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1968-03-13 第58回国会 衆議院 予算委員会第一分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年三月十三日(水曜日)     午前十時二分開議  出席分科員    主査 森山 欽司君       荒木萬壽夫君    上村千一郎君       小川 半次君    井上  泉君       中澤 茂一君    中谷 鉄也君       武藤 山治君    八木 一男君       山内  広君    山中 吾郎君       岡沢 完治君    塚本 三郎君    兼務 横山 利秋君 兼務 沖本 泰幸君    兼務 山田 太郎君  出席国務大臣         法 務 大 臣 赤間 文三君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      木村 俊夫君  出席政府委員         法務政務次官  進藤 一馬君         人事院事務総局         給与局長    尾崎 朝夷君         法務大臣官房経         理部長     辻 辰三郎君         法務省民事局長 新谷 正夫君         法務省刑事局長 川井 英良君         法務省矯正局長 勝尾 鐐三君         法務省人権擁護         局長      堀内 恒雄君         法務省入国管理         局長      中川  進君         公安調査庁長官 吉河 光貞君         自治省選挙局長 降矢 敬義君  分科員外出席者         総理府特別地域         連絡局参事官  加藤 泰守君         法務省訟務局次         長       上田 明信君         大蔵省主計局給         与課長     津吉 伊定君         大蔵省主計局主         計官      高橋  元君         大蔵省関税局監         視課長     鈴木 邦一君         運輸省航空局飛         行場部長    梶田 久春君         最高裁判所事務         総長      岸  盛一君         最高裁判所事務         総局総務局長  寺田 治郎君         最高裁判所事務         総局経理局長  岩野  徹君         最高裁判所事務         総局民事局長  菅野 啓蔵君         最高裁判所事務         総局刑事局第一         課長      佐々木史朗君         日本国有鉄道常         務理事     今村 義夫君     ————————————— 三月十三日  分科員山内広君及び塚本三郎委員辞任につき、  その補欠として井上泉君及び岡沢完治君が委員  長の指名分科員選任された。 同日  分科員井上泉君及び岡沢完治委員辞任につき、  その補欠として武藤山治君及び塚本三郎君が委  員長指名分科員選任された。 同日  分科員武藤山治委員辞任につき、その補欠と  して中谷鉄也君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員中谷鉄也委員辞任につき、その補欠と  して武部文君が委員長指名分科員選任さ  れた。 同日  分科員武部文委員辞任につき、その補欠とし  て太田一夫君が委員長指名分科員選任さ  れた。 同日  分科員太田一夫委員辞任につき、その補欠と  して八木一男君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員八木一男委員辞任につき、その補欠と  して山内広君が委員長指名分科員選任さ  れた。 同日  第三分科員横山利秋君、第四分科員沖本泰幸君  及び山田太郎君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十三年度一般会計予算裁判所及び法務  省所管      ————◇—————
  2. 上村千一郎

    上村主査代理 これより予算委員会第一分科会を開会いたします。  森山主査が所用のためおくれますので、主査が出席されるまで、指名によりまして、私がその職務を行ないます。  昭和四十三年度一般会計予算中、裁判所及び法務省所管予算を議題とし、質疑に入ります。  この際、念のため申し上げますが、質疑時間につきましては、理事会の協議により、原則として、質疑に対する答弁も含め、本務員一時間、兼務もしくは交代で分科員になられた方は三十分となっております。多数の質疑希望者がございますが、できる限り御希望に沿いたいと存じますので、恐縮ながら、質疑時間を厳守いただき、質疑及び答弁はできる限り簡潔を旨とする等、各位の格別の御協力をお願いいたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。井上泉君。
  3. 井上泉

    井上(泉)分科員 法務大臣日本行政法、刑法あるいは国際的な関係に基づく国際法条約、そういうような取りきめはすべて日本国憲法の精神にのっとって行なわれ、または制定されておるものでなくてはならないとわれわれは思うわけですが、これについての法務大臣見解をまず承っておきたいと思います。
  4. 赤間文三

    赤間国務大臣 私も同じような考えを持っております。
  5. 井上泉

    井上(泉)分科員 そういう考えのもとに立って法が運用され、国際法が定められておる段階において、日本憲法基本的人権というものが大きな柱になっておるわけですが、そういう点から、最近の国際的な政情不安ということが原因となって、各国とも亡命者というものが相当多くあるわけです。そこで、日本国に対する政治的亡命、いわゆる亡命者に対する取り扱い法律上どうなっておるのか、そしてまた、予算上どうなっておるのか、その点の御答弁大臣からお願いしたいと思います。
  6. 赤間文三

    赤間国務大臣 お答えを申し上げます。  亡命に関する法律上の問題でございます。いわゆる政治亡命等に関する法律を制定するかどうかということが問題になっておるのでありますが、国際慣習法上、亡命者の概念が御承知のようにまだ熟していない。わが国憲法には、諸外国憲法のようなこれに関する規定がないように私は考えております。難民条約にもまだわが国は入っていないというような、いろいろ困難な問題がありまするので、この問題は慎重に取り扱っていきたい、かように考えておる次第でございます。
  7. 井上泉

    井上(泉)分科員 この問題を慎重に取り扱うといいましても、現実政治的亡命の申し出があったという場合には、日本国としてはどう取り扱うのですか。
  8. 赤間文三

    赤間国務大臣 わが国政治亡命希望する外国人に対しましては、政治難民に関する庇護に関する国際慣行というものがございまするから、この国際慣行に従って出入国管理令所定手続によりまして、政治的迫害主張十分根拠のあるものであるかどうかというようなことをまず慎重に検討をいたし、そしてまた、人権尊重ということも考え、また、わが国の利益と公安の保持というような点の調和をも考慮した上に、在留を適当と認められる事情のある者については在留を許可する、在留を不適当とする者については、最小限度政治的迫害主張十分根拠ありと認められる場合には、そのような領域には送還をしない、こういうことを大体の基本方針としてこれを取り扱っておるのが現状でございます。
  9. 井上泉

    井上(泉)分科員 たとえば、アメリカ政治政策のためにベトナム戦が激化して、そのベトナムに配属されるアメリカ人が、そういうようなアメリカ政策にはついていけない、こういうようなことから政治的亡命考え日本亡命を願い出たり、あるいは生命の安全を確保するために日本の国に入国をした場合、この場合にはどういうふうな取り扱いをしますか。
  10. 赤間文三

    赤間国務大臣 そういうアメリカの現役の軍人でありますならば、日米協定によりまして、アメリカから引き渡しの要求があればこれを引き渡さなければならぬ、こういうふうな協定になっておると承知をいたしております。
  11. 井上泉

    井上(泉)分科員 政治的亡命に対する国際的な条約というものも取りきめられておるわけですが、そういう点、日本国としては、いわゆる世界に冠たるところの人権尊重憲法を保有した国として、政治的亡命を申し出た者に対する保護措置が十分立法化されていないということは非常に残念に思うわけです。この点については、今日の国際情勢の中において、早急にこういう政治的亡命に対する取り扱いを法的に定め、あるいは国際条約に参加するというようなことをなすべきではないかと思うのですが、この点についての大臣見解をお伺いします。
  12. 赤間文三

    赤間国務大臣 一応ごもっともに考えるのでありますが、先に申し上げましたように、日本には憲法の上にもこれの規定がない。それから難民の問題についてもいろいろの問題がありまするので、現在のところでは、いろいろな条件を個々に調べてみて、ケース・バイ・ケースで処置をしておりまするが、将来につきましては、そういう政治亡命については、とくと研究してみたいという考えを私は持っております。
  13. 井上泉

    井上(泉)分科員 次に、大臣松川事件関係者無罪判決を受けたことは御承知になったと思うのですが、その松川事件被告たちがいま国家賠償裁判を請求をし、行なっておるわけですが、この国家賠償裁判が遅々として進んでいない現実にあるわけです。松川人たちは現在四百円の補償——補償の何したところにいたしましても四百円。これは御承知と思うわけですが、刑事補償法の改正の際に、各党が共同提案附帯決議をつけておるわけです。その附帯決議については、「今回の刑事補償金増額をもってしても十分刑事補償の目的を達し得るや否や疑問である。よって政府は、今後さらに経済情勢の推移にかんがみ冤罪者に対する補償改善をはかるべきである。」という決議がなされておるわけです。そういう決議を尊重する面からも、松川事件人たちが無実のために長い間いかに苦しんでこられたか、しかもそれが無罪となった今日においてもわずか四百円。ほんとうに十何年間の青春を国家権力で牢獄の中に閉じ込められておって、その後の補償がわずか四百円で処理されるということは、これはまことに気の毒だという考え大臣は持たないものかどうか、その点の大臣見解を伺いたい。
  14. 赤間文三

    赤間国務大臣 松川事件の問題につきましては、法務大臣として、なるべく早く損害賠償のほうが片づくことを希望をいたしておるのでございます。  御承知とも思いまするが、昭和三十九年十月の二十七日から昭和四十年六月七日まで五回の準備手続を経た後に、同月第一回の口頭弁論期日から昭和四十二年十月二十日までに八十三回の口頭弁論期日において、捜査官、一般民等を含めまして、延べ約百六十七名の証人調べが行なわれておるように私は聞いております。また、事故の現場等についても、四回の検証が行なわれたように聞いております。なお、取り調べ未了のものが残っておるために損害賠償がおくれておると私は思うのでありますが、なるべく早くこの訴訟が完了するように私は希望をいたしておるのであります。しかし、何ぶんこれは御承知のように裁判所がつかさどるのでございますので、その点御了承を賜わりたいと思います。
  15. 井上泉

    井上(泉)分科員 そのいままでの百六十七人の証人調べ、あるいは何回かの公判等によっても、いかにこの松川事件というものがでっち上げ事件であり、そうしてまた公判当時に出なかった事実まで続々と明らかにされておるわけです。私はきょうここに警察庁の長官も呼んで、この事件の当時の模様についても質問をいたしたいと思いましたけれども、時間がないのでそういうことができないのは非常に残念に思うのですけれども、しかし、やはり法務大臣としても、この松川事件というものが今日これだけの大きな犠牲を事件関係者に与えておるということを、そうしてなるたけ早く裁判が結審、終結をするようにと希望されておるということは、これが単に事裁判所に関する問題であるとはいいましても、やはりこの証人として呼ぶ者はほとんど、今日の国家権力の中でそれぞれ位置を占めておる人たちばかりなんです。やはりそういう人たちの率直な、自分たちの犯したいわゆるでっち上げに対する反省の上に立っての行動がないと、なかなかこの裁判は進捗しないわけです。松川事件そのものがずいぶん長い期間かかって、そうしてやっと無罪ということが立証し確定をし得たわけですが、今度は被告になった国がこれに対する裁判をおくらしておる。こういうことをわれわれよく聞くわけなんですが、そういう点があるということは、これは裁判所がやっておるといいましても、やはり法務大臣としてその辺についての注意を喚起するとかという措置はとり得るのではないかと思うのですが、その点についての御見解を伺いたい。
  16. 赤間文三

    赤間国務大臣 特別に裁判をおくらすとかというような事実は私は承知をいたしておりません。それから裁判所のやりますことにつきましては、私はそれがすみやかに裁決になることは希望をいたしますけれども、特別に法務大臣裁判所につきましていろんなことを申し上げることは差し控えたい、かように私は考えております。
  17. 井上泉

    井上(泉)分科員 いま松川事件被告であった人たちと同じような運命の中で、白鳥事件という事件村上國治さんが網走刑務所拘置されておるということ、これを法務大臣は御存じでしょうか。
  18. 赤間文三

    赤間国務大臣 それは政府委員から答弁させます。
  19. 井上泉

    井上(泉)分科員 私は、知っておるか知っておらぬかということを聞いておる。
  20. 赤間文三

    赤間国務大臣 私はあまりはっきりとは知っておりません。
  21. 川井英良

    川井政府委員 そういう事件はございます。昭和三十二年五月七日に札幌地裁判決がございまして、さらに三十五年五月三十一日に札幌の高裁、三十八年十月十七日に最高裁の判決上告棄却判決が確定いたしまして、懲役二十年という刑を受けまして、目下その刑を受刑中でございます。
  22. 井上泉

    井上(泉)分科員 法務大臣もたくさんの被告のことを知っておれということは無理かもしれない。しかし、こういうふうな政治的な陰謀に対して、大きな国民運動として釈放運動が続けられておることですから、それくらいのことは私は承知をしておってもらいたいと思う。白鳥事件がどういうものであるか、これはぜひ勉強しておいてもらいたいと思います。  ところで、憲法二十五条の「すべて国民は、健康で文化的な最低限度生活を営む権利を有する。」というこの条項は、これは受役者あるいは拘置者にも当てはまることであるのかどうか、その点についての大臣見解を承りたい。
  23. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 矯正局長でございますが、お答え申し上げます。  受刑者といえども人間でございますので、当然最大限の考慮を払わなければならない、このように考えております。
  24. 井上泉

    井上(泉)分科員 それでいま受刑者の副食費一体一日幾らになっておりますか。その受刑者の副食費生活保護による最低生活基準での副食費幾らであるか、そのことをあわせて御答弁願います。
  25. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 受刑者の副食費は、成人につきまして三十三円七十四銭、少年につきましては三十八円六十銭でございます。
  26. 井上泉

    井上(泉)分科員 生活保護最低基準の副食費算定をあなたにお尋ねするのは無理かもしれませんですけれども、この成人の三十三円七十四銭、つまり一日にして三十四円、一回が十円内外、こういう副食費算定の基礎というものは一体とういうところからこんな——今日の物価の状態から考えれば、全く非常識きわまる数字ですが、この点どうですか。
  27. 辻辰三郎

    辻政府委員 お答えいたします。  現在の成人受刑者の副食費でございますが、先ほど矯正局長お答えいたしました三十三円七十四銭、これは現行の単価でございまして、四十三年度予算におきましては三十五円四十三銭となっております。これの大体の内容目安でございますけれども、これはこの副食で一日のカロリーが五百カロリーたん白質三十八グラム、動物性たん白質が十八グラム少々、脂肪が十七グラム、かような点を目安にいたした金額でございます。
  28. 井上泉

    井上(泉)分科員 そういうもので一体——私は厚生省の方を呼んでおいてもらったらよかったと思うのですけれども、あなたはこれで十分だとお思いになるのですか。政府委員答弁を願います。
  29. 辻辰三郎

    辻政府委員 副食はただいま申し上げたとおりでございますが、そのほかに、申すまでもなく主食がございます。主食は、四十三年度予算におきましては、成人受刑者につきまして一日五十三円六十九銭でございます。この主食につきましては、受刑者作業内容その他労働によりまして、いろいろ主食の量を区分いたしておりますが、おおよそ主食につきまして一日千八百カロリーないし三千カロリーというものが摂取できるようになっておるわけでございまして、この主食副食を合わせましてカロリーその他たん白質脂肪が一応足りていることに相なっておる次第でございます。
  30. 井上泉

    井上(泉)分科員 これはほんとう基本的人権を無視するもはなはだしい内容だと思うのです。この点については、いずれ法務委員会で詳しく内容をただしていきたいと思いますが、この刑務所拘置されておっても、やはり帰ってから、社会人として復帰した場合に、健康なからだで復帰さすだけのものを与えておくのが私は当然だと思うのです。当然だと思うのですけれども、そういうふうな配慮が全くなされていないという事実、いま政府委員答弁の中でもそのことがはっきり——これはどの栄養学者に言わせても、現在の刑務所の給食の内容というものは人間の命を保つだけのものである、そしてその命をむしばんでいくことによってそのカロリーを補っておる、こういうふうにはっきり言っておるのですから、この点についての配慮をもっとなすべきであると私は思うのですが、法務大臣どうですか、こういう数字でけっこうだとお思いですか。
  31. 赤間文三

    赤間国務大臣 私は十分とは思っておりませんが、現在においては、いろいろな点でやむを得なくてこういう状態になっておる、かように考えております。
  32. 井上泉

    井上(泉)分科員 それで網走とかいうような零下二十度、三十度の寒いところ、こういうところにおける受刑者に対しても同様な取り扱いであるのか、あるいは、これについては特別の便宜をはかっておるのか、その点についての御答弁をお願いしたいと思います。
  33. 辻辰三郎

    辻政府委員 被収容者に対しまする食糧でございますが、先ほど来申し上げておりますのは全般的な予算単価の問題でございまして、このいただきました予算を適当に、その土地土地収容の状況によりまして、本省におきまして配分をいたしております。かようなことで地域的な是正というものを講じておる次第でございます。
  34. 井上泉

    井上(泉)分科員 地域的な是正をやるということは、三十三円でもいいかげん低いのに、片方を四十円にすれば片方は二十何円になる、こういうことでしょう、平均だから。これによって最低標準カロリーを支給しておるのだ、こう言いましても、そういうことにはならぬじゃないですか。これに上積みをすればともかくも、片方を削って片方をふやすというやり方なんだから。だから最低のところはどのくらいであるのか、そして最高の副食費はどのくらいであるのか、これをひとつ伺いたい。それから場所も……。
  35. 辻辰三郎

    辻政府委員 先ほどの地域的な是正の問題でございますが、そのほかに、御承知のように、刑務所におきましては、農園作業としていたしまして、農園の農作物を自給いたしますとか、それぞれその土地事情に応じまして、内容においては、この予算単価の非常に効率的な執行をいたしておる次第でございまして、カロリーといたしましては、各地域に応じまして相当のカロリー、また脂肪たん白質が摂取できるようにいたしておる次第でございます。
  36. 井上泉

    井上(泉)分科員 私は網走刑務所を視察したのですけれども、あそこで乳牛を飼っても牛乳を一合も飲まさない、卵の一個も出さないというような状態で、乳牛を飼ったら受刑者に少なくとも一週間に二合や三合くらいの牛乳を飲ませるというくらいの配慮をなすべきではないか。せっかく乳牛を飼ったのに牛乳がどこかへいってしまうというようなことでは、これは受刑者としても耐えられない気持ちになると思うのですが、その点についてはどうですか。
  37. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 仰せのように網走乳牛を飼っておりますが、これは刑務作業の一環として飼っておりますので、一応国の歳入に入れざるを得たいわけでございますが、ときには牛乳予算で暫く買い上げて飲ませることもございます。ただ、ひんぱんにこれを飲ますということはできませんので、その点につきましては、他の食物によってカロリーの補給をして万全を期しておるような次第でございます。
  38. 井上泉

    井上(泉)分科員 それでこの網走刑務所処遇内容については、最近の一カ月間くらいの献立表をひとつ資料として出しておいていただき方いと思います。これはまた次の法務委員会等質疑をいたしたいと思います。  私は与えられた時間がないので、多くのことを言うことができないのは非常に残念に思うわけですが、少なくとも、白鳥事件村上さんは、この五月でいわゆる仮釈放の要件たる刑期の三分の一の期間が来るわけです。その前の勾留のときから合わせますと、もう実質的には四分の三以上のものを網走の中で拘置をされておるという、まことにわれわれとしては憤慨にたえない状態の中に置かれておるわけです。そういう点からも、私はこれに対する処遇は、単に村上さんだけではなしに、全国の受刑者に対する処遇改善というものがいま法務省の方が述べられたような程度、一日三十何円くらいの副食費あるいはそのカロリー——米食で、主食でと、こう言いますけれども、あの主食状態をごらんになっても、あなたたちだったら一日として食うことがないでしょう。また、そういう食うようなことは、汚職でもしない限りは、そういう目にあうことはないでしょうから、あなたたち受刑者気持ちというものはわからないであろう。だから隔離された場所でどのようなことがなされておっても平気だ。外国人入所者に対してはビフテキを食わしておる、こういう話もずいぶん聞くわけです。あるいはまた、たばこほんとうに無法者のごとく入っておる、こういうふうなことも聞くわけですが、そういうふうなビフテキを食わしたり、あるいはたばこをのましたりするようなことが特定の人に許されて、そうして大多数の受刑者は一日三十何円かの副食費で細々と、自分からだをむしばんで命をつなぎとめておる、こういう状態にあるということについて法務大臣としての見解を承って、私の質問を終わりたいと思います。
  39. 赤間文三

    赤間国務大臣 私は、受刑者が、ある者は比較的楽な取り扱いを受け、ある者は困った取り扱いを受ける、これは非常に好ましくないことに考えております。やはり規則に基づいてみな平等な取り扱いを受けるというたてまえで進んでいきたいということを、この際はっきり申し上げておきたいと思います。  なお、いろいろ御注意の点は、将来十分ひとつ研究をいたして、りっぱな刑務所行政ということにも私は努力をしていきたいと考えております
  40. 上村千一郎

