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参考人(
進藤武左ヱ門君) 御承知のように、われわれ
水資源開発公団は、
政府の御方針を忠実に実施するわけでございますから、公団自身が方針をどうとかいうことは申し述べられないと思います。ただ、私見として、水資源
開発あるいは電源
開発の関係というような問題を、簡単に申し上げてみたいと思いますが、実はわれわれいま、先ほど来お話がありましたように、五つばかり河川の
開発をいたしておりますけれ
ども、従来の利根川、淀川、まあ木曽川もそうなると思いますが、大体水が不足であるから
開発していくんだという、どちらかといいますと需要に応ずるためにあとを追いかけていくという
開発のやり方が中心になっております。今度筑後川などの
開発をいたすことになりまして初めて、一部水不足はありますけれ
ども、筑後川をいかに
開発すべきかという筑後川の総合
開発に対する基礎調査を、経済企画庁から委託を受けましてただいま調査中でございますが、私は、いままでは戦後二十年、なかなか国の経済が非常なテンポで発展しておる、またあるいは戦災復興の問題というふうな問題に忙しかったのでありますからして、
日本の水をどうするかという基本問題等に対しましては、まだこれからしっかり研究すべき問題がたいへんあるだろうと思います。で、この間経済企画庁で昭和三十七年に御決定になりました全国
総合開発計画を新しく改定するのだという第一回の会議が開かれました。その記事を新聞で拝見いたしましたが、あれにも水資源
開発問題が載っておるわけでございます。私はやっぱり
国土総合開発計画の構想の中へ水資源
開発をしっかり入れていただく。で、
国土総合開発計画でいうと、水から申しますと、
土地と水と人間とをいかにうまく配分して、そして
日本のわれわれの生活を向上させ、あるいは住みよい国家にしていくか、
国土にしていくかという、そういう基本問題がどうしてもしっかり地についておりませんというと、せっかく
開発したら都会が疎開して、疎開といいますか、都会の疎開のために水の需要が減ってきたというふうなことになりかねないと思いますので、どうぞ水の問題につきましては、やっぱり
日本の
国土総合
開発の基本問題の
一つであるということをしっかり取り上げていただいて、そしてこれは
計画とまではいかぬかもしれませんが、相当長期にわたる構想をつくっていただいて、そしてそれによって
開発を進めていくという
方向が一番いいのじゃないかと思います。まあ長期
計画と申しましても、年度予算であり、あるいは
計画が、なかなか
日本では長期の
計画というものが、構想はありましても、具体的の
計画というものは、なかなかできるのはむずかしいようないろいろの条件もあると思いますけれ
ども、住みよい
国土をつくり上げるということが、やっぱり
政治の一番大きな問題の
一つでございますから、力強い、従来の戦後二十数年の間のようなことではなく、これから先しっかりした
一つの見通しを持って、それを土台としてその時々の経済状況なりあるいはいろいろの状況で修正しながら進んでいくという
方向に、ぜひやっていただきたいと思います。
それから電源
開発の問題ですが、これは私先ほどお話がありましたように、
日本発送電にもおりましたし、電源
開発にも関係いたしておりましたが、現在電力は御承知のように、火主水従時代になっておるわけであります、われわれがやっておったときは水主火従時代でありましたが。しかもこの火主水従時代で非常に大容量の重油発電所がぽつぽつと大きく出てきております。これに対しまして水力の価値をこれからどういうところから見るかという検討を、もう少しやっていただきたいと思うのであります。現在所得倍増
計画といいますか、経済の非常な高度成長のために水力発電所を五年、六年もかかってやっておられない。また需要が一カ所にばっとふえますからして、水力ではとても間に合わないということが、私は大容量火力発電所建設の
一つの大きな原因であると思います。もう
一つは、目先の建設費がわりあい安い、建設
期間が短いということででき上がったと思うのでありますけれ
ども、現在
日本のエネルギー源の六割近くは、全部海外依存になっておりますが、これは各国のエネルギーの
状態を見ましても、半分以上を海外に依存しておる国は、おそらくAクラスの国家には私はないと思っております。しかも、
