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1968-03-09 第58回国会 衆議院 予算委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年三月九日(土曜日)     午前十時十五分開議  出席委員    委員長 井出一太郎君    理事 小川 半次君 理事 北澤 直吉君    理事 正示啓次郎君 理事 二階堂 進君    理事 藤枝 泉介君 理事 加藤 清二君    理事 中澤 茂一君 理事 小平  忠君    理事 広沢 直樹君       相川 勝六君    荒木萬壽夫君       上村千一郎君    植木庚子郎君       小沢 辰男君    川崎 秀二君       小坂善太郎君    小山 省二君       坂田 英一君    田中 正巳君       登坂重次郎君    中野 四郎君       野原 正勝君    福田  一君       船田  中君    松浦周太郎君       松澤 雄藏君    松野 頼三君       湊  徹郎君    森山 欽司君       山崎  巖君    北山 愛郎君       久保 三郎君    阪上安太郎君       田中 武夫君    多賀谷真稔君       楢崎弥之助君    長谷川正三君       畑   和君    浜田 光人君       森本  靖君    八木 一男君       八木  昇君    山内  広君       横山 利秋君    麻生 良方君       折小野良一君    塚本 三郎君       伊藤惣助丸君    正木 良明君       松本 善明君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 赤間 文三君         外 務 大 臣 三木 武夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         厚 生 大 臣 園田  直君         農 林 大 臣 西村 直己君         通商産業大臣  椎名悦三郎君         運 輸 大 臣 中曽根康弘君         郵 政 大 臣 小林 武治君         労 働 大 臣 小川 平二君         建 設 大 臣 保利  茂君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     赤澤 正道君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      木村 俊夫君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      田中 龍夫君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官北海道開発庁         長官)     木村 武雄君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 増田甲子七君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君  出席政府委員         内閣官房長官 亀岡 高夫君         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣総理大臣官         房審議室長   橋口  收君         総理府特別地域         連絡局長    山野 幸吉君         行政管理庁行政         管理局長    大国  彰君         防衛庁長官官房         長       島田  豊君         防衛庁教育局長 中井 亮一君         防衛庁人事局長 麻生  茂君         防衛庁装備局長 蒲谷 友芳君         経済企画庁総合         開発局長    宮崎  仁君         法務省民事局長 新谷 正夫君         法務省刑事局長 川井 英良君         法務省人権擁護         局長      堀内 恒雄君         外務省北米局長 東郷 文彦君         大蔵省主計局長 村上孝太郎君         文部省初等中等         教育局長    天城  勲君         文部省管理局長 村山 松雄君         文化財保護委員         会事務局長   福原 匡彦君         厚生省環境衛生         局長      松尾 正雄君         厚生省医務局長 若松 栄一君         厚生省社会局長 今村  譲君         農林大臣官房長 檜垣徳太郎君         農林省農政局長 森本  修君         農林省農地局長 和田 正明君         農林省園芸局長 黒河内 修君         水産庁長官   久宗  高君         通商産業省石炭         局長      中川理一郎君         中小企業庁次長 沖田  守君         海上保安庁長官 亀山 信郎君         郵政大臣官房電         気通信監理官  浦川 親直君         労働省職業安定         局長      有馬 元治君         労働省職業訓練         局長      和田 勝美君         建設省住宅局長 三橋 信一君         自治省行政局長 長野 士郎君         自治省財政局長 細郷 道一君         自治省税務局長 松島 五郎君  委員外出席者         法務省刑事局参         事官      吉田 淳一君         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 三月九日  委員大原亨君、川崎寛治君、北山愛郎君、久保  三郎君、田中武夫君、塚本三郎君及び浅井美幸  君辞任につき、その補欠として浜田光人君、八  木昇君、八木一男君、長谷川正三君、多賀谷真  稔君、折小野良一君及び伊藤惣助丸君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員賀谷真稔君、長谷川正三君、浜田光人  君、八木一男君及び八木昇辞任につき、その  補欠として田中武夫君、久保三郎君、大原亨  君、北山愛郎君及び川崎寛治君が議長指名で  委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  分科会の設置並びに分科員及び主査選任の件  昭和四十三年度一般会計予算  昭和四十三年度特別会計予算  昭和四十三年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 井出一太郎

    ○井出委員長 これより会議を開きます。  昭和四十三年度一般会計予算昭和四十三年度特別会計予算昭和四十三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般質疑を行ないます。多賀谷真稔君。
  3. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私はまず、小笠原諸島が二十二年ぶり米国から返還せられるについて、戦時中の強制疎開から二十三年ぶりになつかしい故郷の島々に帰らんとする旧島民方々、さらにアメリカ施政下において現在居住されておる現島民方々の不安について、若干質問いたしたいと思います。  まず外務大臣小笠原返還協定はいつごろ合意に達し、国会にいつごろ批准の手続を求められますか。
  4. 三木武夫

    三木国務大臣 小笠原返還協定はこの国会批准を受けたいと考えておりますが、目下交渉中でありまして、そう時間はかからぬと思いますけれども、具体的にいつ調印に至るかということは、その日時をまだ申し上げることは困難だと思います。しかし、できるだけ早く調印にこぎつけたいと努力をいたしておる次第でございます。
  5. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 大体いつごろですか。
  6. 三木武夫

    三木国務大臣 むろん今月中には調印ができると考えております。
  7. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 現在争点になっておるといいますか、合意に達しない、なかなか困難な点はどの点でしょうか。
  8. 三木武夫

    三木国務大臣 あんまり大きな争点はございませんが、法律関係——とにかく二十数年もアメリカの政権のもとにあったわけでありますから、それが日本の秩序に返ってくるというわけですし、いろいろこまかい問題がある。根本的に日米間に意見の対立はない。いまこまかい問題について協定文の作成を急いでおるという段階でございます。
  9. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 窓口である総務長官にお尋ねいたしますが、協定批准を求められるときに、従来奄美大島の場合もそうでございますが、暫定措置法が必ず必要になると思うのです。さらに、復興特別措置法が問題になると思いますが、これらの問題について、大体どういう運びになるかお聞かせを願いたい。
  10. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  ただいまのところでは、外交交渉がまとまり次第、暫定措置法の御審議を賜わりまして、それから条約たる協定批准になります。そのときをもちまして暫定措置法は効力を発するというような段取りを考えております。  復興関係は、先般根本問題を閣議決定願いまして、帰属は東京都に帰属いたしまするが、復興に関しまする事務自治省が担当するということに相なっておりまして、復興法はまだ調査も不十分でございますので、暫定措置法ですべらせて、その間に十分帰島の希望調査をいたしますとか、あるいはまた原住民生活安定確保をいたしますとか、その後に至りまして復興法を御審議を願うように相なります。
  11. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 復帰決定をしますとすぐ問題になりますのは、現在二百十七名おるといわれ、諸島に現実に住んでおる人は百七十四名ともいわれておりますが、その現在おる島民生活をどうするのか、あすからの問題がある。第一食糧を一体どこから持ってくるのか、あるいは本土との航行をどうするのか、教育は一体どうするんだ、さらに生活はどうするんだ、こういった問題について政府はどう考えておるか、これは復興計画以前の問題でありまして、現実に人間がいるわけでありますから、この人々生活をどう保障するか、これはどうしても当然考えておかなければならぬ問題であります。これについて政府考えをお聞かせ願いたい。
  12. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  お説のとおりでございまして、日本復帰いたしますれば、直ちに日本の責任のもとにこれらの方々の問題を処理しなければならぬ。まず第一には、居住地及び住宅の問題をどうするか、あるいは子弟教育をどうするか、また翌日からの生活の収入に不安を来たすことがないようにしなければならぬ、こういうふうな問題につきまして、総理府復帰準備対策本部を設けまして、現在関係各省庁ときめのこまかい作業を続けておる次第でございます。条約の発効と同時に、われわれはこういうふうな暫定関係を支障がないように処理してまいりたい、かように考えて努力いたしております。
  13. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 まず具体的に聞きますけれども、生活はどういうように保障しようとしておるわけですか。現在一世帯百五十ドルの生活費の支給があるわけですね。これらの人々をあすからどうするのか。これはもうすでに政府として腹をきめておかなければならない問題ですからそれをお聞かせ願いたい。
  14. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいま御質問が出ましたように、日本復帰いたしますれば、あすからの生活をどうするかという問題が必然的に起こってまいります。今日の日本といたしましては、生活保護法という最低生活確保だけはございますが、ただいまお話のとおりに、百何十ドルというような現在までの生活水準をどう維持できるかということも大問題でございます。さような問題につきまして、各省間におきましてただいま検討中でございます。
  15. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 全部検討中として逃げられると困るわけですが、こういった問題は早くめどをつけてやらないと非常に不安なわけですよ。私はあまり空白を置くべきでない。何とかしてくれるかもしれぬということはあるだろうけれども、もうすでに調査団も派遣されて実態も把握されておる。でありますから、日本のいまの制度にすぐ乗るにはあまりに差異がある。そうすると、どうするかという問題は早くきめておかなければならぬ、それが一番——あなたは飛行機の上から対話されたというのですから、身近くはわからないでしょうが、一番心配な問題です。それから文部大臣がおられますけれども、教育は一体どうするわけですか。
  16. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 小笠原の現在における島民子弟は、小中学校段階教育米国流教育制度で現にやっておるわけでございます。復帰後の教育をどういうふうにやるか、これは円滑にやってまいりたいと思います。いろいろ検討いたしております。基本的には、もちろん日本国民を育成するという方針で、わが国の一般小中学校教育と同様な教育をやってまいるわけでございますけれども、この移行の時期における教育については、そこに相当なくふうを要する、かようにいま考えていろいろ検討しておるようなわけであります。何と申しましてもことばがだいぶ違いますので、日本語教育というものに相当重点を置いてやっていかなければならぬだろうと思っております。なおまた、一般の青年にいたしましても、日本語能力が低いのでありまして、こういう点についても配慮してまいらなければならぬと存じております。それから向こうにおる子供の内地への転入学とでも申しますか、そういう問題につきましても考えなければならない問題でございますが、年齢に応じて、それ相当の学年に入れることを原則としてやってまいりたい、かように考えております。これにつきましては、関係教育委員会等に対しまして、適切な配慮をするように措置をしてまいりたいと思いますが、いずれにいたしましても、教育の問題は復帰のときから引き続いて行なわれなければならぬ問題でございますので、準備を急いでいきたいと思っております。
  17. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 日本語能力がない、そこですぐ日本教育をそのまま適用するというのは無理だ、これは十分わかります。そこで、その暫定期間といいますか、ある期間を置いてのくふうが要るというのはよくわかるわけですが、これはどなたに聞いたらいいか、ちょっと疑問なんですけれども、現地住民は非常な不安——いままで日本に帰れるかどうかということは彼らにとっては疑問であるし、また租先は欧米系である。ですから、日本領土であって国籍を持っておった当時も、家庭に帰るとわりあいに英語でしゃべっておったということで、それでかなり食生活内地人々とは違う、こういう関係にある。しかも、帰ってきた人々の話によると、きわめてりゅうちょうな英語だという。そこで私は、この特殊技能を殺してはならぬと思うのですよ。せっかく日本国籍を持つ中に、こういったきわめて外国語のできる特殊的な技能を持っているわけですから、私は、何も日本の画一的な教育をして、へたな日本語をうまく——学校教育は別ですよ、社会に出てまで押しつける必要はなくて、これはひとつ商社あたりが積極的に採用して、あるいは外務省あたりがこれを採用するなりジェトロあたりが採用して、この特殊技能というものを生かしたらどうか。そうしてそういう方向で今後この現地民の将来の就職というものを考えたらどうか。いま率直に言うと、彼らはなるべくグアムに行ってハイスクールを出たり、カレッジに行って、できるならばアメリカ永住権をもらいたいというのが従来の考え方だ。そこで、日本復帰するというについては非常な不安がある。それは当然であります。ですから、私はやはりここに明確に政府方針を定めて、そういう貴重な存在をぜひ評価をして、そうして有用に使う必要がある、こういうように思うのですが、ちょっと答弁者は適当な方がおられませんが、外務大臣
  18. 三木武夫

    三木国務大臣 多賀谷君の御説に私も賛成です。これはやはり長い間アメリカ施政権下にあって英語教育を受けておったわけですから、日本語も少しはやっていますけれども、主たるものは英語ですから、この語学力というものは将来の就職の上に活用すべきものである。具体的にはいろいろ検討いたしますが、お話のような語学力を生かせということには全く私も賛成でございます。
  19. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 時間もありませんから、総務長官に。  生活の問題、それから現実物資のルートをどうするかという問題があると思う。それから、いままで問題になっておりました土地所有権の問題がある。しかし二十年住んでおるという実績もある。またその土地には、所有権者本土におる、こういう問題もある。国有地だけではありませんから、これらは私は、法律関係もいろいろあるでしょうけれども、この現地住民の問題は特殊な問題として、円滑に、しかも島民が喜ぶような政策をしてもらいたい、このことについてひとつ明快な御答弁を願いたい。
  20. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  ただいまお話しの復帰後には、さしずめ食糧の輸送の問題を解決しなければなりませんし、交通の問題もございまするし、それから現在は通信グアムからロスアンゼルス経由日本に来ております。これを直ちに日本と直通の電信ができますように切りかえる予定でございます。なおまた、ただいま御指摘になりました就職等の問題も、先般上京されました方々ともいろいろとお話も申し上げたのであります。なおまた、旧権利者との権利関係の問題につきましては、これは小笠原のほうに帰られます希望者調査をしなければなりませんし、それから従来の権利関係は、たまたま一本だけマイクロフィルムがございまして、土地台帳と申しますか、そういうふうなものが残っておりますので、それとの権利関係調整等の業務がございます。  なお、ただいま第一回の調査団を出しただけでございまして、これから今度は各省別にでも精細な調査をいたさなければなりません。さようなことで、暫定法復興法とに分けて小笠原の問題を解決したいというのは、さような次第でございます。暫定法におきましては、当面の問題を解決いたしたい、かように考えております。
  21. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 行政空白のないようにお願いをしておきたいと思うのです。  それから問題は、農林大臣おられますが、帰島を希望するかどうかというのは、一体自分たちが持っておった土地がどうなるだろうか、あるいは耕作権はどうなのだろうか、漁業権はどうなのだろうか、まずそれがきまらないと、帰島するかどうかという希望意思決定ができないのです。むしろ、政治としてはそちらのほうをきめてやらないと、帰りたいけれども一体どうなるかという不安があるのです。ですから、いま総理府のほうでは、それは調査をするのだとおっしゃるけれども、調査をする前提条件が不確定では、帰ろうか帰るまいかふん切りがつかないですね。ですから、一体この私権の問題をどう解決するのか、土地所有権というのは、国際法では、たとえ領土が割譲になりましても、この私権というのは残っておるわけで、ましてや日本の場合は、小笠原の場合はそういう場合ではございません。でありますから、当然土地所有権は残っておる。そこで問題は、その行政空白期間において新しい法律ができて権利関係が変革をしておるという場合、ことに強制疎開になり、施政権アメリカに移ってから、日本では農地法の設定があったわけです。農地法の制定がございましたから、本来耕作者であれば自作農創設ができておるはずであります。ところが今日はどうかというと、今日の農地法を適用すれば、それはジャングルでありますから、農地じゃないという議論が立つ。そこで一体農林省としては、この関係をどういうように律しようとしておるのか。これは法律問題でありますけれども、政策の問題でもあるわけです。そこでこれを確定してやらないと、帰ろうか帰るまいかという本人の意思決定ができない。農林大臣はこれをどういうように対処されようとするか、お聞かせ願いたい。
  22. 西村直己

    西村国務大臣 小笠原基本産業は、将来とも——従来も農林漁業、したがって、今後もそれに相当な主力が置かれるであろうということは基本になると思います。ただ問題は、いまそれの基盤になる土地に対する法律関係であります。  そこで法律問題でありますから、厳格なことを要しますが、一応私どもがいま検討の基礎に置いております考え方は、一つ土地所有権の問題であります。一般不動産所有権と同じように、強制疎開されましたときにおける旧農地所有権はそのまま存続していたものとして、復帰後もそのまま取り扱われることになる方向考えております。これは法律関係でありますから、具体的にはさらに検討を要しますが、復帰後もそのままに取り扱われる方向考えていきたい。  それからもう一つは、現在は、実際はおっしゃるとおりジャングル化しております。未墾地であります。したがって、農地法をそのまま適用という段階ではないわけであります。したがって、農地の賃貸借の契約については、現在までそれが引き続いて残っておるかどうかということは、他のいろいろな権利関係とも関連いたしまして、政府内でしばらく検討する時間というものをいただきたいと思うのでありますが、農業を営むことを帰島する方々希望すれば、そういう旧耕作者希望は、できるだけ満たすような措置方向検討してまいりたい、これが基本でございます。
  23. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると、農地所有権はそのまま認める、だが、現実にはジャングルであるから、現農地法では農地とは言えない、しかし旧耕作者生活は維持できるようにしたい、こういう条件を私なりに判断をすると、未墾地買収方式といいますか、そういう方式でいく、こういうように考えてもいいのですか。
  24. 西村直己

    西村国務大臣 そこまでまだ私としての考えが詰められない段階なのです。旧所有権そのものは、一般所有権と同じように残る方向基本を置く。今度は耕作権の問題でございますが、それはジャングル化しておる中において農地法を適用するか、それについてはいろいろな法律関係が、他との関連で起こる。そこで、それは関係当局から、さらに法律論としてもう少う御説明する時間をいただきたいと思いますが、旧耕作者が帰って、耕作もしたいという強い希望がありますれば、それも、できるだけ生きていけるような方向を探さなければいかぬじゃないか、そういう基本考えて申し上げたわけであります。なお事務のほうから、局長から御説明をさしていただきたいと思います。
  25. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 時間がありませんから、後ほど別の機会に質問したいと思うのですが、もし行政空白でなければ、耕作者自作農創設者となって所有権を持つわけですね。ですから現実にはジャングルといっても、やはりそこに耕作者権利を認めてやらなければいけないのじゃないか、こういう気持ちがするわけです。そこで、これは法律的にはなかなかむずかしいと思いますが、問題は、御存じのように国有地が八割ある。この国有地の八割を、円滑なる行政の運営に資するために、問題解決の方法に使ったらどうかと思うのです。でありますから、所有権耕作権論争もけっこうであるけれども、現実に八割の国有地があって、争っているのは二割の民有地を争っておるわけですから、行政としては幾らでも手があると私は思うのです。ですから、私は八割全部を開放せよということを言っておるのじゃないけれども、何らか手がありそうなものだ、こういうように思っておるのですが、農林大臣、どうでしょうか。
  26. 西村直己

    西村国務大臣 確かに相当国有地——と申しましても国有林になっている部分があると思います。したがって、雑木林と申しますか、そういうものがありますから、それらも含めてわれわれとしては今後耕作者との関連において考えてはいきたいと思うのであります。
  27. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 さらに漁業権についてお聞かせ願いたいと思いますが、旧島民漁業に携わっている人が一番不安なのは、二十年間自分たちは魚の貯金をしておった、ところが自分たちが帰るまでにその魚族が他の人の手によって捕獲をされて、帰ってみたらその貯金はなくなっておったという事態が起こりはしないかというのが一番の不安であります。  そこで私は、時間がありませんから問題を列挙して質問をいたしたいと思いますが、まず第一は、旧専用漁業権というのは一体どうなっておるのか。第二は、漁業法の改正によって従来の漁業権は非常な変化を見た。そこで今日共同漁業権にしても、いわば回遊魚といいますか、浮遊している魚を専属する、とる権利がない。ですから日本の現行の漁業法を適用して共同漁業権を認めても、いま旧島民が言っている希望を満たすことはできない。そこで私は、少なくとも小笠原については旧漁業法による専用漁業権的なものをある一定期間認むべきじゃないか、これが旧島民希望を満たすゆえんではないか。それから旧島民が帰るまでの間——先般も遺憾ながら漁船の拿捕事件がありましたけれども、返還をされて旧島民が帰るまでの間、他の漁船が入ってきて、そうして魚をとるおそれがある、それを心配している。これを一体どう禁止をするか、あるいは現在の漁業法による禁止区域を設定するかどうか、これらについて御答弁をお願いいたします。
  28. 西村直己

    西村国務大臣 漁業権そのものが存続するかどうかという問題は、これは基本的な法律問題でありまして、他の権利の扱いと一緒に含めまして現在政府内部で検討中でございます。  問題は、具体的に、しかし返還以前あるいは返還の前後等におきまして、沿岸周域で相当な魚介類が散逸をするというか、他にいわゆる資源を荒らされてしまうというようなことに対しましては、これはよほど復帰する島民の権益というものを守っていく立場を政府はとらなければならぬと思うのであります。これはお説のとおりであります。  そこで、相当周辺の海域に出漁する漁船が、返還前でも周辺三マイル以内に入るということについては、これは厳禁をするように再々指導をしております。今後も、入らないようにという指導を強力に府県を通して続けてまいりたい。それから返還された後におきましても、そこに漁業秩序が安定するまでには時間がかかると思います。そこで、その間は、あるいは指定漁業についてはどうするとか、あるいは沿岸漁業についてはどうするとかというような規制の措置をきちっとそれぞれ、あるいは農林省あるいは直接所管する都においてとってもらうように考えておる次第であります。
  29. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 指導指導で逃げても、各県に指導しても威令が行なわれるかどうかはわからないでしょう。それで復帰前の問題は、これは海上保安庁等がむしろ巡視をするという方法がある。アメリカの軍艦に拿捕されるというような恥ずかしいことのないようにしてもらいたいと思いますけれども、復帰後、要するに旧漁民が帰ってくるまでの間、私はこれは行政措置ではいかぬと思う。やはり法的措置が必要である。ことに暫定措置法の中に少なくともこれは入れておく必要がある、こういうように考えますが、どうですか。
  30. 西村直己

    西村国務大臣 暫定措置法としてやるか、あるいはその他の方法によるかは研究をさしてみたいと思うのでありますが、いずれにしましても、漁業法に基く一つの規制あるいは東京都の漁業調整規則というものがございますが、それに基づくところの規制、こういうものはやってまいりたいというふうに考えております。
  31. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そのほか厚生大臣が打ち上げられた国立公園構想、これも非常にいいことですが、時間が限られておりますのでこれは別の機会に譲ることにしまして、さらに防衛庁長官わざわざ見えていただいて、小笠原の防衛計画を聞く予定でしたけれども、あなたに質問しておると私の持ち時間はあなたで終わりそうなんです。御存じのようにいま石炭界はこういう混乱におちいっておる。それで、せっかくですけれども、私も非常に残念に思いますけれども、もたもた長い答弁をされておると困りますから別の機会に譲ります。しかも、これは簡単に質問すべき問題でなくてきわめて重大な問題を含んでおりますから、別に譲ります。  そこで最後にお尋ねしますが、いま第二のハワイとか、あるいは第二のグアム島とか、とにかく十五度から二十三度という気候ですから非常に気候がいい。そこで観光資本が小笠原をねらっておるということを言っても過言ではないくらいの動きがある。現実土地の売買が行なわれておる。こういう状態で、せっかく旧島民が二十三年ぶりに帰ろうとした、帰ってみたところが観光資本で荒らされておった、土地所有者は若干の金は得たけれども、旧島民の帰る安住の地でなかった、こういうことでは私は非常に不幸であると思う。そこで、とにかくこれは佐藤内閣が新しい土地に新しい政治をするわけですから、しかも美濃部さんの言う平和の島というのもわれわれは希求しておるし、そういう意味において、これは旧住民の泣かないような新しい復興計画を立てていただきたい。これに対して御答弁をお願いいたしたいと思  います。
  32. 田中龍夫

