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1968-04-23 第58回国会 参議院 商工委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月二十三日(火曜日)    午前十時三十分開会     —————————————    委員異動  四月二十二日     辞任         補欠選任      森部 隆輔君     仲原 善一君  四月二十三日     辞任         補欠選任      近藤英一郎君     杉原 荒太君      椿  繁夫君     近藤 信一君      向井 長年君     片山 武夫君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         金丸 冨夫君     理 事                 高橋  衛君                 土屋 義彦君                 宮崎 正雄君                 阿部 竹松君     委 員                 上原 正吉君                 近藤英一郎君                 平泉  渉君                 柳田桃太郎君                 近藤 信一君                 沢田 政治君                 竹田 現照君                 矢追 秀彦君                 片山 武夫君    国務大臣        通商産業大臣   椎名悦三郎君    政府委員        通商産業政務次        官        熊谷太三郎君        通商産業省鉱山        局長       両角 良彦君    事務局側        常任委員会専門        員        小田橋貞寿君    参考人        日本鉱業協会理        事        河上健次郎君        日本硫黄企業連        盟代表理事    山野上重喜君        全日本金属鉱山        労働組合連合会        調査部長     地職  司君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○金属鉱物探鉱促進事業団法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付) ○金属鉱業等安定臨時措置法廃止する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○産業貿易及び経済計画等に関する調査鉱業政  策に関する小委員会設置及び小委員、小委員長  選任の件)     —————————————
  2. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨日、森部隆輔君辞任され、その補欠として仲原善一君が選任せられました。     —————————————
  3. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 次に、衆議院送付金属鉱物探鉱促進事業団法の一部を改正する法律案及び金属鉱業等安定臨時措置法廃止する法律案の両案を一括して議題といたします。  本日、午前は両案につきまして、三人の参考人の方に御出席をいただいておりますので、これから順次御意見を伺いたいと存じますが、その前に、参考人皆さま一言ごあいさつを申し上げます。  参考人の方々には、御多用のところ、当委員会のために御出席を賜わりまして、まことにありがとうございます。委員一同にかわりまして厚く御礼を申し上げます。御出席皆さま方から金属鉱物探鉱促進事業団法の一部改正法律案及び金属鉱業等安定臨時措置法廃止法案の両案について忌憚のない御意見の御開陳を願い、当委員会の審査の参考に資したいと存じます。  なお、議事の進め方につきましては、まず初めに一人十五分ないし二十分程度で御意見をお述べ願いまして、そのあとで委員から質疑がありました場合にはお答えを願いたいと存じます。よろしくお願い申し上げます。  それではまず河上参考人に御意見の御開陳お願いいたします。
  4. 河上健次郎

    参考人河上健次郎君) 河上でございます。本日、安定法廃止並びに事業団法の一部改正関連いたしまして、私ども意見を申し上げる機会を得まして、しあわせに存じます。  安定法はいまから五年前に、当時の情勢から見まして、わが金属鉱業界貿易自由化を控えまして、外国とのコスト差に非常に苦しみまして、非能率鉱山が続々と整理縮小の機運にございました。こういう情勢に対処いたしまして、貿易自由化影響最小限度に食いとめると申しますか、そういう趣旨で根本的な鉱業政策基本をこの際考えようという趣旨で立法せられたものでございまして、これの五年間経緯を振り返って見ますと、この法の趣旨に基づきまして、逐年鉱業合理化の目標が定められ、計画が進められたのでございます。業界の必死の努力前提にいたしまして、各種の鉱業施策が講ぜられまして、おかげでわが鉱業界体質も逐次改善されてまいりました。一方、その間特に銅を中心にいたしまする国際情勢の非常な変化が起こってまいりまして、ベトナムのエスカレーション、あるいはアフリカのザンビア、ローデシアの問題、さらにチリのストライキといったような政治労働情勢変化によりまして、銅の供給がきわめて円滑を欠く状況から、銅のブームが出現いたしました。かような変化によりまして、非鉄金属鉱産物価格も銅を中心にいたしまして、鉛、亜鉛も若干上昇するといったような客観情勢変化もございまして、当初非常に心痛されておりました貿易自由化影響は回避できた結果と相なっております。これはもともと五年間時限立法でもございまして、いわば法の役割りを果たして今日に至ったのでございまして、この機会にこれが廃止されるということは自然の成り行きであろう、かように考えておるのでございます。問題は、昨今の非常に大きな国際情勢の動きにも関連いたしまして、今後の日本全体の鉱業あり方考えて見ますると、考えなければならない問題がいろいろあるわけでございます。したがいまして、今後もあるべき鉱業政策を私どもとしては強く要望する次第でございまして、国の立場からお考えいだく点が多々あるわけでございますが、かような問題につきましては、私どもといたしましては、鉱業審議会が現在持たれておりますが、これの活発な御審議の場に私ども意見も十分反映させていきたい、そういうことによりまして、新しい情勢に即したあるべき鉱業施策を今後活発に進展されることを強く期待する次第でございます。  そういう点に関連いたしまして、特に問題になりますのは、国内外の探査を活発にいたしまして優秀な大量の鉱源を今後も把握して、これをものにしていくということがどうしても鉱業の将来の盛衰に関する非常に大切な問題でありまして、こういう点についての政策は今後ますます強く推し進めていくべき問題でございます。こういう点に関連いたしまして、今回、探鉱事業団業務内容を拡充いたしまして、海外につきましても探査事業団の手でやる、あるいは鉱業事業団業務一環といたしまして海外探査開発につきまして大いに援助をしようという趣旨政策を盛り込む法の改正が御審議中でございますことは、非常に私どもとして心強い次第でございまして、ぜひともこれが実現いたしまして、私どもの念願する鉱業政策が実るための大きな一歩の前進になることを期待する次第でございます。  以上、安定法廃止並びに事業団法改正につきましての私の所見を申し上げた次第でございますが、この機会に、今後やはり業界として当面しておりまして、先ほど申し上げますように、大いなる政策の進展を私どもぜひ期待したいという問題の中に、鉱種別に申しまして金の問題がございますので、産金政策確立要望する点に関しまして一言お聞き取りをいただきたいと思います。  御承知のとおり金は普通の鉱産物というものの性格以外に、国際決済手段としての性格を持っております。御承知のような経緯によりまして昨年のポンド切り下げ以来急激に起こりましたゴールドラッシュ、これが続きまして、遂に三月末には金プールの申し合わせによりまして御承知のような結果になりました。世界的に二重価格制が生まれたようなわけであります。今後の国際金融情勢の推移はどうなるか、まことに微妙な情勢をはらんでおるわけでございます。これにうらはらになります金の今後の姿というものは、まことに予断を許さないのでございます。世界的に見ましても金の生産ソ連を入れまして千七百トンといわれておりますが、これはもうすでに南アにおきましては頭打ちになっております。ソ連を除きまして自由世界の約千三百トンの年間生産のうち三分の二は南アでございます。これももうすでに現在の世界的な金価格を前にして生産停滞ぎみでございます。一方、日本状況はどうかと申しますと、戦前最もはなやかなりし時代には日本鉱産物の中で三分の一が金銀の生産でございました。銅と並んで両横綱でございました。それがどうでございましょう。このごろは全く逼塞いたしまして、わずか一%に過ぎない生産状況でございます。しかも現在の日本金山は、もうよたよたといたしまして、このままでは閉山、廃止の運命に直面いたしております。ところで一方、金の需要は非常にふえてまいっておりまして、これはただ装身具だけではございません。歯科医が使います金はもちろん、工業用の用途にも非常に最近使われております。こういうような重要な需要の趨勢を控えまして、一方生産は、国内のいわゆる金山だけの生産をとって見ますると、現在わずかに年間六トン見当しか出ておりません。戦前最盛期昭和十五年には二十七トンの生産を見ておりましたのであります。もちろん私ども業界といたしましては、いわゆる金山のみならず他の銅山あるいは鉛山等からも幾らかの金を出しておりますし、それから最近海外産の開発鉱石もどんどん入れております。そういうことで、全体の金の生産としては十五、六トン見当生産をいたしております。しかしとうていこれでは国内需要に追っつきませんので、政府でも非常に御心配いただきまして、昨年度は初めて外国から十トンの金の輸入をいたしました。それでやっと八トンの放出をお願いいたしまして、国内需要を満たしておるわけであります。しかし、先ほど申し上げましたような国際情勢で、要るときには幾らでも買ったらいいんだというふうなことでいいかどうか。幸い国内にはまだ資源があるのでございます。私どもの研究の結果によりましても、資料を持ち寄りました結果によりましても、また、役所のほうでいろいろ御調査になりました結果によりましても、相当鉱量賦存可能性を持っております。これを有効に開発いたしますならば、相当の優秀な鉱源を発見いたしまして、これから相当産金を思い切った進行状態に持っていくことが可能でございます。現在非常に金山は赤字を背負っておりますので、十分探鉱する余裕がございません。しかしながら近代的な技術探鉱技術をもっていたしますれば、必ずこれの新規の鉱量をつかみ得るための探鉱は可能でございます。これの成果は必ずあがるというふうに考えておるわけでございます。幸い政府も今回の予算におきまして、金の政策のための調査費として一千万円を出していただくことに相なっておりますが、とてもそんなものじゃだめでございます。私ども考えによりましても、また通産の考えによりましても、五カ年間の思い切った探鉱によりましてこれに約五十億近いものをかけて抜本的にこの探鉱開発を促進するということをやりますためには、国庫から思い切った予算をつけていただく必要がある。私ども民間からも業界からもがんばって無理をしてその大きな探鉱一環に費用を投ずるだけの腹がまえができておりますが、どうしてもそういう政府予算化が必要でございます。また、政府一般会計に必ずしもこだわることでなく何かの方法によりましてこれを捻出する道もあるのではないか、そういう考えも持ち合わせておるような次第でございます。いま申し上げましたような趣旨でございます。もうこれ以上の事態の遷延は許さない情勢に立ち至っておるかと存じまするので、この際、抜本的な金鉱業あり方につきまして施策確立していただきたい、この点につきまして特に要望を申し上げまして私の所見開陳を終わりたいと思います。
  5. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) ありがとうございました。  次に、山野上参考人お願いを申し上げます。
  6. 山野上重喜

    参考人山野上重喜君) 私、日本硫黄企業連盟代表理事をいたしております山野上でございます。本日は私たちの意のあるところをお聞きいただく機会を持っていただきましたことを衷心より厚くお礼を申し上げます。  この硫黄の問題につきましては、本委員会におきまして審議中でございまして、本日は金属鉱業等安定臨時措置法廃止する法律案並びに金属鉱物探鉱促進事業団法の一部を改正する法律案の二法案関連をいたしまして、銅、鉛、亜鉛等指定鉱種につながる同じ地下資源産業といたしまして、最近きわめて重大な局面を迎えております硫黄鉱業について、その実情を御説明し、十分な御理解と御支援を賜わりたいと存じます。  硫黄鉱業実情でございますが、硫黄日本におきましてはいままで自給可能な唯一の地下資源でございます。古くから日本におきましては硫黄海外に出しておったわけでございますが、アメリカのフラッシュ硫黄が出現するまでの期間における世界硫黄について硫黄資源国として日本は名高かったことは御承知のとおりでございます。いまささやかながら硫黄鉱業合理化を実施中でございます。御承知のように大企業とは違いまして企業が非常に小そうございます。したがって思い切った合理化を実施する力を持っておりません。なお、会社の企業内容から見ましても合理化を実施するに十分な力を持ち合わせていないのが当企業の弱点でございます。それでも政府指導によりましてここ五、六年の間に自由化を迎える態勢を確立すべく今日まで営々とその努力を続けてまいった次第でございます。この情勢の中で、御承知のように災害を防止するたてまえから、公害基本法の出現を見るに至りまして、石油から硫黄を回収することが法律的にきめられたわけでございます。これは経済的に、硫黄をとって商売をするのだという目的のものではありません。企業本来の目的である、私たち自力で立ち上がって商売をしようという者がとうてい太刀打ちすることのできない、いわば硫黄企業にとりましては第二の被害者であるというような立場に置かれてまいりまして、このばく大な石油回収硫黄ととうてい競争することは不可能であります。需給の均衡は破れ、市場価格は低落の一途をたどっておりまして、小さな企業でありまするから、自分たちの話し合いだけによる市場の安定というものは非常にむずかしい状態であります。この過剰硫黄に対しまして、私たちは先般来鉱山局の御指導もあり、企業みずから自分を守るたてまえのもとに、国内価格の安定と輸出に対する秩序の確立努力をしてまいった次第でございます。このままで推移いたしますと、回収硫黄鉱山硫黄は勢い自由競争に突入するのやむを得ない状態になるおそれが多分にあるわけでございますが、そうした場合には申すまでもなく山硫黄は圧倒されることは間違いないでありましょう。それにつきまして対策お願いいたしたいわけでございますが、もともと石油は輸入された商品でございまするし、できた製品についてはたくさん輸出もいたしておるわけでございまするけれども、この回収された硫黄も、要すれば輸出に振り向けていただくことを御指導いただけないだろうかと、かように考える次第でございます。また、国内需給の安定と輸出を円滑に実施するために、国は何らかの調整機関を設けていただくことはできないだろうか。そうして石油を輸入する場合には、極力低硫黄の原油なり重油なりを輸入していただくことに力を注いでいただくことはできないでしょうか。また、硫黄原料として使う肥料生産機械、この機械プラント輸出する場合には、硫黄ひもつき輸出するということを対策としてお考えいただくわけにはいかないだろうか。それから合理化資金の調達と体質改善援助措置を推進していただくようにお願いをしたい。かような硫黄対策についての御要望お願い申したいと存じます。  この対策要望いたします理由といたしましては、硫黄鉱業は、各社は御当局の御指導によりまして真剣に合理化努力を継続中でございます。硫黄鉱業の現在置かれておりまする姿は、先ほども申し上げましたとおり、第二次公害被害者であるような感じを私たち持っておるわけでございまして、問題の解決には高い次元で御考慮をいただくようにお願いをいたしたいのでございます。国内のこうした資源産業保護育成されて今日に至っておりますが、今後も回収硫黄が出てまいるとはいいながら、なおかつ保護育成さるべき余地が十分に残っておるんではないか、かように考える次第でございます。何とぞ地下資源対策として基本的にこういう面を御考慮いただくようにお願いをいたしたい、かように存ずる次第でございます。硫黄資源は将来とも世界的に不足するのではないか。人口の増加に見合う肥料の増産、それに伴う硫黄需給関係は将来やはり不足をするのではないか、かように考えるわけでございます。硫黄鉱業政策は、この点を十分に御配慮いただきたいと存じます。これにつきまして、後刻御質問がございましたならば、質疑に応じたいと存じます。ありがとうございました。
  7. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) ありがとうございました。  次に、地職参考人お願い申し上げます。
  8. 地職司

