運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1968-05-10 第58回国会 参議院 石炭対策特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年五月十日(金曜日)    午後一時三十二分開会     —————————————    委員異動  五月十日    辞任         補欠選任     小林 篤一君     内田 芳郎君     近藤英一郎君     高橋雄之助君     鬼木 勝利君     宮崎 正義君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         光村 甚助君     理 事                 高橋雄之助君                 吉武 恵市君                 小野  明君     委 員                 井川 伊平君                 石原幹市郎君                 沢田 一精君                 徳永 正利君                 西田 信一君                 柳田桃太郎君                 阿部 竹松君                 大河原一次君                 北條 雋八君                 宮崎 正義君    国務大臣        通商産業大臣   椎名悦三郎君        労 働 大 臣  小川 平二君    政府委員        通商産業省石炭        局長       中川理一郎君        通商産業省鉱山        保安局長     西家 正起君        労働省労政局長  松永 正男君        労働省安全衛生        局長       大野雄二郎君        労働省職業安定        局長       有馬 元治君    事務局側        常任委員会専門        員        小田橋貞寿君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選の件 ○当面の石炭対策樹立に関する調査  (雄別炭鉱落盤事故に関する件) ○石炭鉱害賠償担保等臨時措置法の一部を改正す  る法律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 光村甚助

    委員長光村甚助君) ただいまから石炭対策特別委員会を開会いたします。  まず、委員異動について報告いたします。  本日、小林篤一君、近藤英一郎君及び鬼木勝利君が委員を辞任され、その補欠として内田芳郎君、高橋雄之助君及び宮崎正義君が選任されました。     —————————————
  3. 光村甚助

    委員長光村甚助君) ただいまの異動に伴って、理事二名が欠員となっております。つきましては、直ちにその補欠互選を行ないたいと存じますが、互選は投票の方法によらないで、委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 光村甚助

    委員長光村甚助君) 御異議ないと認めます。  それでは理事高橋雄之助君を指名いたします。     —————————————
  5. 光村甚助

    委員長光村甚助君) 次に、当面の石炭対策樹立に関する調査議題といたします。  昨九日朝発生いたしました雄別炭鉱落盤事故について説明を聴取いたします。西家鉱山保安局長
  6. 西家正起

    政府委員西家正起君) 昨日、北海道雄別炭鉱におきまして落盤災害が発生いたしました。まことに遺憾に存じている次第でございます。お手元にございます資料につきまして、簡単に御説明をさせていただきます。  災害を起こしました炭鉱は、雄別炭鉱雄別通洞坑でございます。鉱業権者雄別炭鉱株式会社で、北海道阿寒阿寒町にございます。災害が発生いたしましたのは、四十三年五月九日午前五時三十五分ごろでございまして、昨日でございます。発生いたしました個所は、同坑の中の堤沢末広第4B払いという採炭切り羽で起こったものでございます。罹災者死亡者四名、重傷者二名、計六名でございます。  災害状況でございますが、当坑は鉱山労働者約千三百三十八名をもって月産六万八百トンを出炭している炭鉱でございます。今回、災害の発生いたしました切り羽は、坑口から約七千メートルの位置にある長壁式後退払い採掘所でございまして、払いの面の長さは九十メートル、傾斜は二十三度、全体の山たけは一メートル七十九センチ、その中の炭の幅は一メートル三十九センチでございまして、払いを支持する支柱水圧鉄柱とそれからカッペ使用の千鳥につくりました三列柱方式でございます。採炭機械ドラムカッターを使用しておりまして、一日の払い人員は八十六名でございまして、毎日約四百二十トンを出炭いたしております。五月八日の三番方といたしまして、係員三名と鉱員二十二名、合計二十五名の方たち配番になりまして、採炭作業を行なっておったのでございます。災害発生前は、カッターとい口——とい口と申しますのは積み込み口でございますが積み込み口から二十六・二メートル付近までコールカッター切截作業をしておりまして、逐次下のほうから払いを上がってきておったのでございます。また、とい口から十五メートル付近においては鉱員の方二人が山固め作業——支柱補強作業をやっておったのでございます。災害直前係員鉱員の方一人が払い肩側、すなわち上部のほうから深側——下のほうへおりてきたのでございます。このとき突然下部のほうにございます深ステープルから上部約二十九・五メートルの間にわたりまして、これは幅が八・六メートル、高さが一・五メートルの範囲でありますが——にわたりまして崩落が発生いたしまして、カッター切截作業をしておりました鉱員一名と散水作業をしておりました鉱員一名と、先ほど申しました山固め作業をやっておりました鉱員二名、さらに払いを下がってまいりました係員合計五名が埋没をいたしまして、払いを下がってきた鉱員一人は重傷を負ったのでございます。埋没をいたしました五名のうち、散水作業をいたしておりました鉱員一名は無事に救出されたのでございますが、残りの四名の方々は遺体として収容されたのでございます。  原因の究明でございますが、現地札幌鉱山保安監督局から一名の監督官、さらに釧路鉱山保安監督署から署長ほか三名の監督官現地に急行いたしまして、目下鋭意調査中でございますが、ただいままでわかっております状況を申し上げますと、この切り羽支柱の中に異種鉄柱が使われておったという事実を、異種鉄柱というのは長さの違った鉄柱を使っておったという事実がわかっておりますが、これが災害に直接関連があるかどうか、これにつきまして目下追及調査をいたしておる次第でございます。  簡単に右のほうに半ぴらで図面が書いてございますが、この図面の上のほうが肩側でございまして、二十三度で下のほうに傾斜をいたしておるわけでございます。で、下のほうから右のほうに炭を掘ってまいるのでありますが、下のほうの入口から十二メートルのところから二十九・五メートルに至る間、その左の斜線の部分が崩落をいたしたわけでございます。罹災者位置はエックスじるしでもって示しておりますが、そのうちマルをつけました二人の方々が救出をされた、残りの四名の方が死亡された、こういう状況になっておる次第でございます。  はなはだ簡単でございますが、とりあえず御報告させていただきます。
  7. 小野明

    小野明君 札幌鉱山保安監督局としても定例的に点検をやられておったと思うのであります。それで、この炭鉱の前回やられました調査の際、大規模な崩落なんですが、この兆候がなかったのかどうか。前回おやりになった日取り、日にちはいつなのか、そういったものがわかっておりましたら御説明をいただきたいと思います。
  8. 西家正起

    政府委員西家正起君) 当炭鉱につきましては、大体月に一回監督官検査をいたしております。災害直前に回りました期日は、四月の十七日から二十日にわたりまして検査をいたしております。その際は今回の落盤に直接関係のあるような指示事項につきましては、危険状態を認めておりませんで指示をいたしておりません。その前に何回か回っております際に、落盤関係につきましては支柱間隔につきまして、これは保安規程にきめられておるのでございますが、その間隔について、傾斜払いでございますので、その間隔がきめられたよりも若干延びがちであるという点を指摘したことはその前にございますが、今回の災害とは直接関係はなかったように思います。
  9. 小野明

