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1968-05-08 第58回国会 参議院 沖縄及び北方問題等に関する特別委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年五月八日(水曜日)    午前十一時九分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         伊藤 五郎君     理 事                 増原 恵吉君                 山本茂一郎君                 岡田 宗司君                 黒柳  明君     委 員                 井川 伊平君                 内田 芳郎君                 大谷 贇雄君                 北畠 教真君                 平泉  渉君                 安井  謙君                 川村 清一君                 春日 正一君    国務大臣        国 務 大 臣  田中 龍夫君    政府委員        総理府特別地域        連絡局長     山野 幸吉君        総理府特別地域        連絡局参事官   加藤 泰守君    事務局側        常任委員会専門        員        瓜生 復男君    説明員        大蔵省理財局資        金課長      大蔵 公雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○小笠原諸島復帰に伴う法令適用暫定措置  等に関する法律案内閣送付予備審査) ○沖繩地域における産業振興開発等のための琉  球政府に対する資金の貸付けに関する特別措置  法案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) ただいまから沖繩及び北方問題等に関する特別委員会を開会いたします。  小笠原諸島復帰に伴う法令適用暫定措置等に関する法律案議題といたします。  まず、政府から提案理由説明を聴取いたします。田中総理府総務長官
  3. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) ただいま議題と相なりました小笠原諸島復帰に伴う法令適用暫定措置等に関する法律案につきまして、その提案理由及び概要を御説明いたします。  この法律案は、南方諸島及びその他の諸島に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定に基づく小笠原諸島復帰に伴い、法令適用についての暫定措置を定めますとともに、小笠原諸島の旧島民及び現島民小笠原諸島における権利または利益保護並びにこれらの者の生活の安定をはかるため特別の措置を講じ、あわせて小笠原諸島をその区域とする村の設置及び現地における行政機関設置等について所要の事項を定めようとするものであります。  以下、この法律案概要につきまして申し述べます。  まず第一に、小笠原諸島が二十余年にわたり無人島に近い状態で放置されていたことにかんがみ、国及び地方公共団体は、その責務として旧島民の帰島及び生活の再建並びに現島民生活の安定に配慮すべき旨を定めております。  第二に、現島民に対する措置といたしましては、まず、建物等敷地として他人土地を使用している現島民の居住の安定をはかるため、法律上、その所有者がその使用者のために賃借権設定することとし、次に、現島民漁業を営むものの利益保護するため、小笠原諸島周辺海域における漁業について操業を制限し、また、合衆国軍隊引き揚げによる離職者生活の安定、就職促進等をはかるため、失業保険法及び駐留軍関係離職者等臨時措置法規定適用について政令で特別の定めをすることができることといたしております。  第三に、旧島民に対する措置といたしましては、まず、本土引き揚げ当時存在していた耕作に関する権利保護するための措置をとることといたしておりますが、耕作に関する権利がこの法律施行後一年を経過する日までに消滅している場合には、一定期間内に申し出ることによって賃貸借契約を締結させることとし、また、旧島民漁業を営んでいたものの利益保護するため、現島民と同様の扱いをすることといたしております。  第四に、小笠原諸島における行政組織につきましては、まず、小笠原諸島区域とする地方公共団体として小笠原村を設置し、また、現地における国の行政機関としては、小笠原総合事務所設置することといたしております。  以上のほか、小笠原諸島復興につきまして別に復興法を定めること、復興の計画的、かつ、円滑な推進をはかるため、一定期間、特定の場合を除き、容易に原状に回復することができない土地形質変更工作物新築等を認めないこと、その他、公職の選挙及び最高裁判所裁判官国民審査に関する暫定措置政令への委任、旧鉱業権者に対する旧鉱区にかかる鉱業権出願優先的取り扱い等について規定いたしております。  なお、この法律施行期日は、小笠原諸島返還協定発効の日といたしております。  以上がこの法律案提案理由及びその概要であります。何とぞ、慎重御審査のうえ、すみやかに御可決あらんことをひとえにお願いいたします。
  4. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 引き続き補足説明を聴取いたします。加藤参事官
  5. 加藤泰守

