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1968-03-06 第58回国会 参議院 公職選挙法改正に関する特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年三月六日(水曜日)    午後三時三十五分開会     —————————————    委員の異動  二月十日     辞任         補欠選任      玉置 和郎君     大竹平八郎君      内田 芳郎君     塩見 俊二君      佐藤  隆君     高橋文五郎君      山本  杉君     西郷吉之助君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         柳田桃太郎君     理 事                 船田  譲君                 剱木 亨弘君                 松本 賢一君                 多田 省吾君     委 員                 青柳 秀夫君                 木内 四郎君                 小柳 牧衛君                 高橋文五郎君                 鈴木  壽君                 鈴木  力君                 野上  元君                 横川 正市君    国務大臣        自 治 大 臣  赤澤 正道君    政府委員        法務省刑事局長  川井 英良君        自治政務次官   細田 吉藏君        自治省選挙局長  降矢 敬義君    事務局側        常任委員会専門        員        鈴木  武君     —————————————   本日の会議に付した案件国会議員選挙等執行経費基準に関する法  律の一部を改正する法律案内閣送付予備審  査) ○公職選挙法改正に関する調査  (政治資金規制及び選挙活動自由化問題に  関する件)     —————————————
  2. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) ただいまから公職選挙法改正に関する特別委員会を開会いたします。  国会議員選挙等執行経費基準に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、政府から提案理由の説明を聴取いたします。赤澤自治大臣
  3. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) ただいま議題となりました国会議員選挙等執行経費基準に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及びその要旨を説明申し上げます。  この改正法案は、国会議員選挙等執行について、国が負担する経費地方公共団体に交付するものの現行基準が、実情に即さないものになりましたので、今回これに所要の改定を加えようとするものであります。すなわち、最近における公務員給与改定賃金変動旅客運賃郵便料金改正及び選挙事務執行実情等にかんがみまして、執行経費基準改正し、もって国会議員選挙等執行に遺憾のないようにしたいと存ずるものであります。  次に、この法律案による改正内容について、その概要を説明申し上げます。  第一は、最近における公務員給与改定等に伴い、超過勤務手当積算単価実情に即するよう引き上げ、投票所経費開票所経費等基準額改定しようとするものであります。  第二には、最近における賃金変動に伴い、人夫賃等単価実情に即するよう引き上げ、投票所経費開票所経費等基準額改定しようとするものであります。  第三には、投票管理者開票管理者投票立ち会い人開票立ち会い人等費用弁償額実情に即するよう引き上げようとするものであります。  第四には、旅客運賃郵便料金等改正に伴い、旅費、通信費及び燃料費積算単価実情に即するよう引き上げ、関係基準額改定しようとするものであります。  第五には、開票事務執行実情にかんがみまして、経費積算の基礎となる開票時間を延長し、関係基準額改定しようとするものであります。  以上が、国会議員選挙等執行経費基準に関する法律の一部を改正する法律案要旨であります。  何とぞ、慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  4. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 本法案に対する質疑は、これを後日に譲ることといたします。
  5. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 公職選挙法改正に関する調査議題といたします。  御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  6. 横川正市

    横川正市君 自治大臣にまず、あなたの大臣就任によって考え方が変わったのか、変わらないのかという問題を最初にお聞きしたいんですが、私どもの知るところでは、あなたが自由民主党選挙関係責任者であって、そして、さき法律として出された案件その他に対しては、相当自主的なあなた独自の考え方というものか、あるいは党の考え方か、いずれにしても、そういう考え方反対の急先鋒になられて、事実上法案取り扱いについては議会で難航したということを私ども承知をいたしておるわけですが、そういうたてまえと、それからもう一つは、第五次までの答申をめぐって、一体、この取り扱いをやる主務大臣としての考え方は、当時の考え方と、主務大臣考え方と、どういうふうに変わっているのか、変わってないのか、まず最初に所信だけお聞かせいただきたい。
  7. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 政治資金規制のしかたにはいろいろやり方があるのは、御案内のとおりです。しかしながら、今日の実情にかんがみて、残念ながら政治資金というものをきちっと規制せざるを得ない、そして国民期待にこたえるということは言うまでもないところでございます。ただ、私が去年の夏、党を代表いたしまして政府提案に対して質疑をいたしまして、よくお読みいただければわかると思いますが、決して私は反対はしていない。ただ、規制のしかたについてはいろいろ意見がありまするので、問題点を若干指摘はいたしました。しかしながら、今日私がこの法律主管大臣になっておりますので、そういう立場から申しますと、やはりすみやかに提案して、そして、これを可決していただかなければなりませんし、まあ言うまでもなく、この長い間の審議会の御苦労が実って答申にもなっておるわけでございまするので、やはり答申の線をくずさないように、しかしながら、答申まる写しではなかなか成立という点にむずかしい面もありまするので、いま与党意見を調整しておる最中でございますが、やはりできるだけ答申の線に沿うて成案を得たいと、かように考えておる次第でございます。
  8. 横川正市

    横川正市君 いろいろと自分の考え方質問したというわけですね。質問をしたということは、いわばいろいろと資金規制等についての今日的な問題で、あなたの考えはあなたの考えなりに問題点があると考えてやられたことですね。それは、質問内容はただ単に第三者的にこういうものがあるから、ああいうものがあるからと言って質問されたわけではないわけでしょう。そういうたてまえからいって、いま大臣になって成案を急いでいるという姿勢の中に、いささかも、当時の状況から判断をしたものと、今日のあなたの大臣として職務を果たそうとするものの中に矛盾がないかということをお聞きしているわけですよ。
  9. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) まあ政治家個人としていろんな考え方を持つことは自由だと思います。それから、何せ、自由民主党という政党内部でいろいろ議論をしているわけでして、御案内のとおりに、与党代表質問は言うまでもなくやはり党で一応目を通して検討してやるわけでして、それも、党員が全部了解したというわけではございませんし、いろいろな議論が御案内のとおりにあるわけでございます。それがそれぞれ新聞紙面なんかで伝えられておりまするけれども、あのときはああいう質問をいたしましたけれども、いま立場が違うわけでございまして、その点はひとつ先ほど申しました御答弁で御了承いただきたいと思います。
  10. 横川正市

    横川正市君 私どもは一般的に政治資金規正法とか一あるいは選挙の自由とかいう問題というのは、これはいわば自由民主党とかいう党内のいろいろな事情などというものよりも、もっと高度なもので、国民全体から要請されたそのものを受けて議会がどうするか、それから、その議会が受けてどうするかという前に、選挙制度審議会へ行ってその実情というものを訴えて、たび重ねて、しかも、促進しながら答申をもらう。その答申というものを受けて、いまあなたが主務大臣になって作業している。そういう一連とした関連の中で、私どもは、いわば今日の民主政治土台である選挙法あるいは政治資金規正法、こういったものを審議しようといたしているわけですけれども主務大臣姿勢が、そういう政治に対する国民の声というものを無視されて、党派心にとらわれて、自民党内部のいざこざで国民にこたえられないということになれば、これはたいへんなので、あなたは責任のある立場だから、一体、どういうふうにこの国民の声をとらえて党内を取りまとめる。党内の取りまとめというよりか、もっと適切妥当な案をつくろうとされているかというのは、これは一般的に疑問に思っているわけですよ。赤澤何がしという男は本会議でああいうことを言って自治大臣になった、一体何をやるのだろう、これが一般的な世論のわけですよ。そういう世論を受けて、さきに廃案になって、今度出されてくる法律案というのはどういう内容なんだろうか、これが一般の世論の受け方としては疑問に思っているところなんです。そういう疑問に、私ども一つ一つあと質問いたして答えていただきたいのですが、ただ、あなたの姿勢として、立場が変わったから今度はこうなりました、立場が変わったから今度はこういたしますというような、そういうことでは私はこれはちょっといただけないと思うのですよ。立場が変わる変わらないにかかわらず、あなたの選挙問題に関しての考え方というものは一貫してありますと、こういうことを私どもは明確にされたいというふうに期待をしますが、どうですか、その点については。
  11. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 総理もたびたびこの問題で質問を受けておりますが、そのことばの中にも、前々国会の苦い経験にかんがみということを言うております。やはりわれわれとしては、答申は受けたわけでございますから、やはり国民にも一つ期待もございますし、ですから、その線に沿いたいという考え方ですが、御案内のとおりに、それでは答申まる写しにすればそれでいいかというわけのものではない。やはり成立を期するためには、政党政治実情から考えまして、やはり与党側意見を取りまとめて、しかも、それが国民期待する線にまとまればけっこうでございますが、われわれといたしましては、その努力をいま重ねつつある最中でございまして、ここで私が私見を申し上げて、そういうふうに引っぱっていく、そういうことは全然考えておりませんので、そういうふうに御理解をお願いいたします。
  12. 横川正市

    横川正市君 法務省から来ているのはだれですか。
  13. 柳田桃太郎

  14. 横川正市

    横川正市君 あなたのほうの取り締まり立場から私、端的に聞きますが、今日厳存している法律、いわゆる選挙法に基づいて下部末端までの取り締まりの衝に当たっているわけです。そういう取り締まりの衝に当たる立場から考えてみて、いま自由民主党が、巷間伝わるような政治資金を集めてくるという方向については野放しである。選挙には使わせない、やらせない、行なわせない、こういう法律が厳存している。こういう立場に立って、取り締まり立場からすれば、一体、これだけ大きく集まった金というのはどうやって使われるのだろうというような疑問をお持ちになりませんかどうか。それから、そういう多額な金というのは、一体、これは使われた一つ一つを取り調べるという点について、あなたのほうでは何らかの手がかりがあるのかどうかですね。私は少なくとも、法定費用というものが厳存し、取り締まり対象としては、事前活動というものの取り締まりがあり、一連として実際については、それが期間によって区切れるわけではないわけですね。取り締まりというものは、選挙を目的として行なわれるあらゆるものについては、常時これは取り締まりというものがあるものだと思うのですね、法律が厳存する限り。ただ、それを判定することがむずかしいということだと思うのですね。ところが、自民党のほうはワクをはずして幾らでも金がもらえるように、金がもらえなければ政治活動ができないがごとくに言って、政治資金規正法については、いまもって党内調整がとれない、こういう現実があるわけです。これは具体的にあなたのほうではこういう事件が起こったからこれは白ですとか黒ですと判断することはいつもやっていることでございまして、これから出てくる法律案ですから、いやそれはどういうふうになるかきまってからということになるかもわかりませんが、私はできれば今日取り締まり法というかっこうでは、厳重な法律規定がある。ところが、その取り締まりの最も禁止しなければならぬ実質犯につながる金のほうは野放しにする、野放しにしなければ、自由民主党党内事情がまとまらない、こういう現実を迎えて、取り締まりの衝に立っている責任あるあなたとしては、その事態をどう判断されるか。私どもは、これは非常にふしぎな現象だと思っているわけなんですよ、そのでき方としてですね。しかも、実質犯につながる、最も厳罰主義で、体罰主義でいかなければならないのに、実際、金はかってに集める、法律は使っちゃならない、こういうかっこうになっているわけですが、その両者のかみ合いについて、どうお考えになっているか、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  15. 川井英良

