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1968-04-23 第58回国会 参議院 農林水産委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月二十三日(火曜日)    午前十時三十六分開会     —————————————    委員異動  四月十九日     辞任         補欠選任      内藤誉三郎君     園田 清充君      大森 久司君     鬼丸 勝之君  四月二十日     辞任         補欠選任      鬼丸 勝之君     赤間 文三君  四月二十二日     辞任         補欠選任      赤間 文三君     佐藤  隆君  四月二十三日     辞任         補欠選任      藤原 道子君     達田 龍彦君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         和田 鶴一君     理 事                 高橋雄之助君                 任田 新治君                 川村 清一君                 中村 波男君     委 員                 青田源太郎君                 佐藤  隆君                 櫻井 志郎君                 田村 賢作君                 温水 三郎君                 野知 浩之君                 山崎  斉君                 武内 五郎君                 達田 龍彦君    政府委員        農林省農林経済        局長       大和田啓気君    事務局側        常任委員会専門        員        宮出 秀雄君    説明員        農林大臣官房企        画室長      小沼  勇君    参考人        東京大学教授   川野 重任君        全国農業協同組        合中央会常務理        事        柳田  久君        京都中央卸売        市場長      三宅 康雄君        立正大学教授   佐伯 尚美君        全国魚卸売市場        連合会会長    筒井 英樹君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○農林漁業金融公庫法及び農業信用保証保険法の  一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 和田鶴一

    委員長和田鶴一君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  委員異動について報告いたします。  本日、藤原道子君が委員辞任され、その補欠として達田龍彦君が選任されました。     —————————————
  3. 和田鶴一

    委員長和田鶴一君) 参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  農林漁業金融公庫法及び農業信用保証保険法の一部を改正する法律案審査のため、東京大学教授川野重任君、全国農業協同組合中央会常務理事柳田久君、京都中央卸売市場長三宅康雄君、立正大学教授佐伯尚美君及び全国魚卸売市場連合会会長筒井英樹君を本日参考人として出席を求めることにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 和田鶴一

    委員長和田鶴一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  5. 和田鶴一

    委員長和田鶴一君) これより農林漁業金融公庫法及び農業信用保証保険法の一部を改正する法律案を議題といたします。  参考人として東京大学教授川野重任君及び全国農業協同組合中央会常務理事柳田久君に御出席をいただいております。  この際、参考人の方に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多忙中のところ本委員会に御出席いただきまして、厚くお礼を申し上げます。参考人におかれましては、忌憚のない御意見を述べてくださいますようお願い申し上げます。  なお、議事順序について申し上げます。初めに川野参考人及び柳田参考人に御意見をお述べいただき、続いて委員から御質疑を申し上げるという順序議事を進めてまいります。  それでは、まず川野参考人から御意見をお述べ願います。
  6. 川野重任

    参考人川野重任君) 御紹介いただきました川野でございますが、私に課せられました問題は、総合資金制度創設について意見を申し上げるようにということでございます。この制度創設に関連いたしまして、個人的に非常に深い関心を従来から持っておりましたものといたしまして、ともかくこの創設段階に至りましたことについては心から賛意を表したいと思うわけでございます。ただ、その運用について、いろいろ実施上御険討をいただかなければならない問題も多いかと思いますので、若干所見を申し上げたいと思います。  この制度特徴は、私の考えによりますると二点ございます。一つは、いわゆる総合資金制度といたしまして各種のたとえば農地取得土地改良果樹園経営改善、畜産の経営拡大等々をうたっておりまするが、従来個々ばらばら融資対象となっておりましたこういった物件を総合的に融資対象とする、あわせましてそういった施設運用上必要なる運転資金の点につきましても、その用意があるかどうかということをあわせ勘案して融資を行なうという点では、文字どおり総合資金制度の名に反しないものだと思いますが、これが一つ特徴でございます。  それから第二の特徴は、運転資金等につきましては、特に信連段階でその措置を考えるということでございます。  まず前者について申しますと、従来個々施設対象として各種融資制度がございますが、これはすでに農業経営実態がかなり内容のあるものとして存在し、それに追加的な投資を行なうと、その面において効果的な投資が行なわれ得るという場合におきましては十分その効果を発揮するものであります。けれども、本来それほどの経営実績がないと、けれども経営能力につきましてはかなり将来性を持つものがあるとした場合においては、各種資金というものを個々ばらばら手当てをするということでは時間的にも事務的にも相当にロスが多いと申しますか、困難が多いわけであります。その結果、経営全体といたしましては一定施設対応いたしまして一定運転資金がなければいけないと、それによって経営の実があげられるという場合にも、その一方が用意できましても他方の用意ができないという場合においては十分な効果をあげ得ない、そういった事態対応いたしまして、この総合資金制度は初めからいわばセット的に資金手当てを考えようという点で非常に画期的なものだと思います。これまた補助金のほうにおきましても、御存じのように構造改善事業におきましていわゆるセット方式というものがとられております。このセット方式につきましては、セット中身が一時的に固定するということになりますと問題が多いし、逆の効果も生じかねないのでありまするけれども、その点の問題の調整が行なわれる場合におきましては、このセット方式というのは十分に評価してしかるべきメリットを持つと私は思っております。そういうものに相対応いたしました総合資金制度といたしましてこれを評価いたしたいと存ずるわけでございます。  それから第二の信連中心にその運転資金措置を考えるということでございますが、これは近代化資金の従来のやり方は単協段階でその措置を考えるということでございます。ところが、単協段階でこのような近代化資金手当てをするということでありますると、最近は大型な単協がかなりあらわれておりますので、必ずしも私の申し上げることがそのまま常に必ず当てはまるとは言いかねるかと思いますが、従来の旧町村単位単協の場合でありますると、その資金規模も小さいと。したがいまして、あまり大規模投資をする、大規模融資をするということについては消極的にならざるを得ないわけであります。いわんやその組合の中から若干のものを選びまして、それに集中的に優先的な融資をするということについてはいろいろな障害が多い。その制約を破りまして、もっと広い範囲から、いわゆるこの単協段階の力を越えた規模融資をするというところにこの総合資金制度のねらいがあると思うのでありますが、それを、したがって担当者といたしましては信連を考えるという点、これが第二の特徴でございます。これがいま申しましたような積極面中心に運営される場合におきましては、これは私はもちろん問題ないと思います。けれども、いま申しましたようなことは当然のことながらその逆の関係もあり得るわけであります。その点について十分チェックをすることが必要かと思います。  第一に、この総合資金総合性ということでございますが、これはかなり長期にわたりやっている投資であります。また総合性でありまするからその中身は不特定であります。いろいろ選び得るということであります。したがって、その許されたる範囲の中で最も合理的なる経営設計をするということが前提条件になるわけでありますが、この条件がいかにして満たされるかと、また満たされるについてはいかなる措置制度的に考えるかということが第一の問題になろうかと思います。  それから信連段階のこの融資措置ということでございますが、これはいま申しましたような旧単協段階資金制約からくる各種障害を避けようということでありますが、同時に信連段階融資ということになりますると、単協の場合でありまするならばかなり厳密な審査が行なわれたと、ところが信連段階になりまするとその点で多少とも甘くなるということも当然これはあり得るかと思います。その点もですね、その審査上の甘さというものを避けるためにはどういうことが必要かと、こういったことが問題になろうかと思うのであります。  資料を拝見いたしますると、その点については、制度といたしましては都道府県ごと融資協議会を設けると、それから農林公庫農業融資コンサルタントを置くと、それとともに営農指導組織の活用をはかるということがうたわれてございます。この点内容を私は十分に承知しておりませんが、もし希望が許されるならばこういうふうなことを考えていただいたらどうかと思っております。  それは第一にコンサルタント制度でございます。このコンサルタント制度は、これは農林金庫融資をするについて審査をするという審査機能ではないのではないかと思っておりますが、おそらく融資基準なり経営設計等についての一般的な基準を考えると、またこれは十年二十年の長期にわたりますが、その間その融資をいたしました経営に対しましてのアフターケアをすると、そのアフターケア経過を見ておりまして、この総合資金制度運用適正化を考えると、その任を負うのがこのコンサルタント制度ではないかと私は思っております。  で、もしそうするならば、これについてどういうふうに言ったらよろしいでしょうか、少なくともですね、通常の農林金庫業務執行組織からは多少離れた立場においてじきじきに農林公庫意思決定に参画できると、少なくとも強力なるアドバイスができるという仕組みとして考えることが必要ではないかと思います。また人間といたしましても、どの程度のものを選ぶか存じませんが、少なくとも任期を限り、五年なりそこらなりの任期を限り、そのかわり大いに有識者を重用し同時に責任を負ってもらうというふうなことが必要ではないかと思います。  そのためにはどういうふうにすればよろしいかということになりまするけれども、まず先ほど申しましたように、融資基準経営設計基準、あるいはアフターケア基準というものを検討いたしましてそれを都道府県融資協議会のよるべき基準にするということが第一の仕事になるかと思いますが、そのあとあとアフターケアにつきましては、私は少なくとも融資を受けたこれらのいわば選ばれたる経営者というものが、自己の経営設計経過については逐一報告すると、その報告を受けまして中央コンサルタントがこれを検討すると、それで制度の運営の全きを期するということにするべきではなかろうかと、その場合ですね、いわば年次的なその報告協議会を経ましてコンサルタントのところまで届けられると同時に、その結果が一般的に検討される。つまり公庫の中の組織としてそれが運用されるだけでなく、いわば融資のもとたる国民——タックスペイヤーというものがそれに対して意見を申し述べることができるという、そういったような機会用意いたしました組織として運用されるということがいいのじゃなかろうか。いずれにいたしましてもこれは非常に長期にわたる融資であります。またその融資条件も非常にゆるやかであるということから、現在の物価の推移を前提といたしますと、悪くしますると、資産保有のための資金として使われるということもなきにしもあらずだと私は思います。それを避けるためにも、いま申しましたように十分にアフターケアチェックということが必要ではないかと思います。  それから第二には、これも融資基準検討等において十分お考えいただかなければならぬ点だと思いますが、と申しますと、こういうものはやはり先ほど申しましたような任意性があればあるだけに地域的画一主義になりがちだと思います。西のほうも東のほうも、あるいは都道府県ごとに何件とか、あるいは何億、何千万といったふうの融資の額というものが与えられる、こういうことになりますると、ここでまた現在の農業発展の趨勢からは必ずしも歓迎されがたい情勢が起こってくるのではないか、こういう感じがいたします。  これはほかの機会にも私は申し上げていることでございますが、たとえば農林省では今後の農業政策につきましては地域性を十分勘案すると、また農業地帯に対しまして地域区分をすることが必要だということをうたっておりますが、まさに私は同感であります。けれどもその地域的な分化というものが経済自然の姿として行なわれている面があります。たとえば地価をとりますと都市近郊あるいは西のほう、それから東北、あるいは九州というところと比較いたしますると、明らかに後者のほうの地価が安い。したがって地価の安いところのほうの農業開拓が進むか、あるいは土地の壊廃が行なわれる場合におきましてはそういうところがあと回しになる。都市近郊なり、西のほうの地価の高いところがまあ農業外に転用されるというようなことに実態としてなっております。なっておりまするけれども、同時に西のほうにおいても、たとえば新規の開拓をする、あるいは開墾をするという事態がなきにしもあらずであります。その結果たとえば十アールあたり五万円の補助をする、それによって開墾なさいといった場合に、おそらく東北のほうなり九州のほうの遠隔地のほうがどっと名のりをあげる。  西のほう、あるいは都市近郊地帯では名のりをあげないはずだと私は思っております。  ところがその開拓費に対してたとえば五割、六割の補助をする、つまり率において同じである、こういうことになりますると、当然のことながら西のほうも名のりをあげてくると思います。国民経済的に見ますると、東北なり九州におきましては五万円の補助でもって相当の、たとえば一〇%の耕地開拓ができる。ところが西のほうなりあるいは都市近郊等におきましては十万円の補助でもって一〇%の開拓ができる。言いかえれば同じ一〇%の耕地拡張をやるについては、一方は五万円、片方は十万円要る。こういうことになるわけでありますけれども定額補助じゃなしに率においても一律という補助をやる場合にはえてしてそういうことになりがちであります。この場合におきましてももしそういう画一的な融資の配分が行なわれるということになりますと、どうもそういうふうの心配が私は起こりかねないのではないか。こう思っております。  そういう点を含めましてこの融資自体も、いわば経営能力はあるけれども資産その他の実績がそれほどないという若い諸君を見込んで二十年、三十年先の成果を期待して融資するということであるだけに、現在ではなしに十年、十五年、二十年あと日本経済が、あるいは農業が地域的にどうなるかという見通しのもとに最も生産的な投資としてこれを行なうということが必要ではないか。その点において地域性を十分御勘案いただくことが必要ではないかと思いますが、いずれにいたしましてもこういう問題について明確な方針を示して、同時にそれが実績によって批判をされるという仕組みというものがコンサルタント制度ではなかろうか。こういうふうに考えるわけでございます。  以上が総合資金制度に対する私の所見でございますが、なお各種施設対象といたしました個別の融資制度があるわけでございますが、これについてどうかという問題もあります。これも私は先ほど申しましたようにすでに経営実績がありまして、その限界的なところが、ある種の施設資金が不足している、そこに特別に有利な融資をしてやれば大いに生産効果が上がるという場合に、個別の施設に対する融資制度が適用されるものと、こういうふうに了解いたしております。したがって個別の融資制度はそれはそれとして意味を持つという点で、あえてこれと競合するということを考える必要はないのではないか。こんな感じがいたします。  ただ一般的に申しますと、補助金一般、あるいは融資制度一般かも存じませんが、その制度創設されるときどきの条件によりまして金利もばらばらなら融資期間ばらばら、据え置きの期間ばらばら、また融資のワクもばらばらと、いかにもそういう点でばらばら感じがいたします。それが客観的に見ますると、必ずしも必然性を持たないという点が相当あろうかと思うのですが、こういうものはしかるべき時期に一ぺん整理をしていく必要があるということでいいのではないか。少なくとも総合資金制度というもの、個別の資金制度というものはそれなりに異なる目的を持つということで、私はこの新制度創設によりましてじかに影響を受けるものではないのではないか、そんな感じを持っております。  なお、系統金融公庫関係をどう見るかという問題もありまするが、現況ではやはり私は系統金融における余裕金というものが公庫のファンドになるという形でもって両方をつなぐというのが最も実態に即している方法ではないかという感じを持っております。  以上でございます。
  7. 和田鶴一

    委員長和田鶴一君) ありがとうございました。  次に柳田参考人にお願いいたします。
  8. 柳田久

    参考人柳田久君) 私に対しましてお求めの点は、今回新たに設けられまする総合資金制度について意見を述べよということでございましたので考えておりますことを申し上げさせていただきたいと思います。  基本的にはこの制度の設置につきましては私どもといたしましては賛成をいたしたいと、かように思っておるところでございます。  この制度特徴につきましては、ただいま川野先生からもお話がございましたが、総合的な融資を考えるという画期的な点もございますし、なおまた内容におきましても長期低利金融を考えるとか、相当の額の施設資金として考えておられるというようなこと、さらにまた必要な運転資金もあわせてここで考慮をして考えていく、並びにこの運転資金に対しても保証保険制度を考えていくというような特徴がございまして、これらの点は自立農家として積極的な意欲があり、能力のあるところにとりましては相当の益をもたらすものだというふうに考えますることからいたしまして、賛成をいたしたい、かように思っておるところでございます。ただこの制度につきましては、われわれ農協系統の中におきましては今日までいろいろの意見がございました。したがいまして、この点につきまして若干申し上げまして、今後この制度運用につきましていろいろ皆様方先生の御配慮をいただきたい、かように思うわけでございます。  この制度運用につきまして基本的に私ども感じますることは、この制度がいま当面しておりまする日本農業問題に対する施策としては、かなり限界のある局部的な役割りを持っていのものではなかろうかということが一つと、それから系統金融とこの公庫資金の交錯する問題をどういうふうな関連において運営していくかということ、この二つが大きな問題点ではなかろうか、かように存ずるわけでございます。  多少その点を申し上げてみたいと思いますが、先般公表されました農業白書を見てみましても、この自立農家は約一〇%ぐらいのものであるというふうに示されております。したがいまして、五十万戸から六十万戸といったていのものがこれに当たるものかと思いまするが、今回この総合資金制度対象とされております農家は一千戸にすぎません。これはまだ初年度であるからということかとも思いまするが、これを今後数年重ねたといたしましても、また増加をするといたしましても、先ほど申し上げました自立農家の五十万戸、六十万戸といったものに対しましても、または全体の生産意欲を持った農家に対比いたしましてもきわめてわずかな措置であるということでございます。  御承知のように、今日の日本農業が当面しておる問題は、白書にも示されておりまするように、この食糧に対する需要、食生活の向上による需要というものはたいへんな勢いで伸びてきておりまするが、農業生産のほうはそれには追いついておりません。若干伸びておりまするが、かなり隔たりをもってきつつある。したがいまして、白書にも示されておりまするように、この数年で農産物の輸入が倍加しておる。全体の輸入の総額の中でも約四分の一強に当たるような状況になってるというようなことでありまして、これは全面的に日本農業生産向上させなければならぬ微妙な問題が出てきているわけであります。そういうことから考えまして、私ども農協といたしましては、これはすでに諸先生方にも御説明を申し上げて御理解をいただいておるかと思いますが、日本農業の課題と対応、と申しまする、いわば農協日本農業に対するビジョンを立てて、これに対する当面の農業問題に対するわれわれの姿勢を考えておるところでございます。その中で特徴的に申し上げますると、先ほど来申し上げまする自立農家育成ということも大切なことであることは認めまするが、何にしましても八〇%余になりまする兼業農家の存在というものを大きくつかまえていきませんと、全体の農業生産向上農業問題の解決といったようなことにはなり得ないものだと存じます。したがいまして、このわれわれのビジョン構想の中におきましては、この多数の農家生産力を上げるということのために、一つ集団生産方式というものを中核にいたします専業農家中核体にいたしまして、この大きな兼業農家を包摂して一つ集団生産方式を考える。そういうことによってこの大きな規模生産方式生産技術経営といったものを取り入れていく。そういう大規模体系をそういうことによって取り入れていくということを考えるわけであります。さらに集団生産組織を広域の経済圏で考えまして、現在のところどんどん規模拡大いたしておりまする消費市場拡大対応するかまえにするということでございます。これを総括いたしまして、営農団地構想というふうにわれわれは唱えておるのでございますが、これによりまして、規模拡大にひとしい生産力向上をはかる、つまり高度の生産技術体系を取り入れることにし生産向上をはかっていく、それからまた広域化していきまする市場に対する対応の姿を求めていくということでございます。  したがいまして、これによることによって、初めて全体の生産性をあげる、日本の当面する農業問題に対する解決姿勢というものができてくるのではないかというふうに思っておるわけでございますので、自立農家育成措置に関しまする総合資金制度といったようなものの価値は認めるのでございまするが、大きくそういう問題を考えていくというところにもひとつ諸先生の御配慮をいただきまして、あわせてそのことの推進を御考慮いただきたいと思います。  そのことにまた関連いたしまして、この総合資金制度の中で、対象農家の選定が大事な問題になると思うのでございますが、その際にも、われわれといたしましては十分関係機関と連絡をとりまして、協調をとりまして、先ほど申し上げました営農団地の集団生産の中で、中核的な、モデル的な農家になりまするものを、なるたけ対象農家に選定していく、そうしてそこが範となりまして、全体の生産力向上になっていくというような方向にも考えまして、この総合資金制度のメリットと合わせてまいりたい、かような考え方も持っておるわけでございます。  それから第二の問題といたしまして、系統金融との関連の問題を先ほど申し上げたわけでありまするが、これも諸先生方には十分御承知かと存じまするが、農林漁業金融公庫ができました当時に比べますれば、最近の農協系統資金量というものは膨大なものに増加をいたしております。で、昨今の数字を見ましても、約四兆円に近いところの数字が出ておりまするし、ことしと来年にかけまして、さらに五兆円を目標といたしまして農協貯蓄の全国運動を展開しよう、十分その実現性は見込めると、かように思っておるところでございます。今回のこの総合資金制度もけっこうなことでございまするが、かような膨大な資金量を系統農協としては持っておるということを、ひとつ十分御配慮をいただきまして、この自立農家育成の面に対しましても、また先ほど申し上げました営農団地の前進の施策のためにも、このことを活用してまいりたいと私ども思っておりまするので、このことが農政の上にも反映いたしますことを御配慮をいただきたいと思うわけであります。  その点に関連いたしまして、少し具体的に申し上げてみたいと思いますが、ただいまこの系統の資金をもちまして、御承知のように農業近代化資金制度の実施が行なわれておるわけでございまするが、本来、今度の総合資金制度でも目がけておられます各個別農家経営向上ということは、本来的にはこの制度で、近代化資金制度で行なわれる出発であったわけでございますので、系統の資金量も先ほど申し上げましたように、非常に大きくなっておりますので、そのこととあわせまして今後この近代化資金制度の拡充、またその融資の円滑化ということにつきまして格段のひとつ措置をしていただきますならば、この総合資金制度に含まれておりまする、問題になっておりまする対象農家の限度があるとか、農家を選別するためのいろいろ困難があるとかいったような問題に対しまして十分な答えが出されるのではないか、かように思うわけでございます。この農家の総合経営計画に対処いたしまして、たとえば資金の種類といたしましては土地取得長期運転資金の配慮をしていただく、償還期限につきましても長期化を考えていただく、貸し付けの限度につきましても拡大を考えていただくというふうに、農業者の総合的な経営計画に対処する、新しいケースを、拡充するケースを考えていただくということによって非常な効果が実際的にも出せる措置が行なわれるのではないか、かように思っているわけでございます。あわせまして、同時に運転資金融資にも密接に関連をさしていくことができるということにも相なるわけでございます。  なお、この点に関連を持つことでもありまするが、先ほど申し上げました営農団地の関連の中で一つ取り上げて特に申し上げてお願いをしておきたいと思うわけでございますが、この営農団地構想の考え方といいますものは、この大きな農業の共同経済圏の中で計画的な生産をし、計画的な出荷をするということでございますが、それに見合いまする流通機構の近代化ということがぜひ必要になってくるわけであります。そういう意味合いにおきまして、生産者と消費者との直結、そのルートを短縮化し合理化をしていくという考え方から、今後農協におきましては農産物の集配センターというものを大きな消費都市の近郊に設けて、そのことを実現してまいりたい、かような構想を持っております。大消費都市につきましては全販連でその施設をする。それから地方の中都市につきましては県の経済連でその施設をする。そういうことによりまして、先ほどの合理的な流通施設を考えていきたいというふうに考えておるところでございます。ただ、これが近代化資金でまかなわれることが私どもは妥当だと思うのでございまするが、政府のほうの見解では、近代化資金というのは直接生産者に対するものだという考え方がいま問題になっているようでございまするけれども、結局消費地に生産者が来まして、そこで販売をするということに等しいのが生産者団体である農協の仕事でございますので、そのことは別なものではないというような考え方をいたしておるわけでございますが、こういう具体的な措置が急速に実現、展開することができまするように努力してまいりたいと思っておりまするが、これまたひとつ、あわせてこのことについての御配慮をお願いをしておきたい、かように思っておるわけでございます。  それからその次に、県の信連の直貸しという制度が、この制度の中で一つ特徴点として考えられております公庫の受託機関として対象農家信連から直接貸し出しをするということでございます。これは御説明を伺いますと、融資の窓口をここに一元化するのであるということと、それから先ほど川野先生もおっしゃっておられたかと思いますが、規模の小さい単協の従来の制度ではリスクがある。今後大きな金額を扱わねばならぬ今回の新しいケースにとってはふさわしくないというような点が、そういう制度を生みました理由のようでございまするが、その点はある程度私も肯定をする点はあるのでございますが、しかし何ぶんにもこの系統農協におきましては、県の信連が直接単協を飛び越えて農家に直貸しをするということは制度の上からもはなはだ意見の多い問題でございます。したがいまして、制度としては今回の制度を認めるわけでございまするが、実際この運用につきましては、われわれ農協組織の一番基盤でございまする単協の存在を十分に認識していくという運用を御配慮いただかねばならないと存じます。特にこの対象農家がおりまする地元の単協との連絡協調ということは、その対象農家が計画どおりに営農の成長向上を遂げていくかどうかということを指導し見守っていく、さらには、その販売物を農協の販売事業に結びつけていくということは金融の確保と償還の確保というような面から考えてみましても、実際的に大切なことでもございます。  それからなお、これは先ほど川野先生もおっしゃっていたようでございますが、最近の単協は御承知のような合併等の措置をもちまして非常に大規模化してまいっております。したがいまして、しばらく前の単協の姿とは今日は非常に異なるものがございまして、この大型農協資金のボリュームも相当なものがあらわれてきております。したがいまして、そういうものにつきましては現実的には十分ひとつ考慮をしていただきまして、全体の制度をさらに活用することも考えられることでございまするが、また、そういった大きい単協の大きな資金ボリュームを、県の段階で結局適当に活用する道を考えていくということも今後現実の問題として必要でもあるし、きわめて有効なことにも相なるのではないかと、かように思っておるわけでございます。  その次に一つの問題は農業融資コンサルタントが今回この公庫の中に設けられることになっておりますが、この点は、伺いますると、初年度のことでもありますせいか、ことしは三人置くのだというようなことでございますが、もちろんこれでもって一応考えられるような営農の指導それから営農計画の審査とかいったようなものが十分に遂げられるものではないことは明らかでございます。したがいまして、地方にありまする農業改良普及員並びに農協におりまする営農指導員等のこの面々をひとつ直接いかに使うかということが大切になってくるものと存じます。特にこの単協段階におきましては、先ほども申し上げましたように、これらは直接農家に接する制度でございまするので、これらのものを十分活用し、それらの意向を反映さしていくということがきわめて大切なことであろうかと存じます。  まあ大体要点だけでございますが、以上のような問題点をわれわれといたしますればいろいろ検討いたしました中に感じたわけでございます。これらの問題を実際的に総合して実践に移す場合に大切な舞台になりますのが各県に設けられます融資協議会ということに相なるだろうと存じます。御説明を伺いますと、関係機関のものが集まって、ここで連絡協調をはかっていくのだというようなことになっておりますが、またそうあるべきことでありまするが、このことの実をあげていきますためには、その中におきまするメンバーの問題、それからこの融資協議会の実際の運用の問題がきわめて重要なことに相なることだと存じます。したがいまして、この中に一応うたわれておりまするのは、県信連はもちろん入ることになっておりますが、さらに必要に応じてその他の農協ということになっておりますが、ぜひ先ほどから申し上げました営農指導の問題、それからまた農家生産をいたしまする販売物の確保を通じての直結の問題、そういう点を考えてまいりますると、県の経済連、県の中央会、さらには必要に応じては直接地元に当たりまする単協をこのメンバーに加えることによって、その意向を十分くみ上げていくというふうにしていただくことが必要ではなかろうかと、かように思うわけでございます。  まあ、大体要点だけ以上申し上げたようなことでございますが、要約いたしますれば、この公庫施設資金制度にはかなりの限度が考えられる点がある。一方、系統の資金力の非常に膨大になっている点もひとつあわせ考えていただきまして、どうかその点を総合して公庫金融と系統の金融とがうまく分野の調整をつけられまして、そしておのおのが協調できた姿で全体としての農業生産向上に資することができるというようにお計らいいただくことをお願いいたしまして、この制度の設置には賛成申し上げます。
  9. 和田鶴一