    政府委員加藤泰守君) この暫定措置法案内容について補足説明させていただきます。  その内容関係がございますので、戦前小笠原諸島のざっとした説明と、それから、現在の小笠原諸島状態等にちょっと触れまして、それから法案説明をいたしたいと思います。  戦前小笠原諸島は、総面積一〇四・一三平方キロメーターうち国有地が七九・六九平方キロメーター、それから民有地が二四・四三平方キロメーターということでございまして、総面積うち七七%が国有地と、こういうことになっております。これを島別に見ますと、父島におきましては国有地は七五%、母島におきましては六六%、硫黄島におきましても大体六六%、その他が八八%ということでございます。小笠原諸島におきましては農業が相当盛んでございましたが、その関係で、耕地面積について申し上げますと、父島におきましては耕地面積は二七四ヘクタールでございますので、二・七四平方キロメーター、このうち小作になっておりましたのが八〇%でございます。母島におきましては四四一ヘクタール、すなわち四・四一平方キロメーター、このうち六〇%が小作でございました。硫黄島におきましては、三四三ヘクタール、したがって、三・四三平方キロメーターうち九六%が小作でございました。合計いたしまして一〇・五平方キロメーター、そのうち七六%が小作であった、こういうことになります。  次に人口について申し上げますと、人口は、父島におきまして四千三百四十八人、世帯数で七百九十九世帯母島におきまして二千百九人、世帯数で三百四十一、硫黄島は千百六十四人、世帯数で二百十六、北硫黄島が九十人で世帯が十七、合計七千七百十一人で、世帯数は千三百七十三という状態でございます。これを職業別に見ますと、農業関係、これが三百七十世帯漁業が百七十一世帯、商業が八十一世帯加工業が四十一世帯勤労者五百七十世帯、その他が百三十三世帯、無職七世帯合計千三百七十三世帯、こういうことでございます。このうち農家の小作関係を見ますと、全体といたしまして大体八割ぐらいが小作あるいは小自作と、こういう関係になっておりました。  次に行政組織でございますが、村の組織は、父島に大村と扇村袋沢村——これは一つの村ですが——この二カ村。母島に沖村と北村の二カ村。硫黄島が硫黄島村。合計五つの村がございましたが、これは昭和十五年四月一日から町村制による村になったわけでございまして、それから引き揚げまで——十九年にほとんど引き揚げておりますので、約四カ年程度村の行政が行なわれていたわけでございます。その他、町村制施行されていなかったところは都の小笠原支庁の直轄ということになっておりました。都の行政組織といたしましては、いま申し上げましたように、小笠原支庁が設けられております。国の行政機関といたしましては、警察、郵便、営林、税務、専売、気象それから裁判所等設置されていたわけでございます。  以上のよう戦前における状態でございましたが、これが昭和十九年四月からほとんど本土引き揚げる、こういうことになりましたので、現在の状況は、政府調査団報告によりますと、父島の一部を除きましてほとんどジャングル化しておるということでございます。特に母島は完全にジャングル化、密林化しているようでございます。硫黄島は、現在米軍施設がございますので、一部利用されておりますが、その他は大体原野化しておるということでございます。父島には、日本国籍を有する住民が現在百七十四名住んでおります。この百七十四名は、昭和二十一年に本土から向こうに帰島した方々——百二十九名の方が帰島されましたが、そのままふえまして、籍のある人は二百十八名、うち現在住んでいる方が百七十四名ということで、四十四世帯を構成しております。その家屋は米軍の払い下げの資材によってつくられたもので、その敷地関係は、官有、公有地が十八戸、自己または親族所有が九戸、民有その他の他人所有に属するものが十戸、所有者の不明のものが五戸、合計四十二戸。四十四世帯が四十二戸の家に住んでいるわけでございます。  それから雇用関係。この方々米軍雇用になっておるのは五十七名でございます。なお、漁業を営んでおる者が十五名おります。  それから、住民住居条件は、水道米軍施設電気米軍施設でございますが、ともに米軍の供給によって生活をしているわけでございます。  それから、この住民には、現在米軍施政下にありまして、自治組織が設けられております。通称「五人委員会」といっておりますが、司令官の監督のもとに限られた範囲の自治が認められております。毎年六月十日に予備選挙を行ない十名の候補者を選んで、さらに六月二十日に本選挙を行なって五人を選び、五人委員会を構成する、こういうことになっております。選挙権、被選挙権は、ともに十八歳以上ということになっております。  これらの住民関係します法令はどういうものがあるかという点について申し上げますと、六四年の九月二十五日付の軍施政長官布告というのがございまして、これがまあ現在の布告でございますが、それの別添といたしまして、小笠原火山諸島及び南鳥島司法及び刑法典というものがございます。この内容は、裁判所関係、それから刑法法規でございます。この布告に根拠を持ちますものとして、しかも、現島民自治権の行使として制定しておりますものに小笠原諸島布令といわれるものがございます。この内容は、野生生物保護あるいは衛生保全、それから所得税関係労働法規関係刑罰法規という内容でございます。この二つの法典といいますか、というものが、小笠原諸島に現在施行されているものでございまして、したがって、私法上の財産関係内容とする法令というものは、米軍布告布令その他の法令によって制定したという事実がございません。したがって、いわゆる親族関係とかあるいは財産関係はどうなるのかということが問題になろうかと思いますが、親族関係は、これは日本人でございますので、日本法規適用問題は当然考えられるわけでございますが、財産関係では必ずしもすぐに日本法令というわけにはまいらぬかと思います。ただ、日本人であり、しかも、戦前日本法令のもとで生活していた方々でございますので、その法意識というものは本土法内容とほとんど同じであるというふうに考えられます。したがって、日本の民法の内容が慣習法的なものとして認められていたというふうに考えていいかと思います。以上が現在の小笠原状況でございます。  以上のことを前提といたしまして暫定法案補足説明をさしていただきたいと思いますが、この暫定法案は、本則が三十九条、附則が七条、合計四十六条で構成されておりますが、これを奄美群島返還の際の暫定法規と比較してみますと、奄美群島の場合は全体で十カ条、実質的な内容といたしましては、現行法令停止が一カ条、経過措置一カ条、選挙特例が一カ条、行政組織関係が二カ条、裁判所関係が二カ条それから裁判手続経過措置一カ条、補助金特例一カ条という内容でございまして、ほとんどが経過措置的なものであったというふうに言えると思います。  しかし、小笠原返還に伴う暫定措置法案におきましては、先ほど申し上げましたように、戦前現況が非常に差がございます。奄美大島の場合は、何といいましても二十万の人がそのままそこに住んでいたわけで、社会秩序もそのまま存続していたわけでございますが、小笠原におきましては、先ほど申し上げましたようなことで、この二十年間ほとんど放置されていた状態でございますので、いろいろ問題が多いと考えます。そこで、法案におきましては、第二条におきまして「国及び地方公共団体責務」として、旧島民の帰島、それから現島民生活の安定をはかること、そういうことを国及び地方公共団体責務として掲げておるわけでございます。  この法案の第二章におきましては六カ条ございますが、これが各法令適用をそのまま適用したのではいろいろ問題が生じますので、特例を設けていきたいという章でございます。選挙特例国民年金法適用についての特例労災失保特例離職者特例と、それから農地法施行停止、これが具体的に法令の上がっているものでございますが、選挙が、現在戸籍等も整備しておりませんので、いろいろ選挙人名簿作製等について特例が必要であろうと思います。また、参議院選挙が近いので、そういうような点にどういう特例を求めるか、これは法律が成立した段階で考えなければならない問題だと思います。国民年金労災失保それから離職者措置についての法律関係は、まあ国民年金はそのまま適用されるわけですが、ただその場合に、期間計算等において不利がないように考えていきたいというふうに思っております。労災失保それから離職者関係は、これは法律そのもの適用されましても、いままでの失業あるいは労災あるいは離職という関係がこれらの法律にそのままなるというわけにもまいりませんので、そういう点も考慮してこれらの法律適用されるよう特例を設けていきたいと考えておるわけです。農地法施行停止につきましては、現在、先ほど申し上げましたようなふうに二十年間も放置されていた関係で、現況がほとんど農地でございません。したがって、現在の農地法はそのままでは適用されないわけでございますが、今後帰島された方が再墾いたしますれば、そのままでいきますと、農地法適用がされてくるわけでございます。ただ、この法案におきまして特別の措置を考えまして、一定期間内はこの法案規定によって農地法によって考えているよう耕作権保護等をはかっていきたい、そして一定期間経過後はこれを適用していく、そういうふうにしたいと思っております。第八条におきましてその他の法令で必要な暫定措置を考えるということでございます。  それから第三章は「権利調整等」という章でございますが、先ほど申し上げましたように、現在住んでおられる百七十四名の方々敷地の問題、返還と同時に無権原ということになっては困りますので、そういう点について賃借権設定を考えるということでございます。また、水力発電施設あるいは水道関係施設がございますので、その関係使用権設定、それから昭和十九年に引き揚げ後は現況がほとんど農地でなくなっておりますので、その引き揚げの時点において耕作権を持っていた方々につきましては、何らかの形で保護をはかっていきたいということ、それから漁業の規制、これはいままでほとんど漁業が大々的に行なわれていなかった小笠原が、急に返還と同時に本土漁業関係者の方に乱獲されるということのないように、一定の基準で制限していきたい。特に現島民及び旧島民方々が帰って漁業を営み得るように改良していきたいということでございます。鉱業権の問題も、昔あった鉱業権者に優先的に出願を認めよう、こういうことでございます。  それから行政組織にいたしましては、村を、従来五カ村あったのを今回はさしあたって一カ村として設置していきたい。これは現在住民が住んでおりますのは父島だけでございますので、全体含めて一カ村でございますが、そういう状態を一応前提として一カ村としたわけでございます。ただ、新しい村の執行機関あるいは議決機関等は直ちに選挙できませんので、それについても特例を認めていきたいと思います。  それから国の行政組織はやはり国が責任を持って復興事業推進していかなければならぬので、いろいろ国事務を行なうための総合的な組織を考えていきたいと思います。都の昔ありました支庁関係につきましては、特にこの法律ではうたっておりませんが、これは東京都が地方自治法に基づいて考えてしかるべきものと思います。  それから雑則におきましては、現島民及びこれから帰島する島民就職問題等を十分考えなければなりませんので、行政機関はできるだけ住民の採用をはかっていく。それから、住民生活の安定のために国、地方公共団体設置する施設を供用する道を開く。あるいは補助金特例、あるいは住民生活安定のための国有財産の譲与、貸し付け等、また緊急に必要な場合もございますので、特に短期間に限りまして簡易な手続緊急使用ができる道を開く。また復興の計画的な円滑な推進をはかる必要がございますので、当分の間、土地形質変更の制限をしていきたいというような条項が入っております。なお、復興法の制定も特にうたっております。以上の実体規定関係で罰則を特に三カ条設けております。  それから、附則において裁判所の管轄の関係を明らかにいたしております。  以上が本法律案内容でございます。
  6. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 本案に対する質疑はこれを後日に譲り、本日は一応この程度といたします。     —————————————
  7. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 沖繩地域における産業振興開発等のための琉球政府に対する資金の貸付けに関する特別措置法案議題といたします。  質疑のある方は、順次御発言を願います。
  8. 岡田宗司

    岡田宗司君 この琉球政府に対する資金貸し付けに関する問題と離れて、現在米軍政府のもとに琉球開発金融公社というのがある。これが従来資金貸し付け等を行なってきたわけですが、ちょっとこれの現在の状況がどうなっておるか、それをお伺いしたい。
  9. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) この開発金融公社でございますが、これは御案内のとおりに、米側におきましてつくりまして……現在の貸し出し状況やなんか詳しく申し上げますか。
  10. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうですね、概略ひとつ。
  11. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) これは機関といたしましては、御案内のとおりに、米側機関でございます。われわれといたしましては、その現状の詳しいことは、担当局長が参りましたのでそちらから申し上げますが、方針といたしましては、これを琉球政府のほうに移管をしてもらいたいという日本側の希望を述べております。また、一本化のためにも、ぜひさようにいたしたい。ことに財政投融資等々の今回の措置にかんがみましても、さようなことが必要である、かように考えておる次第でございます。  それでは、担当局長が参りましたから、この開発金融公社につきましての詳細な現状の御報告をまずいたさせます。
  12. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 琉球開発金融公社は一九五九年に布令でできました機関でございますが、現在資金は百五十八億円でございます。ただ、最近におきまして非常に資金増強がはかられておりませんので、新規融資の金額が非常に少なくなってまいりまして、昨年度におきましては大体二十億前後の余裕金しかないということであります。で、従来、この公社住宅資金、それから農林漁業、あるいは観光事業その他の中小企業中心融資してまいりましたが、この二、三年前までは六十億程度資金がございましたけれども、昨年は二十億程度資金しかございませんので、したがいまして、その融資の対象もきわめて制約された現状になっておるわけでございます。
  13. 岡田宗司

    岡田宗司君 これは、どうしてそういうふうに六十億ほどあった資金が二十億に減ったんですか。
  14. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 従来は米側から資金新規増額等が行なわれておったわけでございます。ところが、ここ三年ぐらい前からそういう新規資金増強が行なわれないというようなことによりまして、だんだん新規貸し付け資金が不足してきたという状況になっております。
  15. 岡田宗司

