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1968-02-26 第58回国会 衆議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年二月二十六日(月曜日)     午前十時十一分開議  出席委員    委員長 井出一太郎君    理事 小川 半次君 理事 北澤 直吉君    理事 正示啓次郎君 理事 二階堂 進君    理事 藤枝 泉介君 理事 加藤 清二君    理事 中澤 茂一君 理事 広沢 直樹君       相川 勝六君    愛知 揆一君       荒木萬壽夫君    上村千一郎君       植木庚子郎君    小沢 辰男君       川崎 秀二君    小坂善太郎君       坂田 英一君    田中 正巳君       登坂重次郎君    中野 四郎君       西岡 武夫君    野田 卯一君       野原 正勝君    福田  一君       船田  中君    松浦周太郎君       松澤 雄藏君    森山 欽司君       山崎  巖君    大原  亨君       川崎 寛治君    北山 愛郎君       久保 三郎君    阪上安太郎君       田中 武夫君    楢崎弥之助君       畑   和君    森本  靖君       山内  広君    山中 吾郎君       横山 利秋君    麻生 良方君       竹本 孫一君    塚本 三郎君       正木 良明君    矢野 絢也君       松本 善明君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 赤間 文三君         外 務 大 臣 三木 武夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         厚 生 大 臣 園田  直君         農 林 大 臣 西村 直己君         通商産業大臣  椎名悦三郎君         運 輸 大 臣 中曽根康弘君         郵 政 大 臣 小林 武治君         労 働 大 臣 小川 平二君         建 設 大 臣 保利  茂君         自 治 大 臣         (国家公安委員         長)      赤澤 正道君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      木村 俊夫君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      田中 龍夫君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 増田甲子七君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      鍋島 直紹君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制局第一         部長      真田 秀夫君         公正取引委員会         委員長     山田 精一君         北海道開発政務         次官      川野 三暁君         防衛庁人事局長 麻生  茂君         防衛庁経理局長 佐々木達夫君         経済企画庁調整         局長      赤澤 璋一君         経済企画庁国民         生活局長    八塚 陽介君         経済企画庁総合         計画局長    鹿野 義夫君         外務省北米局長 東郷 文彦君         外務省条約局長 佐藤 正二君         日本専売公社監         理官      前川 憲一君         大蔵省主計局長 村上孝太郎君         大蔵省主税局長 吉國 二郎君         大蔵省理財局長 鳩山威一郎君         大蔵省銀行局長 澄田  智君         大蔵省国際金融         局長      柏木 雄介君         文部省大学学術         局長      宮地  茂君         文部省管理局長 村山 松雄君         厚生省公衆衛生         局長      村中 俊明君         厚生省医務局長 若松 栄一君         厚生省薬務局長 坂本貞一郎君         厚生省社会局長 今村  譲君         厚生省児童家庭         局長      渥美 節夫君         厚生省保険局長 梅本 純正君         厚生省年金局長 伊部 英男君         厚生省援護局長 実本 博次君         社会保険庁医療         保険部長    加藤 威二君         農林大臣官房長 桧垣徳太郎君         農林大臣官房予         算課長    大河原太一郎君         食糧庁長官   大口 駿一君         通商産業省企業         局長      熊谷 典文君         運輸省鉄道監督         局長      増川 遼三君         郵政省貯金局長 鶴岡  寛君         労働省労働基準         局長      村上 茂利君         労働省職業安定         局長      有馬 元治君         自治省税務局長 松島 五郎君         消防庁長官   佐久間 彊君  委員外出席者         参  考  人         (税制調査会会         長代理)    松隈 秀雄君         専  門  員 大沢  実君     ――――――――――――― 二月二十六日  委員上林榮吉君、麻生良方君、岡澤完治君及  び有島重武君辞任につき、その補欠として西岡  武夫君、竹本孫一君、塚本三郎君及び矢野絢也  君が議長指名委員に選任された。 同日  委員西岡武夫辞任につき、その補欠として上  林山榮吉君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和四十三年度一般会計予算  昭和四十三年度特別会計予算  昭和四十三年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 井出一太郎

    井出委員長 これより会議を開きます。  昭和四十三年度一般会計予算昭和四十三年度特別会計予算昭和四十三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行ないます。横山利秋君。
  3. 横山利秋

    横山委員 私は、本日、物価と減税を中心にして、総理以下各大臣の所信をただす予定でありますが、冒頭、緊急な問題として特に総理のお考えを伺っておきたい問題がございます。  それは、B52が沖縄常駐体制に入ったということであります。沖縄ベトナム攻撃基地となって、県民の不安は一挙に爆発的に増大をしております。これについて、立法院は、十日、与党野党あげて全会一致決議をして、B5常駐反対をいたしました。嘉手納町村会をはじめ、十五の市町村もあげてこれに対する反対であります。沖縄嘉手納基地をはじめ、あらゆる基地に、あらゆる沖縄の場所において常駐反対運動が巻き起こり、公職者もみんなバッジをつけて仕事をしておるような状況であります。そして、立法院山川議長はじめ各党の代表県民の総意を持って本土にやってまいりまして、各方面に、さしあたりこのB52の常駐に対してすみやかに米国政府申し入れるように希望をして、本日も国会に来ておる模様であります。  政府は、アメリカ大使館に、十二日でありましたか、申し入れをなさったそうでありますが、その姿勢がきわめてあいまいであると沖縄県民は不安に感じておる。一体その申し入れ内容はどうであり、アメリカ大使館回答はどういうものであったか、ほんとうに政府B52の常駐反対しておるのであるかどうか、この際総理の所見を伺いたいのであります。
  4. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 B52の沖縄へ飛んできたことについて、また、それをただいまのように常駐体制だと断定を下して横山君はお尋ねでございます。政府自身は、常駐体制だとは思っておりません。しかしながら、住民嘉手納中心にしての多数の反対、また一部の不安、こういうものが醸成されておりまするので、ここに施政権アメリカにありましても、住んでおる諸君はわれわれの同胞でありますし、そういう立場から、日本政府におきましてもこの問題を重視しておりまして、関心を持ちましていろいろ交渉したのでございます。その交渉の内容並びに経過等につきましては、外務大臣からお答えさせます。  ただいまのお話常駐体制、かように言われるが、私は常駐体制をとっておるとはまだ思っておりません。
  5. 三木武夫

    三木国務大臣 B52について立法院代表者日本に来たようでございますが、私はまだ会ってないが、会って詳しく話を聞きたいと思っております。  B52の問題は幾つかの側面を持った問題であります。一つは、条約上は、御承知のように、沖縄は完全なアメリカ施政権のもとにあるわけでありますから、したがって、アメリカはこれを使用する権限を持っておるわけであります。また、軍事沖縄が持っておる日本及び極東に対する安全保障上の役割りというものも、これは評価しなければなりません。しかし、一方、政治的側面といいますか、沖縄住民が非常に不安に思っておるという、こういうことが立法院決議等にもあらわれておるのでありましょう。そこで、われわれとしては、やはり基地の有効な使用をするためには、現地民の理解、協力が必要でありますから、そういう側面はわれわれも重視せざるを得ないのでございます。したがって、われわれとしては、アメリカに対しても、住民にこういう不安があるからアメリカも配慮してもらいたいという申し入れをいたしたのでございます。しかし、アメリカとしては、それに対して、沖縄B52の常駐基地にする意思はないという意向を明らかにしております。したがって、事態が平静に返りますならば、これはもとのような状態に返るものである。したがって、いまのところ、政府B52の撤去アメリカ要求する意思は持っておりません。
  6. 横山利秋

    横山委員 事実認識にずいぶん政府に誤りがあるようであります。これは外務大臣が、山川議長はじめ、すみやかに現地諸君から実情を聞かれることを要望いたしますが、少なくとも私どもに入りました情報によれば、朝B52が発進をして夕方帰ってくる。ベトナムまでの往復は四時間、おそくも五時間あれば往復できるのであります。十数機のB52が毎日、日ごとごと発進をしておる状況を見て、これが常駐体制でないからだいじょうぶだというような認識を持っておられるとは、きわめて意外であります。しかし、総理外務大臣も、常駐体制ではないと思うからいいのだと、こう思っておられるようであります。そうなら、常駐体制だったら何となさる。常駐体制であるという事実認識を持たれたら、これに対しては、施政権アメリカにあるからとか、あるいは米軍軍事力関係からとか言わないで、沖縄九十六万の諸君がこれでは困ると言って悲痛な要求をしておることについて、常駐体制だったら断わるつもりですか。はっきりしてもらいたい。
  7. 三木武夫

    三木国務大臣 アメリカ政府から、B52の常駐基地にはしない、こういう回答をいたしてきておるのでありますから、ここでそういう仮定を設けて考える必要は私はないと思うのでございます。
  8. 横山利秋

    横山委員 立法院は、このB52が今回飛来したことは、四十年の七月の台風を理由にしてやってきた場合と全く条件が異なるといっておる。この認識というものは、沖縄がこのB52の飛来によって直接具体的に、もはやベトナム戦争に巻き込まれる危険性が如実になったと痛感をしておる。あなたは立法院決議というものは尊重しないのですか。B52をここで撤去してもらいたい、飛来をやめさせてもらいたいという立法院決議をどうお考えでありますか、総理に伺いたい。
  9. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 だいぶ話が進んだようですが、最初のお話では、常駐体制ができた、それに対して政府はどういう処置をとるか、これが横山君の第一のお尋ねであったと思います。それに対して先ほど外務大臣から常駐体制ではございませんということをはっきり言ったのであります。  しからば、なぜそういうようなB52が沖縄へ来たのか。これは、最近のプエブロ号あるいはただいまのベトナム等戦闘が、北はこれは一つの緊張でありますが、ベトナム戦闘は確かに激化しておる。そういうような体制から来たのだ、私はかように思います。しかし、これをもって直ちに私ども戦争に巻き込まれる、かように考えられるのはちょっと行き過ぎではないかと思います。私は、日本自身がこの沖縄――また同時にベトナムに対して、全然軍事的に介入しないということは、もうしばしば申し上げておる。したがって、日本自身戦争に巻き込まれるということはない。しかし、沖縄立法院が――アメリカ施政権下にあるその地域でありますから、アメリカがただいまのようなB52あるいはその他の軍事基地を使うということ、これは私はある程度しんぼうしていただかなければならぬと思います。しかし、沖縄立法院が、ただいま言われるように決議をしたのであります。そうして私ども日本政府、これは仲間だと思って立法院諸君は訴えに来ていると思う。だからこれは立法院諸君ともっとよく話をして、そうして実情も聞きますし、また政府が善処する、これは当然のことであります。だから、ただいま外務大臣が、立法院諸君とまだ会ってない、これは至急に会いましてそういう実情をよく聞こう、そうして必要なる対策を立てましょう、こういうことを実は申しております。したがってこれらの点を冷静に私ども考えなければならないのだ。私は沖縄が、よし施政権アメリカにありましても、将来日本に返るであろうと言われる。また現状においては沖縄住民諸君は私ども同胞であります。そういう立場から考えると、この問題をただ施政権アメリカにあるから、ただ常駐しないから、こういうだけではございません。だから立法院決議その他について十分聞こうという、私はこれは当然のことだと思います。
  10. 横山利秋

    横山委員 いま現に、B52が来てから、すでに日ごとごとそこを発進基地にしてベトナムに行き帰ってき、そうしてただ行って帰ってくるのじゃなくて、仕事をして、やって帰ってきておる事実を常駐と言わずして何と言うのです。私は、この問題については同僚諸君あとからいろいろと沖縄問題について詰めますからこの程度でやめますけれども、すみやかに政府沖縄におけるB52の状況を十分に調査をして、そして撤去の方向に努力されることを要望をいたします。  物価について、まず総理に伺いたいのでありますが、御存じのように、昨日は全国で何と六百カ所、二百五十万の大衆が集まって、物価値上げ反対の大集会を行ないました。全国津々浦々にわき立っておるこの物価値上げ反対運動総理はどうお考えでありましょうか。四十年は六・四%、四十一年は四・七%、本年は四・五%、来年度政府見通しをもってしても四・八%、物価抑制佐藤内閣の二大重要政策一つである。世界の近代国家の中で、どこの国にこのような値上げ内閣のある国があるでありましょう。皮肉なことに、佐藤さんは池田総理高度成長政策に対して批判をして、安定成長政策をもって社会に訴えた人であります。ところがあなたの時代になって、歴年物価がこれほど上がるというのは、またこれは何と皮肉なことでありましょう。この四十三年度見通しが四・八というのは、一体これはまず何だとお考えでありましょう。経済見通しについてはいろいろな見方があるけれども、この際、国民にかわって率直に聞きますけれども、四・八というのはあなたにとっては見通しなのか、それとも政策としてこの四・八以下には絶対押える、こういう総理大臣としての決意の表明なのか、まずそれから伺いたいと思います。
  11. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 横山君もたいへん経済通でいらっしゃいますから、経済成長と同時に物価との関係、これなどは私は重ねて申しません。どうも成長率が高いときにはある程度物価が上がるという、そういう形を持っておること、これはもうすでに御承知のことだと思います。わが国の経済成長率は、これは外国に例を見ないものであります。そういう意味では、私は、片一方だけをとって、物価値上がりだけをとって、外国に例を見ないから、こう言って非難されることはいかがかと思う。  私は、この内閣を組閣いたしまして以来、経済成長安定成長に持っていこう、成長、これはたいへん望ましいことには違いないけれども、あまり過度の成長をすると、各方面に悪影響を生ずるから、できるだけ安定成長へ持っていこう。また同時に、物価を安定することが、国民生活を充実さし、また福祉をもたらすゆえんだ、かように思いまして、この二つをただいま私の内閣重要政策にしておるわけであります。私は真剣にただいままで取り組んでまいりました。しかし、私どもの取り組んだだけではなかなか思うように成績をあげておりません。昨年の物価を云々されますが、昨年の物価は、大体本年度といいますか、これは四・五というのがねらいでございました。しかしなかなか四・五がスムーズにいっていないじゃないか、こういう批判を受けました。しかし私は、ことしの物価は大体四・五の範囲内におさまるものだ、かような確信を持っております。  さらにこの点では後ほど経済企画庁長官から説明さすつもりでございますが、しかし、一方で経済成長は私どもが予想した以上のものが、経済成長を実績としてもたらされた。その結果、物価の安定にもなかなか思うようにいかなかったのでありますが、同時に、国際収支の面で私ども非常に悩みを深くした。だからことしはさらに経済成長へ力を入れ、同時にまた国際収支も改善し、同時に物価の安定を来たそう、かように私どもねらっておるわけであります。これがただいまの政府決意でもあります。これを実行するにあたりまして種々困難な問題のあること、これは横山君が経済通であるだけにおわかりだと思いますから、私は与野党ともに相提携してその目的を達成するようにしていただきたいと思います。しかし私は、そのために野党の諸君が別な案を持っておられるなら、これも聞かしていただきたいと思います。ただ責めるだけでなく、またりっぱな物価安定への道をこの際するという、そういう意味で努力したいと思います。
  12. 横山利秋

    横山委員 いかにも自信のなさそうなお話でございますが、私が最後にお伺いしておるのは、政府のいう四十三年度四・八というのは、国民が非常に関心を持ち、そうではないと、金融機関並びにその他の調査機関も五・五ないしは六%だといっておるのだが、そこを四・八とあえていうのは、いつもと違った政治的な意味があると私は思う。そこで、四・八というのは、単なる見通しなのか、総理として政策として決意を込めて四・八以下に押えるというあなたの約束なのか、どちらかと言って聞いている。
  13. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この四・八を出すことは、なかなかむずかしかったです。ことに本年度は四・五内にとどめること、幾多のむずかしい条件がございますから、しかし政府自身は、各種のデータをそろえた上で四・八にしよう、これをただいまの政治目標にしてあらゆる努力をする決意でございます。
  14. 横山利秋

    横山委員 経済企画庁長官に伺うのですが、四・八というのは、その骨格は去年の十二月二十八日の閣議了解事項であります。ところが同じ前向きに税調の答申が酒、たばこに触れましたけれども、これは値上げ率に触れていなかった。一月六日の大蔵原案でも、この酒、たばこ値上げ率については細目が未決定国鉄定期割引についてもその時点においては未決定であります。本年になって国鉄や酒、たばこ値上げ率をきめながら、昨年十二月二十九日に四・八をきめた。これは一体どういうことでありましょうか。少なくとも四・八をきめた時点では、国鉄や酒、たばこ値上げ率がきまっていなかったではないか。それにもかかわらず四・八ということをいっているというのはおかしい。しかも先般本会議であなたは、国鉄、酒、たばこ物価に対する影響度は〇・四%ぐらい物価に響く、こう言っている。これはそうですね、直接的な影響だけでありますね。間接的な波及効果というものは、この〇・四という数字には含まれておりませんね。どうでありますか。
  15. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まず四・八を計算いたしましたときに、本年度物価上昇が、先般も申し上げましたように、後半に高いものでございますから、それが持ち越す分がかなりこの四・八の中に入っております。おそらく、これはまだ今年度が終わりませんのではっきりいたしませんが、かりに四・五ということになりますと、三・四くらい入っておることになると思います。したがいまして、これが四・五以下におさまりますと、もう少し余裕が出てくるわけでございます。三・四といたしますと、いわば年度内に許容し得る幅というものは、引き算をいたしますと、一・四というようなことになるはずでございます。そこで、四・八は四・五より高いのですが、いまのような理由から、今年度よりよほど苦労が必要だということになるわけでございます。  そこで、酒、たばこにつきましては、ただいま仰せのとおり、先般お答え申し上げましたとおりであります。私、この四十三年度予算編成を昨年の秋ごろから大筋を考えてまいります過程で、作業には参画いたしておりましたので、おそらくそれらのものの値上げがある程度あるであろうということは想像をいたしておりました。したがいまして、大づかみながら、まず、たばこで〇・二ぐらい、それから国鉄定期運賃関係で〇・一ぐらいと思います。酒と物品税につきましては、最終の小売り価格がはっきりいたしませんから非常に正確には申し上げられませんが、ます〇・一と考えております。したがって、その〇・四というものはただいまの四・八の中に入っておる、こういうことになるわけでございます。  米価につきましては、値上げを前提にいたしておりません。
  16. 横山利秋

    横山委員 そうしますと、四・八から、本年から来年に持って入るいわゆるげたといわれておるのですが、げたが三・四である。そうすると、残りますのは一・四ですね。つまり本年の四月一日から来年の三月三十一日までに、あなたの言うところの酒、たばこ国鉄運賃、それを除いた値上がり分は一・四しかない、こういうわけですね。お間違いありませんね。それで、もう一つはこの消費者米価については入っていない、こういうことで間違いありませんね。  それでは農林大臣に伺いますが、いまの経済企画庁長官の御説明によると、あと四・八の中で一・四しか物価値上がり率は見つくろっていないようであります。総予算制度で、本年も消費者米価が上がることは、まさに決定的なことのように国民は心配をしています。これは一体どういうふうにお考えでございましょうか。本年の買い入れ予定数量は八百五万トン、とてもこれだけで終わるものではないと私ども考えるのでありますが、上回ることはおそらく必至であろう。生産者米価を十月ごろにまた上げざるを得ない、そうすると結局消費者米価も上げざるを得ないことになるのではないかと国民はおそれておる。去年一四・四%消費者米価が上がりました。これは〇・三五の物価寄与率である。したがって、去年どおりに上げるとするならば、これまたたいへんなことになるが、農林大臣はことしの消費者米価についてどういうふうにお考えでございましょうか。
  17. 西村直己

    西村国務大臣 米価につきましては、御存じのとおり、ただいま直ちに米価決定の段階ではありませんが、いずれ国会とも御相談の上、米価審議会等を構成いたしまして、生産者意向等も十分反映しながら、その間において具体的決定にまいるわけであります。それで、御存じのとおり、米価におきましては、生産者米価、それから消費者米価、そうしてそれを守っていくところの食管と申しますか、食管制度というものがあるわけでありまして、その間にわれわれは正常な関係の位置づけをいたしながら、それぞれの価格の扱いをしてまいりたいというのが現在の段階でありまして、それだけお答え申し上げておきたいと思います。
  18. 横山利秋

    横山委員 農林大臣は御新任早々でありますから、何だかわけのわからぬことでおとぼけになろうとなさっているようでありますが、これでは国民は納得できません。総予算制度というものが生産者米価消費者米価を直結させるのだ、こういうふうに政府筋としては意思統一をされている模様であるから、国民は去年よりももっと不安に感じているわけであります。ここで農林大臣消費者米価は上げませんと言っていただければ私も簡単に次に入れるのであります。上げないなら上げない、上げるなら上げざるを得ない、明白にひとつしてもらいたい。去年の一四・四%程度であるならば物価に対する寄与率は〇・三五である。だから経済企画庁長官が言った残る一・四のうちの〇・三五を引けば、あと物価に対する値上がり率は一・〇五%、つまり一%前後、こういうことになる。農林大臣米価についてもう少しはっきりひとつ所信を聞かしてもらいたい。
  19. 西村直己

    西村国務大臣 ただいまの段階におきましては、所管の大臣といたしまして、米価につきまして、生産者米価、したがってそれから関連してくるところの食管法の中における消費者米価の扱い等におきましては、まだ今後の推移を見ながら、まず米審等を構成して、それによっての意見等もいろいろ考えた上でやってまいりたいというので、それ以上のお答えはできないと思うのであります。
  20. 横山利秋

    横山委員 この米価については政治的条件が――昨年よりももっと政府消費者米価によってしわ寄せをさせよう、こういうことによって非常に国民は不安を感じておる。これが物価に対する影響は、実に明年度で一番強いのではないかと思われます。かりにこれを昨年どおりといたしますと、残るところの物価四・八の中で純値上げ率は一%、正確に言うならば一・〇五%、この一・〇五%で、もううわさにのぼっておりますのが授業料、大学の授業料は平均一二・九%、これは授業料だけの積算でありますが一二・九%、私鉄の十四社、これが話題の中心、続いてバス、トラック、タクシー、市電、地下鉄、水道料金に、政府のやっておる動物園から美術館までもうすでに上がっておる。環境衛生関係の料金十数業者、野菜、魚介類、くだもの、これが物価に対して非常に寄与率が高いこと御存じのとおり、食堂から家賃に至るまで最近値上がり率が強い。これで経済企画庁長官、一%内外でとどまるとほんとうにお考えでありましょうか。もしも一%内外の値上げ率でとどまるというならば、その根拠を示してもらいたい。四・八というのは、そういう点では、総理のおっしゃることは、私はこれでとどめたいと言っておるけれども、全く架空な希望的観測ではないか。いかがですか。
  21. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 やはり消費者物価の動向に、従来一番大きな影響を持ちますのは米価決定でございます。ことにこの場合に、波及効果が一番大きいように考えております。したがいまして、私といたしましては、米価審議会がこれから米価のあり方についていろいろ検討をされるわけでございますが、その結論並びに結論の扱い方について当然に非常な関心を抱いております。  何か本年度、昨年の十月にやりましたと同じような消費者米価値上げを前提にしてお尋ねのようでございましたけれども、これは既知数ではございませんから、米審その他の審議の結果によりましては、必ずしも同じことが繰り返されるとは考えなくてよろしい。とにかく、しかし、それは非常に大きな消費者物価上の問題であることには変わりございません。その他のもので一%程度しかないではないかと言われますけれども、米を除きますと一%という消費者物価指数への影響はかなり大きなものでございまして、そう簡単に一%といったようなものが、いろいろな仮数はございましても、出てくるものではございません。したがって、私は、四・八というのは決して非現実的な考え方ではない。ただその際、米価については従来のいきさつもございます。米価審議会でいろいろな総合的な見地から考えを出していただくことを、私としては期待をしておるわけでございます。
  22. 横山利秋

    横山委員 去年からことしにかけての下半期のいわゆるげた分が三・四だと言いながら、われわれが体験した去年の十月ごろからの米やあるいは健康保険、いろいろな値上がり率が明年度に及ぼす影響げたが三・四%だと言いながら、いまの長官のお話は、これから来年度における残ったいまあげましたようなたくさんのものが、一%内外で済むとお考えの感覚を私は疑うのであります。  運輸大臣にこの際伺いたいのでありますが、昨年の十二月十三日、私は本委員会であなたに国鉄運賃のことを聞きました。たいへんあなたは元気よくお答えになりました。運輸大臣は、国鉄総裁はがんこおやじだ、明治の文化財だと先輩をずいぶん皮肉っておいて、そして最後に、私といたしましては定期割引運賃は上げない方向で全力を尽くす決心であるのでありますと、たいへん私はそれで安心をしたのであります。あれだけたんかを切りながら、わずか半月で豹変して三割五分、三百億をまるのみにされるとは夢にも私は思わなかったのであります。できもしないことをいかにもできるように発言をした、総裁をばか呼ばわりにするということについて、あなたはお責任を何らいまもって感じられないのでありましょうか。  伝え聞くところによりますと、あなたは、小中学校は上げない、高校は一割アップにとどめたい、要救護家族は据え置きでしたい、こういうことを言うておられるようでありますが、もしそうであるならば、あの段階で政府との交渉の過程で、運輸審議会にかける前にあなたは責任を果たすべきなのにかかわらず、そのまま右から左に運輸審議会に渡して、三百億――もしもあなたの言うようにやると、これで二十億ぐらいの減収になるでありましょう。この分くらいは、なぜあのときに責任が持てなかったものであるかどうか。また、伝え聞くところによりますと、通学定期は割引率が頭打ちであるから、四十四年度以降段階的にこの値上げを考慮するようにしなければならぬと言われておるそうでありますが、そうだとしたら全く底抜けであります。この際、運輸大臣の御意見を伺いたい。
  23. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 国鉄の定期の値上げはできるだけ抑制する方針で努力いたしましたが、完全にそれが行なえなかったのはまことに遺憾でございます。私といたしましては、国鉄が地方の市町村に出しておる納付金、これは大蔵省は、ことしは特に免除にめんどうを見てくれておったのであります、それから財政投融資、こういう面でもう少し予算を獲得いたしまして、定期の値上げをできるだけ回避する考え方でおりましたが、ことしの予算の編成が非常な緊縮で、それがとうとう私の非力のために実現できなかったので、定期の値上げを認めざるを得なかったのはまことに遺憾であります。  国鉄の財政は、現在は、四十二年度におきまして千百四十七億円ぐらいの赤字が出ております。また、四十三年度におきましても、利子だけで千三百二十億円ぐらい払わなければならぬのであります。そういう非常に苦しい財政状態にあるものでありますから、最後の努力をいたしましたが、やむを得ず公共負担ということで定期の値上げを認めざるを得なくなったのであります。しかし、社会政策的見地から、母子家庭とかあるいは生活保護者であるとか、あるいは義務教育の小中学生、それから高等学校その他につきましては、特別に配慮して値引きをし、あるいは現状維持で認可する方針でおります。
  24. 横山利秋

    横山委員 いまの通学定期は頭打ちだから、来年度以降段階的に値上げを考慮すると言われておる事実はいかがでありますか。あなたはそういうことをなさいますか、なさいませんか。
  25. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 来年以降の問題につきましては、物価状況、並びに国鉄の財政確立の委員会をつくりまして、そこに諮問をいたしまして、それらの答申を得まして考えてみたいと思っております。
  26. 横山利秋

    横山委員 ずいぶんこの前の委員会と比べてあなたは慎重な御発言でございますが、これだけははっきりしてもらいたい。通学定期の割引率が頭打ちだから、階段的に来年から値上げできるように考慮すると言われておるが、それをあなたはおやりになるかならぬか。
  27. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 その点は、先ほど申し上げましたように、ことしの物価の動向や、あるいは国鉄財政確立のための委員会をつくりまして、その答申を見て考えてみたいと思っております。
  28. 横山利秋

    横山委員 もう少し大臣、はっきりしてもらいたい。  それではもう一ぺん聞きますけれども、私鉄十四社が値上げ申請すると言っている。あなたは最初認めぬと言った。その次にだんだん、秋ごろは認めなければならぬだろうという雲行きらしい。明年度、私鉄十四社の定期割引運賃の値上げ申請を認めることになりますかなりませんか、あなたの決心を聞かしてもらいたい。
  29. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 私鉄の定期の値上げは、これを本年は抑制する考えでおります。これは、終始一貫してこの考えは変わりありません。
  30. 横山利秋

    横山委員 抑制ということはニュアンスの富んだことばでありますが、つまり、明年度は私鉄の運賃の値上げを認めないと拝聴してよろしいのですね。
  31. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 明年度は上げない方針であります。
  32. 横山利秋

    横山委員 四十一年の一月十一日、臨時物価対策閣僚協議会では、大手十四社私鉄は、著しい事情の変更ない限り運賃改定後四年間は申請しないように指導するときまっているのですね、御存じのように。これは一体空文になっておりますか、それとも、閣僚協議会の決定としてこの方針は堅持をされますか。
  33. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 その方針は堅持する方針であります。
  34. 横山利秋

    横山委員 今度この国鉄定期割引値上げで矛盾が生じました。たとえば、一例を示しますと品川-横浜間が、国鉄が二千四百八十円、京浜急行が千六百八十円、差が八百円。八王子-新宿間では国鉄が三千七百円、京王帝都が二千三百六十円、差が千三百四十円、月にこれだけ違いますと、都市のラッシュの波が大変革を来たすと私は思っておる。これはたいへんなことだと私は思うのです。この点について大臣はどうお考えでございますか。私は国鉄の定期値上げ反対する立場でものを言っているのですよ。しかし、国鉄が品川-横浜間で上がって、私鉄がとどまる、その差が八百円だ。あるところでは千五百円になる。月にこれだけ上がれば、これはラッシュの波がたいへんな変更になる。それによって国鉄は、三百億という予定収入はおそらく相当の減収になると私は思う。この点について大臣はどうお考えですか。
  35. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 一部には、お説のとおりそういう危険性がございます。しかし、一つは、定期賃というのは企業主で負担するという部分もございますし、それから自分のうちから乗車駅までの距離とか、あるいは乗りかえの問題とか、そういう問題もございまして、必ずしも全部そういうふうに移行するとは限らないのであります。いままでの経験から見ても、そうであります。そういう実際の状況をよく見まして、いろいろまた適切な措置を講じていきたいと思っております。
  36. 横山利秋

    横山委員 大臣はきわめて甘いですね。私自身が、八百円違うというなら、それはおれはまあ国鉄にしようかという人があるかもしれない。しかし、企業主が何百人、何千人の定期を買ってやるときに、計算して、一人八百円であるけれども、何千人の八百円分というのは違うのですよ。むしろ企業主が選んで、安いほうに乗れというのはさまっているのです。あなたは何をお考えですか。あなたの言うことは全く逆なんですよ。企業主が採算上、安いほうに無理に乗れというにきまっているじゃないですか。これによってラッシュの波が大変革を来たすことは、火を見るよりも明らかじゃないですか。何を考えておるのですか。どうですか、私の言うことは違いますか。
  37. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 従来の経験で見ますと、そういう一部移行するものはありましたけれども、必ずしもお説のとおりにはいっておらないのであります。そういう観点からいたしまして、その推移をよく見てまいりたいと思っております。そして政府といたしましては、そういう若干の不便や困難も多少起こるかもしれませんが、そのために私鉄の値上げを認めるということは、これは適正でないと考えておるわけであります。
  38. 横山利秋

    横山委員 この前のときは、国鉄と私鉄と一緒に上がったんですよ。あなたは何か計算間違いしている。私のほうは国鉄で働いているのですから、あなたよりよく知っているのですよ、これは。この前は一緒に上がって、なおかつ上がったときに一時歩く人もあったというわけで、国鉄は三%の減収を見つくろったのです。今回も、増収分三百二十九億の中で、三十億だけは一時的な減収として三百億にしたんですね。ところが、私の言う、私鉄は上がらない、国鉄は上がるという、それに基づく減収分は見つくろっていないじゃないですか。どうですか、運輸大臣、見つくろってありますか。
  39. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 その点は事務当局をして答弁いたさせます。
  40. 横山利秋

    横山委員 いいですよ。事務当局、聞かなくてもいいです。そんなことは見つくろってないこと、明白なんです。  大蔵大臣にちょっとついでに伺いますが、東京-千葉間が、二千四百八円が三千七百九十円になるんですよ。そうすると、交通費の免税はいま二千四百円ですね。ところが、三千七百九十円になるから、千三百九十円ぐらいが、会社が出しても現物給与として本人の収入と見て課税されるわけです。そうですね。そうすると、会社負担だと運輸大臣がまあいいじゃないかと言っておるけれども、本人にとっては、その分だけ現物給与として増税になるわけです。これを一体どうするつもりですか。免税点を引き上げるつもりですか。
  41. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 運賃の上がった場合に、本人の負担になるかこれを会社の負担にするか、これがわかりませんので、いまのところ何ともその問題は言えないと思います。
  42. 横山利秋

