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1968-03-14 第58回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年三月十四日(木曜日)    午前十時三分開議  出席分科員    主査 田中 正巳君       井出一太郎君    登坂重次郎君       中野 四郎君    大出  俊君       大原  亨君    加藤 万吉君       神門至馬夫君    島本 虎三君       畑   和君    横山 利秋君       大橋 敏雄君    兼務 田原 春次君 兼務 山中 吾郎君    兼務 吉田 賢一君 兼務 田代 文久君  出席国務大臣         労 働 大 臣 小川 平二君  出席政府委員         総理府人事局長 栗山 廉平君         行政管理庁行政         管理局長    大国  彰君         厚生省環境衛生         局長      松尾 正雄君         厚生省社会局長 今村  譲君         通商産業省鉱山         保安局長    西家 正起君         郵政省人事局長 山本  博君         労働大臣官房長 石黒 拓爾君         労働大臣官房会         計課長     東村金之助君         労働省労政局長 松永 正男君         労働省労働基準         局長      村上 茂利君         労働省安全衛生         局長      大野雄二郎君         労働省婦人少年         局長      高橋 展子君         労働省職業安定         局長      有馬 元治君         労働省職業訓練         局長      和田 勝美君  分科員外出席者         内閣総理大臣官         房参事官    宮崎 隆夫君         警察庁警備局警         備課長     三井  脩君         大蔵省主計局給         与課長     津吉 伊定君         大蔵省主計局主         計官      辻  敬一君         運輸省自動車局         業務部長    渋谷 正敏君         労働省職業安定         局失業対策部長 上原誠之輔君         自治省財政局公         営企業第一課長 近藤 隆之君     ————————————— 三月十四日  分科員大原亨君、畑和君、横山利秋君及び大橋  敏雄委員辞任につき、その補欠として神門至  馬夫君大出俊君、島本虎三君及び田中昭二君  が委員長指名分科員に選任された。 同日  分科員大出俊君、神門至馬夫君島本虎三君及  び田中昭二委員辞任につき、その補欠として  加藤万吉君、大原亨君、横山利秋君及び山田太  郎君が委員長指名分科員に選任された。 同日  分科員加藤万吉君及び山田太郎委員辞任につ  き、その補欠として野間千代三君及び大橋敏雄  君が委員長指名分科員に選任された。 同日  分科員野間千代三君委員辞任につき、その補欠  として畑和君が委員長指名分科員に選任さ  れた。 同日  第一分科員山中吾郎君、第四分科員吉田賢一  君、第五分科員田原春次君及び田代文久君が本  分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十三年度一般会計予算労働省所管  昭和四十三年度特別会計予算労働省所管      ————◇—————
  2. 田中正巳

    田中主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。  昭和四十三年度一般会計及び昭和四十三年度特別会計予算労働省所管を議題とし、説明を聴取いたします。小川労働大臣
  3. 小川平二

    小川国務大臣 昭和四十三年度一般会計及び特別会計予算中、労働省所管分につきましてその概要を御説明申し上げます。労働省所管一般会計歳出予算額は一千九十八億二百八十九万円でありまして、これを前年度予算額一千一億九千二百二十五万一千円に比較いたしますと九十六億一千六十三万九千円の増加となっております。  次に、そのおもな内容については、お手元に配付いたしました説明資料のとおりでございます。     —————————————  その一は、総合的雇用政策の展開に必要な経費であります。  今後、わが国におきましては、労働力不足基調が一層強まるとともに、人口構成高齢化技術革新進展等により職種、年令、地域等における労働力需給の不均衡がさらに拡大するおそれがあります。  このような情勢に対処するため、雇用計画を策定して、中央、地方を通じて雇用問題に取り組む態勢を確立し、各種施策を総合的に推進することといたしております。  すなわち、まず労働者能力を有効に発揮することができるようにするという観点から、新たに職業研究充実をはかり、職業に関する適性、採用、配置等基礎的研究を総合的に行なうこととするとともに、従来に引き続いて、労働市場センターの機能の整備求人求職者に対する雇用情報の迅速な提供、新規学校卒業者対策強化中高年齢者雇用促進職業転換対策充実移転就職者用宿舎大量建設雇用促進融資拡大等措置を講ずることとしております。  また、地域の特性に応じた雇用対策推進するため、大都市や、いわゆる開発拠点地域福祉施設計画的に整備し、勤労青少年中小企業労働者等職場適応福祉増進等に資するとともに、季節出稼労働者について、通年雇用奨励制度を創設する等の施策を進めることとしております。  さらに当面する雇用対策といたしましては、港湾労働者に対し、雇用調整手当支給額改善福祉施設などの充実をはかるのをはじめ、炭鉱離職者に対しましては、就職促進手当最高額を引き上げ、また、炭鉱離職者緊急就労対策事業を引き続き実施するなど、その援護措置充実をはかるとともに、身体障害者に対しまして、通勤用自動車購入資金貸付制度及び自営に対する債務保証制度を創設する等、総合的な施策を展開し、また、駐留軍関係離職者につきましては、再就職奨励金支給制度を新たに設ける等就職援護措置強化することといたしております。  なお、駐留軍関係離職者等臨時措置法につきましては、有効期間延長等をおこなうこととし、関係法案を、今国会に提出いたしておるところであります。  失業対策につきましては、失業対策事業に就労する者に対し、雇用奨励制度中心として、一般雇用への復帰を引き続き促進するとともに、失業対策事業賃金の引き上げをはかることとしたほか、その事業運営改善をはかってゆくこととしております。  以上これらに必要な経費として、一千百五億五千五百三十三万一千円を計上いたしております。  その二は、労働力質的向上対策推進に必要な経費であります。  最近における技能労働力不足の現状にかんがみ、積極的に技能労働者養成をはかるため、事業内職業訓練につきまして、補助対象となる訓練人員拡大補助単価改善訓練施設に対する融資等、その助成強化いたしますとともに、公共職業訓練につきまして、総合職業訓練所一般職業訓練所等新設拡充、就職困難な中高年齢失業者等に対する職業転換訓練実施等をはかってまいることとしております。  また、技能水準を一層向上きせるとともに社会一般技能尊重の気風の醸成をはかるため、技能検定実施職種拡大、卓越した技能労働者の表彰、青年ブルーカラー国際交流および昭和四十五年にわが国において開催される技能オリンピック開催準備等を積極的に進めることとしております。  以上、これらに必要な経費として百十四億七百十三万四千円を計上いたしております。  その三は、労働条件確立労働生活環境向上に必要な経費であります。  この問題につきましては、まず、最近の経済、労働事情の変化に即応いたしまして、最低労働条件遵守のための指導監督徹底するとともに、技術革新進展に伴う単調労働に対する対策の検討、仕事と能力に応じた合理的賃金制度推進等をはかることとしております。  また、港湾労働出稼労働等、一般的な労働条件向上の中にあって遅れの目だつている労働者に対しても、きめのこまかい施策の惨透につとめ、労働条件近代化促進するとともに、審議会方式等活用により、実効ある最低賃金普及拡大をはかることとし、最低賃金法改正案を今国会に再提出いたした次第であります。  さらに、家内労働者に対し、最低工賃の決定、家内労働手帳制度普及等行政措置推進をはかるとともに、勤労者財産形成政策等の諸施策を積極的に推進することとしております。  以上、これらに必要な経費として五億五千六十五万四千円を計上いたしております。  その四は、労働災害絶滅のための対策推進に要する経費であります。  労働災害防止につきましては、人命尊重基本的観点に立って、新たな労働災害防止五カ年計画に沿って総合的施策を展開することとしています。  そのため、まず、科学的労働災害防止対策基礎固めを行なうという観点から、科学顧問新設技術基準の設定、安全衛生保護具開発研究等研究活動強化をはかるとともに、重建設石油化学等災害多発業種に対する特別指導徹底その他災害防止に関する安全衛生指導体制確立をはかることとしております。  また、安全衛生センター拡充等災害防止のためのサービス網整備促進することとしております。  以上、これらに必要な経費として十一億五千八百八十六万四千円を計上いたしております。  その五は、婦人能力活用勤労青少年のすこやかな成長のための福祉対策推進に必要な経費であります。  婦人及び年少労働者に対しましては、まず、婦人が有する能力を有効に発揮しうるよう諸条件整備をはかるため、就業分野拡大職業講習実施等中高年齢婦人雇用円滑化推進するとともに、勤労青少年ホーム及び働く婦人の家の増設勤労青少年のための総合的な福祉施設計画的整備余暇活動の振興、職場適応指導強化等施策により婦人及び年少労働者福祉増進をはかることといたしております。  また、出稼労働者留守家族対策推進農村婦人過労対策をはかるための調査の実施など農村婦人に対する指導援助内職対策強化等婦人地位向上対策を進めることとしております。  以上、これらに必要な経費として三十六億二千九十万四千円を計上いたしております。  その六は、建設出稼労働対策強化万博関係労務対策推進に要する経費であります。  建設労働者出稼労働者等に対しましては、通年雇用化促進し、その雇用の安定をはかるため、通年雇用促進融資を拡充するほか、新たに、通年雇用奨励制度を設ける等の施策を講ずることとしております。  また、これら労働者保護徹底をはかるため、出稼援護相談所増設就労経路正常化労働条件明確化をはかるための出稼労働者手帳制度の創設、建設業退職金共済制度普及出稼留守家庭対策強化等措置を講ずることとしております。  さらに、昭和四十五年に開催される万国博覧会の建設工事の円滑な実施を期するため、広域職業紹介強化季節労働者就労促進をはかることとし、現地においては、労働者宿舎建設等労働者受入体制整備万博工事従事者適正労働条件確保及び安全衛生指導徹底等措置を講ずることとしております。  以上、これらに必要な経費として十七億一千八百四十五万八千円を計上いたしております。  その七は、労働保険適用促進と健全な運営に必要な経費であります。  中小企業労働者業務災害及び失業に対する保護充実するため、事務組合の設立及び任意適用制度などの活用による未適用事業主労災保険失業保険への加入の促進徴収事務能率促進機械化による労働保険行政効率化推進失業保険受給者就職促進不正受給防止対策強化等施策を進めることとしております。  以上、これらに必要な経費として十三億四千二百四十五万円を計上いたしております。  その八は、相互信頼関係の上に立った合理的労使関係促進に必要な経費であります。  労使が、相互信頼協力の精神を基調とし、企業の実態に応じ平和的、合理的な話し合いを通じ労使問題の解決をはかる慣行を樹立するため、労働教育等指導啓蒙に意を用いるとともに、労働条件改善と、労働福祉向上等をはかるため、中小企業における自主的労務管理改善に必要な助成強化し、あわせて中小企業退職金共済制度普及等を行なうこととしております。  以上、これらに必要な経費として十一億二千八百二十五万九千円を計上いたしております。  その九は、総合的中小企業労働福祉対策積極的推進に必要な経費であります。  最近における中小企業労働力技能労働者不足等事態にかんがみ、事業内職業訓練実施及びその施設設置等に対する助成充実し、技能労働者養成確保と、その技能水準向上をはかるとともに、中小企業の集団に対して、助成強化し、行政指導を統一的、一元的に行なうことにより、労働力確保労働条件改善労使関係の安定、労働福祉向上等をはかることとしております。  また、各種福施祉設増設中小企業に対する福祉施設設置資金融資拡大中小企業退職金共済制度普及、効果的な最低賃金制推進小規模事業場に対する労災保険及び失業保険適用促進等により、中小企業労働福祉対策を総合的に推進することとしております。  以上、これらに必要な経費として三百二十三億七千七百二十万四千円を計上いたしております。  以上のほか、国際労働行政充実、その他一般行政事務費等に必要な経費が計上してあります。  次に、労働者災害補償保険特別会計について御説明いたします。  この会計歳入及び歳出予算額は、ともに一千四百九十四億五千二百万円でありまして、歳入のうち、保険料収入は一千九億六千四百万円で、また、一般会計よりの受入は、十五億五千万円であります。  また、歳出のうち、保険給付に必要な経費として八百二十九億八百万円、労災病院等施設整備拡充のための労働福祉事業団出資に必要な経費として二十九億九千八百五十八万八千円を計上いたしております。  次に、失業保険特別会計について御説明いたします。  この会計歳入及び歳出予算額は、ともに二千六十八億一千七百二十九万七千円でありまして、歳入のうち、保険料収入は、一千五百三十三億三千九百万円で、また、一般会計よりの受入は三百九十六億八百万円であります。  また、歳出のうち、保険給付に必要な経費として一千五百六十四億四千万円、総合職業訓練所整備拡充移転就職者用宿舎建設等のため、雇用促進事業団に対する出資に必要な経費として百六十億七千六百二十八万五千円を計上いたしております。  最後に、石炭対策特別会計につきましては、炭鉱離職者援護対策に必要な経費として五十億九千五十万二千円を計上いたしております。     —————————————  以上昭和四十三年度労働省所管一般会計及び特別会計予算につきまして概略御説明申し上げました。  何とぞ本予算の成立につきまして格段の御協力をお願い申し上げる次第であります。
  4. 田中正巳

    田中主査 以上で説明は終わりました。     —————————————
  5. 田中正巳

    田中主査 この際、分科員各位に申し上げます。  質疑の持ち時間は一応本務員一時間程度兼務員もしくは交代して分科員となられたお方は三十分程度にとどめることになっておりますので、御協力をお願いいたします。  なお、政府当局においても、質疑時間に限りがありますので、答弁は必ず的確に、要領よく、簡潔に行なわれますよう特に御注意申し上げます。  これより順次質疑を許します。大出俊君。
  6. 大出俊

    大出分科員 職業安定法違反の問題、特に港湾労働に関しまして、並びに港労法十六条ただし書き関係で、正規の職業紹介機関を通じないいわゆる青空職業紹介がやみで行なわれておりまして、あるいは戦後処理の一つかもしれませんけれども、場所は、最近片づいたようでありますが、神戸の三宮であるとか、あるいは横浜でいいますと桜木町の駅前であるとか、川崎であるとか、至るところにあるわけでありますが、私の出身が横浜でございますので事情をつまびらかにいたしておりますから、ある意味では全国的ケースではありますけれども、横浜の例をとりまして御質問をいたしたいと考えております。  大体朝の六時ごろから七百名くらいが桜木町の駅のまん前の商店街の公道に集まりまして、手配師が、何々組といういわゆるあまり世の中で表向きに出られない方々中心になりまして人を集めて、一口十五、六名でございますけれども、一ギャングと言いますけれども、この方々港湾労働紹介をする、こういう行為が連日行なわれているわけであります。この七百名くらい集まったうちの、多いときには二、三百の人が残りまして、これがこの商店街に終日たむろしているという形になっているわけであります。したがって、そこを通行する方もうっかり通れない。最近は車などもとめられてしまいまして、何かくれなければ通さぬというようなことになって、この付近の夜の十一時くらいまでつとめる女性たちが、最近は集団的に店からやめたいという申し出等が出てまいりまして、町内会が再度抗議をいたしました結果、国税なり県税なり市税なりを払っている、税金のほうはきびしく取られるおのおの商店である。その場合にこういうことが、ずいぶん努力をして、何べんも新聞に取り上げてもらっているにもかかわらず、県の労働行政のほうでも、国の労働行政のほうでも、さらには横浜の市の諸施策の面でなおかつこれが続くというのであるならば、税金不払い同盟を起こすという決議をいたしまして、朝六時過ぎから町内会の有志の方々がむしろ旗を立てて、そこの集団的に集まる労働者諸君のところに逆にすわり込む、諸君はここに集まらないでくれということを言う、こういうところまで実は来ております。  そうなりますと、これはけが人でも出ますとえらいことになりますので、私も地元の人間でございますからとめておりますけれども、そうかといって、これはいつまでも放置ができないという、実は爆発寸前であります。これは港湾組合のほうの方々等からは労働大臣等にも陳情が何回か出ておるのだろうと私は理解いたしております。したがってこの問題について指摘を幾つかいたしまして御質問いたしたいのですが、 (大出分科員労働大臣資料を示す)大臣、これは状況でございますけれども、これはばくちを打っているところです。この辺はみんな商店でありますけれども、どうにもならぬ実は状態であります。確かに、私も何べんも行って見ておりますが、これは終日ここらで寝ころがっているというので、店があけられない。店の前におるわけであります。どうにもならぬという、実はこっちに資料が一ぱいありますけれども、きりがありませんが、しかもそこに労働者をとりに来る側が、ここに何カ月分かの集計をいたしておりますけれども、天下の名だたる会社までありまして、これは運輸省関係の認可との関係もございまして、日本通運などもここに十日ばかり来ておりますが、上組であるとか神奈川海運であるとか、小林産業であるとか藤木企業であるとか、矢部組であるとかあるいは東信運輸だとか、原田港湾機械だとか東洋船舶だとか、これは有名な会社でありますが、こういうところがそこにございますバスでとりに来るわけであります。  これは調べてみますと、そこだけで手配師がおおむね三十名おります。寿町というところにもう一カ所同じようなケースがありますけれども、ここにもおそらく三十名くらいおります。手配師の名前から、住んでおられる住所から、会社との契約の中身からみんな実は私調べてわかっております。それからどの程度職業安定法違反という形での手配料をとっているかということもあとから申し上げますが、詳細に私調査いたしました。確たる実は証拠がございます。ただここで申し上げますと、会社のほうにもさしさわりが出てまいりますしするので、中身を申し上げて、どこの会社とどうなっているかということは伏せたいと思っておりますが、どうか御答弁をいただきましたあとであらためてひとつ私、労働省なりにお伺いをいたしまして、中身についても氏名についてもお話をしようと思っております。  これは県の労働行政面——横浜市には労働行政を担当する場所がございません。したがって総務局、市議会で申し上げますといずれの局にも属さないものということで、第一委員会というところが扱っておりますが、所管担当セクションがございませんので、市のほうも苦慮しているという状態であります。したがって、この種のケースについてまず大臣のほうで、横浜だけの問題ではございませんので、神戸でも原口市長がずいぶん苦労されて三宮の問題を解決されたケースがあります。川崎でもたいへんいろいろ問題になっておりますが、大体のところを御存じであるかどうかということをまず伺いたいと思います。
  7. 小川平二

    小川国務大臣 御指摘のような事実は港湾労働の秩序を保つという観点から申しましても、まことに好ましからざる事態と申さなくてはなりませんし、かような場合、十六条ただし書きによる直接の雇用という場合を真に文字どおり例外的なケースたらしめなければならないとかねて努力もいたしておるのでございます。  そこで、いま港湾労働法適用されております六大港についての最近の紹介状況を申し上げますると、昨年十二月中の求人延べ数が三十一万一千人でございます。これに対して職安が登録並びに未登録日雇い労働者紹介いたしました延べ数が十八万九千人ございます。十六条ただし書きによる直接雇用延べ数は六万九千人、かような数字になっておるわけでございます。  そこで、いま御指摘のございました横浜等、直接雇用が比較的多い場所を重点に選びまして、関係者の自主的な協力をも求めてこれを正常な姿に戻していきたいという努力をいたしております。横浜におきましては、神奈川県の職業安定機関横浜地区安定審議会と連携をとりまして、これを規制する具体的な方法を検討いたしておるわけです。根本的にはやはり登録労働者福祉を進める、今後とも処遇を改善していくということが肝心であろうと思っておるわけであります。私どもも今後そういう方針であとう限り努力をいたしたいと思っております。横浜の実情についてはかねて聞いてはおりましたけれども、ただいまいろいろ詳細に実際の状態について御教示願ってまことにありがとうございました。
  8. 大出俊

    大出分科員 私もいききかどうも港湾労働専門的になってしまいまして非常に詳しいのですけれども、これは横浜施設でございます。相当な金をかけまして——これはこの間大臣のほうへ陳情に行った、港湾組合中心になってやったほうの側、それから商店街のほうもありますけれども……。中身でありますが、実は相当金をかけてやってきておるのですが、片づかないのであります。  そこで、なぜ私がきょうここで取り上げたかといいますと、近代的ないまの世の中に、そういう戦後の混乱期に置かれた状態のようなことがいまなお各所で続いているということを何とどう理屈をつけてみても放任はできない。そこに欠けているものがある。それは何かといいますと、県なら県が一生懸命やろうといたしましても、いわゆる暴力団などといわれる方々の流れもございますから、あるいはシマもございますから、警察の取り締まりのあり方をもって道路法規その他を使ったりいたしまして排除することができるのでありますが、排除をした場合に、その方々もそれなりにそれで生計を立てておりますから、したがって警察に対する感情あつれきが強くなりまして、を取り巻いて騒ぎ立てるということにもなりかねません。そうすると警察だけの力でやったのでは、排除しても集まる場所がないということになれば、ほかに集まるわけでありますし、警察だけが風当たりが強くなるということで実は踏み切れないというふうな問題も実はございますので、やはり一般世論として、あるいは国の方針として、そういう状態は放任できないのだという雰囲気をひとつ強めてまいりませんと、どこがこれに手をつけるにしても、そこだけに集中的に責任が負わされるということになりますと手がつけられないということになる。したがって、どうしてももう少し、県、市にまかせるだけではなくて、労働省なりあるいは運輸省なり——運輸省のほうは業者に対する行政指導等もできるわけでありますから、したがってそういう総合的な方向をとっていただかないと、どうしても県だけでは、あるいは警察だけでは、市だけでは重荷になる。そこに中心点があるというふうに考えているわけでありまして、そこらのところをぜひ御理解をいただきたいと思うのでありますが、大臣いかがでありますか。
  9. 小川平二

    小川国務大臣 ただいまおことばのありましたとおり、かような事態をそのまま放置するわけにまいりませんから、世論の喚起につとめ、世論の批判によって是正をしていくということも確かに大事なことだと存じます。また業者に対する指導については、これから先もひとつ一そう厳重に実行してまいりたい、かように考えております。
  10. 大出俊

    大出分科員 そこで、これはどういうふうに進めたらいいかという点でありますが、私どもいろいろ努力をいたしまして、横浜の市会、神奈川県の県会、両方でやりまして、できない。そこで私が取り上げておるわけでありますが、大体話をずっと詰めてまいりまして、神奈川県の労働部長の段階でも、四、五日前に神戸の三宮の収拾した状況を調査にまいりました。横浜市からも一緒についていきました。調査をして帰ってきております。  そこで、まずやらなければならぬのは、ほんとうをいうとこれは港労法十六条ただし書き、先ほど大臣がおっしゃった六万何がし、こういうお話でありますが、実はその数字にあらわれていないわけであります、本来、職業安定所に行かないのですから。毎日七百人からの人がここに集まりますが、安定所に全然顔を出さない。安定所の窓口を通じますと日雇い健保やら何やら三つばかり取られる。差し引かれますから、手取り額が減る。しかもやみ相場のほうが高い。高いから安定所に行かない。安定所では千二百円ということだから働き手がない。だから安定所長の握り金か何か幾らか出すようなことをやるのですけれども、それも出ないということになると行かない。だから極端なときには安定所長を取り巻いて出づら手当、調整手当と称するものを受け取って、これだけでは食えないからどこかほかに働きに行きますよと広言する。それでも安定所長のほうはどうにもならぬということになってくるわけです、仕事の性格上。そういうことになっておりますから、安定所のほうで計算ができないそういう数があるわけです。  そこで、やらなければならぬのは、港労法の十六条ただし書きを本来ならばなくする、つまり港湾に働く者、船内にしても沿岸にしてもあるいは倉庫業にしても、とにかく職安の窓口を通じなければ雇えないのだということにすれば、そこに集まる中の港湾に行く人たちは片がつくわけです、法律的には。ところが、それは港湾ばかりではなくて、土木にもドックにも行く人が中にはあります。したがって、そういう意味では総合的に考えなければなりません。  そこで、まずやってもらわなければなりませんのは、収容する場所というものをやはり新しく一つ考えなければならぬ。それも、その中心になっている場所からそう遠くないところに……。そこで、いま神奈川県のほうでは、万国橋というところに現在港湾施設があるわけでありますけれども、ここを県の考え方で拡大をする。ところが、そこの土地が横浜市の土地でありまして、その一部は道路になっておりますが、何とかしてそこをまず拡大する。それからもう一つ、寿町というところに、有馬さんがよく御存じだけれども、公共職業紹介所がある。その隣に港湾労働職業紹介所がある。これは二つ並んでおるわけでありますが、これは昔、昭和二十七年ごろから国と県と市の間でいろいろ話がありまして、県が管理責任を持つ形で市が青果市場等にすることになっておりましたのを提供いたしまして、建物が実はできておるわけでありますが、いまだれも入ってなくてあいておる建物があるわけであります。利用してない。横浜市はここにスラム対策ということで別な計画を持っておりますから、そこに集めることは一見矛盾するようでありますけれども、都市環境整備という意味からいけば、とりあえずしかたがない。したがって、この寿町の県が管理しておる——これは当時のいきさつからいきますと国にも当然責任があるわけでありますが、ここに一つ施設をつくる、こういうことで、県、市協力を願って、国にもひとつお骨折りをいただいて、この両方にまず場所をつくる。そしてたとえば一ぱい十五円の雑炊でも何でも売る店まで用意する。現在桜木町の周辺にたくさんありますが、そういう業者は向こうに行ってもらう。そういう方法をとりまして、解決の方法をとりたいと思いますけれども、ここで二つの問題があるわけであります。  一つは、そういう場所をつくって、あと警察力その他を使って、県の指導をいただいて、向こうに行ってくれという形の指導をする。どうしても行かない方については、警察等の力もかりる。さらにもう一つの問題は、業者がそこにとりに行くわけでございますから、業者のほうに、運輸省その他の力をかりまして、そちらの側から、こういう業者に対しは、そこにとりに行ってはいけないということで、新しい場所をつくったほうに行けということにして、そちらのほうにとりに行かせるようにする。その場合に問題になりますのは、すぐそばに港湾労働職業紹介所があるのでありますけれども、そこを通じないでとっていくということになりますと、ある意味では違法を黙認する形になりかねない。なりかねないのだけれども、法律をたてにものを言っておったんでは今日まで片づかない。だとすれば、そこのところは相談をいただいて、とにかくそういうシステムをつくっていって、漸次それを適法な方向に変えていく、こういう努力をしなければならぬということになる。その両方をあわせて進めていかなければならない。こういうことになると実は考えているわけであります。  したがいまして、これは政府の関係のほうで、大臣に御相談をいただきまして——中曽根運輸大臣にも、内閣委員会にも場所がありますから、あらためて同じことを御質問申し上げたいと思っておるのでございますが、その両方をひとつ働かせていただいて、県、市が直接に泥をかぶる、あるいは警察が泥をかぶるというだけでなしに、国の方針もあってこういうふうに進めていくんだということにしていただかないと、全大局的な立場から見て解決に向かわない。最後に残る問題は、ざっくばらんに申し上げるのでありますが、何々組と称する、ある種の組がある。シマがある。桜木町駅前で、ある勢力を持っておる組の手配師方々と、今度持っていくところの寿町の職業安定所があるところには別の勢力の、やはりそういった意味の団体、組がある。シマがある。だから、そっちに片一方を持っていった場合に、両者のいわゆるなわ張りの関係の中にあつれきが起きはせぬかという警察当局の心配もある。あるけれども、それらについては、もうここまで来ると世論が黙っていない。だから、諸君の生活のかてかもしれぬが協力をしなければいかぬぞということで、やっぱりそういうところはいまの世の中なんですから、そういう意味の指導をきせてあつれきを解消していく政治的努力を、やはりこれは警察その他を使ってやらなければいかぬと私は思っておるわけであります。そういう形で、そこまで進めていただきたい。こういうふうに実は私考えて、県に対しましても何べんも事情説明し、お話をしまして、県の労働部も相当いま積極的になってまいりました。そして、県の労働部、それから桜木町駅前でありますから桜木町駅、基準局、横浜市、警察、こういうところが集まりまして、桜木町駅前周辺環境整備対策協議会というようなものを昨年末につくりまして、何回か会議を重ねてまいりました。中身も相当いま具体的になりつつあります。それから地元の町内会でありますけれども、ここは、さっき申しましたように、税金不払い同盟をつくって、国税、市町村税、県税を払わぬといって、むしろを立ててそこにすわり込むという寸前までいっておりますが、とめております。ともかく早急にここで方針を、県の労働政策その他の中で打ち出していただきたい。そして地元を押えていただきたい。そうしないと、たいへんな社会問題に発展しかねない、こういうふうに実は私ども考えているわけであります。  これらについて、労働大臣というお立場で、運輸省その他とも御連絡をいただきまして、事情は有馬さんが非常に詳しく御存じのはずでございますから、そこまで現に煮詰まりつつあるのでありますので、県当局とも御連絡をいただきまして、事情をなおお聞きいただけば最近の事情はよくわかりますし、また市当局に対する側面的な協力ということでございましたら、旧来からやっておりますし、現在もやっておりますもっと一生懸命ぼくらもやりたいと思っております。市議会でも質問が出て、市長も前向きの答弁もしておりますし、県議会でも質問が出て、知事も前向きの答弁をしておりますから、どうかそれらを総合的に御勘案をいただいて、何べんも何べんも新聞に出て——私こんなに持っておりますが、これは全部、新聞がこの問題を取り上げた中身であります。これだけ新聞がたくさん書いてくれている。早急に公害を除けということまで書いている。これは東京新聞でありますが、これは横浜版にも書いてある。たくさんございます。「売り上げに影響。売れない。山積みになっている。」山積みになっているやつをきっと持っていったり、店先に段ボールの箱を引っぱっていって、酒屋の前にある一合ビンをその中に入れていったり、年じゅうです。しかも、通行人はたかられる。ずっと野毛に行く商店街ですから。婦人ものは一切売れない。こういうことです。だから、そういうことであってはいけないわけでありますから、税金は平等にとっているわけでございますから、払いたくないという気持ちは無理もない。そこまで爆発点に近づいておりますので、ぜひそういうことで御相談いただきたいと思うのでありますが、この辺大臣の御見解を伺いたいと思います。
  11. 小川平二

    小川国務大臣 いろいろ実情について御高教いただいてありがとうございます。十六条ただし書の方式を廃止すべきであるという御意見がございましたが、これもきわめてごもっともと存じますけれども、申すまでもなくこの港湾労働の需給の変動の幅というのが非常に大きいわけでございますから、直ちに廃止するわけにもなかなかまいらないかと存じます。   〔主査退席、登坂主査代理着席〕 そういたしますと、いろいろ御指摘にあったようなさまざまの困難が出てくるわけでございまして、ただいま非常に具体的なかつ建設的な御提案をいただいておるわけでございますから、私ども御趣旨に沿って、関係機関とも一そう密接に協力をいたしまして、問題を一歩でも二歩でも前進させてまいりたいと存じますから、これから先もおりに触れて御注意も賜わり、お知恵も拝借したい、かように考えております。
  12. 大出俊

