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1968-05-24 第58回国会 参議院 商工委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年五月二十四日(金曜日)    午後零時十六分開会     —————————————    委員異動  五月二十三日     辞任         補欠選任      瀬谷 英行君     木村禧八郎君      椿  繁夫君     小柳  勇君  五月二十四日     辞任         補欠選任      横井 太郎君     新谷寅三郎君      豊田 雅孝君     温水 三郎君      仲原 善一君     紅露 みつ君      向井 長年君     瓜生  清君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         金丸 冨夫君     理 事                 高橋  衛君                 土屋 義彦君                 宮崎 正雄君                 阿部 竹松君     委 員                 上原 正吉君                 紅露 みつ君                 新谷寅三郎君                 近藤英一郎君                 仲原 善一君                 温水 三郎君                 平泉  渉君                 柳田桃太郎君                 大矢  正君                 近藤 信一君                 竹田 現照君                 矢追 秀彦君                 瓜生  清君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        外 務 大 臣  三木 武夫君        大 蔵 大 臣  水田三喜男君        農 林 大 臣  西村 直己君        通商産業大臣   椎名悦三郎君        国 務 大 臣  鍋島 直紹君        国 務 大 臣  宮澤 喜一君    政府委員        経済企画庁調整        局長       赤澤 璋一君        科学技術庁長官        官房長      馬場 一也君        科学技術庁計画        局長       武安 義光君        外務政務次官   蔵内 修治君        外務省経済協力        局長       上田 常光君        大蔵省国際金融        局長       柏木 雄介君        農林省農林経済        局長       大和田啓気君        通商産業政務次        官        熊谷太三郎君        通商産業省貿易        振興局長     原田  明君    事務局側        常任委員会専門        員        小田橋貞寿君     —————————————   本日の会議に付した案件科学技術基本法案内閣送付予備審査) ○海外経済協力基金法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○中小企業に対する金融施策等の改善に関する請  願(第七号)(第三〇号) ○東北開発株式会社の存続に関する請願(第四五  号) ○四・四半期商工中金に対する財政役融資追加に 関する請願(第九五〇号) ○再販契約制度の規制に関する請願(第二八二一  号)(第二八三一号)(第二九二〇号)(第二九六九  号)(第二九八〇号)(第二九八一号)(第二九九五  号)(第三〇二〇号)(第三〇四五号)(第三〇四六  号)(第三〇六一号)(第三〇六二号)(第三〇九四  号)(第三〇九五号)(第三一三九号)(第三一七一  号)(第三一七六号)(第三一九二号)(第三一九六  号)(第三二二六号)(第三二三三号)(第三二五七  号)(第三二五八号)(第三三〇三号)(第三三〇四  号)(第三三〇五号)(第三三四一号)(第三三四八  号)(第三四四二号)(第三五三二号)(第三五三三  号)(第三七二三号)(第三七四一号)(第三七四二  号)(第三七四五号)(第三七五五号)(第三八七一  号)(第四〇三〇号)(第五〇八二号) ○北海道地下資源開発株式会社労働者の処遇に  関する請願(第三五八四号)(第三五八五号)(第  三五八六号)(第三五八七号)(第三五九一号)(第  三五九二号)(第三六九八号)(第三六九九号)(第  三七〇〇号)(第三七〇一号)(第三七〇二号)(第  三七二六号)(第三七三〇号)(第四一一〇号)(第  四一一一号)(第四一一二号)(第四一一三号)(第  四一五八号)(第四一五九号)(第四一六〇号)(第  四一六一号)(第四一六二号)(第四一六三号)(第  四一六四号)(第四一六五号)(第四一六六号)(第  四一六七号)(第四一六八号)(第四一六九号)(第  四一七〇号)(第四一七一号)(第四一七二号)(第  四一七三号)(第四一七四号)(第四二一一号)(第  四二一九号)(第四二四八号)(第四二四九号)(第  四三〇二号)(第四三九八号)(第四五八七号)(第  五一九二号) ○政府関係中小企業専門金融機関に対する政府資  金の増額に関する請願(第三六〇三号) ○中小企業振興事業団の行なう融資事業拡大強  化に関する請願(第三六八五号) ○電灯線引込口避雷設備設置に関する請願(第  三九七三号) ○盲人世帯に対する家庭電気料金の低減に関する  請願(第四二七四号) ○継続調査要求に関する件     —————————————
  2. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨日、瀬谷英行君、椿繁夫君が辞任され、その補欠として木村禧八郎君、小柳勇君が選任されました。     —————————————
  3. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 次に、科学技術基本法案議題といたします。  政府から提案理由の説明を聴取いたします。鍋島科学技術庁長官
  4. 鍋島直紹

    国務大臣鍋島直紹君) 科学技術基本法案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  科学技術わが国経済発展国民福祉向上のために不可欠の要素であるとともに、人類社会発展の基礎となるものであることは御高承のとおりでありまして、科学技術振興につとめ、その水準向上をはかることは国の重要な責務であります。  いまや、世界的な開放体制への移行が進展し、わが国を取り巻く国際的環境の大きな変動のもとにあって、わが国経済基盤の強化が叫ばれており、また、公害、自然災害防止等社会開発を促進し、国民福祉の一そうの充実をはかることが強く要請されているものでありまして、経済社会の広範な分野にわたるこれらの課題の達成のため、今後の科学技術進展に期待されるところは著しく増大しております。とりわけ、これまで少なからぬ分野にわたり、諸外国における研究開発成果に依存してまいりましたわが国科学技術につきましては、今後特に独創的な研究開発につとめるとともに、その長期的な進展をはかるための基盤づくり、諸条件の整備に邁進してまいらなければなりません。  ひるがえって、最近の科学技術進展の動向を見ますと、科学技術の各分野研究開発が次第に細分化し、深化するとともに、他方各分野総合的連係のもとに大規模に展開される傾向にあります。このような情勢に対処するため、科学技術振興に関する諸般の施策を、長期的な観点から計画的、総合的に講じていくことが緊要の課題考えられます。  この法律案は、まさにこのような趣旨に基づくものでありまして、これによって、科学技術に関する国の理念、政策目標基本的施策等を定め、科学技術に関する国政の基本を明らかにしようとするものであります。  次に、この法律案要旨を御説明申し上げます。  まず第一に、この法律は、主として自然科学分野にかかる科学技術をその対象としております。人文科学のみの分野にかかるものにつきましては、それを自然科学分野にかかるものと同列に置きまして推進策を講ずることが必ずしも適当でないので、これをその対象外としたのであります。また、大学における研究につきましては、真理の探求を目的として、研究者自主的判断に基づき進められるべきものでありまして、この法律による施策総合的計画的推進対象とすることは適当でないので、原則として、その対象外としております。しかしながら、大学における研究につきましては、国の計画研究の一環としてその参加を得ることにより大きな効果が期待されるものにつき後に述べますように、特則を設けております。  第二に、この法律は、わが国科学技術政策目標は、科学技術が常に国民経済発展及び国民福祉向上要請にこたえ、あわせて国際社会発展に寄与することができるよう、その水準向上をはかるにあることを明示し、これを達成するため、研究推進、その成果利用推進、優秀な人材の確保、情報流通円滑化国際交流推進等施策を総合的に講ずることとしております。  第三に、政府は、これらの施策を実施するため必要な法制上、財政上及び金融上の措置を講ずべきものとし、政府科学技術に関して講じた施策については、毎年、国会に報告すべきこととしております。また、地方公共団体におきましても、国の施策に準じて施策を講ずるようにつとめなければならないこととしております。  第四に、政府は、科学技術に関する基本計画を策定しなければならないことといたしております。  これは、最近における科学技術総合化、大規模化等傾向に即応し、政府としての目標を設定して推進すべき研究の促進に関する長期的計画及び重要な分野における研究の育成に関する長期的計画中心として、科学技術振興のために総合的かつ計画的に講ずべき政府施策全般にわたり、その大綱を定めようとするものであります。  また、この基本計画の策定にあたっては、高度の専門的知識と広い視野からの判断により、その適正を期するため、あらかじめ科学技術会議の議を経なければならないこととなっております。  このほか基本計画につきましては、毎年検討を加え、必要に応じて修正を行なうこととし、これを定め、あるいは修正したときは、その要旨を公表すべきこととされております。  第五に、科学技術に関する研究推進から知識の普及及び啓発に至るまで、科学技術振興のための広範な施策について各則の規定を設けておりますが、とくに研究につきましては、その推進に関する施策を講ずるにあたって、研究者の創意が十分発揮されるよう配慮すべきこと、研究成果利用に関する施策を講ずるにあたり、国民経済全般の健全な発展に資するよう配慮すべきこと等を規定しております。  第六に、大学における研究につきましては、政府としての目標を設定して推進すべき研究の実施について、大学参加を必要とする場合には、大学自主的判断によりその参加を得る途を特則として設けております。これにより、政府計画研究の一そう強力な推進がはかられることを期待するものであります。  以上が、この法律案提案理由及びその要旨であります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同賜わらんことを特にお願い申し上げます。     —————————————
  5. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 次に、衆議院送付海外経済協力基金法の一部を改正する法律案議題とし、前回に引き続き質疑を行ないます。  質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  6. 竹田現照

    竹田現照君 この基金法の一部を改正する法律案は、いわゆる南北問題という国際的な視野から論ずべき問題であると思いますが、この際、経済協力全般の中でも、長期延べ払い国際収支あるいは輸銀海外技術協力事業団等についてもお尋ねをして基金のあり方などを論議すべきであろうと思いますが、私は、基金中心としてこれから質問をしてみたいと思います。  最初に、きのうも企画庁長官に、いろいろなことが報道されておるが、一体ほんとうのところはどうなんだというお尋ねをしましたら、現在インドネシアに対する援助については政府は全く白紙であると、そういうお答えがあったのですが、けさの東京新聞によりますと、「政府筋が二十三日明らかにしたところによると、表向きはインドネシア要請通り一億ドル強の供与を一応認め、本年度中に支出する実際の援助額は約八千万ドルとする案が有力である。」こういう記事が出ておるのであります。これは政府筋が明らかにしたこういう記事ですけれども、これは一体どういうことなんですか、きのうの答弁とまるきり話が違うわけですけれども最初にこの点もう一度明らかにしていただきたい。
  7. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは昨日も申し上げたことでございますが、先般のロッテルダムの会議におきましても、わが国事情もございまして、総額どのくらいの援助をすべきか、各国がどういう負担をすべきか、プロジェクトはどうなるべきかといったようなことは結論を得ないままになっておるわけでございます。したがって、現在政府としてはこういうふうにするという方針を持っておらないわけでございます。インドネシア側の意向もむろんはっきりいたさない。したがってコンソーシアムの全体の案が固まらないという状態でございますから、確かにいろいろな報道がなされておりますが、その中身も実はまちまちでありまして、それは政府最終考えを固めておりませんためにいろいろな報道がなされておるので、現在の段階では、法律案改正が決定いたしません限り、こういう条件商品援助を与えるということ自身ができないわけでございますから、政府としては最終的な答えを持っていないというのが実情でございます。
  8. 竹田現照

    竹田現照君 これは最後にも触れますが、この援助を扱う行政が一元化されておらない。そういうようなことから、きのう来私がお尋ねしているようなことが起きてくるのじゃないかと思いますが、これはあとにいたします。  四月の二十五日に、この委員会改正案提出理由についてお伺いをいたしました。その中で、東南アジア等の地域の国の中で経済の安定のために緊要な物資の輸入を強く望んでいる国があるので、この要請にこたえるために商品援助もできるようにする、そういうことをおっしゃっております。それで現在わが国に対して商品輸入をするために長期低利資金貸し付けを望んでいるという国は、伝えられているようにインドネシアだけなのか、またそれ以外にもあるのか、お尋ねをいたします。
  9. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私の承知いたしておりますところでは、政府に対して正式にそういう要請をしておりますのは、現在インドネシアだけでございます。
  10. 竹田現照

    竹田現照君 商品援助資金というのがありますけれども、これは消費されてしまいますと、開発援助と違いまして返済のための収益を生みません。返済能力収益性の点を考えると、贈与するということとあまり変わりがないと思うのですけれども、この点はどういうことなんですか。開発事業に回して収益が上がって返済が可能だと、そういうふうにお答えになると思いますが、事実問題として、遠回しにそういうことが可能である、が実際いまの実情からいくと、贈与とあまり変わりはないのではないか、そういうような気もしますけれども、それはどうなんですか。
  11. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま開発投資に回されて云々とおっしゃいましたが、そのとおりでございます。いわゆる輸入権政府が売るわけでございますから、そしてその売り上げ代金一般会計と区分をして積み立てておきまして、これを開発投資に使う、こういう方式でございます。で、昨年まで一般会計に別除いたしますやり方があまり実ははっきりしておらなかったようでございまして、IMF等アドバイス等もあって、私どもそういうことを申しまして、やはりこの売り上げ代金だけはきちんと分けておいて、そうして開発投資に使うことがいいのではないか。わが国にもたまたま似たような経験があるので、そのことを先般も申したわけでありますが、今年からはそういうふうにするというのが、インドネシアの先般来日しました閣僚たち考え方でございまして、したがって、そういうふうにやってくれましたら、それが開発投資になり、開発の利益が、所得が上がってそれが返済資金になるという方式は、ちょうどかってガリオア、エロアといったようなものが御承知のように見返り資金になりまして、それが開発銀行に受け継がれて現在返済が行なわれておる、形としては同じような姿になるだろうと思っております。
  12. 竹田現照

    竹田現照君 商品援助というのはあくまでも輸銀資金でやって、商品というのは特別会計贈与の形をとったほうがいいと、そういう考え方もありますけれども、このことについてはどういうふうにお考えになっておりますか。
  13. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは先方贈与してくれと言っておるわけではございませんし、私どもも、それは当面のインフレーションの緩和と、それから現地通貨の調達ということでございましたら、相当長い期間であれば借款で十分である、こう考えておりますので、あえて贈与の必要がないものというのが私ども判断でございます。
  14. 竹田現照

    竹田現照君 今回のこの改正は、先ほどもインドネシアだけが当面希望しておるとおっしゃっていますけれども、そのインドネシアヘの援助のほうを目的とした改正であるという点に理解してよろしいですか。
  15. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 法律改正になりますと、将来これは特定の国に限らず一般的に適用ができることになりますことは申すまでもございませんが、ただいまのところインドネシア以外にこういうことを必要とする国は私どもないように考えております。法律上の可能性といたしましては、かりにそういう案件がまた別途出てさましたら、これを適用するということになってくると思います。
  16. 竹田現照

    竹田現照君 インドネシアだけといういまのお答えのようでありましたが、これだけの暫定措置法提出をされたほうがいいと、それで処理をされたほうがいいんじゃないかと私は思うのですけれども、将来を想定をされるとすれば、大体どんなところですか。これはあくまでも想像ですが、大体想定がつくと思いますが、どうなんですか。
  17. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私どもインドネシアの場合におきましても、できるだけこの商品援助というような変則的なことはなるべくそうしばしば行なわれないほうがいい、できるだけ早く開発援助に移っていくのがいいと思いますけれども、これはその国の国情にもよることでございますし、今回この援助をどういうふうに先方が扱っていくかということも、私どもいろいろ国際機関ども通じまして希望も申し、また必要ならばアドバイスをいたしていきますけれども、何分にも独立国のことでもございます。いろいろ国情も変化することでございましょうから、ことし一ぺん限りということ、必ずしもはっきりしておりません、私ども続けてやりたいと思っておりませんけれども、一ぺん限りであるということを先方が申しておるわけでもございませんし、またそれ以外の国がいつどういう状況になるかということは、なかなか私どもで見通せないことでございますから、そういう例外的なケースが将来出れば、やはり事情によってはこの条項を発動しなければならないことがあるかもしれないと思います。ですから、これは一般法規として整備しておいたほうがよかろうというのが私ども考えでございます。
  18. 竹田現照

    竹田現照君 これはずいぶん先のほうを見越して恒久法かっこうをとっていますけれども、御答弁に関する限りは、暫定的、変則的なようなものである、とすれば、恒久法である基金法の中にこういうかっこうのものを入れるというのは、法律の体系からいってもおかしいんじゃないですか。むしろ、変則的、暫定的なものであれば、暫定措置、こう言ったほうがいいんじゃないかと私は思いますが、いかがですか。
  19. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 暫定的と申しましたのは、インドネシアがこれから長くこういうことをしなければならないようではお互いに困りますので、そういう意味で申し上げたわけでございます。それから変則的云々と申し上げましたのは、本来こういう最終消費財のような商品は、普通は貿易対象になるべきものであって、こんなに長いクレジットの対象になるのはどちらかと申せば変則でございますので、さように申し上げましたので、将来、類似のケースが起こってこないという保証もございませんので、やはり事と次第によっては協力基金がソフトな条件でこういうことをなし得るというふうにしておいたほうが経済協力の立て方としては完備したものであろうと、こう考えておるわけでございます。
  20. 竹田現照

    竹田現照君 それでは、今後起こってくる商品援助、これにはすべてこの基金資金を使うのか、あるいはまた予備費輸銀資金を抱き合わせ、この間やったようなこと、こういうようなことは今後しない、しなくても済むと、そういうふうに解釈してもよろしゅうございますか。
  21. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 輸銀条件先方なりこのコンソーシアム関係がよろしければ、やはりそれでやりますほうがわが国としては負担が軽いわけでございますから、どうしてもその条件ではきつ過ぎるというときには基金を使うということになるのだと思います。  なお、予備費を支出したということにつきましては、これはまあ昨年の場合は予測し得ない事態に対処したわけでございますから、今後こういうふうに基金をしておいていただきますと、まず似たような事情が繰り返えされるということはないと思っております。
  22. 竹田現照

    竹田現照君 予備費を使うかどうかということを、去年のようなことですね、経緯は申し上げる必要もないことで、ああいうことになっておりますけれども、ああいう形で予備費を出すということについては、私たちは疑問をもっております。そういう意味で、これは決算委員会等でも論議があったところですが、その点、予備費をああいうようなかっこうで使うことがあるかどうかということをあらためて念を押しておきたいと思うのですが、大蔵大臣いかがですか。
  23. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) ああいう形の予備費は使いたくないという考えから今度のような改正案の御審議を願っておるということになったわけでございますが、ただ、これは予測しがたいことに備えるものでございますから、今後どういうことが起こらないとも限らない。その場合に基金予算もない、したがって、どうしても予備費で緊急に対処しなければならぬということが起こらぬとは限らないと思いますが、しかし、昨年のようなのは、向こうの負担を軽くするための一部贈与という形で解決しよう、その贈与分予備費から出したというようなことでございますので、普通の予備費の支出とは違って、やはり望ましい形でないというふうに考えますので、ああいう形の予備費は、今後使用しないというふうに考えております。
  24. 竹田現照

    竹田現照君 それじゃ、その予備費を使わないで済むとして、この基金の投融資の可能額をこえた場合にはどんな処理をなさるんですか、そういうことは考えられませんか。
  25. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今年度の場合について申し上げますと、私ども一定の積算をいたしまして予算要求をしてこの基金資金量を組んでおりますので、予備費を使わなければならないというような事態は、ただいまのところ予見しておりません。
  26. 竹田現照

    竹田現照君 いや、私は、ことしのことを聞いているのじゃない。これから予備費を使うというようなことが大体あり得ないとする場合、今年度は大体予算はわかっておりますけれども、今後の場合をどうですかということを伺っておる。
  27. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 一般に、予備費は、申し上げるまでもなく、予見しがたい事態に備えるものでございますので、一般論といたしましては、そういう予見しがたい事態海外経済協力についても生じ得るわけでございます。したがって、一般的に今後一切これに限って予備費を使用しないということは、お答えが、論理の問題としてできないのではなかろうかと思っております。
  28. 竹田現照

    竹田現照君 それでは法の二十一条で、資金の貸し付けあるいは出資をするにあたっての条件、すなわち、基金以外のものから出資、資金の貸し付けを受けることが困難で、「事業計画の内容が適切であり、その達成の見込みがあるもの」となっておりますけれども、今度の改正案はこれと同じような条文、これを商品援助につけておりますが、開発地域が資金貸し付けの場合は、一応事業計画が達成されれば、その収益性という点で実を結びますので、返済の点を重視することもない、しかし商品援助の場合は、インフレーションが終息をしても実を結んで返済をするというわけでもないので、借款ということは返済可能であるから貸すという考え方ですから、借款供与をするときの条件として返済可能性があるものとかなんとか、何らかの規定あるいは条文というものを定める必要があるのではないか。しかし今度の場合はそういうことをしていません、条文上では。特に二十一条の現行の二項以下ずっと付加しておりますけれども、いま私が申し上げたようなことは書いておらないわけですけれども、その点はどうなんですか。
  29. 赤澤璋一

    政府委員赤澤璋一君) 御指摘の条文でございますが、今回の改正によりまして基金経済の安定のために必要ないわゆる商品援助を行なうわけでございまして、その場合には、その貸し付けの対象になっております輸入に関する計画、あるいはその輸入経済の安定のために受け持っております役割り等も含めました全体としてのその国の経済安定計画と申しますか、そういうものが当然検討の対象になろうかと思います。そういったような全体的な、安定的計画というものを前提として検討いたしまして、それがうまく行なわれ、したがってその国の経済が安定をする、いわばもっと端的に申せば、インフレはおさまっていき、そして経済開発に向き得るような状態になってくるということが必要なわけであります。そういう状態を想定いたしますと、したがってそういう経済が一応の安定を見て、さらに開発に向かっていくということでございますから、そういった面から経済の安定に関する計画の内容が適切であり、かつ、その計画が一応達成できるということであれば、先生お示しのような返済可能であるという状態に達し得るのではないか、かように考えるわけでございます。
  30. 竹田現照

    竹田現照君 しかしそういう判断というのはどこでどういうふうにするのですか。この法律上は、ちょっとそういうことは判断できかねるわけですけれども、何らかの形でしておくのですか、相手の国とは。
  31. 赤澤璋一

    政府委員赤澤璋一君) そういうことで今度の二十一条の二項を設けておるわけでございますが、この判断をどういうふうにするかということでございますが、たとえば今回の当面対象になっておりますインドネシアの場合におきましては、IMF、世銀等が中心となりまして、もちろんインドネシア政府とも相談をいたしまして、一応インドネシアに関する経済の安定計画、こういったものを立案をし、その計画に基づいて各国の間にそれをはかりまして、そして十分説明をし、われわれも説明を聞いた上で、それでこのくらいの金額をインドネシア政府に対して援助していけばまずインドネシア経済というものは安定するであろう、こういう説明をいたしております。そういう説明を政府並びに基金におきまして十分聴取をし、さらに内容を検討し、それについて、この法律改正にございますように「内容が適切であり、」「達成の見込みがある」というふうに私どもはいまのところ判断をいたしております。そういう判断に基づきましてこの法案の改正を行ないますれば、政府間取りきめ、その取りきめに基づく基金インドネシア政府との貸し付け契約、こういう段取りになるわけでございます。
  32. 竹田現照

    竹田現照君 DACの加盟国の中で日本の経済援助条件、これがあまりゆるやかなほうではない。政府援助の約束が、ここに占める贈与の比率も、賠償というものが加わっていますから、六六年で四一・五%、加盟国十五カ国中十二番目ですが、賠償がすんでしまいますと、その分が減ってまいりますから、さらに順位が下がってくる。そうすると、返済される見込み、あるいは返済について考えるようにという条件をつけていない改正案は、返済を見込んでいないと解釈していいのですか。
  33. 赤澤璋一

    政府委員赤澤璋一君) ただいま御指摘のように、日本の海外経済協力におきますところの贈与の比率が非常に低いわけでございます。いま御指摘のございましたように、六六年で四一・五%、御指摘のとおりでございます。ただこれがまた将来賠償等がなくなりますので、その面からはこれが下がってまいる傾向にあることも御指摘のとおりでございます。ただ、しからば今回のこの商品援助と申しますか、こういったものが、返還を前提としていないか、こうお尋ねでございますと、そうではございませんので、私どもといたしましては、昨年同様の条件でございますと、七年据え置きの二十年返済、こういうことで、やはり返済を前提といたしましたいわば借款契約を行なう、こういうことでございますので、贈与とはその性格が違っていると考えております。
  34. 竹田現照

    竹田現照君 それではちょっと余談のようですけれども、国民所得の一%ということについて、ちょっと企画庁長官お尋ねいたしますが、今度海外援助の率というのは、所得の一%が総生産の一%ということになってくると、相当金額が違ってくると思うのですが、国民総生産では世界で三番目だが、しかし一人当たりの国民所得で見れば二十番目、だから全体としては、生産力はあるけれども、一人当たりにすれば少なくなる。そういう世界で二十番目だというような国民の一人一人が、一%を後進国の援助に振り向けるということになると、日本は、日本より生活程度の高い国、そういう国より日本の場合は苦しくなってくる。そういうことを考え、そして国民所得の総合計だけを計算して、二十番目の国民一人当たりの所得ということを考えた場合に、いま言われているような、この援助計画の中の率を上げていくということについては、どんなふうにお考えになっているのか、お答えをいただきたいと思います。
  35. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 国民総生産の一%を目途とするということは、先般のニューデリーのUNCTADのときの会議のときにも話が出たわけでございますが、そのときにわが国はGNPなりあるいは国民所得なりの比率もいいけれども、毎年々々援助の実額が相当顕著に伸びていくという、それもやはり一つ評価してもらってもいいのではないだろうかという主張をいたしました。それは申し上げるまでもなく、わが国のように成長が早うございますと、実額は相当大きくなりましても割合が変わらないといったような矛盾した事態になりますから、そういう主張をいたしたわけでございます。それはそれとして受け入れられておるわけでございます。確かに国民、つまり一定の生活程度をしておる国民は、その国家に関係なく一定の低開発発展途上国に援助すべきであるという原理がかりにあるといたしましたら、わが国の国民一人当たりの援助はかなり重いということは、それは私、確かに言えると思います。しかし、一応ああいうUNCTADなんかで議論されますと、やはり国としてのつとめと申しますか、協力と申しますか、そういうふうなことでしばしば議論されますので、ただいまのおっしゃったような観点は確かに一つの論点でありまして、私どももそういうことを申しますが、まあしかしあなたの国ならというようなことになりやすいわけでございます。ですからわが国としては、毎年の伸び率のほかに、実は一人当たりの国民所得はということも申しておりますのですが、まあ国全体としてはかなりの国力があるということから、多少先進国の国民一人当たりいまは重い負担を一人一人の国民が負っておるということに、比較をすれば私はやはりなるだろうと思います。
  36. 竹田現照

