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政府委員(
柴田淑次君) 初めの御
質問のほうから先にお答えいたしたいと思います。
えびの地震と
日向灘地震との間に
関係があるかどうかという御
質問でございますが、これはいろんな
地震学者の話を聞いてみますと、その方面の
学者のうちで、
関連があるという人と、まあたいした
関連がないという人と両方ございます。したがって、現在の
地震学の
知識では、はっきりとこれがどちらかということを申し上げるような
段階ではないというように
考えられるのでございます。私
個人といたしましても、私は実は
地震学者ではございませんで、
地震が
専門ではございませんので、私の
個人の意見というものはございません。そういうようなことで、現在の
地震学の
知識では、それがほんとうに
関連があると
断定はできない。また、
関連がないということも
断定はできないというのが、残念ながら現在の
地震学の
現状のように私は感ずるのでございます。
それから、その次の
津波の問題、これは
先生おっしゃるように、十時二分に
津波警報を出しましたけれども、
津波の第
一波がきたのは九時五十四分でございます。したがいまして、その間に約八分の
警報のおくれというものがある。これはなぜこういうようにおくれたかということにつきましては、現在、
津波警報はどういうふうにして出しているかということを申し上げないとおわかりにならないかと思いますので、簡単に申し上げましょう。
現在、
気象庁の出先の
気象官署におきましてそれぞれ
地震計を持っております。
地震がありますと、その
官署で
地震の
記録を測定いたしまして、それを東京の
気象庁なり、あるいは
大阪でございますと、
大阪管区気象台へすぐに
報告するようになっております。その
報告が数ヵ所から一応集まってまいります。その数ヵ所から
報告が集まるのに若干時間がかかる。これは大体
地震計を
コンパスで読み取りまして、それを
電文に直して
大阪管区気象台に
電報を打つわけです。
電報は
気象庁の
専用線でございますので、
電文さえできればすぐ
電報を打つことはできますが、そういうようなことで、大体
地震がありまして、その
電報を打ってしまうまでの間にやはり七、八分ぐらいの時間は少なくともかかるわけであります。それを今度は
大阪管区気象台で
電報を受けまして、大体数ヵ所の
電報が
大阪に集まるにはやはり十分ちょっとかかるようでございます。それを今度は
大阪管区気象台のほうで整理いたしまして
震源地をきめるわけでございます。数ヵ所の
電報から
震源地がきまるわけでございます。この
震源地をきめないと
津波警報は出せないんでございまして、これは申すまでもなく、その
震源地が
陸上にございますと、これは
津波は起こりません。
震源地が
海底にありますと、これは場合によったら
津波が起こる。だから
震源地が
陸上にあるか
海底にあるかということをそこできめるわけでございます。
今度次には、
海底にあるということがわかった場合に、どの程度の規模の
地震であり、
海底のどの辺であるか、陸地からどのくらい離れているかというようなことを材料にいたしまして、はたしてその
地震は
津波を伴うかどうかということを判定するわけでございます。そういうような操作をやっておりますので、大
体現状としましては十五分ないし二十分の時間がかかるのでございます。したがいまして、たとえば十五分以内にくるような
津波につきましては、そういうような
津波警報の出し方をやっているその限りこれは間に合わないんでございます。結局どうして間に合わなかったかといいますと、いまも申しましたように、
津波警報を出すまでの間のやり方に時間をどうしても食う、少なくとも十五分ぐらいは必要であるということでございます。しかし、これは決していいことではございません。
次には、こちらの問題になりますけれども、できるだけそれを一分でも
気象庁として縮めたいという
考えで、実はそういった、さっき申しましたように、
コンパスではかるとか、あるいは人間が
電報を打つとかいうようなことはもうやめまして、
機械が自動的にはかってくれて、自動的に
電報を打ってくれるというような
機械が最近できました。これは
電子工学の最近の進歩によりましてそういう
機械ができたんでございます。したがいまして、
気象庁は昨年からそういう
機械を備えつけまして、
津波警報を少しでも早く出したいというように
考えておりますが、
昭和四十二年度では、
関東地方にそういう
機械を備えつけました。四十三年度には、今度は
大阪管区気象台管内にそういう
機械を備えつけたい。これを全国的に備えつけるという方向でやっていきたいというように
考えております。しかし、これにしましても、たとえば
地震がありましてすぐに一分もたたないうちに
津波警報が出るというようなことでは決してございませんので、やはりこういう
機械を使いましても
津波警報を出すためには最低五分か六分か
——まあいまの十五分の三分の一くらいの時間に縮まるわけでございます。
話が非常に長くなって恐縮でございますが、ここでひとつ申し上げたいのは、とにかくどんな
機械を使いましても、やはり五分とか六分とかという時間がかかる。一方
津波は、場合によっては五分以内にくるような
津波も将来
考えられるのは当然のことでございます。したがいまして、そういう場合には、そういう
機械を使っても間に合わないというような
状態が将来生ずることが
考えられます。そういうようなことで、いずれにいたしましても、
幾ら機械を使いましてもやはり間に合わないというような
状態が将来起こる
可能性がございますので、
気象庁は、ずっと前から海岸の
沿岸に住んでおられる
方々に対しまして、とにかく
地震があったら海面の
状況を見てくれ、大体
沿岸に住んでおられる方は
津波に対しての
経験を持っておられますので、そういうようなことを申し上げ、そうして一年に一ぺんはいわゆる
津波訓練と称しまして、これは
気象庁も警察も
地元の町も一緒になりまして、一年に一ぺんは大体
津波訓練をやっております。その典型的な例が、
東北地方の
三陸沿岸の
津波訓練であります。これは御
承知のように、
昭和八年三月三日に大きな
三陸津波がまいりまして大きな
被害が起こりました。そのにがい
経験のもとに、その
沿岸の
住民の方は
津波訓練に熱心でございます。したがいまして、その成果が、実はせんだっての
チリ地震の
津波に対しまして非常に効果があったのでございまして、要するに、そういう
機械をできるだけ整備するという半面、やはり
沿岸の
方々に対しましてそういうような
お話をし、
津波に対するPRを将来とももっと続けていきたいというふうに
考えております。