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1968-02-24 第58回国会 衆議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年二月二十四日(土曜日)     午前十時十分開議  出席委員    委員長 井出一太郎君    理事 小川 半次君 理事 北澤 直吉君    理事 正示啓次郎君 理事 二階堂 進君    理事 藤枝 泉介君 理事 加藤 清二君    理事 中澤 茂一君 理事 小平  忠君    理事 広沢 直樹君       相川 勝六君    愛知 揆一君       荒木萬壽夫君    上村千一郎君       植木庚子郎君    川崎 秀二君       小坂善太郎君    坂田 英一君       菅波  茂君    鈴木 善幸君       田中 正巳君    登坂重次郎君       中野 四郎君    野原 正勝君       福田  一君    船田  中君       松澤 雄藏君    松野 頼三君       森山 欽司君    山崎  巖君       大原  亨君    川崎 寛治君       北山 愛郎君    久保 三郎君       阪上安太郎君    田中 武夫君       楢崎弥之助君    畑   和君       森本  靖君    山内  広君       山中 吾郎君    横山 利秋君       麻生 良方君    岡澤 完治君       河村  勝君    和田 耕作君       有島 重武君    正木 良明君       松本 善明君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 赤間 文三君         外 務 大 臣 三木 武夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         厚 生 大 臣 園田  直君         農 林 大 臣 西村 直己君         通商産業大臣  椎名悦三郎君         運 輸 大 臣 中曽根康弘君         郵 政 大 臣 小林 武治君         労 働 大 臣 小川 平二君         建 設 大 臣 保利  茂君         自 治 大 臣         (国家公安委員         長)      赤澤 正道君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      木村 俊夫君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      田中 龍夫君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 増田甲子七君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      鍋島 直紹君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制局第一         部長      真田 秀夫君         公正取引委員会         委員長     山田 精一君         行政管理政務次         官       森部 隆輔君         北海道開発政務         次官      川野 三暁君         防衛庁長官官房         長       島田  豊君         防衛庁防衛局長 宍戸 基男君         防衛庁装備局長 蒲谷 友芳君         経済企画庁調整         局長      赤澤 璋一君         経済企画庁総合         開発局長    宮崎  仁君         法務省刑事局長 川井 英良君         外務省経済局長 鶴見 清彦君         外務省経済協力         局長      上田 常光君         外務省条約局長 佐藤 正二君         大蔵省主計局長 村上孝太郎君         大蔵省理財局長 鳩山威一郎君         大蔵省銀行局長 澄田  智君         大蔵省国際金融         局長      柏木 雄介君         厚生省社会局長 今村  譲君         農林大臣官房長 檜垣徳太郎君         農林省農林経済         局長      大和田啓気君         農林省畜産局長 岡田 覚夫君         食糧庁長官   大口 駿一君         水産庁長官   久宗  高君         通商産業省通商         局長      宮沢 鉄蔵君         通商産業省貿易         振興局長    原田  明君         通商産業省繊維         雑貨局長    金井多喜男君         通商産業省鉱山         局長      両角 良彦君         中小企業庁長官 乙竹 虔三君         運輸省鉄道監督         局長      増川 遼三君         運輸省自動車局         長       鈴木 珊吉君         海上保安庁長官 亀山 信郎君         気象庁長官   柴田 淑次君         建設省河川局長 坂野 重信君         建設省道路局長 蓑輪健二郎君         建設省住宅局長 三橋 信一君  委員外出席者         国民金融公庫総         裁       河野 通一君         中小企業金融公         庫総裁     佐久  洋君         日本輸出入銀行         総裁      石田  正君         参  考  人         (日本銀行総         裁)      宇佐美 洵君         参  考  人         (全国銀行協会         会長)     田實  渉君         参  考  人         (商工組合中央         金庫理事長)  高木  元君         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 二月二十三日  委員西村直己辞任につき、その補欠として小  坂善太郎君が議長指名委員に選任された。 同月二十四日  委員松浦周太郎君、柳田秀一君、塚本三郎君及  び浅井美幸辞任につき、その補欠として菅波  茂君、山内広君、河村勝君及び有島重武君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員菅波茂君及び河村勝辞任につき、その補  欠として松浦周太郎君及び和田耕作君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員和田耕作辞任につき、その補欠として岡  澤完治君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和四十三年度一般会計予算  昭和四十三年度特別会計予算  昭和四十三年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 井出一太郎

    井出委員長 これより会議を開きます。  この際、委員長として一言申し上げます。  去る七日午後より、御承知のような事態によりまして予算委員会審査が中断し今日に至りましたことは、まことに遺憾に存ずる次第であります。委員長といたしましては、予算審査重要性にかんがみ、今後委員各位の御協力を賜わりまして、審査が円滑に進みますようお願いする次第であります。  また、特に政府におかれましても、各大臣並びに政府委員開会時間を厳守され、答弁は簡潔、明瞭にお願いいたします。  昭和四十三年度一般会計予算昭和四十三年度特別会計予算昭和四十三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  これより総括質疑を行ないます。加藤清二君。
  3. 加藤清二

    加藤(清)委員 私は、委員長のお許しを得、委員の皆さんの御協力を得まして、質問をしたいと存じます。  何ものにもかえがたい平和憲法でございます。とは言いながら、予算審議の最中に国会史上空前空白をつくりましたことにつきまして、国民皆さまにまことに申しわけございません。ここに深くおわびを申し上げたいと存じます。  この間、十七日間、電話、電報、手紙、その激励は自己の犠牲を乗り越えて平和への願望、愛国の至情、仏教、キリスト教への信仰のまことに満ちあふれたものでございました。まさにこれこそがキリストの愛、仏の慈悲、カントの純粋理性に通ずるものでございます。この国民激励こそが空前空白をささえてくれたものと存ずるのでございます。ここに厚くこの御好意にお礼を申し上げたいと存じます。  よって、この際、私は世界の平和、国民の幸福を祈念しつつ、神仏に誓って恥じない気持ち質問をいたしたいと存じますので、総理におかれましても、その気持ちをおくみ取りいただきまして、お答えが願いたいと存じます。特に答弁でございますが、簡潔に、しかもはぐらかさず、逃げずに、能率をあげるべく、この空白を取り戻すべくお答えが願いたいと存じます。  第一番でございますが、この空白の最中に九州では地震四国では雪害日本海では漁船、新潟北陸地方では雪害、また全国に満ち満ちております中小企業の倒産、かように被害災害天災、人災を合わせて全国におおい尽くされておる感がございます。この問題につきまして、各党がすでに直ちに現地調査団を派遣していらっしゃることと存じますが、政府においてはどのような対策が行なわれたでございましょうか、これをお答え願いたいと存じます。
  4. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お答えいたします。  お答えいたします前に、ただいま加藤君が言われましたごとく、十七日間の国民不在国会開会審議に入ることができなかったことは、まことに私も残念に思っております。こういうことがあってはならない。国民のための政治国民の代表として私ども国会に送られておるのでありますから、この点はどういうことがありましても、ぜひとも、遺憾に思っておるということを率直に与野党とも国民の前に表明すべきだ、かように私は考えます。  ときに、ただいまのお尋ねの点でありますが、この十七日間の国会空白の間にも、それぞれの災害が起こり、また政府といたしましては現実の政治と取り組む立場から、これは遊んでおるわけにはまいりません。それぞれの官庁におきましてそれぞれの対策を立て、今日民生の安定に努力してまいったつもりでございます。これらの点は詳細それぞれの所管大臣等からお答えをさしてもいい、お願いをいたします。
  5. 保利茂

    保利国務大臣 お答えいたします。  東北北陸方面雪害激甚地帯に関しましては、先般御報告申し上げましたとおり、引き続き青森、秋田、山形、新潟警戒体制をとりまして、また北陸地建東北地建とも雪害対策本部を特設しまして、万全を尽くして道路確保をはかるようにいたしております。そのために予算配分等も追加をいたしまして、万全を尽くしておるようなことでございます。  二十一日、二十二日のえびの地震につきましては、建設省としましては、一昨日河川局防災課住宅局、それぞれの係を派しましたけれども、昨日また仮谷政務次官現地に派遣いたしまして、実情の把握、適切な現地処理をとるようにいたしておるわけであります。建設省所管直轄河川につきましては、川内川上流等にある程度の——詳しくはわかりませんけれども川内川上流に二千万円ぐらいの被災を生じておるようであります。なおまた道路の亀裂あるいは河川の橋梁の陥没、沈下等があります。これらは現地で十分の現状を把握いたしまして、適切な措置をとるようにいたしておるわけであります。  なお、表日本といいますか、九州から関東にかけました降雪地帯関東はやや平常に復しておるのでございますが、西のほう、九州のほうはまた大雪が来ておるというような、比較的雪対策措置の整備してない——四国も同様でございますが、そういうところで、しかし、なれないながらも道路の、とにかく交通確保ということは大事でございますから、除雪に対しては万全を尽くしてやっておるわけであります。天候も回復してまいるようでございますから、日ならずして回復するであろう、しかしこの地震雪害につきましては、私のほうとしては万全の手を打っておるようなことであります。御報告申し上げます。
  6. 西村直己

    西村国務大臣 一言ちょっとごあいさつ申し上げます。  はからずも農林大臣を任命されましたので、微力でございますがひとつ御指導、御鞭撻をお願い申し上げたいと思います。  ただいま御質問ございました暴風雪に対します対策、私の農林省としての所管面につきまして、ごく概要を御報告いたしたいと思います。  ただいま各地方農政局を通じまして当面の調査に当たらしておりますが、農林省のほうの担当面としての災害の特徴は、御存じのとおりビニールハウスそれから果樹の樹体被害、これが中心でございまして、これに対しましては、すでに前大臣の手におきまして、各地方農政局にあてまして至急手当の方法についての通牒は出しておりまして、必要ございますれば当局から御説明きせます。  それから天災融資法並びにこれに関係する自作農創設維持資金法、この資金特別ワクの設定、こういったものにつきましても、調査がすみやかに決定次第、至急これを発動する準備は整えてまいりたいと思います。  それからなお、温室施設等につきまして被害がございました。これらに対しましては公庫資金の活用、こういうようなことでいきたい。  なお、地震につきましても、現地政務次官中心に、ただいま調査班を出しておりまして、救援並びに今後の措置について万全を期してまいりたい。  なお一言水産につきましても同様、公庫資金等——それから水産その他につきまして施設被害と申しますか、公共被害があると思いますから、そういうような面につきましては、公共土木災害法に基づくものによって、調査が完了し次第、査定その他進めて復旧にかかってまいりたい、こういう考えでございます。
  7. 加藤清二

    加藤(清)委員 ただいまの御報告を承りまして、一つ遺憾に思いまする点がございまするので、御注意を申し上げたいと存じます。  すなわち、公共災害に対しましてはすでに手当てが行なわれているようでございますけれども一体被災者援護個人被災者はどうなっているのか、これについて両大臣一言お答えがございません。災害公共にだけ来るわけではございませんので、個人にも災害が及んでおり、それが一番困窮の基礎をなしていると存ずるのでございます。したがいまして、個人被災者援護個人被害についてどうなっているか。同時にまた、これは本委員会のみならず、きめこまかに対策を練るには災害対策特別委員会を至急開いて対策を講じ、万遺漏なきを期すべきであると存じまするが、この点について総理の御所見を承りたいと存じます。
  8. 園田直

    園田国務大臣 援護救助について御報告申し上げます。  東北北陸地方豪雪は幸いに人家並びに人員の被害は少のうございまして、ただいまのところ救助法発動はいたしておりません。しかしながら福祉施設その他の被害の除去及び除雪費の給付、それから特に豪雪地区は毎度の豪雪の例からいたしましても、し尿処理に非常に困難を来たしますので、こういう点についてそれぞれに処置をいたしております。  なおまた、九州地方地震につきましては、御承知のごとく、えびの町と吉松町に救助法を発動いたしておりますので、それに基づきまして避難所設置、天幕及び仮住宅設置それからたき出し、それから自衛隊の給水車を出動せしめて、一トン車二台給水準備をいたしておりまするが、なお寝具、薪炭あるいはその他等の応急手配等もいたしておりまするが、いずれにいたしましても、地震避難をしておりまする上に、非常な不安の上に雪でございますので、ただいま流行のかぜその他の病気に避難者がなることを非常におそれておりまして、直ちに現地係官を派遣しておりまして、この係官は、救助法を発動いたしました地区調査が終わりましたならば、その周辺及び熊本県の人吉市等にも派遣せしめて、これと緊密に連絡しつつ、逐次適切に処置していきたいと考えております。
  9. 加藤清二

    加藤(清)委員 私は個人災害のことを承ったわけでございまするが、本問題は災害対策特別委員会を至急開いて、万遺漏なき対策を練られるよう要望いたしましたのですが、重ねて総理の御答弁をお願いいたします。
  10. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 関係大臣説明がまだ残っておりますから、その最後に私が申し上げます。
  11. 井出一太郎

    井出委員長 加藤君に申し上げます。  中曽根運輸大臣から答弁の申し出がありますから……中曾根運輸大臣
  12. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 この席をお借りいたしまして申し上げたいのでありますが、国鉄では今度の地震被災者に対しまして救恤品、お見舞い品をお寄せくださる方に対して運賃免除をやっております。国鉄線連絡社線各駅を発駅といたしまして、それから着駅は宮崎、鹿児島、熊本の各県下の国鉄線及び連絡社線各駅でございます。二月二十二日から三月二十一日まで、車扱い小口扱い、小荷物、全部にわたって運賃免除をやっておりますので、この場所を借りまして国民皆さま方によろしくお願い申し上げたいと思います。
  13. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのお尋ね並びに御要望の点でございますが、調査が終了いたしましたら、政府は所要な処置をとるということにいたします。御要望もございますので、十分御意思を尊重する考えでございます。(加藤(清)委員災害対策特別委員会は」と呼ぶ)  災害対策特別委員会、これはいま国会のほうでおやりになることでございますので、これは私、国会のほうにおまかせしておけばいいかと、かように考えております。
  14. 加藤清二

    加藤(清)委員 この問題はこれで打ち切りたいと思いまするが、個人災害がとかく放置されがちでございます。これについて立法措置の必要ありという声が方々から起きているわけでございます。したがって、私は、本件は災害対策特別委員会を至急開いて検討の要ありと、わが党の意見をここで申し述べたわけでございます。至急対策を練られるよう重ねて要望いたします。  次に、憲法問題について、特に総理認識態度、これについてお尋ねしたいと存じます。  申し上げまするまでもなく、憲法は国政の基本でございます。国民の権利、義務の出発点であり、帰結点でございます。なぜこの際、認識態度についてお尋ねせんければならぬかと申しますと、第一番は、近ごろとみに右寄り発言が横行しているようでございます。これについて国民の不安を招いておりまするがゆえに、この不安を除く、これが大切なことかと存じます。  第二には、今後の国会運営を正常化するための基礎確立、この意味におきましても、総理憲法認識、これに対する態度、これを再確認する必要があると存じまするので、国民皆さまにわかりやすく御説明のほどをお願いいたします。
  15. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 憲法は、申すまでもなく、ただいま御指摘になりましたような基本の法律でありますし、私どもは、これによりまして政治も行なわれ、また外交も展開され、また自衛体制も確立され、国民の生活もこれを基準にして進められておること、申すまでもないのでございます。したがいまして、私は皆さま方お尋ねに答えて、しばしば私の基本的政治の観念、政治基礎説明をいたしました。簡単に申せば、外交におきましていわゆる紛争を武力によって片づけない、話し合いによって解決していくという基礎に立ちまして、いずれの国とも仲よくしていくのだ、そのためにお互いに独立を尊重し、内政に干渉しない、そういう態度でありたいということを願ってまいっております。この外交基本方針十分理解をいただいたと思います。  同時にまた、現在の国際情勢のもとで、この基本に立ちましてわが国の安全を確保するということ、なかなか困難であるように思いますので、日本の安全、これは憲法が認めておる自衛力自衛権、その立場に立っての自衛力は持ちますけれども、なお、この国の安全を確保するために必要な安全保障体制、これを確立するために日米安全保障条約を結んでおるのでございます。私は、このもとにおいてわが国の安全も確保され、わが国基本的な外交も進められ、同時にまた国民皆さま方も、いわゆる平和国家として、自由を愛し、平和に徹する国民として経済的な発展を期するという、そういう立場に立って、ただいま協力を願っておると思います。  私の考え方は、以上のような点でございます。  最近の問題で特に議論が起こっておりますのは、ただいま加藤君は、とかく右寄り議論が行なわれる、かように言われますが、私は必ずしもそうは思わないのであります。これは総理といたしまして基本的な態度を申し上げております。ただいま安全保障体制、これを言えば右寄りだとか、あるいは自力によってこの国を守るの気概がなければならない、かように申せば右寄りだとか、祖国を愛する愛国心を持たなければならないと言えばこれまた右寄りだといろ、私は、この考え方は実は間違っておるんじゃないかと思います。いずれの個人にいたしましても、自分のうちを愛しない者はないと思う。こよなく自分のうちを愛すると私は信じております。また国民は必ずその祖国を愛しておる、その気持ちが率直に出てくることが望ましいのだと私は思っております。また、こういうことに触れたがために教育方針が変わるかのような言い方をされます。これも私はまことに残念に思います。  私は、ただいま重大なる発言加藤君されたと思います。国民の大多数が非常に不安にかられておるというようなお話でございますが、私はさようには思いません。国民の大多数は私どもの主張をただいま支持しておる、かように私は確信を持っております。こういう点で、これはお互いにどちらを支持するとかここで申しましても、これは水かけ論だろうと思います。しかし私は、ただいま申し上げるような観点に立ちましてわが国の安全を確保していくつもりでございます。また、これらの点からいろいろの論議が発展しておるようでございますが、私は、内治、外交防衛教育、各面における政府の施策を十分具体的に御検討願えれば、私が現在の時点において現憲法に忠実にこれを守っておるということはよく理解されると、かように私は確信しております。
  16. 加藤清二

    加藤(清)委員 生きとし生ける者にして、ふるさとを思わざる者はございません。いわんや祖国を愛せざる者はございません。祖国を愛する者が与党だけの専売特許であるような言い回しはごめんこうむります。  ところで、現内閣が平和に徹し、現行憲法を忠実に守るのだと、きのうもこの席で御発言になりました。このことばは、ほんとうに真実一路にそうなのか、あるいはたてまえだけなのか、うわべだけのていさいを飾るところの巧言令色なのか、ここに心配の種があるわけでございます。もう一度簡潔に、念を押して聞きます。
  17. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 昨日も申しましたとおり、また、ただいまも申しましたとおり、私は平和に徹し、そして現時点において現行憲法、これを守るということをはっきり申し上げます。
  18. 加藤清二

    加藤(清)委員 それではお尋ねいたしまするが、自民党政治綱領に対する取り扱いの態度は、一体いかがなさるでございましょうか。すなわち、現行憲法自主改正をはかり、改廃すると、昭和三十年度発足した政治綱領がきめているわけでございます。自民党内の改憲論は非常に根強いようでございます。ゆうべもテレビで某氏からそのことを聞いたわけでございます。こういう一連のものをながめてみますと、一体不用意発言なのか、いやそうではなくて、それがだんだんと組織的な運動に変わるのではないか、世論づくり児童教育、これにまですでに——憲法を守る、守るといいながら、それを改廃する方向に向きつつあるではないか、具体的事実は。この心配をひとつ解消していただきたい。
  19. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は憲法そのものについて、九十九条もございますが、同時に九十六条もある、いわゆる改正手続、その他のものを考えておる、かように思いますので、その憲法の改正の発議権がどこにあるのか、これまた別として、そういう事柄についての検討、研究があってしかるべきだろうと私は思います。これは、社会党におかれましても同様じゃないだろうかと思います。時期的に、改正の具体的な方法、そういうものがあるなら、これは現実の批判の対象になる。しかしただいまの、綱領と言われるが、いわゆる憲法九十六条の範囲の検討をしておるというような事柄については、いまから御心配になることはないように思う。それは保守党であろうが、社会党であろうが、いずれの政党も、やはり基本法でありますだけに、そういう点についてはなかなか慎重で、また検討されるものではないか、かように私は思っております。
  20. 加藤清二

    加藤(清)委員 私は、内閣総理大臣としては閣議決定であるところの尊重、擁護を押し通す、ところが、自民党総裁としては、党是が憲法改正をうたっているわけなんです、そのいずれを選ぶか、二者択一の、いずれを選ぶかということを聞いておるのでございます。
  21. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 内閣総理大臣の責任、義務と申しますか、これはもう九十九条ではっきり明文化されております。したがいまして、これに縛られるのは私の当然のことであります。現行憲法が存続する限り、これに忠実にあること、これは当然であります。
  22. 加藤清二

    加藤(清)委員 二律背反が同時に同居している。ここに問題がある。したがって、総理のおっしゃられることが真実かもしれませんけれども国民は、うそかほんとうか、たてまえか、本音かと、疑問を持つわけでございまして、このことをもう一度念を押します。それでは、総理としての任務を優先する、すなわち九十九条はあくまで守る、こういうお考えでございますか。
  23. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおりでございます。これはもう公務員であるばかりでなく、日本国民全部が、憲法が存続する限りにおいてこれに忠実に、これを守ること、これは総理をはじめ、皆さん方も同様だ、かように私は思っております。
  24. 加藤清二

    加藤(清)委員 それでは、自民党総裁としては、総理の踏むべき基本態度に反する場合、この党是を変更する御意思がございますか。
  25. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまお尋ねですが、私は、いま綱領がちゃんときめておりましても、別にそれと二律背反だとか、反しておる、かように考えておりません。御承知のように、日本憲法はもう絶対不変というものではございません。いわゆる改憲の手続がきめられておる九十六条というものがあるのでありますから、したがいまして、この憲法自身について検討が加えられることは、これはもろ自由だろうと思います。しかし、総理大臣として九十九条を無視するような考え方は毛頭ございません。これは皆さんも同じだろうと、私はかように思っております。
  26. 加藤清二