    岡田宗司君 なぜ、その新規資金アメリカが出さなくなったのか。それからまた、その資金はいままでどこから出てたのかですね。そして、なぜそれが出されなくなったのか、そのことをお伺いしたいんですがね。
  16. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) この資金のおもなるものは余剰農産物ガリオア資金と申しますか、そういう資金の、いわゆる余剰農産物売り上げ代金中心にした資金でございます。それと、このすでに貸し付けました資金償還金とが中心になっておるわけでございますが、そういう資金におきまして、新規のそういう資金投入がもうなくなってきたというのが実情でございます。
  17. 岡田宗司

    岡田宗司君 その資金がなくなったというんだが、それは余剰農産物アメリカ側がもう沖繩に出さなくなったと、こういうことですか。
  18. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 従来、一九五〇年以降米民政府のいわゆる出資額としまして毎年度二百万ドルから百万ドル、多いときには三百万ドル程度、一九六三年まで出資があったわけでございます。ところが、一九六三年で申しますと二百万ドル出資があったわけでございますが、一九六四年以降その新規出資がない。で、利益剰余金等でまかなってきた関係で、だんだん新規融資分の原資が少なくなってきたというのが実情でございます。
  19. 岡田宗司

    岡田宗司君 その米民政府出資しなくなった理由ですね、これはドル節約によるものですか。
  20. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) これは一九六四年からでございますから、特にドル危機の問題なり、そういう問題ではございませんで、むしろ、沖繩におけるそのほかの直接投資をしなくちゃいかん部分がふえてきた。たとえば水道でございますとか、あるいは電気でございますとか、その他の関係投資がふえた影響ではないかと、私どもはさように考えております。
  21. 岡田宗司

    岡田宗司君 これはドル危機には直接関係はないでしょうけれども、その前からアメリカ側が海外で使うドル節約をやっていた。そういうことと関連があって、つまり、沖繩の民生のために使う金はしぼっていく、しかし、水道であるとか、あるいは電力であるとか、つまり、発電とか、こういう、アメリカ沖繩に行っておる軍の需要に関係のあるもののほうへ金を回わす。こういう政策のためではないですか。
  22. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) その詳しい内容は私どもははっきりはっかんでおりませんけれども、しかし、全体として最近の資金が四千八百万ドル前後になったわけでございまして、したがいまして、そのうち出資した額が二千六百万ドル前後になっておるわけでございます。したがいまして、そういう体制で一応安定さしていきたいという気持ちがあったことと、それから、まあここ二、三年来、実は開発金融公社で公債を発行する、最近その結論が大体出たようでございますが、そういう動きもございましたので、この新規出資をやめたというようなことに関連しておるのではないかと私は考えております。
  23. 岡田宗司

    岡田宗司君 余剰農産物売り上げ代金は相当ここに入っているわけですね。この分はどうなんですか。
  24. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 現在は入れておりません。
  25. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、つまり、余剰農産物はもう沖繩へ来てないのか、あるいは、来ていてもその代金はすぐにアメリカに払われてしまっているのか、そこはどうですか。
  26. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 現在は余剰農産物売り上げ代金は、公法四八〇号というのに基づく開発金融公社米側から委託を受けて、公法四八〇号に基づく貸し付け金として運用しておる、したがって、開発金融公社の一般資金の中へ入ってこない、こういうことになっておるようでございます。
  27. 岡田宗司

    岡田宗司君 それは別個に融通はされておるのですか。融資されておるのですか。
  28. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) そのとおりでございます。
  29. 岡田宗司

    岡田宗司君 それは従来総額でどのくらいになっておりますか。
  30. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 一九六七年六月三十日現在におきまして七百八十万三千ドルでございます。
  31. 岡田宗司

    岡田宗司君 つまり、琉球開発金融公社の仕事は、資金量が非常に減ったために縮小された、こういうことになっているわけで、まあ、米軍政府でも、縮小されたものであるならば、琉球政府側に委譲してもよろしい、こういうことになってきているのですかね、その点どうなんです。
  32. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) まあ私どもは、委託されたそういう、いま申しました四八〇号の貸し付け金の問題もありますから、全体といたしましては、米民政府で管理してきた体制を続けたいという気持ちは依然としてあると思います。しかし、過般の日米琉諮問委員会琉球政府側から特にこの移管の問題を強く議題にして、移管を検討してもらいたいという申し出があって、そこで、それではひとつ本土の民間の金融の専門家を長とした調査団に沖繩へ来てもらって、長くても半年のうちに結論を出して、その結論でこの移管問題をきめようということに民政府のほうで踏み切られた、こういうぐあいに考えておるのでありまして、特にこの原資から言っても、非常に新規投資も少なくなったからこの際移管してもいいというような事態とは、ちょっと多少違うと思うわけでございます。
  33. 岡田宗司

    岡田宗司君 それは外からの見方だからなにですけれども、日米琉諮問委員会琉球政府側の代表が出したこの問題が取り上げられたということは、大体アメリカ側でもこの機関琉球政府側に委譲してもよろしいという考え方からだと、そう推定していいでしょうか。
  34. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) この開発金融公社の移管問題は、先生御案内ように、ここ数年来の日琉双方の強い願望であったわけでありまして、実は私ども今度の二十八億円を出すにつきましても、できれば移管してもらって新しい機関をつくってということを考えていたわけでございます。そういう中で、日本政府のほうも、そういう開発金融公社の移管問題も議題にしたいということも発言しておったわけでございますが、この機会にそれじゃひとつ調査をしてその結論で考えようというその裏には、やはりそういうことも含めて米側としては考えておられるように考えるのであります。
  35. 岡田宗司

    岡田宗司君 その調査団は構成がすでにきまったのですか、もう政府のほうから委嘱したのですか。
  36. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 諮問委員会で勧告がなされまして、高瀬代表のほうから日本政府のほうへそういう話がございましたが、実はその団長に予定されておる人がいま海外旅行中でございまして、九日か十日ころにお帰りになるように聞いておりますので、そのあとで、政府側としては御当人にお会いしてよくお話ししてからきめていきたいと、かように考えております。
  37. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、この移管問題は、ことしのつまり琉球政府新規の予算年度からは間に合わないわけですね。
  38. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 今度の予算——新会計年度には間に合いません。
  39. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、今回日本側から融資をする金はこの新しい金融機関を通じてではなくて、従来の金融機関を通じて、たとえば農林漁業中央金庫ですか、あるいは大衆金融公庫ですか、ああいうものを通じて流されることになるのですか。
  40. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 御指摘のとおりでございまして、さしあたりは琉球政府の産投会計に入れまして、産投会計から特別会計を通じまして大衆金融公庫に、その産業開発資金は大衆金融公庫を通じて貸し出す。大衆金融公庫は、本土で申しますと、国民金融公庫と中小企業金融公庫の機能を兼ねておりますので、それの法律を、立法を改正してもらいまして、大衆金融公庫が取り扱っていくということになろうかと思うわけであります。
  41. 岡田宗司

    岡田宗司君 あれですね、沖繩においてはあまり大きな企業はないわけですが、農林漁業方面に対する融資というものと、それからいま言ったよう中小企業、零細企業に対する融資と二本立てになるわけですね。その片っ方の農林漁業に対するほうの融資については、いま琉球政府はどういう方法をもってやっておられるか。その資金量は十分なのか。十分でないとすれば、日本側はこれをどうめんどうを見るのか、あるいは琉球政府はその資金をどういうふうにして調達するのか、そこはどうですか。
  42. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 農林漁業中央金庫は一九五二年、昭和二十七年に設立されたわけでございますが、大体この沖繩の農林団体全体を通じまして本土の場合と比較しますと、非常に基礎が脆弱でございまして、したがいまして、農業中心的な金融機関である農林漁業中央金庫の実力と申しますか、そういう資金内容も、本土と比較しますときわめて見劣りがする。大体出資金の九割五分までは政府出資しておりまして、一九六七年末で三十六億円でございます。払い込み済みの資本金が三十六億円でございます。貸し付け残高は六十一億でございまして、もちろん中金のような系統金融の仕事もやっておりますが、この政府資金中心にしまして農林漁業金融公庫のような長期金融も扱っております。そういう面で、農林漁業の経営の合理化等にある程度貢献しておるわけでございますが、まあ全体としましては、この傘下における農林関係諸団体の力も貧弱でございますし、それから農林業、漁業そのものの産業の実態と申しますか、そういうものもそうあんまり活発ではない。そういうことから、その機能にはおのずから限界がございますが、現在は農林漁業振興のための中心的な役割を果たしておるわけでございます。
  43. 岡田宗司