    上村主査代理 次に、武藤山治君。
  41. 武藤山治

    武藤(山)分科員 法務大臣並びに民事局長に簡単に一問だけお尋ねをいたすわけでありますが、これは具体的な事実の問題でありますので、部下からの報告に基づいて具体的に詳しく御回答いただきたいと存じます。  私は、登記事務登記の問題については全くしろうとでありまして、門外漢の立場からお尋ねいたしますので、できるだけひとつわかりやすい御回答をいただきたいと思います。  最初に、大臣登記所登記簿に記載されている所有権者なり、登記簿というものに記載されている権利者というものは、どの程度まで保護されることになっているのか。もし登記簿に記載されている土地が、正式に登記になっているのに、いやそれは国有地だというような争いが起こった場合には、登記簿証拠になるのか、それとも国のほうで持っている国有地台帳と申しますか、あるいは林野庁の持っている林野庁の図面、どちらが権利を表現する唯一の証拠になるのか、その点はいかがでございましょうか。
  42. 赤間文三

    赤間国務大臣 お答えを申し上げます。  個々の土地の所有権並びにその面積等は登記簿または土地台帳に表示されておるのであります。すべてこれが確定的な効果があるというふうには私は解釈はできないと思います。また、土地の位置及び隣地との境界等が示してあるところの公図と呼ばれているものが登記所に保管されておりますが、これは明治の初期に作成された土地台帳の付属地図でございまして、これによって最終的に土地の境界が確定しておるというような効力はないのじゃないか、必ずしもすべて現況に合致したものというわけにはまいらないのじゃないかと私は考えております。したがいまして、土地の境界について紛争が生じましたような場合は、公図はその境界を判定する有力な資料にはもちろん相違ありませんが、結局裁判所の判断によって終局的には境界が確定をされる、こういうふうに考えております。
  43. 武藤山治

    武藤(山)分科員 かりに、いま大臣のおっしゃるように裁判所の判定で境界がきまった場合、それが明治時代にその境界がきまった、それでもしそのきまった時点で登記をしてない、登記簿も直してない、土地台帳も直していないという場合には、その明治時代の境界というくいは有効ですか。登記のほうの台帳も登記簿も一切抹消してないのですよ。そういう場合はいかがですか。
  44. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 登記制度と、先ほど大臣がおっしゃいました土地台帳制度というものの仕組みから実は御説明申し上げなければならないと思うのでありますが、登記というのは、実体上の権利関係が変動いたしました場合に、その事実に即して.それを登記簿に登載いたします。それによって、権利を取得した者が、第三者に対して自分権利者であるということを主張するための対抗要件ということに相なっております。これがもしも効力発生要件でございますれば、登記簿に記載することによって所有権がまさに法律的に確定するわけであります。しかし日本登記制度はそうではございません。したがいまして、第三者に対抗するための要件として登記簿に記入されるのでありますので、それが必ずしも実質上の法律関係をそのまま常にあらわしているとは限らないのでございます。事実関係の変更に伴いまして如実にそれが登記簿に反映されることが望ましいわけでございますけれども、第三者対抗要件ということになっておりますことと、登記は強制されておりません。その利益を享受しようとする者が登記の申請をするわけでございますので、必ずしも実質関係登記簿が反映しているとはいえないのであります。しかし多くの場合、取引がございますればそれが登記に反映いたしますので、登記簿によって一応公の証明力は出てくるということになるのでございます。  それから、明治時代に所有権が一応確定しまして境界がきまったものが公簿の上にあらわされていないという場合にどうかということでございますが、これは当時の扱いといたしますれば、土地台帳にまずそれを登載すべきものであります。それが登載されました後に、面積あるいは所有権者の表示が登記簿のほうへ出てくるということになるわけであります。したがいまして、実質的にそのような境界が定まり、所有権の範囲が確定いたしておりますと、何よりもその事実が、現在においてもやはりものをいうのでありまして、登記簿なり台帳にそのことが書いてないからといって、必ずしもその事実を否定されるものではございません。
  45. 武藤山治

    武藤(山)分科員 しかし、当時、明治三十七年に実測をしたと林野庁は称する。そのときに、ここからここまでが境界だと言いながら、登記抹消しないでそのままになっておるから、個人所有地として、ずっと登記簿台帳、土地台帳に載っているわけですね。権利証もちゃんと登記所はこうして発行しているわけですね、民有地として。しかも、それは、もうせがれの代、孫の代に相続もされ、売買もされ、そして現在の人にその所有権が移っている。この人が、いよいよ民有地で権利証もあり、登記所を確認して間違いないということで、昭和三十六年十二月に、ここの買った土地と称するところを伐採を始めました。場所は、茨城県西茨城郡笠間市箱田大字和田入という場所です。そうしましたら、営林署の署長以下十数名でその現場に来て、伐採をやめろ、これは国有地だ、いやわしのほうは権利証もあり、謄本もあり、法務局で正式に認証してくれているんだ、だからこれは個人のもので、それの売買をしたのであるから間違いないのだ、こう言い張った。そこで営林署は、そのときはそのまま帰る。今度は警察を頼んで、警察が出動してきた。警察官にこの権利証と登記所の謄本を見せたら、これは警察が介入すべき問題ではないと言って、そのまま帰りました。警察が第一回の出動のときには帰った。そこで、伐採人たちは伐採を続けていました。その後、当時の営林局長花園一郎さん、この方が水戸地検に出かけていって、検事と打ち合わせをし、県警本部長と打ち合わせをして、何とか伐採している連中をこらしめる方法を相談をしたようであります。一挙に、今度は緊急逮捕だと称して、たいへん権利者や伐採人をおどかしたわけであります。それじゃ、一応疑問があるんじゃ話し合いをしようじゃないかというので、一時話し合いの空気になって、営林署と権利者でひとつ話し合いをしようということで、伐採をやめたわけであります。ところが、伐採をやめて話し合いをしようということになったのに、営林署のほうは直ちに仮処分の申請をして、バリケードを張り、法務大臣の名前で二百万円の保証金を積んで、仮処分をしてきた。それは三十七年三月十二日、水戸地方裁判所第三十号国有地確認訴訟を国は起こしたのでありますから、現在もこの訴訟は続いておるから、法務省も知らぬはずはないと思うのであります。概略を申しますと、こういう経過であります。そして、争いがあるんだから、話し合いをしようと言っておきながら、一方では直ちに仮処分をし、そして訴訟を国が提起しておいて、六月、直ちに今度は刑事事件として、関係者七名を全部逮捕いたしました。人夫まで、伐採人から人夫まで、全部これを逮捕した。国の権力をかさにして、国家というものの強大な権力を背景にして、こういうやり方で、所有権を持っている、こういう合法的な態度に、話し合いをけって逮捕するに至っては、少々行き過ぎではなかろうか、こういう感じがするわけであります。事件の概要は——時間がありませんから、先に事件の概要を申し上げたんでありますが、概要はそういうことであります。  そこで、私が法務大臣に聞きたいのは、この間林野庁の訴訟官なるものに私の部屋に来ていただきまして、いろいろその訴訟官に経過を聞きました。林野庁の言い分を聞きただしたわけであります。私は、どうもふに落ちないのは、この土地は明治時代からずっと個人の所有地であったことには間違いありません。明治二十四年の所有者は谷田部という人であります。当時この人は村長さんの川辺辰太郎さんという方から買ったわけであります。それがその後、せがれに引き継がれ、谷田部から、昭和十九年に久慈商事というところに入り、それからやがて河原田、磯、鬼沢という人に売買をされて、所有権が移ってきているわけであります。林野庁主張は、それ以前の、明治二十四年の当時の所有権者谷田部と、明治三十八年に境界の話し合いが成立したのだ——林野庁主張ですよ。明治三十八年に境界がはっきり確定されたのだ。そこで谷田部には、これはおまえの土地じゃないのだ。登記簿登記所には登記になっていても、これは国の土地なんですよ、だから、今度は借用書を入れなさい。明治三十八年にその借用書を谷田部から取って、おまえの謄本があり、登記所にあっても、これは国のだと言い含めさせて、借用書を取ったのだ。それを林野庁は唯一の証拠にしておるわけであります。だからこれは林野庁のものなんだ。たまたま登記がえをしなかったのだ。当時個人のものを抹消して国のものにすべきだったのだけれども、しなかっただけなんだ。しかし話し合いがついて、林野庁土地ということになったのだから、これは林野庁のものだと、こう言い張るのであります。常識で考えて、そんなはかげたことが——抹消しないで、民有地になったまま今日なっているのに、当時、話し合いがついて借用書が入っているから、これは国のだということが言い張れるのでしょうか。大臣どう思いますか。
  46. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 具体的な訴訟事件でございますので、私の立場からお答えいたすことは差し控えたいと思います。訟務局長が見えておりますから、そちらからお答えがあろうかと思います。  一般論として申し上げますと、先ほども申し上げましたように、登記簿が必ずしも確定的な証拠力を持っておるものとは保証できません。同時に、先ほどお話しのように、林野庁との間の話し合いによって、こうしようということが一方にあったといたしますれば、そのことも考慮に入れて、裁判所は判断しなければならないことであろうかと思うのでございます。いずれにいたしましても、この問題は登記簿を信用するのか、あるいはその当時の特殊事情を十分踏まえて判断すべきか、さらにその後、所有者が転々と変わっておるようでございます。そういった点も、法律的には問題になろうかと思うのでございますけれども、具体的な事件につきましては、私承知いたしておりませんので、訟務局長のほうからお答えいたすことにいたします。
  47. 武藤山治

    武藤(山)分科員 いずれにしても、大臣、これは私は、やはり、政治家であり同時に大臣であるという高度の立場から、こういうような権利証がちゃんと発行され、登記所登記謄本が発行されるというこの事実ですね。この事実というものが全く法律的に確定的な効力を持たないなどといって、ああでもない、こうでもない、これは国有地だと言って、おっかぶせでもって権利主張し、住民を泣かせるような態度は早くやめなければいかぬ。したがって、もし、明治三十八年のときに話し合いがついたなら、当然抹消すべきでしょう。  今度、一般論として聞きますよ。もし話し合いが。いて、これは国有地ですよということになって契約ができたとするならば、当然登記所の台帳や登記簿というものを、民有地を抹消すべきでしょう。その点はいかがですか、大臣、原則論として。大臣大臣——君じゃない。これは大臣で答えられる。原則論として。当然、話し合いがついたとするなら、抹消するのがあたりまえじゃありませんか。
  48. 赤間文三

    赤間国務大臣 それは、お述べになりましたように、話し合いがつけば、その話し合いに従って、登記台帳等をそれに合わせるというのが常識だと考えております。
  49. 武藤山治

    武藤(山)分科員 私もそう思うのであります。そこで、それが抹消されずに、明治三十八年から昭和の今日まで、個人のものとなってずっと続いていれば、善意なる者は、もうその本人は死んじゃっているのですからね、とうの昔に、契約した人は。で、せがれの代になって、相続登記をし、孫の時代にもなったのですから、全く善意の第三者は、その登記簿なり権利証を信頼しますね。信頼すると思いますか。そういうものは信頼しないだろう。まわりに国有地があるのだろうからということで、この権利証や登記簿謄本を第三者は信用しないと思うか。常識的に考えて、大臣どうですか。
  50. 赤間文三

    赤間国務大臣 お答えを申し上げますが、一般的にはやはり一応登記とか権利証というものは信頼をすると思います。いま承りましたこの事件は、なかなかこれは歴史も長いようであります。いろいろ話があるようでございまするので、やはりその問題について私がどういう考えを持っておるかということは申し上げにくいので、そういうふうな複雑になってきた問題は、やはりこれはどうしても裁判所がこれをいろいろな点から調べてみて判断をすることが適当なものじゃないか、私はこういうふうに考えております。
  51. 武藤山治

    武藤(山)分科員 しかも大臣、こういう争いが一件でなくて、過去の間にかなりの件数がこの笠間営林署管内にはあったと聞いております。なぜそういうことが起こったのか。そうしますと、林野庁はいろいろ、大昔火災にあった当時、公図が紛失して、その公図が、林野庁の公図とつくられた公図と違うのだとか、とにかく明治時代の証拠をもっていまの権利者権利がないと言い張るのであります。私は、それよりもやはり現実土地台帳なり登記簿なりがもう唯一の証拠だということにきちっと確定をして、そして、以後こういう争いなり被害を受ける者が起こらないようにするというのが、正しい行政の姿勢だと思うのであります。住民は、登記簿土地台帳いうものは非常に信頼をしておりますね。登記所のやる仕事は間違いないのだ、こういう先入観が住民にはありますよ。林野庁の公図なんというものは、林野庁がある程度ここはおれのものだ、ここは国のものだといってつくられた図面じゃなかろうかという疑念を持ちます。法務局のものに対する信頼度というものは、もう一〇〇%ですよ、国民から見た場合に。その一〇〇%のものが、否認をされて、林野庁の公図が正しいのだというこの主張は、住民泣かせのための曲がった態度だと私は思うのです。そこで、しかも、さっき大臣は、常識としては、境界が確定したならば、当然抹消登記をして、話し合いのとおりに登記するのが常識だろう、そのとおりですね。それを登記しなかった責任は一体だれにあるのか。私は林野庁にあると思うのですよ。境界がきまったというなら、林野庁は職権をもって嘱託登記でもできるはずですからね、やる気ならば。これは、境界はこうきまって、これは国有地になりましたということを法務局へ申し出て、登記変えは可能なはずであります。それをしないで、明治三十八年から今日まで放棄しておいて、おっぽっておいて、いまになってから抹消登記をするのは、当事者本人の捺印がなければ書類の提出ができなかったから、登記ができなかったのだ、抹消できなかったのだ、こんな主張が通りますか。私はこの問題については、かなり高度な判断を大臣にしていただいて、早急にこういう争いが起こらぬような事態をつくらないと、抹消しない限り次から次へこういう問題は起こってきます。また善意の第三者はこれを買い受けて、また林野庁から、いやそれは国有地だとやられるおそれは十分あるわけであります。いままでにそういう事態は、この笠間営林局の管内にはかなりあったと聞いておりますが、何件くらいありましたか、林野庁はわかりますか。
  52. 上田明信

    ○上田説明員 訟務局次長の上田明信でございます。  この問題につきましては、仮処分をしたということでありますから、おそらく私のほうとの連絡があったと思うのでありますけれども、私、実は非常に事件が多いものですから、この事件がどういうふうになってどうなったか、現在のところ記憶いたしておりません。必要によりまして詳しく調べて、あらためて御報告申し上げたいと思います。  それから、ほかにこういう事件が、営林署関係でたくさんあるかということでございますが、そのほうは法務省側では実はわからないのでありまして、営林署のほうで訴訟に至らない部分が相当あるいはあるのかもしれませんけれども、これも、場合によりましては営林署に問い合わせて御回答申し上げたいと思います。
  53. 武藤山治

    武藤(山)分科員 昭和三十七年三月十二日に所有権確認の訴訟を起こしておりますね。もらずいぶん長い話です。もう六年になんなんとする。六年間たっても、まだこの所有権確認の訴訟というのは勝訴しないのですか。営林署が始めたこの訴訟は勝てないのですか、その勝てない理由は何だと思いますか。もし林野庁が言い張るような常識だというならば、五年もたてばたいがいこんな確認の訴訟は済みますよね、相手は国なんですから。なぜこれがこんなに長引いているか、その原因は何だと思いますか。
  54. 上田明信

    ○上田説明員 お答えいたします。  事件そのものが、先ほど申しましたように、私いま覚えておりませんので、具体的にどうこうということをちょっと申しかねるのでありますけれども、一般的に申しますと、土地所有権の問題は非常に複雑な場合が多うございます。本件がそれほど複雑なのかどうか、私、いま記録がどうなっておるかちょっと記憶がございませんのでお答えいたしかねますけれども、一般に土地所有権関係は非常に複雑なものが多うございまして、わりに長くかかるのが通常のようでございます。しかしこの事件でなぜか、こういうふうに御質問になりますと、いま申しましたように、ちょっとお答えいたしかねるのでありまして、よく調べました上で、なぜこれがおくれているかということの御回答を申し上げたいと思います。
  55. 武藤山治

    武藤(山)分科員 法務大臣大臣は長くとも二年か三年でみなかわってしまうのですから、なかなかこういう問題を処理しようとする熱意は持てないと思うのでありますが、しかし、まじめな法務大臣ですから、直ちにそういう実情を調査してもらいたい。やはり常識が通り、信頼されている登記所登記簿や台帳というものが国民に信頼されるという姿勢をこの際きちっととるべきではないか、このままほっておけば、こういう問題がまた次から次へと起こり、犠牲者が出てくる。七人の逮捕された人の中には国家公務員もおって、まことに気の毒なことですよ。私はそういうものを見かねて本問題を取り上げたのでありますが、十九日間ずつ全部ぶち込んだんですよ。まことにけしからぬやり方だと思うのであります。したがって、こういう争いが今後起こらぬように、大臣として早急にこれらの問題の処理に熱意を示してもらいたいと思いますが、いかがですか。
  56. 赤間文三

    赤間国務大臣 こういう問題がなるべく起こらぬようにするということは、お述べになりましたように重大なことに考えておりますので、十分配慮したいと考えております。また、お述べになりましたように、登記が一般から信頼を受けて、それによって仕事をしていくということは常識でございますので、その信用を高めていくということも、やはり法務省としては十分考えていきたいと考えております。
  57. 武藤山治

    武藤(山)分科員 林野庁にもう一つ要望しておきますが、林野庁も、この争いはもう裁判に出ておるのだから、全く無関心でいていいという問題ではございませんから、そのことの経過を詳細に——きょうは時間がありませんからお尋ねしませんから、文書にして、なぜこういう問題が起こり、なぜ解決できないかという経過を簡単にひとつ私のところへ報告を願いたいと思いますが、林野庁、よろしゅうございますか。——林野庁、見えていないようでありますから、また農林のほうでやります。  私の質問を終わります。
  58. 上村千一郎

    上村主査代理 次に、中谷鉄也君。
  59. 中谷鉄也

    中谷分科員 法務大臣にお尋ねをいたします。  明治百年に関連をいたしまして、昨年の初めころから、恩赦を行なうべきではないか、あるいは恩赦の恩典があるのではないかなどということが、かなり一部において強くうわさされておるが、この点についての大臣の方針あるいは所見を承りたい。
  60. 赤間文三

    赤間国務大臣 恩赦については、法務大臣としては、現在考えておりません。
  61. 中谷鉄也

    中谷分科員 特に参議院選挙が公明な立場において行なわれなければならないということは、国民の強い期待であると私は思うが、恩赦について考えていないということは、そのような選挙についての恩赦を含めて、明治百年に関連をして恩赦などということはないというふうにお伺いしてよろしいでしょうか。
  62. 赤間文三

    赤間国務大臣 現在のところ、恩赦については、法務大臣考えておりません。
  63. 中谷鉄也

    中谷分科員 次に、最高裁判所事務総長にお尋ねをいたしたいと思います。  現在、司法権と行政権との相交錯する問題として、国会周辺に対するデモの許可一さらにこれに対する許可内容の、地方裁判所に対する変更決定の申し立て、それに対する決定、この地裁決定に対する内閣総理大臣の、行政事件訴訟法二十七条による異議申し立てというのが、次から次へと行なわれている。二十七条というのは、本来司法権の行政権に対する大きなチェックをする条文であると私は思うが、このようなことが次から次と行なわれていることについて、司法権の独立を守るという立場から、事務総長の御所信をお伺いいたしたい。
  64. 上村千一郎

    上村主査代理 中谷君、御質問途中で失礼ですけれども、官房長官は他に所用がございまして、三、四分程度しか出席ができませんので、官房長官に対する質疑を先にお願いをいたしたいと思います。
  65. 中谷鉄也

    中谷分科員 じゃ、総長、たいへん恐縮ですが、官房長官にお尋ねをいたします。いわゆる三派系全学連の諸君に対する、破防法の団体に対する破防法の適用の問題について、昨日、長官は記者会見で談話を発表されておりますが、まず、内閣として、三派系全学連について破防法を適用する問題について、どのような方針をお持ちになっているか、これが第一点。  第二点は次の点です。破防法の適用というのは、長官の談話によりますと、その適用が政治的な意味が出てきたと思う旨の、そのような談話を発表しておられるけれども、破防法という法を、いい法律だ、悪い法律だというその評価は別として、政治的な意味というふうなことで、破防法の適用の有無を考えるべきかどうか。この長官の談話によると、政治的な意味合いにおいて、破防法の適用を検討する旨の談話がなされておるけれども、この真意をお伺いいたしたい。  次に第三点として、同趣旨の質問でありまするけれども、ある時期が来れば、法務大臣、国家公安委員長、文部大臣、官房長官関係閣僚の打ち合わせ会を開きたい旨の談話を発表しておられる。本来、破防法の適用というものは、きわめて厳格な法律的な手続を要するものだと思う。したがって、政治的な介入というものをできるだけ避けるという立場に立つべきだと思うけれども、このような観点からすると、関係閣僚の打ち合わせというのはどのような意味を持つのか。それは破防法の運用の面からいって、はたしてふさわしいことなのかどうか、これらの諸点についてお伺いをいたしたい。
  66. 木村俊夫