    参考人地職司君) 金属鉱山労働組合であります全鉱の地職でございます。  地下で働く私たち産業の問題を、先般は衆議院で、今回は参議院で労働組合という立場から意見を述べさせていただく機会を得ましたことを心から感謝申し上げます。  今回二つ法案が出ているわけでございますけれども、かつて貿易自由化日本産業全般にわたって大きなあらしとして吹いたときに、私たち金属鉱山あるいは金属鉱業は、その危機に、ほかの産業と同じように、あるいはその中でも特に第二の石炭になるのではないかといわれるほど、重大な時を迎えたわけであります。そのころ労使の立場を越えて日本地下資源を守り雇用の場を守り、なかなか鉱山という産業から離れていくことのできない私たち生活を守るために訴えてき、政策確立お願いしてまいりました。そのころから考えますと、現在の時点というのは、ベースメタル中心とする世界的な価格の高騰など、多くの条件変化など含みながら、大きく事態変化しているということについて認識をいたしております。したがって、安定臨時措置法が一応の役割りを果たしたということについては、評価をいたすわけでありますけれども金属鉱業経営者方たちが、現在の金属鉱業が多くの条件変化の中で基盤の確立ができたというふうに認識をし、さらにそれは海外に出ていくことによって発展をし得るという確信に満ちておられる反面、私たちの働く者のほうから見れば、多くの課題が残っておるように感ずるわけであります。この自由化から現在四十年台にわたって、金属鉱山でかつて七百三十くらいあった鉱山が、四十年には三百七十一に減っております。労働者の数は七万三千余いたものが約五万に減っております。当時地方自治体をあげて地域産業を守るという立場から全国集会を開いて大きな行動を起こしたことが、政策の面では前進をいたしましたけれども、その発展の陰に多くの犠牲や被害も伴っているということについて黙視することはできないと思うわけであります。そういう観点から今回の二法案の問題について愚見を述べてみたいと思うわけです。  結論から申しますと、金属鉱業等安定臨時措置法廃止する問題については、やむを得ない時期を迎えているとは存じますけれども鉱業全般の問題について、もっと基本的な安定法というようなものを立案をし、その後に一応の役割りを果たした臨時措置法廃止というものを考えてもらいたいというのが率直な私たちの気持ちであります。政策基本は、当時言われましたように、国内鉱業保護育成、特にこの問題では探鉱の強化ということで成果をあげております。二つ目には需給及び価格の安定という問題をあげておりました。三つ目には労働者雇用生活の安定ということをあげておりました。したがって、この三つの問題について、それぞれ政策的にあるいは実際の面で落ちついたという場合であれば、私たち臨時措置法廃止についてすなおにうなずけるわけでありますけれども需給及び価格の安定の問題、労働者雇用の問題など、まだ解決していない問題があると考えるわけであります。それからさらに昨年答申されました鉱業審議会答申には、同じように需給価格の安定、雇用確保対策中小鉱山対策鉱種別対策等、解決しなければならない幾つかの課題を提起しているわけであります。ところが政府は、海外開発重点政策として取り上げ、さらに鉱種問題としては金の問題を具体的に取り上げておるだけで、その他の問題では鉱業審議会答申に十分こたえ得る政策を出していないというふうに考えるわけであります。政府安定臨時措置法廃止し、事業団法海外業務追加肩がわりをしようとしておられるふうに見受けられます。しかし、これはもともと安定臨時措置法に基づいてできた事業団でありますから、事業団法改正によって鉱業審議会答申にこたえるという立場だけでは、数々の課題を放棄するにひとしいというふうに考えております。そこで、安定臨時措置法発展的に強化拡充するために、鉱業安定法の制定など、前向きの姿勢で取り組むべきだと思います。金属鉱物探鉱促進事業団法改正については、臨時安定措置法との関連もあるわけでございます。先ほど申し上げましたように、銅、鉛、亜鉛など、需給拡大があったわけでございます。したがって、それをまかなうに足る国内自給が望めない以上、海外への進出必要性はある程度理解できます。しかしながら、国内対策を軽視し、またすりかえてはならないということを強調いたしたいと思います。国内鉱山安定的発展自給度を高める努力があってこそ、海外進出成功度も高いと判断をいたします。過去の海外投資の実績を見ますならば、そのリスクは国内探鉱開発の比でないことははっきりいたしております。さらにまた、海外鉱山探鉱開発によって原料鉱石を確保する場合、開発途上国経済開発あるいは政策考えれば、原料鉱石確保のみを前提とする海外進出政策は将来大きな矛盾に突き当たるわけで、その観点からいえば、単に国内鉱山だけではなくて、製錬にも大きな影響があると考えるわけであります。そのことは、発展途上国の経済問題と将来大きな矛盾に突き当たる危険性もはらんでいるということをつけ加えておきたいと思います。われわれはしたがって事業団法改正して海外進出するということについて反対という立場ではなくて、それに賛成をしながら国内の問題を忘れてはならない、あるいは海外に出ることの危険性について指摘をしておきたいと思います。  それから今後政策として検討をしていただきたい諸問題について幾つか触れたいと思います。  需給価格の安定については、一手買い取り機関設置による需給価格安定化具体化をはかることを緊急の課題としていただきたいと思います。  それから中小鉱山対策としては、新鉱床探査費補助金の問題あるいは大手に対する融資、それを中小への拡大の問題、または大手中小企業の区分の問題、広域調査関係で言えば一つの鉱種に対する集中的な広域調査成果をあげているところでありますけれども幾つかの鉱種を貫く広域調査、たとえていえば金、銅、鉛、亜鉛などというものが統一的にその地域探鉱されるような方式の策定、こういう問題も検討し、強力な予算の裏づけによって推進をしていただきたいと思います。  鉱種別の問題としては、金の問題について先ほど河上参考人のほうから意見もありました。硫黄対策については山野上参考人からの御意見もございました。重複する部分は避けたいと思いますけれども、特に硫黄の問題で第二の公害としてあるいは第二の被害者としての問題と同時に、硫黄鉱業、これはその他の鉱業でも言えることですけれども、国のそのときの政策によって大きく左右された鉱山が、政策の変更によって山をつぶさざるを得なくなる、あるいは縮小せざるを得なくなる、こういう事態について、やはり私たち政策の面での保護というものを、農業と同じような立場鉱業というものに目を向けていただきたいと思います。現在硫黄問題で、硫黄・硫化鉱分科会で審議がされているようでありますけれども、特に石油には外資が半数ぐらい入っているというふうに聞いております。その場合、石油から出てくる回収硫黄山硫黄との調整の問題で、石油業界鉱山側とが意見の一致を見ようとする努力をしても、外資の持っている経済あるい資本の合理性のみで判断をされますならば、国内産業に対する悪い影響というものは否定せざるを得ません。外資が日本国内鉱山の安定なり保護なりを考え立場に立ち得るかどうか。この点について多くの産業が直面している問題と同じような問題があるように思います。そういう点から言いますならば、鉱業審議会の中の硫黄・硫化鉱分科会で出される結論を待つのみでは抜本的な硫黄対策というものはあり得ない、出し得ないのではないか、こういうふうな危惧すらいたすわけであります。  石こう対策も第二の鉱害としてあるわけで、金、硫黄、硫化鉱、石こう対策というものを当面する鉱種別の問題として、重大な課題として位置づけておるわけでございます。  労働力対策については、御存じのように地下産業というのは、石炭に見られますように非常に災害の多い産業であります。石炭ほど高くありませんけれども、その他の産業と比べますと金属鉱業は石炭に次ぐ災害の頻発と災害のひどさ、強度の高さであります。特に最近の人減らしの傾向は、組み夫、社外鉱が入っておりますが、組み夫の面における災害が本鉱の災害の約三倍という状態になっております。これは困難な鉱業情勢に対応する経営側の努力矛盾が出ているあらわれだと思います。さらに労働力不足はこの産業にも大きな影響を与えております。組み夫で現在なし得ている生産が、組み夫の間の引き抜きがすでに行なわれている、ある鉱山の組み夫に対して他の鉱山の組から引き抜きが起こっているという状態があります。これは労働力問題を産業全体で考えなけければならない事態に直面しているというふうに思うわけであります。  最後に、私たち産業は、出す製品の価格の問題で大きくゆれ動いております。いま銅に例を引いてみますと、昭和三十六年から七年ごろ二十七、八万だというふうにいわれ、それが合理化目標だというふうにいわれておったわけですけれども、最近で見ますと、先ほど御指摘のありましたように、いろいろな政治経済面におけるあるいは労働面における世界的な情勢から、価格の高騰を見ております。四十一年九月期で四十八万円、四十二年三月期で四十五万円、四十二年九月期で三十九万円というふうに、当時から見れば高騰を見ておりますけれども、その価格の変動というものは著しいものがありますが、これはその原因の一つにベトナム戦争もあるわけですけれども金属鉱業の経営の方たちが心情的にはベトナム戦争を支持したり、平和への動きをまずいなどと考えてはおられないと思います。しかしながら、客観的にはそれが価格を通じて産業に少なからず有利に働いていることは否定できない事実であります。私どもといたしましては、こういう作用の働かないような、価格の変動が産業に直接響いてくる、労働者に直接響いてくる、そういう産業であってほしくないわけであります。少なくとも価格なりあるいは物の価値というのは、生産にかかった労働の量によってきまると思います。先に価値なり価格がきまって、そのことから産業影響を受け、企業影響を受け、労働者影響を受けるということについて大きな矛盾を常に持っておるわけであります。そのいい例が先ほどの金であります。人為的にきめられた金が、価格が上がらないために大きな影響が出ていることは御存じのとおりであります。九州の金の鉱山経営者の方と話した機会があるわけでありますけれども、賃金について銅、鉛、亜鉛大手労働者の約七割から八割という労働条件で働いてもらっている。しかも年々の賃上げについては六割、七割でがまんをしてもらっている。   〔委員長退席、理事宮崎正雄君着席〕 こういう事態について金の鉱山経営者自身が矛盾を感じ、労働力の確保の問題との関連も含めて鉱山経営自体について常に苦慮している実態について御理解をいただきたいと思います。  以上幾つかの項目に分けて意見を申し上げ、私の意見を終わらせていただきます。
  9. 宮崎正雄

    ○理事(宮崎正雄君) ありがとうございました。  以上をもちまして参考人の方々の御意見の御開陳は一応終わったのでありますが、これに対しまして質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  10. 沢田政治

    ○沢田政治君 ただいま非常に参考になる貴重な御意見を拝聴いたしたわけでありますが、まだ納得できないこともありますので、これからお聞きしたいと思います。  まず、最初に河上参考人からお聞きしたいわけでありますが、河上参考人金属鉱業等安定臨時措置法がそれぞれの効果をもって五年の歳月を迎えて、今日これの廃止法案が出ておるわけでありますが、いままでの効果等を考えるならば時宜に適したことであるし、自然の成り行きであるというようなことを言われたわけでありますが、私もその意見も決して間違った意見ではないと思いますが、ただ全般的に鉱業というものを見詰める場合に、安定法がある程度の効果を金属鉱業にもたらしたことは否定しません。しかし、全般の鉱種を、各企業の格差を全部ならして考えた場合に、はたしてわが国の金属鉱業が大から小まで完全に自由化対策の体制が完備した、完成した、こういうことはまだ言い切れないのじゃないかと、こういうように考えておるわけであります。特に私は、そのことが集中的にあらわれておるのは、中小企業においてであろうと思うわけであります。たとえば、銅を例にとっても、なるほど、大手企業といわれておる企業は、合理化においてもあるいはまた製錬所の臨海施設あるいはまた製錬所の拡大等を見ましても、完全とは言えないけれども中小企業よりは合理化に対応する体制というものはできておるわけであります。しかし、その反面においては、中小企業価格の変動いかんによっては、まさに危急存亡の運命というものをまだ前に迎えておると思うわけであります。そういうような状態考えてみるとき、私は、この法律を廃止するのは積極的には是としないけれども、まあかりに仮定して是とした場合に、臨時措置法にかわる金属鉱業全般の政策を位置づける母法といいますか基本法といいますか、そういう法律というものが必要ではないか、そういう前提に立ってこれを廃止するものであるならば、積極的に是とできるわけでありますが、そういう不安があるのではないかと私は考えるわけであります。このことについては地職さんと河上さんの意見は若干異なっておるようでありますが、その辺に対する御見解はいかがかと思いますのでお聞きしたいわけであります。ややっこしい聞き方で何が質問の焦点かわかりにくいかと思いますが、大企業においてはある程度自由化に対応できる体制ができたけれども中小企業を含めてそういう体制ができたのか、措置法要らぬのか、もっともっと抜本的な政策が必要ではないかということを私は聞いておるので、その点に焦点を合わして御答弁を願いたいと思います。  次は、河上参考人も金の問題に言及されましたが、まさに傾聴に値する貴重な私は御意見であろうと思います。そこで、通産省が金の五カ年計画をお出しになっておられることは河上参考人も御承知のとおりでありますが、結果的には、四十三年の政府施策として臨んではおったけれども、方向が位置づけられなかったわけであります。まあ出てきたのは基礎調査のための一千万円、こういうのが出てきたわけでありますが、私は、一千万円問題についてはこの前の十八日の当委員会であったと思いますが、相当突っ込んだ議論をいたしたわけでありますが、一千万円では水の出の悪い家庭の井戸を掘るためにも、もう十個ぐらいも掘ったならばなくなるような額なわけであります。まさに、鉱業政策産金対策としてはお粗末の限りといいますか、何をか言わんやの額でありますが、しかしそれに対して論難しているわけじゃありません。これが端緒になり呼び水になることを私は期待しておるわけでありまして、したがって、私は昭和四十四年度、五年度から抜本的な産金政策が必要であろうことは、これは力説してやまないところであります。そこで、たとえば政府が昨年の十二月に発表した金鉱業の五カ年計画が完全に大蔵省の認めることになり、政策になったとしても、すぐ金の価格が引き下がるということには相ならぬわけであります。約三十億円の差益金、企業努力の十七億、こういう膨大な金でやったとしても、すぐ金の値段が、現在のコストである六百九十八円が五百円に来年、再来年からなるというふうなことはとうてい考えられないわけであります。これは地下産業の特殊事情からいってそうなるわけであります。その金で探鉱したからといって金鉱、鉱脈が発見されるとは限りません。相当の歳月とリスクが伴って成果があがってくることだと思うわけであります。反面は恒久対策として五カ年計画というものは必要でしょう。ああいうものに対して私は賛意を表するわけでありますが、はたして有望な鉱床が発見され、そめ一グラム当たりのコストが五百円ぐらいと想定しておるようでありますが、それまでにいまの金鉱山が存命を許されるかどうかという緊急性もあると思うわけであります。そういう意味で、恒久対策の五カ年計画と同時に、いま現在稼行しておる山をつぶさないための緊急対策が必要であろうと思うわけでありますが、恒久対策と緊急対策、この両面をあわせ考えなければ、政策を実行しなければ、将来を望んでおっても現実が崩壊するという危険性が多分にあると、私はこういうふうに考えられるわけであります。したがって、すぐしからば緊急対策のために価格をいまの六百六十円を抜本的に上げるということには、いささかの問題もあるようであります。IMF等からのいろいろな苦情もあるでしょう。しかし国内産金奨励として、金を出すということは価格じゃありませんから、これは国内政策の問題であります。したがって、これはそういちゃもんをつけられる必要はないと思うわけであります。そういう意味で、形はこれは産金奨励金になるか探鉱補助金になるか別としても、何らかの緊急対策というものは当然必要だというように考えられますが、いかがですか。特に私は、金鉱業合理化とかコストダウンとか言っておるけれども、何といってもやはり金鉱業のコストを下げるという方法は、私はたった一つしかないと思うのです。正直に言って、いろいろなことをことばでは言いますが、たった一つしかないと思うのです。その一つは、やはり鉱量を多く把握するということが一つです。これに関連して品位を上げるということですね。これ以外に方法はないと思うのであります。一トン当たり七グラムの含有量になるか、一トン当たり十五グラム、二十グラムになるかによってこれはとんでもない違いがあるわけですね。これは常識でわかるわけでありますが、したがって、その間においてはやはり緊急政策もやっていかなくちゃならぬ。この必要性について河上参考人からお聞きしたい、こういうように考えます。  もう一つ河上参考人にお聞きしたいことは、先ほどの金属鉱業等安定臨時措置法の問題に関連するわけでありますが、それぞれの効果を持ってきたことは先ほど申し上げましたように私も認めるところです。ただ、一番考えられておるところの価格の安定機関というものは、今日にあってもなお政策になって出てきておらないわけであります。実行されておらないわけであります。具現されておらないわけであります。したがって私は、河上さんは大手といいますか、業界の代表でございますからお聞きするわけでありますが、そういう立場で御答弁願いたいわけでありますが、いま、いろいろな国際的な事情、アメリカの産銅会社のストライキとかベトナム戦争とか、こういうものによって銅の価格がある程度好況とはいえないにしても採算に合うような価格になっておるから、もういまさら価格の安定機関というものが必要ないというように、業界全体が政策、ものの考え方、これを変更したのかどうかということであります。私は、そもそもこの金属鉱業等安定臨時措置法が出てくるゆえんというものは、自由化を前にして、当時の経営者が、非常に損をするから政府が何とかしてくれと、こういう願いではなかったと思うわけであります。いついかなる場合でも国内鉱山が、国内の産銅会社が、金属会社が、安定した値段で安定供給をすべきであるという政策的な見地から、やはり一連の法律が国会で提出され、制定されたと思うわけであります。だから現在調子がいいからこれはもう当分かまわなくても、また苦しくなった場合には政治の場に何かを求めたほうがいいというようにお考えになっておるのかどうか、この必要性をもうすでに没却して、もう必要ないと考えられておるのかどうか、この点をお伺いいたしたいと思うわけであります。  河上さんに対する質問はこの程度でありまして、一緒にやりますとまたダブりますので、まずとりあえずこれで御答弁をいただきたいと思うのです。
  11. 河上健次郎