    大出分科員 私、県当局の責任者の方とも、部長さん、課長さんを含めて再三懇談をいたしてまいりました。もちろん横浜は飛鳥田市長でありますから、私も再三話をしてまいりました。それから横浜市警担当の本部長の山口さん、神奈川県警におられますが、この方とも話を進めてまいりました。所轄の警察署長さん、次長さんとも話をしてまいりました。警察側でおっしゃっておりますのは、排除する方法は十二分にとれるという。ただその場合に国の方針、県の方針、市の方針がきまってきて、こういう集まる場所をつくる、こういう方針でいく、だから警察も責任を負え、こういうふうにしてもらえなければ、私どもとしても動きようがないんだ、何とかそこまで詰めてもらいたい、そうすれば私ども責任を持ってやりたい、こう言っておりますから、念のために申し上げたわけでありますけれども、そのことをお含みいただきまして、ぜひひとつ早急に積極的にお進めいただきたい、こう考えるわけであります。  そこで、職業安定法違反の事実がございますので申し上げまして、ひとつそういう点もお含みの上でお願いしたいわけであります。  実はここに持っております表がございますが、これはかつてのこの種の労務供給をめぐりましての職業安定法違反横浜のこの場所で起こった問題であります。これは不起訴になっておるのがほとんど、罰金刑がついております。非常に安く、五千円、六千円、一万円以下という形のもので終わってしまっている。これは会社から、手配師の名前から、中身から、全部一覧表になっておりますが、これは過去のものであります。現在ございますものを、時間がないので簡単に申し上げておきますが、たいへん苦心をいたしまして調べました。確たる証拠もございます。ただ、さっき申し上げたように、ここでは申し上げません。中身だけ。手配師等の調査の実態報告。野毛地区には手配師が三十名ちょっとおります。寿町にも三十名ちょっとおります。手配師の区分を申し上げますと、各会社と契約しておるケースが一つあります。それから二番目に、独自で労務者を集めて、労務者を求めに来る会社に売っているもの、このケースが一つございます。これは会社とは契約はありません。それから先取りと称するものがあります。これは手配師の手先になりまして、手配師から幾らか金をもらっておりまして、労務者を集めておいて手配師に渡す、こういうことをやっているケースがあります。この三つが大体今日行なわれておる、私ども分けてみた種別であります。  次に、手配師の仲間の用語がございまして、手配師のことを単に手配師とだけ言っておりませんで、頭取あるいは親方、こういう名前で呼んでおります。それから先取りということは、これは親方、頭取についているという形で動いて、労務者を常に——つまりあぶれてめしを食う金がないというと、めしを食うめし代と言って渡して、労務者の住所から居所を押えてちゃんとつかんでおく、こういう形であります。それからポンコツと称するのがありまして、ギャング編成が十五名編成、ないし十六名でありますが、実態は十三名くらいになっております。あとの数はポンコツ、寝番と称する諸君であります。そこらで酔っぱらって動けないのを二人だけとらえて、頭数をそろえて、船内荷役なりに連れていく。その船内荷役の場合に船の人に見えない陰のところに寝かせておいて、一切働かない。したがって、働いていないのだから、お前は寝番だから一日二百円、三百円だということで、あとは頭割り、こういうかっこうで分けていく、こういう状態であります。  それから、各社によって一定しておりませんけれども、大体十五名で、職業安定法違反と私が申し上げているのは、実際には十五名なんですが、十六名の形をとりまして、一名分は封筒に入れて金を手配師に渡す。すると手配師も、一人分になっているから職業安定法違反でないというような仕組みをとる、こういうわけであります。  それから、最近の船舶関係の直接調べた金額でまいりますと、日勤は千八百円から二千百円であります。各社ともこれは一応基準があります。夜勤は二千五百円から三千円であります。オールナイトと称する朝から次の朝までは三千五百円から五千円であります。これは船舶関係であります。これは、そのほか、日産とか土木とかありますが、省略いたします。それから残業がありまして、残業は大体二百五十円、それから三百円、こういう残業手当を各社とも出しております。それから作業によりましては五百円の洗たく代、それから二百円の入浴代、これを支給しておりますが、これらを一切封筒に入れて渡すわけであります。会社はどこまでもそうであります。直接、労務者に渡しております。  この渡しておる封筒の中身、給料袋でありますが、これを調べてみたところが、「定」と書いて、これが九百六十円、夜間手当、これが三百円、奨励金四百九十円、残業二百五十円、計二千円、こういうふうになっておるのです。一人の人のやつを見たわけであります。  そこで手配師の収入はどうなっているかという問題があります。労務者一口について——一口ということは十五名編成の一口、会社から労務者一名分の封筒、総計が十五名頭割り分だけ支給されるかっこうになるわけであります。ところで、手配師が労務者と一緒に作業に行った場合の給料袋の内訳、手配師が自分も一緒に働きに行った場合の内訳を調べてみましたが、さっき申しましたように「定」というのが九百六十円、夜間手当が三百円、奨励金が四百九十円、残業が二百五十円、そのほかに千五百円という理由不明の記載がございます。これの説明を求めましたところが、頭金一人につき百円の手配料といわれるもの、十五名でありますから千五百円、当然であります。それに本人の分二千円、これが一緒に封筒に入って支給される。したがって、一口、二口、三口とまとめますというと、それがプラスされていくというかっこうになっておりますが、これは現に現認をしているわけであります。その袋をもらっている手配師が、また一緒に働いてもらった袋の中に手配料が入っておる。内訳はありませんが、間違いないところであります。それから、右の収入の中から手配師のほうは、先ほど申しましたように、労務者にめし代その他をやって日ごろから確保しておく。こういうシステムになっているわけであります。  それから、手配師会社との関係。各手配師諸君はちょうど昼になりますと一ここで申し上げてもしかたがありませんが、会社との打ち合わせのためにある場所へ参ります。そこで、翌日の作業人員等を、会社から指示を受けております。最近の特徴といたしましては、ほとんどの会社賃金の半月勘定というのをやっておるわけであります。したがって、半月勘定で半月分もらっておりまして、それで一時立てかえ、つまりやみ市場、青空に集まる。その集まる方々が、雨が降った何だという場合の生活は、半月勘定でもらっておりまして、それを渡している。労務者を押えているかっこうになっております。みごとな実は仕組みが、会社も十分承知の上で行なわれています。  時間がありませんから結論を申し上げますが、以上のことを、これを証拠立てますと、どういうことになるかと申しますと、職業安定法の四十四条違反であります。四十四条はここにありますように、「何人も、第四十五条に規定する場合を除く外、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を使用してはならない。」しかし供給しているわけであります。四十五条というのは、労働組合が、大臣の認めた場合、無料で紹介する場合でありますから、一切ほかにはできない。これを現にやっているということであります。したがって、明らかに四十四条違反であります。したがって、六十四条の四号に該当いたします。六十四条の四号と申しますのは、以上の問題についての罰金その他の罰則規定であります。四号で「第四十四条の規定に違反した者」、これは「一年以下の懲役又は一万円以下の罰金」、こういうことであります。ここにございますのは、それに該当しているのでありまして、起訴猶予にはなっておりますけれども、このケースであります。  それからもう一つ重大な問題は、六十七条というものが、職安法に定めがございます。六十七条と申しますのは、この行為を業者諸君が知っておってやらせた場合、業者も同条の罰則を食うことになっておるわけであります。念のために申し上げておきますが、「この法律の違反行為をした者が、法人又は人の事業又は業務について、当該法人又は人のために行為をした代理人又は被用者である場合においては、行為者を罰する外、当該法人の代表者又は人が普通の注意を払えば、その違反行為を知ることができるべきときは、その法人の代表者又は人に対しても各本条の罰金刑を科する。」こうなっているわけですね。これは注意を払えばわかるのじゃない、初めからわかっておって、半月契約でやらせておるわけですから……。そうすると、これはこの法律をできるだけ消極的というのではなくして、もう注意を払うも払わないも、それを積極的にやっているわけでありますから、やみ契約をしてということになりますと、明確にそこに該当をいたします。  以上のような点が明らかでございますが、私がいま申し上げましたのは、ずいぶん苦心惨たんをして調査いたしましたので、どこの会社とどこがどうなって、しかも手配師が名前が何の太郎兵衛で、どこに住んでおって、何の太郎兵衛の給料袋の中身、袋の上に書いてあるのはどう書いてあって、ということまで全部わかっております。しかも、何の太郎兵衛というところまで全部調べて質問をして、こうなったということが全部書いてあります。だが、これはここで申し上げると会社にも影響がありますから、私は会社に影響を与えようとか、あるいはそれで生活をしている諸君の生計の道を閉ざそうというのが目的ではございません。問題は、的確な施策が行なわれていないところにこういった結果が出てくるわけでありますから、だから、ここでこの違反を問題にするのでなくて、こういう行為をやらざるを得ない状態とか、あるいはやり得る状態というものを早急になくすための措置を国がとるべきであるというのが私の考えであります。したがって、後ほど中身その他については有馬さんなりに私、別に申し上げますから、いいかげんなことを言っているのでないということだけは明確に申し上げておきますから、そういう意味で、これだけのことが現に行なわれているのでありますから、どうか早急に責任を持ってこの問題の処理、解決のためにひとつ全力をあげていただきたいことを最後に申し上げまして、大臣の御所見をいただいて終わりたいと存じます。
  13. 小川平二

    小川国務大臣 非常に克明な御調査をなさっておるのでございまして、御努力に対して敬服いたしております。私自身も不勉強で知らずにおりました。いろいろなことをいま教えていただいたわけであります。  これは港湾労働者の秩序を維持するという観点から好ましくない問題であることはもちろん、大きな社会問題でもございましょうし、その写真を拝見しますと、公然と賭博が行なわれておる。風教上からも大きな問題であろうと思います。また、労供禁止規定違反の事実についていろいろ御指摘がございました。こういう近代的ならざる雇用関係がいまなお残存しておるということ自体大きな問題だと思いますので、いろいろ御注意をいただきましたことを念頭に置きまして、あとう限りすみやかに事態改善いたしていきたい、このように考えております。
  14. 大出俊

    大出分科員 ぜひひとつ県当局のほうにも御指示なり話をしていただきたいと思います。  以上で終わります。
  15. 登坂重次郎

    ○登坂主査代理 加藤君。
  16. 加藤万吉

    加藤(万)分科員 最近新しい工場地帯、コンビナート地帯がたくさんできまして、工場の災害規模が非常に大型化をしてまいりました。労働省のほうでもいろいろ検討されておるようでありますが、まず最初に、労働災害防止五カ年の基本計画が答申されましたが、この内容について大臣は御存じでしょうか。
  17. 小川平二

    小川国務大臣 労働災害は、災害件数におきましては、近年逐年減少になっておる。これは御同慶のことと存じますが、反面、技術の革新等に伴って、新しいいろいろな病気も発生しておるというような状況でございまして、今後もますます真剣に取り組んでいかなければならない問題であると考えております。ただいま基本計画の内容についてお尋ねがあったわけでございますが、基本計画におきましては、重点的な施策といたしましては、第一に安全衛生の管理を強化する。それから第二に、災害の原因に対して科学的に対処していこう、科学的にこれを究明していこう。三番目には、従来とも怠っておったわけではございませんけれども、機械設備そのものの安全度を高めていく、こういう点に重点を置いていこう。さらに職業性の疾病、いわゆる職業病というものもふえてきておりまするし、問題にもなっておりまするから、これに対する対策強化していきたい。重点といたしましては、大体四つを考えておるわけでございます。
  18. 加藤万吉

    加藤(万)分科員 大臣、私は、重点政策は確かにそうだろうと思うのですが、この答申は、非常に重要な内容を持っておると思うのです。たとえば、この答申の中に、産業の発展は、災害の大型化、職業性疾病の増大等の危険をいま指摘をしておりますね。同時に、そういうものに対処するためには、現状を維持するだけでも非常に困難である。関係者の相当の努力がなければ現状の維持ができない、こう書いてあるのです。そうして、さらにそのことを踏まえて、関係当局は向こう五カ年間に次のようなことを実施すべきである。すなわち、建設業においては二〇%の災害減をする、あるいは林業においては一五%減等々述べておるわけです。  私は今度の労働省予算を拝見いたしまして、一体この基本計画に沿って今度の労働省の安全衛生関係予算は計上をされたものだろうかという疑問を実は持ったわけです。大臣御存じでしょうけれども、労働災害絶滅のための対策費が今年度の予算に計上されております。これは前年度から比べてマイナス四千六百万円ですね。一体現状を維持することですら関係者努力が必要であり、なお五カ年後に災害を一〇%、二〇%減ずると言いながら、災害絶滅のための費用がマイナス四千六百万円にもなったということは、一体どういうことなんでしょうか。この関係についてお答え願いたいと思います。
  19. 小川平二

    小川国務大臣 この問題は、御指摘のように、非常に大事な問題でありますために、十分な予算の裏づけをすべく、あとう限りの努力をいたしたわけでございます。いま数字の点で御指摘がございましたけれども、予算の総額といたしましては、ちょっと私の持っております数字が食い違っておりますが、これはあとで事務当局から申し上げますけれども、四千二百四十万七千円の減少になっておるわけでございます。   〔登坂主査代理退席、主査着席〕  これは、御承知のとおり、昭和四十二年度から研究所の整備にかかっておるわけでございます。この経費が長期計画で入っておるわけでございます。この分を四十二年度、四十三年度、両方の予算から差し引いて対比いたしますと、差し引いた行政関係費の総額で比べますと、三千六百六十四万八千円の増加を見ておるわけでございます。  私がいま荒筋を申し上げたわけでございますが、さらに事務当局からもう少し詳細に数字的に御説明させます。
  20. 加藤万吉

    加藤(万)分科員 いや、いいです。実は、私は答申案を読みまして、二つの点を感じたわけです。答申案そのものは、やや精神論的、訓話的なんです。そして災害防止の責任をでき得る限り企業の側に実は持たしておるわけです。たとえば健康管理をしなさいとか、あるいは災害防止のための諸設備についての点検を行ないなさいとか、企業の側の責任が非常に多くあって、政府当局として、いわゆる行政当局としての監督ないしは監視機能というものはあまり触れていない。その点で非常に不満を持ったわけですけれども、それでも一応基本計画が出たわけですから、それに沿って——確かに大臣が言われましたように、研究所の設備等が含まれればという話ですけれども、これは昭和四十年に学術会議がすでに新産業に対する研究機能というものを充実しなさいと言っておるわけです。ですから、いわば四十年、四十一年、四十二年と継続された労働省災害防止のための事業計画だと思うのです。したがって、四十二年度の末に出た五カ年計画に沿ってやるとすれば、私は年度予算大臣の言われたようなことではいけないと思うのですよ。四十三年度にきめらるべきものが、もっと拡大をされなければ、その答申は生きてこないと思うのです。私は、その不満足であるところの答申すら生きてこないと思うのです。したがって、私は、いま大臣が前年度から含まれれば三千六百六十万ですか、ふえると言いましたけれども、それは少しこの答申案に対しては、不忠実な施策ではないか、こういうふうに私は思います。  それから、今年度の予算で基準監督官が十五名今度は増員ですね。四十二年度は三十名予算化された経過から見れば、いわゆる減、全体の量からいえば、昨年度に比べて減ですね。私はいろいろ調べてみましたら、労働基準法適用労働者が年々百五十万——四十、四十一年度は百十万でしょうか、それまでは百五十万、ここずっと百万から百五十万前後、基準法適用労働者はふえておるのです。パーセントにして何%でしょうか、七%ぐらいになりましょうか。それから労災の疾病患者、これはパーセントは減っていますけれども、絶対的な人員としては非常にふえていますね。それからぼくが非常に心配したのは、じん肺患者一〇・八%、約一割一分じん肺所見者が発見されておるのです。この基準法適用労働者ないしは、じん肺所見者の発見された事業場を見ますと、多くは中小企業の事業場です。いまどのくらいあるでしょうか。二百三十八万ぐらいでしょうか、適用事業場は。ところが、そのうちで大企業というのは三万ですね。あと二百三十五万以上は中小企業です。それからさらに、中小企業でも十人以下の規模といいましょうか、その規模になりますと、そのうちでも過半数ぐらいになっておるのですね。しかもそこにじん肺所見労働者が非常にふえたということは、いわば中小企業の基準監督行政をもっと強めなければいけないというのが数字的にあらわれているわけですね。労働者が七%ふえて、罹病率も相対的には人員が拡大して、しかもそれを監督しなければならない労働省のたとえば監督官、これは監督官だけをとってみましたけれども、増員は前年度から〇・五%ですよ。片方が七・六%増加しているにもかかわらず、基準監督官は二千六百何人ですか、ちょっとこまかい数字の手持ちがありませんけれども、それから見ると〇・五%しか十五名という数字は増加をしていないわけですね。これでは、私は率直にいって基準監督行政が適正に行なわれるとは思えませんが、大臣の所見はどうでしょうか。
  21. 小川平二

    小川国務大臣 確かに御指摘のような事情になっておると存じます。そういう状況に対処いたしまするために、これに向かう体制をますます強化充実しなければならない必要があるということもまた御指摘のとおりだと存じます。  ただ、御承知のとおり、定員の削減ということが非常に強く要請されておる時期でございますが、これはほかの問題と違いまして人命に直接関係のある問題でありますので、行管の当局等に対しましても強くこの点は要望いたしまして、定員に大きな削減を加えられないようなあとう限りの努力はいたしたつもりでございます。現状については、もとより私自身も不満でございますけれども、大切な問題でございますから、あとう限り行政の質を低下させないように、ますます本来の趣旨が生かされますように、できるだけ指導監督を励行いたしまして対処していきたい、かように考えておるわけでございます。  ことしからは、この災害に科学的に対処していく必要があるという点にかんがみまして、科学顧問というようなものも新設をいたしましたし、嘱託医を設置する、あるいは安全衛生コンサルタント、こういうものも活用いたしまして善処していきたい、かように考えておる次第でございます。
  22. 加藤万吉

    加藤(万)分科員 予算が前年度より減って、基準適用労働者の伸び率よりも監督官が減って、中小企業の数がふえて、これをこうやっていきますと、安全衛生対策というものはないというようになるのですよ。  いま私は中小企業のことだけを言いましたけれども、今度は大企業について見てみましょうか。先般千葉では、例の三井のポリケミカルが爆発しましたね。大臣、あの三井ポリケミカルが爆発したときに、千葉の基準監督官は中に入れましたか。入れませんでしたよ。なぜ入れなかったかといえば、監督官に化学の知識がないのですよ。これがまず第一。それから高圧ガスの取り締まりは通産省なんですよ。したがって、あれだけの負傷者を出した災害にもかかわらず、基準監督官が現場を現認することはできないのですね。私はこの二つの点があったと思う。  それから、それでは大企業の災害に対して監督行政が行き届いているのだろうかというと、今度の三井のポリケミカルの爆発を見て、ぼくは非常に思いました。(大原委員「二回目だよ」と呼ぶ)いま大原先生が言われましたけれども、大竹でありましたね。どうですか。あの爆発は二回爆発したのですけれども、一ぺん小さな音で爆発したときに、工場の労働者はどうしたかというと、全部窓ぎわに寄ったのですよ。二度目に大爆発したわけですね。もし監督行政が、たとえばいまコンサルタントを使って云々ということがありましたけれども、あるならば、ガス爆発が起きたときに窓ぎわに立つなんてことは、これは常識外ですよ。ガス爆発が起こったときには必ず伏せるのですよ。これがいわゆる現場を管理する工場側の監督指導、あるいはこれに対する行政官の監督指導なんです。ところが残念なことには、あそこのあれだけ大きな石油コンビナートに化学の知識を持った監督官がいなかった。その結果あれだけの負傷者が出てしまったわけですね。  ですから、私はこれ以上問題を深く追及、解明する意味で、社会労働委員会でもう一ぺんやりたいと思いますけれども、監督官をふやすということは、他の定員削減の問題と全然質の違った観点から大臣に考えていただかなければならない。しかも、これだけの新しい産業構造の変革の中で工業が興き、それに追いついていく監督行政、あるいは災害監督の知識を持つ監督官をふやしていく、このことがどうしても私は必要だと思うので、これはひとつこれからの施策の中に、ぜひ大幅にそういった方向を労働大臣として打ち出していただきたいというように要望いたしておきます。  労災法の関係を少しお聞きしたいと思います。  いま大臣、月給三万円の単身者が工場で業務上死んだときに、幾らの金が労災保険金からおりると思っておられますか。数学的におわかりになりませんか。
  23. 小川平二

    小川国務大臣 ただいま政府委員からお答え申し上げます。
  24. 加藤万吉

    加藤(万)分科員 それでは、時間がありませんから私が言いましょう。月給三万円、平均賃金が一千円のもので、家族が五十歳の父、四十八歳の母、兄弟が三人、十八歳以下の場合、一時金が四十万しかおりない。工場で業務上死亡しますと、単身者の場合は四十万円しかおりません。もちろん労災保険は、御承知のとおり年金制度が別にありますから、扶養家族を持つ者は別です。業務上死亡した場合の一時金四十万円、これは大臣どうでしょう、高いとお思いでしょうか。
  25. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 ただいまの点でございますが、四十年の労災保険法の改正の際に、遺族補償をいかにすべきかという点について基本的な検討が行なわれたわけでありますが、その際に、原則は年金とすべきであるということと、それから受給者につきましては、たとえば従来生計を一にしておったとか、あるいは年齢がどうであったとかという点については区別はしてなかったのでありますが、考え方としては、補償を必要とするものに対して、補償を必要とする期間遺族補償を行なうという原則のもとに年金化を採用し、その補償の必要度の低いものにつきましては四百日分の一時金を支給する、こういう制度に切りかえたわけであります。したがいまして、遺族補償として少ないか多いかという議論につきましては、補償を受ける必要のあるものについての補償としては高いか低いか、こういう観点から考えられるわけであります。したがって、いま御指摘方々は、遺族の中でも比較的必要度の低い方というふうに判断いたしまして、労災保険法の改正の際には四百日分の一時金支給という一これは外国の労災補償法制から見ますと例があまりないのでありますが、そういった形で処理をした。その点がいま加藤先生御指摘のように、いかにも低いじゃないか、こういう感じを受ける給付金であろうと感じます。
  26. 加藤万吉

    加藤(万)分科員 これは御存じでしょうけれども、労災保険を受給した場合は、企業はその責めを免れることができるわけですね。いま言われたのは、おそらく労災保険はいわゆる給付を長期的に受けて、そういう必要上、そういう人に必要な保険制度として生まれたのであって、業務上死亡した者の一時金的、いわゆる弔慰金的要素というものはきわめて少ないというように私は承っておったのですが、それをおそらく局長は、労使間の、いわゆる対会社の、たとえば民事上の請求といいましょうか、そういうことで行なえればいいんじゃないか——一般的にはそういわれておるわけです。しかし労災法は、御承知のように、それを支給すれば企業の側は責任を免れることができるということになっているわけですから、中小企業の場合に、業務上もし死亡しますと、労災の一時金しか実は払っていない場合が多いわけです。そうすると、三万円といいますと二十四、五の独身者ですけれども、その人が死んだ場合には、結局お金としては四十万円しかない。慰謝料的要素ですね。一時金としてしかおりない、こういう結果になるのです。  そこで年金の制度の問題もありますけれども、これを述べたらたいへん長くなりますから申し上げませんが、そこでぜひひとつ大臣に聞いてほしいと思うのですけれども、昭和四十一年の四月から十二月まで、高裁、地裁、簡裁で取り扱った自動車事故による判決、調停、和解ですね、これは三万円以内での解決は七六・三%でした。ところが昭和四十二年の四月から十一月までになりますと、三百万円以内で妥結をしたものは七一・三%、すなわち五%ダウンしたわけですね。逆にいうなら、三百万円以内で解決できなくなった率が五%上がったと見ていいわけです。ちなみに四百万円以下でおさまった事件は八三・一%です。七百万円になりますと九六%が和解、調停あるいは判決で解決しています。一千万円になりますと九八・九%まで妥結をしているのですね。まあ一〇〇%といってもいいくらい一千万円以上のお金を出せば妥結する、こういうことになるわけです。そこで中曽根運輸大臣は先般の国会で、自賠法の改正を行なって保険金の支払い額の引き上げを行なうのはもう時間の問題である、すなわち三百万円ではもう安い、五十万円の事故補償では安い、したがって保険料の引き上げを伴いながら当然支払い額も引き上げなくてはいけないということを答弁されているわけです。  私は先ほど労災法の問題、一つの例だけ申し上げましたけれども、どうでしょう大臣、先ほど言いました単身者が死んだときに五十万円、それからいま言いましたような、今日の死亡に対する裁判所の和解、調停あるいは判決等を見まして、この際労災法を、保険金額の引き上げと同時に額の引き上げを行なうべきではないかというように私は思うのですが、この見解に対して大臣はどうお考えでしょう。これは大臣答弁してもらいたいですね。
  27. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 制度のあり方に関連いたしますので、私から答弁させていただきたいと思います。  これは御承知のとおりでございまして、自賠法では労災のたてまえとは補償の内容が違うわけでございます。端的に申しますと、慰謝料的な、いわゆる精神的損害の面についても自賠法では見るが、労災補償の場合には原則として物的損害と申しますか、本人が支払いを受けておった賃金を基準にいたしまして補償額を算定するわけでございます。そこで金額が低いじゃないかという問題は、賃金を基礎にして計算いたします以上、賃金とのからみ合いということも問題になってまいります。そういう点からいたしまして、その補償の内容的にも、また金額計算の基礎においても違いがある上に、先ほど申し上げましたように、労災の場合は遺族補償年金というたてまえをとりました関係上、一時金であるたとえば三百万円とか六百万円というものと比較いたしまして、年金として支給されるものが高いか低いかということになりますと、必ずしも直接的比較ができない、こういう点もあるわけでございます。いろいろ感じ方としては高い低いの問題が言えると思いますが、労災補償の制度につきましては、これは国際的にも一つの方向があるわけでございまして、労働省といたしましては、四十年の法改正のときに年金制度に踏み切ったという関係もございまして、これを引き戻してもとの一時金にし、そして自賠法その他との均衡をとるというような方向を考えるというのは、方向としては無理ではなかろうかというふうに存じておるわけでございます。
  28. 加藤万吉

    加藤(万)分科員 年金制度を合わせていっても実は相当安いですよ。たとえど四万五千円、日額でいきますと千五百円の給料をもらっている人が死んだ場合に、一時金六十万円、遺族補償年金は一万八千円の年金ですね。私の計算で間違いないと思いますけれども、かりに二十年受けたとしたって三百六十万円ですか、もう少しになりますか、四百万円前後ですよ。  私は、先ほど言いましたように、七百万円以上の一これは自賠法との比較は、確かに制度上の違いは私も認めますけれども、しかし、七百万以上になれば九六%が解決しているという、このいわゆる社会的事実ですね。社会的には一つの人の値段の基準といいましょうか、これをやはり考えていただかなくちゃいかぬのじゃないか。したがって、中曽根運輸大臣が運輸大臣という立場から、自賠法に基づく補償金額というものはもっと引き上げなければならぬということを、国会で言明されておるわけですから、私は少なくとも労働者の生命の安全を守る、そういう意味での立場にある所管大臣として、労災法の改正を行ない、この支給金額の全般的な引き上げを行なうべきである、そういう方向について検討するというくらいは、私は大臣答弁を求めたいと思う。  時間がありませんから、最後に、これは一緒に答弁願いたいと思うのですが、今度労災法の適用は、五人以上の全事業所になりましたね。そこでこういう問題が起きていますが、これもひとつ大臣の所見をお伺いしたいのです。いままで本社、いわゆるホワイトカラーの労働者、これは製造所ではありませんから労災法の適用がありませんでしょう。今度はたとえば本社につとめている者でも労災法の適用になったわけですね。そこで、いままでは労働基準法で一時金の支払いはしておったわけです。死亡した場合は千日分ですね。ところが労災法の適用ですと、先ほどお話しになりましたように四百日ですね。私がかりにここで死んだと仮定しますと、いままで基準法で千日もらえた。ところが先般の閣議で、全事業所強制適用ということになったとたんに、私がかりにきょうあるホワイトカラーの事務所で死んだとしますと、四百日になってしまうのですよ。私はどうしてもこの矛盾は解決しなければならない問題じゃないかというふうに思うのですけれども、前の問題といまの問題を含めて大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  29. 小川平二

    小川国務大臣 前段の問題は基準局長から申し上げましたとおり、労災と自賠と制度のたてまえが違いますので、必ずしもこれを直接対比して論ずることが妥当であるかどうかということは、一つの問題であろうと存じますが、遺族の補償につきましては、これから先も年金を中心にして極力充実をはかっていきたいと考えております。  それから、後段のお尋ねの問題でございますが、これはかつては労災保険の補償が基準法における災害補償と全く同様、一時金で処理されておったわけでございますが、その後に法の改正がありましたことは御承知のとおり。そこで遺族補償が従来、いまおことばにありました千日分の一時金で解決をしておったわけでございますが、年金制度を導入いたしました結果、相当大幅な給付の改善になっておるわけであります。ただ死亡した労働者に扶養されておらなかった家族あるいは働き盛りの若年の父母等にに対して四百日分の一時金が支給されることになっておる。この四百日分の一時金はあくまで補足的、補助的な給付であり、外国等にもあまり例を見ない、異例な制度であろう、このように考えておるわけでございます。
  30. 加藤万吉

    加藤(万)分科員 私は率直に言って、やはり基準法と労災法上の法体系の矛盾だろうと思うのです。前回労災法を改正をしたときに、実は率直に言ってそこに大きなミスがあったような気がするのです。基準法で千日を支給されて、労災法の強制適用になった場合には四百日になってしまうというのは、どうしても私は法体系上の矛盾だろうと思うのです。しかも、今度閣議で全事業場一斉に強制適用になるわけですから、もしそれが五人未満まで拡張されますと、相当な人間が千日から四百日にダウンされるという結果になりますから、私ども労災法の法改正の問題を出す予定でいま作業を進めておりますけれども、その前にも労働省側で十分考慮をして、これからの保険改正の問題に取り組んでいただきたい、こういうふうに思います。  以上で質問を終わります。
  31. 田中正巳

  32. 大原亨

    大原分科員 私は第一に、清掃法、労働基準法、職安法に関連をして、最近やかましくなっている国やあるいは公団や地方自治体におけるそういう法律問題、それからもう一つは、機構改革に伴う安全衛生局廃止、それに伴う問題、これらの問題を中心に簡単に質問いたしますので、ひとつ簡潔にお答えいただきたいと思います。  第一は、国鉄の問題でもいろいろ議論になっておるわけでございまして、労働力の需要が非常に多くなって供給が困難になってきますと、いろんな関係労使関係近代化に逆行するような事態方々で発生をしておることはまことに遺憾であって、労働省は、その点では憲法や労働三法の趣旨に従って、き然たる態度で臨んでもらいたいということが第一でありますが、私がその問題として具体的に提起する問題は、最近全国で、地方自治体において、清掃業務についていろんな問題が起きつつあるわけです。清掃業務、これは非常にやっかいな仕事でありますから、そういうふうなことになるということもあるわけですが、清掃業務の終末処理を労務供給業者に業務委託をして行なう、こういうことに関しまして、ひとつ法律関係を私はこの際明確に示してもらいたい、こういう気持ちから逐次質問を申し上げていきたいと思います。  申し上げたように、清掃業務について、終末処理を労務供給業者に業務委託をして行なっておるという事例が、きょうは厚生省の担当局長も御出席ですが、そういう事例がたくさんございますか、御記憶であればひとつ教えていただきたい。
  33. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 終末処理場だけの業務を委託しているというケースにつきましては、残念ながら数量的なものをまだ承知しておりませんけれども、あまりないかと思われます。と申しますのは、市町村による現在のごみの処理が、約千三百八十万トンほどの処理をやっておりますけれども、その中で委託というものが百万トン程度でございます。そういう状態から見まして、最終のごみ焼却場が全く委託だけで行なわれているというものは非常に少ないというふうに考えております。
  34. 大原亨

    大原分科員 私はその数少ない中で、一つ具体的に取り上げて、二、三年前問題となっておりました問題について、ひとつ環境衛生局長のほうから清掃法の観点での御見解をお伺いしたいのです。それは、広島市におきまして、中部の清掃事務所の焼却場、今度新しく計画されている東部の焼却場の終末処理につきまして、近代的な建物、それから電気やその他燃料、そういうもの、一切資材は市が保有をしておりながら、労務供給業者に対しまして労務の供給を委託をいたしましてやっている、こういうことがあるわけであります。したがって、これは清掃法の議論のときにいろいろ議論になり、あるいは省令や通達等が出ておるわけでありますが、この問題について私はひとつ実態調査をしてもらいたい、こういうことを事前に申し入れておいたのですが、清掃法の精神からいっても、私はこのようなことを何らの規制なしに野放しにすることは、問題ではないかと思うわけです。  たとえば、労務供給業者に末端の業務だけを委託をして、そうして民間の人がそこに入ってまいりますと、たとえば労使関係が起きてまいりまして、ここだけの労使関係で市全体の業務がストップをするということになる。ふん詰まりになるということになる。たとえば労使関係の問題が起きた場合に、全体がこれで処理できなくなるということもあると思う。これはあとの職安法、労基法は別ですが、そういう清掃法の、非常に困難な仕事ですが、非常に大切な仕事です。その処理のしかたは、市が、公共団体が責任を持つという精神からいってもこれはおかしいし、あるいは審議の過程や厚生省の方針からいっても問題があるのではないか。こういうことがどんどんふえていくということは問題じゃないか。したがって、その点についてひとつ現在の段階おにける厚生省の御見解を明らかにしてもらいたい。
  35. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 汚物の処分につきましては、清掃法では市町村が行なうということになっておるわけであります。ただし一定の基準によりまして委託をすることができるという道は開かれております。しかしながら、ただいま先生が御指摘になりましたように、最終の終末処理というべき、たとえばごみの焼却場というものにつきましては、この清掃法の施行規則のほうでも、第十一条でございますが、管理基準というものが定められておりますが、その最後の七号のところに「市町村は、その設置に係る施設の維持管理をみずから行なうこと凶ということを明記してございます。特に中間の収集作業あるいは大量の汚物を外部に収集を委託するということはあり得るといたしまして、このごみ処理の最終の施設につきましては、市町村みずからが維持管理する。これはもっぱらそこが一番不衛生な問題にもなります。また先生御指摘のように、最後のふん詰まりが起こるというような現象もございまして、そういう規定をしているわけでございます。  広島市のただいま御指摘のございました中清掃事務所というのは、三十九年ころからこういうような民間に一部を委託するというような形で出発したようでございます。そういうような既成の事実がございまして、現在でもその委託をしておるということになっております。しかしながら、私どものほうは、ただいま申しましたような方針でございますので、そういうような新たな焼却場に委託をするという計画については再検討いたしますように指示をしておるところでございます。  また、この問題については広島のみならず全国にも波及するということもあるわけでございますので、去る二月の終わりに行なわれました全国の関係清掃課長会議におきましても、このことはすでに明瞭に指示をしておるところでございます。
  36. 大原亨