    横山委員 そういう定期割引についての政府側の答弁があいまいもこたるものでは困りますよ。ほっておけば二千四百円までが免税点だから、それを上回る分については会社が――少なくとも私は、会社負担がいま圧倒的に多いと思う。会社が出すからいいというわけにはいかぬのです。その分だけは、本人が現物給与として課税されることになっておる。だから、その分だけ本人に対して税金が多くなるのです。そんなこと、わからぬはずはないでしょう。それはしかたがないと、ほっておくつもりですかと聞いておる。
  43. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 そのままだったら多くなりますが、結局この二千四百円の範囲を変更するということも考えるか、あるいはそういう事態があるために会社がこれを負担するというようなことになるか、この辺の今後の措置によってこれをきめるほかないと思います。
  44. 横山利秋

    横山委員 会社が負担しても本人の所得として課税される、そう言っておるんですよ。わからぬですか、あなた、そういうこと。企業が全部負担しても、二千四百円以上は本人の収入がふえたとして、課税されることになっておるというのです。そうすると、本人は税金が多くなる。それがわからぬですか。
  45. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ですから、その二千四百円の問題をどうするかも今後の問題でございますから、検討するということであります。
  46. 横山利秋

    横山委員 どうも総理大臣、あなたがそばで気をもんでおられるようですが、あなたのお考えはどうですか。二千四百円の免税点を上げる――はっきりしてくださいよ、早く進みたいから。
  47. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 交通手当の免税点の問題につきましては、横山先生よく御承知のとおり、交通手半が出た場合にそれを一定の限度で免税をするということでございまして、今後国鉄の通勤費の値上げがあった場合に、それがどの程度交通手当として反映してくるかという問題がまだ未確定でございます。この制度を創設いたしまして以来、この金額を定めるにつきましては、公務員の交通手当が最も普遍的なものとして、その交通手当が改正されました際に、それに即して税制を変えておることは御承知のとおりであります。そういう意味で、今後この交通手当をどうするかという問題と関連をして、改正を考えるべきものだと考えます。
  48. 横山利秋

    横山委員 私ども反対でありますが、政府はここで国鉄定期割引を上げるということが明白な態度であるから、その意味においては交通手当並びに交通費の免税点、同時にこの議論の対象にならなければいかぬじゃないか。この国会でその白黒をつける、政府としてこういうふうなお考えと伺ってよろしいでしょうか。
  49. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私のほうでは、いまこの問題は検討しておるところでございます。
  50. 横山利秋

    横山委員 そういう、こまかいようではあるけれども定期割引を上げれば当然の課題として考えなければならぬことを、ほうっておかれては困る。これはこの国会中に処理をしてもらいたいと思いますが、総理大臣いかがですか。
  51. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま大蔵大臣がお答えしたように、こういう事柄はできるだけ早く、みんなが安心するように検討いたします。
  52. 横山利秋

    横山委員 物価問題懇談会が、独占価格調査審議会を設置しろと提案している。この趣旨は、独禁法にかりに抵触しなくても、独占価格でもっと安くなるべきものがあるはずである、こういって政府に提起をしておるのであります。私はきわめて時宜に適した提起であると思います。この点についてどうお考えでありましょうか。  また、再販規制法を今度は政府はお出しにならないようでありますが、今日いろいろ巷説乱れ飛んでおる、結局メーカーあるいは大企業の圧力に押されたのではないかといろ国民の疑問であります。これらについて、所管の大臣から伺いたいと思うのであります。
  53. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いわゆる寡占の場合に独占価格があるといわれておりましたもの、たとえば板ガラスは一番いい例でございますが、これにつきましては、ここのところかなり改まってきたように思います。  それから物価問題懇談会のその提案は、ただいま物価安定推進会議に引き継がれまして、部会を設けまして、生産性の高いもので、しかも寡占状態にあるところでそういうような傾きがないかということを、業種ごとに部会で回を重ねて洗っておるところであります。他方で、公正取引委員会は、過去においてそういうものについて、しばしば注意を発しておられるわけであります。  それから再販価格維持契約のことでございますが、これは、このたび法律の改正案は提案をしないということに公正取引委員会決定をされました。私は、その決定はもっともな決定だと考えております。と申しますのは、これは実は法律の規定を改めませんでも、すでに公示をされ、許されております六業種でございますが、この中には、もう十年ほどたちまして、再販価格維持契約を認める必要のないものが相当あるのではないかと思われます。その点は、公正取引委員会がいわゆる洗い直しをやって、告示を取り消すことによってそれができるわけでございます。聞くところによりますと、公正取引委員会はその作業をいま進めておられまして、おそらく、私の承知しておりますところでは一カ月くらいの間に最終的な結論を出す、こういうことと承知しております。
  54. 井出一太郎

    井出委員長 横山君にちょっと申し上げますが、ただいま参考人として税制調査会会長代理松隈秀雄君が御出席になっておりますので、この点お含みの上質疑を続行願います。
  55. 横山利秋

    横山委員 わが党はすでに物価安定緊急措置法を国会に提出した、御存じのとおりであります。また、物価特別委員会では、各党間で消費者保護基本法について取りまとめをしておるような状況であります。この間、このような法律については、政府みずからが提案をして、物価抑制に対する基本的な柱としてなさるべきだというのが、巷間叫ばれておることであります。一体政府はどうお考えでありましょうか。私はこの際、総理大臣に申し上げておきたいと思うのでありますが、物価は春のかげろうのように自然にわき上がってくるものではない、労働者がまた上げたものでもない、中小企業がまた上げたものでもない。大企業の独善と高度経済成長政策の結果である。しかも一番最近の物価値上がりの主導権を握っているのは、政府の公定料金であります。これがはしりとなって次に上がってくる、こういうものであります。政府が産業政策中心政策を進める限りにおいては、これは避けられないものだ。生活の安定を中心政策を展開しなければ、四・八はとても私は実現ができないと思う。この点について、全国民のうちで特におかあさん方、主婦の皆さんが、どうしても納得ができないと言っている。総理に、いま申しましたこのわが党の提案、並びに物価対策特別委員会における消費者保護基本法の法律、ものの考え方について伺っておきたいと思います。
  56. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 物価安定基本法だとかあるいは物価安定緊急措置法とか、まあいろいろ法律案が出されております。これらのねらいとするところのものが、立法府から提出される行政府の機構の問題であったり、あるいはまた物価そのものを、ただいま行政府で処置しておりますが、そのうちのあるものを国会の議決あるいは届け出制等にするとか、まあいろいろ複雑な問題がございます。これらのことも一案かと思いますが、私ども考え方では、この物価の問題は総合的な施策でなければだめだ、そういう意味で、関係閣僚をもちましての一つの閣僚会議を持っております。さらにまた、国民の協力を得なければならない、こういう立場から、ただいまは物価安定推進会議、それを持ちます。しかもその推進会議では、ただいま企画庁長官が説明いたしましたように、必要なる部会を設けて、そうして物価安定を積極的に、また関係官庁を動員体制のもとにこれを進めていく、これがただいまの方針でございます。  私は、社会党その他から提案されておりますもの、これを一がいに排撃するとかあるいは拒否するとか、こういう考え方ではございません。ただいまの政府考え方は、政府がひとつ持っておりますから、ただいまの社会党の提案のものにつきましては、その機構あるいは取り扱う範囲等につきまして、さらに私ども慎重に検討を必要とするのではないか、かように思いまして、ただいま検討中でございます。さように御了承いただきます。
  57. 横山利秋

    横山委員 物価と貯蓄の問題について、政府の所信をただしたいと思います。   〔委員長退席、藤枝委員長代理着席〕  次に申し上げる投書は、日本銀行、大蔵省等で話題の中心になったそうであります。東京都の小林という人の投書でありますが、新聞から引用します。「貯蓄は、私どもの将来の生活の用意として必要なことはよく分っており、このために預金や保険などの形で貯蓄する。だがこのごろ、私は一つの疑問をもつようになった。それは長期預金や保険が満期になって受取る金が、私どもが実際に積立てた金と同じ価値をもっているかということだ。周知のように、物価は年々上がっている。東京の消費者物価指数は四十年を一〇〇とすると四十二年十二月は一一二・四、三十五年は七四である。食料品などはこの十年間に二、三倍になっているのではないか。またバス代は三倍、電車は二倍だ。これはいうまでもなく、貨幣価値-購買力がそれだけ減ったことを意味する。この物価騰貴の進行は今後も続くと見ねばならず、貨幣価値が今後も年々減っていくとすれば、何年または何十年後に受取る金は、実質上何分の一かの価値に落ちているわけで、大損害を受けることは明白だ。こんな不合理なことがあるだろうか。こんなことでは、私たちは安心して貯蓄できない。思うに、現在の制度は貨幣価値の安定を前提としたもので、昨今のようにインフレの進行している時代には合わない。頂かる側に有利で、預ける側にきわめて不利な、預金の搾取にもなりかねない現代の悪制である。実に不思議なことは、この明白なことが、今の政治に不問にされていることである。」  これが小林という人が投書したものであります。これは確かに、今日の物価と貯蓄について、明白にその問題点をついておる。この点について総理大臣の御所見を伺いたい。
  58. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私どもは、過去におきまして非常な急激なインフレ、それに当面したことがございます。確かに、あの当面したインフレ時代、これは過去の蓄積というものがそのときにはほとんどむだになった、こういう意味からですね、ただいま言われる点がですよ。まあそういう極端な場合は別にいたしましても、やはり物価が安定すること、貨幣価値が安定すること、これが大事なことだと思います。私は、一面の理屈はあると思います。だけれども、ただいま私どもがとっておる政治そのもの等が、特にただいまのようなインフレ的な、非常に過大なインフレ傾向にある、かように私は思いませんので、さらに一そうただいま安定する方向に努力をする、これは必要なことだ、かように思っております。
  59. 横山利秋

    横山委員 たとえば、三十六年に十万円を郵便局に預金したとする。――大蔵大臣に聞いておりますよ。で、利息がついて七年後に十四万六千円。ところが、三十六年から四十二年までに物価が四〇%上がっているから、当時十万円のものは十四万円である。だから、郵便局へ預けておいても何の利子もつかないような結果に終わりやすい。だから貯金は損、逆に借りるほうが得と、こういう気分が最近において増大をしている。元金分も返さなくてもいいようなことになりそうだ、大企業はそう言っている。金融機関物価値上がりでもうける。これが物価と貯金、金融のいまやメカニズムになろうとしている。根本的に、この際、この物価と貯蓄の問題について、大蔵大臣としてお考えになるべき段階ではないか。いかがです。
  60. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 そういう問題がありますために、現在、たとえば政府の拠出制年金問題、こういうところでも、いわゆるスライド制というものが提唱されておりますが、これを実行するということはなかなかむずかしい。いまおっしゃられたような長期の貯金にも、もちろん影響する問題でございまするし、波及するところが大きいことでございますので、それをどうしたらいいかということは、いま恩給制度審議会、そういうようなところでも、この問題の研究に入っておりますが、結局もう、貨幣価値を維持する、インフレにはしないという施策をとって対処する以外に、この問題の解決はないのじゃないかというふうに考えております。
  61. 横山利秋

    横山委員 それにもかかわらず、物価は、政府のいうところで四・八、私ども考えるところでも五・五%から六%に上がるのですよ、明年度。  そこで私は思うのですが、重ねて大蔵大臣に伺いますが、金融機関が最近貸し出し金利を上げ始めました。そうですね。日銀から金を借りてもいない金融機関が、貸し出し金利を上げ始めている。中小企業や消費者は言っていますよ。貸し出し金利を上げながら、なぜ預金金利を上げないのだ、おれのところが銀行に預金しているものの金利はちっとも上げない、貸してもらう貸し出し金利だけどんどん上げていく、こういう不当なことはないではないか、と言っている。世界的に、いまや金利の戦争ということになりかねない。あなた方は、国債という、庶民にわりあいにいま関係のない分、政府に都合のいい分だけの金利を上げて、そして金融機関並びに証券企業の利益をはかるという結果になっておる。こうなりますと、長期金利、特に郵便貯金ですね。郵便貯金はいま通常預金が三分六厘ですね。定額でも五分五厘です。これでは物価値上がり時代に追いつかない。物価は六%必至だとすれば、郵便局へ預けておけば損する、こういう結果になりかねない。この際、預金金利、長期金利についての大蔵大臣の確固たる御意見を伺っておきたい。
  62. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 わが国の金利水準は、現在先進国に比べてまだ非常に高うございます。国際的に金利高の傾向になっておりましても、まだ日本の金利水準が高い。日本の企業のこれからの国際競争力の問題、合理化の問題、いろいろのことを考えまして、やはりここで金利水準を上げないことが望ましいという考えのもとで、公社債市場における実勢によって、国債の条件、それに伴う関係政府保証債というようなものの条件の改定はやりましたが、長期貸し出し金利は上げないということで、私どもはいま押えております。日本の預金金利がやはり水準が高いために、日本の貸し出し金利水準も高いということになっておりますので、やはりこの際、貸し出し金利水準を上げないというためには、預金の金利水準を上げないということが必要だと考えておりますので、経済情勢によって、日銀の公定歩合の操作、短期資金の金利がいろいろ変動することは当然でございますが、長期の金利は、われわれは押えるという方針をいま持っております。その基礎に立っておる。したがって、預金の金利は上げないという方針でおりますので、いま郵便貯金の金利を上げるというようなことも、われわれ金利政策の上から考えておりません。
  63. 横山利秋

    横山委員 ずいぶん説得力のない、自信のない御答弁だと思いますよ。これからは借りるほうが得で、貸すほうが損、預金するほうが損、こういう考えがびまんすることが、私どもは非常に心配です。私どもも低金利がよろしいと思っている。けれども、現実はどんどん高金利時代に入っていくじゃありませんか。そうして大衆の預金がきわめて低金利で、そうしてそれが動いて、貸し出しするほうが高金利だ、こういうばかげたことがいつまでも続いて、それは知らないよとあなた方が言っていられるようなことなら、私どもは、国民がたいへんあなたに失望すると思うのであります。  時間がございませんので、次へ移りますが、もう一ぺん大蔵大臣に、別の問題で伺います。  予算編成のときに、国立大学の授業料が問題になった模様であります。いま大学の授業料は平均二十二万六千円――授業料、入学金、施設拡充費、学債を含めて二十二万六千円という平均でありまして、一二・九%の値上がり、短大では一二・七%です。私学がどんどん上がると、国立大学を上げるか上げないかで議論になって、伝え聞くところによりますと、四十四年度には国立大学の授業料を上げるから、ことしはこの予算編成でがまんしろというて、文部省と大蔵省の間に密約があると伝えられておりますが、いかがですか。
  64. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私学と比べて、公立の大学の授業料がわりに低いということは、始終問題になっておりまして、この値上げ問題は、もうここ数年来起こっておる問題でございますが、しかし、いまおっしゃられるようないろいろな物価問題もございますので、公共料金に類するもの、どれを優先的に上げる必要があるか、どれは待ってもらうかということを考えますと、もう急を要するいろいろのものがいままで多かったために、この授業料の値上げというほうはおくれておりまして、今年度は、私どもとしては、これは値上げをしたかったのでございますが、しかし、酒、たばこ国鉄運賃と、こういうものが上がるときでございますので、電話料金とか授業料というようなものは、今年度上げないという方針をとったことは確かでございますが、それじゃ来年度これをやるかという問題でございますが、これもやはりいまの経済情勢、物価情勢とからんで、来年度もどうするかを、またあらためて考えるよりほかしかたがないのではないかと考えております。
  65. 横山利秋

    横山委員 いま大学の試験がどんどんと行なわれています。その中で、看過すべからざる問題が一つあります。  学生父兄は、すべりどめといって、二つ以上の学校を受けます。合格すると、大学は金をすぐ払ってもらいたいという。ほかが合格した場合にも、これを返済しないということになっている。それが毎年国会で議論になっておるのでありますが、すべりどめのために二つ三つ受けて、合格したけれども入らない、返してくれといっても、いかなる場合にも返さない、こういうことになっておるわけであります。みすみす十万、二十万の、父兄の血の出るような金がすべりどめのために使われておる。これは学校としては不労所得であります。こういうことは教育者のやることではない。教育の場で行なわれるべきことではない。たとえば学債なんかは借金であります。学生が卒業するときに返す金であります。そういうものすら、入学しないのにかかわらず返さないところも間々ある模様であります。予期せざる病気、事故、死亡の場合でも返さない。こういうのは不届きではありませんか。このすべりどめによって不労所得を得る私学というものは、これによって実に膨大な収入を得ている。いま大学受験者はどうでございましょうか。全国で百数十万にあがるでありましょう。その百数十万の諸君並びにその父兄が、血の出るような金で、入りもしないところへすべりどめとして納めざるを得ないということは、これは法理論はともかくとして、考えなければならぬ問題ではないかと私は思うのであります。文部大臣の御意見を伺いたい。
  66. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 お答え申し上げます。  御指摘の問題は、われわれの感覚からいたしましても、確かに問題点であろうかと思うのであります。地方の高等学校等におきましては、いろいろくふうもいたしておる向きもあるようでございます。ただ、この問題は、やはり大学の入学者を募集する際の条項として、いろいろ規定せられておるところでございます。ただいまのような問題につきましては、今後の問題として、われわれとしましてももちろん関心は持っておりますけれども、当面の問題といたしましては、やはり自由意思で入学を取り消す、このような場合におきましては、当事者間の話し合いによってきめていただきたい問題と、このように考えておる次第であります。
  67. 横山利秋

    横山委員 まだ方法は、文部大臣、いろいろあると思いますよ。  昨年でありましたか、高校の問題で、これが訴訟になりました。訴訟は取り下げましたけれども、試験期日を変えたり、合格発表の日にちを変えたりして、高校関係においては相当問題が解消したのです。なぜ大学をやらないか。大学の私学の皆さんに、この問題の協力を願って、少なくともすべりどめが、無造作に、いかなる場合も返さないというようなばかげたことはやめさせるべきだ。そうして入学時の納める金を必要最小限度に、授業料なんかも一年といわずに、半年ないしは四カ月というように圧縮させてもできるはずだ。またいかなる場合も返さないというのはおかしい。予期しない病気だとか事故だとか死亡だとかいう場合には、当然民法上からいっても私は、返させる価値がある、こう思う。一がいにあなたは、情はわかるけれども、方法はないということでは、研究不足だと思う。方法を考えて、このすべりどめについて善処されることを望みたいと思うのですが、重ねて答弁を伺いたい。
  68. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私は、合格者がその自由意思をもって入学を取り消した、このような場合における取り扱いにつきましては、大学と合格者との間の取りきめでもって決定してしかるべきじゃないか、このように考えますが、いまおっしゃいました、例示せられましたような問題につきましては、確かに検討を要する問題でございますので、十分今後、私学関係者との間におきましても、話し合いをしてみたいと存じます。   〔藤枝委員長代理退席、委員長着席〕
  69. 横山利秋

    横山委員 次に、税制について伺いますが、まず端的に総理大臣から。  昨年の臨時国会で、私がだめを押しました百万減税、これは院の決議である。所得百万までは減税するという決意に変わりございませんか。
  70. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たしか四十五年度までということだと思っておりますが、この約束いたしましたことは、忠実に実行に移します。
  71. 横山利秋

    横山委員 一月三十一日の本会議で、あなたはこういうことを答えています。「今日までは所得税の減税もいたしておりますが、今後ともこれらの点が長続きするとは私は考えませんので、これらの点についての国民の御理解、御協力を切にお願いする次第であります。」これは所得百万減税とどういう関係をお持ちでお話しでございますか。
  72. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの、所得百万円減税、これも公約でございます。しかし、これを実施した暁において、さらに百三十万とか百五十万、それまで減税しろ、こういうようなお話が必ず出るだろうと思うのです。しかし、一方で社会保障の充実を非常に強く要望されております。これらのことを考えますと、私どもやはり国家的な財源を必要とする、かように考えます。だから、そういう財源を必要とするという点で、やはり国民諸君の理解もぜひ得たいと思います。これは国民所得に対する各国の税並びにただいまのような社会保障その他の負担、そういうものを考えると、日本の場合はなお低い、私はかように思っておりますので、これらの点で十分理解していただくことが必要だ、かように思います。
  73. 横山利秋

    横山委員 税制調査会の会長代理がお見えになっておりますので、苦言を呈しながら、御意見を伺いたいと思うのであります。  明年度は九千五百億の自然増収がある。それにかかわらず実質減税はゼロ、何としてもこれは国民が納得しない。増収するにしても、酒、たばこ等の大衆収奪以外にやりようはほんとうにないのであろうか。これは検討していないのではないか。しかもこれは税制調査会の自発的意思でない。明らかに政府に追い込まれて、これはしたのではないか。新聞が、世論が何と言っているか、あなたは御存じでございますか。これは新聞のコラム欄のところでありますが、一番あなたに聞いてもらいたいことだけを申し上げますと、つまり審議会というものが、米価審議会をはじめ政府の御用機関になりそうだ。「代表的なのが税制調査会である。この民間の衆知を集めたような形をとっている委員会も、いまは全く大蔵省主税局のご用機関に落ちぶれたかの観を呈している。税制というものが、専門的な知識を要することにつけこんで、元主税局長といった委員が、役人とナレ合いで減税案もしくは増税案をつくって会議をリードし、調査会は主税局の意向どおりの答申をして能事終われりとしている。そうみられても仕方のないような経過である。米審は税制調査会のテツをふまないようにしてもらいたい。」こう言って、あなたのところを引き合いに出しているわけであります。名前は少し言いたくないのでありますが、あなたの同僚委員の中でも、特に今回のこの税制措置については、ふんまんやるかたない発言をしている人があります。これでは国民の期待にこたえる税制調査会とはいえないのではないか、こういうふうに私ども考えております。百万減税は、昨年水田蔵相並びに当時の主税局長塩崎氏が大蔵委員会に出てまいりまして、四十五年の百万は、この物価値上がりでは八十九万の価値がない、こう言って説明をされている。  あなたに聞きたい焦点は、一体四十五年百万ということが物価調整減税に終わる、こういうことでいいのかどうかということであります。で、この昨年の、四十五年の百万が八十九万の値打ちしかないということは――明年度が四・八だと思わない時代であります。この調子でいきますならば、結局私の推算するところ、四十五年は、百万の値打ちは八十五万だと思っている。そうすると全くこの百万減税は、これは実質価値、実質減税は何もないという結果に終わりそうだ。だから、ぼくらは百万減税は直ちにやらなければもうだめだ、四十五年の百万減税は無意味だ、こういうような主張をしているわけであります。この点について、率直にあなたの御意見を伺いたい。
  74. 松隈秀雄

    ○松隈参考人 お答えを申し上げます。  税制調査会が、昭和四十三年度の税制改正について答申を取りまとめまして、内閣総理大臣に提出いたしたのでございますが、四十三年度の税制改正を審議するにあたりまして、最近の経済、財政状況を参考にしまして案を練ったことは、御承知のとおりでございます。なるほど自然増収は九千五百億円程度ございますが、財政硬直化で七千億円程度の金が必要になる。残りで減税も行なわなければならぬ、積極的な施策も行なわなければならぬ、こういうことからして、四十三年度の減税財源が非常に少ないということは、大蔵当局の説明も聞きまして、委員の頭に相当強く植えつけられておる、そういう状況で審議いたしたのでございます。その中におきましても、所得税減税はぜひ実行したい、こういう意見が多数を占めましたので、まず所得税の減税について千億円程度の案を先に審議をいたし、そのまま千億円程度の純減税にしたほうがいいか、何か現在の税制のうち不合理であるものについて調整を加えて、そこに減税財源に見合うような増収を得るものがあれば、これをあわせて実行するかどうかということについても検討をいたしました。その際問題になりましたのが、酒の増税とたばこ値上げでございます。御承知のとおり、酒税は原則として従量税になっておりまするので、最近の所得水準あるいは物価水準等から税負担の関係を見ますると、税負担が引き下げられているような形になっております。これにつきましては、委員の中に、この状況は意図せざる減税が行なわれておるのであって、これを調整することが必要である、こういう論が強まっております。これは今回に限らず、その前からすでに出ておる議論でございます。そこで、財源が必要であるならば、その意図せざる減税を排除するということも、この際の財政状況からいってやむを得ないのではないか、すでに四十二年度においてその著しいあらわれであったところの登録税、印紙税の改正を成立していただいておることは御承知のとおり。その当時においてもすでに酒とたばこが問題になったのでございまするが、四十二年度の際には、そこまでの必要はなかろう、こういうことで、たばこについて言及をしましたが、酒についてはそれほどはっきり言ってないのでございますが、四十三年度の税制改正を審議するにあたっては、やはり財政状況を見るならば、酒の増税、たばこ値上げもやむを得ない、こういう意見の方が多くなった。ことに、御承知の財政制度審議会が開かれまして、そちらのほうが税制調査会の答申を出す以前に結論を出しておりまするので、それらもかなり税制調査会の委員の方々の考えを支配したのではないか、さように存じますのは、まあいろいろ意見はございましたけれども、全会一致というようなことで答申の取りまとめができたことによっても、その間の空気を御了察願えるのではないか、かように存じます。  税制調査会は、中間答申におきまして、夫婦、子三人の給与所得者について、八十三万円程度に課税最低限を引き上げることを適当とすると答申したことは御承知のとおりであります。そういう答申をいたしておりまするので、先ほど申し上げたような、財政事情のきわめて窮屈なおりからであるにもかかわりませず、四十三年度において課税最低限を約十万円引き上げるという答申をいたしたのでございます。これは四十三年度に関する答申でございますが、さきの中間答申をさらに補足いたしまして、長期の税制答申を、今年の八月ごろまでには、任期の関係もありまして、取りまとめたいと思うのでございます。そのときにおきましては、おそらくこれはまた議論してみなければわかりませんが、最近の物価状況あるいは世論等を反映いたしまして、できるだけ早い機会に百万円ということをいうか、あるいはここ一、二年というか、その辺はまだ議論が詰めてございませんが、私が想像するところでは、ます百万円という目標を掲げ、それをどういう順序でやるかというについて、できるだけ早くとか、あるいは一、二年とかいうようなことが一応の取りまとめではないか、こういう想像をいたす次第でございます。
  75. 横山利秋

    横山委員 大蔵大臣、いまの模様でいきますと、四十五年百万は物価調整減税に終わるという見通しが明白であります。大蔵大臣は、物価調整減税に終わる、つまり所得税は実質減税はなし、こういうお考えでお進めになるのか、それとも実質減税を所得税でやる、そういう意味合いで百万減税をやるというのか、どちらか、この際明白にしておいてもらいたい。
  76. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 もし物価値上がり分だけ課税最低限を上げるということでございましたら、いわゆる減税調整をやるということでございましたら、三百億前後のものになろう、三百四、五十億のものになろうと思いますが、御承知のように、今回の減税だけでも千二百五十億ということでございますから、物価調整減税に終わっているというわけではございません。実質減税によって早急に課税最低限を百万円まで持っていくというのが、私どもの方針でございます。
  77. 横山利秋

    横山委員 もう一つ大蔵大臣に伺いたいのですが、一体たばこは税金ですか。明らかに税金でないですね。そのたばこを税制調査会で検討するというのはどういうことでありましょうか。「税制調査会は、内閣総理大臣の諮問に応じて、租税制度に関する基本的事項を調査審議する。」と法律に明記されておる。一体税制調査会がたばこについてああだこうだということはだれが――あなたが諮問したのですか、総理大臣が諮問したのですか。税制調査会がかってにやったことですが。これは法律に違反している。権限外の問題であります。
  78. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 たばこは税金ではございませんが、間接税と直接税の関係でいろいろ税制を論議する場合には、従来からたばこは間接税として取り扱われてきたいきさつもございますので、今回もこの税制改正のときに、たばこの問題がこの税制調査会で取り扱われたということでございまして、これは間接税の国際的な比較とか、あるいは間接税の国民負担の比率とかいうようなものを論議する場合には、従来からたばこは間接税と同じように扱ってきたことは、日本外国でもそうでございますが、そういう意味で、別に法律にあるわけではございませんが、従来からそういう意味で税として扱って、審議のときには関連扱いをしてきたというのがいままでの実情であります。
  79. 横山利秋

    横山委員 それは少し理屈が通りません。私は税制調査会がたばこの審議をするということを全面的に否定しているわけではない。しかしながら、調査会は租税制度に関する基本事項を調査することに明記されているから、それは所管外だとこう言う。もしもやらせるなら、やらせるように税制調査会の法律を変えるべきではないか。従来やっているからまたやったというんならば、きのうの北山さんの質問と同じように、大蔵省が怠慢ではありませんか。こういうことをやって、あなたのほうは税制調査会なり各種委員会を隠れみのに使っているという気持ちが、そこにあらわれているのです。法律を変えなさいよ。どうしてもたばこを今後やらせるとしたならば、法律を変え、租税制度並びにたばこに関する基本的事項を調査すると変えなさい。どうです。
  80. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 変えればそれは明確になるのでございましょうが、しかし税制を論議する場合に、間接税、直接税の比率とか、あるいは国民負担とか、外国との比較とか、こういうような税制の論議の場合に、たばこが間接税並みに扱われて論議されるということはむしろ自然であって、私は、今度の取り扱いは不当な取り扱いだとは思いません。
  81. 横山利秋

    横山委員 私は法律論でやっているのですからね。従来が悪いと言うのです。もしもあなたが財政収入という立場たばこの議論をせざるを得ないというならば、財政収入は、租税以外にたばこもあるし、あるいは塩もあるし、日銀の納付金もあるし、あらゆるものがあるはずだ。それを全部やるならやったらいい。たばこだけちぎってきて税制調査会でやるということは理屈が通らぬ。やるならやるで、財政収入の調査会というふうにやるなら、それもよろしい。税制と銘打って法律に明記されておるなら、そのとおりにやりなさいよ。これは私納得できません。
  82. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それは明確にしろといえば明確にいたしますが、しかし、租税制度という場合に、たばこの問題がこの審議会において関連的に審査されるということは、実質的にこれは別に間違ったことじゃないだろうというふうに考えています。
  83. 横山利秋

    横山委員 そういうふうなあいまいな、法律に明記されておることを自分かってに適当に解釈して、たばこもやればいいじゃないか、そのうち、日銀納付金もやればいいじゃないか、あれもやればいいじゃないか、こういうことになるのがいかぬと言うのです。姿勢を正して、もしたばこを審議するなら、税制調査会についても、まあついでに調査しましょうでなくて、本格的にたばこ調査をしてもらいたい。本格的にいかにたばこはあるべきかということを堂々と議題としてやってもらいたい。ついでにやらして、法律の所管外ではあるけれどもやりましょうというような、あいまいな姿勢で審議をすべきではないと私は言っておる。法律をかえなさいよ。しからずんば、たばこの別の調査会を設けなさいよ。ひとつ明白にしてもらいたい。
  84. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 やはり税制調査会の任務は、税制に関する総理大臣の諮問に答えることが本筋でございますので、それに関連した問題の審議が行なわれるということは、(「悪いことじゃない」と呼ぶ者あり)これは悪いことではないのじゃないかというふうに私は考えますが、そこまで明確にしなければいかぬというのでしたら、これは明確にすることは簡単でございますが、しかし、現行法によって、こういう国の歳入と関係のある、また、税制と関係のあるものを審議されるということは、別に不自然じゃないだろうというふうに考えます。
  85. 横山利秋

    横山委員 そんなかってな解釈はだめですよ。あなたはそこに立って、与党席からちょっと話があったら、それを援用して弁解しているということは、私は、きわめて不誠意きわまる話だと思う。これはどうですか、総理大臣、明白にしてください。やれと言うならやりましょうと言うなら、やればいいじゃないですか。税制調査会で今後たばこも審議するというなら、堂々と法律を変えてやるべきじゃありませんか。なぜそんなあいまいな態度に終始するのですか。
  86. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私は、法律を変えなければ審議できない事項というふうには別に考えません。当然、税制に関してたばこの定価の問題が論議されるということがあっても差しつかえないのじゃないかと私は思いますが、それを明確にするためには、あるいはこの税制調査会においてはこういうものも随時取り扱うことができるという了解が与えられればいいのじゃないか。別に法律をそこまで変えて明確にする事項ではないのじゃないかと私は思います。
  87. 横山利秋