    竹田現照君 国民一人の所得というのは、数字で出せばどれくらいになるのですか。
  37. 大矢正

    ○大矢正君 関連。宮澤さん、いまの質問に関連して、日本の一人当たりの国民所得、総体の国民所得じゃなく、一人当たりの国民所得でいった場合に、日本はそれに対してどれくらいになるのか、そして国際的なアメリカであるとかイギリスであるとかいうような、俗に呼ばれる開発の進んだ国と比較してみた場合に、どの程度の変化が起こってくるのか、そういうものを具体的に数字でひとつ並べてもらいたい、こういうことなんです。
  38. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) わが国の一人当たりの国民所得は、まあ一人千ドルとほぼ考えていただいてよろしいかと思います、ただいまの時点で。それで、いまの大矢委員お尋ねですが、これはアメリカ合衆国と比べますと、大体三千数百ドル対千ドルといったような比率になると思いますが、いま御質問の意味がよくわかりましたので、ちょっと計算をさせまして後ほど申し上げます。つまりこういうことでございますね。アメリカの国民の一人当たりの所得に対して援助の金額が何ドルぐらいになるか、わが国ではそれがどうか、ちょっと計算しまして後ほど申し上げます。
  39. 大矢正

    ○大矢正君 これは国民総生産の一%程度を目標にしてということは、必ずしも先般の会議の決議でもない、決議されたようなかっこうにはなっているようだけれども、必ずしも拘束力はあるとは思われないわけです。今日の段階では。しかし、国民総生産の一%であるとか、国民所得の総体に対する一%であるとか、いろいろ議論があるけれども、しかし貧乏人が金を出すのに背伸びをしてまでやらなければならぬということについては、これは私どもやはり問題があると思うのですよ。だから、やはり一人当たりの国民所得が幾らあるのか、そうしてそれが結局日本の援助額と対比してみた場合に、それが何%になり、そうして他国はどうなるのかということは、やはりわれわれがもうほんとうに裸になって低開発国を援助するにあたっての基本的なかまえとして持たなければならぬと思うのです。日本の国力が大きいとか、船をつくるのが世界一だとか、そういうことで、当然のことながら、第一流の国と肩を並べて援助をしなければならぬという考え方は、私はどうも基本的に違うような気がするので、いまの問題はこれからの基金の議論をするにあたって、やはり関連をさせた場合に大きな問題となるので、これはひとつそのくらいのことは資料としてないことはないのじゃないかという気がするのです。これから計算しなくちゃならぬという問題じゃなくて、おそらくあの会議だって皆さん日本の政府の方も国民総生産に対する一%というものに対しては賛成したわけじゃないのであって、だとすれば、反対の論拠なり根拠なりとして、そういうものも使われたのではないかという感じがする。
  40. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その点は確かに私どももそういう議論をしばしばああいう場でいたしております。DACの資料がございますと思うのです。しかし、そういたしますと、民間ベースの援助は入っているかもしれません。すぐ調べまして後ほど申し上げます。
  41. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 計算はいまできますか。
  42. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まことにおそれ入りますが、ちょっといま計算をしておりますので、しばらく御猶予いただきたいと思います。
  43. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  44. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 速記をつけて。
  45. 赤澤璋一

    政府委員赤澤璋一君) どうも時間がかかりまして、たいへん失礼いたしました。  DACの資料がまだ六六年の分しかございませんので、少し、一、二年古いことになりますが、大まかな数字で申し上げますと、六六年におきます国民所得は、日本は一人当たり七百九十ドルでございます。それに対しましてアメリカが三千百ドルということになっておりまして、人口一人当たりでこの援助額を割ってみますとどうなりますかといいますと、アメリカの場合には一人当たり約二十四ドル、日本の場合には約六ドル程度になっております。
  46. 竹田現照

    竹田現照君 ほかの国はどうなっておりますか。
  47. 大矢正

    ○大矢正君 アメリカだけしか聞かないんではなくて、援助をやっておる先進国というか、開発の進んだ国というか、そういうものを全体を教えてくれと、こう言っている。だから、イギリスなりフランスなりその他ヨーロッパの諸国……。
  48. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) わかりました。  それでは、かなりたくさんの国について比較を必要とされるようでございますので、後ほど、数字を調べまして申し上げます。
  49. 竹田現照

    竹田現照君 これは、ひとつ大矢委員のほうの質問に間に合うように……。  去年八月に出されました外務省の「今後の経済協力のあり方について」というのが配られていますが、この中に、一つの国の援助である場合には民族主義の旺盛な後進国の感情から、国民感情を害するおそれが多分にあるとか、いろいろと述べて、これを排除し、効率的援助をするには国際的援助機関の活用をはかるべきである、そう考えると、そういうふうに書いてありますけれども、そういう意味で、インドネシアでのIMFあるいは世銀の活動は注目されると思いますけれども、この外務省の考え方と、実際のこの国際機関のこういう活動の状況というものは、どういうふうに把握をされておりますか。
  50. 藏内修治

    政府委員(蔵内修治君) 外務省で出しております「今後の経済協力のあり方について」というこの資料でございまするが、これはまだ確定的に政府の一つの政策としてお取り上げを願うというところまできめておるという段階のものでもございません。しかしながら、まあここで考えております外務省なりの考え方を申しますと、日本はアジア開発銀行への出資及び同銀行の特別基金への拠出、それから世銀、第二世銀、こういうものにも出資をいたしております。それから、また、メコン河開発のための国際協力、こういうようなものにも参加をいたしております。こういうもののいわゆる多角的な援助を、できるだけ実施をしてまいりたい。それからインドとかパキスタン、インドネシア、こういうものに対する援助協力等については、できるだけコンソーシアムなど、こういう多角的な場を通じて行なっていきたい、こういうことが基本的な考え方でございます。
  51. 竹田現照

    竹田現照君 その考え方を聞いているのじゃないのです。この外務省から出したものに書いてあることによって、これは日本の場合でなく、国際機関が——日本だけでしたら、ずいぶん内政干渉のおそれだとかなんとか、いろいろ書いてありますから、そのためにはということで、先ほど私がお尋ねしたようなことが書いてある。そういう点で、このインドネシアにおけるIMFや世銀の活動の状況というものはどういうふうな状況になっておりますかということを聞いておるのです。
  52. 藏内修治

    政府委員(蔵内修治君) 昨年十一月のアムステルダム会議、それから本年行なわれましたロッテルダム会議、これらもやはりIMFからも代表者を立てて協議に参加をしていただいております。さらにこの場におきましては、第二世銀等のインドネシアに対する協力のあり方についても十分協議がなされたと承知をいたしております。
  53. 竹田現照

    竹田現照君 それは心配をされておるようなことでなくて、インドネシアはそれを素直に受け入れてスムーズにいっていると、そういう国際機関の活動の状況になっておるのだと、そういうふうに了解してよろしいですね。
  54. 藏内修治

    政府委員(蔵内修治君) そのとおりでございます。
  55. 竹田現照

    竹田現照君 去年の十一月のアムステルダムで行なわれた会議で三億二千五百万ドルの要求がありますが、この三億二千五百万ドルというものの算出の根拠というものは、インドネシア側の要求をそのまま受け入れたものではないと思いますけれども、それをまあ査定するというのか何というのか、そういう信頼できる機関というのは一体どこなのか。どこがそういうふうに信頼できる数字として算出をしたのか、この点を一点と、それからその後ジャカルタあたりの物価というのはかなり騰貴をしている。一面ではスカルノ時代よりもずっとインフレもおさまっているという説明もありますが、一面IMFの資料なんかによりますと、米なんかは、まあ消費者物価などは、かなりの騰貴を示しているということも出ているわけですね。今度のこの三億二千万ドルの援助によってどの程度そういうことが抑制が期待できるのか、この点もひとつあわせてお答えください。
  56. 上田常光

    政府委員(上田常光君) お答え申し上げます。  昨年のアムステルダムで出ました三億二千五百万ドルという数字は、IMFがつくりました数字でございます。で、いま先生おっしゃいましたように、はたしてそれが信頼できるかどうかという問題でございます。これは確かにIMFはいまインドネシアに事務所を持ちまして、インドネシア政府と密接な連絡をとり、そこからでき得る限りの公正な数字を手に入れてつくったものでございます。これをアムステルダム会議で一応披露されて、各国とも協議したのでございますが、現在のところ、それはもちろん完全とは言えないかもしれませんけれども、これより以上の権威を持ってこれに反駁して新しく数字を出す機関は、いまのところまだございません。したがって、一応はこの会議でも三億二千五百万ドルというのを各国本国政府にリコメンドするようにテークノートしたという形でございます。  それからその次の、最近のインドネシアの物価上昇の問題でございますが、インドネシアの物価は、同じ一年平均をとりましても、月によって相当上下がございますし、またジャカルタその他の地域によっても異なっております。特に米の価格をとりましても、ジャカルタ価格、スマトラ価格といって、地域によっても輸送の関係等でございましょうが、相当値の開きがございますが、一応これは先般のロッテルダムの会議でIMF側からの説明を見ましても、やはり年間を通じて概観いたしますと、一九六六年におよそ物価が七倍くらい上がったのが一九六七年には約二倍くらい。もっとも昨年の暮れあたりから今年の初めにかけまして、先生御指摘のように多少物価が上がってまいっております。これは一つは各国の援助が切れてきたこと、ちょうど米の端境期にぶつかったこと及び昨年の相当大規模な干ばつにぶつかったというような、そういう条件がございまして、また昨年の暮れから今年の初めにかけまして物価が上昇いたしております。今度援助をしたらどのくらいにこれがおさまるかという御質問でございますが、これは、先ほど申し上げましたようにIMFが一応今年度このくらいの援助は必要だろうと思って出した三億二千五百万ドルという数字でございます。われわれとしては一〇〇%それによってだいじょうぶだということは言えませんけれども、まあだんだんと改善の方向に向かっていくのではないかと思っております。
  57. 竹田現照

    竹田現照君 三億二千五百万ドルに関連してちょっとお伺いしますが、四月二十四日の読売新聞で、ロッテルダム発AFP、四月二十三日発ですが、「インドネシア債権国会議は二十三日の討議で、インドネシア政府はさきに約束された三億二千五百万ドルを下回る援助額で、ことしの経済安定、復興計画を実施できると裁定した。会議筋によると、世銀ないし他の国際機関の監督をうけた開発諸計画からの繰り越しで、二億七千五百万ドルで十分ということになった。」そういう記事が出ていますけれども、これは当時森審議官かだれか出席されていると思いますけれども、読売新聞の外電として伝えられていますが、これはどういうことですか、間違いですか。
  58. 藏内修治

    政府委員(蔵内修治君) 森審議官が帰国いたしましてからそれらの事実についても向こうの現状を聴取いたしましたけれども、そういうような話は森審議官から外務省では公式には承知いたしておりません。向こうで聞きました限りにおきましては、先ほど経済協力局長からお答えいたしましたとおり、四月におきましても昨年十一月にIMFが勧告いたしました三億二千五百万ドルという数字を変える理由はないということを四月のロッテルダム会議におきましても、IMFとしては答弁いたしておる次第でございます。
  59. 竹田現照

    竹田現照君 それではこの外電は誤報であると、そういうふうに理解いたします。  それで、参議院の予算委員会でわが党の木村、羽生両委員の質問に、きのうからの私の質問にも関連がありますが、長官は、六千万ドルに上積みをする一千万ドルないし二千万ドル程度のものはできないわけではない、そうお答えになっていますが、援助額を決定する基準というものはどこにあるのですか。決定の基準ですね、これをひとつはっきり教えていただきたい。
  60. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) もう少しその点正確に申し上げますと、参議院の大蔵委員会であったと思いますが、羽生、木村両議員の御質問は、かりに六千万ドルということで交渉がまとまらずに、それを上回るといったようなことがあれば、補正予算を組むというような事態が起こるかと、こういう趣旨のお尋ねでありました。それに対して、私は、交渉でございますからびた一文それを動けないというようなわけにはまいらないと思いますと、したがって、協力基金でも多少の弾力性はもっておりますけれども、大きな弾力性はございませんと、よその国の関係にすぐ影響をいたしますからと、こういうことを申し上げまして、そのとき一、二万ドルというようなことも確かに質疑応答の中に出たわけでございます。援助の標準を何によってきめるかということでございますが、ことし私ども六千万ドルを一応積算いたしましたのは、昨年がそうでございましたから、やはり最低そのぐらいのことはどうしても言ってくるであろうし、わが国としても応じなければならないかと、こういうことで一応六千万ドルを積算をいたしました。このインドネシアの場合には、まあわが国としては地理的にも近いことでありますし、貿易関係も相当ございますし、お互いに親近感も持っております、国民の間で。したがって、かなり大株のほうの援助でなければならないだろう、こういうことは思っておりますのですが、ただ最後になりますと、総体がどのくらいになって、そのうちどの国がどのぐらい持つといったようなことから、総体的な関係できめていくということにならざるを得ないと思いますので、一律にこのような基準ということは、実際問題としてはむずかしいと考えております。
  61. 竹田現照

    竹田現照君 それは六千万ドルでも一億ドルでも、算定の基準というものをやっぱりある程度つけなくちゃ、つかみ取りみたいなことでは、まああとでも触れますが、将来の基金なり援助の金のあり方響についてお尋ねをしたいと思いますが、こうこうこういう基準だからこれだけの金の援助が必要だ、そういうようなものを明確にしなければ、たとえば国会で審議をする場合でも、審議の素材がないんです。だからアメリカと並んで日本も三分の一が必要だと、あるいは五分の一が必要だと、こういうことも外交上の状況とかなんとかによってこの種の問題はすらりと逃げられる可能性があるのですけれども、やっぱりそのことの基準というものが作成できないようでは、この特にインドネシア経済援助に伴っていろんなところに書かれているような事態というものが生ずるのではないかと私は思うのですけれども、この援助額を決定する基準というものは、やっぱりもう少し政府としても確たる一つの方針というものを持っていいんじゃないか、そういうふうに考えますが、重ねてこの点についてお伺いいたします。
  62. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 一つの基準は確かに国会で予算を御審議いただいており、成立しておるわけでございますから、その範囲で、わが国負担し得る能力というものは、おのずからわれわれの能力の限界というものはございます。これはこちら側としては当然守らなきゃならぬ基準でございます。で、先方の要求がどうしてもそれに合わないというときには、まあコンソーシアムをやっておりましても、そこから脱落をせざるを得ないということになるでございましょう。ですから、そういう事実上のいろいろなめどというものはあるように思うのでございますが、ただこれを何か数式のようなものであらわすということになりますと、ことにインドネシアのような場合に、これからのインフレの進行であるとか、プロジェクトがどのぐらい正確に計算されておるだろうかということは、必ずしも明瞭でございませんし、IMFの人たちについてでも、まあ最善と信ずる推計というものしか出せないのでございましょうから、やはりそれは最終的には交渉——多国間または二国間の交渉ということにならざるを得ない。その場合、われわれを制約するものは、やはり法令でありますとか、現実に成立しております予算でありますとか、そういうことになると思います。
  63. 竹田現照

    竹田現照君 私は、なぜ援助基準をお伺いするか。先ほど長官、私が尋ねましたのは、予算委員会の第二分科会におけるやりとりです。そのときでも、六千万ドルが基準、たたき台のようですけれども最初から言っているように、それでもなおかつ八千万ドルだの一億ドルだのということが、この審議の過程の中で出てくるということになれば、これはプラスアルファアというものが既成の事実のようなことになってくると、一体何のために審議をしているのか。六千万ドルが、国会がいいと言ったけれども法律が通ったり予算が通れば、一千万ドルや二千万ドルは外交交渉なり政府の権限においてすっときまるのだと、こういうことになると、何だかこの基準というものについて、すんなりと腑に落ちないものですから、そういう意味で聞いているのです。そのことは、やはりいまお答えがあったように、外交交渉のことなんだから何とも言えないと。しかし、基金に余裕があるからという長官の予算分科会における答弁でありますが、余裕があるとかないとかという問題でないような気が私はするのですけれども、どうなんですか。
  64. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 失礼しました。分科会でございました。  そのときにも私が申し上げたと思いますが、これから交渉にも臨むことでございますので、わが国がどれだけを出すというようなことはまだ申し上げかねるということもつけ加えて申し上げたのですが、あのとき申し上げましたことは、基金で、大体今年の事業はどのくらいであろうかという積算をいたしまして予算要求をしておりますので、その積算の中には、必ずそうなるというものばかりではございません。したがって、多少中で融通し得る弾力性というものは、本来あるわけでございます。その弾力性が非常に大きいというわけにはまたまいりませんで、おのずから他国との権衡も考えなければなりませんから、外交交渉ですから、弾力性ゼロというわけにはまいりませんが、ある程度のものは弾力性としては持っております。しかしこれは、これからの交渉できまることでございまして、というふうに私が申し上げたと思います。
  65. 竹田現照

    竹田現照君 この長官のお答えになった分科会におけるものは、「協力基金にも多少の余裕はないわけではございません。」と、こういうお答えなんですけれども、ここに基金の余裕というのはどういうことなんですか、ここでお答えになっている意味ですね。私は、あまりこの日本の財政からいって、それほど余裕を持っているとは考えていないのですけれどもね。この分科会においてお答えになった「多少の余裕はないわけではない」という、この意味は、どういうことなんですか。
  66. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、基金の持っております総体の本年度の資金量という意味でございます。
  67. 大矢正

    ○大矢正君 資金に余裕がないから政府の出資をしたり財投から借り入れてやるのでしょう。それなのに、あなた、資金に余裕があるというお話はおかしい。自己資金でやるとか、あるいはまた自己資金がかなりのものが余っているから、余裕があるからという理屈なら、それはわかるけれども政府の出資とそれから財投から金を持ち込んでおいて、それでいて基金に余裕があるという理屈は、一体どこから出てくるのか。
  68. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、やはり基金でございます。基金として、一定量の資金量を今年度予定しておるわけでございますが、その中のインドネシアの積算が一応六千万ドルとしてございます。その他、一般案件及び直接借款分、幾つかの国を想定しておるわけでございますから、それらのものは全然融通ができないという性格のものではない、そういう意味でございます。
  69. 大矢正

    ○大矢正君 そういう意味ならわかります。
  70. 竹田現照

    竹田現照君 インドネシアの要求額の三億二千五百万ドルのうち、経済安定と復興計画の分というのは、区分をされておると思うのですけれども、その区分、その内容をちょっとお示しいただきたい。
  71. 赤澤璋一

    政府委員赤澤璋一君) 先ほども長官からお答えいたしましたように、今年度自身まだインドネシアに対します援助の総ワクがきまっておりません。したがいまして全体として、そのうちでどの程度が商品援助であり、あるいはどの程度が開発援助であるということも、したがってきまっていないわけでございます。なお、先ほどお話の出ておりましたIMFが勧告いたしました三億二千五百万ドルの中には、一応BE援助として二億五千万ドル、開発援助分が七千五百万ドルという一応の区分けはございます。区分けはございますが、日本の場合はまだ全体がきまっていないということと、それからプロジェクト分についても、やはり日本の関心のあるプロジェクトもございますので、幾らかこれに入ってまいると思いますので、その辺の比率なり金額なりは、全体もきまっていないことでございますから、現段階では決定をしていない、こういう状況でございます。
  72. 竹田現照

    竹田現照君 きのうもお尋ねしましたけれども、具体的内容について質問に入ったわけですから、もう一度念を押しますが、いまもお答えがありましたように、政府部内で援助額についてはいまだ決定を見ない、六千万ドルの商品援助についても白紙であると、いまの段階でそういうふうに受け取っていいということを、重ねて念を押してお尋ねをしておきますが、それでいいですか。
  73. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そのとおりでございます。
  74. 竹田現照

    竹田現照君 そうすると、法律案が通らなかった場合——あともう十時間しかありませんから、商品援助ができないということになりますが、そうなった場合は援助資金の金の出し方はどういうふうにするのですか、この法律が通らなかった場合はどうするのですか。
  75. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 少なくともインドネシアの望むような条件での商品援助はできないことになります。したがって、かりにそういう事態になりますと、交渉をちょっとこちらで相手になってする方法がないようになるのじゃなかろうかということを心配しておるわけであります。
  76. 竹田現照

    竹田現照君 プラントによる援助、向こう側はそうじゃなくて、商品援助を望んでおりますから、これは別ですけれども、そういうふうに開発援助に回す、そういうようなかっこうの交渉に移らざるを得ない、そういうような状態に追い込まれますか。
  77. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほど御質問にもございましたように、先方商品援助を期待しておりますのは二点ございまして、一点は申し上げるまでもなくそういう消費物資がほしい、インフレを押えるためといいますが、もう一つは現地通貨をそれで吸収しましてプロジェクトをやりたいというのでございますので、プロジェクトだけがまいりましても、それに伴う現地通貨先方予算にない、こういう事態におそらくなるだろうと思います。
  78. 竹田現照

    竹田現照君 これはBE制度なんかについてもあとでちょっと触れたいと思いますが、この商品援助にすれば日本の余剰ぎみの消費財が出ていって生産者が販売上助かる、また相手のほうも輸入価格、運賃の点で利益がある。だからこういうことを強く望むというのか、推進するというのか、あと押しするというのか、そういうような意味でBE制度にもとかくの批判が起きている、これは日本の政府の中にもそういう考え方があるということがある本に載っておりますけれども、そういうようなことはどうなんですか、これは余分な質問のようですけれども、ちょっと聞いておきます。
  79. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは本来から申しましたら、商品はやはり正常貿易対象になるべきものであろうと思います。すなわち振りかえで、金がすぐに入ってくるというのが本来商品貿易でございますので、これをこういう長い融資で援助するということになりますと、正常貿易がそれだけ妨げられるということになるわけでございますから、本来私どもにとって非常に歓迎すべき種類のことではありませんで、やはり相手方に対する援助の緊急性があるので、どうもやむを得ないと、こういう性格のものであろうと思います。わが国の市場全体が供給過剰になっておって、ちょうどいいはけ口が見つかったと、かような種類のこととは、私は違うように思っております。
  80. 竹田現照

    竹田現照君 これはあとでちょっと。少なくとも、この法律が通ると、最低六千万ドルの供与をせざるを得ないということだけは事実だと思うのですけれども、そこでこのIMFの一九六六年六月末現在の各国別の債務残高を見ますと、西欧各国の中で日本は約二億二千四百万ドルと一番多くなっています。それなのになぜ日本がなおかつ多額の援助をしなければならないのかという点について、私はちょっといささか理解に苦しむわけでありますが、外務省の経済協力局の資料とも若干違っているわけですけれども、これは先ほどインドネシア援助計画についてはIMF以上の資料というものはいまのところないという外務省の答弁でありましたから、いま私が申し上げましたこの資料と関連をして、ひとつお答えをいただきたい。
  81. 柏木雄介

    政府委員(柏木雄介君) IMFで六六年六月末現在でまとめましたインドネシアの日本に対する債務というものが、インドネシア側の資料に基づきまして、つくったものでございますが、この中には、私どもから見れば当然債務としてあげるには不適当なものがございまして、それを除きましたものが日本から見たときの日本とインドネシアの間の債権債務関係でございます。おもなものを申し上げますと、日本からインドネシア向けにプラント輸出をするという場合に、私どもの計算ではプラントを輸出して現実に物がインドネシアに着いたものだけが債権になる。船積みしていないものは債権になっておりませんが、インドネシア側の計算では、物がまだ日本にあるのに、もう債務として計上している。これは当然落とすべきではないかという問題が一つございます。これは五千六百万ドルあります。それからもう一つ大きなものは、賠償担保借款というものでありまして、私どもから見れば賠償担保というものはいかなる事態があっても当然債権で論議すべきもので、債務に計算するのは適当でない。そういうようなものを除きますと、日本側の計算では一億数百万ドルになります。それでまあインドネシア援助をきめます場合に、日本がインドネシアに幾ら債権を持っているかということを論議します。まあそのリファイナンスをやったわけでありますが、これはまあインドネシアと日本とでバイラテラルに交渉をしまして、日本の数字をとることにきまっております。
  82. 竹田現照

    竹田現照君 そうすると、このIMFの数字というのは、インドネシア側の集計なんで、間違っていると、そういうことですか。
  83. 柏木雄介

    政府委員(柏木雄介君) 少なくとも日本に関する限りは間違っておりまして、その点は、その後IMF、インドネシア側とも話し合いがついております。
  84. 竹田現照