    大原分科員 またあとで申し上げることにいたしまして、職安局長、これは労働省関係ですが、これはいままで国鉄その他の問題で議論になりましたからこまかいことは省きますが、つまり設備その他は完全に市が持ち、燃料まで市の設備の中でやるのですが、労務だけを供給業者に委託をいたしまして、そして又下請まで出す、そういうようなことです。これは基準法にも関係いたしますが、これは職安法の精神からいいましてはっきり問題である、私はこう思いますが、いかがですか。
  37. 有馬元治

    ○有馬政府委員 作業委託に伴いまして、職安法の禁じております労務供給事業に該当するかどうかという問題は、いろいろな場面にございますが、いま御指摘の清掃業務につきましては、清掃法並びに清掃法の施行令によりまして委託の場合の基準がきめられております。この基準は職安法の施行規則の第四条に規定する四つの条件に違反しないような基準になっておりますので、法体系としましては、清掃法の関係におきまして職安法と抵触するというふうなことは起こらないようになっております。
  38. 大原亨

    大原分科員 いまお話のありました職業安定法の施行規則の第四条の四つの項目、その中の第四の事項にございますね。つまり終末処理の労務提供、労務というものの内容は専門的なものじゃないわけです。全く単純な労務なんですね。市が特にだれかに委託をしてやらなければできないというふうなものではない。これは完全な単純労務です。これはだれが見たってそうでしょう。それから先ほど来第二号の問題がしばしば議論になっておりましたね。これだってやはり労務供給について監督の形式はとっておるけれども、やはり第二号の「作業に従事する労働者を、指揮監督するものである」ということに関係をして問題がある、私はこう思うわけです。いかがでしょう。
  39. 有馬元治

    ○有馬政府委員 御指摘の広島の委託契約の内容並びに実態でございますが、私ども委託契約書の写しを取り寄せまして検討してみた結果、最初に御指摘がございました中間のごみ収集業務が、単に肉体的な労働を提供する作業であるというふうにのみ割り切るということは少しいかがかというふうな感じがいたします。こういった中間のごみ収集業務といえども相当の経験が必要であるというふうに考えられますので、この部門を直轄から委託に切りかえるということ自体は職安法違反にならないのではないかというふうに考えておりますが、契約書の内容をしさいに検討してみますと、請負業者の作業員に対する市当局の指揮監督の問題、この点につきまして若干契約文面からいきますと、「業務の実施にあたっては甲の指示に従う」、すなわち市当局の指示に従うというふうな場面がございます。こういった点では若干四条の二号に抵触する疑いがあるのではないかというような感じがいたしますが、いろいろ聞いてみますと、この市当局の指示は、突発事故が起きた場合に請負業者の責任を通じて指示をするというふうな実際の運営になっておるようでございます。その限りにおいては私どもも委託はやむを得ないのじゃないか、これを労基法違反であるというふうに断定するわけにはいかぬのじゃないだろうかと思います。  ただ、実態がそういう実態になっておるかどうかという点がさらに問題でございますので、実情につきましては今後とも十分注意をいたしまして、名実ともに違反でないというふうな作業請負を指導してまいりたい、そのように考えております。
  40. 大原亨

    大原分科員 これについて環境衛生局長は再検討を命じた、これは清掃法の精神からでしょうが、しかし職安法や基準法からいっても、やはり最末端の一番大切な、公共団体が責任を持つべき事業について、その労務の供給だけを下請に出すというふうなことは、これは私は問題じゃないか。出した動機というものはいろいろあると思うのですけれども、広島市は御承知のように人口が非常に増大をする地域です。五十三万人口ですが、百万都市といわれるような規模を持っているほど人口が集中しているわけです。したがってそういう汚物も非常に多いわけです。したがって、めんどうな仕事を市が責任を負うということでなしに、だれかに委託をきせて、そこに責任をおっかぶせるということが、私は実際にこの道が選ばれた一つの動機ではないかと思うわけであります。ましていま局長が言われたように、経験を要するというふうなことを言われたわけですが、しかしこれは言うならば単純労務ですよ。これは非常に技術を要するとか、特殊な仕事ではないと私は思うのです。労働としては普通の人が回避する労働ですけれども、しかしこれが非常な技術を要するものだとかいうふうな、そういう第四号に該当するようなものではないと私は思う。契約書の形式はともかくとしまして、実際にピンはねとか中間搾取が行なわれておるということの問題等についても、私は問題があるのじゃないかと思うわけです。したがって私は職安法の精神からいえば、業務について責任を持っておるものがこの雇用関係を明確にしながらやっていくということが当然のことではないかと思う。だれかにまかせておけば、そこで労使関係その他が処理できるというふうな考えも、うるさいところはあるでしょう。しかし、そこでもし労使関係で紛争が起きた場合には、いまお話し申し上げたようにこれは全体に影響することになるのですから、ですから私は、そういう点で労使関係近代化を主張しておる、そういう観点から言うならばこれは問題ではないか。十分実態を調査した上で検討すべきではないか、こう思います。いかがですか。
  41. 有馬元治

    ○有馬政府委員 清掃業務の一部を民間に委託するかどうかという方針の問題、これは厚生省の問題でございますが、委託をした場合には労基法違反にならないかどうかという見解につきましては、先ほど申し上げたとおりでございまして、御指摘の広島市の具体的なケースにつきましては、なるほど作業の大部分は単純作業員によって処理されるわけでございますが、この中間収集業務、この全体を責任をもって遂行するという場合には、やはり具体的なケースを見ましても、作業員が四十一名に対しまして、技術的な要員が三名、あるいは整備工、ダンプ運転手というふうな免許を持った方々が六名ほどおります。こういった陣容で中間収集業務を処理しておりますので、私としましては、この場合に労基法違反であるというふうには解釈されないと思います。
  42. 大原亨

    大原分科員 いま私が言っておるのは、職安法の施行規則の第四条です。この四つの項目から考えて見て、これは実際に他の作業場でも市あるいは他の自治体が直接やっている。その最末端の処理について、焼却場その他があり、燃料その他も市が供給するのに、労務だけをこういうふうに切り離してやって、またその下請もやらせる、こういうかっこうで契約関係拡大するということになれば、公共性やあるいは労使関係近代化という点から考えてもこれは問題じゃないか。これを問題でないという解釈をするのがよっぽど問題だと私は思う。頭がどうかしていると思う。環境衛生局長は、実態を見てもう一回清掃法で再検討を命じていると言っているのだから、あなたのほうも、この問題はこれから随所で問題になってくるものですから、もう少し近代的な考え方をもって対処してもらいたいと思いますが、いかがですか。
  43. 有馬元治

    ○有馬政府委員 民間委託に出すかどうかという問題は、先ほど厚生省から御答弁がありましたように、できるだけ直営が望ましいという基本方針はあるだろうと思います。しかし、民間に委託した場合には、職安法に抵触するかどうかということが問題になりますので、私どもとしては、十分実態を調査し、違反にならないような指導を加えていっておるわけでございますが、御指摘の第四号の問題は後段のほうに問題がございます。これは技術的あるいは専門的な経験といった要件が要るわけですけれども、全体としての作業にそういった専門的な経験ないしは専門的な技術が要求されるわけでございまして、個々の作業について単純な労務の提供にすぎないという作業がその中に含まれておりましても、これはやはり中間の清掃業務を請け負っておるという解釈が成り立つわけでございまして、その辺は法に抵触するという問題ではなくて、委託することが妥当であるかどうかという問題だろうと私は思っております。
  44. 大原亨

    大原分科員 もう一つは、労働基準法からいえば、中間搾取が行なわれているかどうかということがあるでしょう。他の自治体のほうでは終末処理を清掃法の精神に従って責任を持ってやっているのに、ここだけできるだけ安易に使うというふうなことから、清掃法の精神に反するようなかっこうで、職安法についての合法的な根拠を求めて下請に出すということをやっていくのであるならば、労使関係近代化やあるいは雇用関係近代化には役立たぬだろうと私は思うわけです。逆行するんじゃないか。そういう精神で法律を運営すべきじゃない、一般常識からいってもおかしいじゃないかということを言っているわけです。単にそこだけをとって議論をするならば、あなたのような法律の解釈はある。しかし、これは法律の問題ではなくて政策の問題だというふうにあなたは言われるわけですが、私は、これからそういう問題が随所に出てくると思うので、この問題について十分政策にマッチするような法律の解釈のしかたをきちっととってもらいたいと思います。  あまりこれだけに時間をかけるわけにいきませんが、従来からずっと議論になっていることですから、労働大臣の見解をひとつ聞かしていただきたい。
  45. 小川平二

    小川国務大臣 職安法の適用の問題につきましては、労働省といたしましては、従来厳正な態度で臨んでおるのでございます。おことばにありました国鉄の五万人合理化に関連していろいろ問題が起こっておるわけでございますが、さような場合におきましても、国鉄当局に対して注意を喚起いたしますとともに、いやしくも疑わしい点がありますれば、たとえば、契約の案文等も適当な形に修正してこれを実行させるような指導もいたしておるわけであります。  ただいまの問題の場合につきましては、局長から御答弁申し上げましたとおり、実態を検討いたしました結果、職安法に抵触する事態ではないという一応の判断を持っておりますが、いろいろ御意見もございましたので、さらに慎重に入念に実情を検討させることにいたします。同時に、関係機関とも連絡をとりまして、正しい形で事柄が処理されますようにつとめる所存でございます。
  46. 大原亨

    大原分科員 これはまた別の機会にいろいろと議論することにいたしまして、この問題は一応これで終わります。  それからもう一つは、労働大臣、去年つくった労働安全局をことしすぐはずすのはちょっと不見識ではないか。しかも一省一局削減ということで局長だけ格下げになり、局長の定員が一人減るというだけのことでは意味がないのではないか。こんなことでは問題ではないか。たとえば、通産省の鉱山保安局を労働省の労働安全局に持ってきて、部なら部に格下げにすると言ってはいかぬけれども、部にしておいて安全行政を一体的にやっていくことがむしろ前向きであって、いま労働災害の問題がいろいろ議論になったけれども、今日の情勢に沿うものではないかと思うわけです。あまり便宜主義、機械的であって不見識ではないかと私は思うわけです。この問題についてこれから国会でもいろいろ審議になるわけです。予算にも関係するわけですが、労働大臣、行管の担当局長、通産省の鉱山保安局長からそれぞれひとつ見解を述べていただきたい。
  47. 小川平二

    小川国務大臣 ただいまおしかりをいただきました問題につきましては、実は私も非常に苦慮いたしておるのでございます。おことばのとおり朝令暮改という御批判であればそれは甘んじて受けねばならないかと存じます。ただ一局削減という問題は、いわば非常に高度な政治的判断に基づく政府の方針でございまして、一省でもおれのところは別だということで特殊性を主張してこれに従わないというようなことになりますと、全体の計画の遂行が乱される、かようなことになりますので、私どもこの点は非常に苦慮いたしたわけでございます。労働省の部局は、いずれをとりましてもそれぞれ大事な仕事をしておるわけで、実際甲乙がつけかねるのでございまして、この結論を導き出します過程でいろいろなことを研究いたしたわけであります。いま鉱山保安局についての御意見がございました。私どもも、これは検討に値する、値すると申しますより、検討すべき一つの提案としていろいろ考えたわけでございます。結論といたしましては、局を廃止した後においても、行政が摩擦なく円滑に引き続いて行なわれる、継承されていくような、そういう局を廃止するほかない。まあかような結論になったわけでございます。労働災害の防止の問題がますます大切な問題になってきておることは、先ほど来お話に出ておるとおりでございます。これを労働基準局に統合いたしました後においても、行政の質を落としませんように、むしろより一そう能率をあげていきますように私としては懸命に努力していきたい、このように考えておる次第でございます。
  48. 大国彰

    ○大国政府委員 今回の一局削減につきましては、これは総理の指示で各関係大臣がそれぞれの所管行政を通観いたしまして削減する局を定めたわけでございますが、なお一局削減はその省庁内だけでございまして、各省庁にまたがる機構の改革等につきましては、本年の二月二日に閣議決定いたしました今後における行政改革の推進ということで、三年計画を立てることになっております。その計画の中におきまして、共管あるいは類似行政、そういったものの根本的な検討をいたしまして慎重に結論を出したい、かように考えております。
  49. 西家正起

    ○西家政府委員 通産省といたしましては、明治年代から鉱山の保安につきましては、通産省で所掌してまいっておるわけでございますが、その考え方といたしまして、行政対象となります鉱山が、生産と非常に密接な関係を持っておりますし、行政対象となる施設、技術というものが生産と一体不離でございます。したがいまして、通産省の生産行政の中においても、鉱山保安を最優先するというようなもとに、両者の両立する間で生産を行なっておる、こういうことでございます。実際に鉱山におきます条件状況は、化学工場等と違いまして、毎日毎日生産現場というものが坑内で移動いたしていくわけでございまして、生産の把握ということが即保安を把握するということから、こういう見地からしても、どうしても切り離せない点が多いわけでございます。  なお、鉱山保安行政につきましては、人に対する危害の防止のほか、鉱害の問題、資源の保護ということを包括いたしまして、現在統一的に取り締まっているわけでございます。この事情は、諸外国におきましてもほとんどの先進国が、一般の労働災害につきましては労働省所管でございますが、鉱山につきましては大体生産官庁が一律的にこれをやっているという現状でございまして、私といたしましては、鉱山保安局は現状のまま通産省にあるのがいい、かように考えております。
  50. 大原亨

    大原分科員 それは、鉱山保安局がこれは労働省に持っていったほうがいいと言ったら、それはあとでやられるから、そういうことは言わぬだろうけれども、そうではなくて、鉱山保安局の人事だって、他の省の、ほとんど大企業なんだけれども、その助長や指導の産業面に重点を置いたところと人事交流をやる。あるいは大臣は上は一人だ、そういうことでやったりもらったりすることになって、結局は鉱山保安ということがなおざりになるんじゃないかという議論があるわけですよ、一貫して。しばしば事故があるたびごとに、ある。ですから、それは私はやはり労働安全の問題は法律を守らせるという問題よりも、一つの運動というか、やはり運動的な問題が多いわけです。災害を防止するという努力のほうが多いわけです。そこに努力を置いていこう、こういうことですから、もちろん一般行政と密接な関係がなければならぬことは当然ですが、何も鉱山保安だけをやるという理由は私はないのじゃないか。だから、そういうことを議論をして、行政管理庁のほうもこれからの審議の中で政府は一応提案されておりますが、そういう審議の中で、やはりそういう観点での議論も加えていって、実質的に行政内容が充実をしていくように、あるいは安全運動の啓蒙活動その他を含めて前進をするようにすることが、私は全体の行政の前進ではないだろうか、こう思うわけです。したがって、労働大臣に、じゃそういうことでやってくれということで、やりますということの答弁を求ても、それは佐藤内閣の中で困ることがあるかもしれない。しかし、私は行政管理庁は少なくともそういう見識を持って今後の法律案、これはどうせこの国会ではつぶれるかもしれないけれども、だからあまりそれは意味のないことなんだ、ちょっと姿勢を正す、気合いを入れるということなんだろうけれども、これは局長が一人どうとかなるというだけの問題です。ですから、それをもう少し総合的に、新しい情勢に対応するような行政の近代化をやっていくということから、私は一応提案は提案として、あまり通すとかなんということは考えないでおいて、次によりよいものを生んでいくという一ステップにすることが必要ではないか。このことは、私は行政管理庁の関係の総理府の分科会でもやろうと思うので、きょうはひとつそういう問題について提起をすると一緒に、労働省が労働安全の問題について、国民経済からいっても国民の利益からいっても重要な問題であるから、これを提起をしておいて、今度は次の年は局を廃止をする。大野局長は、わしがひとつ音頭をとってということを言ったとかなんとかということをだれか言っておったけれども、そんな義理人情の問題、浪花節じゃないから、それはやはりもう少し見識のある態度をとるべきじゃないか、私はそう思うわけです。ですから、労働大臣もそういう面でほんとうの意味における近代化をやるということで、私は今後の閣議でまたこれがどうせつぶれた後の処理の問題についても処理をして、そしてほんとうに前向きの形でそういう局長が一人減るのはかまいませんけれども——通産省の局長が減るのはかまわぬというわけじゃないが、一緒になってここで安全運動が強化されればいいわけです。ですから、そういう観点で私は取り組んでもらいたい、労働大臣の見解を聞きまして最後といたします。
  51. 小川平二

    小川国務大臣 ただいまお申しつけのありましたような気持ちで、今後この種の問題に対しましては前向きで善処してまいりたいと存じます。
  52. 田中正巳

  53. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 私は、労働基準法についての大臣の権威的解釈といいますか、わからないものですから、そういう労働基準法執行の責任者である労働大臣の解釈をお聞きしたいということと、その労働基準法の運営についてのお考えを聞きたい、その二点であります。  それでまず第一に、労働基準法は憲法二十七条に基づいた労働条件の基本法と私は思うのですが、その点はいかがでしょう。
  54. 小川平二

    小川国務大臣 御指摘のありましたとおりだと了解しております。
  55. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 そうしますと、いろいろの給与に関する法案で労働基本法としての労働基準法のあとに、給与に関する別な法律で労働基本法である労働基準法を改めるということは不適当であると思うのですが、基本法の線に沿うて、他の法律でその線内において改正することはできるが、基本法というものに相反する改正はできない、基本法そのものを改正しなければできないのではないか、少なくとも不適当ではないか、こう私は解釈をするのですが、いかがでしょう。
  56. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 法律の解釈の問題に関連しますので、私からお答えいたします。  先生御指摘の憲法第二十七条第二項では、「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。」こうなっておりますが、「法律でこれを定める」という点につきましては、労働基準法のほか、たとえば国家公務員については国家公務員法で、地方公務員につきましては地方公務員法におきまして、それぞれ処理しておるわけでございます。一般論としては、労働基準法が、憲法第二十七条第二項の規定によりまして、大多数の労働者適用がある労働基準に関する法律であることは当然でございますけれども、もちろん法律という法形式をもちまして定めれば憲法第二十七条第二項の規定の趣旨は満たされるわけでございますから、私ども、他の法律でも労働条件に関する規定はなし得るというふうに考えております。
  57. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 それは、国家公務員法その他の除外例はわかっておるのですが、労働基準法という基本法の精神ですね。そういうものを一部に準用し、その基本というものに相反する、労働基準法を無視する法律はつくれないでしょう。それを除外して、国家公務員であるがゆえに別に定める場合においても、労働基準法に相反する規定はできない。そうでなければ基本法ではないですね。たとえば教育関係に教育基本法があり、そのもとに学校教育法、社会教育法といろいろな規定がある。私立学校法もあります。しかし、教育基本法そのものを無視する法律は、後法が前法に優先するというふうな単なる法諺に基づいて、かってにいつの間にか基本法を空洞化しておるというふうにはできないのではないですか。
  58. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 公務員以外につきましては、たとえば船員法という法律がございまして、船員については労働基準法の適用はないわけでございます。つまりそのように特殊なものにつきまして、それぞれ別個の法律をつくりまして労働条件を規律するというのは、これはいわば立法政策の問題であろう。労働基準法が基本法ではないかというのは一般的な感じ方でございまして、法律のたてまえといたしまして、いわゆる教育基本法とか農業基本法といったような意味の基本法として労働基準法がそういう法的な地位を占めておるという点については、私どもの所管でございまして我田引水というわけではございませんけれども、そこまで法的な意味において基本法だということを主張することはやや問題があるのじゃないかというふうに存ずるわけでございます。
  59. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 憲法二十七条に、かくかく労働条件は法律で定める、それを受けて労働基準法ができた、したがって憲法の趣旨に沿うて原則を定めた意味において、憲法から流れた基本法である。ところが、ほかの、農業基本法は、憲法に書いてないですからね。これは憲法に基づいた基本法だというのは、私は我田引水でも何でもないと思うのです。労働大臣は基本法だと明確にお答えになった。あなたは何かちょっと半分ぐらい否定するようなかっこうですが、その辺はやはり位置づけをちゃんとしておかないと、いろいろの混乱があるので、いまお聞きしたのです。何か二人で少し違うのですね。  三十分しかないから、それはそこでおいておきます。  そこで、私のお聞きいたしたいのは、いま問題になっておる先生の超勤の問題について、労働基本法の解釈として矛盾が出てくるように思うので、これは解釈でいいです、教員の指揮監督権が労働大臣にあるわけでもないのですから、法の解釈として、一般職を前提とする場合に、そして労働基準法に拘束時間という近代的労働条件の基本があって、超過時間に対しては超過勤務に対する手当を出すという意味の超勤は、これは否定はできない。これは間違いございませんか。
  60. 小川平二

    小川国務大臣 今度の法案で新設されます教職特別手当なるものが、国家公務員あるいは地方公務員についての超勤を規定した部分と競合いたしますので、競合する部分について労働基準法の適用が排除されるわけでございますが、私どもは、この教職特別手当なるものが、実質的に超勤、基準法のいわゆる割り増し賃金に見合うものだ、このような考え方をとっておるわけでございます。
  61. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 今度の特別手当ですね。それは超勤と同質のものであるというお考えですか。
  62. 小川平二

    小川国務大臣 実質的にはこれに見合うあるいは代替するものだ、このように解釈しております。
  63. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 一律に支給するという内容ですが、いわゆる超勤手当の実態を調査をして、小学校の先生は何時間、中学は何時間という実態があらわれて、その算出の基礎で最初予算要求をしたわけです。だんだんと変更して一律支給ということになったが、しかしそれは支給するときの便宜であって、いわゆる超過勤務に対する超勤手当の変形といいますか、そういうものであると解釈をされておる。間違いございませんか。
  64. 小川平二

    小川国務大臣 割増し賃金は、本来提供されました労働時間に対応して払われるのが本筋であるけれども、教職員の仕事の態様、所定の勤務時間をこえる時間についての労働の態様が特殊であって、時間で計量するのに適しない。かような考え方から、一律に四%ということに定められたもの、かように了解しておりますので、いま先生おことばのございましたとおり、一言にして申せば変形と了解してよろしいかと考えております。
  65. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 お医者さんの場合、つまりああいう知能的なものについては、質的な性格があるので、いわゆる量的に計算ができないという意味においては、教師の場合にかかわらずお医者さんの場合でも、いわゆる高次の専門職の場合には、そういうふうな計算ができないということで考えていかれるとすれば、教員の勤務の状況だけを特別、超過勤務を否定して、別な手当という考えは、これは不適当である意味と私解釈してみましたが、よろしいですね。
  66. 小川平二

    小川国務大臣 ただいま教職員に対する教職特別手当について御答弁を申し上げたわけでございますが、私どもは、今回のことはやはり今日までの問題の経緯と関連させて考えるべきではなかろうかと存じます。今日まで……(山中(吾)分科員「政治的なことは要りません、法律解釈をしていただきたい」と呼ぶ)政治的には従来の経緯もあり、現実的には一歩前進であるという考え方をとっておるわけでございますが、お尋ねの点は法律の解釈といたしましては、先ほど申し上げたような考え方をいたしておるわけでございます。
  67. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 局長に……。調整額というのは、法的性格はどういう性格ですか。給与法で調整額というものを出すでしょう。ある職種の中で特別の、たとえば教員の場合に、農業に従事している先生には、特に家畜の飼育その他のなにがあるので、調整額を出すとかいうのがありますね。調整額、聞いたことはないですか。その性格は——同一職種に対して、中で特殊の勤務に対して出す調整額というものが、特別手当として出ておるわけですが、これは法的にどういう性格——これは労働基準局に関係ないのですかね。——聖職ということばが最近よく使われるのですが、これは労働基準法の一般の労働者というものの中で、特に聖職というふうなことば、教員は聖職だから時間を区切って支給なんかできぬという、自民党の古い人たちが聖職論を出しているようですが、あれは労働基準法の立場からいって聖職というものは定義を下せますか。」
  68. 小川平二

    小川国務大臣 教職員の職務は、まさしく聖職の名に値する非常に大事なとうとい仕事だと考えております。また、この大切な仕事に携わる方々が、それに伴う誇りと使命感を持って仕事をなさっていただくということも、私、切望いたしております。あるいはまた、世間一般が学校の先生というものに対して持っております気持ちは、労働者という概念にはなじみがたいものである、文部大臣は、かつてそのような答弁をいたしましたが、これも理解できると存じます。存じますが、先ほど御質問にもございましたように、憲法の解釈といたしましては、労働を提供して賃金を得て生活をいたしております以上、これは労働者であることには間違いない、かように考えております。
  69. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 私も国会議員ですが、聖職だと思っております。命を的にやる自衛隊も、これは聖職でなければいかぬ。人間の命を守るお医者さんも聖職。だから、その職務に対して公のために献身、命を捨ててもという、人によって聖職になり、汚職ばかりをしている者は聖職ではないかもしれぬ。汚職ですね。したがって、客観的にこれは聖職だという概念ではなくて、これは主観的なものであると私は思うのです。警察官にしても人命を守るというときは聖職であり、逃げていくのをぶんなぐるのは聖職ではなくて、その警察官は聖職役人ではない。私は、主観的にこれは論議すべきものだ。したがって、一定の職に対して、聖職だからといって給与の支給のあり方を論議するのは間違いだ、職業に貴賎なしですから。これはとうとい、これは卑しいというのは、近代労働体制の中で否定すべきものでありますので、そういう意味において、労働基準法の意味からいって、職業に貴賎なしといっているものを、聖職論をもって何だかんだと論議をするのは、これはすでに時代錯誤であると私は考えておる。労働大臣のいまお答えになったのは、私と同じ、そごはないですね。同じ意見でしょう。間違いありますか。
  70. 小川平二

    小川国務大臣 教職員が、少なくとも労働者たる一面を持っておる、法律では労働者であるということを私申し上げたわけでございます。しからば、おことばにございました国会議員は聖職ではないのか、あるいは公務員にいたしましても、これは全体の奉仕者である以上、聖職といえばすなわち聖職であろうかと存じます。この聖職ということばが、法律用語のような形で持ち出されておるわけではないと私思います。いろいろ大事な職務、職責というものはあるけれども、とりわけ次代の国民を養成するという仕事に携わっておられる教職員は、聖職中の聖職である、かような意味に理解をいたしておるわけでございます。
  71. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 まず、これは政治的な主観的な要素を含んだ用語で、法律用語でないというお答えでけっこうです。これ以上は論議はいたしません。お聞きしておくだけでいいです。  それから、超勤手当を支給するとかしないとかいうふうな、給与の基本に関係するようなものについては、労働基準審議会ですか、あの審議にかけてこういう関係の法案は提案をすべきものであると思うのですが、その点は基準局長でけっこうですが、法的にいかがですか。労働基準審議会にかけなければならぬ項目ですね。
  72. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 ただいまの御質問の点でございますが、今回の問題は、御承知のとおり文部省が中心になりまして検討されたことでございまして、かつ、法律の形といたしましては、いわゆる特例法の改正という形をとっておりますし、その内容を見ましても、一般職の職員の給与に関する法律の改正と、地方公務員法の改正であるわけであります。そして地方公務員法の中に労働基準法の条項が適用という形で取り組まれておるわけでありますが、そういった場合に、労働大臣の立場で、労働省の付属機関である労働基準審議会に諮問いたすかどうかという決定については、いろいろ問題のあるところであろうと存じます。過去の取り扱いの前例等も検討いたしたのでございますが、労働基準審議会に諮問をいたしたという前例もないのでございます。  そういう意味で、法的な意味で諮問をしなければならないかどうかという点については問題があろうかと存じますが、労働省といたしましては、諮問かいなかの形式は別にいたしまして、重要な問題でございますから、労働基準審議会の場においてこれを報告し、いろいろ御意見を聞くという方法をとりたいと存じまして、法案が閣議決定される前におきましても、労働基準審議会を急速招集いたしまして、いろいろ意見を聞いた。さらに三月に至りまして、八日の日でございましたか、労働基準審議会の場で、あらためて労働側から問題の提起がなされました。それを労働基準審議会の場において取り上げるかいなか検討いたしました結果、取り上げるということになりまして、現在におきましては、労働側委員の提案を取り上げて労働基準審議会において検討する、こういう形でいまこの問題を取り扱っておる次第でございます。
  73. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 時間がないので、解釈だけ一方的にお聞きして、あと定年制の関係ですね。  労働基準法の立場から、一定の年齢に達したときに、法律の強制に基づいてその労働をする権利を奪うというのですか、そういうふうな性格を持っておると思うのですが、労働基準法からいきますと、定年制というものはどう解釈できるのでしょうか。
  74. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 労働基準法上は、労働契約の内容としてそういう取りきめがある場合、あるいは就業規則で取りきめがあります場合、あるいは労働協約で取りきめがございます場合、それぞれ協約、規則、契約の解釈の問題として問題を処理する。(山中(吾)分科員「法律で設定した場合は」と呼ぶ)法律で設定いたします場合には、この労働基準法の場の問題を離れまして法律そのものでおきめになるわけでございますから、そのような形で処理をするということもあり得るだろうということだけしか私からは申し上げられません。
  75. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 それで労働大臣、基本法かどうかもお聞きしたのですが、憲法二十七条に、すべて国民は、勤労する権利と義務がある。そしてそれを受けていろいろの労働条件の基本法ができておる。一定の協約とかその他はいいんです。それはいいんですが、法律で満五十七歳でやめるという規定をつくるときには、その人間の労働の権利を法律で剥奪することになる、あるいは義務からいえば、労働の義務を免除するという法律の性格になるのじゃないだろうかと私は私流に思う。そこで、労働基準法そのものとの関係において、法律で強制された定年制というものは、労働法としては一定の解釈を持ってしかるべきではないかと私は思っておるのです。大臣、その点は労働基準法の立場において御検討を願いたいと思うのです。  もう時間だと言われそうですか、そこで時間がないので、もう少ししゃべります。  民間全体に関するときには労働大臣で、地方公務員の場合は地方公務員法があるから自治省関係ですが、労働基準の解釈としては、いわゆる一定の労働する権利を法律的に剥奪すると考えられる。義務の免除か知らぬが、そういう制度になると私は思うので疑問になるのですが、それはそれとして、政策論として最後に大臣にお聞きしておきたいのは、日本の場合に大体一定の年齢制度がありますね。民法、刑法においては、完全能力を与える認定として成人年齢制度がある。教育については義務教育で満十五歳までを義務教育とするという教育年齢がありますね。労働基準法では、これは労働年齢というのだろうと思うのですが、いわゆる就業許可年齢、満十五歳までは雇用その他を禁止をしているわけです。十五歳ということで、いわゆる就業年齢というのか、そういう年齢制度がある。  そういう年齢制度をずっと考えてきたときに、私は、全体的にこの年齢問題というものを検討すべきものではないかと思っておるのです。そのときに、一方に労働というものを、自分の独立的な人格で雇用契約を結んで労働することができる年齢を、出発点を十五歳にして、終着駅というものが規定されていない。法律で労働の権利を規定するということは、やはり憲法の上から適当でないから私はないと解釈しておったのですが、いろいろの法律でそれが出てくるということになれば、これは労働基準法の体系の問題としてやはり検討すべきものではないかと思ったのでいま質問いたしました。  ただ、具体的に制度として考えるときに、いままでの新聞などを見ましても、これはきっとお調べになっておると思いますが、少年のタコ部屋のことについて、警視庁の調べによりますと、中学校を卒業したばかりのまだ未成年に、土建現場が強制労働、あるいはかせぎのピンはねをするような、タコ部屋式の人権じゅうりんの労働をしいておるというふうな、いわゆる労基法違反の検挙がたくさん出ておる、こういう一つの事実がある。  さらに一方に、教育制度からいいますと、高校進学が七二%以上になってきておる。ほとんど高校進学である。やがて八四、五%になるという見通しがついている。  さらに第三に、一般の日本人の寿命というものが延びて、女性ならば七十二、三歳、男性が六十七、八歳まで延びてきておる。したがって、労働能力というものが人生五十年でなくて、人生六十年以上になって、まだ働くだけの元気が、エネルギーがあるから長生きをしている。  そういうふうなことを考えてきたときに、労働省のほうは、若年労働者の不足を心配してそればかり考えておるが、むしろ高等学校卒業の満十八歳以上、満十八歳をむしろ就業年齢にこの労働基準法を改定する方向にいって、労働者の最低年齢を三カ年上げると同時に、終着駅も五十五歳から六十歳、六十五歳に上げて——労働人口は減らないわけですね、年齢を上げるんだから。そういうことをやって労働政策を立てるべき段階にきておるのではないかと私は思う。低賃金政策というものを改善するためにも、あるいは労働の質を向上させるためにも、このごろはあらゆるものが科学技術が主ですから、そういうことを考えてみるときに、満十五歳というものをむしろ十八歳を原則にして、満十八歳以下においては六時間以上の労働をさせてはならないような労働基準法の改正も検討して、一方労働をやめる場合については社会保障の年金制度の開始も考えながら、五十七、八歳でちょん切るというふうな政策は労働大臣としてはむしろ阻止していくような段階にきておるのではないかと思うのですが、これは政策論としてはどうでしょう。
  76. 小川平二

