○
武内五郎君 それでは
総理府に対して、まあすでに雪害の問題について数回にわたって問題を取り扱っておりまするので、問題の根本というものを十分把握されておると考えますが、私はきょうは特に雪害というものの、
災害の中の雪害という問題で、非常にそれが
法律上に、いろいろな法規や政令等になって出てまいりますると、
災害の中の雪害という問題についての考え方に問題があると思うのでありまして、今日
災害、雪害に関する
法律、雪についての
法律がいろいろある。まず第一に
災害対策基本法ができ、基本法の第二条は、
災害の定義の中にやはり豪雪の用語を用いておる。それから豪雪地帯
対策特別措置法、もちろんこれは豪雪という文字を使って、豪雪地帯の
対策の取り扱いをやろうという考え方であります。それから豪雪に際して
地方公共団体が行なうところの公共の施設の除雪事業に要する費用の
補助に関する特別措置法、これも豪雪という用語を用いて、
地方公共団体の除雪についての
助成を行なう。そのほかいろいろございますが、さらに積雪寒冷特別地域における道路交通の確保に関する特別措置法、これは積雪という文字を使っている。それから天災融資の暫定措置法、これは
降雪という文字を使っている。それから森林国営保険法、これは雪害という用語を使っておる。こういうふうにいろいろな問題に対処するための
法律がたくさんあるのです。しかし、その用語の雪というものに対する観念にまとまったものを持っていないので、いろいろなその表現が出てくるのではないかと私は考える。したがって、雪というものについての、この前佐藤
委員が雪についての
災害感がだいぶ足らぬと言って強く指摘されております。これらはやはりそのとおり問題があるわけです。幸い今年――幸いではない、これはまことに不幸な話なんでありますが、かつて雪のなかった地方にも、雪が降って豪雪だという問題が起きておる。同僚
温水君の郷里の地方なんかにも雪が降って、ミカンがだいぶ
被害を受けた、野菜が
被害を受けたということが起きております。それでかつて雪の害というものを感じないところに、今度雪の害というものを感じておる。東京においても約二、三十センチの雪が降って、交通が麻痺した、一日かなんぼ麻痺しております。そういうようなことで、ほとんど無雪地帯、雪害というものを感じなかった地方で雪害を感ずるようになっている。こういういろいろなことを考えてみますると、私は雪というものについての考え方を、雪害についての考え方を、この機会に変える必要がある。変える機会じゃないかと思う。私の考え方で言わせれば、雪の降ることそのことがすでに
災害だ。かつて私は
災害対策基本法の審議の際に、豪雪という文字についてかなり議論したことがあります。とうとう私どものほうの考え方が入らなかったが、それでも豪雪という名で入ってまずある程度がまんせざるを得なかった。この豪雪だけが私は
災害ではないと思う。雪そのものが私は
災害だと思う。私ども生れ落ちるから死ぬまで雪で苦労しておる者は、雪そのものを
災害だと考えておりますので、いまでも日本の雪に対する政策、その表現であります
法律、いろいろありますが、雪について一定したものの考え方がなかった。したがって私は
災害の中で雪害という問題、雪害の位置づけというものがきわめて薄かったと思う。そういうものを考えた中で、今回
災害の中の雪害という問題を真剣に考えてやらなければならないと思います。その点で、場合によったら
法律上の改正が必要である、あるいはまたいろいろな政令についての改正等が必要になってくるんじゃないかと思います。特に私は今日指摘したいことは、この前も
調査報告の中にもなだれの問題が入っております。このなだれというものはいろいろある。なだれが起きる原因もありますが、雪が降って間もないころには表層なだれ、軽い雪が、しかも大量の雪が非常な速度で下のほうへ滑って落ちる。これが表層なだれ。最近融雪期に入ってきてからのなだれというものは深層です。地底からなだれがやってきて非常に危険なんです。少々の建物なんかというものは、吹っ飛んでしまう。そういうなだれがこれから起きる。私はそういうなだれがこれから起きることを予想しつつ
総理府や、あるいはまた私は特に今回そのなだれの
災害を受けてたいへん苦しんだ小学校、中学校の学童の痛ましい犠牲の姿を見て、特に文部省等においてその問題を真剣に考えてもらわなきゃならないときだと思う。今年の二月一日に南魚沼郡の塩沢の関山部落で小学校学童が、通学の途中で三名なだれにさらわれた。そして一名は死亡しました。二名はまあ非常に体力があったのか、気力があったのか、自分ではい上がって脱出した。その翌日二月二日に十日町の名ケ山、ここの小中学校の三十六人が通学の途中なだれにあった。九人がそのなだれに巻き込まれて十二人が二十メーター下のがけ下へ押し出されてしまった。これはただ押し出されたなんといっても雪をかぶってしまう。その中でまあこれらは幸いその十日町の学童、生徒が全部助かった。自分ではい上がった者もあり、部落民の救援作業で助かったのでありますが、そういう事件が起きた。そのほか学校がつぶれた、体育館の屋根が吹っ飛んでしまったなど、いろいろななだれによる
被害が出てまいりました。そういうように危険なのでありまして、その翌日から新潟県の豪雪地帯における学校がほとんど休校になってしまった。二月一日の休校を出したのが四十六校、二月二日に四十九校、二月三日に三十七校、こういうふうに臨時休校が宣言された、そういう
状態、同時に、このなだれの危険というものは各地にあるのでありますが、かりに新潟県でも最も僻地であって最も雪の多い、全体的に多いといわれている東頸城郡を見てみると、なだれの危険があるということがある。通学路の八九%はなだれの危険にある。これはほとんど全部だと言っていい。それからふぶきで交通途絶する個所がこれも八三%、ほとんどこれも全部。そのほか地すべりが二五%の地帯がある。こういうふうに全体で雪害の痛ましい現象が出てまいります。おとなはもちろん、学童ですら学校に通うことができないという
状態が出てまいります。これは私は、これくらい不幸なことはないと思います、そういう地域において。したがって、これは山間僻地にこういう起こり方が激しいのであります。山間僻地ばかりでない、雪が降るたびに、もう平坦地においてもいろいろな
災害が起きてくる。今年、交通途絶になった部落というものは非常に多い。御
承知のとおり新潟県の古志郡という、これは全郡が全部出入りはできません。それからいま申し上げました東頸城郡の半分以上は、これも出入りができない、こういうふうな個所が至るところにあります。したがって、ここで雪が降ったことによって、出入りができるとか……私は雪そのものが降った、そのことが豪雪であろうとあるいは少い雪であろうとにかかわらず、雪そのものが私は
災害であると考えます。こういうふうなことで、
災害の中の雪という問題について、特に
災害の
責任官庁でありまする
総理府において今後、十分御研究願ってやっていただきたいと考えます。こういうことです。
そこで、今度私は、
総理府と文部省に特にいまの問題で関連いたしまして御検討を願っておかなければならぬのは、まず、特に文部省が今年の雪の問題について、今年ばかりでない、前からそうであり、今後もそうでなければならぬことでありますが、学童、生徒の通学の安全を確保するために、今日までどういう
対策をとってきたかということをお伺いしたい。まず、それを伺って、私がきょういままで申し上げた具体的な例に基づいて私は、この問題を明らかにしたいと考える。文部省の考え方それからとっているやり方をひとつお聞きしたい。