    ○木村(俊)国務大臣 いまお尋ねがありました第一点でございますが、私は破防法というものは、破防法にすでに規定がありますとおり、公共の安全確保のために、必要最小限度において発動されるべき法律だと考えております。したがいまして、政府としても、まだきわめて慎重な態度で、ただいま検討中でございます。  第二、第三の点につきましては、もちろんこの破防法の適用に際しまして、しさいに事務的また法律的検討が先立たなければなりません。したがいまして、法務省あるいは警察庁当局におきましても、破防法の適用については、従来もまた現在も、きわめて慎重な態度をとっておられるようでございます。政府といたしましては、そこに至るまでの過程におきまして、こういう慎重な検討の末、最終的にはやはりこれは内閣の責任で決定しなければならぬものですから、そういう意味において、私が政治的と申し上げたのであって、ただ法律論あるいは事務的検討以上に、政治的判断が必要な時期がある、こういう意味で、そういう会見の際の談話を申し上げたのでございます。
  67. 中谷鉄也

    中谷分科員 官房長樹、お忙しいようですが、では一点だけお尋ねをいたします。  政治的な意味合いというのは、内閣の行政権の行使という趣旨、あるいは行政的な責任をお持ちになるという趣旨であるならば、そのような適当なことばがあると思う。問題は、破防法の問題が政治的に運用される、政治的に利用されるということについて、国民は憂えている。官房長官の談話が、政治的な意味ということばをお使いになった、そのことについて非常な疑義を感ずるわけです。政治的な意味とは何か、この一点について、重ねてお尋ねをいたします。
  68. 木村俊夫

    ○木村(俊)国務大臣 これは記者会見における質疑応答の中で出たものを、新聞ではそう報道していると思いますが、私がいま申し上げましたとおり、治安関係あるいは特に警察関係は、もちろんこれは政治に中立でなければなりません。したがいまして、国家公安委員会における判断も、われわれ内閣としての今後の破防法の適用についての重大な要素にはなると思います。しかしながら、最終的には、国の治安についての最高責任は内閣が持っておりますから、そういう意味合いにおきまして、政治的な判断を必要とする、こう申したのでございます。
  69. 中谷鉄也

    中谷分科員 官房長官に対するお約束のようですから、質問はこれで打ち切ります。  進行の順序としては、最高裁の事務総長にお答えをいただきたい。破防法の問題はあらためて……。
  70. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 先ほど中谷委員から御質問になりました問題は、司法権と行政権との関係の問題になります行政事件訴訟法第二十七条の規定をめぐって、問題にされたと思います。あの規定は、たしか昭和三十二、三年ごろに法律改正の際にできた規定であります。その前に、昭和二十六、七年ごろに、同じような制度が、旧法の第十条に規定されておりまして、問題になります点は、あたかも司法権と行政権との接触点にぶつかる問題について起こるわけでありまして、そうなりますと、いずれの機関に優位を認めるかということは、これは政策の問題になるわけでありまして、したがいまして、旧法の十条時代には、もうすでに十八件か二十件近く適用された事例もありますし、新法になりましてからも数回、最近適用された例がありますけれども、いま申しましたような理由から、それが政策問題である以上は、決してこれは司法権の独立になるというふうに考えることはできないと思います。従来からも、裁判所はそのように考えております。
  71. 中谷鉄也

    中谷分科員 デモの問題というのは、本来国民の表現の自由にかかわる問題であろうと思うのです。この問題について、裁判所が心血を注いで表現の自由を守ろうとする立場での決定をする。一回きりではない、同じような決定が次から次へと出てくる、ことごとく国会周辺のデモに関して。それについて反復して異議の申し立てがなされる。このような状態が二十七条の法構造、法解釈の問題としてではなしに、生きている司法権と行政権のかかわり合いの問題として、裁判所の立場から好ましいことなのか。そういうことが、二十七条があるからやむを得ないんだということで放置していいことなのかどうか。とめるわけにはいかないでしょう。法律のたてまえから、とめるわけにはいかないでしょうけれども、最高裁判所の司法権の独立という立場においての、司法権を守るという立場においての御所見を承りたいと申し上げておる。
  72. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘のような事例が、最近数回起こりました。しかし、その事例につきましては、現在本案訴訟が数件係属いたしております。現に、現在審理中の事件として、数件係属しておりますので、この問題について、事務当局が、こういう席で意見を述べるということは差し控えなければならぬ、かように考えます。
  73. 中谷鉄也

    中谷分科員 重ねて破防法の問題についてお尋ねをいたします。  大臣にお尋ねをいたしますが、破防法をいわゆる三派系全学連に適用するかどらかの問題、この問題については、現在どのようにお考えになっているか。特に御所管法務大臣としての御所見を承りたい。
  74. 赤間文三

    赤間国務大臣 破防法を適用するかどうかということにつきましては、目下研究中でございます。
  75. 中谷鉄也

    中谷分科員 公安調査庁の長官お答えをいただきたい。同趣旨の質問をいたします。
  76. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 お答え申し上げます。  三派全学連に対しまする規制のための調査は、荒筋一応終わりましたが、なおその内容につきましては、きめのこまかい検討を続けておるわけでございまして、これを規制請求をすべきかどうかということにつきましては、もちろんまだ結論も得ておりません。検討中でございます。
  77. 中谷鉄也

    中谷分科員 同じく長官に。検討が荒筋終わって、規制すべきかどうか——とするならば、当然、規制の内容はどういうことに相なってくるかということだと思うけれども、その検討が終結する時期、近くということなのか、終結する時期は一体いつごろなのか、この点はいかがでしょうか。
  78. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 お答え申し上げます。  時期については、いつごろということは申し上げられません。なお、われわれといたしましては、検討を続けておる状況でございます。
  79. 中谷鉄也

    中谷分科員 大臣にお尋ねをいたしたいと思いますが、破防法の問題というのは、裏返してみれば、憲法の問題、基本的人権の問題にかかわってくると思う。破防法の適用を検討されるにあたって、特に配慮しておられる点、この点はどのような点、諸点をあげていただきたい。どの点を配慮しておられるか。
  80. 赤間文三

    赤間国務大臣 大臣といたしましては、あらゆる面から検討をしなければならぬ。諸点とおっしゃいまするけれども、諸点でなくて、あらゆる面から、破防法を適用するかどうかということを、全般にわたって研究しておりますから、その点、御了承願いたい。
  81. 中谷鉄也

    中谷分科員 大臣にお尋ねをいたしたいと思うのですけれども、あらゆる点と申しましても、破防法の適用というのは、破防法の法の規制を受けることは間違いございませんね。破防法の検討内容というのは、おのずから破防法の法によって規制されておりますね。大臣がおっしゃる趣旨は、検討内容を越えてあらゆる点について検討するというふうな意味、逆に言うと、破防法の検討内容を越えた政治的な色合いを持たして検討をすることも含むという趣旨なのか、あらゆる点といえば、そういうふうに聞こえますぞ。この点についてお管えいただきたい。
  82. 赤間文三

    赤間国務大臣 私は、政治の面等を含めてという意味ではありません。破防法を適用することが適当であるかどうか、こういうことをあらゆる面から検討しておるという意味でございますので、御了承願いたい。
  83. 中谷鉄也

    中谷分科員 大臣にお尋ねをいたしますけれども、破防法を適用することが適当かどうかは、どの点を検討しなさいということは、破防法に書いてあると思うけれども、じゃ一体どこに力点を置いて検討されるのか。適用することが適当かどうかなどということを、大臣の頭だとかで考えなさいとは書いてありませんよ。破防法の条文のどれに力点を置いて検討されるのか、これはいかがですか。
  84. 赤間文三

    赤間国務大臣 破防法に書いてあるすべてのことを考えて、私は検討いたしておるのであります。   〔上村主査代理退席、主査着席〕 破防法のどこを重点にするとかいうようなことでなくて、破防法に書いてあるすべてのことをよく研究をいたして、適用するかどうかということを慎重に研究しておる、こういう意味に御了解願いたい。
  85. 中谷鉄也

    中谷分科員 破防法の適用というものが、実際の規制効果があるかどうかという点について、非常な疑義を一部で叫ばれておるけれども、この点については、大臣はどのようにお考えになるか。
  86. 赤間文三

    赤間国務大臣 お答えを申し上げます。  破防法の効果につきましては、人によって意見が違うことがあるのであります。そういうことも、私がいろいろと研究をいたしておるうちに入るのです。破防法の効果は、人によって解釈が違う、そういうことは当然あり得るのであります。
  87. 中谷鉄也

    中谷分科員 所管法務大臣にお尋ねをいたしたいけれども、ある時期が来れば、法務大臣、国家公安委員長、文部大臣、官房長官の、関係閣僚の打ち合わせ会を開きたい趣旨の談話を官房長官は発表しておるけれども、これは一体所管法務大臣の立場から見て、またかりに破防法の適用の検討にあたっては、きわめて厳格に法の解釈の上に立たなければならないという立場から見て、このような関係閣僚との打ち合わせというのがどのような意味を持つか、これはひとつ所管法務大臣お答えをいただきたいと思います。
  88. 赤間文三

    赤間国務大臣 私は、ものごとを慎重にやるためには、いろいろと協議をやることは必要に考えております。だれが主管だとか、だれがどうということでなくて、衆知を集めて、間違いのないような研究をやるということは、これは私非常に大事なことに考えております。
  89. 中谷鉄也

    中谷分科員 長官にお伺いをいたしたいと思いますが、そうすると、破防法の適用、すなわち請求をするかどうか、こういうふうな問題は、結局政府関係閣僚の政治的な判断、話し合い、そのようなことによって左右される問題なのかどうか。厳格に法律的なものであるとわれわれは理解をしておる。基本的人権の制限は、そのようなものでなければならないと思っている。大臣は、いろんなところで大臣が寄って話し合いをする、政治的なそのような話し合いは意味があるのだと言っている。長官は、そのようなものとして、破防法そのものを理解しておられるのかどうか。
  90. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 お答え申し上げます。  規制の請求につきましては、破防法の第一条に、公共の安全の確保に寄与するものでなければならぬということがはっきり書いてありまして、二条並びに三条では、規制の基準といたしまして、これは必要最小限度のものでなければならぬということも書いてあります。もちろんそのワク内でものごとを考えていかなければならない、かように存じておるわけでございます。規制の請求は、破防法の上では私の権限になっております。しかしながら、事はきわめて重大でございまして、私の独断専行が許される筋合いのものではございません。したがいまして、上司の御判断を待つというようなことは当然のことであると考えておるわけでございますが、私はもっぱら事務の立場で考えておるわけでございまして、破防法の規制につきましては、私どもが請求する、そうすると、私どもとは別個の独立した公安審査委員会が決定をするというような形に相なるわけでございます。そこで政治の介入というようなことは、私は考えておりません。
  91. 中谷鉄也

    中谷分科員 重ねて長官にお尋ねをいたしたい。法に、あなたの権限に属することだということが明定をされている。そのとおりです。そうすると、上司のあるいは政府の指示を受ける。そうすると、破防法を適用するための審査請求をしなさい、あるいは破防法を適用するための審査請求をするな、このような上司の指示というものによって、あなたの権限の行使が左右されるということであるならば、破防法の適用というのは政治的なものだ、きわめて政治的なものだ、こういうふうにいわざるを得ないと思うのですけれども、いかがでしょう。
  92. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 お答え申し上げます。  治安行政全般の立場から、高い立場からの御指示を仰いでおるわけでございますが、規制請求するかどうかということは、私の権限でございまして、また私の責仕であると考えております。
  93. 中谷鉄也

    中谷分科員 大臣にお尋ねをいたします。  先ほどの閣僚会議その他が、長官のそのような権限を抑制をする、チェックをする、そのようなものとして、常識的に官房長官の談話を読めば、受け取らざるを得ないけれども、それが、破防法というものが本来政治的なものであり、破防法というものが政治的に運用されているという私の指摘になるのだけれども、一体この関係閣僚会議と長官の権限というものはどんな関係に立つのか、大臣の御答弁をいただきたい。
  94. 赤間文三

    赤間国務大臣 治安につきまして関係閣僚が協議をするということは、何ら政治的とか政治的でないとかという問題でない。私は、そういうことは重要なことで、治安に関する会議をやって、日本の治安をいかによく守っていくかという治安全般についての協議をやるということは、何もそう、それが政治的だとか政治的でないとか批判をすべきものでないと考えています。破防法に限りません。われわれといたしましては、治安閣僚というものは、日本の国の治安を保つためには、たびたび会議をするということが理想的であり、また必要がある、かように考えております。
  95. 中谷鉄也

    中谷分科員 治安関係についての話し合いをする、その中で、破防法の適用に関する、破防法を適用しなさいとか適用するなとかというふうな話も、その中においてなされる、それは何らはばからないのだ、治安関係の話と、破防法の適用という純法律的な問題として理解しなければ、基本的人権というものとの関係が出てこないと私は思うけれども、破防法の権限については、特に長官に明定されておる。それを治安閣僚懇談の名において、その権限の問題にも入り込んで話をするということがいいとおっしゃるのですか。
  96. 赤間文三

    赤間国務大臣 長官の権限をどうしようという考えは一つもない。長官の権限は長官の権限として尊重して、長官が執行すべきことについて、何も治安閣僚会議がこれを左右しようとかどうしようという考えは、毛頭、みじんない、そういう因果関係のないことは、はっきりと御了解を願いたい。治安関係におきましては、破防法のこともいろいろと研究する、あるいは警察の活動につきましてもいろいろ研究する、治安全体についての協議をやるということがたてまえになっております。何もこの会議によって、だれそれの権限を少し縮少するとかあるいは取り上げるとか、そういう意味のものでないことを御了解願いたい。
  97. 中谷鉄也

    中谷分科員 次のような質問で終わりたいと思います。  破防法の適用というのは、当面の問題としては、三派系全学連の団体に対するところの規制問題として課題にのぼっておる。ところが反面、最近特に新聞等によって報道されている問題は、警察官の過剰警備の問題、行き過ぎの問題が大きく報道されている。一体法務大臣として、このような警察官の過剰警備や行き過ぎを、どこがどのようにして規制をするのか、警察庁自体において、内部的に管理をするだけで済むのかどうか。法務大臣としては、人権擁護局の問題あるいは検察庁の独自の捜査、いろいろな問題があると思うけれども、具体的に規制方法についてお答えをいただきたい。
  98. 赤間文三

    赤間国務大臣 お答えを申し上げます。  警察官は、国の安寧秩序を保つためにやっておる。(中谷分科員「行き過ぎがあった場合、規制をどうするか」と呼ぶ)よろしゅうございますか。国の安寧秩序を保つために活動しておる。いやしくも社会の秩序を破壊せんとするようなものに対しては、やむを得ずそれをとどめる警備問題、あるいは法律に触れる場合は、その材料をつかまえて、これを裁判所に持っていくというような働きをやっておるのは御承知のとおりでございます。なおまた、警察が行き過ぎとかというような問題でありまするが、今日まで私の見るところでは、警察の行き過ぎというものはあまりないと私は信じております。しかしながら、すでに福岡の九大の井上教授でしたか、三派全学連の佐世保へ行く途中の博多駅におけるいろいろな問題がある、こういうものについては人権擁護の上から調べてもらいたいという、人権擁護の点から、警察官のやったことが行き過ぎであるかどうかということを、これはまた真剣に、いま福岡の法務局と連絡をとりまして、調査中でございます。私はあくまで人権を擁護することには——これはもう徹底して人権擁護についてはやらなければならぬということは当然のことに考えております。しかしながら、また一方において、国の法秩序を破壊しようというようなものについては、これはまた私は、断固としてこれの処置をやるということが、国の、安全を保つために必要である。警察官は国の安寧秩序を保つためにやっておる。国の秩序を乱さんとしていろいろな破壊行動をやっておるものとの関係があるのであります。私らは公平な立場で、人権の擁護ということについては十分処置をとろうと思うのでございます。そういうことも頭に置きながら、われわれはやっていきたい。人権擁護は、お述べになりましたように、これは非常に大事なことでありまするので、われわれとしては全力をあげて人権擁護の上にも遺憾なきを期するが、いま言いましたように、法秩序を守るということにも全力を尽くす。両方ともわれわれは十分力を尽くしていかねばならぬ。それがわれわれの立場であるということを御了解願います。
  99. 森山欽司

    森山主査 中谷君に申し上げますが、お約束の時間が参っておりますし、従来、各委員ともこのお約束の時間を厳格に御厳守願っておりますので、簡潔にお願いをいたします。
  100. 中谷鉄也

    中谷分科員 御答弁になっていないと思うのです。私がお尋ねをしたことは、機構的に、組織的に、機能的に——三派系の学生についての規制の措置というのは、学生を公務執行妨害で逮捕しあるいはまた破防法の適用を検討するなどという規制の措置は、機能的に法律的にある。ところが、警察官の過剰警備が世間で報ぜられておる。過剰警備があるのだとかないのだとかという事実問題について、私は議論しようとしているのじゃない。そのような過剰警備があったときに、そのような人権を守るという立場に立って——それがあなたのお仕事です。法務大臣政府は、どのようにして警察官などの行き過ぎ、あるいは警察官のみならず検察官も含んでいい、そういう権力を持った者の行き過ぎというものを防止し規制することをお考えになっているか。それは裁判所のお仕事でもあるだろう。あるいはまた法務省のお仕事でもあるだろう。その他の省にもまたがるかもしれない。しかし、それは人権擁護の一番責住者である法務大臣は、そのようなことについて、現在どのような対策をお持ちになっているかということをお聞きしている。その点について、私は、従来から人権を守ることについては考慮いたしますというふうな抽象的な御答弁をお願いしているのではない。当面どのような措置を講じようとされておるか、この点についての御答弁をいただきたい。
  101. 赤間文三

    赤間国務大臣 お答えをします。  人権擁護の立場からいたしまして、人権侵犯の事実があるときには、調査をいたしまして、人権擁護の方策を講ずる。その例として、福岡の駅における井上教授の申し出があったのであって、現在それを、人権擁護の立場から調査をしておるということでございます。人権擁護ということは、これは非常に重大なことでありまするので、私はあらゆる面から、この人権の擁護には努力をしていきたいと考えておりまするが、法務省でやっておる人権擁護の施策を申し述べるという……。(中谷分科員「いや、そうではなくて、もっと基本的なことをお聞きしたのですが、どうぞ答弁を結んでください」と呼ぶ)要するに、答弁を結びますが、人権擁護につきましては、ひとつ全力を尽くして、人権擁護の実のあがるように、法務大臣はやるということを、最後に申し上げておきます。
  102. 中谷鉄也

    中谷分科員 終わります。
  103. 森山欽司

    森山主査 次に、岡沢完治君。  この際、まことに恐縮ながら、岡沢君に念のため申し上げますが、質疑時間は三十分となっておりますので、あらかじめお含みの上、御質疑をお願いします。
  104. 岡沢完治

    岡沢分科員 最初に、最高裁判所にお尋ねをいたします。  最近、全国各地で執行官の汚職が続発しておるようでございますが、その実態につきまして、お答えをいただきたいと思います。
  105. 菅野啓蔵

    ○菅野最高裁判所長官代理者 最近、執行官の不祥事件が続発しておりますが、これに対する対策等につきましては、後ほどまたお尋ねがあろうかと存じますので、事実だけにつきまして、まず御説明を申し上げます。  執行官法制定前から、こういう事件がなかったわけではございませんけれども、私ども特に心を用いておりますのは、執行官法以後こういう事件があとを断っておらないということでございまして、執行官法施行以後、私どもの調査したところによりますと、刑事事件として問題になりましたものが六件ございます。  その一つは、静岡地裁の沼津支部の執行官に起きました刑事事件でございまして、これは二人の執行官につきましては、現金三万円くらい、あるいはカフスボタン、ネクタイ等を、収賄というような形で受け取ったということ。それからもう一つ、やはりこれは沼津支部の事件でございますが、これは差し押えていない物件を、後ほど差し押えたように調書に書きとめました、そういう虚偽の執行調書の作成という犯罪事実で起訴され、判決を言い渡されたという事件でございます。もう一つは和歌山に起きました事件でございまして、これはいわゆる不動産ブローカーと共謀の上、不動産を競売して安く競落してやるからというようなことを申し向けまして、詐欺のような犯罪を犯したということで起訴されたのがございます。それから浦和で起きました事件でございますが、これは競売代金二十万円を着服横領したという事件でございました。それからさらに五つ目の事件といたしましては、岡山の津山支部で起きました事件でございまして、これは債務者と共謀して、債務者の債務を免れしむるために、虚偽の第三者執行をなさしめたというような犯罪事実でございます。それから最近東京で起きました事件は、これはまだ捜査中で、どの程度のことになるか、私どものほうでわかっておりませんけれども、やはりこれは収賄の事実でございまして、数回にわたって、数万円の現金を、やはりブローカーといわれるような人から受け取ったということでございます。それからもう一つ、最後に六番目といたしまして、大津の地裁に起きました事件でございますが、これも現金一万円程度のものを受け取ったという収賄の事実でございます。以上六件が、執行官法施行後起きた不祥事件でございます。
  106. 岡沢完治