    小川国務大臣 ただいまの御意見は、私初めて承るわけですが、一つの御提案として考えてみたいと存じております。ただ今日、民間の企業で定年が延長されていく傾向にありますのは、当面の労働力需給逼迫に対処して能率を保持していきたい、こういうことのあらわれだと了解しております。
  77. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 事実をお述べになったので私見は入ってないと思いますが、業界のほうは、十五、六歳の若年労働者を、安い賃金で適当に思うとおりに使えて、使いやすいから要求があるんですね。労働大臣としては、そういう低賃金を、むしろ少し高くしてやるという政策、それからもっと質をよくするという政策、そういう立場でお考えになる立場だと思ったから、もうすでに高等学校に七、八〇%、東京都は九〇%程度も進学しておるのですから、そのわずかに残った高等学校にまだ行かない十五、六歳の人を対象として労働政策で苦慮される段階ではないと思う。高等学校卒業以上を対象として、労働の質の向上、それから義務教育というものは満十八歳までという実態まできている、七、八〇%就学しているのですから。そういう段階で、労働政策を立て直すところにきておるのではないか。したがって、労働基準法そのものも就業年齢を引き上げる方向で検討し運営する段階ではないか、こう私申し上げておる。  同時にそのことは、一方に職業教育の点について——私すぐ教育問題に入りますが、最後に入りますけれども、企業においても新制中学を卒業した者を採用したときには、このごろはああいう企業内訓練、教育をやらなくなってしまった、捨ててきておる。そうしてわずかに残った貧乏人の新制中学を出——大体東北地方に多いのですが、勉強したいというものの教育の機会もとって、そうして一方に、こういうタコ部屋の土建業者のいわゆる強制労働とピンはね労働が、たくさん若年少年に向かっていっておる。女の子は堕落の方向に持っていかれる。それが現実ですね。だから、労働基準法で一応一八歳までにして、十八歳以下を使うときには一日の時間は六時間以上は働かせない。すなわち、働きながら学ぶ青年というイメージから、学びながら働く段階を十八歳まで持っていく。西ドイツのように、いわゆる雇用者は満十八歳まではいわゆる義務教育を終えたあとでも、職業教育は週に二日間は有給で学校に通わすような、企業からいうところの一種の義務教育、職業教育、そういう制度に持っていく段階ではないか、日本のような平和憲法を持っておる国ですから。そしてそれは、労働基準法の改正も含んでの検討をすべきであると思うのです。大体十八歳以下の場合は、一日六時間以上働かしてはいけない。そうすると、どこかの学校でそのあと勉強ができるとか、あるいは週に二日でも通学きせる義務を企業者が持つということによって、わずかに高等学校に入学できなかった一、二%の者あるいは一〇%くらいの青少年を救っていく。働くことを主として、恩恵として勉強させるんではなくて、勉強しながら働くという段階を満十八歳まで考えていく。これは基準法の改正問題になってくると思うのですね。  そういうことと同時に、定年制というものをただいまのように便宜的に、市町村が首を切るのはむずかしいから法律で規定してくれ、引き受けた、という圧力団体の便宜主義でやるのではない。またそういうことをすることにより、年功序列の温床になるので能力給にするならば、そんなことはやらないで、全体的、総合的に考えていくべき段階ではないか、そう思うのです。そういう検討を、日本の行政の中で一番ヒューマニズムを入れることのできるたった一つの労働省ですから、労働行政だけがわずかに入れることができるんですから、そういう方向の検討をやはり労働大臣になった人はやるべきではないか。憲法改正とか、ああいう変な失言をする閣僚の中におっても、労働大臣だけはそこはもう少し前向きで検討をしていく、ずっと見ておりますと客観条件がそう出ておると思うのです。そういう検討をお願いしたいと思うのです。識見をお聞きして、私の質問を終わります。
  78. 小川平二

    小川国務大臣 労働力の質を高め、低賃金を解消するということにつきましては、今日までも私ども努力をいたしてまいりましたし、これからもその方針で進んでまいりたいと存じます。さような観点から、ただいま職業訓練のお話も出ております。西独等においては学校を卒業した者の数十%という大きな割合が、就職に先立って職業訓練を受けておるというような事実も聞いておりまするし、またこの職業訓練と学校教育との関連、これはたてまえを異にする、存立目的を異にする二つの制度ではございますけれども、この関連の問題も、私どもいまいろいろくふうを重ね、苦慮いたしておるところでございます。  ただ、この労働力の質を高め、低賃金を解消するという観点から、つまり就労が制限されておる年齢を引き上げるべきだという御提案、きわめて示唆に富むお話として傾聴いたしたわけでございますが、何ぶんこの場で初めて承る御意見でございますので、念頭に置きまして、ひとつ真剣に研究をいたしてみたいと考えております。
  79. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 これは文部省の審議会の中でも、現在高等学校の進学率はここまできておる、実態は義務教育と同じまできているので、十八歳まで義務化ということを前提で政府も検討するいう審議会の答申もあるわけです。したがって、労働関係のその義務教育の終着駅といわゆる労働基準法の就労の年齢が、いつもお互いに検討すべきものですから、労働行政だけがむしろおくれておるような感じもするのです、全体の動きを見ると、いろいろな客観情勢の変化を見ると。そういうことも含んで、やはり絶えず労働基準法のそういう方向の改正の検討を関心の中に含めて、今後前進をしていただきたい、こういうことです。  終わります。
  80. 田中正巳

  81. 吉田賢一

    吉田(賢)分科員 私は、主としましてわが国の現在の労働事情にかんがみ、特に若年労働が不足し、中高年齢以上が過剰になりつつある現状、かつまた特に労働不足の企業が、中小企業にだんだんとしわ寄せしてきたという現状、この点非常に重要と考えますので、労働不足対策というような角度から若干伺ってみたいとこう思うのであります。  これにつきまして、昨年十二月に労働省において発表されました雇用の現状見通しにも、相当適切な数字があげられておりまするし、また最近労働不足に対する対策というものを出されておりまして、これらはわれわれも傾聴すべき幾多の示唆に富んでおりますので、これを中心にして若干伺ってみることにいたします。ただお願いしたいことは、時間がありませんので、できるだけ私も冗長なそれを排しますから、ぜひそこは簡潔に、お互いよろしくお願いいたします。  簡単でよろしゅうございますから概況を伺いたいのでありますが、最近のわが国の労働不足の現況につきまして、年齢層あるいは職域層等別から、どなたかひとつ御説明を願っておきたいと思います。
  82. 有馬元治

    ○有馬政府委員 概要を簡単に申し上げます。  学卒を除きまして一般の関係におきましては、求人の倍率が、昨年の七月から求職者よりも上回りまして、七月−十二月の倍率は一・一に上がっております。それから学卒関係は、御承知のように最近ますます倍率が高くなりまして、四十二年の実績によりますと、中学が三・四倍、高校が三・一倍、こういった状況でございます。また規模別の充足率を見ますと、御指摘のようにやはり規模の小さいところほど充足がしにくい。たとえば五百人以上の規模では三六・三%充足しておりますが、二十九人以下では二四・一%しか充足してない、こういう状況に相なっております。
  83. 吉田賢一

    吉田(賢)分科員 特に技能工が不足しているということがずいぶんと伝えられるのでございますが、その点。  それから、職種につきましては、繊維工業とか造船業が特に不足の傾向が強い、こういわれるのでありますが、その点についての実勢はいかがですか。
  84. 有馬元治

    ○有馬政府委員 技能労働者の不足につきましては毎年調査をいたしておりますが、四十二年におきましては総数で百五十七万の不足、率にいたしまして一八%でございます。特に製造業について見ますと、その大宗を占めるわけでございますが、不足数が百二十万人、それから不足率が一八・四%、こういう状況に相なっております。  それから産業別に見てみますと、従業員が不足しておると訴えておる企業の割合を調査したわけですが、繊維産業におきまして七六%、それから造船業において八三%、自動車製造業において八〇・五%というふうに、こういった業種が特に不足を訴えております。
  85. 吉田賢一

    吉田(賢)分科員 ところで、こういう面からいかがなものでございましょうか。わが国の労働の実勢が、ヨーロッパと比較しますると、生産性が低いとよく指摘されるのでございます。これらの点につきましては、やはり工業国として立国の基礎が、労働の優秀な生産性の高いものを求めていくということはこれは当然のことでございます。これらの面について生産性を高める、質を向上せしめる、こういう面からの具体的な対策というものは、何を一番主眼にして労働省はこの行政措置をとっておられるのか、この点について、これを簡単でよろしゅうございます。
  86. 小川平二

    小川国務大臣 企業の体質を改善し、近代化していくという問題は、産業構造の高度化という観点から出てくる当然の要請でございますが、当面の労働力逼迫に対処する方法といたしましても、これがもとより根本的な方法であるべきでございます。企業の体質改善近代化施策は、これはもう各省にわたる総合施策として現に実行されておるわけでございますし、特に中小企業につきましては、昨年中小企業振興事業団というような機関も設立されておりますことは御高承のとおり、これから先も、近代化と生産性向上のためのあらゆる施策を総合的に行なっていくべきことは当然だと存じます。
  87. 吉田賢一

    吉田(賢)分科員 いま私がお尋ねする他の一面は、こういうことにもあるわけなんでございまするが、やはり人間ですから、できるだけその能力を開発して、そして、産業その他の労働の部門において生産等に効果をあげる。そのために、どう導くことが、どういう施設をすることが、より優秀な、より高い生産性を持つ労働者をつくり得ることになるか。これが一つの根本課題だろう、こう思うのであります。一面、各業種の企業の体質の改善、これも重要なことでございますが、労働者自体の生産性を高めるということの具体的な対策、それは職業訓練もあると思いますけれども、もう少し広範に、何か国の大きな施策としまして、相当大きな柱となっていくほどの重要性があるんじゃないだろうか、こう思うのですが、それはどんなものでしょうね。
  88. 小川平二

    小川国務大臣 御指摘のありましたとおり、労働力の供給が不足しておるのでございますから、これは新たな供給源を切り開く、あるいは労働力の流動化をはかっていくということと並んで、質を向上きせるという努力をすべきものだと存じます。これは要するに、教育一般の問題であり、労働省所管の仕事といたしましては、現に行なわれております職業訓練の施設を今後も拡充し、内容を充実していくということに尽きると存じます。ただいまの御質問は、それ以外に何か有効な施策が考えられないかというお尋ねでございます。根本的には、私ども教育一般並びに職業訓練の充実ということを考えておるわけでございますが、この際何かその点につきまして御高教を賜わることができれば幸いだと思っております。
  89. 吉田賢一

    吉田(賢)分科員 労働省指摘しているところによりますと、日本の生産性が就業者一人当たり、国民総生産を一〇〇とすれば、アメリカは五一〇、西ドイツは二二一、イギリスは二一〇、フランスは二三八、こういうことになっておりますが、一体これは原因は何でございますか。これは事務のほうからひとつ御答弁願いたいと思うのです。この低きは何に原因するのか、何が一番重要な要素になるのでしょうか。
  90. 有馬元治

    ○有馬政府委員 達観して申し上げますと、アメリカと比較した場合には、これは相当格差がございますが、ヨーロッパの先進国と比べて考えますと、第二次産業の生産性は大体西欧の水準に達しておると思いますけれども、第一次、第三次産業のそれが著しく劣っておる。これが全体として就業者一人当たりの国民総生産がヨーロッパ諸国と比べて半分程度にすぎない一番大きな原因だと思います。
  91. 吉田賢一

    吉田(賢)分科員 そうすると、この労働の生産性というのは第一次産業、二次産業、三次産業、いろいろと産業構成の要素が全く異なっておりまするので、私の劈頭申しました中小企業労働力が不足しておるという現状——中小企業は概していうならば第一次産業ではございません。したがいまして、そういった面から見ますると、この分析評価のしかたは、やはりばく然とした一応緒論的なそれであって、もっと精密にいたしまするならば、農業においての生産性一人当たり日本はどういう数値が出るのか、あるいは工業において、ある工業、ある工業、ある工業においてはどういう数値が出るのか、あるいはその他のサービス業等においてはどうか、こういうふうに相当こまかく分析していくのでないといくまいと私は思うのでございますがね。これはそういうふうにひとつ今後は明らかにしていただきたい、こう思いますのが一つ。  もう一つは、日本人が昭和四十五年には人口一億三千万になる、こういわれておりますが、そうしますると、日本人の持っておる労働の生産性というのは、どういうふうにして把握したらいいのだろうか。たとえばわが国には熟練工もございましょうし、学卒もございましょうし、あるいはまた高齢者もございましょうし、あるいは婦人もあろうし、あるいはまた心身障害者もございますし、そういうふうになっておりまするが、どういうふうにつかんで、どこにもつと引き上げていく大きな余地があるのだろうか、どこが捨てられたのだろうか、どこをもっと押せばいいのだろうか、こういうことを合理的に、総合的に、全体を科学的につかんでいくというのでなければ、単に労働力生産性を引き上げるというようなことで、ある特定なグループの人間だけを職業訓練するとか、あるいは技術者を引っぱってきて、技術者が足りないのだからなるべく学卒の技術者を取り入れるとかいうような、そういうことじゃなしに、もっと政治としては、行政の最高の指導方針といたしましては、個々の企業者が、自己の利害関係から打算するのでなしに、全体の視野に立ちまして、日本の労働生産性をどう高めるか、どこに遊んで、むだで、そして低い、あるいは高め得る可能性があるかどうか、余地があるかどうか、どこで手がつけられておらぬかどうかというようなことをつかまなければ、私は、生産性を向上するという対策を立てる前提がきまってこないのではないかだろうか、こういうふうに思うのでございますが、これは非常にむずかしいことです。これは土地でいうならば、日本全体の土地を、伊能忠敬じゃないけれども、すっかり測量しちゃって、それを前提にするのでないと、大きな開発計画は私は立たぬと思う。しかし、そういうことはむずかしいと思うのですけれども、やはり労働政治、労働政策という以上は、労働力はどこにあるのか。農村の労働力を持っていく。農村の定着率の最低はいま三%しかない。全国的には、いま六%なんです。一部だけは約二〇%定着しておりますけれども、そういうふうに去ってしまうのです。いよいよ生産性は落ちるのです。というようなことになりますので、私は労働省としまして、他省との総合的な施策になる分野が多いのですけれども、やはり労働の生産性を高めていくということについてはこういう手があるのだ、これに各省協力すべきだ、これに国民は協力すべきだ、これをやるならば日本の労働力はこうなるのだ、だからいよいよ安定成長が高くなっていくのだというような、資本主義社会における労働の位置、要素というものの重大性にかんがみまして、全体として高めるという大きな施策がなければならぬ、こう思うのですが、その前提としてのつかみ方がどうも部分的につかんでおられるのだけれども、これじゃわからない、こういうふうに思うのです。だからどういうふうにつかむのか、そしてどういう点にもっと引き上げていく余地、方法、手段が残っておるのか。それをするのが政治だ、そして行政の最高方針、内閣の労働政策、こういうふうになるのだろうと思うのですが、こういうことにつきまして——若干これは理屈を言うておるのですよ。理屈を言うておりますけれども、ひとつ所見を明らかにしておいてもらいたい、こう思うのですが、どなたでもけっこうです。
  92. 小川平二

    小川国務大臣 ききに発表いたしました文書は、当面の労働力需給逼迫の現状とこれに関連するいろいろな問題を提起いたしまして国民一般の理解に資したい、こういうつもりで発表いたしたものでございます。いま御指摘をいただいておりますように、裏づけの足りない点も多々あるかと存じます。  生産性の問題につきましては、日本の生産性がなお低いところにとどまっておるというのは、これはやはり農業あるいは中小企業、こういうおくれた部門が広範に存在しておるからでございます。根本的にはこれらの部門の近代化ということに尽きると存じます。ただ労働省としても、生産性向上の問題を、全体的な視野から十分掘り下げた検討の結果に基づいてもっと真剣に考えろ、かような御意見でございますれば、もとより私どもこれからさような方向で努力をしていきたいと考えておるわけでございます。
  93. 吉田賢一

    吉田(賢)分科員 具体的な不足対策にちょっと入ってまいりますが、受け入れの企業、これを体質を強化する、大臣の御所見しごくごもっともであります。体質の強化といえども、中小企業は現在の経済社会制度のもとにおきましては、みずからの力でもって体質を強化することは容易じゃありません。容易じゃないところに中小企業問題があるわけなんです。だから、そこに体質強化の問題も実はあるわけなんです。  そこで、第一、受け入れ企業保護対策、体質、構造を改造する対策、そういうものをしなければ魅力のある企業になりませんから、魅力のないところへ来いといっても、今日の若い人は行きませんです。捨てていく人なら別ですけれども、そこで手なえ足なえの労働力、生産性の低い人間が集まったところへ行くということになると、いよいよ生産性が全体として落ちます。そして企業の成績があがらぬ、能率があがらぬ、引き合わないというようなことになると、いつまでたっても下積みの中小企業でござい、こういうことになるわけです。  そこで私は、具体的に一番重要なことは、一つは資金面にあると思うのです。資金面についてやはりもっと協力する必要がないか。たとえて申しましたならば、ここに幾つかの対策にもあらわれておりますが、いま流行しております。東京都内におきましても、また都下におきましても行なわれておりますが、パートタイムなる方式ですね。これは非常におもしろいと思います。  実は兵庫県の明石市で、私も協力して、いま社会福祉法人で宇都宮使徒という人がやっております。この人を中心として三十名の主婦が集まって、一時間百二十五円保証しまして、三菱電機の部品の加工をしているのですが、奥さん方、おかあさん方が実に明るいところで愉快に三時間、長いので五時間やっております。申し込みも殺到です。能率は断然あがります。そうして実によい社会が提供せられたと言っております。そういう状況なんです。東京都下におきましても、あちこちこのごろ、はやっておりますね。おもしろいことです。  ところで、これに必要な五百万とか八百万とかの資金が簡単に得られないのです。そこに中小企業の悩みがあるわけです。だから、それにつきまして、たとえばいまの雇用促進事業団の資金もございます。雇用促進事業団も、そういった方面に積極的に手を差し伸べまして、むずかしい条件をあまり言わずに、やはりできるだけ助長していくというふうにせなければいかぬと私は思う。これは労働省所管の資金でありますから、このような資金も出さして、あるいはまた中小公庫の資金も、国民公庫の資金も、政府関係金融機関の資金なりをやはり出さして、資金というものをもっと潤沢に与えるという方法を講じなければいかぬ。これが一点です。  二点はやはり税関係です。  一つは、いま雇い入れなんかするのに、高いのはたとえば繊維産業、小さい機屋さんなんかでは、人を集めるのに、高いのは一人十万円かかるのです。大臣御存じじゃないと思いますけれども、兵庫県の播州地区におきましては、鹿児島で雇い入れる、宮崎へ行く、愛媛へ行く、くるくる回っておりまして、一人前結局十万円についたという例があるのです。五万円はざらです。それで定着するか。必ずしもしません。自由にくくっておくわけにいきません。好いたところへ行きますよ。これも自由です、職業選択は自由ですから……。そういうようなことをいたしまして、一体十万円かけたやつは、税の面においてはどういう扱いを受けるのでしょうか。当然の支出として認めておりません。これが実情なのです。そうしますと、税の面において軽減、免税の措置を特別に講ずる必要がないか。施設について資金を特別に供給する必要はないか。かくいたしまして、体質改善、構造改善の一助たり得ると思うのです。  あるいはまた、工場内で保育所を設置しているところがございます。しかし、保育所の経営は容易じゃございません。私も若干経験がございますが、こういうような保育所の経営も容易じゃございませんけれども、しろうとの工場が、工場の経営をしたいばかりに保育所をつくります。その保育所につきましても、やはり賃金面とか、あるいは指導面等において、行政的な指導の余地があるわけです。こういうものをしまして、いろいろな面から補強します。教育なり、そういう社会施設なり、ないしは集団的じゃなくても、遠方から来ました青少年が、何かしら一つの夢を描いてくるのです。その人らに失望させぬだけの施設が要ります。これは共同でもよろしい。ここらだったら共同でしょうね。しかし、中小企業につきましては一種の広い意味における保護対策が絶対必要です。これなくしては定著はいたしませんです。質のよい労働者をつくるわけにはまいりません。いかがでございましょう。
  94. 小川平二

    小川国務大臣 いまおことばにございましたように、職業選択の自由が存在いたしておりまする限り、根本的には中小企業の職場を、労働条件、労働環境を含めまして、魅力あるものたらしめなければ、しょせん労働力不足の問題は解消しない、これはただいま御指摘のとおりでございます。このためには、税制の面、金融の面であらゆる施策を集中していかなければならない、当然のことと存じております。労働省施策といたしましても、雇用促進事業団融資等、今後もその目的に合致する方法で弾力的に運用してまいりたいと存じます。
  95. 吉田賢一

    吉田(賢)分科員 なお、日本におきまして、労働の配置が適切にあらず、これはもう痛感いたします。指摘されておるように、バーやキャバレーのホステスとか、失礼ですけれども、ああいったところへ友性がわんさと参ります。あるいはまた、エレベーターガールにしましても、バスガールにしましても、優秀な女性が働いている。そんなものじゃなしに、三年前のドイツでしたけれども、ベルリンあたりにおきましては、六十歳近い者がバスのサービスをやっております。だからそういうふうに、適正就職と申しますか、労働節約というだけでなしに、生産性を上げるという点につきまして、その面が必要でないか。だからできるだけそういったことを、これは一種の風潮でもありますけれども、政治の面からちょっと離れるかわかりませんけれども、そういうような高い視野を持って国民の労働行政というものを行なってほしいと思うのですが、これは積極的に指導の手はあるのだろうかどうか、こういう点を思います。  なお、これにつきましては、やはりお互いに、国の、社会の、国民の最も必要とする部門に、進んで就職していくというような風潮もほしい。これは教育の面との関連もございましょう、社会教育の面との関連もございましょうが、そういうようなことは積極的にぜひとも進めてもらいたい。
  96. 小川平二

    小川国務大臣 おことばまことに御同感でございます。そういう方向で、従来の足らざるところを補いましてやってまいりたいと思います。
  97. 吉田賢一

    吉田(賢)分科員 それから、なお労働力は農村に潜在しております。都市に潜在しております。それから、たとえば身障者にしましても、高年齢者、老人、いわゆる老人ホームで日なたぼっこして、棺おけが用意されるのを待つような今日の老人ホームはいけません。人間は生きている間は、もっと積極的にみずからの生活と生きることの喜びを感じて、そして社会に幾らかでも貢献するような場を提供することを考えなければいかぬと思うのです。年寄りだから、生産性が低いからだめだということではいけません。そういうことは、やはり厚生省との関係もありましょうけれども、進んで労働給源として開拓してもらいたい、私はこう思うのです。  だから、それは農村にいたしましてもやはり同様でございます。身障者の問題も同様です。身障者は雇いはしません。身障者は、雇ったところで七、八しか成績があがらない。それよりも十のものがほしい。でないとこっちは食っていけないということで、身障者につきましては、できるだけ国の施策として場を提供しなければなりません。片足なら片足、片手なら片手で仕事ができるような場を提供しなければいけません。提供するのは、個人の企業にまかしておいたらできやしません。これはやはり国の福祉国策として、積極的にしなければできません。雇う義務があるとかなんとかいいましても、制度だけではできやしません。進んでそれはしなければいけません。だから、ずいぶんむだがありますが、むだをなくしてそういうところに向けるというのが、高い視野から見ました労働行政であるべきだ、労働給源を開拓する大きな課題でなければならぬ、こう思うのです。いかがでございましょう。
  98. 小川平二

    小川国務大臣 御指摘のございましたように、まだまだ活用の可能な潜在的な労働力があるのでございます。そこで、中高年齢層あるいは婦人、いろいろなことを従来やっております。まだまだ足りない点がございますけれども、労働力の給源としてますます大切な存在になってきておるわけでございますが、今後ともあとう限り努力をして御期待に沿いたいと考えております。
  99. 吉田賢一

    吉田(賢)分科員 最近、また大企業中小企業賃金格差が相当具体的にあらわれてきたということがもっぱら伝わっております。年齢層からしましても。これは年功序列の日本の賃金制度の悪い面もあります。しかし、同時に、大企業は高い給与を与えて優秀な労働力を吸収する力を持っておりますから、これの自然格差と申しますか、優勝劣敗的な格差であろうかとも考えられます。しかし、やはり労働の価値というものは一つの社会の責任でありまするから、大企業、小企業にかかわりませず、できるだけ格差をなくするということ、これが政治です。この政治なくしては企業者をほったらかして、野放しにしたのと同じでございます。いかにして最低賃金制度を最も合理的に確立していくか、そして格差をなくしていくか、格差の拡大を防止するかということが、賃金格差に対する労働政策の最も大きなものだろう、こう考えております。いかがでございましょう。
  100. 小川平二

    小川国務大臣 規模別の格差の解消、近年相当急速に規模別の賃金格差は縮まっておりますが、最近におきまして若干停滞が見られることは、御指摘のとおりでございます。この原因の分析等については、私どもただいま検討中でございますが、おことばにありました最低賃金制につきましても、御高承のような改正案を用意いたしまして、実際的な実効のあがる方法で対処していきたい、かように考えております。
  101. 吉田賢一

    吉田(賢)分科員 最後に私は、真に労働の生産性を高めて、その職場、部署におきまして最善の成果をあげてもらうというために、やはり政府が、ぽつりぽつりと職業訓練所をつくるというようなことではなしに、地方公共団体とも手を組んで、たとえば都道府県などを中心として、できるだけ多くの職業訓練所、もしくは再訓練所、あるいは定期的な再訓練所等を持ちまして、簡単に適切な指導訓練を行ないつつ、絶えず時流の動きに沿って開発を助けていく、こういう施設を官民一致協力してやるということが、この時代の補完的な作業として非常に重要なことではないだろうか。そしてその場面におきまして配置転換もできるように、職業を変えることができるように、またそういう場を持つことができるように、こうせねばなるまいと思うのです。これが一つ。  それから、最近行政簡素化の問題が起こっておりまして、あなたのほうにおきましても、一局削減等、行政改革推進について六月までに答申されることになっておりますが、職安関係の職員を地方に移したらどうか、地方の公務員ですけれども、こういうような説が相当強うございます。それのみならず、その他のものを地方にもっとどんどん移して、地方を信頼して鞭撻して、そして信賞必罰を厳重にやって、それ自体の生産性を上げる。つまり、言うなれば行政官庁自体がみずからの生産性を上げる。そしてほんとうにその部署について国民、社会に奉仕をしまして成績をあげる。そのかわり信賞必罰、その成果に対しては十分に報いる。生活のみならず、家族等につきましてもできるだけ処遇を豊かにする、魅力のある職場を与える、こういうふうにすることを率先してやらなければならない、労働行政の総元締めの労働省ですからね。労働省が日本じゅうの各行政官庁に比較して最も能率の高い行政をやっておるというふうにしなければ、これは労働行政を口にできません。最後に大臣からそれの所感をお聞きして、私は終わります。
  102. 小川平二

    小川国務大臣 訓練所につきましての御指摘がございましたが、これは御趣旨のような方向でこれからも進めてまいりたいと存じます。  行政能率の向上ということを率先してやれというおことばでございます。そのつもりで努力いたしたいと思いますが、ただ、職安あるいは失業保険関係になりますと、事柄の性質上、やはり全国的な規模で、統一的な企画のもとに行なわれなければなりませんので、これを地方公務員の身分に移すということについては一つの問題があると存じております。ただ、御趣旨はよくわかっておりますので、これから先も行政能率を高めていくことに懸命に努力いたしたい、かように思います。
  103. 田中正巳

    田中主査 午後は一時三十分から再開することとし、この際暫時休憩いたします。    午後零時五十九分休憩      ————◇—————    午後一時三十四分開議
  104. 田中正巳

    田中主査 休憩前に引き続き、会議を開きます。  質疑を続行いたします。神門至馬夫君
  105. 神門至馬夫

    ○神門分科員 現在、地方公共団体で最も問題になっております公営企業の問題であります。特に財政危機の問題としてこれが取り上げられまして、御承知のように、第五十一回の国会におきまして、約四十日間国会が延長されて、しかも最終日の十一時何分とかいうぎりぎりのところでこの地方公営企業法の改正が成立した歴史がございます。この地方公営企業法の改正にかかわる問題としては、財政危機に瀕している公営企業をいかに再建をするか、こういうところに問題があり、この国会を通じまして余すところなくそれが国民の前に露呈し、また認識をされた、ここに一つの大きな特徴があろうと思うのです。  しかし、現在の公営企業全体の赤字を見ますと、四十一年度の末におきまして累積欠損金は一千億をこえております。特にその中で、公営交通の赤字は七百九十三億という大きな額にのぼっております。公営交通の約八四%が赤字に苦しんでいるというような状態であります。現在の公営交通をはじめとする公営企業問題というのは、この問題を素通りして地方公共団体あるいは地方自治を語ることはできないといわれるような重要な国家的な問題になっている。この点は、すでに政府のほうでも御承知のとおりだと思うのです。そしていろいろな再建方策につきまして、現在検討が加えられております。  こういうような情勢の中にあって私たちが考えるのは、この再建を成功きせる要素としては、どうしてもそこに働いている労使関係が、当面したその公営企業、公営交通の状態を認識して、いかにそれを打開するかにある、これが非常に全体のウエートを占めておるわけです。いざ合理化の問題が進んだといたしましても、問題がそこの壁にぶち当たる、そこに最も紛糾を重ねることは、また関係当局のよく御認識の点だろうと思うのであります。  でありますから、いま私がここで関係各当局にお尋ねしたいことは、このような当面している地方公営企業、なかんずく地方公営交通、それを打開する労使関係の問題が、いみじくも一つの市営バスが民間に譲渡されるということを転機として露呈したわけであります。四十一年の法改正以来初めての事件でありますし、かつてそのような経験もないのでありますから、ここに集中的にあらわれたものだ、こういうように認識いたします。でありますから、これはただ労使間のあり方なりあるいは労働権の存在とはどういうものかというような観点でなしに、これが及ぼす地方公営企業将来への再建の問題として、あるいは今年度予算の中に、それらの起債等をめぐるいろいろな予算が計上してあります。これらの将来への直接間接の考え方として、重要なウエートを占めると考えるのであります。そういうような立場に立って、この問題のみに限らず、普遍的な将来性への問題として御答弁願いたい。これをまず最初にお聞きしておきたいと存じます。  実は、そのような問題を提起するには、この一月の二十五日に市営バスの民間譲渡を決定いたしました島根県出雲市の市営バスの問題を具体的にお話しをして、その中に起きておる現象についての具体的な答弁を願ったほうが一番適切だというふうに考えますので、それを経過を追って私のほうからお話をして、答弁を願いたいと思うのであります。   〔田中主査退席、登坂主査代理着席〕  先ほど申しましたように、このような事件というものは、この法改正以来初めてのことであって、特にそのときに出雲市当局がとった措置というものが、市当局と公営交通、公営企業、あるいは議会と公営企業のあり方、あるいは労使関係と公共団体のあり方、こういうような問題に非常に大きな問題を提起しておるのであります。この市バスは約二千万ばかりの赤字であり、規模も小さくございまして、市当局は審議会を設置して、この再建問題についての諮問をいたしております。それでその審議会は、四十二年の十二月十六日に答申を出しております。その答申の中には、結語として、「以上、経営改善の諸方策について述べたが、市当局管理者、労働組合ともに企業を守るため一致協力して再建への旺盛なる熱意と実行とが要求される」、こういうふうに再建の方向への一つの問題を出しております。そして管理者と組合との間の団体交渉が四十二年の十二月七日、諮問が出されます少し前からでありますが、団体交渉が始まりまして、管理者側から再建方策が提示をされて、十二月十一日、十二月二十日、一月十三日、ずっと継続してこの再建対策について前向きの姿勢で——労働組合のほうも、これはどういいますか、いわゆる強い組合ではないのでありまして、この再建企業について、ある程度諸手当も返上しようというようなことも具体的に話されてきております。  ところが、ことしの二月の二十二日になって、労働組合が、その市営企業の中の事務室、いわゆる管理者周辺がたいへん騒々しくなった、おかしいというので管理者に尋ねてみました。管理者は、そのときすでに知っていた模様でありますが、私は話すことができないからというので、市長に連絡をした。ところが、その日が二月二十二日でありますが、市長はおらなかったので、間接的に市長に取り次いだところが、明日、二月二十三日に会おうということになった。それで二十三日に、この市バスの三役と朝から会いまして、初めてその場でこの市営バスの民間譲渡——いまあそこにあります一畑電鉄という会社でありますが、これに譲渡の仮協約をした、こういうことを初めて明らかにしたのであります。その二月二十三日に、初めて労働組合のほうから様子がおかしいということでそれを尋ねて、そして市長のほうはそれに対して、実はそうだと答えた。民間に売りますと答えた。そして臨時議会をそのあくる二十四日に招集しております。その臨時議会の予定議案の中にはなかったのでありますが、二十四日に可決してしまう、こういうことを言ったのであります。労働組合は、そういうようなことが——二十二日におかしいと思いましたから、関係議員、革新、保守両派の議員に手当たり次第に聞いたのでありますが、議員はだれ一人としてそういうことは知っていなかった。二十二日以前には管理者も実は全然知らなかったのであります。市バス企業の管理者も知らなかったのであります。そして必然的に、弱い労働組合でありますが非常におこりまして、二十四日は大混乱になって、ついに二十四日の採決は持ち越す、きょうは採決しない、上程しないということになったわけです。そして二十五日には、ついに機動隊、警官隊を地方議会に導入して採決をするという非常に最悪な不祥事態が起きました。そして議論という形態は、わずか四時間ばかりでこれが可決、決定をされたわけであります。こういう経過をたどってきております。  ここで問題になってきますのは、交通の公共性、こういうことで労調法等においてもいろいろな制限規定がございます。特に公営交通ということになりますと、またそれ以上のいろいろな制限行為がございます。そういうような一つの労働者に対する制限、あるいはその企業に対する公共性への責任としての権利の制限行為、こういうような点を考えるとすると、それは労使間に課せられた、住民なり公共に対する一つの義務と考えなければならぬと思うのです。それが先ほど申しましたような経過をたどって、まさしく民間企業における労使間の関係においてもめずらしいような、その企業を廃止するという条例の可決を一挙にやってしまった。しかも、警官隊を議会に導入して可決してしまう、こういうようなことに対しては、これは許されないことだ、こういうふうに私ども考えます。これは労働省をはじめ自治省、運輸省も異論はあるまいと思うのであります。  そこで、具体的な問題に入ってまいりますが、地方公企労法の第一条には、労使間に平和的な環境を樹立するのがこの法律の目的だ、こういうふうに書いてあります。先ほど申しましたように、企業内における労使間というものは、平和的に企業を継続することを目的として団体交渉を進めております。ところが、管理者を任命する市長が提案して、議会においてこの市営バスというものを廃止する条例を決定した、こういうようなときに、市長が全く管理者にも連絡をせずに、抜き打ち的にこういうような条例の廃止をきめる、議会に提案する、こういうようなことは、地方公企労法の違反とはならないか。  もう一つは、現在においても、まだ運輸省の認可がおりておりませんから、労使間の団体交渉は続いておりますが、その団体交渉の効力というものは、条例廃止に伴って失効するものか存在するものか、まずこの二つについてお答え願いたいと思います。
  106. 松永正男