    小野明君 いつですか、この前点検されたのは。
  10. 西家正起

    政府委員西家正起君) 直前は四月の十七日から二十日でございます。     —————————————
  11. 光村甚助

    委員長光村甚助君) 次に、石炭鉱害賠償担保等臨時措置法の一部を改正する法律案議題といたします。  直ちに質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言願います。
  12. 阿部竹松

    阿部竹松君 法案と直接は関係ございませんけれども、いま小野委員の質問に関係いたしまして、私北海道に四月に参りましたときに、四カ月間の間に炭鉱災害犠牲者が四十三名、今日ではすでに六十名になっておると思うのですが、これは当然鉱山保安を監督し、行政指導しております鉱山保安局責任でございまするけれども労働省としていかなる処置と、いかに通産省とお話し合いになっているか、労働大臣にお伺いいたします。と申し上げますことは、労働大臣労働災害が生じた場合に通産大臣勧告ができ、基準局長鉱山保安局長に対し要請をすることができるわけです。しかし、現在では基準局でなくして安全衛生局ですか、そこが担当ということになったやに承っておりまするけれども、実に災害が多いわけでございまして、直接責任鉱山保安局だと考えますが、しかし、労働者保安センターということで労働省があげて責任を負っておりますので、その点の見解を承ってみたいと思うわけです。
  13. 小川平二

    国務大臣小川平二君) 炭鉱災害に関しましては、御指摘のように労働省勧告権を持っておりますので、そのつど通産省に対して勧告をいたしているのであります。
  14. 阿部竹松

    阿部竹松君 労働大臣、そのつど勧告しておられるのですか。
  15. 大野雄二郎

    政府委員大野雄二郎君) 所要のつどいたしております。最近におきましては、昨年三池の災害がございました。それからあと若干のものが続いておりますが、昨年秋に勧告いたしております。ことしに入りまして、美唄の災害、あるいは夕張でございますか、それと今回こういう問題が起きております。私ども勧告いたしますときに、きわめて鉱山保安当局でなければわからないような問題について私は勧告をしても、これはよく調べてからでなければならないので、いわばおか目八目と申しますか、私ども安全管理一般の立場から考えて有益な勧告はいたしております。その結果、昨年の勧告は今年度以降の鉱山保安基本計画に入っております。それからまた、過去において、山野のときにしましたような勧告事項も、今回の災害防止五ヵ年計画に組み入れられておりまして、鉱山保安当局では私ども勧告を十分尊重されて御努力になっていると解釈しております。
  16. 阿部竹松

    阿部竹松君 安全衛生局長の御答弁ぼくは了解できませんが、労働大臣、あげてこの種の問題は鉱山の場合、あるいは炭鉱も含めてこれは鉱山保安局、しかし、その他一切は労働基準局であったのは大臣の御承知のとおり、去年八月一日基準局から離れて安全衛生局という局ができたわけです。佐藤総理のアイデアであるか、行管の意見であるかは別として、半年もたたぬうちにその局がなくなるのです。一昨日衆議院を通っていま参議院にきておりますが、大臣こんな朝令暮改がありますか。人命尊重というのは佐藤総理の三つの柱のうちの一つなんです。これは労働大臣何とお考えになるのですか。安全衛生局ということで、そういう炭鉱鉱山保安局がやるでしょうけれども、一切そういうものを処理し行政指導しなければならぬ局をなくすわけですから、あなたが大臣に就任されたときか、それ以前かわかりませんけれども、一番残さなければならぬ局を一番先になくすということは、労働省というのは昭和二十三年に労働者サービスセンターであるということで出発した、どうしてもこれは労働省としてはおかしいと私は思うのです。朝令暮改と言いたいのですが、労働省は一体何をやっているかということをぼくは言いたいのです。何で安全衛生局をなくしたのですかということをお尋ねしたい。
  17. 小川平二

    国務大臣小川平二君) 産業災害は逐年幸い減少いたしてきてはおりますけれども、なお人命にかかわる災害等もきわめて多いのでございます。また、技術の革新が日に月に行なわれます結果、最近におきましては、種々の新しい職業病等も発生してきているわけでございまして、したがいまして、安全衛生行政をますますここで強化する必要があることは申すまでもございません。産業災害の絶滅を期するということは今後ますます緊切な課題になってきている、かように存じている次第でございます。今回の一局削減の問題は、申しますれば、きわめて高度の政治的断判から出てきた要請でございまして、労働省としてもこれに従わざるを得なかったのでございます。労働省は御高承のとおり比較的若い官庁でございまして、各部局いずれもそれぞれきわめて重要な行政の一翼をになってきているわけでございまして、正直に申しまして、そのうちにあって甲乙をつけるということが非常にむずかしい問題であったのでございます。したがいまして、最終的にはいずれかの局を廃止いたしました場合に、比較的容易に行政の継承ができる、こういう観点から選択を行なわざるを得なかったわけでございます。やむを得ずして安全衛生局の廃止に踏み切ったのでございます。ただ、もちろん安全衛生行政がますます大切な課題となってきていることは申し上げたとおりでございますから、局を廃止いたしました暁にも、行政の質が低下することがありませんように、また、かような場合にとかく職員の士気が阻喪するということも考えられますので、私といたしましては、さようなことがありませんように、これを激励いたしまして、この大切な課題に立ち向かってまいりたい、かように考えておるわけでございます。御指摘をいただきましたように、これはつい先ごろ発足いたしたばかりでありますから、朝令暮改ではないか、かような御批判、おしかりをいただきますれば、これは甘んじてお受けいたさなければならないと存じております。やむを得ずしてこれを廃止するに至った事情はただいま申し上げましたとおりでございます。
  18. 阿部竹松

    阿部竹松君 甘んじて受けるというおことばは、戦国時代であればりっぱだという評価がされるでしょうね。しかし、これが絶対必要だということで昨年衆参両院で議決し、決定しているわけですよ、労働省設置法で。それが簡単に、佐藤総理どう言ったか、ぼくたち新聞記事を読んだだけですからわかりませんけれども、それを労働大臣が簡単に衆参両院の議決を踏みにじって六カ月後に提案するなどということは、見識ないのもはなはだしいと思うのですよ。私はそう思います。甘んじて受けますなどということは、りっぱに聞こえますけれども、そんな見識のないことはない。六カ月前に衆参両院の八百名近い議員が可決しているわけですからね、満場一致で。それを総理に一言言われたからといって、わが省ではこれは必要ございませんということは、労働大臣、私が考えれば不見識だと思う。しかし、あなたの甘んじて受けるということは、どういうことを意味しているかわかりませんけれども、そういうように考えているわけです。  そこで、さいぜん申し上げました通産省労働省と、片や生産関係ある省、片や生産に従事する労働者を守るほうなんですが、このくらい災害が起きているのに、いま大臣お話を承ると、減りましたと、こう言う。確かに減りましたですよ、減りましたけれども、四十万おるときの千名の犠牲者と十分の一になったときの五百名の犠牲者では、パーセンテージは上がっているわけですよ。昔のような四十万当時のパーセンテージでいくのであればそれは大臣の御答弁はぼくは了承しますよ。しかし、全然パーセンテージが上がっているわけですから、大臣答弁はぼくは正鵠を得ていないと思うのですが、あなたがそういうふうにお考えになるということは、私どもは残念なことであると思うのですが、この点はいかがですか。
  19. 小川平二

