運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1968-03-13 第58回国会 衆議院 予算委員会第四分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年三月十三日(水)    午前十時七分開議  出席分科員    主査 植木庚子郎君       小山 省二君    坂田 英一君       二階堂 進君    福田  一君       山崎  巖君    加藤 清二君       阪上安太郎君    田中 武夫君       華山 親義君    堀  昌雄君       竹本 孫一君    岡本 富夫君    兼務 島本 虎三君 兼務 岡沢 完治君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君  出席政府委員         総理府統計局長 岡部 秀一君         行政管理庁行政         管理局長    大国  彰君         経済企画庁長官         官房長     岩尾  一君         経済企画庁長官         官房会計課長  財前 直方君         経済企画庁調整         局長      赤澤 璋一君         経済企画庁国民         生活局長    八塚 陽介君         経済企画庁総合         計画局長    鹿野 義夫君         経済企画庁総合         開発局長    宮崎  仁君         経済企画庁水資         源局長     今泉 一郎君         経済企画庁調査         局長      矢野 智雄君         通商産業省貿易         振興局長    原田  明君         通商産業省企業         局長      熊谷 典文君  分科員外出席者         総理府統計局調         査部消費統計課         長       明石  頌君         外務省経済協力         局外務参事官  有田 武夫君         外務省経済協力         局政策課長   野村  豊君         外務省経済協力         局賠償課長   武藤  武君         大蔵大臣官房日         本専売公社監理         官       前川 憲一君         厚生省環境衛生         局水道課長   大橋 文雄君         厚生省環境衛生         局公害部公害課         長       橋本 道夫君         農林省農地局参         事官      佐々木四郎君         農林省農地局建         設部愛知用水公         団監理官    島崎 一男君         通商産業省貿易         振興局経済協力         部長      山下 英明君         通商産業省企業         局立地公害部長 矢島 嗣郎君         建設省河川局河         川計画課長   渡辺 隆二君     ————————————— 三月十三日  分科員田中武夫君、麻生良方君及び正木良明君  委員辞任につき、その補欠として堀昌雄君、和  田耕作君及び山田太郎君が委員長指名分科  員に選任された。 同日  分科員堀昌雄君、和田耕作君及び山田太郎君委  員辞任につき、その補欠として華山親義君、竹  本孫一君及び沖本泰幸君が委員長指名分科  員に選任された。 同日  分科員華山親義君、竹本孫一君及び沖本泰幸君  委員辞任につき、その補欠として工藤良平君、  吉田之久君及び岡本富夫君が委員長指名で分  科員に選任された。 同日  分科員工藤良平君、吉田之久君及び岡本富夫君  委員辞任につき、その補欠として山口鶴男君、  稲富稜人君及び中野明君が委員長指名分科  員に選任された。 同日  分科員山口鶴男君、稲富稜人君及び中野明君委  員辞任につき、その補欠として田中武夫君、麻  生良方君及び正木良明君が委員長指名分科  員に選任された。 同日  第一分科員岡沢完治君及び第三分科員島本虎三  君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十三年度一般会計予算経済企画庁所管      ————◇—————
  2. 植木庚子郎

    植木主査 これより予算委員会第四分科会を開会いたします。  昭和四十三年度一般会計予算中、経済企画庁所管を議題といたします。  まず、経済企画庁所管について説明を求めます。宮澤経済企画庁長官
  3. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 昭和四十三年度経済企画庁予算及び財政投融資計画につきましてその概要を御説明申し上げます。  総理府所管一般会計歳出予算のうち当庁関係予算の総額は、三百三十五億百八十三万円でありまして、前年度予算額三百十九億八千五百九十七万円に比較いたしますと、十五億一千五百八十六万円の増額となっております。  これを予算主要経費別に区分いたしますと、公共事業関係費以外の経済企画庁一般経費では二十九億七千四百七十二万円でございまして、前年度予算額二十六億六千九百九十三万円に比較いたしますと、三億四百七十九万円の増額となっております。  これに対しまして、公共事業関係費では三百五億二千七百十一万円でございまして、前年度予算額二百九十三億一千六百四万円に比較いたしますと、十二億一千百七万円の増額となっております。  まず、経済企画庁一般経費内容につきまして、御説明申し上げます。  第一に、経済企画庁一般行政及び審議会等に必要な経費として十億四千五百九十六万円を計上しております。これは、一般事務を処理する経費のほか、経済運営基本方針策定長期経済計画関係業務国民生活向上対策物価安定対策、内外の経済動向調査分析及び水質保全に必要な経費等であります。  第二に、国土総合開発に必要な経費として八千八百三十六万円を計上しております。これは、国土の均衡ある開発発展をはかるため全国総合開発計画策定地域開発体制の整備、離島山村振興対策等及び水資源開発に必要な調査費等であります。  第三に、国土調査に必要な経費として十三億八千百六十八万円を計上しております。これは、国土調査事業を行なう経費で、主として、地籍調査事業費であります。  第四に、経済研究所に必要な経費として、二億五百七十二万円を計上しております。これは、経済構造及び経済循環基礎的な研究調査等に必要な経費であります。  第五に、豪雪地帯対策特別事業に必要な経費として一億二千万円を計上しております。これは、豪雪地帯において、地方公共団体雪上車を購入する場合に、その経費の一部を補助するものであります。  第六に、振興山村開発総合特別事業に必要な経費として八千万円を計上しております。これは、豪雪地帯にある振興山村地方公共団体豪雪山村開発総合センターを建設する場合、その経費の一部を補助するものであります。  第七に、地域開発計画に必要な経費として新たに五千三百万円を計上しております。これは、各省各庁の所管する地域開発計画に関連する調査について、総合的な促進をはかるためのもので、前年度の公共事業関係費地域開発計画調査調整費等を振りかえたものであります。  次に、公共事業関係費について御説明申し上げます。  第一に、国土総合開発事業調整費では六十二億円を計上しておりまして、前年度予算額に比較いたしますと、三億五千万円の増額となっております。  第二に、離島振興関係事業費では百四十六億二百六十八万円を計上しておりまして、前年度予算額に比較いたしますと九億五千六百七十四万円の増額で、離島と本土との格差を是正するため、災害復旧等を除いた全国公共事業費伸び率を上回る伸びとなっております。  第三に、水資源開発事業費では九十七億二千四百四十四万円を計上しております。この内容は、水資源開発公団が、利根川水系淀川水系、筑後川及び吉野川水系における既着工継続事業等を既定計画どおり実施するほか、新たに淀川、木曽川及び吉野川の三水系における実施計画調査及び建設事業等を同公団が施行するため必要な経費等であります。  なお、愛知用水公団を四十三年十月から水資源開発公団に統合することとしております。  最後に、当庁関係財政投融資計画について御説明申し上げます。  まず、海外経済協力基金につきましては、最近における対外経済協力拡充の要請にこたえるため、資金運用規模を前年度の二百九十億円に対しまして、四十三年度は百五十億円増の四百四十億円を予定しております。  次に、東北開発株式会社につきましては、前年度に引き続き会社の再建をはかるとともに、東北開発促進のために実効ある新規事業を実施することにいたしております。このため、産業投資特別会計からの出資金十五億円と公募債十三億円を計上しております。  次に、水資源開発公団につきましては、総事業費は前年度の三百二億円に対しまして、四十三年度は二百九十三億円を計上することにいたしております。  また、北海道東北開発公庫につきましては、北海道及び東北地方における産業振興開発を一そう促進するため、資金運用規模を前年度の四百億円に対しまして、四十三年度は十億円増の四百十億円を確保することといたしております。  なお、融資のうち、特定のものについて、特別金利を適用することといたしておりますが、細部については検討中であります。  以上をもちまして、経済企画庁一般会計及び財政投融資計画の御説明を終わります。  何とぞよろしくお願い申し上げます。
  4. 植木庚子郎

    植木主査 以上をもちまして経済企画庁所管についての説明は終わりました。     —————————————
  5. 植木庚子郎

    植木主査 これより質疑に入りますが、念のため申し上げておきますが、政府委員等の御要求、あるいは質疑持ち時間等につきましては、昨日分科会の劈頭に申し上げたとおりにいたしたいと思いますから、さよう御承知おき願います。  通告がありますので、順次これを許します。田中武夫君。
  6. 田中武夫

    田中(武)分科員 きょうは経済企画庁長官に、実は総括質問のときにお伺いする予定にしておりましたのを、時間の関係で割愛いたしました経済協力の問題について、お伺いいたしたいと思います。  まず最初に、経済援助経済協力目的理念は何か、お伺いします。
  7. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 第二次大戦後、世界各国とも、もう二度と戦争をしてはならないという気持ちが非常に深まっておりますし、特にわが国におきましては、憲法でそういうことをうたってまいっておるわけでございますから、そういう可能性を防ぎながら、世界各国の中には相当生活水準格差がございますから、したがって、そういう格差をお互いに助け合って是正していくことによって新しい戦争の種をなくしていこう、こういうことが経済協力基本考え方だと思っております。
  8. 田中武夫

    田中(武)分科員 時間の関係がありますので、私もできるだけ簡潔に聞きます。答弁も簡潔に願います。  経済援助目的理念ということでいまお伺いいたしましたが、大体そうだと思うんですが、私は、もっと宮澤企画庁長官ならばいわゆる政策通経済通としての基本的なことが答弁にあるかと思ったのですが、それがなかったのです。私は、まず、国連憲章前文の「一層大きな自由の中で社会的進歩生活水準向上とを促進する」という、この高邁な理想の上に立って、国連憲章五十五条のa、「一層高い生活水準完全雇用並びに経済的及び社会的の進歩及び発展の条件」云々となって続いております。これが私はいわゆる国連のもとにおける経済協力基礎であろうと思う。言いかえるならば、先ほど言われたこととあまり大差ないと思いますが、やはりそういうような基礎をはっきりと踏まえていかないと問題が起こると思うのですが、どうですか。私は、国連憲章前文及び第九章第五十五条のa等々がその基本だと思うのですが、どうですか。
  9. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 仰せのとおり、第九章「経済的及び社会的国際協力」第五十五条に定めるところに基づいて、五十六条で「機構と協力して、共同及び個別の行動をとる」これが基本的な理念だと思います。
  10. 田中武夫

    田中(武)分科員 高邁な高い理想はけっこうなんです。また、それによって日本も国力に応じてできるだけの経済援助をせにゃならぬと思います。しかし、日本の実情を見ましたときには、四十一年度の国民所得は二十九兆二千百十五億円で、国民一人当たりに割ると二十九万四千九百四十一円、八百十九ドル、いわゆる生産面では先進国であるが、所得の上ではこれはまだ先進国までいっていない。ベネズエラの次ぐらいだといわれているわけですね。そうして、国内では国内自体経済の二重構造が存在をしている。そうして中小企業はどんどんと倒産をしている。言うならば、経済援助の問題、南北問題は国際間の二重構造の問題です。同じことが日本国内においてもあるわけです。こういう状態の中でなおかつ日本経済援助をしていく、これはまた必要である、日本経済長期展望の上に立っても必要であろうと思うのです。しかし、それは国民血税です。したがって、はっきりとした理念理想と、そして効果のある経済援助をしていかなければならぬと思うのです。  そこで、次にお伺いいたしますが、経済協力にあたっての協力協定あり方ですが、これは協定の締結あるいは議定書、覚え書き、議事録の交換等々によってその内容が確定せられるわけです。それは閣議決定事項においてやられるのだと思うのですが、そういうことであるので、国会審議の中において十分その全体がつかめないわけなんです。しかも、実際の予算を見ましても、基金輸銀その他の方法でなされているので、一般会計予算審議するようなぐあいに一目りょう然と出てこないわけです。そういうところに、どうも国会審議とは無関係なところで金の取引が行なわれておるように思う。しかも、そのことが、この国際協力または賠償をめぐってとかくのうわさが流される原因ではなかろうかと思うのです。  そこで、私は、この国際協力にあたっての協力協定、これをひとつ条約並み国会批准を求める、あるいは国会審議にかける、そうして国会にその全貌を明らかにする、そういうような方法はとれませんか、いかがです。
  11. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは実は外務省所管になりますので、正確にお答えできるかどうか…。——政府委員のほうから御答弁いたします。
  12. 有田武夫

    有田説明員 経済協力協定に関しましては、普通輸銀及び基金資金を利用しておりまして、これは全部予算によってワクがきめられております。予算ワク内で必要な援助各国に提供しておるという形式をとっておりますので、私は条約局でございませんので、正確にはわかりませんが、予算範囲内ということで、国会審議は必要ないということを聞いております。
  13. 田中武夫

    田中(武)分科員 予算で、たとえば海外経済協力基金とかあるいは輸銀とかいう機関予算審議しておるのです。その内訳というのは、どこの国へ幾ら、その内容は何かということは全然わからないのです。たとえば去年も、六七年度はインドネシアに対して一千万ドルを追加してますね。これは予備費からなされているのです。この内容もわからないのです。  そこで、これは総括質問のため用意したので、そういうところで言うべきですが、ここはそうでないので、国務大臣はあなた一人ですが、宮澤さん、どうです。あなたの所管外かもしれませんが、このことがわかるような方法、その一つの方法として、私がいま言っているように、経済協力協定、これは国会審議にかける、そのことについていかがですか。もし答弁があなた段階でできないようであったら、それはひとつ閣議にでもかけてあらためて御答弁を願います。これは何でしたら締めくくり総括質問のほうに回してもけっこうです。
  14. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 援助の具体的な内容について、できるだけ国会の御審議に便宜な方法でお示しをするということは、私ども行政府の当然の義務であると考えます。なるべく具体的におわかりいただけるような予算の組み方をいたすべきものと思います。  ただ、ただいま御指摘のような具体的な話について申し上げますと、これはやはり双方のある意味での交渉でございますために、こちら側が譲り得る限界というものは、あらかじめそれが事前に先方にまるまるわかってしまうということは、時として不便な場合がございます。ただいま御指摘の一千万ドルなどはややそれに類似したケースでもございます。しかし、基本的にはやはり国会での御審議にできるだけ便利な方法で提示を申し上げるのが私ども義務であると思います。  なお、この具体的な協定につきましては、おそらくはこれは行政権範囲内であるという解釈に基づいて行なわれておることだと考えておりますが、なお御発言の趣は関係閣僚にもよく伝えておきます。
  15. 田中武夫

    田中(武)分科員 援助国民血税です。したがって、商取引だとか民間のものはともかくとして、政府ベースで行なうものは、やはり国会を通じて明らかにする必要があると思う。それと同時に、むだづかいにならないように、相手国の情勢というものを十分に調査をしなければならぬ。せっかくいたしましたところの援助なり協力が、相手国のたとえば政変あるいはインフレ——インドネシアのごときは、一年間に米価の指数が四百幾らというような指数になっておるわけですね。そういうようなところから、提供いたしました資金なり、あるいは商品なり、あるいは役務が十分に活用せられないままに、インフレの中にあって一片の紫煙と化するといったような実態がいままでにもあったと思います。そのためには十分なる調査が必要だと思います。同時にまた、日本の業者がどのような価格の見積もりをするのかというようなことについても、十分に知る必要があろうと思います。ということは、そのことがリベートを生むところの結果になっております。民間見積もり等はもちろん商業上の秘密だと思うのです。しかし、その後でもよろしい。どのような見積もりをしてどうしたのかということ、これを知らなければ——リベートとかなんとかいうことによるおかしな問題が生じる原因はこのことにあるのじゃないかと私は思うのです。たとえばインドネシアにおいてもそういうことがありますし、あるいは資金役務の用途なんかについても、十分に明らかにせられていないわけです。そういうようなことで、たとえばこの肥料を七十二億円だとか、あるいは原料、部品を六十二億七千万円とかいうようなことだけで、その詳しい内容はわからないわけなのです。したがって、そういったようなところも、あとでもいいから、チェックができるような方法が必要ではなかろうか、そう思うのですが、いかがですか。
  16. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 経済援助をいたしますのは、相手の国のためによかれかし、及び、その国と日本との関係がさらによくなるようにということを願ってやるわけでございますから、その援助の結果が悪い結果になるということは、当然避けなければならないことでございます。ただ、これは申すまでもなく、非常に微妙な問題を含んでおりまして、結局その国のために何がいいかということは、最終的には相手の国が判断をしなければならないことでありまして、そこをこちら側が非常に強くのさばっていろいろな主張をいたしますと、やはり相手政府あるいは相手国の主権ということに関係してくるような場合がございます。  それからまた、ただいまリベートというお話がございました。これなどは、もちろん、そういうことが起こらないようにということは、当然こちら側としては考えなければならないことであります。過去においてそういうことがあったとは私申し上げませんけれども、しかし、これは相手方政権責任者考え方いかんではあり得ることであります。私あったとは申し上げません。そういう場合にも、どこまでその援助を与えるかわりに立ち入れるかということになりますと、やはり存在する政権を正当な政権として考えていくより方法がないわけでございますので、それにはおのずからやはり限度というものが現実にはあるのじゃないか。ただ、後段に言われました、実際にその援助がどういうふうになったかということについては、当然これはできるだけ国民に明らかにする義務行政府にあると考えます。
  17. 田中武夫

    田中(武)分科員 そういう秘密主義といいますか、そういうことは円借款の場合でもあるのですね。一九五七年以降六六年十二月までに円借款協定せられたものが四十八件ありますね。そのうち、公表をせられたものは何件ですか。対インドの第六次円借款、それから対インド食糧援助、セイロン第一次、第二次の円借款、台湾の円借款、対パラグアイの円借款等、それから韓国も一つありますね。その程度で、あとは全部秘密なんです。内容すらわれわれにはわからないんです。そういうあり方はどうですか。今後はこういうことについても公表していただきたいと思います。公表できない理由と、今後はどうするか、お伺いいたします。
  18. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 円借款外務大臣所管でございますので、説明員から答弁申し上げることがあれば御説明いたします。
  19. 有田武夫

    有田説明員 公表、不公表協定の数は、大体半々くらいになっていると思います。日本政府といたしましては、この協定秘密にすべき性質のものではないと考えておりまして、われわれとしてはできるだけ公表したいと思っております。しかしながら、何ぶんにもこれは相手との協定でございまして、そのつど相手にこれを公表していいかどうかということを聞いております。そして、先方がこれを不公表にしてほしいと言われる場合に限りまして不公表としておる次第でございます。
  20. 田中武夫

    田中(武)分科員 日本側としては公表したいが、相手方の意向によってということは、これは外交上そのようなことの配慮も必要かもしれませんが、日本の側からいえば、あるいは税金を払う国民の側からいえば、これは一切を公表してもらいたい。そうでなかったら、一体どこで何が行なわれているかわかりはしないのです。そのことが、黒い霧の、あるいはとかくのうわさを生む原因なんです。あなたの責任において答弁できるならけっこうです。してください。
  21. 有田武夫

    有田説明員 相手国が不公表にしてほしいと言われます場合でも、わがほうは、閣議決定がございました直後に、直ちに新聞公表いたしまして、協定のおもな内容、それからどういうプロジェクトを提供するかというようなアウトラインは新聞公表しております。そして、いわゆる黒い霧ということでございますが、相手国が特に公表をきらいます場合には、あらかじめどういう計画をやるかということを発表いたしますと、相手国側として、いろいろ政府に対する陳情があるとか、突きあげがあるとか、あるいはスペキュレーションを生ずるというような考慮から、不公表希望しておる場合が多いように見受けられます。むしろ、黒い霧を相手国側として避けたいという希望からきているようにうかがえる次第でございます。
  22. 田中武夫

    田中(武)分科員 相手方希望による、しかし新聞にはある程度発表しておる、そういうことでありますが、新聞に発表するなら、なぜ国会にそのことが報告できないのか。そこで、主査、先ほど申しました経済協力協定を、国会批准とまでいくかどうか、国会審議にかける、それから円借款については国会に報告をする、そのことを確約ができるならばともかく、できなければ保留をいたします。
  23. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 新聞に発表ができて、国会に報告できないということについては、私にもちょっとわかりかねることがございますので、二つの問題を合わせまして、これは私から外務大臣にお伝えをいたしておきます。
  24. 田中武夫

    田中(武)分科員 では、この二つの点につきましては、むしろ、これは外務大臣が一緒のところがよかったと思うのですが、こういうことになりましたのですが、この二点は保留しておきます。  次に、海外協力行政あり方といいますか、これはいま言うように外務省あるいは通産省の関係がある。それを一応窓口としては経済企画庁だと聞いておる。その他各省庁があるはずなんです。ところが、そのそれぞれの省庁の立場立場があって、いろいろ主張があったり、あるいはその間の調整に手間どって、むしろ、チャンスといいますか、機会を失して、あとになってからきまって、そのために、かえって条件の悪い援助をする、また相手方からもあまり喜ばれないような時期に決定をするというようなことが、いままでもあったと思います。そこで、経済同友会が経済協力の閣僚会議というようなことを提唱しておるようですが、私は経済同友会のそういうことに直ちに全般的に賛成することは別といたしまして、やはり経済協力の窓口の一本化、行政の一本化ということが必要ではなかろうかと思うのです。そのためには、経済協力省というようなものも必要かもしれぬ。しかし、今日のような各省庁を統廃合するというような気持ちのあるときに、新たに省庁を設けることはまた別といたしましても、少なくともそういったことが敏速に時期を失しないで決定できるような行政の一元化が望ましいと思いますが、いかがでしょう。
  25. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私もそういう感を抱く場合がしばしばございます。実際問題としては、しかし、なるべく急いでやりたいという役所と、なるべくゆっくり、金額もできれば少なくと考える役所とがございまして、どうしても調整をするということが現実には必要になっております。
  26. 田中武夫

    田中(武)分科員 現実に必要になっておるということをあなたも感じておられるなら、何らかそういった時期を失せずに決定できるような機関が必要じゃないか。これは一応経済企画庁が窓口のように思うのですが、いや外務省です。いや通産省です。こういうことですから、まず、行政的に一元化する必要があるということが一点。  もう一つは、今度は、民間側でもつまらない過当競争をやる、そのために、相手方から乗じられたり、あるいはつまらぬ経費等々を使っていると思うのです。そこで、民間側もそういうことをひとつ協力をしてなされるような民間審議会といいますか、何かそういうものが必要だと思うのです。すなわち、政府側においても一本化、民間側においても何かそういった一つの機関といいますか、そういうものが必要だと思うのです。後者につきましては、もちろん法律とか等ではできる問題ではありません。これは行政指導といいますか、そういうことでやらねばならぬと思いますが、いかがですか。過当競争の排除です。
  27. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 財政当局には財政当局のやはりもっともだと思うような言い分がございますために、これを一元化するということは、実際問題としてはなかなかむずかしいのでございまして、要するに、その間の関係閣僚間の協議が円滑に行なわれればいいということで、いままでそういうふうにやってきております。機関として一元化をいたすということは、この場合財政当局までひっくるめて考えますと、実際問題としてなかなかやりにくいと考えます。  民間については、確かに過当競争もございますし、そこから間違いが起こりやすいということも確かでございますけれども、実際問題としては、具体的に民間の商社なりが向こうの国に人を置いておりまして、あるいは情報をとっておりまして、どういうものが必要かというようなことを多少進んで探してくるというような場合もしばしばございます。それが経済協力になって実を結ぶということもございますから、これを一つにまとめてしまうということになりますと、かえってこの協力の実があがらないことになるのではないかというような感じもいたします。
  28. 田中武夫

    田中(武)分科員 私の言っているのは、政府行政一元化というような強い意味での民間の一元化ということを言っているのじゃない。少なくとも民間にもそういう過当競争なりを排除するような何らかの協議会といいますか、そういうものが必要ではなかろうか、また、そういうように行政指導すべきではないかと言っておる。このままのような野放し状態がいいと長官はお考えですか。
  29. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、現実の問題として、談合が行なわれたりするような危険よりは、まだまだいまのほうが間違いが少ないかと思います。
  30. 田中武夫

    田中(武)分科員 いや、談合というようなことは、機関を持てばそういうこともあり得ると思うのですが、そういうことをやれば談合があるというように考えることがおかしいのじゃないですか。そういう過当競争、抜けがけ、そこにまたつまらないところのいろんなものが起こってくるのですよ。それはぼくは想像することはできると思うのです。そういうことの改革を言っておるわけです。ひとつもう一度……。
  31. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 現実には、ある程度は、行政官庁、たとえば通産省が内面指導をするというようなことで、できるだけ弊害を防いでいこうということは行なわれておるように存じますが、まあその程度以上になかなか出られないのじゃなかろうかと思います。
  32. 田中武夫

    田中(武)分科員 経済界がそう言っておるのですよ、そういう必要があるということを。通産省、どうです。
  33. 原田明

    ○原田政府委員 先生のおっしゃいますとおり、経済協力につきましては、一方で、商社、業界の総意を十二分に活用いたしまして、できるだけ積極的に協力の実をあげる必要があると同時に、無用な過当競争によりまして弊害を招くということはやはり慎まねばならないことであると私どもは考えております。企画庁長官がおっしゃいます趣旨もやはりそういうところにあると私ども考えておりますので、特に民間の側でできますこととしまして、通常の輸出入を阻害しないとか、あるいはまた国内産業、特に中小企業等に対して、経済協力で出ていくために被害を与えないとか、いろんなことを十分考えながら、しかもまた、相手方に対して無用の競争、同じプロジェクト、同じことに対して幾つかの商社が出かけていって不当に条件を悪くするというようなことは、これは国益にもならないわけです。したがいまして、法律その他行政指導の許す範囲におきまして、また地域別、特に業種別に事情も異なると思いますので、そういうようなことを十分考慮いたしながら、先生の御趣旨に従って、今後ともこういう過当競争防止には全力をあげて進んでまいりたい、かように考えております。
  34. 田中武夫

    田中(武)分科員 宮澤さん、きょうはきわめて時間を制限せられておりますので、議論は避けます。あらためて、海外協力基金法案を審議するときに譲ります。  次に、いま原田局長答弁の中に出てきたのですが、現在、経済協力というこの政府ベース、これは言うならば、相手国、いわゆる発展途上国に対して地ならしをやる、そこへ資本が乗り込んでいく、そして資本と資本とが——これはあえて国内資本だけじゃありません。国外資本とも競争を演じておる、そういう実態であろうと思うのです。それが続くと、またいわゆる帝国主義的な、発展途上国に対する経済圧力ということになりかねないと思うのです。また、中小企業がそういう方面へ出ていけるような構想を持つべきではなかろうか。そこで、たとえば中小企業海外投資会社といったようなものをつくって、資本が出かけるということに対して、中小企業もやはり経済協力という一つの理念を追いながら、一方において進出をしていくというような方向をとることについてはいかがでしょう。これはどっちですか、中小企業の海外投資育成会社等々の構想はいかん、こういうことです。
  35. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、商工会議所などで数年前からそういう案を持っておられるわけでございます。方向としてはいいことであろうと思います。
  36. 田中武夫

    田中(武)分科員 これは実際にもしやるとするなら、中小企業庁かね、通産省かね、もしそういうことを真剣に取り組んでいくとするならば。
  37. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはおそらく通産省でございましょう。
  38. 田中武夫

    田中(武)分科員 通産省は原田さん以外に来ていないんだね。
  39. 原田明

    ○原田政府委員 経済協力の進展に伴いまして、発展途上国の産業が次第に発達をしてまいります。それによりまして、同種産品を製造する日本中小企業との競合の問題が生じてまいっておることは御指摘のとおりでございます。したがいまして、この場合には、そういう面から日本中小企業に悪影響が及ばないようにするという面と、それから、いずれにいたしましても、発展途上国におきましては、中小企業に向きましたような軽工業部門をまず手がけまして、日本が出ると出ないとにかかわらず、各国からそういう技術、資本を導入して進めるというような状態にございますので、その両面を勘案いたしまして、日本中小企業が、国内に悪影響を及ぼさないで、しかも日本の、特に近隣諸国等を中心にしまして、新しい中小企業という形で海外にも進出していけるような素地をつくりたい、これは商工会議所その他でも強い要望がございます。そういう方向に今後も進めてまいりたいというように考えておるところでございます。
  40. 田中武夫

    田中(武)分科員 そこで、私がいままで申し上げてきたことをひとつまとめますと、まず第一番が、海外協力については国会審議の対象になるような方法を講じていただきたい。予算等におきましても、機関なり省庁があまりばらばらであって、予算書を見ただけではわれわれにはそれが十分わからない、だから、そういうことをひとつ来年度からは予算提出にあたって考えてもらいたい。  それから、海外援助海外協力についての行政の一元化という方面に対して、これは一省庁をつくれというのではなしに、ひとつ前向きに考えてもらいたい。  それから、商社あるいは相手国の特定の人の私利私欲に流れないような方法を考えてもらいたい。あくまでも国民的視野に立って考えるべきであって、そういった資本のためのような考え方に立ってもらっては困る。  それから、民間の投資をも野放しにせずに、ある程度これを把握し、あるいは全貌が明らかになるような方法を講じてもらいたい。同時に、相手国の民衆に喜ばれるようなものでやってもらいたい、方法をとってもらいたい。  いろいろありますが、以上のような点をいままでの質問の一つの結論として申し上げます。これらの点についていかがですか。
  41. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いろいろ問題がございますことは事実でありますから、できるだけ改善をはかってまいりたいと思います。
  42. 田中武夫