    ○松永政府委員 ただいま御質問の出雲の市営バスの問題でございますが、結論から申しますと、その後いろいろないきさつを経まして、労使間に協定が結ばれまして、大筋は解決したということになっておるのでございますが、先生ただいま御指摘のように、その間におきまして、労働組合との間におきまして、再建問題についての話し合いは何回かやっておったようでございまして、どのようにして再建するかという議論は、労使の間で相当取りかわされてきておったようでありますが、その問題と別個に、民間に移譲する、一畑電鉄というところにやるということになったわけであります。この問題につきましては、確かに御指摘のように、労働組合との間におきまして話し合いがほとんどなされていなかったということは、事実であるというふうに思われます。  一方、御指摘のように、地方公営企業労働関係法におきましては、紛争の友好的な解決ということを第一条に目的として掲げてございまして、地方公営企業の本旨からいきまして、住民の福祉のために市がこういうものを経営いたすわけでございますので、住民の福祉増進という本法の目的からいきましても、労使関係が円満かつ友好裏に維持されるということが要件になるかと思うのでございます。したがいまして、そういう一条の目的からいいますと、この結論におきまして解決を見たとはいいながら、その経過におきましては、やはり労使の話し合いをもっと十分にやるべきではなかったかという点につきましては、私どもといたしましても、いろいろな事情はあったかと思います、たとえば一畑電鉄との交渉というような問題もあったかと思うのでありますが、しかし、反面、労使関係は非常に重要でございますので、これも十分に話し合いをいたしまして、組合側も納得をした上でやるということが最も適当な方法ではなかろうかというふうに考えます。
  107. 神門至馬夫

    ○神門分科員 いまの答弁ではちょっとこう食い足りないのですが、持ち時間があるのだそうで……。そういう望ましいという主観的なものではなしに、その団体交渉がどうなるものかということを、ずばりイエスかノーかでひとつ回答してもらわないと間に合わないと思うし、これはまた、あらためて社労等で質問をしていかねば解決しない問題ではないかというふうにも考えるわけですから、簡単に、その問題についてはこう考える、ああ考えるというふうに、ひとつ言ってもらいたいと思います。  それからもう一つは、地公企労法の第八条における労働協約の問題、あるいは第九条におけるその労働協約と規則との問題、労働協約と条例との問題が規定してあります。ところが、ここの労使間には、四十二年の二月十七日に締結して、四十三年の五月十六日までに有効な労働協約であるわけです。それにはこのような、いわゆる免職、失職、あるいはこういうような重大な問題についての事前協議約款というものがある。その協約というものがあるのに、条例をもって一方的にそれを売り飛ばしてしまう。労使間は現在存在しておる。その労働協約の効力はどうなのか。先ほど経過を話して、いまは何か平和的に解決したようだというお話だが、これは平和的な問題でなしにやられてしまって、権力で押え込まれたわけですね。議会で議決されたから、これは対等な条件でなくなってしまった。そういうことで、後退を続けているということで、納得ずくの問題ではないので、そういうような現在における結果がどうなったかというようなことから推測しないように、今後の問題がありますから、明確に簡単にひとつ答弁願いたい。
  108. 松永正男

    ○松永政府委員 ただいまの御質問は、条例と労働協約の効力との関係であると思うのでございますが、地方公営企業の設置につきましては、地方公営企業法にもございますように「地方公営企業の設置及びその経営の基本に関する事項は、条例で定めなければならない。」ということになっておりまして、基本は条例で定めるということになっておるわけでございます。労働条件に関する部分につきまして、条例とそれから協約との関係につきましては、地方公営企業労働関係法の八条等に規定がきれておるところでございますが、設置、運営の基本に関する問題につきましては、公営企業法によりまして条例で定めた場合に、条例が優先するという解釈にならざるを得ないと思います。
  109. 神門至馬夫

    ○神門分科員 そういう解釈でいきますと、この公営企業法による条例によって企業を設置し、管理者は公共団体の長が任命をする、こういうことになっていますね。ところが、それによって全然連絡せず抜き打ち的にその企業というものを廃止するということになると、そこにおける労働権、労使関係というものは、いつも宙に飛んでしまうことになるのです。あなたがおっしゃるような完全な分離論でいくと、ここには労使関係があってないようなものになってくるのだが、その辺についてはどうお考えです。
  110. 松永正男

    ○松永政府委員 ごくしぼりまして、単純な形で条例と協約との効力の競合という問題について見ますと、私は、地方公営企業法の規定からいたしまして、設置についてあるいは廃止については条例の定めるところによる、こういうことになると思うのでありますが、それは、ごくしぼった単純な法律解釈だと思うのであります。  しかし一方におきまして、地方公営企業労働関係法の趣旨がございます。これは存続を前提といたしまして、その労使間の調整等のいろいろな手続をきめておる法律でございますが、しかし、地方公営企業というものの本来の目的からいいますと、住民の福祉のために、そういう企業を公共団体が経営する。私的企業ではなくて、公共団体が経営するということになるわけでございますので、その趣旨からいたしますと、単純な効力問題でなくて、適当かどうかという問題になってまいりますと、やはり適当な措置というものは、もっと別の、きめのこまかい、そして納得ずくの措置というものがあるべきであるというふうに考えるわけでございます。
  111. 神門至馬夫

    ○神門分科員 ちょっと時間足らずになるので……。もう一つ端的に聞きますと、条例が廃止をきめた。ところが、労使間は存続する。そのときに雇用主は——管理者ですね、管理者は、解雇通知を出せますか。協約は有効に存在しておる。有効に存在して、事前協議をしなくちゃできないということになったときに、解雇通告出せますか。
  112. 松永正男

    ○松永政府委員 公営企業の設置の根本が条例できめられるということは、住民のために行なわれる事業につきまして、住民の代表である市議会なり、県議会なり、そういうところの意思によって決定されるというたてまえでございますので、根本を律するものといたしましては、条例によってそれが有効に改廃させられると言わざるを得ないと思うのであります。したがいまして、それによって廃止ということになりました場合に、労使関係上の問題がどうあるか、これはまた別個の問題でございます。それからまた基準法上のどのような拘束があるかということも別個の問題でございますが、法律効力論といたしましては、それによって事業が廃止される以上、それによって従業員が解雇されるということはやむを得ないことではないかというふうに考えます。
  113. 神門至馬夫

    ○神門分科員 その廃止が有効かどうか、それは条例によって決定される、これは先ほどの御説明ですね。ところが、条例は廃止をきめても、その間の期間というのがあるのですよ。たとえば五月に廃止する、そういうようなときに、解雇通告というものが、あるいは協約の手続を踏まずしてそういうようなことができるのかどうか。こういう問題を尋ねておるわけで、いまあなたがおっしゃったように、条例による廃止が、労働協約あることによって、効力が失効するのかどうなのかという競合問題からのことじゃないのです。ちょっと時間がないから、それはまたの機会にもう少しお尋ねしたいと思います。  それから自治省に対する質問ですが、市当局は再三にわたって公営企業法に基づいて再建をしたいということで申請をした。いわゆる申請というより、正式でなしに政治交渉したところが、むげにはねられた。二回、三回にわたってやったけれども、はねられた、こういうことを言っておるのです。答申では約二千万ぐらいを、公営企業法の改正の争点になりましたように、一般会計から入れて、継続させようという方向に大体話はまとまったけれども、自治省がけったために、どうにもこうにもならなかった、こういうことを言っております。こういう事実について、事実関係をひとつお教え願いたい。これは事件の争点の一つである。  それからもう一つは、いまのような労使関係が存在し、地方公営企業労働関係法の関係で継続しておるのに、一方的にこういうような抜き打ち的な解雇、条例廃止というふうなことが地方自治法の観点からいって正しいか、許されるかどうか。  それから、そういうような条例を廃止した、定数条例なり企業条例を廃止したときに、その期間が、たとえば二月末ということで条例を廃止します。そのときに、属人的に解雇通告を出さなくても解雇に通ずるものかどうか、この点をひとつ自治省のほうにお尋ねしたい。  それから運輸省に対しては、市当局は二十五日の午前中、団体交渉で混乱したために、一方的に、通告なしに午前中運休したのです。そういうようなことは法律違反にならないか。違反になるとすればどういうような違反になるか。それから先ほど申しましたいろいろな経過がある。そういうときに認可権を持っておる運輸省としてはどういう措置をおとりになるのか。  以上の点にお答え願いたいと思います。
  114. 近藤隆之

    ○近藤説明員 まず第一点の、市当局が法律に基づく再建を申し出たかどうかということでございますが、法律に基づく再建という形では市は申し出ておりません。御承知のように四十二年の九月から十二月まで例の審議会をつくりまして、いろいろ内部で検討いたしまして、あれに基づき自主再建の方向でやるべく内部でいろいろ努力していたようでございますが、結局、この一月二十五日に廃止に踏み切った。それは市当局あるいは議会のほうで、企業として再建が不能であるというようなことで、このような措置をとったんだろうと思います。
  115. 神門至馬夫

    ○神門分科員 政治折衝もなかった——
  116. 近藤隆之

    ○近藤説明員 なお、政治折衝という形でございますが、全国のこういった地方公営企業で、われわれのほうに経営のいろいろな決算状況等報告がまいっております。その程度のことではまいっておりますけれども、それ以上のことにつきましては別に私は関知いたしておりません。  それから、自治法上違法であるかどうかという御質問でございますけれども、今回の出雲市がとられました措置は、法律的に申しますならば別に瑕疵はないと存じております。  それから、このバス事業は、三月三十一日で廃止したいというような予定になっておるそうでございますが、地方公務員の身分を有しておりますので、辞令行為を要せず事業が廃止になったら当然そこで身分を失うということではなくて、やはり解雇の措置が必要であろうと思います。  以上でございます。
  117. 渋谷正敏

    ○渋谷説明員 バス事業の譲渡譲り受けは、道路運送法に定められておりますように、運輸大臣の認可事項になっております。本事案が運輸省に到達いたしましたのは二月十五日でございましたけれども、申請当時の労使間にいろいろ紛争があるもようでありますので、運輸省といたしましては、従来とっていた態度を踏襲いたしまして、労使間の紛争が片づくまでこの問題をじっと静観している次第でございます。  なお、許可なしでバス運行を怠った場合の措置でございますけれども、これは道路運送法で、正当な理由がないのに許認可を受けた事項を実施しないときは、いろいろ行政処分の対象になるわけでございますけれども、この件につきましては地方の陸運局長の権限でありまして、地方の陸運局長がこれについて処分したという報告は受けておりません。
  118. 神門至馬夫

    ○神門分科員 いま自治省のほうの答弁で、私は知っていない、こう言うのですが、あなた個人ではなしに、自治省のほうに、こういう市営企業の問題というのは重大な問題ですから、法律的態容を欠くに至った手続の前に当然いろいろな話があるはずなんです。そういうことが行なわれたかどうか、こういうこと。  それから採決は法律上の瑕疵なし、この辺は形の問題だろうと思う。ところが、議会政治のあり方としてそういう点が許されるか、法律概念として、立法概念として許されるか。
  119. 近藤隆之

    ○近藤説明員 御承知のように再建法は一昨年の七月に国会を通りまして、四十一年の末までに再建を希望するものは申し出ろということになっております。そのときまでに申し出ましたのが交通事業では十四事業だけでございまして、出雲市のときはわりあい赤字の額が少なかった関係もございますか、再建の申し出ということは行なっておりません。その後四十二年になりましてから経営も相当悪化してまいったということで、市のほうで、先ほど申しました自主的な審議会というものをつくりまして、自主再建に踏み切ろうとしたのだと思います。  なお、御承知のように法律上準用再建ということもございますが、準用再建の場合には、財政再建債とか利子補給とか恩典的なものがございませんので、自主再建と似たような形になります。したがって、出雲市のほうでその準用再建を予定していたような節はなかったようでございます。  それから議会軽視の問題でございますが、こういうような審議会も設けまして、いろいろな意見を聞きまして、市長といたしましては住民の福祉のために置いてあります公営企業が、これ以上置いておけば赤字が非常に多くなりまして、存続するとすれば一般会計から入れて存続しなければならぬ。そうするとその分だけ本来市の行なうべき仕事が制約されるわけですから、やめるべきであるという判断に立ち、議会と打ち合わせたものだと思います。そして住民を代表する議会がこの一月二十五日に議決を了したということでございますので、議会軽視ということにはならないのじゃないかと思います。
  120. 神門至馬夫

    ○神門分科員 時間がきましたからやめますが、特に労働省のほう、この問題については、いまのようなしり切れトンボになっておりますから、実情というものをもう少し調べて、これは全公営企業全般の問題に共通する問題でありますので、ひとつまたの機会に質問したいと思うのです。  終わります。
  121. 登坂重次郎

    ○登坂主査代理 島本君。
  122. 島本虎三

    島本分科員 私は短時間でございますから、失対問題を主にして、いわゆる全逓の不当労働行為と思われる見解について、この二つに焦点をしぼって質問をいたします。  まず労働大臣にお伺いしておきたいと思います。  最近の失業者、この数でございますけれども、昭和三十年の七十六万から最近三十九年の三十七万、いわば三十年をピークにして若干下がっておるわけでございます。しかし四十一年から一挙に四十四万人にこれが急増してきた。そして四十二年には、完全失業者が八十五万という激増ぶりを示してきた、こういわれてきておるのでありますけれども、これは総理府の発表です。しかしながら、これはやはり重大な問題だと思うのであります。私はこの中で、いわゆる失対二法ができたのは三十八年でございますけれども、本年は労働省が、五年目にあたる失対関係のこの法律の改定、こういうようなことを考えておられるようでございますけれども、完全失業者がふえてきたこの数字、それと最近の労働大臣の失対関係のこの仕事に対する考え方、これが一致して完全に対処されなければならないと思いますがゆえに、まず大臣の、これに臨む態度をお聞かせ願いたいと思うのです。
  123. 小川平二

    小川国務大臣 ただいま御指摘のありました八十四万という数字は、四十二年の三月の数字でございますが、御承知のとおりこれは月別に相当大幅な動きがあるわけでございます。したがいまして、三月のこの数字だけをとりましては、一般的な動向を示す指標にはならぬのじゃなかろうかと思うわけでございますが、失対の問題につきましては、雇用失業の情勢を分析いたしまして、四十三年度が検討の年になっております。今後のあり方について検討をいたすことになっておりますけれども、今後の問題でございますから、全く白紙で虚心に問題を検討してまいりたいと存じます。その際、現に失対で就労している方々の生活の実情、実態ということは、申すまでもありませんが十分考慮してまいりたい、かように考えております。
  124. 島本虎三

    島本分科員 実際は完全失業者がふえている。しかしながら、政府の関係予算対策予算は、数の面ではだんだん減っておる。ことに今回の場合には、この点は大臣をほめてもいいと思いますけれども、一二%の賃上げを見た。しかしながら、四千人のワクを減らした。この減らしたほうはどうしてもほめるわけにはまいりません。私は、こういうふうにして、このあとどういうような方式を考えられているのか、まずこの前提を聞いておかなければならないわけです。  時間が限られておりますから、その前に端的に質問します。これは大臣でなくてもよろしい。  それは、失対として予算に組まれた人員は何人であるか。それと、それを年齢別にして、四十歳以上十年ごとにこれをあげて、その裏づけとして発表願いたいと思います。
  125. 上原誠之輔

    ○上原説明員 失業対策事業の規模でございますが、四十二年度が一般失対事業におきまして十四万六千、高齢失業者等で一万人でございまして、合わせまして十五万六千人でございましたが、四十三年度におきましては十五万三千人ということで、三千人の減にいたしております。このほかに特別失対がございます。特別失対は一千人減ということにいたしておりまして、総計いたしまして四千人の減ということにいたしておるわけでございます。  現在の失対就労者の年齢別の状況でございますが、年齢構成の推移を申し上げますと、昭和三十五年の十月末と四十二年の十月末で比較いたしまして、四十歳未満につきましては、三十五年が二〇・四%でございますが、四十二年で六・八%、こういうことになっております。なお、六十歳以上につきましては、昭和三十五年の十月で一八・三%、四十二年で三三%、全体といたしまして年々老齢化しているという状態でございます。
  126. 島本虎三

    島本分科員 パーセンテージはわかりましたが、私がいま言った数字とずいぶん違うのです。いま大臣言ったように、去年の三月ですか、もうすでにこの数字が、以前のピークであるといわれた昭和三十年の七十六万をこえて、四十二年の三月には完全失業者が八十五万人という激増ぶりを示しているわけです。そしてその年代ではやはりふえております。しかしいまやってみますと、数がばかに低く見積もられておるわけであります。そうすると数字が間違いなのか、予算案のほうがあまりにも過小な予算なのか、その辺私はわかりませんので、この点を聞いておきたいと思うのです。そのほか、数を聞いているのです。パーセンテージじゃないのです。
  127. 上原誠之輔

    ○上原説明員 失対事業に就労いたしますものの数でございますが、いま申し上げましたのは一日当たり事業に就労させます人員でございます。頭数で申しますと、昭和四十二年十二月末で二十三万一千四百九十三名ということになっております。
  128. 島本虎三

    島本分科員 そうすると、実際の数より相当少ない数字だ。ということは、あえて私が言うと、これだけしかまず政府のほうに、職安に登録していないということなんでしょう。私はずばりと言いますから、この際ですから、その方式でまいりましょう。  二十三万人をまた減らそうとするような動きが最近あるわけであります。私は、そういうような点はまことに残念だと思っておりますけれども、大臣、今後現在のものより減らす考えですか。それとも、今後新しく考える場合には現在の待遇をよくすることに集中して考えるのですか、この考え方を示しておいてもらいたいと思います。
  129. 小川平二

    小川国務大臣 御承知のような労働の需給が極度に逼迫している現状でございますし、失対に就労しておった人々の間でも、常用雇用につく人の数も年々ふえてきておる状況でございます。したがって、減らすということが就労のワクを意味する御質問かと存じますが、これは今後の雇用の動向とにらみ合わせてきめるべきであると存じます。待遇と申しますか処遇の問題につきましては、現にこの制度に依存して生活の資を得ている人がなお多数あるわけですが、実態については十分考慮してやってまいりたいと思います。
  130. 島本虎三

    島本分科員 今年は、大規模にこれを改正する年だとおっしゃいました。これに対する構想がございましたら御発表願いたいと思います。
  131. 小川平二

    小川国務大臣 検討すべき年ということになっておりますので、必ずしもいわゆる抜本的改正とか、そういうことを意味しておるわけではございません。先ほど申し上げますとおり、虚心に今日の制度を研究、検討いたしまして、改正すべき点があれば改正していきたい。何らの先入主を持っておるわけでございません。
  132. 島本虎三

    島本分科員 どうも時間がないのはほんとうに残念なんですが、失対と社会保障の問題は、密接な連絡がなければならないはずですから、この問題についてはいずれ社労委員会徹底的にやらしていただきますから、きょうはこの深入りは避けます。しかし、これはあなたと私の間に意見が一致したのではございませんから、その点は御了承願います。  そして労働省のほうでは、現在失対のワクについて、なおこれを規制しようとする動きがある。ことに今後は、いかにその適格者であろうとも、他の職につかせることに集中させて、若干の不当労働行為があっても排除するようにこれをやれ、こういうような動きが伝わっているということを巷間耳にするのですが、そういう事実はございませんか。
  133. 小川平二

    小川国務大臣 不当労働行為があっても排除云々というおことばですが、さような指導はいたしておりません。
  134. 島本虎三

    島本分科員 大臣、この三十八年の失対二法が改正されました際に、あなたは大臣じゃなかったわけです。大橋さんだったと思います。そのころには、現在失対現場におる失対労務者は現在以上には一切悪くはしない、よくしても悪くしない、こういう法律なんだ、他のほうへ就職させる場合には、現在働いておる場所より安い賃金、悪い待遇ではない、そういうふうな面には一切就職を強要しないのである、この法律はいい法律なんだ、これが前提なのである、こういうようなことを再々言っておったわけであります。したがって、今後考えられる場合でもこの方式は一切はずさないものである、こういうふうに了解しておりますけれども、大臣のほうでもいろんなことを考えて今後この施策に当たるはずでございますけれども、たとえば他に職安を通じましてあっせんするにしても、強制的にそれも悪いほうに就労を強要しない、また事情によってその職場に行きたがらない者だったら、あとは一切かまわないというふうな無慈悲なことは一切しない、こういうようなことは確認されてあったはずなんですけれども、この点においてもう一回確認しておきます。
  135. 小川平二

    小川国務大臣 より条件のよい、より安定した職場にお世話する、一般的原則的にはそのとおりでございます。ただ例外的に、地場賃金のほうが安いという場合もあり得るわけでございます。その場合にも、本人の自由な意思に基づいて、そちらへ就職したいとおっしゃる場合には、これは別でございます。根本的には仰せのとおりでございます。
  136. 島本虎三

    島本分科員 当時、石炭手当という問題が問題になっておりました。これは賃金のワクの中にあるので制度化すべきである、ただし制度化するのはなかなか困難であるから、当分は現在のままで、順次これを引き上げる方向によって解決していく、こういうようなことが当時言明されておりまして、現在の事務次官である三治さんが、この制度と申しますか、この方式をきめた当時の責任者でございましたが、最近の石炭手当を見ます場合に、どうしたのかここ二、三年間停滞したまま全然上がっておらないようでございます。これは当時の約束をほごにしたのか、他に考える理由があったのか、この点を明確にし、今後の方針も示してもらいたいと思います。
  137. 有馬元治

    ○有馬政府委員 石炭手当は、ここ二年ほど据え置いておりますが、賃金の改定と関連いたしますので、いろいろな事情を勘案して来年度どうするかをきめたい、かように考えておるわけでございます。
  138. 島本虎三

    島本分科員 これは現在の状態を見ます場合には、私は残念ながら、失対で一生懸命に働いている人が、生活保護法の適用を受けている人よりも、この方面は全然下がっているというこの事実はどうしても理解ができないのであります。いわゆる冬季加給金、こういうようなものについても、四十年には、厚生省のほうでは、これは失対賃金ではございませんけれども、生活保護法の適用を受けている人に対しては厚い手当てをしているわけであります。労働省ですから、ここでは資料をもって申し上げますので参考にしてもらいたい。一人につき、四十年には三千百九十五円、四十一年には三千五百五円、四十二年には四千三十円、四十三年には四千四百七十円、こういうように見ているんです。しかしながら、この算定の基礎はあります。百一円に対して、甲、乙、丙、丙は北海道、こうなります場合には、二百五日分をかけて算出している。ところが現在、残念ながら八十円に対して百三十二日分しかこれは加算されない。これだったら、失対でなく生活保護法の適用者、この人よりも現在失対現場に働いているこれらの人が、なおこういうような寒冷地石炭手当のほうになると全然下がっているということは、これはやはり矛盾じゃございませんか。そして当時から、三十七年ほどから年々これを上げていく約束であったわけでございまして、百八十円をめどにこれをやる、こういうようなことであったのです。ところが、こういうような状態で足踏みをしておる。こうなれば、相当この問題に対して対処するのでなければならないと思うのでありますけれども、大臣、この点はどうも数字の上から見ても、保護法の適用を受けている人よりもぐっと実態は下である、これは認めるわけにまいらぬのです。   〔登坂主査代理退席、主査着席〕
  139. 小川平二

    小川国務大臣 御意見の御趣旨はしかと拝聴いたしました。ただ、申すまでもないことでございますが、生活保護と失対賃金、これは制度のたてまえが違っておるわけでございまして、これを直接対比するということには若干の問題があろうかと存じます。ただ、御趣旨はよくわかっておりますので、実際問題といたしましては、生活保護における冬季加算あるいは薪炭費の支給の状況ということも考慮の中に入れまして検討をいたしたいと存じます。
  140. 島本虎三

    島本分科員 それではこの問題はこれで終わらしてもらいたいと思いますけれども、考慮するということは現在のような状態ではない、これより前向きに上げる方向で考慮するという意味に解釈して次に移りますが、その点、ひとつだめ押しをきしておいてもらいたいと思います。
  141. 小川平二

    小川国務大臣 これが逐年引き上げられてまいりまして、近年ストップしておるということは御指摘のとおりでございます。今後引き続いて何かの措置が講ぜられないものかどうか、まじめに研究をいたしまして、むろん前向きの姿勢で努力してみたいと存じます。
  142. 島本虎三

    島本分科員 前向きの姿勢ですから、おととし、去年のような並行した状態でない。その以前には上に向いて上がっておったのですから、前向きというのはこれは並行ではなく、上に上げる方向に向かって進む意味だと解釈しておきたいと思いますが、あんまりたいしたことは要りませんが、そうなのかそうでないのか、それだけはっきりさせておいてください。
  143. 小川平二

    小川国務大臣 この場で、次の機会に必ず引き上げますというお約束もいたしかねるわけですが、文字どおり前向きの態度で研究いたしますということはお約束いたします。
  144. 島本虎三

    島本分科員 やはり失対二法を改正したその当時の状況からいたしまして、中高年齢層の人が意外に多い実態からして、その職業訓練、その方面に重点を置く、こういうようなことになっておりました。雇用促進事業団の内容と実態、それからその後の訓練状況について御発表を願いたいと思います。
  145. 小川平二

    小川国務大臣 この中高年の雇用促進のための現存のいろいろの制度については、島本先生はことごとく御承知と存じますけれども、政府委員から概略のことをお耳に入れて、今後の方針等についても説明をいたさせます。
  146. 有馬元治

    ○有馬政府委員 事業団の事業のおもなものについて概略申し上げますが、事業団は、御承知のように訓練所とその他の援護業務、福祉施設、こういった仕事をやっておりますが、現状におきまして訓練所が総合訓練所をはじめとしまして六十九カ所、それから移転宿舎が今日までの実績におきまして四万七千百七十戸、これは来年度さらに港湾関係が、福祉センターが十二カ所、来年はさらに三カ所増設いたします。それから出稼相談所が本年度二カ所設置されましたが、来年度一カ所、これは北海道の札幌に予定をしております。それからあと大きなものだけ拾いますと、大阪の愛隣地区に日雇い労働者専用の福祉センターを一カ所、今年度の予算で目下執行中でございます。そのほか、石炭の離職者に対しましては各種援護措置を講じておりますが、来年度の援護の状況を申し上げますと、移住資金の支給予定者が二千五十三名、それから住宅確保のための各種の奨励金がございますが、これも全数で申しますと千六百七十八戸分、こういった内容になっておりまして、先生御指摘の三十八年度当時と比べますと、業務内容が格段の拡充をしておるというふうに考えております。
  147. 島本虎三

    島本分科員 その中で失対労務者の数は、——これはほとんどが老齢化しております。その中高年齢層の失対労務者を職業訓練によって吸収し、転業さした、その数がはっきりしておりましたら、御発表願いたいと思います。
  148. 和田勝美

    ○和田(勝)政府委員 お答え申し上げます。  三十八年の十一月以降におきまして、三十九年が二千四百十三、四十年が六千五百九十三、四十一年が七千七百五十五、就職率は、平均をいたしまして約九五%でございます。
  149. 島本虎三

    島本分科員 この実態を見ますと、ずいぶん以前に言った指導の方針と異なるような方針があるように承っております。たとえば今後行く職業訓練所、この中には実態にそぐわないような機械を使用したり、老朽化したものをそのままにしておったり、中には、今度は実習生に実費を負担さしたり、こういうふうにして訓練を実施さしている向きがあるかのように聞いておりますが、それは、当時これをつくり上げたころの言明とは違うのじゃないかと思いますが、この点いかがですか。
  150. 和田勝美

    ○和田(勝)政府委員 施設につきましては、年々だんだんと充実をきしていただいておりますので、三十八年の転職訓練を始めましたころと比べますと、機械設備はずいぶんその様相を改めてきておるように思います。  なお、いまのお話の中で、訓練生から実習経費を取っておるということでございますが、転職訓練につきましては、実習経費を取っておる例はないと考えております。むしろ私どものほうから、先生もよく御存じのように、訓練手当を支給したり、あるいはその中に技能習得手当というようなもので、逆に国あるいは都道府県側から支給をいたしておりまして、訓練生のほうからいただいておるということは万なかろうと考えております。
  151. 島本虎三

    島本分科員 では転職訓練以外は。
  152. 和田勝美

    ○和田(勝)政府委員 養成訓練につきまして、中学校卒業生については養成訓練をやっておりますが、これにつきましては総合訓練実習経費ということで、月額五百円をいただいております。
  153. 島本虎三

    島本分科員 この訓練は、当時から、やる際には無料でこれを実施することを原則にするという話し合いがあったように思いますが、私の記憶が間違いでしょうか。
  154. 和田勝美

