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政府委員(両角良彦君)
金属鉱物探鉱促進事業団法の一部を
改正する
法律案につきまして、
補足説明を申し上げます。
金属鉱物探鉱促進
事業団は、
昭和三十八年に行なわれました金属鉱産物の貿易の自由化に対処し、優良な資源を
確保することにより、わが国鉱業の国際競争力を高める必要があるとの見地から、探鉱活動の促進をはかるための
機関として設立されたものでございます。その
事業内容は、探鉱に必要な資金の貸し付けのほか、探鉱を効率的に行なわせるための地質構造の
調査としての広域
調査及び精密
調査でありますが、設立以来
昭和四十二年度までの
事業規模は、貸し付け金額累計約百六億円、広域
調査費約七億円、精密
調査費約八億円にのぼっており、本
事業団は、わが国金属鉱業の体質改善に大きな寄与をしてまいったものと確信しておる次第でございます。
しかるに、
事業団法の制定以後、わが国鉱業の置かれた
条件は大きく変化してまいりました。
それは、まず、わが国経済の開放経済体制への移行が進み、国際競争の場が広がるのと同時に、わが国産業の基礎的
原材料としての鉱産物の低廉安定供給への要請が一段と強まったことでございます。
次に、わが国の鉱産物需要の伸びがきわめて著しく、海外に対する依存度が急速に高まったことでございます。
このような環境
条件の変化に対処するため、今後の鉱業政策は、従来のわが国鉱業の国際競争力の強化に加え、鉱産物の安定的かつ低廉な供給の
確保をはかるための施策の実現に向かって大きく前進することが強く要請されているのであります。
金属鉱業の国際競争力の強化と、金属鉱産物の安定的かつ低廉な供給の
確保というこの
二つの課題にこたえるためには、今後は国の内外を通じ、広く優良な資源を
確保することを目的として施策を進める必要があります。
特に、金属鉱産物は、その資源が世界的に偏在しており、しかも、その多くの部分が国際的な大資本の手に握られているのに加え、その稀少物資、戦略物資的性格から需給価格の変動が著しく、その海外からの供給は安定性を欠くものになりやすいのでありまして、わが国みずからの手により海外の資源開発を行ない、自主的な供給源の
確保をはかる必要性がきわめて高いのであります。
この意味で、今後の鉱業政策の
基本的方向は、国の内外にわたる資源開発体制の確立をはかることにあるのでありますが、国内の資源開発については、すでに金属鉱物探鉱促進
事業団を中心に、広域
調査、精密
調査、企業探鉱の助成という三
段階方式が確立されております。したがいまして、国内の開発体制につきましては、その充実をはかることによって対処することが適当と存ずるのであります。
また、海外における資源開発体制につきましても、国内における実績、経験を生かして同
事業団を中心とする体制づくりをはかることが最も適切であると考えるものでありまして、今回金属鉱物探鉱促進
事業団に海外鉱物資源開発の業務を行なわせるよう
事業団法の
改正を御
審議願うことといたした次第でございます。
改正の
内容の第一は目的の
改正であります。
現行法第一条は、「金属鉱産物の輸入に関する事情の変化が金属鉱業に及ぼす影響に対処し、」ということで、貿易自由化対策として金属鉱業の国際競争力の強化をはかることを
事業団の目的としているのでありますが、今後
事業団に期待されることは、金属鉱業の国際競争力の強化と同時に、金属鉱産物の安定的かつ低廉な供給を
確保することであり、そのように目的を改めようとするものであります。
第二は、業務の追加でありまして、
事業団が行なうべき海外
関係業務として、探鉱資金の貸し付け、地質構造
調査、開発資金にかかる債務の保証及び
資料情報の収集の四業務を追加しようとするものであります。
資源開発の中心は探鉱にありますが、これに要する資金は、一般の金融
機関から融資を受けることが困難であり、国内探鉱について
事業団融資を行なってきたものでありますが、海外における探鉱についてはこの事情はさらに著しいものがありますので、これを海外にまで及ぼすことといたしたいと考えております。
また、探鉱を効率的に行なうには、事前に当該地域の地質構造の
調査を十分行なう必要があり、このため、国内においては
事業団の広域、精密
調査が
実施されております。したがいまして、今後の海外開発を効率的に
推進するため、この探鉱の前
段階たる地質構造
調査を海外の地域につきましても行ない得るようにするものであります。
次に、海外における探鉱