日本のエネルギーの六割、これがだんだんだんだん進みまして、あと十年たつと八割
——八割五分にもなるというふうなエネルギー
政策で、ほんとうに安定供給ができるだろうかという
一つのエネルギー
政策としての大きな問題も、電力はこれはエネルギーの中枢の問題でございますから、ぜひ検討していただかなければならぬと思いますが、もう
一つ大容量のたとえば火力発電所、大容量の原子力発電所は、水力の補給をしなければ発電所個々の経済問題はやりましても、系統全体の運営経済というものは、わりあいに水力の補給がありませんというと高くならない。ことに私よく知識がありませんけれ
ども、原子力発電は負荷率八〇%以上くらいに運転しなければ能率も悪いし、運転の状況もうまくいかないという特色があるそうでありますからして、水力でどうしても補給していかなければならない。しかも水力だけを単独に計算しますというと非常に建設費も高くなり、キロワットアワー当たりの単価も高くなるということで、現在電力経済を中心として電源
開発の方針を大体おきめになっておりますからして、水力の
開発のスピードも急速に下がってしまって、現在おそらく年に五、六十万キロ
程度になってしまっておるわけであります。しかし、私はいままで電力の不足のときに従来のような
開発を早くやらなければならぬ、需要に間に合わせなければならぬということから必要だと思いますが、一応電力の需給の安定した今日、しかも
日本の何かたとえばこの間のスエズの問題があったときに、
日本の重油の問題がだいぶ貯蔵量が問題になったようでありますが、何かのときの
日本のエネルギーの確保という問題に対しまして国内エネルギーの
開発をする。しかもその
開発は電力経済だけのそろばんでなくて、国家経済と国民経済の立場からこれをやっていくということが必要ではないかと思います。水力につきましては、御承知のように利根川の上流の八木沢ダムで揚水式発電二十四万キロの発電所をつくっておりますが、こういう火力あるいは原子力発電の運営を能率的にやる、あるいは供給の安定をするために調整揚水式なりあるいは貯水池を持った大容量の発電所をつくることがどうしても必要でありますけれ
ども、それには電力経済だけでこれをやることはできない。しかし、国民経済的立場からやれば、私は非常に有利じゃないかと思います。また技術的にも非常にこのスタートが簡単であるとか、あるいはピークも簡単にとり得るとか、事故が少ないとか、または余剰の機械を火力のように据えつけておかんでもいい。いろいろ技術的の特色もありますけれ
ども、全体として国内資源である水力をぜひ
開発して、そしてそれと一緒になって電力経済をうまく運営していくということと、水力の
開発は、そのほかにたとえば治水の問題であるとか利水の問題でありますとか、あるいは
農地開発の問題であるとか、いろいろ派生的の影響が非常に大きいのでありますけれ
ども、こういう問題は、いまのところあまり
議論に乗っておらないわけであります。でありますからして、これからぜひ水力の発電の
開発を、少なくとも水系を指定された
地域に対しては、水資源
開発と進んで一緒にやる。私は特に筑後川を例にとりますと、筑後川に約二十発電所がございます、私設発電所が。しかし出力合計はわずかに九万何千、
一つ当たりの発電量が非常に小さい。でありますからして、筑後川の
開発には、既設水力発電所の再
開発をこの際思い切って検討してみたらどうだろうか、これは木曽川も同じでございます。こういうふうな問題。あるいはまた
日本では、包蔵水力の調査を昭和三十八、九年ですかやって、三千五百万キロが包蔵水力だと言われておりますけれ
ども、これを貯水池式あるいは揚水式の立場から、あるいは最近の技術の進歩の立場から検討いたしますというと、私は包蔵水力は相当ふえると思います。でありますからして、現在水力
開発が千五百万キロばかりございますが、おそらくこれからいまのような
考え方で
開発を進めますというと、相当量の水力
開発ができるということにもなりますし、まあわかりませんけれ
ども、重油をどんどん買っていかなくちゃならない、国際収支に対して大きなフアターを持っておる重油も、水力発電の
開発によれば、それもセーブできる。いろいろ電力経済だけの検討でなくて、国家経済全体の立場から、水力発電と水資源総合
開発とをいかに結びつけていくかということは、これからわれわれの非常に大きな研究課題の
一つと
考えておりますので、まあたいへん見当違いの
意見かもしれませんけれ
ども、簡単に私見を申し上げます。