    ○和田(勝)政府委員 一般訓練所につきましては無料でございまして、総訓につきましては、二年間の長期訓練である関係もありますので、それと、二年間ということになりますと、高等学校の教育等とのかね合い等もございまして、一種の授業料的な意味合いで、総訓だけいただいておる。この点は、島本先生のお話はたぶん三十八年のときでございますから、転職訓練、中高年齢者の訓練のほうではないかと思いますが、中高年齢につきましては先ほど申し上げましたように、経費は一切いただいておりませんので、当時の話し合いとは、そういう点では一致をしておると思います。
  155. 島本虎三

    島本分科員 この問題についても、具体的な例がございますから、今後また日をあらためていたします。  なお、大臣に最後に質問させてもらいます。それは全逓の大船渡の処分の問題が若干ございまして、そのおりに、その資料として明確に、暴力行為、業務の怠業行為、業務命令拒否と抗議、こういうようなものによって、ある者は馘首、免職、それから出勤停止、こういうようないろいろな処分を受けたようであります。しかし、その中には、年休をとる、これを許可しない、これが不当だからという理由がございます。これは四十二年十月十一日の判決によって、年休の正当性、これがはっきりしたことは前回申し上げましたから、大臣これは御存じのとおりだと思います。  それから暴行傷害事件、これは組合の問題でいろいろ団体交渉を求め、あるいは面会を強要して、それがはたして暴行傷害事件になるか。これはいわゆる長岡の三条事件といわれた事件で、昭和三十六年十一月二十一日に起訴した事件がございます。これについても、結局は無罪である、そういうものは成立しない、こういうような判決が出ておるのであります。その理由を見ますと、団体交渉に応じないためにそばでどなったり、中にはかんをたたいた、しかし管理者側の背信行為もあるから、これは当然だ、したがってそれは無罪である、このようなことであります。そうすると、かつていろいろいわれていた理由が、暴行というのがございますが、これはすでに前に申し上げましたように一切証拠がございません。どういうふうに押されたか。胸を押されたといって、けがをしたのはどこかといえば、足をけがしているのであります。そして一切診断書もない。現認したのは局長の下にいる課長等、内部の人が現認している。これもやはり現認したという理由だけでははっきりした証拠にはならない。こういう三つの要件が全部当たらないために、十分この処分については大臣も郵政当局と相談の上で善処するように協力してもらいたい、大臣はよろしいということだったのですが、これはその後いかがなっておりますか。
  156. 小川平二

    小川国務大臣 その後の経過につきましては、労政局長からお耳に入れさせます。
  157. 松永正男

    ○松永政府委員 ただいま先生判例を幾つかお引きになったわけでございますが、私、ただいまそれぞれの判例につきまして、いろいろ先生と御議論する意思はございませんので一々申し上げませんが、ただ判例といたしましては、いまお引きになりましたような判例とまた違った判決が、たとえば仙台高裁におきまして休暇問題について別の判決も出ております。ストライキに使うような休暇の請求をする権利はないというような判決が、四十一年の九月の二十九日に仙台高裁で出ております。  それから暴力問題につきましては、ただいまお引きになりました三条の電報電話局関係でございますが、これはピケを破りました事件につきまして、公務執行妨害ということで起訴になったわけでございますが、それに対して公務執行妨害罪に当たらないという判決でございまして、ピケが合法か違法かという問題はまた別個の問題であるわけであります。  それからまた、暴力を理由にするいわゆる行政処分、これは刑事と対比いたしますと民事的な問題、損害賠償あるいは解雇、懲戒といったような民事上の問題、これとそれからただいまの三条の新潟地裁長岡支部の判決は、これは公務執行妨害の成立要件に該当するかどうかでございますので、これもまた直接関係はないのではないかというふうに考えるのでございます。  判決そのものにつきましていろいろな点がございまして、また最高裁で争われておるというような判決もあるわけでございますが、それはそれといたしまして、私どもとしましては、ただいま御指摘になりましたような労使関係の安定という面から、郵政当局ともこの問題につきまして、いろいろ意見交換をいたしておるところでございます。なお、さらに実態につきましても調査をいたしまして、十分な認識を得るために検討をいたしておる段階でございます。
  158. 島本虎三

    島本分科員 時間がもうまいっておりますから、これで最後のとどめのつもりでもございませんけれども、郵政当局の考え方と実施のしかたは、人事局長も来ておりまするけれども、やはり中央部の御意見は、わりあいに国会やその他においてはやわらかでありますが、下部へまいりますと、全然固くて、はしにも棒にもかからない。それはもうおそらく局長も嘆いておられたような言動さえあったのです。現に、またこれをやりながら、ほかにもこういうような問題が発生しているということも聞いているのです。どうもこの労使関係のやり方は、労働省がもう少し中へ入って、具体的に法律の問題であるとか、慣行の問題であるとか、こういうような問題については話し合ったほうがいいのじゃないか、こういうような問題がたくさんあります。もう現に私がやりながら、同じようなことをほかでまたやっておるということも聞いているのです。これはいけません。そのやり方は、大臣としても中へ入りまして、労使関係のほうは、やはり大臣も重大な関心を払っておると思いますから、ことにこういうふうに問題がエキサイトしてまいりました場合には、善良な慣行がそこなわれるのは事実でございますけれども、望ましいことではございません。十分その中へ入って、こういうようなことのないように気をつけてもらいたい。こういうふうに思います。  大臣の御答弁を承って、終わります。
  159. 小川平二

    小川国務大臣 御趣旨の方向で、労働省としてお手伝いのできる場面がありますればお手伝いをして、円満にやってまいりたいと思います。
  160. 田中正巳

    田中主査 畑和君。
  161. 畑和

    ○畑分科員 私は少し地方的なこまかい問題でございますけれども、たまたま予算委員会分科会が開かれます機会に、労働問題について労働省並びに警察関係のほうにお伺いをいたしたいと思います。  それは、たまたま私が住んでおります浦和市にある会社でございますけれども、関東レザーという会社がございます。これはレザーその他の製品をつくっておる、約二百三十名くらいの社長以下の会社であります。ビニールレザー、消火綿レザー、合成皮革、そういったような品物を生産をしておるところです。同時に販売もいたしておりますが、浦和ではかなり、一応名の通った企業でございます。実はここで労働争議がずっと起きております。去年の九月までは組合がなかったのでありますけれども、組合が去年の九月六日に東京一般統一労働組合関東レザー分会という形で誕生して、いわゆる顕在化大会を開いたのでありますが、大体この社長そのものが、実は私、前から個人的に知り合いで、非常に懇意なわけではありませんけれども、知っておる間柄です。かつて社長に案内をされて工場内を見てみたりなどした経験もございました。一応の知り合いでありますけれども、ここで組合をつくるということの動きがあったのでありますけれども、それはもちろんそのときには、最初は企業内の独立の組合、こういう計画があったそうです。これはもう一昨年ころからあった。ところが、それに参加をした職長クラスの一人が内報したというようなことで瓦解をして、結局会社のほうへ知れて、会社のほうからの圧力もあって、それに関係した幹部はやめざるを得ないという羽目になった。したがって、企業内で組合をつくるというのは、相当時間的な経過が必要だ。結局、設立するまでなかなかどうしても時間がかかりますから、それが察知をされると、どうもいろいろな圧迫があるということで、それができなかったわけです。ところで、そういう経験にかんがみて、今度は東京一般統一労組の一分会ということで、急に顕在化大会を開いて分会ということになったものですから、会社側は非常にあわてて、しかも社長の言をもって言えば、横っ腹にドスを突きつけられたようなものだ、私が会ったときにこう言っておりましたけれども、そういったことで実は組合の分会が九月の六日にできたわけです。  いろいろ私も事情を聞いてみましたのですが、なるほど組合がなかなかできにくいような形になっている。職長などを中心として労使協議会ができたり、あるいは上級職中心賃金専門委員会というのができたり、ちょっと一応形は進歩的なような形になっておったようでありますが、それがやはり職制でずっと支配された形のものであったようであります。したがって、若い組合員、労働者等にはとても承知できないという形で組合ができた。先ほど言ったようなことで、独立組合をやるには、なかなかそれまでの経過があるから、圧迫を食うとできない。そこで最後に東京一般統一労組の分会という形になったと思う。  ところで、私の調べたところによりますと、なるほどどうも実際の労働条件は悪いのですね。こちらのデータを見ますると、要するに本人の能力給一本というやり方、勤続とか年齢とか、あるいは家族構成、通勤距離、こういうものはすべて本人の責任で、何ら会社は責任はない。したがって、家族手当や通勤手当や勤続給はない。最近、第二組合の関係のほうの交渉で、世論にも押されてか、通勤手当、住宅手当やなんか支給することになったそうです。そのことにつきましても、第二組合のほうが、これはかちとったものだ、お前らは本来は権利はないんだ−実際は均てんしておりますけれども、そういうことで実際よく第二組合あたりからやられるというようなことでありまして、年齢給も日額五十円という賃金体系、これは私、安過ぎると思う。勤続十五年で三十九歳で二万九千六百三十円、勤続十八年で三十八の男が三万二百十円、勤続三年七カ月で三十八歳で二万六千八百五十円、勤続二年四カ月で四十三歳で二万六千二十円というような一例でもわかりますとおり、全く労働者の生活を無視した賃金政策がとられておる。しかも、そういった私が前にも申し上げましたような形で労使協議会とか、あるいは賃金専門委員会というような形ができていましたものの、要するにそういった賃金体系をかっこうよく維持するための組織であったとしか見られないということが、私にもあとでわかったのであります。それまでは社長に会いますと、なかなか進歩的なことを言いまするし、私は昔共産党の関係でどうだこうだというような話もありましたので、なかなか進歩的な人と思っておったのですが、さにあらずでございまして、私も、実はそういう実情を聞きまして、組合の関係等につきましては支援をいたして今日まできたんです。  ところで、こういった賃金体系なんですが、これはどうでしょう、私が見ると、非常に安過ぎると思うのですが、こういった一般のあれに比べまして、労働省のほうで、ほかの例に比べてどんな程度だと思いますか、概略でよろしいのですが、まず承りたい。
  162. 田中正巳

    田中主査 速記をとめて。   〔速記中止〕
  163. 田中正巳

    田中主査 速記を始めて。
  164. 松永正男

    ○松永政府委員 個々の事業におきます賃金が高いか安いかということにつきましては、いろいろな業態、いろいろな労働職の種類がございますので、一がいに、ただいまお示しになりました資料で、それは安いとか適当だとか言うのには、私どもといたしましては、ややちゅうちょいたすのでございますが、たとえば賃金資料といたしまして、全国平均で平均がどのくらいかというようなことにつきましては、データはあるのでございますが、ただいまお示しの、その具体的な会社について、安い高いと言うことは差し控えさしていただきたいと思います。
  165. 畑和

    ○畑分科員 それじゃ、全国平均じゃどうですか。
  166. 松永正男

    ○松永政府委員 労働省で毎月勤労統計というのをとっておりまして、その資料によりますと、常用労働者の最近におきます賃金は、毎月きまって支給します給与の総平均、各産業全体の総平均の全国平均でありますが、四万三百六十七円、これはもちろん超過勤務手当等も入った金額でございます。   〔主査退席、登坂主査代理着席〕
  167. 畑和

    ○畑分科員 ここでそういったこまかいことをやっておっても——それは、何歳で勤続年限幾らというのは、こまかく出してもらえれば当然出てくる。そうすると、それを比較すれば出てくると思いますが、いまは時間がないから、いまのはすべての平均ということで了解いたします。時間がかかるから、その点はあと資料でももらいまして、比較すればわかる、そういうことにいたしたいと思います。  ところで、この関係のいろんな不当労働行為等があるはずであります。そういったことの申し立てがあるはずでございます。そのあっせん等も申請したそうでありますが、その辺はどうなっているか、承知いたしていますか。
  168. 松永正男

    ○松永政府委員 私どもの、県の労政当局を通じまして得た情報でございますが、ただいま御指摘会社におきまして、組合から埼玉県の地労委に対しまして、昨年の九月二十日に不当労働行為の救済の申し立てをいたしております。申し立ての事由は、会社が組合活動を企業内の組合の活動にとどめるように発言した、東京一般の役員の活動を封じようとした、たとえば構内での職場集会の禁止とか、それから組合集会から東京一般の役員の排除を要求した、あるいは東京一般に対する誹謗のビラを配布した、それから職制を通じて組合脱退の勧奨を行なったというような諸点が示されまして、これが組合に対する支配介入であるという理由で地労委に対して不当労働行為の救済の申し立てがございまして、現在埼玉地労委におきましてこれの審査を継続いたしておるという状況だと承知しております。
  169. 畑和

    ○畑分科員 その前に申請があったでしょうが、あっせんはどうしたのですか。
  170. 松永正男

    ○松永政府委員 なお、これは不当労働行為の救済申し立てでございますが、賃上げ、それから有給休日、勤務時間というような問題につきまして、ただいまお示しになりました第一組合といいますか、それから要求が提出をされまして、これをめぐって何回か争議行為が行なわれたわけでございますが、昨年の十一月の一日に、これらの問題につきまして、賃上げを二千円してもらいたいということと、団交の促進をしてもらいたいということにつきまして、あっせん申請を組合側から行ないました。これに対しまして、会社側は、そのあっせんを拒否をいたしております。  それから、昨年の年末に至りまして、年末一時金の要求三・三カ月分プラス一万円という要求を組合側から出しまして、会社がこれに対してゼロ回答を行ないましたために、この年末一時金についてのあっせん申請を地労委に行なっておりますが、これに対しましても、会社は、そのあっせんを拒否をいたしておるというふうに承知いたしております。
  171. 畑和

    ○畑分科員 その労働関係のほうの状態はそれだけで、そのほかに、いろいろこの争議には、第一組合、第二組合あり、それから同志会ありということで、三つに分かれておるのです。非常に収拾がつかなくなっておるわけですが、会社は、そういったような形でなかなか頑迷に、大体根本的に組合否認のような立場におる。そういうことなんでありますが、これは労使関係でありますから、なかなかそう労働省が干渉するわけにはまいらぬかもしれぬけれども、いろいろな法的な範囲を越えてはなかなかできないかもしれぬけれども、法外におきまして、県当局のほうの労働関係の責任者等でそういった努力は何かしておりますか、どんな努力をされたかひと……。
  172. 松永正男

    ○松永政府委員 この問題、御指摘のように、中小企業と申しますか、労使関係が非常になれていない方々の間におきましては、ときどきこういうケースが出てまいる場合があるのでございますが、組合が三つに分かれまして、また、その間にストライキを繰り返しやるとか、あるいは不当労働行為と思われるような行為があって提訴問題が起こるとか、あるいはまた、暴力事件というようなものが起こりまして告訴問題が起こるとか、あるいはまた、これをめぐって解雇が行なわれ、解雇撤回闘争が行なわれるといったようなことが、昨年の九月以来いろいろ起こってきておるわけでございます。先ほども畑先生がおっしゃいましたように、御自身でもおやりになったというふうに私も伺っておるのでありますが、そのほか社会党の議員の先生方も、何とか解決したいということで御努力を願ったようでありまして、その際に、県の当局、労政関係の職員でございますが、もう何とか解決したいということで、その社長と社会党の議員さんとの会談に立ち会うとかというような具体的なことをやっておるのでありますけれども、私、県から聞きましたところでは、非常にこじれておって非常にむずかしい。率直に申しまして解決のめどがなかなか立たない。しかし、問題が非常に深刻になってきておるので、県といたしましても、何とかこれの解決をいたしたいということで努力をしておるのだという報告を受けております。私どもといたしましても、いま申し上げましたようにむずかしい要素がたくさんあるのでございますが、県当局に協力をいたしまして、何とか解決のめどを見出すべく今後も県を応援してまいりたいというふうに思うわけであります。
  173. 畑和

    ○畑分科員 それで労働省の態度はわかりましたが、私らの目から見まして、私らの努力も足りないのでありまするけれども、なかなかそういった考え方の社長以下の経営陣でございまして、いわゆる頑迷固陋ということが当たりますかどうかわかりませんけれども、大きい企業でいえば例の福島交通の社長みたいに、自分自身で独特の哲学を持っておりまして、なかなか曲げない。こういうことで、労働法に対する理解がほんとうに私は足りないんじゃないかと思う。そういったことを相当の年齢の人にあまりどうもなかなか教えるわけにもいかぬし、そういう点で経営者の教育ということが相当私は必要だと思う。経営者協議会というような団体もありまするし、正当な労使関係ということは、やはり労働者のほうも、また企業経営者のほうも、十分に労働関係の法規をよくかみ分けて、そして新しい時代の労使関係というものを築く心がまえが必要だ。どうもそういう点が、組合のほうにも、まだ結成早々ですからそういう点があるかもわかりません。しかしながら、それは東京一般の統一労働組合の分会でありまして、東京一般の場合はそう激しいあれじゃないと私は承知しております。したがって、おもなる原因は経営者側にあるというような感じがいたすのでありまして、会社側は根本的には第一組合否認ということであります。私なども第二組合はつくりなさんなということを言っていたのですけれども、第二組合をとうとうつくった。そして第一組合をどんどん切りくずす。いろいろな手があります。長くなるから申し上げませんけれども、いろいろないやがらせをやっております。  そういう点で、経営者の教育——教育といってもそういう機会がなかなかないかもしれませんけれども、あらゆる機会をとらえて、そうした大きな立場での労働法の理解、労使関係に対する理解ということを深める必要があろうと思う。その点についてひとつ大臣としての考え方を伺いたいのであります。
  174. 小川平二

    小川国務大臣 畑先生御自身、この問題の円満な解決に御努力を払っておられるとかねて承って、敬意を表しておる次第でございます。おことばにございますような独自の哲学を持った経営者というのが間々存在しておるに違いない。私どもといたしましては、各種の機関、たとえば日本労働協会あるいは県の労政当局等を通じまして、労使の正しいあり方ということについて啓蒙指導をやっております。また、中小企業につきましては、中小企業各種団体に助成をいたしまして、あるいは労務管理の問題、労使関係等について講習会を開く等の形で指導啓蒙につとめておるわけでございます。まだまだ努力の余地が残されておると存じます。ただいま承りましたような事例にもかんがみまして、これから先もそういう仕組みをますます強化いたしまして、啓蒙指導の活動を活発にやっていきたいと存じます。
  175. 畑和

    ○畑分科員 ひとつ今後とも、一般についていえることでありますけれども、そうした特殊な、組合に対する認識の足りない経営者に対して、いろいろな形を変えての説得、そういうことが必要だと思うのです。これをぜひお願いいたしたいと思うのであります。結局、労使関係だからというので、法規による申し立てその他がなければなかなかいろいろなことができないという制約がありましょうけれども、そういう形だけにとらわれておりますると、なかなかこういうこじれたものは解決できない。われわれもその一半の責任をしょわなければならぬのでありますけれども、そういう点で、事労政を担当されている労働省ですから、その意味で大きな責任があると思います。ぜひともそういう立場で指導してもらいたいと思います。  ところで、そうした労使関係のことについて、労働省としてはなかなか干渉その他ができぬところがあってむずかしい、そういうことなんでありますが、この事件につきましては、実はいろいろな告訴や何かされた。労働省当局が言われておりましたように、告訴などが出ております。これは実に告訴の数が多いのでありまして、おもに会社側の告訴、しかも労働組合に対するいろいろな圧迫その他のことがあると労働組合が抗議をしている。そうすると、それをすぐ威迫だ、脅迫だ、業務妨害だということで告訴をする。その前に警告をする。その警告が、私の手元にあるだけでも、警告の一覧表というのを会社がつくってあるのですね。みんなPRのためでしょう。これを見ましても、十月の十日ごろから十二月八日までの間に何と四十件くらい、個人あるいは組合に対しての警告——ちょっとしたことで警告をする。しかも、そういう事実がないものも相当ある。ひどいものに至りますと、その場にいなくて休んだ人に対しても警告があったというようなことで、お笑いぐさになっているのがあるそうでありますが、ともかくそういうことが大好きなんでありまして、これは警告書一覧表のその一で、まだその二があります。そういうことで、すぐ警告をし、告訴をするということで、警察のほうも応接にいとまないとは思います。一応告訴が出ますれば、やはり聞かないわけにはいかないということで、たくさんの人に聞く。それを検察庁に送る。また検察庁で調べる。こういうようなことで、ほんとうに応接にいとまがない。組合のほうからも二、三件は告訴はしてあります。してありまするけれども、そういう点で非常な告訴狂みたいなところがあるのでありまして、警察のほうとしても、告訴が出ればやむを得ないかもしらぬのでありますけれども、結果的に若干どうも踊らされているようなきらいがあるのであります。その点を、実はきょうは警察当局のほうに若干もの申したいのであります。  労働組合のほうからいたしますならば、組合活動に対する警察の不当介入ということばで表現されることでありますけれども、こういうことが、組合の立場から見まして何回かあるのでありまして、こういう点で、あとで総括的に申しますけれども、ひとつそうした告訴等にそのまま乗るというようなことでなくやっていただきたいと思うのです。それからまた、現に私が見ましても、聞きましても、不当介入のような感じがするところが相当ございます。そういう点をひとつ十分に考えて指導してもらうようにお願いしたい。逮捕をされたという例はまだないのでありますけれども、結局告訴がもとでありますから、そういうことになるでしょう。別に激しい乱暴があったわけでも何でもないわけです。でありますけれども、ことごとに警察をすぐ呼ぶわけですね。そうすると、警察は実に連絡がよくて、すぐ来る。こういうことで、私服が十名くらいたいてい来ている。そうしてぱちぱち写真をとったり状況をメモしたり、おまえらは立ちのかないと不退去罪になるぞ、こういったようなことを来た警察の方が言われておる事実もあるわけです。おそらく警察も、先方がすぐ電話をする、すぐかけつけるというようなことで、若干警察があやつられているような結果になっておるんじゃなかろうかと思うのでありますけれども、こういうことは結局は組合を刺激をするということになると思う。労使関係でございまするから、労働省でもよく御承知のように普通の場合と違うので、いわゆる正当なる行為として刑事免責をされる場合が相当ある。したがって、普通一般のことと同じようなことに考えられると、不当介入ということになるおそれがある。そういう点を十分考えておられるかどうかということであります。  その具体的な例を一、二、——調査をされておるかどうかわかりませんけれども、時間の許す限り申し上げます。  まず去年の十月二十六日のことでありますが、荷物の搬入搬出のときの説得を組合員がやっておるとき——ストライキ行為中ですが、写真をとったり、メモをとったり、浦和警察署が来ていろいろやったということがございます。それから、その日に大体話がついておって、もう門をあけるということになっておったのに、会社側のほうで無理をして、そこにおった人が傷つくということも承知しながら、無理に門をあけたということで一人けがをいたしておりますが、そういったことについても告訴はあとでしてはおりますけれども、それに対して、そのときに立ち会った警察の方は何とも処置をしてない。こういうような事実がございますが、その点はどういうことだか警察庁、承知いたしておりますか。
  176. 三井脩

    ○三井説明員 ただいま畑委員からお話がございましたように、労使関係の問題につきましては、問題が問題でございますので、警察としてはきわめて慎重な態度で臨む。同時に、労使双方に対しましてあくまで中立の立場で厳正に法の執行に当たるということでございます。いまお話しのように、労働組合の行為につきましては、それぞれ労働組合法による違法阻却の問題もございますし、また、問題が争議であるということでございますので、常に厳正な立場で、しかし同時にまた、法に定められた警察の任務を遂行するということで、慎重な立場で臨んでおるわけでございます。  労働争議がこじれますと、いまお話しのように告訴合戦が行なわれたり、また一一〇番その他によって警察官に対する要請があったりということがしばしばあるわけでございます。本件の場合につきましても、労使双方から、また第二組合等からも告訴が多数出ております。現在までのところ二十七件というような数にのぼっておるわけでございます。この点につきましては、告訴の性質上、当該本人が、自分が被害にかかったと思い込んで告訴をするというものもありますし、また、客観的に見ましても、それがいかにも犯罪になります、こういう場合もございますが、告訴があった段階におきましては、これは必ずしも客観的に明瞭ではございません。したがいまして、この告訴事件につきましては、十分当事者の話を聞いて慎重に処理をするということで現在まで処理をいたしておりますが、この点につきましても、いまお話がございましたように、いずれも任意に関係者に来署をいただきまして事情を聴取するという形で進めておりますので、現在までのところ、強制捜査にわたったというものは全くないわけでございます。  なお、一一〇番その他の関係警察官に対していろいろとあることないこと言うような場合がございますが、出動の要請、あるいは要請とまでいきませんでも連絡がございます。一一〇番等に連絡の場合には、何をおきましても警察官が現場に早く到着をするということで、主としてパトカーによって要員が現地にかけつけるというような措置をとっておるわけでございますが、本件争議の場合におきましては、かなり長期にわたっておりますし、しかもまた警察署からわずか八百メートルというような位置にあるところでもございますので、警察といたしましても日ごろから十分な関心を持って、暴力的な事案が起こらないようにという観点からこれを見ておるわけでございます。現在までのところ、かなりの回数にのぼる警察官が現場にかけつけるという事案も起こっておりますが、この大部分は主として私服の警察官が現場に臨むということでありまして、ある場合には二名、ある場合には八名、七名というような数でございます。また、制服の警察官が現場に臨むという場合もございますけれども、できるだけ事態の真相を客観的に見きわめるという考慮もございまして、制服警察官を最も多く出したという場合は四十一名でございますけれども、この場合も路上で車上待機をするというようなことで、当該現場には警察官をできるだけ出さない、こういうような配慮をいたしておるわけでございます。ただいまお話がございました十月二十六日の件につきましては、告訴もございましたので、その後任意捜査によりまして捜査をし、地方検察庁に書類送付をいたしておるという段階でございます。
  177. 畑和

    ○畑分科員 それから二月十六日に花田書記長という者がこの会社の第二組合員の人たちなどに暴行を受けたという事件がございます。それで組合事務所にかけつけたところが、そこでさらにまた殴打された。とことんまでやられたそうだが、それを会社の責任者、重役等はみんな見ておって、そのままにしていた。それで電話をかけようとしたらそれを阻止された、こういうことがあった。しようがないから構外の電話に行ってようやく連絡をした。そうしたら、一組か二組かというようなことをだいぶくどく聞かれたそうでありますけれども、すぐには来なかった。結局、夕方になってから警察のほうから来てくれということで、それで調書をとったそうであります。組合から申しますと、会社のほうが言うとすぐ来る、われわれのほうが言ってもすぐ来ない、ひがみかもしれませんが、そういうことを言っております。そういう点がないように、ひとつ気をつけてもらいたいと思います。  それから、十六日の事件を十七日に、いろんな状況説明等について回答を求めるために会社側との間で団交しておった。そうしたときにやはり警察のほうで入ってきて——これは会社が知らしたんでありましょう、そして話し合いの最中に警察の私服が入ってきて、写真をとったり現場の状況をとったり、そういうことをやった。そして抗議をすると、おまえら不法侵入だ、不退去罪だ、こう言われた。こういうことなんです。この辺は団体交渉でありますから、一々写真をとったり何かすると、かえってエキサイトするので、そういうことは警察のほうも慎むべきだと思うのです。そういう点をひとつ……。  ほかにもいろいろ例がございます。ついこの間も何か問題があったようでありますけれども、三月一日にもあったようですが、これは一々聞いておりますと時間が長くかかりまして、ほかの人に迷惑をかけますから、もうこういった事実を羅列することはやめますけれども、いずれにいたしましても、そういう特殊な経営者でもあります。まあ組合のほうが全然、全的にいいんだと私言うわけではありませんけれども、その点法規的には気をつけているようでありますが、そうした特殊な事情でありまするから、結局、警察権を極力、労働組合の争議関係でありまするから、抑制をしてやってもらいたい。いま課長のほうから、動員してもだいぶ離れたところに置くというような話でありますけれども、そうひどいことをやるはずはないのでありまして、かえって近くにおりますると刺激をし挑発をするという形になる。したがって、こういう点十分気をつけて今後やってもらいたいと思うのです。その辺について警察庁の当局として、浦和のほうに、あるいは埼玉県警のほうにそうした指導をしてもらって、かえって警察が利用されるという形にならぬように今後やっていただけるかどうか、これを最後にちょっと承りたい。
  178. 三井脩

    ○三井説明員 ただいま二月十六日の事案についてお話がございましたが、この点につきましても、当日の夕方電話による届け出がございましたので、直ちに被害者、目撃者等を取り調べの結果、事件を近く暴力行為、傷害ということによりまして書類送検の予定でございます。これにつきましては、その後十日たちましてから、つまり二月二十六日に初めて告訴が出されておる、こういうような状態でございます。したがいまして、警察としてはできるだけの措置をやっておったというように考えるわけでございます。  なお、全般を通じまして警察官の措置が挑発的な形ではないか、こういうような点につきましては、先ほども申し上げましたように、警察といたしましてはきわめて慎重に対処するという方針を常々堅持いたしておるわけでございまして、本件の場合につきましても十分その点については配慮をいたしておると思いますが、さらにそういう意味におきまして御趣旨のように慎重な態度で臨んでまいりたいと考える次第でございます。
  179. 畑和

    ○畑分科員 最後に、いままでの態度としては慎重にやったつもりだと言われておりますけれども、われわれから見ますれば、やはり不当介入というようなきらいがあると思うのです。ひとつ今後とも労働事件の特殊性ということも考えてもらいまして、慎重にひとつ扱っていただきたい。こういうことを重ねて申し上げまして、時間も参ったようでありまするから質問を終わることにいたします。
  180. 登坂重次郎

    ○登坂主査代理 大橋敏雄君。
  181. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 私は、いまからいろいろとお尋ねするわけでございますけれども、時間に制限がございますので、私が聞いていることに対して答弁はきわめて簡潔に、とはいっても責任ある答弁をお願いしたいと思います。よろしいでしょうか。  まず第一番に、四十二年度の大企業及び中小企業の、中学卒また高卒、そういう若年労働者企業の希望数に対する充足率ですね、それはどの程度だったか、四十二年ないし四十三年がわかればあわせて説明願いたいと思います。
  182. 有馬元治

    ○有馬政府委員 四十二年の実績について申し上げます。  中学を先に申し上げますと、五百人以上の規模では三六・三%、これが一番少ないところで三十人から九十九人の規模では一九・九%、非常に下がっております。高卒では、同じく四十二年三月ですが、五百人以上では四六・一%、それから三十人から九十九人の規模では二九・二%、非常に下がっております。さらに規模別にどういうふうな就職をしておるかという角度から見ますと、中学では五百人以上の規模で三三二%就職しております。それから三十人から九十九人の規模では一七・八%、それから高卒では、同じように五百人以上では三九・三%、それから三十人から九十九人では一九%、小なくなるほど充足率も、就職構成から見ても数が、割りが悪い、こういう状況になっております。
  183. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 いまの説明を聞いても明らかなように、若年労働者に対する人手不足といいますか、これはきわめて深刻な状態にあると思うのです。最近の一般労働市場の状況を見ますと、ずっと前とは百八十度の変更をしている。端的に申し上げますと、昔は職安のほうから企業側に一生懸命職業あっせんをお願いに行った。ところが、最近は企業のほうから、特に若年労働者に対しては企業のほうが職安のほうに日参をしている、このような状態ではなかろうかと思うのです。したがいまして、企業側の気持ちとしては、学校を出るそうした新規学卒者をねらうためには、学校の担当先生をねらってみたり、あるいは職業安定所をねらえというようなことで、あの手この手を使って殺到していると思うのです。したがいまして、あの手この手というのが職安のほうから見れば、つまりあの手が魔の手に早変わりするのじゃないか。私はここで事件を蒸し返して言うわけではありませんけれども、実によい実例がございますので、一、二申し上げたいと思います。  三月の二日から三日にかけての事件でありますが、群馬県の渋川職安管内の中之条出張所の所長さん以下六名の方と、業者の鐘紡の有力者の数名が、伊香保の温泉の福一という旅館で懇親会をやった。その席上で、事もあろうに、酒の上とはいいながら、居合わせた芸者に対して、三名だと聞いておりますが、乱暴を働いた。そのために傷害暴行という現行犯で逮捕されたというわけですね。また業者側も、その供述等から、どうもこれは供応の疑いがあるぞということで、いま取り調べ中だということを私は聞いたわけでございますが、この不祥事件がもし事件としてあがってこなかったならば、これもうやむやのうちに忘れ去られたであろう、私はこう思うのです。こういうことについて大臣は特にこの事件に対してどのように感じておられるか、一言所感を伺いたいと思います。
  184. 小川平二