    加藤(清)委員 政党政治のたてまえからいきますと、総理は、総裁なるがゆえに総理となれるわけでございます。総理出発点総裁でございます。この党是と総理としての任務、義務、これが今後違反した場合、もう一つことばをかえていえば、党の方針と閣議決定と異なった場合、いずれを優先し、いずれを選ばれまするや。その点について国民心配があるから、茶の間の皆さんにもわかるように、わかりやすく御説明が願いたい。
  27. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはもう問題のないことでございます。私は総理大臣として全責任を持つ。したがいまして、その決定は憲法に基づいた、また憲法にさからわない決定をするつもりでございます。したがって、これに忠実であること、これは間違いございません。これは、おそらく社会党の皆さんにおかれても同じではないかと思う。党の綱領がどうあろうと、現行憲法が改正されるまで、現行憲法がある限りにおいて、その憲法を忠実に守らなければならない、これは当然であります。ことに総理といたしましては、お説のように、まずその責任を果たすことが第一であります。
  28. 加藤清二

    加藤(清)委員 現行憲法を守り、総理としての任務を果たす、まことにりっぱなおことばでございます。それで、閣議決定と党の方針がもしいち二律背反した場合の態度、これは明らかになりました。  そこでお尋ねいたしまするが、それでは今後そういう問題が起きた場合に、総理としてはいずれを是とし、いずれを非となさるお考えでございますか。
  29. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いままででも、政府考え方と党の考え方が政策について相違することはございます。これは憲法ではございませんが……。しかし、そういう場合におきまして、政府は十分話し合って与党との間で調整をとること、これは政策においてしばしば出ております。いわゆる政府が責任を持つというその立場でございます。私はこれでけっこうなんだと思っております。先ほど来申しますように、憲法自身、先ほど私は、現時点においては改正する考えはないということを申しました。これは申すまでもなく、改正の手続というものがございますから、その改正の手続を踏んで、そうして改正がされるという場合に、これが私は憲法に違反するものだとは、かように考えておりません。だから、そこに両者の調整のできる問題がある、かように私は理解しております。ただいま具体的にさような考えのないことをはっきり申し上げまして、御安心を願いたいと思います。
  30. 加藤清二

    加藤(清)委員 この際念を押しておきたいのですが、現行憲法をあくまで守る、このおことばは、最初に私質問しましたが、真実一路にそうか、一体それはいつまで続くおことばであるか、これを念を押しておきます。
  31. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 現行憲法が続く限りこれを守る、これははっきり申し上げておきます。
  32. 加藤清二

    加藤(清)委員 そのあとのおことばに、総理内閣総理大臣としての任務を全うするという意味のお答えがございました。  それでお尋ねいたします。二律背反した場合に、総理の任務を全うする、それでは、政治資金規正法は、内閣総理大臣のもとの答弁と今日の自民党考え方とに相当の開きがあるようでございまするが、特に大骨、小骨は絶対に抜かないとおっしゃられました総理のおことばに間違いはないでございましようや。
  33. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 政治資金規正法についてのお尋ねですが、これは私がこの国会におきましてもすでにお答えいたしましたように、私は過去の苦い審議の経験に徴しまして、今回はぜひ成立を得たい、かように考えておりまして、ただいま政府におきまして党と意見を調整中でございます。いましばなくお待ちをいただきたい、かようにお願いしておきます。
  34. 加藤清二

    加藤(清)委員 大骨、小骨は一体いかが相なりましょうや。
  35. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまお答えいたしましたように、できるだけ成立を得るということが目的であります。そういう意味で、審議で過去におきまして苦い経験をなめましたのですから、その点を十分反省をいたしまして、そうしてできるだけりっぱなものをつくりたい、かように努力するつもりであります。
  36. 加藤清二

    加藤(清)委員 今国会にその政治資金規正法を御提出になりますか、なりませんか。しかもその法案には大骨、小骨は入っておりますか、おりませんか。
  37. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはこの前もお答えいたしましたが、できるだけ二月じゅうに出したい。二月じゅうに出せばこの国会で成立を得られるだろうということであります。したがいまして、できるだけ急がなければなりません。かような状態であります。ただいまの大骨、小骨云々につきましては、成案を得ました上で十分御審議をいただきたいと思います。
  38. 加藤清二

    加藤(清)委員 今日の総理の心境を承っているのでございます。総理の過ぐる本委員会における答弁、あるいは本会議における答弁、大骨、小骨は絶対に抜かない、この心境に変わりがあるかないかとお尋ねしておるのでございます。
  39. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、ただいま過去の審議の苦い経験にかんがみて十分反省し、法案を成立さすことが第一でありますから、そういう意味で最善の努力をする、かように申しました。これが私の偽らない心境であります。
  40. 加藤清二

    加藤(清)委員 はい、わかりました。  それでは次に総体の予算案についてお尋ねいたしまするが、来年度の四十三年度予算は総予算主義で立案した、こう言われておりまするが、補正予算は組まれますか、組まれませんか、この点について。
  41. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 補正予算を組まないつもりで、実は予算を編成したのでございます。
  42. 加藤清二

    加藤(清)委員 組まないとおっしゃられますると、しからば人事院勧告並びに米価審議会の答申、これは人事院勧告を完全実施することが不可能になるおそれが出てまいります。米価改定の場合に、審議会の答申にこたえることのできないおそれが発生してまいります。  そこでお尋ねしますが、補正予算を組まなくて、はたして人事院勧告は完全実施できるのか、この点についてはっきりとお答えが願いたい。もしこの人事院勧告を完全実施しないというならば、その趣旨の改正法案を出されるべきが妥当であると思いまするけれども、いまだにそれは出ていないようでございます。
  43. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまお尋ねの点ですが、できるだけ財源、それを全部さらし出して、そして予算を編成したのであります。したがいまして、冒頭に申しますように、いわゆる補正予算を組まない、そういうような——組もうといたしましても、ただいまの状態では財源がないのじゃないのか、かような状況であります。そこで、具体的な問題でただいま御指摘になりましたように、補正なしに人事院勧告がはたして実施できるかどうか、こういうお話しであります。お尋ねの点は、ことしの予備費はたいへん多額なものが計上されております。したがいまして、その予備費やあるいは——すでに配付予算のうちからこれをいじれば組みかえということになりますが、あるいは補正ということになりますが、できるだけそういうことをしないで、この予備費の範囲内で片づけたいというのが、政府考え方でございます。しかし、これは人事院勧告がどんなのが出てまいりますか、ただいまの状態ではわかりません。政府考え方とあるいは食い違うかもわかりません。そういう場合には、そういう時点に立って十分善処するという考え方でございます。
  44. 加藤清二

    加藤(清)委員 保留分で人事院勧告が間に合わなかった場合にどうなさるかとお尋ねしておるのでございます。間に合わなかった場合にどうなさるか。
  45. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 間に合わなかった場合にどうするかとおっしゃるのは、金額が足らない場合という御意味でございますか。
  46. 加藤清二

    加藤(清)委員 そうです。
  47. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはとにかく一応人事院勧告が出てまいりまして、その時点において十分考える、かように申しておるのでございます。
  48. 加藤清二

    加藤(清)委員 それでは、まさか人事院勧告を、人事院の自主性を阻害するようなことはなさらぬでしょうね。
  49. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 人事院勧告はどこまでも尊重する、これはもう間違いございません。ただいまのように、予備費にこれを計上すると、人事院に対して何らかの圧力を加えることになるのじゃないか、こういうことを御心配のようですが、私どもはそういうような考え方で今回の処置をとったわけではありません。だから、人事院の勧告は勧告として、在来どおり自由に出される。それに対して、政府はこれを尊重していく。在来の考え方で間違いはございません。
  50. 加藤清二

    加藤(清)委員 本件につきましては、いずれ後続の各委員がもっと掘り下げてお尋ねすることと存じます。  そこで私は、次に日本経済について二、三お尋ねしたいと存じます。  まず第一番に、日本は貧乏である。アメリカは大金持ちである。にもかかわらず、貧乏な日本がなぜ大金持ちのアメリカに援助をせなければならないのか、この点についてお尋ねしたいと存じます。日本より数倍の金持ちの英国は、借金してまでも援助はできぬと断わっているようでございます。フランスは、日本の二十七倍も純金を持ちながら、これを断わっているようでございます。西独もまた、金保有は日本の二十倍の余ございまするが、協力ではなくて、逆に国境税を設けてアメリカ品の輸入を制限しているようでございます。日本だけがなぜ日本の金保有と同額の協力をせねばならぬだろうか、国民の疑問でございます。英国はアメリカに飛行機輸入の契約をいたしておりましたけれども、これをキャンセルいたしました。その飛行機をなぜ日本は買わなければならないだろうか。しかも、ドル防衛はベトナム戦を長期化する基である。なぜかならば、アメリカは貿易は黒でございます。ベトナム援助二百六十億ドル、これが赤字の最大原因ということは、もう世界の通説でございます。平和に徹する佐藤総理は、ベトナム戦に通ずるこのドル防衛をなぜ協力せんければならぬだろうか。アメリカの婦人団体は、日本大使館に抗議デモをかけておる。なぜそれでも協力せなければならないだろう。対策はあるはずなんです。日本の国内は引き締め、日本中小企業の倒産は横目に見て、なぜアメリカを助けなければならないだろうか。もしかしたら佐藤さんは、アメリカ国日本州の州知事ではないだろうか、こういう声がございます。(「ない」と呼ぶ者あり)いいや、あります。中小企業に直接会って話してごらんなさい。事実あります。あなたたちは不勉強である。総理の見解を承りたい。(発言する者あり)きみらは不勉強である、文句があったら出ていらっしゃい。何が懲罰だ、何が懲罰だ。   〔発言する者多し〕
  51. 井出一太郎

    井出委員長 静粛に願います。
  52. 加藤清二

    加藤(清)委員 ここへ出てきて質問しなさい。
  53. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お答えいたしますが、あまり興奮しないでひとつ聞いてください。  ただいまドル防衛について、日本協力、やや分に過ぎた協力ではないか、そういう意味でいろいろと御批判がございました。私は、しばしばドル防衛についての日本態度説明したつもりでございます。また重ねてこの委員会でもそういうお尋ねであります。なぜ私どもがドル防衛協力するのか。これは申すまでもなく、国際通貨決済としてのドルの持つその地位、これをやはり確立するといいますか、これを確保することが最も大事だ、ただいまの国際経済情勢から考えまして、さように思っておるのであります。別にアメリカの一州日本という考え協力はいたしません。これはどこまでも……。したがって、ドルを強化するということは、同時に日本もこれによって国際経済上助かるということであります。しかしながら、協力が行き過ぎて円自身が弱体化するというようなことがあっては、これは総理としてその責任を果たすということにはならないのでありますから、したがいまして、私はいままでもしばしば申しましたように、協力はするが、日本の円を弱体化するようなことまでして協力はいたしませんということをしばしば申し上げてまいりました。それで、国民の皆さん方は、それをやはり支持していらっしゃる。政府考え方、たいへん適当だ、たいへんけっこうだ、かように実は言っておる。どうか十分御勉強願って、国民の声を聞いていただきたいと思います。私は、ただいまの点がさらにこれからもいろいろ問題になるだろうと思います。ドルの赤字は、ただいま言われるように、ベトナム戦費、そのためではないか。一体ベトナム戦費が幾らになるか、これはなかなかわからない数字であります。人によりましては十億と言い、あるいは十四億と言い、あるいは十五億は下らない、かように申しております。最近は、大体十五億というところに数字が納まったのではないかと思っております。したがって、御指摘のように、貿易そのものでは黒字だ、このベトナム戦争がないなら、さような点も解消するのではないか、これは御指摘は、一面そういうことは言える、かように私は思います。しかし、それぞれの目的が、それぞれの理由があってやることでありますから、一がいにこれを一緒にして、そしてこれはベトナム戦争さえやめればそれで済むんだという簡単な片づけ方には、なかなか私は賛成できない。ただいま日本自身が平和に徹するその立場から、ベトナム戦争はベトナム戦争でぜひとも早く和平をもたらすように協力する。また、そういうことが望ましいと心から願っております。しかし、私は、ドル防衛協力しないことによってベトナム戦争がやむという議論には賛成いたしませんので、これは別なことだ、かように考えております。そこで、ただいま申しましたとおり、ドル防衛協力することは同時に円にも都合のいいことだ、利害関係が相一致しておる、かように私考えて、ただいま協力考えたのであります。しかし、そのために円を弱める、かようなことは、私は絶対に避けてまいりますから、そういう点で今後ひとつやることについての御批判もいただくし、またその危険があれば十分御注意をひとついただきたい、かように思います。
  54. 井出一太郎

    井出委員長 加藤君にこの際申し上げます。加藤君に申し上げますが、ただいま参考人として日本銀行総裁宇佐美洵君、全国銀行協会会長田實渉君、商工組合中央金庫理事長高木元君が御出席になっておりますので、この点お含みの上質疑を続行願います。
  55. 加藤清二

    加藤(清)委員 参考人の方、どうも御苦労さんでございます。  はしなくも総理のドルと円の心中論を承ったわけなんですが、さりとて円を守り、円を弱めるようなことはしない、こうおっしゃってみえまするけれども、あなた御存じでしょうけれども、ロンドンの「エコノミスト」、これがアメリカのドル防衛がヨーロッパ諸国に与える重大な影響について論評していることは、御案内のとおりでございます。特に投資及び貸し付け規制が目的達成に接近する、この際は国際収支へ大きな影響があると警告をいたしておるのでございます。またアメリカの雑誌である「エコノミックノーツ」「USニューズ・アンド・ワールド・レポート」等も、世界経済へ深刻な影響ありと警告いたしておるのでございます。この経済誌の報告するところによりまするというと、佐藤総理のただいまの発言とやや異なる点があるようでございまするが、佐藤総理、はたしてほんとうにドル防衛をすることが日本のしあわせであり、円を守る道に通ずると思っていらっしゃるのですか。これもたてまえ論と実質論とが狂っては困りまするので——事経済でございます。中小企業はばたばたと倒れております。そういうやさきでございまするがゆえに、念を押してお尋ねするわけでございます。
  56. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 さきにポンドの切り下げが行なわれ、ポンド自身がその欠陥、その弱体さを暴露した。その次が今度はドルだといわれておる。ところが、このドルにしてもポンドにしても、国際通貨の基調でございます。そういう意味で、これを守り抜こうというのが、各国の一致した考え方であります。私は、国際経済の観点に立って、その国際通貨の基調、それをゆるがせにして、ゆるぐような方向に持っていってそれでいいというわけのものではないと思います。いまのいろいろの経済論評が行なわれておる、重大なる影響がある、それはそのとおりであります。重大なる影響があるからこそ、アメリカもドルをあらゆる努力をしてこれを守ると言っている。IMF、これもやはりドルの強化に最善の努力をしておるわけであります。私は、現状においてこの政策には間違いはない、かように確信をしております。
  57. 加藤清二

    加藤(清)委員 あなた一人がそういうことをおっしゃられても、世界の経済通はそのようには言うておらないようでございます。特に「エコノミックノーツ」にも出ておりまするが、日本佐藤総理は、ドルを強化するための不愉快ではあるが必要な薬として、条件つき支持を与えたと述べております。「リポート」誌も同じような意味のことを述べております。  一体、アメリカ議会が保護貿易主義に動かないというこの問題、はたして国民に向かって確信を持って言えることでございましょうか、お尋ねいたします。
  58. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 だいぶん議論が変わってきたようですが、いまのドルの防衛の問題、これは国際基調としての通貨のドルということで、これは大事だ、それを守るために、アメリカ自身が今度は保護貿易に移るのじゃないのか、こういう御心配のようでございます。  私は、アメリカ自身がただいま非常な苦しい状況に立ち至っておると思います。私はいままで、昨年も十月に参りまして、ケネディラウンドを提唱したアメリカが、ただいままだ自由貿易のそのトップにいるアメリカが、保護貿易に移るというようなことがあれば、これはたいへんではないか、したがって、いわゆるボーダータックスそのものについて、よもやアメリカはさようなものを採用しないだろう、かように実は批判を十月にしたばかりであります。当時のジョンソン大統領は、勇敢に、在来の基本方針を守るその立場でこれを貫いたようであります。したがって、もし万一議会でいわゆる保護貿易の法案が成立するならば、自分はそれをビートーの権で拒む、そこまで発表したのであります。しかしながら、その当時から、おそらく四月くらいになればまたそういうような考え方が出るだろう、また政府部内にもそういうものが必ず起こるだろう、こういうことがいわれております。今日、いわゆる課徴金制度を設けるのではないか、これはたいへんわが国の経済界におきましても実は心配しておる問題であります。また政府自身も、そういうことがないようにと、かようには願っておりますが、しかし、これは何にいたしましてもアメリカのことであります。ことに、この正月にロストウが参りましてアメリカの新しい政策をるる説明いたしました際に、このボーダータックスの問題をやはり触れております。私どもは、その考え方が間違っている、間違っている方向だということを実は指摘し、強くアメリカ側にも反省を求めたのであります。しかし、今日どういうような立場に置かれておるか、国内においてどういうような議論が進行しておるか、十分の知識をただいま持っておりません。しかし、万一課徴金などの制度が設けられるならば、これはわが国の貿易界に及ぼす影響も非常に重大であります。したがいまして、政府はこの成り行きについては、重大なる関心を持って注視しているというのが現状であります。これに対しての対策はいかにしたらいいか、もし万一さような状態が起きたらどうしたらいいか、いろいろくふうしておる最中でございます。
  59. 加藤清二

    加藤(清)委員 貴重な時間でございまするので、答弁がすれ違わぬように、私の質問にストレートで答えていただきたい。そうしないと、理論がよそへ展開していっちゃうのですから、私は理論を集約してお尋ねしておるのでございます。  つまり、もう一度清書しましょう。アメリカはたいへんな大金持ちである。日本は貧乏である。なぜ援助しなければならないのだろうか。大金持ちの証拠を一つ申し上げます。たとえば、ことしの、というより来年度予算に見るところのアメリカの企業利益、これは税引き後五百十億ドルあると述べております。配当金は二百四十億ドルあると述べております。五百十億ドルというのは、日本の総貿易の約四年間分もあるわけなんです。二百四十億ドルというところのこの配当金は、日本総貿易の約二年間分もあるわけなんです。配当だけをこう調べてみますると、日本の配当と比べたら、これは十七倍もある。たいへんなことなんです。それほど大金持ちである。にもかかわらず、日本品を制限するための議員立法が続々行なわれつつある。これが行なわれた場合には、日本のアメリカ貿易に受ける打撃、被害ははかり知れないものがある。だから、これについて、円をあくまで守ると言っていらっしゃる総理は、どう対処しなさるかということを聞いておるわけなんです。そんなことをしなくてもアメリカはいけるではないかということを言うておるわけなんです。筋が違いますか。
  60. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お金持ちと小さな貧乏人、こういうお話で例を説明していらっしゃいます。私は、家庭の事情というものはなかなか外からわからないもので、大金持ちはそれだけ間口も広い、いろいろの仕事をしておりますし、どこかで問題が起こると、その影響するところが非常に大きいので、これはたいへんだろうと思います。私は、むしろ小じんまりした小さいほうが狂ったときの対策がわりあいに立てやすいのじゃないだろうか、これは加藤君がお尋ねになりますから、一応端的にお答えしておきます。  ただ、私は、米国の事情そのものについて、ただいま言われるように世帯が大きいというだけでこれは簡単に片づかない内情があるだろう、かように想像します。
  61. 加藤清二

    加藤(清)委員 それでは日本でどのくらい貧乏であるかという問題についてお尋ねいたします。  一体、一人当たりの国民所得、これは日本は何番目でございますか、大蔵大臣
  62. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 国民総生産を人口で割ったものの順番ということでしたら、二十数番目ぐらいだと思います。
  63. 加藤清二

    加藤(清)委員 そうです。二十何番目ですか。これをちょうどことしは二十四番目ですね。つい三年前までは二十七番目でございました。これは一体どこと比べたら匹敵するかと思うと、数年前はチリと一緒でした。きのうきょう二十四番目になりますと、ベネゼラと一緒です。三等国並みですね。これは三等国もひどいほうなんです。そんな国でドル防衛協力している国がどこかにございますか、総理
  64. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 さような状態の国はないだろうと思います。ただいまのパーキャピタが何番目か、それだけでその国の力を裁定するということが間違っているんじゃないかと私は思います。御承知のように、やはりその国の生産力というものはパーキャピタの問題ではない。やはり国民総生産、これはもう加藤君の最もお得意な点だから、そういう点間違いないようにお願いしたいと思います。
  65. 加藤清二

    加藤(清)委員 総理のお説のとおりでございます。待ってました、私はそうおっしゃるのを。なるほど日本の総生産は大きい。富もある程度ランクは上である。しかし、問題は、円を守り、国民経済を守るということになりまするというと、一人当たりの国民所得に基礎を置いて計算を始めなければなりません。なるほどあなたのおっしゃるとおり、いわゆる総固定資本形成は、これは相当なものでございます。特に企業資本、これは一九六一年には国民総生産の三五%を占めておりましたが、一九六七年ではどれだけでございますか、大蔵大臣。(「こまかいことだ」と呼ぶ者あり)こんな大事なことを知らぬで予算が成り立ちますか。国民総生産に占めるところの総固定資本の形成、これは一九六一年には三五%を占めておったんですが、一九六七年は一体何%でしょうかとお尋ねしている。
  66. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 民間総資本で二五%ほどでございましよう。
  67. 加藤清二