    田中(武)分科員 それでは次に、具体的なインドネシア経済援助についてお伺いいたします。  昨年度は六千万ドル援助しましたね。本年度も大体六千万ドルといわれておりますが、その内訳をお教え願いたいと思います。
  43. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 昨年の経緯、それから関係各国が相談をしておりますいきさつから考えまして、今年も相当額の援助をするということになるであろうという想定のもとに、一応昨年と同額を予定をいたしております。したがって、最終的な金額及びその内容はまだ一切きまっておりません。
  44. 田中武夫

    田中(武)分科員 商品援助を考えておるのでしょう。したがって、そのために、海外協力基金法の改正を考えて提案するのではないですか。そして大蔵省は、これにあたって、商品援助インドネシアだけにしてもらいたい、そういう希望をもって関係各省に呼びかけた、こういうようなことを聞いておりますが、いかがでしょう。
  45. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど仰せになりました、その相手国政府及び民衆ができるだけ歓迎する方法でという、このものの考え方でございますが、私どももそう思っておりますが、インドネシアの実情をいろいろ聞いておりますと、非常に手っとり早いそういう商品を必要とする、そういう経済状態であるというふうに承知しておりますので、おそらくはそういう要求が出てくるであろう、そういう予想をいたしております。ただ、商品援助は、原則論としてはいわゆる通常貿易との競合が非常に起こりやすいものでございますので、なるべくそういうことをあちこちにしたくないという気持ちはございます。一種の緊急的なものだというふうに考えております。経済協力基金法の改正をやがて御審議を仰ぎたいと思っておりますけれども、これは、協力基金を必要があればそういうことをなし得るという体制にしておきたいと考えておるわけでありまして、特にインドネシアだけを目ざしてどうという考えではございません。
  46. 田中武夫

    田中(武)分科員 ところが、われわれ見ておると、インドネシアだけを特に特別扱いにしているように感じられるのです。これは宮澤さんに聞くより、総理に聞いたほうがいいのですが、総理は昨年東南アジア各国を回りました。そして、そこで共同声明を出しておられるわけですね。その共同声明の中で、その国と日本との協力関係がアジアの平和と安定にとって不可欠であるとうたっておるのは、インドネシアと、現に戦争をしている南ベトナムだけなんです。あとの諸国にはそういうような文章が入っていないのです。これは総理に聞く必要があろうと思うのですが、特にそういう文句が南ベトナムとインドネシアだけに入ったというところに、私、インドネシアの今後の援助ということに対する背景があるような気がするのです。これは宮澤さんに聞くのはどうかと思いますが、いかがですか。
  47. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 事情をつまびらかにいたしませんけれども、共同声明でございますから、相手方希望、こちら側の希望、両方が合致したところで声明になりますので、あるいは先方に特にそういう強い要望があったのではなかろうか、これは想像でございます。
  48. 田中武夫

    田中(武)分科員 ところが、これは特にその文句が入っておるというところに、私は新たな問題があると考えるわけです。これはいつも聞きましても、そんなことはなかった、こういうような答えなんですが、ホノルル会議においても、インドネシア援助の問題が議題として出ているはずなんです。そのことのもとは佐藤・ジョンソン会談にもあったと思うのです。しかも、そのホノルル会議とちょうど時を同じゅうして、スハルト大統領代行の側近第一人者といわれるアラムシャ少将外一名が日本へ来ていますね。そういうような一連の動きは、私は背景に何かあるというような感じを持つわけです。そのときのアラムシャ少将の日本への提案は、一−三月の危機に対して緊急援助として三千万ドルを出してもらいたいという提案をしておるわけです。これはどうかといいますと、インドネシアの米の収穫は四月なんです。一月−三月が一番端境期であって、インドネシアのいわば経済的ピンチの時期なんです。物価指数もそのときにはものすごく上がるわけです。たとえばこの一月−三月の間に、ジャカルタの消費物価指数が三九%ですか上昇しておるわけですね。そこで、緊急援助三千万ドルということの申し入れがあったと思うのです。そういうようなことについて、一体どのように考えられますか。特にインドネシアのみを特別扱いをする理由をお伺いしたいのです。
  49. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これも、私直接に知っておりますことはたいへん限られておるのでございますが、一月にロストウ国務次官が参りましたときに、一緒に参りました随行者からインドネシアの情勢について話を聞いたことがございます。そのときには、いま田中分科員の言われましたように、米の問題を中心にしてかなり危険な経済状態にあるという話がございました。債権国といいますか、援助をしようとするコンソーシアムの国々が、いまのような状況についてみんな心配している。わが国もあわせて心配しておることは確かでございます。それから、そのアラムシャという人は私の役所にも参りました。しかし、率直な印象はどうもインドネシアの正常なルートかどうかということに、少し私としては疑いを持ったものでございますから、あまりその話は期待せずに、政府全体としてもあまり進行しないままの状態になっておるかと思います。
  50. 田中武夫

    田中(武)分科員 インドネシアは、六七年の合計年度で三五%、本年度では二三%といわれておりますが、国家財政のこれだけの分は頭から海外援助、外国借款にたよっての予算を組んでおるわけですね。しかも、日本の状態を見ますと、いわゆる財政硬直といわれる中にあって、六千万ドルという昨年並みの金額、さらに昨年並みの長期低利の条件で援助をするということはむずかしいのじゃないか。そういう点についてはいかがです。やれますか。もちろん、やろうと思えばやれると思いますが、それだけ国内に対してしわ寄せがくるということなんです。いかがです。
  51. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど申しましたように、経済協力基金では一応六千万ドルということを想定いたしております。確かに、財政硬直化の中で、わが国としては、これは身を切られるような金額でございます。
  52. 田中武夫

    田中(武)分科員 いやいや、同じような条件でもやるつもりですか。期限とか金利とか、いろいろなそういう面について……。
  53. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはコンソーシアムの一員として行動するわけでございますから、そちらとも相談しなければならないと思います。
  54. 田中武夫

    田中(武)分科員 これも外務委員会といいますか、第二分科会のほうが適当だったと思うのですが、三木外務大臣は、インドネシア賠償について、いわゆる公式ルート、外交ルートによるというように考えられたようです。そうしてマリク外相が来たときに、三木・マリク会談といいますか、それによってある程度の約束ができたように聞いております。ところが、今度佐藤さんが行って、佐藤・スハルト会談によって、いわゆるホットラインという、直結ですか、佐藤さんとスハルトの直結によるところの援助ということにだいぶ話が変わってきた。私はあくまで、三木さんをたたえるわけじゃありませんが、外交ルート、公式ルートによる援助方式が望ましいと思いますが、いかがです。
  55. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 原則として、こういうことは外交ルートでするのはもちろんでございますけれども、両国の首脳が会って話をする、大所高所から話をきめるということは、これはもうきわめてあり得ることであって、私は別にそれは悪いとは思いません。
  56. 田中武夫

    田中(武)分科員 インドネシア国内情勢は、先ほども触れましたが、激しい米価の値上がり、それに伴う物価の値上がりといいますか、たとえば六六年では米価は六五〇%に上がっておるのですね。六七年には若干その数字は減ったけれども、やはり依然として米価の値上がりが続いておる。そしてルピアはだんだん弱くなる。しかも、日本が高度な技術をもってプラント等を輸出しても、それを十分にこなせるだけの技能者がいない。すなわち、劣る工業力を持っておる。まあいろいろ考えてまいりましたときには、十分な調査と、そして民衆に喜ばれるような援助ということになると、少しいままでのやり方を考えなくてはならない、こう思いますが、どうでしょう。その理由はまだありますが、時間の関係で省きます。次々あげていってもよろしいですよ。
  57. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 特定の国を批判するつもりはございませんが、賠償からこの経済協力へずっとつながってきました過去十年余りの中で、国によっては、どうも民衆にちょっといかにもはでに映るようなプロジェクトなり何なりを進めたがる国があったように思います。やはりこれは、農業から築き上げて中小企業、それから工業といったようなやり方をするのがほんとうなんではないだろうかという感じを抱かせた国が過去においてあったように思います。
  58. 田中武夫

    田中(武)分科員 賠償援助は、当然向こうの相手国の選択権があるわけなんです。しかし、それが、これはまあよその国のことを言いにくいこともあるが、特定の相手国の高官のためであってはならぬと思うのです。したがって、これはあくまで賠償ではあるけれども、選択権は向こうにあるとしても、先方国民のために、そして日本国民のためになるようなものを選び、方法をとらねばならぬと思うのです。どうでしょうか。
  59. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど相手国国民のためにと言われましたときに、私は政府国民ということをつけて申し上げたのでございますが、相手国政府あるいは政府首脳部と相手国国民とを分けて別のものと考えるということは、なかなか実際問題としてむずかしゅうございます。事と次第によっては内政に干渉するのかという印象を持たれやすい問題でございますので、私どもは、現にある政府国民を代表する正統政府であると、そう考えていくよりどうもしかたがないのでございます。
  60. 田中武夫

    田中(武)分科員 まあ、そういうことになろうと思いますが、——言いにくいね、この辺は。言いにくいけれども、たとえば、あとに残る、三Kダムなんていわれていますね、そういうものだとか、あるいは農業技術員を動員して農業開発のための援助をやるとか、そういったような方法が、私はいま言っている方法だと思うのです。できるだけそういった後々その国の国民から喜ばれる、あとに残るようなものを残していく。そのためには、日本からやはり多くの技術員、技能者を送り込むとか、そういうことが必要だと思うのです。私の言っているのは、その場限りで消えてしまう——もちろん、そとの国の国民がその日の食糧にも困っているというなら、これはまあ物品の援助もやむを得ないと思いますが、できるだけ、インドネシアでいうなら三Kダムといったようなもの、あるいはその国の経済発展のためにあとに残るようなもの、こういうものを選んで、そういう方向に、内政干渉にはならないような方向、むずかしいと思いますが、持っていくべきではないか、そう思いますが、どうでしょう。
  61. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 具体的なケースについてはつまびらかでございませんが、お考えは、私は全面的に賛成であって、善意を持ってそういうふうにしていこうじゃないかというアドバイスのようなものは、これはやはりやって差しつかえないと思います。
  62. 田中武夫

    田中(武)分科員 インドネシアは、IMFの指導か何かでBE制度、ボーナスエキスポートという制度をとっている。これはいわば一つの利権なんですね。輸入権といいますか、それを政府が売るのですね。そしてそれを政府の財源にしておるわけでしょう。かつて国会においても台湾バナナの問題が問題になりました。あれも一つの権利を横流して売るという、ダミーあるいはペーパーというようなことがいわれておるのです。それとは若干違うとしても、同じような一つの形のない権利、輸入権、無形債権といいますか、その輸入権というものを売ることによって、その金で政府の財源をまかなっておるのでしょう。これはこれ以上言うと内政干渉と言われるから、云々ということになるかわからぬですが、そういうところに先方の——これはそれじゃインドネシアと言わなくて、相手国と一般的に申しましょう。その先方の国の特定の人と、たとえば日本商社との間に黒い霧が生じる、こういう危険性があるわけです。そこで、先ほど来私申し上げているように、民間援助あるいは投資にしても、十分な監視なり、これは商業ベースで行なわれるのだから事前に国会の承認というようなことは無理だろうけれども、事後においてチェックができるような方法を講じるべきではないか。BE制度についておやめなさいとは申しておりませんが、それの使い方はどうです。いかがでしょうかね。
  63. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 一般論として申し上げます。  輸出を振興したいと考えるときに、その輸出実績の中の一定の割合を輸入に自由に使わせるという考え方は、だれでも実は考えそうなことでございます。わが国でも、ごく短期間でありましたが、たしか終戦直後にややそれに近いような措置をやったことがあると記憶いたします。問題は、そこで、その場合それで何を輸入するか。やはり一番民生の安定になるようなものの輸入をほんとうはしてもらいたいわけでございますし、それから、いっときにそういう輸入が行なわれないように、なるべく平準化することも必要でありますし、もう一つは、そういう権利を与えましたときに、それからくる財政収入をきちんと明確に整理をしておくというようなことも必要だと思います。そういうことは、そういうことをやっておる発展途上国に対して、私ども善意に基づくアドバイスとしてはやっていくべきだと思っております。
  64. 田中武夫

    田中(武)分科員 インドネシアはまだ未開な点がありまして、工業国からいえばほしい原材料といいますか、銅だとか、ボーキサイトとか、ニッケル、すず、石油、どのくらいあるかまだわからぬけれども、たくさんあるように考えられておる。したがって、先進国は争ってそれの利権を取ろうというような動きを示しておる。そこに、私先ほど言ったように、経済援助が帝国主義的なものになってはならないと、こう言っておるのです。現に資本対資本、それも国内資本と外国資本といいますか、日本の場合は、アメリカ資本あるいはその他との競争が現に行なわれていると思います。私は、日本経済の長期的展望といいますか、日本経済の戦略的路線からいうならば——あまりこれを言うとちょっとぐあいが悪いが、インドネシアの天然資源というものはやはり握らねばならないものだと思うのです。そういうところにむずかしい点もあろうと思うのです。そこで、政府インドネシア民間の大型経済使節——大型というのは大ものという意味でしょうね、それを派遣するような考え方で進められておると聞いておりますが、どうなんでしょう。
  65. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは結局、相手国が自国の資源開発をどういうふうにやっていくかという相手国の方針の問題であろうと思います。つまり、言ってみれば、外資を導入する導入のしかた、優遇措置であるとか、あるいはジョイントベンチャーであるとか、いろいろなことがあると思うのですが、それに従ってやるというのが基本的な態度でなければなりません。したがって、ただいまの問題の場合でも、相手国から、日本からも関係者、経験のある者にひとつ見てもらいたいというようなことでもあれば、喜んでわが国からもそういう人たちを出すべきだと思います。
  66. 田中武夫

    田中(武)分科員 時間もなくなったようでございますので、最後に、いままで申しましたことを取りまとめてもう一ぺんひとつ要請をいたしますが、これはそのもとはすべて国民血税です。したがいまして、それが一部の人たちの私利、私欲の材料になったり、あるいはまたそれがどこかへ消えてしまったり、これには相手国の先ほど来言っておるインフレ等々による価値の低下もあるでしょう、こういったようなことのないように、十分海外援助に対しては考えていただきたい、こういうことを申し上げます。  さらに、先ほど来行政の一元化とか、私いろいろ提案いたしましたが、私はきょうはあなたと議論したり、野党的態度で食い下がろうという態度じゃございません。前向きのつもりで申し上げたのですから、十分にひとつ検討を進めていただきたいと思います。あくまでも国民血税であるということ、同時に、相手国国民からも感謝せられるような方法によっていただきたい。そうして冒頭読み上げましたこの海外援助理念といいますか、その基礎となっておるところの国連憲章及び五十五条の理想達成のために、これはひとつ矛盾した点が出てくると思うのですが、そういう理念の上に立って、いま申しましたようなことを実現するような方法を講じてもらうように強く要請をいたします。  これで終わるわけですが、もうあと二分ほどあるようですから、最後の一分まで有効に使うことにいたします。  きのうのニュースを見ますと、アメリカの輸入課徴金の問題について、あなたが二十日ごろに特使としてアメリカへ行かれるというようなことが報ぜられておりますが、そのことについて、宮澤さんどういうような考え方を持ってあちらへ行かれますか、そしてどのような成果をわれわれ期待してよろしいのか、それをもうあと一分でお答え願いたいと思います。
  67. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 前段の問題でございますが、援助を受ける相手国すべてが非常にきちんとしている国ばかりとは限りませんので、とかく間違いが起こりやすいという御心配の点は、私ゆえなしとしないと思います。十分戒心していかなければならないと思います。  後段の問題は、総理大臣から別段そういう話を聞いておりませんので、お答えを申し上げません。
  68. 田中武夫

    田中(武)分科員 まあ、予算委員会でいろいろと防衛庁の問題とかいろいろなことでもめておりますのは、新聞では堂々と書かれたり報道せられておるのですが、それを国会の場になると閣僚は知らないとか、そういうようなところにいろいろ問題があって、進むべき審議が進まない場合があると思うのです。総理から何も聞いていないというのですが、きのう大きくあなたの写真入りでニュースに出ていましたよ。じゃ行くとしたら、輸入課徴金についてはどうあるべきだとあなたは考えておられるか、アメリカに行く行かないは別として、輸入課徴金についてのあなたの考え方をひとつ伺います。
  69. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私も、新聞に書いてあるものでございますから、心当たりがないので、きょうあたり官房長官にでも聞いてみようかと思っております。これはそのとおり真実でございます。  課徴金の問題につきましては、これは世界貿易が保護主義的になる、あるいは縮小するというような契機になる心配が十分ございますので、そういうことはやめてもらうことが必要だ、こういうふうに考えております。
  70. 田中武夫

    田中(武)分科員 終わります。
  71. 植木庚子郎

    植木主査 次は堀昌雄君。
  72. 堀昌雄

    ○堀分科員 きょうは少し物価の問題をお伺いをいたしたいと思います。実は、昨日物価安定推進会議が提言をまとめられたようでありますが、この中で、物価安定推進会議が取り上げられております意見については、私ども全く同感なところがたくざんあるわけです。まず最初のほうに、「公共料金の動向いかんは、たんに消費者物価指数の動きに大きな影響を与えるばかりではなく、生活実感に物価指数の変動以上の影響を与える。しかも、その決定には政府が関与するところから、公共料金の引上げは、政府が物価上昇を主導しているきらいがあり、さらには、便乗値上げを誘発する事例も少なくない。したがって、政府が物価の安定を期そうとするならば、まず率先して、みずから規制することのできる公共料金の安定をはかるよう努力しなければならない。」全く私どもがたびたび申しておりますことをいみじくも指摘していただいておりますし、また、料金決定の原則というところでは、「公益事業の投資資金を調達する手段として、料金引上げが必要であると主張する向きもあるが、本来料金の決定は、損益勘定に基づく原価主義により算定されるべきであり、設備投資は、できるだけ料金引上げ以外の資金調達、たとえば、(三)の受益者負担金」ここがちょっと賛成しないのですが、「受益者負担金のほか長期低利借入、出資等によることとすべきである。」こういうふうに提言はまとめられておるわけでございます。  そこで、まず最初に、いろいろとこの物価安定推進会議から提言がされておるのですけれども、私ども、一体どれだけ実際にそれが取り上げられ実行に移っておるかという点について、非常に実は不満に思っておるわけですが、今回のこの提案については、企画庁長官はどういうふうにお考えになっておるか、ちょっと最初に伺います。
  73. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 提案の内容は、事前に所管の運輸大臣にも実はお伝えをしてございまして、聞くところによりますと、運輸大臣としては、この提案の中にございます再建のための委員会でできるだけ早く再建ということをやりたい、こういう御意向のように承知しております。
  74. 堀昌雄

    ○堀分科員 いや、運輸大臣もそうだと思いますが、物価を担当しておられる企画庁長官としては、この提言を全くそのとおりだ、こういうふうにお考えになって、行政の上に十分、事務担当部分といいますか企画庁でできる問題もありましょうが、そうでない部分がたくさんあるわけですから、これを推進をしていこう、こういうお考えでございましょうか。
  75. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 さようでございます。これは結局財政当局との間に一番大きな問題がございますから、よく説明をして、協力を得ながらそうしていきたいと思っております。
  76. 堀昌雄

    ○堀分科員 そこで、いみじくもここにちょっと書かれておりますことなんですが、さっき触れましたように、「消費者物価指数の動きに大きな影響を与えるばかりではなく、生活実感に物価指数の変動以上の影響を与える。」と、こう書かれておることについて、きょうは少しこの問題を中心に論議をしておきたいと思うのでございます。  というのは、消費者物価指数というのは一体何かということなんですね。消費者物価指数というのは、指数の形で出ておりますものは、現在、昭和四十年基準の原指数をずっと一年分足してこれを十二で割って、前年の一年分足したものを十二で割ったものとの間の比較をして、そうしてそれが一体何%だ——これは全く統計上の数字なんですね。生活とは非常にかけ離れた数字だと私は思うのです。なぜかというと、一年間と一年間で比較するなんということは、理論的には確かにそのとおりですけれども、われわれの実感というのは、一年間平均で物の価格なんというものを考えることはないわけでして、経済のいろいろな判断をするものさしとしては役に立つけれども、消費者物価指数というと、何かわれわれの生活に非常に密接に結びついているかと国民は錯覚を起こしているけれども、実はこれは統計上の数字であって、実生活に関係のあるのは、私はやっぱり、たとえばこの一月の消費者物価指数で見るならば、対前年同月の上昇率、要するに食糧が七・三%、これなら生活実感にまあまあまだくると思うのです。去年からことしまでの間に——これは食糧は抽象化されておりますが、一応こういう分類にするとしますと、食糧だけは一年間に七・三%上がったというのは、前にとにかく百円だったら、百七円三十銭だということがぽんときますから、これは表現として正しいので、私は生活実感の関係から言うならば、大体、消費者物価指数幾ら上がるなんという議論をあまり国会ですること自身、経済論議としては意義がありますが、国民生活から見るともう一つ何か抽象化され過ぎているのじゃないか、こう思うのです。その点、企画庁長官どのようにお考えですか。
  77. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは、あるいは堀委員はもう御承知のことであるかと思いますが、記録もございますから、ちょっと申し上げておきます。  それは、対前年同月と比較するのも私は一つの方法だと思いますし、そういう統計も出しております。しかし、この年度はそれ全体としてはどうなったかということも、やはり要り用なことであると思いますので、それも出しておるわけでございます。それで、国民の実感と合わないと言われます部分は、いろいろな理由があると思いますけれども、たとえば野菜とか魚とか肉とかいうものは、しょっちゅう買うものでございます。したがって、しょっちゅう買うものが上がるということについて、国民はやはり一番感じやすいわけでございますけれども、しかし、たとえば、これらの物の全体におけるウエートを考えてみますと、生鮮食料品のウエートはたしか一万の中の三〇〇くらいでございます。野菜が三一五でございますか。そこで、全体の中のウエートというものは、それは生活実感としてはなかなか感じにくうございますから、だから、そういうことが起こってくる場合が一番多いのではないかと思います。
  78. 堀昌雄

    ○堀分科員 いまの話、どうせずっとこまかく議論をするつもりなんだけれども、先を少しおっしゃったのですが、私はいま申し上げたのは、確かに前年同月比でもいいし、前月比でもいいのですが、項目別の上がりというのは実態感ですね。実際の消費者物価からの上がりですからね。ただ、私が申し上げたのは、国会でこのごろ、私どももそうですか、消費者物価指数というものに非常なことだわりを持っている。そうすると、政府のほうも裏返して、宮澤さんもこの間おっしゃっているのですけれども、たばこを今度上げてもそれは〇・二だとか、国鉄の定期は〇・一だとか、こういう話が出てくるわけですね。私、これはあまり意味がないと実は思っているのですよ、〇・一だとか〇・二だとかいうことは。そこで、私は申し上げたいことは、消費者物価指数は意味がないというのじゃないですよ。意味はありますが、その意味というのは、経済的なものさしとしての意味であって、生活のかかわり合いでは、非常に抽象化されておるから、縁遠いものだということをちょっと申し上げておきたかったのです。  その次に、いまウエートのことをいみじくもおっしゃいましたけれども、私は、実は家計調査年報の四十一年で、現金実収入五分位階級別一世帯あたりの支出のウエートをちょっとのぞいてみたわけです。そうしますと、第一分位では食料費のウエートが四三・九%なんですね。それから第五分位では二八・七%。これは四十一年です。これは総理府からお出しになった資料ですから間違いがない。このウエートの二八・七と四三・九の間の比率というものが、一・五二あるのですね。要するに、同じ食料品を買う者でも、さっきおっしゃった頻度の問題というのは感覚ですけれども、ある家計の中に占める四三・九%の食料費が七・三%上がるときと、それから二八・七%のウエートしかないものが七・三%しか上がらないということになると、おのずからここで一・五倍の差が出てくるというふうに理解をすべきだと思うのですね、家計の感触としては。だから、実はここに現在の消費者物価指数というものが非常に抽象化されておるために、実感から非常に離れているではないかという議論がしょっちゅう起こる一つの大きな要因があるのではないか、私はこう思っているのです。  これをちょっと主要項目だけで申し上げておきますと、その食料品の内訳ですが、米類は一分位はウエートが九・一です。五分位へいきますと四一でして、その比率は二・二一倍ある。そうすると、米が一〇%上がったということは、その五分位のほうではなるほど一〇%かもしれない。しかし、それはいまの——私例示ですからそう言っているので、これをきっちり統計学的に言えば、いまのいろいろな数値はまん中の全体平均だから、モード、まん中にあると見て、両側の差があるわけですけれども、そういう言い方をここでやると非常に複雑になるから、まず第五分位のほうにスタンダードを置いたとすれば、比率として、いまのウエートの差が九・一と四・一というふうに二・二一倍くらいあるということで議論をしていくと、もし一〇%上がったといえば、片方は二〇%上がったというような家計内における影響を受けておるわけです。だから、同じものがそういうかっこうで上がるというところをちょっと先に認識しておいていただきたい。この考えは、長官どうでしょうね。私が申し上げていることは正しい、こう私は思うのですが、どうでしょうか。
  79. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはエンゲル係数の問題でございます。お示しになった数字もお考えも、私は正しいと思います。いいポイントだと思います。
  80. 堀昌雄

    ○堀分科員 そこで、ずっと見てまいりますと、住居費はウエート一一・一、一〇・一です。ですから、住居費というものは、階層別の負担としてはわりにウエートは同じところへきているわけですね。光熱費は五・五の三・九で、これはやはり下のほうが一・四一倍くらいウエートは重いですね。被服は、今度は逆に九・七、一一・九ですから、五分位のほうをスタンダードにすると、八割方くらいしか被服費の値上がりは影響しない。逆に、最近、被服費というものは、上がるより下がる場合もあるのだから、そうすると、逆に下がったときには五分位のほうが下がり方が大きくて、所得の少ないほうは下がり方が少ないという問題が起きてきますね。その次の雑費は、ここで食料費と決定的な相対性が出てくるわけですが、五分位のほうが四五・四のウエートで、一分位のほうが二九・八。ちょうどそのエンゲル係数と雑費とがさかさまになって、あとは大体パーだ。こういうのがいまの五分位階層別のウエートの違いです。  そこで、私は、特にその中できょうちょっと触れたいのは、さっき触れた米が九・一と四・一。酒類が二・二と一・三。ですから、酒類については、その比率は一・六九、約一・七くらいですね。それからたばこが、一分位のほうが一・四に対して五分位〇・五で、その比率は二・八です。たばこが値上げになれば、大蔵省きてもらったから比率を聞きますけれども、その上がった比率に対して、所得の低い人たちは約三倍負担がふえる、こういうことになります。そこで、大蔵省専売公社監理官入られたようですから、ちょっと伺いますが、今度のたばこの値上げは、消費者側が受け取る場合の値上げの比率は幾らになりますか。
  81. 前川憲一

    ○前川説明員 家計の、いまおっしゃった五分位で分けてまだ計算いたしておりませんけれども、全体としての値上がりは初年度一一%、こういうことでございます。それは、値上げによりまして数量も若干変わりますし、銘柄も変わるということを入れて勘定したものでございます。
  82. 堀昌雄

