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1968-05-21 第58回国会 参議院 社会労働委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年五月二十一日(火曜日)    午前十時二十四分開会     ―――――――――――――   委員の異動  五月十七日     辞任         補欠選任      小柳 牧衞君     黒木 利克君      小林  章君     林   塩君      青田源太郎君     佐田 一郎君      宮崎 正雄君     植木 光教君      田村 賢作君     玉置 和郎君      北畠 教真君     丸茂 重貞君  五月十八日     辞任         補欠選任      秋山 長造君     佐野 芳雄君  五月二十一日     辞任         補欠選任      船田  譲君     内藤誉三郎君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         山本伊三郎君     理 事                 鹿島 俊雄君                 黒木 利克君                 大橋 和孝君     委 員                 植木 光教君                 紅露 みつ君                 内藤誉三郎君                 山本  杉君                 横山 フク君                 藤原 道子君                 小平 芳平君                 中沢伊登子君        発  議  者  小平 芳平君    国務大臣        厚 生 大 臣  園田  直君        労 働 大 臣  小川 平二君    政府委員        科学技術庁原子        力局長      藤波 恒雄君        厚生大臣官房長  戸澤 政方君        厚生省医務局長  若松 栄一君        厚生省児童家庭        局長       渥美 節夫君        厚生省年金局長  伊部 英男君        社会保険庁年金        保険部長     中村 一成君        労働省労政局長  松永 正男君        労働省労働基準        局長       村上 茂利君        労働省職業安定        局長       有馬 元治君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        大蔵省主計局主        計官       辻  敬一君        大蔵省銀行局保        険部長      新保 実生君        大蔵省銀行局保        険第一課長    小泉 徳夫君        厚生大臣官房企        画室長      首尾木 一君    参考人        日本原子力研究        所理事      楠瀬 熊彦君        日本原子力研究        所労働組合中央        執行委員長    鶴尾  昭君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選の件 ○児童手当法案小平芳平発議) ○国民年金法等の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○社会保障制度に関する調査  (保育所国庫負担等に関する件)  (国立療養所特別会計制度実施後の諸問題に  関する件) ○労働問題に関する調査  (保険外務員の労働問題に関する件)  (日本原子力研究所の労働問題に関する件)     ―――――――――――――
  2. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  まず、理事補欠互選についておはかりいたします。  去る十六日、黒木利克君が一たん委員辞任されましたので、理事が一名欠員となっております。この際、その補欠互選を行ないたいと存じます。  互選方法は、先例により、投票の方法によらないで、委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事黒木利克君を指名いたします。     ―――――――――――――
  4. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) まず、児童手当法案(参第十五号)を議題といたします。  発議者から提案理由説明を聴取いたします。小平芳平君。
  5. 小平芳平

    小平芳平君 ただいま議題となりました児童手当法案につき、提案者を代表いたしまして提案理由並びに内容概要を御説明申し上げます。  この児童手当法案は、国が児童について児童手当支給することにより、児童福祉増進することを目的としております。児童福祉増進して、次代の社会をになう児童心身ともに健全な成長を期することは、両親責任であるとともに、また社会の重大な責任であります。すなわち、児童扶養義務は、まずその両親にあることは永久に変わりませんが、ますます複雑化する近代社会においては、ただ両親にまかせておいただけでは児童福祉を完全に守っていくことは困難であります。ゆえに、一九五九年の国連総会における「児童権利宣言」には、次のようにうたっています。すなわち、その第二条に、「児童は、特別の保護を受け、また健全かつ正常な方法及び自由と尊厳の状態の下で、身体的、知能的、道徳的、精神的及び社会的に成長することができるための機会及び便益を、法律その他の手段によって与えられなければならない。この目的のために法律を制定するに当っては、児童の最善の利益について最高の考慮が払われなければならない」とあります。さらに、その第四条には、「児童社会保障の恩恵を受ける権利を有する。児童は健康に発育し、かつ、成長する権利を有する」とあります。  わが国においても一九五一年に児童憲章が制定され、その第一に「すべての児童は、心身ともに健やかにうまれ、育てられ、その生活を保障される。」と定められているのであります。  このような児童福祉精神から、すでに児童に対して虐待の禁止一定年齢以下の児童就業禁止義務教育無償実施など、多くの施策が講ぜられてきておりますが、さらに一歩前進して、児童手当制度実現こそ、わが国において緊急に要求される最も重要な政策であります。一九四七年敗戦後の間もない時代にすでに児童手当制度創設が要望されていたにもかかわらず、二十余年を経過した今日において、いまなお政府調査検討を続けているのみで、具体的な実施時期やその内容を明らかにしておりません。しかも、政府閣議決定をした昭和三十五年の「国民所得倍増計画」にも、昭和四十年の「中期経済計画」にも、昭和四十二年の「経済社会発展計画」にも、みな児童手当制度早期実現を明らかにしておきながら、政府みずからこれを守ろうとしていないのであります。さらに、衆参両院社会労働委員会においても、しばしば早期実現を与野党一致して決議しており、さらに、社会保障関係等各種審議会においても、幾度かその実現政府に対して要求してまいりました。もはやこれ以上遷延することは許されない段階に来ていると、われわれは判断せざるを得ないのであります。  さらに、また、児童手当制度基本理念としては、いろいろの考え方がありますが、今日のわが国現状において、この制度実現社会保障制度充実に大きく影響することを見のがすわけにはいきません。ILO第一〇二号条約は、社会保障対象として、疾病、出産、失業、老齢業務傷害多子、廃疾、遺族をあげておりますが、多子を除くすべての項目は厚い薄いの相違はあるにしても、一応わが国においてその制度が確立しております。しかして、多子家庭貧困化を防ぐことのみが、わが国ではいまだに実現しておりません。わが国社会保障が、救貧から一歩を進めて防貧政策を立てるべき時であると、われわれは考えるのであります。したがって、この法案による児童手当は、児童福祉増進という広い目的のために支給されるのでありますが、その他の効果とともに多子貧困の問題について、防貧という結果をももたらすものであることは、あらためて言うを待たないところであります。  わが公明党においては、党結成以来社会福祉政策に最も力を入れてまいりましたが、以上の理由から児童手当昭和四十四年度に必ず実現すべきであると考えて、ここに児童手当法案を提出する次第であります。  以下、その内容概要を御説明いたします。  第一に、国が児童手当支給することにより、児童福祉増進をはかることを目的とすることといたしました。  第二に、この法律において「児童」とは、義務教育終了前の者としました。  第三に、手当児童一人につき月三千円をその児童を監護養育している者に支給することといたしました。したがって、第一子から全児童支給することとなります。  第四に、高額所得者児童に対しては、支給制限を行なうこととし、さしあたり昭和四十三年の年収が標準五人世帯で百三十万以上の家庭には支給を制限することとしました。  なお、この年収百三十万円は公明党昭和四十三年度予算に対し所得税課税最低限度額としたもので所得税の課税されない家庭児童に対して全員に支給しようとするものであります。  第五に、財源はすべて国の一般財源から支出することとしました。  第六に、附則において、将来は、経済成長生活水準向上に伴い、三千円を引き上げ児童福祉充実を期するとともに、所得による支給制限を撤廃し、全児童に対し平等にその福祉を保障するように規定いたしました。  法案内容概要は以上でありますが、次に、この児童手当実施により関連する諸制度や、すみやかに改めるべきもの等について申し上げます。児童福祉法では、健全育成対策を推進し、また、保育に欠ける乳幼児に対しては無料で保育所に入所せしめることとし、保育施設の拡充をはかる必要があります。また、生活保護費母子福祉年金児童扶養手当は、それぞれの目的をもって実施されている制度ゆえ、併給することといたしました。また、特別児童扶養手当は、介護手当性格にし、金額引き上げ所得制限緩和して併給することとしました。また、母子保健法の栄養の摂取に関する援助の規定を強化するとともに、新たに出産給付金創設することにしました。また、各種公的年金扶養加算や、所得税扶養控除は大幅に減免し、現行税制を根本的に検討する必要があると考えます。また、優生保護法経済的理由による妊娠中絶は将来削除することが望ましい。さらに、児童手当制度とともに完全雇用と公正な最低賃金制度を確立し、いやしくも児童手当創設実質賃金の切り下げや労働強化の口実とされないよう、政府責任をもって福祉国家実現努力すべきであると考えます。また、義務教育無償すら完全に実現していない現状にかんがみ、父兄負担教育費を軽減するとともに、文教政策を全たからしめるように努めることといたしました。  最後に、この法案実施に伴い、国家財政の大きな負担になる点について申し上げます。わが国社会保障関係予算額欧米先進国に比してきわめて低額であること、わが国税制が大企業をことさらに優遇していること、公明党提出最低賃金法案実現によって賃金水準は大幅に上昇すること、賃金体系合理化等により中高年齢層の再就職を容易ならしめること、政界浄化、行政の簡素化能率化、不急不要の予算節減等により、大衆負担の増大を来たさないでこの程度の財源は十分にまかなえるものと考えます。  何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  6. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 本日は、本案に対する提案理由説明聴取のみにとどめておきます。     ―――――――――――――
  7. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 次に、国民年金法等の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、政府から提案理由説明を聴取いたします。園田厚生大臣
  8. 園田直

    国務大臣園田直君) ただいま議題となりました国民年金法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  国民年金制度は、昭和三十四年に創設され、同年十一月から福祉年金支給を開始し、現在ではその受給者数は約三百万人に達しております。この間、逐年、制度改善を行なってきているところでありますが、この福祉年金老齢者障害者及び母子世帯福祉に貢献する役割りが大きいことにかんがみ、なお一段とその内容充実をはかる必要があります。  児童扶養手当は、昭和三十七年に創設され、また、特別児童扶養手当は、昭和三十九年に重度精神薄弱児扶養手当として発足したものでありまして、逐年その内容改善をはかってまいっておりますが、支給対象となる児童福祉向上をはかるためには、なおその改善が望まれるところであります。  今回の改正法案は、以上の趣旨にかんがみ、福祉年金児童扶養手当及び特別児童扶養手当につきまして、その額を本年一月の改正に引き続いてさらに引き上げるとともに、所得による支給制限緩和をはかろうとするものであります。  以下、改正法案のおもな内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、額の引上げについてでありますが、国民年金につきましては、障害福祉年金年金額現行の三万円から三万二千四百円に、母子福祉年金及び準母子福祉年金の額を現行の二万四千円から二万六千四百円に、老齢福祉年金の額を現行の一万九千二百円から二万四百円に引き上げることといたしております。  次に、児童扶養手当及び特別児童扶養手当につきましては、その月額現行の千七百円から千九百円に引き上げることといたしております。  第二に、所得による支給制限緩和について申し上げます。  その第一点は、福祉年金児童扶養手当または特別児童扶養手当支給対象者本人所得による支給制限緩和でありますが、地方税法における老年者等についての非課税限度額引き上げられる見込みであること等を勘案して、現行限度額二十六万円を二十八万円に引き上げるとともに、支給対象者が子や孫を扶養する場合においてその子や孫について加算する額を現行の一人につき六万円から七万円に引き上げることといたしております。  第二点は、福祉年金児童扶養手当または特別児童扶養手当支給対象者配偶者または扶養義務者所得による支給制限緩和でありますが、扶養親族が五人の場合でその限度額現行の九十三万二千五百円から百五万五千円に引き上げることといたしております。  最後に、実施の時期についてでありますが、所得制限緩和に関する事項につきましては昭和四十三年五月分から、額の引き上げに関する事項につきましては同年十月分から適用することといたしております。  以上がこの法律案提案理由でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことを望みます。
  9. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) これより質疑に入ります。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  10. 大橋和孝

    大橋和孝君 それでは、まず、第一点といたしまして附加年金制度創設についてでありますが、百条の附加年金制度につきましては、いつごろから実施されるようなお考えでありますか、それについてお伺いいたします。
  11. 伊部英男

    政府委員伊部英男君) 御指摘のように、第百条におきまして附加年金制度が別に法律をもって定めるということになっているのでございますが、国民年金制度発足以来まだその運びに立ち至っておらないのでございます。しかしながら、国民年金制度発足以来、国民所得水準が著しく向上いたしておりまして、より高い給付水準を望む声もまた多くなってきているのでございまして、この要請にこたえますため、明年度厚生年金の再計算期にあたりまして、国民年金につきましてもただいま基本的な検討を加えておる段階でございまして、この検討一環といたしまして附加年金制度の問題あるいは所得比例制問題等の問題が強く出されておる問題でございまして、明年度検討の過程におきましてこの問題を十分煮詰めてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  12. 大橋和孝

    大橋和孝君 次には、老齢年金についてお伺いいたしますけれども、被用者年金支給開始年齢六十歳並みに合わせてほしいと思うのでありますが、これは特に老齢福祉年金が七十歳でありますので、これを引き上げるために、まず第一段階としては六十五歳に上げるとすれば、それは年度的にやらなければならないと思うのでありますが、ほうっておいて一ぺんにということにならないと思うのでありますが、そういうことに対してどういうふうにされるのか。また、国年老齢年金の六十五歳というのも、いま申したように、被用者保険並みの六十歳に引き上げていかなければならない。こういう二段階考えなければならないと思うのでありますが、この点について一体どういうふうにされるのか、特にその足並みをそろえてほしいと思うのでありますが、そのお考えは……。
  13. 伊部英男

    政府委員伊部英男君) ただいま御指摘のように、厚生年金におきまして、支給開始年齢は六十歳でございます。六十歳以後における退職ということが厚生年金支給開始の条件でございますが、国民年金におきましては、これを六十五歳にいたしているのでございます。これは、言うまでもなく、国民年金の被保険者自営業者、農民でございますので、就業実態被用者と異なっている。被用者よりも就業期間が総体的に長いのではないかということと、もう一つは、六十歳と六十五歳ということが相当保険料にもはねかえってくるということも背景にいたしておるのでありますが、しかしながら、被用者年金国民年金とのバランスをとるべきであるという議論は基本的には正しい議論だと思います。そこで、先ほども御説明申し上げましたように、明年、厚生年金国民年金あわせて基本的な検討を加えます機会に、両制度バランスという問題につきまして特に重点を置きまして検討をいたしてまいりたい。この一環といたしまして、ただいま御指摘のような点は重要な事項であろうと考えるのでございます。  なお、福祉年金につきましては、現在、御指摘のように、支給開始年齢が七十歳であるわけであります。そこで、この支給開始年齢を引き下げるべきではないかという御議論が従来からもあるのでございますが、実は、年齢の引き下げにつきましては、非常に多くの財政負担を伴うわけでございます。しかしながら、中高年齢層に対しましての優遇という問題は、年金制度として非常に大きな、しかも当面の緊急の課題であると考えておるのでございまして、この点、ただいま、国民年金審議会及び社会保険審議会厚生年金保険部会、両審議会におきましても御審議いただいておるところでございますが、そういう中高年齢対策という問題とも関連をしつつ、また、国家財政の全体の状況をもにらみあわせつつ、慎重に考えてまいりたい、かように考える次第でございます。
  14. 大橋和孝

    大橋和孝君 特にこの点は重大な問題で根本的な問題でありますので、明年度の改定のときは、もちろん、それから福祉年金の場合でもいろいろなところに波及いたしております。ですから、この引き上げに対しても相当真剣に考えていただかないといけないと、こう思います。  それから老齢福祉年金月額を百円引き上げられておるのでございますが、私は、ほかは二百円上げて、ここを百円にされた根拠はどこにあるか、お伺いしたいと思います。国民年金発足当時、昭和三十三年の生活保護の第四級地におきましては、六十歳以上の男子老人単身者月額約二千円の半額の千円が福祉年金額基本額として社会保障制度審議会のほうで答申があったと、こう聞いておるわけであります。また、同時に、本年度生活保護男子老人単身者月額が六千八百二十円で、その半額の三千四百円である、こういうふうになっているのでありますが、従来から、政府は、拠出制年金額最低額月額二千円のために、福祉年金額がそれ以上に引き上げられないという理由を言っているようでありますけれども、法律上は年金額引き上げは可能であるので、拠出制最低年金額引き上げを行なうべきではないか、こういうふうに思うわけであります。また、福祉年金生活保障的な年金となるために、社会保障制度審議会答申にもあるとおりに、福祉年金性格をもう一ぺん検討してみなければならないのではないか、こういうふうに思うわけであります。社会保障制度審議会答申では、「福祉年金などについては従来しばしば本審議会問題点指摘しているところである。また現行法においては福祉年金は本来の拠出年金の経過的補完的な制度とされているが、その性質についても再検討の要がある。」ということを言っているのでありまして、この答申趣旨に沿いましてもここらで十分配慮してもらうべきではないかと思うのでありますが、その点について御意見はいかがですか。
  15. 伊部英男

    政府委員伊部英男君) ただいま御指摘のように、今回の御審議いただいております法案では、老齢年金につきましては百円、障害母子につきましては月額二百円の引き上げ実施いたそうといたしておるのでございます。  この百円、二百円という理由でございますが、障害母子につきましては、基本的に生活実態にかんがみましてつとめて財政が許す限り可及的に引き上げ実施いたしたいと考えておりまして、従来とも老齢よりも障害母子につきましては若干優遇をいたしておるのであります。そこで、百円の引き上げでございますが、百円の引き上げによりましておおむねこの制度発足以来の物価上昇率には見合っておるのでございますが、なお、御指摘のように、これで十分であるという考えでおるわけではございませんので、今後とも努力をいたしてまいりたいと考えておるのでございます。  なお、福祉年金につきましては、昭和四十年以来連続四回目の引き上げになるのでございまして、かつ、今回は、額は前年と同じでございますけれども、実施時期が三カ月早うございまして、本年は一月に実施をして、さらに十月に実施をするということで、その意味におきましては前年よりは若干の実質的な改善があるのでございますが、しかしながら、今後とも御指摘のように引き続き改善努力いたしたい、かように考えておるのでございます。
  16. 大橋和孝

    大橋和孝君 いまちょっとお答えの中にもありましたように、消費者物価指数に見合ってほぼ上げているというような話でありますが、三十四年と四十三年と比較して見ますと、三十四年を一〇〇としますと、四十三年は一六〇・四になっております。農村平均であれば一五九・七ということで、引き上げに見合っておるように言っておりますけれども、これは、生活保護なんかのことから比べてみれば、三十四年を一〇〇とすれば、四十三年は三〇五になっております。三倍以上になっているわけですね。そういう点からいったら、あなたのおっしゃるような消費者物価指数にある程度見合っておるような引き上げだということにはとうていならぬわけであります。この指数あたりから見てもそういうことが言えると思いますが、そういう意味で、引き上げ金額というものをもっともっと大幅にしなければ、そんな指数どころではなくて、いわゆる生活のあれということを考えるならば、私は足らないと、こう思います。そういう点についてはどうですか。
  17. 伊部英男

    政府委員伊部英男君) 消費者物価指数にはほぼ見合っておると申し上げたのでございますが、三十四年以来、御指摘のように生活水準上昇いたしておるのでございます。その結果、公的年金等につきましては相当の改善が行なわれていっておる点は御指摘のとおりでございますが、福祉年金につきましては、生活水準上昇までは実は至っておらないのでございまして、今後ともこういう御指摘のような線で努力をいたしたい。また、社会保障制度審議会におきましてもいろいろ御指摘をいただいておりますように、さらに基本的にこの問題につきまして十分取り組んでまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  18. 大橋和孝

    大橋和孝君 ういまお話を申したように、根拠的に考えて百円といのは根拠がどうもわれわれには納得できないわけです。とにかく生活保護ですら三倍になっているんですから、もう少しそこらのところの引き上げの額については特に配慮してもらいたいと思います。  それから次には障害年金についてでありますが、二級障害福祉年金を認めないのはどういうわけかと思うわけでございますが、これについてお答えを願いたいと思います。  同時に、また、障害年金福祉年金配偶者と子の加算制度を設けていないのはどういうわけか。もう一つ第三点には、加入前の障害についても拠出制年金対象とすべきではないかと、こう思うのですがいかがでございましょう。特にそこで私申し上げるのは、ハンセン氏病のときでありますけれども、発生時期の前であるとか三十四年以前であるとかという人に対してはこれが入っておりませんでした。ですからして、これは非常に大きな問題になって、同じところで生活しているハンセン氏病の人に大きな差が出てきているということは、あそこの中でこのあいだうちも所長からも陳情があったわけですが、収容しておる所長でも非常に困っておるわけでございまして、こういうようなことから考えまして、これは相当考えてもらわなければいけない問題ではないか、こういうふうに思うわけです。  第四点は、障害年金障害福祉年金との金額にはあまりに格差が開き過ぎるのではないか。これはいまも申しましたようならい療養所における入所患者については特にそうでありまして、このような点につきましてもう一つ詳しく考え方も聞いておきたいと思います。
  19. 伊部英男

    政府委員伊部英男君) 現行国民年金法におきましては、障害年金は二級まででございますが、その二級の中には一部厚生年金におきます三級も含んでおるわけではございますが、しかしながら、厚生年金のほうがより広い範囲になっておるのでございます。  それから障害福祉年金につきましては、御指摘のように、一級だけでございまして、二級はないという状況でございますが、これらについて、いずれも、三級を設け、あるいは障害福祉年金の二級を設けよという御意見をいただいたのでございますが、障害年金につきましては、基本的に障害年金の等級表をそろえるという問題がございまして、沖中先生を長といたします専門家が数年間にわたり御審議をいただきまして、これがまとまりまして、ただいまこれの実施案を省内におきまして関係部局で検討を進めておる段階でございますが、この機会にかような障害年金の三級の問題を前向きに検討してまいりたいと考えておるのでございます。なお、障害福祉年金につきましても、御趣旨はごもっともと思うのでございますが、これも国家財政上のはね返りが非常に大きい問題でございまして、そういう点をも勘案しつつ十分検討努力してまいりたいと考えるわけでございます。  それから年金制度加入前の障害につきまして、拠出年金の給付対象とせよという問題があるのでございますが、実は、この問題につきましては、年金制度そのもののいわば一つの限界みたいな問題もあるのでございますが、しかしながら、これらの障害者に対しての処遇を改善せよというお気持ちはまことにわれわれとしても同感できるところでございますが、年金制度そのものの実は限界もあるのでございます。そこで、年金保険そのもののたてまえについても、社会保障制度審議会の御答申にもございますように、掘り下げた検討をする必要もあるのでございますし、また、さらに年金制度以外の方途によりまして処理をするということも検討方法としてあり得ると思うのでございまして、いずれにしても、今後、先ほど申し上げました明年度改正の重要な項目として慎重に検討してまいりたいと考えておるのでございます。  また、らい療養所におきまして、らい療養所の患者も拠出制年金対象といたしておりますので、国民年金の拠出条件を満たす方につきましては障害年金が出ておるのでございますが、その結果、福祉年金の方とのアンバランスが起きておるという問題は、われわれも承知をいたしておるのでございます。これも、年金制度のたてまえあるいは限界といったような問題がございまして、実は非常に苦慮いたしておる問題でございます。この点は、また関係部局とも十分協議をいたしてまいりたいと考えておるのでございますが、基本的には、先ほど申し上げましたように、障害母子につきましては特にすみやかに改善をしてまいりたい。これが、年金制度として、何と申しますか、いわば一番たてまえ論までいかなくて問題を解決し得る方向であろうと思いますので、障害福祉年金を急速に改善をするという問題につきましては一そう努力をいたしたいと、かように考えておるのでございます。
  20. 大橋和孝

    大橋和孝君 先ほどの中で、配偶者と子供の加算を設けてほしいというこれについては御回答がなかったのですが、これについても、特に障害年金あるいは福祉年金のほうにもないのでありますからして、この次のあれのときには十分配慮してもらいたいと思います。  それから時間がありませんから、続けて御質問さしていただきますが、児童扶養手当法の問題についてでありますが、児童一人の場合、児童扶養手当の額と母子福祉年金の額との不均衡是正についてどのように考えておられるか。ことに、生別、死別の場合の差というようなことが相変わらず三百円あるわけでありますが、これについても、まあ理屈を言えば、生別のほうにまだその可能性というものもあるでしょうと思いますけれども、実際としてはもう現実は同じでありますからして、ここに差をつけることはおかしいと思うわけであります。  それから特別児童扶養手当法の一部改正についてでありますが、特別児童扶養手当性格はいかに考えておられるのか。特に所得保障的よりも介護料的に解釈をするならば、所得制限なんかはおかしいのではないかと思うわけであります。  また、公的年金受給制限を撤廃する考えはないのか。  また、第三には、それぞれの障害ではかからなくても、精神的あるいは身体的の障害の併合によってかなり重度の障害に達するいわゆる併合障害児が特別児童扶養手当の中に含まれないという点がたくさんあるわけでありますが、その併合障害児につきましても含まれるのが当然だと思うのですが、含まれない理由がよくわからない。これについてひとつお話しを願いたい。  以上でございます。
  21. 渥美節夫