段階が終わり、開発に取りかかることとなった場合、わが国企業にとって最も問題となるのは、その資金調達であります。すなわち海外における資源開発には大規模な資金を必要とするのでありますが、これを調達する場合の担保不足が問題となっております。
したがって、
事業団に企業の行なう開発資金の調達に際し、その債務保証を行なわせ、資金調達を容易ならしめるよう
措置したいと考えます。
さらに、海外の資源開発を効率的に行なうため、世界各地の地質、鉱床に関する情報、世界各国の鉱業法規、労働法規、社会、経済の諸
制度等に関する情報、
資料を収集する必要があります。このような
事業は、民間企業が個々に行なったのでは十分なものが期待できず、国家的業務として行なうのがふさわしいと考えられますので、この際、
事業団にこの業務を行なわせることとしたものであります。
以上、
金属鉱物探鉱促進事業団法の一部を
改正する
法律案の御
説明を終わります。
次に、
金属鉱業等安定臨時措置法を廃止する
法律案につきまして
補足説明をいたします。
本法は、
昭和三十八年に
実施された銅、鉛、亜鉛等わが国鉱業の主要鉱産物の貿易自由化対策として制定されたものであります。
すなわち、当時わが国鉱業は自然
条件の制約から、その生産費は国際的に見て割り高であり、このような状態のままで貿易の自由化を行なえば、わが国の鉱山を壊滅的な状態におとしいれるおそれがあったのであります。
本法は、このような事態に対処して生産費の引き下げを中心とする
合理化計画を策定し、この
合理化計画を達成するため、資金面、
技術面での
政府の援助を
規定するとともに、生産者、需要者間の取りきめ(引取保証など)を認め、さらに
通商産業大臣に生産調整や鉱石の輸入取引
条件の改善を行なうよう勧告する権限を認めているものであります。
この
法律の対象といたしました鉱産物は、銅、鉛、亜鉛、水銀の四鉱種であり、これらについて
昭和四十二年度を目標年度とする
合理化基本計画が策定されたのであります。
その
内容は、生産量及び生産費の目標のほか、これを達成する手段として探鉱の急速、効率的かつ
計画的な促進、国内及び海外の優良資源の開発の促進、採選鉱設備等の
合理化の促進、製錬
方法の改善等、製錬所の
合理化の促進、鉱石の輸入取引の
条件の改善等を掲げたものであります。
この
合理化計画を達成するため、
政府としては、金属鉱物探鉱促進
事業団による探鉱の促進、中小鉱山に対する新鉱床探査費補助金の拡充、鉱業所得の課税の特例、いわゆる減耗控除
制度の
実施、金属鉱物探鉱促進
事業団による広域
調査、精密
調査の
実施、開銀等
政府金融
機関融資による鉱山製錬所の
合理化、雇用促進
事業団による離職者対策等の施策を講じてまいりました。また、このような
政府の施策を受けて民間企業の側においても真剣な
合理化努力がなされたのであります。
しかるに、このように
政府、民間を通ずる
合理化努力が進められている間において、わが国鉱業をめぐる国際環境は大きな変化を見せました。
すなわち、低迷を続けていた価格水準は
昭和三十九年ごろから急騰し始め、ピーク時には本法施行当時の二倍以上の水準に達し、また銅においては最近再びピーク時の水準を再現し、需給
関係においても、一時は供給不足が深刻な問題となったほどの事態が生ずるなど、各種の一時的要因に加え、世界需給の上に基調的な変化が見られるに至ったわけであります。
国際市況がこのように大きく変化する一方、国内では前述のように着実に
合理化努力が続けられてきたため、貿易自由化後のわが国鉱業は混乱におちいることなく推移することができたのであります。この意味では貿易自由化に対処し、金属鉱業等の安定をはかるという本法の目的は一応達せられたと考える次第であります。
ひるがえって、今後の鉱業政策に期待されるものは、貿易の自由化当時必要とされた国際競争力の強化に加え、急速に増大するわが国の鉱産物需要を円滑に充足していくための安定的かつ低廉な供給の
確保が、これと並ぶものとしてきわめて重要となってきているというべきであります。
そして、そのためには、国の内外にわたる資源開発体制を確立し、優良資源の
確保をはかることが、今後の鉱業政策の大きな課題となってきていると考えます。このような考え方から、別途
金属鉱物探鉱促進事業団法の一部を
改正するよう御
審議をお願いしているところでありまして、今後は、同
事業団の活動を中心に鉱業政策の
推進をはかってまいる所存でございます。したがいまして、
金属鉱業等安定臨時措置法につきましては、当初
予定されていたとおり、この際、廃止するのが適当と考える次第であります。
以上、
金属鉱業等安定臨時措置法を廃止する
法律案の御
説明を終わります。