    横山委員 不満であります。そんなかってな解釈でやっているから、おとといのように財政法についてもいろいろな問題が出てくる。  大蔵大臣、次に伺いますが、閣議で予算決定してからいろいろな問題が起こりました。まず第一に、経済見通しが変わりました。総生産を押えたということが起こりました。国債の五十万までは免税が、予算の閣議決定後に行なわれました。これで二億数千万の歳入減でありますね。定期割引運賃がまた運輸審議会で変われば国鉄の収入にも変化を来たす。その後、自動車取得税についても税率が最終的に確定をいたしました。これは予算案の内容が変わったことを意味すると私は思う。これは予算案をわれわれの前に出しておいて、そしてそのあとで予算案に修正を加うべきような点を続々おやりになっておる。この点について予算を修正すべきではないか。どうですか。
  88. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 歳入が大きく変化するというような問題でございましたら、当然そうしなければならぬと思いますが、今度変えましたのは、国債の利子についての少額非課税の適用というような問題でございますが、金額的に見てきわめて小さいものでございまして、別に予算に変更を加えなくてもこれは運営できるというふうに考えて、別に……(横山委員「予算は百万単位で上程されておる、何が少ない」と呼ぶ)まあ、歳入についてとにかく大きい変化を与える金額ではないというふうに私ども考えております。
  89. 横山利秋

    横山委員 大蔵大臣として全くそれは納得のできない態度ですね。予算は百万単位から精細にわれわれの手元に出しておる。そのあとで歳入減が明らかに起こっておる。そしてその法律も出ようとしておる。そういうときに、われわれの手元にある予算案と内容が、すでにその後の閣議決定その他で変わっているではないか。だから、予算は当然その後の変化によって修正がさるべきことではないかと私は言うのです。それを、まあ、まあ、まあいいじゃないかとは何ですか。冗談じゃありませんよ。まじめな態度じゃありませんよ。予算が決定したあとに予算案の内容に修正を加うべき点があったとしたらば、予算を修正すべきだ。そうでなければ少なくとも、その後予算案の内容に修正を加えました点はかくかくのことです、影響があります点はかくかくのことですといって、政府はみずから予算委員会にその内容変更の事情並びにその金額、それらについて当然上程すべきだ。
  90. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 税制は当初閣議できめた以外にその他ということを予定しておりまして、したがって、これが私どもの論議の中ではやはりその他の中へ、実は一億円以内くらいの問題では随時、閣議後といえどもそういう新しい税制もつくれるということを見通して予算には組んでございますが、これがそれをこすようになるとやはり問題がある。いろいろ審議いたしましたが、七千万円くらいの問題で済むということを考えましたので、大体当初予定した一億円以内の中にこれが入るというふうに私ども考えました。
  91. 横山利秋

    横山委員 国債の五十万免税措置は、四十二年度七千万円、四十三年度二億一千万円です。あなた、勘定違いしておるようですね。そうすると、あなたが言っておるように、もう一億をこしておるから当然処置をしなければならぬ。どうです。
  92. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それはあなたのほうが間違いであって、七千万円というのは四十三年度の問題でございます。
  93. 横山利秋

    横山委員 私は主税局で確かめたのです。確かめて、私のところへ書類で来ておる。ここでごまかそうとしてもだめです。私のほうは主税局から書類で来ておる。
  94. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ただいま大臣が仰せられましたとおり、国債の別ワク非課税の措置による初年度減収額は七千九百万円でございます。初年度はつまり四十三年度でございます。
  95. 横山利秋

    横山委員 そうすると、私のところへの報告は二億一千万円といっておいて、そうして、ここでは七千万円、まあそれはあとで一ぺん厳重に整理をしてみます。しかしながら、それをもっていたしましても、私の言う四点――予算は百万円単位でここへ上程されている。だから一億以下ならいい、かりに一歩譲っても、あなたの言うように、一億以下ならいい、一億以上は国会へ報告しなければならぬというのは、だれがどこできめたわけでありますか。あなたのほうで適当に、かってにきめたわけでありますか。そんな根拠がどこにありますか。
  96. 村上孝太郎

    村上(孝)政府委員 御説明申し上げます。  予算に対する議決の性格でございますけれども、議決によって、そこで法律的に意味されるものは、歳出の限度を政府に対して認可する、こういうことでございます。歳入は、それぞれの法律によってきまるわけでございますけれども、いまおっしゃった金額については、所得税その他いろいろな税収入の見積もりの中で、いま申し上げましたように、一億円程度のものは、いろいろな税の収入が集まって、ああいう見積もりになっておるわけでございますから、そういう調整要素によって、いまおっしゃいましたような小さな歳入の見積もりのそごは、歳入全体としては欠陥を起こさないように措置するようになっておる、こういうことでございます。  それから、先ほど、予算のきまりましたあと見通しが変わるということをおっしゃいましたけれども、これは予算の全貌がきまりましてから国民経済計算の各項目の需要もはっきりするわけでございますから、そこで最終的な経済見通しができる、こういう関係でございます。
  97. 横山利秋

    横山委員 あなたの答弁と大蔵大臣の答弁と違いますね。私の聞いているのは、大蔵大臣の言う一億円以下なら報告しなくてもいい、一億円以上ならまあ報告しますという根拠を伺ったのです。いまの主計局長お話は全然見当外、場違いのお話だと思うのです。事務当局と大臣と意見が違いますが、どう考えたらいいのですか。
  98. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ただいま主計局長から御説明申し上げましたとおり、税制の収入につきましては、予算の収入の見積もりとして国会にいわば予算の参考として提出をいたすわけでございます。これは議決事項ではございません。歳入は見積もりでございます。  しかし、ただいま問題になりました点は、従来から、御承知と思いますけれども、租税についてはこまかい規定の整備等がございまして、その他所要の規定の整備を行なうということを常に要綱でもうたっております。それに応じた、予定した収入を計算をして見積もりをつくっておりますので、今度の見積もりはそれが入ったところでできておったわけでございます。したがいまして、御承知のとおり、あの制度をつくる場合にもかなりの無理がございますけれども、その規定の整備に必要な予算額の範囲内にとどめるということで確定をいたしたわけでございます。したがいまして、歳入見積もりとしては間違いないものであると申すことができると思います。
  99. 横山利秋

    横山委員 そんなかってな理屈がありますか。国会へ出す予算案というものは、閣議で最終決定されたものが出される。閣議で予算が決定したあとで、国債の五十万免税がきまった。それで減収が生ずる。ところが、主税局長の話は、それはもうすでに前に織り込み済みだ。じゃ織り込み済みである予算案というものは、まだ閣議で決定してないものを織り込んだ、こういうことになるのですか。同時に、いま言いましたように、一億円以下なら国会に報告せぬでもいい、一億円以上なら国会に報告しなければならぬという財政法の根拠を何としてもあなたはおっしゃらない。これは一体何ですか。
  100. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 根拠がある問題ではございません。先ほど私が言いましたように、歳入の見積もりにおいて若干のそういう問題を予想した金額というものを最初から予定している、その予定している金額が、いま説明されましたように、大体今回の場合は七千九百万でございますが、これが非常に多い予定というようなことは問題でございますので、したがって、事後にこういう問題が起こったときにどの辺までの財源変更があるかということを私どもは非常に重視しまして論議したときに、少なくとも一億円以上の食い違いがあってはいかぬというようないろいろな問題が出たということを申しておるのでございまして、結局七千九百万のことは、当初からそういう整理のときに予定されておるものだということでございますので、差しつかえないと思ってああいう措置をとったということでございます。
  101. 横山利秋

    横山委員 それはあなた、自分でも説明がしきれないでしょう。閣議で予算が決定した、そのあとで閣議を開いて歳入歳出に関係のあることを決定して、したがって、当初やった予算案について修正をしたということだ。その修正したことについて、あなたは自分の独断をもってらしいけれども、一億円以下なら国会に報告せぬ、一億円以上なら国会に報告をする、そういうかってな判断をしておるということは迷惑千万です。国会軽視もはなはだしいじゃありませんか。国会軽視もはなはだしいですよ。少なくとも予算案が決定した後、予算案に変更を生ずるような歳入歳出があった場合には、予算を修正するか、国会にこれを報告すべきが当然ですよ。やりなさいよ、それを。
  102. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私があれをきめるときの内輪の話をしたことが、かえって混乱しておると思いますが、さっき主税局長が説明しましたように、歳入の見積もりのときには、その他いろいろのことが起こりますので、若干の余裕を持っておる、その余裕の範囲内でいくのならこの新しいそういう制度を入れてもいいと思ったのですが、その余裕の範囲内という、その余裕というのがどれくらいかということで、私があまり大きい金額の変更になるのでは困るといって、これは私のほうからいろいろ事務当局に質問してこの問題を審議したのですが、いま言った程度のものなら、最初から歳入の見積もりの中にこれだけは見ておるからこの程度のものならいいということでしたから、それに合わせてこういう措置をとったというのが、これをきめるときの実情でございます。
  103. 横山利秋

    横山委員 きめるときにこの程度ならという程度が、そういう判断がいかぬというのですよ。私はいまや金額の問題じゃなくて財政法及び国会に対する政府の態度について指摘しなければならぬ。予算がきまってから予算に修正を及ぼすような内容の変更をしたときには、予算を修正するか、国会に報告するのが当然だ、こう言っておるのです。それを、この辺ならまあいいだろう、この辺なら国会に報告しなければならぬ、そういうかってな判断をされるということは、国会を軽視するもはなはだしい、予算委員会に対して不親切きわまる、ばかにしたやり方ではないか、こう言っておる。その辺の理屈をはっきりしてもらいたい。
  104. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いま言ったように、大きい変更をするということでしたら確かにそういう問題が起こりますので、私はそのことを心配して、これはやれることかどうかの検討をいたしました。そうしますと、さっさ申しましたように、歳入の見積もりの中に七千九百万程度のものならいろいろその他のものとして一応見てあるということでございましたので、その範囲内におさまる措置をとったということでございます。かってにやったというわけではございませんで、もうすでに国会に提出した歳入見積もりの中にそれだけのものが見られるということでございましたので、こういうふうにきめたというわけでございます。
  105. 横山利秋

    横山委員 委員長、これは委員長も予算委員会の委員長として御判断を願いたいのです。結局、最終的に大蔵大臣の言っていますのは、この程度ならいいじゃないか、これから上は報告をする、こういう判断です。その判断は大蔵大臣にまかせらるべき問題ではないと私は思う。予算委員長として、予算委員会の権威に関する問題であるから、あなたにもひとつ御判断を願いたいと思う。
  106. 井出一太郎

    井出委員長 それじゃ、もう一ぺん大蔵大臣からお答えがあります。
  107. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私が申しましたのは、さっき言いましたように、一億というのは根拠のあるものではございません。これは御了解願いたいと思います。きめるときに私から質問したことでございますので、根拠はございませんが、七千九百万というのは、当初歳入に予定されておったものの範囲内ということでございますので、こういう措置をとったというのでございますが、もしその間のもう少し詳しいことを御質問でございましたら、あらためてこれは書いてお出ししてもよろしゅうございます。
  108. 横山利秋

    横山委員 それでは、いま大臣が御答弁されましたように、今後の問題でも大事でございますから、予算が閣議で決定をしたあとで予算の内容に変更を生ずるような場合は、予算を修正すべきか、あるいは変更を与えた事情、数字その他を国会に提出すべきである、こういうふうに私は理解をし、その意味において大蔵大臣が今回のことについて資料を提出する、こういうふうに考えてよろしゅうございますか。――はい、わかりました。  それでは、次に進みます。一月三十一日、山内君の質問に対しまして、総理大臣は「配当分離課税についてのいろいろの御批判がございました。しかし、こういうような制度は流動的に絶えず改廃をしていくのでございますから、今日の状況で、いつまでもこれを守っていくというものではありません。」こういう答えをしておられるのであります。私は、本会議の席上におきましてこの発言に対してたいへん重視をいたしました。私どもはかねてから、配当分離課税について、これは租税の公平を乱すものだ、こういうことを強く強く主張をしてきたところであります。こまかい一例で恐縮でありますけれども、こういう例をあげましょう。  庶民的な例でありますが、妻の内職はいま二十万円まで非課税であります。奥さんが内職をしている場合は二十万円まで去年から非課税になりました。こえたら扶養家族でなくなるのであります。二十一万円も内職をやっておったら扶養家族でなくなるのであります。ところが、配当を受けておる奥さん、百万でも二百万でもいい、配当をもらっておる奥さんは、どれだけもらっても扶養家族で済ませるのであります。これは分離課税の明らかな庶民的な欠陥であります。分離課税は、かくのごとく随所に問題を提起しておる。本年度の例でありますが、標準家族、二百二十六万円もらっておる五人家族は、配当の場合国税はゼロであります。地方税を含めましても四千九百円にしかすぎません。勤労所得の場合、年間二百二十六万もをらっている場合には、驚くなかれ四十万五千円の国税、地方税の税金であります。事業所得の場合は五十一万八千円、まさに四千九百円と五十一万八千円のこの不公平というものは、何としても庶民の中へ落ちないのであります。租税の公平を貫かずして納税者の真の協力を得ることはできません。労働をして得た金の税金は高く、労働せずして不労所得で得た所得の税金が驚くべく安いということは、これは何たることでありましょうか。なるほど分離課税、配当や利子の理屈はある。理屈はあるけれども、このような状況はいつまでも続くべきではないという総理の発言に私はたいへん共鳴しておるわけであります。ただ、私があの本会議の席上で不安に感じましたのは、あれは一体総理はどういうつもりで言われたのであろうか、山内君に対して、まあまあ適当にひとついいことも少しは言おうという、そういう意味で言われたのか、ほんとうにこの際配当や金利の問題の課税についてメスを入れるという決意であなたがおっしゃったのであるか、この際明白にしてもらいたい。
  109. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 横山君もよく御承知のように、税の場合にいつも問題になりますのが租税特別措措、それがいつも問題になります。おそらく、ただいま言われるように税は公平で、また同時に中立性を持たなければいかぬ、こういう点に重点を置いての考え方で、ただいまは特別措置が問題になるのだと思います。しかし、ただいまのように税そのものが、公平あるいは中立性といいながらも、一方でときに政策的な減税を必要とするものもございます。しかし、その政策的減税というものがいわゆる慢性化するとかあるいは既得権化するとか、こういうことは避けなければなりません。だから、その目的を達したら、そこでその税制は変わっていく、税率を変えるというのが、これは当然だろうと思います。私がお答えしたのはそういう意味でございます。  これは一体いついつまで、この税を――あるいは貯蓄減税を行なうとか、あるいは特別な輸出減税を行なうとか、こういうものではございません。そのときどきの政策減税でございますから、実情に応じてその処置をとるべきだ、それも、しかも、政府だけでなしに、税制調査会その他の意見も十分伺いまして、そうして、税のあり方が公平であるように、また、中立性が保てるように、その方向へ持っていくべきものだ、かように私は考えております。
  110. 横山利秋

    横山委員 総理、もう一つ突っ込んでお答えを願いたいのであります。  あなたは衆議院の本会議で、「今日の状況で、いつまでもこれを守っていくというものではありません。」とお答えになった。つまり、これは廃止さるべきもの、分離課税は総合になるべきものとしての総理大臣の見解を御披瀝になったものである。そうでなくして――あなたも、失礼ながらいつまでも総理大臣をおやりになっておるわけでもあるまいと思う。総理大臣として、この配当分離課税はいつかはなくなるものだという自分の意思表明をなさったならば、在任中におやりになるのが当然の政治的責任だと思う。本年度の税制調査会へ総理意思としてこれをかけられるお気持ちはありませんか。
  111. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま抽象的に私は基本的な考え方を述べました。ただいま問題になっております分離課税の問題は、期限があと二年ある、かように理解しております。どういうように処置をしたらいいか、その問に十分考えるということでございます。
  112. 横山利秋

    横山委員 どういう措置をしたらいいかということは、廃止をしたあとにどういう措置をしたらいいかというふうに理解をしてよろしゅうございますね。あなたは、衆議院の本会議で、いつまでもこれを守っていくというものではないと言われたのだから……。逃げられるつもりですか。お逃げになるつもりですか。あなたは、本会議で言ったことはそういう意味で言ったことではないと、また言をひるがえされるつもりですか。ここのところは佐藤さん、英断をふるって、いまあなたのおっしゃったように、租税の公平、中立のために――これが一番の財政硬直化、歳入硬直化の真の原因ですよ。ここへメスを入れずして租税の公平は期しがたい。ここへメスを入れることによって、他は千波万波を呼んで、租税は簡素化され、租税は公平になり、租税はわかりやすくなるのですよ。あとのことは「てにをは」ですよ。これだけ長年政治的な課題になってきたものに対して、あなたは、これをいつまでも守っていかないと、初めて総理大臣として明言された責任をとってもらいたい。
  113. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 横山君と私と立場が違うようですが、私は政策減税というものはあり得るという考え方です。だから、全然それを否定してかかったような考え方に私は賛成しない。したがって、いま二年の間の期限がございますから、その間にどういうようにするかということを考えればいいということを申しておる。ただいま言われるように、廃止してしかる後にどういうようにするかということを考えろという、これはこの税制を認められない考え方、私はかように理解したのです。しかし、この税制も一応理解した、とにかくわれわれは反対はしたがそれが成立はしたということを社会党の方もお認めになって、そしてこの制度を存続するか存続しないかということを考えるべきじゃないか。やめてしまった後にその処置を考えろというのでは、私はどうも政策減税を否定されている、かように理解します。
  114. 横山利秋

    横山委員 あなたはまだ私に率直にお答えになっていないようであります。私も政策減税が全然必要ないとは言っていません。しかし、いまの課題は、配当分離課税についてあなたに真意を聞いているわけです。本会議であなたは、いつまでもこれを守っていくものではないとおっしゃったのだから、そうであるならば、税制調査会に本年諮問して、その廃止をしたあとにおける問題はどうあるべきかということを相談をするというなら話はわかるけれども、廃止をするかぜぬかわからぬということでは、本会議で言ったことはあなた何の意味もないことではないか、責任をとらないことではないかと私は執拗に言うのです。本会議で言ったことがあなたのほんとうに真意であるならば、この方向に沿って総理大臣としては処置をしなければならぬではないかと言っている。
  115. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私が本会議で答弁したことは私の考えでございますが、間違っておりません。いまでもその考えを変えるつもりはございません。だからこそ、ただいまお答えしておりますように、二年間期限があるのでありますから、その二年間の期限の到達する前にいかに処置するかを考えるということを申しておるのであります。  ただいまそれを廃止するか廃止しないか、また存続するとしたらその税率がどういうようになるのか、いろいろ研究する問題があると私は思います。その処置がとられて後に、特別な財源の欠陥をどういうように埋めるかとか、こんなことはまた別の問題です。だから私がお答えしておること、私の考え方には矛盾はございません。どうかひとつ御理解をいただきたい。
  116. 横山利秋

    横山委員 もう一問かそこらでやめますから。総理大臣、いまになって本会議の答弁が右を向いているか左を向いているかわからないような御答弁をなさるということは、いささか私は総理大臣の誠意を疑うのであります。この際、ひとつ十分に検討をされて、この分離課税の問題についてメスを入れられるように強く私は要望したいと思うのであります。  最後に、この来年度九千五百億の問題が租税行政面にどういうふうにあらわれるかという点を一、二指摘いたしまして、大蔵大臣の見解を伺いたいと思うのであります。  一昨年でありましたか、私はここで租税のあり方によって一人の自殺者が出た、こういう指摘をいたしました。昨年も名古屋で自殺が生じました。遠く東北地方へ行って調査の過程で自殺をした人があらわれました。  つい最近、上野市で、ノイローゼの患者として税務署で知られておる職員が徴税の非常なプレッシャーにかかって、上野市の市役所へ行きまして、女の子を調査関係でぶんなぐった。上野市の市議会は満場一致税務署長に対して陳謝の要求を文書でよこせ、こういって、上野ではそれこそ上や下への大騒ぎをいたしておるのであります。このノイローゼになって、みんなが知っておる職員までが調査に行かされなければならないような雰囲気が実はいま問題になっておるわけであります。  名古屋の市内のある税務署で、産休の予定の、つまり出産予定で産休をとる女の子が税務相談にかり出された。上の人はどうしておったかといいますと、増差額が少ないから、徴税事務に専念をしなければならぬから税務相談に出れないからおまえ出てくれというやり方で、産休をとる手前にかり出された。とてもえらいからというわけで、産休が許してもらえぬならば有給休暇でやるというて有給をとったのですが、えらいので結局うちにおる、こういう事態であります。私は第一線の税務職員の苦労というものはよくわかるのでありますけれども、少なくとも今日の徴税のあり方について国民の不安が非常に強いのであります。  積年、私はこの際不服、苦情の問題、納税者の苦情処理の問題について十全な措置をしろと言っておるのでありますが、この際、根本的に租税審判所制度を基幹とする苦情処理のあり方について、政府としては根本的に考え直す必要があるのではないか。徴税行政も非常に合理化されあるいはきめのこまかいやり方になってきている。そうだとするならば、その半面、納税者の権利、納税者の苦情処理のしかたについて、思い切って改善をすべき段階である。こういう事態が続出するようでは、また税制の面で先ほど私がるる申しましたような不公平が存在する限りにおいては、納税者の真の協力が得られない、こう考えるのでありますが、大蔵大臣の御意見を伺いたいと思います。
  117. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 この問題は、第五十七回臨時国会でもあなたから御提案がございまして、私どもも何らかの改善をする必要があるというふうに認めて、ただいま税制調査会にこれは諮問している最中でございます。さっき小委員長からお話がありましたように、任期が八月でございますので、できるだけ八月までにこの問題の答申もほしいということを要望しまして、いま税制調査会の検討事項になっておりますので、この結論が答申されると思います。それによってこの問題の解決へ私どもは努力したいと考えておる次第であります。
  118. 横山利秋

    横山委員 私の質問は終わります。(拍手)
  119. 井出一太郎

    井出委員長 これにて横山君の質疑は終了いたしました。  松隈参考人には、御多用なところ御出席いただき、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。  午後は、一時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時十七分休憩      ――――◇―――――    午後一時二十七分開議
  120. 井出一太郎

    井出委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。矢野絢也君。
  121. 矢野絢也

    矢野委員 公明党を代表いたしまして質問をいたします。  二月六日、倉石前農林大臣は、武力外交の必要を説かれまして、あるいは原爆の保持の必要、平和憲法をじゅうりんする重大な発言をされたわけであります。そして、国民の激怒を買ったわけでありますが、このように平和憲法を侮辱する倉石発言は、日米会談以来特に露骨になっております一連の右傾化現象と照らし合わせまして、佐藤内閣の本質と軌を一にするものではないか、このような重大な危惧が国民の間に重くのしかかっておるわけであります。  そこで伺いたいのでありますが、総理は土曜日の委員会で、現行憲法は現時点において改正する考えはない、このように答えておられます。しかし、自民党内には根強い改憲論がある。これはもう周知の事実であります。また党の綱領にもそのようなことがうたってあるわけであります。また土曜日の委員会で、日本の憲法は絶対不変というものではない、憲法第九十六条で改定の手続がきめられており、検討することは自由であろう、このように答弁して、将来には改憲しようとしている意思があるのではなかろうか、このように疑うわけでありますが、将来自民党の方針に従って憲法を変えられようとする御意思があるのかどうか、この点について伺いたいと思います。
  122. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 矢野君もこれはよく御承知だと思いますが、私しばしばこの席から、あるいは国会の本会議の席上あるいは委員会の席上等を通じてわが国の憲法、これは国民とともに検討すべき問題だ、かように申してきております。いわゆる主権在民、その姿におきまして、政府がかってにそれを変えようといったってそれは変えられるものでもございませんし、またさような意図を持つことは、これは間違っております。でありますから私は、土曜日のこの席におきまして政府の当然あるべき態度についてはっきり御説明申し上げたつもりであります。しかし、このことは各人の考え方を拘束するものではありません。政府として現時点においてやることであります。でありますから、ただいまのような点は、誤解はないことだと思いますが、私は、条件が整った暁にこれを改正しようという、そして九十六条の手続によること、これは何ら禁止されておるものじゃない、かように考えます。
  123. 矢野絢也

    矢野委員 いま総理は、条件が整ったときには云々ということを言っておられるわけであります。昨日のNHKの国会討論会におきまして、私も同席をしておったわけでございますが、自民党の福田幹事長は、改憲しないのは三分の二の議席が確保されていないからだと発言しておられるわけであります。詳しく申し上げますと、自民党は立党の政綱で憲法改正をうたっている、いまの憲法は銃と剣で押しつけられたものである、いつの日か自分の手でつくり直そうということだ、佐藤総理も、党の総裁として、いつの日にか改正するという考え方だ、こういったことを言っておられるわけであります。さらに、自民党の議席は三分の二ないので改正したくてもできない、いまはしたがって改正ができないのである、しかし、日本が完全に独立した象徴として、憲法を改正し自主憲法をつくるというのが自民党の意思である、こういう意味の発言をしていらっしゃるわけでありますが、先ほどから、現時点においては変える意思はない、しかし、条件が整えばやるという非常に気になることばがあったわけであります。  そこで伺いたいのでありますが、その条件、たとえば自由民主党が三分の二の議席をもしかりに確保されたときには、総理は憲法をお変えになる意思があるのかどうか、このことについて伺いたいと思います。
  124. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お尋ねの、三分の二の議席を持ったらそのとき改正するか、それだけでは改正はできません。これはもうはっきりわかっておるだろうと思います。わが自由民主党の綱領にもございますが、その他の政党にもやはり憲法改正の綱領があるんじゃございませんか。私は、そういう点がやはりどこかにあるように、また話を実際聞いておる。(「どこの政党だ」と呼ぶ者あり)資本主義憲法はこれを改正しなきゃいかぬ、これはもうかつて私どもこの耳り残り、今日あるのでございます。私は、そういうことでなしに、国民自身が憲法改正の必要を認め、そして国民から立ち上がった場合、そのときにはやはりわれわれは政府としてその負託にこたえる、これは当然ではないか、かように思います。したがって、ただいま三分の二というそういう形式だけではとやかく考えてはおりません。誤解のないようにお願いしたい。
  125. 矢野絢也

    矢野委員 どこの政党かということをおっしゃっておられますが、それは私の質問の意味を取り違えておっしゃっておるようでございます。  そこで、私は申し上げたいのでありますが、土曜日のあなたの御答弁におきまして、九十九条においては国務大臣は憲法を擁護する義務がある、しかし、九十六条においては改正する道が開かれておるんだ、こういう意味のことを言っておられる。全くそのとおりだと思いますが、先ほど、三分の二の議席ができたからといって憲法は変わるわけではない、このようにおっしゃったが、私が聞いておるのは、変わる変わらないはあとの問題としても、そのような発議をされる意思があるのかどうか、このことを私は聞いておるわけであります。いま一度御答弁を願いたいと思います。
  126. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 九十六条、これでは、改正の手続は国会にある、発議の手続がある、また、九十九条、これはもう誤解ないだろうと思いますが、天皇、国務大臣、国会議員、その他も憲法を守らなきゃならぬとはっきり書いてあります。
  127. 矢野絢也

    矢野委員 私たちは自民党の内部問題にまで立ち入る気持ちはございませんが、あなたは内閣の首班であると同時に自民党の総裁でもあるわけであります。したがって、あえて伺いたいわけでありますが、あなたは今後とも平和憲法を守る決意である、このように言っておられる。しかし、これは、土曜日のお話では、現時点においては、という条件がついておる。あなたが総裁である自民党の使命の一つともいうべき憲法改正の政策、そして内閣の首班として憲法を守っていくというこのことばに矛盾はないかどうか、そのことをあらためて伺いたいのであります。
  128. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は別に矛盾を感じておりません。現実の問題としてはどうするということを私はただいまお答えしております。でありますから、綱領はどうあろうと、現実の問題が問題である限りにおいて、そこは御心配なさらないように、私の考え方には微動もございません。
  129. 矢野絢也

    矢野委員 それでは重ねて念を押したいのでありますが、現在は内閣の首班である、総理である、したがって、九十九条の規定によって総理は憲法を守らなくてはならない、しかし、それは現在有効とされておる憲法である、こういう意味だと私は思うわけであります。しかし、現在のこの憲法は、九十六条の定めによって将来改正される道が開かれておる、自民党は綱領で改正する意思がある、こういうふうになるわけでありますが、本質的にあなたは護憲論者なのか、あるいは改憲論者なのか、このことについて簡単にお答えを願いたいと思います。
  130. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私が改憲論者か護憲論者か、そういうことも一つの問題でしょう。しかし、私、総理としてただいまお答えすること、また、土曜日に申し上げましたように、現行憲法が存在する限りこれを守るというのは、これはもう当然のことであります。私が護憲論者であろうが改憲論者であろうが、その点に狂いはございませんから、そういう点で、私の答えをひとつ御了解、御理解いただきたいと思います。まさか矢野君にいたしましても、私の思想の内容にまでついてとやかく言われるつもりはないでしょうが、その点はお預けを願います。
  131. 矢野絢也

    矢野委員 要するに私が申し上げたいことは、私は憲法を実は変えたいのだ――勘違いしてもらっては困るんで、私はというのは佐藤さんのことですけれども、変えたいのだけれども、現在総理であるがゆえに、九十九条の定めによって、変えたくてもそんなことを言い出すのはちょっとぐあいが悪いのだ、しかし、そういうふうに憲法を守ると言っておるのは、いわば不本意ながらしぶしぶそう言っておるのであって、本心は自民党の綱領にある改憲論者なのかどうか、そういう意味で私は伺っておるわけであります。
  132. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私もやはり自民党の綱領を忠実に守ります。だからしたがって、綱領と全然反対考え方は持っておりません。しかし、その中身はどういうことか、これについては、自民党の中でもいろいろな議論がありますから、その意見がまだ統一されたというものではございません。同時に、私は総理として現実の問題でどうするのか、こう言われれば、先ほど来答えておるように、現行憲法が存続する限りこれを守る、この点に間違いございません。
  133. 矢野絢也

    矢野委員 ですから、私がいま申し上げておるように、その総理としてのお考えは、不本意ながら九十九条の定めによってしぶしぶそう言っておるのかどうか、本心は改憲論者なのかどうか、それを私は聞いておるわけであります。私は、あなたのおっしゃるように、あなたの思想の内容までとやかく批判するつもりはない。しかし、改憲論者でもなければ護憲論者でもない、そんなおかしな話はないと思うわけであります。だから、総理としてのお立場はともかくとしても、あなたの政治姿勢といいますか、政治的信条として改憲論者なのかどうかということを伺っておるわけであります。
  134. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私はしぶしぶ守っておるわけでもありませんし、いやいやに口をつぐんでおるわけでもありません。ただいま申したように、自民党員としての私が綱領を守るというそのことと、今日総理として現行憲法を守るということは、別に矛盾はしていると思いません。私、先ほど来申しますように、憲法がその所要の手続を踏んで改正されれば、これは何をかいわん、それに従うのは当然であります。また、しからば、改憲、その改憲はどういう方向か、こういうことになってのお尋ねならば、先ほど申したように、まだ党内できまっておらないとはっきり申し上げます。
  135. 矢野絢也

    矢野委員 どうやら話がかみ合ってないようでありますけれども、最後に念のためもう一度伺いたいと思います。  一つは、憲法改正の能力といいますか、具体的に言いますと、福田さんの言っておられる三分の二の議席があればどうのこうのということであります。そのような能力があれば変える意思があるのか、たとえそういう能力ができても憲法は変えない、そういう御決意なのか、その点、最後にお尋ねしたいと思う。
  136. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま三分の二という議席の数が問題になっております。これが国民の改憲を要望する数であれば、これは私どもは勇気を持って改憲に踏み出す、これは当然であります。しかしながら、三分の二がどういう理由で与えられたか、そこがはっきりしなければ、ただ三分の二の数だというだけで、われわれは軽挙盲動はしない、かように御了承いただきます。
  137. 矢野絢也

    矢野委員 国民の声がそういうことであればという条件をつけておられますが、これはしばしば現在まで政府が使ってこられた口実であります。したがって、いまのお話は、三分の二の議席を得た暁には、自民党の綱領に従って憲法を変えることに踏み出す、こういうお考えである、このように了解したいと思います。それについていま一度伺いたいと思います。
  138. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来私が申し上げたので、国民の皆さまが、この席を通じて聞いていらっしゃるから、よもや間違いはなさらないだろうと思います。ただいま矢野君のように、三分の二持ったら改正に乗り出すんだ、こう言ってきめられることは、自民党とすれば、たいへん迷惑するだろうと、はっきり申し上げます。
  139. 矢野絢也