    政府委員川井英良君) 御質問の中にも御指摘がございましたように、私の立場から現実にまだ私ども内意を受けておりません法案について、この国会の権威ある場でとやかく申し上げることはちょっと適当でないと思いますけれども、私ども公職選挙法あるいは政治資金規正法運用についてかなり実績と体験を持っておりますので、個人的にはまさに御指摘のようないろいろな意見を持つべきであるし、また、持っております。現に先般国会提案されましたこの前の規正法改正案につきましては、私いろいろな委員会に呼び出されまして、私の立場から、特に刑罰法規運用しているものの立場から、かなり具体的な意見を申し上げてまいりました。ただ、この公職選挙法という法律罰則運用と、それから政治資金規正法という法律罰則運用というものが、選挙並びに政治の実際においては、まさに御指摘のように、きわめて密接な関連があることは否定できないことだと思いますけれども、何ぶんにも、私ども立場からいうならば、一応罰則法律でございまして、それぞれ国会で定められた法案についての御趣旨をくみまして、その趣旨に沿ったような運用をしてきているというふうな実情になっておりますので、まことに申しかねますが、また出た暁において、検討の上、御意見を申し上げるということでお許しをいただきたいと、こう思います。
  16. 横川正市

    横川正市君 私は実はなぜこういう問題を提起するかというと、この選挙法という法律審議している国会が守りもできないものをつくり上げて、そうして守れないものをまことしやかに実施に移していくと。結果的に国会というものの存在といいますか、そういうものの価値を低めてしまう、そういうことを実はおそれるわけなんですよ、この選挙の法からいってみてですね。しかし、この選挙を最も毒しているのは実質犯だから、実質犯については、厳重な規制規定というものをこれはやるべきである。そういう考え方で今日までの選挙の法のいわば改正されていく道程というものを見ておりますと、どうも法律そのものをつくる姿勢というのに納得しないところがたくさんあるわけですね。たとえば今度の場合に、新聞で見ただけですから、これはどうなるかわかりませんけれども一つは、文書活動自由化の問題について答申が出ております。文書活動自由化の問題と、それから第三者言論活動自由化の問題、それから戸別訪問と、いわば形式犯を大幅に自由化して、選挙というものについての取り締まり対象というものを実質犯に集中的に向けるべきだという考え方で、実はいままで私ども公職選挙法特別委員会で対処してきました。その限りにおいては、前の長野さんのときには、大体この委員会では、私ども意見というものがそういう方向でいくことが望ましいという姿勢自治省というのはとっておったわけなんですよ、内容としては。ところが、今度のこの案を見ますと、まず、文書活動自由化については、これはどうも規制が現在のとおりある。それから第三者主催言論活動、これはだめである。戸別訪問は限定された個人に限りと、何人かですね。一体これはどういうことをこの中で言おうとしているのか。もしこの法律が違って変えられるということならば、その変わった考え方も説明していただきたいのですが、この三つのいままでの制度審議会答申内容が大幅に変わった理由というのは、どういう理由なのか、それをひとつお聞かせいただきたいと思うのです。
  17. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 大幅に変わったという御意見ですけれども答申に、お持ちでしょうけれども、そういうふうに書かれてあることは、長い間時間をかけて、いろいろな方々から御議論いただいたわけです。この審議会の構成は、御案内のとおりに、議員特別委員というので若干おりますけれども、中心は何といっても選管の代表であるとか、元警察庁長官であったとか、いろいろな学識経験者が主体でございます。戸別訪問も思い切って自由にしてしまえという御意見もありました。文書活動あるいは個人演説会あるいは第三者主催のものであれ、思い切って自由化せいという御議論もありましたけれども、また、それをやることによって、かえって選挙に金がかかったり、また、取り締まり面で残念ながらまだそこの域まで進むということは弊害もあるのじゃないかという御議論もありますし、その結果出てまいりましたのが、文書図画の頒布は、必要な合理的制限を除き、自由化をすると、こういう表現になっております。また、戸別訪問等につきましても、自由におっ放すというのでなくて、やはり時間、人数等、一定の制限を設けて——これにはいろいろな議論がありまして、あなたの党からも代表者が出ておりまして、審議会議論はよく御承知になっておるわけでございますが、こういう審議の経過というものも踏まえて、そして政党政治ですから、成立を期すために、われわれのほうで調整しておりますことは、これはひとつお認めを願わなければならぬ、結論はこの答申に沿いたいということで私たちは努力をしておるわけでございます。何も、この党にとって公平不公平、どの党にとって好都合不都合、そういうことは全然考えておりません。しかも、この公選法の改正のほうは間もなく意見調整も終えて成文化段階に入りますので、それが出てまいりました段階で、いろいろ御審議をわずらわしたいと思っております。
  18. 横川正市

    横川正市君 いま作業段階内容を実はお聞きをしているので、出てきてから審議してくれということでは、実はいままで私どもはここで審議をしてきた結果について、いままとまろうとしているから、最終的にお聞きをしているわけなんで、きのうの新聞にも出ておりますように、たとえば戸別訪問というものについての制限を部分的に解除したということと、そして、その戸別訪問を部分的に解除したということのいわゆる弊害について、これをどういうふうに論議されたか。一応その弊害については除去しながら、部分的戸別訪問を許した。ところが、文書活動の問題とか第三者の問題については、戸別訪問より以上に弊害の問題その他が論議されたのかどうか。ところが、事実上は、戸別訪問よりか弊害の面は少ないのに、なおかつ同等な取り扱いをされたのかという点については、やはりこれは取り扱いの問題としては疑問があるわけですよ、形としてはですね。だから、どちらに重点を置いて、しかも、弊害の度合いはどういうふうにはかられて、最終的には、この戸別訪問はある程度部分的に自由化し、他は今日見送る、こういうふうになったのか、その点についても、これはもう全然私どもとしてはその内容が明確ではないわけです。  それからもう一つは、政治資金規正法については、これはもういま伝えられている内容その他からいきますと、大体献金する金額についてはもう少し広げなさいとか、こういうことを言っているようです。そこで、こういう法律が、部分的に幾らか自由化をするけれども現行法のいわゆる取り締まり的な選挙法が厳存する中で、そういう金だけ集めるやつは、ワクを広げていく、その精神が実は私もわからないので、もっと厳密にいえば、いまあなたは、いろんな事情がありましたが、あるいは政党間のということを言っておりますけれども、そういういろんな事情とか政党自体体質の問題が、実は世論の攻撃にあって、選挙法改正について踏み切らざるを得なくなったということが事実なんで、逆だと思うんですよ。いまつくろうという法律は、あなたのほうの党とか、あるいは私のほうの者が加わっているかもしれない。しかし、私のほうは三党でもって改正案を出しますからね。私どものほうはそういう意見なんです、内容は。あなたのほうのいわゆる意見調整しておるものとはいささか違うんじゃないかと私は思う。そういうふうに見てみますと、一体、党がどうしなければならないかという国民世論も、あるいは、その世論を受けて考えられた答申内容を、あるいは個人的な私案を、私どもは全部これを読んで、これならばまずある程度妥当であるという私案を持っているわけですね、その答申の中に。それを一切漸進的に解決していかなけりゃいけないという体質ですね、政党体質、あるいは漸進的に解決しないと不都合があるという不都合の問題ですよね。その不都合の問題があるから、実は逆にいえば、世論盛り上がり答申を必要とした、一体どちらをとるんですかというのが、あなたの一番最初私が聞きました姿勢の問題なんです。ところが、あなたは答申を尊重しながらと言うから、私はやはり答申を尊重して、今日的な政党のいわゆる体質の中にある取り除かなければならないものは、この際、抜本的に取りはずしたらどうだろうかと、こういうふうに考えているわけです。そのことを、法律として提案される前にあなたにそれをやってもらえるのかどうかですね、このことを私どもは強く期待するから質問をしているんですよ。ただ、私どもは、赤澤代議士といういわゆる大臣にならない前の赤澤さんには不信感を持っているわけですよ、実際。大臣になられてどういう姿勢になったのかということを実は私ども明確に答えてもらいたいと言っているわけです。選挙法というのは、これは一党の利害や何かでやるべきものではないんですよ。現実民主主義土台をやるためにはどれが一番正しいか、選挙法には、正しいことが一つしかないのだから、その正しいことを私どもが見つけて世論にこたえようというのが、選挙法改正姿勢でなければならぬと思うのです。その点から、実はいまの問題を私どもとしては、ぜひこれは大臣に聞いておきたい。そうでないと不安ですよ、自民党にまかせておいたならどんなものが出てくるのか。私どもの不安をぬぐうような答弁をして、自民党の調節をやってもらいたいというように私は期待をします。
  19. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 姿勢のことを盛んにお尋ねでございますが、これは繰り返して申し上げておりまするけれども、私も、政治姿勢を正すという問題につきましては、あなた以上にあるいは深刻に考えておるかもしれない。ただ、御案内のとおりに、さっきから言いますように、政党政治でございますから、また、一方、政党政治と申しましても、この問題につきましての世論または国民期待というものもあるわけですから、これを裏切ってはいけないということは、当然責任者として始終頭を去らないで考えているところであります。しかし、法案成立を期しますためには、それぞれ手続がありまして、まず与党側として意見調整をして、そして、やっぱり国民期待する線に一応議論を求めて、具体的にいえば、政策審議会とか総務会とか、いろいろな段階を経て、政府与党の一致ということで成文を仕上げるわけでございます。そこで私は、今日の段階で、単に試案というもの、自治大臣としての意見はございますが、それをいま出しますと、せっかく党のほうでいろいろ努力しているのに、何だ自治大臣一人でやるならやってみろということになりますと非常にまずいことになりますので、いま大事な峠に差しかかっておりますので、私としては非常な苦慮をしているわけであります。その点はひとつ御了察をいただきたい。
  20. 横川正市

    横川正市君 大臣の時間はいつまでですか。
  21. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 四時半ぐらいまでにお願いしたいのですけれども
  22. 横川正市

    横川正市君 非常に大切な論議をしているときに退席だなんていうことになると困るのですね。だから、いま言っているように、私どもは、たとえば政府与党のそれと意見を調節して国会に出した法案であれば、野党側が反対してもそれはおれのほうの都合だからと言って通されてしまうということになると問題になる、実際には。少なくとも、これは答申をもらって、答申をもらったものについては、私、賛成の部分があるのだから、それをもって法律改正しようと言っているのに、答申そのものは尊重しますが、実は大切なのは政府与党意見の調節でありますというような、そんなべらぼうな意見はないですね。時間を延ばせるなら延ばしてもらいたい。どうですか、大臣、何時までいいですか。
  23. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 速記をとめて。
  24. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 速記を起こしてください。
  25. 横川正市