    岡沢分科員 ただいま局長から御説明がございましたけれども、たしか、静岡地裁の沼津支部の場合は、四人の執行官全員が汚職、刑事事件に引き込まれておる。また、岡山地裁の津山支部も、たしか二名の執行官、これも全員、全滅であります。現に係属中の事件だけでも、ただいま御説明のとおり、静岡、和歌山、浦和、岡山、東京、大津と、中国から関東まで、裁判所関係の汚職が続発しておる。これは、普通の官庁の汚職とはいささか趣を異にして、法の番人である裁判所に関連するものであるだけに、法の権威、国民の期待を裏切るという点では、比較にならないほど強いものがあろうかと思います。  先ほどの御説明でも少し出ましたけれども、昭和四十一年七月一日に、旧執達吏規則、執達吏手数料規則が廃止になりまして、新しく執行官法ができたわけでございますが、その趣旨は、従来、ともすればありがちでありました、当時の執行吏の汚職をなくするということが大きな目標であったはずであります。ところが、その執行官法が実現した以後にも、ただいまお読み聞けのとおりの事件が続発しておる。単に一件でありましたら、犯罪を犯した執行吏の個人的な人間性とかということも考えられますけれども、このように多数の犯罪が、もちろん、しかも性格は違いますけれども、各地で続発しておるということについては、何か制度上の欠陥があるのではないか。あるいは、法的な改正の必要があるのではないか。その辺について、最高裁判所としてお考えの点がありましたら、この際明らかにしていただきたいと思います。
  107. 菅野啓蔵

    ○菅野最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘のとおり、執行官法の改正ということは、まさに当面の目的といたしまして、執行官の不正事件を防止するというところにあったわけでございます。しかるに、その改正後も、かような事件が続発いたしましたということにつきましては、私ども非常に遺憾に思っておるところでございますが、これに対する対策いかんというお尋ねでございますので、いささか、ただいまの現状において、私どもの考えておりますところを申し上げたいと存じます。  執行官のかような不正な事件を防止するためには、一つには、執行官制度という組織法的な方面がもちろんございます。その改正が、執行官法ということで、一応の結論を得たわけでございまするけれども、それにつきましては、この改正が中途はんぱであるという御批判を——御批判と申しますか、そういう御議論が、執行官法改正の途上でもなされたわけでございます。しかしながら、一応、中途はんぱという批判はあるにしても、この執行官法の、そういう制度でやっていくということに一応の結論が出された以上、そしてまた、この執行法の施行という点につきましては、やはり年次計画的なものでございまして、漸進的に、人員と予算とを伴いながらやっていくということであったわけでございまして、ただいま、その施行の二年目に入っているわけでございます。そうして、年々私どもはこの施行を貫徹するというための努力をいたしておるのでございまするが、これは、今後さらに続けていかなければならないことはもちろんであります。しかし、この執行官の汚職をなくすという道は、実は制度だけでは足らない面があるのでございまして、それは、競売手続、強制執行法という手続の面を改正していかなければ、汚職等の不祥事件をなくす方法はないというふうに考えておるわけでございます。なぜかと申しますると、今回の、先ほど申しましたような事件を見てみますと、ただ一件、浦和で着服横領という事件がございますが、その他はすべて、いわゆるブローカーというものとの関係において起きた事件でございます。したがいまして、ブローカーあるいは道具屋と称せられるような人たちが競売の中にあまり深く入り込んでくるということが、今回のような不祥事件を起こした原因であろうかと思うのでございます。ただいまの手続法、競売法、強制執行法のもとにおきましては、ブローカーを排除すると言ってはなんでございまするけれども、一般の人が買えるという制度にほど遠い手続の制度になっているわけでございまするので、この点を改正いたしまして、手続的にも、しろうとが買い得る競売の制度に持っていったならば、ブローカーというものに競売場を独占されるという事態が払拭されるのではないかというふうに考えておるわけでございまして、私どもといたしまして、執行官の制度を改革いたしたいと存じておる裁判所の立場といたしまして、法務省に、この強制執行法の改正ということを実はお願いしておるわけでございます。法務省のほうにおかれましても、われわれどもの希望も取り入れられまして、すでに、その手続法の改正ということにつきまして、法制審議会の何回かの会議を開かれて、そして、やがて結論が出る日が近いというふうにも聞いておりまするので、この、執行官法の制度面の実施の貫徹と、それから手続法の改正ということによって、再びかような事件が起きないようにいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  108. 岡沢完治

    岡沢分科員 時間がございませんので、私の所見を、ただいまの局長の御答弁とあわせて述べてみて、最後に最高事務総長の御意見を伺って、この問題を終わりたいと思うのでございますけれども、先ほど申し上げましたように、各地で執行官の汚職が続発しておる原因については、ただいま局長お答えのように、執行官の制度、ことに、私は、やはり問題になっております手数料制度というものにあるような感じが一ついたします。これを俸給制に切りかえるべきではないか。いわゆる、純然たる官吏の身分保障的なものを与える必要がありはしないかという問題点が一つあろうかと思います。おっしゃるとおり、執行官法の改正とあわせまして、民事訴訟法、あるいは競売法の改正、ことに一般人が競売に安心して参加できるような事態をつくり出すということが必要ではないか。実際には、競売に参加するのは専門のブローカー的な人が中心でございまして、民間人はほとんど参加できないような雰囲気と実際の障害がございます。こういう点についてもぜひ改正の努力をしていただきたい。しかし、また、そういう法の改正となりますと、相当時間がかかります。しかし、裁判所の権威を守っていただくということは、毎日その日その日が必要でございます。そういう点を考えますと、やはり指導監督上にも若干の配慮が不足しておったのではないかということを指摘せざるを得ないわけでございます。具体的には、たとえば東京の地裁の執行官がわずか二十名である。一千万の人口を擁する東京で、執行官が二十名という、数の問題等にも、こういう犯罪続発の原因がありはしないかと私は考えるわけでございまして、事務総長の見解を最後にお聞きして、この問題の質問を終わりたいと思います。
  109. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 法実現の最終段階における執行の面の手続でこのような不祥事が起きるということは、これは司法のために非常に恥ずべきことであり、残念であり、また国民に対してもはなはだ申しわけないことだと存じております。その点につきましては、先ほど民事局長がいろいろその原因を究明いたしまして、そうしてどの点に欠陥があるかということを御説明申し上げました。今後、裁判所としましては、監督面を厳重にすることはもちろんでありますが、そういう手続関係の改正を漫然と待つことなく、監督面の強化と、それから今後質のいい人を執行官に任命する、また必要によってはしかるべき人的な充実をはかる、そういう面において万全の策を講じたい、かように考えております。
  110. 岡沢完治

    岡沢分科員 それでは、法務省のほうにお尋ねをいたします。  矯正関係が中心でございますが、最近各地で刑務所の移転問題が起こっております。具体的に移転計画のある刑務所について、実情を簡単にお答えいただきたい。時間の関係がございますので……。
  111. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 お答えいたします。  現在、刑務所の所在地が市街地になったために移転の要請を受けておりますのが、二十三カ所程度ございます。私のほうといたしましては、その移転要請の理由並びに移転先の問題、さらに職員の生活状況、さらに予算上の問題等を勘案いたしまして、逐次具体化したものから、前向きでこの問題を処理したいと、このように考えております。
  112. 岡沢完治

    岡沢分科員 行刑職員は、今度の予算で定員の御要求が幾らかございますけれども、その応募状況といいますか、そういうことについて簡単にお答えいただきたいと思います。
  113. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 御承知のように、行刑職員につきましては、人事院の試験によって採用いたしておりますが、この採用が始まりました昭和三十二年度一万人をこえた応募状況でございましたが、昭和四十一年度並びに四十二年度は、二千人前後という応募状況でございます。
  114. 岡沢完治

    岡沢分科員 局長、ずっとそこにおってもらっていいのですが、行刑職員が、いまお答えのように非常に魅力の薄い職場になって、応募者が少ない、それはそれなりの理由があると思うのです。行刑職員の一番の悩みというのはどの辺にあるか、お答えいただきたいと思います。
  115. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 御承知のように、最近の収容者の状況が、心身に何らかの障害を持っていた者、あるいは暴力団関係者といった、収容者の質が悪化しているために、これに自信を持って処遇をしていくだけの知識、技能をひとつぜひ身につけさせるような方策を講じてもらいたいというのが、現場の第一点でございます。さらに、御承知のように、刑務所におきましては、日曜、休日といえども、収容者に対して何らかの行事を行なって処遇をしているわけでございます。そのために、その休日に勤務にかり出される職員があるわけでございます。そういう休日勤務の職員に対して、週休を完全に与えてもらいたい。それから第三点といたしましては、いわゆる夜間勤務明けの非番の職員につきまして、出廷——いわゆる裁判所、検察庁への出廷、あるいは少年鑑別所でいえば鑑別所への出廷といった任務があるわけでございます。その出廷等の職員が不足のために、非番明けの職員がその仕事に従事している。こういうものを解消してもらいたい。おおむね三点が、最も行刑職員が悩んでいる点ではなかろうかと思っております。
  116. 岡沢完治

    岡沢分科員 あわせまして、現在の受刑者一人当たりに、国庫としてはどれくらいの負担を一年間にしておるのか、数字だけでけっこうでございますが、お答えいただきたい。
  117. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 ごく大ざっぱな計算でございますが、収容者収容するために直接必要とする経費、いわゆる衣食住でございますが、これが予算上は三十六億三千四百十二万二千円でございます。これを収容人員六万六千人で割りますと、一人当たり五万五千六十三円という数字になります。  なお、この直接経費以外に、職員の俸給、あるいは収容者作業を与えているわけですが、その作業に必要な経費、さらに施設経費といったものを、総予算を含めまして収容人員で割りますと、一人当たり三十三万六千四百九十七円、こういう計算になります。
  118. 岡沢完治

    岡沢分科員 最初の質問と関連をするのですが、いま移転計画中の刑務所が二十三カ所あるとおっしゃいましたが、そのうちで、反対運動があるもの、あるいは非常に歓迎されているというようなものがもしありましたら、その辺の状況についてお答えいただきたいと思います。
  119. 辻辰三郎

    辻政府委員 お答えいたします。  現在移転計画中の行刑施設につきまして、地元で受け入れ反対のございますのは一カ所でございます。
  120. 岡沢完治

    岡沢分科員 ここでちょっと話題を変えまして、総理府の特連局の方おられましたらお答えいただきたいと思うのですが、小笠原諸島が、今月中に返還協定が調印されるというふうに聞いております。この島で、住民が住める島はどれくらいあるか。また、そのうち無人島はどれくらいであるか。また国有地は大体何%くらい全地域の中で占めるものか。  それから、時間の関係質問を先に進めますが、小笠原の将来の利用方法について、産業、経済その他考えられるものがありましたら、お答えいただきたいと思います。
  121. 加藤泰守

    ○加藤説明員 お答えいたします。  戦前におきまして、小笠原で、人の住んでおりました島は、父島と母島と、それから硫黄島、北硫黄島、この四島でございます。その他三つ、四つの島には、一時的に人が住んでいたといいますか、短期に住まっていたことはあるようでございますが、ほかの島は人が住んでおりません。合計いたしまして二十七ぐらいの島があるわけです。したがいまして、二十三ぐらいの島は無人島であったということになります。  それで、この島の復興の問題につきましては、いままだ返還前のいろいろな準備をしておる状態でございまして、復興そのものの計画等については、まだそこまでいっておりません。返還になりましたら、早急に復興法等を制定していただきまて、それに基づいて、土地の利用関係をはかっていきたい、こら思っております。いままで小笠原におきまして、戦前におきまして産業として見られたのは、農業、漁業であると思います。ただ、漁業につきましては、いろいろ施設等をある程度準備していけば、何とかやっていけるのではないかと思っておりますが、農業につきましては、これはほんとうは農林省のほうから答えていただかぬと悪いわけですが、農業の問題につきましては、内地の農業の進歩というものとのからみにおいて、小笠原の農業というものを考えていかなければならぬわけでございますので、相当検討を要するのではないかというふうに考えております。
  122. 岡沢完治

    岡沢分科員 ここで私は、いわゆる行刑施設と小笠原を結びつけて考えてみたいと思うわけでございますけれども、御承知のように、日本におきましても、徳川時代には政治犯的な人々を八丈島や佐渡に流す、いわゆる流刑制度がございました。佐渡では鉱山役夫等に従事したようでございます。また、有名なアル・カポネが収容されておりましたサンフラン・シスコのアルカトラズの重警備刑務所の存在もアメリカにはございましたし、また西ドイツのハンブルグではハヌーバーザントに少年刑務所がございます。これはエルベ川の中州にあるわけでございますが、最近の受刑者教育といいますか、行刑の目的ということを考えました場合に、やはり受刑者に技術を身につけさすということが一つと、また、その収容期間はできるだけ開放教育と申しますか、開放処遇と申しますか、明るい雰囲気で過ごさしてやるということが大事ではないかということもいわれております。また、日本におきましても、すでに最上農場等で、囲みのない地域でトラクターの技術等を身につけさして農業に従事するという基礎を与えて、それが非常に再犯防止に役立っておるというようなことも聞いておりますし、広島でも構外作業場の設備等も成績をあげておるようでございます。日本土地事情先ほど矯正局長お答えになりましたように、現に市街地になってしまって移転を計画中の刑務所が二十三カ所もある。日本のような狭い土地で、土地の高度利用が要求される国におきましては、特にこういう問題を考えたらいいのじゃ、ないか。私の聞きました範囲で、国連アジア極東犯罪防止研修所に参っておりますタイの研究生が、どうして日本では島を利用して刑務所をつくらないのだというような示唆もあったようでございます。幸いに小笠原が近く返還される。無人島が二十三もある。先ほどの辻部長のお答えでは、刑務所の移転について反対運動は一カ所しかないということでございましたが、実際の感じはちょっと違うのではないか。刑務所の移転することを歓迎する地区はほとんどないのじゃないか。また、あわせまして、離島にそういう施設を設けましたときに、私は一つ心配なのは、職員の方々の子弟の教育とかで問題があると思いますけれども、大規模な収容施設を設けまして、そこで小中学校を併設する。大学に行く子弟を持った方々には、東京あたりに特別の寄宿制度を設ける。かえって職員の処遇としては優遇策も講じられて、先ほどの、応募数の少ないのを補うというようなことも可能ではないか。私の居住地にも一つ拘置所がございますけれども、阪奈国道の入口でございまして、ことしことに万博を控えて外人の最も出入りが考えられる場所に、一等地に拘置所がございますが、そういう必要性はむしろないのではないか。また収容される受刑者からいたしましても、市民としょっちゅう接するような場所におけるよりも、むしろ離島あたりで、朗らかに明るい太陽のもとで、しかも技術を授けられながら更生を誓うということは、一石二鳥、三鳥の価値があるのではないかというふうに感ずるのでございますが、これにつきまして勝尾局長あるいは法務大臣の御所見を両方から伺いたい。局長のほうは専門的な立場から、大臣のほうは政治的な大局的な御態度から、これについて御所見を賜わりたいと思います。
  123. 赤間文三

    赤間国務大臣 岡潔委員の御質問お答えを申し上げます。  刑を受ける方に、お述べになりましたように、やはり技術を持たせてくるということ、これはもう一番大事なことで、これはある意味からいうと犯罪の予防にも非常に役立つ大事なことであります。なおまた、軽い気分で暮らさせるということも、お述べになりましたようなのでございます。日本は非常に島が多いですから、島でそういう施設を設けるということにつきましても、私は、十分これは研究に値する問題だと考えております。  ただ、実際の問題としては、最後にお述べになりましたように、収容者処遇の方法などが、島で行き届くかどうか。また、これを移したりいろいろする場合とか、特にその家族等とときどき会わせるということは非常に大事なことですが、島ですと、家族との面会なんかが、やはり少し骨が折れるのじゃないか。なおまた、お述べになりましたように、職員のほうの待遇とかなんとかいうのが、島ではわりあいに骨が折れるのじゃないかというような点が、ざっと頭にあるのであります。それで、現在のところでは困難な問題もあるように思うのでありまするが、非常にいいところも私はたいそうあると思いますので、法務大臣としては、慎重にこれは研究をさせていただきたいと考えております。
  124. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 御承知のように、収容者に対しては、閉鎖的な処遇から、できるだけ開放的な処遇に持っていくというのは、世界的な傾向でもあり、私も行刑のあり方としてはそうあるべきだろうと思っております。  お尋ねの島嶼を刑の執行の場所として利用するという問題につきましては、ただいま大臣から答弁がございましたように、その趣旨において私も全面的に前向きで検討いたしたいと思っております。ただ、ただいまお話に出ました小笠原の問題につきまして、はたしてそこに恒久的な行刑施設をつくるということになりますと、いろいろ当面解決すべき問題が多いように思われますので、あるいは釈放前の成績のいい受刑者を、したがって短期間になるかと思いますが、半年なりあるいは一年間、開発に従事をするというような形で、暫定的な処遇というものを考えるという余地があるのではないか、このように考えております。
  125. 森山欽司

    森山主査 岡沢君に申し上げますが、お約束の時間が参っております。
  126. 岡沢完治

    岡沢分科員 一点だけ。質問じゃございませんで……。  御答弁でよくわかったわけでございますけれども、なるほど家族との面会等の問題もございます。しかし、日本は造船王国でもございますし、それほどむずかしい問題じゃなしに、むしろ職員の往復のためにも、ヘリコプターとか一そうの船ぐらいは持っていいのではないか。また、特にテレビ、ラジオの発達等を考えました場合に、必ずしも昔のような暗い島流しという感じはなくなったし、ことに先ほど来申し上げておりますように、受刑者の更生、再犯防止のためには、技術を身につけるということがきわめて大事だ。そういたしますと、やはり大規模な収容施設——まあ何百人が適当かについてはいろいろ所見は分かれますけれども、しかし、具体的な、たとえば機械技術、電気技術あるいは農業技術を身につけられるような教育をするためにも、小さい刑務所で百人足らず収容したのでは不可能でございますけれども、一定の場所に大きな規模でやりました場合には、相当な能率もあげられて、いまお答えのように、島の開発にもあるいは日本の経済の復興にも役立つし、先ほどもお答えがございましたように、現状では国民受刑者のために年間一人当たり三十数万円も負担しておる。非常に不合理でございますし、自給自足が国民の感情からいたしましても当然ではないか。そういう点からいたましても、前向きに御検討をいただきたいということをお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  127. 森山欽司

    森山主査 午後は正一時から再開することとし、この際暫時休憩いたします。    午後零時十分休憩      ————◇—————    午後一時六分開議
  128. 上村千一郎

    上村主査代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  森山主査が所用のためおくれますので、主査が出席されるまで、指名により、私がその職務を行ないます。  この際、念のため申し上げておきますが、質疑時間につきましては、理事会の協議により、原則として、質疑に対する答弁も含め、本務員一時間、兼務もしくは交代で分科員になられた方は三十分となっております。多数の質疑希望者がございますが、できる限り御希望に沿いたいと思いますので、恐縮ながら質疑時間を厳守いただき、質疑及び答弁はできる限り簡潔を旨とする等、各位の格別の御協力をお願いいたします。  質疑を続行いたします。横山利秋君。
  129. 横山利秋