    加藤(清)委員 そうなりますると、あなたのおっしゃったその二五%、ほんとうは私はそれを額面どおり受け取りません。私のデータではそうなっていない。しかし、そこでやりとりしてストップをかけようというのが目的ではございませんから、論を先に進めていきましょう。  もし二五%であったとしても、これはアメリカの一六%、イギリスの一七%、フランスの一八%、西ドイツの二五%と比較しても、なお国民総生産に占めるところの、いわゆる名前をかえて言えば企業資本、固定資本、これは相当な率である。そのゆえに反面、国民の所得は非常に低い。よろしゅうございますか。そういう低い国民をよそ目に見、中小企業の倒産をよそ目に見て、なぜ企業資本が大きいからアメリカに奉仕せなければならないだろうかと言っておるのですよ。
  68. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御所見をやや異にいたします。長いことそうやりまして資本形成をしてまいりましたから、経済成長があり、そうして国民所得が大きくなり、国民消費が大きくなりつつある、私どもはそういうふうに考えております。
  69. 加藤清二

    加藤(清)委員 それは国民優先ではなくして、企業優先、国民はおこぼれをちょうだいして満足せいという考え方なんです。  そこで、次にお尋ねしまするが、ホノルル会議では一体どのようなことが決定されたんでございましょうか。
  70. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ホノルル会議は、御承知のように、特定の問題について具体的な結論を得るといろ会議ではございませんでしたので、国際収支の問題を中心にして日米の経済金融情勢をお互いに述べ合って、理解を深めたということに終わった会議でございます。むろん、その間には、いろいろ米国の現在直面している問題を中心に議題は出ましたが、また日本側からもいろいろな問題を提起して討議いたしましたが、具体的な結論を得るという会議ではございませんでした。
  71. 加藤清二

    加藤(清)委員 何もきめられておりませんか。
  72. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 具体的にきめたものはございませんが、一番の討議の中心は、赤字国同士の協力というものが両国の国際収支にどれだけ役立つかという問題を掘り下げてみますと、やはりこの際黒字国の協力を得ることが一番必要である、そういう点を中心にして、日米の協力をどうするかというようなものがもっぱら話し合われた議題の中心でございました。
  73. 加藤清二

    加藤(清)委員 その際、兵器購入は一体幾らきめられましたか。
  74. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 御承知のように、三次防計画によって兵器の国産化を中心にする計画が日本にございますので、その計画に沿って国産するものと外国から購入するものというものは、すでにもう大体数字的にもきまっておるというのが実情でございますので、この際この問題について新しい取りきめも相談も全然ございません。
  75. 加藤清二

    加藤(清)委員 先刻申し上げましたように、イギリスは飛行機を契約キャンセルしてまでも断わっている。そうやってまでもイギリスのポンドを守り抜こうと努力している。日本はこれを買おうとしている。あまつさえ、ドル建て輸入のユーザンス、これをユーロダラーに変えろ、インパクトローン、これもユーロダラーに変えろ。しかし、ユーロダラーはすでにアメリカ企業がここへ進出をしてかき集めている。したがって、金利はどんどん上昇しつつある。この際お尋ねしたいのは、ドル建て輸入ユーザンスやユーロダラーの振りかえを一体どれだけお約束になりましたか。日本経済にとっては重大な問題でございます。
  76. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 その前に、先ほどのお話でございますが、イギリスは武器の購入をキャンセルした、日本はなぜ買うのかというお話でございましたが、イギリスと日本とは全く違いまして、日本では国産で間に合わないものはどうしてもこれは購入せざるを得ませんので、買う計画を立てておった、そのとおりに執行するということでございまして、特に今回のこういう問題によって日本が武器を買うということをきめたという事情では全然ございません。  それから、いまユーロの金利がどんどん上がるというお話でございましたが、米国の市場から金融調達をするよりも、ユーロのほうの金利はまだ割り安であるということが言えようと思います。同時に、米国が今後ああいうドル防衛政策をとることに関連しまして、将来米国からの金融というものは非常に困難になると思いますので、私どもはその準備をしなければなりません。したがって、この金融調達の多元化をはかるということは日本自身の必要でもございますので、欧州市場に金融を転換していこうというのが私どもの方針でございまして、その方針に沿っていまいろいろの対策をしているということでございます。
  77. 加藤清二

    加藤(清)委員 あなた、インパクトローンや輸入ユーザンスの金利とユーロダラーの金利の特殊な例をとって、そうしてこれを演繹しては、それは理論になりませんよ。  そこで、お尋ねしたいことは、このホノルル会議において、日本の米銀行預けの債権、これを長期にしてもらいたいと先方からの要望があったはずでございます。これについてはどのようになさいましたか。
  78. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 別にそういう要望はございません。いま日本の預金は、これは一週間の通知預金から始まりまして、一カ月もの、三カ月もの、六カ月もの、一年もの、一年半とたくさん種類がございますが、要するに、この期限が片寄らないで、そうしていつでもこれが流動性を持つようにくふうしまして、この期限の調節をしております。いまから半年先の間には大体この預金の期限が全部来るというふうに、そういう調節をはかるというようなことはしておりませんが、これをどうこうしようというようなことは、またこれは両国で相談すべきことではございませんので、日本独自の考えでやっております。
  79. 加藤清二

    加藤(清)委員 それでは外貨準備の内訳を聞きたい。特にアメリカへ預けてあるところの日本の債権、この内訳を承りたい。
  80. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 外貨準備の内訳は、これは発表しないことになっておりますが、大づかみに言いますと、一月末の外貨準備高は約十九億七千万ドル、IMFのゴールドトランシュと、それから金で大体五億四千万ドル保有しておる。その残りの十四億三千万ドルが米国の短期証券と預金ということでございまして、大体これがやや半々というような金額になろうと思います。その程度までは申し上げることはできます。
  81. 加藤清二

    加藤(清)委員 ゴールドトランシュは幾らあるか。
  82. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 二億一千万ドル。
  83. 加藤清二

    加藤(清)委員 新聞の報ずるところによりますると、この短期債権を長期に切りかえの約束がホノルル会議において行なわれたと出ておりまするが、この記事は誤報でございまするか、それとも真実でございまするか。二月九日の朝日新聞に出ているのでございます。
  84. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 そういう取りきめは別にございません。
  85. 加藤清二

    加藤(清)委員 朝日新聞のみではございません。もう有名各紙は全部出ていると同時に、すでに先ほど申し上げました「ロンドン・タイムス」にもこの問題は出ているわけでございます。それであなたは秘密だと言うておる。短期債権を長期債権に切りかえたかかえないか、いずれでございますか。
  86. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 別に切りかえてはおりません。
  87. 加藤清二

    加藤(清)委員 切りかえた覚えなし——なしですね。それではこれからどうなるのです。今後どうするのです。
  88. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 さっき申しましたように、銀行への預金でございますので、各種の預金がございます。金利の状況を考えたり、いま言ったような期限が来るのをやはりこれはならさなければいけない。いざというときにはこれを取りくずして使わなければなりません。したがって、そういう観点から期限の調節をすることがございますが、それは今後といえども同じように運営したいというふうに考えています。
  89. 加藤清二

    加藤(清)委員 それでは流動性は確保する、円は守ると、こう受け取ってよろしゅうございますか。
  90. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これは流動性を持たなかったらたいへんでございますので、その点には十分気をつけた運用をしておるつもりでございます。
  91. 加藤清二

    加藤(清)委員 さきの本委員会において、成田さんがこの問題について質問をいたしております。総理は、その際に、短期債権を長期債権に切にかえるようなことは絶対にないと言われました。特に日本のアメリカ債権は、あなたは秘密だ秘密だと言っておりまするけれども、外国紙は全部報道している。しかも、いまあなたもはしなくも言われましたように、約二十億ドルの保有外貨のうちの六割から七割までは短期債権なんです。これが凍結される。これが長期に切りかえられるということは、日本の流動性を阻害するもはなはだしと言わなければならぬ。その結果発生するところの日本経済への打撃は、これはもうはかり知れないものがある。国際信用の上からいうてもしかりでございます。これについて重ねて総理の見解を承ります。——総理に聞いておる。
  92. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いや、もう一ぺん。短期債権ということでしたが、これは預金のことと財務省証券をさすものじゃないかと思います。それを長期化せよということは、中期債にかえろということではないかと思うのですが、これはもう前に国会でも答弁いたしましたように、中期債を日本では買わない、これは流動性をなくすることで、これはやらないと前に申しましたが、現在でもその考えに変わりございません。
  93. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま大蔵大臣お答えしたとおりでございます。
  94. 加藤清二

    加藤(清)委員 それでは、今後も流動性の多い短期債権——その「ケン」は、入場券の「券」、証券の「券」ではなくして、権利の「権」でございます。よろしゅうございますか。その流動性の多い短期債権——アメリカに預けてある預金とか短期の政府債の意味でございます。それを長期に切りかえてくれとアメリカから要求があったとしても、それはいたさない、かようでございますか。
  95. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たいへん外貨保有量でもふえれば別ですが、ただいまの状態ではこれの流動性を拘束するような処置はとらない、かように御理解をいただきます。
  96. 加藤清二

    加藤(清)委員 官房長官は、この問題について、期間は三年、五年という意味ですとお答えになっていまするが、官房長官の御意見変わりございませんね。(「総理大臣が言っているのだから」と呼ぶ者あり)いや、総理大臣の言うたことを、この間新聞で別なことを言うたからだ。
  97. 木村俊夫

    ○木村(俊)国務大臣 いまの総理お答えと変わりございません。
  98. 加藤清二

    加藤(清)委員 それでは、絶対にさようなことはない、日本の貿易商は安心して仕事に従事してよろしいと、こう解釈してよろしゅうございますね、総理
  99. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの商社の諸君にも、絶対に心配されないように、御安心がいただけるように、先ほど来大蔵大臣並びに総理が答えておりますから、御了承いただきたいと思います。
  100. 加藤清二

    加藤(清)委員 アメリカが目下用意しておりまするところの国境税、輸入課徴金、これがもし課せられたとしたら、日本の輸出はどのくらい減ると想定しておられまするか。まず通産大臣
  101. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 課徴金という形になるか、あるいは国境税という形になるか、この問題についてはまだまだ不確定な要素が非常に大きいのでありまして、したがって、これに対してどういうふうな予想を立てていいかというような段階ではない、さように御了承願います。
  102. 加藤清二

    加藤(清)委員 何を言うているか。新聞にも経済雑誌にも試算はどんどん出ているじゃないか。何を言っているか。そんなこと言って、対策ができますか。  外務省の試算を承りたい。
  103. 三木武夫

    ○三木国務大臣 私は存じませんが、しかし、いま私がやっておることは、やはりこのようなことになれば世界貿易の縮小にもなるし、日米両国の経済の円滑な運営に対して支障を来たす、絶対にこれはやめてもらいたい、外務大臣が全力を尽くしておるのはこの一点でございます。
  104. 加藤清二

    加藤(清)委員 名答弁でございます。これはもう、この点、野党三派と完全に意見が一致したようでございます。やってもらっては困る、絶対にやらせない、ここまでよくわかりました。もしやったらどうなさいますか。
  105. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いろいろとこういう国際問題について、そういう仮定で——できるだけやらせないように努力しておるときに、弱気を出さないほうがいい、こういうことです。
  106. 加藤清二

    加藤(清)委員 これは禅問答だ。すでに西欧諸国、EEC諸国は、もしやれば報復手段をとると言うております。その報復手段の内容まで発表いたしております。このことがやがて備えとなって、アメリカの勇み足をやめさせる一つの大きな武器になることは御案内のとおりでございます。したがってお尋ねをしておるのです。何が空理空論であるか、何が想定であるか。冗談じゃないですよ、通産大臣。  そこで、総理お尋ねいたします。もしアメリカが、輸入課徴金二・五%とか一〇%とかいろいろうわさされておりまするけれども、かけた場合に、西欧諸国はこぞって報復手段に訴えると言い、その報復手段の内容まで経済誌には散見できるのでございます。日本総理として、円を第一に守るという立場に立った総理お答えをお願いしたい。
  107. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もし万一課徴金が、あるいはボーダータックス、その他類似の制度が設けられるとしたら、いま輸出振興をして、輸出をふやして国際収支を好転させようという日本に重大なる影響のあること、それはもう御指摘のとおりであります。したがいまして、私、先ほど申しましたように、昨年の十月に訪米した際に、もうすでにさような点が見受けられた。さらにまた、一月にロストウが参りました際にも、かような点に触れておる。私ども、その点が、本来のアメリカの自由貿易主義あるいはケネディラウンド、それらの本旨にも反することになるので、そこで反省すべきことだといって注意を喚起しておるわけであります。  ただいま外務大臣お答えいたしましたように、これは内閣全体といたしまして、かような事態が起こらないように、こういうことの最善を尽くしておる、その段階でございます。また、皆さん方がかようなお尋ねをいただくのも、たいへん御心配のあまりだと思っております。したがいまして、そのお気持ちはよくわかりますし、また、産業界からの要望も同じでございます。したがいまして、こういう際に政府が善処することが、何よりの政府のつとめでございます。私は、ただいま外務大臣が交渉しておることについて、最善を尽くすようにこれをプッシュしております。  私が申し上げるまでもなく、御承知のように、日本がアメリカから輸入いたしますものは原材料が主でございます。日本がアメリカに輸出するものは、これは工業製品その他でございます。したがいまして、影響を一方的に受けるというような結果にもなるのではないか、その影響はたいへん重大だ、かように思っておりますので、何よりもかようなものを設けないこと、本来のアメリカの自由貿易主義、ケネディラウンド、あの発足した、あの発想に立って今後とも貿易を続けること、これを願う以外にはない、かように現段階においては考えております。
  108. 加藤清二

    加藤(清)委員 西欧諸国は、すでに報復手段の中に、戻し税であるとか特別税であるとか、輸入奨励の措置をとっておるようでございます。  アメリカはこの問題については二つの矛盾をおかしているようでございます。  すなわち、第一は、最初に申し上げました大金持ちでありながら、貧乏な日本に貧者の一灯を強要しているという点でございます。これがはたして互恵平等の精神でございましょうか。日米友好通商航海条約の精神でございましょうか。第二は、ケネディラウンドによって全世界の自由貿易を推進するために、関税は引き下げろと日本にも要求いたしておるわけでございます。しかもなお、日本に対しては資本の自由化を迫って、金がないない、ないないと言いながら、アメリカの大企業は沖縄にまで進出して、沖縄を第二の香港にしようといたしておるわけでございます。ケネディさんが生きていらしたら、まさかこんなことはなかったでしょう。ケネディ精神、世界自由貿易主義、これとはまるっきり反するところのモンロー主義が堂々と横行しているようでございます。  これに対して欧州諸国は総攻撃に出ているようでございます。現にドイツは輸入課徴金にかわる税金をひっかけておるのでございます。日本も、この際、ほんとうに円が大事であり、祖国日本が大事であるとおっしゃるならば、当然そのくらいのことはやってしかるべきである、かように存ずるのでございます。相手の矛盾を反省していただき、日米友好通商航海条約の精神にアメリカが立ち戻るようすることこそが、フレンドマンシップではないでございましょうか。総理の見解を承りたい。
  109. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 第一点が、実はやや加藤君と認識を異にしております。と申しますのは、アメリカがボーダータックスというような考え方をなぜ持ったか、この点であります。御承知のように、このボーダータックスは欧州で発達しておる制度である。それそれの国にそれぞれの理由があって、いろいろな制限あるいは保護的な立場に立っておる。どうも欧州諸国は、ただいまは国際収支の面では黒字だ。その黒字の国がかようなことをやってもらっちゃ困る。これもまず欧州諸国がそれをやめてくれれば、アメリカの立場も、これが互恵平等の立場になって、アメリカも同じような状態になれる。大体の発想がそこにあったようであります。したがいまして、いわゆるドル防衛にいたしましても、いわゆる国際決済で黒字の国、それらが協力すること、先ほど大蔵大臣がちょっと触れましたように、赤字の国同士が相談してもいい効果はあげないだろう。やはり黒字の国、欧州の協力を得ることが先決だということに触れましたが、どうしたらこれがいいだろうか、その点をまず欧州でやめてほしいというのがアメリカ側の要求であったと思います。欧州でどうしてもやめない、しからば自分のほうも、ただいまのような何か課徴金その他を考えたい。ところが、欧州とアメリカだけならよろしゅうございますが、アメリカがさような処置をとると、日本のような全然条件を課しておらない国が、実は欧州と同じようにアメリカの課徴金制度を受けるということになって、日本はたいへんな損害をこうむる、こういうことであります。したがって、私どもが先ほど来申すような意味でアメリカに猛反省を願っておる、これが実情でございます。その上でただいまのような世論として、さらに報復的な手段をとれ、こういうようなことがあれば、これはもちろん私どもも自国の立場、自国の産業、それを十分育成強化しなければならないのですから、そういう立場に立ってものごとを考えますが、ただいままだそこまではいってない、いま課徴金をつくるのではないか、たいへんその心配をしている、それを先ほど申しますように外交ルートでまずとめよう、かようにしている際であります。その次に、どうしても所要の国内の法律が制定されて特別な処置に出たときに、今度は初めて日本はどういうようにするか、こういう立場に立ってものを考えていきたい、かように御了承いただきます。
  110. 加藤清二

    加藤(清)委員 私は、先日この問題についてアメリカの大使館を訪れました。関係担当官と長時間にわたって話し合いをいたしました。その際に、日本がアメリカから経済的に攻められることが、やがてアメリカに不利になる。すなわち日本の外貨は不足している。ことしの赤字は七億ドルをこえる予想でございます。来年は三億五千万ドルというておりまするけれども、この見方は甘いという経済通の見通しでございます。そういうやさきに、アメリカからの、あなたがいまおっしゃいまするような原材料の購入、これができなくなるではないか。やむなく市場転換をせんければならないではないかということを申し上げたのでございます。その結果が報復手段と受け取られることにも相なるでございましょうと言いましたところ、ぜひそのようなことのないように、アメリカの良識に声を大にして訴えてもらいたい、こういうお答えでございます。そこで、できることならば、この際、日本品制限立法だとか、あるいは課徴金だとか、いろいろ山積する関係がございますから、この際、日本国会議員をしてかの地に訪米使節団として渡らせて、日本の苦境もよく訴えて、日本もアメリカもともに両立するような方途を見つけ出すよう具体策を講ずる考え方はございませんか。私は、この際訪米使節団をアメリカへ送るべきである。それは経済界の人でなくて、議員のほうがいい。なぜかならば、自分の商売が第一主義になると事が間違うからでございます。
  111. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは一部であるいは政府自身が大臣を派遣したらどうかという意見もございます。ただいまは新しい御提案がございます。これはもちろん私どももそういうものを十分検討すべきものではないか、かように思っておりますので、いまこの席で直ちに賛成とまでは申しませんが、もう少し検討いたしますが、ただいまの御提案に対しましては敬意を表して検討する、御了承いただきたい。
  112. 加藤清二

    加藤(清)委員 次に、私は中小企業の問題についてお尋ねしたいと存じます。  今日日本中小企業は近代化を迫られております。その第一の理由が人手不足でございます。第二の理由が後進国の追い上げ、特に国際的に発生してまいりまするところの南北問題、特恵問題等々によりまして、どうしても発展途上の国よりは技術も能率もあげなければならぬところに追い込まれているわけでございます。にもかかわりませず、政府の施策、経済の引き締めを金融にたより、その金融を窓口規制にゆだねられている結果は、中小企業の倒産が続出でございます。  日銀総裁も聞いておってもらいたい。山でカラスのカァと鳴かない日があっても、中小企業の倒産のない日はないのです。きょうこうやって話している間にも四十件以上の倒産がある。負債額一千万円以上だけでそれだけである。その連鎖反応によって起こるところの下請企業の関連産業の倒産を数えまするならば、一日百件をこすのです。これはもう新聞雑誌が毎日のように報道している点でございます。これを救わずして外国に援助だなどと、とんでもないおこがましい考え方であると、中小企業の中から怨嗟の声が起きている。これに対して、窓口規制の総本山であるところの日銀総裁一体どう考えていらっしゃるのか、お尋ねしたいのでございます。
  113. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 ただいま御指摘のとおり、私どもも、倒産が引き続き商い水準にあることを非常に心配しておるわけであります。その原因は、いま御指摘にもなりましたが、あるいは人手不足、あるいは融手の金繰りがつかぬ、あるいはまた出血受注、また注文が非常に減ってきておるとか、いろいろの原因が折り重なってまいりまして、今日のような状態になっておるのであります。しかし、一方におきまして、中小企業の中には、最近非常に合理化をされ、経営の健全化につとめられ、さらに私どもの関係で申しますと、金融機関ともきわめて密接なる連絡をとりながら仕事をされておる中小企業の方々もだんだんふえておるわけであります。  ただ問題は、一方においてそういうふうに中小企業がよくなっておる方も大ぜい出ている中に、倒産に追い込まれるということになっておるわけであります。金融機関といたしましても、それらの問題は十分注意いたしておりまして、現に全国銀行の全貸し出しにおける中小企業向けの融資の率も、徐々ではございますが上がってきておりますし、また、政府の金融機関を込めまして、中小企業についても非常に努力をされておるということは数字でも明らかなところでございます。ことに、そういう状態とは申しながら、いま加藤さんがおっしゃったとおり、国内の問題のみならず、海外からも、これからは中小企業に対していろいろな影響が出てきやしないかということも非常に心配しておるわけでございます。  それではこれをどうしたらいいのかということになりますと、なかなか金融も非常に影響が多いのでありますが、第一は、やはり中小企業の方々自身が、いまの時勢あるいは今後の経済の動きを十分考えられる必要もございましょうし、また、これに協力する各種の機関ももっと勉強しなければならぬと考えておるのであります。現に私どもも、当面の問題としまして、日本銀行だけでなく、大蔵省あるいは通産省その他各種の機関とも十分協力して、その問題を掘り下げ、さらに進めてまいりたいと懸命の努力をいたしておるところでございます。要するに、各方面の協力がなければこの問題は容易に解決しないと思っておるのであります。私どもとしては、全力を尽くして、ことにいまのようなときには、連鎖反応が起こらないようにいろいろの点を考慮してただいま努力しておるところでございます。
  114. 加藤清二