    政府委員(渥美節夫君) 四点ばかり御指摘がございましたから、順次お答えを申し上げます。  第一点の、児童が一人の場合に、児童扶養手当の額と母子福祉年金の額が三百円開いている、問題ではないか、こういうようなお話でございます。確かに三百円の開きがあるということは問題であるという問題意識は、私ども十分持っておるわけでございます。考えてみますると、児童扶養手当母子福祉年金というものは、その成立の過程におきましても、あるいは目的におきましても、多少変わっておる、全く同じでないということも言えるわけでありますが、何といたしましても児童一人の場合に差があるというのは問題でございますので、今後ともこういった点につきましては努力してまいりたいと思います。しかしながら、基本的にはやはり児童手当創設の問題ともからんでおりますので、そういった際に基本的な検討をいたしたい、かように考えておるわけでございます。  それから第二点でございますが、特別児童扶養手当性格の問題でございますが、これは、御承知のとおり、特別児童扶養手当という制度が、重度の精神薄弱児なりあるいは重度の身体障害児を持っている家庭におきまして、特別にそういった子供に介護が必要であるというふうな実態に着目いたしまして、心身障害児対策の一環としてその父及びその他の養育者に対しまして手当支給するということでございます。したがいまして、御指摘のように、現在は、原則としては公的年金の給付との併給がなされていないとか、あるいは所得制限が設けられておるとかというふうな問題がございますので、こういうふうな特別児童扶養手当性格からかんがみまして、御指摘の二つの問題点につきましては、今後ともに十分改善努力をいたさなければならない、かように思っておるわけでございます。  それから最後の点についてでございますが、特別児童扶養手当が、重度の精薄でありますとか重度の肢体不自由というものに着目いたしまして出されております。したがいまして、たとえば結核であるとかあるいは心臓疾患であるとか、こういうような内部障害、あるいは精薄と肢体不自由が重複することによって非常に重度になるというふうな方につきましては、まだ支給は行なわれておりません。その理由といたしましては、たとえば身体的な障害、特に内部障害等に関しましては、先生も御承知のように、子供というものは身体的な発達途上にあるものでございますので、ある場合におきましては児童福祉法による育成医療であるとかあるいは養育医療であるとか、こういうふうな別の制度によりましてできるだけ早く回復していただくというような別の手段もございます。したがいまして、そういった点も考えなければいけませんし、また内部障害に関しまする認定の問題も、特におとなと違いまして、子供の場合には相当問題があるようにも伺っております。したがいまして、そういった点もあわせて検討しながら、いま申し上げましたような内部障害でありますとか、あるいは精薄と肢体不自由がダブって重度になるというような点についても、それが給付ができるような方向で、いろいろ問題はありますが検討してまいりたい、かように思っておるわけでございます。
  22. 大橋和孝

    大橋和孝君 もう一点だけ。今度聞きたいのは児童手当制度についてでありますが、四十四年度には、厚生行政関係では、年金及び医療保険の抜本改正、さらには農民年金児童手当創設等の実施につきましていろいろ公約をしておられるところの懸案の問題でありますが、どのように処理して解決しようとされておるのか、その方針を明らかに示していただきたい、こういうふうに思うわけであります。国会で児童手当の構想を質疑された際には、いつも、目下児童手当懇談会で検討中であるということをしばしば聞いてまいったわけでありますが、一方においては、「週刊社会保障」という専門誌や、あるいは「日本経済新聞」、「毎日新聞」、「読売新聞」、こういうようなところでは児童手当の懇談会の構想、試案が堂々と発表されているわけで、この際、こういうような状態で新聞に発表されているくらいでありますからして、その進捗状況、あるいはまた、どういうような段階にいま来ておるか、具体的な内容等について明らかにしておいていただきたいと思います。特に、新聞あたりで報道されておるにもかかわらず、委員会においてそれをあまりよく知らないということ自身も問題があると思いますので、そういうことをひとつ示していただきたい。  その中で、児童手当の懇談会における試案が社会保険方式で第二子から二千円ないし三千円支給というふうに記事には出ているわけであります。第二子から二千円と三千円の場合、この試算によりますと、大体財政負担は幾らぐらいになるのか。社会保険方式の場合の負担は国と事業主、こう考えておるわけでありますが、一部の新聞の報道を見ておりますと、勤労者も負担をするということで考えておるということが報道されておるのでありますが、勤労者あたりに負担をさせるということであれば、私どもの考え方としては非常に問題があると思うわけであります。こういうようなことに対しましてもお考えを伺っておきたい。  それから社会保険方式の場合には、自営業者、農漁民等の無拠出との間に国民年金のような給付の格差とならないように配慮してもらうのが当然だと思うのでありますが、こういうことなんかも含めてちょっと御見解を聞いておきたい。
  23. 首尾木一

    説明員首尾木一君) 児童手当の問題につきましては、かねてからお答えいたしておりますように、昨年十一月の末に最初の懇談会をいたしまして、ただいままで八回児童手当懇談会を開きまして、基本的な問題について検討をしていただいているわけでございます。そこで、先生ただいまおっしゃいましたような新聞あるいは雑誌等の記事にすでに懇談会の結論が出たものがあるではないか、こういうふうなお話でございますけれども、実は、懇談会自身の意見というものはまだ固まっておりません。それで、各種の、たとえば給付額を幾らにするか、あるいは対象児童をどのようにするかといったような問題につきまして、たとえば対象児童につきましては、第一子から最終的には考えるべきだというような議論、それから第二子からに考えたらいいではないかという議論、あるいは、最終的には第一子、第二子にするけれども、経過的には第三子あたりはどうだといったようなこと、そういったような議論が出ておるということでございます。それから金額につきましても、先生のおっしゃいましたような二千円で計算した場合に総額がどのくらいになるか、あるいは三千円で計算した場合に総額がどういうようになるか、それをただいま申しました第一子、第二子に当てはめるとそれぞれどうなるかといったようなことでその額につきましてこちらが御説明を申し上げておる、それに対しまして現在のいろいろの制度との均衡からいってどのような額がいいかどうかというようなことにつきまして各先生の御意見をちょうだいをしておるというような段階でございます。それからさらに財源負担の問題につきましても、非常にむずかしい問題でございまして、この財源負担の問題がいわば児童手当創設するにあたりましての一番大きな問題であろうというようなことで、この点につきましても懇談会で何回か御議論が出ておる段階でございます。しかしながら、懇談会としていまだ全部の意見を取りまとめるというような段階になっておりませんで、それをこれからやっていこうというようなことでございます。  私どもといたしましては、したがいまして、ただいま厚生省がどういった案を取りまとめておるということをこの席上で申し上げる段階になっておりませんけれども、懇談会の先生方にお願いをいたしましてできるだけ早く御意見をおまとめいただきまして、それに従いまして私どもは将来非常に重要な制度でございますので、これはできるだけ早くかつ慎重に検討をするというようなことで努力をしたいと、こういうふうに考えておるのでございます。
  24. 小平芳平

    小平芳平君 時間の関係がありまして、私は、いまここで内容についてあるいは制度的な問題について御質問をすることは省略いたしますが、一つだけ、厚生大臣に、国民年金法等関係する改正に賛成する意味において、内容がこのままでそっくりけっこうです、十分ですというふうに私たちは考えませんので、その制度的な問題については、児童手当制度創設して、これに関連するいろいろな制度の問題を提起したいわけですが、それはいまこの席ではいたしませんが、そこで、要するに、一番問題と私たちが思うことは、さしあたって四十三年度改正するにあたって、この金額について、したがって所得制限についての問題ですが、この金額について、先ほどの局長の御答弁では、老齢福祉年金だけをなぜ百円にしたかという質問に対して、物価の値上がり分ぐらいは十分埋めているのだと。それに対してまた再答弁がありましたが、どうもその辺の考え方が、最初の厚生大臣の社会福祉に対するお考えと、そうした事務当局のお考えとがちょっと違っているのではないかという気がするんですね。第一に、児童手当創設しようとしても、それじゃ老人福祉対策が手落ちになるのではないかという意見がすぐはね返ってくるわけです。ところが、一方では、国という立場から社会保障制度全体から見た場合に、医療保障に比べた場合に所得保障が非常に立ちおくれて不均衡であるということで、政府の閣議で決定された所得倍増計画でもその他でも再三指摘しているわけですから、したがって、所得保障の中でこうした福祉年金額を大幅に上昇しなければ均衡がとれないわけです。  そこで、厚生大臣が、私は新聞で拝見し、また、他の委員会で大臣のお考えをただしたこともありますが、要するに、四十三年度予算では生活保護基準が一四%切るか切らないかということで大奮闘された。そういうことは、企画序で発表している個人消費率の伸びも一四%なんだから、それを少しでも切るということは、これに伴って生活内容が切り下げになる、そういう切り下げにならないようにということで大いに大臣ががんばったということをお聞きしたわけですが、いまのように百円の伸びだとなれば、五%ちょっとですから、一四%切るか切らないかどころの論争じゃなくて、五%しか上がらないわけですね。ですから、これは、消費者物価に見合うとか見合わないとかの問題じゃなくて、国全体のそれだけの経済力が向上し、生活水準向上していくときに、老齢福祉年金だけを三分の一の五%ぐらいしか上げないで、それで物価に見合っているということはどう考えても出てこないと思うのですが、いかがでしょう。
  25. 伊部英男

    政府委員伊部英男君) 福祉年金の額の引き上げにつきまして、諸般の財政上の状況もございましてこの程度にとどまったのでございますが、御指摘のように今後とも福祉年金改善に出そうの努力をしたいと考えておるものでございます。
  26. 小平芳平

    小平芳平君 ですから、大臣から、四十四年度において医療保障と所得保障の関係で所得保障を充実していく上の福祉年金の位置、そういう重点施策としてやっていかれるお考えかどうか、その点を御答弁いただければ、それで私は終わります。
  27. 園田直

    国務大臣園田直君) 老齢年金引き上げ額についての御指摘は、私も実はさように考えておりまして、物価の上昇に見合ってと言っておりまするが、小平委員指摘されたとおりでございまして、したがいまして、今年度はいろいろな財政上の面からできませんでしたので、これを老人の医療費を国で負担するとか、あるいは就職あっせんの費用を組むとかいうことでかろうじてカバーしてきたところでありますが、しかし、わが国の人口構造が老齢化してきまして、核家族の変遷等によりまして、老人の所得保障というものはますます必要になり、ますます高く要求されるようになってきたことは御指摘のとおりでございます。したがいまして、こういう面も勘案いたしまして、ただいま審議会のほうでお願いしておりまするのは、給付の水準、それから中高年齢者の対策、特に年金額のしばしば御意見が出ておりまするスライド制の問題、それから福祉年金、それから積立金の管理、運用、保険料の水準など、御検討願っておりまするゆえんのものは、ただいま御指摘されましたように、所得保障というものがこれではあまりに低過ぎる、したがって、明年度の再計算期に、一方には保険、一方には年金というものの改善をはかって、ここで重点を注ぐというか、むしろおくれを取り返して土台だけはつくりたいと、こういうことを考えております。
  28. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 制度的な問題について一つお伺いしたいのですけれども、時間がたいへん少ないようでございますから、一点だけ質問させていただきます。  それは、海員組合の問題でございますけれども、魚をとりにいく人たちが拠出制年金をかけておりますね、月給の中から。それでございますのに、突然夫が亡くなったあと遺族年金をもらいます、その遺族年金が、相当腕のよかった地位の高かった人で九万円くらいということを聞いてきたことがあるのです。ところが、これは八戸の問題ですけれども、八戸で四・二人で生活保護費をいただくとすると、そのときに月に一万七千円くらいいただくことになる。しかし、遺族年金をもらうとすると、一年間で九万円ぐらいの年金しかいただけない。せっかくここに母子年金だの児童扶養手当だのということがありますけれども、年金をもらっている方はそういうものは併設をしていただくわけにいかないと、こういうふうに聞いておるのですけれども、そうすると、遺族年金をもらうのなら、いっそのこと月給からそういう年金をかけずに、貧乏になったとき、あるいは夫が亡くなったときは、いきなり生活保護費をもらったほうがいいというようなことを聞いたことがあるのですが、それはどういうふうにお考えになりますか。
  29. 伊部英男

    政府委員伊部英男君) 去る昭和四十年に厚生年金改善が行なわれまして、定額部分に報酬比例部分が加わっていわゆる一万円年金実現をし、遺族年金は基本年金額の二分の一をたてまえとし、定額部分五千円が老齢年金及び母子年金の最低保障となっていて、ただいま御指摘のような年金額になっておるわけでございますが、今日の時点におきまして、昭和四十年から相当時日が経過いたしておりまするので、年金額の水準が、ただいま大臣から御指摘ございましたように、改善を要する時点に立ち至っていると思うのでございます。明年度改正におきましては、老齢年金はもとより、障害母子につきまして大幅に改善をはかってまいりたいと、かように考えておる次第でございます。
  30. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 いま私のことばがちょっと足りなかったかもしれませんが、生活保護費が四・二人で一万七千円ぐらい。これは大まかな数字ですけれども、たとえば遺族年金をもらわれる方が、子供が五人あっても六人あっても、あるいはひどい人は八人も九人もあるわけですね、そういう方でも、遺族年金といえば大体平均が九万円ぐらいだと、こういうことが非常にバランスがとれていないわけですね。こういうことについて、制度的にどうお考えになりますか。
  31. 伊部英男

    政府委員伊部英男君) 年金額のきめ方でございますが、年金額は、保険料負担、あるいは国庫負担等もございますが、特に被用者保険におきましては、労使の御意見を煮詰めまして一つの水準を定めておるわけでございます。その場合におきまして、ただいま御指摘のように、生活保護の水準といいますものは確かに一つの考慮すべき要素でございます。しかしながら、生活保護というのは、いわば全体の動産、不動産をゼロと仮定をいたしましての水準でございますので、生活保護水準を念頭に置きつつこれと直接の関係を年金の水準に定めることはできないと考えておりますが、しかしながら、やはり一つのめどといたしまして、労使なり関係者の審議の上において十分念頭に置くべき水準である、かように考えておるものでございます。
  32. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、関連して一つだけお伺いしておきたいと思います。  先ほど大橋委員がハンセン氏病関係のことを御質問になりましたが、私もしばしば陳情を受けているわけです。四十三年以前に生まれた者は、あれはたしか任意でいいということでしたね。ところが、ああいう所にいる人は、聞かされなかったという人が多いのです。その結果、いまになって非常な格差が出ておる。できるならば、掛け金が必要ならば、さかのぼって掛け金をしてもいい、ぜひ何とかしてほしいということが一つ。いま一つは、障害年金に、らい性麻痺ですね、それを認めてもらえないだろうか。もし認めてもらえるならば療護が非常にスムーズにいく、これは施設長側がそう言っておる。これらについて、厚生省は、この前、保険局ですかとよく相談をしてできるならばそうしたいと思うというような御意見を伺っているんです。御案内のように、ハンセン氏病の施設は特殊でございますから、一つの村なんですね。ですから、ちょっとしたことが非常に不安を醸成し、円満を欠いて、園の運営がスムーズにいかない、こういうことの訴えがしばしばございます。それと、もう一つは、これは日本の法律でございますからいたし方もございませんが、園の運営で一番困っているのは、外国人の問題――まあこれは別といたしまして四十三年度以前に生まれた者、これらの人は任意でいいということになったんじゃないですか、何年だか知らないけれども。ところが、あと知らなかったのだから、われわれにも権利を与えてほしいと。これはもっともだと思うんですが、こそらについてのお考えをお聞かせ願いたい。それからまた、らい性麻痺の点についての御研究はいかがでございましょうか。もしこれが適用になるならば園の運営が非常にスムーズにいく、こういうふうに伺っておりますが、どういうお考えですか。
  33. 中村一成

    政府委員(中村一成君) 先生の御質問の四十三年とおっしゃいましたのは、おそらく昭和三十四年国民年金法が始まった年を意味せられておるのであろうと思うのでございますけれども、違っておりました後ほどまた……。  先生御指摘のように、国立の療養所に入っておられる入所者九千二百七十二人の方々で、障害福祉年金をもらっている方は四千六百二十二人、それから障害年金の受給者が二百六十四人というふうに、圧倒的に福祉年金の受給者が多い。それで、そのもらっておりますところの金額が、片や五千円ないし六千円、福祉のほうは二千五百円でございますので、療養所の内部の問題としては非常に大きな問題でございます。私どももかねがね関係の方々からいろいろ御相談を受けておりますが、私どもといたしましては、もちろん、法律の運用によりまして障害年金に切りかえることのできる方々につきましては、できるだけ努力をして切りかえるような手をやっております。先生のおっしゃいましたらい性麻痺の方々につきましては、これは例の併合認定の場合につきまして、一人一人の方につきまして日常生活障害程度というものを具体的に当たりまして、そして先ほど申しましたような気持ちで私どもとしては切りかえるべきものは切りかえるように指導をいたしております。  なお、保険料が未納であった方々、保険に入っていなかった方々、国民年金に入っていなかった方々が、その後年金の拠出によりまして入り得る場合というのは、おそらく廃疾認定日のとり方というものによって相当考慮ができる場合も起こってくるのじゃないかと思うのでございますが、一つ一つのケースにつきましてこういう患者さん方につきましては私どもとしては親切に取り扱っていきたい、こういうふうに考えております。
  34. 藤原道子

    ○藤原道子君 らい性麻痺はちょっとわからないんですよ。ですから、ほんとうに本人ならではわからない麻痺の状況、はたから見れば何でもないようで、やけどをしたり、そのやけどもわからないというような、非常に気の毒な状態ですから、その点も十分考慮してあたたかい気持ちで配慮していただきたいということを要望して、時間がないから終わります。     ―――――――――――――
  35. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) この際、委員の異動について御報告いたします。  本日、船田譲君が委員辞任され、その補欠として内藤誉三郎君が選任されました。     ―――――――――――――
  36. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 他に御発言もなければ、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  37. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 御異議ないものと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。――別に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  38. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 御異議ないものと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  国民年金法等の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  39. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 全会一致と認めます。よって、本案は、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
  40. 大橋和孝

    大橋和孝君 私は、各会派の皆さんの御賛成をいただきまして、国民年金法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議案を提出いたします。  附帯決議案の案文は、お手元に御配付してございますとおり、長文にわたっておりますので、朗読を省略いたしまして、案文は会議録に掲載していただくことといたしまして、簡単にその要点を御説明申し上げたいと思います。  第一に、今回の改正法案内容となっております福祉年金に関して、五項目にわたる改善努力指摘いたしました。  次いで、右に関連して、拠出制年金に対する今後の努力目標として六項目があげてあります。  次に、児童扶養手当特別児童扶養手当に関して改善を要すべき事項をあげて、なお、包括的な児童手当制度実施を要望いたしたのであります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  41. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) ただいま述べられました大橋和孝君提出の附帯決議案を議題といたします。  大橋和孝君提出の附帯決議案に賛成の方は挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  42. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 全会一致と認めます。よって、大橋和孝君提出の附帯決議案は、全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
  43. 園田直

    国務大臣園田直君) ただいま国民年金法等の一部を改正する法律案に対しまして附帯決議を議決していただいたわけでございますが、この附帯決議につきましては、御趣旨を十分尊重して、実現努力いたしたいと考える次第でございます。
  44. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  45. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。  ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  46. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 速記を始めて。     ―――――――――――――
  47. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 次に、社会保障制度に関する調査議題といたします。  これより質疑を行ないます。御質疑のある方は、御発言を願います。
  48. 大橋和孝

    大橋和孝君 時間もありませんので、要約して、保育所措置費国庫負担額の不足という問題についての質疑をさせていただきたいと思います。  大都市のたとえば東京、横浜、川崎、名古屋、京都、大阪、神戸、北九州というような所で、四十一年度については四千六百三万八千円という負担額が不足いたしております。これが、四十二年度におきましては、九千三百六十万九千円、こういうようになっております。その他の府県におきましても、大分、栃木、山口、三重、香川、石川、鳥取、群馬、福岡、長野県というような所で、四十一年度は、八千六百七十八万六千円という約二%に当たるものが不足額になっている。四十二年度においては一億八千六百七十八万一千円。四十三年度の見込みでは、二・九%以上が負担額不足になるという状態になっております。  これは、四十一年度分につきましてはもうすでに精算済みであると昭和四十三年五月十五日に厚生省児童家庭局の鈴木企画課長は答弁しております。そして、保育所入りの措置権者でありますところの市町村長のほうからの事実実績報告書、こういうものを県を経由して厚生省に補助手続をとるのでありますが、これを信用できない、こういうようなことも言明しているようでございまして、厚生省の見解で査定して、したがってこれは精算済みになっていると、こういう見解のようですけれども、これは非常に問題があるのではないか。特に市町村長の措置権、これは児童福祉法の第二十四条ですが、これの侵害にもなり、また、当然国民全体に対して不信感を与えるものである。ことに、地方財政法第十八条、これは国の支出金の算定の基礎ですが、この精神をも否定するように思うのでありますが、この点はいかがでございますか、御見解を伺います。
  49. 渥美節夫

    政府委員(渥美節夫君) 昭和四十一年度の問題と昭和四十二年度の問題の二つの御指摘があったわけでございますが、まず昭和四十一年度保育所の措置費の国庫負担金が二%ばかり不足しているじゃないか、こういうふうな御趣旨であったと思います。昭和四十一年度におきまして保育所の措置費としまして国庫負担額として国費に計上いたしました金額は百四十八億七千百万円であったのでありますが、昭和四十一年度におきましては保育所の増設なりあるいは三歳未満児の増加等が急速に行なわれたために予算額に不足を生じたのでございまして、したがいまして、四十二年の春になりまして補正予算を組みまして、保育所に対しましてば約八億五千七百万円程度の追加交付額を決定してその不足を補ったのでございます。御承知のとおり、保育所は、児童福祉法におきましても規定しておりますように、母親が働かなければならない等の理由によりまして保育に欠けるという児童保育するための施設であるわけでございます。私ども、こういった国費の支出の問題でございますから、絶えずいろいろと監査等を実施させていただいておるわけでございますけれども、いろいろと監査の結果等も勘案いたしまして、いま申し上げました保育に実際欠けるというふうな子供が適正に入所されているかどうかという点についても多少問題がございます。こういった点も勘案いたしまして、二%ばかりになるかと思いますけれども、そういった点を考慮いたしまして国庫負担金の算定をいたしたわけでございます。その結果、先ほど申し上げましたように、昭和四十一年度におきましては、当初予算額ではどうしてもまかないきれませず、八億五千七百万円程度の補正予算によりまして不足分を補ったという状況であるわけでございます。  それから次の第二の問題でございますが、昭和四十二年度におきましても保育所の増設が急速に行なわれてまいっております。これは特に昭和四十二年度を起点といたしまするところの保育所の整備計画なども実施された第一年度でございまして、保育所の増設が急速に行なわれますし、また、三歳未満児――手がかかり、予算がかかる、そういった三歳未満児の子供たちも相当多く入所してまいりましたために、当初の予算額が百八十三億程度計上しておったのでございますが、この辺につきましても相当の不足も生ずる気配が濃厚でございましたために、四十二年度の終わりになりまして予備費によりまして約十一億七千八百万円程度の追加を負担することにいたしたのでございます。しかしながら、御承知のとおり、昭和四十二年度の分につきましては、まだ市町村から提出されますところの事業実績報告書が期限にまだ達しておりませんので、現在のところ、そういった事業実績報告書の内容を集め、かつ、参りましたものにつきましてはいろいろと審査をしております。したがいまして、先ほど申し上げました予備費で十一億七千八百万円程度計上いたしたのでございますが、おそらくこれではまだ不足であるわけでございますので、この点につきましては昭和四十三年度におきまして、予備費等におきましてこれを負担しなければならないのじゃないか、かように考えております。いずれにいたしましても、その実績の報告を受理いたしまして結論を出したい、かように考えておるところでございます。
  50. 大橋和孝

    大橋和孝君 もう一つで終わりますが、四十三年度分の保育所国庫負担金交付予定額についてでありますけれども、これは四十二年度の当初予算では四十億六万人増となっておるわけでありますが、これは局長の答弁の中にもあったと思うのですが、それにもかかわらず、指定都市の、東京五億八百三十万、大阪一億二千三百六十五万など、その府県知事への交付予定額は平均七一とか七三%程度に押えてあるように思うわけでありますが、法五十三条で規定されておる義務的な負担であるにもかかわらず、このようなワクをかけるのはおかしいのではないか、今後どういうふうにされるか。いま多少答弁の中にもございましたけれども、こういうものに対しても明確にしておいてもらわないといけない。  それからまた、衆議院の決算委員会でありますか、華山委員の答弁の中にも一、もの年度分に対しては予備費から払うとか、次年度のものについては追加予算とか、あるいはまたもう一年先のものを処理する場合にはたとえば当初予算に組むとかしてこれを払うのだというような御答弁がなされておったと思うのでありますが、そういうふうにしてこの不足分に対しては十分明確にこれを支払うことにしないと、これが地方に対してまたプラスになって働きますし、いま調べてみますと、結局は、保育単価の問題に対しても響いてくるのじゃないか。保母の人件費なんかを見ましても、非常に低いわけでありますね。それから調整手当、扶養手当、超過勤務手当、通勤手当なんかをずっと見て合計をいたしましても、非常に低い程度になっておる。また、一面、保母の最低基準の改定なんかを見ましても、たとえば四歳児については三十人に一人であるのを二十人に一人を要求している。三歳児については二十五名について一人になっておるのを十五名に一人を要求している。おっしゃるように、三歳未満のように手のかかっているのは五名に一人にしてほしいというようなことも要求されているのですが、こういうことに対して設置の責任者であるところの都道府県に対しては、いままだそういうプラスによけいの超過負担があるとなれば、こういうことをやりたいと思ってもなかなかその額は伸びない、こういうことになりまして、非常な大きな問題になるわけでありますからして、このことに対してはひとつ明確にやるようにやっていただきたい。  また、大蔵省のほうにちょっとお願いしてお尋ねしておきたいのですけれども、そういうようなことでいろいろ答弁は決算委員会でもなされておりますが、今後に対しても大蔵省のほうもこういうような問題に対しては十分責任をとっていただきたい、こういうように思うわけでありますが、この点の御見解を伺って、私の質問を終わります。
  51. 渥美節夫