    横川正市君 そこで、赤澤さんにお聞きをしたいのは、政党活動の必要経費ということです。これはいわばもう生きたものですから、制限をして殺すことは、これはいけない。それから制限をしなくて野放しになっても、実は制限をしたと同じような政党活動というものがあって国民の信頼を受けない。これはいろいろとあると思うのですね、政治活動の中には。必要悪的なものとか、必要であって必要でないものとか、そういういろいろなものを判断をされていま私どもが——たとえば去年の一月に衆議院議員選挙がありました。そのときに自由民主党から届けられた政治資金、お金ですね、これを見ておりますと、額からいきますと驚くべき額なんですよ、何十億という。これは選挙法のたてまえからすれば違法な金の使い方ではないかと私どもが疑うほどの高額なものなんです。それだけの金を使わなければ今日自由民主党という政党国民の信頼にこたえる政治活動ができないということになるならば、そうすると、それはどういう金の使い方をしているのですか、実際は。これはどうでしょうか。自治大臣として、これだけのワクが必要だ、自由民主党との調節の中で実はこれだけのものは必要なんだということを言われておると思うのです。だから、そういうふうに言われた額の必要経費一体何が必要経費なのか。最近ある人は、社会党さんしっかりしなさいと言う。いま自民党は映画館で自民党のPRの映画を映しているそうですね。何分か、あるいは何十分だか知りませんけれども、私はそれを見ておりません。それから週刊誌を通じて、週刊誌の中に自由民主党という政治活動のビラが出る。それから新聞その他にもいろいろな宣伝文が出る。とても野党としては追いついていけないだけの金をあなたのほうは使っている。私は、同じ主張をするならば、公平ならば、いわゆる同じ土俵のワクの中で論議するならばいいんだけれども、あなたのほうは金を償いほうだい使い、片っ方のほうは金がないから使わないのがあたりまえ、おれのほうは金があるから使ってもいいんだという形の、いわゆる制限維持といいますか、これはいささか矛盾があるような気がするのですね、実際には。それはないもののひがみかもしれませんけれどもね。今度はたとえば、ある県で年賀状三十五万通なんというのが出まして、そうして事前活動にひっかかったというのがありますね。それから何何建設十周年記念式典というのに四千人も連れてきて、折り詰め弁当に四合びんを持たせて帰す、こういう行事も行なわれておる。また、地元からバスで無料で連れてきて東京で泊める。もう三百六十五日選挙運動をやっているという事実もあるわけなんです。一体政治活動の範囲というものはどの範囲なんで、金の必要はどうなんだということをやらないで、一方的にきちんと法定費用というものをきめるということは、これは法律をつくるたてまえからいっても矛盾だらけだという気がするのです。必要経費というものは一体何か、不必要な経費とは何か。選挙費用というものは、三百六十五日やっているうちのどこからが選挙費用なのか。これは、私は、法律をつくる場合には明確にしてもらわなければならぬ。  それからもう一つ、時間がないようですからお聞きをいたしたいのですが、選挙法関係は特別ですから、私は、体罰は法律の規定の中から取るべきだと思う。一番問題なのは、公民権の長期停止がこの罰則の中では一番大きな問題じゃないかと思う。これは公に、おまえは選挙に参加することができませんよというのを五年とか十年やられるということは、これは私は一番痛いことだと思う。何日とか、何カ月懲役だとか、そういう体罰規定ではなしに、長期公民権停止の方法をとったらどうか。これは私は近代的な選挙法とか、それにはぜひ必要なことだと思うわけなんですね。この二つ、ひとつお答えいただきたいと思うのです。
  26. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 前段にちょっと気になることをおっしゃいましたが、何も政府与党で妙なものをつくり上げて押し通そうとする気持ちはございません。ですから、あわせて世間の目もあるし、国民期待にこたえなければならぬということで苦慮しておるということを申し上げたわけであります。決してそういうふうなことは考えておりません。  あとお述べになりましたことは、全く私、同感でございまして、いまここに小柳先生おられますが、ずっと審議会にお出になりましたので、政治資金特別委員会の場でも、また選挙審議会の場でも、政治活動というものは一体何なのか、どの範囲をさすのか、それに要する必要経費は何なのか、これは政党であれ、個人であれ、それを十分議論をして明確にする。そこから税金の問題、いろいろなことも派生してくるわけでございますので、これこそ、なかなか国会ではきまらぬから、こういう審議会の場できめていただきたいと願って、いろいろ発言いたしましたけれども、そういう時間がなくて、ほとんどこういった問題には触れておられません。全く御指摘のとおりでございます。まあ、しかし、いまそういったことを申しましても、もう日暮れて道遠しの状態になっておりますので、とにかく、そういったところを踏まえて、できるだけ早く成案を得たいという努力をしているわけでございます。
  27. 横川正市

    横川正市君 もう全然、私は、結果的に効果のあらわれる姿勢というものをどうして政府がとれないのかという、非常に疑問を持つのですよ。四十年前のイギリスで、いまのように日本の政治体制と同じだったものが、いまのような政治体制に変わったのは何かというと、これはもう自治省のお役人さんだって、あなたのほうの政党の中だって、これはみな論議して知っているわけです。しかも、日本は先進国である。工業立国であって、近代国家であって、民主主義の国である。看板だけはいいけれども政治は十八世紀だと、これはだれが言ったかというと、朝海大使がアメリカから帰って、日本の政治は十八世紀だ、そういうように言われている政治体質というものをどうやったらいいかということを真剣に考える時期に来て、いま大臣の言われるようなことでは、実は私もこれは了解できない。ほんとうは、こんなものは二時間あればつくりますよ、選挙局長は。どういうふうにやれば一番いい選挙立法ができるかということは。それができないのは、今日的政治体質があるからでしょうが、ところが、体質に押されて選挙法改正ができないということでは困る。それが去年の一月の解散ですよ。それを受けて、国民世論というものを受けて、いま改正に立っているのに、命がけで自治大臣がひとつ取り組もうというのなら、自治大臣、あなたはやめたらどうですか、それだけの気概があったらば。いまは日本の政治の危機だ。民主主義の危機だ。ここにもいろいろ資料を持っておりますが、地方選挙というものは腐敗堕落の極ですよ、いまの状態では。しかも、この中には、選挙ブローカーというものは、日本の各地区においても全部存在しておりますよ。中村さんの文章、本をお読みになったでしょう。まず第一に、だれが新人になって選挙に出るか、選挙ブローカーを金で押えていくのだ、そういうことがやられている、そういう体質を少しも解決しない。これを解決しないで、一体、どういう漸進的な前進を求めるのか、私はどうも解せないわけです。いいチャンスだと思うのです。だから、佐藤さんが大骨どころか小骨一本抜かないと言ったときに、今度はできるだろうと実は期待したわけです。法律をつくるのなら、いまからでも政府委員を入れてやりなさい。二時間か三時間で法律ができますよ。そういう法律をつくって議会にかけて、あなたのほうの良識と私のほうと精力的にやって、国会で通したらいいじゃないですか。金を使わなければ選挙に当選できない代議士さんが反対しているのだったら、それはおいていったらいいじゃないですか。それくらいの考え方も持たないで選挙法というものはつくれないですよ。権力をどうするかという問題まで発展するのですよ、選挙法というやつは。だから、権力はどうなるかということを思っていれば、やっぱり権力を守るためにどう法律をつくるか、どういう金の使い方をやるか、こういうふうに出してくるのは当然なことじゃないですか。それを私どもはどうやったらいいかということを真剣に考えているときに、いま言ったような姿勢一体法律というものはできるのだろうかと思うのはあたりまえだと思うのです、実際に。  私は、刑事局長さんが来ているから、刑事局長さんにもお聞きをいたしたいと思っているのは、取り締まりの原則が出ておるわけです。たとえば、三十五万通出した郵便というものは事前活動です。この中には、私は全国区から地方区へ移りますからよろしくお願いしますと書いてある。三十五万通出した。これは本人の名前が書いてありますから、第三者がやったものだとは絶対とれません。だれが証明しますか。ところが、七十何歳の年寄りがいま事前運動として書類送検された、こういう事実がありますね。ところが、片一方のほうでは、二百枚か三百枚書いたやつは、たとえば全国区はだれです、地方区はだれですといったものは、これは事前活動をやったと、書類送検された。同じ形が出ていますよ。これが一体、今日の政治の大本を直していく取り締まりかどうかと、私たちは実にふしぎに思うのです。ふしぎな国ですよ、日本の国の法律というやつは。そういうことを私どもはどうやったら直るだろうかと、これを考えているのです。たとえば、文書関係については、金のあるものはかってなことをするかもしれぬ。金のあるものがかってなことをするのは、あなたのほうの政党じゃないですか。それをなぜ規制するだけの考え方を党として持てないのですか。そういう点をもっと考えて、私は、もう大本としては取り締まりをして、公民権がとまどいをするような選挙法はつくってもらいたくない。もう正々堂々愉快になって選挙をするというかっこうにしてもらいたいと思う。何でもない方にちょっと来いと言って自殺者を出すような、そういうべらぼうな法律は今度はやめてもらいたい。そうして全部が同じような立場に立ってやって、公正に政策が判断をされて、良い悪いが決定される、選挙をそういうふうにしてもらいたい。しかし、実質犯で物品の供与とか金銭とか、そういったもので選挙をやることは、これはもう厳重に、後退する問題ですから、取り締まってもらいたい。その二つをかみ合わせた法律をつくり、なおかつ、取り締まりの最後の判断というのは、公民権停止ということでまとめてもらいたいと、この三つを私は今度の法律改正の柱にしてもらいたいと思うのですよ。いわゆる選挙は大幅に自由化する、実質犯は厳罰にする、罰則は公民権停止である。これは私は民主主義の国ではあたりまえだと思うのです、姿とすれば。私どもは、今日地方のいろいろな政治を見ていますと、残念でしかたがないですよ、やり方を見ていますと、いまのままで内容は。だから、これはもう法律規制するということは必ずしも歓迎すべきことじゃないけれども、しかし、しかたがない。やるとすれば、いまの三つの柱を立ててもらいたい。これはぜひひとつ、大臣、職を賭してやってもらいたい。その答弁をもらった上で私の質問を終わりたいと思います。
  28. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 職を賭すことは何でもないことでございますけれども、やはり私としては主管大臣として、ぜひそういう世論にこたえたい、そういった意味で成案を得て議決願いたいといういま一心でおるわけでございまして、党内の調整も、先ほど申しましたように、私も非常に関心を持って私ども考え方のほうに誘導していくという努力をしておるわけでございます。  いま取り締まりにつきまして、むしろ公民権停止と申しますか、議員の資格を剥奪する、そういったことが主体になって罰則が設けられるべきだということについても、私はたいへん賛成でございます。あまり体刑が何年だの、罰金が幾らのというよりは、そのほうが効果がある。そうすれば、政治家がそれぞれ自分の立場というものを自覚して、つまらぬ間違いを起こさないようになっていくのじゃないかということは考えております。しかし、私も長い間審議会でいろいろ委員をしてつくづく感ずるのですが、今日こういうふうなことになる原因というものはいろいろ数えられますけれども、やはりそうすると、制度の問題に及ばざるを得ない。政治資金規制答申にも、それから、この間の選挙制度の答申にも、やはり前提は金のかからない選挙政党本位の選挙を実現することが前提であるというまくらことばがついて、いろいろなことが書かれてあることは、御案内のとおりでございます。制度のことに触れますと、これは両輪論か三輪論かということになりまして、たいへんな御反対があるわけですが、私は自分の党の現状を振り返ってみました場合に、これだけ激しい同士打ちをやるという選挙制度をとっておる限りは、なかなか弊害はなくならぬじゃないか。審議会の中でも、じゃあ区制を改正したら清潔な選挙になるという保証はどこにあるかという御議論もありましたけれども、しかし、大勢はやはりとにかくそれでやってみるということなんですね。最終的に一本にまとまらなかったことはたいへん残念ですけれども、しかし、明確にこういう柱を打ち立ててこれに沿うてやるべきであるという結論をいただいておることは間違いないわけでございます。なかなか選挙制度、資金の問題にいたしましても、それぞれ皆さんに御意見がありまして、それを調整していい線にまとめるということは容易ではないということを、私もさらにつくづく痛感してまいっているわけでございまするけれども、いましばらく時間をいただいて、御期待に沿えるような案を何とかひとつ出したいと考えておりまするので、その上で、十分ひとつ御審議をいただきたいと思っております。
  29. 多田省吾