    加藤(清)委員 この際もう一つ日銀総裁お尋ねいたします。  それはほかでもございません。中小企業の倒産はリセッションのたびに急激なカーブをつくって急上昇するわけでございます。それが終わりますと、また倒産がだんだんと少なくなってくる。そこで、お尋ねせんければならぬのは、一体日本のこの引き締め景気は、いつのころになったら中小企業にあたたかい風を吹かせるだろうか。すなわち、ことばをかえて言えば、景気立て直しの見通しはいつごろでございましょうか。これを聞くことが、まさに死なんとするものが耐え忍ぶ一つの非常に力強い基本になるからでございます。景気立て直しの見通しをお願いしたい。
  115. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 先ほど十一時から私総理大臣をはじめ各大臣加藤さんの御問答を謹聴しておりまして、いかに世界の情勢がむずかしいかということをつくづく感じておるわけでございます。内閣も非常に努力されておりますし、また、国会においてこういうふうにいろいろ議論が出ますのも、いかにむずかしいかということでございます。私どもは、何とかして一日も早く国際収支を改善したいと思って努力しておりますが、先ほどの御議論にもございましたとおり、これから何が出てくるかということもあるわけでございます。したがって、これに対処しながら、やはりいつごろという予測を私どもは申し上げることができないのは非常に残念でございますが、何とか……(加藤(清)委員「暗やみです」と呼ぶ)いや、暗やみではございません。しかし、加藤さんの御議論にもありましたとおり、非常にむずかしいのであります。したがって、何月ごろとか、なかなかめどは私の立場からはっきり申し上げられません。しかしながら、努力をして一日も早く国際収支を改善し、それにはやはり世界全体が貿易を拡大してくれないと輸出は出ないということでございますが、先ほどのお話のように、はたしてどれくらい拡大していくか、相手のあることでございますので、それらの成り行きを見まして、しかし、そうかといって決してほうっておくわけではございません。世界の経済が拡大し貿易が拡大するように、日本も努力していくということ以外にないと思うのであります。
  116. 加藤清二

    加藤(清)委員 引き締めれば中小企業が倒産するということは初めからわかっている事実なんです。倒産をあえて承知の上で引き締めにかかったわけなんです。引き締めにかかる場合に、見通しなしで、これはいつの期間まで続けてどれだけで終わるかというスケジュールなしで引き締めに踏み込まれるはずはないと思います。いわんや、この法王ともいわれる日銀総裁が、それをやみくもに飛び込んだなどとはだれも受け取っていない。ただ、政府の手前上、それを言うたら差しさわりがあるかもしれぬので、私は、この質問総理お尋ねいたします。  総理みずからは、中小企業は倒産する、それはわかった事実なんだ、それをわかりつつ引き締めに飛び込んだ。ことしの予算はそう組んだ。それでは一体いつ立て直るか、いつ引き締めをやめるか。目標、めどなしで、まさか飛び込まれたとはいえない。もし飛び込んだとすれば、これはもはや総理としての資格もなければ、それだったら経企庁の存在は必要ないわけなんだ。まあ通産大臣はとぼけておるから、これはもうやめておきます。
  117. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御承知のように、佐藤内閣といたしましては、経済を安定成長へ持っていく、そうして国際収支を改善し、同時に物価の安定を期する、これを政治の課題として取り組んでおるわけであります。ところが、経済の成長は、私ども考えるような安定成長ということになかなかならない。なかなか力強いものがある。いわゆる行き過ぎといいますか、これは計画以上の成長を示しておる。まあ成長でございますから、計画以上でも、これはうれしい悲鳴とでも申しますか、そういうような感じのものであります。その結果が、昨年来のような金融の引き締めにぶつかり、あるいは金利の操作をいたしまして、いわゆる設備投資その他を抑制せざるを得なかった。これがまたそういう処置をとりますと、今度は不況感を片一方であふることにもなります。これは日本の経済の実情から申しまして相当高い成長率でないと国民全体が納得しない、こういうものがございます。したがいまして、ここらに一つの問題があります。ありますから、いま言われるように、引き締めをしたらそれをゆるめるときを考えるだろう、また、金利を引き上げたら金利を下げるときを考えるだろう、これはもう当然のことでございます。しかし、なかなかそれが一体いつか、これを申し上げることはたいへん困難だ。私は逃げるわけではございません。いまの金利の問題は日銀にまかしてあります。政府自身がそれをとやかく予想を立てることは、これは間違ったことであります。私どもがいま持っておるもの、期待というか、あるいは希望というか、これははっきり言える、希望はできるだけ早くということであります。これがおわかりならば、もうそれより以上政府お尋ねになりましても無理かと思います。
  118. 加藤清二

    加藤(清)委員 それでは日銀総裁要望しておきます。  見通しなしというわけにはいかぬ。なぜかならば、あなたが投げられたボールを、また総理が今度あなたのところに投げたんですから。日銀にまかせてあるとおっしゃる、金融の引き締めをゆるめることはまかせある、それはそのとおりでしょう、おたくのほうの政策委員会がきめることでありますから。この予算委員会審議が終わるまでには当然見通しは立つと思います。すでに最初にあったはずです。したがって、それまでに書面でよろしいですから御答弁願いたい。これはできますか。
  119. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 ただいま総理から、金利はおまえにまかしておるというお話がございました。しかし、私も金利を上げることを好んでやっているのではございません。何とか上げないで済むように努力をいたしておりますが、しかし、国際収支の現状はなかなか楽観を許さぬ。ことに国際貿易全体がどうなるかという見通しもなかなかつかないのであります。したがって、この予算がいつ上がるか知りませんけれども、そのときまでには——まあこれは、皆さんたいへん御努力願うそうですからできると思っております。しかし、それまでに的確な判断は、非常にデリケートなときで、なかなかつきかねますけれども、何らかの御返事を書面をもって申し上げることにいたしたいと思います。
  120. 加藤清二

    加藤(清)委員 わかりました。  あと残り時間が少のうございまするので、私も簡潔に質問しますが、答弁なさる側も簡潔にひとつお願いします。  全銀連の会長さんにお尋ねいたします。  市中銀行が中小企業に貸し出しているところの貸し出し率、全体の貸し出しの中に占める中小企業への貸し出しの比率は何ぼで、それはただいま確保されておるかおらないか。なぜこういうことを聞かなければならぬかと申しますと、窓口規制がだんだん強化されるに従って、市中銀行は中小企業へ貸し出していた命をどんどん引き揚げているからでございます。どんどん引き揚げております。その結果、倒れぬでもいい中小企業が倒れているからでございます。これについて、全銀連はパーセンテージの確保ができるかできぬかもあわせてお願いしたい。
  121. 田實渉

    田實参考人 ただいまの御質問に対してお答えいたします。  まず、中小企業向け貸し出しの総貸し出しに占める比率でございますが、三十八年の九月、全国銀行におきましては三二・四%でございました。それが四十二年、昨年の十二月でございますが、これが三三・三%になっております。それから都市銀行でございますが、三十八年の九月が二五・二%、四十二年、昨年の十二月が二六・三%、いずれも貸し出し比率は微弱ではございますがだんだん上がっております。  それで、今後この比率がどうなるかということでございます。つまり大企業向けにだんだんいくのではないかという御質問かと存じますが、実は一昨年の十−十二でございますか、このときは非常に中小企業向けの貸し出しの比率が高まりまして、非常に上がったわけでございます。この理由といたしましては、わりあいに金融もそういまのように引き締まっておりませんで、大企業の手元資金の流動性がたいへん高まっておりましたために、銀行が一生懸命中小企業に金を貸す努力をいたしました。多少また過当競争などと言われたわけでございますが、そのために非常に比率が高まりましたのでございますが、四十二年度の昨年暮れごろから、そろそろ大企業も自己資金がやや手詰まりになってきた。それまでは大企業は自分のところの預金を使っておりまして、貸し出しにたよらなかったわけでございますので、したがいまして、大企業におきましては、自分の預金を使っておりましたので、貸し出しの需要が少なかったわけでございます。したがいまして、大企業の預金というのが非常に減りまして、中小企業の貸し出しがそのかわりにふえた。で、これはまた、簡明にというお話でございますが、中小企業さんはそれによって合理化、いろいろ企業の整備をされたわけでございます。ところが、ここにまいりまして引き締めになってまいりましたので、やや大企業の資金需要が出てきたといういまの状態でございます。したがいまして、将来この割合が多少また旧に戻る、おととしの暮れよりは比率が落ちるのではないか、こういうふうに考えておりまするが、全体といたしまして、将来を見まして、大企業と中小企業の比率は、これは間違いなく中小企業の貸し出し比率がだんだんにふえていく、これは私言えることかと存じます。  以上お答え申し上げます。
  122. 加藤清二

    加藤(清)委員 貸し出し比率を確保することが先決であると存じます。  二番目に大切なことは、コール金利を上げられましたですね。もう引き締めが始まってから六厘も上がっている。これはたいへんなことでございます。こうなりますると、中小零細金融機関の金がコール市場へ流れて、それがまた大企業へ大企業へと流れる。それはやがて農村から都会へと金が集約され、いわゆる金融の中央集権化が行なわれるということでございます。これに対して総理はどう処置されますか。
  123. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いままでの引き締めのときにはそういう現象ございましたが、今回の場合は少し様子が違いまして、引き締めを行ないましたが、当然公定歩合が上がるに従ってコールレートも上がる。その上がり方が、いままでとは違って、今回は非常に緩慢でございます。御承知のとおり、昭和三十六年のときには五銭六厘、今度は、いまのところ二銭四厘でございますが、なぜコールレートがそう上がらぬかと申しますと、日銀の窓口規制のやり方で、もし外部負債を多くとれば、日銀の貸し出しをそれだけ減らすというような規制をやっておりますために、都市銀行がコールにあまり魅力を示さないというようなことから、中小金融の各機関、地方銀行や信金、相銀がコールで運営するということをやめて、いま銀行協会長が言われましたように、貸し出しに非常に努力しているということでございますので、私は、今回の引き締めによって資金がコールへ流れて、中小企業の金融が狭められるということは、今回の場合はあまりないというふうに考えています。
  124. 加藤清二

    加藤(清)委員 もう残り時間が少ないから、あなたはくろうとですからね、それをよく了解して答弁も心得えてしてもらいたい。聞かぬことを答弁する必要なし。  そこでコール。コール市場の値上げは今後やるかやらないか。金利の値上げをするかしないか。
  125. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 そう大きいコールレートの上昇ということはないというふうに考えます。
  126. 加藤清二

    加藤(清)委員 中小企業金融の貸し出し金利レート、これよりコール市場のほうが上がるようなことをするかしないか。
  127. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いまのところは少しコールレートのほうが高いようでございますが、実質金利という点から見ましたら、また貸し出し金利のほうがいまのところ高いのじゃないかと思っております。
  128. 加藤清二

    加藤(清)委員 実質金利が高いと、はしなくもしっぽが出ました。なぜか。それは歩積み両建てだからだ。それが歩積み両建ての原因なんですね。本人みずからがしっぽを出した。  そこで、歩積み両建ては今日どのように行なわれているか、何%行なわれているか、パーセントだけ聞きたい。総理——総理がわからなければ、大蔵大臣
  129. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これはもう加藤さん御承知のとおり第一ラウンドで自粛目標の拘束預金の問題は解消いたしました。そうしていま第二ラウンドの問題に入っておりますが、これは着々いま効果をあげております。
  130. 加藤清二

    加藤(清)委員 歩積み両建てが解消したとおっしゃる。それでは公取の委員長、現状を承りたい。
  131. 山田精一

    ○山田政府委員 お答えを申し上げます。  歩積み両建ての問題につきましては、公正取引委員会といたしましては深甚なる関心を持ちまして、毎年調査を行なっております。残念ながら昨年の十一月末現在における調査はただいま集計中でございまして、なお二、三週間の御猶予をいただきませんと、御報告申し上げる運びに至らないのでございますが、昨年五月末現在のところで調査をいたしました限りにおきましては、改善の足取りは若干下げ渋っておるように思いますが、決して悪くはなっておらないように承知をいたしております。なお今後、今後の経済金融の情勢の推移にかんがみまして、この上とも十分注意をいたしまして監視を続けてまいります心組みでおります。
  132. 加藤清二

    加藤(清)委員 すでにあなたのところから発表されているこのトータルにもますますふえておる実態があるが、しかも業者の訴えは、くしの歯を引くようにわれわれの手元へもきておるわけです。これがないなどとはとんでもない話なんです。よくも、いけずうずうしくもそんなことが言えるんですね、あなたは。冗談じゃないですよ。
  133. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 何か加藤さんが勘違いされておるのじゃないかと思うのですが、この拘束預金というものの中でこういう性質のものは困るのだという自粛対象預金について、これは総貸し出しについてのその比率をゼロにするというのが第一ラウンドの私どもの目標でしたが、これはそのとおりにやって、昭和四十一年の五月にもうすでに御承知のとおりこの問題は解決をしております。そして、いま第二ラウンドに入っておるのですが、拘束性預金というものは当然存在するのでございまして、その統計と、私どもがこういうやり方をなくしようというものとは別のものでございまして、拘束性預金の中にある自粛対象預金、これが問題でございましたので、その解決にはもう万全を尽くして、第一回は解決しておるということでございます。ですから、統計で出ておるのは、一般の拘束性預金の統計だろうと思います。
  134. 加藤清二

    加藤(清)委員 冗談じゃないですよ。そんなものじゃないです。あなたは誤解があるなんと言っておりますけれども、しからばお尋ねする。現行行なわれている歩積み両建て拘束預金は何%ありますか。何%と見ておりますか。何%なら銀行は金を貸すのですか。ないと言った人に聞きますよ。あなたがないと言っておるんだから。なければゼロでしょう。
  135. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それでは銀行局長からお答えいたします。
  136. 澄田智

    ○澄田政府委員 私のほうからお答え申し上げますが、まず現在の第二ラウンドで拘束性預金の貸し出しに対する比率を下げさせる、こういうことで規制をやっておるところでございますが、昨年の五月末現在の数字がいま手に入る一番新しいものでございまして、それによりますと、都市銀行につきましては中小企業向け貸し出しの拘束性預金の比率は一七・六%、それから地方銀行におきまして同じく中小企業向け貸し出しの拘束性預金の全体の貸し出しに対する比率は一六・八%、それから相互銀行で二二・二%、信用金庫で二八%、そういうような状況になっております。
  137. 加藤清二

    加藤(清)委員 あなたのほうの調査は畳の上や芝生の上で御調査なさいまするから、そういう答えが出てくるのです。実際に工場に行って、店先に行って調べたならば、そんな答えは出てこないです。現に公取で調べたその調査はそれとはまるっきり違っておる。もう時間がないから私は簡潔にはしょりまするけれども中小企業倒産の原因の最大が歩積み両建てであるということを認識してかからなければならぬ。これが病源体なんです。これを除去せんければならぬ。それが一%とか一〇%とかせいぜい一五%、しかも自由預金であるならば、これは何%でもよろしい。しかしあなたのほうの指示が出てから定期を普通預金に切りかえさせられた、裏預金を言いつけられた。それからいままでよりも金利を引き上げられた。いろいろの例がここに出てきておる。そのトータルが全部出てきておる。不統一です。はなはだしい、これは。  さてこういうことでございまするので、すでにこの問題については歴史が古い。いま山村さんがおられますが、山村さんのおとうさんの委員長の時代から、いまここに荒舩さんもいらっしゃるが、その委員長のときも、福田委員長のときも、これは問題になった。過去十三回にわたって銀行局長から指示が出ておる。にもかかわらず、依然として陰に隠れて形を変えてこれが行なわれている。これに対して一体総理はどうなさいます。
  138. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 さっき申しましたように、この問題は非常に改善されておることは事実でございます。で、もう私どももいま言ったような第二ラウンドの対策に入っておって、これも統計から見ましたら逐次改善されていることは確かでございますが、問題は、こういう引き締め時になってさましたら、せっかくここまできた歩積み両建ての改善がもとへ戻ることが一番心配だと私どもは思っています。その可能性もあると思いますので、これを取り締まって戻さないことがこれからの私どもの行政の一番重点だというふうに考えております。
  139. 加藤清二

    加藤(清)委員 時間ですから、二つの提案を行ないます。  一つ、歩積み両建ては悪いことです。中小企業の倒産のもとです。これを解消するために、もう一度本委員会に特別なこれの委員会を設けられまするよう要望いたします。  次に、この三月危機が四月−六月に移行したといわれておりますけれども、ちょうど政府の揚げ超のときに、銀行までが中小企業から金を吸い上げてくる。貧血状態の中小企業は一そう貧血になる。したがって、これの緩和策として、財投から繰り上げ支給をなさるよう要望をいたします。そうしてこの倒産を救うてもらいたい。  この二つの提案について御答弁を願います。これは総理……。
  140. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 二つの御提案がございますが、第一はひとつ委員会で十分御審議をいただく。これには行政府は別に関与いたしません。  第二の問題、これは日本銀行総裁をはじめ大蔵省におきましても、いまの実情に即した臨機の処置をとる、これは当然のことでありますので、そういう意味で十分実情を把握し、またその時期を失しないようにこの上とも注意するつもりでございます。
  141. 加藤清二

    加藤(清)委員 委員長お答え願いたい。
  142. 井出一太郎

    井出委員長 ただいまの加藤君の御提案、前段の分につきましては予算理事会においてこれを協議いたします。
  143. 加藤清二

    加藤(清)委員 あと二問で終わります。簡単にいたします。  もう一つの倒産原因がございます。それは不良手形の横行でございます。企業間信用の増大でございます。この不渡り手形と申しましょうか不良手形と申しましょうか、この期限は不請代金支払遅延等防止法によって六十日と規定されておりまするにもかかわりませず、これは空文化して、とんでもない長期になっているわけでございます。総理、飛行機手形とは何でございましょうか。あとでお答え願いたい。お産、台風、七夕は通り越えております。それは全部犯罪なんです。ところがこれは銀行でチェックでき、手形交換所でチェックできるにもかかわらず、ひとつもこれに対して罰金その他の法が適用されておりません。かくのごとくルーズでございます。それが中小企業を痛めつけているのでございます。これについてチェックをするところの手形交換所、銀行窓口、これらを督励して法律が守られるようにすべきだと思いまするが、総理の御見解をお願いしたい。
  144. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 結論だけ申します。法律を守らなければなりません。実情を十分把握して、そうして無用の影響を与えないような、そういう状態をつくるようにいたしたいものだと思います。
  145. 井出一太郎

    井出委員長 加藤君に申し上げますが、約束の時間がだいぶ過ぎておりますので……。
  146. 加藤清二

    加藤(清)委員 もうあと一問。  飛行機手形、めったに落ちない。たまに落ちる。それは、飛行機はそれでけっこうですが、手形のほうは落ちなければならないのでございます。しかもそれは法律で定められた六十日以上は、振り出し方において金利を払わなければならぬはずなんです。払わない者には罰則の適用があるはずなんです。にもかかわらず適用がない。一つもない。常識になっている。流行語が通用する。これでは金融は不正常でございます。正常化し、合法的に法律のもとに行なわれるよう、総理において、これも今国会中にはっきりとした御答弁が願いたい。  最後に、最初の約束でございました米審、核三原則、これの御答弁は総括質問が終わるまでと相なっておるはずでございます。これについて、新しく出られた農林大臣防衛庁の長官、おさおさ用意怠りなく御準備が願いたい。もしその準備ができないとなりますと、スムーズに円滑に能率をあげることができなくなります。この点について、総理の御見解を承りたい。
  147. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの飛行機手形の問題ですが、これはただいま政府ももちろん、また参考人諸君も加藤君の説を拝聴しておりますので、先ほど申しましたように法の秩序は維持しなければならない、同時にまた無用の摩擦を実社会に起こさないように、この上ともこれは努力するつもりでございます。  また第二の問題、ただいまの研究する問題として御提示になりました案件につきましては、もちろん政府において——一そう御満足のいくような答弁ができますかどうか、これは別でございますが、政府として確信の持てる答弁をするつもりでございます。
  148. 井出一太郎

    井出委員長 これにて加藤君の質疑は終了いたしました。  参考人各位には、御多用中のところ御出席をいただきましてまことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。  午後は一時半より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時二十八分休憩      ————◇—————    午後一時四十二分開議
  149. 井出一太郎