    横山分科員 私が本日政府の意見をただしたいのは、刑事訴訟法並びに刑事補償法の改正についてであります。時間の関係上、問題の焦点を最初に申し上げます。  現在の法律におきましては、無罪裁判が確定した場合、国は被告人であった者に対し、拘束中の期間についてのみ一日四百円以上、千円以下の補償にとどまっていますが、これはさらに非拘束中の期間の補償並びに裁判に要した費用をも補償すべきではないかというのが、私の提案の趣旨であります。なぜかと申しますと、人が刑事訴追を受けるのは、その人の人生の最大の不幸でありますが、罪なくして刑事訴追を受け、幸いに裁判において無罪となった場合でも、その人の受けた精神的、物質的損害はほとんど無限、人生の大半が失われる場合は決して少なくありません。吉田石松氏をはじめ枚挙にいとまがないのであります。民主国家においては、国家はみずからの権力において国民を訴追、しかも罪なきことが裁判で確定した以上、その国民がこうむった最大の不幸に対し、相当の補償をすべき義務を負っています。たとえその誤った訴追が、捜査官の故意または過失によるものでないにしても、およそ生命、自由及び幸福追求に対する国民権利は、立法その他の国政の上で最大の尊重を必要としています。憲法十三条はそれを示しているのであります。けれども、現在の刑事補償法によれば、無罪裁判を受けた者が刑事訴訟法等によって拘束を受けた場合に限り、国に対して抑留または拘禁及び刑の執行による補償を請求することができるとしているだけで、無罪裁判が確定した場合でも、非拘束中の損害に対しては補償する規定がないのであります。また、現在の刑事補償法によれば、検察官のみが上訴した場合において、上訴が棄却されまたは取り下げられたときは、当該事一件の被告人であった者に対し、上訴によりその審級において生じた費用の補償をしますが、第一審から上訴審を通じ無罪になった場合の裁判費用を補償する規定がないのであります。  以上、時間の関係で朗読をいたしましたが、事態はおわかりだと思います。先般、私が田中前法務大臣に対しまして、本件に関しまして提起をいたしましたところ、前法務大臣は弁護士をやっておられた経験もございまして、事態きわめて十分に御理解をいただきました。そして十分に検討をする旨答弁がありました。今国会で、拘束中の四百円ないし千円の金額の若干の引き上げは行なわれますけれども、御答弁にかかわらず、本質につきましては改善がされていないのであります。また、本件は、日本弁護士会がこれを取り上げまして、すでにこの問題に対して、弁護士会の決議となっておる次第であります。また、与野党の法務委員並びに心ある者に対しまして日本弁護士会からも、この点については十分に検討されるよう要望がされておるところであります。私は本問題でいろいろのさまつ的と申しますか、具体的なことにおいて多少の問題があることは承知しております。これはこれから解明いたしたいと思いますが、原則的にこの問題については十分思考する価値があり、検討する価値があると痛感をいたすのでありますが、法務大臣の御答弁を承りたいと思います。
  130. 赤間文三

    赤間国務大臣 非拘禁者に対する刑事補償の問題についての御質問でございます。十分これは御研究にもなり御承知のことと思いますが、現行の刑事補償法におきましては、刑事補償の問題は定型化され、形がきまっていて、国家補償になっております。補償の額がお述べになりましたように一定額の範囲内に限っておる。国家機関の故意、過失を補償の要件としないというふうな原則をとっておることはお述べになったとおりでございます。そして、非拘禁者に対して補償すべきであるというお考えでいろいな方面が努力されておることも承りましたが、私はこの問題はなかなかむずかしいのじゃないかという感じを持っております。趣旨は私はよくわかります。拘禁されなくともそういうふうに迷惑を受けておる、そういう者に補償するという、その趣旨については私はよくわかりますが、現在におきましては、非拘禁者に対しての補償は、むしろむずかしいという感じを持っています。  なお、外国あたりにおきましても、非拘禁者に対する刑事補償は、私の聞いておる範囲では、ほとんどまだそういう制度が行なわれていないというふうに聞いております。御趣旨の点はひとつ十分研究はさせていただきますが、私の勘といたしましては、この問題は非常にむずかしくはないか、こういうふうな感じを持っておりますので、御了承願います。
  131. 横山利秋

    横山分科員 前法務大臣が良識をもって十分これは前向きに検討する旨を答弁されたにかかわらず、赤間法務大臣はうしろ向きな話をなさるおつもりですか。少なくとも、おまえを犯罪被疑者としてつかまえる、つかまえて留置場に入れた者についてのみは、おまえは無罪だったという場合に四百円ないしは千円の補償をする。ところが、留置所に入れなかったけれども被疑者扱いにされて、そしてさんざっぱら社会から疑いの目を向けられた人間について、おまえは白だったと言うことによってさようならをするということはいかぬというのです。したがってその者の受けた物質的精神的なものについてはこれは補償をすべきだ。前法務大臣は、全く趣旨はよくわかりますからそのようにいたしたい、こう言っておったのです。だから私は、少なくとも本人が抑留または拘禁を受けなかった場合の補償については、通常手続により無罪裁判が言い渡された場合は、起訴された日から無罪判決が確定したまでの期間のうち、抑留または拘禁を受けなかった日数に応じて一日何がしかの補償金を交付すべきだ、こう言っておるのですが、この考え方はあなたは賛成ができませんか。
  132. 赤間文三

    赤間国務大臣 私は、あなたのその考え方に不賛成を唱えておるわけじゃないので、考え方はよくわかりますが……。
  133. 横山利秋

    横山分科員 賛成できるんですか、できないんですか。
  134. 赤間文三

    赤間国務大臣 御趣旨には私は賛成です。
  135. 横山利秋

    横山分科員 それじゃやりなさいよ。
  136. 赤間文三

    赤間国務大臣 ただ、外国に一つも例がなく……。
  137. 横山利秋

    横山分科員 そんなことは関係ありません。そういうことは関係ない。日本の国会で議論しているのだから。
  138. 赤間文三

    赤間国務大臣 それはそうです。何も外国の国会じゃないから。日本の国会ですから。それはわかっていますが、外国に一つもなく、現在においては実現が相当困難だと考えますということを言うておるのです。
  139. 横山利秋

    横山分科員 なぜ。あなた、ちっとも理由を言わないじゃないか。外国の理由だけ言って、日本でなぜむずかしいか理由を一つも言わないじゃないか。なぜ。何がむずかしいのですか。
  140. 赤間文三

    赤間国務大臣 まあ日本の刑事訴訟のたてまえが……。
  141. 横山利秋

    横山分科員 たてまえをいま変えようとして質疑応答をやっている。
  142. 上村千一郎

    上村主査代理 横山君にちょっと申し上げておきますが、速記をいたしておりますから、発言をお求めになりまして御質疑ください。
  143. 赤間文三

    赤間国務大臣 御趣旨には私は賛成でありますので、できるだけのことは努力をいたしたい、こういうことを申し上げます。
  144. 横山利秋

    横山分科員 大臣、もう少し歯切れのいい答弁をしなければ、三十分ですからね。  それでは聞きますけれども、本問題はすでに数年前国会で議論になったことがある。そして改正をしようとする機運が与野党できゅう然と持ち上がったときに、政府はその機運を押えるがために、法務省限りにおいて被疑者補償規程というものをおつくりになって運用してみえる。被疑者補償規程の精神は、まさにこれと同じじゃありませんか。違いますか。大臣、知りませんか、被疑者補償規程。——ちょっと待ってください。知っていらっしゃるか知っていらっしゃらぬか、それだけを聞きたい、被疑者補償規程があることを。
  145. 赤間文三

    赤間国務大臣 あることはよく承知をいたしておりまするが、政府委員から答弁をさせます。
  146. 横山利秋

    横山分科員 必要ありません。いいです。私知っていますから。被疑者補償規程というものについて大臣はいま御存じなかったようだけれども、つまり被疑者補償規程というのは、この趣旨、私がいま言っておる趣旨をくんでつくられたものです。ところが、被疑者補償規程というのは一体何法によって根拠を持っていますか。法務省の省令か何かでできておるそうでありますが、いかなる憲法、いかなる法律によってその規程はつくられましたか。
  147. 川井英良

    川井政府委員 法務大臣の訓令でございます。
  148. 横山利秋

    横山分科員 国家が歳出をいたしますためには、憲法並びに法律によらなければならぬ。あたりまえのことです。私がいまお伺いしたことは、法律によらざる歳出をしているではないかという意味であります。法律に準拠して訓令が出、省令が出、規程が出るならいいけれども、被疑者補償規程が何らの法律的根拠なくして歳出をしているということは、財政法違反じゃありませんか。どうです。
  149. 赤間文三

    赤間国務大臣 私は金の支出、予算の支出は全部法律によらなければならぬというふうには解釈をいたしておりません。予算があれば法律はなくとも支出ができる、まして訓令があればそのこと自体は違法でも何でもない、かように私は了解をしております。
  150. 横山利秋

    横山分科員 そんなばかげたことがありますか。予算があれば歳出ができる、しかも、それについて、かってに被疑者に対する——あなたはこの趣旨が正しい、もっともだと言い、そうして国会に議論があっておるのにかかわらず、実際はやりようがないと言いながら、現実法務省でやっているじゃありませんか。私の趣旨に賛成だ、しかし技術的にむずかしいと言いながら、法務省でかってにやっているじゃありませんか、なぜかってにやるのですか、なぜ法律によらずしてあなたはかってに歳出を認めているのですか。被疑者補償規程があるからいいというならまだ話はわかる、被疑者補償規程というものが現在あるが、私は法律によらずして歳出をしてはいかぬという立場だ。だから私の提起しているように、この刑事訴訟法なり補償法を改正して堂々とやりなさいよ。そんなかってな、あなたのほうで、おい、おまえは白だった、だから少し補償してやるという制度をかってにつくって、しかもそれは無罪になった人の権利ではないのですよ、被疑者補償規程は。お情けだ、恩恵的だ。しかも規程ができてから今日までどれだけ歳出がされましたか、その数字を言ってください。
  151. 辻辰三郎

    辻政府委員 お答えいたします。  被疑者補償規程に基づく支出でございますが、四十二年度におきましては現在まで四件でございまして、二万六千円の支出をいたしております。四十一年度におきましては二件で一万四千円の支出をいたしております。
  152. 横山利秋

    横山分科員 大臣、ごらんなさいよ、被疑者補償規程というものは法律によらずして、しかも無罪になった人の権利でなくして、あなたのほうの恩恵的措置で、しかも、あれども実際は何ら行なわれていない。全国で起訴されて無罪になった人がどれくらいありますか。その中でこの二年のうちに六件しか適用されてない、まさに空文に堕しておるじゃありませんか。私の指摘しておることは、法務大臣、あなたもお考えだと思いますけれども、こんなばかなことを許してはいけませんよ。かりに千歩も万歩も譲って、私は反対ですけれども、法律によらなくても歳出ができるというあなたの論理を、私は反対ですが、譲ったところで、被疑者補償規程の存在を認め、それによって運用しておるなら、なぜもっと無罪になった被疑者が、被疑者補償規程がある、補償措置があるということを天下に明白にさして堂々と要求をする仕組みにしませんか。なぜあなたのポケットに隠して、全国でわずか六件しか二年の間に支給しないような仕組みにしておくのですか。重ねて申しますが、そういういままでの御説明でわかったと思いますが、刑事訴訟法並びに補償法を改正してこの趣旨を生かす、こういうお気持ちになりませんか。
  153. 赤間文三

    赤間国務大臣 私はあなたの御意見に別に反対は一つもしていない。御趣旨には賛成であるが、実現がなかなか骨が折れる、骨が折れるというか、なかなか実現が困難だ……
  154. 横山利秋

    横山分科員 無罪になった人に、骨が折れるからやらぬというのですか。
  155. 赤間文三

    赤間国務大臣 いや、そういう意味じゃありません。補償規程でお述べになりましたのも、やはり私は拘禁された者に限っておるように承っておる、米拘禁の者はあの補償規程にも入らないというふうに了解をいたしておるのでございますが、たしかそういうふうに私は記憶をしております。それで御趣旨の点に何も反対じゃなくて、私もあなたのおっしゃることには非常に賛成だということを申し上げている。できるだけ努力をいたしますということです、努力をいたしますということを申し上げたのです。
  156. 横山利秋

    横山分科員 どうも歯切れが悪いですね。あらためてはっきり言ってください。刑事訴訟法並びに補償法の二つを改正するという点について大臣の明白なおことばをいただきたい——大臣に要望しているのです、政治的な発言だ。
  157. 赤間文三

    赤間国務大臣 お尋ねのような問題は、刑事補償制度をどのように改めるかについての一つの、私は賛成もしましたが、傾聴に値する考え方であると思うのでございます。そのような、お述べになりましたような形の補償を行なうとするならば、刑事補償に関する従来の考え方を大きく変更するものでございまするし、これは私はなかなか簡単にはいきにくい、慎重な検討を要するものであると考えております。最高裁判所その他の関係機関とも十分ひとつ協議をいたしまして、非常に熱意を持ってお述べになりまするのでとくとひとつ研究、検討を進めてまいりたい、かように考えております。御了承願います。
  158. 横山利秋

    横山分科員 大臣、もう少し勉強しておいてほしいですね。そんな一番最初に言いたいことを一番最後に下僚に教えてもらって言うようなことでは困りますね。  次に質問をいたしますが、起訴をされました際に、国家公務員を例にとりますと休職になります。休職になりますと六割以下の給料になります。六割以下の給料で休職になりますと、六割の起算点が全収入じゃございませんから、本俸と家族手当あるいは地域手当ですか、そういう基本給の六割でございますから、きわめて生活に困難を呈します。そして裁判は二年、三年、四年ということになります。したがいまして、六割では食っていけない。そういう問題があるわけであります。  私は時間の関係上問題点を全部列挙をいたしますからそれぞれ担当の方からお答えを願いたいのですが、六割で食っていけない、しかしがまんをして裁判をやる、無罪になった、全く青天白日であったという場合に、一体国はその六割以下しか支給しなかった責任をどうとるかということが第一の問題であります。  第二番目の問題は、六割では食っていけないから、この際自分は無実であるけれども、六割で裁判が長引くから一応やめます、辞表を出します、辞表を出したときにお役所は大体において辞表を受理いたしません。ひょっとして裁判の結果有罪であるかもしれぬというわけで、そのために懲戒免職にしなければならぬ場合があるからというて辞表を受理しないのです。そうすると六割以下で何年も何年も家族をかかえて食っていくためには、何かほかの仕事をやらなければ食えません。そこで何かをやろうとすると兼職禁止にひっかかります、違法行為です。そこでないしょの内職をやらざるを得ないというのが実態であります。私はいまの制度について何か考うべき点があるのではないかと思います。たとえば私の私案でありますけれども、辞表を出した者について、その役所としてどうしても懲戒免職の可能性があると思った場合には、辞表は受理するけれども、退職金や年金の支給を一たん停止をしておくとかいうようなことが可能性があるのではないかと思われるのが、これが私の私見であります。  それからその次の問題として、最近続発をいたします交通事故であります。この休職制度ができましたころは、今日のような交通事故が続出する時代ではございませんでした。しかし最近ではお役所の皆さんもマイカー族が非常に多いのですから、ふとした過失で交通事故を起こす場合があります。この立法の趣旨であります国家公務員として恥ずべき行為、どろぼうをやったとか人殺しをやったとかという場合と違いまして、この交通事故続出の時代に全く同じような扱いをするのはいかがかと私は思うのであります。先般も大臣の傘下の京都の法務局で、おじいさんに右のくるぶしにちょっとけがをさしたということがございました。それで懲戒で、戒告であります。しかも法務局では一全国百五十台の実測車がありながら、一人の運転手も定員が配置されておりません。たまたま免許を持った人間が、それでは私が行ってきましょうと言って行った。どちらが悪いとは必ずしも言えない。けれども、おじいさんの右のくるぶしにけがをさしたからというわけで、それで戒告処分であります。この交通事故に関するものの考え方については、別途議論はいたしますけれども、これをもって直ちに懲戒措置をとるということについては、別な基準があってもよろしいのではないか、こう思われるわけであります。  以上三点につきまして、人事院、あるいは法務省、あるいは大蔵省、それぞれ御答弁を願いたいと思います。
  159. 川井英良

    川井政府委員 いわゆる起訴休職の問題でございますが、国家公務員法等で定められておる立法の趣旨と、それから先ほどお述べになりました、刑事訴訟法その他刑事補償規定等に考えられております法の体系との調整の問題であろうと思いますけれども、ただいま私どもの所管といたしましては、前段で刑事訴訟の体系、それから刑事補償の合理性というようなことについて、またいろいろな深い問題も含めて、あらためて研究をしてみたい、こういうふうに考えておりますので、休職の関係につきましては、ほかの部局からお答えしていただくことにします。
  160. 津吉伊定

    ○津吉説明員 お答えいたします。  先生御指摘になりますように、服務及びそれに関連する給与の制度上の問題でございますので、われわれ、予算面におきまして御相談を受けておりますけれども、おっしゃる向きを十分検討いたしまして、関係の担当部局と相談をいたしたいと思っております。
  161. 尾崎朝夷

    ○尾崎政府委員 たいへんおくれてまいりまして、横山先生の御質疑を承らなかったものでございますから、ちょっと……
  162. 横山利秋

    横山分科員 もう一ぺん言いましょうか。簡潔に申しますが、人事院関係は、起訴をされる、休職になる、六割になる、そして裁判が二、三年続く、無罪になったという場合に、一体その青天白日になった人に対して、国家は四割以上の分について何ともする気持ちはないのかということが一つ。それからもう一つは起訴をされた、この際自分無罪ではあると思うけれども、迷惑をかけたから一ぺん辞表を出す。ところが役所は辞表は受けつけない。なぜならば、懲戒免職にする可能性があるかもしれないから。そうすると、六割以下で数年食べなければならぬ。それではやり切れないから他に職を求めようとしても、兼職禁止になる。だから本人は非常につらい。だからこの際、何かの方法が別途考えられてもいいではないか。私の私見としては、たとえば辞表を受理する。けれども、退職金その他については保留をしておくというような、何かの方法がなければ——休職になった人はみな内職をやっておる。人を殺したとか何とかという者なら、それは簡単だけれども、私の議論しているのは、裁判無罪になった人を振り返って考えてみて、たいへんお気の毒だ、こういう意味なのです。
  163. 尾崎朝夷

    ○尾崎政府委員 刑事休職期間中におきましては、御指摘のように、現行六割以下の休職者給与が支給されておるわけでございますけれども、その場合に、無罪で復職してまいりました場合には、いわゆる復職時の調整ということで、休職期間につきましての給与の調整を行ないまして、昇給についての新しいスタートにつかせる。その換算は二分の二以下ということで、大体二分の二で調整をするということになっているわけでございます。  いま御指摘の関係につきましては、六割そのものについてが一つと、それからもっと総合的にその辺のことを考える必要があるのではないかというようなお話であろうかと思いますけれども、六割そのものにつきましては、昭和二十六年だったかと思いますけれども、当時のエンゲル係数等を考慮しまして、六割ということできめてきたというふうに承知しておりますけれども、現在この関係につきまして特に——御指摘のような問題はあろうとは思いますけれども、それにつきまして、上げるべきか下げるべきかという点につきましては、まだ特に検討をいたしておるわけではございません。なお総合的な関係につきましては、さらに私どもの給与の関係以外の問題も含みますので、そういう関係部局とも相談してみたいというふうに思っております。
  164. 横山利秋

    横山分科員 時間が超過しそうですから、結論だけ申し上げて、再度法務大臣に御検討を願いたいのですが、大体、私は最近の事象を検討してみますと、松川裁判等をはじめ、無罪になる事例というものが多くなりますし、あるいは、名前を出してまことに恐縮でございますが、与党の福田幹事長も、ある意味ではその被害者の一人であります。私はこの機会にもう一度全体的に見直してみるべきではないか、こう考えておるわけであります。たとえば、こまかい話で恐縮でございますが、いま四百円ないし千円という拘禁中の補償は、戦前では一日五円でございました。物価が千倍上がっているといたしますと、一日五千円、戦前のほうが、この無罪になった人々に対する慰謝というものは、はるかに現状よりもよかったのであります。おまえは無罪だ、おまえを引っぱった期間中一日四百円やるから、これで御苦労さま——こんなばかな、人権をじゅうりんしたような制度はございません。いわんや、留置場へおまえは引っぱらなかったのだから、おまえは無罪だったけれども、まあえらい世話かけたなということで放置さるべき時代ではないはずであります。法務省が最も人権に——先般もあなたもおっしゃったように、人権に注意されるとするならば、国家権力を発動して、被疑者扱いにして間違っておった、これは無罪だという場合には、格段の措置をすべき時代であります。もちろん、私も冒頭申し上げたように、いろいろの問題のあることは承知しています。たとえば身がわり犯人です。身がわり犯人のようなものに補償する気持ちは毛頭ありません。だから、そういうこまかい問題については、私も十分腹に入れてお話をしておるつもりであります。この機会にそれらの点を十分勘案をされて、法務省が主体になりまして、この刑事訴訟法並びに刑事補償法、この二点を、人権の問題として全般的に手直しして、すみやかに国会に上程されるよう、またあわせて法務省限りで行なっております被疑者補償規程は、法律に基づかず歳出を行ない、しかも規程がありながら、二年の間に六件三万円しか無罪の人に出していないということは、私はあらゆる意味において、この規程はむしろ即刻なくすべきだ、こういうふうに痛感をするわけであります。法務大臣の御意見を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  165. 赤間文三

