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1968-05-16 第58回国会 参議院 社会労働委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年五月十六日(木曜日)    午前十時三十二分開会     ―――――――――――――    委員の異動  五月十六日     辞任         補欠選任      黒木 利克君     小柳 牧衞君      林   塩君     小林  章君      佐田 一郎君     青田源太郎君      植木 光教君     宮崎 正雄君      玉置 和郎君     田村 賢作君      丸茂 重貞君     北畠 教真君      佐野 芳雄君     秋山 長造君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         山本伊三郎君     理 事                 鹿島 俊雄君                 大橋 和孝君                 藤田藤太郎君     委 員                 青田源太郎君                 植木 光教君                 北畠 教真君                 小林  章君                 小柳 牧衞君                 紅露 みつ君                 田村 賢作君                 船田  譲君                 宮崎 正雄君                 山本  杉君                 横山 フク君                 秋山 長造君                 杉山善太郎君                 藤原 道子君                 小平 芳平君                 中沢伊登子君    衆議院議員         修正案提出者  佐々木義武君        発  議  者  田辺  誠君        社会労働委員長        代理理事     橋本龍太郎君    国務大臣        厚 生 大 臣  園田  直君        労 働 大 臣  小川 平二君    政府委員        厚生政務次官   谷垣 專一君        厚生大臣官房長  戸澤 政方君        厚生省公衆衛生        局長       村中 俊明君        厚生省医務局長  若松 栄一君        厚生省社会局長  今村  譲君        厚生省援護局長  実本 博次君        労働大臣官房長  石黒 拓爾君        労働省労働基準        局長       村上 茂利君        労働省職業安定        局長       有馬 元治君        労働省職業訓練        局長       和田 勝美君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        厚生省公衆衛生        局企画課長    江間 時彦君        労働省労働基準        局賃金部長    渡辺 健二君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○最低賃金法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○最低賃金法案小平芳平君外一名発議) ○最低賃金法案衆議院送付予備審査) ○参考人出席要求に関する件 ○身体障害者福祉法の一部を改正する法律案(内  閣提出衆議院送付) ○国立光明寮設置法の一部を改正する法律案(内  閣提出衆議院送付) ○理容師法及び美容師法の一部を改正する法律案  (衆議院提出) ○原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律  案(内閣提出衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  最低賃金法の一部を改正する法律案閣法第二号、衆議院送付)、最低賃金法案(参第九号)、最低賃金法案(衆第一号、予備審査)以上三案を一括して議題といたします。  三案につきましては、すでに提案理由説明を聴取いたしておりますので、これより質疑に入るのでありますが、閣法第二号については、衆議院において修正議決されておりますので、まず、衆議院における修正点について、修正案提出者衆議院議員佐々木義武君より説明を聴取いたします。衆議院議員佐々木義武君。
  3. 佐々木義武

    衆議院議員佐々木義武君) 最低賃金法の一部を改正する法律案に対する衆議院における修正の要旨を申し上げます。  第一は、審議会方式による最低賃金の決定、改廃の手続について関係労使に申し出の道を開くこととすること、  第二に、中央最低賃金審議会最低賃金制基本的あり方についての答申がなされたときは、これを尊重してすみやかに必要な措置をとるものとすること、  以上のとおりでございます。
  4. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 三案に対し質疑のある方は、順次御発言を願います。
  5. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、政府案に対して、労働大臣に若干の質問をしたいと思います。  今度出された最低賃金法改正案は、いわゆる業者間協定九条、十条の事項について廃止をする。方向としては一応われわれも了解するところでありますけれども、問題は、最低賃金というものは経済国民生活の中でいかなる意義を持っておるのかということがこの提案説明では十分にくみとることができないわけであります。九条、十条関係では、この法律が成立いたしますと二年間は要するに最低賃金が有効である、そういうことをおっしゃっているわけでありますけれども、いまの日本経済下においてただ形式を並べたという提案にすぎないと、私はそういう感じを強く持つわけでございます。ですから、最低賃金というのは何を目的にしておるのかということが、改正にあたっては、法律上の改正内容実質改正意義というものが十分にあらわれるということでなければ意味がないと私は思います。  そこで、労働省からもらっておる最低賃金業務統計をとってみても、総体で二千三百二十件、六百十万の労働者適用されておる。そのうちで、九条関係が千九百十九件、十条関係が三百六十七件、十一条が四件で、十六条がたった三十件、労働者の数を見ましても、十六条関係では百四十六万となっておりますけれども、全体の六百十万の何分の一かにすぎない、これが現実最低賃金の姿です。  それから日本経済の推移というものを考えてみるときに、ことしの国民総生産関係は四十七兆という表示をしておる。国民所得は三十七兆九千億という表示をしているわけです。去年は三十二兆という表示をして、先日出たのは三十三兆何千億、こういう水準にあるわけです。たとえば四十三年度の数字をとってみると、一億として一人三十八万円としても五人世帯では百九十万円、物価とか税金をのけた要するに分配所得平均値がそういう状態日本経済があるわけです。  そういう状態の中で、今度はここにあらわれている最低賃金の額なんですけれども、五百円以下が圧倒的に多い。その次に五百円と五百十円を加えると、おそらく三分の二ぐらいになるのではないかと思う。そうすると、五百円という賃金で二十五日稼働をやったらどうなるでしょう。六百万の最低賃金を受けている中の四百万からの人が最低賃金適用を受けているのが月一万二千五百円、その人がやっぱり生計を立てている。標準五人世帯として百九十万円が分配所得平均値としたら、この最低賃金というのは何の意義を持っているのか。だから、業者間協定で低賃金に押えてきたことを取りのけようということは、私はそれなりに理解をしましても、この法律が通っても二年間はこのままで推移するというような考え方が、一昨年とか五年前とかいうならともかくとして、改正にあたっての最低賃金としてはいかなる役割りを果たすかということについて一つも触れていない。これは大臣専門家の方がたくさんおいでになるわけですから、社会経済的にどういう影響をもたらす意義最低賃金というのは持っているのかということについてまずお聞きしたい。
  6. 小川平二

    国務大臣小川平二君) 最低賃金意義、果たします役割りにつきましては、法律の第一条が規定いたしておりますように、低賃金労働者労働条件改善に役立つ、結果といたしましてはこれによって労働者生活が安定することはもちろんでございまするし、労働力質的向上もこれによって期待されると存じます。あるいはまた、もっぱら低賃金を武器とする公正ならざる競争が行なわれております場合に、最低賃金制は公正な自由な競争を確保するのに役立つ効果を持っておる、かように考えておるわけでございます。
  7. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 法律の書いていることが実際の行政の中で生かされてこそ法律なんです。絵にかいたもちでポスター幾ら張っても、事実問題がポスターに即して進まない限りは、それは今日の法制度を創設するための意義とは違うと私は思うのです。いま申し上げましたように、五人世帯で百九十万の分配所得実質水準にあるときに、一万二千五百円の賃金の諸君が四百万もおる。いままでのことは私はさておくのでありますけれども、これから二年間、ことしの分がそれなんです、経済は停滞しているのではない、過剰生産操業度は五〇%くらいだと、そういう状態の中で、二年間このままの状態で有効だということは、この改正案を出す場合にあたっての法律の精神というものにあまりにも無関心といいますか、形式さえそろえば事は済むというものの考え方でこの法律が出てきているとしか考えられない。それは、低賃金を解消するためにやるということが法律意義だと。当然です。最低賃金一般論です。しかし、具体的な法律改正というものをここに出しおいでになったときに、いまの日本の現状と比べて見てどうなるんです。これは、大臣、きびしい言い方をしますけれども、そういうことじゃないですか。あなたが想像されてもわかるでしょう。一人当たり年寄りも赤ちゃんも平均三十八万円の所得になっておる。税金や何かの影響しない実質所得分配所得政府見通しとして出している。そうでしょう。政府出しておいて、それで低賃金を上げるのだからといって二年間とめ置くというのは何の意義があるか。おそらく一人当たり四十万円か四十五万円になるそのときでも、いまの一万二千五百円で家族の生計を立てる最低賃金で、低賃金を打破するという最低賃金と言えるのかどうか。再生産に値する最低賃金と言えるのかどうか。この点についてもっとうんちくを傾けてもらって、名実とも最低賃金というのは目的に書いてあるように低賃金を打破して公正云々というところへ行くようにしなければ意味はないのじゃないですか。大臣、もう一度お答えを願いたい。
  8. 小川平二

    国務大臣小川平二君) ただいま分配所得平均値数字等もお示しをいただいたわけでございます。それはそのとおりであろうと存じますが、現実には、おくれた分野におきましては、労働条件も非常に立ちおくれているし、賃金水準もきわめて低いわけでございまして、今日まで最低賃金制が実施されてきたことによりまして適用されておる労働者の約一割相当のものはこの制度によって賃金改善されておるわけでございます。また、これとの均衡上、賃金改善をされたという分野も、相当たくさんあると推定をいたしておるわけでございます。賃金の額につきましては、一般賃金水準上昇に応じましてこれから先も実情に即するようにだんだん改正をしていく仕組みにもなっておるわけでありますし、私は、最低賃金制が今日まで賃金改善に全く効果がなかったとは考えておらないわけでございます。ただ、いわゆる業者間協定による方式は、ここでそろそろ限界点飽和点に近づいてきてもおりますので、今回法律改正いたしまして、もっぱら十六条方式中心にして運営をしていくという方向をとっていくわけでございます。経過期間内におきましても、業者間協定方式を十六条方式によって逐次切りかえていく方針でございます。  十六条の方式につきまして先刻御発言もあったのでございますが、最近の実績を御参考までにお耳に入れますると、従来は他の方式によることが不可能または困難な場合にのみこの方式適用されたわけでございますが、この改正によってそういう制約を取り払いました場合には、かなり急速に普及していくであろうという見通しを私ども持っております。すでに昭和四十一年度の末までにこの方式による最低賃金は十件、人数にいたしまして六十六万人に適用されておったのでございますが、ことしの三月の末では、これが件数で三十件にふえており、適用労働者も百五十万人にふえておるという実績でございます。今後は、もっぱらこの方式中心として運営することによりまして最低賃金制を普及してまいりたい、そうして所期の効果をあげていきたいと考えておるのであります。
  9. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、これから努力されることについていま議論をしていないのです。それは、法律改正されたのだから、されるでありましょう。しかし、今日行なわれている二千三百件に近いものが二年間有効だということになると、いまの経済国民所得国民生活水準と合わして見て、あなたは政治家として、これは事実上の問題として、これだけのものが二年間据え置きされるということを理解して法律を出されたのですか、そこのところが聞きたいわけです。形式論じゃない。これから努力するということはともかくとして、そういう低賃金の人が、まだ一万二千五百円より低い人がたくさんおいでになる。そういうものを二年間定着する権利が――権利というか、労使関係でいうと有効なんだというものを固定した状態で、ほとんど九八%くらいのものを低賃金に固定されて二年間いる。片っ方の国民所得というものと国民購買力との関係について、もっとうんちくを傾けて閣議で議論されたことがあることと私は思う。大臣自身が、こういう改正案を出されるときに、具体的な国民生活数字とあわせて十分にのみ込んでこの法律を出されたのですか、それを聞いているのです。
  10. 小川平二

    国務大臣小川平二君) これは、業者間協定方式による最低賃金の額を二年間据え置くあるいは固定するという趣旨ではないのでありまして、これに対しましては異議申し立てをする道も開かれておりまするし、さような申し立てがありません場合にも、逐次積極的に目安改定を行なっていくわけでございます。その際、一般的な賃金水準とか生計費ということは当然考慮いたしまして改定が行なわれていく、決してこれをこのまま固定するという趣旨でありませんことは、御了承いただきたいと思います。
  11. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、立法のかまえの問題を言っているんですよ。それは異議があって何かあったらともかくとして、法律改正する趣旨というのは、いまや九条、十条を廃止して、そして賃金の本式の方向にちょっとでも近づけようという気持ちでこの改正案を出されたのだと思う、本来は。ILO常任理事国です、日本は。ILO最低賃金のきめ方はいかにあるべきかということは、三十号勧告できちっと明記しておるわけですね。だから、二十六条との関係がここに生まれてくるわけでありますけれども、ただ、事なかれ主義といいますか、労働者の立場とか再生産とか日本経済という問題を頭に入れないで、法律の字句を追っていくということじゃ意味がないと、私はそう思う。これは少し僭越でありますけれども。アメリカでは、公正労働基準法というものと再雇用協定とあわせてニューディール政策の柱になって、あの世界の恐慌を生産と消費のバランスの方向の中で救済した。違憲の判決が出た時分には経済はすでに立ち直っておった。政治をやる者、政権を担当する者は、それぐらいのかまえと決意というものがなければ意味ないと私は思う。  今日、片方では四十何兆の総生産がありながら国民購買力が低くて、基幹産業は膨大な操短です。操短を通じて中小企業の倒産は毎月新記録です。むろん日本輸入能力において輸出は出ていくわけですから、かねや太鼓で鳴らしても輸出ができるわけじゃないのです。輸出輸入はフィフティー・フィフティーですよ。そういう条件の中で、いかにして社会保障を含んで機械化生産に見合った国民購買力を高め、そして主権在民の国家にふさわしい世の中をつくるかというのが、今日の政権を担当しておられる佐藤内閣の使命だと思う。それにまだ二年間定着するとは何だという意見が出てくるわけです。私は、政治家としての大臣質問しているのです。そういう大づかみに、経済社会労働生産という判断がつかないのがふしぎでしょうがない。低賃金を上げる目的であります。最低賃金を増すということであります。しかし、現実状態というものと日本機械化生産における今日の社会の問題と比べてみて、労働者生活というものは単に物取りじゃない、経済社会にいかなる役割りを果たすかという意義をもっと十分にかみしめて最低賃金法改正案をお出しにならなきゃ意味はないのじゃないかと私は思う。だから、最低賃金意義というもの、役割りというものを労働省考えおいでになるのかどうか。考えないのじゃないか、ただ形式を追うだけにすぎないのじゃないかということを私は質問したい。所見を聞きたいと思います。
  12. 小川平二

    国務大臣小川平二君) 最低賃金意義役割りにつきましては、最初にお耳に入れましたとおりでございます。これは、労働者労働条件改善にも役立つでございましょうし、あるいは、公正競争の確保ということにも役立つでございましょう。あるいは、これがまた近代化の契機にもなるに違いない。そう考えまして、今後もそのつもりでこの制度を運営していきたいと考えておるわけでございます。
  13. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 いや、それは何べん聞いても同じですよ。あなたは現実政治をやる労働大臣というその職と佐藤内閣閣員として、いかなる位置に労働者生活というものがあるべきか、これがいかなる役割り経済全体の中で果たすのかどうかということをお考えにならないでこの法案をお出しになったということが私はわからぬと、こう言っているのです。そうでしょう。単に形式論だけです。それは最低賃金意義じゃないですよ。それは形式をそろえただけですよ。だから、いまの二年間というのじゃなしに、いまの経済状態において、健康を維持しながら再生産に値する生活水準生活維持というのは那辺にあるのだということをもっと端的に考えてこの問題をお出しになるべきじゃなかったか、私はそう思う。しかし、過去のことをいま振り返って三年前のことをいま直せといってもできないから、これから直していくというなら、二年間といわないで、九条、十条の現実数字に出ているこれを是正しなければ、労働者生活としてもぐあいが悪いし、全体の経済上の問題としてもぐあいが悪いから、直ちに一つ一つ再検討をしようじゃないかと、それが法律意義基本だと私は思うのです。それを、二年間も有効でありますというようなかまえで、要求があったり異議があったりしてまた審議会に話をする、幾らかのものだけが救われる余地がありますというのは、私は主客転倒していると思う。その現実の問題というものを生かさない限り、意味がないと私は思うのです。あなた、さっきから二回もおっしゃいました、低賃金を打破するためにと。そういう公式議論はよろしゅうございます。しかし、あなたも閣員の一人として、労働大臣として、こういう日本経済機械化生産状態において、これでいいかどうかということをお考えにならなかったのですか。たとえば、私はさっきアメリカニューディールの話をしました。しかし、いまヨーロッパで行なわれている社会保障所得保障最低賃金というようなものが、その人の生活を、どれだけの必要物品必要経費最低――要するに、再生産生活に必要なのか、経済が成長したら自動的にそれが上がっていくという処置をとっているというところまで世の中は進んでいるんですよ。日本は、経済世界の三番目の生産国だといっていばっている。国民分配所得は二十一番目だということもいわれている。その数字にこだわっていま言うわけじゃないのですけれども、いまの日本経済のアンバランスというものをどうして是正して経済発展の道を開くか、国民生活向上するかという道は、ただ一つじゃないですか。人間の能力を最大限に発展をさして、科学を発展さして、生産増強をやっていく、それがそのまま国民生活向上につながらなきゃ意味ないですよ。生産幾ら高くても、分配所得幾ら高くても、国民の非常にたくさんの人が困っているという状態で、そのままではどうにもならぬじゃないですか。現実政治家としての労働大臣がこういうことを御存じなしに法律が出たのじゃないと思う。私は、あなたの人格については、常日ごろ非常にりっぱな方だと思っている。思っている労働大臣がこういうことをお出しになるなんていうようなことは、よく内容も知らずに、知らずといったら失礼ですけれども、理解されずに、あなたは十分に知悉されずに法案が出てきたのじゃないかと私は思う。そういう気がする。いやそうじゃないということをおっしゃるなら、なぜこんな法案が出てきたのか。最低賃金意義というものは低賃金を上げるんだと。一円上げても上がったことになるでしょう。厚生省国民年金のように、老後生活を保障するといって、月百円上がったからいいでしょうというような議論労働省もされるのかという気がする。千六百円に百円上がったからこれで意義がある、老後生活を保障すると。年金所得保障の柱ですよ。柱ですけれども、百円上がったからいいじゃないかという議論とあなたの今度出している法律議論が一緒になってきた気がする。そこらをもうちょっと心境を聞かしてください。
  14. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 先ほど来先生の御質問を承っておりまして、大臣からは、最低賃金意義という観点からお答えをなされておりますが、先生の御質問の中には、いわゆる最低賃金制意義だけではなくて、経済のダイナミックな動きに適応いたしまして最低賃金がどのように機能するかというその働きの面についての御質問も含まれておると存じますので、その点について労働省考え方を私から申し上げさしていただきたいと思います。  この法案では、業者間協定方式を廃止するというのが主眼でございます。これは最低賃金のきめ方の問題でございますが、いま先生指摘の、動く経済にマッチした最低賃金の機能というものを考えます場合に、業者間協定方式か十六条方式かというきめ方の問題はもちろんございますけれども、業者間協定方式を廃止するわけでございますから、そのきめ方の問題は別にして、最低賃金額をどうきめるかということ、か現実には非常に大きな問題になってくるだろうと思います。  そこで、二年間据え置きという先生の御意見が、金額固定、そのままにして置くんだ、こういうことになりますれば、現実経済動きにマッチしない、機能しないようになるのじゃないか、こういう御指摘であろうと私拝聴いたしておりました。そういうことであれば、まことに仰せのとおりであります。そこで、従来、労働省としては、最低賃金額目安を逐次改善しまして、その当時の経済情勢にマッチしたものにしたい、こう考えておりましたが、たとえば昨年十二月末現在の最低賃金額現実にきめられましたものの額の中位数――まん中の数字でありますが、総平均では五百二円となっております。甲地域で申しますと五百三十一円、乙地域ですと四百八十五円、丙地域ですと四百三十九円というように格差がございますが、全国ならしますと五百二円、こういうことになっておりまして、目安よりもむしろ上回っておる、こういう形になっております。ところが、何ぶんにもこの目安は古いものでございますから、そのものを賃金上昇に見合いまして引き上げたい、こういう意向がございまして、いま中央最低賃金審議会目安額の再改定について検討いたしておるわけでございます。  そこで、その目安がどのように改定されるかということが、わが国の最低賃金がどのように経済にマッチして機能するか、働くのかどうか、こういうことになるだろうと思います。この点につきましては、大臣からお答えがございましたように、生計費であるとか、賃金上昇の傾向であるとか、そういった要素を総合的に勘案してこれからきめられるというふうに存じております。そのきめ方の問題については、いろいろ御議論があろうかと思います。先生指摘のように、ヨーロッパでは、働く者の生計というものを中心に問題を考えてそしてスライドアップしているんだという意味の御指摘もございました。フランスではそのような方式をとっております。しかし、フランスの場合には、生計費上昇よりも賃金上昇率が高いもんですから、生計費にスライドさせるフランスの方式がもうおくれてまいりまして、賃金上昇に追随できないもんですから、実際の機能というものは非常に低くなってしまいまして、現在適用を受けている労働者がせいぜい十万か十五万、こういったかっこうになっております。ですから、そういうことになりますと、生計費だけじゃ一般賃金上昇に追随できない。そうすれば、やはり賃金上昇の動向というものを考えて金額を考えなくちゃいかぬ、こういうような問題が起きてまいります。私は、ここが、最低賃金制度のあり方と、現実に金額をどのようにきめて経済情勢の変動に適合していくかという、その機能を生きたものとならしめるということの苦心の存するところだろうと思います。  そういった外国の先例もございますので、今後、最低賃金制度の意義は、考え方としましては大臣が仰せられたとおりでありますが、現実のダイナミックな経済情勢にどのように適合していくかということにつきましては、以上申し上げました観点からいろいろ考慮しなければならないと、私どもはかように考えています。したがって、経過期間を二年間据え置くといったような考えはございませんので、現にいま目安改定を急いでおるということでございますので、そのわれわれの考えております気持ちをひとつ御了承賜りたいと存じます。
  15. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 最低賃金というのは、私は何回も言うようですけれども、目的にあるように、低賃金労働者を引き上げる、そして労働者を守っていくというのが最低賃金意義なんです。これはこのとおり。ただ、いま基準局長も少し補足されましたけれども、機能といいましょうか、新しい制度九条、十条はわれわれが三十四年にやかましく言ったやつがようやくそこまで来た。それはそれなりに意義はあるというんです、私は。意義があるけれども、それじゃこの事態においてこういう改正をして低賃金を急速に上げなきゃいかんという面も一つあるんです。ぼちぼちという人もあるかもわかりませんけれども、しかし、いずれにしても、労働者最低生活を引き上げて、再生産生計費を維持していこうというのが具体的にはその目的です、最低賃金というのは。そうならば、なぜ二年間というものを有効だということで固定をするのか。この法律が通ったら一時に二千何百というものを一ぺんに水準を云々という議論がありましたけれども、実情においてこれは最低賃金がきまっていくんでしょう。おそらく審議会でも議論されるし、労働者要求もあるでしょう。きまっていくでしょうけれども、それじゃ二年間というものを固定をしていくところの意義がどういうことになるのだ。なぜ全部再検討をこの法律ができたらしようとおっしゃらないか。それは私の言うことがなかなかわかりにくいんでしょうから、なかなか答弁が公式論だけの答弁になってしまう。経済状態の中で労働の再生産生計費を維持するところに最低賃金意義がある。  たとえば、またアメリカの話をしますけれども、あのニューディールのときに最低賃金をきめて、最近のアメリカはケネディ以来一ドル六十セントです。最低賃金適用拡大をしながら、一ドル六十セントです。どうなりますか、一ドル六十セントというのは。フランスもそうです。フランスはいまはそんなに高くはありませんけれども、しかし、いずれにしても、二万五千円から二万八千円水準に毎年国内の経済の成長の度合いによって上がっていくんですから、むしろそこでは生産と消費のバランスということが議論をされているわけです。そうして、経済の成長とあわして国民生活最低規正というものが行なわれるわけでしょう。それに、その点は、片一方では世界の三番目とか二番目の経済成長やといって自慢しておって、片方では労働者生活というものは固定して置く。どこに目的があるのかと言いたくなるんです。わかっていただけましたか。だから、むしろ大臣はこの法律というものを御存じなしにお出しになったのか。それじゃ、大臣に私は聞きますけれども、二年間という固定はなしに、最低賃金法が通ったら、審議会で――基本的な今後の方向大臣衆議院お答えになっておるのですけれども、あれですか、審議会はいまの二千何百件の最低賃金というのは直ちに検討に入られるのですか。あなたのおことばを聞いていると、何かそんな返事をされたようですけれども……。
  16. 小川平二

    国務大臣小川平二君) この業者間協定は二年間の経済期間の後に廃止されるわけでございますが、なぜそのような経過期間を設けたのかということは、申すまでもなく、これを一挙に廃止いたす場合には、この制度のもとで現実に多数の労働者が保護を受けておるわけでございます。その保護が一挙に失われる、それによって混乱が生じてはならないという配慮からでございまして、もちろんその期間の中におきまして、政府といたしましては、積極的に十六条方式に切りかえていく努力をいたすわけでございます。何ぶんにも件数がただいま仰せのとおり数千件にのぼっておるわけでございますから、これを一時に新たな方式に切りかえるということは実際問題として困難でございますので、二年の期間内においてあとう限りすみやかに実情に応じてこれを切りかえていこう、こういう考え方をとっておるわけでございます。
  17. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) なお、補足させていただきますと、二年間固定してなお存続さすのではないかというふうにも私とれましたので、その点は改正法案の附則の関係でそうなっていないということを補足さしていただきたいと思うのでございます。  附則の第二項では、二年間はなおその効力を有するということで二年間生かしております。しかし、第三項で、第十六条第一項の規定による最低賃金の決定またはその改正の決定がなされるというときには従来のものは効力を失う。それから第四項では、そのままにしておきますといわゆる二年という期間満了後も効力を存する、こうなっておりますが、第五項で、最低賃金適用を受ける労働者異議申し立てをしたという場合には、最低賃金審議会でその効力を存続させる旨の決定をした場合を除いてはその効力を失う、こうなっておりまして、最低賃金審議会でふるいをかけまして、これは適当だから残すべきだというものは残りますが、そうでないものは労働者異議申し立てがございまして、不適当だ、存続させない、こういうものは効力を失ってしまうわけであります。そういうような関係になっておりまして、附則をさっと見ますと、生かしておいたという面が先に出ているものですから、生きるように見られがちでございますが、大臣も仰せになりましたように、異議申し立てを認めております。ですから、審議会で適当だから存続さすというふうに決定すれば格別でございますが、そういういわゆるけちのついたもので適当でないというものは効力を失うわけでございます。そういう形で、この二年間に不適当なものは消滅さしていきたい、そうしてその間において新しい業者間協定はもう締結させない、しかし、改定さして金額を引き上げるというものだけは認めよう、こういうたてまえにしております。  そこで、先ほど御答弁申し上げましたように、いま審議会で鋭意その目安改定の問題を審議しておるわけでございます。目安改定になりましたならば、それに見合うように引き上げろ、こういうことになって処理されていくだろう、かように存じておりますので、私から補足さしていただいた次第であります。
  18. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうすると、この二年間というものは二年間というもので固定しておいて、異議があって云々ということになったら改正をするとおっしゃるわけですけれども、改定をする、それから審議会が決定を下したら停止命令をしてもっと引き上げるということをするということになるのか。さきに大臣の答弁を聞いていると、これが今日からということになると、労働者も困る。四百五十円やそこらの賃金でどこに目的があるのか。四百五十円や五百円の賃金でこれはよい賃金だからということで、労働者は、使用関係はむろん最低賃金というものに縛られて低い賃金に押えられていく、業者間協定によって。それが労働者の立場じゃないかと私は思うのです。しかし、労働者も困るからという、どこからどういうお話が出てきたのか、そういうことが。労使関係における経済と全く無関心です。全く無関心で労働者賃金というものが業者の一方的なことで、ここで「支払能力」云々というやつがこの法律に出てくるわけです。そうすると、支払能力云々といわれるこんな条項ははずすべきだと私は思う。最低賃金の性格というのはそんなのじゃないと思うんです。だから、そこらの関連と意義というものの私たち一般労働者考えているのと、大臣発言から出てくるニュアンスとは、基本的に違うのじゃないか。また、これは、業者間協定は実情に沿わないというような形式論業者間協定なのか、実質上業者問協定で賃金を押えられているという立場に立つのか、業者間協定によって労働者賃金が引き上げられているんだということになるのか、そこらの認識の違いだと私は思うんです。さっきから聞いていて、はっきりそこらあたりが――経済全体の話をしたのは、そういうニュアンスがどうも出てくるから、経済全体の中における最低賃金というのはいかなる意義を持ち、いかなる位置にあり、どういう役割り、機能を果たすのかという議論をしたのは、そこらあたりがだんだん聞いてくると明らかになってきたように思うんです。労働大臣はどちらの立場に立っておいでになりますか。
  19. 小川平二

    国務大臣小川平二君) 私は、業者間協定方式による最低賃金が、賃金を低い水準に固定させる作用を持っておったとは考えておらないわけでございます。最低賃金制がもっぱらおくれた分野適用されておるわけでございますが、先ほど申し上げましたとおり、これによって現実賃金改善を見た業種、業界というものが存在をするわけであります。そういう業種ないし業界においては、今日の最低賃金制が実際問題として賃金のささえとして機能いたしておるわけでございます。私どもはそのような考え方を持っておるわけでございます。したがって、これを直ちに廃止いたします場合に、現在受けておる保護が失われる、こういうことにならざるを得ない。さればと申しまして、一挙にこれを新たな方式に切りかえるということは、何ぶん件数も多いことですからなかなか困難が伴いますので、二年の経過期間を設けて逐次切りかえていこう、こういう考え方をいたしておるわけでございます。
  20. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、そうなると、ちょっといまあれですが、労使関係というのは、労働三権が確立した中で労使の対等の立場であるということを、憲法で明らかにし、そうして労働基準法にも明らかにしております。だから、そういう立場というものが労使関係労働法の基本だと私は思うんです。労働法の基本である立場というものが十分に発揮されてくると、ILO三十号のような最低賃金のきめ方というものがああいう形に生まれてくると思う。労使の対等の立場で十分に突き詰めて、最後の手続的な集約を公益委員がやる、こういう立場に賃金労働条件のきめ方というものは集約されてくる。そこではじめて力の――力のと言ったらなんですけれども、労使が三権を確立した上で労働条件向上というものが必然的に生まれてくる。  ところが、実際問題として、今日の日本の未組織労働者、だから、労働省は、労働組合の組織をしなさいという法律に基づいてどんな小さいところでも組織化についてどれだけの努力をされたんでしょうか。組織がないからということで見のがすわけだ。どこもかも組織には努力をしていても、何らかの社会的制約があって組織できないところもある。業者がきめてそうして押しつけているという以外に考えられない。十年余り前に私どもの経験も一つあるわけです。京都の奥丹後ちりめん労働者が非常に安い賃金で働いている。一カ月もストライキをやって賃金協定ができた、ようやく。それが三十四年にできた最低賃金適用ということになってきたわけです。だから、そういうかっこうの出発点があっても、その後それじゃ十分に改定されたかというと、改定されていなかった。生産力を持つ業者に力があって、労働者自身が十分な機能を発揮していない。労働三権の機能を発揮していないところに問題があるんですけれども、しかし、少なくとも労働組合、また労働組合がどうしてもできなければ労働者の代表というものが、対等の立場で団体交渉をして、そして三十号勧告に出てくるような労働者の全体の代表の意思というものが、一般賃金労働条件とあわせて、最低賃金にも生まれてくるというかつこうのものが出てこなければならぬ。そういう意味も含んで今度は九条、十条というものは廃止されるようになったと思うんです。それなら、いまの労働省に働いている公務員の賃金はどうでございます。一般賃金水準はどの辺にありますか。少なくとも同じように業種は違っても働いて世帯をささえているわけでしょう。それで、四百円や五百円の賃金がむしろ労働者が得をしているような感じ、これでささえられているような感じが事実あなたのおっしゃったようにあったとしたら、なぜ労働行政は、労働者保護の立場から、労働組合の組織とかそれから保護施策をもっと何でおとりにならないのか、私はそういう議論までしなきゃならぬことになってくるんですよ。しかし、少なくともイギリスのように産業別のウェージカウンシルのような最低賃金方式があります。いまフランスの話が出ましたけれども、経済の成長に応じてどんどんと最低賃金の額を引き上げていく、しかし一般賃金が上がりがきついから、いま適用されるのは非常に少ないんだということをおっしゃった。私はけっこうな話だと思うのです。労働者と使用者との関係は、団体交渉でものをきめていくというルールに世界じゅうなっている。しかし、何らかの公的機関できめるというのは、救いがたいところを救うわけです。そうでしょう。だから、団体交渉で最低賃金が毎年上がっていく、最低賃金適用がだんだん少なくなって、それよりか賃金が上がっていくということになれば、私がいま申し上げているような議論をしなくても済むんです。残念ながらそうでないところに議論があるわけですから、これはやはり政治の指導としてやるべきことなんだと思うのです。それを業者間協定で守られているのじゃないかというような議論が出てくるのは、実情とあまりにもかけ離れているんじゃないか。四百円や五百円の賃金を五百万人近くの労働者が受けて、一定の期限だからといって押えられているのが多いんじゃないか。そういう点、組織的にも十分成熟していないから、泣きの涙でいる。だから、労働力が固定しないという現象を起こしているんでしょう。いつも労働省がおっしゃるように、百何十万もの中小企業労働者がだんだん大企業に行く。また、最近の中小企業の若年労働力に対する賃上げは、ここ二、三年は大企業を乗り越えるほど高くしなければ中小企業労働者が来ないというところまで来ている。だから、そういう点は、いま大臣のような感じで見ておいでになったら、それは労働者のいま置かれている実情と大きな違いだと、私はそう思うんです。どうでしょうか。これは事務局からの見方も聞かせてください。
  21. 小川平二

