○大矢正君 総理は、いま
近藤委員から、
経済協力を
開発途上国に与えた以降、その国の軽工業を
中心とした技術
水準なり生産力というものが高まって、それがおくれている日本の
中小企業を
中心とした産業、企業の
分野で、将来国際競争をする上において大きな問題になるという話はいま指摘されたとおりです。これはいまいろいろ業種別に例をとって述べられておりますが、全くそのとおりであります。ですから、競争していかなければならぬことは事実なんです。それが
援助を受けている国であろうが
援助を与えている国であろうが、競争をしていかなければならぬことは事実です。したがって、
政府がそれに対処する態勢なりそれから対策なりというものが、
施策を通して行なわれなければならぬこともこれは当然のことなんです。そこで、その話と若干異なるけれ
ども、
考え方の上で、私、総理の言うことがどうも気になってしようがないことがある。それは、先ほど来
経済の成長率の高い
わが国においては、アメリカなりイギリスなりその他の国々と伍して、
開発途上国に対して
援助を与えなければならぬ。それはいいのです、
考え方で。私は
援助を与える必要性がないとか、やるべきでないということを申し上げておるのではない。
援助は必要ではあるが、しかし国内においても非常におくれている
分野の企業なり産業があることは事実だし、そういうものに
施策の重点をより積極的にやらないで、
援助の方向に走るということについての、いままでやってこられたことをわれわれは見ていてよくわかるわけだから、なるほど総理ここでそういうきれいなことをおっしゃるが、現実にはさっぱり進んでいない。
中小企業対策なんといったら、四十三年度
予算で三百八十億しか金を出していないのだから、それでいて、国際的に、十分
開発途上国が、将来
援助を通して
経済的な力が強まってきたときに、競争できるという根拠にはならないのじゃないかというものが一つと、それから、なるほど
経済成長率は高い、諸外国に比較をして。だからこそ、国民総生産においては世界第三位というところまでどんどん上がってきたことも事実です。これも否定するものじゃない。だがしかし、国民所得面からいえば二十一番目というやつが何年たってもこれは動かないでしょう。国民総生産が上がる、そうして世界の
水準が高まるということになったら、当然のことながら国民所得の
分野においても一人当たりにおいてこれは上がっていかなければならぬ。ところが、何年たったって上がっていかないじゃないですか。そこで
政府側のほうから、なるほど国民総生産に対する一%という議論はされているし、事実その方向へ努力しなければならぬという問題はあるが、しかし一人当りの国民所得、この所得の中で一体どの程度の
援助を与えているのかという数字をさっき
答弁をしてもらった。時間かかったけれ
ども、
答弁に出てきたのによると、これがずっと計算すると、たとえば日本とアメリカと比較した場合に、日本の一人当たりの国民所得は七百九十ドルである。アメリカは三千百ドルである。それに対しての
援助額というものは、日本が六ドルでアメリカが二十六ドルであると、こう言う。そうしますと、結局一人当たりの国民所得においても、それから
援助額においても、同等な
負担を日本がしていることになる。アメリカと同じだけの
援助を与えているという数字が出ている。事実数字がそこに出ているからしょうがない。アメリカと比較してさえこうなんでありますから、他のヨーロッパ諸国と比較した場合に、日本は一人当たりの力の
負担の内容からいえば決して劣っているものじゃない、こういう問題が一つ出てくる。それからもう一つは、アメリカの国民一人一人の富であるとか、国の富であるとか、法人の富であるとかいうものを比較したら、比較にはならないでしょう。国民生活の環境なりそういうものと比較すれば、それだけ日本は劣っている。そういう劣っている生活環境であるとか社会資本であるとか、そういうものを抜きにして
考えて、一人当たりの国民所得から見ても、アメリカと同じだけのものを日本がやっていることになる。いいですか。そこへ持ってきて、アメリカは年々
援助額が減ってきている。これも事実だ。数字の上で明らかになっている。まだまだ将来減るといわれている。そうすると、アメリカの過去の
負担を日本をはじめとする諸国が負わなきゃならぬという問題がここへ出てきているわけでしょう。だから、日本の国は一人当たりの国民所得においても四分の一、
援助額においても四分の一、ちょうど合うわけだ。しかし、将来はこれが逆転して、日本のほうが一人当たりの部面で計算をしていくとアメリカよりよけいな
援助を与えなきゃならぬという問題が出てくるわけですよ。ですから、それはもうかっている会社が
援助を与えるとか、余っている金で
援助を与えるならいいけれ
ども、やはりこの全部じゃなくてもある部分が国民の税金の中から出ていくとすれば、零細な、所得のない者からも取った税金の中から
援助されるということになるわけだから、その
援助が多いのがいかぬとか、
援助は極力減らすべきだということを私は必ずしも申し上げているわけじゃないが、日本は日本の国力に沿うた
援助をすべきであって、総理が、国民総生産はもう最高の
水準にきているからどんどん
援助をふやさなきゃならぬという、単なるそういう議論では、これはいかぬと言っている。