    委員長和田鶴一君) ありがとうございました。  それでは、質疑のある方は順次御発言願います。
  10. 中村波男

    ○中村波男君 柳田参考人にお尋ねしたいと思うのでありますが、いま御意見を承りました中に、今回の総合資金制度は、信連の直貸しである。その制度としては認めるけれども、何としても生産基盤の中核とも言うべき農協がノータッチということについては一考を要するんではないか、そのような趣旨の御発言があったと思うのでありますが、そこで、農林漁業金融公庫のとっております貸し付け方法の中に、農協の転貸方式というのがあるわけでありますが、私が承知しておるところによりますと、四十一年末の融資総額が千二百六十八億円、そこで公庫が直貸ししておりますのは百八十四億円、その残りの千八十四億円のうちの三四%程度がいわゆる転貸方式による貸し付けである、こういうふうに聞いておるわけでありますが、そこでまあ転貸方式に特に農協等が批判的でありますのは、いわゆる農家が返済能力を失ったときには代位弁済をしなければならぬというようなことも、その批判の中の大きな理由でなかろうかと思うのであります。したがって、それに対する農協としてのお考え方、また、実情、実態等について、できますならば詳しくいま少しお話しをいただけないかと思うわけであります。
  11. 柳田久

    参考人柳田久君) 私、日常、信用事業にタッチいたしておりませんので、ただいまのきわめて具体的な御質問に十分お答えをすることができないかと存じますが、まあおっしゃるように、先ほど川野先生もおっしゃいましたが、単協にその代位弁済といったような非常な償還のリスクがかかってくるということにつきましては、その実際に当たりました組合からは、困るという意見がかなり出ております。事実そういうことで、かなり実際行ないましたものが多少後退するような気味合いが出ておるように感じておるわけでございますが、私なりに日常十分接しておりませんので、これ以上はっきりと申し上げることができかねて申しわけないのでありますが、ただ先ほど申し上げましたように、最近の大規模組合になりますればまた事情は異なってくると思います。
  12. 中村波男

    ○中村波男君 川野先生にお伺いするのでありますが、いま柳田参考人からもお話がありましたのでありますが、まあ政府がとっております自立農家、自営農家育成をさらに進めるための一つ金融制度だというふうに評価できると思うのでありますが、その自立農家育成が政府が目ざしております方向に進んでおらないことは、これは自他ともに認めなければならないことではないかと思うわけであります。問題は、八割以上に達する兼業農家生産をいかに拡大をするかと、このことが食糧の自給度が毎年下がってきておる現在の中において、さらに真剣に私は考えなければならない問題ではないかと思っておるわけです。そういう点から、総合資金制度というのを、いま柳田さんがおっしゃったように、集団生産というものに焦点をさらに進める必要があるんじゃないか、合わせる必要があるんじゃないか、こういうふうにも考えられるのでありますが、それらの点について先生はどういうお考えをお持ちになっているか、お伺いできたらと思うのであります。
  13. 川野重任

    参考人川野重任君) 農業人口が減りまして、しかも農家戸数が減らない、兼業農家の割合が高まる、農業生産としてはそれほど伸びない、需要はふえる、したがって農産物の輸入がふえるという実態を御指摘になったものと思いますが、その中で総合資金制度が何をなし得るかということに問題はなかろうかと思います。  私の考えるところでは、現在、国会においても審議の対象としておられるかと思いますが、現在の農地制度が変わりますれば、その点についてはかなり大きな変化があるのではないかと思っております。結論を申しますると、たとえば、農地の売買はともかくといたしまして、貸借についての、あるいは不在所有についての制限等が緩和するということになりますれば、農地の所有者そのものの数はたいして減らない、けれども農業経営者の数はかなり減少すると、当然のことながら土地を貸す地主という、きわめて小規模でありますが、そういう地主がふえるということになりますが、私は農業経営者の数はかなり減るのではないか、その関係兼業農家の率も多少は落ちてくるというふうに考えられないかと思っております。そういうふうの事態において、この総合資金制度が並行して発足するということになりますれば、いわばこの総合資金制度といたしましてはそういう新しい条件が加わることによりまして、さらにその機能を高めるということになりやしないかということを第一に考えます。  それから第二には、集団生産ということでございますが、私もよくわかりませんけれども、こういった自立農家というものは確かに個々経営者能力によってりっぱな経営ができるということが基本であります。けれどもいかに有能な人でありましても、周辺の条件が非常に停滞をしておるという場合におきましては、なかなか腕を伸ばすことができない。そうしますと、かなりたとえば水の問題にいたしましても積極的なかんがいあるいは排水あるいは草地の造成等、国の政策、県の政策等による新しい条件の整備が周辺にありまして、その上にこういう経営が積極的に伸びていくということになるのが考えられる一つのコースではなかろうかという感じがいたします。 つまりあっちの村に一つ、こっちの村に一つというよりは、地域的にまとまりまして、そのまとまり方も新しい耕地が開かれるとかあるいは水利かんがいの施設が新しく行なわれて、その上に大きな経営が伸びていく、そういうほうが農家の定着の条件としてこれが生きていくのじゃなかろうかという感じを私は持っております。  余談になるかもしれませんが、最近の土地利用の特色は、従来は水のコントロールあるいは揚水等についての技術的な制約というものが土地の利用というものについての制限を多くの場面においてもたらしていたということでありますが、それが最近ではかなり深いところからの揚水もできるし、またそれだけに大規模なかんがいというものが比較的に安くできるということによりまして、今後の農業の発展の基盤は地域的に申しますると私は限界ではなかろうかと思っております。ささやかな経験でございますが経験した事例を幾つか持っておりますが、ひょっとするとカリフォルニア——御存じのフルーツ地帯果樹園地帯がございますが、ああいうものも事と次第によりましては日本の場合にも実現しないものでもないという期待を私も持ってみたところがございますが、これはいずれも辺境地帯でありまして、国有地あるいは県有地あるいは部落有林というところでありますが、水がなかった。その水をかけることによりまして事態が一変するというような事態を見るにつきましても、こういう制度がございますれば、一気にそこに——柳田さんのおっしゃる集団的なものとどの程度内容的に一致するか知りませんが、とにかく一つのグループとしてそこにでき上がる。それが周辺の農村にいい影響を及ぼしていく。それをまねて、まねた範囲内においては経営が伸びていくということこそがこの制度の目的ではなかろうか。決して個別な農家対象としたものではなく、それはパイロット的な意味を持つのではなかろうか、それは当然環境の変化ということも含めまして、新しい基盤の上に成り立つ多少ともまとまったグループの農家ではなかろうか、こういう感じを持っております。
  14. 佐藤隆

    佐藤隆君 川野先生にお尋ねをいたします。  先ほど柳田参考人からもちょっと述べられたと思うのでありますが、系統金融制度金融との分野の調整の問題にちょっと触れられましたが、このたびのこの総合資金制度によって近代化資金との競合の問題、これはそれほどないのだというふうにさっき承りましたが、せっかくの機会でございますので、全体的な分野の調整の問題というもの、これはなかなかむずかしい問題で、農林省でもそう簡単に結論の出るはずのものでもないし、しかし私どもも時間をかけても前向きの形で検討を続けていかなければならない問題だと思うわけです。そこで競合しないかというふうに思われがちなこのたびのこの資金にまつわる分野の調整問題について、簡単でけっこうでございますが、現況における御所見をひとつ承われれば幸いだ、こう思うのです。  それから第二点は、具体的な問題として、先ほど来コンサルタント制度についていろいろ御批判がございます。私もこの点については大いに批判をしたいと思っておる一人でございます。後刻、農林省に対しましても質問をいたしたいと思っておりますが、先ほどの先生のお話だと経営設計についての相談あるいはアフターケアについては当然そうあるべきだと私は思いますけれども先生のお考えになっておられるのは、むしろ何か経営コンサルタント融資コンサルタントではなくて、もっと広い経営コンサルタントというお考えをお持ちのようにちょっと拝聴したのでございますが、しかし、経営コンサルタントという制度を掲げますと、これは具体的にいろいろ問題のあることも私は承知しております。実際問題として、そういう人が一体いるかどうかという人の問題も出てくるでしょうし、なかなかむずかしい問題だと思いますが、その辺のことについてちょっとお尋ねをいたしたいと思うのです。特に柳田参考人のお話にございましたように、農協側の受け取り方としてはこういう制度ができて農家に接する機構、こうおっしゃいました。私も確かにそうありたいものだ、こう思うのですが、そういうことになりますと、はたして三名でいいかどうか、具体的な問題が出てきますが、これは農林省にお伺いするとして、融資コンサルタント経営コンサルタントという問題についての考え方をお聞かせいただければ幸いだと思います。
  15. 川野重任

    参考人川野重任君) あとのほうからお答えさせていただきますが、私の拝聴した限りにおきましては、融資コンサルタントというのは融資をするについて意見を申し上げる、その融資というのは、融資したものは必ず返してもらわなければならぬ、安全確実に計画どおりに返るかどうかという見通しを立てまして、それが立ちました場合において融資することが融資の原則かと思います。私のいまの話は、経営コンサルタントということばをかりに使わせていただくとすれば、その融資を媒介として新しい経営創設されますが、その経営創設が、いわば国民経済的にと申しますか、日本農業全般の進歩のためにどれほどの意義を持つか、逆にまたそういう融資をもって創設されました経営というものが、一般に普及する可能性をどの程度持っているか、それによって一般の農家の水準を上げていくということについての見通しいかん、そういったこと等についての検討がございまして、初めてそういう制度が、単なる農林金融公庫融資を能率的にするかというだけでなしに、いわば特別に安い金利でもって、国民の税金でもって融資をするということの意味があるのじゃなかろうか。本日、この席において、私ども呼ばれましてささやかな意見を申し述べるということでございますが、これ自体がそういう感覚からいたしまして、いわば国民の審査にかけられておると私は思っております。しかしながら、一たび制度が成立いたしますと、ともすればあと運用についての審査という機会がないのじゃなかろうか、それをコンサルタント制度の中に織り込むということで、毎年農業白書でもって農政の足跡が検討されておりますが、あたかもそれと類似した形におきまして、その足跡をひとつ検討し常に活用していくということが必要ではなかろうか、それによって制度が生きていくのではなかろうか、こういう意味において経営コンサルタントというふうに言ってしかるべきのような発言をしたかのようにお受け取りいただいたかと思いますが、私の趣旨はそういうことでございます。  それから第一の点でありますが、これもどうも私は実態を存じませんので、どんぴしゃりのお答えができなくてたいへん恐縮でございますが、まあ問題は信連段階単協の競合の問題、それから近代化資金のワクの中での競合の問題ということかと思います。あとのほうは、これはまあワクの拡大で問題は解決するのじゃないかと思いますが、前の単協信連との競合の問題、これは私は確かにあると思います。この点は、おそらく融資協議会の中に、当該の、つまり融資対象となるような農家の所在する単協関係者というものが融資協議会において意見を申し述べる機会を持つこと等は必要じゃないかと思いますが、ともかくそういう調整を事実上、運用上するということになるほかないんじゃなかろうか。やや時間をかけますと、今度は大型農協というものが出てまいりますれば、今度は大型農協にその仕事が移っていくということも考えられるのじゃなかろうかと思いますが、この辺はどうも相当めんどうな問題が私は起こってくるのじゃないかという感じもいたしますが、ちょっと現在はその程度以上に申し上げようがございません。
  16. 任田新治

    任田新治君 いまの佐藤委員の話に関連しましてお伺いしますが、このコンサルタント、ことしはさしあたり三名ということになっております。先ほど川野先生のお話でコンサルタントの性格というか、これからの仕事というものをどの範囲にする、どういうような仕事をさせるかということによって人数もいろいろに変わるでしょうし、それから単に中央公庫のまん中におって指導者をつくるというか、設計を考えるというような、その場だけで考えればその程度でいいのかもしれませんが、さらにもう一歩踏み込んで、各地方のまた少なくとも各支店あたりにいろいろ根を張って、そうしてその地域、地域の営農の基準のあり方というものをその人たちに考えてもらって、そうしてやっていこうということになりますと、相当組織を持たなければなりません。単に営農上の指導というかあるいは設計というようなことまで発展しなくても、たとえば先生からいまお話があったように、貸した金をいかにうまく、しかも農家に迷惑をかけないで回収するだけのものを与えていくというような考え方に立つだけでも、これはまた組織の上からしても相当の人数に発展するのじゃないかというふうに思います。農林省関係からいきますと、さしあたり三人はことしというような意味なのか、大体もうこの方針でいこうとするのか、そのあたりがまだ十分私ども聞いてはおらないのですが、先生がいまの立場から忌憚のないひとつ御意見をいただきたいと、このように思います。
  17. 川野重任

    参考人川野重任君) ただいま三人のコンサルタントという原案だというお話がございましたが、私も十分に伺っておりませんけれども、およそ金融機関として融資をするにつきましては、安全確実に回収がされると、もちろんその目的に沿ってですね、能率的な融資が行なわれるということが必要かと思いますが、これはもう貸す立場においてそういう配慮をすることは当然のことではないかと思っております。したがいまして、あえてコンサルタントということばが出てくるにつきましては、この融資制度のいわば国民経済的な意味を考えまして、これが他の農家を引きずっていく一つ基準になり得るかどうか、そういうものを選択的に選んでいく。つまり、単なる貸し付け機関としての立場でなしに、農政を担当し、いわばそれに協力する金融機関としての立場で、そういう経営育成的な観点からの融資を考えると同時に、その結果というものを常時反省しながら新しい融資体制を考える。同時に農林金融公庫の大きな背景となっておりまする農政そのものが、そこでまた新しいチェックを受ける、反省をしていくと、こういう機能を期待してのことではないかと私は思ったものですから、融資コンサルタントというよりも、むしろそういう経営育成コンサルタント、それを融資でやるとすれば、どういうことでいくかということを判断する場をこの制度をもって考えるという意味ではないかと、こう考えたわけです。そうすれば、やはりそれなりに、中央に三人というのでなしに、もっと広げるということも必要でありましょうし、それからその公庫の中における地位にいたしましても、先ほど申しましたように、公庫意思決定に参画できるような重要な地位を持たせるということではなかろうか。つまり、一定の額の金を有効に使うというアドバイスコミティでないと、そもそもそういうものは、極端な場合ですと、うまくないからやめるというふうな意見が出てきても私は差しつかえないというぐらいのことではなかろうか、いわばこれはまるがかえに融資をする思い切った制度ですから、そういう点で私はもっと幅広くお考えいただくことがいいのじゃないか、かように思っております。
  18. 和田鶴一

    委員長和田鶴一君) 他に御発言もないようでございまするので、両参考人に対する質疑はこれをもって終わります。  参考人の方には、長時間にわたり本委員会に御出席くださり、貴重な御意見をお述べいただくとともに、委員の質疑にお答えいただきまして、まことにありがとうございました。  これより質疑を行ないます。本案に対し質疑のある方は順次御発言願います。
  19. 佐藤隆