    参考人河上健次郎君) 沢田先生から御質問ございました第一の点でございますが、安定法廃止に関しまして、私が先ほど述べました趣旨は、時限立法で一応終点がきた、そこで、どうでもこうでもこの法律をそのまま続けるかどうかというふうに考えてまいりますと、法の趣旨が、自由化対策ということの色彩で取り上げてまいりましたので、それをそのままでなしに、これは自然にひとつ解消、これは、けっこう。付け加えて私が申しましたのは、その後の特に最近の諸情勢、今後の情勢考えまして、鉱業政策としてわれわれも要望したいし、ぜひとも考えてもらいたい問題がずいぶんたくさんある。これはわれわれは審議会で十分にひとつ意見を出すつもりである、これをひとつ政策に大いに盛り込んでいただきたい、まあそういったような多くの問題のうちで、この際御審議願っております事業団が、国内を強化するだけでなしに、海外のほうも開発の強化に一歩踏み出す、これは非常にけっこうだということを申しただけでございまして、気持ちとしては、ただいま沢田先生おっしゃいましたこれで今後のあるべき鉱業政策を——いままでの過去の経緯を振り返って見ましても、大体もう心配はないという情勢にきておるとは決して思っておりません。御指摘のように中小鉱山対策、これは実はいままでよりももっともっと手を抜いちゃいけない大事なウエートのある問題でございます、ほかにもずいぶんいろいろございます、ほんとうの国際競争力が日本中小はむろんのことでございますが、大手鉱山でも国際競争力がこの五年の間に飛躍的にふえてきたかと申しますと、決してそうではないわけなんです。むしろ引き離されてきておる面もなきにしもあらずでございます。そういうことで多々問題はございます。そこでそういうことを盛り込むために、立法の手段でもって、グランドになる基本法をつくるかどうかということのお考え、そういう考え方があり得るわけでございます。そういう点に正直申し上げますと、われわれも将来のあるべき姿を考えて、業界の内部でもそういうことを実はディスカッスし、研究と申しますか、そういうことをやった経緯もございます。これはそういう一つのまとまった立法の手段を今後考えるかどうかということも一つの確かに研究問題じゃないだろうか、こう思っております。ただ、そういうことをやりますにも、じゃどういう観点で、どういうことを具体的にわれわれが要望するのだ、どういうふうに日本鉱業はあるべきだということを、まず考えていく、そこの考え方をはっきりする必要がございます。そういう点につきましては、昨年の鉱業審議会でも相当まあ議論をしたことがございました。やはりそういうことを考える上につきましても、鉱業審議会における議論、これを十分に尽くして、そういう方向づけを私どもも十分に主張する予定でございます。その意味で審議会を十分に活用して、将来の政策樹立の場の足がかりにしていきたい、これを念願しておるわけでございます。第一点につきましての私の考え方を申し上げました。  第二点、金融につきまして、先ほど説明が不十分でございましたが、沢田先生のおっしゃいますように、いまのままでは実は没落していく金山が出ます。戦後第一回、金山の復興政策ができましたのは、昭和二十五年でございます。その当時八十余りありました鉱山、これは戦後軌道に乗り出して動き出したわけであります。それがもう現在四十に減っております。労働者の数も七千七百おりましたのが、三千そこそこ、もう現にそういうふうに地域経済社会からの衰退を招いております。離職者も出ておる。このままでございますと、赤字に苦しんで探鉱はできない、赤字がふえるということで、悪循環して没落する鉱山が出ます。出ますと申し上げますのはおかしいのでございますが、どうもそういうことになりそうでございます。しかも、金山は大部分が、ほとんど全部が中小金山でございまして、いわゆる大企業で経営しておりまして現在息を保っておりますのは二つだけでございます。あとは全部中小企業の経営している金山。大企業が経営している金山と申しますのは、えらい大きいようでございますが、スケールはもういわゆる中小金山でございます。そういうのが金山の実態でございます。そこで、どうしてもこれは根本は鉱量を見つけて、それでうまくやっていくのが何と申しましても根本でございますので、その根本にメスを入れるという意味で抜本的な再開方策につきましての政策、通産で御検討中の政策を、これをわれわれも全面的にバックアップしているわけでございまして、もう大きな金山対策はこれ以外になかろうと思うわけでございます。しかし、その五カ年間計画を進める間に息の根の絶える心配のあるものに対しての取りあえずのカンフル注射でもたせる方法、これが必要があるのじゃないかという御指摘でございまして、これは全くわれわれそういう気持ちでございまして、私どもの端的な心境から申し上げますと、実は補助金をどうしても出してもらいたいというところから話が始まったわけでございます。私ども業界では、昨年の六月金鉱業対策として要望いたしましたのは、現在金山のほうからのグラム当たり六百三十七円、これが政府への、それから一部特価を出している向きもございますし、それから一般にはグラム当たりは六百六十円市中売りをしております。九五%はそうです、市中売りでございます。全部をおしなべまして一グラム当たり六百三十七円が金山の収入でございます。それに対しましてコストはもう今日では七百円をこしております。一昨年の資料で六百九十円なにがし、七百円近いところでございます。でございますから、すでに一昨年のコストの試算で申しましても六十円は赤字でございます。それをやりくり算段いたしまして、これを小鉱山の場合に銅の製練所へ送って買ってもらっている。そういう場合にはファイナンスをその製練所に頼む。何とかつけてもらうとか、やりくりをする、あるいは技術的な援助を頼んでやりくり算段して、どうにか命脈を維持している、そういう金山に対しまする現在の政策、唯一の政策といたしましては、中小鉱山に対しまする新鉱床探査補助金というのがあるわけでございます。これは新鉱床探査というようなことをすぐできる程度の探査費でありませんと、出ません。しかも、それが全額が出ないということでございます。金山に限りましては、これの適用につきまして一定の範囲において手心を公認していただくというふうなこと、これもカンフル注射の一つになるのじゃないか、こういうふうに考えましたが、それでなければ新しい補助金を堂々と出していただくか、あるいはこれでもできないということであれば、何かの方法でこの際基金をつくって金山の復興のために使っていただくというようなことで運営をお願いする、こういうふうなこと、いろいろ考え方もあろうかと思うのであります。先ほど私が述べました抜本的な五カ年の探鉱費、思い切った探鉱費を出すためには、ひとつ輸入金の差金の財源を一つのプール機関にリザーブして、これを探鉱のために、開発のために使おうというふうな構想も通産で御検討中でございました。そういうふうなものに、また、何かの方法で一部をもっていまのような緊急カンフル注射の役目を果たし得ることができればこれもしあわせだと思うわけでございます。どういう方法が一番いいかということにつきまして、具体的な案を持ち合わせておりませんが、御指摘のようなカンフル注射も必要である。ただしかし、あまりそればかり考えておりますと、大きな今後の金山の再開ということはどうしてもできません。これはどうしても通産でお考えのように全国十二地区、かなりこれは残されておる、しかも有望な可能性のある地区でございまして、これの探査から始めて開発に至る段階を促進することが、これがあくまでオーソドックスな今後の政策であろうとこういうふうに考える次第であります。  三番目に、鉱産物需給安定につきましての当業界考えはどうかとの御質問でございますが、これは自由化対策当時から需給価格の不安定が、鉱産物の実は従来の経験から見て、今後とも非常に懸念されるという点から、この安定策ということを大きく一つ取り上げていただくということを要望したわけであります。その後の経緯を見ますと、むしろその必要をさらに裏づける経験をわれわれしたわけでございます。思いもしなかったような需給の不円滑な状況非鉄金属の場合に世界的に証明されたわけであります。どうしても需給価格の安定を今後真剣に考えなければならぬということは、われわれ生産業界のみならず、需要業界でもその点につきましての考え方は基本的にはむしろ一致しておる。したがいまして、そういう需給安定につきましての考え方は、むしろ過去の経験から考えまして、今後もっともっと真剣に考えなければならぬというふうな考えであるということを、はっきり申し上げる次第であります。問題は、どういう観点からこれをやるかということでございまして、鉱山立場から一つの大きな心配は、将来国際的に需給が著しく緩和して逆に非常にダブついた場合、日本鉱山あるいは生産を縮小しなければいかぬということになる心配はないか、そういうふうな場合に対処して、非常に需給が緩和し過ぎて非常に困る場合に、そういう場合のことを考え需給価格の安定対策というふうな見方が一つあります。それから逆に非常に逼迫をして、なかなか外国からの輸入ができないような状態、したがいまして価格も非常に暴騰するというふうなことをできるだけ緩和するためにどうしたらいいかという方面の見方があるわけでございます。いろいろそういうふうな、どちらにどういう程度の重点を置くかということにつきまして、具体的な方策はいろいろ違うわけであります。しかし、両々包含いたしまするのと、それから日本の将来の需給の趨勢を考えてみまして、ベースメタルにつきましては、まだまだ需要を安定した姿で将来確保するということがむしろ問題が大きいという観点に立ちまして、そういう意味で需給の安定をはかり、価格の安定をはかるということを真剣に検討すべきである。こういうふうに考えております。その一番根本の方策といたしましては、やはり低コストにたえる優秀な鉱源国内においてもっともっと見つけるということ、海外におきましても日本からの投融資によりまして継続性、安定性のある優秀な鉱源を確保するということ、こういう手を伸ばすことがやはり需給価格安定のための本来あるべき最も大きな主流をなす考え方であります。  その次に、特定の機関をつくって、さらに需給価格の安定のためにプラスになるような機関はどういう機関であるべきかということを研究するという問題は、やはり依然として残されておるわけでございます。そういう機関の構想につきましては、今後に残された問題でございまして、今日ただいまのところで業界でこれがベストだ、需要業界の協力も得られるベストな構想であるということを断定的に申し上げるものがまだ具体的に成熟しておりませんので、それは申し上げられないわけでございますが、根本的に需給安定、価格安定の必要は痛感をいたしておるということを申し上げる次第でございます。
  12. 沢田政治