    政府委員(渥美節夫君) 昭和四十三年度保育所の措置費の国庫負担に関する御質問をいただいたのでございます。先生御承知のとおり、昭和四十二年度の当初におきまするところの保育所措置費の国庫負担金は百七十三億でございまして、昭和四十三年度保育所措置費の国庫負担金は二百十六億と相なっております。つまり、四十三億ばかり年度当初におきましては増額を昭和四十三年度においては行なっておるわけでございます。この内容は、先ほど御質問の中にありましたように、いろいろな保育所の運営費の改善を行なうものも入っておりますが、特に大きな要素といたしましては、六万一千人の子供さんを新たに保育所に通わせるという大きな要素が入っておるわけでございます。これは私どもが計画しておりまするところの保育所の増設計画の内容をなすものでありまして、毎年六万人以上を保育所に通わせよう、それによりまして要保育児童の解消をはかるという内容でございまして、したがいまして、相当大きく昭和四十三年度におきましては予算が伸びておるわけでございます。そういったことを計上しておりまして保育所保育対策の推進をはかっておるのでございますけれども、四十二年度、四十一年度の傾向を見ますると、さらに相当多くの保育児童が出るのではなかろうか、かようにも考えております。  ところで、昭和四十三年度の国家予算はいわゆる総合予算主義をとっておりますために、一応のその当該年度におきまして使われる保育所措置費のめどというものも都道府県にお示ししなければ目標が立たないのじゃないか、かような考え方から、先ほど御指摘になりましたように、当局の企画課長からの通知といいますか、内簡を出しまして、四十三年度におきましてはこの程度が一応の目標額だということはお示ししておるのでございます。しかしながら、この保育所の措置費につきましては、いわゆる国庫負担金でございます。そういう性格を持っておるわけでございますので、保育所の増設が予期以上に進んだとか、あるいは三歳未満児の率が予期以上に進んで入ってきておるとか、あるいは、当然のことでございますが、給与の改善等もございますから、こういった点につきましては、一応の目標額を示したその中でとどまることは当然できません。したがいまして、従来と同じように、年度内におきましての予備費の使用でありますとか、こういうふうな財政的な措置を講じて保育所行政を確保していかなければならない、かように考えておるところでございます。
  52. 辻敬一

    説明員(辻敬一君) 保育所措置費につきましては、御承知のように、年々充実増額をはかってまいりましたところでございまして、四十三年度におきましては、ただいま児童家庭局長からお答え申し上げましたように、きびしい財政事情のもとではございましたが、措置児童数につきまして六万人余り増加を見込みますとともに、施設の職員の給与の改善でございますとか、保母の定員の増加でございますとか、諸般の政策を織り込みまして、総額におきまして二百十六億円を計上いたしております。これは、四十二年度当初予算の百七十三億円に対しまして約四十三億円、二五%というふうなかなり大幅な増加になっているわけでございます。保育所措置費の実行につきましては、保育に欠ける児童の認定が適正に行なわれているか、あるいはまた、御承知のように、所得に応じて保育料を徴収することになっておりますが、その徴収が適正に行なわれているかというような点につきましては、私どもといたしましても大きな関心を持っているところでございます。しかしながら、適正に行なわれました措置によりまして生じた不足につきましては、従来からこれを補てんするということで来ておるわけでございまして、先ほども御議論のございましたように、現に、四十一年度の不足につきましては、四十二年度の補正予算によりまして、あるいはまた、四十二年度の不足見込みにつきましては一部四十二年度の予備費の支出によりまして対処してきたわけでございます。  なお、四十二年度さらにもしも不足が生じますような場合のことでございますが、四十三年度は、御承知のように総合予算主義というたてまえをとっておりますので、もしも不足が生じた場合には、四十三年度の予備費で処理するか、あるいはまた、四十四年度の当初予算に織り込むか、いずれにいたしましても、適正に行なわれました措置について不足が生じました場合には、これを補てんするという方向で検討してまいりたい、かように考えております。
  53. 大橋和孝

    大橋和孝君 時間がありませんから、大臣に最後に一つ聞いておきますが、先ほど議論をしましたように、不足額が二%というのが、自治体でやっているのが、先ほど局長の答弁の中にも、実際児童が適正であるかどうか、そういう理由をつけて認定をするということになって、それが果たされないということになれば非常に大きな影響があるわけでありますから、いま主計官のほうからもお話になりましたように、これは十分措置してもらえると思うのでありますけれども、特に大臣としてはこれに対して前向きの責任のある答弁をしっかりしておいていただかないと、これはプラス負担が増加しまして、それがみな保母とかあるいはまたその方面に影響してくるわけでございますから、これは非常に問題が大きいので、特にその点をお伺いしておきたいと思います。
  54. 園田直

    国務大臣園田直君) 保育所の設置の助成その他についてもとかく意見がありまするが、いまの問題は一応の目安が与えられたようでありますから、事務にあたっては当然そのように措置するつもりでおります。
  55. 藤原道子

    ○藤原道子君 関連して一つ。  私は、おかしいと思って聞いておりました。保育に欠ける子供というのは、どういうところを認定しておられるのか、そこが問題だ。保育所がふえておりますということは、あたりまえなんです。いままでなさ過ぎた。しかも、最近、労働力の不足で、勤労者の家庭の奥さんの八〇%くらいが内職だとか。パートタイマーで生産に協力しているんですよ。その子供は一体どういうふうになるのか。三歳児未満の保育、これが急速に伸びたというけれども、これはやらなかったほうがおかしいので、そういう子供の福祉が阻害されておるから、外国に比べても日本の子供の事故死というものの数は飛び抜けて多いじゃございませんか。私は、総合予算主義をとったから云々ということは、納得がいきません。総合予算主義と法律とはどっちが優先するか。憲法と総合予算主義とはどっちが優先するか。私は、そういう考えだから困ると思う。しっかり御答弁願いたい。
  56. 渥美節夫

    政府委員(渥美節夫君) 御指摘のように、最近におきます都市化の進展に伴いまして、都会におきまする特に若いお母さん方の働き手がふえておることは事実でございます。したがいまして、先ほど申し上げました中で、特に大都会におきましては、保育所の増設、したがいまして保育所の措置費の国庫負担額は大幅に考えているわけでございます。  それから総合予算主義の問題でございますが、適正に措置されました子供に対しましての措置費は当然国庫負担をいたすわけでございまして、したがいまして、その実情に応じまして、先ほど大蔵省からも御答弁がありましたように、後ほど補てんをするというふうな方針は、従来と同じように変わらないわけでございます。     ―――――――――――――
  57. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、この際、過日国民の反対のさなかに通過いたしました療養所の特別会計制についてちょっとお伺いしたいと思います。  その後運用がどのようになされているか。あのとき、局長も大臣も、機械的には強行はいたしません、やれるところからやります、こういうことでございましたが、どのように運用されておるか、それをちょっとお伺いしたいと思います。
  58. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 特別会計移行に伴いまして、基準看護、基準給食、あるいは基準寝具の実施をやることにきめておりますが、その実施の状況は、たとえば看護につきましては、五月一日に実施をする目標で準備の整いましたものが百三十八、まだ準備の整わないものが十九施設ございます。給食関係につきましては、五月一日を目標に実施の準備が大体できましたものが百四十九、まだ準備のできておりませんのが八施設、寝具につきましては、四十三年度から実施しておりますのが三十九施設でありまして、今年度になって五月一日目標に実施の準備ができておりますのが五十四施設、なお準備のできておりませんものが六十四施設でございます。
  59. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、けさ聞いてびっくりしたので、急な質問でございまして、こういうことがあってはならないという立場から質問いたしたいと思います。それは、茨城の東海村の晴嵐荘にいま起こっている紛争でございます。この問題について、五月十四日に、全医労と患者自治会約二百名が施設長と交渉した。それは、了解も求めずに直ちに基準料金の徴収の申請をしたことはおかしいじゃないか、これが一つ。  現在行なわれている看護、給食の実態は明らかに申請できる内容のものではないのではないか、だからこれは撤回すべきである、こういうことであったと聞いております。結局、いまでも、ほとんどの患者は補食をしておる、あるいは重症患者でも痰が自分で出せない場合は患者同士が助けあってやっている、寝具の取りかえなどは患者の仕事のように当然として行なわせられている、こういうことを聞いております。寝具は、この療養所では昨年度から実施しているけれども、初めはフワフワして気持ちがよかった、その後かたくなって、たけが短くなって足が出る枕。などは、もみがらがこほれちゃって、一日でベットの上はまつ黒になる。こういう実態だと、こう言っております。これに対して、私も無責任な質問はできませんが、患者と施設側の交渉を録音にして――あとで逃げるのが厚生省の常だから、録音にして持って来られました。私はその録音を聞いて黙っておられないからきょう御質問しているということを一応頭に置いて御答弁願いたいのです。  結局、あそこは、いまでも看護婦が足りない。二人夜勤をしているのは重症病棟と手術直後の病棟だけです。あと一人夜勤で、一人夜勤をどのくらいやっているかと聞きましたら、少なくて八日、多い者は十四日の夜勤をしている、こういう状態です。人事院勧告では八日以内と言われている。ところが、十四日も夜勤をしている病院で基準看護をどうしてやれるとお考えになってこれを踏み切られたのか、こういう点について、まず第一にお伺いをしたい。  これに対して、施設側は、相談もせずに申請したことは陳謝する。患者、全医労、日患、荘当局との四者の話し合いが済むまでは認可書は県に返上し、実施をしない。県の実態調査を行なう。こういうことが録音でけさ聞きましたら明らかになっております。  ところが、五月十四――よく聞いておいてくださいよ、県衛生部の保険課長と交渉したら、朝、荘の事務長が県に来たが、認可書の返上の話は全くなかったこと、県は公式に返上されれば取り消すこと、荘の言い分も聞き、再調査考えることを約束した、こういう経過になっておるんです。ところが、私が許せないのは、特会制の審議のときにあなた方の言われたこと、これを持ち出して、国会審議とは約束が違うじゃないかということを言った。ところが、療養課長というのですか、国会審議はどうあろうとやるんだと、こう言うておる。それで、荘の者を東京へ呼び寄せて、撤回することはまかりならぬ、おれが責任を持つからやれ、こういうことを言っておいでになりますが、国会審議とはどういう意義を持っておるのか、私はこの点がどうしてもがまんならないから、きょう、時間はございませんけれども、質問の時間をいただいたわけでございます。そういうふうな指導をしておいでになるのか、これをまず伺いたいと思います。
  60. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 晴嵐荘における看護力の充実状況は、これは国立療養所としては非常にいいほうでございまして、御承知のように、通常二類看護を申請しておりますと、患者数六人に対して一人の看護婦というのが基準になっております。これに対して、現在の晴嵐荘の実情は、五百二十八名の患者に対して看護婦及び准看護婦の数が百二名でございまして、四・三人について一人という状況になっております。したがって、看護力としては、二類看護の六対一に比べまして充実度の高い施設でございます。といいますのは、この施設は非常に高度の外科手術等をやっておりますために、重症病棟あるいは手術病棟等には多数の看護婦をつけております。重症病棟につきましては、二人に対して一人の割合でついておりますし、手術直後の患者を入れます手術病棟については、〇・四人に一人の割合、つまり、現在、患者が手術病棟に七名しかおりませんが、看護婦は十五名つけてあるというぐあいで、もちろん軽症病棟は当然のことといたしまして、現在では八・二人について一人ということで、病院といたしまして当然重点を指向しまして傾斜配置をし、適切な看護のために職員を配分していることは、御承知のとおりと思います。そういう状況で、確かに夜勤は八回ないし十四回ということは事実であろうと思います。これは一般医療機関の通常の状態でございまして、特にこの施設が看護状況が悪いというふうに御判断いただくのは、必ずしも適切ではなかろうかと思います。そういう意味で、この施設は、二類看護を申請するのは、通常の病院の経営形態から見ましてまことに適当なものでございます。そういう状況で、基準看護の申請は四月八日に県保険課に対してなされております。  これを患者の了解を求めずに一方的に実施したのはおかしいというお話でございますが、これにつきましては、施設側から患者の組織の代表に伝達をしてございまして、決して全く無報告、無警告といいますか、知らせずにやったというものではございません。その後の折衝については、テープ等であるいはお持ちかもしれませんが、先ほど確認事項というお話がございましたが、これは私の承知しておりますところでは、折衝のときにこのようなことを確認するということを患者側が発言をしたということであって、これを両方が合意したというものではないと私は承知しております。したがって、録音には当然入っているかもしれませんが、荘側の納得したものではないであろうと私は存じております。
  61. 藤原道子

    ○藤原道子君 通り一ぺんの答弁ではかないません。看護婦は六対一、要員を満たしておる、確かに患者側もそう言っております。六人に一人はおります。けれども、あなたはあの晴嵐荘は御承知でございますか。古い建物で、しかも坂道で、看護婦というものの連絡等も悪い。それは近代的な建物でエレベーターで上がりおりするところとは比較になりません。それと同時に、私がしばしば質問いたしました六人に一人の看護要員が適切かどうか、ここに問題がある。昔と違いまして、手術をすれば手術病棟に看護婦がとられます。重症病棟にとられます。そういうことで、看護婦さんたちの労働がいかにきびしいものであるか。あるいは、ブザーを押しても来てくれないほど看護婦がたえず飛び歩いているのです。そうだから、喀血して窒息して便所の中で死んでいた、朝になって死んだ患者を発見して大騒ぎになる、こういう事態が起こるのです。だから、厚生省は、四人に一人、療養所は第三類ですか、六人に一人、これが妥当とは思っていないとこの前答弁しているはずです。だけれども、看護婦がいないから仕方がない。したがいまして、看護婦の充足を急速にはかり、そうしてこの看護基準を変えなきゃならぬというのは、あなた腹の中ではそう思っている。数だけそろっている。現状の勤務状況も知らない、病院の状態も知らない、数がそろったからここで基準看護をするのはあたりまえだということは、私は納得ができません。  それから八日ないし十四日の夜勤、これは普通だと、そこだけが多いのではないといまあなたはおっしゃった。それでは、人事院の判定というのはほご同然のわけですか。あんなものはほご同然なんですか。とにかく、もぐらじゃないけれども、若い女が夜の夜中の勤務を一月に十四日も十五日もやる、これを普通だと考えるあなたの神経が疑わしい。それで基準看護ではたしてやってやれるのですか。やれないから、患者同士が助け合いをする。看護婦の手が足りないからやっている。それで基準看護料をとろうとおっしゃる。私は、そういうことで、医療を担当されるあなたからそういうことばを聞くということは残念でございます。  それから組合側が書けと言ったので、荘側がそれを納得したのじゃない、こういうふうにおっしゃいました。その確認書というのは、  二 基準の申請を公文書をもって撤回します  以上を吉田保険課長同席のもとに確約します  こうなっておる。しかも、そのときには、ちゃんとそこの事務長は言っておりますが、確かに文案は患者が言ったのを採用いたしましたけれども、これは荘側の考えであるから、別に強要されたものではない。それから暴力で書かしたのだ、暴力で判を押したのだと本省では言っているようでございますけれども、そうではない。自分が判を押したけれども、薄かったので、こんな薄い拇印ではだめだから、もっときつく押してください、こういうときに、一患者が事務長の手に手を添えたそうでございますけれども、それをやった本人自身が、決して暴力をふるったわけではないと言っているじゃないですか。それでも本省は暴力とおっしゃるのですか。荘の意思ではないとおっしゃるのですか。ここに私は問題があると思います。  さらに、こういうことに対して本省から再三上京を命じて、そうして荘側もあるいは県の衛生部も、いまやるのは無理だから撤回をしますと言っているのに、本省が、何が何でもやれ、撤回することは認めない、国会答弁がどうあろうとも、厚生省が責任を持つから強行するように、こういう指示をしてもよろしいものでございますか。それなら、われわれ国会で質問することはむなしくなります。法律を通すときにはあなた方は低姿勢です。ところが、通ってしまえば、活殺自在、国会の答弁なんてあんなものは問題じゃない、こういうことを言ってもよろしいかどうか、これを聞かしてください。
  62. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 先ほどちょっと間違ったことを申しましたので、訂正さしていただきますが、今度の基準看護の申請は二類看護でございますので、標準は患者五対一の標準で申請をしているわけでございます。事実は四・二対一ということで超過しておる。これは先ほど六対一と申しましたので、この点をあらかじめ訂正さしていただきます。  それから確認事項云々のことがありましたが、これはそういう場所でいろいろなことが起こっておりまして、当初、私が、テープに入っておりますものは、おそらく荘側が確認したものでないというふうに申し上げましたのは、私の記憶では、十四日の交渉のときの確認事項であろうと思います。そうして、ただいま先生があとからお読み上げになった確認事項といいますかの案文は、これは十五日に茨城県の保険課において行なわれた文書でございまして、これに拇印で捺印したということでございます。したがって、先ほどの確認書と、あとの確認書といいますか、事務長が捺印しました確認書とは、内容も違うものでございます。  なお、あとに話が出ました、事務長が拒んだにかかわらず、書かないなら私が文書を書いてやると言って組合の職員が自分で自筆で確認書を書いて、そうして事務長がその署名捺印を拒んだものを無理やりに署名させ、さらに印鑑を押せと迫ったのを、印鑑を持ち合わせがない。そこで、それならば拇印を押せと。拇印が薄かったら、今度は職員か患者かだれがやったか知りませんが、事務長の手をとって朱肉に拇指を押しつけてそれを確認書に次々に押させた、こういう事実はあったようでございます。これが暴力でやったかどうかということは、それぞれその当事者の見解によって異なると思いますが、少なくとも手をとって押さしたということは事実でございますし、荘側の者は事務長と補佐と栄養係長三名、それにもちろん県の保険課の職員がおりましたが、患者、職員側は二十三名と承知いたしております。相当威圧を加えてそのようなことを行なわせたということは間違いないと私は思っております。  なお、その後のことにつきまして、施設側からこれを撤回しようかどうかということについて、国会審議のいかんにかかわらずこれの撤回はまかりならぬと言ったというふうなお話がございましたけれども、国会審議のいかんにかかわらずというようなことをその撤回と結びつけると、非常に不穏当だと思います。国会審議内容が、いまのことそれ自体のことであったのか、国会で審議されたこととそれからいまのこととは直接関係があるのかないのか、そこら辺の確認もなんにもございません。ただ、国会で審議があった、しかし、それとは別に、これは事務的な問題なんだから、事務的に進めるものは進めて差しつかえないという返事をしたことは、これは確かにございます。また、この申請を出し県の保険課でこれを承認するという事務的な経過をたどるわけでございまして、その申請に対して承認が適当であるかないかということは、県の保険課が実地調査をいたしまして、その判定に基づいて承認をいたすわけでございますので、この保険課の事務手続に関しましては、これは直接国会の審議とは関係のないことでございます。そのように私どもは理解しておるわけでございます。
  63. 藤原道子

    ○藤原道子君 これは五月十七日でございますけれども、第二番目のあなたの言った確認書、これに対して、事務長は、  一、文書の本文は確かに支部長が書いた。しかし、内容は荘の幹部会できめた方針が書かれている。  二、拇印は、最初私の意思で押した。それが薄く小さかったので、一患者が私の手を持って押したことは確かだ。しかし、あとの二枚は自分で押した。  三、決して暴力的ということはないし、確認書は荘の方針が書かれていると確認する。  こうなっているんですね。ですから荘側が少なくて患者側が二十何人というのは、団交のとき私たち厚生省へ行っても、会わないんですよ。荘側だって出てきたらいい。それで、患者側のほうが人数が多かったから、だから暴力だ、威圧だということは成り立たないと思う。課長の報告だけに重点を置かれないで、局長なんだから、もっと真剣なものを調査していただかなければ、今後基準を実施するときになるといよいよほうぼうで問題が起こるのじゃないのですか。私は、あなたといつもやりとりするのはいやなんですよ。スムーズにやります、できるところからやりますということを期待しておりますから、こういうトラブルの起きないようにしてもらいたい。  それから国会答弁云々につきましては、もう一回私は録音を聞きまして、この質問は後日に譲ります。あなたの言うような意味ではないと私は理解しておる。けさ委員会が開会になるというので急いで参りました。もし御希望ならば、委員会で録音を公開してもいいと私は考えております。とにかく、強い者が、なんだお前たちはという考え方で臨むからこういうことになる。私は、看護婦だって、いまの状態で、二類基準看護も無理だと思っております。一度御一緒に見に参りましょう。とにかく、愛情ある運営をしてもらいたい。この問題は、きょうは時間がございませんので、やる予定はなかったのでございますけれども、録音を聞いてびっくりいたしましたから、それできょうお伺いをして、あなたもその点は腹に据えて御答弁を願わなければ、あとで問題になると困ると思うのです。いかがでしょう。
  64. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 私どもも現地の実情について非常に心配しておりましたので、地方医務局の担当官を派遣をいたしまして、そうして、現地の実情はつぶさに調査いたしました。その結果に基づいて私どもは了解いたしておるわけでございまして、決して一方的な判断ではないと承知いたしております。基準看護あるいは基準給食の実施におきましては、できるだけその実の整った施設から無理をせずにやっていくという方針は、いまも変わっておりません。ただ、晴嵐荘の場合は、御承知のように、国立療養所といたしましても、医療能力からしても、診療の看護能力からいっても、国立療養所としてはいいほうに属する施設でございます。そういう意味で、基準看護、基準給食も当然県の保険課の審査に十分たえ、問題なく実施できるものと私どもは確信いたしております。したがって、この手続も比較的早目に進めておったわけでございます。途中でこのようなトラブルが起きたことは、まことに残念でございます。施設長も非常にすぐれた、先生あるいは御承知かもしれませんが、日本で最もすぐれた結核外科の第一人者でございまして、患者からこのような不信を招くことは、私は生涯においてこんな遺憾な残念なことはないと漏らしておられる状況でございまして、施設運営それ自体も決して欠点の多い施設ではないと確信しております。そういう意味で、今後もできるだけこのようなトラブルがないようにやってまいりたいと思いますし、また、患者あるいは職員側も、十分必要な限度において協調していただきたいということを私どもはむしろ切望しておるわけでございます。
  65. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、あの法律が通るときに、問題が起こると思ったのですけれども、問題は起こさなくスムーズにやります、できるところからやります、こういうことで、まあ反対だけれども多数で負けたわけでございますけれども、その施行の実施のしょっぱなからこういうことが起きては非常に残念だと思って、将来が案じられる。あそこの荘長の手腕とか人格は私もよく承知しております。私は、あの施設であの現状でこれを強行なさると、あんなりっぱな先生にますます御苦労をかけるんじゃないかということも憂えますので、またこの問題は後日に譲って、お互いに納得のいくまで質問をしてみたい。  大臣、こういうことが起こっておりますが、大臣はどうお考えになり、今後はどう処理なさるか、大臣の御決意を聞かしていただきたい。
  66. 園田直

    国務大臣園田直君) 御意見は十分拝聴いたしました。私、いま初めて聞くことでございますから、実情を調査いたします。  なお、国会の答弁がどうであろうとということばがあったかなかったかわかりませんけれども、これも調査いたしますが、私は、特に国会が終了いたしました段階で、さらに全国の国立療養所長を集めました席上におきましても、もう一ぺん国会における大臣の答弁及び各議員の質問等をさらに詳細に拝読して、そうして、その御意見等を十分体して業務を円満に遂行するように、という特別の要求を事務当局にいたしておりまするが、国会の答弁はどうでもいいという意味なのか、そうじゃないにしても、国会というものは法律を通すのが仕事であって、あとは自分たちが勝手にやっていいんだという考え方があるとするならば、これは重大な問題でありまするので、この点は特に重要視して実情を聞いてみたいと考えております。
  67. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 他に御発言もなければ、本件に関する質疑はこの程度にとどめておきます。     ―――――――――――――
  68. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 次に、労働問題に関する調査議題とし、質疑を行ないます。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  69. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、この際、生命保険の現状とその伸び率、外務員の労働条件とその実態についてお伺いをしてみたいと思います。  まず、現在、わが国の保険契約高は全体でどれくらいになっておるか、保険会社の配当その他はどのようになっているか、時間がないからぶっ続けでやりますが、それから解約とか破棄とかいうような率はどの程度になっているか、この点をお伺いしたいと思います。
  70. 小泉徳夫

    説明員(小泉徳夫君) 四十二年度決算が間もなくまとまる時期でございますので、その数字を申し上げるべきでございますが、ちょっと計算が最終的に確定いたしておりませんので、四十一年度の計数で申し上げますと、保有契約高は三十兆四千四百億でございます。四十二年度末の推定でございますが、約三十八兆円にのぼるかと思われます。  それから解約失効高は、いま数字を用意いたしますので、しばらくお待ちください。
  71. 藤原道子