    田中国務大臣 全くお説のとおりでございます。そこでわれわれは、現在おります二百名ばかりの方々生活の問題は、これは当面の問題といたしまして緊急処置を考えておりますが、他の関係となりますと、旧権利者の帰島の問題でございますとか、あるいは今後のいろいろな施策につきましては、十分に調査検討を加えて、計画性を持って処理したい、あわてないで処理してまいりたい、かように考えておる次第でございます。よろしく御協力をお願いいたします。
  33. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 では、小笠原関係でお呼びしました大臣、非常に恐縮ですけれども、時間の都合で割愛させていただきます。  次に、総理の見えるまで通産大臣に石炭問題を質問してみたいと思います。  いわゆる抜本策と称せられた昨年実施したばかりの一千億の元利補給金、安定補給金あるいは石炭特別会計の諸施策が、もう実現わずか一カ月程度で崩壊をしたと言っても過言でないくらい総くずれになったということであります。それは大日本炭鉱の閉山がある。あるいは九州鉱山の更生会社の申請がある。こういうわけで、少なくとも十年間は安定しておかなければ貸すべきでなかった元利補給金制度が、制度を実施して一回分の金を受け取ったら、もう二つ炭鉱がつぶれた。こういうことでは、私は国民に対して申しわけないと思う。私どもは、これはそういう危険がありますよということを再三再四にわたって忠告をし、警告をしたはずである。そこで、一体その石炭再建崩壊の原因はどこにあるのか、どこにあったと思うのか、これを大臣から御答弁願いたい。
  34. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 石炭産業はきわめて労働集約の程度が高い。コストの五〇%が労賃であります。そして非常な各企業の勉強によって、非常に能率があがったのでありますけれども、ほかの産業と違って、絶えず出炭を維持するために非常な努力をしなければならない。こういう環境にあるのでありますが、御承知のとおり労務が非常に流出をいたします。その他自然条件がどうも思わしくない、悪化の一途をたどっておるというようなことで、急激に状況が悪くなってきた。簡単に申し上げると、そういうことだろうと思うのであります。  それからまた、さらにエネルギー革新によって石炭の外部からの需要というものが非常に急激に減退したというような状況が相重なって、当初の計画よりもどうしても出炭が下回る。将来に向かってもなかなか好転の見込みが立たない。こういうことで、したがってまた金融の状況も非常に条件が悪くなるということで、非常に急速に石炭企業に不利な条件が重なってきた、こういうことでございます。
  35. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 労働者が不足をする、他の競合エネルギーが進出する、これは当然一千億肩がわりをやる場合にわかっておった条件じゃありませんか。われわれが当然指摘をしておったことでしょう。変化はないのですよ。一体十年続くという炭鉱が、金をもらったとたん二つもつぶれるなんということがありますか。再建管理炭鉱といわれる中央大手の炭鉱で個別救済はともかくとして、三井、三菱、北炭、住友というような超大手の炭鉱を個別的に救済をしなければならぬという事態は異様な事態ですよね。それを個別的に借金の肩がわりをする、そういう個別政策というのが間違っておりはしないか。要するに、日本の炭鉱の中でランクが非常に低い、こういう炭鉱に個別的に手当てをしてやるというのならわけりますけれども、三井、三菱をはじめとする旧財閥の炭鉱までどうにもならなくなったということは、もう個別政策ではいかない、すなわち石炭産業全体の政策をとらなければならないという事態にきておるんじゃないですか。その認識のないところに今日のような悲劇が生まれたと私は思う。これは率直に言いますと、政府と自民党がイデオロギーに固執したのですよ。  まあ、三木外務大臣は出られましたけれども、私は三木さんに再三言った。こんな状態になって個別的に救済をするというのは間違いですよ。トップクラスがあぶないというなら、これはもう石炭政策全体をやり直さなければだめじゃないですか。一体どこの国に、こういった個別企業の借金の肩がわりをしたという国がありますか。あったらお知らせ願いたい。
  36. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 外国の事例は追って調べて申し上げます。
  37. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 世界にないのです。イギリスも実は借金の肩がわりという方式をとった。これは御存じのようにイギリスは国有であります。でありますから、政府に対する債務が九億六千万ポンドある。それを要するに四億ポンド帳消しにしてやろうと政府が言ったわけです。そこで日本の資本家は、イギリスは一億トン出ておるじゃないか、そうすると日本は五千万トンだから四分の一で一億ポンド、すなわち日本円に直すと一千億だ、だから、イギリスがしたのだから日本もしてくれと、こう言った。イギリスの場合は、日本一般会計から国鉄の特別会計に帳消しをするというこれは問題ですよ。個別企業じゃないのです、向こうは一本なんですよ。ですから、これは全部の政策が同じようにやられたと考えていいわけです。ところが、日本の場合は、中堅の炭鉱で一銭も肩がわりを受けない炭鉱もあるのです。三井、三菱は受けて、一生懸命働いておるところは一銭も恩恵を受けないという、政治としては非常に不公平な政治が行なわれている。ドイツもいろいろ政策をしておりますけれども、ドイツのは、これは日本の格差補給金であるとか、元利肩がわり金であるとかいう個別政策は一切やめて、日本と同じように、電力用炭の補給金であるとか、あるいは掘進補助であるとか、買い上げの補助金であるとか、これはきわめて公平な政治をやっている。ですから私は、そこに一番の問題があったのじゃないか、こういうように思います。それが、先ほどお話がありましたように、すでに一年目からくずれたというのは、本年の出炭見込みは四千六百九十万トン、五千三十万トンの予定が四千六百九十万トンですから、三百四十万トン程度の欠損が出ておる。それを三千五百円といたしますと、ちょうど百二十億、元利補給金の一年分が百二十三億ですからね。一千億を肩がわりしたけれども、結局その分だけは水泡に帰したということですよ。こういう状態になっておる。  でありますから、私は、本質的なものを解決しなかったところに誤りがあったと思う。もう企業内の合理化というのは限度がきて非合理化になっておる。やっておることはどういうことかというと、第二会社をつくって賃金を下げる。組夫を入れて低賃金の労働者を雇う。超過労働をさす。災害は非常に起こる。こういうことで、企業内ではもう全く非合理化の方向にいっておる。非近代的な方向にいっておる。しかるに全然手のつけられていない部分がある。それは何か。それは企業間の合理化が全然行なわれていないのですよ。大臣は一体どう考えるか、企業間の合理化が全然放置されているのですよ。それはどういうことかといえば、あなたのほうは自由競争であるからという、私企業であるからという。それで明治以来全然改革されていない。こういった国が一体あるでしょうかね。大臣、企業間の合理化というのは、どういうことかおわかりになりますか。
  38. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 まず鉱区の調整が一番大きな問題だと思います。その他経営上かなり共同でやって能率が上がってコストが下がるというような問題もあります。運送の問題であるとか、あるいはまた販売の面においても、企業間の協調が非常にものを言うだろうと思います。そういったようなととがどうも思うように進んでおらぬ、こういうことだろうと思うのです。
  39. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 さすがはやはり商工次官をやられて、一生商工省におられたベテランですね。問題は十分把握されている。そのとおりですよ。私どもは、いまの石炭合理化臨時措置法ができました昭和三十年に、社会党は左右両派に分かれておりましたが、一緒になって共同提案をした法案があります。その法案の骨子は、エネルギーにおける石炭の位置づけ。さらに休眠鉱区が膨大にある。新鉱開発は私企業でできないから、新鉱開発株式会社をつくって開発を行なう。販売は、御存じのように銘柄が二千もあって、そうして東京に九州の石炭が行ったり、関西に北海道の石炭が行っている。こういう錯綜輸送をもうやめようじゃないか、販売は一元化したほうがよろしい、こういうわけで販売一元化の法案を出した。このことは何らいまでも解決されていないのですよ。あなたのほうは私企業である、自由競争であるという。こんなもうまさに気息えんえんとしているものにかけ足をやれと、こういうのですよ。ですから、そういう前提で政策が行なわれておるから政策が実を結ばない。一体鉱区問題だって、ほんとうに解決する意思があるのですか。とにかく鉱業権者は天賦人権の権利のように思っているのですよ。労働組合でも、鉱区を譲るということには抵抗するのですよ、自分の職場が少なくなるから。こういう状態の中で鉱区の統合なんてできっこありません。幾ら口で言ったってできない。現実にそれができなくて、幾多の炭鉱がつぶれたでしょう。鉱区の統合さえやっておれば、操業を続けられたはずの炭鉱は幾つもあるのですよ。時間の関係がありますから、私は一つ一つ例をあげませんけれども、大きくは、かつて問題になりました志免炭鉱と三菱勝田の鉱区、これを統合しておれば問題はなかった。要するに志免の坑道を使って勝田の休眠鉱区を開発するということです。これは断層があって三菱からは掘れなかった。こういう問題もある。いま、北海道の北空知炭田の状態を見てごらんなさい。全く過剰投資もはなはだしいですよ。鉱区図で見れば、もう立て坑が群立しておる、鉱区は錯綜しているでしょう。ですから、みな立て坑を掘ったけれども、それに投資が償却されるだけのフィールドがない。ですから、みな過剰投資になって、今日非常に困っておる。これは政府が怠慢である、自民党がこだわる、経営者の言うとおりになる。全く自滅したわけですね。イギリスが国有にしたという理由は、これは鉱区問題からですよ。イギリスは、鉱区というのは、これは土地所有権に属しておりました。ですから大きな鉱区ができない。それを一挙に解決するために、それは社会主義的なイデオロギーもあったけれども、鉱区を統合するために国有化したのですよ、これは。フランスだって同じですよ。ですから、鉱区問題を解決するには国有以外にはないのですよ。国有か一社か、大臣はどういうようにお考えですか、お聞かせ願いたい。
  40. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 炭鉱の国有化はフランス、イギリスにおいて行なわれておりますが、わりあいにほかの産業と違って、大体態様が共通でございますから、そういうことも考え得ると思います。現に西ドイツにおいては、国有化ではないようでありますけれども、統合の計画が発表されて、その方向に進んでおります。鉱区の入り乱れたのを、乱雑な状況を一つの頭でこれを合理的に調整するということは、確かにこれはもうだれが考えても大事なことだと思いますけれども、ただ、それで国有化というものに直ちに進むことがいいか悪いか、これはよほど問題がたくさんあると思うのであります。ことに行き詰まったから何でも日の丸にたよるんだというような、そういう安易な考え方で国有化に向かったならば、今度はもう炭鉱それ自体が非常な不能率な、荷やっかいな存在になる。ことに日本の炭鉱は非常な赤字をかかえておりますので、みんな大手の炭鉱でも余裕なんかほとんどない。そういうわけでございますので、何か現状に対して抜本的に考え段階にもうきておりますけれども、いまあなたの言われるように、国有化に直ちに進むというような結論は、まだまだ慎重に考ええた上でないと出るものではないと私は思う。
  41. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 国有化の問題はあとから申し上げますが、少なくとも鉱区問題については統合というのが必要でしょう。それはお認めになりますか。鉱区問題については、少なくとも統合が必要であるということはいえるでしょう。
  42. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 その問題は御指摘のとおり、私も必要であると考えます。
  43. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 次は販売のロスですが、この販売のロスをどう解決するのか。いま日本の需要は全部政策需要ですよ。鉄鋼にしても、電力用炭にしても、みな政府政策で需要をつけてやっているでしょう。ですから、この政策需要について販売が自由競争をする、錯綜輸送が行なわれている。そうして銘柄は千数百ある。そうして何万トンも使う電力会社にわずか百トンの機帆船で送っておる。自由販売をしている国は欧州にないですよ、自由競争をしているところは……。ドイツだって、私企業ですけれども、販売は二社ですね。ほんとうは一社ですよ。ですから、販売を統合する必要があるでしょう。
  44. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 とにかくもっと合理的な能率のいい方法に切りかえる、みんなで共同して考えるということは必要だと思います。
  45. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 販売は共同して考える必要がある……。  次に、スクラップ・アンド・ビルドといわれるけれども、スクラップは進んでおるけれども、ビルドができていますか。現実にビルドがほとんど行なわれていないでしょう。ビルドにはものすごいリスクが伴うわけですね。最近新鉱開発をやった炭鉱で成功したのはあまりない。住友の昭嘉炭鉱あるいは明治の庶路炭鉱、いずれも二十億円を投じ、せっかく炭住までつくって、選炭機までつけたけれども、失敗をしておるのですね。非常なリスクを伴っておる。いま四億トンの埋蔵量を持ち、そうして約二百万トンの出炭を予定して、自己資本で百億つぎ込んでおる。日鉄有明も政府政策を待っているという状態ですね。これは非常に大きな問題だ。そこで、これは一体私企業で新鉱開発ができますかね、これだけ衰弱した体質を持った炭鉱で。どうお考えになるか、これをひとつお聞かせ願いたい。
  46. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 資金の面から、せっかくいい計画であっても、もうやり切れなくなったということでありまして、それが私企業では不適当であるとかないとかという結論にはつながらないと思うのです。
  47. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 しかし理論でなくて、現実問題として、もういまの炭鉱で新鉱開発をやる力がないといえば、何かつくってやらなきゃならぬでしょう、埋蔵量はある、しかも原料炭だという山だから。政府はスクラップするとき金を出しておるわけですから、何か救ってやらなきゃならぬでしょう。ですから、最近の資本構成を見てごらんなさい。投資勘定が非常にふえておる。こういう炭鉱の経営が非常に悪いときに、投資勘定がふえておるというのは、一体どういうわけなのか。それは社外投資に移っておるのでしょう。要するに企業家としては、石炭産業の問題は、ほどほどに、政府の補助金をもらっておる程度でやって、よそに投資をしたほうが企業としては賢明だと見ている、率直に言うと。なるべくなら石炭から資本を逃避したいという、こういう考えが出ておるのですよ。ですから、投資勘定がふえておるのです。最近の資産構成を見られればわかるのですが、この状態は、私はもう経営者は石炭を捨てたのじゃないかと思うのです。それでは一体だれが石炭産業を守ってやるのだということになるでしょう。それは何とか企業を守るためには、石炭のほうにどんどん投資をするよりも、できればほかのものにやっていきたいというのが、利潤を追求する企業家の当然の考え方でしょう。そうすると、石炭産業というものは全く崩壊をする。これは火を見るよりも明らかです。その投資勘定がふえている、しかも社外がふえているという例は、あなた自身が十分知っておられるでしょうから私言いません。個別的な話はしませんけれども、実際そういう情勢に残念ながらある。だから、このままではまかしておれないのではないか、こういうように思うのですが、どういうようにお考えですか。
  48. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 石炭企業で、たとえばセメントをやっているとかいうような他部門に対する投資をやっている例はございます。ございますけれども、それは結局石炭の消化のために、そういう投資をしておるのであって、石炭と全然無関係な事業に投資をしておるというようなことは、最近においては整備法でこれはチェックしておりますから、そういうむだな遊びごとみたいなことはやらせないようにしております。
  49. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 三十六年の下期に、資産の内訳の中で投資勘定は一二%しか占めていなかったのに、四十二年の上期は、二二%占めておるのですよ。現実にこれだけ数字が違ってきておるのですね。投資勘定が一〇%もふえておる。もちろんこの中には、第二会社をつくって、炭鉱それ自体に投資をした形を行なったところもある。しかし現実に、大臣知っておられるでしょう。観光にもホテルにも金が行っているわけですね。幾らうまいことをあなたが言われても、現実に国民は知っているのです。ですから、私はそこに問題があると思うのです。それから銀行のほうも、石炭と他の産業と一緒にやっておれば、他の産業を石炭とともに心中させてはいかぬから、分離をせよ、分離をせよと、こう言う。せっかく他の産業と一緒になって強靱な形をつくった会社は、銀行によって分離をされている、あるいはまた銀行でなくても、本人が補助金をもらうために分離している。一方は隆々とした産業になって、一方は瀕死の状態の石炭会社になっている。これはもう御存じのとおりでしょう。私は会社の名前は言いません。しかし御存じのとおりです。ですから、結局炭鉱は投資をする者がないですね。だから、これで一体、銀行が金を貸さぬのに私企業として成り立ちますか。現実に成り立たぬでしょう。政府資金が金融機関を通じて回ってくるほうが、市中銀行の金融よりも非常に多くなっているという事実ですね。これではやっていけないということでしょう。これで再建ができるとお思いになりますか。
  50. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 再建はさせなければならぬと思っております。
  51. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 もう最近は余裕がないからしませんよ。もうそんな余裕は最近はない。しかし三十六年から四十二年の姿は、私が示したとおりです。ですから、もう全くどうにもならない状態になっている。  それから労働者の問題、労働者が不足している、あるいは流出している問題ですが、大体日本は御存じのように終身雇用でしょう、労働大臣もおられますが、会社に入ったら、一生その会社につとめるというのが大体慣習ですね。ところが、いま一体炭鉱で一生つとめられる炭鉱が何個ありますか。若い者が来ない、来ないと言うけれども、あたりまえでしょう。自分がその炭鉱につとめて、一生その炭鉱で過ごすことのできる炭鉱というのはわずかしかないですよ。それで若い者が来ないということを嘆くほうがおかしいや。そうでしょう。  それから退職金の支払いが保障されていない。一体退職金を払ってくれるかどうかが不安です。そういう会社に人は集まらないでしょう。  それから依然として北海道のような厳寒地においても、便所が外便所ですね。こういう環境の悪いところに、いま若い夫婦を呼ぼうといっても無理ですね。零下十何度というところで外便所だという状態。ですから、私は、これはその炭鉱が閉山になっても、何らかその企業には雇用がつながっているというような制度をつくらない以上、労働者は集まらないと思う。これはどうですか。
  52. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 労務不足は、別に炭鉱に限った現象ではないのであります。しかし、炭鉱において著しいということは言えるかもしれません。これを補うためには、やはり機械化をするとか、あるいはまたあなたの言われるいろいろな福祉施設をもっと完備するというようなことで、少なくとも流出しないというような努力はどうしてもしなければならぬ。これは別に炭鉱に限ったわけではないが、炭鉱において特に考えなければならぬ事柄であろうと思います。  それからいろいろいま炭鉱業の現状について、もうみな行き詰まった、こういうふうにおっしゃいます。確かにこれは容易じゃない。容易じゃないが、それを国営にしたら一ぺんに解決するかといったら、やはり同じ状況、問題が残る。でありますから、全部国営に逃げ込んでしまえばみな解決するように、もし一これはお考えではないと思いますけれども、そう簡単にはいかぬと私は思います。
  53. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 総理がおいでになりましたから、総理に集中してお尋ねいたしたいと思います。  総理は、かつて大蔵大臣あるいは通産大臣時代、また総理大臣になられてからでも、石炭の問題とは常に取っ組んでこられた。第一次答申以来、第三次の抜本策に至るまで関係をしておられるわけです。そこで、私は率直に言いますと、一番よく石炭を知っておられるし、また協力者である、こういうように思います。私も石炭については、野党でありますけれども、外におって、批判者ではなかった。しかし、残念ながら私どもが指摘したとおりになってきた。杞憂が杞憂でなくなったというところに非常に問題があると思うのですね。そこで、いま欧州における私企業として、しかも十五ドイツマルクからの高い消費税を設け、さらに輸入炭で関税を設けて障壁をつくっておったドイツが、御存じのように、企業形態について国会において論議をされておる情勢になってきておる。早ければ四月一日から新会社は発足するという情報も流れてきておる。こういう情勢の中で、一体総理としてはどういうようにお考えであるか。一体どうしたらいいとお考えであるか。率直にお述べいただきたい。
  54. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 たいへん困った問題、率直にお尋ねがありまして、結論を出せということですが、まあ多賀谷君もずいぶん長いこと石炭問題では苦労しておられる。私もいまお話になりましたように、石炭問題とは真剣に取り組んだつもりでありますし、また内閣自身、党自身、この問題とは真剣に取り組んでまいったつもりであります。そうして、それぞれの時期において適切だと考えた対策、その対策を立てて、今度こそはこれで基本的な根本解決ができるだろう、かように言ったものが、もうその翌年からくずれてきている。これが実は現状であります。私は四十二年のあの対策を樹立したとき、今度こそはこれでしばらく過ごせるんじゃないか、だれしもみんな思ったんではないかと思います。ところが、昨年予想したものよりも、今日考えてみると、さらに状態は悪化している。一体どうしたういいのか。そこで、それぞれの問題についての結論を急ぐわけでもありませんが、それぞれみんな結論を出しておられる。しかし、財界、産業界でいま出しておるいわゆる植村試案というか、そういうものが新聞に出ておる。これなどもおそらくこの産業界、石炭業界自身がひとつまとまった意見を出すべきじゃないかという、それが一つのねらいだろうと思います。私は植村君の構想自身を、この機会にこの席で批評するつもりはございませんけれども、おそらく産業界自身が、ひとつまとめた意見を出すべき段階にきているんだ。この点を実は指摘したい、かように思います。また、社会党は社会党で、国有化案をいま検討しておられ、近く出されるようにも漏れ伺っております。あるいは全国一社案というものがあったり、あるいは三つの会社がいい、三社案があったり、あるいは経営よりも販売のほうで統合会社をつくることが先決だという、そういうような案があったり、いろいろ案が出ておる。これは私がこの席で一々御紹介するまでもなく、多賀谷君は専門ですから御承知のとおりだと思います。  そこで、政府はそれじゃ一体どうするのか。これらの案について、私は一々いまここで批評するつもりはございません。これから政府がとろうとするもの、これは何といっても昨年考えたものがもうくつがえされておる。そういう意味で、もう一度ひとつ各方面のお知恵を拝借するという、そういう意味で石炭対策協議会を早急に開いて、そうして対策を立てていただくというか、答申をいただく。それによって政府が最終的決定をする。これ以外には実はないように思っております。  ただいまも伺っておれば、労働力が、われわれが予想したより以上に急激に減っておる、ここに問題があるのだ、こういうことでもあります。同時にまた、炭価自身を据え置いておるのだが、その石炭一トンについての赤字は、昨年予想したよりもさらに倍になっておる。昨年は二百五十円程度じゃないだろうかといったものが、もうすでに五百円だ、こういうような赤字になっておる。そうすると、そういう状態のもとで昔のような採炭計画、出炭計画、それを維持していこうといったってこれはできないことになっている。そういうところにも根本的な対案を立てるべき段階に来ているのじゃないだろうか。かように私は思います。  この問題はそういう意味で各界、各方面の方が真剣に取り組まないと、これは国のエネルギーの安定供給の面から、あるいは国際収支の改善の面からこれはたいへんな問題でもあるし、同時にまた一面に、いまのような石炭のとり方をしていると、これがマイナスの面もあるわけですから、それらの点も考えて、できるだけ可能な範囲にこの出炭量を維持する。そういう政策はとりますが、やっぱり利害得失も十分考えて、そうして商機的な観点に立っての企業のあり方、それと取り組むべきではないだろうか、かように私は思います。御承知のように昨年立てたもので、一応何か一千億程度のたな上げで、これでは何か解決ができるように思ったが、とんでもないことだというようないまの実情だ、かように思っております。
  55. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は、一千億肩がわりという抜本政策と称するものの前に、少なくとも前提条件を整えるべきではなかったかと思うのです。いま論議をされておるこの論議が、一千億肩がわりをするときに少なくともされなければならぬ問題じゃなかったか。先ほどから通産大臣と若干質疑をかわしておるわけですが、個別企業にそれぞれ肩がわりをするというむだなことをなぜするのか、少なくとも一千億を使うのに。しかも政治は、一方においてきわめて不公平な政治になっておる。こういう状態で、前提条件を整える、それがまず第一じゃなかったか。いまドイツは、むしろその前提条件を整えつつあるわけですね。日本の場合は、逆に、前提条件なしに先に肩がわりのほうがいった。やってみたら、やっぱりだめだとこういう。それはやはり私は総理が自由競争、私企業というものにちょっとこだわり過ぎておると思うのですよ。これはいまのような炭鉱に、自由競争なんかさして何になりますかね。本来炭鉱というのは、製品の新しいのが出るわけじゃないのですよ。下にあるものを上に出す運搬企業ですよ、率直に言うと。ですから私はそういう意味において、よその国ではそのことを比較的早く考えて、そうして是正したにもかかわらず、日本だけが、しかも炭鉱のみを残して他は何らかの形で統合整理した需要部門は、鉄道は国有鉄道にしたでしょう。製鉄は、日本製鉄株式会社にしたでしょう。電力は日本発送電にしたでしょう。こういうように需要部門は統合したにもかかわらず、石炭部門だけを、財閥会社そのままに置いておる。それに中小企業を、そのまま温存しておったという仕組みにこだわったところに問題があると思うのです。今度の植村構想も、とにかく新聞の伝えるところによると、石炭の資産を全部第二会社をつくって分離をするというのでしょう。いま日本に百幾つの会社があるけれども、それは二百幾つの会社になるわけですよ。それを炭鉱管理会社というのが統轄をすると、こういう。私は、きわめて複雑な仕組みの上に、なぜそういうように、会社を倍にしてまでいまの形態を守らなければならぬかというところに問題があると思うのですね。ですから私は、われわれが国有化の法案を出すといっても、何も社会党が政権をとった社会化構想の一環として出すのじゃないのですよ。佐藤内閣でも十分できることを言っておるのですよ。ですから私は、そういう意味においては、少なくとも合理的にいえば、まず全部の炭鉱を統合する、そうしてその中でスクラップするものはスクラップし、ビルドするものはビルドしていく、このことがまず前提条件でなければならぬと思いますが、どうですか。
  56. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 いま、一つの案として一会社案、これが提案されたと思います。その前に私、経営形態に別にとらわれておるつもりじゃございません。われわれが自由主義、資本主義だから、会社、民営、それにこだわっているからこういう状態だ、こう言われるが、いま石炭の困っておりますのは、いわゆるエネルギー革命といわれるその時代に、それに対する対策ができてないということですね。私はそれに尽きると思います。御承知のようにエネルギー革命はありましても、いわゆる原料炭は必要だ。それは確保されておる。その事実を見れば、やはり経営形態、それよりもやはりエネルギー革命、そういうものにほんとうに真剣に取り組む態度でなかった、こういうことじゃないかと思う。何だかわれわれが努力すれば、過去の経営規模、それも維持でき、さらにあるいは経営規模をもっと拡大することすらできるように考えた、そういうところに一つの問題があったのじゃないかと思う。私はいまドイツ自身が、すでに一億四千万トン使うようなものを、今度は七〇年には、これは九千万トンに減らすといっている。私は、九千万トンでも——おそらくドイツは、七〇年になったらもっと減らすだろう、減らさなければならぬだろうと思いますよ。いま私どもが、この石炭の問題と取り組んで見ていて、原料炭自身は、どんどん製鉄事業は盛んになっているのだから、その意味から見るとこの粘結炭は必要なんだ。だからいまこの時代でも、国内の粘結炭を掘っているところの炭鉱はそう困っていないだろう。それはいま首を振られるが、労働力が足らぬという、そういうような意味のものはあっても、まだこれは必要なんです。だから私は必ずしも、いまの一社案をとやかくは申しません。この際私が批判することはどうかと思うから、意見は述べませんが、問題はやはりエネルギー革命に対する対策、こういうことで考えていかないと、私は、お金がむだに使われることになるのじゃないか、納税者の負担においてこれをやろうというのは無理だ、かように思います。
  57. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そのエネルギー革命であるこの前提条件は、異論のないところです。  何か経営形態とおっしゃるけれども、私は先ほど鉱区統合の話をしました。それから販売の問題もしました。こういうものをやっていくためには、どうしても統合をしなければだめじゃないか、こう言っているのですよ。ですから、これが経営形態でしょう。最近再編成といわれるのはこれでしょうが。ですから、私は、論理的に合わしていくと、結局統合する以外にないという結論になるのです。というのは、企業内の合理化というのは、もう非合理化へきておる。企業間の調整、合理化は、全然行なわれていない。そうしてむだな投資をお互いにしている。むだな競争をしている。つぶさなくてもいい山をつぶす。なぜいままでこういうむだなロスを合理化できなかったかという。それは経営形態が問題なんですよ。私が一足飛びに経営形態の話をしているのじゃないのですよ。前提がずうっとあって、それをやるためには結局は統合経営形態に入らざるを得ないじゃないか、こう言っているわけでよ。しかも、つぶさなければならぬとおっしゃるけれども、今後のスクラップというのは非常にむずかしい。なぜむずかしいかといいますと、従来は数炭鉱を持っておる会社が、悪い炭鉱をスクラップしてきた。ところが、五つ持っている会社が三つスクラップして、あと二つ残っている。一つをスクラップするためには、その炭鉱はつぶれるのですよ。会社がつぶれるのですよ、会社が。ですから今後のスクラップは、会社の倒産ということと関連があるわけです。ですから私は、非常に問題がむずかしい。いまドイツで一番困っておるのは、わりあいにいい炭鉱が閉山をするのですよ。最下底の炭鉱はがんばっておる。いまのままでいけば日本でもそういう状態が起こるのですよ。日本の全体の炭鉱を見まする、もう一番下にあるのでもがんばっておる。ところが、いい炭鉱は身軽いから、退職金なんか自分で払えるから、ぽっとつぶしていく。ですからスクラップを合理的にやるにしても、器を一つにしなければ非常にむずかしい。スクラップ自体が企業倒産になる、こういう問題をかかえておるわけです。ビルドもできないが、スクラップもできないというのが現在の状態。ですから、やはり企業形態を云々せざるを得ないでしょう。
  58. 井出一太郎

    ○井出委員長 多賀谷君、あと持ち時間は七、八分でありますから……。
  59. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 私はあるいは、少し急いだので、誤解したかわかりません。経済形態を国有論に何でも持っていきたい、こういう御主張かと思ったものですから、ただいまのような話になったのですが、ただ、いま言われる点ですが、規模をもっと大きくしろ、だからいま言われるように鉱区の整理、これはぜひ必要じゃないか。そうしてもっと採炭が効率が上がるようにしたらどうか、これは確かにそうだ。あるいは鉱害の復旧等についても、そういう規模が大きければそういう点も可能になる。そういうことを考えると、いまの規模では不適当だ、しかし、それは直ちに一会社がいいとか、三会社がいいとか、かように私は結論を出しているわけじゃないですが、いまのように、数が多ければたいへんだという、そのことはわかります。けれども、いまおっしゃるように、それだからといって、直ちに国有論にいくとも実は考えられない。私考えますのに、数は減らしてほしいが、しかし同時に、基本的な問題をやはり考えて、エネルギー革命だ、それと取り組む態度だ、それにはいろいろな方法がある。いろいろな方法があるが、同時に、こまかな点にも細心の注意を払って計画を進めていくべきだ。いま言われるような、販売機構の整理であるとか、あるいは鉱区の整理であるとか、あるいは終山、閉山についての思いやりだとか、こういうようなこまかな点も合わせていかなければならないが、大筋をやはり考えて、そうしてこまかなものを整備していく、こういうことが必要なんじゃないか。これは私なりの考え方ですよ。これはまた事実いままでも、炭鉱経営者だけの負担で片づけようといったって、これは全然できないというので、国も積極的に乗り出した。しかもエネルギー革命だというからこそ、重油関税をもってこの石炭の救済に乗り出そう、こうしたのですから、それらの点を考えると、やはり大筋はエネルギー革命、それと取り組む姿勢であって、そうしてこまかな点でまで、各産業界が自分たちも犠牲を払うという、そういう立場で立ち上がってほしい、かように実は申すのです。
  60. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 経営形態の問題に帰するという答弁がありました。それは了解しましたが、短日新聞に、萩原吉太郎さんが総理の言を引用しておるのですが、昨年暮れ佐藤総理にお会いしたが、問題のポイントをつかんでおられるのに感心しました。総理は初めから一社にせず、九州、常磐、北海道の三社くらいがよいのではないかと言われた、こうおっしゃっておられます。何も私は応接間で話されたことを、ここに持ち込もうとは思わぬけれども、いまの心境はそういう心境ですか。
  61. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 いまの心境は、先ほど申しましたように、どうも白紙が好きなわけじゃありませんが、ただいま白紙の状態でございます。
  62. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 総理が、率直に言いますと、とにかく一番よく御存じなんですよ、いままでの経過というのは。ですから、私はもう決断を下されていい時期が来ておるのじゃないかと思うのですよ。御存じのように、ドイツの炭鉱というのは鉄鋼会社が炭鉱を経営して、その炭鉱が発電所をみずから持ち、電力会社に送電をし、重油の四〇%まで販売のシェアを持っておる。資本主義としては強靱な形態の炭鉱が、いまそれらを離して一社にしようというのでしょう。そうして所有権も移すというのでしょう。そのかわり債務も移行して、全部統合をしようという時期でしょう。ですから総理がその方向を指示すべきであって、各界の意見なんか聞くことはないですよ。あなたが一番よく御存じですよ。ですからそれを指示して、作業を命じたらいいでしょう。ことに日本の場合はルールと違って、産炭地が北海道と九州にある。しかし需要地は遠いということでしょう。ですから産炭構造が、最近は九州のウエートが低くなって北海道のウエートが大きくなっている。そうすると、北海道の石炭をどうしても関西まで運ばざるを得ない。しかも瀬戸内に製鉄所がどんどんできておる。ですから極端にいえば、北海道の原料炭を瀬戸内まで持ってくるかという問題にもなるわけです。そういう従来にない大きな変革が一方においては来ておる。私も、販売一社を唱えた時期がありましたが、今日はもう石炭企業の体質があまりにも弱っている。ですから企業統合以外にない。しかも最近のような状態ですと、北海道、九州、常磐の炭鉱の格差が非常に著しくなっておる。ですから九州の会社をつくるとすれば、筑豊炭田はかなりスクラップしなきゃならぬ。北海道はまだビルドが多い。こういう中で、私はもう結論はきまっておると思う。その結論のきまった統合を、どういう形態でいくかというのは、それは議論があるところでしょう。これはわれわれと自民党、政府と議論のあるところです。しかしそれ以前の問題は、私はもう議論がなくなっておるのじゃないかと思うのです。ですから総理がそれだけの決断をされれば、あとは負債をどうするか、それからいろいろの鉱害その他の問題をどうするかという、細部にわたる問題だと思う。どうですか、もう審議審議会といって、時間ばかりかかりまして、審議会でゆうゆうと審議をしておる、そしてそのうちに答申が出る、それを法律化するなんていいますと、もうその間にこの一千億の肩がわりの二の舞いを演じますよ。ですから、現実はそれまで待っておれないでしょう。この五月、六月が越せるかどうかと心配しておるのでしょう。ですから、ひとつ総理大臣、決断をお願いします。
  63. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 決断を急がれるようですが、これはまだ一つ基本的な問題があります。これは一体日本の出炭量がどの程度が適当なのか。これは多賀谷君とも長い間論争し、政府が皆さん方と議論した。五千五百万トンから五千万トンに下げた。ただいま四千八百万トンだろう、こういつているが、どうも四千八百万トン、その維持は困難ではないかと思う。だから、まず、石炭は一体どのくらいの規模で考えるか、そのための労働力はどうして確保するか、これは昨年ほぼ九万二千人とかいったものがもう八万七千人、五千人減っているでしょう。こんな状況でいけば、石炭を四千八百万トン出そうといったって、おそらく一人当たりが四十二トンになろうが四十三トンになろうが、そんなことでは採算はとれないだろう。こういうことを考えると、一体日本の石炭を幾らの規模にするか。これにはやはり各方面の御意見も聞かないと、自分だけで知ったような顔をしたら笑われるだけです、私はここらにいまの一つの悩みがあるのではないかと思っておるのです。多賀谷君もほんとうに苦労してこられたのですから、そういう意味について、どういう規模が望ましいのだ、先ほど申したように、ドイツ自身が一億四千万トンから七十年には九千万トンにするという、そのことをお考えになってもわかるだろうと思います。これはやはり各方面の意見を聞く。総理がそれほど力もございませんし、ひとつその意味では各界の御協力を得たいと思います。御承知のように、かつては一度炭鉱国管、これもひとつやったのであります。しかしいまのような状態で、どこに解決しなければならない点があるかも究明しないで、経営形態だけを一つにするとか、あるいは国に持っていくとか、かようにいっても私は無理なように思うのです。そしてまた事実ある程度小さくすれば、そして必要なものは、確保しなければならないようなものがはっきりしてくる、こうなってくると扱い方がもっと楽になってくると思うのです。私はその意味ではもう少し知恵を拝借したいし、考えてみましても、これはずいぶん変わってまいりましたから、かつて給与の一番いいといわれた炭鉱労務者、それが今日の状態じゃないですか、ここらに問題はあるのです。そこらをひとつ考えましょう。これはぜひそういう意味で、政府もお知恵を拝借するという態度でございますから、どうかそういう意味で遠慮なしに御叱正もいただきたいと思います。
  64. 井出一太郎

    ○井出委員長 多賀谷君、時間は尽きております。
  65. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 よく御存じの総理の言とも思われぬわけです。といいますのは、労働者のほうが六千万トンにしてくれといった場合に五千五百万トンだ。五千五百万トンにきめたとたん五千二百万トンしか出なかった。それで今度も五千五百万トンやってもらいたい、いや五千万トンだ、五千万トンに決定したとたん四千七百万トンだというのです。これはもう目標をきめるとき労働者の気持ちなんか全然考慮してないのですよ。だから五千万トンの決定を見て、もう炭鉱はぱっとしないと考え、離山してしまった。ですから、そのことも十分考慮する必要があるのですよ。現実にあなたのほうが設定して、一年たたぬうちに全部くずれているのです。ですから私が言ったでしょう。目標だけは下げぬでくださいと。それは重大なんですよ。あなた方は労働者の心理を知らぬで論じておるからこういうことになる。ですからその点本ひとつ十分考慮してもらいたい。  それからもう一つは、やはり五千万トン出してみましても、昭和五十年では国内産石炭のエネルギーの占める比率は九・三%でしょう。現在の鉄鋼の伸び、原料炭の伸びを見ますると、昭和五十年になりましても原料炭はもう四千六百万トンぐらい要るのです。そうすると三千万トン以上外国原料炭を輸入しなければならぬという状態になっておるのですね。ですから海外の開発も必要である、国内の原料炭の開発も必要である。そういうのを見ながらこの出炭規模というものをきめる必要がある。こういう点をひとつ十分勘案してもらいたい。  それから総理に最後に一言御注意申し上げて驚きます。かつての国管が非常な失敗であった、こういうことをみな盛んに言うのでありますが、あれは全く経営者が国管がなくなるということを目通して——自民党が政権を取りましたからは、もう見通して、みなサボってしまったのです。サボってみな粗悪炭ばかり出したのです。坑内から粗悪炭ばかり出るわけはないのです。いい石炭と悪い石炭が同時に出るはずなのに、粗悪炭ばかりどんどん坑内から出て、配炭公団はその粗悪炭の処理に困ったのですよ。ですから、むしろあの国管というのは生産増強にあった、そういう状態を見ますると、私はあれはある時期にはやはり成功だったと見ていいんじゃないか。しかしこれらの批評は別にして、全然違う観点から論議をしなければならない問題だと思います。そこでこの問題は私はゆうちょうに論議をすべきでなくて、やはり早く決着がつけば、たとえば臨時国会でも開いて、そうして新しい法案を出しておかないと、いまの順序でいきますと、炭鉱は全部つぶれる状態を待つようなものです。たとえば審議会に答申を求める。審議会がいつごろ出すかわかりませんが、次に通常国会に予算も伴う法律を出す。四十四年の四月一日から新会社が発足しませんね。そうするとそれが十月くらいになる。一体こんなに答白を置いて、いまの炭鉱企業が成り立っていくかどうか。ですから結論がきまったら電光石火のように早くやらないと、このままで空白な状態でこの経営状態を続けるべきでない、こういうように思います。これを要望して質問を終わります。
  66. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 いまの要望に、ちょっと私も答えておきたい。  確かにこの結論を早く出さなければいかぬ。そこでいまの、現在の維持資金、その資金を獲得するのがたいへん困難だ、かような状態だ。あるいは新鉱区掘進も必要だ。そういうものをだれが一体金を出してくれるか、こういうような問題が当面あるわけでございます。それらの点については、私もそれぞれの機関を通じまして、十分めんどうを見るようにこの上とも努力するつもりでございます。このことをひとつ申し上げ、また過去の炭鉱国管は別にそう気になさることはございませんから、これは過去の問題だということにしたい。  それからもう一つは原料炭の問題、これは積極的にもっと考えるべき問題で、ここらに力を入れてもらいたい。とにかく労務はいまの状態で確保できませんから、この確保方法もぜひともお願いしなければならぬ、かように思います。
  67. 井出一太郎

    ○井出委員長 これにて多賀谷君の質疑は終わりました。  次に、八木一男君。
  68. 八木一男

    八木(一)委員 私は、同和問題について内閣総理大臣並びに関係の各閣僚に御質問申し上げたいと思います。総理のお時間の都合があるようでございますから、最初に総理大臣に御質問を集中していたしたいと考えております。  同和問題については、ことに同和対策審議会の答申の急速な完全な実施や、その中の中心の問題でございます内容の十分な同和対策特別措置法を早期に提出する問題につきましては、佐藤内閣総理大臣が一番御熱心にこの問題をいままで推進してこられましたことについて、心から敬意を表するものでございます。しかしながら、この問題が提起をされましてからことしは足かけ四年目、まる二年半ということになっております。この間、おくれた事情については私も事態を十二分に存じておりますから、おくれました過去のことについてとやかく申し上げたくはございませんが、ぜひこの通常国会において十二分なものが成立するようになっていただきたいという熱望を持っておるものでございます。  先日、本委員会で同僚の大原亨委員の御質問に対しまして、総理から、最善の努力をするという御答弁がありました。たいへん力強く存じているわけでございます。しかしこの前の特別国会、その前の四十一年の通常国会というように、他の案件のために提出がおくれ、またそれが流産になったという経過がございまして、事三年目になっておりますので、この通常国会でぜひとも成立をさせていただきたいという考え方から、再度佐藤内閣総理大臣から、本国会に十二分に成立する可能性のある時期において、内容十分な同和対策特別措置法案を提出することをぜひ明らかにしていただきたいというふうに考えるわけでございます。どうか総理大臣の誠意ある、熱意ある御答弁を期待をいたします。
  69. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 同和対策につきましては、八木君とともどもにたいへん私も苦労してまいりました。ただいま特別措置法について、格別な法案の成立あるいは成案を得ることについて努力をしておるということについて、御同情を賜わりましたが、しかしいままでこれが報いられておらない、成果をあげていない、これは私自身が実はまことに残念に思っております。おそらく八木君のように、野党の立場から政府を鞭撻されるというその方面から考えれば、ほんとうにどうしておくれているかということで御不満だろうと思います。それにもかかわらず御叱正をいただかないで、ただいまのようなお尋ねをいただいて、たいへん私も恐縮に思っております。この点では、もうすでに御承知のように同和対策協議会、この同和対策協議会からいろいろな意見が出ております。これらの意見はたいへん簡単であり、非常にわかりやすいように思いますが、どうもこの協議会から出した対案自身を実施に移すことすらまだできないでおる。そういう意味で私、担当大臣を特に督励しておるのが現在の状況でございます。過日、大原委員質問にもさような意味でお答えしたのであります。ただいま、四年間あるいはその以前からこの問題に取り組まれて私とともに意見を交換し、ある点では同意見であるようです。そういう問題が成果を結んでないことを私も残念に思っております。いまの準備の次第その他については、田中国務大臣からひとつお聞き取りいただきたいと思います。   〔委員長退席、藤枝委員長代理着席〕
  70. 八木一男

    八木(一)委員 田中総務長官からは、それだけのお時間がございますからあとで伺いますし、私もいまの経過は大体存じているつもりでございます。実は同和対策協議会で本月の五日に法律部会というものを持っております。三月十二日にそれを受けて総会で、同和対策特別措置法の問題についてできるだけ早く結論を、その日に結論を出すような気持ちで各委員が堀木会長以下御努力になっているという状況も私は知っております。  ところで、ぜひ総理大臣にお願いをいたしたいことは、今国会に成立するのに十分余裕のある時期で内容のよいものを出していただくことを、前々からここで明らかにしていただきましたと同様に、ぜひしていただきたいと思うわけであります。そのことが同和対策協議会の審議を非常に促進することになると思いますし、またこの問題についていろいろと御意見を持っておられる各党の方々にも総理の決意が知られまして、それを早くりっぱに成立させようという空気を譲成して、そしてこの国会で成立することを実現をするもとになると思うわけであります。そうした意味で、総理大臣がほんとうに御決意になれば  同和対策協議会というのは実は社会保障制度審議会や社会保障審議会のように、内閣なりあるいは厚生省が立案の前にその意見を聞かなければならないという法律規定はないわけであります。しかし熱心に審議をしておられる協議会でございますから、その協議会の意見が早く出て、それが尊重されて立案をされること、私はそれに賛成でございますが、いままでも月に一回というような総会のぺースでありますから、そのぺースで、三月の中ごろまでに結論が出ませんと、今国会に間に合わなくなるおそれがあるわけでございます。その点で、ぜひ総理大臣が、もし万が一同和対策協議会が何らかの事情でその結論を出し得ないときでも、内閣自体として法律で制約されている問題じゃございませんから、またそこで論議をされていることは田中長官以下十分に御承知でございますので、同和対策協議会の結論が早く出てやることが一番望ましゅうございますけれども、もし出ないときでも、それがおくれたときでも、今国会に間に合うように提出をするということを、ぜひここでお答えをいただければ非常にしあわせだと思うわけであります。
  71. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 総理の立場でもっとはっきりものを言えるだろうというおしかりですが、この同和対策協議会、たいへん熱心に出しております。同時にこういう問題は、法律をつくることがはたして必要かどうかというような基本的な問題で、一部そういう意見がある。私は、基本法はこれはつくらないことにしても、特別措置はどうも必要ではないか、こういうので、皆さんにたびたび私の所見を申し上げてきたわけでありますが、今度同和対策協議会がそういう意味のもの、それらに盛り込むべき内容を答申する、かように考えております。法律で要求するものではありませんが、しかし、協議会の意見をいままで尊重してまいっておりますから、ぜひその結論はひとつ政府に答申してもらいたいと思うし、意見を述べてもらいたいと思うし、また政府はそれによって処置をする、そうして結論が出れば、おそらくこの立法をする前にも、同和対策だけは超党派で議論されておりますから、その中身が前もって御相談もされておるようですから、でき上がったらわりにすらすらと国会で通るだろう、かように思います。しかし、それにしても、いま言われるようにできるだけ早く国会に出せとおっしゃる、これはもっともなことだと思います。できるだけそういうように努力したい、かように思いますが、いまの対策協議会の意見だけは聞くことが望ましい、かように私考えておりますから、それも御了承いただきたいと思います。
  72. 八木一男

    八木(一)委員 実は私、社会保障制度審議会の委員を長らくいたしたことがございます。そこで、これは内閣自体じゃなくて、厚生省からの御要請でございましたが、あのように各委員かなり忙しい方がおられるところでも、時間を切って、非常に政府が急ぐからということで、しかもそれを政府原案がなしに審議会自体でその案をまとめてくれということについて、大内会長以下最善の努力をして、三日間で初めての問題を考え抜いてつくった例がございます。ほんとうに内閣が今国会にぜひ出したい、成立に間に合う時期に出したいから、同和対策協議会においてはいついつまでにぜひいい結論を出していただきたいということを強力に要請をされましたならば、必ずその任にこたえられるだろうと思います。また、もしそのような要請にこたえられない場合には、これは法律規定にないわけでございますから、間に合えばもちろん尊重していただいたらいいけれども、間に合わない場合でも、政府が今国会に間に合うように出すということは、ぜひともひとつそういうふうにお答えをいただきたいと思うわけであります。実は佐藤さんが組織されておられる佐藤内閣、またそれをバックしておられる自民党と、私の所属をいたしております社会党の中に、いろいろな案件について非常に意見の相違があることは申し上げるまでもございません。しかし、この同和対策の問題とかその他の問題については、十二分に誠意をもって要請申し上げ、そうして御相談申し上げたならば、必ず一致点が出るべきものだと私は考えております。その点で、岸内閣総理大臣のときにその問題を提起しましたところ、私よりも総理大臣のほうが熱心な調子で、方針がきまり、その結果、同和対策審議会ができ、その結果、同和対策審議会の答申が出走した。その答申の中の主要項目で、同和対策特別措置法というものがそれを進めるものだという答申をしているわけであります。でございますから、この論議は、十数年前から国会政府との約束になっているわけであります。ただ、その間の経緯を御存じのない方、あるいは地域的にそういう問題について認識が幾ぶん違う方、幾ぶんそういう問題について違う方があると思いますけれども、すでに十数年来のそういう約束で来ましたものが進まないということでは、非常に残念だと思うのです。私、いままで総理大臣が熱心にやっておられることについては、この問題は佐藤内閣総理大臣が一番熱心に取っ組んでおられるということを常に申してまいりました。しかし、ある政党のある部分の方は、佐藤内閣は信頼ができない、そうおっしゃっても、そんなことはしないだろうと言う方もございます。あるいはまた、政府が公約を時期的に実行されないということを激しく追及する形でなければ問題が進まないという御意見の方もあるようであります。しかし、私は国内の問題について、ほんとうに一生懸命誠意を持って申し上げ、また総理大臣がほんとうに熱意を持っておられるときに、そうしたほんとうの努力を続けていけば、必ず早くそれが実現するものだと信じてまいりました。いまも信じております。しかし、今国会にこれが成立しませんときには、私はそのままに信じておっても、私の見解が政治の動きから見て間違っておった、非常に甘い考えであったという批判に対して、私も返すことばがないことになろうと思います。私個人はどうなってもいいと思いますが、私と同じ考え方でこの問題の早い成立を熱望している国民の方々に、私自身もそうでございますが、国会としても、政府とされても、これは非常に申しわけがないことになろうと思います。それで、いままでこの問題が進まなかった理由の中には、ごく一部の方に、この問題の経緯を御存じなくて、それはまあもっとあとでもいいじゃないかというお考えの方があったこともあると思います、たとえばある党の中に。それから、それがなくても予算でやっていけばいいじゃないかというような議論もあると思います。しかしながら、この問題は佐藤さんが十分御承知のように、予算でやることが、予算を出すことが、最終的に具体的には一番大事ですけれども、出し方について、地方が超過負担でこの問題を実際上ストップせざるを得ないという状態ではなしにやるということでなければ進まないという問題があります。また、国の責任なり地方公共団体の責任というものを明確にして、みんなが一生懸命決意を持ってやるということで推進しなければできないという問題がございます。ですから車の両輪でございまして、いまやっておられる十カ年計画をほんとうに進めるためにも、どうしても必要なものであるということを私は信じ、総理大臣も同じお考えを持っておられますが、この問題は非常にむずかしい問題でございますから、人の中には簡単に考えて、その経緯を御存じなしに、まあそれはあとでもいいというお考え方がごく一部の方にありましても、これはどうしてもやらなければならないのだということで、総理大臣として、また総裁としての指導力で、ひとつぜひ今国会に成立が間に合うようにしていただきたいと思います。総理大臣がほんとうにその決意をお持ちいただきましたならば、いまの政治形態の中では必ずそれが実現するものだと私は思っております。総理大臣もその御決意だと思います。ですから一部の方々のことに御遠慮なさらずに、今国会に必ず成立させるようにしろ、提出をしろ、その内容についても十二分なものにしろ、そういうことでやるという御答弁をぜひいただきたいと思います。
  73. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 これはいま言われるように予算的に出てくればいいという、これはもう金をつければそれで済むか——ことしなどは昨年の四割増しになっておると思います。したがって、問題は十分理解してくれていると思うが、われわれのように最初からこれに関係しておる者から見ると、やはりその出し方が実は必要だ、こういうものを何か平等の原則、特に立ちおくれた方々に対しての処置だ、こういうことをはっきりしたいというか、そこらにねらいがあるように実は私は思っております。そういう意味で、堀木君が御承知のように対策協議会の会長をしておりますから、もとの経験者でもありますし、いろいろ厚生省関係の経験者でもあるから、これを督励しておるわけであります。また、御指摘になりましたように、地域的に見まして、関東方面あるいは東北方面には、こういう問題についてあまり深い関心はないと思いますけれども、関西、ことに私どものほうはたいへんな問題でございますから、こういうものが整備されることが望ましい。しかし、その後の意見では、いまさら同和というようなことばを使うまでもないじゃないかというような意見も実は出ておるのです。これは確かに同和ということば自身に、裏を返せば一つの差別的なものがあるんじゃないかという非難は当たっておるように思います。しかし、名前自身の問題でなしに、何らかこういうものが基本的に平等のもとに処置されるという気持ちがにじみ出るような、そういうものがほしいように私は思っております。
  74. 八木一男

