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1968-03-14 第58回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年三月十四日(木曜日)    午前十時四分開議  出席分科員    主査 野原 正勝君       小沢 辰男君    川崎 秀二君       石野 久男君    川崎 寛治君       北山 愛郎君    中村 重光君       楢崎弥之助君    華山 親義君       堀  昌雄君    帆足  計君       八木 一男君    広沢 直樹君    兼務 田中 武夫君 兼務 西風  勲君    兼務 折小野良一君 兼務 田中 昭二君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 水田三喜男君  出席政府委員         警察庁保安局長 今竹 義一君         大蔵政務次官  倉成  正君         大蔵大臣官房長 亀徳 正之君         大蔵大臣官房会         計課長     村田  博君         日本専売公社監         理官      前川 憲一君         大蔵省主計局次         長       相沢 英之君         大蔵省主計局次         長       船後 正道君         大蔵省主税局長 吉國 二郎君         大蔵省関税局長 武藤謙二郎君         大蔵省理財局長 鳩山威一郎君         大蔵省証券局長 広瀬 駿二君         大蔵省国有財産         局長      大村 筆雄君         大蔵省銀行局長 澄田  智君         大蔵省国際金融         局長      柏木 雄介君         国税庁長官   泉 美之松君         通商産業省鉱山         局長      両角 良彦君  分科員外出席者         大蔵省銀行局保         険部長     新保 實生君     ————————————— 三月十四日  分科員川崎寛治君、北山愛郎君及び楢崎弥之助  君委員辞任につき、その補欠として石野久男  君、華山親義君及び八木一男君が委員長指名  で分科員選任された。 同日  分科員石野久男君、華山親義君及び八木一男君  委員辞任につき、その補欠として川崎寛治君、  中村重光君及び楢崎弥之助君が委員長指名で  分科員選任された。 同日  分科員中村重光委員辞任につき、その補欠と  して帆足計君が委員長指名分科員選任さ  れた。 同日  分科員帆足計委員辞任につき、その補欠とし  て堀昌雄君が委員長指名分科員選任され  た。 同日  分科員堀昌雄委員辞任につき、その補欠とし  て北山愛郎君が委員長指名分科員選任さ  れた。 同日  第一分科員折小野良一君、第三分科員田中昭二  君、第四分科員田中武夫君及び第五分科員西風  勲君は本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十三年度一般会計予算大蔵省所管  昭和四十三年度特別会計予算大蔵省所管  昭和四十三年度政府関係機関予算大蔵省所管      ————◇—————
  2. 野原正勝

  3. 倉成正

    倉成政府委員 ただいまから、昭和四十三年度一般会計歳入予算並びに大蔵省所管一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び各政府関係機関収入支出予算について御説明いたします。  まず、一般会計歳入予算額は五兆八千百八十五億九千八百万円でありまして、これを前年度予算額五兆二千三十四億三千六百万円に比較いたしますと六千百五十一億六千百万円の増加となっております。  以下、歳入予算額のうち、おもな事項について内容を御説明いたします。  第一に、租税及び印紙収入総額は四兆六千九百七十八億五千二百万円でありまして、前年度補正後予算額に比較いたしますと六千二十五億六千百万円の増加となっております。  この予算額は、現行の税法によって見積もった場合の租税及び印紙収入見込み額四兆七千五百二十八億六千六百万円から、今次の税制改正における所得税減税租税特別措置拡充等による減収見込み額一千九十一億六千八百万円を差し引き、これに租税特別措置整備合理化及び間接税負担適正合理化による増収見込み額五百四十一億五千四百万円を加算したものであります。  次に、各税目別におもなものを申し上げますと、まず、所得税につきましては、今次の税制改正における中小所得者負担軽減重点を置いた課税最低限引き上げ等による減収額一千五十億七千三百万円を見込み、一兆四千六百五十七億五千七百万円を計上いたしました。  法人税につきましては、今次の税制改正における輸出の振興、技術開発の促進、中小企業構造改善等による減収額四十億九千五百万円及び租税特別措置整備合理化による増収額四十億九千五百万円を見込み、一兆四千七百六十四億九千九百万円を計上いたしました。  酒税につきましては、今次の税制改正における負担適正合理化による増収額四百五十億三千七百万円を見込み、五千五百三十三億六千百万円を計上いたしました。  物品税につきましては、今次の税制改正における暫定措置整理による増収額五十億二千二百万円を見込み、二千三百二十一億六千四百万円を計上いたしました。  以上、申し述べました税目のほか、揮発油税三千七百二十三億七千三百万円、関税二千六百八億二千五百万円、印紙収入一千七百二十五億三千六百万円及びその他の各税目を加え、租税及び印紙収入合計額は四兆六千九百七十八億五千二百万円となっております。  第二に、専売納付金は二千三百十七億九千百万円でありまして、前年度予算額に比較いたしますと六百十五億三千七百万円の増加となっております。  これは、アルコール専売事業特別会計納付金において八億九千八百万円減少いたしますが、日本専売公社納付金において製造たばこ小売り定価引き上げ等により六百二十四億三千六百万円増加することによるものであります。  第三に、官業益金及び官業収入は二十五億七千六百万円で、前年度予算額に比較いたしますと百三十七億二千百万円の減少となっております。  これは、印刷局特別会計受け入れ金において三億八千六百万円増加いたしますが、病院収入において国立療養所国立病院特別会計へ移したこと等により百四十一億七百万円減少することによるものであります。  第四に、政府資産整理収入は二百十八億九千百万円で、前年度予算額に比較いたしますと二十六億二千六百万円の減少となっております。  この収入のうち、おもなものは、国有財産売払収入百四十一億九千二百万円、地方債証券償還収入六十七億四千二百万円等であります。  第五に、雑収入は一千七百二十七億五千百万円で、前年度予算額に比較いたしますと八十八億七百万円の増加となっております。  この収入のうち、おもなものは、日本銀行納付金八百三十二億三千百万円、日本中央競馬会納付金百六十五億六千五百万円、懲罰及没収金三百三十一億三百万円等であります。  第六に、公債金は六千四百億円で、前年度予算額に比較いたしますと九百十億円の減少となっております。  この公債金は、財政法第四条第一項ただし書きの規定により、公共事業費出資金及び貸付金財源に充てるため発行する公債収入を見込んだものであります。  最後に、前年度剰余金受け入れにおきましては、昭和四十一年度決算によって同年度に新たに生じた剰余金五百十七億三千五百万円を計上いたした次第であります。  次に、当省所管一般会計歳出予算額は五千五百五十一億八千七百万円でありまして、これを前年度予算額三千九百四十四億九千六百万円に比較いたしますと一千六百六億九千百万円の増加となっております。これは、国債費において九百四十八億七千九百万円、特殊対外債務等処理費において七億八千九百万円、対外経済協力費において二十五億七千四百万円、予備費において六百七十億円を増加いたしましたが、他方、政府出資金において七十五億一千万円、海運業再建整備日本開発銀行交付金において十五億九千九百万円、産業投資特別会計繰り入れにおいて二十三億円の減少を見たこと等によるものであります。  この歳出予算額を、まず組織ごとに分けますと、大蔵本省四千六百六十六億九千五百万円、財務局九十六億九千五百万円、税関八十二億三千七百万円、国税庁七百五億五千八百万円となっております。以下、この歳出予算額のうちおもな事項について内容を御説明いたします。  まず国債費につきましては二千十二億六千百万円を計上いたしておりますが、この経費は、一般会計負担に属する国債償還国債利子及び大蔵省証券発行割引料支払い並びにこれらの事務取り扱いに必要な経費を、国債整理基金特別会計繰り入れるものであります。このうち、国債償還財源に充てる額につきましては、前年度首国債総額の百分の一・六の定率繰り入れ分百四十八億六千八百万円、財政法第六条の規定に基づく四十一年度決算上の剰余金の二分の一に相当する額百十三億七千七百万円及びその他国債償還に必要とされる額四百三十億一千六百万円、計六百九十二億六千三百万円を計上いたしております。  公務員宿舎施設費につきましては九十二億四千五百万円を計上いたしておりますが、この経費は、国家公務員に貸与する宿舎の設置に必要な経費でありまして、公務員宿舎の現況にかんがみ、前年度と同程度の戸数を確保し、その充足をはかろうとするものであります。  政府出資金につきましては、中小企業信用保険公庫等機関に対し、一般会計から出資するため必要な経費として百八十五億円を計上いたしておりますが、その内訳は、中小企業信用保険公庫九十五億円、新東京国際空港公団三十億円、海外経済協力基金六十億円であります。  海運業再建整備日本開発銀行交付金につきましては三十二億六千五百万円を計上いたしておりますが、この経費は、海運業再建整備に関する臨時措置法に基づき、日本開発銀行整備計画を実施中の会社に対し、外航船舶建造融資にかかる利子支払いを猶予することに伴い、その猶予する利子相当額日本開発銀行に交付するものであります。  特殊対外債務等処理費につきましては三百四十三億二千五百万円を計上いたしておりますが、その内訳は、賠償等特殊債務処理特別会計法第一条に規定する賠償等特殊債務処理に充てるための財源を、同会計繰り入れるために必要な経費百九十億円、日本国ビルマ連邦との間の経済及び技術協力に関する協定に基づいて負担する債務処理に必要な経費四十二億一千二百万円、財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定に基づいて負担する債務処理に必要な経費九十一億五千二百万円、日本国とマレイシアとの問の一九六七年九月二十一日の協定に基づいて負担する債務処理に必要な経費九億八千万円及び日本国シンガポール共和国との間の一九六七年九月二十一日の協定に基づいて負担する債務処理に必要な経費九億八千円万となっております。  対外経済協力費につきましては三十五億四千六百万円を計上いたしておりますが、この内訳は、ラオス外国為替操作基金に対する拠出金六億一千二百万円、ナムグム開発基金に対する拠出金三億六千万円及び発展途上国食糧問題解決に寄与するために行なう援助に必要な経費二十五億七千四百万円であります。  産業投資特別会計繰り入れにつきましては五百九十六億円を計上いたしておりますが、この経費は、産業投資特別会計において行なう産業投資支出財源に充てるため、一般会計から同特別会計繰り入れるものであります。  アジア開発銀行出資につきましては三十六億円を計上いたしておりますが、この経費は、アジア開発銀行を設立する協定第五条及び第六条の規定に基づき、同銀行に対し出資するため必要な経費であります。  予備費につきましては、予見しがたい予算の不足に充てるため一千二百億円を計上いたしております。  以上が、大蔵本省に計上された歳出予算額のおもなものでありますが、財務局税関及び国税庁につきましては、その歳出予算額の大部分は、これらの機関人件費その他事務処理に必要な経費であります。  次に、当省所管特別会計といたしましては、造幣局特別会計をはじめ、十の特別会計がありますが、そのうちのおもな会計につきまして、その概略を御説明いたします。  まず、造幣局特別会計におきましては、歳入歳出とも七十六億五千三百万円でありまして、前年度予算額に比し、いずれも一億二千万円の増加となっておりますが、これは、補助貨幣等製造経費増加によるものであります。  印刷局特別会計におきましては、歳入百七十九億四千四百万円、歳出百五十五億九千四百万円、差し引き二十三億五千万円の歳入超過であります。歳出におきましては、前年度予算額に比し、十一億四千三百万円の増加となっておりますが、これは、日本銀行券等製造経費増加によるものであります。  資金運用部特別会計におきましては、歳入歳出とも五千四百八十七億二千四百万円でありまして、前年度予算額に比し、いずれも九百七十億九千八百万円の増加となっておりますが、これは、主として歳入においては、資金運用に伴う利子収入歳出においては、預託金に対する支払い利子に必要な経費がそれぞれ増加することによるものであります。  国債整理基金特別会計におきましては、歳入歳出とも一兆三千二百十二億九千六百万円でありまして、前年度予算額に比し、いずれも三千八百四十三億五千百万円の増加となっております。これは、国債償還短期証券償還借り入れ金返償、国債利子及び大蔵省証券等短期証券割引料等に必要な経費増加によるものであります。  貴金属特別会計におきましては、歳入歳出とも七十五億五千五百万円でありまして、前年度予算額に比し、いずれも九億七千二百万円の減少となっております。これは、産業用金地金輸入等に必要な貴金属買い入れ費につきましては、増加しておりますが、貴金属特別会計法附則第九項の規定による一般会計への繰り入れ減少したことによるものであります。  産業投資特別会計におきましては、歳入歳出とも九百四十二億八千二百万円でありまして、前年度予算額に比し、いずれも八十六億一千四百万円の増加となっております。これは歳出において、産業投資支出等増加したためであります。  この会計投資計画のうち、出資金につきましては、日本輸出入銀行ほか九機関に対し総額六百八十九億円の出資を行なうこととし、貸し付け金につきましては、電源開発株式会社に対し二十三億円の貸し付けを行なうことといたしております。その出資財源といたしましては、一般会計から五百九十六億円を受け入れるほか、株式売り払い収入五十五億七千万円等を予定いたしております。  なお、経済援助資金特別会計及び余剰農産物資金融通特別会計の両会計を廃止し、その権利義務をこの会計に引き継ぐことにより、会計経理簡素化をはかることといたしております。  以上、申し述べました各特別会計のほか、外国為替資金賠償等特殊債務処理国有財産特殊整理資金及び地震再保険の各特別会計につきましては、お手元予算関係書類によりましてごらんいただきたいと存じます。  最後に、当省関係の各政府関係機関収入支出予算につきまして、簡単に御説明いたします。  まず、日本専売公社におきましては、収入七千百二十四億六千四百万円、支出五千百八十六億三千三百万円、差し引き一千九百三十八億三千百万円の収入超過であります。  専売納付金は二千三百四億三千百万円を見込んでおります。  これを前年度予算額に比較いたしますと、収入は一千四十八億八千七百万円、支出は三百六十三億一千五百万円の増加であり、専売納付金は、六百二十四億三千六百万円の増加を見込んでおります。  なお、日本専売公社事業のうち、たばこ事業につきましては、本年度製造たばこ国内販売数量は、前年度に比し二十二億本を増加し、二千十二億本を見込むとともに、製造たばこ小売り定価昭和四十三年度において改定することとし、これによる増収額五百五十億円を見込んでおります。  次に、国民金融公庫、住宅金融公庫、農林漁業金融公庫中小企業金融公庫北海道東北開発公庫公営企業金融公庫中小企業信用保険公庫医療金融公庫、環境衛生金融公庫、日本開発銀行及び日本輸出入銀行の各機関につきましては、収入支出予算は、主として、これら機関事業の運営に伴う貸し付け金利息収入並びに借り入れ金支払い利息及びこれらに必要な事務費等を計上したものでありますが、前年度に比し、各機関とも事業量増加を見込みましたことに伴い、収入支出とも増加いたしております。  これら各機関収入支出予算額等につきましては、お手元予算関係書類によりまして、ごらんいただきたいと存じます。  以上をもちまして、大蔵省関係予算概略について説明を終わります。
  4. 野原正勝

    野原主査 以上をもちまして、大蔵省所官予算説明を終わりました。     —————————————
  5. 野原正勝

    野原主査 この際、分科員各位に申し上げげます。  質疑の持ち時間は、一応本務員は一時間程度兼務員もしくは交代して分科員となられた方は三十分程度にとどめ、議事進行に御協力願いたいと存じます。  なお、政府当局に申し上げます。質疑時間が限られておりますので、答弁は的確に、要領よく、簡潔に行なうよう特に御注意申し上げます。  質疑の通告がありますので、順次これは許します。北山愛郎君。
  6. 北山愛郎

    北山分科員 きょうは、この前の予算委員会総括質問の際に問題にしました国庫債務負担行為、この点まだ私納得しておりませんので、資料等もいただきましたが、これを中心にしてお尋ねをしたいと思うのであります。  その前に二、三お聞きをしたいのは、新聞等では、本年度暫定予算が必至であるというふうにもいわれておりますし、また、大蔵省としても、省議としては暫定予算を決定しておるというふうにもいわれております。それでこの際、大蔵大臣から、暫定予算大蔵省としてはもうすでに提案するということで決定し作業しておるのか。それから、出すとすればその期間はどの程度期間であるか等につきまして、簡単にお答えを願いたいと思います。
  7. 水田三喜男

    水田国務大臣 まだ政府暫定予算を出すというような方針は全然きめておりません。大蔵省におきましても、まだいまのところはその準備もしておりません。私は衆議院のこの予算通過の状態を見てから考えたいとは考えておりますが、いまのところはまだ暫定予算方針準備も全然立てていない状況であります。
  8. 北山愛郎

    北山分科員 暫定予算大蔵省としては考えておるけれども、しかし正式には本予算が済まないうちは態度は出せない、こういうことですね。
  9. 水田三喜男

    水田国務大臣 これは予算審議国会の問題でございますし、私どもとしましては、できるだけ年度内の御審議をお願いしたいというふうに考えて、いまいろいろお願いしております。まだ月末までには日がございますことですし、したがって暫定予算をお願いするということもいま全然考えていないので、ひたすら国会に対しては年度内の御審議をお願いしているということでございます。
  10. 北山愛郎

    北山分科員 そうすると、そういうことをお聞きするのはやぼだということになるようでありますが、いずれ暫定予算は必至だとは思われるのであります。  次にお伺いをしたいことは、きょうきのうあたりの新聞に、世界で大きな情勢変化というものが伝えられております。一つアメリカのニューハンプシャー州の大統領予備選挙、この動向で、アメリカベトナム戦争に対する世論の動向というものは大きく動いておるということ。それからもう一つは、ヨーロッパのロンドン、パリあるいはチューリヒ等においては、例のゴールドラッシュがさらに再燃をして、欧州金市場というものは非常に動揺しているというふうに伝えられておるわけであります。このことは、実は野党のわれわれとしても憂慮しておった問題でありまして、この情勢では、どうも金プール停止であるとか、あるいはアメリカの金の売却の停止、あるいはまた、金の価格の値上げというものが必至なような情勢に考えられるわけです。非常に事態は重大だと思うのであります。  そこで、政府の今年度予算案というものは、もっぱら国内的な観点から、いわゆる財政硬直化というようなことを中心として編成されたようであります。したがって、本年度予算の中に、このような国際的な経済変動を十分織り込んだという点は、私は非常に不十分ではないか、そういう観点が薄いのではないかと思う。いまに至って振り返ってみると、もう一ぺん考え直す必要があるというふうな気がするわけです。しかし、それはそれとして、私は、政府としては、このような世界通貨不安というような重大な事態に対してどう対処するのか、政府としては、これに対処する対策というものを緊急に協議をして、この対策を逐次総合的に進めていくというような必要があるんじゃないか、こう思うのであります。たとえば、対中国貿易等についても、従来の行きがかりというものを捨てて、この際思い切って前向きに前進をさせる、これに踏み切るということも一つでございましょう。また、国内的には、国内経済をいままでのようなやり方のいわゆる金融引き締めということでその効果を期待するというのではなくて、もっと具体的な、もっとドラスティックな方法が考えられるべきじゃないか、そういうふうに私は思うのでありますが、大蔵大臣はどのようにこの情勢を判断をして、そうして国内のいまの財政経済はそのままでいいのか、さらに、政府としては緊急に対策を検討する必要があるか、どういうふうにお考えになっているか、これをお答え願いたい。
  11. 水田三喜男

    水田国務大臣 ドルの信任がとにかく国際通貨制度の基盤をなしているという以上、これを守ることは国際経済の上からどうしても必要だ。これはひとりドルの問題でなくて、各国がそれぞれ自国通貨の安定とつながっていることでございますから、これはドル防衛に協力するという形で各国態度はきまっており、現に今度の金の騰貴に対しても各国協力体制というものははっきりしておるのでございますが、しかし、こういう国際協力の形でドルを守ろうというからには、アメリカ自身政策が一番大事である。たとえばこのドル防衛のために、国際収支改善策のために今度のような輸入課徴金というようなことをとる前に、まずアメリカ自身政策をはっきりさせることがドル不安を防ぐ一番の基本的な事柄であるというのが私ども態度でございまして、これも、欧州も大体そういうようなことでございますので、私はやはりアメリカが増税に踏み切るか、思い切った金融引き締め措置をとるか、まずアメリカ自身が自分の国際収支改善のために本格的な自国政策をまずとってみるということが前提だと考えておりますので、おそらくアメリカがそういう政策をとってくると思います。そういうことによって、最終的にはこのドル不安は守れるというふうに私は考えております。  それから日本の今度の四十三年度予算についてのお話でしたが、財政硬直化を避けるというのは、景気調整を行なったりなんかする場合に、もし財政が硬直化しておったらこのフィスカルポリシーがとれないというところに問題があるので、この財政弾力化が必要だということを言っておりますが、国際収支対策ということから見ましたら、今年度予算は何としても総需要を圧縮するということに重点を置くべきでございまして、今度の予算はその点にはっきり重点を置いてあります。  いま税制でいろいろ問題になっておりますが、私は、本年度日本減税の余裕を持つときではない、いま申し上げたような政策から見ましたら、何としてもことしは国債を削減するということをやらなければ、この財政の健全性といいますか、内外の情勢に対処し得る予算にならぬということを考えて、減税というものについてことしは考える年だということにしたのでございますが、しかし所得税の累進構造から見て、どうしても中小所得者減税はやらなければならぬ。所得税はやりましたが、一方間接税の調整をやるということにして、実質減税がない、しかも増税にはならぬというところで、一応今度の予算編成はその問題を柱としましたが、いま米国あたりの状態を見ましたら、何としてもこういう時期に対処するためにはアメリカはやはり増税をやらなければ、イギリスも同様ですが、そういうときだろう。しかし日本はそこまで行っておりませんので、そのぎりぎりの線のところまでの政策をとっておるということは、私は、日本としてはわりあいに適切な措置をとってこのきびしい国際情勢に臨んでいるんだということが言えるのではないかと思いますので、日本はまず自分の国内政策をがっちり固めるということを主にすべきだという観点から今度の予算編成をやっておりますので、私は、若干のきびしい国際情勢が出ましても、日本はこの予算の執行によって国際収支改善というものは必ずできるという確信をいま持って国際情勢を見守っておるというところでございます。
  12. 北山愛郎

    北山分科員 本年度予算が抑制型であるかあるいは刺激型であるかということは、この前も大いに議論しましたが、私は予算の性格から見て、これは私だけじゃなくて、やはりことしの予算は大臣の言うような抑制型とはどうも見られない。しかもその予算が抑制型でなければ当然金融のほうに負担がかかっていって、いまやっておるようなきびしい一般的な金融引き締めをやる。ところがその中で、大企業はそれに免疫性を持っておりますから、これに耐えていく、そのしわが中小企業に寄っていく、こういうことになって、言うならば国際収支改善には直接にはあまり縁の薄いようなところが実害をこうむって、国際収支改善のために設備抑制をしてもらわなければならぬような企業がどんどん遠慮なしに設備投資をしていく、こういうような、いままでやってきたようなマンネリ化した景気調整政策ではだめではないかということを私は言っておるのです。もう少し考えるべきじゃないか。たとえば、最近例の防衛費の問題がこの国会では大いに論議されました。ところがきのうあたりの新聞を見ますと、今度はさらに、いままでも国庫債務負担行為で、防衛費関係で来年度四十四年度以降の分というのが、継続費を入れれば二千七十億ぐらいになるんですね。そういうものを、来年度以降の歳出財源を先食いしているわけですよ。ことしの予算には少ししか載っておりませんけれども、大部分は来年度以降の予算を先食いしている。これは硬直化の原因をつくることなんです。防衛費だけは特別待遇なんです。この硬直化の場合に、そういう考え方が許されるようななまやさしいような状態ではないんじゃないかというのが私の考え方なんです。そこへもってきてさらにFXの、次期戦闘機の選定を急いで六月とか八月とかにやると言っている。こういうやり方で、こういう防衛費については、いま言われるようなものには逆行するような、総需要を刺激するような、しかも財政硬直化を激化させるような措置を野放しにしておいて、はたしてきびしい国際情勢の中で日本経済を守っていけるか、私はその点を心配するわけなんです。そういう点で、やはり思い切ってことしの防衛費における国庫債務負担行為停止する、あるいは兵器の購入を停止するぐらいの思い切った措置が必要だというのが私どもの意見であって、その点は大蔵大臣の考え方は少しのんびりしているのじゃないか、いまのドルあるいはポンド不安というものがどんどん広がってきたときに、あわてないようにされる必要がある。最近、通産大臣あるいは大蔵大臣も中国貿易に前向きな姿勢を若干とり始めたようですがこれはおそいんですよ。もっと急迫したときになって中国にやらなければならぬというのではなくて、いまから手を打っておく、それが政治というものなんです。いまから手を打つ必要がある。そういう点で、思い切った判断をなさつてもらいたいというのが私の要望です。  中心債務負担行為ですが、あのときに、財政法第二十八条による国庫債務負担行為に関する調書を出してくれというたら、膨大だからというお話だったのですが、その膨大だというものが出てきたんですよ。その膨大なものを見ますと、膨大どころじゃなくて、ガリ版で六枚程度のこれなんです。たった六枚の防衛費関係ですが、膨大で出せないと称するものが、こんなものを出してきたわけなんです。こんなものなら何も遠慮しないで初めからどんどん出せばいいんだ。要求しなければ出さぬというところに問題がある。  そこでこの国会国庫債務負担行為、特に防衛費に関する国庫債務負担行為がいろんな面から追及をされたわけです。たとえば福崎君の技術研究開発費、あるいは大出君の例のバッジの予算ということを追及されて、追及されて初めてその輪郭が金額の上で出されるということになって、実に内容が不明確なんです。それが私は大いに問題になると思うのですが、まず最初にお伺いしたいことは、やはり次年度、多年度にわたるこの契約調達の工事あるいは製造の調達の場合に、国庫債務負担行為の方法と継続費の方法と二つあるわけですね。それで、防衛庁についても、ある種の艦船については継続費でやる。潜水艦、警備艦は継続費でやる、ある種の艦艇については国庫債務負担行為でやる。それは、どういう区分でやっているのですか。私どもから言えば、艦艇をつくる、飛行機をつくる 多年度にわたる場合は継続費でやるほうが明快でよろしい、こういうふうに考えるのですが、なぜ継続費でやらないで、国庫債務負担行為でやるのですか。
  13. 相沢英之

    ○相沢政府委員 ただいまお話しのとおり、後年度にわたる債務負担する形引には、国庫債務負担行為と継続費と、両方あるわけでございます。この両制度は、後年度における債務負担するという意味におきましては目的が同じでございますけれども、その制度上の差異が数点ございます。一番大きな差異は、継続費の場合におきましては、後年度における歳出権限をもあわせて付与しておるところでございます。そこで、防衛庁の場合には、現在、大型の警備艦、潜水艦等につきまして継続費をとっておりますが、これは建造工事の内容が、船体、機関、武装というふうに、契約を分ける必要があり、また、それぞれについての技術、工法に不断の進歩がございますので、それを見定めて契約を数年に分けて締結する必要があり、しかも、全体としての規模が複合的な事業であると認められるので、これは継続費として後年度債務負担の権限をとっておるわけでございます。同じ防衛庁の艦船でも、小型のものであって、工事内容も画一的、簡単なものは、それは国庫債務負担行為で十分間に合うということからして、これは国庫債務負担行為によっております。
  14. 北山愛郎

    北山分科員 どうもはっきりしないのですね。要するに、国庫債務負担行為でも継続費でも、多年度にわたる契約をまずやって、ただ、継続費の場合には、各年の年度割り額というものがはっきりしている、明確になっているという違いがあるのですね。それだけの違いで、船については、何も警備艦だって——何か艦船で国庫債務負担でやっておるものもある。大きい、小さいといったって、飛行機だって金額の大きいものもある。だから、どっちだってかまわないような気がするんだが、どうも大蔵省のほうでは、防衛庁だか大蔵省だか知らぬが、継続費のほうはなるべく避けて、そして国庫債務負担行為のほうをふやしていく、そういうふうに考えられますね。どうもいまの御説明では、いずれにしても、なぜ継続費でやるか。どういう基準で継続費でやり、どういう基準で国庫債務負担行為でやるという区分がわからない。納得いきませんが、大蔵大臣、何か御明答でもあれば、ひとつお願いしたい。
  15. 水田三喜男

    水田国務大臣 予算の単年度主義からいきましたら継続費のほうが単年度主義に一番違った方向へいっている、例外度の強いやり方だと思います。一番いいのは、後年度債務負担行為と、同時に、もう歳出の権限まで一緒に付与されるということが一番やり方としてはやりいい方法だと思いますが、債務負担行為に比べてみたら、このほうが単年度主義ということは反するやり方だというふうに私は考えます。だから、どっちかといったら、この国庫債務負担行為でやるほうが、いまの単年度主義から見たらいいんだということが言えることがまず一つと、それから、いろいろいま国が直轄の仕事をしているんならともかく、大きい工事において民間に請負で出すということでしたら、一回でもう請負契約ができるというようなものでしたら、これは継続費でやるほうがいいと思いますが、そうじゃなくて、さっき政府委員が言いましたように、大型の船をつくるというようなことは、契約が毎年次々に行なわれていくというようなこと、それから、年度が変わって契約を次々にしていくということと、それから、たとえば船体の契約をする、ほかの装備の契約をするというふうに、契約が幾つも分かれるというような、こういうものだったら、いま言ったように、債務負担行為でやるんでなくて、継続費でやるほうが私はいい。   〔主査退席、川崎(寛)主査代理着席〕  そうじゃなくて、単純にもう一回で契約はできるというようなものは、債務負担行為でやるほうがいいというようなことで、結局、どちらがいいかといいましたら、政府としては、一番継続費でやるのがやりいいのですが、しかし単年度主義ということから見ましたら、歳出の権限までも最初に付与されるというやり方をとらぬほうがいい。その契約のつど、債務負担するつどこの国会の承認をとるというやり方のほうがいいんじゃないかというふうに考えます。
  16. 北山愛郎

    北山分科員 せっかく大臣から御明答を期待したのですが、実は、それはわからないのですよ。なぜかというと、この前、村上主計局長でも債務負担行為というのはもう原則として多年度なんだということなんです。ぼくは、もう理論的には単年度のものもあると言ったのだけれども、村上さんは承知しないで、常に多年度以外はないといったような説明をされておるのです。そうしますと、債務負担行為が単年度というふうないまの大臣のお答えと相反するのですけれども、とにかく、いまここで時間を食っているわけにいきませんから、先に進めますが、継続費でやるのか、国庫債務負担行為でやるのか、どうも基準がはっきりしないのです。私は、一つ想像するのですが、特にこの防衛費ですね、継続をやっているのは。防衛費に比較ができるわけなんですが、防衛費に関する国庫債務負担行為一つの特徴というのは、あなたがおっしゃるように、一つの契約じゃないのです。たとえば、バッチだって、分ければ五十何件の契約に分けられるのだそうです。ですから非常にたくさんの契約の集合体ですよ。バッジでもそうです。  そこで、この一般会計予算の定義を見て、こうやって各省庁の国庫債務負担行為があります。皇室費、国会、総理本府、みなずっとあります。その中で、他の省庁の分についてはその問題事項が大体において特定されているのですね。たとえば皇室費については「御料牧場施設取得」国会については委員会庁舎あるいは「本館等空気調和施設整備」というふうに、特定された具体的なものになっているのです。たとえば、法務省については、金沢の刊務所の施設を取得するという事項に特定されているのです。農林省関係なんか少しあいまいなところもありますが、大体において、ほかの省庁におけるこの国庫債務負担行為というものは特定議決なんです。このほうが正しいわけです。財政法第十五条の第一項による国庫債務負担行為というのは、御承知のように特定議決といっているのです。特定した事項についての債務負担行為議決なんです。ところがこの防衛庁のやつは非常に包括的なんです。たとえば艦船の建造にしても飛行機——飛行機といえばある程度特定されているようですが、一番ひどいのが器材整備ですよ。器材といってもこれは広うござんすで、これに書いてあるのを見るとどう書いてあるかというと、防衛庁(事項)として「器材整備 国は、防衛本庁における器材の整備のため、」何の器材だか、それが戦車なのかナイキなのかホークなのか、それがみんなごっちゃになってただ器材ということになっている。ですからこれはおそらく何千という契約になるのでしょう。こういうふうに包括的な事項としてやっているところに国庫債務負担行為の妙味があるんじゃないかとぼくは思うのですよ。継続費ならば。何年の甲型の警備艦であるとか何型の潜水艦であるとかいうように個々に特定しているのです。ところがいま言ったように、防衛庁における国庫債務負担行為はまことに幅が広く、特定されていないのです。事項と称するけれども、特定事項じゃないのですよ。だからこれはよくいわれておる財政法第十五条第一項の特定議決というものに違反して行なわれておる。この器材整備に関する、たとえば本年度千三百十一億の器材整備のものは一体一つ債務負担行為なんですか、たくさんの負担行為の集まりなんですか、どうなんです。
  17. 相沢英之

    ○相沢政府委員 この防衛庁の器材整備に関しましては、ただいまお話しございましたとおり千三百十一億という相当膨大な金額の国庫債務負担行為となっておりますが、これは具体的に国庫の債務となる行為をなすことは契約によるわけでございますから、その契約はもちろん相当多数になっております。
  18. 北山愛郎

    北山分科員 それが財政法十五条の一項に違反しているのですよ。私はこの財政法に関する、会計法に関する国庫債務負担行為についてのいろいろな本を見てみたのです。平井平治さんという人は、これは元大蔵省におられた方で皆さんの先輩だと思うのですが、昭和二十三年、ちょうど財政法が制定されたあと出ました「豫算決算制度要論」という本を見ました。まず聞いておきますが、その平井さんというのは、元大蔵省の何だったのですか。この財政制定当時は何をやっておられたのですか。   〔川崎(寛)主査代理退席、主査着席〕
  19. 相沢英之

    ○相沢政府委員 平井平治さんは、後に主計局の司計課長をやり、それから東海財務局局長をやりまして退官しております。この財政法の制定当時は主計局におられたことは承知しておりますが、どこの課におりましたか、ちょっと私は存じておりません。
  20. 北山愛郎

