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参考人(
知花英夫君) われわれが
要請に持ってまいりました三件はいずれも重要な問題でございまして、
施政権返還の問題は
沖縄の基本的問題でございます。
国政参加の問題は
国民としての当然の
権利獲得の問題でございます。そうして
B52の撤収の問題は、これはいま
沖縄に振りかかっているところの最も緊迫したところの問題でございます。
それで本員は、
参考人は、まず
B52の撤収の問題から先に取り上げていきたいと思うのでございます。
御
承知のとおりに、
B52が核兵器の三Bと申されまして、そうして万人から非常にこわがられているものでございます。これが去る五日、
沖縄の
嘉手納基地に約十五機——
これは
報道によって明らかでございますが——
駐留いたしまして、連日
県民の目の前で
作戦行動を展開しておるような状況でございます。核に対する
恐怖と不安というものは、これは万人みな同じであろうと思うのでございます。
佐藤総理が非核三原則を打ち出されましたのも、また、かつてソ連がキューバに核を持ち込んだときに米国人があれだけ大騒ぎをしたのも、やはり核に対する不安と
恐怖からだと思うのでございます。
沖縄県民が現実の問題として強度の不安と
恐怖にかられておりますのも、この
B52の性格、性能からでございまして、われわれは、
立法院におきまして全会一致をもって
B52の即時撤収を強く
要請いたしておる次第でございます。
アメリカは
ベトナム戦争には核は使用しないと言っておるということでございます。これは、昨日まで
政府の
方々にお願いをいたしましたときにいろいろと
政府の
方々から申されたことでございます。ところが、そのような論議ではわれわれ
沖縄の
代表団といたしましては不安が解消されないのでございます。現に
沖縄には核があるわけでございます。いつでも
B52は搭載することができるわけでございます。また、
B52の行動はひとり
ベトナム爆撃だけであるとは何ぴとも断言できないことであると思うのでございます。哨戒飛行もあるはずでございます。
B52の
駐留は抑止のためだということでありまするならば、なおさらわれわれは
B52から核を
分離しては考えられない、このように考えるわけでございます。
B52の事故墜落がないということも断言できないのであります。すでに事実といたしましては、グリーンランドやスペインその他にその例があることは御
承知のとおりであります。
B52が毎日
県民の頭上を飛んでいる
沖縄の状況でありまして、何ぴとも不安と
恐怖に追い込まれることは、これは当然のことであろうと思うのであります。たとえ総理大臣であられようとも、このような状況に置かれましたときには、いまのようなお考えでは済まされぬと、私
たちはこのように思うわけでございます。総理大臣の、「
住民の不安や
恐怖をかき立てないでくれ」とのわれわれに対するおことばでございましたけれども、われわれとしては実に心外なおことばであったとしか考えておりません。
県民は、
B52の
駐留によりまして
戦争に巻き込まれはしないかというふうな不安にかられております。それには次のような要素がございます。
ベトナム戦争があのように激化してまいりました。朝鮮半島はあのように
緊張を続けております。
アメリカのアジア戦略の拠点として
沖縄の
基地の自由使用が非常に強化されております。なお、このように、
沖縄をめぐる客観情勢と
B52を中心としたところの航空機の
作戦行動は日増しに激増の一途をたどっておるわけでございます。なおまた、
基地の状況といたしましては、兵員の移動あるいは爆弾や軍需物資の輸送が非常にひんぱんに行なわれておるというような状況でございます。なお、
基地周辺におきましては、従来と異なりまして、軍用犬を引っぱって武装兵が立哨いたしております。MPの。パトロールが非常にひんぱんに行なわれており、非常に厳重な警戒が行なわれておるような状況でございます。なお、新聞等の
報道によりますると、パイロットは、投宿するのに。パイロット服を着たまま投宿して、いつでも出動できるような態勢にある。なおまた、
基地内におきましては避難訓練が実施されておるということが、マスコミの
報道によって明らかでありまして、
県民はこのような状況下に置かれまして、そして飛行機による爆音やあるいは弾薬輸送、これは主として夜間行なわれておりますが、このような騒音によりまして、安眠が妨害され、そしてそれを目撃しながら、不安と怒りの絶頂に達し、そして夜を明かすような
現状でございます。全く戦場同様だと
県民は言っております。この極度の不安にかられておりまして、特に