    八木(一)委員 いま、同和ということばがどうであろうかというようなことを、ごく一部の方が言われる状態のあることを私は知っております。この問題については、岸内閣以来の論議の中で、一部が、眠った子を起こすなという考え方で、これを具体的に取り上げることについて積極的に賛成されない向きがございました。実は、われわれ政治を担当している者や、幾ぶん社会的にいろいろな活動をしている者が同和地区の方にお会いするのは、そこの中で、非常に状態がよくて、たとえば地方議員になったり、たとえば会社の社長になったり、その地区の区長になったり、そういうような−そこの中の出世をした人ですか、何か自分自体が差別と貧乏から解放された人たちの意見を聞いて、それが同和地区の人たちの意見だというふうに誤認をすることが非常に多いわけであります。そのような発言の場を持たない、政治家と接触の場を持たない、百人のうち九十九人までの、いまだに非常に差別と貧乏に苦しんでおられる方々は、その問題を国がほんとうに正面切って取り上げて、その差別と貧乏のもとを断ち切ってくださる政治を熱望しているわけであります。地域的にその現象の薄いところと濃いところがございますから、薄いところの方はそういうふうに誤認しがちでございます。そういう方々が、十数年の国会の論議の、前からの経緯を御存じなしに、いまただそれがどうであろうかというようなことでブレーキになったならば、これは国会の、国の政治の継続性という点で非常に問題があろうかと思います。また、その名前については、同和教育、同和問題、同和予算ということで、すでになじんでおる問題であります。そういう点で、そういう名前に。いていろいろな御意見のある方も、総理大臣の指導力で、これは総理がやるんだ、いいんだということで、ひとつその方々にすぐ納得していただいて、それから同和対策協議会のほうも強力に進めていただくことを要請されまして、そういうことがあることは存じ上げておりますが、最終的に今国会に成立が間に合うような、十二分の内容を持ったものをその時期に御提出される、その決意をひとつ前向きにぜひ明らかにしていただきたいと思います。
  75. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 ただいまのお話しで、私と八木君との間には何ら食い違いがないようでございます。私もできるだけの努力をすることをこの機会にはっきり申し上げておきます。
  76. 八木一男

    八木(一)委員 それから内容の問題でございますが、内容の問題については、昨年の四月六日に、総理大臣のおられるところで、予算委員会で申し上げました。それについても総理大臣は御賛成をいただいて、各大臣も全部よくわかったと思う、その問題については、非常に僭越でございますが、八木、おまえの意見を聞いて十二分の案をつくるようにしようというふうに言われました。同和対策協議会の結論が十二分によいものであれば、これはほんとうに喜ばしいことであります。しかし、それが、何らか、非常に新しい飛躍的なことをする場合に、少しむずかしいんじゃないかという、遠慮がちで、遠慮過ぎた原案になりましたときには、内閣においてそれをさらに補強していただきたいと思いますし、その間についても、私どもの意見もひとつ十二分に取り入れて出していただきたいと思います。  具体的な内容はこの前申し上げましたし、総理のお時間の都合もありますから申し上げませんが、この前、四十二年四月六日の予算委員会で申し上げたような内容をぜひ盛り込んだ、そういうものを早くつくっていただくことをぜひ要請をいたしたいと思います。先ほどからの総理の御答弁で、今国会で成立する時期において、いま申し上げたような十二分のものを出す御決意であるというふうに私は理解をさしていただきたいと思いますが、ぜひ、そのとおりだということを一言お答えをいただきたいと思います。
  77. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 先ほど申しますように、私はあらゆる努力をする、かように申しておりますし、八木君が御理解になったとおりでございます。
  78. 八木一男

    八木(一)委員 どうもありがとうございました。ぜひひとつお願いいたします。  予算委員長も、いま総理が、八木君の言われたとおりだと最後に言われたことを、速記録に載りますけれども、ひとつ御確認になっていただいて、これからの政治を進めていただきたいと思います。  では続いて、これから関係総務長官をはじめ各大臣に、また法制局長官にもお伺いをしたいと思います。  総理のお時間があって、いま内容を申し上げられませんでしたが、昭和四十二年の四月の六日の日には、内容についても総理大臣に申し上げたわけであります。そのときには、田中さんはまだ内閣に列しておられませんでしたので、ぜひその速記録を十二分にお読みいただいて、内容の問題を御推進をいただきたいと思うわけであります。その内容の問題は、同和対策特別措置法という固有名詞をぜひ使っていただきたいということであります。総理もいまその名前でお答えをいただきました。また、御承知のとおり同和対策協議会に、いろいろの、堀木会長の私案なり、あるいは各委員の私案が出ておりますが、これは部落解放同盟や、あるいは全日本同和会の関係委員方々もみんな出しておられます。そのすべてが同和対策特別措置法という名前で、その案に対する意見を出しておられるわけでございまして、先ほども総理との質疑応答の中にありましたように、名前にこだわる方が一部残念ながらあるようでございまするが、その名前にこだわる方々に対しては説得をされ、それに遠慮されることなしに、同和対策特別措置法という名前の法律案を出していただくことがその内容であります。  その内容としては、前文あるいは基本条文に、国連の人権憲章の問題なり、日本国憲法の問題なり、あるいはこの問題の経緯その他を明らかにして、いかにしてこういう問題をやるのだということを明らかにする。それから、国の責任を明確にする。地方自治体の責任を明確にする。そして、それに対して国が十カ年計画、前期五カ年、後期五カ年、それを積極的に推進する任務を負う。そのことについては、それが、政府がやられることをほんとうによく見つめ、督励する意味において、国政全体の重要な問題でございますから、国会にその報告の義務をつけて、国会においてその問題を積極的に推進できる自動的な場をぜひつくるというような問題、それから実際の内容の問題といたしましては、この問題を推進するために、おもに地方行政団体が国の政策についてやっておられまするけれども、地方行政の問題として、超過負担という問題が地方行政の推進に非常にブレーキになっているという問題が一般的にございます。その一般的な問題も重要でございまするが、それ以上に、この問題については、特にその問題がブレーキになるわけであります。たと、えば、国庫補助率を高めなければならないけれども、高め方がまだ少ないということになれば、その残りは、国庫補助裏ということばで技術的に呼んでおられるようですが、地方公共団体の負担によるという問題があります。それから、補助対象を建物だけに限って、土地に対しては補助対象にしない場合があったならば、建物を建てて遂行しようとしても、その土地代が地方負担になるという問題がある。これは補助対象の問題である。補助率、補助対象の問題。それから、一般的にいわれる予算単価等、実際の施行に要する費用の食い違いがございます。実質単価の問題がある。それ以外に、それでも地方負担が残るとするならば、これは交付税の問題なり、特別交付税の問題ということになるわけであります。そのほかにまた起債でやる部分があったならば、その利子補給という問題が起こります。そういうような問題を解決しませんことには、特にこの同和地区は、ある府県には集中し、ある府県には少のうございます。また、ある市町村にはひどく集中し、ある市町一村にはございません。しかし、この問題は憲法のあらゆる条章に関係のある問題で、ぜひともこれを推進をしていかなければならないという問題でございますから、そういうことを、ほんとうに具体的に超過負担がないように、地方負担がないように対処しなければ、やるといっても、やらないということになるわけであります。もしその地方が小さな財政で、この問題に強力に集中的に取っ組んだという場合には、ほかの地方財政のほうに影響を及ぼしますから、そこで同和地区じゃない住民との間に、その予算の配分に向かっていろいろの意見の相違が起こり、これが差別を助長することが起こるわけであります。したがって、この問題に関する限り、地方の超過負担、地方の負担なしにこれを前進することが必要でございます。  そういうことをさせられるような、たとえばこの同和対策特別措置法において、財政上、資金上、金融上の、あるいはまたそれをつくる法制上のそういうような特別な措置を規定したものでなければ、ほんとうに動くわけはないわけであります。そういう問題が入る必要があるということは、昨年の予算委員会において総理大臣と私どもの間に意見の一致を見、閣僚の各大臣もみんな聞いておられたと思う。その問題を推進をしようという明確な御答弁がございました。そういうような内容、さらにいま実際に効果のある具体的な内容をどんどん進める。たとえば石炭離職者に対していろいろの特別措置がある。急速に一地域的にたくさん失業者が出た問題で、石炭離職者の対策が行なわれている。これもまだ私は不十分だと思いますけれども、百年にわたる長い半永久失業というような、そういう状態の場合には、やはり同じような対策が必要であろうかと思います。たとえば離島振興法という法律がございますが、残されたそういう亀城に、同じような対処が必要ではないかと思うわけであります。  そういういろんないま考えられるものをできるだけたくさん入れ、また即時入れられないならば、その同和対策特別措置法に、そういう問題を入れるようなもとをつくったものを入れるくらいのことはどうしても必要ではないかと思うわけであります。特に、いまの財政措置は絶対に必要であります。高率補助、そして必要なすべての対象に対して補助をする、そして実質単価をとる、そうして同和対策の特別交付税をつくるというような問題も含んだ、そういう同和対策特別措置法を制定することが総理大臣を通じての政府国会の約束になっているわけであります。その点で、その問題の衝に当たられる田中総務長官は、いままでの国会政府との約束、国会を通じて政府と国民との約束が早く実現するように、十二分な内容で実現するようにぜひ推進をしていただきたいと思います。  同和対策協議会には、たとえばいままでの財政の措置、いままでの法律、そういうものの概念を乗り越えてやらなければこの問題は解決をしないのだ、そういうものに遠慮をしないで同和問題を解決するにはどういう方法が必要だ、これを解決するための、推進するための法律にはどういうことを盛り込むことが必要だということを、既成の概念に遠慮は一切せずにやってもらいたい。一番いい方法を出してもらいたい。そしてそれをこの通常国会に間に合うような時期に、その協議会の答申を尊重できるように、早く、少なくとも三月中旬までにその結論を出してもらいたいということを、ぜひ総務長官から強く要請をしていただきたいと思います。総理大臣自体の御要請もぜひ進めていただきたいと思います。  これは総務長官、官房長官両方に申し上げておきますが、そのような決意を持って当たられましたならば、堀木会長以下、必ず十二分な内容をこの三月中旬に出していただいて、それ以後は、政府がほんとうに決意を持たれましたならば、必ず三月末までくらいには提出ができるのではないかと思います。総理大臣はいま、今国会に間に合うように、十二分な内容の法律が成立するように、間に合うようによいものを早く出したいということを私に御答弁をいただきました。その総理大臣の御答弁を実現をされるために、重大な責任を持っておられる田中総務長官の完全な、総理大臣の御決意以上の御決意をぜひ伺っておきたいと思います。
  79. 田中龍夫

    田中国務大臣 八木さんからたいへん御激励をちょうだいいたしておりまするが、ただいま総理が詳しく申し述べましたように、ただいま堀木会長のもとで協議会が一生懸命に作業をいたしております。おっしゃるとおりに、五日の法律部会、十二日にはさらにまた総会をいたしまして、意見の取りまとめや何かに努力中でございます。また、協議会の御審議につきましては、もう八木さん一番よく御承知のとおりでございまして、私と八木さんとの間には、議論を戦わしたり何かをする何にも必要ないところで、一生懸命に総理の意を体しまして努力いたしたい、かように考えております。
  80. 八木一男

    八木(一)委員 その協議会について、ほんとうに政府がお急ぎになるときには、担当大臣がそこに出て、ほかのいままでの慣例などに遠慮をせずに、十二分なものを審議をしてぜひいつまでに出していただきたいという要請を、関係の大臣自体がその総会でおっしゃる例がございます。そのことが推進になるわけでございます。ぜひ十二日の総会には田中総務長官が行かれまして、いままでの慣例などに遠慮をせずに、ほんとうにこの問題を解決するために役に立つ同和対策特別措置法を、しかも今国会で間に合うように三月の中旬までにぜひ結論を出してもらいたいということを、協議会に御出席になって直接に、熱意を込めておっしゃっていただきたいと思います。それが一つであります。  それから、協議会のほうで十二分なよい答申が出ましたならば、それを十二分に尊重した案を即刻に総理府でつくられる。前からの総理大臣とのお約束で、その内容について八木の意見を聞くということにお約束をいただいておりますから、その出される前に私にその内容をお示しをいただきまして、十二分に私の意見も取り入れて案を出していただきたいと思います。それについては私は時間はかけません。申し上げることはもう三十分で、これはこうこういうふうにしていただきたいということを即時申しますから、時間はかけませんから、ぜひそういう案をまとめられるまでに、そういうことをやっていただきたいと思います。これは内閣とのお約束のことでございますので、ぜひお願いをいたしたいと思います。  それから、総理大臣もあの御決意をしていただいたのですから、田中総務長官、非常に熱心であられるのはわかりますけれども、もし今国会に間に合うように提出ができないときには、職務をかけてもそれを推進されるということをぜひお約束をいただきたいというふうに思うわけであります。この点についてぜひ……。
  81. 田中龍夫

    田中国務大臣 たいへん御促進のお気持ちはわかります。しかしながら、堀木会長はああいう方でございまして・同和のことに関してはおれにまかせろという、たいへん強い信念で努力しておられる次第でございます。御意見のほどは承っておきますが、今後ともなお堀木会長ともよく談合いたしたい、かように考えております。
  82. 八木一男

    八木(一)委員 一番目について御答弁いただきましたが、あとの二つの、提案までに私の意見を聞くということ、それから職務にかけてこれを推進される決意を表明していただきたい。その二つについてひとつ。
  83. 田中龍夫

    田中国務大臣 堀木会長にも申し伝えておきまするし、御意見を十分に拝聴いたしておきます。
  84. 八木一男

    八木(一)委員 それでは、御答弁は十二分じゃありませんけれども、私のさっき申し上げたとおり、職務にかけてもこれを推進されるということと理解をさせていただきたいと思います。よろしゅうございますね。  それから、続いて法制局長官にお伺いをいたしたいと思います。昭和四十一年の予算委員会総括で、法制局の長官にいろいろ意見を申し上げました。この問題の解決のためには、いままでの法制上のやり方あるいは財政上のやり方、いろいろなやり方が全部何もしていなかったために、明治四年の解放令が絵にかいたもちになって、いまだに差別と貧乏が残って、大ぜいの国民の人たちが、労働者として、農民として、中小企業者として、そのスタートを非常におくらされた。いまだにスタートにつけないという状態で、非常な貧困に苦しみ、人権が侵害をされているという問題がある。いままでの法令や法制がこれを解決しておらなかった。それを解決するための法令は、いままでの既成概念を乗り越えた法令でなければならないということについて意見の一致を見ました。この同和対策特別措置法の答申が出、いまのようにどんどん進みますと、法制局の問題になります。法制局の問題になって、いままではこういう問題を書いたことがない、だからそれはなじまないというような一ほかの法律を書くときによくそういうことでブレーキになる。そういうことを一切乗り越えて、一日か二日でりっぱなものを書かなければならない。それを書くことを法制局長官がしないならば、これはあなた自体がこの同和問題を否定したことになって、憲法の十一条から二十六条までに関係のあることをやらないということになる。憲法九十九条に違反をするということになる。そういうことを、法制局の一部のへんてこな理屈屋を一切押えて、あなた自体で執筆をするつもりで、内閣からこの連絡があったときには、一日か二日で成案を得るということをしていただきたいと思いますが、それについて明確な御答弁を願いたいと思います。この前も答弁をしていただいております。一昨年と違った答弁になりましたならば、あなたは憲法違反を侵すということになって、重大なことになります。明確な答弁をひとつお願いしたい。
  85. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘のように、先年八木委員との間の御質疑がありました。御答弁申し上げたことも覚えております。いずれにいたしましても、協議会から答申がある、答申になったものが今度は政府の施策としての法案となって固まってまいります。その法案について法制局はむろん審議するわけでございますが、ただいま御指摘の数々の御熱意のあふれた御要望、それらは十分意に体して、りっぱな法案をつくるように努力をいたしたいと思います。
  86. 八木一男

    八木(一)委員 次に、総務長官と官房長官に御質問を申し上げます。  この問題を進めるのには、総務長官が前に言っておられたように、十カ年計画、前期五カ年、後期五カ年の計画を進めること、それをスムーズにさせるための法律をつくること、そうしてその計画について予算を完全に裏づけをすることということが、どれも欠くことのできない、また至急にやらなければならないことであります。しかし、それを推進するためにはいろいろな機関が必要であります。政府のほうでは、これは総務長官の御努力で総理府設置法の一部改正案が提出を見まして、同和対策協議会の任期の延長ということが出たことは、御努力の一つのあらわれと思います。その点敬意を表したいと思いますが、それだけではなしに、中央政府の機関あるいは地方のいろいろな自治体におけるそういう機関、それからいろいろな外郭団体——外郭団体ではありません、たとえば公庫、公団というようなものも全部必要になってくるわけであります。そのことについて、臨時行政調査会の答申を——ここにおられる閣僚の方はみな御勉強家であられますから、その答申をはすかいに読んでおられないと思いますが、往々世の中にははすかいに答申を読んでおる方があります。何でも政府の部局は減らせばいい、何でも審議会なり公庫なり公団を減らせばいいというふうに、臨時行政調査会の答申を思い込んでいる間違った人があります。ところが、臨時行政調査会の報告を読みますと、そうではないのであります。それをいま行政管理庁の長官に伺いますので、その御答弁について、いろいろお話ししたことをもとにして、総務長官なり官房長官なり、また関係方々が、そのような具体的に推進する機関をどんどんと拡大をするということをやっていただきたいと思います。総務長官、白雪長官と申し上げながら、行政管理庁長官に質問が一転しまして恐縮に存じますが、行政管理庁長官は臨時行政調査会の勧告の二十五ページ——これは政府で出した本でありますが、二十五ページの中で、「人権の擁護、後進地域の総合的開発、辺地の総合的振興、低所得者等の生活の向上、労働災害の防止、公害の防止等その向上・推進をはかることが行政の当然の任務とされるべき分野にかかる行政機構は、その充実をはかること。」という項目があることを御承知であり、また、この行政機構というのは、前の文章から見て、中央行政機構だけではなしに、地方行政機構にもこれは同じことを言っておる、また、公庫、公団というようなものについても同じようなことを言っておるということを御理解になっておられると思いますが、それについて、行政管理庁長官の御答弁をひとついただきたいと思います。
  87. 木村武雄

    木村(武)国務大臣 よく承知いたしております。やれるものから逐次やってまいりたい、こう考えております。ただ、あなたのおっしゃいました同和問題でありまするが、私、幼い時代には若干知っておりましたけれども、私のほうの地方ではこの問題が解決いたしておりまして、どうも実感が伴わないで、まことに申しわけありません。その渦中におられまするあなたの御心労には御同情申し上げまするが、できる範囲内において、早くこんな歴史のつめあとは解決すべきものだ、こういうように考えております。
  88. 八木一男

    八木(一)委員 行政管理庁の長官は東北の御出身でございますから、実感の薄い点については私もわかります。しかし、東北にも現象が少なく薄うございますけれども、その実態のあることをぜひさらに御研究を願いたいと思います。その問題ではなしに、いま申し上げた字句で、三十九年の九月にこの勧告が出ております。同和対策審議会の答申は四十年の八月に出ております。この同対審の答申がさきに出ておりましたならば、臨時行政調査会としては、同対審答申において指摘するようなものについてはというような文言が入るか、あるいはそういう解釈をしてこの文章がつづられたものと思うわけであります。ここに人権の擁護あるいは後進地域の総合的開発、低所得者等の生活の向上ということは、明らかに中心的に部落問題をさしておるところがあるわけであります。そういう意味で、こういう機関の充実をはかるものの中に、第一義的に同和問題に対する機関の充実ということがはかられなければならないと思うわけでありまして、その点について、行政管理庁の長官総務長官と、それからまた官房長官と、簡単でけっこうでございまするから、すっぽりとした前向きの御答弁をひとついただきたいと思います。
  89. 木村武雄

    木村(武)国務大臣 もう一ぺん読み直しまして、御期待に沿うように努力したいと思います。
  90. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  御質問の内容は、同和局の新設、同和事業団の設置、公庫の設置、こういう点だろうと存じます。この点はなかなかむずかしい問題でございます。容易なことではないと考えておりますが、ことに今日の客観情勢から申すならば、これをすぐ実現をするということは、けだし不可能に近い。私は歯にきぬを着せないでこのことは申し上げておいたほうがいい、かように存じます。
  91. 木村俊夫

    木村(俊)国務大臣 いまそれぞれ担当の大臣から申し上げましたが、いずれにいたしましても、行政上特に必要あるものについて、これをあくすで制限するという意味ではないと思います。臨調の精神もそのところにあると思います。
  92. 八木一男

    八木(一)委員 新しい大切な政策をつくろうとするときに、それを推進するための部局が必要なことは、これはもう言わなくてもわかることであります。ですから、大体これをしなければならないわけです。そういう行政をやろう、そういう政治をやろうとしたら、それに必要な部局をつくるのはあたりまえの話であります。ただ、それを一般的に行政機構を縮小しようというふうに理解去れ過ぎている臨時行政調査会の答申があるので、その無理解のために、こんな大事な問題であるけれども、行政機構は縮小しなければならないという大前提があるからだめだというような、間違った政治家が世の中にある、また間違った公務員がいるということで、これを持ち出したわけです。臨時行政調査会では、こうしたものについては充実をはからなければならないということをいっているわけです。でございまするから、いま総務長官の言われたような、なかなか困難な事情があるというのは、困難な事情を言っている、その閣僚であるか、どこの部局であるか知りませんが、これは困難だと言う人たちが、この問題の内閣の約束をほんとうに実行しようとしない、、また政策を実行するときに機構が要るということを理解していない、けしからぬ連中であります。そのようなけしからぬ連中の意見を受けて、なかなか困難だというようなことを田中長官が言われるようなことであれば、この問題の推進は非常におくれます。そうではなしに、いま申し上げたことをもとにして、これは何が何でも推進しなければいけない。臨時行政調査会の答申を見ても、この問題は特に充実をしなければならないという問題である。なかなか困難であると言うのがだれであるか知らないけれども、君の考え方は間違いであるということでこれを説得して推進をしていかれる、どうしても推進をしていくという決意を持っていただかないと、困難ということで御答弁になったんでは、問題が推進することにならないし、総理大臣の意思を受けてほんとうに全面的にやられるということにはならないと思うのです。どうか、田中長官のいまのようなことは、私は何も問いませんが、今後は断じてそれを貫いて、必要な部局については、国地方を通じ、あるいはまた政府の直接の機関、公庫公団等を通じて、充実、拡大をする、新設をするという決心をこの場で固めて、この場で明らかに御答弁を願いたいと思います。
  93. 田中龍夫

    田中国務大臣 さようでございますから、協議会を特に二年間の延長をいたした次第でございます。なお、ただいま私が申しましたのは、客観的な姿を申し上げた次第でございます。
  94. 八木一男

    八木(一)委員 客観的な姿を申し述べられたことはわかります。しかし、その間違った観点による客観的な状態を打開をして、それを推進するという決意がなければ、この問題を担当しておられる大臣としては、ほんとうに責任を全うされたことにならないと思います。その決意を述べていただきたいと思います。
  95. 田中龍夫

    田中国務大臣 私も閣僚の一人といたしまして、内閣の方針に従いまして万事やっております。かような次第で、何とぞ御了承を賜わりたいと存じます。
  96. 八木一男

    八木(一)委員 具体的な問題として、たとえば同和対策金融公庫という問題があります。で、金融公庫という名前になると、それを増設することは何だか悪いことのような議論が、この一両年間方々で言われておるようであります。しかし、この百年の間に、零細企業をする基盤について政府が全然してくれない、そういうことで非常に立ちおくれるものに対して、特別なそのような金融公庫というものをつくることが、このことから見ては非常に重大な問題であります。それを一時的にこの数年間で、金庫はいけないんだ、金庫はふやさないんだというような、ばく然とした、根底がはっきりしていないことで、これにブレーキをかけられるようであっては非常に間違いだと思います。同和対策特別措置法の中の論議においても、金融公庫を設置すべしという意見が、二つの団体の意見として出ております。そういう問題についても、それが必要であればどんどんやるんだということでやっていかなければならないと思うわけでございまして、その点について大蔵大臣と通産大臣の御意見をひとつ伺っておきたいと思います。
  97. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 昭和四十四年度を初年度とするこの長期計画というようなものも、いま対策協議会でやっておるところでございますし、こういうものができましたら、この計画に基づいた資金需要というものは十分われわれは考えるつもりでおりますし、また、国民を差別しないでできておる国民金融公電以下の金融磯菊というものは、いまりっぱにあるのでございますから、必要な資金の調達というようなものは、十分従来の既設の機関を通じて私どもが運用することができると思いますので、私は、新しい特別の金融機関をこれによってつくるという必要はなくて、りっぱに要望に対処し得るというふうに考えています。
  98. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 同和関係の中小企業の人たちは、なかんずく非常に零細でございます。そういう人たちのために、すでにできておる金融機関を十分に活用して、不自由のないように十分にめんどうを見てまいりたいと思います。新しくつくることにつきましては、大蔵大臣と大体同様で、特にそのために一つのものを設けなければならぬか、やはりそれよりも、一視して同仁的な機関があるのでございますから、それを十分に活用して、不自由のないようにしてあげたい、こう思います。
  99. 八木一男

    八木(一)委員 大蔵大臣も通産大臣も、この問題の本質をほんとうにじっくりわかっておられないと思います。ほかの大臣の方にも、恐縮でございますが、ひとつよくお聞きになっていただいて、根本的に考え方を変えていただきたいと思うのです。  同和問題というようなものがどうしていま問題になっているかということは、何回も前に申し上げたことがありますから、私は省略をいたしました。しかし、そのときに、水田さんは閣議で私の申し上げたことを聞いておられるのですが、ほんとうに聞いておられなかった。また、総理大臣がそれを理解していろいろな決意を示しておられるのを、ほんとうにそれを理解していない。ただ、いまの財政とかいまの金融というような立場でものを判断をしておられる。非常に間違いであると思います。  大体、この部落問題というのは、何から淵源があったか、あなたに伺いたいのですが、時間がないから私から申し上げます。大蔵大臣も通産大臣も——通産大臣、横を見ないで聞いていてください。  大体、この問題は、徳川時代からずっと始まっております。徳川時代に、あの徳川の政府が、百姓をして食わしむべからず、飢えしむべからずという、ぎりぎりの収奪政策をとった。時のおもな生産を担当しておる農民に対して収奪政策をとった。それで、武士階級がその権力を維持したというところから始まっております。そのために、農民に名を与えて実質的にしぼろうということで、故意に士農工商、繊多、非人という階級制をつくった。人の上に人を置き、人の下に人を置く。特にそういう人たちについては人間以外の扱いをして、徳川の時代が終わったわけであります。ところで、明治の四年に太政官布告というものが出ました。一切これを平民とするということが出て、関係者一同は非常に喜びました。しかし、明治の政府は、いままでの身分制は取り払いましやけれども、華族を置き、士族を置きました。前からあった位階を温存しました。新しく勲等という制度をつくりました。こういう制度は、人よりも栄誉のある人たちがいる。人よりも、普通簡単に言うと、上の人があるという概念を残したわけです。貴族があるという概念を残しました。人よりも上の人があるということになれば、人よりも下の人があるということにならざるを得ません。貴族があれば、賎族があるということになる。こういうことで、身分制は撤廃をしたけれども、その差別の実態は明治の解放では何にも解決をしなかったわけです。そこで、農業に従事して去られる方は、武士階級の土地所有権がなくなっただけ楽になりました。士農工商の商に当たる人は、資本主義の興隆期にあたって大いにその才幹を発揮して、大いに発展ができたわけであります。工に当たる人たちも、仕事がふえてよくなったわけであります。あの身分制の撤廃でいろいろなことが変動したのは、武士階級と、そしてこの部落の人たちであります。武士階級に対しては、その当時、たとえば農業を希望する人に対しては一番優先的に農地を与えました。農民として成り立つ方法を与えました。二億一千万円という秩禄公債を発行いたしました。この秩禄公債をいまの貨幣価値に換算をするとものすごいことになります。卸売り物価で千三百倍、小売り物価で二千五百倍になります。そうなりますと、二千七百億からあるいは五千億という金になります。それを三分でいままで回したとすれば、何と三兆か四兆という金になります。そういうものを同和地区の人たちよりもずっと数が少ない武士階級に、俸禄がなくなるかわりに支給をしたわけであります。ところが、この同和地区に対しては、いままで徳川時代にあった斃獣処理権その他の職業的な独占権を、職業の自由ということで取り上げました。そして農地の再配分を一切いたしませんでした。そして、いままでなかった徴兵と納税の義務を課しました。明治政府は、この人たちに何もしないだけでなしに、徳川時代以上に経済的には圧迫をする方法をとったわけであります。しかも、商売人として立とうとしたならば、そのような貴族あり、賎族ありという状態を残しましたがために、土地を貸してくれない、土地を売ってくれない、家を貸してくれない、家を売ってくれないということで、都会のまん中で商業に工業に進出する道は閉ざされました。武士階級は、おもに官軍側は高級公務員に、幕府側は下級公務員に、そのような安定した職業に吸収はされましたけれども、そのように公共事業はもちろん、私的事業においても差別があるために、労働者として雇用される道も閉ざされてまいりました。農民としても土地を与えられず、労働者としても、零細企業者としても、行く道を与えられず、いままでの伝統産業は資本主義の自由でどんどん侵略をされる、そういう状態で、貧困に次ぐ貧困がいままできたわけであります。最初から、自由に商業をする、自由に工業をする、労働者として成り立つ、そういう自由権を奪ってまいったわけであります。九十五年間もスタートをおくらしている一わけであります。したがって、その人たちが零細企業者として成り立ち、労働者として成り立ち、農民として成り立つために、この九十五年間のおくれを取り戻すために、政府としてはあらゆる意味でこの立ち上がりのための援助、協力をしなければ、その百年間の差別と貧乏、その前の身分的な差別は取り返しがつかないとしても、いま生きている同和地区の人たちに対してそれをやらなければ、対処したことにならないわけであります。それを一般的なベースで、いま財政の硬直化だ、あるいはまた、いまそのような金融機関はあまり特設しないのだというような、ここ一年か二年か五年ぐらいのベースで何百年の問題を解決をし、この百年の問題を解決をし、政治の課題としては十数年の問題になっている問題を、一時的のいままでのあなた方のやりにくかった問題をもとにして、それをやらないという考え方は、この部落の問題を根本的に解決しようという政府国会の約束を、大蔵大臣や通産大臣が踏みにじることになるわけであります。そのような通り一ぺんの一年や二年の考え方で、そういうものは必要はないというような考え方を断じて改め、このような同和対策金融公庫は必要だからつくろうと、大蔵省みずからつくることを主張する。通産省も何をしているんだ。なおさらのこと、そのような零細企業者のために、大蔵省が何と言っても、だれが何と言っても、つくるのだというような決意を持っていただかなければならないと思う。その立場で大蔵大臣と通産大臣に御答弁をいただきたいと思います。その御答弁が不満足であれば、内閣の約束をあなた方がほんとうに理解をしない、あなた方がブレーキをかける、閣内が不統一だということになります。その点を深く勘案をせられまして、問題をいま十二分に把握した時点において、前向きの積極的な御答弁を願いたいと思います。大蔵大臣、通産大臣の答弁を求めます。
  100. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 先ほどから申しているように、政府はこの問題について特別のいろいろな措置まで考えるというようなことでやっておりますし、私どももまた、今年度の予算で見ましても、ほかの一般の予算の伸び率と比べてもおわかりのように、特別にこの問題に力を入れて予算の編成をやったつもりでございますが、そういうことと、いまおっしゃられたようなことは、私はまた別ものだろうと思います。と申しますのは、もし現存のいろいろな金融機関が特にこれを差別して金融しないというようなことがございましたら、差別させない方向への行政努力を私どもはすべきものでありますし、また、いま、たとえば環境衛生とか、いろいろ金融に特別にワクを持ったやり方もございますが、何かの措置考えろということでしたら、実情に応じた考え方もしましようが、問題は、同和事業の一番の本質というものは、いかにして早く同和してこういう差別的ないろいろな行政をなくするような方向へ解決するかということが私は重大だと思います。そうでなくて、一々いろいろなものを全部金融機関まで区別するような特別のものをつくるという方向は、私はやはりほんとうに同和事業の本来の問題から考えてどうかという気がいたしますので、現実に困るものは困る、それをどう打開するかということと、新しい機関を区別してそういうものをつくるということは、これは考えを違えてもいいのじゃないかというふうに考えます。
  101. 八木一男

    八木(一)委員 大蔵大臣は、同和対策審議会の答申を全文読みましたか。読んだか読まないか、はっきり言ってください。
  102. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 その六項目に関するもの、一応読みました。
  103. 八木一男

    八木(一)委員 いまの六項目というのは何ですか。
  104. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 たとえば、いま設置されて審議しております内閣における同和対策協議会も、この答申によってできたものでございますし、そのほか、同和対策についての問題、大体大きく六項目あったと思いますが、これは読みました。
  105. 八木一男