    ○堀分科員 そうすると、いまの私の論理からいきますと、一一%上がる。それは五分位のところが一一%とスタンダードを引けば、所得の少ないほう——この所得の五分位の中身をちょっと申し上げておいたほうがいいでしょう。この統計による五分位は月収九万四千九百九十一円以上です。それから、一分位はゼロから四万一千六百七十九円までというのが、これがいま私が議論しております五分位の現金実収入の姿ですが、そこで、五分位で一一%上がるということは、ちょっと二・八をかけるのはあれだから、三をかけて、大体たばこは三〇%ぐらいの実感がある、こうなる。ちょっと私は主税を呼んだつもりだったんだけれども、主計が入っておるようですが、酒、答えられますか。——ちょっと答えられる人いないだろうな。まあいいでしょう。酒は、御承知のように、しょうちゅう、合成酒等を除いて税金が上がります。ところが、税金が上がって、おまけにいまの情勢では価格も上げようという問題がいまうしろにくっついております。しかし、これは長官も御存じだろうと思うのですが、この問題の中には、要するに、米代が上がるものですから、原料米が上がるものだから、一升当たり約五、六円の分がどうしても上がってくる。これを何とかしてくれという問題がうしろについていますから、二級酒まで上がるようですね。上げたいというふうに業者は言っていますけれども、ちょっとそこなんですが、長官はそこのところよくわからないと、この前横山委員の質問に対しては、ちょっと小売り価格がどういうふうに動くかわからないが、消費者物価指数で〇・一ぐらいだろうとお答えになっているのですが、現実はどうも同時に上げるか、あるいはシフトして上げるかは別として、どうも小売り価格は税金と別途に上がるようですね。だから、それを合わせると、どうもたばこの感覚からして〇・二ぐらいになるんじゃないか。それは〇・一でも二でもいいですが、酒が上がるために——酒はさっき申し上げたように、二・二と一・三で一・六九ということですから、やはり下のほうにだいぶかかってくる。しかし、しょうちゅうがあるからこれはどうかという問題が出ましょうが、ここでちょっと調べてみて驚いたのですが、二級というのは、所得階層別に影響なく、わりに平均して実は飲まれています。これは家計調査年報の中に出ております。ですから、その分はこれはストレートにくるなという感じがするわけです。  そういうふうに見ますと、問題は、今度の酒類、たばこ、米ですね。この米ですが、企画庁長官はこれをどうお考えになりますか。ことしの消費者米価上がりますか、上がりませんか。
  83. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 米の話はなかなかむずかしゅうございまして、私どもとしては、新しい米価審議会がこの問題について根本的に取り組んでくれることに期待をかけておりますので、ただいまの消費者物価の見通しでは、消費者米価は据え置きという前提に立っておるわけであります。
  84. 堀昌雄

    ○堀分科員 私、そこが実際怪答弁というものだなと思うのですけれども、皆さん、総合予算主義だ、こういってお出しになるわけですね。補正を組まないんだ、二千四百十五億円お組みになっておる。私は、八百五万トンがふえるなんて議論は、ここの場所じゃないからしません。しませんが、かりに八百五万トン——昭和四十年、四十一年、四十二年は生産者米価が六・九%ずつ上がっている。三カ年連続して上がっているわけですね。だから、皆さんのほうも、私は主計局もそんなことはしないだろうと思うのですが、よけいにとれた分まで消費者にかぶせるということをするのだったら、これはけしからぬと思うのですね。七百五十万トンとれれば、八百五万トンとの差額をスライドするというのなら、ある程度そういう推移はあるだろうと思うが、それがともかく九百五十万トンとれれば、八百五万トンとの差額までも消費者に全部かぶせるということには私はならないと思うのです。私なりの試算をしてみますと、一一・一%上げなければ実は食管のいまの赤字はペイできない。六・九%の値上がりのときは一一・一%、昭和三十八年は八・四%アップなんですけれども、これは非常に例外的に低い。八・四%アップで、一〇・二%アップです。これは私の試算です。どっちにしても、ことし一〇%ぐらい上がるということですね。皆さんはきょうはお答えにならなくてもいいです。どこか機会があるときに答えていただくような仕組みで、それは宮澤さんに答えていただくか、農林大臣に答えていただくかは別ですが、お答え願うようにやりたいと思うのですが、そうすると、さっきの米類というのは二・二一の比率があるわけですね。一世帯当たりで一分位が九・一、五分位が四・一ですから。そうすると、二倍以上。一〇%上がったということは、二〇%以上上がる。ここにいまの生活実感との関係で、政府はやはり十分考えていかなければならない問題があるのではないか。単純に一〇%だとか、〇・一だとかいうことは、それはなるほど経済学的用語としては通用しても、生活の大きさ、小さい方と大きい人との間における負担の割合というものは非常に違っているということをきょうはここで明らかにしておきたいと思う。  そこで、私がお尋ねしたいのは、いまの消費者物価指数のウエートは四十年に改定になった。私も、これはこまかく消費者物価指数のウエートの仕組みも全部承知をしているわけですが、全体一本になっているわけですね。一分位、二分位、三分位、四分位、五分位、全部ひっくるめて一つのウエートがこう出ているわけです。しかし、実際には、私がいま申し上げたように、ウエートには相当の差があるということですね。ここらの問題は、消費者物価指数の中で、もう少しサンプル的なものでもいいから、いまの全体のものが一つ出て、そうして一分位と五分位の場合にはどうなるか、それが一つ。もう一つは、これは非常にむずかしいことですけれども、このいろいろな価格の中で、ものが上がってきたらほかのものに転嫁するのですね。これが一体どのくらい補正部分として出てくるのかという問題がある。たとえばサバを買うということでは、買っている人がサバが上がってきたらイワシに動くというものですね。サバが上がってきてもサバを買ってくれれば、問題は簡単なんですが、そういうふうに生活というものはなっておりませんから、自動調節というものが出てきますね。自動調節というものは統計には出てこないもんですから、その分はどこかで補正しなければならぬじゃないかと私は考えます。物価指数という面では、代替されたものは行くえ不明になるから、それらの問題を含めて、もう少し所得の低いものと高いものとは——高いほうがほんとうはいいのですが、スタンダードとスタンダードでない低いものの場合というのを、もう少し何かそういう消費者物価指数という形でなくていいのですが、与える影響というか、いまのようにたばこが〇・二、国鉄定期が〇・一というような言い方は、私は、物価対策としては問題があるのじゃないか。この前私がここで議論したのは、電話料金の値上がりについての指数が出ている、ところが電話を持っていない人間があのサンプルの中にあるわけですね、今度は八千世帯くらいに伸びていますが。そのときに私は、総理府の統計局に、これからひとつ電話料金のときは、電話のある世帯だけの場合には一体どれだけそれで動くのかということを出してもらいたい、こういう要求をしたのです。きょうは総理府来ていただいたから、そういう統計がつくられるようになっておるかどうか。国鉄運賃というのに、国鉄の定期を使わない人間の家計まで含めてやれば、なるほどそれは小さくなるでしょう。しかし、実際には定期を使っておる人の家計の中だけにしか起きないことを、水増ししたいわゆるさっきの理論数値では私は説得力がないのじゃないか、こう考えるものですから、時間がないからちょっと二、三点触れましたが、私が申し上げましたものについての企画庁長官のお考えを承りたい。
  85. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いま伺っておりまして、御指摘になっている問題は非常によくわかりました。何かそこに確かに一つ問題があるということはよくわかりました。それをさあどうしたらよかろうかといま考えておりました。今後も考えなければならないと思いますが、結局物価指数である限りは十円の大根が十五円になれば五割上がったということで、この大根はだれに対しても十五円でございますから、価格の問題としてはそれでいいことになります。そうして先ほどおっしゃいました八千世帯、昭和四十年におけるマーケットバスケットでやっておるわけでございますが、これは五年ごとに改めておりますので、この五年というのがこういう変わりの早い生活では少し長過ぎるということはあるいはあるかもしれない。これはそうしょっちゅうやれるものかどうか存じませんけれども、結局物価指数としてはもうこれしかやりようがないと思います。幾つかのタイプに分かれた一から五までの生活程度に応じて、それがどれだけ生活にウエートを持っていくかということになりますと、物価指数の問題ではなくて、たとえば家計支出の中でエンゲル係数に該当するようなものがどういうふうに動いていくかというようなことを別途に統計でとらなければならないのじゃなかろうか。もう少し私も考えさしていただきますし、総理府にも考えてもらいますが、確かに反省としては、たばこが何%とか酒が何%とかいうときに、私どもそのものの価格だけを言っておって、生活におけるウエートということをやはりもう少し考えなければいけないということはおっしゃるとおりだと思います。
  86. 堀昌雄

    ○堀分科員 いまの私がこの前提起をした問題について——私は大体こういうところへ一回提起をしたら締めくくりはどうしてもさしてもらうという主義です。たとえば、電話料金はことしは上がりませんでしたが、来年また当然問題になるのですが、そういうものですね。酒とかたばことかいうものは普遍的ですからそんな必要ないと思うのですが、たとえば、いまの国鉄料金の問題ですね。私鉄の料金だとかあるいはバスの料金とか特定の式のものは乗らない人が込みになっていると——まあ込みでもいいけれども、その込みの中身はどうなんだということがわからないと困るのですよ。たとえばふろ代の値上一つにしましても、自分の家でふろに入っている人間が入浴料金の水増し部分に使われているということになるというのはうまくないので、そういうもののためには、その対象の中で一体どれだけがその対象か、ウエートはどうなっているのか、もしその中だけで見ればいまの〇・一というのは〇・三になるのですということが私は必要だと思うのですが、統計上の準備、していただいていますか。
  87. 岡部秀一

    ○岡部政府委員 電話の問題につきましては、御指摘がありましたので私どもも検討しまして、その分を調査することにいたしております。  あとの問題につきましては、非帯に膨大な統計調査関係になりますので、いますぐここでそれができますとは断言しかねますけれども、御要望の点を十分検討いたしたいと思います。
  88. 堀昌雄

    ○堀分科員 少なくとも国鉄とか電話とか特定な公共料金ですね。さっき私が前段で触れたように、政府が指導して物価を上げるのではないかという感じがするような公共料金についてのファクターは、私はぜひそういうものを、その全部の八千から引くのがなんならば、それはアトランダムにもう少し抽出を小さくしてもらってもいいし、それは方法はいろいろあろうと思いますが、ともかくやはり合理的に私どもが判断のできる資料を出してもらわないと、要するにそれはわれわれは信用しないわけですよ。電話料は上がりました、しかし電話のない家庭が半分ありましたなんというのだったら、それは〇・一と出たって実際は〇・二の影響があるのだ、こういうことになるわけですから、その点はぜひひとつお考えを願いたいと思います。  そして、この点いま私が申し上げましたのは、物価というのは、要するに小売り価格と消費者物価というものは別だと思うのです。別だというとおかしいのですが、小売り価格というのは売ってある価格ですから生活に無縁なんですね。いま長官もちょっとお触れになりましたけれども、生活に無縁の価格として店屋に行けばわかるわけです。ただ、消費者物価というのは消費者というものとの関連で出てくる価格だと私は見ていますからね。そういう感覚から見ると、消費者と無関係に消費者物価があってはおかしいじゃないか、小売り価格は無関係ですけれども。だからそこで私が申し上げたいのは、そういう意味で、家計の問題というよりは、そういうかかわりのある消費者物価がどういうふうに影響しておるかということを、ひとつ企画庁でこれから第一分位と第五分位、そういう階層別に、全部必要はありませんけれども、特に下のほうにはこの場合はどんなふうに影響しておるかという形で、これからそういうものをやっていただきたいということをお願いしたいのですが、よろしゅうございましょうか。
  89. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 消費者物価ということばは、おそらくこれは生産者価格というものとの関連で消費者価格ということばができておるのだと思います。小売り価格といいますと、今度はたとえば運賃であるとかテレビの聴視料であるとかいうものが、小売りという観念とちょっとうまく合いませんものですから、消費者物価といっておるのだと思います。  それで先ほどのお話は、物価と生計費との関連を何かの形でつけなければほんとうの議論ができないのではないかといっておられるので、どうも私もそれは確かにそういう問題があると思いますが、さてどうやったらそういうことができますか。問題があることはよくわかりましたので、統計局にも研究していただきますが、私どもも研究いたしてみます。
  90. 堀昌雄

    ○堀分科員 終わります。
  91. 植木庚子郎

    植木主査 次は、華山親義君。
  92. 華山親義

    華山分科員 私も物価の問題についてお尋ねしようと思います。  現在、外国の問題とか憲法の問題とかいろいろなことがございますけれども、とにかく内政の面におきまして、物価が毎年上がり続けるということが根本的な日本の問題じゃないのか、そういうふうに考えるわけでございます。先ほどお話もございましたので、私もちょっと触れておきますけれども、米価の問題につきましても、私は多くの農民に会いますが、あの人たちの言うのは、米の値段を高くしてくれとわれわれは言っているのじゃない、とにかく物価さえ押えてもらえばわれわれは米の値段を上げてくれなどとは、決してそんなめちゃくちゃなことは言わないのだ。それで米価の問題につきましても、とにかく米価の要求ということがこのごろ非常に猛烈に行なわれるようになりましたけれども、これは初めのうちはなかった。物価がどんどん上がって、そして三、四年の間この運動が猛烈になってきた。これが実態で、農民は物価を押えてもらいたい、そうすればわれわれの米の値段を上げてくれというようなことはそう私たちは言わぬ、こういうのが多くの農民の声でございます。  それで伺うのでございますけれども、私非常に情けなく思うことは、政府のほうで来年度の見通しをなさる場合に、物価はこれだけ上がるであろうというふうなことを平然としておっしゃる。これは一体どういうことなんですか。もう物価の上がることは当然であるかのごとくにおっしゃるのですが、日本経済の機構、そういうものから申しますと、物価の上がるのが当然なような経済の機構でございましょうか。それはもう毎年毎年上がるのですから、私がそういう経済機構と思うのも当然だと思うのです。どこにそういうふうな病根があるのか伺っておきたいと思います。
  93. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 決して平然として申しておるわけではございませんで、何とかもう少し低くならないかということをしょっちゅう考えながら、しかし経済見通しとなれば、やはり最も起こりそうなことを見通しに立てなければなりませんので、非常に残念だと思いながら、やはりこの起こりそうなことを見通しに立てるということでございます。決して、ことしは四%でございますからけっこうでという気持ちでものを考えてはおりません。しかし、それと今度、別に平然ということではなくて、当然かどうかということになりますが、やはり私は人手がだんだん不足になって、人間の労働力が高く評価されるようになったということから申しますと、労働集約的な商品はどうしても当然上がる傾向にある。資本集約的なものは消していくことができると思います。したがって、基本的にはできるだけ労働を節約するような生産のしかたあるいはサービスのしかたというものを考えていく、また政府も財政その他によってそれを助けていくということが一番中心になるべき施策だと考えております。
  94. 華山親義

    華山分科員 まあ統計のお話もありましたが、その統計自体がどうこうという問題もございますけれども、消費者物価については、世界の中で日本が一番上がり方が大きいわけですね。いろいろ小さな国とか経済程度の低い国とか、そういうところは別にいたしまして、とにかく先進諸国の中で考えますと、私から申し上げるまでもないのでございますけれども、とにかく消費者物価について見ますと、一九六一年から六五年の年平均の上昇率をとりますと、日本は六・二という数字があげてあります。このような上がり方をする国というものはないわけであります。そこで、まあ宮澤長官は非常に新しい経済学を御勉強になったので、私のような古い勉強とは違うのでございましょうけれども、われわれが学生のころは、一般物価の上がり方というものは通貨量というものと関係があるんだというふうに習ったわけです。そのことは間違いなのかどうか私はわかりません。しかし、いま都知事になられましたが、美濃部先生は、通貨量の問題が根本的なんだということを言っていらっしゃいますし、このことは都知事になってからの言いわけではないわけです。私も美濃部先生にいろいろお話をお聞きしたときもございますけれども、都知事になる前からそういうふうに言っていられる。通貨量というものと現在の物価というものは関係ございませんでしょうか。
  95. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 もちろんあると思います。かりに通貨の発行量が縮小するというようなことがございましたら、おそらく物価の動きというものは、やはり大きい影響を受けるだろうと思うのです。
  96. 華山親義

    華山分科員 私は現在の経済機構が、当面そういう軌道からはずれることができないような状態になっているのであって、通貨の縮小政策というものはとれない。これはわれわれ教科書で習ったのです。一般物価が上がるときには、通貨は縮小すべきものだ、こういうふうに習ってきた。いまの経済政策ではもうできなくなった。昔だったら金本位制度でございますから、そこにおのずから調節があったけれども、いまでは管理通貨でございますから、それができない。自然の調節ができない。どうしてもそこに何か通貨を抑制するようなことがなくちゃいけないのじゃないかと思いますけれども日本経済の体質からいいますと、そういう方向には向かない体質でございますか。
  97. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 結局、通貨を増発させるような、もとの原因がやはり物価を上昇させておるというふうに申し上げたら比較的正確なのかと思います。それで過去十年ぐらい私どもが持っておった選択は、こういうことではなかったかと思います。通貨を増発させない。しかしその反面で、国内に相当程度の失業があることもやむを得ない。そういう経済を考えるか、あるいはその結果は、おそらく物価はかなり安定すると思うのでございますが、あるいは国内の雇用を増大するために、完全雇用という目標に近づくために多少通貨量も増発をし、そうして物価も上げる。そのいずれをとるべきかという選択で、私どもは明らかにあとのほうを選択したと考えます。それでもしかしこれほど物価が上がらなければ、多少は上がってもというコンビネーションが一番理想的な結合でございますけれども、なかなかそれがそうまいらずに、そのかわり雇用のほうは、かなり完全雇用に近づいてきた、そういう選択を、意識して政策の上でとってまいったと考えております。
  98. 華山親義

    華山分科員 それで、ここで統計を申し上げるのはなんでございますけれども、通貨供給高の列国の比較でございます。これは一九五六年から六五年までの比較でございます。日本は一六・二%年平均上がっておる。こういう国はちょっと——イタリアが一二・二%ということがございますが、通貨の供給が非常に大きいわけでございます。しかも諸般の統計を見ますと、通貨供給の上がり方というものは、この二、三年統計的には大きいと思う。そういうふうなことが原因をしておるのじゃないのか。それから国民総生産と通貨の割合、こういうふうなものを見ましても、日本は通貨量が国民生産量に対して年々の増加が各国よりも大きいですね。そういう点に、物価の上がり方が多いのじゃないか。しかし宮澤長官のおっしゃるとおり、これは日本としてはやむを得ないのだ、そういう体質なんだということであるならば、これを明確にやはり国民に言うべきだと思うのです。しかしわれわれは、そういう体質の中の経済ではあるけれども、できるだけそこから出てくるところの弊害を除去していくのだ、こういう方策を国民に明示されたほうがいいのじゃないかと私は思うのでございますが、どうでございましょうか。
  99. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 諸外国との比較において、確かにいわゆる先進国グループで、わが国は一番消費者物価が上昇いたしております。そのとおりであります。しかし同時に、GNP——国民総生産の上昇も、これも一番でございますし、賃金の上昇も、おそらくやはりそうであろうと思います。したがって、国民の生活内容そのものも、これはなかなか測定が可能ではございませんけれども、しかし向上の度合いは、おそらくやはり一番か、非常な高位であろうというふうに考えております。  そこで、それは御指摘のように管理通貨のもとで行なわれる。これまでのところは、私は、それで失業というものがなくなって、政策としては、まあ大まかに言って、よかった、これで物価さえ上がらなければと考えるのは実は少し中で矛盾したことになってしまうので、もう少し物価の上がり方が少なければなおよかったわけでございますけれども、これまではようございましたが、さてここで、まだまだ完全雇用ではございませんが、いろんな事情から労働の流動性というものは必ずしも高くございませんから、いわば疑似完全雇用のようなことになってきたときに管理通貨というものをどういうふうに運営するかということ、これから御指摘のような問題に本格的に対処しなければならないことになる、こういうふうに思っております。
  100. 華山親義

    華山分科員 私も申し上げて長官も言われましたが、国民総生産、成長、膨張率と同じ意味かもしれませんが、国民総生産と通貨量との比較、これは日本は通貨量が高いですな。国民総生産の伸びよりも通貨の伸びのほうが早く伸びている、これは事実なんです。私考えるのに、国民総生産を上げるために、雇用も当然でございましょうけれども、上げるために投資をした。それが効果をあらわすまでの時間的ギャップがある。そのギャップというものがもう七、八年も続いてずっと行なわれてきた。そこに調整をとるところの時間的な余裕がなかった。そこが連続的な物価騰貴の原因じゃないんだろうか、そういうふうに思いますが、これは長官、ひとつ、議論をするわけでもちっともございませんで、教えを乞う意味で姿勢を低くしてお伺いいたしたい。
  101. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはむずかしい問題と思いますので、私にもはっきりお答えする知識がございません。確かに通貨の伸びのほうがGNPの伸びよりも大きいということは、もうそのとおりでございます。それがいま言われましたいわゆる投資の、どう申しますか、懐妊期間とでも申すのでございますか、それとも関係があることもそうだと思いますが、やはり技術革新というものがもう日々に新たに進んでおりますから、そうしていろんなことの自由化も行なわれたということで休むひまがなく投資が続いてきておる。ここで何年か休む期間があったら多少様子は変わるのではないかと言われますことは、私はおそらくそうだと思いますが、けれども、休んでいる間に国際競争におくれるとか、あるいは経済の体質が滞るとかいうことになるのだろうと思います。まあどちらかといえば、そういう常に伸びよう、常に技術革新をやっていこうという意欲のほうをやはり高く評価したい。諸外国においてもそれを評価しておるのだと思いますが、ただ、ちょっと観点を変えて申し上げますと、それはそうであっても、少なくとも生活の、いわゆるエンゲル係数に含まれるような部分については何かもう少し政府責任において安定できないかということは、どうもそこのところがいかにも政治としては至らないところがある。まあ食べものだけは少なくともそんなに上がりませんとか、何か最低限度のものは何とかやっていけないかということは常々思っております。
  102. 華山親義

    華山分科員 物価の問題につきまして私は総理大臣からいろいろなことを聞いてまいりました。所得倍増計画を池田さんがおっしゃって間もなく物価がどんどん上がる。そうしますと、池田首相は関西か何かにおいでになって、私の思ったよりも産業界の投資が意外に大きかったので、これは自分としては自由経済のもとでは統制ができないということで、産業投資の大きいことをもって物価上昇の原因にされる。それがあります。その後また今度は下村博士は、いまは物価は上がる、これはあたりまえのことだ、しかし間もなくこれはとまるから、いま物価が上がるからといって生産の伸びを押えることはいけない、こう言ったけれども、とまらなかった。それから今度はいまの佐藤総理大臣は、物価の上がる原因はわかったとたいへん元気よくおっしゃった。何が原因かといいますと、農業とかそれから中小企業とかそういうものの近代化が進んでいないからだ。これは一つの理屈がありましょう。卸物価が上がらないで消費者物価が上がるのですから。そういうことを言われる。そういうふうなことなんですけれども、私はいまここで政策で生産の上がり方をとめるとかなんとかということまで言う元気はございません。ただしかし、そういう根本的な論議というものがいまの物価論議の中で忘れられちゃっているのじゃないだろうか。重要なことですけれども、ただ表面的に出てきたところのものを論議されている。基本的に日本経済がどうなれば物価が安定するんだとか、あるいは物価は多少上がってもやむを得ないとか、そういうふうな基本的な論議は欠けているのじゃないかと私は思いますが、長官どうでしょう。
  103. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 物価が上がってもやむを得ないという態度は政府としてはやはりとれませんし、とるべきではないと思うのでございます。ですから、そういう生産性の低い部門をどうやって一日も早く生産性を高くしてもらうかということがやはり施策の中心であって、そうしてその間物価の上昇を最小限に食いとめていくための施策をできるだけやる、こういうことに尽きるのではないかと私は思っております。
  104. 華山親義

    華山分科員 国民蓄積の中で生産を増すというふうなことは日本としては無理だったと思いますけれども、オーバーローンをしたわけです。ところが今度の公債をやりますときに政府までがオーバーローンを始めた。とにかく御承知のとおり一年間国債は買いオペをしないあるいは担保にとらないというふうな政策だったのですけれども、御承知のとおり四十二年に発行された国債は大体五千二百億、まことにふしぎなことにそれと同額のものを日銀が買いオペをしている。とにかく一年は持ったかもしれませんけれども、日銀が買いに出るわけですね。それで、この三月まで見ないとわかりませんけれども、いままで出た国債の七割はもう日銀に返っちゃっている。それから政府保証債なんかは驚くべき増加です。日銀がどういうのか発表いたしませんので私はとっておりますけれども政府保証債は驚くべき増加で出ております。他の担保債は減ったかというとそうじゃない。そういうふうなことで、これはもう政府自体の施策がオーバーローンなのじゃないか、こういう点を考えますと、これは財政の縮小にも通じますので一がいに私から申し上げるわけにもいきませんけれども、やはり通貨の面からの物価ということをやはり高い角度で、高いところから長官はごらんになっていただかなければならないのじゃないか、こういうふうに考えますので、長官の御所見をひとつ伺っておきたい。
  105. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 国債の発行はよほど気をつけておりませんと、いま御指摘になったようなことになりやすいわけでございます。何とかして国債が毎年ふえるのを防がなければならない。一般会計が国債に依存する依存度というものを下げていく習慣をいまのうちにつけておきませんと、とめどもないことになると考えまして、四十三年度にはそういうことに踏み切ったわけでございます。これにはかなりの抵抗があったわけでございますけれども、ともかくそういう方針を現実に四十三年度には打ち出して実行しようといたしております。このことは財政それ自身の問題でもございますけれども、やはりただいま言われましたような物価にも無関係なことではございません。こういう方向を四十四年、四十五年ときちっと定着させていくことによって、国債発行からくるところのそういう弊害を除去していきたい、こういうふうに私どもいま考えております。
  106. 華山親義

    華山分科員 公債の依存度とおっしゃいましたが、公債の依存度は次第に低くはなっておりますけれども、これも各国に比べますと、北ベトナムと戦争をしているアメリカに比べてもきわめて高いですね、もう比較にならないほど。依存度だけを列国に比べたならば四倍、五倍の高さ、私はめちゃくちゃなやり方だと思うのです。とにかくそれはおっしゃるとおり国民の総生産は世界一かもしれません。しかし物価の上がり方は最高だし、日銀の供給率の上がり方は最高だし、国債依存度は最高だ。日本のやり方というものはきわめて大胆かもしれぬけれども、私、何だかわきで見ていてあぶなくてしようがないのですよ、長官。やはりある程度節度のあるところへ持っていかなくちゃいけない、日本経済が浅いなどということはそこから出てくるのじゃないか。外貨の準備率は最低でしょう。日本経済というものは非常にその面ではまだまだ脆弱な面があるので、これを現実に向ける面にもう転換すべきじゃないだろうか、こんなふうにも考えるわけであります。この点につきまして御回答があれば伺いますが、どうでしょう、よろしいですかそれで。
  107. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 従来何とかして失業をなくそう、完全雇用に近づいていこうということからやってまいりましたが、この程度に労働力が逼迫してまいりますと、いままでの考え方をそのままやっておったのでは、確かに一本調子でいってはならぬ段階がくると思います。そういうときに、そういう段階にそろそろ入りつつあると思いますので、よほど戒心をしなければいけないと思います。
  108. 華山親義

    華山分科員 話は一変いたしまして、昨年、私、東北開発のことで長官にいろいろ教えていただきました。そのことにつきまして残った時間でちょっとお聞きいたしたいと思います。  昨年、東北各県が知事提言をいたしました。その知事提言がどういうふうに実現されたかにつきまして、私大体存じておりますから時間を節約する意味で言いますが、間違えておりましたならばおっしゃっていきただきたい。  とにかく東北各県知事は提言といたしまして、東北につきましては特に農業を基本にやっておるので、農業につきまして東北に特別な財政的な措置なりあるいは資金の融通等があってほしいということでございましたけれども、今年度予算ではそれが実現しなかったようです。  それから第二点につきまして、東北開発株式会社につきましては、知事会はあまり具体的なことは申しませんでしたけれども、これをもっと活用する方向にということを言ったようでございますが、その点につきまして伺っておきたい。  それからもう一つは、この前、北海道東北開発公庫の特利的なものを考えようというふうに長官はおっしゃいましたが、これは御努力によってある程度実現したというふうに聞いておりますが、その三点ぐらいについて、その他今年度予算の成果をひとつおっしゃっていただきたいと思います。
  109. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 東北知事会の御提言は私は非常に有意義なものと受け取っております。そしてこれを長期的には、今年秋ごろに策定いたします全国総合開発計画の中へできるだけ取り入れてまいりたい、そういう観点から総合開発計画を進めていきたいというふうに考えております。  それからさしずめのことといたしまして、ただいま仰せになりましたように昭和四十三年度の予算との関係でございます。まあはなはだ十分ではございませんでしたが、少しずつ実現したものもございますが、それは北海道東北開発公庫資金ワクを少しふやすということと、それから問題でございましたその特利でございますが、これはいろいろ問題がございましたが、ともかく何か東北によそと比べて投資のための優遇を考えたいと考えまして、まあ特利ということに政府としては踏み切ったわけでございます。これをどの地域にどういう業種にどんな規模でやるかということは、ただいま関係各省と協議をいたしておりますが、そういうことそのものは政府としては決定をいたしたわけでございます。  それから東北開発株式会社は、御承知のように経理的には非常な病人でございますが、しかし新規事業を何もしないということはいかにも東北の人々に暗い印象を与えると考えましたので、病気ではあるが、しかし今後民間企業ではなし得ない、また公共団体が自分でするのにはなじまないといったようなそういう中間的なものについて、東北開発自身が新規事業としてやっていこうということで、その分の予算もわずかではありますが用意をいたしました。それからなお豪雪山村開発センターでございますが、これは岩手県と山形県に二カ所すでに決定をいたしております。農業の採択基準の問題についてはなかなかむずかしい問題がありまして、ほんのわずか実現しただけでございます。
  110. 華山親義