    国務大臣小川平二君) 産業災害全般といたしましては、これは絶対的にも相対的にも幸い減少してきております。ただこれが減少しておるから、これでよいという心境でございませんことは先ほど申し上げたとおりでございます。鋭意努力しております。
  20. 阿部竹松

    阿部竹松君 減少でなくてふえておるのですよ。減少しておりませんよ。何人対何ということはパーセンテージでいくとふえているわけですよ。絶対減っておらぬのですよ。
  21. 小川平二

    国務大臣小川平二君) ただいま数字について安全衛生局長からお耳に入れさせます。
  22. 大野雄二郎

    政府委員大野雄二郎君) 産業全般といたしましては、ただいま大臣からお答えいたしましたように、絶対数、それから率、これは率も千人率、強度率、あるいは度数率、いずれにおいても落ちております。阿部委員の御指摘鉱山の問題ではなかろうかと存じます。この点は鉱山保安局からお答えいたしたいと存じます。
  23. 阿部竹松

    阿部竹松君 それは鉱山保安局関係でしょう。しかし、労働省は全然心配も何もせぬわけですか。私ども関係ございませんと言うていただければいいわけです。しかし、私はそういうものではなくて、労働者サービスセンターとして出発した労働省関係あると思うのですよ。あなたそんなこと言うから、安全衛生局はなくしてしまえ、こういうことを言われるのだよ。
  24. 大野雄二郎

    政府委員大野雄二郎君) 私どものほうも勧告の問題もございますし、またお金の問題で恐縮でございますが、労災保険の適用の問題もございますので、これにつきましても深甚な注意を払っておるわけでございます。正確な数字鉱山保安局長から申し上げたほうが一番新しい数字が入るかと思います。
  25. 阿部竹松

    阿部竹松君 鉱山保安局長から聞かなくても、数字をぼくがわかっておるがゆえに、労働省はどうするんですかということを聞いておるわけです。ぼくはそんな数字鉱山保安局長に聞かなくてもわかっている。それで確かに総体的には減っておるけれども、以前の人員と現在の人員をはじき出すと、いまのほうが被害者が多い、こういうことを言っておるんです。労働省はどう考えているかということです。あげて鉱山保安局責任だというならそれでよろしい。
  26. 大野雄二郎

    政府委員大野雄二郎君) 確かに御指摘のように、鉱山保安の部面においては全体の現象と逆の現象が結果的に起こっております。これはほかにも林業にさような傾向が若干ありまして、非常に注目すべき現象とわれわれは考えております。したがって、これをどうやって災害を減すかということは、私どものほうとしても鉱山保安当局考えられておる以外に、考えられる限りは十分考えていきたい。これはどういう角度かと申しますと、鉱山保安局の扱っておられる問題は保安技術という角度から見ておられると思うのでございますが、やはり災害というものは人と職場との関係、そんな関係からいたしますと、安全管理部門全般、あるいは人と物とのいわゆる人間工学というんですか、そういう見方をやっていきたい。このためにはかなり時間がかかるので、その間待っておられないというおしかりに対しては、はなはだ申しわけないんですが、昨年度における勧告もそういった観点を多分に織り込んだものでございます。
  27. 阿部竹松

    阿部竹松君 長い時間をかければおしかりをこうむるということなんですがね、鉱山保安局長いかがですか。
  28. 西家正起

    政府委員西家正起君) 鉱山の中で特異な石炭鉱山だけをとりまして災害の推移を見た場合に、絶対数、罹災者全体の数は相当減っておりますけれども、分母に労働者のファクターをとりました稼働延べ百万人当たり災害率という点から見た場合には、まさに先生指摘のとおり横ばいよりはむしろ最近は強含みの状態でございます。ただ、罹災者全体の率から見ますとそうでございますが、死亡率につきまして見た場合には絶対数も減っておりますほかに、稼働延べ百万人当たりにつきましては、昨年度におきまして非常に減少してまいったわけでございます。今年度もさらにそれに引き続きこの率が下がる傾向でございます。ただ、たまたま今回また死亡者を発生いたしましたが、現在までのところ、やはり昨年よりは減ることが予想されておるような次第でございます。しかしながら、死亡者ばかりでなくて、罹災者全体として先生指摘のとおり全体の災害率を減らすということが非常に重要であるというふうに考えておりますので、ことし始めました新しい五カ年計画につきましては、この点を非常に重視をいたしまして、罹災そのものを減らすということでいろいろな基本計画をつくりまして、実行に移しているような次第でございます。先ほど労働省のほうからいろいろお話がございますような点も十分織り入れまして、単に保安技術ばかりでなく、人の面につきましても十分施策を講じまして、全体の災害率を減少させよう、かように考えておる次第でございます。
  29. 阿部竹松

    阿部竹松君 また保安局長の同じような答弁を承りますが、さいぜんあなたもお聞きのとおり、労働省はそのつどあなたのほうに勧告しておる、こういうお話なんです。何回勧告を受けてどういう処置を講じたんですか。
  30. 西家正起

    政府委員西家正起君) 過去におきまして災害のございましたごとに労働大臣から前後四回、それから基準局長のほうからやはり三回勧告を受けております。ごく最近受けましたのは、昨年の三池の災害のございました直後に安全衛生局長から勧告を受けておるわけでございますが、その中で特に強調されております炭鉱幹部——幹部がしょっちゅう入坑いたしまして、坑内状況を十分把握して、身をもって坑内状況を把握して対策を講ずる、こういう一項目があるのでございますが、これにつきましては、その後たびたびこれを全鉱山に周知をいたしまして、今度の新五カ年計画につきましてもこれを一本の柱としまして、幹部級を督励をいたしまして、身をもって災害防止に当たらせるように指導もいたしておる次第でございます。そのほか特殊な項目一酸化炭素に対する処置規則改正その他につきましては、そのつどこれは実行いたしておりまして、現在までこの状況につきましても十分監視をしておるような次第でございます。
  31. 阿部竹松