    佐藤隆君 それでは、いまの問題につきまして一点だけここで詰めておきたいと、こう思うわけです。参考人の貴重な御意見農林省側でも聞いておられましたので、多くを申し述べる必要はないかと思いまするけれども、一体三名を配置するという問題ですね、これはもう実は非常に無礼な言い方かもしれませんが、ナンセンスだと私は思うんです。おそらくは予算要求時においてはこういう考え方ではなかった、これはもう聞かなくても私わかるわけです。大蔵との折衝の過程においていろんなことがあるということも存じております。  そこで私は、まあ融資コンサルタントということで、融資そのものに限っての相談相手という制度だとするなら、ひとつ、せっかくの制度ですから機動性を持たせていただきたい。特に先ほど柳田参考人からは、農家に接する機構というふうに受け取られておるのです。そうすると、やはりもう末端の農民にかゆいところに手の届くというようなあたたかい行政の、そういうふうに受け取られるようなせっかくの仕組みですから、機動性が必要だ。そういう機動性からいっても、この三名というのはまことにナンセンスだと、こう私は思うんです。  そこで、三名というのはおそらく公庫の本店に人選をして置かれるんだろうと思いますけれども、私は金融機関というのは、制度金融機関であっても系統金融機関であっても、単協の場合は信用事業とそれから購販売事業を一緒にやっておりますから、店頭に農機具もあればビスケットやキャラメルまで売っている。たわしも売っているということで、わりあい敷居が高くない。ところが信用事業専門の機関ということになりますと非常に敷居が高いわけです。信連の場合でも中金の場合でも、あるいは公庫の出先機関の場合でも、非常に敷居が高い。そういうときでも、さあ、いらっしゃれば御相談に応じますよというコンサルタント制度、あるいはいらっしゃらなくっても出かけていくこともありますよというコンサルタント制度。  そこで私は、この三名が、何を聞かれても融資万般にわたって、特にあるときは経営設計に至るまで、多少の意見を述べられるくらいのそういう有能なる人を探すとなかなかない、だからとりあえず三人という理屈づけも可能かと思いまするけれども、これがそういう資格であるとするなら、あるいはそういう能力をお持ちの三人だとするなら、それを機動的に生かすためにそれを何というんですか、補佐するというか、そういうことをあわせて考えますと、公庫もせっかくあちこちに支店があるわけですから、そういう機動性も考えて、各店舗に当然三名の補助者なりコンサルタントというものを、そういう名前をつけてもつけなくてもいいですが、そういう者をやはり置く必要があるんじゃないか。一名なり——まあ一名というのはどうかと思いますから、二名ぐらいを各店舗に必ず置くと、こういうことになってくると、でははたして公庫の各支店にそういう能力を持ち会わせた人間がおるかどうかという問題になるわけでございます。私はまあ万般にわたってもうほんとうに何もかも知っておるというのが三人中央におる、それを補助する立場で各店舗に二名程度を、少なくとも二名程度を置くと、特に融資についてですね、融資問題を中心として置くということであれば、私は各店舗に置くことができるんじゃないか。いますぐ増員をするということになりますると、これは予算との問題も出てまいりますし、もちろん予算との問題があってこれはまあ三名というところに落ちついたんじゃないかという私推測もしておるわけですが、まあそれはそれとして、とにかく中央に三名、各店舗に機動性を持ったそういう相談相手という者をこの際ぜひとも現場配置の中でそういうことをぜせやっていただきたい。  私はいまの公庫の各支店の——まあ公庫もだいぶ人数が多くなってまいりましたからいろいろな人がおると思いまするけれども、各店舗に二人ぐらいはそれにこたえる人間は私はいると思います。ですからまあほんとうの専門家が、いま考えられている三名と同じような資格なり能力を持った方々が、今後予算要求をすることによって全国に配置されれば、それが一番いいんですけれども、現況はそういうやり方をぜひとっていただきたい、こう私は思うんです。そうでないと、せっかく融資コンサルタントというもうりっぱな看板を打ち出しても、受け取る農民側からいわせると、何か看板ばかりりっぱでちっとも何も意味がないんじゃないかというふうに思われたんでは、せっかくの御努力が実らない、こういうことになると思います。  そこでもう一つ、蛇足でございますが、公庫にそういうコンサルタントを置くと、本店に三名、地方には二名ずつその補助者を置くと、さあいらっしゃいということと同時に、まあ実際この金融コンサルタントとして、私どもも、私自身が選挙区においては、これはもうこの豚鶏資金、まあ豚をどうする、鶏をどうする、それは公庫へ行って豚鶏資金借りろ、どうも話を聞いてみると豚鶏資金にはマッチしないようだと、のらないようだと、それじゃ系統資金で行けと、私自身が経営コンサルタント的なことをやっているんです。  そこで、できればこの系統と制度金融とのこの横の連絡というものは、これは密なるべしで、ひとつこの融資コンサルタント制度ができるのを機会に、系統機関に対して、公庫にはこういう仕組みをつくったと、ついては系統機関にも——私の知っている範囲では、融資コンサルタントというような看板はいままで出しているように私は伺っておりません。そこでまあ制度と系統とはこれは両輪でございますから、ひとつ系統機関に対して、制度機関である公庫にこういう仕組みをしたから、ひとつ意思の疎通をなにする意味において系統機関においてもそれと対応した措置を考えてほしいというような行政的な指導は農林省においてなされてしかるべきではないか、こう私は考えるわけです。その点についてお伺いします。
  20. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) コンサルタントの問題でございますが、私ども総合資金制度を考えましたときに、まあ農業金融関係の研究会を一年ほどやりまして、東畑四郎さんを座長にし相当長い間多数の会合を重ねて案を練ったわけでございますが、その議論の過程におきまして、総会資金制度農業コンサルタント制度というものは不可分であって、むしろ現在ある農協の指導員の制度なり、あるいは普及員、専門技術員などの制度とは別に、農業コンサルタント協会というふうなものをたとえば県ごとにつくって、そして総合資金制度関係経営アフターケアをやったらどうかという意見相当強かったわけでございます。  ただ、私どもずっと議論の過程で、どうも現在の制度なしにいわば白地に絵をかくような話でありますと、いま申し上げましたように経営コンサルタント制度公庫から末端まで置いて、それが経営のめんどうを一切見るということは、はなはだ意味のあることだと思いますけれども、何せ現在相当多数の営農指導員が農協におりますし、県には一万名をこえる農業改良普及員がおり、また相当多数の専門技術員がこれをバックしているという、そういう経営指導体制ができておるわけでございますから、そういう現在の制度の上にもう一つコンサルタント制度を載せることは、実際の運営としてうまくいかないのではないか。したがいまして、公庫コンサルタントを置いて融資の指導をすることは、今度の総合資金の機構として必要でありますけれども農家にじかに接して、農家の相談相手になるのは、やはり普及員なり、専門技術員なり、あるいは農協の営農指導員の職分であって、それを公庫コンサルタントが十分指導して新しい総合資金制度の運営をうまくやることのほうがよいのではないかという、そういう結論に達したわけでございます。  確かに三人農業コンサルタントを置くことはおかしいではないかという御意見は、コンサルタント制度をいまの普及指導組織から切り離して考えますれば、まさにおっしゃるとおりでございますけれども、私どもの考えておりますのは、やはり現在の機構をできるだけうまく改善して、総合資金による自立経営育成といいますか、経営指導をもって現在の普及員なりあるいは指導員なり専門技術員なりを十全に利用してやりたいという趣旨でございます。それからさらに金融機関、信連あるいは公庫等を含めて、もっと農業経営に興味といいますか関心といいますか、そういうものの指導的な立場に立つべきではないかという御意見、私は考え方としてはまさに御意見どおりであるだろうと思います。ただこれも農協に指導員がおり、県に普及員なり専門技術員なりがおるわけでありますから、それらを切り離して支店ごとにあるいは公庫の支店ごとに、あるいは信連ごとに営農設計の指導をするような機構等をつくることがいいかどうかということは、私はなお相当問題があるというふうに考えております。ただ信連にしろあるいは公庫にしろ普通の金融機関でございません。あくまで農業振興あるいは経営改善のための金融機関でありますから、ただ金を貸すだけではなくて、金を貸したあとの世話を十分行なうべきだということは、私はそのとおりであろうと思います。したがいまして今後三人をどういうふうにふやすかということは、この農業コンサルタント制度がどういうふうにうまくいくか、あるいは普及員なり営農指導員なりまた専門技術員なりが、はたしてわれわれの期待するとおりにうまく経営指導に当たってくれるかどうかということを見ながら、十分慎重に検討をいたしたいと考えております。
  21. 佐藤隆

    佐藤隆君 いまの話でございますが、とりあえず三人でということですが、これはどうもみんなの受け取り方は違うと思うのです。違うということはどっちが正しいかということではなしに、ぜひそうあらねばならぬとみんなが考えていると思うのです。そこで、せっかく融資コンサルタントという表札を、看板をさげるわけですから、やはり三名の専門家が東京におって、あと各県の普及員なり何なりがいろいろ経営診断をやったり、技術の指導をやった、結局その中の金融問題を、じゃ金融コンサルタントの東京へまで、まあ文書でやるか出かけて来るかわかりませんけれども、そんなやりとりをやっていたのでは、本来的なコンサルタントという私どもの認識におけるそういうコンサルタントという何からすると、ちょっとはずれているのではないか、私はそう思うのです。ですからこれ非常にいいことなんですよ、コンサルタントという制度は。中小商工業者に対してもコンサルタントという制度があるのです。ところが、各町村の商工会議所なり商工会なりが申し込んでも、一カ月か二カ月しなければ県から指導員が出かけられない。ここにも人の問題があるのです。しかし、指導を受けた連中はみんな喜んでいるのです。ところが、まあ先ほど来申し上げるように、金融機関ということになると、金貸しのところへ行くということになると、敷居が高くなっておるのです。ですから、いま普及員の方々なり農民が直接コンサルタントのところに来なくても、普及員の方自体が経営設計なり何なりを技術指導とあわせて指導をしているときに、融資の問題が出たときに、即刻相談相手になれるという一つ仕組みがなければ、やはり徹底しないのではないか、こう思うのです。  特に公庫の場合は管理課というものが各店舗にあるわけですから、管理課は大体延滞整理をやっているのです。実態はそうなんです。貸した金がこげついた、それをいかに取り立てるかということが主たる業務になっておるのです。ほんとうはそれではいけないのです。延滞しないうちにどうするかという問題、やはりその辺にコンサルタントとしての使命は、公庫の各店舗の現況としてあるところの管理課ですか、その辺にやはり使命があるのじゃないか、こう私は思うものですから、そこに予算的な裏づけがなくても、当面この制度を生かすために補助者なり、コンサルタントという名前をつけなくても、そういう補助者なりを置いて、さあいらっしゃいということは、今日農家側はいろいろ融資の問題に考えあぐんでいるときに適切な措置だ、こう私思うのです。ですから、せっかくのこの表札が生きるように、一つの提言をしているわけでございます。  さらに先ほどの話を繰り返しますけれども、系統機関におかれても、こうした考え方に対応した措置をひとつお考えになっていただきたい、考えるべきであるということぐらいは、ひとつ局長、通達ぐらいで当然指導されてしかるべきではないか、こう思うのです。私は実際、たとえば新潟なら新潟の公庫の支店がございます。それじゃあ、資金のことは東京の公庫へ——ところが、私はその専門家でもなんでもございませんから、はずれていることもございます、私の意見が。そうすると、公庫のほうから即刻中金のほうへ、いや、おまえの言っていることは公庫仕組みにはこれは乗らないのだから、おまえは中金に行きなさい、信連に行きなさいということを言うわけです。そして信連なりに行って、いやあ、ありがとうございましたということで陳情の目的を全うしている場合もあります。そういうときに、系統機関がやはりどうも融資コンサルタントというのはおれは知らぬのだということでは困るのです。同じ考え方ですべり出せるものならすべり出してほしいということなんでございます。
  22. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 先ほども申し上げましたように、信連なりあるいは公庫なりが、現地におきましても、さらに農業経営の指導について熱心であるべきだという御趣旨は全く私も賛成でございます。したがいまして、公庫の支店におきましても、総合資金制度の発足を機にして、どういう機構にするかは別問題でございますけれども、これに対応するような人の配置を当然考えておりますし、それから信連につきましても、とにかく農業にもっと自主的に突っ込んでほしい、また突っ込まなければ総合資金の運営はできないわけでございますから、それについての配慮をしてもらうように十分指導いたすつもりでございます。
  23. 中村波男

    ○中村波男君 局長、融資コンサルタントというのは、高度の職員であるわけですね。そこで、都道府県融資協議会というものが構成されて、そこでパスしたものが東京の公庫へ送られてくる。さて、それを審査するのが融資コンサルタントの仕事であって、経営技術指導などをする余裕もないだろうし、考え方としても、そういうことは全く考えておらない、こういうことじゃないですか。
  24. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 総合資金制度審査は、県の協議会で、公庫の支店あるいは信連その他、県の人も集まってもらって、そこで一括して審査するわけでございますが、そこできまりましたものを東京に上げて、コンサルタント審査して可否を決定するというふうには、私考えておりません。これは公庫の支店の段階できまりましたら、それで即決できるように、一々東京まで引き上げてやりますと、とにかく三人の人が、初年度で少ないのですけれども、千戸でございますから、千戸の農家についての経営設計を一々公庫コンサルタント審査をするということになりますと、非常に融資に時間がかかりますしいたしますから、私どもは県の段階で、公庫の支店の人が出て、そこできめれば、それでもう決定になるというふうに考えております。
  25. 中村波男

    ○中村波男君 そうだとすれば、もう少し具体的に、いま佐藤委員からも質問があったのですが、融資コンサルタントの仕事の内容ですね、どのようにやるという計画ですか。
  26. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 融資コンサルタントの三人の人選につきましては、農業経営といいますか、農業技術的に相当高い水準の人を現在予定いたしておりますけれども、この人々が、県の専門技術員なりあるいは改良普及員なりを指導して、営農設計審査をする場合の問題の指摘、あるいは県の専門技術員から、融資に関連して営農設計審査についてのいわば疑問点の解明の依頼がありましたときは、それを解明する。さらに総合資金を受けて農家経営がだんだん変わっていく。その変わっていくあとのトレース、それが今後の総合資金の運営に当然役立つわけでございますから、そういうものをやりながら、漸次経営指導の、監督といいますか、そういうものの作成にも当たりたいというふうにも考えております。  要するに、農業コンサルタント自体は、直接農家に接して営農指導をするというよりも、むしろ農家に接して営農指導をする普及員なりあるいは農協の指導員なり、それの後見としての専門技術員なりの指導と相談にあたることが、そうして総合資金全体の運営を絶えず経営技術的な面からチェックしていくということが、農業コンサルタントの役割だというふうに考えております。
  27. 中村波男

    ○中村波男君 その説明を聞きますと、指導系列という面から言いまして、ますます混乱をするのじゃないかと思うのです。これは従来、政府は構造改善だ、選択的拡大だといって、いろいろ奨励してきたけれども、事業に対して技術的、経営的な指導が欠けておった。また、全く無責任だ。こういうところに、政府の奨励する反対のことをやればもうかるというような、農民に不信があるわけです。したがって普及員制度が、国と県との系統的な制度があって、その指導を農林省が責任を持ってやらなくて、金の貸す側のコンサルタントが高度な技術、経営の指導をやるということを考えること自体に一これは屋上屋とは全く違ったことであって、私は割り切っていいと思うのです。金を貸す側は、貸した者に対して完全回収をしなければならんというところで、農林公庫公庫みずからの金でコンサルタントを置くということについては、これは当然な公庫側としての要求であり、そういう措置、機構がつくられてしかるべきだと思うのです。それをあたかも、公庫の金で設けたコンサルタントを、国と県との指導系統にさらにこれを、何といいますか、指導させるということを考えること自体に、農林省の考え方はどうかしているのじゃないか、そういう感じを持つのですが、どうです。
  28. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 公庫農業融資コンサルタントの仕事というものは、あくまで総合資金の貸し付けに関連しての指導でございますから、一般の普及事業の指導としての普及員あるいは専門技術員の指導することは、一般の農林省の指導関係になるわけでございます。公庫コンサルタントの仕事は、普及事業一般ではもちろんございませんで、総合資金の貸し付けということに関係しての観点からの指導でございますから、それは二つの系統が混乱するということは私はまずないというふうに思います。
  29. 中村波男

    ○中村波男君 ますますわからなくなるのですがね。総合資金制度は、農林省が考えられて今回の法律を提案されておるのですからね。したがって私は農林省にそういう必要があるとするならば、やはり三人と言わず、はっきりとしたそういう指導機関というものをつくって農林省の責任においてやるべきであって、これを貸す側の金融機関に依存するということ自体が間違っておるんじゃないか、これはやはり資金を貸したあとの償還という問題は公庫の要求であろうけれども農林省としてはそれを中核農家として自立経営をさらに拡大していくという大きな政治目標があるわけですから、そういう面ではもう少し考えていただく必要があるのじゃないか、このことを申し上げて質問を終わります。
  30. 任田新治

    任田新治君 今度の総合資金制度、これはこまかくいろいろお話を聞いたり、それから刷り物を見たりしますと、まだまだ問題もありますし、いまのコンサルタントの話が出てきたり、また既往のいろいろな融資制度との関連の問題もあるわけですが、全般的に見た場合に、われわれがいなかで農家に直接接してみますと、とにかく個別の資金公庫資金があって、それと話をしながら、とにかく公庫自体の担当者から見ますと、それの守備範囲がきまっておるものですから、その守備範囲のきまった人を相手にしながら個別に相談をしてそして金を借りてくるというようなことをやっておったいままでのやり方から見ますと、今度は具体的にはどんな形になるかわかりませんが、とにかく制度の上からいって、窓口がある程度一本化されて、そして自立経営あるいは規模拡大ということをはかっていく上においては便利になったということが言われるだろうと思うのです。  そこで先ほど川野先生もいろいろお話がありましたが、自立経営育成規模拡大というものが一つの目標になっておる構造政策の実行手段としての総合資金制度であるということになるわけですが、この資金制度を見てみると、ひょっとすると、これは離農促進に通じるんじゃないかというような意見も持つ人があるだろうと思う。そこで、そういうような意見を持つ人に対して、政府はどのような態度で、姿勢でもって対処していくかと、この点伺っておきたい。
  31. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 総合資金のねらいといたしましては、とにかく現に農家農業相当大きくして農業相当な生活を上げようと心がけている特に若い人たちがおるわけでございますから、その人たちにとりましては、現在の公庫資金制度というのは多少窮屈な面があるわけでございます。土地の取得資金はたとえば限度が百万円でありますとか、畜産経営あるいは果樹園改善の資金は限度が二百五十万円でありますとか、それぞれ普通の農家が普通のやり方で農業をやる限りは、現在の公庫資金制度というのは、私はそれで十分間に合うと思いますけれども農家相当思い切って農業をやる。思い切って農業をやると言いましても、現在の日本の農村の現実に立っての話でございますから、とんでもない大規模農業ということを当然考えておるわけではございません。しかしいずれにしろ、農業相当な生活を上げるための規模拡大、あるいは資本投下の増ということを考えますと、現在の資金制度ではやや窮屈であることは当然でございますので、そういう農家に対して資金を供給しようとするのが総合資金でございます。したがいまして、それで離農を促進するということとは全然別の次元の話でございます。資金融資あるいはそれに関連しての離農促進かどうかという問題は、総合資金制度の実際の動き方から申しまして、私は全然無縁だと思いますし、また、小さい農家あるいは兼業農家等々に対しましては、先般からいろいろ御議論がございましたように、集団的な生産方式の導入等々によってその農業所得の増あるいは農業生産の増強ということを考えておるわけでございます。
  32. 任田新治

    任田新治君 いまのお話によりますと、それとは無縁でやっていく、それから兼業なりあるいは小規模農家がそれぞれ個別にものを考えて資金を借りていこうというような場合には、それは既存の資金制度でもってやっていけるのじゃないかというふうに受け取ったのですが、大体そういうことであれば、農家全般についてもそれで安心していけるというふうに思いますが、ところがいま一方、そういうことであった場合に、さて初年度二十億というようなことですが、この二十億でいいのかどうかという問題が出てこようと思います。この点は千戸の農家対象にしてやっていくのだというような話になっておりますが、これも実際はやってみなければわからない。やってみなければわからないのですが、この場合、既存の資金のほうでなかなか余裕というものはないかもわかりませんが、全体として千六百億が千八百億にもなっておるのですから、その点で各種資金の中で、あるいは余裕ができたり、ないしは需要の度が少なかったりした場合に、二十億のほうに上乗せするためにそれを融通するような気持ちがあるかどうか、これもひとつ伺っておきたい。
  33. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 総合資金制度対象農家戸数は初年度千戸というふうに考えております。これは農林漁業金融公庫資金のワクが全体で千八百億でございますから、先ほども申し上げましたように、相当規模農家でも、個別の経営改善でございますれば、一般の資金から当然融資を受けることができるわけでございます。総合資金にたよりますのは、そういう農家の中で特にまとめていろいろな種類のものを借りたいという者に限定をされるわけでございますから、それほど数として多くの資金需要にはまずならないのではなかろうかというふうにも考えておるわけでございます。千八百億のうち総合資金に回る金は一応二十億と考えておるわけで、まず二十億で初年度は間に合うのではないか。次年度以降は、これは総合資金制度の運営の実を見ながら私どもはこれをだんだんに増加さしてまいりたいというふうに思います。また、四十三年度におきましても、千八百億の中のワクのやりくりはある程度まで自由でございますから、資金需要実態を見ながら、必要なところに要らなくなるような資金を回すということは十分考えられるわけでございます。
  34. 任田新治