    竹田現照君 話し合いがついていると、そうすると、ほかの援助をしている国の援助額というものは何で調べるのですか。この次に触れますが、外務省から出している、このインドネシアの対外債務の資料によりますと、日本だけいまお答えで間違っているようだけれども、ほかの国は大体このインドネシアの資料そのままでしょう。外務省の出してるやつは、日本だけが都合が悪くて間違っている、ほかの国は全部同じだ、多少の入り込みがございますが、大同小異ですね。そうするとインドネシアの資料というのは、日本に関する限り間違っていて、そのほかのほうは合っているんですか。
  85. 上田常光

    政府委員(上田常光君) いま大蔵省のほうから説明があったとおりに、一億と二億の違いはそういう理由でございますけれども、この数字の、つまりとり方でございます。日本の場合は、われわれとしてはそういう数字に、いま御説明になりましたように船積み分を入れるか入れないか、賠償分を入れるか入れないか、問題がありまして、これについて意見が分かれて、われわれとしてはあとのほうの主張のほうが正確と思って、これを話をして変えたわけでございます。ほかの国につきましても、多少の違いはあるようでございます。これはそれぞれすべて二国間で話をしてもらうことにする以外に方法はないと思います。私のほうで、これはおそらく先生おっしゃいましたが、外務省から参議院の矢山先生に差し上げた資料かと思いますけれども、ほかの国の点は、ほぼわれわれの承知している限りのところを、正しいと思われるところを載せたのでございます。
  86. 竹田現照

    竹田現照君 どうもすっきりしないんですがね。三億二千五百万ドルでも、先ほどお尋ねしたように、IMFの資料というのが、現在のところこれ以上権威ある資料はないという先ほどお答えがあったのですね。そうすると、やはりこの援助額をきめる一つの基準ともなるべきようなものの、いま私が質問してるような資料です。これも、出したのはインドネシアであるかどこか私は知りませんけれども、IMFの資料であることは間違いないんですね。そうすると、三億二千五百万ドルのこの資料だって、インドネシアから出した資料というものをそのままIMFが載せているとすれば、いまのような、何ですか、適当だと言っちゃ語弊がありますけれども、必ずしも信用でき得ない数字が出されているとすれば、最初お答えがあったように、外務省、最も権威のある資料だなんということは言い得ないんじゃないですか。
  87. 上田常光

    政府委員(上田常光君) インドネシアに対しましては、少なくとも債務のほう累計いたしましたほうの数字は、これはIMFがインドネシアから聞きまして、インドネシアの出した数字を集めたものでございます。それから三億二千五百万のほうは、これはIMFが新政権と申しますか、スハルト政権になって、最近でございますが、最近はIMF自身が相当インドネシアの中に、まあ指導とは申しませんけれども経済的にも相当入って自分でも計画に参画してやっておりまして、そしてインドネシア側の数字も参照しながらつくったものでございます。もちろん先生御指摘のように、全然間違いないかという御質問に対しては、お答えむずかしいと思いますけれども、ただアムステルダムの会議におきましてもその後の会議におきましても、この数字につきましては、どこの国からも特にここはおかしいと言った国がないということが一つと、それから少なくとも現在のところ、まだこれに対して前の数字はおかしいじゃないかといって、より大きな権威をもってこれに反駁するだけのまだ数字が見つかってないという、そういう意味で、いまのところ一番信頼できる数字だと申し上げたのでございます。
  88. 竹田現照

    竹田現照君 まあ調査をする機関といいますか、そういうものも違っている、インドネシアの国内の事情も違っていると、そういう意味では、その点は理解しておきますが、ただこの援助額を決定をする際に、各国の援助が、あるいは債権残高なんていうものも調べないでやるんですか。たとえば六六年七月の三千万ドルを緊急援助をした際、それから去年の六月の五千万ドル借款と一千万ドルの無償供与、こういうようなものはどういうふうにしてきめられたのですか。これはもうすでに日本は出しておるわけですから、出すに至ったいろいろな資料その他というものはそろっていると思いますけれども、その点いかがですか。
  89. 上田常光

    政府委員(上田常光君) 六六年、これはスハルト政権ができましてすぐ三千万ドル緊急援助、とりあえずの措置の緊急援助でございまして、主として食糧とそれから肥料、それから綿糸のようなものでございますが、綿糸布だったと思いますが、これはそういった緊急援助的な性格のものでございましたので、いま先生のおっしゃいましたような債権債務の総額というものと直接関係はなく出したものであります。
  90. 竹田現照

    竹田現照君 去年の……。
  91. 上田常光

    政府委員(上田常光君) 昨年の六千万ドルにつきましては、これはスハルト政権ができましてから、インドネシアに累積する債権債務をどうしていくのかということで、六六年の春から東京で債権国会議を開きました。それで六六年の東京の会議及びその年のパリ会議におきまして、これは一応、六七年の暮れまでに支払い期限がきます、まず債権の繰り延べのほうをきめました。それと同時に、六七年の春のアムステルダムの会議でございましたか、そこで今度は新規の援助、つまり一応、債権は繰り延べてやるけれども、いまインドネシア政権を、経済を安定させるためには、いまやはり新しい債権を与えなければいけないということで、債権国会議でその総額が約二億ドルときまったわけで、その二億ドルのうち各国と相談して日本はやはり六千万ドルくらい出してほしいと言われて、インドネシア側からも要請があって出したわけでございます。
  92. 竹田現照

    竹田現照君 援助額の基準というのは、先ほどきまってないとおっしゃったのですけれども、基準はきまってないにしても、たとえばいま、今年度積算の六千万ドルが幾らになるかは別として、そういう場合に、いま私が質問している各国の援助額だとか、債権残高というようなものは、それを決定する場合に調べないのか、そういうことを聞いているのです。それはどうなんですか。あまり借金が多いが。
  93. 上田常光

    政府委員(上田常光君) いやもちろん全然そういうのを考慮しないというわけではありません。
  94. 竹田現照

    竹田現照君 債権が多いということは、借金が多いわけだから、まあ銀行でも、でかいところには、倒産させないために、借金が多くても金を貸すという論法で、国際間の金を貸したりなんかすることも、日本が借金が多いというのは、その先ほどの論法のようなかっこうでやはりやるのですか。これは相手の国……。
  95. 上田常光

    政府委員(上田常光君) 日本がどのくらい支払うかという、そういう標準につきましては、先ほど宮澤長官から御説明がございましたように、まあこれはすっきりした数式で出すような、そういう標準というものはございませんで、やはり日本の現在占めております国際的な地位及び日本とその当該国とのいろいろな関係、そういうものから、国際会議、特にこういう国際会議でも、各国から要請される額及びその当該国から要請される額及び日本とその国との関係並びにわが国の現実の財政負担能力というようなものを考えてきめられるわけでございまして、もちろんその中の一つとして、日本とその当該国との債権債務の関係、あるいは貿易関係、その他政治経済全般の問題を考慮されるわけでございますが、必ずしもいま先生がおっしゃったような意味での債権が多いから、それをカバーするためにというような、そういうようなものでもございません。もっと全般的な観点から、また特に外交的な交渉の場できめられることが多うございます。非常に多角的な要素があると思います。
  96. 竹田現照

    竹田現照君 いまお尋ねした外務省の経済協力局の出した六六年六月末現在の資料、これで現金ですね、おたくのほうから出している現金の項目、インドネシアの対外債務額は総体で二千八百万ドルのうち、日本の分として二千五百万ドルが残っている、こういうことになっていますが、これは大蔵省ですか、ことしの一月にリファイナンスされた、処理された分はどれくらいあるのですか、この中で。
  97. 柏木雄介

    政府委員(柏木雄介君) 債権国会議でリファイナンスをきめましたものは百八十日をこえるものについての債権だけでございます。ここに掲げてございます百八十日未満のもの、現金債権につきましては、リファイナンスいたしておりません。
  98. 竹田現照

    竹田現照君 そうするとあれですか、この二千五百万ドルというのは、いまほとんど返済されているというふうにとっていいのですか。それとも残っているのですか、そのまま。
  99. 柏木雄介

    政府委員(柏木雄介君) このことにつきましてはまだ全部入っておりませんが、ちょっと数字は忘れましたが、大部分は回収済みでございます。
  100. 竹田現照

    竹田現照君 大部分というのはどれくらいですか。わかりませんか。
  101. 柏木雄介

    政府委員(柏木雄介君) 大体三月末で約千六百万回収済みで、残りが九百万で、あとの分も全部本年内に回収する予定でございます。
  102. 竹田現照

    竹田現照君 これは例の九・三〇事件で、その当時インドネシアの支払い額の不払いになっているということがわかっていながら、輸出保険契約の停止をしなかった、それの失敗策ではないかと思いますが、これは朝日ジャーナルにちょっと詳しく書いておりますけれどもね。六六年の六月十二日号にいろいろなことが書いてあります。これはその当時の経緯をですね。そしてこれがリファイナンスの対象となって援助するということになれば、この記事は言わなくてもわかりますね。その当時の、六十四年の十二月にいろいろとやられたことですよ。通関実績の二千六百六十八万ドル。これはいいですね。別にこれ読み上げませんけれども、何だったら読み上げますがね、これが間違いであると困るから、読み上げましょうか。ここに書いてあるのは、「インドネシア向け緊急援助の綿布三千万ヤードは、回教の旧正月で、男性が女性に贈る習慣のサリー用布であって、それがないと社会不安が起るというインドネシア政府のたっての要請があったため、政府の円借款より、手っとり早い民間ベースの二年間延払いということにして、一二月二八日にやっと船積みをし、この日で保険をストップしたのであった。ところが、この一二月中に各商社はこぞってインドネシア輸出に精を出し、一二月の通関実績は二六六八万ドル、」になった。「代金が回収不能になるのを承知で、なぜ輸出するのか。そのカラクリはこうである。」というのは、いま私が質問したことに関連があるわけですね。カラクリというのは、「六カ月を越える延払いは、輸出貿易管理令で通産省の許可事項になっているが、許可をうければ、ほとんど自動的に輸銀融資が期待でき、この融資に対しては、輸出保険をつけることになっている。極端な言い方をすれば、貿易振興政策の手厚い保護の下で、商社は契約だけとってくれば、あとは危険負担なしに、もうけられるというのである。」こういうことを書いている。このことに関係があるわけでしょう。いま私がこの外務省の資料について聞いていることは。これ間違いですか、私の認識が。ちょうどいまの資料と合致するのです。六六年の六月末現在のことです。間違いであれば私はこれちょっと質問をやめますけれども、これ聞くと、そういう無理な輸出をして、そういう金になっていなければ、中長期の返済というものはできたのではないかと、私はこう思っているものだから聞くんです。このIMFの資料に基づく中長期のいろんなものがありますが、これはどうですか。
  103. 原田明

    政府委員(原田明君) 六五年の終わりごろにインドネシアのほうから、お正月用の綿布を緊急に輸出をしてもらいたいという非常に強い要請がございまして、それにこたえまして綿布の輸出が行なわれたことは先生御指摘のとおりでございます。そのころ、これと無関係インドネシア経済事情は悪化をしておったわけでございますが、インドネシアの中央銀行は、確実に代金の送付を行なってまいっておりました。ただ十二月の終わりになりまして、代金の支払いの事故が起こりましたので、保険が停止をされたわけでございます。その後、先生御指摘の二千五百万ドルの短期債権ないし現金債権といっております分が逐次回収をされておりまして、本年じゅうに回収の見込みがあることは、先ほどお答えがあったとおりでございますが、この中のどれがどこに入っているかというのは非常に不明確でございまして、その以前に行なわれました輸出についての現金債権で回収されていなかった分が、逐次回収をされているということになろうかと存じます。
  104. 竹田現照

    竹田現照君 インドネシアやその他の国を含めて、全体の援助計画あるいはまた資金計画というふうなものはつくってあるんですか。先ほどお尋ねした外務省の「経済協力のあり方について」、ここに書いてある程度の資金計画しかいまはないんですか。
  105. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいまのお尋ねは、わが国の対外援助についての長期計画があるかと、こういうお尋ねでございますが、外務省ではいろいろ検討しておられるようでございます。しかし、政府としてきまったものはございません。
  106. 竹田現照

    竹田現照君 これはあれですか、財政硬直化とかなんとかいう現在、効率的な運用というものをはかるためにも、早急に援助計画というものはつくっておく必要があると思うんですけれども、そういうことをいつおつくりになるという考え方があるんですか。これやっぱり総理大臣かな。
  107. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは考えてまいりますと、やはり国民総生産の伸びを一応想定いたしまして、そうしてどの程度の負担が可能であるかというわが国側の事情、それから国際間の事情はなかなかきまったものばかりでない、きまらないものが多いものでございますから、なかなかわかりませんですが、それに民間の経済協力がどうなるかという両方の事情を合わせるしかないのでございますけれども、どうも一つそれが非常にやりづらい事情は、例の一%という問題があったりいたしまして、これは目標年次がない目標であったりいたしますものですから、いろんな事情からそういう、長期計画を立てるに至っておりません。
  108. 竹田現照

    竹田現照君 立てるに至っていないけれども、早急につくるべき必要性はどうなんですか、あるんでしょうか。
  109. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) うまくできればそれにこしたことはないのでございますけれども、なかなか一%台にならぬではないかということを言うわけにもまいりませんので、その辺が非常にむずかしいところでございます。
  110. 竹田現照

    竹田現照君 これはあとに譲ります。  じゃ輸銀基金資金によりますインドネシアにおけるプラントの数は何件ありますか。そして、そのうち不成功に終わったもの、あるいはまた完成予定がきたけれどもでき上がらなかったもの、それは何件あるのかですね、その原因、これひとつお答えをいただきたいと思います。ちょっと場所を、私も資料持っていますから、できなかったところをちょっとおっしゃってください。
  111. 赤澤璋一

    政府委員赤澤璋一君) 私ども基金を担当いたしております面から先に御説明申し上げますが、経済協力基金が従来までインドネシア関係で投融資いたしました案件は、対象案件で七つ、全体で十四件でございます。対象案件別に簡単に申し上げますと、一つはニッケル鉱山の開発、それから次は森林開発でございまして、東カリマンタン、中カリマンタン、南カリマンタン、このそれぞれの森林開発、それが三件あります。それからもう一件ブル島森林開発、これはちょっと離れておりますが、森林開発だけはいま申し上げましたことでございます。それから北スマトラの石油開発、これが一件でございます。そのほかにセラム島の製糖事業、砂糖の開発、これだけは事業でございます。  簡単に概要を御説明申し上げますと、ニッケル鉱山につきましては、比較的順調にこれが推移をいたしておりまして、若干のおくれはございますけれども、現に月に一万トンないし一万二千トンベースで船積みが行なわれて、日本にこれが来ております。森林開発の事業につきましては、東カリマンタンが最初でございます。まだ現地の通貨が十分供給されない、あるいは労務者の集まり方が悪い等々の事情がございまして、これは必ずしも十分うまくいっているとは申しがたいと思います。最も新しく着手いたしましたブル島につきましては、これからでございますので、まだやっておりません。しかし全然材木が来ていないということはございませんので、毎月森林開発されたところからの材木は、逐次輸入されつつある、こういうことでございます。それから北スマトラ石油でございますが、これも必ずしも十分じゃございません。当初の目標からいたしますと、非常に遅延をいたしております。これも現地のいろいろな事情で計画がずれてきておりますのでおくれておりますが、しかし、これまた逐次おくれを取り返しつつあるというような状況でございます。最後に、砂糖の開発でございますが、これは最初セラム島ということで計画をいたしました。すでに第六船までの機材の運び出しは終わりましたけれども、その後政権が変わったりいろいろいたしまして、セラム島から開発の場所をジャワ島に変更したい、こういうことで、昨年からこの事業は一応中止となっておりますが、なお現地の大使とインドネシア政府との間で、今回新しく向こうがあと地の変更を申し出まして、ジャワ島の開発につきまして目下協議中、こういう状況でございます。いずれもこの対象案件七件につきましては、御存じのいわゆるPS方式というものでございます。まだなかなか、政変がございまして、いろいろな事情があって十分とは申しがたいと思いますが、私ども鋭意進みますように努力をいたしてまいりたいと考えておるわけであります。  以上基金につきまして、とりあえず申し上げました。
  112. 竹田現照

    竹田現照君 輸銀はどうか。
  113. 柏木雄介

    政府委員(柏木雄介君) 輸銀関係インドネシアに対する貸しでございますが、最初にいわゆる賠償引き当ての借款が十三件ございまして、総額で現契約が八千百万ドルでございますが、現在の貸し付け残高は本年三月末では二十五億円でございます。十三件であります。これは賠償の引き当てになっておりますので、逐次全部賠償で返済が行なわれております。それからそのほかに延べ払い信用、いわゆるクレジットライン方式によって援助した分が三十八年、四十年に千八百万ドルありますが、現在その貸し付け残が三月末で十二億ございます。それから四十一年の第一次円借款三千万ドル、四十二年の第二次円借款五千万ドル、計八千万ドルになります。この関係の貸し付け残は三月末で二百四十三億円となります。先ほどの基金関係でPS方式——生産分与方式における貸しつけでございます。これは輸銀関係では北スマトラ油田関係で三件、ただいまの債権が二十五億円ございます。それからそのほかに一般の延べ払い輸出プラント関係の債権関係でありますが、これは客車の輸出とか、船舶の輸出等の延べ払い輸出に伴う債権でありますが、これが八件、三月末の債権が四十九億でございます。  以上でございます。
  114. 竹田現照

    竹田現照君 先ほどもちょっと触れましたけれども、輸出奨励策の一つとしてインドネシアでBE制度を実施しているようですけれども、これによってインフレーションを押えようとしている、それが目的だったのですけれども、去年の六月に出されたやはりIMFの資料によると、あんまり成功しないと書いてある。一説には、これはだいぶかなりの成果をあげた、そういう説もありますが、また一面、「日本でも金にしぶい大蔵省官僚ばかりでなく、各省事務当局や、自民党内部においてすら援助をふやしても捨て金になるばかりだというBE制度にかなりの批判がある。」という説もあります。先ほど長官、BE制度についてのお答えも聞きましたけれども、実際インドネシア実情として、BE制度というのはかなりの成果をあげているのかどうか。いまちょっと読み上げましたように、政府内部、与党内部にもいろいろ批判があるといわれている。これは一体どっちがほんとうなんですか、実情は。
  115. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私も非常につまびらかには存じませんけれども、先般参りましたインドネシアの首相以下閣僚の話すところでは、結局いままでBEで吸い上げた現地通貨をきちんと積み立てて開発に使うということが有効に行なわれていなかったところに問題があったらしゅうございます。それで、その反省の上に立って、本年はこれは別にする。先ほどから竹田委員がしきりに言われますことはごもっともでございまして、消費物資をそのまま使ってしまっただけでは返済もむずかしいわけですし、片一方の開発の金をつくる、現地通貨をつくるという目的に沿わないわけでありますから、やはり別除をして、そうしてそれをプロジェクト開発融資に使うのだ、そういうたてまえでことしはいきますのは、IMFの指導があったからだと思います。そう申しておりますので、そこでそれがちゃんとやれれば、かなり有効にいけるはずだと、われわれの経験などから思いますのでございます。経局これはそれを運営する国民あるいは国民の指導者たちのものの考え方、資質等によるのであろうと思っております。
  116. 竹田現照

    竹田現照君 これからもBE制度を通じて援助をやる。そういうふうに思うのですが、いまの長官のお答えのように、このインドネシア側の意向もあって、一般のほうに回さぬ、かなり強い規制ということでありますが、依然として、まあ過去が過去だから、昔というほど遠い昔ではありませんけれども、過去が過去だけに、いまおっしゃったように大きな期待が持てない、そういう感じを捨てるわけにはいきませんけれども、いまIMFその他のかなりきつい指導監視のもとに運用なさると、こういうことを言っていらっしゃいますが、その点は先のほうで私がお尋ねをした外務省のパンフレットにも書いてありますが、内政干渉だとかなんとかいう、あるいはまた、ああいう国の民族感情を刺激するというような面も含めてかなり抵抗もあると思いますけれども、その国際機関の指導監視というものはどの程度効果をあげ得るものか、あるいは三億二千五百万ドルに対する国際機関インドネシア当局との間の了解というのか、何というのか、そういう国際監視機関のいろいろな要望その他を受け入れる態度というのですか、そういうものはどういうことなんですか、どういうふうになっていますか。まあ日本政府はかなりそういうことをいままでの轍を踏まないということを強くこの会議でも日本あたりが一番強く要請をしてきたのだということも聞いておりますけれども、いま私がお尋ねしたようなことは、どういうことになりますか。
  117. 藏内修治

    政府委員(蔵内修治君) 竹田委員の御指摘のとおり九月三十日の事件までのインドネシア政権には非常に指摘されるような不安な点があったことは事実であろうかと思います。しかしながら、現スハルト政権になりましてからは、なお幾多の困難な事情を包蔵いたしてはおりまするけれども、漸次平静、正常化の態勢に向かいつつあることは大体認めてやっていいのではないかと思います。さらにIMFチームが現に向こうに常駐いたしておりまして、向こうのいわゆる当局と密接な連絡をとりながら、今後の計画に参画をいたしておる状態でございまして、まあ監視とかいうことばが適当であるかどうかわかりませんが、かなり行き届いた指導というものができるのではないかと思います。それから、先ほど先生御指摘のように、IMFでも、商品援助じゃあまり効果がないのではないかという見解があるということもおっしゃいましたが、昨年十一月も、やはりアムステルダムにおける会議では、この商品援助インドネシア経済の独特の必要性に合致していると、こういう見解もIMFでは持っております。ただし、これは必要な物資の品目をかなり厳密に検討しなきゃならぬ。これは多年の経験によって何と何が一番民生安定上あるいはインフレの収束上有効であるということは、十分これは考慮する必要があるということはつけ加えてございますけれども、BE援助の効果というものを、IMFもかなり評価をしておると私ども判断をしております。
  118. 竹田現照

    竹田現照君 これは私のほうからいろいろと注文をつけることはやめますが、それで、この商品援助をするということになりますと、日本で援助をする分だけは日本に買いにくる。こういうことになるわけです。その際、日本のこの購買価格の決定というものは、買う者、売る者との間で契約をするということだけで済むわけですか。そういうことでいいのですか。向こうの買う人とこっちの売る者との間の契約だけでいいのですか。
  119. 原田明

    政府委員(原田明君) BE制度によります援助の場合には、BEを取得しました向こうの輸入業者と日本の輸出業者との間のコマーシャルの取引できまっております。
  120. 竹田現照

    竹田現照君 その場合、不当に安く売ったり、新聞などで伝えられているように秋葉原の電機のあの辺のかいわいからいろいろなものを寄せ集めてつくってトランジスターを売ったとか、あるいはインドネシア国民経済からいくととても購売力がないというようなテレビをたくさん持っていったとか、いろいろなことを伝えられていますけれども、そういうようなことに伴って、私が心配したような両方の業者の、これは言い方が悪いんですけれども、うまい汁、甘い汁を吸おうというような危険性というものを防ぐという意味で、基金なり輸銀なりがそういうようなことが行なわれないように検査をするというか、是正させる、そういうようなことというものは実際上できるのですか。もしできないとすれば、これは日本の対外信用にも関係をすることですし、また悪い不正事件も十分想定されることになるわけですけれども、そういうことを防ぐ意味からも何らかの措置をとるべき必要があるのじゃないかと私は思うのですけれども、そういう点についてはどうなんですか。
  121. 原田明

    政府委員(原田明君) 実際問題といたしまして、BEを取得した輸入業者と輸出業者との契約は自由に結ばれまして、その契約が直ちに輸出となってこちらから物が出てまいります。この間の手続はかなり活発に行なわれておるようでございます。また書いてございます商品の規格等々から見まして、個々の単価が適正であるかとか、あるいは品物の性質がきわめて公正なものであるかというような点のチェックは、窓口においてもなかなかむずかしいような段階ではないかと思います。しかし非常に極端な場合、たとえば何かの情報などでわかるというようなこともございましょうし、趣旨としましては、先生御指摘のとおり援助による物資が公正な価格で公正な条件で輸出されるように、何らかの手段を考えるべきではないかというふうに考えております。
  122. 竹田現照

    竹田現照君 何らかの手段を考えるというのですけれども、現実に行なわれ、またこれからも行われようとしているわけですね。ですからインドネシア側のいまのスハルト政権の再建に取り組む意欲は意欲として、そのことを正しく何かバックアップするというような意味も含めて、いま何らかの措置を講じなきゃならぬということは、やはり早急にすべきだと思うのですよ。そういう早急にすべき段階にあるものを、政府としては考えるというだけでは私は済まないと思うのですが、どういうふうに検討されているのですか。そしてその検討の結論というものは、それこそ早急に出るという段階にあるのですか。
  123. 原田明

    政府委員(原田明君) 通常の場合には、やはり輸入業者はできるだけいいものを安く買おうと思うわけです。また輸出業者は妥当な価格で輸出したいと思うわけでございますので、そういう自由な取引にまかせるということで、妥当な価格が確保され、また自由な競争という原理も働きますので、一応妥当な価格、条件というものが確保される仕組みになっているかと存じます。したがいまして実際問題としては、そういう問題が起こりますのは何かのごく例外的な場合ではないかというふうに予想されます。したがいまして私どもとしましては、過去において問題のあったような商品とか、そういったようなものにつきまして、今度インドネシア側と話し合いが行なわれます場合に、そういう品目を、たとえばBEのネガリストに載っけることを考慮するとか、そういう手段を講ずるのが一番効果的ではなかろうかというふうに考えております。
  124. 竹田現照