    ○多田省吾君 初めに、政治資金規正法の問題でお尋ねしたいんですが、総理大臣は、この前の本会議あるいは委員会等におきまして、二月中に成案を得たいという話がありました。また、自治大臣もたびたび三月中旬というような話もしていたと記憶しております。現在まで政治資金規正法成案が出ておりません。初めにお尋ねいたしますけれども、ほんとうに成案を早くつくって、今度の国会成立させようという意思がおありなのかどうか、それをまずお尋ねしたい。
  30. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 提案するからには、もちろん成立期待しておるわけでございまして、ただ出せばいいとか、何とか時間をかせいでのがれようなどという考え方は毛頭ございません。  もう一つの公選法の改正のほうも、大体この時点で出るという順序は、すでに話は済んでおりますけれども、まだ党の最終調整が済まぬうちにそういうことを発表しますと、また、そのほうがくずれた場合には困るので申し上げませんが、政治資金規正法だって、これは腹づもりは実はあります。ありますけれども、やはりいまの私の立場といたしましては、いついつまでという期限を切ることができない実情にあるわけでございます。しかし、三月中でもとにかく成案を早く得て、そして皆さんの審議に供したいという考え方は十分持っておりまするので、その点はひとつ御了解をお願いいたしたいと思います。
  31. 多田省吾

    ○多田省吾君 提出の日にちだって、すでに二月下旬という話が三月中旬という話になって、また、いまの話ですと、三月中にでも成案を得て出したいと。三月下旬という話に受け取れますけれども、さらにどんどん後退している。お話は、政党政治であるから与党との話し合いがまだつかないとか、あるいは世論国民期待にこたえたいとか、そういう逃げ口上を打っていらっしゃるわけでございますけれども、ほんとうに自治大臣政治資金規正法国民期待にこたえて早く成案を得て通したいという熱意があれば、そんなことは、先ほどからの質問で言われておりますように、わけないことだと思うんですね。こういうことが延び延びになっているということ自体が、今度の国会でまた流すんじゃないかというような気持ちを、私たちのみではなくて、国民全般が持つのではないかと、こう思うわけです。その内容につきましても、大臣大臣になられる前に、与党選挙制度委員として活躍されていたころからの姿から見て、どうも前向きの姿勢ではない、こういうことが常に言われておりました。この前のこの委員会でも話が出ましたように、新聞記者会見においても、政党に対する政治献金は制限すべきではないと考えるというような私見を述べられて、それが大きな問題になったわけでございます。この前は、個人的な意見は差し控えたいというようなお話もありましたけれども、この前も、参議院の議運の理事懇談会で大臣に来ていただいて、いろいろ参議院選の日にち等について、また、政治資金規正法の提出日についてお尋ねしたときも、懇談会ですから、責任がないと思われたのか知りませんけれどもね。その話の中に、私は多分に後退の姿勢というものを感じ取ったわけです。こういう答申どおりの成案を得るならば、国民へのスタンドプレーといいますか、大向こうをうならすようなことはできっこない、実際の問題はそんなことはできないが、規制そのもの一つ取り上げても大きな前進であると。私は、そういうようなお話の端々から、ほんとうに成案というものが国民期待から大きくはずれて、大幅に後退したのじゃないか、そういう疑念を持つわけです。ほんとうに大臣として、この前も述べられたように、政治資金規正法答申にこたえていく、国民期待にこたえていくという成案を得るつもりなのか。世論といえば、国民期待といえば、当然少なくとも、答申に忠実な成案をみな期待しているわけです。ですから、衆議院選の前だって、与党の候補の人たちでさえ、会社等の政治献金についてどう思うか、これは禁止すべきであると答えられた方が非常にたくさんいたわけです。そういった点から見ても、国民世論というものは、もう少なくとも審議会答申にのっとった成案を得るべきである、こう考えていると思います。大臣としてどういう姿勢でこの政治資金規正法成案をつくろうとしているのか、さらにお尋ねしたいと思います。
  32. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 規制法については、先ほどから横川さんに申し上げたとおりでございまして、たいへんしゃんとしているつもりでございます。その点はひとつ御理解をいただきたいと思います。ただ、さっきの、総理が言いました前々回の苦い経験にかんがみと申しましたのは、それはとにかく何といっても政党政治ですからね。ですから、成立させようと思えばどうしても与党としっくり腹が合わなければうまくいかないわけなんです。私がスタンドプレーで、とにかくかちかちの答申まる写しのものを出して、通ればけっこうですけれども、それが御案内のとおり、そういうものが通らぬとしたら、何のために作業をしたのかということになる。ですから、世論期待にこたえるという意味で苦慮しているというのは、そこにあるんです。同じことを繰り返すようですけれども、この私ども努力というものもぜひくみ取っていただきたいということを申し上げる以外にないわけでございます。
  33. 多田省吾

    ○多田省吾君 野党三派は答申に忠実な成案を一回、二回と出しておりますけれども、それを大臣はスタンドプレーとおっしゃるようでは、もうほんとうに国民期待にこたえないのもはなはだしい、こう思うんですけれども答申にこたえるのがあたりまえで、スタンドプレーでも何でもない。その線を通すのがあたりまえで、それを通すことはスタンドプレーだと、こういう話ではもう全然納得できない。  時間もありませんので、次の問題に移りますけれども選挙自由化の問題で先ほどからもお話がありましたけれども、一応文書図画の頒布と、それから第三者の演説会の制限を緩和する、また、確認団体の戸別訪問、この三つの答申が出ているわけでございますけれども、この前の自民党自治省の話し合いの結果というのが、新聞報道とか、あるいは社説で見るところによりますと、確認団体の戸別訪問は、与党自民党にのみ有利な成案期待しているようでありますし、また、文書図画の頒布や、第三者の演説会につきましては、全然困難な見込みということで、やらないような報道もなされているわけでございます。自治大臣として、今度の選挙自由化法案に対しては、今度の参議院選にほんとうに間に合わせようと思って提出なされようとしておるのか。  それから答申に忠実に、文書図画の頒布、第三者の演説会、確認団体の戸別訪問、三つとも全部出そうとしておられるかどうか。  それからもう一つは、いわゆる永久選挙人名簿の年四回登録の線は、この前の政治資金規制法と一緒にからめた法案の出し方でありましたので、流れてしまったわけでございますけれども、今度もしそれが出ないとすれば、また、それが通らないとすれば、当然三十七、八万の新有権者が、満二十歳になりながら今度の参議院選に参加できないという、この前の衆議院選と同じような大きな問題になりかねないと思うのでございます。ですから、ほんとうに年四回の登録制度も、今度の参議院選に間に合うように、六月登録できるように通すようにしてもらいたい。この点をまとめてお尋ねしておきたいと思います。
  34. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) ぜひ、この次の皆さんの選挙には、この新しい改正案でやっていただきたいと思っております。先ほども申し上げましたとおりに、私ども、腹の中では、もう、いつ党の委員会での調整を終わって、いつの政策審議会また総務会にかけ、いつの閣議にかけるかという、最終段階までの実は日程を組んでおります。ですから、遠からず皆さんに御審議願う日が来ると思っております。といっても、何も故意に選挙人名簿の年四回やるというのをかみ合わしたわけじゃございませんので、一緒に通ればけっこうでございます。まあ私としては、一日も早く出し、そして皆さんの審議の時間が十分にあるようにということを考えてやっております。
  35. 多田省吾

    ○多田省吾君 この同じ選挙制度でも、自由化の問題は、いろいろ各党においても賛否があるようでございます。しかし、永久名簿の年四回の登録ということに関しましては、数多くの国民、しかも、これから政治に新しく参加しようとする青年が三十数万人も、選挙権を剥奪されるか、選挙権を得られるかというせとぎわでございます。当然性質が違うと思うのですね。同じ選挙制度ではありますけれども、それをむしろ私たちは別々に提案なすったほうが、かえって審議もしやすいのじゃないか、こういう考えもあるわけですが、大臣としてはどうですか。
  36. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) この段階ではっきり、間もなく改正案を出すと申し上げておるわけでありまするので、何もいまの段階でそれだけ別にする必要もありませんし、一緒に御審議願って、そうして通していただければ事は終わると考えております。
  37. 多田省吾

    ○多田省吾君 今度自治省とそれから自民党で協議されたようでありますけれども、もし確認団体の戸別訪問のやり方としまして、衆議院選挙の場合は三十人から五十人とか、あるいは参議院の選挙については、地方区百人とか、全国区は都道府県ごとに十人とか、そういった案も論議されておるようでありますけれども、そういったような戸別訪問がもし許されるとしても、私どもは、自民党のような大きな政党与党のみが利益を得るようなこれは戸別訪問自由化であって、公認されない人とか、あるいは政党に関係していない参議院候補とか、そういった人たちの戸別訪問というものは相変わらず制限を受けるようでございまして、非常に私たちとしては、つまみ食いのいわゆる法案化であるとさえ思うわけでございます。  刑事局長にお尋ねしますけれども、こういった、ちょっと一般化しない特別な戸別訪問のみが許されるとするならば、買収禁止というような観点から、どういった違反の防止をなさるつもりなのか。仮定ではありますけれども、できる範囲でお答え願いたいと思います。
  38. 川井英良

    政府委員川井英良君) 今日、戸別訪問につきましては、現行法に基づいて慎重な運用をいたしておりますが、戸別訪問につきましては、選挙の実態にかんがみまして、過去の公選法の歴史を調べてみましても、いろいろな案があったようでございます。そこで、この私ども取り扱いといたしましては、基本論としましては、先ほども横川委員のほうからいろいろ御主張なさいましたような、法の精神に基づいて最も悪質なところに重点を置いて限られた取り締まりの手を徹底するということ、それから片や罰則がございましても、それは必ずしもすぐに重い罰則をもって取り締まっていくという、必ずしもそういう趣旨のものではなくて、警戒的な意味で設けられたと思われる罰則も非常にたくさん、御承知のとおりあるわけでございまして、それらのものにつきましては、私からもう申すまでもなく、同時期に殺到してこの違反が出てまいりますので、すべてをやるというわけにはまいりませんので、そういうふうな方針にのっとってやっておるわけでございます。  そこで、戸別訪問でございますが、戸別訪問におきましても、そういうような趣旨から運用をしてまいっておりますが、戸別訪問の中にも、おのずから情状で悪質なもの、あるいは実際に結びつく内容を持ったものではないかと疑われるようなものも過去において多々ございます。それから、調べた結果そうではなくて、純然たる形式犯的な戸別訪問にすぎないというような事案もございます。その事案事案に応じましてそれらの具体的な取り締まりを徹底する、こういうことになろうかと思います。
  39. 多田省吾

    ○多田省吾君 最後に大臣にお尋ねしますけれども選挙自由化選挙活動自由化成案化するにあたって三つの答申が出ておりますけれども、それを全部おやりになろうというお考えに立っておられるのか、それとも、確認団体だけの戸別訪問に限られようとしているのか、その点を明確に、明快にお答え願いたい。
  40. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 三つの答申というのは、文書図画の頒布、それから第三者主催の演説会、それから戸別訪問のことですが、これはやっぱり答申の線に沿って具体的な結論を急いでおります。これは言うまでもなく、何党に不利とか有利とかという判断をお持ちになっては困りますので、やはりこれは一つのルールをつくりましたら、共通にこれを十分こういうやり方のもとでそれぞれ選挙活動をするというしか、しかたがない。私どもの党の中でも、いろいろな意見があり過ぎるくらいあるわけなんです。まあ戸別訪問だけを取り上げたって、もっと自由にやれという方もあれば、いや、とにかく形だけ戸別訪問をつくればいいという議論が沸騰しておりますことは、もう新聞紙上に出ておるとおりでございます。それを、審議会で大体このくらいなところを予想しておられるという線でまとめたいという努力をいま、しておるわけでございまするので、その案が出ました上で、十分御検討をお願いいたします。
  41. 多田省吾

