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政府委員(吉光久君)
砂利採取法案につきまして、補足して御説明申し上げます。
近年における土木建築工事の急速な増大に伴い、砂利、砕石、人工軽量骨材等のいわゆる骨材の
需要は年率約一〇%増という大幅な増加を続けており、
昭和三十八年度には約三億トンであったものが
昭和四十二年度には約四億五千万トンに達するに至っております。この間、骨材
供給の大宗を占める砂利の生産も拡大を続け、これとともに、砂利の採取に伴う災害が各地に頻発して大きな社会問題となっております。
すなわち、災害の発生件数から見ますと、
昭和三十六年から五カ年間では三十七件であったのに対し、
昭和四十年、四十一年及び四十二年の三カ年で六十八件と激増しております。
特に最近におきましては、河川砂利の枯渇化を反映して、いわゆる山砂利、陸砂利の採取が増大し、これに伴う災害が激増しておりますが、山砂利、陸砂利の採取には、その規模が大きなものが多く、このため災害の規模及びその与える影響も従来に比し大きく、かつ深刻なものとなっております。
また、原因別に砂利災害の発生
状況を見ますと、土地の深掘、乱掘等に起因するものと、砂利の洗浄汚濁水の排出に起因するものが圧倒的に多く、災害全体の七五・六%を占めております。このほか、降雨時における砂利採取場からの土砂の流出、汚濁水沈澱池の決壊、さらには採取あとでの幼児の水死等、種々の災害が発生しております。
このような砂利の採取に伴う災害に対しましては、現在砂利採取法等の運用によりその防止につとめてきておりますが、何ぶんにも同法は
昭和三十一年に制定されたものであり、その
内容も砂利の採取についての事後届け出制をとっており、また砂利の洗浄汚濁水による災害は同法の規制の対象に含まれないなど、最近の大規模化した、また新しい態様の砂利の採取に伴う災害には十分に対処し得ないものとなっております。
このような
実情にかんがみ、この際、新法を制定し、砂利の採取に対する規制を抜本的に
強化することにより、砂利の採取に伴う災害の防止をはからんとする次第であります。
次に、本法案の
概要を御説明申し上げます。
第一は、砂利採取業につきまして
登録制度を確立することであります。
すなわち、砂利採取業を行なおうとする者は、二以上の都道府県の区域内に
事務所を設置して事業を行なおうとするときは
通商産業大臣の、一の都道府県の区域内にのみ
事務所を設置して事業を、行なおうとするときは都道府県知事の登録を受けなければならないものとし、その登録を受けるにあたりましては、
一定の拒否条項に該当しないこととともに、資格試験に合格した砂利採取業務主任者を置かなければならないこととしております。
この資格試験は、災害防止に必要な知識及び技能について行ない、これに合格した者を設置しておくことを登録の要件とすることによって砂利採取
業者の災害防止のための技術的な能力を
確保し、あわせて自主的な災害防止
体制を確立したいと考えております。
さらに、本法に違反して砂利災害を惹起したような砂利採取
業者についてはその登録を取り消すこと等により、災害を頻発させる悪質な砂利採取
業者を排除したいと考えております。
第二は、砂利の採取計画の認可制度の実施であります。すなわち登録を受けた砂利採取
業者は、砂利の採取を行なおうとするときは、個々の砂利採取場ごとに採取計画を定め、山砂利、陸砂利等については都道府県知事の、河川砂利については河川管理者の認可を受けなければならないことといたしております。現行砂利採取法では砂利の採取に着手したときは事後的に通商産業
局長に届け出れば足りるとしておりますが、この事後届け出制によっては災害防止の
方法や施設等についての尊前の指揮
監督を行なうことができず、常に災害が発生してからの事態の収拾という事後的な行政に追われるのが
現状でありました。本法案ではこれを事前の採取計画の認可制に改め、この採取計画には、砂利の採取量、採取の
方法、災害防止の措置等を詳細に定めさせることとしており、この場合において、都道府県知事または河川管理者は、当該採取計画にかかる砂利の採取が他人に危害を及ぼし、公共の用に供する施設を損傷し、または農業や水産業など他産業の利益を侵害するなど砂利災害の発生するおそれがある場合には、その認可をしてはならないこととしております。
以上の措置により、今後は、未然に砂利の採取に伴う災害を防止し得る
体制が確立されるものと確信いたしております。
第三は、砂利採取
業者に対する各種の命令措置の
強化をはかっていることであります。
現行砂利採取法では、土地の掘さくまたは砂利もしくは廃止の堆積により災害が生じた場合には必要な措置を講ずべき旨の命令を発動できることになっておりますが、砂利の洗浄汚濁水の排出による災害につきましては命令の対象とはなっておりません。したがって、本法案では命令の発動要件を拡大して、そのような事態にも対処できることとするとともに、各種のきめこまかな命令措置を規定いたしております。
まず、都道府県知事または河川管理者は、認可をした採取計画の変更命令を発動できることとし、砂利採取場の
状況の変化等、認可時に予測できない事情の変更に伴う災害の発生に対処することとしております。
次に、災害防止のため緊急の必要があると認められるときは、直ちに災害防止の措置を講じさせることを
内容とする緊急措置命令を発動できることとし、必要があれば事業の一時停止をも命ずることができることといたしております。
さらに、登録を受けないで、または採取計画の認可を受けないで砂利の採取を行なうなど本法に違反している者に対しては、罰則による制裁と同時に、採取あとにおける災害の発生の防止の必要性にかんがみ、本法違反の事実があり次第直ちに採取あとの埋め戻しなどの措置を講じさせることといたしておりますが、これら各種命令措置の
強化により、砂利採取
業者の
登録制、採取計画の認可制と相まって、砂利の採取に伴う災害の防止のため万全を期しております。
なお、このほか、砂利採取場に標識の設置を義務づける規定及び砂利の採取に伴う災害に密接な関係を有する関係市町村長の
意見を採取計画の認可等に反映させるための規定を設けるとともに、一元的な取り締まり
体制のもとに砂利の採取に伴う災害の防止をはかるための所要の規定の整備をはかることといたしております。
これが、この
法律案の補足説明でございます。