    矢野委員 この問題は、総理がおっしゃるとおり、国民が判断することであります。あなたが先ほど、総理としては憲法は守るけれども、しかし、自民党の総裁としては党の綱領に従う、こういうまことに矛盾した御答弁に対して、国民がどのように判断しておるかは、これはもう自明のことであります。これは国民の皆さんに御判断をまかせることにしたい、このように思います。  次に、問題を変えたいと思いますが、沖縄問題について伺いたいと思います。  沖縄米軍基地が極東の自由諸国の安全保障に重要な役割りを果たしておる、こういう認識は、あなたが去る四十年に渡米されたときに、ジョンソン大統領との共同声明で確認しておられるところであります。ところが、昨年十一月、再び渡米されたときには、この四十年の声明と異なりまして、さらに進んで、沖縄米軍基地日本安全保障のためにも重要な役割り――バイタルロール、つまり死活的に、生きるか死ぬかというほど重要な役割りをこの沖縄米軍基地日本の安全のために果たしている、こういう立場をとっておられるわけであります。私が申し上げていることは、四十年のときには単に極東の自由諸国の安全、昨年では極東の自由諸国並びに日本の安全、日本ということを追加しておられることを申し上げておるわけであります。このような主張は、アメリカが従来主張しておったことである。沖縄日本のためにも重要なんですよ、こういうことはアメリカが従来言っておった。公式、非公式にアメリカ当局が言っておったことであります。  そこで、佐藤総理日本総理として初めてこのアメリカ考え方に全面的に同調された。これはいかなる理由で、今般進んで、沖縄基地日本の安全のために重要であるということを特記されたか、この事情について承りたいと思います。
  140. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まあ表現あるいはそのニュアンスの相違はありましても、四十年に私、参りました際のジョンソン大統領との話で、とにかく安全に米軍の抑止力が寄与している、しかも、その点は、極東アジアの諸国と、かようには申しますが、この極東の平和と安全、これにわが国もたいへん密接な関係を持っております。その関係から見れば、私は、アメリカ基地が果しておるその役割り、その抑止力、これは私どもアメリカと同じような立場でこれを評価するということであります。ただ、相違いたしますのは、アメリカ側においてはうんと広い範囲を考えるかもわかりませんけれども、私どものいま考えられるものは、極東諸国、同時に日本と、かように私は考えております。
  141. 矢野絢也

    矢野委員 それでは、さらに具体的に伺いたいと思いますが、沖縄米軍基地のどのような機能、どのような役割り日本の安全にどのように役立っておるか、このことを具体的に説明を願いたいと思うわけであります。アメリカ政府アメリカ議会で、沖縄アメリカ基地を置くことがアメリカの安全に役立っておる、こういう説明をすることは、これはアメリカのかってであります。しかし、われわれ日本国民が、日本政府から、沖縄米軍基地がどの程度に、また、どういう意味日本の安全に役立っておるか、これはまだ寡聞にして具体的に説明は伺っていないわけであります。アメリカ当局は、日本の安全にも役立っている。この考え方を、あなたが、私たち国民に対して一方的、独善的に押しつけてはいけない、具体的に説明をされるべきだと思うわけであります。こういう意味お尋ねをしたいと思います。
  142. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 軍の配置状況その他について、あるいは詳細に私のまだ知らない点もありますし、また、知っておりましても、全部を発表する自由を持っておりません。その点は一応前もって御了承おき願いたいと思います。  ただいま日米安全保障条約ができておりまして、そうして日本安全保障は、この日米安全保障条約にたよっておること、このことは御承知のとおりであります。その観点に立って、日本本土における米軍の配置その他はもうすでにそれぞれ部分的には目に見えております。陸兵その他は順次撤退をしておるし、なお、航空部隊にいたしましても非常に数が減っております。また、海軍部隊は、ときどき寄港はいたしますが、常駐しているようなものではございません。しかし、日本に近接する沖縄、ここにはどうもアメリカが強力なる軍事基地を持っておるように思います。言われておりますのは四万五千の兵隊、これは陸、海、空だと思いますが、それが常駐しておる。その他にもメースBがあるとかいうようなことが言われております。同時にまた、これは一朝有事の際には直ちに飛び立てる態勢にあると思います。また、ここが同時にりっぱな軍基地である、補給基地である、こういう立場でもございます。この点が私どもが期待をするアメリカの抑止力ではないかと思う。これだけのものがある。これは戦争抑止力、戦争を始めるとアメリカ自身がどんな行動をとるかわからない、こういうことでございますから、これがいまお尋ねになるような点だと思います。あるいは詳細の答えができない、そういう自由を持っておらないだけにあるいは御満足がいかないかわかりませんけれども、私は、アメリカの抑止力というのはただいま申し上げるようなものでございます。
  143. 矢野絢也

    矢野委員 ただいまのお話では、そのような沖縄アメリカ軍は確かにアメリカの極東戦略の推進には役立つかもわからないけれども日本の安全にどのように役立っておるかということは、あまり詳しくは理解ができなかったわけであります。  そこで、重ねて伺いたいと思いますが、まず、沖縄基地は自由使用になっております。さらに、沖縄に核基地があるということは、これはもういま総理がおっしゃったとおり、これは天下周知の事実である。核基地問題も含めて、沖縄米軍基地は、内地の米軍基地と異なり、いわゆる自由使用基地である。つまり米軍日本政府の事前協議の了解等も必要としないで使用しておる、こういったことが特徴であろうかと思います。そこで伺いたい。沖縄基地に自由使用を認めておる、これはアメリカから見れば戦路上重要かもわかりませんが、わが国の安全にとって、この沖縄基地の自由使用あるいは核を置いてあるということは、わが国の安全にどのような意味を持っておるか、これを具体的にお示しを願いたいと思うわけであります。
  144. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私がジョンソン大統領と話し合った前回四十年の際、アメリカは、日本への攻撃に対しては、いかなる攻撃からも日本を守る、こういう約束をいたしております。したがいまして私は、それはただ単に日本にいるアメリカ兵だけが日本を守るものだとかようには考えてお号ません。沖縄であろうが、あるいはハワイであろうが、あるいはグアムであろうが、あるいは本土であろうが、その兵力をもって日本を守ってくれるんだ、かように私、思っております。そういう意味で、いまの国民の皆さん方は、沖縄日本安全保障上果たしておる役割りはわかっていただけると思います。  次に、ただいまのお尋ねでありますが、自由使用ということ、これは御承知のようにただいまアメリカ施政権を持っております。施政権下にあるところで施政権者が自由な使用をするということ、これは考えられることであります。ただしかし、沖縄というところは潜在主権を日本が持っておる。ここに住んでおる百万の同胞――これは同胞でございます。みんな日本人でございます。そういう意味で、私どもは、施政権アメリカにあるからといって無関心ではあり得ないという状況であります。したがいまして、これについて私ども関心を持っておるということは、もうすでにおわかりだと思います。最近、B52がこの沖縄から発進している、こういうようなことについてもすでに所要の手続をとったことも、これは無関心ではあり得ない、しかし施政権下にあるということは、施政権者の自由だという、そういうことと一致するものでございますから、ただいま申し上げるような潜在主権のある日本、同時にここに住んでおる日本人、それが不安を持ったりあるいは非常に危惧を持ったり、そういうことのないように私どもが処置をとるのは、これもまた当然だとかように思っております。
  145. 矢野絢也

    矢野委員 総理は、日米共同声明におきまして、日本の安全にとって沖縄基地は死活的に重要だとこう言っておられるわけであります。したがって、この自由使用も当然わが国の安全上重要である、こういう立場に立っておられると思うわけでありますが、しかし反面、この沖縄基地が中国を刺激しあるいはアジアの緊張を激しくしておることもこれは看過できないことであります。そこで、簡単にお答えを願いたいが、核兵器も含めて沖縄基地の自由使用は日本安全保障上有益なのか、有害なのか、あるいは必要なのか、不必要なのか、この点について簡単にお答えを願いたいと思います。
  146. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 沖縄米軍基地が中共に脅威を与えておるとこういうお話でございます。私はそれよりも、中共でなくて、日本の安全にどういうような影響を与えているか、これは国民から聞きたいのです。国民の皆さんが心配しているのもそこだと思う。ただいまお話がありましたが、これが有用なのか有害なのか、これは必要なのかどうなのかということは国民がきめる問題だと、かように私は考えております。
  147. 矢野絢也

    矢野委員 当然それは国民がきめる問題でありましょうが、その前に、そのように現在の日本立場を指導しておられるのはあなたでありますから、まずあなた自身が有害と考えておられるのか、有益と考えておられるのか、これをまず御意見を聞いておるわけであります。
  148. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、ただいま沖縄が果たしておる抑止的な働きというか、これはたいへん日本安全保障上役立っておる、かように考えております。
  149. 矢野絢也

    矢野委員 次に伺いたいことは、この沖縄基地の返還後の役割りの問題であります。いまお話のあったとおり、沖縄米軍基地の機能、核あるいは自由使用、とういった機能があなたの言うほど日本の安全にとって重大な役割りを果たしておる、このように考えられるのでありますと――あなたの考え方によりますれば、日本の安全を害することなく沖縄日本に返還する、こういう立場に立ったとすれば、沖縄米軍基地に対して従来どおりの機能を果たさせるつもりがあるのかどうか、あるいはそれにかわる何らかの処置を講じられるつもりであるかどうか、こういう点であります。佐藤総理考え方、基本的に私は正しいと思っておるわけではございませんから、念のためお断わりをしておきたいわけでありますが、要するに現時点における日本の安全に対する沖縄基地役割り、これを返還の時点においてどのように扱われるか、これをひとつ日本の安全という立場からお答えを願いたいと思うわけであります。
  150. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 返還が実現したときの基地のあり方、これは一体どれがいいのか、ただいままで私は白紙という表現をしておりました。これはなかなか評判が悪い。一体どうするのだ、一体白紙とは何だ、こういうことでございます。しかし、私はこの機会に、せっかく矢野君からのお尋ねもございますから、私がたいへんいま悩んでおるその点を少しぶちまけてお話をしてみたいと思います。  私は、いまの米軍の軍基地としてどういうような整備をされておるか、その詳細を実は知りません。さらにまた、この装備というものが絶対不変のものか、もっと軽くできるものか、あるいはもっと重くしなければならないものか、これはアメリカともう少しよくひざを交えて相談してみなければならないことであります。同時にまた、このことはおそらく国際情勢の変化によってもアメリカ考えるだろうと思う。さらにまた、科学技術の進歩によりまして、科学兵器の変動もございますから、それでもきまるだろう。そうして私が先ほど来この機会に申しましたように、国民が最終的にはきめるものだということ、国民の世論の動向に耳をかさなければならない、そういう状況であります。  そこで、皆さん方から、沖縄問題の基地のあり方について直線的な交渉をしろというようなお話にとれるようなお尋ねがしばしばございます。私は、ただいま申し上げるような諸条件筆を考えた場合に、これはどうも直線的に交渉はできないのだ、だからその辺もう少し掘り下げてみる必要があるのじゃないか、それがいわゆる白紙という状況で説明をしておるのであります。でありますから、何を政府考えているかわからぬと言われるのは、私自身があれはまだきまってない証拠でもります。これは私、国民の皆さまとも考えるが、与野党ともにこういう問題と真剣に取り組んでいただきたいと思います。私どものいまの願いは、何といいましても一日も早く沖縄が返還されること、祖国復帰が実現することであります。私はそのために、この祖国復帰ということを実現するためにどういうような条件ならわれわれはしんぼうできるのか、どういうようなことをわれわれは要求しなければならないのか、これをひとつ皆さん方とともども考えてみたいと思うのであります。これはたいへんな世紀の重大事件、日本国民にとりまして重大な案件であります、沖縄が祖国に復帰するということは。幸いにいたしまして、両三年のうちに復帰の時期のめどをつけよう、こういうことにいま取りきめができました。その立場に立って、私は、ジョンソン大統領、米政府日本政府の間で十分胸襟を開いて話し合うべき段階だと思います。いわゆる継続的にやるというのはこういう点であります。そういう際に、私は、沖縄が祖国に復帰する、これも実現したいが、同時に日本の安全、沖縄を含めての安全、これを長期的な観点に立ってきめていきたい、かように思います。
  151. 矢野絢也

    矢野委員 そこで伺いますが、いまもお話がありました沖縄返還構想のこの白紙論ということであります。いろいろとお話しになったようでありますが、要するに、そのお話を承っておって感じますことは、ただ白紙白紙と言われるだけでは、これはもう逃げ回っておるだけだ、このような疑惑を感ずるわけであります。  そこで伺いたいのでありますけれども沖縄施政権が返還された場合、沖縄は本土になる、ごくわかり切った話でありますが、沖縄が本土になると考えてよろしゅうございますか。
  152. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 本土になるというのはどういう意味ですか。とにかく沖縄沖縄、本土は本土だ、かように私は思いますが、とにかく本土と沖縄との一体化、これはあらゆる面ではかっていこうというのがいまの政府考え方であります。
  153. 矢野絢也

    矢野委員 きわめてわかり切ったことでありますから、お聞きするほうが失礼であったかもわからない。いずれにてしも沖縄施政権が返還された場合には、沖縄は本土になる、これは当然だと思います。そして総理は非核三原則を明瞭に打ち出されておる。当然この非核方針というのは日本の本土全体に及ぶものと理解されるわけであります。そこで、沖縄が将来返還されて本土になった場合、沖縄にも当然非核三原則を適用したほうがよい、適用するんだとお考えになっておるかどうか、この点について伺いたいと思います。
  154. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、ただいまそういうことをはっきりきめて直線的な交渉をすることがどうだろうか、先ほどるる説明したのはその点であります。だから、そういう点を皆さん方とともどもにこれは研究すべきことだ、かように私考えております。
  155. 矢野絢也

    矢野委員 それではもう一度、角度を変えて伺いたいと思います。  沖縄が返還されて本土になった場合、この沖縄総理の非核三原則、つまり核を持ち込まないという方針ですね。これはいろいろあなたのおっしゃるように紆余曲折があろうかと思います。しかし、あなたのお気持ちとして、この非核三方針を沖縄にも適用したいというお気持ちがあるかどうか、このことを伺いたいのであります。
  156. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 核を製造せず、核を持ち込まない、また持たないといういわゆる三原則といいますか、これはもう基本的な私どものいまの悲壮なる実は決意であります。これは私、国民としておそらくこの決意には皆さん賛成だろうと思います。だから、したがいまして、いまのところ、本土においてはさようなことをしておらない状況ということでありますね。しかし、同時に、いま直ちに沖縄が返ってきて、そうしてそういうことを実施する、これは望ましいことでしょう。でしょうが、ただいま沖縄が果たしておる軍基地というものは、そう簡単なものでないと私は思っております。したがって、先ほども申すように、これからの科学技術の進歩もあるんだし、国際情勢の変化もあるんだし、世論の動向もあるんだし、そういうところにたよるものが非常にあるんではないでしょうか。私はそれをいましばらく待つべきではないか、かように思うのです。ただいま一つの前提をきめて取り組めば、これはおそらく沖縄復帰が非常に困難な状態になるかもわからない。そういうことを考えると、先ほど申すように、沖縄の復帰、ここに全力を注ぐということがあってほしいのではないか。しかし、そのために本土に核兵器の持ち込みを許すというようなことは考えられない。これはもういまはっきりしている問題でございます。
  157. 矢野絢也

    矢野委員 いま沖縄に非核方針を適用することが望ましい、けれども、ということで、あとがちょっと悪かったんでありますけれども、私が伺っておりますことは、総理が白紙白紙と言っておられるその事情ですね。おそらくアメリカ側の態度あるいは日米共同声明でうたっておる中共の脅威、極東の緊張、そういったことに関連する沖縄基地の重要性、そういったいろいろなことを勘案して、そして将来どういう形式においてこの結論がつくかわかりゃしない、そういう意味で白紙だ白紙だとおっしゃっておる。そういうようにいま私は聞いたわけであります。私がお尋ねしておることは、そういう客観的な条件なり相手の態度、そういうことではなくして、どういう状況であろうとも、相手がどういう意思であろうとも、まずそれは別問題にいたしまして、あなたの気持ちを私は聞いておるわけであります。まず沖縄に非核方針を適用することを望ましいと思うかどうか、私は、そのことをもう一度ひとつはっきり、主観的な総理の気持ちを聞かしていただきたい。
  158. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 矢野君に私お答えをいたしました。私の気持ちを非常に忠実に率直に表現するような方法をとりました。しかし、なお重ねてのお尋ねでございます。しかし私は、そうなると、私自身が現実の政治家であること、現実を無視して議論することは、いたずらに問題を紛糾さす、あるいは誤解を招く、かように考えますから、そのことは私は避けてまいりたいと思います。  ただいまお話のうちにもありましたが、中共が核兵器を開発しておる。一体これを何らの脅威を感じないでいるだろうかどうだろうか。私は別に脅威を国民の間にまき散らすつもりはございません。しかしながら、アジアの諸国を昨年歴訪いたしますと、中共自身が核兵器を持っておるということに脅威を感じない国はどこにもございません。どこもそんなことはない。みんな脅威を感じておる。米国へ行ったら一体どうか。米国自身は、この核兵器の開発の進行度合いについて、あらゆる情報を集め、自分たちも判断を下しておるようであります。だから、したがいましてこれは相当アメリカ自身が関心を持っておるということ、これは同様であります。私もその程度の関心日本総理といたしましてこれは当然のことだと思いますが、私もこれに無関心ではあり得ない、そういう状態でございますから、核兵器がそばにある限り日本の安全を確保するために核の抑止力によるということは、これは当然のことだと御了承いただきたいと思います。私は、このことなくして、いまの議論をしておることは、実はナンセンスのようにすら思うのです。  しばしば核三原則を言われます。そうしてそのことは、核抑止力を言うことは矛盾じゃないかということを、しばしば皆さん方のほうから聞かれております。公明党の方はそうまではおっしゃらないけれども、しかし私は、このこと自身は、この国の安全を確保する、安全保障のために必要だ、かように思っております。いわゆるどういう状態が望ましいか。これはもう申すまでもなく核兵器、そういうものがこの世からなくなると、それが望ましいに違いございません。そういう意味で、核兵器も持たない、持ち込みも許さない、これは私たいへんりっぱな日本考え方だと思います。しかし現実には核兵器があるのです。そうして、これはアメリカもソ連も中共も持つという、そういう状況だ。そういうもとにおいてこの国の安全を確保するのに、全然さような点を度外視して核兵器を持たない、かように申すことは現実の問題としてはできません。
  159. 矢野絢也

    矢野委員 非常に具体的なお話があったわけでありますけれども、私は、くどいようでありますけれども沖縄に非核方針を適用することを望ましいと思っておるかどうか、それだけのことを聞いておるだけであります。
  160. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 だから、これはたいへん私はくどく説明しますが、これから国際情勢も変わるだろうし、また核兵器も、科学技術の進歩もあるだろう。そうすると、これも変わってくる。そうすると、いままた国内の世論の動向も変わる、そういうときには何をか言わんが、現状においてはこれはそうはいかない。これははっきり申し上げる。そうして、私どもがはっきり、これは皆さんとともどもに、核を製造しない、持たない、それから同時に持ち込みも許さない、こう言っている限り、そういうものがすべての地域に適用されることが望ましい、これもよけいなことを申し上げる必要はない、これは大体そういうことだ。しかし沖縄自身の問題については、先ほど来申しますように、現実の問題と、そのただいまのような望ましい状態のときに沖縄を除外するつもりはございませんから、それは沖縄を含めて世界各国にそういう状態がくることが望ましい、かように私申し上げておきます。
  161. 矢野絢也

    矢野委員 くどいようでありますけれども、その望ましい状態のときには非核方針を適用することを除外する気持ちはないとおっしゃる。ですからその望ましい状態、それはどういう状態なのか。先ほどのお話では、アジアの緊張が緩和されるとか、あるいは武器の進歩とか、いろんなことを御説明なさっておられましたけれども、私はそれほど、あなたがおっしゃっておる両三年の間にめどをつける、この三年の間に、あなたが期待しておられるようなそういう望ましい状態ができるかどうか。国民も疑問を感じておるわけであります。ですから、この望ましい状態について、どういう状態を考えておられるのか、これをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  162. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まあ両三年内にただいま核兵器がこの地球上からなくなる、私はそうも思いません。また、両三年内にたいへんな国際情勢の変化があるとも思いません。全部が戦争放棄という、そういうような決議ができる状態でもないだろうと思います。しかしいま両三年内にという云々は、沖縄の問題については、返還のめどをつけるのが、これが両三年ということであります。したがって、いまのような望ましい状態が実現するまでには、もう少し先の問題だと思います。私は、かりに一つの問題を考えれば、非常に科学技術の進歩があれば、沖縄自身がそういうような軍基地である必要があるのかどうか。それが必要でなくなれば、いまのような状態が文句なしの状態だと思います、非常にはっきりしたことを申せば。しかし、ただいまのような国際環境、各国の軍備状況等から申しますと、現実には核兵器がなくなったり、あるいは国際情勢が非常に変わって、戦争は一切しないというような申し合わせもできる時代は、なかなか二、三年ではこない、かように思います。
  163. 矢野絢也

    矢野委員 その望ましい状態が実現すれば非核方針を適用するにやぶさかでない、こういうお話が先ほどあった。そしてこの望ましい状態は残念ながら両三年内では実現しそうもないということも言われたわけであります。そういたしますと、この両三年の間には非核方針を沖縄に適用できるような状態はこない、そういう望ましい状態はこない、こういうふうにもあなたのお話からは理解できるわけであります。そういたしますと、私が先ほどから伺っております沖縄に非核方針を適用するかどうか、裏返せば、核基地撤去を求めるかどうかという問題は、このめどをつけるべき両三年の間にはその条件は整わない、したがって核つき返還もやむを得ないという、そういう論理の運びは間違っておるかどうか、御意見を承りたいと思います。
  164. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの論理の運び方は、それも一つかと思います。しかし、お考えになりましても、いまの防衛体制というか、これはやっぱりそのときどきに変わっております。アメリカ自身が沖縄基地を必要としない時期がくるかもわからない。それは現にあるいはトルコあるいはイタリアその他におきまして、防衛体制がそれぞれ変わっております。そういうことを考えると、そう簡単にあきらめる必要もないのじゃないか、かように思います。でありますが、私は皆さんに特にはかりたいのは、この際一番大事なことは、日本国民沖縄同胞がこれだけ願っているのだ。その祖国復帰を願っておるそういう場合に、この復帰を実現するためにわれわれはどういうように考えたらいいのか、それをひとつ皆さんと一緒に考えようじゃないか、われわれは一〇〇%の状況のもとにおいて沖縄の復帰を考えるのか、それが望ましいことにしても、それでなければ絶対いかぬのか、そこはどうか、ひとつ考えていただきたい、かように私思うのです。でありますから、ただいまの議論よりも、いま沖縄の復帰、沖縄島民の心から願い、またわれわれ一億の国民もそれを願っておる、もう他国の施政権下に置かないぞという、その立場に立って立ち上がっていま交渉しようというその政府考え方、これを、私は政府だけでこういうような世紀の大事業を片づけるつもりはございません。各党ともほんとうに胸襟を開いてこの問題と取り組むべきじゃないか、かように思います。
  165. 矢野絢也

    矢野委員 いま伺いました範囲では、総理の非核三方針は、事沖縄に関してはあまり熱意が感じられないような気がするわけであります。  そこで、勘ぐった言い方をするようでありますけれども、私たちは沖縄の核基地撤去、そしてその返還、こういったことを主張しておるわけであります。いまの総理お話を聞いておりますと、どうやらそういったことも考えておられるような気もする。しかし、白紙白紙と言われる。これはアメリカに気がねをなさって御本心を言わないのか、アメリカがいまベトナム戦争をやっておる、そういうときに、アメリカの友だちである日本が、沖縄の核つき返還はもってのほかであるというようなことを言うとアメリカにぐあい歩悪い、アメリカに気がねをしてそういう白紙白紙と言っておられるのかどうか、こういう勘ぐりも、きわめて善意に満ちた勘ぐりでありますけれども、したくなるわけでありますが、この点はいかがでございましょうか。
  166. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま皆さんからの強い輿望もありますし、私は独立国日本としての国益を守るという、その立場に立っては、これは人後に落ちないつもりでございます。ただいま日米安全保障条約を結んでおる。もちろんこの安全保障条約、これは万全なものとは思いません。まあそれぞれの立場で、私どもは、いま日米安全保障条約日本安全保障上適当だと思う。また公明党の皆さん方は、階段的解消というようなことをいっておられると思います。あるいはまた民主社会党の諸君は有事駐留ということもいっておられる。いまこういう関係にございますが、日本安全保障を確保するためには、社会党の諸君のような非武装中立論は別として、独立を守るという立場からはこの方法が、その形式、内容はどうあろうと、やっぱり必要ではないかというのがいまの国民常識ではないかと私は思っておるのです。  そこで、そういう立場から私は独立国家の総理として、また安全保障条約を結んでおる両国の関係から、お互いに信頼すべきことは信頼する、しかしながら独自の立場において主張すべきことは主張する、こういうことでなければならぬ、かように思っております。私は、いまの矢野君のお尋ねは、あるいはアメリカに遠慮をして言うべきことも言わないのじゃないか、情けない総理じゃないか、こういうおしかりを実は受けたのではないかと思って、私が率直な立場をいま申し上げておる。これは確かに日本の安全確保のためにアメリカの核の抑止力によっておるという、そういう点ではまことに残念であります。しかし、私は核兵器を日本が持とうとする、そういう大それた考え方は間違っておる、かように思うのでありまして、核兵器、アメリカの核の抑止力にたよっているから独立がないのだとか、あるいは遠慮しなきゃならぬ、かように言われることは私は当たらないように思うのです。だから、その点はいろいろそれぞれの立場もあるようですから、それぞれの御議論があろうかと思いますが、私の申し上げたいことは、ただいまのような点で相互信頼し、相互に相よる、こういう形の上で、わがままは許さないし、また日本の言うべきことは日本が堂々と言う、胸を張って言う、かように私考えております。
  167. 矢野絢也

    矢野委員 いずれにしても、沖縄の返還にあたって核基地撤去を求めると明言をされなかったことは、私も非常に残念であります。  次に移りたいと思いますが、いまも仰せになった核のかさの問題。総理は、わが国の安全上アメリカの核のかさはきわめて重要である、そういう意味の発言をしばしばしておられるわけでありますが、どういう理由で、わが国の安全にとってアメリカの核のかさは重要なのか、伺いたいと思います。
  168. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのところ、私は核の戦争抑止力というものを実は信じておるものであります。核というか、アメリカの核の戦争抑止力、これを信じておるものであります。そういう意味で、アメリカ日本をあらゆる場合に守ると言いますが、守る以前に、こういう抑止力にたよれば戦争はないんだ、日本を攻撃するものがあれば、これはアメリカと全面衝突だ、その危険をおかして戦争をしかけるものはないんだ、攻撃してくるものはないんだ、かように私は考えておるものです。
  169. 矢野絢也

    矢野委員 元来、核のかさというこの考え方は、いまお話しにもあったとおり、核抑止戦略論、こういったところから言われておるわけであります。この抑止戦略論によりますと、相手側からいかなる奇襲的第一撃が加えられても、なおかつ残存して、そして相手方に耐えがたいほどの第二撃力を与える報復力を持つ。したがって、そういう報復力を持つことによって相手国の第一撃を思いとどまらせることができる、こういう思想だと思います。つまり、核兵器による報復力によって相互抑止の効果をあげておる。これが核抑止論の骨子だと思うわけでありますが、総理の言われる核のかさとは核兵器による報復力と考えてよろしいかどうか、この点について伺いたいと思います。
  170. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私はかさだとかあるいは報復力だとか、こういうことは実は言うつもりはございません、私はただいま言っているように、戦争抑止力、こう表現するのが一番いいかと思います。したがいまして、これはもちろん、あらゆる攻撃に対して日本を守るとジョンソンが言ってくれたその立場も理解するわけでありますが、同時に、この日米安全保障条約があれば、ただいまも説明いたしましたように、自分たちが報復を受けるというその危険をもおかして戦争をしかけることはないだろう、そこにいわゆる抑止力の効果があるのであります。私は、実はそういうように日本考えております。だから、これがあるからかってなことをするという意味ではございませんが、私はさように思っております。
  171. 矢野絢也

    矢野委員 いまのお話ですと、核のかさが抑止力として働くから、だから核攻撃というのはあり得ないんだというふうに理解できるわけであります。そういたしますと、逆の立場で、核のかさのもとにないときには核攻撃の危険にさらされる、こういうようなことになるかどうか、この点について伺いたいと思います。
  172. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは先ほどの話にもつながるのでありますが、私は、世界から核兵器がなくなればたいへんけっこうだ、望ましい状態だ、そういう場合には、日本も抑止力云々がなくていいんだということを申しました。核兵器が存在する限り、日本安全保障を確保するためにはどこかの抑止力によらなければならぬということを申しました。しからば、ただいまの情勢はさような危機にあるのかという問題であります。私は、大国同士がとにかく戦争をするということはたいへんなことであって、核戦争に発展すれば人類の破滅だということで、ただいまは米ソをはじめ、この戦争ということはまず一応あらゆる機会に回避できるだけの回避をしておる、かように考えておりますから、ただいまの状態は、私たいへんいい方向だと思います。しかし一二〇%とでも申しますか、一二〇%、一〇〇%安全だという、そういう状態ではない。戦争は絶対にないという状態ではない。もし戦争が絶対にないならなぜ核兵器を持つのだ、もう戦争のない状態になれば、核兵器を持つということは、それは財政的な負担であるだけだ、それはやめられたらいいと思うのですよ。だけれども核兵器がある限りにおいては、そういうものは、何かの機会に使われる、そういう危険をわれわれは感ずるということであります。
  173. 矢野絢也

    矢野委員 核のかさが抑止力として働く、アメリカの核のかさは日本の安全にとってそういう意味で重要なのだ、こういうお話を先ほどから言っておられるわけであります。  そこで私は、その前の質問で、そのアメリカの核のかさは、使わない核なのか、あるいは報復力として実際に発動する核なのかということを伺いました。これについては、あまり明確なお話はなかった。そこで私は、核のかさが抑止力として働くから核攻撃はない。このような立場をとられるのであれば、逆に核のかさのもとにないときには、核攻撃の危険にさらされるというようにお考えになっておるかどうか。そのことをいま聞いたわけであります。どうかひとつ簡潔に御答弁を願いたいと思います。
  174. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 少し回りくどく申しましたが、核兵器がある限り、それはやはり使うのだろうということを申しました。日本はそういうものを持っておりませんから、持っておる国から見たら、やはり核攻撃にさらされておる、そこに脅威があるということでございます。
  175. 矢野絢也

    矢野委員 核のかさの必要を説かれておる以上は、わが国がいずれかの国の核の脅威にさらされておる、このように考えられるわけでありますが、そのわが国に脅威を与えておる核保有国は、どのような国であるか、ひとつ御説明を願いたいと思います。
  176. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは核保有国であります。
  177. 矢野絢也

    矢野委員 核保有国と言われたわけでありますから、それでは順番にお尋ねいたしましょう。  まず核保有国といえばアメリカ――アメリカの核の脅威を感じておられるかどうか。あるいはフランスあるいはイギリスあるいは中共あるいはソ連、順番に一つ一つ、わが国の立地条件あるいは国際情勢の中から考えて、いかなる国の核の脅威をあなたは感じておるか。核の脅威を感じないのであれば、核のかさの必要をお説きになる必要はない。そういうことで順番にお答えを願いたいと思う。
  178. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 過去の歴史をごらんになりましても、今日の友好国、それが明日はどういうように変わるかということは、これはもう歴史の示すところであります。私は、いずれの国がどうこうというのじゃございません。今日アメリカが私どもを守ってやろう、核の抑止力を十分働かしてやろう、こう言ってくれた。そのときにアメリカと私どもが信頼関係をつないでいく、これが長く続くようにと願いましても、そういかない場合もあるだろうと思います。こういうことが国際社会のありきたりの問題であります。(矢野委員「現時点」と呼ぶ)現時点におきましては、私はいまのような、戦争はないということを心から願っておりますから、そういう危険はないだろうと思います。しかし私が先ほど申しましたように、十二分な安全保障を確保するのが総理としての責任だ、かように申しました。あそことは、いまそんな考え方はないから、だいじょうぶだから、まあいいだろう、そういうようなことでは済まされない。やはりこの国の安全確保の立場に立っての議論である、考え方である、これはひとつ御了承をいただきたいと思います。
  179. 矢野絢也

    矢野委員 具体的に核保有国の名前をあげて御質問をしたわけでありますけれども、どうもお答えをいただけないようであります。私が申し上げておることは、核のかさの必要を認めることは、核の脅威をあなたが認めておることだ。そこでお尋ねしたところ、要するに核保有国でありますという、まことに味もそっけもない御答弁であります。そこで、具体的にお尋ねしたわけであります。核攻撃がいずれの国からもない、このようにお考えになっておるならば、核のかさの必要はないわけであります。  そこで、もう一度くどいようでありますが、それでは中共の核については、あなたが核のかさの必要を認めるほどの脅威をお感じになっておるかどうか、これをひとつお聞きしたいと思います。
  180. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの状態では、さような心配はないだろうと思います。
  181. 矢野絢也