    八木(一)委員 どういう意味で、はすっかいに読まれたのか、さかさまに読まれたのか知らないけれども−大蔵大臣、こっちを見て聞いてください。この問題は、さっき簡単に申し上げたけれども、あなたは頭がいい人だと思うから、あのくらいでわかると思った。ところが、頭はいいはずだけれども、この点では頭が悪いのか、熱意がないのか、いいかげんで逃げようとするのか、本気で聞いておられない。本気でいまの速記録も全部お読みなさい。そうして、本気で同和対策審議会の答申も全部お読みなさい。そうしたら、普通の判断力のある人であれば、この問題については、たとえば労働者として、たとえば農民として、たとえば零細企業者としてのスタートがおくれているのだから、それがほんとうに普通の公平のベースに乗るためには、特別なことを全部やっていかなければ公平なことにならないということが一貫していわれている。その一番中心をあなたは一つも理解をしていない。理解はしていても、大蔵省のやりくりがめんどうくさいから逃げようとしておられるか、どっちかだ。そんなふまじめな態度でどうなるのか。佐藤さんは総理大臣だから、こまかいことについては時間の制限があるから言わなかったけれども、そういうことについては全部いままで討議をして、それをやっていこうという気持ちの発言をしておられるのだ。あなたも閣僚の一人ならば、佐藤内閣が国会と約束をしたこと、あらゆるいままでの内閣が国会と約束をしたことを実行することに積極的にならなければならないと思う。あらゆる特別中の特別の措置が必要であると思う。あなたの言われるように、一般の金融機関で同和地区の人たちの企業に貸すことはどんどんしたらいいのです。それは差別してはいけません。しかしながら、特にその資金が必要であるということで、それにプラスをして同和対策金融公庫というものが必要であるということが、一般的な問題ではなしに、この四百年の問題を解決するために必要であるということが、答申で全部いわれておる。論議をされておるのです。頭を切りかえて、そこの時点からものを判断して、ものを推進していただきたいと思う。一般の金融機関でもどんどん貸さなければいけません。そのほかにそういうものが特別に必要である。何百年のおくれを取り返す、同じスタートにするためにはそういう制度が必要であるということを理解をされなければいけないと思う。いまのあなたのことばの中にも、いろいろ予算をふやしたと言われる。予算をふやしたと言われるけれども、三一%ふやしたということを言われたいと思う。全体の予算の伸び率よりも倍近いということを言われたいと考えておられるのではないか。そういう考え方があったら、全部これは捨てていただきたいと思う。新しい政策をやるときに、前の予算の伸び率というようなものは問題にすべきではありません。ゼロのところから五十億すれば五十億倍になる。前との率なんというのは問題じゃありません。そして、この何百年の問題を十何年間の国会政府の約束で対処する問題は、いまの財政硬直化、あなたが言っておられる問題に制約をされるべき問題ではありません。あなたは七十数億の予算要求に対して六十一億五千万円まで予算を削減をされた。同和問題についてはこれから急速にやらなければならない。まだ各省の公務員も問題を理解をしていない人が多い。非常に熱心な人であっても、さっさお話があったように、東北の人にはわかりにくい。そしてまた、お役人の中には、前の慣例を乗り越えてやることについては、非常に憶病な状態がある。ところが、この問題をほんとうに飛躍的にやらなければならない時期ににおいて、前の慣例とか、予算の編成の実例とかそういう問題を乗り越えて各省でやっていかなければならないのに、各要求官庁自体がへっぴり腰である。そのへっぴり腰の予算を出してきたのを、あなたは査定をして減らしておる。この問題に関する限りは、びた一文も削減をすることは、同対審の答申を軽視をすることになり、内閣の約束をじゅうりんすることになる。精神的に言えばそうであります。あなたは削減をしておられる。大蔵省は削減だけが能ではありません。国の政策としてやらなければならないことについては、各省が要求をしてきたら、この予算は少ないではないか、政府政策とは違うではないか、もっとふやしたらどうだと言うことも任務の一つであります。何でもぶった切るのが商売であれば、そんなものは大蔵省の主計局の役目を果たしているとは言えない。それしかできない大蔵大臣であれば、大蔵大臣の資格はありません。技術的に資格はない。また、それをできるのに、同対審の答申を理解をせずしてブレーキをかけるような考え方であれば、これは断じてやめてもらわなければなりません。予算の支出についてもそういうことでございますが、金融公庫の問題についてさっき申し上げましたから、金融公庫の問題については、通産大臣も同じ立場で、さっきのようなイージーゴーイングな答えではなしに、いま言ったことを、いまのいまかみしめて、この数日間に前向きの結論を出すような努力をする、そういうお約束を、ぜひ大蔵大臣と通産大臣から明確にいただきたいと思います。
  106. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 さっきお尋ねの六項目の中には、特別の融資に対する措置という項目もあります。これはさっき私が申しましたように、どういう特別措置をとろうかという問題について協議会がいま協議しておって、いずれこれが草案となって出てくると思います。御承知のように、農業におきましても、あるいは中小企業におきましても、金融の特別措置ということはたくさんやっております。こういう措置をするんだということがきまったら、それにのっとった措置政府はやっておるんでございます。その措置をやることはやりますが、それといま言ったように、みなほかのいろいろな施策は現存の金融機関を通じて特別の措置をやっている。あなたが、ただそうじゃなくて、新しい公庫をつくらぬかと言うから、らしい公庫をつくらなくても、われわれ特別な措置は、きまればそれによっていろいろやれるんだということを言っているんでございまして、補助の問題とかいろいろな問題が、この特別措置の中にはこんな内容があると思います。こういうものがきまりましたら、予算においても、このきまったものにのっとって計上するということは、当然私のほうはやろうと、こう思っております。それだけのことでございます。
  107. 八木一男

    八木(一)委員 それではほかの問題にも移りましたから、その問題を含めて、いまのような根本的に、いま申し上げたことでかみしめて、特別中の特別の措置が必要であるということを理解の上で今度の問題について対処をしていただきたいと思いますし、金融の問題については、同和対策金融公庫というものを含めて、それ以上の方法をあなた方が見つけ出せば、別にそれでなければいけないということを、いつのいつまで言うわけではないけれども、そういう問題を含めて特別な金融措置をする、そのことについて最善の努力をするということをぜひお答えをいただきたいと思う。
  108. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いろいろな措置は、これからきまると思いますし、これがきまりましたら、十分その線で努力をいたします。
  109. 八木一男

    八木(一)委員 それから、一番大事な問題になりますが、先ほど申し上げました補助率をきわめて高率にする。それから、必要な一切のものを補助対象にする。それから、実質単価でやっていく。そしてその上で、さらに地方負担がありますから、それに対して特別交付税を設けるということについて、これは同対審の答申の内容であります。それから予算委員会を通じての約束事項であります。その点について、大蔵省は既成の概念をはずして、特別中の特別の措置をすることが必要であるという概念でこれに対処をしていただきたい。そして大蔵省みずからが、そうやろうというような決意で問題を推進していただきたいということについて大蔵大臣の御答弁を願いたい。
  110. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 同和対策も十分重要であると考えておりますが、そうであってもやはり他の施策との均衡をとらなければなりません。たとえば補助率というような問題におきましては、御承知のとおり本年度は現存補助率を上げるということはやらないといって、全部この点は堅持してやったというようなぐあいもございますので、これはやはり他の施策との均衡によってきめるということはやらざるを得ないと思います。特別に見なければならぬというものは、むろん特別な考慮をいたしますが、いまここで御要望に対して無条件にそういうふうなことをやれるということは、私からは申し上げられません。結局、そういうものを勘案して一つの具体策、特別措置の対策というものは出てまいると思います。これが政府部内で決定いたしましたら、私どものほうはその措置をそのとおり実行するということはいたしますが、そこへきまるまでの間には、いろいろなそういう問題の均衡の考慮というものは当然行わるべきものと思います。
  111. 八木一男

    八木(一)委員 ですから、あなたの御答弁のしやすいように、私は何割という数字をあげて申し上げたわけではない。そのやる方向を申し上げておるわけです。他の問題との均衡問題ということは、これは改めていただきたいと思う。ほんとうに、さっきから言ったように、特別中の特別な措置をとらなければならない問題でありますから、それを、他の特別中の特別という問題に当たらないものとの均衡で考えられたならば、特別中の特別の措置をとるということにならないわけであります。その他の問題との均衡ということばではなしに、問題を熱心に推進をするという答弁でけっこうでありますから、それを言っていただきたいと思う。それを言っていただかないならば、私は総理大臣に出ていただいて、総理大臣と大蔵大臣の意見が違っている、閣内が完全に不統一であるという問題で、これは一週間かかろうと、一月かかろうと、決着がつくまで議論をいたしたいと思います。
  112. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 たとえば地方財政の同和事業に対する問題も、あなたがさつきおっしゃられましたように、これは全国普遍的な事象ではございませんので、したがってこれを、基準財政需要額の算定で、普通の交付税で考えるということは不適当であって、やはり特別交付税においていろいろ対処するのが、この問題は特殊性を生かす措置であるということも考えられます。そうしますと、補助の問題でいくのか、そういう問題をどの程度取り入れて解決するかというような問題も出てこようと思います。したがって、要するに、悪くするようなことじゃなくて、どうすることがこの特殊性に応じたいい措置であるかということは、政府部内においても研究の余地がたくさんございますので、そういう点を私は考えて、やはり一般的な事象に対するやり方との均衡というようなものも考えて、これはとにかくいいように私どもは誠意を持ってやるということだけは申し上げます。
  113. 八木一男

    八木(一)委員 その問題一つだけ、大蔵大臣、他の問題との均衡という問題は、この問題の本質とぶつかります。特別中の特別の措置をやるということを、他の問題との均衡という問題をいまこの場で言われておる、これは内閣総理大臣の御意向と反することになります。その点について、具体的な方法について、補助率を高めることをどの程度にして、交付税をどのようにするというような問題については、これはあなた方の言われるように、いろいろと一番いい方法で研究し実施していかなければならない問題だと思いますから、その点はけっこうでありますが、他の問題との均衡ということばをその中に言われたことについては、これを改めていただきたいと思う。そうでなければ事の本質にかかわります。均衡ということばをなぜそこで言われるか、特別中の特別の措置というものは、他の問題との均衡という問題と背反した字句であります。その均衡という問題だけこれはやらなかったことにしていただきたいと思う。委員長、もしその均衡ということばを取り消されないならば、総理大臣を再度おいで願うように御配慮願いたいと思います。
  114. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それは勘違いされているのじゃないかと思います。均衡ということは、悪くする方向じゃなくて、他との均衡から見たら特殊性があるという場合には、あることの措置、それに適当な措置を加えるのですから、そこでいま言ったこの補助というような形一本やりでいくのか、いまの特別交付税をどういうふうに活用していくかというような、そういう問題をからめて、私どもがいいように考えるということを申したのでございまして、そういう意味の均衡でございます。
  115. 八木一男

    八木(一)委員 そうすると、特別中の特別のことを、さっき言ったような補助率、補助対象、それから実質単価、交付税ということで推進をされる。具体的に事はあなた方が非常に技術的に精密にいろいろ御検討になるし、また、法律の字句、法律に従って、同和対策特別措置法やそういうものに従ってやられるということで理解をして間違いないですね。  それでは次の問題に移りたいと思います。  通産大臣はさっき、先ほどの大蔵大臣の御答弁のように不満足な御答弁をなさいましたけれども、時間がありませんから、大蔵大臣は私が申し上げた後に前向きの御答弁に変わられた。それと同じような気持ちでおられるというふうに理解をしてよろしいですか。
  116. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 大蔵大臣の答弁は全く私の答弁と一致しております。
  117. 藤枝泉介

    ○藤枝委員長代理 八木君、お約束の時間が迫っていますので、簡潔にお願いします。
  118. 八木一男

    八木(一)委員 通産大臣にひとつお伺いをしたいと思いますが、二月にニューデリーで開会をされた後進開発途上国に対する特恵関税の問題があります。その問題の中で、部落の産業が非常に圧迫される危険性のある問題があります。部落産業の中に皮製品に関係しましてグローブ、ミットあるいはまたヘップサンダルというような産業が非常に多くの部門を占めております。この部門については、香港あるいは台湾あるいは韓国において、その技術等をまねをしていろいろな生産が行なわれております。そこで、後進国あるいは開発途上国に対してその事実のためにいろいろの協力をする、特恵関税を与えること自体については、これは前向きの姿勢で取っ組んでおかれたらいいと思いますけれども、日本の国の産業形態は先進形態と後進形態がまざっている。特に部落産業は後進中の後進である。でございますから、このようなものを、似たものは部落以外にもあると思いますが、日本の後進的な産業、そのような零細企業、中小企業に対して、これをほかの国の中で、それを勘案しないで開発途上国に対する特恵関税が結ばれますと、日本の市場内に、そういうものが韓国や台湾や香港から流れて非常に日本の産業が圧迫をされる、あるいは輸出先であるアメリカにおいて非常な競合を受けて困るという問題が起こります。その問題について、グローブ、ミット、ヘップサンダルというようなものが特恵品から除外されるように、また、ほかにもたくさんそういう日本の零細企業で同じ状態で困るものがあると思いますが、そういうことに除外をされるように強い態度で臨んでおられると思いますが、それを貫いて実現をしていただきたいということについて、通産大臣の決意を伺っておきたいと思います。
  119. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 御指摘の点は、われわれも非常に心配をしておるところであります。ただ、あの会議は三月二十五日まででおしまいになるのです。でありますから、大体その原則論的な大まかなことを論議するだけであって、そういったような具的体な特恵の問題は、引き続いてその当事国の間で十分に協議が行なわれるだろうということを私は期待しております。でありますから、部落の産業はもちろんのこと、その他の零細な日本の中小企業が特恵のために非常な混乱におちいるということのないように、十分気をつけてまいりたいと存じます。
  120. 八木一男

    八木(一)委員 次に自治大臣に伺います。  交付税の問題でございますが、交付税は、国税三税の三二%ということに現行はなっているようであります。その中で一般交付税が百分の九十四、特別交付税が百分の六というふうになっているのであります。この特別交付税というものは、たとえば災害であるとか、市町村合併であるとか、伝染病がはやったときであるとか、そういうような問題に対処して使われておった例が多うございまして、最近同和問題についてもこの中で処理をしていただいているわけであります。しかし、この同和問題については、昭和三十二年にちょっとした五千万円の予算がついた。それから、いまわかっていることをどんどんやっていこう、同対審の答申が出たならば、それを完全に本格的に進めようということになっているわけであります。そうなると、同対審の答申の年次計画は、田中総務長官が前に言われましたように、ほんとうの始まりが四十四年から始まるわけであります。そうなった場合に、地方行政団体のいろいろな負担という問題がブレーキにならないようにするために、特別交付税について飛躍的な増大をみなければならないと思いますが、その二つの制約、国税三税の三二%、それからその中の特別交付税が百分の六という制約がこれにブレーキをかけると思います。そこで同和対策のものを多くすれば、既定の災害その他のものを圧迫することになります。それをおそれれば同和対策の問題が進まないという問題になります。その点で交付税の全体のワクの拡大、あるいはその中における特別交付税のワクの拡大、またそれを二つ二重にするのではなしに、ずばりと同和対策の特別交付税というものを制定することが一番すっきりして問題を進めることになろうと思います。その同和対策特別交付税の制定について、前向きのひとつ御答弁を要請いたしたいと思います。
  121. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 同和対策につきましては、言うまでもなく、最終的には地方公共団体がそれぞれお世話をしておるわけでございまして、最近、御案内のとおりに、事業になりましたものにつきまして地方公共団体負担分は財源的には十分な措置をしてまいっておるつもりでございます。ただ、いまおっしゃいますように、交付税に一つのワクをつくれとおっしゃいましても、これは制度そのものの根本に触れることでありまして、大体この交付税制度と申すものは、言うまでもなく一般財源を対象としておるわけでございまして、なかなかこの制度自体に手をつけるということは簡単なことではございません。まず不可能ではないか。ただ、ただいま申しましたように、同対審の答申もありますし、これに対して地方公共団体が困らないだけの十分の財源を準備すればいいわけでございますので、そういう方面に関しましては、前向きの措置考えていきたい、かように考えております。
  122. 八木一男

    八木(一)委員 自治大臣、いまの不可能というようなことが、この問題をほんとうに理解をしておられないと思います。特別中の特別ということは、あなた方の不可能と思う、われわれのちょっとした困難と思うことを、完全に乗り越えることです。不可能ということは取り消していただきたいと思うのです。
  123. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 これは不可能ということばはちょっと当たらなかったと思いますから取り消します。非常に制度の根底に触れる問題でございますので、なかなかむずかしい問題であるということに置きかえさしていただきたいと思います。
  124. 八木一男

    八木(一)委員 むずかしい問題であるということで、そのようなあいまいな答弁ではいけないと思う。特別交付税をつくるためにいま一生懸命推進をしているという御答弁、あるいは特別交付税は技術的にむずかしいので、国税三税の三二%を大蔵大臣と折衝して、これを三三にしたとか四にしたとか、その上げた部分については、特別交付税のほうの率を上げて、これは同和対策のほうの分に充てることを完了しましたという御答弁か、その二つに一つでなければほんとうに熱心とは言えないと思うのです。特別交付税をつくったほうがあっさりしているのです、二つの段階でやるよりも。しかし、同じことであればあの二つを、国税三税の三二%を取っ払ってふやす、百分の六を取っ払ってふやすことにきめましたと、いま言われるのであれば、それでもけっこうです。そうじゃなしに、その答弁ができないなら、特別交付税をつくるために短期間に全力を尽くして努力をする、自治大臣のいすにかけても努力をする、そのくらいの前向きな答弁が必要であります。それをいま、にやっとされましたけれども、そんなことを言ったってここだけのことと思うような考え方ではなりません。あなたも同対審の答申をほんとうに読んでおられないと思うが、その点で、いまの時点で気持ちを入れかえられて、前向きな御答弁を明確に願いたいと思います。
  125. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 最初に申し上げましたように、いままでとて一〇〇%の財源措置はいたしてまいっております。いまの交付税の税率を変えるといったような問題になってまいりますと、御案内のとおりに、これは地方と国との税の配分を補完する意味で三二%にきめましたときも、ずいぶん歴史があるわけでございます。なかなかこういう数字を動かすということは困難であるということを申しました。困難であるということがたいへんお気にさわったようでございまするけれども、しかし、私どもといたしましては、冒頭申しましたように、地方公共団体が全部お世話をするわけなんだ、所期の目的を達成すればいいということだと思うのです。そういった面につきましては、よく八木さんの御主張はわかっております。同対審の答申をここで読み上げなくても十分承知もいたしておりますし、十分前向きで進めてまいりたい、かように考えております。
  126. 八木一男

    八木(一)委員 非常に不十分でありますが、時間が迫ってきましたので、御出席をいただいた文部大臣、労働大臣、厚生大臣、建設大臣、農林大臣にぜひ一言ずつ御答弁をいただきたいと思う。それは、いま大蔵大臣や自治大臣と、いろいろと質疑応答をいたしました内容に関連してでございますが、いろいろの具体的な、各官庁でいままで同和対策について推進をしてこられましたけれども、今度の同対審の答申が出て、来年からほんとうに画期的にやるという決心で、担当部局に対して、既成の概念にとらわれずに、その問題を推進するという姿勢を出していただきたいと思います。それを実行するときに、地方公共団体のいろいろな負担がございますので、大蔵大臣がこのように前向きなる御答弁をなさったわけでございまするから、地方公共団体の自己負担の分で問題が推進できないように、各省では補助率の問題や、補助対象の問題や、実質単価の問題や、交付税の問題では、積極的に、いままでのワクを越えて、概念を越えて、大蔵大臣にざっくばらんに要求をされ、大蔵大臣は、それについてはうんという返事をしておられるわけでございます。それをやるという返事をしておられるわけでございますから、そういう点で実施官庁で飛躍的に来年度からはそれを推進していただくという御決意をひとつ伺いたいと思います。  また、国務大臣とされまして、同和対策特別措置法の制定、それから同対審の答申すべての完全実施、特に年次計画の推進等について、総理大臣同様、あるいはより以上の熱意を持ってこれを推進するという御決意を、お一人お一人明確に、ひとつ前向きに御答弁を願いたいと思います。
  127. 園田直

    ○園田国務大臣 同和問題は、所管は総理府でありますが、この問題が人類不変の問題であり、憲法の規定する問題でありまするから、十分御趣旨の点に従って処理したいと考えております。
  128. 西村直己

    西村国務大臣 八木さんのお話、しみじみ身に感じております。十分熱心にやってまいります。
  129. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 八木さんのお心持ちは、十分了解いたしておるつもりでございます。極力目的の達成に努力したいと思っております。
  130. 小川平二

    小川国務大臣 同和地区出身者の雇用の安定につきましては、不十分でございましょうけれども、相当こまかい配慮が今日までなされておると存じます。現存のいろいろの制度につきましては、よく御承知でございましょうから、あらためて申し上げませんけれども、ことしは職業訓練所などもふやしておりまするし、指導官も設けておるようなんです。これからも前向きにできるだけ善処していきたいと考えております。
  131. 八木一男

    八木(一)委員 時間が来たようですから、これで質問を終わりたいと思いますが、各大臣また政府委員の方が、前向きの御答弁を、すぐしていただいた方と少し時間を置いてしていただいた方がございますけれども、それをなべていまの結論に従って、同対審の答申が、完全実施が急速にされるように、同和対策特別措置法が十二分の内容で本国会に成立する時期に提出されるように、総理大臣のお約束に従って、各大臣、政府委員が全力を傾注していただきますように、今後ともこの問題について、具体的にあらゆる点で推進をされるように心から要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  132. 藤枝泉介

    ○藤枝委員長代理 これにて八木君の質疑は終了いたしました。  午後は二時から再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時二十八分休憩      ————◇—————    午後二時十三分開議
  133. 井出一太郎

    ○井出委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  一般質疑を続行いたします。折小野良一君。
  134. 折小野良一

    ○折小野委員 まず冒頭に、外務大臣にお伺いをいたしたいと思います。  沖繩と核の問題がいろいろ論議されておるのでございますが、その途上にプェブロ事件あるいは南北朝鮮の国境問題、こういうような問題を契機といたしまして、朝鮮半島における緊張というのが高まってまいりました。これに対しましてアメリカは、B52戦略爆撃機を沖繩に持ってきたわけでございます。これはもちろん、その主任務が核装備、そして常時警戒、長距離戦略爆撃、こういうような目的を持っておるわけでございますので、現地沖繩といたしましては、特に住民の感情を刺激し、また民心の不安を招いておるわけでございます。ところが、B52を沖繩に持ってきたその条件、朝鮮のいわゆる緊張という問題、こういう問題は、その後時日がたってくるに従いまして、徐々に変わってまいっております。最近の情勢から申し上げますと、むしろこれは鎮静してきておるのじゃないか、こういうふうに考えるわけでございます。そういう情勢の中におきまして、このB52の滞留あるいはその発着状況、こういうものから見てまいりますと、そういうような国際情勢に対しまして一時的にやってきたと、こういうふうにいわれておりますB52の沖繩における現状というものは、結局常駐というものを決定化していく、こういうような情勢にあるように私ども考えられるわけでございます。そういう点から沖繩の住民も非常な関心を持ち、また不安を深めるということから、先ごろ沖繩立法院の全会一致の決議を持った使節も参りましたし、また地元の人たちの陳情も直接日本政府にあったわけでございます。これに対しまして、政府といたしましては、米国は常駐させる考え方はないんだ、こういうことで、そういう人たちの説得をしておいでになった、こういうような報道がなされておるわけでございますが、現在の情勢におきまして、政府のこの問題に対する確固たる方針、決意のほどをこの際お伺いをいたしておきたいと思います。
  135. 三木武夫

    三木国務大臣 B52の問題は、これは非常に複雑な側面を持っておる問題であります。条約上の問題もございますし、また安全保障上の問題もございます。また政治上の側面もある。われわれが注目しておるのは、現地の人たちが非常に不安に思っておるということについては、日本政府も無関心でいるわけにはまいりません。御指摘のように、立法院あるいはまた地元の人の陳情も最近にはございましたし、われわれもこれと会っていろいろそういう人々から話を聞いたわけであります。ただしかし、アメリカ政府日本政府に申し出てきておることは、二月の五日にB52が沖繩に移駐してきたわけでありますが、これは最近の極東情勢の緊張に対してB52を移駐するが、これは沖繩を恒久的な基地にする考え方はないという意思表示をしてきておるわけでございます。したがって、われわれは極東情勢が平静になってB52というものが沖繩から撤退できるような事態というものを希望しておるわけでありますが、現在のところ、政府として沖繩のB52の撤去を求めるという考え方は持っていないということを申し上げておるわけでございます。
  136. 折小野良一

    ○折小野委員 沖繩の現在の政府は、外交権を持っていないわけでございます。そういう点から、潜在主権を持っております日本政府の外交権に、この問題の処理の一切を期待をしておる、こういうことだと私どもは考えております。それだけ日本政府アメリカに対してしっかりしてもらいたい、しっかり交渉してもらいたい、現地住民の気持ちを何とかしてもらいたい、こういう気持ちが非常に強いのだ、私どもはそう考えます。そういう点から、沖繩立法院の決議もございましたし、また沖繩地元のいわゆる直訴団という人たちが、直接政府に対していろいろお願いをした。ところが、その交渉の間で、沖繩の地元の人たちの感情といたしまして、どうも日本政府考え方現地の人たちの考え方が食い違っておるのじゃないか、こういうようなことがいろいろいわれておるわけでございます。私どもは、将来少なくとも日本と一体にならなければならないこの沖繩の人たちの気持ちをほんとうにくんだ行動というものがなければならないというふうに考えるのでございますが、こういう食い違いをどういうふうにお考えになるのか、あるいはそういう食い違いというものを十分考えて、そうして今後の政府の対米交渉あたりでそういう食い違いをどういうふうに埋めていこうとされておるのか、御所信をお伺いしたいと思います。
  137. 三木武夫

    三木国務大臣 二回沖繩から陳情団が来て、非常に時間をかけたわけです。せっかく沖繩から非常に不安を持って来られた方々の話を十分に聞きたいと思って、相当時間をかけて二回の陳情団に会ったわけであります。食い違いというものはどこであるかというと、非常に不安である、核兵器を持っておるのではないか、戦争に巻き込まれるのではないか、こういう不安が中心の不安でありました。それで直ちにB52の撤去を求めてくれ。アメリカ自身も、これは永久の基地にする考えはない、一時的な極東の緊張した状態に対処するために移駐したというのでありますから、われわれとしても、こういう極東情勢というものが、B52に限らず、平静になっていくということは、日本政府も望むところでありますし、そういう点で、アメリカ自身も永久に置く意思はない、そういう事態が早くくることを希望しておるのであって、いま直ちにということと、やはり極東情勢の緊張状態が平静になる、こういう多少の時間的なズレと申しますか、こういう点が沖繩から来た人々と私どもの考え方の相違であって、われわれは、これはいまは施政権はございませんが、やがて近いうちに沖繩は日本に返ってくるわれわれの同胞でもありますし、いろいろな気持ちというものを——外交権はないわけですから、それを体して対米交渉をやらなければならぬということは、御指摘のとおりだと思う。ただしかし、全部が全部向こうで言ってきたことをそれなり取り次ぐというわけにはまいらぬ場合もあるという事情は、沖繩の人々にも理解をしてもらいたいと思うのでございます。
  138. 折小野良一

    ○折小野委員 地元の直訴団が参りまして、そして総理にいろいろなお願いをした。今月の七日のことでございますが、その際総理は、地元の期待にこたえて、政府としましては直ちに調査団を派遣しよう、こういうようなことをおっしゃったということが報道されております。ところが、その調査団がその後うやむやになってしまった。政府調査団は取り消しだ。そしてたまたま沖繩問題の懇談会が現地にいろいろな調査に行くので、そのついでにひとつ見てきてくれ、こういうようなことになった、こういうふうに報道されておるわけでございますが、その辺の真意と、そしてそういうようなことではたして現地の沖繩の人たちのこの気持ちにこたえることができるか、あるいはそこに食い違いがあるというふうに沖繩の人たちが判断した、その気持ちを静めることができるか、あるいはこの問題に対してほんとうに自主的な政府の外交姿勢というものがあるかどうか、こういう点を疑わせるような場面が私ども見られるわけでございますが、こういうような今後の問題に対する対策について、お考えになっているところをひとつお伺いいたしたいと思います。
  139. 三木武夫

    三木国務大臣 私も田中総務長官からそのお話を聞いたのですが、大浜さんの沖繩問題懇談会ですね、ちょうど基地の問題に関して沖繩に調査に行く予定になっておったようでございます。ちょうどそういう予定もありますので、B52の問題を中心にして、現地の人が非常に不安に思っている。この実情を、行った場合に、やはりいろいろと現地の模様を調べてきてほしいということを委嘱したのが真相だと、私は聞いておるわけでございます。われわれとしては、これはいろんな側面はあっても、人心の動向というものは——基地の問題にしたところで、やはり地元民の理解、協力というものが基地の有効利用を果たし得る大きな柱になることは事実でございますので、沖繩の人々の気持ちというものはこれを体してアメリカとの間にも折衝はしなければならぬことは、御指摘のとおりでございます。ただ開きは、先ほども申し述べたように、すぐに撤去を要求してほしいということと、われわれは、アメリカもこれは永久の基地にする意思はないと言っておるのであるから、極東情勢が一日も早く平静化されて、この問題のB52が移駐の必要のないような事態が起こることを希望する、多少時間的なズレがあるということが、開きでございます。しかし、根底にある、沖繩の人たちが不安に思っておるという事実は、対米交渉の場合に頭に入れなければならぬ事実であることは明らかでございます。
  140. 折小野良一

    ○折小野委員 この問題は、ついでにというようなことで片がつく問題じゃないんじゃないかと思うのです。そういうような政府の態度が、かえって沖繩の民心を不安におとしいれる。母国ははたしてわれわれをどういうふうに見てくれるであろうか、こういう面について不満を感ずる一つの大きな原因じゃなかろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。  ところで、外務大臣はいろいろお忙しいそうでございますので切りをつけますが、最後に、この点についてはっきりした御答弁をいただいておきたいと思います。  このB52は沖繩に常駐するのではない、こういうはっきりした政府の決意、それに伴いまして今後の情勢は、大臣の御答弁によりますと、多少の時間のズレとか、そういうものがあると思います。やはり客観情勢というものは考えなければなりませんでしょうが、そういう面を考慮いたしまして、さらにアメリカに対しまして、このB52の撤去を政府として申し入れる御意思があるかどうか、その点をはっきりお伺いいたしたいと思います。
  141. 三木武夫

    三木国務大臣 はっきり申し上げておきたいことは、アメリカ政府も意思表示をしてきておりますから、政府もまた——沖繩をB52の恒久的な基地にする考え方アメリカも持ってないし、日本もさように確信をいたしておる次第でございます。また外交折衝のことは、いろんな場合を仮定して、あらかじめいろいろこういう場合にはああする、ああいう場合にはどうするということは適当でないと思いますが、沖繩の動向に対しては日本政府は今後とも十分注目をするということを申し上げて、お答えにかえたいと思います。
  142. 折小野良一

    ○折小野委員 この問題につきましては、今後の情勢もあろうと思いますし、そういう情勢の中でさらにお尋ねする面も出てこようと思いますので、一応ここで打ち切らしていただきます。  次に、法務大臣にお伺いをいたします。去る二日でございましたか、神奈川県の横須賀市におきまして、アメリカの婦人が運転する乗用車がわが国の海上自衛隊の教育隊の隊列の中に暴走してまいりまして、そして二名の死者、七名の重傷、それから九名の軽傷、こういうような被害を与えておるわけでございます。この点につきましては、その場所が基地ではございません。またその加害者が軍人でもなければ軍属でもない。またその加害者は、公務に従事しておるということでこういう事故を起こしたというわけのものじゃございません。したがって、この問題は明らかに日本の裁判管轄権の中における犯罪だ、こういうふうに申していいわけでございますが、この問題の今日までの経過について、まずお伺いをいたしたいと思います。
  143. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答え申し上げます。  三月四日に横須賀の警察署で、お述べになりましたマラリン・A・ローランドの自動車事故事件につきましては、捜査をいたしまして、いま言いました三月四日に横浜地方検察庁の支部に事件が送致をせられたのでございます。目下、同支部におきまして、被疑者本人をはじめ、関係人を鋭意取り調べ中であるということでございます。近く結論が出るものと考えております。
  144. 折小野良一

    ○折小野委員 今日までの経過におきまして、通常被疑者は当然警察に拘置して取り調べをするということになるはずでございますが、今回の場合、米軍基地の拘置所に身柄を返しておる、こういうような実情がございます。こういう点につきましては、政府としてはどういうふうな考え方でこういうような措置をとられたか、お答えをいただきたい。
  145. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えを申し上げます。  警察が身柄を米軍に引き渡しましたのでございますが、その身柄を引き渡しました際には、身柄の確保、逃走の防止、それからまた自殺の防止、出頭の確保、あるいは証拠隠滅をしない、こういうふうな非常にきびしい条件を付しまして米軍に寄託をしておる。米軍は、現在被疑者を横須賀基地内の一室に収容して、監視をいたしておって、逃亡のおそれはないと考えております。現に検察庁におきましても、呼び出しまして数回取り調べをやっておる、こういうふうな実情でございまするので、御了承願いたいと思います。
  146. 折小野良一

    ○折小野委員 この問題につきましては、このような特別な扱いをするということが、通常の日本の場合においてございますかどうか、お伺いいたします。
  147. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えを申し上げます。  通常の日本人であると、こういうことは少ないと思いますが、米人でございまするし、しかしながら調べるのは日本が責任を持って調べるということになっておりまするし、実際にこの被疑者が逃亡のおそれもなく、また向こうのほうで身柄を確実に預かってくれて、こちらが呼び出すときにはいつでも出てくるということになれば、こういうふうな取り調べをやることも差しつかえがないから、こういうことをやっておるものと私は考えております。
  148. 折小野良一

    ○折小野委員 このような取り扱いをなされておること自体に、いろいろな問題があろうかと思います。いま大臣は、身元が保証されておるというふうにおっしゃったわけでございますが、一応その身元保証の確認について、米軍当局とどういうような手続をなすっておられますか。また、それが身元保証をほんとうに確認できるような十分な手続がなされておりますかどうか、お伺いいたします。
  149. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えを申し上げます。  米軍側と日本側と十分な協議をいたしたのでございます。それで、向こうの米軍のほうで身柄を預かって、何どきでもこちらに必要のときに呼び出すと出てくる、十分そういうことの約束がございます。それから、自殺などをされても——一時はだいぶん興奮をいたしておったので非常に心配な点があったのでありますが、そういう興奮をいたしておるので、自殺をするようなことがあっては困る。自殺防止についても十分責任を負うてもらわなければならぬ。それからまた、証拠を隠滅するようなことをしてもらったら困るから、証拠隠滅も絶対にやらない。それからまた、逃げるようなことがあってはいかぬというので、逃走防止ということ、そういう重要なものについて両者で十分な協議をして、日本側としても大体それに信用が置けると考えましたので、こういう調べをやっております。いまも申し上げましたように、数回呼び出しをいたしまして捜査を行なったというような状態でございまするので、御了承願います。
  150. 折小野良一

    ○折小野委員 ところで、こういうような措置をされましたことにつきましては、まあいろいろな折衝その他はあったでしょうが、わが国でこういうような措置をしていいというふうにきめておりますその法的な根拠と申しますか、そういう面がはっきりなければ、そういうような措置はできなかろうと思うのでありますが、そういう点はっきりした御答弁をひとついただきたいと思います。
  151. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 法的根拠その他につきましては、政府委員から詳細にお答えをするようにいたします。
  152. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 在日米軍の構成員またはその家族の裁判に関しまして、日本側が第一次的の裁判権を持っております事件に関します拘禁その他の規定に関しましては……(「奥さんだよ」と呼ぶ者あり)奥さんは米軍の家族でございますから、十七条五項にその関する規定がございまして、その五項の合意議事録、これは地位協定の付属として国会にも御報告になったものでございますが、その中に、「その犯人を拘束する正当な理由及び必要があると思料する場合を除くほか、当該犯人を釈放し、合衆国の軍当局による拘禁にゆだねるものとする。」こういう規定がございますので、それに従って、先ほど法務大臣から御説明がありましたように、拘禁をアメリカ側にやらしておる、こういう根拠でございます。
  153. 折小野良一

    ○折小野委員 こういうような条項がありますことは、これは日本の自主性という立場からいって問題があるのじゃありませんでしょうか。もしそういうのがあってそういう差別的な扱いが行なわれるということになりますならば、やはりこれは基本的に、日米友好という精神からも反しておる、そういうふうに考えるのでございますが、この点について法務大臣はいかがお考えでございますか。
  154. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えを申し上げます。  裁判が日本側にありまするので、私は裁判をするのに十分妨げとなることでなければいいのじゃないか。たとえば呼び出しも自由に応ずるし、それからそこで自殺をするとかいろいろな事故は起こらない、そういうふうないろいろな点から考えてみまして、日本の裁判に服するのに差しつかえがない場合においては実質上差しつかえはない、かような考え方を私は持っております。
  155. 折小野良一

    ○折小野委員 裁判を行なうのについて差しつかえがなければいいのではないかということでございますが、それなら日本の場合におきましても、裁判をするのに差しつかえがなければ、何か特定なところに置いておっていいのか、こういうことになってくるんじゃありませんですか。やはりこれは基本的に正しい方向日本が当然裁判管轄権を持っておりますならば、日本の取り扱いでやっていくということがむしろ至当なやり方じゃなかろうかというふうに考えるわけでございますし、こういうような特別な扱いが米軍の家族についてだけあるということは、これは日米対等の立場において友好あるいは親善を維持していくという精神からいってむしろ反することだ、こういうふうに私どもは考えますが、いかがでございますか。
  156. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えをしますが、先ほどこの根拠は御答弁を申し上げたようであります。それに基づいてこういうことが行なわれたと私思いますが、私は友好関係を害するとかそういうふうには考えておりません。こういうケースというものは非常に少ないのでありまして、ただ、日本が裁判を行なうのに妨げとなるようなことがあれば、これはもう私は実質的に問題にならぬと思いまするが、日本に第一次の裁判権があって、その裁判が完全に行なわれるという状態であるならば、別に日米の友好関係に阻害を及ぼすとかそういうことは私は考えておりません。まして根拠になる規則がありまするならば、こういう措置をとられてもいいのじゃないか、かように私は考えております。
  157. 折小野良一