    岡田宗司君 これに対しては、今度日本側からの融資といいますかね、それは行なわれないんですか。
  44. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 農林漁業中央金庫に対しましては出資が一億七千万、これは援助費の中で全くの出資でございます。それから産業開発関連資金から、二億七千万円が農林漁業に行くことになっております。
  45. 岡田宗司

    岡田宗司君 沖繩ように第一次産業に依存しておるようなところで、しかも基盤が非常に貧弱なこういうところは、やはりもっと融資すべきじゃないんでしょうかね。今度は大衆金融公庫を通じてこれは主として中小零細企業に貸し付ける。これは資金の需要が非常に大きいのでそういう措置をとられたんだと思うけれども、いまあなたの説明では、どうも農林漁業中央金庫に対する一融資の額が小さいです。沖繩産業現状から見ると、このほうも振興にもっとやはり融資をすべきじゃないかと思いますが、どうでしょう。
  46. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 沖繩農林漁業の活動の実態の問題とも関連するわけでございますが、全体の農林漁業中央金庫の資金を申し上げますと、六十六億五千八百万が全体でございまして、そのうち、いわゆる貸し付け金の回収が……
  47. 岡田宗司

    岡田宗司君 ドルで言ってくださいよ。向こうのやつはやっぱりドルでないとね、ちょっと頭に来ないんだな。
  48. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) ちょっとここでは実は円で出ておりますが、二千万ドルまで行かないわけでございます。そのうち五十七億が回収金になっています。そうしまして、財政、いわゆる産投会計からの出資が三億九千万、それから、いわゆる資金運用部の資し付け等で九億二千万、こういうことでございまして、全体の八割までは回収金でまかなっておるわけでございます。ただいま御指摘になりました今後の運営の問題等につきましては、ことしのひとつ運用の実績を見まして、私ども十分その内容についてあらためて検討もし対処をしていきたい、かように考えております。
  49. 岡田宗司

    岡田宗司君 私ども向こうへ行って見て、沖繩農業、林業というのがあるかないかということは別として、林業、それから漁業、これが非常に貧弱なんですね。そして、近代化どころの騒ぎじゃないんです。しかし、沖繩における第一次産業というものがまだ沖繩の経済の重要な基礎になっている以上は、もっとこれのめんどうを見てやって、そうして旧態依然たるものを何とかもう少し近代化への道を歩ませるようにしなければ、私は沖繩の経済全体をよくすることはできないと思う。そうすると、この面に対してもっと政府がやっぱり力をかしてやらなければならぬのじゃないか、こう考えるんで、やはりいろいろな施策が必要でしょうけれども、この金融の面においても十分に政府として力を入れるべきだ。今回のなにを見ておると、そういう面に力の入れ方が足りないように思うんですがね。それは注文ですから別にいまお答えいただかなくてもいいが、大臣の見解だけはお伺いしておきたいと思います。
  50. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) お話しの点につきましては、私も現地に参りまして全く同様に感じております。なおまた、こういうふうな農林漁業関係の開発にあたりましても、一方におきましては、御案内のとおりの甘蔗糖の生産状況等もございまして、この面におきましてもやっぱりまだまだ改良しくふうしなければならぬ面が残っております。それからまた、畜力の導入とかなんとかという面におきましても、いろいろこれからの計画を考えましても、ただいま御高見がありましたその面につきましては全く同感でございまして、われわれもその方向に向かいまして今後施策をいたしたい、かように考えております。
  51. 岡田宗司

    岡田宗司君 次に、琉球開発金融公社ですね、これが今後琉球政府側のほうに移管される、こういうことになって、何か新しい公的な金融機関ができますね。で、おそらく、これを琉球政府側に委譲してくれと言う琉球政府でも新しい金融機関についての構想を持っておると思います。日本側でもそういう構想があろうかと思います。もちろん、調査団が行って、その調査団が公式の報告を諮問委員会に出すことになって、それを基礎にして新しいものがつくられるのでしょうが、しかし、それまでになおかつ、琉球政府側にしても、日本政府側にしても、大体こういうものにしたらどうかという考え方は持っておるだろうと思います。それはどうなんでありますか。
  52. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) これは先ほどちょっと申し上げましたように、大衆金融公庫がまず国民金融公庫と中小企業金融公庫の両方の役割りを持っております。したがいまして、おそらく、かりに将来開発金融公社琉球政府に移管になった場合には、それを中心にしまして産業金融の機関としてどういう構想で整備するかという問題を検討する際には、当然大衆金融公庫との関連もまず考えなければならぬだろうと思うので、したがいまして、まあ本土で言いますれば中小企業の公庫とそれから開発銀行、本土にあります開発銀行のような機能、そういうものを大体合わしたような機能にすることが考えられるわけでございます。しかし、ただいまのところまだ、こういうぐあいにしたい、こういう構想でいたしたいという琉球政府側の意見はまとまっておりませんし、したがいましてまた、日本政府の側においても、まだそこまで具体的な構想がまとまっていないわけでございます。
  53. 岡田宗司

    岡田宗司君 大体、農林漁業中央金庫と、それから、いま言ったような開発銀行と中小企業金融公庫ですか、これが合わさったような、要するに鉱工業向けのものと、それから小企業、零細企業向けのもの、三本立てという形になる、こう理解していいですか。
  54. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) ただいま御指摘になったようなそういう考え方になろうかと思いますが、これもまだ確定したわけではございません。
  55. 岡田宗司

    岡田宗司君 それから、琉球開発金融公社に委託されている、その例の余剰農産物の売却資金、これはそのまま民政府のほうに残すのですか、それとも、それも一緒に移管されるのですか。
  56. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) この問題は、実はまだ私どもも、移管時における余剰農産物資金の取り扱い等については深く検討をして態度をきめているわけではございません。一部聞くところによりますと、琉球政府の側としては、余剰農産物資金開発金融公社出資されたものは琉球政府のものであるというようなことを考えておられるようでございますが、その資金の取り扱い等についてはまだ現在結論を出す段階になっておりません。したがいまして、専門的な調査団が行かれまして研究されまして、それについての開金のあり方についての方向が出される際には、おそらくその従来の資金の取り扱い等についてもいろいろ方針が示されるだろうと思います。そのようなことを考え、参考にしながら私どもも十分この問題を検討してまいりたいと考えております。
  57. 岡田宗司

    岡田宗司君 もしこの余剰農産物資金の運用ですね、余剰農産物売却代金の運用ということが米民政府の手元に戻されて、せっかく琉球政府のほうに委譲されて、そうして三本立ての機関ができても、これがかなりいろんな面で乱される、そういう問題が起こると思うのですよ。だから私は、米民政府琉球政府にこの機関を委譲するならば、この余剰農産物代金の運用も、これはやはり一緒にそっちへ移さるべきもので、決して民政府に残しておくべきものではない、こういうふうに思うのですがね。その点は大臣はどうお考えになるか。
  58. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) お話しの点はよく私どももわかるわけでございますけれども、ぜひそのようにやりたいと思いますが、なかなかその点は今後のいろいろ折衝もあろうかと存じます。今後の点につきましてまだ明確にお答えをいたしかねます。御意見の点は、基本的にはわれわれも同様に考えておる次第でございます。
  59. 岡田宗司

    岡田宗司君 これは、せっかくあなた方のほうで一体化する予定ならば、残しておかないほうがいいと思うので、それはもう遠慮なく、これはやはり一緒にこっちへ移してしまえというように交渉さるべきだと思うのですよ。そうしていただきたいと思います。  それから、これは直接融資の問題と関係ないのですけれども、民政府のもとに電力と水道が経営されていますね。あれは一体どうするのですか。あれがなかなか移管もむずかしい問題を含んでいると思うのですけれども、これを何とかしなければならないと思うのですが、これはどう考えておりますか。
  60. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) この琉球公社につきましても、基本的な考え方は、やはり琉球政府に移管すべきものということについては、日本政府もさように考えております。ただ、現状におきましては、いろいろ軍需民需との大体需用から見まして、水力は若干民需が多いようでございますし、また、火力は若干軍需が多いようになっておりますが、その使用の実態、それから、現実まで建設してきましたのはほとんど一〇〇%米側の力によって建設されてきたということもございますし、それから、将来の電力と水道の開発の計画というようなものとも関連しまして、たとえば水道について申しますと、将来のダム構想から言うと、基地の中ではなくて、ほかへ新規のダムをつくる計画もございますし、そういうような時点になると、移管問題も相当現実より変わってくると思います。そういう、電力についても今後の工業の発展に伴ういろんな需給のバランスも変わってまいりますし、また、新しい電力事業をどういう形で興すかということも関連しまして、将来適当な時点にはぜひひとつ琉球政府のほうに移管してもらいたい、それからまた、琉球政府自体もそのような考え方でおるわけでございます。
  61. 岡田宗司