    華山分科員 東北開発株式会社につきましては、私、自分のことを言うのも恐縮でございますが、たいへんいいことだと思うのです。私はその当時地方の役人をいたしておりましたが、とにかくああいうふうな第二次産業に食いついてやっていたんじゃ、とても何ともならない。だから県庁ではやろうと思ってもやれない仕事がある。いまとは時代が違いますけれども、農業関係の機械あるいは草地開発の機械を買うなり、あるいは中小企業の集団的工場をつくるための資金なり、県庁が責任を持つからそれを出してくれ、そのほうに東北開発株式会社はいくべきじゃないかと言ったんですけれども、とうとうじんぜん今日まできたわけです。私は七、八年おそかったんじゃないかと思っているが、宮澤さん、私は自分じゃたいへん得意になっているわけなんです。  それから、今年度もいろいろの要求が知事から出ておるようでございますけれども、どんなことを実現されるおつもりで今後努力されるか、ちょっとおっしゃっていただきたいと思います。
  111. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど申し上げましたのが四十三年度に実施することになりました施策でございます。それで全国総合開発計画を、間もなく本格的に作業を始めようと思っておりますので、その前の段階で東北の知事さんからももう一度御意見を伺って、そして総合開発計画に盛り込みます分と、それから昭和四十四年度にどういうことを御希望になるか、これを承って、できるものからやっていきたいと考えております。
  112. 植木庚子郎

    植木主査 次は竹本孫一君。
  113. 竹本孫一

    竹本分科員 私は三つばかりお尋ねをいたしたいと思います。  第一は円の切り下げの問題でございます。これは私はないと思いますし、またあってはならぬと思っております。しかしながらこれについて外国、イギリス等に非常にたびたびうわさが流れておる。また日本でも、われわれが地方に参りましてよく質問を受けるようになりました。そういう意味で、この際長官のお考えを明確にひとつお示しをいただきたいと思います。
  114. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 一切考えておりませんし、その必要もないと思っております。
  115. 竹本孫一

    竹本分科員 長官から非常に心強い御発言をいただきまして、私もそう願っております。しかし問題はなぜそういううわさが流れるかということについて、やはりわれわれは反省をしなければならぬのじゃないか。あるいは参考にして考えてみなければならぬじゃないか。特に私が指摘したい点は、これはそういううわさが出る可能性が全然日本経済の体質の中にないかというと、三つばかりある。その第一は言うまでもなく、先ほども議論になりました消費者物価、消費者の階層別の分析もない今日、どうも適切でない面の御指摘がありましたけれども、とにかく消費者物価が上がっておる。これはあとで局長から一つ伺いたいのだけれども、卸売り物価、小売り物価、消費者物価が最近何年連続して上がっておるか、そのために何%上がっておるか、これはあとで局長から伺いたい。いずれにいたしましても、それだけの消費者物価が五年あるいは七年どんどん上がっておる。これは確かに、実質的な意味においては円の価値を下げるものですから、その点がそういううわさを呼ぶ一つの理由になっておるのではないか。   〔主査退席、小山(省)主査代理着席〕  それから第二番目は日本の準備、特に金準備が足りない、外貨の保有高が少な過ぎるという点はよく指摘をされております。七〇年以来特にフランスなんかが、いま五十二億ドルですか、金を持っておるというときに、日本はこの十年来——十年来と言ったらどうか知りませんが、六〇年以後ほとんどふやしていないし、ふえていない。それでもやっていけるのだからいいじゃないかという考え方もあるでしょう。しかし私の予算委員会における質問についても、総理も三十億ドルくらいが適正ではないかと言われた。三十億ドルが適正とすれば、まあいまの二十億ドル前後にあとの十億ドルくらいは金でふやすべきだと私は思いますが、とにかくいずれにいたしましても、日本の保有外貨というものが外国に比べて少な過ぎる。これが第二のポイントじゃないか。  第三番目は、これはイギリスが特に問題にしておる点じゃないかと思うのですけれども国際収支が悪い、ことに景気が悪い、あるいは景気調整下の現段階において、なお二年、あるいはへたをすれば三年赤字が続いていくというようなことは珍しいことでございますが、一体この国際収支の赤の原因は、イギリスは、特に個人消費が伸びておる点、二十六兆円が大き過ぎるという点を問題にしておるようですけれども、私は設備投資と個人消費と両方で、とにかく国際収支を悪くするほうへの働きが大きく動いておると思います。そういう点でまず物価の問題、それから保有外貨の問題それから設備投資並びに個人消費がどんどん伸びているということからくる国際収支の問題、この三つの点を、やはりしろうとはしろうとなりに、専門家は専門家なりに分析検討して、結論は間違っておるかもしらぬけれども、そういった間違った結論が出るについてはやはり全然必然性がないとはいえない。この三つの点は、われわれが経済運営の場合ひとつ基本的に考え直すべき問題じゃないかと思いますが、長官のお考えを伺いたい。  なおあわせて、最近新聞では——第二番目の問題に関連いたしますけれども日本が自由に使えるドルが九億八千万ドルぐらいあるうちで、アメリカのドル防衛に協力するということで、四億三千万ドルぐらいは長期のものに切りかえたというような記事が出ておりましたけれども、それがほんとうであるかも伺いたい。
  116. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 何ゆえに円の切り下げがロンドンあたりでうわさされましたか理解に苦しんでおります。しかしおそらくは、いま竹本委員の言われましたようなことをやはり考える人がおったのではないか。何ぶんにもこういう管理通貨制度で高い成長をしてきたということは、ことにイギリスなどから見ますと非常に異質的なものでありまして、したがってときによってはこれを非常にほめることもございますし、またときによってはだからあぶないと考える場合もあるのであろうと思いますが、実態は御存じのとおり、私ども少しも円の価値について心配をしておりません。ことに円の対外価値については、これだけ貿易が伸びておることからもおわかりいただけますように、私は問題がない、こう思っておるわけでございます。  それから設備投資、消費、これは、ことに設備投資の伸びは諸外国に比べて問題なく非常に大きいわけでございます。それが生産力になって返ってきておる。消費については、私は日本の消費水準というものは決して十分だと考えておりません。消費水準を上げていくということは、申すまでもなく消費だけの問題ではなくて、それが生産力につながる。そうして輸出のコストを引き下げるということになってくる要素もございますので、私はその辺にもあまり大きな問題はないというような考え方でございます。  それで後段の問題でございますが、私は日本の外貨がどのように運用されておりますか、正確には存じておりませんが、過去二、三年の間にできるだけ外貨を有利に運用しようということは、これは当然いつの段階でも考えますので、それならば幾らかでも長期のほうが有利でございますから、そういうことは、できる範囲では、これは必ずしもドル協力という意味でなくて、わが国自身の利益のために、できるときにはやってきたと考えております。ただもちろんそういう場合でも、満期になります時期というものは必ずずらせてやってまいっておりますから、必要があればいつでもどれかは使える、こういうような運用をしてきたに相違ないと——正確には存じませんが、そう思っております。
  117. 竹本孫一

    竹本分科員 消費水準は、私はイギリスがそう見ているということを言ったので、私自身がいまの消費水準が十分だとか、行き過ぎているという議論ではありません。  それから外貨の運用のしかたにつきましても、有利だけでものを考えていいのかどうかということも議論があると思いますけれども、きょうはその問題はこのくらいにいたしまして、次に設備投資の問題についていささか御質問をいたしたい。  昨年度の設備投資の伸び率二七・五%について、政府の見通しは誤りであったけれども、結果としてはそのほうが中小企業の近代化等も進んでよかったのではないかという御発言が長官からあったように承知しておるのでございますけれども、そうであったか。私が事実問題として通産省の調査等を見れば五千万円以上の企業の設備投資は三七・八%というように伸びておる。したがいまして、全体が二七・五である以上は、それ以下のいわゆる中小企業の設備投資というもののウエートはぐっと減るのではないか、したがって、中小企業は設備投資が伸びたから確かにその面もありましょうけれども中小企業の近代化が促進されたのでけっこうであったということは、事実としてどうであろうか。特に、これはあとで基本的にひとつ議論をしたいと思うのですけれども経済企画庁の長官が政府の見通しが誤ったのは結果においてよかったというようなことをまず言われたとなれば、これはひとつ企画庁自体のあり方として大きな問題だと思いますけれども、それは事実であるかどうか伺いたい。
  118. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 誤ったのはもう歴然たる事実でありまして、誤りました。それで私が誤ったことがよかったというようにお聞き取りになる表現をあるいはしたのかもしれませんが、私が申したかったことは、その見通しというものがたいへんに値打ちのあるもので、事実がそれと違ったら事実のほうが悪いのだという考え方は私はとらない。それは見通しを間違えたほうがむしろ間違いなんだ、こういう気持ちがしょっちゅうございますので、だからそういうふうにとれることを申したかもしれません。現実には三〇%近い設備投資の伸では少し伸び過ぎであった、これが予想できなかったほうも悪うございますが、しかし伸び過ぎたほうも少し伸び過ぎたのではないかというあたりの感じでございます。そこで中小企業の問題でありますが、製造業をとってみますと、かりに資本金一億円未満を中小企業と考えますと、これは四十一年に非常に大きな伸びがございました。四二%ほど設備投資が伸びております。それから四十二年はまだ推定でございますが、一応三八%、三九%あたりの伸びがあるのではないかと思っております。実はこの点を私ども見落としておったわけでございますが、かなり大きな伸びを二年間にわたってしたことは事実であろうと思います。
  119. 竹本孫一

    竹本分科員 この問題は時間がありませんからあまり議論はいたしませんが、いずれにいたしましても、中小企業も確かに伸びました。また伸びなければどうにもならないという事情の中に置かれていることも事実でありますから、それはそれでよろしいとして設備投資の、いま長官のおっしゃった行き過ぎですね、これが私はすべての日本経済を半身不随とまでは言いませんけれども、現段階における経済的なあらゆる矛盾、たとえば物価高にしましても、あるいは景気調整の必要性にしましても、あるいは国際収支にしましても、百悪の根源は大きくいえば大体設備投資にあると私は思っているのです。もちろん設備投資をやったから大いに高度成長をしたし、また競争力もできたし、私は設備投資の経済的なメリットを一つも否定はいたしません。しかしそのことと幾らやってもいいのだということとは別問題で、やはり程度がある、度がある。その点について行き過ぎた設備投資というものが大体において物価高でも国際収支の赤字でもその他景気の問題でも、コスト高でもおおむねその原因となっている。私はそういうように見ておりますが、長官のお考えどうですか。
  120. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そうであろうと思います。そこで竹本委員も決して設備投資のメリットを認めないわけではないと言っておられるのでありますから、これ以上申し上げる必要もないのかと思いますが、ただ設備投資は悪だという考え方は(竹本分科員「行き過ぎがあるといっているのです」と呼ぶ)これは竹本委員がおっしゃったと申すのではなくて、世の中にときどきそういう議論がございます。しかし、これは先進諸国を見ておりますと、設備投資がなくて新しくならないので非常に困っておるという経済の国が大部分でございますから、わが国にそれだけのエネルギーがあるということは、基本的には私はメリットのほうを重く考えたい。ただ、御指摘のように、たとえばある産業のように市況は必ずしもよくない。そうして一、二年先の需要量の見通しもある程度見当がつく、それにもかかわらず、よそがやるから自分もやらないとシェアが落ちてしまう、こういう考え方はやはり調整をしていかなければならない。また通産省が現実に調整に努力しているわけでございますが、そういう部分については、これは考えてもらわなければいけない、こう思っております。
  121. 竹本孫一

    竹本分科員 そこで長官に二つ伺いたい。  一つは、去年といいますか、四十二年度の最初の設備投資の見通しで、増加は一四・八%であったと思いますけれども、大体この辺に押えるべきではなかったかと私は思っております。その点についての感じでございますけれども、長官のお考えを伺いたい。  もう一つは、これを二七・五%、ことしもまた大いに伸ばす、不景気の中でも九・七%伸ばす、こういうふうにして特にこれは先ほど堀委員が物価についていろいろ言われたように、数字というものは何年もならして言いますからきわめて不正確になりますけれども、いま長官自身言われたように、特定の産業部門ではむちゃくちゃにふやしておる。将来の需給見通しも考えずにふやしておる。個別企業の立場ではある程度やむを得ませんが、そういうむちゃくちゃに伸ばしたものを、また不景気になれば今度は不況カルテルで調整をさしてやるということは、二重、三重に国民経済にとっては浪費であるか少なくともマイナスである。これはあとで議論いたしますが、私の考えでは経済企画庁はもう少ししゃんとしてもらって、全体計画をもう少しきちっとしたものにしてもらいたい。個別企業にもガイドラインかなにか知らぬけれども、ある程度指示もしていただいて、それをも聞かずにめちゃくちゃに設備投資をやったようなものについては、今後不況カルテルなんか認めないぐらいの態度でやってもらわぬと、やりほうだいで、政府はあとからしりぬぐいばかりが専門だ、こういうふうな無責任な資本主義はないと思うのです。資本主義には資本主義のけじめがあり、規律がなければならぬ。こういう点から考えて、一体設備投資を過度にやって、その結果、またこれが不景気になれば不況カルテルを申請する、これをまた認めるというようなことについては、一定の制約があってしかるべきだと思いますがいかがですか。
  122. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 同感でございます。
  123. 竹本孫一

    竹本分科員 長官から同感だということでございますが、その次の段階になりましょうが、今後不況カルテルの申請があった場合に、過去の業績の勤務評定をやってもらって、わかり切っておるのに個別企業の立場で設備投資をやり過ぎたというものについては、不況カルテルなんというものは簡単には認めないのだ、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。もう一度念を押しておきます。
  124. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 不況カルテルそのものは法律で認められておりますから、その制度そのものを否定はいたしませんけれども、具体的な業種については、そう甘いことをしょっちゅうやってもらっては困るという考えは強く持っております。
  125. 竹本孫一

    竹本分科員 ぜひひとつその点は貫いていただいて、われわれは無政府生産といっておりますけれども、今日の乱脈経済にとにかく一定の折り目とけじ目をつけてもらうということでやっていただきたいと思います。  時間がありませんので、あと経済社会発展計画について一言伺っておきたいと思います。  なお、その前にもう一度設備投資行き過ぎの問題で不況カルテルだけを申し上げましたが、もう一つ。これは長官御承知のように投資の平準化、準備金制度というようなものが今度通産省で考えられておるようでございますが、大蔵省あたりは反対であるとかいうことで、いま検討しておるとかいろいろいっておりますが、私はやはり長官の言われる自由経済のもとでございますから、必ずしもわれわれの理想とするようなステートコントロールを行なえるとは思いません。そうすると、若干利害誘導といったような面で、税金の面でアメリカでも、これは日本と違って投資を促進する意味の控除制度がある。しかし、日本では、国柄が行き過ぎるくせのある国民ですから、それをチェックする意味の税金を考える。投資平準化準備金というのがいいか、名前は別として、そういう税制の面等から日本の行き過ぎる国柄についてチェックを考えてみるという制度的なくふうは、私はあってしかるべきだと思いますが、長官のお考えを伺いたいと思います。
  126. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 従来の考え方から一歩踏み出しまして、税制をそういうことの手段に使うということは、私はやはり必要だと思います。
  127. 竹本孫一

    竹本分科員 さらに欲ばってもう一つ伺いますけれども、御承知のように、スウェーデンでは中央銀行が準備金を取っている。そして、要するに景気を中央銀行の準備金制度を通じて一つコントロールしている。これはまた、いまの平準化の問題よりは、一方において一歩前進した考え方だと思うのですね、それは全体的な計画ができますから。この問題を一ぺん経済企画庁あたりでも投資の基調を平準化していくために考えてみるべきじゃないかと思いますけれども、これはいかがでございますか。
  128. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御承知のとおり、わが国にもその制度はないわけではございません。ただ、きわめて作用は微弱でございまして、その根本の理由は、やはり市中銀行が日本銀行から金を借りておるものでございますから、そうでない国のようにうまく働かないのでございますが、この状態をだんだん解消していくとともに、やはり準備預金制度というようなものはだんだんに発展をさせていくべきだと思います。
  129. 竹本孫一

    竹本分科員 日本の準備金制度と少し意味が違うと思うのですけれども、これはまた議論になりますから、次に進ましていただきます。  最後に、経済社会発展計画についてお伺いしたいのですけれども、これには三つばかり柱があったと思うのですね。経済社会発展計画には、物価の問題にしても、経済の効率化の問題にしても、あるいは社会開発といったような問題について、基本的なねらいというもの、柱というべきものがあったと思うが、いかがですか。
  130. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのとおりでございます。
  131. 竹本孫一

    竹本分科員 その三つの柱というものは、今日の段階においては、ほとんど終わったというのか、あるいは役に立たなくなったというのか、あるいはだめになってしまったというのか、その大きな柱がくずれて、経済社会発展計画は、物価の問題だけではありませんが、社会開発にしてもあるいはいまの設備投資にしても、ほとんど意味をなさなくなっておる。だからこれは、私は計画経済論者ですから、ぜひこういうものを充実したいという立場から、この辺で一ぺん再検討すべきではないかと思うのです。その点で、たとえばいま、設備投資あるいは経済成長率の問題にいたしましても、大体八%程度に計画では実質成長を考えておると思うのですけれども、今年は七・六%の実質成長でもどれだけ不景気になるかというのでいま問題になっておる。そうしますと、八%で経済計画を考えておるのに、七・六%でもうたいへんだ、八%以下では、あるいは七・六%ではどうにもならぬというようなことであると、もし成長率をその予定されたところでおさめるというと、へたをすれば万年不景気ということになるのじゃないか。もしまた八%なりの成長率が低過ぎるというのであるならば、またこれを、先ほど長官のおっしゃったように、完全雇用の問題もありましょうし、中小企業に対する打撃の問題もありましょうから、やはり成長率についてもっと高めるような意味の検討が要る。いずれにいたしましても、成長率の面、物価の面、社会開発の面、いろいろな面から見て再検討すべきが当然だと思いますけれども、いかがでございましょうか。
  132. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 物価の安定と経済の効率化と社会開発の推進でございますが、こういう基本的な考え方は、私、大まかにはその線で進んでいけるものと考えておりますので、この点を変える必要があるとは思っておりませんが、ただ、この裏づけになりました計数につきましては、初年度に三〇%近い設備投資になってしまいましたので、もし四十三年度も私どもの予測を裏切って非常に高い設備投資の伸びがあるといたしますと、これはもうその段階で考え直さなければならないことになると思います。が、幸いにして私どもの見通し程度、一割内外でございますが、それならばそう急いでそれを考える必要はない、あともう少し見ていけばいい、こんな気持ちでただいまおります。
  133. 竹本孫一

    竹本分科員 時間がないので論議を深めることができないままに、質問だけいたしますが、この経済社会発展計画というものには具体的な数字の裏づけが少し少な過ぎるような感じを持つが、どうか。それから、これを実現していくプロセスがいささか大ざっぱ過ぎて、もう少し具体的に示されなければ経済運営基本計画にならぬではないかと思いますが、どうか。三番目は、財政の裏づけというものもほとんど考えられていないようであるが、どうか。四番目は、技術革新というものはどの程度織り込んでおる計画であるか。五番目は、三次防がどういうふうにこれには関連をしておるのか、これだけお尋ねいたします。
  134. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまのような御批判はあろうと思いますが、私ども自由経済のたてまえで考えてまいりますと、まあこの程度の大まかなガイドというものでいいのではないかというふうに考えております。  それから三次防は、政府の財貨サービス購入の中に入っておる。経済的にはそれ以上でもそれ以下でもないものでございますから、そういうふうになっております。
  135. 竹本孫一

    竹本分科員 この問題はいまポイントを指摘しただけですけれども、それぞれについてわれわれはわれわれなりの考え方を持っておるのですから、また機会をあらためて論議を深めてまいりたいと思います。  そこで、最後にもう一つ伺いたいのですが、こうした計画が、まあ長官に言わせれば、おおむねその方向に流れておるのだとおっしゃいますけれども、ある意味においてどうも実態がめちゃくちゃになっておる。先ほど申しました設備投資にしましてもそうです。私はこれは偶然気がついたのだけれども、「昭和四十三年度の経済見通しと経済運営基本的態度」と、こう書いてある。これは少し過大広告になりませんか。とにかく政府経済運営、そしてその基本的態度、こういうことになれば、それは物価の問題にしても、設備投資のあり方にしても、自由経済だからこれくらいに荒っぽくやる以外には手がないかもしれません。もっと入ればいわゆる計画経済になるか官僚統制になる一つの議論です。しかし、少なくともこれには「経済運営基本的態度」と書いてある以上は、設備投資が行き過ぎるのだということについて長官のお考えがあるわけなんだから、これについても大体それを、態度で示そうよということばがあるように、基本的態度で具体的に示してもらいたい。ここに、日本の現在の段階における  計画性ということからいっても非常に不十分な点がある。これは一つは経済企画庁の権限の問題にも関係します。また、経済企画センターというような一つの制度的なあり方にしても、まだ不十分な点がある。いろいろの点がありますが、とにかく「経済運営基本的態度」という以上は、まあガイドラインというか、ガイドポストというか、遠くのほうから一つの方向づけをするのだという程度に、ある程度やむを得ない、がまんしなければならぬ点もありますけれども、もう少し乗り出して、経済企画庁の権限を強化するか、あるいは制度的なあり方を考えるかいずれにしてもその基本的な態度によって経済の運営ができるという基本的な方向だけはきまらなければ、設備投資一つ考えても、予定の一四・幾つからいくと、約倍になってしまう。これでは全く経済運営基本的態度にはなっていない。そういう意味で、この制度的なくふうをお考えになっておるかどうか。  それからもう一つ、この質問で終わりますが、大体こういう基本的な計画は、国によっては国会が議決をしておりますね。大きな国でも、フランスなんかはやっておるようですし、そういう意味ではこれはやはりもう少し大衆討議にかけるという意味も含めて、国会の承認というか議決を得るというよなことも一つの——それだから大いにうまくいくとは私は思いませんけれども、しかしあり方としては、やはり国の基本的運営に関する態度だということからいえば、そういう強いあり方も必要ではないかと思う。その二点について。
  136. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 経済運営基本的態度というのは、私どもことしの経済をこう考えるあるいはこうありたいといったようなことを数字で示すとともに、したがって政府としては財政はかりに非常に小さく組むとかあるいは金融は締めるとかいうようなことを述べておるわけであります。そうして設備投資についてもその線に沿ってやってもらいたい。しかし万一行き過ぎがあるようならば、政府としてもかくかくの処置をとらざるを得ない、こういったようなことを述べておるわけでございます。政府としては市場経済ではありますけれども、やはり財政それから税制、政府関係金融機関の貸し出し方針、中央銀行の金利、貸し出し量、それから通産省等によりますところの業界に対するいろいろな指導、これらの道具を持っておりますから、ある程度はこの政府考え方というものを経済の運営に反映させることができるわけであります。  それからこれを国会で議決をしたらどうかと言われます点については、国会にまでお願いして議決をしていただくということはややおそれ多いと申しますか、いまの段階ではなかなかそれほど自信のあるものができないというのが実情であります。
  137. 竹本孫一

    竹本分科員 希望を申し述べて終わりにいたしますが、もう少し政府のコントロールでも悪ければ、リーダーシップをぜひ発揮する制度的くふうをしていただきたい。これは経済企画庁のために私は言っているわけで、大いにひとつまじめに検討してもらいたい。  それから国会の承認なり議決なりということについては、非常に謙遜した態度で御辞退をされたのですけれども、私はやはりこの経済計画にほんとうの意味の方向づけと権威を持たせるためには、そのことも御検討を願いたいと希望を申し述べて、質問を終わります。
  138. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 十分国民に信頼していただけるようなものをつくるために、今後とも努力をしてまいりたいと思います。
  139. 小山省二

    ○小山(省)主査代理 午後は二時から再開することとし、暫時休憩をいたします。    午後零時五十三分休憩      ————◇—————    午後二時五分開議
  140. 植木庚子郎

    植木主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和四十三年度一般会計予算中、経済企画庁所管について質疑を続行いたします。山口鶴男君。
  141. 山口鶴男

    ○山口(鶴)分科員 ことしは明治百年といわれていますが、群馬県の足尾銅山の鉱毒は明治十一年から問題になりました。今日まで約九十年、百年近い長い月日がたっているわけであります。この渡良瀬川の鉱毒につきましては、故田中正三が全生命をなげうって、この問題解決のために努力をしたことは私ども忘れることができません。この長い間の紛争でございました足尾の鉱毒につきまして、去る三月の七日、水質審議会は、この渡良瀬川鉱毒問題について審議をいたしまして、渡良瀬川における銅の水質基準を〇・〇六PPMということを決定いたしました。その水質規制を昭和四十四年十二月一日から実施するということに決定されたようでございます。長い間の紛争に対して、一応の解決のめどを置きました点について、私ども喜んでおるわけでありますが、しかしこの基準自体につきましても、地元の皆さんは決して満足をいたしておりません。群馬県ないしこの地元におきましては、水質基準を〇・〇二PPMにしていただきたいということを強く要求いたしてきました。農林省におきましても、〇・〇四PPMでなければならぬ、こういう意見を出しておりました。企業の立場に立つ通産省だけが〇・〇八PPMという主張をいたしまして、結局は農林省と通産省の主張を足して二で割るというような形の〇・〇六という形で基準がきまったようでありました。何かこう非科学的な感じを持たざるを得ないわけであります。  まず事務当局にお尋ねをしたいと思うのですが、この足して二で割る式の〇・〇六PPM、そういうことなんですか。科学的根拠というのは一体どこにあるのですか、お尋ねをしたいと思います。
  142. 今泉一郎

    ○今泉政府委員 お答え申し上げます。  いま先生御指摘のように、長い関係の問題でございまして、水質の基準の設定に関しましても、いまおっしゃったような工場側、それからお百姓さん側と相当な相違がございました。できるだけ農民の方々の御要望に沿うようにやってきたつもりでありますが、必ずしもこれが会社側で、物理的にも経済的にも非常にむずかしい問題、また技術的にもむずかしい問題がございまして、なかなかそういかなかった。ことに先生御承知のように鉱山地帯でございますから、非常な広範囲にわたりまして方々に銅分を含んだ山が連なっているというふうな状況もありまして、なかなか思うとおりにはいかなかったのでありますが、御指摘のように〇・〇六というような数字でございましても、ほかの稲の発育その他につきまして、まあ大きな支障はないのじゃないか、こういうふうに専門の先生方の御研究を見まして判断いたしました。同時に、水質の規制だけじゃございませんで、農林省におきましては、農地に積もりました銅を含んだ土地の客土事業もやる、そういうことを総合して農業の対策に遺憾のないようにいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  143. 山口鶴男

    ○山口(鶴)分科員 この水質審議会が決定をいたします際に附帯決議と申しますか、「水質基準と併せて講ずべき措置」についても答申をいたしているわけでありますが、これを拝見いたしますと、「本水域の流水基準の確保について十分なる考慮を払い、万一この流水基準が確保されない場合は、これが実現について、すみやかに対策を講ずるものとすること。」ということを申しております。そのほかいま一つ客土事業についても触れておりますが、これはあとでお尋ねをしたいと思います。  問題は、この〇・〇六PPM、この水質基準がはたしていわゆる鉱害の除去ということを達成するために必要な基準であるかないか、これはいろいろ議論があると存じます。しかし一応そういうことが決定されまして、いまさらこれをすぐ改めるということは、これは不可能だろうと思うのですが、問題は、今後この流水基準が完全に守られているか、いないかということを監視する、いわゆる監視体制が問題だと存じます。過般決定されました公害基本法におきましても、政府のとるべき措置としまして、この監視測定体制の整備強化ということがうたわれておるわけでありまするが、問題はこの〇・〇六PPMがきちっと守られるか。しかもこれはかんがい期における平均の基準ということになっていますね。ですから、一度雨がたくさん降りまして洪水等が起きると、銅分をたくさん含んだものをたくさん溶かして一時に流れ出て、瞬間的にはもっと汚水の度合、銅の濃度が高まるということもあるし、それからまた濃度が高まると同時に、そういう場合は水量も多いわけですから、銅分自体の量というものも非常にこれは多くなると思うのです。そういうことを考えますと、〇・〇六PPMをかりに認めるとしても、これが最高の許容限度ではない。かんがい期における平均の数値であるということになりますと、ただいま申し上げたように、部分的には非常に高い濃度のものが出る場合も許容されることになるし、しかもそういった場合に流量が多いということは、銅分の量が非常に高まるということでもありまして、こういう点では非常に問題があるんじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。やはり〇〇六PPMをかんがい期の平均ということではなしに、最高の許容限度ということに押えていく、今後そういう形で押えていくという考えはございませんか。
  144. 今泉一郎