    竹田現照君 効果的なのはやっぱり効果的なんですから、それは早急に、いまおっしゃったようにリストに載せるとか載せないとかいうものがどういうかっこうになるのか、交換公文になるのかならぬのか、あとで聞きますけれども、私の聞いているのは、何らかの措置を具体的に実施の段階でどうするんだということを聞いているんです。半年先、一年先のことを聞いているわけじゃない。先ほどから私が聞いている趣旨をくみ取っていただいてお答え願いたい。
  125. 原田明

    政府委員(原田明君) どういう品目をネガリストに入れるかどうかということは、現在、昨年度の経験にかんがみました一応のネガリストがございますが、今後新しい援助の話が行なわれます際に、あらためてインドネシア側と話し合いが行なわれるわけでございますので、その際に、先方との話し合いの場所に持ち出すのが一番適当ではないかというふうに考えております。
  126. 竹田現照

    竹田現照君 商品援助のための融資となっていますが、商品とはどんなものを指すんですか。
  127. 赤澤璋一

    政府委員赤澤璋一君) 商品と申しますと、普通の定義で申しますと、いわば大体の場合には消費財を中心にした商品、こういうふうに考えてよろしいかと思います。
  128. 竹田現照

    竹田現照君 そうすると、軍需品だとか武器、そんなものは当然商品援助の対照にはなるべきことでもないと思いますが、それはいいですね。
  129. 赤澤璋一

    政府委員赤澤璋一君) 御指摘のとおりでございます。
  130. 竹田現照

    竹田現照君 それでは商品はこんなものだという限定というものは、業務方法書の中で規定をするんですか。この商品はこうなんだという規定のしかたですね、これはどういうふうにするんですか。
  131. 赤澤璋一

    政府委員赤澤璋一君) 別に当方といたしまして商品を規定するわけではございません。基金のほうで申しますと、両政府間の取りきめに基づきまして、基金が一定の金額をインドネシア政府に貸し付けるという契約をいたすわけでございます。その契約に基づきまして、先ほど来御説明申し上げましたようにBE制度という制度で向こう側が、インドネシアの中央銀行がBE証書と申しますか証券と申しますか、それを一般に売り出し、そしてインドネシア側輸入業者がそれをルピア貨を対価として買い取り、そして日本側の輸出業者と商談をして購入する、こういうわけでございます。その際、先ほどちょっとお話しのございましたような武器でございますとか、その他インドネシア経済の安定に適当でないと思われるものにつきましては、両国政府は合意をいたしまして、いわゆるネガチブ・リストというものをつくりまして商品名をあげております。ここに載っておる商品は、今回のBE制度によりましてインドネシア輸入業者は日本から買うことができない、それ以外のものについては購入はできる、こういう仕組みになっておるわけでございまするので、特に商品の範囲はこれとこれとこれというふうに詳細に規定をしておるということではございません。
  132. 竹田現照

    竹田現照君 インドネシアの場合は、BE制度でいまお尋ねをした軍需品だとかなんとかというものは除外をされることはわかりました。しかし、いまさしむきの問題ではないと思いますが、法律改正は将来のことも考えて出されているわけですね。そうすると、ほかの国にはこのBE制度なんという特殊の制度がないわけですね。ない場合に、私がいまお尋ねをした軍需品だとか武器だとかいう問題が将来出てきた、あるいは出てくるということを想定をした場合、私は国内法上の何らかの規制というものはしておくべきではないかと考えるのですけれども、またその一方、供与を受ける側のいろいろな需給計画というものもあるわけですから、規制をすることは内政干渉なんだというようなことを言われるおそれもあるわけですけれども、その点は、インドネシアのほうはわかりましたけれども、将来を想定される場合には、その点はどうするのですか。これは将来の想定ですけれども改正案が将来のことも想定して出ているわけですから私はあえて聞くわけです。   〔委員長退席、理事宮崎正雄君着席〕
  133. 赤澤璋一

    政府委員赤澤璋一君) この経済安定のためのいわゆる商品援助でございますが、国によりまして、あるいはその時期によりまして、いろいろな態様があろうかと思います。今回の場合は、御指摘のとおりBE制度ということでございまするので、先般来るる申し上げておりますような、いわゆるネガティブ・リストというような制度を持ちまして、いまお話しのように経済の安定に役立たないような、たとえば武器類であるとか、そういうものは除かれておると、こういうことでございます。おそらく将来を想定をされますいろいろな態様の一つといたしましては、こういった制度がない場合、しかもまた基金等を使いましてその国に経済安定のためのいわゆる商品援助をするというような場合を考えてみますると、そういった場合には、おそらく両国間でどういう商品が最もその国の経済安定に適当であるのかという相談をいたしまして、おそらく商品名等もはっきりきめ、金額等をきめて、両国間のそういう取りきめに基づいて商品が日本から輸出される、こういうことになるのではないかと考えております。
  134. 竹田現照

    竹田現照君 このインドネシアに関連してお伺いしますが、五月十日の日本経済によると、日本の印和通商というのですか、本社は東京で、軍需品など八十億円のインドネシア国防省と仮契約ができたという記事が出ていますね、こういうのは、いまのBE制度による軍需物資その他との関連もありますが、こんなのは間接的な軍事援助ということ、いまの直接援助計画とは関係ないかもしれませんけれども、しかしまた一面私が考えると、そういう民間貿易の中で、そんな金があるなら、援助資金の削減その他のほうとの関連にはどういうことになるのかなと、私は専門家でないのでわかりませんけれども、一面ではこういう貿易をやる、一面ではいま論議をされておるような援助要請がある、こういう面はどういうふうにお考えになっているのですか。これは私疑問なものですからちょっとお伺いしておきます。
  135. 赤澤璋一

    政府委員赤澤璋一君) ただいま御指摘の具体的な案件につきましては、あとから通産省のほうから御説明があろうかと思いますが、いまのところ、インドネシアとの間では、とりあえず、こういった経済安定のために必要な借款をするという状態でもございますし、また輸出保険もストップになっておりますので、いわゆる通常の貿易というものは行なわれがたい状態にあるものと私ども考えております。そういうことでもありますので、消費財等を借款でもって向こうの国に送ってやるということが必要になっておるのだと思います。その具体的な案件につきましては通産省の当局から御説明をすることになると思います。
  136. 原田明

    政府委員(原田明君) 御指摘の新聞の記事は、私ども拝見をいたしまして可能な限り調べてみましたけれども、現在のところ、そういう商談がまとまりそうであるとかいう話は全然聞いておりません。したがいまして、まだ単なるうわさの段階ではないかと思いますが、インドネシアに対する援助に関します限りは、すでに兵器類はネガリストに掲げられておりますので、こういう武器等のものが援助という形で向こうに出るようなことは絶対にないというふうに考えております。
  137. 竹田現照

    竹田現照君 調査の段階ではっきりしないというならそれには触れません。  それでは、輸銀基金の業務方法書を見ますと、業務区分が明確でありません。昭和三十八年の五月七日の理事会の申し合わせというものがありまして、業務の調整基準を定めていますが、この基準によって機械的に輸銀分担あるいは基金分担というものが分かれられるのかどうか、このところをひとつ、輸銀とそれから基金との相違ということをお聞きする意味において、ちょっと聞いておくのですけれども、どうですか、これ。
  138. 赤澤璋一

    政府委員赤澤璋一君) これはもう御存じのように、経済協力基金は輸出入銀行から通常の条件では融資のしにくいというものを扱うということが法律に明定をされております。また輸銀法と基金法の条文の面におきましても、それぞれ、輸出入銀行はいわゆる輸出金融の補完機関であり、経済協力基金海外経済協力の促進のための機関でありということで、本来的にその性格が違っております。そういうことを受けまして、両当局間で先ほど御指摘になりましたような申し合わせのようなものができておるわけでございますが、これ、いずれも法律を受けまして具体的な案件をどうさばくかということをきめたもののように考えております。  いずれにいたしましても、海外経済協力と申しましてもいろいろな形のものがございまするので、これはある意味で見れば当該国に対する援助あるいは協力であり、また裏返してみれば日本からのプラント輸出あるいは延べ払い輸出であるというような観点もございます。そういうことから、具体的の個々の案件につきまして、いわば、はたしてどうかというようなこともあり、また関係の業界その他の面においても、これはどっちへ持っていったらいいのかというような面もございまするので、一応の基準といたしまして、輸出入銀行が融資しがたい案件ということではございますけれども、大体農林漁業でございまするとかあるいは土木事業、いわばこういったものにつきましては大体輸銀ベースに乗らないものが多いだろうということから、原則として基金が取り扱うのがいいのじゃないか、また当該事業でございましても現地の通貨分が比較的多いというようなもの、これは実はプラント輸出等の場合、当該機器そのものに対する融資よりも少しはみ出るものでございますから、そういった据えつけ費の関係その他においても現地通貨分が三割を越えるようなもの、こういったものはどうも輸銀の性格上やはり取り扱いにくい、こういうことではないだろうか、こういったことから、大体一つのめどといたしまして、そういったような基準と申しますか、考え方を両当局で話し合っておるようでございます。もっとも、具体的な個々の案件になってまいりますると、いま申し上げましたように、一面では経済協力であり、反面、返してみればプラント輸出である、あるいは延べ払い輸出である、こういうことでもございますので、原則はそういうことで一応の取りきめはいたしておりまするが、個個の案件については、さらに輸銀基金両理事者間の連絡協議会を持っておりまして、そこに常時はかりましてお互いに相談をしながら法律のたてまえを解釈をいたしまして、そうしてきめて処理をいたす、こういうことになっておるわけでございます。
  139. 竹田現照

    竹田現照君 それは、両当事者間の意見調整あるいは協議事項というように、適当にそのときに必要だということだけを定めるのでなく、そのことが明確でないのであれば、法律的に改正すべきところはしておく必要があるのじゃないか、そう私は思うのですけれども、このままの状態にしておくということはどうなんですか、やはり法律的にもすっきりさしておいたほうがいいのじゃないですか、一目りょう然わかるように、どうですか。
  140. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは前から、実はいろいろな議論がございまして、いま竹田委員の言われましたような議論もあるのでございます。つまり、相当似たような部分もあるわけでございますから、たとえば一緒になることが適当であるか、あるいはまたむしろ世界の趨勢は、いわゆる銀行的な性格のものと商業的な性格のものと、それからそうでないものとは、むしろ機関を分けるようなのが最近の傾向であるというような議論がありますし、   〔理事宮崎正雄君退席、委員長着席〕 まあ政府借款的なものは基金で、民間的なものは輸銀ではないか、そういう考え方もございまして、実はこの問題についてはだいぶ長いこといろいろ議論がございます。各省の所管の関係もございますのと、それからまた海外経済協力の何か一つの役所なり、一つの部門で統轄すべきじゃないかという議論もございまして、そういうこともからみまして結論が出ておりません。しかし、現実には輸銀基金両者が一つの申し合わせをいたし、また具体的なケースは定期に協議をしてきめているというのがいまの状態でございまして、これは将来のやはり懸案として、御指摘のような問題が残っておるというふうに私ども考えております。
  141. 竹田現照

    竹田現照君 これはいま長官お答えになっただろうと思うのですが、臨調の答申もありますし、これは先ほど触れられましたように、私は基金政府ベースのものだけを融資の対象にすべきだ、それからいま国際的に経済援助機関は独立しているものが多い、そういうようないろいろなことも考えて検討すべき段階にきていると思いますが、たなざらしになっておるのですね。臨調の行政改革に関する意見なども、その他の点についてはいろいろのことを言っておりますが、これは行政改革全体の中で検討するのだというようなことでなく、まともにこういう問題は、経済協力というものは、これからどんどん重要性を帯びてくるだけに、早急に何らかの結論を出して、すっきりしておく必要がある、そう思っていますが、各省のなわ張り争いでなかなかできないといえばできないのかもしれませんが、これはどうですか。そのむずかしいなわ張り争いとかなんとかいうのではなく、早急に私はすっきりすべきだ。これは一つの提案として申し上げますが、いかがですか。
  142. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 経済協力の機構そのものがまず一元化できないかという問題と、それから協力基金輸銀との関係がもう少しすっきりできないかという問題とは別の問題でございますけれども、しかし経済協力全般ということになりますと一つの問題でありまして、ただいま権限云々というお話もございましたが、私ども経済企画庁では、経済協力基金をおあずかりしておりますけれども、もし一元的に運用できるというふうなことになれば、私どもいつでもこの権限はこだわるつもりはございませんで、一つにまとめることができればほんとうはそれがよろしいわけでございますから、私どものほうとしてはそういう心がまえを常に実は持っております。
  143. 竹田現照

    竹田現照君 次に、この通産省の出した「経済協力の現状と問題点」、これによりますと、先ほどもちょっと触れましたが、いま払っている賠償、これは七七年で全部済むことになっております。これはもう間違いないわけでしょう。そうなるとDACの決議に近づけるためにも、この賠償にかわって輸銀なり基金なりの資金量というものは当然に拡充されていかなければならない必然性を持ってくると思うんですね。しかもそれは特に金利も安い、しかも借款供与だと、こうなってくると、特に金利の面だけを考えてみても、海外経済協力基金資金の拡充、これが相当大きな額になってくると思うのです。しかしそれにもかかわらず、現在の基金法からいくと、予算、決算とも経済企画庁の長官の認可と承認だけで済んでいて、輸銀のように、国会の議決というものは必要としない、これはやはり私は問題ではないかと思います。当然に国会の審議対象に乗せるべきである、これは私どもが言うばかりではなくて、政府、与党に直接密接に関係のある経済同友会のこの海外経済協力に対する御提言の中にも、このことは触れられております。どうもはっきりしないと書いてある、言っている、経済同友会でも。それで、国民の理解と協力を得るためにも、はっきりと海外経済協力予算というものは計上して国会の審議を受けるべきである、そういうふうに指摘されておりますが、この点についてどうお考えになっておりますか。膨大な金になればなるだけに、しかも経済協力というものについて外交ベールというようなかっこうで、とかく論議が国民の前に明らかにならない。そしてその結果大きな疑惑というものが生まれている。そういうことを解消するという意味からも、私はぜひ必要である。そう思いますが、これはどうですか。  総理が間もなくお見えになるから、総理からこれはお答えいただいてもいいのですが。
  144. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 一般政府関係いたしましたいわゆる政府関係機関というものはたくさんございますけれども予算を御審議願っているものもあり、そうでもないものもありますが、一般論といたしまして、これは機動的な仕事をする、いわばやや企業に近い、あるいは金融業に近い性格のものは、その機動性を確保する意味で、予算書をきちっときめることはむずかしい。それは主務大臣の認可等でやっているというのが大体原則のようでございますけれども、少し立ち入って考えますと、どれが機動性がある、どれが機動性がないということには、やはりいろいろ問題がございまして、全般的にやはり検討する必要がある問題ではなかろうかと思っております。  委員長、それから恐縮でございますが、先ほど大矢委員の言われました数字をいま申し上げてよろしゅうございましょうか。
  145. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) あとでよろしいそうですから。
  146. 竹田現照

    竹田現照君 ただいま私が質問いたしました点は、これからだんだん大事になると思いますが、見通しとしてちょっとお伺いしておきますが、外務省のあれだと十三億幾らになることになっておりますが、そういうことになるかならないかは別にして、印刷して出されたものには十三億幾らと、これが総生産ということになると、十五、六億になりますか、そうなった場合を想定すると、輸銀基金との金の割合というものはどういうことになりますか。私の先ほど説明したように、金利の面その他からいくと、基金のほうの金というものは相当大きくなりませんか。それは大体外務省のあれのそのとおりになったと想定した場合に、基金の金はどれくらいになりますか。これはそろばんを入れたことはないのですか。
  147. 上田常光

    政府委員(上田常光君) いま外務省の事務当局がつくりました試案についての御質問でございますから、私から一言申し上げますが、この算定いたしましたのは、ごく事務的な、かりに一%近くになるために五カ年間やったと仮定したならばどういうことになるか、こういう一つの計算をしたのでございますけれども、それだけでございまして、それ以上に、現実にこれが基金から資金化するというところまで立ち至ってきめたとか検討したというような、そういうものではございません。
  148. 竹田現照

    竹田現照君 これは大事なことですがね、十三億幾らにならないにしても十億ですね。十億としても三千六百億ですね、これは国の金としてはたいへんな金ですね。これが何かさっぱりわけのわからない。わけのわからないといっちゃ悪いですけれども、まあわけがわからないのですよ。すっきりしてないのですから、予算書の上では。こういうことでは、やはり私は問題があると思うのですよ。だからやはり一目りょう然わかるようなかっこうで、しかも国会の中でも十分の論議ができることを素材として政府は提供できるようなかっこうにしておく基本的な問題だと私は思うのですけれどもね。どうもこれはいままでのお答えでは納得いかないのですがね、これをすっきりしてもらいたい。
  149. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 海外援助につきましては、有償援助、無償援助がありまして、無償援助といいますと、まず賠償、贈与、それから国際機関への出資、分担金それから技術協力というようなもので、当然これは予算審議対象となってくるものでございます。有償のほうは、国の出資金とかあるいは財政投融資ということを通じて別個の機関が援助するものでございますので、全部国会の審議を得られるという性質のものでないものも入っておりますので、したがって、この全貌がわかりにくくなっているようでございますが、いま内閣の予算の概算というようなものにつきましては、これをわかりやすくするために、各省に配布された予算を全部集めて、貿易振興及び経済協力費として、全部を集めて見やすいような編成をして、閣議の決定をするというようなことになっておりますので、今後国会に対してもこれを説明が十分にいくように一目りょう然になるようなそういう表をつくって御審議を願うということが一番いいのじゃないかというふうに考えておりまして、こういうものについては十分今後研究をするつもりでございます。
  150. 大矢正

    ○大矢正君 いまの質問に関連してですがね、四十三年の貸し出し規模からいけば四百四十億円、基金それ自身は。ですからそうたいした大きな金額でないということにあるいはなるかもしらぬが、しかし、将来これはもうどんどんふえていくことは間違いないわけだね、総対的な対外的経済協力という面からいけば、基金それ自身が予算上果たす役割りというものは、かなり大きくなってくる、いま大臣が言われたとおりに、これは予算書の片すみにちょっと載ってくるけれども、現実には、基金はどの程度の運用規模をもって借款を与えるかという単なる総体的な数字が出るだけであって、どのような計画に基づいて本年度は具体的にどの国にどういう方法で、どんな考え方で協力をするのかというようなものは、全然何も出てこないでしょう。予算書だって、ただ政府の出資とそれから資金運用部の財投計画の中でちょっと数字が出てくるだけの話であって、どんなことを一体やろうとしているのかということは、これは全然出てこない。しかも法律の上で今度はいわゆる商品援助というものが新たに加わるということになったら、何をやっても国会には全然出てこない、極端な表現をすれば、ポケットから金を出して、適当にインドネシアでもあるいは台湾でも話し合って、ことしはおまえのところ、これだけくれてやろうかということで、国会が終わってから話をつける、そういうやり方をだんだん金額がふえていったときに認めることができるかどうかという本質論の問題がある。  それからもう一つは、さっきも竹田君が言っているとおり輸出入銀行と基金との関係だけれども、実際にたとえば海外の諸国の、東南アジア諸国の実情を調べるにしたって、あるいは信用を調べるにしたところで、何をやるにしてもかなりの調査機関というものがやはりなければ、はっきりしたものは出てこないことになるでしょう。ところが、百人程度のこの基金の人間で一体何ができるか、金の出し入れをやっているだけであって、対外的の信用の調査なりその国の経済現況なり、将来どうなるかなんという問題を調査するような、そういうような力なんというのは現実にないわけだよ。だから行政機構の簡素化とか、そういう議論があるとすれば、この際、やはり機構上からも基金のあり方という問題を考える必要があるのじゃないかということの二点の機構上の問題と、それからほんとうにポケットから金を出すようなやり方の、財政上、予算上のあり方がいいかどうかという二つの問題があると思うのですね。それをひとつもう一回答弁してください。
  151. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 今後まあ総生産の一%というようなことはたいへんなことでございますので、年々相当額がふえていくということが考えられますので、したがって対外協力援助というようなものについて国会の御審議を得る得方というようなものも、現状はさっき申し述べましたようにこれから検討する問題はたくさんございますので、十分今後の問題として検討したいと思います。
  152. 竹田現照

    竹田現照君 総理がお見えになりましたから、いまお尋ねしているのは年々これからの海外援助の金というものが膨大なものになってくる。しかし、これは国会の審議が特に基金だとか、そういうものは国会の議決を必要としませんから、こういうことではいかぬ、海外経済協力にからんでいろいろなことをいわれる。国民の疑惑を一掃するという意味からも、国会の審議で明らかにすべき方法をとるべき必要がある、そういう意味で本質的な問題だからということで、いまやり取りやっておったのですけれども、これはやはり総理からひとつお答えをいただきたいと思います。
  153. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) まあ先進工業国相互でも話し合ってGNPの一%というのですから、それまで援助に振り向けよう、こういう申し合わせをしております。また日本も先進工業国の一員として、それを実現するように努力したいと思っております。しかし各国で一%という問題は、それぞれの国で違うと思います。日本の場合はたいへんな成長率を示しておりますから、毎年毎年一%はどんどん変わって金額がふえておる。したがって経済成長率、非常な高度の発展をしておる日本の場合には、なかなかこの一%まで努力するといたしましてもなかなか困難さがある。その上にただいま言われるように国会の審議等も十分できないのじゃないか、こういうような問題もある。ところが、もう一つ私ども考えなければならぬのは、各国が協力して開発途上国に援助するといたしましても、あまり手のうちが前もってわかるような事柄もあまり好ましい方法ではないのですね。したがって、ただいまの御審議をいただくにいたしましても、そこらになかなか困難なデリケートな問題があるだろうと思います。ただいま大蔵大臣はそれらの諸般の事柄を総合的に判断をいたして、そうしてただいまの国会の審議等におきましても、さらに工夫して、まじめにひとつ検討してみよう、かように申しております。私も確かに検討すべき問題だろうと、かように思いますが、この問題にはただいま申し上げるような幾多のむずかしい問題もあると思います。これもあらかじめ御承知おき願って、そうして皆さん方の御協力をお願いすると、まあこういう態度で政府もありたいと思います。   〔委員長退席、理事宮崎正雄君着席〕  申すまでもなく、これは、政府援助すると申しましても、政府が特別な資金を持っておるわけじゃありませんし、申すまでもなく、国民の負担でありますから、そういう意味において、これが適正に使われなけりゃならない、そういう意味で国会の審議がやはり十分行なわれなけりゃならぬ。こういうことも私ども考えますので、いまの形は必ずしもその方向でない。まあ予算編成上の問題もあると思います。目的主義的な予算ができると、比較的に御審議が容易ではないだろうか、かように思いますが、これらのことを含めて、総合的に、ひとつ大蔵大臣ばかりでなしに、政府として検討するということを私からもお答えしておきます。
  154. 竹田現照

    竹田現照君 いまの問題は、まだ他の委員質疑があるそうですし、総理の出席時間の関係もあるそうですからほかに移ります。  私の時間もきておりますから、ひとつ総理に、経済協力行政の一元化の問題について、ちょっとお尋ねをしておきたいと思います。  いま、各省ばらばらになっておって、海外経済協力の実があがってないと、先ほど実は、いまの問題で、経済同友会の指摘を持ち出して、私、質問したのですけれども、やはりこの経済協力行政についても同じことが指摘されております、経済同友会からも。わが党もまた、かねてからこの問題を、責任体制というものを明らかにすべきであるということを主張してきておりますけれども、先ほども宮澤長官といろいろと問答をやっていることの中でも、各省のいろいろなことのなわ張りが云々ということもありましたが、これは、インドネシアにしぼって見た場合でも、たとえばインドネシアの一九五六年度から六〇年度までの第一次五カ年計画におけるこの援助を受けるほうの国のことでも、日本の経済企画庁に相当する国家企画庁というものが、当初、計画調整の専門機関として発足をしたけれども、日本の各省庁のなわ張り争いと同じように、各省ばらばらのことがやられて、結果的には、何だか資料収集の機関に堕してしまったと、まあ失敗だと、そういうふうな受ける側のこともありますが、これを逆に日本の場合に当てはめた場合、やはりいまのような一貫した管理をする責任体制というものが存在をしないということは、このインドネシアと、これは逆になるか同じようなことになるか——大体同じような轍を踏む、そういう結果になりかねないと思いますので、これは臨調の答申もありますし、先ほど来触れましたように、わが党のかねての主張もありますし、政府、与党ときわめて密接な経済同友会自体の、ごく最近における指摘といいますか、提言といいますか勧告といいますか、こういうこともあるわけで、この点は、経済協力行政の一元化、これは言うべくしてなかなかむずかしい問題でありましょうけれども経済協力が具体的にさらに大きなものになって大事なものになりていく過程の中で、早急に手をつけなければならない問題であろうと、そういうふうに思いますから、この点について総理のお考えを聞いておきたいと思うのですが、いかがですか。
  155. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) この経済協力行政、まあ援助行政というか、これの一元化、これはいまもお話しになりましたように、なかなかむずかしいことですがと言われる。確かにこれはむずかしいことなんです。これは、まあ別に私はことばじりをとらえて言うわけじゃないのですが、実際にむずかしいのです。   〔理事宮崎正雄君退席、委員長着席〕 ことに御承知のように外国に関することだから外務省だ、かように申しましても、金を出すのは大蔵省だし、またその金が向こうで使われるその場合に、商品援助または企業進出と、こうなってくると、通産省に関係があり、経済企画庁に関係がある。ことに援助した後にわが国とやはり競争の立場に立つと、こういうことも考えると、なかなか複雑なものなんです。それを単純化して外務卿だけに一元化すると、それは外交はうまくいくかもしらないが、大蔵省のほうにずいぶん無理を言うようなことにもなる。でありますから、いまのようなことでは、問題が起こると関係の省で集まって、そうして相談をしてそうしてきめると、こういうことをしておりますが、私はいまの協力の会議、それを通じてやることが比較的目的を達するのじゃないだろうか、かように思っております。それにいたしましても、それぞれの役所の立場でそれぞれ主張いたしますから、簡単なものではありません。外務省と大蔵省だけの関係をとってみましても、外務省のほうは、非常に査定が甘いというわけじゃないが、なるべく外国の立場も理解して、そうして話をしようとする。大蔵省のほうとすれば、外国も外国だけれども、もっと大事なのは自分のほうじゃないか、わが国内のことを考えると、そういう金は出せないと言う。これは当然のことで、さらにまた通産省が入ってくると、これは援助した結果が、あとで今度は日本の産業と競争の立場になるのじゃないか、また商品援助をすると言っているが、そう簡単に日本の産業形態では出せないじゃないか、ことに援助計画はその年限りのものだ、そのために膨大な施設を持つというようなことになれば過剰生産になるから、それはまたたいへんだ、こういうようなわけで、なかなか話がむずかしいのです。しかし、そこらをまとめていくのが私の責任であり、また内閣としてそれだけのことを当然やらなければならない。まあいろいろおしかりを受けつつも、そういうことでそれぞれやっております。だから、機構を単純化すると言われるが、いまのような方法が比較的実際に合うのじゃないだろうか、かように思います。しかし、せっかくお話もございますし、他のほうから見ると、何だかもどかしい感もするでしょうから、そういう意味で、政府がいまの状態でもう固定してしまうという考えを持っておりません。さらにいい方法があればくふういたしますが、ちょっと見つかりかねているということを率直に申し上げてお答えといたします。
  156. 竹田現照