    阿部竹松君 ごく最近ということで昨年の三池の例をあげられましたが、そうすると、さいぜん労働省がそのつどということは、これはもう全然違うお話なんですね、それはもうそれでいいですよ。しかし労働省見解が違ってもしかたがない、労働省がいかに熱意がないかということがわかるわけです。  そこで関連してお尋ねいたしますが、いまより四年前に、組夫はこうこうこういう仕事以外にやってはいかぬという話し合いができておりますね。それ以外の仕事組夫がやっておるんではないですか。これは労働省でもけっこうですし、石炭局長あるいは鉱山保安局長でもけっこうですから、組夫というものがどれとどれとどういう仕事をやっていいのかということをひとつどちらからでもけっこうですから、承りたいと思うわけです。
  32. 西家正起

    政府委員西家正起君) 請負組夫の炭坑内におけるやっていい仕事、やって悪い仕事ということでございますが、一応炭坑の中における掘進作業採炭作業運搬作業、仕繰り作業、この四つの種類は、請負組夫を使用いたします場合に合理化法によりまして通商産業局長承認を得る、こういうふうになっておるわけでございます。これの中で、これを受けまして、今度は鉱山保安法のほうでは承認を得た労働者につきまして、鉱山労働者に対する教育ということにつきまして十分の措置を講じたものにつきまして、鉱山保安法でこれを坑内で使ってよろしい、かような措置をいたしておる次第でございます。
  33. 阿部竹松

    阿部竹松君 そうすると、ただいまの局長答弁以外の仕事を、事故が起きた美唄炭鉱なり、三菱大夕張がやっておったということに相なりますね。
  34. 西家正起

    政府委員西家正起君) このほかに職業安定法の問題が労働省の所管であるかと思いますが、その点を除きました場合には先生の御指摘のとおりでございます。
  35. 阿部竹松

    阿部竹松君 労働省にお尋ねすると、それは鉱山保安局でありますと、保安局長にお尋ねすれば、それは労働省の管轄だということになるならば、われわれはどなたを対象にしてお尋ねすればいいわけですか、椎名通産大臣にお尋ねすればいいわけですね、これは。次期総裁候補だから、これは一回で答弁できるかもしれませんが、そういう無責任なことはやっぱり困りますよ。やっぱりお互い連絡とって——ぼくは別に追及しようというのじゃない、将来のためにお尋ねし、それから御意見を申し上げようとしておるのですから。
  36. 西家正起

    政府委員西家正起君) 職安法で組夫と認められた者につきましては、先ほど申し上げました業種の制限以外につきましては、組夫の使用につきまして制限がないということでございます。
  37. 阿部竹松

    阿部竹松君 これについて労働省御意見ないですか。
  38. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 組夫の使用につきましては、措置法でもって通産省承認が要るわけでございますが、正式の承認を受けたものについては、私ども職安法で禁止しておりまする労務供給事業ではないというふうに判断をいたしております。ただ、現実の作業の実態が、職安法の禁止する労供の実態を備えておるかどうかという問題が第二段としてございまするけれども、これについても私ども通産省側の承認した職場については、まず原則的に職安法に違反しないという判断を持って対処をいたしております。
  39. 阿部竹松

    阿部竹松君 有馬さん、これは基準局長仕事なんでしょう。ですから、職安局長にお尋ねしてもこれは無理かもしれませんが、労働省通産省であろうが農林省であろうが、一切がっさい労働者サービスセンターとして出発しているわけですから、通産省責任であるという鉱山保安局の問題はありまするけれども、あなたのほうで一切あげて責任があるわけですが、これはあなたの責任じゃないでしょう、基準局長、労政局長のお仕事なんでしょう。それならば、いまの保安局長お話労働省としては納得できるんですか。
  40. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 職安法上の労供事業であるかどうかという点は私のほうの所管でございまして、職安法と措置法上の承認の問題とは相関連しておるわけでございます。私どもとしましては、この措置法の二十一条に基づき承認された組夫使用の場合には職安法に違反しない、抵触しない、こういう考え方で対処をいたしてまります。ただ、実態がどうなっているかという、第二段の問題はございまするけれども、一応たてまえは、法律上の関係はそういうふうに理解していままで運用いたしております。
  41. 阿部竹松

    阿部竹松君 組夫といえども、正式な従業員といえどもこれは同じなんですが、保安局長組夫と一般のその会社直接の鉱員、これが保安問題についての指導あるいは指示、そういう面について違うのじゃないですか、そんなことございませんか。
  42. 西家正起

    政府委員西家正起君) 実際問題といたしまして、組の方々炭鉱に働いておられる限り鉱山保安法の適用を受けまして、われわれが監督をいたしておるわけでございますが、これにつきましては、直轄、請負の差別を一切しないということで監督をいたしておる次第でございます。
  43. 阿部竹松

    阿部竹松君 そういう答弁になろうかと思いますが、どうして組夫ばかり事故が多いのですか。私がさいぜん申し上げたとおり、北海道に五月の初めに行きましたときも五十数名の犠牲者が出ているわけです。組夫が多いのですね。これは一つの鉱山が全部組夫の場合もあろうかと思います、中小炭鉱の場合は。しかし、あなたのおっしゃる保安教育指導、そういう面について差があるのじゃないですか。あなたは全く同じであるということであり、あなたのおっしゃることが望ましい、私もそれに賛成である。しかし現実はあなたの御答弁と全く相反するのではなかろうか、こう思うのですがね。
  44. 西家正起

    政府委員西家正起君) 先生指摘のとおり、確かに一般的には請負組夫災害が多いわけでございますが、今年に入りましてそういう点はだいぶ緩和をされてまいりました。今年に入りまして三月末までに七十名の死亡者を出しています中で、請負組夫死亡者は九名ということで、だいぶ数字的には改善をされてまいっております。しかしながら実際に行ないます作業自身を、非常に危い作業あるいは危くない作業、こういうことに分けて考えました場合に、請負組夫のほうは必ずしも危い作業場におりませんので、この数字だけから判断をいたしますのは少し危険だと思いますが、大体傾向といたしましては、最近はだいぶ改良されてまいっております。しかしながら確かに先生指摘のとおり、それは私は教育その他につきましてはむしろ請負組夫のほうに重点を置いておると思いますけれども、直轄の労働者につきましては、長年の間炭鉱で実際に危険なところで仕事をされておるという点で、もともと炭鉱になじんでおる状況に若干の差があるのじゃないか、こういうところがまだ不十分な結果を出しておるのじゃなかろうか、かように考えておる次第でございます。
  45. 阿部竹松