    ○多田省吾君 私がこういう質問をしたのは、どうも自民党自治省の話し合いでは、自民党与党に有利な政党に公認された候補者についてだけ、候補者の戸別訪問はできないけれども、運動員百名ないし五十名というような数をすぐって、そして戸別訪問自由化したらどうかというような案が出ている。しかも、第三者選挙活動については、全然その制限を緩和しないような方向であり、文書活動等についても、いままでどおりというようなお考えのようである。こういうことを聞いて実は非常にあ然とし、また、非常な横暴ぶりに驚いているわけです。いま何といっても国民期待しているのは、先ほど横川委員からもお話がありましたように、いま第三者選挙活動というものが非常に制限されて、ほとんど何もできない。電話でちょっとやるぐらいしかできない。それで文書活動もほとんどできない。したがって、選挙となりますと、みんなおそれおののいて選挙活動をやらなくちゃいけないというような現状です。で、私どもは、選挙はあくまでも国民の祭典として自由濶達に行なわなければならないし、しかも、買収犯等については、厳格な罰則を規定すべきである、こう常々主張しているわけでございます。そういった観点からしますと、どうしても一部の政党のみに有利であって、しかも、第三者、すなわち国民全般——第三者というようなことばも非常によくないことばだと思いますが、選挙をする当事者は国民であり選挙民です。選挙民がほんとうに自由濶達に選挙できるような運動の緩和というものを中心に考えなくちゃいけないと思うんです。それを、いままでの既成政治家あるいは特定の大きな政党のみが有利になるような選挙活動自由化をはかろうという考えは、また大臣がよくおっしゃる世論とか国民期待とかに大きく反する成案になる可能性が強い。ですから、私は、やるならつまみ食いじゃなくて、むしろ国民本位の、選挙民本位の選挙活動自由化というものを推進すべきであると、このように考えておりますから、いま質問したのです。その点に関してはどうですか。
  42. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) つまみ食いをするというようなことばがありましたけれども、決してそんなことをやるわけではございませんので、もちろん答申趣旨に沿うてやるわけでございます。  それから、ちょっと私ども考え方と違ってお考えになっているんじゃないかと思うのですが、これはやはりこの審議会の全体の流れというものは、やはり確認された団体である政党に重点を置けと、だから、この政党活動というものをゆるやかにしていこう、そのかわり、無所属だとか、いろんなのが出てくる場合には、かなり制限を受けるということに、この答申では結果的になります。しかし、これは審議会全般の空気でございまして、この結論がこういうふうになっておりまするので、その点は御理解いただきたいと思います。
  43. 鈴木力

    鈴木力君 先に刑事局長さんにちょっとお伺いしたいんですが、これは、場所は岩手県ですが、当事者に御迷惑かかるといけないから、個人の名前をあげなくてもよろしいのですが、去年の一月の衆議院の選挙で、選挙公報に利益誘導にかかわるような選挙公報を出した某候補者が、これが告発をされて警察で調べ、それが送検された。ところが、それが二月に検察庁の結論が出まして、不起訴というのですか、起訴猶予ですかになった、こういう事件があった。まず局長さんに、この事件をおそらく御存じだと思いますから、経緯を御説明をいただきたいと思います。
  44. 川井英良

    政府委員川井英良君) 御指摘のように、二月七日にその事件は不起訴処分にしたという報告を受けております。  簡単に本件の経過を御説明申し上げますと、昨年一月二十九日に行なわれました選挙に際して、某候補が選挙公報の利害誘導に当たるような字句の内容の事項を記載したという事実に関しまして、選挙期日の前である一月二十三日付で警察に対して告発がなされております。警察ではそれを受理いたしまして取り調べをした結果、三月一日に盛岡の地方検察庁に対して事件の送付をいたしております。自来、検察庁は慎重に取り調べてまいりましたけれども、積極の証拠を認定することができないということで、冒頭に申し上げましたように、二月七日不起訴処分にした。これが大体の経過の概要でございます。
  45. 鈴木力

    鈴木力君 ちょっともう少し伺いたいのは、取り調べを受けた人は二人あるでしょう。この事件でその二人の処分は違うというふうにぼくらは聞いておるのですが、どういうことですか。
  46. 川井英良

    政府委員川井英良君) そのとおりでございます。候補者本人が被告発人として取り調べの対象になっておりましたけれども、警察から検察庁に送られた内容には、候補者が被告発人になっておるので、主としてそれを調べたけれども、本人はその事実を否定して、その秘書に当たる人が実際行為をすべてしたもののように見受けられるが、しかしながら、この人は前回の選挙の際には、自分みずからその掲載文について目を通したというふうなことが言われておるので、おそらく今度の関係においても、本人はこれを認めないけれども、たぶん目を通したものではなかろうかと思われる、こういうふうな事実関係になっておるというふうな意見をつけて検察庁に送ってまいっております。検察庁はその関係をかなり慎重に大ぜいの者について取り調べを進めております。その結果、遺憾ながら、この候補者本人につきましては、候補者本人がこれに関与したという積極的な証拠を認定することはできない、しかしながら、その秘書については、秘書がこれを行なったものであるという事実については、これを積極に認定する証拠がある、しかしながら、秘書については、いろいろな事情があるので、候補者——告発された候補者本人については、犯罪の嫌疑がないということで不起訴になった。秘書については、検察庁において取り調べた結果、積極証拠がある、しかしながら、これについては情状があるので起訴を猶予する。したがいまして、御指摘のように、検察庁にまいりましてから新しい被疑者が一人ふえましたけれども、候補者については犯罪の嫌疑がない。それから新しく認められました、その実行行為をした秘書については、起訴を猶予する。確かに処分理由が違っております。
  47. 鈴木力

    鈴木力君 もう少しわかりやすく伺いたいのですが、これは新聞記事なんですけれどもね、これはどの新聞も共通ですから、おそらく間違いはないだろうと思うのです、筋からいいますと。  もし、なんでしたら、政務次官がおいでくださるなら必ずしも、大臣どうにもならぬ場合は……。
  48. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) ちょっと速記とめてください。
  49. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 始めてください。
  50. 鈴木力

    鈴木力君 問題はこういう筋だ。詳しいことは申し上げませんけれども、利益誘導の記事が二項目ないし三項目あった、ところが、それが、その項目に関する限りは、利益誘導の疑いは十分にあった、しかし、候補者本人はその選挙公報に直接自分が書いてない、それから直接その選挙公報の仕上げを自分が見ていない、そこで候補者本人は不起訴になった。それから秘書の人のほうは、自分が書いて出したから利益誘導には該当するけれども、まあ事件は起訴するまでもないというのですか、もう少し具体的に言えばいいけれども、そこまでは申し上げませんが、ということで起訴猶予になった、こういうふうに新聞等がこの筋で報道しておりますけれども、この報道は間違いございませんか、この筋は。
  51. 川井英良

    政府委員川井英良君) およそそのとおりでございます。
  52. 鈴木力

    鈴木力君 そこで大臣に伺いたい。問題は、私が伺いたいのは、選挙公報が明らかに利益誘導になる。具体的に申し上げますと、ある地区にある団体が合併をしたら何百万の金を持ってくるというようなことが一つある。それから、来年度からは、ある特定の地域に十二億円ですかの予算を持ってきて道路改善をやるのだということを書いてあるということですよ。それは選挙公報に出ておる。まだそれに類するものがあったようですけれども、二つだけ言う。これを調べた結果、確かに本人は口頭で秘書の方に要綱を説明しただけであって、選挙公報そのものは見ていなかった。だから本人には犯意がなかったから、本人は起訴にならない。秘書は自分が書いたのだから、その問題があるけれども、すでに町の人はわかっておったから起訴にするほどでもないという、起訴猶予だ、こういう筋です。いまも刑事局長も認められたことなんです。それで、その筋だとすると、私は非常に重要な問題があると思うんです。小さな事件じゃないと思う。それは、選挙公報というのは、いわゆる普通の文書図画と同じように、本人が書いたか書かないかというようなことで責任が免れる筋合いのものかどうかということなんです。これは、岩手県の県民は非常にこの新聞記事を見てショックを受けまして、私どもには、このままにしておくのかという手紙がずいぶん一ぱい来るんです。それは、選挙民から見れば、選挙公報を見てだれが書いたのかと一々検討する筋合いのものもない。しかも、これは国が法律をもってやってくれる選挙公報です。それが、あとで本人が書いたのじゃないから責任がないのだということになってきたら、もはや選挙公報の権威は全然なくなってしまう。そういう気持ちを私も持つのですが、これは自治省として選挙執行する立場として、この選挙公報の権威をどう考えておるのか、所見を伺いたいと思います。
  53. 横川正市

    横川正市君 ちょっと関連して。選挙公報の政党記載が間違っていたということで選挙のやり直しをやったという事実もありますから、選挙公報そのものについての権威というものは、これは国民に対するいわゆる道義的にも法律的にも私どもはやはりこれはきわめて高いものと判断するのですけれども、そういう意味合いでいいかどうかということも、あわせてひとつ御答弁いただきたいと思います。
  54. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) お互い選挙をやる者は、何かちょっと文書を書きましたときに、ちょっとこれは判断に困るがという場合は、やはり都道府県の選管に持っていって、これはどうでしょうかと聞きますね。やはり自治省としましては、選管によく勉強してもらって、こういったものはやはり違反なんだというふうなことを指摘してもらうということをよく指導しておるはずでございます。ここでは相当そういった面での熟練した人がそれぞれ携わっておるわけでございまするので、やはり第一義的には、こういったことを選管がどうして指導しないで外に公報として出たものか、はなはだ不審にたえませんが、しかし、出てしまったものをどう判断するか、法律上の問題としては、司法当局の御判断を待つよりいたし方がない。しかし、われわれといたしましては、そういう間違いを起こさないようにということは常々考えて指導はしておるつもりでございます。  それから、ただいまの政党名が違っておったということは、これは自民党と社会党とを取り違えてやったりしたら、これは選挙民のほうも進んでおりますから、これは間違いじゃないかとすぐわかるはずだけれども、しかし、なかなかこれは重要なことだと思います。しかし、こういったものの政治的な判断のしかた、また、刑事的なものの考え方というものはおのずから違うと考えまするので、やはり出てしまったものにつきまして最終どう扱うかということは、司法当局の慎重な御判断を仰がなければならぬと、かように考えております。
  55. 鈴木力

    鈴木力君 私の質問は、いまの事件に対してどうかということを聞いているのじゃないのです。こればまたあとでいろいろ聞きたいのですが、そうじやなしに、まず自治省として、所管庁の大臣として、選挙公報というのが、お互い選挙をやっているからというような言い方ではなしに、選挙公報というものは本人が書いた書かないということによって責任が免れるというような、そういう軽い見方を自治省がしているのかどうかということを聞いている。  それからもう一つ、ついでに言いますが、指導しているなどということをぼくは聞きたくない。指導しているなんということは、あらゆる選挙法について違反しないようにという指導をしているのはあたりまえですから、そんなことは聞きたくない。
  56. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) やはり、さっきお答えいたしましたとおりに、政治的な判断というものと、犯罪として扱う場合とは、それぞれ違うわけでございまするので、しかし、自治省としては、選挙民の判断の重要な材料でございまするので、選挙公報というものはやはり慎重に、権威ということばが当てはまるかどうかわかりませんけれども、しかし、慎重に扱うべきものであるというふうに考えております。
  57. 鈴木力

