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国務大臣(
椎名悦三郎君) 御
指摘のとおり最近日本の生命線である貿易の
円滑化、拡大化、そういったような機運が、にわかにポンド切り下げをひとつの契機といたしまして、これに逆行するような情勢が出てまいりましたことは、まことに遺憾であると存じます。アメリカがそれに関連して、ドル防衛のためにどうしても国際収支を大幅に改善をしなければならぬという決意をして、そうして年始における大統領の声明になったわけであります。その一環の施策として、ヨーロッパにおける国境税といったようなものが、アメリカの国際収支改善のために障害となり、これの撤廃方を工作したようでございますけれ
ども、なかなかこれがアメリカの言うとおりにならない、そうすると、今度はその対抗策として何らかの施策を
考えなければならぬということから発端をいたしまして、アメリカはとうとう
輸入課徴金を課して、そうしてとにもかくにもアメリカの国際収支をもっと有利に導いていかなければならぬということになったのでございますが、これも
原因がEECを中心とするヨーロッパの国境税撤廃ということが、そもそもの発端になっておりますので、それに関係のない、あるいはそれに類似したような関税障壁を設けてない日本等に対しては、その影響というものが、まあこないのではないかというような期待、
考え方、そういうものが、順次そうでない、一網打尽にやられるのではないかということになって今日に至っております。
輸入課徴金の実態については、いろいろの説が流れておりますけれ
ども、いずれも情報の
程度であって、正確な報告を受けているわけではないのであります。これがいよいよ実現するということになると、幾通りにも
考えることができるわけであります。はたしてそれがどういうふうな形態をもってあらわれてくるかということが、まだ的確につかめない、日本といたしましては四%ないし六%の間であろうというような情報は、在米日本大使館のほうから情報が流れて入っておりますけれ
ども、これとても的確なものではございません。それから、年頭の発表の中の、つまり全体として三十億ドルの国際収支上の改善をしたい、その三十億の中の六分の一に相当する五億ドル、五億ドルというものを貿易の面から改善したいということはわかっておるのですが、それがどういう形であらわれてくるのか、また、日本に対してどれくらいの負担がかかってくるのやら、アメリカの
考え方もわかりませんし、また、その
内容いかんによっては、ただ貿易が減るというようなことよりも、今度はそれ以上に国内の経済が非常に攪乱されまして、そしてたいへんな損害がそれにプラスされるということも
考えられるわけでございまして、いろいろな場合を想定して研究はしておりますが、まだ、これという結論を得ておらないわけでございます。このことが、ただ情報の
程度でありましたけれ
ども、だんだん実現性を持ってくるように思われたので、ちょうど二週間くらいになりましょうか、正確ななにはここに記憶しておりませんが、在米大使館を通じまして、これこれの報道が流れている。もしこれが事実だとすれば、これは連鎖反応的に各国がこれに対する対抗策を講ずるようなことになると、今度は世界全体がたいへんな逆効果に苦しまなければならぬ、こういうことになって、結局、アメリカの国際収支の改善というものも全く何らの効果をあげない、逆効果をもたらすということになるのであって、これはよほど気をつけなければならぬ。特に日本としては、従来、世界通貨であるドル防衛に関しては、及ばずながら協力をしてきたのだけれ
ども、もはやこういうことでは、われわれとしてはまた別に
考えざるを得ないという、かなりきびしい警告を出しておるのでございます。もういよいよこれをやるということを聞いてからでは、警告は警告になりませんので、これをあえて出したような次第でございます。非常に御
指摘のとおり、軽工業、特に日本の繊維工業等には非常な混乱を生ずるおそれも多分にございますので、非常に憂慮しております。聞く
ところによると、EECの内部においても、アメリカの
輸入課徴金制度の実施を取りやめさせる、また一方において国内の輸入制限運動もこれは緩和するように
PRをやる。それとともにケネディラウンドの実施等も早めるというような動きがあるそうでございますし、これを反映して、アメリカの国内においても、課徴金の決定をもう少し延ばして考慮する余地があるのじゃないかというような動きも出てきたように、これは報道として伝わっております。いまは心配しながら情勢を見守っているような
状況でございます。