    国務大臣小川平二君) ただいまおことばに出ておりますように、労使が対等の立場で自主的な交渉をいたしまして、その結果、締結された労働協約の内容を拡張適用していくという方式は、確かに一つの行き方でございましょうし、現行法も制度としてはこれを規定いたしておるわけでございます。また、西欧におきましても、もっぱらこの方式中心にして運営しておる西独のような国もございます。日本におきましては、これもおことばにそのような趣旨があったかと存じますが、産業別の組合組織が普及しておりませんために、この方式が十分実効をあげ得るための条件がまだ熟しておらないという事実があろうかと存じます。労働省といたしましては、近代的な労使関係のあり方というような点については、絶えず啓蒙指導もいたしておりまするし、健全な労働運動の発展ということは国民経済的見地から考えましても好ましいことだと存じております。また、労働者の保護という点につきましては、現行の諸法規のもとであとう限りの努力をいたしておるわけでございます。  お話の前段に対するお答えのつもりでただいま申し上げたのでございますが、幾らか御趣旨がまだ理解いたしかねておるような点が終わりのほうでございますので、さらにお尋ねがございますれば、私の考えを申し上げようと思います。
  22. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) ただいま先生の御質問を私なりに受けとめさせていただきますと、一つ労使対等の原則をどのように実現するかという問題と、それから最低賃金をきめてもかえって賃金くぎづけのようなかっこうになりまして現実には働いてこないじゃないかという趣旨とが含まれておったように思うのでございますが、そのあとのほうから申し上げさせていただきますと、最低賃金をきめます際には、必ずその影響率というものを考えまして、どの程度その最低賃金決定によって引き上げられる労働者がおるかということを予測しまして決定するわけでございますから、最低賃金をきめました当時においては必ず有効に働きまして、賃金引き上げの現象を伴います。しかし、それが数年経過しました場合に一般的に賃金上昇しますと役に立たなくなるのじゃないか、これはもう御説のとおりでございまして、これは何も日本に限ったことではないと思うのでございます。いずれにしても、おくれる傾向がある。そこに、いかにして最低賃金現実に機能するように、働くようにするかということが問題だろうと思います。  そこで、今日までの実績は、これは先生御承知でございますが、三十九年の十月に審議会の答申をいただきまして、最低賃金額目安を決定しました。その後、四十一年の二月に答申をいただきまして、その目安の額を改定いたしました。これをいま改定すべく審議中でございます。このように、額を適正ならしめまして、経済の情勢なり賃金上昇傾向に追随せしめていくという努力がいかに適正になされるかということが、最低賃金をきめられたあとの最低賃金額とどのように現実にマッチしていくかということにかかるだろうと思うのでございます。この点の努力は、私ども大いにしなければならない、かように存じておるわけであります。  それから労使対等の原則の問題でございますが、大臣お答えになりましたように、労使対等の原則がそのまま実現される、労働組合というものが結成されまして使用者との間に対等の交渉が行なわれるという分野は、これはもう言わずもがなでございますが、零細企業で組合も結成されていない、そういう分野におきまして、労使対等の原則がそのまま働かないという場合に、国の力をもちまして最低賃金をきめる、こういう働きが出てくるのだろうと思います。その際に、最低賃金をきめるときの労使対等の原則というものをどう働かすか。組織の問題じゃなくて、最低賃金をきめる審議会の場における労使対等の実現をどうするかということであろうと思います。先生ILO勧告の三十号を引き合いに出されましたのも、最低賃金をきめるときの審議会の場における労使の対等性ということについてお触れになったのじゃないかと私は承ったのでありますが、まさに最低賃金を決定します場合に、当該最低賃金に直接関係のあります労使が平等対等の立場で参与する、これが三十号の勧告の趣旨でもございますし、私ども、この法改正にあたりまして、審議会の場における構成はもちろんでございますが、決定する以前におきましても関係労使意見を聞く、審議会の結論が出まして労働大臣が告示する前にもう一度関係労使異議申し立てを認めるというように、審議会の運営の前後に関係労使意見表示の機会を認めたわけでございまして、今回の法改正ではそのような配慮がなされておるというふうに私ども存じておる次第でございます。
  23. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 いや、私の言っているのは、最低賃金審議会の手続の問題についてはILO三十号勧告に従って明確にやらなきゃならぬ。しかし、労働者と使用者がなまの声として最低賃金審議会に来たのではなしに、業者間だけがきめて、これだけしか支払いができませんというところに、労働者の組織未熟その他によって押えられてきて、それがやむを得ずということで最低賃金決定ということになってきたのがいままでの歴史なんです。だから、そういう意味で救われる人も中にはあるでしょう。しかし、多くの人は、もっと高い賃金を得たいという願望のほうが圧倒的なんですよ、どの最低賃金でもね。もっとよい生活をしたい、もっと上げてもらわなければ困るというのが労働者の中で圧倒的ですよ。しかしながら、安い賃金で押えられてきた人を業者の主観によってやったんですよ、業者間協定というのは。九条、十条方式でですね。それをあなた方は改めようというんでよ。何で改めるのですか。憲法や基準法の原則に基づいて、またはILOの原則に基づいて、九条、十条を改めようと発想されたのでしょう。そのことは私は是としますと言うんです。けっこうなことだと思っているんです。しかし、そのよってきたる原因の根本は何であるかというと、業者間協定一つのここに節があって、そのために労働者が公平に扱われていないということ、これは世界じゅうの世論が認めていることなんです。私だけが勝手な議論を吹っかけているわけじゃない。それであなた方も態度を改めてこれを改正されるということになったんでしょう。それなら、なぜこれを二年間有効だなんということをされるのですか。そうじゃなしに、検討しよう、この九条、十条が廃止されたのだから直ちに検討しようという立場に立たれるのがあたりまえじゃないですか。私は、先ほどから、額の経済的な影響の問題も少し言いましたけれども、ちょっと説明のために申し上げた。だから、政治をやる者の立場というものは、社会相互全体です、その中で最低賃金というものがいかなる意義を持つかという意義論を少し話したわけです。だから、そういう意味で、なぜそれじゃ二年間というものをとめ置かなければいけないか。これには効力があるのだからと使用者が言ったら、労働者はどうなる。どうにもならぬじゃないですか。そういうことがどうなりますか。労働者はみんな異議を申しますよ。二千何百件みな異議申し立てますよ。そのときに、審議会というものは、二年間有効ですというようなことを使用者が言わずに、審議会がそれじゃ実情に――あなた目安目安と言われるけれども、官庁が労働賃金目安をきめて押しつけるのですか。むしろ審議会できめるわけでしょう。そうでしょう。官庁が目安をこれだけにせいと言うのじゃないでしょうが。そんなことを言うたら原則に反しますよ。だから、私は、あなたの発言を聞いたらそう思えるけれども、それはまあ審議会できめるということに理解をして、それならどうなるんですか。二年間というものは有効だと使用者が言うたら、それでもお前はあかぬのだと審議会がきめたら、十六条方式にみななりますか、この九条、十条のやつは二年間いつでも。それははっきりしてくださいよ。全部のやつが全部異議申し立てたら、十六条方式で全部決定ということになりますか。審議会の運営については私は議論はまた別ですから言いませんけれども、そうなりますか。そこのところを明確にしてください。
  24. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) いまの目安の問題につきましても、政府がきめるということよりも、これは審議会で検討していただくわけでございます。そういう意味合いにおきまして、今後の運用につきましても、正確に申しますと、審議会の御意見を聞いて処理するわけでございまするから、いま私が審議会における今後の審議というものを抜きにして断定的なことを申し上げるのはいかがかと思いますが、考え方といたしましては、この改正法が施行される時点の状態考えてみますと、比較的最近にできましたもので金額もほどほどのものがございましょうし、改定されてもその金額は二年前であったといったような古いものもあるわけでございます。そこで、一口に従来の業者間協定方式によるものをどう扱うかと申しましても、そういった最近にできたもの、金額もほどほどのもの、古いもの、金額の低いもの、これらのものをどうするかという問題がございます。そこで、二年間の経過期間はございますが、まず金額の改定という問題が焦眉の急になってまいります。審議会でいま検討しているわけでございますが、金額の目安改定されるということになりますれば、それより低いものをどうするかという問題がまず生じてまいります。それを業者間協定方式改定という形で処理するか、十六条方式でもう制約がなくなってしまった――つまり、九条、十条、十一条方式がまず考えられまして、そういう方式では困難または不適当と認めた場合にはじめて十六条方式が現在は発動されておるわけでございます。ところが、改正後は、もうみずから十六条方式それ自体で動くわけでございますから、同じ十六条方式と申しましても、その発動の条件は全然違うわけでございます。そこで、いま申しました金額改定の問題とあわせまして、十六条方式をどう活用していくか。審議会がみずから判断いたしまして、労働大臣あるいは都道府県労働基準局長が判断いたしまして、諮問をして、十六条方式を積極的に運営すれば、もう相当な効果をあげ得るわけであります。そういうことでございまするから、私どもの予想といたしましては、二年間というこの経過期間の満了を待つまでもなく、相当な部分が十六条方式へ切りかえられていくということが予想されるのであります。それを具体的にどうやるかということにつきましては、冒頭に申し上げましたように、審議会でも今後検討されることでありますから、審議会の御意見を聞きまして適正に処理していきたいと存じております。
  25. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) ちょっと速記とめてください。   〔速記中止〕
  26. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 速記をつけて。
  27. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで、私はまあこの問題はもう一度労働大臣議論をせんならぬことになるのだけれども、ほかの問題もありますから一応これでとめますけれども、しかし、いまの基準局長説明は、労働者がどうせみんな異議申し立てるに違いないということでしょう。そのときには、最大限フルに中央、地方の審議会が十六条方式で今後その運営をすると。まあ本答申が来年の三月までに出るようですから、そこらの関係はどうなるかわかりませんけれども、しかし、そういうぐあいに理解しておいてよろしいですか。
  28. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 改正法案の附則の定めるところに従いまして労働省は努力をいたしたいと思います。ただ、御承知のように、改定等については、事務局でフルに活動いたしましても、調査に相当の日数がかかるといったような制約がございますが、一般的に見まして鋭意努力をしておるという努力は私ども十分尽くさなければいかぬ、こういうふうに考えております。
  29. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 だから、私は、いま申し上げていますように、いまの経済下において二年間低賃金に固定するなんというものは、自民党の立場からもそうだろうと思うんです。経済政策に合わない、国民生活と、生産と消費のバランスにも合わない、世界に類例のない最低賃金がある。また二年間かすを残すということになる。せっかく改正されるわけですから、発意はよろしいですわな、業者間協定というものをなくしようというんですから。だから、私が先ほど申し上げたような理由でなくそうとおっしゃるんだと私は理解している。理解しているから、単に労使意見がどうのという理屈はおっしゃらないわけです。それは現実の問題として要するに業者間協定というようなものがいまの最低賃金の法体系にあるということが間違いだという国際世論の上に立って、国際基準の上に立ってお変えになるようですからけっこうだから、いまだんだん突き詰めていったら、その二年間ということじゃなしに、労働者はみんな異議申し立てると思います。四百円や五百円の――五百円でも、二十五日労働で一万二千五百円です。そんなことで生活ができるはずがないですよ。ですから、異議申し立てる。そのときには労働省としては受け入れ体制をつくるということだけは少なくとももっと期間を短くしてもらいたいと思うんだけれども、短い期間内にその受け入れ体制を労働省はつくるということをここで大臣に明確にしておいてもらいたい。
  30. 小川平二

    国務大臣小川平二君) ただいまの御発言趣旨に沿って運営すべきことは当然のことだと考えております。
  31. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで、ちょっと一、二事務局にお尋ねしておきたいんですが、私は先ほど言ったんですが、イギリスのウエージカウンシルのような産業別につくっているところは別としまして、一律的につくっている最低賃金アメリカとフィリピンとフランスが私の頭にいま浮かぶわけです。この実情はどうなっているか、ちょっと聞きたい。
  32. 渡辺健二

    説明員(渡辺健二君) お尋ねの世界各国の中で大体一律に近い形をとっておりますアメリカ、フランス、フィリピンの諸国の状況を私からお答え申し上げます。  アメリカにおきましては、公正労働基準法で州際産業の労働者に対しまして法律で一律の最低賃金がきまっておりまして、現在一時間一ドル六十セント、こういうことに相なっております。ただし、農業は別の金額になっておるわけでございます。なお、州際産業の労働者に限られておりますために、州際産業労働者以外の労働者につきましては、多くの州で州法に基づきまして別個の最低賃金制適用がされておりまして、これは州によりましてまちまちでございます。州内一律の州法をきめているところもあれば、審議会方式のようなことで業種別にきめておる州もございます。両方併用いたしておる州もあるわけでございます。  フランスの状況について申し上げますと、フランスの最低賃金制は二本立てになっておりまして、一つは全職業最低保障賃金、これは農業と非農業と二本立てになっておるわけでございますが、そのほか地域が二区分ほど地域区分がされておるわけでございます。そういう二区分のもとにおける全国的な全職業保障最低賃金のほかに、もう一つのやり方として産業別の協約の拡張適用による最低賃金、こういうふうにフランスは二本立てに相なっておるわけでございます。  それからフィリピンにつきましては、詳しいところはわかりませんが、一応農業と非農業が二本立てになっている。ただし、五人以下の小売り業、サービス業には適用されていないところの一律の最賃が適用になっている、さように承知をいたしております。
  33. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それからもう一つお聞きしておきたいのでありますが、三十号勧告のたとえば(2)の(a)の決定に対する問題について、いまの審議会の運営をどう理解しているかということを聞いておきたい。
  34. 渡辺健二

    説明員(渡辺健二君) 三十号勧告の(2)の(a)におきましては、一名または二名以上の中立委員は、労使の代表の投票が同数に分かれたる場合において有効な決定に到達することを得しめるために設ける、こういう趣旨の規定があるわけであります。三者構成の審議会といたしまして労使委員の話し合いを尊重して運営がなさるべきことは当然であると存じているところでありまして、従来も審議会の中におきましては中立委員労使委員の意向を十分尊重して運営されていると、かように存じておりますが、今後とも一そう審議会の運営につきましては労使委員の話し合いということを尊重して運営されるようにしてまいりたい、かように存ずるところであります。
  35. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 その前のⅡの(1)ですね、これをちょっと読みますと「之を運用すべく、如何なる場合に於ても、最低賃金率の決定に関する一切の事項に付ては、右使用者及労働者意見を求め且其の意見に対しては充分にして均等なる考慮を払ふべし。」ということをここに明確にしているわけですが、この点についてはどうですか。
  36. 渡辺健二

    説明員(渡辺健二君) 従来も、審議会最低賃金を決定いたします場合には、実際問題として適用を受ける関係労使の意向を聞き、実地調査等において十分その意向に考慮を払っておったわけでありますが、特に今回の改正におきましては十六条方式により最低賃金を決定する場合には必ず関係労使意見を聞くことの規定を設けておりますので、三十号勧告のⅡの(1)の要件は今回の改正においては十分に含まれていると、かように考えております。
  37. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 これもまた公式論は別といたしまして、たとえば中央労働委員会に対する不信行為がなぜ出てくるか。形式は三者構成だから、労使意見がまとまらぬから公益委員がものを発表してやったからこれが三者構成の云々ということに取り扱われて、労使意見というものがどうも軽んぜられて三者構成の運営というものが行なわれる。そういう意味で不信感を持っているわけです。だから、私は、ILOでもⅡの(1)というようなものをつくったんだと思う。一つの紛争ですから、団体交渉でまとまらぬときは調停あっせんをする。最低賃金も、出すほうと取るほうだから、すぐにはまとまらないから、いろいろ意見があるけれども、さっと切り上げて公益委員がさっと結論を出すと。それは民主主義というのは手間のかかるものですよ。そういうものを頭に入れて全体の成長を待つという方式をとらぬ限りは私は問題だと思う。だから、各国によって、あっせんとか調停に入る人に対する信頼度の高いところは、中立仲裁というような問題に移行されているという国も相当多くのものがある。しかし、もうあっせん調停すら紛争解決のためのその門をくぐらずにむしろ忌避をするという風習もあることは、労働省もよく御存じだと思う。だから、そういう意味では、運営については、やはり何といっても対等の立場できめるという最後の集約をする機関ですから、その母体を改めて、九条、十条が取られて十六条方式になっていくとなったら、そういうものはいま十分におやりになっているかもしれぬけれども、私は審議会のことはよくわからぬけれども、その点については特段の配慮を――世界の各国にもいろいろ問題があるからこういう条文ができたと私は思う。だから、そういう点について十分な配慮をしていただきたいということを約束してください。
  38. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 先生の御趣旨は私ども十分尊重いたしまして、もともと制度自体がそのような趣旨でできておるわけでございますから、運用上にもそういった精神が生かされますように今後も十分配慮してまいりたいと存じます。
  39. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで、少し具体的な問題ですが、たとえば雇用関係の場合、労働省はよく御存じだと思うが、社外工とか臨時工、パートタイマーという問題が出てきます。これは重大な問題だろうと思います。私たちも、社会労働委員会のメンバーの一人として、現地調査をあちこちやったことがございます。そうすると、親会社と同じように工場で働いておって、社外工なら半分以下の賃金で身分が保障されない。いつまでも身分保障のない臨時工がある。そういうパートタイマーというものも最近出てきておる。こういう方々の最低賃金というものはどうなるのか。  それからこれに付随して、家内労働の問題が出てくる。家内労働の問題と最低賃金との関係はどうなっているかということを明らかにしてもらいたい。それから家内労働というものをいつどういうぐあいにそれじゃ処置しようとするのか。一般的にいわれる家内労働と、いま、生活苦のために、ほとんどのと言ったら言い過ぎかしらぬが、多くのサラリーマンの奥さん方が内職をしている。この規正もやっぱし問題にしなきゃならぬと思うのです、同じように最低生活保障の最低賃金の問題ですから。ひどいのになると、非常に安い、一時間十五円とか二十円でやっておるところがある。都会方面ではだいぶ上がってまいりましたけれども、そういう家内労働の今後の特に内職を含んだ保護処置というものはどうするのかということもあわせて、質問が多いですけれども、ひとつ答えておいてもらいたい。
  40. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 臨時工、パートタイマー、家内労働等に関連する問題でございますので、私から申し上げますが、臨時工制度は、制度そのもののよしあしの問題はいろいろ御議論のあるところでございますが、労働基準法上は、そういう臨時工とか企業内における身分的な扱いというものはむしろ比較的問題にならないわけでありまして、解雇の場合にどのように考えるかということだけであろうと思います。法律上の問題としてではなくて、労使の慣行として、たとえば就業規則とか労働協約の適用のときに臨時工あるいは社外工に適用を除外するという、労使の扱い方が別になっておるというところに制度的な問題があるだろうと思います。  そこで、最低賃金の問題についてはどのように扱うかということでございますが、最低賃金法の第八条におきまして、第四号に、「所定労働時間の特に短い者、軽易な業務に従事する者その他の労働省令で定める者」は、許可を受けましたときには除外することができるという制度がございます。しかし、今日までの実際の経験を見ますると、たとえば「所定労働時間の特に短い者、」たとえばパートタイマーでございますが、パートタイマーにつきましては、時間当たり最低賃金をきめておるものがかなりございます。それから臨時工などで除外をいたしておりますものは、四十一年中の実績を見ましても、百五十一件、全体の千九百件と比較いたしますと一割以下でございますが、若干除外いたしておるものがございます。これはそれぞれの業種につきましてこまかく検討しなければならない問題でありますが、こういった問題につきましても今後配慮をいたしまして適正に処理していきたいと考えております。  それから家内労働最低工賃につきましては、今日までの最低工賃決定の例を見ますると、むしろ最低賃金よりも高目にきまっておるのが例でございます。と申しますのは、最低賃金のほうは無技能の単純労働を含めてきめる。ところが、家内労働の場合は若干の技能を必要といたしますので、現実にきめられました最低工賃のほうは金額としては最低賃金の額よりも高い、こういう形に相なっております。それが現在の状況でございますが、今後これをどうするかという問題につきましては、御承知のように、家内労働審議会でいま鋭意検討を進めております。現状は、小委員会を設定いたしまして、家内労働法を制定するとすればどのような事項が問題になるか、こういう点を検討いたしまして、小委員会の報告をいたしまして、総会では、それを聴取いたしまして、法制検討のために起草委員会をつくりまして具体的な労働法制定の作業にかかっておる、このような状況にございます。御承知のように、家内労働審議会は、来年三月末をもちましてその存続の期限が終了するわけでございます。そのような制約もございまして、鋭意審議を進めておる次第でございます。
  41. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ちょっと私たちと理解が違っているんだね。家内労働の一時間当たりの工賃は最低賃金より云々というようなお話がありましたね。しかし、家内労働の中で内職部類に属する家内労働者というのは、問題にならぬような零細な内職工賃で働いているということを頭に置いて理解してもらわないと、家内工賃のほうが高いんだというような認識――それは特殊な人はあるでしょう。パートタイマーでも、特殊の技能の人は高いところもあるでしょう。地域的に分けて、太平洋ベルト地帯の工場密集地帯の周辺においては高いところもあります。しかし、それを離れた所の内職なんてものは、ものすごく安いですよ。一時間当たり十円か十五円でやっている内職労働者はたくさんあるということを労働省はちゃんと理解してもらわないと困ると思うんだな、そういう認識は。どういう調査をされておるのですか、そこらあたり。  それからいまの社外工、臨時工というのは、非常にいままで問題になっておりましたけれども、その身分保障とそれから賃金格差の問題の指導というのはどういうぐあいにされておりますか、本工と社外工と臨時工との関係は。
  42. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 家内労働一般的な工賃につきまして低いではないかという問題については、私どももそのように問題を認識しておるわけでございます。先ほど申し上げましたのは、現在までに設定されました八つの最低工賃の事実を申し上げたわけでございます。これは、最低賃金がきまりまして、そうして類似の業種につきまして家内工賃を最低工賃を設定しているという制度に現在なっております。最低賃金が設定されたのに、独自に別に最低工賃をきめるという制度にいまなっていないわけであります。最低賃金がきめられました業種について最低工賃が決定される、こういう最低賃金制度と最低工賃制がからみ合いになっておるわけであります。そこで、今後の問題といたしましては、こういうからみをそのまま存続するのか、あるいは、最低工賃というものは、最低賃金の決定の有無にかかわらず、ひとり立ちしてそういう金額をきめていくかという問題もあろうと思います。しかし、これは今後の家内労働法を考えます場合の非常に基本的な問題でございますから、私からこれ以上申し上げるのは差し控えさしていただきたいと思います。そこで、今後の最低工賃を考えます場合に、最低賃金と結びつけて考えるか切り離して考えるかということが基本でございますが、いずれにしましても著しく低い工賃を是正しなければならないという問題が生じてくるわけでございまして、どのように是正するかという問題、これは非常に問題が多うございますし、いま審議会議論しておりますから、これ以上は申し上げませんが、認識が甘過ぎるじゃないかという点につきましては、たまたま最低工賃というものが決定されましたものを申し上げたのでございまして、そう認識の違いはない、非常に重大に考えておるということを御了承いただきたいと存じます。  それから社外工、臨時工、いろいろ問題がございますが、これをどうするかという問題についてはむずかしい問題がございますが、最近の傾向としては、人手不足のおりから、そのような不安定な雇用関係に置きますことは得策でないという観点から、臨時工を大幅に常用工並みに切りかえるといった傾向が進んできております。労働省といたしましては、特に私どもといたしましては、労働基準法適用上のいろいろな問題がございますので、そういった傾向を十分注目いたしながら指導を加えてまいりたい、かように存じておる次第でございます。
  43. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それでは、あまり長くなるからこの辺でその問題は今後に問題を残しますが、第三条に、「労働者生計費、類似の労働者賃金及び通常の事業の賃金支払能力を考慮して定められなければならない。」ということが書いてあるわけですね。これは、どうですか、今度の改正に出ていないのだが、取る気はないのですか。支払能力というたら、いまのよってきたる業者間協定の経緯の中からもにじみ出ていると思うのです。支払能力がないというその法律の概念によって安い賃金をきめるということがずっとつながっているわけです。この第三条というものを取り除くということはどうでしょうか。
  44. 小川平二

    国務大臣小川平二君) 最低賃金を決定いたしまする場合に、生計費あるいは類似の労働者賃金、こういうものを考慮すべきことは当然でございますが、同時に、支払能力も考慮すべき一つの柱だと考えております。支払能力に全く考慮を払わないということになりますれば、これによって経済に混乱が起こるでございましょうが、実際問題としては全く考慮を払わないというわけにはまいらないと存じます。ただ、将来の最賃制のあり方につきましては、現在審議会で御研究をいただいておるわけでございますから、御指摘の点につきましても、答申が出ました場合、答申に沿ってこれを尊重して考えてまいりたいと思っております。
  45. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 事務当局に聞きますが、最低賃金法の中に、支払能力というようなものを本文に目的の次の第三条に書いているような最賃法を持っている国はどことどこですか。
  46. 渡辺健二

    説明員(渡辺健二君) 各国の再賃法、それぞれの法律の中で、日本のように最低賃金決定の基準を明確に書いておるもの、全然そういうものには触れておらない国もございます。したがいまして、ただいま、支払能力を明文をもって書いておる国をどこということは記憶いたしておらないわけでございますが、ただ、ILOの一九五八年の条約適用専門家委員会の報告の中にも、各国の中には、生計費を考慮しておるのは当然でございますが、そのほかにも数多く考慮されている事項の一つといたしまして通常の支払能力を考慮しておる国が多いということがございますので、各国におきましても、実際問題といたしましては、三条の支払能力というものを運営にあたりまして考慮している国は少なくないのではないかと考えております。
  47. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 労働者生活を守るのに、一条、二条と出てきて、三条という法律の重大なところに支払能力論を書いているというようなことは、今日の日本としては世界状態の中で恥ずかしいじゃないですか。業者間協定を取ると同時に、この支払能力の規定を取る。支払能力がなければ賃金がゼロになるわけですから、むろん賃金決定にあたっては考慮されるでありましょう。しかし、支払能力によって支払いができるのだと大上段に振りかざして最低賃金というものをきめようという考えは、最低生活保障ができないということです。これも三十四年にやかましく言うた問題です。実際問題として、支払能力というもの、企業の生産とそうして利益、賃金労働者の果たす役割り、そういうものが出てきている。しかし、最低生活保障というのがあらゆるものに優先をして、むろん支払能力というものを全然ゼロとは言いませんけれども、その前提が一〇〇%近く生かされるという前提に立たなければ最低賃金制はできないと私は思うんです。これが労働者の問題にする第二の問題なんです。業者間が勝手にきめて、うちの地域の産業はこれだけしか支払能力がないと言えば、法律に載っているじゃないかと言えば事が済んでしまって、いま四百円や三百円の最低賃金業者間協定がきまって、これが皆さん方の改正の配慮の中の一つだと思う。三条というものを取ってしまうか、これは全体の考慮の中の一つにするか、なぜされなかったんですか。こんなものを大上段に振りかざして賃金をきめようなんというたって、肝心の労働者が未組織その他によって非常に困難な状態最低賃金というものがきめられてきたんですね。だから、こういうものが大上段にいまだに存続しているということが問題じゃないか。これについては今度の法改正にどういう議論をされたか、どういう配慮をされたか、ちょっとお聞かせ願いたい。
  48. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 労働省としましては大上段に振りかぶっておるわけではございませんので、法文に書いておりますように、第一に出てまいりますのは「労働者生計費」でございます。第二に「類似の労働者賃金」、第三番目に「通常の事業の賃金支払能力」を考慮するということが法文にも書かれておるわけであります。そこで、これは要らないじゃないかという御意見でございますが、実務的な例を申しますと、最低賃金を決定いたします際にいろいろ調査をいたします。そうして、ある金額をきめようというときに、地域ならその地域内における企業の分布を見まして、その金額以下の賃金がどのようにあるか、そして当該企業の経営状態はどうであるかというものを調べるというのは、その最低賃金が決定された場合の影響度、ないしは、裏返しますと、その最低賃金の有効度、どのくらい働くかということを見きわめる手がかりにもなるわけであります。そういう観点から、マクロ的に見た観点と、ミクロ的に当該地域内における影響をどういうふうに判断するかということを見ます場合には、その事業の賃金支払能力を考慮するという要素は意味があるわけであります。全然削ってしまうか否かということについては議論のあるところでございましょうが、先ほど賃金部長が申しましたように、外国の例は一々つまびらかにしておりませんけれども、少なくともILOの条約勧告適用専門家委員会が各国の最低賃金の例を調べました結果、「最もしばしば見出される基準は、定められた賃金率を支払う企業の能力一般的な経済状態、類似の職業において支払われる賃金率及び仕事の性質である。」と、かように述べておりまして、諸外国でやって「おります実例を調べた結果、「支払う企業の能力」ということを指摘しているというような次第でございます。そこで、御議論はあろうと思いますが、実務上の点から見ましてもこれは意味のあることでございます。これを大上段に振りかぶって第一に掲げるかどうか、従来もそのような考え最低賃金を決定しておるわけではございませんので、そういう意味合いにおきまして、今後の運用上の配慮も関連いたしますけれども、少なくとも実務的に見ました場合には、このような観点からの検討というのは意味もある、かように存じておる次第でございます。
  49. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 しかし、第三条で、「(最低賃金の原則)」という表題で支払能力論をここに出すということはどういうことなんですか。これはもうさんざん議論したのですけれども、今度はよってきたる業者間協定というものがやはり実情に即さないということで改正をしようということに一般の世論がなったのですから、それにもかかわらず、支払能力論が賃金決定の原則としていまだに法律に残るというのはおかしいんじゃないですか。最低賃金の原則として支払能力論を出すのはおかしい、私はそう思う。外国にもそんなことは書いているところはほとんどない。そうでしょう。そして、最低生活の保障、労働生産というところにピントが合っている。ですから、それでは会社をつぶしてもそれだけの賃金を云々ということは、常識として出てこない。支払能力の限界というのは主観に基づくでしょう。これがあるために、大上段というのはちょっと大き過ぎるけれども、支払能力がなかったら払わないでもいいんだ、だから、わしのワクはこれだけとして、ちょっぴり余ったものが支払能力だと言えば事は済むんじゃないですか。これは検討されなかったのですか、今度の改正の際に。
  50. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 第三条の趣旨としておりますのは、個々の企業の支払能力ということじゃなくて、通常の支払能力ということであるわけであります。しかし、それはともかくとして、また、外国はどうだということも、私どもの主観的判断じゃいきませんので、ILO専門家委員会の報告書の記載どおりのことを申し上げておるのでありまして、「適当な生活水準の維持」のほか「最もしばしば見出される基準は、定められた賃金率を支払う企業の能力、」ということを言っておりますので、外国でもそのような配慮がなされているんじゃないかと、こういうことを申し上げておるのでありますが、そこで、この問題をどうするかという点については、先生指摘のような議論があることを私ども承知いたしております。ところで、中央最低賃金審議会では、最低賃金制度の基本的あり方についていま鋭意検討を進めておるわけであります。その検討項目の中に最低賃金額のきめ方という問題がございます。その中でこの問題が含まれて検討されるものというふうに私どもは考えておりますので、あえてこれを固執いたしまして検討もしないんだというようなことではないのであります。今後中央最低賃金審議会の検討の結果を待ちまして労働省として判断いたしたい、かように存じておる次第でございます。
  51. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 これは、思想的なイデオロギーにとらわれないで労働者最低賃金をきめていく立場における重大な項目ですから、中央最低賃金審議会が三月までに答申を出されるというのでありますから、その中でも、こういう法律上の原則、「(最低賃金の原則)」というようなことで出していいのかどうかということも意見を十分聞いて、私は、今度九条、十条が廃止されるに関連をして、過去を振り返ってみて、おおかた十年間、業者間協定決定への経過と、あわせてこういうものが適当であるかどうかということを十分にひとつ中央最低賃金審議会議論をしてもらいたいとお願いをしておきます。  それから一番私たちが主張していきたいのは、まず最低賃金の一律制です。一律で全体の最低賃金の底上げをせにゃいかぬ。産業の二重構造即生活の二重構造というものはだんだん最近はなはだしくなってきているわけですから、大臣はいま即答を避けられて、一律制については審議会にそういう諮問をしたい、こういうことを衆議院でおっしゃったそうでありますが、そのあたりの心境はどうですか。
  52. 小川平二

