○北山
委員 この問題で時間を費している余裕がございませんので、先へ進みたいと思いますけれ
ども、こういうような
憲法についても、あるいは核兵器の問題についても、どうも
総理の言うことと腹の中は食い違っているのじゃないかという疑いを、私だけではなくて
国民が持っているということです。そしてそういう中から、平和を守る道は核抑止力ではなくて、安保条約ではなくて、中立の道であるということを
国民の多数が支持している、こういう世論動向というものを
総理は十分お
考えを願う必要があると思う。
なお、あわせて私の疑問点の一つをこの際
お尋ねしたいのでありますが、昨年の十一月の日米共同声明を読んでみると、私は
総理が過去の歴代の保守政権がやらなかったところの新しい約束をやっておるのじゃないか。それは安保条約を逸脱した、いままでのいわゆる安保というワクを一歩踏み出したところの約束をしている。すなわち安保条約というものは、
日本の領域の中では日米が共同
防衛するのだというのがたてまえであります。アメリカ軍はそれ以外に極東の平和と安全について
日本の基地を利用することができる。
日本は極東の平和と安全については
協力するとか行動するとか、そういう責任は何もないわけです。ところが今度の共同声明の中では、第五項に、両者は、
日本の安全と極東の平和と安全の
確保のために日米相互
協力及び安保条約云々ということが
基本政策として確認されておる。なお、さらに
総理は進んでアジアの平和と安定のために、国力の許す限り貢献をするという約束もされておる。これはいままでのいろいろな取りきめなりあるいは共同声明なりそういうものを見ましても、そこまでは言っておらないのです。御
承知のように現在の安保条約では、その前文の中に日米両国は極東の平和と安全というのが共通の関心であるということは書いてあるわけです。共通の関心事であると書いてあるけれ
ども、
日本が極東の平和と安全に責任を果たすなんというようなことはないわけですよ。当時の安保条約の
説明でも、そういうことはなかったのです。今度の共同声明では、この線を逸脱をして、極東の平和と安全のために
日本が働く、アメリカと
協力してやるんだということをうたっているじゃないですか。安保の線を逸脱して、いわゆるアジア安保になっているというのはこの点なんです。
一体こういうことをかってに
総理がやっていいですか。安保条約というものは、あの
国会の中でそういうものであるということを確認されて、言うならば
国会を通ったというふうに
——私
どもは認めませんが、とにかく通っている、そういうふうに受け取られておる。それを
日本が今度は
——極東の平和と安全にまで
協力するのだというようなことをうたったことはないのですよ。そういう線で、日米共同声明の中で、
佐藤総理は従来の線を踏み越えて、そして安保というものをアジア安保に拡大している。なるほど
日本には
憲法があるから自衛隊は出さないのだというかもしれません。しかしそういう
政治的な、あるいは経済的な方法で、さらには将来どうなるかわからぬのですよ、いままでの
憲法解釈からいうと。そういう点で私は重大な逸脱をしていると思うのでありますが、この点をひとつ
国民の前に明快にしていただきたい。