    ○沢田政治君 需給安定機関の必要性は今日といえどもさらに必要を感じているほどであって、もういいんだというように、必要ないんだというように考えておらぬということを聞きましたので、その限りにおいては全く私ども考えておることと一致いたしますので、重ねてお聞きする必要がないわけでありますが、ただこの中身に入っていくと、いろいろな議論があると思うわけであります。地職さんが言ったように、一手買い取り公団ですか。こういうものもあるし、いろいろな多様性のある形があるでしょう。それを議論してさらに意見を求めたとしても、きちんとしたものは業界としてまだきまっておらぬと思うわけであります。したがって、これ以上はこの点についてはお聞きいたしませんが、ただ金の緊急対策、この点について、もうちょっとだけお聞きしたいと思うわけであります。大体大筋においては私ども考えておることと同じでございます。恒久策も必要であるし緊急策も必要である、両面の政策が必要であるということも一致しました。ただその中において、緊急策としていろいろな数をあげられておりますけれども可能性、こういうことが考えられる、こういうことが望ましいということをあげられておりますけれども、その中において、たとえば現在事業団で行なっております新鉱床探査補助金、このワクの中で何らかの配慮を金にしたらどうかということも一方法として河上参考人があげられておるようでありますが、私はこの点について鉱山局長とも若干の質疑をかわしたわけでありますが、これは金のみに新鉱床探査補助金が出されておるわけじゃないんです。対象業種、鉱種十七あるわけでありますね。しかも額が無限大にあるものであればいいのですが、無限大までとはいかないまでも、二十億とか三十億あるならば、その中でこの際金の緊急対策も必要なんだからある程度窮迫時に見てやろうということもぼくは可能だと思うのです。ところが多くある鉱山の中でわずかに四億円そこそこでしょう。これを金のほうに振り向けることによって何かの業種のほうが圧迫されることは物理的に明らかなわけですね。したがって私ども考え方としては、やはり新鉱床探査補助金以外のワクとして、特に金については緊急性もあるし国際通貨政策あるいは国際収支の政策、そういう観点から政策的に緊急性が特にあるのだから、別ワクに何らかの補助、奨励金というかっこうで出すべきだ、こういうまあ意見を私自身は持っておるわけです。したがって、新鉱床探査補助金のワクの中で考えるということは、そのものはいいとしても、他の業種、他のほうに圧迫を加えることになるからいまの額を見ても不適当じゃないか。こういうようにまあ考えますので、いまでなくても山野上さんに次に御質問したいと思いますので、その際にあわせて御答弁をいただきたいと思います。  次に、山野上さんにお聞きいたしたいと思います。大体要約して四点にわたって御質問申し上げたいと思います。  硫黄は、経済にとって非常に必要性があるものである、重要な位置を占めておるということは、描象的には多くの国民や政治家もあるいは関心を持っておる方々が知っておるわけでありますけれども、具体的に石炭ほど知られておらないわけですね。産業にどういう裨益をしておるのか、貢献をしておるのかわからないのが実情じゃないかと思うわけであります。特に私考えますのには、日本の戦後の復興は石炭とつまりS——硫黄、硫化、これから始まったのじゃないかと思うのですね。したがって戦後の政策を見ましても、たとえば炭鉱住宅とか硫化住宅とかこういうものを国が率先して金を出したわけですね。そういう事実を見ましても、硫黄というものは戦後の復興に対してどういう貢献をしたかということは、私はうかがい知ることができると思うわけであります。石炭の場合はエネルギーですね。工業復興のためにはエネルギーというものは不可欠な要素なわけであります。と同時に、あの荒廃した戦後における何といっても国民が生命を維持しなくちゃならぬ、食糧を確保しなくちゃならぬ。こうなりますと、肥料というものは当然これは前面に出てくるわけであります。肥料ということになると、硫化とかあるいは硫黄、こういうものが出てくるわけでありますね。だけれどもなかなか一般の人が硫黄というものが戦後の日本の復興に対して、あるいは戦前を含めて、どういう貢献をしたかということは案外知られておらないわけであります。これは肥料という分野ばかりじゃありませんね。私はしろうとでありますけれども、紙パルプとか非常に広範な範囲の工業に対しても、それぞれの貢献をなしておるということでありますから、まあ大体経済に対してどういう影響を与えてきたかということをかいつまんで、まあここで私も勉強になりますから、御説明願いたい、こういうように考えるわけであります。さらに先ほど山野上参考人公害対策に基づく石油回収硫黄というものがどんどん出てきておる、もう数年たったならば国内山硫黄をはるかにこえて、既存の山硫黄は重大なことになる、経営の基盤というものを根底からゆさぶられることになる、こういうまあ立場に立った御説明があったわけでありますが、その実情をもう一歩突っ込んでお聞きしたいと、このように考えるわけであります。  次は、いまお聞きしました第二点と関連するわけであります。かりに皆さんが望むような、私どもも望んでおりますけれども山硫黄回収硫黄の競合関係を、国内硫黄が成り立つように調整すべきである。こういうまあ考え方をわれわれ自体としては持っておるわけであります。かりに、その調整策がなったとしても、やはり将来はこれは自由化されるでありましょうから、いつかは別といたしましても、そうなった場合、鉱山硫黄自体としての国際経済競争力、こういうものをどういうようにしてつけていくか、こういうことをお聞きしたいわけであります。そのためには企業努力もさることながら、企業努力だけではだめですから、もうすでにつぶれるかというところまで、どんじりまできていますから、それだけに皆さんの努力を望みたいわけでありますけれども、皆さんの努力だけでは何ともならない物理的な条件が現に出てきているわけであります。したがって、先ほども若干要望しておりましたけれども、思い切って、一体何を望むのか、まあここは国会でありますから、具体的に遠慮なくこういうこと、こういうこと、こういうことをやってもらいたいということを、一歩突っ込んでここでお述べ願いたいと思うわけであります。ただ単に政府なりあるいは立法の立場において、努力せよとか合理化目標はどうとかと言ったって、ことばだけでは解決できない問題があると思うわけであります。したがって、合理化をするためには何を望むのか。どういう裏づけが必要なのか、こういう点を、おぼろげながら私ども知っておりますけれども、専門家でありませんので、わからない点が多々ありますので、その点をお聞かせ願いたいと思うわけであります。たとえば調整機関をこうしてもらいたいとか、回収硫黄をどっちにどうしてもらいたいとか、これは鉱業審議会で議論しているようです。分科会で絶えずこれはユーザーと生産者とまた第三者を含めても、うまく話し合いがつくとは、望んではいますけれども、私どもは確信を持てないと思うのです。その際に、政府にどういう態度をとってもらいたいのか。それともう一つは、ともかく将来の合理化目標はけっこうでありますけれども、いま現在でも金融面から非常にあぶない状態、赤信号にある山もたくさんあると思うわけであります。したがって、金融の問題はぼくは緊急な問題だと思うのであります。五年後の問題ではないのです。大谷重工がつぶれるとかつぶれないとか問題になっておりますけれども、もう五年とか三年後の問題あるいはまた鉱業審議会の分科会で結論を出すまでというような問題ではないと思うのです、金融の問題は。だから金融の問題については、そういう政策を将来決定することになるわけでありますが、その以前に、どうしてもらいたいのかということをひとつ明らかにしていただきたい。こういうように考えておるわけであります。それと同時に、たとえば石炭と同じエネルギーである石油との競合、こういうことから油のほうが経済的に勝って、石炭のほうが非常にまずい状態になっておる。そういう面からこれは一つの政府政策でありますから、政策上の重大な影響を与えたものとして、原油等の関税を六百億円を何というか、石炭のほうにまあ一応回しておるようなかっこうになって、助成策をとっておるわけでありますし、それと同じような因果関係硫黄もあると思うので、したがって、当然先ほど言われましたように、政府政策によって、一つの産業の基盤というものに、より重大な影響を与えておる。だからやはり政府政策によってそうなっておるんだから、そういう産業に対して同じような扱いをしてほしいという解決もあったわけでありますが、私は当然だと思うのであります。したがってそこまで考えてきておられるかどうかわかりませんけれども、石炭と同じようにというか、どういうようにしてもらいたいのか、どういうかっこうでどういう角度でやってもらいたのか、ひとつ立場を明らかにしてもらいたいと思うわけであります。  第四点は、ぼくはやはりどう考えてみても、そういうように政府政策というものも必要でしょうし、立法、行政も手を差し伸べなければならないと思うのでありますが、やはり企業努力というものも必要なことは当然ですね。他の政策とかあるいはそういう補助、援護、助成、それを待つのみではこれはいかぬと思うわけであります。まあ通産省のほうでも昭和四十五年の合理化目標としてトン当たり一万八千円を考えておるようでありますが、よくそこまで到達するかということですね。ただ努力しますというだけでは——まあそれでも説明にはなりますけれども、中身はちょっとわからぬわけでありますね。特に私は、やはりどういうように合理化したとしても、硫黄鉱山の場合には労働集約型の産業であることは間違いないと思うのです。人の手が多くかかる。人件費というもののコストの中に占める地位というものはぐんと高いと思うわけであります。これは将来もそう変わらぬと思うわけであります。したがって、そういうことになりますと、物価の上昇につれてやはり人件費も上がっていく、そうなったならば、はたしていまの政府施策のような形でやったならば、一万八千円の合理化価格の目標というものに到達できるかどうか、私は非常に危惧を感ぜざるを得ないわけであります。したがって、どういうようにして合理化をしようとしておられるのか、労働強化をしいられあるいはまた解雇したりして、何というか苦汗労働をしいて合理化をされるということに対して、われわれは賛成できないわけでございますけれども、そういう面をあわせてひとつ御答弁を願いたいと思うわけです。
  13. 山野上重喜

    参考人山野上重喜君) いま沢田先生からこまかく問題の内容に立ち入って、おまえの考えている、言いたいことを言ってみろというお話のようでございますが、硫黄鉱山が今日までどういう役割りを果たしてきたのだというお尋ねでございますが、日本は御承知のように資源に比較的乏しい国でございますが、その中で硫黄鉱山は、今日まで日本の国の中で自給力に最も富んだ国内地下資源の一つでございます。この前にも申し上げましたように、遠くは中世紀から重要な輸出品として、アメリカのフラッシュ硫黄が出るまでは、イタリアとともに世界に対する硫黄の供給国であったわけでございます。硫黄は御承知のように化学繊維に最も重要である二硫化炭素をつくること、紙やパルプをつくるために硫黄を使うこと、そのほか合成維繊に硫黄が使われること、ゴム工業に使われることなど、わが国重要産業原料として、今日までその役割りを果たしてきたわけでございます。世界的に見ますと、硫黄資源は偏在しておりまして、国によりましては、その不足のために、肥料、無機化学工業品の生産に不自由を感じておるところがまことに多いわけでございます。その点では、わが国におきましては、まことに恵まれた硫黄資源によりまして、今日まで不足を生じたことはありません。なお、わが国においては硫化鉱を豊富に産出いたします関係上、諸外国と異なって硫酸を製造するのに硫黄を使ってはおりません。ほとんど一〇〇%硫化鉱を使って硫酸を製造しているのがわが国の現状でございます。  お尋ねになりましたからお答え申し上げます。終戦直後GHQの管理下に食糧の増産を命ぜられた、そこでその後引き続き日本政府の治下においても同じく食糧の増産に果たしてまいりました。そのもとをなす肥料生産について、硫黄鉱業は連日人海戦術で増産に励んできたわけでございます。数年たつうちに労働攻勢は激しく、結局かかえた人員をそう簡単に処理することもできない社会情勢の中で、苦労をして今日までやってきたのが実情でありまして、いわば企業そのものの合理化に使用する資金とあわせて、それにも増して人員整理のためにあえいできたのがこの企業の一つじゃないか、かように考えておるわけでございます。したがいまして、こうした企業合理化ができない状態に立ち至っておる一つの理由として、小さい力のない企業が当然突っ込んでいく姿、いわゆる人をもって間に合わせて、その人を処置するためにその企業が参ってしまうというようなのがあるわけでございます。硫黄企業はその小さな企業の一つだというふうに考えます。  その次には、石油から回収される硫黄、これが出てくることによって鉱山硫黄が非常に大きな影響を受けておる、それについて実情はどうだということなんでございます。昨年末までは、硫黄は  一カ月平均二万六千トンの需要がございます。そのうち鉱山硫黄は大体二万二千トンでございまして、軽質油並びに灯油から回収される硫黄四千トンをもって二万六千トンをまかなってきたわけでございます。これで需給はバランスがとれております。そうした中で、公害対策として重油中の硫黄分脱硫が強行されることとなりましたので、各石油精製工場において重油からの硫黄回収設備が新設されることに決定をいたしまして、将来は膨大な量の回収硫黄が出てくることが明白になったわけでございます。昨年末その第一番目である出光興産の千葉工場に月五千トンの回収硫黄の設備が出現したわけでございます。これが出ますと、この量だけは日本市場で余ることになりますから、昔から余りものに相場なしといいます。われわれが国内市場価格維持に全力をあげて努力はいたしておりましても、やはり品物が余って出てくるということになりますれば、勢い価格は下がらざるを得ないわけでございます。まだこれからも計画的に石油の精製工場から法律に基づく設備が次々となされて、年を追って硫黄生産がなされることが明白でございます。世の中は自由化に向かっておるわけでありますが、われわれ硫黄鉱業は、その規模の貧弱さから、今日まで国の保護下にこの産業を続けてきた、こういう特異な存在の企業であるということを御承知いただきたいと存じます。本年度下期以降数社の石油精製会社が重油の回収をいたしますと、数十万トンの硫黄が出てまいることになりまするので、最初に申し上げました月二万二千トン、年間二十五万トン程度の山硫黄は、はっきり言えば、あってもなくてもいいんだという形に追いやられるのがもはや目の前に見えておる、かような状況に立ち至っておりまして、まさに硫黄鉱山は経営基盤全く危殆に瀕した状況にあると申さなければなりません。一体そうした中でどうすれば窮状を打開できるかというお話もございましたが、硫黄鉱山といたしましては、もちろん合理化その他、現在、局面を打開すべく、あらゆる努力をいたしております。重油回収硫黄の大量出現は、御承知のとおり全く公害対策から生じた新しい問題でございまして、硫黄鉱山はその被害者として今日経営基盤まで危くされているわけでございます。また、硫黄自給力の高い地下資源である点から考えまして、国の強い施策要望いたしたい。私たち小さいながら今日まで自営してまいりました山が危殆に瀕するのについて考えまするのに、沢田先生からお話のありましたように、硫黄は小そうございますが、いわゆる油から受ける条件は、石炭も硫黄鉱山も同じであります、寸分変わらないのであります。したがいまして、どういう施策をとっていただくかということについて、私たちが申し上げるまでもなく、公害基本法ができるとき以前から、できたならば硫黄鉱山はどうなるかということが明瞭であったはずでございます。したがいまして、企業が小さいから顧みられないのだ、企業が大きいから十分に手を尽くすのだというふうな片手落ちの政策のないことを私はお願いをいたしたいと存じます。対策といたしまして、回収硫黄の出てくる石油は、もとより輸入でございます。石油製品はたくさん輸出もされておりますけれども、でき得ればこの硫黄も、韓国、台湾をはじめ東南アジア、インド、豪州など年間百数十万トンの需要がございます。わが国はこれに輸出をするのにきわめて有利な立地条件にあると考える次第でございます。将来過剰硫黄が五十万トン、六十万トンに達することも予想されますわが国として、この輸出に対する必要な体制を整えて新たに硫黄輸出国となることを考えるべきではないか。それには、やっぱり一定の立地条件を持った土地を必要とすると思います。たとえば一万トンなり二万トンなりの船を横づけできる岸壁が要るんではないか。その岸壁を持つある地域に、硫黄輸出するに必要な施設をすることが必要ではないか。そうした場合に問題が当然起こるであろうと思われまするので、そうした場合には、それに対する十分なる政府施策が必要ではないか。かように考える次第でございます。したがいまして、過剰硫黄については、その全量を、できましたならば買い上げて、つくった輸出基地にこれを在庫して、一元的に輸出するという公的な輸出調整機関設置することが必要ではなかろうかと考える次第でございます。  過剰硫黄の全量買い上げが行なわれることになりまするならば、国内硫黄需給は安定し、硫黄鉱山合理化努力をさらに継続することによって窮状を打開し得ると考える次第でございます。自由化に備えまして、硫黄鉱山は四十一年度以降五カ年計画をもちまして輸入硫黄価格に対抗し得るところまでコストを低下するよう合理化努力を行なっておりますが、今後も引き続き努力をしていく決意を固めております。鉱山、回収両硫黄業界が共存共栄し得る処置が講ぜられるとしても、いわゆる輸出採算価格までコストを引き下げ得るよう私たち硫黄業界は一段の努力をしなければならないと思います。そうでありませんと、ただ何もかもおんぶする、ああもしてもらいたい、こうもしてもらいたいということだけでは、硫黄鉱業はとても立ち行かないと考えております。あらゆる努力を傾注いたしましてこれを達成いたしたいという決心をしております。しかし、抜本的合理化を行なうには、合理化を遂行するための資金が必要でございます。ばく大な量の回収硫黄の出現が予想せらるる今日、なかなか通常の金融ベースでは調達が困難だと考えます。たとえばいまの時点で申しますと、私たち合理化をやるのに金が要るんだということを金融機関に説明をいたしましても、一体山硫黄ってどうなるのだ。保証があるのか。貸した金が返る見込みが立つか立たないかということなんだが、貸した金が返る見込みがないのに金を貸すということはぐあいが悪いんだ。山硫黄の将来についていろいろ考慮されており、施策もそれぞれ考えられておるという実情についてはよく聞いてわかっておるが、具体的にどうなんだ。こういう問題を提起されるわけでございます。通常の融資をお願いする程度ではとてもむずかしいんじゃないか。かように考えます。どうかできましたならば、政府資金の融資等について特段の御配慮をいただく機会がほしい、かように考えるわけでございます。また資源賦存状態から、合理化効果の期待できない硫黄鉱山もあろうかと思います。先ほど石炭鉱業の問題の例が出たわけでございますが、石炭鉱業にも見られるように、どうしてもいけない、合理化の達成が不可能な山というものが万一出た場合には、その鉱山について離職者の対策等を含む国の絶大な御援助を切にお願いをいたしたい、かように考える次第でございます。
  14. 沢田政治