    北山分科員 その平井さんの「豫算決算制度要論」、この人は財政法制定の当時、その実際の仕事にタッチした人だそうです。その人の解説によりますと、財政法第十五条一項及び第二十六条によるいわゆる国庫債務負担行為というのは、個々の具体的必要によって事項内容を示して国会の議決を求める。これがこの十五条一項による国庫債務負担行為だ、こういうように定義されている。これに対して御承知のように第二項では、非特定議決と言って、包括的に一定の金額の範囲内で国庫債務負担行為ができるという、いわゆる非特定議決の第二項があるわけですね。それに対応して第一項というのは特定した−平井さんは、個々の具体的必要によってその事項内容を示している、こういっている。それから御承知のようにこの十五条一項の制度というのは、昔の旧憲法の第六十二条による予算外国庫負担と同じものなんですね。それがいまの十五条一項の制度になっておるわけですが、その旧憲法の解釈について清宮四郎氏の解説によりますと、戦前の旧憲法の予算外国庫負担の契約というのは、各種の具体的な契約ごとに内容を明らかにされる必要がある、こう書いてある。こういう立法の趣旨からいったら、そのていさいから見たって、十五条第一項の国庫債務負担行為というのは、いま防衛庁がやっているように、ただ艦船建造という項目だとかあるいは飛行機だとか、それでもまだ飛行機ということがわかるからいい、この器材整備に至ってはまるで広いのですよ。防衛庁で使う器材全部、それが一本で千三百十一億というところで国会の議決を経るというと、その中でまるで白紙委任状を与えたように、本年度千三百十一億のどんな器材、ナイキだかホークだかあるいは戦車だか弾薬だか小銃だか機関銃だか、みなそれで買えるのです。その内訳が何もないのです。限定されていないのです。こういうやり方は、いま申し上げたように第十五条第一項の特定議決と称する国庫債務負担行為の法の規定に違反するものではないかと私は思うのですが、大臣はどのようにお考えですか、これでいいと思うのですか。
  21. 相沢英之

    ○相沢政府委員 おっしゃるとおり国庫債務負担行為には、財政法第十五条第一項のいわゆる特定議決による場合と、それから第二項の規定によるいわゆる非特定議決による国庫債務負担行為とがございます。この特定議決による国庫債務負担行為につきましても、財政法事項ごとにその必要の理由を明らかにする、行為をなすべき限度を明らかにする、債務負担の権限を明らかにするということをその要件としているわけでございまして、この個々の国庫債務負担行為、つまり具体的には契約になる場合が多いのでございますが、個個の契約ごとに、ただいま申しましたような要件を明らかにするということを要請しているわけではないのでございます。もちろん国が歳出予算以外に債務負担する権限を、これによって国会から付与されるわけでございますから、できるだけその内容を明らかにすることは必要であろうと思っております。しかしながらその個々の債務負担のすべてを、たとえて申しますと、この防衛庁の器材の整備で申しますと、おそらく契約といたしましては何百件、何千件になると思いますが、その全部を予算書に掲げる必要はないのではないか、かように考えております。たとえばまた、国庫債務負担行為では、外国人に支給する給料、恩給等につきましても債務負担行為ができることになっておりますが、その場合に、一々全部の人の名前をあげてその債務負担行為をすることが必要かどうか、そこまでこの財政法は必要な要件として言っているのではないのではないかというふうに考えております。
  22. 北山愛郎

    北山分科員 あなたの言うとおりなんですよ。私は何も個々の契約ごとにしなければならぬとまでは言っていない。たとえばバッジだって五十件もの契約に分割されるわけですからね。私のほんとうの趣旨は、個々の契約——だからこそもとの憲法でいえば「予算外国庫ノ負担トナルベキ契約二関スル件」というふうに、契約という文字を使っていたんですね。だから私は個々の契約ごとにしなければならぬとは主張しないけれども、相沢君の前段のところですね、そんな器材整備というふうに包括して、何を買うのだかわからないのに千三百十一億の発注の財政権限をこの国会で議決をして政府に与えることは、まるで千三百億の白紙委任状を与えることと同じじゃないですか。そしてこの予算の本文はもとより、参照書、この予算総則にある参考書類、予定経費要求書、国庫債務負担行為要求書、そういうものを添付していると言っているが、そのどこにもこの千三百十一億で何を買うのかということは一つも書いてない。それはこちらが委員会で要求して、膨大だ、膨大だといやがるものを、出せ、出せと言って無理無理出してもらうと初めて、この中で大体飛行機はどういうものを買うのか、ナイキをどのくらい、ナイキとかあるいはホークとかわかるのであって、予算の正式の添付書類には何もないのです。こんなものであって一体いいのですか。私はだから最初に継続費であるべきだ、そのほうが明確だと言うのは、やはり継続費ならば何型警備艦と特定させられるのです。しかも他の省庁では、いま申し上げたように大体において特定された議決をしているのです。防衛庁だけは、飛行機、艦船、あるいはいま言ったように特に器材整備に至っては——器材整備といったって広うございますよ。それでもって千三百億の権限を与えろと言われても国民は納得しないと思うんですね。こういうやり方であるからこそいろいろな問題が出るのですよ。予算が、制約をしてもその金額がどんどんふえるしかけになっている、まことにこれは不愉快である、これは増田長官が言ったのです。財政法会計法ではふえるしかけになっていないのです。財政法会計法の精神を無視して、このような大ざっぱな込みでやっているから、だからその器材整備の中にバッジが入っている。そのバッジのワクがわからないのです。きめてないんだから。それは内部的には政府のほうではきめているでしょう。それが伸び縮みしたって国会はさっぱりわからぬ。国民は何もわからぬ。そういうことをするのは会計法違反、財政法違反ですよ。財政法違反をやっているからこそ、増田長官が言うように、どんどんふえていくまことに不愉快なしかけになってくるのです。大臣、私はもっともっと時間をとってこの点を詳細にやりたいと思うのですけれども、こういうやり方ですね、これは明らかに財政法十五条の違反である。私は何も個々のこまかい点まで議決の案件にしろとは言いませんよ。しかし、あまりにもひどいじゃないか。せめて他の省庁がやっているぐらいのところ、たとえばナイキ、ホークとか、あるいは三十五ミリの高射機関砲とか、何台とか、あるいはバッジとか、そういうふうなもの、これこそそういう事項ごとの債務負担行為の議決ぐらいまでは特定しなければ、一体債務負担行為で何を買うのかさっぱり国会もわからぬし、国民もわからぬ。こんなかっこうはよくないのじゃないですか。どうですか。私はこれは法律違反だと思う。この問題は、こういうかっこうをいままで何年もとってきたんです。それはあなたの言われるような悪い慣行です。だから悪い慣行はこの際直すべきなんです。できることなら今度の予算は返上して、この債務負担行為というものをあるところで特定議決にやってもらう必要がある。しかしまあそんなこともあるいはしないかもしれないが、少なくともこんなかっこうはいかぬですよ。改める意思がありますか。私の言っていることはどこか間違っているところがありますか。
  23. 水田三喜男

    水田国務大臣 この器材整備費はたくさんの契約の総合体で、おっしゃられるようなことだと思います。結局、御審議のときに資料として出すということによっていままでは御審議願っておったのですが、もともとこの国庫債務負担行為は、事項ごとにその必要の事由を明らかにするというふうにすべきものとなっておりますので、どの点まで明らかにして国会の御審議を願ったらいいかということについて一ほかのほうは大体この器材整備費と同じような扱い方をしていません。これは少し例外だと思っておりますが、しかし、歳出予算とか継続費についてはやはり財政法で項に区分して、そして国会の議決を受けるというふうになっておりますので、この債務負担行為も大体歳出予算の項に類するものを単位として国会審議を受けるというふうに歩調をそろえてありますために、その内容一つ一つ全部にわたってない、こういうことでございまして、大体項にそろえてやれば御審議を願う場合に適当な区分じゃないかと私は思いますが、いま御指摘になったようなものは、これは何十という契約を含んでおるものですから、そういう点は少し不明確といえば確かに不明確で、これは御審議のときに必要に応じて資料として当局から出すべきものだというふうに思います。
  24. 北山愛郎

    北山分科員 これは項ごとにとかなんとか言ったのですがね、実は私は器材整備の内容を調べてみました。そうすると、実に広範にわたっているのですね、予算歳出の項目を見ますと。そういうのがなぜわかるかといえば、各日明細の中で千三百十一億の器材整備の国庫債務負担行為のうちで本年度に計上される分がある。それを拾っていったのです。そうすると防衛本庁の項で、陸上自衛隊運営費の中で目が七つにまたがっている。海上自衛隊の目には八つ、航空自衛隊の運営費には八つ。それから驚くべきことには項をまたがっているのです。どだい器材整備という項はないのですよ。艦船建造だとか飛行機の購入だとかいう項はあるけれども、器材整備という項はなくて、これは研究開発費の分まで入っているのです。項にまたがっているのですよ。ほんとうは、さっき言ったとおり債務負担行為はもっともっと特定した具体的な事項についてだから、項目によるよりも、もっと狭い限定されたものを対象にしてやらなければならない。それが、器材整備は一件でもって、防衛本庁の項、陸海空の防衛本庁の器材をあっちこっちのやつを全部集め、そうしてまた研究開発費の項にまで及んで、両方の項にまたがっているのです。これは大臣御承知のとおり、その項間の流用というのは、やはり国会の議決を経なければできぬわけですよ。ところが国庫債務負担行為だって、歳出予算とは違うけれども、やがては歳出予算に分解されるものです。それを初めから項をまたいでおったら、項間の流用を事実上認めたことになるのですよ。しかもその研究開発費が幾らか、防衛本庁が幾らかというのは、内訳がないからわからないのです。一体、そんなでたらめきわまる、たとえばこういう器材整備のような一ほかのほうもそうですけれども、特にひどいのはこの器材整備なんです。どこから見たってこれは財政法違反じゃないですか。どうですか大臣。
  25. 相沢英之

    ○相沢政府委員 ただいまお話しのとおり、防衛庁の器材整備費の国庫債務負担行為、それに基づく四十三年度歳出予算は、防衛本庁と研究開発費の項にまたがっております。これは、財政法上は、国庫債務負担行為についての限度をその事項について示すことを規定しているわけでございますので、その事項が二つの項にまたがってはならないという制限はないのでございます。したがいまして、その限りにおきましては、この二つの項にまたがっておりますことも、別に財政法上違法だということはないと思います。また、この二つの研究開発費という項は、実は途中で設けられた項でございまして、それまではこの器材整備費はもっぱら防衛本庁の項に歳出が計上されておったわけであります。しかしこれは沿革的な経緯もありまして、現在のような事項区分がとられているわけでございますので、ただいまの御意見の点につきましては、今後なお慎重に検討いたしたいと存じております。
  26. 北山愛郎

    北山分科員 相沢さん、事項事項と言うけれども事項というのはあっちこっち違って使っているんですよ。たとえばこの予算書の中の予定経費の要求書を見る。そうすると、防衛本庁のところを見ると、項が防衛本庁で、その中に各事項があるのですね。そういうふうに使っている。それから丁号の国庫債務負担行為については、これは財政法事項と書いてあるから、ただ事項という名前が書いてあるだけなんです。事項というのは、先ほど言ったように、法の十五条のほんとうの意味から、具体的な事項と解釈しなければならぬのであって、事項という名前をつけさえすればそれでいいというものじゃないのです。その事項の定義は固定されているものじゃないのだ。また、この予算書を見ても、大蔵省政府自身があっちこっちで違って使っているのですよ。だから、事項だからいい、法律にも事項と書いてあるから、名前が同じだからいい、そんなものじゃないのですよ。それは三百代言の議論ですよ。法律というのは、法理、条理というものが裏にあって、ただその表に、ことばにあらわれた、文字にあらわれただけの意味じゃないのです。そういう解釈をしなければならない。だからあなたたちの先輩はそういう解釈をして、先ほど読んだように定義しているのです。そういうふうに運営しなければならぬのですよ。法律を自分なりに都合のいいようにかってに運営してはだめですよ。大臣は残念ながらこういうこまかいことというか、そういうことまでは御存じでなかったと思う。やはり大蔵官僚といいますか、事務当局が、自分たちの運営に都合のいいように財政法の精神を踏みにじって、かってにこういうふうなやり方をやってきた。そして国会は残念ながら予算審議の中で気がつかないでおった。私はそこに間違いがあると思うのです。だから私は政府のほうにも、こういう財政法や憲法の原則あるいは法律の条文を踏みにじったようなやり方、予算という重大なものを決定するのにそういうことがあってはならぬ。また国会としても、こういうものをなぜ見のがしたかといえば、初めから十分な資料が出てないからですよ。こっちが気がついて要求すれば初めて出す。黙っておれば出さない。千三百十一億の金でナイキを買うのかホークを買うのか、何を買うのかちっとも説明せぬで国会を通そうとする。そういう資料があれば十分論議ができる。資料を出さないでほっかぶりをして逃げようとする。そういう態度に、ほんとうの予算のいわゆる財政民主主義というものは失なわれていくのです。  その他のいろいろな問題にもありますが、ことにこの国庫債務負担行為についてはそういうような予算の立て方と、それから国会における審議のしかたというものは、いままでのようなやり方であってはいかぬ。それだからあのバッジのような問題が起こり、問題が起きてもさっぱり内容がわからない。初めの予算がだんだんふえていったと言うけれども、初めの予算がどだい国会で議決されてないじゃないですか。バッジの国庫債務負担行為が幾らだということがきまってないわけだから。きまってないから全体のワクの中でどんどんふやせるわけですね。そういう操作をかってに政府がやるということは許すことができないのです。いまの憲法や財政法のたてまえからしてですね。そういう点を、私はきょうは時間がないから、問題を指摘してそのまま問題を残すつもりですが、もう一点ある。  もう一点は、この前議論した、重複しているという問題です。これだって、こちらのほうで調書なんか見て気がついたから重複しているということがわかるのです。予算書のどこにもほんとうはないのですよ。各目明細調書を見て初めてわかるのであって、予算添付書類にはないのです。予算を見ると、予算総則と甲号の歳入歳出予算、それから乙の継続費、丙の繰越明許、丁号の国庫債務負担行為、こういうふうになっていますね。そうすると、かりに百億の国庫債務負担行為があり、そのうち十億を歳出に載せたとする。内面的には政府がそういうふうな腹づもりで書いたとする。しかし予算の効果とすれば、十億の歳出歳出予算の中で議定される。百億の債務負担行為は債務負担行為丁号でもって決定される。百十億になっちゃうんですよ。十億については歳出権限、百億については国庫債務負担の権限を与えられる。ダブったかダブってないかはあとで説明してわかることであって、予算そのものの議決の効果からいえば十億だけ余分の財政権限を与えることになる。だから私は、予算形式上それは重大な問題だと思う。いままで間違ってやってきたが、これは直す必要がある。直せば幾らでも直せるのです。たとえばその国庫債務負担行為のところに注釈をつけて、総体の金額、それから歳出に計上した額を差し引いてあとの分を議決をしてもいいのです。その関連が一つも出ていない。調べればやっとわかるんです。そういうふうに、これは予算の本体ですよ。これだけを議決すればその余分の財政権限を与えることになるから、私はそういうことは許すことはできない。これに対して村上主計局長説明は、契約上の必要で一括契約をするから、これは予算の項目に分解するのはめんどうくさいと言う。そういう契約上の会計経理上の便宜上の問題からこの憲法や財政法の原則をゆがめるというのは逆なんです。これを、こういうふうになっているから、これに沿うて、契約の場合の事務的な技術的な障害があれば、それをそういう手続の中で解決をするなり、先ほど私が申したような解決策もあるわけです。私がこの点を指摘したのに対し、村上主計局長は、契約上の理由をもって、この憲法、財政法の明白な違反を正当化しようとしている。これは誤りです。ですから、あとで私、こういう説明書みたいなものを大蔵省からもらったのです。二月二十六日付です。これを見ても、あの総括質問のときに村上さんが答弁をした趣旨と何ら変わってない。これでは納得ができないですよ。契約上の都合でこの予算の基本的な形式を曲げてはならない。そういう点で私は指摘しているのです。この点について、答弁する点があればお答え願いたい。
  27. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 議事進行について。ただいま大蔵大臣に聞いていただきたい。大蔵省の姿勢で非常に不満なのは、北山委員が、予算総括質問大蔵大臣並びに主計局長とずっと詰めてきた問題をこの分科会でやるということは、ちゃんと通告してあるのです。それに対して、きょうは主計局長は来ていないのです。それは政府委員室のほうからいろいろ聞いたら、非常に疲れておるということの説明はありましたけれども、御本人は了承しておらない。そういう点では、こういう大事な根本にかかわる問題を審議する際に、分科会に移ったからということで、政府委員のほうの差しかえというか、こういう陣容で臨んできて、議論がかみ合わない、議論が継続していかないということについて、たいへん不満だと思うのです。この点、大蔵大臣としても、今後ひとつ十分に御注意願いたい、こういうふうに思うわけです。
  28. 水田三喜男

    水田国務大臣 先ほどの御意見けっこうだと思いますが、予算審議というものをずいぶん長くやりました経験から申しますと、大蔵省がごまかそうとかなんとかと苦心しているようなことはございませんで、結局、この予算書にそういうこまかいものまで全部盛る必要はなくて、やはりそれは審議の過程で全部資料として出される用意があればいい。したがって、その資料を全部使う審議が実質的に行なわれればいいということでございまして、この分科会でこういうふうにこまかく掘り下げられるから、初めてこういう問題がどんどん出てくるのであって、それによってぐあいの悪いところは将来直せばいいというので、ほんとなら分科会的ないまのような審議が相当時間かけて行なわれて、予算のその年の全貌のこまかいところを握ったところで、今度は初めて総括質問とかいうようなものへいって、最後にこの予算はいいか悪いかというようなやり方ならいいんでしょうが、いままでは、とにかく国政全般の審議ということで、ほとんど予算に触れないでやって、ここにきて一日で審議を済ませるというのですから、そこまで膨大な資料を先に出さなくてもというような考えもやはりあったのじゃないかと思うのです。これは今後両方でお互いに改善すべき問題だというふうに考えます。こちらは財政法違反をやろうとか、隠そうとかというわけじゃございませんで、審議によっては、資料はいつでも整えて、御審議に応ずるというつもりでございます。
  29. 北山愛郎

    北山分科員 大臣も国会審議についてお話しだったのですが、それは別として、やはり財政法違反をやってきたということ、いまの国庫債務負担行為について、第十五条一項のそれは、ことばの上から言えば事項にしてやるからいいと言うかもしれない。相沢君はそう言う。しかし、ほんとうの精神は特定議決だ。そういうようなことで、少なくとも何を買うか、軍艦か警備艦を買うのか、あるいは戦闘機を買うのか、あるいはナイキを買うのか、戦車を買うのかというくらいはわからなければ、話になりませんよ。だから、これは国会が要求しなくたって、そういうふうな形式にすべきものです。私はそれを主張する。けれどもあなたは、私は予算案財政法違反でございますとはちょっと答えられぬでしょう。  それから、もう一つは重なっている問題ですね。これも先ほど言ったような問題があるわけです。したがって、これはことし始まったものであれば絶対に直さなければならぬ。けれども、いままで一つの悪い慣行として——慣行というか実際にやってきた。けれども、考えてみれば、財政法というものを正しくやってみれば、こんなことであってはならない。憲法の精神からいってもならない。私はそのことを主張するわけです。この私の言っていることは、大臣はわかっていただいたと思うのです。  それから、審議についても、大臣が言っているとおり、国会のほうにもおそらく責任があるでしょう。しかし、その審議を充実させるためには、たとえばせんだっての二十八条の調書だって、出せというやつを出していないのですよ。こっちが指摘してからぺらぺらとしたものを出してきた。ということは、膨大であるから出せない、こんなことを言って、決算のときに審議する——そうじゃなくて、審議に都合のいいような資料はあらかじめ出すべきなんですね。出してからものを言うならいい。出さないでおいて——だから、そういう点でどんどんこれから大蔵省政府側についても、国民の前で国会政府がことしの予算、国民の税金をどう使うかということを公開して、できるだけ明らかにするという趣旨でいくならば、政府だってどんどん積極的に資料を出すべきであるし、まして法律できまっておる資料は当然出すべきである。それ以上に出すべきだ。国会としてもやはり十分予算そのものについての審議を深めるべきだ。私は、そういうことを今後の——これは国会予算委員会の運営の問題でありますから、また別の場で論議をいたしたいと思うのでありますが、とにかくこの債務負担行為は、その形式、特に防衛費については、そのやり方が少なくとも十五条一項違反の疑いがある。それから重複の点についても、予算の基本的な形式としてはこれではまずい。こういうふうな点も十分検討してもらって——われわれも検討します、国会としても検討すべきだと思うが、大蔵省としても検討する気持ちがあるのかないのか、それをひとつ大臣から伺いたい。
  30. 水田三喜男

    水田国務大臣 それは十分検討いたします。
  31. 北山愛郎

    北山分科員 私、時間がありませんのでこれで終わりますが、主査、いまの問題はお聞きのとおりなんで、政府だけの問題じゃなくて、やはり国会審議の問題でありますから、いずれこの点はあらためて本委員会等でその場を与えていただくようおはからいを願いたいと思います。
  32. 野原正勝

    野原主査 そうお願いします。  華山親義君。
  33. 華山親義

    華山分科員 いま北山委員が非常に重要な質問をなさっておりまして、時間が延びましたので、私は十五分ぐらいで済ませたいと思います。私の質問も短かくいたしますから、政府のほうもひとつ短かくお願いしたいと思います。  だんだんと年度末に近づきましたが、昨年の公共事業の繰り延べ、そういうことにも影響があると思いまするし、諸般の問題もあると思いまするけれども、今年度国債発行額、これはどの程度年度末までには減額をして発行されますか。お伺いいたします。
  34. 水田三喜男

    水田国務大臣 今年度国債発行予定額はまだ一千億円残っておりまして、これをどうするかという問題は、いまいろいろ検討しておりますが、問題は、今年度どれだけ予算の不用に立てられるものが出るかとか、税の増収はどれだけあるかとか、不用に立てられる分がどれくらいあるのかとか、こういうものが出たら、これはあげて国債の減額にしたいと思っております。その分だけ国債の発行を減らすというふうにしたいと考えておりますので、それを減らしたあとは、国の資金運用資金でどれだけ引き受けるか、市中消化をどのくらいにするかということをきめようと思いますが、まだもう少し——月末ぎりぎりになってから、この国債を幾ら減らすかということをきめたいと思っておりますので、いまのところ検討中でございます。
  35. 華山親義

    華山分科員 公共事業が繰り延べしたのですけれども、その分だけでも当然建設公債でございますから、減るのが当然じゃないでしょうか。
  36. 水田三喜男

    水田国務大臣 繰り延べをするということは、本年度予算をそれだけ削減したということではございません。したがって、その財源措置はしなければならないものでございます。したがって、繰り延べたからといって、予定を繰り延べた分の財源措置はしなければなりませんので、したがって、いま言いましたように、月末になって、どれだけ国債を削減するか、これがきまってから日銀の引き受けるものと市中において発行するものとをきめようと思います。これは月末ぎりぎりにならないときまらないと思います。
  37. 華山親義

    華山分科員 その御方針ですが、国債はできるだけ発行を減らそう、こういう御方針でございますか。
  38. 水田三喜男

    水田国務大臣 そうでございます。
  39. 華山親義

    華山分科員 そこで伺いますけれども、四十年は私も承知いたしますとおり、赤字を補てんするためにやられる。四十一年度に本格的な公債を発行された場合に、その当時の説明によれば、今後は公債時代に入るのだ、国民にかわって政府が借金をするのだ、そういうふうなことで、開き直ったかっこうだ。減税をする、国民の負担をなるべく少なくする、国民にかわって政府が借金をしていくのだ、積極的に国債政策を進めるような国債新時代がきたかのごとく説明あるいは答弁をなすっておられる。ところが、最近になりますと、次第に国債依存度は減らしていきたい、何カ年か後には五%まで減らしていきたいというふうに言われますけれども、一体国債に対するものの考え方は、政府は変わったのですか、どうなんでございますか。ひとつ伺っておきたい。
  40. 水田三喜男

    水田国務大臣 国債発行の可否というようなもの、あるいは国債発行をする必要性というようなことについての政府の考えは全然変わっておりません。ただ、国債経済情勢に応じてこれをどういうふうにどれだけの量を発行したらいいのかというような問題については、その経済情勢とにらみ合わせて、また国の税収との関係、財政需要との関係とにらみ合わせてこれはきめるべきものでございまして、国債の運営についての考えは、当初といまでは当然違った考えを持って運営しているということは言えようと思います。
  41. 華山親義

    華山分科員 そういたしますと、大蔵省の中でもそういう御意見があるということを私は新聞等で承知するだけでございますけれども、あるいは財政調査会ですか、審議会ですか、そこでも何カ年か後には五%程度まで減らすべきだという意見がある。そういうふうなことにつきまして、今後の長い目で見ました国債政策につきまして、国債依存度はそのときの経済状態なり、あるいは財政の状態できめるべきものであって、今後減額していく方向ではない、こういうように承知いたしてよろしゅうございますか。
  42. 水田三喜男

    水田国務大臣 昭和四十一年度公債発行は一つのフィスカルポリシーとして、不況克服というような問題と関連した国債の出し方でございましたが、現在は国債の依存度を減らすということがフィスカルポリシーの重点になっているということでございますので、今年度減税までを犠牲にして、私ども国債を削減する予算編成方針はとりましたが、いずれにしましても、国債の依存度が十何%というようなことは、これは世界に例のないことでございまして、こういう国債政策をとることは、財政の健全化の上からいただけませんので、これはできるだけ今後も圧縮していって、ことに諸外国の例を見ましても、国債の依存度が五%前後というところまでは圧縮していく必要がある、そういう大きな長期的な観点をもっていま運営しているところでございます。
  43. 華山親義

    華山分科員 これはお前のかってだと言われるかもしれませんけれども、そういうことばを言い出しますと、四十一年に本格的な公債政策をおとりになったときと政府態度は変わってきた、こういうふうに言わざるを得ない。そういうふうなものの考え方の違いによって、国債というものは当然出すべきものだ、そういうふうなものの考えに立つのか、やむを得ず出すのだという立場に立つのか、これは出してもいいんだ、出すべきだという立場に立つのか、そのことによって非常に国債政策というものに影響するから、私はお聞きしたわけでございます。  それから、この間本会議でも私、申し上げましたけれども、これは私のしろうと考えかもしれません。しかし、多くの学者もそういう点については言っておりますから、私は必ずしも間違いではないと思うのでございますが、昨年五千二百億も市中で消化されたわけでございますけれども、それがそのまま日銀では——五千二百億の中には担保にとったものも入っておりますけれども、五千二百億を買い上げているわけです。買いオぺだ、一年たったものがそのまま日銀に入っちゃった。これは通貨インフレになると私は思うのですけれども、どういうものでございましょうか。
  44. 澄田智

    ○澄田政府委員 ただいま御指摘の点でございますが、日本銀行の金融調節の対象といたしまして、オペレーションで市中で消化をいたしました国債を買い上げる。これは、市中が消化をいたしまして一年経過いたしました国債を対象といたしておるわけでございます。一年間は市中で消化をされておるものでございます。この金融調節は、御承知のとおり、これは市中の資金の需要、資金の繁閑を見まして、そのときの情勢に応じてそのオペレーションの量をきめていく、これは日本銀行が金融調節をやっている、御承知のとおりでございます。したがいまして、国債が発行され、市中で消化されるということと、それから、その国債がオペレーションの対象として、そのときの金融情勢によってオぺを行なう、これは別なことでございます。その銀行券の流通状況とか、市中の資金の状況等によって金融調節を行なう。これは、実体の経済の動きによって金融調節の量は考えていく、こういうことになるわけでございまして、国債が完全に市中消化されている限りにおきましては、国債のオペレーションというものと、ただいまのお話しのようなインフレになるというような問題は、これは別なことでございます。経済情勢によって、そのときの繁閑によって日本銀行が金融調節を行なう。この行ない方がどうか、こういう問題であります。
  45. 華山親義

    華山分科員 私は、そういうことだと思うのですよ。そうだったならば、責任は日本銀行なんだ、インフレになるようなことは、これは日本銀行がやることであって、政府はかまわない。いろんなものに書いてあるところの財政と金融とを一体化するという中のものの考え方と違うじゃないですか。あなたは、資金需要と申しますけれども資金需要の中には公債の発行も入っているでしょう。だから、その資金需要というものを増したのは、国債の発行によって増した。それによって、政府のほうで買い取らなければいけない、そういうふうな事情から、通貨が出てくる。決して公債発行と資金需要というものとは関係ないわけでもないし、また、それによってインフレのもとになる。現在、私から申し上げるまでもなく、もう金融機関はオーバーローンでしょう。そこに公債をぶっつけたならば、緩慢なときにはいいでしょうけれども、繁忙のときには、これは日本銀行に行って金を出してくれというにきまっている。日本銀行は、公債は至上命令として、何としても消化しなければいけない。だから、一番利潤的には悪いような公債というものを提供する、そういうふうなかっこうになっている。私は、いま時間がありませんから申しませんけれども、五千二百億と五千二百億がぴったり合うなんてことは、これは偶然にしてはあまりにも偶然過ぎる。ことに私は、驚くべきことは、政府保証債の日銀還流は非常に大きいということなんです。いま数字は申しませんけれども、大体四倍に達している。こんな事態はいままでなかった。そういうふうな政府公債政府の出すところの、政府の保証するところの保証債、こういうふうなものが、一たん市中では消化されるけれども、それがまた間もなく日銀に還流してきて、そして、これが通貨になっていく。   〔主査退席、小沢(辰)主査代理着席〕 よほど財政と金融の一体化を考えられるならば、そういう方面で私は、公債政策というものは相当考慮されるべきじゃないか、そういうふうに思いますが、どうでしょう、大臣。
  46. 水田三喜男

    水田国務大臣 インフレとの問題もむろん考えなければなりませんし、したがって、市中消化ということを原則として公債の発行をしておりますから、その市中の消化ができ得る状況であるかどうかということを考えて発行は調整される。それで、発行されたものを、一年たって日本銀行が金融調節の手段としてオペをするということは、これはいま局長が言ったように別問題でございまして、あくまで市中消化を貫く以上は、公債の発行についての十分な調節が行なわれるべきものだというふうに私は考えます。そうして、昭和四十三年度の事情を考えましたら、これはもう政府保証債も国債も思い切った削減をする必要があるということを考えて、今年度のような措置をとったというわけでございます。
  47. 華山親義

    華山分科員 それで、そのことにつきましてちょっと私は、各大臣にたびたび聞いてきた問題がある。コールレートが上がります。コールレートが上がりますと、地方の金融機関から都市銀行に金が流れる、これは当然の現象です。そのたびに、地方の中小企業専門の金融機関の貸す金が少なくなってくる、こういう現象が起きます。私は、この問題につきましては、池田大蔵大臣——池田総理大臣が大蔵大臣のときですからもう十年ぐらいになりますかな、そのときにも、知事の会議があったときにお尋ねした。大蔵大臣は、そういうふうな傾向が確かにあるので、何とかしてこれを押えて、地方の中小企業には御迷惑をかけないようにする、こういうふうにおっしゃった。しかし、あまりなさらなかったようです。その後今度は、田中大蔵大臣、このときに私は国会議員でしたが、田中大蔵大臣にお聞きをした。そのときには、非常なもう、五千億程度のもののコールが一兆円にも地方から流れてきている、そういうふうな状態で一体どうするのか、これでいいのかということを聞きましたところが、金融制度調査会がいま銀行法の改正をいろいろ考えておるので、その調査会の中でその点は審議して、今後そういうことのないようにしたいと、こういうふうに言われた。その後調査会のほうでその問題がどういうふうに取り上げられたのか、私わかりませんが、今日コールレートによりまして、まだ顕著ではないけれども、確かにそういう傾向が出ております。いまここで数字をあげる時間もありませんから省きますが、特に相互銀行等からのコールローンが多くなって、そうして都市銀行のコールマネーが多くなってきた。そういうふうな傾向というものは私は困ると思うのですが、どういうふうにお考えになりますか。これはいままで大臣にお聞きしておりましたので、大臣からお答え願いたい。
  48. 水田三喜男

    水田国務大臣 従来は、コールレートが上がると、地方銀行からコールに運用されて、中小企業への貸し付けが減るというような現象が確かにございました。これは過去、公定歩合を上げたとき、それに伴ってコールレートが上がったようなときには、必ずこういう現象が起こりましたが、この現象がきわめて緩慢であるというのが今度の場合の特徴だと思います。昔は多いときには、五銭六厘なんていうようなレートがございましたが、今回は二銭四厘でとどまっておって、この上がり方も少ないということと、それから、都市銀行がコールを引いた場合には、その後を見て日銀が窓口規制で規制をするというようなやり方をしていることも響いておるのでございましょうが、地方銀行からの都市銀行へのコールの流れというものが、今度の場合は多くない。したがって、いま統計で見ましても、中小企業への貸し出し比率が、あらゆる機関が少しも下がっていないので、むしろ公定歩合が上がってから中小企業への貸し出し比率が上がっているという現象が見られています。と申しますのは、中小企業はやはりどんどん伸びて体質も強化されておりますから、この際にやはり堅実な金融機関との結びつきを強化しようというような積極的な考えもあるというようなことから、金融引き締めをやったにもかかわらず、中小企業への金融量が減っていかないというのが今度の一つの特色ではないかと思いますので、この傾向を何とかして維持する。それにはいまいろいろ懸命な指導をしているところでございます。
  49. 華山親義

    華山分科員 ぜひお願いしたいのでございますが、相互銀行のおととしのコールローンは六百一億、昨年末は八百六十三億に増しておりますね。資金量にもよりましょうから一がいには言えませんが、そういうような状態で、必ずしも今後楽観を許さないと私は思います。  いろいろお聞きしたいこともありますけれども最後に申し上げます。従来は、オーバーローンの形で企業界は借金政策をとってきた。いまでは、今度は政府が借金政策に転じた。日本は全部借金でやろうとしている。インパクトローンにしても、時間がありませんからもうお聞きいたしませんが、企業は今度は外国から資金集めに一生懸命なんです。借金借金でやった企業というものは、気をつけないと非常にあぶないと私は思う。その点御注意だけ申し上げて、私の質問を終わります。
  50. 小沢辰男

    ○小沢(辰)主査代理 次に、中村重光君。
  51. 中村重光

    中村(重)分科員 大臣に日中貿易の問題で少しくお尋ねをしてみたいことがあるのです。この問題は、昨日の大蔵委員会でも総理も出席されて質疑が行なわれ、私も予算委員会でいろいろとお尋ねをしましたし、商工委員会でも通産大臣から考え方を伺ってきたわけですが、どうも各大臣のお答えになっていることにニュアンスの違いがあるように感じられる面があるわけです。たしか三、四日前、土曜日の朝日新聞であったかと思うのですが、輸銀資金を日中貿易に使うことはいいのではないかという意味の大蔵大臣の談話が、記者会見で出ておるのです。また各大臣も、具体的な問題が出てきた場合にそれによって対処するとか、あるいはケース・バイ・ケースでいくのだとか、吉田書簡には拘束されないのだというようなことなんですが、さらにまたそういう考え方から出てくるものは、政経分離で日中貿易は進めていくのだ。予算委員会で私申し上げましたように、政経分離というけれども、吉田書簡に拘束されるとかあるいはその他いろいろな政治的な判断というものによってとらわれていくことは、それは政経分離ではなくて、政治とこれをからませていくことになるのではないか。政府自体が口にしていることと現実にやっていることとは、これは全く矛盾しているのではないか。そういう考え方でございますから、そういうことでいろいろとお尋ねをしたわけです。  そこで大蔵大臣、輸銀資金というのは純経済問題であるということは、議論の余地はないところだろうと私は思う。この輸銀資金を、当然貿易振興のために使わなければならないにかかわらず、これを使われないということでいままで使っていないわけですが、使わない圧力となっている政治的な判断、そういうものは大体何かということですね。それをひとつこの際率直にお聞かせを願いたいと思うのです。でなければ、どうもすっきりしないのです。どういうことです。
  52. 水田三喜男