    岡田宗司君 工業が発展していく。あるいは人口が増加していく。要するに、沖繩の経済が発展していくと、電力の需用というものがどんどんふえていくわけですね。新しい発電施設をつくらなきゃならない。その発電施設は、いまの軍側が独占的につくるということになっていきますと、これはとうてい沖繩における経済発展にマッチしたものでなく、依然として軍需第一ということになってしまうので、その面から沖繩の経済発展というものはチェックされていくと思うのですよ。現在琉球政府としては、いまの米民政府側の持っておる機関は別として、別個に琉球政府側で発電施設をつくる、あるいは水道施設をつくる、そういう計画があるのか、それに対してアメリカ側がそれを許すか、その点はどうなっておりますか。
  62. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 本島に関します限りは、非常に狭い地域でございますから、したがいまして、軍需、民需といって特に分けて発電をつくるということがはたして適当かどうか、そのこと自体も問題だと思いますが、琉球政府で現在民需だけにこの公社と離れてそういう計画を持っておるようには私どもは聞いておりません。したがいまして、どうせ琉球政府に移管してもらうなら、軍需も民需も合わした現在の電力公社の持っておる全体を琉球政府に移してもらうというほうが私は妥当だろうと思っております。
  63. 岡田宗司

    岡田宗司君 私も、まあそれができて、そうして、琉球政府側でそれを経営していくということになれば一番いいと思うのですよ。ところが、いまのままでほっておくというと、どうも、水道にしても電力にしても、民需のほうは第二にされてしまう。そうして、水道なんか、片方は夏渇水して水の使用の制限をしておるにかかわらず、基地の中ではゴルフ場の芝生にどんどんスプリンクラーで水をまいておるというような事態があるわけでしょう。こういうようなことは早くなくさなくてはならないわけですよ。だから、こういうことをいつまでも続けていたら、一体化もくそも何もあったものじゃないのです。電気でも同じだと思うのです。それを考えると、もし向こう側で手放さないということになれば、これはやはり、軍のほうは軍のほうでもっておやりなさい、しかし、琉球政府側としては人数の増加に伴ってこうしなきゃなりませんぞということぐらいでいかなきゃならぬわけじゃないですか。日本政府としてもそれを援助してやっていくということが必要なんじゃないでしょうかね、どうですか。
  64. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 現在までのところ、実は水道にしましても、電気にしましても、建設計画が全体としてマスター・プランが立てられてきましたから、したがいまして、そういう特に琉球政府単独で民需のための建設計画をつくるということにはなっていないわけでございます。しかし、そうかと申しまして、いま御指摘になりましたような点については私どもも十分理解できるわけでございますので、琉球政府のほうの意見を十分聞きまして、日本政府としても琉球政府の考え方をひとつバックアップしていきたい。ただいまのところはそういうような動きがございませんが、将来の問題としては、場合によればそういう方向も考えられるかとも思うわけでございます。
  65. 岡田宗司

    岡田宗司君 これもこの法案と直接関係がないのですけれど、高等弁務官資金というのがありますね。高等弁務官が自分の使える金としていろいろ使っているわけですが、これはなかなか政治的な目的というか、政治的な意味を持った使用が行なわれているのですね。あんなことはもうこの際やめてもらっていいと思うのですが、どうですか。あれをやめさせる提案ぐらいしたらどんなものですか。諮問委員会を通じてそれを提案したらどうですか。
  66. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 高等弁務官資金につきましては、かねてから批判なりあるいは改善なりについて各方面からいろいろな意見のあることは御指摘のとおりでございますが、まあ実態から申しますと、最近はこの高等弁務官資金の中でも、たとえばいまお話に出ました開発金融公社とか、あるいは電力、水道公社とか、そういうところへの建設資金等が相当程度出されておりまして、いわゆる一般的に御指摘になったような方向で出されておる資金は毎年漸減してまいっておるわけでございます。まあ、そういうようなこともありまして、私どもとしましては、いまの時点でこれを特に取り上げてどうこうというような気持ちはいまのところは考えていません。
  67. 岡田宗司

    岡田宗司君 あれは、自分も行ってみて聞いてみるとけしからぬのですね。非常に露骨です、とにかく。ある村の村長が簡易水道を引いてくれと、それでもって言いに行っても、その村長は革新糸だからそんなのはだめだと、こういうのですね。それから与党系のところへはそれを盛んに流す。自分も出てきて、その金を出す、資金をやるとか、そしていかにも与党の選挙政策を大いに促進するようにやっているのですね。ああいうことは、私は幾らアメリカが施政権をあすこに持っているといっても、ずいぶん人をばかにしたやり方だと思うのです。大体ああいうことをやるというのは、よほど沖繩の人たちには自治能力がないのだというふうに見くびってやっているとしか思えない。だから率直に、ああいうことはおやめなさいというぐらいに総務長官言ったらどうかと思うんですが、どうでしょう。
  68. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 御指摘の高等弁務官資金の使途やなんかにつきまして、私寡聞にしてあまりよく存じませなんだのでありますが、いまお話を承りまして、またいろいろと検討、研究させていただきます。
  69. 岡田宗司

    岡田宗司君 御存じにならないじゃ困るので、ああいうものが非常に沖繩の人たちに不愉快な感じを与えているんですね。実情は、琉球政府の諸君はあなたにそんなことは言わぬかもしれぬが、新聞社の人に聞いてごらんなさい、みんなそのやり方をよく知っていますから。あなたもひとつ、高等弁務官に会われたら、あんなやり方はおやめなさいぐらい言ったらいいと思うんですが、どうでしょう。
  70. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) ただいま申し上げましたように、ひとつよく研究させていただきとうございます。
  71. 岡田宗司

    岡田宗司君 次にお伺いしたいのは、今後資金を毎年流していくということになると、やっぱりこれは向こうの長期計画、長期の経済復興計画一いいますか、経済開発計画というか、それと関庫があるわけですが、まあ、たとえばこれから五カ年ぐらいに毎年どれぐらいずつ内地から資金を流していくのか。そういう計画は——大体の計画ですね、これはお持ちになっているのかどうか。これは大蔵省のほうでおわかりなんでしょう。
  72. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) ただいま御指摘になりました、沖繩の経済開発についてのたとえば五カ年計画のようなものがあって、それに基づいて本土政府のほうから毎年計画的に金を出すというようなことになっておればこれは理想的でございますが、現在のところ、沖繩の経済の長期計画につきましては、まだ米琉それから日本本土政府としましても検討中の段階でございまして、そういう長期的な計画を持っていないわけでございます。したがいまして、明年度の二十八億円の長期資金の計画にしましても、明年度琉球政府が想定しています資金計画に基づいて、それに従いまして琉球政府のほうでまかなえる長期資金とまかなえない部分とを区分けをしまして、その不足分に対して日本政府が援助をしたというきわめて現実的なやり方をしておるわけでございまして、まあ将来は、近い将来は、ひとつ御指摘になりましたような計画的な経済計画のようなものに基づいて長期資金が策定されれば望ましいことだと、かように考えております。
  73. 岡田宗司

    岡田宗司君 まだ長期計画ができていないから、きちっとした計画を立てて資金を流せと言うことは無理かもしれない。しかしながら、こっち側だって、まあ毎年沖繩に対する財政支出というものはふえていっているわけですね。それで、まあ沖繩における経済の発展もずっと行なわれているわけです。資金の需要が増大するということは目に見えている。いま言ったように、大衆金融公庫を通じて貸し出し額についてことしは重点を置いたわけでありますが、さっき言ったように、農林漁業のほうに対する融資日本側としては非常に少ない。しかし、これも増大しなければならない。こういうことになってきますと、来年度だってどうしてもふやさなければならぬということは言えるのじゃないですか。長いことは言わないけれども、来年はことしよりもふやさなければならないということだけは言えるんじゃないですか。どうですか。
  74. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 総理府の立場から申しますと、先生いまおっしゃいましたような気持ちに近いと思いますが、日本政府としましては、まだ来年度の計画について遺憾ながらはっきりと申し上げるわけにいかないわけでございます。ことしの運用の実態をよく見まして、御意見の趣旨も尊重しまして明年度の計画は立ててまいりたいと思います。
  75. 岡田宗司