    ○沢田政治君 河上さんに……。
  15. 河上健次郎

    参考人河上健次郎君) 先ほど金対策関連いたしまして重ねての御質問がございましたが、現在、国の財源でもって金の対策として出ておりますのは、中小に適用されます新鉱床探査補助金、これのワク内で金山にも適用があるということになっておりますものだけでございまして、今回、一千万円の調査費がつきましたのが最初でございます。そのほかには、政府に売るのは五%でよろしい、あとは市中に売ってよろしいということが実現されまして、そのために、IMFのベースでいきますと四百五円であるのが、グラム平均にいたしまして六百三十七円ということになっておる。これが間接的に金山の生存を支えているという一つの大きな役割りになるというのでございます。そういう意味で対策費として出ております新鉱床探査補助金の運用によって、できるならばそういう可能性をひとつ希望したいという私見を申し上げましたが、これは、もちろん御指摘のように、金山だけでなくて他の鉱床合わせましての中小に対する非常に大きな施策であります。そういう特例の運用を受けるよりは、金山は、本来別の金山対策費として補助金を堂々と出していただいてこれの緊急対策を講ずるということがむろん最も望ましい、これがわれわれの基本的な要望でございます。重ねて申し上げます。  ただ、一つ先ほど申し上げましたように、根本的に金山の緊急合理化対策、五カ年でこういうものを打ち立てるんだという方針がはっきり鮮明されまして、それが一歩実現に入っていくということがはっきりいたしますれば、現在稼行しております金山、おおむねその地区に関連を持っておりますこういう苦境でやっております金山は、それだけに、近くに探鉱によりまして、有望な、当てる可能性のものを持っておるわけであります。そういう地帯が再開発されることによりまして、現在稼行しておる金山も息を吹き返すということの可能性に大いに恵まれるわけでございますが、そういう方策がはっきりし、そういうことが実現するということが、実際そういうピッチが確認されますれば、その間の現在稼行しておるものに対する支えの方法は、あるいはそれぞれ関連業界での話し合いによってその間持ちこたえるような努力は、これは決して不可能と断定することはできません。したがいまして、むしろ私は、そういう観点から申しますと、そういう根本的な再開発の方針の確定、それに対して一歩でも予算化の実行、またそういうことについての具体的な進め方が確認されれば、さっき沢田先生おっしゃいましたように、現在のよたよたしておる稼行山に対する支えにはなり得る方策が生まれてくる、こういう点だけはあわせてお答え申し上げます。
  16. 沢田政治

    ○沢田政治君 最後に地職さんにお伺いいたしたいわけでありますが、先ほど硫黄対策につきまして、労働者、特に作業に従事しておる、働いておるものとしての立場をお述べいただいたわけでありますが、私、考えてみまして、硫黄業種に働いておる従業員は他の業種より、特に金、銅、鉛、亜鉛等労働者より、比較してみた場合には非常に低賃金である、しかも硫黄でございますから、非常に鉱内等においては高温多湿といいますか、労働条件も非常に劣悪であることはこれは想像にかたくないわけであります。かてて加えてどんどん人減らしもされておる、雇用が不安定である、こういう面から非常に苦労をされておると思うわけであります。若干、働くものとして、従事しておるものとしての政策に対する要望がございましたが、一応労働組合立場に立って——労働組合立場というよりも働くものの立場に立って、硫黄対策についてわれわれも研究しなければならぬけれども労働組合としてどう考えているか、何を望んでおるか、どうしなければならぬと考えておるか、時間もございませんので簡潔に御答弁願いたいと思うわけであります。  第二点は、これは硫黄ばかりではありません、金属鉱山全般についての労働力不足、特に労働力不足からくるところの組夫の存在も先ほどお話なさいました。これは雇用形態からいっても、しかも、非常に危険な作業に従事するという観点からいっても、臨時夫というような雇用形態というものは好ましくないと思うわけであります。特に保安上からいってもこれは非常にまずい方法だと思うわけであります。と同時に、先ほど憂えておりましたが、将来、これはまあ経営者考えることであって、労働組合が心配してくれているということは、ぼくは非常に奇特なことであり、これは珍しいことだと思いますが、労働力不足というのは非常に深刻になろうと思うわけであります。水は高いところから低いところに流れますけれども、働くものは低いところから高いところに流れていくわけであります。これは労働賃金ばかりではなく、作業環境もいいほうに流れていくわけであります。そういう面からいって、働くものの立場として、どういうようにこの雇用対策といいますか、雇用というものを見通されておるのか、若干の意見があったならば付加して御答弁願いたいと思うわけであります。  第三点は、鉱業審議会の構成について、特に政策のいかんによっては雇用が減少し、端的にいえば首切りあるいは雇用の不安定におののいておる、こういう形からいって、鉱業審議会の構成メンバーに対する何か要望があったやに私は承っておるわけであります。これについて、きょう意見がございませんでしたのでお述べ願いたい、こういうように考えておるわけであります。  第四点は、今度の事業団法目的並びに事業内容の一部改正によって全部ウエートが海外開発にいったわけじゃありませんが、海外開発という点が政策面で非常に大きくクローズアップされてきておるわけであります。そこで、一応、使用される立場に立って反対はしませんと言っておりましたけれども、一抹の不安があるじゃないかと思うわけであります。国内のほうを食い荒らす、というとことばは悪いわけでありますけれども、最も有望な海外に行って、国内政策というものが希薄になるんじゃないか、気抜けになるんじゃないか、こういう御懸念もあるやに先ほどの御意見からお聞きしたわけでありますが、私ども委員会においてはこの点についても非常に憂慮しておるわけであります。もともと鉱業政策というのは自由化によって国内産業が存立できるかどうかというところにやはり政策の背景があったし、必要の背景があったわけであります。つまり国内鉱山が壊滅する、自由化のために。そうなると地域雇用がどうなるのか、地域財政にどういう影響を与えるのか、地域産業格差といいますか、全国的な所得格差に対してどういう影響を与えるのかというのが、この立法の大きなねらいであります。もちろん海外も必要でありますが、海外のほうは、これは私企業でございますから、もうかる山があったらどんどん入れてくればいいと思うわけであります、鉱石を買えばいいと思うわけであります。立法のねらいは、国内産業をどうするかというところに大きな政策的な背景があると思うわけでありますから、おそらくそういう御懸念を私同様にしておられると思いますので、何か御意見じゃなくても感想でもけっこうですから、これに対する感想なり御意見なり、希望があったならばお聞かせ願いたいことを私は望みまして、私の質問をこれで終わります。
  17. 地職司