    鈴木力君 もう少しはっきり答えてもらいたいのですよ。私は、いま検察庁の処置が適当であるとか不適当であるとかいうことで質問しているのじゃない。選挙の指導者としての本山である自治大臣選挙公報について言うことは、言い方によっては、非常に重要な影響を国民に及ぼす、だから聞いておるのです。  そこで、もう少しそれなら伺いますが、これは大臣じゃなくて、自治省選挙局長さんの指導した「参議院選挙の手引」というのがありますが、これも指導上はぼくは間違いないと思うのですよ。選挙公報は本人が提出することとはっきり書いてある。しかし、これも、大臣はお互い選挙をやる者はと、よくそう言いますから、そういう立場からいいますと、本人が提出すべきであるという意味は、何も本人が直接窓口に持っていって出せということじゃないと思う。私どもは、この指導を素直に読みますと、持っていく人は代理人であることがあるけれども、書く人はまた必ずしも本人でないこと、それはよくあることですよ。しかし、責任は本人が持つのだというふうにこの指導を読むのですけれども、そこはどういう意味なんですか。
  58. 降矢敬義

    政府委員(降矢敬義君) お話のとおり、公職選挙法には百六十八条に、「公職の候補者が選挙公報に氏名、経歴、政見等の掲載を受けようとするときは、その掲載文を具し、……文書で申請しなければならない。」というふうに書いてあります。したがいまして、先生の御指摘のように、選挙公報の内容といいますか、選挙公報そのものに対する候補者との関係は、まさに選挙法としてはいま先生がお読みになりましたようなたてまえでできていることは当然でございます。
  59. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 速記をとめてください。
  60. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 速記を始めて。
  61. 鈴木力

    鈴木力君 いまの局長さんの御答弁でだいぶはっきりしたと思います。これはたてまえとして、本人がどこまでも責任は免れないのだ、これをはっきりしないと、選挙公報というものはなきにひとしいと思う。いま局長さんがそういう筋の御答弁でしたから、重ねてはもうお伺いいたしません。  そこで、刑事局長さんにもう少し私は伺いたいのですが、刑事局長さんのほう、検察庁のほうは、そうは言っても、いろいろその他の法律の勘案や何かで法律的な見解で処分ということがあり得ると思うのです、あり得ると思いますが、率直に申しまして、岩手県民に与えたショックというのは、こういうことになるなら選挙公報を読んでも、もう判断の資料にはならないというほどにショックを受けているわけです。いまの公職選挙法一つの権威というものをこの行為によってだいぶ傷つけておる。もう一つは、いまの公営選挙の意味すら、正しい選挙という意味すら、白昼こういうことが行なわれるならということが、非常に不信感を呼んでおるわけですね。たとえば、私なら私が選挙公報に何かいいことを書くわけです。それで投票してもらって、あとで、あれは自分がやったのじゃなかったと、そう言えば本人の責任は免れる、これを自治省はいまお認めにならなかったからいいけれども、そういうことが今度は検察庁のほうで例をつくっていくことになれば、これは、はがきや何かと性格が違うのですから、その点については十分これは再検討してもらうべき値打ちがあると思うのです。  そういう立場で私が伺うのは、この結論が出たのは、事件は、さっき伺いましたように、昨年の三月のことですね、一月二十三日が告発で、三月一日に送検をされておる。そして結論が出たのは二月八日です。そこで、常識からいいますと、二月八日までかかる事件というようにはどうしてもわれわれには考えられない。それが二月八日までかかったということについては特別な事情があると思うのですけれども、刑事局長さんにその事情を伺いたいと思うのです。
  62. 川井英良

    政府委員川井英良君) 少し余分なことかもしれませんけれども、ただいまの御質問にお答えする前に、ちょっと前提を申し上げることをお許しいただきたいと思いますが、私、この選挙公報にはかなり前から非常に関心を実は持っておりまして、国会議員の場合におきましては、私どもの目から見まして、比較的こういう事件は少ないのでございますけれども、地方選挙などの場合におきましては、特に県会なんかの場合におきましては、最近比較的利害誘導のすれすれのものが非常に多いわけでございます。で、前に、御存じだと思いますけれども国会の関係でもって選挙公報に、非常にどなたがごらんになりましても適当でないことを書かれた人がございます。その際に、こういうふうなものがどうして選管の手を通って堂々と国民の前に出てくるのかと、私ども、刑罰法令を運用するものとしては、これはがまんができない。それに一体検察権が入れるものかどうかということを、十年ほど前のことですけれども、真剣に議論したことがございます。これは御承知のとおり、公選法の中に、候補者の名前でもって出てきたものはそのまま載せなければならないと、こういうふうな規定に相なっておりますので、選管といたしましても、これを途中でもって、適当でないからということでチェックする方法がないというようなことで、当時、当局の説明が私どものほうにあったわけです。私ども、いろいろ研究いたしまして、それはそれといたしまして、とにかく現在の法律に触れるような内容のものが選挙公報という形におきましても一般の目に触れるということは、それはそれとして刑罰法令の刑事責任を負うべきだと、こういう考え方を私、固めまして、この面につきましても、あとう限りの力を注ぎまして、刑事責任を追及するというたてまえをとったのでございます。そういうふうないきさつが実はあるわけでございます。  そこで問題は、この候補者本人が提出することになっているのに、検察庁が調べるというと、候補者は知らぬ存ぜぬで、秘書がやったことだということになりますというと、簡単に候補者は責任がなくなってしまうということはおかしいじゃないかという、おそらく疑問がおありだろうと思います。こういうケース、こればかりじゃなくて、ほかにもございます。それで、実は私は、選挙公報については、候補者本人が自署してこれを選管に提出するとか、または自署でなくても選挙公報の掲載については、候補者は責任を負うのだ、刑事的な責任を負うのだ、免れることはできないというふうな趣旨の、私どものほうで推定の規定と申しておりますが、的確な証拠がなくても、否認しましても、自分の名前で出した限りは責任を免れないのだ、こういうふうな規定にでもなっておりますれば、簡単に責任を免れることはできない。もちろん、私、説明するまでもなく、ご存じのように、選挙を実施される方々におきましては、いろいろなことを考えられまして、まあ率直に申し上げまして、いろいろな問題が起きましても候補者にはいかないように、いろいろな関所を設けられて、いろいろ実際の選挙をやられておりますので、刑事事件になりましても、なかなかいまの刑事訴訟法上ではそのものずばりのところまでいくということは非常に困難でございますのは申すまでもないところでございます。特にこのような事件につきましては、この選挙法の百六十八条の上では、道義的ないしは行政的と申しましょうか、いろいろな意味の責任が、候補者が知らないと申しましても、その責任は十分に、私、社会上の責任はあると思います。ただ、そうだからといって、いまの現行法のたてまえのもとでは、刑事責任が追及できるかと申しますと、御承知のとおり、刑事責任はその行為を現実にやった個人責任を問うのだというたてまえになっておりますので、秘書がやったのだという弁解をくつがえすことができないという場合には、秘書の責任しか問うことができない、こういうふうになりますのはやむを得ないことでございまして、あるいは、これは捜査のほうの、何といいますか、意気込みなり、あるいは技術の面が欠けているからそういう結果になるのじゃないかというふうなおしかりもあろうかと思いますけれども、その辺のところにつきましても、現行法のたてまえでできる限りの適正な処理を行なうようにというふうなことは、常に中央から指示をしているところでございます。  そこで、ただいま御質問のお答えに入るわけでございますが、そのような関係がございまして、昨日御通告がございましたので、きのうからけさにかけまして、電話でもっていろいろ内容の概要を私、報告させたのでございまして、この種事件すべてについて事前に、こまかい報告が実は法務省に参っておりませんので、取り急ぎ聞いたところによりますというと、いま申しましたように、いかにも不自然なかっこうになるのはおかしいというようなことで、かなり候補者の家族の方々というふうなものにつきましても、相当たびたび当たりまして、でき得る限り真相を把握するために、いろいろな努力を重ねておったというふうな事情はうかがわれるようであります。それにつきましても、約一年近い期間がかかっているということは必ずしも適当でないように思いますので、この種事件につきましては、より早急な結論を迅速に出すように、さらに注意したい、こう思っております。
  63. 鈴木力

    鈴木力君 いまの局長さんの御意見で、原則としては、やっぱり選挙公報というものは、本人が記載した記載しないということにかかわらず、選挙公報に記載した責任というものは原則として負うべきであるということが、いま局長さんからの御意見であるというふうに承りました。ここがやっぱりぼくは大事なところだと思うのです。  それで、いま時間がかかったということ、いまこのことだけをどうこう言ってもしょうがない話ですけれども、こういう批判がある。これは局長さん、聞いておいていただきたい。たとえば、まあ、ある市会議員の候補者が、ちょうど衆議院の選挙と一緒の運動期間中に、はがき百八枚か何かにたまたま衆議院の候補者の名前が一人書いてある、そのはがきの中に、時候あいさつか何かの中にですね。それはもう直ちにその人たちは逮捕されて起訴されて、そして、もう裁判は略式で受けておる、公民権剥奪の判決を受けておる。その人たちには二カ月ないしその辺でやってしまう。そうすると、明らかに原則として——これはもう原則としてというよりも、自治省は検察庁の扱いの当否については、これはなかなか口を出しにくいだろうと思いますけれども、そのことをいいとは言わぬのですが、そのことを別として、自治省の見解としては、選挙公報というものは本人が責任を持つべきものである、こういうことになっているわけです。その事件は、何をしておったのかわからぬが、県民からいわせれば、年を越して二月になってから、しかも、本人でないから不起訴になった。こういうことに対して、最近の検察庁は選挙取り締まりについては、ほとんど過失みたいな小さなものと、基本的に国民を欺瞞するのか欺瞞しないのかということにかかっている選挙公報と、はかりにかけてはかってみると、そっちのほうはどうも思いやりがあり過ぎる、片手落ちだ、そういう批判がいま相当に出ておる。つまり、かつて昔、われわれが聞いたことによりますと、内務省が健在なりしころ、与党が内務省を使って、警察を使って与党に有利な取り締まりをしたということが昔はあったという物語りがある。そういう形がいまの検察庁に復活しているのではないかという意見さえ出てきておる。これは私は国民を責めるのは間違いだと思う。検察庁のその扱い方が、そういう形で国民を不安なところに落とし込んでおる。こういうことに対して、やはり検察庁としてこの事件にもう少しまじめに取り組んでもらう用意がないのかということを伺ってみたいと、こう思います。
  64. 川井英良

    政府委員川井英良君) 選挙取り締まりの眼目は、申すまでもなく公正、いわゆる公平に、しかも、正確に正しく迅速に行なうということだろうと思います。この趣旨は常に全国検察庁に指導しているところでございますが、何と申しますか、普通の刑事事件でありますと、御承知のように、警察、検察がそのきっかけ、私ども、端緒と申しておりますが、犯罪の端緒をつかむということは大体なだらかに自然に出てくるものでございますが、選挙違反の事件は主として警察が最初に行なうものでございますが、その端緒の出方が、つかみ方が非常に時期的にも、それから事柄の重みによりましても、でこぼこに出てくるということ、それから、主として密告でありますとか、告発でありますとか、申告でありますとか、投書でありますとか、そういうようなことが発端になりますので、それらのたくさんのものを一応警察、検察が多くの場合は協議をいたしまして着手をすべきもの、それから、必ずしもこれは中身はなさそうだというふうなものはあと回しにするというようなことで、時期的に一緒に発生する事件でございますので、その辺のところを適当に、慎重に勘案しながらやっているというのが実情でございます。そこで、前提におきましてそういうふうな実情がございますので、大きな目から見て、また、あとからごらんをいただきまして、そうして何か不公平な処置が行なわれているんじゃないかというふうな御批判が出るのは、実は公職選挙法違反事件の一つの宿命とも私、申し上げてもいいんじゃないかという気がいたしております。ただ、そうだからといって、結果において適当でない処理が行なわれたということについて、決して責任を回避するものではございませんので、御指摘を拝聴いたしまして、でき得れば私、この会議の速記録をあとでよけいにもらいまして、盛岡検察庁に送りまして、さらに一そう今度の反省なり教訓なりにしてほしいという措置はとるつもりでございますけれども、結果においてまずい点があったかもしれませんが、心組み、気持ちといたしましては、あくまで公正ということを旨としてやっているということを御了解いただきたいと思います。
  65. 鈴木力