    国務大臣小川平二君) 中央最低賃金審議会に対しましては、かねてから、いまおことばにございました全国全産業一律最低賃金制をも含めるということを明確に盛り込んで示しておるわけでございますが、これをも含めまして今後のあり方について御検討いただいておるところでございます。さような次第でございまして、この基本的なあり方につきましては、全国全産業一律最賃制、あるいは産業別、地域別と、いろいろの考え方を含めて御研究を願っておるわけでございます。ただ、御質問の御趣旨も十分理解できまするし、もとより私も何らかの形で全国全産業の労働者がひとしく最低賃金適用を受けることが望ましいと考えておりますので、この際、審議会に対しまして、前述の諮問に対する答申に際しては、全国全産業一律制を含めて御答申をいただくようお願いいたしたい、このように考えておるわけでございます。
  53. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで中間報告、答申というかっこうで出たのが、来年の三月には中賃の正式な答申が行なわれる。いま私のお願いしたことも含んで答申が行なわれる。そうなってまいりますと、これは来年三月に出るその答申に基づいて法改正をするということになりますか。
  54. 小川平二

    国務大臣小川平二君) 答申が出ましたら、その趣旨を尊重いたしまして、法律改正すべしという御趣旨の答申でありますれば、直ちに法律改正に着手するつもりでございます。
  55. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それからこれはわれわれが議論したいところですけれども、時間もだいぶもう経過いたしましたからあれしますが、いつも問題になるのは、公益委員の選び方の問題ですね。これは非常に大事なことです。アメリカのように、調停あっせん委員というようなものをつくって、どのような立場かは別として調停あっせんをやる。一人が調停あっせんというようなものを調整事項としてやるような相互に信頼感があれば、私はこういう議議をしなくてもいいと思うわけです。しかし、どの人が悪いとかいいとか言うわけではありませんけれども、労働者側とそれから三者構成の公益委員との間にはいつも問題が起きているという感じです。ですから、やっぱり労使の同意案件として、まあ一〇〇%明らかな立場といったら公益委員にならぬわけですけれども、一〇〇%いかなくても八〇%ぐらいは了解をするという人を選ばなければ、最後の一分の仕上げというものが一番大事なんです。その仕上げが八割までいくというようなところが問題なんです。仕上げの公益委員役割りというのは、私は一%とか五%――五%も多いと思います。ILOの勧告からいっても、最後の仕上げをしてもらう、それができるかできないかで一〇〇%それが生きるか生きないかという、非常に重要な意義を持っているのが公益委員の立場だと私は思うんです。労働大臣は、十分協議してと、こうおっしゃっているわけですけれども、協議と同意とはどう違うかということになると、意思が通じるところまでがどういう形であらわれるか、同意案件の問題をどうあらわすかということは非常に重大な問題だと思う。じゃ、同意案件だからいつまでもきまらぬということになって、またいろいろ問題を起こしましょうけれども、少なくとも双方の同意案件としてこの問題を処理をしてもらいたいとお願いをしたいわけです。これはお願いをしたい。だから、労使にメンバーを出して、そうして一〇〇%労使が――労使が一〇〇%と言ったら、公益委員だってなかなかきまらぬと私は思うけれども、その配慮というものは十分なものでなくちゃならぬ。労働大臣は、十分に協議してと、こうおっしゃったそうでありますけれども、十分に協議してというそのことばの意味は何をさしているかということが大事な点です。その点について、私は、同意案件でありたいと、こう思うんです。
  56. 小川平二

    国務大臣小川平二君) 最低賃金審議会の公益委員につきましては、労使委員と協議する等によりまして公正な選任につとめてまいりたいと存じます。何ゆえであるかと申しますれば、ただいまおことばにありましたように、公益委員の果たす役割りの重要性にかんがみてそのようにしたいと考えておるわけでございます。
  57. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ほかにも質問される方があるわけですから、私は質問をきょうのところは終わりたいと思いますが、一つだけ大臣に最後に申し上げておきたいと思うんです。労働者保護というか、労働行政を担当されている大臣なんでありますから、労働行政というものは単に今日までの固定した労働行政だけを見てもらっちゃ困ると思うんです。労働行政、政策というのは、社会保障政策も、すべて国の経済政策の中から生まれてくるものですね。そうでなければ、生産も消費も国民生活も維持できないものであり、ただ安かろうよかろうでしぼりさえすればよろしい、できるだけ権力で制圧さえすれば片方で利益があがったらいいというようなものの見方、考え方労働政策をやると、そのときはいいかしらぬけれども、結局社会の破壊になってくると私は思います。そういう点は、先ほど、私は、いろいろの外国の例やなんかをとって日本の実情に沿って申し上げたわけでありますから、十分に大臣もそういう面から労働行政というものに取り組んでもらいたいと思います。だから、五人世帯で百九十万という分配所得があって、それで一万二千五百円で世帯主だという生活、その生活実情というものから経済全体の生産と消費がどういうぐあいにバランスして経済発展するかということをお考えになるのが大臣の役目だと私は思うんです。せっかくつくった工場も、生産力そのものがほこりをかぶって止まっておるなんという情けないことの原因はどこにあるか。労働一つある。生産に対する労働が。しかし、その労働者を含んで全体の国民購買力を高めなければバランスがとれないんじゃないですか。そういう個々の労働者要求なんていうものは自分よがりの要求だ、できるだけ押えたらいい、それだから行政が要るんだというものの考え方から脱皮してもらいたいと思う。完全雇用の方式でもそうなんです。いま、労働力を持っている人を遊ばしておくほどつまらぬことはないですよ、国民社会生活の中で。だから、そういう面から大きく労働行政というものをとらえてもらわないと、あらゆる問題に行き渡ってきて、私は、まあ百円上げたらいいというような福祉年金のようなことに知性の高い労働大臣はなってもらいたくないということなんです。今度の端的な例で少し議論をしましたけれども、もっと大きな立場から、国家全体、国民全体がどうなっていくかということの立場から労働行政というものをとらえてもらいたいということですね、それだけは一つ、私は労働大臣になられてからこういう議論するのは初めてですけれども、所信を承っておきたいと思います。
  58. 小川平二

    国務大臣小川平二君) 労働行政の目標は、申すまでもなく、労働者の福祉の向上でございますが、いまおことばにございましたように、経済政策の観点から申しましても、国民経済が均衡のとれた発展をいたしますためには労働者所得水準向上ということが必要であろうと考えております。また、それと関連いたしまして、健全な労働運動の発展ということはあとう限り助成育成すべきものであろうと考えております。申すまでもないことでございますが、一般的には賃金水準上昇は有効需要の喚起につながることでもございますし、国内市場の拡大にもつながる問題でもございましょう。仰せのとおり、経済政策としての観点からも今後労働者労働条件の維持改善ということに努力していくべきものだと私は考えておるのでございます。
  59. 小平芳平

    小平芳平君 いま藤田先生からいろいろ御質問がありましたので、私のほうでもダブって御質問いたしませんので、また、御回答も、ダブって御回答はしてくださらなくてけっこうだと思います。  いま御質問のあった、最低賃金をきめる場合に、労働者生計費、類似の労働者賃金、通常の事業の賃金支払能力、こういうものが賃金決定の要素になるということであります。それで、事業の賃金支払能力というものは必要ないではないかということに対して、それはILOのこれこれという答弁があったわけですが、私も必要ないと思うんですが、それでなおかつ必要であるという御意見でしたが、地方で十六条の決定をされたものがありますですね。たとえば、この一番初めに書いてある千葉県金属機械等製造業、これは京葉地区、使用者数千九百五十七、労働者数九万一千六百三十三人となっております。はたしてこの使用者数千九百五十七の通常の事業の賃金支払能力というものをどのように検討されてきめられておるのか。これは、検討のしようがあるのですかないのですか、それすら一切見当がつかないのですが、いかがですか。
  60. 渡辺健二

    説明員(渡辺健二君) 実際に具体的な個々の最低賃金を決定する場合にどのようにいたしまして通常の企業の支払能力を見ておるかということであろうと存じますが、これにつきましては、もちろん対象事業につきましてのいろいろ経営指標等を資料としてとって審議会の審議に供していることはもちろんでございますが、そのほかに、特に十六条のような場合でございますと、これを決定するための専門部会におきまして審議の過程で当該事業の実地視察等もいたしまして、対象の事業場を委員が見て回りまして、労働者側の事情を聞くと同時に経営事情等も種々聴取いたしまして、そういうことを考えながら事業の支払能力を含めまして三条に規定されておる決定基準、これらを総合勘案し、最低賃金の決定をきめているわけでございまして、いま例にあげられました千葉の事例等におきましても、対象となった機械製造業のうちのある地区の一部の事業について下請で非常に零細な企業がございまして、それにつきましては、審議の過程で、この金額ではたしてそれらの地方の当該業種について一般の事業についても支払えるかどうかというようなことが審議の途中に論議されました結果、そのような金額が決定された、かように聞いておるのでございます。
  61. 小平芳平

    小平芳平君 ですから、いま御説明のように、結局、総合勘案というようなことになると思うんです。とにかく、この千葉県の場合だったら、千九百五十七の使用者数があるわけですから、その収支決算を一々検討し、経営診断をし、そして支払能力があるかないか、それによって金額を一日五百四十円を五百三十五円にすべきかどうか、そういうことを個々に具体的にできるわけがないでしょう、実際問題として。それはごく大ざっぱな総合勘案ということになる、実際の作業としては。あるいはまた、私が申し上げたいと思いましたのは、そういうことは政府のいまの説明でも、下請等の関係でということばがありましたが、下請等の関係で非常に経営が苦しいということは、政府のほかの政策の面からテコ入れをしないことには、個々でもって最低賃金を一日五円なり十円なり下げたところでその企業が立ち上がるものではないのですから、そういう政府中小企業対策というものが企業の支払能力には一番重要な要素であって、あるいはその企業の努力というものが一番重要なのであって、賃金水準を五円、十円下げるか上げるかによってその企業が決定的なものをこうむるということじゃないので、私は、そうした決定的な力というものはほかにあるのだと、こう思いますが、いかがですか。
  62. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 先ほども申し上げましたが、現行法でも「生計費」がまず第一に掲げられ、「類似の労働者賃金」が次に掲げられ、それから「支払能力」が三番目に掲げられる、こういう順序になっているわけであります。そして、運用につきましては実際どうやっているかということでございますと、たとえば消費者物価指数とか、あるいは人事院のそういった関係数字であるとか、求められる限りの指標を求めまして生計費判断の基礎を考えます。それから賃金につきましても、学卒初任給であるとか、あるいは各事業所の賃金格差であるとか、そういった資料もまとめる、そういった関係賃金額の決定をずっと煮詰めてまいります。そして、さらに、これがどのような影響を持つかということで、大体案ができますと、その影響の度合いというものを調べます。そのときに、先ほど賃金部長が申しましたように、下請などでどういう影響が出てくるかという観点からさらに検討する、こういう関係で調べておるのが現状でございます。ですから、ことばとして、また、法律の条文の解釈として、総合勘案しと、こう言っておりますけれども、具体的に審議会が活動します場合には、いま申し上げましたような形でおのずから順序があるわけであります。さればといって、これを全然削除してしまうということは、いろいろまた意見があるわけでございます。そういう観点から、たとえば、先ほど来、労使対等の原則と、こういうようなことも強調されておりましたが、生計費論あるいは賃金論がございましょうが、使用者の立場から労使対等の立場で主張するといっても、支払能力といったようなことがあろうかと思います。しかし、いずれにいたしましても、この問題は、現行法のたてまえについていろいろ申し上げておるわけであります。運用面とあわせましていまこれはこの問題も含めまして中央最低賃金審議会で検討中でございますので、これはどのような意見が出ますか、この意見が出ましたら、政府もそれによって判断したい、かように考えております。
  63. 小平芳平

    小平芳平君 私のお尋ねしておることは、そういうことをお尋ねしておるのじゃなくて、生計費のことはあとでお尋ねしたいと思っております。いま企業の支払能力のことが出ましたので、大体私が申し上げておることとそう変わらないと思いますよ、御意見は。結局、企業の支払能力を法文の中へ入れる入れないは意見が違いますけれども、私たちは入れる必要はないと思いますが、しかし、企業の支払能力をどう総合勘案するかということは、いま私が説明したように、千葉県の一つの産業だけでも、千九百五十七という事業場の経営を全部洗い出して、そして支払能力がありやなしやを調べて、そして五円、十円最低賃金を上げるか下げるかを論議しているんじゃないし、また、そこまで行ってはむしろ行き過ぎじゃないか。そこで、政府として、新しく最低賃金法改正が成立して業者間協定がなくなる、そのなくなった段階で中小企業者で下請等で生活が苦しくて支払いができない者があると困るんじゃないかというその懸念というものは、あらゆるところに起きる問題ですよ。ですから、最低賃金を決定する場合に、企業の支払能力も考慮いたします。いたしますが、それだけでその中小企業が決定的に立ち上がるか、つぶれるかきまるのじゃなしに、中小企業の政策というものは、むしろ通産省なら通産省のほうでテコ入れするなり、企業努力するなり、そういうものが決定的なものである。したがって、中小企業者の方に、この最低賃金法改正になるということは、業者間だけできめるということがなくなりますけれども、そういうような不安は政府として別個の形をちゃんと考えているんだから、考えていかなければならんし、また、やっていくんだからという、そういう政府の姿勢が必要じゃないですかということを言っておるわけです。
  64. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) よくわかりました。御指摘の点は、私どもも同様に考えております。つまり、法律でいうておりますものも、「通常の事業」なんでございます。一々のものを調べて、ある事業では支払能力がないからその最低賃金制を決定するのを見合わせよという、そういう趣旨のものではないわけでございます。そして、そういういわば弱い零細企業についてはどうするかというのは、中小企業対策の問題として別個に考えなければいかぬ。この点は、中央最低賃金審議会でも非常に重視しておりまして、いままでも数回にわたりまして中小企業の保護育成策を最低賃金制度の推進と裏表の関係で考慮してもらわなければならないということを政府に要望した次第でございまして、御趣旨の点については私どもも同感でございます。
  65. 小平芳平

    小平芳平君 ですから、むしろこれは労働省を所管する大臣として言うべきようなことを私がいま言っていたわけですよね。したがって、そういう程度の通常の事業の賃金支払能力はわれわれは法律に入れる必要を認めないということなんですが、これはさっきのとおりだからいいです。  次に、生計費ですが、いまの局長説明でも、千葉県なら千葉県でこうした最低賃金額をきめる場合には、労働者生計費を独自に調べるわけじゃないでしょうね。これは、いままでの十六条の決定は何によって生計費を調べられたか。とにかく、いまの説明でも、労働者生計費最低賃金決定の一番重要な要素だと言われた。私たちももちろん一番重要な要素だと思うのです。現在までの十六条はどういう形で調査したか、決定されたか、その点はいかがですか。
  66. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 今日までやっておりますのは、生計費の判断材料といたしましては、たとえば消費者物価指数、総理府の家計費調査、それから人事院の十八歳の者の標準生計費、地方では地方の人事委員会がやっておりますが、そういった資料を参考にいたします。もちろん、生活保護費なども参考にいたしまして検討をするわけであります。御承知のように、一口に生計費と申しましても、理論的にも一理論生計費、あるいは実態を中心にする実態生計費がございますし、実態をとらえるとしましても、その生活に必要な物品なり、たとえば食料とかその他、最低のものをとるのか、あるいは標準的なものをとるのか、とり方によっていろいろ数字が違ってくるわけであります。現存します先ほど申しました資料につきまして、それぞれの観点がございまして、同一平面で比較はできませんが、しかし、大体の傾向値は判断できるわけでございます。そういう傾向を見ましてきめるという態度をとっておるわけでございます。
  67. 小平芳平

    小平芳平君 私も、最近の総理府の消費者物価指数の調査をあまりよく見ておりませんので、詳しくないんですが、たとえば先ほどの千葉県といい、あるいは三重県等がこういうふうに出ておりますけれども、十六条の決定をされた労働者の必要生計費は、その県内の消費者物価調査を何都市ぐらいやっているかにも問題があると思うんですが、いまここで私が具体的に申し上げることは、今度は中央で相当やられるわけでしょう。数の上からいってどういう結果になるか。将来とも、総理府の消費者物価指数をお使いになるという、そういうことでいけるかどうか。総理府の調査は全国的に出ますから、中央としては使う一番いい材料となると思うんですけれども、その理論生計費のほうはあまりやっていないですね、最近。人事院でやっておりますけれども、あるいは各地方の人事委員会でもあるようですけれども、この辺を結局審議会が第一段階で審議されるわけですが、おぜん立ては労働省で職員がおやりになると思いますが、その点は、この法ができるやいなやすぐ問題になるわけでしょう。ですから、相当の準備が必要じゃないかと思うんですが、いかがですか。
  68. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 御指摘のように、生計費を基準にするとしましても、技術的にも非常にむずかしい問題があります。そもそも、たとえば十八歳年齢の労働者を基準にするのか、二十歳をとるのか、そういった基本的な点がきまりませんと、生計費と申しましてもきめようがないわけでございます。この点に関しましては、中央最低賃金審議会基本問題特別小委員会を設けましていろいろ検討しております。その中に、たとえば最低賃金額の決定基準の問題、一定の基準年齢について最低賃金額を定めることの可否といったような項目を取り上げております。そういった考え方についてある程度まとまりましたならば、その年齢の者についてどう考えるか、こういうことになっていくだろうと思うのでございます。御指摘の点、御趣旨はわかるわけでございますが、そういうスタートポイントをどこにきめて、どういう要素を考えるか、いろいろ技術的にむずかしい問題がございますが、今後審議会の御意見を聞きまして判断いたしたいと考えるのでございます。
  69. 小平芳平

    小平芳平君 まあ審議会で聞いてというんですから、それ以上申し上げませんが、この法律ができたってなんにもならないですよ、実際問題。十八歳の労働者生計費が基準か、あるいは二十七歳を基準にするか、それさえもまだきまっていない。その生計費はどうやって調査するか、それさえきまっていないとなると、十六条できめていきようがないわけですよね。ですから、私たちとしては意見があるわけですけれども、それはもう申し上げませんが、要は、労働者の必要生計費をどうきめるか、そこで労働者も納得し、使用者も納得できる、そういう基準生計費のきめ方が問題ですね、実際問題として。外国の例などでも、なかなかそこが労使まとまらないで困ったというようなお話もありますが、準備が大事なのと、また、同時に、特にいままでは何といったって業者が集まってきめたのだから、支払能力を相談したのだが、今度は必要生計費労働者の満足できる生計費の線をきめる。とにかく、労働者生計費に第一に主眼を置いて、そうして調査資料、調査方法、そういうものも納得できる方法をとる、こういう点は言えると思いますが、いかがですか。
  70. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 御意見趣旨はわかるのでございますが、これは最低賃金決定方式をどう考えるか。全国全産業一律方式もございましょう。産業別、職種別、地域別もございましょう。そういったきめ方の基本の問題等がありますので、今後審議会で検討をわずらわしていきたいと思いますが、今日までの経験を通してみましても、たとえばある地域では新卒の初任給の賃金は相当上がった、むしろ低いのは中高年齢層で、しかも婦人の賃金が低いという場合に、そういった面に焦点を合わせまして賃金を引き上げよう、そこに最低賃金を設定しようという場合には、年齢を離れました別の要素が加わってくるわけであります。しかも、その場合に、家庭の主婦という場合に、その主婦だけの生活費なりそういったものを考えるかどうかということになりますと、理論的にこれは検討しましてもいろいろな問題がございます。要するに、これは現在の三者構成の上に立ちました審議会の御意見を聞きまして、いろいろな御意見の中で大体まとまりました意見というものを私ども尊重いたしまして判断させていただきたいと思います。
  71. 小平芳平

    小平芳平君 局長、ほかのことを言われるけれども、そういう全国一律か産業別かということじゃなくて、私がいま言っていることは、いままでは支払能力を相談したと、今度はまず第一に生計費を相談するんだという、そのための準備が必要だ、納得できる資料が必要だということを申し上げたわけですよ。  それから次に、実際に六百万人の適用労働者があるという現状が、これから新しい改正案がかりに成立した場合に、先ほどの御答弁でありましたが、法改正になったために、労働省がせっかく六百万人できたと言っているそれが大きくまたくずれていくんじゃないか、なかなか次から次に十六条で決定していくということは相当困難じゃないかというふうな懸念もありますが、いかがですか。
  72. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 先ほど、藤田委員の御質問に対しまして、大臣から、十六条方式の最近の状況を申されたわけでありますが、この六百万が減るか否かという点につきまして、今日までせっかく努力いたしましてここまで適用を拡大してきた。労働省としては、三年計画を立てまして、かなり努力してまいったわけであります。したがいまして、この適用対象労働者をかえって減らすというようなことは、私どもとしては避けなければならない。そこで、先ほど藤田委員の御質問お答えしましたように、今後も相当な努力をいたしまして十六条方式に切りかえをいたしますけれども、従来までの十六条方式には制約がございましたが、今後は、必要と認めた場合にはどんどん決定できるのでありまして、したがいまして、鋭意努力をいたしまして今日までの適用の幅を縮小させないどころか、さらに拡大していきたいというふうに考えております。  なお、そんなことはできるのかという御懸念もあろうかと思いますが、先ほど千葉の例もございましたように、十六条方式で行ないますと、相当多数の労働者が、千葉でございますと九万人一ぺんに適用になる、あるいは神奈川では三十二万の労働者が一ぺんに適用になる、こういう形でまいっておりますので、運用いかんによりましては、適用労働者の数というのは、減少よりもむしろ拡大というふうに私ども考えております。
  73. 小平芳平

    小平芳平君 次に、最低賃金が十六条方式によってきまったとします。そうすると、今度は、いまの労働情勢では、それはまあ第一に物価が上がるのが原因ですけれども、一〇%ぐらい春闘で賃金が上がっていくわけですよね。したがって、このいただいた表で見ましても、四十一年に十六条で決定した分が、四か五かプリントがよく見えないんですが、まあ五かもしれない。四十一年が五、四十二年が九、四十三年が十四、計二十八となっておるんです。ところが、四十一年の六月に決定したというこのいまの例として出した千葉県にしても、山口県にしても、ちょうど二年たつわけですね。こうなると、実際問題として、最低賃金を決定したことが、二年たったらもう全然実情に合わなくなっていやしないかと思うんです。いかがですか。そういうようにどんどん合わなくなっていくように思うんですがね。
  74. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 一般的には、先生の御指摘のような懸念がございますことは否定できないと存じます。ただ、実際に見ますると、春闘のベースアップ率が中小企業や他の産業にどのように波及するかというその影響度の測定については、私ども、各種の統計を用いて行なっております。非常に重要な問題ですから行なっておりますが、そう直接的にパラレルな関係中小企業その他に影響しているということは、今日までの資料の面等で出てきておりません。大企業にはそういう傾向がありますが、中小零細企業に対しましてはかなりジグザグな影響を及ぼしております。したがいまして、最低賃金問題を考えます場合には、中小零細企業の賃金がどのように推移していくかということを確かめて措置していかなければならない、こういうことに相なるわけであります。そういう配慮が一つと、いま一つは、最低賃金額目安をきめておりますが、この改定は、従来は三十九年に設定して四十一年に改定をした。いままた改定の検討をやっておるわけでありますが、改定する際のアップ率はかなり高い率になっております。従来の経験から申しますと、毎月勤労統計で見た一般賃金のアップ率よりも、むしろ目安改定のアップ率が高い、こういった傾向もあるわけでございます。  そこで、先生指摘の点につきましては、中小企業における賃金の動向をよく見定めると同時に、目上安改定等の措置を講ずるときに現状にマッチするような形をとるという方向で今後検討すべきではないかというふうに思っております。
  75. 小平芳平

    小平芳平君 なおさら問題ですよね。中小零細企業は賃金上昇の影響があらわれてこないと。全然こないわけじゃないけれども、去年の調査結果は、労働省調査結果でも、大企業との格差が開いてきたという発表がありましたですね。ですから、そういう面こそ最低賃金で救済していく面だ、言われたとおりだと思いますね。そこで、なおさら必要生計費が大事になってくると思うんですね。類似の労働者だけ見ていたのではなかなか上がらない。しかし、ひどく生計費が上がっているというような場合もあるわけです。まあそれはよろしいです、そういう考え方ですから。  次に、労働大臣あるいは労働基準局長は、審議会意見を尊重してきめるというんですが、審議会がかりに答申をして、大臣はその意見を尊重するだけですから、そのとおりきめなくてもいいわけですね、この法律上は。したがって、別個の額をきめるということがありますか。
  76. 小川平二

    国務大臣小川平二君) 賃金の決定にあたりましては、審議会の御審議を経て十分これを尊重いたしてきめるわけでございます。また、最低賃金審議会の決定に対して不満があります場合には、異議申し立てる道が開かれておるわけでございまするし、さらに、また、労働大臣ないし都道府県労働基準局長審議会意見によりがたい、かような判断をいたしました場合には、審議会に対して再審議を求めるということにもなっておるわけでございます。したがいまして、労働大臣あるいは都道府県労働基準局長審議会意見を全く無視して一方的に恣意的に最低賃金を決定するということは、実際問題としてはございません。ないと信じております。もちろん、制度の中身といたしましては、審議会の決定と異なる最低賃金が決定されるということは、これはあり得ることでございます。
  77. 小平芳平

    小平芳平君 あり得る……。
  78. 小川平二

    国務大臣小川平二君) 制度の仕組みとしては、可能性の問題といたしましては、さような場合がないと申すことはできない。実際の問題といたしましては、さようなことはまずあるまいと思います。
  79. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) ちょっと私から補足さしていただきますと、現行法のたてまえから言うと、審議会の決定に異なる措置労働大臣や都道府県労働基準局長がするということは、これは好ましくないと思います。だから、審議会の決定に違ったような措置をしようと思えば、審議会の答申に不満なわけですから、そのときには「理由を附して、最低賃金審議会に再審議を求めなければならない。」と、こういう制度を十五条の第二項に設けておるわけであります。しかし、法的に全くできないかという議論を申し上げますと、大臣が最後にお答えになったようなことになるんですが、しかし、今日までの経過にかんがみまして、そういう例は全然なかった。全く審議会の決定どおり措置してまいった。それから法律のたてまえとしては、審議会の答申に異なったような措置をしようという場合には、勝手にやらないで審議会に再審議を求めろという規定が十五条の第二項にございますから、万々そういうことはあるまい、こういうことでございます。
  80. 小平芳平

    小平芳平君 その審議会は行政委員会でないわけですね、決定する審議会ではないのですね。ですから、諮問に対して答申するだけだと思うんです。そこでもって、いまの選挙制度の場合のように、大骨、小骨をみんな抜いちゃう、そうして答申はみんな尊重だと言っておるというようなことはこの最低賃金の場合はやらないと。これは法律上は大臣が決定することになっておりますから、再審査をやれるといっても、再審査をしてもらってもまた不満の答申しかないというような場合もあり得るわけですね。そうした場合に、選挙制度の例が当てはまるかどうかわかりませんけれども、とにかく答申尊重だと政府は言う。言うけれども、やっていることはだれが見てもまるっきり答申なんか尊重を全然していないというようなことは、最低賃金の性格からいって、賃金という性格からいって、そうした労使同数参加をしてきめた審議会の答申に対して、それと異なる決定を、法律上はできるにしても、賃金の性格の上からいってこういうふうにいくことが望ましいとか、こういうふうにしていくということは言えると思うのですが、いかがですか。
  81. 小川平二