    ○藤原道子君 三十八兆にのぼるであろうというような保険契約、この前線に立って働いております保険外務員の労働条件はどういうふうになっているか、あまりにも複雑怪奇で、私にちょっとわからないのでございますけれども、これらの第一線で働いておる保険外務員の登録されているものはどれだけあるのか、その登録の中でもいろいろ職種があると思いますが、これらの待遇、労働条件、これらについてお聞かせを願いたい。
  72. 小泉徳夫

    説明員(小泉徳夫君) 現在、生命保険外務員の数は、四十一年度期末で四十六万六千人でございます。  この四十六万六千人の外務員の労働条件と申しますと、結局、身分的な待遇の相違で区分するか、性別で区別いたしますか……。
  73. 藤原道子

    ○藤原道子君 登録されているものはどのくらいありますか。
  74. 小泉徳夫

    説明員(小泉徳夫君) 四十六万六千人でございます。
  75. 藤原道子

    ○藤原道子君 それから代理店と称するものは……。
  76. 小泉徳夫

    説明員(小泉徳夫君) 約百万軒が登録されておりますので、差額の五、六十万軒が代理店というふうに御解釈願いたいと思います。
  77. 藤原道子

    ○藤原道子君 そこで、これらの労働条件が非常に不安定だから、登録はする、たくさん登録はするが、たくさんやめていくのです。その率はどうなっておりますか。
  78. 小泉徳夫

    説明員(小泉徳夫君) 四十一年度で見ますと、新規登録いたしました者が三十五万二千、同じ四十一年度に業務を廃止登録をいたした者が三十三万四千でございます。この率は九四%程度になるわけでございますが、その業務廃止数の三十三万四千というのは、過去からの五年ないし十年と長い期間勤めておられる外務員もおりますが、こういった累積的に勤めておられた方の当年度における廃止数でございますので、私どもの別な計算といいますか、実態調査によりましてサンプル調査をやった結果で申し上げたほうがより正確な業務廃止率をあらわすのではなかろうかと思われますが、それは約一万一千人の外務員につきまして調査をいたしました。採用後満一年を経過したときに何人残っておるかという調査をいたしたことがございます。これによりますと、一年後に六二%が脱落をしておる。二年すでに在籍した者がさらにその後一年間で何人脱落するかというのを見ましたときに、四八%が脱落をする。三年以上すでに外務員でおられた方がその後一年間で何人やめておるのかというのを見ましたときに、一三%がやめておられる。かように、全体を通しますと、一年間にこれらの各在籍年数別に見たものをトータルいたしまして四五%が脱落しておるというのが一万一千人の外務員についての実際に当たって調べました調査の結果でございます。これを類推いたしますのに、約六割程度はやはり平均して脱落しておる、こういうふうに解釈できるかと思います。
  79. 藤原道子

    ○藤原道子君 生保外務員の就業不安定の結果がこう脱落が多いと私は考える。これは、大きな社会問題であり、人権問題であると思うのです。外務員登録数と業務廃止届け数にあらわれているだけでも私どもはたいへんなことだと思うのです。この不安定な就業実態をあなた方はどのように見ておいでになるか。と同時に、現在までどのような行政指導がとられてきたのか。  この実態についていろいろ調査をいたしておりますけれども、出来高払い賃金のもとでの人海戦術を強行しておる。大量増員に拍車をかけるため、次のことをやっております。機関長に増員強制をいろいろな手段でやらせる、職員に同僚誘致をやらせる、これらを金品、利益の供与、懸賞や規定でやらせております。さらに、また、現行の外務員登録試験制度が行なわれましたその合格率は九五・五%ともいい、九九%以上という人もございます。試験の効果はこれではあまりないのじゃないか。しかも、これは、本来は大蔵省がやるべきことを保険協会がやっております。無差別増員をやるので、外務員の質が下がっておる。外務員の身分は、給与も、三カ月か六カ月ごとに変わってくる臨時雇い的な不安定制度に置かれておる。新人教育制度は、一部を除きまして、現場一任、あるいは組織的な教育がほとんどなされていない。こういう状態に置かれておるのです。  それで、この大量増員をいたしますために、支店長その他が賞金を出したり、あるいは、何というのですか、増員があったとか、増員したものが正式化されれば、それがプラス上の人たちの給与が上がるとか身分が上がるとか、いろいろなことではね上がるようなシステムになっているようでございますが、こういうことは正しいとお考えになっておるのですか、労働省としてのこの点の御見解を聞きたいと思います。
  80. 新保実生

    説明員(新保実生君) ほかの委員会がございましておくれてまいりまして、おわびいたします。  藤原先生が御指摘の点は、生保業界全体にとってまことに大きな問題でございまして、私どもといたしましても、生保業界の外野の制度を近代化する目標に向かって努力しなければならないということは痛感をいたしておるわけでございます。仰せのとおり、大量導入、大量脱落がございます。これはわれわれとしても決して好ましいこととは思っておりませんが、また、他の一面から考えますと、現在の生保の外野の職員の大部分、八割程度の方は家庭の主婦でございまして、初めからこれをもって専業、これだけでもって収入を立てるという方ばかりではないわけでございまして、パートタイム的な労働を望まれて最初からお入りになる方もある。いろいろな方がいらっしゃるわけでございまして、直ちにこれを否定してほんとうの意味の専業外務員だけで生保の外野を固めるということはいささか日本の実情に即しない点もあろうかということは考えておるわけでございます。専業外務員につきましては、仰せのとおり、その方向で努力すべきものと考えまして、実は、先生も御承知のとおり、四十年の十二月に、保険審議会におきまして、募集制度の近代化という目標でどういうことをやったらいいかということで答申もいただいております。それに基づいて、われわれ、生保の各二十社におきましては専業外務員の割合をなるべく引き上げていく。日本の現状におきましては、副業的な外務員というものの存在理由といいますか、社会的な必要性なり意義というものも否定できませんけれども、また、専業的な職員をなるべく多くするということは生保の現状にかんがみまして非常に急務だということで、三カ年計画でもって専業外務員の割合を引き上げていくという目標、計画をつくりまして、それをやっていただいております。いままでの実績を見ますと、わずかずつではございますけれども、その割合は高まってきておるわけでございます。しかし、これをもってわれわれ満足しているわけでございません。  また、大量誘致あるいは大量増員の手段といたしまして、割り当てなり、あるいは懸賞金とか、仰せのような事実が行なわれておるわけでございますけれども、これにつきましても一がいに全部が違法だとは考えておりませんけれども、しかし、中には行き過ぎのケースもあるようでございます。それらにつきましては労働省等の御見解も承りまして是正につとめていきたいと考えております。
  81. 藤原道子

    ○藤原道子君 この試験制度ですけれども、これは大蔵省がやるべきだと思うんです。けれども、試験はいま協会がやっている。ここに問題はないでしょうか。
  82. 新保実生

    説明員(新保実生君) これは三十七年に保険審議会におきまして一度議論された問題でございます。国がやるべきか、あるいは免許制度にすべきか、あるいは協会がやる試験制度にするかというようなことがいろいろな議論されたようでございますが、その当時の結論としては協会がやるということで、しかし、登録そのものはこれは国の責任においてやるということにきまっておりまして、それで現在に至っておるわけでございます。現在の試験制度は、仰せのように、合格率九〇何%という実情でございまして、当初考えました試験制度趣旨に即しておるかどうか、その辺に若干の疑問もございます。そうかといって、これをいま直ちに国家試験に切りかえるということもわれわれ考えておらないわけでございますが、しかし、現在の試験制度については改善すべき点もありますので、その辺はいま検討しておるところでございます。
  83. 藤原道子

    ○藤原道子君 私が聞くところによると、試験問題が事前に漏れて、試験を受ける人はちゃんと問題を知っているんだ、やってもやらなくても同じだと。これは、試験制度を始めましたということの言いのがれにすぎない。したがって、これはしかるべき制度をもってやるのが正しい。その試験制度の運営は、公益、労使三者代表を交えて、そうして構成していくべきじゃないか。登録試験制度は問題が幾多ございますので、将来は国家試験による免許制度実現が好ましいと私は考えますけれども、どうお考えでございましょう。
  84. 新保実生

    説明員(新保実生君) 試験問題が事前に漏れたという事実は確かにございまして……
  85. 藤原道子

    ○藤原道子君 ほとんどです。
  86. 新保実生

    説明員(新保実生君) 私どもそういう事実を確認いたしておりますので、さっそく注意をし、そういうことのないようにするということはやっておるわけであります。また、協会におきましても、自主的にそういうことのないようにという注意はいたしておったわけでございますけれども、一部のところでそういう事実があったこと、これはまことに遺憾でございます。  試験制度そのものをどうするかということは、これはいろいろな点に関連もございますし、影響も大きうございますので、われわれ研究はいたしておりますけれども、いま直ちに国家試験ということは実は考えておらないわけでございます。さしあたっていまの試験制度について反省を加えまして、改むべき点は改めるということで、これは二、三カ月前から実は研究をしておるわけでございます。試験問題の作成、あるいは試験の責任者をどうするかという問題につきましても、私どもとしてはいまのところ保険審議会におきましてきまった線、三十七年度答申に基づく現行制度をいま直ちに変えるということは考えておりません。ただ、改善すべき点があることは事実でございますので、その点についていま研究しておるわけでございます。
  87. 藤原道子

    ○藤原道子君 もっと突っ込んで伺いたいんですが、きょうは時間の制約がございますので、いずれあらためてその点については伺いたい。所によっては試験問題が漏れるというけれども、ほとんどですよ。そうでなければ、九九%の合格率を出すなんという試験がほかにございますか。この点はせひ御検討願いまして、よりよきものをお考え願いたいと考えております。  そこで、労働省にお伺いしたいのですが、本年の四月一日から適用することになった保険外務員の労災保険、これの現状はどうなっておりますか。
  88. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 生命保険会社等の事業におきましては、従来、労災保険の適用は任意適用になっておりましたわけでございます。これが四月一日から五人以上の労働者を擁する事業は全面的に強制適用になりますので、生命保険会社もこの適用を受けるわけでございます。私ども、生命保険会社だけの数字は持っておりませんが、金融保険業として把握しておりますものは、事業所数にいたしまして約三万、その中ですでに任意加入で加入しておりましたものが約一万、残りの二万が今後の対象になる、かように考えておるわけでございます。  ところで、労災保険が強制適用になりましても、問題は、外務員が労働者であるか否かという問題があるわけでございます。そこで、実体的に労働関係ありと判断されますものは当然適用になるわけでございますが、労働関係がないというものにつきましては保険の対象にならない、こういう関係になってまいります。しかし、その関係は、契約の形式とか業務の実体等を総合的に判断いたしまして考えなければならぬわけでありますが、いまそれらの人々がどの程度労災保険の適用を受けますか、否か、この数字は明らかにいたしておりません。  なお、労災保険におきましては、他の保険と違いまして、その事業に適用されます関係上、労働関係が成立いたしますれば、パートタイマーであろうが、アルバイトであろうが、すべての者が適用になるわけでありますから、その適用労働者数が何人で、それがパートタイマーであるかアルバイトであるかといったようなことは別に保険のたてまえ上必要がないわけでありまして、労働関係さえ明確であれば労働者として保険の適用があると、こういう関係にあるわけでありまして、労働者数幾らといったような具体的な数字は手元には現在ございませんが、ただ、強制適用の趣旨から申しまして、恵まれない労働者に適用を拡大するという今回の適用拡大の趣旨を生かすように今後運用してまいらなければならない、かように存じておるわけであります。
  89. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、そこなんですよ。きょうは、最初は、労働者というものの定義ですか、そこから十分お伺いしたいと思っていたんですが、時間がないので省略したわけなんです。それでは、あなたの考えで、保険外務員の中で労働者とみなすものはどのぐらいいると思いますか。
  90. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 人数的な調査は把握はいたしておりません。この問題は、結局、労働基準法の第九条の解釈になってくるわけでありまして、要するに使用従属関係の有無ということから判断せざるを得ない。そして、使用従属関係の有無の判断という点につきましては、たとえば出勤の義務が課せられておるか、あるいは労働時間とか休日がきめられておるか、あるいは業務に関しましてたとえば報告義務があるかどうかといったような事項が判断の材料になろうかと思います。この問題は、保険外務員に限らず、集金人とかいろんな面にあるわけでございます。私どもは、こういった問題につきましては、労働基準法第九条の解釈といたしまして共通の問題であるというふうに考えております。何ぶんにも保険外務員の募集、業務の実体を見ますると、たとえば労働時間的なものが明確でないとか、あるいはその受け持ち区域も、概括的に指定されておるけれども、ことこまかな一々の指定はないという、いわば労働の場所の指定が明確でないとか、あるいは、就業規則の適用関係につきまして、当該事業場の従業員としてたとえば一定の基準に違反した場合には制裁規定が適用されるか否かといったような問題につきまして、不明確な点が非常に多いわけであります。そこで、従来は、一々のケースが労働基準法違反の問題として出てきました際に個別的に実体判断をして処理するということにいたしておりまして、一がいに外務員であるからこうこうこうだという区別をいたすのは実体的にも無理な点があるわけでございます。
  91. 藤原道子

    ○藤原道子君 私はその点をもう少し明確にしたいのでございますが、残念です。五月十五日の衆議院の社労委で川崎代議士の質問に答えて、生命保険外務員の労災保険適用人員数は調査の上報告をする、こういう答弁をなされておりますが、調査はできたのでしょうか。  それから区分は、内勤、外勤の範囲全部あれをされておるかどうか。問題点としては、適用数のアンバランスが相当ございます。失業保険の適用数、それから健保、厚年の適用数が非常にアンバランスになっている。失業問題については、いろいろ御答弁になったのを読んでおりますけれども、それに至る原因が外務員の仕事の内容にかかっているんですね。保険金が成績が上がっているときにはかけている、ところがちょっと下がるともう適用からはずされるというような、非常に微妙な運用がなされておるわけであります。ですから、失業保険、健保、厚年、そして労災、非常にアンバランスのように伺って納得がいかないのでお伺いしたのですが、調査の結果はどんなふうでございますか。
  92. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 調査する資料は、現在大蔵省でお持ちの数字しか私どもすぐには得がたいという状況がございまして、先ほど大蔵省のほうからも御説明がございましたが、現在は一応形式的に把握できるものは大蔵省の申し上げました数字のように承知いたしております。ただ、問題は、労働者であるか否かということになりますと、生命保険会社の規定そのものが多少違う点もございますし、これは一人一人の外務員につきまして労働者であるか否かという判断をなすことはほとんどむずかしいのじゃなかろうかというふうに存じます。そこで、たとえばこの前川崎先生の質問にお答えしましたが、労災保険の強制適用によりまして金融保険業では労働者数が八十一万九千、そのうちで任意加入をいたしております者が約五十一万、これから入るであろうまあ未加入の状態にありました者が約三十万という概数を私ども事業所センサスの調査によりまして把握しておるわけでありますが、生命保険の外務員だけに限りまして労働関係がどの程度の人々が労災保険の適用を受けるかという点については数字を持っておりませんし、これは将来とも把握が非常に困難であろうと思います。  そして、本質的にも、先ほど申し上げましたように、労働者数、パートタイマーであろうがアルバイトであろうが、労災保険のほうは、その趣旨から見まして、業務上の災害によって生命身体がそこなわれたという場合に、その損失をてん補する制度でありますから、雇用期間が何カ月であったとか、日々雇い入れた者であるかどうかというようなことは区別する必要がないわけであります。  そういう意味で、たとえば失業保険のほうで、雇用期間が短い者とか、六カ月未満の者であるとかいろんな制約がございます。これはそれぞれの保険制度の持つ使命から申しましてそういった差があるということはあり得ることでありまして、これは外国の保険制度でも同様なことがあるわけでございまして、日本だけのことではないと私は承知いたしております。そういう意味合いにおきまして、失業保険の適用労働者数、これは一人一人につきまして適用関係を判断せざるを得ませんから、失業保険のほうはかなり人数が問題になろうかと思いますが、労災のほうは、いま申しましたように、その事業に適用がございますので、日雇いであろうが、パートタイマーであろうが、アルバイトであろうが、だれそれという特定人を限定しているわけじゃありませんので、労働関係がございますれば労災保険の適用がある、かようなことになりますわけでございます。したがいまして、事業所センサスによりますと、金融保険業でこれから加入いたします者が三十万ぐらい見込まれるということでございまして、以上申しましたことによりましてほかの保険との食い違いがある点については御了承いただきたいと思います。
  93. 藤原道子

    ○藤原道子君 労働者の定義についてまあ会社側と皆さんとの間にいろいろあるかもわかりませんけれども、あまりにも複雑怪奇ないまの状態でありますから、もう少し検討していただきまして、特に女が多い職業でございますので、非常に不安な働きをしておるわけなんで、しかも、このごろは、交通戦争といわれるように、出歩く仕事でありますので、身近な危険を感じながらやっておる。こういうところに少し思いをいたして、もう少し検討していただきたいと強く要望をいたしておきます。  私、きょうはここに資料を持ってきているんですけれども、もう委員長に言われた時間が来ちゃったんです。というようなことで、いずれあらためて御質問したいと思います。  そこで、職安局長にお伺いいたしたいのでございますが、一年間に三十万人以上の人を集め、三十万人が脱落している、その実態の中で、会社が、金品、利益を提供して人集めをしているようです。しかも、人集めの方法で、金品、利益を提供する以外にも、上司が就職あっせんをして、人を得た場合には、その人は賃金が上がるような仕組みになっておる。それから身分も上がる。それから利益も配分になる。いろいろ複雑なようでございますが、こういうふうな金品、利益を提供して人集めをしているということは、法律に抵触しないでしょうか。
  94. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 職安法四十一条の規定によりまして、財物利益の供与は禁止されておりますので、これに該当する場合には違反になるわけでございます。また、本人のみならず、御指摘のような上司に当たる管理者の立場にある方、あるいは法人等の役員で、そういった計画を知りつつ防止に必要な措置を講じなかったような場合、御承知のように、職案法の六十七条でそういった場合にも、違反、罰金の規定がございますので、これらの諸規定を十分活用いたしまして違反防止につとめてまいりたいと思います。
  95. 藤原道子

    ○藤原道子君 たとえば、外務員のAが新人Bの入社をあっせんする。そうすると。二千円から三千円程度支給される。この新人Bが成績をあげると、その成績の半分がAに加算される。この新人Bが所定の成績をあげて職員になると、Aは数千円の支給を受ける規定がある。まあこういうことがある。金品支給のほかに、旅行招待、観劇招待、招宴、食事提供など、いろいろある。こういう場合に違反になる場合もあるといまおっしゃったけれども、違反としていままでこれに処分なさいました例がございますか。
  96. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 御指摘のような事例につきましては、いわゆる成績加算制度といわれておるものでございますが、これは四十一条違反に該当する場合があると考えられまするけれども、同時に、また、実費弁償については違反にならないという問題もございまして、この辺の判断が非常にむずかしい場合が相当ございます。私どもも今日までそういったケースについて、違反摘発をいたした事例はほとんどないのでございまするが、御指摘のような事例も今後募集にからんで弊害が出てくる可能性がございますので、会社側を十分指導いたしまするとともに、違反については厳正な態度で臨んでまいりたいと思います。
  97. 藤原道子

    ○藤原道子君 そういう例があればとおっしゃるけれども、もう公然と行なわれているんですよね。それが一件も引っかからないということがおかしい。だから、ごらんなさい、いろいろなビルが建つのは、保険会社か銀行ばかりじゃありませんか。そのもうけを与えておる先端で働く労働者の待遇――勧誘に行ったときに出すマッチ一つでも外務員が全部買っているんですよ。会社の名入りのマッチを自分が低収入の中から買ってサービスをして保険を勧誘している。ところが、それによって、こういう明らかに違反行為ですよ、それが一つもあがっていないというのは納得がいきませんが、時間に急がれますので、この次にいたしたいと思います。追いかけられるような気持ちで質問いたしておりますので、非常に残念でございます。  そこで、私は、生命保険外務員の不安定就業実態は、いろいろな数字に示されているように、見れば見るほど驚いているんです。労働対策の責任のある立場から、労働大臣の御意見を聞きたいんです。職安局長に質問いたした人集めのための人買い的な実態は、戦後二十年間、何らの対策もとられておりません。野放しになっております。五月十五日の衆議院社労委での大臣答弁は、十分調査して峻厳な態度で臨みたいという趣旨であると私は読み取りましたが、具体的にはどういう処置をとるのか。以上の問題点は、人権、婦人、社会問題の見地から見ても非常に重大だと思いますので、ひとつ大臣の御意見を伺いたいと思います。
  98. 小川平二

    国務大臣(小川平二君) 生命保険の外務員につきましては、先ほど来御答弁を申し上げておりますように、雇用関係の明確ならざるものが多いのでございます。一部の外務員につきましては、これらの点がだんだん改善されていく傾向も見られるのでございまして、この関係が明確になるのに伴いまして、失業保険の適用も逐次拡大をしてまいりたいと存じております。  また、ただいま御指摘をいただきました労働者の募集に際し、法律上許してあります限度をこえた金品の提供、報酬の供与が行なわれておるという事実がございますると、これは職安法の違反でございますから、大蔵省とも連携をとりまして十分調査もし、また指導をしてまいりたいと存じます。  また、外務員の雇用が非常に不安定であるという御指摘でございますが、実際問題といたしまして短期の離職者もきわめて多い現状でございます。最近における労働力需給の逼迫という事実を背景にいたしまして、かような点も逐次改善されていくとは存じますが、私どももあとう限り努力をいたしまして不安定な雇用の解消につとめてまいりたい、このように考えております。
  99. 藤原道子

    ○藤原道子君 とにかく、わかっていながらわからないんです。きょうまで放置されている。もう許せない段階に来ている。私はまた日を改めて御相談の質問をしていきたいと思いますが、責めるつもりじゃございません。安心して働けるような労働条件をつくってほしい。法律に違反しているなら、その身分がどうあろうとも、違反は違反で処分していただきたい。一つ二つが処分されたならば、勢い是正される結果になるのじゃないでしょうか。この点、職安局長にも強く要望いたします。大臣の今後の峻厳なる態度、これを期待いたしまして、きょうは質問を終わりたいと思います。
  100. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 他に御発言もないようですから、本件の調査はこの程度にとどめておきます。  午後一時まで休憩いたします。    午後零時五十五分休憩      ―――――・―――――    午後一時二十五分開会
  101. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) これより社会労働委員会を再開いたします。  休憩前に引き紡ぎ労働問題に関する調査議題といたします。  日本原子力研究所の労働問題に関する件について調査を行ないますが、本日は、本件調査のため、日本原子力研究所理事楠瀬熊彦君及び日本原子力研究所労働組合中央執行委員長鶴尾昭君の御出席を願っております。  この際、参考人の方に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ御出席いただきまして、まことにありがとうございました。労使双方から実情について御報告を願うとともに、忌憚のない御所見等を拝聴いたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。  では、これより御発言を願うのでございますが、まず、参考人の方からお一人十五分程度で御発言を願い、それからあと委員からの御質疑に対しお答えを願うようにいたしたいと存じますので、その点をあらかじめお含みおきをお願いいたします。  それでは、まず、楠瀬参考人よりお願いいたします。
  102. 楠瀬熊彦