    小川国務大臣 御承知のような労働力の需給逼迫の状況でございます。これからもこの基調が続いていくに違いないと考えられるわけでございまして、そうなりますと、とかくいろいろな場合に誘惑を受ける機会もふえてくるのじゃなかろうかということをかねておそれておったわけでございます。幸いにして、近年そういう事例もなかったわけでございますが、今回のことはまことに遺憾でございます。私としても責任を痛感しておる次第でございます。これは求人側の供応を受けたという事実はないようでございますが、求人側と打ち合わせて同席して酒を飲む、心がまえとしてこれは全くよろしくないことだと存じまするし、その上暴行を働いた、こういうことも、公務員としての心がまえにおいてはなはだ欠けるところがあることは申すまでもないのであります。直ちに必要な処分をいたしますとともに、全国の職安関係の職員に対しまして厳重な通達をいたします。かようなことが繰り返されませんように、厳重に戒めておる次第でございます。
  185. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 いま大臣がおっしゃったとおりだと思いますが、私もこれについて多少調べてみました。その内容は、確かに誘惑に乗ったということであったと思いますけれども、求人難のときもときです。しかも、企業の催促を一応はことわったとはいうものの、結果的には行っているわけです。しかも、そのちょうちん持ちをした主役といいますか、その人は元職安につとめていた職員だ。しかも、その場所は温泉、伊香保というところで、このように悪い条件があまりにも重なり合っておる。ここには何か取引があるんではないかと国民が疑うのも無理はないと私は思うのです。しかも、私も社労に入りまして、労働行政のあり方をながめておりまして、特に綱紀粛正に対しては、労働省としては力を入れて手を打っていることは認めます。認めますけれども、わずか一回とはいいながらも、このような事件が起こると、まじめに働いている皆さんがかわいそうだと思うのです。私は、こんな問題が起こるというのは、ある意味では行政上に何か欠陥があるのではないか、このように思うのです。多少立場は変わるかもしれませんけれども、現在話題になっております。地方自治体に勤務する国家公務員の身分の移管の問題がございます。つまり職安行政員、いわゆる自治体で勤務している人、その人の身分というものは地方事務官という名のもとに、身分そのものは国家公務員である。ところが、予算等の執行権、人事の執行権というものは労働大臣にある、行政の指揮監督というのは知事にあるということになれば、勢いそこに働いている職員の皆さんは、二重の指揮監督を受けているというような立場に立っているわけです。このような繁雑な仕組みから、職員の行政に対する意欲も欠けようし、また、職員に対する指導もおろそかになる。こういう隘路からこういう問題が起こってきているんじゃないか、私はこのようにも感ずるのですけれども、そういう点について、大臣はどうおとりになるか。
  186. 小川平二

    小川国務大臣 このたびのことはまことに遺憾千万でございますし、私も世間に対して申しわけないと存じております。ただ、このことが現行の制度と直接に関係があるかどうか、私は、むしろ、ただいま御指摘のような、現在のような制度になっておるからとかく綱紀が弛緩しがちだ、そういう考え方はいたしておらないのでございます。職安関係の人たち、いずれも国家公務員としての誇りを持って仕事をしておるに違いない。したがいまして、現存の制度とは関係がないと考えておるわけでございます。
  187. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 大臣は、労働大臣という立場からこのことを考えられて、いまのような御答弁だと思いますけれども、自治省としては、一応国家公務員の身分を地方自治体におろすことに賛成をしておる、こういうふうにも聞いております。私は先ほどから、そういう行政の上からも問題が起こるんじゃないかということをくどいように言っておるわけでございますけれども、そういう立場からも、もう一度この問題とも取り組んでもらいたいし、また本質的には、地方移管の問題の基本といいましょうか、問題は給与の問題が出ていると思うんですね。地方自治体の職員の給与が高くて、国家公務員のほうが安い。こういう問題はきわめて不合理だと思います。こういう立場からも、大臣の立場から強くベースアップの問題も取り組んでもらいたい、こういう気持ちもありますので、この点についても答弁をお願いします。
  188. 小川平二

    小川国務大臣 この問題は、予算委員会等でも私どもの見解をお耳に入れたわけでございますが、要するに、失業保険の仕事にいたしましても、あるいは職業安定の仕事にいたしましても、全国的な規模で一つの基準で行なわれなければならない。現状に改変を加えました場合に、その趣旨が今後も支障なく執行できるかどうかという点に不安を禁じ得ませんために、にわかに賛成ができかねるという考え方をいたしておるわけでございます。  給与の問題もございましょう。給与がいいから地方公務員になりたいという人もあるかもしれません。逆に、給与などにはあまり関心を持たずに、国家公務員として中央の指揮下で働いておるほうが張り合いがあるという人もあるかもしれません。いずれにいたしましても、これらの職安関係失業保険の人だけに限って給与の面で何らか特別の優遇をするということも、今日の公務員制度のたてまえからいたしかねるわけでございますが、給与の点に問題があるということは、これからも念頭に置いてまいりたいと思います。
  189. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 それでは話を変えまして、失対労働者の就労ワクについてお尋ねしたいと思うのです。  これは実例を申し上げますが、私の居住する北九州市ですけれども、その隣接に中間市というのがあります。それから遠賀町、水巻町、それから岡垣という町があるんですが、そこから北九州市の職場に、いわゆる現場に相当の数が流れ込んで働いているわけです。これは北九州の職安関係ですので問題はないわけでありますけれども、私が心配していることは、北九州市の財政面から非常に危倶するものがあるのです。というのは、北九州市の財政が逼迫しておりまして、この失対労働者予算も限界に来ているんじゃないか。たとえば中間市の関係予算だけを見てもかなり苦しい状況にあって、最近では中間市のほうに少しは負担しろというように強硬に交渉、申し入れをしておるようであります。そういう金額は調べてはきておりますけれども、あと回しにしまして、私が心配しているのは、そうした限界が来ているので、隣接市町村から来ている労働者をシャットアウトするようなことがあるのではないか。こういうことで、そうなれば中間は中間で失対事業を起こせばいいじゃないかとも考えました。しかしながら、中間市も再建団体といわれるほどの貧乏な市でありますから、ここでは不可能だと思います。じゃ県が失対事業を起こせばいいじゃないかということになるわけですけれども、県そのものも逼迫した財政であります。一体これはどうすれば解決するんだろうか。私、この点を非常に心配しておるわけでございますので、大臣の考え方をお尋ねしたいと思います。
  190. 有馬元治

    ○有馬政府委員 御指摘のとおり北九州市の失対就労者は八千人をこす人員でございまして、近隣の市町村から若干これに加入しているわけでございますが、これを地元市町村に引き取ってもらいたい、あるいは財政負担をしてもらいたいというふうな問題が出ております。しかし、これはどっちつかずになって、ちまたにほうり出されるというようなことに相なりますとゆゆしい問題でございますので、目下県並びに関係の市町村との間に意見の調整をはかっておりますので、いずれにしても県と関係市町村との間に十分協議をした上で善処してまいりたい、そのように考えておるわけでございます。
  191. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 たとえば中間市関係の四十一年度分の予算を見ますと、これは国と市が出しておるわけですけれども、北九州市の分の予算を見ますと一千三百九十八万七千八百八十一円、これだけ北九州市が見ておるわけでございますが、中間市に対して北九州市が、あなたのところから少なくとも五百六十一万七百二十九円出しなさい、こういうふうに強力な交渉をしているわけです。しかし、現実には入ってきておりません。また、四十二年度の内容を見ますと、北九州市として中間市から流れ込んでくるその数を九十七名という人数で予算を立てておりますけれども、現実には百六十九名になっておるわけです。だから予算の基礎人員よりも現実は十七・四倍もふえておるわけです。ということは、それだけにまた北九州市の財政が逼迫する、これは大きな問題だと思うわけです。  そこで、いまいろいろな立場でこの問題を調整しておりますと言いますけれども、もう少し具体的に、もしこういうふうになったときにはこのような手を打つんだというような、具体的な答弁がこれはほしいのです。
  192. 有馬元治

    ○有馬政府委員 御指摘のような問題がございますので、新年度を目途といたしまして、県と関係市町村の間で十分協議させて、漏れのないような対策を講じてまいりたいと思います。
  193. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 それでは、いまから話すのは一つの仮定の話でございますけれども、たとえば賃金の問題になります。あくまでも仮定という立場で話しますから。たとえば失業対策事業に働いている労務者に対して日々支払われている賃金を、直接労務者に手渡さないで組合の幹部などにまとめて依頼するようなことはいいのかどうか。それは合法か非合法かという問題です。
  194. 有馬元治

    ○有馬政府委員 失対労務者の賃金は、運営管理規程に基づきまして通貨で直接本人に支払うということに相なっておりますので、他人を経由して支給するということはございません。
  195. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 それは違法ということでいいわけですね。
  196. 有馬元治

    ○有馬政府委員 そのとおりでございます。
  197. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 では、実例を申し上げますけれども、これは賃金そのものの問題とはちょっとかけ離れると思いますが、去年の暮れにこの失対労務者に対して国からも期末手当というのが出ました。これは一応賃金の一部として支給されるのですけれども、その期末手当にプラスアルファとして県とか市のほうから出るお金があるわけです。実は去年の暮れ北九州市に働いている労務者に対しては一人当たり二万六千円出たように聞いておりますが、たまたま八幡区の折尾現場に二十一名の人が働いていたのですが、その人たちはその半分の一万三千円しか出なかったというのです。話を聞いてみると、地元の水巻のほうから半分はもらってくれというのです。というのは、先ほど言いましたように、隣接町村の中の一つである水巻から八幡の中に働きにきていたのですね。その人たちの分は二万六千ではなくて半分の一万三千円、あとの分は地元の水巻からもらいなさいというようなことで支給されたわけです。しかも、そのお金が本人に渡ればまだいいのですけれども、本人ではなくて組合の幹部に渡された。そこで幹部は、これはかわいそうだということで、水巻のほうに交渉に行ったが、なかなか交渉がつかないわけです。水巻は、そんな金は出せません、五千円程度ならばということで、交渉がつかないまま今日まで来ておるわけでありますけれども、その二十一名の人たちはいまだにその一万三千円の金すらももらっていない。話によれば七千円程度はもらったということでありますけれども、そういう事実があります。  また、門司のほうにも、これは入院患者の人ですけれども、やはり失対で働きながら病気のために入院をした。しかし、その人たちにも留保という言い方ですか、そういう立場でやはり手当が出ておるわけです。手当というのが妥当な表現かどうか知りませんけれども、それも組合幹部に直接まとめて渡されたものですから、当人には三分の一ぐらいしか渡らないで、あとの分は組合に置かれている。こういうふうな事実がある。  私はこれは、先ほどから言いますように賃金そのものではありませんけれども、非常にあいまいなものを感ずるのです。このような不明朗な事柄が起きるということは、組合幹部にまとめてそういうものを渡すというところに問題があるのじゃないかと思うのです。そこで、この期末に出されました県とか市の分は、いまも言いますように公式的には賃金ということではなくて、つまり自治体の裁量によってまかなわれたお金でありましょうから、とやかく言う筋合いのものでもないとは思いますけれども、労務者の個人という立場から見れば、当然お金は必要だろうし、また出した市長さんや知事さんのその善意も本人には届かない、そういうことになります。しかも出た金そのものは、名目上はどうであろうとも、公金には間違いないわけです。私としては何ともこの辺が釈然としないものが残りますので、大臣におかれましては、これらの解決には努力を払い、善処されんことを強く要望するものであります。どうかこの点についてお願いします。
  198. 有馬元治

    ○有馬政府委員 御指摘の、市町村が単独負担で支出しておりますいわゆる期末手当というのは、賃金ではない。労働大臣の定める賃金ではないということで、私ども表向きは関知していないわけでございますが、御指摘のような事実があるいはあろうかと思います。いずれにしましても、事実を究明した上で善処いたしたいと思いますが、もし支給の趣旨が、本人に対するいわゆる期末手当として支給するものであるならば、組合幹部がそれを渡さずに着服するというようなことはあり得ないことでございますが、もしあったとすれば、横領その他の問題が出てくる場合もあると思います。いずれにしても、支給方法について実情をよく調べた上で善処いたしたいと思います。
  199. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 それはしっかりお願いしたいと思いますが、昭和四十二年の十一月二十八日から二十九日の二日間に、労働省の中央失業対策事業監察官という人たちが四名ほどで監察に行っているわけですが、そのときのマル秘の文書が手に入ったのです。その中に、賃金支給について非常に問題ありとして何項目か取り上げております。きょうは時間がございませんので、この問題はまたの機会に譲って、じっくりと検討し、また審議したいと私は思っておりますが、とにかく失対事業の現場ないしはその賃金の支給、あるいはそういう手当の問題については、非常に乱脈ぶりというか、そういう姿を感じますので、ひとつあらゆる点から善処されんことを要望しますので、大臣のほうから一言それに対して答えていただきたいと思います。
  200. 小川平二

    小川国務大臣 御趣旨に沿って努力をいたしたいと思います。
  201. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 それでは話をかえますが、これまた福岡県の問題になりますけれども、田川の職安管内において失対労務者の就労停止処分というものが行なわれております。一月から二月にかけて百五十八名という人が停止処分を受けたということでありますけれども、これは労働省としてその事情を承知の上で措置なさったのか、また、田川の職安所長が独断で措置をしたあとに事後報告が来ているのか、まずその点を、簡単でけっこうですから聞かしていただきたいと思います。
  202. 上原誠之輔

    ○上原説明員 田川の職安管内におきまして失対労務者の紛争があったことはいま申されたとおりでございます。今回の就労停止の処分は、現地の定安所長が業務遂行の方針に従いまして処理したものでございまして、その結果につきまして私どものところに報告が来ている、こういうことでございます。
  203. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 そういうことでいいということであれば、それはそれでいいと思いますが、私は、その停止処分の数があまりにも多いという感じを受けて、これはちょっと問題だというのでお尋ねをしますけれども、では、本省からこの事件に対しての調査員か何かを派遣なさったかどうか、大臣、これは御承知でしょうか。
  204. 小川平二

    小川国務大臣 概略のことを承知いたしております。
  205. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 いま言ったように、そのことについて本省からだれか派遣なさったかどうかということですが……。
  206. 上原誠之輔

    ○上原説明員 特別このために派遣したことはございませんが、逐一現地から連絡を受けております。
  207. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 一つの職安管内で百五十何名もの停止処分という事件は、珍しい事件だと思います。そうじゃないでしょうか。ですから、このように特別変わったような事件は、当然本省から責任の持てる人を派遣して真相を確かめるべきじゃないかと思うのです。この私の質問に対して、大臣はどうお答えになるでしょうか。
  208. 小川平二

    小川国務大臣 私ども報告を受けております限りでは、なるほどたくさん前例のある問題ではございませんけれども、事柄自体非常に複雑した問題でもないと思っておりますので、いまのところ、特に人を派遣するということはいたしておりません。しかし、時期を見て、必要に応じて労働省から派遣をいたしまして実情の調査もしたいと考えております。
  209. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 その時期を早い時期にしていただきたいと思いますが、どうでしょうか。
  210. 小川平二

    小川国務大臣 これは現地の職安の当局とも鋭意話し合いをいたしまして解決につとめている段階でございますので、その状況によりまして——決してこれは人を出したくないという特別の事情があるわけでも何でもございませんから、必要に応じていつでも派遣いたしたいと思っております。
  211. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 就労停止処分の理由は何でしょうか。
  212. 上原誠之輔

    ○上原説明員 御承知のように、失対事業に就労いたします条件といたしましては、誠実かつ熱心に求職活動する者でなければならないというたてまえになっておるわけであります。本件田川の場合におきましては、公共事業——これは鉱害復旧事業でございますが、これに対しまして求人がまいっておるわけであります。この求人を処理いたしますために、現地といたしましては、炭鉱離職者をはじめといたしまして紹介をしておるわけでありますが、それでもなお不足いたしますので、失対就労者の中から適格者を選んで紹介をするという段取りになったわけであります。五百名ほどの求人に対しまして、安定所のほうで出頭の指示をいたしましたにもかかわらず、職業相談のための出頭にも応じない、こういうのが半数近くございました。そういうことでございますので、安定所といたしましては、誠実かつ熱心な求職者というものに該当しないという判断をいたしまして、失対事業に対する紹介の停止をしたというわけであります。
  213. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 いまおっしゃったことによれば、鉱害復旧事業ということですね。その職業あっせんに応じないという、それだけの理由ですか。
  214. 上原誠之輔

    ○上原説明員 求人が出ておって、それを処理するために職業相談に出てきてもらいたいという呼びかけをした者が職業相談に応じてまいりますならば、公共事業に行く適格者を選定いたしまして、具体的に紹介活動に移るわけでありますが、その職業相談自体にすら応じてこないというのが現状であります。   〔登坂主査代理退席、主査着席〕
  215. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 それは賃金が低いとか、あるいは労働条件が悪いとか、そういう問題はないでしょうか。たとえば現在働いている場所よりもかなり離れた場所で、働きに行くのにたいへんだ、就労条件等が非常に劣悪だということや、いまも言いましたように賃金がいまより安いというようなことはないのですか。
  216. 上原誠之輔

    ○上原説明員 今回の場合に安定所が紹介いたしております鉱害復旧事業の賃金でございますが、これは当初男子九百円、女子七百円という状態であったわけでありますが、安定所長が求人条件の引き上げということで業者にも交渉いたしまして、その結果、男につきましては九百七十円、女につきましては七百五十円というふうに改善されておるのでございます。ちなみに、あの地区におけるところの一般失対賃金について申しますと、男子が六百八十円、女子が六百三十円でありまして、したがいまして、紹介先の賃金が特に低いということはないというふうに私どもは考えております。
  217. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 いま言った就労現場から遠過ぎるというような労働条件のほうはどうですか。
  218. 上原誠之輔

    ○上原説明員 特に安定所といたしましては、やはり就労の条件等を考えまして、この鉱害復旧事業の現場に近いところの方々を呼び出しておるようでございます。特に一般的な条件として、労働条件が標準よりも劣るということはないというふうに考えておりまするし、なおかつ、現在の失対就労者は公共事業に就労いたしました経験者が多数おるわけであります。そういう経験者の中から選んで紹介するという態度でおるというふうに私どもは聞いております。
  219. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 地場賃金との関係はどうなんでしょうか。
  220. 上原誠之輔

    ○上原説明員 地場賃金ということの場合、地場賃金の種類もいろいろあろうかと思いますが、先ほど申し上げました公共事業の賃金は地場の賃金に比べて特に劣るというふうに私ども考えておらないのであります。
  221. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 いろいろといま説明を聞いておりますと、その職業あっせんに応じない労働者のほうがずいぶん悪いように聞こえるのですけれども、そういうことから、やはり労働省の本省から力ある人が実際現場に行ってほんとうのことを調べてくる必要があると思うのです。  もう一つ聞きますけれども、失対事業に従事している労働者が組合をつくると、その組合をつくっても、団体交渉に及んだ場合、その交渉権は認められるのか、られないのかということです。
  222. 上原誠之輔

    ○上原説明員 失対事業を実施いたしますのは県あるいは市町村でございます。したがいまして、その事業に就労する失対労務者は、事業を実施いたします市町村、県との関係におきましては、労使関係があるというふうに考えます。ただしかし、いつも問題になりますのは安定所との関係でございますが、安定所との関係におきましては労使関係はない。したがって、団体交渉権の問題は起こらない、安定所との関係におきましては起こらない、こういうふうに考えます。
  223. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 それでは、今度田川の職安所長さんが、職業相談は各人に行なわれるので、いわゆる組合に労働条件の明示を行なう必要もない、だから失業者には団体交渉権はない、こういうふうなことを言ってその交渉に応じないというのですけれども、このような考えは法的には間違いでないというわけですね。
  224. 上原誠之輔

    ○上原説明員 失対事業の就務者との関係におきまして、いま申し上げますように、団体交渉権というものはないわけでございます。しかし、求人先に求職者を紹介いたします場合に、安定所といたしましては、やはり紹介先の求人の条件等につきましては十分知らしてやるということは必要だと考えております。
  225. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 いまの話から察するのですけれども、公共事業へのあっせんの話も、私はきっと組合幹部を通じて初めに徹底されていったのじゃないかと思うのです。そのような、都合のいいときには幹部を利用して、逆に悪いときには法律というものをたてにとって、交渉権はないのだとかなんとか言ってはねつける。こういうことは私は非人道的だ、こう考えておるのですけれども、こんな点はどうですかね。
  226. 有馬元治

    ○有馬政府委員 団体交渉権の問題は、いま失対部長から御説明申し上げたとおりでございます。したがって、法律上も、慣例上もその余地はないのでございますけれども、やはり組合がある場合には、今度の場合もそうですか、失対労務者を公共事業に大量にあっせんするという場合等については、賃金条件その他について十分組合側にも連絡をしてあります。もちろん、これは直接本人を呼び出して、本人との職業相談の上で就労あっせんをいたしておりますので、職業紹介の原則は貫いておるわけでございます。
  227. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 それでは、今度の就労停止処分が一時的なものなのか、それとも無期停止というものなのか、その点現地では非常に問題にされておりますので、お伺いします。
  228. 有馬元治

    ○有馬政府委員 これは無期停止ではございませんで、御本人が相談に応ずる態勢になればひとりでに今度の場合は停止を解除していこう、こういう考え方でございます。
  229. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 そういうことになれば、公共事業に働きに行かない限りは失対のほうも認めない、こういうことになるのでしょうか。
  230. 有馬元治

    ○有馬政府委員 職業相談に応じない限り紹介を停止する、こういうことに相なります。集団として今度のように大規模に停止した例はあまりございませんけれども、そういう場合に紹介の停止をするということは間々あるわけでございます。
  231. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 私は、失業している人たちですから、仕事はしたくてたまらない人が多いのではないかと思うのです。ところが、なぜその人たちが紹介に応じないのか。本人が来るまではどうしようもないのだというふうに聞こえるわけですが、再就職に応ずるまでどうにもならないということになれば、生活の問題が起こってくると思うのです。生活の保障は一体あるのか、あるわけがないと思うのです。ここで先ほどから何べんも言っておりますように、恩情ある措置をとる意味からも、早く現地に行って実情を把握した上で最善の努力を払うべきだ、私はこう思うのですがね。どうなんでしょう。
  232. 有馬元治

    ○有馬政府委員 これは先生御承知だと思いますが、ほかの全国自労あるいは全失労、全民労という系統の方々は、安定所長と賃金増額折衝の結果によりまして、いまの鉱害復旧事業に就労しているわけでございます。そういったいききつもございまして、この全日自労系の方々に対して無条件に停止を解除するというわけには、他の組合員の方々との権衡上できない事情もございます。しかし、御指摘のように生活がかかっている問題でございますので、私どもとしましても、現地を督励して、一日も早く現地において解決させたい。実は報告によりますと、明十五日に現地で関係者と協議をするということになっておりますので、私どもとしては、一刻も早く現地で円満に解決することを望んでおるわけでございます。
  233. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 時間がございませんので、次に移りますが、解雇予告の期限は、法律の上では雇用主は解雇者に対して三十日前に予告しなければならない、こういうふうにあると思うのですが、田川職安の場合、各人に職安に出頭通知のはがきを出して、わずか十日間くらいで処分に踏み切られた、このように私は聞いておるのです。これが事実ならば労働者の権利を無視したことだ、私は大きな問題だと思いますけれども、この田川職安のとった、出頭の日から十日くらいで処分したということが、先ほどの法律上の解雇予告の条文とどういう関係に置かれるか、これについて答弁願います。
  234. 有馬元治

    ○有馬政府委員 失対就労制度というものは、御承知のように日々紹介によって就労しているわけでございまして、基準法でいう解雇予告の問題は起こる余地がないのでございます。なお、御参考までに申し上げますと、失対就労適格者というものは、絶えず民間ないし公共事業に求人があった場合には、条件が著しく悪くない限りそちらへ優先的に紹介をする、また、その紹介を受けるという求職者になって登録されておるわけでございますので、今回の田川の場合におきましても、相談に応じないという事実があって十日を経過した後に紹介停止処分をしたということは、法律上は全然問題がないわけでございます。
  235. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 法律上では問題ないとは言いますけれども、第一次の処分者は職安出頭から十一日目、第二次の処分者はわずか七日目に処分されたと、私はこのように聞いているのです。法律の上から問題ないということになれば、それこそ問題ないことでしょうけれども、働いている当人にとって、七日や十日くらいで処分されるというのは、やはり理解できない問題じゃないかと思うのです。どうなんですか、この辺は。
  236. 有馬元治

    ○有馬政府委員 安定所が使用者の立場ではなくて、職業あっせん一この場合は日々の職業をあっせんしている場合でございます。したがって、相談をしたいという出頭の連絡をいたしまして十日もたっても来ないということでは、やはり紹介を停止する以外にない。これはいままでもそういう措置はとっておるわけでございます。今回も従来の例に従ってやっておるわけでございます。
  237. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 どうも、法律の上からいけば確かにそうだと思うのですけれども、やはりもっと長い期間相談の期間を置くべきではないかと思うのです。というのは、働いている人は、事情はどうあれ、人間ですから、そういう立場で法律だけをたてにとらないで、もっと長い期間相談の時期を置くべきである。  そこで、実際はどうなんですか。ずっと前からそういう話がなされておったのか、正式には何月何日にはがきが出されてそうなったということなのか、そういう実情はつかんでありますか。
  238. 有馬元治

    ○有馬政府委員 これは、この失対適格者の中で、民間、公共に常時働いておる、あるいは体力的にも向くという適格者は、安定所は十分個人別に承知しておるわけでございます。したがいまして、今度の場合も、鉱害復旧の、しかも田面復旧工事でございまして、田植えの関係等からいいましても、この時期に復旧をしなければ間に合わない、こういうような事情も一方にございまして、本人たちは十分知っておるわけでございますが、いろいろな事情から相談に出てこないという状態でございますので、やむを得ず紹介停止処分をしたという事情でございます。
  239. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 時間が来ましたので、最後に労働大臣に、この実態あるいは真相をより的確に把握されまして、一日も早く善処し、温情ある手を差し伸べていただきたい。強い要望をして終わります。
  240. 田中正巳

  241. 田原春次

    田原分科員 私は質問が二つありますが、そのうちの第一は、いま大橋委員から質問されております福岡県田川職業安定所と全日自労の地元の分会とのごたごたの問題について、もう少し尋ねてみたいと思います。  大橋委員の質問である程度わかってきましたが、第一は法規に基づいたことでもなく、慣習に基づいたことでもないといいますけれども、実例土地元の職安と地元の全日自労の分会の幹部との間には、あすは何名出すとか、来週は何名出すとかいう話し合いをしているわけですね。本件に限りそれがないということが、自労側の不満の原因だったろうと思います。何ゆえにいきなりはがきでもって個人の出頭を求めたか。やはり遠いところでなく地元に自労の分会と事務所がありますから、だれか係員を出して、今度はこういう方針になるので、おまえのほうから何名出してくれぬかというような交渉ができなかったのか、これをまず第一にお尋ねいたします。
  242. 上原誠之輔

    ○上原説明員 田川の労働紹介の問題につきましては、先ほどから局長が申し上げておるとおりでございますが、今回の場合につきましても、求人を受けましたあと十分組合のほうとも話をし、それから職業相談に応じた者につきましては、求人条件等につきまして話し合いをして、そしてすでに二百五十名の者につきましては紹介をされまして、公共事業に就労しているわけでありまして、あとの一部の団体におきまして、公共事業に紹介されるということが失対の首切りにつながるということで、十ぱ一からげに反対をして職業相談にも応じない、こういう事態にあるわけでございます。私ども十分話をする態勢にございますのに、そういうことで職業相談に意識的に出てみえないというのが、率直に申し上げまして現状でございます。単に職業相談においでにならないということだけでなくて、このことを不満として、安定所に多数をもって押しかけて騒ぐというような事態もあるわけでございます。そういうことでございまして、私どもとしてはできるだけ早くこの問題が解決することを期待しておるわけであります。
  243. 田原春次

    田原分科員 多数の者が安定所に押しかけたというのも、やはり不安があって行ったことと思うのです。だから、そういう場合でもじっくりかまえて、その多数の押しかけました中から代表者を三人なり五人なり選んで事情を話すという手があると思うのですが、何ゆえにそれをやられなかったのですか。
  244. 上原誠之輔

    ○上原説明員 実は具体的に申し上げますと、この求人を受けまして、相談に来るようにということで出頭の連絡をいたしましたけれども、それに応じておいでにならない。そこで私どもといたしましては、就労者に周知させるべく現場に参りまして、その趣旨の徹底をはかろうという措置も講じたのでございますが、これすらも妨害にあうというような事態にあるわけでございます。私どもといたしましては、できるだけ個々人につきまして相談をした上で紹介をしていくという態勢を現在もとっておるわけでございます。そういう態勢にできるだけ早い機会に応じていただいて、急がれております鉱害復旧事業ができるだけ早く完成するようにいたしたいと願っておるわけでございます。
  245. 田原春次

    田原分科員 この問題が起こりましてから後に、組合側からいろいろな報告書、刷りもの等のごときが出されておりまして、おそらく労働省にも届いておることと思いますが、その中にこういうことが出ておるのです。  第一は、公共事業に移った場合、組合の加入の自由があるかどうか。第二点は、先ほど大橋委員が地場賃金と言いましたけれども、職安さんでは九百数十円であるけれども、地場では現に千数百円になっておるから、その地場賃金並みに払っておるかどうか、賃金増額の要求ですね。そのほか三点くらい、合計五カ条くらい要望を出しておるようでありますが、これに対する親切なる回答なきままに二百数十名の就労停止処分がきまったというように出ておるのです。これがどの程度事実であるか、また事実であるとすればこれに対して職安局のほうではどういう態度をとられるか、この際明瞭にしてもらいたいと思います。
  246. 上原誠之輔

    ○上原説明員 今回の求人に関します労働条件、いわゆる賃金の問題でございますが、これは地場賃金よりも低いというような御意見でございますが、そういうことはないと私ども考えておるのでございます。先ほど申し上げましたように、失対事業に就労した場合に支払われます賃金よりもかなり高いのでございます。しかも、その額に達しますまでには安定所長もかなり苦労をしてそこまでの賃金を実現したわけであります。ただ組合の方々が言っておられますのに、たとえば緊就事業と比べて低いじゃないか、こういうお話があるわけでございます。この緊就事業もあるいは特失事業も実は公共事業の一種でございます。民間のこの公共事業を請け負います企業体がそれぞれの経営能力等に従いまして賃金をきめていくという筋合いのものでございまして、厳密に公共事業であるからといって実際の賃金が統一されるという筋合いのものでもないわけでございます。しかし、一般の同じような仕事に従事いたします場合と、現実に支払われます賃金につきまして非常にアンバランスがあるという事態も、実はこれは問題だと思うわけでございまして、その点のバランスの調整につきまして、役所の立場としては限界があるわけでございます。しかし、何もその労働条件向上につきまして安定所として手をこまねいているわけではございませんで、今回の場合も努力をいたしておりますし、今後とも十分努力をしていきたい、こういう態度でございます。
  247. 田原春次

    田原分科員 先ほど二つ質問したのでありますが、一つは、公共事業に移った後も労働組合参加の自由をあらかじめ保障するかどうかという点については御答弁がないのであります。
  248. 上原誠之輔

    ○上原説明員 公共事業に就労いたします場合に、どういう就労の形態になりますか、いずれにしろ特定の公共事業を実施いたします請け負い業者に雇われるわけでございますから、その関係におきまして組合の結成の自由は当然あるわけでございます。
  249. 田原春次

    田原分科員 新組合結成という問題でなくて、従来入っておった組合のままで公共土木事業にかわり得るか、身分は従来の失対関係の組合員として、転職なり配置転換は新しくやることができるかという点だと思うのですがね。
  250. 上原誠之輔

    ○上原説明員 全日自労に加入することも自由だと思います。
  251. 田原春次

    田原分科員 いずれにいたしましても、全国まれに見るケースでございまして、私ども地元であるためこうやってはがきで千枚ぐらい陳情が来ているのです。詳細はいずれ社会労働委員会等でじっくりやってもらわなければならぬと思いますけれども、この機会に、前の大橋分科員からも御質問がありましたように、現地の調査、いま職安局長のお話を聞きますと十五日に行かれるそうでありますが、一応行ったけれどもだめだというような形式的なことでなくて、じっくりかまえまして、二百数十名の就労停止通知というのは非常に大きな問題でありますから、特別に悪質な者でない限りは、やはり就労を継続せしめる。そして誠実に他の仕事に就労する日まで待ってもらわなければならぬと思うのです。今度のように同一市内の公共土木事業に二百数十名回す、それが組合との話がつかないためにいきなり就労停止をやることは荒療治過ぎると思うのです。そういうことはないようにしてもらいたいと思うのです。職業安定所としては、やはりじっくりかまえて、失業者の立場から生活の問題を見てやってもらいたいと思います。今後この問題の処置について、どういうふうにおやりになるか、労働大臣対策を聞かしてもらいたいと思います。
  252. 小川平二