    ○折小野委員 大臣の御答弁によりますと、今日までは日本のほうで期待するような措置がなされておるようでございます。しかし、将来にわたりましてはたしてどうなるか、こういうような保証が十分なされておりますかどうか。すなわちそういう面の何らかの一札というものが十分とられておるのかどうか、その点をお伺いいたします。
  158. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 私は、日本で裁判をする場合におきまして、日本の裁判をやるに支障があるというようなことであることは、これはもう非常にぐあいが悪いと考えておる。さきにも言いましたように、身柄の確保が十分か、それから逃走を防止するに十分であるか、また興奮して自殺をするようなことについての見張りその他も十分か、それから裁判に必要な場合に、出てこいと言うたときにはいつでもこちらに出頭してくるか、証拠をまた隠滅するというような事柄があるというような場合には——私はそういう措置は好ましくないし、またとられないと考えておりますが、こういう条件が厳として守られるという場合におきましては、私はこういうことが行なわれても差しつかえがないのじゃないか、こういうふうに私は実質的にこの問題を考えております。御了承願います。
  159. 折小野良一

    ○折小野委員 私は、いま大臣のおっしゃったそういう条件が厳として守られる、そういう保証がはたしてあるのかということをお尋ねしているわけなんです。確かにいままでのところはそうでございましょう。確かに逃亡防止のための十分な施設はございましょう。しかし、もし万一逃亡してしまったということになりますと、米軍はそれに対してどういう保証を日本政府に対してするか、そういう最後の保証がこの際なされておるか、こういう点をお聞きしたいわけであります。
  160. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 政府委員からお答えをさせます。
  161. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 地位協定の十七条におきまして、軍人、軍属及びその家族の刑事事件に関する取り扱い方は詳細規定してございまして、それにはもともと家族の場合には米国側の裁判権を認めておりません。そのような場合に、刑事事件が起こった場合にこれをどうやるかといえば、これは日本の法令に従ってやるわけでございますが、ただいまの拘置の点につきましては、これこれの場合にアメリカ側に拘置をやらせることがあるというこれは条約上の約束でございまして、これを向こうが逃がしやしないかなどということは、もしこれは逃がせば条約違反ということになりますので、われわれは、米軍もこの条約の規定に従ってそのようなものを処理する、こう考えておりますので、米軍が悪意を持ってこれを逃がすというようなことはないと考えております。
  162. 折小野良一

    ○折小野委員 私は、米軍が逃がしはせぬかということを言っているわけじゃありません。米軍はもちろん条約に従って誠実にやろうといたしますでしょう。しかし現実に逃げないという保証はないわけです。アメリカが逃がしたということでなくても、現実に逃げた場合の保証はどうなっておるか、これをお聞きしたいわけであります。
  163. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 かりにそういうことがございますれば、これは外交交渉の問題として適当な解決をはかることになると思います。
  164. 折小野良一

    ○折小野委員 なお、この問題につきましてはとりあえず刑事問題でございますから、それに対する今後の履行という問題がございます。あるいは死者、重軽傷者、相当たくさんの被害を与えております。民事上の問題にもなりますでしょう、いわゆる補償という問題。こういうようなものの履行確保につきましてはどういうふうにお考えになっておりますか。
  165. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 被疑者は、米国系の保険会社二社を保険契約を締結しておりますので、この補償等につきましても話し合いが進められる、かように考えております。だれがどういうふうにやるということは、いままだ申し上げにくいですが、とにかく適当な補償ということは、当然これは問題になってとり行なわれると考えております。
  166. 折小野良一

    ○折小野委員 この問題につきまして深く突っ込むこれ以上の時間を持ちませんので、この辺で打ち切っておきたいと思うのでございますが、ことしは明治百年だということで、政府におきましてはそのお祝いをしようというふうにされておりますが、明治新政府の第一の目標は治外法権の撤廃ということであったはずであります。したがって、官民問わずその実現のために非常に努力をしてまいりました。私どもは、そういうわれわれの祖先の気持ちを十分考えて、明治百年を祝うにあたりましてもやはり十分考えていかなければならない点が多いんじゃなかろうか、こういうような問題の処理につきましては、外交上のいろいろな問題もからんでまいりますが、あくまでも国の自主性という立場、こういう面を堅持していくということが非常に大切なことであろう、かように考えておりますし、またそのことが日米の真の意味における親善友好にもつらがることだ、かように考えております。したがって、この問題の処理にあたりましても、政府としてはき然たる態度をもって処理されるよう特に要望いたしまして、この問題の質問を終わります。  ところで、私は、都市問題についていろいろ御質問を申し上げたいわけでございます。  最近の都市化の傾向はいまさら私が申し上げるまでもないわけでございますが、これをこのまま放置するわけにはまいらない、こういうような立場で、総理の施政方針演説の中にもその第三項として大きく取り上げられております。この都市化の傾向をどういうふうに見ていくべきか、これは今後いろいろな政策をやっていく上に非常に大切なことじゃないかと考えます。  ところで、この都市化の傾向あるいはその結果として出てまいります大都市問題につきまして、これを肯定する考え方とこれを否定する考え方というものがございます。否定する考え方というのは、過大都市というのは困るんだ、いけないんだ、したがって、これを規制しあるいは抑制しなければならないんだ、こういう考え方でございます。それから肯定する考え方といたしましては、都市が大きくなるのはそう悪いことじゃないんだ、むしろそれはその国民のバイタリティーの一つの表現でこそあれ、これをむしろ肯定してやっていくことのほうがより大切なことじゃないか、こういうような意見でございます。  ところで、政府は、ここ十数年急激なわが国の都市化の現状に対しましていろいろな政策もとってこられました。今日まで政府としてはどういうような立場でこの都市化の傾向というものを受けとめて施策を講じてこられたのか、そして現在、また将来に対してどういう基本的な考え方で都市化に対するいろいろな対策を進めていこうとしておられるのかお伺いいたしたいと思います。これは企画庁長官にお願いいたします。
  167. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 今日まで産業構造が高度化する、あるいはいろいろなことが国際化をしてくる、また生活様式が変化をするといったようなことから、いわゆる人口あるいは資本が都市に集中するという都市化の傾向は今日まで続いてきております。そしてこれから今後二十世紀の後半を想像いたしますと、いわゆる情報産業あるいは情報革命といわれておりますように、そういうものの発達によって都市の管理機能、中枢機能というものは、おそらくますます強まる方向に進んでいくであろうというふうに考えます。したがって、世界的に幾つかのメガロポリスというようなものができてくるであろうと思われますが、わが国の東京から大阪に至る地域がやはり世界で有数の一つのメガロポリスになっていくということは、おそらく今後必然の傾向であると思われます。ただその場合、都市の中心部に人が住むということはおそらくだんだんなくなっていくであろう。それからもう一つ申しますと、これは少し先のことになるかもしれませんが、その都市の中にたくさん工場があるといったようなこともやはり少しずつ変わっていくのではないか。つまり、住宅地域あるいは工場地域というものが都心から少しずつ外へ出ていくというような趨勢にあるのではないだろうか。したがって、これは急にそうなるというわけではございますまいけれども、やはりそういうことを踏んまえてそれに対応する施策をしていくということであろうと考えております。したがって、いわゆる都市化といわれる問題については、私ども基本的な方向として、それはそういう方向に向かっていくであろうというふうに考えております。
  168. 折小野良一

    ○折小野委員 ただいまの大臣の御答弁は都市化というものは必然の傾向である、こういうふうにおっしゃいました。しかし、従来の政府考え方あるいは政府の施策を見てまいりますと、必ずしもそういうふうには考えられません。また先般来の総理の御答弁を聞きましても、総理のお考えもいまの大臣のお考えと必ずしも一致しておるというふうに私ども考えられないわけでございます。  ところで、もう少し具体的に申し上げますと、国民所得倍増計画によりますと、これは過大都市発生の防止ということを非常に強くいっておられる。もちろんこの計画はもうなくなったのでございますからそれはいいといたしまして、この計画を前提にして立てられました全国総合開発計画、これは現在行なわれております計画ですが、現行の計画は、なお都市の過大化を防止する、すなわち、都市化についてあるいは大都市についてこれを否定しようという立場からの計画が考えられ、またその計画に基づきますいろいろな施策が講じられてまいったわけであります。新産都市計画とかあるいは工業整備特別地域整備促進法とか低開発地域工業開発促進法、こういうようなむのはそういうような情勢に対しまして、これを誘導的に抑制していこう、こういうお考えでございます。さらにそのほかに、大都市圏を取り巻く、特に東京でありますが、東京がこれ以上膨張しないようにということで、ロンドンその他の例にならってグリーンベルトでこれを囲む、こういうような政策もいろいろ行なわれてまいったわけでございます。  これらの政策というのは、やはり従来は都市化というものを否定する、これは好ましいことじゃないんだ、したがって、これを規制したり抑制したりということが従来の政策の基礎になっておったんだ、こういうふうにいわざるを得ないんじゃないかと思いますが、そういう面についての長官の評価といいますか、みずからどういうふうに評価されておりますか、お伺いいたします。
  169. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それが第二段のお尋ねであろうと思っておりました。そこで、都市化というものは否定するわけにいかないということを一方で考えておるわけでありますが、他方で、しかしその反面は、地方において極端な場合には過疎状態が起きるということでありますし、そこまでいきませんでも、国の人口なり資本なりの集積に格差が国内でできてくるということでございます。それからまた、かりに都市化という観点から考えましても、その中枢の管理機能以外のものはなるべく都市から外へ出しておくべきだという問題がやはりもう一つございます。したがって、現行の昭和三十七年につくられました全国総合開発計画では、都市化の方向を否定したというのでは、おそらく思想はそうではなかろう。ただ他方で、いま申しましたような理由から、それに対応する施策がなければならないという考え方で、地方における開発の拠点というものをやはり求めるべきである、こういう思想がその反面にあるというふうに考えております。現に総合開発計画がつくられました昭和三十七年の段階で、すでに新産業都市というような議論はしきりに行なわれておりましたし、また、低開発工業地帯の指定についての法律もたしかその年に成立をしております。そういうわけで、都市化という一つの大きな方向はこれを否定しない、肯定する立場でありながら、他方でただいま申しましたような二つの理由からそうでない面への誘導も同時に考える。いわば簡単に申せば二つの目的を負っておるというふうに考えておるわけでございます。  これをどう評価するかということでございますが、いまになって回想いたしますと、この三十七年の全国総合開発計画で想定されましたよりは、人口、資本の集中が関東あるいは近畿地方に想定よりはかなりよけいに集まっております。これは非常に正直に申しますと、当時エコノミストたちが考えましたのは、一般の期待に反してどうも集中化傾向がなお続きそうだということが彼らの大部分の実は想定であったわけでございます。しかし、それではいかにも政治としてのビジョンに欠けるというような気持ちがまた他方でありまして、そこでもう少し地方に人口なり資本なりが集積できないものだろうか、誘導いかんによってはもう少しできるのではないだろうかというようなものの考え方がその計画の中にやはり入っております。しかし、事実は経済法則のほうがどうも予想に反して強く支配したというのが今日までの評価であり、反省であるわけでございます。
  170. 折小野良一

    ○折小野委員 ただいまの御意見を総合いたしますと、従来の全国総合開発計画の見込み違い、その当時に考えたいろいろな政策が結局経済法則に負けたんだ、こういうふうな御意見とお伺いをいたしておきます。したがって、新しい経済社会発展計画におきましては、従来の都市化に対する考え方あるいは大都市に対する考え方、こういうものを改めておられる、こういうふうに私ども判断をいたしておるわけでございます。  ところで、今後の施策につきましては、やはり過去の正しい評価の上に立ってこれがなされなければならないと思うのでございますが、今日までのいろいろな規制あるいは抑制措置、こういうものが結果的にはいたずらに各地域の地価の高騰を招いた、あるいは当面の過疎、過密対策につきまして自治体の行財政を非常に困難におとしいれた、あるいは都市化の傾向というものをむしろいろいろな対策が混乱せしめた、こういうような結果になってまいっておるわけでございますが、こういう結果になってまいったということは、端的に申しますならば、都市化の傾向についての見通しがはっきり誤りであったということ、したがって、今後につきましては、さらにこの傾向について十分な判断がなされなければならないということ、それからいろいろな政策、特に誘導的な政策でございますが、こういうような政策が不徹底であったのではないか。新産都市あるいは低開発その他の政策にいたしましても、そのような誘導的な政策が不徹底であったのではないか。これを今後に対してはもっと徹底してやっていかなければならないじゃないか、こういうようなことが考えられます。それからまたもう一つは、適切な施策が行なわれなかったのじゃなかろうか。具体的に申しますと、たとえば土地政策というようなものの貧困、その中における地価対策というものがほとんどない。こういうようなことが、今日の都市化傾向というものを悪い方向に激化させた一つの大きな原因であるんじゃなかろうか、こういうふうに考えるわけでございますが、そういう面について、現在企画庁といたしましてはどういうふうな過去の事象の検討の上に今後の対策を考慮しておられますかお伺いをいたしたいと思います。
  171. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 地方に資本なり人口なりが分散していくということは、確かに一つは誘導の効果として起こり得ることでございますけれども、他方で経済そのものの法則というものがある程度は修正できますけれども、ある程度以上はなかなか修正が可能でないということはおわかりいただけると思います。そうして三十七年の全国総合開発計画の場合、誘導力が弱かったという批評もできますし、あるいはまた経済法則のほうが非常に強かったということも、おそらく両方でございましょうが、今日までのところ必ずしも思ったとおりになっておりません。しかしそうかと申しまして、私ども、たとえば新産業都市の指定でございますが、これは昭和五十年くらいまでの長期を考えまして先行投資をしておるわけでありまして、これは私、今後とも続けていくべきものであると考えております。いつの日にかこういう先行投資がやはり生きてくる段階があるというふうに今日まで考えておりますので、したがって投資も予定どおりしておりますし、概して工業出荷額の年次割りも、二、三の実は例外の地方もございますけれども、まあ見通しとそんなにはずれておりません。  それから低開発工業地帯の指定は、これは非常に小さな企業を小さな町なりなんなりに考えたわけでございますが、これは意想外に地方からは喜ばれて効果を発揮しておるように考えております。それで今度全国総合開発計画を書き直すわけでございますが、この昭和四十年代がはたしてどのような経済法則で動いていくかということは、やはり一つ問題でございましょうけれども、私どもとしては、今度はその地域地域に適したような開発のビジョンをなるべくこまかくこの計画の中に織り込んでいくことと、それからどのようにすればそういうビジョンの実現を政府が助けられるかということを少し具体的に述べてみたい、こう考えまして、すでに経済社会発展計画を立てましたときに、今回は地域部会というものを設けまして、地域モデルを電子計算機で開発いたしまして、どういう誘導方法であれば地域開発、つまり資本なり人口なりが地域に分散するかというようなことも研究いたしてみたわけでございます。
  172. 井出一太郎

    ○井出委員長 この際、東郷政府委員より、先ほどの答弁に関し補足発言を求められております。これを許します。東郷政府委員
  173. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 先ほど私、米軍当局による米軍人家族の拘置に関しまして、地位協定十七条五項に関する合意議事録を引いて御説明申し上げましたが、私の申し上げたことに対して多少疑義を感じましたので、まことに恐縮でございますが、月曜にさらに取り調べの上御説明させていただきたいと思います。
  174. 折小野良一

    ○折小野委員 ただいま発言がございました問題につきましては、私といたしましても一応質問を留保いたしまして先に進めさせていただきたいと思います。  ところで今後の都市化の傾向でございますが、その一つといたしまして、今日までの産業と人口の集中、こういった場合の産業はほとんど第二次産業ということで考えられてまいりました。そしてまた、これをある程度抑制するための誘導的な政策として考えられましたのも、やはり第二次産業というものを中心にして考えてこられました。しかし、最近の特に大都市におきます集中の状態を考えてみますと、その上にさらに第三次産業の集中が加わっておる。あるいは今後の情勢を考えてみますと、先ほど大臣もちょっとお触れになりましたいわゆる第四次産業といわれるようなものの分野、こういうものもやはり問題になってくるのじゃなかろうか、こういうふうに考えるわけでございますが、この第三次産業あるいはいわゆる第四次産業、こういうものについての将来の見通しあるいはこれに対するお考え方、こういう面についてお聞かせをいただきたいと思います。
  175. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 まさにその点が、先ほど私が申し上げかかったところであるというふうに考えております。すなわち、ここ十年では少し短いと思いますけれども、二十一世紀が近づくにつれまして、都市というものの持っておる管理機能がだんだん強くなるということを申し上げましたのは、やはりそこに情報産業が発達する、あるいは第三次産業がいまよりももっとそこへ集中していく。また、国全体といたしましても、おそらくは今後第三次産業の就労人口が年とともに高まっていくのではないだろうかというふうに思われます。したがって、非常に極端な表現をいたしますと、一部の学者などが申しておりますように、いわゆる都市の中に工場があるというのは、これはたんぼがあるようなものではないか、極端な表現ではそういうことを言われておりますが、やはり都市というものは、いま言われましたような機能に向かって、わが国の場合さらに進んでいくのではないか、こういうふうに想像いたしております。
  176. 折小野良一

    ○折小野委員 もう一つ、現在の都市化の現象の中で、特に大都市の人口構成の一つの傾向と申しますか、この点から将来に対するいろいろな問題が出てまいるわけでございますが、大都市の平均年齢というものが非常に若くなってきておる、といたしますと、現在までは周囲から人が都市に集まってきたということでございますが、近い将来におきましては、今度は、大都市が大都市自身の内側から爆発的な人口増加、こういうものを来たしてくるんではないか。すなわち労働力の再生産というものが、従来はその中心が農村にあった。ところが、それが逆に都市に移行してくるんじゃないか、こういう面の対策というものは、もうやはり考えていかなければならないんじゃなかろうかと思うのでございますが、こういう面の予測並びに対策についてお伺いをいたしておきたいと思います。
  177. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 おそらくそうなるであろうと予想をいたしております。しがたって、御審議願っております都市計画法の新法に基づきますところの土地利用計画というようなものは、やはりそういうことを踏んまえていく必要がございますし、それと同時に、高速自動車道路であるとか、あるいは高速鉄道といったようなもので、そういう膨張していく人口が住むような地域の開発、おそらくはそこから世帯主が中枢機能である都市へ通勤をする、そういう都市圏というようなものを形成していく、そういうふうに考えていくべきであろうと考えます。
  178. 折小野良一

    ○折小野委員 長官の御発言の中にもございましたが、全国総合開発計画は近く改定する予定である、そういうことで準備を進めておられるというふうに考えるわけでありますが、従来の計画が工業開発を中心にした、いわゆる拠点開発方式というものをとってこられたわけでございますが、新しく改定しようとしておられます計画は、どのような基調で、そしてどのような方式で開発を進めよう、そのための計画を策定しようとしておられるのか、お伺いをいたしたい。   〔発言する者あり〕
  179. 井出一太郎

    ○井出委員長 どうぞ静粛に願います。
  180. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 本格的な計画作成に間もなく入るわけでございますが、入ります前に、学識経験者を幾つかのグループで集まってもらいまして、そうしてただいまお尋ねのような基本的なものの考え方を一ぺん最初につくっておきたいと考えております。  で、やはりこういうことには、将来のビジョンに関することでございますので、できるだけその方面の知識のある人たちに討議をしてもらいまして、基本の構想をつくってまいりたいと思っております。したがいまして、それが済みますまで、しばらく正確なお答えを申し上げ得ないかと思います。後日そういうことができましたらまた御批判を仰ぎたい、こう思っております。
  181. 折小野良一

    ○折小野委員 都市化の現象の中でいろいろ問題になりますのは、具体的な問題となってまいりますのは、いわゆる過密、過疎のいろいろな問題であろうと思うのであります。これに対しましては、政府といたしましてもいろいろな施策を強力にやっていただいておるわけでございますが、たとえば住宅政策であるとか、あるいは道路、環境整備対策であるとか、あるいは通勤対策、公害対策、まあこの問題はいろいろ今日の重要な内政上の問題になっておるわけであります。  その中の一つを取り上げてみますと、たとえば住宅政策でございますが、現在五カ年計画で住宅政策を進めていただいている。ところがこの計画がはたしてそのとおりに進むであろうかどうかということについては、多くの方々は非常に悲観的な考え方でございます。その問題の一つに、政府の施策を受けて具体的に住宅を建てます各地方公共団体におきましては、この用地取得に非常に困っておるという現状があるわけでございます。最近のニュースで申しますと、最近、都営の住宅が募集を行なった。ところが、赤羽地区のわりあい便利なところですと三百二十九倍という非常に大きな競争率になった。ところが遠いところでは必ずしもそれほど大きな競争率になっていない。しかし公営住宅をつくる側といたしましては、金の問題があるので、なかなか都心の近所あるいは利用者の便利のいいところにはできない。したがって周辺地区に周辺地区にと持っていかざるを得ない。したがって、その結果どういうことになるかといいますと、東京都の高校の競争率が平均一・六倍であるというのに対しまして、周辺地区、最近住宅がどんどん建っていきます地域におきましては、その競争率が二倍にも三倍にもなっておる、こういうような例等も出てまいっておるわけでございます。そういう点からいたしまして、この住宅建設あたりをもっともっと効率的に促進するために、私どもは土地政策、中でも地価対策というものが非常に大切なことじゃないか、かように考えるわけでございますが、こういう施策を講ずるについての土地対策、ひいて地価対策の重要性、これに対する政府考え方、そしてまたその立場からする今後の対策、こういうものをお聞きいたしたいと思います。これは建設大臣お願いいたします。
  182. 保利茂

    ○保利国務大臣 御指摘のように、住宅難が依然として解消されていない、しかも無秩序な市街地開発が行なわれてきておるというようなことを何とか是正していかなければいかぬじゃないか。いま御審議を願っております都市計画法がかりに成立さしていただけるということになりますれば、そこに市街化区域、市街化調整区域という地域指定を行なう。そこで市街化区域の土地利用を一体どうすべきであるか、住宅地域、商業地域あるいは工業地域といったようなこまかい利用計画を上位計画のもとに合わして立てていかなければならない。いずれも、その土一地の利用をいたすにしましても、これはみんな民有地である、個人の所有に属しているものがほとんど全部と言っていいわけでございますから、したがって、かりに市街化地域の住宅地区として利用していこうとするところを、どういうふうにしてしからば住宅に利用さしていただけるようにするか。私有財産を尊重しつつ、そして住宅に利用せられるように、あらゆる措置を講じてまいらなければならぬ。それで、もちろんそれ自体は私はある程度目的は達せられると思いますけれども、いまお話しの、その場合にしからば、低家賃を保障しなければならない公営住宅はその市街化地域に一体どう確保できるであろうか、これは非常な問題点になってくるであろうと思います。私はいま事務当局に命じまして、そういう点を掘り下げて検討を進めさしておるわけでございますが、いずれにいたしましても、この今日の都市化を幾らか秩序立ててまいりまするためには、土地利用計画のこまかい実施が必要であろうということを感じておるわけであります。
  183. 折小野良一

    ○折小野委員 再開発によって都心部にもある程度人口を収容するように考えなければならない、こういうような御意見もございます。しかしまた私が申し上げているように、政府土地対策あるいは地価対策、こういうものが十分でないがために住宅が周辺に、周辺に出ていかなければならない。そういうことによって現在の都市化というものを悪い方向に混乱させておる、あるいはドーナツ現象をさらにさらにひどくさせておる、そういうようなこともあるわけでございます。また市街地の再開発と申しましても、これは人口を入れるということだけを考えてはたしていいのか。東京の道路率が非常に低いということがいわれております。東京の道路が一〇・九%、それに対しましてワシントンは四三%であるとか、ニューヨークは三五%であるとか、ハリは二六%であるとか、あるいはロンドンも二三%である、こういうようなよその例を引くまでもなく、今日東京の道路の狭さ、道路率の低さ、これはいわゆる過密問題の一つとして私どもが日常考えておるところであります。また都心部に非常に公園が少ない。非人間的な町になっていきつつある。なるほど数字的に見ますと、公園は東京では一人当たり〇・七平米、ロンドンが一一・四平米、あるいはニューヨークが一一・四平米、その他の都市をとりましても、少なくも東京の十倍ぐらいの公園、緑地がある。これもやっていかなければならない。といたしますと、もちろん都市対策をいろいろ講じていくこと、大切でございますが、当面これをやるためには、何といっても民有地を買収していかなければならない。東京のこの道路率あるいはこの公園率、こういうようなものをよその都市並みに、あるいは快適な市民生活ができる程度にするためのばく大な用地、こういうものがはたして政府といたしまして、あるいは地方公共団体としてもそうですか、具体的に支弁していかれるものなのかどうか、あるいはこれに対してどういうふうな対策をお考えになっておるのか、これを建設大臣にお伺いいたしたいと思います。
  184. 保利茂

    ○保利国務大臣 現状は御指摘のとおりであるわけでございます。しかしまた、東京都で持たれておりますところの都市計画が果たされるということになりますれば、まだ相当の余地といいますか改善が行なわれるわけでございますけれども、お話しのように、これはばく大な資金を要するということになりまして、たいへんな大事業と取り組んでいかなければならないわけですけれども、何とかしてこの東京都の都市計画あるいは大都市の都市計画を、現に大阪の知事さんあたり、非常に熱心に大阪の空地をつくるために努力をされておられるわけでありますが、ああいう努力の方向を東京都においてもひとつ強力にやっていただいて、改善をはかってまいりたい。しかし、これは容易な仕事じゃないということはよく承知をいたしております。
  185. 折小野良一

    ○折小野委員 時間がございませんので、いろいろな対策のすべてについて触れていくわけにまいりませんが、ただいまも住宅対策に関連して一部申し上げましたように、少なくも過密対策の多くの問題点というのは土地対策にある。その土地対策が今日まで十分できていないところに、非常に非効率的な行政を行なわなければならない、その成果が十分進んでいない、こういう原因があるように思うのであります。その土地の中で、私は特にこれからちょっと地価の問題について触れてみたいと思うのでございます。  数字的に見ますと、昭和三十年から四十年までの十カ年くらいの数字でございますが、この間に卸売り物価は四%上昇をした。消費者物価は四五%上昇した。賃金は二倍になった。そして地価は、六大都市の平均で十倍になっておる。都市近郊の農地におきましては、これは見方によっていろいろな数字があるようですが、十三倍から十七倍にも上がっておる、こういうような状態でございます。特に私はこの地価の高騰、これをやはり一番問題にすべきじゃなかろうか。一面には、この地価の高騰が、物価高ということによって国民の生活を圧迫をいたしております。またこの地価の高騰が、公共事業を非常に効率の悪いものにしておる。そういうような状態から考えますと、今後都市化のいろいろな政策を進める上におきまして、この地価というものに対しましてもっともっと関心を持って、しかも四つに取り組んでやっていかなければ政策の推進ということはできないのじゃなかろうか、かように考えるわけでございます。こういう点につきましては、実は総理の施政方針の中にも、検討したいというおことばがございましたので、私も予算書をいろいろくってみたのでありますが、少なくとも予算書にあらわれております地価対策、こういうようなものはほとんどと言っていいくらい見当たらないわけでございます。この地価対策についての基本的なお考えというものを一応お伺いをいたしておきたいと思います。
  186. 保利茂

    ○保利国務大臣 お答えいたします。  地価問題も、すべての土地政策の最大のねらいが地価の安定というところにねらいを持っていかなければならぬことは御指摘のとおりでございます。すでに本院におきましても、三十九年に地価抑制に関する決議がいたされております。受けまして政府は、翌年の十一月に閣僚協議会の決定をもって地価抑制方針を打ち出しております。一連の施策を講じ・たとえば土地収用法の改正であるとか、都市計画法であるとか、都市再開発法というような、そういうものを受けて一連の施策をなして、ただいま国会の御審議をわずらわしておるわけでございます。そこで、やはり何と申しましても先ほど来折小野さん御指摘のように急激な人口、産業の都市集中、そして家族制度の変革からきますところの世帯の細分化、輪に輪をかけた住宅の需給の非常なアンバランスが一に土地の不足感、宅地の不足感を起こしまして、それが上昇ムードをつくり上げる。そこにまたいろいろ土地を目当てに思惑投資が行なわれる、あるいは値上がりを見越しての手持ち売り控えというようなことがあって、いろんなそういう錯雑した理由で今日の急騰を示しておるわけでございますから、まず第一は、やはり政府の施政方針でも明らかにされておりますように、土地の持っている公共性、なるほど土地というものは大事な私有財産ではあるけれども、この私有財産の土地社会のため公共のために利用せられるのだ、利用してもらわなければならないのだという観念を広く強く持っていただくようにならないと、なかなか一つ二つの施策ではいかぬのじゃないだろうか。まず私どもとして考えます点は、何をおきましても、とにかく値上げに拍車をかけるような思惑投機を許さないというような措置はできるだけすみやかに講ずる必要があるのじゃないかというように考えておる次第でございます。
  187. 折小野良一

    ○折小野委員 ただいま大臣の御答弁にございました、そういう立場からいわゆる地価の公示制度、こういうものをやっていこう、こういうふうに考えておられるのであろうと私ども思っております。現在地価対策として考えられます制度といたしましては、この公示制度をやるための準備を建設省のほうでやっておられるのだが、これ一つしか実は私どもの目にもつかないのでございますが、この公示制度におきまして地価対策上どのような効果を期待しておられるのか、お伺いをいたしたいと思います。
  188. 保利茂

    ○保利国務大臣 御案内のように昭和三十九年から東京、大阪、今年から名古屋、これの準備をいたしました。先日非公式に事務当局のほうから東京の例を発表いたしましたわけでございます。これはまあいろんなまた批判が巻き起こっておるようで、せっかく寝ているところまで高くしてしまうのではないかというような御批判もありますけれども、ある程度はやむを得ない事態が起きるのではないかと思います。しかし、少なくとも建設省としましては、ただいま、四十五年、おそくも四十六年にはひとつ公示制度の実施に踏み切りたいということで準備を急いでおるわけでございますが、この公示価格は、昨日も御批判がございましたけれども、一応の取引上の目安価格ということで相当の効用を発揮するのではないか。したがってまた、公共用地等の取得につきましてはこの公示標準価格というものが大体のめどとして運用されていくようにならなければならない。そういうことになりますと、また一般の取引も、そこを目安として取引が行なわれていくようになりますれば、一応の安定傾向に入っていき得るのではないかというような感じがいたしておる次第であります。
  189. 折小野良一

    ○折小野委員 取引上の目安あるいは公共用地の取得の目安ということでございますが、はたしてそれだけで今日の地価騰貴というものを押えることができるであろうか。こういう点について私どもは大きな疑問を持っておるわけであります。  ところで、土地の評価にはいろいろあるわけでありますが、今日固定資産の評価というものがあります。それから相続税の評価というものがあります。それから時価  これはまたいろいろな意味における時価というものがございます。ただそれに、公示制度によって新しい価格が一つのめどとして示されたということだけでは・決して地価対策上の効果はあがらないのではなかろうか。たとえこの公示制度によりまして一定の、ただいまおっしゃったような方法をとられるにいたしましても、いままでのようなばらばらの評価制度、これを一本にまとめなければ効果があがらないのじゃないかと思うのであります。  私どもは、現在あります固定資産税制度におきましても、この評価を適正な価格に確定をして、現在のようにばらばらな評価でなしに、これが一本化する。そして地価の高騰あるいは都市化の動きというものにこれが反映してくるということになるならば、すなわち都市化即応の税制というものになりますならば、今日の地価の問題というものもある程度抑制されてきておったのじゃなかろうか。また、その上に立って新しい地価対策というものもいろいろ講じられやすいのじゃないか、こういうふうに考えるわけでございますが、特にこの点につきましては固定資産の評価制度の今後について、自治大臣の御所見をお伺いいたしたいと思います。
  190. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 御案内のとおりに三十九年でしたか、評価がえをいたしまして、新評価の決定をいたしましたところ、非常に差ができましたので、いまの段階ではその負担を調整しながら、できるだけ早い機会に新評価に近づけようとして努力しておる最中でございまして、それがやっとという段階でございます。しかし税調の部会のほうでも特にこういった問題について検討していただいておりますので、そのうち結論も出ると思いますので、われわれといたしましてもよく検討いたしたいと考えております。
  191. 折小野良一

    ○折小野委員 地価対策につきましてはいろいろございまして、昨日の御質問にもあったようでございますが、一つだけお尋ねをいたします。  いろいろな地価対策が講ぜられる。また、土地収用法が昨年改正になったわけでございますが、それによりまして公共用地の取得につきましてある程度よくなった、こういうことがいわれております。もちろん公共用地につきましても適正な価格で買収をして、そして事業が順調に進められることが望ましいのでございます。しかし、現在の状態からいきますと、公共用地につきましてはそういうような方法がとられておりますが、その公共用地を取得して、そこに公共事業が行なわれる。ところが、その周辺は何らの犠牲もなしに、その事業が行なわれることによって地価の高騰を来たした。したがってばく大な利得を得る、いわゆる開発利益を得る、こういうような結果を来たしておるわけであります。こういう面に対する対策が行なわれない限り、やはり基本的な地価対策というものは出てこないのじゃなかろうかというふうに考えるわけでございます。したがって、いろいろな土地関係審議会あたりでも出ておりますし、諸外国の法制例にもあるわけでございますが、いわゆる土地増価税、こういうようなものの運用によって今後地価対策をはかり、またこの地価に対する社会正義、こういう面を正す、こういうお考えはないのか、大蔵大臣にお伺いをいたします。
  192. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いわゆる開発利益を吸収するという問題は、御承知のように土地収用の問題と関連して先般議論されましたが、考え方方向はみなそれでよろしいと思うのですが、さて実際的にそれをどうするかといいますと、公共事業の施行によってどれだけの範囲の土地がどれだけの開発利益を得ているかという、この実際上の認定の問題で、技術的には非常にむずかしいというところへぶつかりまして、そのほかにも、土地に対する税制はいまいろいろ論議されておりますので、需給の緩和とかあるいは有効な利用の促進というものを全部一緒にして、この開発利益の吸収というものも一緒にして、土地税制として、やはりばらばらでなくて総合的に検討する必要があるということから、いま税制調査会の特別部会がこれを一括取り扱っているという次第でございまして、今年度は間に合いませんでしたが、何としても来年度までに間に合わせるように、答申を夏ごろまでには得たいというふうに思っておるところございます。
  193. 井出一太郎

    ○井出委員長 折小野君、時間が参りました。
  194. 折小野良一

    ○折小野委員 次に、公害の問題につきまして一つだけただしておきたいと思うのでございますが、最近いろいろな公害が出てまいっております。ところがこの公害に対しまして十分な対策がとられていないというのが現状でございます。たとえば水俣病におきましては、四十一名の死亡者が出ており、多くの患者がいまなお苦しんでおる。第二の水俣病といわれております阿賀野川事件におきましても七名の死亡者が出ておる。また最近問題になっておりますイタイイタイ病にいたしましても、今日まで百人をこす人たちがそのためになくなっておるわけであります。こういうような問題を考えますと、もっともっときびしい態度で公害というものを取り締まっていかなきゃいけないのじゃないかというふうに考えます。  ところで、神通川の問題につきましては、一応鉱業法の対象ということでございますので、これは現在の法制のもとにおきまして無過失責任というのが明らかになっておる。ところがその他の工場排水につきましては、それが明らかでないのであります。こういうような点につきましては、被害者の立場からすると結局同じじゃないかと思うのであります。これは公害対策基本法ができました際におきましても、無過失責任の採用につきまして十分政府検討されたいということを決議されておるわけでございますが、こういうような点について、通産大臣の御意見を最後にお伺いをいたしておきます。
  195. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 お答え申し上げます。  阿賀野川の問題にしてもあるいは神通川の問題にしても、ただいま調査を急いでおります。その調査の結論を見まして善処したいとは思っておりますが、しかし調査のために時日が遷延する、そういう中に公害がどんどん起こっている、進行している、こういったようなことになりましては、いささかその点は、救済の問題はどうしても急ぐという状況にありますので、これらは当該責任いかんにかかわらず、広く産業界のほうに働きかけて、そしてまず救済は救済、その救済の問題を急ぐという方向をただいま考えて、手を進めておるような状況であります。
  196. 井出一太郎