    参考人地職司君) 硫黄に対する政策の問題ですが、先ほど述べましたように、国内における量そのものがふえていくということについては、すでに諸資料が出ているところであります。したがって、合理化によって価格回収硫黄山硫黄が競争するという問題については、これはおのずと限度があるというふうに思うわけです。したがって、一つは輸出の問題について取り組んでいただくと同時に、輸出で事が済むのではなくて、価格プール制を採用することこそ山硫黄が生きていく道だというふうに考えております。  硫黄の砿山の労働者の賃金の問題は、金属鉱業あるいは非金属鉱業全般と極端な差違はないと思うのですけれども大手中小という見方からすれば、中小鉱山が置かれている労働諸条件というのは、やはり劣悪だというふうに思います。さらに若干つけ加えますと、この場でいささかあれなんですが、今年の賃上げもいまだ片がついておりませんで、私も昨晩徹夜交渉をやってきたのですが、鉱山から掘り出した鉱石なりあるいは資源を使う産業の労働条件というものは、装置工業なりあるいは伸銅、電線なり、それぞれ社会的な格づけをされております。ところが、その原料となる鉱石を掘り出している坑内で働いている労働者の賃金というものは、国際的なあるいは国内的な価格によって圧力を受けている、こういう点について常に矛盾を感じているわけであります。今回でも、ことしの賃上げをめぐっての問題点でも、経営のほうの言い分は、銅の価格が一時の高騰から極端に下がっていくだろう、金属工業の置かれている現状はなまやさしいものではないという言い分が、一つの言い分でありますけれども、その点についてわれわれは若干の判断の違いがあると同時に、そういう価格変動が常にわれわれに圧力となって加わってくる、こういうことについて指摘をし、需給価格安定の問題については、一つは国内の経済的な面での安定という方策を望むと同時に、働く者の立場からの安定ということを望んでいるという点をつけ加えておきたいと思います。  それから組夫の存在については、先ほど参考意見で述べましたときに、鉱山の現状と労働者の現状の問題を述べましたが、労働者の減少の中には組夫の数も指数として入っております。しかも、組夫そのものの数は大体五年間に二千人から三千人ぐらい増加をしているように統計上出ております。したがって、組夫問題というものは本鉱に対する圧力であると同時に、雇用の一つのひづみとして見ております。ですから、特に危険な坑内における組夫の導入について法的な規制はできないものだろうか、この点について御研究を願えたらと思うわけです。さらにそれは労働環境だけではなくて、作業環境、あるいは社会保障にかかわる問題など多くの課題があると思います。鉱山というのは山間僻地にあります。経済的に地域との結びつきが多いと同時に山間僻地であるために生活環境というものが都会よりは異なっておる。例を医者の問題に引きますと、昨年、私たちの手でいわゆる鉱山の事業所病院というものでどの程度医師の問題が逼迫をしているかということで調査をいたしましたそのときに、回答のあった鉱山のうち半数が医師の不足を訴えております。しかも、それは保安上重大である外科の医師が不足をしている。医師の不足によって当然助かる労働者の災害が助からない事態すら懸念をされる、あるいは教育の問題一つとりましても、子供を高校にやるのに数十キロも離れた町に寄留をさせなければならない、こういう生活環境にあるわけで、そういう点、単に賃金の問題ではなくて、すべてにわたって広い立場で見ていただきたいというふうに思うわけです。鉱業審議会の構成のメンバーについて私たちは現在労働者代表として二名が入って大きな立場審議には加わっているわけですけれども、一つは需要側の労働者代表は鉱業審議会の中に入れないものだろうか、あるいは数の問題も一つあります。それから鉱種別対策労働者意見がいれられないものだろうか、行政指導的な立場鉱業審議会の結論について尊重されるというのが政府の見解でありますけれども、あるいは業界の見解でありますけれども、その行政指導の中に生かしていく鉱業審議会の中に、労働者意見というものを単に対立という形じゃなくて、日本の貴重な地下資源を掘り出しているものの立場から常に意見を述べたいし、意見をいれていただきたいというふうに思うわけです。  事業団の問題との関連で、海外に出て行くことと国内鉱山の問題ですけれども、私たち国内鉱山の存立問題について常に重大な関心を持っています。最近の印象としては、金属鉱業経営者方たちの一部に製練業として生きていく道を重点的に考えられて、そうして国内鉱山に対する見方というものが大きく変わりつつあるのではないかという危惧を持っておりますので、世界的な政治情勢、経済情勢変化によっては重要なベースメタルの輸入という問題、あるいは廃鉱という問題が直ちに大きく響くということも考えられますし、地域産業との深い結びつきということから考えましても、国内鉱山のいままで果たしてきた役割り、さらにこれから果たすであろう役割り考えるときに、国内鉱山の育成強化というものをさらに重視をしながら海外へ出ていく問題も考えてもらいたいというふうに思います。
  18. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 速記をとめて。
  19. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 速記を始めて。  ほかに御発言もなければ、参考人の方々に対する質疑はこの程度にいたしたいと存じます。  参考人の方々に一言御礼を申し上げます。本日はお忙しいところ、御遠方から御出席をいただきまして、また、長時間にわたりまして御意見の御開陳、あるいは質疑に対するお答えをいただきまして、まことにありがとうございました。今後の法案審議に大きく参考にしてまいりたい、かように存じます。重ねて委員一同にかわりまして御礼を申し述べます。ありがとうございました。  それでは午後一時三十分に再開することにいたしまして、これにて休憩をいたします。    午後零時四十分休憩      —————・—————    午後一時五十五分開会
  20. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) これより商工委員会を再開いたします。  先ほど委員の変更がございました。  近藤英一郎君及び向井長年君が辞任され、その補欠として杉原荒太君及び片山武夫君が選任されました。     —————————————
  21. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 午後は金属鉱物探鉱促進事業団法の一部を改正する法律案及び金属鉱業等安定臨時措置法廃止する法律案の両案について、政府に対し質疑を行ないます。  両案に対し質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  22. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 鉱山局長にお尋ねしますが、午前中参考人三名の方においでいただいて、参考意見を述べていただいたわけですが、時間がございませんので参考人開陳された意見に対し質問することができなかったわけですが、たまたま局長も同席されて、まあ三参考人の意向を伺ったことだと思いますので、その点に触れてお尋ねします。山野上参考人のことばの中に、油の完全脱硫装置を講ずることによって山硫黄が全滅に瀕する、したがって私ども被害者であるというようなことばを使って意見開陳しておられたようですが、まあ明治の時代に鉄道馬革が、蒸気機関車ができることによってこれは被害者になる。資本主義社会というものはこういうことの蒸し返しが資本主義社会であって、はたして山野上参考人開陳されたように被害者であるかどうかわかりませんが、政府としてはこの問題をなおざりにしておくわけにはまいらぬと思うのであります。その点については前回の委員会においても沢田委員なり私なり大矢君からいろいろとお尋ねいたしましたけれども、あの参考人意見に対して、局長として手当てをしなければいかぬでしょうから、黙って放任しておくわけにいきませんので、いかなる処置を講じて参考人の言われた被害者でないようにされるか、その点をまずお尋ねいたします。
  23. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) 午前中お話がございましたように、今後重油の脱硫装置の完成に伴いまして回収硫黄が増産をされてまいる、それが価格的に見まして鉱山硫黄需要を圧迫をしてまいる、したがって鉱山硫黄の経営が困難になるであろうという御意見は、私どももさような方向にあると考えます。したがいまして、御指摘をいただきましたように、われわれは決して鉱山硫黄の現状を放置することは許されないと考えております。これに対する対策といたしましては、現在鉱業審議会におきまして硫黄の専門分科会を設けまして鋭意検討をいたしておる次第でございますが、五月中には結論を得たいという段階にきております。その大筋は、何と申しましても輸出の問題であろうかと思います。この輸出につきましては、すでにお話が出ましたように、東南アジア市場が今後有望な輸出市場であるということのほかに、アメリカ合衆国自体におきまして硫黄の不足ということが近年著しい情勢に相なっておりまするので、価格的に見ましてメキシコその他と競争が可能である条件が達成できますならば、対米輸出ということも今後大いに期待いたしたいと考えております。このような輸出を推進するために一手買い取り輸出機関が必要であるかどうかという点につきましては、なお慎重に検討をいたしたいと思いますが、少なくとも現在の情勢から判断をいたしますと、これら有望な輸出市場というものに対しましては、大手の商社筋におきましてもきわめて積極的な関心を持っておるようでありまして、問題は輸出市場の把握と、これに対応できる条件での回収硫黄の売り込みが可能であるかどうかということにかかってまいるものと考えております。  なお、輸出と並びまして、当面鉱山硫黄に対する回収硫黄の圧迫を合理的に調整するためには、鉱山業界石油精製業界という両業界の話し合い、あるいは協調的な相互の協力ということが必要であるという観点で目下この両業界に対しまして、   〔委員長退席、理事高橋衛君着席〕 私どもからもそれぞれ要請をいたしまして市場秩序の維持につきましての協力を求めておる次第でございます。
  24. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 鉱山局長さんとは両三度当委員会で、私ばかりでなく他の委員ともども抽象的な論議はしておるわけです。しかし、私の勉強不足かどうかわかりませんが、そう海外輸出というものも甘くないというように承っておるわけです。前回の委員会でインドからビルマから東南アジアから出して局長さんといろいろ質疑応答をかわしたわけですが、私の知る限りにおいては、誤りであれば幸いですが、そうその海外市場というものは簡単にまいらぬというようなことを聞いて心配しておるわけですが、いま局長の御答弁のように、スムーズに輸出ができる、採算ベースが合うということならば、これ以上お尋ねせぬわけですが、しかしそこに私の勉強したのといささか違うから、あらためてお尋ねするのと、もう一つ、これは局長、別に抽象的な論争でなくして、具体的にお尋ねするわけですが、山によって違うでしょうけれども、岩手県の松尾とか群馬地方にほとんど生産されるわけですが、二万円をトン当たりこえるわけでしょう、日本のコストは。ところが私がたまたま見せていただいた出光の姉崎にある千葉製油所でも、一万五千円で売ってもよろしい、一万六千円でも採算ベースが合います、こう言っておるわけですね。これはしかし容易ならぬことだというように私は判断してきたのですがね。そこで、前回も局長に意見として申し上げたとおり、プールにして処理をしたらいかがですかというお話をしたわけですが、それ以外の方法で何らか具体的にさしあたりの手当てとしてやる方法がないでしょうかね。
  25. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) 輸出は必ずしも簡単でないということでございまして、これはたとえばアメリカ市場におきましては現在輸入硫黄がCIFでトン五十ドルないし六十ドルということになっております。わが国の現在の硫黄のコストから申しますと、かようなCIF価格での輸出はなかなか困難であるという現状であります。しかしながら、今後回収硫黄がたとえば両三年後には二十万トン、三十万トンと増加いたしてまいりまして、相当な大量が安定的に供給できるという国内的な体制が整いますならば、回収硫黄のコストという面から考えまして、ただいまのアメリカ市場向けのような条件を満たすことは必ずしも不可能ではない、ただその前に、もちろん市場の打開という意味で商社なり関係業界努力が必要であることは当然でありまするが、いわゆる経済条件として決して不可能な市場ではないということは申せるかと思います。ただ、鉱山硫黄自体を対米輸出をしよう、あるいは東南アジア輸出をしようというためには、なお相当合理化投資も必要であろうし、また合理化努力が必要であると考えますが、少なくともわが国全体として回収硫黄生産分程度余ってまいりますれば、そのような回収分を中心とした輸出をこれからはかってまいるということは、われわれとしては努力をすべき問題であり、また決して不可能ではないという問題であると考えております。
  26. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 午前中おいでになった参考人の中で、これから二万トンの船をつくれとかあるいは港、岸壁をつくらなければならないというような意見もありましたが、千葉県の製油所、あの手の、五百メートル沖合いまで十万トンのタンカーが入ってくるわけです。あの参考人のおっしゃるようなことをやらなくても、完全脱硫した硫黄海外へ出そうと思えばこれは簡単にできるわけです。ただ、その市場が求められるかどうかということが難点と、それからもう一つ、日本硫黄山の企業、いまのような形態ではとうてい外国へ出すにしても石油会社と同等の話し合いにしても、いまの力では不可能でしょう。ですから全部一社に整理ということが無理であれば、せめて二社くらいに整理できぬものか、これは法律云々するよりもあなたのほうの行政指導でできるのではないか。一億の金を出すといっても松尾に三千万出して群馬に三千万、北海道に一千万、総花式な、てんでんばらばらに切り離しては、一億の価値がないので、一社なり二社なり、これは一つの例ですが、一億円あるいは五千万円出すということになれば、それだけ力がつくような気がするわけです。いまのような全国の中から小の山を対象にして、君のところだめだ、きみのところいいと選別するのも鉱山局としてはなかなか困難だと思いますので、そういうような具体策ができぬものかどうか、この点はいかがでしょうか。
  27. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) 現在硫黄鉱山は七社九鉱山生産をいたしておりまするが、これをある程度集約といいますか、統合といいますかを行ないまして重点的な合理化を推進すべきであるという点は、私どももそれが可能ならば大いに推進をいたしたいと考えます。ただ、御指摘のように、山の事情というものは一山に一社的な姿が多いために、これを合併したり集約したりすること自体が即座に年産合理化につながるという効果もなかなか出しにくい性格があろうかと思います。しかし輸出の問題あるいは国内的に見まして回収硫黄業界との調整の問題等にあたりまして、鉱山硫黄業界がより強力な立場をとるためには、その集約化が望ましいという点はまことに同感でございます。私どもとしましてもさような方向を常に念頭に置きながら鉱山硫黄業界に対して今後とも行政指導を行なってまいるつもりでございます。
  28. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 局長の御答弁のようになさることがけっこうなことだというのは理解するけれども、それをおやりになるには二年、三年かかるでしょう。もうすでに脅威を与えておるわけですから、そうすると、この二十万トンなら二十万トンですか、その中に食い込んできている、したがって三年か四年、昭和四十七年ですか、四十七年になると計数を見ると山硫黄一トンも要らなくなるというようないまの需要であれば、答えが出るわけですが、御答弁もけっこうなんだが、いまの急場に間に合わぬのではないかという心配を私はする、そういう心配はございませんか。
  29. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) 当面の対策といたしましては、ただいま回収硫黄鉱山硫黄需要市場をある意味で荒らしておるということに対する対策考えるべきであると思っております。   〔理事高橋衛君退席、委員長着席〕 ということは、鉱山硫黄というものに対しまして、回収硫黄は常にその千円下、あるいは二千円下という相場をもって鉱山硫黄のいままでの得意先に対しまして売り込みを行なう、そういうことで鉱山硫黄需要が食われてまいるということは、鉱山業界にとりましてきわめてゆゆしい問題でございますので、かような面での協力、協調というものを、私ども石油精製業界並びに鉱山硫黄業界に呼びかけておるわけでございます。すなわち、端的に申しますれば、回収硫黄が確かに安いコストであるかもしれないが、少なくとも鉱山硫黄の従来の売り手としての市場は確保していくべきである。その間に鉱山硫黄業界合理化努力を進め、回収硫黄業界輸出努力も進めて、硫黄業界の併存というものを確立するように努力しようではないか、こういう方向で当面の指導を行なっておるわけでございます。
  30. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 そこで、後段のほうが局長私は心配なんですね。その販売路の確保。いままでの七つの会社が、まあ明治・大正、昭和と続いている会社もあるわけですが、全部ルートを持っておったわけです。しかし、去年よりことし、ことしより明年というように、紙パにしてもマッチにしてもナイロンにしても、あるいは肥料にしても、需給が本年は五千トン、来年は七千トンというように伸びる見通しはない、いままでの数字を見ていると横ばい状態ですから。いままではしたがって販売ルートを持っておった各社が、今度は出光なり、次に出てくる各社の製油所は全部、完全脱硫装置が設備としてでき上がるわけですから、そうすると、現在は、私の聞くところによると、ガソリンを何トン買ったら、重油を何千万キロ買ったら、そうすると硫黄ひもつきで君はこれだけ販売してくれ、君のほうはこれだけということで、新しい販売ルートを設けているらしいですね。そうでしょう。そうすると、その販売ルートで激しい過当競争が始まるわけです。そうすると、トン当たり五千円も安いコストで販売せんとするところが最後に残るということは、これは自明の理じゃないですか。これは自由主義経済ですから結局そういうことに局長なりましょう。そういうことにならなくて、あなたのおっしゃるとおりその販売ルートが完全に、いままで各社が持っておったのを各社がき然として二年でも三年でも持っておれれば幸いだ。ところが下部においてはすでにやっておるわけですから、京阪神から京浜地区、中京地区でやっておるわけですから、これはなかなか上のほうで話しておるように紳士的じゃないわけです。そういう点を懸念しておるんですが、いかがですか。
  31. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) 御懸念のような事態はあり得ると思います。ただ、それを放任しておくわけにはまいりませんので、先ほど申し上げましたような趣旨で私ども石油精製業界の協力を強力に要請をいたしておるわけでございます。
  32. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 いまやすでに聞くところによれば、群馬の二、三の山で滞貨しておるというんですね、全部はけなくて。こういうものは局長、さしあたりどうするわけですか。滞貨に融資でもするわけですか。そういう状態がもうすでに一部で起きているわけですね。ここで私と鉱山局長と問答やっておる間に、すでに現地では山に硫黄が滞貨しており、下部では販売競争やっておるわけです、ここではきれいにお互いに論争しておるわけですが。手当てをするならば滞貨についてはこういう手当てをいたしますとか、販売競争については通商産業省で行政指導でどうしますとか、具体的な問題をひとつお知らせ願いたいのですがね。
  33. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) 硫黄の滞貨が一部で起こっておることは事実でございます。この滞貨はまさに回収硫黄進出分に相応する量でございまして、言いかえれば回収硫黄進出がかような滞貨を生ぜしめておるという原因でございます。したがいまして、先ほど来申し上げておりまするように、鉱山硫黄需要をできるだけ確保してまいる硫黄業界基本的な協力関係というものを設定をいたすことが、今後の滞貨の解消に役立つ唯一の実際的な方法であります。もちろんこの滞貨をかかえることによりまして、企業の資金繰り等が著しく困難になる場合がございますならば、たとえば大手のケースに見られますような事例に対処いたしましては、通産省といたしましても、関係金融機関に対して所要の協力を求めてきておりますし、また、今後ともさような方針で対処をいたしたいと思っております。     —————————————
  34. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) ただいま委員の変更がございましたので、御報告申し上げます。  椿繁夫君が辞任され、その補欠として近藤信一君が選任せられました。     —————————————
  35. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 すでに滞貨になっておるから、局長、これさしあたり通産省としてはどういう御処置をとられるのですか。まあ市中銀行から金を貸せという方法もあるでしょうし、この次事業団のことについてお尋ねしようと思いますが、何らか措置を講じなければいかぬと思うわけです。四、五年前に銅が安くて問題になりまして、昭和三十八年特に貿易自由化ということで問題になって、これは経営者は二十六万円ベースだ、アメリカから二十四万円の銅が入ってくるというときに、国会でてんやわんややって、現在は五十万も五十二万もするわけです。安くなったときには国会に押しかけてわんわん騒いで、高いときには国会などあるか、そういう経営者も現におるわけですから。しかし、そういう鉱山と違って硫黄山などというのは何とか行政指導の面で助けてやらなければだめなんです。いま申し上げたように、通産大臣にもお聞きしたいが、通産大臣は、おれの選挙区は岩手県です、岩手県に松尾鉱山ありますよ、これはよく知っております、こういう答弁をこの前やっておりましたが、この措置は通産大臣どうなさるのですか。
  36. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) 現に滞貨を起こしておる事態に対して具体的にどういう行政指導を行なうかという御趣旨でございますが、ただいまお話の出ました松尾鉱業について申し上げるならば、松尾鉱業の資金調達の面におきまして滞貨が圧迫となっておることは事実でございます。これに対しましては、四十三年度上期における当該企業の運営におきまして、関係金融機関側からは弁済の繰り延べ並びに金利のたな上げという措置を講ずるよう、現在われわれとしては関係金融機関に対して要望をいたしておりまするし、企業としてもさような方向で折衝をいたしておるわけでございまして、もしこれが認められるならば、私はこの滞貨による金融面での困難という問題は一応打開できると考えております。
  37. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 局長が打開できるという責任を持っての御答弁ですからね、これは間違いなくやっていただきたいのですが、それにあわせて事業団、この法律の事業団ですね、これは一カ年間政府の融資も含めて三十億か三十五億の仕事をなさっているのですね。このボーリングをやったりして現地の探鉱調査をやっている面と、金を貸しておる面がございますね。ところがこの金を貸しておる面に、三井とか住友あるいは三菱、日鉱、同和、こういう大きな大会社だけに金融を講じて、助けなければならぬ中小企業には融資をしておらぬのではないですか。投げておってもいいと言っては極端になりますが、やはり政治というものは一番弱いところに手を差し伸べてやるのが政治でしょう。中小に一銭も貸しておらぬ。これはこの法律に、中小には金を貸していかぬという条文がありましたかね、いかなる理由ですか、これは。
  38. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) 金属鉱物探鉱事業団の融資対象といたしましては、資本金五千万円以上、従業員一千名以上という、いわゆる大手鉱山を対象といたしております。中小に対してはなぜ融資をしないかということでございますが、これは中小鉱山は多く一山一社経営でございまして、いわゆる探鉱融資というものが、将来の弁済の可能性について、大手のように複数の鉱山を持ち、複数の探鉱を行なっているケースと異って、その危険性が相対的に高いという実情にあるわけであります。したがいまして、中小鉱山に対しましては、融資によるよりはむしろ補助金というもので探鉱資金を政府が補助金として出し切りにして、その返済を求めないほうが実情に即しておるのではあるまいか。こういうわけで探鉱助成の方式を探鉱事業団によります融資方式と、中小鉱山に対する補助金方式と、二本立てにいたしてきておるわけでございます。ただ、実態としまして、いわゆる五千万円、千人以下の中小企業といわれる山の中にも、補助金によるよりは融資によるほうがより実際の要請にこたえる場合があるだろう。さような実態に即しまして、事業団の融資というものをあえて中小鉱山に対して拡張することは、私どもも前向きに検討をいたしたいと思っております。
  39. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 前向きに検討でなくして——この法律できるときは両角さん局長でなかったでしょうが、大手の場合はほとんど金も幾らか持っておるわけですね、金山も。午前中、あの住友の社長が参考人としておいでになって、ずいぶん困ったような話をしておったが、なるほど困るでしょうけれども、大蔵省が外国からグラム四百五円で買ってきたのをそのまま配分して、それで六百六十円か幾らかで売って、その分いただいておるわけです。これでは大蔵省おこるのも無理ないところもあるわけですが、だから、そういう大手に補助を、あたたかい手を差し伸べておって、なおかつ事業団大手しか金を貸しておらぬのですな。これはしかし局長あまりひどいじゃないですかな。国の政治というのは、大手はダブル——トリプル・プレーで補助を与えておるんですね。中小の場合は、全然あなたのおっしゃった探鉱費などというものは微々たるものだ。補助金といっても微々たるものですよ。これはしかしあまり大手中小と格差がつき過ぎるじゃないですか。前向きに検討ということは、これを中小企業にも、五千万円の資本金を三千万円以上とするとか、あるいは五千万円の資本金を二千万円以上の鉱業会社、そこに貸与するというようなことを考慮していただくわけですか。
  40. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) 探鉱事業団の融資の対象を、現在の画一的な基準にかかわらず、その実態が補助金よりは融資方式のほうが望ましい企業につきまして拡張をしていくということについて、われわれとしては前向きに検討をいたしたい、かように申し上げた次第でございます。ただ、中小鉱山に対しましても、すでに過去五年間におきまして延べ八百八十一鉱山に補助金を交付しております。ところが、わが国の中小の山は約一千ございます。ということは、実質的に見まして九割近い補助が行なわれておる、対象鉱山数としてはそういう補助実績に相なっておりまして、決して大企業偏重に政府の助成をいたしておるわけではございません。中小鉱山に対しましても、できる限りその実態に即した補助形式をもってわれわれとしては助成をいたしておるつもりでございます。
  41. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 こういうことはこの委員会で言うべきことばかどうかわかりませんけれどもね、中小鉱山に補助金を出して、百万の補助金をもらうために職員が二人ぐらい専門にかからなきゃならぬらしい。それから、地方通産局に百度参りして、結局半年ぐらいかかってようやく補助金をもらう。補助金をいただいたときは、すでに半分ぐらい経費としてかかった。こういうことで、ぼくは、日にらは申し上げませんけれども、通産省の鉱山局へ、あまりひどいではないかという話をしたこともございますよ。いまはそういう方法で半年かかって職員二名ついて、百万円補助金もらったが、五十万円使ったというようなことは、今日はないでしょうが、そういうことぐらいしか中小にやらぬで、炭鉱促進事業団から資金の手当て一切やっていないのですからね。これは局長、何とかしてあげなきゃならぬ。これは私いまここですぐどうせいと言うても、大臣と二人おいでになっているから、そこで省議を開いて御答弁いただいてもけっこうですがね。これは少し矛盾だと思いませんか。
  42. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) 補助金の支出手続がきわめて繁雑過ぎる、あるいはそのために無用な経費がかかるということにつきまして、かりにさような事実でありますならば、もちろんわれわれとしてはすみやかに改善をいたします。また、さようなことはないと信じておりますが、かりにございますなら改善いたします。
  43. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 これは大臣いかがですか、いまの点。その中小大手施策の差、ただいま私申し上げましたがね。
  44. 椎名悦三郎