    竹田現照君 それでは私の質問は最後です。  総理に、これはこの法律案審議する一番最初にお聞きをすべきことなんですけれども、総理がお見えになりましたら私はお尋ねをしようと思って残しておいたのです。  いままでの審議の過程の中でもちょっと触れましたが、低開発国に対する経済協力というものは、もういま国際的にもきわめて大きな重要な問題になってきている。特に総理が去年東南アジアに行かれてから、日本においても一段とこの問題について関心が高まってまいりました。しかし、この経済協力というものの全般について、日本がどういう態度で臨むべきか、臨もうとするのか、そういう政府の方針について私は先ほどから企画庁長官以下にもお尋ねをいたしましたが、さっぱりはっきりしておりません。はっきりしておらないから、日本の国論というものも、それについてどうだということの高まりもない。そういうようなことで、今日いろいろと国際的な動きなども考えながら、日本がこの重点施策としてとるべき方向というものを明らかにしていく必要がある。そういう意味で総理大臣は、わが国経済協力の重点施策というものをどのようにお考えになっていらっしゃるのか。これは基本的な問題でありますから、私はそのことをお尋ねをして質問を終わりたいと思うのですが、明確にお答えいただきたいと思います。
  157. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) わが国の戦後のいき方、これはかってのような膨張政策、あるいは帝国主義的な考え方は清算する、そうしていわゆる平和に徹した国として発展していこう、そういう決心をしたわけですね、それでスタートいたしました。いままでの国際紛争の多くを取り上げて見ますると、やはり貧困がしばしば紛争の原因になっているということは、これは見のがすことのできない状況であります。あるいは飢餓、さらに疾病、あるいは教育等の問題いろいろからんでおりますけれども、そのうちでもこの南北間の格差の問題、これなどはどうも国際緊張をかもしやすい。そこで、日本のような平和国家として考えた場合に、やはり国際的な緊張を緩和し、そうして平和を願うという立場から、お互いに繁栄への道をたどる、そうして国民生活を豊かにする、そういうことが、そのまま看板どおりとられるような国柄であればたいへんしあわせだと思います。これは日本の新しい使命だと思っております。そういう意味のいわゆる経済膨張の国でもない、昔からしばしばいわれますように武力侵略はしない、今度は経済侵略に変わった、こういうようなことを思われないような国にならなければならない、これが新しい憲法のもとにおける日本の行き方だと思います。そこで先進工業国として、ほんとうに平和を愛好するその立場から、日本が何か役割りを果たすことがあればひとつしようじゃないか。まあ幸いにして南北間の格差をなくしよう、開発途上の国に対してもあたたかい手を差し伸べよう。しかもこれが日本一国じゃなく、国際間の話し合いの場においてそういう方向がはっきり打ち出された、それがいわゆるDACの会議でございます。そういうことに日本も賛成をして、今日取り組んだわけでございます。ところが、世界各国とは申しましても、日本の場合は、アジアにいるのでありますから、アジアの諸国が独立を達成し、そうしてそれが繁栄してくれば、必ず国際緊張、これは緩和される、かように考えるわけであります。私は、昨年東南アジア諸地域を訪問いたしました。これなども全体として考えれば、地域の平和、これを願うという、そういう気持ちからでありますが、しかし出かけていけば日本と当該国二国間の問題、それをやはり解決することに重点を置いて、そうして国際的な場においてきめる事柄もあるし、二国間だけできめることもある。その二国間だけできめることに重点を置いて私は各国を回ったわけであります。国際的な機関というのはアジア開発銀行であるとか、アジア農業基金の設置であるとか、こういう問題等でございます。また二国間の問題だといえば、その両国の間で貿易の伸張をいかにしてやるか、日本の場合はこれは企業の進出、技術的な援助もさることながら、経済援助なりが真にその国の経済発展に役立つようにこれをひとつつとめていこう、こういうような意味貿易の拡大をはかりつつ、援助の効果が上がるような事柄を二国間で話し合っていきたい。私はその点では、ビルマに対しましても、タイに対しましても、マレーシアに対しましても、シンガポールでも、またフィリピンでも、インドネシアでも、みんな同じことが言えるのであります。比較的そういう意味の問題がただいまないのは中華民国と台湾ぐらいのもので、韓国もただいまたいへん要望しているし、中華民国はいまのところ一応協力援助、その金がきまって、それが全部まだ使っておられませんが、そういう意味でほとんど解決しておる、豪州やニュージランドにはこれはございません。いま私があげましたような諸国には、それぞれの国においてそれぞれの形の援助が望まれておる、そういうものを私どもの可能な範囲で、国内の問題で多くの問題を控えておりますから、外国に援助するにいたしましても、やはり国内の問題を絶えず考えつつ私ども援助に踏み切るわけであります。それが私ども考え方であります。ところで、いままでは協力援助経済援助というものが、いわゆる今回御審議をいただいているような基金法——基金ではございませんで、どちらかといえば輸銀資金等がいろいろに使われてきた。本来からいえば輸銀貿易拡大の資金なんだと、援助のものはもっと別のものがあってしかるべきだ、だから今回の基金法改正して援助の分とそれから貿易拡大の資金はやはり明確に区別することが必要だろう、かように思ってただいま御審議をいただいておるわけであります。まあ私はこのいき方ならば、在来からいろんな問題を起こしましたけれども、少なくとも大筋としては今度はわかりやすいのじゃないか、そういう意味では誤解を招かなくても済みはしないか、かように実は思っておるような次第であります。そういう意味でたいへん会期も押し迫って御多忙の際にもかかわらず、こうして基金法案をぜひ成立するように御協力を願っておるような次第でございます。
  158. 近藤信一

    近藤信一君 総理に若干質問をいたしますが、私ども商工委員会では、なかなか総理の姿も見ることがまれでございまして、会議録を見ますると、衆議院の商工委員会にはしばしば出席しておられるけれども、本院の本委員会にはなかなか御出席していただけません。私の記憶によると、これで、五十八国会は二回だと思うのです。万国博覧会といまの法案と二回なんですが、そこで、まず私は基本的な問題について総理に一言お尋ねしたいのですが、昨日も、私、担当大臣の御所見を伺ったわけでございまするけれども、総理も御承知のように、この法律案は非常に重要法案であると、こういうことで三月に国会に上程されたわけなんです。ところが、本委員会審議するというこの日数というものは、一昨日、衆議院の本会議でこれが採択されまして、昨日の委員会から私どもこれの審議に入ったわけなんです。これは今回だけでなくして、私ども過去二、三回にわたっていわゆる重要法案であるというものを会期末のぎりぎりに私ども審議しなきゃならぬ、そうして十分な審議もすることができずにこれを私どもは採決をしておるわけなんで、このことは、提案理由の際にも大臣が慎重審議していただきたいと、こういうおことばがあったわけでありますが、ところが慎重審議する時間が大体ないわけなんです。そこで、いよいよ第五十八国会も百五十日間の期間というものは本日で終わりなんです。十日間の延長は議決されましたけれども、実質上はきょうで私は終わりだと理解しておるわけなんです。その本日のぎりぎりに持ってきて本法律案をあなた方政府としてはこれはきょう上げていただきたいと考えておるだろうと思うのです。しかし、実際は私どもは慎重審議しようといたしますならば、わずか数時間では、これは私質疑は終わらないものと、こう理解するわけなんです。しかし、私どもも長年国政に参与いたしましていろいろと法律案と取り組んでおりまするから、政府の苦衷などにつきましても十分理解はしております。そこで、できるだけの協力はさしていただきまするけれども、やはりこういうあり方というものがいいのかどうか。総理は、それは野党がごたごた言うからこうなったんだと、こう言われるかもしれませんけれども、野党がいちゃもんつけても、その執行の責任というものは政府にあり、さらに総理に責任があると私は思うのです。したがいまして、この点について、こういうあり方というものが、これは将来もまた繰り返されるのじゃないかということを私心配するんです。一体こういうことがいいか悪いか、総理はどのようなお考えを持っておられるのか、まずこれをお尋ねいたしまして、次に入りたいと思います。
  159. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 近藤君からずいぶん手きびしい質問を受けまして、実は私はだいぶ困っておりますが、申すまでもなくベテランでいらっしゃるから、こういう法案の扱い方もおなれだろうと思います。また明晰な頭脳の持ち主でありますから、わずかの間にもこなされると思います。しかし、大体この両院制度のもとにおいて、正式な審議もさることだが、やはり予備審査というものの期間が大体あるわけであります。私は、そういうものが十分うまく使われてしかるべきではないか。また、政府自身が提案した以上、国会の御審議に協力するのは当然でありますから、政府が勉強が十分でなくって、審議に事欠くというようなことは、政府の責任においてさせませんが、ただいまも申し上げますように、今日この段階になって、私もどういうわけでなったのか、これはたいへんまずいことじゃないか、かように思っております。しかし、まあ総体といたしまして、ここまできたのでありまするから、今後十分政府が議運、国会対策等も督励いたしまして、与党のもとに、皆さん方の協力を得るような方途を考えて、そうしてまた審議に万全を尽くすようにいたすよういたしたいと存じます。とにかく今回の事柄は、ただいま申し上げますように、いろいろの問題があったようでありますけれども、とにかく皆さん方の多年の御経験と明晰なる頭脳によりまして御審議のほどをお願いいたします。
  160. 近藤信一

    近藤信一君 総理は、私が頭脳明晰だと言われましたけれども、これは総理のように私は頭はよくありません。至って頭の悪い私でございまするから、総理のほうで受け取りにくい質問をするかもしれませんけれども、この点はひとつ御了承を願っておきたいと思います。  そこで、昨年十月総理がインドネシアを訪問されたそのときに、インドネシアにおきまして総理は、債権国会議援助総額がきまれば、従来の経過から見ても、三分の一程度を分担することになろうと、こう断言されている。そうしてスハルト大統領ともお約束をされたと私は伝え聞いております。そこで、スハルト大統領が今度日本を訪問すれば、総理のお約束もございましたから、何とかひとついい返事がもらえるであろうと思って日本に来られました。ところが、滞在中に色よい返事が聞けなかったということで、さびしく羽田から立たれたというふうにも新聞に出ておりました。一体この間違いというものはどこから起こってきたのか、この点をお尋ねいたします。
  161. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 御承知のようにスハルト大統領は日本を訪問しました。しばしばやられるように、話ができれば必ず協同コミュニケを出される。しかしこの場合においてそれがなされなかった。これは十分に意見が一致しなかった、そのことはあり得る。それは一体どういうわけなのか。申すまでもなく、政府はただいまのアムステルダムにおける債権国会議、その金額そのものについて、これは適正なきめ方でないという、そういう考え方を実はしております。それはもう適正なきめ方なら、もちろん政府が果たすべき役割りを心得ております。その金額が非常に膨大なものなら、これはできる相談じゃございません。前提がそういうことが一つあるわけでございます。で、昨年と比べましてことしのインドネシア援助というものは金額がふえておる。しかし国際情勢はたいへんきびしい状況におかれておる。インドネシア経済の再建というのには、それは金額はたくさん要るかわかりませんが、国際環境そのものが非常にきびしくなっている、そういうことを勘案いたしますと、アムステルダムの三億二千五百万ドル、このものが最終的な決定を見るまでには相当の手順があるはずです。まして日本の場合は、当時は予算が成立しておりません。基金法もただいま御審議をいただいておるような状況であります。政府は授権された何ものも持っておらない。そういうわけで、先走った話は一切できないという状況であります。したがってスハルトさんによくこれらの事情を説明をいたして、その事情はわかった、しかしながら自分たちが期待したものでない、そういう不満はあったろうかと思います。しかし、私どもはいいかげんなことは言えない、こういう立場でございますから、ただいまのように共同コミュニケも出さないで今日まで立ち至った。これが実際の状況であります。こういう場合には、しばしばあることですが、受ける側の期待あるいは希望意見、これが一つ問題もありましょう。同時に、こちらのほう、提供する側との、この間の意見が、両者が一致していないと、ただいま言われるように失望して帰った、こういうようなことにもなるのじゃないかと思います。しかし私は、大統領その人、また総理私という者の間には、何ら誤解はないように思っております。いろいろの関係者がそれぞれおりますので、その間臆測しているものが非常にありますから、そういうもののところに誤解があるのじゃないだろうか。したがって私は、スハルト大統領が私の私邸でひざを交えて話し合ったときの気持ちから申しますと、その間には何ら誤解はないと、かように私は思っております。
  162. 近藤信一

    近藤信一君 昨年の十一月、アムステルダムで、インドネシアの債権国会議が開かれて、経済安定のためには今年は三億二千五百万ドルを了承した、こういうふうで、一応あの会議で了承したわけですね。そうすると、インドネシア経済安定というものが、これは足固めだということもいわれておるのですが、三億二千五百万ドルで、今日のインドネシア経済というものが安定するのであるかどうか。私は、聞くところによりますれば、インドネシアはインフレで非常に恐慌だ、こういうことも聞いておりますが、やはり三億二千五百万ドルは今年の計画だ、こういうことかもしれませんけれども、そうすると、将来、一体どれだけインドネシア経済再建のために必要になってくるか、こういう見通しも立てなければならぬのではなかろうかと私は思うのですが、この点はいかがですか。
  163. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 近藤君、そのとおりなんです。まあ将来の問題もありますが。そこでことしの三億二千五百万ドルというものの中に一つの問題がありますのは、この商品援助が三億二千五百万ドル全部ではないのですね。だからその開発計画というものが、そのうちに幾らあるかという問題です。したがってここらに、その一年中になかなか消化できないものもあるのじゃないだろうかと私は一応考えるのです。だから開発計画と同時に、当座の経済危機を安定さす、そのための商品援助、こういうものを合わせていまの三億二千五百万ドル、かようになっているように思います。したがって、そこらに問題のやや複雑さがあるわけです。この辺を理解しないと誤解があるのじゃないか。
  164. 大矢正

    ○大矢正君 総理、いまインドネシアにまあ与えたほうがよろしいと思われる三億二千五面万ドルの援助というものは、これはその三億二千五百万ドル全部がそうではないにしても、当座それだけが必要であるといういまの総理のお答えなんだが、そうすると、四十三年度の、かりに予算の編成が終わり、その予算の編成とこの基金法改正の範囲内においてインドネシアに対する経済協力が行なわれるが、これはあくまでも当面の問題であって、明年度は明年度でまたあらためて、これが商品援助であるかあるいはプロジェクトであるか知らぬが、そういうものをまたやらにゃいかぬと、こういうことは当然のことながら出てくるという解釈になるわけですか。
  165. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) いまのこの援助ですが、商品援助というものは本筋の援助じゃございませんから、なるべくそういうものは早く打ち切るべきものだと、かように私は思います。本来は、やっぱり開発計画のほうに援助すべきじゃないか。IMFが中心になりましてそのインドネシアの再建計画、復興計画を立てている。これはまあ今後五カ年ですか、この計画が樹立されて自立さしていこうというのだと思います。私どもインドネシア援助にいたしましても、やっぱり各国と協力してやらないと、一国だけではいかないし、したがって、ただいまのようにIMF中心のこの援助計画、これに沿ってやるのが当然いいんじゃないだろうか、かように実は思っております。しばしば問題になりますように、ただいまお話したように、商品援助というものは当座の何か危機を救うことはできる。たとえば非常にインフレが高進している、あるいは物資が非常に不足だ、こういうふうなものに対して特効的な役割り、こういう効果はあると思うのですが、だけどそれはいろんな弊害も同時に伴いますから、考えなければならぬと思いますけれども、日本の場合も終戦直後インフレが高進した際に、こういう援助を受けたわけですが、そういう点をかみ合わせてみまして、そしてIMFでいろいろ計画を立てている、それに沿いたいと、かように思っております。
  166. 大矢正

    ○大矢正君 その商品援助インドネシアに限ったことではなくして、かりにそういうものを必要とする国がほかにあらわれたとすれば、将来またそれも出てくるであろうことは想像されることだ。ただ、いま私が言っているのは、当面問題となっているインドネシアに対する商品援助ということに限定をして議論をすると、総理はいま、当座だと、こう言うから、その当座というのは、来年も再来年もまた引き続きあることに通ずるのかと、こういう質問をしているわけだ。その点ですよ。だからこれはそういう商品援助に類するようなものは、少なくとも四十二年度のわが国予算の限度が、インドネシアについていえば最後であって、次も次もということにはならないと、それからあなたは盛んにインフレ終息と、こういわれるから、そうすると日本の国は八千万ドルと言っている人もいるし、一億ドルと言っている人もいるが、そういう限度においての役割りを果たせば、インドネシアのインフレというものは終息して経済が安定すると、こういう解釈になるのか、こう聞いているわけです。
  167. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) ただいまのお話、今度商品援助をいたしますと、これで向こうが輸入するものに売るわけですね。そこで現地通貨を調達する、こういうことをやるわけです。現地通貨の不足がことし一年で終わると、私はそういうふうになってはほしいと思いますけれども、しかし来年もいまのような金額ではないでしょうが、場合によるとやっぱりそういう現地通貨が必要だ、こういうものがあるのじゃないか。そこらを、少しゆとりがあるように私考える。ゆとりがあると言うと、しかられるかわからぬが、やっぱり一年ぽっきりでやめることは案外困難じゃないか、かようにも思う。こういうようなことでございます。私はなるべく基本的にはやめるべきだと思うけれども、ことしだけでこれはやめられると、あくまでも断言はできません、こういうことを申し上げておるわけです。
  168. 近藤信一

    近藤信一君 もう一つ基本的な問題でお尋ねしておきたいのですが、海外経済協力にいたしましても、またアジア開発銀行のあの問題にいたしましても、すべてこれ後進国の地域開発、こういうことでいろいろと法律が示しているとおりでございますが、実際いわゆる貧乏国の日本で、経済的にもまだ私は十分安定していると思わないその日本が、後進国の経済援助開発のために協力せなければならぬ、こういうことは、一体、日本の将来の経済にとっていいのか悪いのか、どういう一体日本の将来の経済にとって影響があるか、この問題についてお尋ねいたします。
  169. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 私は長い目で見たら日本の経済に役立つと思います。問題は、ただいま御指摘になりますように、日本自身もいま成長している。また国内に幾多の問題を控えておる。そういう際に、国内の問題も解決しなければならないし、それだけの支出が、国内において行なわれないで、海外援助の形で行なわれる、これではちょっと困るじゃないかということは言えると思います。しかし当座の問題でなしに、やっぱり長い目で見れば、相手方も強くなりますし、そうして第一次産品などもどんどんいまの粗悪な状態からさらに品質もよくなり、値段も落ちついてくる、こうなれば第一次産品なども日本が輸入するようになります。しかし問題は控えておりますから、非常に短期間の間にその効果はあるかどうかわかりません。そこらに日本側の援助の金額にも自然に限度があるし、また受けるほうの連中も、急にまたそれが強くなって今度日本と競合の立場になりましても、これは日本も困る場合がありますから、その辺に利害得失いろいろあるので、冒頭に申しましたように、そこらに援助の複雑さがある。かように私考えております。
  170. 近藤信一

    近藤信一君 総理も御承知のように、日本のいわゆる倒産状態というものは、一昨年より昨年、昨年よりことしと、こうずっとふえてきているのですよ。そうして日本の倒産が、毎年新記録をつくるというふうな状態なんです。それから本委員会で、いろいろと毎年法律が出てまいりまして、私ども質問をして、当局からの御説明なども聞き、その中で受け取ることは、いわゆる特に軽工業においては、先進国と後進国の板ばさみになって、日本の産業自体に大きな影響があるということを私どもよく聞くわけなんです。いまここで後進国のいわゆる開発計画に対してわが国援助をして、後進国がいわゆる産業的に成長してくる。そうすると、私どもは毎年聞いておるように、いわゆる後進国と先進国との板ばさみになる日本の産業というものは、一体今後どうなっていくか、私はこの点が非常に心配だと思うのですが、総理その点どう考えておられますか。
  171. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 私はいまの近藤君の御指摘になったとおり問題がある、かように思いますが、そこで、倒産の場合ですが、最近の経済成長から、構造改善もいろいろはかられておる。しかも倒産がある。しかし一面、失業者があふれたということはないわけですね。だからいまの倒産というか、そういう形があるが、何かの方向においてそれらの倒産の結果が吸収されておるのがいまの日本経済じゃないか、かように思います。したがって、私は、大事なことは、こういう場合に、失業者が町にあふれていることがあればこれはたいへんなことだ。やはり構造改善、そういう過程においてある程度倒産が出ておるが、これは発展のため、拡大の方向において協力するということであれば、いわゆる犠牲者が犠牲者として取り残されるということがないのじゃないか、かように思うので、そういう方向で倒産問題も処理したいと思います。別に倒産を当然のことだと言うのではございません。私は社会的にその犠牲者が救済されておる。そこに目をつけて、これは経済全体とすればそう心配することではないのじゃないか、こういう見方をするわけです。  それから同時に、ただいまの軽工業の部門で競争の立場になる、これは確かにあります。過去におきまして香港の繊維と日本の繊維がたいへんな競争をした、こういうことでありまして、そこで大事なのは、軽工業におきましても、今度は品質のいいもの、質の高度のものをつくる、こういうように指導しなければならない。開発途上にあるところで、そういう精巧なものはできない。だから非常なプリミティブなものしかできない。そういうものと別な分野、品質の良好のものをつくる、こういうことでなるべく競合しないように、避けていくということをするわけです。同時にまた中小企業、同時に農業におきましても競争の立場にある。農業の場合だと、日本農業の欠陥もありますが、低開発国の農業、これは先進国との競争のもとにずいぶん苦しい立場にある。いま一次産品を買おうとすると、それは多くの場合にアメリカ産品と競争している。こういうことのように思います。小麦しかり、あるいは各種の飼料しかり、こういうようなことを考えると、低開発国、開発途上国の一次産品をこれらの先進国の製品と競争さすためには、やはり私どもがある程度安定した注文を出す。そういうことによって順次品質の改良をはかる、あるいは値段を安くする、こういうような方向に指導する必要があるのじゃないか。過去におきましても、日本が飼料がほしい。これでタイあたりにトウモロコシ、日本の好むトウモロコシの種を向こうへ持っていって、そして向こうで指導さして、そしてトウモロコシの輸入をしている。こういうようなずいぶん手間のかかる方法で農業開発をしております。とにかく日本産業自身の競争の立場にある場合、また開発途上国自身がその産業が安定するために、先進工業国とやはり競争する。それは工業製品ばかりじゃありません。ただいま申すように、農業製品、それとの競争に打ち勝たなければならぬ。そこらの援助をしないと、いつまでも後進国は取り残される。ここらの問題があるように思います。
  172. 大矢正

