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説明員(
高島益郎君) 森先生の御
指摘の点は
協定第二条についての、マレイシアの場合とシンガポールの場合の相違に関する御質問だと思います。われわれ、従来この種の
協定を
締結いたします際には、シンガポール
協定の第二条と同様な趣旨の
協定をすべて
締結しているわけでございますが、マレイシアの場合につきましては表現が若干違っております。ただ、マレイシアの場合におきましても、「両国間に存在する良好な
関係に影響を及ぼす第二次
世界大戦の間の不幸な事件から生ずるすべての問題がここに完全かつ最終的に解決されたことに同意する」ということが書いてございまして、その限りにおきましては、シンガポールの場合と実質については何ら相違はないわけでございます。ただ、シンガポールの場合と違って、その
あとに、したがって今後一切の請求を行なわないという趣旨の
規定がないわけでございますけれども、「したがって」以下のことにつきましては、
日本とマレイシアとの間におきまして何ら意見の相違がございません。特にマレイシアの場合におきましては、華商
連合会とマレイシア
政府との間に特別の
関係がございまして、非常に最後まで紛糾いたしました。
政府といたしましては、シンガポールの場合と同様なことで何ら差しつかえはないけれども、華商
連合会との
関係において、どうしてもそのことを
協定の文言中に書くことにおいては非常に問題なので、その点何とか
日本政府のほうで了解してほしいという趣旨の依頼がございました。特に最後の段階で、ラーマン首相から華商
連合会に対して特別な書簡が出ております。その要旨を申し上げますと、「華商
連合会の立場には
関心をよせているが、対日補償要求には法律的
根拠のないことを理解すべきである。日・マ
友好関係、マレイシアの国際的
地位等にかんがみ、華商
連合会が
政府の下した解決を支持するよう要請する」というような特別の書簡を出しましてこの説得に当たった次第でございます。そういうことでございまして、
政府間においては何ら誤解はないわけでございますけれども、特別にそういう華商
連合会との政治的な特殊な
関係であって、もしシンガポールと同様の
規定を置きますると、いかにも従来法律的な賠償要求権があったにもかかわらず、それを
日本との
関係において放棄せしめられたというふうに誤解されては非常に国内政治上困るという特別な
関係があって、こういうことになった次第でございます。