    阿部竹松君 ここは大学の教室じゃないですからね、考えておるじゃ困るのです。たとえばことしになって大災害が起きた三菱美唄にいたしましても、九割まで組夫です、犠牲になったのは。あるいは大夕張にいたしましても九割まで組夫です。あたのおっしゃるように平等に教育しておれば、これはぼくの言うのは結果論ですから当たるかどうかわかりませんけれども、現実の姿がそうなんですから、そうするとこれは保安教育をしなかった、保安に対する無知であった、あるいはなれなかったということを懸念するわけなんですね。あなたのおっしゃるとおりすべてが平等であって、すべてが同じように教育され、すべてが同じように指導される、それであれば心配ないわけですが、何で組夫だけが九割近く大災害の犠牲にならなきゃならぬかということを懸念すると同時に、あわせてそういう組夫を使うことが正しいのかどうかということを考えるわけですが、見解はいかがですか。
  46. 西家正起

    政府委員西家正起君) 先生指摘のとおり組夫の教育につきましては、今後ともさらに監督を厳にいたしまして十分にやっていきたい、かように考えるわけでございます。十分教育を施した者であれば、これは組夫といえどもしかるべき作業に働いて差しつかえない、かように考えまして、今後ともなお一そうの努力をいたしたい、このように考えております。
  47. 阿部竹松

    阿部竹松君 次にお尋ねいたしますが、労働省からおいでになっておりますので、労働省局長さんに二、三点お尋ねして本法案の審議に入りたいと思うわけですが、職安局長、これは炭鉱ばかりでなくて、労務者不足とか労務倒産というのがございますね、これは東京とか横浜ばかりでなくて、大阪あるいは名古屋等においても同じ現象なんですが、中小企業とか、あるいはその他の企業にやっぱり労務者が集まらぬのですね。しかし、レジャーブームかどうかわかりませんけれども、観光ホテルとか、そういうふうな仕事にはどんどん若き青年男子女子が集まるわけです。これは一般日本全国の風潮だと思うのですが、労働省の職安行政に携わっている局長はどうお考えになりますか。ほんとうの生産業務には応募しない、企業倒産、労務倒産と言われている。ところがレジャーブームで観光ホテルとか、その他のそういう種類の職場には膨大に人が集まるわけですね。日本の国というのは一体そういうことでいいのか、労働省というのはそういう仕事をやっていなさるのかということを私は疑問を持つのですが、いかがですか。
  48. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 労働力が不足になりまして、御指摘のような傾向が非常に露骨に出ておりますので、私どもとしましては今後の不足時代に対処いたしまして、できるだけ産業経済の発展という観点も考慮に入れまして、そういった三次部門、特にレジャー、あるいは奢侈部門という方面に労働力が必要以上に流れないように、過剰就業にならないようにという観点でいろいろ考えておりまするが、何せ労務の統制ということは考えられませんので、勢い二次産業、わけても重要な生産を担当しておる分野に必要な労働力がごく自然に流れていくようにというふうな誘導政策をできるだけとっていきたいということで、この一月でしたか、「労働力の不足の現状とその対策」という労働大臣の基本的な見解を発表いたしました。これを窓口においても、また私どもが産業界その他世間一般に呼びかける場合においても、この考え方を基本にして、できるだけ雇用政策を展開していく、こういうふうな方法をとっておるのでございます。何せ雇用の問題は非常にきめ手を欠く問題でございますので、気長に世論形成をしながら、啓発指導しながら誘導していくという手段しかございません。効果が非常に薄いと思いますけれども、その努力はわれわれとしては着々やっておるつもりでございます。今後ともそういった奢侈産業等に過剰にそういう労働力が流れていく、あるいは過剰就業の状態ができないようにできるだけ指導を加えてまいりたい、かように思います。
  49. 阿部竹松

    阿部竹松君 直接責任大臣と違ってないわけですから、有馬局長にお尋ねするのは、ちょっと過ぎることばかもしれませんけれども労働大臣見解発表くらいでは問題が解決しないと思うのです。太平洋戦争に日本が敗れて、まあ満州から、あるいは台湾から、朝鮮から、樺太から引き揚げてきて、北海道、本州、九州、四国の四つの島に一億の人口が生活をしなければならぬ、これはたいへんなことだというように考えたのですが、ところが、いま労務不足、こういわれているわけです。これは不思議なんですね。労務不足で生産部門に人がないというのです。こういうことについて、これは局長にお尋ねするのでなくて、総理大臣のほんとうに日本の国をどうするかということについての質問になるかもしれませんけれども、こんな小さな島に一億もおって、みなが生きていかなければならない、どうなるんだということを心配しました。有馬局長もそういうことをお考えになったかどうかわかりませんけれども、ところが、今日人がない。人口密度はまあオランダが一番ですから日本は世界二位ですが、こういうことについて労働省は不思議とも何とも思わぬのですか。
  50. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 不思議といいますか、非常に労働力不足といいますか、人手不足の状態になりまして、今後これにどう対処していくかということにつきましては、非常に真剣に検討を加えまして、先ほど申し上げましたような基本的な見解をこの正月に大臣見解として発表したわけでございます。この考え方の基本は、労働力不足だというけれども、ほんとうに不足なのだろうか、どうなのだろうか、その分析から始めまして、これをヨーロッパの先進諸国と比較検討してみた結果、ほんとうの意味で人手が足りないという状態ではない。まだまだむだがあり、節約の余地があるという結論に達しまして、一方では労働力の節約を強力に呼びかけながら、他方で先ほど先生が御指摘になったような過剰就業なり、あるいは過剰サービスなりというような問題もございますので、できるだけ必要な生産分野に労働力が確保されるような誘導政策を強力に展開していこう、こういう基本的な見解を発表いたしたわけでございます。ただ、これを実現する手段としては限られておりますので、なかなかこれを一朝一夕に実現することのむずかしいことは百も承知で、こういった考え方を世間に公表いたしまして、この考え方に基づいてあらゆる施策をこれに集中し、われわれの窓口においても、この考え方をできるだけあらゆる場面に織り込んで窓口の指導をする。そのことによって、非常に手ぬるいという御非難はございますけれども、その目標に向かって着々誘導していこう。こういう体制を確立しつつございますので、全然労働省としてはこの労働力不足時代に対処して何もやっていないのだというおしかりでございますが、私どもは私どもなりに、いま申しましたような考え方で指導しておりますので、これはぜひ御理解をいただいて御協力をいただきたいと思います。
  51. 阿部竹松