    ○大矢正君 総理は、いま近藤委員から、経済協力開発途上国に与えた以降、その国の軽工業を中心とした技術水準なり生産力というものが高まって、それがおくれている日本の中小企業中心とした産業、企業の分野で、将来国際競争をする上において大きな問題になるという話はいま指摘されたとおりです。これはいまいろいろ業種別に例をとって述べられておりますが、全くそのとおりであります。ですから、競争していかなければならぬことは事実なんです。それが援助を受けている国であろうが援助を与えている国であろうが、競争をしていかなければならぬことは事実です。したがって、政府がそれに対処する態勢なりそれから対策なりというものが、施策を通して行なわれなければならぬこともこれは当然のことなんです。そこで、その話と若干異なるけれども考え方の上で、私、総理の言うことがどうも気になってしようがないことがある。それは、先ほど来経済の成長率の高いわが国においては、アメリカなりイギリスなりその他の国々と伍して、開発途上国に対して援助を与えなければならぬ。それはいいのです、考え方で。私は援助を与える必要性がないとか、やるべきでないということを申し上げておるのではない。援助は必要ではあるが、しかし国内においても非常におくれている分野の企業なり産業があることは事実だし、そういうものに施策の重点をより積極的にやらないで、援助の方向に走るということについての、いままでやってこられたことをわれわれは見ていてよくわかるわけだから、なるほど総理ここでそういうきれいなことをおっしゃるが、現実にはさっぱり進んでいない。中小企業対策なんといったら、四十三年度予算で三百八十億しか金を出していないのだから、それでいて、国際的に、十分開発途上国が、将来援助を通して経済的な力が強まってきたときに、競争できるという根拠にはならないのじゃないかというものが一つと、それから、なるほど経済成長率は高い、諸外国に比較をして。だからこそ、国民総生産においては世界第三位というところまでどんどん上がってきたことも事実です。これも否定するものじゃない。だがしかし、国民所得面からいえば二十一番目というやつが何年たってもこれは動かないでしょう。国民総生産が上がる、そうして世界の水準が高まるということになったら、当然のことながら国民所得の分野においても一人当たりにおいてこれは上がっていかなければならぬ。ところが、何年たったって上がっていかないじゃないですか。そこで政府側のほうから、なるほど国民総生産に対する一%という議論はされているし、事実その方向へ努力しなければならぬという問題はあるが、しかし一人当りの国民所得、この所得の中で一体どの程度の援助を与えているのかという数字をさっき答弁をしてもらった。時間かかったけれども答弁に出てきたのによると、これがずっと計算すると、たとえば日本とアメリカと比較した場合に、日本の一人当たりの国民所得は七百九十ドルである。アメリカは三千百ドルである。それに対しての援助額というものは、日本が六ドルでアメリカが二十六ドルであると、こう言う。そうしますと、結局一人当たりの国民所得においても、それから援助額においても、同等な負担を日本がしていることになる。アメリカと同じだけの援助を与えているという数字が出ている。事実数字がそこに出ているからしょうがない。アメリカと比較してさえこうなんでありますから、他のヨーロッパ諸国と比較した場合に、日本は一人当たりの力の負担の内容からいえば決して劣っているものじゃない、こういう問題が一つ出てくる。それからもう一つは、アメリカの国民一人一人の富であるとか、国の富であるとか、法人の富であるとかいうものを比較したら、比較にはならないでしょう。国民生活の環境なりそういうものと比較すれば、それだけ日本は劣っている。そういう劣っている生活環境であるとか社会資本であるとか、そういうものを抜きにして考えて、一人当たりの国民所得から見ても、アメリカと同じだけのものを日本がやっていることになる。いいですか。そこへ持ってきて、アメリカは年々援助額が減ってきている。これも事実だ。数字の上で明らかになっている。まだまだ将来減るといわれている。そうすると、アメリカの過去の負担を日本をはじめとする諸国が負わなきゃならぬという問題がここへ出てきているわけでしょう。だから、日本の国は一人当たりの国民所得においても四分の一、援助額においても四分の一、ちょうど合うわけだ。しかし、将来はこれが逆転して、日本のほうが一人当たりの部面で計算をしていくとアメリカよりよけいな援助を与えなきゃならぬという問題が出てくるわけですよ。ですから、それはもうかっている会社が援助を与えるとか、余っている金で援助を与えるならいいけれども、やはりこの全部じゃなくてもある部分が国民の税金の中から出ていくとすれば、零細な、所得のない者からも取った税金の中から援助されるということになるわけだから、その援助が多いのがいかぬとか、援助は極力減らすべきだということを私は必ずしも申し上げているわけじゃないが、日本は日本の国力に沿うた援助をすべきであって、総理が、国民総生産はもう最高の水準にきているからどんどん援助をふやさなきゃならぬという、単なるそういう議論では、これはいかぬと言っている。
  173. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 私もどんどん援助しろとは言わないんですよ。一応一%ということを言っているが、日本の場合は経済成長が非常に高いからどんどん上がるのでなかなか一%やれない、こういうことを実は申しているんです。で、一%は取りきめだからぜひやりたいと、こう言っているわけじゃない。その辺は誤解のないように願いたい。ことに、もう何度も言っておりますように、私どもも、外国の総理大臣ではないのでございますから、日本の総理大臣だから、やはりわが国の国民の実態をよくつかまえて、その上で援助すべきものを援助する。なるほど世界の平和は望ましいことだけれどもわが国が犠牲になってそしてやるべきでもない、かように思っております。だから、その辺は、私もいまの大矢君の話と同じような主張をしておるのでございます。ございますが、いまのお話にもありましたように、日本の場合でも一体十五年あるいは二十年ぐらい前はどうだったか。で、いま工業生産が自由主義陣営の中で三番目だ、こういうことを言いますけれども、これは十年あるいは十五年前だったらたいへんなことじゃないか。まあ十五年前と今日と比べればたいへんだろうと思います。たいへん進んでおる。いま通産大臣も資料を持ってきておりますが、大体十五年前はパーキャピタ百五十ドル、韓国並み。ところが、いまは大体千ドルではないか、ことしですね。そういうように進んできている。それで、いまいろんな本が書かれて、二〇〇〇年というか、二十世紀の後半は一体どうなるか。必ず日本がどんどん台頭してくるだろう。もう一つ、人口の多い中共もたいへんな発展をするだろう、国際的な脅威になるだろう、こういうことも一部に言われております。コンピューターあたりでいまの成長率を計算すればそういうものは出てきますから、そういうときに、日本のパーキャピタ、これはどうなるか。これはもうすばらしい結果になるのではないだろうか。過去十五年間の発展から見て、最近の生産の伸び等から見て、いまのパーキャピタではないですね。だから、ただいま言われるように、現在は、一九六六年程度で二十一位というように言われるけれども、これもどうも生産とそれから順位の問題が、とった期間が違うといいますか、時期が違うようですから、ことしのものをとればよほど変わっているんじゃないだろうかと私は思います。それがいまさつき言われたように、日本が一人当たり六ドル、これは千ドルとしても六ドルあるいは九百ドルとしても六ドル、こういうようなものをですね、だからほんとうに苦しい状況において経済協力しているのかどうかの問題が一つありますね。いまそれらのものを比べるということも大事ですが、やっぱり客観的な見方から、日本の経済援助がこの程度は可能だ、これは一%という数字は私はたいへんなことだから、そこまでやれないと思います。アメリカ自身がだんだん下がるというのも、やっぱり一%の援助はなかなかやれない、そういうところに問題があるのでございますね。広い範囲で援助をいたしておりましても金額は多額になりますから、したがって、そうことしじゅうに一%に達するというわけのものじゃないです。大体の援助目標というものは一%に置いている、かように御理解をいただいて、そして大事なことは、日本国民の税でこういう援助をするのだから、日本国民をもちろん第一に考える。それ中心考えて、しかも余力というとやや語弊がございますが、海外援助が可能な範囲でやると、かように私どもいま考えております。この点をひとつ御了解をいただきたいと思うのであります。
  174. 近藤信一

    近藤信一君 総理が、長い目で見れば経済協力も必要だ、こういうことは全くそのとおりだと思うのです。人口一億を有するインドネシアの将来からいっても、やはりそういうことも期待し得ると思うので……。しかし、いま大矢委員も一言われましたように、いわゆる国外にだけ眼を向けて、国内の足元がくずれるというふうなことでは、私ははなはだ問題が起こってくるんじゃないか、特に貿易自由化によって外国からは日本を市場としてどんどん入ってくる。日本から輸出するものに対しましては、アメリカ等においてはドル防衛という名のもとに、いろいろと貿易の制限が課せられる。あの繊維の課徴金の問題もその一つだったと思うのですが、そうすると、日本の将来のいわゆる産業という事態に、長い目で見てインドネシア等々に援助していくことは、大きなプラスになるのだ。こういうことだと私は思うのですけれども、国内の産業がぐらぐらとこわれてくるんじゃ私ははなはだ危険なことになるじゃないか。いま大矢委員も言われました、特に中小企業の現状というものは、きびしいものがあるわけなんです。私はやはり国内の中小企業に対するところの施策というものを十分に考えての上であれば、われわれもこれを納骨するわけでございまするけれども、そうでなくて、国内の中小企業問題は、ちょいとこうよけておいて、十分な手だてもせずに、そして海外だけに眼が向いているということは、私は長い目で見れば国の利益になるかもしれませんけれども、当面の問題を私は憂うるのです。この点はどうですか。
  175. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 近藤君の御指摘のとおりでございます。でございますから、いま中小企業の近代化、合理化、さらに農業の構造改善等々積極的な施策を総合的に推進しつつあります。この点で、わが国中小企業や農業がおくれをとらないようにということ、これにはこの上とも前向きで積極的に努力しなければならぬと、かように思います。これは御指摘のとおりでございます。
  176. 近藤信一

    近藤信一君 インドネシアに対するところの第一回の援助資金は三千万ドルでしたか、これがその後いろいろといわれておるところによりますると、どこかに蒸発してしまったというようなうわさもわれわれは聞いておるわけなんです。前大統領のスカルノ大統領が、いわゆる大統領の永久権というものを剥奪され、さらに大統領を追われたのも、あの第一回の三千万ドルの援助資金というものがどこかに蒸発してしまったというところに一つの問題があったんじゃないか、こういうことを私ども聞くわけなんでございまするが、その第一回の三千万ドルの援助資金というものは、一体どのようにインドネシアにおいて、これが地域開発のために使用されたのか。あなたのほうもいろいろと計画を持ってやられるわけでございまするから、具体的な計画のないところに、私は援助資金なんてあり得るものじゃないと思うのですが、この点お聞かせ願いたいと思います。
  177. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 第一回の援助あるいは賠償等について、いろんなうわさのあることは私知っております。聞いております。しかし、この具体的な内容等については、どんなふうに使われたものか、詳しく私存じませんので、事務当局から説明させます。
  178. 原田明

    政府委員(原田明君) 六六年に供与されました三千万ドルの円借款は、インドネシアが農業生産をふやしますために最も必要としております肥料に約二五%、それからインドネシアの民生安定のために最も必要とされておりました繊維製品に約二八%、そのほか繊維機械、鉄道機械及びその部分品、船舶用のエンジン、通信機の部品、それから機械のクレーンでございますとか、化学品、新聞用紙といったようなものに使用されておりまして、インドネシアの民生安定、経済安定に役立ったのではないかというふうに私ども考えております。
  179. 近藤信一

    近藤信一君 いま貿易振興局長から御答弁がございまして、肥料の二五%と民生安定のための二八%、これはもうはっきりといま数字で言われたわけですが、その他は繊維機械だとか、機械だとかなんとかかんとかいまいわれましたけれども、この点はぼやけておるんではないですか。具体的に一体どこへどう使ったんだ、こういうことをあなたのほうでお調べになっておられますならば、具体的にひとつもっとお聞かせ願いたいと思います。
  180. 原田明

    政府委員(原田明君) 港に使っております浮きクレーンでございますが、これが二百二十八万ドル、繊維機械及びその部品、これは既存の繊維工場の修繕用部品等を主として百万ドル、それからインドネシアの鉄道の機械及びその部品、これが百万ドル、それからインドネシアの各島嶼間の交通等に非常に必要といわれております船舶用エンジン並びに通信機の部品が百万ドル、それから新聞用紙が百二十万ドル、化学品が八十五万ドル等でございます。
  181. 近藤信一

    近藤信一君 いま具体的にそれぞれ数字をあげられましたが、百万ドル台でずっとあげられた、これから計算しても、肥料と民生安安のために五三%——いまあげられた数字だけでは四〇%にも達しないというふうな数字なんですが、あなたのほうのいまお示しになりましたこの百万ドル、二百二十八万ドルというような数字ですね。具体的にいかに使われたかということを見てこられたんですか、ただ報告だけですか。これはどうなんですか、実際に調査されたかどうか。
  182. 原田明

    政府委員(原田明君) 先ほど私が申し上げました数字で、最初に比率で申し上げまして、後におもな品目の金額を申し上げましたので、たいへん不十分かと存じますが、総額のほとんど九割以上に達しております。この部分その他の商品が具体的にどこへまいってどういうふうに使われたかということは、私どものほうでは、現地調査というのはまだいたしておりません。
  183. 近藤信一

    近藤信一君 あなたのほうは、ただインドネシア資金を出して、そうしてインドネシアから報告のあったその数字だけで信用しておられるわけですね。実際あなたのほうで向こうにおもむいて調査されたわけじゃないと私は思うのです。そういたしますると、今後の援助資金に対しても私は疑問を持たざるを得ないと、こう思うのです。具体的に日本政府のほうから調査におもむいて、これだけの再建のためにこれが活用されているのだ、こういうことになりますれば、国民としても私は納得するであろうと思うのです。先ほど総理が言われましたように、長い目で見るならば、日本の利益のためになるのだから、これはもう当然であろう、こういうことになるのでございまするけれども、ただ、一方的に向こうの数字だけを信用して、そうして金だけどんどんと援助資金を送るというようなことになりますと、将来にとっても、国民の血税の一部からこれは援助するわけでございまするから、私も国民の一人として、これは全く了解しにくい結果になるわけなんですが、この点はどうですか。
  184. 原田明

    政府委員(原田明君) ただいま申し上げました数字は、品物が何かわからず向こうに出た、あと向こうからこういうものがきた、こういう報告を受けたという性質のものではございませんで、先方と借款の話し合いをいたします際に——まだBE制度になる前でございますので、先方経済の必要性に応じまして、特に緊急に経済安定のために必要であるというインドネシア政府要請を受けまして、その話し合いの結果きめられた数字がそのとおり輸出されたということでございます。
  185. 近藤信一

    近藤信一君 これは、両国間の信用上の問題でやられたわけでしょう。われわれがいろいろとこう新聞や、雑誌なんかで——私も見たわけでない、向こうへ行って調べたわけじゃないが——スカルノ大統領はぜいたくざんまいをして、日本から援助していただいたその資金で個人的な私生活のためにぜいたくざんまいをこれ尽くして、インドネシアの国定からも強い反撃を受け、そうして大統領を追われた、こういういきさつが私はあったんじゃないかと、このことも私自身調べたわけじゃないので、これが事実かどうかということも、私はここで言明することはいたしません。いろいろと新聞や、雑誌等によって私どもが知るところによると、そういう結果になってきているわけなんです。  総理も御承知のように、後進国はいつ何どきクーデターが起って政権の授受ということがあり得るかもしれません。きのうまで安定しておったと思いますと、きょうはクーデターでこの政権が変わっているというふうなこともわれわれまざまざと今日見せつけられているわけ、なんですが、私は、日本が経済再建のために経済援助をするということであれば、やはりそこの政権のまず政治の安定というものがなければ経済的な援助というものもそううかつに私はやるものじゃないと、こう思うのですが、いまインドネシアのいわゆる政治情勢というものは一体ほんとうに安定しておるかどうか、この点、総理の判断でひとつお答えを願いたいと思うのですが、いかがですか。
  186. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) まあ私は政情が安定していると、かように考えております。簡単にお答えいたします。  ところで、いまいろいろの疑惑等についてお触れになりましたが、私も当時出かけたときには、スハルトさんはまだ大統領になっていない大統領代行という、その当時のスハルトさんに率直に話をしたのですが、これから経済援助が具体化するが、その場合においては真にインドネシア経済再建に役立つものでなければならぬ。そういう意味では受け入れ側において十分ひとつ役立つそういう方向のものをまとめてもらいたい。また援助する側——日本側ですが、日本側においてもいままで商社等どうも活動がほんとうに効果をあげているようでないという、そういううわさもあるから、これは私どものほうで気をつける、あなたのほうもその意味でひとつ決心をしてもらいたい。まあこういう話をしたについて、とにかく過去のことをいろいろ私は申しませんと、しかし自分が政局を担当する限りにおいて間違いの起こらないようにしたい、これは新しくできた政権として国民に対する当然の責務だと、かように思いますし、またそれが政局を安定さすゆえんでもある、かように考えますから、十分注意しますと、こういう話をした。私はまあずいぶん失礼な意見を述べたのでありますが、相手方が快くこれを聞いてくれた。こういうところにスハルトさんの新しい国づくりに努力しておられるそのまじめな姿が映ったようでございまして、私はこれを援助いたしましても、ただいま言われるような政局が何だとか、またそれが無意味だ、こういうような心配は、ただいま持っておらない。ただ、いままでどうも私自身、国内で授権されておりませんから具体的なお答えはできなかった、かように思っておるわけであります。ただいまの、まあ過去の問題もいろいろあるだろうとは思いますが、私はそういうことのとうとい経験に基づきまして、今後間違いのないように、真に援助の効果があがるように注意したい、かように思っております。
  187. 近藤信一

    近藤信一君 総理はスハルト大統領と会見されて、もういろいろとインドネシアの情勢も把握しておられると思う。いま総理がインドネシアの政情は安定しておると、こういう御答弁でございました。そこで、私はお尋ねしたいことは、これからのこの援助資金いわゆる今年度六千万ドルといっていますね。そこへまた上積みするとかなんとかという話もあるんだが、まあ六千万ドルとして、このインドネシア経済協力のための基金を使うわけでございまするが、私は先ほど申しましたように、いわゆる過去の問題は過去の問題といたしまして、やはり今後これからの問題としては、六千万ドル出すということになれば、それに対するところの具体的な計画というものが私はなければならないと思うのです。これは先ほど竹田君からも質問をしておりましたが、私重ねてこの点触れるわけですが、いわゆる具体的計画というものがないところに援助というものはあり得ないと思うので、やはり建設のためには具体的な計画というものが一応出されて、その出された計画に基づいてこれだけの金が必要だからということになってくるであろうと私は思うのであります。その具体的な計画について把握しておられますか。
  188. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほどから申し上げておりますように、このたびのコンソーシアム援助の問題ではIMFがすでにかなり深く入って作業をしておるようでありますから、開発計画に必要な現地資金商品援助の形で受け取る、こういうことでございます。したがってその数字は、総額において先ほどから申し上げましたように、きまっておらないわけでございますけれども援助されたものはすべて見返り資金——一般会計と別に積み立てそれを開発援助に使う。なお今年使う開発資金は、まだ五カ年計画の第一年であるというふうにはいかないようでありますが、すでに五カ年計画を立てて、そうして農業それから道路、通信、交通といったインフラストラクチュア、それにやるというところまでがきまっておるようでありますから、今年が第一年ではございませんが、これからそういう方向に使う、それまで大体IMFが見ておってそういうようにするというふうに考えております。
  189. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) ただいま宮澤君からお答えいたしましたけれども、全体の取り扱い方についてはそれでおわかりだろうと思います。  私、スハルト大統領が日本を訪問したときに具体的に話をしておるのは、できるだけ食糧がほしい、また肥料がほしい、こういうような話を実はしておりました。これは当時の状況でありまして、米が不足しておる、また四月中に肥料を入手したいというようなことでございます。それも滞在中そんな話がありましたけれども、だんだん話を進めてみますと、さしあたりのものはもう手当てがついた、食糧もこれは一応ついた、また肥料もついた。だけれども、秋の肥料というものをこれから相談に乗ってほしい、また端境期以後の食糧、年間を通じてとにかく不足であるから、そういうものを考えてもらいたい。こういうふうに、やはりほしいものは一応考えられておるようであります。これなぞは非常にはっきりしたものですから、政府におきましてもインドネシアの要望にこたえるような意味でさらに具体的なものに掘り下げて相談してまいりたい。かように考えております。
  190. 近藤信一

    近藤信一君 本年の四月二十二日から三日間ロッテルダムで債権国会議が開催されまして、日本からも代表が派遣されております。その際に小麦協定がなされたと私聞いております。その小麦協定の内容について具体的に御説明を願いたいと思います。
  191. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ロッテルダムにおきましてその点どれだけ深く触れたかということは、実は私非常に正確には存じませんが、わが国が、場合によってと考えておりますことは、すでに予算で御承認いただいております食糧等援助、いわゆる五十一億円ばかりのものを予算に計上すべきところを、今年はその半分を計上しておりますが、これはインドネシアも当然受ける資格のある開発途上国でありますから、場合によってはこの一部を活用することも考えられるのじゃないか、その程度でございまして、最終的にはやはり全体がきまりますときにその問題がきまる、こういうふうにお考えおき願いたいと思います。
  192. 近藤信一

    近藤信一君 具体的にはまだあるいは出ていない、ただし食糧の援助、そうですね、食糧ですか。
  193. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 食糧などでございます。
  194. 近藤信一

    近藤信一君 「食糧など」と、こういま答弁されましたが、しからばお尋ねしますが、日本から援助するその「食糧など」ということになっておりますると、それは食糧が中心になると思うのですが、食糧としてまずあげられるものは一体どんなものがございますか。
  195. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先般、国際小麦協定との関係で、わが国はその点は留保いたしまして、別途にわが国の意思表示をしたわけでございますが、それによりますと、わが国の立場は、食糧もさることながら、農業の自立ということをやはり助けることも必要ではないかということでございましたから、米を含む食糧、穀物、麦その他それに含むと思いますが、そのほかに、農機具であるとか肥料であるとか、直接農業の助けになるもの、そういうことで食糧の部分が六割ぐらいとお考えくださってけっこうです。
  196. 近藤信一

    近藤信一君 そこが私はうまく逃げてあるんじゃないか。「食糧など」と、こういうことになって、食糧を実際援助するといったって、大臣も御承知のように、わが国ではそうあり余っている食糧というのはないので、ただ、「など」というところで、いわゆる技術援助ですね、これは食糧増産するための向こうであれする。また機械を送る、技術と私は商品だと思いますね。機械などはもう商品なんですから。それから向こうで増産のための云々となると、これは技術ということになるのですよ。「食糧など」といっても、「など」というところで私は逃げてあるので、技術援助商品援助だということになる。そうすると、これは実際基本的な考え方と間違ってくるようなふうにも私受け取れるんですが、そういう点は、これは「食糧など」で、食糧を先に書いて、「など」ということにどうもその点は私はごまかしがあるんじゃないかと思うのですが……。
  197. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ちょっと詳しく申させていただきます。わが国が年間負担いたします五十一億が今年度は二十五億円、半分でございますが、これは食糧とそれから農業の助けになるような技術ではございませんで、農業機械、肥料等々、いわば物でございます。で、わが国の意思の表明によりますと、その全体の五十一億円の中で六割程度は食糧にしよう。これは本来事柄が御承知のように小麦協定との関係から発生しておりましたので、まあ食糧にある程度重点を置くということが各国と歩調が大体そろうので、そういうことにいたしております。しかしロッテルダムで話になりましたこの部分は、これは肥料とか農機具とかということでなく、大体食糧をかりに出すといたしましたときに、その金が使えるか使えないか、こういうことであったようであります。
  198. 近藤信一

    近藤信一君 そうでしょう。やっぱり機械やあれじゃなくて、食糧中心だったというように私も聞いているんですが、そこで一体、今度農業機械ということになりますと、わが国のメーカーはおおむね久保田鉄工——毎晩テレビで宣伝しております。先日私もブラジルの上院議員を案内して、久保田鉄工へ行きましていろいろと農機具を視察してまいりましたが、やはり機械メーカーが今度輸出の中心になっていくわけですね、農耕機械等等。農業機械ということになりますると、そういうことになるんじゃないかと思うのですがね。そうすると、若干これは話がおかしくなってくるんじゃないか、この点どうですか。
  199. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) かりに機械、農業機械でございますね、こういうようなものが入るといたしますと、それは先ほどからの問題の商品援助のほうの系統でございまして、かりに二十五億の一部を使うといたしますと、これは農産物だけというロッテルダムの場合の話はそういうことでございます。ですからこの二十五億のほうから、これはケネディ・ラウンドの関係では、機械、農機具なども出せるわけでございますが、今度ロッテルダムでインドネシアとの関係で問題になりましたのは、食糧の部分であって、機械というものはおそらくいくと思いますが、それはいま問題になっている六千万ドルとかという商品援助の系統でございます。
  200. 近藤信一

    近藤信一君 私もそうだと思っております。そこで、先ほど竹田君も御質問しておりましたように、しからば一体、それは直接日本の商社と向こうの商社との今度は関係になってまいりますね。そうでしょう。これはメーカーが直接売り込むのじゃない。やはり商社と商社との関係ということになってくるのですが、何か伝え聞くところによりますると、過去の話は、ということでございましたが、総理は……。私ども過去の話からいきますと、あまりよからぬ商社も暗躍したというふうなことも聞いておりましたが、そこらあたりは将来今度は前向きになって、しっかりした商社といいますか、信用のおける、向こうもこちらも信用のおける、そういうものをまず選定するということが私は重要な一つの問題になるのじゃないかと思うのですが、この点どうですか。
  201. 原田明

    政府委員(原田明君) ことし行なわれるであろうと思われます新しい援助は、いわゆるBE方式という方式でございます。ボーナス・エキスポートの方式によります場合には、インドネシア側はBEを購入した輸入業者ならだれでもよいということになります。日本側のほうは、その輸入業者と通常の商取引によって契約を結んだ輸出業者なら一応資格としてはだれでもいいということになるわけでございます。したがいまして、そういう通常の商取引、つまり競争原理の働きます商取引という仕組みの中から、向こう側としてはできるだけ安くいいものを買いたい、こちらとしてはできるだけ公正な値段で売りたいというところのかみ合わせで商談が行なわれまして、むしろ相手国その他でも選定をするというような手続に伴いがちな弊害が除去されるという形になろうかと思っております。ただ日本側の輸出業者は、そういう形でコマーシャルに選ばれるわけではございますが、特にうわさにのぼるとかなんとか、そういうことがございました商社が公正な輸出というものが実行できるかどうかというような点については、十分注意をしてまいるようにしたいというふうに考えております。
  202. 近藤信一