    任田新治君 大体その点は私も安心しました。  次にお尋ねしたいのですが、今度の制度は一本化されて、そして目標が一つきまっておる、窓口も一本化されたような感じでありますが、この貸し付け条件を見ますと、全体として一本化された関係上、五分、四分五厘、また償還期限にしても二十五年、十年というふうになってきているわけですね。既存の各種資金、ああいうものと比べていろいろ農林省としても考えられた結果この案が出てきたのだというふうに思いますが、全体としてどういうような吟味をされた結果これが出てきたか。  また実は先ほど川野先生に特に伺おうと思ったのですが、川野先生はその用意をしてこなかったと言っておられたのですが、諸外国の例ですね、諸外国の総合資金に対する例というか、そういうものについて、もしきょうお持ちであれば、それとも幾らか対比しながら大体この辺であろうというような気持ちでされたと思うのですが、その点をひとつ伺ってみたいと思います。
  35. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 総合資金を考えますときに一番大きな私どもの関心は、相当、特に若い人たちが思い切って農業をやります場合に、融資のワクをたっぷりすることと、それに伴いまして償還期間なり据え置き期間なりを相当長期にするということが最大の関心であったわけでございます。したがいまして、額は農業金融関係としては非常に類のない額でございますが、おおむね八百万円ということで、必要があれば八百万円のワクをこえることもあるべしというふうに考えております。融資率八〇%でございますから、八百万円といたしましても事業内容としては千万円でございます。償還期間なり据え置き期間といたしましては、農業関係公庫融資の中で一番長期のものといたしまして果樹関係で償還期間二十年以内、据え置き期間十年以内というものがございますので、それを総合資金の償還期間及び据え置き期間といたしたわけでございます。  金利は、農業関係の金利といたしましては土地改良あるいは土地取得というふうに土地基盤に関係するものが御承知のように三分五厘ないし四分五厘でございます。それから家畜の畜産経営拡大資金あるいは果樹園経営改善資金等々、果樹畜産関係及び施設関係を通じまして五分五厘ないし六分五厘でございます。これらのものを勘案いたしまして中をとったというと必ずしも正確でございませんけれども五分というふうにいたしまして、ただ相当多額の金を長期にわたって借りるわけでございますから、経営改善の実があがらない据え置き期間中は農家の金利負担も相当重いということが考えられますので、据え置き期間に限りましては四分五厘ということにいたしたわけでございます。  なお、諸外国の農業金融でございますが、これは諸外国における一般の金利水準と農業金融との水準を考えませんと、日本農業金融制度と諸外国の農業金融制度と直接比較はできないわけでございますが、総合資金制度がきわめて似ていると学者が言っております。  たとえばアメリカにおきまする農家更生管理局の融資、これはアメリカにおける家族経営育成するための政府金融でございますが、通常FHAと呼ばれておるわけでございますが、これは家族農場を維持改善するための事業で、土地の購入あるいは住宅、建物の新改築、土地改良等々のいわば施設資金でございますが、それが年利五%で償還期限が四十年以内、これはコミュニティの委員会の認可によってきめるというふうにいたしております。それからさらにこの家族農場の経営運転資金といたしまして、家畜とかあるいは小農機具の購入でございますとか、えさあるいは農薬等の購入、いわば経営運転資金と考えられますものは、これも利子は五分で償還期間が一般に七年以内というふうになっておるわけでございます。  アメリカを除きましては農業金融制度としてそれほど完備しておるところは見当たらないわけでございますが、たとえばイギリスについて申し上げますと、ここは農業金融制度いわば制度金融はあまり発達はしておりませんで、農業抵当公社というのがございまして、これは原資を政府資金あるいは補助金それからボンドを発行して資金源といたしておりますが、農場購入あるいは建物の新改築、電気、水道の設置等々の施設資金といたしまして利子が七分五厘でございます。イギリスはあと一つ二つ制度資金がございますが、いずれも利子は特に七分五厘ないし八分というようになっております。  それからフランスにつきましては、フランスの不動産抵当銀行、これは資本金及び国庫からの資金と、それから債券を発行して資金源といたしておりますが、土地の購入につきましては七分三厘五毛、償還期限といたしましては六年ないし十五年等々のものがございます。それからかつて私ども農地管理事業団という構想で御審議をわずらわしましたけれども、農地管理事業団の一つのひな形として私ども勉強いたしましたフランスの土地改善農村設備会社、いろいろな呼び方はございますけれども、農地や農場を買い取って、これを五年以内に再びもとの農業者に売り渡すという制度でございますが、これは年利が三分で、償還期限は三十年ということになっております。  以下オランダ、ベルギー等々若干の制度はございますけれども、あまり時間をとりましても恐縮でございますから、以上にとどめる次第でございます。
  36. 任田新治

    任田新治君 大体わかりましたが、いまの日本農業金融制度を含めて全般的に見た場合に、まずまずこの程度しかできないということかもしれませんが、まあその点はやむを得ないと思います。  そこで担保の関係ですが、この際に、担保の点でいろいろ緩和の道を講じておられるのかどうか。それから先般南九州、北海道の畑作振興のあの法律が出たのですが、あの法律の際も私もいろいろお聞きをしたのですが、あのときも担保に対する考え方があったのですが、あの新しい考え方と今度の場合の考え方と、そこに比べた場合に当然南九州なり北海道に対しては担保の点ではゆるくなければならぬというふうには思うのですが、大体その見当で改善がどの程度なされておるのか、それをひとつ御説明いただきたい。
  37. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 公庫の担保の徴求がきつ過ぎるという非難は事実だいぶあるわけでございますが、公庫もことしで十五年の歴史を持ちましたこともあって、最近におきましては相当担保について弾力的に考え方を固めてきておるわけでございます。もちろん金融機関でございますからあまりゆるく将来のことも考えないで貸すということは、これは国家資金を預かっておるたてまえからもできないわけでございますけれども、担保の取り方等につきましては、相当改善のあとがみられるわけでございます。一つは、農地を含めて土地の評価が、従前におきましては時価の五割程度で非常に低い担保価値しか認めておりませんでしたけれども、最近におきましてはこれを八割まで引き上げたわけでございます。さらに昔担保に相当安い価格で取った農地をそのままにして、別に担保の差しかえ等をしないという非難も一時ありましたけれども、最近におきましては、担保に取りました農地につきましても、現状で評価をして、必要であれば担保の差しかえ等々の措置も講ずるようにいたしております。なお、物的担保と人的担保とを組み合わせて、ものによりましては物的担保と人的担保を取る場合もございますし、あるいはそのどちらかで十分である場合は両方は取らないで済ますということもあるわけでございます。  なお、いずれにいたしましても、農家が金を借ります場合に、物的担保としては、従来は土地、家屋が大部分でございましたが、幸いに昭和八年に農業動産信用法という非常に古い法律でございますけれども農業動産を農家が使ったままで抵当権を設定するという制度日本にあるわけでございます。これは私どもも全然使われていない死法——死んだ法律というふうに実は最近まで考えておりましたけれども、どうも総合資金制度なりあるいは北海道、南九州の畑作営農改善資金等々を考えます場合に、新しく畜産を導入するという場合が非常に多いわけで、導入した牛等に担保価値を見出せないということは、これはどう考えてもおかしいわけでございますから、農業動産信用法に沿って、何か家畜を担保価値に還元することができないかということを検討いたしました結果、地方の法務局等を通じて具体的な調査もいたしましたところ、北海道その他において、現在におきましても農業動産信用法を使って乳牛を動産抵当に取るという例があるわけでございます。したがいまして、その点に着目をいたしまして、これは法律の改正は要しませんで、農業動産信用法の施行令を改正すればいいわけでございますが、現在農業動産を抵当として取れるものは農協、漁協、信連、漁信連というふうに限られておるわけでございますが、これに公庫あるいは中金を加えることによって農業動産信用法の運用相当楽にする、あるいは昭和八年につくりました法律でそれ以降改正をいたしておりませんので、施行令につきましても改正をいたしておりませんので、たとえば、現在農業機械の主力をなしております動力耕うん機がこれに入っていない等々、あるいはミルカー——搾乳機が農業動産抵当の対象に入っていないということもございますので、そういう機械なりあるいは家畜の種類につきましても、政令の改正によってこれを拡大するということによりまして、農業動産を抵当に取るということをやるべきだというふうに現在考え、その施行令の改正の準備をいたしておるわけでございます。  したがいまして、要約いたしますと、土地の評価について従前と違うような評価をいたしておることと、人的担保、物的担保を弾力的に組み合わすということと、さらに今回、ごく最近行ないたいと思いますが、農業動産信用法の施行令を改正することによりまして、公庫が新しく家畜を動産抵当の対象とするということによって、担保の問題は相当前進するのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  38. 武内五郎

    ○武内五郎君 資料要求。去年八月閣議で決定したいわゆる新構造政策——「構造政策に関する基本方針」、これを配付してください。いずれまた順次ほかの資料をお願いしたいと思います。
  39. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 承知いたしました。
  40. 和田鶴一

    委員長和田鶴一君) 速記をとめて。  〔速記中止〕
  41. 和田鶴一

    委員長和田鶴一君) 速記を起こして。  これにて暫時休憩いたします。午後一時三十分より再開いたします。    午後零時三十六分休憩      —————・—————    午後一時四十五分開会
  42. 和田鶴一

    委員長和田鶴一君) これより委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、農林漁業金融公庫法及び農業信用保証保険法の一部を改正する法律案を議題といたします。  参考人として京都中央卸売市場長三宅康雄君、立正大学教授佐伯尚美君及び全国魚卸売市場連合会会長筒井英樹君の御出席をいただいております。  この際、参考人の方に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多忙中のところ、本委員会に御出席いただきまして、厚くお礼申し上げます。参考人におかれましては、忌憚のない御意見をお述べくださいますようお願い申し上げます。  なお議事順序について申し上げます。初めに三宅参考人佐伯参考人筒井参考人の順で御意見をお述べいただき、次いで、委員から御質疑を申し上げるという順序議事を進めてまいります。  それでは、まず三宅参考人から御意見をお願いいたします。
  43. 三宅康雄

    参考人三宅康雄君) 京都中央卸売市場長でございます。  本日は、当委員会で御審議なさっております流通近代化資金の点につきまして、私ども意見なり希望を申し述べさしていただきますと同時に、せっかくの機会でございますので、私どもが日ごろ現場で仕事に携っておる者の立場から、市場の運営につきまして感じている二、三の点を申し述べさしていただきたいと思います。  最初に、流通近代化資金についてでございますが、御承知のように、現在中央卸売市場は集散市場化の進展に伴いまして、取り扱い量が非常に増加しております。しかも、一方では著しい自動車の増加によりまして、市場施設が狭隘の度をますます深めているのでございます。そういったことを打開いたしますために、市場施設整備に追われているというのが現状ではなかろうかと考える次第でございます。これを打開いたしますためにいろいろ整備を要するわけでございますが、それには巨額の経費が伴います。したがいまして、開設者といたしましては、どうしても基幹的なものに限定され、卸、仲買い人の個々の店舗の改良といいますか、設備の改善につきましてはなかなか手が届かないというのが実情でございます。そういった点におきまして、この制度はまことに時宜に適したものだと考えております。  また、一方小売りにつきましても、近年におきまする需要の高度化、多様化、そういったものに対応した設備の改善が必要でございます。また、零細な小売りの多いということは、私ども市場の機能に種々の障害を与えております。たとえて申しますと、仲買いの大型化にいたしましても、小売りが零細であるがために、やはり悪い影響を与えているというような面もございますし、また、零細な小売りが多くあるということは、決して消費者の利益にもならない。そういった意味で小売り自体がもっともっと大きくなっていただく、そういったための必要な措置を講ずる必要があるわけでございますが、この面におきましても、この資金制度は非常に有意義なものだとも感じているわけでございます。  さらに、また現在卸、仲買い、小売りを通じまして、労働力確保の問題が共通の悩みになっているわけでございます。これが対策の一つといたしまして、従業員宿舎の充実が強く要請されるわけでございます。こういった面につきましても、この資金制度は直接役立つものでございまして、大いに期待されている次第でございます。  以上、三点申し述べましたが、この新しく設けられる流通近代化資金制度は、生鮮食料品の流通合理化、価格安定をはかるために、卸売市場施設整備と卸、仲買人及び小売り業者を含めました生鮮食料品の流通関係業者に対してその改善を促進するものでございまして、開設者といたしましても画期的ともいえる新しい資金制度が一日も早く成立されまして、関係業界の期待にこたえていただきたい、このように強く御要望申し上げる次第でございます。  なお、この制度が実施されます場合にあたりましての希望事項といいますか、そういった点の二、三を申し述べさしていただきたいと思います。  中央市場にとりまして特に重視いたしております資金は仲買い人の統廃合に伴う近代化資金でございます。最近の生産地の大型化、計画化と、消費生活の向上は仲買い人の機能におきましても、営業の規模拡大が流通機構の近代化としてどうしても必要なものとなっておるわけでございますが、仲買い人の大型化を推進する場合に、設備関連融資ももとよりでございますけれども、特にきめ手となるのは転廃業者に対する資金融資でございます。今回の制度がこの方面にも拡張できるよう要望いたしますと同時に、今回の融資制度を拝見いたしますと、期間、金利、あるいは融資率もやや不十分ではなかろうかと感じる次第でございます。ことに三十億円というワクはあまりにも僅少に過ぎると思いますし、また金利につきましても、できるならば年六分ないし六分五厘、融資率につきましても八〇%以上のものを確保されるというようなことが要望されるわけでございます。さらに、融資の窓口も分かれておりまして、一貫性を欠くきらいがあるのではなかろうかと思いますので、できることなら農林省一本にしぼっていただきたい、このように思います。  なお、一般に公庫資金融資手続は繁雑のきらいがございます。できるだけ簡素化されまして、業者が使いやすいように、利用しやすいような御配慮をいただければ幸いかと存じます。  次に、融資運用につきましては、卸売り、仲買いにつきましては開設者がそれぞれ市場の整備方策を考えておるわけでございますから、そういったものに対応した改善がなされるように、開設者の推薦によって融資をする。あるいは小売りにつきましても、開設都市の市長の全般的な見地から見たところの推薦、推薦よりむしろこの場合は意見と思いますが、そういったものをつけて取り扱い金融機関にあっせんしていただくようにすれば私どもとしてはたいへんしあわせに感じる次第でございます。  以上をもって、流通近代化資金に関します意見並びに希望事項の開陳を終わらしていただきますが、この際、日常、市場で仕事をいたしております私どもといたしまして、市場運営につきまして日ごろ特に痛感いたしております事項につきまして、簡単に述べさせていただきたいと存じます。  現在の中央卸売市場におきまして、改善検討を要する事項はたくさんございますが、最も基本的な、大切であってしかも早急に対策を講じる必要があるというふうに感じております点は、まず施設整備の問題、それともう一つは従業員対策の問題ではなかろうかと感じている次第でございます。  まず、市場の開設整備についてでございますが、最近はいずれの都市でも市場の狭隘化あるいはまた老朽化といったものに悩んでおります。これは先ほど申し上げましたように、取り扱い量の増加と著しい自動車の増加、こういったものが直接的な原因でございますが、このために、市場の開設あるいは整備を積極的かつ計画的に促進する必要がございますが、御承知のような地方財政の現状におきましては、用地費、建築費、いずれも最近ことに増大の傾向が強うございまして巨額の経費がかかる。そういったために、こういった開設整備というものはきわめて財政的に困難な面がたくさんあるわけでございます。京都の例を申し上げましても、三十七年から約十七億あまりを入れまして施設整備、拡張整備をやっておりますが、一応本年度で終わる予定になっておりますが、これでもなお農林省がお定めになっておるところの基準にはまだまだ到達しない。したがいまして、明年度からさらに第二次の拡張を必要とする、どうしてもやらなければならないというような事態に追い込まれておるわけでございますけれども、こういったものがほとんど起債で行なわれるわけでございますが、そういったものの償還に悩んでおるというのが実情でございます。  ことに拡張整備につきまして一番困りますのは用地費でございます。現在これに対する国の補助はなされておりませんが、私たちは、市場用地として購入いたしましたものを、将来他に転用する場合は国からいただいた補助金をお返しする、そういった条件をつけていただいてもけっこうでございますから、用地につきましても国庫補助対象に入れていただきたい。このように要望申し上げたいわけであります。  さらにまた、現在国の補助率は新設市場につきましては三分の一、既設市場につきましては五分の一となっておりますが、現実の問題といたしまして、私のほうのように古い市場は特にそういった点が多うございますが、古いところは古いものを取りこわししなくちゃならない。あるいはまた市場の特殊性からしまして業務を停止するわけにまいりませんから、臨時的な店舗をつくる、あるいは移動をやっていく。そういった、いわばでき上がればつぶれてしまうような間接経費を要しますから、むしろ新設市場よりも割り高につくというのが現実でございます。したがいまして、既設市場につきましても、新設と同じように少なくとも三分の一に補助率を上げていただきたい。このように思うわけであります。  それからもう一つは、こういった開設整備についての国の補助対象の問題でございますが、最近は農林省のほうで非常に御努力いただきまして逐次対象が増加しております。しかし先ほど申し上げましたように、京都の例で申し上げますと十七億七千万円ほど入れております経費の中に、国庫補助対象になるものは約二四%にすぎない。これが実情でございます。したがいまして、補助対象拡大ということに一段の御配慮をいただきたい。このように感ずる次第でございます。  次に、市場の財政運営についてでございますが、物価の値上がり、あるいはまた先ほど来申し上げておりますように、施設整備等によりまして、いずれの都市でも市場経済といたしましては赤字の状態だろうと存ずるわけでございますが、しかも、一方大都市の市場におきましては、集散市場化の傾向が非常に顕著でございます。これは大消費地市場としまして、道路網だとか情報網だとか、そういったものの集中化が避けられない限り、必然の動きでございます。このような、市場の指定区域を越えた広域的な流通活動の現実に対しまして、経費負担の原則をこの際明確にすることが必要ではなかろうかと感ずるわけであります。ことに流通圏が広域化いたします観点からいたしますと、国の財政援助というものはもっともっと強化していただきたい、このように感ずる次第でございます。  なお、市場の使用料につきましては、昭和三十八年の七月の農林省からの通達によりまして抑制されております。ところが、現実の市場経済の収支維持が困難となっております。したがいまして、こういったものは再検討いたしまして、この際その通達の趣旨を撤回していただきたいということを強く御要望申し上げたいと思う次第でございます。  これは全く私見になって恐縮でございますが、市場の流通圏の広域化というものは、将来ますます進展するだろうと思われますし、これに対処するためにここらで根本的に考えておく必要があるのではなかろうか。現在の行政区域に合わせました中央卸売市場の指定区域というようなものはあまりにも現実離れいたしております。たとえば大阪市におきましても、指定地域内に流れるのは取り扱い量の四八%と聞いておりますし、京都市のようなところですら六一%にすぎないわけでございます。そういった意味合いにおきまして、たとえば京阪神のように流通圏が交錯しておる、あるいは集中化が進んでいると、そういったところでは、むしろ京阪神の中央市場というものを国あるいはまた公団的なものが一元的な組織をつくって運営するというような根本的なことを考えていただくような段階ではなかろうかというふうに感じるわけでございます。  次に、従業員対策の問題でございますが、労働環境の改善と労働条件向上は、労働力確保の上においてぜひ必要な問題でございますが、はなはだ残念ながら市場、特にこの生鮮食料品関係の業界におきましては、従業員対策というものが非常に立ちおくれております。もう現実に人を採用しようにも、来る人がない。試験をして選考するというのじゃなしに、そういう余裕はなくて、来るという者があれば飛びつくといったような悲しい現実でございます。このために、当面福利厚生事業を積極的に推進する必要がございます。たとえば勤務時間が一般と異なりまして特殊性がございます。そういったために従業員宿舎の充実を早急にやるあるいはまた最近青年の間から声が出ておりますが、現在市場の休日は日曜日のみでございますが、これをせめて年間五日程度の祝祭日につきましては市場も休むというようなことを、先ほど申し上げましたような意味合いとの関連におきましてもお考えいただかなければならないのじゃないか、このように思うわけでございます。同時に、先ほど来重ねて申し上げております施設整備といったようなものは、こういった労働環境の改善にも役立つわけでございますので、そういった意味でも必要だと、このように感ずるわけでございます。  およその時間が迫ったようでございますので、最後に取引の多面化につきまして簡単に申し上げたいと思います。中央市場は委託販売いわゆるせり取引が原則でございます。むろん商品の多様性、生産の高度化ということが現実にございます以上、この原則は今後も必要であろうと信ずるわけでございますが、しかしながら、最近の生産地の計画生産、計画出荷の増大あるいは取り扱い商品の貯蔵性、規格性の増加等によりまして、取引の能率化と公正化の観点から、集荷につきましては買い付け、また販売につきましては相対売り二本取引の導入といったものを制度的に検討すべき段階ではなかろうかと感じております。  なお、買い付け、相対売りにつきましては、商品の性格上、需要供給の安定性等から検討すべきでございまして、あくまでも消費者物価の安定という見地から個別的に認めていく、そういったことの配慮が必要ではなかろうかと思います。またできることなら、こういったことは統一したルールによって全国が同じようなやり方をするということができましたならば、非常に幸いかと存じます。  以上、はなはだざっぱくな申し立てでございましたが、私の陳述を終わります。
  44. 和田鶴一