    岡田宗司君 会計年度の食い違いですね、ことしの二十八億というのは、どうせことしの七月一日からの分でしょう。また来年の六月三十日までの分ですね。そうすると、日本政府が来年度の予算で組む分については、その次の会計年度の分になるわけですね。たとえば、来年の四十四年度の予算、それは来年の七月一日から始まる琉球政府の予算に組み入れられることになるわけでしょう。そうすると、来年度の予算においてふえていく分を組み込まないと、向こうのつまり経済の発展に追っつけないということになる。向こうの会計年度がまだ始まらないうちに出さなきゃならぬでしょう。そうすると、向こうの会計年度でちゃんと予算がきまってからこちら側がそれに応ずるのでなく、それより前にこっちで見込みをつけてふやしてやらなければならぬという問題が起こるのじゃないですか。
  76. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 会計年度が三カ月ずれておりますので、この問題については将来根本的な検討を加えて、できるなら日本政府の会計年度に合わしていくようにしないといかんと思いますが、むろん、それまでの間は、いま御指摘になりましたように、明年度の予算は三カ月後の七月からの予算ということになるのでございます。しかしながら、この会計年度が違っておりますが、私どもが策定しますたとえば百五十三億円という明年度の全体の計画で、明年の四月までことしの予算に計上する部分と、それから四月から六月までの部分とに去年から区分しておるわけでございます。したがいまして、全体としては、平年度化しますと十二カ月にわたって資金が向こうへ充当されることになります。いずれにしましても、前年度に、しかも明年の七月以降の資金需要に対して計画を組むということは非常にむずかしい点があるわけでございます。この点につきましては、琉球政府のほうで私どもの予算策定時までにできるだけ正確な見通しを立ててもらいまして、それに基づいて私ども本土政府の援助金なりあるいは財政投融資の融通額をきめていかなければいかぬ、こういうことでございます。
  77. 岡田宗司

    岡田宗司君 これ、大蔵省の理財局の資金課長さん来ておいでだから聞くのですが、沖繩に対する財政支出もどんどん出ておる。今度は財政投融資のほうもこれはおそらくそういう傾向を示すのじゃないかと思いますがね。来年度については本年度並みの増加のパーセンテージが見込めるものかどうか。ゼロということはないだろうと思うのですがね、どうでしょう。
  78. 大蔵公雄

    説明員(大蔵公雄君) ただいま先生から御指摘がございましたように、本年度から資金運用部資金が、この法律をお認めいただければ、沖繩に対して融資をするということになるわけでございまして、御指摘のように、沖繩五カ年計画と申しますか、将来のはっきりした経済開発計画ができません段階におきまして資金運用部資金を融通するということは非常にだらしがないではないかという御意見もあるかとも思いますけれども、現在、少なくとも現状におきまして沖繩方々が非常にお気の毒である、しかも、経済開発のための四十三年度におきまする融通資金が非常にショートしておる、こういうことを前提といたしましてこの法律を御審議いただくことによりまして、日本政府として沖繩に対する資金を融通するということをおきめいただきたいと考えておるわけでございまして、私どもといたしましても、できるだけ早く沖繩の経済開発五カ年計画というものがやはり相当しっかりしたものができ上がりまして、それに伴いまして毎年毎年日本政府として沖繩に対して出しまする金が確定をいたしますればそれにこしたことはないと考えておるわけでございますが、いずれにいたしましても、経済開発の進展に伴いまして資金需要が徐々にふえていく、できるだけそれに即応して考えていきたいというふうには考えているわけでございます。ただし、現在の段階におきまして明年度どのくらいふやすつもりがあるかというような御質問でございましたら、私もはっきりしたお答えをいたしかねるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、かかる資金運用部資金というものの融通を日本政府といたしまして踏み切りました以上、それが有効に使われますように、沖繩の経済開発に対しできるだけ協力をするという姿勢で対処していきたいと考えております。
  79. 春日正一

    ○春日正一君 二十八億円ですか、財政資金投資するわけですけれども、その渡し方ですね、これはどういう形になるわけですか。
  80. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 日本政府のほうから向こうの産業投資特別会計というところを通しまして、それぞれの、たとえば農林中金あるいは大衆金融公庫等への資金供給がなされるということでございます。
  81. 春日正一

    ○春日正一君 つまり、こういうことですか。日本政府から直接に琉球政府の産投会計に入ると、それが今度は、いま言った琉球開発金融公社ですか、それにこう入ってくると、こういう経路をとるわけですか。
  82. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 開発金融公社へは行きません。これは開発金融公社の移管問題が片づきませんから、したがいまして、その分は向こうの大衆金融公庫という琉球政府が管理している金融機関に渡します。
  83. 春日正一

    ○春日正一君 そうすると、その使い道はどうなっておりますか。
  84. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) これは各金融機関につきまして、琉球政府側でそれぞれ業務方法書をつくっておりまして、その業務方法書に基づきまして、たとえば漁船建造でございますとか、あるいは農業関係資金とか、あるいは観光その他産業資金にそれぞれ供給されるわけでございます。もっぱら琉球政府で、各公庫でつくっておられます業務方法書、さらにはその公庫の立法、それぞれの法律に従って運用されるということでございます。
  85. 春日正一

    ○春日正一君 そうするとあれですか、二十八億入れてやって、そういう形で琉球政府がきめる、どこへどれだけ分配されて、どう使われるということははっきりしてないのですか。
  86. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) ですから、大衆金融公庫へ幾ら、あるいは農林漁業金融公庫へ幾ら、そういう大ワクは日本政府のほうで、この協議委員会できまっておりまして、その中の資金をどう使うか、その各事業別のこまかい資金量は、これはそれぞれの公庫がきめていくということになろうかと思います。
  87. 春日正一

    ○春日正一君 そのわかっているところまで、農林漁業ですか、大衆金融公庫ですか、こういうものにどれだけというようなことはわかっていますか。
  88. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 農林中金に対しましては二億七千万、それから漁船建造資金特別会計に一億、大衆金融公庫に九千万、産業開発特別会計、これは特別会計を通じて大衆金融公庫へ行く金でございます。産業開発特別会計へ十二億六千万、それから住宅建設特別会計に十億八千万でございます。
  89. 春日正一

    ○春日正一君 住宅のほうですね、そうすると、これは特別会計というのは琉球政府の特別会計になっておるわけですか。
  90. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) さようでございます。
  91. 春日正一

    ○春日正一君 沖繩の住宅の事情ですね、これはどういうふうになっていますか。
  92. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) まあ、沖繩の住宅事情につきましては、実は本土以上に那覇市に集中する度合いが相当高いというような事情もございまして、住宅難世帯本土の場合より相当多いわけでございます。一九六〇年に、昭和三十五年に調べた調査によりますと、全沖繩の住宅難世帯は五万四千世帯、住宅難の率が約二八%と報告されております。特にその場合、那覇市の住宅不足が非常に著しくて、約二万戸であるということがいわれております。これに対しまして琉球政府は鋭意住宅の整備をはかってまいっておりますが、現時点におきましてもまだ住宅不足状況は相当深刻であるというぐあいに考えられます。
  93. 春日正一

    ○春日正一君 住宅で一番困っている人、どういう人たちが困っていますか。
  94. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) その階層別には私も詳しくわかりませんが、一般的に申しまして、やはり低所得者階層の人が多いのじゃないかと思います。
  95. 春日正一

    ○春日正一君 今度の住宅建設に入れられる金はどのくらいでしたか、この中で。
  96. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 十億八千万の資金をもらまして大体約一千戸の——日本住宅金融公庫で貸し付けて住宅を建てさせておりますが一あれと大体同じような方式で約一千戸を建設したい。このほかに、実は公営住宅の建設に対しまして約二百六十戸程度援助金で見ることになっております。
  97. 春日正一

    ○春日正一君 そこのところですね、低所得者が一番困っている。こういう人たちは、これは百万円借りて家建てて払ってということはなかなか困難です。一定の資産なり所得のある人は公庫から借りてこれは建てられますけれども、むしろ公庫から借りられない人が一番困っているし、一番解決してやらなければならぬ。そういう場合に、公営のほうにはたった二百六十戸、金借りて建てるほうは千戸というのは、これはおかしいじゃないですか。
  98. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) これは、いま申し上げましたのは、日本政府の援助費に関連して申し上げたのですが、全体では琉球政府の明年度の建設計画は千八百二十戸でございます。公営住宅が五百二十戸でございます。それから、琉球土地住宅公社が三百戸ございまして、そのほかに千戸の長期資金による住宅建設があるわけでございます。
  99. 春日正一