    水田国務大臣 その点については、委員会において椎名大臣がいろいろ申し上げたそうでございますが、私のほうは、この輸銀という機関は、特定国にはこの資金を使用させないというような原則を持っておりませんので、ケース、ケースによってこれは処置するという方針でございますので、今後もそれでいきたいというふうに思っています。
  53. 中村重光

    中村(重)分科員 大臣、いまの答弁は説得力は少しもないわけですよ。なぜかと言えば、吉田書簡が出るまでは、これは経済ベースですから、ケース、ケースによることでしょう。それで、それまではずっとケース、ケースによって融資が行なわれてきたわけですね。吉田書簡が出てから、政府方針としてすばりとこれが中止された。このことはケース、ケースによってやっていないということですね。だから、ケース、ケースでやるのだということは、吉田書簡によってこれがストップされたんだから、いまあなたはそういうお答えだけれども、ケース、ケースによってやっていないのだから、それはどういうことなのかということをやはり明確にしていただかなければならない。  それからきのう私は通産大臣にお尋ねしたのですが、ケース・バイ・ケースとは何かとお尋ねした。あれはよろしい、これはいけないということはどういうことか。それじゃさっぱりわからぬじゃないか。それで通産大臣も実は困っておるだろうと思うのですが、いろいろと私はその点はお尋ねしてみたわけです。何といったってこの輸銀資金を使わせるという問題これは大蔵大臣の判断というものが当然尊重されなければならないし、最優先しなければならない。だから、政経分離である、輸銀資金は純経済問題であるというならば、これをいろいろ制約をするということは、大蔵大臣の権益を侵していると思う。だから、あなたが記者会見で輸銀資金を使ってもいいのではないかとおっしゃられたことは、これは当然なことだ。それをほかからいろいろ言って、そのあなたの考え方をねじ曲げさせているということは、これは間違いであると思うわけです。時間がありませんから、お答えを聞いていかなければならないのですけれども、いまの大臣の答弁は答弁になりませんから、もう少しはっきりお答えください。
  54. 水田三喜男

    水田国務大臣 この問題には、過去においていろいろいきさつがあったということは、もう御承知だと思います。今後の運営をどうするかという問題になりますと、私がさっき答えたあれで尽きるのではないかというふうに考えます。ケース、ケースによってこれを処理する、この原則をはっきり確立すれば、今後適当に処理されるというふうに私は考えます。
  55. 中村重光

    中村(重)分科員 いまのことばでやや明確になってまいりました。いわゆる吉田書簡が出た。それによって輸銀資金がストップされ、中国に対するところの延べ払い輸出にこれが使えないということになったことは、君も知っておるだろう。まあそのときにはお互いに議論したんでございますから……。だけれども、輸銀資金というものは、これは経済ベースであるから、日本の輸出貿易を伸ばしていくために少々これを強めていくということでなければならない、輸出能力というものを与えていかなければならない、そのために輸銀資金というものは使われてこなければならないんだから、したがって、輸銀資金は主としてこれはプラント等の延べ払い輸出に使うわけですからね、だから商社の能力であるとかあるいは輸出するところのそうした物資であるとか、いろいろなことによって、輸銀資金をこのプラント輸出に対しては使わしてよろしいのかよろしくないのかという判断は、当然これは輸銀がしなければならないんですね。それが大原則なんだから、これまではいろいろ制約があったけれども、これからはその大原則にのっとって、ケース・バイ・ケースによって純経済問題としてこれを取り扱っていく、こういうことに理解をしてよろしゅうございますね。
  56. 水田三喜男

    水田国務大臣 さっきの御質問に関することでございますが、輸銀はやはり政府機関でございますので、貿易政策とか金融政策、国のそういうものに適合しなければならない。その範囲において、個々の自由な判断は輸銀がそういう政策に沿って判断してきめる、こういう立場でございますので、そこで従来その国の貿易政策とかいうようなものとからんだいろいろな問題があったために、この輸銀の判断が自由にはいかなかったというような点はあったと思います。しかし今度は、通産省においても、外務省においても、大蔵省においても、今後これをケース・バイ・ケースの問題として処理しようというふうに政府見解が統一されたわけでございますので、私はこの統一された政府見解を一応述べるにとどめますが、大体おわかりだと思います。
  57. 中村重光

    中村(重)分科員 どうもこの問題に対して政府が答弁することに慎重であり——慎重というよりも、答弁に苦悩の色があらわれてくるんですね。どうしてそうまでこの問題に対して政府は慎重になり過ぎるというぐらいに慎重になっておられるのか。大体吉田書簡の問題で、これはケース・バイ・ケースでいかなければならないということに政府の統一見解が出ました際に、台湾に対してはたしか一億五千万ドルの長期借款を認めたはずですね。それで解決をしたということがいわれてきたんですよ。ところが、依然として今度の覚え書き貿易が締結をされたにもかかわらず、政府の答弁というものが変わってこない。いまのお答えで若干前進したような感じもするわけですが、いまお答えになったケース・バイ・ケースというのは、政治的な問題に制約される意味のケース・バイ・ケースではないのであって、あくまでそれは経済的な判断ですね。これがストップになった当時、御承知のとおりに、日立の貨物船の輸出が行なわれようとした寸前ストップされた。日紡のビニロンプラントの輸出がまさに成約されたけれども、これを使わせないということでストップした。だから、この後は、そういうように特定の企業が特定の物資を延べ払い輸出をする、そういう場合、この企業には貸してよろしい、この企業が輸出をしようとするところのその物資はどうもこれは適当でないんじゃないかというような、そういうことのいわゆるケース・バイ・ケースであるというように判断をしてよろしゅうございますね。
  58. 水田三喜男

    水田国務大臣 私は外交問題とかそのほかの問題については触れませんが、これについてどこに問題があるかというような問題については、椎名通産大臣がけっこうもう御趣旨に触れた答弁をいろいろしているようでありますから、それでもうおわかりだと思います。今後ケース・バイ・ケースによってこれを処理する。新たに政府の中で方針をきめるということは、これは個別の判断は輸銀がすることでございましても、輸銀がその場合に政府の貿易政策の線に沿わなければなかなかやれないことと思いますが、政府の貿易政策によって輸銀が個々の判断でやっていけるということになるのでございますから、大体この程度のお話にしておいていただきたいと思います。
  59. 中村重光

    中村(重)分科員 どうも大蔵大臣はあまり外交上のことに触れられる必要はないとおっしゃる。それはまあ政府ですから、いろいろと配慮されるような点もあるだろうと思うんですけれども、ともかく国の貿易政策によって云々と言われたんですが、御承知のとおり、日本輸出入銀行法は、その目的は「金融上の援助を与えることにより本邦の外国との貿易を主とする経済の交流を促進するため、一般の金融機関が行なう輸出入及び海外投資に関する金融を補完し、又は奨励することを目的とする。」これによっても、第三章の第十八条にずっと業務が明らかにされているわけですから、だから国の貿易政策ということもありましょう。ですけれども、輸出入銀行法というのは、これは国会の議決によって一つの法律になっている。院の意思はこれに確定をしている。にもかかわらず、政府のあれこれの配慮から、院の意思によって決定をしたこの法律を守らない、順法しないということは、これは許されないと私は考えておるわけです。だから、大蔵大臣は、この輸出入銀行法が正しく守られていくように、そして日本の貿易の発展となり、経済の発展に寄与していくというような態度であるべきだ、こう思います。だから、姿勢としてはそういう姿勢であなたはお進みになる、こういうように理解を、判断をしてよろしゅうございますね。それは言えると思います。
  60. 水田三喜男

    水田国務大臣 それはよろしゅうございます。
  61. 中村重光

    中村(重)分科員 それではいろいろお尋ねしたいことがあるわけですが、信用組合の問題についてお伺いいたします。  御承知のとおり、信用金庫とか信用組合でいろいろな不正事件が発生をいたしておりますね。信用金庫は大蔵省の直接監督ということになりますけれども、信用組合は、全信連の場合は大蔵省の直接監督であるけれども、単位信用組合というのは都道府県知事の認可ということになる。したがって、間接的な監督指導しかできない、そういうことになっておると思いますが、そこにはどうも問題があるような感じが私はいたします。しかも都道府県の監査にいたしましても、たしか三年に一回の定期監査——これは随時監査はもちろんやるべきでありましょうし、自主的にそれをやらしておるということでございましょうが、ところが都道府県の監査にいたしましても、全く機械的なんです。何もこれに対する強制力を持たない。したがって、改善勧告とかあるいは注意なんかやりましても、そのときだけ承知いたしました、こう言うだけで実際やらない。その結果は、預金者に対して多大の迷惑と損害を与えていくということがあっちこっち起こってきている。私の長崎県に長崎信用組合というのがあるのですが、これは実に内容的にひどいですね。ともかく何とか屋と、こう言うのですが、ブローカーですが、それが二億の導入預金を持ってきて、そして五千万の担保をとって二億五千万円融質をするという。それから大口預金というのは、法定金利六・五%ですか、六%ですか、それだけではなくて、別にいわゆる謝礼とか特利とかいう名目でもって、その金額によって一万円とか二万円とか一時金を渡すというやり方をやっている。そういうような業務の運営のあり方ということから、ついにこれは運営できなくなる。そして善良な預金者というものは金をもらうことができないで、たいへんな問題がいま起こってきている。これは私たち一つの例として申し上げたのですが、そういうことが全国的にも多々あるのではないか、こう思います。ですから、この信用組合の問題については、私は、先般いろいろと大蔵省の監督というものはいままでのあり方ではなくて、これをもっと強化していく必要があるのではないかということを指摘をしてまいりました。これは水田大蔵大臣のときではなくて、田中さんか、福田さんのときであったと思うのでございますが、金融制度調査会の中でこれをいま検討しておるので、それによって実情に即するような大蔵省の監督が強化される方向に進めてまいりたい、こういうお答えである。ところが、今度の調査会の答申の中には、この信用組合の問題はそれほど強化されるというようなふうにには感じられないわけです。いわゆる大蔵省の監督というものは強められるということにはならないのじゃないか。これらの点に対してどのようにお考えになっておられるのか。もし長崎信用組合の問題を御調査になっておられるならば、時間の関係もございますので、簡単にお答えを願いたい。
  62. 澄田智

    ○澄田政府委員 信用組合に対します監督の点につきましては、これは従来からただいま御指摘のように都道府県事務としてこれを行なっておるわけでございますが、その監督あるいは監査等につきまして、とかく手が行き届かないというような弊のあったことは事実でございます。金融制度調査会につきまして、中小企業のあり方について答申を出しました。そうして今回の国会において、信用金庫を含む中小企業専門機関のあり方についてのための法律改正を用意をして、御審議をお願いしているわけでございます。その中で信用組合の監督の点でございますが、これにつきましてはやはり地方自治というたてまえから、府県知事の監督という基本的なやり方は、これは従前どおりということにいたしておりますが、十分自治省を通じ都道府県との連絡を緊密にする、そして監督等については、従来より積極的なる心がまえで大蔵省としてもその内容を十分に把握し、都道府県を通じての監督に努力をしたい、そういう要望もございましたし、答申の中でその点を特に指摘をしている個所も、連絡を強化するという意味において中にうたっております。そういう意味で、今後この法律改正も行なわれることでありますし、十分その連絡には注意していきたい、かように存じております。  ただいま御指摘の長崎県の信用組合の具体的な例につきましては、まだ私ども十分調査をいたしておりませんので、なおよく調査をいたしたいと思います。
  63. 中村重光

    中村(重)分科員 長崎中央信用組合の問題は、ここ数カ月の問題ではないのです。たしかもう一年以上前から問題になっておるわけですから、まだ銀行局のほうでこれを調査をしておられないというのも、私実は意外に感じたのですね。都道府県が直接的にやっておるといたしましても、そういう問題が起こった場合は、当然大蔵省のほうに報告というものはなければならぬと思うのです。それによって適切な指導というものはあるべきじゃないですか。
  64. 澄田智

    ○澄田政府委員 ただいま私のお答え申し上げましたことが、ちょっと不完全でございました。実は県からの報告はきておりますが、いま手元にその内容を持ってきておらない。私自身、いま内容をここで申し上げるほど十分承知をしていない、こういうことでございまして、その点訂正させていただきます。
  65. 中村重光

    中村(重)分科員 それでは、この問題は報告がきておるということになってまいりますと、大蔵省のその問題に対する扱い、これに対するそれなりの指導というものはあるべきだと思います。適切な指導をなさる考え方である、そしてそうした善良な預金者に対する被害を最小限度に食いとめるように、被害を与えないように、そういう指導をされる考え方であるというように理解をしてよろしゅうございますか。
  66. 澄田智

    ○澄田政府委員 直接は県の処理する問題でございますが、その点よく内容を調査いたしまして、十分そういう指導をするようにいたしたいと思います。
  67. 中村重光

    中村(重)分科員 直接には県だとおっしゃるのですけれども、県はどうにも手がないのです。ただ二十万円以下の預金者に対して、ある職域の信用組合が地域信用組合に改組する、そういうことにすることを条件として、それを一部を買い上げた。それを県が指導に当たった、これをやっているだけですね。五十万円以上は全然払っていない。そしていわゆる特利で百万円預金して一万円もらった、それは善良な預金者ではないという無理なこじつけ方をやっている、そういうことなんです。しかし、これでなにしたら時間がございません。それで大臣に、基本的な考え方でもう一点お尋ねしてみたいと思います。  地域開発の問題あるいは干拓、いろいろないま国が進めているところの行政のあり方というものを見てみますと、私は全く総合性がない、貴重な国費を全くむだにしておるという感じがしてなりません。産炭地振興の問題しかりです。御承知のとおり、産炭地振興ということで振興事業団が土地造成をどんどん進める。ところが もうペンペン草が生えているというようなことで、これは企業が全然いっていない。そういうところが多い。干拓なんかの場合におきましても、漁民から漁業権を取り上げて干拓を進めておると思いましたけれども、その三分の一くらいは他の用途にこれを転用するというやり方、あるいはそのまま遊ばしておるというようなことですね。たまたま、私は先般、決算委員会で大蔵大臣に長崎干拓の問題もただしてまいりましたが、そういうような干拓行政を進めておりながら、漁民が絶対反対を、一部ではあったにしても、しているのにかかわらず、しかも、国民のたん白源というのは、これは漁業の面における重要な役割りということになってまいりますから、年間三百万円というようなそういう収益を漁民はあげて、みんな希望に燃えて従事しておる。それを取り上げて干拓を進めていくということには問題もあるだろう。国内農業の発展ということは考えていかなければならぬけれども、やはり総体的に見ていかなければならないのではないか。そういうことで予算を、その繰り越しだけではなくて、新規にずっと追加、追加という形で進めてきた、執行は三年もしていない、こういうことは決算上から見ても適当ではないじゃないか。だからして、もうこれを一応打ち切って出直す、あるいはもっと漁民を土俵に上げるための精力的な補償の問題、その他これに取り組んでいく必要があるのではないか、こう申し上げたところが、大阪の例をとられて、大臣は、そのとおりだと思う、話がつかなければこれは打ち切らなければならぬと考えておるというお答えがありました。ところが、さらに今度また四十三年度において十億の追加をされました。私も、話がつけばけっこうであると思います。ですけれども、強権をもってこういう水面の埋め立て等、強引にこの干拓を進めていくというやり方は、厳にこれは避けなければいけないが、四年目になるわけでございますから、新たに今度また私の質問と違った形で、その判断の上に立って十億の予算をまたおつけになったわけでございますから、干拓行政に対する、そういう問題に対する根本的な大蔵省としての考え、具体的な問題として、いま私がとり上げましたようなことについての考え方はどうか、それから地域開発ということについて大臣の考え方を伺うということで申し上げたわけでございます。また繰り返しますと、たとえば、地方自治体が、私の県でいえば外港計画をするという形で進めておる、相当広範な埋め立をやっておる、あるいはほかの県においても同じようなことをやっておるところが非常に多いですけれども、企業誘致については計画がない。ただ誘致したいというだけで、具体的な計画というものは何も持ってない。そういうようなことであっては、これまた私が指摘しました干拓と同じようなこと、たいへんなむだになってくるのではないか。だから、もっと総合的な計画性のある地域開発なり干拓なりを進めていくのでなければならないのではないか。その点に対する大蔵大臣の考えを伺ってみたいと思います。
  68. 水田三喜男

    水田国務大臣 これはもう全く同感でございます。特にいま一番問題になっておるのは、いわゆる過密対策でございますが、これはもう経済の成長につれた都市化現象に応じて次々に施策を積み重ねてきている。そうしてそれに予算を盛り、財政投融資をしているという形できましたので、非常に効率の悪い施策を政府はいまやっておるということでございますし、一方過疎対策の面におきましても、いま御指摘になったようないろいろな問題がありますが、これをこのままいまのような形にしていったら、国民経済の大きいロスになるいうことを考えますので、この際、ひとついままでのいろいろな対策を全部洗い直して、そうしてここで総合計画を立て直そうというのが、いま経済企画庁を中心にやっている仕事でございまして、このことは絶対必要だと思います。過去において、いまの干拓でも何でも、きめられたものは何かそういう大きい総合政策の見地からこれを抑制する、あるいは変更するということでないと、地方のいろいろな利害関係は、なかなか政治上にも反映してきますからむずかしくて、これをそのまま漫然とやったら、もうほんとうに非効率な投資になってしまいますので、それは洗い直して、そうしてはっきりした総合政策を立てる。そうしてこの線に沿った投資だけを今後やるということにしたら、国民経済のむだは救われるということを考えまして、私どもはぜひこれは早急にやらなければならぬということで、いま経済企画庁がこの問題に取り組むということになっておりますので、そういう方向で解決する以外に方法がないのではないかと考えております。
  69. 中村重光

    中村(重)分科員 長崎干拓問題についてですが、私が決算委員会で質問をした際、大臣は、話がつかなければ打ち切らなければならぬとおっしゃった。今度また十億の追加予算をつけたわけです。ですから、何か条件がついているんだろうと思う。それから、私が申し上げたように、いわゆる強権発動みたいなことでやるのでなくて、あくまで漁民に——非常にに有効な漁場でもあるわけですから、漁民の納得の上において干拓は進めていくべきものであると私は考えるので、今度新たに十億の追加をされたことについてのいろいろな条件があるやに伺っておるわけですから、それらの具体的なことについてのお答えを願いたい、こう言っているのです。
  70. 水田三喜男

    水田国務大臣 いまの問題は具体的問題でありますので、至急調べてあとからお答えいたします。
  71. 中村重光

    中村(重)分科員 それでは、中小企業の金融問題を質問したかったのですが、時間がありませんから、これで……。
  72. 小沢辰男

    ○小沢(辰)主査代理 折小野良一君。
  73. 折小野良一

    ○折小野分科員 昨年の夏以来、財政あるいは金融両面から、いわゆる引き締め政策というものが進められております。特に金融面から申しますと、「五%の窓口規制、それから公定歩合の一厘引き上げというのが昨年の秋口に行なわれました。その後、国際経済のいろいろな問題がございまして、それに対応するということで、本年に入りまして、さらに公定歩合の一厘引き上げということが行なわれています。こういう政策の効果というものが、はたして現実にあらわれておるのかどうか、これはいろいろな見方があろうかと思いますが、大蔵大臣は、このような一連の引き締め政策の現段階における効果というものがあらわれておるかどうか、その点について御所見をお伺いしたいと思います。
  74. 水田三喜男

    水田国務大臣 引き締め政策を最初とりますときには、効果のあらわれるまでには相当ひまがかかるということを私どもは一応覚悟しておりましたが、ようやくこの効果のあらわれが出てきたというふうに考えております。御承知のように機械受注とか、あるいは建設の請負というような先行費用といわれるもの、それから卸売り物価、輸出入等の指標から見て、最近になってようやく効果が浸透してきたという徴候が各所に出ておりますので、たとえば、三月の輸出、国際収支の状態が定着したものであるかどうか、まだそう簡単に言えない問題がございますが、しかし、いままでにおける指標とはっきりと違った現象が続いて出てくるということは、やはり好転へのきざしと見てもいいんじゃないかと思われますが、そういう形でようやくいま出てきました。ただ、生産が落ちないという問題だけが残っておりますが、いままでの例から見ましても、ほかの先行指標そのほかが変わってきますというと、大体三、四カ月後にこの山が来るというようなことも予想されますので、私は、いままでの引き締め政策はいい方向に動いているというふうに思っております。
  75. 折小野良一

    ○折小野分科員 ようやく政策の効果があらわれてきた、浸透してきつつあるというようなお見通しでございますが、当初政府は、このような一連の政策を行なわれました場合においては、もっともっと早くその効果があらわれるということを期待しておられたんじゃなかろうか、その後国際経済の緊迫化に伴って、早く効果があらわれないと困るんじゃないかというようなお考えがあるいはあったんじゃないかというふうに考えられるわけ  であります。そうしてまた、今後の国際経済のいろいろな問題を考えますと、早くその面の効果を見きわめなきゃいけないというような面も見通されると思うのでございますが、そのような今後の見通し、こういうようなものの中に立ちまして、過去の引き締め政策の実積でございますが、過去におきまして、窓口規制を二二%くらいまでやられたというようなこともございます。あるいは公定歩合の引き上げも、一厘あるいは二厘くらいの引き上げじゃ足りなくて、三厘以上の引き上げをやられてようやく効果をあげたというような過去の実積もございます。そういうようなものと今後の情勢を考えまして、今度の場合、今後さらに引き締めを強化する——巷間近くさらに一厘引き上げるんじゃないかというような観測等も出ておるわけでありますが、そういうような面について、大蔵大臣としてはどういうふうにお考えになっておりますか。あるいは政策として今後さらに引き締めを強化するというような御意図がございますかどうか、お伺いいたしたいと思います。
  76. 水田三喜男

    水田国務大臣 御承知のように、過去においては景気調節というものをもっぱら金融政策でやってきましたが、国債を発行するということをしました以後の金融情勢は変わってきておりまして、金の流れが変わっておりますために、国債発行下における景気調整策ということになりますと、金融政策にはそう多くたよれない。また、金融政策として金融引き締めをやってみても、大企業の手持ち資金が豊富であるというようなときに、その引き締めの効果というものは短期間には出てこない。結局、財政政策によって景気調整をしなければいけないという事情にありますので、私どもとしましては、今回の場合の景気調整は、もっぱら財政政策を主役にするという方針で今日までやってきました。そうしていまようやく効果が出ておるときでございますから、さらにこれを促進するために、四十三年度財政政策は特に大事だということを考えまして、本年度は、たびたび申し上げるようでございますが、私どもとしては、いろいろいま御批判をこうむっておりますが、減税まで犠牲にしてもこの財政措置を完ぺきにすべきだということで、国債も思い切って切った措置をやっておりますので、この財政政策を機動的に運営していくということになれば、大体所期の目的は達せられるんじゃないかというふうに考えられますので、いろいろな問題が今後まだ予想されても、私は、これを金融政策によってさらに強化したりどうこうするという措置はとりたくないというふうに考えております。
  77. 折小野良一

    ○折小野分科員 ただいまの大臣の御答弁にもございましたように、金融政策というものがその反応を十分あらわさなくなってきたという一つの傾向が見られるのではなかろうか、日本経済そのものが金融の引き締めに対しまして、いわば鈍化しあるいは硬直化しているというようなことが考えられるのではなかろうかと思うのでございます。そういう点から考えまして、その原因はどこにあるのか、こういうような面を十分検討してみることは、長期にわたる経済政策を立てる上に非常に大切なことではないかというふうに考えておるわけでございますが、大臣あるいは政府として、そういう面の原因についてどういうふうに御検討になっておるか、お伺いをしたいと思います。
  78. 澄田智

    ○澄田政府委員 私のほうからお答えさせていただきます。  従来、金融引き締め中心に景気調節をやってまいりました。この段階におきましては、何と申しましても、民間の資金需要が非常に強く、成長も非常な高度成長というような時期でもありまして、企業はオーバーボローイングというような状態で、非常に借り入れに依存していたという状態であります。したがいまして、こういう場合には金融引き締めということによって引き締めが非常に急速に効果を発揮するということで、これはむしろ企業の借り入れ需要が異常に多いという過去の三十年台の経済情勢というところからきたものではないか、かように存ずるわけでございます。その後、企業の自己金融力というものが増大してしまいりまして、全体としては借り入れに依存する度合いが減ってきておるという状態でございます。したがいまして、過去は過度にそういう金融依存の高いという状態を背景に金融引き締めが非常な効果を持った、こういうことがございますが、いわば正常化されました今日の状態におきましては、金融だけで景気調節をまかなうというようなことにはならない。財政政策というものともあわせまして、両々相まって効果を発揮するというふうな金融情勢全体の変化が、こういう形になって、いわば過去は、その点については非常に金融依存が高いだけに、金融引き締めのみにたよった、こういうことで、むしろ正常化されてきた面もあるのではないか、かように存ずるのであります。
  79. 折小野良一

    ○折小野分科員 ただいまの御答弁ですが、従来金融依存度が非常に高かったものが正常化されてきた、こういうふうにおっしゃるわけでありますが、私は、金融依存度がそう正常化してきているとは考えられないのではなかろうかと思います。従来からわが国の企業の自己資本率は非常に低く、これは一つの問題であるということが言われてまいりました。欧米の企業におきましては、大体自己資本率が六〇%程度、それに対しまして、わが国の企業におきましては二〇%台かあるいはそれを割るというような状況で、私の一応調べたところでは、昭和四十年度は一九%、それから四十一年度は一八%、こういうふうにむしろ自己資本の率というものが下がってきておる。むしろ他人資本、金融に依存しておる度合いのほうが大きくなってきておる、こういうふうに考えられるわけであります。むしろ、そこにこそ今日の問題の基本的な原因があるのじゃないかというふうに、私どもは考えております。ただいまこういう面が正常化しつつあるというふうにおっしゃいましたが、そういうふうにお考えになります根拠をひとつお示しをいただきたいと思います。
  80. 澄田智

    ○澄田政府委員 自己資本比率につきましては、いまお示しのような傾向があるわけでございます。私が申し上げましたのは、たとえば企業が設備投資をするというような場合に、その中に占めます自己資金の割合が高まってきておる。これは、その場合は、自己資金と申しますのは、償却のための資金、それと内部蓄積、この合計でございますが、このところの、三十年代の設備投資の盛んに行なわれました結果、償却資産というものが非常にふえてきております。また償却の割合というのも高まってきておりまして、したがって、そういうようなところから企業の償却というものが非常に大きくなってきている。その償却の資金が、自己資金として、設備投資等を行なう場合に自己金融力という形になってあらわれている、そういうようなことでございまして、そういうふうな点から、かつての時期に比べますと、自己資金でまかなう度合いというものが相当高まってきている、こういう状態でありまして、全般といたしまして、他人の借り入れに依存する度合いというものが減ってきている、こういうことを申し上げた次第でございます。その点は、企業の手元流動性が高まっているというようなことをしばしばいわれております。引き締めに入ってもなおそういう状態が続いて、最近に至ってややそういう手元流動性をくずしてきている、こういうことがいわれるのは、そういう点を示しておるわけであります。こういうような点から、ストレートに借り入れに依存をしておりましたかつての状態と違ってきている、かように申し上げたわけであります。
  81. 折小野良一

    ○折小野分科員 いずれにいたしましても、今日のわが国の経済が、特に世界的な経済の激変に伴いまして、いろいろ重要な段階にきておることは申し上げるまでもないわけでございますが、特にその面の当面の問題といたしまして、アメリカドル防衛政策、一連のドル防衛政策がいろいろとられてまいっておりますが、特にその中で輸入課徴金問題、これが非常に大きな問題になってまいっております。わが国の立場といたしましては、何とかこれをやめてもらいたい、あるいはその影響をできるだけ少なくするようにしたい、こういう当面の努力というものは、当然なされなければならないわけでございます。これは相手のあることでございます。そしてまたその相手の出ようによって考えていかなければならないことだと思うのでございますが、このような一連のドル防衛政策の今後の動きに対しまして、わが国経済のとるべき道、本筋の道、こういうものはどういうところにあるとお考えになっておられますか、お伺いをしておきたいと思います。
  82. 水田三喜男

    水田国務大臣 わが国はドル防衛には協力するという基本的態度を持っておりますが、協力するといっても、日本自身の国際収支の問題を解決しなければならないところに私ども置かれておりますので、したがって、この協力には限度と範囲がおのずからあるというふうに考えまして、ハワイ会談を通じ、いろいろ両国の事情を述べ合って、お互いの防衛についての努力について話し合いましたが、結論としましては、この問題はやはり黒字国の協力をどう得るかということがお互いの共通の関心事項でなければならぬというようなことで、黒字国の協力をまずアメリカ自身が得るということに、いままたアメリカ自身も専念しているようでございます。日本もまた、アメリカの金融負担というものを軽くするという意味もありますし、また一面日本資金調達先を分散化するという必要もございますので、金融の調達を欧州に求めるというようなことは私どももやるというようなことで、いろいろ協力体制は今後とっていくつもりでございますが、しかしその場合、ほんとうにドル不安をなくするためには、米国のドル防衛のしかたが重要でございまして、やはりドル不安をなくするためには国内政策が基本でなければならないというふうに私は考えています。昨年アメリカへ参りましたときに、ニューヨークの財界と会ったときに、私は、こういう場合に臨んだときは、経費を削減するか増税か、いずれかの道を選ぶべきだ。日本は増税の道を選ばないで、経費を縮減するという道を選ぶのだ。アメリカは、ベトナム戦や何かあって経費の縮減が選べなかったら、増税の道を選ばなければ、終局的にドルの信用を確保することができないだろうということを言いましたが、いまでもその考えに変わりございません。こういう対策からドル防衛の基本策をきめていただきたい。輸入課徴金というようなものによってドルを防衛しようというような行き方は邪道だということを機会あるたびごとに私は申しまして、いまもこの方向についての反対はあらゆる機会を通じて行なっている最中でございますが、ドルの防衛には日本は十分協力いたしますが、協力できる方向において協力するということであって、こういう輸入課徴金というような世界貿易を縮小の方向へ持っていくような形でドル防衛の問題を処理しようということは間違いだというふうに考えますので、そういう意味において、正しい方向への協力は十分する、そしてこういう誤った方向に対しては日本は反対するものは反対する、こういう態度でいきたいと思っております。
  83. 折小野良一

    ○折小野分科員 そういう情勢の中で、特にわが国といたしましては、国際収支の均衡回復をする、こういう当面の目標があるわけであります。そのために、何としても今後輸出を伸ばしていかなければならない。政府が四十三年度について発表されました経済の見通しによりましても、国際収支の均衡を回復するということを一つの大きな柱にしてその見通しを立てられておるわけですが、それを遂行していくためには、特に輸出におきまして前年度比一五・二%程度の伸びになるものと期待される、こういうような表現が行なわれておるわけであります。一五・二%という数字は、非常に高い数字であると私ども考えざるを得ないわけでございますが、これが達成できるかどうかということは、今後のわが国の経済、当面四十三年度経済にとって非常に大切なことじゃないか。これをただ単に期待するということだけで、十分な見通しが立つのであるか、あるいはどうしてもこれをやらなければならないということで、何らかそういう面の政策的なものを打ち出さなければいけないのじゃないか、こういうような考え方もいたしておるわけでございますが、今後の情勢を判断して、政府といたしましては、ただ単に期待しておればできるのか、あるいは何らかの政策的なてこ入れをしなければできないのか、その辺のお見通しを伺いたいと思います。
  84. 水田三喜男

    水田国務大臣 いまの御質問の、伸びの見通しをきめた根拠についてはあとから政府委員から御説明いたしますが、私はできるというふうに考えています。国際環境がきびしいことは十分承知していますが、さっきから申し上げましたように、何といっても国際収支改善対策というものは、自分の国の国内政策がやはり基本になるべきだ、私はそう思っておりますので、これはいばるわけじゃございませんが、世界情勢がどういうふうに変わっても、日本は、内需を減らすという、これができますれば、引き締め政策下においても七兆円以上の投資を二年にわたって続けるということができる国でございますから、この生産力の増加というものはたいへんなものでございますし、これが内需の調整ができるということになりましたら、輸出圧力も出てまいりますし、相当の障害を乗り越えても日本の輸出力というものは伸びていく。それにやはり国内政策が大切だというような問題のからみからもきておることでございますし、もう一つは、欧州の諸国がいまのような行き方をしたら、世界経済は縮小への傾向をたどってしまう。だから、貿易の黒字国は外貨を相当犠牲にしてもここで成長政策をとるべきだという方向へ欧州の諸国の考えが一致して、今後そういう施策をとるという条件が出てきますので、これも日本にとっては一つのいい環境になるのじゃないかというようなこと、それから過去において世界貿易が伸びた場合に、日本の弾性値はどういうところにあったかというような問題も勘案いたしましたし、また通産省当局においては、相当国別、物資別の積み上げ計算もやっておりますし、そういうものの総合から今度の政府の見通しをきめたということでございまして、もうきびしいことを承知の上できめた見通しでございますので、私は、そんなに甘いものではない、われわれの努力によって達成できるのじゃないかという、この点はわりあい自信を持っているところでございますが、やはりこれは相当苦しい目標であるというふうには考えています。
  85. 折小野良一

    ○折小野分科員 大臣はできるとおっしゃった。私どももおっしゃるとおりに、また政府の自信のとおりに、そういうふうになることを心から期待をいたしております。しかし、今後の国際経済の諸状勢というものは、非常にきびしいものがある。これは私ども申し上げる必要もないことでございますが、そういうものをすべて勘案して、なおかつ単にできるというふうにお考えになっているのか。今後考えられるものといたしましては、あるいは第二のポンドショック、あるいはいまのドル不安がドルショックというようなことにならないとも限らない。あるいはベトナム戦争の推移等によれば、ベトナムショックというようなものが出てこないとも限らない。ほかにもいろいろな問題を考えて、なおかつできるという十分な自信がおありなのか、あるいはまたでかすために最善の努力をする、そのために万一の場合においては新たな政策を加える、こういうところまでお考えになっておるのか、その辺をさらにお伺いいたしたい。
  86. 水田三喜男

    水田国務大臣 たとえば、ベトナム戦争がやんだ場合はどうか、こういう考えられる一連の問題についての検討も十分いたしました。それでなおかつ、政府部内においても、ここまではむずかしいというのと、気の強いところはもう少し伸びるという意見を持っておるところもございまして、こういうものを全部勘案して政府の一応の見通しというものをきめたわけでございます。世界の貿易が六・五%しか伸びないときに、日本ひとりがそんなに伸ばすことが可能か、一見非常に甘いように思われるかもしれませんけれども、私はできるというような気がいたします。
  87. 折小野良一