    国務大臣小川平二君) 申すまでもなく、これはおことばのとおりでございます。
  82. 小平芳平

    小平芳平君 それから先ほどもちょっと触れられましたが、労使委員のうち、労働側、もしくは使用者側、片側委員が出席しないというような場合、これもかつてあったわけですが、あるいはどうしても意見がまとまらないというような場合、米審がその例になるかどうかわかりませんが、とにかく答申がまとまらないというような場合はどうされますか。
  83. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 法令上の制度を申し上げて恐縮なんですが、法令上は、審議会は、各側委員のおのおの三分の一以上、または全委員の三分の二以上が出席すれば、会議を開き、議決をすることができるわけであります。しかし、ただいま先生のおことばにもございましたように、賃金でございますから、労使がいろいろ審議をしましてできるだけ意思が合致するということが望ましいわけであります。ですから、法令上はこうなっておりますから、かりに片側が全部退場いたしましても、他の側が全員出席しますとできないことはないのでございますけれども、しかし、運用としましてはそういうことは適当でない。最低賃金をきめるのですから、各側の委員が大部分御出席いただきまして審議をすることが望ましいわけでございます。  御質問の中に、ボイコットをしたような場合どうするかというような問題につきまして、これは審議会運営の基本原則としてどう考えるかということでございますけれども、先ほど申しましたように、各側の大多数の方が出ていただきまして審議をしていただくということが原則でありますし、かつ、そういった問題が生ずるには、それなりのいろいろな背景があるだろうと思うのでございます。そういった障害となる背景、条件の除去といったような点につきましても十分留意いたしまして、今後審議会が円滑に運営されますようにわれわれとしても努力し、各側委員の御協力を求めたい、かように存じておる次第でございます。
  84. 小平芳平

    小平芳平君 答申が出ない場合は……。
  85. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 先生指摘のような事情がございまして答申が出ないという場合には、これはやむを得ない――先ほど申しましたように、答申を尊重して措置をする、こういうたてまえでございますので、答申がない場合に独断で措置するということになりますと、かなり問題がございます。やはり長期的に見ました審議会のあり方というものを考えまして善処しなければならないと存じております。
  86. 小平芳平

    小平芳平君 時間がおそくなりますので、間もなく終わりますが、米価審議会は答申がなければ農林大臣がきめちゃうわけですね。ですから、この最低賃金の場合はそういうことがあり得るのですかどうですかということをお尋ねしているんです。
  87. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 最低賃金法では、答申がなかった場合にどうするという措置は規定いたしておりません。ですから、法のたてまえは、答申がある、それを尊重いたしまして措置をする、こういうたてまえであろうと存じまして、法に規定のないような異例の措置をとるということにつきましては慎まねばならないと私ども存ずる次第でございます。
  88. 小平芳平

    小平芳平君 審議会労使平等に参加して賃金をきめるわけですから、それが基本原則なんですから、答申がなければ労働大臣が全く一方的にきめるということはないのではないんですか。そういうことはしない、法律上はあり得ても。ILO労使平等参与の原則からいってもそういうことはしないということが言えますか。
  89. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 最低賃金の決定につきましては、御指摘のとおりでございまして、そういうことはあり得ない。意見が一致しませんのに最低賃金をきめる、しかも直接労働者、使用者の権利義務にかかわる最低賃金でございますから、そういうものを答申を得ないのに措置するということはあり得ないことじゃないかというふうに私どもは存じております。
  90. 小平芳平

    小平芳平君 じゃ、それはやらないということで……。
  91. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) はい。
  92. 小平芳平

    小平芳平君 最後に、今度の場合、結局、中央の場合でいえば、労働大臣が諮問をするわけですね、まず。その上で審議会が答申をするわけですね。ですから、政府の産業政策あるいは労働力流動の政策、そうしたいろんな政府の政策によって最低賃金が使われるような可能性もあるのじゃないかと思うんですね。ですから、労働大臣が諮問をする場合に、どういう地域のあるいはどういう産業の最低賃金について諮問をするか、まずその出発が一つの問題だと思いますね。政府の御都合によって、特に産業関係大臣や各省の都合によって労働大臣が動いていくというんじゃなくて、やはり労働省労働者に対するサービス省であり、同時に、また、最低賃金そのものが、法律にもあるように、労働者の保護立法なんです。そうしたものを、ある産業の人を集めるために最低賃金を諮問をするとか、ある地域にある産業を興したいために最低賃金を諮問するとか、そういうような、まあちょっとばく然とした言い方かもしれませんが、最低賃金のこれからの諮問なり決定というものは、労働者保護、低賃金労働者を格上げしていく、生活を安定さしていくという基本線を貫いていっていただきたい。この点はいかがでしょうか。
  93. 小川平二

    国務大臣小川平二君) これは申すまでもないことでございますが、この法律目的として掲げております趣旨に従って運用されることが当然でございまして、ほかの政策的考慮、あるいは他の観点から法律趣旨がゆがめられるというようなことがあってはならないと、これは当然のことでございます。
  94. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、すでに各委員から御質問がございましたので、時間の関係がございますので、とりあえず二、三だけをお伺いしたいと思います。  きょうまで、業者間協定によってきめられてまいりました繊維とかあるいは木材、金属、食品などの最低賃金額幾らになっているか、パートタイマーの時間賃金幾らであるか、それから今年度中学卒業の女子の初任給が幾らになっているか、この点に対してちょっとお伺いしたいと思います。
  95. 渡辺健二

    説明員(渡辺健二君) 従来業者間協定できまっておりますものは、御承知のとおり、それぞれの地域におきまして業者が協定を結んで申請をしてまいることがございます。したがいまして、いま二、三の業種につきまして例をあげて御質問がございましたけれども、これまた地域によりまして非常に違いがございまして、いま申されました繊維とか衣服とか木材、これに該当する業者間協定は非常にたくさん数がございますので……
  96. 藤原道子

    ○藤原道子君 概略でいいです。二、三の例でいいです。
  97. 渡辺健二

    説明員(渡辺健二君) いまちょっと二、三の例を調べておりますが、非常に地域によって違うということを申し上げておきます。――繊維、たとえば綿スフ織物業の例で申しましても、地域によって違いまして、茨城の綿スフは五百六十円、あるいは、これは決定の時期も違いますが、埼玉でございますと五百円、あるいは新潟でございますと四百七十五円、富山は四百七十円といったような数字に相なっております。  木材の製材、木製品の例でございますと、たとえば北海道は四百七十円、青森が四百五十円、宮城が製材工四百六十円、その他のものが四百十円、秋田が四百五十円というように、それぞれの決定された地域によりまして違いが見られるわけでございます。  それから初任給につきましては、本年度の初任給はいまのところまだ調査が済んでおりません。昨年の学卒初任給の例で申し上げますと、四十二年度平均の金額は一万五千五百十九円に相なっております。しかし、これも全国の平均でございまして、地域によりましてはかなりの格差がございます。たとえて申しますと、中位数で東京は一万六千二百二十九円、大阪が一万五千七百四十二円でございますが、青森は一万二千四百四十円、宮崎一万二千三百八十六円、岩手一万一千九百五十八円、鹿児島一万四百五十五円というように、地域によりましてかなりの違いが見られるわけでございます。  それからパートタイムの最賃について御質問ございましたが、十六条で決定いたしました最近の例で申し上げますと、滋賀の繊維産業は一時間六十七円五十銭、鳥取県で決定いたしました調味料、飲料等の最低賃金は一時間七十一円二十五銭というような例がございます。業種、地域によりましてこれもかなりの違いがございます。
  98. 藤原道子

    ○藤原道子君 ことしの春闘で、繊維労連という小さな組合でございますけれども、そこでは最低賃金が協定いたしましたのが六百八十円から七百円ということになっております。これは中卒の初任給あるいはパートなどと比較いたしまして非常に低いんですね、最賃の業者間協定が。これはむしろ労使の交渉によらないで、政府目安で押えているというようなことがあるのじゃないですか、業者間協定賃金が。中卒とそれからパートの時間にしましても、パートは東京あたりでございましたら一時間百円から百二十円。そうですね。低いところを例にとっていらっしゃいますけれども、東京では、一時間百円から百二十円、八時間だと九百六十円くらいになっている。初任給にいたしましても、東京だと、一万六千二百二十九円ですか、ということになっている。東京の最賃というのはどのくらいになっておりますか。
  99. 渡辺健二

    説明員(渡辺健二君) 東京の最低賃金につきましては、まだ十六条方式による最低賃金は東京はございませんので、現在ありますのは業者間協定による最低賃金で決定をみたのがかなり古いものもございますが、例を申し上げますと、たとえば昨年きまりましたものでは、繊維染色整理につきまして五百八十円、既製服五百円、ミシンの部品六百円、通信機・関連機器五百六十円、合成樹脂成型五百八十円、自動車整備五百七十円、こんなような例が出ているわけでございます。
  100. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、いろいろ業者の云々ということばが先ほどの答弁でありましたけれども、これで食べられますかということを労働省考えたことがありますか。  それから全国産業一律方式をめぐって、沖繩の法定最低賃金幾らになっているか、フィリピンは幾らになっているか、アメリカ、フランス、これだけのところでよろしゅうございますから、ひとつお聞かせ願いたい。
  101. 渡辺健二

    説明員(渡辺健二君) 先ほど申しました最低賃金の額で生活がどうであるかという御質問でございますが、これにつきましては、もちろん楽な生活であるとは存じませんけれども、従来も、この最低賃金を決定する以前にはそれ以下の賃金を受けておった者もございまして、したがいまして、決定の時期におきましては、最低賃金が決定されることによって何人かの労働者がそれだけ賃金改善されたわけでございます。ただ、先ほど申しましたのは、昨年の例でございます。したがいまして、当然その後の賃金上昇もございますので逐次また一般の情勢に応じまして改定がはかられていくものと、かように考えておるわけでございます。  なお、お尋ねの諸外国の最低賃金につきまして申しますと、沖繩は、現在、一時間十八セントという最低賃金適用されております。  それからアメリカは、先ほども藤田委員の御質問に申し上げましたように、州際産業労働者――農業は別でございますが、それからなお零細な小売業、サービス業等について除外例がございますが、それらを除きましたものに対しまして、一時間一ドル六十セント、こういう最低賃金が決定になっております。しかし、州法できめられております州内労働者賃金につきましては、それ以下の額をきめておるものもかなりあるように承知をいたしております。   〔委員長退席、理事藤田藤太郎君着席〕  フィリピンにつきましては、現在、非農業労働者は一日六ペソ、それから農業労働者は一日二・五ペソという最低賃金額になっております。  フランスは、先ほども藤田委員に申し上げましたように、全職業最低保障賃金と協約の拡張適用とによる最低と二種類がございますが、全職業最低保障賃金は現在二区分に分けられておりますが、その高いほうのいわゆるパリ地区の例で申しますと、十八歳で一時間二・二二フランでございます。十八歳以下の労働者につきましては年齢に応じまして減額がされることに相なっておるわけでございます。   〔理事藤田藤太郎君退席、委員長着席〕
  102. 藤原道子

    ○藤原道子君 それではもう一つ聞きますが、日本の製造産業の労働者賃金水準幾らになっておりますか。男は幾らか、女は幾らか。
  103. 渡辺健二

    説明員(渡辺健二君) 製造業全体、これは男女区分はいまちょっと数字をさがしておりますが、男女を含めました全製造業の平均賃金は、四十二年平均におきまして月四万五千五百六十八円、かように相なっております。しかし、これは夏季、年末の臨時給与等を含めました年間の平均でございます。――男女の別について申しますと、これは生産労働者と管理事務、技術労働者と分かれておりますが、生産労働者について申しますと、四十二年平均で男子が四万九千六百四十四円、女子が二万二千五百八十七円、かように相なっております。
  104. 藤原道子

    ○藤原道子君 いまあなたがおっしゃったように、最低賃金制ができて若干の労働者賃金が上がったと。あたりまえですよ。労働者が食えないからこういうことをやったんですよ。最低賃金制ができて暮らしが悪くなったらたいへんなことです。そんなことは私は聞いちゃいない。あたりまえのことなんです。しかし、そのやり方がまだ足りないというんです。いま聞きましたような製造産業に働く者の給与が四万九千六百四十四円、これは男の平均ですね。ところが、業者間協定による労働者平均収入は幾らです。それで一体食えますかというんですよ。だから、いま、結核にしても、非常に疾病の発生いたします場所は低賃金の人にある。そうすると、今度、低賃金の人が政府管掌の健保で赤字が出る、そうしてそれを値上げをする、薬代もとる、こういうふうなやり方が私たちはたまらないから、それでほかの産業との比較を聞いた。今度できますところの最低賃金も、もっと労働者の生命を守る、暮らしを守るという立場から配慮してほしいからこの例を尋ねたんですよ。これができたら労働者賃金が上がったんだと。あたりまえの話です。上がり方が足りないというんです。そこで、沖繩、フィリピンなどの経済力と日本経済力を比較いたしましても、十八セントといえば非常に低いけれども、それでも一時間六十四円八十銭になるんですが、沖繩の経済力――いまの現段階ですよ、これがいけないから、沖繩の返還を求めて本土並みということを要求しておりますけれども、現時点でどんなにかひどい暮らしをしておいでになるかと心配している人たちがとにかくこれだけの状態です。そうなれば、日本経済力は世界の三番だの二番だの言っているんです。こういうところでこういうことでのうのうとしていられて、労働者の福祉を守るために出発したはずの労働省の責任が果たせるかどうか、この点私たちは非常に不満でございます。したがって、今度審議会が審議されるわけでございますけれども、皆さん方もそういうことをひとつ頭に置いて、よりよきものを、労働者を守るんだ、食えるようにしていくんだ、疾病率も少なくなるようにということを考慮にして今後も労働行政をやっていただかなければ困る。こういう意味から、私は、皆さんが十分御審議になりましたけれども、あえて蛇足でございますが二、三をお伺いしたわけでございます。  大臣、私が誠心誠意お願いしたいと思いますことは、結核は昔は有産階級に多かった。いまは、低賃金、年寄り、こういうところが吹きだまりになっているんですよ。あるいは、疾病率を見ましても、やはり中小企業が一番高くなっておるんです。その原因はどこにあるかといったら、働いても働いてもこういう低い賃金に放置されている、いろんな関係で優秀なところへは行かれない、労働管理も衛生管理もなおざりになっているところから起こるのです。ましてや、これでは食えません。したがって、働く人の御家族の八〇%以上は内職をしているんです。命を削っているんです。そのために婦人の体位は非常に努ってまいりました。そのために異常産が起きる。心身障害児の出生率もふえてきておる。またそこに国の保障が要るんじゃありませんか。こういうことを考慮して、私は、大臣に、労働行政をもっともっと前向きでやっていただきたいということを申し上げて、時間もございませんので、質問を終わります。
  105. 小川平二

    国務大臣小川平二君) 労働者の福祉を増進し、健康を維持増進するということは、労働政策全体の目的でございまするし、また、この法律目的でもございます。最近の労働市場の情勢から判断いたしまするときに、労働者一般労働条件は逐次改善されていく傾向にございますが、労働省といたしましても今後この方向で努力をいたします。特にいま御指摘のありました中小零細企業におきましては、労働条件一般に立ちおくれておるわけでございますから、施策の最重点として努力をしてまいるつもりでございます。
  106. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、この問題の重要な部分の質問をしておきたいと思います。  労働大臣は、来年三月末までに最終答申をいただけるよう審議会にお願いしたいと答弁しておりますが、政府はこれに伴って当然必要な法改正をするものと考えますので、本改正を含めた本法律の有効期限は実質的に今後一年間になると思うが、どうでありましょうか、御答弁を承りたい。
  107. 小川平二

    国務大臣小川平二君) この法律改正につきましては、現在中央最低賃金審議会において最賃制度基本的なあり方について御審議を願っている段階でございます。答申があり次第、すみやかに答申に基づいてこの法律改正をも含めて必要な措置を講ずる考えでございます。  なお、答申の時期につきましては、審議会の御意向によることはもちろんでございますが、私といたしましては、来年三月までには御答申がいただけるように審議会にお願いいたすつもりでおりますし、労働省としても極力努力をいたす考えでございます。したがいまして、御期待申し上げました期間に御答申がいただけますならば、御質問趣旨に沿い得ることとなると考えております。
  108. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そういうことになると、この改正法律案の成立後一年を目途にさらに法律改正が行なわれることになるものと考えてよろしゅうございますか。
  109. 小川平二

    国務大臣小川平二君) 政府といたしましては、御趣旨に沿って来年三月までに中央最低賃金審議会の答申がいただけますよう努力いたしますとともに、その答申に基づいて法律改正を含めて所要の措置を講ずる考えでございます。したがいまして、おおむね、御質問のとおりになろうかと考えております。     ―――――――――――――
  110. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) この際、委員の異動について御報告いたします。  本日、黒木利克君及び林塩君が委員を辞任され、その補欠として小柳牧衛君及び小林章君が選任されました。     ―――――――――――――
  111. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) では、最低賃金法の一部を改正する法律案閣法第二号)について、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  112. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。――別に御発言もないようでございますから、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  113. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  最低賃金法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  114. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
  115. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 私は、この際、ただいま可決されました最低賃金法の一部を改正する法律案に対する各派共同の附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。  最低賃金法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)  政府は、左記の事項について、その実現に努力すべきである。    記  政府は、昭和四十四年三月三十一日までに、最低賃金制のあり方について、中央最低賃金審議会の結論が得られるよう努めるとともに、その答申に基づいてすみやかに法律改正を含む所要の措置を講ずること。  右決議する。  以上でございます。  何とぞ御賛成くださいますよう、お願いいたします。
  116. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) ただいま述べられまして大橋和孝君提出の附帯決議案を議題といたします。――別に御質疑もないようでございますので、これより本案の採決をいたします。  大橋和孝君提出の附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  117. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 全会一致と認めます。よって、大橋和孝君提出の附帯決議案は、全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
  118. 小川平二

    国務大臣小川平二君) ただいまの附帯決議につきましては、御趣旨に沿いまして措置いたしたいと存じます。
  119. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  120. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  121. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) この際、参考人出席要求につきましておはかりいたします。  原子力研究所の労働問題に関する件について、関係者に参考人として出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  122. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 御異議ないと認めます。  なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長及び理事に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  123. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  午前の審査はこの程度にとどめ、午後三時まで休憩いたします。    午後一時三十九分休憩      ―――――・―――――    午後三時四十分開会
  124. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 休憩前に引き続き、これより社会労働委員会を再開いたします。  まず、冒頭に、このたびの十勝沖地震について厚生大臣から発言を求められておりますので、これを許します。園田厚生大臣
  125. 園田直

    国務大臣(園田直君) すでに御承知だと思いますが、北海道周辺の地震について簡単に御報告申し上げます。  震源地は、北海道の襟裳岬沖百五十キロ、マグニチュード七・八――関東大震災が七・九で、新潟震災が七・六でありますから、相当強度の地震でございます。  わかりました状況を申し上げますと、北海道の浦河海岸は、床上浸水、国道の地盤が沈下をして列車は不通でございます。苫小牧は、市役所のビルの壁がくずれ、道路は亀裂、水道管破裂、電灯は停電でございます。美唄炭鉱は、さらに抗道がくずれております。それからなお、はっきりわかりませんが、道南地方の函館大学の一階がくずれて、その中に学生が相当入っているのではなかろうか。これは詳細はわかりません。そのほか、日本水産の倉庫がつぶれ、ガス漏れのために道路は不通でございます。それから電話のマイクロ線が不通でございます。青森のほうが被害が多いようでございまして、死者が八名、行くえ不明十二名、けが人が三名、火災が二十四カ所、道路の寸断が七カ所起こっております。それから津波が、三陸地方の海の潮が沖へ引きましたので、退避命令を出しましたが、二メートル八〇ぐらいのものが三波やってきております。岩手県の損害は、津波が宮古港に十時二十六分ごろ二、三メートルの波がきましたが、被害はさほどないようでございます。これも詳細はわかりませんが。特に北海道につきましては電話が不通でございまして、警察電話、それから防衛庁の無線が中継所がこわれて、これも通じないという状態でございます。相当なものではなかろうかと想像いたします。  海上保安庁では、小樽、塩釜、横浜の所属のものが出動中であります。それから自衛隊の横須賀では、自衛艦六隻、航空機十機が出動の準備中でございます。  政府では、総合対策本部を設置しまして、六時から第二回目の各省連絡会議を開くことになっておりまして、現地にそれぞれ調査団を派遣するように準備をしております。  函館、青森の港は岸壁が破壊をいたしまして使用不能になっております。飛行機は、北海道全島の飛行場が使用停止をいたしましたが、千歳だけは通うようになったようでございます。  そのほか、現在までわかっております模様は、断片的ではありますが、これから想像しますと、相当な大きな被害ではないか。私のほうでは、それぞれこれに応じて準備をしなければならぬと思っております。     ―――――――――――――
  126. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) それでは、身体障害者福祉法の一部を改正する法律案及び国立光明寮設置法の一部を改正する法律案を議題とし、政府から提案理由説明を聴取します。園田厚生大臣
  127. 園田直

    国務大臣(園田直君) ただいま議題となりました身体障害者福祉法の一部を改正する法律案について、その提案の理由を御説明申し上げます。  最近、身体障害者福祉はますますその重要性を加え、国民的な関心の高まりをみせております。  申すまでもなく、身体障害者福祉対策の意義は、身体障害者がその能力を十分に発揮し、積極的に社会経済活動に参加できるよう更生の実をあげることにあります。  このような見地から、国といたしましても、身体障害者更生援護施設の整備及び運営については特に意を用いているところでありますが、今回、都道府県知事等の措置によりこれらの施設に入所して訓練を受けている身体障害者に対して、この訓練をより効果的に受けることができるようにするため、都道府県知事等は、参考書等の費用を更生訓練費として現金で支給することができることといたした次第であります。  なお、特別な事情がある場合には、更生訓練費の支給にかえて物品を支給することができることとし、また、国立の施設に入所した身体障害者に対する更生訓練費等の支給は、当該施設の長が行なうことといたしております。  以上が、この法律案提案の理由でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。     ―――――――――――――  次に、国立光明寮設置法の一部を改正する法律案につきまして、その内容及び提案の理由を御説明申し上げます。  最近、身体障害者福祉はますますその重要性を加え、国民的な関心の高まりをみており、政府といたしましても、身体障害者のため諸施策の充実、強化に努めているところであります。  申すまでもなく、身体障害者福祉の目的は、その能力を十分に活用し、社会の一員として活動ができるよう更生の実をあげることにあります。このため、身体障害者を収容し、治療及び訓練を行なう更生援護施設を整備し、身体障害者の社会復帰の促進をはかっているところでありますが、その一環といたしまして、国も、視力障害者を収容し、更生に必要な訓練を行なう施設として国立光明寮を設置し、視力障害者の福祉の増進に努めているところであります。  国立光明寮は、これまで、東京都、北海道等四カ所に設置されておりますが、さらにその地域的分布を考慮し、その受け入れ態勢の整備をはかるために、主として九州地方の視力障害者を対象とする光明寮を福岡県に設置することといたしました。そのために、設置場所として福岡県を追加するのが本法案内容であります。  以上が、この法律案内容及び提案の理由でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  128. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) それでは、これより両案について質疑に入ります。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  129. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 一つ二つ質問をさしていただきたいと思います。  更生訓練費の金額は大体どのようになっておりますか。この金額では更生のため訓練を受けるには不十分ではないかと思うのでありますけれども、その様子をちょっと伺ってみたいと思います。
  130. 今村譲

    政府委員(今村譲君) お答え申し上げます。  予算全額としましては、四十三年度、国立が約八百万、それから都道府県あるいは民間の施設全部ひっくるめまして国庫負担金が四千五十五万、合計いたしまして五千万ちょっと欠けるということでございます。個人々々に渡しますものは、普通の更生訓練施設、あるいは国立の光明寮のように盲人施設、ろうあ施設というものは、千円以内、それから授産所は、まだはっきり大蔵省と最後的な詰めをいたしておりませんが、その二分の一ということでございます。もちろん、千円以下で低いじゃないかというお叱りは十分わかりますが、入ります場合の食費あるいは教育費全部公費負担ということでございますので、教科書とか作業衣とかノートとかいうものについて千円ということで出発をいたしたいと、こういうふうに考えておる次第でございます。
  131. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 お答えの中に額の少ないことをお認めになっておるようでございますが、その趣旨からいいましてこういう金額のつけ方では十分でないということはひとしく私も感ずるところでありますが、これはどうぞ今後とももっともっと増額していただくようにお願いいたします。  それから身体障害者福祉司の質の向上をはかるために、その養成訓練については今後さらに充実し、また、その資格要件を高くするとともに、専門職としてふさわしいところの処遇の改善をはかるべきである、こういうふうに思いますが、この福祉司の質の向上に対しての対策はどのようにお考えでございましょうか。
  132. 今村譲

    政府委員(今村譲君) 現在は、各福祉事務所が全国で千五十二カ所ございますが、そこに身体障害者福祉司が千八十三名、大体一カ所に一名ということでございますが、まだまだ数が少ないというふうな状況でございます。現在の資格としましては、社会福祉事業法に定めております社会福祉主事の資格を持った上にさらに二カ年間現実社会事業に従事した者、お医者さん、これは無条件でございます。それから大学を出て厚生大臣の指定する心理学とか職業指導とかそれらの研究を積んだ者というものでございます。そういう人方でありますが、人数をふやしますこと、それから今後のいわゆる現任訓練といいますか、これは中央で毎年約二百人くらいの現任訓練をやっておりますのと、それからブロックごとに行政事務を兼ねまして会議をやりましていろいろ新しい方法を注入するということをやっておりますが、今後とも強化してまいりたいと思っております。  それから処遇の問題につきましては、これは都道府県の吏員でございますので、直接的にこちらから補助金というわけにはまいりませんが、交付税交付金のあれでありますが、たとえば特殊勤務手当を、非常につらい仕事でありますので、昨年から二千五百円を三千五百円というふうに上げたり、そういうふうな面での努力も今後とも続けてまいりたいと考えております。
  133. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 次は、身体障害者更生相談員の充実の件でありますが、各都道府県には身体障害者更生相談所が設置されておりまして、そして、技術的な判定とか更生相談事務など、身体障害者行政上重要な部門をこういう人たちが担当しておるのでありますが、現在は設備と職員がともに不十分なために、巡回相談は若干効果をあげているとはいいましても、その本来の機能が十分に発揮されていない、こういうような状態でありまして、いまこの法改正も行なわれようとしておりますけれども、その中においてはこのような不足な状態が起こりつつあるわけでありますが、実情はどんなふうなものであり、今後これに対してはどんなふうな処遇をされるかということもここらで明確にしていただかないといけないのではないかと、こういうふうに考えます。
  134. 今村譲

    政府委員(今村譲君) いま御指摘ありました更生相談所、これは全国に五十三カ所、大体都道府県に一カ所ずつございます。職員は、全部引っくるめまして五百四十三名、これは四十二年度末でありますが、したがいまして、一カ所十名前後というもので、まだ人数としては少ないわけであります。お医者さんが約百七十名、技術判定職能が百八十四名、生活指導が五十六名というふうな技術職員の系統がまだまだ不十分であるというので、今後とも県のほうに強力に指導いたしたい、こういうふうに考えております。  それから来る人、たとえば四十一年度の相談の実績、あるいは巡回相談の判定の実績を申し上げますと、四十一年度で相談件数が、相談所に参りましたのが十四万件、それからいわゆる機能とか職能とかいろいろな判定を持ち込んでまいりますが、それが約十四万七千件、まあ十五万件、合わせて大体二十八万件というふうな取り扱いをいたしております。巡回につきましては、そのうちで、四十一年度の実績でありますが、七万四千八百三十三名、全国で七万人くらいしかまだできておらないというふうな状況でありますし、人によっては一年に二回でもみてあげなければならぬというふうな状況の人もおりますので、この各相談所は巡回相談車を持っておりますけれども、まだ十分な活動まで至っておらないということでございますので、それの推進と申しますか、予算的措置と申しますか、そういう点を努力してまいりたい、こういうふうに考えております。
  135. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 まだまだこういう点も、一番基幹をなすわけでありまして、施設ももちろん大事でありますけれども、こうしたところが非常に必要だと思いますし、ことに訓練して、そして社会復帰させようということになれば、こういうところでもって早く十分な処置をしなければならぬと思いますので、特にひとつ御配慮を願いたいと思います。  次には、民生委員と身体障害者相談員との関係でございますが、現在、身体障害者に対する指導相談活動については、民生委員が、社会福祉事務所等の協力機関として設けられているのに、別にボランティア活動として身体障害者のうちから身体障害者相談員というのが設けられているわけでございますけれども、両者の業務の調整をどのようにしておられますのか、こういうこともまたいろいろあれがあるようでございますから、ちょっとお伺いしておきたいと思います。
  136. 今村譲

    政府委員(今村譲君) 本来から申し上げますならば、県あるいは市町村の行政当局、福祉事務所が中心になりますが、それ以外のいわゆる一般的な相談というのは民生委員が本来ならば全部引き受ける、母子であれ身障であれ、そういうのがたてまえであるというふうに存じております。ただ、民生委員さんは、全国で十二万九千幾ら、約十三万人弱おられます。最近、いろいろな法律ができ、あるいは行政項目も多くなるというので、民生委員さんも、それからもう一つ、民生委員さんの側において昔のようにいわゆるだんなさんといいますか、生活に余裕があってその地域を一生懸命めんどうを見てくれるという人が少なくなり、御本人も忙しくなってくるというふうな点が逆にありまして、どうしても身障なり母子なりいろいろな指導面において手が及ばないという点がありますので、ことに身障の問題につきましては手まねとか口話法とかいろいろありますし、本人も民生委員のところあるいは福祉事務所へ行って補装具を申請するというのも非常に不便である。逐次その地域地域で身体障害者の盲あは盲あ、肢体不自由は肢体不自由というような団体組織ができてまいりまして、そこの世話役さんというふうな人がいろいろ役所の関連を取り持ってくれたり、あるいは身の上相談をやったりというふうな人が相当おります。四十一年の調べでは岐阜県とか約十県に現実にそういうふうな組織をつくっているところがありましたので、四十二年度の法改正のときにおきましてこの制度をはっきりつけるということで、四十三年度におきましては三千名全国で身体障害者の中からお願いしてございます。この点、民生委員形式上はダブるようでありまして、各地の民生委員協議会というのがございまして、その辺とこの身障相談員の人方との連絡会というものを持たして、お互いに押し付け合いということではありませんが、機能が分離しないようによく連絡をとって、生活保護その他何から一切がっさいをうまくやるというふうな連絡会を持つように指導いたしております。そういうふうな状況でございます。
  137. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 それから今度は自家営業のための援助についてちょっと伺いたいわけです。身体障害者の職業として自家営業は、就業者のうち六〇%で、大きな割合を占めておると、こういわれておりますが、現行の自家営業に対する援助措置として、公共の施設内での売店設置の優先許可や、たばこ小売人の優先指定が規定されておりますけれども、実効がほとんどあがっていないというふうにいわれております。今後この制度の積極的な運営をはかるために、公営住宅内でのあんま、 マッサージ、指圧師の営業等を優先的に行なわせるような事業種目を拡大するとか、あるいはまた、公共施設設置者に売店設置予定個所を援護の実施機関に通知する制度に改めること等、法制上の措置を講ずる必要があるのではないか、こういうふうに思うのですが、それに対してお話を承りたい、こう思います。
  138. 今村譲