    井出委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。北山愛郎君。
  150. 北山愛郎

    ○北山委員 私は、主として四十三年の予算案を中心として財政経済問題の質疑をいたしますが、その前に一、二点お尋ねをいたしたいのは、まず、けさの加藤委員との質疑の中で感じたことでございますが、いままで十数日のこの国会空白ということがいわれておりましたが、私は、今回の問題はむしろ空白ではなくて、この機会にわれわれはじめとして国民の多数の方々が憲法というものをもう一ぺん考え直した、そういう意味で、非常に重要な意義のある空白であったと思うわけであります。しかも、そういう中で、佐藤総理をはじめとして現在の日本憲法を尊重し、擁護するということが明らかにされた。国民の多数の中にいまの憲法ががっちりと根を張って、憲法の重みというものを私どもは十分感じ取ることができたわけであります。その点で私は、この十何日というのは非常に歴史的な意味のある時間であったと思うのでありますが、その前に、総理お尋ねしたいのは、総理憲法を擁護すると言われた。それならば、毎年の憲法の記念日には憲法の祝賀行事、記念行事をやるべきじゃないのか。これをやめているのはおかしいじゃないか、このように思うわけであります。ことしは明治百年祭ということで、百年祭の式典をやるそうでありますけれども、明治百年というのは、明治憲法下における八十年と現在の憲法、新憲法のもとでの二十年と、この二つがあって、明治百年というわけであります。したがって、そういう点からしても、現在の憲法の記念行事をことしこそはやるべきである。私はそのように思うのですが、総理憲法を尊重し、擁護するという気持ちをはっきりと示されたわけでありますから、国民とともにその先頭に立って憲法を祝うという行事を、ことしの記念日にはやるという御意思があるかどうか明らかにしていただきたいのであります。
  151. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 あえて議論するわけじゃございません。ただ、私は、いまの空白憲法考えるいい機会だったと言われますが、これは国民のほうから申せば、国会が正式の機関でございますから、国会の論争を通じて国民が理解する、あるいはその論争になっている点でものを考える。こういうことを考えますと、国会が開けなかったこと、審議をしなかったこと、これは私、国民不在だといわれてもしかたがないのだ。さような意味で、私は、まず与野党ともこれはやはり国民にあやまるべきことだ。たいへん謙虚な気持ちでさような意味を申したのでございます。これは第一の問題であります。  そうして、ただいまの憲法の行事の問題でありますが、私は最近の状態では、憲法の祝賀式が行なわれたのが過去の時代でありまして、その後から、これがもういつの間にか祝賀がやめられておる。こういうのがいまの現状でございます。それをまた復活するというようないまの考え方には、いま直ちにはなっておらない。ただいま御提案になりましたことはよく考えてみたい、かように思っております。
  152. 北山愛郎

    ○北山委員 それだからおかしいわけです。憲法を擁護すると言いながら、国民とともにこの憲法の祝典を、憲法を祝うということはなさらない。別にむずかしいことじゃないのです。金もそうかかるわけじゃないでしょう。それをやる気はないと言われる。私どもは、この前の非核武装の宣言の問題でも、核三原則を支持すると施政方針の中で明確に言いながら、その宣言を国会で議決することには反対だ、こういうとこで、常に総理の表の発言と実際腹の中とは違うのじゃないだろうか、こういう点を疑わざるを得ない。この点を率直に申し上げまして次に移ります。  最近、二月十八日の産経新聞で見たわけでありますが、内閣がよく世論調査などを委託しております中央調査社の世論調査として、二月の世論調査ですが、佐藤内閣の支持率が非常に暴落をいたしております。一月四一・六%から二月には三三%に暴落をしておるわけであります。その点は別としても、中立主義が急速に上昇しておるということであります。二月の段階では二四・七%が四二%に上がっておる。一方、自由陣営支持率は四二・九%が三一・三%に下がって逆転をしておるわけです。私は、これがすなわち、この世論調査国民の中での気持ちを、まあ流動しておる、急速に動いておる気持ちというものを反映しておるのじゃないか、このように考えるわけであります。国民はやはり賢明だ。大衆は決してばかではないわけです。単に倉石発言だけではなしに、ベトナムの問題、エンタープライズの問題、沖縄の問題、朝鮮の問題、こういう内外の情勢をじっと考えておる。そういう中で日本の平和と安全を守る道は中立が正しいのだということを感じとっておるわけです。決して原爆を持ったり三十万の軍隊を持って日本を守れると思わない。大衆はそう思わない。そういうことをこの中央調査社の世論調査が示しておる、明らかにしておると私は思うのであります。この点について、ひとつ総理から御見解を承りたいのであります。  なおあわせて、私のところに投書がございまして、その投書を見ると、こういうことが書いてある。総理大臣は核兵器の絶滅を念願すると施政方針では述べておる。そう言っておきながら、核兵器の抑止力というものを評価しておる。これは小学校の生徒でもわかるような矛盾ではないか、こういうふうに言っておるわけであります。そういう点もあわせてひとつ明快にお答えを願いたいのであります。
  153. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 産経新聞に出ました世論調査、ただいま御指摘になりましたとおりでございます。私は別に世論調査を軽視するものではございませんし、この国民、国論、そういう動向には政治家は十分気をつけるものだ、気をつけなければならぬ、かように実は考えております。  次の問題でございますが、これは別に私は矛盾しておるとは思いません。現実の問題とわれわれの政治の高度の目標というものと、その間には大きなギャップのあること、これはおわかりだと思います。北山君もその点は混同されないだろうと思う。ただ現実の問題としては、私、ただいまの安全を確保するためにアメリカの核の抑止力、日米安全保障条約にたよる、こういうことでございます。しかし、本来考えてみるのに、この種の兵器、これはなくなること、もちろんその前提といたしまして、戦争はもうごめんだ、かような考え方でございます。
  154. 北山愛郎

    ○北山委員 この問題で時間を費している余裕がございませんので、先へ進みたいと思いますけれども、こういうような憲法についても、あるいは核兵器の問題についても、どうも総理の言うことと腹の中は食い違っているのじゃないかという疑いを、私だけではなくて国民が持っているということです。そしてそういう中から、平和を守る道は核抑止力ではなくて、安保条約ではなくて、中立の道であるということを国民の多数が支持している、こういう世論動向というものを総理は十分お考えを願う必要があると思う。  なお、あわせて私の疑問点の一つをこの際お尋ねしたいのでありますが、昨年の十一月の日米共同声明を読んでみると、私は総理が過去の歴代の保守政権がやらなかったところの新しい約束をやっておるのじゃないか。それは安保条約を逸脱した、いままでのいわゆる安保というワクを一歩踏み出したところの約束をしている。すなわち安保条約というものは、日本の領域の中では日米が共同防衛するのだというのがたてまえであります。アメリカ軍はそれ以外に極東の平和と安全について日本の基地を利用することができる。日本は極東の平和と安全については協力するとか行動するとか、そういう責任は何もないわけです。ところが今度の共同声明の中では、第五項に、両者は、日本の安全と極東の平和と安全の確保のために日米相互協力及び安保条約云々ということが基本政策として確認されておる。なお、さらに総理は進んでアジアの平和と安定のために、国力の許す限り貢献をするという約束もされておる。これはいままでのいろいろな取りきめなりあるいは共同声明なりそういうものを見ましても、そこまでは言っておらないのです。御承知のように現在の安保条約では、その前文の中に日米両国は極東の平和と安全というのが共通の関心であるということは書いてあるわけです。共通の関心事であると書いてあるけれども日本が極東の平和と安全に責任を果たすなんというようなことはないわけですよ。当時の安保条約の説明でも、そういうことはなかったのです。今度の共同声明では、この線を逸脱をして、極東の平和と安全のために日本が働く、アメリカと協力してやるんだということをうたっているじゃないですか。安保の線を逸脱して、いわゆるアジア安保になっているというのはこの点なんです。一体こういうことをかってに総理がやっていいですか。安保条約というものは、あの国会の中でそういうものであるということを確認されて、言うならば国会を通ったというふうに——どもは認めませんが、とにかく通っている、そういうふうに受け取られておる。それを日本が今度は——極東の平和と安全にまで協力するのだというようなことをうたったことはないのですよ。そういう線で、日米共同声明の中で、佐藤総理は従来の線を踏み越えて、そして安保というものをアジア安保に拡大している。なるほど日本には憲法があるから自衛隊は出さないのだというかもしれません。しかしそういう政治的な、あるいは経済的な方法で、さらには将来どうなるかわからぬのですよ、いままでの憲法解釈からいうと。そういう点で私は重大な逸脱をしていると思うのでありますが、この点をひとつ国民の前に明快にしていただきたい。
  155. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 安全保障条約は成規の手続により成立した有効なものでございます。それを一片の共同声明で変えるわけにはまいりません。これはもう北山君もよく御承知で、条約はどうしてでき、共同声明がどういう拘束力を持つか、これはおわかりだと思います。共同声明で安全保障条約の内容を変える、そんな大それたことを考えておりません。これもせつ然と分けていただきたい。そこでこれはもう議論の余地のないことです。ただ、いままではアジアの安全と平和、あるいは極東の安全と平和ということがどこにも出てこなかった、こういうことでありますが、ただいまの共同声明にそれが出てきた。これは日本の地位がもうそこまでになったのです。私は武力を用いて平和と安全を確保する、こういうことを申してはおりません。もしも武力によって極東の安全と平和を確保する、こう言ったら、おしかりを受けてもこれは当然であります。さような大それたことは申しておりません。私は、しかし、わが国の経済力によりまして、政治を安定さすことができればこれは何よりも有効な方法だと思います。また、平和国家としてそれはやるべきことだ、かように考えております。
  156. 北山愛郎

    ○北山委員 これは重大な問題で、共同声明でもって安保条約を逸脱するような取りきめはできないのだというけれども、そのことをおやりになっているのです。そういう方向に一歩足を踏み出しているのです。しかもここにはさらに、むしろこういうふうに書いておる。「総理大臣と大統領は、平和と安全の維持が、単に軍事的要因のみならず、政治的安定と経済的発展にもよるものであることを認めた。」しかし、軍事的手段は日本はとらないのだとは書いてないのですよ、裏を返せば。(「とれないのだ」と呼ぶ者あり)とれないのだといっても、従来の自衛隊の海外派兵に関する政府答弁なりそういうものを見ると、全然その道をふさいでないということなんです。そこにこの共同声明というような、非常に危険な第一歩を踏み出したのじゃないかということを私は指摘をして、これは今後またわが党の同僚諸君等からいろいろと追及があると思いますから、私はこれをこの程度にいたしまして次に移りますけれども、とにかくいま内外の情勢というのは非常に大きく流動している。ベトナム戦争をごらんになっても、アメリカのベトナム介入の政策に対して世界の各地で反戦、反対の運動が起きておるパリでもベルリンでもワシントンでもリスボンでも、また東京でも起こっておるわけです。そういう中でいま北ベトナムの外相が、アメリカが北爆を停止すれば四十八時間ですか、直ちに和平の話し合いに入るのだということを言明している。なぜ一体アメリカが世界の世論を無視して北爆をやめないのか。ベトナム戦争を和平の方向に持っていかないのか。私は、いま日本人として、あるいは日本のわれわれ政治家としても、日本がベトナム戦争を終結するための大きな役割りを果たし得る地位にあると思うのです。  私は率直に言いますけれども総理がこの際アメリカに対して、北ベトナムの爆撃を停止をして、すみやかに話し合いでベトナム問題を平和的に解決すべきである、こういうような勧告をすべきだ。率直に申し上げます。そういう考え方、これを検討する気持ちがあるかないか。そういう重大な地位に日本というものは置かれておるのだということを私は考えますために、この際率直に——あるいはそんなことは例によっていままでのような答弁をされるかもしれませんが、あらためて真剣に考える必要があると思う。その点のお答えをいただきたい。
  157. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 わが政府のベトナム戦争についての態度、これは御承知のとおりでありまして、別に軍事的に介入しているというものでもありませんし、また軍事的に介入する考えはございません。そうして何とか早くベトナム戦が終結するように、こういう意味であらゆる努力をいたしておるのでございます。まだいままではその成果があがらない、こういう意味で、ただいま北山君の言われるようにややあせった気持ちも出てきて、政府は何をしているか、こういう意味のおしかり的な質問だと、かように私理解するのでございます。  すでに御承知のように、旧正月——テト総決起とでも申しますか、なかなか熾烈な攻撃が展開されたと思うと、一面にまた爆撃も非常に強くなった、こういうことで、ただいま非常に憂慮しております。しかしながら、同時にその裏面におきまして、この戦争終結への努力が非常に展開され、努力されつつあるようにも見受けます。偶然のことですが、きょうの夕刊の早版、その読売の記事にも、ベトナム戦終結近い、ラスク米国務長官が演説をした。「無条件話し合い用意」、こういうようなサブタイトルで記事が出ております。私はこのものが信頼するようなものであるかどうか、それはわかりませんけれども、いずれにいたしましても、努力があらゆる方面で払われておること、これは見のがすことはできない。同時に私どもも、そういう機会にこそ、われわれが果たすべきその役割りを果たすべきだ、こういう意味でいろいろ努力をしておるというのが現状でございます。
  158. 北山愛郎

    ○北山委員 われわれ日本人が、アジアの平和と安全、安定のために果たし得るのはそういう場所において、こういうところでだと思うのです。アメリカと共同声明で、アメリカのアジア政策、極東戦略に協力をするんだというとこじゃないのです。日本の独自の、日本人としての立場で、このアジアの和平、ベトナムの和平のために、日本を代表する総理として私は行動をしてもらいたい、こういうことを書っておるのであって、新聞の紹介をしていただこうとは思わない。  次に移りますけれども外交においても、いろいろ私は政府外交政策の方向というのは間違っておると思うのですが、経済政策においても大きな誤りを幾つかおかしております。この前の臨時国会でも申し上げましたとおりに、第一点は、世界の通貨不安というものを甘く見てきた。そして、外資依存でもって、どんどん金を借りて、放漫な高度成長を続けて、自分の備えを忘れたということが第一点です。だから、日本がいまのドルやポンド不安という中で一番ショックを受ける。そういう立場にさせたということは、これは佐藤内閣だけじゃありませんが、歴代の保守党政権の大きな長期の失敗だ。第二点は、そういう国際環境の中で、四十二年度の経済、財政の運用を誤って、そして国際収支が大赤字になり、二カ年を通じて十数億ドルの赤字で、いわゆる国際収支の危機というものに、いまわれわれは直面しているわけです。これが第二の失敗です。こうしなくてもよかった。第三には、そういう円の状態が悪い、いろいろ円の切り下げすらも、いま外国でむしろ伝えられておるような、そういう状態の中で、日本がドル防衛協力するなどというようなことを約束をしている。こういうような失敗があると私は思うのでありますが、この内外の経済情勢の変化の中で、大きな経済の政策の転換というものをやらなきゅならぬと思う。これは二つあると思うのです。一つは、やはり日本の経済の自立をはかるということです。これは何も社会党だからどうのというのじゃなくて、日本経済というものを自立化させる、それが第一の問題。第二の問題は、大企業優先の、大企業の拡大、それを中心とした経済成長政策というものをやはり改める必要がある。この二つの点がある。大きな内外の経済政策というものの転換をしなければならぬと私は思っておるわけです。  そこで、そういう観点から、四十二年度における政府の景気調整策というものをひとつ振り返ってみたいと思うのです。今度の総理、大蔵大臣あるいは企画庁長官の施政方針を見れば、異口同音に、去年の九月以来景気調整策をとったが、いまだにその効果が出ていないと言っている。まことに淡々としたものであります。自然現象でもあるかのごとく言っておるのですね。そこには、ほんとうに日本の経済の内外の危機というものに体当たりをして取っ組んでいくという姿勢が、あの施政方針の中にはないのです。そういろ点で私はまことに遺憾だと思うのですが、特に経済的に見ると、なぜ一体去年の七月以来の景気調整政策——金利を上げたり、あるいは公共投資を減らしたり、金融の引き締めをやった、そういうことをやったにかかわらず、半年たってもなぜ効果が出ないのかということを、なぜ一体考えないのです。ただ淡々として、そして同じようなことをこの四十三年度もやろうとしておる。もう少し考えたらいいのじゃないかと私どもは思うのです。いろいろ時間の制限もございますから、あまり深入りはできませんけれども、そういう点からここで宮澤企画庁長官にお尋ねしたいことの一点は、経済社会発展計画というものは出直す必要があるのではないかということです。あれは御承知のように三十年代はいわゆる高度成長時代であった。これを反省をして、四十年代は安定成長の時代に持っていくのだという計画であったはずです。ところが四十年代になっても、相変わらず三十年型の高度成長が去年行なわれたのじゃないですか。そうなれば、その体質を変えるなりあるいは計画を直すなり、どっちかでなければならぬ。とにかくいまのような経済政策を続ける限りにおいては、あのような経済社会発展計画を何ぼつくったって意味ないのです。あれをつくり直すお考えがあるかないか、企画庁長官の見解を承りたい。
  159. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいまのところ経済社会発展計画をつくり直す考えはございません。と申しますのは、確かに四十二年度企業設備を中心に、経済社会発展計画の予想していなかったような事態が起こりました。四十年代にはないのではないかと言われたようなことが一ぺん起こっておりますが、これがはたして四十年代さらに続いて起こるようなものであろうか、あるいは何かの事情でやや変則的に起こったものであろうか。四十二年、四十三年を通じて見ますと、私どもの四十三年の見通しどおりならば、まず両方がバランスオフされるわけでございますが、しかしそういう判断をいたしますのにも、やはりああいう計画がございまして、それにのっとって判断をするという基準にはなっておると思いますので、かりにもう一、二年いたしまして、基本的にとった想定が間違っておったということになれば別でございますが、ただいまのところ、あれを改める必要があるとは考えておりません。
  160. 北山愛郎

    ○北山委員 一々問答しておれば時間がたちますから、私ども考え方を申し上げますと、なぜ一体四十二年度の景気調整策が有効に機能しなかったかというと、これはいまの日本の経済が、いわゆる大企業の独占的な地位というものが確立をして、もうちょっとやそっとの金利の引き上げとか景気調整くらいでは免疫性を持っておる。四十一年度の法人企業統計を見ましても、五十数万の法人企業の中で、十億円以上の資本金を持った九百の会社が、資本金全体の五八%を占めておる。収益の四六%、金融機関からの借り入れ金の六八%を、この九百の会社が借りておるというような形で、そういう大企業がもうがっちりと地位を固めて、しかも四十一年度以来ものすごく金をもうけて、そして豊富な自己資金をもって設備投資をやるのですから、少しくらい金利を上げたって、そういうものにはこたえないのです。そういうことが、これは当然はっきりわからなければならぬわけです。企画庁のいろいろな資料の中にもそういうことはほの見えておりますけれども、そういう実態をそのままにしておいて、去年と同じような景気調整をやるということ自体が、知恵のない話だと私は思うのです。  この際お伺いしたいことは、大蔵大臣にお伺いするのですが、昨年、例の景気調整税制ということをやった。税制のやり方でもって景気を押えようと、公定歩合を上げる、景気調整をしなければならぬときに、合理化機械の償却減税というものを一時停止をする、こういう税制をわざわざ政府が提案をして去年通ったわけですが、去年使わなかった。なぜ使わなかったのか、こういうことこそが景気調整にきくのじゃないかと思うのです。ことしも使わないというような話ですが、一体どうされるお考えであるか、大蔵大臣の見解を承りたい。
  161. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 昨年の公定歩合を引き上げいたしましたときにも私はお答えいたしましたが、ここ三、四年来の設備投資の内容を見ますというと、中小企業の合理化投資というものが非常に進んでおります。したがって、今度のような設備投資をある程度押えなければならぬという必要に迫られたときに、もしあの法律の発動をやるということになりますと、過去必要に応じてようやく大企業の設備投資が少し停滞して、中小企業の設備が非常に進んだ。そのときに投資した中小企業に対して、この恩典を失うことになるという関係もございますので、自由化を前にして、いろいろ日本の設備の近代化、合理化をやらなければならぬというときに、あの法律をすぐ発動するということは、過去の必要によってやった設備投資の恩典を奪うということの作用のほうが大きい。今後これを押えるというほうにどれだけ働くかというような問題、いろいろ産業政策上の問題を考慮して、しばらくこれは慎重に考えたほうがいいという考えで、あのとき発動しませんでしたが、現在もまだ私は同様な考えで、もう少しこの様子を見たいというふうに考えております。
  162. 北山愛郎

    ○北山委員 総理お尋ねをしますが、一体こういうときにこそ使うために政府がこの景気調整税制を出したのでしょう。こんなときにも使わない。いろいろな理屈はあるでしょう。だけど、景気調整という一つの至上命令がある。そういうときに使うために政府が提案をして通ったようなものをこんなときにも使わないなら、一体何のために提案をしたのかと言いたい。総理から伺いたい。
  163. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お答えいたします。  いまの北山君の、そういう宝刀ができておる、宝刀を持っているのだから、なぜそれを抜かないのかと、こういうお話です。宝刀というものはしょっちゆう抜いても宝刀のきき目がないということも言えるのでございます。御承知のように、一環の金融引き締め、その他の処置をとってまいりました。やや落ちつくのではないだろうか、かように実は考えております。したがいまして、ただいまそういうものをちらつかすだけで効果があるかもわかりませんし、また実際に使えばなお効果があると、こういう議論もあろうかと思いますが、現実の問題として大蔵当局あるいは金融機関等、すべてが総合的対策を立てておる。実情に適したものをやる、こういうような考え方でございますから、ただいまのお責めになったこと、これは一つの理由はありますから、大蔵当局、決してその意見を無にしておるわけではありません。十分、謙虚に伺っておると、かように思います。どうか、ただいまのような実情に即していろいろな制度を発動する、かように御理解をいただきたい。
  164. 北山愛郎

    ○北山委員 率直に言えば、業界からたのまれればやはり相変わらず租税特別措置を、減税を続けていこう、こういうふうに思われてもしようがないのですよ。  そこで、去年の景気調整の中で財政繰り延べをやっておるわけですね、財政支出の。こういうことは、実はわが党の井手議員が前に質問したことがあると思うのですが、いまの憲法の中で、明治憲法でやったような実行予算を組むというようなことはおかしいと思うのです。だけど、そのことは議論しません。しませんが、少なくとも財政繰り延べをやる。その内容を国会に報告をする、その報告もしないというのは、あまりにもこれは国会無視じゃないですか。国会予算執行の権限を与えているんですよ。それをかってに来年に繰り延べるとかなんとかいって、その内容についてさっぱり知らしてくれない。大ざっぱには、一般会計と特別会計で七百三十九億、政府関係機関で五百九十五億、財投で千五百二億、地方財政で九百十億、合わせて実質三千百十二億の繰り延べをするといっただけです。その内容をひとつここで明らかにしていただきたいのです。あたりまえですよ。国会軽視ですよ、これは……。
  165. 井出一太郎