    阿部竹松君 私は労働力不足について申し上げているのでなくて、生産部門に労働力がない、非生産部門にはあり余るほど人が集まっているこの矛盾、アンバランス、これをどうするのかということなんです。これはやがてこういう姿でいくのであれば、これはやむを得ないと言って割り切らざるを得ないけれども、こういう情勢がいつまで続くかわからない。しかし、いまのうちにこれにやはり行政指導の面でしかるべき処方箋を書いて処置しなければ、これはたいへんな問題だと、こういうことを考え局長にお尋ねしておるわけです。労働力が足りないというだけであれば何ですが、一方には大ぜい非生産部門に膨大に集まっておるわけですから、こういう点について非常に矛盾しているじゃないか、これを労働省の力で何とかならぬものかというお尋ねなんです。
  52. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 御指摘のとおりだと思います。ただ、二次部門と三次部門のアンバランスをどう判断するか、将来どういうふうに修正していくかということは、これは非常にむずかしい問題でございまして、私ども当面、三次部門に労働力が集中し過ぎる傾向が非常にはっきり出てきておりまするので、できるだけ二次部門に必要な労働力を確保する誘導政策を展開をしていく、たとえば学卒を見ましても、いままでのように中卒であるならば四人に三人は現場の労働者になったわけでございますが、これが供給構造といいますか、進学率が高まって、高卒が主体になりますと、高校卒の従来の傾向は五人に一人か四人に一人しかブルーカラーにならない。これをやはり相当の比率でもってブルーカラーに進出できるような誘導政策を展開しないと、この一面から見ましても、重要な生産部門を担当するブルーカラーの補給がつかない、こういうことは傾向としてはっきりいたしておりますので、私ども先ほど申しましたような基本的な見解に立って具体的に雇用政策を展開しておる、こういう状態を申し上げておるわけでございます。
  53. 阿部竹松

    阿部竹松君 審議しなければならぬ法案のお尋ねに入る前にあまり時間を使ってあれですから、最後にお尋ねいたしますが、職安局長御存じかどうかわかりませんが、一週間ほど前に、正確に言うと、四月の二十五日から三十日にかけて、九州で共同石炭とか大辻炭鉱、こういうところが閉山になったのですね。そうすると、あなたのほうでいろいろと御苦労願ってお世話を願わなければならぬ。一方さいぜん論争したように、人が足らぬということで従業員の募集をしなければならぬ、やめていく分には国で金を出していろいろ手当てをしなければならぬ、一方はいま申し上げましたとおり労務不足ですから募集に金がかかる、きわめて矛盾だと思うのですね。そこで私ども社会党から、炭鉱国有案というものを出しておりますので、その点についてはあとで椎名さんにお尋ねしようと思いますが、そういう矛盾を労働省がどう考えるのかということが私の最後の質問であり、それからもう一つ、これは労政局長おいでになっておりませんが、どなたか労政局関係の方がおいでになっておればお尋ねしたいのですが、炭鉱の賃金について、炭労にストライキをやめなさい、そのかわり中労委に預けて責任をもって解決しますと、こういうことで炭労のストライキをストップさせた。こういうことについて、私反対しませんけれども、その後一体どうなったのか、労働省はどうしてくれるのかということを最後にお尋ねいたします。
  54. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 最近の閉山離職者の措置と関連いたしまして、ビルド炭鉱に対する労務の確保と矛盾するのじゃないかという御指摘でございますが、まあ私も最近の石炭産業の労働力事情を考えますと、その点は御指摘のように矛盾を痛感いたしております。現在の離職者措置法が御承知のように他産業に離職者を転換させるということを基調にしてできておりまするので、基本的にはその考え方を離職者対策としましては踏襲しているわけでございます。しかしながらビルド山の労働力の確保もあわせてやらなければならぬという事情が三十九年末ごろから出てまいりました。そのころから私どもとしましては、石炭の離職者を再度石炭山に再就職させるという方向を徐々にとり出しました。一昨年からは御承知のように石炭山に再就職する場合にも移住資金を出すという制度を新たに設けまして、必要な石炭労働力を離職者の中から確保していくという政策を推進して今日にきております。実績から見ましても、石炭の離職者のうちの三分の一程度は再度石炭山へ帰っておる、まあこういう状態でございます。  今後の問題といたしましては、やはり石炭産業の再建方策というものをきっちりときめて、その中でどうすれば必要な労働力が確保できるかという観点から今後根本的に検討し直さなければならないのじゃないかと思います。その際に、やはり労働力の面から見るならば、石炭産業全体として考えなければこの矛盾は解決できないのじゃないかというふうに考えまして、まあ今後の石炭政策のあり方とも関連いたしまして、私どもとしましては労務の確保対策を今後とも重視してまいりたい。と同時に、閉山合理化から生ずる離職者も他産業に円滑に再就職できるような方法も講じなければならぬ。いわば他産業への転換と石炭産業内における労務の確保とまあ両面を負って石炭対策といいますか、労務対策を展開しなければならない事態になるのじゃないか、かように考えております。  賃金は私の所管じゃございませんが、御承知のように、中労委に現在かかっておりますので、これは公正な第三者機関としての中労委が賃金の問題についてあっせんに入り、中労委の手によって解決されることを期待いたしておる段階でございます。
  55. 阿部竹松

    阿部竹松君 職安局長の分野でないということは百も承知であります。しかし労働大臣衆議院に行かれたので、やはり責任ある答弁をしていただかなければならぬわけであります。労働大臣が、おまえストライキをやめなさい、そのかわり責任をもって解決しようと、こういうことで中に入ったのですから、行司に。そうすると、やはり責任ある答弁をいただかないとこれはいかぬわけです。どなたかおらぬのですか。おらなければ、ほかの人が質問しておるうちに出席願って、あとで御説明願います。
  56. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 阿部先生の言われることはよくわかりますが、私も二回ばかり石炭の賃金のあっせんを中労委の立場でやりましたので、まあ大体いまお答え申し上げたことでおわかりいただけるのじゃないかと思います。
  57. 阿部竹松

    阿部竹松君 全然わからない。それは大臣が中に入ったわけですから、中労委に問題を審議願う場合に、労働者側が訴える場合と、あるいは経営者側が訴える場合と、反対する場合と、三様にいろいろあるわけです。今回は労働者を呼んで大臣が中に入っておるわけですから、それは確かに裁定は中労委がなさるのでしょうけれども労働省は、ただまかせたと言われただけでは済まぬと思うのですがね。  それでは続きまして法案の内容についてお尋ねいたしますが、直接関係ございませんけれども、前回も論議しましたが、まあ抜本策についての論議ですね、私ども日本社会党から国有化法案というのと公社法案と二つを出しておるわけです。これは直接行政府に関係ないわけですから通産大臣にお尋ねするのがちょっと過ぎることかもしれませんけれども、しかし、お互いに石炭産業をどうするかということで心配しておるわけですから、その衝を一手に握っておられる通産省の御見解をお聞きしたいと思うわけです。ということは、立法府のことですから、立法府でかってにきめなさいという発言になるかもしれませんし、あるいは私どもの法案が出てから論議するのが妥当だと私も考えますが、自由民主党の諸君はその提案すら聞かないというような頑迷固陋なことを言っておりまするから、この際直接通産大臣にお尋ねしたいと思うわけであります。
  58. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 現実の案を拝見しないと何とも申し上げかねる点がありますが、しかし、何でも財政にみなしわ寄せするというような安易な考え方であっては、これはもちろんなりませんですが、とかく、そうなりがちである、と言ってもまあ貸借対照表で運営されておるものではございませんから、それに依存するということは、結局そういう方面をないがしろにするということになりますし、それからまた労務管理の面でも非常にやりにくい点があるのではないか。やはり石炭は石炭特有の一つの管理が必要だろうと思いますし、そういう点でいうと、何もかも国家機関になると非常に大味になって、大ざっぱになる。そういうために能率がぐっと落ちるというようなことをよく言われているのです。そういう意味でよほどこれは慎重に考究すべき点が多々あるように考えております。
  59. 阿部竹松