    ○井出委員長 これにて折小野君の質疑は終了いたしました。  次に、長谷川正三君。
  197. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 私は今日、文教問題を中心に政府の所信をただしたいと思いますが、御承知のように、文教問題はきわめて重要な問題が山積しておると思います。そこで、わずかの時間ではその全般をただすことはできませんが、特に緊急を要すると思われる問題のうち二、三点、さらに今日の佐藤内閣の非常に右寄りな政治姿勢に対して国民が不安を持っておりますが、これとの関連において、教育の問題にもその影がさしておるのではないか、こういう点について非常に国民が不安を高めておりますので、これらにつきましても、二、三の点についてただしたいと思う次第であります。  そこで、最初に緊急の問題といたしまして、本委員会におきましてもしばしば同僚から取り上げられました過密、過疎の問題あるいは地価対策の問題あるいは住宅の問題等がございますが、その中で特に端的に人口急増地帯におきます市町村が、もうほんとうに待ったなしに悩んでおりますところの義務教育諸学校の施設、設備、こうしたものについて、もうどうにもならないところへきておる。御承知のように、この人口の急増問題につきましては、あるいは都市対策であるとか、先ほど来申し上げたいろいろな施策が、これは総合的に行なわれなければならないのでむずかしいとか、総合対策を立てるとかいうおことばは聞くのでありますけれども、問題は一向に解決に向かって開かれておらないのが現状であります。そこで私は、そういうことも大切でありますが、とにかくまずこういうところから手をつけたらどうか、こういう意味でお尋ねをするのであります。すなわち、私は、都下の久留米町あるいは国分寺市というようなところを少し調べてみましたけれども、ここらはいずれも急激な人口の上昇をかかえまして、義務教育の諸学校は、これは学齢期に達すれば待ったなしに入学をさせなければならないのでありますから、この学校の建築のためあるいは設備のため、それよりもまず前に用地の取得のために四苦八苦であります。しがたって、この際この窮迫した地方自治体に対して、ともかく教育だけでも正常に行なわれ、かたがた地方自治体の財政が少しでも余裕を生み出すためにはどうすればよいか、現在のように小学校の建物について三分の一、中学校の建物について二分の一、用地の取得については何らの補助がない。わずかに一部起債が認められる。この程度である。こういう状況ではとうていこの人口急増に伴う児童、生徒の収容にはまかないきれないのであります。で、私はこの点について、いま申し上げたように久留米町や国分寺の現状を少しこまかく掘り下げて申し上げたいのでありますが、これは分科会等に譲りたいと思います。  ただ、わかりやすいことを一言申し上げれば、たとえば久留米町におきましては、学校を建てるためにばく大な借金をしょって土地を買収して学校を建てている。それでいまやその土地の元金の返済などよりも、利息の返済のほうが大きくて、この調子でいけば、しまいには学校の借金でついに町政は破産に瀕するのじゃないかということがいわれておる。  また国分寺市におきましては、駅に近い学校の用地や土地が高く売れるだろうということで、これを住民の反対も押し切って売ることにして、そうして周辺地帯に土地を求めて二つの学校を建てた。一つの学校をつぶして二つの学校を建てた。ところがなかなか期待するような値段で、売ろうと思った学校の敷地は売ることができない。二つの学校はもう建ってしまって、支払いをしなければならない、こういうことで、にっちもさっちもいかなくなっている。  これはほんの一例でありまして、こういうのはこの人口急増地帯、大都市周辺のいずれにも起こっておる現象であろうと思うのであります。私は愛知文部大臣のころにこのことを直接、そうしたところの住民の方と一緒にお話し合いをしたときに、これは臨時時限立法でも、何かこの措置を講ずる必要があるなということをおっしゃいました。その後の中村文部大臣のときには、いやまことにもっともなんだ、しかしどうもいまの文部省の力では大蔵省を説得するのはむずかしそうだ、だから、どうだ君、大都市周辺出身の議員の超党派の期成同盟でもつくってやってくれないかと、げたを預けられる始末であったのであります。まあ、これは別に私は、そのことを非難して申し上げているのではないのであります。事実をただ申し上げておるわけでありますが、いまやそういうことばのやりとりで済む段階ではないのであります。したがって、この人口急増地帯の義務教育諸学校の建設には、もし臨時の時限立法であっても私はやむを得ないと思いますが、とりあえず、少なくとも小中学校ともほんとうに実額の半額、これは施設、設備、ことにいま一番悩みとなっている土地取得についても半額を国が見るというような思い切った措置をとらなければならない段階に来ているのじゃないか。このことにつきまして文部大臣あるいは自治大臣、大蔵大臣の御所見を承りたいと思います。   〔委員長退席、北澤委員長代理着席〕
  198. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 お答えいたします。  人口の移動が非常に激しいものですから、御指摘のような個所が点々とできております。そこでいままでも義務教育の学校施設整備につきましては、自治省としては起債の重点的の配分をいたしますとか、あるいは交付税なんかで特に措置をしてまいった次第でございますが、なかなか用地が求めにくいこと、これは先ほどから土地利用についてのいろいろな議論がかわされておりまするけれども、御指摘のとおりでございます。政府資金による学校用地の取得債を増額するとか、いろいろなことをやっておりまするけれども、なかなか追っつかぬのが実情じゃないかと思っております。そこで、ただいまおっしゃったように、用地も含めて二分の一の国庫補助云々ということになりますと、やはり事実何らかの措置をしないといけない個所もありますので、これは政府部内でも慎重に急いで検討しなければならぬ問題の一つである、かように考えております。
  199. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いわゆる社会増地区の学校問題については、もう相当私どものほうではこれは重点的に考えまして、要望に沿っているつもりでございます。現に今年度も、御承知のように予算としては七十億円以上見ておりますし、それから校地の取得についても、土地についての起債の別ワクも用意してございますし、当面必要な起債をする。そうして、あとは、さっき自治大臣から言われましたように、いろいろな地方交付税の問題を考えてもらうというようなことで対処する以外にはないのじゃないかと考えまして、私どもはこの問題に関する限り、予算は相当に重点的に見ているつもりでございます。
  200. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 人口の急増に伴いまして、私ども所管の学校施設の整備について非常に困った町村があるということは、私も長谷川さんと同じような実は心配をいたしておるものでございます。財政措置においてもっと何かしなければということは、ほんとうにそのような心持ちで心配をいたしておる次第でございますが、明年度の予算におきましても、率直に申し上げまして、従来の公立文教施設の小学校の補助についても、補助率を上げたいという気持ちはございましたけれども、明年度は財政一般の原則もございまして、志を遂げることができなかったということをまことに残念に思っておりますけれども、さりとてその状態でいつまでも置けるものじゃないということはもちろん考えております。また、校地の取得について各町村が難渋しておられるということもよくわかるのでありまして、何とかそこにうまい方法はなかろうかと思いますが、用地の取得に対する補助という方針をとることは、これまた財政一般の原則から申しますと、なかなかむずかしい事情もございますが、何かしかし、適当な方法をとることによって用地の取得を容易ならしめるという方向で取り組んでいかなければならぬ。言いかえまするならば、心配は同じようにしておるつもりでございます。前向きに、ひとつ各省の御協力も得まして、問題の解決に一歩でも二歩でも前進したい、こういうつもりでおるということを御了承いただきたいと思います。
  201. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 文部大臣は、私の言うことはよくわかる、努力しているけれどもいまの程度しかできなかったが、これではいいと思っておらない、さらにどうしてもこれを打開する方途を講じなければならないというふうにおっしゃったと思います。自治大臣もほぼ同様であったと思います。ただ、大蔵大臣は、もう精一ぱいやっているつもりなんだ、これ以上のことはもうできませんと言わんばかりのことなんですね。これはたいへん食い違っている。大蔵大臣どうですか。
  202. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いま必要とされて要求されておる予算については私どもは十分見ている。今後どういうやり方をするかというような問題は別としまして、当面迫られた問題については私どもは善処しているつもりであるということを申したわけでございます。
  203. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 大蔵大臣、ことし要求されたことは十分見てやったはずだとおっしゃるのですね。私が申し上げたのは、地方自治体がそういうことではとうてい解決しない緊急の事態に差し迫ってきている。一体これをどうするのかと伺っているのです。いま、ことし組んだ予算をこの場ですぐ直せとまでは言わないけれども、必ずこういうような方向でいくとか、あるいは文教あるいは自治省その他と緊密な打ち合わせをして、何らかいまの私の申し上げたことに対してこたえる方途を考えてみる、こういうことをあなたはお答えにならないですのか。
  204. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 十分もうそういう点は考えます。ですから、今後どう考えるかということは別として、いままでの問題には私どもは十分対処してきたつもりだということを言っただけでございます。今後考えます。
  205. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 大臣も今後考えるということですから、再び文部大臣に伺います。  大臣も考えるそうですから、ひとつ自治大臣とも緊密な連携が必要だと思いますし、また内閣全体として大きな決意をしなければ、これはできないことだと思いますけれども、私が申し上げたような臨時時限立法でも何でもいいと思いますが、一つの特例措置の立法措置考える、このことをここにひとつ明確に言明していただけませんか。
  206. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 特定の町村につきまして特に困ったような事情のあるところが、先ほど御指摘のとおり随所にあるわけでございます。そういう町村に対しまして特別な援助の方式考えていくということが必要ではないかと思いますが、関係各省とも十分協議もいたしまして、適切な方途を考え出していくという意味で検討させていただきたいと思っております。
  207. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 それではこの問題については、いま大臣からそういう御答弁がありましたから、これがことばだけに終わらないように、強く、ひとつすみやかに実施のできるような方途をとっていただくように要望しまして、次の問題に移ります。  これもまた非常に緊急な問題でありますが、今日御承知のように、国土開発が全国的に進んでおります。鉄道が敷かれ、高速道路が全国的に伸び、またその他の道路の整備も進み、さらに日本住宅公団による全国的な大量の住宅の建設あるいは地方の公社、さらに民間の宅地や住宅の建設業者等のやっておることを考えますと、全国的にあちらこちらもう堀り荒らされていると言ってもいいのですね。こういう中で、貴重な文化財が至るところで、浅薄な目先の経済主義に圧倒されて、破壊に瀕しておるのであります。ことに埋蔵文化に至りましては、一度破壊されれば、永久にもう取り戻すことができないのであります。これにつきましては、文化財保護委員会等に対しまして、文教委員会等を通じてしばしばこの問題を指摘してまいりましたし、現に文教委員会の中に文化財保護の小委員会も設置されております。しかしながら、なかなかはかばかしい成果があがっておらない。私は、この文化財保護の予算は、こういう建設の進むときには、特に集中的に思い切った予算を組んでおかなければ、民族の将来に対してきわめて深い悔いを残すことになり、また世界の学界等に対してもまことに申しわけない結果になると思うのであります。そういう意味で、文化財保護の予算については年々かなりふえていることの努力は認めますけれども、この程度のテンポではとうてい間に合わないのではないか、こういうことを痛切に感じておりますが、このことに対して、後ほど具体的なことを申し上げますけれども、まず文部大臣の御所見を承りたいと思います。
  208. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 仰せのとおりに、最近の産業経済の発展に伴いまして、各地で開発が進んでまいります。その関係で、いまおっしゃいましたような埋蔵文化財が破壊されるという事例を見受けておりますことは、まことに私どもも遺憾に存じております。この問題については長谷川さん常に熱心に御心配をいただいておるのでございますが、われわれとしましても予算の増額をはかりまして、できるだけ御期待に沿いたい、こう存じております。なかなか思うにまかせない点もございますけれども、そういう方向については年々進んでおるということだけは、ひとつお認め願いたいと思います。今後さらに一そうの努力をいたしたいと思います。
  209. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 文部省文化財保護委員会は、おそらくいまお持ちの力量の中では、いま大臣がおっしゃったように努力はされておると思います。しかし、これは何と申しましても大蔵大臣の文化財保護という問題に対する御理解の深さがどのくらいであるかによってたいへん左右されるのではないかと思うのです。大蔵大臣の御所見を承りたいと思います。
  210. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 文化財については、私はむしろいばれると思っているのですが、終戦後、日光をはじめとして史跡や城が全部荒れておるのを見て、何をおいてもこの文化財を保護しなければならぬといって、この文化財事業の最初の予算を主張して盛ったのが私でございます。以後、予算の伸び方は少し少ないような気がしますが、しかし、いま言った史跡あるいは埋蔵文化の維持のためにことしの予算は六億一千万をこして、昨年の四億九千万よりは二三%という伸びでございますが、文化財保護事業全体としては、ようやく予算規模二十億円前後になったということで、年々予算は伸びてきております。なお今後とも、この文化財の保護ということは、私はやはり民族として重要なことだというふうに考えております。
  211. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 水田大蔵大臣が個人的にも文化財には特別な御関心をお持ちだということは仄聞をいたしております。ただいまたいへん御理解のある態度で今後努力するというお話でありますが、私は、いまの文化財保護予算は少なくとも一けた、けたが違うんじゃないかと思うのです。この時期を過ぎてしまったら、ほんとうに取り返しがつかないことになります。これは、将来永久にそういう額が必要だということではないと思うのです。いま一番大事なところにきているのですから、その点をひとつ十分押えまして、また具体的に全国にどういう文化財問題の危機があるのかということも詳細に御理解を願いまして、ただ予算全体のバランスであるとかいうことでなく、取り返しのつかないという事態になりませんように、ひとつ強く要望をいたしておきます。  そこで、私は具体的な問題を一つだけ申し上げます。これは、文化財保護の国の施策としては最も大きなものとして取り上げられてまいりました奈良の平城宮の保存の問題であります。これは最近の調査によって、当時の学者の推定よりもはるかにはみ出しておるということが明らかになってきたのであります。ところが、そういうことがわからなかったころの計画として、国道二十四号線のバイパスを、この平城宮のわきに通っておる東一坊大路のあったというところに通す計画を立てた。ところが、そこを調査してみたところ、いま申し上げたような結果になった。これは当初から平城宮を保存するという国策に立ちましても、当然このバイパスの計画はすみやかに変更をして完全な保存をすべきであると思うのであります。おそらく文部大臣もそのつもりであろうと思いますが、最近、万博が迫ったから道路の建設を急がなければというようなことや、この文化財保護について軽視する一部の地元の動きなどもありまして、建設省は強引にこの道路の建設を推し進めよう、土盛りにすればいいとか、あるいは高架にしたらよかろうとか、そういうようなことでやろうとしているというふうに伺いまして、まことにこれはたいへんなことだと思っております。はたしてそんなことがあるのかどうか、文部大臣、建設大臣からそれぞれお答えをいただきたいと思います。
  212. 保利茂

    ○保利国務大臣 御指摘の奈良の平城宮の宮址のところのバイパス問題、当初はお話しのように、そこはよけておった。よけておって計画されておったところが、あとから、いやそっちに延びておる、そうすると、結局宮址の上を通るというようなことが発見されて、そこで、たいへんそれぞれの賛否、それぞれの御意見がわいておるのでございます。私は、大体公共事業を進めてまいりますのに、地元の御理解と協力なしに公共事業はやろうとしてもやれるものじゃない。無理押しにやるというような気はございませんので、しかしまた、全体のその地域の福祉ということからいろいろ御意見もあるわけでございまして、どちらにしまして、二度とはつくれないそういう史跡でございますから、これはもう文化財保護委員会と十分協議をして、そして御納得のいくような形でなければやらないようにしてもらいたいということを命じておるようなことでございます。慎重に取り扱ってまいります。
  213. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 先ほどの御質問の具体的な例だと思うのでございますが、われわれの側から考えますと、産業経済の発展、地方の開発、そういう要請と、文化財の保護という要請と、この間の調整をいかにしてとるかというのが、実は非常な悩みでございます。御指摘になりました平城宮址につきましては、いま建設大臣がお答えになりましたように、あとから問題の所在がわかってまいりました。いかにもこのままで当初の計画どおりやられるのでは困る、こういう考えのもとに、路線の変更等について建設省にもいろいろ御相談をしておる、こういう状態でございます。
  214. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 いまのお二人方の答弁では、どうも一まつの不安が残る。一般論として、土地の開発と文化財の保護において、いろいろその調整に悩むということは、一般論としてはわかりますが、この平城宮の問題は、もうそういう一般論の段階の問題ではないと思うのです。特に万博ともからんで、たとえば奈良県の知事なり、大阪府の知事なりが、どういうふうにお考えになっているか、正確なことはわかりませんけれども、いま地元の意向もということもありましたが、地元の意向と申しても、この平城宮の価値を知っている学者や、文化人や、あるいは郷土愛のあるその市民は思っても、知事はまた別の経済面からの計算から、ここに早く通してもらいたいというようなことを言いかねない。しがたって、単に地元の意見というようなことを知事が代表しているんだというふうなことにとられますと、これは非常にあぶないことになるんではないかという不安を、かえっていま強めたわけであります。ですから、文部大臣におかれましては、特にこの平城宮の今日まで——これは文化財保護政策としては最も画期的なことであったはずです。これの完全なる遂行に向かってまっしぐらにひとつ進んでいただく決意をもう一度はっきり明確におっしゃっていただきたいと思います。
  215. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私といたしましては、平城宮の跡をできるだけ完全な姿において保存していきたい、この方針のもとに御相談を進めておるわけでございます。
  216. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 それでは次に移らしていただきます。  もう一つは、義務教育諸学校の教職員定数についてであります。これは御承知のように、四十三年度は本則が実施されることになっておりますが、四十四年度以降はこの定数法についてさらに抜本的な改正をし、充実をしたい、このことは、先般の文部大臣の文教委員会における所信の表明の中にもその意味のことがあったと思います。ところが、いまの定数法でそのまま年来もいくと計算しますと、児童生徒数の増減と相まちまして、教職員定数をふやさなければならないのではないかと考えられる都道府県が相当にある。しがたって、当然現在の定数法でいきますと、四十三年度なお定数をふやさなければならないはずのところが、再来年は今度は減るからというので、それを見越してあえて定数を下げているというような現象が、各都道府県において四十三年度の予算編成の過程で見られるのであります。このことはたいへんゆゆしいことでありまして、たとえば北海道の例をとりますと、ここでは現在の定数法でいけば、総計において最終的に四十三年度は二十二名ふえるはずなんです。それが四十四年度以降のことを見越して、四百七十七名も減の定数を組もうとしている。こういう現象は方々に起こっておりますので、すみやかに文部省は四十四年度以降の定数法の改正、抜本的充実の態度を明らかにし、その骨子を示す必要があると考えますが、これについての文部大臣の御所見を承りたいと思います。
  217. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 四十四年度以降の問題につきましては、ただいま検討いたしておるところでございます。まだ確実な方針というものをお話し申し上げるところまで至っておりませんけれども、来年度予算編成をめどにいたしまして、その間に方針をひとつ確立してまいりたい、こういうふうな心づもりでおる次第でございます。
  218. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 御答弁は一応わかるような気もいたしますが、いま私が前段に申し上げたような全国のこの教員配置の状況、先を見越して控えようとして、現行法規より下回ろうとするこの傾向について、やはりそういうことが起こり得ることを十分予測して、文部当局としては不安のないような措置をとる必要があると思いますが、この点についていかがお考えですか。
  219. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 四十四年度以降の問題については、いま申し上げましたとおりでございます。私どもとしましても、なるべく早くひとつ方針決定してまいりたいと思っておりますが、大体のめどは、予算編成の時期ということで検討を進めたいと思っております。ただ、各地におきまして、あるいは御指導のようなこともあろうかと思うのでありますが、これも程度問題ということになりはしないかと思うのであります。各地におきまして、将来の需給というふうなことの円滑をはかりますために、若干の調整を加えるというふうなことはあり得ることと思いますけれども、その程度によっては問題にもなろうかと思いますが、この点につきましては、各都道府県の教育委員会の判断というものも、またそれなりに認めていかなくちゃならぬ点もありはしないか、このように思っておるような次第でございます。
  220. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 いまの御答弁では、私が指摘していることについては的確にお答えになってないと思うのですね。わからないではないのです。来年度の予算編成、この夏ごろからということだろうと思いますが、ただそれでは不安で、各県がいま言ったような方向に非常に押しつぶされていく傾向があるわけなのです。ですから、この点については、特に四十四年という年はそういう境目にきているということは、もう前からわかっているのですから、二年先くらいを見越して方針検討し、大蔵当局とも折衝を事前に十分進めておかれて、こういう切りかえ時期の不安のないようにするのが文部当局の責任だと思いますが、大臣、いかがお考えですか。
  221. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 仰せのとおり、将来の不安を残さないようにしていかなければならぬということは、私もそのように考える次第でございます。現段階の話として申し上げますれば、いまのようなお答えをする以外にはない、かように考えております。
  222. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 極端な例はないだろうというお話ですが、各都道府県ごとにいろいろ御相談等もあろうと思いますから、そういうときには、ひとつできるだけ親切な、適切な、前向きな御指導をなさり、また、そういう方針を示されるように強く要望をいたしまして、この件は打ち切ります。  次に、緊急の問題まだ多々ございますけれども、時間がありませんので、教育の本質にかかわると思われます問題、憲法、教育基本法の精神が、文部省の推進する教育政策によって暗影を投じられているのではないか、こういうふうに感じられることが最近たくさん出てまいっております。そのうちの一、二の点についてお尋ねいたします。  まず第一に、最近非常に世の中で問題になってまいりました、京都府の教育長の任命にかかわる文部大臣の承認の問題であります。この問題につきましては、先般の予算委員会の総括質問におきまして、同僚の山中委員から質問がありましたが、このとき以来、私は、この問題が行政の冷静な常識に従って、すみやかに円満に処理されることを期待しておったのでありますが、その後の推移を見ますと、一向に進展をしない。これをだんだん調べてみますと、一つには、文部大臣が、地方教育行政の組織及び運営に関する法律十六条の二項をたてに、権力の乱用になっておるのではないかという点に疑問が持たれます。もう一つは、自民党自体から、いわゆる外部の介入というような形で、この問題が混乱してきているのではないかという報道が一般商業紙によって盛んになされておるのであります。したがいまして、わが党といたしましても、これはきわめて重大な問題を含んでおるということで、先般、急遽調査団を組織して、京都に行って調査をしてまいりました。私もその一員に加わって京都に参りましたので、以下、山中委員の前回の質問に続いて御質問を申し上げ、大臣の所信をただしたいと思うわけであります。  そこで、まずお尋ねいたしますが、この文部大臣の承認を得て教育長を任命するという法律が、国会を沸騰させるような大騒ぎの中で、いわば強行突破の形で昭和三十一年に通過をいたしましてから、今日まで十数年になるわけであります。あの国会におきまして、当時の清瀬文部大臣は、この新しい教育委員制度は、全く憲法、教育基本法の精神をはずれた、新たな国家統制の立法ではないかという野党側の追及に対して、決してそういうことはない、ただ教育委員会の公選制を任命制にしただけである、それも別に中央政府が統制して任命するわけではない、住民の意思を代表する各都道府県、市長村の首長と、また住民から選ばれた議会の議によって教育委員を任命するのであって、あくまで教育の地方分権、地方自治の本旨というものの尊重は少しもおかしていないのだということをるる申し述べておるのであります。教育長の文部大臣承認の項に対しましても、これは連絡を密にし、国と地方が円滑を期する意味で、一応どういう人がなるかお知らせくださいという程度の意味だと言っておるのであります。したがって、自乗今日まで十数年の間に、四十六都道府県ではこの法律に従って、教育長がそれぞれの手続を経て任命されてきておりますが、まずお伺いいたしたいのは、いままで各都道府県から正式に教育長の承認申請があってから、承認の許可といいますか、その手続の、承認した旨の書類を送って事務が完了する、それまでにどの程度の日数がかかっていましたか、それをお伺いします。   〔北澤委員長代理退席、委員長着席〕
  223. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 一がいには言えないと思いますけれども、それほど長い口数をかけた事例は私は記憶いたしておりません。
  224. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 大体おおよその目安はどのくらいですか、最近の例は。
  225. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 別に目安というものもございませんけれども、大体十日前後じゃなかろうか、このように承知いたしております。正確なことはもし必要ならば、局長も来ておりますので、お答えいたさせます。
  226. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 十日前後で手続が終わるというのが通例である、確かにそのとおりだと思います。私も二、三調べたところ、たいがい一週間から十日の間には承認がおりておるようであります。しかし、この承認の事項は、事務的にいきなり何の事前連絡もなく、都道府県教育委員会がぽんと書類を送る、そういうようなことは、行政の常識として私はないと思う。必ず事前に十分協議をし、一応了解の点に達したところで書類手続をとり、そして承認をする、こういう意味で、その日数はほんとうの事務的な日数しかかかっておらない。これがこの法の今日までの運用であったと思いますが、いかがですか。
  227. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 お話のとおりだと思っております。
  228. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 京都の場合も、同様に事前のお話し合いはあり、進んでおったのではありませんか。
  229. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 京都の場合におきましては、あまり事前のお話し合いをするような状況ではなかったと思いますが、この点は、私、就任前のことにも関係いたしますので、政府委員からひとつ当時の経過を御説明いたさせます。
  230. 天城勲

    ○天城政府委員 京都府の教育長承認の最初の経過でございますけれども、昨年の十一月二十二日に、前任の教育長が会議の機会に訪れまして、月末で退任したいんだ、後任はこういう人であるという話を持ってまいりました。当時、私たちといたしまして、ちょうど内閣の更迭の時期がございまして、この問題については、普通の時期でないので、向こうで限られた三十日という日にちまでにということは処置ができかねるだろう、それからなお、京都の教育問題についていろいろ話があるので、これは少し検討をしなきゃならないし、三十日という日にちまでを限っての承認ということはむずかしいですということを最初に申し上げてございます。それから、二十七日に委員長が来まして、正式に後任者の話を持ってまいりました。そのときにも、三日後の三十日を要望してまいりましたけれども、そのときも同じように、そういう時間を限った形では処理ができないということを初めから申しております。
  231. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 正式の書類が提出されたのはいつですか。承認申請の必要書類が提出され、文部省が受理されたのはいつですか。
  232. 天城勲

    ○天城政府委員 昨年の十一月二十七日でございます。
  233. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 事前の協議の中でも、書類の種類を示したり、あるいは申請は発令をしたい日の一週間ないし十日前にはしてくださいよという指導をなさっており、その意味では、二十二日に大体お話があれば、三十日でも通常の場合だったら日があったわけです。しかし、二十五日に内閣の改造がありましたが、まあこれは確かに少しごたごたしたでしょう。それで多少おくれるという程度の話だったんじゃありませんか。そして、年を越すような心配はないというふうな話し合いが、だれがなさったか知りませんが、私は別にお役人をいじめたいと思いませんからあれですけれども、何かそういうことで、ごく平静に話は進んでおったのではありませんか。
  234. 天城勲

    ○天城政府委員 少し詳しく申し上げますが、十一月二十七日に委員長が来られて、教育長の承認の申請をされたわけでございますが、私たち、いかにも大臣更迭の最中でございまして、三十日までに処置することはできないから、まあ私、率直に申しまして、そのときに、書類をきょう付でいただくわけにいきませんから、もう少しよく事前の話をしてから書類はいただきますということを申して、私は受け取らなかったわけでございます。と申しますのは、正式書類提出後の問題がいろいろ出てまいりますものですから、きょうは受理しないということまで申したわけでございますが、その後、私と会談終わってから、どうしてもこれは置いていくということで、私どもの担当官が郵送されたと同じ意味で、じゃ預かっておきましょうというような受け取り方を最初からいたしておりまして、最初から非常に時間的に、また調査が必要なケースでございましたので、初めから慎重に処置をいたしたわけでございます。
  235. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 一週間以内とか三十日までには無理だから断わったんですか、ほかの理由があって断わったのですか。
  236. 天城勲

    ○天城政府委員 京都の教育問題につきましては、いろいろ問題もございますし、私たちもいろいろなことを聞いておりますものですから、事情を調査した上で、この問題を処置いたしたいという考えもございましたので、そのように申したわけでございます。
  237. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 それでは文部大臣に伺いますが、受け取る受け取らないはとにかく、一応郵送ということで受け取った、はたしてそういうことばで言ったかどうか私はわかりませんが、局長がそう言うんですから、一応それはそういうことにしておきましょう。しかし、その後どうして内閣改造が落ちつきましたのに、通常の手続によってこれの承認がなされなかったのか、その理由をお伺いしたいと思います。
  238. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 長谷川さんもすでに御承知のように、通常の場合におきましては、正式の書類が出て、そうしてものを決定するというまでに大体の了解がついておる問題でございます。今回の京都の場合につきましては、それだけの事前の話がなかったということであろうと私は思うのでありまして、そういう意味で、いままでは話のついている人の書類が来ておるから早く処理ができた、こういうことなのであります。その点について、京都の場合におきましてはいろいろ問題があるというようなことになったのではないかと思うのでありますが、しかし、その問題はすでに書類として出ておるのでありますから、それによって処理していかなければなりませんけれども、この京都の教育行政につきましては、従来からいろいろ問題もございました。したがって、どういう人が教育長におなりになるかということは、文部省の事務当局としましては相当な関心事であることは御了解をいただけるだろうと思うのであります。また、この方につきましては、私、就任後でございますけれども、いろいろな———を耳にしたのであります。したがって、私はそういういろいろな———を耳にするにつけましても、大事な人事でございますので、事務当局に慎重に検討するようにということで、検討を命じておるわけでございます。
  239. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 これは非常に重大なことなんです。どういう———だか知りませんが、———によってこういう人事案件、特に承認案件について延ばす、そういうことが普通許されていいんですか。これは法律が成立したときから、承認案件で教育長を任命する根本の意思はどこにあるかといえば、これはあくまで京都府民にあるのです。地方自治の本旨なんだ。戦後の民主的な教育制度の本旨なんだ。教育の根本の精神は、憲法や教育基本法に明々白々と書かれておる。この敗戦の痛手を踏み越えて祖国再建に立ち上がった国民の理想は明々白々になっているのです。それに基づいて、再び不当な権力に教育が左右されないようにというので、この教育の地方分権の制度というものが教育委員制度として確立し、そうして三十一年の改正はありましたけれども、この根本精神は決して変わってないと、繰り返し繰り返し清瀬文部大臣は説明をしておるのです。したがって、京都府の教育行政は、これは直接は京都府教育委員会が責任があるのです。その委員会というのは委員会の五人ではないのです。京都府民が背後についているのです。京都の知事、京都の議会という間接な形ではありますけれども、その信任を得て教育委員が任命されておりますから、その教育委員会の権能である教育長の任命ということも、その根源は京都府民の意思にあるのです。文部大臣が任命権を持っておると錯覚してはいけません。それはおわかりですね。その信頼すべき京都府教育委員会が満場一致で推薦した人物を、単なる———によって文部省が左右するというようなことが今後行なわれるのですか。これは承認権の乱用ですよ。これは絶対に看過できないことです。日本教育の根本のたてまえをくずすおそれがあります。明快な御答弁を願います。
  240. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 原則論としては、長谷川さんのおっしゃるとおりだと思います。ただ、教育長の任命について、御承知のように文部大臣の承認を得て任命すると、こう書いてある。この承認というのは、文部省をただ素通りすれば、それでよろしいとかいうようなものではないと私は思うのであります。やはり承認というものをあえてそこに入れましたのは、言いかえますれば、教育委員会と——もちろんイーニシアチブ教育委員にあるわけでありますけれども、その教育委員会と文部省との意思が合致しなければ、任命ができないというたてまえになっておるわけであります。そういうふうなことで、この規定は決して無意味な規定とは思わないのであります。   〔発言する者多し〕
  241. 井出一太郎