    近藤信一君 私昨年国会から派遣されましてオーストラリアのほうを視察してまいりました。佐藤総理が行かれる前でございましたが。で、現地の日本の公館からいろいろとお話を聞きますると、オーストラリアと日本との貿易が好転してきたからということで、日本から商社がわっと押しかけて、売らんかなの競争を非常にやっておる。これは大きに困ったことだと言って発言をしておられました。私がなぜいまインドネシアのことをお尋ねするかというと、特に日本の商社は、一つの問題に対して、あれがいいということになるとわっと多く押しかけて、みずからの首を締めるような結果にもなるわけなんですね。過当競争で、売らんかなということで、盛んに売り込むわけでございまするから。そうすると、どうしても値段を引き下げていかなければならぬ、こういうことにも相なろうかと思うのであります。だから私は、やはり今後のインドネシアの取引に対しましても、いわゆる商品援助をする場合においても、そういうふうなことが私は心配されるわけなんです。それインドネシアへ行けということで、日本の商社がわっとあそこへ押しかけるということになりますると、またいわゆる正常な価格でこれが算定されるやつが、そうでなくなってくる場合もあるわけなんです。だから将来についてそういう点も政府としては十分に注意をして、そうして日本の産業自体がみずから首を締めるようなことは特にこれは戒めていく必要があるんじゃないかと私は思うのです。そのことを特に私は政府に注文し、御所見を承って、総理の時間も限られておりますので、この辺で私質問を終わります。
  203. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) いま近藤君の御指摘になった点、たいへんむずかしい問題だと思います。まあ商売には、売り手市場とか買い手市場とかいうことばが使われております。この商品援助の場合には、やっぱり買い手市場になるんじゃないか。一応どういう品物を買う、それを現実に買うインドネシア政府が、ほしいというそういう意味においてインドネシア輸入を許可することになるわけでありまして、したがってまあ買い手のほうが強い、こうなると思います。ところが日本の場合は、買い手市場であろうが売り手市場であろうが、どちらでも、とにかくわんさと出かけて競争する。それでまあ至るところで実は問題を起こしておる。先ほど豪州のお話が出ましたが、これなぞもまあ日本は買い手だと思います。これは売りのほうも相当ではございますが、何といったって豪州貿易輸入がばく大もないものですから、だからそういう意味でそれが押しかける。そうして問題を起こしておる。ことにあそこの政党の関係もあって、まあホルトさん、なくなりましたが、副総理なぞもその後日本にまた来て、そして豪州がたいへん困っておる点もいろいろ話をして帰りました。つまり、これはいま商品援助という形をとると、もうそれから先は完全な自由取引、競争取引になりますから、わんさと押しかけて、こちら側がつまらない不利益をこうむることのないように、やはり産業界自身ひとつ気をつけてもらいたいと思いますので、自粛は願いたいのです。そういう意味では、経団連やその他経済関係におきましても、秩序のある取引をしようと、ただいま申し合わせをしておるようであります。したがって、過去よりもよほど改善されるんじゃないかと思います。これはもう政府はそこまでタッチできないですけれども、信用を落とす、そういう形が過去においてあった。だからこれは自粛がひとつ望ましい。こういう意味で経団連に話をいたしまして、それはもう確かにそうだと、こういう意味で自分たちで一つの団体をつくり、そして秩序ある取引をしようと、こういうことに踏み切っておるようでありますから、おそらく見違えるようにはなるだろうと思います。だが、これは油断はできません。なお、ただいまもお話のありましたような点について一そう注意をして、経団連等とも連携を緊密にして、間違いのないようにしたいと、かように思っております。
  204. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 矢追君にお願いします。総理大臣、時間のお約束がありますから、先にひとつ御質疑の点はお願いします。
  205. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 私に与えられた時間は二十分間でありまして、したがいまして、総理に対して基本的な問題で二、三お伺いをしたいと思います。  先ほど経済援助基本姿勢といった問題についていろいろお伺いいたしましたけれども、この問題について重ねてお伺いするわけですか、東南アジアに対する経済援助のやり方、いま開発途上国をよくすることであると、そういうようなことでお話がありましたけれども、昨年の総理とジョンソン大統領との共同コミュニケにおける第二項目の最後のほうに、 「開発途上国、特に東南アジアの開発途上国に対して効果的な援助を与えること、の重要性に留意した。」、このことが載っております。このことについても、予算委員会におきましていろいろ議論がございましたけれども、私が感じますのはこの佐藤・ジョンソン会談における経済援助の問題については、その次の第三の項目における中共の脅威ということに対して、「アジア諸国が中共からの脅威に影響されないような状況をつくることが重要であることに合意した。」、こういう点から考えて、何か共産主義の脅威に対して経済援助をやって国をよくしていく、こういうふうにとられない面もないじゃないか、こういうふうに思うのですが、この経済援助考え方の姿勢にそういうものが入っておるのかどうか、まずお伺いしたい。
  206. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) これはいわゆる中共をどうこうするとかソ連をどうこうするとかいうわけではありません。しかし私どもが国づくりをする基本には、やはり共産主義にはくみしない、やはり自由を守り平和に徹する、そういう考え方でございます。とかくその考え方がところどころ出てくる、かように御理解いただきたいと思います。具体的な問題を、具体的な国をどうこうしてこういう問題をメンションしているわけではない。ただ共産主義そのものについては、国づくりの面から私ども同調できない、かように考えておりますので、さような意味で御理解いただきたいと思います。
  207. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 この間私は日米議員懇談会に出席をさしていただきまして、これはアメリカの政府の代表ではございませんので、ただ単なる——向こうの上院議員もおりませんでしたし下院議員だけでありましたので、もちろん責任ある話ではありませんでしたけれども——向こうの議員さん方の話の中から一番私が痛感しましたことは、アメリカはあくまでも中共、共産主義に対しての姿勢は非常に固いものがある。要するに共産主義に対しては武力をもってあくまでも対抗するという基本姿勢が非常に強いことを私は感じました。  もう一つは、日本の経済は非常に成長しておる。したがって、その日本の国がこれだけ経済発展をしたのだから、だからもっとアジアに対して経済援助の手を差し伸べろ、まことに私もそれは悪いとは言いませんけれども、何かそのときに、必ず言ったことは、アメリカはいま非常に困っておる。ドルで苦しんでおる。あるいは国内からは保護貿易をやれというような声が非常に強い。私たちは議員として非常にそれを押えるのに苦労しておるのだと、そういうような話もありました。何かともすれば、日本がアメリカのアジアに対する経済援助の肩がわり、それを非常に感じないでおれないような、そういうことを議論の中から私は思うのであります。それで共産主義に対しては武力をもってあくまでも戦う。共産主義者が攻めてきたからおれたちは戦っているのだ。ベトナムにしても私たちは好きでやっているのではない。もしベトナムでアメリカが戦わなければ、いまごろはタイ、ラオス、カンボジアが共産主義者にとられておったであろう。朝鮮のときもそうであった。そういう意見で出ておりました。そういうことを考えて、総理とジョンソン大統領との共同コミュニケの上から考えて、先ほどのような質問を私はしたわけですけれども、その点について総理から明確な御答弁を願いたいと思います。
  208. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 矢追君にお答え申し上げますが、ただいま申し上げましたように、私は国づくりとしては自由主義で自由を守り平和に徹する、そのための国づくりをする。しかし、いずれの国とも仲よくするということも申しております。私どもは平和愛好国民である、こういう意味から、特定の国に対して、これを敵視するというような政策はとっておりません。しかし、佐藤内閣は中共を敵視しているというような批判を受けますけれども、私は中共自身を非難したこともなければ、敵視したこともございません。むしろ、どちらかといえば、佐藤内閣は、批判こそ受けれ——毎日北京放送など聞くと、佐藤内閣はなってないというので批判ばかりしているようでありますけれども、私どもは敵視はしていない。ただその場合に、お互いに独立を尊重し内政に干渉しない、そういう前提のもとにお互いに仲よくしていこう。だから中共とも、政経分離の形において貿易は拡大しつつあるわけであります。これは、アメリカはどういう態度をとろうとも、日本のとっておる態度に変わりはないのでありますから、これは私がアメリカを第一回に訪問した際も、日本の中共政策をはっきりと明示しております。アメリカが中共とつき合わなくとも、日本は政経分離の形でつき合う。したがって、お互いに独立を尊重し内政不干渉ということでやりたい、こういうことを申しておりますし、また、その後も引き続いてその態度を堅持しておりますから、ここはもう誤解はないと思います。また、いまの矢追君御自身にも、私は、佐藤内閣が終始変わらない友交態度をとっておるということを御理解いただけるだろうと思います。ところで、ただいまの、アメリカは中共をどういうふうに見ているか——私は、必ずしもワシントン政府自身は、せんだっての日米議員会議における議員さんのような考え方をとっておるとは思いません。これはしばしば説明しておるのもさようでございますけれども、最近はまた中共との関係を、いまのままであるということは望ましいことではない。しかし、それにはやはり環境、また考え方をもう少し変えてもらいたい、こういうことを具体的には言っておるようであります。でありますから、日本とアメリカの共産主義に対する態度の相違、こういう点にあるだろうと思います。また、海外援助の問題にいたしましても、アメリカの肩がわりをして、それで日本が海外援助をするというものじゃありません。先ほど来、近藤君や竹田君ともいろいろ話し合いましたが、これはもう日本の独自の立場に立ってその計画を進めるのでありますから、私ども開発途上の国、これに心から同情もいたしますけれども、それにもまして本筋は日本国民のしあわせを願う、これが私どもの政治の態度であります。ましてや、アメリカのやることを日本がかわってやるとか、こういうようなものではない。独自の立場で日本は海外援助をする、かように御理解をいただきたいと思います。
  209. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 インドネシアの問題に入る前に、一つだけお伺いしたいのですが、いま、独自の立場でやる、このように総理はおっしゃいましたけれども、いまベトナムにおいてはようやく和平会談が行なわれておりますが、ポストベトナムということも今後の大きな問題になってくると思います。いままでベトナム戦争に対して総理は、軍事援助はしていない、こう言い切られますけれども、われわれの目から見れば、この戦争をうしろで応援しておったような向きも私は十分にあると思うのですが、それは別といたしまして、ポストベトナムに対しても、やはり日本は独自の立場で経済援助をやっていくという姿勢を堅持されるかどうか。いままでのベトナム戦争に対しての日本政府としての取り組み方とは、あるいは変えてやらないと、また、いま私が言ったような疑惑を国民は持っているわけですから……、その点いかがでしょう一か。
  210. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 軍事援助はしておりません。軍事援助というものは、軍需品の輸出——武器、弾薬などは厳重に、ベトナムばかりでなしに周辺の諸国にも輸出はしておりませんから、したがって、軍事援助というものはしていない。日米安保条約の地位協定からくる、そういう点の条約の義務を履行するという面で多少ベトナム戦争と関係はあったかもしれませんが、それはベトナム戦争の前から安保条約を結んでおるわけですから、そういうことで、いま言われるような軍事的ななにはない。したがって、今後は戦争の後においては、戦争が終われば、むろん日本は独自の判断のもとに、ベトナムに対してのみならず、東南アジアに対して援助をやっていくということになると思います。
  211. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、インドネシアのことになりますが、いま総理も、スハルト大統領に対して期待をしておる、このように言われたわけでありますけれども、はたして日本が戦後今日まで復興したような経過を、インドネシアの現在の政情、国情あるいは民族の国づくりの意識、そういうふうな上からいって、また、いまの指導者であるスハルト大統領の政治力といいますか、指導性といいますか、そういう点からいっても、総理は経済援助をやっても心配がないと、そういう確信がおありなのか。特に具体的に申し上げますと、たとえば日本の場合は、占領下にあってドッジ・ラインというのができまして、やはりそういうことが日本の経済の立て直しに大きな役割りをになっておりました。そういうふうなことがインドネシアにおいても、それにかわるといいますか、そういうことがあれば私は心配ないと思うのですけれども、そういう体制をやはりインドネシアとしては計画をしておるのかどうか、そういったこともあわせ考えた上で、この巨額にのぼる経済援助をやっても心配ないということは、いままでも再三議論に出ておりましたように、過去においてはいろいろ問題がありましたが、そういった点からお聞きするわけですけれども、いかがですか。
  212. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 日本民族は、私どもほんとうに自慢できるように世界に誇るべきりっぱな素質を持っておりますから、これはどこの国でもなかなか日本のまねはできないのじゃないかと思います。その上、御承知のように、当時は日本はドッジ・ラインも出しやすいような占領下にあった。その占領下にいいアドバイスがあった、これで日本はほんとうに目を見張るような再建復興ができた、かように私は思っております。日本をまねる——インドネンアもそうしたいと、かように考えておられるだろうと思います。それにはよほどの努力がないとできないだろうと思います。しかし、非常に短期間にどうこうするのじゃなしに、やはり相当努力が続けられれば、いまのインドネシアとしてはインドネシアらしい再建ができるのじゃないか、かように私は思います。いきなり先進工業国の列に加わることはできないにいたしましても、とりあえず、いまのインフレを防止して経済の基礎固めをするというようなことはできるのじゃないか、かように思います。また、そういうことをしてもらうことが、私ども援助の実際のねらいでもある、かように私は思っております。
  213. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 総理の言われること、わからないでもないのですけれども、いまインフレである、だからそれをおさめるためにいまの援助が必要だ、もちろんそれはそうでしょうけれども、ただそういうふうな応急措置的なことはやはりいけない。長期計画が必要だ。それに対して、いま言われた、確かに工業国に一ぺんに持ってくるということは、それは無理かもしれません。やはり徐々に持っていくためのステップ・バイ・ステップを踏まなければならない。もちろんよその国ですから、日本の国の総理からこうしろ、こうしろということは言えないかもしれませんけれども、やはり向こうと話し合って、まず農業の問題から教育の問題、特に日本として一番できることは、技術援助、あるいは農業にしても技術指導、そういう面が非常に大事だと思うのです。特に教育の問題、これは経済援助の問題のときにはあまり話題に上らないのですけれども商品援助とか、そういうことは非常に言われていますけれども、そういう問題にやはり、その国の基礎づくりといいますか、それに対して同じ金をかけるなら、きのうも宮澤長官には申し上げたのですけれども、その点にはもっともっと留意しなければならないのじゃないかと、こう思うのですけれども、その点はいかがですか。
  214. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 矢追君の御指摘のとおりだと思います。私は、特に日本で電力界からの調査等も行き届いた、いわゆるダム建設等を急ぐべきではないか、これが中途はんぱになっている、そのようにも聞きます。これは積極的に進めるべきじゃないかと思います。また、最近の豊富な地下資源の開発、これには日本は資金的にも技術的にも援助すべきじゃないだろうか、かように思います。とにかく、正しい意味考えまして、豊富な地下資源を持っているし、人間はたくさんいるんだし、恵まれた自然環境ですから、ほんとうに施策よろしきを得れば、それらのものもどんどん開発され、経済発展は望まれるんじゃないか、そういうことを意欲ある政府をしてやらすという、これが経済援助だと、かように私は思っております。そういう意味でスハルト大統領が立ち上がる、かように私は考えます。
  215. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 時間があまりありませんので、一一こまかい問題はできませんので、次に、いま日本人は優秀であると言われましたけれども、優秀であるべき日本人が、実際私は一番残念なのは政界における腐敗だと思うのです。向こうの国の人たちが日本を見習おうとしても、腐敗のほうを見習うと困るわけです。この経済援助の上において、過去にはいろんな問題がありましたけれども、そういう問題、さっきスハルト大統領との会談において、過去のことは言わない、佐藤政権になってからは心配ない、こういうふうなお話でございましたけれども、それはちょっと私もいただけないような気がするんですけれども、日本がいままでやってきた——もちろん向こうにも悪い点はあるかもしれません——日本の国がはたしてほんとうにインドネシアをはじめとして、東南アジアの諸国に対して、その国の人たちのためになる経済援助、技術援助等が、また医療援助が十分行なわれてきたかということは、過去のことは言わないではなしに、ほんとうにもっと反省する必要がある。その点において、過去のいろいろな問題については、総理はいいこと悪いこと全部御承知になっているか、いろんなこと全部お聞きになった上で、そうして過去においてはここがまずかった、こういう点ではこういう汚職があった、だからこういう点は今後一切やらない、こうしなければならない、まだまだ国民の前に明らかにされてない問題もかなりあると思います。そういう点についてはいかがですか。
  216. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 過去の問題について、腐敗だとか汚職だとかいろいろうわさがありましたが、しかし、それらのものは大体いわゆるうわさであったように思っております。私は、このインドネシアの再建にそう政界人が暗躍してどうこうというような、あとで批判を受けるようなことをどんどんやっている、かようには思っておりません。しかしながら、とにかくいろんなうわさの立ったことだけは確かでありますから、そういうようなうわさの立たないようにこれからひとつ気をつけようじゃないかというような話し合いをしたわけでございまして、私は、過去がみんな腐敗しておって、そんなものは見習うべきじゃないと言われました。もし腐敗があるなら見習うべきじゃないと確かに思いますが、過去がたいへんきたないものであった、かようには私は考えておりませんので、その辺はひとつ矢追君も十分御認識いただいて、過去のいろんなうわさは、これはもうそういううわさを立てない、こういう政府の心がまえで取り組んでおる、これをひとつ御了承いただいて政府を御鞭撻を願いたい。政府はしっかりやれと言っていただきたい。どうかひとつよろしくお願いします。
  217. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 そのうわさを出さないようにするのではなしに、そういううわさが片りんでもないようなガラス張りの明るい経済援助をやる体制をつくる、これが大事じゃないか。いまの総理の話だと、何かうわさであって、今度は絶体うわさの立たないようにやれと聞こえるのです。私はひねくれているのかもしれませんけれども。したがいまして、これを国民の前に明らかにする意味において、先ほど国会において明らかにする問題も出ておりました。これも一つだと思いますし、そういう点について、この基金法改正案が出ている今日においてもっとはっきり示していただきたい。  もう一つは、そういう政界の汚職のうわさとは別に、いろいろな工事がおくれている問題、外務省においても賠償調査団の報告等がいろいろ載っておりますけれども、この内容は、実に見るもむざんな報告が出ておるわけです。たとえば第五次賠償調査団の報告書では、マルタプラ製紙工場の資材は、六〇年五月に船積み完了したが、どういうわけか発電機二台は、四年も海中に沈んだままであるとか、二番目としては、ラワン及びデンバッサル紡績工場は、工事中止のまま機械の大半は野ざらしのまま腐食にまかしているとか、こういうふうな非常にむざんな報告書が外務省の調査で出ているわけですけれども、こういうことも、向こうが悪いといってしまえばそれまででしょうけれども、そうでなしにこっちが、せっかく国民の中からのお金ですからして、それは有効に生きるように、そういう点から私はさっき言った教育の問題をがっちりやって、その基盤からステップ・バイ・ステップでもっていかなければならないと、こう思うわけです。また、汚職とは別に、こういう工事の進捗状況、その他にもいろいろおくれてきているのは一ぱいあるわけです。この点について、どのようにチェックをし、どのようにそれを改めてやっていくか、その方法をはっきり明示していかなければ、向こうの人たちにも私は悪い感じを抱かせ、また、日本国民にも疑惑を抱かせるもとになる、そういう点も含めまして、今後東南アジアの経済援助、特にインドネシア経済援助がどのように国民の前に明らかに、納得のいく方法で、しかも、その国の人たちのためになる経済援助をやることができるか、その点の今後の方針をはっきりお伺いいたしまして、時間がまいりましたのでこれで終らせていただきます。
  218. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) どうもさっきの表現が悪かったようで、うわさが立たなければどんな悪いことをしてもいいというのではございません。うわさが立たないようにやれというのではない。うわさが立たないように悪いことをしろということではございませんから誤解のないように。御指摘になりましたように、うわさが一つも立たないようなりっぱな仕事をしろ、こういうことでございますから誤解のないように。表現のまずかった点はおわびしておきます。  ところで、ただいま具体的な問題について、これから先どうなるのか、たしかインフレが高進中であるその国で、長期にわたる工事計画を進めるということはなかなか困難なことだと思います。私は、ジャカルタに行って一番先に目についたのは、日本大使館のすぐ目の前にビルができて、骨格だけできている。これが進んでいない、完成されていない。ただいまも二、三の例をあげて申されましたが、これは多くの場合、インフレ高進、そういうためにたいへんな間違いを起こしているのだ、かように思います。しかし、こういう事柄が野ざらしになっておる、ああいうビルも中途はんぱだ、どっかで工事費を食ったんじゃないかとすぐ言われますし、また、さっき申しました三Kダムというダムあたりも完成を見ないで中途はんぱになっておることなども確かにまずいことだと思います。これもやはりそれぞれの計画またインフレ高進、それなども勘案しながらこれらの完成に努力をしていかなければならないと、かように思います。インドネシアの場合は、なかなか長期にわたる工事、これを完成さすことが困難ではないか、かように思っております。しかし、これはインドネシアばかりではありません。ちょうどブラジルにウジミナスの製鉄所をつくったその際も、たいへん日本で苦しい思いをした。経済が絶えず動揺している国だとそういうような不都合がいつも起きるようであります。そういうことのないようにするのも、これはひとつわれわれの援助計画、援助の効果をあらしめる、こういうことにもなるのだと思いますので、これらも十分将来のとうとい参考にして、将来においては間違いのないようにしたい、かように思います。  なお関係各省におきまして、このインドネシア経済援助を実効あらしむべく政府はもちろん努力いたしますが、十分ひとつ監視も願いまして、成績があがるようにしたいと心から願っておる次第であります。
  219. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) ここで、だいぶ続きましたので、約二十分ばかり休憩したいと思います。    午後四時五十分休憩      —————・—————    午後五時三十六分開会
  220. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) これより商工委員会を再会いたします。  先ほど委員異動がございましたので御報告いたします。  横井太郎君、豊田雅孝君、仲原善一君、向井長年君が辞任され、その補欠として新谷寅三郎君、温水三郎君、紅露みつ君、瓜生清君が選任されました。     —————————————
  221. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 休憩前に引き続き、海外経済協力基金法の一部を改正する法律案質疑を行ないます。質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  222. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 先ほど総理に総括的な話を質問しまして、あと具体的な問題を二、三お聞きして終わりたいと思います。  最初に、海外経済協力基金の四十三年度の投融資計画の積算内訳の内容をおっしゃってください。
  223. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 御承知のように、経済協力基金の投融資計画は、一般案件と直接借款案件とに分かれておりまして、四十三年度におきましては、一般案件、たとえばメキシコのマイクロウェーブでございますとか、あるいはセイロンの送電線でありますとか、こういったもの七件、ほぼ六十億円という見当をつけております。それから直接借款案件でございますけれども、既定分、すなわち従来からの継続分とでも申しましょうか、韓国、台湾、タイ、マレーシアなど百五十億円余り、それから新規分、この中にインドネシアも入るわけでございますが、フィリピン、アフガニスタンなどを含めまして二百二十億円余り、既定分と新規分と合わせまして三百八十億になりますが、それと先ほど申し上げました一般案件六十億円合わせまして、一応四百四十億円をもって積算の基礎といたしております。
  224. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 直接借款のうちの既定分の内訳はどうでしょうか。
  225. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 実はその点が先ほど総理大臣からお答えがあったところでございまして、私ども一応の見当を持っていないわけではございませんが、国ごとにこの程度を私ども予定しておりますと申し上げますと、実はこれからの交渉が非常にやりにくくなりますので、まことに恐縮でございますが、この点は、四国分を一括して百五十億円余りということでお許しをいただきたいと思うのでございます。
  226. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いま言われたことはわからないわけではないですけれども、たとえば韓国の場合、いままでの取りきめでは七十二億というふうになっていると記憶しているのですが、それ以上は出ないという線でいかれるのか。悪く言えば、ある程度よけいに見積もっておいて、そうして実際はそう出さなくてもその余りをインドネシアで上積みの分へ回すとか、そういうふうな操作が可能かどうか、そういうことは絶対できないようなし組みになっているのかどうか、その点をお伺いしたい。
  227. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 実は七十二億のほかに別建ての話が在来からございまして、これが交渉の比較的めんどうになる部分でございますが、私どもなるべくそういうものを小さく済ますような交渉をいたしたいと思っておるのでございます。これはしかし交渉の展開のしよう等もございますので、ある程度いろいろな局面に対処できるように考えておるわけでございます。
  228. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いま申し上げましたように、そういう対外交渉ですから、ある程度はっきりきめるのはむずかしい面もあろうかと思いますが、まああとの問題でもけっこうですから、こういう点はこういうふうになってこれだけ使ったと、内容はこうであると、そういう面がいままであまりはっきりしてなかったんではないかと、だから今後この積算をやられ、そのあとの問題としてこうであったんだと、そこに意図的なやりくりはなかったというふうなことを、やはり国民に明快にする必要があると思う。そういうことをやれば、政府のほうがそういう対外交渉があるから積算をはっきりこまかいことまで国民に明らかにできないといっても納得すると思うんですけれども、いままでのいろんな経過から、どうしても海外援助というものにはとかくうわさが絶えない。そういう点は総理もさっき認められたんですけれども、この点を明らかにしておけば、みんな政府に対して信用すると思うんですが、そういう点で何か新しい方法といいますか、何かお考えになっているかどうか、その点をお伺いしておきたいと思います。
  229. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その点につきましては、先ほど大蔵大臣から、今後予算を機能別になるべく御審議に便利なような形でごらんいただくようなことも考えたいという御発言がありまして、なお総理大臣からは、交渉の相手国にこちらの、たしか手の内というようなことを言われたと思いましたが、そういったような問題もありまして、むずかしい面もありますが、それらを総合して大蔵大臣を中心に内閣全体としてくふうをしたい、こういう答弁がございました。交渉が済みましたあとでありますと、将来の交渉に差しつかえない範囲で具体的に、こうなりましたと御報告することもできるわけでございますけれども、それら全部含めまして、今後そういう疑念の起こりませんようなやり方を検討いたしたいと思っております。
  230. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 先ほど質問が出たかと思いますが、このインドネシア商品援助の問題でありますけれども、その商品を売却して得た資金をどのようにして保管をして、どのような方面に使うか、これは非常に重要な問題であると思うんですけれども、その点についてのお考えをお聞きしたいんですが……。
  231. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは先般インドネシアの首脳が来日いたしましたときに聞いたことでございますので、知識が限られておりますけれども、売却代金を一般会計と一緒にせずに今回は別に積み立てておく、そしてそれを開発のための現地資金に使うというのが、インドネシアの今回の新しい方針であるようであります。これには当然IMFが指導なり勧告をしておるわけでございますが、今年度からすぐに五カ年計画に入るというのでは必ずしもないようでありますが、五カ年計画については、これから農業なりあるいは社会開発投資といったようなものをやっていきたい、間もなく発足をしたいようなことで細目をきめるんだという話でございました。おそらく今年のプロジェクトのための現地資金でありますが、先方の話から察しますと、新しい長期のものに手をかけるということよりは、途中になっておってまだ生産力化していないものについてそれを生産力化するために、この残額の投資をする、重点をそういう点に向けていくというようであります。この点はインフレをこれ以上激化させない、むしろ生産力を手短に増強していくという意味では、私はそれがやはりいいのではないかと思っております。
  232. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 日本の場合、かって援助をもらって、その援助物資によってそれが復興資金あるいは開発資金というものに利用された。そのためにまあ開銀のような制度ができたわけですが、インドネシアの場合、吸い上げたルピアというものを使う機関としては何か予定されておりますか。
  233. 赤澤璋一