沖縄県民は
戦争の悲惨を身をもって知らされておるのでございまして、なおさらその不安を感じておるような状況でございます。三木外務大臣にお会いいたしましたときに、大臣はわれわれに対しまして、
B52の問題については
三つの側面がある。
一つは
条約上から、二つは
軍事上から、
三つは
政治上からである。すなわち、
沖縄は
アメリカの
施政権下にあるので自由に使用する
権利がある。
沖縄は
軍事上
日本及び
極東の
安全保障の
役割りを果たしている。したがって、
B52を撤収せよとは言えない。それで、
政治面から
基地を有効に使用するために
住民の
理解と協力が必要だということを言われた。そして、米国は
B52を
沖縄に常駐しないと言っているから、撤収せよとは申し入れないというおことばでございましたけれども、実に、この問題につきましてわれわれは一時間二十分にわたりますいろいろと大臣とのやりとりの中に、
沖縄のこの切実な
実情を強く訴えまして、その再度の折衝を強く
要請いたした次第でございます。昨日外務大臣とのお話におきましては、まことに残念でございましたけれども、われわれは十分な
理解を得ることができなかったのでございます。
施政権をまかしてあるからという理由で自
国民を不安と
恐怖の中に置いていいということであるのかということをわれわれは反問せざるを得ないのであります。外務省の局長から大使館に申し入れられたと言っておられますが、
現地では事態はますます悪化の傾向をたどっているわけでございます。
現地の不安と
恐怖の除去は
B52の撤収以外にはないとわれわれは考えております。これはすでに事実が証明いたしておりまして、米国が経験しているあのキューバの問題も、核を撤収してこそ米
国民は平静に戻っておるような状況でございます。また、米国が
沖縄戦略
基地を持ち作戦行為をする根拠は一体どこにあるのか。戦略
基地として保持するのであるならば、国連にはそのルールがあるはずでございます。しかし、それが現在なされておらないのは御
承知のとおりであります。また、それができるはずはないと思うのでございます。明らかに違法行為をし、不法不当の
沖縄支配をしておるものだとわれわれは考えております。また、これを佐藤
政府は許しておられるということでありますならば、まことにわれわれ
県民といたしましては残念であり、
理解に苦しむ次第でございます。すでに一ヵ月にならんとしております。
ベトナム戦争が終わるまでとか、あるいは北鮮の
緊張がなくなったら引き揚げる、だから常駐はしないというようなことであると聞いておりますが、それが
政府のお考え方の、常駐はしないということであるとするならば、
沖縄県民の緊迫感を、切実感を、そうして深刻な不安と
恐怖を十分に
理解しておられないものであると私
たちは受け取らざるを得ないのでございます。外務大臣は、われわれとの話し合いで、二十六日
アメリカから通告があったことを言っておられました。これでわれわれは、結局、
政府が
合意の上でこれがなされておるということがわかり、撤収を
要求しないという理由がここでわれわれにつかめたわけでございます。このようなことでありますことに対しましては、まことに
現地の
代表といたしまして、残念でならない次第でございます。
B52の
駐留は決して偶然とは私
たちは考えておりません。昨年末、
B52が自由に発着できるところの滑走路が
嘉手納飛行場に整備されました。そうして
ベトナム戦は御
承知のとおりあのような
状態を続けております。グアムからのべトナムヘの出撃は四時間かかるといわれております。
沖縄からの出撃は二時間で済むといわれております。このような状況からいたしましたときに、あのような
ベトナム戦争の遂行は
沖縄基地を使用したことによって
アメリカにいかに有利であるかということもこれで明らかになろうかと思うことでございます。
なおまた、
共同声明の中に
ベトナムあるいは中共に対する政策の支持があらわれております。このようなことから、
沖縄の
基地がバイタル・ロールであるという表現をいたして声明せられておることも、私
たちは決して無縁ではないと考えておるわけでございます。
私
たちは、ここで十分考えていただきたいと思いますのは、佐藤・ジョンソン
会談——第一回の会議、六五年でございました——あの後に
沖縄におきましてどのようなことが起こったか。いままで
ベトナムに対しての
基地としての活動はあまりなかったのでございますけれども、その直後から第一線補給
基地として活発な動きを見せ、重要な
基地としての
役割りを果たしておるようになったことでございます。このために、第二回の
会談の結果は、申し上げておりますように、