    ○国務大臣(椎名悦三郎君) 強いものに厚くて弱いものに薄いというのは、どうもやはりどこへ出しても聞こえない話であります。でありますから、何かのこれは手違いでそういうことがあるいは起こるかもしれませんが、そういう方針でやっているわけじゃない。御了解を願います。
  45. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 大臣、もう少し大きな声で。全然わかりませんですよ、失礼ですが。
  46. 椎名悦三郎

    ○国務大臣(椎名悦三郎君) 大業者に手厚い保護をして中小をほうっておくというような考えは持っておりません。もしそういう事実があるとすれば、まあ場合によっては手違いというものがございますから、それによって生ずる現象であろうと思います。
  47. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 これは大臣、私誇張して申し上げておるのでも何でもないのですよ。ただ事実として、大手の場合には、外国から買ってきた金を、まあ何キロ配分しておるかわかりませんよ、四百五円で買ってきた金を、産金業者に四百五円で払い下げて、その諸君は六百六十円で売っているわけですから、それだけでも、もうグラムでとにかく二百五十五円もうかるわけですよね、大手の業者はね。中小は持っておりませんからね、金山大手の業者はそれでいただきですよ。  それからもう一つ、いま論議されている法律、この法律を見ますと、これは金属鉱物探鉱促進事業団というより、補資促進事業団のほうが適当な表現であろうと思うのですがね。この金でも中小には一銭も貸しておらぬわけです。ですから、鉱山局長のお話を承ると、資本金で五千万円以上でなかったら貸しませんというようなルールになっておるからと言うから、それはもう少し格を下げて、そして中小にも与えるようになさってはいかがですかと、こういう質問、というよりも要望を申し上げているわけだ、ぼくは。
  48. 椎名悦三郎

    ○国務大臣(椎名悦三郎君) 御要望趣旨はよくわかりましたので、そういう方向に努力をいたします。
  49. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 それは大臣、大手の場合といえども、通産省の行政指導あるいはてこ入れを極力やってもらわなきゃならぬでしょうが、中小は特に通産局のてこ入れがなければ、これはやっていかれぬわけですから、格段の措置をお願いいたします。  その次に、これは通産局長にお尋ねいたしますが、この前の委員会で、さいぜん申し上げたような一つの窓口に油のほうからと山のほうからとプールにせいとかいろいろ申し上げましたが、こういうことは鉱山局長できませんか。タリフクォータ方式にして一ぺん貿易自由化のとき水銀でやったことございますね。日本の水銀が当時トン三百万円、イタリアから入ってくると二百二十万円くらいで入ってくるということで、タリフクォータ方式をやるということで施策をとられたことがありますね。あれと同じように、二十万トンは二十万トン、日本山硫黄は。あと不足分は、国内の脱硫硫黄で使って、残った分は油会社の責任において海外市場を求めて処置せいと、半分タリフクォータ方式ですね、こういう方法を講ずるわけにいきませんか。さいぜん申し上げましたように、たとえば船で油がやってきますね、帰りの船はから船で帰りますから、これはただで——ただということは極端ですが、普通の船で持ってくるのは東南アジアにいたしましてもあるいはビルマ、インドにいたしましても、きわめて安価な価格で運べるのですね。このタリフクォータ方式ということは考えられませんかね。
  50. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) 鉱山硫黄の内需を確保し硫黄輸出を促進するという面からは、たいへん御示唆に富む御意見だと思います。ただ現実問題としてそれがどのように運営され得るかという点につきましては、御趣旨を承りまして慎重に検討させていただきたいと思います。
  51. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 鉱山局長は意見は言うけれども、それは検討するとかと言って、いつも国会で法律が通ってしまってからあなた知らぬ顔ばかりしているから、特にだめ押しをして置かなければいかぬのですがね。タリフクォータ式にして、局長、何らかこれがもしよしとせざれば、何らかの方法を講じなければ、ただ助けてあげましょうではどうもいかぬような気がする。漫然として別に通産省が努力せぬとかあるいは鉱山局がいかぬと私は言っているのじゃない。何とかうまい方法を見つけて、ともに生きるような施策を講じてもらわなければいかぬから、そうすると、これとこれとこれはいまやります、これは明年というように、でももう少し具体的にお話は願えぬですか。
  52. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) 何かうまい方式をやるべきだということは私どももさように存じますが、いま硫黄分科会でせっかく検討をお願いしている段階で、ございまして、最終的な具体策を御説明できないのはまことに遺憾に存じますけれどもが、私どもとしましては、先ほど申しましたように、問題は輸出とそれから鉱山硫黄国内市場の確保、この二つにしぼって、当面いかなる具体策があり得るかということをいま検討をいたしている段階でございますので、さように御了承をいただきたいと思います。
  53. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 その点については午前中の沢田委員参考人質疑の中で、局長もお聞きのとおり、なかなか部会の答申ですか、部会の意見の一致を見るところにならぬ、こういうようなことを局長もお聞きになったでしょうし、私も聞いたわけです。それは意見が早く一致して大臣のところに答申されて、それを大臣が肉づけ裏づけされて、ものになるのであればそれは喜ばしいことで、私はそれを否定しませんけれども、しかし午前中の話では、なかなかそういうようにまいらぬというようなことを、同席しておりまして聞いたものですから、そうすると放任しておくわけにいかぬし、一方、油のほうはますます増産されるわけですからね。特に東半球の油から西半球の油になると、これは硫黄分が多いから増産されるということは火を見るよりも明らかなんです。局長のおっしゃるとおり、その審議会の答申が五月に出るのであればこれはけっこうですが、なかなかそうまいらぬのじゃないですか。
  54. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) 硫黄分科会におきましては、需要業界鉱山業界との意見がなかなかまとめにくいとういことは事実であります。ということは、それだけ活発な議論が行なわれておるわけであります。しかしながら、われわれといたしましては、五月中に結論を出さねばならないと考えておりまして、いまそのめどのもとに努力をいたしておる次第でございます。
  55. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 まあ審議会のことを干渉してはいけませんが、その活発な意見によりけりで、活発な意見で前向きで、前進する意見をちょうちょうはっしと戦わせておるのであればこれはけっこうだが、ぐちが半分入ったり、非難が半分入ったり、そういうような意見を長いこと戦わしておったのじゃこれは困るのですが、局長のほうで審議会の、答申がなくてもできるのでしょう。たまたま鉱山局というところはほかの局と違って石油のほうも握っておるし、硫黄のほうも両方持っておるわけですからね。通産省はいろいろ局の中でなわ張り争いがあるそうだが、しかしあなたのほうではそれを全部包含しておるのだから、出るところは違ってもその指導する最高責任者はあなただ、まあ大臣が最高責任者でしょうけれども、両方あなたが押えておるわけですから、石油は石炭局にあって、硫黄鉱山局にあるというとなかなかむずかしいでしょうけれども、あなたのほうに両方あるわけですからね。操作は簡単にできるような気がしますがね。
  56. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) 石油鉱山硫黄とはまさに鉱山局の中の部局でございます。したがいまして、それだけに調整にいろいろむずかしい問題もあるわけでありますが、しかし私の責任におきましてこの両業界の利害調整という問題につきまして結論を出すべきものと存じております。
  57. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 次にお尋ねいたしますが、この事業団海外に力をそそぐということになりますと、そうするとやはり持てる力が倍加したわけでないからね、国内の分は手薄になるか、海外のほうが完全に探鉱調査ができないか、いずれか二つのうちの一つであろうと思うわけですよ。五年、十年先のことは別として、膨大な資力と膨大な人員をつぎ込んだわけでございませんし、膨大な組織が確立したわけでございませんから、どちらかがこれは手薄になるということは、これは論を待たないことだと思うのですね。そうしますと、これはやはり国内にいままで投じておった力を海外に出すものか、新しい力ということを申し上げても、前回の委員会で十五名採用を大蔵省に頼んでおるという程度ですから、大学を出た十五名の人が満ばい入るものとしても、それはあまり力にならぬですね、三年や四年では。そういう点について、外国へ行ってどのくらいできるものかお尋ねいたします。
  58. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) 金属鉱物探鉱事業団海外開発に関する業務を新たに追加をされる場合に、それが国内に対する努力を減らすことにはならないと私ども考えております。今日まで、たとえば十の力を十全部国内に投入をしておったわけでありまするが、今度は四十三年度たとえば十三の力を十一国内に投入して二だけ海外に投入すると、かようなわけで、国内に対する努力も従来以上にふやしてまいりますとともに、あわせて海外に対してその力の及ぶ限りでの探鉱開発を助長をしてまいる、こういう姿勢でやってまいるわけであります。これによりましてもちろん初年度あるいは二年度等はまだ十分な探鉱助成活動もできないかとは思いまするが、この道が開かれるということにおきまして、今後漸次機能並びに資金を充実をいたしまして、将来のわが国の海外開発に対してきわめて有効な助成を行ない得るようになるものと確信をしております。
  59. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 これは局長、こういうことになりゃせぬですか。あまり猜疑心を持って法案審議するということは妥当でないんですが、立法府で論議して決定した以上は、行政府にゆだねて、立法府で論議したときの精神がどうであろうとも、皆さん方の力によって左右されるわけです。そこで、いま答弁をいただいたわけですが、海外の外を入れる場合、あらゆる角度から検討なさったことであろうと判断される。そうしますと、オーストラリアに行こうが、あるいは南米、チリ、アルゼンチン、あるいはブラジルに行くか、あるいはメキシコに行くかわかりませんよ。しかし、そこに行っている会社に対して、現在国内の会社に金を貸しておるように、そこに行っておる会社に融資をして、それで外をつけたのではないかというような気がするのです。そうでなければ、外国に五人十人行ったところでどうにもならぬわけですから、一つの商社でも十人、十五人と行っているわけですから、少なくとも政府管掌の事業団がやるという場合には、豪州に二人、南米に二人というわけにいかぬでしょう、いまの答弁からいって。そうすると、結論的には、外国へ行って探査なりあるいは鉱業権を取得して、これから鉱石でも買って持ってこようとする会社に対して金額を融資するということに終わってしまうのじゃないかという気がするのですが、いかがですか。そういう面から見ても大手しか外国へ行っておらぬわけです。中小企業外国に行っているところは一つもない。この点についても、大手偏重主義になって、御説明と実際やられるお仕事とは違うのではないかというような気がしますがね。
  60. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) 探鉱事業団海外探鉱の助成に関する業務と申しますのは、みずから事業団が現地に出かけてまいりまして、実際の探鉱活動を行なうという趣旨ではございませんで、むしろただいまお話のございましたような、各企業が南米、アフリカ、カナダ、オーストラリアといった地域進出をいたしてまいりますにあたりまして、その基礎となる情報、資料を提供いたしたり、あるいは基礎的な地質調査をみずから行なって、そのデータをこれら企業段階での探鉱のために提供をいたしたり、あるいはそういった探鉱のための必要な資金としての融資を行なったり、あるいはまた開発段階に入りました資金の債務保証を行なう、こういったサービスを行なうことを事業団海外開発業務にいたしておるわけであります。したがいまして、人員は四十三年度二十五名の増員を要求中でございまするが、数は少ないわけでありまするけれども、仕事としましては、初年度に課せられました海外探鉱に対する助成の仕事は、この人員をもって十分こなし得るものと考えております。将来はこれを充実してまいりまして、また資金も充実しまして、より大量の資金をより広い地域にわたって助成をいたしていく方向に持ってまいるわけであります。
  61. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 その場合に、おもにどこを、中南米とか、豪州とか、あるいは東南アジア等ありましょう、どこが大体現在計画の中に入っている個所ですか。
  62. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) これは事業団計画と申しますよりは、産銅各社の海外探鉱開発計画に対応いたすわけでありまして、これらの各社は、現在南米におきましてはチリ、ペルー並びにボリビアの三国を中心探鉱活動に入っております。またアフリカにおきましては、コンゴにおけるカッパーベルトにおきまして利権を獲得して探鉱に入ろうといたしております。その他カナダ、オーストラリア等にも今後積極的な進出が期待されておるわけであります。
  63. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 次にお尋ねいたしますが、この探鉱促進事業団のお仕事は、このプリントをいただいただけでは、その成果というものがあまりはっきりせぬわけですがね。具体的にわかれば、国内の場合の現在までやってきたお仕事ですね、そういう点において御説明をいただきたいわけです。
  64. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) 金属鉱物探鉱事業団は、第一に探鉱資金の融資を今日まで国内探鉱につきまして行なってきております。これは昭和三十八年度から開始をいたしまして四十二年度までに延べ百五億六千五百万円の融資を三百九鉱山に対して行なっております。  また広域調査という基礎的な地質調査を行なっておりまして、これは三十八年度から四十二年度の間に政府資金六億九千四百万円をもちまして全国十一カ所について広域調査を行なってまいってきております。これは昭和五十年度までに全国二十七カ所を広域調査するという計画に従いまして進行をいたしておるわけであります。  また精密調査につきましては、昭和三十九年度から四十二年度の間に七億九千三百万円の事業費、そのうち補助金四億七千六百万円をもちまして全国三カ地点についてこれを行なっておる次第でございます。  以上が今日までの探鉱事業団国内関係探鉱に関する業務の概要であります。  海外関係は四十三年度から新たにつけ加えさせていただきたいというお願いを申し上げておるわけであります。
  65. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 その融資の分を含めてみずからやったような資料ですが、おそらく全部みずから仕事をやったのではなしに、一部ボーリング会社に仕事をやらせたんだと思うのですが、やった個所と金額があまりに差があり過ぎるですね。ばくはしろうとですからよくわからぬけれども、平均五百メートルボーリングしても相当額な金額になるわけですが、これはいかがなんですか。私の計算方法が間違っておるのですか。省では、大体何メートル掘ってボーリング一本が幾らというのがあるでしょう。そういうようなことは全然関係がなくて、事業団独自でやって決算報告だけ通産省の承認を求めるために提出をする、こういうことになっておるのですか。
  66. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) ボーリングの深さ等につきましては、実績で出しておると思いますが、たとえば精密調査につきまして三十九年度に独自で行ないましたボーリングの平均の深さは四百三十八メートルである。また四十一年度では、それが五百メートルである。白髪山につきましてはそれが千七百メートルである。これはすべて実績によりました資料でございます。またそれに要しました費用というものも、その実績に基づく費用でございます。
  67. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 私これで質問を終わりますが、話がさいぜんに戻りますが、さいぜんあるいは前々回いろいろ要請を申し上げておきましたね。要請どおり一〇〇%やっていただくというわけに、予算もかかることですから、なかなかできないでしょうけれども、さしあたりめんどうな問題は検討していただくということでお願いしておいて、いまの促進事業団の金ぐらいは、ひとつ中小のほうにも、五千万以下はだめですというようなことでなしに、十分検討して、やはり大手並みに取り扱っていただきたい。これは特段に法律をどうするこうするでなくて、それは大臣と鉱山局長の相談でおできになることだと思いますので、それをお願いするのと、もう一つはいぜん申されました局長の御答弁にもございましたが、滞貨があるわけですね、油と競合をした結果ですね。その滞貨のやはり処理について、格段の御配慮を要請申し上げまして質問を終わります。
  68. 沢田政治