    政府委員赤澤璋一君) いま御指摘のBE援助の見送りとしたしまして積み立てられましたルピアでございますが、ことしのインドネシアの国家予算を見ますると、そのうち四百十五億ルピアがいわゆる開発関係予算でございます。その内訳をさらに見てみますと、中央政府のプロジェクトといたしまして、主としてまあ何と申しますか、インフラストラクチュアの関係、こういったことの復興関係に二百五十七億ルピア、それから国営企業を持っておりますので、国営企業への貸し付け金といたしまして七十億ルピア、この二つを合計いたしますと三百二十七億ルピアになりますが、これが一応BE援助二億五千万ドルを見返りにした予算でございます。なお、このほかに、開発関係予算といたしましては、地方開発プロジェクトが八十八億組んでございますが、これは地方開発税及び土地税によってまかなう、こういう当て込み方をいたしております。しかも、一般会計予算と申しますか、インドネシア予算の中に組み込まれ、そして予算としてこれが支出されるという形でございます。
  234. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いま開発のことがありましたけれども、この吸い上げたルピアを、インドネシア政府としてはどこを一番重点に使おうとしているか、その点はわかりますか。
  235. 赤澤璋一

    政府委員赤澤璋一君) 先ほども申し上げましたように、吸い上げましたルピアといいますか、インドネシア中央銀行のスペシャル・アカウントに積み立てられましたルピアでございますが、先ほど申し上げましたように、その大部分は中央政府関係のインフラストラクチュアと申しますか、かんがいでございますとか、港湾あるいは鉄道、通信、あるいは空港、電力、運河の改修、こういったような従来から手がけており、かつまた現在非常に荒廃しているというような点の修復等に主として使われる、こういうふうに私ども了解をいたしております。
  236. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 なぜ聞くかといいますと、要するに、こういう金は往々にしてぜいたくな、あまり国民生活の、特に経済発展とあまり関係のない産業に流れるおそれもあるわけです。特にまあ後進国あたりでは、そういう傾向がなきにしもあらずでして、そういう点でいま承知しているといわれましたけれども、その点の監督といいますか、規制といいますか、間違いなく、そういう基幹産業、あるいは国づくりに役に立つ産業に必ずそのお金が流れているという点をちゃんと規正、監督ができるかどうかなんですけれども、そういう機関ははたしてどういう機関が適当か、その点を……。
  237. 赤澤璋一

    政府委員赤澤璋一君) インドネシアの国家予算のことでござますので、特に外国からこれを監視をするとか、あるいはその使途について一々事前に何かチェックするとかいうことは、まあ内政干渉といったようなことでもございまして、実際上はなかなかできないと思います。ただ、こういった全体の使い方等につきましては、先ほども答弁の中にございましたように、IMF当局からも数人のコンサルタントが現地にも常駐をいたしておりまして、中央銀行あるいは政府当局とも密接な連絡のもとにこれの実施をはかっておりまするので、その点は大体当初の予算計画に従っていくのじゃないかと思います。また、私ども実際のことはよく存じませんけれども、国の予算でございまするので、向こうの議会といったようなものでございますとか、あるいは会計検査というようなものもあるわけでございます。そういったことから、結果的にはきちっとした使途が明らかになるものと考えております。
  238. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いま言われましたけれども、IMFからもコンサルタントが出ておると、そういった意味において世銀あるいは債権国会議、こういうのもあるわけですし、何かここでひとつ機関をつくるというのもあれかと思いますけれども、何らかの会議的なものでもやって、ある程度そういう後進国が、低開発国がまあ一人前の成長を遂げるまでの間はそういうお金を出しておるところが集まって、そして監督、指導、規制をやれるような、しかも向こうの、現地のそういう議会の意思といいますか、そういうものもあわせてできるような何らかのはっきりしたものができてもいいんじゃないかと思うんですが、その点はどうなんですか。
  239. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは援助いたします国がまずコンソーシアムを組んでおりますし、次に国際機関がじきじきにアドバイスをしておるということでございますので、まあそれと国内のいろいろな考え方との調整ということは、当然インドネシア政府当局の仕事になると思うんです。まあ私どもは、機構としてこれ以上にいきますことは、いろいろ問題をおこすんじゃないだろうか。しかし非常に効果的だと思いますのは、おそらくコンソーシアムによる援助は今年一年で終わりということにはなりませんわけでございますから、明年また議論がありますときに、過年度のものがどのように使われたかということは、当然各国とも報告を聞き検討することは、これは当然そうなると考えますので、したがって、インドネシア側としても将来引き続いて援助を受けることを希望いたします限りは、援助をいたします側ないし国際機関のそういう意見はかなり尊重を実際問題としてはしてくれることになるであろう、そう期待していい理由があるんではないかと思っております。
  240. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 こういう経済協力の問題で、いま各国がおのおの別個に管理をしている、していく点はこれはよくないと思います。まあ共同の管理をするほうが望ましいといま言われた点もよくわかるんですが、そうなると、やはり援助をする体制が、各国別にお金を出すよりも、何か世銀とかあるいはアジア開銀とかIMFとか、そういうところに各国からお金を出して、そこから何かのこれをひもつきとしてインドネシアに貸し付けると、そういう方式のほうが疑惑を招かないのではないかと、こういうことも考えられるんですが、そういう方法に対して検討されたことがあるか、あるいは議論にのぼったことがあるかどうか、その点をお伺いしたい。
  241. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 現実の問題としてそういうことをあんまり実はいままで詳しく考えたことがございませんでしたが、実際問題といたしましては、いまコンソーシアムをつくって、そうしてIMFの人々が中心になって相談をしながら案をつくったり、アドバイスをしておるという体制は、いま矢追委員が言われました体制にかなり実は近いものであろう。かりにこれを世銀なり何なりでいたしますにしても、結局はワシントンではわかりませんので、現地のほうへ人を常駐させなければならぬ。世銀のほう、あるいはIMFのほうということになるのでございましょうから、やっておりますことは、ほとんど私はそれに近いんではないだろうかと思っております。
  242. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 今後の問題として検討されるお気持ちはあるだろうか、あわせてお伺いしたいと思います。
  243. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これはロッテルダムのときにあった話のようでありますが、国際機関としてのIDAがある程度IDAの責任において何がしかの援助をしようという意思を持っておるそうでございます。金額ははっきりきまっておらないそうでございます。  それからIMF自身がスタンドバイクレジットを出しておるそうでございますので、そういう面では国際機関が直接タッチしておる部分もあるようでございます。
  244. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 先ほども総理が言われたのですけれども、日本の国が経済が成長をしてきたので、大いに海外援助をやるべきだと、さっき社会党の方からも国内の中小企業の問題等が出ました。だからそういう場合、結局世界的なそういう機関等ができますと、私は、日本の国はこれだけの力がある、ただ国民総生産ではなしに、国民の所得等も勘案した上でこの国は大体これくらい、この国はこれくらい、そういうようなものもきめられると思うのです。そうすると、その国に対して非常にオーバーコミットメントも出てこないし、妥当な線が——なかなかこの会議はまとまらないかもしれませんけれども、あるいは特にいま日本の国の中で議論のあるようなことは案外おさまってしまう、国際的な立場に立ってものを考えられれる、このように思うのでいまのようなことを申し上げたわけでありますけれども、ぜひ検討をしていただきたいと思います。  それから、通産省の原田局長にお聞きしたいのですが、実は「政策時報」という本の中で座談会がありまして、そこでいろいろおっしゃっておりますが、「産業協力の必要と三つの問題点」ということをおっしゃっております。「ザルに水を注ぐ」というなことが盛んに出てくるわけでありますが、この三つの問題点について、もう少し詳しく教えていただきたいと思います。
  245. 原田明

    政府委員(原田明君) 経済協力につきましては、各種の問題点があることは指摘されておりまして、この座談会で私がどの三つを指摘したかということははっきり覚えておりませんが、援助をやる場合に、相手国の立場に立ちまして経済開発に十分効果をあげるという点、第一だと思います。  それからまた第二に、特に効果をあげます場合に、物の売りっぱなしというような形ではございませんで、企業ないし産業それ自体が相手国に根をおろし、相手国の経済開発に役立つような、世上いわれております産業協力というような形をだんだん整えていく必要があるというような点が第二でございます。  それから第三番目には、いずれにしましても、日本の経済力というものにふさわしい援助というものを世界各国と共同いたしまして、特にわが国関係の深い東南アジア諸国に重点を置いて進めるべきであるというようなことを平生考えておりますので、たぶんそのようなことを申しているのではないかと思います。
  246. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 ここで特におっしゃっているのは、「先進国が一%の義務を履行しても、百円の月給から一円渡し、それを十人家族で分ける様な事で、効果は僅か。よその国もそうですが言葉のわりに協力の実が上らず、やや進んできた韓国と台湾を除けば、金を注げども注げども、ザルに水を注ぐような観があるわけです。」、そういうことから始まりまして、「技術や機械だけもっていき、工事は現地の労力と資本に任せるのでは、機械は野ざらし、ビルは中途で立ちぐされとならざるを得ぬ。」、こういう悲観的なことを言っておられるのですよ。現状においてこうだと言われるのはけっこうですが、通産省の局長さんとして、いま法案が出てきた、改正案が出てきた上において、じゃ、これをどう改善できるか、具体的にこういう点でこの点はうまくいくのだと、こういう方途をお示し願いたいと思います。
  247. 原田明

    政府委員(原田明君) 先ほどの御指摘のおそらく座談会では、特にいままでの経済協力につきまして問題点となっておりますようなことについての反省を強くいたしまして、それについての対策を考えるべきだということを力説したものと思います。したがいまして、いままでの経済協力はそれなりに相当の効果がございましたし、また、これからもそういう効果をあげていかなければならないと思います。いまお話しのございましたような点では、やはり先ほどからお話もございましたようなインフレその他経済の困難に悩んでおりますような国で、長期にわたるプロジェクトというようなものを出します場合に、機械設備をただ送ると、そして計画それ自体は全部現地の国が立てて、現地の人たちで現地の人の管理で継続をしようというような場合には、とかくその国の経済事情その他から、なかなか計画どおり円滑な推移というものは見られないような状況になっております。したがいまして、援助ないし機械設備等の形による援助にいたしましても、そういう援助をいたします当初から、その計画の実行性といいますか、よくいわれますフィージビリティーというものについての見きわめを相手国と相談の上で十分にいたしまして、その上に立ちまして日本としてできる範囲の協力を長い目で続けるというよう努力が一番必要ではないかというふうに考えております。
  248. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 まあ、いまいろいろ言われましたけれども、ほんとうにこの改正案が通ればそういったことは私は早急に解決しないと思うわけです。というのは、先ほどからも申し上げましたが、この外務省の賠償調査団の報告書を見ましても、非常に残念な結果しか出ておらないわけです。今年度の予算でせっかく、先ほど言われましたように、四十四億組まれても、はたしてどれだけその効果があがるか非常にわれわれとしては心配なわけです。ぜひ、今後ともこの点の監督をしっかりやっていただけなければ、国民は、とかくいろんな問題の多い経済部面に対してやはり疑惑の目をどうしてもなくすというわけにはいかないのではないかと、このように思うわけです。  次に、先ほど総理にもお聞きしましたけれども、私はきのうもやかましく言っている教育の問題ですね、これはあまり具体的にお話が出てきてないのですけれども、もしお答えできる方がおられましたらお願いします。
  249. 上田常光

    政府委員(上田常光君) 先生から教育という問題のお話しございましたが、これはいわば技術と申しますか、知識の……。
  250. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 技術と知識と両方含めて……。
  251. 上田常光

    政府委員(上田常光君) これは御承知のとおりに、低開発国から学生さんその他を呼びまして日本で教育をしてやる場合、それからまた、日本から専門家を現地に派遣して指導訓練をする場合と二つございます。これはわが国などは最も東南アジアに対しては技術協力というのは行ないやすい分野にございまして、欧米と違いまして、日本人のほうが東南アジアの人にいろいろな意味でなじみやすいという点もございますし、従来教育と申しますか、技術協力の分野が、わが国経済援助の全体の額の中で占めます率から申しますと、残念ながらまだ、たとえばDAGのあの加盟国の平均よりもずっと低いのでございますけれども、しかしわれわれとしましては、今後とも、特に経済協力を進めます場合に、技術協力という面を強力に進めていきたいと思っております。
  252. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 最後に一つだけお聞きして終わりますが、先ほどもちょっとお話が出ておりましたが、武器の問題ですが、おそらくというか、絶対に武器は援助されないと、こう思います。しかし、けさの「読売新聞」ですか、武器のプラント輸出の問題が出ておりました。武器は出さなくても、そういう武器のプラント輸出ということが行なわれるならば、武器の援助と同じようにならないか、その問題、それに対しては今後どういうようにお考えになっておるか、それが一つと、それから直接武器は出さなくても、要するに武力強化に役立つような物資、そういうのが輸出されたりすることが考えられるわけです。  それと、もう一つの問題として、向こうでどういうふうに使うかわかりませんので、その日本の援助物資について、吸い上げられたルピアの中からそれが軍事援助に回されたり、いわゆる軍事の強化に回される部面もなきにしもあらず、それは、さっき監督ができると言われましたので、心配ないかとは思いますけれども、もしその軍備にいろいろ援助されると、結局ほんとうの経済復興ということはできない。韓国においても、かつてアメリカが相当援助をしたけれども、結局韓国における経済復興はあまりできなくて、むしろ軍事援助が主体になってしまった、こういうふうな歴史もありますし、そういった点について、やはりそういう平和憲法を持っておるわが国はそういうことをしないと長官も言われましたけれども、重ねてこの商品援助としての武器は絶対出さない、それからそれに関する物資、武力抗争に役立つ物資も出さない、また、その金が軍備にも使われない、こういう点をどういうふうにしてチェックすることができるか、その点をお伺して終りたいと思います。
  253. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 武器を出さないということは、御答弁を申し上げたとおり、これは間違いのない方針でございます。  それから間接的にこの武力等の増強になるというようなことについて少し考えますと、たとえばトラックであるとかといったようなもの、これはそれ自身では武器ではないし、武力を増強することにはならない、このように鑑別することも考えられますので、たとえば銃座を持ったトラックということになりますと、これは経済安定、そういうことにどうも直接関係しない、むしろ武器として使われる疑いが非常に濃いわけでございます。そういうものはチェックをすべきだと思います。これらのことはネガチブリストでも十分チェックができます。  それから積み立てられました金が従来のように人件費に使われたりいたしますと、その人件費の中には兵隊さんもいる、米を現物給与したりしますと、そういうことになり得るわけでございますが、今度インドネシアの首脳者たちが言っておりますように、はっきり開発援助に使うために分けるということになれば、そういう心配もないだろうというふうに考えます。
  254. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 武器のプラント輸出の問題は。
  255. 原田明

    政府委員(原田明君) 武器を出しますということは、武力抗争を援助助長するおそれがあるという理由で出さないわけであります。したがいまして、その武器を製造する設備も武器に準じて武器輸出の三原則に照らしまして、紛争のおそれのある国といったようなものについては、もちろん出さないということになろうかと思います。
  256. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 他に御発言もなければ、本案に対する質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  257. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 御異議ないものと認めます。  それでは、これより討論に入ります。  御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
  258. 竹田現照

    竹田現照君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました海外経済協力基金法の一部を改正する法律案に対し、反対の意を表明するものであります。  今日、いわゆる南北問題が歴史的な課題として登場し、先進国と発展途上国との間の格差の解消が真剣に検討されつつあることは周知の事実であります。わが国が東南アジアにおける唯一の先進国として、開発途上にある諸国に対して、応分の援助を果たすべきことが期待されていることも否定できないのであります。昭和三十五年に本法の成立にあたって、わが党が附帯決議を付して賛意を表しましたのも、こういした世界史の流れの中で、わが国もその国力にふさわしい貢献をすることに心から拍手を送ったがためであります。  しかるに、今回の法改正の背景並びにその内容を見るに、基金法の本来の趣旨を著しく逸脱するばかりか、そのねらいはきわめて政治的であり、国民的利益とまっこうから反した危険なものと言わざるを得ないのであります。  第一に、今回の改正案は、その目標インドネシア援助に置いている。そのことは、深刻なドル危機によって窮地に追い込まれたアメリカの強い要請を受けて、ドル防衛協力の一環として東南アジア援助の肩がわりを行なうものであります。すでにドル防衛協力が、日本の国際収支悪化を助長し、外貨準備を弱め、ドルよりも円の防衛すらおぼつかない危険な状態にあることを政府は十分認識すべきであり、安易な考え方は直ちに捨て去るべきなのであります。  第二に、現在経済援助の多くの割合を占めている円借款、再融資等は国会の議決事項となっておらず、国会の権限は政府予算として提出された資金並びに国庫配分について審議されるのみにとどまり、その他一切の行為は、政府並びに輸出入銀行、海外経済協力基金等にまかされ、その運用をはじめ対象金額の決定など政府の権限はきわめて大きいのであります。しかるに、年々膨張する援助費に比較して国会の権限が微弱であり、これを強化し、経済協力の取りきめはすべて国会の承認ないし議決事項とすべきであります。基金法改正により、商品援助が加ることにより、業務が拡大されるわけでありますが、基金業務の範囲、輸銀との関係など、その位置づけについて多くの問題を残していることは、すでに審議の中で明らかにされたとおりであります。国民の血と汗の結晶である税金が国の機関を通じてルーズに海外にばらまかれ、国民の代表がこれを十分に監視、監督できないような法改正はとうてい許すわけにはまいりません。  第三に、発展途上国に対するわが国開発援助体制がばらばらで、経済協力の効果が十分にあがっておらないことであります。政府機関は、外務、大蔵、通産、農林、企画庁などによって対外経済協力は分担されている結果、一貫して管理する責任体制が存在しないにひとしいのであり、その結果は、各省庁ごとのなわ張り争いとなり、結果として、妥協の産物としての援助政策と、その実施方法が出てくることになります。これは業務が、国会に対してほとんど責任がないこと、外交の秘密主義の助長とこれの逆用、業者の利権の大幅な介在、政府の無責任主義、国民の追及の不十分などの理由によることでもありますが、そのために問題が出れば、それを隠すことも、相手国の責任にしても、自由であるということを招来いたします。このような弊害を一日も早く除去するためにも、対外経済協力に統一性と総合性を与えるための行政の一元化をはかるべきであるにもかかわらず、具体的方策を示しておらないことは遺憾であります  最後に、政府は本年度予算編成にあたって、財政硬直化を口実にして、国民生活を圧迫し、国民大衆に犠牲をしいる予算を組んでおきながら、海外協力費については、防衛費などと並んで、本基金はじめ輸銀等に対して優遇するなど、本末転倒の予算を組んだのであります。しかも、きびしい国際経済情勢の中で、ベトナム和平も道が遠く、いつドル切り下げが起こるかもしれず、景気引き締め強化が必要となっているおりから、中小零細企業の倒産は激増の一途をたどり、低所得階層の生活はますます押し下げられているのであります。国民生活を忘れて、誤った対外援助に走ることの愚は、国民のきびしい審判をいつの日か受けることは必定であります。  政府は、いまこそ、これまでの経済協力のあり方を正し、国民の利益と、被援助国の民衆の自立と福祉向上にかなった経済協力の道を探り、真の南北問題解決のため、国際平和と善隣友好の原則に徹することを要望して、反対討論を終わります。
  259. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 私は、公明党を代表して、海外経済協力基金法の一部を改正する法律案に対して、反対の討論を行ないます。  近年、わが国の国際的地位が向上したことから考えると、政府も民間企業も一致協力して、発展途上国に経済援助推進しなければならないことは言うまでもないことであります。  経済援助成果は、一方においては、発展途上国の工業化の傾向に応ずるプラント輸出や、中間製品の輸出の拡大となり、他方においては、わが国の不足する原材料や燃料等の確保に貢献するところがきわめて大きいものがあります。さらに、アジア諸国に対する経済援助は、相互扶助の理念に基づくアジアの繁栄と、今後のわが国経済発展のためにも、重大な意味を持っていると思うのであります。しかしながら、わが国の過去の経済援助には、とかく汚職の疑惑に包まれ、また、それとうらはらの関係にある援助の非効率がつきまとっていたのであります。また、賠償調査団の報告書の中でも、多くの賠償プロジェクトが、当初の計画に反してむざんな結果に終わった例が列挙されております。これらの例は、形の残るプラントであるからまだ追跡できるが、どこにどのように消えてしまうかわからない消費材となれば、それも不可能であります。プラントすら満足にチェックできないところに、その上消費物資がどんどん送り込まれ、それが一般に売り渡されて吸い上げられた資金の行くえということになると、どうなるか全く見当がつかず、これまでの不始末の上塗りをしようという、まことにおそろしいことであります。  いま述べましたように、汚職の疑惑といい、非効率といい、政治モラルもさることながら、制度上、運用上の欠陥に大きな原因があると思うのであります。経済同友会の「経済援助についての政府に対する勧告」の中にも、「わが国援助資産は、産投から輸銀基金資金の補てんとして計上されるだけで、その後は、政府が自由に使って、国会審議を経る必要がないような制度になっている。アメリカでは、対外援助費は予算に計上され、議会やマスコミで活発に討論されていることを考え合わせると、わが国のそれは議会制度を無視した、まことに非民主的な制度である」と述べているのであります。現在のような、政府の非民主的な、また汚職を生みやすい体質を前提とするとき、一見きれいごとのような外観を有するこの法改正の内容は、このような政府のゆがめられた運用を通じて、まさに汚職奨励法ともなりかねないのであります。  法の目的とするところを真に効果的に達成するためには、その前提条件として、援助費の予算化と援助行政の一本化という制度自体の抜本的是正と、この制度を運用する政府、与党の政治姿勢を改めることが絶対不可欠であることを主張いたしまして、私の反対討論といたします。
  260. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 他に御意見もないようでございますが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  261. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 御異議ないものと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  海外経済協力基金法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  262. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、本案の議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  263. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 御異議ないもの認め、さよう決定いたします。     —————————————
  264. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 次に、請願の審査を行ないます。  第七号、中小企業に対する金融施策等の改善に関する請願外八十八件を一括して議題といたします。  本請願につきましては、慣例によりまして、理事会において慎重に検討いたしました。  以下、お手元に配付いたしました資料によりまして、その結果を御報告いたします。  第七号、中小企業に対する金融施策等の改善に関する請願、他に同趣旨のもの一件、第四五号、東北開発株式会社の存続に関する請願、第三六〇三号、政府関係中小企業専門金融機関に対する政府資金の増額に関する請願、第三六八五号、中小企業振興事業団の行なう融資事業拡大強化に関する請願、第三九七三号、電灯線引込口避雷設備設置に関する請願、第四二七四号、盲人世帯に対する家庭電気料金の低減に関する請願。  以上七件の請願を、いずれも本院の会議に付するを要するものにして、内閣に送付するを要するものと決定いたしました。  以上御報告いたします。  ただいまの報告のとおり決定することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  265. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。  なお、報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  266. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  267. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 次に、継続調査要求についておはかりいたします。  この会期中に産業貿易及び経済計画等に関する調査を完了することが困難であると考えられますので、閉会中も引き続き調査を行なうことにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  268. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の作成及び提出の時期等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  269. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。  本日はこれをもって散会いたします。    午後六時二十二分散会