    小川国務大臣 先ほど来政府委員からお耳に入れましたように、就職の相談にも応じてもらえないということは、その人々がみずから自分の手で就労、就職の機会を狭めているものと考えるほかない、かような前提に立ってこの問題に臨んでおるわけでございますが、そう申しましてもこれは理屈の問題でございます。いまいろいろ御高教もあったことでございますから、適当な機会に人も派遣いたしますし、仰せのような趣旨で円満な解決に努力いたしたいと思っております。
  253. 田原春次

    田原分科員 現実、二百数十名が、いろいろないきさつ、交渉の関係等で、あるいは不安を持ちまして応じなかった点もあるかもしれませんけれども、真意はそうでないということを理解させ、少なくとも四十五歳以下ぐらいの転職、配置転換可能な労働力を持っておる者をあらためて話し合いの上採用するなり何かきっぱりしないことには、首の切りっぱなしというようなかっこうでおくことはよろしくないと思いますから、そういうように善処されることを希望しておきます。次に、第二の質問でありますが、それは同和対策に対する質問であります。  まず、大臣にお尋ねいたしますが、部落とはどういうものか、部落の定義についてお考えがあればお示しを願いたいと思います。
  254. 小川平二

    小川国務大臣 非常にむずかしい御質問でございまして、私もまだ勉強が足りませんけれども、これは非常に長い歴史的な社会的な原因を持つ問題だと存じます。一言にして部落とは何ぞやと仰せられましても、ちょっとこの場で的確な表現が見当たらないわけでございます。また、非常に微妙な問題でもございますから、これはいいかげんなことを申し上げては相すみません。ひとつ御容赦いただきたいと思います。
  255. 田原春次

    田原分科員 それでは私のほうで勉強しました著書に基づいて申し上げます。東京大学文学部の故久米邦武博士の著書、それから京都大学の歴史のほうの主任教授をやられました故喜多貞吉先生の著書、これらによりますと、今日いわゆる部落とは、封建時代における軍事上の落後者だといっております。したがって問題は、封建時代に軍事上起こったことであるということになるわけであります。ある豪族と他の豪族との戦いで、負けたほうの豪族についておった者が、負けるとともにいまでいう捕虜になり、そして人間以下の扱いを受けたのが始まりらしい。この定説については学界において大体間違いないとされている。したがって人種が違うのじゃない。白色人種と黒色人種というような人種の違いとか、あるいはラテン民族とゲルマン民族というように民族の違いでもない。同一日本人であって、封建時代において、要するに負けたほうについておったということなんですね。この軍事上の落後者が経済上の落後者となり、社会上の落後者となったということは学界の通説であります。中には、部落民は朝鮮民族の子孫であるという人もおりますけれども、これも書物によりますと、朝鮮民族で日本に帰化した人は全人口の三五%というのですから約三千五百万であります。部落民は三%というのですから三百万でありまして、それは違うと思うのです。自由民主党の大臣、代議士の中にも、風貌、骨格から見まして、その出身地から見まして、明らかに朝鮮民族の御子孫であられる方が相当おられます。現閣僚にもおります。それはしかし何も恥ずかしいことでなくて、ちょっと朝鮮民族は文化が進んでおって、貴族がたくさん来たし、それからせともの工だとかいうものも来たし、技術的に日本を指導した時代があるのであります。明治、大正時代に至って、朝鮮の政治上のまずさあるいはいろいろな抗争から日本についておったりしたのでありますが、これは一視同仁、尊敬すべき民族として扱ってきたのであります。したがって、部落民がよしんば朝鮮民族の子孫であっても、それがゆえに差別することはできない。学者は先ほど申しましたように一定の説を立てております。したがって、これを現実に労働問題にいたしますと、就職する場合に身元調べをやりまして、部落出身の娘や青年は雇わない。一たん雇っておっても、何か理由をつけて断わるというところがひんぴんとしてあるのです。奈良県におきましても、京都におきましても、大阪におきましても。高等学校を出て、あるデパートに働いておる、就職した、間もなく首になった、悲観して自殺した例もあるのです。ですから労働省として、いやしくも表面、裏面を問わず、部落出身なるがゆえに就労の機会を不当に圧迫するということがないようにしなければならぬ。小川大臣の郷里にも部落がありますが、あなたの決意をこの際明らかにしておいてもらいたいと思って質問を申し上げたわけであります。
  256. 小川平二

    小川国務大臣 同和地区出身の方々が、いまお話しのように、まあ経済的にも社会的にもいろいろハンディキャップをになわされておる、まことにこれは遺憾なことだと存じます。労働省といたしましては従前からいろいろの施策をやっておるわけでありまして、中身のことをこまかく申し上げるまでもなく、御承知のことと存じます。いま就職のお話もございましたが、求人側、雇う側に対しましては、そういう根拠のない偏見、差別感を排除するための指導もやっておるわけでございます。制度といたしましては、たとえば就職促進措置を受ける場合に、同和地区出身の方には年齢の制限をしないというようなこともやっております。あるいはまた、就職いたしました場合には雇用促進事業団が身元保証をする。まだまだ不十分と存じますけれども、相当きめのこまかい施策を講じて今日に至っておるわけでございます。この問題につきましては、御承知の協議会で御審議を願っておるわけであります。その結論を見ました上で、一そうこの対策充実していかなければならない、こう考えております。
  257. 田原春次

    田原分科員 同和問題の解決については、同和対策審議会というのが数年前に設けられておりまして、かなり綿密に調査もし、討議もして、その結果解決には法律的な措置をとるべきものである、仮の名を同和対策措置法といっているものをつくるべきだと結論が出ておるわけです。そして、佐藤総理大臣はふしぎにも——ふしぎというか当然か知りませんが、これはあたりまえであります、最大限に考慮しますと言うし、それが今度厚生省や、費用の点で大蔵省になりますと、少しぼけてくるわけです。今度の、いま大臣がお話しになりました同和対策協議会というのは、同和対策審議会が答申を終わった後に新たにまた総理府に設けられた機関でありまして、結論が出ておるというんですね。したがって、今度の国会で法律的な措置をして、それによってできるだけ問題の解決を法制、行政、それから費用の点においてやらせようというのでありますから、これにはまっ先に労働省としては賛成してもらって、むしろほかの省と手を合わせまして、今会期内における成立を期すべきものであると思うのでありますが、お考えはどうですか。
  258. 小川平二

    小川国務大臣 これから先も従来の施策をますます拡充していかなければなりませんし、またこれに加えてさらに効果があがると思われることがありますれば、これにつけ加えて実行していかなければなりません、この方針は当然のことでございます。  同和対策はもちろん労働省だけでなく、政府の各省に関連のある問題でございますが、いまおことばの出ております立法措置の問題につきましては、はたしてこの際立法をすることがそれらの施策を進めていく上において効果があるかどうか、逆に法律をつくらなければ対策が円滑に進めていかれないものだろうかどうか、そういう点について政府としてはまだ結論を得ておらないわけでございます。したがいまして、予算委員会等におきまして同様な趣旨の御質問も出ておりますけれども、これに対して必ず立法をいたしますという答弁は政府として申し上げておらないわけでございます。
  259. 田原春次

    田原分科員 総理府の関係当局にお尋ねいたします。総理府としては十分の準備の後に法制化する用意をしておるという話でありますが、いまの大臣答弁からしますと、各省ともまだ歩調がそろってないというのでありますが、そうするとこれは出しませんかどうか、そういうことについての決定はしてますか、そういうことについて伺います。
  260. 宮崎隆夫

    ○宮崎説明員 お答えいたします。  ただいまの法的措置に関する問題につきましては、総理府の附属機関でございます同和対策協議会において現在御検討をいただいております。できる限り早期に結論を得るように、総理府といたしましては繰り返し審議をお急ぎいただきますように御要請申し上げてきておりますが、ただいままでのところまだ最終的な成案を得られていないような状態でございます。御答申をいただきましてから、総理府はもちろん、政府各省といたしましては十分にこれを検討さしていただきまして、善処さしていただきたいと思っております。
  261. 田原春次

    田原分科員 それじゃ大臣にお尋ねしますが、その法制化することの必ずしも賛成できないという理由ですね、どの点が難関であるか。法制化することによって地方公共団体等も施設予算においてもやりやすくなると思うのです。それを法制化せよという要求があるにもかかわらず政府が渋ったということは、従来積極的にやっておるところまでも二の足を踏むと思うのです。ですから、法制化する、こうきまった以上は、どういう方法にするかということについての方法論の研究じゃなかろうかと思うのですが、大臣の御見解をお尋ねいたします。
  262. 小川平二

    小川国務大臣 立法につきまして、消極的な考え方を持っておるというわけではないのであります。ただ協議会で目下御審議を願っておる段階でありますから、その結論を得た上で考えてみたい、こう申し上げておるわけでございます。
  263. 田原春次

    田原分科員 なるべく早目に結論が出るように要望いたしまして、私の質問を終わります。
  264. 田中正巳

  265. 田代文久

    田代分科員 労働大臣にお尋ねしたいのでありますが、現在の労働者の生活実態ですね、たとえば公務員労働者の暮らしの問題ですが、厚生省のある職員で昨年の九月に六千三百五円の生活保護費をもらっておるんですね。そういう事実。それから運輸省の職員が、三万四千六百十七名の中で七千八百六十一名が健康保険の薬代の一部負担存免除されておる。そういう措置をとって、薬代の免除を受けておる。また、陸運局では全員の三、九・六%、三分の一以上がこれに該当するような処置を受けておるというような事実。それからまた、昨年人事院勧告がございまして、三千五百二十円の平均アップということになりましたけれども、しかしこり内容たるや——これは大臣なんかは二万円ぐらい上がったと思うのです。あるいはそれ以上でしょう。総理大臣なんか十五万円ぐらい上がっていますから。ところが八百円とか千円くらいしか上がっていない。ですから三千数百円の平均アップに満たない、上がったか上がらなかったかわからないような人たちが全体の公務員の六割もそれ以上もおる、こういう実態です。  先ほど申しましたように、少なくとも厚生省の公務員が生活保護を受けねばならない、それに準ずるような多数の公務員がおるというような実態は、私どもとしましてはゆゆしき問題であるというふうに考えるわけでございますが、これは労働省、したがって労働大臣としましては、申し上げるまでもなく、日本の労働者、勤労者全体の暮らしなり生活条件向上を念願し、そういうふうにする義務があることは明確であるわけであります。したがって、こういう労働者の生活の実態に対して担当の労働大臣はどのように考えておられるか、お尋ねしたいと思います。
  266. 小川平二

    小川国務大臣 公務員の給与は、御承知のように人事院の勧告に基づきまして、一口に申しますれば民間賃金に追随して決定されておるわけでございます。いまお話の出ております生活保護の問題、これは家族構成のいかんによりましては御指摘のような事例の人も出てくる場合があると存じます。もちろん私ども労政の当局といたしまして、公務員をも含む勤労者の賃金改善ということには強い関心を持っておるわけで、これから先もそういう方向で努力をしてまいりたいと考えております。
  267. 田代文久

    田代分科員 はっきり労働者の暮らしなり民主的な権利なりを十分保護し、それを前進きせる責任を果たしたいという御答弁であったので、これは非常に当然なことだと私は思うわけです。  そういたしますと、ことしの国家予算は総合予算主義になって、いままでにない画期的な予算の組み方になっております。この総合予算の組み方そのものは、大体公務員の——大きくは全労働者と申しますか、とりあえずは公務員が直接関係するわけなんですけれども、公務員の利益あるいは生活の向上に十分役立つ、またその方向を目ざした予算の組み方であろうかどうかということをお尋ねしたいと思います。
  268. 小川平二

    小川国務大臣 総合予算主義をとりましたのは、年度の途中で大きな補正財源を求めなければならない、そういう困難を回避したいという趣旨であることは、本会議その他でしばしば政府の答弁がなされておるところであります。労働省といたしましては、毎年そういう困難に逢着いたしますために勧告の実施が円満にいかない、そのことが労使の不信感を助長するというようなことも出てまいりまするので、今回の措置をそういう意味で歓迎いたしておるわけであります。これによって公務員の給与を規制しようとか、そういう考えを持っておらないことは、これまた本会議その他で繰り返し説明がなされておるところであります。
  269. 田代文久

    田代分科員 規制とかなんとか、そういうことをいまお尋ねしているわけではありません。そういう点では御心配要りません。  とにかくそういう総合予算主義をとった。これは画期的であるということを総理なんかも言っておりますし、私たちもこれはまさに画期的であると思うのです。それをいま勧告との関係でおっしゃいましたけれども、私がいまお尋ねしておるのは、こういう予算の組み方による決定が、いま言いますように公務員の利益になるのかならぬのか、それを端的にひとつ御答弁ください。賛成か反対か。
  270. 小川平二

    小川国務大臣 いま申しましたような意味において公務員の利益になると期待をいたしておるわけであります。
  271. 田代文久

    田代分科員 つまり総合予算主義というのは公務員の利益になるという確信を労働大臣は持っておられるということですね。——はい、わかりました。  そういたしますと、その本年度の総合予算の中に公務員の給料を、これは当然昇給しなければなりませんが、大体どれくらい見ておられます。
  272. 小川平二

    小川国務大臣 これは本年人事院の勧告が、厳密に申しますればなされるかなされないかもわからないわけです。いかなる趣旨の勧告がなされるかもはっきりいたしておりませんから、厳格にそれに対応する予備費を組むというわけにはまいらない、このように考えておるわけでございます。
  273. 田代文久

    田代分科員 そうしますと、あなたのお話は全くこれは一般論で、現在の日本の経済なりあるいは生活なり、社会の実態というものがあるわけですね。そこからとにかく予算を組むか組まぬかということを見なければ——一般的に人事院が組むとか組まぬとか、そういうことはありますよ。これは必ずしも毎年組まなければならぬということもないですが、しかし、なお申しますと、特に昨年の下半期から非常に物価の上昇が急カーブを描いていることは、これは天下周知のことなんですね。そういう事態の中で、当然第一に、あなたがお話しになったように労働者の暮らしを心配し、その暮らし向きがよくなるという前提に立たれるならば、物価はどんどん上がっている、そしてまた、家族構成をおっしゃいましたけれども、公務員の中に生活保護をもらわなければ暮らしが立たない者があるというようなことは、これは実際政府の責任ですよ。だから、構成とかなんとかで見るべき性質のものではないと私は思う。いずれにいたしましても、具体的にそういう状態にある日本の現在の実情の中で、労働省、政府は公務員の給料のアップを全然考えないのかどうかという問題です。
  274. 小川平二

    小川国務大臣 公務員の給与は人事院の勧告を待って決定されるのが今日のたてまえでございます。政府が自分のイニシアチブで公務員の給与を改定いたしておるわけではございません。したがって、私どもといたしましては、第三者機関である人事院の勧告を待って対処していきたい、こう申し上げるほかはないと存じます。
  275. 田代文久

    田代分科員 それも非常に無責任なお話じゃないかと思うのです。それは、機関としては人事院がそういうことをとにかく勧告するという制度になっております。しかし政治全体としましては、現在の佐藤内閣は全責任を負っておるわけでございます。したがって、こういう事態の中で労働者の暮らしが一体どうなるだろうか、賃金はどうなるだろうか、これをどういう方向にしなければならないということは全然お考えにならないなら、これはあまりに無責任ですね。
  276. 小川平二

    小川国務大臣 私の申し上げましたことから政府が公務員の賃金に何らの関心を持っておらないという結論は出てこないはずでございます。私どもは、現在の制度を尊重いたしまして、勧告が出たらその趣旨に沿うべく全力を傾ける、従来やっておりましたように、今後もそうやっていく、こういうことを申しておるにすぎないのでございます。どうぞ御了承願いたいと思います。
  277. 田代文久

    田代分科員 そうしますと、ことしの予算をお組みになるときに労働省としてもそういう立場から、労働者の暮らしなり生活、賃金を十分配慮するという立場から、全然無手で人事院の勧告が出たらそのとき勝負でいこうかというようなことでおのみになったんじゃないと思うのです。労働省としてはそういう事情の発展の中で大体何億何千何百何円というようなことは、これはもちろんできませんけれども、おおよそこれくらいのことは予算として組んでおかなければならぬじゃないか、こういうことは予算折衝の中で言っておかなければならぬじゃないかというようなことがなければ、これは意味がないと思うのです。それはあったわけでしょう。
  278. 小川平二

    小川国務大臣 これは、勧告がどのような趣旨の勧告が行なわれるか、あらかじめ予想をすることはできないわけでございます。したがって、これに対応する予備費が厳密にどの程度でなければならないかということを判定することはできませんので、これは財務当局の良識に私どもは信頼いたしておるわけでございます。
  279. 田代文久

    田代分科員 そういたしますと、ことしの予算の中には、実際上においては予備費になりますけれども、公務員のアップの分というものを予想する部分というものはないということになりますか、大体あるということになりますか。
  280. 小川平二

    小川国務大臣 これは勧告に備えて予備費に組み入れておるということは、もう繰り返し正式に言明がなされておるところでございます。
  281. 田代文久

    田代分科員 勧告に備えて予備費の中に公務員の給与分が含まれておるという御答弁で、当然そうだと思うのですが、おおよそそれがどれくらいかということをお尋ねしたいのです。
  282. 小川平二

    小川国務大臣 これは予備費でございますから、予備費の性格上その中にふすまや仕切りがあるわけではないのでございます。予備費は予備費として全体として計上されておるわけでございます。
  283. 田代文久

    田代分科員 予備費の中にふすまや仕切りは厳密にはないということは一般的にいわれております。しかし、少なくとも昨年度予備費が七百億で、ことしは五百億円プラスの千二百億円というちゃんとした大きなワクがあるんです。とにかくことしワクは五百億円ふえたとか、千二百億円で押えなければならなかったということについては、これは一つ一つ予備費の項目、あるいは災害がどうとかいうこともございましょうが、それはあらかじめ雨がどれだけ降るか、ひでりになるかということはわかりませんけれども、しかしそれにしろ、数年間における、あるいは十数年間における平均というものから見て、大体どれくらい見ておかなければいざというときにぐあいが悪くなる。ましてや公務員の給与というものは基本的なベースがあって、これは天災地変とは性質が違うわけですね。物価なり生計費なり、あるいは民間賃金というものがずっと現実にあるわけですから、その中で考慮されなければなりませんから、千二百億円というワクがある、ことしはあらためて五百億円というものをプラスしたという関係を考えるならば、当然その中で幾らくらいを見なければならぬということがなければ私は政治家ではない、このような気がいたしますが、どうですか。
  284. 小川平二

    小川国務大臣 同じことを繰り返すようで恐縮でございますが、先ほど来申し上げましたとおりでございまして、何%アップという勧告が出るのか予見することはできないわけでございますから、したがって、一口に申せばこれは腰だめの作業になると存じます。私どもといたしましては、公務員を含めて勤労者の給与には強い関心を持っておりますから、そのことはもとより財務当局にも強くいろいろな機会に要望いたしております。それから先のことは、問題が予備費の問題でございますので、大蔵当局の良識に信頼をいたしておるほかはないのでございます。
  285. 田代文久

    田代分科員 腰だめとおっしゃいましたが、非常に無責任だと思うのです。大体大臣の腹にはあるのじゃないですか。なければこれはうそだと思う。おおよそ何百億くらいいかなければこれはいかぬ。これはほんとうに補正を組むということになれば、それはあなたのようなそういう御答弁も考えられないでもない、補正を組めば済みますから。しかし、ことしは総予算主義でいく、全体のワクをはっきりきめておるということですから、その腹づもりがはっきりなければそういうことは組めないはずです。ですから私は、そういう点では非常に無責任な御答弁のように思うのですが、大体こういうことではないかと思うのですが、つまり昨年の補正は——時間がなんですからめんどうくさいことはあれしますが、全体が二千五百二十五億補正されましたね。ところがその中に食管費あるいは昨年特に補正しなければならなかった交通関係の費用、こういうものを差し引きますと大体千二百億程度になるのですね。そうするとことしの予備費も大体千二百億円で非常に似ているのです。そうすると、ことしあらためて五百億プラスしたということは、去年の予備費の七百億円の中には公務員のアップということは全然入っておりませんでしたから、これは補正で組まれて大体五百四十四億くらいがアップ分として補正されております。そういう点から見て——ほんとうの腹を割って話そうじゃないですか、これは大体五百億程度予算をお組みになっておるのじゃないか、このように考えられる。それからこれはいろいろ理論づける根拠があると思うのですが、宮澤経済企画庁長官ですか、予算編成の前後、昨年の十月にいわゆる宮澤さんのお考えを話されて、そうして予算は総予算主義でいくべきだ、そうすると公務員の給料というものは物価の上がった比率だけをアップするということだけでやるべきだというような構想を発表されましたね。そうすると私それを計算してみましたら、一般職あるいは特別職の公務員全体の給料をプラスして、そしていわゆる皆さんが言っておった、したがってことし考えられておる四・八%の物価高の見込みを掛けてみますと、大体これは五百四億、いわゆる五百億見当になります。そうすると、宮澤さんが考えておった、そういう経済担当の大臣の考えておった五百億というのと大体一致する。去年のあれとも一致する。これは御承知のように昨年度の予備費に新しくことしプラスの五百億という点をプラスしてますね。  そういう点から見まして、大体政府、労働大臣の腹づもりでは少なくとも五百億見当は——これはこの予備費、補正予算は組まないというたてまえなんだから、その中での千二百億の中の少なくとも五百億見当は、これは障子があろうがなかろうが、考えておかなければならぬ、予算折衝のときにそういう線をお出しになったのと違いますか。それは要らぬことですが、大体五百億程度は必要だというふうにお考えになりませんか。
  286. 小川平二

    小川国務大臣 私の考えは先ほど来るる申し上げましたから、御理解いただけたかと存じます。いずれにいたしましても、これから春闘で民間賃金の相場がつくられる、どの程度になるか、これは予想できませんし、災害にいたしましても幸いにこれが発生せずに済むのか、発生した場合にどの程度の規模になるのか、これもいまから予測するわけにはまいりません。非常にたくさん不可知の要素があるわけであります。したがいまして、私どもといたしましては財務当局の良識に信頼するほかはないのでございますが、この問題は私の所管の問題でございません。もちろんこのことに重大な関心は持っておりますけれども、これ以上こまかい点でございましたら、どうぞ総理府なり大蔵省から参っておるようでございますから、そちらのほうにお尋ねいただければ幸いでございます。
  287. 田代文久

    田代分科員 時間がありませんから簡単に、大体どれくらいあれを見込まれておるか、ひとつ教えてください。
  288. 津吉伊定

    ○津吉説明員 お答えいたします。  四十二年度に比較いたしますと、先生おっしゃいますように五百億円増というかっこうになります。しかし千二百億円というものをわれわれは考慮いたしたのでありまして、その考え方といいますのは、過去数年における予備費使用あるいは年度中途における追加需要につきまして補正予算によってまかないをいたしました給与改定、災害、それから事務費の精算補足というような費目を総合いたしまして勘案いたしましたが、先ほど来労働大臣もおっしゃっておりますように予備費でございますので、その中で幾らがどの事項に当たるという計算はいたしておりません。
  289. 田代文久

    田代分科員 そういたしますと、大体五百億円がそれに上積みになるだろうという見当になるのですね。
  290. 津吉伊定

    ○津吉説明員 いま申し上げましたようにそういう見当ではございません。予備費の使用につきましては、先ほど来労働大臣もおっしゃっておりますように、その中に障子、仕切りがあるわけではございません。ワクといいますか、ことばは悪いのですけれども、年度途中における数年来の追加需要のまかないというものが千億あるいは千二、三百億というようなところでありますので、それを平均的に見ましたのが四十三年度の予備費の額でございます。
  291. 田代文久

    田代分科員 どうも実際に国民に誠実じゃないと思うのです。とにかくそういたしますと、ことしのこういう経済的、社会的な事情の中で、労働省としては、あるいは大蔵省あるいは総理府などとしては、人事院の勧告はあるかないかわからぬというようなお話がございましたが、そういった一般論では問題にならないのです。政治家の話ではないのですよ。そういうことではなくて、こういう事情の中で、大体人事院勧告は必至の情勢なのかそうでないのか、これをお答え願いたいと思うのです。
  292. 栗山廉平

    ○栗山政府委員 先の問題でございますので何とも申し上げられないと存じます。
  293. 田代文久

    田代分科員 冗談じゃないですよ。あなたたちは何の政治をやっておるのです。物価がじゃんじゃん上がっておるのですよ。働く労働者はこんな物価の上がる中で、自分たちの暮らしはどうなるだろうか——さっき言ったように、公務員が生活保護をもらうというような実態になっているんですよ。ですから、当然そういうことで、政府であるならば、だれが何と言われようが言われまいが、何はともあれ、ことしはかりに無理算段をしても人事院勧告を一刻も早くやって、そうして安定きせるという立場に立たなければならぬじゃないですか。労働大臣が先ほど何て言ったんです。労働者の暮らし、国民の繁栄、それに対して責任を負うとおっしゃったじゃないですか。そういうでたらめな答弁はやめてもらいましょう。そういう責任が果たせないなら、私は国民の代表としてはっきり申しますが、やめてもらわなければならない。  ことしは人事院勧告は必至であるということを私は、はっきり申し上げます。それは私の独断で言っておるんじゃないですよ。これは数字をあげますけれども、昨年の人事院勧告の基準ですね、これは時間がないから申し上げません。いわゆる民間労賃から物価指数から生計費、それを基礎にして昨年約七・九%のアップを勧告しておる。ことしの民間労賃は、まだ春闘できまっていないとおっしゃるけれども、もうすでにどんどん上がっておるじゃないですか。昨年以上にもうぼんと上がっておるじゃないですか。物価はどうです。物価はすでに政府自身が四・五%から四・八%上がるとはっきり見込んでおる。これは大臣も知っておられるわけでしょう。しかも、その政府が見込んでおる四・八%の物価の値上がりの中には、実に私たちの納得のできないからくりがあるのですよ。たとえば、この中の家賃などのアップ分というのはわずか二・九九%しか上がらない、三%しか上がらないというような数字のからくりの中でも四・八%の値上がりを見ておるのですよ。生計費はどうです。民間賃金が上がることは、これはもう必然ですよ。そういう状態を見て人事院が勧告をするかしないかわからないというようなことは、これは答弁になりますか。政治の責任を果たしておるということが申されますか。国民に対して責任を果たしているということが申されますか。その点、はっきり言ってください。つまりことしのこういう情勢の中では、人事院勧告というのはやるのかやらぬのか。やらぬならやらぬとはっきり言っていただいていいんですよ。
  294. 栗山廉平

    ○栗山政府委員 御承知のように、人事院の勧告は人事院が自主的に非常に詳しい調査をされました上で判断をして決定されるわけでございまして、われわれといたしましては、この際断定的にどうこうと申し上げることはできないわけでございます。
  295. 田代文久

    田代分科員 私は断定できるかというような、そういうことは一言も言わないでしょう。そういう非科学的なことをいま言うはずはないのです。しかし、ずっといろいろの要因を基礎として考えて、当然去年よりもはるかに上がるのだから、したがって人事院勧告は必至だという方向は出ているじゃないかということですね。これを否定するかどうかという問題です。  なお申しますと、昨年の人事院勧告の基礎数字、これは大蔵省の方が見えておるからこれは御存じでしょう。そういう人事院が出した要因を基礎にして、そうしてベースアップの要因を基礎にして出したその数字というやつが、これが八百九十億円、約九百億円の試算をやっておりますね。これはここにはっきり書類が出ております。そういたしますならば、こういう物価、生計費あるいは民間賃金が現在すでに上がっておるし、また、ますます上がるというような状態の中で、ことしの公務員のアップに対する上昇分というものは、昨年すら大蔵省の試算で約九百億円なんですから、千億円をこすという必然性を持っているということを認めざるを得ないんじゃないですか。労働大臣、どうですか。
  296. 小川平二

    小川国務大臣 私の申し上げたことと関連があるようでございますから、御了解をいただきたいと思います。私の申し上げましたのは、非常に厳密に理論的にものごとを考えてまいります場合には、これは先のことでございますから、可能性の問題としては人事院が勧告をしないということもあり得ると言わざるを得ないと思います。そういう趣旨で、一つは、これは権限が人事院に属しておるのでございますから、それを尊重する意味からもあのように申し上げたわけです。  確率と申しますか、見通しの問題になりますれば、常識的にはおそらく勧告はなされるでございましょう。必至というおことばをお使いでございますが、あるいはそういうことばをお使いになってもよろしいと思いますが、そういう意味でございますから、どうぞ御了承願います。
  297. 田代文久

    田代分科員 非常に回りくどかったが、早くそうおっしゃっていただけばわかるのです。  そこでお尋ねしますが、私が申すように、千億円では間に合わない。だから、現在の千二百億円の予備費なんかではどうしても間に合わない。そうすると、補正予算を組むのか組まぬのか。  もう一つは、勧告が去年並みに出ましても、これを値切る以外にないんです。そういう事態になった場合には、政府としては、したがって労働大臣としては、勤労者の暮らしの立場に立たれるならば、補正予算を組むべしということをやるのか、それとも反対に、とてもそんなに財源なんかないんだから、人事院勧告が出たら値切らなくちゃならないという立場にお立ちになるのか、その点ひとつ御答弁願いたい。
  298. 小川平二

    小川国務大臣 これも本会議、予算委員会等でしばしばただいまの御質疑の御趣旨と同様のことがございまして、政府から何度も答弁がなされているわけで、これはいまから何とも申すわけにいかないのですが、政府は総合予算主義のたてまえをとっております。これは補正予算を組まないという原則でございます。したがいまして、勧告がなされた時点における最大限度の努力を、従来やってまいりましたように今回もいたします。これ以上の答弁はできかねるわけでございます。
  299. 田代文久

    田代分科員 時間が来ておりますから、一言だけお願いをするのですけれども、政府はいろいろお逃げになっております。この総合予算を組むというのは公務員のためでもあるということをはっきりおっしゃいましたけれども、そうではない。いまの答弁そのもので見ましても、総合予算主義というのは、宮澤さんがあれに出しておるとおりです。宮澤構想自体もそうですけれども、賃金統制はやらない、たとえばガイディングライトというのは、日経連なんかいろいろ言っておるが、それにひっかかるからうまくよけて通らなければならないということからいろいろおっしゃいますけれども、実際の総合予算主義は明らかに賃金統制である。それから人事院制度そのものは非常に不満なものであるし、賛成できません。不満であるけれども、労働者の権利を奪った人事院制度すらも、これを制度として尊重せずに影を薄くしてしまっていくという総合予算主義の内容になっておる。それからまた、これは同時に、そういうことで賃金に対して政府がワクをはめるというようなことは、憲法に保障された労働者の基本的な民主的な権利——労働三権というものをますます侵害していく、骨抜きにしていくというような方向なんです。  それから、時間がありませんから申し上げませんけれども、今度最低賃金法をお出しになるようになっております。しかもそれは、以前の業者間協定方式を廃止して十六条方式、つまり職権を基礎にして最低賃金をきめる。現実においても二年前からどんどんやられておるということで、時間があれば大いに追及しなければなりませんけれども、そういうことをやっております。そうしてその中には、金属労働者、機械労働者という、労働者の中でも最も高い賃金をやらなければならない層に対してわずか六百円あるいは四百八十円でありますが、これで金属労働者が食えますか。しかも、それを最低賃金制でワクをはめ、十六条方式でやるというようなことをやっておられる。こういう全体を貫いている現在の政府の労働政策なり考え方というものは、非常にそういう統制の方向に向いていって、労働者にものを言わせぬような方向へ持っていく、低賃金を固定化し、賃金を押えつけていくという危険な方向に進みつつあると言わざるを得ないと思います。あなたたちは若いからあるいは経験がないかもしれませんが、私なんかは、この前の戦争をよく知っていますよ。昭和五、六年ごろ日本があのむちゃな侵略戦争を始めたそのときに、一年間賃金ストップをやりました。いわゆる賃金の押えつけあるいは労働の権利を奪うというようなことをやって、そういうもとにあのむちゃな侵略戦争になったのです。ですから、こういうふうに労働者賃金と暮らしが国の力によってどんどん押えつけられ、民主主義が破壊され、人事院制度そのものが破壊されるというような方向に進みつつあるというような事態は、非常に私は心配なんです。ですから、その点を十分考えて、現在の政府に注意を喚起して、時間が参りましたので私の質問を終わります。
  300. 田中正巳

    田中主査 次回は明十五日午前十時から開会し、自治省所管に関する審査を行なうこととし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時十八分散会