    ○折小野分科員 最後に、もう一つお聞きいたしておきたいと思います。  現在ヨーロッパにおきまして、いわゆるゴールドラッシュが起こっておるわけであります。この問題につきましては、わが国に対する影響そのものはそうたいしてないだろうというような考え方も、いろいろあろうと思っております。しかし、それが世界経済全般に及ぼす影響、あるいは将来の世界通貨政策に及ぼす影響、こういうものを考えますと、その影響必ずしも小さくはないというふうに考えております。こういうものに対するわが国としての具体的な対策、こういうものを用意してその事態に対処しようとしておられますかどうか、その点をお伺いいたします。
  88. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 ヨーロッパにおけるゴールドラッシュにつきましては、これは新聞等でごらんのように、アメリカはじめ主要各国が共同で対処しよう、やはり金の騰貴というのは国際通貨対策に対する非常な不安の原因になります、したがって、各国ともそれに対処しよう。そのためには大臣から先ほど言われましたように、アメリカドルの安定のためには国内施策が必要だというふうに考えております。アメリカとしてもその方向でいろいろ対策を検討しているところでございますので、この金の騰貴というものも、必ずや近いうちにおさまる。その場合の日本対策でございますが、これにつきましては、先ほど大臣からいろいろ御説明ございましたように、基本的にはやはり日本国際収支を早く均衡させる、立て直す、国内の態勢を早く安定したところに持っていくということが、基本だと思います。それに必要な方向へ財政金融政策を持っていくということが、私ども必要だというふうに思います。
  89. 折小野良一

    ○折小野分科員 終わります。
  90. 小沢辰男

    ○小沢(辰)主査代理 午前中の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時五十九分休憩      ————◇—————    午後一時三十八分開議
  91. 野原正勝

    野原主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  大蔵省所管に対する質疑を続行いたします。  この際、楢崎君から発言を求められております。これを許します。楢崎君。
  92. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 資料要求をお願いしたいのです。研究機関関係に人当割りの研究費という名目でお金が出されておるわけですね。それで、各省関係研究機関の人当割り研究費がどういうふうになっておるか、資料として提出をいただきたい。
  93. 亀徳正之

    ○亀徳政府委員 準備して提出をいたします。
  94. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 いつごろまで——できれば明日この分科会が終わるまでにお願いしたいのです。
  95. 亀徳正之

    ○亀徳政府委員 なるべく御希望の線に沿うようにいたします。
  96. 野原正勝

  97. 田中武夫

    田中(武)分科員 本日は、金の問題につきまして、若干お伺いいたしたいと思います。時間がきわめて限られておりますので、こちらもできるだけ簡単に御質問しますが、答弁者もできるだけ簡潔に御答弁をお願いします。  そこで大蔵大臣、きょう朝、新聞をごらんになって一番最初に目につくのは、ヨーロッパにおける金戦争の問題です。ある新聞は「金・為替相場混乱続く」あるいはまたある新聞は「金戦争、悪化の一途」こういう見出しで大々的にいわゆるゴールドラッシュについて報じております。そこで、このような状態がどこまで続くだろうか、こういう金戦争について、大蔵大臣はどのようなお見通しを持っておられますか。
  98. 水田三喜男

    水田国務大臣 午前中も言いましたが、やはりドル不安に対する根本的な対策は、何といっても、私は米国の国内政策の確立だというふうに考えております。そういう問題をかかえているときの不安でございますし、いろいろ騰貴を誘うことが起こってくると思いますので、今度の場合もイタリアが金プールから離脱をしたというような情報が入ったために、ああいう熱狂的なブームを起こしたということも報ぜられていますが、しかし、何といっても国際協力の線がはっきりしていることと、これに対処するアメリカ自身方針がきまっておることと、金は売却停止はしない、今度の金の値段は変えないで守るという態度がはっきりしている以上は、一時若干の混乱はあっても、この問題はやはりおさまると思います。おさまると思いますが、根本的な解決のためには、アメリカ国際収支対策、いろんな対策をとるのもけっこうですが、欧州各国でも望んでいますように、また私どももそう考えますように、アメリカが金融の引き締めとか、あるいは増税とか、思い切ったドルを守る、その基本的な国内政策をまず確立して出るということが、ドル不安を解消する一番基本的な問題だと思いますので、アメリカもこういう事態に直面した以上は、必ず思い切った政策をとるものと私どもは期待しております。
  99. 田中武夫

    田中(武)分科員 現在のアメリカの金保有高は、百十四億五千万ドルです。そのうちからIMFの出資金を引きますと、中身が百三億ドル、よくアメリカの金保有の限界は百億ドルだと言います。その限界に近づいておるといいますか、もうぎりぎりのところまできておるわけなんです。そこで、もう少しこういう金戦争が続くならば、私は、何らかアメリカは金政策を変えねばなるまい。たとえば金プール、金の交換の停止、あるいはドルと金との交換停止、あるいは金の引き上げ、すなわちドルの引き下げというようなことにもなりかねないと思うのです。そして、なおそれをアメリカががんばっていったとしても、私は、世界ドルと金とに足場を置くところの体制と、金に足場を置くところの体制の二つに変わるのじゃないか、かように思います。議論はいたしませんが、あくまでもアメリカを信用せられるわけですね。そういう事態は起こらない、こういうふうに大蔵大臣は考えておられるわけですね。
  100. 水田三喜男

    水田国務大臣 金を売ることを停止するとか、金の値を上げるということは、これはたいへんな問題でございまして、アメリカはこの事態に処して、これだけは守り抜くというふうに私は思っております。
  101. 田中武夫

    田中(武)分科員 それじゃ、分科会らしくきめこまかく言います。  大蔵省所管貴金属特別会計、これの四十三年度歳出の貴金属買入費を見ましたときに、六十三億三千二百四十八万円が計上せられている。そのうち、国内金の買い上げが五億八千万円になっております。それは目方にして千四百二十五キログラムを買うことになる。ところが、金管理法によると、五%——これは政令ですが、五%の買い上げなのです。五%の買い上げで千四百二十五キロを買うとするなら、来年度の産金は二十八トン以上見越すことになるのです。そういう計算に九るのですが、来年度の産金を二十八トン以上に見越しておるのですか。
  102. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 国内産金は二十八トンではなくて、もう少し少ない数量——いま手元に数堂がございませんが、十数トン、十七トン五百九十を見込んでおります。
  103. 田中武夫

    田中(武)分科員 国内産金の買い上げの予算州五億八千万円でしょう。それを一グラム四百五田で割ったら、千四百二十五キログラム買うことになる。千四百二十五キログラムは、これを全部新産金にたよるならば、それが五%になる。そうすると、一〇〇%というのは、産金二十八トン以上でなくてはならぬ。そうでなかったら——それじゃ、新産金以外の金をどこで、何をどれだけ習うという予定なんですか。
  104. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 貴金属特別会計で見込んでおります国内の金の買い上げは、一部は新産金でございますが、一部は没収金、密輸関係で押収し、裁判の結果、国が没収することにきまりました金につきましては、一応一般会計で没収したものを貴金属特別会計へ買い上げて、貴金属会計収入としてあげておりますものですが、五百キログラム見込んでおります。
  105. 田中武夫

    田中(武)分科員 そうすると、新産金は十四、五トンということですか。
  106. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 新産金は、先ほど申し上げました十七トン五百九十、その間において若干の回収金がございますので、国内産金は十八トン五百を見込んでおります。
  107. 田中武夫

    田中(武)分科員 刑法十九条二項によって没収した、判決によって没収した金、これを検察官が刑事訴訟法四百九十六条によって処分する。ところが、これをいままで競売に付してきた、現に昨年の秋大阪でやっております。それをこの会計で見ると、それは全部この特別会計へ入れる、それを五百キログラムと見込んでおるのですか。
  108. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 昨年の衆議院の予算委員会田中委員から御指摘がありました点でございますが、そのときの御意見によりまして、私どももいろいろ検討いたしました。その結果としまして、一般会計において没収したものをそのまま競売に付すことは、必ずしも適当ではないのではないか、やはりこれは国のものとして保有すべきではないかということで、今回そういう没収金は貴金属特別会計の保有にしようということでございます。それで新年度は、先ほども申し上げましたように、五百キログラムのものを予定しておりますが、新年度を待たずして、本年度からでも没収金は金属会計で買い上げようという計画がございます。
  109. 田中武夫

    田中(武)分科員 大蔵省は、最近はどこかの新聞で私見たのですが、金の密輸は昨年の六倍だ、こう言っておるのですね。そうすると、五百キログラムというのは、この六倍密輸があった、こういう上に立っての数字ですか。
  110. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 金の密輸を推定することは非常にむずかしゅうございます。密輸で幾らか、とても公式の見積もりはできるものではございませんが、現実に税関等で調査した結果によりますと、密輸によって入ってきた金はかなりふえておるようだ。それで、没収金の具体的な数字については、関税局長のほうから御説明申し上げます。
  111. 武藤謙二郎

    ○武藤政府委員 倍数の話でございますが、四十二年は四十一年に比べて七倍の金密輸犯があがっているということでございます。それで、それは全部原物があって没収したというわけではございません。没収の数量は、四十一年、九十六キログラム、四十二年、二百八十八キログラム、こういうことでございます。
  112. 田中武夫

    田中(武)分科員 警察庁にお伺いしますが、もちろんわからないから密輸なんですがね。しかし、最近どんどんと大きな密輸があがりましたね。そういう点から、大体どのくらい密輸をせられておるということが推定せられますか。
  113. 今竹義一

    ○今竹政府委員 たいへんにむずかしい御質問でございまするが、私どもはっきりと確認をしておるわけではないのでございますが、取り締まりが強化される、あるいは取り締まられると、やみの金価格が上がるとかいううわさを聞いておりますので、どのくらいあるかということは、個々の押収量が一つの目安でございますし、また、現実に押収した数量よりももっと、違反の対象としまして浮かび上がってきた数量がございます。たとえば四十二年で申しますと、違反の対象としましては、四千百四十キロばかりが違反の対象になっておると思います。ただ、現実の押収量はこんなに押収できませんで、二百キロばかりでございますが、そういう違いがございますが、違反の対象量程度、あるいはそれを上回るところが密輸の数量じゃなかろうか、かように考えております。
  114. 田中武夫

    田中(武)分科員 そうすると、いろいろ議論はしたいんだが、時間がないので進みます。一般会計歳入のほうで、一番最後の「雑収入」、そのうちの一番最後の「その他」のところへ、没収金の払い下げといいますか、金の収入金が入ると思うのですね。それが一般会計の雑収入のうちの「その他」ですね。多分ここへ入ると思いますが、八億九百八十二万円ですか、計上せられておりますね。この金額の中に、先ほどあなたがおっしゃった五百キロの、いわゆる特別会計での買い上げの金額がここへ入るのですか。
  115. 村田博

    ○村田政府委員 いまのお尋ねでございますが、特別会計において貴金属買い入れ費といたしまして、六十三億円計上いたしております。その六十三億円のうちにたぶん没収金の買い入れ代金が入っております。
  116. 田中武夫

    田中(武)分科員 いやいや、没収したやつは一般会計に雑収入として入るのと違うのですか。この六十三億というのは、十トンの買い入れをした地金の金でしょう。それも聞くつもりなんですが、違いますよ。それはグラム六百六十円の計算でしょう。国際価格はグラム四百五円ですよ。買い入れは四百五円ですよ。だから、それは違いますよ。そんなことでどうなるのや。たよりないな。特別会計収入がわからぬのか。
  117. 村田博

    ○村田政府委員 たいへん失礼を申し上げました。雑収入に入ると思います。
  118. 田中武夫

    田中(武)分科員 そうでしょう。その雑収入の基礎は五百キロかと聞いておるのです。
  119. 村田博

    ○村田政府委員 五百キロでございます。
  120. 田中武夫

    田中(武)分科員 そうでないと合わないわけですね。  そこで、たまたま歳入のほうが出ましたが、今度歳出貴金属特別会計歳出のほうを見ますと、大体十四トンを買い入れる予定になっておりますね。そのうち十トンを払い下げる。四トン残るわけですね。この四トンは金保有のほうへ回るのですか。
  121. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 ただいまの予定といたしましては、十四トン程度を輸入いたしまして、そのうちの十トンを国内の産業用のために払い下げる、こういうぐあいに考えております。
  122. 田中武夫

    田中(武)分科員 産金会社へ払い下げるんだろう。
  123. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 いや、産業用のためでございます。産金会社を通じまして……。
  124. 田中武夫

    田中(武)分科員 産金会社に払い下げるんだな。金管理をあけておきなさい、次に入るから。
  125. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 そして四トンは、金属会計の在庫として保有するつもりでございます。
  126. 田中武夫

    田中(武)分科員 そうすると、大臣、その四トンはいわゆる外貨準備の金保有の中に入るのですね。入らないのですか。入れないのですか。
  127. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 政府の持っている金は、一応全部外貨準備に入れる計算になっておりますので、金属会計で持っております金も、実際のところは全部外貨準備に入っております。
  128. 田中武夫

    田中(武)分科員 そうすると、外貨準備の中の金保有は、わずかですが、四トン上がる、こう解釈していいのですね。
  129. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 ほかに買い入れない場合には、この四トン分が金の保有の増加になります。
  130. 田中武夫

    田中(武)分科員 そこで、先ほどから言ったように、いわゆぬゴールドラッシュ、金戦争、この中にあって、十四トン予定どおり買えますか。どこで買いますか。さらに、本年度十トン輸入の計画があったのですが、具体的に何トン入れましたか。そしてそれをどこから入れたか。それからその差益金はどのようになっているか、簡単に言ってくだきい。
  131. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 十四トンは、海外の市場におきまして買うことができると思っております。それから今年度の……
  132. 田中武夫

    田中(武)分科員 買えると言ったって、具体的にどこから買うんだ。
  133. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 今年度の十トンにつきましては、すでに全部買っております。市場は、昨年の委員会で申し上げましたように、ロンドン市場を通じて確保いたしております。
  134. 田中武夫

    田中(武)分科員 来年度の十四トンも買える自信があるのですね。
  135. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 来年度の十四トンは、予定どおり買えると思っております。
  136. 田中武夫

    田中(武)分科員 その差益金ですね、十トン買えば、大体計算しても、二十億以上の差益金が出るわけですね。政府は金管理法で金を管理しておって、そして特別会計をつくってそれを通す。そうして政府のみが金を輸入して金もうけをしようということですか。その差益金の処分方法。
  137. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 金属会計で買いました金を民間に払い下げる場合には、田中委員御承知のように、六百六十円で売っておりますが、そういたしますと、一グラムにつき二百数十円の差益が出る。その差益は、金属会計の中に蓄積されておる次第でございます。
  138. 田中武夫

    田中(武)分科員 金属会計で蓄積はわかるのです。しかし、それを何らかの方法に使わないのですか。一般会計に入れないのですか。
  139. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 金属会計で蓄積された差益を一般会計へ入れるかどうかという問題は、これは予算上の問題でございます。昨年でしたか、一昨年でしたか、金属会計から資金一般会計に入れたことはございます。四十三年度におきましては、そういう予定をいたしておりませんが、必要があれば貴金属会計から一般会計繰り入れることも可能かと思います。
  140. 田中武夫

    田中(武)分科員 大臣、この差益金は、ちょっと見積もっても二十何億になる、これを国内の産金政策に全部を使えとい言いませんが、そういう考えはどうです。あるいは四百五円で買って産金会社へ渡すときに、やはりその価格で払い下げる、そういうことはどうですか。
  141. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 国内の産金の保護のためには、田中委員御承知のように、目下金の輸入を一般には認めず、政府のみが輸入するようにして、国内の価格水準が大体一グラム六百六十円の価格になるようにいたしておるわけでございます。したがいまして、その面で事実上相当手厚い保護が加えられておる。そのほか、一般会計において、探鉱奨励金といったような形における助成金が出ております。その両者をもって産金に対する助成が行なわれております。これは予算上きまったわけでございます。
  142. 田中武夫

    田中(武)分科員 予算上きまったのではなしに、政策として四百五円で買い入れて、それを産金会社へ払い下げるときに、もちろん四百五円プラスアルファがつくだろうと思いますがね。いわゆる六百六十円ということではなくて、そういう価格で払い下げをできないかということが一つ。なお、六百六十円で払い下げるとするならば、二十何億の差益金が出る、これをひとつ国内産金政策に使う、こういう考え方はないかと聞いておるのです、大臣。
  143. 水田三喜男

    水田国務大臣 産金政策は、必要があれば産金政策として予算的な助成をすればいいと思います。現に、そういうことは探鉱費の補助金を出しておるという形でやっておりますが、いまのお話は、もし日本が金の輸入を自由にしたというときには、日本の産金業者がやっていけない。したがって、この一グラム六百六十円という、これは二百何十円という関税で優遇したと同じようなことにもなりますし、産金業者についてはこれだけの優遇をしておるのでございますから、優遇するためにやったいろんな処置から出た利益をまた優遇の金にどうこうしろというのは、少し筋が違うので、産金政策は必要だというなら、必要な資金は別に取ることにいたしまして、ここでもうけが出るから、それだけ産金業者に返せということは政策の筋が違うと思うのです。
  144. 田中武夫

    田中(武)分科員 私は、全部返せとは言っていないのです。政府は金管理法によって管理をしておる。そうしておいて、自由に輸入をさせない。だから密輸が多くなるわけです。そして政府のみが公式には買い入れるわけです。そうして、二十数億円の差益金が出る。それを政策的に全部使えとは言わないが、考えたらどうか。保護と言うが、今度初めて一千万円出たけれども、いままでには具体的に金は出していないです、産金会社に。  そこで、通産省の鉱山局長が見えておりますので伺いたいと思うのですが、現在の、これは山の状態によって変わりますわけで、十グラムのところとそれ以下のところと変わると思いますが、平均では大体品位は六グラムないし六・五グラム程度だと思うのです。そこで、この平均あるいは最高のコストはどのくらいかかっておりますか。
  145. 両角良彦

    ○両角政府委員 ただいま御指摘がございましたが、大体平均六グラムの品位の鉱石をとっておりますのが実情でございますが、大手八鉱山の平均コストを調べますと、六百九十八円という数字が出ております。これは六グラム品位でのグラム当たりのコストでございます。したがいまして、実際の面で相当の赤字になっておるということでございます。
  146. 田中武夫

    田中(武)分科員 少なくとも四百五円より、どの山をとってみてもコストが高くついておるということが言えると思うのです。だからこそ、この内容にまで私は立ち入りませんが、鉱山会社あるいは産金に関係のある会社までが密輸金に手を出そうとしたりするのです。  そこで、時間がありませんから、ずばり入りますが、金管理法の三条、これによって強制買い上げをしますね。これは政令によってその割合はきめることになっておりますが、かつては三三%であったのが今日では五%である。だから、五%だからというわけにはいかないわけです。政令を変えることによって、一〇〇%にもなり得るわけです。そうすると、六百九十八円、七百円近くのコストをかけておる、これを強制的に四百五円で買い上げる。憲法二千九条の三項との関係はどうでしょうか。
  147. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 国内における金の価格は、政府が買い上げる場合は、一グラム四百五円ときまっております。適正なる価格で民間から買い上げておりますので、適当だと存じます。
  148. 田中武夫

    田中(武)分科員 そんなことを聞いておるのじゃないのですよ。憲法二十九条をごらんなさい。日本の憲法では、私有財産を尊重する私有財産制をとっておるわけです。そうして三項には、公益のために使う場合には正当な補償のもとに行なう、こうなっておるのです。四百五円は正当な補償ではございませんね。だから金管理法の三条と憲法二十九条の三項の補償のところ、あるいはその法律自体が二項の違反ではないか、こういうことを伺っておるのです。
  149. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 憲法二十九条では、財産権を公共の福祉のために制約することができる……。
  150. 田中武夫

    田中(武)分科員 それは二項だ、三項は正当な補償のもとに……。
  151. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 金管理法に基づきまして国が買い上げますのは、対外決済用の準備に供するために買い上げるので、まさに公共の福祉のためにやるということでございます。  それから金価格が一グラム四百五円というのは、政府が買い上げる価格としては、適当だと存じます。
  152. 田中武夫

    田中(武)分科員 その答弁では私は了承できません。二十九条の三項ですよ。公益のために使うときでも、正当な補償のもとに買い上げるのですよ。正当な補償ということですよ。四百五円が正当な補償であるのかどうか。したがって金管理法と憲法二十九条との関係を聞いておるわけです。
  153. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 一グラム四百五円というのは、国除価格とほぼ同じ価格でございます。
  154. 田中武夫

    田中(武)分科員 一グラム四百五円は国際価格とほぼ同じだけれども、実際には七百円近い金をかけておるのですよ。それを四百五円で買い上げるのでしょう。それが正当な補償になりますか。あなたの答弁じゃわからぬが、これは時間もきたようですから保留しますが、法律の専門家の解釈を伺いたい。あなたは憲法なんかよくわからぬのですよ。時間をいただけるならもっと論議を進めます。二十九条の二項、三項との関係を考えてごらんなさい。まず金管理法がいかなる性格かということが二項なんですよ。そして二項において肯定できたとしても、今度は三項の正当な補償ということで、七百円をかけておるのに四百五円なら三項違反じゃないか。二項と三項と二つの問題があるのですよ。だめです。法律論議なら私に勝てません。だれかにかわってもらいなさい。
  155. 水田三喜男

    水田国務大臣 問題は、いま国際価格以上で金を買わなければならぬかという問題がその前にあると思います。しかし、国産の金奨励ということは必要でございますので、そこで政府の買い上げはそういうふうにするかわりに、今度は別に六百六十円でよろしいというものとのかね合いでこういうことはできておるのでございまして、これはいけないということにしたら、もう世界的にコストの高いものを日本政府はむしろ買ってはならぬといって——買わなければ問題は一切ありませんが、そうじゃなくて、やはり国産の金を買うことが必要だという政策からきている問題であります以上、政府が正当な値段で云々、コストが現実にそれだけかかっているから、かかったものをそれだけで買わなければならぬということはないだろうと私は思います。
  156. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 金管理法の第四条に、「買い入れる場合の価格は、国際通貨基金協定第四条の規定による価格の範囲内で主務大臣が定める。」ということになっております。国際通貨基金協定によりますと、一グラム四百五円という価格になります。
  157. 田中武夫

    田中(武)分科員 そうではないのだよ。五%で、あとは六百六十円といっているけれども、現実に六百六十円でもコストに合わないのです。しかもその割合は政令委任なんですよ。したがって、法律上は一〇〇%もあり得るのです。そうでしょう。そうなると、あなたは四条でIMFのことを言われましたが、それはコストを割った、いわゆる私有財産権を侵すことになるのですよ。そうすると憲法二十九条の二項の問題になってくる。そして現実に五%買うときにいかなる補償をすべきかということは三項の問題です。そこまでくると、IMF協定、いわゆる条約と憲法との関係になります。しかし、あくまでも私有財産権を尊重し、正当なる補償のもとに買い上げるという、これは憲法の精神ですよ。それをIMFがどうだとか、こういうことだけでは国内的には通じません。この点につきましては時間もきていますから——主査、よろしいですか、時間をくれますか、それとも保留しますか。
  158. 野原正勝

    野原主査 保留してください。
  159. 田中武夫

    田中(武)分科員 それではこの金管理法と憲法との関係につきましては保留をいたします。現在のところ、大蔵大臣及び国際金融局長の答弁は法律的ではありません。私はあくまで法律論として今後これを展開していきたいと思います。それでは保留して、時間がきたからやめます。
  160. 野原正勝

  161. 石野久男

    石野分科員 大蔵大臣にお尋ねしますが、いま田中分科員からも質問がありましたように、ポンド、ドルの問題に関連して金の問題が世界的に非常に大きな問題になっておる。それでアメリカの実情は、ドルを防衛するために必死の体制になっていると思うのです。大臣からいま、金の問題を解決する、あるいはまたドルの問題については、すべてアメリカ国内体制を整備することにかかっている、こういうお話がありました。しかし、国内体制というのは、結局、増税の問題があったり、あるいはまたいろいろな施策をする、いわゆる金融引き締めなどをやると思いますけれども、それが日本に対してどういうふうに影響してくるかということがいま一番大きい問題であろうと思います。おそらくアメリカでそういうドルを守るための体制をとれば——ちょうどきょうの新聞にもありますように、ジョンソンは「もし米国が輸出を増進し、ドルの流出を防ぐ措置を速やかにとらなければ、米国経済は重大な局面にぶつかるだろう」と言っております。だから輸出を増大するという問題は、当然今度は日本の輸出に対してはね返りが来ていろいろな問題を起こすだろう。そのことがやはり課徴金問題等になってくることは火を見るよりも明らかだと思います。そういう情勢の中で日本はどういうような対処をすべきか。特に大臣は大蔵関係ですから、通商の問題とは直接には関係ないかもしれませんが、国際収支の面、ドル保有、金保有という面からいえば、通商関係に対しての一つの考え方を持っていなければならないと思います。大蔵大臣はこういう事態の中で、日本の貿易関係等についての考え方をどういうふうにお持ちになっておられるか、この際ひとつ聞かしていただきたいと思います。
  162. 水田三喜男

    水田国務大臣 日本日本としていま景気調整を行なって、総需要を押えることによって輸出を伸ばすということをやっておりますが、これによって国際収支の均衡を回復する。この目的のために財政金融政策を集中的に運営しているところでございますので、何をおいても輸入を調整し、輸出を伸ばすということが日本経済にとって急務でございますので、この線に沿った施策をしておる最中でございます。
  163. 石野久男

    石野分科員 財政経済の側面から輸出を増強させるということは、ことばとしては非常に簡単ですけれども、実質上世界ではドル、ポンドが非常に動揺している、金がこういう状態で売却停止までやらねばならぬというような騒ぎが出ている段階では、やはり市場への視点をもう少しはっきりとさせないと、輸出増強という問題が出てこないのじゃないかと私は思うのです。そういう点で大臣は、ただ財政金額の面だけをやっておれば今日の日本の輸出増強の側面は解決されるというふうにお考えかどうか。
  164. 水田三喜男

    水田国務大臣 いままで日本の輸出の鈍化した原因というものはもう御承知のとおりでございますし、世界の環境がきびしいとはいっても、黒字国が世界経済の縮小への方向をとってはいけない、やはり黒字国が率先して外貨を犠牲にしても成長政策をとるべきだということで、欧州諸国もそういう方向へきているときでございますので、日本国内体制がはっきりして、そうして競争力というものがつく限りは、世界の各地に対する貿易というものも昨年と違った様相を当然呈してくるでしょうし、相当国別、品目別にも政府はいろんな見通しを立てておりますが、何をおいてもやはり国内の体制が大事である。それによって日本の競争力をつけるということが必要だと思いますが、幸いに、この経済調整がどうのこうのと言われてはおりまするが、これをやっている間にイギリスやドイツに比べて、ほとんど設備投資がふえていないという国に比べて、日本は十四兆、十五兆の設備投資をやるということですから、やはり新しい産業の合理化によって、これから輸出に向かおうとするというのでしたら、相当世界の中でも有利性が発揮できる、このように考えております。
  165. 石野久男

    石野分科員 国の生産設備が非常に高度化しておるから、輸出の条件はそれ自体としては悪いわけじゃないこともよくわかるのです。ただ今日の世界情勢でいきますると、かりにこちらが輸出力を持っておりましても、それが輸出の可能な国では相当やはり輸入制限をするという態勢があり、それから今度は向こうとしては輸入を受けようというところで、力がないためにやはりうまく取り合いができないという状態が東西の関係、南北の関係でいろいろふくそうしていると思いますし、そういう中で私はやはり日本の貿易の面ではいま、先般北京で話し合いをしました前のLT貿易、今度の覚え書き貿易でございますか、あの古井さんたちがやってこられたこれの位置づけというのはやはり非常に高い意味を持っている、こう私は思うのです。大蔵大臣は、この日中覚え書き貿易の締結、協定がされた段階で、この協定貿易についてどのように対処していこうとするお考えを持っておられるか。たびたび新聞などで、委員会等での答弁も聞いてはおりますけれども、この際ちょっと聞かしておいていただきたいと思います。
  166. 水田三喜男

    水田国務大臣 先般ソビエトのミッションが日本へ参りましたが、そのときも私どもはいろいろ相談いたしました。結局、日本は共産圏貿易も拡大したいという方針で、いまいろいろのことをやっておりますし、したがって日中、一番近い隣の国でございますので、中国との貿易の拡大ということは私ども望むところで、今後そういう方向へお互いの両国が、いろいろな困難を乗り越えても行くべきものだと考えております。
  167. 石野久男

    石野分科員 大臣がそういう心がまえであれば非常にこれはけっこうなことなんですが、実際はやはり日中貿易の発展の途上で問題になってきたいろんな案件の中には、大蔵当局の関係している問題でなかなかやはり貿易が思うようにいかないというような事情が多いわけです。たとえば輸銀の使用の問題等について、これは政府全体とはいいますけれども、直接にはやはり大蔵関係の問題がひっかかってくる。もちろんそれには吉田書簡などもあると思います。しかしそういう状態の中で今後この覚え書き貿易を拡大していこうとすると、大蔵当局の関係している問題を一つ一つほぐしていくということに手をつけていかないと、やはり貿易の総量を広げることも、発展させることも非常にむずかしかろう、こう私は思うのです。きょうは時間があまりないのですから端的にお尋ねしますが、今度国会に提案されます関税定率法の一部改正がございますが、これはケネディラウンドの実施にあたって定率法の一部を改正することになるわけですが、この中で日中貿易がどういうふうな扱いをされるか、この点を非常に私どもは関心を持っているところです。われわれの聞き及ぶところでは、それがなかなかうまくいきそうもない。一部分はやはり配慮されているようでございますが、うまくいきそうもないように聞き及んでおります。いま大蔵当局はどのように中国貿易について関税定率法の一部改正で扱おうとしておられるか、その点をひとつお聞かせ願いたい。
  168. 武藤謙二郎

    ○武藤政府委員 お答え申します。  中国とケネディラウンドとの関係で関税率がどういうふうになるかという御質問だと思いますが、ケネディラウンドで下がります結果、それから中共の関係はKRはございませんから、当然には均てんしない、そういうことの結果、法律改正をいたしませんと、六割のものは差がないけれども、残りが四割ございますが、その中で二割は大豆と銑鉄、これを国定税率をケネディラウンドに合わせて下げる、こういうことをいたします。したがいまして八割については差がない、こういうことになります。残りのものについて、ケネディラウンドで引き下げたものと国定税率とが違いますので差ができます。こういうことになります。
  169. 石野久男

    石野分科員 日中の間で取引をしている品目のうちの八割については差がない、こういうのですか。二割のものが一それは金額の面ですか。それとも品目ですか。どっちですか。
  170. 武藤謙二郎

    ○武藤政府委員 今度お願いしております法律案で二割のものについてはケネディラウンドに合わせて国定税率を下げるということにいたしますので、八割については法案が通ると差がなくなる。それから、その割合は何かと申しますと、金額でございます。
  171. 石野久男

    石野分科員 品目ではどういうふうになりますか。
  172. 武藤謙二郎

    ○武藤政府委員 品目で申しますと、現在格差がなくて、したがってケネディラウンド自身もまた格差がないというものが二百五十九ございます。それから今回の国内法の改正で格差がなくなるというものが十九ございます。十九の中のおもだったものは大豆と銑鉄でございます。合計が格差がないものが二百七十八になります。それから格差が残るものですが、この中でKRと関係なしに従来から残っているというようなものが十一ございます。それからケネディラウンドで譲許税率は下がるけれども国内法の改正はいまは提案していないということで、開きができるものが三百四十五、合わせて格差が残るものが三百五十六、品目でいうとこういうことでございます。
  173. 石野久男

    石野分科員 大臣、いまのこの数字でおわかりだと思いますが、金額にいたしますと差のなくなるものが八割、二割だけが差はある。しかし品目でいいますと三百五十というものがまだやはり差が残るわけですね。この問題は、日中の間における貿易を拡大する上では非常に問題を残します。これは端的にいえば結局大もの、日本の取引で大ものに属するものは一応やはり差はなくなる、こまかいものは残る、こういうことなんですね。この品目における差は、そのまま日本の取引業者とか、あるいはまた中国の側に対しても非常に問題を残します。もっと端的にいうならば、日本が大量に入れるものとか、そういうようなもの、大量扱いするものにはKRの便益は与えるけれども、そうでない小ものについてはこれはほうり放しだ、こういうことになるわけですね。これは関税定率法第五条のうちの品目の部分だけを適用しているわけですね。だから国という問題は一応除外されるわけですね。現在便益関税の適用されているのは、国はいま五十二か三でございましたか。
  174. 武藤謙二郎

    ○武藤政府委員 便益関税の適用国というのは、英国属領を除いて五十一カ国でございます。
  175. 石野久男

    石野分科員 中国の貿易については、いま確かに国交はありませんけれども、御承知のように今度は覚え書き協定という形で、せっかく自民党の古井さん、田川さんたちが努力をなさって、日中の間にあるパイプをつなぐという成果をあげてきましたし、それから大臣も先ほどから、日中問題についての貿易の拡大は、今日の時点から積極的に協力しようという決意を表明されたわけでございます。日中の間に約六百数十品目ある中で、三百五十品目という約五五%をこえるものがまだ差別がついたままに残されていくということは、やはり関税定率法改正にあたっての大蔵当局の心がまえの問題について若干疑義を持つわけですが、どうしてこういう扱いをされるか、むしろこれは一括して便益関税というものを適用するような方向を出したほうがいいんじゃないか、こう思うのですが、大臣はその点についてどういうふうに指示を与えておられますか。
  176. 水田三喜男

    水田国務大臣 これは協定税率ができた以上、若干こういう格差ができるのはもうやむを得ないことでありますし、別に中国に差別をつけたというわけではございません。できるだけ国内事情の許す限りは国定税率を下げるほうへ今後努力しようと思っておりますが、いまこういう差がついたばかりですから、もう少し様子を見てから逐次税率を下げることもやりたいと思いますが、しかしいずれにしましても、向こうも日本に対して差別税率を持っておることでございますし、便益の指定をするというためには、向こうが日本を差別しなくなったら、これに対して日本も同様の待遇をするというようなことで、この関係がない限りは要件というものは満たされないことでございますからして、すぐそういうことはできません。しかし実際において、日本国内経済の許す限りはこの格差を縮めていくという方向へは私ども今後努力しよう、こういうふうに考えております。
  177. 石野久男

    石野分科員 大臣きわめて重大なことを言いましたが、向こうも日本に対して差別待遇をしているということは、どういうところに確証があるのですか。
  178. 水田三喜男

    水田国務大臣 これは国交が回復しておりませんから、ほんとうの情報を得られませんが、いろいろ私どものとる、いままで民間貿易をやっておったほうからの情報によりましても、高い関税と低い関税と二本立てを持っている。日本には高い税率を課しておるというのは大体事実だろうと思います。こういう問題は、今後一方的にばかりはいかない問題でございますので、中共側が日本に対して関税の優遇を与えるというような方向が出てくれば、これに対する日本の対応のしかたも違ってくるでございましょうし、一方的にばかりは解決できない問題をこの問題は持っておるというふうに私は考えます。
  179. 石野久男

