○武内五郎君 少し急ぎますので、
ことばも足らぬし、だいぶまだ私は質問したいのだけれ
ども、この一、二点にしぼったんです。
そこで簡単にただしておきたいんですが、かつて
構造改善事業を推進するときにあたって、いまの県の選定と同じようなことが
考えられた。指定を受けた町村が、その町村の中で、今度は現地で選定から漏れた農民と選定に入った農民との対立で非常に問題が起きた村々があった。私はかつてどこかで、これは
委員会で指摘したことがあったと思うんですが、秋田県北秋田郡の比内町、これは一生懸命に町長が
農林省に参りまして陳情した結果、それでは指定しようということになったんだろうと思うんですが、指定をもらって意気揚々として帰って青写真をつくった。そしてそれを該当部落の農民たちを集めて、こういうプランだからひとつ大いに
農業改善をやろうじゃないか、こういう相談をしたら大騒ぎです。漏れた者は一体どうしてくれると言うんだ、いやそれはだいじょうぶでございますと、こう言って
説明している。どこでやるんだ、どうするんだといったら、これは小坂鉱山に近いところです、比内町。小坂鉱山に仕事を世話する、頼んでやるからまあまあそっちはだいじょうぶだろう、こういう話です。とんでもない話である。先祖代々の
農地とふるさとを捨てて、小坂鉱山の山の中へわれわれを入れるのかと、こういうことで大騒ぎになって、それでこれが指定を返上したというんです。このような事件がやはり秋田県の相川町というところにもあった。和歌山県や山形県の天童市というようなところにもそれに類似した事件が起きたことは御承知のとおりだと思う。私はそれをおそれるんです。そこであえて私はこの問題を出して、非常に短い時間の間だからあえてこれからの進め方について、あまりそういうことのないようにくふうと運営の
方針を立てることが大事じゃないかということを申し上げたい。
それからその次に、私は特に御指摘して申し上げておきたいことは、何といっても金を貸したり、
農業経営についてのアドバイスや指導をすることになると思うんであります。およそ行政行為と
金融と結びついたときにそれを受ける者というのはこれは弱くなることは事実だ。これはどうしても弱くなる。頭が上がらない。そこで問題が起こることは、先般テレビで青森県の三沢でビートでたいへん苦しんだ農民の姿がテレビに写し出された。これは二、三日前です。青森県、岩手県、秋田県で御承知のとおりビート栽培を奨励されたのが約二千数百町歩に及んでいる。それが今年になって全然だめなんだ——だめどころじゃなくてもう青森県で六万トンのビートの収穫をあげながら野ざらしになって腐っている。どこでも引き受け手がないのでたいへん
農林省も困った。トラクターやレーキやハローが野ざらになって畑にころがっている。農民はぼう然としていま陸稲をまいている。陸稲なんというのは青森県のような寒冷地にはあまり適さない、しかしそれをやらざるを得ない、それをいまやっている。私も郷里が青森県ですからその辺のことはよく知っている。おまえさん何をやると言ったら、しかたがないから陸稲をやるべえ、おまえさん何をやると言ったら、ベコをやるべえ——ベコというのは牛のことですが、そういう
状態であります。私にこのビート栽培はどういうところがやられたかというと、ビートは青森県や岩手県のような寒冷地帯に非常に適するものだからこれをやれということで奨励されて、役場と
農協を往復いたしましたが、おまえ牛を飼え、ビートとあわせて牛を飼わなければビート栽培の補助はやらぬぞというので、しかたがなしに牛を飼う。私はそういう形が金と指導と結び付けて農民に政策を強制する形が出てきやしないかということを実はおそれるわけであります。そういうことのないことを私は望む。これは質問ではなくて
希望だけ申し上げます。
そういうことで、去年ほとんどいまごろからビートの問題がやかましくなった。高原地帯のばくばくとした見渡しのきかない畑に白亜の殿堂ができた、これはビート工場です。それはいまは何の利用価値もない、実にむだである、そうして農民を苦しめてきたことは避けられない。私は
金融の問題を
考えますときにいつもこういうことを
考える。それについては特にコンサルタントを設ける。コンサルタント三名というが、おそらくどこにどうやっていいか知らない現地を指導するというようなことになったら、これは奔命に疲れてしまって何にもできないと思う、千戸の農民を三名で指導するということは。しかも転々として駆け回ってやるということでは一年かかっても二年かかってもできるものではない。そういうことできわめて正しい民主的なアドバイスと指導がりっぱにできる組織、それから農民に
一つのケースを強制する——先ほどから安心して聞いておりますが、ケースは決して強制しないと言っております。そういうケースを強制しない、農民の創意とくふうの中で
農業を推進していく指導が必要じゃないか、それらについてひとつお
考えを
伺いたい。