    参考人(楠瀬熊彦君) 私、ただいま御紹介にあずかりました楠瀬でございます。  時間もございませんので、当面原子力研究所が取り扱っております労働問題につきまして、概要を事実につきまして申し上げます。なお、それにつきましての御質問には、また後刻お答えいたしたいと思います。  まず、第一に、好村滋洋君の留学に関する問題を申し上げます。  好村君は、昨年、原研を退職されまして、イギリスのハーウェル研究所に留学されました。問題は、留学にあたりまして、好村君はまあ従来イギリスといろいろ交渉されておったのでございますが、最終的に原研理事長の許可を得ずしてハーウェル留学の契約にサインいたしまして送付しておるということが判明いたしました。御承知のように、原研といたしましては、外国へ参る場合に、それが出張でありましょうとも、あるいは会議に出席するためであっても、あるいはまた留学でございましても、必ず理事長の許可を受けることになっております。これは就業規程の第七条で明定されておりますし、なお、好村君の場合は、外国の資金による留学でございまして、原研といたしましては外国の資金によって留学する場合にも特別の規定がございます。それによりましても、理事長の許可を得なければ留学ができないという定めになっておるのでございます。好村君は、理事長の許可なくハーウェル研究所に対して留学を承諾し、条件をのむということで署名をいたしまして契約を締結をしております。その事実がわかりましたので、原子力研究所といたしましては、理事長の許可のない留学でありますので、中止を命じたわけでございます。  それに対しまして、一応、御本人から、留学中は休職にしてもらいたい、それで帰ったら原研をやめよう、こういう御提案がございましたが、それは拒絶いたしました。そうして、留学を原研が中止を命じたのでございますが、御本人がどうしても行きたいという場合には、原研をやめていらっしゃる分には、これは原研としては何ら干渉すべき問題ではございません。しかし、現職のまま理事長の許可なく留学することについては、これは処分の対象になるわけでございます。その結果、任意の退職を決意されまして辞表を提出されたのであります。私どもはそれを受理いたしまして、御本人は現在ハーウェルにおります。これが現状でございます。  それをいま原研労組が取り上げて、本委員会に問題を持ち出しておられるかに聞いております。  好村君の事情は以上のとおりでございます。  次に、東海村に東海研究所が原研としてはございますが、原研といたしましては、外部の方々並びに職員のために原子炉研修所を設けております。そのほかにRI関係、ラジオアイソトープ関係の研修所もございます。これは現在東京にございます。このRI研修所の講師は大体六十名ないし八十名くらいの間で任命いたしておるのでございますが、外部からも講師を御委嘱いたしておりますし、また、職員の中からも講師を任命しております。  四十三年度の状況を申し上げますと、まず四十三年度の上半期五十七名が発令されております。これはちょっと注釈をいたしますと、原子炉研修所の講師は、毎年二回に分けて任命いたしております。大体の目安といたしましては、半年ごとの交代ということにいたしております。これはいろいろの事情で全年を通じて同じ科目もあればいろいろ変わった科目も出てまいるということから、こういうシステムになっておるわけであります。四十二年度年度の上半期は八十一名任命しております。  ここで申し上げたい点は、講師の任命を部内からする場合におきましては、これはもう私から御説明申し上げるまでもなく、職員として講師を任命する。組合の委員長であるとか役員であるとか、そういったことは全然考慮に入れておりません。職員として講師を任命する、こういうたてまえをとっておるのでありまして、これは十分おわかりのことと思うのであります。  それで、毎年講師も相当量入れかわっております。ちょっと実例を申し上げますと、四十二年度上半期に任命されまして、ことし四十三年の上半期に任命されなかった者は三十名でございます。そのうち労組役員経験者は八名おります。それから、四十二年度下半期に任命されて四十三年の上半期に任命されなかった者は二十八名ございます。このうち労組役員経験者は五名でございます。  以上申し上げましたように、講師に任命する者は、そのつどの事情によりまして、原子炉研修所長が研究担当部門の部長と相談いたしまして、あらかじめ講師の候補者を予定いたします。それを提出いたしまして、理事長の決裁を得てはじめて任命される、こういう段取りをとっております。したがいまして、くどいようでございますが、講師に任命することは、理事長の人事権と申しますか、権限と申しますか、あるいは専決権と申しますか、理事長の権限において任命するものでございまして、講師に任命を要求したり、あるいは任命されなかったことについて不満を申し入れるということは筋道として許してはおりません。あくまでも理事長の職権において任命しておるというのが実情でございます。  たまたま、今回の上半期の講師の中から、現在の労組委員長であるここにおいでの鶴尾さんが除外された、そのほか二、三の組合役員の方が除外されたことについてでございますが、そのことにつきましては、ただいま申し上げましたように、炉研修所長が訓練のいろいろの種類によりましてそのつど研究部門の部長と相談いたしましてきめたことでございまして、労働組合員であるとかないとかということは、ただいま申し上げましたように、全然考慮外の問題でございます。  なお、つけ加えて申し上げておきたいことは、ただいまも申し上げましたように、これは人事上の就業命令と申しますか、作業命令と申しますか、命令によって任命されるものでございまして、労働条件の維持改善等に関する本来の労働問題ではございません。したがって、所の見解といたしましては、この問題は労働問題あるいは団体交渉の対象にはならないと、こう考えております。過般、組合のほうから、この問題につきまして団体交渉の申し入れがございました。しかし、所といたしましては、本件は団体交渉の対象となる事項ではないということで組合を説得しております。今後といえども、この問題に関しまして組合の団体交渉に応ずる意思は所としてはございません。  以上が大体の講師問題のいきさつでございます。最後に、昨年、御承知のように、JPDRの運転制度につきまして世間をお騒がせ申し上げたことはまことに申しわけないと思うのでございますが、あの問題は、相互の主張が激しく対立した問題ではございましたが、結局、四月になりまして労働組合との間に円満に協定が締結されましたので、ただいまでは問題はございません。  協定の内容は、すでに御承知かと思いますが、交代時間につきまして十五分間の余裕を設ける、ただし、この十五分間の時間は、これを超過勤務にかえたり、あるいはその時間を集積いたしまして休日に振りかえるということは絶対いたさない、単純に十五分間を延長してこれを拘束時間とするということで組合と妥結いたしました。したがって、この問題は、ただいまでは円満解決いたしたものと考えております。  はなはだ行き届きませんが、ごく概略を申し上げますと、以上のとおりでございます。
  103. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) ありがとうございました。  それでは、次に、鶴尾参考人にお願いいたします。
  104. 鶴尾昭

    参考人鶴尾昭君) 日本原子研究所労働組合中央執行委員長鶴尾でございます。  こういう国会の場でなければ、原研の労使関係というものが原研の内部だけで解決できないいろいろの問題があるということは、私はそれなりに残念なことだと思っておりますが、実は、原研の労使問題が国会で取り上げられましたのは、今回が初めてでございませんで、四年ほど前に衆議院の科学技術振興対策特別委員会で原研の問題が取り上げられまして、そこで労使問題も含めまして五項目の決議がなされております。その五項目の決議と申しますのは、大要を御説明申し上げますと、  第一項は、原研が、今後、開発研究に重点を指向するとともに、これと不可分の基磯研究分野における有機的な結合をはかる。  第二項は、学界、産業界との協力を強め、人材を養成する。  第三項は、研究者、技術者に対する所要の体制を確立するとともに、労使協定、労務管理を整備し、所内規律の確立をはかる。  第四項は、研究者、技術者の処遇の改善をはかり、施設の拡充にあたってこれに見合う要員の確保を期する。  第五項は、原研の予算運営にあたって、会計法規の弾力的運用をはかる。  この五つのことを総合的に運用して日本の最大の研究所である原子力研究所を発展させていく、こういう点で国権の最高決議機関としての国会での決議がなされているわけでございます。  この国会決議の中で申し上げましたように、第三項のように、労務管理を強化して所内規律をきびしくしろというような条項は、労働組合として必ずしもたいへんありがたいと言うわけにいかないような内容を含んでいるわけではございますけれども、いやしくも国会でそのような五項目の決議がなされまして、そういうものを総合して運用していくことによって研究を発展させていくという意思が明確に出されました以上、労働組合としても、これを尊重していくと同時に、こういうものを通じて労使の相互信頼の回復もはかれる、そして研究が発展されるならば、これにすぐるものはないと、そういうぐあいに思って努力しておったわけであります。  このような決議がありましたあとで、政府のほうも、どういう事情か、原子力委員長も次々にかわりまして、私がこの二年間委員長をつとめておりますが、その間に三回原子力委員長、科学技術庁長官の方がかわられております。まあそういう中でこの五項目の決議が総合的に推進されたかどうかということが重要なのではないかと思うわけであります。ところが、私どもの見るところ、この五項目の決議が総合的に進められたということはどうしても考えられないのであります。  まず、研究が発展させられていったかという点では、前記の国会決議がなされました三十九年四月直後に、現在の理事長の丹羽周夫理事長が来られまして、そこでは今後は原研はかなりよくなるのではないかという一種のみんなの期待があったわけでありまして、また、理事長も、たとえば「日本原子力学会誌」の巻頭言に、国家の目的で研究をやっていくにあたって、どうしても研究者やなにかの間に摩擦が生ずる、フリクションが生ずる、こういうフリクションをうまく管理して、そうしてみんなをまとめていくのが管理者の役目であると、こういうことを述べられておりました。ところが、残念なことに、研究者の中では、一体これからどうなっていくのかという点で非常な不満、不安というのが起きております。  たとえば、理事長が来られましてから、原研の一番大きな任務は動力炉の開発なのである、こういうことをぶたれたわけでありますが、残念なことに、動力炉開発という大きな柱は、昨年、動力炉・核燃料開発事業団というのができまして、そこからいろいろ委託を受けていくということになって、それでは、一体、原研の主体性はどうなるのだろうか、どんな仕事のしかたをしていけばいいのか、どうも納得がいかない。特にこれは、開発を担当しておる研究者、技術者の中から非常に強い不満が出ております。  第二の、人材の確保、処遇の改善についてつとめるべきであるという項でありますが、人材の確保どころか、流出の現象というものは、これは理事長も認められているわけでありますが、この数年間に、研究歴十年ないし二十年の研究者の約三十人の人が原研から流出されております。このクラスの人というのは、原研全体で百数十人の程度でございますけれども、そういう中で一番中心的な研究員が流出していくわけでありますから、この三十人という数字は、われわれの研究者の気持ちとしては、何といいますか、からだがそがれていくような、そういう感じのする方が多いわけであります。そういう中で、本年度は人員増加というものがほとんどゼロである。事業量はふえているのに実質増員がゼロという、こういう状況でございます。  それでは、少ない人数でもって待遇はかえって大いによくなったのかというと、そうではございませんで、わかりやすい例を申しますと、たとえば原研とほぼ同じような立場におります特殊法人――幾つもございますが、道路公団でありますとか、住宅公団でありますとか、そういう特殊法人の中の大卒初任給というものが、大蔵省の指導では二万九千四百円というようなことになっておるわけでございますが、原研だけはそれより二百円低い。原研などは、初任給調整手当というようなものが研究者に対して出されているような事情があるにもかかわらず、そういう政府の全体の方針に反して初任給が他の特殊法人よりも低い、こういうようなことはどういう意味なのか、われわれは全く解しかねるわけであります。  そういう研究者の不満、こういうのは研究者だけじゃございませんで、たとえばまじめな事務屋さんの間にもそういう意見が強くて、たとえばこれは「原研」という原研当局で出しております雑誌でございますが、ことしの予算折衝で折衝期間中の五日間は毎晩二時間足らずしか眠れなかったという担当のSさんは”敗軍の兵涙を流す”と題して、残念ながら原研は無配会社に転落した、もうだめなんだという意味のことを論じておられます。私は、労働組合の委員長としましては、研究所を株式会社と間違えるような発言をすること自体に対しては若干疑問がございます。正しい表現ではないと思いますが、こういう所の管理の中枢におられるまじめな職員にもこういうことばをはかせるその職員の気持ちというのは、痛いほどよくわかります。  じゃ、そうすると、何がなされておったかというと、こういう総合的な発展ということとは離れて、ただ労務管理の強化だけで、第三項のところの強化というところだけを、真の意味を歪曲して、労使の信頼関係を失わせるようなかっこうで、決議全体の精神を無視するようなかっこうで強行されておる、 ここに問題があります。そして、それは、極端な場合には、労働法さえ無視しているという事実があるわけでございます。たとえば、この間の労使紛争にあたりまして、われわれは、動力試験炉というもの、これはいま来ております原子力潜水艦なんかに積んでおります原子炉とほほ同じくらいの大きさの原子炉が原研に発電用の実験炉としてありまして、そこでいろいろ研究を行なっておるのですけれども、そういうところでどういう勤務をするかということに関しては、昭和三十八年に労使協定がございます。この労使協定というのは、労働組合法の十五条第三項によりますと、無期限の協定でございましたので、明確な破棄の文書通告後九十日たたなければ破棄できないわけでございますが、実はこれを改定しようという通告があってから四十日程度でもって、しかも大みそかに近い暮れの十二月二十七日というような時点でこれを一方的に破棄してくる――破棄するというか、破棄の通告もなしに業務命令が出てくる、そういうことが行なわれるわけであります。こういう状態が、一体、労使信頼関係が持たれるかどうか、私は持たれないと思うのです。  でも、私どもは、いろいろそれで忍耐いたしまして、いろいろなことがあった結果、ストライキ、それに対するロックアウトというようなことがございまして、私どもは、研究を発展させるというようなことから、これ以上なにを大きくしないために、直ちにストライキを回避したわけでございますが、それ以後三週間余りロックアウトが続きました。こういう中で、たとえば、御承知のように、放射線を扱っておるわけでございますから、血液検査などが法律上必要でございますが、そういうようなものも中止される。共済会とか生活協同組合とか、ああいう東海村という僻地で生活を維持していくために必要な施設の利用も十分にできない。労働組合事務所への立ち入りも禁止である。そういう人道上の問題もございますし、特に研究者をおこらせましたのは、三月から四月にかけて学会シーズンのその研究発表も禁止されていく、こういうようなことが行なわれました。  こういうことに関しましては、たとえば五月十八日の「朝日新聞」に次のように載っております。茨城地方労働委員会は、「ロックアウトは会社側の権利ではなく、労働法では、正当防衛、緊急避難の場合のみ行使できることになっている。従って、スト解除後のロックアウトは行過ぎだ。」というようなことを、「一般論になるが」と前置きして言っておられます。あるいは、「週刊読売」の記者としておいでになった評論家の奥野健男氏は、「今日の労働運動の常識では考えられない前近代的、ウルトラC級の労組対策がとられている」ということをお書きになっていらっしゃいます。これが実態かどうかは私は論評いたしませんけれども、第三者にそのような感じをさせたということは御指摘したいと思います。  それから、歴代委員長を原子炉研修所講師からはずしておりますような問題、これにつきましても、ただいま楠瀬参考人からいろいろ申し上げられましたけれども、それについての参考資料は皆さまのお手元に時間の関係もございますので配付してございますが、きわめて形式的な御意見ではないかと私は存じます。これは、現実に、特にこの数年間、昭和三十九年のそういう国会決議がなされて理事長が交代されて以後の歴代中央執行委員長を一挙に何の理由の明示もないまま講師からはずす、こういうことについては、研究者の間では非常に大きな憤激が起こっております。現在の時点で、これを、特に学術会議の会員の選挙資格者、これが日本の法律で科学者ということに規定されておりますけれども、そういう原研の中の科学者のうち四十五人の方が発起人となって署名活動なども進めておられます。この科学者の中には、労働組合員以外の方も含んでおられます。そういう点で、このことの持っている内容意味ということがおわかりいただけるのではないかと思います。  まあまとめて言ってみますと、私どもの労働組合は、研究を一番大事にしております研究所の労働組合らしい、まじめな、そして民主的な運営を大事にしておる労働組合でございます。でございますから、あの三十九年の国会決議のように総合的に研究所の発展というものがなされており、人員の補充もあり。それに応じた処遇の改善もあるならば、決して大きな問題は生じないのではないだろうか。それが、国会決議の精神がゆがめられて、ただ一部だけを拡大して精神をねじ曲げて適用されている、そういうところに問題があると、私はかように感ずるものでございます。
  105. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) ありがとうございました。  それでは、これより参考人に対し御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  106. 大橋和孝

    大橋和孝君 それじゃ、参考人の方々にちょっと御質問をさしていただきたいと思います。  まず、委員長のほうへお尋ねいたします。  研究者の間に、研究を進める上で、先ほどお話しになりましたように、不満な点が大きいと言われているわけでありますが、一体、どのようなものであるか、また、それに対してはどういうふうにお感じになっているのか、もう少し具体的に聞かしてもらいたいと思います。
  107. 鶴尾昭

    参考人鶴尾昭君) お答えいたします。  基本は、やはり、原研がこういう国家の大きな体制の中でどこに行くのか、そして国家自体の原子力政策は原研を使ってどういうぐあいに行くのか、その辺が、いろいろ機構いじりは一ぱいあるのだけれども、具体的に仕事をしていく上でどうなっていくのかさっぱりわからない。この辺は、新聞でもいろいろ論評されておりまして、お手元に配っておまりす「朝日新聞」その他の記事などにかなり具体的に書いてございますので、研究者の気分というのを少し御紹介したいと思うわけでございます。  それで、私がいま持っておりますのは、日本原子力研究所当局が出しました「理事長懇談会における問題点のまとめ」(第二集)というので、ちょうど私くらいの、現在十年前後のところを集めました人たちの懇談会での記事でございます。いろいろ研究所当局がとったアンケートが集計されておるわけでございますが、その中でどういう問題に関心があるかといいますと、わが国の動力炉開発方針であるとか、研究成果と研究所運営であるとか、研究炉の将来計画であるとか、あるいは先ほど楠瀬参考人が申しました好村問題であるとか、これがたとえば三六・三%というような高率で述べられておりますが、具体的には、たとえば気分を御紹介いたしますと、こんなふうでございます。「外国に留学するばかりでなく、留学生の受入、外来・協力研究員制度の活用等により、第一線で活躍している研究者と互に刺戟しあう必要がある。それには宿舎・給料等の問題がもっとよい方向で解決されなければならない。現状のままだと、東海の孤島を老兵が死守するようなことになりかねない」とか、あるいは、別のもので、「原子力政策の安定化、それを進めるための妥当な裏づけと評価はないように思える。目標に対し職務を満足に果せる体制を確立し支援をつづけてほしい。人員や予算現状のように極端に少くすると予想以上の退化が結果として生ずるのではないかと非常に恐れている。」とか、「政府の原子力政策の基本的な方針が立って、それに沿って長期的な研究計画又は開発計画を立てないかぎり、我々の年齢のものがいかに熱意を示してもどうしようもないのではないか。現状ではあまりにもその場かぎりのことが多いように思う。この国としての計画性の無さが原研全体の将来を不安にしている原因であると考える。」とか、また、「今、原研は本当に研究者を大切にし、その研究を伸ばす方向で運営されているだろうか。(例えば好村事件、その他)研究部、その他の部長、担当理事及び室長がもっと本来の権限を発揮すべきではないか。今はやとわれマダム的な存在になっている。」とか、「最近不明朗な人事が多すぎる。管理体制の強化のみが上層部の頭の中で先走っている。特にサービス部門では専門的な知識、経験を下に仕事をすすめてゆくのが最も現実に即していると思う。」とか、「仕事は多い、しかも人員は極度にたらない。理事長はPu-Thermalもやる、JPDR-Ⅱ……もやるという事業の構想を拡大するにだけ急で、仕事の質的、量的、度合、困難さを考慮に入れて実務家的な面でしっかり問題を把握しているのか。我々中堅層がいなかったら”原研はどこへゆくのか?”我々の怒りに近い使命感でかろうじて原研は支えられている。」とか、あるいは、「今の原研の研究員は給与よりも、地位よりも、原研にいることによって研究者の能力をうたがわれてしまうような事態をもっとも恐れて悩んでいる。」と述べております。このような気分というようなものを研究所当局のアンケートに対しても書かなくてはいられなかった気持ちというのは、お汲みいただけるのではないかと、そのように思います。
  108. 大橋和孝

    大橋和孝君 たいへん不満な状態を聞きまして、これはあとから科学技術庁に対しても一ぺん御質問をすることにいたします。  次には、ロックアウトの問題でありますが、ロックアウトによって動力試験炉の運転を直接担当していないところの研究者の研究が著しく妨げられたり、はなはだしきに至っては、いまの御意見を聞きますと、学会発表も一研究所当局に禁止されていると聞きますが、どの事実があるのでありますか、こうした事態の発生に対しまして労働組合はどういうふうに処置をとってまいりましたか、このことについてお伺いしたいし、理事の楠瀬さんのほうに対しましては、国会の決議にも学会との協力を強めて人材を養成するという事項があり、また、原研法にも研究成果の普及という義務があるのでありまして、長期にロックアウトをしてこのようなことをさせないという態度をとってこられたということは、学会に対してとった態度というものはわれわれにとってはわからないわけでございますが、その点についてお答えを願っておきます。両氏から……。
  109. 鶴尾昭

    参考人鶴尾昭君) 争議の行なわれました動力試験炉というのは、研究所の機関でございますから、ただ原子炉を動かしていればいいというだけじゃございませんで、原子炉を動かす人は大体十人一組でもって五つのクルーで交代に運転するわけでありますが、ほかにその同数の五十何人かの方で研究をされたりなんかしておるわけでございます。それで、この争議にあたりましても、われわれが当初ストライキをかけましたのは、この中で直接運転に当たる一班十人という方々だったわけでありますが、ロックアウトは、その研究に当たられている方も事務の方等も含めまして百人余りの方にロックアウトがかかってきたわけであります。  そういう中でいろいろな方が研究発表ができなくなりまして、しかも、それがストライキの中止後三週間にもわたりましたので、たとえば三月十八日から二十日に京都で行なわれました保健物理協議会、これは放射線などの安全のための学会でございますが、そういうところで、停止中の動力試験炉内の放射能線レベル測定、こういうことを行なっておりました安全担当員の発表ができませんで、それで、その人などはどうしたらいいだろうと課長に聞きましたところ、ロックアウトが学会開催の直前に解かれることを予想して発表できることを準備しておきたまえと言われたのですけれども、結局、ロックアウトは続いて、出張命令は出せない、そういうことを言われて研究発表ができなくなりました。  そういう方はたくさんおりまして、たとえば、はなはだしい方は、本務は動力試験炉でございますが、半分くらいの比率でナトリウム研究室という新しいタイプの原子炉のための研究室にずっと行っておられて出張などをされておった。それで、そういうような人の研究も、おまえは本務がJPDR、動力試験炉なんであるからというのでこの研究所もストップを受ける。そういうようなことがいろいろ続きまして、こういうことはたいへんまずいことだ。  いままで、実は、原研労働組合は、十年間の間に何回かストライキもいたしまして、それにはたまたま学会の発表と重なるというようなことはあったわけでございます。そういうようなときば、私どもは、学会当局の方には、結局、学会発表者にはストライキはかけない、そういう態度でもって臨んでおったわけでございます。これは十年間の慣例でそのようになっております。そういうことも加味しまして、いろいろ私どもは交渉したのでございますけれども、もう非常に硬直した答えしか返ってきませんでした。  しかも、百人というような事態になりますと、三月の末に早稲田で行なわれました原子力学会のある部門が、くしの歯が抜けてしまうようにごそっとなる、そういうことも考慮いたしまして、私自身も原子力学会員でございますけれども、原子力学会に対しまして、その担当の品川理事、大阪大学の教授である品川先生にお会いいたしまして、このような事態があって、労働組合としては、たとえば出張旅費等々の問題があれば、これは労働組合当局で労働組合自身のほうで立てかえてもいいんだけれども、どうも研究所当局が、こういうわけで、参加した場合には処分するようなことも交渉の席上ではにおわしておる、そういう状態もありましたので、いろいろ御了解していただくようにいたしました。品川先生は趣旨は御了解してくださいまして、ちょっと研究者としては考えられませんけれども、まあ事態が円満に片づくようにと述べておられました。  以上でございます。
  110. 楠瀬熊彦

    参考人(楠瀬熊彦君) ただいまの大橋先生のロックアウトの問題につきまして、九十日前に予告をしないでやったのはどうか、こういう御質問でございますが、実は、五班三直制を四班三直制に切りかえるべきだという問題は、四十一年ごろからすでに話を始めておるのでございます。たびたび交渉を持ったのでございますが、らちがあかない。しかも、本年の二月に入りますと、新しい運転体制に入りますので、この五班三直制につきましては大方の方は御承知かもしれませんが、世間の非難を浴びた制度でございました。つまり、JPDRは、いまから四年ほど前に始まったのでございますが、その当時の事情は、JPDRという炉は、初めての原子炉でもあるし、未知の分野も多いということからいたしまして、万全を期そうというたてまえから、一応五班三直制でスタートしたわけでございます。ところが、その後年数を重ねまして、運転員も習熟いたしますし、監督者も習熟いたしました結果、必ずしも五班三直制のシステムに乗ってやる必要はないと。これは関係類似団体を私どもで調べましたが、約二十五社を調べたのでございますが、五班三直制を採用いたしております会社は一社もございません。みんな四班ないし三班でやっております。日本全体といたしましても、五班三直制をやっている会社なり工場はないではなかろうか。全般的に調査いたしたわけではございませんので、確たることは申し上げかねますが、日本におきましてこうした運転体制というものは少なくとも常識上は四班三直制でやるべきだという私どもは判定に立ちまして、久しい以前から四班三直制を施行すべく組合ともしばしば団体交渉いたしまして接触をいたしたのでありますが、がんとして要求に応じないという事態が続いてまいりまして、一方、社会的批判というものも相当きびしいものが出てまいりまして、どうもこのままではいけないという判断に立ちまして、昨年十一月に組合と最後の交渉に入ったわけですが、その交渉におきましても、組合は、納得しない、こういう状況でございましたので、万やむを得ず業務命令でこれを実施に移すという行動に出たわけでございます。  その後、組合は、二月二十一日、JPDRの改修後の運転体制に入ろうという直前において、第一班は無期限ストを打ってきたわけであります。これは、御承知かと思いますが、五班ございましてあるいは四班ございまして、第一班は午前八時から午後四時までの勤務でございます。次は午後四時から八時まで、次は八時から四時までというふうに次々に運転を引き受けてまいるわけでございますので、第一班がストに入りますと、第二班が八時間かかって再起動いたしましてパワーアップする、そうして八時間後にパワーダウンしなければならないという状態は、安全性からいたしまして非常に危険であるというふうに私どもは判断をするわけであります。言いかえれば、組合の第一班が無期限ストに入ったために、動力試験炉の運転というものは遺憾ながら全面的に停止せざるを得ないという事態に逢着いたした次第であります。  そこで、私は、この支障を防ぐために、臨時編成の班を第一班にかわって投入しようといたしたわけでございますが、その際、原研労組は、その交代要員に対して、さらに二十四時間のストを打ってまいりました。したがって、原子炉は動かないままに終わったのでございますが、さらにその次回の午前八時から二回目の交代要員に対する二十四時間ストを打ってまいりました。さらに第三回も同様の挙に出てきたわけでございます。私どもは、この事態を放てきいたしますと、永久に原子炉、動力炉の運転はできない、それでは研究上支障があると考えまして、そこで初めてロックアウトに入ったわけでございます。ロックアウトに入ると同時に、組合は、その日のうちに、ストを解除するという通告をしてまいりました。私は、この組合の態度については私なりの意見はございますが、これは申し上げません。それで、私どもは、できるだけロックアウトを解くべきだと。ロックアウトが防御的、予防的措置であることは、私も十分承知いたしております。しかし、当時におきます組合の情勢というものは、直ちにロックアウトを解除する情勢ではなかったのでございます。戦うかの姿勢が非常に強くて、これは組合の当時のニュースをごらんいただければわかると思うのですが、長期に戦うんだと。五、六月になりましても、これは参院選もあるし、いろいろの政治的な問題もあるであろうが、そういう事態までも労働組合は長期的に戦うんだということを組合ニュースで言っております。私は、そういう情勢下におきまして、何とかして組合との間に四班三直の結論を出したいとたびたび団交を申し入れましたが、応じません。片や、ただいま申し上げましたような組合の情勢を勘案いたしまして、ロックアウトをいま解くべき時期でないということで、約三週間後に初めて組合が団交に応じてまいりまして、先ほど申し上げましたような趣旨の意見に同調して円満解決をしましたので、直ちにロックアウトを解除したわけであります。  したがいまして、九十日以前にやるべきだといういま大橋先生のお話でございますが、事実上はすでにそういう問題はずっと以前から所としては組合に開陳いたしておるわけでございます。幸いに、四月に入りまして、先ほど申し上げましたように円満解決いたしましたので、私はこの問題についてはこれ以上申し上げる必要はなかろうかと、こう考えております。
  111. 大橋和孝