    ○春日正一君 いまこれで意見聞くのは、これは日本本土の場合でもそうですけれども、一番困っている人、そういう人たちは一番劣悪な住宅条件に住んでいるわけですね。大体、自分で頭金つくって金借りて返していけるという人は、まあまあ、困っているといっても、ある程度住宅らしいものに住んでいるという場合が多いのですが、しかし、東京の多くの場合を見ると、四畳半に何人、そういう人が非常に多い。だから、やはり政府が一体化ということで沖繩の県民の一番困っている問題にこたえて金を使うということにすれば、やはり公営住宅というようなもの、一番困っている人々のためのものをたくさん出すようにしなければならないのじゃないか。そういう点から見ると、このいま説明された二百六十戸あるいは琉球政府の千八百戸の中でも、公営は五百何十戸ですか、というような比率を見ると、これは逆になっておる。私はやはり公営住宅をたくさん建てて、自力で自分の気に入った家を建てたいという人には融資をしてあげるというたてまえにしてあげないと、ほんとうの住宅の要求にこたえるということにならないのじゃないか、そういうふうに私は考える。その点、長官どういうふうにお考えですか。
  100. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) これは春日先生のおっしゃるとおりでございますが、しかし、いまの計画は、これはわれわれのほうの事務当局と先方の琉球政府とのいろいろ打ち合わせでさようになっておると考えるのでございます。琉球政府自体どのような公営と一般との関係の需給状況にありますか、私、つまびらかでございませんが、その点、ひとつ、交渉にあたりました当局から、ちょっと詳しく申し上げさせます。
  101. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) まあ、公営住宅につきましても、実は日本政府昭和三十八年度ころから毎年度百内外のものを建ててまいっていまして、それで、特に一昨年でございましたか、宮古台風がありまして百九十戸の援助を行なったわけでございます。で、明年度は、琉球政府のほうも、いま申しました五百数十戸をぜひ建設したいという要望もございまして、五百二十戸の中の約半分——二百六十戸という戸数の援助を行なうことにしたわけでございます。で、その後におきまして、実は財政投融資の問題が出まして、まあ住宅が不足だからとにかく住宅についてひとつ十億前後のものを援助しよう、そうすれば一千戸というものが解消できるのではないかということで、私ども、そういう琉球政府の要望を入れて計画化したわけでございます。したがいまして、むしろ、従来建てていました公営住宅を倍に、公営住宅の基準を、去年から比較しますと約七十戸ふえておりますが、ふやしたほかに、新しくそういう千戸が建つ、こういうぐあいに御理解をいただきたいわけでございます。で、もちろん、そう申しましたからといいましても、ひとつ今後とも、そういう公営住宅、低所得者層の住宅に対しましては、私どもも今後十分力を入れてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  102. 春日正一

    ○春日正一君 それで、産投会計の十二億という金が一番多いんですが、これが大体どういうように使われるわけですか。
  103. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) この産投会計に対しましては、いま申しましたように、この大衆金融公庫が引き受け機関になってやるわけでございますが、これは、沖繩産業開発のための各種の中小企業の振興のための一般的な資金でございまして、たとえば木材加工業もございますし、あるいは砂糖・パインの関係産業もございますし、あるいは海運振興等の資金にも向けられますし、また、その他沖繩の一般的な地場産業の面に充当されるものと考えております。
  104. 春日正一

    ○春日正一君 この大衆金融公庫というものの性格、それからその営業の内容ですね、そういうようなものはどういうあれなんですか。こっちのことばで言うと「大衆金融」と言うから、まあちょっと、えらい、こう大衆の零細なものだけを対象にしたように考えられるのですけれども、そういうものだけを対象にするのか。
  105. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 先ほど岡田先生の御質問にもお答えしましたが、一方では、いわゆる国民金融公庫の機能を果たしておる、その面では生活資金なりあるいは生業資金の全く庶民金融をやっておる。それからもう一つの性格は、中小企業金融公庫の役割りをしておりまして、中小企業の近代化、合理化のための資金貸し付けを行なう、こういう両方の性格を備えたのが大衆金融公庫でございます。
  106. 春日正一

    ○春日正一君 そうすると、それはそういうふうに性格ははっきりさしておるわけですか、中小企業に限るというようなふうに。
  107. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) それははっきりしております。
  108. 春日正一

    ○春日正一君 それじゃ、衆議院の特別委員会で、この法案に対する附帯決議が出て、「基地依存経済の体質を改善し、経済の自立体制とその安定した発展を確保するため長期計画を速やかに樹立すること」というふうに言っていますが、まあ、アメリカのほうでは、アメリカは無制限な基地の使用を認めない限りこれを手放すことは不可能だというようなことを、最近でもザブロッキという人は言っているのですね。そうすると、いまあれほどこの基地が大きな比重を占めている沖繩産業が、先ほど言われたように、電力から水道から金融から、みんなアメリカに握られてしまっているというよう状態のもとで、どういうふうにしてこの基地の依存経済というものを体質改善しようとするのか、できるのか、そういう見通しですね、考え方、そこらを聞かしてもらいたいのですがね。
  109. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) まあ、非常にむずかしい問題でございますが、沖繩本土復帰に備えまして、沖繩の経済の自立する力をだんだんに増強していかなきゃいかぬことは、これはもう間違いのないことでございます。したがいまして、そういう面から、沖繩のたとえば五カ年計画とか、あるいは十カ年計画とか、将来の展望を包含しました一つの長期経済計画をつくろうということで、現在米琉において検討され、また、日本政府としましてもそういう方向で検討を加えてまいりたいと考えておるわけでございます。ただ、それじゃ、どういう方向でという御指摘でございますが、まあ、長期的に見ましたら、沖繩の経済的な地位と申しますか、日本の東南アジアとの経済関連から見た沖繩の地位を利用した中継基地とか、あるいはその他亜熱帯農業の研究機関とか訓練機関とか、あるいはそれに伴います観光産業的な分野の開発とか、あるいは沖繩の海運業の将来をどういうぐあいに持っていくか、あるいは漁業の面でどういう余地があるか、農業におきましては畜産業をどういう方向で振興していくか、現在の砂糖とパインとの合理化の方向はどういう方向があるか、どういう形で合理化していくか、そういうような全体にまたがって相当慎重な調査と検討の結果立てていかなきゃなりませんが、結論的に申しまして、いま御指摘にもございましたように、沖繩の自立経済体制の方向で計画を策定していくということになろうかと思うわけでございます。
  110. 春日正一

    ○春日正一君 自立経済の問題について、たとえば、沖繩経済界の首脳といわれるような人たちですね、こういう人たちの中でたとえば那覇の市長の西銘という人は、コザで即時復帰反対協議会というものをつくられたときに、これはコザの業者だけの声じゃない、経済界全体のほんとうの声だというようなふうに言って、ほんとうに復帰すること自体にいわゆる経済界といわれる人たちの中で不安を示して、復帰反対というような声まであげておる。それから、開金の総裁も、復帰して一体どれだけの経済的利点があるだろうかということで、そういうことでだいぶ疑問を持っているということになりますと、やはり基地依存の経済から本土の一部としての自立的な経済に変えていくという問題は相当大きな問題だし、やはりそこでの沖繩の経済全体のやっぱり支配というか何というか、そういうものを変えていくというかまえになりませんと、これはせっかく附帯決議がつけられても、できないことになるのだけれども、そういう点は政府はどう考えておられますか。
  111. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 現在の経済体制を抜本的に自立経済体制に切りかえていくという方策は、前回も申し上げましたように、なかなか具体的にはむずかしい問題がたくさんございます。したがいまして、私どもとしましては、少しでも基地経済の依存度を減らしていくと申しますか、沖繩のいわゆる自立経済体制、そういうものに近づくようなあらゆる可能性を、沖繩という地理的な、風土的な、産業的な実態の中から発見していかなければならないわけでございますから、したがいまして、相当問題はむずかしい問題ではございますが、そういう方向でできるだけの将来に向かっての沖繩産業の自立体制への可能性をさがしていく、それを長期的な計画の中へ反映さしていくという方向で検討を続けたいと思います。
  112. 春日正一

    ○春日正一君 たとえば、さっき岡田委員のほうから水道と電力の問題が出されたのですけれども、金融の問題でも、あれでしょう、日本から入っていっている資本というものは、金融関係は入っていっていますか。
  113. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 本土からの資金も相当沖繩には進出しております。現状では、ほぼアメリカ投資額と同じ程度のものが現在は行っております。たとえば砂糖でございますとか、パインでございますとか、あるいはホテルでございますとか、その他一般的に大体米国と同じ程度の割合の投資が向こうで行なわれておるというのが実情でございます。
  114. 春日正一