    赤間国務大臣 お述べになりました予算は、御承知のように、これは最高裁のほうの予算に組んであると私は承知しております。お述べになりました趣旨は、非常にごもっともでございます。前向きで、十分御趣旨に沿うように努力をいたしますことを、はっきりと申し上げます。
  166. 横山利秋

    横山分科員 終わります。
  167. 上村千一郎

    上村主査代理 次に、山田太郎君。
  168. 山田太郎

    山田(太)分科員 きょうは、御通告申し上げておりますように、拘置所並びに刑務所の移転問題についてお伺いしたいと思っております。  そこで、この移転問題に際して、建築交換方式についての疑念と、そして現在問題になっております小菅刑務所の移転についての株式会社新都市開発センター、この会社についての問題点と、同時に建築交換方式に際しての青梅の友田地区と巣鴨プリズンの土地の評価に対する疑惑、この三点を主としてお伺いいたしていきたいと思います。  刑務所あるいは拘置所の移転に際しましては、地元の住民の皆さんからの問題がとかく——とかくというよりも、非常に多い実情でありますけれども、法務大臣は建築交換方式を最良の方法と思っておられるかどうか、そのことについてお伺いしたいと思います。
  169. 赤間文三

    赤間国務大臣 予算関係上やむを得ない、かように考えております。
  170. 山田太郎

    山田(太)分科員 やむを得ないということは、最良ではないということに解釈していいでしょうか。
  171. 赤間文三

    赤間国務大臣 最上というふうには考えておりませんが、予算関係で、そういう方式をとるよりほかにやむを得ない、かように考えております。
  172. 山田太郎

    山田(太)分科員 ではどのような欠点があるか、当局からお答え願います。
  173. 辻辰三郎

    辻政府委員 建築交換方式の問題でございますが、先ほど来大臣お答えになりましたように、予算関係で、現在移転を問題にしております施設を全部つくるといたしますと、二百数十億円の予算を要するということに相なるわけでございます。それを全部予算化して建築するということは、現下の財政上きわめて困難な事情であるということは十分承知いたしておりますので、現在法務省が使っております施設、これを財源にした交換を行なうということがやむを得ないことでございまして、最良でないという意味は、やはり一つの等価交換方式でございますから、事務的にもいろいろなめんどうな手続その他もございます。本来ならば、新しいものは建てる、古いものは払い下げるということであれば、手続はきわめて簡単にできるということを申し上げている次第でございます。
  174. 山田太郎

    山田(太)分科員 まことに恐縮ですが、その欠点が幾つあるか、述べていただきたいと思います。
  175. 辻辰三郎

    辻政府委員 本来、新しいものを建て、古いものは売り払うということと、建築交換方式といたしましても、やはり結果的には古いものを売り払い、新しいものを建てておるわけでございますから、本質的には問題は同じことになろうかと思うわけでございます。問題は、現在ある施設を評価し、新しい施設を評価して、交換という形式でやることに事務的な煩瑣があるという点が、しいて言えば欠点であろうと理解しているわけでございます。
  176. 山田太郎

    山田(太)分科員 事務的に煩瑣である、その加点以外にはないという御回答と解釈いたします。  そこで矯正局長にお伺いいたしますが、東京拘置所、現在の巣鴨プリズンと、建築交換方式によるものは、私の知る範囲では、小菅刑務所を改造して東京拘置所、岡山刑務所、旭川刑務所の移転、川越少年刑務所並びに浦和拘置所、これは仮称ですが、それに仮称の多摩刑務所であると聞いておりますが、金額的にどのような交換方式になるのか、簡単に教えていただきたいと思います。
  177. 辻辰三郎

    辻政府委員 お答えいたします。  先ほど御指摘のとおり、東京拘置所いわゆる巣鴨プリズンを財源といたしまして交換いたします計画でございますが、まず巣鴨にございます東京拘置所を、現在小菅刑務所でございますが、そこに持っていきまして、そこに拘置所をつくるわけでございます。そして現在の小菅刑務所を仮称多摩刑務所に移すわけでございます。この二つが主力でございますが、そのほかの、なお巣鴨の財源に余裕がございますので、旭川刑務所、岡山刑務所、それから川越少年刑務所、浦和拘置支所、これにつきましては、全部巣鴨の財源という意味でなしに、関係市の部分もございますが、その一部をこの交換によって取得したいということになっておるわけでございます。評価の問題は、巣鴨の評価を四十六億七千三百一万六千円といたしておりまして、それをそれぞれ、先ほど申しました各施設に割り当てておる次第でございます。
  178. 山田太郎

    山田(太)分科員 では、次にお伺いいたしたいことは、この小骨刑務所の移転先の青梅市の友田地区ですか、この移転について、いつごろからその交渉を、だれを相手に始めたのか。このことについては、わが党の同僚議員からも簡単にはお伺いしておりますが、もう少し深くお伺いしたいと思いますので、あらためてお話しいただきたいと思います。
  179. 辻辰三郎

    辻政府委員 経過から簡単に申し上げますと、現在の東京拘置——巣鴨プリズンでございますが、首都圏整備の関係で、立ちのくようにとの閣議了解が、昭和三十三年二月ございました。自来、法務省といたしましては、この東京拘置所の移転先につきまして、いろいろと物色をいたしてきたわけでございます。その結果、本来は東京都にお世話を願うというのが筋でございますので、東京都及び首都圏整備委員会、その他にお願いいたしておったのでございますが、東京都におきましては、昭和三十九年に至りまして、財政上の理由で、自分のほうが主体になって交換を行なうことは困難であるという、拒否の回答をいただいたわけでございます。そこで、いろいろ苦慮いたしておりましたところ、三十九年の七月になりまして、先ほど御指摘の株式会社新都市開発センターの発起人代表より、自分のほうが新しい刑務所の予定地を提供するから、池袋の拘置所あとに公共施設、その他の施設をつくりたいという申し入れがございまして、東京都及びその他関係機関といろいろと検討いたしました結果、この新都市開発センターを相手に交換契約を行なうということに相なってきたわけでございまして、契約は昨昭和四十二年二月に、青梅に関する部分はいたしておるわけでございます。かような関係で、この交換の相手方でございますセンターにおきまして、それぞれこの申し出をいたしますについて、地元の関係者にいろいろお話し合いをした結果、こちらへ申し入れてきたという経過になっておるわけでございます。
  180. 山田太郎

    山田(太)分科員 矯正局長にお伺いいたしますから、矯正局長答弁を求めます。  先ほど話のありました新都市開発センターの発起人という御答弁がありましたが、この新都市開発センターの発起人並びに現在の重役の名前を教えていただきたいと思います。
  181. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 お答えいたします。  最初は、発起人代表といたしまして、ソニーの井深大さんがお見えになっておられたわけでございます。現在の重役とほとんど氏名には異動ございません。  まず現在の重役を申し上げます。代表取締役社長中村建城、取締役副社長中田乙一、専務取締役大池眞、取締役安西正夫、同じく今里廣記、同じく一瀬幸雄、同じく清水雅、同じく田中甲二郎、同じく堤清二、同じく永野重雄、同じく水野成夫、同じく渡辺武次郎、同じく井深大、監査役谷育三、同じく副島勝、このうち当初の発起人の中には、中村建城、大池眞、一瀬幸雄、田中甲二郎、渡辺武次郎、谷育三、副島勝の方々は入っておられなかったわけでございます。
  182. 山田太郎

    山田(太)分科員 現在の予定地——予定地といいますか、もう契約の締結はできているそうですが、この問題の友田地区の前所有者はどこですか。
  183. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 西武鉄道株式会社でございます。
  184. 山田太郎

    山田(太)分科員 この西武鉄道株式会社が友田地区の住民の方々から購入するときに、どのような問題があったか御存じだと思いますので、答弁願います。
  185. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 西武鉄道株式会社が当該土地を買う際に、各地主との間に、それぞれ売買契約書を締結いたしております。その売買契約書のほかに、その西武鉄道に土地を売却する地主たちを取りまとめたり、あっせんをする部落の代表者の方々ではないかと思いますが、その人たちとの間に覚え書きというものが交換されております。その覚え書きによりますと、西武鉄道が観光開発の目的に使用するように努力をしてもらうということで、われわれも所要の土地を獲得できるように努力するという趣旨の覚え書きが交換されているというふうに承知いたしております。
  186. 山田太郎

    山田(太)分科員 では、新都市開発センターと交渉に入るときには——矯正局長は、その当時現在の御地位ではなかったと聞いておりますが、その交渉には当たっておられたと聞いております。そこで、この開発センターとの交渉に入るときには、先ほど御答弁のありました、観光の目的に供するという覚え書きが入っている、一札入っているということは承知して、交渉に入られたわけでしょうか。
  187. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 最初交渉に入る際には、そういう覚え書きが交換されているということは私は承知いたしておりませんでしたが、交渉が進むに従いまして、そういう話し合いが行なわれていたということを承知したようないきさつでございます。
  188. 山田太郎

    山田(太)分科員 交渉が進むにつれて、そのような一札が入っておったということを承知して、そうして新都市開発センターと契約を結んだとおっしゃるわけですね。
  189. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 契約を結ぶ際には、当該土地を、新都市開発センターが所有権を獲得しているということを前提にして話をいたしまして、その結果、四十一年の十二月七日に西武鉄道と新都市開発センターとの間に売買契約が成立をした、このように承知をしております。
  190. 山田太郎

    山田(太)分科員 住民の方々が、観光の目的に供する、それが大きな目的であった、その目的のために西武鉄道に売ったということを承知しておりながら、当局が、相手は違うといえどもその交渉に入るということは、任国の方々の意思を無視しておると判断していいでしょうか。
  191. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 その点につきましては、相手方に対して十分納得、了解を得るということを条件にいたしておりまして、その後、状況を聞きましたところ、周囲の事情も変わっており、この点については住民のほうの了解はだいじょうぶであると、こういう結果の報告が参りまして、それによってやったものでございます。
  192. 山田太郎

    山田(太)分科員 私は、絶えず法務大臣が叫んでいらっしゃる正義を貫くという意味においても——ここに、このような決議文があります。「さきに法務大臣代理として来青された法務省勝尾理部長は当市議会において、地元民との了解なしには絶対に刑務所設置ならびにそれに付随する事項については、着手せぬと確約したにもかかわらず、新都市開発センターならびに西武鉄道株式会社との間の売買契約の締結を迫り、その契約をさせた行為は、われわれ青梅市議会に対する不信行為とみなされる。」等々、あと続いておりますが、この決議文についての覚えがおありでしょうか。
  193. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 その決議文自体については、私、承知いたしておりませんが、おそらくその決議文の出る相当前ではないかと思いますが、移転の経緯を詳細聞きたいという青梅市側の要望がございまして、私、青梅市へ出かけまして、市議会議員全員であったと思いますが、に対しまして、移転の経緯その他の御説明を申し上げたことがございます。その際に、地元の了解が完全につかないで着工するようなことがあるかという御質疑がございましたので、移転問題につきましては、あくまでも地元民との間に十分話し合いがついた上で着工するという方針をとっているということを御説明申し上げたことがございます。
  194. 山田太郎

    山田(太)分科員 時間がありませんので、一言要望しておきます。  その次に、このようなことが書いてあります。「また、われわれ市議会も異例の会期の延長を行ない、再三、法務省の来青を要望したにもかかわらず、何ら誠意ある態度の見られなかったことは、まことに遺憾である。法務省は、この不信行為に対し、善処するとともに、今後かかる行為のなきよう要望する。」昭和四十二年、去年でございますが、先ほどの御答弁とはちょっと様子が違っておったようでございます。そこで、その問題はこれからの法務省の態度として要望しておくとともに、現在この土地は新都市開発センターの所有になっておるとの御答弁でありましたが、登記面においては依然として西武鉄道であると承知しておりますが、どうでしょうか。
  195. 辻辰三郎

    辻政府委員 御指摘のとおり、現在この土地の旧農地部分を除きます大部分は、所有権は新都市開発センターに移っておりますが、その移っております部分につきましても、登記面はなお西武鉄道株式会社になっておるものと考えております。
  196. 山田太郎

    山田(太)分科員 では、西武鉄道と新都市開発センターとの売買契約書はいつ締結されて、どのようになっておりますか。
  197. 辻辰三郎

    辻政府委員 昭和四十一年十二月七日付で、新都市開発センターと西武鉄道との間に売買契約が行なわれておるものと承知いたしております。
  198. 山田太郎

    山田(太)分科員 それはあなたはごらんになっておりますか。
  199. 辻辰三郎

    辻政府委員 その写しを見ております。
  200. 山田太郎

    山田(太)分科員 建築交換方式といえども、その土地国民のものでございます。通常の取引の場合、新都市開発センターがトンネル会社ならばいざ知らず、先ほどのお話にありましたように堂々たる方々が重役に陣を連ねていらっしゃる。そのために、普通では登記においても第三者に対抗できる措置をしておいてからの契約というものがなされていくのが当然だと思うのですが、その点は信用したという御答弁でしょうか、どうでしょうか。
  201. 辻辰三郎

    辻政府委員 西武鉄道株式会社から新都市開発センターに本件土地が譲渡されております。で、御承知のように登記は第三者対抗要件でございますので、本件の場合には、西武鉄道株式会社と新都市開発センターの間に所有権の移転の契約があれば、それで契約の相手方として十分であると考えた次第であります。
  202. 山田太郎

    山田(太)分科員 保存登記がしてなければ第三者に対抗できないということは、もう御承知思います。それを承知でそのような契約をなさっているわけですか。
  203. 辻辰三郎

    辻政府委員 登記法律的効果につきましては、十分これを承知した上で契約をいたした次第でございます。
  204. 山田太郎

    山田(太)分科員 この問題はあとに譲るといたしまして、後の日にいたします。  新都市開発センターとの契約書によりますと、巣鴨プリズンの土地は坪当たり単価幾らになっておりますか。
  205. 辻辰三郎

    辻政府委員 巣鴨プリズンの土地の評価でございますが、これは現在の建築物を解体いたしましてさら地といたしました評価でございますが、平均して坪当たり二十七万六千六百六十一円となるわけでございます。
  206. 山田太郎

    山田(太)分科員 私は現地へ行って、その周辺の土地の実際に取引されている値段も調査してまいりました。算出方式はどうのこうのというそのようなむずかしい問題はあるかもしれませんが、しかし、これは内密である、秘密であるというふうなことになっているやにも聞いております。ただ、問題点は、実際に調査したところによりますと、あるたばこ屋さんは七十万円で売れておる。また、その近辺でございますが、四十万円で取引しておる。土地が広大であるからというだけにはとどまらないそこに大きな値の開きがあるということを感ずるわけですが、その点については、なぜそのように安い値段で取引されるようになったのか、それを教えていただきたいと思います。
  207. 辻辰三郎

    辻政府委員 御承知のように、国有財産の払い下げあるいは購入の場合の物件の土地の評価その他の問題は、権限はすべて財務局、大蔵省系統で評価をなさるわけでございます。本件の場合も、大蔵省のやっておられます一般方式によりまして、大蔵省におきましていろいろと慎重に御検討の結果評価された金額でございます。
  208. 上村千一郎

    上村主査代理 山田君に申し上げますが、お約束の時間が参っておりますので、簡潔に願います。
  209. 山田太郎

    山田(太)分科員 法務大臣にお伺いいたしますが、このような先ほど申し上げた覚え書きといいますか、覚え書きは価値がないものでございましょうか、その点を私しろうとでございますから、法務大臣から御答弁願いたいと思います。
  210. 赤間文三

    赤間国務大臣 お答えをいたします。  法務省としては、十分研究をしてその処置をやったように私は聞いております。
  211. 山田太郎

    山田(太)分科員 結果論から言いますと、法務大臣はどのような覚え書きであろうとも、結果から言えば無視したのだと解釈せざるを得ないのですが、どうでしょうか。
  212. 赤間文三

    赤間国務大臣 十分その効果を研究して契約したように私は承知しております。
  213. 山田太郎

    山田(太)分科員 私の問いの答えになっていないと思います。もう一度答えていただきたい。
  214. 赤間文三

    赤間国務大臣 政府委員から正確な答弁をさせますので、御了承ください。
  215. 辻辰三郎

    辻政府委員 先ほどのもとの地主さんから西武鉄道株式会社がこの土地を購入いたします際の覚え書きでございますが、私どもは、土地を売り払います場合の一つの動機であるというふうに理解をいたしておるわけでございますけれども、そういう点はさておきまして、やはりそういう経過があったことは事実でございます。これの正確な法律的な判断というものは、結局、訴訟になって裁判所が御判定くださる問題に突き詰めればなるわけでございますけれども、法務省当局といたしましては、その覚え書きを十分に検討いたしまして、こういう覚え書きを前提としても、なおその当時の一般の地元の関係者の御意向その他を照らしてみまして、これはこれを前提にして契約をしても国としては欠くるところがないと判断をいたして、契約したものと理解いたしております。
  216. 上村千一郎

    上村主査代理 山田君に申し上げますが、お約束の時間が参っておりますので、簡潔に願います。
  217. 山田太郎

    山田(太)分科員 法務当局は、そのような民間人とあるいは民間人同士との覚え書きは、都合によってはそれを無視する、結果論から言えばその結果になってきますが、そのような態度ではそのようなまた法務当局の方針ととられてもしようがないと思います。いまこの青梅の友田地区における刑務所移転については、住民の方々が猛反対しております。この点についての法務大臣のこれからとっていこうとなされる方針、具体的な方針があればその具体的な方針、それを述べていただくとともに、この覚え書きは大臣とするならば無視できないはずです、平素の大臣の御主張から考えましても。それをあわせて、覚え書きに対する法務大臣の方針と、それから友田地区に対してこれからどのように臨んでいくか、どのような具体的な方針で臨んでいくか、それを答弁していただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  218. 赤間文三

    赤間国務大臣 私の考えは、住民のほうで反対があるということであれば、話し合いの上で反対を解消してわれわれがやらんとすることを遂行していく、あくまでその反対をむやみと押し切って、無理にでもやっていこうという考えはできもしませんが、そういう考えは持っておりません。あくまで、反対があれば反対をひとつ緩和してやっていきたい、そういう考え方を持っております。  それから、大体移転の問題は、やはり自然にいかないと、あまり無理をしては、私は移転はできにくいのじゃないかという考えをもともと持っております。どこか双方が話し合いの上でうまくいけば移転ができるし、それがうまくいかないとなかなか長引くのじゃないか、こういうふうな考え方を私は持っております。しかし、法務省としては一たん思い立ったことであるから、私は無理は面して説得を十分やって、無理のないような方法でできれば実現をしたい、そういう熱意に燃えております。
  219. 上村千一郎

    上村主査代理 次に、沖本泰幸君。
  220. 沖本泰幸

    沖本分科員 私は、限られた時間の中で法務省の出入国管理令を管理法に改正する問題点と、ジャンボジェットの時代に対する東京国際空港の現在の受け入れ態勢、そういう二点についてお伺いしたいと思います。  主査に申し上げますが、極力時間内につとめてやろうと思いますが、はずれましたらよろしくお願いいたします。それから答弁者のほうも、できるだけ、時間がありませんのでお答えのほうは簡潔に願いたいと思います。  入国管理局長さんにお伺いいたしますが、最近の船舶とか航空機、こういうものによる出入国の状況、おもに人員のほらですが、それは三十九年の東京オリンピックのピーク時代、こういうときと現段階と比べてどういうふうな現況にあるか、こういう点簡単に御説明願いたいと思います。
  221. 中川進

    ○中川(進)政府委員 出入国者の数は漸次ふえてまいっておりまして、昨年昭和四十二年は全国であらゆる種類の出入国総数を足しますと、三百十四万九千三百九十四件になっております。
  222. 沖本泰幸

    沖本分科員 それが昭和四十五年にはジャンボジェット機時代が到来する、こういうことで法務省の出入国管理のほうも、あるいは税関のほうも、また運輸省のほうも、これに対する受け入れ態勢というものをいろいろ御検討なさっていらっしゃると思いますけれども、これに対してどういうふうな対策を現在お立てになっていらっしゃるか、この点運輸省、大蔵省、法務省から簡単に御説明願いたいと思います。
  223. 梶田久春

    ○梶田説明員 お答え申し上げます。  四十五年早々にはジャンボジェット機が日本に飛来するということでございますので、御承知のように、現在の東京国際空港はまことに手狭でございまして、まずニプロン地域の拡張、さらには出入国を含めました旅客の受け入れ態勢というものを早急に検討しなければいけないというかっこうになっております。したがいまして、運輸省といたしましては四十三年度からバースの拡張、いわゆるエプロン地域の拡張を実施いたすことにいたしております。御承知のように、現在乗降用のバースが三十一でございますが、それを四十六まで拡張する計画を四十六年度までに完成いたしたい、かように考えております。  また税関、出入国管理、検疫の受け入れ施設につきましても、現在の規模のおおむね二倍程度の増設を考えたいと、目下関係機関とその方向で検討中でございます。
  224. 赤間文三