    鈴木力君 くどいようで恐縮ですけれども公職選挙法取り締まりの宿命だと言ってしまわれたらもう身もふたもない。われわれは、この公職選挙——公職選挙法というよりも、いまの選挙をいかにして公正に、かつ、政党政派にかかわらず、思想信条のいかんにかかわらず、どうして公正に、国民から審判を受ける選挙をやるかということがわれわれの任務だと思う。ところが、いまのような御説明ですと、これは私はなかなか納得できない。それはさっき言いましたように、選挙公報というものは、そんな軽々しく一通のはがきやなんかと同じ扱いをしてもらっては困る。あえて法律に、その他のものについては、こうやった場合にはこういう罰則があるということがあって、そうして選挙公報には本人でない場合には、こういう間違いを起こした場合には何という罰則がないからということで、それはのがれるべき性格のものではなしに、その罰則がないのは、当然本人が書くべきものという前提でこの法律ができておる。私は公職選挙法を、まあ法律はよくわかりませんけれども、すみからすみまで読んでみて、罰則規定は非常によくできておる。よくできておるという意味は、ことばは悪いのですけれども、漏らさずあらゆる場合を想定して罰則規定がある。ところが、この選挙公報のいまの点に罰則規定がないというのは、これは常識外で、本人が責任を持つ持たないを議論するのは常識外であって、その前提はもう本人の責任なんだ、この解釈の上に立っておると思う。そうすれば、利益誘導になったかならないか。利益誘導にならないから不起訴になったというなら、私はまだ救われると思うが、本人が関与していないから責任をのがれるということになれば、これは救いようがない、この点についてはですよ。何か検察当局の法律考え方が、木を見て山を見ずというたとえがあるけれども法律の重箱のすみのようなものをいじっておって、全体のこの公職選挙法が何を求めておるのかということは見ていないような気がする。したがって、私は、これは判決が出れば別だけれども、不起訴なんですから、こういう点こそ、検察庁は積極的に裁判所にこの判決を求めるべきじゃないか。局長さんは、いま法律にそういう条項が明らかであればやりいいんですけれどもという意味のこともおっしゃっておる。それならば、その法律的な解釈は裁判所にゆだねるべきではないのか。それを、検察庁が一方的な解釈でこれを起訴しない、裁判所にその判断をゆだねることもしなかった、これはどう考えても検察当局の手落ちである、私はこう思いますけれども、その点は認めませんか。
  66. 川井英良

    政府委員川井英良君) この問題になっておる百六十八条の関係で、その内容の中に利害誘導の事実をとらえたということで、御承知のとおり、二百二十一条の一項二号の利害誘導の罰則の規定の適用があるわけでございます。したがいまして、いま問題になっておる事案につきましても、公職選挙法上はりっぱに罰則がございます。したがって、その罰則容疑ということで検察官が取り調べをしたわけでございます。  それからもう一件例にあげられましたはがきの事件は、必ずしもよくそのものずばりで承知しておりませんけれども、これはたぶん法定外文書の頒布の事件ではないか、こう思います、百四十二条ですか、六条ですか。これは御承知のとおり、条文を見ていただきますとよくわかりますように、犯罪としておることの、その何といいますか、私ども、構成要件ということばを使っておりますが、その要件のきめ方が違うわけでございます。ですから、そういうふうな文書を頒布したという事実だけをつかまえれば、おそらく、その事件は有罪の認定がもらえる要件に相なっているわけでございます。本件の問題になっておるこの事件のほうは、利害誘導の事実を演説などで口頭で述べた、あるいは文書にそれを記載して頒布するということによって、もちろん成立する犯罪ではありますけれども、この文書は選挙公報記載という形式をとってその利害誘導という犯罪事実が行なわれたということで、もう一つクッションがそこにあるわけでございます。そこで、まさに御指摘のとおり、私もそう思うのですけれども、いやしくも、選挙公報に掲載したという限りは、名義人である候補者本人がそれについて責任を負うべきものである。ただ、それから先がちょっと違うわけでございまして、その責任公職選挙法上の、行政上の責任もございましょう、それから民事上の責任もございましょう、それから、いま問題とされておる私の所管であります刑事上の責任もございましょう。そこで、それらの責任をいろいろ勘案してまいりますというと、刑事上の責任についてだけは、特殊な法律の体系になっておりまして、その行為を現実に行なったというその個人責任を追及するということに、刑事責任というものはすべてそういうたてまえになっておりますので、どんな悪いことが行なわれましても——卑近な例で失礼でありますが、悪いことが行なわれまして、行政上も社会上もけしからぬと、こう思われましても、けしからぬということだけで直ちに刑事上の責任を問うわけではございませんで、名前も書いてある候補者自身がその内容についてそのまま秘書に口授して、口でうつして書かしただけ、あるいは頼んで書かしましたけれども、あとからあるいは手を入れてみたとか、あるいは現実に自分でそれを読んで署名捺印して持っていかしたとかいうふうな、その記載の内容について候補者本人が現実にどの程度関与しているかという事実を検事が立証いたしませんと、残念ながら有罪の認定は受け得られないわけでございます。そこで、検事といたしましては、疑いがあるならば、裁判所に持ち出して、裁判所の判断を受けるのが正当ではないか、まことにごもっともな御指摘でございますけれども、起訴いたしました限りは、検事のほうが原告官といたしまして、この人が、候補者本人が関与しているものですという事実を立証しない限りは、公判が始まらないわけでございます。原告官といたしまして検事が立証するためには、本人は否認いたしましても、家族の方々とか、あるいは秘書とか、あるいは、その他の周辺の事情とか、あるいは過去、現在の事情をしさいに調べまして、状況証拠をかき集めまして、本人は知らぬ存ぜぬ、こう言っているけれども、かき集めたたくさんの状況証拠を総合勘案すれば、これは本人の否認の主張にもかかわらず、この程度の証拠があれば本人がやったと認めてよろしい、こういうものが集まらない限りは公判を求めるわけにまいりませんので、かなり時間がかかっておりますが、検察官はいろいろの方面からいろいろの人を調べて、さような証拠を集めるためにかなりの努力をしたというふうな報告が参っておりますけれども、残念ながら——残念と申しますと、ことばはいけませんけれども、公判を求めるだけの積極の証拠を集めることができないので不起訴の処分にしたのだ、これが結論でございます。
  67. 鈴木力

    鈴木力君 だから、私が聞いている趣旨は、いまの刑事訴訟法からいうと、直接本人が関与していないということでは何ともできないのだ、しかし、本来は罰すべきであるという局長さんの御意見ですね。そうすると、法の不備だということです。いわば、この候補者は法の盲点を巧みについて犯罪を犯したと言えば言えないこともないわけです。それはそれとして、あともう一つだけ私は伺いたいのです。  これは盛岡地検が新聞の談話として出している中に、こういうことがある。これは一つ新聞だけが書いているのじゃないから、おそらく間違いがないと思うのですが、この利益誘導に当たる項目は、当時すでに町当局の広報などにも掲載され、ほとんどの町民が〇〇代議士の公約が出される以前から知っていた。そこで、公約そのものの影響力は薄かった。その判断が、秘書の起訴の猶予になった根拠になっている。そこで私は伺いたいのは、選挙公報というのは、当該する町の人が知っておればあとはもう影響がないのかということです。選挙公報というのは、私は選挙区民全体に対する公約だと思う。それを、そういうことで一体責任をのがれるのか。検察庁はそれを責任をのがしてやったと私にすれば言いたい。このことはどうも私は納得できないんですね。選挙公報というのは、その町の人が知っておったから、利益誘導に当たることを書いても利益誘導ではないんだという、この言い方が成り立つのかどうかですね。  それからもう一つは、本人がやったことじゃないと、こう言っておるけれども、しかし、いまのこういう経緯から見れば、このことについて本人は何もしていないということはどうしても私は考えられない。町の広報にまで出さしておいて、町の人にみんなにわからして、演説のときにも本人がしゃべっておる。そうして選挙公報に出て、公報は私ではありませんでした、公報の罪はだからその人はのがれる、本人は関与していないという断定をこういう状況の中にもできるのかどうかですね。この二つの点について伺いたい。
  68. 川井英良

    政府委員川井英良君) 前段のほうでございますが、選挙公報に犯罪になるようなことを記載した以上は、必ず本人に責任があるんだ、こういう趣旨のことで、おまえもそれを認めているという御趣旨のあれがあったのでございますが、この点は、しつこいようでございますが、責任ということばの中に、いろいろございますので、選挙公報——百六十八条に関する限りは、その内容について御本人が公職選挙法上の行政ないしは民事上の責任というものはありましょう。しかし、刑事責任については、また別な観点から検討が必要だということを重ねて申し上げることをお許しいただきたいと思います。  それから、秘書に犯罪が認められるのにこれを起訴猶予にして起訴にしなかったという点が一つ納得できない、その理由一つとして、発表された中に影響力云々ということが書いてある、こういうことでございますが、私、候補者について責任が認められないとしても、秘書について責任が認められるならば、選挙公報の持つ意味の重要性と権威にかんがみて、秘書について公訴提起ということも検察庁の一つの行き方だろうと思います。同種事件につきまして、候補者につきましては責任の追及できないけれども、秘書ではありませんが、その取り巻きの人に書かしたということが明らかになりまして、候補者以外の者を同種の事件につきまして現在起訴して公判中の案件がほかにもございます。私ども、手元に公報が参っております。したがいまして、そういうふうな方法もあろうかと思います。ただ、具体的な本件につきましては、これを担当いたしました盛岡地方検察庁がいろいろおあげになりましたような諸般の事情を考慮した上で、この秘書につきましては、公訴を提起するほどのこともない、こういう判定を下しましてこういう結論になったのだということでございます。これはもちろん、いろいろ慎重な御配慮と御批判をいただかなければなりませんが、要するに、先ほど申しましたように、候補者本人が、何と申しまするか、すべてのいろいろな責任を持つべき筋合いの事柄である。たまたま、その秘書という、主人と秘書といいますか、候補者と秘書という立場の関係にある者がこういうふうなことを行なったんだということで、秘書のみの責任をこの種の事件について追及するということが、公益の代表者としての立場の検察官としていかがなものかというふうな、いろいろ思案をしたようでございます。そこで、その際に、候補者本人ならばまたいろいろな情状が出てまいりますけれども、秘書の場合におきましては、当該秘書の性格なり年齢なり、それから、いままでいろいろなどういうふうな前科があるかないかとかいうふうな、いろいろな本人の一身上の事情もずいぶん詳しく調べております。それらのことを勘案いたしまして、候補者、先生と秘書というふうな関係にあって、本来は先生が責任を負うべきような事柄の内容の事案について、たまたま秘書が責任を負わなければならなくなったというようなときに、検察といたしまして、あえてこれを起訴するか、あるいは厳戒を加えて再び犯罪を起こさないことにいたしましてこの起訴を猶予するかということは、これは検察官として最も慎重に考慮しなければならないところだと思いますが、本件を取り扱った盛岡地方検察庁はいろいろな事情を勘案した上で、いま申し上げたような一応の事情考えた上で、そして、これを起訴猶予にしたのだ、こういうふうなことに報告が相なっております。
  69. 鈴木力