    ○今泉政府委員 御指摘の点は、先般の水質審議会でも問題になりました。いま先生のおっしゃったような規制のしかたをしてはどうか、あるいはできないかというふうなことも問題になったわけでございますが、いろいろ技術的な問題もございまして、何と申しまするか、物理的な精密機械みたいな議論とはやや違うものでございまするから、どうしてもやはり法令的に実効ある規制をするという場合は、審議会で答申になりましたようなかんがい期平均〇・〇六というものを考えるというほかないのではないかということになりました。しかしながら、私どもとしましては、しからばそれを一時的に非常に越えることを放任するとか、どうでもいいのだとか、そういうことではいけないわけでございまして、もちろんそれを大きく越えるようなことは極力ないように、そしてほんとうに農業かんがいに実害のないように、むしろ、より少なくするように努力していく。そのためには、やはり〇・〇六を確保できるように、十分なアフターケアと申しますか、監視をやるべきではないか、かように考えておるわけでございます。
  145. 山口鶴男

    ○山口(鶴)分科員 大臣にお尋ねしたいと思うのですが、公害基本法もできました。今回それにのっとりまして、水質審議会で水質基準もきまりました。実施は四十四年十二月からのようでありますが、今後これを実際にこの基準濃度で運用いたしまして、これでは十分な鉱害の除去というものが不完全である。さらにまた、今後科学技術の進歩等ございまして、企業にあまり負担をかけることなくこういった鉱害の除去というものも当然開発されていかなければいけないと思うのです。科学技術の進歩というものは、鉱害の除去という点にも私は向けられるべきものだと思うのです。したがいまして、そういうもろもろの要素を考えまして、今後、今回きめた水質基準を将来に向かってはよりシビアーな方向で規制をしていく、こういう形で私は当然政府としても対処さるべきだと思うのですが、今後政府として、こういった汚水を規制し浄化し、鉱害を除去していくということについて、よりシビアーな方向で規制をしていく、またそのためのもろもろの科学技術の進歩なり、これに対する助成なりということも考えて、そういう方向に向かっていく、そういうことに了解してよろしゅうございますか。政府としてのこの問題に対する基本的な考え方というものをひとつお示しをいただきたいと思うのです。
  146. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど政府委員から申し上げましたように、各方面の立場を考えながら〇・〇六PPMというものできめられたわけでございますから、鉱害除去という点からいって、これがもう理想的な基準だということは、なかなかやはり申しにくいところがございます。いろいろ苦労をいたしまして、ともかくこれならば最低限の目的には適合する、こういうことできまったように承知しております。したがって、ただいま仰せのように、今後技術の進歩等によって会社側に非常に大きな負担をかけずにさらに排水を浄化することができるようになれば、当然にもっときびしいと申しますか、理想に近い基準に改めていくべきものであろうと思います。ただいまのところは、非常に長い間折衝に手間どりまして、ようやく最低限満足できるという点に達したところでございます。
  147. 山口鶴男

    ○山口(鶴)分科員 次にまた事務的なことをお聞きしたいと思うのですが、銅に対しては許容限度というものをきめたわけでありますが、当然私は水素イオン、これの許容量というものをあわせて規制すべきじゃないかと思うのです。銅分が除去されましても、酸性が非常に高い。現在も石灰を投入してある程度酸性を除去するように企業でやっておるようでありますが、今回の規制でもって水素イオン、いわば酸性度については規制されなかったということになりますと、酸のほうは流してもいいということになったのでは私は問題だと思うのです。なぜ水素イオン濃度と申しますか、PHと申しますか、酸性については規制をなされないのか、また酸性を規制するということについては一体どう考えておるのか、その点をお聞かせいただきたいと思います。
  148. 今泉一郎

    ○今泉政府委員 今回の規制の対象は銅をやったわけでございますが、銅以外は無害であるとかいうつもりではございません。たとえば亜鉛などは銅と一緒に今回の措置におきまして相当除去できる部分もあるのじゃないかという考え方から、今後の状況を見て、必要があれば新たに規制も検討しよう、水素イオンのPHにつきましても大体同じような考え方で、これは何も銅と一緒に落ちるという問題でもないかもしれませんが、これも強過ぎれば当然問題になるわけでございますから、必要かあれば今後研究いたしまして、場合によっては規制の対象に加えていきたい。今回はとりあえず最も中心を占めました問題である銅について、おくれましたがようやく結論を出した。また、今後ほかの規制項目については研究を進めてまいりたい、かように考えております。
  149. 山口鶴男

    ○山口(鶴)分科員 それでは企業に対してはやはり酸の水を出さぬように規制をしていくわけですね。そして今後この水質の基準として、水素イオンですね、酸性度についても検討して、これについて水質基準として規定する必要があれば将来それを決定することもあり得るのだ、こう理解してよろしいわけですね。
  150. 今泉一郎

    ○今泉政府委員 さようでございます。
  151. 山口鶴男

    ○山口(鶴)分科員 そこで問題は、〇・〇六PPMで十分であるかないかという議論は一応おきたいと思います。問題はこの〇・〇六PPMの基準をきちっと守ることができるかどうかということであります。先ほど触れた附帯決議と申しますか、水質審議会で答申をする際につけました「講ずべき措置」の中にも、流水基準が十分確保される必要があるということをうたっておりますが、この監視機構は一体どういうところでおやりになるわけですか。当然経済企画庁が中心で当たられると思うのでありますが、関係省といいますと通産省とか農林省とか建設省というものも参加するのではないかと思いますが、中央官庁ばかりでなく、やはり現在の行政のたてまえ、地方自治ということ、住民の総合行政は府県がやっているということから考えまして、関係いたします群馬県及び栃木県、この両県がやはり監視機構の中で重要な役割りを占めるべきではないか、そうすることが必要であるし、またそのことが地元住民に対して大きな安心感を与えるということになろうかと思うわけでありますが、この監視機関については一体どうお考えでございますか。大臣のほうからお答え願いたい。
  152. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 十分関係県とも連絡をし、また協力も得たいと思っております。従来もそういう例はあるようであります。
  153. 山口鶴男

    ○山口(鶴)分科員 これはぜひ関係県を重要なメンバーとして加えてひとつ対処していただくことを強くお願いをいたしておきます。  次にお尋ねをしたいのは、こういった河川の水質の保全そのための経費が一体どのくらいあるかと思って資料を拝見いたしたのでありますが、公共用水域水質保全四千二百六十万円、たいへん少ないわけであります。そしてその内訳を見ますと、水質審議会の経費が三百二十万円、それから水質保全事務費が八百五十万円、水質調査費が三千万円というきわめてささいな経費しかない。しかもこれだけの経費で一体どのくらいの河川を監視をしているのかと聞きましたら、二十四河川もの多数の河川をこれでもって監視をいたしておるという話であります。これでは、たとえば事務費八百五十万円を二十四河川で割ってみれば、二河川当たり三十万円にも足らぬというようなことになるわけでありますが、こういったきわめて少ない経費で二十四河川もの河川の水質保全を監視することができるのだろうか。また渡良瀬川の鉱毒の場合も〇・〇六PPM、これはやはりきちっと監視をしてもらいたいというのが地元の願いだと思います。そうした場合に、この程度の経費でもって私は住民が納得するような水質の監視というものはできぬと思うのです。この予算との関係は一体どうなんでしょうか。
  154. 今泉一郎

    ○今泉政府委員 御指摘のように、私のほうの企画庁の水質関係予算というものは、通産省あるいは厚生省のように事業費的なものがございませんものですから、非常に少ない金額になっております。いま御質問になられました調査費の問題でございますが、これは先ほども大臣からもちょっと申し上げましたように、私のほうの職員だけが、わずかな人間が所々方々に出張いたしましてはかってくるというようなものではございませんので、それぞれ各府県にも水質担当その他の機関がございます。また農林省には農林省のそういう専門の機関がございます。通産省にも通産省の出先機関がございます。そういうところと相連携し、協力し合いまして水質監視に当たるというのが従来の慣例でございます。さようなことでもございますので、経済企画庁としての予算というものは比較的少のうございます。しかし、これで各県協力してまいれば相当なことができるはずだ、こう思っております。と同時に、渡良瀬川の問題につきましては、御承知のようにこれから規制が法的に発動するわけです。もちろんその法的に発動する前でも、われわれとしては十分現状をチェックしていく、これは必要でございますけれども、今後のアフターケアの経費につきましては、今後の予算にもまた盛るべき問題でもあるわけであります。私どもといたしましては、遺漏のないように自今十分に予算的な措置をしてまいりたい、こういうようにも思っておるわけでございます。事が緊要なことでございますから、私ども十分な監視体制ができるように、予算面でも遺憾のないように善処したい、そういうふうに思っております。
  155. 山口鶴男

    ○山口(鶴)分科員 結局〇・〇八PPMの暫定的な基準が四十四年一月からであり、〇・〇六PPMが十二月だということですから、その段階で水質監視をきちっと行なうに足る予算を確保すればいいということだろうと思いますが、それについてはひとつ遺漏なきを期していただきたいと思うのです。  それから、通産省、農林省あるいは建設省がそれぞれ予算を持ち合って監視をするという形がはたしていいのかと私は思うのですが、特に通産省などの場合は、ややもすれば企業擁護の立場に立っておる。むしろ私は、こういった問題を総合的に調整していく経済企画庁がこういう水質監視の関係予算もできるだけ握ってやっていく、もっとも各県の協力も必要でありますが、そういうことが望ましいのではないかと思います。そういう点はどうでしょうか、大臣。
  156. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これはおそらく大部分が出張旅費、それから現地で多少人夫を頼むとか、アルバイトでございますか、そういうものでございますので、私どものほうの役所はそう数もおりませんし、いま局長が申し上げたように、この点での不自由はおそらくしていないのだろうと思っております。金が足りなくて出張ができなかったというようなことはないのだろうと考えます。各省限りの出張でございますと、やはりその役所役所で旅費を持つということが従来の扱いでございます。弊害もなかろうと思います。通産省など、これはやはりあの水質基準をきめますと、あとそれを順守するために企業に対するいろいろ条件があるわけでございますが、やはりそのほうの監督官庁を入れでおきませんと、あとがなかなかうまくまいりませんのでそういうことがございます。旅費の点は、やはりおのおのの役所で持ってよろしいのではないかと考えております。
  157. 山口鶴男

    ○山口(鶴)分科員 まあ予算のことはいまのようなお話ですが、要は水質基準の監視ということに万全を期していただきたい。そのことを強く要請をいたしておきたいと思います。  それから時間もありませんから最後にお尋ねをしたいと思うのですが、今回この基準を守りますために治山事業として二十四億でございますか、建設省、林野庁それから山元が栃木県にありますものですから栃木県、この三者で五カ年計画で治山事業を行なうようであります。それにあわせまして、客土事業を十三億円の事業費で渡良瀬川の流域約七千二百ヘクタールにわたって行なうということが計画をされておるようであります。このような客土事業は、費用分担としては、二分の一が国庫負担、残りの二分の一を県といわゆる受益者と申しますか、これで持つという形が通例のようであります。通常の客土事業であるならば、そういった費用分担も一応理屈はあろうかと私は思います。しかし問題は、足尾銅山による鉱毒の被害を除去するために行なわれる客土事業であります。そういたしますと、この公害基本法におきましても、当然事業者の責任というものがあるわけでありまして、二十二条には、費用分担とございまして、「公害を防止するために国又は地方公共団体が実施する事業について、当該事業に要する費用の全部又は一部」について事業者が負担をするということも規定されているわけですね。そういたしますと、この足尾銅山の鉱毒を除去するための客土事業は国が二分の一持ち、残りの二分の一ですから四分の一を県が持ち、残りの四分の一を受益者が持つということは、私は筋が通らぬと思うのです。むしろ受益者の四分の一負担というのがあれば、これはその公害の発生の原因であるこの事業者、足尾銅山が責任を持って負担をするということが私は当然ではないかと思います。水質審議会が決定いたしました際の附帯決議と申しますか、これを見ましても、「被害地に蓄積されている銅分を除去するための客土事業の実施にあたっては、農民の負担をできるだけ軽減するよう十分に配慮すること。」ということがありますが、できるだけ軽減ということではなしに、この原因を考えれば、受益者に持たせること自体が筋が通らぬのではないかと私は思うのです。この客土事業の費用分担については、これは農林省の方にお願いしておったわけですが、いないようですから、それでは基本的な考え方を事務当局からまずちょっとお聞きしたいと思うのです。
  158. 今泉一郎

    ○今泉政府委員 非常に農民の方々の強い要望もございましたし、またいま先生おっしゃるように、事の筋合いが農民のほうは被害者であるということなんでありますから、その立場には非常に同情すべきものがあると思うのでございます。そういう実情を了承しまして、水質審議会の部会並びに審議会においても、ただいま先生の御指摘のような附帯決議が出たと承知しております。  私どもとしましても最終的にはこれは農林省が推進し、大蔵省と交渉の結果一つの予算の方針として決定されることであろうと思いますが、経済企画庁といたしましても大蔵省当局にも十分実情を話しまして、できるだけこの附帯決議の趣旨が実現できますようにつとめてまいりたいと思っております。ことに国庫負担分をどうするかということと、いま先生御指摘のように農民と会社の負担分をどうするかという両方の問題もいろいろございます。これは関係各省と相談して、できるだけ御趣旨のような線に沿うようにこれから研究してみたいこう思っておるわけでございます。
  159. 山口鶴男

    ○山口(鶴)分科員 それではこれでやめますが、大臣、どうでしょうか。私は通常の客土事業の国、県、受益者の負担、これはいいといたしますが、今回のような鉱毒によって起きました銅分を除去するための客土事業という特殊なものについては、やはり国、地方公共団体である県、それからこのような鉱毒の原因をなした事業者、この三者が持つべきだと思うのです。それで負担割合はどうするかということは、これは当然大蔵省あるいは農林省等において議論をしていただいてけっこうだと思うのですが、その基本的な考え方として、この農民に対しては受益者負担をかけるべきでない、あくまでも国、地方公共団体と事業者の三者がしかるべき比率でもって負担をすべきであるという考え方は一体どうでしょうか。ひとつ大臣としてのお考え方をお聞かせいただきたいと思うのです。
  160. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、現在の特定のケースを一応離れまして考えますと、公害ということがこれだけ世の中で言われ、また公害という観念ができつつあるわけでございますから、その次の段階はやはり加害者と申しますか、原因になった者にその除去及び結果の救済について当然責任があるという観念がだんだん育ってまいっておるように思います。公害基本法の中にもそういう考え方はございますが、これがもう一つ具体的に、どういう分担にするといったようなことまでいま進み得ないでおるわけでございますが、私は将来の問題としては、当然その公害発生の原因をつくった者の社会的責任というものは、やはり観念として定着すべきものだと考えております。  ただいまの具体的な問題につきましては、いま局長から申し上げましたようなことをせっかく私どもとして促進をしてまいりたいと思っております。
  161. 山口鶴男

    ○山口(鶴)分科員 それではこれでやめますが、少なくとも公害基本法制定の精神、また将来は無過失賠償責任も明確化していかなければいかぬという議論がなされました公害基本法制定の経過等考えまして、ひとつこの客土事業については農民負担は避けるべきである、先ほど申し上げたような国及び公共団体と事業者との三者でもって負担をすべきである、こういう方向で、いま答弁いただきました趣旨はわかりますけれども、ぜひともそういう方向でこの客土事業についても実施がなされますように、今後とも大いに経済企画庁におかれまして努力をいただくことを強く要請をいたしまして、質問を終わりたいと思います。
  162. 植木庚子郎

    植木主査 次は岡沢完治君。
  163. 岡沢完治

    岡沢分科員 それでは国務大臣としての宮澤長官にお尋ねしたいと思うのでございますけれども、最初に暫定予算関係でございますが、一部新聞の報ずるところでは、政府は三月九日の閣議で暫定予算約二週間程度の編成方針を内定されたというふうにお聞きしているわけでございます。もしそれが事実だとした場合に、暫定予算国民生活に及ぼす影響、あるいはまた国民経済に及ぼす影響、景気に及ぼす影響、特に物価の問題への影響、あるいは国民の暮らしの中で、御承知のように生活保護世帯の生活保護基準も、四月一日から一三%アップの予定でございますので、こういうものについての影響、あるいはどういう措置をおとりになろうとお考えになっておるのか、国務大臣の立場からお答えいただきたいと思います。
  164. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政府として、暫定予算を編成するという方針をまだ決定いたしておりません。本院並びに参議院におかれて、ただいま御審議願っております本予算案をなるべくすみやかに御審議を終わっていただきたいということを、お願いを申し上げておる段階でございます。したがって、暫定予算をかりに組むようになりましたときに、どういうものが盛られるべきかといったような具体的な検討もまだいたしておりません。
  165. 岡沢完治

    岡沢分科員 宮澤長官にしては、非常に正直かもしれませんが、お答えに不満がございます。と申しますのは、もう四月一日まで半月余りでございます。現在の審議状況、特に参議院においても当然慎重審議が要請される大事な予算審議日程等を考えました場合に、暫定予算を考えないということのほうがむしろおかしいんではないか。ことに地方財政への影響等も考えましたら、各省庁といたしましても当然準備されるべきいろんな問題点があろうかと思います。それではいつごろおきめになり、規模としては大体どういうことをお考えになっておられるか、やはり経済企画庁の立場から意見があってしかるべきかと思います。お答えいただきたいと思います。
  166. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それでは、政府として決定をいたしておりませんままでありますけれども——従来、暫定予算というものは何回か組んだことがございます。そして、ただいま生活保護費のことを、当然御心配でございますが、御発言がございましたので、従来の場合、どういうものを最低限暫定予算に盛り込んでおるかということにつきまして、経験がございますので、官房長からお答えをいたさせます。
  167. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 暫定予算でございますが、いま長官お答えになりましたように、きまっておりません。見通しといたしまして、出さざるを得なくなるのではないかというようなことがいわれておりますが、いま長官お話しになりましたように、かりに暫定予算を出すということになった場合にどうなるかということを申し上げたいと思います。  暫定予算と申しますのは、財政法三十条におきまして、政府は暫定予算を提出することができるという規定がございます。この暫定予算は本予算が成立をいたしますと失効して、そのまま本予算に吸収をされる、これが第二項でございます。この規定に基づいてつくるわけでございますが、国会審議権の立場から申しますと、本予算というものが通っていない段階で暫定予算を出すわけでございますから、したがって、政府の政策的な意図の入っておるものは、これは審議権を無視するようなことになりますので出しにくい。そういうことに従来考えられております。  そこで従来、暫定予算といいます場合には、その中身は骨と皮だけのもの、どうしても政府がその支出が必要なものだけを出すというふうに考えておりまして、しかもその日数も、予算が空白になる期間が少ないような場合には、必要最小限のものを出していくということであったわけでございます。  昨年は、御承知のように選挙の関係で非常におくれまして、相当長期の暫定予算を組みました。この場合には、先ほど長官お話しになりましたように、国民生活に重大な影響を与えてはいけないということで、御審議をいただいて通していただくということを前提に、かなり政策的なものも盛り込んだ予算を出したわけでございます。たとえば北海道におきます公共事業の促進でございますとか、生活保護費失業保険等についての増額分を乗せるというような措置を昨年は講じたわけでございます。本年は先ほどお話のありましたような状況でございまして、どれくらい空白になるのか、あるいはどういうことになるのか、政府としては年度内に必ず通してほしい、こう思っておるわけでございます。したがって、いずれにしても、かりに出す場合にも、非常に短期間の暫定予算になるのではないか。そういたしますと、そういった審議権の関係から、勢いあまり政策的なものに触れない暫定予算をつくらざるを得ない、こういうことに相なるかと思います。  そこで、普通に考えられます。四月当初にどうしても払わなければならない金は国債の利子——十六日過ぎますと、公務員の月給等が出てまいりますが、普通は国債の利子、それから失業保険の保険金の支払い。恩給が四月に支払われることになっておりますので恩給。それから、これは本来必要はないのかもわかりませんが、先ほどお話のございましたように地方の金繰りの問題がございまして、従来、生活保護費の補助金あるいは普通交付税等については、若干のものを四月当初から地方に交付いたしております。これが交付されないということになりますと、地方が金繰りの面で非常に困ってまいります。したがって、これを暫定予算に計上するかどうかというようなことがその際議論になろうかと思います。国民生活にはできるだけ影響のないような措置を講じたい、かように考えております。
  168. 岡沢完治

    岡沢分科員 この問題は本論でございませんのでこの程度でやめますけれども、しかし、あと二週間に迫っておることでございますので、一応長官から見通しとして、暫定予算の期間の幅、金額はどれくらいということを考えておられるのか。やはり経済企画庁長官の立場から、物価への影響、暮しへの影響は当然御配慮をいただいておると思います。それからまた今度の減税法案、それから増税法案である酒税と物品税の改正が出されておりますが、これがもし間に合わなかった場合にどれくらいの減収になり、またそれを何で穴埋めなさる予定であるか、もしお答えいただけるならお答えいただきたい。
  169. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは、なるべくそういう事態は招きたくないと考えておりますので、そうでないようにぜひ御配慮をお願いしたいと思っておりますが、盛り込むといたしますと、ただいま官房長からお答え申し上げたようなものになろうかと思います。  それから減税、増税の関係でございますが、減税は、所得税などは年末調整にならざるを得ないと思います。これはそれだけやや、その期間納税者に迷惑をかけることになります。増税のほうは、徴税になります時期がおくれるわけでございますが、たしか月に四十億ないし五十億ということじゃないかと思います。暫定予算の規模につきましては、したがって申し上げることができません。
  170. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 税法でございますが、長官お話しになりましたように、直接税のほうは関係がないわけでございますが、物品税、特にタバコにつきましては、五月一日になっておるので、これは関係がございます。ほかの物品税につきましては、もし年度内に通していただきませんと、物品税の中には本則に戻るということがございまして、増税になるのがございます。それから減税になるのもございます。そういう意味で、これはぜひ年度内に通していただきたいと思います。
  171. 岡沢完治

    岡沢分科員 やぶへびになりそうですから、この辺で暫定予算の問題は避けまして、きょうの本来の質問に入りたいと思うのでありますけれども、現在インドのニューデリーにおきましては、低開発国援助問題を中心に国連貿易開発会議の第二回総会が開会中でございますし、今月の二十八日にはインドネシアのスハルト大統領代行も、主として援助問題を中心に来日されるというふうに聞いておりますので、お聞きしたいと思いますが、日本の最近の海外援助、特に低開発国に対する海外援助の趨勢というのですか、移り変わりというのですか、特徴、そういう点について若干述べていただきたいと思います。
  172. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 詳細は後ほど調整局長から申し上げますが、賠償の時代から援助の時代に移ってきたわけでございます。それで国民所得の一%というのが各国の話し合っておる目標でございますけれども、なかなかわが国の場合には国民所得伸びが非常に多うございますために、実額は伸びましても、パーセンテージでいうと、またかえってそれが下がるというような場合がございまして、一九六五年に〇・七%をこしまして、六六年は〇・六九といわれております。そして六七年は、これはまだ確定した数字じゃございませんが、ちょっと〇・七をこえたのではないかと思っておりますが、はっきりいたしません。それで大要といたしましては、従来御承知のようなことでやってまいりましたが、今回、緊急な場合に限って商品による援助も行ない得るような法律改正を後日御審議願いたい、こう思っております。詳細は調整局長から申し上げます。
  173. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 最近数年間のわが国の援助につきまして、これはOECDのDACに出しておる各国共通の統計資料でございますが、それに基づきまして申し上げますと、一九六四年が総計二億九千百万ドルでございます。六五年になりますと、これが相当伸びまして、四億八千五百九十万ドル、非常に大きく伸びております。六六年は同様の計算をいたしますと、五億三千八百八十万ドルでございまして、ただいま長官もお話がございましたが、六七年につきましては、政府ベース援助につきましては、ほぼ四億ドル程度と考えておりますが、まだ民間関係の分が全部統計上まとまっておりません。かりに、これを従来の傾向値その他でほぼ推定をいたしますと、約二億六、七千万ドルになろうかと思いまするので、おそらく六七年、歴年でございますが、この合計は約六億六、七千万ドルということであろうかと思います。全体を通じた特色を申し上げますと、ここ数年にわたりまして日本経済協力というものの中には、政府ベース援助伸びているというふうに考えていただいてよろしいかと思います。
  174. 岡沢完治

    岡沢分科員 たしか、八日の閣議海外経済協力基金法を閣議決定なさって、国会にも御提案になったと思いますが、この内容、これは申し上げるまでもなしに、従来の開発援助に加えて商品援助の窓口を開いたというふうに考えるのでございますが、問題はその援助あり方方法ということになるかと思うのでございますが、政府借款のうちで、貸与条件の低いもの、過去の他の国への例等もあげてお答えをいただきたいと思います。
  175. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 援助条件につきましても、DAC等でこの程度のものにすべきだということが、いろいろ話し合いがございまして、わが国は、期間にいたしましても、利率にいたしましても、国際水準から申しますと、まだかなり遠うございます。具体的な数字につきましては、調整局長からお答えを申し上げます。
  176. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 ただいまお話のございましたように、援助の全体的条件はまだ日本の場合には各国に比べまして、必ずしも低い、あるいは緩和されておるというふうに申せないと思いますが、いま御指摘の、特に利率あるいは年限等の長期、低利のものということで、一、二の例を申し上げますと、たとえば韓国につきましては、利率三・五%、七年据え置き含む二十年という政府借款をいたすことになっております。また中華民国、台湾でございますが、これに対しましては、決定額のほぼ三分の一程度のものを三・五%、二十年、また三分の二程度のものが十二ないし十五年で利率が五・七五%、こういったような例がございます。
  177. 岡沢完治

    岡沢分科員 この基金法改正は具体的にはインドネシアが求める商品の輸入について、長期低利の借款を与えるということがねらいかと思うのでございますが、いずれスハルトさんが近く来られるわけでございますが、インドネシアに対しては、どの程度の利率を予定しておられるのか、あるいは期間、金額等についても、お答えできる範囲でけっこうでございますけれども、一応の見通しについて、国民も大きな関心がございますし、また国民の大事な血税を使うわけでございますので、お答えをいただきたいと思います。
  178. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 午前中にも多少関連してお尋ねがございましたわけですが、一応私どもとしては、インドネシアの現状を見たり、あるいはコンソーシアム全体の意見を聞いておりますと、今年度も相当の援助を与えなければならない実情であろう、こう判断をいたしまして、四十三年度の予算編成に際しましては、一応昨年度と同額の六千万ドルを経済協力基金に組み込んでおるわけでございます。昨年は御承知のように、条件につきましては、輸銀のほうが五%、そしてそれに一千万ドルが一般会計から出ておりますので、有効利率は三%になっておると思います。今年もおそらく同じような条件を先方は望むのではないかと考えております。金額につきましては、私どもいま一応六千万ドルを用意いたしておる、しかし最終的にはインドネシア側の実情それからコンソーシアムの意向によってどういうことになりますか、それで済むものかどうか、必ずしもはっきりいたしておりません。  それからやがて御審議を願いまする協力基金法の改正は、ただいま仰せられましたように、緊急の場合に商品援助を行ない得るという点が改正案の中の一つの点でございますが、これは特にインドネシアということだけを考えておるわけではございません。ただ、ただいまそのような緊急な状態にある国が——確かにインドネシアは今年初め以来そういう状況にあるようでございますから、もしそうであれば、この法律を御可決いただきましたら、あるいはこれを発動することになる場合があるか、こう思っております。
  179. 岡沢完治