    赤間国務大臣 お答えを申し上げます。  ジャンボ時代の出入国審査を円滑に実施することはなかなか困難があると考えております。明年度はとりあえず十二名の増員を認められ、さらにこの機会に勤務体制の合理化をはかって、効率的な人員の配置をやっていく、また審査用能率器具の整備をも、これはひとつはかっていきたい。そして、なお今後とも、もう少し人間の増員ということも考えていきたい、かように考えております。御了承願います。
  225. 鈴木邦一

    ○鈴木説明員 税関といたしましては、第一に、夜間に旅客が集中している現状でございますので、五当直制をしきまして、夜間のピーク時に多くの職員を配置できるように考慮しております。  第二点といたしましては、昨年の六月に関税定率法を改正いたしまして、旅客につきまして簡易税率表を適用することといたしまして旅客の徴税事務の迅速化をはかっております。さらに、徴税事務の迅速化をはかる見地から、加算機、金銭登録機等を導入して徴税事務の迅速化をはかっております。  人員の点につきましても、羽田の税関につきましては、年々重点的に人員の増加をはかってきておるわけでございますが、昭和四十三年度におきましても十六名の増員が認められたわけでございます。今後とも非常にきびしい環境のもとでございますが、この点については十分努力していきたいと考えておる次第でございます。
  226. 中川進

    ○中川(進)政府委員 ただいま大臣が申されました点を若干補足いたしますが、大臣が申されましたごとく、羽田には四十三年度の予算におきまして十二名の増員を要求しておりまして、いま御審議を願っておるわけでございますが、これと対応いたしまして、万国博にも備えまして、関西地方の客もふえることでございますので、とりあえず明年度は伊丹に五名の増員を計画しております。それから板付に二名、そういうふうにやっております。それから少しロングレンジな考え方といたしましては、何と申しましても、大臣も申されましたごとく、職員の能率向上ということが大切であろうと思いますが、私どもの商売柄といたしまして、それで大きな作用をなすのは語学でございまして、語学の研修を従来もやっておりますが、さらに積極的にやらしたい、かように考えておりまして、新しい機軸といたしましては、昭和四十三年度から、従来はございませんでしたが、ロシヤ語の研修を、わずかではございますが二名でやらせる。英語、中国語、朝鮮語というものは従来どおりやらせるというつもりでおります。
  227. 沖本泰幸

    沖本分科員 とっぴな質問でございますが、法務大臣は現在のジェット機には平均どれくらい乗れるか、ジャンボーになるとどれくらい乗れるか御承知だろうかどうか、お伺いしたいと思います。
  228. 赤間文三

    赤間国務大臣 ジャンボは大きければ四百五十名くらいは乗れる、それから比較的小さくても三百五十名くらいは乗れる、かように私は聞いております。
  229. 沖本泰幸

    沖本分科員 いま三百五十くらいから四百、こういうふうにお答えになったわけですけれども、明年度十二名増員、昭和四十五年度ということになりますと明後年度ということになるのです。そのときは万国博とかち合うわけですね。そうすると、先ほど運輸省のほうの計画を発表されましたけれども、約二倍の計画を進めておるという運輸省のおっしゃっておることと法務省のおっしゃることと全然倍率なんか合わないわけです。東京空港の場合は、どうしても現在の倍のあれでなければ消化できないという考え方から各省との間に交渉をやっておる、こういうことをおっしゃっておるわけです。そこで能率の合理化あるいは勤務体制を合理化していくと言いますけれども、現実にゆうべ行ってみたんですけれども、カードの整理をするところなんかは通風装置が一つあるだけで、夏になると蒸しぶろになっている。現在自体が非能率なんです。それから入ってきたお客さんは、ジャンボになると、現在でさえ一番ピーク時になってくると足の踏場みもない、こういうふうな現況を呈しておる。そういう現況に合った対策をお立てになっているお話じゃないと思うのです。語学の点についても御質問すると申し上げていたからお答えがあったのだと思いますけれども、ロシヤ語に力を入れてお話しになったわけですけれども、現状は英語だけで、フランス語もドイツ語もゼロである。それじゃ何にもならないと思うのですね。英語だけでやっとであり、勉強するにも勉強時間がない。いまブースが十二あるけれども、全員を六班に分けて各班が全力をあげてやっても、ブースの半分しか使ってない。その半分の中で仕事をやり出したら便所へ行く間もない。どうしても便所へ行きたくなって立ってくると、入管の審査を受けている人があとについてくるという。食事へ行く間もないから、夜食の時間を使って食事をしている。これじゃどういうふうにして能率化をはかれるかということになるわけです。まず、その人員をふやす以外にどうしようもない。こういうことになるのですけれども、こういう現況で、いまお話しになっている点では全然話にならないわけです。そうして港の審査官を連れてきてここへ充てるにしても、少なくとも四カ月、五カ月は養成期間が要る、こういうことで、いま全国の審査官は手一ぱいである。あとでこれは運輸省のほうから答弁していただきますが、ジャンボははたして東京国際空港だけ入るのか、万国博の時代になったら伊丹へ入らないのかということになってくると、きょう聞きますと伊丹へ入るということなんです。それじゃ伊丹のほうに現在五名増員して、それで消化できるかということになってまいります。この点、大臣のほうからお伺いしたいと思います。
  230. 赤間文三

    赤間国務大臣 お述べになりましたように現在は非常に人手不足で、少々増員はいたしましたが、まだ不足に考えておりまするので、四十四年にはまた相当、入管に関しましては飛行場等につきましても人を増員していきたい、かように私考えております。
  231. 沖本泰幸

    沖本分科員 いま申し上げたから御答弁があるのだと思うのですが、そういうお話からいくと、ジャンボ時代に対してどれだけの増員計画で、どれだけふやして何名にしていけばどういうふうな消化ができるか、そういう点が全然無計画じゃありませんか。その点いかがですか。
  232. 中川進

    ○中川(進)政府委員 確かにジャンボ時代になりますと、先生御指摘のごとくただいまの百十九名、それに十二名の増員が認められまして百三十一名に明年度からなるわけでございますが、これだけの人員をもっていたしましては、いかに百人力に働きましてもとうていこれを処理し得ないことは承知しておりますので、ただいま大臣が申されましたごとく、明後年度からは画期的な人員の増強の養成をいたしたい、かように考えております。ただ、日本へ来る人の数の増加というものは、先生よく御承知のごとく、昭和四十一年から四十二年にかけまして大体一七%のアップでございまして、交通手段がジャンボになりましたからといって、一躍その年から、その前年度に比較して、すなわち昭和四十四年と四十五年と比較して日本へ来る人が三〇%も四〇%もふえることはまあなかろう、やはり二〇%ぐらいの増加率じゃないか、かように考えておりますので、私どもといたしましても、先ほど申しましたごとく、これに対応するように職員の画期的な増強をぜひ四十四年度からは要求かつ実現したい、かように考えております。
  233. 沖本泰幸

    沖本分科員 簡単に増強するということをお答えになるわけですが、実際に行って聞いてみますと、熟練の審査官でも、空港の扱いは、先ほど申し上げたとおり四カ月、五カ月は養成しないと間に合わない。そうすると、新たに審査官をつくり出していこうということになると、少なくともどこかのそういうふうな特殊な学校へ入れるとか、あるいは港のほうの通関の、あるいは入国の審査のところで何年か養成されて出てこなければ一人前の仕事はできない。ところが、いま法務省にはそれを充足するだけの者はゼロである。これから新規に募集して、応募してきた人を採用するにしたって明後年度には間に合わない。こういう非常に矛盾したものが出てくるんです。そうしてここは日本の表玄関なんです。表玄関をどういうふうにして外国の人に感じよく、また日本の国に将来もどんどん来て、日本の国の発展に寄与もしてもらえるように人の出入りがよくなっていく、こういうふうになってもらうには、やはりそういう点がスムーズに行なわれなければならないと思うのですが、大臣、この点は耳新しいお話で、そこまでは十分お考えになっていないと思うのですが、大臣のお立場としてこれはたいへんだ、何とかしなければならないというような点から、どういうふうなお考えをお持ちでしょうか、率直にお答え願いたいと思うのです。
  234. 赤間文三

    赤間国務大臣 全くお述べになりましたように私も考えます。少なくとも万国博覧会を前にいたしまして、外国から来る人、また出入国人間にあまり不便利な目にあわせず、気持ちのいいような入国ができるようなことに、十分ひとつくふうをして切り抜けていきたいと考えております。いろいろ困難はあると思いまするが、まだ時間もありまするので、十分ひとつ万国博等のことも考えて、不便を与えないよう全力を尽くして期待に沿うようにやっていきたい、かように私考えております。
  235. 沖本泰幸

    沖本分科員 運輸省のほうにお伺いしますが、日本航空のほうでは、いわゆるジャンボ機を二機、DC8のスーパーというのをいま二機注文して、この秋には入ってくる、こういうふうなことも聞いておるわけですが、現在もうカナデアン航空では二百五十人乗りがときどき入ってきている。ですから、一時にふえるということよりも自然にどんどんふえてくる、こういうことになりますし、きのうも運輸大臣のほうは、ソ連の飛行機を買ってもいい、こういうふうな表明をなさっているわけです。そうすると現実にこれは入ってくる、くるようになれば。こういうことになってくると、どういうふうな状況でこのジャンボジェットが——成田のほうはいまああいう状態ですから、話がつくにしてもなかなかの問題です。そうすると、どうしても日本の玄関は羽田になるわけですが、羽田にどういう状況のもとにジャンボ機が入ってくるのか、こういう点についてお答え願いたいと思います。
  236. 梶田久春

    ○梶田説明員 日航のジャンボジェット機につきましては、四十五年の三月に第一機が入る予定になっております。引き続いて一カ月ないし二カ月ごとに一機ずつ、計三機入るように聞いております。お話のありましたように、成田の新東京国際空港完成までの間、現在の羽田でもってそういったジャンボあるいはストレッチタイプのDC8の飛行機を全部受け入れなければいけないわけでございますが、先ほども御説明申し上げましたように、現在の羽田空港はエプロン地域がまことに狭うございます。そういった意味で、飛行機がせっかく着きましてもなかなか駐機するところがないという状況でございますので、四十三年度から四十六年度までにかけまして早急にエプロン地域を拡張する、またジャンボジェット機等が入ってまいりますと、一時に多数の乗客が到着するわけでございますので、こういった乗客をスムーズに流すというのが空港当局の責任でございます。その間、税関あるいは入国審査といったチェックの機関がございますが、こういった面の施設につきましても、先ほど申し上げましたように、関係機関と施設の増設につきまして目下打ち合わせ中でございます。ジャンボジェットの到来までにこういった施設の面も解決いたしまして、乗客のスムーズな流れというものを完遂いたしたい、かように考えております。
  237. 沖本泰幸

    沖本分科員 運輸省のほうも、御答弁の中でお忘れになったのかもわかりませんが、問題は人だけじゃないのです。貨物のほうもたいへんな増加率を示しておって、人どころではない。到着貨物はもうものすごい勢いで、船に乗せるのかと思うようなものが到着しておる。だからジャンボになると、現在はいわゆるカーゴのビルができておるけれども、それをうんと移転さしてもらわなければならない、こういうようなことが税関のほうの現地のお話だったわけですが、きょう課長さんにいろいろ事情を聞きますと、臨海の青写真を持ってきて見せてくれましたけれども、計画書で現在の入管やそういう点の取り扱い場所は横に移す、現在のカーゴビルのところに移していくという計画をお話しになったわけですが、その内容は全部鉛筆書きであるわけです。ということは、私の皮肉な想像かもわかりませんが、にわかに私あてにおつくりになったのじゃないか。そういう点がどうも現実とぴったりこない。  それから、各御答弁内容を伺ってみますと、お話がばらばらである。現地へ行ってみますと、税関のほうは休憩するところにも十分冷房もあるし、事務所にも冷房が行き届いている。それから入管のほうに行って見てみますと、やっと場内あるいは飛行場が見渡せるテレビをこの間据えてもらったところですと大喜びしていらっしゃる。そういうような点の食い違い、ちぐはぐというものは、各省間の連絡が全然ばらばらである。また、自分の持ち場のところの整備状態も、全部各省から予算を出してもらってやっているから、まるっきり法務省が一番貧弱な内容になっておる、こういう点が見受けられたわけです。  それから運輸省のほうにも、現在自体問題があるわけです。出ていくお客さんにはずいぶんきれいにして出ていっていただいているのですけれども、入ってくるところはもうごちゃごちゃになって、バスも何か路地から出ていくとか、全く外国から来たお客さんを扱うような玄関口じゃないわけですね。こういうことで日本の玄関でございますというようなことが言えるか。また、ジャンボジェットが入ってくる、あるいはSSTが入ってくる、こういうような新しい感覚と飛行場の感覚というものを実際に見てみると、もう全然ばらばらである。何か成田空港だけに一生懸命力を入れて、それができさえずればいいじゃないか、こういうような感覚を十分受けるわけです。これは早急に現在自体を改善してもらわなければ全く日本の恥である、こういうふうに考えておるわけですけれども、その点を十分御留意になって、早急な改善方を私は各省に御要求申し上げます。大臣のほうもこの点はよくお耳にとどめていただいて、実際行って見ていただいて——大臣の田中さんは、実際中へ行かれて仮眠室まで見てこられて、これはいけないということで直されたということでありますから、遠いところではございませんから、一ぺんごらんになってみたらおわかりになると思うのです。こういう点は早急に改善していただかなければ、全くたいへんなことが起きるのではないか、こういう点が危倶されるわけです。  時間もありませんから結論に移りますけれども、昨年法務委員会で、私は前田中法務大臣にいろいろ御質問して、そのときに確約していただいた問題は、現在、昭和二十六年のGHQの指示によってやっとできたところの、アメリカの移民法を横写しにしたものが日本の出入国管理令です。当時は全然日本航空も存在していなかった。ただGHQが指示した数社の外国の飛行機が入ってきておっただけである、特に航空機に関してのみを申し上げるわけですけれども。ですから、当時の出入国管理令というものは、ほとんど海を対象にしたところの考えである、また問題であった。ところが、管理令自体がアメリカ移民法をそのまま使っておる、ほとんどそのままである。それが、現実日本航空がなかった東京空港あるいは日本入国管理という点から、いまは、今度ジャンボが来る、SSTが入ってくる、こういうふうな時代感覚あるいは宇宙衛星がどんどん飛んでいる現実の時点で、日本の国が、この入国管理令をこのまま事よしと済ませておること自体がおかしいということになるわけです。外国から日本へ来て、日本入国管理についてはどういう法令でしょうかとお聞きになると、実は日本は政令の出入国管理令でございます、こういうことは全くお恥ずかしい次第ではないか。こういう点で昨年大臣にいろいろ御質問しましたところが、大臣は、来年の通常国会には、全く言うとおりだから必ず管理法を提案します、絶対これはやりますからということを確約なさったわけですけれども、いまもって出てこない。現実には今国会には間に合わないだろう。いろいろ聞いてみますと、各省間の折衝が多岐にわたっておるから、その間の調整が全然とれない。こういうことなんですけれども、その下のほうでそういう問題だけをもまないで、大臣が、どういう点に各省間の食い違いがあるのか、そういう点を御自分でおつかみになって、閣僚会議にでも実際お出しになって、日本の国の恥だからこれを早く出させてほしい、こういうふうな御交渉をなさって早急な成立を見るようなお考えはないのでしょうか、どうでしょうか。
  238. 赤間文三

    赤間国務大臣 御意見の点まことにごもっともに思いますし、前大臣も非常に努力をせられておりまするし、また、事務的にも入国管理令改正については熱意を持って努力をしてまいっておるのでございます。できるだけ早い機会に出していきたい、かように私考えております。
  239. 沖本泰幸

    沖本分科員 いまの大臣の御答弁——地域的なことを申し上げては非常に失礼でございますけれども、大臣も大阪御出身なんです。万国博というものにはやはり多少は興味をお持ちだと思うのです。万国博でどんどん外国の人が入ってくる。こういう事態をお考えになってみて、同時に、最近はアメリカの逃亡兵であるとか、いろいろな対外国の出入国の問題がたくさん出てきているわけです。そういうものを扱うのに、ただ単に管理令だけでということではありませんけれども、少なくとも法律にして、内容を充実していってこういう問題を明確にしなければならないわけです。そういう点がなおざりになっているという点に、大きな問題があると思うのです。これをやってきびしく締めるとまたたいへんな問題が起きてきますし、ゆるめるとまた問題もあるという点で、おつくりになる上にたいへん御苦労があることはわかりますけれども、こういう点をすみやかにやって明らかな問題にしなければならないわけなんです。そういう点に対する大臣の御答弁が、できるだけ早い機会にと、こういうふうなお答えのニュアンスがどうも私にはぴんとこないのです。前の大臣も、次の通常国会には必ず出します、こういうふうにはっきりおっしゃったわけなんです。大臣の御確信として、閣議にもはかりましょう、あるいはできるだけといっても、次の国会に間に合わすとかなんとかいう目途をお立てになってお答えいただきたい、私はこう思うわけなんですが、いかがでしょうか。
  240. 赤間文三

    赤間国務大臣 お答えを申し上げますが、実は今国会に出したいということで、ずいぶん努力もしてみたのでありますが、ごく一部分まだ未解決の点が残っておりまするので、そういう意味で、私はできるだけ早く何とかこれを提出したい、こういう意味でお答えを申し上げた次第でございます。私も大阪でございまするし、万国博覧会はどんなことがあっても成功させなければならぬ。たいへんな人間外国からも来る。東京の飛行場にしても、さきにお述べになりましたと全く同感で、みんな一致団結して、すべての人が力を合わして、日本の玄関をよくしなければならぬ。また、大阪のほうも気にかかっておりまして、あそこもひとつ思い切って、東京とあわせてりっぱなものにしなければならぬ。全くあなたと同じ考えを持っておりまするので、全力を尽くして、御期待に沿うように勉強させていただきたいと思います。
  241. 沖本泰幸

    沖本分科員 時間が参りましたから、そのほかの関連の問題は各委員会でいろいろお伺いしたいと思います。  以上で質問を終わります。
  242. 上村千一郎

    上村主査代理 次に、八木一男君。  この際、まことに恐縮でございまするが、八木君に念のために申し上げますが、質疑持ち時間は三十分となっておりますので、あらかじめお含みの上、御質疑をお願いいたしたいと思います。
  243. 八木一男

    八木(一)分科員 法務大臣はじめ法務省関係の方に、おもに同和問題に関連をいたしまして、御質問を申し上げたいと考えているわけでございます。  先日、この予算委員会の一般質問で、内閣総理大臣をはじめ関係大臣に、同和問題についての御質問を申し上げまして、各大臣から御答弁をいただいたわけでございます。残念ながら時間が切れまして、法務大臣から十二分な御所見を伺う時間がありませんでしたので、その件に関して、法務大臣にまず最初に御質問を申し上げたいと考えているわけでございます。  同和問題は、憲法の各条章に抵触する問題がたくさんございまして、憲法第十一条、第十四条あるいは第二十四条、第二十五条、第二十六条、第二十七条、憲法の条章が非常に実現されない状況にあるわけでございまして、この問題の解決は非常に重大な問題でございます。そのことで国会と政府の間に昭和三十二、三年以来努力が続けられて、その問題を解決するための意思統一が行なわれておりまして、それに従って、同和対策協議会というものが設置をされまして、一昨年の、昭和四十年の八月に、同和対策審議会の答申というものが出たわけでございます。内閣総理大臣が、再三、その同和対策審議会の答申の完全実施と、その問題の中核をなします十二分な内容の同和対策特別措置法の早期提出、早期成立についてお約束をいただいておるわけでございまして、その間の事情は、先日、予算委員会一般質問で申し上げまして、御列席でございましたので、赤間法務大臣には十二分に御承知であろうと思います。総理大臣が再三約束をされました同和対策審議会の答申の早急な完全実施、それから十二分な内容を持つ同和対策特別措置法の本国会における成立に間に合うような早期提出について、国務大臣として、総理大臣より以上の御熱意を持って問題を推進していただきたいと思いますが、その問題について、赤間法務大臣の、国務大臣として、また法務大臣としての前向きの御決意をぜひ伺いたいと思うわけでございます。
  244. 赤間文三