    鈴木力君 盛岡検察庁がいろいろなことを勘案した上でこうしたのだ、それはそのとおりだと思うのです。そうしたからそのことが私はおかしいのじゃないかというふうに質問しているのです。だから、盛岡地方検察庁がこうしたのだとだけ言われてしまうと、質問申し上げる意味がないのです。法務当局としてこういう事実に対してどうかと聞いているのですから、まあ、しかし、これは私のほうも、局長さんに前もってもう少し詳細に調査をしてもらうとか、そういうことをやれば、もう少しまたはっきりしたいろんなことが伺えたかもしれませんが、これは局長さんだけを責めるわけにはまいらぬ、私も前もって調査の衣頼等をやっていなかった点もありますから。ただ、私は、まだまだ申し上げたいのですけれども、時間がありませんから最後に申し上げたいのは、さっきも私が言いました、これははがきの事件でどうなった、その事件をどうこうと私は聞くわけじゃない。しかし、わずかに百何名かにはがきを出した人は公民権を停止をされておる。そうして選挙区全体に、有権者全体に、書くべからざることを書いて、それは本人ではありませんと、その人は起訴にもならない、こういう点がどうしても片手落ちになる。これは私は片手落ちだと、どうしてもそう思う。その場合に、局長さんから、いろいろといまの法律のたてまえなども伺いました。伺いましたが、検察庁自体の選挙取り締まりのやり方は、さっき言いましたように、法律全体の趣旨というのはどっかに飛んでしまって、そうして何条何条という重箱のすみだけをつついておる。いわば木を見て森を見ないという選挙取り締まり、このことが国民から、さっき申し上げたように、片手落ちだという批判を受けることになりはしないだろうかという意味で申し上げた。そういう意味で申し上げたのですから、取り締まりの方針等については、なおもいろいろとこれは検討してもらいたいと思うんです。この方針や検討のあり方等については、あるいはまたいろいろと御質問申し上げたりする機会があるだろうと思います。これは検討をしておいていただきたい。  それから、この事件については、いま聞いた限りにおいても、技術的な、法律をいじくっていけばこうなる、ああなるという話は、それはまあ、その立場としてはややわかるような気がするけれども、どう見ても、やはり法律全体の趣旨というのは、そのやり方によっては、これは殺されておる、公職選挙法そのもの趣旨からいっても、これはどうも殺されて、曲げられておると思うんです。そういう意味では、この事件については、もう少し、さっきは局長さんが速記録を送り検討するとおっしゃいましたけれども、そういう過程で、もっと、この法律がねらっている趣旨、そういう見地からこの事件についても再検討をするようにお願いしたいと、こう思います。
  70. 横川正市

    横川正市君 関連して。私、さっき刑事局長さんに、ちょっと仮定のことだから非常に判断しづらいだろうということで質問をいたしまして、まあ明快にはお答えにならなかったのですが、たとえば、いまの取り締まり立法で判断をした場合、鈴木委員のほうからは、もうはがきを書いた、そうして、そこへ名前が書いてあった、それは個人の事実行為だと、こういうふうに認定できる、いまの法律だと。だから罰則規定が適用される。こういうことが、たとえば片や電話で依頼をする、道路で個別的に依頼をする、これは選挙法上自由である。何が自由かといえば、これは取り締まり対象として実質犯を伴うようなものを、これを取り締まることのできないような、そういう事実について、たいへんどうも、これは法律上から考えてみても、現場の警察官あるいは検察官としては困るから、だから実は実質犯を伴うような違反、戸別訪問については困るというようなことが、従来の選挙法の解釈としてあるわけですよね。ところが、手紙に名前を書いて出したと、たとえば年賀状を何通出したと、百枚とか五十枚とかというようなことが、一体電話とか個々面接とかというようなことと比べてみて、どれほど重い犯罪構成になるのか、この点の判断のしかたが、実は法律上もう個々まちまちですし、それから、取り締まりの人たちも個々まちまちに判断するし、そこで、片方では公判に持ち込んで二審までいって無罪になったとか、あるいは何だとかといって、事実上実質犯の買収とか供応とかという案件であっても無罪になる。ところが、その場で略式命令でやられると、たいしたことでないのに公民権停止ないしは罰金になるということで、いわゆる選挙法の実際上の運用の面で法そのものに不信を抱かせるような取り締まり当局の態度というものを必然的に生ましめている今日のこの選挙法に対して、これはどうお考えか。私はたまたま、元警察庁にいられた柏村さんですね、あの人の答申を見て、これは実に前向きで、取り締まりの衝に当たられた人の考え方として当然妥当だと、こういうふうに実は感じている点があるわけなんですよ。むろん現在すでにもう取り締まりの衝に当たられている立場でどう考えるか、これが一つ。  もう一つは、事前運動としての犯罪をどういうふうに選挙法から見てやられているのか、これがまあ第二点。  それから第三点は、財界からいろいろな金をもらって、公認料とかなんとか、いろいろ金をもらっているのが法定費用より上回っているという事実が公然とあって、公然とあるのに、これはもういわゆる法定外費用にならないというようなことが日常茶飯事でやられているわけですね、この資金の問題で。これは、この取り締まりの当局としては一体どう判断するのか。これは降矢さんがたまたま新聞記者に話したのだろうと思うのですけれども、公認料とかあるいは選挙費用とか言って上回ったものを渡してあっても、それは実は選挙に使わなけりゃいいんだと、こういうことを言ったというので、これは記事に載っているわけですがね。選挙に使わない公認料とか選挙費用というのはないと思うのですよ。選挙に使うからもらうわけですからね。使わなかったというなら、その金は一体どうなったのか。どうなったかというのは、いわば所得と加算されて届け出て税金の対象にしたのかどうか。そういうところまで関連性が出てくるのだけれども、そういう問題が公然と出ているのだけれども、そういうことを勘案されて、取り締まり当局としてはどうお考えか。この三つをひとつお聞かせいただきたいと思うのです。
  71. 川井英良

    政府委員川井英良君) ごもっともな御質問で、私にも個人的にはたくさんの意見があるわけでございますが、この政治資金規正法、それから公職選挙法改正、非常に重大な影響を現実に持つ法案でございまするし、弁解でございますが、隣におられる選挙局長が主として所管の官庁としていろいろ御考案になっているということで、私、この刑事罰則を主として運用するという刑事司法だけを、まあ受け身な消極的な仕事をさせられている立場から、この権威ある場で積極的に立法なり、立法につながるような意見を刑事局長という立場で申し上げることがはなはだ、何と申しますか、ちゅうちょされるわけでございます。まあ、はしがきとして、その辺のところは一応お許しをいただきまして、いま申しつけがございました三点でございますが、このはがきとか文書で頒布すると処罰される、しかしながら、電話とか個個面接とかいうようなものは一応そのまま野放しになっているというようなことで、実際の効果は同じじゃないか、片方には罰則があり、片方には全然罰則がないというようなことについて、同じように刑罰法令を適用、運用しているおまえの立場から矛盾を感じないか、こんなような御趣旨に第一点は一応私は拝聴したわけでございますが、もしそういう御趣旨だといたしますならば、確かにそういう面を否定しがたいものがあると思います。ただ、御承知のとおり、法律はその時代時代を反映いたしまして、しかも、国会でいろいろな立場から御議論が尽くされまして、そして立場の違った方々の間におきましても、何らかの妥協をした上で設けられている。立法は妥協だと、こういうことばが私ども法律をいじっている者の問にも、一種のことわざとして使われているような事柄でございますので、でき上がったものを純粋法律的な立場から見まして、理論的に非の打ちどころのないように筋が通っているというものは実は少ないように見受けるわけであります。ことに、取り締まり法規である規正法とか公選法なんかにおきましては、その感が私ども立場からは率直に申し上げまして深いものがあると思います。これは抽象論でございます。具体的な点につきましては、私ども立場から、しいて理屈をつけますれば、電話とかというものは瞬間的なものであるし、また、個々面接なんかにおきましても、瞬間的なものだけれども、文書にしてやった場合においては、これは残るものであって、その期間が、若干継続期間が当然予想されるものであって、効果の面においてはかなり違ったものがそこにあらわれてくるのだというようなこともございましょうし、あるいは、はがきなんかにつきましては、御承知のように、枚数等が法律できめられている。それはまた、公営選挙でございますので、その費用は、きめられた枚数につきましては国家でもってこれをまかなうというような体制にもなっておるというふうな、理屈をつけますと、いろいろな合理的な理屈が若干出てくると思いますけれども、抽象的な常識的な印象としましては、確かに御指摘のようなことを避けがたいものが一、二あるのじゃないかというふうな気がいたしております。  それから、第二点は事前運動のお話でございましたけれども、事前運動につきましては、これはちょっと御趣旨を間違えているかもしれませんけれども、確かに選挙に重大な影響を及ぼすことでございますので、事前運動の取り締まりにつきましては、警察、検察庁ともにかねてから協力いたしまして、いろいろ方法も講じております。ただ、事前運動は、その他の公選法に定められておる犯罪の類型と異なりまして、なかなか犯罪になるかならぬかという認定が困難な犯罪の類型になっております、私どもの目から見ますと。そこで、その疑いのあるものにつきましては、行政権を持っております警察当局のほうからたびたび警告を発して自粛をお願いするというような型をとっておりまするし、証拠が十分で悪質なものにつきましては、二、三年前から、期日前といえども断固検挙するのだという方針を固めておりまして、御承知だと思いまするけれども、期日前におきましても事前運動について検挙をした事例が最近は出てまいっておりますので、大体そういうふうな事前運動についての方針を立てております。  それから、最後の費用の点でございますが、これは先ほど一番冒頭に申し上げましたはしがきにも関係することでございますが、非常に規正法とそれから公選法との有機的な関係にある事柄でありますが、法律の体系としては、一応別個の体系になっておるということでございますので、冒頭に御説明申し上げましたように、私ども、刑罰法令だけをいじっておるというたてまえのものからは、もうしばらくこの具体的な意見は差し控えさせていただき、さらにまた私ども考え方を検討し、また研究をしてみたいというふうに思います。
  72. 横川正市

    横川正市君 降矢さん、最後に、参議院の第八回の執行期日については、これはきまったのですか、まだきまっていないのですか、それとも、どういうような審議過程か、それを聞いてきょうは終わります。
  73. 降矢敬義

    政府委員(降矢敬義君) 七月七日に任期満了になることを前提にして行なわれる通常選挙の施行の期日は、まだ全然きまっておりません。いま御案内のとおり、公職選挙法三十二条によりますと、国会の会期が、五月二十四日にこの国会が終わります、そうしますと、その日から三十一日以後三十五日以内において投票を行なわなければならぬとなっております。したがいまして、自動的に、いまの国会の会期が五月二十四日に終わるということになりますと、投票の期日は六月の二十四日から六月の二十八日の間に必ずきめなければならぬということになっております。ただ、国会の会期が延びますと、その日がそれだけ、延びた分だけ五日の幅をおいて延びていく、こういうかっこう法律ができております。
  74. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 他に御発言もなければ、本件に対する質疑は、本日はこの程度にとどめたいと存じます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十八分散会      —————・—————