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政府委員(佐藤達夫君) いま御
指摘の問題については、私
ども非常な、まあ何と申しますか、誤解のような形の対象になっておりまして、非常にまあ残念なことに思っております。したがいまして、たいへんうれしいお尋ねでございますので、この機会に私
どものとりました措置の由来及びその性格を、ごく簡単でありますけれ
ども、申し上げて御了解を得たいと思います。
で、先ほど触れましたように、
給与法上は額もきまり、支給期日も、その月分はその月中にということになっておりますけれ
ども、先ほど触れました、そのためには現実にそのお金が出なければならない、少なくとも、働き得る
予算の裏づけ、これを支払い得る
予算の裏づけというものがなければならないわけでございます。今回の場面においては、たいへんこれは不幸なことでございますけれ
ども、
予算は先に成立いたしましたけれ
ども、その
予算の支出を可能にする
特別会計法が成立を見ないままにきてしまった。したがいまして、
特別会計法が成立することを前提としてできております
予算でありますために、これが成立いたしません限りは、あるいは別の特別の立法でもしていただければ別でありますが、そういう法律上の手当てがなされない限りにおいては
予算が出せません。これは私
どもは、十五日ごろでありましたか、いよいよ十七日が支給日でありますから、そのせっぱ詰まった段階において、
厚生省方面から、この法律のほうはとても成立しない、払えません、支払い不可能な
状態になっておるという情報を受けました。それはたいへんなことだというわけで、急遽
大蔵省——
大蔵省はいつもお金のほうでは元締めでございます。それから、
厚生省にももちろん何か便法を講じてお金が出るようにしてもらわなければ、これはたいへんなことだということで、私自身も各方面に特別の措置をとっていただくように
努力をいたしました。ぎりぎりの十七日の前夜まで八方手を尽くして、何とか法律的手段によってこれを支払い得る形にできないかということでありましたけれ
ども、
大蔵省当局も打つ手はないという話でございましたから、そうなりますというと、法制上は根拠がない、お金を出すほうの根拠がないわけです。お金を出したら、むしろそれは当時の新聞記事にありますが、お金を出せば憲法違反ということに相なって、非常に卑近な形でありますけれ
ども、国会の議決に基づかなければ金を出してはいかぬ。これは憲法八十三条、八十五条の条文、これを支払えば憲法違反、これは新聞記事に示すとおりだろうと思います。ところが、
人事院規則で、ほうっておけば十七日には払えぬ、支払わなければ
人事院規則違反、支払えば憲法違反という、そういうほんとうにこれは、私わずか四十年の法律生活ではありますけれ
ども、いまだかつてこれは前例のないたいへんな異常な事態である。そこで、憲法違反か
人事院規則違反かという場合に、憲法と一
人事院規則との間の軽重を
考えていただけば当然わかります。私
どもは、やはり私自身、憲法に深い縁故を持っておりますせいもございましょうけれ
ども、憲法に対しては、私は一番これはとうとぶべきものということで、神経質なくらいに
考えております。一
人事院規則が憲法違反を強制する形になるわけです。十七日に支払えという、支払わなければ、
厚生大臣は別として、現場の
療養所の
給与の当局者が処罰される、
人事院規則をそのままにしておけば、憲法違反をしなければ処罰するぞという体制が法制上できておる。それはとてもわれわれ
責任ある立場にある者は、憲法違反を強制するような
人事院規則を、それをそのままにしておけるかということが問題の根本でございまして、したがいまして、憲法をやっぱり立てて、そうして
人事院規則のほうはむしろ現状にあわせる、無理な憲法違反をしいるような体制は、われわれが
人事院規則を直しさえすればその場面は避けられるわけですから、その場その場の
給与支払い
責任者が処罰される場面もないということで、万やむを得ずやったことでございます。しかし、それは法的の措置であります。現実にお金が払えない、それをわれわれは何とかしなければということは、これは実質的のわれわれの
責任であります。したがいまして、先ほど触れましたように、とことんの十六日の晩夜中まで
大蔵省、
厚生省に何とかできないかとかけ合うとともに、それがだめだというものですから、いまの払えば憲法違反の場面になったわけです。しかし、現実のお金をどうするか、これはほうっておけない。したがって、共済組合のお金でも何でもいい、何とかしてお金だけは払えるようにしていただきたいということを八方
努力し、
厚生大臣も、もちろんそのことは御自身お
考えになった上でありましょうけれ
ども、それによってまあ当面の現実のお金の手当てだけはできました。それで一応われわれとしては安心はしましたけれ
ども、私
どもは、その
人事院規則を出しますと同時に、
大蔵大臣と
厚生大臣に対しては、とにかくかようかくかくのことになったけれ
ども、現実に
公務員が困らないような処置だけは万全を期していただきたいということを文書をもって申し入れておるわけでございます。したがいまして、私
どものとりました措置は異様なことには違いありませんけれ
ども、その基本になる法的
状態がすでに異常な
状態のもとに行なわれた万やむを得ない措置であるということで、われわれとしては告発をされたり、非常な私は無実の罪だと思いますが、きわめて遺憾な心境にあるわけです。きょうこの機会にこの説明を聴取していただきますことを非常に私はうれしく思います。