    岡沢分科員 いまのお答えからいたしますと、六千万ドル昨年並みということになりますと、実質上三%の利率というふうに解していいかと思います。そういたしますと、現在の財政状態、財政硬直化といわれることは、私から御指摘を申し上げるまでもございません。また、特に外貨準備の状況等を考え、一つの国に六千万ドルという大金を投与することが国民感情として、特にその利率を考えました場合に、日本国民が一番求めている一つは住宅建設だと思います。その住宅建設の資金、住宅金融公庫の利率は昨年も五分五厘でございますが、それよりも安い金利で外国を援助する。もちろん、それは国連の一%決議もございますし、DACの援助条件よりは下回っていることは確かでございますけれども、そういう国際的な批判はありましても、国民感情としてはやはり納得できないものがあるのではないか、ことに日本の場合はいかに国民総生産が世界第三位といわれましても、実質的な国民の個人の所得は二十位に低迷しておりますし、それ以上の社会資本のおくれ、いま申しました住宅とか道路とか、先ほど御質問申し上げました公害問題とかいろいろなおくれの面は、これはその数字以下のものであるというのが実態ではないか、その際に、この金額、この金利ということについては、若干国民としては納得できない点があるのではないかと思いますが、この辺についての長官の御意見を伺いたいと思います。
  180. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 確かに国内でいろいろのことが決して十分でない状態において、外国援助をするということは身分不相応といいますか、そういう感じがいたすこともございますし、これはわが国ばかりではありませんで、相当の先進国、世界第一の先進国と思われるような国においても、国内ではときどきそういう議論がやはりございますから、そういう国民感情があることは、私はもう認めるにやぶさかではございません。しかし、わが国の場合、とにかく第三次大戦があっては断じてならないという立場をとっておりますし、憲法にもそれをいっておるほどの国でありますから、やはりそうなりますと、国際間の紛争の種がだんだんなくなっていくように、そうして、南北間脳などの格差が是正されていくようにということは、それはわが国の憲法が定めておる国是でもあるように考えます。また、国連経済協力の条章にもございます。でございますから、かなり苦しいながらも、やはりできるだけ援助を続けていくということが、相手国のみならず、世界平和を通じてわが国にも直接の国益にもなる、こういうふうに考えていくべきであろうと思います。三%という利率は非常に低うございます。従来わが国がやっております経済援助の平均の利率は、五・何%だそうでございますが、それにいたしましても、ずいぶん低い率でございます。しかし、このコンソーシアムというようなよその国とのつき合いでもっていたしますと、わが国だけが高い利率というわけにはやはりまいらない。向こう側もまた、わが国だけにそういう高い利率を認めるというわけにもまいらないでございましょうから、どうも、ことに財政がこういうおりに、まことに苦しいことではございますけれども、これも結局一つの国益であると考えて、応分の負担はしていくべきではないかと思います。
  181. 岡沢完治

    岡沢分科員 国益とおっしゃる意味あるいは国連の精神その他からわからないわけではございませんが、しかし、過去の例からいたしますと、せっかく国民血税援助した効果と申しますか、逆に経済発展を——発展の自分の努力というのですか、その努力を阻害するというような結果を招いたような協力が、私はないとは言えないのじゃないか。援助に関連する汚職等も報じられたこともございます。まず、ことに今度この基金法の改正で商品部門への援助を開かれたというのを見ますと、逆に考えますと、開発よりも商品のほうをいまごろになってうたい出した。逆コースじゃないか。初めに商品援助があって開発援助に移行していくというのならわかりますけれども、結局、従来の開発援助の努力とか効果がなかった一つの反証と見てもいいような結果が、今度の改正案の一つのあらわれだというような見方もできないことはないのではないか。古めかしいことばでございますが、私の好きなことばに、西郷隆盛の「児孫のために美田を買わず」ということばがございます。いたずらに後進国に援助することが決して国益でもなければ後進国のためでもない。むしろ自助努力についての技術協力とかあるいは日本の明治維新後の経験についての、ことばは悪うございますけれども、行き方について低開発国に学んでいただく。ことに、もう大部分の国が独立して二十年を経過した後、なお現状の姿ということについては、いたずらな先進国の無計画なと申しますか、善意かもしれませんが、効果についてアフターケアの足らない援助が、逆に怠惰と言っては語弊があるかもしれませんが、いまだに低開発国があの状態にあるという結果をもたらしたという見方もできないことはないという感じがするわけでございます。これについて長官の御見解と、国民血税を使った授助についてのアフターケアと申しますか、効果についての追跡努力等についてお考えがあれば、あるいはまた、事実関係についてもしお答えしていただけることがあれば、お答え願いたいと思います。
  182. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 特定の国の名をあげずに、一般論として申し上げるわけでございますけれども、確かに、従来この援助がわれわれの善意に反して有効に使われなかったのではないかと思われるような例が一般的に申しましてあるのではないかと思います。したがって、この点は決して相手国の内政に干渉するという意味合いではなくて、いい意味でのアドバイスをしていくということは大切なことであると思います。けれども、他方、これは場合によっては非常に微妙な問題になるわけでありまして、わが国も敗戦直後は残念ながら他国の援助を受けたわけでございますが、その際につけられるいろいろな条件、あるいは説教といったようなものを非常に苦々しく思ったことを、いまでも私ども記憶いたしております。でありますから、もちろん善意でなければなりませんし、相手側の自尊心を傷つけるとか内政干渉になるとかいうようなことの誤解を受けない程度で、いわば、こちらが少し先進国でございますから、アドバイスをしていくということはぜひやはり必要なことだと思っております。
  183. 岡沢完治

    岡沢分科員 インドネシアについて、具体的に、先方の国に失礼にならぬ範囲でお伺いしたいのでございますけれども、御承知のように、昨年一年間にインドネシアに、わが国だけではございませんが、約二億ドル借款をいたしております。それからまた御承知のようにインフレでございまして、米の値段等も一年間に三倍強、肉も二倍半になっておるというように聞いております。また昨年六月にわが国が六千万ドルの援助をきめましたときも、スカルノ政権時代に与えました延べ払い信用四千五百万ドルのリファイナンスを同時にきめたようないきさつもございます。そういうことを考えますと、せっかく貸しました金の回収について、私は非常に心配するものでございまして、回収不能のおそれはないのか、その辺の見通しについてお答えいただきたいと思います。
  184. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 新政権は、過去の借りました金については、いわゆるモラトリアムを要求してはおりませんで、金を借りかえまして、かなり長い期間で返すという立場をとっておるようでございます。私どもとしては、したがって早く国力ができまして、その約束されたとおりの条件で返してもらうということを願っております。何ぶんにも外国のことでございますので、必ずそうなるだろうということを、いまここで確言をいたすわけにもまいりませんが、決してモラトリアムというようなことを先方も考えておりません。具体的に返済条件は約束をしておるわけでございます。
  185. 岡沢完治

    岡沢分科員 最後に、今度の援助につきまして、一部ではアメリカのロストウ氏が年の初め早々に来られたことと結びつけまして、アメリカのアジアにおおける反共体制の一環として援助がなされるのじゃないか、日本の自主性について懸念する向きもあるわけでございますが、この辺について、長官はいかがお考えでございますか。
  186. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私の直接知っておりますことは非常に限られておるのでございますが、ロストウが一月に参りましたときに、その一緒に参りました補佐官から、この問題について、多少の発言がございました。それは、むしろいま言われたようなことではありませんで、インドネシアの実情を見ると、相当にインフレが進行しておって、しかも、先ほどおっしゃいましたように、米はじめ物資が払底しておる。そこでこれから各国金を貸すについてばらばらに行動をすると、かえってインフレを助長することになるかもしれない。したがってコンソーシアムを通じて一緒に意思統一をしてやろうじゃないか、こういう発言がございました。私どももそれはもっともなことでございまして、従来もコンソーシアムを通じましてやっておりますので、ではひとつ相談をした上でやりましょう、こういう返事をしたことがございます。それ以外には何かアメリカの体制の一環としてといったようなことを、私聞いたこともございませんし、そういうつもりでもございません。
  187. 植木庚子郎

    植木主査 大体時間がまいりましたから、なるべく……。
  188. 岡沢完治

    岡沢分科員 時間がまいりましたので、終わります。
  189. 植木庚子郎

    植木主査 御協力ありがとうございました。  次に、岡本富夫君。
  190. 岡本富夫

    岡本(富)分科員 私は、宮澤経済企画庁長官が二月二十八日に衆議院の公害対策特別委員会におきまして所信表明されましたその中に、「国民生活行政を所掌する経済企画庁におきましては、経済成長の成果がひとしく国民の生活向上に結びつくよう、人間尊重と社会開発を行政基本とし、公害問題に取り組んでいく」こういう所信表明がありましたので、これに基づきまして若干の質問をいたしたいと思うものであります。  この中に、全国で二十水域の排水の水質基準を設定し、またその確保につとめてまいった、こういうように仰せになっておりますけれども、どことどこで、どういうように確保されたかひとつ……。
  191. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 水資源局長からお答え申し上げます。
  192. 今泉一郎

    ○今泉政府委員 お答え申し上げます。  昭和三十七年の九月に江戸川を手始めといたしまして、以下淀川、木曽川等、最終は昨年の九月に加古川の水質を決定しておる、こういう状況でございます。
  193. 岡本富夫

    岡本(富)分科員 加古川の水域をおきめになりましたけれども一向にきれいになっておらない。それから、この法律は三十三年に施行されまして、ちょうど十年になりますけれども、その中で二十水域といいますと、一年に二水域、非常におそい行政であるように思うわけです。全国には相当よごれた川がありますが、このままでは百年くらいかかるんじゃないかと思われるのですがどうですか。
  194. 今泉一郎

    ○今泉政府委員 確かにこの水質に関する法律ができましてから、まあ今日までやってまいりましたのが二十。私どもの思うとおりに必ずしもいっていると考えるものではございません。ただ相当ややこしいものから手がけている関係もございまして、一件を処理するために相当な手間を要しておるという結果、こういう実情になっておるわけでございます。しかし、これをもって満足すべきものじゃないのは当然のことでございまして、私ども、何とかこの打開の方法がないであろうかということをいろいろ考えておるわけでございます。その一つといたしまして、できれば府県とも協力いたしまして、府県にも積極的に水質の規制を分担していただく、現在もうすでにやっておられる府県もたくさんあるわけでございますが、そういう体制をとっていったらどうであろうかというふうなことも考えておるわけでございます。そのようないろんな施策を積み重ねまして、ぜひ水質の規制をもう少し拡大強化していきたいと考えておるわけでございます。
  195. 岡本富夫

    岡本(富)分科員 長官に申し上げますが、五十五国会におきまして、私は加古川の水をやかましく言いまして水質基準をきめていただいた。けれども、まだ一向にきれいにならない。結局、御承知のように、国民生活向上ということになりますと、水がきれいにならないと何にもならない。また、こういう例があります。経済企画庁が水質指定をした地域、兵庫県と大阪府との県境にあります神崎川あるいはまた淀川、大阪市内の河川寝屋川、大和川、これを一ぺん例にとってみますと、いままでその地方の条例で取り締まっておりましたのが、今度経済企画庁が水質指定をしたために、その中で七十四工場の取り締まりが不能になった。要するに、条例で取り締まっていると、その七十四工場も入るわけです。この七十四工場の一日の排水量が約十一万トン余り、汚染が非常に激しい。これはどういうところに原因があるのかということを調べますと、経企庁が水質保全法で指定します。そうすると、今度は工場排水法というのが必ず一緒にくっついてくるのです。いままで条例で取り締まっておりますと、非常にスムーズにいっておった。ところが、工場排水法という法がちゃんとくっついてくるものですから、条例よりも国法のほうが上でありますから取り締まれなくなった、こういう事例があるのです。  そこで私の画期的な見解ですが、水質保全法と、それから工場排水法を一緒に足しまして、要するに、基準をきめると同時に、今度は取り締まるほうもきちんと一緒にする。そうして、ここに公害対策基本法を制定されたわけですし、厚生省のほうでは大気汚染防止法、こういうのも今度出すという話でありますが、同じように水質汚濁防止法、これは仮称でありますが、こういうような実施法を制定されたらよいのじゃないか、こう思うのですが、長官いかがでしょうか。
  196. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私どもは、公害基本法ができましたので、現在の水質保全法でございますか、これを改正する必要があるのであろうというふうに考えておるのでございます。それは、いま岡本委員の言われました水質汚濁防止法といったようなものにかわる、実際は同じようなことをねらっておりますが、この水質のほうは、すでに法律が先にできて施行されておりますので、これを一部かえよう。その一つは、規制の対象を当然広げることになると思います。舶舶の廃液であるとか、し尿処理であるとか、屠畜場であるとか、砂利の採取場であるというようなこと。それからもう一つは、環境基準に当たるもの、水域基準とでも申しますか、そういうものを考える。そういったような点で改正が必要なのであろうということで、いま関係の各省と相談中でございます。  それから、いまの大阪府の条例のことは、私も一ぺんそういうことを聞いておりまして、ちょっと詳しいことをいま覚えておりませんので、局長からお答えいただきたいと思います。
  197. 今泉一郎

    ○今泉政府委員 御指摘のように、先般淀川並びにその近辺の川についていろいろ経緯がございましたが、国で水質の規制を行なう。それは御承知のように、京都並びに大阪両方にかかっております関係上、これを一括して国でやるのが適当ではないかという話になりまして、それで長い間関係者の非常な御協力と検討を願って、審議会の答申を得た、こういう形になったわけです。そのとき若干の工場がワク外、規制の外に残ったというのは御指摘のとおりでございます。ただ、これは国としての規制外には残りました。それは先ほど先生おっしゃった工排法の特定施設であるからでありますが、条例をもってこういう工場を規制していくことの可否は、これは別問題でありまして、私どもといたしましては、大阪府が当然その権限と権能に基づきましてそういった工場を地方住民のため取り締まっていく、こういうことで、いささかも異議を申し立てているつもりはございません。ぜひやっていただきたいものである、かように思っているわけでございますが、若干法制的な問題にわたる問題もありますので、この点については法制局とも相談しまして、いま申し上げたような方法で解決するように大阪府のほうにもお話し申し上げている、こういう状況でございます。
  198. 岡本富夫

    岡本(富)分科員 長官、この問題につきましては、私、商工委員会で取り上げまして、これで約三月ぐらいになりますか、そのとき資源局長がいまのような御答弁をなさった。そして、まだ通産省との意見調整ができていませんし、経企庁としてもまだこの問題については結論が出ていない、じゃあ、その問題については、これはひとつ一日も早くはっきりしてもらいたい、なぜかと申しますと、条例で取り締まったらいい、こういうふうに言われますけれども、今度は各事業者、工場のほうになりますと、条例よりも国法のほうが上だ、みんなそう言って逃げちゃうわけです。いままで経企庁が指定しておらなかったならば、条例ですからこれはうまくいっていた。今度は経企庁が指定したために、直ちに国法が適用される。こういうことになりますと、いまあなたがおっしゃるようなわけになかなかいかない。あらためてその大阪府の条例で取り締まってもらったらそれでよろしい、こういう経企庁のほうの指示でありますなんて事業所に言ったところで、何言ってんですか、こういうことになるわけです。  もう一つ、業種別に見ますと、これは工場排水法になりまして通産省の関係になるのですけれども、工場排水法の業種で見ますと千八十一しか取り締まれない。ところが条例では千五百五十三。要するに、五百の事業所は取り締まれなくなってくる。こういうようなギャップ、ひずみがここにできているわけです。そこで、よもやこんなことが起こるとは思わずに、おそらく経企庁のほうでは、これは京都と二県にわたっているから指定したとおっしゃっているわけです。初めから、これはこういうふうになるということはわかっていたんですか。
  199. 今泉一郎

    ○今泉政府委員 はなはだ恐縮なんでございますが、私も初めからそれがわかっていたかどうか、ちょっと明確にお答えいたしかねますけれども、少なくとも答申する場合は、審議会に付議いたしまして検討願う段階におきましては、もうすでによくそういう問題がわかっておりまして、大阪府とも幾たびか御相談申し上げた、その結果、先ほどお答えしたような状況になっておる、こういうふうなことだと思います。
  200. 岡本富夫

    岡本(富)分科員 じゃあ、七十四工場が漏れるのは初めからわかって、そして、その人たちの苦情問題に対しては国法では取り締まれない。条例のほうでは、もう効力がなくなるということはありませんけれども、取り締まられるほうになりますと、工場排水法になりますね。こういうことの是正を最初にせずに、初めからわかってやったことになるわけですね。そうすると、大阪府と話し合ったとおっしゃいますけれども、大阪府のほうでは納得しませんし、第一、府で納得しようとも、要するに、工場の排水がきれいにならない。国民の生活は困る。それはちょっと局長さん、いいかげんな答弁じゃありませんか。私そう思いますね。だから、最初あなたのほうでこれを指定すはるときに、そういう問題が起こるとは夢にも思わなかった、知らなかったのだ、こう言うなら、ぼくは話はわかると思うのですが、どうですか。
  201. 今泉一郎

    ○今泉政府委員 先ほどお答えしたので事実に間違いはないのです。知らなかったのでも申しわけないことでございまして、さっぱり知らないでやったのじゃ、これも国の役人として申しわけない。そうかと申しまして、府県のほうとしても、先生おっしゃいますようにやりにくいでございましょう。でございますから、やはり国の水質保全に関する法律というものをもうちょっと強くする、あるいは拡大するとか、そういうことはやはり検討すべきものじゃないだろうか。そして府県と相携えてやっていくべきじゃないかと思うわけでございます。
  202. 岡本富夫

    岡本(富)分科員 いま局長さんが答弁なさったように、確かに各地方公共団体と話し合いの上でやっていくべきである、一方的ではいけないということを仰せになりましたけれども、経企庁としては水質基準を指定するだけ、きたないからというわけで水質基準を指定して、ここまでしなさい、あと今度は、取り締まるのは工場排水法、要するに、これは通産省の関係になります。こういうような二重の行政になりますと、そこまで気がつかない。それなら、最初から工場排水法をきちんとこの条例に合わせて、そしてそこまで法改正をしておいてやれば、これは何の問題も起こらなかったと思います。そこで、その問題についてまでちゃんとせずにやったということになるわけですが、この問題は、やはり水質基準をきめるのが経済企画庁、それからこれを今度取り締まるのは通産省、こういうようになっておるがためにうまくいかない。そこで、いま私が提唱いたしました水質汚濁防止法、この二つをひっくるめた法案にしたほうがよいと思うのですが、どうですか、長官。
  203. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、冒頭に、水質基準を設定した河川が数が少なくて、これではたいへんかかるではないかというおとがめがございました。水質基準一つきめますのにも、実はこれをきめた以上は、これが守られなければならないわけでございますから、当然関係各省と相談をしなければきめられないわけでございます。まあ、公害ということが比較的新しい概念でございますから、おのおのが従来の頭というものはなかなか切りかわりませんで、やはり企業の中には、むしろ川があるからそこに工場を持ってきたのであって、それはもう大正何年からやっておる、いまになってそんなこと言ったって、というようなことをいまだに言う人があるぐらいでございますので、なかなか観念がそろわない。それで水質基準をきめるのに時間がかかるのも、そういうためでございます。それで、いま岡本委員が言われますように、もし、そういう法律を一本にしてしまって、それでぴしっときめれば簡単なようでありますけれども、実はそうしますと、やっぱり産業を担当しております役所には、その役所の主張も意見もございますし、そして実際企業に水質基準を守らせるという段取りになれば、これはもう監督官庁がそういう指導をすることが、何といってもよく相手も話を聞いてくれるわけでございますので、私どもとしては、できるだけ各省の調整をとりながら水質基準をきめる、きめたものはこれは守ってもらう、それですから時間がかかるわけでありますけれども、やはりそういう行政をやっていくしか、どうも具体的に考えてみますと、それ以外にやりようがないような気がいたします。   〔主査退席、小山主査代理着席〕
  204. 岡本富夫

    岡本(富)分科員 長官のいまの答弁を聞きますと、各省の調整をとっていくといいますけれども、そういういろいろな企画をちゃんと立てていくのが長官の役目ではないかと思いますし、また、基本法もできましたのですから、ここらで画期的な——従来と同じようなことをやっておりますと、二十水域しかきまってない、きまってないのはしかたないとしても、きまったところが、先ほどのように、加古川の状態も少しもきれいになっていない、これは通産省の責任でございます。いや、厚生省の責任でございます。こういうことでは、確かに企業の方とよく話し合うのも大事でありますけれども、やはり強力に進めませんと、これはいつまでたってもうまくいかない。そこで、ひとつこういう画期的な考えを、いますぐに制定というわけじゃありませんけれども、将来はやっていかなければならぬ、こういうお考えはありませんか、どうでしょう。
  205. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 結局、これは公害というものを考える頭の切りかえの問題であろうと思います。それは役所ばかりでなく、企業家も住民も全部の切りかえの問題であろうと思いますので、そういう基盤が年とともにできていきましたら、いまのように手間のかかる、非常に煩瑣な行政をしなくて済むようになるのではないかと思います。
  206. 岡本富夫

    岡本(富)分科員 それは、もう少し時間をおいてよく考えてください。  そこで、通産省の熊谷さん見えていますか——どうですか、この水質二法と工場排水法、両方とも若干ざる法と言われておりますけれども、これをまとめて一つの法案をつくるほうがよいと私は提案しているのですが、あなたのお考えはどうですか。
  207. 熊谷典文

    ○熊谷(典)政府委員 一つの御提案だろうとは思います。しかし御承知のように、ばい煙規制の問題にいたしましても、水質問題にしましても、どういう基準でいくべきかということは、これは政府の基準としてはっきりしなければならぬと思います。それに個々の企業が水質基準とかいろいろなものを合わせていく、これにはいろいろ技術の進歩もございます。そのほか設備投資の場合にそれを織り込むというような問題もございます。したがいまして、これは通産省だけの問題ではございません。私の考えでは、各省がその気持ちになってやるのが一番効果があがるのではなかろうか。もちろん姿勢の問題はございますが、私はそういうふうに考えております。
  208. 岡本富夫

    岡本(富)分科員 各省が協力してやればそれは一番よいのです。その一番企画をつくって調整するところが経企庁なんですけれども、現在ではうまくいってない。その一つの例を申し上げますれば、あなたのほうの排水法の中に施行令というのがありますね。この施行令に一つ例をとりますと、この施行令の中に、どういう工場を取り締まらなければならぬということがあり、その中に飲用牛乳の工場が対象になっている。ところがバターやチーズや、このごろヨーグルトというのができておりますが、このほうの製造は対象になってない。こういうのは一本にしぼって食料品製造の用に供する施設、こういうふうに一つに包括した施行令にすれば、どれもこれも取り締まることができる。要するに、条例で取り締まっておったのも入ってくる、こういうふうに思うのですが、どうですか。  それから、同じように化学薬品の問題がある。これは化学薬品の名前も出ておるわけです。ところが薬品も日進月歩していくのです。それから、もう一つ申し上げますけれども、たとえばステンレスの加工工場があります。小さな注射針をつくっているところが厚生省、ちょっと太いパイプなんかつくるところは、これは通産省なんです。一般の家庭用品をつくると、これは知事、また車両工場、これは運輸省が管轄しております。時代の流れで、科学機械とかあるいは中には電気製品をつくったり、あるいは毛編み機をその中でつくり出している。こういうことによって管轄がどの省になるかわからない。この二つの問題につきまして、これはいろいろと企画される経企庁の長官に、こういうのはやはり行政の一本化が必要ではなかろうか、同じこういう中でも変わるわけです。また指定する場合に、包括して指定することが必要である、こういうように考えるのですが、いかがでしょうか。
  209. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは確かにおっしゃるようなことがございます。縦割りの行政をやっておりますものですから、世の中が変わりましてもなかなかいままでの、ことに管轄権の問題などになりますと、簡単に新しい事態に即応するということがなかなかできないものでございます。しかし、やはり時代に即応して変えていかなければならない。一般の人が見て、ちょっとしたところで管轄が違っているなんていうことは、ほんとうに国民にもずいぶん御迷惑をかけておると思いますので、常にそういうことは心がけていかなければならないと思います。これは一つの行政機構改革の問題でもございます。ことに、この公害につきましては、これが比較的新しい観念であるために、まだまだみんなの頭にこれがうまく入りません。行政をいたしますほうも同様。したがって、先ほどもおっしゃいましたが、このくらいの企業は除外してもいいだろう、なるべく除外例を多くしておくようなことで従来きておると思いますが、もうだんだんそれでは済まなくなる。公害という問題がそれほどやかましくなりますと、そういうことについてはそのつどそのつどやはり即応していかなければならないものと思います。
  210. 岡本富夫

    岡本(富)分科員 いまの行政の一元化、この問題について長官は、即応していかなければならぬというおことばですが、一元化していかなければならぬ、こういうふうに私は提案しておるのですが、どうですか、長官。
  211. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私は、行政をなるべく簡素にしていくということは賛成でございますが、公害だけという観点からその業種を見るということは、また非常にいろいろ問題があるだろうと思います。やはり総合的に考えていかなければならぬ、ただ、それにしても、いまの縦割りは、私はあまりこの時代に向いてない部分がかなりあるというふうに考えておるわけでございます。
  212. 岡本富夫

    岡本(富)分科員 時間ですからもう一点だけ。新潟の阿賀野川の水質基準をおきめになりましたか。これは経企庁のほうで、どうですか。
  213. 今泉一郎

    ○今泉政府委員 きめておりません。と申しますのは、御承知のようにたびたび産業公害対策特別委員会で問題になっておりまして、水銀中毒の問題につきましていま最終結論が出かかっておる、こういう状況でございますから、それを見守っておるわけですが、阿賀野川で問題になりましたのは先生御承知のとおりメチル水銀でございます。しかして鹿瀬工場はやめてしまいました。また瓦斯化学の工場もやめてしまいましたものですから、過去に発生した悲惨なる事件ではございましたが、将来にという問題として考えますと、また問題が異なってくる、こういうことになろうと思います。
  214. 岡本富夫

    岡本(富)分科員 水質保全法の第五条第一項に、経企庁長官は公共用水域のうち、当該水域の水質の汚濁が原因となって公衆衛生に看過しがたい影響が生じたもの、またおそれあるものを指定水域として指定するという一項があるわけです。これをやらないということは若干責務怠慢であると私は思うわけであります。いろいろずいぶんわけがあったと思いますけれども、やはりあの地域をよく一ぺん見ていただいて、今後の問題もあると思いますから、やはりやったほうがいいと私は思う。同時に、いまの被害の人たちが非常に納得するのではないか、こういうふうに思うのですが、どうでしょう。
  215. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点は、御承知のとおり厚生省の食品衛生調査会で一つの結論を出しまして、そして科学技術庁がこれについての各省の意見を聞いておるわけでございます。科学技術庁長官のお話によりますと、この年度内に最終的な結論を出そう、こう考えておられるようであります。  さて、そこで問題は、その結論がメチル水銀が原因であるということで出ましたときに、水質基準を設定すべきかどうかということでございます。もちろん工場が現に仕事をしておれば、これはもう水質基準を設定いたさなければいけないわけでございますが、両方の工場とも閉鎖をいたしてしまいましたので、今後そういう公害が新たに発生する危険はなくなった。それでもなお教育的な意味で設定をしていくほうがいいかどうかという問題だけが残ると思います。その辺はよく考えてみたいと思います。新しい発生は、いまのところもう可能性としてはなくなったわけでございます。
  216. 岡本富夫

    岡本(富)分科員 それでは時間が参りましたから、これで終わります。
  217. 小山省二

    ○小山(省)主査代理 島本虎三君。
  218. 島本虎三

    島本分科員 ただいま長官から岡本委員に対していろいろな答弁がございまして、私もそれを聞いておりましたので、ダブらないように始めてまいりたいと思います。  私も同じような立場で、この水質保全の問題について、最近高くなってきた公害の発生率からして関心を持っておるわけなんであります。それで、前回からもすでに長官には一部私の微意を漏らしておいたのでありますけれども昭和四十二年十一月二十五日に、長官は内閣改造で経済企画庁長官に留任されました。そして十二月二十二日に産業公害対策特別委員会に参りまして、その所信の表明を行なっているわけであります。その所信の表明の中で、最後に、「先般の国会で公害対策基本法が制定されましたが、これに関連いたしまして、流水基準の設定、規制対象の拡大等につき、目下水質保全法の改正を検討しているところであります。」と、こう結んでおられるわけであります。私はこのとき感心して、これでよろしいのだと思いました。しかし、つい最近、二月二十八日に、これまた公害対策特別委員会に長官が参りまして、そして新しい立場から、今度は長官としての所信の表明をされたわけでございます。その際に、前の十二月二十二日に言ったそのことばとほぼ同じような決意を表明されておりましたが、ただ一つ最後に、この水質保全法の改正を検討しているところであります。こういうのだけが抜けておって、単に、水域指定の拡充、監視態勢の強化などによって保全行政の充実をはかってまいる決意であります。ということだけでとどめてあるわけであります。そうすると、いまいろいろ伺ってまいりましたところが、やはりこれは改正の意図があるかのように私は拝承して喜んでおりました。しかし、あなたの場合は、十二月にこれを改正すると言って、今度改正するということばが一言もないのです。これではせっかくいいことを言っても、われわれを前にして、また何かまやかしではないか、こう思わざるを得ないのでありますけれども、心境の変化でこれを抜いたのか、いかなる理由によってこれを抜いたのか。そしていま聞いてみると、やる意思があるようでございます。これは立案者が間違ったのか、長官が読み落としたのか、いかがなものでありましょうか。
  219. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 確かにいまおっしゃいますとおりでございます。先般申し上げましたときに、前回と少し違った表現で申し上げております。これは、私どもやはり公害基本法が成立いたしましたので、音でありますとか空気でありますとかと同じように、水質のほうも現在の水質保全法を変えたいと思っておるのでございます。変えたいと思っております点は幾つかございまして、そういうことを昨年から実は関係各省と相談をいたしておりますが、どうもこの点につきまして各省間の合意がまだできておりません。そこで、先般ごあいさつをいたしましたときには多少その状況を反映いたしまして、ああいうふうに申し上げたわけでございます。それで鋭意各省との意見調整をはかりまして改正案を決定いたしたいと思っておりますが、実はそのことに関係いたしまして、騒音であるとか空気であるとかいうものの関係、それから公害の救済、補償の問題等々、公害基本法から幾つかの法律が生まれなければいけないわけでございますが、それらのものの調整とも実はからんでおりまして、これだけが独走することはちょっとむずかしいような現状になっております。しかし、鋭意これは意見調整をいたしまして改正案をまとめたいと思っております。
  220. 島本虎三