    赤間国務大臣 お答えを申し上げます。  同和対策審議会の答申は、これは十分尊重しなければならぬと考えております。その実施のための長期計画の策定、並びにお述べになりました立法措置につきましても、現在同和対策協議会において検討中と承っておるのでありまして、その結論が近く得られると私は考えております。これにつきましては、御期待に沿うように十分努力してまいりたい、できるだけ御期待に沿うように全力を尽くしていきたいということを、はっきり申し上げておきます。
  245. 八木一男

    八木(一)分科員 明確な前向きの御決意を伺いまして、その点については、非常に感謝を申し上げたいと思います。  ただ、この問題に十数年間取り組んでまいりました者としての苦衷をぜひお聞き取りをいただきたいと思います。政治家の中には、非常に御勉強になられて、政治全般について卓見のある方が多うございます。また国家公務員の方の中に、高級公務員の方、ここにたくさんおられますが、そういう問題についても、全般的に行政について非常に熱心にやっておいでになると確信をするものでありますが、本問題は、地域的に認識の差がございまして、たとえば青森県の方、北海道の方にこの問題を申し上げましても、その政治家があるいは公務員の方がいかに優秀な方であっても、事情に対する切迫感がない。またはっきり言えばぴんとこないというようなことで、なかなかこの問題についてわからない。したがって、決意を持って前進する気持ちを慫慂しましても、そのとおりにやっていただけないという事情がございます。昭和三十二、三年ごろから問題に取り組んで、本年ですでに十年をこえておりますけれども、その間に政府と国会を通じて、国民との約束がありますけれども、大臣がかわられるごとに、あるいは局長がかわられるごとに、問題が停とんいたしまして、終始努力をしましても、そのことのために、問題の解決のための施策がおくれておるような状況であります。同和対策特別措置法の制定というようなものは、同和対策審議会をつくることのもとをつくりました昭和三十三年の三月の、当時の岸内閣総理大臣と国会との約束のことをみんな知っておられれば、もうすでに完全に二年前から始まっておると思う。そのときに、この問題を解決することは国の責任である、それから、こういう問題が出たことは、徳川時代以来の全部の政府の責任であって、これを解決するためには、これらの内閣が、何党の内閣であろうと、何人が総理大臣であろうと、全面的に取り組んで解決しなければならないということが、そこで確約になっておりました。具体的には、その当時、必要な施策はどんどん推進をする、そうしてそのような総合的な調査をし方針を出した審議会の答申があったときには、それを全面的に急速に促進をして問題解決に当たるという約束ができておるわけであります。したがって、そのことを御存じの方であれば、同和対審の答申が出たときに、その年から予算が組まれなければならない、その年から法律が制定されなければならないという状態でございますが、年が移り変わりますと、その当時の経緯がわからない方でちょっとだけ問題をかじった方が、問題の深さを知らずに、上つらだけをかじって、そうして眠った子を起こすなという、問題を逆行させる思想のもとに、ブレーキをかけるわけであります。眠った子を起こすななんということは、現象の少ないところにそういう声があります。すでに問題は解決しておるから、いまさらそういう問題を取り上げる必要はないじゃないかということを言う方がございます。これは問題の現象が薄いためであって、ないわけではない。それからまた、政治家なり公務員の方々が、いろいろその地区の方々にお会いになるときには、そこの中で出世した人、地区から出ていろいろな各級議員になられた人、あるいは会社の社長になられた人、こういうように、社会的に日の当たるところに出てこられた方々とお話しになることが多いわけであります。ところが、そういう人々は、同和地区の出身でございますが、すでにみずからの努力と運のよさ両方まざりまして、社会的にも地位を持っておられるのでありますから、差別の概念を乗り越えてそういうために自分自体はもうすでに差別を受けなくなっている。差別から淵源をした非常な貧困から脱却をしておられるという状態であります。したがって、そういう方々はもう解決が近づいているからあまり問題を掘り起こさなくていいということを、同和地区の関係の方々の、みずからそういうふうな状態になった方はおっしゃることがあるわけであります。それを受けて、同和地区の方々の意見がそうであるか問題を取り上げる必要はないんだ、眠った子を起こす必要はないんだというようなことを信じている方が一部あるために、それが猛烈なマイナスになるわけであります。で、同和地区の方々の百人のうち一人がそういうふうに運がよくて、あるいはみずからの努力で脱却をされた。あと九十九人は、努力にかかわらずそうでない状態にあります。そうでない状態を解決するためには、政治の本題として強力に取り上げて、いろんな施策を急速にやらなければ解決がつかないわけであります。ところが、そういうごく表向きの皮相的な理解をする方の意見によって往々にしてブレーキがかかるわけであります。そういうことがないように、そういうブレーキで問題の解決がおくれないように、赤間さんは大阪府の行政に当たられまして、同和地区の問題については非常にお詳しいと思います。実感もお持ちだと思いますので、どうか閣議において、あるいは与党の中の有力な政治家としての影響力で、あらゆる面において、あるいは人権の問題を主管される法務省長官として、そういう点についてあらゆる部面で御努力をしていただきたいと思いますのと同時に、各種のそういう協議会の、たとえば同和対策協議会なり、あるいはまた、その他の会議で法務省の代表の方が、次官あるいはその他の方が、そういう各省に関係のあることですから、代表の方が出られると思いますが、そこで法務省だけの立場ではなしに、この問題を解決することが絶対に必要であるという立場で、全部の問題が十二分に早く推進するように御発言なり御推進を願いたいと思います。大臣御自身の、また法務省の全部の方のそういう御努力についての大臣の指導なり支援なり、そういう点についての前向きの御答弁をひとつ承りたいと思います。
  246. 赤間文三

    赤間国務大臣 八木議員が非常にこの同和問題についてお詳しく、非常に努力をされていることは、敬服を私はしております。お述べになりましたように、人権のことを預かっておる法務省としては、ひとつ全力をあげてこの問題がうまく解決をするようにあらゆる面に最大の努力を尽くしていきたい、かように私は考えておるのであります。単に口ばかりでなくて、効果が、いまお述べになりました趣旨が徹底するように全力を尽くしていくということが、われわれ人権の受け持ちの者としても当然のことであると私は考えております。  率直に私の考えを申し上げて御参考に……。
  247. 八木一男

    八木(一)分科員 前向きの御答弁、非常に敬意を表したいと思います。  実は、人権の擁護で同和問題についての予算を要求をされましたけれども、残念ながら本年度の予算で削減をされているわけでございます。昨年より削減されたというのじゃなしに、大蔵省の査定で要求額どおりにいっておらないわけであります。それをこまかく申し上げるつもりはございませんが、法務省だけではなしに、各省の、たとえば厚生省なり農林省なり通産省なり、それから建設省なり文部省なり、そういうあらゆる省の要求が全部で七十八億ほどありましたのを、同和予算として大蔵省のほうでは六十一億五千万円に査定をされました。要求が削減をされているわけであります。この問題は、実は大蔵省のほうは財政硬直というようなことをいって、各省の予算を削減することがただ一つの大蔵省主計局の任務であるように行動しているふるまいがございますけれども、数百年の問題を解決する問題で、明治以後百年間の問題を解決する問題で、最近国会で政府との約束になりまして十数年経ております。さっき申し上げたような過程で出ておりますので、この一両年間の財政硬直とか、そういうような一時的現象でこれがブレーキをかけられるべき筋のものではないわけです。しかも、いままでの予算はできるだけふやすという約束、同和対策審議会の答申ができて本格的に始めるときには飛躍的に増大をさせなければならないというところでございますから、それを一般的なほかの現象と同じように考えて、財政硬直だからとめるんだ、あるいは伸ばしても伸び率を前より減らすのだというようなことを大蔵省が考えているとするならば、これは同和問題の本質を全然わきまえない、それにブレーキをかけるやり方だと思うわけであります。法務省関係で主計官も来ておられると思いますが、特に予算委員会分科会でございますから、法務省自体のこと以外に予算関係のあることを申し上げているわけでございますが、法務省予算総額は、同和問題についてはそう多くないケースでございますから、特に内容まで申し上げませんけれども、閣議その他でそういう問題について一時的な現象でブレーキをかけてはならない。それからもう一つは、飛躍的に今度ふやさなければならないものだから、一般的な、前の予算に対して伸び率はこの程度にとどめおくというような大蔵省的な考え方では、これは何百年にわたる何百万人の人たちの人権の問題を解決することにはならない。そういうことは許されないという態度で、ひとつ国務大臣として閣議をリードしていただきたいと思うわけであります。これは各大臣にお願いをいたしますけれども、特に人権の擁護の責任を持っておられる法務大臣、特に大阪で問題をよく御存じの赤間法務大臣に特にこの点についての強い熱心な御対処を再度要望しておきたいと思いますが、これについて……。
  248. 赤間文三

    赤間国務大臣 ご要望の点はよく了解をいたしております。できるだけの努力をいたします。
  249. 八木一男

    八木(一)分科員 では一般的な問題はそれだけにいたしまして、法務省管轄の問題で御質問申し上げたいと思います。  先日本院の法務委員会で同僚の中谷君から壬申戸籍についての御質問があったと伺っているわけでございます。それから、最近それについて法務省が通達を出されたことも、新聞紙上を通じて拝見をいたしました。この壬申戸籍の問題は、これは法務大臣、十二分に御承知だと思いますが、明治五年、みずのえさるという年に最初の戸籍がつくられたわけであります。その戸籍法で、明治四年の四月四日の太政官布告で戸籍をつくれということになりました。その最初のときには臣民一般をその戸籍に載せるということになっていまして、その身分は、士族、祠官——これは神主さんです、僧侶、平民と分けられておったわけであります。したがって、同和地区の住民の方々は、最初の戸籍をつくるときの対象から除いておったというような状況がございました。その明治四年の八月にこの問題に関する太政官布告が出ました。第六十一号であります。いわゆる解放令といわれておりますものが出たわけであります。この壬申戸籍をほんとうにつくりましたのはその翌年になりましたから、そこで未解放部落の同胞の皆さんがそこで戸籍に載ることになったわけでございますが、その戸籍の中で、元穢多であるとかあるいは新平民であるとか、そういう記載がなされておりました。昔の身分的な賤称が記載をなされた状態でいわゆる壬申戸籍がつくられたわけでございます。そこで、その問題が不当でございますので、大正年間にいろいろ水平社の運動その他の状況がございまして、当時の内務省では司法省に対しまして「戸籍制度実施前に於ける戸籍賤称ある部分を改写し原本を焼却せられたきこと」の請願を行なわれたわけであります。それで司法省は、そのときに、それを受けまして、司法省の民事第一〇一九六号司法次官通牒ということで、「当該戸籍の改製をなすは差支えなく又」間を抜きまして、「当該文字を市町村長の職権にて抹消することを得しめるのみならず、右抹消の如何には拘はらず、当該戸籍の謄本若は抄本には当該文字の謄写を省略して交付すべきこと」ということを地方裁判所にいっておられるわけであります。内務省はその見解を付して、大正十五年の五月三十一日に、社会局長の通牒で、「戸籍に於ける賤称抹消に関する件」ということを各知事あてに通達をされております。ところが、こういうことが行なわれましたけれども、指示が徹底しておりませんで、その戸籍を悪用いたしまして、それを調べて、昔の身分的差別の概念を持って、その人の結婚を妨害をしたり、あるいは就職を妨害をしたり、そういうようなことがずっと事象として行なわれておる。そこで、そういうことがございましたので、福岡県の知事から、昭和七年六月二十七日付で、「現在の戸籍のみ改製しても問題は除籍簿にある」除籍簿のところ、除籍のもとをたどると壬申戸籍が出てくるわけでございますが、「除籍簿にある」「当該文字を市町村の職権にて抹消することを得」というが、これは「賤称を抹消し得るに止まり、右箇所の抹しあるものは閲覧等の場合一見して賤称ありしものたること判明しその効甚だ尠きを以って之を改製して痕跡を留めざらしむるを要す」ということを、福岡県知事から中央官庁に、そういう意見を具申をしているわけであります。それに対して司法省のほうは、次官名で、「賤称の抹消の痕跡あるものについては、今般更に之を改製せしめれる上、原戸籍は裁判所に引継保管せしめることに相成候」ということで、昭和七年の九月六日付で通達を出しているわけであります。  そういうことが行なわれておりますが、それにもかかわらず、その壬申戸籍が各市町村で保存をされておりまして、各地でこれが悪用をされておる事実がたくさんあるわけであります。いま戸籍法では、残念ながら、手数料を納めさえずれば、だれでも戸籍の閲覧ができるというふうになっております。そういうことで、金だけ払えば、その除籍簿も通じて壬申戸籍まで人が閲覧をできるようなことになっておりますので、興信所の人たちなどが悪用をしまして、個人的なけしからぬ差別概念のある人たちの用をなすために、興信所がそれを見に行って、それを悪用しているという事実が方々にあるわけであります。これは結婚の問題や就職の問題やその他の問題にも非常に影響がある、基本的人権が完全に侵されているわけであります。そういうことについて、市町村長が、そういう悪用を許しておらないところもありますけれども、おったところがあることは市町村長が非常にけしからぬと思うわけでございますが、そのことを、戸籍の点について監督する立場にあるのは地方の法務局でございます。したがって、その法務局がそういうことを許して、そういうことをなおざりにしておかれたことについては、ほんとう基本的人権を擁護する点においては非常に怠慢だったといわなければなりませんし、その法務局のもとをなしておられる法務省のほうも、そういう点について非常に不十分な態度で終始をされてきたということをいわなければならないと思います。そういうことについて、法務省全体として深い反省をされて、そういうことが、ただ通達を出したからそううまくいくというのではなくて、このような完全にいわれのない差別、昔のけしからぬ身分制からきたいわれのない差別がこういう法制面で残っているというようなことはゆゆしき問題でございますから、それを完全になくすように、ありとあらゆる強力な措置法務省としてはとられる必要があるわけでございます。どうかひとつ、法務大臣はじめ関係の方々は、そういう問題の重要性を深く考えられまして、いままでの手抜かりについて、その点は十二分に反省をしていただきまして、今後の問題について一番完ぺきな方法で対処をしていただきたいと思うわけなんです。先日通達を出されたのはわかりますけれども、あの通達では私はまだ不十分だと思うわけであります。と申しますのは、閲覧禁止ということであって、そのものがあるわけであります。そのものがあれば、差別の概念が残念ながら消え得られない関西方面においては、まだそういうことの影響を受けておられる市町村長が現在もないとはいえないし、市町村長がかわったときに、またそういう人が市町村長になられないとも限らないし、ということになると、そのものがあれば、閲覧禁止をしても、内緒で見せるとか、そういうことが起こりがちであります。そういうことによって人権が非常に侵害されることがありますので、閲覧禁止だけではなしに、完全にこれを廃棄をする。廃棄をするというのは、焼き捨てるということではございません。完全にそれを法務省あるいは地方法務局に回収をして、そこで厳重に封印をして、たとえば純学術的なことのためにそういうことを調べるようなときに、特にそういうことについては厳重に管理しながら、そういうときに各機関との協議の上、見せていいときには見せる、あるいはまた、めったにないと思いますけれども、同和地区以外の人も含めて、以外の人でも、昔のものがなければ裁判上、相続の問題で帰属がはっきりしない、民事裁判やなんかで、そういうものにどうしても必要があるという場合も、ほとんどないと思いますけれども、もしあるというおそれがありますならば、そういう場合の裁判上の記録、そういうもののために保存をされていくことは、これはいいと思いますが、とにかく市町村で保存をするということは、いままでの内務省あるいは司法省のそれだけの努力にもかかわらずそういう事実があります以上、そこで市町村で保管されて、そして閲覧禁止ということでは、不十分だと思うわけであります。そういうことについて、先日通達を出されたお気持ちはわからないではありませんけれども、さらに強力に完ぺきにそれをするための廃棄処分、いま申し上げたような内容の廃棄処分、学術あるいはそういう裁判上の問題については特に機関が協議をして決定することは、あるときには閲覧させることがあるかもしれないけれども、それ以外のときには一切見られないというような処置をとっていただきたいというふうに考えるわけでございます。そういう問題について法務大臣のひとつ、従前の——法務大臣は前から法務大臣ではございませんから、直接赤間さんの責任というわけではございませんが、法務省全体のそういう問題についての手抜かりについて御反省の上の完全な方法をとられる御決意を承らしていただきましたならば、非常にけっこうだと思うわけであります。
  250. 赤間文三

    赤間国務大臣 八木委員が御承知のように、これは重要な問題で、できるだけひとつ徹底的な方策を講じていきたいと考えます。御承知のように、ことしの一月の十一日には、民事局長の通達で、賤称、前科等の記載のある壬申戸籍の閲覧については、まあ親戚くらいのところはやむを得ないのじゃなかろうか、親戚くらいはそういう壬申戸籍を見せてもいいが、それ以外には断じて見せることはならぬというようなものを出したのであります。それではとてもまだ不徹底だ、こういうことではいかぬというので、また間もなく三月四日に、いまお述べになりましたように、民事局長の通牒で、壬申戸籍については親戚の者であるといなとにかかわらず、一切それを見せる、閲覧ということはもう全面禁止、それからまた、その戸籍についての謄本をくれとかあるいは抄本をくれというような場合においても、記載事項明細書は現行の戸籍記載事項に相当する事項についてのみ作成をして、そういうことを一切——これを一月に次いでまた三月にこういうものを出したのであります。十分この趣旨が地方の法務局にも徹底し、できるだけこれの趣旨が徹底して遺憾のないように努力をしていきたい、かように考えております。  それからまた、お述べになりましたように、全部これを取り上げる、あるいは法務局に集めるとかいうようなことについては、なかなかこれは重要な問題でもありますが、研究をひとつ十分していきたいと考えております。いまでは、とにかく絶対にいかなる人間にも見せないし、いかなる者にもそういうものの写しなり謄本、抄本を与えない、こういうことをとりあえずもう全国に徹底させるという考えを持っておりますので、御了承をひとつお願いいたします。
  251. 八木一男

    八木(一)分科員 持ち時間は。
  252. 上村千一郎

    上村主査代理 持ち時間は参っておりますけれども、どうぞ。
  253. 八木一男

    八木(一)分科員 持ち時間が来ているそうですが、次の御質問の方がないので、二、三分ちょっとずれることをお許しをいただきたいと思います。私で最後らしいので。持ち時間の約束をやはり守らなければなりませんので、この問題についてはまた法務委員会で、この前にこの問題で御質問になりました中谷委員なり、また私も御質問をさせていただきたいと思います。法務省のいまとられた御努力については、御努力をされたことは認めるのにやぶさかではございませんけれども、私先ほど申し上げましたように、それでは不完全だと思うわけであります。いままでも内務省や司法省の通達がありながら、それが閲覧をされておったという事実から見て、また非常にけしからぬことに、表には出さないけれども、差別概念を深く持っている人がかなりたくさんございます。これは赤間さんも御存じだと思います。口には出さないけれども、差別概念を持った国民が残念ながらいるわけであります。そういう人たちが結婚なり就職のときに、表には出さないけれども、差別した概念でこれに対処をしようとする。そのときに、そういう概念を持っておりますから、懇意な市町村長なり懇意な保管者なりに頼んで、一般には閲覧を許さないけれども、ちょっと見てくれ、そういうおそれがなきにしもあらず。それからもう一つ、市町村合併で昔の戸籍の原簿の行くえが少しわからなくなっているものがございます。そういうものがどうしてわからなくなったかということは、非常に困った問題でございますが、そういうものが残っていても困ると思う。そういう点で行くえがいいかげんにされておるものはちゃんと突きとめて、これを回収する。それから、いまの市町村の保管という点について、閲覧禁止の措置はけっこうでございますけれども、そういうおそれが多分にあり、ほんとう基本的人権関係するものでございますから、これは少なくとも私は法務省の本省と申し上げたいのですけれども、なかなかこれはいろいろ御手数もあると思いますから、とりあえず地方法務局に全部回収を願って、厳重に保管をして、法を守られる法務省でございますから、これは市町村よりはずっと信頼ができると思いますので、その法務省のほうに保管をされて、万遺漏なきを期すということをぜひしていただかなければならないと思うわけであります。  時間がございませんから、いまもその点について前向きに研究するという御答弁をいただきましたので、今後ともにまた法務委員会その他で御質問をさしていただき、政府が早く完全なる対処をなされるように要望するものでございます。そういう強い要望を申し上げまして、本日の質問をここで終わらしていただきたいと思いますが、ひとつ前向きの御決意を再度承らしていただきましたならば非常にしあわせだと思います。
  254. 赤間文三

    赤間国務大臣 いま要望せられましたことは、前向きで十分ひとつ研究をすることにいたします。
  255. 上村千一郎

    上村主査代理 これにて昭和四十三年度一般会計予算裁判所及び法務省所管に関する質疑は終了いたしました。  明日は正午前十時より開会し、文部省所管に関する質疑を行ないます。  本日は、これにて散会いたします。    午後三時二十五分散会