    政府委員(今村譲君) 全般的に申しますと、身体障害者全体が、現在の状況におきましては、通常の雇用関係に入ることは非常にむずかしいというので、就業調べをやりますと、一般国民平均が六六%が就業しているというのに、身体障害者については四十一万二千人、三九・三%、まあ四割、これは一般の人の三分の一ぐらいしかいわゆる正常の就業というかっこうにならない。これを何とか進めてまいりたいというふうに労働省とも連絡をしながらわれわれ考えておる次第でございます。  最初お述べになりました専売品の販売許可でありますが、参考までに申し上げますと、昨年の暮れでありますが、全国で十八万六千人ぐらいたばこの小売人がおる。身体障害者で許可をもらったのは、三千四百六十六人、約二%弱でございます。こういうふうな観点から、もっと強化しなければならぬじゃないかというふうに私ども考えて、専売公社関係といろいろ折衝いたしております。  それから公営住宅の中であんま、マッサージができるようにというお話でありますが、これは実のところ公営住宅の入居基準というのが非常に厳密にできておりまして、営業的なものは一切許さない。これは開業のお医者さんだけは別だということになっておるようでありますが、これも建設省のほうといろいろ――他に波及するとか、いろいろ議論がありますけれども、これはいろいろ折衝を進めてまいりたいと、こういうふうに考えております。  それから公共機関でいい売店設置の場所でもあれば、実施の機関いわゆる都道府県知事に報告せいというふうな問題、これは現行法の改正になるわけでありますけれども、現在は、県の社会課あるいは社会福祉協議会あたりで地域地域でいろいろ調べた上で話し合いをしておるわけでありますが、これの法制化をするかせぬかというふうな問題につきましては、今後十分に検討してみたいと、こういうふうに考えております。
  139. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 もう一つでありますが、労働省の職業訓練所と厚生省の更生指導所というのはきわめて類似の施設だと思うのでありますが、現状ではこれがどのように区分されて運営されておりますのか、各省のほうからちょっとその状態を聞かしていただきたい。  それからまた、それぞれの役割りと対象者の相違を明確にした上で、相互の密接な連携をとりながら両者の充実をはかり、一貫したところの職業的リハビリテーションの施設体系を確立する必要があるんじゃないかと、こう思うのでありますが、密接な連携をとる上でおのおのの対象とかそういう点についての将来の展望、将来の施策ということについて両省から伺っておきたいと思います。
  140. 今村譲

    政府委員(今村譲君) 厚生省のほうから先に申し上げます。  本来ならば、厚生省の系統の施設で、職業の問題よりも先に、まず歩行とか日常生活とか、とにかく身体の機能訓練というふうなかっこうのものをやりまして、それから若干適性検査その他いろいろやりまして下準備をして、それから労働省の、十カ所、約千五百名収容定員がございますが、身体障害者の職業訓練所というふうに行くのが一つの流れの道だろうというふうに考えます。ただ、実態を見ますと、そこに入って一年あるいは一年半で生活機能訓練あるいは身体的な調整というふうなものをやりまして、すぐにそう技術を必要としないような簡単なところへ就職をする、あるいは自宅に帰って――女の人もおられますので、自宅に帰るというふうな人もございますし、それから発奮して、労働省のもう一段高い本格的な職業訓練のほうに進みたいというふうに入る人もございます。したがって、厚生省の施設、四十八カ所、約二千四百人ぐらいおりますけれども、これが全部労働省のほうとの連携は必ずしもつかないわけでございますけれども、ただそういう未熟練労働というようなかっこうで出るよりか、できますならば労働省のほうにお世話になって、もっと高い仕事で、高いペイがもらえるというふうな社会復帰をさしたいというので、労働省関係の方面とそのリンクのつけ方というのをしょっちゅういろいろお願いもし、議論もしておる、こういうふうな状況でございます。
  141. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) ただいま厚生省社会局長のほうから御答弁を申し上げましたような基本的な考え方は、全く同じでございまして、労働省の身体障害者職業訓練所といたしましては、一般の職業訓練所ではいろいろの関係で訓練が困難な事情にある身体障害者につきまして、別に身体障害者職業訓練所を設けまして職業訓練をやっております。私どものほうは、厚生省のほうの身体障害者更生指導所で医学的なあるいは社会復帰的な機能の訓練を終えられまして、一応治癒の段階になり、今後さらに高い技能を身につけて社会に帰りたい、こういう方につきまして入所をしていただいておる、こういうことでございます。したがいまして、そういう点で一応厚生省の身体障害者の厚生指導所との差異はございますが、両所ともいずれも身体障害者の社会復帰のための施設であります。社会局長から御答弁申し上げましたように、より密着した問題がございます。十分お互いに連絡をとりつつ、いやしくも身体障害者の方に不自由をかけるようなことのない運営を両省とも心がけてまいりたい、かように考えております。
  142. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 それからもう一つ私伺っておきたいのは、一昨年九月でしたか、障害等級調整問題研究所から研究内容の報告がなされまして、二年近くのうちに等級を一つにしなければならぬ、こういうふうなことが答申が出された、こう聞いておりますけれども、身体障害等級表というのもいろいろまちまちになっておるようでありますが、こういうものを統一すべきじゃないか、こういうようなことを考えるわけでありますが、それはどういうようなことになっておりますか。
  143. 今村譲

    政府委員(今村譲君) それは、お話のありますように、一昨年の秋だったと思いますが、恩給は恩給、身障は身障、労災は労災、ばらばらではないか、これは一本にすべきではないか、こういうふうな結論が出ました。これは、厚生省内だけを申しましても、厚生年金あるいは障害年金というふうな場合と身体障害者福祉法との調整もございますし、それからこれはもう関係各省ほとんど全部にわたったということでございますので、総理府に障害等級問題の統一に対する各省の担当官が寄り集まって、なるべく早い機会にそこまで逐次直していこう、こういうふうな会合を持っておるというふうな状況でございます。厚生省では年金局長がそれの主管としてそこにしょっちゅう出ておりまして、その情報を私どもいただいております。ただ、みなそれぞれいきさつがあって、一気に用意ドンというかっこうにはなかなかまいりませんので、なるべく早く各省の意見を統一して、なるべく近い機会にそれぞれのものを一定の線に合わして直していく、こういうふうな気持ちではおりますが、まだ現実にはそこまでまいっておりません。
  144. 小平芳平

    小平芳平君 いまの大橋委員からのお尋ねにもありましたが、厚生省労働省が身体障害者の更生について――厚生省労働省と同じことを予算要求して、それで大蔵省から両方削られたという話も聞きますけれども、連絡会議というものは制度としてできているわけですか。それがどの程度持たれましたですか。
  145. 今村譲

    政府委員(今村譲君) これは、制度としてというか、法律措置というかっこうではできておりませんが、二十二年ごろにちょうど私社会局で身障法の制定を担当したわけでありますけれども、そのとき以来、職業安定の系統と、私のところの社会局系統と、児童局も含めまして、これは三カ月に一回くらいだと思いますが、問題があれば二回、三回ということもありますが、その辺の会合は常時やっております。ただ、これが制度審議会あたりでいろいろな意見がございまして、文部省も関係があるし、もう一つは医療とリハビリテーションと職業と結びつくとにかく一つの場所で一貫してやるべきだというような当然の議論もあります。ということで、医務局あるいは文部省、労働省というかっこうのものを法的につくったらどうかというような御意見もございます。しかし、現在のところは、近くにありますので、しょっちゅう行ったり来たりということで事実上は十分じゃないかというつもりでおりますけれども、将来本格的に各省のばらばらでなしにまとめて本格的にという時期にはまたひとつ考えなければならない問題ではないか、こういうふうに思います。
  146. 小平芳平

    小平芳平君 大臣、これはいかがでしょうかね、いまのような問題は。まあ身体障害者は比較的軽度の人で、厚生省でも局が置かれているし、それからまた、文部省、労働省厚生省その他運輸省、いろいろ関係があるわけですが、特にさしあたっては厚生省内の二局と、それから労働省ですね。職業訓練を受け社会へ復帰していくというそういう点について、いまの局長説明だと、近所だからいつも連絡してやっているから十分やっていけるというようなお話ですけれども、何によらず、行政の縦割りの関係で何でもかんでも全部まとめて一つの省にする、局にするということは無理でしょうけれども、しかし、一人の身体障害者の人が、あちらの局の窓口、こちらの省の窓口、こちらの県の窓口というような現実問題としては不便があるわけですが、そういう点についてのお考えはいかがでしょう。
  147. 園田直

    国務大臣(園田直君) これは特に手続その他でやはりあちこち回されたという実例もございますから、窓口はなるべく一本にしなければならない。それでも、訓練その他につきましても、私のところは少しは違います。私のほうは、職業訓練を受ける前準備の訓練、一方は専門の職業訓練ということで違いはありますけれども、しかし、御指摘のとおり、そこに一貫した連絡があり、訓練の計画や施設等についてもできれば一カ所でやったほうがいいわけでありますから、私のほうでも、今度、そういう観点から、障害福祉課という課を設けましてなるべくそこにまとめるようにはいたしましたが、単に両方の省から相談するというだけではなくて、もっと何かそっちの方向に向かって研究をしてみたいと考えます。
  148. 小平芳平

    小平芳平君 それから施設へ入りまして、授産所ですね、比較的重症の人が入る傾向にあるんですね。わりあい症状の重い人でも、そうした仕事をしている比較的軽い人たちと一緒に仕事をして、そして職業の訓練を受け、働けるようになっていきたいという、そういう場合があると思うんですね。比較的そうした重い人がそういう施設へ入るということと、それからもう一つは――まとめてお尋ねしますから、その問題点と、もう一つは、今度はせっかく施設へ通いまして、何年という施設に通ったけれども、そこの訓練は終わったが、さて今度は社会に出るといっても、おいそれと働けない。おいそれと働く先がなければ、授産所ですぐ取け入れてくれればいいけれども、定員が満員ではいれない。そうなると、したがって、家庭へ閉じ込もりになる。せっかく何年も親としては施設へ通わしてあげて、ようやく社会性も身についてきたころ、また今度は家庭へ逆戻りして、本来の動けない身障者の生活に逆戻りしてしまう。したがって、授産所施設の拡充といいますか、せっかく施設へ通って、訓練を受け、社会になれてきた人たち、その人たちが安心して生活していかれるようなそういうものがほしいという要望が強いわけですね。その点についていかがでしょうか。
  149. 今村譲

    政府委員(今村譲君) 第一点の、重度の人の授産所という点、これは、御指摘のように、まだ数が非常に少のうございます。数字を申しますと、先ほど大臣が言われましたような普通のいわゆる職業前の訓練といいますか、職業前のいろいろな機能調整訓練というふうなものは、四十八カ所で二千四百人ほど――二千三百八十九人おりますが、重い人のそういう職業前の訓練というのは、毎年これを重点的にやらしておりますが、十三カ所で九百九十名という程度でございます。したがって、今後は、どちらかといえば、中度、軽度の人を早く回転して、いくというふうな気持ちも相当ありまして、重い人が自宅に閉じ込められるということは申しわけないというので、重度の更生保護施設というものの強化につとめたいと考えます。  それから第二点の、それは出たけれども、家庭へ帰れる人はまだいいかもしれぬけれども、授産というふうな問題も、これは身体障害者の授産全体が現在六十一施設で三千九百七十五名、四千名足らずという実情でございますが、これもことに重度の人方を入れる授産施設というものに重点を置いて今後の設置計画を進めていきたい、こういうふうに考えております。現に、普通の身体障害者の更生施設を出ました者は四十一年度の報告で九百七十三名で、その施設を出たというので就労するのが五六%くらい、五百五十三名、家に帰るという条件の者が二百十六名、そのほかに、転所といいまして、授産所へ入る、あるいは別の機能の更生訓練所へ入るという者が百三十一名というふうに、出ますときにその人の状況によりまして、授産所へ至急連絡して入れる、あるいは別な訓練施設に入れるというふうな措置もやっております。何しろ入れものがまだ不十分でありますので、おっしゃいますような点は重々私どもも今後努力しなければならぬというふうに考えております。
  150. 園田直

    国務大臣(園田直君) いまの御意見の中の、機能の訓練もさることながら、社会に身体障害者を送るということは非常に大事なことで、やはり何といっても引っ込み思案で外に出ようとしない、それをようやく訓練所に収容することによってそういう気分に向いてきたところをまた家庭に押し戻すという、その精神上の問題これは予想外に大きな問題で、非常に貴重な意見だと思います。この点、さらに施設の点についてもそうでございますが、先ほども御意見がありましたとおりに、行政機構の検討という意味だと思いますが、いまのままで身体障害者の予備的訓練を私のほうでやるか、それから職業訓練所は労働省でやってもらったらいいのか、あるいは設備の冗費を省くという点においてもそのまま私のほうを拡大していったらいいのか、この点は非常に検討をすべきだと思いますので、労働省のほうと率直に繩張り争いではなくて相談していきたいと考えております。  なお、この際、一言御報告申し上げますが、先ほどの震災の御報告の中で、この地域に身体障害者の施設がございますので非常に心配しておりましたが、函館の光明寮は幸いに適切な指導によって全部グランドに避難を終わったところで、いろいろなあれがあったので全員無事だったとのことでございます。
  151. 小平芳平

    小平芳平君 その点はよくわかりましたが、身体障害者の人で労働省の訓練所を出られた方はどのくらいありますか、最近の四十二年度で。そして、その人の就職の状況はどうですか。
  152. 和田勝美

    政府委員(和田勝美君) 昭和四十二年度の定員が千五百二十人でございまして、在所率が九二%でございますから、千四百何人でございます。就職率は約九〇%でございます。なお、それは、雇用労働者となられた方々が九〇%でございまして、自分で自家営業をおやりになる方はそれ以外にございます。大体それぞれ職業についていらっしゃると、こういうことで御理解いただければけっこうだと思います。
  153. 小平芳平

    小平芳平君 この点は大臣からお話がありましたので、単なる縄張り争い云々というような問題じゃなくして、実際職業訓練は共通する面があるわけですね。それが、職業紹介とか、あるいは失業保険とか、同じ労働省でもそういう関係だと、とても質的に違った仕事になりますが、そうした問題は検討すべき、研究すべき問題だと思います。これは大臣がおっしゃるとおりです。  次に、これから先のことについてですが、厚生省として、身体障害者福祉審議会から答申があったわけですが、この答申の中で一つ、二つ、三つくらいだんだん実現してきている面もあるんですが、まだ相当数が残っているように思います。それで、これはまあ一挙にすぐことしとか来年ということができない場合は、これから実施していくという年次計画なり、四十四年度ではさしあたって何を拡大し要求していかれる予定か。それからまた、年次計画ですから、したがって、今度は、施設なども、これはまあ重症者施設もそうですが、何年にわたって――普通は、道路にしても、五カ年計画とか各省もやっているわけです。大体まあ途中ですぐ狂ってしまうですが、各省でやっているですが、社会保障関係の年次計画、それも、いまお尋ねしている点は身体障害者福祉関係の年次計画、そういう点についての総括的なお考えはいかがでしょうか。
  154. 今村譲

    政府委員(今村譲君) 一昨年の十一月の身体障害者の審議会の答申、これは実はここに要約しましたもので三十二項目ほどございます。そのうちには、現在やっているものも単に見本的なものにすぎないので、本格的にやれ、量的にふやせというようなものも相当ございますけれども、過去二年間におきまして昨年も身障法の改正をお願いをしたわけでございますけれども、過去二年間で新規として取り入れましたものを先に申し上げますと、内部障害者の取り入れ、家庭奉仕員制度の創設、それから筋ジストロフィーの施設収容、それから身体障害者相談員の新設、通所制度の新設、それから結核のアフターケア、これは運用で保護施設としてやっておりましたものを身体障害者福祉法に入れまして、十分の八国庫負担という制度を確立しました。それが一つ。それから本日お願いしております社会復帰促進手当と、こういうふうなものをやっておるわけでございます。もちろん、これも、芽が出たというだけでありまして、量的にも質的にもまだまだ不十分であって、今後の問題が残るわけでございます。  今後残されております問題は、身体障害者の地域活動の振興、それからスポーツの振興、盲人用具の普及というふうな問題から、非常に大きな問題でありますけれども国の出資による保護授産工場、これはイギリスにレンプロイというのがございまして、約八十カ所くらいの工場で七千人くらいの身障者を戦傷軍人が多いのでありますけれども雇って、それで赤字収支は国で全部みるというような非常に大がかりなものがございます、これも研究はいたしておりますけれども、なかなかいますぐに踏み切るというわけにはまいりませんが、そういうふうなものとか、それからもう一つには、先ほど御指摘がありましたように、各省ばらばらではないか、要するに連絡協議体制の確立、それから先ほど大橋先生から御質問がありましたように、行政体系、福祉事務所とそれから身障の相談所、その辺が都道府県まかせで、また、かっこうだけつけておるが、実態的にはまだ不十分だというふうな問題、たくさんございます。それにつきましても、私ども、去年、ことしと法改正をお願いいたしたわけでありますが、今後も引き続いて一つ一つやっていきたい。ただ、四十四年度に何をやる、四十五年度に何をやるというところまではまだ固まっておらない、こういうふうな状況でございます。  それから施設整備の問題につきましては、やっと百六十施設で収容力は約一万人ということにこぎつけたわけでありますけれども、四十年八月の実態調査から見ますと、施設へ入れて訓練してあげたらいいなというふうなものが内部障害を入れまして四万人ということでございますので、施設としてはまだ整備不十分な状況でございます。したがって、これは、身障ばかりではありませんで、老人も、あるいは児童福祉もひっくるめまして、これは早急に長期計画というふうにして厚生省の玄関を出るというかっこうにしなければいけないと大臣から強い御指示をいただいておりますので、私どものほうとしましては早急に両局と合体して社会福祉施設の整備計画というものをつくりたいというので目下勉強中でございます。
  155. 小平芳平

    小平芳平君 これで大臣にお尋ねして終わりたいと思いますが、年次計画ですけれども、道路や住宅と違って、厚生省社会福祉行政はむずかしい点があると思うんです。それは、ただ住宅を建てる、道路をつくるようなそうした対象が物でないだけに、やはり対人間の関係であり、また、一番弱い人たちの福祉対策であり、むずかしい点はあると思いますとともに、また、いまの社会保障制度全般にわたっての体制が、ある面では相当進んでいる、ある面では薄弱である、児童手当はゼロであるというような面といい、単純にいまここでじゃ年次五カ年計画を立てようというような簡単なことにはいかないかもしれませんが、少なくとも国の経済力を裏づけとした、財政を裏づけとした一応のそうした将来の計画というものが必要だと思うのです。特に社会福祉全体として見ても、身体障害者福祉政策というものはやはり貧弱な部類ですね、立ちおくれている面の一つだと思うのです。したがって、全般にわたる社会保障制度一つの問題点でありますし、また、今後身体障害者福祉に対する年次計画、ある一つの目標、こういうものを早急に検討する段階ではないかと思います。といいますのは、身体障害者福祉について、世論の支持といいますか盛り上がりというものも現状において高まっているということも見のがせないと思います。したがって、そういう点についても考慮されるべき時期ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  156. 園田直

    国務大臣(園田直君) 社会保障制度の体系的な計画というものは、すでに命じてありまして、事務当局でやっておりますが、これはややおくれまするから、やはり予算折衝の前までにこれを終わるように急ぎたいと考えております。なお、また、近ごろ、各行政の第一線である各県の知事さん方と、政党は違いますが、会って聞いてみますと、大体の意見というものは、公共投資から社会保障への投資へというふうな意見が非常に強いのでございます。なお、また、世論の高まりもおかげさまで高まってまいりました。各位の御協力によって今年度は社会保障制度というものがいかに大事かということが浮き彫りされたと考えております。したがいまして、今度の予算折衝は、去年は、重点と申しましても、率直に言うと、単にいままでの予算にふやし方を厚くふやしたところを重点と考えただけであって、したがって、実際には努力といいましても何もやってないじゃないかというお叱りも受ける結果になっていますから、計画に基づきまして、その計画のもとに――私は、今国会に各位からいただきました御意見、それに対する私の答弁を、事務当局で総括して整理さしております。それを軸にして計画をつくりまして、ただいまのような御意見方向で財政的の裏づけを考えながら明年度の計画なり折衝を進めたい、こう考えております。     ―――――――――――――
  157. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) この際、委員の異動について御報告いたします。  本日、佐野芳雄君、佐田一郎君、植木光教君及び玉置和郎君が委員を辞任され、その補欠として秋山長造君、青田源太郎君、宮崎正雄君及び田村賢作君が選任されました。     ―――――――――――――
  158. 秋山長造

    秋山長造君 このいただいた資料の一五ページのところで二、三点お尋ねしますが、すでに今度の福岡の施設を合わせて五カ所できるわけですが、この規模は大体どこも同じですか。
  159. 今村譲

    政府委員(今村譲君) これは大体規模は同じで、定員が二百十名で、東京光明寮というのは、これは一番歴史の古い大きいものでございますが、ちょうど三音名ということでございます。
  160. 秋山長造

    秋山長造君 東京の光明寮ができて二十年になりますね。この二十年間に、いままであった四カ所、まあ今度で五カ所になるわけですが、これらの施設を出た人の累計はどのくらいになりますか。大体のことはわかるんですがね、ざっとした数字は。
  161. 今村譲

    政府委員(今村譲君) あんま・はりで二年、それからあんま・はり・きゅうをやりまして五年コースということでございまして、今日までにおいて三千六百五十七名、これは四十三年の三月三十一日現在ということでございます。
  162. 秋山長造

    秋山長造君 これらの人の、さっきちょっとお話が出ておりましたが、出所したあとの手当てといいますか、アフターケアといいますか、追跡調査といいますか、出た人のあとの状況をずっと調査しておられるのですか。
  163. 今村譲

    政府委員(今村譲君) これはあんま・はり・きゅうの学校的なものでございますので、その同期会とか何とかをつくって非常に仲よくやっております。その大体の計数は出ております。これで申し上げますと、先ほど申し上げましたように、三千六百五十七名のうち、あんま、マッサージ、指圧師を開業している者が一千九百七名、五二%、それから施術所に勤めておるという人が一千九十名で約三〇%、それから病院、療養所、診療所、そういうところに勤務している人方、これが三百二十五人で約九%、それから盲学校の先生をやっている人が三十九名で一%、はっきりしないその他全部というのが二百九十六名、約三百名、八%、こういうことでございます。
  164. 秋山長造

    秋山長造君 そのはっきり開業しているとか、勤めているという人は、まあまあでいいぐあいにやっておられるのですからけっこうなんですが、その他であなたの調査の網に全然かかってこぬというのは実態はどういうことになっておるのですか。その三百人の人の行くえというものはどうなっているのですか。
  165. 今村譲

    政府委員(今村譲君) それは、申しわけありませんが、その他の中身をとっておりませんが、病気や何かで仕事につけない、あるいはつかなくてもいいというような人、あるいは、あんま、はり、きゅうをやめまして、別のたとえば小さい店屋を持っているというふうな人とか、いろいろ雑多におると思います。これも、現況全部を洗いますとわかると思います。
  166. 秋山長造

    秋山長造君 それにしても、この下の表で二十三万四千の中で二十年間にあなたのほうで手がけられたのが三千六百人ですから、まあ非常に微々たるもので、先ほどのお話のように、計画的にさらに拡充していかれるおつもりだろうし、、ぜひそうしていただかなければいかぬわけですが、これはどうですか、その視覚障害者の数というのは、ここには四十年の調査だけが出ているのですけれども、年次的に見ますと、減っているのですか、ふえているのですか。
  167. 今村譲

    政府委員(今村譲君) 視覚障害全般を見ますと、先天性というのが約一〇%ぐらいございまして、二万四千人ぐらいでありますけれども、それはパーセンテージそのものはほとんど変わらない。したがって、人口増がありますだけに若干ふえてくるというふうなことであります。それから九〇%の人方については、その後の中途失明ということでございます。それが二十一万人ぐらいおります。こういうふうな数字になりますが、これは五年ごとにやっておりますが三十年十月には視覚障害が十七万九千人、それから三十五年に二十万二千人、四十年に二十三万四千人ということで、ある程度若干の増加がございます。しかし、これは人口増もありますので、比率から見ますと少しずつふえているような気がいたしますが、それほど急激な増減というものはなさそうな気がいたします。
  168. 秋山長造

    秋山長造君 もう一つ身体障害者福祉法の資料の一八ページに身体障害者の表がありますが、この表を見ますと、視覚障害者の場合は、聴覚あるいは肢体不自由者の場合に比べて、成人に対して児童の障害者は非常に少ないのですね。この関係から類推しますと、先天性の視覚障害者というのは将来相当減るのじゃないか、少なくとも先天性のものが非常に減るのではないかという感じがするのですが、その点をどう見ておられるかということと、それからさっき先天性の障害者は年次別に見てもあまり増減がないというようなお話だったのですが、この増減がないという線は、医者はこの壁を何とか今日の近代医学によって破れぬものかどうかということですね。それから中途失明が非常に多いわけですが、中途失明というのは、けがをするとかあるいは病気をするとか、どっちかであろうと思いますが、その中途失明が、三十年が十七万九千で、四十年が二十三万四千、六万近くふえているわけですね、五万何ぼ。だから、それはまあ中途失明がそれだけふえたというふうに見なければいかぬわけですが、その中途失明の内容というのは、病気でそんなにふえたのか、あるいはけがでふえたのか。それから病気にしても、けがはまあ本人が気をつければある程度防げるわけですが、ソコヒとかなんとかというような病気で失明するという者が非常にふえるということに対しては、厚生省として何らかの対策いかんによっては中途失明という傾向を少しでも減らしていくということは不可能なことじゃないんじゃないかというような感じがするんですが、その二つについて伺いたいと思います。
  169. 今村譲

    政府委員(今村譲君) 最初申し上げました三十年が十七万九千、それから四十年が二十三万四千と申し上げましたが、これは中途失明だけじゃありませんで、先天性も含めましたいわゆる身体障害者の視力障害でございます。そのときの人口千人対比率を見ますと、三十年では千人について一四・四人、三十五年には一三・七、四十年には一五・七というので、一四から一五の間というふうなかっこうで、若干の微増はあります。そういう状況で、これは調査の技術的にも若干の影響があるかと思いますが、そういうふうなことでございます。  それからもう一つは、疾病の問題につきましては、もちろん非常に治療も進んでまいりますので、それから妊娠中毒とかなんとかの対策もできておりますので、先天性失明が相当減る、それから中途失明も医学の進歩で相当減らし得る、これはまあ医学界でもそれだけの進歩はしているものと私どもは見ておりますけれども、必ずしも減っておらない。その辺の状況が、まあ人口がふえているのだから比率が同じなら人数はふえてくるというふうなことで片づけられない問題があるのではないかということで、この辺はもう少し医学界のほうともよく連絡してみないと、原因をちょっとつかまえかねておるところでございます。
  170. 園田直

    国務大臣(園田直君) ただいまの問題は、確かに角膜移植の手術ができる段階でございますから、相当減らなければならぬ。残念ながら、ことしは、これに対する協会をつくってやっておりますが、私のほうも助成金の予算は組み方はほとんどなかったような状況でございまして、これを予算が終わってから私は承りまして、明年度はぜひそうい点をやりたい。なお、また、中途失明を救い得る道は、今日では相当これに対する対策ができるはずでございますから、角膜移植をする第一にお医者さんが少のうございますから、このお医者さんの養成と、それからその費用の問題、それから中途失明の対策については、明年度は十分考えていきたいと思います。
  171. 秋山長造

    秋山長造君 いずれにしても、三十年に十七万九千だったのが、四十年に二十三万四千になっているわけですからね。しかも、児童のほうは非常に少ないわけですから、やっぱり成人のほうの失明が十年間に六万近く総数がふえているということになると思いますね。それからいろいろな医学が発達し、いろいろな技術が発達しているときに、これだけ急激にふえる人口増というものを勘案しても、それにしても相当グラフは上昇傾向だという感じがしますがね。
  172. 今村譲

    政府委員(今村譲君) これは、先生おっしゃいますように、医学的な解明が私のほうでは不十分でございますが、もう一つこういう問題がございます。身障法は二十五年に施行になりましたが、二十三年ごろに私ちょうど担当の事務官としてこの問題に取り組んでいたのですが、実態調査をやりますと、まあことばは悪いのですけれども、目が見えない、足が悪いという人を調査しますと、言わないわけです。それからいろいろな会合でも、身体障害者は、人前に出るのはいやだというので引っ込んでおるというわけです。統計調査は、たしか全部で盲人だけでも十万切っておったというふうな統計だったと思います。それで、三十年、四十年というふうにだんだん身体障害者対策というものについて別に身体障害は恥ずかしいのじゃないのだということで、基礎数字のとり方にもよりますけれども、そういうふうなものがどんどん出てきたというような問題も一つあるのじゃないかというふうに考えます。最近、身障オリンピックと称して国体のあとでやっておりますが、これに身体障害者が堂々と車いすで胸を張って何千人と出てくる。それは、終戦直後あるいは二十年代というのはなかなか人目に隠れて出てこなかったというふうなことと関連してその辺の一般の受け方の問題も影響しておるのじゃないかと思いますので、この辺はもう少し分析してみたいと思います。
  173. 秋山長造

    秋山長造君 年次計画で計画的にやっておられるわけですから、必ずしもいままである施設だけで律しられないから、何とも言えぬだろうと思いますが、視覚障害者の地域的な分布状態というような何か特徴的なものがあるかどうか、そういうことを調査されたことはないですか。
  174. 今村譲

    政府委員(今村譲君) これは調査の原票を詳細に分析いたしますと、あるいは出るかもしれませんが、手元に持っておりますのは全国の分析表だけしか持っておりませんので、追って調べまして先生方に申し上げたいと思います。
  175. 秋山長造

    秋山長造君 そうすると、このいまある施設の所在地と視覚障害者の分布状態と別に関係ないわけですか。順次ふやしていくということは……。
  176. 今村譲

    政府委員(今村譲君) これは、申し上げるのを忘れましたが、小学校、中学校、いわゆる盲学校でございますけれども、これが全国で七十三校で収容人員が一万百一人、こういうことでございます。これも各県漏れなくずっと配置ができておる、こういう状況でございますので、おそらく、私の感じでは、東京が多いとかどこが多いということではないのではないかという気がいたします。私どもは、いままでは、数をできるだけ減らすということが先決だ、これが立地配分は次だということでまいっておりまして、どの地域が重点という気持ちはいままで持っておらなかったわけであります。
  177. 秋山長造

    秋山長造君 もう一点だけ。  視覚障害者の年齢構成というのはどういうことですか。やっぱり高年齢のほうが多いんですか、どうなんですか。大体の傾向でいいです。
  178. 今村譲

    政府委員(今村譲君) これは、大勢から申しますと、一ぺん視覚障害、全盲になったら、なかなかなおりにくいということがありますので、高年齢になるほど累積していくということでございますので、たとえば二十歳から二十九歳の人が九千人、三十歳から三十九歳が一万五千人、四十歳から四十九歳が三万人というふうになっておりまして、ずっと累積してまいります。
  179. 秋山長造

    秋山長造君 そうすると、やっぱり高年齢になるほどグラフが上がっていくわけですね。
  180. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 私もちょっとお伺いしたいと思います。  まず、国立光明寮設置法の沿革について聞かせていただきたい、この法律ができたときの。
  181. 今村譲