    ○井出委員長 静粛に願います。
  242. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 ———ということを申し上げましたが、単なる———ということで文部省がかれこれするということもございませんが、しかしながら、文部省としましては、地方と文部省との間に、常に円満で協調して、そして教育行政が中央・地方を通じて円滑に行なわれるということは、心から期待するところであります。  そういう意味におきまして、この教育長さんに関するいろいろな———とか———というふうなものがある。そのとおりに受け取れば(発言する者あり)ちょっと文部省としては承認についてはちゅうちょせざるを得ないというふうなことでもございますので、よく状況も調べた上で結論を下そうというので、私は慎重に検討するように、事務当局に命じたわけでございます。
  243. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 きょうは教育長のいろんな———について、いま大臣はおっしゃいました。これは非常に重大なことだと思います。承認事項というものが、今後全部そういう形で、何か———があれば、全部直接そういうふうな調査をする。聞くところによれば、本人に出頭を命じたとか、来いということを言ったそうでありますけれども、そういうようなことを今後こういう承認案件についておやりになることを正常な解釈とお考えになるのですか。これはたいへんなことですよ。
  244. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 従来、承認の問題でわざわざ出てこいとかなんとかいうふうなことを言った事例は、おそらくないだろうと思います。また、そういうことをしなくても、よくわかっている方が教育長に就任せられる、こういう事例が大部分じゃないかと私は思うのであります。したがって、これが常に行なわれることであるというふうにおとりになれば、そのようなことは考えていない。大体、いままで言ったようなことで済むはずのものでありますから、そういうことを考えておるわけじゃございませんけれども、今回の場合におきましては、事務当局が御本人に会ってお考えを伺ったり、とかくの———についての御説明を伺ったりというふうなことをしなければわからないというふうな気持ちから、調査の一方法として事務当局のほうで上京を求めた、こういうことでございます。
  245. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 いや、これは納得できません。私もその———というものは京都へ行っていろいろ調べてみました。週刊誌などもおもしろおかしく書きました。非常に誇張した書き方をしているようです。しかし、これは個人にはいろいろありましょう。人生の過程においてはいろいろありましょう。家庭の事情もありましょう。そういうこと以外に、あの岡田という人が教育長として不適格性があるというようなことは、どうして考えられましょう。しかし、私は、いまそういう問題をここで論じようとは思わない。そうじゃなくて、そういう承認の問題について、政府が直接その人間を調べなければ、いま申し上げたとおり、各都道府県の民意を代表しておるその委員会の厳とした教育長の任命権というものに対して、そういう直接の干渉ができるのか。私はめくら判とは言いません。書類において一通り審査をされることもいいでしょう。それはめくら判ではないです。これがたまたまその地方の昔の大名の子供で、精神薄弱の人だけれどもこれは大名の子供だから教育長にするなんという、そういう非常識なことは起こり得ないけれども、万一、そういうことがあれば、また別ですよ。しかし、少なくとも住民の信頼を得、住民の意思を代表している教育委員会が、そういうことをやるはずがないのです。それを、いまの岡田さんのごときは、全くそういう面から見れば、教育長として不適格だなんということは、どういったってないはずです。しかし、その人物論を私はここでやっては、かえって問題がそれる。そうじゃなくて、そういうふうに文部大臣が、文部省が直接本人を調べるというようなことですね。これが今後許されていいかどうか、ここはもう非常に重大なことで、いいかげんにこれは済まされないのです。もし今回あやまってそういう要求をしておるとしても、それが実際に行なわれなかったことは、まあ不幸中の幸いです。そういうことの今後絶対ないように、ここでこの法律のほんとうの精神、日本の戦後の民主的教育制度の運営の大道というものをりっぱに確立をしていただかなければ、私どもは国民に対して申しわけがない。ひとつ明快な御答弁を願います。
  246. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 本人と会ってはならないということもないはずだと私は思うのであります。本人にむしろいろいろお話を伺うほうが結論をつけるのにはよかろう、こういうことで、本人にお目にかかろうということを事務当局は言っておるわけであります。いろいろお話がありますから、そういう問題についても、直接御本人のお話を伺うということが、われわれがものを判断する上において適当ではないかという考えのもとに上京を求めたということで、われわれとしましては、むしろひとつそれに御協力をいただきたかった、こういう気がするのであります。
  247. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 まあいろいろな問題がここへ出てきておりますが、もう一ぺん私がいま明快にと申し上げたことに対して、明快でないのです。本人と会うということは、それは形を変えて、別にこの承認の一つ条件としてでない意味なら、それは会うこともいいでしょう。渡り合うこともいいでしょう。しかし、この承認事項を進める上に、会うことを一つの要件のごとくに扱ったとすれば、これは非常に重大だと言うんです。今後こういう承認人事というものについては、すべて首実検をすると、こういうことですか。
  248. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 さようなことは考えておりません。今回の場合において、お目にかかったほうがよろしい、こういう判断のもとに上京を求めたわけでございます。できることならば、教育長さんの人事を文部大臣の承認にかけておるというふうな関係もあるわけでありますので、これは決して文部省と教育委員会とが離れ離れ、別々、対立、こういうことでなくて、お互いに協調して円満にやっていく。その一つの大きな役割りを果たす人は、文部省からいえば教育長でございます。したがって、この人事については非常な関心を持っておる。ですから、結論を得るために、お目にかかった上で正しい結論を下したほうがよかろう、こういうことで、上京を求めたわけでございます。これを、常に、いかなる場合にも行なうとかいうふうなことを考えておるわけではございませんが、今回のケースにおいては、それが適当ではないかということでやったことであります。
  249. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 一般的ではない——じゃ今回の京都府教育長岡田氏の場合は、これはどうしても会わなければならない、会ったほうがいいじゃなくて、会わなければならないと、いまでもお考えですか。
  250. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私は、願わくば、会ってよくざっくばらんにお互いに話をし合う。教育長におなりになれば、一番近い人だと私ども考えておるのであります。そういう意味におきましても、会ってよくお互いに誤解があれば誤解を解く、こういうふうなことがあったほうがいいのではないかというので、やっておるわけでございます。
  251. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 私は会って話をすることを決して否定していないのです。特に教育長にすれば、いやおうなく会って話をするのですよ。それを、教育長の任命権に水をさすような形での、この首実検をしようとしたところを問題にしているのです。  それじゃ、今後国会の承認事項も一それは全部でなくてもいい、何かうわさがあったら、だれかにそういううわさが入ったら、こういうやり方をやるんですね。
  252. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 それは国会で御判断になることであろうと私は思うのです。この問題とその問題と同じようにお考え——国会でとうお考えになるかは別といたしまして、私どもそのようなことは考えておりません。
  253. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 この点は、私も国会で御判断なさると思いますから、今後この例は国会の人事案件承認のときには大きな問題になるであろうということをはっきりと申し上げておきます。  そこで、先般の同僚山中君の質問に対しましての文部大臣のお答えは、本人の———というようなこともちょこっと申されましたが、大部分の御答弁は、京都府教育委員会の行政に何かとかく問題があるやのことを答弁なさっていたと思いますが、その考えは変わりがありませんか。
  254. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 先ほども申し上げましたとおりに、私は文部省と、それから地方の教育委員会と、これがいたずらに対立するとか抗争するとかいうことは、最も好ましからざることだと思うのであります。お互いに協調し、お互いに円満な関係に立って、教育行政をともどもに進めていくということが一番望ましい姿だと思うのであります。その点に関して、私は率直に申し上げますと、従来、京都府の教育委員会と文部省との間は、必ずしも親密な関係でないというふうな気持ちがいたすのであります。また、現にいろいろ文部省の立場から御注文申し上げることについても、各府県においては、大体それに従ってお考えをいただいておるけれども、京都だけは御協力が願えないというふうな関係もちょいちょいあるわけでございます。こういう関係は、やはりお互いに反省すべきところは反省して、直していかなければならぬ問題だと思うのであります。そういう意味から申しますと、円満にいっております教育委員会と、比較的疎遠になっておる教育委員会というふうなことを考えますときに、この教育委員長の人事というものにつきましては、私どもとしましては、いわゆる事務当局からいえば、ほんとうに話し相手になってもらえる委員長ということでありますので、将来の協調、将来の円満な関係を結び得る人にぜひなってもらいたいと思うのであります。これが初めからけんか腰というふうなことでは、とうていわれわれとしても承認しがたいということにもなるわけであります。お互いにやっていけるということが、私どもとしましてはぜひほしいのであります。  そういう意味から申しましても、局長あたりは、直接まだその方にお目にかかったこともないということでございますので、お話し合いを願って、お互いに誤解があれば誤解を解いていく、協調できない点があれば協調できない点を明らかにしていくというふうなことで、はっきりしたところで最後の判断を下せばそれでよろしいのじゃないか。したがって、私としましては、この教育長の承認問題についてはまだ結論に到達しておらないのであります。その道行きの問題でございます。そういうふうにひとつ御了解を願って、あまりしゃちほこばらずに、気軽に出てきてもらって、会っていただいたらいいのじゃないかというぐらいに実は私は思っておるのでありますが、その点が思うようにまかせないので判断も下しかねておるというのが今日の状況でございます。
  255. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 いま大臣が言われたように、文部省と都道府県教育委員会とが何かにつけて円満に話し合いができるということは、それはけっこうなことでしょう。それがいけないなどとは申しません。しかし、さればといって、文部省の言うことには何でも唯々諾々と、地方の実情やそういうことはもう関係なしに、住民のほうに目を向けるのではなくて、権力を持つ文部省のほうにだけただ目を向けて、唯々諾々とするところが円満な教育委員会で、それに何か自主性を発揮すれば、それは文部省と円満にいかない教育委員会だ、こういうようなことでおっしゃったのでは万々一ないと思いますが、そうじゃないでしょうね、いかがですか。
  256. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 各省大臣の中で、一番権力を持たないのは私は文部大臣だと思っております。決してそういう権力的な意識でかれこれ言っておるわけじゃございません。ただ中央・地方を通じましてお互いに協力するということが日本教育行政を進めていく上において必要だ、こういう考え方のもとにいろいろものを考えているわけであります。
  257. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 さっき大臣は、たいへん重大なことを言われましたが、円満に話し合いができないような委員会の申請では承認できない。ちょっとそうおっしゃったのです。これは重大ですよ。そうですか。
  258. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 円満に協調できるような人が教育長であってほしいのであります。そうでなければ、教育行政がうまく進まないということをおそれておるわけでございます。
  259. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 そうすると、私が念を押したことは修正されたのですね。承認できないとあなたはおっしゃったのです。望ましいということと違うですよ。
  260. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 これはそのときそのときのケースによると私は思うのであります。文部大臣として承認をいたします以上は、やはりその承認には責任を持たなくちゃなりません。そういう意味で私は、文部大臣が、もし責任の持てないような人を承認するわけにはまいらない、こういうことになってくるわけであります。できることならそういうしゃちほこばった話でなくて、お互いに了解の上で承認ができれば一番しあわせだと思っておるのであります。
  261. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 それでは、私先般京都へ行って京都府の教育委員会の人々ともいろいろ話をしてきました。そちら側の言い分もいろいろ聞いてきましたが、その印象では、これは確かに、率直に申して、京都の教育委員会は蜷川革新府政下の教育委員会です。そうして文部省のいろいろな指導を一から十まで全部そのとおりすぐストレートに聞いていない部分もあるでしょう。しかし、少なくとも日本教育法規に違反するようなことは何一つやっていない。私から言わしめれば、憲法や教育基本法には非常に忠実にやっておると思う。それはどこの教育委員会にも、人間のやっていることですから、完全ということはないでしょう。ないでしょうけれども、文部省の言うとおり何でもやらないから、これを全面的に非難するというようなことは当たらないと思うのです。しかし、快く思っていない方々が、文部省の全部とは申しません、あるいはどこかにいたかもしれません、特に自民党としては、非常に苦々しく思われていたということも率直な事実でしょう。ところが、この問題の経過は、さっき申し上げたとおり、十一月一ばいで谷口前教育長がやめるということが明らかになって、そこで後任は次長を昇格させるということに方針をきめて、事前の相談に来た。そのときは、内閣改造の時期なので、ちょっと三十日には間に合わないかもしれませんよという程度の話であった。まあ、局長の話に上れば、個人の———もあったり、あるいは教育委員会と必ずしも全面的にぴったりいっていなかったから、少し調査するというようなこともあるいは少しあったかもしれませんけれども、少なくとも年を越すようなことはないでしょうねという念入れに対して、はい、幾ら延びてもそんなことはありませんよということも、事務当局同士では話し合われたと伺っております。ところが、十二日の二十日、あるいは二十七日ごろに、自民党にはいろいろ御会合があって、そこに文部省の事務当局が常に呼ばれる、その辺からハッパがかかって問題が急転してきた。これが私は真相であろうと思うのです。そこに私は、文部大臣のこれは職権乱用だということを責めることも、これは今後のことを考えると、きちっとしておかなければならないと思いますが、それ以上に、こういう人事に直接党が介入してくるというようなことは、これはゆゆしいことである。これは私が初めて得た印象ではないのです。もう当時の京都の新聞、あるいは全国紙でも、みんなそれをちゃんと書いていすすよ。読み上げてもいいけれども、文部省に対して待ったがかかった。灘尾文部大臣が待ったを九けた。ところが、その背後には、自民党の中の右翼文教グループがいる。党の中の何々委員会、何々委員会、あえて私は申しません。そういうふうに新聞に書いてあるのですよ。そういうふうなことが真相であろう。ですから、文部省の−大臣はわかりませんが、おそらくは大臣も含めて、この問題は、事務当局は非常に当惑をされておるというのがむしろ真相ではないかと私は思っている。しかし、さればといって、このままこれを見のがすわけにはどうしてもいかないのです。大臣は、いま考慮中なんだと、別に承認しないともするとも言っていないんだというふうに、最終的には濁しておりますけれども、私は、こういうことで地方教育行政が、とにかく教育長なしで進む、教育長の職務代行で実際には困らないかもしれませんけれども、そういう不正常な形をこのまま残すということは、大臣がさっきおっしゃったように、決して好ましいことではない。このことによって、京都府教育委員会と文部省との間に——本来は敵、味方の対立があるわけではない、ただ、おそらく言われるところは、この間も文部大臣がおっしゃったように、勤評の問題、管理規則の問題、勤務条例の問題、そういうようなことをおっしゃっているのだと思います。しかし、これでも決して違法なことをやっているわけでない。むしろ京都府民は——東京において勤評問題が大騒ぎになったとき、私は当事者の一人です。あれだけの教職員や父母、国民がエネルギーを使ってこの問題に非常に苦労した。ああいう混乱を起こさなかっただけでも、京都府民はむしろ感謝をしているのではないか。だからこそ、蜷川府政というものが京都府民の支持を得ているのではないか。京都府教育委員会の教育行政というものが、京都府民の支持を得ているのではないかと思うのですよ。それを、何も塗りつぶさなければ気が済まない、そういうことではなく、文部当局はもっとおおらかに  これは憲法や教育基本法等、その他教育諸法規にはずれるような違法があってくれば、これはきちっと助言、指導するのが文部大臣の職責です。しかし、これも助言、指導の域を逸脱してはならないと明記されているのです。ですから、この承認ということがたまたまあったことによって、しかも京都府教育委員会のいままでやっていたことと文部省の考えとぴったりすべてが一致しないからといって、地方の自主性をじゅうりんし、しかも教育委員会が任命権を持っているそのことに対して、その教育委員会の責任で承認を求めてきたその人間に対して——教育長は教育委員会の指揮監督のもとに教育行政を執行する立場じゃありませんか。もし百歩を譲っても、いろいろ注文つければ、これは教育委員会に注文をおつけになることなんです。あるいは、教育長に任命された上に、事務的には、教育長を招集していろいろ御伝達をなさることもあるでしょう。御相談をなさることもあるでしょう。これは教育長になさってからやっても十分間に合うことなんです。それを、こういう御殿女中がやるような、しかも党の一部からの圧力で、正常に進んできたものがゆがめられるということは、私はとうてい許し得ないと思うのです。しかし、おそらく私がここで幾ら言ってみても、文部大臣は、党の圧力に屈しましたとは言明できないでしょう。ですから、私はその答弁をあえて求めません。求めませんけれども、こういうふうな質問を何とかしないで済むように、円満に解決してほしいということを私は大臣にも個人的には申し上げました。私も、今後ともこれを荒立てようとは思っていないのです。しかし、教育の中央、地方の関係が次第に国家の統制が強められるという、それが一つの具体的な例になり、前例になっていくということをおそれますから、私はここで強くこのことを問題にしておるのです。ですから、私はもうこれでこの問題は一応打ち切りますけれども、大臣からもう一ぺん、ひとつ誠意がある、しかも今後の処置についての見通しを含めて御答弁をいただきたいと思います。
  262. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 先ほど申し上げましたとおりに、まだこの問題について結論は出ておらないのであります。慎重な検討を続けておるという状態でございます。  今後の見通しということでございますが、私としましては、もちろんなるべく早く結論を得たいものと思っておりますが、それについては、変な見方でお考えにならないで、京都の委員会の方々も、われわれの気持に対して、御協力をいただきたいものだ、せっかく来ていただきたいと言いましても、いつも拒否せられておる、そういうふうなことでは、どうも水くさい話ではないかという気もするのであります。そうではなくて、われわれのやることに間違いがあれば、もちろん私どもは反省するにやぶさかではございませんけれども、なるべくスムーズにものが運ぶようにありたいと思いますが、現状はまさしくこの承認権の問題をめぐりまして、いかにも京都府の委員会と私どもの間に隔たりがあり過ぎるというような気がしてならないのであります。  いずれにしましても、慎重に検討いたしまして、結論はなるべく早く出したい、こうは思っておりますけれども、どうもなかなか結論を出しにくい点が御承知のようにあるわけでございますので、そこに私ども悩んでいるようなわけでございます。また、これは先ほどのお話にもありましたように、何もいつもこういうやり方でやるのだというふうな原則を立てるつもりは毛頭ございません。そういう事例はほとんどいままでなかったことであります。そういうことでありますから、要は、私どもとしましては、中央、地方が常に協調を保ちながら——決して私どもは地方の教育行政の自主性を軽視する、こういうつもりはございませんけれども、一面において、政府としましては、全体の教育行政の伸展をはかっていかなければならぬという立場もございますので、われわれが申し上げることについても理解を持って御協力いただきたい、こういう気持ちでいるわけでございます。  この教育長の問題につきましても、私どもの頭を使っております点は、今後、京都府と文部省との間が、この教育長の力によりまして円満に、かつ協調的なものが進むようになれば非常にしあわせだと思うのでありますが、それにしましては、いろいろな批評もあり、批判もあることでありますから、そういう問題について釈然として私どもが承認ができるという事態であれば幸いである、このような考え方をいたしているわけでございます。どうぞ御了承いただきたいと思います。
  263. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 練達の大臣ですから、できるだけこれを冷静な行政常識に従って処置することを望みますが、ただ、いまのお答えの中にも、どうしても私は引っかかるものがあるので、もう一度お尋ねしますが、これは京都府教育委員会が、委員会の権能において大臣に承認を求めてきた事項ですね。ですから、もし疑義があれば、筋として教育委員会に、もし何ならいろいろただされるのが筋です。それを、本人をどうこうということにこだわるのは、そのほうが私はどうもおかしいと思うのです。また、将来円満な連絡をとるなら、教育長と正式になった方には、教育会議も招集されるでありましょう。ですから、その本人にこだわるということに、私も非常にひっかかりますので、この点については、あくまで申請者が責任者であるということを十分おわきまえになった上で処置されるように強く私は要望し、この点について大臣にもう一度念を押しておきたいのです。
  264. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 もちろん任命権を持っていらっしゃるのは教育委員会でございます。したがって、また承認するとかしないとかいう問題の話し相手は、もちろん教育委員会であることも当然のことでございます。ただ問題は、いかなる人物であるか、いかなる人を承認するかというその個人にかかわる問題でございます。したがって、私どもの問題としているのは、その個人が実は現在は問題なんでございます。それによりまして、結論を得ましたときに、承認するとかしないとかいうことは、もちろん教育委員会に対してわれわれはお話を申し上げる、こういうものであることは当然のことであります。  それから、先ほど来、党の圧力云々というふうなこともございました。もちろん自由民主党の中にも外にもいろいろの声はございます。しかし、それによって私の承認の仕事というものが左右せらるべき性質のものではないと私は思います。これはあくまでも文部省独自の見解において、文部大臣の責任においてなすべきことであると考えておりますので、そのようなことについては御懸念のないようにお願いしたいと思います。
  265. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 私は最後に、この問題に関して三月六日、毎日の「教育の森」、三月七日の同じく「教育の森」に、この問題を端的に取り上げて書いてありますね。いま、大臣は決して不当なそういう党やその他外からのあれには左右されないとおっしゃいました。大臣はそうかもしれませんけれども、ここにはずいぶん情けないことが書いてあるんですよ。読みましょうか。——まあ、それじゃ読むとえげつなくなるといけませんから、よしましょう。  それでは、あと時間があまりありませんから、もう一つだけ質問を申し上げます。  それは最近、先ほど申し上げたとおり、佐藤内閣の姿勢全体が非常に右寄りだといわれております。これは自民党内にも、そういう批判を持っている方がいらっしゃるそうであります。そこで、それと関連して教育の問題、特に重要なのは、教育内容の問題であります。この内容の問題についても、どうも最近、憲法や教育基本法の精神から遠ざかろう、遠ざかろうとしているのが、文部省の指向している教育の内容への態度ではないか、こういうことが感ぜられるわけです。具体的に申し上げますと、この間、と申しましても昨年でありますが、参議院の文教委員会で、文部次官をつとめられて参議院に出られた内藤誉三郎さんがいろいろおっしゃっているんですが、この中に出てくる思想は、私は驚くべき考え方だと思うんです。歴史教育について、剱木文部大臣質問をなさっている。一歴史教育の問題についてお尋ねをしたいと思います。」「特に、私は、神話の中で、私どもが子どものときに習った神武天皇の御東征とか、あるいは素戔鳴尊の八岐大蛇とか、大国主命の白兎とか、日本武尊の草薙剣とか、たいへん心あたたまるような神話がございました。私はそういう意味で神話をぜひ大切にしていただきたい。」この辺はまだよろしいと思います、まだまだ。その次へいきますと、「特に戦争の取り扱い、ある意味で歴史は戦争の継続でもあると思います。その戦争の歴史というものが戦後の教科書ではたいへんゆがめられておると思います」こういう把握であります。さらにまた「天皇は内閣総理大臣および最高裁判所長官を任命する権限を持ち、内閣の助言と承認に基づくのではありますが、国会を召集し、解散する権限もおありになる。さらに外交使節の接受もあるわけでして、私はその意味で立法、行政、司法の三権の上に君臨しているということが言えるのではないだろうか。」さらに「私は天皇の地位というものは歴史の中で解明しておくことが必要じゃないかと思う。時に先ほどあげた神話の中にも、「豊葦原瑞穂国、なんじ皇孫ゆいて治めよ、皇祚の栄えまさんこと天地とともにきわまりなかるべし」という神話があるわけなんです。これは日本書紀や古事記に出ております二〇〇〇年来わが国国民の不動の信念にささえられて、今日の憲法においても日本国および日本国民統合の象徴という形で存続されておることは、私はまことに驚くべきことだと思うのです。このことは子どもたちによく教えなければならぬと思うし、その意味で神話の中に今度神勅というようなものもぜひ私は含めていただきたい」こういうことを言っておるのです。国会の文教委員会の質問ですよ、これが。そうしてこれが昨年の五月のことです。ところが、そのあとで佐藤総理大臣は何と言ったか。佐藤総理大臣は五月二十三日にテレビの座談会でこう言っているのです。「義務教育の教科書は二年たつと無償になる。」いよいよこの四十三年から無償になりますね。「そのときは、教育内容を変えなくてはならない。昔のものを取り入れて、正しい地理、歴史を教えなくてはならない。」これは内藤さんの考えをそっくり総理大臣がまた裏づけているんですね。私はなぜこういう発言をすることを重視するかというと、これは個人の単なる思想の問題ではないのです。こういう論議が実は重大な影響を与えている。つまり教育課程審議会といういわゆる教育内容を審議して答申する機関ですね、これに非常な方向性と圧力をかけている。また、教科書会社の教科書執筆に対して非常な影響を与えていることは、これは厳然たる事実です。こういう行き方が進んでおることに対しまして、まだ事例をあげれば実にたくさんあります。昨年の十月三十日に答申された小学校の教育課程の答申、あるいはまた本年の一月二十四日に答申された中学校の教育課程の答申の内容、こういうところを見ますと、たとえば中学校のを見ましても、特に顕著なのは「中学校教育のねらい」として、「教育基本法および学校教育法の示すところに基づき」と言っていながら、その法律にあるところの「平和的な国家」という「平和的」を削って「国家および社会の形成者として」というふうに、わざおざこういう大事な精神のところの文字を落として、平和ということばを極力この答申の中から落としている。そうすると、教科書会社は、この次は平和ということばを使わない教科書をつくれば、これは検定に通るんだな、こういうことになっていくのです。こういうことがあちらこちらにありまして、私は、時間がありませんから、これらは文教委員会等で十分掘り下げて国民の前に明らかにしていきたいと思います。  そこで伺いますのは、こういう重要な教育内容の改変について答申をする教育課程審議会その他の教育関係審議会全般にもこれは言えることでありますが、この構成がきわめて不明朗であり、非民主的であり、しかむ、この日本をこれからしょって立つ若い青少年の教育の内容が、国民をつんぼさじきに置き、教育を直接担当している教師の意見をつんぼさじきに置き、一部の秘密非公開で行なわれる教育課程審議会というようなところで、いつの間にか政府権力の意のままにこれをオウム返しに答申するような形で内容づけがされ、それが学習指導要領にそのまま引き写され、教科書の編集に移されていくというこの姿の中に、私は国民の知らないうちに非常に憲法や教育基本法の精神から遠のいて、非常に国家主義的、もう一歩進めれば軍国主義的な教育方向の内容がじわりじわりとにじみ出つつある。このことに対して、私は特にいま質問したいのは、この教育課程審議会のいまのあり方は、その構成においても、その運営においても、まことに非民主的である。したがって、私は次のことを資料を要求をして答弁を求め……。
  266. 井出一太郎

    ○井出委員長 長谷川君、時間が経過しております。
  267. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 私の質問を終わろうと思いますが、この教育課程審議会の構成、それからその委員の出席回数、それから議事録、その委員会に文部省側から出した資料、それらを全部明らかに資料として出してください。それをもとにして、今後文教委員会においてこの問題は徹底的に深めていきたいと思います。大臣、いかがですか。
  268. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 各種の審議会の委員の氏名、出席回数等につきましては、正式の御要求があれば、調査の上で提出いたしたいと存じます。しかし、議事録等審議内容につきましては、議事録を作成しておる場合と、また作成していない場合とがございます。また、審議会におけるいろいろな立場からの自由な発言を期待する、こういう趣旨から、公表することを前提としてはおらないのであります。この点はひとつ差し控えさしていただきたいと存じます。
  269. 井出一太郎

    ○井出委員長 時間が来ております。
  270. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 まことにこれはおかしいことです、国民教育の内容を議するのに、秘密にしておかないと——言えないとは何です、それは。そんなことは聞き捨てなりませんよ。とんでもないことです。絶対納得できない。
  271. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 いろいろなことを専門家の方々が集まられまして議論をせられる場合に、それが常に発表せられるということになりますと、思うような議論もできないといううらみもありますので、非公開というたてまえのもとにいろいろな議論をしてもらっておる、こういうものについては、公表することはひとつ差し控えさしていただきたいと思います。
  272. 井出一太郎

    ○井出委員長 時間です。
  273. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 議事録を出さないという点は、これは私は納得できません。議事録出しますか。
  274. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 速記をつけたものもありますし、つけないものもあるのでありまして、しかもその内容については、だれがどう言った、かれがこう言ったというようなことが一々出ていくというようなことになりますと、自由な学問上の議論もやりにくい、こういうこともあろうと思いますので、公表しないことをたてまえといたしております。ただ御承知のように、まとまりましたものについては、中間まとめというような方式をもって世間に公表し、御批判を仰いでおるわけであります。その点はひとつ御了承いただきたいと思います。
  275. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 納得できませんが、協力をしまして、あとの問題は文教委員会のほうでまた深めます。  ただ、先ほど大臣の発言中、教育長予定者の人物批評中、不穏当の言辞がありましたから、これはお取り消し願いたい。
  276. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 御要求の御趣旨がよくわからないのでありますが、もし不穏当な点がありましたら、もちろん取り消すにやぶさかじゃございませんけれども、どういう点がどうなのかよくわかりませんので、委員長においてお取り調べの上で適当な御処置を願いたいと思います。
  277. 井出一太郎

    ○井出委員長 ただいまお聞き及びのとおり、委員長におまかせがありましたから、会議録を調べました上で措置いたします。  これにて長谷川君の質疑は終了いたしました。  次に伊藤惣助丸君。
  278. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 去る昨年の十一月の日米共同声明において、小笠原諸島が返還に決定したわけであります。同様の立場にある沖繩がいまだに返還のめどがつかないその現状を忘れることはできませんが、小笠原諸島の返還が決定したことは、小笠原島民はもとより、国民の大きな喜びの一つであります。しかし、小笠原島民の悲願はかなったが、手放しで喜ぶわけにはまいりません。戦後二十数年もの長い間米国側の手で管理されたその小笠原は、島全体が荒れ果て、復興には多額の資金と労力が必要とされているからであります。  そこで外務大臣に伺いたい。昨年十二月三木外務大臣とジョンソン大使との会談において、返還協定の大筋について合意に達した。さらに午前中の答弁においては、今月中に調印の運びである、そのように答弁されておりますが、その概要について伺いたいと思います。
  279. 三木武夫

    三木国務大臣 小笠原の返還協定は、いま日米間で折衝を続けておりますが、三月中には調印に持っていきたいと考えておることは、午前中に答弁をいたしたとおりでございます。この小笠原の返還は、奄美大島の返還の場合のごとく、平和条約第三条におけるアメリカの持っておる施政権、これを全部日本に受け継ぐわけであります。したがって、返還協定の中心になることは、いま申したような一切のアメリカの持っておる施政権上の権利日本が受け継ぐ、これが中心になるわけであります。そのほかには、小笠原の返還をすべき地域、いわゆる嬬婦岩の南から南方諸島あるいは沖の鳥島、あの南のほうにある島を含めた地域、こういう地域が返還の対象になって、そして日米安保条約、これが本土と一緒になるわけでありますから引き継がれる。そのほかには、従来の法律関係権利義務の関係、こういうふうな問題が協定の中に織り込まれるので、きわめて簡単な返還協定になるものと考えております。まだ交渉途中でありますから、その協定の内容について詳しく申し上げられませんが、そういうことが骨子になっておるものでございます。
  280. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 その返還の内容については、調印前であるので詳しくは言えない、こう答弁ございましたが、国民は一日も早くその返還の内容について、また返還から国会批准、そしてそのあとの日米間の最後の実際の返還の時期、こういうことについて関心を持っております。返還から実際の返還に至るまでのプログラム、そういう点について伺います。
  281. 三木武夫

    三木国務大臣 国会批准を得られますならば、ある期間を置いて実際に日本に返還してくるわけであります。現在総理府において返還後の諸問題、たくさん問題がございますし、各省にもまたがっておる問題が多いのでございます。いまジャングルであります。住民が住めるような小笠原にしなければならぬわけですから、そこで総理府の中で、それまでにどういう暫定的な措置を講じていくか、あるいは恒久的にはどういう対策が必要であるかということを検討しておるし、また法律も、いろんな暫定措置に対しては法律案も必要でございますので、そういうものも検討いたしておるので、総務長官が来れば、もう少し詳しくお答えができると思いますが、そういうことで現在いろんな対策を進めておる次第でございます。私でなくして、総務長官のほうがもっと内容は……。
  282. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 実際のこちらが小笠原に渡っていいという、その期間を言っていただきたいわけです。内容についてはだんだんと総務長官等に聞いてまいりますので、そのプログラムでございますね。要するに、国会には大体いつごろ提出されるのか。国会の承認を経て、日米において批准される。まあ、批准後一カ月後にその実際の返還のめどがつく、こういうふうに承知しているわけですが、いわゆるその実際の返還時期を伺っているわけです。
  283. 三木武夫

    三木国務大臣 現在の予定では、三月中に調印ができるようにもっていきたい。直ちに国会に提出をいたします。国会の御承認を受けるのが、これはまあ国会のことでありますから、どれくらいの期間がかかるかよくわかりませんが、国会で承認を受ければ、普通ならば一カ月とかあるいはある期間を置いて、そして返還が具体化する。そうなれば日本領土になるわけですから、それは旅行することもできるわけですが、輸送機関の問題もありますから、いつでも行けることになるということと実際に行けるということの間には、いろんな輸送機関なども考えなきゃならぬし、また現地に行っても宿泊の施設もありませんし、そういう実際問題の制約は受けるけれども、たてまえとすれば、日本本土に返ってくるのですから、いつでも行けるというたてまえでございます。
  284. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そうしますと、総務長官に伺いたいのですが、大体いま三木外務大臣お話に上りますと、六月ごろに実際の返還がなるのではないかと思います。実際いままでに政府調査団が行ってきております。そこで第二次調査団の派遣が現在予定されておるようでありますが、いつごろ第二次調査団を派遣するのか、伺っておきたいと思います。
  285. 田中龍夫

    田中国務大臣 第一次調査団各省庁から一応行ったにとどまっておりまして、さらに担当担当の省におきまして具体的な計画を立てなければたりませんから、できる限り早く出さなければならぬ、かように考えておる次第でございます。
  286. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 ただいま総務長官からお話がありましたが、この小笠原復興については、それぞれの各省がばらばらに調査する、またはばらばらに計画を立てる、ここに私は問題があるのではないかと思います。そこで、現在総理府小笠原準備室があり、さらに計画は自治省が立て、そして総合調整を総理府がやる。すでに二月の二十三日の閣議において決定したようでありますが、私はここで、それらの各省がばらばらに調査をする、そしてその結果それぞれの復興計画を立てるというではなくして、それぞれの省がたとえば仮称小笠原開発協議会というようなものをつくって、そこで総合調整をやりながら、そしてその協議会の計画に基づいて調査団を派遣し、そして小笠原復興開発計画を立てる、こういうふうに一元化をはかるべきであると思いますが、総務長官考えを伺っておきたいと思います。
  287. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えをいたします。  段取りを一応申し上げたいと存じます。ただいま外務大臣が言われました協定の成立発効、そのときをもちまして暫定法がすぐ効力を発効するように、国内法の整備をただいま急いでおります。これは協定調印ができましたならば、すぐ私のほうから国会のほうに暫定法の御審議をお願いをいたすわけでございます。そしてそれを効力の発効までに成立させておきまして、そして効力の発効と同時に、今度は日本の国内の暫定法が実施に移る、こういうように相なります。それから、ただいま各省ばらばらとおっしゃいましたが、そうではございませんので、小笠原復帰準備対策本部はこれは総理府に厳としてございまするし、また連日連夜各省庁から非常な努力をして、ただいま法案の作成、あるいはまた今後の措置等を検討をいたしておる次第でございます。そうして復帰暫定法ができましても、復興までの間にはやはり相当調査も必要でございますので、東京都に帰属いたしますから、そういう意味で復興法自治省が担当いたしますけれども、その間の相当湖間というものは慎重に検討し、計画的に出ていかなければ相ならぬ、かように考えておる次第でございます。
  288. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 第二次調査団の出発をいつごろに予定されておるか、その点も御答弁をお願いいたします。
  289. 田中龍夫

    田中国務大臣 第二次調査団の具体的な問題は、担当の責任者から申し上げさせていただきます。
  290. 山野幸吉

    ○山野政府委員 小笠原が返還になりますまでの間におきましては、さしあたりむしろ専門的な分野の調査をすべきではないかと思っております。おそらく返還になりまして、自治省が所管されていろいろな事業を計画される場合には、また総合的な調査団も必要となるかと思いますが、私どもとしましては、さしあたり返還直後のこの島民生活状態その他を確保するための専門的な調査をいろいろやってみたい、こう考えておるわけであります。
  291. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いつなんですか。いつごろに考えておるのですか。
  292. 山野幸吉

    ○山野政府委員 まだ期日までははっきりしておりませんが、必要とする調査の要望を各省から現在とっております。それが出そろいましてから、期日を調整したいと考えております。
  293. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 この第二次の技術調査団等については、私は即刻やるべきだ、このように思います。少なくとも実質返還の六月くらいまでにはむしろ調べ上げて、そして実際の問題の結論をそこで出して次の復興開発を手がける、このようにすべきが旧島民または欧米系住民に対する政府の誠意じゃないかと私は思います。その点についての総務長官考えを伺いたいと思います。
  294. 田中龍夫

    田中国務大臣 全く御意見のとおりに考えております。
  295. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 きまってないから答弁ができないのだと私は思いますが、どうか早急に計画を立て、そして第二次調査団の派遣を要望いたします。  私は去る二月七日、その小笠原調査に行ってまいりました。この目で私は硫黄島、そして母島、父島を見てまいりました。以後その調査をした結果に基づいて各省大臣からその復興開発の概要、または計画等を伺っていきたいと思います。  現在父島には欧米系住民が四十四世帯、二百七名が住んでおります。またそこには米沿岸警備隊また海軍、そういった人たちが数十人住んでおります。現在はそのアメリカ軍が中心となって、軍政下にあります。そこで、私は軍人また島民と親しく懇談をしてきたわけでありますが、この小笠原に参りまして感じましたことは、日米共同声明によって決定した小笠原のあの島は、今後の沖繩の返還方式にもなる。いままで奄美大島が返還され、その奄美方式小笠原に適用される。さらに今度来たるべき沖繩返還については、その奄美方式または小笠原方式がそのまま沖繩返還の方式になるという面から、私は真剣にその返還について検討もし、また考えていかなければならない。さらに、島民と懇談し、数々の問題を私は調べてまいりました。  そこで外務大臣に伺いたいわけでありますが、あの父島におります米海軍、また気象観測等をやっております沿岸警備隊については、私は当然撤去すべきである、このように思うわけでありますが、その計画について伺っておきたいと思います。
  296. 三木武夫

    三木国務大臣 これは安保条約の適用範囲内に小原笠が当然なるわけであります。アメリカの使うべき区域、施設などについては日米合同委員会で今後検討をいたすということになるわけでございます。
  297. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 続けて外務大臣に伺いたい。  硫黄島、さらに南鳥島等においても米海軍また空軍、沿岸警備隊が正、六十人また二、三十人と駐留しております。確かに安保条約による防衛、これは自民党の政策でありましょうけれども、その安保条約の中には、沿岸警備隊なんというのはないと思うわけです。その沿岸警備隊との関係についてでありますが、いままでの沿岸警備隊は引き続きそれらの気象観測または——現在沖繩や南鳥島には東京タワーよりも高い四百メートルのロラン局というのがありまして、一説には太平洋地域の艦艇に電波を発信する、またはポラリス潜水艦等に対する発信基地とも言われておるようでありますが、その沿岸警備隊との関係をどのようにするのか伺っておきたいと思います。
  298. 三木武夫

    三木国務大臣 このアメリカの基地に対しては、撤去するのもありましょうし、引き続いてアメリカが基地使用を求める場合もあろうと思います。引き続いてというのは、やはり沿岸警備のことなどは日本だけでないわけですから、アメリカ自身がそういう極東の安全のために必要な場合も起こってきて、引き続いてそういう警備隊の駐留を希望する場合も私はあり得ると思います。この点はアメリカが今後小笠原に関して、日本に−直ちに日本の自衛隊で引き受けるものもございましょうし、あるいは引き受けられぬものもあるし、またアメリカ希望するものもあるでしょうし、これは日米合同委員会できめることになる予定でございます。
  299. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 アメリカ領土アメリカの海域であれば、当然沿岸警備隊の警備の範囲になります。しかし第三条の発効によりさらに日本に返還されれば、当然これはアメリカの海域ではなくなるわけです。引き続き沿岸警備隊がそこにいるというならば、どこの条約また安全保障の中のどこできめているのか伺いたいと思います。
  300. 三木武夫

    三木国務大臣 御承知のように日米安保条約日本内地といいますか日本の国土だけの防衛ということだけではなくて、日本の安全及び極東の平和と安全ということが日米安全保障条約の基礎になっておりますから、日本そのものの国土だけという解釈で基地を考えるというわけにはまいらぬことは御承知のとおりでございます。
  301. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いままではアメリカの海域であり、さらに米国にとっては、極東の戦略上からいっても太平洋が自分の湖のような関係にあったかもしれません。しかし返還がきまり日本領土になった場合には、沿岸警備隊の派遣は安保条約でもない。日米合同委員会等とか、いま申されましたが、いままでにそれではそういうことがあったかどうか。また、安保条約、安保条約ということをよく言われますが、どこにきまっているのか、その点をはっきりしてもらいたいと思います。
  302. 三木武夫

    三木国務大臣 いままではアメリカ施政権を持っておったわけですが、今度は日本施政権を持つわけでありますので、これはいままでに話はむろんなかった。これから日米合同委員会の議題になるということでございます。
  303. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それでは、安保条約の中に沿岸警備隊も含む、それらを含めて日本との防衛または日本との安保条約というふうになるわけでございますか。
  304. 三木武夫

    三木国務大臣 安保条約の陸、海、空という中には、そういう沿岸警備隊も含んでおるとわれわれは解釈をいたすものでございます。
  305. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それは非常におかしなことですね。陸軍、海軍、空軍、その中に沿岸警備隊を含む、これは米側がそうおっしゃっているのですか。
  306. 三木武夫

    三木国務大臣 沿岸警備の任務を持つ沿岸警備隊も米海軍の中に含んでおるという意味でございます。
  307. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それは外務大臣、問題です。沿岸警備隊は、日本でいうなら運輸省の管轄じゃありませんか。日本でいうならば海上保安庁の管轄ですよ。そんなことを言ってごまかしちゃだめですよ。その点ちゃんとここにあるというものがあれば、証拠を示してください。
  308. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 米国のコーストガードは、米国の国内法上は別の所属かと存じますが、これは米軍の軍律に服しておるものでありまして、安保条約第六条に申します陸、海、空三軍と申す場合には、これを含めて考えております。
  309. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 これは非常に大事な問題です。ですから、どうか三木さん、北米局長じゃなくて、あなたからいまのことを、これは将来大きな問題になりますので、はっきりと伺っておきたいと思います。
  310. 三木武夫

    三木国務大臣 局長答弁いたしましたように、この海軍の中にそういう機能を持つ沿岸警備の任務もある部隊を含む、さように解釈いたします。
  311. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それでは陸、海、空の中で、たとえば日本以外のところで実際そのような組織のもとにあるようなところをあげてください。
  312. 三木武夫