    石野分科員 私はいま大蔵大臣説明なさったことに対しては疑義を残しますが、持ち時間がありませんから、これはあとでまた論議したいと思います。  いずれにいたしましても、中国の側との貿易について、今度古井さんや田川さんたちが行ってこられてはっきりしていることは、今度は確かに政治三原則を表に出してまいりました。そのことを受けとめなければ貿易ができないという事情は那辺にあるかということについても、考慮しなければならぬ問題がたくさんあるわけです。いまの大蔵大臣のそういうようなお話を聞くと、おそらく中国側はおこるだろうと思います。私は別に中国をひいきする考えじゃないですよ。そうでなく、日本側が中国に対して、政治的諸政策において非常に強い敵視政策をとっておると向こうは見ているのですよ。また現実にジョンソン・佐藤共同声明などは具体的にそのことを出しておるから、向こうは非常にきつい態度をとっておるわけです。そういう中を古井君や田川君たちが、両国の総済関係を進めるために、いろいろ論議してきたと思います。しかし日本政府がこの経済問題について、特に取引の問題について、中国が差別待遇をしているということを根底として、この関税定率法の適用についてもまた類別をするんだということになるというと、これは日本の側の姿勢というものについて私は考えなければならぬものがあると思います。おそらくこれは、両方の間の話し合いがなかなか進まなくなる理由になるんじゃないかとも私は思うんですよ。向こうが非常に善意な形で考えているときに、その態度は非常に政治的になっていると思います。そんならいっそ便益関税を入れないほうがいい、そういう態度をとるなら。むしろそうじゃなくして、先ほども言うように、日中の間の取引のうちの八割というものは、金額においては八割は便益を与えられる。いわゆる大手には便益を与えている、しかし友好商社や小口のものに対して便益を与えないという傾向、品目の五五%、三百五十品目に対して与えないという実態が出てきている。政府のやり方は、日本の取引の大手については非常に便益を与えるようにするけれども、小口についてはほうりっぱなしだという状態が具体的に出ているんだと思います。いま大臣の言われるのは一つの方便であって、実質的にそういうようなやり方をしているふうには見られない。大蔵当局はこういう態度をとることについては考えてもらわなければいけないと思うのです。
  180. 水田三喜男

    水田国務大臣 私はそういったことを申しておるわけではございません。そういうことだからこれはやれないんだと言っているのじゃございませんで、協定税率があるでしょう。それによって、国定税率とそこに自然に格差が出てきたということはやむを得ない。しかし、それは今後日本経済の事情を考えてだんだんと格差をなくするように、国定税率を下げるほうへ努力したいということと、もう一つは、あなたのほうは全部そういう問題をなくしたらどうだというようなことでしたが、全部なくするというためには、やはり関税は相互協定的なことが一番望ましいので、日本に対する向こうの関税のあり方というようなこともやはり今後お互いに考えるという形でいかなければ、完全に協定税率と同じようなものに全部がなるということはむずかしいんじゃないかということを言ったわけでございます。向こうがこうだからこっちはやらぬ、そういうことを言ったわけじゃございませんので、今後そういう問題も、両国の接触がどういう形で持たれるか知りませんが、そういう形によってこの格差を解消するということが好ましいということを言っただけでございます。
  181. 石野久男

    石野分科員 これは論議をしませんが、大臣が前向きの姿勢でこの問題を論議するというふうに私は受け取りたいと思います。できることならこれは第五条の適用——他の諸国にもやっているわけですし、ことに日本国内にどういうふうな経済的影響を与えるかについても、取引額の二割の部分なんです。品目は多いけれども、額としては二割ですよ。経済的な影響からいえば、八割のほうが影響が大きいわけです。その八割のものはたんたんとしてKR定率にいくんですね。二割のごく少数。しかも品目の多いものについてはきびしくあれこれ言うというのは、これは普通の取引の立場からは考えられない。むしろ何か別の政治的な意図があってのことじゃないかというような疑義を私たちは持つのです。だから、そういう疑義を持たさないようにやってもらいたい。特にこれはできるだけ第五条の適用の国の指定ですね、これができるように配慮してもらいたいと思います。そういう配慮をすることについての大臣の心がまえだけは、ちょっとこの際聞かしてもらいた  いと思います。
  182. 水田三喜男

    水田国務大臣 これはもう石野さんのほうがよく御承知だと思いますが、便益関税ということは、私はいまのところ日本と中共との間ではなかなかむずかしい問題だと思います。
  183. 石野久男

    石野分科員 時間がありませんから、税金の問題で一つだけ大臣に聞いておきたいと思います。わずかな時間ですので。  税金の取り立てという問題については、非常に問題がございます。こういうような場合にはどういうふうにするのだろうかということの疑問があるので、それでひとつ大臣の意見だけ聞いておきたいのです。あるところで課税がございました。その課税に対して納税者の側では不服があって、不服申請をしておりました。苦情相談所のほうに出した。大体課税された額は約数百万円になるわけです。これは約十数年前でございます。その陳情がある中で取り立てがありまして——片方は苦情申請をしておるわけですね。取り立てが出て物件の差し押えがきた。片方苦情申請をしておる中で差し押えが来て競売してしまった。競売した結果ある程度代金があって、それを本人に渡すという形になってきた。ところがその後、苦情申請の結果、税の取り立ての間違いがあるということで、数百万円の税金がたった二十何万円になってしまった。そのときすでに国が六百坪くらいの土地は売ってしまったわけですね。それは目抜きの通りですよ。こういうことになると、これは納税者の側からすると、たった二百万円くらいの金をもらったのではどうにもならぬわけです、六百坪という土地ですから。このような場合は、国のやはり錯誤によって非常に納税者に迷惑をかけておるわけです。この納税者はしばしば苦情の問題を提起しておるのだけれども、それがなかなか片づかないでおるわけです。これはやはり、おそらくこういうことは至るところにあるのだろうと思いますが、非常にきびしい例だと思います。しかし、またそのことのために、その会社もなかなかやりにくくなっておるわけです、納税者のほうは。こういう場合には、私はやはりあやまちはあやまちとして何か改めてやらないと、もう競売してしまった、その金をお前取れというようなことで、しかも取ったのが会社の中の一部の知らない者が取ってしまった。そこで罪が出るとか何とかいうことがあるものだから、一応やはり会社はその人を罪にしないようにして、その金を受け取った形で供託をするというようなことにしておるわけです。こういうような場合の処置というのは、これは少し納税者の立場に立って考えてやらないと、あまりにもこれはひどいじゃないか、こう思うのだが、これはこのままほっておくつもりなのか。私の考えでは、やはりこういう場合には何か配慮して、金額とか何かの問題じゃなしに、一応やはりこの場合に対しては配慮してやるという心がまえが必要だと思う。大臣のひとつ考え方を聞かしてもらいたい。
  184. 水田三喜男

    水田国務大臣 これは私が五年前、大蔵大臣になったときにこの問題は聞いた記憶がございます。まだ解決しないようでございますので、それからのいきさつは国税庁長官から答弁させます。
  185. 泉美之松

    ○泉政府委員 石野先生のおっしゃる事実関係に、かなり事実と違った点がおありだと思います。  まず第一は、いま課税が行なわれ、それに対して異議申し立て中に公売があったというようなお話でございましたが、この法人につきましては、その滞納処分の対象になった事業年度につきましては異議の申し立てが出ておりませんで、対象になった次の事業年度について異議の申し立てが出ておったわけであります。これも実は異議の申し立て期間をすでに徒過いたしておりまして、苦情相談として税務相談所のほうにそういう申し出があったわけでございます。そこでその滞納処分の目的となりました事業年度につきましては何ら異議の申し立てが出ておりませんで、そして二十八年に差し押えが行なわれまして、数回公売をいたしましたけれども落札人がなくて、三十三年に落札された。落札が済んだ後に今度は納税者のほうから異議の申し立てが出てまいったのでございます。その異議の申し立ての内容は、当初法人税の申告の際に、法人が売却したと申告したけれども、それは個人が売却したのであって、法人の売却ではなかったのだ、会社の記帳が間違っておったし、申告が間違っておったのだから、それを訂正してほしいということを言ってこられたのであります。しかしそれは、われわれのほうが邪推かもしれませんけれども、個人所得税について時効が成立して、個人所得税を追及できなくなってから法人のほうを直してくれ、こう言ってきたように思われるわけであります。しかしそういうことを申し上げるのもいかがかと思いまして、十分調査いたしますと、なるほどお話のとおり、個人が売ったものであって、法人が売ったものではないということがわかりましたので、三十五年になりまして課税処分を取り消して金額を減少いたしたのであります。その結果、三十三年に公売いたしましたのが過剰に国庫の歳入になっておるということでございますので、その金を受け取るようにということを再三通知いたしたのでありますが、三十八年まで取りにおいでにならなかったのであります。そういう非常に過去のことでございまして、いまからとやかく言うのはなかなかむずかしい問題がいろいろございますけれども、いずれにいたしましてもそういった事実経過でございまして、一般的にそういうことがあるように思われてははなはだ心外でございます。私どもといたしましては、滞納処分をいたしますときには常に、課税処分のほうがどうか、それに対して異議申し立てが出ているどかうか、そういうことを十分見きわめました上で滞納処分をするという方針をとっておるのであります。本件のごときは非常にまれな事案でございまして、このことが納税者に対して非常に御迷惑になっておるということは重々申しわけないと思いますけれども、相手方も何ら過失なしというわけにもまいらない事案でございます。したがって、今日になってこれを救済するという手段はないのでございます。しかし一般的に申し上げと、先ほど申し上げましたように、滞納処分をいたしますときには、課税処分との間に十分連絡をとりまして、誤った課税のために滞納処分が強行されるといったことのないように十分配意していかなければならぬと思っております。今後ともそういうふうに努力いたしたい、このように考えておるわけであります。
  186. 石野久男

    石野分科員 ここでは論議はいたしませんが、結局いま長官が言われたこととの間に、若干私のほうの意味とは違いがあります。けれども、きょう私の持ち時間がございませんから、このあとでもう一ぺん相談さしてもらいたいと思います。というのは、私はただ個人をあれこれ言うのじゃないのだ。こういう事件というものは非常に納税者に迷惑をかけているわけです。それであとで査定の結果、結局税がどんな理屈があろうとも二十分の一か、二十分の一以下になっちゃったわけでございますから、そういうふうな事実をやはりほうりっぱなしにしておくということはよくないと思いますから、これはあとでもう一ぺん相談さしてもらうことにして、大臣、一応ひとつ頭にとめておいてもらいたいと思います。
  187. 野原正勝

    野原主査 広沢直樹君。
  188. 広沢直樹

    ○広沢(直)分科員 時間がありませんので、端的にお伺いしたいと思います。  まず、たばこ値上げの問題と、それから時間がありましたら専売公社の問題について二、三お伺いしたいと思います。  いま、製造たばこの定価法の一部改正法案が出ておりますが、いわゆるたばこ値上げ案が提案されているその理由として、財政収入の確保をはかる、これは法案のうしろにその理由がついております。そこでまずお伺いしたいことは、一体国は、財政収入の確保と言っておりますけれども、たばこ益金による財政的な依存率、どの程度それに依存しているのか、その点について端的にお伺いしたいのです。
  189. 前川憲一

    ○前川政府委員 お答え申し上げます。この財政の依存度をどこで見るかということでございますが、専売納付金でいま見まして、これは一般会計に納付することになっております。それと一般会計の割合、これは昭和二十六年当時では一三・三%でございましたが、逐年低下いたしまして、現在ではこれが四十二年度の補正ベースで三・二%まで落ちております。
  190. 広沢直樹

    ○広沢(直)分科員 いまその推移をお伺いしたわけじゃないんであって、今度の値上げの問題が、要するに財源の確保である、こういうことでありますので、まあ政府としてはその財源の確保のために値上げをする、こういうことであれば、どの程度たばこの益金に対する依存度を見ておるのか、こういうことをお伺いしたいわけなんです。
  191. 前川憲一

    ○前川政府委員 ことしの歳入の問題ということと、それからもう一つは、昭和四十一年以来、政府税制調査会におきまして、たばこの値段というものを改めなければ、財政全般の中に占める財政専売としてのたばこの役割りがほかのもの、たとえばお酒などに比べて少し低くなっておるんじゃないか、ここいらで手直しをしてはどうか、かような御勧告があったわけであります。したがいまして二、三年来検討をしておる。ところが、四十三年度になりまして、これはまあ大臣その他からるる御説明があったと思いますが、単に金額の問題として、五百五十億が非常に大事だということももちろんございますけれども国際経済情勢、あるいは公債依存度を下げる、そういうふうなことで、やはり五百五十億がどうしても大事だ、こういうことでもって、二、三年来検討してまいりましたたばこの値上げを四十三年度においてやろう、こういうことになったわけでございます。したがいまして、限界部分としての財政貢献度だけで踏み切ったというわけじゃなくて、二つの柱があったということだと思います。それで、かりにいまのお話で申しますと、四十三年度予算ベースでもって一般会計歳入に占める納付金の割合は、一応四%くらいを予定されております。したがって、三・二が四%に上がる、こういうことでございます。
  192. 広沢直樹

    ○広沢(直)分科員 この問題ははっきりしておきませんと、要するにこういう財政硬直化になってきたということから、十年間値上げしなかったわけでありますが、再び値上げをされる。たばこは、値上げしても一本あたり五十銭だとかあるいは一円だとか、間接税でありますから、消費者にはあまり目立って響かないものでありますから、やはりいまの財政硬直だというようなことから、こういった問題を値上げしていくということになりますと、どうしてもその点ははっきりしておかなければ、再びまた何かあった場合に、そういうほうへしわ寄せしてくるんじゃないか、こういうふうに考えられるわけです。そこで、専売益金の率というのはこの表にも出ておりますが、大体逐年ずっと下がってきております。六〇・三%になっておるわけでありますが、実質的にはこれは専売益金はふえているわけですね、率で比べますと相当逐年下がっていっているわけでありますけれども。ですから、いまの国民感情としてみた場合には、やはり来年度は九千億という戦後最大の自然増収というものが見込まれておるわけです。そこで実質減税ゼロ、きのうも大蔵大臣お答えになっておられましたが、そういうことになりますと、非常に国民感情としてこれはどうも納得がいかない。政府自身はここ数年間毎年減税ということをうたって、毎年一千億くらいの減税をずっと続けてやっているわけです。しかしそれはそれとしての理由があって、いわゆる生計費には課税しない、こういう理由をもって、一応相当給与所得者あるいは学校卒業者等にもかかっているし、広範囲に所得税の納税人口がふえているということから、軽減をはかろうということになっているわけです。しかし、所得税一千五十億円の減税をした、しかしその反面において酒やたばこのごとき間接税の増税、こういうふうにすりかえている。最大の負担者である勤労者の税負担の意識を、さっき申し上げたようにこれは非常に意識が薄いものですから、そういうふうに考えられるわけでありますけれども、そういうふうにして所得減税をやって税を軽減していっているというかたわら、保護世帯あるいはまた低所得者の世帯層に至っては、やはりこういう間接税、たばこだとか酒だとか砂糖だとか、こういう生活と密接に結びついてしまっているもの、こういうものを上げていくということになりますと、これはまた非常に納得ができない問題があるわけです。その反面高級品ですね、輸入の奢侈品、ゴルフ道具だとかマージャンのパイだとか、そういったものについては非常に税率が低いわけですね。たばことか酒というものが税率が高くなっている。当然これは所得税の税率というものは累進税率をとっておりますから、一応は高額の所得者が重くなっている、こういうかっこうになっております。そこでこういった生活必需品にかかってくる間接税、こういうものに対しても、やはりいまさっき申し上げた高級品だとか奢侈品だとか、こういうものの税率というものは高くとってしかるべきじゃないか。やはりそういう観点から、減税という面から考えれば当然そうすべきではないか、こう思うのですがね。それで、大蔵大臣にその意見をお伺いしておきたいと思います。
  193. 水田三喜男

    水田国務大臣 昭和四十二年度、いま行なわれておる予算の問題について私どもはいろいろ反省いたしておりますが、私も十二月に大蔵大臣になってすぐに準備なしにつくった予算でございましたので、あの当時は相当の引き締めをやった予算だと自分では思っておりました。公債の発行高も最初の原案よりは私自身ずいぶん削ったつもりで、だいじょうぶな予算ではないかと思ったのですが、実際にやってみましたら、やはり内需のあれだけの強さに対してこれは調整力のない予算というふうに気づきましたから、途中で運営の点において機動的な弾力的な措置をとるということで、御承知のようなことをやってまいりましたが、この経験から見まして、本年度予算編成はどうあるべきかということを考えますというと、何をおいてもことしはまず公債を思い切って削減するということから始めなければいかぬ。そのためには税をどうするというのが、当然政策的には一番大きい問題ですが、私は本来なら本年度減税しない、このままに置くというくらいの措置が必要な年じゃないかというふうに考えましたが、しかし、全く減税をしないかと申しますと、そうじやなくて、必要なものは税の調整をとっていく、問題は、それが経済調整に支障を来たさない、同じ役割りを果たすというのなら、単純な減税なしという手はないという議論が当然に出てまいりますので、そうしますと、じゃそれをどうやったらいいかといいますと、やはり税制調査会の答申を私どもは妥当だと思いまして、ほうっておけば、国民所得が上がっていくにつれて、もうそのまま自然に増税になるという累進構造を持った所得税は、やはり中小所得者のためにこれは減税をすべきものだ、反面税の中には、ほうっておけば自然に税負担率が低下していくというものがある、これの税制の調整をやることが必要だというこの点から見ますと、酒とたばこがまさにそういう性格を持っておりますので、この両税の調整をやるということによって、実質的にはまだ増税の時期ではないと思いまして、すれすれのところまでの税制によってそれだけの余裕をあげて国債の削減に充てる、こういう方針をとったのが今度の予算の編成でございます。したがって、たばこを上げなければ国の財政の上で非常に困るんだというような、さっき比率の話がございましたが、この収入をそういう意味から重要視したというわけではございませんで、いま言ったような一つのフィスカルポリシーを実現するというための今度の税のあり方をどうしたらいいかということになりますと、税にそういう二つの性質のものがあるので、それをかみ合わせて、実質的には大きい減税をしないというところにとどめて国債の削減をするということをやったわけでございまして、酒とたばこがいまでも安いからこれを上げたのだとか、あるいはこれが財政収入の上で重要な役割りを果たすから本年度はやらざるを得なかったというような性質のものではないと私は思っております。
  194. 広沢直樹

    ○広沢(直)分科員 いまおっしゃった所得税減税をやっていく、これは当然だと思うのです。大蔵大臣も再三公約しておりますように、昭和四十五年までに百万円までの減税をやっていくんだ、こういうお話でありますから、今回やらなかったとしたら、当然、四十四年、四十五年には大幅な減税をやらなければいかぬようになってくるのじゃないか。それは減税をやっていこうという、いま百万円までということが当然のように言われておりますけれども、そういう観点であっただろうとは私は思います。しかし、私いまお伺いしていることは、たばこだとかあるいは酒というものが、そういう生活保護世帯にしても低所得者層にしても、非常に生活に密着した問題になっている。その税率というのは非常に高いわけですね。そういうわけです。所得税は累進税率になっておりますから、高額の所得者は、これは応能負担の原理ですか、そういう面から考えてみても、それは多額を払っていくということになって、それで低所得者層には軽減していくという方向をとっていく。ところがいま申し上げましたたばこやあるいは酒なんというものは税率が高いのに、あるいは高級品とかあるいは奢侈品については非常に安いものがあるわけです。これはいまここでるる例を述べるまでもないことでありますけれども、たとえばカメラにしてもあるいはテレビにしても、あるいはもっと高級なものといえばダイヤの指輪にしても、そういったようなものは非常に税率が安いわけです。ですから、そういったものを上げて、こういうせっかく減税をして、そして税負担を軽くしていこうというものが、間接税にそれが移行したことによって、やはり何万円もとっている者あるいは何十万円もとっている者と同じような税負担になっていく、過重になっていくという面は改めるべきではないのか、そういう点をいまお伺いしたわけです。ですから、要するに、応能負担の原理というものは、これは民主的な原理から、こういった形はかけ離れた形になっているのではないか、間接税のかけ方にしてもそういう面を考慮してはどうなのか、こういう面をお伺いしたわけなんですが、その点についてお伺いしたい。
  195. 水田三喜男

    水田国務大臣 いま申しましたように、特に税制調査会でも来年度の税はどうあるべきかということにつきまして相当研究した結果、こういう答申が出てきております。そういう調整をすると同時に、一方、こういう調整しかるべしという意見でございましたので、私どもは一応今回はこの意見に従ってこういう措置をとったのでございますが、こういう措置をとるについては、ただ漫然とするわけにいきません。こういう国民負担が増すほうのものでございますから、これについての配慮も私どもはいろいろしたつもりでございまして、一カ所得税減税すると同時に、今度は住民税の減税をやる、なおかつそれによって、税によって救われない人たちがございますが、その一番生活力の弱いという、いわゆる生活保護階級の人たちに対しては一三%の基準の引き上げということをやるので、そういう点を勘案しますと、相対的に税負担が下がっておった酒、たばこを上げることによって、そう大きい問題を起こさないのではないか、そういう考慮とからんだ値上げの措置でございまして、ほかの物品税をいじるとかいうようなことよりは、外国でもそうでございますが、特に酒、たばこというものは一つの嗜好品であって、一般の間接税をかけておる国でも、これには二重に特別な税をかけておるというのが実情でございますので、したがって、酒、たばこというものの値段をこの際直すということのほうが、ほかの税をいじるよりははるかにいいのではないかということを考えたわけであります。
  196. 広沢直樹

    ○広沢(直)分科員 私が聞いておるのは、いま基本的な姿勢についてお伺いしているわけです。ですから、やはり間接税に変わってまいりますときに、これは酒、たばこですから、すべて直接税が間接税に変わってしまうというわけではないわけですが、しかしそういうふうな今度の酒やたばこの課税ということになって間接税が上がってくるということになりますと——いまの所得減税を指向して、低所得者層に対しては、生計費にはかからないという原則もありましょうが、優遇していくのだというような形をとっているわけで、これが間接税に変わった場合には、これはおしなべて同じような負担でかけていくというと、やはりそれが一つの問題になるのではないか。ですから、相当余裕のある方々がそういう高級品、奢侈品というようなものを買っていらっしゃるわけでありますから、そういった面にやはり税率をどう考えていくか、そしてそういう大衆に密着したものは上げない方向に持っていく、日用品としてほとんどの、上から下までのすべての階層に密着してしまっているものについてはできるだけ税を上げていかない。こういう方向をとってはどうなのか、この点についてお伺いしているわけです。
  197. 水田三喜男

    水田国務大臣 これは日用必需品に税をかけるというようなことは問題でございますが、酒、たばこはもう昔から嗜好品として相当高率な税金をかけておるものでございまして、それが相対的に負担が下がっておったというものをここで調整してある程度の回復をはかろうということでございまして、積極的にこれの値上げをしたというよりは、やはり税の調整をやったというのが今回の措置でございますので、一般の物品税をどうこうするというよりは、私はこの酒、たばこにおいて税の調整をはかるというほうがむしろ大衆課税にはならない措置であるというふうに考えます。
  198. 広沢直樹

    ○広沢(直)分科員 ここに世界一高い日本の税金と出ているわけですが、大蔵省の調査によりますと、月収三万円の階層の人が負担する間接税の割合というのは二・一四%の割合になっている。月収十万円の人はその半分の一・〇五、十二万円の人は〇・九五%と、はるかに低くなっている。そういうデータから見ましても、低所得者ほど税金の負担率が大きくなっているわけです、間接税にそのままかかってくる場合。そこで例が出ておりますが、砂糖に例をとってみましても、砂糖一キロの小売り値というのはおよそ百三十円、このうち税金を計算してみると、消費税、関税も入れまして五十九円五十銭、その税率というのは四四・二%になっているわけですね。外国の例を見ますると、イギリスでは二三%、アメリカは九%、フランスは四%、こういうふうに砂糖に例をとってみましても非常に高い。それからまたビール一つ例にとってみましても、これは非常に高いわけです。ビールもいま大衆化されておりますが、これは現在では五〇%の税金がかかっている。西ドイツは八・七%で、アメリカでは一〇%だ。だから大体アメリカの五倍、西ドイツの六倍。主要国で一番高い。ビールに例をとってみれば、日本の酒税というのは非常に高い。たばこにしても、四十三年度専売納付金というのは、見込みでは五百五十億です、相当増収を見ておるわけですが、これもほかの産業と違って、全部製造から販売まで要するに独占事業で、消費者数にしても何ら心配はないわけですね。これが上がったら急激に減ってしまうというものでもなければ、ほとんど独占的な事業をやっているわけです。  ですから、経企庁が先日発表した年次世界経済報告によっても、日本の国というのは世界第三位に国民総生産はなってきている。ところが国民一人当たりの所得というのは二十位あるいは二十一位だとか二十二位だとか言われておりますが、要するにベネズエラの次ということになるわけです。このことは、やはり経済発展が目ざましかったとはいっても、国民の犠牲の上に一部の企業が成長しているという姿をこのデータは示しているのじゃないか。やはり国民生活というのはまだ非常に低い生活をしているというデータですね。そうして大企業に対しては、御承知のように租税特別措置法によって相当大幅な減税が行なわれているわけです。ですから、政府・与党の姿が、今日の間接税の増税、こういったところに顕著にあらわれてくる。こういった財源がいま不足であるということで、別にその依存率を考えているのじゃない、こういうことであれば、やはりこの租税特別措置法というものも次第にはずしていったらどうなのか。配当あるいは利子課税にしてもそういうことが言えると思うのです。大体今年景気は過熱してくるということになりまして、要するに民間の設備投資を押えなければならないということを、しきりに大蔵大臣も、銀行協会の会合に行ったときもそう要望しておったようでありますが、そういうようなことから考えていくなら、当然そういった優遇措置というものをはずしていけば、これによって占める税の割合というのは大体五百五十億くらいあるわけでありますから、やはり五百億くらいのものは当然出てきたわけじゃないかと思うわけです。だから、一般大衆に当然しわ寄せしてくるこういった酒やたばこのごとき間接税の値上げをしていくよりも、そういう措置をとっていくべきじゃないか。あるいはまた高級品や、先ほど申し上げたようなぜいたく品に対する課税をしていく、その税率を改正していくということが当然の措置じゃなかろうか、こういうふうに考えるわけでありますが、その点についてお伺いしたい。
  199. 水田三喜男

    水田国務大臣 租税特別措置のごときは、一つ政策目的を持ってとられた措置でございますので、ことに本年度審議を願っておりまする問題は、当面の経済情勢から見て、最も必要な措置として新たに改正しようというようなものでございます。また古いものも、昨年一応みな見直して改正をしたばかりでございますので、もう少しその様子を見てから、この期限があと二年ございますから、その間に次の措置の検討をすればいいというふうに私どもは考えております。  そういうふうに、財源をほかにさがせばいいではないかというお話でございますが、財源をさがすとすれば、新しい増税的なものを求めるとしたら求め得ると思います。しかし、今回はそうじゃなくて、すでに過去相当の増税であったものが、国民所得の向上によって相対的に下がってきておるものをここで調整するほうがこの際適当であるという考えから、特に酒、たばこを私どもは調整の対象にしたという事情でございまして、ほかの税の措置については、これはまた来年度予算編成を機にしていろいろ私ども検討したいと思っております。
  200. 広沢直樹

    ○広沢(直)分科員 ほかに財源をさがせばさがし得たかもしれないけれども、要するにこのたびは、いままでのたばこにしても酒にしても、たばこについては十年も上げてないのだから、答申にもあって、そのとおりやった、こういうお答えですが、それを聞いて国民は納得しないと私は思う。先ほどから再三申し上げているように、こういう酒やたばこというものは一もうこの八年間ずっと政府・与党は物価を安定させると言いながら上げてきているわけですよ。したがって、この問も、いま大蔵大臣もおっしゃていたように、それは減税をストップするか、あるいはまた公共料金の値上げを一年間ストップするかという宮澤構想まで出てきているわけです。そういうぐあいに、物価の上昇というものが国民にはもう非常なしわ寄せになってきている今日でありますから、特に密着しているたばこだとか、あるいは酒類という、欠くことのできないと言ったら語弊があるかもしれませんが、大体そういったものですね、それを値上げしていくということは、ほかに財源をさがせばあるということならば、そういうふうな政府の姿勢があってしかるべきじゃないかと思う。たばこの税金を大体幾ら払っているのか、データがありますから申し上げてみたいと思うのですが、いま壮年のたばこを吸っていられる方で、大体平均すると、一日二十本吸っているということになっております。そうすると、最高級の「こはく」は、年に負担している税というのは二万二千八百八十五円五十銭になっているし、「ホープ」は一万七千二百八十六円四十銭です。特に最近親しまれております「ハイライト」は一万四千八百二十六円三十銭の税金を負担していることになっているわけです。これが今度値上になるわけでありますが、生活保護世帯や、あるいはまた低所得者層の人たちが、仕事が終わってほっとして親しんでいくのはたばこだ、あるいは一ぱいの酒によって疲れを休めていこう、そういったものを値上げしていくという政府の姿勢というものがどうも考えられないわけです。これを統計的に見たり、あるいは物価の推移だとか、あるいは所得の推移と見比べてみて、あるいは今日そのほかの物価は相当上がっているのだけれども、たばこはこの十年間ほとんど上げていないのだから上げるのだという理由というのはどうも納得がいかないわけです。まあ先ほど申しましたように、高給取りの方が買ったとしても、あるいは低所得者の方が一箱のハイライトを買ったとしても、やはり四十円六十二銭という税金を払っているということになるわけですね。払える者が払わないために税負担はますます低所得者層にしわ寄せがきている。先ほどの例から申し上げますとそういうことになるわけですが、これは所得の多少には関係なくかかってくるのが間接税でありますから、どうしても大衆の必需品あるいは嗜好品、そういったものに対しては政府のやり方として税をかけないように、税負担の不公平をますます拡大していこうとしているこういった問題に対しては、それをとどめていくという方向に持っていくべきではないのか、かように考えるわけでありますが、もう一ぺんその基本的な考え方について、これは先ほどのたばこ、酒のみじゃなくて、基本的な考え方についてそのことをお伺いしておきたいと思います。
  201. 水田三喜男

    水田国務大臣 概して間接税というものは、そういう意味では全部逆進性を持っておるものでございますが、そのうちでも日常生活物資、必需品にまでかかるたとえば売り上げ税というような税制と比べたら、日本はいまそういう意味で大衆課税と思われるものを避けている税制をといっている国であるというふうに思っています。しかし、その場合でも酒とたばこというものは別でございまして、どこでもこれは嗜好品として高い税金をかけているのが各国財政一つの常識と申しますか通例になっておることでございます。そこで、もう昔からそれだけ高い課税をしてあったものでございますが、そういうものの負担を少なくするのにこしたことはないとは思います。しかし、いままでそういう高い税率をもってかけておったものが、いま国民所得がどんどんふえてくるに従って相対的に負担が軽減されてきて、下がってきて、他の税との均衡というような問題から見ても、これは調整されてもいいというところへきておるのでございますから、ほかのものは何をいじっても新しい増税ということになりますが、相対的に下がっているこれを調整するということは、新規の増税ということとはまた若干違う意味を持っておりますので、したがって、今回この二つを直すということは、私はこの際適当な措置ではなかったかというふうに考えております。
  202. 広沢直樹

    ○広沢(直)分科員 どうも話が食い違っていくようでありますが、要するに、たばこやあるいは酒によっていま間接税の問題が出ているわけでありますが、基本的にはそういう生活必需品だとかあるいは大衆に密着した嗜好品については、これは間接税をかける場合においてもやはり高級なあるいは奢侈品等にかけていくようにして、こういったものにかけないという方向を今後も考えていただきたい。ちょうどいま、減税はやったけれども間接税は増税になっているという一つの形が見えている以上、その政府態度をはっきりお伺いしておきたい、こういうわけで聞いているわけです。酒やたばこの問題についていまからまた聞きますけれども、問題はありますが、その基本的な姿勢というものをひとつはっきりとお伺いしておきたい、こういうわけです。
  203. 水田三喜男

    水田国務大臣 基本的な姿勢というのですが、税制調査会でもいっておりますように、この間接税と直接税の比率をどうしたらいいかというような問題はございますが、大体いま程度の比率を保ったらよくはないかとういのが税制専門家連中の意見でした。いま程度間接税、直接税の比率をしばらく保ったらいい、そのためには、さっき言ったように、捨てておけば上がるもの、捨てておけば相対的に下がるもの、この調整は年じゅうしないとこの比率は保てませんよということでございまして、それは確かにそうだと思いますので、私どもも今度の税制はもっぱらそういうところに力を入れた税制の改正だったというふうに考えています。今後もやはりそういうバランスはとるような形でやっていくのがいいのじゃないかというふうに思っています。
  204. 広沢直樹

    ○広沢(直)分科員 税率はいま六〇・三%に下がっているわけでありますが、そうなってきますと、今後もまた税率は下がっていく。このままほうっておけば、おそらく四十三年度は六〇%を割ると思われます、たばこの分については。そうなりますと、いま大蔵大臣がおっしゃっていらっしゃるようなことでありますと、これが下がってきた場合においては売り上げも相当伸びていると考えられるし、本数も今後もまた伸びていくと考えられる。そういう比率から見て、やはり下がってくればまた上げるという理屈になるのですが、そういうことになるのですか。
  205. 水田三喜男

    水田国務大臣 ことしたばこを値上げしましたら、来年もまたすぐ上がるというような事態はおそらくないと思いますが、あと何年かたって税の負担が相対的に下がってきたというときには、やはり見直してこの調整をしないと——日本の直接税と間接税との比率を一定の割合に保っていくのがいいとするのでしたら、何年かたったら見直すということはやはりやるベきだというふうに思っています。したがって今後もこれは、非常に国民所得の伸びが多くて相対的に負担が下がっているというときには、また手直しをやってもいいだろうと私は思います。
  206. 広沢直樹

    ○広沢(直)分科員 三十一年当時から、たばこ十本当たりの平均単価というのが出ておりますが、非常に高級品に変わってきている。その当時の十本当たりの平均単価を見ますと、いろいろデータがありますから正確にこれというわけにはいきませんでしょうけれども、こちらがはじき出してみたところによりますと、二十二円八十銭になっているわけです。ところが、四十二年においては三十二円四十五銭になっている。十本当たり平均単価で九円六十五銭、約十円くらい上がっているわけですね。ですから、約五〇%も売り上げが増加しておりますから、そういう観点から見ますと、これは実質、益金から考えると上がっているじゃないかということになるわけです。そこで、こういうふうに実質的に値上げされているという、すなわち増税されているという点は、こういった点から見ても明らかであるわけです。ですから、単にいま申されておったような事情で、やはりその比率が変わってくればまた将来において上げていくのだということはちょっと納得できないのですが、その点についてはどうですか。
  207. 前川憲一