    大橋和孝君 ちょっと理事さんのほうにお伺いしますが、先ほどの研究者の不満の問題、これはやっぱり国会の中でもかなりこうした問題は重要視されて附帯決議もつけられておる。同時に、また、こういうような重要な研究でありますからして、研究者も熱心にやっておられるわけです。先ほど聞けば、涙をのんでいろいろ訴えられている。こういったようなことも、理事者側でも十分わかっていることだと思う。今度のロックアウトの問題に対しても、そういうようなことは九十日いかなくてもと言っておられますけれども、ロックアウトをやることは明示してすらないようなふうに聞いております。  それからまた、特にそういう研究上重大な使命であるのに対して、学会に出られないということに対しては、何か特別な処置をとられたのかどうか。ことに、学会というのは、年じゅうあるわけじゃない、学会のシーズンがあるわけでありますから、少なくとも理事者側でこうした重要な研究の問題を取り組ませるならば、学会に対して特別な処置をすべきじゃないか。それもあえてやって、そして既定方針どおりにやらなければ承知をしない、こういうふうな弾圧的なことをもう少し――この法案のときの附帯決議の中を見ましても、もっと柔軟に問題を取り上げて研究発展のために尽くすべきだという附帯決議をされておりますけれども、そういう観点から言うと、どうもあまり柔軟性がない、私はそういうふうに感ずるわけでありますが、一体、担当理事としてどういうふうに考えておられるのか。学会に対してどのような態度をとられたのか、また、理事者側としては、学会に対してはどういうふうに考えておられるのか、ここのところをお聞かせいただきたい。
  112. 楠瀬熊彦

    参考人(楠瀬熊彦君) ちょっと申し忘れまして、申しわけございません。ただいまの鶴尾委員長説明につきまして、全面的に必ずしも鶴尾委員長の事情のとおりではございません。ロックアウト中に確かにその問題は起こりました。学会につきましては、私は、行くべきだと、また、出させるべきであると了解を与えております。したがいまして、事実行っておるはずでございます。  ただ、問題は、ロックアウトは原研始まって以来のことでございますし、特殊法人の中でも初めてやった事柄でございます。また、やるにつきましても、原研労務担当当事者といたしまして、必ずしも経験があるわけではございません。したがって、やることにつきましてかなり混乱も初め予想したわけでございますが、やりました結果は、幸いにして事業場閉鎖も円満に済みましたし、それから組合本部の出入りも、あるいは売店の出入りも、私は必要な限りは許しております。したがって、鶴尾委員長の発言は、少しオーバーに過ぎるかと存じております。必ずしも全面的に禁止をいたしましてそういったことを阻害をいたしておるわけではございません。そういう混乱の中でございますから、あるいは一、二不届きなことが起こったかもしりませんが、決して他意のあるわけではなくして、いずれも不なれのために、行き違いその他のために、あるいは一部の方々に御不満なり何なりあったかと思いますが、原則といたしまして、一般論といたしましては、そういうことはいたしておりません。  なお、その点は、御必要とあらば、いずれ調査いたしまして御報告いたしましてもよろしゅうございます。
  113. 大橋和孝

    大橋和孝君 聞けば、ストライキも解除した。それで、あとまだ三週間も続いてやった。それで不届きではなかった、そういうふうにお考えですか。ロックアウトなんか続けることに対して、理事者側としても、学術研究というものが重大な機関であるとするならば、もっと押えつけていこうということよりは、しろうとの私どもから考えれば、この研究に従事している人、こういうような人は、何と申しますか、一番先端的、これが中心をなしているわけですね。それであるからして、こういう国会の決議の場合でも、そういうことを円滑にしてもらうために、希望をここで国民の代表として決議しているわけです。国民一般がそう思っているわけです。しかも、そういう段階でそういうことをして、それが当然であるというふうにいまでも考えでおられるのですか。三週間もロックアウトすることに対しては、いまから考えたら、もう少しそれはしないでもよかったのじゃないかとか、そういうことはどうお思いになっているのかどうか、その心境のところを聞いているわけです。
  114. 楠瀬熊彦

    参考人(楠瀬熊彦君) ただいまのお話でございますが、三週間が長いか短いかという問題もございます。これは、端的に結論を申し上げまして、私どもは、やむを得ず三週間になったと申し上げたいと思いますが、三週間が短いか長いか、妥当かどうかという問題につきましては、私もしかとは存じませんが、組合として、近く、賃金カットは不当であるということで民事訴訟を起こすやに伺っておりまするが、法廷に出まして法廷論争において結論を得ましたならば、それに従うつもりでございます。いまここで私のほうといたしましては、やむを得ず三週間になったのだということだけ申し上げておきたいと思います。  それからなお、研究者に対しまして学会その他を尊重することは、もちろんでございます。したがって、たまたまロックアウトが学会の期日とダブってしまったということは、私どもといたしましても非常に遺憾でございますが、決して学会出席を阻止したりなんかはいたしておりません。  なお、研究の自由と申しますか、原研の若い研究員たちが大いに原研のためにやらなければならないという問題でございますが、いろいろ議論をすればたくさんございましょう。人おのおの見解も違いますし、異論を申すことはだれにもできますが、いま、現状といたしましては、原研は、まず最初に原子力委員会、政府が立てました長期計画にのっとって仕事をいたしております。その長期計画がどうであるかこうであるかということは、ただいま私が申し上げる資格もございませんし、遠慮さしていただきたいと思うのであります。まず、原研は、その長期計画に従って仕事をする。原研は、年度初頭に、それに基づきまして各部から研究テーマ、計画を出させております。それを集約いたしまして、ヒヤリングをいたし、さらに理事会において採否を決定いたしまして、そうして実行に移す。もちろん、そのテーマの選び方、選択のしかた、いろいろ議論はあろうかと思いますが、私は、原研の職員といたしまして、一たび原研の首脳部において理事長が決裁してこの計画で行くのだという計画がきまった以上は、多少自分に意見があり、ほかの見解があるにいたしましても、その計画に従って勇往邁進するのが原研の研究員の態度ではなかろうか、こう思っております。とかくこの問題はオーバーに言いふらされまして、あたかも原研には研究の自由がないかのごとき言動をなす者も間々あるのでございますが、私はそういう言動に対しては非常に遺憾に感じております。それだけ申し上げておきます。
  115. 大橋和孝

    大橋和孝君 いまの理事の発言を聞いておりますと、私はちょっと納得いかぬ点がある。ちょっと委員長に話を聞きたいと思うのですが、いまのように研究は民主的にはかられて民主的に決定されたものに対して不服を申す、いろいろな理由はあるだろうが、やることはけしからぬというようなお話でございます。私がいままで受け取っておったのでは、そうじゃなくて、研究者のまじめな真摯な態度をひん曲げていくというような傾向があるためにこういうことが起こってきて、ロックアウトまで行ったんじゃないかと理解しておった。いまの楠瀬さんの話を聞くと、ほくが理解しておったのとちょっと違う点があるわけですが、委員長のほうではどうですか、このような点は。  それからまた、研究者の不満の問題は、何も不満じゃない、勇往邁進せぬのが悪いというような、何か進軍ラッパのようなものを聞くわけでありますが、どうもそこのところが、あまりにも理解のしかたがいままで私が理解しておったのと理解が違うので、むしろそういうような態度が研究者の人たちに対していろいろなものを考えさしたりするんじゃないか。そこらのでっちとは違うわけですからね、研究者というものは。ほんとうに第一線で研究しておられる。しかも、医学的な方面では私も研究しておりますが、そのリーダーシップをとっている研究所長が自分で勝手な旗を振られたら、われわれいろいろ議論を申して、従わないといっていままでやってきた経験もあるし、何かそういうことが問題じゃないかと思うのですが、委員長側では、どうですか、やはりいまの楠瀬さんの述べたような状態であるのか、そこのところをもう少し補足しておいていただきたい。
  116. 鶴尾昭

    参考人鶴尾昭君) 大きな筋としてやはりある方向をきちんと打ち出さなければいけないということにつきまして、冒頭にも述べまして御紹介いたしました三十九年の四月の国会決議において、研究開発に重点を指向するとともに、これと不可分の関係にある基礎研究分野における有機的結合をはかる、こういうようなことを、原研設立後三十九年というと九年目でございますね、わざわざ国会で決議していただかなければならなかったというところに、まず第一の問題があろうかと存じます。また、それ以後、たとえば原子力委員会の委員長さんはおそらく五回かわっておられるんじゃないか、そのように思います。そういう中で、また、この時点で、私どもの理事長のことばを借りれば、フリクションがあるということを「原子力学会誌」でも述べておられるということを御紹介申し上げましたが、そのフリクションが解消されていないという事実を私は指摘したのでございまして、そういう中で、労働組合の委員長としての発言でございますと、労働条件でございますとか、人員が足りないとか、給料が安いとか、そういうようなことを重点的に申し上げねばならない立場でございますから、そういうことも解決されておらぬということは申し上げました。  そこで、私自身も研究者でございますから、そういう研究の方法について申しますと、はっきりそういう方向やなんかが打ち出されておって、そうしてその長期計画やなんかが具体的にわかりやすいかっこうで説明されて、なるほどこの計画の中に身を投じていけばわれわれも伸びていけるし、国の科学研究も伸びていくのだという状態がほんとうにほしいと思うのでございますが、そういう確信というものを多くの研究者が得られないでいるというところにやはり問題があるのじゃないかと、そのように私は考えております。
  117. 大橋和孝

    大橋和孝君 それじゃ、次の好村元書記長の退職の件を伺います。  先ほど理事からも話を聞いたわけでありますが、この労組の元書記長をやっておった好村という研究者が昨年原研を退職した件については、労働組合はもちろん、広く研究者の間に、組合活動を理由にした退職強要ではないかという意見が多いと聞いておるわけです。私もこの件を調査してみましたが、はなはだ問題が多いと思うわけであります。好村さんのはがきの中で、   さてこのたび私は英国原子力公社の招きによ  り、ハーウエル原子力研究所にて研究に従事す  る機会を与えられ、九月十八日に家族ともども  羽田より出発する予定でおりましたが、出発の  間際となってやむを得ざる事情により原研を退  職しなければ留学できないことになり、不本意  ながら原研を退職して出発することになりまし  た。  と、「不本意ながら」と書いておられます。ここのところをずっと先ほど話を聞きまして、本人自身が言っておるところのこの状態は、どのように鶴尾委員長のほうでは見ておられるのか。先ほどの説明を聞いておりますと、その点については、私がこうしたものをいままで調査した範囲とは少し違うようで、理事者の側の考え方にはちょっとかけ隔たった点があるように思うのでありますが、委員長のほうからこの事情についてもう一ぺん詳しく話を聞きたいと思います。
  118. 鶴尾昭

    参考人鶴尾昭君) 話題になっております好村君については、私の東京大学時代から同級でございまして、一緒に労働組合をやり、彼が書記長であったときに私は副委員長でつとめておりました。それで、物理学者でございまして、物理学の中では固体物理――原子炉から出てまいります放射線を使って物質の性質を調べるという学問を行なっております研究者でございます。  四十一年の四月だと思うのですが、好村君のところの室長がイギリスに国際会議があって渡ったときに、ある専門家を一年間ほど留学させないか、いい人間をさがしておるのだという話を聞いて、おれのところにいいのがいるから世話しようというようなことで帰って来て、好村君にそういう話をしたと、そういうように私は聞いております。それ以後いろいろいきさつがあったのですが、ちょっと話が一時とぎれまして、昨年の二月に、イギリスから、ちょうど人があいたので前年紹介のあった好村君が現在留学を希望するのならば、こうこうこういう条件で来ないか、こういう話が室長あてにイギリスの研究所から参りまして、そうして室長から好村君のほうに話がありました。  そうして、その直後に、いよいよイギリスのほうから、推薦状を送れ、彼がどんな研究者であるか、ちゃんとした書式にして送れと。そこで、室長は、元部長でございました、現在名古屋大学の教授をされておられます高木先生という、これは国際的にも高い業績をあげておられる方でございますけれども、その高木先生との推薦状を付して送ったわけであります。この推薦状を送るときには、室長は、上司の上田部長、それから研究担当の阿部理事と、この理事まで了承を得ております。そして、やがて七月に入りまして、イギリス側から、よかろう、一カ年契約したい、家族を含めて三人分の旅費はイギリスで持つ、年俸二千四百ポンドだと、こういうような話があったそうであります。そこで、家はどうするとかいろいろな話があって、それでサインをしてくれというので送ってきたそうであります。好村君は、このサインをする前に、室長、部長、理事にもう一ぺん確認を得て、よろしゅうございますか、よろしいと、そういうことになったのでサインをして、それであとは事務手続をしてくれというかっこうで事務のほうにお願いしたと、そのように聞いております。  それが、先ほど楠瀬参考人のほうからございましたような規定は確かにございまして、そういう規定があるのは、私はそれはそれでけっこうだと思うのですが、現実に、いままで、そのような一定の実質的な話し合いが済んだあと、それを実務的に決定、確認しにくいというのが、この好村事件が起こる直前まで原研で十年余り慣例となっておった事情であると、そのことは事実でございます。それで、パスポートや航空機の切符なども買ったあとで、急に人事担当のほうから、先ほど楠瀬参考人の申されたような理由でもって不許可の通知があった、このような事情でございます。  私の知っております事実経過はそのようでございます。
  119. 大橋和孝

    大橋和孝君 そうしますと、日本原子力研究所を運営する基本は、やはり原子力基本法によるべきだと、こう思うわけですね。この基本法では、民主的に運営をすることが強く規定されておる。そして、また、日本学術会議では、一九五四年の十八回の総会の決議で、原子力研究に携わるところの研究者の基本的人権は十分に尊重されるべきであるということを政府に対して勧告しております。いま鶴尾委員長からちょっと話を聞いてみましても、ある程度十年間では慣例的になってきておった。しかも、その前には上司の理事のほうに言って、それは楠瀬理事だと言ったかどうかわかりませんが、上司の理事のほうに対しては了解を求めて、そして進められた。その間、そういう上司の方の通達云々はわかりません。しかし、それにしても、そうしたことは手はずを踏んで行なわれてきた。ところが、こういうふうなことが間際になってぽんとやられるということ自身は、このように基本法で言われ、また、学術会議から政府に対して勧告をしているようなこういう趣旨からいったならば、研究者の基本的権利とも言うべき研究の場を奪うことになる。特に、わずかな、いままでの慣例ではおそらく問題にならないようなことを問題にして、しかも、基本的なそういうふうな職場も奪い、ことに大事な研究をしなければならぬという使命にもとるようなことをされたこと自身に対して、私は勧告や法律無視ということにもなるんじゃないかと思うのですが、これは人事担当の理事としてどういうふうなお考えでございますか。
  120. 楠瀬熊彦

    参考人(楠瀬熊彦君) ただいまの御質問にお答え申し上げます。  好村君の事件は、端的に簡単に申し上げますと、手続不備ということでございます。ただいま委員長からの説明がございましたように、あるいは部長、担当理事は何らかの承諾めいたものを出したかもしれませんが、本来、留学する場合には、留学する本人が留学の手続をするたてまえになっております。したがって、理事であるとか部長であるとかは、こまかい手続上の問題は実際はよく承知しておらないのが常態でございます。したがって、好村君自身が、すでに、就業規則も、留学の問題も、さらに外国資金による留学の規定もございますので、しかも、年々歳々多数の留学生が出ておる際でありますから、そのくらいの手続を知らないはずはないと思うのでございます。当然やるべきだ。そうして、理事長の決裁を受けてはじめて契約にサインをして送るのが常道だと思います。私は、好村君が組合員であるかどうかということは眼中に置いておりません。実は、私は、昨年八月以降初めて人事を担当いたしたのでございますが、好村君事件以外にも一件ございました。それは組合員ではございません。これは理事長の決裁を受けずして外国出張の手続をいたしましたので、直ちに中止を命令いたしております。したがって、くどいようでございますが、組合員であるとかないとかは、留学に関する条件とは何の関係もないことを御承知おき願いたい。  さらに、私、本日伺いましてむしろびっくりいたしますのは、ただいま委員長の御説明の中に、これは十年間の慣例だと、こういうようなお話があったのでございますが、こんな慣例があったとすれば、これはゆゆしい大事だと思います。研究員にはもちろん研究の自由を所としては尊重し、大いに便宜をはかることにやぶさかではございませんが、少なくとも外国に行く場合に、理事長の決裁を経ずして、慣例として勝手気ままに職員が部長あるいは室長と相談をしてどしどし出ていくということになりますと、これは原研内の規律というものは保たれません。私はそういうことが十年も慣例として行なわれたことにびっくりしたわけでございます。  余談でございますが、留学に関しましては、ただいま委員長説明でやや思い当たることがあるのでございますが、従来は人事担当理事だけの決裁でやらしておりました。その他の出張であるとか国際会議の出席であるとかは、全部理事会にかけまして、理事長の決裁を受けて出しております。原則といたしまして、年度初頭に、当該年度の出張者あるいは国際会議の出席者をリストアップいたしまして、それにつきまして検討を加えて、当該年度の出張者あるいは出席者をきめておる次第でございます。留学だけは、どういうわけか、そういう人事担当の理事の決裁だけでいいということになっておりましたので、私は、これはいかぬと。しかも、いま鶴尾委員長のお話のように、こんなことが十年間も野放しに慣例だとして許されておっては規律上ゆゆしい大事だと私は考えたのであります。そこで、私は、留学に関しましても全部理事会にかける、理事長の決裁を受けさせるということに理事会の了承を得まして、最近は全部そういうふうに形式を改めました。  でございますから、いま先生のおっしゃるように、原研は、外国に研さんに人を出すとか学会に人を出すとかいうことにつきまして、それをゆえなく阻止したり妨害したりするような考えは毛頭持っておりません。研究の自由は十分尊重しておるつもりでございますが、ただいまの留学者の手続問題はそういった簡単な問題ではないということを初めてここで認識したわけでございまして、それを許しますとなると、研究者の真の活動に私の個人プレーで留学などが行なわれるようなことがあってはいかぬと懸念いたしておるわけでございます。
  121. 大橋和孝

    大橋和孝君 ところが、昨年の暮れに、理事長は、原研職員との懇談会の席でこの問題に触れて、「好村君には気の毒であった」と、こう言っておられるのですね。手続上のことは、事務屋さんや上司の方がむしろあらかじめ注意をしてやったりしてめんどうをみてやるというのが義務ではないか。それが血の通ったお互い同じ場所で働いている者としての常道ではないか。ところが、いま理事長のお話を聞くと、そんなことはわかっておってやらぬからけしからぬのでとめたとか、組合員以外の人でもあったがとめたとか、それは筋からいえばそういういうも言えるかもしれぬけれども、少なくとも、その中の処置を、理事長なり理事なりしておられる方が、おい、おまえ、これはちょっと手続上まずいぞ、こういうようなことはせにゃいかん、一ぺん協議するまで待てとか、あるいはしてやろうというような、もう少し血の通った交流があってもいいんじゃないか。それをけしからぬといってやるのなんかはいけないし、どうもそこのところが第三者から見るとあまりにも規則ずくめで、むしろ落とし穴でもつくっておいて、落ちたやつはつまみ上げて叱りとばすというような、そういうようなあれにもなるんじゃないかという異様な感じを持つわけであります。  同時に、また、そういうようなわけでありますから、理事長も気の毒だといっておられるわけだから、こういう好村なら好村という人が帰ってきたら、おまえの手続は悪かったからこうしたんだぞ、だから、今度帰ってきたら復職さすからなというくらいのことをやれば、むしろかえってこれからの職員の気持ちというものが変わってきてうまくいくんじゃないか。おまえが悪かったから、そういうやつはどんどん首にしていくんだということでは、私もちょいちょいとお話を承っておるだけで、理屈を言えばそうかもしれませんけれども、労使間というものは理屈どおりにはいかぬのじゃないか。そういう観点から、あなたは人事担当の理事として、この人は何年たって帰ってくるかよく知りませんけれども、帰ってきたときには、おまえは手続が悪かったからやむを得ずああいう処置をしたけれども、今度は復職さすぞと、こういう点を職員と理事者側が話し合って進めていこうじゃないかというお気持ちがあるかどうか、ちょっと聞いておきたいと思います。
  122. 楠瀬熊彦

    参考人(楠瀬熊彦君) ただいまのお話は、非常に貴重なお話として拝聴いたしました。私は、先ほど、組合員でない者が勝手な手続をいたしまして出張を取りやめたことを申し上げましたが、それに引き続きまして、私は、部長会議を招集いたしまして、留学であるとか出張であるとかは当然理事長の許可または命令によって行くものである、したがって、その点は十分部長各位において職員の監督につき遺漏のないようにお願いしたいということは申し渡してございます。なお、その際に、特に出張なり留学なりする場合に、相手国と交渉を持たなければなりませんが、その交渉を持つ時点において、部長なり、あるいは室長なり、あるいは理事なりの了解を得て交渉を始めるべきである、そこまで注意はいたしております。従来の慣行がどうであったか存じませんが、推測いたしますれば、中には部長あたりの了解を得ているかもしれませんが、中には単独で交渉を始めまして、あとになってこうだということを持ち込む例がなかったかどうかということを私は心配するわけでございます。そういうことをぜひなくしていただきたいということを考えております。  なお、好村君が帰国した暁にどうするかということは、ただいまちょっと私の一存ではお答えできませんので、御容赦を願いたいと思うのでございます。
  123. 大橋和孝

    大橋和孝君 特に私はさようなことを考えまして、いい方向でもう少し考えるべきだと。一存では言えないかもしれませんが、方向ぐらいは人事担当理事としては血の通った行き方をしてもらいたいなあということで私はいまの質問をさしていただいたわけでございます。  それから、もう一つは、原子炉研修所の講師の問題について先ほどちょっとお話がございましたが、先ほどの好村さんの事件に似たような、労働組合活動を理由にした不当人事の感がこの問題でもするように聞いているわけでありますが、先ほど多少そうではないような御説明はありましたが、現在までの歴代の委員長三名を今回一斉にこの中に含めて解任されたということも、どうも私は第三者として聞いておりましておかしいように思うわけでありますが、その理由は、一体、人事担当の理事としてどういうふうに考えておられるのか、ひとつ伺っておきます。
  124. 楠瀬熊彦

    参考人(楠瀬熊彦君) ただいまの問題でございますが、研修所の講師の任命につきましては、まず第一に所長が責任を負いまして、その研修項目と申しますか講義内容に基づきまして適当な人選をいたすわけでございます。研究担当の各部門の部長と相談をいたしまして、そうしてあらかじめこれで行こうということをきめたものを理事長に提出して決裁を受ける。   〔委員長退席、理事鹿島俊雄君着席〕 したがいまして、いろいろの事情がございます。各人各様いろいろな事情もございますし、講義の内容の変更その他もございまして、必ずしもここで一括して統一した基準で講師を任命するというものはございません。いずれも話し合い、協議の上で講師をきめるのでございまして、たまさか、ことしは、従来委員長であった方、現委員長がやめられたということが起こっただけのことでございまして、委員長なるがゆえにやめさせるとか、組合の役職者であるからやめるとか、そういう組合関係は念頭に置いていません。全部職員の中から任命するという観念で選考しております。  以上でございます。
  125. 大橋和孝