B52が
沖縄に
駐留するという結果になった。このような事実は、われわれは、総理が
国民の——われわれ
国民のいわゆる総理であるというようにわれわれは非常にたよりにいたしております。ところが、その
会談された結果は、御
承知のとおりの、
沖縄の
基地が
戦争へと結びつけられる結果をたどっておるということは、これは先生方も決してお見のがしにならないようにお願いを申し上げる次第でございます。また、このような結果は決して
沖縄だけじゃなくして、
沖縄の
基地から関係いたしまして、
本土の安全のためにも対岸の火事祝するわけにはいかないようになっておるものと私
たちは考えておるわけでございます。私はここで特に申し添えておきたいと思いますことは、
沖縄の
県民を
日本国民の一人として無差別に考えていただきたい。と申しますことは、核三原則を
佐藤総理は打ち出されておりますけれども、残念ながら、われわれがお聞きするところによりますと、これは
沖縄が除外されておるというようなことも承り、まことに残念でなりません。
さらにまた、
共同声明の冒頭に、「
日米両国が、個人の尊厳と自由という民主主義の諸原則を指針として、
世界の平和と繁栄をもたらすため、緊密の協力をする」と言っておられるわけでございます。
沖縄を異民族の支配に置き、
軍事優先的な政策によりまして個人の尊厳や自由は侵害せられ、そして民主主義の諸原則に反するところの施政が現在行なわれておるような状況でございます。そして、いま申し上げましたような
戦争に対する不安、
恐怖の中にわれわれは生活をさせられておるような
現状でございます。たいへん失礼な申し方かと思いますけれども、私はこれを考えましたときに、冒頭のこの
基調に照らしまして
沖縄の
実情を見ましたときに、まことに羊頭狗肉の施政ではないかと申し上げたいくらいでございます。それで、私は重ねて申し上げますが、どうぞ
沖縄を
日本の一県として、ことばだけじゃなくして、実践面におきましてもそのように取り扱って、無差別にやっていただきたいと特に御要望を申し上げる次第でございます。
最後に、
政府はそういったようなお考え方に立たれまして、どうぞ
沖縄の緊迫化したところのこの情勢、これは単に
施政権の問題といったようなゆうちょうな問題ではないと思うのでございます。何とか
沖縄の
県民のこの不安を、
政治の要諦は
県民の不安を払うということにしかないと思うのでございますので、どうしてもこのわれわれの不安を一掃していただきますように、そのためにわれわれの
要請いたしております
B52を撤収いたしていただきますように特にお願いを申し上げる次第でございます。
国政参加の問題につきましては、さっき
代表の団長が申しましたように、あくまでもわれわれは
国民の当然の
権利を付与してもらいたい。そして、これは
国会のお仕事であると考えております。また、二十余年の今日、主席の公選を許した今日、
アメリカは決して了解しないとは考えておりません。それで、これも決してほかと差別のあるようなものじゃなくして、これこそ無差別な方法でやっていただきたいと、このようにお願いを申し上げる次第でございます。
それから
施政権返還の問題につきましては、これはいま団長から言われましたように、
要請の
一つになっております。ところが、先生方もまたいろいろと問題につきましても関係があろうと思いますので、
実情を申し上げておいたほうがよろしいかと思いまして、少しくふえんをいたしたいと思いますが、
施政権返還の問題につきましては、最も重要な問題でございまして、われわれ
立法院におきましては、あくまでも全会一致をもってこれを
要請していく、これこそ、政策ではなくしてむしろ民族の問題として取り上げていかなければならぬ、このように考えてまいったのでございますけれども、そのような考え方に立ちましてそのように
努力をいたしてまいったんでございますけれども、残念ながら、この問題が佐藤・ジョンソン
共同声明を中心といたしましてこれが持たれたために、残念ながら全会一致を見ることができず、野党はいまの
決議案に賛成することができないで退場いたしまして、自民党だけによる全会一致になっているということを申し添えておきたいと思うのでございます。内容につきましてのことは、時間も足らないようでございますので、申し上げることはあとの
参考人のほうからいろいろと質問にお答えしたいと考えておりますが、どうぞ、いま申し上げました
三つの点につきましては先生方の十分なる御検討をしていただきまして、このいずれもすみやかなる明るい
解決をしていただきますように切にお願いを申し上げまして
参考人の陳述といたしたいと思うのでございます。たいへん失礼いたしました。