    三木国務大臣 これは防衛庁がおったら、もっと詳しいのかもしれませんが、いま政府委員からこの点について問い合わせましたら、北海道にも沿岸警備隊がおる、ほかにもおると、沿岸警備隊は現にあるということでございます。地位協定によって沿岸警備隊がいるということでございます。
  313. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私は、それらの沿岸警備隊の使命は、あくまでも自国の沿岸を警備する、それが使命であり、また安保条約とはそのような拡大解釈というものはないと思う。アメリカの陸、海、空軍のほかに、海兵隊等は含まれるでしょうけれども、沿岸警備隊を含むということであれば、これは問題であると思います。現在、北海道または横須賀等にもあるようでありますが、これも非常に大きな問題であると私は思います。  そこで伺いたいことは、それらのロラン局が引き続き観測をする、または引き続きその位置にいて撤退しない、こういうことが報道されておるわけでありますけれども、その点は事実であるかどうか、外務大臣に伺っておきたいと思います。
  314. 三木武夫

    三木国務大臣 これは協定が正式にでき上がったときにきまるわけでありますが、いま交渉の途中であります。しかし、おることになると思いますけれども、まだ決定はいたしておりませんから、協定決定をして、そういう一切のものを明らかにして国会審議を受けたいと考えております。
  315. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 この問題はまたあらためて外務大臣と議論をしたいと思います。  時間の関係上、次に進みます。防衛庁長官に伺いたいのですが、この施政権の返還に伴って防衛庁の計画が一部に報道されているようであります。その計画の骨子を長官に伺いたいと思います。
  316. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 伊藤さんにお答え申し上げます。  防衛庁といたしましては、いまアメリカ小笠原方面に展開しておりまする部隊で、残存する部隊は別といたしまして、その国へ帰っていく、そういうような範囲のものをこちらで受けるというようなことが原則でございます。ただ、どの範囲までやるかということはまだ検討中でございまして、原則といたしましては、米軍の基地をわが国におきまして民生安定その他のためにできるだけ開放するとともに、必要なる範囲はこちらのほうで防衛基地として自衛隊がこれを管理し、これを維持してまいる、こういう方針でございます。
  317. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 ただいまの長官答弁でありますが、新聞等に一部発表になっておりますが、それによりますと、とりあえず海上自衛隊を中心として硫黄島にP2Vの基地、またはそこに海上自衛隊を百名程度見込んでいる。また父島や南鳥島等についても、いままで米海軍、空軍がいた約二百名程度をこえない限度でやりたい。このようにいわれておりますが、その計画は事実でしょうか、伺いたいと思います。
  318. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 目下検討中でございまするが、硫黄島につきましては、飛行場等を共同管理する、アメリカの基地、ないしまたわが国の防衛庁の基地にもする。共同管理の状態は、ちょうど福岡県の板付飛行場と同じような状態になると考えております。その要員を必要であるとわれわれは考えております。父島につきましては通信施設並びに揚陸艇等が桟橋等を持っております。その桟橋等を管理する要員を考えております。それから南鳥島におきましては飛行場を返すということになっておりまするから、その飛行場の管理要員が必要でございまして、それがはたしてどれくらいかかるかはまだ検討中でございまするが、二百名を出ないということだけはほぼ明瞭でございます。
  319. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 小笠原の防衛については、前国会において総理からも小笠原地域f小笠原地域とは言わない、小笠原の領海、領土、領空を防衛する、このように言われております。これを政府の立場に立って伺うわけでありますけれども、いま海上自衛隊さらにP2Vの基地にするというような答弁でございますが、P2Vというのはこれは対潜哨戒機であって、確かに海上を哨戒しさらに潜水艦攻撃の飛行機ではありますけれども、陸と空は何で守るのかということですね、その点、長官の見解を伺いたいと思います。
  320. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 お答え申し上げます。  大体におきまして検討中でございまするが、海上自衛隊で領海、領空並びに領土を守りたい、こう考えておる次第でございます。
  321. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 防衛庁長官は、かつて海からの侵略は海上自衛隊、陸からの侵略は陸上自衛隊、空からの侵略については航空自衛隊、それでもって防衛に当たります、このように答弁したことがございます。その点のことについて長官に伺いたい。
  322. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 私がかつて答弁申し上げましたことは、自衛隊法にそのとおり書いてあるのでございまして、「主として」という字がなおその上に加わっておりまするが、そのとおりでございます。しかしながら、小笠原島の地理その他の情景を見ますと、まずまず海上自衛隊だけで自衛の目的は達し得る、こう考えておる次第でございます。
  323. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そこで長官に伺いたいのですが、確かに返還と同時にはその規模でやるかもしれません。私はここで思うのですが、要するに領土、領海、領空——海上自衛隊はい喜一たように空を守る飛行機はない。また艦艇であってもなかなか空の飛行機については守り切れないということから、将来もこの規模でいくのかどうかということであります。その点長官に伺っておきたいと思います。  さらに伺っておきたいのでありますけれども、いま航空自衛隊では飛行機のほかにミサイル部隊を持っているわけであります。そういう点の見通しについても長官答弁を伺いたいと思います。
  324. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 伊藤さんにお答え申し上げます。  海上自衛隊の部隊でまず十分である。それから二百名を出ないということは明瞭でございます。それから父島には飛行場がございませんが、将来は、あそこに飛行場のあとがございますが、これを開発いたしまして飛行場にいたして民間機もまた自衛隊機も使い得るようにいたしたい、こういうことは考えておりますが、原則としていまアメリカが基地として使っておる範囲を出ない。そしてなるべく民生のために必要最小限度にいたしたい、こう考えておるわけでございまして、南鳥島、父島及び硫黄島ともに加えまして二百名の海上自衛隊で守るというのが相当の将来にわたる見通しでございます。  それから航空自衛隊が、陸もそうでございますが、陸のほうではホークを持っております。航空自衛隊はナイキを持っておりまして、両方ともミサイルであることは御指摘のとおりでございますが、そのミサイルの試射場に使ったらどうかという説もございましたが、だんだん地形等を研究してみまして、ミサイル試射場として試験をする場所としては不適当であるという意見に傾きつつございます。まだ断定的ではございませんが、そういうふうに相なっております。
  325. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いまは自民党の立場から質問したわけでありますが、公明党の立場に戻りまして、この硫黄島について言えることは、私たちいまから二十年前の昭和二十年の三月十七日だそうでありますが、かつての日本軍が約一万八千、非常に悲惨な戦闘の結果玉砕した。そしてそこに住む島民も軍属として働き、一平方メートルに一発ぐらいずつの砲撃を受けて、やっと八人だけ生き残った島である、このようにいわれております。太平洋戦争においても非常に悲惨な戦闘を繰り返した島を私は再び死の島にしてはいけない、このように心から思うわけであります。そこで玉砕した英霊に対しての唯一のはなむけは、再び死の島にするのではなくして、平和な島として開発することが大事ではないか、このように思うわけであります。そしてまたあの小笠原にあっても、あのちっぽけな島をまた再び死の島にし、そして同じ道を繰り返さないようにしていただきたい、このように私は島民とともにまた国民とともに思うわけであります。長官考えを伺いたいと思います。
  326. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 二百名に満たない海上自衛隊を配置するだけでございまして、お説は全然同感でございます。
  327. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私はここで、ただいま長官からお話がありまして小規模なということがございましたが、確かに一時はミサイル試射場としての候補にのぼったようであります。かつて戦争中において日本軍があの島に渡ったわけでありますが、特に父島等については、狭い島に、しかも最初はたった一隻の軍艦が補給所をあそこに設け、その一隻の船からだんだんと大きく船が通うようになり、そして基地をつくり、戦時中においては陸、海、空玉万の基地になってしまった、このようにもいわれております。またさらに狭い農地を君のため国のためといって没収され、取り上げられた。また、あの父島の二見港の真裏に天の浦というところがございますが、あの天の浦に第一砲座、第二砲座、第三砲座とつくられて、そしてその有力な漁場は入域禁止にさせられて、非常に困った、このようにある老人が申しておりましたけれども、たとえば今後基地の島、またミサイル試射場にするのであるならば、いかに年は老いたとしてもからだを張って反対する、このようなことを言っている現地民もおります。長官の率直な答弁を私は伺っておきたいと思います。
  328. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 佐藤・ジョンソン共同コミュニケにもございます。硫黄島その他小笠原島が果たしておる防衛上の責任を徐々に引き受ける、こういうことが書いてあるのでございまして、その線の範囲内、いま米軍は百名ちょっと上おるだけでございまして、その範囲のものしかわれわれは考えておりませんし、基地にはなりますけれども、それ以上の姿にはいたしたくない。やはり民生のために、国民も非常に期待いたしておりますので、そういう方々のために使っていただくというのが当然の考えでございましょう。
  329. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 時間の関係上進めますが、この小笠原復興にあたりまして、政府行政面のうち、特に郵政、警察、気象、海上保安、国有財産の管理など、いろいろ国がやると言っておるようでありますが、そこで各省に伺っておきたいのですが、最近自治省から小笠原復興計画が出た。またこう固まったという線で一部報道されたようでありますが、それによりますと、二千名の帰島者と、さらに五年から十年にわたって百億から百五十億の復興計画、予算規模でございますが、発表になったわけでございます。その計画については、旧島民は非常に帰りたいと思っておった人でさえも、こんな少ない予算であっては非常にたいへんだ、向こうに行っても餓死をするかもしれない。少ないその予算措置について、いろんな悲しいうわさがいま流れているわけであります。自治省はこのような草案を、何を基準に考えて設定したか、伺っておきたいと思います。
  330. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 先月の二十三日でしたか、決定で、小笠原復興開発は自治省でということにきまったわけでございます。その時点から復興計画をつくることにいろいろ努力をいたしておりますが、いまの段階でもまだ具体的な内容、金額などは一切きまっておりません。そのころの、またその前に何か新聞にいろんな記事が出たようでございまするが、これはどこから取材されたか知りませんけれども、まだ自治省として、そういったものが固まっている段階ではないと申し上げておきます。
  331. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いま答弁がございましたが、旧島民や現住民があの計画を見て、いま言ったようなことを言っているわけであります。どうか、それらの島民に不安を与えないような、うかつな、またいいかげんな案文といいますか、そういうものを発表してもらっては困る、私はそのように思います。  そこで、郵政大臣に伺いたいのですが、今回の返還に伴って、通信施設についていろいろ復興計画が立てられていると思います。過去においては、父島と母島の間に海底電線が敷かれておった、このようにも伺っておりますが、それらの概要を伺っておきたいと思います。
  332. 小林武治

    ○小林国務大臣 島の復興に一番最優先的にやらなければならぬのは通信の回復と、こういうふうに思っておりまして、返還早々短波移動無線機、こういうものによって当面の要望に、内地との連絡に備える、そしてさらに四、五カ月の間に固定無線局をつくりたい、これによって内地との電信回線または模写電信回線、こういうものをやる。次いで十カ月か一年以内には短波による無線電話を内地との間に回復する、こういう予定をいたしておるのでありまして、他の問題は復興に応じてひとつやる。こういうことで、海底電線は従前ございましたが、いまはもう全然用にたえない、こういうことでありまして、これらはすべて短波無線によって計らう、こういうつもりでございますし、また郵便局は、父島には返還早々にわれわれ直轄の郵便局を設置する予定にしておるのでございまして、これらにつきましては、すでにそれぞれ準備をいたさせておる、こういう状態でございます。
  333. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 時間がございませんので、次に、運輸大臣に伺いたいと思います。  小笠原の海上保安について、その概要、また内地との航路の問題について、その概要を簡単に答弁願いたいと思います。
  334. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 運輸省としまして小笠原関係しますのは、まず第一は航路の問題であります。住民及び資材の往復のために、客船ないし貨物船を配置するということがまず第一であります。  それから第二は、港湾の整備がございまして、二見港を中心にして船が横づけになるというふうに、港湾の整備及び航路標識の整備をやらなければなりません。  それから海上気象、航空気象の関係が出てまいりまして、これは現在米軍がやっておりますが、どちらがやるかということは、日米当局間において話し合いをして、将来きまるものであります。もし日本側がやるということになれば、気象庁におきまして喜んで引き受けてやりたいと思っております。ロラン局の点も同様でございまして、日米両国の当局者の話し合いによって決定されるものと思います。  それから小笠原周辺の海難警備の問題がございますが、これも、日本領土復帰するのでありますから、当然海上保安庁は、その部分は引き受けましてやることになるだろうと思います。
  335. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 建設大臣に伺いたい。  建設省の復興開発計画、また、かつて宮古島台風のときに建設省が青年隊を編成して台風の被害のあと始末をつけた。非常にこれは評判がよかったようでありますが、そのような計画を小笠原復興計画の中で考えているかどうか、簡単に答弁を願いたい。
  336. 保利茂

    ○保利国務大臣 復興計画の実施に必要となりますれば、産業開発青年隊を積極的に考えていきたいと考えております。
  337. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 厚生大臣に伺いたい。  小笠原地域の海域には、多くのサンゴ、または自然というものがございます。そういう面での自然保護または国立公園等について、簡単に復興開発の概要を伺いたいと思います。
  338. 園田直

    ○園田国務大臣 私の所管では生活環境の問題がありますが、さしあたっては水道、診療所の整備を、ただいまの施設を利用しつつやるように関係各省と連絡しつつあります。  なお、当地域の自然保護の立場から、自然公園に指定するのに適当ではないかと考えて、第一次の調査団にその任務を命じてありましたところ、きわめて適当である、こういう資料を受けておりまするから、さらに詳細な調査をやって、この地域の自然の温存をするいろいろな規制を講じたい、このように考えております。国定公園にするか国立公園にするかは、今後の調査の結果によってやりたいと考えております。
  339. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 次に、大蔵大臣に伺いたいわけでありますが、小笠原復興の予算規模については非常に国民が関心を持っております。その考えられる予算規模、また何を算定要因にしてその規模を決定されるか、基本的な問題についてお示し願いたいと思います。
  340. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 小笠原島の復興に関する事業につきましては、国が行なう調査の結果、各関係省が協議してこの計画をきめることになっておりますので、政府による専門的、技術的な調査の結果、奄美大島のときもそうでございましたが、やはり何年計画という相当の長期計画をもってこの復興計画がきめられるだろうと思います。したがって、この各省の協議を持ってから、はっきり予算はきまっていくと思います。
  341. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 予算規模については、返還のきまった昨年、東京都においては五百億を見積っております。さらに、現在、ちょっとわかりませんけれども、大蔵大臣から答弁がありましたが、旧島民、原住民ともに戦争の犠牲者といえば犠牲者であります。さらに政府が強制して疎開もさせ、そうしていままで長い間非常に苦労している島民たちであります。どうかそういう点からいっても、その復興開発については、それらの島民や原住民が支障を来たさない規模を持つべきであろうと思います。  また、先ほど自治大臣からお話があり、ましたが、五年から十年というような長い期間ではなくて、二年から三年、しかも復興、開発をともに行なうような方法で、しかも段階的に、帰島を希望する者に全員帰島できるような条件政府がつくっていくべきである、このように思うわけであります。  時間がありませんので、次に進みます。結論としては、私は、あの小笠原を基地の島にするか平和な島にするかということでありますが、どうか二度と太平洋戦争の当時のようなそういう条件をつくらないように、また平和な島としての復興開発に全力を尽くしていただきたい。最後に総務長官にその点について伺っておきたいと思います。
  342. 田中龍夫

    田中国務大臣 おっしゃるとおりでございまして、昔小笠原は、日米もし戦わばというところの第一線基地であったわけでございます。いまはそういう客観状態ではございませんから、お説のとおりわれわれも考えております。
  343. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 さらに、いま原住民の間で問題になっていることに子供の教育の問題があります。その点で文部大臣に伺いたいわけでありますが、現在、ラドフォード提督学校というところに一年から九年まで約六十九名ほど勉強しております。教科書は全部英語であって、アメリカ方式であります。返還に伴って義務教育が今後なされていくであろうと思われますが、どのように扱うか、文部大臣の御見解を伺いたい。
  344. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 小笠原の現在の教育制度としましては、お話しのとおりに、ラドフォード提督初等学校というのか、九年制の学校でございますが、一校あるだけでございます。島民子弟が六十人ばかり就学いたしておるわけでございますが、これは申すまでもなくアメリカ流の教育をやっております。今度こちらに復帰してまいりまするならば、もちろん日本国民としての教育をやってまいらなければなりません。特に日本語の学習については力を入れてまいらなければなりませんが、いずれにいたしましても、しかし直ちに現在の状況を完全に切りかえるというふうなことは適当でもないし、またむずかしいことでありますので、移行するには相当期間を必要とすると思いますが、その間に十分調整してまいりたい、かように存じております。
  345. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 次に、農林大臣に伺います。  これは小笠原海域の漁業権の問題でありますが、最近米軍によって漁船が拿捕された、こういう報道がありました。そうして旧島民等は、その漁業権はあくまでも三海里から、できれば五海里くらいまで島民に与えてほしいという要望がございます。そういう点についての農林大臣の見解を伺っておきたいと思います。  さらに、母島等は農業を中心に開発されていくであろうと思われますが、その開発にあたっても、小笠原国有地は八割近くございます。そしてまた母島列島にある向島などというところは、全島が農地に適し、しかも無人島であります。こういう国有地等を積極的に開放していくべきである、このように思いますが、農林大臣の所見を伺っておきたいと思います。
  346. 西村直己

    西村国務大臣 漁業権の問題につきましては、特にけさほど触れましたけれども、そのうちで当面一番問題になっておりますのは、沿岸三海里近く海洋資源があるわけでありまして、返還以前にそれを荒らされてしまったらたいへんだという旧島民の不安感があると思います。これに対しましては、現在アメリカ施政権のもとではありますが、保護をしてまいらなければならぬ。その意味で、東京都をはじめ漁労をやるような県に対しましては再々にわたり指導を加えておりますし、今後も指導を続けてまいります。  それから返還になりましても、直ちに漁業秩序の安定というものが、漁業権設定とかその他の問題に出てまいる、その間がございます。その間は、漁業法に基づき、あるいは東京都の管轄に入りました場合における東京都の諸法例に基づきまして、調整なり規制なり、よその島民が荒らしにいかないような規制を加えてまいりたいと思います。  それから国有林野、確かに国有地の多いところでございます。ただ農地関係権利調整等の問題もございますが、先ほど来お話が出ておるように、平和の島として、また民生安定、しかも農林漁業というものが帰られる島民の主産業でもありましょうから、十分活用ということを考えてまいるつもりでございます。
  347. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 法務大臣に伺いたい。欧米系住民、また内地、八丈島等離島に住む旧島民の戸籍のことでございますが、戦時中軍部の命令で外国名は一切抹消されて、そして日本人になっております。そういう点で、彼らは島民でございますが、先祖からの名前、またはそういう軍部の人たちから抹消されたことについては、ぜひ前の名前にしてほしい、こういう要望があったわけでありますが、法務大臣の所見を伺いたい。
  348. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 旧名に変更をいたしますためには家庭裁判所の許可が必要でございますので、その旨を届けることによって変更することにしていきたい。趣旨といたしましては、あくまでできるだけ簡単な手続でやりたいということを研究したいと考えております。
  349. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 法務大臣、ちょっと伺いますが、家庭裁判所といっても、これは軍部の一方的な方向で抹消されたわけです。そういう点について、いままでの例とは違うと思うのです。その点について伺いたい。
  350. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 その点につきましては、できるだけ便利な方法を研究したいと考えておりまするが、普通は御承知のように家庭裁判所でやるということになっています。特にひとつ便利な方法もあわせて考えたいと考えております。
  351. 井出一太郎

    ○井出委員長 ただいま質問者の伊藤君からのお申し出によりまして、外務大臣防衛庁長官を除いた他の大臣各位はお引き取りをいただいてけっこうだそうであります。
  352. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 次に、沖繩に常駐するB52についてお尋ねいたします。   〔発言する者あり〕
  353. 井出一太郎

    ○井出委員長 静粛に願います。
  354. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 現在沖繩では毎日十数機のB52が発進、帰着を繰り返しております。弾薬等の積み込み状況から考えてみても、ベトナム戦争に介入していることは周知のとおりであります。沖繩県民は本土にたびたび代表を派遣し、B52の即時撤去要求を行なっておりますが、これに対して外務大臣の所見を伺いたい。
  355. 三木武夫

    三木国務大臣 B52の問題については、しばしば沖繩からも立法院、その他地元の人々が来て、いろいろお話も承っております。アメリカもまた、B52の恒久的な基地にするつもりはない、極東の情勢が緊張したための移駐であると言っておりますので、これがずっとB肥の基地になるとは考えていないわけであります。現地の人たちは、B52がおるということで、戦争に巻き込まれやしないかという非常な不安をお持ちになっているようでありますが、われわれはそうは考えていない。あそこに対してどこからか攻撃を加えるというようなことは考えられないことでありますので、そういう不安は現地人々たちもお持ちにならないことが実際的ではないか。あの土地に向かって攻撃を加えてくるということは考えられないのでございます。しかし、いろいろ不安に思われておるようでありますから、われわれとしても現地の人たちの気持ちというものをできるだけ頭に入れながら、アメリカとの間にも、今後対米交渉もいたしたいと思っております。しかしこの問題は、直ちに撤去要求をしてくれという申し出に対しては、政府は直ちに撤去の要求をしようという考えはございません。一時的なものだというのですから、極東の情勢が平静になって、そういう撤去の事態が来ることは希望いたしますが、直ちに撤去を要求するという考え方はないということを申し上げておきたいと思います。
  356. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 ただいま大臣から答弁がございましたが、かつて総理が、B52については施政権がない現状ではとるべき処置にも限界があると言って、B52の沖繩撤去はいまのところ要求しない、このように答えておりますが、外務大臣はその点についてどのように考えておられるか伺いたい。また、その理由はなぜか伺いたいと思います。
  357. 三木武夫

    三木国務大臣 このB52は、午前中の御質問にも答えたのですが、非常な複雑な幾つかの側面を持っている。一つの側面は条約上の側面であります。アメリカとすれば、沖繩の基地は自由使用できる、こう考えて、条約上からそういう考えを持っておる。また、一つは軍事上の側面、沖繩の持っておる基地が日本を含めて極東に対しての安全保障上の役割を果たしておるという、この評価もこれはせざるを得ないわけであります。また政治的な側面としては、現地の人が非常に不安に思っておる。そういうことで現地人が非常に不安に思うというような状態が非常に長続きすることは、やはり基地の有効使用の上においても好ましい結果ではない。したがって、日本政府とすれば、重視いたしますのはこの政治的な側面であります。沖繩の人心、その人たちが不安に思っておるということは日本政府としても注目せざるを得ない、こういうことでアメリカに対しても善処を要望をいたしたのでございます。したがって、B52というものをどう外務大臣考えておるかというと、B52は幾つかの側面を持った複雑な問題である。しかし、われわれは沖繩の人々の不安に思っておるという事実に注目をしながら、アメリカに対しても善処を要望した、これがいまの、現在考えておることに対する正直なお答えだと思います。
  358. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 外交権のない琉球政府としては、その対米交渉に際して、どうしても本土政府を通じて行なう以外に道はないことは十分御承知のことでございます。そこで、沖繩県民が最もたよりとするところも当然本土政府であります。そこで肝心の政府自体が米国の諸政策をあまりにも意識し過ぎて、そして沖繩県民の一体化促進は、総理みずからが主張している課題でもありますが、政府はその一体化政策を変更したのではないか、このようにも思うわけでありますが、外務大臣答弁を伺います。
  359. 三木武夫

    三木国務大臣 そういう考え方はあり得ようはずはないので、一日も早く沖繩の施政権の返還を実現したいと政府は心から願い、そのために一体化促進のための諮問委員会でありますとか、あるいはまた予算、沖繩の現状に対する援助費の増額であるとか、一段と施政権返還に対する熱意を政府が持ってきつつあることは御承知のとおりであります。したがって、B52が沖繩に移駐したという、この極東の緊張した状態という一時的な極東情勢の変化でB52が移駐してきた、これに対して直ちに撤去というものを要求しないというようなことで、施政権返還に対する政府方針が変更したというものでは絶対にございません。ますます施政権返還の必要、こういう問題があれば、沖繩の人たちも日本の問題としてこの問題が処理できるので、B52の問題をいろいろわれわれが聞くにつけても、施政権の返還の必要性というものを痛感をいたす次第でございます。
  360. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 立法院では、B52の即時撤去の決議を超党派で採択いたしました。また島ぐるみのB52撤去要求運動が展開されております。このB52の駐留は二月五日以来今日まで続いておりまして、もうすでに一カ月以上にわたっております。政府は、これまで米国は沖繩にB52を常駐させる考えはないとはっきり回答してきていると繰り返し、常駐基地化の危険がないことを強調してまいりました。しかるに官房長官は記者会見において、プエブロ事件が解決し、ベトナム軍事情勢が全く鎮静してもまだB52が沖繩にいるというのであれば、これは常駐態勢に入ったと言える、こう語っております。今回の官房長官の発言は、次の点で重要な意味を含んでいると考えます。その第一は、緊張をもたらすような事態が起きた際に、いかなるときでも沖繩がB52等の発進基地とされても当然であり、やむを得ないとする考え方であります。また、本来沖繩は、客観条件がどうなろうとも、すなわちいかなる緊張が起ころうとも、わが国は沖繩を米国の極東戦略の犠牲にしてはならないと考えることこそ最も大切な点ではないかと思います。  また第二に、プエブロ事件の解決、ベトナム軍事情勢の鎮静がなされない限り、一年経過しようとも、B52が沖繩に移駐しているのだと政府考えるかどうか。本来常駐とは駐留期間の長さを意味するものであって、客観情勢は一切関係しないことを考えるものですが、この点、本来ならば官房長官に伺いたいところでありますが、きょうは残念ながら欠席しておりますので、外務大臣に伺いたいと思います。
  361. 三木武夫

    三木国務大臣 おそらく、官房長官が新聞記者会見等で言われたことばを引用されて御質問だと思いますが、これは直接本人から私は聞いておりませんので、こういう重要な問題を新聞記事を材料にされて、官房長官にかわってお答えすることは適当でないと思います。しかし、B52が極東情勢の緊張した状態によって移駐したわけでありますから、これが平静に返れば当然にB52は撤去されるわけであります。その平静というのはどういう状態かということは、なかなか具体的にこうだということは言いにくいと思います。しかし、常識的に考えて、極東情勢が、ベトナム戦争もあるわけですし、あるいはまた、朝鮮半島の事態も全く何も問題がないというわけにはいきますまいが、一般の者が常識的に考えて平静になったというような時期は、まあみなの判断にも出てくると私は思う。それを具体的に、この事件がどうだ、あの事件が片づいてということはなかなか適当でない。一般の常識として、だいぶん極東情勢が平静になった、こういうときにはやはり撤去されるものだと考えておるわけでございます。
  362. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 ただいま新聞報道云々ということがございましたが、新聞は国民が毎日見ておりますし、非常にその影響を受けていきます。したがって、いまの答弁ではちょっと納得いかないのですが、この官房長官の言われたこと、これが正しいかどうか、外務大臣の所見を伺いたい。
  363. 三木武夫

    三木国務大臣 いま私が官房長官にかわって記者会見で言われたというものを、第一その言った当人もおりませんし、そういうので、私がこれに対して批判を加えて、正しいとか正しくないとかいう評価をいたすことは適当でない。私はその場におったわけではないのですから、そういうことを申し上げておるので、御了承を願いたいと思います。
  364. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 時間がございませんので、次に進みますが、いずれにしても、総理は、駐留が長引けば米側にその配慮要請を再び行なう用意がある、このように語っております。私は、即刻米国側に対して厳重なる抗議を申し入れるべきであると考えますが、外務大臣の所見を伺いたい。
  365. 三木武夫

    三木国務大臣 私が最初に申し上げたように、このB52の問題は、条約上の問題もあるし、軍事上の問題もあるし、あるいは政治上の問題もあって、複雑な問題である。しかし極東の情勢が平静になって、一日も早く、そういうみなが不安に思っておるのですから、アメリカもまた永久の基地にする意思はないと言っているのですから、B52が撤去されるような事態がくることが望ましいとは考えておりますが、いま御指摘のように、直ちにB52の撤去をアメリカに要求するという考え方は持っておらないということを申し上げておきたいと思います。
  366. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 現時点においては要求しない、こういうことでありますが、それではどのような情勢、いかなる時期に米国側に配慮要請をされるのか、また今後の見通しについて、明確な答弁を伺っておきたいと思います。
  367. 三木武夫

    三木国務大臣 アメリカ自身も、しばしば申し上げておるように、これは一時的な極東の緊張に対するB52の移駐である、永久の基地にする意思はない、こう言っておるのですから、これは極東情勢が平静になれば、当然にB52は撤去されるのだと思いますが、政府は、沖繩の人心の動向あるいは極東情勢、こういうものをわれわれは注意深く、これはわれわれとしても見守っていくということが今日お答えのできる範囲でありまして、将来のことに対していろいろ仮定をして、どう将来外交交渉をやるのだということをここで仮定をして申し上げることは適当でないと考えるものでございます。
  368. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 なぜ沖繩の人たちがB52の撤去を望んでいるか、これは一つは、B52は水爆搭載機だからであります。また、B52には水爆が四発から六発ぐらい搭載されているともいわれております。もしこのようなB52が事故を起こした場合には、沖繩はすっ飛んでしまうわけです。そしてまた、そのB52の墜落事故というのは世界にも何回かあったわけであります。そういうことによって、B52がもしか事故を起こした場合には沖繩は死の灰になってしまう、また、死の灰が降って、第二、第三のあの広島やまたは長崎のようになる、このような考えを沖繩県民は持っているわけであります。したがって、一日も早くそのような不安、またそのようなB52を撤去させるように、そしてまた一日も早く平和な沖繩を築くために、そういう要請をすることは当然ではないかと思います。大臣の所見を伺いたい。
  369. 三木武夫

    三木国務大臣 伊藤さんは、事故を起こして沖繩が灰になったら困るではないかと言うが、沖繩には百万の人たちがおります。これは百万という生命、アメリカ軍だけでも四万五千、家族もおるわけですから、これは灰になるということになればたいへんなことでありますから、B52に対して事故を起こさない十分な注意は、これはだれに言われるまでもなく、当然にするべき責任をアメリカが持っておることは申すまでもありません。  また、水爆については、極東にいま水爆をアメリカが使うということは考えられない。必要のないものをB52が絶えず水爆を搭載しておるということは、私は常識に反すると思います。そういう必要もないものを常に積んでおるということは、それはおまえ見てきたのかと言われたら困りますが、しかし、およそものごとというものは、やっぱり合理性のあることでないと、そんな何も使うことが必要もなければ使う意思もないものを、常に水爆を積んでおるということは常識にも反しますし、ものごとを考える上における合理性がない。私はそういうことは考えておりません。
  370. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 時間がございませんので、その問題は次の分科会等においてまたもう一回議論したいと思います。  次に、事前協議についてお伺いいたします。  この問題については今国会におきましてもしばしば論戦されてまいりました。しかし、政府答弁は相変わらず明快さを欠き、国民を納得させるものではありませんでした。私は、ここで再び事前協議制の内容について若干のお尋ねをしたいと思います。  事前協議は、安保条約第六条によって、米軍の日本での基地等の使用についての規制であって、わが国が日米安保の存在によって戦争に巻き込まれる危険性をなくすものであると、このように理解しております。それで、その事前協議の対象となる内容について伺います。  まず、米軍の日本での配置における重要な変更についてでありますが、重要な変更とは具体的にはどのような内容が含まれているのか伺いたいと思います。
  371. 三木武夫

    三木国務大臣 最初に、事前協議というものは安保条約における重要な条項であると私は考えております。私はこれを重視する一人でございます。しがたって、いろいろな国会の討議を通じて事前協議を空文化そうという意図は私にはない。これはやはり、してはいけないと思っている。ただ条約上のたてまえとして事前協議というものは第六条の規定によってやるということで、日本が事前協議をやろうではないかというような申し出はいつでもできるのです。しかし実際に装備というものに対して変更を加えるとかいろいろなことには六条という規定を使うのだという条約の解釈を申し上げたので、私の条約解釈論というものは少し強過ぎて、外務大臣は事前協議を何か空文化そうというような疑いを野党の諸君がお持ちになるとしたならば、そういう意図はない。この事前協議の条項というものはやはり安保条約の重要な条項であって、条約解釈上のことを私が言っておるので、これを何か空文化そうという意図のもとにいままで私が答弁しておるのではないということを明らかにしておきたい。それで、重要な装備の変更ということは、これは原爆、いわゆる核兵器あるいは核ミサイル、その基地、こういうものを含んだ核兵器の持ち込みということが装備の重要な変更でございます。
  372. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いま伺いましたものは配置における重要な変更ということでございましたが、私は一つ一つ聞いていくのです。大臣、少し先回りしないでくださいね。  それで、この基準というものがちょっと理解できない。兵器は年々長足の進歩を遂げ、攻撃力にしても、破壊力にしても、安保条約締結当時とは格段の相違があります。配置における重要な変更が、海の場合が一タスクフォースであり、空の場合は一個師団であるというような基準は何に基づいて決定されたものであるか、明らかにしていただきたいと思います。
  373. 三木武夫

    三木国務大臣 これは安保条約ができますときに日米両国でいろいろ話し合いをして、これは文書にはなっておりません。配置の基準というものは交換公文等にはなっておりませんが、その後の日米の了解しておる一つの配置の基準である、日米間の了解を得ておる基準であるとわれわれは解しておるものでございます。
  374. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 アメリカ側と了解済みである、また日米両国間においてきめた。それでは、いつ、どこで、日本のだれとアメリカのだれとによって決定されたか、伺っておきたいと思います。
  375. 三木武夫

    三木国務大臣 日米の安保条約の協議のときにこういう話も出まして、だからこのことを話したのはだれと話したかというのでなくして、アメリカの代表と日本の代表との間に安保条約でいろいろ話されたときのこれが一つ日米の了解点である、こういうふうに考えております。
  376. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 だれとだれが了解したか、その点をはっきりしてもらいたいと思います。
  377. 三木武夫

    三木国務大臣 そのだれとだれというよりかは、日米政府の代表間における了解事項であるということであります。
  378. 井出一太郎

    ○井出委員長 伊藤君、時間になりました。
  379. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 時間がないようでありますけれども、これは非常に重大な問題であります。だれがこれを証明するのですか。また、政府はいままで外交折衝の際に、口約束だけで済ませてきたことがあるのですか。わが国の外交姿勢が対米一辺倒である、このようにいわれることも、こういうことからも否定できないではありませんか。先ほど外務大臣も答えましたが、この事前協議制は安保条約の中で重要な意味を持っている、こうおっしゃいました。そして歴代の総理も、外務大臣も、再三にわたって、わが国が戦争に巻き込まれないための歯どめであると言ってきております。外務大臣、このような重要な問題を単なる口約束だけで済まされる問題であると思っておられるのですか。伺いたいと思います。
  380. 三木武夫

    三木国務大臣 口約束と、こう言ったらいかにも簡単なように響きますけれども、日米間で了解に達して、これがずっと国会においても絶えず皆さんのいろんな御批判の対象にもなってきておるわけでありますから、口約束とこう言ったら、いかにもすぐにでも変わるようなことになりますが、そういうふうには思ってないのです。そういうふうなことで、これが非常に簡単なものだとは考えておりません。国会のたびごとにこれは繰り返し言ってきておるのですから、もうそうなってくると、何か文書にして残してなくても、日米間の重要な了解になっているというふうに考えますので、このことによって何か日本アメリカに非常に追随的だというふうには、私は考えておりません。
  381. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 時間が経過をしておりますので、今回はこれで終わりますが、次の分科会で、もう一回外務大臣と論争したいと思います。  以上をもって終わります。
  382. 井出一太郎

    ○井出委員長 これにて伊藤君の質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  383. 井出一太郎

    ○井出委員長 この際、分科会の件についておはかりいたします。  理事会の協議によりまして、昭和四十三年度総予算審査のため、五個の分科会を設置することとし、分科会の区分は、第一分科会は、皇室費、国会、裁判所、内閣、防衛庁・経済企画庁を除く総理府、法務省及び文部省所管並びに他の分科会の所管以外の事項。第二分科会は、会計検査院、防衛庁、外務省及び大蔵省所管。第三分科会は、厚生省、労働省及び自治省所管。第四分科会は、経済企画庁、農林省及び通商産業省所管。第五分科会は、運輸省、郵政省及び建設省所管。以上のとおりといたしたいと思いますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  384. 井出一太郎

    ○井出委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  次に、分科会分科員の配置及び主査の選任、また、委員の異動に伴う分科員補欠選任並びに主査の辞任及び補欠選任につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  385. 井出一太郎

    ○井出委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  なお、分科会は、理事会の協議により、来たる十二日より十五日まで四日間開会することといたします。  次回は、明後十一日午前十時より委員会を開会し、一般質疑を続行いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後七時散会