    委員長和田鶴一君) ありがとうございました。  次に、佐伯参考人にお願いいたします。
  45. 佐伯尚美

    参考人佐伯尚美君) 佐伯でございます。総合資金制度について若干の意見を述べたいというふうに思います。  総合資金制度という構想は、御承知のように、数年前よりの農政上の懸案でありまして、もともとは三十九年の中期経済計画の中にすでにそういった発想があらわれておりました。四十二年の、昨年の農林金融懇談会でかなり具体的に煮詰められ、その結果がこのような形で落ちついてきたということかと思います。初年度の計画では約二十億円で、国庫融資が現在一千億をオーバーするほどの融資ワクを持っておりますから、量的に見ますと大したことはないように見えますけれども、しかし、その質的な内容という点からいいますと、こういった制度ができるということ、あるいは将来にわたってこの制度拡大されていくということは、農政上においても、あるいは農業金融制度上においてもかなり重大な問題を含んでいるのではないかというふうに考えます。その点についてやや立ち入って私の見解を申し上げたいというふうに思います。  この資金制度は、従来の金融常識から見ましてかなり型破りの金融であるといっていいかと思います。いろいろな側面で、これまでの農業関係制度金融のワクを大きく踏み出しているのではないか。その点を少し理論的に整理して申し上げますと、大体この総合資金制度特徴といわれる点は、三つほどに分けることができるというふうに思います。  第一の点は、融資対象の規制の仕方が、これまでのように個々のものごとに規制をするという形から、経営全体を総合的に規制するという形に変わったという点であります。これまでの制度金融は国庫融資にせよ、あるいは近代化資金にせよ、個々のものに即した形で融資対象を規制した。たとえば耕地整備費であるとか、土地改良であるとか、あるいは農機具であるとか、そういったものに対して規制をする、ものに対して融資をするという考え方が制度金融の基調にあったというふうに理解できます。ところが、この総合資金制度になりますと、そういった個別的な、あるいは物的な融資規制から総合的な、経営的な融資規制へと、規制の方法が大きく変わるという点であります。経営内容一定の政策目的に合致していさえすればどんな資金でもいい、つまりその点では経営内容がある政策に合致さえすれば、それについては政府はいわばまるがかえ金融をやるという発想に立っているといっていいかと思います。まあこういった発想は部分的にいいますと、たとえば近代化資金の中の制度融資というような発想にも若干ありますし、あるいはかなり特殊な部分でありますけれども開拓融資の部分その他にもそういった発想に近いものがこれまでにもあったかと思います。しかし、一般農政の面でこれだけ思い切った形で制度金融を打ち出してくる、あるいは制度金融の発想を変えてくるということはこれが最初であります。その点においてまず画期的な意味を持っているというふうに考えます。  第二点は、融資対象農家のきびしい選別を前提としているという点であります。融資を受ける農家というのは、この資金を使用することによって自立経営に到達し得る農家である、つまり自立経営候補農家にきびしく限定すると、そういう思想が基礎にあるわけであります。将来、この融資のワクがどの程度に広げられるかということはよくわかりませんが、かりにかなり融資のワクを拡大するといたしましても、おそらくこういったきびしい基準に合格し得る農家というものは、日本の総農家の中でごく一部の上層農家に限られるということは自明であろうかと思います。このように、自立経営育成ということを制度の目的に掲げて、選別融資を非常にきびしく行なうということを鮮明にしたのは、この制度が初めてであります。その意味で非常に画期的な制度金融であるといっていいかと思います。  それから第三点は、融資限度がこの制度によってきわめて大幅に引き上げられる結果になったということであります。総合施設資金融資限度は一農家当たりおおむね八百万円というふうにきめられるようでありますが、これは近代化資金、系統資金などの形でセット融資される額を含んでおりませんから、それらの運転資金をも含めますとおそらくその最大の融資限度は一千万円をこえることになるのではないかというふうに考えます。で、現在、近代化資金について見ますと、個人施設に対する一件当たりの融資規模というのはせいぜい三十万円にすぎない、あるいは公庫資金について見ましても、個人施設に対する平均的な融資規模というのはせいぜい五十万円にすぎない、その程度の規模であります。あるいは農家の側から見ましても、二戸の農家が最大限に制度金融を利用して借りる幅というのはおそらく二百万円ないし三百万円というのが実情ではないかというふうに思います。そういった基準から見ますと、この一千万円という融資限度はまさに記録的な大きさであり、その意味でかなり画期的な制度であるというふうに考えられますが、同時に、それだけ融資する主体、融資金融機関の側から見ても、融資を受ける側から見ても、リスクが大きいということは当然その裏側には含んでいるというふうに考えられます。  以上要しますのに、この制度の基本的特徴は、形式的に見ますと総合資金であり、内容から見ますと自立経営育成資金であり、そういったものとして大量の資金を集中的に融資する、そういうところにあると一応考えられるわけです。これまでの制度金融に比べまして、きわめて思い切ったいわば異例の制度金融であり、それだけにこの制度が実現された場合、それに伴う問題点も非常に多いというふうに考えております。  そこで一括してその問題点を大きく二つに分けまして、この制度に内在する問題点と、この制度の外在的な問題点という二つに分けまして、若干の問題点を指摘したいというふうに思います。  内在的な問題点というのは、この制度自体に即しまして、かりにこの制度が現実に運営されるという場合にどのような問題が生じてくるかということであります。これについては、六つほど主要な問題点をあげてみたいと思います。外在的な問題点というのは、この制度日本農業の現状なり、あるいは農業政策の現実なり、あるいは農業金融の現実なり、そういった一般的な観念で見た場合にどういった問題点があり得るかということを、これを三点にわたって申し上げてみたいというふうに思います。  ところで、まず第一に内在的な問題点についてですけれども、内在的な問題点の第一点としてあげたい点は、はたしてこの制度によって資金総合性というのがうまく確保できるかどうかという点でございます。というのは、この制度の中には公庫資金と系統資金——農協系統資金という全く異質の金融が含まれているわけです。つまり設備資金公庫で貸し、運転資金は系統で貸す。しかも系統で貸すという場合には、実際には系統原資としての近代化資金と系統のプロパー資金と二つが組まれるわけですから、いわば三本立てに近い形の構造になるわけであります。現在の農業金融にあります公庫と系統というこの二元的構造がそのままこの制度の中に持ち込まれて、その解決はもっぱら融資機関の運営にゆだねると、そういう構造をとっているわけです。で、当然、はたして設備資金運転資金がうまいタイミングで融資できるかどうか、あるいは融資対象の設定について、系統、公庫という違った立場の金融機関が食い違うことがないかどうかといった問題が出てくる。つまり、系統と公庫というそれぞれ違った主体の融資機関がどういう形でもってうまく調整しながら総合的な運用の実をあげるかという問題が起こってくるのではないかということが第一点であります。   〔委員長退席、理事任田新治君着席〕  それから第二点は、対象の選別がはたして政策目的にかなった形で実行できるかどうかという点であります。この点は、おそらくこの制度の最大の問題点であろうと思います。それは詰めていきますと、現在の段階で一体自立経営候補農家とは何なのかという問題に帰着するかと思います。一応私がいただいた農林省の資料によりますと、融資対象農家として四つほど条件をあげているようであります。一つは、経営者が比較的若いということ、若年であるということが一つ、第二に、農業経営を改良していくという主体的な能力といいますか、意欲があるということ、第三に、家族労働力が十分にあるということ、それから第四には、将来自立経営に達し得る見込みがあるということ、その四点を一応の対象の選別の基準としてあげているようであります。しかし、こういった程度の抽象的な規定をもってして実際に融資を実行するという場合にはおそらく不可能ではないかという感じがするわけです。おそらく具体的な融資の実行という過程になりますと、よりこまかな基準なりあるいは要綱なりといったものをどうしてもつくらざるを得ない、それに沿って融資させるという形にならざるを得ないのではないかというふうに考えられます。となりますと、おそらくその場合問題になるのは、一つは、県なりあるいは国なりによってつくられるであろうそういった一定対象農家の営農類型なりあるいは経営主張なりといったものがはたしてどこまで現実に妥当するものかどうかということが一つ問題になるわけです。いま一つは実際の審査に当たる関係者、これはかなり多くの関係者が予定されるようであります。たとえば農協信連公庫といった金融機関の系列があります。おそらく県、市町村の農業改良普及所といった行政の関係も当然審査委員会ですか、の中に入るかと思います。その中で、一体どのような権限の分限関係を想定するのかということが問題になろうかと思います。場合によってはお互いの権限が明確でないままに何とはなしに相談ずくで融資するという形になって、責任の所在があいまいになるという可能性が多分にあるのではないかという気がいたします。この二つの問題の扱い方いかんによっては、これまでの制度金融にしばしば見られたような行政による一方的な押しつけというような、いわば制度金融の悪い面が拡大されてくる可能性が残っておるのではないかという感じがいたします。以上が第二の問題であります。  それから第三の問題は、担保制度についてであります。この制度によりますと、施設資金八百万円という非常に大きな金を融資するということになりますが、それに見合う担保をどう考えるかという問題であります。その点に関連して言いますと、当初のこの制度の発想は、考え方では、これとセットに考えられていた農業抵当制度というのが結局見送られて、わずかに農業動産信用法の改正が実現されるという模様であります。しかしこの程度の改正をもってしてはたしてこれだけの巨額の資金の担保をまかない得るかどうかということがかなり疑問である。あるい疑問であるというより、もっとはっきり申しますと、どうもとうてい所要の担保をまかない得ないのではないかという感じがいたします。これまでの公庫資金融資については、公庫資金はどうも形式的な担保主義が強過ぎるという批判が下から強くあったわけですが、おそらくこれだけの大きな、しかもリスクの大きな金を出すということになりますと、当然公庫の窓口といたしましても担保というものをかなり強く考えざるを得ない。となりますと、担保の問題がネックになってこの資金が容易に流れないという問題が生ずる可能性があるのではないか。結局あくまでも政策の発想に忠実であり、その初志を貫徹しようとはかるならば、現在の制度金融の基調となっております担保主義ですね、これをある程度ゆるめるといいますか、撤廃するというか、そういう考え方に立たざるを得ないのではないか。ある程度ゆるめるといいますのは、担保として一応融資物件をとるけれども、その融資物件では評価が不足であってもこういった金融についてはやむを得ないのだ、そういう割り切り方をして融資をするかどうか、それがなければおそらく八百万円という非常に巨額なものを限度として想定いたしましても、それだけの金が流れないのではないかという感じがするわけであります。  それから第四の点は、信連の直貸に関連してであります。この制度によりますと、一応窓口は、融資の責任は信連であり、信連直貸を原則とするというふうにうたっております。おそらくその趣旨は、非常にリスクが大きいから単協にできかねるのではないか、単協にゆだねるのは無理であろうということかと思います。その趣旨はわかるのですが、実際にはそれに伴って次のような問題が生じてくるのではないか。一つは、現在の信連の状態あるいは信連実態から申しますと、個々農家までを信連が全部把握している、その経営実態を十分に把握していくということはまず無理である。おそらく実際の処理といたしましては、農協が窓口となりましてある程度の選別を行ない、それで合格したものが信連に持ち込まれる、いわゆる融資候補農家として持ち込まれるという形になるのではないか、そういった農協信連とのいわば窓口と融資責任機関との分業体制がはたしてうまくいくかどうかという問題が一つある。それからもう一つは、運転資金をどうするのかという問題であります。たとえば近代化資金であるとかプロパー資金であるとか、この制度セットして融資されるべき運転資金を、はたして信連で直貸せよというのが法案の趣旨かどうかという点でありますが、どうも私の印象から申しますと、そこまでこの制度では強制していないし、またできないのではないか。おそらく運転資金については、ケース・バイ・ケース式に、ある場合には信連のプロパー資金運転資金として出し、ある場合には単協のプロパー資金運転資金として単協が出すという、そういう処理のしかたになるのではないかという感じがいたします。そこでおそらくよほどうまいことをやらなければ、両者の中で、一方は、施設資金信連が出す、他方、運転資金単協が出す、その関連がうまく調整がつかなければかなりの混乱が生じるおそれがあるのではないかという感じがいたします、それが第四点であります。  第五点は、これはあまり大きな問題ではありませんけれども融資コンサルタントの問題であります。当初の構想といたしましては、この制度のメリットとしては、営農指導と融資との一体化が実現されるという点が非常に強調されていたわけであります。その意味から、融資コンサルタント機能を大いに活用するのだというととがしばしば強調されていたわけです。おそらくそういった発想はこの制度の模範になりましたアメリカのFHA金融というのがあります、農家更生資金、これを模倣して、それを日本に持ち込もうとしたのだろうと私は推測しております。ところが最終的に落ちついた案を見ますと、融資コンサルタントとしては、わずかに公庫の本店に三名の嘱託を置くという形になるようであります。で、どう考えましてもこれだけの融資を行なう、しかも全国的な広がりをもって行なうという場合、わずか三人の融資コンサルタントというのでは非常に中途半端ではないか、その程度の規模では、一体どの程度のコンサルタントをやろうとするのか非常に不明確である、あるいはもっと詰めていきますと、そもそも現在の日本農業の指導組織なりあるいは営農指導体制の中で、あらためて融資コンサルタントというものをつくる必要があるのかどうかという点も問題になろうかと思います。  第六点といたしまして、この制度ができた場合に、たの制度金融との区別といいますか、区分はうまくいくのかどうか、特に下部の農家段階及び単協段階で混乱を生じないかどうかという点であります。この制度の考え方といたしましては、自立経営候補農家については、すべてこの資金でめんどうを見る、逆にいいますと、他の資金は一切貸さないということになるかと思います。しかし、はたして現実の農家がそううまく峻別できるかどうか、同じ土地改良資金を借りるという場合、この総合資金対象農家は借りれないというふうに割り切れるのかどうか、あるいは近代化資金を貸りるという場合、総合資金対象者は総合資金にワクづけされた近代化資金以外に借りれないというふうに言えるのかどうかということであります。そういった点を考えますと、実際の農家段階では、結局さまざまな資金ルートが交錯して、無理にそれを制度的に割り切るというのは、かえって混乱を生じるのではないかという感じがいたします。その点をもう少し理論的に詰めていきますと、この資金が先ほど言いましたように特定の階層、つまり自立経営候補農家という特別の階層をまるがかえで融資するのだという形を一応とっておりますけれども、必ずしもそれが徹底していないという点にもなるかと思います。それについては、すぐあとでもう少し一般的な角度から申し上げてみたいというふうに思います。  以上申しましたことが、いわばこの制度の運営に即した内在的な問題だと思います。  次に、この制度をやや外部から見まして、この制度の評価をどのように考えたらいいのかという点であります。  これについていろいろな問題がありますけれども、第一の問題は、自立経営育成政策あるいは構造政策という点から見まして、この制度ができたということは、どうも政策の手順としては逆になっているのじゃないかという感じがいたします。たとえば西ドイツにせよ、フランスにせよ、構造政策を展開するという場合には、まず目標とすべき経営内容を確定する、それに沿っていろいろな施策を集中していく、というのがいわば構造政策の正規の手順であります。ところが日本の場合には、この制度ができたにもかかわらず、目標とすべき自立経営農家というのが一体何なのかという点が、内容が全く固まっていない。やや極言しますと、構造政策の目標については現在なお個別経営か共同経営かというようないわば非常に抽象的な議論が戦わされているという段階であります。どうも少し勘ぐって考えますと、この制度ができてある程度融資が実現されていけば何とか目標も固まってくるのではないかという、そういう発想に立っているのじゃないかということさえ考えられるのであります。どうもそれでは非常に政策としては無責任ではないかという印象を強く持つわけであります。  第二点は、以上政策全体の問題として考えました場合には、構造政策全体の中でこの制度の位置づけが明らかになっていないのではないかということになるかと思います。構造政策というのは、農地政策であり、後継者育成政策であり、あるいは資本の大型技術の導入政策である。しかし、単なる個別政策ではなくて、それらを含めた総合施策であるというのがいわば常識化しているわけでありますが、実際には他の施策、他の政策というのは一向進まないで、もっぱら金融だけが独走する形を強めているというのが実情であります。いわばこの総合資金制度というのは、構造政策としては非常に孤立化した形の政策であり、それだけに危険性が多い、リスクが多い形であるという感じがいたします。  第三の点は、農業金融政策、金融制度の問題であります。長期的に見た場合に、制度金融全体の体系をどう考えていくのかということは、当然こういう融資制度をつくる場合考えていく必要があるのではないか。現在二十億前後の融資規模ということでありますから、さしたる問題はないように思いますけれども、しかし、性格から言いまして、この資金ワクというのはかなり急激に増大していく可能性がある。そうなりますと、農業関係制度金融全体のあり方をどう考えていくかという問題にどうしても直面せざるを得ない。しかも、それはかなり近い将来に直面するのではないかという気がいたします。制度金融の中にも、この総合資金に見られるような経営中心の発想と、その他の制度金融に見られるようないわば物中心の発想と二つある、その両者の調整をどう考えるかという問題がどうしても近い将来に現実化するのではないかという感じがいたします。いわば農業金融の交通整理問題がより複雑化してきた形で提起されてくる可能性があるのではないかという気がするわけであります。  その点は、結局ここで交通整理問題については詳しく述べている時間はございませんけれども、簡単にポイントだけ申し上げますと、公庫資金の中でもこの総合資金制度というのは、従来の構造改善関係資金に比べてはるかにリスクが大きい資金であり、いわば公庫融資といっても、どちらかといいますと、事業団融資に近いような性格を当然持たざるを得ないのではないかという感じがいたします。となりますと、将来の公庫融資の方向として、こういった総合資金に見られるような階層別融資という方向を一そう徹底さしていくのか、それともやや幅を拡げた従来の構造改善関係資金、そういったものを公庫融資中心に置いていくのかという、そういった選択を公庫自体が迫られていくことにどうしてもならざるを得ない。公庫がそういう問題に直面するということは、やや広げていきますと、結局公庫系統金融とのあり方についても関連してくるわけであります。この制度を将来に向かって拡大していくというには、当然そういった点を含めまして、将来の農業金融制度なり農業金融機関全体の見取り図的なものをある程度見当をつけておく必要が現在あるのではないかという感じがいたします。  以上、いろいろ申し上げましたけれども、結論として言いますと、この制度は発想としては非常に斬新であり、しかも性格としては、基本的には農政の将来の基本線に沿っている制度、政策だと、その点については私も大いに賛成であります。ただ、現実の状態に照らしていきますと、この制度を取り巻くいろんな条件、たとえば農業の状態であるとか、農政の姿であるとか、あるいは農業金融実態、そういったものに照らしてみますと、そういったまわりの条件があまりにも弱体であり、十分に詰められていないのではないか、この制度をささえるだけの条件が熟していないのではないかという印象を強く持つわけであります。その点でややこの制度が理論倒れに終わる可能性が強い、あるいはやや先走り過ぎた感じが強いということを強く感じるわけです。この制度を当初の発想どおりに動かすためには、どうしてもそういった点において農政全体が強くバックアップしていくということがなければ成功しないのではないか。この制度を生かすも殺すも一にかかってそこにあるのではないかという感じがいたします。  以上、ごく簡単でありますが、私の意見を述べさせていただきました。
  46. 任田新治