    政府委員(今村譲君) これができましたのは、戦前は、東京にありましたのは、傷痍軍人の失明軍人寮というものが昭和十三年からずっと終戦後まで続いておった。ところが、終戦直後に傷痍軍人対策という一切の対策はやめまして、やるならば全国民対象でやらなければならないということで、昭和二十三年に身障法の制定と並行いたしまして国立光明寮設置法というものをつくって、これは軍人対策ではないということで出発したものでございます。それが、塩原、それから神戸、北海道というふうにふえてきたものでございます。
  182. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 厚生省設置法の二十五条と国立光明寮設置法との関係はどういうふうになっておりますか。将来はやっぱり厚生省設置法に含めるべきではないかと思いますが、そういう点は一体どういうふうに考えておるか。それからまた、設置法による厚生省の管轄の施設がほかにありますか、こういうことについてちょっとお知らせ願いたいと思います。こうしたものはやっぱり厚生省設置法の中に含めるべきではないか、こういうふうに思うんですが、その点はいかがですか。
  183. 今村譲

    政府委員(今村譲君) これは、本来ならば、厚生省設置法の中に含めるべきであろうというふうに私どもも思います。その当時の事情を私知っておりますものですから申し上げますと、各省設置法というものがそもそも一体何をどこまで書くべきかというようなことは各省とも手さぐり中であった時代に、しかも、一方には、先ほど申し上げましたように失明軍人寮というものが官制でできておりまして、いろいろの附属機関も全部一本の設置法に書くという体制も確立しておらなかったので、省の設置法とは別に一本つくった、こういう情勢でございまして、これと似ましたのが、若松町の東一病院の隣にあります身体障害者センターの設置法、これも軍行法を持っております。これもほとんど同時期につくられたものでございます。したがいまして、これは将来は一本に設置法の中に含まれるべきものではないか、こういうふうに思います。
  184. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 それから全体の訓練体制についてお伺いしたいと思いますが、訓練を必要としている待機者の数は七千三百と聞いておりますが、一方、受け入れ体制として、右の待機者に応ずるには、施設の定員を千三百五十人にする必要がある。ところが、現在の受け入れ体制は、今回の福岡を含めまして国立がたぶん千百四十になるのではないか。東京が三百、あとは二百十。そのほかに、民間の施設として受け入れられる定員が百。中国が五十、四国が三十、京都が二十。こういうふうになっておるわけでありますから、差し引き百ぐらいの不足定員に対する対策は一体どういうふうにされておるのか。それからまた、とりわけ施設の全くない地方、先ほど秋山先生から御質問がありましたように、東北ブロックとか裏日本ブロックあたりのほうの対策はどうするか、この点について伺っておきたい。
  185. 今村譲

    政府委員(今村譲君) 失明者の中で、この前の実態調査のときに施設に入れたほうがいいという判定の上で、本人も入りたいという希望を持っておるのが四千人おります。また、御質問のように、いま現実にありますのは、国立が福岡も含めまして五カ所一千百四十名、それから民間、公立合わせまして五カ所で二百十名、合わせまして千三百五十名、こういうことでありますので、三分の一足らずではないか、こういうことになります。私どもとしましては、国立施設でありますので、そう五十人定員、百人定員とたくさんつくるわけにもまいりませんので、将来は、各ブロックのようなかっこうの配置を考えていくと同時に、都道府県のほうにも働きかけて、まだ五つしかありませんので、そっちのほうもふやしてもらいたい、こういうふうに考えております。
  186. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 せいぜいこれは早くふやしていただきたい。京都にもありますけれどもわずか二十ですから、これは非常に数が少ないわけです。ですから、特に施設の拡充ということはうんと力を入れてもらいたい。  それから今度は盲人の職業開拓についてでありますけれども、現在、センターでは、カナタイプ、点字印刷、養豚とか養鶏、シイタケの栽培などについて試験的にやっておられるという話を聞いております。大阪のライトハウスなんかでは、旋盤とか木工とかプレスなんかも訓練いたしておるし、また、電話の交換手は盲人がやっておる、こういうことも聞いております。大阪のライトハウスは、私、実際に見せてもらっておりますが、危険防止の装置もついておりますので、なかなかよくやっておられるようでありますけれども、これもまだほんとうの、何といいますか、やったというだけであって、一つも実効はあがっていない。しかし、いい着眼でやっておられるわけですから、私は敬意を表しておるわけでありますが、こういうことに対して今後の見通しはどういうふうになっておるのか。外国なんかでは、いろいろ書物なんかで報告されておりますが、それはどうなんで、また、外国のレベルで考え日本はどうなんだ、こういうことも踏まえて将来の展望を伺っておきたいと思います。  それから盲学校の教育の中にも取り入れられるべきことだと思うわけでありますが、盲学校の教育の中にこうした職業開拓訓練の連携体制がつくられていくべきじゃないか、こういうふうに思います。こういうようなことについて、第二点として、どういうふうに将来の対策あるいは展望を持っておられるか、ちょっと伺いたい。
  187. 今村譲

    政府委員(今村譲君) 第一の点でありますけれども、率直に申し上げまして盲人は、あんま・はり・きゅうというふうな、日銭の入る、生活のすぐに安定するというふうなものがありますだけに、日本はそれにぶら下がり過ぎるのではないかというふうな感じがいたします。イギリスあたりの例を見ますと、電話交換、機械操作、組立検査というふうなもの、それからマッサージなんかはごく一部分でございます。それで、教師とか牧師、弁護士、タイピスト、速記、それから織物、編み物、ピアノの調律師とかというふうに技術的なものにどんどん進んでおるという点で、日本のその点における立ちおくれということは痛感いたしております。現に、国立の施設につきましても、あんま・はり・きゅうのいわゆる教育機関ということで能事足れりというわけではありませんけれども、ほとんどがそういうことだけにとどまっておったということで、今後、私どもとしましては、そういう教育系統のほかに、新職業開発部門というふうな組織を早急につくりまして人を入れまして研究開発をやっていきたい、こういうふうに考えます。ただ、ライトハウスでやりましたように、アメリカなどでは、科学者でもあり心理学者でもある優秀な専門の人々がいて海外盲人福祉協会のジムマーマン博士であるとか、私も二、三回会いましたが、それほどの知識を持ち、機械をどんどん改良してすぐ使えるというふうな知識を持ち、社会福祉に関連を持ち、リンクを持った人が非常に少ない。その人をどういうふうに入れるかということが今後の問題じゃないかというふうに考えます。これは、今後大いに努力したいと思います。
  188. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 その次には、聴力言語障害児の対策について少し伺ってみたいと思います。国立のものといたしましては、東京にセンターが一つあるだけで、聴覚障害児は二万五千人ぐらいもいる、十八歳以上の者を合わせますと、二十二万九千になるといわれております。ろうあ学校への就学率は七〇%であるという報告を聞いておりますから、三〇%の七千五百人の子どもは学校教育を受けていない、こういうことになるわけであります。それから言語障害児の訓練は就学年齢以前にやらないとおそきに失するといわれておるわけでありますからして、こうした教育制度といいますか、そういうものはより一そう重大な意義を持つわけであります。医者は訓練にまで手が回りませんので、STの養成計画、こういうようなものも必要になってくる、こういうことになるわけであります。これにつきましては、文部省の対策もあわせて、どういうふうにこれは組んでおられるのか。文部省もおそらくいろいろやっておられる。文部省の報告の中でも見ておりますが、まず厚生省のほうではこういうようなものに対しての対策というのは非常に大事じゃないかと思うのです。これが非常に手薄になっている。こういう点もあわせて聞いておきたいと思います。
  189. 今村譲

    政府委員(今村譲君) 御指摘のように、大きく見ますと、いろんな実態調査がありますけれども、数年前でありますか、アメリカの白亜館会議で言語障害の国際会議がありました。そのときに、総人口の〇・五%ぐらいはどこの国でもあるのではないかというような議論があったそうでありますけれども、その計算でまいりますと、日本でも四十五万ぐらいあるのじゃないか、こういうことでございます。しかし、現実には、身体障害者の身障手帳をもらうというところまで来ておりませんので、来ているのは二万八千とか三万という数字でございまして、これはおもにどもりのことでありますが、言語症障害は、聴覚、言語障害両方で二十万人というふうなかっこうであります。これにつきましては、アメリカあたりでは、二百以上の大学で言語治療養成課程というふうなのがありまして、一九六〇年の調査でありますけれども、約一万人が言語治療養成課程修了の資格者ということでありまして、障害児の三四%がそういう非常に根気のよい教育を受けておるという状況であります。ところが、日本の場合におきましては、文部省で、ろう学校が百一校、一万八千人ということで、これはそれなりのいろいろの努力をしておられるわけですけれども、そのほかに、この対象にならないような、いわゆる吃音とか、中程度以下の軽い言語障害というのが相当放置されております。それが養護学校あたりへ参る場合もありますけれども、その点の力も入れるようにしなければならぬ。国で持っておりますろうあの聴力言語障害センター、颯田先生が所長でありますけれども、ここにそういう言語障害治療のいわゆる教育研修の機関をつくりたいというふうに私ども考えております。それから文部省は文部省で直接の機関を持っておりますので、各大学のそういう部門にしかるべき先生を委託学生ということで相当数出しております。その辺、文部と組みまして、言語障害の治療対策あるいはその先生の養成ということに進んでまいりたい、こういうふうに考えております。
  190. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 同時に、今度は、盲人の勉強対策でありますが、文部省にもあとで断かなければほんとうはいけないかもしれませんが、現在、大学の教科書には点字のものがない、あるいはまた、点字を公文書の中に取り入れていないので、答案を点字で書く道がついてない。これが高等学校あるいは大学の教育につながるのに大きな壁になっているんじゃないか。ですから、こういうことからいえば、盲人の人たちの進み得るところのいろんな勉強機関に点字とかそういうためのものが大きく入れられない限り、教育の機会均等とか、あるいはまた一つは憲法違反にもなるわけでありますから、こういう観点からも、教育の問題に対してひとつ大きくここらで――もうおそきに失するくらいでありましょうけれども、大きくこれに対して取り組んでもらわなけりゃいかぬのじゃないかと思うのですが、その点を……。
  191. 今村譲

    政府委員(今村譲君) その点、実は、文部省にほとんどまかせっきりというかっこうでやっておりまして、私どもも不十分でございます。今後、文部省ともよく連絡をとりたいと思います。
  192. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 特にこれは重大な問題でありますし、要望もきついと思いますので、厚生省のほうでも相当真剣に取り組んで、こうした寮をつくられたりなんかするときには、そういうことをもう少し含めていろいろな施設を考えてもらう。あるいはまた、そういうところで教育を受けてもらうということで真剣に取り組んでもらわないといけない。文部省だけにやっておきましたのでは、そういう人たちがその文部省の学校のワクの中には入っておりにくい条件もありますから、今度何かこういうものを設置してもらうような場合には、特にそういうものを考えて、こういうものの中には必ずそういう学校もあるのだということであれば、そこらにも特に優秀なその方面の人を送って、あるいはまた大学に行ってそういうふうな講義も受けに行けるというくらいに連絡をとっていただきたい、こういうように思います。  それから盲人も含んだところの障害者に対する社会適応訓練というものを考えてまいる必要があるのではないか、特に盲人の場合はそういうことが言えると思うのでありますが、外国では、職業訓練に入る前の段階において、その生活態度あるいは心がまえを含む社会適応訓練を相当きびしくやっているというような報告を読んだことがあるのでございますが、こういうようなことで、外国では、職業訓練をする前に社会適応訓練というものに相当重きを置いているように思うのでありますが、日本では、こういうような基礎的な研究体制もないし、あるいはまた、そういうふうな受け入れ体制もないわけでありますから、こういうことに対して特に配慮してもらいたい。それからまた、指導者の養成、特に先ほど申しましたような、そういう訓練をする人の指導者はもちろんでありますけれども、こういうふうな社会適応訓練に対しても、心理学的に、あるいはまたいろいろ高いレベルで指導するような指導者も必要だと思うのでありますが、そういうふうな一貫したものがないとこうしたところの充実ははかれないと思いますので、この点を要望すると同時に、ことに今度は大臣のほうにお願いしますが、熱心にこういうようなことを考えてやってもらっているわけでありますから、こういうことを教育の面あるいはまたそういうふうないままでなおざりになっておった社会適応訓練の面、あるいはまたそういうことをする指導者、こういうことにまで発展をして、系統的な方法を考えていただきたい、そういうことに対して大臣から……。
  193. 園田直

    国務大臣(園田直君) 教育の問題については、文部省とも十分折衝して御指摘方向にいきたいと考えております。  なおまた、訓練につきましては、さらに検討して、一期、二期、三期に分けて、社会復帰のための、特に盲人及び視覚障害者には、歩行から始まって、社会のための訓練から、もう一ぺん計画等も検討していきたいと思います。
  194. 秋山長造

    秋山長造君 さっき、盲学校が全部で七十三校あって、収容人員が一万百一人だと、こうおっしゃった。これは、一八ページの視覚障害の欄の児童九千人という数字が出ている、これとはどういう関係になるのですか。
  195. 今村譲

    政府委員(今村譲君) 実は、一番痛いところを言われましたのですが、私どもは、この統計表のときに、全国の世帯調査を区分してサンプリングをするときに、子供のことだからというので親が言わなかったのか、何かのミスで、実際は九千人であるはずがないと思っておりますけれども、その集計しました結果がこうなるものですから、もっと多い思います。これは申しわけございません。
  196. 秋山長造

    秋山長造君 どうも、視覚障害の児童の数よりも盲学校の生徒の数が多いのだから、ちょっとおかしいと思う。ところが、聴覚障害のほうは、二万五千人の中でろう学校へ収容された者が一万八千人だから、これは常識的に考えてそこらかと思うけれども、そうすると、つんぼのほうは親が隠さずに言うて、めくらのほうは隠すんですか。
  197. 今村譲

    政府委員(今村譲君) 実は、この調査の場合でも、一人一人全部医師が立ち会って、いわゆる視力判定までやっておりませんので、その辺、親の欲目というやつもあったり、いろいろあるわけでございます。ただし、この九千というのは、私、自分でつくっておきながら納得できないというのはおかしゅうございますけれども、これは申しわけございません。
  198. 秋山長造

    秋山長造君 それは、日本の最高の権威ですからね、あなたのほうは。その最高権威者がつくる数字としては、どうも盲学校の生徒数はちょっとおかしいですな。まあしょうがないでしょう。  それからついでというか、こういう機会がないからちょっとお尋ねするのですけれども、視覚障害者の人口比率を国際的に比較してどうなんですか。まあ先進国、後進国、中進国、いろいろあるでしょうけれども、日本なんかと同じレベルの文明国、先進諸国と比べて、一体、人口比率というものはどの程度なんですか。大体でよろしいです、傾向を……。
  199. 今村譲

    政府委員(今村譲君) 個々のデータを分析しておりませんので……。
  200. 秋山長造

    秋山長造君 特に日本と欧米を比べて……。
  201. 今村譲

    政府委員(今村譲君) いろいろ視覚障害者の研究報告というのはありますけれども、各年次もばらばらでありまして、どうもはっきりいたしておりません。もう少し研究をさしていただきたいと思います。
  202. 秋山長造

    秋山長造君 大体のことでいいんですよ。欧米に比べて日本は多いとか、日本のほうが少ないとか、そういうことでいいんです。
  203. 今村譲

    政府委員(今村譲君) これも日本盲人福祉委員会というところでいろいろデータを集めたのでありまして、必ずしもはっきりしない点がありますけれども、日本で言えば、人口一〇万に対して二三七人。ところが、フィリピンでは人口一〇万に対して四一六人、それから韓国では二〇〇人……
  204. 秋山長造

    秋山長造君 いや、そういうところじゃなしに、欧米の……。
  205. 今村譲

    政府委員(今村譲君) それからスウェーデンが人口一〇万について七三人、フィンランドが一〇〇人、イギリスが二〇七名、それから西ドイツが七〇名というのでありますので、基準がばらばらになっているようであります。
  206. 秋山長造

    秋山長造君 アメリカ、フランスあたりは。
  207. 今村譲

    政府委員(今村譲君) 北アメリカが一九八で、イギリスと大体とんとんぐらいです。
  208. 秋山長造

    秋山長造君 そうすると、日本は文明国としては少ないほうじゃないですね。どっちかといえば多いほうですね、いまの感じから言って。これは大いに厚生省のほうでがんばってもらわないといけませんね。  もう一つ、この機会ですから、これは厚生大臣にお尋ねとそれから希望を申し上げたいのですが、近視の問題ですね。これはワクに入らぬのですけれども、おとなの近視も問題ですが、児童の近視が加速度的にふえつつあるという事態ですね。これはもちろん文部省があずかって、文部省の体育局あたりでおっかけ手当てはしておられるようですけれども、学校で年に一回学年始めに身体検査をやって、そのときにごく初歩的な検眼をやって、それでもう翌年の春まで何もせぬわけです。その一年の間に、子供の近視は、仮性近視も含めたら、ぐんぐん進む。だから、ことしの春の身体検査の検眼でたとえば視力が一・五であるからというて、一年たった来年の春の身体検査のときに一・五であるとは言えぬ。来年一年たった後には、今度は〇・一とか〇・二とかになっている子供が多いと思うんです。毎日検眼ばかりやっているわけにいかぬでしょうけれども、この事態というのは、ただ文部省の受け持ちとか厚生省の受け持ちとかいうことじゃなしに、広く国民全体の体力向上というか、保健の向上というか、そういう面から考えて私はゆゆしい問題だと思うのです。眼鏡でちょっと間に合うものですから、目が悪くなれば眼鏡をかければいいじゃないかというふうに安易に考えやすいけれども、私はそうはいかぬのじゃないかと思うんですね。児童の近視というのが非常にふえている、交通事故よりもっと急激にふえていると思うんですよ。この事態に対して、厚生大臣、何かお考えがあったら……。
  209. 園田直

    国務大臣(園田直君) 盲人、視覚障害者の調査でお叱りを受けましたが、その他の調査も十分注意をいたします。近視のほうはこれはもう日本が断然多いので、眼鏡をかけた方がここにもおられますが、これは生活環境から指導していくことでございますし、それから二番目には、いまおっしゃいましたように、検眼の際に直ちに適切な処置をすれば、児童の中にはなおる人も相当あるわけでありますから、この点は、これも文部省、総理府、私と三カ所にまたがっておりますから、一ぺん閣僚懇談会の議題に出してこれに対する具体的な検討をいたすことにいたします。
  210. 秋山長造

    秋山長造君 私は、この問題は、文教委員会でも何回となく繰り返してお尋ねもし、お願いもしてきたわけですけれども、私らが文教委員会のつど少々言ったくらいのことでは、大きな問題ですから、とても届きも何もしないのですけれども、これは厚生大臣なら厚生大臣というものが閣議あたりでこの問題を大きな問題として持ち出して、国家的な大問題、民族的な大問題として何かこう打ち出してくださったら、これはまた非常に響くと思うんですがね。これを十分研究していただいて、至急に厚生大臣としての大きな政策を打ち出していただけませんか。
  211. 園田直

    国務大臣(園田直君) この場の答弁ではなくて、必ず資料を集めまして閣議で発言をして問題を提起して、それに対する具体的な今後研究をいたします。
  212. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 いま話がありましたから、私はもう一つそこへ加えていただきたい。これは要望だけで、あと答弁は要りませんけれども、斜視というのがありますね、あれは訓練等をずっと続けてやればなおるわけです。斜視からくる弱視です。これはいまもう眠科のほうでは非常に盛んにやっておりますけれども、手数がかかる。ところが、医者が直接やらぬでも、医者が監督してやれば、そういう技能士ができればいいわけですから、そういうものの養成をやってくれということは、おそらく厚生省へどんどんと要望が来ているはずです、眠科のほうから。これも、いま秋山先生のおっしゃったように、なかなか出ていかないわけですから、そういう訓練をする者の身分確定をしてもらうということを同時にやっていただきたい、これを一つお願いしておきまして、御答弁は要りません。
  213. 園田直

    国務大臣(園田直君) 斜視の訓練のことは私も経験しておりますし、それからいまおっしゃいました近視も、年齢の関係があるかもわかりませんが、相当に訓練によって矯正もできるし、ドイツでは「あなたの近視はなおる」という本も出ていることでもありますから、これも十分研究いたします。     ―――――――――――――
  214. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 委員の異動について御報告いたします。  ただいま、丸茂重貞君が委員を辞任され、その補欠として北畠教真君が委員に選任されました。     ―――――――――――――
  215. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 他に御発言もなければ、両案に対する質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  216. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 御異議ないものと認めます。  それでは、これより両案に対する討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。――別に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  217. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 御異議ないものと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  まず、身体障害者福祉法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  218. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 全会一致と認めます。よって、本案は、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、国立光明寮設置法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  219. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 全会一致と認めます。よって、本案は、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、両案についての本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  220. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。午後六時三十分まで休憩いたします。    午後五時二十二分休憩      ―――――・―――――    午後六時五十四分開会
  221. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) これより、休憩前に引き続き、社会労働委員会を再開いたします。  ただいま本院に送付されてまいりました衆議院社会労働委員長提出の理容師法及び美容師法の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、提出者衆議院社会労働委員長代理理事橋本龍太郎君から提案理由説明を聴取いたします。橋本君。
  222. 橋本龍太郎

    衆議院議員橋本龍太郎君) ただいま議題となりました理容師法及び美容師法の一部を改正する法律案提案理由を申し述べます。  近年、わが国の消費生活水準の高まりは目ざましいものがありまして、理美容業もまた保健衛生の向上とともに高度な理論と知識とを必要とするようになってまいりました。このため、これら理美容所の経営には、相当な業務経験と知識を有する管理に当たる者を必要といたしておりますので、本案は、管理者制度を新たに設けようとするものであります。  そのおもな内容は、第一に、常時二人以上の理美容師が従事する理美容所の開設者は、その理美容所に、免許を受けた後三年以上業務に従事し、かつ、厚生大臣の定める基準に従い都道府県知事が指定した講習会の課程を修了した者を管理者として置かなければならないものとすること。そして、この管理者を、以下管理理美容師と名づけております。  第二に、管理理美容師の氏名等については届け出を要するものとすること。  第三に、経過措置として、理美容所に置かなければならない管理理美容師は、昭和四十六年十二月三十一日までは、理美容師の資格のみで足りることなどでございます。  何とぞ御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  223. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) これより質疑に入ります。御質疑のある方は、順次御発言を願います。――別に御発言もなければ、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  224. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 御異議ないものと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。――別に御意見もないようでございますので、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  225. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 御異議ないものと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  理容師法及び美容師法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  226. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 全会一致と認めます。よって、本案は、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  227. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  228. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 次に、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律案を議題といたします。  まず、政府から提案理由説明を聴取いたします。園田厚生大臣
  229. 園田直

    国務大臣(園田直君) ただいま議題となりました原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律案提案の理由を御説明申し上げます。  昭和二十年八月、広島市及び長崎市に投下された原子爆弾の被爆者につきましては、昭和三十二年に制定された原子爆弾被爆者の医療等に関する法律により、医療の給付、健康診断等を行ない、その健康の保持及び向上をはかってまいったのでありますが、原子爆弾の傷害作用の影響を受けた者の中には、身体的、精神的、経済的あるいは社会的に生活能力が劣っている者や、現に疾病に罹患しているため他の一般国民には見られない特別の支出を余儀なくされている者など、特別の状態に置かれている者が数多く見られるところであります。従って、これら特別の状態に置かれている被爆者に対する施策としては、医療の給付等の健康面に着目した対策のみでは十分ではなく、これらの被爆者に対して、その特別の需要を満たし、生活の安定をはかることが必要であると存じます。このことにつきましては、昭和三十九年に行なわれました衆参両議院の決議、その他関連法律の制定の際の附帯決議等におきましても強い要望のあったところでありまして、政府といたしましても、昭和四十年において被爆者の実態調査を実施するなど、被爆者対策の総合的な改善について慎重に検討を進めてまいったのでありますが、このほどようやくその成案を得、ここに原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律案提案することといたした次第であります。  次に、この法律案の概要について御説明申し上、げます。  第一に、現行の原子爆弾被爆者の医療等に関する法律に基づき、その負傷または疾病が原子爆弾の傷害作用に起因する旨の厚生大臣の認定を受けた者であって、その認定にかかる負傷または疾病の状態にある者に対し、月額一万円の特別手当を支給することといたしております。  第二に、特別被爆者、すなわち原子爆弾の放射線を多量に浴びたと認められる者であって、造血機能障害、肝臓機能障害その他の原子爆弾の影響との関連が想定される障害を伴う疾病にかかっている六十五歳以上の者、一定の身体上の障害がある者または母子世帯の母もしくはこれに準ずる者に対し、月額三千円の健康管理手当を支給することといたしております。  第三に、原子爆弾被爆者の医療等に関する法律に基づき、その負傷または疾病が原子爆弾の傷害作用に起因する旨の厚生大臣の認定を受けた者であって、同法による医療の給付を受けている者に対し、従来、同法により医療手当を支給していたのでありますが、これをこの法律に移行させることといたしております。  第四に、特別被爆者であって、一定の精神上または身体上の障害により介護を要する状態にあり、介護に要する費用を支出している者に対し、介護手当を支給することといたしております。  第五に、国は、特別手当、健康管理手当及び医療手当にかかる事務の処理及びその支給に要する費用を交付することとし、また、介護手当の支給に要する費用についてはその十分の八を、その事務の処理に要する費用についてはその二分の一を負担することといたしております。  以上が、この法律案を提出いたしました理由及びその概要であります。  何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  230. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) これより質疑に入ります。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  231. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 まず、第一番目に、この立法の精神と法律の名称的なことについて少しあれしたいと思うのでありますが、軍人、軍属、準軍属、公務員につきましては、国家補償の立場から援護措置がなされておるのであります。その根拠とされるところはどういうところにあるかと申しますと、国との問に特別の契約関係があったということ、その結果本人の自由意思による行動をとることができなかったということ、こういうようなことにあるのだろうと思うわけであります。ところが、一方、原爆が落とされた当時の被爆者について見ますならば、勝手に市の地域を離れることが許されなかったわけであります。同時に、また、一発の原爆投下によりまして一瞬にして全市域が壊滅したということは、戦地と同視してよいような状態にあった。こういうふうなことをかみ合わせて考えてみたならば、国家補償の立場をとる根拠が先ほどの場合とよく似かよっている、こういうふうに考えられるわけであります。政府は、原爆被害者に対しまして国家補償的な援護措置をとることにつきまして、一般の戦争犠牲者との均衡をおそれているようでありますが、全地域が戦地と同一の状態となったという事情はほかにはないのであります。また、国民感情から言いましても、原爆被爆者に対しましては特別の同情を持っているわけでありますから、この際に国家補償の見地に立った援護法に踏み切ってよいのではないか、このように私は考えるわけであります。特にいろいろこの状態を見ましても、総力、戦体制の状態、あるいはまたサンフランシスコ条約による日本国家の対米賠償請求権の放棄、あるいはまた戦後の十二年間に及んでほうってあったということ、あるいは原爆判決、あるいは両院の決議、いろいろなことを考えまして、私は、あわせてこの法の精神からして、被爆者の援護法に踏み切るべき時期ではないか、こういうように考えるわけでありますが、この点についてお考えを承っておきます。
  232. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) 今回提案いたしました原爆の特別措置法につきましての立法の根拠と申しますか、その点につきましての御指摘がございましたが、私どもは、先ほど来お話しのように、社会保障という観点から今回の措置考えているわけでございます。援護措置考えませんでした理由としては、これも御指摘の中にございましたが、国との間に雇用関係がない、あるいは、軍人、軍属の援護的な諸法規との関連からまぎらわしいというような判断に立って、原爆医療法から一歩前進をした特別措置法の立法を考えたわけでございます。
  233. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 特別措置法に踏み切ったと言うのでありますけれども、いま私が指摘したように、その関係あいまいであると言うけれども、実際問題として被爆地におった人は逃げるわけにいかなかったのであるから、一瞬にしてそういうようになってしまっておる。そういう国民的な感情もあるとすれば、もういつまでも特別措置だとか何とか言わないで、国が責任を持ってこれを援護するという援護的な援護法として踏み切るべきではないか、こういうように思うわけでありますから、局長はそんなことの経過しか言っていないが、大臣のほうでそういうことに踏み切るべきではないかと思うのですか、大臣のお考えを聞かしていただきたい。
  234. 園田直

    国務大臣(園田直君) 戦争被害者の他の面の均衡、あるいは事務的な問題もありますが、原爆というものを初めて人類の中で受けた被害者であって、これは特別な被害者である等の観点、それからその被害につきましても、子供まで及ぶのか、あるいは二世、三世まで及ぶのか、実際はまだ今後の経過を見なければわからないわけであります。したがいまして、衆参両方の決議や附帯決議等の趣旨等もございまするから、できれば理想としては御指摘のとおりであると考えまするけれども、ただいまお願いしました法律案では、ごらんのとおりに、医療面から医療を強化して援護のほうに踏み出そうと一歩を出した程度の内容のものでございますから、この際は措置法という名目を使ったものと、私は考えております。
  235. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 その点、まず医療面を強化したいということは、いま御説明のとおりでよくわかりましたが、もう一歩を進めて、今後そういうふうな方向へ進めていただくために大いに努力をしてもらいたいと思いますので、その点について聞かせていただきたい。
  236. 園田直

    国務大臣(園田直君) これは、本会議その他でも答弁いたしました審議会の問題も関連がございます。そこで、原爆医療法に基づく審議会をただいまつくっておるわけでございまするが、これは答弁いたしましたとおりその後事務当局に命じて関係各省とも積極的に検討を進めておるわけでございまするが、各関係省とも相談をして、なるべく早い時期にそちらのほうへ踏み切れるように私も考えております。
  237. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 どうかひとつその方向に早くひとつ転換をしてもらいたい、こういうふうに思います。同時に、今度は、現行の医療審議会でいまやっておるわけでありますが、これは原爆被爆者援護審議会というものに切りかえてもらいたい、こういうふうな考えのもとに質問をさしていただくわけでありますが、厚生大臣の御答弁の中に、あれは衆議院の三月十三日の予算の第三分科会でありましたか、そこらの答弁の中には、被爆者対策は医療から総合的なものへ飛躍実施にあたりまして、各方面、学識経験者の意見を聞く必要もあり、いまの医療審議会を改組したらよいか、あらためて援護の関係審議会をつくったらよいか、こういう点で十分検討をしてから相談を進めていきたいという厚生大臣の答弁もございました。あるいはまた、四月十二日の参議院本会議の中村順造議員に対しても、同じような趣旨の答弁がございました。それからまた、四十二年の七月十一日には、戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律に対する附帯決議の中でも、「原爆被爆者援護については、既に昭和三十九年衆参両院において「原爆被爆者援護強化に関する決議」がなされていることにかんがみ、政府は、すみやかに、原爆被爆者援護に関する法的措置を促進するため、関係者を含む特別の審議会を設置して、両院決議の実現をはかること。」という決議もなされているわけでありますからして、そういう観点からして、私は、いま申したように、この審議会をもう少し被爆者のほうからもいろいろ意思を反映したところの審議会のほうに一歩前進をしてもらったらどうかと考えておるわけでありますからして、ことにそういうことでなければいま審議の過程におきましてもより十分な成果をおさめられないと、こういうふうに思いまして、この点について考え方を聞かしていただきたいと思います。
  238. 園田直