    矢野委員 それほど心配がないのであれば、核のかさはわが国の安全にとって必要である、そのように強調なさる必要もそれほどないと私は思うわけであります。  次に進みたいと思います。どうもふきげんな顔をしておられるから聞きづらい。核抑止理論を認めるとすれば、当然の結論といたしまして、次の三点、これが問題になると思います。その第一点は、ある地域を制圧するための有効な核兵器の存在、核兵器がそこにあるということであります。第二点は、必要があれば核兵器を直ちに使用する意思がある、意思の問題であります。さらに第三点は、核兵器の使用に伴う犠牲の覚悟ということも、当然問題になるわけであります。核抑止理論を突き詰めていきますと、この三点が当然備わっていなくてはならない。  そこで、まず第一点の核兵器の存在、これはもう自明のことでありますからあらためて伺おうとは思いませんが、具体的に総理の御判断――日本地域に関する有効な核報復力、もっと具体的に言いますと、直ちに報復できる核兵器、あなたのおっしゃる核のかさの実態であります。その核兵器は、一体どこにあるのか。アメリカの核のかさを強調するその実態は、どこにあるのか、国民にわかるように具体的に聞きたいのであります。そこで、聞くところにおいて、たとえばグアム、あるいは韓国、あるいは沖縄、あるいは第七艦隊、在日米軍、南ベトナム、これらの地域において、あなたのおっしゃっておる核のかさの実態がどういう形であるか、これをまず防衛庁長官に、これは専門家でいらっしゃるから、伺っておきたいと思います。
  182. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 矢野さんにお答え申し上げます。  在日米軍は、核を保有いたしておりません。その他のことは、総理から御答弁ございました。すなわち、沖縄にはメースBがございまするし、それからナイキハーキュリーズがございまして、ナイキハーキュリーズは核、非核両様でございます。それからグアムのことはよくわかりませんし、韓国のこともよくわからないのでございます。(矢野委員「南ベトナム、第七艦隊は」と呼ぶ)南ベトナムもよくわかりませんが、全然ないと思っております。
  183. 矢野絢也

    矢野委員 あまりよくおわかりになっておらないらしい。総理もおそらくそうおっしゃるだろうから、もうあらためて聞きません。しかし、あまりよくわかってない核のかさをえらそうに有効だ有効だと、こう言うことも、私はどうかと思うわけであります。  そこで、次に伺いますが、日米安全保障条約によるアメリカの核のかさ、これはわが国の安全にとって有効である、これは何べんも私はくどいように言いますが、このようにあなたが核のかさの有効を認めておられる以上、アメリカが場合によってはいつでも直ちに極東で核兵器を使う意思がある、このように総理がお考えになっておると理解してよろしゅうございますか。
  184. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 積極的と申しますか、先に進んで使うような考え方はございません。ただいま戦争の始まっているベトナムでも、たびたびここで使う考えなしとはっきり申しております。
  185. 矢野絢也

    矢野委員 積極的には使わないというお話でありますが、場合によってはということを私は申し上げておる。たとえば不幸にしてわが国に核攻撃が加えられた、そういった場合に、アメリカはわが国を守るために核を使う、このようにお考えになっているかどうか。
  186. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 攻撃された場合に、それを使うことが最も適切な方法であると考えたら、アメリカは使う、これが抑止力ということです。
  187. 矢野絢也

    矢野委員 そうすると、適切でないと考えればアメリカは使わない、こういう核のかさらしいのでありますけれども……。  そこで、もう一度伺いますが、アメリカはいつ核兵器を使う決意をするか、これはわからない、これはおっしゃるとおりであります。しかし、もし核兵器を使うことを決定したときには、前もって日本に相談することになっておりますか。極東において核兵器を使う、万が一にもそういう決意をしたときには、わが国に相談をすることになっておるかどうか、この点について伺いたいと思います。
  188. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 事前に協議の条項、いわゆる装備の重要なる変更、この場合は私どもに相談がある。また、直接本土を作戦行動の発進基地とするというような場合にはもちろんでございます。これは核を使うか使わないかとは別ですが……。
  189. 矢野絢也

    矢野委員 たとえば南ベトナム、ケサンにおいて攻防戦が行なわれておりますが、そこで使うとか使わないとかいうようなことが取りざたされております。日本に直接の関係があるかないかはともかくとしても、この極東において使う場合、すべて日本に相談があるかどうか、このことを伺っておるわけであります。
  190. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまのはなかなかむずかしいお話ですから……。いわゆる事前協議としてきめたものには入っておらないと、かように思います。たとえば、それは日本関係しない地域その他においてですね。しかし、私はいまの日米間の状況から見ると、そういうような重大なる事柄、これは必ず事前に話し合いがあると思います。いわゆる事前協議ということでなくて、これは随時協議の問題になると、かように私は思います。
  191. 矢野絢也

    矢野委員 あなたの言われる核のかさの実態は、とにかく極東のこの地域にアメリカの核兵器がある。これは先ほど防衛庁長官から御説明あったとおりであります。核兵器がある、そしてその核兵器は、使わない核兵器ではない、可能性として使うこともあり得る核兵器である。使わない核ではない、使われることもある。しかも日本と相談なしに――それは友好関係の信頼に基づいて相談があるはずだと、こういうように言っておられますが、法律的な根拠による日本に対する相談、こういう日本に相談なしに使われる核である。しかも、いつでも使われる核であり、どこで使われるかわからない核である、このようにあなたのお話を聞いておると思わざるを得ないわけであります。  一つ一つ申し上げます。使われるかもわからない核である。しかも、日本に請求権を伴うといいますか、必ず相談しなくてはならないという、アメリカに義務のある立場日本に相談するというようなものじゃない。しかも、いつどこで使われるかわからない核である、こういった点について、ひとつお考えを聞かしてもらいたい。
  192. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 矢野君はなかなか質問がうまいからだんだん引き込まれるようですが、先ほど申しましたように、積極的に使う意思米軍にはございません。これだけははっきり申し上げておきます。  先ほどもお尋ねがありまして、積極的に使うのか、どこからか使われてそれに対応して使うのかというお話がありましたが、この点は厳格に守られておると、かように御理解をいただきまして、積極的に何が何でも使うとか、こういうものじゃない。攻撃されれば、もちろんそんなものが最も有効であれば、これは核兵器を使う、これは私先ほどお答えしたとおりでありますから、それでおわかりじゃないかと思います。ただいまのように、まあ使うか使わないかわからない、自由意思でやる、こういうものではなく、やっぱり考え方とすれば、積極的に使うのか、あるいは積極的でないのか、ここに一つの線を引いてお考えをいただきたいと思います。
  193. 矢野絢也

    矢野委員 それが適切であり有効であると判断される場合に使うかもわからぬというような意味のことを申されましたけれども、私は、核兵器はいかなる場合でも使ってはならない兵器である、このように信じておるわけであります。  そこで、あなたはアメリカの核のかさを信頼しておられる。しかもそれは有効かつ適切なときに使うかもわからない核である、こういうことについて、それがいいと考えておられるかどうか、これをひとつお聞かせを願いたいと思います。
  194. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これも先ほど申しましたように、核兵器がないことが一番望ましい。しかし、核兵器がある限りにおいては、核兵器の攻撃を受けるということもやはり覚悟しなければならない。核兵器の攻撃を受けた場合に、それを守る手段は一体何なのか。これはやっぱりアメリカの核の報復力、それによる。しかし、その報復力というものではあるが、同時に核の戦争抑止力というものが、その報復力以前にあるのだ。それを忘れないで、アメリカとの安全保障条約を結び、そのもとにおいて安全が確保されておる、かように私は考えております。
  195. 矢野絢也

    矢野委員 先ほど万が一不幸にして日本が核攻撃を受けた場合――そんなことはあってはならないわけでありますけれども、当然防衛を考慮しておられる総理としては、そういったことも可能性の一つとして考えておかなくちゃならないと思うわけであります。そこで、そういった場合には、日本防衛のためにアメリカが適切であると判断すれば使うでしょう、こういうお話をしておられました。そこで、もしアメリカ日本防衛のために、つまり核攻撃を受けそうになっておる日本を守るためにアメリカが核を使うとすれば、それは事前に、つまり頭の上で核弾頭が爆発する前に、それを防ぐために使うのか。つまり事前の防御としてそれを使ってくれるのか、あるいは頭の上で爆発して、私たちが死んでしまった後に、事後の報復力として使ってくれるものなのか。つまり事前の防御力、迎撃防御力か、あるいは事後の報復力として核を使ってくれるのかどうか、この点について総理はどうお考えになっておるか。
  196. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 矢野君は、先ほど来核攻撃はないという前提でいろいろお尋ねになりました。ただいままた、核攻撃があったらどうなるかというお話であります。私は、一貫してお答えしておりますのは、アメリカの核の抑止力にたよっておる。この抑止力というものは、これのために核攻撃を受けないで済むんだということであります。私は、さような攻撃を受けるということを、大体考えておらない。まず、抑止力が働いておるから、そういう戦争はない、そのもとであります。ここが大事なところでありますし、また、矢野君のお話も、たぶんそういうようにもお考えじゃないかと思います。  またもう一つ、私先ほど来のやりとりでやや疑問を持たれ、不安を持たれるのではないかと思いますのは、アメリカが積極的に使うことがあるかどうか。私、先ほど有効適切な処置ならばこれを使うことはあると言いました。これは攻撃をされた場合なんです。攻撃されたら一体どうなるかと言われるから、攻撃されたら核兵器を使うことが有効適切なら使うでしょう、かように申したのであります。これは事前に有効適切な方法として、あるいは戦争抑止力としてます働くのだ、かようなものではございません。そこの誤解のないように願いたいと思います。アメリカ自身もしばしば言っております。自分たちは積極的にこの兵器を使わない、かように申しておりますから、日本をめぐる場合におきましても、同様なことが言える。日本が攻撃を受けるような心配があるから、アメリカが積極的に先に進んで核兵器で攻撃する、こういうようなことはしない。この点はもしも誤解があると困りますから、はっきり申し上げておきます。さようなことはございません。
  197. 矢野絢也

    矢野委員 たとえて申しますと、このかさでございますが、雨が降るからかさの必要がある、こういうことになると思うわけであります。しかし、核のかさがあるから絶対核攻撃はないという理屈は、かさを持っておるから雨が降らないのだということにひとしいわけであります。そういう論理的な矛盾があるわけであります。現にアメリカだって、いわゆる対中共向けの薄い迎撃ミサイル網、アンチミサイル網を配置する、このように決定したと聞いております。これはアメリカの核抑止力が、ソ連に対しては有効に効果を持って働くかもわからないけれども、中共に対してはアメリカの核抑止力は働かないかもわからない。逆にいえば、このアメリカの抑止力を中共はそうおそろしいとは思っていない。きかない相手であるかもわからない、そういう判断がアメリカ側にあればこそ、対中共向けの迎撃ミサイル網を設置しよう、つまり核抑止理論が中共に対しては破れようとしておる、こういうことをアメリカ自身も認めておるわけであります。したがって、総理の言うように、核のかさがあるから核攻撃は絶対ない。そのような単純な考え方では、私が申し上げたように、かさを持っているから雨が降らないのだということにひとしいわけであります。ですから、かさを持っておる。しかし、雨が降ってきた。しかし、かさを持っておるから雨にかからなくて済むのだ、こういう話なら私はわかる。だから、私は、その場合でも雨が降る、つまり核弾頭が飛んでくる可能性は、核のかさがあるからといって否定してはいけない。私は、決してそういったことを望んで言っているわけじゃない、そういうことがあってはいけないと思っております。しかし、私はきょうはあなたの立場に立って質問しておるわけであります。ですから、もう少しまじめにひとつ答えてもらいたい。  もう一度質問いたしますが、あなたのように、核のかさで守ってもらうというのもけっこうでありますけれども、一体核のかさは、日本国民が死滅する前に、つまり飛び来たるミサイルをたたき落としてくれる事前の迎撃防御か、あるいは私たちが核ミサイルの洗礼を受けた後に、つまりみんな死んじゃった後に、アメリカがよしそれならかたきをとってやろうといって攻撃してくれる報復的な攻撃力なのか、その後のかさの意味を私はさっきから聞いておるわけであります。その点についてお答えを願いたい。
  198. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日本自身が核兵器を持たない。そうして世界には核兵器がある。そういうもとだから、日本の安全を確保するためにアメリカ戦争抑止力にたよる。これがいまの日本立場であります。かさの話をいまいたされました。かさを持っておるから、相手が攻めてこない、雨が降らない、こういうものじゃございません。しかし、かさを持っておれば、雨が降ったときにぬれないで済む、これはもうただいまお話しになりましたとおりであります。私は、これが非常に望ましいことではないかと思います。各国でそういうような例もございます。私はただいま……(発言する者あり)ちょっと待ってください。   〔発言する者多し〕
  199. 井出一太郎

    井出委員長 静粛に願います。
  200. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 核の兵器を持っておる国にいたしましても、アメリカは一体どう使うのか、これは先ほど積極性はないということを言いました。もしも攻撃を受ければ、日本を守ろうといっておる。しかし、これではただいまのようにおそいということであります。幸いにして中共自身も、中共自身が進んで核を使うようなことはしない、いままでたびたび毛沢東もそういう声明をしておるようであります。私どもこれをたよりにしております。また、それと違った情報を持っておられれば、この機会にお知らせを願いたいのです。私はさように考えますと、ただいまの核兵器を持っておる国が、ぞれそれ積極的に攻撃する意図がない。ここまできたらもう一歩を踏み出して、財政的負担のある核兵器の開発をなぜするのか。核兵器の開発をやめられたらいいだろう。みんな世界人類が核兵器を持たないことを希望しておる、こういう状況でありますから、私はいまのいろいろの御議論がございますが、こういう戦争がないように、またそういう戦争をおかさないで済むようなあらゆるくふうがしたいと思うのです。私の言っておる抑止力は、そういう意味戦争がないものだ。これはただ単に、かさを前もって持っておるから雨が降らないというのではございません。
  201. 矢野絢也

    矢野委員 あなたは、核のかさがあるから核攻撃はないんだ、それが私の抑止理論だ、こう言っておられる。ところが、かさを持っているからといって雨が降らないわけじゃない、こういうことをおっしゃっておる。ということは、核のかさがあっても、絶対に核攻撃はあり得ないということではないとおっしゃっておるのだと思うわけであります。つまりそういう万が一核の攻撃を受けたときに、あなたの非常に重要だと高く評価しておられるアメリカの核のかさは、事前に迎撃防御をしてくれるものなのか、事後に報復攻撃してくれるものなのか、それをはっきり聞かしてもらわなければ、あなたが国民に、核のかさはありがたいのだと言ったとて、それはあまりすなおに納得できないわけであります。したがって、万が一攻撃を受けた場合――これはいまあなたと私の問答で、そういう場合はあり得る、こういうことになっておるわけであります。したがって、その点についてお答えを願いたい。  あなたは、それにもう一つ、中国の毛沢東も絶対に核を使うことはない、そう言っておるから安心だと言われる。それなら核のかさは必要がないわけであります。そのようにあなたが信じておるならば、核のかさなんか要らない。信じてないから核のかさの必要性を感じておられるわけであります。だから、もうちょっとわかりやすく、具体的に私の質問に答えてもらいたい。事前の迎撃防御か、あるいは事後の報復攻撃力か。
  202. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、まあ事前の迎撃力とかあるいは事後の攻撃力とかいう、その観念が私には明確でございません。私は、ただいまそういうことを区別するよりも、アメリカの核兵力の戦争抑止力、これを申し上げることがまず何よりも大事だ、かように私は思っております。  その次に、中共自身が、これが事前に使わないという。だから、それを信用したらいいじゃないか。核は要らないじゃないか、かさは要らないじゃないか、こういうお話でございますが、私は、国際間の情勢は、冒頭にも申し上げましたとおりに、一方だけの方向に進んでおるものでもございません。どんな変化があるかわかりません。そういう意味で、私は、わが国の安全確保のために万全を期する、こういう立場に置かれておるのであります。あらゆる場合を考えてやるわけであります。いま中共自身がどうこうというのじゃありません。アメリカ自身と仲のいい間柄でありましても、これはどんなことになるかわかりません。これは歴史が示しておる。かつての日英同盟、これが敵国として相まみえたではございませんか。私は、国際情勢というものは、さような非常に簡単なものでないということ、これをよくひとつ理解してもらいたいと思います。
  203. 矢野絢也

    矢野委員 防衛庁長官に伺っておきたい。  アメリカの核のかさは、万が一わが国に核攻撃が加えられたときに、事前の迎撃能力を持っておるか。つまり迎撃ミサイル網を日本のために現実において配置しておるかどうか。このことをひとつお尋ねしたいと思います。
  204. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 矢野さんに申し上げます。  まず第一に、総理外務大臣も私も、核のかさ、核のかさということを矢野さんおっしゃいますが、われわれは核のかさということばは、どうも語弊を生じやすいから使いたくないのである、あまりわれわれは使っておりませんということを申し上げておきます。あなたのほうの御質問からかさと言いますから、こちらのほうでもそれを受けてかさと言ったようなことはありますが、世の中の一般の人々が、かさということばから受ける印象は、何か雨が降ってきたときにさしていくかさのように感じますから、これはわれわれが使いたくない。使いたくないという立場総理も発言されておるのでございます。  それからその次に、総理がいつも強調されておるのは、核の攻撃を事前に抑止する力、核の攻撃がないようにする力、核の攻撃をじゃまする力、これが核の抑止力でございまして、核が来たときに途中で迎撃するなんというものではございませんで、アメリカが強大なる核兵器を保有することによって核戦争を事前に防止する力・これにわれわれは依存し、期待いたしておるということを、この際明瞭にいたしておきます。
  205. 矢野絢也

    矢野委員 話がまたもとへ戻りますが、しかし、アメリカ自身が中国に対するみずからの核抑止理論の破綻を認めて、この迎撃ミサイル網をアメリカのためにつくろうとしておる。だから私は、日本のためにもそういう迎撃ミサイル網をつくってくれておるのかどうか、このことをいま聞いたわけであります。ところが、そういうようなものはない。そうすると、要するに核攻撃を受けないために、核抑止力をわれわれは期待しておるのだということに尽きるわけであります。しかし、それはもうさっきから何べんも言っておりますように、それ自体は現在破綻をしておるわけであります。(「破れがさだ」と呼ぶ者あり)だから、私は、核のかさには限界がある、先ほどからも不規則発言で出ておりますが、これは破れがさではないか、そういったことを言っておるわけであります。やられてから、われわれが死んでから、それではかたきをとってやろうかというような核のかさなら、これはもうまっぴらごめんだ。かえってこういう危険な核のかさがあるために、日本と中国あるいはその他の諸国との友好関係が阻害される、こういう核のかさなら、もう取っ払ったほうがましである、こういう立場で私は申し上げておるわけであります。核のかさに限界がある、そのことについて、もう一度総理の御見解を聞きたいと思います。
  206. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、先ほど来、日本の置かれておる立場、同時にまた日本安全保障の形、その方式、それをるる説明をいたしました。この点では、ただいま矢野君と私は結論が別なようであります。別に結論を急ぐわけではございませんが、いま、ただいまのように考えておりますから、戦争が起こらない、戦争抑止力、その力、それをたよってただいまのような日米安全保障条約を結んでおる、かように御了承いただきたいと思います。
  207. 矢野絢也

    矢野委員 この核による抑止力に依頼するということは、いわば犠牲を覚悟の刺し違いの論理である、このように考えざるを得ないわけであります。そういった核抑止力、私たちは、それにおのずから限界がある、破れがさである、そういったことを先ほどからるる申し上げておるわけでありますが、どうも十分な御答弁をいただいてない。  しかし、ここで一言申し上げておきたいことは、このような限界のある、しかも危険性を伴う、刺し違いの理論ともいうべき核のかさをあなたが国民に対してあまり誇大に説明をされることは、慎んでいただきたい。それは、こういう核のかさがあるから日本が安全なんだ、こういう言い方をされることは、国民を欺瞞するもはなはだしい。いま申し上げたように、やられてからやり返してくれるような核のかさなら、全然われわれはありがたくない。今後あまり核のかさ、核のかさとありがたそうに言うのは、慎んでいただきたい。このことを最後に申し上げておきたいと思います。  それから、次に移りたいと思います。  まず、安保条約の事前協議制度の趣旨についてでありますが、この事前協議制度の趣旨はどういうものであるか、これは三木外務大臣に答弁をお願いしたいと思う。
  208. 三木武夫

    三木国務大臣 先ほどからの核の矢野君とのやりとり、これは外交にも関係するから一言申しておきたいと思うのですが、どうも矢野君は核戦争があるという前提でいろいろ進められておりますが、私はそうは思わない。人類の常識が健全である限り、核戦争をやるというようなことは、これはもう考えられないことです。これを防ぐために、世界の――国際政治の全力を傾けておるのは、いかにして核戦争を防止するかということで、世界政治のこれはもう焦点になっておるのですから、実際に核戦争があった場合を仮定していろいろ問答が行なわれますと、国民に非常に不安を与える。これはもう現在の国際政治の現状は、核戦争を防止するために全力が傾けられておるので、私は、全面的な核戦争が起こるというような、それほど人類をばかだとは思ってない。そういうことで、あんまり仮定の場合を、核戦争を仮定していろいろやると、必要以上の不安を国民に与えるものである。外務大臣立場から申し上げておきたいのであります。  次に、事前協議についてでありますが、事前協議条項は、いわゆる装備の重大な変更であるとか、あるいは軍隊の移動であるとか、あるいはまた作戦行動に基地を使う場合であるとか、こういうふうな安全上重大な影響がある問題についてアメリカが事前に協議をする、こういう精神のものであって、安保条約における重要な事項である、こういうふうに考えております。
  209. 矢野絢也

    矢野委員 私は、核の問題につきましては、あまりこれ以上言うと総理がむずかしい顔をしておられるからやめておこうと思ったが、また三木さんがよけいなことを言われるから、また私は言わなくちゃならない。私は、何も核戦争が起こる、そういう前提で申し上げておるのではない。総理が、核のかさがあれば核攻撃が防げるのだ、これは間違いないんだ、こういう前提に立ってお話をしておられるから、アメリカの場合だって、中国に対しては核抑止理論が破綻しておる、こう思われるじゃありませんか、また、現実に防衛を担当される政府として、そういった万々が一不幸なこともやはり想定をしておかなくてはならないじゃないか、そこで、先ほど政府立場に立って質問をしておるんだということを申し上げておるわけであります。こちらがそういうことを希望し、核戦争を希望しておる、そんなことを、そういう立場でものを言っておるわけじゃない。そういうことを前提にしてものを言っておるわけじゃない。そういうふうに問題をすり違えてもらっては困るわけであります。ましてや、ジョンソン大統領と佐藤さんが会談されたときにも、日本に対するいかなる攻撃、エニ・アタックに対してアメリカはあるいは手段を尽くして防禦する、核をもって防禦するということを意味しておる。あるいは国防長官も、核を使って日本に対する核攻撃に対処する、こういうふうに現実に言っておるから、それを私は問題にしておるわけであります。この問題については、これ以上やるときりがないから、これで終わっておきたいと思います。  いま三木さんが言われた事前協議の趣旨であります。私たちが承知しておりますところでは、事前協議という、こういう制度があることは、日本国民が最も嫌悪しております核兵器が持ち込まれたり、あるいは最もおそれておる戦争に巻き込まれたりする危険性をあらかじめ抑制していこう、このために事前協議制度があるわけであります。六〇年の安保改定時の政府国民に対する説明も、そういう戦争に巻き込まれぬ歯どめである、こういうふうに説明をしておられた。この点、総理は間違いがないかどうか、簡単に御答弁を願いたいと思います。
  210. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 アメリカ日本の意に反していろんなことをするという、そういうことのないように、日本に、重大なる変更をするような場合には相談するということであります。同時にまた、アイゼンハワーと岸総理との間にも、日本政府考え方に反してアメリカが行動するようなことはない、そういう覚え書きもございます。
  211. 矢野絢也

    矢野委員 法律や条約を解釈し、あるいは運営する場合には、その制度全体の趣旨に合うように考えて運営しなくてはならない、これはもう当然のことであります。ところが、政府は、事あるごとに、友好国であるアメリカ政府を信頼する、このように言っておられます。信頼されることはけっこうであります。しかし、幾ら信頼するといっても、アメリカにかってな、ほしいままなふるまいを許してよい、そういうことではないと思います。これはもう総理も同感だと思うわけであります。ところが、この安保条約の事前協議の精神から考えますと、従来、六〇年以来この事前協議は骨抜きにされ、形骸化されてきておる、このような気持ち、不安を私たちは持つわけでありますが、そのことについて具体的にこれから聞きたいと思います。  そこで、まず第一点でありますが、事前協議を日本側から求めることもあり得るかどうか、一月三十日の新聞によりますと、増田防衛庁長官は、閣議後の記者会見において、日米安保条約の事前協議について、事前協議は日本側から申し入れることもできるはずだ、このように述べたと新聞に報ぜられております。増田防衛庁長官のお考えを承りたいのであります。
  212. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 矢野さんにお答え申し上げます。  事前協議の性質上、当然アメリカが申し出べきものでございます。ただしかしながら、事前協議の対象らしきものがあり得るというようなときには、安保条約第四条によりまして随時協議というものがございますから、こういう線があったならば、ひとつ事前協議にかけたらどうですかというようなことをこちらからもイニシアをとって言い得る、こういう意味でございます。
  213. 矢野絢也

    矢野委員 新聞の記事から見ますと、そういう詳しい説明はしておられない。事前協議は日本側からも申し入れることもできるはずだ、こう言っておられるわけです。それはそれでいいでしょう。  それで、三木外務大臣のお考えも、いまの増田さんの考えと同様であるかどうか、簡単にお願いしたいと思います。
  214. 三木武夫

    三木国務大臣 同様でございます。
  215. 矢野絢也

    矢野委員 昭和三十九年の二月十八日、衆議院の予算委員会の議事録によりますと、同僚議員の質問に答えて当時の大平外務大臣は、「事前協議の申し出は、当方からもできると承知いたしております。」このように述べておられるわけであります。この大平外務大臣のお答えは、先ほどから申し上げておる事前協議の精神、つまり、戦争に巻き込まれぬための歯どめであるという立場から考えれば、これは当然であります。こちらに主体性のない、アメリカばかりにイニシアチブのある歯どめなんというものは、およそナンセンスであります。したがって、三十九年の予算委員会における大平外務大臣の答弁は、私は正しいと思うわけでありますが、しかし、いま増田さんなり三木さんの御答弁は、この事前協議のわが国の権利をまるで平然と放棄しておられるような感じを受けるわけでありますが、あなたまかせのものであってよいのかどうか、この点について伺いたいと思います。
  216. 三木武夫

    三木国務大臣 おそらく大平君の答弁は、安保条約の事前協議の条項というものではなくして、安保条約第四条の随時協議、これは常に日本からもできますし、むろんアメリカからもできるわけで、双方から申し出られるので、そういうことは可能である、そういう意味のことを答弁されたものと思います。事前協議は、御承知のように、米軍の配置とか装備とか作戦行為でありますから、やはり向こうのほうがイニシアチブをとることは当然でありますが、これに関連する事項で随時協議ができるわけでありますから、こちらのほうで申し入れをして協議をするということは、それは常に可能でもございますし、やっておるわけであります。したがって、そういう意味のことを大平君は答えられたものであるというふうに考えております。
  217. 矢野絢也

    矢野委員 私が伺っておるのは、条約第六条の実施に関する交換公文の事前協議のことを言っておる。この大平さんの御答弁の議事録はございますが、そんな、安保第四条に基づくそういう相談だというようなことは、一言もおっしゃっておりません。この同僚議員の質問に対する答弁、この前後のいきさつからいいまして、「事前協議の申し出は、当方からもできると承知いたしております。」このように言っておるわけであります。これは明らかに条約第六条の実施に関する交換公文、この六条に基づく事前協議である。これは明らかであります。そういういいかげんな答弁をしてもらっては困ると思うわけでありますが、この点について、なぜ大平さんの答弁が今日においては平然と放棄されておるか、もう一度御説明願いたいと思う。
  218. 三木武夫

    三木国務大臣 速記録を私は読んでおりませんが、よく読むことにいたしますが、しかし、事前協議そのものはやはりアメリカ軍の関係でありますから、向こうがイニシアチブをとる形になりますが、随時協議の条項を通じて、アメリカに事前協議を必要とするような事項が起こっておるような場合には、こちらのほうからそういうことを言うということは実際問題としてあると思います。しかし、安保条約による事前協議そのものを申し入れ条約上の手続としては、アメリカがイニシアチブをとる性質のものだと私は思っております。
  219. 矢野絢也

    矢野委員 こういう説明では納得ができないわけであります。そこで、条約局長おられると思いますが、先ほど引用いたしました予算委員会の議事録、これによりますと、当時の中川条約局長、現在ソ連大使になっておられると聞いておりますが、この中川さんも次のように答弁をしておる。「事前協議を日本側からできるかできないかというお話につきましては、」「協議は双方とも言い出すことができることは当然でございまして、日本側から言い出して協議をするということも当然あり得るわけであります。」このようにはっきり答えられております。  そこで、あなたの、条約局長の御意見を聞きたいわけでありますが、この中川さんの見解についてどう思われるか、御答弁を願います。
  220. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 私も中川条約局長の御答弁を読んでおります。御承知のとおり、事前協議の交換公文は、大臣から御説明いたしましたとおり、合衆国の軍隊の日本国の配置、合衆国の軍隊の装備の重要な変更、合衆国軍隊の日本からの発進ということになっておりますので、こちらからそういう話を持ち出すというような問題ではないわけでございます。したがって、中川局長のおっしゃったことは、先ほど大臣がおっしゃったように、この内容のものを、こちらから第四条の協議と申しますか、普通の外交ルートでもけっこうでございますが、その内容のものについてこういう話をしようじゃないかということをこちらから持ち出す、そういうことはできますが、これが第六条に基づく交換公文にいう事前協議というものではないということは、これは条約上確かでございます。
  221. 矢野絢也

    矢野委員 明らかに、この中川さんにしても大平さんにいたしましても、第六条による事前協議、これはできるのだとおっしゃっておるわけであります。ところが、いつの間にかできない。それはどういう理由で、いつそのように重大な政府の見解の変更をされたか、これははっきりしてもらわなくちゅならない。もう一度、これは総理に御答弁願いたいと思う。事前協議の形骸化というのは大問題です。
  222. 三木武夫

    三木国務大臣 矢野さんにお答えをいたします。  事前協議の条項は、アメリカ軍が配置を変更するとか、装備の変更であるとか、作戦行動に使うとか、これはこちらのほうから申し出るという――向こうの軍事行動に伴って、そうして相談をするというのでありますから、やはりアメリカのほうがイニシアチブをとる性質のものでありますが、四条によって、事前に日本が話し合いをしようではないかという申し入れば私は可能だと思う。しかし、あくまでも、アメリカが装備の変更をするのに、日本から申し出てどうだ、装備の変更はどうかとかなんとかいう性質のものではない。したがって、おそらくは事前に、この安保条約の第四条の協議とは、事前に協議ができるわけでありますから、そういう協議はできるということであって、的確に安保条約六条にいうところの交換公文による事前協議そのものをさしたものではないと解釈せざるを得ないのでございます。
  223. 矢野絢也

    矢野委員 いまのお話は、大平さんの答弁に対する説明ではございません。そこで、具体的に伺いますけれども、エンタープライズの場合でございますが、事前協議の対象となるのは一タスクフォース以上だ、このように説明しておられる。これはわれわれの考えでは、第七艦隊の編成、装備等から見て、むしろ一タスクグループを対象とすべきである、このように考えるわけであります。政府は一タスクフォースが事前協議の対象になるというわけです。そこで伺いたいと思いますが、この一タスクフォースが五個のグループから成り立っておる場合、そのうち四個のグループが入港する、これは事前協議の対象になるかどうか、ひとつ聞かしていただきたい。一タスクフォースなら事前協議になる。しかし、その一タスクフォースが五個のタスクグループで編成されておる。その場合、五つのうち四つのグループが入ってきた場合は事前協議の対象になるかどうか、これをひとつ聞かしてもらいたい。
  224. 三木武夫

    三木国務大臣 基準としては一タスクフォースは五つのグループからなっておる。実際問題として、基準からすればそれは事前協議の中には入らぬわけでありますが、きわどい、五グループの中で四も来るというような場合は、安保条約四条の協議、いろいろ協議をしてアメリカと話す場合もあると思います。しかし、事前協議の一つの基準を設けなければなりませんから、その基準は一タスクフォースということで、五グループ以上がタスクフォースと考えておりますから、事前協議という基準の中には入ってないのでございます。
  225. 矢野絢也