    ○理事(任田新治君) どうもありがとうございました。  次に、筒井参考人にお願いいたします。
  47. 筒井英樹

    参考人筒井英樹君) 御指名をいただきました全国魚卸売市場連合会の筒井でございます。  私は、本日は主として地方卸売り市場関係中心として御説明を申し上げ、お願いを申し上げたいと存じておりますが、その前にまず生鮮食料品の卸売市場の分布状態を、御承知とは存じますけれども説明をさせていただきます。  御承知のように中央卸売市場法は大正十二年に制定されております。その法律の規定に基づいて国の恩恵を受けるということばが当てはまるかどうかはわかりませんが、前参考人からもお話がございましたように、補助金制度その他の助成の措置が講ぜられて開設されております中央卸売市場、それは御承知のごとく、人口十五万以上の都市が全国で約九十五ございます。その中で二十五の都市にこの市場が開設をされておるのでございまして、その数は五十四と承知をいたしております。  私は地方卸売声場の輿係者でございますので、表現の悪いところはお許しをいただきたいと思いますが、いま申し上げましたように、国の助成措置が講ぜられて中央卸売市場が開設をされておる。その他の卸売市場の現状はどうかと申し上げますれば、本日までは何ら政府の助成措置もなければ、指導措置もございません。さような中で野放しで全国に分散して開設されておるのが地方卸売市場と申しても過言でないのであります。その数は昭和三十九年度の農林省の調査によりますと一千七百五十五という数になっております。しかし、昭和四十二年八月現在で総合的に生鮮食料品を扱っております市場は全国で百五十、青果物専門市場が千二百四十一、水産物関係が五百二十三、食肉関係が四、合計千九百十八市場でございます。かような観点から、私は地方卸売市場の実情を簡単に御説明申し上げて、諸先生に御同情をいただきたいと思います。  申し上げるまでもなくわが国の経済は、近年急速な成長を遂げております。この成長と同時に国民の食生活というものは非常に向上しておることは御承知のとおりでございます。その反面、われわれ国民のお台所へ直結をいたしております生鮮食料品の流通関係企業というものはどういう状態にあるか、その大半は零細であり、中小企業でも一部には零細企業に属するものすらあるような現況でございます。現在の経済の高度成長の谷間にあって、あらゆる経営上の困難を克服いたしまして、今日その経営の安定向上がきびしく要請されながらも、自分の力ではとうていなし遂げられないような現況にある市場の数は非常に多いのでございます。この安定につきましては、その根幹をなす生鮮食料品の流通というものを担当する私たちの関係企業の経営の安定向上がなくしては、政府がいかなる施策を講ぜられても、私はその実効を期しがたいものがあろうかと考えるものでございます。  さような点で、今回の流通近代化資金制度というものには、私たちは農林省の大英断に深甚の敬意と感謝をささげつつ諸先生にお願いをいたしまして、多少の不平不満もございますし、他の参考人の御意見等もございましょうけれども、われわれ究極に追い詰められた関係業者としては、一日もすみやかにこの法律が成立をいたしまして、今回の生鮮食料品流通近代化促進の措置が現実に行なえることをこいねがっておるものでございます。私はこういう点から、この生鮮食料品の流通近代化資金制度というものについては、ほんとうに今日までわれわれ地方卸売市場関係者は、長い年月を通じて政府並びに国会に対して何とかしていただきたいという陳情、請願を続けてまいりました。決して私たちがみずからの企業を守るためではなく、生鮮食料品の流通を通して、国民保護の社会政策的な公共性を持つ市場というプライドでわれわれは毎日のことを続けております関係上、強力な運動を続けてまいりました。しかし、いままではお取り上げをいただかなかったのでございますけれども、今度の——今度と申し上げましても、四十年十月から始まりました地方卸売市場の立地等実態調査というものと、昨年の十月に生鮮食料品流通近代化に対する地方卸売市場対策協議会の答申等を基本にして、農林省の今度のこの政策が私は発表せられたと信じておるものでございます。初めて政府の方々においても地方市場実態、その関連業者の実態というものを十分御把握願ったものと考えておるのでございます。それで重ねてこの英断に対してお礼を申し上げますと同時に、今度この政策が地方卸売市場並びに中央卸売市場の卸売り人、仲買い人、小売り業者と一貫した方途によって行なわれます政策でございますので、われわれから申し上げますれば、生産から末端流通に至るまで一本の線で行政が推進をされるということに対しては、大きな期待を持つと同時に、これが当然であろうかと考えておるものでございます。ゆえに、どうか諸先生は、本法案についてよろしく御審議をいただきまして、前段にも申し上げましたように、弱い者をひとつお助けをいただきたい。  と申し上げますことは、現在の生鮮食料品の実態から申しまして、地方卸売市場というものの行なっておりますあるいは関係業界の行なっております企業の中で、もちろんこれは中央卸売市場も同じでございますが、生鮮食料品の特異性というものを十分くんでいただきたい。と申し上げますことは、非常に品質が変化しやすい、規格、包装というものがまだ標準化されていない。ことばを変えれば完全商品ではございません。さような非常にむずかしい点と、その流通には非常に困難な問題が数多くございます。先ほどいろいろの御意見がございましたが、集分荷にいたしましても評価の点におきましても、その調整等におきましても、技術的な経験を重ねなければなかなかやっていけないような面が数多くあることを一これは自己宣伝ではございません、ほんとうにございます。さような点で、卸、仲買い、小売りを通しての関連業者が一体となってこれをやっていくということは、ほんとうに今度の政策が最初であろうかと考えます。それでおのおのの立場を御理解いただきまして今度のこの法案の推進をしていただくことによって、初めて国の大きな問題でございます生鮮食料品の流通というものに国民の批判を受けない、ほんとうに国民生活を保護する社会政策的な公共生を発揮することができると私は信じております。  それから前段にも申し上げましたとおり、この仕事のむずかしさということは、京都市場長さんからもお話がございましたとおり、諸経費中の人件費が非常に大きなウエートを持っておることはこれは申し上げるまでもございません。地方市場も同じでございます。なかなか労働問題の解決というものにはむずかしさがございますし、前参考人のおことば、そのとおりでございますが、地方卸売市場の中にも、一部にはこれを解決し、労働問題も、その他の問題も解決しているものもございますけれども、そのほとんどはなかなか人を雇うといっても雇えない現況にあるということは同じでございます。  それと皆さんも御承知のとおり、生鮮食料品の関係の地方声場というものはただいま説明を申し上げましたように、千九百十八という多数でございますが、そのほとんどは非常に零細でございます。その零細な市場が、小さい町に幾つもの市場が乱立をして、過当競争をやり、そのためには資金、信用の不足から決済ルールが不備である、さような指摘を受けるような市場が数多くあることを私は御説明を申し上げたいと思います。  反面、市場が荷物を送っていただく相手方、すなわち生産地はどうであるかといえば、申し上げるまでもなく、もう生産団体は、農産物といわず、水産物といわず、その生産団体の組織化、大型化、出荷の計画化、貯蔵機能の増大あるいは輸送単位の大型化というように、画期的な変革を来たしておるのであります。ゆえに生産地やあるいは生産地の出荷者というものは、資力、信用のある市場で、物資を消化する力のあるもの、そうして再生産に見合うような、価格の安定した水準が出るような強力な市場でなければ物を送らないというのが現在の状況であると申し上げても過言でございません。さような点でわれわれは真剣に考えて、これを実施しなければいけないと考えてはおりますけれども、先刻来申し上げましたように、地方市場というものは零細なものが非常に多い。そうしてその建物その他は老朽化し、非常に狭隘である。中にはそのほとんどと申し上げてよろしいのですが、旧市街、要するに市街地の中心地に位して交通を渋滞せしめたり、あるいは騒音により、あるいは悪臭を発生し、非衛生的なものが多いという御批判もいただいておる市場が、数多くあることは御承知を願っておると思います。私も実態調査に回りまして、自分ながら驚いてしまったような現況でございます。  さような非常に資本に弱い市場が圧倒的にございますが、しかしこの市場が、現在農林省が示しておりますような大型化——近代化ということは大型化でございましょう。そうして先刻申し上げましたとおり、消費者の生活が高度化し、いろいろの品ぞろえをする、大量集荷をやっていける市場というものに立ち返らなければ、流通の円滑化は期せられないと思います。しかしそれを現在のわれわれ地方出場は、数回申し上げますが、非常な苦しみの中に、ただ日本人と申しましょうか、ほんとうの魂の、魂ばかりと申しましょうか、忍耐と勤勉と申しましょうか、そういうような形でわれわれは歯を食い縛って高度経済の成長のこの谷間であえぎつつも営業を続けております。さような点で、何とか、政治というものは、国民にすべて平等であるべきと私は考えておりますが、いままでのように、中央卸売市場関係には、補助もあれば助成もある。地方市場は何ら考えられたことのないというこの政治のもとで、今日まで過ごしてまいりましたから、そういう状態にまで追いつめられております。しかしわれわれは精神においては、数回申し上げますとおり、国民生活を保護するという社会性を持って、社会政策的な、公共性を持った市場経営をやっておりますので、今回のこの制度が活用されることによって、われわれの喜びと申し上げるよりは、むしろ国民全般に対して、流通業者としてかくあるべきだという仕事を続けてきたことをお受け取りをいただけるような仕事ができることを、私は固く信じておりますと同時にお誓いを申し上げるものでございます。  それで今度の制度の三十億という問題の多い少ないという問題がいろいろ業界からは出ております。しかし私個人といたしましては、いままで何ら国の恩恵を受けなかった地方市場関係が、今度のこの政策によって、思いやりのある政治のもとで、自分たちの持つ全知全能をふるって流通業界にお尽くしができるという点から考えれば、私はこの三十億の——少ないことは当然少ないんです。地方市場関係の各業者や千九百十八の卸売市場関係対象した予算とすれば、まことに少額でございますけれども、私自身が言えば、この三十億の金を使わしていただいて、その効果というものをはっきりあらわして、これを百億にしてください、二百億にしてくださいという御要求を申し上げることができる自信があるから、第一回の三十億を私は喜んでお受けをして、今後の仕事を進めたい。皆さん方においても、あるいは大蔵省においても、この三十億が実効を示して、ほんとうに国民生活安定のために寄与できたということになれば、それはふやしていただけることを私は信じて疑いません。さような点で、この制度には満腔の敬意を表します。  それで、もう一つ関連して申し上げたいことは、法制化の問題でございます。これはわれわれ長い間ひとしから、ざる政治のあり方を、国民すべてにその恩恵を与えてくださいという運動を続けてまいりました。ようやくわれわれの悲願が融資制度においては達成をいたしましたけれども、まだ法制関係では何ら問題が解決をいたしておりません。現在、中央卸売市場には、先ほど申し上げましたように、中央卸売市場法がございます。で、私はこの制度が新しくできましたと同時に、いろいろの点において農林行政の交通整理をやっていただきたい。と申し上げますことは、地方卸売市場中央卸売市場関係業者と同じように、国民の義務は十分果たしております。それが二十五の都市に開設された中央卸売市場だけに法律的な措置が講ぜられて、その他の市場関係、千九百十八には何らの措置が講じられていない。しかも都道府県の中には条例すらない県がございます。  私はこの際、中央卸売市場法もおそらくいろいろと改定の御研究をなさるのが当然だと思いますことは、大正十二年に制定された法律で、現在の日本の社会から考えまして、その法律が完全であるかということに疑義を持たざるを得ない。さような点から、近く中央卸売市場審議会においても御検討願うんじゃなかろうかと思っておりますので、その節には中央卸売市場だけでなく、地方卸売市場も生鮮食料品の流通の関係業界も、打って一丸として法制化をひとつお考えを願って、ことばはどうかわかりませんけれども、生鮮食料品流通の基本的な法律をつくっていただきたい。その法律をもとにして、各地方公共団体にも条例を制定さしていただいて、全国の流通を一貫した形において強力な指導監督を行なっていただくようなひとつ法律をつくっていただくことをこいねがうものでございます。  それから、時間の関係で簡単に申し上げますが、関係をする小売り業者の問題でございます。先ほど他の方からも御意見がございましたが、小売り屋の近代化というものはなかなかむずかしいのでございます。ことばをかえれば、非常に零細なものが多い。そうして、ねじりはち巻きをやった魚屋の威勢のいいことのみを誇ったり、おれなんかは菜っぱ屋だという感じを持ったような業者も数多いのでございます。しかしながらそういう業界も、現在の経済成長というものに取り残されてはたいへんだという気持ちで、地区によっては、私は北海道でございますが、北海道でまだわずか人口二十八万の旭川市でございますけれども、私の町ですら小売り屋がどんどん協業化し、あるいは合併をしようという態勢もでき、協業スーパー的なものも十数の数を数えるくらい進んでまいりました。これにはもちろん卸売市場としてあるいは仲買い人としてボランタリー組織的な協力をすることによって初めてでき上がるのでございますけれども、もう小売り屋さんも、何とかして近代化し大型化しなければ、また昔のような魚屋だけであるいは菜っぱ屋だけではいけないということを認識いたしております。で、今度の制度を活用させていただいて、小売り屋さんの近代化をはかるということは決して至難ではございません。私はこのことも非常に大きな喜びと感じております。  ただし、小売り屋さんというものは経営管理の問題であるとか、あるいは資金運用の問題であるとか、記帳とかあるいはその他こまかい経営の問題については非常に知識の低級な者が数多くございますので、これは全国の商工会議所等に、中小企業の振興というものを兼ねた、特に生鮮食料品流通業者に関して指導方針をとらすようなこともかつて日本商工会議所の総会に私は提出をしてございます。そういうことで、北海道においてはこういうことも進めておりますので、そういう点では十分私はできると思いますので、労務管理その他についても、なかなか魚屋さんの個人商店にはつとめてこないというようなことも知っておりますし、あるいはスーパーマーケットがどんどん出てくる。農協スーパーはどんどん百貨店化をしてきているという今日でございますので、私は長い風雪に耐え、時の生産と消費にマッチした流通をやってきたこの零細企業を救済する上からも、何とか諸先生方のお力添えをいただいて、すみやかにこの法案の活用ができますように、そして私たちもこれを利用させていただいて、いま言う乏しき者を救っていただくという意味できょうはお礼とお願いを申し上げた次第でございます。  十分申し上げられないことを遺憾といたしますが、これで私の陳述を終わります。
  48. 任田新治

    ○理事(任田新治君) どうもありがとうございました。  それでは質疑のある方は順次御発言願います。——別に御発言もないようですので、参考人に対する質疑はこれをもって終わります。  参考人の方には、長時間にわたり、本委員会に御出席くだされ、貴重な御意見をお述べいただき、まことにどうもありがとうございました。厚く御礼申し上げます。  それではこれより質疑を行ないます。本案に対し質疑のある方は順次御発言を願います。
  49. 佐藤隆

    佐藤隆君 それでは、ただいまも参考人からいろいろ御意見も承りましたが、私なりにひとつ農林省にお尋ねをいたしたいと思います。  この流通近代化のための資金は、こういうものができ上がることは、できたということは非常にいいことだ、さっそくひとつ適用してくれという切実な声もいま聞いたわけでございます。最初にお尋ねをいたしたいのは、生鮮食料品の流通対策というのは、今日国民的な課題となっているということは、これはもうすでに御案内のとおりで、政府におかれても、ここ数年来その問題に取り組んでこられたということについては、私もそれを認めるものでありまするけれども、しかし取り組んでこられても、十分であったかどうかということになると、先ほどの参考人の話ではございませんが、不十分であったと言わなければならないと思うのです。そこで、やはり中核的な流通機構としての中央卸売市場の整備改善ということ、これが、ぜひ必要だということ。私どもの聞いておりまするところでは、政府では、中央卸売市場法の改正の検討を含めて、種々対策を進めてきているということを聞いておるんですが、現在中央卸売市場をめぐってどういう問題があるのか、どういう問題点のとらえ方をしておるか、あるいはその問題についてどう対処しようとしているのか。中央卸売市場法の改正を含めての対策というか、そのお考えをひとつ最初にお聞きいたしたいと思います。
  50. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 中央卸売市場の現状といたしましては、まず施設がきわめて老朽化しているという問題がございます。さらに中小都市で人口十五万以上でありながら中央卸売市場を持たないというところで、急速にその新設の要望が出されているということもございます。また、東京、大阪等の大都市で、いわば過密問題から中央卸売市場を新たに都市の外縁部に設ける必要があるのではないかということもございます。しかしそういう、いわば施設の物的な問題を別にいたしまして、多少掘り下げて、中央卸売市場の問題として私どもが当面していることを申し上げますと、東京、大阪等で、はなはだ顕著な事態でございますが、それらの大都市の大市場が集散市場化しているわけでございます。大阪市でありますれば、大阪市が設立している中央卸売市場で扱う品物の相当部分が大阪市以外に流れております。東京でもそのとおりであります。したがいまして、いわば生鮮食料品の流通圏と行政圏といいますか、その食い違いが非常に顕著になってまいりまして、それをどういうふうに調整するかということがはなはだむずかしい問題の一つになっておるわけでございます。これは現在中央卸売市場法におきましては、市町村ばかりではなしに県も中央卸売市場を設置することができるわけでございますから、県が市場をつくるということも一つございましょうし、また、大阪市であれば周辺の市と相ともに一種の連合をつくって、それが市場経営するという問題もございましょうし、またさらにそういうことを奉仕的にやってもやらなくても、一体大阪市だけが金を持つべきものであるか、周辺の都市もまた一定のルールに従って金を負担すべきではないかという問題もあるわけでございます。これらは要するに経済的に見た流通圏と行政的に見た行政圏との食い違いから起こる問題で、これは私はますます深刻な問題になってきておると思います。  それからこのことにやや関連をいたしまして、市場施設をやりますと非常に費用がかかるわけでございます。その場合に、一体国庫補助を、ただいま参考人からの話もございましたけれども、現在は新設三分の一、既設五分の一ということで国庫補助をやっておりますけれども、その国庫補助を一体どういうふうに考えるか、あるいは市場自体が卸売り人あるいは仲買い人から使用料をとっておりますけれども、その使用料を一体どういう基準で定めるべきか、あるいはまた周辺の市町村から費用をどういうルールでもらうかという問題もあるわけでございます。これは流通圏と行政圏との食い違いから生じた問題とやや関連をいたしますけれども、とにかく最近におきます市場の行政上、財政上の新しい問題でございます。  それからもう一つ三番目の問題といたしましては、卸売市場の運営の問題でございます。たとえばせりをさらに公正にするためにはどういう手段が必要であるか、せりの機械化あるいは計算センターの問題もございます。それからさらに規格の定められていてしかも需要が計画的に行なわれてそう値下がり値上がりがないようなものについて一体せりにする必要があるのか、相対売買でもいいのではないか、そのルールをどう考えたらいいかという問題もございます。また最近非常にやかましくなっております。たとえば水産物で東京の築地の市場から地方の市場へ転送という形で相当荷も流れていっているわけでございますが、その転送を一体どういうふうにルール化すべきかという問題もございます。要するに施設の問題ではございませんで、その市場の中で行なわれる業務の運営の適正化についての問題がいろいろあるわけでございます。以上三点が、現在私ども中央卸売市場の問題として当面をしている大きな問題でございます。  それで、私どもこれに対する対策といたしましては、   〔理事任田新治君退席、理事高橋雄之助君着   席〕 まず物的な施設の整備の問題がございます。これはここ数年二億何がしの予算が、四十三年度におきまして十三億五千六百万という相当大きな補助金になっておることでもおわかりのように、私どもずいぶんここ数年力を尽くしておるわけでございますが、東京、大阪等の過密都市における周辺等に大市場をつくることの問題、さらにいままで中央卸売市場を持っていない都市に新しく市場を新設する問題、さらに既設の市場における施設の整備強化をはかる問題、これらについて精力的に取り組んでおるわけでございます。  それから業務の運営につきましては、ここ二、三年各市場を督励いたしまして市場の運営を公正にするために、たとえば転送の問題でございますとか、あるいは相対売買の問題でございますとか、見本取引の問題でございますとか、そういうことについてのルールづくりを現在やっておるわけでございます。だんだん軌道に乗っておると考えております。  それから第三番目は、以上申し上げたものを総括いたしまして、やはり法律の問題がございますので、中央卸売市場の審議会等におきましてもおりに触れおはかりいたしておるわけでございますが、事務的にも中央卸売市場法の改正の問題を現在練っておるわけでございます。ただ、これは実は地方卸売市場法をつくるかつくらないか、中央卸売市場法を再検討する場合に、中央卸売市場と地方卸売市場を一本にした法律が適当であるかどうか、これらのことにつきましては、私ども市場の問題でこれは利害関係もはなはだ大きく、また複雑な問題でございますので、むしろ拙速を避けて、十分論議を尽していいところへ持っていきたいということで現在検討いたしておるわけでございます。
  51. 佐藤隆

    佐藤隆君 流通圏と行政圏との問題についてはどうですか。
  52. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 流通圏と行政圏との食い違いの問題は、一つは、事業の運営としてあらわれておりますのはいわゆる転送の問題でございます。転送の問題は、確かに東京のように非常に交通の激しい、混んでいる市場に一たん荷物がどかっと来て、それから地方に送られるわけでございますから、混んでいる市場をさらに混ませる一つの要素でございますし、また転送がルールなしに行なわれますと、市場の運営をはなはだしく不公正にすることが考えられますので、私ども、とにかく中央卸売市場に荷物が集まって地方市場に荷物がなかなか行かないということは、これは地方市場施設が悪い、あるいは業者の信用が十分でないということにも基づくわけでございますから、一方では今度の卸売市場の近代化の資金を活用いたしまして地方市場の力を強めるということが第一でございます。  それからさらに中央卸売市場の問題といたしましては、仲買い人の統合を進めて、仲買い人の力を強めて、仲買い人が荷物を送るという転送の問題を実際的に解決することが一つございますが、それらのことがなかなか具体的には十分うまくいきませんでしょうから、それはやはり卸が転送いたします場合にでも、たとえば現在名古屋でやっておりますように、一〇%あるいは一五%を、品目別に取引される荷物の中で一定数量だけ転送を認めるというような形で、しかも卸、仲買い等々の関係業者の声を十分反映させて転送のルールをつくるということが必要であろうかと思います。  それからさらに行政上あるいは財政上の問題としては、議論としては、たとえば公団をつくってそれに卸売市場をやらしたらどうかという議論もあるわけでございますけれども、私どもそこまでいかないで、市同士あるいは県と市との実質的な話し合い、あるいは当然組織化ということも必要でございますけれども、そういうものをつくることによっていまの行政圏と流通圏との食い違いの問題をだんだん軌道に乗せていきたいというふうに考えております。
  53. 佐藤隆

    佐藤隆君 中央卸売市場の問題については大体わかったような気がいたします。ただ、ここで中央卸売市場以外の市場、先ほど来参考人からもお話が出ましたけれども、地方の市場、特に消費地の市場だけでもさっき何か千七百という参考人の話もございましたが、私どもの承知しているところでは大体千九百あるわけです。この千九百の市場があるのですが、これらの地方の市場についてそれこそ全く国の対策というもの、施策というものは及んでいない、なされていなかった。これは実際そういうことだろうと思います。そこで、農林省が去年発表された「地方市場実態調査の報告」あるいは「生鮮食料品卸売市場対策協議報告」ですか、ここにありますが、去年の十二月十二日付のやつですが、こういう報告あるいは答申、こういうものを読みますと、零細経営、あるいは施設の老朽化だとか、集荷力の不足だとか、立地の不適正だとか——場所が悪いということ、それから取引ルールの未確立、いろいろ問題が指摘されているわけです、この中に。そこで地方市場の整備というものはこれはほんとうにすぐやらなければならぬ問題だと思います。さっき局長がおっしゃったように、中央卸売市場法の検討とあわせて進めておられるやに伺いましたけれども農林省の現在の地方市場整備に関する基本方針というか、そういうものをお示しいただきたい。
  54. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 地方市場は、いま御指摘のように千九百ほどもございまして、実は中央卸売市場と大体生果物、水産物について半々ぐらいの取り扱いをやっておるわけでございます。いままでは生鮮食料品の流通改善あるいは物価問題というものは主として大都会の問題であるような面もあったわけでございますけれども、ここ数年の動きから申しますと、決して大都会の問題ではございませんで、中都市、小都市にとっても深刻な問題であるわけでございます。そういうところについても生鮮食料品の台所を一挙に引き受けているのは地方市場でございますから、生鮮食料品の流通改善とか消費者物価の安定というたてまえから申しますと、中央卸売市場だけを農林省はやっておいて地方市場についてないがしろにしておるという状態は、これはだれが考えても適当ではなかった。私どももここ十数年来、地方市場の問題は絶えず念頭にございましたけれども、とにかく千九百十八あって種々雑多、大小取りまぜてありますばかりか、公設市場もございません。大部分は株式会社等の民間市場でございますし、そのほとんどの内容等々も複雑でございますので、なかなかよく調査をして踏み出さないと、そうめくらめっぽうに行政をやるというわけにはいかなかった事情がございます。いま御指摘のようないろいろな文書も、この三年ほどの間私ども相当時間をかけ、また関係者多数の御協力を受け、まとめた資料で、大体私どもも地方市場について行政の手を伸ばすだけの自信がついたというわけでございます。  したがいまして、地方市場の問題といたしましては、まず地方、地方の基幹的な市場があるわけでございます、それぞれの地方に基幹的な市場が。そうしてその中には当然公設のものがあるわけでございますから、それらのものの整備につきましては中央卸売市場と同じように私ども助成金、補助金を出して施設の整備に当たるつもりで、四十三年度に初めて地方市場施設の整備の補助金を六千万円ほど予算に計上いたしたわけでございます。それ以外の地方市場につきましては、これは今回農林漁業金融公庫に設けます農林漁業近代化資金によって整備いたすわけでございますが、まず千九百十八という数のままではなかなかこれ整備し切れない。相当程度統合して大型化する必要があると思います。そうでありませんと、業者が信用されて荷物がどんどん来るという状態にはならないわけでございますから、そういう統合大型化ということが目標の一つであります。さらに、その地方、地方の都市計画があるわけでございますけれども、地方市場の沿革として、いきなり町のまん中に市場ができて、あとになって非常に交通が、それが交通の中心になって混雑しておるという事態があるわけでございますから、都市計画の線に従ってやっぱり適当な土地に立地をするということも必要であろうと思います。あるいは施設をします場合に十分用地をとりまして、最近における交通事情として小売りがオート三輪やあるいはトラックで荷物を引きに来るわけでございますから、そういう自動車等の便利のいいようにいたしたい。それからさらに事業の運営につきましては、これは中央卸売市場と同じように統一的な基準できちっと締めることはなかなかむずかしいと思いますけれども、それぞれの地方の実情に従って府県におきまして条例で指導ができる程度のものはやっぱり国の法律で規制をいたしたいということが、大体私どもの現在の地方卸売市場の整備の方針及び今後の法制化の大体の考え方でございます。
  55. 佐藤隆