    井出委員長 大蔵大臣からまず答えて、主計局長に……。
  166. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いまの問題は、御承知のとおり国会で議決いただいた内容を変更するものではございませんで、繰り延べは時期の調整をするということでございますので、いままでの明治憲法の実行予算というようなものとは違う。したがって大ざっぱな報告はいたしましたが、こまかい報告はしてございませんので、主計局長からお答えいたします。
  167. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 御報告申し上げます。  昨年の九月におきまする繰り延べの中身といたしましては、いま大ワクとしては北山委員がおっしゃったところでございます。その中で、一般会計におきましては公共事業関係費が中心になっておりまして、総額四百八十九億円に相なっております。その中身といたしましては、治山治水が八十四億円、道路整備が二百十七億円、港湾、漁港、空港関係が四十一億円、住宅対策が三十八億円、公園、下水道等の生活環境施設整備が二十二億円、農業基盤整備費が六十九億円、林道、工業用水等で十五億円、こういうふうに相なっております。その他公共事業関係費の中には類別されておりませんけれども、官庁営繕その他の施設費におきまして、たとえば防衛関係の施設費であるとか、公務員宿舎の施設費であるとが等々におきまして百二十三億円、合わせて六百十二億円というふうなものが繰り繰べられております。この中で、たとえば治水とか、あるいは道路というものは、特別会計のほうにおきまして実際の支出をいたすわけでございますけれども、その特別会計のほうにおきましての繰り延べも、公共事業関係としましては三百八十五億円、その他におきまして五十八億円、四百四十三億円というふうに相なっております。したがって、一般会計と特別会計の合計額では千五十六億円になるわけでありますけれども、先ほど申し上げましたような、一般会計に組んだものをもう一度特別会計で支出するという重複額もございますので、その重複額三百三十五億円を差し引きますと七百二十一億円、こう相なるわけでございます。  そのほかは、先ほどおっしゃいました財政投融資その他地方財政、あるいは政府関係機関ということで、総額三千億円に相なる、こういうわけでございます。
  168. 北山愛郎

    ○北山委員 いまの内訳は、あとで文書で出していただきたいと思うのであります。  そうしますと、これは一般会計、特別会計その他いわゆる繰り越し明許という規定で翌年度へ繰り越すと、こういうことですね。
  169. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 そういうことでございます。
  170. 北山愛郎

    ○北山委員 財政投融資についても、千五百二億というのは翌年度に繰り越して、翌年度分として使うと、こういうことですね。
  171. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 そういうことでございます。
  172. 北山愛郎

    ○北山委員 次にお尋ねしますが、四十二年度の税収見込みはどうなりますか、その見当を聞きたいわけです。  それから、あわせてこの第四・四半期に国債発行予定の千七百億のうち、国債を千億削減して七百億発行する、千億の国債を削減するというふうな方針と承っております。この点を明らかにすると同時に、その千億の国債を削減する場合においては、その財源は何で補てんされるのか、この点も、いわゆる税の自然増とも見合わせてお答えをいただきたいのです。
  173. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 四十二年度の税収見込みは、昨年の十二月の収納ぐあいから見ますと、所期の税収見込みがなかなか困難という数字でございます。しかし、御承知のように賞与の税の措置の問題等がありますので、その税収は十二月を越した以後に入ってきますので、そういう点を見ないとまだわかりませんが、最初の見込みどおりの税収があるかないか、いま非常に心配しているところでございます。  国債の発行についてでございますが、当然公共事業費の繰り越されるものに応じて国債の発行がずれるという部面と、また資金運用部資金によって引き受けられる部面と、いろいろ出てまいりますので、これは三月、もう少したって年度末にいかないと、最後の国債発行の処理がつかないというような状態でございます。
  174. 北山愛郎

    ○北山委員 いまのお話ですと、財政繰り延べ、歳出の繰り延べによって、たとえば一般会計で四百八十九億という財源を次年度へ繰り延べなければならぬわけですが、それじゃ国債発行をその財源として次年度に繰り延べるわけですか。要するに、いまのお話ですと、一般会計の歳出の繰り延べがある。したがって、その財源として国債を翌年度へ繰り延べていくというようなふうに伺ったのですが、それでいいですか。
  175. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 翌年度ではなくて、出納整理期間に発行する。具体的には四月一日にずれるかもしれません。
  176. 北山愛郎

    ○北山委員 私、会計のことはよくわからないのですが、国債発行というのは、やはりその当年度でやらなければならぬ、歳入の繰り延べということはないわけですからね。そうしますと、発行自体が収入行為じゃないでしょうか。現金が入ってくることは、それは出納閉鎖期でもよろしい。しかし三月三十一日までに国債発行のことは契約なりなんなりはしなければならない。これは当然じゃないですか。
  177. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 三月末に契約はします。しかし四月に発行されます。
  178. 北山愛郎

    ○北山委員 いまのお話を総合しますと、とにかく国債は、一千億は今年度の国債を削減するということは、これはもう方針として大体きまっているんですね。そうすると、その補てん財源は何であるのですか。
  179. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 御質問がはっきりしませんでしたが、一月から三月の国債の発行額を減らしたというのじゃございません。年度を通じて四月から三月までの国債の発行額を千億円削減したいということでございます。
  180. 北山愛郎

    ○北山委員 同じことなんです。要するに年度分の一部であることは当然ですね。とにかく四十二年度の発行予定を千億削るでしょう。それは歳入欠陥になりますね。歳入が足らぬ。そこで何か別の財源で埋めなければならぬでしょう。それを何で埋めるかと聞いているんですよ。自然増があれば、それで埋めるとか……。
  181. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これは自然増を一応予想して削減したわけでございます。
  182. 北山愛郎

    ○北山委員 そうすると自然増が一千億もあるのですか、補正予算に組んだ以上に。
  183. 鳩山威一郎

    ○鳩山政府委員 私から答えさせていただきますが、昨年末に、本年度の国債のうち市中消化分を幾らにするかということを大体方針をきめて、これで進んでいるわけでありますが、一月−二月の分といたしまして七百億円という金額を市中消化で発行しようということをきめました。その結果、予定されておりましたものより市中消化分として千億減らしたわけでございます。その千億の始末につきましては、三月末までの税収の状況あるいは歳出の不用が出る状況、その状況を見まして、やはり不足分が出ると思いますが、その分につきましては、資金運用部の資金で引き受けますとともに、一部分は、先ほどお話がありましたように、歳出の面もずれますので、四月の発行を考えております。これは一応年度は四十二年度でございます。出納整理期間のうちに発行するということでございます。その発行の考え方といたしましては、引き受け契約は三月の末に結びまして、入金が四月中ということになりまして、現在の制度によりまして四十二年度の収入となるわけであります。ですから、財源といたしましては、これは四十三年度の公債として大部分はやはり発行されるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  184. 北山愛郎

    ○北山委員 もうすぐ三月、年度末なんですけれども、そうすると一体四十二年度の国債発行の額はどのくらいになるのか。これはついでに鳩山さんに……。大蔵大臣だめだ、これは。
  185. 鳩山威一郎

    ○鳩山政府委員 ただいまの千億という話から申し上げますと、これは先ほど申し上げましたように、税収と不用がどれくらい出るかという不確定要素があるわけであります。これが幾ら出ますかということは、やはり三月末にならないとわからないのでございます。ただ、これが四月から三月までの発行といたしましては、市中分がほぼ五千九百億と、それから資金運用部資金引き受けが、ただいまのところ五百億をいたしまして、六千四百億程度になっておりますが、それに対しまして、さらに四月に発行されます分がほぼ千億からある程度不用を引いた額ということになります。それだけが四十二年度の発行される国債である、こういうことになるわけであります。
  186. 北山愛郎

    ○北山委員 その辺にずいぶん問題点があるのですけれども、時間がないのです。  そこで、とにかく国債をどのくらい発行するのか、まあ自然増だとかなんとかの見合いでいま考えている最中のようですが、補正予算を組むのか組まないのか、これをひとつ聞いておきたいのです。補正予算の必要が起こるのじゃないですか、起こらないのですか。
  187. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 先般大きい予算の補正をやりました直後でございますので、もう一度の補正の必要は、私はなくて済むと思っております。
  188. 北山愛郎

    ○北山委員 大蔵大臣は補正予算というのはいやなようですから……。  先へ進みますが、そこで四十三年度の財政、予算の問題であります。政府は施政方針、大蔵大臣の演説等で、四十三年度の予算の性格、目的というもの、それを早期の国際収支改善、そのための景気調整に置くんだ、そのためには財政規模というものを極力抑制してきてある、こういうことを言っております。もう一つは、既存の制度、慣行の再検討でいわゆる財政の体質改善、こういうことを強調しておるわけです。総理以下みなそのような演説をされておるのです。ところがその内容を見ると、必ずしも実質抑制になっているかどうか、疑問なんです。こういうふうにしなければならないのじゃないかと思うのですが、その前に、政府一般会計予算については、従来前年度の当初予算と比較しておった。今度は、前年度の補正後の予算と比較しておる。ところが、財政投融資については、前年度の当初予算に比較しておる。どういうわけで一体こういうことを考えるのか。都合のいいほうへ比較する、こういうふうに考えられもするのですが、その理由をひとつ明らかにしていただきたい。
  189. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 お答えを申し上げます。  今度の予算で一番特徴になりますところは、総合予算主義とわれわれ申しておるところでございますけれども、従来予算を編成しますときに、ある程度年度の途中で膨大な追加原資を必要とするであろうと思われる食管あるいは公務員給与というふうなものを別に置きまして、本予算を編成してまいったわけでございます。今回はそれをやめまして、今後の経済情勢も考えますというと、年度の途中で大きな自然増収があるということを期待することは非常にむずかしい。あるいはまた、非常に限られた原資の中で何が一番緊急かということを比べまするにつきましても、本予算の際に全部その年度で起こるであろういろいろな施策というものを比べまして、そうして最も重点的、効率的な原資の配分をするということのほうが本道であるということから、今回のような総合予算主義になったわけでございます。そうしますというと、非常に異常な条件というものを考えないといたしますと、一般の、通例の条件のもとにおきましては、年度の途中で膨大な追加原資をもって補正予算を組むという必要がなくなるわけでございまして、そうなりますと、比べまする前年度の予算というのは、前年度の本予算、補正予算を合わせたものと今度の四十三年度の総合予算主義をとった予算との規模を比較すればよろしいではないかというのが、われわれの趣旨でございます。  財投につきましてそういうことをしなかったのは、財投というのは、補正予算という制度はございませんけれども、これは年度の途中におきまして、貿易の関係で輸出金融をどうするかとかあるいはまた年末金融をどうするかというふうな要素、これは当初の財投計画を組みますときに正確に把握できるというものでもございませんから、従来どおりの方式で組んだということで、従来どおりの方式で組んだ前度年の予算との比較を求めるのが、それが正しいではないかということで、一般会計の予算と財投の予算のいわば抑制型の説明には、基準の取り方が異っておる、こういうことでございます。
  190. 北山愛郎

    ○北山委員 局長答弁はどうも時間がかかるので、今後はひとつ大蔵大臣から簡潔に答弁していただきたい。  そこで、わかりましたが、ただ総合予算主義というのは、従来も実は原則はそうなんです。初めから当初の予算を組むときに年度内で予想されるものはできるだけ全部組むというのがこれがたてまえなんで、ただ事実そういう事故が例年起こっておったということなのであって、あらためて総合予算主義なんていうことを言う必要はない。初めから総合予算主義なんです。ただいまの経済ですね、たとえば物価が上がるとかいろいろな変調な事態が何年間も続いておりますから、そこで相当大きな補正が出るだけの話であって、ここで何か新しい総合予算主義なんかをとるというようなことを言うのは、おかしいと私は思うのです。しかも、こういう経済変動の中で、この前の国会でも言いましたけれども予算だけ硬直というか、予算だけきちっとやったって、経済そのものが動くじゃないですか。政府の経済見通しは、みんな狂うじゃないですか。だから、年度当初には、ことしは総合予算主義で補正予算は組まない、組まないと言っても、そういう事故が出てくるんならば、何もそれは無理をする必要はないですよ。そういう事由が出てくれば、補正の事由が出てくれば、補正を組んだほうが実態に合う予算になる。それをわざわざ年度当初で絶対今年度は組みませんなんて、そんなやぼなことをやる必要はないですよ。総合予算主義なんてもっともらしい名前をつけておるのですが、私から見ればナンセンスだ。そこで、昨年の予算と比較してみるということを科学的にやろうとするならば、ことしの当初予算では、御承知のように国立療養所の分が特別会計にはずされておるんですね、百四十一億。これをプラスしなければ、当然これは正しい比較にはならぬでしょう。それからもう一つは、先ほどもお話があったように四百八十九億の公共投資を繰り延べるという方針なんですから、昨年の分から、補正じゃないけれども差し引かなければならぬ。そしてことしの分に積み上げなければならぬのです。そういう計算をしてみますと、四十二年度のいわゆるほんとうの実績という予算は、五兆一千五百四十五億になる。それから四十三年度は、いま申し上げたような操作をいたしますと、五兆八千八百十五億になるのです。これが正しい科学的な——昨年度の予算規模、財政規模と比較するならば、それが正しいじゃないですか。そうしますと、伸び率というものは一四・一%になって、政府が言っているような一一・八%じゃないんですよ。それはただ表向きだけの話で、しかもごまかし、紛飾をしておるんですよ。したがって、一四・一%となれば、当然経済の成長率を上回った財政の伸びということになるのではないでしょうか。そのほうが科学的じゃないでしょうか。どうですか、大蔵大臣
  191. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 前年度の繰り越しを入れて計算するということになると、いま言ったようないろいろな問題が出てまいりますが、しかし、これは経済の今後の進み方によりまして、私どもはまだ弾力的な財政の運営というものを基本として考えておりますので、そういう要素を入れると、この運営のやり方というものを入れますと、この比率はなかなか簡単には言えないだろうと思います。そこで、景気調整ということから申しますと、やはり政府支出がどれだけ一年にあるか、国民経済にどれだけの影響を政府支出が与えるかという国民経済計算の上で、いわゆる政府の財貨サービス購入費がどうなっておるかということが、そういう観点から見たら一番重要なことだと思いますが、それはもう御承知のとおり、中央・地方を通じた政府支出というものは一一・七%ということで、明らかに昭和四十三年度の経済成長、予想される成長率を下回っておるということでございまして、この点から申しましたら、決して政府の今度の予算が抑制的な予算でないというようなことは言えないだろうと思います。
  192. 北山愛郎

    ○北山委員 さっぱりわからないのですね。何かこれからもう四十三年度でも財政の繰り延べがあるかもしれないから、だから比較ができないと言うならば、前年度と比較すること自体がナンセンスですよ。そんなことを、施政方針演説の中には何も書いてないでしょう。四十三年度でこれだけ繰り延べますなんというようなことを書いておるのなら、お話のとおりになるけれども、そうでなかったら、なぜ昨年と比べるか。今年の予算は景気抑制なんだということを証明するために、去年よりもそう伸びてはおらないのだ、経済成長率よりも下回っているのだということを証明するために、前年度比が何%だなんということを言うのでしょう。それならば、私が言ったように、国立療養所の分を入れて、そして繰り延べ分を差し引いて、そして比較するのが最も科学的なやり方で、いわゆる経済的な影響から考えたならば、そのほうが合理的なわけなんです。たとえば、それ以外にも一般会計と特別会計の純計予算というのがありますね。その歳出の純計で見ますと、こういうことになる。昭和四十二年度は九兆一千七百九十六億円です。四十三年度は十兆六千八百四億円です。ですから、その純計の伸び率、いわゆる特別会計も入れた歳出の純計の伸び率を見ると、一六・四%になるのです。はるかに経済成長を上回った伸び率なんです。こういうことを一体検討されているのですか。あるいは財政投融資にしても、先ほどお話があったように、千五百億というものを繰り越して使うとするならば、その分だけ四十二年度から差し引きになり、四十三年度に上積みされるわけなんですよ。だから、財投も、そういう操作をするならば、二〇%も伸びちゃうのです。どこから考えても、私は、政府説明しているように、四十三年度の一般会計その他の全体の財政規模というものが——これはきのう発表ざれた地方財政の財政計画の規模を見ても、一七・五%の伸びなんです。どれから見ても、政府説明しているように、経済成長よりも下回った抑制型の予算を組みましたなんというようなことは、これはことばだけのことであって、実体はそうじゃないということなんです。一体どうなんです。
  193. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 いろいろこまかい条件をお与えになって非常に正確な計算をしておられることに、非常に敬意を表するのでございます。もしそうであるとするならば、たとえば四十二年度の予算におきましても、四十一年度から繰り越しを加えなければならぬということになりますし、四十三年度から四十四年度の繰り越しということにもなります。そこで、私は先ほど大蔵大臣の申し上げましたことを補足するのでございますけれども、結局何がふえるかによって公経済の需要というものの経済に対する影響は違ってくるわけでございます。たとえば国債が非常にふえるという場合、債務償還をするということはむしろ景気に対しては抑制することになるかもしれないのでありまして、そこでいろいろな面から見ますと、一体経済に対してどういうふうな影響を公経済が与えるかということは、経済企画庁が計算をいたしておりまする政府の財貨サービスの購入といろ、その計算から出てくるのが、私は一番判断としては正しいと思うのです。その点から申しますと、先ほど申し上げましたように、経済の成長率に対しては下回っておるということでございまして、一般会計の規模とかあるいは純計の増加率というものを、これをときどき指標として出しますけれども、これは非常に常識的な概念でございまして、科学的に申し上げるならば、やはり国民経済計算上の公経済の需要全体をつかまえて、一体経済に対してどういう影響を持っておるかということをあげるべきだと私は思うのでございます。
  194. 北山愛郎

    ○北山委員 そういう詭弁では納得しません。四十一年度から四十二年度がどうのということは、いま論点になっておらないのです。四十二年度から四十三年度の比較を、われわれは議論しておるのです。政府もそれを言っておるでしょう。しかも、あなたが御説明されるような内容的なものにまでふえんして説明をしなければ納得できないとするならば、一体なぜ財政演説の中に、あるいは総理の施政演説の中に、そのことを書かぬのですか。その面では、いま言ったような形でただ表づらだけの比較でもって、このとおり経済成長よりも下回っております。ですから抑制予算です、こういうふうに言っておるじゃないですか。もしも主計局長が言っておるとおりとするならば、全部施政演説、財政演説を書き直してください。そんなふうないいかげんな答弁では困りますよ。
  195. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いまの問題は、私の財政演説の中にもはっきりと、国民経済計算上の問題で下回る見込みにしてあるということは、予算の編成方針として申し上げてあります。そうしてさっき言われました点は、そういう計算をされると、過去の毎年の計算もそういう問題が伴いますが、今回の問題の中では、やはり予算は昨年度御承認を願った予算は変更しない、この執行時期を繰り延べをしてあるだけであって、これは昭和四十三年度にずれてくると思いますが、それはそれとして、昭和四十三年度の経済見通しを土台にしてあるべき姿の予算を私どもは一応編成して、そのずれてくることとの関係においては、さっき申しましたように、まだ問題が残る。これがそのまま全部ふえるというようなことでございましたら、その予算がはたして抑制予算と言えるかどうかわからないと言われましょうが、さっき申しましたように、政府考えは、運営は機動的に、弾力的にやるということでございまして、この点は十分承知してこの運営をしなければならぬというふうに考えておりますので、私どもは、この財政運営にあたって、この予算の放漫な運営ということは絶対にいたさないという前提で御了承を願いたいと思います。
  196. 北山愛郎

    ○北山委員 これは、私がいまここで言っておることは、私だけが思いついたことじゃなくて、経済評論家だってなんだって言っておるですよ。その年度の実質の財政需要がどのくらい起こるかということで、それがふくれれば景気刺激的だということでものを判断しておるでしょう、比較しておるのでしょう。ですから、四百八十九億の公共投資だって、これだって繰り越し明許でもって年度繰り越しをするのでしょう。そして四十三年度で使うのでしょう。四十三年度の財政需要になるのじゃないですか。いまの説明なんというのは、全然支離滅裂でわけがわからないですよ。こんな程度のことで堂々と、「第一は、財政規模の増大を極力抑制したことであります。すなわち、一般会計予算」は云々、こういうふうにやって、しかもこれは「前年度の実績見込みに対して一一・七%の伸びとなり、国民総支出の伸びを下回る見込みであります。」なんというのは、うそですよ。もっと科学的に、率直に説明しなければならぬですよ。私は、必ずしも抑制しろとかなんとか言うのではないですよ。ただし、実際の予算は刺激的なふくれた予算を組みながら、口の先だけでは抑制して予算を組んでいますというのは、うそだから、これはインチキですよ、ごまかしですよ。こんな大きなことが、そんなことで一体通るものですか。総理大臣、どうです。総理大臣の演説にもあるのだから……。
  197. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 お答えを申し上げます。  おっしゃいますような現実の執行面の繰り越しであるとか、繰り延べであるとかということを入れまして計算すると、確かに北山委員のおっしゃるようになるだろうと思うのであります。しかし、従来も繰り越しの多い年もありますし、少ない年もありますけれども予算ができましたときに比較いたしますときには、形式規模でいっておりますので、そういうことを申し上げておるのでありますけれども、それは単に計数だけの話で、実際にはどうなんだということになりますというと、予算の中には非常に乗数効果の大きいもの、あるいはそうでないもの、要するに経済に対する需要効果の大きいものと小さいものがございますから、そこまでもやはり分析しなければならない。そこで、いま申し上げましたように、繰り延べの関係も入れまして、国民経済計算におきましては、政府の財貨サービスの購入が、ことしに対して来年の現実がどうなるであろうかということを計算いたしておりますので、その内訳を資料として御提出申し上げれば、よくおわかり願えるかと思います。それは後刻よく研究して提出をいたしたいと思います。
  198. 北山愛郎