    矢野委員 事前協議の対象としては一タスクフォース、五つのグループ。ところが、そのうち四つなら事前協議にはならぬというお話であります。もっと極端な場合、四個のグループじゃなくして、この五個のタスクグループのうち、一隻だけ駆逐艦が抜けておる、これはあなたの形式論理からいえば一タスクフォースじゃない。その場合でも事前協議の対象にならぬ、このように考えてよろしゅうございますか。
  226. 三木武夫

    三木国務大臣 日米両国は、そういうきわどい、事前協議をはずすために一隻を除く、そういうふうな日米関係ではないのでありますから、そういうふうなことを仮定すれば、これはいろいろな問題が起こりますが、むろん、一隻ぐらいのときには、一隻除いただけで一タスクフォースだというときには、これは常識的にはやはり事前協議にかかるべきものだと私は思います。
  227. 矢野絢也

    矢野委員 私がこういうこまかいことを言い出すのは、エンタープライズのあのグループはタスクフォースでないから事前協議をしない。このタスクフォースということに政府はこだわって、事前協議の対象にない、こう言っておられるから、そのタスクフォースなるものはきわめてあいまいなものだということを申し上げているわけです。要するに、いまの御答弁によると、そういうタスクフォースのうちから一隻の駆逐艦が抜けておる、そういう場合は当然事前協議するのだ――要するに、事実関係において判断をしなければならないという意味だと思うわけでありますが、その点、三木さんいかがでございますか。
  228. 三木武夫

    三木国務大臣 そういうことは考えられないことでありまして、一つの大きなタスクフォースの中から駆逐艦を一隻だけ除いてほかは全部タスクフォースだという場合は、極端な例をおあげになったので、そういうことは日米関係としてあり得ることではないと思いますが、そういうときには、むろん事実的な判断によって事前協議をすることは当然のことだと思います。
  229. 矢野絢也

    矢野委員 私がこういうことを言い出したのは、やはり事前協議というのは、そういうタスクフォースとか、そういうような形式的な基準できめるのではなくして、事実関係において事前協議の対象になるかどうかをおきめになるべきだ。そうであれば、第七艦隊の主戦力ともいわれるエンタープライズ、これは船の数では私が申し上げた例に当たらないかもわからないけれども、このエンタープライズのワンタスクグループは、事実関係からいけば第七艦隊そのものだ。それが一タスクフォードでないからあれは事前協議にならないのだという論理が非常におかしい。やはり事実関係に立って考えようというならば、エンタープライズもこれは事前協議の対象にされるべきである、このように思うのでありますが、その点いかがですか。
  230. 三木武夫

    三木国務大臣 それは、エンタープライズは相当大きな水上艦隊ではございますけれども、しかし、タスクフォースだと認めるわけにはいきませんし、常時配置でもないわけです。したがって、事前協議の対象になるとは考えておりません。
  231. 矢野絢也

    矢野委員 それでは事前協議の対象の戦闘作戦行動について伺いたいと思いますが、戦闘作戦行動と単なる作戦行動とはどのように違うか、お聞かせ願いたいと思います。
  232. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 戦闘作戦行動と作戦行動とは大体同じだと思いまするが、しかし、もし専門的なことでございましたならば、防衛局長をして答弁せしめます。
  233. 矢野絢也

    矢野委員 いまの答弁ではあまり釈然としないのでありますけれども、先を急ぎますから、次へいきましょう。  戦闘任務を帯びて日本からアメリカ軍が出動する。日本から出動しているかいなか、これを何をもって判定されるか。これはひとつ防衛庁長官に聞こう。そうお逃げにならないで。
  234. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 作戦命令を具体的に受けまして、日本基地として出動するというような場合には、日本基地とする戦闘作戦行動と、こう考えております。  それから、戦闘作戦行動と作戦行動とは、一般に演習なんかのときにもオペレーションという字を使いますから、それが戦闘作戦となるというと、ほんとうに日本字の作戦という字が悪い字でございまして、これはむしろ作業とか動作とかいう字なんでございまして、戦闘動作、戦闘作業というならば、これは作戦という字を動作、作業というならば相当ニュアンスが違います。でございますから、オペレーションということで、あなたがそういうふうにお使いでしたならば相当ニュアンスが違います。しこうして、戦闘作戦命令を受けて日本基地として出発するという場合には、その基地から作戦行動が行なわれたものと、こう考えております。
  235. 矢野絢也

    矢野委員 アメリカ側で戦闘作戦行動についての事前協議が非常にわずらわしい、じゃまくさい、だからその煩を避けよう、そのように考えれば、極端な場合、たとえばエンタープライズの場合なんかもそうでありますけれども日本領海に接続する公海上、要するに、日本の領海から外へ出て、あるいはその上空に移動させて、その直後に攻撃命令を与えれば、事前協議の対象にならない、こういうふうに考えてよろしゅうございますか。外務大臣に伺いましょう。
  236. 三木武夫

    三木国務大臣 作戦基地として日本を使うということは、日本基地で作戦命令を受けて出動する場合をいうのでございます。
  237. 矢野絢也

    矢野委員 そういうお話であれば、公海上に出てから命令を受けたと称すればいいのであって、たとえば佐世保湾内にあるエンタープライズが戦闘作戦命令を受けておるかどうかはわれわれはわかりはしない。あるいは佐世保湾に入る前にエンタープライズが戦闘命令を受けておるかどうかもわかりはしない。したがって、要するに、公海上に出てから命令を受けたと称すれば、それでこの事前協議の煩を避けることができるわけであります。これでは全く事前協議はもぬけのからであります。全く形骸化されておる。元来、この戦闘作戦行動についての事前協議は、日本から直接戦闘行動を起こされては、日本がこの戦争関係しておる、そういうふうに思われるのがいやだ、そういう立場でこの戦闘作戦行動についての事前協議ができ上がっておるわけです。ところが、いまのように全然わかりはしない。しかも、公海上に出てから受けたと称すればそれで済む。これでは全く情けないと思うわけであります。  そこで、実例をもって伺いたいのでありますけれども、これはこの戦闘作戦行動についての解釈を容易にするために、実例をもって伺いたい。  あの第二次世界大戦の真珠湾攻撃、いささかお古い話で恐縮でありますが、これは御承知のようにまず第一段階は、連合艦隊が内地の各基地より千島のヒトカップ湾に集結をした。このときすでに戦闘作戦命令を受けていたかもしれない。第二の段階は、連合艦隊がヒトカップ湾を出航して、そして一切の無電封鎖をして、隠密裏にハワイを目ざして行った。このときに戦闘作戦命令を受けておったかもわからぬ。第三は、太平洋上、あの有名な「ニイタカヤマノボレ」の暗号命令を受けたとき。第四段階は、オアフ島の付近で、赤城をはじめ各空母から艦載機が真珠湾に向かって発進したとき。それから第五番目は、真珠湾の上空に到着し爆撃をしたとき。こういう五つの段階にこの場合は分かれるわけでありますけれども、いま事前協議の対象となる戦闘作戦行動の政府解釈によりますと、あくまでも事前協議の対象となるべき戦闘作戦行動、こういう意味で伺うわけでありますけれども、その場合は、いま申し上げた実例で、どの時点において戦闘作戦行動が発動されておる、この辺について御意見を外務大臣から伺いたい。
  238. 三木武夫

    三木国務大臣 太平洋戦争のことは、私、そのときの命令ということはよくつまびらかに承知いたしませんが、しかし、おそらく一つの根底にあるものは、条約というもの、両国間の信頼関係というものが非常に大事であります。なかなか条約というものは全部条文に一切のことを網羅して書くわけにはいかない。両国の信頼関係というものがないならば、これは疑ってかかれば、なかなか条約というものが完全なものにはなり得ない性質のものだと私は思います。したがって、作戦事前協議を受けるのが非常に繁雑だからといっても、結果的にはわかるわけであります。作戦命令を実際に受けて出動したかどうかということは、その後の行動についてわかるものでありますから、われわれは、作戦命令を受けた行動が、作戦命令を日本基地において受けた場合における軍隊の行動というものが事前協議の対象になるということで、日本があらかじめ日本意思を反映することは可能であると信じております。
  239. 井出一太郎

    井出委員長 矢野君に申し上げますが、あなたの持ち時間は大体経過しております。
  240. 矢野絢也

    矢野委員 私はいま具体的な実例をもって伺ったわけであります。この日本の各空母をエンタープライズと解釈していただければよろしい、ヒトカップ湾を佐世保と解釈していただければよろしいわけであります。その場合、第三段階の、太平洋上で「ニイタカヤマノボレ」という暗号命令を受けた、この時点において、エンタープライズの場合、戦闘作戦命令が発動すると考えてよろしいか、あるいはベトナム沖へ行って――ちょうど真珠湾と同じことです。飛行機が発進する、その時点において戦闘作戦行動になるのか、この点について伺いたいと思います。
  241. 三木武夫

    三木国務大臣 それは日本においてある地域に行って作戦をすることを命令を受けたところが事前協議の対象になる。ある地点まで行って、そこからまた命令を受けるということは、事前協議の対象とは考えておりません。
  242. 矢野絢也

    矢野委員 そうすると、日本の領海から出れば、つまり、公海に出れば、アメリカがいかなる命令を受けようとも、これは戦闘作戦行動、事前協議の対象にならぬ、こういう解釈だと了解してよろしゅうございますか。
  243. 三木武夫

    三木国務大臣 日本の領海で命令を受けていない場合は作戦行動だとはわれわれは考えられません。けれども、それは結果的には、実際どういうものであったかということは、その後の作戦によってわかることでありますから、結果的にわれわれはそれが判断できることは、多少あとではありますけれども、あり得るんだ、そういう意味で、そのような、ただ事前協議の条項を避けるために日本では命令をしないけれども、実際には日本の領海から直ちに作戦行動に出るというようなことは私は考えられない、それは結果的にわかることである、こういうように考えております。
  244. 矢野絢也

    矢野委員 結果的にあとからわかったんではどうしようもない。事前に日本がそういうことに巻き込まれないための事前議協でありますから、先ほどの御答弁はどうも納得できないわけです。そこで、伺いますが、昨年の十月の六日に藤崎条約局長はこのように言っておられる。「この航空母艦の実態を私はよく存じませんが、従来の説明は、その航空機が航空母艦から飛び立っていく、そこで戦闘作戦行動が発進されるのだ、そういうような考え方であると存じます。」こういうふうに、飛行機が航空母艦から飛び立って初めて戦闘作戦行動になるのだ、こういうお考えのようでありますが、そうすると、たとえばベトナム沖までエンタープライズが行く、そしてベトナム沖で飛行機が発進する、その発進するまで、ベトナム沖へエンタープライズが行く行動は一体どういう行動になるのか、単なる飛行機の輸送ということになるのか、防衛庁長官に伺いたいと思います。
  245. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 いま外務大臣からお答えいたしておりますとおり、事前議協の対象は、あくまで日本基地として使用する場合の戦闘作戦行動でございまして、戦闘作戦行動の命令を日本基地のうちあるいは日本の領土、領空のうちで受けた場合は事前協議の対象になるということでございます。  そこで、エンタープライズのことはわれわれはそうではないと考えております。と申しますのは、途中はいろいろ行動いたしましたが、また日本海へ入りましたり、いろいろ命令を受けまして、そうしていまはベトナムに向かいつつあるようでございまするが、佐世保あるいは日本の領海内において戦闘作戦行動を命令されていないことだけは事実でございます。あとは輸送である、普通の軍艦が運行しておる状態である、こう考えております。
  246. 矢野絢也

    矢野委員 まことに恐縮ですが、もうしばらく時間をいただきたいと思います。  そうすると、ベトナム沖までエンタープライズが行くことは、この航空母艦の行動は輸送、戦闘作戦行動ではない、こういうふうにおっしゃったように思いますが、それで間違いございませんですね。
  247. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 いわゆる事前協議の対象である日本基地とする戦闘作戦行動ではなかったと、エンタープライズという具体的問題について申し上げるわけでございます。  あと藤崎君の説明等は、条約局長その他外務省からお答えがあると存ずる次第でございます。
  248. 矢野絢也

    矢野委員 それでは、たとえば航空母艦が飛行機を積んでベトナム沖へ行く、その航空母艦を輸送船と置きかえた場合、さらに飛行機を地上軍と置きかえた場合、あなたの例でいきますと、輸送船がベトナムに到着して地上軍が輸送船より上陸用舟艇に乗りかえるまでは輸送任務である、戦闘作戦行動ではない、こういうことになるのではないかと思うのですが、こういう考え方は間違っておりますか、伺いたいと思います。
  249. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 矢野さんにお答えいたしますが、安保条約第六条に基づく岸・ハーター交換公文による事前協議の対象としては三つございまするが、その第三番目の、日本基地とする戦闘作戦行動、このことにエンタープライズが核当するかしないか、該当しなかったことは具体的事実できわめて明瞭でございまして、そこで日本基地として佐世保基地から出かけた場合は運航であると私は思っております。あと、どの辺で戦闘休戦行動の命令を受けたかどうかは、私どもの存じないところでございます。
  250. 矢野絢也

    矢野委員 先ほどから、たとえばエンタープライズが事実の上からは、これは第七艦隊の主力そのものである、にもかかわらず、事前協議の対象になっていない、これは理不尽であるということを申し上げた。あるいはまた、戦闘作戦行動の面につきましても、たとえ日本の領域内において戦闘命令を受けておっても、受けていないと称すればそれで事足りる。そうして公海上において受けたと称し、かつまた行動すれば、何ら文句のつける余地はない。三木さんは、先ほどアメリカを信頼しておるからそういうことはないとおっしゃる。しかし、信頼されるのもこれは自由でありますけれども、それを疑うのも私たちの自由であります。現に国民は、そのことについて疑いを持っておるから聞いておるわけであります。先ほどからアメリカを信頼し、アメリカ日本のためを思っておるのだから、日本の意図に反するようなことはしない、そういうふうな御答弁で片づけておられるようでありますけれども、最後に私が申し上げたいことは、最初に三木さんも総理もおっしゃったように、事前協議はわが国が戦争に巻き込まれないための大事な歯どめである。したがってこれは、アメリカ側に対してよりきびしく拡大解釈をしていかなくてはならない筋合いのものであります。しかるに、政府は、みずからの手で、この事前協議の解釈を、アメリカ側に有利に、そしてわが国に不利に解釈をしようと、そのように努力をしておられるとしか思えない。そこで先ほども、事前協議はわが国からすることができるんですかと、このようにお聞きした。ところが、そういうことはできません、こういうお話であります。まあ大平さんあるいは中川さんの文章を引いて御質問したわけでありますけれども、先ほどの御答弁で、私は一向に納得しておりません。したがって、なぜ事前協議の権利をわが国はみずから放棄したのか、いつそのように変えたのか、いつそのように、いかなる理由でそういう決定をされたのか、これは次の機会にあらためて承りたいと思います。  以上で質問を終わらせていただきます。(拍手)
  251. 井出一太郎

    井出委員長 これにて矢野君の質疑は終了いたしました。  次に、大原亨君。
  252. 大原亨

    ○大原委員 日米会談以来の佐藤内閣、特に私は、きょうは昭和四十三年度予算編成、これを通じての問題点を中心といたしまして、社会保障の問題などについて質問をいたしたいと思います。  昭和三十九年でありますが、佐藤総理大臣総理大臣になられる前に、総裁に立候補を決意されたときに、正式に記者会見をされております。そこに二つの重要な問題について決意の表明をされておるのですが、それは憲法の問題と人間尊重の問題でありました。  それをやや具体的に申し上げますと、高度成長政策の行き詰まりに対して、私は池田君のいわゆるひずみ是正などということではなしに、人間尊重、社会開発を政治の中心とするのだ、そういうふうに言い切っておられます。もう一つは憲法の問題ですが、池田前総裁は憲法改正の立党の精神を無視しており、私とははっきり違う、こういうことをあなたはお述べになっておる。その原稿を私は手元に持っておるわけであります。これはやはり国民に対しまして――私は政治家は、特に総裁、総理になる、政権をとる人は、責任を持つことは当然であると思うのであります。その間のあなたの決意について、いまも御記憶になっておると思いますが、お変わりはありませんか。
  253. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お答えいたします。  第一問については変わりはございません。  第二問については、先ほどもいろいろ私の心境、また所信を明確にいたしております。別に矛盾しておらないように私考えております。
  254. 大原亨

    ○大原委員 先ほどの議論を私はじっと聞いておりまして、国民立場に立って、あなたが組閣をされる以前、組閣をされて以降の一貫した言動その他につきまして、私どもが、きょうの質疑応答あるいは過般の質疑応答等を比較いたしまして考えますと、その点私は納得できない。というのは、ただいまも言われておりますが、池田前総理は憲法改正の立党の精神を無視しておる、私とはっきり違うのだ、こういうことを言っておる。これはいまもお話がございましたが、福田幹事長がNHKの放送討論で、いまの憲法は銃と剣で押しまくられたもので、改正できないのは自民党が三分の二の議席を占めていないためだ、これと私は同じだろうと思う。幹事長ではあるし、あなたが総裁、総理決意されたときの所信の表明と同じだと思うのです。そういうことの立場に立ってみると、初心忘るべからずということがございますが、佐藤総理の御答弁で国民は納得できぬだろう。重ねて御見解をお伺いいたします。   〔委員長退席、北澤委員長代理着席〕
  255. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 初心忘るべからず、おそらく国民は納得してくださると、かように思っております。
  256. 大原亨

    ○大原委員 うそも方便ということがあります。うそも方便、総裁、総理になるときに、自分の所信をはっきり対比させて言いながらあなたの子分や手下を集める、こういうことでうそも方便ということもある。あるいはいま申し上げましたように、初心忘るべからず、こういうこともあるわけでございまして、政治家はやはり節操を重んじ、自分の所信については責任を持たなければならぬ。こういう点におきまして、私は、総理の質疑に対する答弁はきわめて遺憾である、こういうふうに申し上げます。  それから、私は、先ほど来の質疑応答を聞きまして、一国民として常識的に考えましてこういう問題を持っておるわけです。あなたの御答弁の中に、アメリカの核のかさに依存する、核攻撃を受けたときにアメリカの核の報復を期待する、こういう御答弁があるのです。アメリカの核のかさ――これは中国やソビエトの核のかさ、日本立場に立てばそういう立場でもあるわけであります。核のそういう影響の範囲にあるわけであります。アメリカの上院におきまして、国防当局のさる高官が証言をしたことを私は思い出すのであります。日本のために、日本基地のために、あるいは沖縄のために、アメリカ人が税金を出すということは、これは日本のためではない、アメリカのためである、これは前線攻撃基地である、言うなれば犠牲基地であり、攻撃を吸着する吸着基地である、こういうことを磁石基地であるとも表現しております。そういう立場に立って考えるならば、これはアメリカ人の税金の支払いに対しまして有効な効力がある、こういうことを言っておるのであります。つまり核ロケット戦争を想定した場合においては、国民の常識から考えてみまして、私どもははっきり言い得ることは、日本はアジアの大陸に密着しておるのです。四面海ですが密着しておるわけであります。だから核競争、軍備拡大競争で、ABMでたとえ防御しようといたしましても、核が向こうから発射されまして七、八分以内には日本には届くわけであります。ですから、前線の攻撃基地、犠牲基地であります。攻撃を吸着する基地、犠牲基地であります。そういうことは、核戦争の常識からいえば非常にはっきりしておるのではないか。そういえば、佐藤総理の御答弁を聞いておりますと、国民はほんとうに日本の国を守るという、最近よく言われますが、そういう観点で総理は自分の高姿勢の自衛力増大やその他のことを言っておるのだろうか、安保支持の国民合意を予期しているのだろうか、こういう疑いを持つのであります。この点につきまして、あなたのよくわかるようなお話を簡単にお伺いいたします。
  257. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど矢野君にずいぶん時間を費やしてお答えしたのですが、御承知のように、私はできるだけ核のかさということばではなしに、核の抑止力ということばのほうが実態に合うように実は思いますので、さように御理解をいただきたい。先ほどもそういう話をいたしました。私がジョンソン大統領に四十年に会いましたときに、安全保障条約、これはいわゆる核兵器といっても核兵力はあまり考えない時分の安全保障条約、それに対しましてジョンソン大統領は、日本をあらゆる攻撃から守る、こういうことを実は申してくれました。その攻撃に対してこれを守るということは、攻撃が起きてから守る、こういう場合もありましょうが、攻撃を受けないように整備する、こういうこともあるように思います。ただいま言われます犠牲基地あるいは吸着基地、大陸から七分でこの国は攻撃されるか、かようにお話しですが、私は、よもや大原君自身が中共から攻撃を受ける、かようにお考えになっていらっしゅるのではないだろうと思います。私自身も、攻撃を受ける、核兵器から日本を守る、かようには申しますが、どの国から攻撃を受けるというような話はいまだかってしたことはございません。国際情勢がどんなに変わるかわからないから、それで万全の策を立てているのだ、こういうことを皆さん方の執拗なるお尋ねにもかかわらず説明してまいりました。しかし、ただいまは、大原君自身が七分くらいで攻撃をされるじゃないか、こういうようなお話です。私は、ただいま七分で攻撃を受けるというような事態は起きておらない、かように考えております。
  258. 大原亨

    ○大原委員 日米会談で私はきょうは深く入っては議論いたしませんが、日米会談以来、共同声明にも、中国の脅威について一致して確認したような声明文があるわけです。ですから、特にそういうことを、自衛力増強、安保支持の国民合意の要求と一緒に佐藤総理が大きな声を出し出されたので、私どもはその点について問題を指摘いたしました。  次に、もう一つお尋ねしたいことがある。まさか原爆を使うようなことはないだろう、ない、そういうことを確信しておるというお話ですが、最近の新聞や外電その他の報道を見ますと、ベトナムにおいてアメリカは非常な手詰まり状態になりました。これはライシャワーもロバート・ケネディもそういうことをはっきり言っております。もう軍事力では片がつかない、民衆が決定するだろう、こういうことを言っておるのです。しかし、手詰まりになればなるほど、アメリカにはアイゼンハワー前大統領をはじめ、戦術的な核兵器――これは広島型くらいであります。戦術的な核兵器を使うべし、そういうことで専門家を現地に派遣をしたという報道も、これは二、三にとどまらない。ウ・タントも、ベトナム戦線においてアメリカが戦術的核兵器を使うことには反対だ、こういう申し入れをしたそうです。こういうこともいわれております。あるいはイギリスの総理大臣のウィルソンも、アメリカの公式の記者会見において、核を使うなどというふうなのは気違いざただ、こういうふうなことを言っておる。佐藤総理大臣日本政府は――ベトナム戦線でアメリカが核兵器を使う、このおそれが多分にある。軍部でもそういう用意をすべきだという意見を持っておる者がある。であれば、そういう疑いがあればあるほど、唯一の被爆国とかいろいろと言うわけですから、アメリカに対してそういう意思表示を、堂々と天下にまっ先に公表すべきではないか。こういうことを総理はやったことがありますか。
  259. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ウィルソン英国首相、それと同じことをやったことがあるかというお話ですが、前日この予算委員会で、アメリカベトナムで核は使わないということをはっきり書っておるということを御披露した。これは御記憶に存するだろうと思います。私は、これを、こんなばかげたことはない、かように確信しております。また、そういう意味のそういう心配は、実はないように思っていたのです。だけれども、いま大原君の言われるように、一部にそういう考え方の心配があるようですから、これはたいへんいいお尋ねですから、この機会にはっきり申し上げておきます。さような危険はございません。これは、せんだってエンタープライズが入りました際も、エンタープライズはそういうものを装備できる船じゃないか、こういうことで皆さん方から非常に責められた。核兵器を持ち込んだんじゃないかということでありました。しかし、アメリカベトナムで核兵器を使う考えがない、こういうこともエンタープライズが核装備をしてないという一つ理由でもありました。これらの点を勘案されまして、ただいまのような心配のないこと、国民のほうはおそらく御存じだと思います。御理解をいただきたいと思います。
  260. 大原亨

    ○大原委員 私が言うのは、やはりそういう情報でもこうなんです。プエブロにいたしましてもそうでしょろ。あれは公海上で拿捕された、捕獲された、こういうことを言ったけれども、実際に調べてみると、捕獲して調べてみると、航海地図が全部出ている。航海地図は領海に入っているということがいわれておる。そのことは半ば公然アメリカが認めているじゃないですか。ですから、アメリカを信頼するというようなことでなしに、国民の利益とかあるいけ自主外交とかいう立場に立つならば、言うべきことは私は言うべきではないか。そのことをまっ先に日本は言うことが、私はほんとの自主外交、平和外交、平和に徹する外交というべきではないか。そういう危険はありませんと言ったって、アメリカ自体が、専門家や政治家を含めて言っているではないかということを私は指摘をいたしておるのであります。
  261. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 アメリカはまだプエブロ号が領海内にいたということを認めておりません。ただいま板門店でいろいろ会議をして一番議論になっているのは、領海を侵犯したか侵犯しないか、こういう問題であります。それらの点も新聞その他ではっきり出ておりますから、これは皆さんがあまり誤解はないだろうと思います。
  262. 大原亨

    ○大原委員 スパイ船ですからね。横須賀を基地にしたスパイ船ですから、これは領海に入っておるのは常識だということだけでなしに、航海図で証明されたということを言っているのです。そういう情報なんかも、アメリカの大使館だけじゃなしに、アメリカ関係の情報だけじゃなしに、あらゆる点から情報を確実にとって、日本としては自主性ある行動をとるべきではないか。私は、こういう反省があってしかるべきだと思うのであります。外務大臣、いかがですか。
  263. 三木武夫

    三木国務大臣 したがって、総理大臣が大平君の質問に対して答えたとおり、日本は海洋国家として、公海における航行の自由というものは重大な関心を持っておるわけです。だから、アメリカのプエブロが、もし公海上のああいう拿捕事件であるならば、それが事実であるならばきわめて遺憾なことであるという、総理国会における答弁は、私はきわめて当然の答弁であると思っております。公海における拿捕であるということが事実であるならば、公海上におけるそういうことがあることは非常に遺憾であるというのであって、何ら自主性のない発言ではない、きわめて自主性に富んだ発言である、かように思っております。
  264. 大原亨

    ○大原委員 先般、倉石前農林大臣の発言がいろいろ問題になりました。これが非常に重要であるというのはどういうことかというと、最近のそういう政治情勢の中で出てきた氷山の一角だ、こういうことで非常に大きく扱われておるわけです。  その中身で議論になりましたことは、これは武力を背景とする外交でない限りは限界があるということが一つです。もう一つは、他力本願じゃだめだ、こういう発言で、親鸞を引き合いに出されたわけであります。私は西本願寺はじめ十の宗門の代表が抗議を申し入れたということを聞いておるわけですが、私もゆかりが深いわけであります。私も真宗の門徒であります。そこで、きょう政府委員の中に適当な人がおられるから、この倉石前農林大臣が親鸞の他力本願ということについて発言をしたことについてこういう問題が起きた、その親鸞の他力本願とは一体何か、こういうことについて私は重大な関心を持っておるわけです。ちょうど北海道開発庁の次官である川野三暁参議院議員は、西本願寺の大幹部であります。ひとつその問題についてだけでよろしいから、どういうことなのかということについて発言をしてもらいたい。
  265. 川野三暁

    ○川野政府委員 ただいま大原さんから御質問がありましたので、簡単にお答えを申し上げたいと思うのであります。  私は北海道開発政務次官という立場ではなくて、ただいま私の答弁を求められましたのは、私は西本願寺の出身であるという意味で、しかもこの問題については専門家であるということでお聞きになったのだと思うのであります。  他力本願ということば、先般の倉石発言の中で、現行憲法は他力本願である、親鸞のような他力本願ではいまの世界では生きていけないのではないかという発言がありまして、その次にキリストのことば、聖語を用いまして、右のほおを打たば左ということばが出ておるわけであります。元来、これはたいへんな乱用、誤用でございまして、われわれそういうほうの専門家から申しますと、全く宗教的な無知から出てきたのではないかと思うのであります。これは他力本願ということは、まさしくは純粋な宗教上の信仰用語でございまして、決して相対的な、社会生活の上でこれを使いますると、非常に誤って用いられるのであります。御承知のように、外国ではキリストの聖語が乱用せられたり、あるいは茶化されたりということは、ほとんどその例を見ないのであります。わが国におきましては、識者の間でしばしば聖者のことばが乱用され、茶化されておりまして、これはわが国の国民の精神生活を著しく破壊するものであると私は思うのであります。他力本願ということは、これは定義がございまして、親鸞上人が――これは専門的になりまして説教になるかもしれませんが、簡単に申し上げますと、教行信証という本に他力本願ということをはっきり定義いたしまして、他力とは如来の本願力なりとはっきり定義しておるわけであります。おそらく倉石さんは、こういうものを全然お読みになったことはなしに使われたのであろうと思いまするが、この定義をくどくど申し上げますると時間もかかりますが、すなわち他力の他というのは、相対的な他であるとか自であるとかいう問題ではなくて、それを越えた純粋な、仏の衆生を救う、いわゆる救済の原理をあかしたものであります。しかも親鸞上人のことばで、他力回向ということばがあるのであります。これはまことに趣が深いので、他力回向ということは、要するに如来の力が、仏の力が人間の内側に入って、そうしてその生ける生命力となり、人間の逆境を越えて生きていくきわめて力強い生命力になってあらわれてくる、すなわち、ほんとうの意味の独立主体性を持ったものである。一例をあげれば、母親の乳ぶさの乳のようなものであり、太陽の熱や光のようなものであると申してもいいのであります。そういう意味で他力本願という意義があるのでございまして、どうかそういう意味で――答弁になったかどうか知りませんけれども、一言申し上げておきます。
  266. 大原亨

    ○大原委員 けっこうなお話を承りました。私は、親鸞上人を尊敬しますのは何かというと、当時の既成宗教が貴族仏教といって時の権力に阿諛迎合した。   〔北澤委員長代理退席、委員長着席〕 しかしながら、親鸞上人は、愚禿親鸞、みずからそう称しながら農民大衆の中に入っていって、時の権力の迫害を受けながら、ほんとうに民衆と一緒に宗教活動をやったのです。ですから、私は親鸞の教えについてくどくど言う時間はないが、いまに親鸞上人が生きておられたならば、これは自民党じゃなしに社会党だと思っている。これは社会党、革新だ。だから親鸞上人が言われた他力本願というのは、これは絶対者に対する帰依ということですが、南無阿弥陀仏ということだが、これはやっぱり平和とか真実とか、あるいは平和憲法を守るという、私はそういう精神だと思う。であるのに、そういうことを引用して、そうして憲法を冒涜する、あるいは主権者である国民を冒涜する、これはもってのほかであると思う。(「ケリはついたじゃないか」と呼ぶ者あり)ケリはついておるけれども、不用意な発言であるというふうに佐藤総理は閣議で言った。しかし、不用意な発言とはこの憲法否定のことば――武力を背景とした外交でなければだめだと言ったそういうこと、原爆や三十万の軍隊を持てと言ったそういうことの考え方に立脚したそのような考え、そういう思想、こういうものは、私は根本的に誤りである、こう思うわけです。総理大臣に所見があれば、ひとつ伺わしてもらいたい。
  267. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、ただいまのような大原君のお話、御批判、これは一つのこの話から感ぜられたことだろうと思います。たいへん残念なことは、いつも倉石君がいまして、そうしてこういうときには必ず自分で弁明が許されるのであります。そういう場所が与えられていないことは、私はまことに残念に思います。私が申しましたのは、ただいま言われるように、内外タイムスの記事をそのままお伝えになりますが、倉石君は、三十万の兵隊だとかあるいは武器を持つとか核兵器を持つとか、かようなことは申しておらぬと言っております。私は、その他不適当なことばはあると、かように思いますので、国務大臣として発言は十分気をつけなければならないことだと、かように私は思っておりますから、私は率直に、どうも発言が当を得なかったというか軽率であった、そのところを得なかった、かように率直に私の感じを披露しただけであります。
  268. 大原亨