    佐藤隆君 いまのお話ですと、四十三年度から——本年度からは六千万円の予算もついているし、中央卸売市場に対すると同じような考え方で手をつけ始めたというところ。ところが、その地方市場行政というか、そういうものを考えると、さっき参考人の御意見にもありましたように、もうほとんどのものが県の条例というか、そういうものにゆだねられておる、国は何らそれに対する手を打っていない。もちろん法律もない。極端な例を言えば、条例すらないということで、先ほども指摘があったとおり。そこでこうしたことをやはり画一的に国の責任において一つの法律をもって当然指導していく、めんどうを見ていくということが私必要だろうと思います。私は端的に言って地方卸売市場法という法律を、ぜひつくるべきであるという提案をひとつここでしたいわけです。もちろんこうしたものにもそういう立法化について意見が書いてありますが、中央卸売市場法の整備と相待って、先ほどの局長さんの御意見だと、中央卸売市場法整備の段階において織り込んでいってはどうかという意見もあるということをお話になりましたけれども、私どもの考えではやはりこれは切り離したほうがいいんではないか、こう思うのです。それでどうしても地方卸売市場法という法律をつくって、そうしてそれに基づいて運営していくというやり方、特にこういう問題はこれは物価対策云々でもって非常にみんなに関心を持たれている問題でもございますし、ひとつ中央卸売市場法の整備というもののめどを時間的に大体どこにおいているか、これはもう一年も二年も三年もたったんじゃ、これは意味がないので、一つの努力目標というか、いま考えられる、予想される時期というか、地方卸売市場法という法律をつくるという前提で作業を進めていって、大体どの程度の期間かかるか、それを含めてひとつ……。
  56. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) ただいまもお答えいたしましたように、地方市場を規制する法律はぜひつくりたい。現在その検討に入っておるわけでございますが、法律の形式といたしまして地方卸売市場法というふうにするか、あるいは中央卸売市場と一体になった卸売市場法とするかということは今後の検討に待ちたいというふうに思います。いずれにしろ地方市場を規制する法律はつくりたいということで現在作業をいたしております。  それから地方市場の行政について一歩を踏み出すだけの自信がついたということを申し上げましたけれども、とにかく中身が複雑怪奇をきわめておることは御承知のとおりでございますので、ただいまやっておりますことはできるだけ県に御努力をいただいて、融資の場合でも県に卸売市場の整備計画というものをつくらせまして、それに基づいて融資をして、融資によってあるいはまた公設市場につきましては若干補助をやりますけれども、それらのことを行ないながら地方市場実態に迫るといいますか、行政的にこなしていきまして、いまの腹づもりといたしましては、大体やはり昭和四十五年に法律の形で出すように努力をいたしたい。早く上がればはなはだけっこうでございますけれども中央卸売市場の問題と地方市場との問題でも利害関係がなかなかむずかしい問題がございますので、十分念を入れてお互いに話し合わないと、途中でかえって法律をつくることによってまずい事態になりかねないむずかしい問題がございますので、急ぎ、かつきわめて慎重にという私どもの気持ちでございます。
  57. 佐藤隆

    佐藤隆君 いま四十五年には何とかひとつ地方卸売市場法、これは中央卸売市場法の整備を含めるか含めないか、これは今後の検討だというお話ですが、きょうは時間がございませんので、その点について深くは触れませんが、やはり中央市場とは別な形の、地方市場は地方卸売市場法という法律をつくるべきであると私は思います。いまこのことについての議論はこれ以上進めません。しかし私どもそういうふうに考えておりますので、これからの検討の過程において事前にまたいろいろ話を聞かしていただきたいと思います、私のほうからも意見を申し上げますから。  そこで四十五年にはというお話ですが、四十五年というと四十五年の十二月末までということになりますけれども、四十四年度中くらいには、もちろん四十五年度予算に関連したいろいろな問題も出てくると思います。したがって、四十四年度中にはひとつ何としてもやり遂げるというめどをここで約束せいといってもこれは無理な話でございますが、そのめどを期待しておりますから。そうでないと四十五年の予算要求の問題いろいろ出てまいりますから、それをぜひひとつお含みおきを願いたいと思います。  それから次に、このたびの卸売市場近代化資金対象となる卸売市場範囲、この中に産地市場が除かれておる。ことに水産物の産地市場は流通上消費地市場に劣らない重要な位置づけをされておる、こう私は思うんです。これらを含めると地方の市場というものは約三千になると聞いておるんですが、この産地市場をはずした理由というものをここでひとつ明確にしておいていただきたい、こう思うんです。
  58. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 法律の規定といたしましても御売市場、農林水産物の卸売市場というふうに書いてございますから、法律上産地市場を除いたわけではございません。ただ、実際の当面の取り扱いの方法といたしまして、産地市場、特に水産物の産地市場はこれは漁港整備計画の一環として整備されるという面もございますし、産地市場をどういうふうにもつていくかということは、水産行政としてもきわめて重要な問題でございますので、それらの検討を待って融資対象としてまいりたいというふうに考えております。また産地市場であると同時に消費地市場の性格を持っておるものは、これは当然今回の融資対象になるわけでございまして、もう一度繰り返して申し上げますと、法律の問題として産地市場融資対象として含まれておるわけでございますが、水産物の産地市場につきましてはさらに検討を進めてもらって、それに従って融資を開始したい、そういうことでございます。多少の時間のおくれがあるだけで、この法律から除いておる趣旨ではございません。
  59. 佐藤隆

    佐藤隆君 そうすると四十三年度中にはやっぱり無理だ、四十三年度中は一応はずされるということに理解してよろしいですか。
  60. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 水産庁の検討その他が非常に進めば別でございますけれども、私どもの気持ちとしては四十三年度中は無理ではないかというふうに思います。
  61. 佐藤隆

    佐藤隆君 この近代化資金はいわゆる一般の商業金融とは違うわけですから、一つ制度金融としてこれは発足するわけですから、一つの行政指導方針というか、そういうものがあるはずだと思います。それは先ほどちょっと局長が触れられましたが、その卸売市場整備計画というものを何するんだ、こういうお話ですが、卸売市場整備計画というのはどういうものなのか。それは何か膨大な計画で、あるいはそういうものは何カ月かかるとか、それによってその制度のすべり出しがおそくなるとか、その辺のことをちょっとお伺いしたい。
  62. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 県がつくります卸売市場の整備計画は、そう膨大なものでは必ずしもございませんで、まず水産物、青果物等につきまして県内にそれぞれ流通圏がございます。青果物なり、水産物がどの範囲でまとまって流通するかという流通圏がございますから、流通圏を拡大確定して、その流通圏に即して市場の配置を考え、一つの流通圏に一市場ということでは必ずしもございませんけれども、そこで流通圏に即して市場の配置を考え、整理統合の計画を立てる、あわせて配置する市場についてその中身の整備計画を練るということが、大体県が立てます卸売市場の整備計画でございまして、これは法律が成立いたしませんと、本式に動くわけにはまいりませんけれども融資をことし願うものにつきましてはその計画がおくれるために融資が進まないということではこれは困るわけでございますから、大体ことしの八月一ぱいぐらいまでに各県で大体のメドを立てる、もちろん私が申し上げましたこまかいこと以外に、県内における一般的な方針を県が策定することは当然でございますけれども、とにかく八月末までに県としては一応のものを持ってきてくれということを言っておるわけでございます。
  63. 佐藤隆

    佐藤隆君 まあ流通圏をこれから各県ごとにつくらせて、その流通圏に基づいてひとつそれを基本として整備計画をつくらせてやる——おそきに失した感もありますけれども、せっかくこれから手をつけられるわけですから、ぜひ急いでやっていただきたいと思いますが、こうした流通圏を定めて、そして整備計画をつくって近代化資金をつぎ込んでいく、もちろん国民の税金なり、そういうもので国の融資としてやるわけですから、相当の、ある程度の効果というものを、特に物価安定にちなんで効果というものをもちろんはじき出された、これを農林省も考えられたんだろうと思いますが、まあしかし、こうした、物価安定にどの程度の効果があるかという議論をここで進めますと、これは局長さんえらくても、これはちょっと簡単には、そんな数字でぴしゃぴしゃっと、三十億つぎ込んだ、その投資効果はどうだという答えが出ようはずはございません。それは聞くほうがやぼだとは思いますけれども、しかし何かそう数字的にぴしゃびしゃとしたものではなくて、何かこれこれしかじかの効果があるんだ、物価安定にまつわって。そういうものがお聞きできるなら、お答え願いたい。
  64. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) まず卸売市場計画について流通圏を定めるという問題でございますが、それは人為的に勝手に書くという趣旨ではございません。現状に即して、現状の認識といいますか、現状がどうなっているかということに即して立てるわけで、もちろんある地方市場を固めますと、流通圏が多少広がるということはございますけれども、しかし、勝手に県庁の人たちが頭の中に、壁に絵をかくようなものではございません。その点の御了承をいただきたいと思います。  なお、卸売市場近代化資金融資によってどの程度の物価安定の利益があるか、これは御指摘のようにそう数量的に申し上げることはできませんけれども、私ども考えておりますことは、現在中央卸売市場というのは相当整備が進んでおりますし、卸売り人というのは相当力を持っておりますから、荷物が地方市場を避けて中央卸売市場にくる。中央卸売市場からまた地方に逆送されるという事態相当現状となっておるわけでございます。地方市場が整備されることによって、地方市場の荷を引く力がふえて、中央からもらわなくても相当の品ぞろえができるという点をまず第一にあげてしかるべきだろうと思います。さらに、市場が整備されて、たとえばいままで自動車の置き場が全然なくて、道路に自動車を並べていたというところが、適当なところに自動車がおさまるようになりますれば、それによって小売り人が荷物を引くコストが非常に安くなるという問題もございます。それら、消費者にとりましてはいままでよりも比較的——これはそれほど声を大きくして言うほどのことではないかと思いますけれども中央卸売市場から転送されて荷物が地方市場に行くよりも、直接地方市場に送られるほうが、多少とも安いものが買えるということがございましょうし、小売り人としましては、荷を引く力が、荷を引くコストが安くなって、流通改善に役立つという事情があろうと思います。その他市場整備をめぐりましていろいろ有形、無形の利益が私は相当あるというふうに考えております。
  65. 佐藤隆

    佐藤隆君 まあとにかく御売市場というものが、この近代化資金によって流通対策としてもとにかく取り上げられてこうしてすべり出すのですから、まあ流通機構が整備される、その期待は私どももしております。ところで、この市場が近代化されていく、整備されていく一面、流通圏というものを想定する、あるいはつくって、その中で考えて、これから進めていくわけですから、生産者に対するこの対策というものをあわせて考えてもらわないと、これは——まあこの場合は生産者に対する融資の問題とは違いますからですけれども農業政策として当然——まあせっかく流通圏というものを定めるわけですから、生産者の問題を考えなきゃいかぬと思うのです。特に最近まあ生産者が、いわゆる豊作貧乏ということばがありますけれども生産者が、キャベツだとか、促成もののキュウリやトマトをうんとつくった。うんとつくって地方市場へ持っていく。夜中に荷積みに行って、翌朝いわゆる値段が仕切られる。いわゆる現金収入だ、換金作物だということで、農家側はそれに甘んじて営々として働いております。生産物が多くとれたのだから、値段がたたかれる、安くなる。これは経済原則として認めていいのですけれども生産者が市場窓口においてたたかれておる。その生鮮食料品——まあもう少し具体的に言うなら、もう菜っぱ類でも、あるいはキュウリでも、トマトでも、それが消費者の口に渡るときになると、ガ然高い値段になる、まあこういうことですね。  私は、一昨年の新潟県の七・一七水害のありましたときに、新潟市を中心とするあの近郷の地帯で、非常に促成ものが、ビニール栽培にしても何にしても、被害をこうむった。それで出荷されたものが非常に少ない。じゃ高くなるかといったら、市場のいわゆる窓口では、おまえたちには米の金はことしは入らぬのだぞということで、足元を見られてしまって、わずかとれたキュウリ、トマトが値段をたたかれてしまう。一方、消費者の口に渡るときには、水害があってどうも蔬菜類が高うございますというようなことで、やはり値段は高かった。こうしたことを考えると、とにかく生産者がたたかれて、消費者が高いものを買わせられるということになる、そうなると、これはいろいろ問題があると思うのです。  で、こういうことは何に原因するかというと、市場仕組みというか、その市場内容自体にも問題があると思いますけれども、一番生産者の立場が弱いというか、そういうところにも大きな原因があると思うのです。ですから、生産者が組織的に共同出荷をやるとか、そういうことで値くずれを押えるとか、そうした指導ももちろんしてもらわなくちゃいかぬと思いますが、計画的な生産販売指導というか、そういうようなことを農林省はどう考えておられるのか。まあこの際、せっかく流通圏をつくって、この地帯の消費量はどの程度だ、生産の限界はこの程度だということをやはり考えて、ある程度科学的な一つ生産指導をやる必要があるかとも思いますし、いずれにしてもやはり生産者がたたかれて、消費者が高いものを買わせられるというような皮肉な現象は、農林省生産者に対する指導を綿密にやることによって相当程度救われるのじゃないか、こう私は考えるのですが、農林省のお考えをひとつお聞きしたい。
  66. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 確かに、中央卸売市場なり、地方市場なりの整備をいたしましても、農家が買いたたかれるような状態が続くとしますれば、はなはだ不公正なことでございます。この点につきましては、市場取引の公正化をはかるということはもとより必要でございますが、それ以外に、私ども農林省全体としてやっておりますことは、かいつまんで申し上げますれば、やはり計画出荷といいますか、野菜ならば、指定産地を中心とした計画的な生産あるいは計画的な出荷ということをまず強め、市場のほうからこれを見ますれば、私どものほうの仕事として、たとえば出荷奨励金等の配分を通じてそういうものを強める方向で事を運ぶということが一つございます。さらに情報の伝達の機構として、現在統計調査部を中心にし市場に対する入荷量でありますとか、値段とかを生産地に相当速く伝達させるような制度をとっておりますが、それをますます効率化させるということも大事であろうと思います。  さらに最後の受け手といたしましては、価格補償といいますよりもむしろ所得補償の形で野菜等につき一ましても値くずれした場合にこれを一定基準に従って補てんをするという制度がございますので、その制度仕組みをいよいよ効率的にするという、そういうことであろうと思います。要するに私どもただ流通改善ということだけではなくて、やはり農家にとっての生産の安定、あるいは所得の安定ということをはかることがたいへん大事なつとめだというふうに考えておるわけでございます。
  67. 佐藤隆

    佐藤隆君 それからこれはまあ一般的な問題になりますけれども、食糧の自給率確保の問題——主食——米の問題になりますといろいろまた議論の多いところですし、いろいろ異論もあるところでございます。この際は時間もございませんので、それに触れませんが、きょうの主題にちなんで野菜、くだもの、水産物、食肉等いわゆる生鮮食料品の自給率、この問題はどう考えておられますか。
  68. 小沼勇

    説明員(小沼勇君) 生鮮食料品の自給率でございますけれども、年次報告でも出してありますが、昭和四十一年で果実は九三%、肉類が八八%、鶏卵が一〇〇%、牛乳乳製品が八〇%という状況でございまして、そのほか野菜がほぼ一〇〇%でございますし、また魚介類も大体一〇〇%に達しております。しかし、この中で畜産関係のものは、ものとしては相当自給度が高くなっておりますけれども、実際には濃厚飼料の輸入がふえているというふうな状況でのえさの問題が別途あるわけでございます。先ほど経済局長からも説明がありましたけれども、今後やはり生鮮食料品の需要が特にでん粉質から動物性のたん白質、したがってそれにつながって生鮮野菜等がふえていくだろうというふうに思われますので、そういう需要の増大に対応させまして、特に生鮮食料品については簡単に外国から輸入するというわけにもまいりません性質のものでございますので、国内でできるだけ必要量を満たすような方向で進めるというふうにして、安定的な供給をやるようにはかってまいりたいと考えておるわけでございます。そのためには野菜、果実等につきまして生産の集団的な産地の育成なり、あるいは生産基盤の整備、また飲用乳等につきましても酪農の近代化の基本方針に即しまして酪農振興をはかるというふうなことも進めてまいらなければならないだろうと考えておるわけでございます。
  69. 佐藤隆

    佐藤隆君 あと二間ほどで終わりますから。——卸売市場近代化資金のレート——金利の問題ですが、これはまあ卸売り人なり、仲買人関係の引きは七分七厘、八分二厘、こういうことでございますが、系統金融でも大体八分三厘くらいで関連産業融資企業融資をやっていると思うんです。そこで私はおそらく政府部内でいろいろ大蔵省と農林省との間で検討された結果、その結論がここに出て七分七厘、八分二厘ということになっておると思うんですが、おそらく、大蔵省側の見解は、これはまあ制度金融なんだから農業、漁業に関する問題であっても他の制度金融との比較において金利を考えなければ金利体系が乱れるという一つの、ある意味では筋の通った意見があってこれはきめられたと私は思うんです。しかし私は、今日農民年金等の問題もありまして、国民年金をさらにそれに上積みをするかとか、あるいは農民年金としてぴしゃっとした恩給のようなものを打ち出すとか、あるいは食糧の自給確保の観点から過去に行なわれた保護政策とは違った一つの観点で、農業者の生産意欲を増して食糧を確保しようということで政策が打ち進められているときに、制度金融長期低利の国の融資でございますといって系統金融との差がわずかに一厘と、これはちょっとどうかなと私は思うんです。そこで他の制度金融機関——中小企業金融公庫とか、あるいは環衛とか、国民金融公庫、そうしたものと並列的に並べた場合は確かにこの八分二厘でもいいんです。私も調べましたけれども、八分二厘でいいんです。そのとおりなんです。ですからそういうことで合わせたのだろうと、こう私は思っておるのですが、これは今後の課題として農林金融全体を取り巻く金利の情勢というものはこれでいいのかという大きな問題が現在あるわけです。これをやっぱり引き下げるという問題も一つあるわけです。  そこで、このたびは新制度発足のためにこれはまあまあやむを得なかったと、こう私は思うのですけれども、今後の課題として、これはやはり系統資金の金利自体も私は高いと思いますけれども、しかし現況、系統資金と、中金なら中金の八分三厘の金と、それからいまのこの八分二厘という金利のほとんど変わらないこのことについてちょっと異論があるんですが、ひとつ今後の展望として金利の引きさげ——しかし、まあ金利の問題となるときわめて流動的な問題ですから、来年度から何分何厘引き下げますなんていまから言えようはずはございません。ございませんけれども、発足当初であるからまあまあこれですべり出してみて、しかし客観情勢、この農林金融の情勢というものもよく含みながら多少やはり引き下げの方向というか、そういうことで前向きの形で負担の軽減をはかる措置を考えていく必要があるのじゃないか、こう思うんですが、そういうお考えがありゃなしや、ひとつちょっとあるいはお答えにくいかもしれませんが、しかし、いま現在の判断のお考えをひとつ聞かしていただきたい。
  70. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 御指摘のように、卸売市場近代化資金は、中小企業金融公庫でありますとか、国民金融公庫でありますとか、一種の企業金融でございますから、そういう特殊企業金融機関の利子から著しく離れた水準できめるということはなかなかむずかしいわけでございます。それより決して不利でない形で、ものによりましては多少有利なものもございます。地方卸売市場の中で特殊なものにつきましては六分五厘という金利でございますから、一般の特殊金融機関に比べて決して不利ではなくて、やや有利というふうに考えております。また、中金の系統外の関連企業融資は、二銭三厘ではなくて、たしか二銭六厘ないし二銭七厘であったというふうに記憶いたしております。二銭三厘というのは——信連に対する融資が二銭二厘でございますから、二銭六厘ないし二銭七厘であったと思いますが、しかしそれはいずれにいたしましても、卸売市場近代化の資金は、企業金融として一般の政府の企業金融に合わせざるを得なかったという点はひとつ御了承をいただきたいと思います。ただ将来の問題といたしましては私どもこの融資条件に決して満足はいたしておりませんので、一般の金利の動向にももちろんよりますけれども、今後におきましてなお改善の意欲をもって事に当たりたいと考えております。
  71. 佐藤隆

    佐藤隆君 二銭六厘か、七厘か、あるいは二銭三厘ぐらいだったか、ちょっとあるいは私の考え違いがあるかもしれないが、いずれにしろ、そうした方向でひとつお考えおきを願い、進めていただきたい、こう思います。  それから生鮮食料品を主として考えた今度の措置だろうと思いますけれども、都市住宅構造というか、そういうものがだいぶ変わってきた。それから生活程度ですね、消費生活というものが非常にレベルアップされてきたということで、お花だとかそういう関係ですね、花弁の関係は非常に前時代的な取引条件もあるようですし、花弁市場仕組みというのはこれまたいろいろ問題があると思います。で、時間がございませんのであれですが、生鮮食料品とは違うのですから、これに含めることがいいのか悪いのかちょっと議論があると思いますが、私は、特に新潟県あるいは富山県など北陸一帯のチューリップ、いわゆる球根の関係ですね、これなんかも非常に問題になっておるのです。特に新潟県においては、球根取引についてですね、いまもう非常にもめているわけです。まあこの球根関係は、特に輸出産業という一面を持っておりますし、こうした制度ができた機会に、やはり花弁なり球根なり、そういうものを含めて市場の近代化をはかっていくとか、流通の改善をはかるとか、そうした配慮がなされてしかるべきではないかとこう思うのですが、御所見いかがですか。
  72. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 花の市場も、実は農畜水産物の卸売市場ということでございますから法律上は決して除外はいたしておりません。ただお話のように、花の市場はこれまたきわめて複雑で、お花のお師匠さんその他のああいう特別な用途に対するものが四割程度もあるぐらいで、なかなかこれ今度の融資対象にすぐのせるというわけには私まいらないと思いますが、なお、花の市場をほうっておいていいということはございませんから、将来の検討課題として、どういうふうに花の市場を動かすかということが大体の腹づもりができますれば、この制度にのせることを十分検討いたしたいと思っております。ただ御参考のために申し上げますと、たしか横浜の卸売市場でございましたか、そこでは付属施設の形で花の取引も現にやっておってたいへん便利がられているといいますか、実情に即した解決をしているというふうに聞いておるのが一つございます。
  73. 佐藤隆