    ○前川政府委員 私から御説明申し上げます。  いま先生のおっしゃいましたように、十本当けりの単価は確かに、三十一年から四十二年にかけましては二十二円八十銭が三十一円四十銭くらいに上がっております。   〔主査退席、小沢(辰)主査代理着席〕 しかしこれは実質的値上げというよりも、結局全体として、国民の消費水準といたしまして、嗜好品でございますから、たばこに対する嗜好が高級化していったということを意味するものだと思います。しかしながら、一方、益金のほうはそんなに上がっておりません。したがって、たとえば同じ銘柄についてこれを見てみますと、新生を売り出しましたときには、そのうち十五円十六銭が税金であったのでございますけれども、四十二年ごろには、同じ一箱吸いましても、税金は十円三十七銭というところまで落ちておるわけでございます。先ほど来大臣が、調整とか手直しということをおっしゃいましたが、いわば今回の調整は目の玉の飛び出るような調整じゃなくして、どっちかといえば穏健なる調整でございまして、今回、値上げいたしましても、新生の税金の部分は十四円三十銭、したがいまして昭和二十六年ころの十五円十六銭よりは安いということでございます。  それからもう一つお考え願いたい点は、なるほど先ほど来御指摘のございましたように、十本当たりの単価は約四割上がっております。それから本数で申しましても、かりに昭和二十六年を一〇〇といたしますと、現在二二O——二三〇になっておる。おかげさまで売り上げは四倍になっておる。しかしながら益金額として財政に寄与する分は三倍でございます。ところが、この間経済の伸展につれまして、いろいろな税金、特にお酒の税金などは、お酒の売れ行き量がぐんぐん伸びておりますので、三倍とか四倍どころの騒ぎじゃないということでございまして、したがいまして、たばこの財政に対する貢献度は、先ほど申したように落ちておるわけでございます。しかしこれも先ほど来申しておりますように、何もむちゃくちゃにたばこでどうこうしようというような、そんな大それた考えは持っておりませんので、この点も御納得願いたいと思うのですけれども、まず先ほど大臣がおっしゃいましたように、直接税と間接税の比率は、今回のたばこ、酒の値上げにかかわらず、基本的には変わらないということですね。これは逆転して六−四が四−六になるというようなものじゃない。それからまた、その四割の中に占めるたばこの益金の割合も、たとえば昭和三十年ごろをとりますと、ほぼ三割。つまり間接税等の中に占めるたばこ益金の割合が三割だったわけですね。それが低下いたしまして、四十二年度は一七・五%になっておる。それを今回値上げいたしましてどうなるかというと、一八・六でございます。四十一年が二〇・二でございますから、四十一年にやや返らんとする程度のきわめて穏健なる手直しであるということをひとつ御了承願いたいと思うのです。
  208. 広沢直樹

    ○広沢(直)分科員 いろいろ理由は説明されておりますけれども、要するに、先ほど申し上げましたように、公共料金が相次いでずっと上がってきて、諸物価が上がってきているわけです。ですからそういったたばこだとか酒だとか、比較的大衆に税金を負担しているという感じを与えてないものにすりかえて移行していくということは、これは一つ大きな問題だと思うのですよ。特にたばこは専売業でありますから、政府がこれを押えていこうと思えば完全に押えることができる。こういう物価上昇で、物価を安定さしていかなければならないという時限に、先ほどちょっと漏らしておりました、その財源をほかに見つければあったかもしれないけれどもというようなあいまいなことでこれを上げてもらうことになりますと、非常に納得できないわけです。  そこで、もう時間がありませんので、もう一つお伺いしておきたいと思うのですが、要するに今回のたばこの値上げについては、財政の確保だ、こういう話であります。また大蔵大臣も先日は、原料も上がっているからというようなことも理由になさっておったようでありますが、葉たばこの収納価格のことでありますけれども、収納価格というのは、米とかそういったものに比べますと非常に安いわけです。ですから、たばこを耕作している農家の方々の一日当たりの労働報酬というものは、米に比べればこれもまた半分ぐらいにしかなっていない。したがって、たばこを値上げするということは専売益金を増収するためであると説明していることから考えますと、この収納価格を据え置くという考えも出てくるのではないか、この点についてどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、お伺いしておきたい。
  209. 前川憲一

    ○前川政府委員 お時間もございませんので、また私も非常な専門家でもございませんので、こまかいことは言えませんが、考え方といたしましては生産費補償方式ということでやっておりますので、労働賃金も含めまして、生産費のことしの推移をよく見まして、そしてまたことしの暮れに来年度の葉たばこの値段をきめる、こういうことでございますから、絶対値上げしないという考えで臨んでおるわけではございません。
  210. 広沢直樹

    ○広沢(直)分科員 それでは、時間がありませんので、今度は公社のいろいろな問題についていろいろお伺いしようと思いましたのですが、これは次の機会に譲ることにいたします。
  211. 小沢辰男

    ○小沢(辰)主査代理 次は、帆足計君。
  212. 帆足計

    帆足分科員 まず大蔵大臣にお尋ねいたしたいのですが、私は今日の日本におきまして政治家として一番念頭に置かねばならぬことは、日本は海の国でございまして、日本国というよりも日本丸といったほうが適当なくらい貿易と造船に依存しておる国でございます。これはたびたび分科会でも、また外務委員会でも私は主張しておりますが、したがいまして外には平和と貿易、この二つの任務は党派を越えての課題である。ただいま諸悪の根源は、インフレと重税と住宅難、社会保障の乏しいこと、この四つが内政において心すべき問題ではないかと思っております。したがいまして、大蔵省予算を組むにあたりまして今後念頭に置いていただきたいことは、貿易、平和外交、インフレの防止、住宅難の緩和、社会保障の充実、これらが眼目であろうことはおよそ御異存のないところであろうと思いますが、特にインフレーションは諸悪の根源でございまして、ときどき千円札のにせ札をつくった恥ずべき犯人がございますが、しかし立場をかえて考えますと、年に一割の物価が騰貴したとするならば、月五万円の収入、年六十万円の収入の者は、インフレーションによって年間六万円収奪されたことになるのでございますから、その点において日本銀行並びに財務当局は重大な責任を負わねばならぬのではあるまいか。私は戦争前に長らく日本経済連盟に職を持っておりまして、親しく当時の財界の巨頭に接する機会がございました。団琢磨氏でも井上準之助氏でも、それからどちらかといえば積極政策の高橋是清翁でも、よく私は口述の筆記を青年時代にいたしましたけれども、高橋是清翁のような積極政策財政政治家が、インフレーションとリフレーションの区別をよくわきまえまして、リフレーションまでは積極政策で許容することはできるけれども、インフレーションの徴候が少しでも見えたときは最大の注意を払わねばならぬ。この一線を守ろうとして彼がついに軍国主義者の凶弾の犠牲となったことは御承知のとおりでございます。明治の金融財政の指導者というものは、まさにそのような心がまえでございました。しかるに今日、戦後ずっとインフレーションが続いておりまして、上からは重税、下からは物価の騰貴、やむなく春闘、秋闘、ストライキに明けストライキに暮れるという状況になっております。うちの手伝いさんなどは、去年の秋ストライキがあったのにまたストライキをしておりますか、ストライキのできない手伝いさんはびっくりして私にそう申しますが、全くそのとおりでございましょう。しかしそれはどういう理由で起こるかといえば、それは物価騰貴、インフレーション進行の反作用として起こるのでございまして、はしかになって顔にしっしんができるのと同じであります。もしこれに対してストライキが起こらなかったならば、生産と消費とはアンバランスになりまして、あるいは急激な不景気が襲来するかもしれませんし、人心悪化して内向するおそれがあるのでございます。はしかが内向したときにいかに生命に危険であるかということ、はしかで熱が出たからといってこれを冷やしてはいけないということは、賢い母が知っておるとおりでありまして、逆に汗が出るようにこれをあたためるのでございます。だとするならば、春夏秋冬のストライキも、インフレーションにやむなく触発されて発熱する状況であるならば、私はそれが妥当な合理的要求である限においては、ストライキのあとにいわば総評、中立労連その他の組合の諸君に対して、よくぞ正当な要求をすることによって生産と消費のバランスができた、市場の開拓が合理的にできたといって大蔵大臣賞を与えてしかるべきであるまいか、こう思うのでございます。戦後二十年たって幸いにして強烈なデフレーション、恐慌にぶつかっていないことの一面には、労働組合がその均衡作用を営んでおるという健全な部面があることを政府当局には知っていただきたいと思うのでございます。またそのストライキが事の性質上ときとして激化いたしまして、多少逸脱するようなことがありましても、政府当局は、これはインフレーションのなせるわざと考えまして、大らかな気持ちでこれに対処する必要がある。この哲学をしっかり身につけていただかなければ、さかうらみということに政府政策はなろうと思うのでございます。今日、日本の幹部候補生たる東大その他優秀な青年たちが、水田大蔵大臣も高等学校の時代は全学連であったように私も承知しておりますし、その他数を数えれば、保守党の大臣各位の中には数名の全学連の諸君がおられるわけでございます。水田さんが青年時代にビラをまいたからといって、おうちにはお困りなかったと思いますけれども、もしアルバイトをしておられたとしたなら、それで奨学金をストップして学校を追い出したならば、いまこの輝かしい席に着くことはできなかったのでありますから、教育者もまた政治家もまさに心すべき問題である。大らかな心、理性、ものごとの分析、正確な認識、こういうものは党派を越えて政治家に最も必要なものである。それにしても文部大臣その他の諸君の発言をちょいちょい見まして、まことにその水準の低いことをなげかわしく思うのでございますが、ペスタロッチの名も知らず、グルントビッヒの名も知らないような方が、運輸大臣になりそこなって、翌日ふたをあけてみると文部大臣になっておる。こういう閣僚選考が行なわれておるような世の中でございますから、これも文化文政の弊風をまねたものと思えばあきらめもつくでしょうけれども、百の説法よりもインフレーション退治が急務中の急務であると思います。そこでここ数年の生活物資の騰貴率と諸外国の例と、どうぞ時間が限られておりますから一言で、同時にインフーションの根を断つための根本対策は何とお考えになっておられるか、一言でよろしいから大蔵大臣に聞きただしたい。私は予算委員会で立ってお問いするならば、理路整然とこれを体系的にお尋ねするのでございますけれども分科会はむしろ具体的細目を論ずる場所でございますから、大上段の論議は控えまして、大蔵大臣の心持ちのほどを伺い、政府に対して、物価騰貴に悩む国民大衆を代表して、逆に御反省を求める次第であります。
  213. 水田三喜男

    水田国務大臣 一口に言いましたら需要供給の均衡のとれた経済社会、これがインフレーションのない社会ということになろうと思います。
  214. 帆足計

    帆足分科員 まことに簡にして要を得ざる御答弁であって、ただいまのような御答弁であったならば、労働組合の意味というものは大蔵大臣にはよく御理解願えたと思いますから、関係閣僚を大蔵大臣の立場、インフレーションの責任者の立場としてさらに啓蒙のほどをお願いしたい。特に文部大臣に至っては経済学の経の字も御存じなきがごとく存ぜられますし、教育学、哲学についての初歩的観念も欠除しておりまして、まだ雲にそびゆる高千穂の——ホッテントットと言うとちょっと議院の品位を汚しますから、こういうことばは避けますけれども、生蕃人という表現もこれは気をつけねばなりませんし、穗積君の、世にいわゆる失言というものを思うと、かくもたやすく懲罰に付せられるということは私はどうかと思うのですが、控え目にいたしまして、教養のお低きお方よ、こういうふうに今日の文部大臣の御発言を批評せざるを得ないのでございます。このインフレーションがいかに諸悪の根源であるか、住宅難がいかに諸悪の根源であるか。孟母三遷の教えといいますけれども、三たび公団をかわろうとすると、かれこれ二十、五年はかかるでしょう。そのころ孟子はすでに不良少年になっていると思います。こういう時代でありますから、これを前提として、インフレーションというものがいかにおそろしいものであるか、インフレーションとは痔です。昔の銀行家がどれほどインフレーションに対して神経質であったかということを水田さんはよく御存じでしょう。そうして英国がインフレの問題に対してまたどれほど慎重であるか。その慎重なイギリスがポンドの切り下げをせざるを得なかったということなどをお考えくださって、思えば西ドイツにまさる日本の所得倍増も、そのからくりはきわめて簡単でございまして、それはインフレーションの歴史だった、一言でいえばそういう半面があるのでございますから、所得倍増は庶民からインフレーションをもって搾取した、膏血をしぼってそれが貯水池になり、そこでその国家資金が産業に還元されたものである、こういう客観的性格を持つというこの事実について深くお考えあらんことを希望する次第でございます。  そこで、最近恩給に対してせめてスライドしたらどうかという議論も伺いました。私は、その言うことやよし、しかし恩給のほかに定期預金もあり、保険金もある。保険金などは私も十万円入っておりまして、戦前ならば十万円あれば百万長者の十分の一、一生楽に暮らせる金であります。いまでは槿花一朝の夢になりました。それから定期預金その他の年金も同じですから、これにスライド制をつけることは非常に困難である。困難であるとするならば、やはりインフレーションを防ぐ方法を考えねばならぬ。水田さんは予算が通ったらしばらく国会をお休みになって、この問題をゆっくり考えて抜本策をお立てになるベきときではあるまいか。かりに自民党のあとに社会党が引き受けるとしましても、このインフレーションのあと始末をしろといえば、ちょっと私は木村禧八郎君の手でもむずかしいと思います。デフレのあとならインフレをやれば楽なんです。インフレのあとでうまくいったという例は、天才でなければこれはできないことでございます。デフレのあとなら盲腸の手術、インフレのあとなら腸捻転の手術、帝王切開をせねばならぬ。そういう役割りをわれわれ引き受けたくありませんから、自分でなさったことは御自分で始末をしたあとで社会党に政権をひとつ譲っていただきたい、こう思う次第でございます。インフレについての抜本策についてどのようにお考えですか。それから恩給問題について、きょうの新聞に出ておりましたことについてどういうふうにお考えでしょうか、伺っておきたいと思う次第でございます。
  215. 水田三喜男

    水田国務大臣 いわゆる恩給のスライド制は確かに波及するところが非常に大きい問題でございますので、私は、やはりあなたがおっしゃられるように、ここでもうインフレをとめるという仕事を真剣にしなければいかぬということを考えております。三十年代の成長期は平均して日本で六%程度の物価の値上がりでございましたが、ようやくここへきて、四十年代になって四%台にきましたが、まだまだこれは非常に高率な物価の上がり幅でありまして、いま経済会計画の中期の計画においても、少なくともこの五年間に二、三%に持ってくる施策をすべきだというのが計画の趣旨でございます。急速にこの物価の上昇というものをとめないとどうにもならないと考えまして、それには何としても国内財政政策、金融政策が一地大きい役割りを持つものと考えますので、今回の場合もいろいろ、いまあなたのおいでになる前までだいぶ税の問題でつつかれましたが、ほんとうなら日本は増税もやるくらいの覚悟を持ってこれを食いとめるというくらいの決心をしなければならぬ時期がやがて来るのではないかとすら私は思っておりますが、一挙にそういうことにならなくても、平素からそういう基礎を築いていく必要がありますので、どうしても物価の上昇というのはとめなければならぬと思っています。先般、韓国の副総理が来てこの問題を話しましたが、韓国は本年度は六%以内に物価上昇をとめるということについていろいろなお話をされておりましたが、これも政策的には非常に大きい問題で、相当施策について決心を持っていることでございまして、そういう点を聞きましたので、一そう私どもは、韓国のいまの物価の上昇率と比べたら、日本はどうしても三%台の物価上昇にもっと早く持っていかなければいかぬというふうにいま考えております。
  216. 帆足計

    帆足分科員 鉄鋼百万トンもできない韓国政府のことなどは、ばからしくて私はお尋ねする気にもなりませんけれども、しかいし過去六年間において ただいまいただいた資料です。日本は四五%も消費者物価が値上がりしているのです。アメリカはわずか九%、英国は二割三分、ドイツで一割八分、フランスは二割三分。それに対して日本は四割五分も騰貴しております。かりに百万円定期預金をしていたとするならば、百万円の金は五十五万円に減ってしまっているわけです。四十五万円は大蔵大臣に盗まれたというような不平が出ても、懲罰委員会に付することもできないような数字でございます。どうかこの数字の深刻さ——これだけのものが国家資金に還流して、わわれれの財産を盗んで、盗んだものが所得倍増の美名のもとに大資本に投下されておるという、この経済のからくりを国民によく知ってもらい、学者に検討してもらって、ただ批判するばかりでなくて、徐々にこれを解決するのにはどうすればよいかということに協力し合わなければ日本は退廃してしまう。その根源はここにあることを痛感いたすのでございます。  時間がございませんから、あとは急行で各論に移りますが、生命保険の問題も同じでありまして、私は多少生命保険の事情を存じておりますが、このような苦い経験のもとで生命保険に勧誘するということもたいへん困難です。その困難を押して今日数兆円の生命保険の契約ができておるということは、驚くべき外交員諸君の御努力の結果だと思います。われわれも、いやなことがあったりして町裏のバーなどに寄りますと、つい二、三千円、四、五千円は使うのでございますが、それを保険勧誘員が集めて、そういうむだづかいを保険の掛け金にして万一の非常事態に備える。保険に入ってあとで後悔した未亡人はないのであります。したがいまして、その労を多とするものでございますけれども、わが国においては、生命保険一つ例にとりましても、まずインフレーションという重大な難関が横たわっております。また保険外交員の移動が非常に激しくて、縁故関係で、未亡人その他婦人が非常に多いのですが、採用いたしまして、話に聞きますと、年々二十万人近くも移動が起こっておる。定着しておる外交員は十万少しこえておる程度にすぎない。私は、セールスマンとしての外交員の教育、学習、訓練にもう少し会社として熱心になって、そして常時勤務する人たちの生活安定を一そう確実にし、保険に志す未亡人さんたちもできるだけ定着し得るように教育せねばならぬと思います。私どもがむだづかいする金は相当のものでありまするし、会社の交際費だけでも六千億円といわれております。そういうむだづかいはできるだけ保険に吸収するという、仕事はつらいけれどもとうとい仕事として、保険勧誘員諸君の訪問を受けましても私は苦い顔をして追っ払うという気は起こりません。しかし、尋ねてみますと、専門の知識がございませんために——年齢、職業、目的、環境において適切な保険に入らねばならぬでしょう。アメリカでは保険の仕事はセールスマンの仕事となっておりまして、エスキモーに冷蔵庫を買わせる能力を持っておる、こう自負しておるのが保険の外交の専門家だそうでございます。そこまで神わざとまでいかなくとも、保険についての正確な知識を持たしめて指導する、こういうふうに銀行局のほうでは御指導あらんことを切望する次第でございます。また、保険会社はあれほど何兆円という金額に達して大廈高楼がそびえ立っておりますのに、案外にまだ経営者の一部には封建制が残っております。いまも忘れませんが、いまから三十年前に、第一生命会長の矢野恒太氏が御存命中——彼はすぐれた立志伝中の人物であります。親指が曲がった方でありましたが、小柄な方で、非常な秀才で、国勢図会という大衆にわかりやすい統計の本が出ておることは御存じのとおりであります。もうずいぶん前になくなった方ですが、その方ですらが、相互保険の組織を同族会社のように考えがちでございまして、勤労者に対して、近ごろ百姓が自転車のうしろにビールを載せ、わらじのかわりにゴムぐつをはいて走る、こんなぜいたくなことではだめだと、まるで二宮尊徳時代の経済学を述べていたのに私は肝をつぶしたことがある。日本の生命保険の開拓者である矢野恒太氏、この敬愛する実業の天才がこのような幼稚なことを言われる。ゴムぐつはだれのためにつくるか、ビールはだれのためにつくるか。百姓に飲んでもらい、寄生虫を防ぐためにゴムぐつをはいてもらう。そして日本の軽工業は発達する。それが正しい成長的循環であるのに、そのことわりすらわきまえない方であった。一面保険王でありながら、封建制のワクを出ることはできなかった。そのために、日本の実業界は庶民の尊敬を得ることができなかった。こういう封建残滓は銀行にも会社にもありますけれども、相互組織の生命保険にもまだ色濃く残っておるわけです。たとえば残業手当にいたしましても、六十円ないし百円前後と聞いておりますが、しかしストがあったり余儀なき事情があって職場を離れましたときに、その賃金をカットするのは、厳密にその時間で総賃金を割ってカットいたしておりますのに、残業手当の場合には、ほんの封建的な胸算用でもって制度がきまっております。私は保険行政を監督される銀行局におきまして、銀行と会社と比較なさいまして、そういう封建残滓はやはり明朗にして、そうして今後保険業務はだんだん合理化されていくと思いますが、合理化には二種類ありまして、一つは消費者に奉仕し、勤労者の苦しみを緩和し、能率をあげ、賃金を高め、すべての人から喜ばれる進歩的合理化と、その苦しみのしわ寄せを勤労者だけに寄せるような反動的合理化と二種類ありますから、その点よく御勘案くださいまして、日本の企業に伴いがちな封建的な陋習を取り去りまして、合理的に筋道の通るように、経済最後の目的は消費である、国民生活の向上である、こういう観点保険行政の皆さまも立っていただきたいと思うのでございます 日ごろこの点を痛感いたしておりまして、特に移動率の激しい未亡人残酷物語のような日本の外交員制度に対しまして、一挙に抜本的にこれを直すことはできないでありましょうけれども、この業務が専門化し、定着化するようなあたたかい指導と教育を与えて、縁故関係を食い荒してあとは弊履のごとく捨てるというような保険残酷物語を減らしてまいりまして、定着し、安定した仕事として保険の仕事ができるようにお骨折り願いたい、こう思う次第でございます。  あと一問ございますので、あとで申し述べます。それだけをお許しを願います、まだ時間が三、四分ありますから。
  217. 小沢辰男

    ○小沢(辰)主査代理 あとわずかですから、ひとり……。
  218. 帆足計

    帆足分科員 そこで、保険の使途別資金の一覧表をいただきましたら、案外に住宅資金、建設資金に私が当初思っているよりはたくさん使われておることを見まして、たいへんいいことだと思いましたけれども、零細な国民の資金が集まっておることでございますし、しかも長期の資金でございますから、今後住宅問題の困難を一そう御勘案くださいまして、住宅資金、建設資金、また長期に必要な社会福祉関係の資金などに対しては、保険会社が最も適切でございますから、その方向に心をとめていただいて、そして保険というものが国民相互扶助の性格を持っておるというふうに御指導いただきたいのでございます。また、平均年齢が高くなるにつれまして死亡率が減少をします。一方、これは契約差益金にあらわれてくるでございましょうけれども、そういう余力を持って、保険会社は社会福祉の仕事あるいは予防医学の仕事等にもさらに関心を持たれることを、そのように指導されんことを切望いたす次第でございます。  あと一問ございますから、御答弁をいただきまして……。
  219. 小沢辰男

    ○小沢(辰)主査代理 時間もありませんから、簡単に答弁願います。
  220. 新保實生

    ○新保説明員 ただいま先生の御指摘の点は、まさに生保業界の体質的な欠陥を御指摘になられたわけでございまして、私どもも深く反省しております。  まず、第一点の外野組織の問題でございますけれども、セールスマンのある程度の通弊といたしまして、非常に異常交代がはなはだしい。これはある程度はやむを得ないのでございますけれども、これも近代的な外野制度を確立するという観点からするならば、いまのままでは決してよくないわけでございまして、これは三カ年計画というものを立てまして、専業外野員の割合というものを漸次上げていく。目標といたしましては、四〇%というところをねらっておるわけでございます。実績を見ますと、年々数%ずつ向上をいたしておるわけでございます。しかしそうだからといって、現在の外野の七、八割を占める家庭婦人を全部なくすというわけには、やはりまいらないのではないだろうか。あくまでも日本のそういう特殊な労働事情というものを前提に置きまして、しかも、より合理化していく、そういう方途を研究いたしたいと考えております。  それから合理化の問題でございますけれども、これは私どもは絶えずやかましく会社には申しておるわけでございますが、冗費を節約するということ、不動産関係におきましても、不動産の比率をだんだん下げていく、総資産における不動産の比率というものは、逐年低下するように指導いたしております。  保険料の引き下げの点は、先ほど先生御指摘のとおり、死亡率の低下によりまして当然起こるわけでございますので、それも考慮に入れまして、過去十年の間に数回保険料の引き下げをやっておりますけれども、なお年々の死亡率の低下に追っつかない部分につきましては、契約者配当金というのがございますので、それをふやす。結果的にはそれがふえるわけでございますので、できるだけ冗費は省いて契約者に還元するということを指導いたしております。住宅関係、その他公共的な目的のために生保資金を使うということについては、まことにごもっともなことでございまして、私どもも今後ともそういう方向に指導いたしたいと考えております。  それから相互会社であるところの通弊といたしまして、同族会社的になる。これは確かに問題点でございますけれども、数年前の保険審議会で審議をいたしまして、この相互会社組織をもう少し民主的に運営するという方途について具体的な答申をいただいております。それにつきましても着着指導を進めております。
  221. 小沢辰男

    ○小沢(辰)主査代理 それでは、時間がありませんから簡単に願います。
  222. 帆足計

    帆足分科員 主査とのお約束を守りまして、簡単にします。  ただいまの御答弁の趣旨で、特に合理化の際に従業員の福祉ということをお忘れなく、それと矛盾しないように御配慮のほどを切にお願いをいたしまして、最後に、このたびの便益関税の問題でございますが、特に貿易に役に立つものはすべて善であると私は申し上げました。吉田書簡などという老人のつやぶみが貿易のじゃまになるようなことでは困るというようなことには、大蔵大臣も御賛成になっておりますから、あえて申しません。このたびの便益関税の問題につきましては、残念ながら中国と国交回復いたしておりません。しかしインドネシアの初期の国交回復等の例もありますから、さらに慎重に御勘案をいただきたいと思います。また差別関税が中国側にありはしないかということにつきましては、御承知のように向こうは計画貿易をいたしておりますから、差別関税というよりも計画貿易の総量をふやしていくという形をとっておりまして、このことはポーランドとアメリカとの関係におきましても解決いした問題でございます。そのことも御記憶くださいまして、これが、せっかく古井さんが協定を結んできましたことについての重大なショックにならないように、慎重な御研究のほどを切望いたしまして、三十分という時間は、これはトラをおりの中に入れてほえさせるようなものでございまして、やむを得ないことでございますから、以上をもちまして終わります。
  223. 小沢辰男

    ○小沢(辰)主査代理 堀昌雄君。
  224. 堀昌雄

    ○堀分科員 本日は、二点お伺いをいたします。  最初の一つは、私は、昨年の七月の五日の大蔵委員会で大蔵大臣と実はお約束があるのです。ところが大蔵省は約束をちっとも守っていないものですから、その点を言っておきたいと思います。それは何かといいますと、昨年の投資信託法の一部改正のときに、私は実は会社型投信の問題を取り上げて、そこでこう申したのです。「やはり私は、今後の会社型投信の問題の中の一番大きな問題は税制だと思うのです。ただ、税制だからといって、われわれはその他との関係の公平な税制までを無視していいとは考えていない。ただ税制だけが足を引っぱるのでは、これまた、せっかく制度を発足させても無意味である、こう思うわけです。そこで大臣、これはいずれも大蔵省所管の内部の問題でありすから、やるやれないは別としても、ひとつ、ことしの年末までに、会社型投信についての税制の問題について、大蔵省として見解を一本にまとめて、当委員会に報告してもらいたいと思うのですが、大蔵大臣、どうでしょう。」水田国務大臣「いずれにしろ、検討はして、結論がどうなるかはともかくとして、報告いたしましょう。」と、こうなっておるわけです。ところが、とうとう昨年中に大蔵省は報告してない。きょうここで報告を求めたいのです。お願いいたします。
  225. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ただいまお尋ねの点でございますが、実は、私もあの御質問がありました直後に証券局に参りまして、その御質問の趣旨はよくわかった。そこでこれをどうするか、大臣はお約束になっておりますし、何とかお返事をしなくちゃいけまいというので、実はこれは検討を命じました。しかし、いま御指摘のとおり、この問題の一番の難点は、やはり税制である。したがって、税制解決しなければ、幾らやってみてもこれはだめじゃないか。そこで証券局として考えられる案をつくって、とにかくこれに対して主税局はどう考えるかというのを内部的に当たるべきであるということを指示いたしました直後に、今度私は主税局にかわりました。そこで私は、主税局の立場で考えたのでありますが、この問題の一番の難点は、先生もよく御承知のとおり、法人における課税の問題でございます。投資信託の形といたしまして、現在の契約型の場合の受益者の形と、会社型の場合の受益者はいわば株主でございます。したがって、信託関係の起きた形は、実質的には非常に違っております。そこで、法人の段階でキャピタルゲインが出た場合に、法人税であれば当然課税いたしますが、契約型でございますと、これは課税にならずに、受益者本人に分配された場合に、たまたま配当控除が二分の一になるという形で調整されているわけでございます。そこで証券局としては、当然このキャピタルゲインの問題を解決しなければ、これは成り立たない問題だ。もっとも私は、キャピタルゲインにたよっていた時代と現在とはだいぶ違うのじゃないかという気持ちはいたしますけれども、現在でもお子らくキャピタルゲインが二割ないしは三割は利益のうちに入っているのじゃないかと思います。そこで、このキャピタルゲインを投資信託であるということで法人税の課税から除外するのかどうかという点でございますけれども、会社型投信というのは、私が申し上げたように、信託関係は受益者との関係ではないわけです。そういう意味から、一般の株主と同様の形の受益者に対して、特別な扱いをするのは相当困難がある。さらに御承知のとおり、アメリカの会社型投信が一九二九年に問題を起こしましたのは、非常に大きなキャピタルゲインが出て価格が上がり、それが今度非常なキャピタルロスが出て価格が下がったということが出ております。したがって、普通の法人に比ベますと、この法人はキャピタルゲインが非常に大きな要素をなす法人である、こういうことになりますと、現在株式のキャピタルゲインを非課税にしております趣旨は、証券流通を円滑にするという意味で非課税にしておるわけでございまして、キャピタルゲインを個人について非課税にする趣旨ではないわけでございます。そういう点から申しますと、法人としてまとめて売買をして得たキャピタルゲインを負けてしまうということは、この法人がキャピタルゲインを他の法人と違って収益を中心とするだけに、法人税としては現在の段階ではとうてい無理だ、こういう判断でございますので、私のほうとしては、やはり普通の法人の形態で課税をしたいという結論を、いまのところまだ動かしておりません。証券局も非常に心配をいたしまして、何回か接触しておりまして、報告を申し上げるにしては統一見解としてまだ御報告できる段階になっておりませんので、経過だけを御説明いたしたわけでございます。
  226. 堀昌雄

    ○堀分科員 大臣、約束は、私は大蔵省一つの考えにまとめて、やるかやらないかは別として、一つの見解をまとめなさいといってあるのですが、まとまってないんですよ。証券局はどうも別途なことを考えておるようです。ですから、私はこんなものも両方で角を突っぱり合っていれば、これは永久にできっこないです。それじゃ諸外国、先進諸国でできておるものが、日本だけでできないというのは一体なぜかといったら、それはそういう行政の突っぱり合いだったということでは、これは政治の世界では通りませんよ。水田さんどうですか。ですから、私が言ったのは、事務当局だけにまかせておいて、そんなものが、一本のものが出るとは思わないんです。やはりあなたが政治的判断をして、どういう処理をするかということを私は答弁で得たと思っていたんです。去年の七月五日です。ところが、あなたは無責任にも何もしないでほったらかして、事務当局でやったからこんなことになっているんです。そこできょうは、はっきりした答弁をいただきたいと思うのですが、政治的判断を含めてどういう処置をするか、あなたはいつになったら答えられるのです、それだけちょっと……。
  227. 水田三喜男

    水田国務大臣 いま局長が答弁しましたように、中間報告でまだ結論が出ていない。いずれこれはまとめます。証券局長を主税局長にして、これでまとまらないようだったら、なかなか取りまとめはむずかしいと思いますが、必ずまとめると思います。
  228. 堀昌雄

    ○堀分科員 私は、なぜこのことを強く言っているかといいますと、今度四月一日からいよいよ証券業免許制になるわけです。要するに、三十八年以来やってきたことがようやくここで締めくくりができて、その中では運用預かりの改善の問題も改善されてきたし、いろいろな問題が処理されてきたわけです。これは全部、大体私にいわせればうしろ向きの処置なんです。これまで当然やるべきことをやっただけで、これをやったらそういう資本市場の問題がルールのレールの上へ乗ってどんどんうまくいくかといったら、要するに軌道を引いただけで、これから動かすものは、今後の問題として問題提起をしていかなければならぬと思っているから、やはりその一番問題は現状の不信感、資本市場のいろいろな問題があります。最近の動きを見ても、ややスペキュレーションを強くすることによって資金の流入をはかろうとしておるような動きがあります。私から言わしたら、やはりこれは本筋ではないと思うんです。大衆が安心して市場に参加できる仕組みというのは、やはり投資信託が軌道に乗るような投資信託を開発をしていくことが、これが私は最も根本的な方向であるし、同時に私は国民がいわゆる間接投資だけにたよっておる姿がこれでいいのかといったら、やはり国民の側から見ても、直接投資に参加をして、そういう企業のプロフィットの分配を受けることが私は当然であって、いいと思うんですね。五分五厘という固定されたものだけが国民の投資対象であっていいとは思いませんが、どうかひとつ水田さん、これは証券免許制と関係のある重要な問題なんですよ。せめてこれ一つくらい、あなたのほうが責任を持って片づけなければ、私は免許制をやって、ともかくある一つの軌道の中にきちっと乗せるだけ乗せたけれども、これにエンジンかからないわけですよ。やはりあなた方燃料を補給してエンジンかかるようにする責任が、私は政策担当者としてあると思うんですが、だから少なくともあなたは時間を——私のいつもの手だけれども、時間はいつでもいいですよ。六カ月以内にできるならば六カ月以内にきめて、ちゃんと答える。どうしても六カ月以内だめなら、ことしの十月までにはきちんとする。これでもいいですよ。ともかくあなたひとつ責任のある答弁をここで一回してもらいたい。これなくして免許制で多数の人たちに私は気の毒な思いをさしてきたと思う。それの提案者の一人として、私はどうしてもその点きちっとしてもらわなければ困る。
  229. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 いま堀先生のおっしゃった点は、その必要性については私も同感なのでございますが御承知のとおり、現在の配当と利子の課税が非常に経過的に変わった形になっております。投資信託の課税自体が、配当課税ではございますけれども、源泉分離の形をとっておったりいろいろ複雑な形がございまして、今度会社型をとった場合には、会社型投信の配当というものをどういう形で扱うかということを考えますと、どうも私は、配当利子の特別措置に決着をつける時期に一緒に考えないと……。(堀分科員「来年の三月」と呼ぶ)再来年の三月までにははっきりした答えが出し切れぬような形が——私もう少し努力はいたしますが、私自身の気持ちとしてはそういうところにあるのでございますが、そういうわけで大臣に来年までとお約束するのは、私自身非常にじくじたるものがあるので、率直にほんとうのことを申し上げたわけであります。
  230. 堀昌雄