    ○北山委員 主計局長説明は、演説なり政府予算に関するいろんな説明、そういうものにはないのですよ。別なことを答弁されているのです。もしそういう表づら——いま私が申し上げた数字の比較については、これは認めたのですね。実質上そうでしょうと、そういう計算すれば。これは私だけが計算するのじゃなくて、そういう計算をしている人があるのです。実質から言えばこれは膨張型の予算だ、こういうことを言っているのですよ。私だけが言っているのじゃないですよ。そう言っているのに対して、乗数効果がどうであるとか、費目によって変わるとか、そういうことなら、そういうものを資料としてお出しくださるまでは、これは納得できないですよ。大蔵大臣どうですか。資料として出しなさいよ。またこういう演説の中身も、そういうことで書き直してください。そうでなければ納得しませんよ。
  199. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 政府の財貨サービス購入についてのこまかい資料を出せば、はっきりすると思います。資料を出します。
  200. 北山愛郎

    ○北山委員 しかし、少なくともこの演説の中身は、そんなこと解れてないのですからね。そういうことで、計算上は膨張型に見えるかもしれぬが、乗数効果その他その内容を分析すればそうじゃないのだと言うならば、なぜ一体こういう演説に、説明にそのことを言わないのです。ただ口の先だけ、こういう数字だからこうなんだということだけ言っているのじゃないですか。これを直してくださいよ。もう少しまじめに……。
  201. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 書いてないとおっしゃいましたけれども、実は国民経済計算上の政府の財貨サービスの購入が一一・七の伸びになるということの中には、政府の需要を千億投入すれば、それが幾ら個人消費に波及するとか、そういうふうな計数もはじきましてあの国民経済計算全体ができ上がっておるわけでございますから、そういう影響指数等々の計算をしてでき上がったものがそういうものだとお考えになれば、財政演説の中で国民経済計算の政府財貨サービスの購入は一一・七%の伸びであるということにあらわされておるわけでございます。
  202. 北山愛郎

    ○北山委員 ここで議論しているのは、予算なんですよ。国民経済計算じゃないのですよ。経済計算はこれこれのことであって、財政需要のはね返りはこうだという計算はあるでしょう。それは国民経済計算のことなんだ。ここで言っているのは、予算案の説明なんだ。予算案の説明には何にもないじゃないですか。そういうことであるならば、こういう大蔵大臣の演説なりあるいは企画庁長官の演説の中に、それを出さなければいけないのです。出してない。ただ表づらの数字づらでもって比較して、だからことしの財政規模は抑制型でございますとはっきりうたっているのですよ。部分的な間違いじゃない。政府が出している予算の一番の性格を、うそを言っておるということになる。
  203. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それは、いまうそを言っておるというお話でしたが、そうではございませんで、予算の組み方、説明のしかたを今後改めろということでしたら話はわかるのですが、いままで、従来のやり方は、従来もこの繰り越しというようなものはございますし、それはそれとしておいて、その年の経済の見通しからその年の予算の編成をやって、その説明をしております。したがって、いま言ったような問題のズレが、確かにことしだけじゃなくて毎年あるのでございますが、そのために、そういうものの処理との関係において予算の執行面で常に弾力的な運営をしなければならぬという必要がいままで生じておった、またそれはそれで解決しておったのでございますが、そういうものをはっきりさせろ、今後の予算編成においてそういうふうにしろということでしたら、これからの問題でございますが、従来やった方式で一応きて、その御説明をしたということでございます。
  204. 北山愛郎

    ○北山委員 私は人がいいのですから、たいていなことなら承知したいのですけれども、この問題は、いま議論しておるのは、四十一年度から四十二年度の変化と、四十二年度から四十三年度の変化を比較して議論しておるのではないのです。四十一年度、過去のことは過去のことでいいのです。四十二年から四十三年の比較をして、これだけ伸びがあるんだ、財政需要がこれだけふえるんだぞ、だからこれはこれしかふえないから、経済成長率よりも下回っておるから、それだからこれは景気抑制型でございますと、こういうふうにはっきり言っておるじゃないですか。ところが、事実はいま説明したように違うんだ。事実と違うことを言っておるから、私は納得できないのですよ。おそらくこの話を聞いておる人も、納得できないと思うのです、そんないいかげんな説明じゃ……。
  205. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 過去の説明のしかたが、全部前年度との比較においてはこういう比較の方法をいままでとっておった。したがって、今度もそういう過去の比較のしかたによって比較しているということでございまして、この実態面をそういう点の掘り下げからの比較をしろというのでしたら、それはまた別の話になりますが、いままで申し上げておりました御説明は、過去の説明のしかた、過去の比較のしかたに全部よって今回も同じような比較のしかたをしておるということでございます。
  206. 北山愛郎

    ○北山委員 あなたはうそを言っておるのですよ。たとえばさっきの総合予算主義で、ことしの予算は、いままでは去年の当初予算に比較しておったのですが、今度は去年の補正予算に比較してみたり、やはり新機軸を出しておるじゃないですか。そうしておきながら過去の慣行に従ってやったなんて言ったって、私は納得できませんよ。問題は、ことしの財政というものの規模が、一体景気刺激型であるのか、抑制型であるのかという問題なんです。いままでのやり方をとってきましたから、これでかんべんしてください、そういうことじゃないのです。事実、刺激型であるのか、政府が言っておるように抑制型であるのかということをここで議論しておる。ところが、それを説明するに足るものがない。いままでの大蔵大臣その他の政府説明ではないのです。これは私だけが疑問を持つだけじゃなくて、だれでも持つのですよ。一般会計、特別会計を合わしただけの純計予算の歳出面を比べてみても、一六%と違うのです。地方財政計画を見ても、伸びが一七・五%なんです。いまの一般会計にしてもいま申し上げたとおり。私が申し上げたことは、あなた方が納得しておるじゃないですか。それならば、科学的に、合理的に考えた場合においては、一四・一先少なくとも伸びがある、伸びている、財政需要が一般会計だけでふえるんだ。どこに間違いがあるのです。それならば、政府が言っておるような経済成長率よりも下回っておるなんていうことは言えないわけなんですよ。
  207. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 北山委員の御指摘で、大体私は論点はそれでよろしいと思うのでございます。つまり、今年度内における政府の財貨サービス購入が昨年度からどれだけ伸びておるか、そうしてその伸び率が経済成長率を上回っておるか下回っておるか、結局、そういう数字をお出しになるために会計間の純計をお求めになっておられるわけであります。私は、そういう方法論でそれでよろしいのだと思いますが、実はその場合に、ただ純計……(「いや、方法論じゃない」と呼ぶ者あり)いや、ちょっとお待ちください。ただ重複を除いただけではほんとうはだめなんでありまして、その中からさらに経常の補助金であるとか、出資金であるとか、貸し付け金であるとか、個人への移転、国債費、そういうものを全部除きませんと政府の財貨サービス購入にならないわけであります。  そこで、私どもがこれはかなり正確にやっておるのでございますが、実はその五兆八千百八十五億円の中で実際に政府の財貨サービス購入に充てられるものは、いまのように出資金とか経常補助金とか除いてまいりますと二兆三百五十億円になるわけでございます。そういう計算を一つ一つ一般会計と、それから非企業会計、これはたとえば国立学校であるとか、厚生保険とか、港湾、治水などであります。それから企業会計、これは特別会計、あと政府関係、公団、電電公社などがございます。それを同じくやります。そうして中央の計を出しまして、今度は地方につきまして、同じような手法で普通会計と非企業会計、それから企業会計と出しまして地方の計を出します。そうして中央の計と地方の計を合わせましたものが一般に政府財貨サービス購入といわれます九兆五千五百億円であります。これは経常と資本の二つに御承知のように分かれるわけであります。ですから、この数字が前年度はたして何がしであったかということ、その比較をいたしますと、それが先ほど大蔵大臣の言っておられる一一一・七になるわけであります。ちなみに四十一年度対四十二年度はそれが一一五・五でございます。これはとことんまで申しますと、かなりむずかしい、電子計算機などを使って計算しておりますが、先ほど主計局長のお話しのありましたとおり、これだけの計算に到達したおのおのの分類はかなりはっきりいたしておりますから、これは御審議の参考に裸出をいたしてよろしいと思います。  繰り延べにつきましては、まず先ほど申しました四十三年度の政府の財貨サービス購入は二兆三百五十億円でありますが、その中で、経常支出が一兆四千百億円、資本支出が六千二百五十億円であります。そこへ四十三年度に四十二年度からずり込みました分、それが百五十億円になるわけでありますが、それを加算してございます。
  208. 北山愛郎

    ○北山委員 私は、電子計算機の向こうを張って議論するわけにはいかない。だけれども、ここで言っていることが、向こうの計算は表づらの、しかも私が先ほど言うような操作をしないような比較でもって一一・八%と出ておるわけです。それに基づいて、財貨サービスについても、当然一一・七%はそういう財政規模の見方からきているのだ、こういうふうに私ども考えざるを得ない。もしもそんなことを言うなら、たとえば国庫債務負担行為なんかはどうなんです。あれだってことし契約をするのですよ。防衛庁だけでも二千億あるじゃないですか。金は払わないかもしれないけれども、発注するのですよ。そういうものだとか、いろいろなものを入れなければ、実質上比較にならない。私の言っているのは、政府の言っているよりももっと実態に近い、予算面で言うならば。繰り越しの分を加除してそしてやった結果が一四・一%。それならば、私は、少なくともこういう、ただ前年度の予算額に比べて、補正後に比べて、一一・八%という比較じゃなくて、たとえば国立療養所の分はこうだからというような、そういう足すぐらいのことは、当然入れるべきですよ。去年の一般会計には入っておった。これをことしは特別会計に百四十一億はずしたでしょう。比較するなら、それをプラスしてやるのが当然じゃないですか。そんなこともしないで比較している。こんなようなことに基づいたことは私は納得できないということなんです。
  209. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 予算の財政規模の増大を押えるということが、即景気とどういう関係があるかということでございましたら、いろいろ問題があると思います。さっき言いましたように、景気抑制ということから考えましたら、この政府の財貨サービス購入を昨年と比べてことしは非常に縮めておるというところに、景気対策があるわけでございますが、予算の規模については、演説でも言いましたように、財政規模の増大を極力押えた、そうして今年度はこうなった。いままでの比較のしかたから見て、ここ十年来においては一番低い率の押え方をしている、こういうことを言っているのでございまして、その限りにおいては別にこれは間違いじゃ全然ございません。
  210. 北山愛郎

    ○北山委員 私はいままでの説明にさっぱり納得しないし、わからないのですよ。ですから、私は、私が質問するか、あるいはほかの者が質問するかもしれませんが、ともかくこの問題については納得できませんから、今後の質疑に保留しておきます。  まだ問題がたくさんありますので、先に進みますが、一つ大きな疑問点があるわけなんです。それは、ことしは、いまお話をしたように、政府は、景気を抑制しなければならぬ、国際収支を改善するのだ、これが一つの大きな命題だ、それから財政の硬直化を改善する、こういうことで、確かに私どもから考えても非常にむずかしい段階だと思うのです。そういう中で、防衛費と海外経済協力費だけは優先的にふえているのですね。特に防衛費は、なるほど一般会計の表づらでは三百五十億しかふえていません。しかし、国庫債務負担行為で千五百七十九億もふやしているのですね。これは四十三年度で発注するのですよ。もちろん、支払いは後年度でもまたがってやるのだけれども、これだけの発注をする。前年度その他のものを加えてみると、いわゆる防衛費関係で来年度以降、四十四年度以降で払わなければならぬもので注文する分というのが、継続費を入れますと二千七十五億もあるのですね。ですから、表づらで見ると防衛費はそれほどふえていないように見えるけれども、国庫債務負担行為という中で、ものすごいものをふやしているということです。ことしだけで新しくやったものは、いま申し上げたように、千五百七十九億もあるのです。その点、どうして一体防衛費をこんなに優先してふやさなければならぬのか、そんなに急がなければならぬのか。これは西ドイツでもあるいはイギリスでも財政の改革をやる。西ドイツの中期財政計画によると、九十三億マルクを人員から装備から削っているのです。イギリスはせんだって一月に発表したとおりです。アメリカに注文したF111の発注をキャンセルまでして、そして防衛費を削っている。もちろん、日本防衛費の規模は違いますよ。違いますが、経済の立て直しということが至上命令であるならば、防衛力整備計画というものはずらしていっていいのではないですか。私どもからいうならばやめてしまえということになるのだが、あなた方のほうからいえばこれはやらなければならぬというなら、こういう財政が苦しいときに、しかも国際収支が非常な危機に向かっているときに、どうして一体防衛費をこんなに膨大にふやすのですか。これを総理からひとつ……。
  211. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これはもう御承知のように、第三次防計画というものがございまして、私どもはこの計画に従って予算措置をとっているのでございますが、これを普通にした年次割りの予算配分ということにいたしますと、今年きめたよりはもっと大きい金額になろうと思います。しかし、今年度はそういういろいろな事情がございますので、大体年度割りの基準というようなものから見たら相当縮めた予算の配分になっていまして、特に防衛予算を計画に沿ってそのとおりにやったのではなくて、計画に沿ったよりもまだ相当削減しているという予算でございます。
  212. 北山愛郎

    ○北山委員 大蔵大臣はいつの間にか防衛庁長官になってしまった。普通の財政の時期じゃないのですよ。私どもからいえば、こんなものは全部ふやすなということになるのだけれども、しかし、政府与党の立場からいったって、こういうときに防衛費を——しかも、これは外貨が要るのでしょう。七千万ドルことしアメリカに兵器関係で払わなければならぬ。国際収支で外貨準備が非常にあぶない。これは先ほどのニュースか何かによりますと、APのロンドン電報では、日本の円の切り下げが近いというようなルーマ、うわさが流れているというAP電なんです。そういう、いまの日本の円というものを立て直さなければならぬ、真剣にやらなければならぬときに、防衛費だけが大手を振って、これでもまだ少ない、こんなばかなことを言う。一体佐藤総理大臣どう思いますか。国民はそれで納得しますか。
  213. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 予算編成にあたりまして、重点を置いた考え方をどこに置いたか。先ほど来いろいろ議論してございますように、抑制型の予算をつくっていく、そういうことを努力いたしたのであります。したがいまして、まずその規模自身としては、先ほど来の説明で御了解をいただいたと思いますが、要は、抑制型の予算ができた、そしてその中で、個々の項目について予算を計上いたしました場合に、できるだけ民生安定あるいは社会開発その他のものに重点を置く予算を組もう、そうしてただいまの防衛費などは、これはできるだけ年次計画とは別に今回の予算が編成された、こういうことでございまして、私は、ただいま言われるような優先的な計上はしておらないのであります。私は、しかし、これらの個々のものについて一々指図はいたしておりません。これは大蔵当局におきまして予算を編成したのでございまして、それらの点を御了承いただきたいと思います。
  214. 北山愛郎

    ○北山委員 それは総理大臣としておかしいと思うのですよ。これは予算編成のときに、総理大臣は、何でも箱根の国際会館の一千万円の調査費については指示を与えたらしい。そういうことについては指示を与えておる。しかし、千五百億の、約二千億の防衛費を、国庫債務負担行為は私の知らないことろだといったような、無責任な態度ですよ、それは。このことのために、酒、たばこを上げたり、国鉄運賃を上げたり、増税しているじゃないですか。そして防衛費だけはこういう優先をしているじゃないですか。それだから、今度の予算というのは戦後最悪の反動的な予算だ、私どもはそう言わざるを得ない。自然増収が九千何百億もあるという中で、実質減税をしない、むしろ増税じゃないですか、実質増税じゃないですか。そうしておいて、防衛費だけは国庫債務負担行為を入れて二千億もふやしている。そんな理屈が通りますか。それで優先的じゃない、それでもまだ足らない。  特に、私は、まだいろいろ問題がありますけれども、時間がありませんから先へ進みますが、ことしの防衛庁関係の国庫債務負担行為というのはことし始まった分ですね。これが千五百八十億五千六百七万二千円です。ところが、説明を見るというと、その中で四十三年度に予算に計上されている分があるらしい。それが九十三億六千四百九十二万三千円、これだけが四十三年度の予算に載っておるわけです。一方においては、国庫債務負担行為によって、これは予算とは別ですから、丁号の例の国庫債務負担行為でもって、いわゆる債務負担の権限というものを与える、同時に、その九十三億を重複して歳出の予算に載せている。ダブっておるじゃないですか。これは財政法違反じゃないですか。財政法の第十五条を見ますと、こう書いてある。国庫債務負担行為というのは、歳出予算の金額の外なんですよ。歳出予算にダブっちゃいかぬのです。歳出予算は支出権限を与える決定なんですね。ところが、債務負担行為は債務負担だけの権限を与える、これは別なんです。歳出の金額以外に債務負担行為をするということに財政法はなっているのだから、もしもこれを今年度の予算のとおりやりますと、九十三億幾らというものは余分に債務負担行為の権限を与えたことになっちゅう。こんなばかなことをやっている。これは財政法違反ですよ。二重なんだ。二重になっている。もちろん、これはことしだけじゃなくて、前からやっているようですが、こういう慣行こそやめなければならぬです。どうですか、大蔵大臣
  215. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 この点は主計局長から説明します。
  216. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 お答え申し上げます。少し専門的な財政法の解釈になりますので、私からお答え申し上げたいと存じます。  憲法の八十五条に、国が債務を負担する場合には国会の議決を経なければならぬと書いてございます。それを受けまして財政法の十五条で、そういう契約権限を与えるものといたしまして、法律、継続費、歳出予算及び国庫債務負担行為が列記してあるわけでございます。ところが、これらの契約権限は、それぞれ法形式が違いますけれども、その効果も違うのでございまして、歳出予算と申しますのは、単年度の契約権限を与えるのが原則になっております。法律あるいは継続費あるいは国庫債務負担行為というのは、年限に限界があるのもございますけれども、多年度にわたる契約権限を与えるものでございます。そこで、一つの契約を結びます場合に、その契約が分割できないとなりますというと、それが単年度に終わる契約であるか、あるいは多年度に及ぶ契約であるかによって、それぞれの形式を使い分けなければならぬわけでございます。そこで、たとえば防衛庁のようにナイキ、ホークの調達をするというふうに多年度の契約を結びますときには、これを国庫債務負担行為としてとるわけでございます。ただ、国庫債務負担行為としてとりましても、その場合に、たとえば前金を払うとかあるいは着手の金額を払うということで、その契約をいたしまする年度に支出をしなければならない全額が出てくるわけでございます。それが国庫債務負担行為とそれから歳出予算の重複する部分になっておるわけでございます。あそこの十五条に掲げております歳出予算というのは、これは契約権限として掲げてあるのでございますけれども、単年度の契約に限ってそうした歳出予算が契約権限を与えるものだ、こういうふうな趣旨で響いてあるわけでございます。そこで、カッコがしてありまして、四十三条の三によって繰り越しの承認を得られた場合には、歳出予算でも例外的に二カ年にわたる場合があるわけでございまして、そこで、カッコのない歳出予算の金額と書いてありますのは、単年度においてのみ契約権限を与える根拠として使われる歳出予算をさしておるわけでございます。そこで、契約を分割しまして、単年度に終わる契約と、それから多年度にわたる契約というふうに分割できる場合には、前者については歳出予算を契約権限として使い、後者について国庫債務負担行為を使うということも可能でございますけれども、一括した契約であって、しかもそれが多年度にわたる場合には、国庫債務負担行為をとらざるを得ない。ただ、その国庫債務負担行為を契約いたしまして履行する場合に、その年度に金を支出する必要があるという場合に、それが予算に組んであるというわけでありまして、予算に組んである金額というのは、契約権限として使われておるわけではなくて、支出権としては期待されておる。こういうふうな解釈になるわけでございます。この解釈は旧会計法時代からずっと伝統的にとっておりまして、契約が分割できない限りにおいては、そうした解釈によって国庫債務負担行為と歳出権とを重複させないと、実際に契約をいたす場合にはやっていけない、こういうことに相なっておるわけでございます。
  217. 北山愛郎

    ○北山委員 そうすると、いまのことばの中で、単年度の国庫債務負担行為というのはないのですか。
  218. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 単年度の契約の場合には、歳出予算というものが使われるわけでございます。歳出予算というのは、契約権限と支出権限と二つながら兼ね合わせておる法形式、こういうふうに考えております。したがって、単年度に終わる契約につきましては、国庫債務負担行為をとることはございません。
  219. 北山愛郎

