○春日正一君 ですから、その床を借りられてそこに残れる人はうまくそういう
関係が回っていくからいいけれ
ども、残れない人ですね、一番弱い者ですわ、そういう者がやはり非常に困難におちいる、それの救済というようなことが今度考えられていない。だから、この
法律を読んでみて感ずることは、
土地の
所有者、
土地を借りた者、家屋の
所有者、家屋を借りた者というので、持っているわりあい力のある者が一番強くて優遇されて、端のほうにいって
借家人、間借り人というふうに、端にいけば端にいくほど粗末に扱われるというか、そういう印象を受けるのですがね。それで、こういうことでもしこの
法律が成立して人家の密集した
市街地でこれが適用されるということになったら、これはいろいろ複雑な問題が起こると思うのです。
で、これとは違うけれ
ども、さっき言った大曾根地区の場合どういうことになっているかというと、
都市改造区画整理裏業ですけれ
ども、十八万五千坪ですか、それで対象
地域の軒数が三千五百五十秤、このくらいあるんですよね。それで、そこがずうっと国道だとか、六車路とか、いろいろ
道路が錯綜してきれいになるのですけれ
ども、しかし、こういう公共施設のために
土地を提供させられるとか何とかという形で、三千五百五十軒のうちで七五%に当たる二千五百戸が
移転ぜざるを得なくなるというような状態ですね。そうしてそういう中で三十坪以下の
住宅だとか、そういう店舗だとかいうようなものが非常に多くて、結局換地をする何をするといっても、小さなところでなかなか換地が与えられないというようなことで出なければならぬというような形で、区画整理で町がよくなるのに相当の人がその町におれなくなるというような
事態が起こっておるわけですね。だからこれについて
意見書は、とにかく
事業計画に対しては四千二百六十人——だから、それぞれの人が
意見書を出しているのですけれ
ども、これが実際採用されないというふうな形になって、いまでもいろいろ問題が起こっているというふうなことですわ。だから、こういう問題が非常にたくさん起こってくる。そしていま言ったように借りている人が八百戸もあって百二十二人しか正規の、何というか、
借地権の資格を持つ者が証明されないような
事態ですね。こういうようなことが現に起こっているということになると、
法律の文章に書いてないけれ
ども、いま言ったような融資なり何なりで
移転のなにをするとか何とかいう行政
措置で法の不備を補なっていくということを言われるのだけれ
ども、そういうことでほんとうにこの根本問題というものは片づくだろうか。だから私はやっぱりこういう町を大きくいじる場合に、どうしたっていじれば移動が出るわけですから、そういう場合に弱い者の
保護——私らは前よりよくしろとは言いませんよ。いままで住んでおった状況よりもよくしろとは言わないけれ
ども、よそに移っても少なくともいままでと同じ程度に
営業なり
生活なりできる程度の
補償というようなことがきちっと法的にも保障されていなければ、どうしたって賛成できないというようなことでトラブルが起こってくる。
道路の問題にしたって、
都市改造の問題にしたって、日本のこういう
事業での一番の問題は移動とか
移転、変化に伴う
生活のほうの保障というものが確立されてないから、だから、大局的に見ればここは改造しなければならぬし、ここへ
道路をつくるのは必要だということは認めても、その対象になる人たち
個々にとってみれば、
生活が保障されてないということで反対せざるを得ないような状態が、至るところで起こってくるということになれば、この
事業に伴うその変化に対して
生活が保障されるというようなことが確立されてない限り、いろいろそれは手立ては尽くしてみても、こういうような問題は避けられないのじゃないか。そしてこれがやっぱりこの
計画をやっていく上での一番大きな障害になる、そういうおそれはあると思うのですが、その辺どうなんですか。