    ○堀分科員 大臣、いまから二年間待つのですか。あなた方、免許制にして、ともかくおまえらしっかりまっすぐ前向いて歩けといって、しかし道の前にはいろいろなものがあるのを、ちょっとはどけてやるくらいの親切があっていいのじゃないですか。社会党がそう言っているのですよ。自民党の議員が言っているのじゃないのですよ。どうですか。私が言っているのは、ともかく国民がああいうところから疎外されている状態は、やはりよくないと思っているから言っているのです。だから、疎外されておるものを正常な状態にして、その人たちも企業があげた利益の一部の分配を受けるのは、あたりまえじゃないですか。ひとつ政治的判断で答えてください。事務当局はもうはっきりわかりました。要するに分離課税、そうなるとたいへん問題が複雑になってきて、私に言わせれば分離課税みんなやめてしまえということになるのですが、そうすればまた別の問題が起きてきて、またごたごたするだろうから、一年くらい前にやっておいたほうがいい。そのあとの時点で考えるならば、また別個に考えればいいですから。どうですか、ことしの十月までに、大臣、ひとつ結論を出してくださいよ、そうすれば次の通常国会に間に合いますから。それだけひとつ。
  231. 水田三喜男

    水田国務大臣 いま税制調査会にお願いしているのは、例のよく問題になる二百二十六万円の問題を中心にして、法人税のあり方というようなものについてもいま研究を願っておりまして、これらの答申が一応ことしの夏には出てくるんだと思いますが、こういうものともみなからむ問題でざいますので、税制調査会から基本的ないろいろの答申を得てから、この問題をあわせ次の段階に私は考えたいと思っております。考えるといっても、私が考えるんじゃなくて、実際は技術的にむずかしい問題をたくさん持っていますから、事務当局に考えてもらわなければならぬことでして、わきにおって、十月まで引き受けられないといまのところ言っておるのですが、なるたけ早い機会に解決するようにやりたいと思っております。
  232. 堀昌雄

    ○堀分科員 証券局長、いま前任の吉國君があんなことを言っている。あなた、それでいいのですか。証券免許制にして、そういった人たちに何かの方法で資金が市場に流入してくるようなことを何らやらないで、スペキュレーションを助長するような特定銘柄の入れかえのようなことだけを大幅に認めておることが、これまでの委員会でわれわれが言ってきたこととどういうかかわりがあるのかについて私はいま言っていないけれども、もう少し本質的な問題を考える必要があなたの立場としてあるんじゃないですか。一言言ってください。そのあとでもう一ぺん大臣に詰めて、この問題を終わりますから。証券局長の責任において……
  233. 広瀬駿二

    ○広瀬政府委員 免許制を境にしまして大いに前向きに考えなければならないことは、御指摘のとおりでございます。この問題もその一環として、われわれの立場としてはできるだけ推進していただきたいというふうに考えます。
  234. 堀昌雄

    ○堀分科員 ですから、大蔵大臣、実は技術的なことはたいしたことないのですよ。それをどこで判断して調整するかという政治判断が残っているだけなんですよ、大臣。技術的なことだったら、十年たってもできません、これは確かにいろいろ問題があるのですから。問題があるけれども、その問題と一あなた方は、国債五十万円非課税なんということは、簡単に認めているのですよ。国債五十万円非課税、これは重大な問題なんです。なぜかというならば、国債に五十万円非課税を認めたということは、国債の権威に傷をつけたということですよ。国債だけを特別扱いにして、五十万円まで非課税にしなければできないような国債日本政府が出しておるということを、世界に向かってやったわけですよ。日本国債というものはそれほど無力なものかというふうに、世界じゅうの人が評価していると思う。それはなぜやっているかといったら、要するにあなた方国に関係があるからだと思ってやったのでしょう。あるいは証券界に多少協力したつもりかもしれません。しかし、この筋といまの税制の問題と考えて、一体どちらが筋がどうなのかは、私は判断の問題にかかっているのではないかと思います。どうですか、大蔵大臣、いまの国債の五十万円別ワク非課税、百万円まで国債は非課税になるのですから、国債だけが百五十万円まで非課税の取り扱いを受ける。その他の社債あるいは政保債、あらゆる債券は——最も権威の高かるべき国債が一番メリットがあって、その他がずっと低いところに並んでいる。こんなものは世界じゅうにないです。地方債ならあるかもしれませんが、国債では日本だけでしょう。日本以外に国債でそんな取り扱いがあるかどうか、主税局長
  235. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 国債で一般的に非課税にした例は、各国でもなかなか見当たりません。個別に何年債を非課税にするというような制度は、アメリカでも、イギリスでも、フランスでもございます。日本でも戦前はそういう例がございました。しかし、国債一般を非課税にしたという例はございません。ただし、これは非課税にしたわけではなくて、特定の制度の中に入れた場合だけでございますから、日本の場合でも一般的非課税ではないわけでございます。
  236. 堀昌雄

    ○堀分科員 一般的非課税でないといっても、五十万円までは届け出たら非課税なんでしょう。何号国債に限ってということですか。
  237. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 届け出なければこれは非課税でない、そういう意味で特別な、ちょうど預金利子が全部非課税であるといわないのと同じような意味で非課税ではない、こういうことであります。
  238. 堀昌雄

    ○堀分科員 ここでへ理屈を言っている時間はない。大臣、いまの世界でないことをやっているわけでしょう。私は、アメリカでもイギリスでもやっていることをやりなさいと言っている。会社型投信の税制というのは、アメリカでもイギリスでもちゃんと調整ができている。日本は、国債についてはアメリカもイギリスもやったことのないことをやる。ここを比べて、あなたの判断を求めたいと思う。もう一ぺんだけ聞きます。十月までに政治的判断で処置をすると、ひとつ約束してください。
  239. 水田三喜男

    水田国務大臣 できるだけ努力します。
  240. 堀昌雄

    ○堀分科員 これ以上答えられないのでしょうから申しませんけれども大蔵大臣というのは、やはりそのくらいは責任を持ってやってもらいたいと思うのです。ちょっとその点不十分ですが、時間がありませんから、まあまあここらで……。  次の問題は金の問題ですが、きのう、きょうたいへんな情勢になってまいりました。私が心配をいたしますのは、金がどうなるかもさることながら、おそらく近い時期に金の売却は停止される可能性が必至である、こう見ておる。金の売却が停止になってきて、いろんな問題が起こってくるでしょう。変動為替レートの問題が出てきたり、いろいろなことが出てくると思いますが、その中で一番問題になりますのは、ユーロダラーがあるいはマルクに、スイスフランにどんどんかわっていくような情勢が出てきたら、いま日本に入っておるユーロダラーは引き揚げられて、そしてそういう方向へどんどんかわっていって、ユーロダラー市場というものが非常なさま変わりになってきたときに、いまの日本国際収支情勢から見て、一体どういうことになるだろうか、たいへんなことが起こるような気がしてしかたがない。大蔵大臣は、これについてどういうふうにお考えになっておりますか。
  241. 水田三喜男

    水田国務大臣 この問題は、私ども非常に関心を持っておるところでございます。ちょうどいま向こうへ行って帰ってきた局長ございますので、局長からその辺のいろんな御説明をいたします。
  242. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 金のスペキュレーションをめぐりまして、海外ではいろいろ動きがございます。その中におきまして、ユーロダラー市場においてどうなるかという御質問だと思いますが、これは金のスペキュレーションそのものがどうなるかわかりませんし、これに対して各国いろいろ協調して対処しております。ユーロダラー市場の動きも、それを反映して、あるときはタイトとなり、あるときはゆるむということだが、しかし、ユーロダラー市場そのものは、もう過去何年、十数年来発達してまいりました。ことに近年非常に発達しております。したがって、この市場が、そういう市場そのものがいろいろな情勢で一ぺんになくなってしまう、そういうことは全然考えられない。ただ、御指摘のようにユーロダラー市場が窮屈になり、そのために日本の入れている長期、短期の外債でいろいろ問題が出てくるということも予想されます。したがいまして、私どもとしては、こういう非常に変化の多い国際情勢のもとにおいては、国際収支の基調をできるだけ早く均衡の方向に持っていくということがぜひとも必要だ、さように考えます。
  243. 堀昌雄

    ○堀分科員 大臣、いまのお話のとおりで、私はずっと最近商工委員会にかわったものですから、あそこで企画庁長官や通産大臣と論議をしてきているんですけれども一つだけやはり予算委員会として考えておかなければならぬと思うのは、あなた、この前北山さんの質問に答えられて、予算の弾力的運用ということを答弁しておられますね。私は、予算の弾力的運用もさることながら、いま予算審議があるときに、いろいろな情勢から見て、初めから相当繰り延べなければならぬというような予算を、これはそのままでいいのかどうか、ちょっと問題があるような気がしてしかたがないのです。また別の機会に、きょうは時間がありませんから、その点はおいておきますが、ですから、いま国際金融局長が言いましたように、相当私は日本国際収支については重要な段階に差しかかっておるという判断をしておるんですが、大臣はそういう認識ですね、相当重要な段階だというふうに認識をしておられますか。
  244. 水田三喜男

    水田国務大臣 先ほども申しましたが、私は、何といっても日本がまず人をたよるのではなくて、自分自身の国内政策において国際収支改善する、均衡を回復する措置をとらなければならぬという考えのもとに、昨年から一連の財政金融政策をとっております。そこで、昨年は公共事業費の相当大幅の繰り延べをやりました。これがとうとう経済情勢から見てこれを解除するときがございませんので、来年度に持ち越す、こういう事情にございますので、昭和四十三年度予算の査定におきましては、公共事業費の伸び率というものはきわめて少ない。これを二つ寄せて、ズレてくる分を寄せてもなおかついままでよりも伸び率が非常に少ないというような予算を組んでおりますが、こういうことによって総需要の圧縮ということができるなら、必ず国際収支の回復はできる。もうすでに昨年からの措置の効果は出るころであるというふうに思っておりましたが、ようやく最近徴候らしいものが出てまいりました。金融の先行指標しかり、また輸出入の動向も、昨年の暮れまでの情勢とは相当違った情勢になってきましたので、私は、いまのままいけば、国際情勢にはいろいろな問題があるかもしれませんが、日本は自分自身の措置によって相当国際収支の均衡という点からはいいほうへいま向かっているというふうに思っております。
  245. 堀昌雄

    ○堀分科員 まあたいへん楽観的なんですが、私はもう少しきびしく見ておりますがね。  そこで、新聞で伝えるところでは、いよいよ暫定予算をお出しになるようですね。これはそうなるのですか。
  246. 水田三喜男

    水田国務大臣 私は、暫定予算じゃなくて、国会において、衆参両院で年度末までに予算の御審議をお願いしたい、いまお願いしているところでございまして、いまのところ、なるたけ暫定予算なしでお願いしたいという考えでおります。
  247. 堀昌雄

    ○堀分科員 願望と実際とありますね。確かにあなたからの立場で暫定予算をつくったほうがいいなんという答弁にはならぬことを知っています。しかし、それはあなたがっくりたくないという気持ちは、私もよくわかります。それはわかるけれども、現実にもう暫定予算なくしては、私は問題があろうと思う。そこで私申し上げたいのは、この際だから、暫定予算をつくるのなら一カ月くらい暫定予算をつくったらどうか。小刻みに十五日なんてしないで、一カ月暫定予算を組むと、少なくともざっと四月に繰り越してきている公共その他の支払いは、そこでぐっと締まりますね。文句なしに締まってしまう。四月一カ月暫定予算。そうすると、五月から問題が始まる。私は、この四月一ぱい様子を見ると、だいぶ情勢が、やや見通しが立ってくるのじゃないか。四月というのは、ことしの勝負でしょうね。だから、その点では、そういう財政の状況から見ても、財政的な処置を使う意味で、いきなり初めから予算を出し、つくっておいて、繰り延べだなんということは、これはもう不見識もはなはだしい。大体私は、そんな議論が国会予算審議中に行なわれること自体がまことにおかしな議論だと思っているのですが、どうですか、一カ月暫定予算という私の案は。かりに暫定予算をつくるとした場合、現在の景気情勢、国際の金のああいう情勢、すべての情勢からにらんで、私は検討に値する問題だと思うのですが、どうでしょう。
  248. 水田三喜男

    水田国務大臣 予算審議国会の問題でございますので、私どもはもうこちらはどんな夜中の審議にも応じますので、できるならやはり予算は三月三十一日まであげるように、国会でひとついろいろ御協力を願いたいといま思っておるところでございまして、そこで暫定予算のことはいま考えておりません。
  249. 堀昌雄

    ○堀分科員 それじゃひとつあなたも責任のある立場だから、現実の問題じゃ困るでしょうから、ひとつ理論的にいきましょう。いまこういう経済情勢の中で、仮定の問題として暫定予算を組むというようなことがあったときには、理論的にはどうですか。一カ月の暫定予算というのは、経済理論的にいうと……。要するに、いま依然として過熱の情勢なんです。私はこの間商工委員会でやりましたけれども、全く過熱の情勢で、民間設備投資は、日銀の調査でも一四%くらい。日本経済新聞の調査では、工事ベースで一七%くらいと、ともに依然として高いわけです。鉱工業生産も、いまのところ下がっておりませんよ。だから、そういうときに政府の財貨サービスの購入をしぼるという意味では、理論的にはどうですか、一カ月の暫定予算というものは検討に値すると思いますか。これは仮定の事実ですから、その仮定の範囲で答えていただけばけっこうです。
  250. 水田三喜男

    水田国務大臣 仮定でなくてもけっこうですが、私は先ほども申しましたが、四十二年度予算の編成について、いまいろいろあとを顧みて反省もするし、参考になる点も非常に多いと思っておりますが、やはり本年度予算はいろいろ問題があったと思います。そういう目から見ますと、昨年の暫定予算二カ月というものは、いまあなたがおっしゃられるような意味においては、非常に私は意味があったというふうにいま考えています。しかし、そう思いますから、今度は暫定予算などなくても、もう最初からいろいろの調整をしなくても済むような予算ということを考えて繰り越される予算も頭に入れた予算を組んでいますから、今年度はもう四月から新予算を出発したい。出発させても大体もう心配ないという気持ちでおりますので、今年度は昨年度と違って、この三月三十一日に予算の成立することを私は希望いたします。
  251. 小沢辰男

    ○小沢(辰)主査代理 時間ですから、もう一問に  して……。
  252. 堀昌雄

    ○堀分科員 実はあらためて私は、この問題は少し緻密な議論を別の場所でやりますからあれですけれども、昨年は確かにおっしゃるように効果がありましたが、効果があったように見えて実はやはりなかったわけですね。それはどこでなかったかというのは、私はこの間いただいた資料を分析したわけですけれども、去年の当初見積もりと実績見込みとの間の差というのは、寄与率はほとんど民間の設備投資なんですよ。実は本来いえば、民間の設備投資を押える以外に手がないのです。押えられないとするならば、やはり政府でやれることをやらないと、民間が悪いからとうとう手をあげたなんということは、これは政府としては言えませんよ。だから、民間を押えなければいかぬけれども、さっきあなたが言ったように、国際収支、外側のことはともかく、自分でやれることはやりましょう。自分でやれることはやりましょうということは、民間が行き過ぎているので、しかたがないから財政を締めるということよりしようがないじゃないか。これがあなたのさっきの論旨と同じじゃないかと思うのですが、その点どうですか。
  253. 水田三喜男

    水田国務大臣 その点はまさにそのとおりです。
  254. 堀昌雄

    ○堀分科員 それならさっきのお話の、私が申し上げたように一カ月の——暫定予算というものは昨年も効果があったとあなたはおっしゃった。私は、三カ月の暫定予算を組めとは言っていません。どうせ二週間くらいの暫定予算を組むくらいなら、一カ月の暫定予算を組むことは、きわめて似たような情勢だから、あなたの去年の反省がそういうことなら、ことしはそれを取り入そるくらいの幅があっていいんじゃないですか。
  255. 水田三喜男

    水田国務大臣 昨年の予算は、いま言ったように若干甘いところがございしたので、あの三カ月の暫定予算というものが、非常にいい意味に働いたということは事実でございます。本年度昭和四十三年度予算は、そういう予算でないと思っておりますので、そういう調整はなくていいというふうにいまでも思っております。
  256. 堀昌雄

    ○堀分科員 結局来年の予算委員会で、あなたが大蔵大臣であるかないかは別として、これはどうであったかよく出ますからそれはよくわかるけれども経済というのは、いは議論したのがあとでトレースできますからあれですけれども、そのときに、やはり彼の言うとおりにしておいたほうがよかったというようなことのないように、ひとつよろしくお願いしたいと思います。
  257. 小沢辰男

    ○小沢(辰)主査代理 八木一男君。
  258. 八木一男

    八木(一)分科員 大蔵大臣はじめ関係政府委員に、主として同和問題に関係をして、集中して御質問を申し上げたいと思います。  水田大蔵大臣には——大蔵大臣、こっち見て聞いてください。この前の土曜日の予算委員会の一般質問で、私は内閣総理大臣はじめ各閣僚、特に大蔵大臣を含んでの皆さま方に御質問申し上げましたときに、総理大臣は最も前向きな姿勢をお約束されたわけでございます。最初原則的でございますが、原則ということばを抜きにしまして、最初に、総理大臣の、同和対策審議会の答申を急速に完全に実施をする、そして、具体的な一つの大切な問題である同和対策特別措置法を本国会に成立するに十二分に間に合う時期において内容の十二分のものを提出をするというお約束について、総理大臣より以上に、国務大臣として大蔵大臣として御推進になる前向きの御決意を明確に伺っておきたいと思います。
  259. 水田三喜男

    水田国務大臣 ただいま同和問題の対策協議会でこの問題を審議しておる最中でございまして、私も、管轄ではございませんが、この間の答弁で聞きますと、極力この審議を急ぐというお話でございましたが、御承知のように、この前の答申によって、長期計画は立てられる、実態調査をやって、来年度を初年度とする十年間の長期計画を立てるんだという方針政府できまっており、同時にその長期計画ができない間でも、一応先を見通してその線で予算は並行的に計上するようにという方針でございましたので、その線に沿って、利のほうは今年度も相当予算措置はとっておるということでございますが、今後この協議会においでこまかい問題が決定されれば、その線に沿って予算の配分をするということは十分お約束いたしますが、そちらの促進のほうは私のほうの関係でございませんので、そちらはまた関係省と御相談していただきたいと思います。
  260. 八木一男

    八木(一)分科員 先ほど私が質問しました内容を全部御確認と、私は時間の関係上確認さしていただきたいと思います。もしそれが違うんでしたら、いまおっしゃっていただきます。それを御確認の上で申しますが、ほかのほうでやっているといいますけれども、やはりこれは閣議の問題になります。また、閣議で出てきたものを指導するだけではなしに、決定するだけではなしに、こういう政府の公約について早く実現することが内閣の責任であるというような立場で、国務大臣としての御責任があろうと思いますし、また同対協その他に大蔵省局長か次長か課長か知りませんが、そういうふうなものが出られる。そういう方々にもそういう意味で前向きな発言をさせ、狭い意味でこれをブレーキをかけるような発言を一切させないというような大蔵大臣としてのこの問題に対する御責任があろうと思う。そういう意味も含めて、総理大臣以上の熱意を持ってこの問題の推進に当たっていただくということについて、ひとつはっきりとお約束をいただきたいと思います。
  261. 水田三喜男

    水田国務大臣 その点のお約束はいたしますが、ただし大蔵省から協議会に出ました場合に、そのやり方について、財政的にはこういう方式はとれないんだとか、こういうことは技術的にむずかしいとか、いろいろな問題があると思いますので、この意見を述べてはいかぬというのでとめられては困りますが、要するに、この問題を進展させるために前向きの努力は、われわれの役所において十分するということはお約束いたします。
  262. 八木一男

    八木(一)分科員 大蔵大臣の、総括において非常に前向きな、熱意のある御答弁、その点敬意を表したいと思いますが、事実が伴っていない点が多分にあるわけです。今度の同和対策予算の問題でございますが、各省から同和対策について要求が出ましたのは七十七、八億円でありました。それに対して大蔵省は六十一億五千万円、十数億の差がある。そういう査定をされました。それで予算案に計上されておるわけであります。おそらく大蔵大臣は、こうおっしゃりたいと思います。ほかのものよりも伸び率はいいんだ、これは三一%ふえているんだから、予算全体の伸び率よりも多いんだというようなことをおっしゃりたいのだと思いますけれども、そういう問題ではないのでございます。と申しますのは、いままで四百年間にやっていなければならないことを放置された。特に明治維新後の民主主義になったはずのこの明治百年間において、完全に放置されて、差別と貧乏を存在させてきたというような問題を解決するときには、特別中の特別の配慮をもって予算的にもどんどん推進して、そういうものは出していかなければならない。各省の七十数億の予算というのは、これ自体がへっぴり腰要求予算でありまして、ほんとうに九牛の一毛に足らないと私は思うわけであります。といいますのは、この問題については、地域的に認識の差がございます。たとえば近畿地方の人や中国や四国の人は、非常に問題の必要を深く考えておられますが、東北や北海道の方は、非常にりっぱな政治家でありましても、有能な公務員の方でも、実感が来ない。したがって、実感が来ない立場でそういう問題について批判をし、あるいはブレーキをかけるというようなことが方々にございます。また、そういう熱心な方でありましたなら、たとえば青森出身の方でも、熱心に取り組んで、理解をして推進されますけれども、その方々がしばしば地位を転々となさって、次の方が理解されるには半年、一年かかるというようなことがある。そういう状態でございますから、各省の要求も、その人の理解の程度によって熱意が足らない場合があります。各省の中で要求を出しても、またその各省内で調整するときに、これはちょっと減らせというようなことでへっ込んでしまうというようなこともある。ですから、各省の予算自体が貧弱なものである。それを今度は大蔵省が査定されるわけであります。査定で、ほかのものよりも削る率が少ないのはわかっておりますが、どうか大蔵大臣には——非常に聡明な、りっぱな政治家でございます。十分におわかりでございますから、事この問題に関する限りは一般の財政査定方針ではなしに、一文も削ることは許されない、そうしなければならないのだという態度で臨んでいただきたいと思うわけであります。大蔵大臣が問題の本質を理解されてそういうふうに言われませんと、有能な主計局次長、主計官の方々も、そうは思いながらも、全般的には圧縮をしているときにこれだけ認められたらやっぱりほかで文句を食うことになろうということで、問題を理解しているここに御列席の方ですら、やっぱりそういうところで一〇〇%の態度をとれないというようなことが起こってくるわけであります。そういう点で、これはびた一文も値切るべきではないものである。各省の態度が少なければ、国の政治方針できまったことでいままでなかったものを急速にやるのだから、伸び率などは三〇%増しではなくて、たとえば問題によれば二倍になり、三倍になり、五倍になり、十倍になり、あるいは百倍になってもこれは必要なものである。率というものは、伸び率というような制約をしないで、各省の要求については少なくとも一文も値切らぬ方針でやるのだというふうに、ぜひ御指導を願いたいと思うわけであります。そうでないと、この問題の本質を理解された立場とはいえないと思います。内閣総理大臣のお約束をされた方針とは、たがうことになろうと思います。大蔵省財政全体のワクに入れることについて非常に御苦労になっておることは、私も知らないではございませんし、御苦労はほんとうにたいへんなことだと思いますが、その一般的な御苦労のベースでこの問題をはかられないように——大蔵省というのは、財政要求を削減するだけが能ではない。必要なものでほかの省がなまけておったならば、なぜもっと要求を出さないのか、政府方針とはたがうではないか、そういう点で財政調整上の各省のなまけたところがあれば、それについて大蔵省としての意見を十二分に言われるような責任も、私は少なくともあろうと思います。値切るだけが能ではありません。必要なものは出すという態度でやっておられると思うので、その精神を貫かれて、今後同和対策予算の各省の要求について、必要だ、びた一文も削れない、そしてまた足りないところがあれば、大蔵省みずから指導して、もっと要求を出したらどうだというふうに推進をしていただく、ひとつそのようにお願いしたいと思うわけでございますが、大蔵大臣の熱意ある前向きの御答弁をぜひ伺いたいと思います。
  263. 水田三喜男

    水田国務大臣 とにかく内閣に対策協議会までつくってこの特別な措置審議するということでございますから、きめられたことに対してはきまったとおりのことが十分実行できるように、私どもは協力いたします。ただ、いま一円も値切らないようにとかなんとかいうお話でございましたが、問題はこの措置のきまり方でございますが、措置をきめる段階においては、私どもにはいろいろ考えがございます。たとえば、よそのほうから見ましたら影響がないように、この仕事には国がこれだけの補助をしろというような補助の問題の要求がいろいろ出てくると思います。そういう場合に、これはその目的を果たすには、特別交付税で対処するというようなことをやれば、そのほうがもっとうまくいくのじゃないかとかいうようなやり方についてのいろんな問題は出ようと思いますが、こういうものを十分勘案して措置がきまったら、私のほうは十分の協力をいたします。
  264. 八木一男

    八木(一)分科員 大蔵大臣の前向きな御答弁で、その点非常にうれしく思います。   〔小沢(辰)主査代理退席、主査着席〕 ぜひそれで推進をしていただきたいと思います。  やや具体的な問題に入ってまいりたいと思います。この前もほかの大臣に対する質問中に申し上げましたし、また大蔵大臣に申し上げました質問中にも申し上げましたけれども、繰り返すようで恐縮でございますが、この問題自体の推進には、非常に隘路があるわけでございます。一般的に地方が事業をいたしますときに、政府のほうでは御努力になっているとは思いますが、たとえば実質単価という問題と予算単価の食い違いのために地方に超過負担が起こる、あるいはもっと補助率を高めていただきたいのに、それが高まっていかないから、地方自治体の超過負担が非常に重くなる。それからまた補助対象を、建物をつくるときに土地に対するものの補助まで対象は拡大されていないために、建物はつくれても土地がないから問題が進まないということが方々にございます。ほんとうにものを進めるときに、地方の超過負担、あるいは地方の重い負担のためにものが進まないということは、国政上非常に残念なことでございます。そのことについて、大蔵省大蔵省として御努力になっておられるべきであると思うし、御努力になっておられると思いますが、しかし、問題が解決していないことは明らかな事実であります。これは一般的な問題でございますが、この中で特に同和問題については、同和地区の集中しておる県は集中しておりますし、ないところはないというところがあるわけです。また、市町村も集中しておるところは猛烈に集中して、そうでないところはちょっとしかない。たとえば奈良県の御所市、和歌山県の御坊市であれば、大体人口の三分の一くらいは同和地区の人々というふうに集中的になっておる。そういうような例がございますから、そういうときに、この問題の解決のために諸事業政府政策に従って各市町村がやるというときに、その実質単価と予算単価の違い、補助率の低さ、あるいは補助裏がありますね、あるいはまた補助対象が完全でないということによっての地方財政負担というものが、非常に重荷になるわけでございます。重荷になるために、やらなければならない仕事をずらす、少なくするということが起こります。また非常に熱心に、それにある程度一生懸命に取っ組みますと、その地方財政がいたみますから、その市町村のほかの事業がおくらされる、縮小されるという結果になって、結局一般の住民と同和地区の住民との意見の対立が起こり、それが差別の再生産になるおそれがございます。したがって、こういう同和問題については、少なくとも特に超過負担なり地方負担というものなしに遂行していただくようにしていただかなければ、政府方針どおりにいかないということでございます。その点で、補助率をできるだけ高く上げる、あるいは実質単価にしていただく、あるいは補助対象を全部にする、それからまた同和対策特別交付税というものが必要だと思います。それについては、大蔵大臣はいろいろな方法があるとおっしゃいました。これは財政や金融について権威者がそろっておられるから、一番いい方法であれば、私はこの方法でなければいかぬとは申しませんが、少なくとも一生懸命取っ組んで、その四つとも必要だと私は思っておるわけでございます。そういう点で、ぜひ閣議においても、また協議会、審議会等でも、大蔵省の代表の方々も、この問題の本質、大蔵省がこれを推進するのだということで、地方負担がなしに事業がどんどん国の目的に従っていくように、そのように御努力、御推進を願いたいと思うわけです。その点について、ぜひ大蔵大臣の前向きの御答弁を伺いたい。
  265. 水田三喜男

    水田国務大臣 超過負担の解消につきましては、御承知のように、今回大蔵省、自治省関係官庁で実態調査をいたしまして、大体いわゆる超過負担問題の実態というものを把握いたしましたので、今後補助単価の決定のしかたというようなものについても、十分その実情を勘案して、そうして物価あるいは人件費の値上がりというようなものを考慮してきめるという方針をとっておりますので、この超過負担はできるだけさせないという方向について、十分気をつけたいと思っております。
  266. 八木一男

    八木(一)分科員 前向きな御答弁でけっこうでございます。  それからそのような財政補助の問題もございますが、この問題については、たとえば自治省との関係は、起債の問題とかあるいはその利子補給というような問題も関連をいたしてまいります。そういう問題についても、いま言ったと同じような趣旨でひとつ御推進を願いたいと思いますし、それからその中の特に中小零細企業の問題やあるいは小さな農業の問題そういう問題で融資という問題が具体的に非常に大切な問題になろうかと思います。この問題については、この前予算委員会の一般質問におきまして、大蔵大臣と最初はいささか見解を異にいたしました。また、通産大臣とも見解を異にいたしました。先輩に対して大きな声を立てて失礼なことになりましたけれども、最終的には大蔵大臣も通産大臣も理解を深められまして、同和対策金融公庫ということも含めて、そういうことについてひとつ研究し、前進していこうという御答弁をいただいたことを非常によかったと思うわけです。金融公庫については、環衛金融公庫の例もありますように、いろいろな意見が出ているようであります。ところが、この前にそれが出たからといって、その問題と同じようにほかの問題を処理するというようなことは、同じような考え方で今後やられるというようなことは、りっぱな政治家の水田さんはとられないと思います。必要なものは必要なもので推進する、必要でないものはまた考えを別にするということになろうと思う。臨時行政調査会の報告にありましたように、人権の尊重、あるいは後進地帯の開発、あるいはまた低所得者層の生活の向上という問題については、中央、地方の機関あるいは公庫、公団等を通じてそのような機関を充実させなければならないということが、臨調の答申に明らかに出ているわけであります。ところが、残念ながら、政治家の中にもあるいはまた公務員の方々中にのも、あの答申をはすっかいに見て、何でも機構を減らせばいいように思っている方もあるようであります。そういう無理解があるようでございますけれども、特にこういうものについては拡大をしなければならないという精神で臨調が報告をいたしておりますことを頭に十二分に入れられまして——大蔵大臣は十二分に把握しておられますが、大蔵省の全員の方々がそれを頭に入れていかだくように御指導いただいて、特にいろいろな事情でおくれにおくれたものを、特別にスタートラインを取り返すための特別中の特別の措置が必要である、これをぜひ推進をしていただきたいと思うわけです。大蔵大臣は、一般の金融機関でそのワクをきめて、平等に融資をすればいいということをおっしゃいました。それは表面的な一つのりっぱな御意見であります。もちろん一般の金融機関で、部落産業についてもどんどん融資をしていただかなければなりません。しかし、歴史的な沿革をいま重ねて申しませんけれども、九十六年間、約百年間ずっとそういう不利な状態に置かれたものを取り返すためには、特別中の特別な措置が必要である。したがって、一般の金融機関にプラスしてそういうものが必要であるということが同対審の答申でもうたわれておるわけでございまして、私もそういう意味で申し上げておることをぜひ理解していただきまして、こういう金融機関についても問題を深めていただく御努力を願いたいと思うわけでございます。この点についての大蔵大臣のお答えをいただきたいと思います。
  267. 水田三喜男

    水田国務大臣 この前予算委員会でお答えいたしましたように、金融についても必要な措置を十分にとるということで、私どもも御協力いたしたいと思います。
  268. 八木一男

    八木(一)分科員 そういう同和対策金融公庫のことも含めて、前向きで御検討願っていくというふうに私は理解をさしていただきたいと思います。この前の一般質問においても、そのように私は理解をしておりました。水田大蔵大臣の、りっぱな政治家の御発言にゆるぎはないと私は考えております。それを含めて御検討願いたいと考えておるわけでございます。  それから今度は、国有財産のことについて伺いたいと思います。実は、同和地区は非常に地域が狭小でございまして、家も小っちゃくごちゃごちゃ建っているところが多うございます。そこへ共同のふろをつくろうとしても土地がないという問題がございます。また、共同の集会所をつくろうとしても土地がない。また、児童の遊園地をつくろうとしても土地がないという問題がありますので、たとえばそのまわりの池というようなものを埋め立てて土地をつくる、あるいはそのまわりの山林を削って土地をつくるというような問題があります。そういうときに、国有地について一番いい方法で——私は無償でと申し上げたいのですが、法律的にどういうふうになるかしりませんが、無償あるいは無償と同じような意味で、ほんとうに土地的に狭められた、圧縮されたところに住んでおられる方々のために、教育上や健康上に必要なものを建てるために国有財産をそちらに活用できるように、ひとつ御配慮を願いたいと思うわけですが、それについて大蔵大臣の御意見を伺いたい。
  269. 水田三喜男

    水田国務大臣 たとえば学校施設とか、図書館とか、公民館とか、公営住宅等の公共施設、こういうものを同和対策の一環として整備するというときには、国有地を利用することは十分考えられることであろうと思います。いま実態調査をやっておりますので、この調査によって、必要な場合が出てまいりましたら、国有地の利用については私ども賛成でございます。
  270. 八木一男

    八木(一)分科員 前向きの御答弁、ほんとうにありがたく思います。実は、主計局の次長さんもおられますが、私と同郷で、この問題についてはよく御研究でございますし、また先ほど御退席になられました鳩山さんもよく御存じでございますが、大蔵省はいろいろなことをやられるところでございますから、問題を理解しておられる方々と、残念ながらそうでない方々とあるわけでございます。これは各省全般にわたりますので、たとえば文部省にも、労働省にも、厚生省にも、農林省にも、通産省にも、自治省にも、建設省にも、法務省にも、みなにわたりますので、どうか大臣の指導のもとに、主計局の全員の方、あるいは理財局の方、あるいはすべての各部局の方がこの問題を十分に理解されて、内閣と国会の約束、国会を通じての国民との約束、そして総理大臣の熱意をもって当たられようと決心したことが、財政当局の非常な協力のもとに、その約束された政治が進むように、大蔵省全員の方々がこの問題を理解されて推進していただくような態勢を大蔵大臣はぜひおとりいただきたいと思いますが、この点についての御所見を伺いたい。
  271. 水田三喜男