    国務大臣(園田直君) 各種の決議、及び私が本会議、委員会で答弁した考え方は、いまも変わりはございません。事務当局に検討を命じまして、事務当局は関係各省と積極的に詰めるようにただいま検討中でございます。
  239. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 それから次には認定の制度の問題でありますが、これを再検討していただきたいと思って質問さしていただきたいと思います。特別手当、医療手当というものを見ますと、これは合計で一万円と五千円でありますが、これは認定をされた分になるわけでありますが、これが関連が考慮されて、特別被爆者になりますと、七つの病気が規定され、それが老齢だとか母子家庭だとか身体障害者だとかいうことを付加して三千円と、こういうふうになっておるわけでありますが、この間の認定の状態が大きな格差をつくっておる。こういうところに大きな問題があるわけでありますからして、この認定というものに対してもう少し十分再検討をしてもらって、そうしてこういう格差のないように、また、ことにこういうふうな病気、疾病が起こった場合には、非常になおりにくいような状態になるとかいろいろな特別な状態がここで起こっているわけでありまして、こういうふうな格差があとからできてきて、しかも、介護手当ということになってまいりましても、ここらの認定を受けられない人がかなりあとでほかの病気になって、たとえば血液の病気そのほかのいろいろ疾病にかかりやすいとか、かかったならばなかなかなおらない。あるいはまた、そういうふうな放射能の作用によって大きなハンディキップを受けている。これは、結局、認定された者とあとから病気になった場合にはあまり違いがない、同じような苦しい状態に置かれているという観点から考えますと、この認定基準というものを一ぺん考え直さなければならぬ時期じゃないか、こういうふうに思うわけでありますが、早急にこういうものも考え直すというような形で私どもは考えておるわけでありますが、その点はいかがでございますか。
  240. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) 認定患者の認定の方法についてのお尋ねでございますが、現在、認定いたす方法といたしましては、御承知のとおり、原爆医療法の中にございます先ほど来のお話の医療審議会で認定をいたしております。この審議会の認定は、純粋に、専門的な学者が、出てまいりました書類について医学的な検討を加えて処理をいたしております。間々この認定の方法が少しきつ過ぎるのじゃないかというふうの意見も私自身も聞くのでございますが、現実に法制定以来今日まで、九五%が申請をいたしまして認定されているわけでございます。これは必ずしもきつ過ぎるということではないと考えております。  なお、認定につきましては、これが原爆に起因しないというふうな明確な医学的な判断が出た場合にはこれを却下いたしますが、その判定の中に、何と申しますか、なかなかいまの医学的な判断では判断しかねるというふうなものの申請については、できるだけ認定するような形で処理されておるわけでございます。  なお、この認定につきましては、医学的な研究なりあるいは臨床的な経験の積み重ねによって今後いろいろ改善されていく要素も多分に持っているわけでございますけれども、ただいま申し上げましたようなことで、基準があってその基準にはまるかはまらないかということではなくて、個個の患者についての認定をいたしているわけでございます。
  241. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 いまあなたのおっしゃったように、原爆の傷害作用の起因ということで認定をして、また、それはその認定基準があって、審議会で専門の者が認定をするんだと、こういうことでありますけれども、いま私が話したように、放射能なんかに起因してそれが原子爆弾と関連が想定されるというものがいわゆる特爆になっているわけですが、こういうようなことから考えて、認定されたものと認定されていないものとには、いまも申したように、大きな差がある。こういうようなことから考えてみますと、やっぱりこれはaに近づける――初めに言ったいわゆる認定されたものがaとするならば、bのほうは放射能を受けておるということだけで特爆のものと考えますと、その差は区別がむつかしいわけであるし、あるいはまた、そこでいろんな基準によってそれが制定されたにしても、その結果から言えば、なかなかなおらない、あるいはほかの病気も併発しやすい。こういうふうな状態になってしまった病気のその状態におきましては、前の場合もこっちの場合も差がないんです。しかし、認定された場合にはそういう格差が出てきている、こういう矛盾がある、こういうものはどうしても矛盾がないようにしなければならぬわけですから、認定の基準というものを考え直して、もう少し幅を広げて、実際いま長く日にちが経過している現在では、それで困っている人のほうがむしろ苦しさが多いという場合もあるわけでありますから、そういう点について特にいま差別の根拠がないとむしろ断ずるほうが正しいのではないか。こういう意味において、認定制度というものには問題があるわけですから、そこらのことについては十分配意をして、不十分な点はさらに検討して、その範囲については研究するということも厚生大臣が前にも言っておられるわけで、現行の被爆者の認定制度は、放射線医学会の専門家等の学識経験者にもいろいろ審議会意見を聞いておるけれども、やはりこの作用が原因が不明なそういう年限が来ておる場合については、厚生大臣も、不十分な点があるならばさらに検討して、その範囲については研究してみたいという言明をしていらっしゃるのですから、どうかひとつこの認定については十分配慮してもらいたい、こういうことでございますから、大臣のほうからも配慮の方向を示していただきたい。
  242. 園田直

    国務大臣(園田直君) これは、いま申し上げましたとおり、もっぱら医学的判断によって個々に決定しているわけで、いわゆる審査の基準というものはないわけでございます。したがいまして、私のほうからも審議会のほうに出まして、ただいまの御指摘のような意見は述べて、その方向に十分検討してもらいたい。  なお、また、原爆症というものは特別にないわけでありまして、原爆における影響、それが時間の経過でどうなるか、あるいは医学的な研究も相当変わっておるはずでありますから、これについてはやはり検討するのが当然であると考えております。
  243. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 それから援護措置の対象についてちょっとお尋ねしたいと思いますが、今回の特別措置は、認定患者を中心として、現に疾病にかかっている者のうちの一部の者が対象となるだけでありまして、先ほどいろいろお話をしておりましたのでありますが、これを考えてみますと、特別措置対象者数は、厚生省の積算を見てみますと、特別手当が三千五百六十四人、医療手当が四百三十七人、健康管理手当が一万五千八百五十二人、介護手当は特定疾患を認定した患者だけが二千八百四十二人、合計二万二千六百五十九人だけと報告されております。  被爆者の中には、現に疾病でなくても、被爆のために労働力を阻害されて正常な社会生活を営むことのできないような者や、あるいは、原爆によって家族と死別してしまったために、いわゆる原爆孤老といいますか、不遇な生活を送っているような人もまだ多数あります。このような被爆者に対しましては、何ら援護措置が講ぜられていないのは不都合のように思うわけでありますが、こういうようなものも範囲を拡大して援護措置の中の対象にしてもらったらいいと思うのですが、そういう点をお伺いいたします。
  244. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) 被爆者の一〇%弱の数に今回の特別措置法の適用を受ける対象がなるわけでございますが、この対象が選定された経緯といたしましては、御承知のとおり、被爆者の健康診断から出発し、健康的に被爆による影響があって、それが陰に陽に影響しながら生活環境なりあるいは経済的な事情なりが悪い方向へ追いやられるという方々に対する健康の面、福祉の面の手当であるわけでございます。私どもも、今回の特別措置内容がこれで将来ともいいと、完全であるというふうには判断いたしておりませんが、現時点では一応被爆者に対する福祉の面の措置はこの程度でよかろうというふうな判断をいたしたわけでございます。  なお、御指摘のように、被爆者の疾病の対象を広げる、あるいは手当の額の増の問題、こういうふうなことは、将来の問題としては検討をしていきたいと、こう考えるわけでございます。
  245. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 厚生省では、生活保護世帯が受ける特別手当については一万円全額を収入として認定することとし、他方、生活保護に放射線障害者加算として五千円を加算することに考えておるということでありますが、そうでありましょうか、これについてもちょっと聞かしておいていただきたい。  そうなると、特別手当受給者については、一万円収給されるべきものが、生活保護世帯の場合は実質五千円の支給となると、こういうようなこともあり得るわけでありますし、また、健康管理手当は三千円であるから、放射線障害者加算五千円の中に入ることになってしまって、実質的には全額支給となる。これは二つの面で少しおかしいような点もあるわけでありますが、その点はどういうふうでございましょうか。  それからまた、今回の特別措置法による手当は、放射能を浴びたところのことによって特別の健康状態に置かれている認定被爆者と、特定の病気にかかっておる者の医療、健康管理に伴うところの特別の需要を満たすために支給されるものでありますわけでありますが、他方、生活保護は、一般生活需要についてその最低限を確保するものである。したがって、この二つは、もともと異なる次元の需要に対応するものであります。特別措置による手当の一部が生活保護適用上の収入に認定されて保護費から差し引かれるようなことになると、被爆者はその部分だけが一般の人に認められておる生活需要がほかの人よりは少なく見られるということになっておかしいと思いますが、そういう点はどういうものでございましょうか。  それからまた、その必要性が最も高い特別手当受給者の方が、健康管理手当受給者に比べまして不利に取り扱われることになるのでは、特別措置意義が没却されるのではないかと、こういう点も考えられますので、この点についてもお聞かせを願っておきたい。
  246. 今村譲

    政府委員(今村譲君) お答え申し上げます。  ただいまの御質問、私どもその調整に苦慮しておるところでありまして、先生御承知のように、生活保護は、一定の生活水準というものを国が保障する。いわゆる最低限度の生活というものをきめまして、その施行に条件がありまして、資力、あらゆる財産、金銭、あるいは働ける人は働くということでそれを充当し、なおかつ足らない部分を国なり県なりが生活保護法に基づいて保護費を支給する、こういうたてまえになっておりますので、特別手当につきましては、これはいろいろな意味もございますけれども、生活費にも充当される月々一万円という金が来るというふうなものでありますので、たてまえ上は収入認定はどうしてもせざるを得ないという状況でございます。ただ、問題は、この法案によりまして考えられております中に、そういう特殊な状況下にある人々がある程度栄養の問題とかあるいは医薬品の問題とかいうふうな特別な需要の部分があり得るということで、収入は認定せざるを得ないけれども、別個に放射線の障害によって特別の需要があるというふうに見まして、それの加算制度をつくりたいということでいま内部でいろいろ細目を検討しておると、こういうふうな状況でございます。それから医療手当、これは、現在までも、特別の需要であって、生活費ではないのだということで、今度は五千円で金額はだいぶ上がりましたが、これは従来どおりいわゆる生活費に充当される部分ではない、こういうふうに見ておりますので、収入認定はしない。それから健康管理手当も新設でありますが、これは医療手当と同じような性格のものである、特殊な需要に基づくものである、こういうふうにして、これも収入認定にはしない。こういうふうな方向で、特別手当に関しましては放射線障害の特別の加算制度というふうなものを今後この法の施行になりますまでに固めてまいりたい、こういうふうな気持ちでおります。
  247. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 私はいまのお話には多少疑義があるわけですが、特に「健康の保持及び向上をはかることを目的とする。」という現行の原爆医療法の目的で、被爆者の健康の保持ということに対しては、法律案による金額及び支給対象はきわめて狭くなっているわけです、いまの解釈のしかたは。それにまだ老齢だとか身体障害者とか母子世帯とか、いろいろな重い病気になった場合に限られてこれがやられておるというようなことになりますと、健康管理的なものとはならず、むしろ従来の医療手当的な性格が濃いわけでありますからして、これはそういう人たちの手当としては不十分だ。私はいろいろなことをここへ重ねて考えていくことは問題があると、こういうふうに思うわけでありますが、厚生省の予算要求額月額五千円に増額して、その対象を、六十五歳以上の特別被爆者とか、身体障害を有するところの特別被爆者とか、あるいは、母子、準母子家庭とか、いまあなたのおっしゃったように、いろいろな人が入っているわけであります。これを支給対象とする厳格なあれがありまして、もっともっと被爆者が全身的な補強、いまあなたのおっしゃったように、非常に薬を使わなければならない。こういうように、普通の者よりは、健康を管理していく上において必要なわけでありますからして、また、それが医療手当的なものと解せられるようなものであっては、もっと範囲を広く拡大しなければならない、私はこういうふうに思うわけでありますが、そこらの点で、医療手当に近いような範囲に置くということは間違いであって、もっとこの健康管理手当というものの額とそれから支給範囲を拡大せんければならぬ、こういうふうに思うわけですが、その点について大臣あたりからお考えを聞かせていただきたい。大臣もこのことについては、かなり前進したお考えもお持ちのようでありますからして、そういう観点からひとつお話しを願っておきたいと思います。
  248. 園田直

    国務大臣(園田直君) まず、特別手当の加算の問題でありますが、これはいま私と事務当局と非常に苦労をしながら検討している問題の一つでございます。と申しますのは、原爆の特別手当もそうでありますが、公害病と認定をした場合に、補償料等が支払われます。そこで、私は、生活保護に対する問題で、法律的にはわかるけれども、国民の側から立ってわからない点があるわけでありまして、それはどういうことかというと、たとえばあの水俣病の例をとりますと、会社から見舞金、補償金等が渡っているわけでございますが、天災あるいは災害、交通事故等の場合の見舞金あるいは補償料というものは生活保護費から差し引かないということで私はやったのでありますが、さらに残っておる問題が、月々に分けてやられる金はこれはやっぱり生活保護費から差し引いているわけでございます。そこで、私は、イタイイタイ病だとかあるいはその他の災害で払われる金は、これは生活の保障というよりも、むしろ健全なからだの人を不具者にした、あるいは人生をめちゃくちゃにしたと、そういう意味で一緒に払うものと月月に払うものと分かれているわけであって、これから何とか差し引かぬようにならぬかということで、事務当局は事務当局で言っておりまするのは、生活保護の法律の第一条の目的によってその体系がこわされるということを心配しているのでありまして、事務当局の言い分もよくわかるのでありますが、この点について、法律改正しなければならぬのか、あるいは法律改正はしないで何とかやる方法があるか、あるいは特別な立法をするか、こういうことを前向きでいま私と事務当局と盛んに議論をしながら検討している問題であります。したがいまして、特別手当の問題も、私は、そういう意味から言いますると、これは原爆というもので被害を受けて特別な状況に置かれた方々に対する手当であって、やはりそれを全部差し上げるのも当然であると思いまするが、いまのようなことで、特別手当の問題も健康管理手当の問題も、今年度は正直に言って財政上の折衝などのこともありまするが、将来は逐次増額をしていくなりあるいはそういう方向でやりたいものと思って検討しておるところであります。
  249. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 次は、家族介護についてちょっとお尋ねしておきたいと思いますが、自宅療養者のうちでも低所得者の人は、経済的な理由から介護者を雇うことができず、やむを得ず家族の者たちが介護に当たっておる。そのために、家族等の労働力が制約されなど、物心両面の負担が大きいわけでありますからして、このような家族介護の場合におきましても介護手当が支給される必要があろうと思うのでありますが、その点につきましてはどうなんでありましょう。
  250. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) 介護手当の問題につきましては、これを創設いたしました目的は、介護の必要があるけれども現実に身寄りがないというふうな特別被爆者の方々が、人を頼んで介護を受けると、かかった費用に対する手当を支給する。もう一点は、実際に外に出て働く必要があると。しかし、家庭に家族の中に特別被爆者の介護を必要とする者がいるために外に出られない。そのために、やむを得ず人を頼んで費用を払って外へ出て仕事をするというふうな方々に対する実支出の介護手当であります。したがいまして、家族の中でも、ただいま申し上げましたような支出の実体が整うものであれば、ケース・バイ・ケースで考えられるのじゃないかと、こういうふうに存ずるわけでございます。
  251. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 その介護の場合に、手当はもらってないわけでありますけれども、もし被爆者がいなかったなら働きに出ればそれだけ収入があるわけですから、その得られないところの収入は結局それだけ支出になってその人の生活の中からマイナスになっているわけでございますから、やはり人を頼んで払ったのと同じように、人を頼んでないけれども、たとえば女房なら女房が働きに行って生活をささえられる分だけがマイナスになるわけですから、そのことなんかは同じ生活には響くわけでありますから、そういう生活実態を見て、余裕のある人は別といたしまして、そういうような生活実態から比べて、そういう人に対しては、いまのあなたのおっしゃっているような一部たてかえてマイナスになっていると同じような形に考えるべきじゃないかと思うのですか、その点はそう考えていいですか。
  252. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) 基本的な姿勢は、ただいま申し上げましたように、例を二つ申し上げましたが、あとの場合で、実際に働きに出る必要があると。しかも、家庭に介護を要する被爆者がいるために人を頼んで外に出ているという場合に対する実支出に対する費用の負担でございますが、現実に家族が外へ出て働かなければならないけれども働くことができないというふうなことで、実際上のそういう形式と申しますか証拠が整うという、そういう段階ではこの手当の支給の対象になり得る。これは個々のケースによるものだと考えております。
  253. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 できるだけ拡大してそういうことに解釈をして、個々のケースですから、考えてもらいたいと思います。  それから今度は被爆者施設の充実強化についてちょっとお尋ねしたいと思いますが、昭和四十三年度の予算においては、原爆被爆者養護施設四カ所及び原爆被爆者特別養護施設二カ所、計六カ所の建設補助金が計上されております。  養護施設は、原爆被害者の特異性から見まして、医療設備を充実するとともに、余生を安らかに送ることのできるような慰安的な設備等も完備し、また、社会復帰等も可能になるような総合的な福祉施設とすべきであると、こういうふうに思うわけでありますが、今後、被爆者の高齢化に伴って規模の拡充については特に考えてもらわなきゃならない状態ではないかと考えますが、その点はどうなんでありましょう。  それからまた、養護施設、収容施設とは別に、被爆者に心のよりどころと申しますか、そういうふうなことを与えるとともに、心身の保養をはかるための慰安施設備として、被爆者の保養センターと申しますか、そういうふうなものの設置が必要だと、こういうふうに思うんですが、政府は保養センターを設置するようなお考えはあるのかどうか、ちょっと伺っておきたい。
  254. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) お尋ねの被爆者養護施設の拡充強化の問題についてでございますが、予算書にございますように、今回は一億三千万弱の予算を組みまして両県市に設置することにいたしたわけでございますが、この設置する趣旨は、老齢病弱者、老齢単身者――原爆孤老でございますが、あるいは小頭症、そういう生活環境上に養護を必要とする、そういう被爆者の収容、保護をするというのが目的なわけでございます。  この設置される施設につきましては、特別養護ホームという場合には、医学的な保護管理を必要とするというふうな者を対象にいたしますし、被爆者養護ホームという場合には、先ほど申し上げました原爆孤老とか小頭症とか、一応保養的な、多少収容施設的な性格を持つ、そういう施設になるわけでございますが、今回初めてこういう福祉施設を設置したわけでございまして、これの運用によりまして判断をしてまいりたい、こう考えております。
  255. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 それでは、もう一つお伺いしたいのは、沖繩在住の被爆者への適用でございますが、これにつきましても、中村順造議員からの質問に対しまして、厚生大臣のほうから、現行医療制度と同様の措置を講ずるように配慮をして本土並みにしていくんだというようなお答えを聞いたわけでありますけれども、沖繩の特殊な事情を考えてみますと、本土並みだといいましても、いま、沖繩におきましては、専門医が少なくてこちらから派遣されておるという状態でございますし、また、こういう被爆者がいろいろな治療を受けるにいたしましても、指定医療機関というものが少ない。こういうものをまず充実増設していかなかったらば、こういう被爆者が十分に治療をすることもできないようになっている。むしろ、私どもとしては、被爆者に対する専門的なお医者さんは、広島とか長崎あたりでそういうことを勉強しをおられるような医者を交流して、あるいはまた現地沖繩に派遣をして、そしてこれを十分やってもらわなければいけない。あるいはまた、沖繩の政府が発行しておりますところの被爆者手帳というものも本土に来てすぐそのまま適用できるような形に改めてもらわなければならないし、あるいはまた、健康保険制度などを向こうで見てみますと、療養費払いというか、初めにたくさんお金を出さなければならないような制度でありまして、なかなか一口に言って本土並みにするというようなことにしましても、まだそれが充実されていない。こういうようなことを考えますと、相当の上回った措置をしないと沖繩におる被爆者が本土と同じように向上したということにならぬのでありまして、そういう観点につきましても十分の配意をしていただきたいと思います。いかがでございますか、お考えを聞いておきたいと思います。
  256. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) ただいまの沖繩在住の被爆者に対する対策についてでございますが、これは、御承知のとおり、一昨年四十一年の十月に琉球政府原子爆弾被爆者に対する実施要綱を決定いたしまして、当時の医療法は本土における実施と同じような体制を沖繩でとったわけでございます。  なお、今回御審議を願っております特別措置法につきましても、現在、総理府を通じましていろいろ折衝いたしまして、予算化におきましても、実施の方法につきましても、対象につきましても、本土と全く同じような方法をとられるような体制ができたわけでございます。ただ、御指摘のように、保険制度の違いと申しますか、医療の普及の状況などとからんでまいりますと、私どもが考えておるとおりの本土の制度がそのまま沖繩に生かされておるかどうかという点については、私ども自身も心配をいたしております。これは今後十分総理府を通じ琉球政府と話し合いをして協力をしてまいりたいと考えております。  なお、年二回の専門家の本土より派遣による健康診断は、現在実施しております。  財政措置につきましても、法律的な措置につきましても、本土と同じく変わりがないような手当てがされております。
  257. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 それでは、最後に厚生大臣にお気持ちを聞いて私の質問を終わりたいと思うのでありますが、繰り返しにはなりますけれども、どうかひとつ前向きに御答弁を願いたいと思います。  この特別措置法でありますけれども、被爆者の医療等に関する法律を、厚子爆弾被爆者援護法というふうな形で、立法の趣旨を国家補償の精神を明らかに盛り込むという意味でそういうふうな援護法的な考え方に将来大いに持っていっていただきたい。と同時に、いろいろなことが決定されるところの医療審議会を、被爆者援護審議会というように、できるだけ被爆者の人たちの意見がその中に反映するような形で将来に向けていっていただきたい。こういうようなことで将来の方向を先ほどからお聞きをしましたけれども、なお一そうそういうことで近き将来にはだんだんとそういう方向に持っていっていただくということをお話を承って終わりたいと思います。
  258. 園田直

    国務大臣(園田直君) お願いしました法律案は、社会保障政策の一環として、しかも医療を少し拡大した程度で、援護と呼ぶ程度のものではありませんので、このようにお願いいたしましたが、事の本質上やはり将来はこれを援護のほうに向かって第一歩を踏み出すべきであると考えておりますので、御意見のとおりと考えております。
  259. 小平芳平

    小平芳平君 いろいろの点について質問がありましたので、私はほんの二、三質問をいたすのでありますが、初めに、特別手当と健康管理手当と医療手当と介護手当と、この性格を簡単に御説明願いたい。  それからこの該当者がおよそどのくらいあり、予算がどのくらいか。  それからついでに申し上げますと、政令になっておりますが、政令できめる所得制限はどのくらいを予定しておられるか。
  260. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) 今回の特別措置法の中に盛られております手当につきましては、第一点の特別手当でございますが、これは、認定患者に対して、約三千六百人でございますが、月一万円ということで見込んでおりまして、この手当の支給の目的といたしましては、先ほど来お話が出ましたが、原爆の被爆の直接の原因によって、特別の生活上あるいは健康上の状態が生じた、これに対する手当と申しますか、そういう特別の状態を緩和する、そういう目的内容一つであります。もう一点は、この中には、生活的な面について配慮をする。現実には、たとえば保健薬、あるいは医療を受けるために通院する費用、あるいは入退院の費用、そういったものが実際の支出になろうかと考えておりますが、そんなふうに、特別手当の内容といたしましては、精神安定、健康のための保健、それから生活費の一部というふうな考え方でございます。  それから健康管理手当につきましては、これは後ほど数字を申し上げますが、精神安定的な要素を多分に持っておりまして、従来まで措置されております原爆医療法の中の医療手当に非常に性格が似ております。原爆という特別の状態に置かれて精神的な安定を欠いている。そのために、たとえば詩を読むとかあるいは音楽を鑑賞するという、広い意味の精神安定的な、生活療養を目的とした性格を持っておると、こういうふうに考えております。  なお、医療手当につきましては、これもほぼ健康管理手当と同様でございますが、健康管理手当が、大臣の定めた特定の疾病を持っている高年齢者と、身体障害者と、それから母子世帯というふうな対象に支給されるのに対しまして、医療手当は、認定患者が医療を受けている期間支給される、こういうことになっているわけでございます。  なお、介護手当につきましては、特別被爆者の中で、入院は別といたしまして、自宅で療養をしておる、しかも介護を必要とするというふうな対象に支給されるものでございます。  人数につきましては、特別手当が三千六百人、健康管理手当が一万五千九百人、介護手当が二千九百人、医療手当につきましては、これは延べ件数で五千三百一件、応人員にしまして六百人を見込んでおります。合計いたしまして約二万三千人、これが措置法の中に盛られております手当を受ける対象のおおよその数でございます。
  261. 小平芳平

    小平芳平君 もう一つ質問は、政令でいうところの所得制限について。
  262. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) どうも失礼いたしました。  各手当の所得につきましては、従来ございます原爆医療法の中の医療手当の所得制限と同じ基準を今回の措置法の中のその他の手当についても横すべりで準用いたしたいと考えております。数字を申し上げますと、所得税の額が一万七千二百円をこえる場合、それから所得の額にいたしまして、これは年間でございますが、八十四万六千円をこえる場合、これ以下の場合には一応ただいま申し上げました諸手当が支給される、こういうことでございます。
  263. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 関連して。いまの答弁を聞いておりましても、健康管理手当はやっぱり医療手当的なものだということで、どうしてもあれを聞くような感じがするんですけれども、これは医療法の目的でいえば、健康の保持向上ということもあるわけですし、また、一面からいいましても、健康管理は、先ほどから私も申したように、いろんな範囲があるわけですが、健康管理という目的にある程度沿うようにやっぱり支給の対象とか金額というようなものに対しても考えを広げてもらわぬといかぬのじゃないかと思いますが、先ほどから答弁を聞いておりますとひっかかりますから、そこのところをもう一ぺん念を押して聞いておきたいと思います。
  264. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) 健康管理手当の創設を考えました基礎には、ただいま御指摘の医療手当というものが私どもの考慮の中にあったわけでございますが、現実に医療手当の内容を私ども考えますときには、先ほど申し上げましたように、療養の安定をはかる。どちらかと申しますと、精神的な安定をはかるというのが医療手当の目的である。したがいまして、保健薬を飲むということもあるわけでありますが、たとえば気分をやわらげるということで、レコードを鑑賞するとか、あるいは詩集を読む、あるいは折りヅルをつくるとか、従来の概念ではおそらく医療というふうな範疇には入りにくいそういう性格を持つものと考えますが、そういうふうなものも医療手当の性格としてはあった。今回は、認定患者に支給されます医療手当の概念を健康管理手当という形で範囲を広げまして、先ほど来申し上げております七つの大臣の定めた特定の疾患にかかっているもので、老人、身体障害、母子世帯というふうな対象にその支給をするということでございまして、内容につきましては、私は、医療の範囲内と必ずしも狭い意味では言いがたい、そういうものを含んでると、こう考えております。
  265. 小平芳平

    小平芳平君 何か手当が四本になることと、それからその内容が、いま大橋委員からも指摘されておるように、よくのみ込めないような内容でありますが、要するに、出発が、考え方が、手当の出るお金をしぼろうという考えでなるべく予算を少なくして名目をいろいろつけたみたいな感じもするんですけれどもね。先ほどやっぱり指摘された問題点として、生活保護を受けている方に対して差し引くということは、どうも理屈がないように思うんですね。  それからいまの所得制限にしましても、ほかの福祉年金等と違って、原爆被災者という立場において国家が補償する以外に進む先がないわけですから、こうして八十四万六千円というわりあいきびしい所得制限をかけるということも腑に落ちないわけですが、いかがですか。
  266. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) 私どもは、支出をしぶるという前提で今回の手当を設定したわけでございませんで、先ほど来申し上げますように、被爆という特別の状態に置かれている健康並びに生活上の不安をできるだけ解消したいというのが今回の法律趣旨でもございますし、従来ございます医療法の趣旨でもあるわけでございます。  なお、八十四万というふうな所得というのは、私は必ずしも低いものではないと考えます。これは多少時間のズレはございますけれども、昨年まとめました被爆者の実態調査の結果によりましても、たしか平均所得が六十万というふうな数字が出ていたかと思っております。そういう意味で、これは今後の国民所得水準とのからみもございますけれども、一応私どもが八十四万という線を出しました根拠には、昭和四十二年度の所得税を基準にして計算いたしました。
  267. 小平芳平

    小平芳平君 八十四万六千円が高いか低いかということは、こうした被爆の人たちにはそう高収入の人がいないということになるわけですよね、結局は。この八十四万六千円よりちょっと収入の多い人は、これだけのいろいろな手当を――原爆の被災を受けたという、まずそれが第一の事実ですね。その上にこういろいろな意味で手当が条件がしほられているわけですよ。それで、これだけの条件に合っている原爆被災者である方が八十四万何がしの収入があるといって、全然国家がみてやらないわけでしょう。大体、この所得制限にどのぐらいかかりますか、該当者は。
  268. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) これは、従来の原爆医療法の経験によりますと、大体二〇%強というふうな考え方を持っております。何と申しますか、控除の対象にならない割合が……
  269. 小平芳平

    小平芳平君 したがって、八割までは支給を受けるわけですね。ですから、今回はともかく、将来はもっとこれを大幅に引き上げるか、あるいは、基本的な考え方として、生活保護費から差し引くとか所得制限をかけるというこの考え方自体がどうも問題だと思うんですがね。  それから次に、厚生大臣から、いまのこうしたきびしくいろいろな条件をつけた各種手当をつくったということ、それから所得制限をし、また生活保護費から差し引くということ、こういう点についての御意見と、それからもう一つ大臣に重ねてお伺いしますが、実態調査を待って対策を考えるとしばしば大臣は言われてこられたわけですが、今回これで実態調査は終わったというわけでもないと思うんですけれども、今後の施策、今後の政策に対する考えをあわせてお伺いしたい。
  270. 園田直

    国務大臣(園田直君) 実態調査については、いろいろ御指摘、御意見があることは十分承知いたしておりますが、今般の実態調査は、各界の意見を聞き、国立予防御生研究所、広島大学附属原爆放射能医学研究所、原爆病院等がいままでに行なった調査の結果、及び関係各界の意見等も十分考慮したところでありまして、大体この法律案をお願いするのにはその目的を達したと思いますけれども、しかしなお御意見や御批判もあることでございますから、その点も十分考慮し、将来は死亡者その他の問題もありますから、さらに調査はやるべく検討したいと考えております。  なお、また、いまの諸手当の問題、所得制限の問題でありますが、これは大橋委員質問に率直に私答えましたように、社会保障政策の一環として出しましたし、しかも、財政的な関係もありまするけれども、国家補償いわゆる援護まで押し出し法律案をお願いできなかったというところにやはり所得制限その他のものが出てくるのでありますが、しかし、実態といたしまして将来はそちらの方向に押し進めていくべきものと考えておりますので、御意見は十分拝聴して今後の検討の資料にしたいと考えております。
  271. 小平芳平