    大橋和孝君 楠瀬理事はあのようにおっしゃっていますが、私は、いままでのいろいろなあれから、受け取り方はちょっと違うわけでありますが、この際、鶴尾委員長のほうからどうなのか、その点を聞いておきたいと思います。
  126. 鶴尾昭

    参考人鶴尾昭君) この問題に関しましては、まず、原子炉研修所の内容というものについて、ある程度詳しい御説明をしなければならないわけなんでございますが、時間の関係もございますので、結局、研修所というのは、半年のコースが一番標準でございまして、そこでカリキュラムが組まれます。そのカリキュラムというのは、現在の時点では、原子炉研修所専門につとめております教官たちの一種の協議会のようなものでおもなカリキュラムが立てられまして、その中で、専門に教えている者が担当する講義と、それから各研究室から講師が臨時に派遣してもらうものと、そのようになっております。   〔理事鹿島俊雄君退席、委員長着席〕 あと、その他は、たとえば半年のうち一カ月とか二週間とか各研究室に行って、短い期間ではありますけれども、専門的な実習、実験、計算等を行なう、そういうような場合がありますと、その派遣された人間を二週間なり一カ月なりめんどうをみる人間がまた講師に推薦される、そのようなかっこうになっております。いま問題になっております講師という場合に、研修所の講義室に行って、自分の書きましたテキストをもとにしてある程度系統的な講義を行なうこういう所内の講師のことについて見ますと、たとえば四十一年の上半期が五十七人、後半期が五十八人――これは皆さまのお手元に配ってある資料にございますが、四十二年の前期が六十一人、後期が六十三人、四十三年の前期が六十人、こういうぐあいになっております。  そのほかに、所外講師、これは原子力局や何かのお役人の方にも来ていただいて法律の話など聞くようなことでございますが、やはり十人、十人、八人、九人というようなかっこうでいろいろなっております。  こういうようなわけでございまして、個々のいろいろな専門講座について専門的にしゃべるとなりますと、原研の中でもおのずとその人と人がきまってくるわけでございまして、ほとんど人の数もそうは動いておりません。大きく動くのは、研修所の教室で受ける講義じゃなくて、おのおの研究室に希望して行きますときには、研修生の希望もございますし、そのときの研究室の事情もあって、そのときによって講師が違う、こういうわけでございまして、だいぶ大きく二、三十人の割合で変わるわけであります。この基幹部門というのは非常に移り方が違うということはいま申し上げました。ほとんど変わっていないというのは、いま申しました数字でも明らかだと思いますし、それから、現実に、たとえば皆さん、この排除されました私を含めて三人の人間は、昨年の夏からそのための講義の教科書を準備したり、あるいは実験というか、あらかじめ原子炉であぶって放射能性物質やなんかをつくっておいたり、そうしていろいろ準備を続けておるわけでございますから、それが突然直前になって研究所あるいは教育上の理由が示されず、とにかく外部の圧力だからしかたがないのだからというような言い方でもって排除されている、これが実情でございます。
  127. 大橋和孝

    大橋和孝君 それからもう一つ、私はこれはほかから聞いておるわけでありますが、外部からの圧力として、電力会社あたりから圧力があったこともちょっと聞いたわけでありますが、この事実は一体どうでありましょうか。もしそんなことがあったとすれば、これは研究所の民主的な運営を阻害するものではないかと私は思っているのですが、理事はどう思っておりますか。
  128. 楠瀬熊彦

    参考人(楠瀬熊彦君) ただいまのことは、私ちょっと耳にいたしたのですが、私自身そういう発言をした者がだれであるかは聞いておりません。しかし、責任ある地位にある者は、間違った事柄を不用意にあるいは軽率に口にするということは厳に慎むべきことだと私は考えております。したがいまして、今後調査いたしまして、もしそれが事実であれば、きびしく注意をいたすつもりでおります。
  129. 大橋和孝

    大橋和孝君 何かこういうことが積み重なって働く人たちの気分をこわすということは大きい問題ですから、これはまあよく決意していただきたいと思います。  それから、いまの研修所講師のメンバーの入れかえでございますが、無理を通すために、授業時間割なんかに記載されている化学実験まで、適当な後任者がないというような理由で中止してしまったというような問題も聞いております。こういうことは、原子力研究所法に定めた原子力に関する研究者、技術者の養成、訓練を怠っているということになりますね、カリキュラムを途中で廃止したりすると。そういうことは立法府としても見のがすわけにいかない。いままでも、附帯決議をつけたり、各界からの要請もあったり、いろいろなことを考えてみますと、これは非常に問題で、結局、その専任教授会あたりで決定されているところのものを上層部のほうである程度勝手に中止しているというようなことがあっては非常に問題があると思うわけでありますが、このようなやり方は、研究とか教育以外の、労務的観点のみで研究所を運営しようというふうなあらわれの一つでもあるように私は受け取れると思う。ですからして、教授会で決定されたカリキュラムとかあるいはそういうことに対してやっているものに対して、軽々に方針を変えていくべきじゃない。それも、技術者の訓練をやり、よくするとかなんかという理由であればいいと思うのでありますが、こういうような、いずれにしても差しかえたりなんかするということに対して、何となく割り切れないものがあるし、こういうふうなことがあれば、やっぱり好村留学の事件と相通ずるものがあるのだ、このように考えざるを得ないと私は思うわけでありますが、楠瀬理事のほうは、もっとこういうことに対して慎重な考え方のもとにやられるべきじゃないかと思いますが、その所見を聞いておきたいと思います。  また、人数のことなんかが、いま話を聞きますと、二十何名中、三名がそういうことは顧慮せずに入っておったのだ、こういうようなお話でありますが、原子炉研修所の講師の数だとかいろいろなことについての経過をずっと資料をもらって調べてみましたけれども、そこのところを調べてみますと、いまあなたが表面的にぱっと言われると、さもそのように聞こえるけれども、実際からいって、こういう資料をずっと逐次見てみますと、必ずしもそうじゃない。また、カリキュラムの決定なんかを民主的にやっているのを変えられておりますし、あるいは、また、これからやろうとしていろいろな広告――まあ広告ということはないけれども、いわゆる周知徹底のための書類をつくられているのを途中からボツにされておりますし、こういうようなことは、いまあなたのおっしゃっていることと違うように思いますが、その点はどうですか。
  130. 楠瀬熊彦

    参考人(楠瀬熊彦君) 教授内容その他につきましては、私は直接担当でございませんので、自信あるお答えはちょっとできかねるのでございますが、いま先生の御指摘のような事実もあったかと存じます。これはぜひ是正いたさなければならないと思います。厳重に所長に注意いたしたいと思います。  なお、この訓練、養成につきましては、原研は、泣き言を申し上げて恐縮でございますが、目下のところ、人も金もなかなか困難いたしております。しかし、決して放てきいたしているわけではございませんので、ただいまRI研修所並びに炉研修所がございますが、さらに射放線業務の管理者を養成しなければならないという問題にいま当面いたしております。これは外部からが大部分でございまして、いま予定されております人員は、記憶に間違いがなければ、約十六、七名というものを養成いたしたい。これは、特別の講座でやるか、あるいはRI研修所の中に込めてやらせるか、原子炉の研修所にしたほうがよいか、これは検討中でございます。しかし、やることは決定いたしております。したがって、養成も、欲を言えば、いま少し人もほしい、金もほしいというところでございますが、なかなか思うようになりません。しかし、努力いたしております。  なお、研究内容、項目、その他のあんばい、取捨選択等について、いま御指摘のような不都合な点がございましたら、今後はどしどし改めさせてまいりたい、こう考えております。
  131. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) それでは、楠瀬、鶴尾参考人に申し上げます。  本日は、長時間にわたり、貴重な御所見を賜わりまして、ありがとうございました。  それでは、続いて、政府当局に対し質疑を行ないます。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  132. 大橋和孝

    大橋和孝君 先ほどから説明にありましたのですが、昨年度までは毎年百数十名も増員されておったのが四十三年度においてばっさりゼロになったということでございますが、これは一体どういうわけでございますか。
  133. 藤波恒雄

    政府委員(藤波恒雄君) 現在、原子力研究所の規模は約二千人の規模になっているわけでございます。いまお話がありましたように、従来は年々何がしかの増員があったわけでございますが、本年につきましては増員がゼロであるわけでございますが、これの一番大きな理由といたしましては、全般に財政硬直化の予算でございまして、原子力関係は一般の水準よりは相当に力を入れて予算がつけられたわけでございますが、たまたま動力炉開発事業団が新たにできまして、そちらのほうの予算並びに人員の増強に最大の重点を置かなければならない、こういう情勢にありました関係もございまして、原子力研究所のほうは約二千人の現在人員にとどまった、こういう経過でございます。
  134. 大橋和孝

    大橋和孝君 これは大事な原子炉の仕事からいいまして、先ほどもちょっと人事担当の理事からも言っておりましたが、科学技術庁としては、国会の決議もありまして、そうした運用を徹底的にうまくやって、ここがほんとうに日本の原子力に対しての中心的なセンター的な役割りを持つところの研究所、言うならば一番中枢をなしておるわけですね。そういうところに対して力を入れなくて、ほかに何をおいて力を入れるところがあるかというふうにわれわれは感じているわけだけれども、特に担当の科学技術庁としては、ここらに対して、財政硬直化とはいいながら、こういう科学の先端を行って、一番いろいろなことに対して研究をし、また、新しいことを研究開発し、新しく開拓していってもらう、こういう意味で世界各国にひけをとらぬようにやってもらうためには、この人員も各方面の研究スタッフをそろえる必要があって、いままでから考えて、これ以上人員をどんどんふやしておられることもむべなるかなと考えておったわけですが、こういうようなことが、硬直の意味でこれが行なわれるとするならば、科学技術庁としては、一体、こうした研究をどのように解釈しているのか。もっといろいろな調整もとりながらこれを進めなければならぬという国会の決議にも反するだろうし、あるいは、また、学術会議のほうからの政府に対する申し入れも一あったのでございますからして、いろいろな意味からいって、こういうふうな人員の確保の問題というのは非常に大事じゃないか。簡単なそういうことでしわ寄せをして、こういうことを決定していいのかどうかということを私は疑うわけでありますけれども、こういうことに対して、積極的にもっと人員を増加して、そしてスムーズな研究をしてもらえるような考え方を前向きに持っていくべきじゃないかと思うのですけれども、今後どういうふうになりますか、ちょっとそこのところを伺いたいと思います。
  135. 藤波恒雄

    政府委員(藤波恒雄君) 原子力開発研究につきましては、御承知のように、原子力研究所のほか、放射線医学総合研究所でありますとか、あるいは関係の各省の試験研究機関でありますとか、あるいは関連の研究開発につきまして、民間企業の助成等をやっておるわけでございまして、全体の予算規模は二百六、七億に及んでおるわけでございますけれども、先生おっしゃるとおり、日本原子力研究所がやはり一番基礎をなし、また、中心的役割りをなしておることは当然でございまして、予算規模におきましても、二百六億のうち、九十億余りのものは日本原子力研究所につけられておるわけでございます。東海村の設備につきましては、すに十年の歴史を経まして、五百億以上の研究設備投資がなされておりますし、それから、最近におきましては、高崎研究所におきましては放射線科学分野におきまして成果をあげておることは御承知のとおりでございますし、また、本年には大洗地区の施設におきまして材料試験炉のような画期的な大きな設備が運転を始めたといったようなぐあいでございまして、人数におきましても約二千人を擁しまして、原子力の研究開発部門における最大の研究所である、こういうことはもちろんでございます。今後も、この研究所の活動が、原子力開発利用の見地から大きなウエートを占めて進んでいくということをわれわれは期待しておるわけでございます。
  136. 大橋和孝

    大橋和孝君 特にそういう観点から、そういうような人員を押えるということでなしに、積極的にやってもらいたいと希望いたしておきます。  ところで、きょうは、長官にも来てもらってよく話を聞きたいと思っておったのですが、きょうは長官がおいでにならなかったので、局長のほうに聞きたいのですが、先ほども何べんも出されておりますが、三十九年の国会の決議で研究所の処遇の改善がいわれているわけです。人材確保については、先ほど言われたように、非常に必要だと思います。昨年の七月の衆議院の科学技術特別委員会の決議にも繰り返されているわけであります。それなのに、私がもう一つここで尋ねたいのは、原研の初任給が大蔵省からの指示よりもさらに二百円低いという点は一体どういうわけでありましょうか。こういうところが大事だというために初任給の調整手当も出されておるというわけでありますが、それを下回って二百円も低くなっておることは理解に苦しむわけでありますが、これは  一体どうなんでありましょうか。
  137. 藤波恒雄

    政府委員(藤波恒雄君) お話の道路公団等に比べて二百円低いという数字は、私いま的確に数字を持っておりませんので申し上げられませんけれども、原子力研究所の給与が、ほかの原子力の関係の各機関の給与に比べて特に低いというぐあいには考えておりません。なお、この点につきましては、今後さらに検討をいたしてまいりたいと思います。
  138. 大橋和孝

    大橋和孝君 それはもう事実そうなっているんですよ。一番そういう元締めの科学技術庁がどんなぐあいに研究者に対して待遇しているかわからぬような状態であって、まともな指導ができていますか。または責任がとれていないということですよ。そんなおかしなことで、いままでの間、あなたのほうの省で責任を持っていますか、そのことに対して。それはたいへんな問題であって、局長自身が知らないで低いということがあったりしたらたいへんだと思いますが、こういう問題に対しては即刻その状態を調べて私のもとにも報告してもらいたい。これは重要な問題ですよ。人員を確保したり、研究者がうまく研究に従事できるというのは、ある程度それに対してのペイをすることが当然であるし、しかも、そういうことを認める調整手当がついているはずです。それが実質下回っているというので皆が困っているのに、そんなことがあったか、私の手元ではわかりませんということでは、いかにも大事な国の中の中心的な研究所に対しての監督指導を怠っていると言わざるを得ぬと思います。特にこれはそういうふうにお願いしておきます。  時間がありませんから、次に進んでまいりますけれども、ロックアウトの問題につきまして、労働省に対しましても、あるいは、また、科学技術庁に対しても逐次お伺いしたいと思います。  労働省としましては、この動力試験炉の争議につきまして原研当局の行なったロックアウトに対してどのようなふうにいままで調査をされたか、それから、また、それに対して監督官庁として具体的に行政指導はどういうふうに行なわれたか、ちょっと聞いておきたい。先ほどから聞きますと、労務担当の理事の言っておることばと、それから労働組合のほから話を聞いてみても、そこに食い違いがあるようであります。いままでの調査結果、それから指導監督された結果を聞かしていただきたい。
  139. 松永正男

    政府委員(松永正男君) ロックアウトにつきましてのJPDRシフト制が紛争の中心でございまして、組合側がストライキをやったということに対しまして経営者側がロックアウトをかけたということでございますが、一般的に、ロックアウトは、受動的、防御的なものであるべきであるというのが裁判所の見解、あるいは学者の見解等でございます。法律のたてまえといたしましては、組合法にも、労調法にも、ロックアウトについての規定はございませんので、法律上どうかという問題になりますというと、学者の説、あるいは判例の動向というようなもので判断をしなければならないと思うのでありますが、この具体的な原研のロックアウトにつきましては、先ほどもお話が出ましたように、組合側がストライキをやめたということを通告したにかかわらず、その後継続してロックアウトが行なわれておった、この点が過剰ロックアウトではなかろうかという問題だと思うのであります。それにつきまして具体的にいろいろな議論があるかと思いますが、私どもといたしましては、そのような状況を地方の労政機関を通じまして把握いたしておりますけれども、具体的争議につきまして直接こうせいああせいというような介入をいたさないたてまえになっておりますので、この事件につきまして、私どものほうから、労使に対して、こうしたらよかろうというような具体的な行動はとっておりません。ただ、ロックアウトにつきましての見解等について労働省当局がどういう見解を持っておるかということの御質問が国会でございましたので、その際には私どもの見解を申し上げた程度でございまして、私どもはこの事件に具体的には、介入といいますか、手を触れていない、いままでおりませんでございます。
  140. 大橋和孝

    大橋和孝君 ロックアウトの期間中に、労働組合のほうは、労政局の組合課ですか、その課長さんは北川さんですか、そこらあたりを通じて、再三ロックアウトを打ち切ってくれという要請もしているわけですね。それで、原研当局のほうは、こういうことに対して、あなたは何ら介入しないという程度で、やっていないというわけでありますけれども、先ほど来のお話の中にもありましたように、原研の重要な使命、そういうようなこともいろいろ御存じであろうと思うのでありますが、ロックアウトが、ストライキが済んでしまってからなお行なわれているということに対して、労働省としての考え方、そういうようなことについて見解を明らかにして、そういうようなむしろ不当だと思われるようなことが行なわれないような、行政指導というか、監督官庁としての責任上の何か指導というものをすべきじゃないかと私は思うのですが、これは何にもされてなかったのですか、どうですか。そこで、そこのところの間をみんなストップしたとするならば、どういうような方にされたのか、そこのところをもう少し明確に答弁をしていただきたいと思います。
  141. 松永正男

    政府委員(松永正男君) 争議の中止の通告があったあとのロックアウトにつきましては特にいたしませんでしたということで申し上げたのでありますが、いま御指摘がありまして、実は、最初のロックアウトをかけました際に、動力試験炉ですか、その立ち入り禁止だけでなしに、構内全般についての立ち入り禁止がありまして、寄宿舎等の出入りとか、あるいは食堂、購買組合等の出入りとかというようなことができないので、組合員の個人生活上の問題もいろいろあるというようなことがございまして、組合からのお話を伺いまして、私どもの課長から、原研のどなたか、はっきり覚えておりませんが、責任者の方に、ロックアウトの作業所立ち入り禁止の処置の範囲につきまして、そのような組合事務所とか寄宿舎とか、購買組合、食堂といったような利用をさせないのは不適当ではないかというようなことを申し上げまして、原研側も、それは使わせるようにしましようというようなことがございました。その立ち入り禁止処分につきまして、こちらのほうが組合側からの意見を聞いて、原研側に御注意を申し上げたという事実はございます。  それから、ストライキをやめると言ったあとの継続ロックアウトにつきましては、特に私どものほうでは組合側からのお話もございませんでしたし、私どものほうとして、このロックアウトの微妙な点がございますので、要請もございませんでしたし、また、解釈上、たとえば従来の判例等を見ますというと、組合がストライキをやめたといっても、またストライキをやるような危険性があるのかないのかという客観的な判断に基づかないと、ロックアウトの合法、違法を判定することはできないといったような判例もございますし、まあ微妙な問題でございましたので、私どもとしては特に御注意を申し上げるといったようなことはなかったのでございます。
  142. 大橋和孝

    大橋和孝君 北川課長はおられますか、いま。
  143. 松永正男

    政府委員(松永正男君) 出席しておりません。
  144. 大橋和孝

    大橋和孝君 出席しておらぬ――そうですが。これは、何日の日に研究所側のだれに言ったかということを私の手元まで報告してもらいたいと思います。  それから、いま私が聞いているのは、あとのこまかしい問題ではなくて、組合側がストライキをやめますということを宣言してこのロックアウトが長く続けられた。しかも、先ほどお話を聞いていたみたいに、最も大事な学会にも行かせなかった。まあ行くこともしいてとめませんと言うけれども、行けばあとから処分するというようなことも言っているから、よう行けなかったという人もたくさんあったわけですね。こういうことをやっているということは、私はだいぶ不当なものだと思うんですよ。ほんとうのロックアウトの問題から考えてみても、これは新聞社もそういうことを報道しておりますね。五月十八日の日にもちゃんとそう書いているですね。新聞社あたりもそういうことを書いてアピールしているわけですよ。だから、こういうような状態であれば、むしろそういうことなんかをうまく指導したりするところのもとはだれがやるのかといえば私は労働省だろうと思うんですね。ですからして、労働省のほうは、そういうことなんかに対して、もう少し責任ある態度、まああなたのおっしゃっているような、すぐまたストライキをかけるかもしれぬという非常にけわしい状態であったかどうか。もしそういうことであれば、それが延びたこともやむを得ぬということも言えるかもしれません。しかし、私がいま言うているように、そのようなことに対してはどのような調査をしておられたかどうか。あなたのほうではそれを言わなかったということは、もうそういうけわしい状態であったことを認めておられたのかどうか。私はそういうことを一ぺん労働省に聞いておきたいと思うんです。こういうことが起こったとすれば、少なくともロックアウトということは大問題ですね。だから、そういったことが起こったときに、一体いまの争議の状態はどうなっているんだ、争議をやめたと言ってもすぐまたストライキが起こるようなエキサイトした状態であったのかどうかということを調査して、そうでなかったとすれば、そういうことをすぐやめさして、特に先ほどから聞いているように、非常に重要な問題ですね、ここらの研究者が学会に発表するということは。しかも、学会というのが一月、二月たってまた先に何べんでもある、のべつまくなしにあるというものだったら、またやらせればいいということになりますが、学会のシーズンが済んだら一年先になる、二年先になるということになってしまえば、こういう問題は影響するところは重大な問題でありますからして、私はそういうことはよくわからないけれども、そういうものを認めてもらうところなんかは、原研でやるのか、あるいは、また、原子力局長のほうでやるのか、労働省のほうでやるか、どちらかでやってもらわなかったら、こういう問題はうまくいかぬわけですね。ですから、こういうような重大な問題に対してはやはり労働省のほうでももっと積極的にそういう調査を進めてもらいたいと思うのですが、そういう調査段階ではどうであったか。それから、また、科学技術庁の原子力局長のほうでは、こういう問題をどういうふうに見ておられるか。もしそういうことがエキサイトしていなくて、まあもうちょっとたてば解釈するというものだったら、長い間こんなことをして科学の進歩においてもマイナスになるようなことをやらしておってはいけないと思うのですが、そこらあたりの責任問題はどう考えているのですか。両方からひとつ説明してください。
  145. 松永正男

    政府委員(松永正男君) 個々具体的な争議につきまして一々労働省が取り上げてこれを解決するような仕事をやるべきだと、こういう御意見なのでございますが、私ども労働省並びに労政関係の仕事といたしましては、一般的な労働教育と申しますか、たとえば労使関係のあり方といったようなものにつきまして、労働法の知識等を含めまして、常日ごろ経営者の方にも労働組合の方にもよく御理解をいただくということが主たる目的でございまして、個々の争議につきましては、やはり地方労働委員会、中央労働委員会等がございますので、これはまあそういう専門の調整に当たる機関がおやり願うというたてまえになっております。ただ、労働省といたしまして、個々の争議についての労使関係の全般に及ぼす影響というような面から、それから、また、そういう影響の度合いが強い場合に、たとえば労働委員会で処理するとえらいかどが立つし、何とか事実上役に立てば解決について援助をしてほしいというようなお申し出があります際には、これはよく状況を判断いたしまして、助言をするなり、あるいは注意を促すなりというような行動もいたしておりますけれども、一般論として、個々の労使関係について全部労働省がそういう責任を持つというふうにはいかぬかと思うのでございます。
  146. 藤波恒雄

    政府委員(藤波恒雄君) 先般の労働争議の発端になりましたJPDRの班直制の問題につきましては、かねてから私ども科学技術庁といたしましてもその改善についての検討を促しておったところでございますので、それの改善策の実施は早期になされることを期待しておったのであります。しかし、それに関連しての争議が非常に長引くことは望ましいことでは決してありませんので、われわれはその早期の解決を望んでおったわけでございますが、争議行為の内容にわれわれ監督官庁が直接介入することは避けるべきであると、こういう判断のもとに、報告は常に徴しておりましたけれども、指示でありますとか意見などといったものは特に差しはさむのを差し控えたわけでございます。
  147. 大橋和孝

    大橋和孝君 ぼくが言っておるのは、介入してくれということを言っておるのじゃない。少なくとも調査をして、いまどういうふうになっているかということをもう少しはっきりとしておいてもらわないと、先ほどからも話を聞いておって、詳しいことは第三者的な立場だからわからぬかもしれぬけれども、私の受けた感じでは、相当学力もあり、勉強して研究する人たちが集まっているところ、そういうところへもってきて、この一つの事柄を上司のほうで押えつけていこうというやり方でいけば、私は当然それからはね返った理論が来ると思う。先ほどもちょっとそういうことで話が出たのですが、そういう観点からいって、私は、いまのやり方、いわゆる理事者側の態度というものに対しては、やはり監督する側でいろいろな情勢と十分な調査を吸い上げて持っていてもらわないと、そういうことに対して非常に誤った方向に行きやすいという観点から、調査段階はどうしておられるかということを伺いたかったわけでありますが、そういう観点からも、どうぞひとつ十分な、直接に介入しなくても、あるいは地方労働委員会にしても、あるいは出先の監督署長に対してでも、あるいは、また、科学技術庁のほうから言えば、その理事者側に対しても、ある程度のサゼツションなりあるいはアドバイスなりというものは、介入ということとは別な意味でやられるべきではないか、報告をもとにしてですよ。調査と報告というもので十分実際を把握してもらっての指導というものを私は望みたいと思う。  ところが、これを聞いてみますと、労働組合が三月一日に全面ストを解除した後に、スト参加者の十倍に及ぶ約百名の組合員に二十一日間もロックアウトしたというのは、これは非常に行き過ぎじゃないかと思うのです。これはそういうことなんかに行き過ぎというものがはっきり出ていると思うのですが、こういうものに対して労働省や科学技術庁ではどういうふうに考えているか。実際十倍に及ぶわけです。十人くらいの組合員で、百人にロックアウト二十一日間かけた。その点、どういうふうにお考えですか。
  148. 松永正男