    水田国務大臣 承知いたしました。
  272. 八木一男

    八木(一)分科員 それでは、まだまだ申し上げたいこともございますし、それ以外の申し上げたいこともございますが、大蔵大臣から非常に前向きの御答弁をいただきまして、大蔵大臣の御熱意に私は敬意を表し、感謝を申し上げたいと思います。  政治は各省に分かれておりますが、実際に政治をするのは、財政金融が関係がありまして、いいことか悪いことかわかりませんけれども大蔵省政策に対する取り組みが、半分くらい政治を前進させるか停滞させるかということになると思いますので、どうか大蔵大臣をはじめ大蔵省の方々が、この重大な問題——ことしは明治百年でございますけれども、百年間差別と貧乏のために三百万人の人々が人権を侵害されて、非常な苦しい生活をし、非常な悲運に泣いてきた。これを百年目のことし、同和対策特別措置法あるいは十カ年計画というものを確定して、そうしてやらなければ、百年間民主主義をじゅうりんしてきたそのことがなくならないのであります。こういうことを解決するために非常な影響力を持っておられる大蔵省が、いま大臣の御決意のように前向きにぐんぐんと推進していただくことを心から要望申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
  273. 野原正勝

  274. 田中昭二

    田中(昭)分科員 私は、先ほど同僚議員の広沢議員からも申されましたし、大蔵大臣からも大事な、貴重な御返答をいただいたようでございますが、まずその面から入らせていただきたいと思います。  現在、財政硬直化ともいわれまして、たいへんなときになっておりますが、先ほど広沢議員が、今度の税制改正につながるたばこの値上げ、こういうものについて、たばこの値上げに財源を求めなくても、ほかに財源があるのではないか、そのようなことを中心にお聞きいたしましたところが、大臣のほうから、それはたばこのほかにも財源があるのだけれども、いろいろな事情でたばこに財源を求めているのだ、このような御返答があったということを聞いておりますが、その私の理解に間違いないものかどうか、大臣からもう一回伺せわていただきたい、こう思います。
  275. 水田三喜男

    水田国務大臣 もし財源を必要とするなら、ほかに財源はないかという御質問でございましたので、私は、必要な財源はさがせばあると思っております。しかし、では何かと申しますと、現存の、いまある税制を強化するか、あるいは新しい税を起こすか、いずれにしてもこれははっきり財源のための措置をとる以上は、増税的なものとなる。そうなりますというと、そういう税制をとるためには、またこれは別個に、いまの機構としましては税制調査会の議を経てやるということになっておりますので、そこに諮問もしなければならぬということになりましょうが、幸いに税制調査会の答申は、ほっておけばそれだけで実際の増税になるというのが所得税であって、国民の所得はいまどんどん伸びている。したがって、この累進構造を持っておる以上は、そのままほっておいてもみんな増税になるんだから、この調整はすべきだ。同時に一方、税の中には国民所得の伸びに応じて税負担が相対的に下がっていくものがある。酒、たばこがまずその代表的なものですが、こういうものについての調整をすることがいいんだ、この両方の調整をやることによってやはり間接税、直接税の比率というものをいま程度に保つことができるんだというのが税制調査会の考え方でございまして、私どももその考え方によって今回酒とたばこについて改定を考えたということをお話ししたのでございまして、ほかにあるんだが、そっちよりも簡単にこっちの道を選んだ、そういうような意味じゃございません。
  276. 田中昭二

    田中(昭)分科員 時間もあんまりございませんから、簡単にその問題はお答え願いたいと思います。  もう一回お尋ねしておきますが、私がいま申し上げましたことは、現在のたばこの値上げの財源を現在の税収の中において他に求めることができる、このように私は理解したわけなんです。いろんな事情があることは十分わかっておりますが、その点ひとつもう一回、簡単でけっこうでございますから、お願いしたいと思います。
  277. 水田三喜男

    水田国務大臣 法人税を増税するとかなんとか財源をほかに求める方法はないかといったら、これはないとは言えないということを私は申しただけでございます。
  278. 田中昭二

    田中(昭)分科員 それでは次に移ります。  私、現在の税収というものを見てみますと、その中にはいま大臣がおっしゃったようなものにかかわる、いわゆる現在の税法の中において当初見積もった税収よりも年度末におきましてはふえる部分の税がある。このことは、大臣も十分御承知のことと思います。そこで、いわゆる相続税というのがございますが、この相続税の四十二年度の税収というものは、どのくらいになるものか。また現在一月末——二月末がわかっておればなおけっこうでございますが、二月末の相続税の収入額調べはどのようになるものか、それを主税局のほうからでけっこうですから、お答え願いたいと思います。
  279. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 四十二年度の相続税につきましての予算額は、六百三十七億円でございます。一月末の相続税の税収は、四百六十五億円、予算に対する収入歩合は七三%、前年度決算に対する実績が七二・七%でございますから、ほぼ同じような進捗状況を示しております。大体予算どおりという見込みでございます。
  280. 田中昭二

    田中(昭)分科員 そこでもう時間がございませんから、私相続税の税収についてはもう少しこまかく検討してみたいと思いますが、これは後日主税局のほうに資料として提出をお願いしたい。前々からお願いしておりますが、まだまだ出ておりませんから、よろしくお願いいたします。  そこで、いま四十二年度の相続税の税収をお聞きしましたが、大臣御存じと思いますが、ひとつ聞いていただきたい。この相続税は、大体毎年予算額よりも多額な税収がもたらされております。それはそれとしまして、かりに過去の実績を見てみますと、四十一年は補正で五百九十一億見たものが、決算では五百五十八億、当初予算に比べますと、約百三十億くらいの増収になっております。そうしましてこの四十二年のいま六百三十六億の税収の見積もりも、この相続税の歳入に占める割合を見てみますと、急激な増加をしているのですね。いわゆる四十年には四百四十億くらいのものが、四十三年度には八百三十二億、倍近い税収が見込まれておる。これは私は、ただ国民所得がふえたからというようなものでは、相続税はないんじゃないかと思うのです。ちなみに申し上げますと、四十年は四百四十億、四十一年は五百五十八億、四十二年は六百三十六億、このようにほかの税目よりも急激な増加を来たしておると思うわけなんです。そうしまして、いまの歳入全体の中に占める割合も、四十年には一・三%の割合を占めておったものが、四十一年は一・六%、四十二年は全体がふくれておりますから一・五%、四十三年は一・八%という、歳入に占める割合も高くなっております。でありますから、私はこういう相続税の収入においては、いま大臣がおっしゃったような、ただ財源をほかに求めるとした場合に税法を改正しなければその財源がないということは当たらないのじゃないか、こう思うのですが、それは論議がいろいろあると思いますから、いまの相続税の税収から見た場合に、大臣がどのようにお考えになるのか、もう一回お尋ねしたいと思います。
  281. 水田三喜男

    水田国務大臣 相続税の税収が毎年ふえる、これはもう本年度の見積もりの中に十分もう入れてございまして、それ以上に財政需要、特に義務的経費中心にして当然増というもののふえ方が、非常に大きいのでございますから、これに対処するために、あらゆる税の伸びるであろうというものは目いっぱいみんな見橋もって、九千五百億円というものを出しておるのでございますから、もう相続税の伸びも、私ども見積もり済みでございます。
  282. 田中昭二

    田中(昭)分科員 その見積もり済みのやつが、やりようによっては変わるのですね、変わったという実績があるのですから。そこはまあきょうは省略いたしまして、いま大臣がおっしゃるように、四十三年度は総合予算でたいへんな歳入の見積もりになっておると思います。大臣も本会議でもまた委員会でもいろいろお述べになっておりますが、四十二年度の補正後の歳入が確保できるだろうか、私、こういうことを心配もするわけです。いままでは、大臣御存じのとおり、隠し財源があるのじゃないか、そのようなことも申し上げてまいりましたが、昨年の暮れから本年にかけての景気の行き過ぎによるところの不況といいますか、この波を乗り切るためには、たいへんな状態になってきておる。いわゆる四十二年度歳入が確保できないとするならば、私はこれはたいへんなことだと思います。また、その点については、大臣も四十二年度の税収においてもいままでのようなことは期待できない、目一ぱい見ているんだというふうな御発言もあっておるようでございますが、その点は、現在までの税収を見て大臣がどのようにお考えになっておるのか、お尋ねしたい。
  283. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 数字の問題でございますので、私からお答えいたします。  四十二年度予算額が、補正後で二千九百一億ふえたわけでございます。補正後の予算に対しまして、一月末の現在では、四兆九百五十二億に対しまして、三兆二千七百八十一億入っております。予算達成率としては八〇%、前年の決算の実績が八一%でございますが、去年の税制改正のうち、印紙その他に関しまする分が後半にふえてまいります。そういう関係もございますし、ことしの所得税の確定申告が、先ほどお話しになりました好調を反映してかなりふえると見込まれますので、何とかこの補正後の予算まではほぼ近い額までいくだろう、歳入欠陥を大きく起こすようなことはないだろうと思っておりますが、まだ未確定要素が三月十五日過ぎませんとわかりませんので、その点若干の留保を残しておきたいと思います。
  284. 田中昭二

    田中(昭)分科員 そのことにつきまして、大臣からもう一言、大体の感じでけっこうでございますがお聞きしたいわけですが、その前に主税局長から数字の大体のお話がございましたが、私、もう一ぺん確認する意味において申し上げたいと思いますが、いま御説明のあったとおりに、一月末で歳入の八〇%の収入があっておる。昨年は八一%、一%の減でございます。一%といいましても、金額に直せば四百億近いのじゃないだしょうか。その四百億、いわゆる昨年よりも歩合から申し上げた場合収入が減っておる。いまその収入が減った、割合が減った時期を見てみますと、いままでは所得税法人税も順調な伸びをしておったのが、期せずして昨年の九月、十月ごろからがたっと落ちて、逆に前年よりも下回った収入歩合になっている、こういうことから考えますと、いまの主税局長の申告所得税が三月十五日をもって好景気だからふえるだろう、こういう御答弁がございましたが、これは私は疑問じゃないかと思うのです。かりに申告所得税がふえましても、申告所得税の全体の収入に占める割合は、たいした金額ではありませんですから、このような状態から見てみますと、私は歳入面のその時期と昨年と比較しまして、四十二年度は、順調にきたときとそれが逆に落ち込んだとき、このときからの上下の差を見てみますと、私はこれはただごとでない、こう思うのです。ですから、大臣も来年度予算を組むときには、これはたいへんだというようなお話があった、こう私は理解しておったのです。そういう点について、私の理解が間違いがないか。また、大臣が現在の税収から見られまして、四十二年度歳入についてどのようにお考えになっているか、お聞きしておきたい、こう思うわけです。
  285. 水田三喜男

    水田国務大臣 引き締めが進行しているときでございますので、私もあなたと同じような心配を、来年度もしております。
  286. 田中昭二

    田中(昭)分科員 もう時間もございませんから、次に移らしていただきますが、次は、所得税の実行面におきます所得調査の面でございますが、いよいよ世の中も引き締めによっていろいろな問題も起きておりますし、倒産もだんだんふえておるというような状況のもとで、聞きますところ、私の出身の福岡県でございますが、福岡国税局管内の所得調査について、いろいろ私のところに苦情がきております。といいますのは、ここで大臣にもそのようなことがあるということを認識していただいて、今後税務行政の指導監督をしていただきたい、こう思いますから申し上げるわけでございますが、普通零細企業みたいな法人、並びに申告所得税、いわゆる事業所得者に対する調査が、結論から申しまして、強行調査が行なわれておる。といいますのは、普通の零細所得法人とか事業者に対しは、帳面があれば、大体税理士が入っておれば、事前通知を行なって、また行なわなくても、調査官が一人で行きまして、相手の記帳に従って調査を始める。これが私は普通の姿じゃないかと思う。そうでしょう、大臣。ところが、いま行なわれている調査は、そうじゃないのです。実は私も経験がありますから申し上げるわけでございますが、臨戸しまして——臨戸するのに三人くらいで、第一線の職員が臨戸しまして、そして相手は記帳があるわけですよ、その記帳のあるところに対し、直ちにその事務所の引き出しをあげたり——もちろん本人立ち会いのもとですが、いわゆる税務第一線でいうのはガサを入れるといいますが、そのようなことが行なわれております。これに対しては税理士のほうからも、最近はちょっとひど過ぎる、そういう話も聞いておりますし、私は、そのような調査のやり方は、いたずらに納税者に恐怖の感を与える。世間でも、最近の本なんかにも、税務職員は雲の上の人だ、昔は天皇が雲の上の人だったけれども、最近はもう税務署が雲の上の人だ、そのように権力の偉大さに一般の人はおびえておるといいますか、そういうことが感じられる。そういうことから考えまして、いま九州で、特に福岡国税局管内で行なわれておる所得の調査は、私は通常の状態でないと思う。そのようなことについて、国税長官からでもけっこうでございますから、実情把握がなされておるかどうか、お答えを願いたいと思います。
  287. 泉美之松

    ○泉政府委員 私どもといたしましては、税務行政を適正、公平に行なうということを念頭としておるわけでございます。そこで、いまお話しのように、法人の場合あるいは個人の場合におきましても、調査対象が全部の法人あるいは全部の個人について調査するわけにまいりませんので、特に調査対象を選定いたしまして、それについて調査することにいたしております。その調査にあたりましては、できるだけ相手方の記帳あるいは相手方の主張ということをよく聞いて、それを参考にして当方の考え方を述べ、そして納税者が納得するような姿でやるべきだというような指導をいたしておるわけであります。ただ、場合によりまして、いまお話しの、俗にガサをかけると申しますが、これは現況調査のことでございまして、現況の調査と帳簿の記帳とが合致しておるか、現金のあり高が合っておるかどうか、こういうことを調査しておるわけでございます。場合によって、その現況調査のときに行き過ぎがあったというような話も私聞いております。したがって、そういう調査の際に、たとえば病人がおったとかというようなときには、十分注意して調査しなければいけないんで、それによって納税者にかえって恐怖感を与えるというようなことのないように、十分留意するようにということを申しておるのでございますが、そうしたことがあるのを聞いて、そういった点を是正していかなければならないというふうに感じておるのでございます。
  288. 田中昭二

    田中(昭)分科員 結論から申し上げまして、長官もおわかりになっておるようですけれども、私が質問していることに対しましての回答としてはちょっと不足だと思うのです。なぜかと申すならば、いま長官のお話では現況調査とおっしゃったわけです。しかし、私が聞いているのは全部事後調査です。そういうことと、それから、長官のお話を聞いておりますと、なるほどそういう達しも指導もなさっておると思うのですけれども、それが実際の第一線のところには逆なんですね。その指導したことが逆にいっているのですよ。そういうことをあげるならばたくさんございます。それは組織の上においていたしかたない面もあるかとも思いますけれども、いまおっしゃったようなことが、第一線にそのまま反映するように今後していただきたい。また、これに対しては、大臣からもどういうようなことでいくのがほんとうだということもひとつお聞きしておきたいと思うのです。  それで、この前の大蔵委員会で私、長官にも、また大臣からもお答えをいただきました。あのえびの地震の救済、いわゆる税制面における救済も私はお願いいたしました。長官からも温情あるあたたかい措置をするんだ、そのようにお聞きしたわけなんですけれども、それさえも、私現地の状況を調べてみますと、何もなされていないのです。あの災害が起こったときにいろいろされたことは私も知っております。ところが、委員会で私お願いし、また長官からも、大臣からも、そのようなあたたかい処置をするんだと承っておりましたが、その後そのようなことは何一つなされていないような現状なんです。きょうは時間がございませんから、そういうことを含めまして長官からなり大臣からなりお答え願いたいと思います。
  289. 水田三喜男

    水田国務大臣 先般申しましたように、災害についての税の措置は、いままできわめて迅速にやってきておるものでございまして、まだ何らの措置をとっていないということはちょっと考えられません。
  290. 泉美之松

    ○泉政府委員 ちょっと補足して申し上げます。  えびの地震につきましては、先般田中委員から御質問がございまして、私、現地の国税局及び税務署のほうにどういうふうな措置をとっているか確かめたのでございます。地震の翌日から現地に参りまして、災害を受けた人に、お説のように災害減免法による所得税の軽減、免除あるいは所得税の雑損控除あるいは純損失の控除、こういったような事柄につきまして説明いたしますと同時に、御承知のとおり国税庁告示をもちまして、地震を受けました地域の納税者につきましては、二カ月間申告及び納税を延期いたしておるのでございます。現在ちょうど所得税の申告期限ではございますけれども、その地域では納税を申告するのが延びておりますし、また、納税も延びておるわけでございます。現在そこで納税なり申告の手続が行なわれておるわけではございません。ただ、早く災害の程度を確認いたしまして、資産に受けた損害が二分の一以上であるかどうか、それによって御承知のとおり災害減免法による所得税の軽減なり、あるいは給与所得につきまして源泉徴収の猶予なり、それぞれの措置をとることになりますが、目下はそういった災害の程度の調査をいたしておるわけでございます。したがって、それらの調査が終わったあと、その後に申請を出していただきまして、それに基づいて所得税の軽減、免除あるいは徴収の猶予、こういったような措置をとることになるわけでございます。
  291. 田中昭二

    田中(昭)分科員 時間もございませんからあれなんですが、大臣はそのように処置をとったとおっしゃるのです。ですから私は、この前の大蔵委員会でも申し上げたはずなんです。あたたかい救済の処置というのは方法があるわけですね。いわゆる所得税法で、救済をきめた法律があるのです。それをやられるのは当然なんです。法というのは、運用する面において、納税者がほんとうに喜ぶようなことができるのです。税金を取るときだけ現地に行って取るというふうな方法をとるのだから、今度は災害のあった場合には、現地に行って、そのような救済措置があるということをPRもし、また、その適用を受けることを進んで国税の機関が行なう。そういうことがあたたかいことではないでしょうかと、私は具体的に申し上げたわけなんですよ。それをあくまでも、ただ現地の国税局、税務署で、そういう法に規定するものをやった、これだけでは、こういう国会の場で申し上げることが、あまりにも現地に反映しないと思うのですよ。いま長官がおっしゃったように、現地で減免の処置をやられたことは、私も初めから認めておるのです。そういうことをされたことは間違いないのです。しかし、それじゃあたたかい手を差し伸べたことにはならないし——ならないというと語弊がありますが、それを具体的に現地においてどうするかということをお尋ねし、また御返答いただいたならば、その後にでもこういう方法でやりなさいとか、こういう指示ぐらいはなされていいと私は思うのですよ。それじゃ、当初やったこと以外には、何も実際に通達も出していないじゃないですか。それを言えばまだ議論するところも出てきますが、時間もありませんから、大臣、もう一回お考えを聞いておきたいのです。
  292. 水田三喜男

    水田国務大臣 私の聞いたことでは、今度は全戸にビラを配って、こういうことがやれるのだからというようなことを周知させたというふうに聞いておりますが、この上さらにまた私どもは一段手を尽くしたいと思います。
  293. 田中昭二

    田中(昭)分科員 全戸にビラを配ったと言いますけれども、配られてないですよ。私のお尋ねするのがちょっとへたなお尋ねのしかたかもしれませんけれども、同じ配るといいましても——それじゃ申し上げますと、現地の税務署はどういうことをやったかといいますと、税務署長も課長も町長に会った商工組合の幹部に会ってお願いした、こういう程度なんですよ。ほんとうに現地に配るあたたかい手というのは、現地の一戸一戸に、こういう方法がありますよと税務職員の一人ぐらいを、えびの町というのは小さい町ですから、一人が一日で回ってもできるはずなんですよ。それは、中にはあのいなかから東京、関西に出かせぎに来て、そうしてその被害のあまりにも甚大な姿にほんとうに号泣し、悲惨な目にあっているのですよ。そういう人は、何も全戸に配られてくるどころか、どうしようもない状態でおるのですよ。  もう時間がちょっと超過しておりますから、その次に一つだけお願いしておきたいのですが、実は福岡県の飯塚というところでございますが、これは産炭地で、ものすごくいま困窮者も多くなっております。その困窮者のなま血を吸うような貸し金業者がばっこしておる。そういうことがいろいろな本にも紹介されておりますが、そういうものに対しての課説の充実といいますか、そういうことがなされておらないという現地からの連紹もあります。また、これと逆な、いわゆる老夫婦で細々ながらサラリーマン金融をやっておるところに対しては、それこそ強行調査で、老夫婦がその強行調査によって命を縮め、死んだという実例もある。そういう反面に、そのような貸し金によってばく大なる所得を得ておるような人には課税が行き届いていない。こういうことがございますので、どうかそういうものに対する今後の、長官並びに大臣のお考えを聞いて終わりたいと思います。
  294. 泉美之松

    ○泉政府委員 お話しのような事実につきまして、私まだ報告を受けておりませんけれども、もしそういうようなことがあるとすればはなはだ遺憾なことでございますので、さっそく、相当の貸し金をいたしまして多額にもうけておる人に対しは課税の充実をはかりますし、老夫婦の場合のようにお気の毒な事情である人には、適正な方法を講じていきたい、このように考えております。
  295. 水田三喜男

    水田国務大臣 そういう点の指導をもっと十分にするように、私も承知いたしました。
  296. 野原正勝

    野原主査 西風勲君
  297. 西風勲

    西風分科員 いろいろ聞きたいことがあったのですけれども、率直に事実についてお尋ねしますので、あなた方のほうも率直なお答えをいただいいてできるだけ短い時間に終わるように、まず要望しておきたいと思います。  まず第一にお伺いしたいのは、日本の商社とか、あるいはもっと端的に言いまして、百貨店のようなものが海外に支店を設けるときには、その開設についてばく大な外貨を必要とするわけでね。したがって、これらの百貨店の海外支店がつくられる場合には、大蔵省や通産省はどういう基準、どういう方法に基づいて認可を与えておるのか、お伺いしたい。
  298. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 日本の会社の海外進出につきましては、進出することが国民経済国際収支にどういうふうに寄与するかというようなことを勘案しまして、進出を個々に判断してきめておる次第でございます。個々のケースにつきまして、当該産業を所掌する通産省と相談し、私どもよく検討して許可いたしております。  百貨店業務につきましても、そういう業種の進出につきましては、それが、先ほど申し上げましたように、国際収支にどのように寄与するか、具体的に申しますれば、日本の商品輸出にどの程度寄与するかというようなことを勘案してケース・バイ・ケースで判断してきめておる次第でございます。
  299. 西風勲

    西風分科員 国際収支の問題はもちろん重要ですけれども、同時に、これらのつくられる支店とか営業所とかいうものは、私は別に民族主義者でも何でもないですけれども、これは当然の常識として日本の商品を中心にして、日本の商品が外国でできるだけたくさん売れるように、しかも日本の商品の優秀さというのが国際的に認められている際でありますから、そういうものを広く諸外国に売るということに非常な留意をしなければならぬと思うのですけれども、その点どうですか。
  300. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 御指摘のとおり、日本の商品がなるべく多く売れるような配慮は当然しなければならぬと思います。
  301. 西風勲

    西風分科員 では、率直にお伺いしますけれども日本のある有名な百貨店の支店がバンコクに店を持っているわけですけれども、この店で売っている品物の七〇%から八〇%は全部外国の商品であります。日本の商品はごくわずかであります。こういうことをまず知っておられるかどうか、お伺いしたいと思う。
  302. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 私どもが、いまお尋ねのありましたバンコクの百貨店の東京事務所の人に聞いたところによりますと、大体日本商品につきましては一級品のみを取り扱うことにしている、大体総売り上げのうちの半分程度日本商品である、そういうように聞いております。
  303. 西風勲

    西風分科員 日本商品の販売については一級品だけを売っている、そういうふうにいま言われたのですか。
  304. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 さようでございます。
  305. 西風勲

    西風分科員 間違いないですね。
  306. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 先ほども申し上げましたように、私どもがその会社の東京にある事務所から聞きますと、さようなことであります。
  307. 西風勲

    西風分科員 それでは、このバンコクのある百貨店が売っている品物を言いますと、その写真その他もあるのですけれども、きょうちょっと持ってこなかったのですが、ある人がバンコクに行きまして百貨店に行って驚いた。こういうことが一体許されるのかということを聞かされまして、私きょう御質問申し上げているわけですけれども、入りますと、最初にアメリカのネクタイを売っている。えらいこまかい話になって恐縮でありますけれどもアメリカのネクタイをまず売っている。その次の売り場にはイギリスの婦人セーターを売っている。その次の接続した売り場にはフランスとアメリカの化粧品を売っている。その次の接続した売り場にはアメリカの貴金属を売っている。それから陶器はアメリカとヨーロッパの陶器ということになっておりまして、日本の商品が最もたくさん置かれているのは、これは少し極端な例かもわかりませんけれども、ハンカチ、おもちゃ、ブラウス、こういう程度のもので、大部分はヨーロッパ、アメリカの商品が、先ほど申し上げたように、七、八三%陳列されているということが事実として報告されているのですけれども、これは全然あなたの言われたことと違うわけです。その点どうです。
  308. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 先ほど申し上げましたように、私どもが百貨店の東京の事務所から聞きましたところとは違っております。私もバンコクに参ったこともございます。その百貨店に行ったことがございますけれども、特に外国商品のみを売っているという感じはいたしませんでした。
  309. 西風勲

    西風分科員 外国商品のみかどうかというのは、現場へ行ってあなたと私と見てこなければわからぬわけですから、こまかいことは言えませんですけれども、百貨店のかまえと、いままで設置されて以後の営業方法、営業方針、それを客観的に見ているお客さんの態様というようなものから見ますと、この百貨店は欧米の商品を売ることに対しては非常な情熱を傾けているけれども日本の商品を販売することについては、ほとんど情勢を持っていない。たとえばこういう例があるわけです。特選品コーナーというのがありまして、外国の高価な品物を置いてあるわけですが、この特選品コーナーの外国製品を買ってくれるならば日本の真珠をただで差し上げますというような新聞広告をしております。これは現物があります。タイの新聞にその広告をしているわけです。私はあまりよく宝石のことは知りませんが、日本の真珠というのは非常に優秀なわけですね。しかもこれは国際収支を償う上で、日本の貿易を拡大する上で、かなり主要な品目になっているわけです。そういう重要なものを、外国の特選品コーナーで品物を売るための景品、無料で差し上げますという新聞広告を出してやっておるんですね。こういう事実は一体どうですか。証拠品の新聞、ちゃんとありますよ。
  310. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 そういうお話は実は聞いておりませんですけれども、何でしたらもう一ぺんよく調べます。
  311. 西風勲

    西風分科員 いや、よく調べてくれるのもけっこうですけれども、時間がたったら変わってしまいますからね。だから、そういう点でこういうふうなことが許されるかどうかということを聞いているわけです。
  312. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 バンコクにあるこの百貨店は支店ではございませんで、現地法人でございます。こちらから為替管理法に基づく投資の許可を得て資本金を送金して設立された法人でございます。したがいまして、現地において独立採算で営業をいたしておるというわけでございまして、営業のしかたにつきまして一々為替の許可で制約するというようなことはいたしておりませんが、最初に申し上げましたように、海外進出する企業の目的というかにつきましては、私どもとしましては、できるだけ国民経済国際収支等に寄与するようにやってほしいという希望を持っておりますし、そのような方針で指導をいたしております。いまお尋ねのような外国商品の売り込みのみを、あるいは売り込みに非常に熱を上げているということにつきましては、さらによく調べてみたいと思います。
  313. 西風勲

    西風分科員 この百貨店がバンコクへ行くときには、外貨の許可はどの程度のワクを許したのか、お答え願いたいと思います。
  314. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 昭和三十九年の四月に約四一十六万八千ドルの資本金を全額日本より送金いたしております。
  315. 西風勲

    西風分科員 それでは大蔵大臣にお伺いします円けれども、佐藤内閣を背負っている大蔵大臣にこういうこまかいことを聞くのは気の毒なんですけれども、非常に重要なことですからお答えいただきたいと思うんですが、この百貨店に置いてある品物を言いますと、時計、これは西ドイツとスイスの時計が大部分であります。それから服地ですね。これはフランス、イギリスのが大部分であります。それから化粧品とか香水とか、香水も化粧品の一つですけれども、フランス製品が大部分ですね。それから皮革製品。皮革の場合は日本は必ずしも優秀ではございませんから、部分的にあってもいいと思いますけれども、皮革製品はほとんどドイツのものを置いております。それから電気製品ですね。電気製品は日本世界で一、二といわれるほどの生産量と技術を誇っているわけですね。この電気製品、たとえばステレオとかテレビとか、こういうものの大部分はアメリカの製品であります。それから、先ほども申し上げましたように、たいへんこまかくなって恐縮なんですけれども、洋酒とかいうようなものはもちろんイギリス製というように、大部分の商品が欧米諸国のものを中心にした構造、組み方にこの百貨店というものはなっておるんです。こういうことが貴重な外貨、先ほど御答弁がありましたような多量の外貨を持ち出して、金さえもうかればいいということではないわけですね。やはり日本の商社や百貨店が行く場合には、すぐれた日本の製品というものがそのことを媒介としてさらに各国に伸びるというような目的を持ってやるのが当然だ。これがあたりまえですよ。日本人の常識ですよ。ところが、そういう常識に反したそういう行為が行なわれております。事実ですよ、これは行ってきた人が、写真その他全部とってきておりますから事実であります。こういう点について大蔵大臣どうですか。
  316. 水田三喜男

    水田国務大臣 私の持っております資料では、だんだんに売り上げがふえて、最も近いときの売り上げが二百三十万ドル、このくらいの売り上げになっている。その中に日本商品が約半分近く入っておるという話を聞きましたので、そうであるとしたら、相当日本からの商品もそこへ仕入れられて売られているというふうに私は思っておったんです。局長もこの点は調べたようでございますし、これはやはり興味のある問題でございますから、私のほうも一ぺん事実を調べたいと思います。
  317. 西風勲

    西風分科員 特選品コーナーは、先ほど申し上げたように外国製品ばかりなんですけれども、特売品コーナーというのがございまして、日本の百貨店でいったら安売りですか、そういうコーナー品物は全部日本の製品であります。先ほど申し上げたように、行ってきた人の話によれば、ハンカチとかくつ下、安い服地とか化粧品バッグ、ブラウス、こういう日本の製品が一番たくさん置いてあるのは特売品コーナーだ、そういうふうに言っているわけです。だから、こういうことを言うとまた問題になるかもしれませんが、どうも通産省や大蔵省は百貨店に弱い。そんなことはないと思いますけれども、特に現在の皆さんはそんなことはないと思いますけれども、そういうふうにいわれている。それから、事実としてこういう写真、たびたび申し上げておりますが、新聞広告その他、ちゃんと証拠があるわけですね。きょう持ってこようと思ったのですけれども、あまりおとなげないことをするよりも、率直にお伺いしたほうがいいというので持ってこなかったのですけれども、こういう事実のあることについて、何か積極的な指導の方法、あるいは積極的な監督の方法というようなものが考えられないかどうか、お伺いしたいと思います。
  318. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 海外に進出いたしております企業につきましては定期的に報告を求めております。したがいまして、この百貨店につきましてどういうふうな営業をやっておりますか一ぺんよく話を聞きまして、私どもとしては、冒頭申し上げましたように、国民経済に寄与する方向における営業を期待いたしておるわけでありますので、よく調べてみたいと思います。
  319. 西風勲

    西風分科員 これ以上あまり言いませんし、私の言うことが一〇〇%全部間違いないかどうかというと、その人が行ったときの写真の状況、新聞広告の状況あるいは店内を見た状況というものがこのとおりだ。ここでそういうことが議論されたといえば、店舗みたいなものはすぐ変えられるわけですからいろいろやるでしょうけれども、とにかく、いずれにしましても、日本の商社とかあるいは各種の企業、機関というようなものが海外に行っております中で、とかくのうわさ、風評があるわけです。前にもソビエトで人が死んだ。あるいは北欧ですか何かで事件があったというようなことがありますし、どうも日本の商社同士が、その当国の役所とのかけ引きその他をめぐって、あるいは商品のコストその他をめぐって、国益よりは商売の利益というようなことを考えてとかくの風評があるわけですが、こういうことは起こってから処理してもだめなんです。起こる前から厳格な指導方針をきめて、日本のそういう活動が他の国の模範になるようなやり方をしなければいかぬと思いますのです。そういう点についてどういうふうにお考えですか。
  320. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 海外の投資案件につきましては、それぞれいろいろ異なった事情がございますので、一律の基準で律することはむずかしいのでございますけれども、できるだけ国民経済国際収支等に寄与するように個々に検討し、指導してまいりたいと思います。
  321. 西風勲

    西風分科員 これもまたこまかい話になって恐縮ですけれども、たとえば海外の商社なんか、車一つ使う場合でも、十台あれば九台まで外国の車を使うというのが商社の慣習になっておるわけです。日本の在外公館でもそういうきらいなしとはしないのです。どうも日本人というのは、自分の国にかなり有能な、部分的にちょっとおくれていてもしばらくしたら外国の製品を追い抜く、自動車だってそうですね、そういうときがあっても、外国の車に乗るということによって、何かわけのわからぬ優越感あるいはコンプレックスを、それによってあれしているというようなことがあるんですけれども、そういう点については、あなたが言われるように、一律の指導方針というわけにはいかぬと思いますけれども、そういう点で、少なくとも日本のすべての商社の活動、在外公館の活動というようなものが、日本国際収支に役立ち、日本の生産品を海外に広めていく上で積極的なプラスになるような方法でやっていただかなければならぬと思うのですけれども、どうですかこの点は。
  322. 柏木雄介

    ○柏木(雄)政府委員 国産品愛用という点はまさに仰せのとおりだと思います。海外へ行っております者が、なるべく日本の商品を使い、それがきっかけで日本の輸出が伸びるということ非常に望ましいことだと思います。
  323. 西風勲

    西風分科員 それじゃ、もうこれで終わりますけれども大蔵大臣あるいは通産省の皆さんにお願いしておきたいと思うのですが、こういう状況については、すみやかに調査すると同時に、こういうふうなことが問題になったときだけ調査するのではなくて、それは在外公館の数その他、あるいはさまざまな点で障害があると思いますけれども、こういうようなことが問題にならないように十分指導、監督してもらう必要がありますので、この点についてあらためて調査して御報告をいただきたいというふうに思うのですが、どうですかこの点。
  324. 水田三喜男

    水田国務大臣 さっき申しましたように、定期的な報告を求める機会がございますので、報告を求めて御返事をいたします。  それからもう一つ、いま日本の商社などは外国の自動車を使わなくてもいいじゃないかというお話、これは私、話は重大だと思います。日本の商社の在外支店などは、やはり宣伝の意味をもって日本の自動車をこっちから持って行くくらいのことは必要だというふうに思いますので、この問題は私、通産大臣と相談して、通産省からそういう指導もひとつ商社に向かってしていただこうというふうにいま考えています。
  325. 野原正勝

    野原主査 これにて大蔵省所管に対する質疑は終了いたしました。  明十五日は午前十時より開会し、会計検査院所管の審査を行なうことにいたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後六時三分散会