○国務大臣(
灘尾弘吉君) 大学の
現状に対しまして深い御心配からの御発言でございますし、その御心配も必ずしも御無理とは私は思いません。ただ、大学を、大学とわれわれの間でどういうふうに、この事態の改善のためにやっていくかということは、決して私は簡単なことではないと思うのでございます。大学の
現状というものについてもお互いによく認識もしなければなりませんし、またその
現状というものを踏まえて改善の策というふうなことも考えていかなければならないと思うのでありまして、いかにもどうも不統一ではないか、いかにも秩序がとれていないではないか、妙な
先生もおるじゃないか、ということはごもっともであります。しかし、それが全部の教授であるというわけでもないのであります。すべての人がそういう状態であるというわけでもないわけであります。しかも、大学の教授は御承知のように特にまた学問研究の自由を認められている
人たちのことでありますから、いろいろな言論が出てくるということも、これまた大学としては当然あり得ることでございます。そういうような大学と私どもとが事態の改善をはかっていこうというわけでございますので、御趣旨はよくわかるのでありますけれども、問題の
取り扱い方というものにつきましては、十分にわれわれのほうも考えまして、そうしてやっていかなければならない
性質のものではないか、そういうように思うのでありまして、外部から何か制度をつくるとか、あるいは命令を出すとかいうようなことで片づくのなら、きわめて事態は簡単であると申さなくちゃならないのであります。そうなかなか簡単にいくものではない。しかも大ぜいの教授が全部みなが御心配になるような
先生ばかりではないので、また学生にしましても、一部の、ごく一部の学生が矯激な運動に走っておる。全体の学生がみんなそうであるというわけでもないわけであります。ただ、これに対しまして
政府が処置を誤るということがありますというと、ますます事態は悪化する、こういうことも予想せられることでございますので、この
取り扱い方については十分慎重にやってまいりたいと思うのであります。
なお、先般の
文部省で招集しました会議についての御心配でございます。私どもも、われわれの気持ちが実は十分に徹底していなかった、われわれの
取り扱いの上にあるいは粗漏な点もあったのじゃなかろうかと存じますけれども、一、二の大学におきましてこの会議に参加するということを積極的に拒んだ、こういう事例が起こりましたことは、いかにも残念なことでありますけれども、いま申しましたように、大学の学部長等を
文部省が招集して会議を開いたという例はこれまでないのでありまして、そこで十分にこちらの気持ちが徹底しておれば、ああいうことにもならなかったのではなかろうかと思いますけれども、残念ながらあのようなことになってしまいましたが、私どもの心持ちは、何もかた苦しい会議を開くつもりでも何でもなかったのであります。いわば大学と
文部省との間には、まだ何と申しましても縁遠いものがあるような感じがいたすのでありまして、何か
文部省が言えば
政府から圧力がかかったとか、あるいは干渉が始まったとかいうふうにとるという気分も、いまだに大学の中には私は一部残っておると思うのであります。そういうふうなことで、
文部省がいままで例のない招集をしたということだけで何か急に固くなったという
人たちもおったんじゃないかと思いますが、私どもは申すまでもなくそういうふうな疎縁なような
関係をまずひとつ改善をしていく必要があるんじゃないか。近ごろのことばで言えば、いわゆる対話を大いに促進する必要があるんじゃないか、こういうことで実は集まってもらったのでありますが、実はそこが十分徹底しなかったために、われわれとしても遺憾な点が発生いたしましたが、こういうことは、われわれもなおよく注意をいたしまして、大学側とも
話し合いをしたいと思いますし、問題としてはそう根深い問題とは思いません。解決をし得る問題だと、このように考えております。お互いに遠慮なしにものを話し合う、遠慮なしに考え、ともどもに考えるということが、
文部省と大学との
関係においては一番大切なことじゃなかろうか、というふうなつもりで努力をしていくつもりであります。いかにもなまぬるい、あるいはまどろっこしい点があろうかと思いますけれども、この種の問題につきましては、大局的に考えねばならぬ問題もございますと同時に、きわめてまたきめこまかい配慮をしなければならぬ点もあろうと思います。慎重な態度で進んでまいる。大学としての自発的な努力、それに対する
文部省の協力、こういう
関係をなるべく早くひとつできあがるようにしたい、かように考えておる次第でございます。御了承をいただきたいと思います。