    ○春日正一君 私の言っているのは、金融機関ですね、たとえば開発公社がある。これはいまのところ民政府機関で、アメリカの純然たる政府機関みたいなものです。それから琉球銀行がある。これも五一%をアメリカ政府が持っているから、ほとんどが政府機関になっている。軍政府機関みたいなものです。これがほとんど沖繩の金融を支配している。そういうふうな状態になっている。こういう状態をそのままにしておいて、端のほうから少しずつ金を入れてやるといったようなことをしておりても、ほんとうに基地依存経済というものから自立していくとか、あるいは日本政府が望んでおるような形の経済に持っていこうというようなそういう効果が出てこないのではないか、金融機関をきちっと握られてしまっていたら。
  115. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 御指摘はドル経済と円経済の問題だろうと思うわけでございますが、日本沖繩との経済関連がいまより相当飛躍的に密接、密着しまして、日本の経済の寄与率が、たとえば米側の経済寄与率よりも相当ウエートが変わっていくというような時点になりますれば、復帰前においても円経済への切り換えは検討していかなければいかんと思います。ですから、また、そういう経済金融について、円経済のもとに置かれれば、あらゆる面の一体化施策、あるいは自立経済の体制も推進しやすいことも、これは事実でございます。しかしながら、現在の時点におきましては、そういう問題を検討することは、もつ一沖繩住民全体の不安とか動揺とかいうような問題にもつながる問題でございますから、したがいまして、十分慎重に検討してから対処したい、かように私どもは現在は考えておるわけでございます。
  116. 岡田宗司

    岡田宗司君 この問題は少しその問題と離れているのですが、この間沖繩で個人タクシーの免許問題で汚職事件があった。小渡副主席以下が逮捕される事態があった。どうもこういう汚職問題で本土沖繩一体化なんというのはまことに困った問題ですね。そのほうが先に行っちゃったんですね。そこで問題になるのですが、今度この法律が通った、資金運用部資金など、簡易生命保険年金、郵便貯金、特別会計の積み立て金が向こうに流れるわけです。貸し付ける。本土だととにかく会計検査院の検査を受けなきゃならぬことになるわけでしょう。向こうに流れたやつはどこが検査するのです。
  117. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) この融資につきましての検査は、実は本土におきましても、府県市町村のこういう融資についての検査は、一般の補助金とは違って、それほど厳密と申しますか、むしろ詳細な検査は行なわれておりませんが、現在会計検査院等では検査を行なっておるわけでございます。そこで、沖繩の場合も、もちろんこの融資につきましては総理府が会計検査院に委嘱いたしまして毎年度援助金の監査をしてもらっておるわけでございますが、それと合わせまして会計検査院に監査を委託をしたい、かように考えております。
  118. 岡田宗司

    岡田宗司君 これは現地に行って監査できますか。
  119. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 現在までも四、五人で二週間ぐらい現地で監査をしておられます。したがいまして、この融資についても同じようにやっていく。
  120. 岡田宗司

    岡田宗司君 これはアメリカの施政権とは衝突しないのですか。
  121. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) これはいろいろ問題はございましょうが、援助金の覚書で毎年度とりきめておりまして、総理府が会計検査院に委嘱して援助金の監査をする、そして、その報告日本政府、それから米民政府琉球政府へ出すということになって、そのとおり実行してまいっております。
  122. 岡田宗司

    岡田宗司君 実はこれから日本側から多額のこういう資金が流れると、さて向こうでこれを貸し付けをする場合に、汚職が起こらぬとも限らぬでしょう、この間の例から見ると。そういうときに、それが起こらないようにすることについてよほど十分な監査が行なわれなきゃならぬ。そういうことが未然に防げるよう措置も講じなきゃならぬ。それは何か方法がありますか。
  123. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) この政府の援助金、従来援助金等をめぐってどうこうという問題が起きたことは現在まで一件もございません。したがいまして、融資につきましてもそういう問題が起ころうとは、起こることは私ども考えておりませんが、しかし、融資が所期の目的どおりの効果をあげるように運用されることを私どもは期待しておるわけでございまして、したがいまして、この融資の方法なりあるいはその運用のしかた等については、あらかじめ日本政府へも十分相談していただいて実施していただくように取り運びたいと考えておりまして、まあ、そのようなことによりまして、万が一懸念されるような場合に対処したいと考えております。
  124. 岡田宗司

    岡田宗司君 いままで起こらなかったと言っても、この間のタクシー免許汚職を見ていると、かなり上のほうまで巻き込まれているのですね。そうすると、起こらないという保証もないと思うし、こんなことで本土との一体化が進められていったんじゃ困るので、ひとつそのチェックする方法を十分やっぱりこれは講じなければいけないじゃないか。それについては特段の監督というか監査というか、そういうものを必要とすると思うのですがね、大臣、その点についてどうお考えですか。
  125. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 御指摘の点でございますが、ただいま担当官から申し上げましたように、今日までも会計検査院のほうは、異例な措置ではございますが、実質的にはずいぶんいたしております。今後はますます一体化の緊密な交流が行なわれるわけでございますから、なお一そうさようなことに留意しなければいかんと、かように考えております。これにつきましては、ひとつ琉球政府を信頼をいたすと同時に、また、さようなことも起こりませんようにいたしたいものだ、かようにいま考えております。
  126. 岡田宗司

    岡田宗司君 もう一点お伺いしますが、先ほど春日委員がちょっと触れた問題ですが、いま沖繩における金融機関は、本土側の銀行は一つも出ていないのですね。そして、まあ地元の銀行、相互銀行と、アメリカ糸の銀行が二つ、大きな力を持っている。特にアメリカ系の銀行が非常な力を持っている。まあ、こういうことで、先ほど春日委員もその点を指摘されたわけですが、この日本側の銀行がまた出ると、これは問題もありますけれども、いま日本側の銀行が向こうへ出ておらないということは、これはアメリカ側がチェックしているのか、それとも、日本の銀行側が自制をして出しておらないのか、それからまた、将来その問題がどうなるのか、その点はどうお考えになっておりますか。
  127. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 私も金融は詳しい専門家ではございませんので、御納得のいくような御答弁、できるかどうかと思いますが、現在沖繩ドルの経済下にありますのと、それから、現実に米国の経済寄与率と申しますか、そういう経済との関連が米側が圧倒的に全体としては大きいわけでございます。それで、日本政府の直接的な関連としましては、今度の予算で言いますと、百五十三億というのが直接援助金として参りますし、また、その他いろいろ恩給その他の民間の人に支給する、そういう恩給等の問題はございますけれども、全体として日本の経済との関連が米側と比較しては相当格差があるというのも事実だろうと思います。したがいまして、現在日本の金融機関が向こうへ進出して直接活動しなければいかんというような実態には置かれていない、端的に申しましてですね。したがいまして、先ほど御答弁申し上げましたように、そうかといって、沖繩本土復帰するような場合を考えつつ、適当な機会には、やはりドル経済から円経済の問題を真剣に検討する時期も必ず来る。その時点は、やはり日本沖繩との経済が、アメリカよりもさらに密接な関係に立つ時点ではないかというぐあいに私どもは想定するわけであります。したがいまして、そういう時点で円経済に切りかえるというようなことになれば、日本の金融機関も進出をしなければいかんし、また、当然進出していくだろうというぐあいに考えるわけでございまして、現在、現時点においてはそういう実質的な意味において必要性が薄いというのが実態じゃないかと、かように考えます。
  128. 岡田宗司

    岡田宗司君 沖繩本土との金利ですね、金利の差はどうなっておりますか。
  129. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 従来政府金融機関——まあ主として開発金融公社ですが、この金利は日本政府関係機関の金利より低い。ところが、民間の金利は大体本土と同じ程度であると、かように承知しております。
  130. 岡田宗司

    岡田宗司君 政府のこういう財政投融資が行なわれるようになり、ますます資金量はふえていくということになって、沖繩の全体の金利を引き下げ得る可能性がありますか。
  131. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) まあ、現在の程度資金融通の量から申しましても、このために特に沖繩の金利が下がっていくというほどの影響力はないと思いますが、今後やはりこの運用が重なりまして、わが国の資金融通が強化されていくような時点になりますと、その結果が沖繩全体の金利にも影響を及ぼすようなことにもなろうと思います。
  132. 岡田宗司

    岡田宗司君 いま沖繩ドル経済の範囲ですね。ドル経済の範囲であるとすれば、沖繩の金利というのは、本来アメリカ並み、あるいは海外だから、少し低いくらいでいいのじゃないか。それが民間金融が日本並みというのは、沖繩の経済にとっちゃ高過ぎるのじゃないか、これはどうお考えでございますか。
  133. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 非常にむずかしい問題で私もよくわかりませんが、まあ沖繩日本本土とのいろいろ金融機関の営業の実態等から見ますと、資金コストの面から見ますと、そういう本土なら本土の各府県とそう相違ないじゃないか。むしろアメリカの非常に機械化された、合理的な金融機関の運営されている実態から来る資金コストとはやはり沖繩のほうが高くなるのがあたりまえじゃないか、私どもは常識的にはそのように考えるわけでございます。
  134. 伊藤五郎

    委員長伊藤五郎君) 本案に対する本日の質疑は一応この程度といたします。  なお、次回の委員会は五月十五日に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時二十分散会      —————・—————