    ○大原委員 次に、いま国民感情を尊重しなければならぬ。官房長官の発言でいろいろ問題になりましたが、これは私は国民意思だと思う。国民意思を無視してはいけない、そういうふうに思うわけです。  そこで、エンタープライズの佐世保入港問題をめぐって、いろいろな問題が起きたわけですが、たとえば横須賀の軍港の市長さんも絶対反対だと言っておる。それから佐世保の市長さんも、千数百万円の損害を賠償することを政府要求しているし、こんなのはごめんだ、こういう意味のことを言っておられるわけです。私は広島から出動命令を受けたある警官の話を聞いたわけです。佐世保はエンタープライズの作戦基地ではない、あるいは補給も、十日前ハワイで済んでおるし、何カ月間でも航行できるエンタープライズが、じゃ何のために佐世保に入港したのか。それは休養のためであると政府は答弁するけれども、しかし一警官や一国民立場に立ってみると、これは納得できない。なぜかといえば善悪、事の是非については別として、学生やデモ隊に対して警棒をふるうたその足で歓楽街に行って、そしてアメリカの兵隊たちが遊ぶやつを警護するというようなことは何としてもおかしいような気がする、こういうことを述懐したことばを聞きました。これは今日、佐世保の人々の述懐でもあるわけです。私はそういう点について、国民感情とか国民意思というふうなものは十分尊重するという立場で、エンタープライズなどの寄港問題等については政府ははっきりした意思表示をすべきであると思うわけです。いかがですか。
  269. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御承知のように、当時も説明をいたしたのでありますが、エンタープライズが佐世保に寄港する、その際に、その目的をはっきり大使館から書面で政府、外務省には通告があります。その以前に、これが強力なる原子力による航空母艦でありますから、いままでいつも原子力潜水艦が問題になりましたというような観点から、事前に、このエンタープライズが寄港することがあるが、一体そういうことについての準備は十分できているか、こういうような申し出もあり、政府はそういう意味の準備を全部いたしまして、そしてただいまの安全保障条約のもとにおいて、これは支障がないということ、これは入港を認めるべきだという結論に達して、それでエンタープライズが佐世保に寄港いたしたのであります。私どもは、まさかかような事柄であれだけの暴力行為が展開されるとは思わなかった。しかし、事前にいろいろの情報などが入っていますから、間違いがあってはならないと思いまして、警官が佐世保現地において警戒に当たったのであります。  私は国民の皆さん方に申し上げますが、どんなことがありましても法律は守らなければいかない。またそれが皆さん方も平和に徹する姿ではないかと思います。暴力行為、これは許されない、その観点に立って行動していただきたいと思います。皆さん方の、国民の一部のお話、静かなる抗議は、私は十分聞くだけの用意がございます。しかし、暴力によって社会秩序を破壊し、それによって自分たちの意思を遂げようという、かようなことは、この民主政治のもとにおいて、法治国家のもとで許されることでない、これが私の信念であります。どうかさような意味で、いろいろ弁護されることもけっこうでありますが、暴力行為だけは、与野党ともに一緒になって、これをひとつないようにしようじゃございませんか。私はそういう意味で、政府自身も反省を必要といたします。十分考えてまいります。しかしながら、国をあげて暴力の渦中に巻き込ます、かようなことがあってはならない、これが私の考え方であります。
  270. 大原亨

    ○大原委員 私が質問いたしましたこととは若干違うわけですが、しかし若干の反省を含めながら所信を述べられたわけであります。  総理大臣昭和三十五年ごろから、佐世保や長崎やあるいは横須賀や岩国その他の外国軍事基地外国船が出入りするところ、そういうところを中心に、亡国病といわれている悪質な性病その他が蔓延している。ある学者の推定によると、五百万という人もある。また、ある人の推定によると、これは二百万だろうという人もある。そういうことは民族の健康や純潔、そういうものから言いましたら、外国人の悪性の梅毒その他ですから、非常に悪質です。そういう民族の健康からいいましても、私は非常に大きな問題ではないかと思うのです。このことを御承知ですか。
  271. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、私なりに事情を知っております。したがいまして、ただいま言われるように、民族の純潔を保つ、そればかりではありません。健康を守る、こういう意味から、この問題を軽視するつもりはございません。いわゆる三悪追放、これに対して特別に私ども政府が協力しておる。このことはすでに御承知のことだと思います。ただいまのような点を心配するがゆえでございます。
  272. 大原亨

    ○大原委員 これは一部の国会議員が現地調査をしまして社会問題になったわけですが、これは私はこういう席上で大きな声をして申し上げるのもどうかと思う点があるのですが、しかし事は非常に民族の純潔にかかわる問題です。非常に重要な問題ですから申し上げるのですが、新聞やその他で御承知のように、厚生省管轄の佐世保の保健所は、年一回血液検査をいたしまして、検査をしたという証明を出し、毎月監視をして回って、そしてこれは検証済みという判こを押した。この証明書を持っておる、健康カードを持っておる婦人はだいじょうぶですというふうな、そういう活動に協力をしたということが社会問題になったわけです。私が最初に申し上げたことも国民感情からいえばその一つなんです。ここに英文と日本文の健康カードがあります。保健所が判こをつくようになっておる。アメリカ基地の軍医が誘導し一緒に来ましてやったわけですけれども、何の権限があってそういうことをやったのか、あるいはどういう法律上の根拠があってやったのか、これは私じゃなくても、国民がだれしもこういう問題を契機としてやはり大きな問題であるというように思うことは当然です。どういう根拠で一体やったのですか。
  273. 園田直

    ○園田国務大臣 御指摘のとおりに、性病が非常に増加しておることは事実でありまして、医者の届けによりますと約一万八千名、しかし推定量によりますと二百万といわれております。ある人は五百万と言っております。そういう関係で、結婚あるいはその他の場合に、検診、血液検査等をやることはできるだけ推進してはおりますが、今度の佐世保の問題はそれとは別個の問題でありまして、昭和二十八年度に特殊の性病検診カードまたはこれに類似するものを交付したり利用せしめてはならないと都道府県知事に対し指導いたしております。しかるに御指摘のとおりに、今度は英文を併記をいたしましたカード等をやった、このことは国内的にも非常な誤解を与える、あるいは国際的にも国辱的な印象を与えますので、直ちに通達をして、これを廃止するよう指導をいたしました。
  274. 大原亨

    ○大原委員 私は一警官の述懐をしみじみと聞いたわけですが、学生デモその他についての議論はまた別の機会にする。しかし警棒でデモ隊をたたいた足でそういう歓楽街に行って、全く日本人とは違った形で警備の任務につく、警備をしておる。夜中じゅう立って待っておる。そういうことは市民感情、国民感情からいったって、たとえ一地域において行なわれたことであっても許すことはできぬのじゃないか。性病予防法とか売春防止法というのには刑罰もちゃんとついている。や法務省は一体何をしているのか、こういう声が起こるのは当然であります。ここだけは治外法権ですか、自治大臣国家公安委員長いかがですか。
  275. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 決してそういうことはございません。ただいま厚生大臣が申したとおりでございます。
  276. 大原亨

    ○大原委員 今後はそのような民族の血液を濁し、純潔を損う、そして子孫に対して多大の――精薄児の問題とか身体不自由児とか、これから議論いたしますが、これは無縁ではないわけです。全部が原因じゃないけれども、これは無縁ではない。そうして施設は足りない。福祉施設は足りない、社会保障はない、こういう実態ではありませんか。また菅原通濟さんが、これはこの道の専門家だが、沖縄へ行ってこられたときには、二、三割やはりそういう亡国病におかされているというおそれがある、こういうことを公然と文書にも出しておられる。そういうために日本基地に休養と称して来て、それを受け入れるのが日米親善とかいうふうに、現地の業者は言ったそうだが、そういうものではないと私は思うのです。その点については、自主的な国家、独立国家として、き然として禁止すべきものは禁止する、健康を守る、純潔を守るという方法をとるべきである。これが厚生行政であり、政府の方針でなければならぬ。そういうものは来るべきではない。寄港させるべきではないと思うのです。総理大臣、そういうものは寄港させるべきではないです。この点は、国民が納得できるように、ひとつ総理大臣は、エンタープライズなんか、そんなものは入港させるべきではないですよ。取り締まりもできないのだったら拒否すべきです。いかがですか。
  277. 園田直

    ○園田国務大臣 私のほうでは、佐世保市で飲食店の従業員が売春をしたという事実はわかっておりませんが、ただいまの検診カード等は、そういう誤解を招き、しかも非常にいやな連想を与えますから、直ちにこれを廃止するように指導いたしたわけでありますが、今後ともそういう問題については十分検討し、注意したいと考えております。
  278. 大原亨

    ○大原委員 警察は取り締まりますか。アメリカ人、アメリカの軍人であっても、遠慮しないで、治外法権はないはずだから。基地を出てくれば治外法権はないのだ。だから、日本の各地におけるように公平に私は取り締まるべきだ。それについて警察の最高責任者の答弁を願います。
  279. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 もちろん治外法権ではございませんので、そういう事実があれば厳重に取り締まりをいたします。
  280. 大原亨

    ○大原委員 それはアメリカの個人個人は非常に親しみのある人です。私も個人としては友人がおる。しかし、後進地域や植民地域へ行って遊んだと同じような気持ちで日本に来て、わがもの顔にやることを許すということは、私はいけないと思います。これを一警察官が行って取り締まる、そういう立場考えてごらんなさい。これは警察官の人権じゅうりんですよ。総理大臣、いかがですか。
  281. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま厚生大臣並びに赤澤君から答弁をいたしましたように、政府はその方針でおりますから、どうか御協力を願います。
  282. 大原亨

    ○大原委員 四十三年度の予算をいろいろと各角度から分析をいたしました。同僚委員からも今日までいろいろ議論がありました。佐藤総理は、先ほど来言われておるように、自主防衛を強化する、安保体制の支持、こういうことで国民の合意を求めることが沖縄返還の前提である、こういうことすらも成田質問に対して御答弁になっておる議事録がありました。  で、今回の予算編成を見てみますと、防衛関係の予算だけは全く別格扱い、聖域として扱われておる。これは私は国民立場から見ると非常に納得できない。大体、自主防衛の拡大というけれども、どこまでを目標にして日本は軍備が増大するのであろうか。かつてあなたの政敵でもありました池田総理は、軍備へ金を投入することはどぶの中に金を入れるようなものである、経済的にはどぶの中に金をぶち込むようなものだ、拡大再生産に乗らないという意味のことを、あの人らしく、中小企業が死んでもいいと言った人ですから、言ったことがある。文章にも書いたことがある。そういうことから、財政硬直化の原因といたしましてはこれは非常に大きな問題です。あるいは、この取り扱いの問題は、政治の中におきましては、初心忘るべからずということで、佐藤総理の最初の、人間尊重、社会開発の公約を私は引き合いに出しましたが、ションソンの演説――ことしの大統領教書からは、偉大なる社会、パンもベトナムもというやつは消えた。やはり佐藤総理の演説からも、これは全然社会開発や人間尊重はなくなった。これは政治の姿勢、予算編成の根本、こういう問題として、国民の納得できないことではないか、こう思いますが、いかがですか。
  283. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いずれ予算がさらに分科会その他にもなってくれば、防衛費がどういうように計上されているか、その伸び方もわかってくるでしょう。大原君も、その通でいらっしゃるのだが、ただいまのように防衛費だけは非常な伸び方、これだけは聖域だ、こういうような表現はひとつやめていただきたいと思います。私は、第三次防衛計画、これを前国会において通しましたけれども、この第三次防衛計画を年度割りにすればもっと計上すべきかもわかりません。しかしことしの予算は圧縮型でございますし、抑制型でありますから、防衛費におきましてもできるだけこれを縮小したつもりであります。したがいまして、年度割りでないことはもうおわかりになると思います。日本の防衛費の計上を他の先進各国に比べてみれば、私は、日本の防衛費というものは非常に少ないものだということがおわかりになると思います。こういう点こそ国民にも理解していただきたいし、また皆さん方も正しく予算のあり方を国民に説明してもらいたいと思う。感情的な議論はひとつやめていただきたいと思います。これが防衛費についての私の希望であります。  この点は、私が他の外国の例を申してみれば、主要国における国防費の伸び率、これは御指摘のように、日本の場合はやや他の国に比べて高い。これは最近の伸び率です。しかしながら、国民所得に対する割合、これは四十三年は、日本の場合は一・一一であります。また同時に、これが一般会計予算に占むる割合、これは七・二五でありまして、私はたいへん低いものだと思います。これを、国防費の歳出予算に占むる比率を主要国について例を見ますと、日本の場合は、一九六五年が八・二八であります。しかし、米国の場合は、これは特別に多いが、イタリアにいたしましても一二、あるいはフランスが一九、あるいは西独が一七、あるいは英国が一五、それぞれたいへん国防費の歳出予算額は多い。また国民所得に占むる割合にいたしましても、日本の場合は一・二二であります。しかしフランスの五・五九、イタリアの三・二七、西独の五・二四、英国の七・四四と比べてみると、日本の場合は低い。この点をよく御理解をいただきたい。そうしてしかもことしの計上から見れば、平均の、社会保障その他に比べてみると、伸び率もまた計上額も低い、この点を御了承いただきたいと思います。  ただいま、基本的な社会開発あるいは人間尊重、そういう予算が減っているじゃないか、こういうことでございます。しかしこれもいずれ分科会等において十分御検討願うことになっております。社会開発で一番重点を置かれる住宅の問題、住宅は昨年よりもさらに約五万戸程度ふやしてあります。これで私がこの社会開発を忘れていないのだ、口でこそ申しませんけれども内容的には十分盛ってあります。下水の整備につきましても、またその他学校等につきましても整備されております。  もう一つ申しますが、人間尊重を忘れたのではないかと言われますが、人間尊重の一番大事なことは交通事故防止の問題であります。これにも所要の予算が計上されております。また公害の予算も在来に比べまして非常に格段にふえております。これらの点を詳細にお考え願えば、私は絶対に初心を忘れておらない。この点はおわかりをいただけるのではないか。どうか十分御審議を願いたいと思います。
  284. 大原亨

    ○大原委員 できるだけ簡単に。総理大臣、私はこういうことを言っているのです。日本の防衛費の成長率、増加率というものは、現在世界で第一番だ、これは数字を検討してください。増加率は第一番だ。それで取り扱いにおいてもこれは聖域扱い、別ワクとして扱われた。生活保護なんかも徹底的にいじめつけられた。宮澤構想以来、物価だけでいいとかなんとかいうことを言われてやられた、私はそのことを言っている。大体どこまで、たとえば中国とかフランスクラスまであるいはアメリカとかソビエト――倉石さんは、アメリカとかソビエトは国連で働いている、それはあんなに原爆を持っているからだ、やはり軍事力がなければだめだということも言ったから、そこをねらっているのか。世界一の膨張率を持っている、日本の軍備はどこまでいくのだろう、どこを目標にやるのか、国力、国情に応ずるという抽象的なことではこれはわからぬ、こういうことを私は言ったので、これは水かけ論になってはいけませんから、具体的な問題についてこれから私は逐次申し上げていきたいと思う。  北山委員はじめ同僚委員からお話がありましたように、昭和四十三年度の予算は、物価の上昇率がしり上がりにひどいわけです。昭和四十二年、昨年の十二月の前年同月比でいきますと、たしか五・六%です、物価の上昇率は。平均いたしますと四・五%におさまるかもしれぬが、五・六%です。横山委員がさっき議論されたようにしり上がりです。それから酒やたばこや運賃その他、こういう逆進性の強い間接税が増徴されているわけです。だから、所得税を納めていない半分に近い階層にはこれは非常にきびしい予算じゃないか、非常に弱い者いじめの予算じゃないか、大衆いじめの予算じゃないか、そういう配慮のない予算じゃないか、こういうことを私は国民の一人として感ずるのです。いかがですか。
  285. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 御承知のように、やはりいま一番必要なのは所得税の減税であるというふうに私ども考えております。それによって、今度は所得税の減税と同時に住民税の減税をする、これによって相当の国民負担というものは減っておる。同時に間接税の増徴をいたしましたが、これも御承知のとおり国民所得水準、物価水準に比べて、相対的には税負担が軽くなっておりましたので、この調整の意味をもって間接税の増徴をやりましたが、しかしその場合も、私どもは、いまおっしゃられたような問題を考えて、一部の品目については位上げをしないという部面もつくると同時に、一方生活保護費以下のその他の低所得層への社会保障は、今度の予算で相当の強化をいたしておりますので、私は、今度特にそういうふうにこの逆進性によって低所得者の負担が不当にふえる税制ではないというふうに考えております。
  286. 大原亨

    ○大原委員 あなたはごまかしちゃいかぬですよ。物価上昇の一番しわ寄せを受けるのは低所得者でしょう。低所得階層ですよ。食糧費やその他がウエートがあるのですから、これは弾力性がなくなるのです。それから間接税は逆進性が強いでしょう。大衆負担の負担率が強いでしょう。ですから所得税の調整減税の恩恵にもあずからないような、そういう人々に対しては、何も政府の施策というものはこの予算の中に見られぬじゃないか、どこにありますか。そういうことを私が言っているのですよ、大蔵大臣
  287. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 生活保護費も、御承知のように、東京で四人世帯というようなところでは、今年度初めて一カ月三千円以上の増額というようなことがなされておりますし、それによって、引き続いた生活保護基準の引き上げによって、著しく、いわゆる低所得層の生活も改善されております。エンゲル係数に見られるところにおいてもそうですし、一般勤労世帯との格差というものが非常に狭まっているということは事実でございます。したがって、たとえばたばこのような問題にしましても、昭和二十六年以来据え置かれておる。実質的には消費税的なものが毎年相対的に下がっておったというようなことから、税の増徴はいたしましたが、しかし、たばこは、たとえばほとんど売り上げの四〇%がハイライトでございますが、こういう大衆性を持ったたばこ値上げをわりあいに低い率でいたしましたし、また一部の銘柄は、特にそういう低所得層のために植を上げない、こういうような配慮もいたしておりますので、私はそう大きい負担の強化ということにはならぬじゃないかと考えます。
  288. 大原亨

    ○大原委員 バットとか新生とかハイライトなどは、税金を上げないで現状維持できるじゃないですか、そういう議論もやったのだけれども、一般的にこういう間接税は――私が言っているのは、間接税を増徴すれば、逆進性が強いから貧乏人いじめになるじゃないか、そういうことを、育っているのじゃないですか。それをごまかしちゃいかぬです。  それから、生活保護を引き合いに出されましたが、予算編成過程で私が絶対に納得できないと思うのは、いままで生活保護は、去年は一三・五、おととしも一三・五%上がったのです。ことしはいろいろ厚生大臣苦労されて二三%までいったけれども、個人消費水準の伸び率よりも上がっているから、格差は拡大しているんですよ。大蔵大臣、うそ言っちゃいかぬですよ。一般勤労者と生活保護者の格差は、五一・七%ぐらいまで昭和四十一年はなったが、四十三年から拡大する方向になっている。それは去年は個人消費支出のちょっと上のところで、経済社会発展計画、経済企画庁がやっているそういう計画に沿うて、格差是正の方向で去年、おととしは一三・五%上げた。ことしは一三%。宮澤構想などは、最初出たころは物価値上げ分の五%から六%ぐらいにとどめろ、公務員賃金と一緒に、こういう構想を出した。大蔵省は、査定の過程で九%までやった。その前には六%という放送をした。これは経過から見て、こちらの防衛費のほうは前からずっと素通りだった。こっちのほうはいじめいじめて、最後に努力してようやく上がったやつは格差を拡大する方向ではないか。いかがですか。
  289. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 国民経済計算の上におけるいまの消費支出から申しますと一四%ということになっておりますが、国民一人当たりということの計算で見ますと、これは一三%になる。ここらが境のところでございますが、本年度はいろいろ私ども考えたあげく、この一三%でとめたということでございますが……(大原委員「格差は拡大している。」と呼ぶ)私は格差は拡大していないと思います。
  290. 大原亨

    ○大原委員 数字を出しなさい。つまり私が言っているのは、個人消費の支出、そういうものよりも下回っている。昨年は必ずしもそうじゃなかった。一三・一%が個人消費支出の水準だったが、一三・五%ずつ上げた。今度は値切りに値切って、最後に上げたのは相当の努力のあとは見られるが、しかし格差は拡大だ。この生活保護基準のきめ方によって、あなたも御承知のとおり、児童福祉施設や老人やその他身体障害者の施設の飲食費その他、全部右へならえするんだ。その人たちは減税の恩恵にも浴さないし、あるいは物価上昇のはね返りを受ける。これはひどい予算じゃないか、取り扱いにおいてもひどいじゃないか。私はこう言っているんです。出してごらんなさい。格差が縮小している数字を見せなさい。
  291. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 さっき申しましたように、個人消費支出の伸び率は一四%となっておりますが、人口一人当たりに換算すると、これは一三%になります。で、都市勤労者の家計消費支出の増加率は、四十二年の一月から七月、これを前年同期に比べまして、九・二%でございますが、一三%上がるということによって、今回の値上げによってこういう問題は相当の改善を見ているというふうに考えております。(大原委員「いまの数字はでたらめですよ。そんな数字はいかぬです。」と呼ぶ)  いずれにしましても、この低所得者、ことに被保護者の最近の統計は、どの統計を見ましても格差が縮まっているということは、これは確かでございます。勤労世帯の実計消費の統計から見ましても格差は縮まっておりますし、エンゲル係数から見ましてももう非常に格差が縮まっておるということで、これはもうどの統計を見ても格差が縮まったということははっきりしております。
  292. 大原亨

    ○大原委員 私が言っているのはこういうことですよ。去年、おととしも一三・五%の生活保護費の最低の引き上げをやりながら、ことしは、いじめにいじめ尽くして一三%しか上げていないじゃないか。個人消費の伸びというものは、去年もことしもこれは伸びるんですよ。だったら格差が拡大しているじゃないか。あなたは都合のいい数字だけ言われているが、私は一々全部反駁しますよ。それはできるのです。だから、問題はこういうことです。防衛予算その他については聖域扱いにしながら、この問題については、一定のルールが朝日裁判以来できておったんだが、それを今回ぶちこわした。この中身についても議論したい。児童施設やその他の食費なんかというのはひどい扱いだ。たった一〇%しか上がっていない。そういうのがある。だから、私は、生活保護をそういうふうに最低を引き上げる、人間尊重だったならば、格差縮小の方向でやるというルールを予算編成において確立しなさい、こういうことだ、一つは。もう一つは、昭和三十六年に社会保障制度審議会、総理大臣の諮問機関の審議会が、当時の生活扶助基準額を十年間で三倍に――昭和四十五年ですよ、引き上げなさいという勧告をしている、実質三倍に。それから見たならば、小手先のことでなしに、計画的に、人間尊重の精神で低所得階層に対してあたたかい思いやりのあるような予算編成のルールを確立しなさい。五%、六%の宮澤構想もあった。あるいは九%にひねった。一三%を、一晩じゅう二晩じゅうやってそうなった。ある社会福祉大会へ行った人のおかあさんが、こういうことを言っている。児童収容施設、心身障害児を持っている親である。自分がこのままでもし年をとると、自分の子供がどうなるかわからぬ、そのことの心配を考えると、そういう不具の子供については親は殺してもいいという法律をつくってもらいたい、こういうふうに無慈悲なことをするのであるならば、こういう発言をした人のことばが私はわかる。これは非常に思いやりのない予算だと思う。そういうルールを確立しなさい、こういうことを私は言っているのです。
  293. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 問題は、いまの格差の問題ですが、一三%の扶助基準の引き上げをやった。この一三%と、他のいろいろ消費者物価とかあるいは賃金の上昇率とか消費支出水準の上昇率というものがどういう関係があるかということを比較することによって、大体格差がどうなるということを判断できると思うのですが、数字をあげてみますというと、いま言ったように個人消費支出の伸び率は国民一人当たりの換算にすれば一三%ということですし、都市勤労者家計消費支出の増加率というものは九・四%だ。したがって、これも一三%以下である。消費者物価は御承知のとおり四・八%、民間賃金は五人から三十人というところの職場及び全産業、いろいろやってみましても、やはり八・六%前後の賃金値上げである。そうしますというと、一三%の引き上げをやるということによって、一般の勤労者との開きというようなものも、これは縮まった方向へいっているというふうに私は考えております。ことに国家公務員との比較にしましたら七・九%。そういうようなことを考えますと、一三%の引き上げということは、いまの他のいろいろな賃金、消費の支出水準の上がり方と比べて、この引き上げ率のほうが多い。したがって格差解消には一歩近づいているということを申したわけでございます。
  294. 大原亨

    ○大原委員 昭和四十一年は確かに五一・七%、そうだったんですよ。一般の勤労者の水準と、国民の生活水準と生活保護は五一・七%だった。四十二年、四十三年、四十三年の予算で差が開いたじゃないか、こういうことを私は言ったわけです。ともかくも格差を縮小する、こういうことに従って、そういうルールを確立して、こういう問題についてすったもんだというふうなことでなしに、きちっとして私は、けじめをつけてやりなさい、予算の編成の仕方はこれはひどいじゃないか、こういうことを、あなたが生活保護の問題を出されたから、内容的にはまだ議論いたしますが、私が指摘をいたしたのであります。  この予算の編成の中でもう一つ私が指摘をいたしたい点は、私どもは軍人恩給についてはこう思っているのです。これは反対ではないのです。特に戦争犠牲者の遺族の給付については当然やるべきです。原爆の問題もそうです。しかし、旧大将が恩給が五十五万円で兵隊が二万一千円というのは、格差が二十七倍ある。これはひどいじゃないか。その軍人恩給が一六・六%、恩給審議会の答申もなしに素通りをしている。一方では生活保護の問題あるいは公務員賃金の問題、その他の国民に対する思いやりはない。そういう点は国民感情からいってもこれはひどいじゃないか、こういうことを私は指摘をいたしたいのです。  それから、防衛庁の問題だけを取り上げて増田さんきげんが悪いだろうが、自衛官はいま二十八万人の定員ですが、その充足率を上げて九一・五%、二万三千名の増募をするというのです。一方では五十八万の国家公務員、その中で二十八万人自衛官がいるのですよ。その自衛官以外の公務員について三年間五%の削減をする。この問題についてはともかくとして、硬直化のおりに、何も自衛官、これだけを無批判に欠員補充で二万三千名をふやす必要はないじゃないか。私は、これは国民立場に立てば当然じゃないか。軍備反対賛成はともかくとして、硬直化の問題を議論する際には、これを当然私は一緒に議論すべきじゃないかと思う。大蔵大臣いかがですか。
  295. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 先ほどから防衛費は別扱いにしたようなお話でございましたが、さっき総理が答弁されましたように、今度の予算編成において、われわれは防衛費を別格に取り扱ったという事実はございません。ただ予算編成において、いままでのように大蔵原案が最後には相当大きく動くというやり方をやめるということから、最初からもう適正な予算の配分をやる、そして若干の調整費をもって最後の仕上げをするということをやりましたが、最後の調整費はいま言った生活保護費の一三%アップとか、それ以下のいろいろな社会保障費そのほかにこれを配分して、防衛費には最後に配分しなかったということから、何か特別扱いをしたように思われるかもしれませんが、それだけ防衛費は昨年よりも率においても減っておりますし、一般の、たとえば社会保障費の伸び率に比べて、九・一%という防衛費は、いままでの防衛費ではふえ方が一番少ない。しかも防衛費の一般会計における比率、国民所得に対する比率は年々下がっておるということで、今年特に防衛費を大幅に増額したというようなことはございません。
  296. 大原亨

    ○大原委員 基本的な問題だけを大まかな議論をするわけですが、最近は予算の硬直化に関連をして、イギリス病あるいは西ドイツ病、こういうことをいうて、そして社会保障制度を目のかたきにしている。これはお門違いじゃないか。硬直化の原因――受益者負担の原則をここに入れるとか、いろいろいっているのです。社会保障を伸ばしたというけれども社会保障の伸び率は一〇・三%で、全体の率からいえば一二%あるいは一四%という、特別会計を入れれば、これはそういう議論にもなる。そこからいえぱ、これは決して高くないです。いままでの考え方からいえば高くない。やはり西ドイツとかイギリスの教訓を学ぶというのは、イギリスがスエズ以東から軍隊を引き揚げる、一九七一年には核兵器をも廃棄しよう、あるいは西ドイツも、硬直化の原因は軍事予算だということで、一年間千八百億円も削っていっている。五カ年の軍縮計画をやっている。向こうは、いまは高いかも知らぬ。日本は低いかも知らぬ。しかし一年一年の膨張率からいうと、財政を硬直させる大きな原因になるのじゃないか。そういうことについて外国のことを学ぶのならいいけれども、硬直化、硬直化と言いながら、弱いところや大衆の国民の生活に関係のあるところにしわを寄せるのはいけないのじゃないか。ドイツ病とかイギリス病というのは、そういう逆のとり方をしてはいけない。見解はいかがですか。
  297. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 結論は同じになると思いますが、何か社会保障を目のかたきにして云々というお話でしたが、それはむしろ逆だと思います。ドイツにしろイギリスにしろ、財政硬直化をそのままにしておいたためにいろいろな問題が出てきて、ドイツにおいては、硬直化してしまったから景気調整機能というものを財政が失った。したがって、この景気調整をやろうとしたら、ほとんど金融政策にのみ依存しなければいけなかった。そのために、これは非常な問題を起こして、経済を縮めて、整備投資をも押えて経済を維持させたというような問題、したがって、その結果がどうなったかといいますと、公債を多く出さなければいかぬ、公債を多く出すことによってドイツの財政はインフレになってきた、こういうことで、ここらを解決するためにやった措置が、みないままでせっかく水準を高くしてきた社会保障費の打ち切りとかあるいは一時停止とかいうようなことをドイツもイギリスもやっておるのであって、財政硬直化問題を打開しないというと、せっかくわれわれがやってきた社会保障の水準も途中で狂わせて、これを押えなければならぬということが目に見えるからこそわれわれは財政硬直化を避けなければいかぬということを言っているので、むしろそのことは、こういう社会保障制度というようなものを、国の経済の伸びと対応させてこれを仲ばしていこう、弾力性を持たせようというためにこそ、この財政硬直化の問題を私どもやっておるのであって、あなたの言うことは逆ではないかというふうに考えます。
  298. 大原亨

    ○大原委員 私は具体的にいま申し上げたので、時間のむだになりますから、あなたと議論はいたしません。  それから、この四十三年度の予算の中で、いままでの公約に関する問題が三つあるのです。  その一つは、佐藤総理がややこれについては積極的な熱意を示されたわけですが、八木委員等から熱心に従来質問いたしておりました同和対策の問題です。同和対策特別措置法案の立法化については、首相はしばしばこの席上で非常に積極的な言明をされたわけです。しかし予算を見てみますと、その法律案ができるような気配があるのかないのかわからない。私どもの党といたしましても、予算審議中もこの問題に重大な関心を持っております。あるいは別の機会を設けて八木委員からも質問があるはずですが、この問題について私は佐藤総理から、この機会に積極的な熱意のある御回答をいただくようにひとつ要請をいたしたいわけであります。佐藤さんいかがですか。
  299. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この問題につきましては、私はかねてから積極的な考え方を持っております。また、そういう意味社会党の皆さんからも鞭撻を受けておるような次第でございます。  ただいまそのほうの担当の田中大臣から、ただいままで準備しておるところ、それをひとつお聞き取りいただきたいと思います。
  300. 田中龍夫

    田中国務大臣 御質問にお答えいたします。  同和対策の問題につきましては、総理もお答えになりましたように、われわれといたしましては、この同和問題の重大性というものに対して十分考えまして、この解決を考えておる次第でございますが、御承知のとおりに、この同和問題は、ただ法律をつくったから解決するという問題でもございません。ことに、ちょうど岸内閣のときに、五千万円から発足いたしました予算が、今日は四十二年度約六十一億五千万円という、対前年比約三〇%増、四十三年は約四十六億八千万でございますが、非常な実は伸びをいたしております。これは一口に申すならば、やはり具体的な一件一件、ケース・バイ・ケースで解決していくということのほうが、実際には効果的でございます。さような意味におきまして、いまは協議会におきまして、昨年の十一月、法制部会というものを設けまして、この同和対策協議会で立法の問題を検討中でございます。この協議会の答申を待ちまして考えたい、かように存じております。
  301. 大原亨

    ○大原委員 いつ出しますか。
  302. 田中龍夫

    田中国務大臣 それは、協議会がただいま法制部会で審議中でございます。
  303. 大原亨

    ○大原委員 佐藤総理、御答弁いただきます。  これは佐藤総理は積極的な熱意を示されたわけですが、この通常国会には出すというのが佐藤総理の御答弁、これは私が何回かの議事録を調べてみましたが、総理大臣が一番積極的であります。ですから、この点についてははっきりここで、そのことだけは、国会でせっかく審議しているのですから、はっきり答弁してください。
  304. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 大原君のお気持ちもよくわかりますし、私の考えておることも御理解いただけると思います。ただいまお答えいたしましたように、審議会等におきまして意見を調整中だ、かように聞いております。私も督励をいたしまして、できるだけ早くこれをまとめ上げるということに努力したいと思います。
  305. 大原亨

    ○大原委員 この国会に出るというふうに理解してよろしいですね。
  306. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 できるだけそういうふうにしたいと思います。ただいま調整をするというのは、そういうことが目標で調整中でございます。
  307. 大原亨