    阿部竹松君 私耳が悪いせいか、大臣説明がよう聞き取れぬのですが、どういうわけでそういうことになりますかね。あなたのお説でいくと、国鉄にしろ、あるいは電話にしろ、郵便にしろ、みんなばらばらにしたほうがいいということ、これは極端な解釈ですが、そうなりませんか。
  60. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 早い話が、電信電話は一本の電線、あるいは一つの電波といったようなものにつながっておりまして、そういう方面の統一性がおのずからある。国鉄にいたしましてもそういう点があると思います。しかし、炭鉱となると、それは千差万態でありまして、非常に国家機関として大まかに運営するという点では非常に適当でないというふうに考えられます。
  61. 阿部竹松

    阿部竹松君 大臣は、現状の姿で炭鉱がこのまま生きれるということには判断しておられぬのでしょうね。
  62. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) もうこのままではとてもいかぬと、こういうことでお互いに知恵を出し合って抜本的な構想を打ち立てようと、こういうところへいまきているわけでございます。
  63. 阿部竹松

    阿部竹松君 そこで、この前大臣は、衆議院の本会議のためにおいでになりませんでしたが、石炭局長に私こういうことを申し上げた。これはなかなか石炭産業はたいへんで、これは石炭局長に申し上げても、局長答弁は困難でしょうけれども、やはりガンはガンだと言うたほうがいいですよという話から始まって、言いにくいことをだれが言うかということが問題であると。しかし、切るところは切って、もう悪性盲腸をペニシリン注射で痛みをとめておくなどということはだめですよという話を申し上げたことがある。それとあわせて大臣ね、植村甲午郎会長のところで、審議会で結論を出して、それを今度大臣がいかにせんかということを決定になって、閣議決定して国会にかかるでしょう。しかし、それではちょっと手間ひまがかかりますよと。したがって、それは通産省とそれから石炭経営者と炭労と集まって結論出したらどうですかと。千億の肩がわりをしてもらって、六百億の特別会計をつくってもらって、石炭経営者は横着じゃないかと、ここらあたりで何とか三者であまり人のお世話にならぬで解決する方法はないもんですかということを、二回も私申し上げてたいへん恐縮なんですが、そのとき石炭局長に申し上げたんです。ですから、大臣ね、この際あなたの力でというよりも、現内閣の力で、だめなのは早くだめだというたほうが労働者も助かる。あすは何とかなるだろうという甘い気持ちでもって宣伝する、われわれ野党も責任はないといっても、立法府に参画しておれば責任あるわけですから、ただ自民党が悪い、現政府が悪いというだけでは済まされぬわけです。そういうことをひとつやってくれませんかということを石炭局長に申し上げておる。この点について石炭局長からお聞きになっておるかどうかわかりませんけれども、このいま論議しておる法案などは、この二つの事業団が一緒になるというのですから賛成ですよ。しかし、これを一緒にしていく法律を異議なしできめたところで、石炭産業は助からぬ、根本問題があるわけですから。その点を大臣にはっきりと承っておきたいというのが私のお尋ねする一点です。
  64. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) もうこの期に及んでいわゆる事柄をごまかして粉飾していこうという考え方はもう許されないと私も思います。でありますから、いま諮問をしておりますが、その諮問に対する答申があり次第、できるだけ早く結論を出して、そして直ちに実行に移すというだけの勇気を持たなきゃいかぬと、こう考えております。
  65. 阿部竹松

    阿部竹松君 予定の時間も過ぎましたので、たいへん恐縮ですが、最後にお尋ねいたしますが、これは石炭局長からお願いします。  四十三年度の出炭の見通し、それからその需要と電力用の関係についてお尋ねするのと、それからいま労働省と論争しましたが、労務者の問題ですね、確保について。その次に、事業団が合併するわけでしょう、衆議院で修正になりまして、理事長、副理事長ということになりましたが、そういう部分についてはけっこうですが、その職員の配置についてのお尋ねと、それから最後に、三年間ぐらいのデータでけっこうでございますが、休山、閉山、廃山によって開発銀行から相当融資を受けながら、完全にお世話をかけながら赤字を出したという山もあろかと思います。以上四点を、委員長恐縮ですが、最後にお尋ねして私の質問を終わります。
  66. 中川理一郎