    島本分科員 それで私は一応満足し、次の質問に移っていくわけであります。しかし、いかに各省の案がそろわなくても、経済企画庁なら企画庁の所管する事務で、これはやらなければならないと思うことであるならば、それはやはりいいことですから、所信表明の中で、前回言っているのですから、それと同じものを二度繰り返しても、みな拍手をしても悪く思う者は一人もいないと思います。また、それを抜いたために、あらぬ心を探られるような結果になることは、人格高邁なる宮澤長官に対して私はまことに申しわけないと思わざるを得ないようなことをあなたが出したわけでございますから、そういうようなことのないようにすべきである、こういうように思っております。  では、ここで確認いたします。公共用水域の水質の保全に関する法律の一部を改正する法律案、これが検討中だと聞いておりますが、そのとおりでございますか。
  221. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのとおりでございます。   〔小山(省)主査代理退席、植木主査着席〕
  222. 島本虎三

    島本分科員 そうすると、その内容につきましては、かねてから、これは公害基本法ができたので、公害基本法の実施法としてこの制定を急ぐといった現行水質二法の発展的な一つの改正策になる、こういうふうに私ども思いますけれども、水質でなく公害防止、産業公害基本法ができておりますけれども、その公害の実施法の一つとしての水質汚濁関係の法律案を一本にまとめたのが、いわゆるこの法律なのか、また、この法律のほかにもっと考えておられるのか。この辺をもう少しはっきりしてもらいたいと思います。
  223. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは公害基本法を母法といたしまして、一種の特別法と申しますか、そういうものとしての地位をこの公共用水域の水質の保全に関する法律の改正法に与えたい、こう思っておるわけでございます。
  224. 島本虎三

    島本分科員 各方面のこれに対する意見の調整がまだできない、こういうようなことでございますけれども、通産、農林、この方面だと思いますが、どの点の意見が調整できないのでございましょう。
  225. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いま考えておりますおもな改正点は、一つは公害源の拡充と申しますか、汚濁源の規制の対象をもう少し広げるという点が一つでございます。それはし尿処理でありますとか、あるいは屠殺場でありますとか、採石、砂利等の場所でありますとか、船舶の廃油でありますとか、そういうようなものを規制の対象に加えたいということであります。  それからその次に、やはり環境基準ということに今度はなるわけでございますから、水についても、その水質基準のようなものを設定する必要がある。それをまた守るための排水基準も要るということになると思うのでございます。それからあとは中央、地方との連絡調整などについても規定いたしたいと思っておりますが、それらの点についてまだ各省の合意ができていないということでございます。
  226. 島本虎三

    島本分科員 最近の大きい川の汚濁、この内容を見ますと、長官もすでに御存じのように、隅田川にしろ水清きがゆえに、こう佐藤総理さえおっしゃった。いま北海道では汚濁の川の代名詞になっております石狩川、このようなところでさえも水質基準がもうすでに設定されて、そのとおり要請を受けて改善しても、依然としてきたないのであります。そして、それをもう少し内容的に調べたところが、都市下水の問題の解決がない以上、この解決は望まれないんじゃないか、こういうふうなデータさえも出てまいったのであります。そうすると、肝心なところが、いまあなたの説明によるところの法律案の中に抜けていやせぬか、こういうふうに思うのでございますけれども、それじゃ、またしり抜け法の二法を改正して、もう一回しりを抜くようじゃ困るのですが、いまのこの下水道の整備の関係はお考えにならないのですか。  その前に、ちょっと厚生省のほう来ておりますか。——じゃ、厚生省のほうから、この水質がよごれている原因の中に都市下水が入っているのかいないのか、またその占めているパーセンテージを発表してもらいたいと思います。
  227. 橋本道夫

    ○橋本説明員 都市下水道と工場排水のウエートはどういうぐあいに違うかということは、現在河川によって相当異なりますが、非常に多いところでは、八五%ほど公共下水道のほうからの汚濁がある。あるいは工場排水のほうのウエートの問題は、一部では高いところがございますが、現在問題になる多くの河川については、四分六かあるいはそれよりも下水のほうが大きいという状況でございます。
  228. 島本虎三

    島本分科員 もしそういうような状態だとすると、やはりこの公共用水域の水質の保全に関する法律の一部を改正する法律案、これは現在検討中でございますけれども、この中にも、やはり下水道整備促進の条項か何か、その要点をかっちり入れないと、せっかくの法案も仏をつくって魂を入れないような結果に終わりはせぬかということをおそれるのでございますが、長官、いかがでしょう。
  229. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういう問題は確かにございます。非常に大きな問題としてございますが、この法律の体系の中に入ってくるというのではなくて、そのこと自身としてやはり解決しなければならないのではないかと思います。この法律の中にそれを体系として取り込むということは、やはり不適当のように思います。
  230. 島本虎三

    島本分科員 どうもそこばかりやって時間がなくなるのは惜しいのです。惜しいけれども、これはどうもしようがありませんが、やはりこれは公害基本法の実施法として、現行水質二法を改正して新たにこれをつくるという意図であるならば、いわゆるこれを総合して、りっぱな結果を招来できるような法律でなければならないのじゃないか、私そう思って、この法律のほかにもっと考えがあるのかということを前もって聞いたのであります。これ一本だとおっしゃいますから、この中に抜けているのがありますよということを、ただいま具体的に入れたわけであります。そうしますとまた反転して、このほかにもっと水質関係の法律は考えている、こういうようなことになるのではないかと思うのですが、長官、これはお間違いではございませんか。
  231. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういう意味でございましたら、この法律さえつくれば、もう水の問題は解決するかと言われる意味でございましたら、確かにいまのような問題は残るわけであります。これはこれとして処理をしなければなりません。
  232. 島本虎三

    島本分科員 せっかくでございますから、この中にこれらを含めて、総合的な基本法の実施法ということにすべきじゃないかと思うのですが、これは立法上の問題点があってできないのか、各省の権限がいろいろ入りまじってできないのか、法体系として無理なのか、私は一本のほうがいいと思うのですけれども、これはいかがですか。
  233. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは結局下水道の整備とその利用ということになるわけでございますから、そのこと自身には法律を別に必要といたさない。行政でやらなければならないし、やり得ることでございます。したがって、それをこの法律の中に、つまり汚濁源として持ってまいりましても、そのこと自身を解決することにはならないと思います。やはり行政で下水道整備を進めていかなければなりません。
  234. 島本虎三

    島本分科員 したがって、そういうように別々なスタイルをとると、当然この行政の一元化から離れ二元化、三元化いたします。そういうようなことになりますと、いままではっきりとこれに対する規制ができなかったのが公害発生の現在の結果になっている、ですから、これは一本になるように、今後実施法の面で考えると言ったのが、公害に対する総理の構想なんであります。そうすると、私はあなたを日ごろから尊敬していたのですけれども、それをもうそのまま一本化して法制化するのが、いわゆる総理の道に通ずるあなたの態度ではないかと思うのですが、別々なことをしていたら、総理はわれわれにうそを言ったことになる。これはどういうことになりますか、私はどうも理解できませんぞ。
  235. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 たとえば、私どもが今度汚濁源として屠殺場であるとか、あるいは船舶の廃油であるとかいうものをこの新しい法律で規定をいたしますと、それらの人に対して当然一定の義務を課することになるわけでございます。その際に、汚濁源としての下水というようなものを取り入れてまいりますと、そこに義務を課してみても、下水道の整備ができていなければこれはどうにもならないことになりまして、そのほうが進まなければ、結局法律が今度は逆にまとまらなくなるということに、現実の問題としてはなるわけでございましょうから、やはり下水道整備というものを行政として進めていってもらう、そうしてもらいませんと、ただ、それを汚濁源に指定しただけでは、事態は少しも直らないことであろうと思うのであります。ですから、法律の問題ではないというふうに思っているのでございます。
  236. 島本虎三

    島本分科員 賢明にして進歩的な長官の言とは思えないのであります。私は、それならば斃獣処理等に関する問題は厚生省であります。それから砂利採取に対していろいろ考えるとすると、これは建設省か通産省でございましょう。それからまた屠場並びに云々、こういったものは、これは厚生省ではございませんか。それぞれの所管になっているものを一本にまとめてこれをやるのですから、これはできる。まして下水道の場合には、これは現在つくるほうは建設省ですか、管理するほうは厚生省ですか、そうなっていますから、それだけ言ったのではこれはできない。実際できませんし、やれませんから、この際、そういうふうな管理形態が持たれているものを一本にして、あなたの考えですぱっとやれるようにするのが今回の水質汚濁による公害を排除する一つのきめ手になるのであります。だからこそ、それを総合してやってもよい立場にある経済企画庁長官であるあなたが、水の関係を受け持った、こういうふうに思うのであります。そうでなければ、やはり依然として計画、立案、調整する官庁だけで、あとは実権がないとするならば、これは困るのであります。
  237. 今泉一郎

    ○今泉政府委員 長官からお答えしたとおり、いろいろな問題があると思うのですが、若干補足して技術的に御説明申し上げますと、かりにそういう法律をつくりまして、どう書くであろうか。経済企画庁長官は、府県に対して下水道をつくれという命令をすることができるというふうなことを書きましても、予算その他の裏づけもございますから、おのずから限度がある、実行上の問題もある、そういうことに相なるかとも思うのでございます。現行法では、決してそういう点を無視したような、忘れてばかりいるわけではございませんで、一元化は確かに必要なものでございますが、現行法の十条を見ますと、経済企画庁の長官は、この法律の目的を達成するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し勧告することができる、こういうことが書いてございます。こういうふうに経済企画庁の総合調整機能というのがございまして、水質をきめるのですから、アンパイアとして水質をきめた以上は、それを実現するべく関係大臣に勧告しろ、しっかりやれというのは当然でございます。当然でございますので、この法律によりまして、都市関係の水質を最近おくればせながらきめてまいりましたが、それにいたしましても、企画庁長官名をもって、公共下水の水質の保全、下水道の整備ということで、金の大臣、大蔵大臣はじめ責任大臣のすべてにしっかりやれ、こういう勧告もいたして、せっかくお願いして、東京都その他各地方もこれを受け収められまして、関係各庁ともぜひやろうというようなことでいるわけでございます。
  238. 島本虎三

    島本分科員 厚生省、水質保全のためにいろいろその基準をきめるようにいままでやってきたのは、いつから始めましたか。
  239. 橋本道夫

    ○橋本説明員 これは水質審議会の問題でございますので、経済企画庁のほうからお答えしていただきたいと思います。
  240. 今泉一郎

    ○今泉政府委員 三十三年十二月二十五日に法律ができまして、それ以来やっておるわけでございます。
  241. 島本虎三

    島本分科員 公害は、それ以来発生しているじゃありませんか。
  242. 今泉一郎

    ○今泉政府委員 確かに公害は日に日に盛んになってまいりました。それで、こういう法律だけでやるわけにいきませんが、何とかしてこれを防止して追いつかなければいかぬ、こういうふうに思っているわけです。大いに努力して、今後追いついて、そしてできるだけ理想の姿に持っていきたい、そう思っております。経済的にも技術的にも、公害という問題は、これは日本ばかりでなく、どこの国でも相当の重要問題になっている、これはもう先生御承知のとおりだと思います。
  243. 島本虎三

    島本分科員 三十三年以来もうちゃんと勧告できるようになっていて、公害が盛んになってきているということは、それ自身何も力がない、やってないという証拠じゃございませんか。そういうようなことじゃ困りますから、あらためて基本法の実施法として一元化して、権限の整った、りっぱな成果をあげ得るようなものにせいと言うのですよ。いまのあなたの答弁だと、三十三年からそのままできるものをやらないでサボってきたのか。法律自身でこれができないようになっておるから、これを改めるのに検討中だという長官の答弁なんでしょう。長官はそう考えても、水質、水源をつかさどる肝心のあなたのほうでそういう考えではいけませんよ。現に富山県の神通川、これでさえももうすでに訴訟問題になっているでしょう。こういうような中で、三十三年以来、早くからこういうような問題は気をつけていたら、少しは防げたかもしれない。イタイイタイ病のこれだって、もともとわれわれも反省しなければならぬ点もあるし、行政をつかさどっている皆さんももっとその面で意を用いなければならないところもあるのです。もちろん、医学的な立場にある人もそのとおりです。こういうようなものはわれわれの権限外だとしているから、現在もうすでに要入院者が七十三名も出ているじゃございませんか。患者といわれる人は百五十一名、実際は二百二十名をこえているそうじゃございませんか。こういうのが現在人の生命にかかわるような公害の一つのあらわれです。これをばっさりやるためには、何といっても経済企画庁がいまその権限をもってやらなければならぬから、ここに新しい法律をつくるということになるんじゃありませんか。だからこそ、しり抜けのものではだめだ、もっと考えたらいいのではないかという、私のあたたかい勧告なんですよ。これがわかりますか。これを中に入れて今後十分処置していったらいいと思いますが、この点どうですか、長官。
  244. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御指摘になっておられることは、初めからよくわかっておるのでございます。結局、一つの汚濁源としての家庭の排水あるいは工場の排水、これを川へきたないまま落とさないということにしようとすれば、国なり公共団体が下水道を整備しなければならないわけでありますし、そして、その下水の末端処理をまたやらなければいけないわけでございますが、それが整わなければ、かりにこの法律にそういう汚濁源を規定いたしましたところで、家庭の人々はやりようがないわけでございます。他方で、下水道の整備ということは、これは何も法律に書きませんでも、よく認識されておって——行政行政として相当金がかかりますので、わが国はずいぶんおくれておりますが、進んではきておるわけでございます。ですから、そのことを汚濁源として入れる入れないということは、ただそれで水がきれいになるのかというと、そうではなくて、やはり下水道整備というものを長期的な視野に立って国が進めていく、地方が進めていくということが、問題解決の中心点であろうというふうに考えるわけでございます。
  245. 島本虎三

    島本分科員 あなたは、いつも明快な答弁をする人なんです。ただし、この問題だけは私はわかりませんね。これは水質、水源をちゃんとりっぱにして、きれいな水を流す、その八〇%が都市下水の関係だということをいま言っている。それと関係ないものだけをやってもよくならない。それには金がかかると言う。しかし、金がかかるなら金がかかるようにやってこそ、行政の実があがる。それをやらせるのがあなたの立場ではないかと思うのです。金がかかるからやらないとすると、やはり公害によって死ぬ人が何人できてもわしや知らぬ、こういうことになってしまうのと結果は同じではございませんか。いま神通川の流域のイタイイタイ病患者のあの悲惨な状態を見ても、これに対する対策の一つもあたたかく講ずるべく、あなたが今後この改正法案を出して、これによって救えるものでなければならないし、そうあってほしいと思います。ですから、私は声を枯らしてあなたに言っているのです。詰問しておるのじゃないですよ。抜けているのはこれこれこれではありませんかというのです。そうであったら、それをやはり一本にして考えていくというのがいいのではないか。だから、行政が乱れる、一元化していくように実施法ではつとめます。こういうのが佐藤総理です。ですから、これが基本法の実施法である以上、やはりその点を盛り上げて、あなたがこれをちゃんと取り締まっていっても何ら差しつかえないのです。総理は認めているのです。基本法ができるとき言ってあるのです。もし大蔵大臣が聞かなければ、あなたは堂々と総理にかわって言ってやりなさい。総理は、実施法の中に一元化してこの点はちゃんとやりなさい、そう言っているのですから、それは何ら遠慮は要りません。これをやらない以上、やはりいつもあなたの場合は計画、立案、調整する機関であって、これはあとになって何かいろいろなものが起きてまいりましても、権限がないのだ、そこで逃げ回る長官になってしまうじゃありませんか。やはり水資源ではなくて、川を管理する以上、その辺までばしりとやるべきであるし、やらせるべきです。もしそうでないとすれば、今度はあらゆる機関にそうであるための立証をやらざるを得なくなるわけです。そばで補佐する人たちもそのとおりじゃありませんか。長官がずいぶんいいことを言っておるのに、あなたたちはみなぶちこわしている、そんなやり方ではだめですよ。
  246. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私だけがいいことを言っているつもりではございませんので、くどいようでございますけれども、私の申し上げておりますことは、要するに、川というものを下水道のかわりに長いこと使っておったわけでございます。それがいけないんだと言っておられるので、私は、その点については何も異議がございません。ただ、そこで、今度はそれを使わせないようにするためには、下水道というものを別に整備をしてやらなければならないわけでございますから、その汚濁源としての下水ということを法律に書きましたところで、それでもって川がどうなるものでもない。したがって、下水道の整備をしていくということが結局この問題の解決の唯一の方法ではないか、こう思いますと申し上げているのでございます。そこで、しかし、他方で、いま現にとめられるものがあるわけでございます。船舶の廃油だとか、屠殺場だとか、砂利の採石だとか、こういうものは、ひとつ汚濁源として指定をして規制をすれば、これはもうあすからでも実効があがるわけでございますから、それだけの範囲のことをやっていこうと思っておりますので、下水道整備は、国のまた一つの大切な施策として今後とも進めていかなければならない。これがちゃんとなりませんと、川というものはほんとうにきれいにならないと言われることは、私はほんとうだと思います。それを法律に書きましても、事態が変わるわけでもないのでございますから、下水道整備の努力というものを続けていくということが、私はやはり先決だと思います。
  247. 島本虎三

    島本分科員 したがって、水を全面的に保全させるためには、あなたのほうでも、水質汚濁防止対策の基本は、これはもう八〇%下水道整備にあるということを認めているんですから、それに対して、強力に行政的にそれを促進させることができるようにしておかないとだめでしょう。それは人がやるんだから、それはかまわないということじゃないでしょう。ですから、この中にそういうようなものも考えておくべきじゃないかというのです。もしそれがだめだというなら、あなたが言ったやつは、全部ほかのほうの官庁の所管になっているようなことをいまお考えになっておると思うのです。砂利でも、それから屠殺でも、何かいろいろ厚生省のほうでやっている事務でございましょう。どうですか。それならば、これはもう厚生省と建設省がやっておるそれも一緒にお考えになったって悪くはないのです。これは大事ですから、残念ながらこれだけで時間をとってしまって、ここは厳重で、もう三十分以上許さないそうです。ですから、ここでもって、この一つのために質問を終わらせるような作為をとっちゃいけません。そうじゃなかったら、ひとつこのためにはっきりした措置を考えます。いずれか考えます。これくらい強力に言わなければ、これは納得できませんよ。ほかの質問全部犠牲にしてしまったじゃありませんか。たいへんなことです。いかがですか。
  248. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 下水道の整備ということができませんと、河川というものはきれいにならないわけでございますから、そういう意味では、水質の保全ということの非常に大事な施策が欠けることになりますので、下水道整備については、国としてできる限りの努力を続けていくべきものと考えます。
  249. 島本虎三

    島本分科員 全面的に答弁は私は不満でした。いままで不満なのは今回だけです。しかしながら、もうその不満な答弁も、最後に全面的にこれをやっていくというそれが若干ありますから、良心のかけらだけは私は認めて、今後はその成果を期待したいと思います。  これで質問を終わります。
  250. 植木庚子郎

    植木主査 次は加藤清二君。
  251. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 政府は、とかく矛盾したことをやりがちでございまするが、特に行政整理に至っては、その矛盾がはなはだしいのでございます。  そこで、お伺いしたいのは、行政管理庁の長官にでございますけれども、去年自民党の側も必要を認めず、予算計上にもなかったような金融機関を余分につくっておきながら、このたびは、去年この席で、宮澤さんも御存じでございまするけれども、これはぜひ必要であるから残すと農林大臣も松平長官もおっしゃった愛知用水は、廃止、吸収合併、こういうことになったようでございます。その理由を承りたい。
  252. 植木庚子郎

  253. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 いや、それは行政管理庁に聞いておる。査定したのは行政管理庁だ。
  254. 植木庚子郎

    植木主査 加藤君に申し上げますが、行政管理庁はいま要求しておりますが、たまたま行政管理庁の担当官が出ておりませんで、恐縮ですが、間もなく見えると思いますから、ほかの所管の省の分について御質疑を進行願えませんか。
  255. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 ほかならぬ、私の尊敬している植木主査の命令でございまするから、その命令に従います。しかし、これを決定したのは宮澤長官ではなくして、行政管理庁でございます。その行政管理庁の食言を私はここで問いただしてみたいわけでございます。それで、これは幸い二階堂筆頭理事もいらっしゃることでございます。総括、総締めくくりを一日で急げ急げとおっしゃいますが、これを総括、総締めくくりに持ち込むことについて、さきの委員長、今日の植木主査は御承諾いただけましょうか。
  256. 植木庚子郎

    植木主査 速記をやめておいて。   〔速記中止〕
  257. 植木庚子郎

    植木主査 速記を始めて。
  258. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 わかりました。理事会できめろという声もございます。私の尊敬しておりまする植木主査のおことばでございますので、そのとおりに従いたいと存じます。  愛知用水公団がどのような姿になろうと、濃尾平野を流れるところの木曽、揖斐、長良の三川は永久に流れております。また、その水を必要とする人もまた永遠でございます。その必要はまさに増加の一途をたどっております。にもかかわりませず、その仕事に専念していたのを、これを経企庁のもとに吸収合併なさるということでございます。経企庁の長官にお尋ねいたします。経企庁の長官としては、この任務をしょい込んで、地元の要望、名古屋を中心としたところの東海地区の経済発展、それに必要な水、それの確保がはたしてできることでございましょうか。また、長野県、岐阜県、三重県とわたるところの水資源地帯、その治山事業をはたして支障なく行なうことができるでございましょうか。
  259. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 従来愛知用水公団で仕事をやってこられました人たちをすべて引き継いで、仕事を継続するつもりでございますから、関係方面の御協力を得るならば、そういう目的は支障なく達成できるものと考えております。
  260. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 これを受けて立たれる以上は、愛知用水事業、豊川用水事業の評価については、それぞれ御調査にのことと存じまするが、これをまずその管轄官庁でございました農林省のほうの評価をお尋ねしたいと存じます。
  261. 佐々木四郎

    ○佐々木説明員 お答え申し上げます。  御承知のように、愛知用水事業のほうは、昭和三十六年に完成をいたしまして、現在でき上がった施設の管理をいたしておりますし、豊川用水事業のほうは、あと数カ月をもって全部工事が完了いたしまして、ことしの夏の水には間に合うように仕事を進めております。これらの事業は、愛知用水につきましては、当時外国からも新しい技術を導入いたしまして、総合開発事業といたしましては画期的な大規模の開発事業でありましたし、それからまた、短期間にこれを完成することができたというメリットがございます。  なお、その技術、その組織、これを豊川のほうに適用いたしまして、同種の事業でございました関係から、同じような技術と組織をもちまして、これも計画どおりに所期の目標を達成しようとしておるわけでございます。これらの事業に導入されました技術、組織等は一括して、なお残されております今後の木曽川水系の開発事業等にも使ってまいりたい、こういうつもりでおります。
  262. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 お聞き及びのとおり、この愛知用水事業、豊川用水事業を完遂していただきました件につきましては、地元民もこれを高く評価いたしております。しかし、その内容とするところは、その方々の新しい技術の導入、修得、これの実行であると同時に、それはその組織のチームワークのよさでございます。これを水資源公団に吸収されまする場合に、この組織がこわれますると、この技術の威力は喪失することは、東洋の魔女といわれましたニチボー貝塚のあの選手の実態を見てもよくおわかりのとおりでございます。はたしてこの組織を受け取られまする経企庁のほうで、十二分に国家のために貢献できるよう利用をする用意があるかないか、これについてお尋ねいたします。
  263. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういうメリットがこわれませんように、水資源公団には十分注意をいたしております。
  264. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 送り出す農林省のほうとしてはどうお考えでございましょう。
  265. 佐々木四郎

    ○佐々木説明員 先ほど申し上げましたように、お話しのような状態でやってまいりましたので、今回の合併に際しましても、それらの技術、組織が十分生かされるように、合併後も大幅な変更がないように、そういうことを注意いたしまして、将来の事業もやれるようなことを希望しております。
  266. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 しからば、その仕事の場所はどこでございましょうか。
  267. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは当然現在名古屋にあるわけでございますから、そこを存置することになるかと思います。
  268. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 いや、その仕事の場所でございます。
  269. 今泉一郎

    ○今泉政府委員 まあ、現在農林省が担当官庁として、いろいろ先の構想も考えておられましょうし、私どももいろいろ伺っておるのでございますが、それによりますと、愛知用水はすでに管理体制に入っておる。しかして、豊川用水もだんだん管理体制に入ってきまして、若干の職員の方々が仕事の場所が変わるということもあろうと思いますけれども、御承知のように、木曽川につきまして、木曽総合用水事業を計画いたし、また三重県地方に三重用水事業を計画しておる。こういうところに、先生おっしゃったように、チームワークがくずれないように、優秀な技術を持った職員を配置いたしまして、それでしっかりとりっぱな事業を引き続いてやっていただく、こういうことになるのではないかと思います。
  270. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 時間がありませんから、簡潔にお答えをいただけばいいのです。あなたの答弁は、仕事の場所は、木曽三川、木曽川水系の流域、こう受け取ってよろしゅうございましょうか。並びに三重の関係ですけれども、それでよろしゅうございましょうね。そういうふうに簡潔に言ってください。  次にお尋ねいたしますることは、愛知用水の残した残務と申しましょうか、権利義務関係と申しましょうか、そういうものがたくさんございまするが、わけても農民負担金の問題、都市用水に農業用水を転用するの問題等々、懸案事項がたくさんあるわけでございます。合併によってその解決に支障を来たすことはないかどうかという不安があるわけでございます。それが反対の理由にもなっているわけでございます。実は話し合ってみますると、あなたは、はっきり全部こぞって賛成である、こういう認識を御発表になっておられましたが、それは下々の声上聞に達せず、そんな認識でかかってはとんでもない大やけどになります。したがって、いま申し上げましたところの残務整理、農民負担、権利義務関係等々の問題は、いかように御処理なさいまするか。この点を承っておきたいと思います。
  271. 佐々木四郎

    ○佐々木説明員 いま御指摘の、愛知用水公団がやってまいりました仕事の中で残されておる問題は、でき上がりました施設にかかりました費用を負担金として徴収します。これは愛知用水と豊川と両方ございますが、愛知用水のほうは、御承知のように、かなり長い間懸案といたしまして、なかなか解決がつきませんでしたけれども、たまたま最近都市用水の需要が非常にふえております。また、農地の転用等もございましたような事情の変化がございまして、これらとからみ合わせまして、愛知用水を始めたときに農民の団体との間に取りかわしました約束の負担金の額を変えないで、これをおさめるという方向で、大体その線で現在進められておりまして、そのめどがおそらくつくのではないかと思っております。  なおまた、豊川のほうにつきましては、すでに工事も完成まぎわになっておりまして、だいぶ前から農民の負担金の程度その他を十分農民の方々にお知らせいたしまして、来年度から成規の賦課徴収ができるように準備を進めておりますので、今回の合併いたします十月一日という時期、これを一つの目標にいたしまして、これらの問題が解決するように目下努力を続けております。
  272. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 あなたは農林省としての立場を御答弁いただいたわけですね。それを受けて立つ側の経企庁はいかがでございますか。
  273. 今泉一郎