    佐藤隆君 まあこれは三十億という資金ワクがあるわけですが、公庫の四十三年度融資ワクというのは一千八百億、先ほど参考人の、特にあれはどなたですか、全国の魚の卸売市場連合会会長さんですかのお話によると、相当需要がやっぱりあるのじゃないか、資金需要があると思います。そこで千八百億あるのだから、その中の融通は多少つくとは思いますけれども、ほかを削ってこれにつぎ込んでいいということにはならないのであって、ワクの増大ということについては、これからのその実需とにらみ合わせて、ひとつ特別の配慮をすべきだとこう思います。  そこで最後にお願いをしておきますが、きょうは大臣いらっしゃらないわけですが、特に二点だけを、これ全部伝えてくれといってもなかなかたいへんでございますから、特に二点を大臣にお伝えおきいただいて完ぺきを期していただきたいと、こう思うのですが、その一点は、午前中に申し上げました融資コンサルタント制度、この問題。それから二番目には、地方卸売市場法の策定、これを四十四年度中にひとつ何とか仕上げる、その意欲的な実績を、ぜひこれから示していただきたいという御要望を申し上げまして、私の質問を終わります。
  74. 任田新治

    任田新治君 午前の私の質問に続いて、続けてしたいと思います。主として総合施設資金についてお尋ねをいたしておきたい。  この施設資金の中で各県にそれぞれ融資協議会が設けられるわけですが、その協議会の構成なり、それから貸し付けをしようとする対象農家の営農計画の判定をやる、その判定をやる場合の権限ですね。それから協議会公庫との関係、まあこのようなことを考えてみますと、なかなかたいへんな構想を持ってこれから実施していかなければならぬということになろうかと思いますが、特に私気にかかることを二、三点申し上げてみたいと思います。  昨年の八月に農林省が構造政策を発表しておりますが、その中で、この施設資金の問題について行政庁が画一的な規制をなるたけ加えないように配慮しなければならぬということを書いてあります。この点について、新しくできるこの融資協議会に、いわゆる地方公共団体の役人なりそういうような人が入らない、そういうことができるのかできないのか、こういう点があろうかと思います。  それから第二番の点としまして、地域別にいろいろ経営指標を設けたり、また営農の事業を考えたり、経営体の所得目標をつくったり、あるいはまた、今度は八百万円になっておりますが、融資ワクの拡大を将来も考えなければならぬというようなことが出てくるだろうと思うのですが、そういうものを各県の融資協議会とどういうふうに結びつけて考えていくのか、こういう問題があろうかと思います。  それから第三点の問題として、この制度は、取得資金と近代施設とこの両方に必要な施設資金というものが考えられておって、そうしてその上でこれに関連して運転資金を回していこうということになっておりますが、もちろん供給源が違うと、しかし、農家の皆さんから見れば、受け取る先が違っておっても、自分としては一貫した考え方でとにかく借り入れなければならぬということになるわけですが、この供給源の違うものを一本に考えていく、そういう窓口に協議会がなり切るかどうか、こういうこともあろうかと思います。  それから第四番目の問題としまして、これは具体的な話になるかもしれませんが、農家のほうから見ますと、総合施設資金の貸し付けを、とにかく何とか協議会の認定を受けまして、そうして貸し出しを受けるようになる。そこでさらに次の段階で、自分の経営改善をはかるために運転資金を借り受けたいということになる。そこで今度は次の段階で、農業信用基金協会で最後の保証を受けるということになる。さらに信用保険協会の保証保険対象にしてもらう。こういうわけでありますが、二の農家の立場から見ますと、総合資金の窓口が一本化されておるようで非常にありがたいけれども、これに関連して運転資金を借りようとすると、まだまだ相当に頭を下げて回らなければならぬとろがあるじゃないかといふうに思うわけです。そこで運転資金近代化資金、そういうものの貸し付け条件やらその他をやっぱり一貫して緩和するというような優遇措置が考えられなければならぬような気がします。それから運転資金そのものも地方の格差がこのままでは出てくるのではないかというふうにも思うのですが、大体この協議会運用のしかたについて特に気にかかることを四つ五つ申し上げたんですが、御意見をちょうだいしたいと思います。
  75. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 総合資金制度を動かします場合に、行政庁ができるだけ画一的な態度をとらないで、地方の実状に応じて弾力的に扱わせるということは私ども非常に大事な事柄だというふうに考えております。総合資金制度でつくろうといいますか、対象として考えておりますのは自立経営ということでございますが、自立経営というといかにも何か特別の農家のように聞こえる向きもございますが、昔でいえば中堅農家とか、あるいは中核農家とかいうようなもので、要するに、農業をやって農業で食べられるという農家でありますから、そう特別にえらいとんでもなく大きいものでもございません。水田でいえば、私ども十年先を眺めて、いまの物価水準のままで大体農業所得が百五十万ないし百七、八十万くらいということで考えますと、水田で三町五反ないし四町二、三反ということになるわけでございましょうし、果樹でいえば、ミカン等で二町歩を少しこえるところであろうと思いますが、いずれにしろ自立経営ということを東京で抽象的に考えますと、えらい何かむずかしいような感じもいたしますか、村で考えますと、といいますか、農村の中で考えますと、どういう農業をやればその地帯で現在でも生活できるし、相当五年、十年先でもこれでやっていけるという目途は、私は非常に具体的なものであろうと思います。自立経営ということを抽象的に議論すれば切りがございませんけれども、現地で考えます限りではきわめて具体的な問題でございます。したがいまして、自立経営の大体の形というのは、私がいま申し上げたようなもので、各県に言いますけれども、それをもとにして各県ごとで、できることなら地帯ごとにどういう農業をということを描いてもらいたいというふうに思います。これもしかしあくまで一つ基準でございますから、県が現地に即して描いたものから少しでもはずれれば、総合資金の貸し付けをしないというふうに固く考えることではなくて、要するに、五年、十年先になって農業でとにかくちゃんと生活できるような農業をつくるということが主体でございます。したがいまして、営農の類型あるいは営農規模というようなものを一応は私どもは参考のために流しますけれども、それはあくまで参考でございまして、県が現地に即して描こうとするし、それでもそれはやっぱりあくまで一つ基準であって、それを参考にして、具体的に農家に即してこれでやっていけるかどうかを判断するというふうにいたしたいと思います。したがいまして、御心配のように、何か中央で一律のものをつくって、それを県なりあるいは村なりに押しつけるということは私ども絶対にいたさないつもりでございます。  それから施設資金近代化資金あるいは運転資金等が一挙動で貸し出されるということで私ども総合資金というふうに考えておるわけでございますが、県の協議会で、これはやはり県の人が入ったほうがいいと思いますが、それと公庫の支店、あるいは信連、場合によりましては、単協その他の融資機関等々が入って、そこで相談をして、営農設計について、借り受けを希望する農家の営農設計について十分そこで審査をして、そこでよしといえば、公庫信連も出ておるわけでありますから、公庫からは施設資金信連からは運転資金が貸し出されるということで一挙動でできるだけきめたいというふうに考えております。したがいまして、総合施設資金公庫から借りることができたけれども、また運転資金をあらためてかけ回るということはないようにいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  76. 任田新治

    任田新治君 いまの点が幾らか気にかかりますが、局長の御答弁で私自身は大体了解できたわけです。  次に、貸し付けの対象農家というものに対してのお考え、いろいろ書いたものを見ますと、自立経営意欲能力と、それから若さというものが必要だというようなことで、そこに相当のウエートを置いておるように見えます。この融資対象者の認定に当たって、私として一つ要望したいことがございます。昨年のこの農水委員会で私が申しておったことでもありますが、政府で、あるいは各県でいろいろ農業近代化のための機械化研修をやるとか、いろいろなことがなされておるわけです。あの研修を受ける連中というのは、とにかく後継者として立とうという意欲が非常に強いわけです。それぞれ何カ月なりの講習を受けて修了証書を持って帰っておるわけですが、これらの連中を、今回のこの制度の認定に当たってある程度優先して有資格の、完全な有資格者とは言えないかもしれませんが、その面での有資格者としての考え方で扱ってやるというようなことがやはり必要じゃないかと思うのです。せっかく勉強してきて、そうして修了証書を持って帰っておやじのあとを継ごうと思って努力しておるのに、この制度ができたためにあらためて考え直されたんじゃ本人もかわいそうな気がするのですが、ぜひひとつこの点は考えてやっていただきたい、このように思います。御意見いかがでしょう。
  77. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 総合施設資金の借り受けの資格といたしましては、決していま現在の時点で大きく農業をやっているということは特に考えませんから、その人の能力とかあるいは技術とかに重きを置くわけでございますが、その判断の際に、当然いま御指摘になりましたような、講習会あるいは訓練等々の事情がものをいうことは実際問題として当然であろうと思います。事実そういうふうに適当な講習あるいは研修等々がありますれば、そういうものもよく頭に入れて考えなさいという指導もいたすつもりでございます。
  78. 任田新治

    任田新治君 この点は、ぜひお願いいたしたいと思いますが、いまのは表向きのきれいな話でございますけれども、今度裏のことを考えてみると、これもまたたいへんなことだと思います。いま日本地価を抑制するという対策というものはほとんどございません。こういう中でそれぞれの地域で工業なりあるいは農業そのものを振興しようというような気持ちで地域振興がはかられていっておるのですが、こうした中で何かうまく考えると、この制度に便乗しまして、農業規模拡大ということをやるのだということで、本来わずかの面積を経営しておるとか、たとえば他の産業にも手を出しておるグループが、農業経営拡大ということに名をかりて、しかも、農地法の改正を目の前に控えて、ある程度大きな土地を手に入れて、そうしてハッスルしていくというようなことが起こって、何年かたった場合に、おれのやり方はどうも失敗であったというようなことでお手あげにする。その結果、土地そのものはそのまま自分の手に帰するわけでありますから、地価相当変わってくるというような、そういう事態が裏において考えられると思うんですが、こういうものに対する認定のしかたということは非常にむずかしいんですが、何かお考えがございますか、承っておきたいと思う。
  79. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 総合資金の借り受け者の資格を認定する場合に、ほんとうにその人が将来自立経営として農業に精進し得るかどうかということの判断が一番問題でございますが、私は、村の中で、その人が大体農業を本気にやる気があるかないのかということは、大体村では見当がつくのではないかというふうに思います。したがいまして、県の協議会でも——先ほど来信連農協との運用のしかたについての御議論がございましたけれども信連が金を貸す場合も当然農協を通して金を貸しますし、それから選定について農協意見も十分聞くわけでございますし、その他普及員等の意見も聞くわけでございますから、私は大体のその人柄の本質についてはそう誤りはないものであるというふうに思います。ただ、不幸にして、当人の意思のいかんにかかわらず、何年かたって農業をすっかりやめちまおうという事態があれば、これは公庫としては一時繰り上げ償還を命ずるということで、やはり具体的に解決してまいるつもりでございます。
  80. 任田新治

    任田新治君 そういう面では、午前中もいろいろ話が出ましたが、信連どんぴしゃりというわけでもなく、まあいろいろ方法があろうと思いますね。これはまあ単協なんかのメンバーにときによっては入れなきゃならぬというようなことにもなろうかと思うんですが、特に御配慮願いたいと思います。  それから次、お願いいたしますが、施設資金に関連して運転資金が出ていくわけですが、その運転資金を信用保証保険対象となるように保険法を今度改正するということであります。この保険制度の現状について、大体どのようになっているか。まだ保険制度そのものが非常にわが国では若いわけですが、このあたりうまくいっておるのかどうか。ここですぐそれに乗りかえてこの制度運用していけるのかどうか、あなたの気持ちを大体お聞きしておきたいと思う。
  81. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 信用基金協会は御承知のように県ごとにございまして、国と県とが補助金を出して、現在、近代化資金につきましては約百二十億ほどの基金がございますし、近代化資金以外の一般資金につきましては三十六億弱の基金がございます。近代化資金につきましては、すでに債務保証残高が千三百億ほど、一般資金については二百億ほど債務保証残高がございますが、この一般資金の三十六億ほどの基金を対象にし総合資金で系統が運転資金を貸す場合に、これを保証にかけるわけでございまして、各県は大体余力が十分ございまして、総合資金運転資金を貸す場合に保証にかけないという事態はまずないというふうに考えております。
  82. 任田新治

    任田新治君 話がちょっと飛びますが、今度公庫の役員の欠格条項を変えるというようなことの改正があるようですが、この内容がどうもいただいた資料ではあんまりはっきりしませんので、お伺いしたいと思います。
  83. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 公社、公団等の、公庫を含めまして、役員の欠格条項につきましては、二、三年前でございますが、内閣の法制局で統一的な意見を出したわけであります。それで正確に申し上げますれば「特殊法人の役員の欠格条項について」、昭和四十年二月十九日というものでございます。これによりますと「一、国会議員及び地方公共団体の議会の議員は、欠格条項中には、掲げないこと。二、政党の役員は、欠格条項中には、掲げないこと。三、国会議員及び地方公共団体の議会の議員並びに政党の役員を欠格条項に掲げている法律については、最近の改正の機会において、当核規定の部分を削るように措置すること。」ということで内閣法制局の決定がございます。それに基づきまして畜産振興事業団等幾つかの事業団、公団につきまして、法律改正のつどこのような法制局の決定に基づきまして法律の改正をいたし、農村漁業金融公庫につきましても同様な措置を今回講ずるわけであります。ただ国家的な金融機関でございますから、こういう欠格条項についての改正を行ないましても、現在公庫の理事は全部常勤でございますから、実際問題としての扱いとしては私は変更がないというふうに考えております。
  84. 任田新治

    任田新治君 この点は私は了解いたしました。そういういきさつとは知らないので、理由というか、そういうものがどこにあるのかはっきりしなかったので質問いたしたのであります。  それから最後にお尋ねをいたしておきますが、卸売市場近代化資金の問題ですが、この制度創設の必要性というものはわかります。その必要の内容というか、そういうものについてもよく伺っているわけですが、基本的な問題に関する質問として、流通機構の施設の近代化が物価安定にどのような効力を発揮することができるかということがあろうと思います。とにかく農家は天候を見ながら生鮮食料品をつくっている。それが豊作であっても凶作であっても心配なことばかりで、豊作であれば買いたたかれるということになるわけですが、その卸売り、仲買いというものが近代化、合理化されてもはたしてマージンを安くしてくれるのかどうなのかということがある。なるほどそれだけの資金を投入してそうして近代化されれば、労働関係その他の点は結局幾らか楽になってくる、また環境衛生の面やその他の面においても非常によくなってくる、流通の機能というかそういう面においてもいい点があろうかと思いますが、それはそれまでにしておいて、やはりマージンそのものは一向に下げようという気がしないということもあろうかと思います。これは一般工業の工場あたりの生産品のコストが下がっても売りだす卸価格というものは下げないということがあり得るのと同じようにそういう点が気にかかるのです。小売りは小売市場の値段がどのように変化しておっても、最終的にはいままでのベースで消費者に行くということになるのであって、生産から消費までの過程の中で両端にいる生産者と消費者が一番割りが悪いような気がする。それでまあまあいまのいろいろな統計から見ますと、消費者価格というものは生産者価格に比べまして、もう倍であったり、あるいは三倍であったりする場合があるのですが、このような中で基本的に考えた場合に、流通機構の整備、近代化だけで物価安定というものがうまくいくわけはない。もちろん幾らか貢献する面があろうかとは思いますが、農林省としては相当物価問題というのは大事なことでもあり、しかも生産者側に立つ場合が多いのですから、生産者も救いまた消費者も救っていくというふうな角度からいきますと、どうもその点がはたしてうまくいくかどうかということが気にかかるわけです。  で、日本の卸売り業者に対して小売り業者というものは大体七対一ぐらいの比率になっておる、私の出身の石川県でもそうですし、全国的にも大体そんな感じですが、この小売り人から見ますと、われわれ七人でもって卸売り業者を一軒養なっておるという感じになるわけです。それから卸売り業者から見ますと、とにかく自分の小売り先の連中はわずかに七人ぐらいではとても商売にならぬという考え方になっておるわけです。アメリカあたりになりますと一対七十ぐらいになってけたが一つ違う、こういうことを考えますと、日本全体からいってどうも流通機構のほうがずいぶん大きな幅を持っておっておさまっておるような感じがするんです。そこへもってきて今度の市場近代化資金関係が出てきた場合に、流通の中におるこの人たちが非常に擁護される、それはある程度やむを得ないものはもちろんありますし、ある面においては有利なというか、国全体から見てそれだけのことをしていくだけの効果があるかもしれませんが、物価という観念に立つと、必ずしも基本の問題を片一方から片ずけていっているような気がしない、こういう点についてどう持っていかなきゃならぬのか、何かお考え方があったらひとつ伺っておきたいと思います。  それから最後にもう一つ申しておきますが、これだけのことが整備されて、卸売り人、小売り人それぞれが整備されていく、小売り人の関係は国民金融公庫のほうでめんどう見てくれるようでありますが、そういうような形も出てくる。しかし先ほど申したように、生産と消費という、両極端にある農家というものと消費者というもの、これを直結した売買の場というものがやはりどうもなければいかぬというような気がする。大都会の中でこれだけの制度を持って中央卸売市場やなんかということで、十五万以上の都会でどんどん政府が市場の改善をはかっておられますが、今度の地方市場のような場合に、それをさらに中身を改善しようとするなら、そこまでいく場合に、その市場にあわせて、いわゆる農家が直接消費者に売るような場というものを考えなきゃならぬというふうに思う。一足飛びに流通機構だけが強化されて、しかも繁盛するように見ているんだが、消費者と生産者というものは全く縁が切れていくというようなことではどうもうまくないように思うんです。昨年の秋モスコーで、いわゆる近隣のコルホーズの農家がモスコーの市場へ物を直接持っていって、そして直接モスコーの市民に販売する、そういう場があるということを見てまいりましたが、ああいうような形というものは何らか日本らしい形で残しておく必要もあるんじゃないかと思う。  私の郷里に和倉というところがあるわけですが、和倉では毎朝魚あるいは野菜その他のものが町の両側に並べられて、直接消費者との間に取引があるわけですが、これはなかなか評判もいいし、それが全体としての物価の何というか、安定のほうに寄与しているのではないかというような気もするのです。そうした点からいって今後中央卸売市場の強化、近代化というものにあわせて、そうした配慮も必要じゃないかと思います。御意見をいただきたいと思います。
  85. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 第一の問題ははなはだ大きな問題で、簡単にお答えはいたしかねるわけでございますが、私は日本の生鮮食料品の流通というのは、よその国に比べてそんなに不合理なものとは考えておりません。しかしそれにいたしましても、卸、仲買い、小売りのそれぞれの段階について相当な大型化、近代化をはかることが私はやはり物価安定にとって一つの大きな力になるというふうに思います。しかし御指摘のように、流通改善というだけで消費者及び生産者がうまくいくかというと、それだけではだめなので、いい品物が豊富につくられるということはやはり基本でございますから、そのための施策ということは先ほども申し上げましたけれども、野菜ならば野菜の指定産地を中心にした計画的な生産あるいは出荷の大型化ということに懸命の努力を尽くすべきだと思います。  それからいまのことに関連をいたしまして、とにかく流通関係というのは相当動いているわけで、一番動かないと考えられる小売りの段階でも、最近は家庭の主婦が一カ所で買いものを全部済ませられるようにワン・ショッピング・システムといいますか、そういう希望が非常に強くなったことを反映して、小売り店の総合食品化の動きが東京におきましても、地方におきましても相当な勢いで発展をいたしております。それに応じて卸売市場自体の総合化、生鮮ものばかりではなく、かん詰めその他の加工食品も一カ所で小売り人が仕入れるようにしたいということで卸売市場自体も相当変わりつつある。私どもいま御審議をわずらわしております卸売市場近代化資金の中でも、卸売市場に付設した付属売り場の整備ということを考えるのもそういうことの反映でございます。  それから流通改善ということに関連して、生産者と消費者を直結することを考えたらどうかというお話で、私も中央卸売市場というのは何といっても流通のかなめでありまして、大量の荷物を非常に短い時間でさばいて、しかも決済が確実に迅速に行なわれるという強み、これはなかなかほかのものではまねができない長所でございますから、中央卸売市場中心にして流通改善をはかっていくというたてまえの変更はございませんけれども、それ以外にも絶体に道がないというふうにきめつける必要はないわけでございますから、たとえば全販連が現在埼玉の戸田町で東京を対象にして大口の需要者等に直接販売したり、あるいは加工調製をするために集配センターというものを建設中でございまして、四十二年度の予算で八千万円の補助金農林省として交付して、いまその建設及び建設後の成果を見守っておるわけでございます。それがどういうふうに動くか、もう少しそれが利用できるか、いやなかなかやはりむずかしくてとてもだめかということは今後の判断に待ちたいというふうに思います。  それから地方市場で地場野菜のお話がございましたが、私も確かにそのとおりで、たとえば東京の神田市場のようにあれほど旅荷の多いところでも地場の野菜を売ることをもっぱらやっております一元青果という小さな卸がございます。これは合併前の東印とか、あるいは丸一というものに伍して地場野菜だけを取り扱ってとにかくちゃんとやっておる卸売人があるわけです。地方市場におきましても、大体市場によって多少の相違はありますが、地場の野菜を取扱うコーナーを設けておるのが普通でございます。私はそれはそれとしてやはり存続して、そういう地場の野菜の活用及び生産者の所得の安定ということに役立てたいというふうに考えておるわけでございます。
  86. 和田鶴一

    委員長和田鶴一君) 本案についての質疑は、本日はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後四時三十一分散会      —————・—————