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政府委員(
熊谷典文君)
割賦販売法の一部を改正する
法律案につきまして、その提案理由及び要旨を補足して御説明申し上げます。
割賦販売法は、割賦販売及び割賦購入あっせんにかかる取引を公正にし、その健全な発達をはかることにより、商品の流通を円滑にし、
国民経済の発展に寄与することを目的として、昭和三十六年に制定されたものでありますが、今回の改正案は、同法の
規定のうち、当面緊急に改善
措置を講ずる必要のある前払い式割賦販売業にかかる
規定を改正しようとするものであります。
この改正の対象となる前払い式割賦販売は、最近急速な伸びを示し、現在、業者数は二百をこえ、前受け金残高は、ミシン二百四十六億円、手編み機九十二億円、家庭電気器具百二億円、家具及び楽器百三十三億円等合計約五百八十億円の規模に達しております。
しかしながら、このような目ざましい伸長の反面、倒産事故も次第に増加し、多数の購入者が不測の損害をこうむるような事例も発生し、また、この制度に関連する苦情も、契約解除の際の返還金の支払いの遅延に関するもの等を
中心に通産省の苦情処理窓口等で受理するもののみで年間約三百件に達するような状況に立ち至っております。
これがため、
政府におきましては、従来、業者の経営体質の強化及び業務運営の改善のため積極的な指導を行なうほか、倒産事故に際しては業界の相互扶助等による購入者の救済をはかり、また、苦情の申し出については紛争解決のための仲介を行なう等、消費者保護の見地から各種の
措置を講じておりますが、これらの行政指導にはおのずから限界がありますので、今回この
法律の改正をお願いすることとしたものであります。
この改正案の作成にあたりましては、昭和四十年十一月から割賦販売審議会において検討を重ね、昨年四月五日に答申を得ておりますが、この改正案は、ほぼ答申の
結論を忠実に法文化したものであります。
次に、主要な改正点につきまして、提案理由説明の順序に従って補足的に説明いたします。
第一の改正点は、前払い式割賦販売業の登録制を許可制に改めることとした点であります。これは、申し上げるまでもなく、財産の状況または業務の方法が適正でない業者にはそもそもこの方法による営業を許すことが適当でないと考えたためであります。
これがため改正案では、許可の要件として前払い式割賦販売業を健全に遂行するに足りる財産的基礎を有することを加えております。これは、現行法のような形式的、外観的な基準のみではなく、許可の申請を行なう者の実態により一そう立ち入って財産的基礎の有無を判断するためのものであります。したがって、判断にあたっては、当該企業の経常収支、負債等の状況、一定期間の業務計画等を参照しつつ総合的に行なうこととしております。
次に、許可の要件としては、前払い式割賦販売契約約款が購入者保護のための一定の基準に適合することを加えております。これは、約款には購入者に一方的に不利を課するものが多く見られ、しかも、契約の締結に際して購入者が約款を詳細に検討することはきわめて少ないため、解約に伴う前渡し金の返還等の問題を
中心に紛争が頻発しておりますので、この状況を是正するため、約款を許可の際の事前
審査にかからしめることとしたものであります。
第二の改正点は、前払い式割賦販売業者の営業保証金の供託義務を強化し、購入者の債権保護を強化することとした点であります。現行法においても、主たる営業所につき十万円、従たる営業所または代理店につき五万円の営業保証金の供託義務を課しておりますが、この金額は、倒産のような
事態においては、購入者保護には十分とは言えない状況にあります。そこで改正案は、前受け金残高の三分の一に相当する額を、購入者への優先弁済のための営業保証金として供託しなければならないこととしております。この比率は、高率なほど事故が生じた場合の債権者の救済には資するわけでありますが、前受け金は、実際には商品の仕入れ代金、集金費用等の資金手当てにその三分の二
程度が充当されており、あまり高率にすると業者の経理に影響を及ぼし、かえって混乱を生ずるおそれが強いので、三分の一としたものであります。また、不幸にして倒産等の
事態が生じた場合においては、多数の債権者に公平に供託金を還付し得るよう、政令等で合理的な手続を定める予定であります。
なお、現在前受け金残高は約五百八十億円の多きに達し、その三分の一といえば、約二百億円につき供託義務が生ずることになりますので、この急激な義務強化による影響を緩和するため、供託は二年間にわたり四回にわけて実施するよう経過
措置を講じております。
第三の改正点は、倒産等の
事態を未然に防止するとともに購入者との間の紛争を減少させるため、前払い式割賦販売業者に対する監督を強化することとした点であります。
この点に関しては、まず、改善命令の
規定を設けております。
これは、前払い式割賦販売業者の財産の状況または業務の運営につき購入者保護の見地から改善を要すると認められる場合には、通産大臣が、改善のため必要な
措置をとるべきことを命ぜんとするものであります。この改善命令が発動される場合といたしましては、
法律上定められている経常収支の状況または流動比率の状況悪化の場合のほか、たとえば、著しく過大な債務がある場合、約款で定めた商品引き渡し期限等を遅延している場合等を通産省令で定めることとしております。また、改善命令の内容としては、個々の場合に応じて最も適切な
措置を命ずることになりますが、その例としては、経費の節減、前払い式割賦販売の営業規模の縮小、商品の仕入れ方法の改善等の
措置を考えております。
前払い式割賦販売業者に対する監督強化のための
措置としましては、その他、約款の変更につき事前に届け出る義務を課し、その内容が不当な場合には変更命令を行なうことができることとする
規定等を設けております。
以上御説明申し上げました前払い式割賦販売にかかわる改正のほかにも、本改正案は、相当数の条文について、削除、変更、追加等を行なっておりますが、これらはおおむね前払い式割賦販売にかかわる改正に伴う条文整理であります。
以上で、この
法律案につきまして、簡単でございますが
補足説明を終わります。何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
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