    ○今泉政府委員 いま農林省の佐々木参事官からお話しのような方針で、私どものほうもこれを受けとめましてやってまいりたい、この思っております。
  274. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 送り出す側の農林省と、これを受けとる側の経企庁と、意見はその点において完全に一致した、こう解釈してよろしゅうございますか。長官から承りたい。
  275. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それでけっこうでございます。
  276. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 次に承りたいことは、これからがたいへんでございます。労働問題でございます。  先ほど、愛知用水の技術効果は高く評価されていると、両省がこれを認められたようでございます。それを地元も認めている。私も申しました。それは一にかかってチームワークのよさでございます。全員を一括してその技術を国家のために貢献していただけるような方途が講じられておりますか。
  277. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういう心組みでおります。
  278. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 ことばは悪いのですけれども、一括活用と申しましょうか、チームワークを利用して働いていただけるといいましょうか、そういう事業が用意されておりますか。
  279. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 お尋ねの意味が非常に抽象的ではっきりいたしませんが、職員などにつきましては、むろん全部引き継ぐつもりでございますし、仕事は何かということについては、先ほど局長からお答えをいたしております。
  280. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 それじゃ、さしあたって四十三年度の仕事量やら場所、その明細を提出してください。
  281. 今泉一郎

    ○今泉政府委員 四十三年度の予算といたしましては、木曽総合用水事業が、これはたしか財投も入れまして九億ぐらい、それから三重用水事業が八億円さしずめ計上いたしまして、水公団引き継ぎ後の初年度の事業を推進してまいりたい、こういうふうに相なっております。
  282. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 その仕事量と予算額は、四十二年度と比較して多いですか、少ないですか。
  283. 今泉一郎

    ○今泉政府委員 きわめて多うございます。
  284. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 前年度よりどれだけ増加しておりますか。
  285. 今泉一郎

    ○今泉政府委員 前年度は、農林省のほうで手がけている段階でございますから、たしか予算といたしましても一億以下くらいの程度——ちょっといま数字がはっきりしませんが、そういう状況だと思います。準備段階でございます。
  286. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 これはあとでもう少しゆっくりと詰めてお尋ねいたします。  まず、愛知用水の従業員の一括活用、ところで、労働条件はどういうことになりますか。
  287. 今泉一郎

    ○今泉政府委員 労働条件等につきましても、法案がまだ国会に付託されておりませんが、実際上両公団の当事者同士でいろいろな話し合いをぼつぼつ始めておる。真剣に考えておりまして、できるだけ統合後に職員の方々が働きにくいようなことのないように考えてまいりたい。両当事者が一生懸命ただいまから話し合いを始めつつある状況でございます。
  288. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 労働条件の保障はできるとおっしゃいますですね。保障ができないとおっしゃるのですか、ただ努力するだけですか。保障ができるかできないかというところが問題なんだ。
  289. 今泉一郎

    ○今泉政府委員 労働条件に関する当事者は公団でございまして、国は監督の立場でございますが私の理解しているところでは、従来の法律上、組合との各種の規約等がございますが、これは原則として、特段の修正がなければそのまま新しい公団に引き継がれるというふうに考えるべきものであると思います。ただ、話し合いで若干の修正と申しますか、変更と申しますか、そういうことは公団と労組側の両当事者の円満な話し合いでいくべきことではないかと思います。
  290. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 その変更、修正というのは、労働条件のダウンの意味ですか、アップの意味ですか。
  291. 今泉一郎

    ○今泉政府委員 私も、それは、基本的には決してダウンということはないものだと思います。
  292. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 全員を一括活用、労働条件は保障する、それはアップはあり得てもダウンはない、場所は木曽川水系である、こうおっしゃられたんですね、以上総括してみると。——何か違うておるですか。言い直すならいまのうちにしておかぬと、あとがあぶないですよ。
  293. 今泉一郎

    ○今泉政府委員 基本的にはダウンということはあるまい、ただ、非常にこまかい点になりますとそれから具体的にお話し合いが組合とも始まるわけでございます。当事者として両方の公団と両方の組合と相互に検討し、協議し、懇談するわけでございます。したがいまして、私がいままで申し上げたように、原則としてそういうことで、配置転換の問題にいたしましても、さしずめ先ほどお答え申し上げたとおりでございます。ただ、五年さらにその先ということにつきましては、これは当然適正なる人員配置ということは、公国としても考えなければいかぬことではないか、これはそう思います。
  294. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 私の質問に答えてもらえばいいのです。  法案の提出はいつでございますか。
  295. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ごく近いうちに提出をするつもりでございます。
  296. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 その法案はすでにできておりますか、おりませんか。
  297. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まだ閣議決定をいたしておりません。
  298. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 素案はできておりますか。
  299. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 要綱はできております。
  300. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 その要綱の中に、以上ここで御答弁なさいましたことが包含されておりますか、おりませんか。
  301. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 要綱の中にそういう考え方を盛っております。
  302. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 それではわかりました。  しからば、理事をはじめとする管理者のクラスはどうなるのですか。
  303. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 管理者については、適当に整理をいたしたいと思っております。
  304. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 適当に整理とはどういうことでございますか。
  305. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 たとえば総裁が二人いるわけにはまいりませんし、理事などはあまりたくさんおってもいけないと思うのです。
  306. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 素案の中には、どのように現在の愛知用水のほうの管理者を生かし、どのように殺すということになっていますか。
  307. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これはまだ法案を最終的に決定いたしておりませんので、いまの段階で私どもが相談し合っている方向は、新しい水資源公団でございます。両方一緒になりましたあと、暫定期間ある程度理事の増員をしたい、こう思ってるおわけでございます。
  308. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 さて、今度受け取る側の職員並びに従業員の関係でございますけれども、四十三年度で利根川水系の事業がほとんど完了するわけですね。それは間違いありませんか。
  309. 今泉一郎

    ○今泉政府委員 間違いないと思います。
  310. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 その際の労働者の配転問題がいますでに起きておりますね。したがって、利根川水系で働いておられました方々の転勤先も、九州、四国、関西と非常に遠いところに行かなければならぬ。その対象者はすでに四百五十名に及んでおる、こういうことなんです。ところで、その中に愛知用水公団から約五百名の方が入っていかれるわけですね。これできちっとそのところを得せしめ、チームワークを発揮させるようなそういう事業、それとマッチするのですか。
  311. 今泉一郎

    ○今泉政府委員 御指摘のように、非常にむずかしい問題だろうと思います。むずかしい問題でありまするが、職員との融和をはかってほんとうに働いてもらう、一方において事業を効率的にやるというためには、適正な人員配置についてやはり相談をしていく、こういうことじゃないかと思います。したがいまして、確かにおっしゃるように利根川等の事業が——これはどこの事業でもそうでございますが、完了した場合に、職員の配置転換は現に行なわれております。しかしながら、配置転換に伴う一般的な組合のほうの要求、希望、こういうものを公団当事者としてはできるだけ聞きまして、適正な話し合いによって事を処理する、そういう方向で公団としてはいま臨んでおる、かように私どもは存じております。
  312. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 この詳細については、いずれ法案が提案されましてから、その場でゆっくりと詰めを行ないたいと思います。  しかし、私のみならず、先行きに、だれしも実態を知っている者は不安を持っております。なぜ不安を持っておるかと申しますると、去年の十二月に水資源公団の賃金体系を改悪なさったですね。そういう記憶ございませんか。これは長官に聞いたほうがいいでしょう。
  313. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政府委員から申し上げます。
  314. 今泉一郎

    ○今泉政府委員 いろいろ賃金体系について検討されておるようでございますが、まださように決定いたしておらないと心得ております。
  315. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 決定してないじゃない、妥結してないのですよ。ことばを間違えてはいけません。あなたのほうが改悪条件を出した。組合はこれをのまない。だから、妥結しないままが現状、こういうことになっているわけでしょう。長官、どうでしょう。
  316. 今泉一郎

    ○今泉政府委員 妥結しておらないわけでございます。
  317. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 わかりました。短い時間にたくさんの内容を盛らなければならぬから、さっさといきましょう。  ということは、どういうことになるか。さきのあなたのことばと矛盾してくる。なぜかならば、職務給を提案して妥結してないところ、そこへ愛知用水の公団がそのまま入ってくる。したがって、愛水労に職務給が導入されるということは、統合された結果、いわゆる愛水労の労働者の賃金に影響がないと言えますか。大きな影響があると言わなければならぬでしょう。行政整理というにしきの御旗のもとに、何も悪いこともしない、仕事は能率をあげている、世の中の賃金は上がっている、そういうやさきに行政整理された、むしろ、何とかほうびでもあげなければならぬ、そういう人に対して賃金ダウン、これはどういう仕打ちでございますか。
  318. 今泉一郎

    ○今泉政府委員 賃金を下げるということではなくて、いわゆる職務給を導入して、給与の体系を若干職務給を加味したほうに変えていきたいというふうに公団側としては考えまして、労働組合の方と当事者間の話し合いをやっておる、こういうわけでございます。しかしながら、先生御指摘のように、職員に対する影響は最も基本的な勤労条件でございますので、公団は十分慎重にやってまいるだろうと思いますし、私どももさよう指導しておるわけでございます。
  319. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 この件は別な委員会でするとしましょう。  行政管理庁の責任者、愛知用水を水資源に吸収合併しなければならないという理由を……。
  320. 大国彰

    ○大国政府委員 愛知用水公団を水資源と統合いたすということは、これは臨調の答申の趣旨にのっとりまして、愛知用水公団が愛知用水並びに豊川用水という二つの大きな事業をいたしまして、その事業を終了する予定になっております。この際、同じ使命を帯びております水資源開発公団と統合いたしまして、さらに有効にその技術陣を活用するということでございます。
  321. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 あなた、そういうあほうなことを言うておったら笑われますよ。あなた、去年ここで松平君が何と答弁したか、御存じですか。そんな形式論を言うておってはだめですよ。
  322. 大国彰

    ○大国政府委員 去年やはり統合の方向で検討すると言われたと思っています。
  323. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 冗談言っちゃいけませんよ。農林大臣は、愛知用水公団法第一条の精神にのっとって、絶対にさようなことのないようにいたしますと答えておる。行政管理庁の松平君に、あなたの先祖は、かつてこの木曽三川において、これに功績のあった島津の武士をぶった切った、また今度この木曽三川に功績のあった方々をぶった切るのですか、あなたの血の中には徳川の殺伐な血が流れておるのですかという意味のことを聞いたら、さようなことは絶対にいたしませんと言った。食言だよ。うそだと思ったら記録を調べてごらん。
  324. 大国彰

    ○大国政府委員 いや、絶対にというのは……。
  325. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 もういいですよ。こんなところで時間をとりたくない。あなた、読んでないですね。あのとき、この席におられましたか。
  326. 大国彰

    ○大国政府委員 ええ、おりました。
  327. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 おられましたら、そんなことを言うのはおかしい。宮澤長官はいらっしゃった。そんなところであれすることはありません。あなたをいじめようなどとは思っていません。問題は、ほんとうに功績のあった人に、功に報いるに首切りということのないようにしたい念願で申し上げているのですから。  それでは、通産省に承わります。一括木曽三川の水系指定が行なわれて、ここで開発が行なわれる場合に、発電用の水の問題は、これを経企庁へゆだねられますか、それとも通産省独自の立場でいままでどおりの監督を進められますか、いかがでございます。
  328. 今泉一郎

    ○今泉政府委員 通産省の担当の局長がおられませんで、かわって、私も若干承知いたしておりますので、お答えしたいと思います。  これは発電に関係して、具体的に申し上げますれば、岩屋ダムにおきます中部電力の発電問題かと存じますが、発電会社が受託してやる、こういう方針でいまのところ考えております。
  329. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 あなた、そんないいかげんな答弁をして、あとで責任を負わなければならないようになったらどうしますか。  では長官に聞きますが、発電の関係も、吸収統合、管轄なさいますか、それともその業務はいままでどおり通産省ですかと聞いておるのです。これはむしろ長官に聞いたほうがいいでしょう。
  330. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 非常に具体的なことなので、私にわかりかねますから、政府委員から申し上げます。
  331. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 それはだめだ。わかりかねるものをもらってどうするのですか。娘一人もらうのだって、履歴から学校の成績からみんな調べるじゃないですか。血統まで調べるでしょう。あなたのところおかげで血統がいいでしょう。冗談じゃないですよ。あなた方よう見ておってくださいよ。総括でやらなければならぬようになってしまう。  次にいきます。それでは、飲料用水をつかさどっていらっしゃる監督官庁は厚生省と思いますが、木曽三川開発、飲料用水の需要は増加の一途でございます。その際に、管轄が経企庁に移った場合に、飲料用水の管轄、開発権限並びに仕事はどっちにいきますか。
  332. 大橋文雄

    ○大橋説明員 いまの時点におきましては、経企庁にお願いいたしたいと考えております。
  333. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 何をお願いしているの。
  334. 今泉一郎

    ○今泉政府委員 その点は、水資源開発公団法の第五十五条に、主務大臣という規定の条項が特に設けてございまして、たとえば一般監督、会計等につきましては内閣総理大臣、かわって経企庁長官、そのほかの治山治水につきましては、いわゆる特定施設、これにつきましては建設大臣、その他の施設につきましては、それぞれの利用の目的に従いまして、上水は厚生大臣、工水は通産大臣という担当の権限が相定まっておるわけでございます。これによって処理するわけでございます。
  335. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 農業用水の関係はどうなりますか、農林省。
  336. 佐々木四郎

    ○佐々木説明員 ただいまのお話のように、水資源公団で農業用水事業をやる場合には、事業の直接監督の責任は農林大臣にございます。公団の職員その他予算、一般管理は経済企画庁でおやりになりますけれども、事業そのものの工事上の監督は農林省でいたします。
  337. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 そのとおりです。  次に、工業用水のいまの権限はどう相なりますか。やはり吸収合併、統合なさいますか、経企庁の長官。
  338. 今泉一郎

    ○今泉政府委員 先ほど申し上げましたように、法律の五十五条に従いまして、従来どおりの考え方でやっていくわけです。
  339. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 だから、通産大臣も厚生大臣も農林大臣も出ておってもらわないとできないということを言っておる。失礼な言い分ですが、各省は盛んになわ張り争いをおやりになった結果、総理大臣がこれを管轄し、その代行として経企庁の長官がこれを行なうことになったでしょう。さすれば、この大移動が行なわれるときに、なぜ関係大臣が出て来ぬ。そんなことあなた一人で引き受けられますか。あとでなわ張り争いがあったら、あなたは一人で処理できますか。長官、まとめて答えてください。
  340. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはだいじょうぶでございます。
  341. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 何がだいじょうぶです。
  342. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 なわ張り争いなどあって、ごたごたして引き受けられるかと御心配でございますが、引き受けられます。
  343. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 しからばお尋ねいたします。  いま権利義務関係をそのまま受け取るとおっしゃられました、さきの答弁で。いいですか、あなたの答弁から出発していきますよ。そうして、決してごたごたの起きないようにするとおっしゃられました。今日ごたごたが起きておるのです。同じ愛知用水の水を飲みますが、東海製鉄の中で飲むと四円、へいの外で飲むと四十四円、それから一つ越えていきますと五十五円、同じ水なんですよ。このおかげでごたごたが起きて、ほんとうは愛知用水神社が治水神社と同じようにできなければならぬ、今日になってもなおできない。なぜか、地元受益者に感謝の念がわいてこないからです。むしろ、この不平等、この差別、これについて非常な憤りと不信感を持っているからでございます。さて、受け取られたあなた、これはどうします。
  344. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、別に統合したから新しく起こった問題ではないわけでございます。従来からある問題でございますから、これはやはり何とか片づけていかなければならぬと思います。
  345. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 歴代の関係主管大臣は、その差別をなくするように努力をする、事実また努力もしてこられました。その努力はあなた、するかしないか。
  346. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはやはり努力をいたさなければなりません。
  347. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 しからば、同じ水が東海製鉄で飲めば四円、へいの外で飲めば四十四円、この原因が那辺にあるか。
  348. 今泉一郎

    ○今泉政府委員 お尋ねは、東海製鉄で使っている工業用水関係の水が安い、しかして、一般の市民なり住民の飲まれるいわゆる上水道、これが高い、こういうお尋ねかと思います。確かにそういう差がございます。これは、上水道のほうは水源地においてはそうお互いに違いがないのでございますが、御承知のように、水道でございますと、浄水施設、各種のろ過、浄水、非常に設備がかかります。それから水道ですから、各戸ごとに配付せねばいかぬということで、水道路線というものは相当細分化されて長い。こういう点からして、山元で同じでございましても、末端に行きますと、コスト計算すると非常な差が出てくる、こういうのが実情じゃないかと思います。
  349. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 そういうばかなことを言って、おってあなたよくもこれを受け取れるですね。つまり、あなたの答弁でいくと、水源地に近ければ安い、水源地に遠ければ高い、水道の配管工事その他その他、そういう意味ですね。水源地に近ければ安い、水源地に遠ければ高い……。
  350. 今泉一郎

    ○今泉政府委員 管が細分化されているという意味では、同じ水源地からの距離でも、各戸に配給すればやはり施設費が高くなる、まとめて一本でやると安くなる、こういうふうなことを申し上げたつもりであります。
  351. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 承服いたしがたい。水道のじゃ口はどこでも同じ大きさです。東海製鉄の中だってちゃんと細分化されているのです。東海製鉄は知多半島にありますよ。水源地からどれだけ離れておるか。それよりももっと水源地に近い春日井、岐阜県境、水源地に近いほうが高いですよ。何を言っているのですか。
  352. 今泉一郎

    ○今泉政府委員 先ほど申し上げたことのほかにも、少しことばが足らなかったかもしれませんが、一つには、何と申しますか、工業用水ですと多量消費になる。それに対しまして水道の場合には、施設費がかかった以外に、ことに小さな町でありますと、効率が非常に低い、こういう点があるかと思います。
  353. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 権利義務の懸案を解決するとおっしゃったから私は聞いておるのです。そんなことじゃ解決できません。原因ははっきりしておるのです。東海製鉄の水は通産省管轄の工業用水法によっておる。へいの外の水は、これは厚生省管轄の飲料用水法によっておるのです。工業用水法によればなぜ安いかというと、工事費は全部国家負担なんだ。第一期工事上野浄水場の工事は十六億五千万、ここで審議したのです。工業用水法として。第二期工事、佐布里の浄水場四十六億、これもここで審議して国家が負担している。ところが、片一方の飲料用水のほうは国家負担でなくて、これが原価コストの中へ割り込まれているから高いのだ。その原因がわからずして、どうしてそんな権利義務の不平等が解決できます。長官、あなたは権利義務関係を解決するように努力するとおっしゃったでしょう、原因もわからずにどうやって努力できます。
  354. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、その権利義務というのは、つまり愛知用水公団が負っておるところの権利義務を水資源公団が一切承継するかと言われますから、そのとおりであると申し上げたのです。しかし、やはりそういう問題はございますのですから、いま言われたようなそれはそれとして解決の努力をしなければいけないと思っております。
  355. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 農林省にお尋ねする。反当、受益農民は幾ら払っていますか。
  356. 佐々木四郎

    ○佐々木説明員 愛知用水関係につきましては、先ほど申し上げたように、当初、農民のほうに正規の賦課をかけましてもそれが完納されません事態がございましたので、昭和四十年度からその経費負担額の一部を払い出しまして、今日までその負担を公団のほうに出してきております。
  357. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 反当幾らかかっておりますか聞いている。時間がないからストレートに答えてくさだい。反当とは反当たりだ。
  358. 佐々木四郎

    ○佐々木説明員 農民負担の総体の償還額は大体四万三千円くらいです。
  359. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 そのとおりです。大体四万五千円。ところで、それは公団に納める負担額ですね。それ以外があるでしょう。
  360. 佐々木四郎

    ○佐々木説明員 それ以外と申しますと、施設の管理に要する経費を農民が負担する、こういうこにとなっております。
  361. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 経企庁に聞く。これを受け取った場合に、土地改良法の規定を準用するものとするという書類をあなたのほうからいただいた。土地改良法の規定を準用するというと、これにまた組合ができておる。そこに負担額が出てきておる。反当たり幾らです。
  362. 佐々木四郎

    ○佐々木説明員 愛知用水土地改良区が負担すべ額きというのは、先ほど申し上げましたように、事業費に対しましては利子を含めて総体で四万三千円、そのほかに施設費や管理費が……。
  363. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 そんないいかげんなこと言っちゃいかぬよ。これができる前から町村負担までしているのですよ、地方自治体までが。御存じですか。
  364. 佐々木四郎

    ○佐々木説明員 いまのお話は、土地改良区の中に含まれます各町村は土地改良区と相談いたしまして、その土地改良区の負担を軽減する意味において町村が自主的に負担するという例もございますので、そういうことではないかと思います。
  365. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 まあことばのやりとりはやめましょう。自主的とおっしゃるけれども、これは協力を要請されておるのです。何が自主的ですか。受益者でなくしてもらいたいという、だから返納ががたがた出ておるんですよ。それ御存じでしょう、そんなに負担させられたら営農ができません。これが入植開拓者だったら反当たり幾らになります。——あなたのほうがよく知っておるでしょう、答えてください。
  366. 島崎一男

    ○島崎説明員 それはいろいろと差はございますが、約五万七千円くらいになります。
  367. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 五万七千円から七万円でございます。おわかりですか。これで営農ができますか。これが米価を上げてくれという原因の一つになるのですよ。長官、米価設定のことはあなたのほうがお詳しいでしょうから、反当たり七万円も召し上げられてどうやって払うのですか。これは土地代金より高いのですよ、米をいただくだけで。おまけにいままでため池がございました。そこへ愛知用水公団の水を入れて、補足分二割いただきます。そうすると、この管轄権は全部公団に移っておるのですよ。そうして、これも払わされるのですよ。こういう実情をよくひとつお調べ願いたい。
  368. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 むろん一時に払うわけではないと思いますけれども、よく調べます。
  369. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 そうして、これはめどとしてあなたは長期計画を立てる名人ですから、どの程度をめどにして、この価格のアンバランスやら農民負担の過重やら、これを解決する用意がございますか。
  370. 佐々木四郎

    ○佐々木説明員 農民負担金の問題は、この愛知用水だけでございませんで、一般の土地改良全体にあるわけでございます。従来も補助金及びその補助残の融資の条件、そういうものをなるべく農民に有利なように緩和しながら進めていく方針でおりますが、まだ十分ではございませんけれども、なお今後も引き続きその努力は続けていく。特に事業によりましては、農民負担金が過重になるものもありますので、そういう場合には事業の計画等、内容を検討いたしまして、なるべく農民に負担をかけないような方向でやっていきたいと思っております。
  371. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 なるべくかけないようにと、こんなときにおせじみたいなことを言ったって、仕事になりませんよ、あなた。事実かかっておるのですよ、そうでしょう。事実かかって、それで困っておる。だから、もう受益者から返納、返納が出てきておる。返納する場合でも、なお反当たり四万五千円は絶対に払えという命令です。区画整理事業に持ち込んでも、なお反当たり四万五千円払えという厳命、しからずんば宅地転用も認めず、こういうことになっておるでしょう、事実でしょう。だからあなた、足もとに火がついているのですよ。そんな遠き将来の問題じゃないのです。したがって、めどとして、この解決をどのころにするか、私はあなたに聞いているのじゃなくて、長期計画の名人に聞いておるのです。  ついでといっては失礼ですけれども、長官、水の利用がだんだん変わりつつあるんです。とてもかなわぬ、いやだと言うてお百姓が返納するんです。毎秒三十トンずつの水が余る。それは何に変わるかといえば、工業用水に一番変わる。工業用水に回すというと、一トン当たり最高にいって五円五十銭です。ますますアンバランスが出てくる。ふえるのは飲料用水と工業用水。当初これをつくるときの主目的であった農業用水はだんだん減少の一途をたどっていく、こういう状況でございます。だからだんだんアンバランスが大きくなるでしょう。それをどう解決するか。その解決の方法いかんによっては、愛知用水の会計はますます赤字がふえる一方ですよ。  そこでお尋ねする。工業用水が今後ふえた場合に、どのような措置をとられますか。
  372. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 愛知用水の事業が始まりましたころには、わが国の経済も今日のようではございませんでして、農民に相当受益者があるということで、事業を施行するほうも農民のほうも、そう考えておられたことだと思います。しかし、その後御承知のように非常に情勢が変わりまして、ことに、あの地方は工業化も相当著しくございますから、たいへんに事情が変わってしまった。そこでいま言われたような、私実はこれはたいへんやっかいな問題をかかえることになると思っているんでございますが、そういう問題をかかえることになるわけです。そこで、負担金の徴収の実行計画というのをやはり立てて、そうしてこの受益面積が減るわけでございますから、そうすると、その分の徴収額は減るわけで、それを都市用水との関係でどう補てんするか、そういったような基本考え方を立てて、現実に即したやり方をやっていくしかないであろう。ただ、これは従来からもそういう努力がなされてきたと思いますが、このことで何か急に非常にきつい方針を打ち出してということになりますと、これは統合ということに非常に支障になりますから、従来関係者が努力をされてきた線を今後も忍耐強く続けていくということにせざるを得ないであろう。たいへんこれはいきさつの長い、やっかいな問題であるように承知をしておりますから、慎重に対処するつもりでおります。
  373. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 この問題の結論を申し上げます。わずか三十分程度お話し合いをしても、頭のいい長官は難問題が山積しているという実態を把握していただきました。かくのごとく、愛知用水関係には権利義務のみならずアンバランスや将来への展望やら、いろいろな問題が山積しているわけなんです。これを吸収合併すれば行政整理の目的に合致するなどと、どこをたたいたらそんな方針が立つのかしらと、私は行政管理庁の感覚を疑うものでございます。どこをどうお調べになったか、大体調査のときに、畳の上や芝生の上で調査なさるからこういうことになるのです。たんぼに入ってよく実態をごらんなさいよ。そういう調査のしかたをしていらっしゃるからだめなんです。したがってこれは、法案が提案されてから私はもっとこまかに質問する予定でございます。そうして、長官にここでぜひ努力してもらいたいことは、この難問題を背負った以上はやむを得ませんから、あなたの明敏な頭と非常にすぐれた政治力でもって解決を早期にしていただきたい、こういうことでございます。  そういうりっぱな人でございますから、次の問題を二点だけ。  政府は、あなたを米国の課徴金阻止の代表としてアメリカへ送ることをきめたと新聞発表が行なわれておりますが、政府がきめたというのは、どこがどうきめたのでございますか。
  374. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この農民負担金の問題については、微力ではありますが、努力をいたしいとた思っております。  課徴金の問題についてアメリカに派遣されるということは聞いておりません。当人が存じませんので、おそらく政府部内できめたということもないであろうと思います。
  375. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 それはあくまでも新聞辞令でございましょうか。
  376. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 実は、けさほどもそういうお尋ねがございましたので、官房長官に確かめましたところが、やはりそういうことはきまっていないそうでございます。
  377. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 将来きまる可能性がございますか。
  378. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは総理大臣でありませんとお答えができません。
  379. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 いま二階堂筆頭理事は、そうだろう、御賢察を、こういうことでございます。あなたは総理大臣に聞かぬとわからぬとおっしゃられる。それはそのとおりです。何も私それに反対じゃないのですよ。社会党は何でも反対という人がいますけれども、これはもう大賛成なんです。特にあなたのような、かの地にも詳しいし、弟さんが露払いで長年向こうへ行っておられるのですから、最もふさわしいお方だと私は思います。と同時に、行かれるのだったら、あなたの努力によってアメリカがこのあやまちをおかさずに済むような、日本が被害を受けないような、そういう結果が招来されることを期待してやみません。  ところで、もしそういう段階になった場合に、実は筆頭理事がいらっしゃるから申し上げますが、予算の理事会においても一総括質問質疑応答もこれあり、そのゆえにそれらしい下相談が数回行なわれているわけでございます。このことこそは、超党派的に国内が、政界も業界も行政当局も、一致結束してこの国難に当たるべきだ、かように存じておりまするが、やがて出発されるでしゃう、それにあたっての御所懐を承りたい。
  380. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 行けということを言いつけられておるわけではございませんので、その点にはお答えいたしがとうございますが、政府としては、やはり御所見のように、こういう動きは世界貿易に保護貿易主義的な傾向を持ち込み、また、貿易を縮小させる契機に非常になりやすうございますから、米国政府に再考を求めるという態度は公にも表明をいたしておりますし、そういう政府の方針でございます。
  381. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 ちょうど時間となりましたので、これで終わります。ただし、答弁残りの問題は総括質問においてさせていただきますから、さよう御準備のほどをお願いいたしまして、質問を終わります。
  382. 植木庚子郎

    植木主査 以上をもちまして、昭和四十三年度一般会計予算中、経済企画庁所管に関する質疑は一応終了いたしました。  本日の質疑はこの程度とし、次回は、明十四日午前十時より開会し、通商産業所管について質疑を行なうことといたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時十九分散会