    政府委員中川理一郎君) 最初に、四十三年度の出炭見通しでございますが、四十三年度の石炭鉱業合理化実施計画では、生産数量を四千七百万と定めます。これは閉山処理の見通し、それから石炭鉱の近代化計画、設備投資の動向、それから労働力確保の見通し等から予測されます生産の落ちつきを総合的に判断いたしたものでございますが、具体的に申しますと、四十三年度の能率を四六・八トンと見ております。閉山規模は二百五十三万トンと見ております。常用労務者は八万一千人と考えております。かく判断いたしましたもとになっておりますのは、四十二年度の実績でございますが、四十二年度は先生御承知のように上半期にたいへん出炭不振でございまして、第四四半期りに入りましてかなり能率が上がっている、出炭が伸びておるという状況でございます。そこで全体としてどう考えるかということが一つございまするが、大ざっぱに申しまして、第四四半期の生産数量の千二百二十万トンというのを季節修正をして年産に直しますと、四千八百万トンぐらいのものを第四四半期は出しておるということになります。そこで先ほど申しました二百五十三万トンの閉山規模を考えておりまして、これを引きますと、もっと小さな数字になるのでございますが、先ほどの閉山規模に相当する出炭減をカバーして、なおかつ先ほど申しました四十六・八トンの能率という点での生産状況をビルド山等に見込みまして、全体として四十三年度は大体四千七百万トンくらいに落ちつくのではなかろうか、かように考えておるわけでございます。  次は、生産に見合う需要についての御質問であろうかと思います。四十二年度は前々から申しておりますように、電力側におきまして異常渇水がございまして、四十二年度の石炭引き取りはかなり大きかったわけでありますが、四十三年度はさようなことを想定するわけにもいかぬ。もう一つは、一般炭の一般需要でございますが、スエズの関係で四十二年度はわれわれが予想したよりも一般産業の一般炭需要というものは減らなかった、こういう状況でございました。これを四十三年度期待することは必ずしも当を得たものではない。こう考えまして、大体需要数字といたしましては、四十三年度におきましては四千七百六十万トンぐらいの需要というふうに考えておるわけでございます。先般来、九電力の引き取りにつきましても、大体話がまとまりまして、二千百五十万トンということでいま考えておるわけでございます。鉄鋼需要のほうは、原料炭が出ますれば出るだけ引き取ってもらえるという話し合いになっておりまして、あとの動向は一般産業用一般炭の需要というものがどうなるかということであろうと思います。若干かた目に見まして、いまの生産と需要のほうは見合うものと考えております。  それから第三番目の御質問は労務者確保対策の問題でございます。御承知のように、これがだんだん減ってまいっておりまして、最近の減少動向は著しゅうございまして、四十二年度末におきまして八万六千人ということで、前年度に対して一万四千人の減少となっております。このような労務者の急速な減少というものが石炭の生産に支障を生ずる原因の大きなものとなっておるわけでございます。先ほど来御質疑がございましたように、生産部門における労務者不足問題というものは、他の部門におきましても深刻な問題となっておる現況でございます。むずかしい問題でございますが、石炭の場合特に問題がございます。特別年金制度の実施と相まちまして、私どものほうとしては経営者層あるいは地方公共団体等にも呼びかけをいたしまして、老朽住宅の改善といったよようなことを中心にした労働者の生活環境の改善、さらには技能労働者の養成を強化するというような事柄等を実施することによって、雇用の安定確保をはかりたいと考えております。しかし、これらは具体的なといいますか、いわば対症的な療法でございまして、基本的には先ほど阿部先生おっしゃいましたように、石炭鉱業の長期的な安定ということなくして、ほんとうの意味での労働者確保という問題は出てこない、この安定策の中で、石炭鉱業に働く人の立場から見て、魅力のある職場にすることが基本的には一番大事なことでございます。先ほど大臣からお答えいたしましたように、審議会の答申を待って、私どもも今度は相当な決意を持ってこれに対処いたしたいと思っておるわけでございます。  なお、いままでにも閉山炭鉱等によりまして、開銀融資のうちで返済不能と申しますか、要するに完全なる貸し倒れとして銀行側で消却せざるを得なくなったものがどれくらいあるかという御質問でございましたが、開発銀行からいただきました数字によりますと、開銀の石炭鉱業に対する貸し付け額のうちで、昭和三十三年度から昭和四十二年度までの十年間におきまして、回収不能ということで大蔵大臣承認を受けて消却いたしました額が九億七千万円であると聞いております。これはいま申しましたような意味におきまして、回収不能ということで、最終的に不良資産として消却した額でございます。したがって、大部分の閉山の炭鉱の問題につきましては、これで片づいておるわけでございますけれども、閉山会社のうちでまだ清算が終わっていないというようなものが若干ございます。例を申しますと、たとえば少し前の時点では大正鉱業、新しいところでは大日本炭礦、この二つにつきましては、貸し付け金の回収がどこまでできるか、まだ全体の清算が終わっていない。担保、抵当権による回収がどれだけあるかということをやっておりませんので、このほかに回収不能になるものが全然ないということではございませんけれども、はっきり見きわめをつけて、ルールに従って、大蔵大臣承認を得たものの十年間の総額が九億七千万円、そのように御承知願いたいと思います。なお、これの分母に当たります開銀の石炭鉱業に対する現在の貸し付け金残高、これは四十二年度末の数字でございますが、八百六十四億円でございます。  それからもう一つ油という御質問があったかと思いますが、これは全体の需給の問題でお答え申したつもりでございますが、四十三年度の国内における重油の消費量の見込みというものを鉱山局から聞きましたところでは、七千二百七十七万六千キロリットルという数字をもらっております。非常に大ざっぱな石炭換算では一億トン強のものだろうと思います。  それから鉱害復旧事業団の職員の身分についての御質問が最後にあったかと思います。御承知のように、今度の総合によりまして、旧石炭鉱害復旧事業団というものの職員の身分は新しい石炭鉱害事業団におきましてこれを承継いたすことと相なっております。これは旧事業団の一切の権利義務を承継することの一環として、職員についての雇用契約に基づく職員の身分も承継する、こういうことでございます。で、一つの基金と四つの鉱害復旧事業団を合わせるわけでございます。ことに、四つの鉱害復旧事業団はもともと政府機関という性格を持っておりませんので、政府機関並みの大体統一基準みたいなもので指導はいたしておりますけれども、若干それぞれの給与基準、退職手当の支給基準というものには格差がございます。こういうものがございますので、これにつきましては、統合後の問題になろうかと思いますが、私どもとしましては、従業員の立場が不利にならないように調整をいたしたい、是正をいたしたい。まあ結論から申しますと、低過ぎるほうが多くなるという修正になろうかと思いますが、一挙にやるということもまた私ここでお約束するわけにはいきませんが、一定の計画期間をもちまして、徐々に調整をはかってまいりたい、かように考えております。結論として、いまより悪くなるようなことは可能な限りやらないつもりでおります。
  67. 阿部竹松

    阿部竹松君 北海道地下資源のようにはならない……。
  68. 中川理一郎

    政府委員中川理一郎君) はい。
  69. 光村甚助

    委員長光村甚助君) 他に御発言もなければ、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  70. 光村甚助

    委員長光村甚助君) 御異議ないと認めます。  それではこれより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御発言もないようでございますが、討論はないものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  71. 光村甚助

    委員長光村甚助君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。石炭鉱害賠償担保等臨時措置法の一部を改正する法律案を問題に供します。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  72. 光村甚助

    委員長光村甚助君) 全会一致と認めます。よって本案は、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  吉武恵市君から発言を求められておりますので、これを許します。吉武恵市君。
  73. 吉武恵市

    ○吉武恵市君 私はただいま全会一致をもって可決されました原案に対し、この際、ここに各派共同提案にかかわる附帯決議案を提出いたします。まず、案文を朗読いたします。    石炭鉱害賠償担保等臨時措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案  石炭鉱害の問題は膨大なる残存鉱害量に加えて、終閉山に伴う無資力鉱害の激増を見、益々深刻化している現状にかんがみ、政府は本法施行に当り、鉱害量を適確に把握して、早急に長期計画を策定し、鉱害復旧の計画的実施を強化するとともに併せて産炭地域の振興を積極的に推進し、以て国土の保全と民生の安定に万全を期すべきである。   右決議する。  以上であります。何とぞ委員各位に御賛同をお願いいたします。
  74. 光村甚助

    委員長光村甚助君) ただいまの吉武君提出の附帯決議案を問題といたします。  吉武君提出の附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  75. 光村甚助

    委員長光村甚助君) 全会一致と認めます。よって、吉武君提出の附帯決議案は、全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、椎名通商産業大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。椎名通商産業大臣
  76. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ただいま御決議のありました附帯決議につきましては、その内容を尊重いたしまして、御趣旨を体して善処いたしたいと思います。
  77. 光村甚助

    委員長光村甚助君) なお、議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  78. 光村甚助

    委員長光村甚助君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時三分散会