう
意味では、公取
委員長には、ほんとうに長いこと、それは申しわけないと
思いながらやってきましたけれ
ども、実際は、私のほんとうのねらいはそこにあったんで、そういう
気持ちで、
長官に、もう一言、あなたのひとつ考え方を聞かしてもらいたい。