    政府委員(松永正男君) これは大橋先生十分御存じでございますので、釈迦に説法の感がするのでございますが、一般的に、ロックアウトをかける場合は、ケースとしては非常に少ないわけでございますが、その少ないケースの中でも、通常の場合には、たとえば部分ストに対しますロックアウトというのが多いケースでございます。それは、一般的に、たとえば生産工程の中のかなめの部分の指名スト、部分ストをやる。そうすると、非常に少数の組合員のストライキになると賃金がもらえませんから、そういう意味では経済的な面で犠牲が少なくて効果が大きい、こういうような戦術があるわけでございます。そういう場合に、それでは使用者側から見ますと、どういうことになるかといいますと、ストライキに入らない人たちは、出勤をして就労したいということを言われるわけであります。そうしますと、一般の賃金問題といたしまして、ストライキをやっておる人には賃金を支払う義務がございませんが、他の組合員で労務の提供があった場合に、使用者側がその受領をしないということになりますと、賃金支払い義務、組合員側からいいますと賃金請求権が出てくるというようなことで、組合側はいわば犠牲が非常に少なくて、経営者側は犠牲が非常に大きいというような場合に、経営者側の戦術として、部分ストに対抗するロックアウトというのがロックアウトの通常の形でございますので、いまおっしゃいました十人に対して百人というのは多いじゃないか、こういう問題につきましては、具体的にその中身に入って詳細に見ないとわかりませんけれども、普通の場合にはそういうケースが多いわけでございます。そのような事態も含めまして、ただいまの御説明によりますというと、賃金支払いの訴訟提起をしておられるということでございますので、このロックアウトが正当であったかどうか、賃金支払い義務がはたしてあるのかないのかという問題につきましては、いまや裁判の段階になっております。おっしゃいましたようなことでいろいろ問題はございますけれども、通常、ロックアウトとストライキという関係においては、ストライキ参加人員が少なくてロックアウト対象人員が多いという場合が過去の例においても多かったということを御参考までに申し上げておきます。
  149. 藤波恒雄

    政府委員(藤波恒雄君) 先般の場合は、JPDRの炉の運転のうちの一班が欠けますと、実際問題としてその炉の安全な運転は継続することがきわめて困難であると、こういう実態にあったかと存じます。そういうことがロックアウトという形になった原因であろうかとわれわれは考えております。
  150. 大橋和孝

    大橋和孝君 いま局長から説明があったのですが、多くなるのはやむを得ないと。実際そういう場合が多いわけですが、この場合、十名に対して百名であるし、もうストを解除したと言ってから二十一日間も続いておる。こういうようなことは少し常識をはずれていますね、実際考えてみて。それをぼくは言うのであって、そういうようなことなんかも、あまり非常識な状態にまでこういうことがやられているという場合は、いまおっしゃったように、こういう問題については訴訟中の問題だからといえば言えますよ。言えますけれども、訴訟になる前の段階でこういうことが行なわれようとしているときにもう処置をとるべきであって、これは少しかけ方がえげつないじゃないかというときには、何とかしてやらぬと、やるのは勝手だということで、そこへ入る権利はないとか、しないほうがいいとかそういう解釈もあります。むやみに事柄が起こったときに労働省のほうから、あるいは、また、こちらの科学技術庁のほうからじゃんじゃん入っていってやるのもこれはよろしくないと思う。ですけれども、常識の程度の問題であって、やっぱりこんなことがだんだんと大きく波及をしてくるということになれば、やはりそこらのことはもう対象の問題で、少しこれは配慮すべきじゃないかと、こういうふうに思うわけです。たてまえからいったら、たてまえではほっておけばいいんだということにはならぬと思う。  同時に、先ほどちょっと局長のほうから答弁がありましたのですが、要請があったからそういう注意はしたということでありますけれども、これを見ましてもそうですが、たとえばロックアウトの範囲を非常に広げてしまって、いま行き過ぎだと思うと言われたけれども、この内容がたいへん大きなものを含んでいると思います。第一番目に、こういうさびしい所でありますからして、物を買うにも周囲で物を買えないというような状態ですね。中には共済会やあるいは生協の売店んかもある。周囲に一ぱいそういう施設があってどこでも買える状態だったら別ですね。そういう状態でないような田舎村であって、しかも、そこの中に売店で物を買えなかったら非常に困る。唯一のデパートみたいなものです。そういうようなものまでロックアウトの中に含まれておる。あるいは、また、共済会とか健保なんかの問題で事務所に行こうといっても、事務所に行けない。これは生命に関係することもあるかもしれません。こういう重大な問題もありますね。あるいは、また、血液検査みたいな、普通の血液検査じゃないわけです。被爆をされている人であれば定期的に検査を受けなければならぬというのは、これはもう障害防止法で規定されていると思う。法律違反ですわね。こういうようなこともこの中に含まれているわけです。食堂で飯を食うということからいって、飯も食えないでしょう。これはたいへんな問題です。一つ一つが全部人権にかかわり、基本権の問題になってくる。こういうようなものがロックアウトの対象になってひっくるめられておる状態ですね。大体。やり方は、全体を見て行き過ぎですね。めちゃくちゃだと思う、同じロックアウトをかけるにしても。  ですからして、こういうようなことから考えてみて、人数の問題からいっても、日にちの問題からいっても、こういうようなワクの問題からいっても、言語道断です。こんな問題に対して、ほっておいていいのかどうか。そういうような面からいって、科学技術庁にも、労働省なんかにも、こういう全体を含めたもう少し何らかの方法をとってもらわなければ、それじゃだれが仲立ちをするのかということで非常に困るんです。権力をもって臨めば労働者に対しては何ぼでも圧力をかけられるということになってしまったんでは、こんなハイレベルな労働組合の人たちに対する理事者の態度ではないと、こういうふうに断ぜざるを得ぬわけです。だから、そこのところが間違ってぐんぐんやられてきた、もう労使間の問題だということでうっちゃられておいては、日本の科学の進歩をこいねがう国民の側からしても、非常に問題があると思うのです。こういうことについて、先ほどからも科学技術庁の原子力局長の答弁なりを聞いていると、非常に不熱心だね、こういう問題に対して。ぼくはいまの局長の答弁を聞いて、どうも納得がいかん。私のいま言っている気持ちはおわかりですね。こういうことに対して一体今後どうしようとするのか、その所信を聞かせてください。
  151. 藤波恒雄

    政府委員(藤波恒雄君) ただいまお触れになりましたロックアウト中の食堂使用の問題でありますとか、あるいは血液検査の問題でありますとか、そういうことにつきましては、われわれいままで詳細に聞いておりません。よく調査してみないと何とも言えませんが、先生の御意見を体しまして、調査をしてみたいと思います。
  152. 大橋和孝

    大橋和孝君 ちょっとそういう冷酷な答弁自身がおかしいわけだ。調査してみますというのはおかしいのですが、ぼくはもっと極端に口であなたに迫ろうとするならば、あなたはそういうことをやるべき任務にあるのじゃないかと思うんですよ。  私、こういう問題を一ぺん聞いておきたいのですが、このロックアウトのために、原子力学会の年次研究発表会、これは三月二十七日から二十九日まであったのですが、これに影響する点というものは、あなたは一体どういうふうに考えておられるのですか。最も必要な年次研究発表会に出なかったことに対しては、非常に問題があるのじゃないかと思いますが、どうですか。それから、また、組合のほうは、従来のストライキでも、研究着の良識として、スト当日学会に行かなければならぬ人をそのストから解除して、いままで特別なことをやってきていると聞いております。また、ロックアウト関係者は、研究室に立ち入れないために、数カ月の間あるいは数年間にわたって研究してきた成果を世に問い、普及する、そうした機会を失ってしまっているわけであります。少なくとも十二件の研究発表がロックアウトによって準備の機会を奪われ、また、四件は取りやめざるを得なくなった。このようなことは、動力炉開発の重い責任を負う科学技術庁として、一体黙認していいのかどうか、こういうことですね。私はそこらに大きな責任があると思うんですよ。局長はこれをどういうふうに考えますか。それから、この問題は、先ほどからの答弁の中で、こういうようなことに対しては、科学の進歩、あるいは、また、そういうことの研究を伸ばすための意味において、あなたのほうにおいてはもっともっと指導的役割りをすべきじゃないかと思うのですが、もう少し前向きの答弁をしてもらえませんか。
  153. 藤波恒雄

    政府委員(藤波恒雄君) 学会の出席がこのために制約されたのではないかというお話でございますが、この件につきましても、当時争議中に私どものほうは報告を受けていなかったわけでございまして、本日お聞きするわけでございますが、そこまで制約をしないのではないかと存じますが、もしそのためにそういう出席が相当支障が出たということであれば、私といたしましても残念に思う次第でございます。
  154. 大橋和孝

    大橋和孝君 実際は、私が調べたところでは、少なくとも十二件の研究発表がロックアウトのために準備の機会を失っているんですね。それから、四件はもう取りやめざるを得なかったという事実があるんです。これをいま初めて聞いたということでは、これは非常に困るじゃないですか。おたくのほうが原子力局長であれば、こういうふうな原子炉に対しての研究がどんなふうにやられているかということは、一番把握してもらわなければいかんのじゃないですか。もっと極端にこのことを言うならば、あなたは一体何をしているのだと言わなければならない。むやみに月給だけ食んでもらっていては困るよとまで私は言いたくなる、何も知りませんなんて。少なくとも研究所の中心メンバーだったら、局長あたりが、原子力研究所の中で何がされているかぐらいのことは少し知ってもらったらどうですか。むしろ、研究発表に行かぬやつがあったら、しりをたたいて行けと言うくらいに指導せんならぬ立場じゃないかと思うのですが、どうですか。
  155. 藤波恒雄

    政府委員(藤波恒雄君) お説のお気持ちは私としてもよくわかりますのですが、原子力に関する研究発表会等は相当広範にわたっておりまして、実は一々私ども直接にタッチすることはできないことでございまして、それぞれの機関の理事者にまかせるというところが多いのが実情でございます。
  156. 藤原道子

    ○藤原道子君 関連して。私は、専門でもないし、きょうは質問の通告もしておりませんので、黙って拝聴しておりました。私は、労働省にしても、労働者の福祉を守るのが労働省の使命だと思う。また、技術庁の御答弁を聞いていましても、どうも逃げの一手だ。責任回避の一途だ。第一、初任給が二百円安いのも知りませんし、ロックアウトで研究発表に行けなかったということも知らない。知らない知らないで、逃げの一手のように思って、私はどうも納得がいかぬ。しかも、いま科学技術庁の一番責任ある地位にある方がそれじゃ相すまぬだろうと思うのですが、ほんとうに知らなかったのか。この場合のがれであればいいというものではないと思う。労働省にしても、地方にまかせてある、わしゃ知らなかった、そんなばかな答弁は聞いたことがないですよ、いままで。もっと責任ある答弁をしてください。
  157. 藤波恒雄

    政府委員(藤波恒雄君) 先ほど来御答弁申し上げておりますとおり、争議の経過につきましては報告は受けておったわけでございますけれども、最後のほうでいろいろ御指摘になりました食堂の問題でありますとか、あるいは学会出席の問題につきましては、実は当時はわれわれ報告を受けておりませんで、承知いたしておりません。
  158. 藤原道子

    ○藤原道子君 ちょっと伺いますが、あなたの受け持ちは何ですか。
  159. 藤波恒雄

    政府委員(藤波恒雄君) 原子力局長でございます。
  160. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、日本の原子力研究というものは非常に大切なものだと思っているのに、聞いていて心細くなってしまった。しっかりお願いします。
  161. 大橋和孝

    大橋和孝君 今回のロックアウトの時期は、考えてみると、ちょうど大洗の研究所で材料試験炉が完成間近で、この炉の勤務条件の協議を必要とする、まさにその時期にかけられたわけですね。一方の大洗のほうではそういう勤務条件の協議が行なわれようとしておるところで、こっちのほうではロックアウトだ。これは、何でもないように、時期的にちょうどそのころに当たりましたといえば、それは言えるかもしれませんけれども、そういうふうなときにぶつかってこれをやられることは、一方のほうに対する圧力というふうなことを考えざるを得ないのであります。特にこの大洗の炉に勤務する職員は、四月一日からの勤務条件をきめる労使協定が、この炉の最初の慣行になるために、よい協定をとりたい、こういうふうなことで団結を固めて闘争態勢に入ったときに、動力試験炉で広範囲な長期間のロックアウトが起こってきたということは、結局、大洗ではできるだけ初めての労働条件をよくしようとする動きがあるということを察知して、ここで長いロックアウトをばんとかけた。ということは、これは先ほど言ったようにどうしても考えざるを得ない。それは勘ぐっているんだといえば言えるかもしれぬけれども、考えざるを得ない状態です。これは、ロックアウトが防衛的なものでなく、動力試験炉以外の労働条件をも悪くするために先制的攻撃的なものであって、非常に悪い事例になるんじゃないかと、こういうふうに思うのでありますが、労働省、科学技術庁は、この点はどういうふうに考えておられるのですか。私は、そういうための先制攻撃として不必要な長い期間かけられたんだと解さざるを得ないと思うのですが、この点についてどうですか、労働省は。
  162. 松永正男

    政府委員(松永正男君) 事実問題でございますので、先ほどの責任者である人事担当理事のお話を伺いますというと、労働組合のほうのスト態勢というものが非常に強くあって、ロックアウトをかける側の判断としては、同じようなストライキが行なわれる可能性が非常に強かったという判断のもとにおいてやりましたと、こういう説明でありますので、それがはたしてそうであったかどうかという事実審理の問題になりますと、私は、いま理事が言いましたような判断のロックアウトというものは、ロックアウトとして成り立ち得るというふうに考えるのですが、はたしてそうであったかどうかにつきましては、どうも私どもも具体的な判断をここで申し上げるというのには非常に準備不足だと思いますし、おそらく労働委員会、あるいは裁判所等におきましても、相当の時日をかけ、証人喚問をし、そして結論を出すということになりますので、事柄としては、ただいま理事が申しましたようなそういう判断の場合に、そういう客観的な情勢があった場合には必ずしも違法とは言えないという一面と、それから、その判断が正しくあったかどうか、事実はそうでなかったという場合には、やはり防衛の範囲をこえたものになるということしか申し上げられないので、恐縮でございますが……。
  163. 藤波恒雄

    政府委員(藤波恒雄君) お話のように、ことしの初めごろから、大洗にありましたJMTRが運転間近いということで、それの直制度の話し合いが続けられていたということは事実でございます。JPDRのほうの直制度改正問題は相当以前から話が出ておった問題でございまして、十二月に至りまして、両者の話し合いによる解決が困難になってきたということで、十二月に、すでに現在は協定されました内容と同じものが業務命令として出ておったようなぐあいでございますので、そのあとに起こりましたロックアウトの問題というものは、特にJMTRに対する圧力云々ということではないのじゃないかと思っております。
  164. 大橋和孝

    大橋和孝君 みんな焦点をぼやかして、ほんとうにぴちっと示してくれないのですが、そうじゃないんですよ。これは大事な問題で、先ほどから繰り返して言っていることは、こんなようなことは、ぼくは先ほど聞いたのですが、やはり調査して、いまどういう問題であるというようなことはきちっと握っておかなきゃいかん問題ですよ。実際の内容がどうなってきているかということをきちっと握っているのが、科学技術庁の中で研究所でどういうことがやられているかということを監督したりずっとしていく権能を持っている人としたら、当然やるべきじゃないですか。そういうことが十分になされずして、こういうことがあってどう思いますかと言ったときに、それはまだ決定的なことはいま提訴されておるからわからないとしても、こういうふうなことで自分らとしては考えて処置をしてきたというようなくらいのことを持っていなかったら、あなた自身に対して責任を追及したくなるんですよ。無為に禄を食んでいる、こういうことまで言いたくなるんですよ、そういうような答弁をしておればですね。私はそこまで言いたくありませんよ。言いたくありませんけれども、少なくとも、そういう状態は、直接あなた自身がやらなくてもよろしい。あなたのほうにいろいろの職制の人がいるわけでしょうから、そういうところに指示をして、きちっとそういうものを取りつけておらなければいかぬ。どんなことが起こったか知らなかった、やったやつが悪いんだということで済ましているとすれば、あまりにも無責任じゃないかと言わざるを得ぬと思うんです。こういうことは今後十分に考えてもらって、こういう行き過ぎがないように、特に私がいま指摘したように、一方においてこういう交渉をしているそういうところにこっちがロックアウトをかけて、普通常識から考えて長過ぎる、行き過ぎであるということは新聞にも書いてあるから、みんなが認めていると思うんですよ。こういうような行き過ぎということをやっているのに、研究所としてはこうしかありません、ああしかありませんということで、ほうっておくことは、お互いにもっともっと労働組合と理事者との間の意思がうまく疏通しないことになってくる。ぼくはもっともっと話を進めていくならば、ここらで働いておる研究者も、いまの最高水準の勉強をしたりっぱな研究者ですよ。こういう人たちが集まって、こういう無謀なことをやられてしまったら、これはもう研究する意欲は失ってしまうだろうと思うんです。そうなったら、日本はどうしますか。大事な研究でこんなむちゃくちゃされるのだったら研究するのはやめた、もう研究所がいやになってしまったら、もうこれからの重要な使命が果たされなくなるのではないかと、こういうようにまで考えざるを得ぬのです。  もう一点私は労働省のほうに尋ねておきたいと思うのですけれども、先ほどの動力試験炉の争議に対して、原研当局は、協約破棄通告もなくて、改定の申し出以後わずか五十日もたたぬ四十三年一月六日に業務命令を出してきたと、こういうようなことなんかは、これは協約違反でもあり、労働組合法の第十五条違反にもなるのではないかと思うのですが、この見解はどうですか。
  165. 松永正男

    政府委員(松永正男君) 労働組合法の十五条の規定によりますというと、期間の定めのない協約につきましては、当事者双方から解約の申し出ができる。しかし、それは文書によって九十日前にやらなければいかぬということになっておりますので、確かに、御指摘のような期間の定めがない協約について解約をするときには、九十日前に文書でやりませんというと無効であるというふうに考えます。
  166. 大橋和孝

    大橋和孝君 こういうふうにして、やはり労働組合法にも違反するようなことをやっているわけですね、ですから、私は、ほんとうにこれは大問題だと思うんですよ、実際から考えたら。私も先ほどから申し上げたように、学力の高い、レベルの高い人ばかりです、ここに行っている人たちは。そういう人たちに、理事者が、労働組合法も無視し、あるいは、また、行き過ぎであるということもどんどんやっていく。一方では、ほかのほうで協定を結んでいるやつの一つの押えになるようなかっこうで、同じ時期に不法に長くロックアウトをかけてやっておる。こういうことでは、いろいろの点を考えてみますと、こんなような状態で続いていくならば、働いている人はほんとうに研究をしようという意欲もなくなるだろうし、不当なこういう政策のために研究が麻痺してしまうのじゃないか、こういうことを心配するわけなんです。こういう観点からも、労働大臣のほうへひとつお伺いしておきたいと思うのですが、大臣もおいでくださるから、労働組合法にも違反するようなことがあるわけですから、どうかひとつそういう立場に立って、私が言いたいところは、ほんとうに大事な研究所でもあるし、日本でも中枢的な役割りを演じている研究所でありますから、そういう点に立ってひとつ十分なサゼツションをしていただきたい。  それから、また、そういうところで働いている人たちも、ほんとうに権利は守られるのだ、労働省のほうではそうしたことは十分理解してくれているのだというようなことの上に立って働こうとする意欲を持っているのだ、こう思うわけです。科学技術庁に対して特に私はお願いしておきたい。どうかひとつ長官のほうに話して、そういうような気持ちを持っているということを十分長官のほうからはっきり出して、少なくともそこで働いている人たちをカバーをして、その人の言うておられることを十分吸い上げて、進んで研究をしよう、あれをしようという前向きの姿勢がとられるように――押えつけて、反発するならまた問題にせんならぬというような指導のしかたではなくて、もっといろいろなことを吸い上げ、かような中でよく言い分も聞きながらやっていくほうがほんとうの労務上のやり方でもあろうし、あるいは、また、研究所そのものの発展であると思います。  私は、きょうは、端的に労務担当の理事との質疑応答で受けた中では、あんな理事がおったら、まともに働く気がしない、何をぬかす、何を言うかといって反撥をしなければならぬというようなぼく自身も衝動を受けるわけです。そういうようなことに対しては、私は実際いけないと思うのです。ですから、長官のほうによく話をしてもらって、少なくともあそこに出てくるような担当理事は、ああいう間違った考えの人であったら罷免して、もっとりっぱな人をつけて指導するくらいの前向きな姿勢でやってもらいたいということを言っていいと思います。私の受けた感じです。言い方が過ぎているかもしれませんけれども、実際率直にはだに受けた感じばそういう感じを持つわけです。だから、十分に長官のほうに言っていただきたいと思います。ひとつ労働大臣の所信を聞かしてもらいたい。
  167. 小川平二

    国務大臣(小川平二君) 問題の重要性という点につきましては、私も先生と考えをひとしくいたしております。原子力研究所は非常に大切な使命を持っている機関でございますから、ぜひ平素から労使双方の間で意思が疏通するようにしてもらいたいと切望いたしておるわけでございます。そして、平和な労使関係を確立してもらいたい。ことに、おことばにも出てきておりまするように、これは科学者の集団であり、ハイレベルの人たちの集まりでございますから、いずれも近代的、合理的な精神を身につけた方々だと存じます。ぜひ、そういう職場における労使の関係も、また近代的な、合理的なものであってほしいと切望いたしておるわけでございます。かような個々の労使の紛争の問題につきまして私どもが介入をする、あるいはこの場で介入的な効果を生じますような発言をするということは、これは慎まなければならないと存じまするし、ロックアウトの問題につきましては、先ほど労政局長からお耳に入れたとおりでございまして、この種の場合におきましても、反復して争議が繰り返されそうな事実が客観的にかりに認められれば、必ずしも過剰なロックアウトであるとは言えないという趣旨の判例もあると聞いております。ただ、事実に即してこれを判断するということは非常にむずかしい問題でもあり、微妙なことでもあろうと存じまするし、すでに訴訟も提起されておることでございますから、この問題は最終的には裁判所の判定にゆだねるほかはないと存じております。  ただ、今後も明白に法律に違反するような事実があり、あるいは起こりそうな場合には、法律趣旨説明して注意を喚起する、指揮するということも、これはもちろん御指摘をいただきましたようにやらなければならない。もしそういう心がまえにおいて足りない点があるといたしますれば、十分反省もいたすつもりでございますが、私といたしましては、今回の問題は、どこまでも労使がお互いに信頼し合って、話し合いによって解決をする、あるいは事情によりましては第三者の機関の判定にゆだねて、願わくはこの問題が解決をしてほしい、このように切望いたしておるわけであります。
  168. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 他に御発言もなければ、本件に対する質疑は、本日はこの程度にとどめておきます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十四分散会      ―――――・―――――   〔参照〕    国民年金法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)  政府は、次の各項について、その実現努力すべきである。 第一、福祉年金に関する事項  一 福祉年金支給額について、その引上げをはかること。  二 各福祉年金について、所得による支給制限の大幅な緩和をはかること。とくに、現に受給者となっている者に対する所得制限の適用については、特別の考慮を加えること。  三 老齢福祉年金について   1 年金額の引上げにあたつては、他の福祉年金に比して均こうを失しないよう措置すること。   2 支給開始年齢の引下げについて、拠出制老齢年金の開始年齢にあわせるための措置を講ずること。   3 夫婦受給制限を撤廃すること。  四 障害福祉年金について   1 受給対象となるべき障害の程度を拡げて、支給要件を拡大すること。   2 拠出制障害年金額との格差の縮小に努めること。  五 母子福祉年金について   1 子に対する扶養加算を大幅に増額すること。 第二、拠出制年金に関する事項   なお、右各項に関連し、拠出制の各年金について、次の諸点に努力すること。  1 年金額の引上げ及びスライド制の確立、保険料の適正化、支給要件の緩和に関して、社会保障性格をおり込んだ改善に努めること。  2 右事項実現のために必要な国庫負担を行なうこと。  3 積立金の運用について、被保険者の意向が充分反映できるよう配慮するとともに、被保険者福祉に運用される部分の拡充を行なうこと。  4 保険料免除者の年金給付について、改善措置を講ずること。  5 障害年金趣旨にかんがみ、障害の発生時期にこだわらず、現に存する障害に着目して、保障がなされるよう考慮すること。  6 年金制度に関する国際間の適用及び期間通算について措置を講ずること。 第三、児童扶養手当特別児童扶養手当に関する事項  一 支給額の引上げ及び所得による支給制限緩和努力すること。  二 母子家庭に対する援護措置は、生別又は死別という原因の如何によって差別が生じないようにすること。  三 特別児童扶養手当について   1 支給事由となる障害の範囲を拡大すること。   2 公的年金との併給をはかること。  なお、政府は、包括的な児童手当制度を、昭和四十四年から実施するよう努めること。      ―――――・―――――