    小平芳平君 それでは、最後にもう一つだけ。  いま大臣の言われた死亡者に対する援護措置がないということが一つ。これはいま大臣が将来においてと言われましたが、具体的にもう少し何らかの目標を持っておられるかどうか、これが一つです。  それからもう一つ、ちょっとこまかい問題ですが、健保特例法の患者の一部負担、これなどは、さっき申し上げたような観点からして、これも適用除外になるのが基本的な行き方じゃないかと思いますが、あわせてお答え願いたい。
  272. 園田直

    国務大臣(園田直君) ただいまも申し上げましたような理由で、ただいまお願いしました法律では社会政策の一環になっておりますので、軍人軍属の援護等とは違いまして、死なれた方及びその遺族の方に対することは考えていないわけでございます。しかしながら、これは特殊な問題でもありまする、が、今度はまた、その調査については、手帳を見るとか、あるいは、米軍が当時持ってまいりました米穀通帳等を外交ルートを通じて検討するとか、さらに調査を進めるとかということをしなければならぬと思いまするが、なかなか事務的、技術的には困難な面が多うございます。しかし、困難であるからといってやめるわけにはまいりませんから、何とか方法を検討しろと事務当局に言っておるわけでありますが、そこで、とりあえずこの法律案のもとでできますることは、葬祭料の問題があるわけでございます。この葬祭料については、議員の方からも御意見が出ておるわけでありまして、これについては総理から私並びに大蔵大臣には指示がございましたし、大蔵大臣と話しまして事務当局に検討するように命じてございます。したがいまして、今年度からは財政上無理ではございまするが、来年度は何らかの形でまず死者の方に対する一つの手として葬祭料はぜひ出したい、こういうことでただいま進めております。  健保については、事務当局から……。
  273. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) 健康保険の被保険者本人の自己負担につきまして、現在、初診料、それから薬価、それから入院の一部負担というのがあるわけでございますが、本来的に健康保険の対象者につきましては、医療給付から除かれている部分について公費で負担するというのが昨年の特例法の趣旨から出てまいった取り扱いでございます。いま申しました健保本人の初診料その他につきましては、医療の給付の中に含まれていて一部負担だというふうな技術的な事務的なたてまえから現在これが自己負担になってそのまま残っているというふうなことでございますが、参考までに申し上げますと、一カ月の薬価費用というのは百五十円ぐらいの自己負担になっております。金額が少々であるからということではございませんが、この問題につきましては、現在、医療保険の抜本改正という問題もありますし、それに関連する諸制度の再検討も行なわれるわけでございますので、その中で検討してまいりたいと、こう考えております。
  274. 秋山長造

    秋山長造君 「法律案参考資料」の最後のページに出ている表がございますね。この表に掲げられている数字と、それからさっきお答えになりました二万三千人という今度のこの法律の対象になる人数との関係をちょっと説明してください。掲げられた数字とさっきあげられた二万三千人という数字がどんな関係になるのか、どの項目に当てはまるのか、わかりやすく説明してください。
  275. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) お手元の最後の資料でございますが、一番上の表で、「被爆者数」が昭和四十一年度末現在で合計三十万一千人、その中で特別被爆者というのが二十四万五千人、それから二番目の表に「認定被爆者数の推移」の一番終わりに昭和四十一年度で四千二百四十一人という数字が出ておりますが、この二十四万五千人の中に含まれている四千二百四十一人の認定患者に対して、先ほど申し上げました医療手当及び特別手当というのを支給することになるわけでございます。  なお、三千六百人と申し上げました数字は、四千二百人に対して所得制限をかけた場合、大体二割ちょっとになりますが、そういう数字がほぼ三千六百人というふうに考えております。
  276. 秋山長造

    秋山長造君 いや、それだけでなしに、あとさらに健康管理手当を受けるのが一万五千九百人でしょう。それから介護手当を受けるのが二千九百人、こういう数字がこの表の中のどの数字の中に含まれているのかということを知りたいんです。
  277. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) 特別措置法の中のいま申し上げました特別手当及び医療手当は、御説明いたしました四千二百四十一人の中に含まれます。それから特別被爆者の中に、言いかえますと一番上の表の合計の二十四万五千人の中に、厚生大臣が特に定めた疾病というのがあるわけです。この対象の中で、老齢者、それから身体障害のある者及び母子世帯、こういうものを抜き出しまして積算いたしましたのが一万五千八百人、これが健康……
  278. 秋山長造

    秋山長造君 一万五千九百人じゃないですか。
  279. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) おおよその数字で一万五千九百人、これが健康管理手当の対象人員になる、こういうことになります。今度は、この特別被爆者二十四万五千人の中で、入院している者を除きまして、自宅にいてしかも介護の手がないというふうな対象を計算いたしまして、これが二千八百人――二千九百人というのは大ざっぱでございますが、正確には積算いたしましたのは二千八百八十二人という数字でございます、これが一応介護手当の対象という考え方でございます。
  280. 秋山長造

    秋山長造君 そうしますと、こういうように理解したらいいですか。いままでは原爆関係で国から何らかの形で手当を受けておったのは、医療手当として三下四百円ないし千七百円もらっておった少数の人、それきりだったわけですね。それが、今度は、さらに一万円の特別手当をもらう人が三千六百人ふえること、それから三千円健康管理手当をもらう一万五千九百人がふえること、それから介護手当をもらう二千九百人がふえること、それだけの人がふえる、こういうように受けとったらいいですか。
  281. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) そういう考え方でございます。
  282. 秋山長造

    秋山長造君 これはもちろん併給じゃないんでしょうね、それぞれが受ける。
  283. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) 特別手当と医療手当については合計になるわけでございます。それから自宅で療養している場合には、介護手当も認定被爆者については出る。それから健康管理手当と介護手当が重なる場合が出てまいります。
  284. 秋山長造

    秋山長造君 そこで、特別被爆者が二十四万五千人ある中で、今度の法律で救われるのが二万三千人ですね。そうすると、あとの二十二万二千人という人に対しては何もないわけですね、依然として。そういうことになりますか。
  285. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) これは、原爆医療法の中で、被爆者全員が年間二回の健康診断を受ける。これは三十万全員に対してであります。それから、疾病にかかった場合には、認定被爆者については全額公費で負担する。それからその他の特別被爆者の中で、先ほど申し上げました特定疾患を持っている者、これについては保険で支払われて、残りが公費でみられることになる――失礼いたしました。認定被爆者の四千二百人を引いた二十四万、これが疾病を持った場合には、保険でみまして、その差額については公費で負担をする。ですから、医療については自己負担がないということでございます。
  286. 秋山長造

    秋山長造君 そうすると、医療については特別被爆者全員がただでみてもらえる、俗に言えば。ただし、幾らか目に見える金をもらうのは二万三千人だけだ、こうなりますね。そうすると、あとの二十二万二千人というものは年二回の診断はただでやってもらえるが、この法律の対象にはならぬ、だからといって完全に健康体じゃない、こういう状態で残るわけですね。そこらの辺はどうですか。
  287. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) ただいま申し上げましたように、健康診断を年二回行ないまして、これによって異状が発見された場合には、医療機関に行くわけです。医療機関で手当てを受けている場合には、これを公費で、結果的には自己負担がなしに済むということでございまして、ただいまの御指摘の何らかの欠陥があるというふうな者は、私どもは一応医療の公費の対象になる、自己負担がなしで医療が受けられるというふうに考えております。
  288. 秋山長造

    秋山長造君 いや、医療が、ちょっと変調を来たした場合にはただでみてもらえる、なおしてもらえる、それはもちろんけっこうなんですが、ただそれ以上のものは何もないわけですね。たとえば、原爆を受けた人というのは、やはり非常に神経質になっていますでしょう。だから、かぜを引いて咳が出ても、ああやはりいつかのあれが出たと、こう思う。だから、そういう意味では、常に精神的な不安感というものが伴っていると思うんですよ。そうすると、健康管理手当というのは主として精神安定的な効果をねらっているわけでしょう。そこらに、一万五千九百人という精神安定的効果をねらったその数と、それから何か変調を来たした場合に医者代だけはただでやってもらえるという二十二万人という膨大な数字との間に、どうもちょっとみぞがあり過ぎるような感じを受けるのですが、これはどうですか、もうこれで打ち切るのですか。この二十二万二千人の中からも、今後どんどん健康管理手当の対象人員に拾い上げていくつもりなんですか。そこらはどうですか。
  289. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) 私どもは、そういう対象になる被爆者については、積極的にそういうふうな措置法あるいは医療法の中で処理していくような努力をしたいと考えております。
  290. 秋山長造

    秋山長造君 あなたがそうおっしゃるから、そのとおりやってもらいたいと言う以外にはないのだけれども、実際にはなかなかそうもいかぬのじゃないですか、実際の扱いになると。最初の制度の出発のときに一万五千九百人というワクがきまると、あとこのワクの中へ拾い上げてもらうということは実際問題としてはなかなかむずかしいことになるのじゃないですか。
  291. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) 現在、大部分が長崎、広島両県に片寄っているわけでございます。この両県の医療機関、あるいは原爆に対する体制というものは、私はほぼ理想に近い体制にあると考えております。そういう中で、特定疾病の取り扱いなりあるいは認定患者の申請なりというのは、ほぼ満足できる状態で処理されると思いますが、ただ、問題は、両県以外に散在する地域について、経験的に原爆愚者に対する十分なる技術を身につけていないというふうな機関に被爆者が訪れた場合、そういう方々がどういう形で処理されるか、これは今後対策を進めていく上には問題が残るわけでございますが、これにつきましても、先ほど来御質問がございましたが、できるだけそういう専門家の技術の向上ということについて努力をしてまいって格差の是正ということをはかりたい、こう考えております。
  292. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 関連して。さっき、何か差額は全部公費で負担すると言っているが、実際は、申請したものだけでなくて、いわゆる特別法による薬価のあれだとか、いままでの患者の負担というのは、全部公費でやっているのですか。何かそこのところが違いはしないかと思います。特別申請した場合だけのように思いますが。
  293. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) 健保本人の一部負担の問題でございますが、健康保険のたてまえとして給付の中に含まれるというのが、健保本人の一部負担の対象になっている薬価、初診料、そういったものでございます。それから医療給付の対象に含まれないものというのは、これはまるまる公費で負担をするということになるわけでございます。
  294. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 自己負担……。
  295. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) 健保本人の自己負担というのは、これは保険制度の中には給付の対象に入れているわけでございます。入れているけれども一部を負担をしている。(「あとに残るだろう」と呼ぶ者あり)本人については、そういう意味で、一部自己負担は残るわけであります。
  296. 秋山長造

    秋山長造君 残っているわけだ。公費になっていないわけだね。
  297. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) ちょっと説明がうまくできないのでありますが、それが……。
  298. 秋山長造

    秋山長造君 一般の患者と同じことじゃないですか。
  299. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) それで、健保の家族が被爆者で医療を受けるといいますと、たとえば八割給付とか七割給付になると、その残りの二割なり三割というのは、これは給付の対象外になる。したがって、公費負担をすると……
  300. 秋山長造

    秋山長造君 いや、家族でなくて、本人は。
  301. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) 本人については、一部自己負担ということで、本来的には給付の対象の中に入るわけであります、性格的に。
  302. 秋山長造

    秋山長造君 どうもちょっとよくわからぬですが、この二十二万二千人の人について、国保の保険証でもってみてもらいますわね。そうすると、これはただでみてもらえるわけですか。いま局長の話では、やはり七割給付という町村が多いですわね、そうすると、あとの三割というものは、どうなんですか、これは国が公費でみるものですか、本人が自己負担ということなんですか。
  303. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) 健保本人の場合には、たてまえは全額保険……
  304. 秋山長造

    秋山長造君 国保です。
  305. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) 国保の場合は、全額みられます。本人でも、残りの分については公費の対象になる、公費で負担される。ただ、健保本人については一部負担が制度上残るというわけでございます。
  306. 秋山長造

    秋山長造君 国保については全顧みる、健保については一部残る、それはまあどういうわけですか。
  307. 江間時彦

    説明員(江間時彦君) お答えいたします。  若干誤解があるかもしれませんが、要するに、あらゆる保険を通じまして、医療費は、健康保険でみてもらえない部分、これは国民健康保険を含んでですが、あらゆる保険を通じて、保険でみてもらえない部分は、全部公費負担をする、あらゆる疾病について全部公費負担をするというたてまえでございまして、ただ、問題は、健康保険制度の被保険者本人、すなわち十割給付のたてまえになっておる人、その人が、健康保険の制度上、ごくわずかではございますが、一部負担という制度がございまして、それについて、現在のところは公費負担をしておらぬ。それについて、これを公費負担の対象にしてはどうかという御質問が先ほどからございました。これにつきましては、われわれのほうは、将来検討してみたいというふうに考えておるところでございます。
  308. 秋山長造

    秋山長造君 それでわかりましたが、その点もどうもちょっとおかしい、受け取りかねるのですがね。まあそういう事実は事実としてあるとして。  それは、なんですか、つまり、去年だったかやりましたね、改正を。われわれは改悪だといって大いに反対したわけですが、あれによるのですか、薬価一部負担というのは。
  309. 江間時彦

    説明員(江間時彦君) おっしゃるとおりでございまして、十割給付の場合の話なのでございますが、われわれとしましては、十割給付の中で保険制度の仕組みとして若干の自己負担額はあったというようなたてまえから、従来はそれを公費負担の対象にしていなかったわけでございます。将来の問題としてはそれを検討してみたいと思っているところでございます。
  310. 秋山長造

    秋山長造君 そうすると、原爆の場合は別として、一般的に健康保険と国民健康保険とを比べた場合、本人の場合ですよ、従来の常識からいうと、健保のほうは、全額十割、ただ、自己負担はなしでやってもらえる。ところが、国保のほうは、範囲が広い関係もあるから、それからまた、掛け金、保険料が安い関係もあるでしょう。とにかく七割しか給付をしてもらえぬ、あとの三割は自分が負担しなくちゃいけない、こうだったわけですね。ところが、この場合には、国保のほうは一切公費でやってもらえる。逆にいままで給付率の高かった健保のほうは自己負担をしなければならない。これもちょっとへんてこな話だと思うのですが、どうですか。
  311. 江間時彦

    説明員(江間時彦君) 同じ健康保険の制度の中でも、家族については給付率がたとえば五割とか七割とかいっていろいろありますが、その場合には家族は全く自己負担のないただになります。ところが、本人の場合には、一部負担金というものがあるために、若干の自己負担が加わります。その点につきまして、われわれは、やはりおっしゃるような問題点を意識いたしております。これを今後検討してみたいと思っているわけであります。
  312. 秋山長造

    秋山長造君 今後でなしに、こういう画期的なとおっしゃっているこういう法律をつくるときにそんなものは一挙に解決できぬのですか。金の関係ですか、どういうわけですか。
  313. 江間時彦

    説明員(江間時彦君) いろいろ要素はございますが、たまたま健康保険制度の抜本改正問題も控えておる時期でございますし、われわれとしましては検討をもう一年先に延ばしたのでございます。
  314. 秋山長造

    秋山長造君 しつっこくは申しませんが、しかし、それにしても、あとの二十二万二千人の人は年二回ただでみてあげるというさっきのお話にただし書きがついてくるので、ただし何ぼか負担させるんだということになれば、別にあなた一般と変わらぬじゃないですか。特別被爆者という肩書きをもらっても、ちっともありがたいことはない。
  315. 江間時彦

    説明員(江間時彦君) おっしゃるとおり、健康保険の被保険者本人につきまして、特に若い階層などにとりましては、今度の特別措置の現金給付の対象にならない場合が多いかと思います。ただ、老齢であるとか、あるいは母子世帯であるとか、あるいは身体障害であるとか、そういうような事故のあった場合には現金給付の対象になり得るというようなことで、そういう点をわれわれは考慮したわけでございまして、現在のこのたてまえでございますと、健康なる若い被爆者には現金給付が行かない場合が多いということになろうかと思います。
  316. 秋山長造

    秋山長造君 だけれども、そんな健康なる若いなどというようなことはあとからつける形容詞であって、要するに、特別被爆者というこのワク内の人ですから、今回の法律の対象外の人で、しかも特別被爆者である二十二万二千人という人に対しては、金は本人へ渡らないまでも、少なくとも病気になった場合には全額公費でみてやるというたてまえで一貫をしなければ、ちょっとありがたみがない。羊頭を掲げて狗肉を売る話になってしまうんじゃないかと私は思うんですが、そこらの見解をぴしっと言ってください。
  317. 江間時彦

    説明員(江間時彦君) この特別措置法の基本的な考え方は、先ほど来御説明いたしましたように、社会保障制度の一環として、社会的な事故のある方について現金給付を考えるというような考え方をとりました結果、特別被爆者の中でも必ずしも現金給付の行かない人が相当多いということは事実でございます。したがいまして、医療給付だけについて考えてみました場合に、健康保険の被保険者本人がやや不利な状態になるという矛盾も起きておるわけでございます。この一部負担の問題は、額としてはそれほど大きいものでもございません。将来の問題として検討する用意がございますので、御了承いただきたいと思います。
  318. 園田直

    国務大臣(園田直君) いまの問題、私もわからず、いま詳細を聞いたところでございますが、全く事務的なことに縛られてくることになっているわけであります。と申しますのは、健保は十割負担になっておりますから、その十割負担のほかに一部の薬価を持つということになっておりますので、したがって、公費というのは十割で、あとの百五十何がしは公費負担ではないということで、国保も健保も公費で負担することになっているんだが、百何十円か公費負担の対象から漏れたわけでございます。そこで、折衝の経緯を正直に申し上げますと、これは当然おっしゃるとおりの理屈だと思いますが、金額にいたしますと約六千万から八千万の問題で、この点は次の健保のときにこの問題だけは直すということで話がついているようでございますが、正直に申し上げましたから、御了承願います。
  319. 秋山長造

    秋山長造君 大臣の御答弁で了承しました。これ以上言いません。それを早くやってください。  それから一般被爆者の五万六千六百十五人というものに対しては、これは別に何もないわけですか。
  320. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) これは、先ほど申し上げましたように、年二回の健康診断……
  321. 秋山長造

    秋山長造君 それは特別被爆者だけ……。
  322. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) いや、被爆者全員、三十万全員でございます。
  323. 秋山長造

    秋山長造君 そうしますと、いま大臣の御答弁になった問題点ですが、その点は特別被爆者も一般被爆者も変わりないわけですか、一部本人負担になるという点は。
  324. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) 一般被爆者については、保険の対象は保険で、国費の援助というのは、この対象には、医療にかかっても、保険以外にはないわけであります。
  325. 秋山長造

    秋山長造君 そうすると、特別被爆者、一般被爆者を通じて、年二回診断を受けられると。診断を受けても、特別被爆者は全額公費、一般被爆者はやっぱり自己負担が国保なら三割を自己負担をしなければならない。それだったら、年二回診断を受けられるという効用はどこにあるのですか。何か特別なところへ行ってみてもらえるというだけですか。どうなんですか。
  326. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) 社会保障という立場で被爆者の健康を管理しておる。少しことばがきつうございますが、異常がなくてもそういう健康診断の場を用意しております。できるだけそこで健康診断を受けて自分の健康に対する自信を持つということが効用だと考えております。
  327. 秋山長造

    秋山長造君 だけれども、一般被爆者には別に強制的に年二回診断するわけではないでしょう。社会保障の効用、社会保障で精神的な、それは気休めですわね、俗に言えば。一般被爆者と特別被爆者と区別をしておる理由はどこにあるのですか、また、区別したためにどういう効用があるのですかということを聞いているんです。
  328. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) 被爆者に対する一般被爆者、特別被爆者の区別のしかたは、原爆医療法の中で、爆心地から距離で計算いたしまして、特に原爆の影響があるけれども、この距離を過ぎれば被爆の影響もないだろうというふうな距離的な関係があるわけであります。それを目安にして一般被爆者、特別被爆者の区別をいたしております。ですから、逆に申し上げますと、一般被爆者は、広島、長崎、あるいはあの原爆投下の付近にはいたけれども、距離的に浴びた被爆線量はそれほど心配のないものであるというふうな判断から分けております。
  329. 秋山長造

    秋山長造君 それは一般と特別だから、特別のほうが重くて一般のほうが軽いだろうとは思うけれども、ただ爆心地からの距離だけの区別ですね。そうすると、年二回の診断をするのだということですが、特別被爆者のほうはただ、一般被爆者のほうは自己負担、こうですね。そうすると、年二回の診断はしてやるんだと言われても、別に二回でなくても、どうせ自己負担だとすれば、五回でも十回でも、全然せぬでも、全部同じことになりますね。
  330. 江間時彦

    説明員(江間時彦君) いま局長から申し上げましたように、一般と特別の差というのは、被爆の距離を基準にして分けられておるわけでございますが、一般被爆者に対する給付は、先ほど申し上げましたように、現在の状態では、年二回の健康診断、さらに希望すればあと二回まで受けられます。そうして、さらに、一般被爆者になっておりますと、たとえば健康管理手当の支給対象にきめておりますような厚生大臣の定める病気にかかりましたら、これが特別被爆者になれるというような制度もございまして、その実益はやはりいろいろあろうかと思います。
  331. 秋山長造

    秋山長造君 まあそれで一応わかったような気がします。――それはそれであまり時間をとっては申しわけないですから、その点、 いまおっしゃったのは間違いないでしょうね、はっきりしておいてください。
  332. 園田直

    国務大臣(園田直君) 一般被爆者もただなんです。(「あと戻りした」と呼ぶ者あり)
  333. 秋山長造

    秋山長造君 念を入れてもう一ぺん……。
  334. 江間時彦

    説明員(江間時彦君) 若干誤解があったようでございますが、健康診断というのは、これは無料の健康診断が受けられるということでございます。それから一般被爆者というものが特定の疾患にかかったような場合には特別被爆者になれるというようなことになっておりますので、一般被爆者の手帳を持つということも大いに実益があるということでございます。
  335. 秋山長造

    秋山長造君 どうも時間がはなはだ恐縮ですけれども、さっき最初に局長が言われたのとだんだん進んだりあと戻りしたりするので、そうすると、こう理解してよろしいか。一般被爆者は、特別な恩典ということはちょっと語弊がありますけれども、特別な恩典はないんだと。ただ、しかし、一般被爆者ということになっておけば、もし病気が再発して悪くなったというような場合に特別被爆者に入れてもらえ、さらに用すれば今度のこの法律の対象になって健康管理手当なり何なりもらえる可能性がある、見込みがあると、こう理解しておればいいですか。
  336. 園田直

    国務大臣(園田直君) それは、健康診断は、自己負担なしにただです。
  337. 秋山長造

    秋山長造君 健康診断を受けても、一般被爆者の場合には、やっぱり自己負担が……
  338. 園田直

    国務大臣(園田直君) ない……。
  339. 秋山長造

    秋山長造君 あると言ったじゃないですか。
  340. 園田直

    国務大臣(園田直君) いまのは答弁が間違っておったのでございまして、健康診断と治療を勘違いしてこちらが答えたわけでございまして、健康診断については負担がございません。
  341. 秋山長造

    秋山長造君 それでよくわかりました。私どもしろうとですからね。  それで、もう二点お尋ねしますが、(2)の「認定被爆者数の推移」の表ですが、三十七年度から三十八年度で四百人減っておりますね。それから三十八年度から三十九年度へさらに三百五十人ほど減っている。さらに、四十年度になると、十八人減っておりますね。四十一年度になると、今度逆に三十九人ふえていますね。これはどうですか。
  342. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) 年間の認定数の変動でございますが、これは診断を受けて認定患者というふうな申請があって認定された患者でありますから、結局、認定被爆者という状態がこの年にこれだけあった。もう一点は、死亡あるいは治癒したという形で差し引きが出ている、こう考えております。
  343. 秋山長造

    秋山長造君 これは四十一年度ですが、四十二年度はどういう数字になっておりますか。
  344. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) 大体前年度程度の予算を見込んでおります。
  345. 秋山長造

    秋山長造君 前々年度とは……。
  346. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) 年度の累計のところでごらんいただきますと、四千二百名程度……。
  347. 秋山長造

    秋山長造君 横ばい……。
  348. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) はい。
  349. 秋山長造

    秋山長造君 それから(3)「医療手当支給状況」の表ですが、三十五年度から三十六年度の一年にどかっと倍以上にふえている。これはおそらく原爆医療法ができた早々で、調査等が十分徹底しなかったためにこういう少ない数字が出ておったが、調査が徹底して倍にどかっとふえた、こういう事情だろうと思う。それから三十九年度から四十年度へまた三百人あまりふえていますわね。それからさらにその次には二百人足らずふえている。さっきおっしゃった数字で、今度の法律の対象になるのは、四十三年度の数字でしょうが、医療手当の支給というのが五千三百件とおっしゃったですね。そうすると、のは千四百人ほど減っていますわね、四十一年度から。これは、やっぱり千四百人ばかりこの二年間になおった、治癒したということですか。
  350. 江間時彦

    説明員(江間時彦君) この表は、ここに書いてございますように件数でございまして、件数というのは、ある患者がかかった月を一件として計算いたしております。したがいまして、非常に大ざっぱな見当といたしましては、すべての認定疾病患者がこの人数に計算されているわけではございません。すなわち、認定疾病患者が医療機関にかかる件数の状況によって多分に浮動性を持っております。最近は、どちらかというと、この件数は減少ぎみの要素もございまして、かなり浮動がございますが、来年度におきましては大体五千二百数十件ぐらいで足るであろうとわれわれは考えております。
  351. 秋山長造

    秋山長造君 そうすると、人数は大体六百人ぐらいでずっと横ばいで来ている、そうでございますか。
  352. 江間時彦

    説明員(江間時彦君) はい。
  353. 秋山長造

    秋山長造君 それから、今度のいろんな諸手当と、たとえば生活保護費だとか福祉年金だとか、こういうものは、相殺はされぬのでしょうな。
  354. 江間時彦

    説明員(江間時彦君) 生活保護との関係では、先ほど来の議論でございましたように、特別手当以外のものは生活保護の制度適用上では収入とは見ない、すなわち併給されるということであります。  それから福祉年金との関係でございますが、これはいずれも併給は可能である、併給することができるかと思います。
  355. 秋山長造

    秋山長造君 そうすると、特別手当は、生活安定的な趣旨の手当であるから、生活保護費と相殺されると、こういうことですね。
  356. 江間時彦

    説明員(江間時彦君) おっしゃるとおりだと思います。
  357. 秋山長造

    秋山長造君 それから最後にもう一点お伺いしますが、特別手当、健康管理手当、それから医療手当、この三つはもう事務費も含めて全額国が負担するわけですね。介護手当についてだけは、十分の八、事務費は半分と、こうなっているのはどういう理由ですか。
  358. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) 介護手当を創設しました経緯につきましては、主として広島、長崎の被爆地のいろいろな被爆者団体、そういう方々が、ホームヘルパーのような形で、自宅で療養していて手が足りないというふうなものを回って指導援助する、そういう制度がほしいという要望が非常に強かったので、当初、そういう指導員のようなことを考えたのでございますが、結果的には、これが実際に実支出の費用を予算化いたしまして、そういうことのために雇った人について、人を雇った場合には費用をみるということに変わりまして、本来的にはその地域のホームヘルパー的な福祉活動になじむ、そういう性格であるということから、若干地元の負担を考えたわけでございます。
  359. 秋山長造

    秋山長造君 そういう意味ですか。そうすると、介護という意味は、ただわれわれが通俗的に、まあ子供が親のめんどうをみるとか、家族が被爆者の病人の世話をするとか、そういう意味じゃないんですね。もっと厳密な、厳格な意味ですね、介護というのは。
  360. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) 先ほども申し上げましたように、介護をする必要があるという対象については、たとえば例をあげますと、中枢神経の損傷というふうなことで、手足の不自由な状態であったり、あるいは下の処理が自分ではなかなかできにくいだろう。現実に症状が進行の状態においては当然入院される患者でありますが、一応症状が軽快してきて、しかもなお介添えする人がいることが被爆者にとって非常にプラスになるというふうな対象に、現実に手当てをする人を雇った場合、頼んだ場合に、それに対する出費をみるという考え方でございます。
  361. 秋山長造

    秋山長造君 それでは、家族がたとえば大小便までとらなければ、世話をしなければならぬというような程度は、この介護に入らぬわけですか。他人を頼んだ場合でなければいかぬわけですか。
  362. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) 先ほどの大橋委員の御質問にもこの点につきましては触れたわけでございますが、現実に家族の介護ということが、形として現金の、と申しますか、支出の認定ができるというふうな状態にある場合には、ケース・バイ・ケースで処理されると思いますが、なかなか一般論で申し上げますと家族の介護ということがはたして支出の認定にたえるかどうかという問題はありますが、この点については今後運用の面で考えてまいりたいと、こう思います。
  363. 秋山長造

    秋山長造君 いずれ、具体的なことはこまかく政令でおきめになるんだろうと思いますが、原爆を受けたという人で家で寝たり起きたりしているような場合、その家族は、今度こういう法律のこういう文言があるし、やはりみな一応は申請を出されると思うんです。そういう場合に、あまりきびし過ぎては、せっかくこういう規定をつくった意味がないし、また、あまりゆる過ぎては、これはまた乱用されることになるし、そこらの実際に処理していかれる場合のかじのとりようというのは、なかなか私はむずかしい、微妙な点があると思いますが、ひとつ寛厳よろしきを得てきめてください。
  364. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) 仰せの点はよくわかりました。そういうふうなことを考えたいと思います。
  365. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 他に御発言もなければ、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  366. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。――別に御発言もないようですので、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  367. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  368. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 全会一致と認めます。よって、本案は、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
  369. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 私は、この際、ただいま可決されました原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律に対する附帯決議案を提出いたしたいと思います。  案文を朗読いたします。   政府は、次の各項について、その実現に努め   ること。  一、認定疾病被爆者の認定を行なうにあたって   は、特別被爆者に及ぼす放射能の影響を重視   して、積極的に対処すること。  二、生活保護法の適用上特別手当の収入認定を   行なうにあたっては、極力大幅な加算措置を   講ずること。  三、諸手当について、その支給対象の拡大及び   支給金額の改善に努めるとともに、介護手当   について弾力的運営に努めること。  四、健康保険等被用者保険における本人の一部   負担金について、公費負担を行なうことを検   討すること。  五、すみやかに、原爆死没者及びその遺族に関   する調査を実施するとともに、葬祭料の支給   その他の援護について検討すること。  六、原爆被爆地において旧「防空法」に基づき   防空業務に従事中死傷した者に対する施策の   推進をはかること。  七、沖繩在住被爆者に関しては、現地医療制度   の実態を考慮して、万全の措置を講ずるこ   と。  八、右各項のほか、昭和四十二年七月十一日の   本委員会の附帯決議を尊重し、被爆者のため   の施策の前進について努力すること。   右決議する。  以上でございます。  何とぞ御賛成くださいますよう、お願いいたします。
  370. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) ただいま述べられました大橋和孝君提出の附帯決議案を議題といたします。  大橋和孝君提出の附帯決議案に賛成の方は挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  371. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 全会一致と認めます。よって、大橋和孝君提出の附帯決議案は、全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
  372. 園田直

    国務大臣(園田直君) ただいま原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律案の採決にあたりまして当委員会より付せられました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重して、これが実現に一そうの努力をいたす所存でございます。
  373. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  374. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後八時五十九分散会      ―――――・―――――