    ○沢田政治君 硫黄の問題につきましては、もう十八日に基本的なことをお聞きしておりますので、そうこまかい点お聞きする点がないわけでありますが、一括して硫黄についてもう二、三点質問をいたしたいと思います。  中身に入る前に、特に私は硫黄政策といいますか、硫黄に対する行政側の今日までの施策については、相当の責任があるんじゃないか、こういうような点を指摘しておきたいと思うわけであります。まあ今日回収硫黄の異常な生産によって、国内的には過剰ぎみである、こういう傾向をたどっておるし、そのことが国内山硫黄の経営を根本的に危険にさらしておる、こういうことがあるわけでありますが、事ここに至るまでの政府の行政の指導を見ますと、非常に一貫性に欠けておる点があるのではないか、こういうふうにまあ考えざるを得ないわけであります。古い歴史から私は言うわけじゃありませんが、戦後から今日までの政策を、あるいは行政指導を見た場合には、その点は完全に指摘できるのではないか、こういうように考えます。あるときには輸入、あるときには出血輸出、そうしてまた今度輸出、こういうことになるわけであります。したがって国際的な需給関係の長期展望に対する大きな誤りがあった、こういう点は私はやはり指摘せざるを得ないのではないか、こういうようにまあ考えておるわけであります。これは考えておるだけではなく、十分やはり反省すべきではないか、こういうように考えざるを得ないわけであります。  そこで、中身に入るわけでありまするが、私は今日この硫黄の問題は、なるほど石油からの回収硫黄が異常に産出されて、国内産の硫黄を圧迫しておる、こう考えますと、何か国内産業回収硫黄のために保護するという政策的な目的だけに政策が限定される、こういうふうにまあ考えられがちなわけでありますが、そういう狭い次元からこの硫黄問題を考えたのでは、あまりにも量見が狭いし、あるいはまた長期展望に立った場合の政策としては欠けておるものがあると私は考えざるを得ないわけであります。なるほど回収硫黄からいま難航しておる国内産業である硫黄を守るという使命が一つあります。と同時に、私はそういう目的もあるけれども輸出産業としてこれを根本的に高い次元から考えてみる必要があるのではないか、こういうふうに考えるわけであります。といいますのは、ちょっと前まではアメリカが相当輸出国であったわけでありますが、鉱山局長が言われるように、アメリカの輸出というものもそう無制限ではなくなった。だんだんに落ちてきておるわけでありますね。いまアメリカでおもに輸出しておるのはイギリスとドイツですか。カナダが豪州、ニュージーランド、東南アジアですか。もうイタリアの場合にはすでに輸出国としての座を落ちたわけでありますね。こう考えるならば、日本硫黄産業が将来輸出産業の花形とまではいかないけれども、やはり貿易輸出産業としての大きな役割りというものがこれに残されておるのではないか、こういうふうに考えるわけであります。特に、今日世界の食糧事情を見まするに、アメリカ、カナダぐらいのものですか食糧が余って困っておるのは。ほとんどが、やはり世界的な、地球的な規模で見まするならば、食糧問題というものは非常に大きな問題になってくると思うわけであります。やはり食糧増産ということになると、どうしても硫黄、硫化、こればかりではありませんけれども、これが非常に重点的になるわけであります。需要が強くなると思うわけであります。たくさんの肥料があるわけでありますけれども、速効的に農産物の増産に役立つのは、これは同じ酸のうちでも硫酸だけであるということは、これはもう常識であるわけであります。したがって爆発的な硫酸のS分、こういうものの需給というものは、世界的な角度から非常に強くなってくるというような傾向を持っておるわけであります。そういう意味で私述べたいことは、やはりいま回収硫黄から国内硫黄をどう守ろうかという当面の一つの使命があると同時に、世界的な規模におけるS分の硫黄需給世界の食糧政策という大きな視野、大きな観点からこの問題を考えるべきじゃないかと思うわけであります。ところがどの資料を見ても世界の食糧がどうなるのか、これに対してS分の世界的な立場で見た場合の需給関係は将来どういうように推移し、どういうように展望されるのかという一つの視野というものが、資料の中を見ました場合でも非常に希薄なわけであります。だから、もっと高い次元で硫黄産業というものを見つめていくべき段階にきているのではないか。でなければ回収硫黄から国内山硫黄をどう守ろうかというきわめて狭い範囲の議論になるわけであります。そうなると、これは大蔵省もさいふが渋くなるわけであります。まあ大蔵省のさいふが渋い渋くないは別としましても、やはり特に所管官庁である鉱山局は、もっと高い次元からこれを見つめてほしいと思うわけであります。特にそれまでやはり山硫黄の存在、存命というものも考えなければならないわけでありますが、先ほど阿部委員も質問しておりますが、相当負債をしょっておる鉱山も中にはあるわけであります。五十三億も負債をしょって、そうして四億五千万円ですかの利子を払わなくちゃならぬ。利子のためにつぶれかかっておる鉱山もなしとしないように私は理解をしておるわけであります。また、今日の回収硫黄関係において在庫をかかえておる、在庫融資を市中銀行に申請をした。そうした場合に市中銀行も、これは銀行でありますから当然だと思いますが、山硫黄というものは政策的にどう位置づけられるのかどうか、その存在を許されるのかどうかという不安感を持っておるでしょう。そういうことから、一社だけの関係ではお貸しすることはできません、したがって硫黄産業全体の関係であるならば考慮しますという、きわめて渋い態度を金融筋が申し述べておる、こういうことも聞いております。したがって先ほど阿部委員も言いましたように、一体当面どうするのか、特に金繰り、金融機関との関係をどうするのか、こういう点について御答弁があったようでありますけれども、きわめてこう何といいますかね、答弁としては非常にじょうずな答弁だと思いますが、こうするという具体性にちょっと欠けておるやに私としては理解されるので、再度この点について態度を御明確に願いたいと思います。  と同時に、もう一つ最後の私の硫黄に関する締めくくりでありますが、むずかしくなるほど、ややっこしいほど鉱業審議会待ちというように、意識的に私は逃げておると思いませんが、どうも諮問機関である鉱業審議会という方向に問題を転嫁されておるような気配が私としては感じられてならなかったのであります。これ、私の杞憂か懸念かわかりませんけれども、したがって、先ほど五月中には硫黄分科会の結論というものを期待していますと、こう言われておりますけれども、私もそれに期待したいと思いますが、しかし五月中に結論が出なかった場合には一体どうするのかということです。六月になるとそろそろ四十四年度の鉱業政策というものを考えなくちゃならぬし、予算というものも考えなくちゃならぬし、そういう場合になっても、あくまでも分科会の答申待ちという態度で推移するのかどうか。もう出なかった場合には、やはり通産当局としては硫黄に対する独自の考え方を明確にする意思があるのか、この点を明快にしていただきたいと思うわけであります。まあまだ石膏の問題にまいりますけれども、一応硫黄問題に対する私の質問の締めくくりのためにあえてお聞きするわけであります。
  69. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) お答えいたします。硫黄が将来輸出産業として大いに将来性のある役割りを果たし得るではないかという点につきましては、御案内のとおり、すでに世界的に見まして、昭和三十八年ころから世界的な硫黄需給は不足状況に入ってきております。この傾向は今後ともなお増大をするものと見込まれまするので、わが国の硫黄が国際競争力をつけますならば、かような世界的な食糧増産、肥料の増産という需要に対応いたしまして、輸出面で大いに期待が持てるというふうに私ども考えております。  第二に、当面わが国の鉱山硫黄業界が、その滞貨あるいは過去の合理化投資の金利支払い等のために資金繰りが苦しくなっておる。それに対していかなる対策を立てるかという点でございますが、一つは、すでにこの鉱山硫黄業界の取引銀行に対しましては、通産省といたしましての鉱山硫黄に対する合理化方針というものを説明をしてまいってきております。当面問題は、これら鉱山硫黄業界の金利負担並びに資金繰りの困難性からくる弁済の期に来た債務の償還という問題につきまして、いかなる手を打つかということでありまして、目下のところ私どもとしては、企業側の要望いたしておりまする金利のたな上げ弁済の猶予ということにつきまして、関係金融機関に対して通産省も協力をして要請を行ないたいと考えております。また、今後とりあえずいかなるめどでこの鉱山硫黄業界の再建をはかり、立ち直りをはかるかという点につきましての硫黄分科会等の結論を基礎にいたしまして、取引銀行に対して通産省の考え方を積極的に説明をいたしまして、協力を求めたいと思っております。  それから第三に、審議会の隠れみの論でございますが、われわれは五月中に結論を得たいと存じますが、いろいろな議論があることは、先ほど申し上げたとおりであります。しかしながら、議論が尽きませんままにこれを過ごすわけにはまいりません。われわれは適当な段階におきまして私どもの案というものを提示をいたしてまでも審議会の早期の結論を得たいと考えております。
  70. 沢田政治

    ○沢田政治君 私の最後の質問でありますが、硫黄問題についてはこれで終わりますと言いましたが、一つだけ気にかかることがありますので、あえて質問をしておきますが、それは簡単なことです。かりに鉱業審議会の結論が一応出た、こういう方向にすべきだ、こういう方向が望ましいと、そういう答申が出た。そうなりますと、緊急の問題もあります、硫黄政策については。そうなった場合には、これは総合予算主義でありますから、途中で予算を補正するということはないといわれておりますけれども、そうなった場合に、ともかく施策上やはり財政の裏づけがあるという問題が出ててきた場合に、臨時国会ですね、開かれるかどうかわかりませんけれども、参議院の選挙後、臨時国会があるだろうと思うのです。その場合に、予算措置をどうするのか。臨時国会との関連においてこういうことを一点だけお伺いしておきたいと思うのであります。これはなかなか答弁しにくい問題だと思いますが。  それで、最後に私お聞きしたいのは、鉱種問題で、石こうの問題についてどういう対策をお持ち合わせになっておるかと、こういうことであります。やはり私ほんとうに十八日に申し上げましたように、いろいろ悩みがあったにしても、日本国内資源というものを自給自足できるのは硫黄と石こうである、こう申し上げたのであまりすが、自給自足できる硫黄と石こう、皮肉な運命のことには、非常にこの二つ産業としての危険性といいますか、危険な状態にあるわけであります。やはりこれも回収石こうといいますか、副産物で出る石こう、これとの競合関係もあるわけであります。硫黄と同じような運命、同じような因果関係にあるかどうか別としても、大体類似している性質を持っているわけであります。したがって、私重ねて再答弁を求めませんから、石こうについてはこれこれの施策を行政の場で行なうということを明快にして、その点に対する御所見をお伺いしたいと思う。
  71. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) 第一点の今後の必要に応じてかりに資金的な面での対策が必要な場合に、いかなる方策をとるかという御質問でありますが、これは硫黄業界情勢の推移もわれわれは慎重に見守りまして、弾力的に対処いたしたいと考えます。  次に、石こうの問題でございますが、これは御指摘のとおり、化学石こうのために天然石こうがやはり需要面で圧迫を受けているという事態は、鉱山硫黄の場合と類似しております。これにつきましては、やはり石こうに特有の対策というものが考えられると思いますが、その一つは、やはり石こうの賦存状態が黒鉱鉱床と併存をいたしているのが大部分でございますので、むしろ黒鉱開発というものをあわせて行なうことによりまして、いわゆる多角生産ということで、石こう経営の基盤の強化をはかるように指導をしてまいりたいと思います。  第二に、もちろん合理化の推進、あるいは探鉱補助金の交付等を通じまして、石こう業自体の体質の改善を通産省といたしても進めてまいる所存であります。その他石こうに固有の考え方といたしまして、セメントに用いまする石こうの原単位等につきましては、セメントのJIS規格等で何らかの天然石こうの需要の確保ということについての方策は検討いたしたいと考えております。以上でございます。
  72. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 沢田委員のさいぜんの質問ですが、大臣がおられるのですけれども予算の問題と関連して大臣から最後に一言承っておきたいのですが、いま審議会で論議し、局長のお話では五月中に答申がなされると、こう言うのです。したがって、まあ大臣のお手元で、何日かかって結論が出るかわかりませんけれども、いずれにいたしましても予算化しなければならぬ、立法化しなければならぬ、あるいは省令、施行令の改正も必要とするかもしれません。その場合に、まあ参議院選挙後の国会は無理かもしれませんが、例年通常会の前の九月、十月に召集される特別国会にその措置を講じていただけるでしょうということが通産大臣に対する沢田さんの質問ですよ。その弾力的というのは上下の幅があまりあり過ぎるから、そこを明快に責任者から承っておかなければならぬと思うのですがね。
  73. 椎名悦三郎

    ○国務大臣(椎名悦三郎君) もちろん、明年の予算化に間に合うようにというので御答弁を申し上げておるというわけでございますから、これは私といたしましてもぜひとも明年の予算化にはどうしても具体的に問題を提示いたしたいと思います。
  74. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 何度もお尋ねしてたいへん恐縮ですが、明年の予算化をやっていただくのであれば、いまここで多くの時間を費やして要請やら質問やらせぬわけです。したがって、事急を要する問題等が出てくるでしょう。そのときは暫定措置として、参議院選挙後の国会は無理であっても、通常会前に例年補正予算を組む国会があるのだから、そのときにやっていただけるでしょうねと、  こういう簡単な問題なんです。
  75. 椎名悦三郎

    ○国務大臣(椎名悦三郎君) 通常国会前にでも必要があればやるべきであるという御意見のようでありますが、もちろん必要があればそういたしますが、大体まあ明年の通常国会において必ずこの問題を具体化するというお約束はできると思います。
  76. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) ちょっと速記をとめて。
  77. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 速記をつけて。  他に御発言もなければ、両案に対する質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。
  78. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 御異議ないものと認めます。  それでは、これより両案の討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御意見もないようでございますが、両案の討論はないものと認めて御異議ございませんか。
  79. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 御異議ないものと認めます。  それでは、これより両案の採決に入ります。  まず、金属鉱物探鉱促進事業団法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。
  80. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 全会一致と認めます。よって本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、金属鉱業等安定臨時措置法廃止する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。
  81. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 全会一致と認めます。よって本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、両案の議長に提出する報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  82. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  83. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 次に、産業貿易及び経済計画等に関する調査を議題といたします。  この際、おはかりいたします。本調査一環として、鉱業政策に関する小委員会設置いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
  84. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 御異議ないものと認めます。  つきましては、小委員の数及び人選並びに小委員長選任は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  85. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 御異議ないものと認めます。  それでは、小委員の数は七名とし、小委員に高橋衛君、土屋義彦君、宮崎正雄君、阿部竹松君、柳田桃太郎君、竹田現照君、矢追秀彦君を指名いたします。また、小委員長には高橋衛君を指名いたします。  なお、小委員辞任及びその補欠選任並びに小委員会から参考人出席要求がありました場合の取り扱いにつきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  86. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 御異議ないものと認め、さよう取り扱うことに決定いたしました。  本日はこれをもって散会いたします。    午後三時十四分散会      —————・—————