    ○大原委員 この四十三年度予算の中で、いままで議論いたしました中で、政府が公約をされました問題で、非常に大きな問題が残っておるわけです。これは児童手当の問題であります。児童手当の問題につきましては、いままで総理や、あるいは大蔵大臣や厚生大臣や、あるいはその他いろいろと議論があったわけであります。議事録を私は手元に持っておるわけでありますが、一番の問題は閣内の不統一であると思う。私は、この前の国会におきましては十分議論する時間がありませんでしたから、大蔵大臣に対しまして最初にお答えを願いたいのですが、それはこういうことであります。この前の国会における議事録を見てみますと、あなたが児童手当が困難である、できない、こういう理由としてあげたのが、一つは年功序列型の賃金ということであります。あるいは課税問題であります。いわゆる所得税控除の中における扶養控除の問題であります。あるいは重度心身障害児に対する特別手当の問題であります。私はこの三つをあげられたと思うのです。これは間違いありませんね。この前の答弁……。
  308. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 そういうこともあげましたが、大体日本社会保障制度というものの発達の過程を見ますというと、救貧制度と申しますか、低所得者に対していかにこれをめんどうを見るかというところから、いろいろの制度が積み重ねられてきております。したがって、そういう体系をなしておるところへ、全然異質のものを植え込もうとすることは非常に困難だ。たとえば児童手当というものをここへ導入しようとしますと、児童があるからこそ税制においては扶養家族の控除制度というものがあるとか、あるいは低所得者の児童を優遇するための制度は、現存の制度がみんなたくさんあるのですから、それとの関係をどうして体系づけるかということになると、よほどこれは研究してかからなければ、日本のいまの社会制度の中に簡単にこれは芽ばえないというふうに考えて申した、その中のいろいろの意見としていま言われたようなものを述べたことは確かでございます。
  309. 大原亨

    ○大原委員 第一番に大蔵大臣認識です。大蔵大臣が予算を動かして、社会保障だって、あとで申し上げるような大蔵省の見解を文書にいたしまして、財政制度審議会等に出しておるわけですから、これは全く、年功序列型の賃金がある日本においては、児童手当というものは順序不同、主客転倒だ、こういうふうな意味のことがあるわけであります。これは後に申し上げます。しかしあなたの認識は、私は間違っておると思います。日本の賃金が年功序列型の賃金である、こういうことは、あなたはどういう認識に基づいて言っておるのですか。どういう水準で、どういう格差でということを含めても私は専門的に議論したいが、あなたの言う年功序列型ということはどういうことなんですか。
  310. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 日本におきましては、一定の職場に長くつとめておれば、したがって能率もあがることになるのでございましょうが、若いときは安くて、年をとったらだんだんに高くする、年数によって賃金が上がる、こういう形を日本の賃金体系はとっておるのでございますが、そこへいきますと、外国のようなところではそうなっていない。したがって、子供が多いというようなときには、特別に何かのことをしなければならぬという必要が出て、向こうのような賃金形態の上に、児童手当というものを考えて、これが雇い主の負担になるというような形で発達してきた制度でございますが、日本は逆に、そうじゃなくて、年功によってだんだんに賃金が上がる。したがって、児童、お子さんもたくさんできてきて大きくなるということを考えて、賃金を上げていく。また、一人お子さんができればそれによって扶養手当をどうするというふうな税制においても考えるということをやって積み上げてきているのですから、そういう制度を積み上げた上に、今度は金持ちでも困った人でも無差別に一定の金を全部支給するというような形は、なかなかなじまないということを私どもは申しているわけであります。
  311. 大原亨

    ○大原委員 大蔵大臣、私どもは労働者だけを対象にして児童手当を考えていないのです。これは全国民、農民や中小企業、全部ですよ。このことが一つ。  日本の賃金水準は、時間があれば労働大臣に聞くけれども、非常に低いんですよ。そして格差がひどいのですよ。年齢別、性別、規模別の格差がひどいのですよ。これは労働省が出しました統計によりますと、定期給与額の年齢別格差、製造業について出しておるのです。この表を見てごらんなさい。どこが年功序列ですか。これをあなた見なさい。これは年功序列ですか。これは労働省。年功序列でない。三十五歳が一番高い。ずっと下がっておる。あなたが言うのはうそですよ。あなたはいいかげんのことを言うて、そして強引に救貧的なぎりぎりの生活保護を値切っただけでなしに――大蔵大臣、それはそんなものを見ないで、私の話を聞いてからやりなさいよ。私が質問している間は、聞かなければだめじゃないか。それが済んでからやりなさいよ。聞きながらそんなことはできない、親鸞上人じゃあるまいし。あなたは年功序列の賃金だというふうに言って、年を取れば取るほど子供を養う生活費が入っているというふうな、そういう甘っちょろい考えは、とんでもないですよ。うそじゃないですか、あなたが言っているのは。うそですよ、これは。認めなさい。
  312. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いま私もそこに統計を持っておりますが、五十歳前後をピークにしてそういう現象がありますが、この数字の問題はまたあとで私のほうで整理いたしますが、いずれにしましても、日本の賃金形態は、大体幾つかに分ければ、いわゆる年功序列型の賃金形態であるということは、これは間違いないと思います。
  313. 大原亨

    ○大原委員 私は、農民や中小企業、低所得階層その他を含めて、全部の国民の児童手当が問題である。児童は国の子である。これは児童の人権尊重のたてまえからも、社会の子である。いろんな観点、国民経済の観点からも、これはいままで論議をした救貧政策としてのぎりぎりの生活保護以外に、防貧政策としての社会保障、その中の基礎的な児童手当について認識をきちっと持たなければいかぬということが一つ。  その中で、年功序列型の賃金であると言うけれども日本の労働者の点について言うと、三百人以下の中小企業の大部分は、これは全部の労働者の中で七七%を占めているのですよ。それはもういまや年功序列の賃金ではなくなっているのですよ。三十五歳から四十歳、一番働き盛りがピークなんですよ。そして残りの二三%、つまり、総理大臣、大企業の場合においては、言われるように、五十五歳定年というひどいのもあるけれども、それから後に子供を養わなければならぬけれども、これは年功序列という傾向はあるけれども、年功序列というふうに大蔵省が独断をして、児童手当の問題について、年功序列型の賃金があるから児童手当は問題にならぬというふうなことは、絶対にうそである。詭弁である。このことが第一点。  それから、去年の議事録を見ると、あなたは、いまもあげましたけれども、第二番、企業は給与の中に扶養手当を出している。企業の中で、五百人以上一〇%、五百人以下は二五%が支給されておらぬのです。第一種、第二種、第三種、第四種と、順次金額が減少しているのです。一人六百円ないし四百円ぐらいが大多数なんです。一世帯に三千円どまりなんです。妻の扶養手当もあるわけです。そういうことからいうと、児童手当をほんとうに防貧政策、中間層以下低所得階層の防貧政策、貧乏の原因を除去する積極的な社会保障制度子供が多いから生活保護を受けるという例が多いのです。そういう防貧政策からも、その中において児童の人権を尊重するという意味からも、企業の給与の中に扶養手当があるというふうなことは、この実態から、第一種、第二種、第三種、ずっと少なくなっている。しかも四、五百円どまりであって、近く政府は児童手当をやるだろう。世界で六十二カ国もやっているのだから……。そういう点からいうと、あなたの認識はうそっぱちだ。これも間違いだ。  それから第三点、所得税に扶養控除があるからという説です。しかし、三千一百三十万人の雇用労働者の中で二千四百二十万人が所得税を納めておって、七百万人は控除の対象外なんです。そういう控除の対象外の人は、子供がおりましても、控除の対象にならぬわけです。ですから、低所得者ほど控除額が少ないのだ。そういうことからも、やはり児童手当の必要性は出てくるのです。税金の控除の面からも出てくるのです。それから企業の扶養手当の面からも出てくるのです。  もう一つ、議事録にはあなたが指摘をされておりますが、第四として、特別児童扶養手当の制度があるというのです。これは重度心身障害者の問題です。しかし、これもきわめてわずかじゃないですか。幾ら出しているのですか。何人に幾ら出しているのですか。特別児童扶養手当というのは、何人に幾ら出しているのですか。大蔵大臣答弁してください。
  314. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 各種の児童手当は、全部で大体六十億前後じゃなかったかと思います。
  315. 大原亨

    ○大原委員 何人ですか。
  316. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 六十億円。
  317. 大原亨

    ○大原委員 つまり、総理大臣、お聞きになってわかるように、大蔵省の見解がここにあるわけです。大蔵省の見解があるのです。大蔵省が財政制度審議会に出した財政硬直化の所見の中に、「社会保障の現状と問題点」というのがここにある。これを出している。その中には、年功序列型の賃金その他の問題が解決されない限りは、児童手当などというふうなものは問題にならぬと書いてある。大蔵大臣は、この前の昨年末の答弁でも、一年、二年ではこれは問題にならぬと言っている。あの大蔵省が財政制度審議会に出した文書は、厚生省が出したのですか、大蔵省が出したのですか。どこの責任で出したのですか。
  318. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 大蔵省から出したものでございます。で、いまいろいろの議論をおっしゃられましたが、児童手当が悪いとかいいとかという問題と、児童手当というものをもし日本の制度の中へ取り入れようとしたらどういう点でむずかしさがあるかという問題は、区別して考える必要があると思います。私どもは、日本の児童手当というものが、最初からこういう手当が日本に導入されておった、社会保障の中でこういう措置がとられておったということになりますと、おそらく税制も変わっておるでありましょうし、企業も扶養手当――いま賃金の中で支払われる扶養手当は大体一千億といわれていますが、こういう手当があれば、そのために各企業が扶養手当として払い出すことはやめるでしょうし、各種の子供に対して、生別の子供、それから死別の母子、こういうもののいろんな児童に対する手当というようなものも、要らなくなる。いままではそういうものを中心に積み上げてきてありますから、ここで一律無差別に児童に対して手当を出す、かりに三千円ずつ出すとかいうことにしましたら、何千億という財源を要するんですが、そういうものをここへそのまま植えつけようということは、むずかしい。ですから、児童手当を研究しようとするなら、いまあるいろいろな社会保障の制度をここで一ぺん全部これは統一的に見直さなければむずかしいということを私どもが申しておるのでございまして、これをやるのには、私は、一年、二年で簡単に解決できる問題じゃない、かりにやろうとしても、もう少し社会保障制度の統一化といいますか、これを全体的にやらなければ、そのままここへは植えつけられないということを言っておるのでございまして、児童手当が悪いとかいいとかいうことを言っているんではございません。(大原委員「これはだれが出したんですか。どこから出したんですか。」と呼ぶ)これは大蔵省から出しました。
  319. 大原亨

    ○大原委員 これは「社会保障の現状と問題点」とあるんですが、これは厚生省が出すんじゃないんですか。財政制度審議会に社会保障の問題点を出す場合に、厚生省が出すのじゃないのか。大蔵省が出しておるのは、どういうことですか。ことにこの問題はいままでこんなにたくさんあるほど、戦後社会保障制度審議会その他がずっと答申を出しているんだ。これはきょうきのうの話じゃないんだ。世界各国が六十二カ国やっているというのは、子供は大切にしなければならぬということもあるけれども、これは社会保障の基礎だといって、非常に苦しい中を計画的にやったんですよ。やっているだ。だから、それをまっこうから否定するようなことを大蔵省が文書で出して、そしてぬけぬけと大蔵大臣がそういう答弁をするということは、私はあとでまだありますが、納得できませんよ。厚生大臣は、児童手当について積極的な意義、いままで論議された意義、児童手当がなぜ必要か、こういう問題について、ひとつ私はこの際所見を明らかにしてもらいたい。いろいろな答申があるし、国会における質疑応答がある、決議がある。ひとつお願いいたします。
  320. 園田直

    ○園田国務大臣 児童手当は、単なる救貧政策ではなくて、二十一世紀の子供づくりのためにも、国づくりのためにも一番大事な問題であって、これはただいま児童手当懇談会で案を作成中でございまするから、これを督励いたしまして早急に成案を符たいと考えております。  なおまたそれと関連をいたしまして、心身障害児の年金が神戸その他の都市で実施されておりまするが、この面につきましても、これを範囲を拡大をして検討を進めております。
  321. 大原亨

    ○大原委員 答弁、ちょっと待ってください、あと機会がありますから。  これは鈴木前厚生大臣のときもそうです。その前の厚生大臣のときもそうです。それであなたも、前の本会議委員会等におきましては、四十四年度云々というのがあるんです。特に経済企画庁長官も、御承知のように経済社会発展計画の中にもあるんです。所得倍増計画の中にもある。中期計画の中にもあるんです、この問題は。きのうきょうあなたが言うように始まった問題ではない。そういうあなたが言うような議論は全部克服して、そして出すべきであるという議論があるんです。ILOの百二号条約の批准もできていない。このままでいけば、人手不足があってたいへんでしょう。年寄りは多くなる。核家族化する。住宅も足らない。そういう点で子供の人権はじゅうりんをされて、たとえば出生率は世界で最低から二番目だ。ハンガリーに次いで最低から二番目です。十年、二十年先にはどうなるかという、そういうことについて真剣に政治の問題を考えるのであったならば、この児童手当の問題を、あなたが言ったような財政上の見地だけでそういう見解を出して、それがまかり通るということは、私はおかしいと思う。総理大臣は四十三年からやるということをしばしば本委員会において御答弁になり、そうして御答弁を通じて国民に公約されたんです。総理大臣はどうお考えになりますか。
  322. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど厚生大臣がお答えいたしましたように、これの成案を得るべくただいま手当懇談会でいろいろ検討しております。  また、先ほど大蔵大臣からお答えいたしましたように、現在の減税、あるいはその他の扶養手当、あるいは心身障害児等に対しまして、いわゆる児童手当の内容をなすであろうと考えられるようなものが部分的に実施されておることも、すでに御承知のことだと思います。これらのものを一応整理いたしまして、そうして新しく児童手当というものと取り組もうと、ただいま厚生省で検討しておるのが実際の実情でございます。  さらにまた、もう一つつけ加えて申しますならば、私は、社会保障制度を充実させようとするならば、もっと国民の負担もそういう方向でものごと考えないとできない状況じゃないか、かように思います。いま租税並びに保険料等のいわゆる公的負担と考えられるものが、日本の場合はその他の国に比べて一番低いようであります。したがいまして、社会保障の内容を充実さす、このためには、ただいま申し上げるような適当なる財源も確保しなければならない、そこへ結局落ちるのです。幾ら実情はこれがいい、かように申しましても、ない袖は振れないというのが、いまの現状ではないか、かように思います。
  323. 大原亨

    ○大原委員 つまり税金を取るべきところからは公平に取るという議論は、いままでいたしましたから、私は議論いたしません。このことを実施するためにはどうするかということの議論も、いろいろ国際的に前例があるわけですよ。ですから、ほんとうにやるつもりになって計画を立てて、そうして救貧政策社会生活保護の問題、防貧政策では、年をとった場合、子供の問題、母子家庭の問題、身体障害者の問題失業や病気の問題について、貧乏の原因を除去するような総合政策を立てる。その基礎の中で児童手当をつくっていく、こういうことでいままで議論をしてきたんです、私ども真剣に。佐藤総理は、前の国会においてもその前の国会でも、四十三年からやるのだ、こういうことをあなたははっきり言っているんだ。やるように検討する、そのときは、できておらぬから、やるように検討するのだ、こういうことを言っておられるのですよ。それを横から大蔵大臣がのこのこ出てきては、全く一知半解の意見で横車を押す。こういうことは、私は全く閣内不統一だと思うのだ。できやせぬと言ったじゃないか。あなたは四十三年にはやると言ったのですよ、総理大臣。大蔵大臣は、この前一般質問のときには、あなたおられなかったから、私はいいかげんの質疑応答で締め切ったが、あなたは一年、二年の問題じゃない、こういうことを言っておるのだ。問題にならぬというようなことを言っておるのだ。こういうことをやるのであったら、幾ら議論したってだめですよ。総理大臣が答弁したことに従って、総理大臣はかつて去年もおととしも、この答弁のあと事務当局に命令して、準備をしろと言ったという話を新聞記者からも聞いた。それだけの熱意を示しながら、一部においては大蔵大臣総理大臣や厚生大臣の答弁、あるいはいままで何十ある勧告を全く無視して、全く理屈にならぬへ理屈を立てて横車を押している。そういうことだったら、幾ら議論したってだめじゃないか。大蔵大臣は、あなたの発言なりこの文章を撤回する、取り消す、そのことをまず第一にやって審議を進めるということでなければ、全く時間つぶしではないかと私は思う。国会無視だと思う。あなたじゃない、総理大臣ですよ。あなたは言っているんだから、あなたの意見はいままでわかっている。あなたは主管大臣じゃない。
  324. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 この財政制度調査会は、結局この社会保障という問題は、一番中心はこの給付と負担の問題をどう解決するかということでございます。負担ということになりますと、事財政問題になるから、財政問題としていまこの問題に取り組んでいる。したがって、財政当局はいまの社会保障制度についてはこう考えるという考え方を出しておりますが、一方的ではございませんで、この財政制度審議会は、今度は社会保障担当の主務官庁はこれについてどう考えるかということで、次の段階に厚生省の意見を求める、こういうふうな手はずになっております。私どものほうの考えとしては、これは御承知のように、そこにはっきり書いてございますが、日本社会保障制度は一応出尽くしている。もう諸外国でやっている項目は、この児童手当を省いてあとは出尽くしている。しかし、その中で特に医療保険の一番大きい問題がいまいろいろ問題を起こして、他の社会保障制度が伸びなくなっている。ここでこれを整備統合して社会保障制度の一つの体系をどうつくったらいいかということに入っておりますので、この過程の中で児童手当なら児童手当をどういうふうに織り込むかということを研究していただかなければ、簡単にこの問題は片づくとは思わない。いまでも財政問題でへたをすると保険制度の問題がどうなるかという危機に直面しているときに、そういう問題を解決しないで、また何千億かの負担をする、こういう問題をただ漫然と取り入れるということは、非常にむずかしいということを私どもは意見として述べているのでございますから、撤回するも何もなくて、私どもの財政当局の意見としてはそうだ。これは各省の意見も、関係省の意見もこれから聞いて、財政制度審議会はこういうふうにしたらよかろうというものをこれから答申してくれるということになっているわけでございますから、私どもは私どもの意見として述べていることは、これは別に撤回する必要はないと思います。
  325. 大原亨

    ○大原委員 大蔵大臣、あなたは、この文書の中を見ると、財政的な見地から児童手当が困難だということではなしに、また財政的な見地からはどうすべきだという提案でもなしに、厚生省や他の省が言うようなことについてぬけぬけと児童手当をまっこうから否定するようなことを言っている。総理大臣は、去年おととしにかけて、四十三年からやりますと、厚生大臣もそういうことを言っておる。社労における決議も出ている。それを全くまっこうから反対するような答弁をし、あるいはその中身にわたる一知半解の文書を出して、いいかげんなうそっぱちの文書を出して、そしてこれを財政上の見地から硬直化に名をかりて妨害するということは、これは日本社会保障制度を総合的に、計画的に前進させ、人間尊重をし、格差を是正するという政策とは反するじゃないか、こういうことを言っておる。全く不統一である。総理大臣、それらを撤回させなさい。
  326. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お答えいたします。  もう大原君もたぶんおわかりだと思いますが、ものごとがきまる間には、いろいろな意見が出てまいります。ただいま私は、先ほど園田厚生大臣がお答えしたとおりで、その手当懇談会にかけてただいま審議、それを促進している、こういう状況でございます。これが内閣立場でございます。さらに、そのものをいつから実施するかというようなことになると、これは財政的な問題もございましょうけれども、しかし、それはどこまでも委員会でまず答申を得るという、それが先決でございます。また先ほど私がお答えいたしましたように、現在の税制その他の手当て等も、いわゆる児童手当の内容をなすであろうと考えられるようなものも、すでに計上されております。その金額は大体六十億だということも、さっき言っております。したがいまして、私は、これはやはりそういうものを抽出して、引き出して、そして一つのまとめたものを考えようというのが、現在の考え方ではないかと思います。だから、この審議会の答申をひとつ待っていただく、たいへん急いでおられることも、またいままでの経過から見ましても、鈴木元厚生大臣の時分には、これもはっきり言ったわけじゃないと思いますが、四十三年からでもやりたいというような、そういう気持ちだったと思います。私は、その点で十分検討するということを申したように思います。
  327. 大原亨

    ○大原委員 それはそのときの段階であるから、実施するということは言明しないが、総理大臣は、児童手当についての所信には今日変わりはありませんと言って、私が指摘した点について四十三年度と断言しているし、坊厚生大臣も、四十三年を目途に鋭意検討いたしておりますと、こういうことを言っている。その前の予算委員長の総会におきましては、確かに、鈴木厚生大臣お話を引き合いに出されましたが、四十三年にはこれを実現するようにしようというので、いろいろ各方面で検討いたしておりますと言った。私が言うたのは、これはやや具体的な答弁です、四十三年には児童手当を実現しよう、こういうことで各方面で鋭意検討いたしておる。こういうふうに理解してよろしいですねと、そうしたらあなたは、頭を下げて、そうだと、こう言われた。しかも世界で六十二カ国が実施し、こんなにたくさんの委員会が児童手当の実施について促進し、やれといって出している。いまさら懇談会でというふうなことは、逃げ口上としか思えぬじゃないですか。しかも、その中からは大蔵大臣のような発言がどんどん出てくる、あるいは硬直化に対する財政制度審議会の資料も出てくる。これでは、総理大臣はほんとうにイニシアチブをもって統括しておられるかどうかわからぬじゃないですか。子供はたくさんおっても、投票権がないからそれはばかにしておるかもしらぬけれども、圧力団体だけしか――圧力団体が票を持ってくればやるということになるじゃないですか。そういう事実があるじゃないですか。そういうことは、せっかく総理大臣が真剣にいままで二回にわたりこの委員会においても答弁されている。検討あるいはやるというのは、いつからやるのですか、総理大臣
  328. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど厚生大臣が答えたとおりであります。
  329. 大原亨

    ○大原委員 厚生大臣が答えたとおりというのは、どういうことなんですか。厚生大臣の中身は十分でなかった。いままでの委員会の答弁とも違うし、少しぼけておる。この点はひとつはっきり答弁してください。そうでなかったら、何のために時間をかけて議論しているかわからぬでしょうが。そんなことは国民を無視することになるのですよ。(「公約違反だよ」「へたなことを言うと食言になりますよ。放言、失言ならいいけれども、食言は許されませんよ」と呼ぶ者あり)これじゃ議論にならぬじゃないですか。私は、全く誠意がないと思うのですよ、お聞きのとおりに。総理大臣の答弁、大蔵大臣の答弁。厚生大臣は、いままで遠慮しながら総理大臣あとを確認して答弁してきたんだ。それで、もうこれは検討いたしましたがと、こういうようなことではいけないと思うのですよ。だから、総理大臣がはっきりした、責任を持った統一見解を出す、こういうことを私は委員長を通じて要求いたします。それでなければ、これは議論したってだめだ、具体的内容を答弁してもらわぬと。全く時間つぶしだよ。そんなことだったら、予算なんか通すことはできぬじゃないか。
  330. 園田直

    ○園田国務大臣 いまの答弁のいきさつで食言をしているようでありますが、事実そうではなくて、歴代の所管大臣が答弁しました時期はおくれておりますが、昨年度も大蔵省は児童手当の法律案成案を得るための調査費を支出いたしております。本年度もまた調査費をわれわれは支出をしておりますので、明年度の年金財政再計算期ともにらみ合わせて、決して逃げるのではなくて、手当懇談会の成案も、督励をして急いで決定案を出してもらって、それに伴って御希望に沿うようにしたいと考えております。
  331. 大原亨

    ○大原委員 いつからやるのですか。
  332. 園田直

    ○園田国務大臣 何年度ということは、成案を得てからなるべく早急に表明をいたしますが、いまの段階では何年度ということもできませんが、明年度の四十四年度は年金の再計算時期でもありまするから、明年度はぜひやるということを目途にして私は計画を進めております。
  333. 大原亨

    ○大原委員 いま厚生省の、厚生大臣の私的な諮問機関として児童手当懇談会があるのは知っているのです。しかし、それ以上予算をかけて公的な審議機関でこんなにたくさん出ているのです。衆参両院の社労でも決議しておるし、総理大臣も答弁されたんです。これは政治の百年の大計を考えたら、この児童手当の問題は、社会保障の観点からも、国民経済の観点からも、これは実現しなければならぬ問題である、世界の常識からいっても。それに対して全く無理解な横やりを入れるような、そういう議論が出たり答弁が出たり、全く百鬼夜行です。総理大臣が答弁をしたその直後そういうことが出るのです。それでは何をしているかわからぬ。  では、やや園田厚生大臣のいまの答弁は前進をしているようですが、しかし、もう少し私は総理大臣から具体的な責任ある答弁を聞かなければ、これは議事を進行することができない。(「そのとおり」と呼び、その他発言する者あり)不規則発言で、厚生大臣が答弁したじゃないか、こういう意見がある。しかし、厚生大臣が答弁しても、社労やその他で決議しても、かってに大蔵省、大蔵大臣はかってな答弁をするんじゃないか。だから、その点は、財政上の見地はどういう見地から協力するのかということを示すのが大蔵大臣じゃないか。それを片っ端からひっくり返して、そんなものは問題にならぬというようなことを言うんだったならば、国会で時間をかけて審議する必要はないじゃないか。四十三年度の予算をわれわれが審議するときに、四十三年度からやりますということについてわれわれは審議しおるのです。それに対して全く誠意のない答弁であるならば、これは予算をこのまま質問することはできないですよ。時間つぶしですよ。
  334. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 児童手当の問題でどうもだいぶ紛糾したようですが、児童手当の積極的な手当を設けようということについては、私今日も変わりございません。しかし、ただいま、先ほど来申しますように、各種のいろいろ準備行為も必要でございます。そういう意味で先ほど厚生大臣実情お話しいたしました。私は、厚生大臣を督励して、できるだけ早くこれが実現するようにこの上とも努力いたします。
  335. 大原亨

    ○大原委員 いつですか。
  336. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは、厚生大臣は先ほど四十四年ということを申しました。私はこれができればたいへんけっこうだと思いますが、さらにそれらの点について十分督励しなければこれはなかなかできないことだと思います。先ほど来、大蔵大臣の意見とこれがこんがらかっていろんな御意見になっておりますが、閣内において不統一というのはまだ実はございません。しかし、なかなか財源の要ることでございますから、そういうものの実施期をこの機会に明確にお約束することは、これは私できない。そこまでおっしゃることはやや無理ではないだろうか、かように思いますから、その点は御了承いただきたいと思います。ただいまの努力目標も、その点を厚生大臣は責任を持ってお答えしたのでございます。私もその線でできるだけこれを督励する、かような立場でございます。御了承いただきたいと思います。
  337. 大原亨

    ○大原委員 大蔵大臣、あなたは総理大臣や厚生大臣が御答弁になりましたことについて、これは協力されますか。
  338. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 むろん協力いたしますが、その協力のしかたが、さっき述べているように、この制度を日本へ新たに移そうとしましたら、そのためには、いまの現存の社会保障体系をもう少し整備しなければそのままはいかぬ。そういう問題があるから、それを研究して、十分やれるような形でやってくださいというのが私どもの言っていることでございますので、それのむずかしさを実は私どもは述べただけで、これをやるとなれば、その問題を解決しなければ実際問題として私はやれないのじゃないかと考えますので、そういうことを申し述べておるわけでございます。
  339. 大原亨

    ○大原委員 つまり、総理大臣は、数回にわたって予算委員会において、四十三年にやるように、実施するように鋭意努力しますと重ねて言っているのだ。だから、四十三年度の予算審議にあたってこの問題を提起して、そうしてこの問題を前進させようと思っておるのだが、これをさらに下がって四十四年というふうな議論がある、努力目標がある。しかし、大蔵大臣は問題にならぬようなことを言っているのだ。その理論的な根拠というものが全くなっておらぬ。独善的な見解なんだ。年功序列賃金だって何だってみんな違っているのじゃないですか。あなたはそういう認識違っているのじゃないか。だから、そういうことを財政上の見地で横車を押すということはいけないのじゃないか。もう少しやるように閣内が意識統一をして答弁してもらわなければ――総理大臣が答弁してもらわなければ、いまの答弁を踏まえてしてもらわなければ、これは進みません。
  340. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いや、話がこんがらかっているようですが、協力しないというんじゃなくて、もし皆さんの言うとおりにしましたら、そういういまの積み重ねのいろんな体系をそのままにしておいて、そこへただ何でもいいから新たに一人何千円というものを出せというものを機械的に加えればいいというのでしたら、これは簡単でしょうが、なかなかそういかないということを述べているので、その準備をすっかりしてくれなければ、なかなかこれは財政的に実行に移せないということを財政をあずかっている私が一番心配して、この問題を言うのはあたりまえだと思います。
  341. 井出一太郎

    井出委員長 委員長としてちょっとあなたに申し上げますが、先ほどの総理大臣の答弁をもってこれを内閣の統一見解、こういうふうにお聞き取りをいただき、大蔵大臣は財政当局の考え方を述べたのだ、こういうふうに御了承して御進行願えませんか。   〔「賛成賛成」と呼ぶ者あり〕
  342. 大原亨

    ○大原委員 賛成賛成、だれが賛成なんだ。与党が賛成かな、そんなことを言うのは。ぼくは、国会はやはり権威を持って審議しなければいかぬと思う。真剣勝負だ。ほんとうにこれは国民にこたえなければならぬ。そういう意味においては、たび重ねて総理大臣は、四十三年にやるように準備をしなさい、こういうことを言い、若干の準備は進んでいる。いろいろな資料も出尽くしているのです。財源についてもどうすべきかといういろいろな議論があるのです。それを取り上げるのと、いろいろな理屈をつけて、四百円、五百円あるいまの家族手当の制度、いろいろなものを理由にして拒否するというようなことではいけないのじゃないか。それでは、四十四年度実施を目標にしてこれを検討するというふうに、総理大臣が厚生大臣の答弁を受けて御答弁になった、こういう点についてひとつ確認してよろしいかどうか。
  343. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この児童手当というものは、よほど本質的にはよく御理解をいただいていると思いますが、いま大蔵大臣の心配のところ、同時にまた、私も先ほど来申しましたように、いまの社会保障の中にも、将来児童手当の内容をなすであろうと考えられるような部分が相当ございます。だから、そういうものをやはり抽出し整理をしないと、真の児童手当はできないんじゃないのか、こういう事柄を踏んまえて児童手当をつくるということで、ただいま厚生大臣がそういう意味で一生懸命勉強している最中であります。ただいま四十三年にはこれはできなかった。ことしの予算にはそれを計上することができなかった。しかし、できるだけ早目にこれをしたい、それが四十四年にでも、こういうのがいま厚生大臣の言い分でございます。しかし、私は、皆さん方がそんなに非常に年度についてやかましく言われるなら、ただいまはたしてその確信があるかと言われれば、それはまだはっきり申し上げることができません。しかし、私は、ただいま厚生大臣もせっかくそういうように言っておるんですから、そういう意味の努力をいましている最中だからと、この点を申し上げて御了承を得たいと思います。
  344. 大原亨

    ○大原委員 日本は世界で二番か三番の経済成長国だ、こういうのです。世界で六十二ヵ国やっているのですよ。それで、ほんとうに子供を尊重する政策がないのですよ。これが防貧政策の基礎なんですよ。総合政策もないですよ。社会保障の長期政策もないですよ。つくる、つくると言って、つくらないのですよ。だから、人間尊重とか社会開発とかいう、そういうことからいってもおかしいじゃないか。その議論の中から出てきた児童手当の問題について、いままで二回もたび重ねて前向きの質疑応答があったわけです。それがあやふやなようなことで、これがうやむやになるというふうなことについては、私は国会の権威にかけてできないと思うのですよ。もう一回ひとつ総理大臣答弁してください。
  345. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は言を左右にしてあやふやにするつもりはございません。先ほど厚生大臣がお答えしたこと、さらにこれを督励する、このことをひとつ御了承いただきたいと思います。
  346. 大原亨

    ○大原委員 これはいまの答弁だけでは私は了解できません。時間をかけて――全く横車を押しているんじゃないですよ。議論をずっと積んできて、長い間議論をし、国会あげての意思になっているのだ。これはいろいろな問題がある。全部資料は出そろっているのだ。私はもう少し前向きの責任ある答弁をしてもらいたい。この答弁では私は納得できない。だから、次の機会において、ひとつもう少し十分議論をしてもらって、閣内における統一意見を私は出してもらいたい。この問題は保留いたしておきます。
  347. 井出一太郎

    井出委員長 これにて大原君の質疑は終了いたしました。(拍手)      ――――◇―――――
  348. 井出一太郎

    井出委員長 この際、参考人出頭要求の件についておはかりいたします。  昭和四十三年度総予算審査に関し、明二十七日午後二時三十分、日本銀行総裁宇佐美洵君に参考人として出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  349. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  明日は、午前十時より委員会を開会し、総括質疑を行ないます。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時四十二分散会