    ○北山委員 事実上は少ないかもしれませんが、理論上はないとは言えない。当初予算のときには財源がなかった。ただ債務負担行為だけはやっておく。年度内に財源があれば、それで補正したらいいじゃないですか。そういうことがあり得るのです。だから、いまお話しのように、国庫債務負担行為というのは常に多年度でなければならぬという理由は、私は理論的におかしいと思う。  それからもう一つは、説明は契約上の問題、確かに契約上の技術上の問題もあるでしょう。しかし、予算形式からするならば、予算というものと国庫債務負担行為は別なんですよ。そういうふうに予算書に書いてあります。国庫債務負担行為は丁号のあれだと。しかも財政法では、それは歳出予算の金額の以外だというのだから、以外に歳出予算があるなら、債務負担行為なんか要らないのです、ほんとうは。その分は控除して、そのあとの分について債務負担行為のことをやるべきなのであって、いまやっているようにやりますと、事実上は、ことしの防衛費でいえば、九十三億という余分に権限を与えたことになる。歳出のほうで支出権限を与え、それから国庫債務負担行為のほうで債務負担行為の権限を与えているのです。ただ、実際はそのとおりに実行してこなかっただけの話であって、予算の形式上からするならば、こんな誤ったことは直すべきなんです。こういうことこそ誤った財政法違反の慣行なんだから……。あとの説明書きでどうやろうとも別ですよ。ただ、予算というあの骨ですね、骨というのは、歳出予算というものと別でなければならぬ、債務負担行為というのは。あと契約上これをついで合体してやったって、技術的にできないことはないですよ、めんどうくさいだけで。それを契約上の便宜から、予算の形式までその財政法違反のようなことをやっていることが問題なんです。どうですか。大蔵大臣、よく研究して、これをやってもらいたい。
  220. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 お答え申し上げます。  いま北山委員のおっしゃいましたように、国庫債務負担行為と歳出予算とをつぎまして、たとえば一つの工事、あるいは官庁が調達しようとする物品の契約をいたしますということになりますと、その契約が一本でありますというと、一本の契約の中の歳出予算に関する分が一年度限りで、あとは効力がなくなるということになるわけでございます。したがって、その分だけ分割できて、別個に契約して、しかもその契約が当該年度に終わるということであれば、それは可能なわけでございますけれども、あそこに組んでございますいろんな予算外契約というのは、すべてこれは多年度にわたる契約を一本としていたす場合でございますので、予算が組んでありましても、その契約の目的を達するためには、それがプラスして使えない、こういうかっこうになっておりまするから、決して弊害はないと、こう考えております。
  221. 北山愛郎

    ○北山委員 予算というのは、憲法上は議会が政府に対して権限を与える行為なんですね。それを契約上の都合で形式をいいかげんにされちゃ困るのです。あの予算形式から見るならば、明らかに九十三億というのは支出のところでも歳出権限、歳出金額に載っておる。しかも国庫債務負担行為のほうにも載っておる。ところが、ダブってやられたってこれはしかたがないということになるんです。ただ、事実上はやらなかっただけの話であって、予算の形式というものをしっかりしなければだめですよ。もしもそれが事実上困るというなら、財政法を変えたらいいですよ。そんないいかげんなことをやっておる。  しかも——局長いいですよ。まだ質問してないよ。それにこういうことがある。財政法の第二十八条に、いわゆる参考資料を出す。国庫債務負担行為については、そういうふうに多年度にわたるから、そこで、当該年度以降の支出予定額並びに数会計年度にわたる事業に伴うものについてはその全体の計画その他事業等の進捗状況等に関する調書を出せ。調書を出してないじゃないですか。財政法違反ですよ、この点から言っても。そして政府の出した資料というのは、例の二十八条のこの薄っぺらなやつです。これにこういうことがある。全くこれでもって国会が責任のある審議なんかできっこないですよ。いま、たとえばことし四十三年度で、器材整備で千三百十一億五千六百九十二万五千円、これだけの国庫債務負担行為が行なわれる。それにどんな説明があるかというと、この右のほうに備考欄みたいな摘要欄のところに「国庫の負担となる年度 昭和四十三年度以降五箇年度内」これだけの説明しかない。千三百十一億で何をやるのか。あるいは従来からの続いてきておる、たとえば四十二年度から続いてきておるやつで、航空機購入三百億、これの年次割りが出ておるんですね。飛行機を何台買うと書いてあるが、一体いままで何台買ったのか、計画がどのように進んでおるのか、その調書を出せと二十八条は命じておるじゃないですか。その調書を出しなさいよ。こんなもので、千三百億の金がたった一行ぐらいな説明でもって国会が通ると思うか。国民をばかにしておる。
  222. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 お答え申し上げます。  国が商行為をいたします場合にも、これはやはり一般の商慣習というものを尊重しなければならぬわけでございますから、したがって、できるだけ一般の常識、商慣行上、一括して契約をするという場合には、そうした多年度にわたる場合においては、多年度にわたる契約とその年度に支出しなければならぬ支出とを合わせるような技術をやはり財政制度上も考えませんというと、大きな経済の中で国が大きな需要者として働いておるわけでございますから、いま申し上げましたような解釈になるということを一つまず申し上げます。  それから、二十八条のこの調書でございますけれども、確かに非常に簡単であるということにつきましては、もっと個別にいろいろな説明を出せということでございますれば、詳細な御報告をしてもよかろうかと思うのでありますけれども、この国庫債務負担行為が実際に支出されますというと、その支出については、やはりまた一方に決算の説明というものも出るわけでございまして、これを全部一緒にいたしまして調書をつくりますというと、非常に膨大なものにもなりますので、従来そういう慣行になっておるということは、この際お断わり申し上げなければならぬかと思うのであります。
  223. 北山愛郎

    ○北山委員 局長の話では、決算があるから、予算のときにはざっとした説明で、そんなばかなことがあるか。それも程度がありますよ。当然調書を出せと書いてあるじゃないですか。それを、何も調書なしに、こんなたった二行、こんなもので、いなかの村の議会だって、こんな雑なことをしないですよ。われわれが納得すればいいというものじゃない。財政というものは、国民に対して公開をしなければならぬのです。われわれをただ答弁でいいかげんにごまかせばいいというものじゃないですよ。国会でやるということは、国民にその内容を明らかにし、国民の税金がこういう理由で、こういうことに使われる、それが財政民主主義じゃないですか。こんなものじゃがまんできない。   〔発言する者、離席する者あり〕
  224. 井出一太郎

    井出委員長 この際、大蔵大臣から答弁がありますから、議席にお着きください。
  225. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いま主計局長お答えしたことは、決算があるからと言ったわけではございませんで、一応の報告書は出ておりますが、これは従来の慣例によって行なっておったので、非常に簡単である。で、今後こういうものの報告についてこうせいというような御要望でございましたら、これは十分これから検討して、御要望に沿っていってよいと思います。
  226. 北山愛郎

    ○北山委員 今度の大蔵大臣の演説の中にも、従来の慣行をここで打破しなければならぬなんていうようなことを言っているでしょう。りっぱなことを言っているじゃないですか。そして今度は従来の慣行になる。何ですかこれは。支離滅裂じゃないですか。
  227. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それは率直に言いますと、従来の慣行によって、もし明細を出せという必要があって求められたときに出すというのがいままでの大体慣行だったそうで、これはなかなか膨大なものになりますので、そういうことをやっておったと思います。  それで、いま制度とかそういう慣行について、いわゆる財政の硬直化問題と関係しまして、財政制度審議会において、従来のそういうものについて、いま全部の総検討をしておるというときでございますので、改善すべきものは、今後この検討を経て私ども改善したいと思っております。
  228. 北山愛郎

    ○北山委員 先ほどの主計局長の言ったことは、ついうっかりと腹の中が出ているのですよ。一体、役所の官僚諸君はそういう心がけだから、当然国会で正常な正しい審議をするのに必要な参考資料も出さないでおいて、そして請求があればしぶしぶ出すという程度でやっている。そういう心がけがよくないのです。それをまた、政府が黙ってそのままほったらかしておくということがいけないのです。そういう悪い慣行なんです。自分たちに都合のいい慣行だけは残しておいて、そして財政硬直化だとか、都合の悪いものは慣行を直す、そんなかってなことを言ったってだめですよ。一体国会を何と心得えておるのですか。総理大臣憲法にある財政民主化の原則をどう考えるのですか。われわれがなぜ論議しているかといえば、国民の税金をこういうふうに使うのだというためにこうやってみんな審議しているのじゃないですか。市町村の議会へ行ってごらんなさい、そんな雑な審議はしないですよ。もっと積算の基礎を出しますよ。国の模範でなければならぬ国会が、こんないいかげんな一行や二行で千何百億も、さっとこれでけっこうですなんというような審議ではお恥ずかしいですよ。そういうことがいままでまかり通ってきたことが間違いなんだ。だからこれは、慣行でも何でもない、財政法違反をやっているわけですよ。だから国庫債務負担行為について、多年度にわたる全体の計画並びにその進行状況の調書を出しなさい。これは防衛費だけじゃないですよ。一般会計、特別会計、たくさんあるわけだ。これみんな同じようなことでやっているのですよ。こんな薄っぺらな説明でやっているわけです。これは国会をばかにし、国民をばかにしているやり方なんだ。
  229. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 さっき申しましたように、こういろ問題は従来の慣行でも改善すべきものは十分検討したいと思います。
  230. 北山愛郎

    ○北山委員 慣行で許されないのですよ、これは法律にあるのだから。財政法の二十八条でそういう調書を出しなさいと書いてある。ちゃんと明記されているのですよ。ほんとうはもっともっと親切な調書を出さなければならないのですよ。これは国民に対する義務ですよ。それを、法律で規定したものすらも出さない。もっともっと親切に、その計算の基礎やなんかわかるように資料を出すべきですよ。少なくともこの法律のことを実行してもらう、法律にあるのだから。国庫債務負担行為の多年度の全体計画、事業等の進捗状況の調書を出しなさい。
  231. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 さっき申しましたように、従来の慣行によって一応の報告書は出ておりますが、きわめて簡単だというところに問題がございますので、これをおっしゃられるとおりに出しますと、なかなか膨大な資料でございますが、これは十分私のほうで考えます。
  232. 北山愛郎

    ○北山委員 とにかく法律にきめてあることは、慣行として許されないのですよ。きめている以外の慣行なら、不適正なものはまあ今回はということはある。しかし、法律できめた違法のことを認められますか。しかも必要がないのじゃなくて必要なのです。
  233. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 できるだけ詳細な調書を出すことにいたします。
  234. 北山愛郎

    ○北山委員 いまは国庫債務負担行為の八号のことだけ言ったのですが、継続費についても同じことが言える。同じ規定が九号にあるのですね。ですから、同じように継続費についても出してもらう。これを要求いたします。  それから、もう一つの問題、肝心の問題が片づいていないわけですよ。その国庫債務負担行為というものを、何か契約上の便宜を主計局長は言っているのですよ。そんなことで予算というものの形式が黙って左右されるというのは、これは私どもは納得できない。もし、従来そういう必要があるというならば、財政法なり何なりを直したらいいのですよ。そうして、予算の総則なり何なりにそういうことを書いたらいいですよ。それをそのままの形式でやってきたのだ。そんなことは許されませんよ。国会が議決をする予算並びに国庫債務負担行為その他の議決というものは、それだけの権限を政府に与えるこれは非常に重要な決定なんですよ。
  235. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いま申しましたように、できるだけ詳しいものを出します。
  236. 北山愛郎

    ○北山委員 これはやっぱり審議のために必要だから出せと言うのですよ。これは当然いま出てなければならぬものなんですよ。いつまでに出しますか。
  237. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 全体のものは相当時間がかかりますが、もし、たとえば防衛費に関するものというようなことでございましたら、一日で整備して政府のほうからそのつど御説明するというようなことで、順次必要に応じての説明なら早くできますが、全体をまとめて、こまかいものというと若干の時間がかかろうと思います。ですから、御審議には差しつかえないように、必要の官庁からこの説明をするということでしたら、一日で説明できます。
  238. 北山愛郎

    ○北山委員 これはいま必要なんですね。私どもが実を言うと、防衛庁にいろいろ内容を聞いてみた。聞かなければ説明しないのですからね。当然財政法に書いてある出すべき資料が、こちらから一々要求したり聞かなければ——当然これは出すべきものなんですよ、言わなくたって。これだけの金額をこういうものに使うというような、器材整備千億なんという、そんなばかなことは恥ずかしくて国会ではできませんよ。当然出すべきものを横着して出さないんだ。だから私は、少なくとも防衛費については月曜までに出してもらいたい。その他のものも大急ぎで出してもらいたい、こういうことを要求いたします。いいですか。
  239. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ほかのは必要に応じて出しますが、とりあえず防衛費は月曜日までに出します。
  240. 北山愛郎

    ○北山委員 国庫債務負担行為は確かに膨大ではあるのです、項目は。一般会計、特別会計みなありますからね。それをひとつ大急ぎで出してもらう。  それから、肝心の点が実は解決ついていないのですよ、その国庫債務負担行為の。いまのやつは調書の提出のことであって、国庫債務負担行為というものは、これは予算基礎なんですからね。今度の審議の一番中心の問題なんです。予算書でいえば、一番前のほうのやつですよ。そこに歳出、それから国庫債務負担行為、繰り越し明許というように書いてあるでしょう。その問題なんですから、いまお話ししたように、国庫債務負担行為の中に九十三億幾らというのは、さらに歳出に再計上をされておるんだから、これはダブって余分の権限を与える結果になる、予算書を見ると。これは是正してもらわなければならない。
  241. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 お答え申し上げます。  その点につきましては、私先ほど北山委員に申し上げたと思うのでございますけれども、財政法十五条に書いてございますあそこの歳出予算の金額というのは、単年度契約に関する契約権限を与えるものでございます。したがって、その契約が多年度にわたる国庫債務負担行為でとりました契約というものは、これは多年度の契約権限でなければ使えないわけでございますから、したがってその一部が歳出予算として出ておりまして重複しておりましても、それはその契約で期待しておる契約権限を提供するものではないわけでございます。なぜそれを組んでおるかと申しますと、先ほど申しましたように、多年度にわたる契約でございましても、当該年度に前金を払うとか、あるいは着手金を払うということで、支出権限として必要となるから予算を組んでおるわけでございます。したがって、それは重複し、あるいはそれがプラスアルファになるということでは決してございません。この解釈は、私は財政法の解釈としては、いままでだれも疑った者はないと思うのでございます。
  242. 北山愛郎

    ○北山委員 歳出予算が単年度であるぐらいはあたりまえのことです、言わなくたって。しかし、国庫債務負担行為だって、これは単年度の場合だってないことはない、先ほど言ったとおり、理論上は。多年度の場合が多いから国庫債務負担行為をやるのだけれども、例外的には当年度であり得るのだ。当初予算では、いろいろな都合で歳出予算を組まないで、ただ債務負担行為だけを議決することはあり得るのです。何を言っておるのですか。そういうことは、前の制度で言えば、予算外義務負担といっていたのです。予算とは別なんですよ。その中に予算が含まれておるなんということはないのです、いまの制度の十五条でも何も。このことばのとおり読んで、予算の金額のほかと書いてあるじゃありませんか。だから、予算予算であり、国庫債務負担行為は負担行為として、いわゆる債務負担権限というものを与える、歳出については支出権限を与える。これは別個にしなければダブってしまうのです。あるいは契約上の便宜だとか、そういうことは事務上のことであって、もしそういうことはどうしても都合が悪いとなったら、そこで財政法を当然直すべきなんです。しかし、いまの予算の制度からするならば、そっちのほうが先行して、こんなダブったような権限は与えられませんよ。これが予算の骨格ですよ。どうですか、大蔵大臣
  243. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 しかし、私は、この解釈は、主計局長の大体言うとおりじゃないかと思います。
  244. 北山愛郎

    ○北山委員 こまかいことじゃないのですよ。予算の各項目といいますか、要素なんです。肝心の基本の要素なんです。歳出予算、国庫債務負担行為、繰り越し明許というようにちゃんと書いてある。基本のことなんですから、大蔵大臣、これがわからない、そうでしょう、主計局長の言ったとおりでしょうなんという、実に自信のない答弁じゃ困りますよ。だから、もしこの実態がわからなければ、私は、政府として、大蔵大臣その他よく検討して、あらためて政府の見解を出してもらいたい。
  245. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それでは主計局長から答えます。
  246. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 いま北山委員の御質問は、よく私も意のあるところはわかったのでございますけれども、重複しておるところが……(発言する者あり)ちょっとお聞きを願いたいのですが、重複しておるところがおかしいとおっしゃる場合には、歳出予算と国庫債務負担行為が同じ契約権限のベースで重複する場合には、確かにおっしゃるようにおかしいかと思うのでございます。そこで、私が申し上げますように、多年度契約の中でその年度に支出しなければならぬものが歳出予算にも上がっておるという場合に、これは私は重複をしないと思うのです。おっしゃるように、一年度限りの国庫債務負担行為もあるじゃないか、その場合に歳出予算とそれが重複しておれば、これは確かにおっしゃるようにおかしいのでありますけれども、そういうものは、現在のところ、予算の中で一年度限りの国庫債務負担行為と歳出予算を重複させておるものはございません。したがって、その点の重複性を北山委員が御指摘になっておるということがわかりましたので、私の説明を補足いたす次第でございます。
  247. 北山愛郎

    ○北山委員 実は、予算面だけから見れば重複してないのですよ。ただし、そのとおり決定をすれば、政府説明よりは、防衛費で言えば九十三億が余分に権限が与えられる結果になるわけだ、財政法のとおり読めば。そこが問題なんです。説明予算形式とが矛盾しているということなんです。だから重大問題なんです。
  248. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 私も、先ほどから何度も御説明を申し上げておりますけれども説明がへたなものですから、なかなか御納得いただけなくて残念なんでございますけれども、私が申し上げますように、多年度の契約と歳出予算が重複しております場合には、権限をプラスアルファ加えるものではないのです。というのは、その契約としては多年度の契約をねらっておるわけですから、歳出予算がありましても、それは一年度限りの契約にしか使えないわけですから、その契約をさらにプラスアルファ行使するその権限にはなり得ないのでございます。ただ、したがって十五条に書いてありまする歳出予算とそれから国庫債務負担行為とが重複をして権限を余分に与えるという危険性のある場合は、一年度限りの国庫債務負担行為と一年度限りの歳出予算とが重複する場合に限るわけですけれども、そういうふうな計上のしかたはいたしておりませんと、こういうことを先ほどから申し上げたわけでございます。
  249. 北山愛郎

    ○北山委員 私は予算基本的な形式を言っておるわけです。だから、いまの予算の、あのとおりの決定をすれば、政府がこの調書等で説明されているものとは違って、それよりも九十三億オーバーした権限を与える結果になるというわけです。(「ならぬ」と呼ぶ者あり)どうしてならぬ。それはそのような措置をしているからなんです。そういうふうなこれは重複だと考えておるからそのように執行しているだけであって、予算面からすれば、権限をよけい与えているから、使われたって実際は文句の言いようがないのですよ。その予算の中に説明がないのだ、予算そのものには。   〔「それで答弁できなければ休憩だよ」「統一見解」と呼び、その他発言する者多し〕
  250. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いろいろ専門的なことでございますので、はっきりするために政府のほうで文書で書いて月曜日にお出しいたします。
  251. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 先ほど私が不用意に決算の説明を引用いたしましたことは、取り消させていただきます。
  252. 北山愛郎

    ○北山委員 それでは、この問題については、政府から見解が示されるそうでありますから、その見解が出ましてからあらためてまたお尋ねをすることにいたします。  ただし、この問題は、皆さんもお聞きになってわかるように、ほんとうに重要なことが事務当局の都合によって適当にされているということなんです。だから、これは野党であると与党であるとを問わず、国会の問題なんです。政府国会の問題で、しかも政府としてはしっかりそのところを見て、当然措置すべきもの、国会に出すべきもの、国民の前に示すべきものを当然出す、出させるとか、そういうふうな措置をしなければ、こういう問題がたくさん起こるわけです。  私は、ほんとう言うと、その他いろいろなことを関連して申し上げたいのですけれども、時間も、この問題でつかえたもんですから、ほかのたくさんの問題が——私の予定しておりましたのは、財政の硬直化の問題、それからいわゆる総合予算主義の問題、たくさん問題があるわけですが、時間が過ぎておりますので、それをかいつまんで、ひとつ総合予算主義のことで伺います。  ことしは補正を組まない、なるべく組まないということを言っている。ことに問題は、米価については、年度内に改定がありましても、補正は組まない方針だと大蔵大臣が言っているのです。こんなことが一体できるのですか。  その前に、私は、新農林大臣に伺っておきたいことは、この前の倉石さんのときに米審の委員が任命されたわけです。で、農林大臣は、前者の倉石さんの方針を踏襲すると、こう言っているけれども、倉石路線を踏襲するというのは、墓穴への道を踏襲すると同じことです。すべからく新農林大臣は、新たなる構想をもってこの米価の問題、食管の問題に取っ組んでもらいたいと私は思うのです。特に、まずお聞きをしたいのは、農林大臣としては、いまの食管の原則ですね、食管の第三条、第四条の原則というものを堅持するという考え方であるのかどうか、これをお聞きしたいのです。これは三条、四条というのは、生産者米価については「生産費及物価其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シ米穀ノ再生産ヲ確保スルコトヲ旨トシテ」定める、いわゆる再生産を補償するような原則、これでもってきめるということ。それから消費者米価については「家計費及物価其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シ消費者ノ家計ヲ安定化シムルコトヲ旨トシテ」定める、この二つの原則、これを農林大臣は堅持するという気持ちであるかどうか、これをまず明確にしていただきたい。
  253. 西村直己

    西村国務大臣 食管制度は国民経済の中でもきわめて大事な問題でありまして、生産者にとっても消費者にとりましても与える影響は大きい。それだけに論議の対象になり、巷間にもいろいろ論議は出ております。しかし私といたしましては、食管制度の根幹というものは守ってまいりたい、こういう考え方でございます。
  254. 北山愛郎

    ○北山委員 根幹というのは、いまの第三条、第四条の原則と考えていいですか。  あわせて、時間の都合もありますので、倉石前農林大臣の際に任命されましたあの米審ですね、中立とかなんとかと言っているけれども、中立米審というのは私はよくわからぬのですが、あの米価審議会というものを再検討する考えはないか。私はこの際思い切って再検討すべきだと思うのです。そういう考えがないかどうか、あわせてお答えを願いたい。
  255. 西村直己

    西村国務大臣 米審の委員の構成についてお尋ねがございましたが、過去の経験にかんがみまして、今日までああいう発令をされておる。したがいまして、これに対して御異論のあることにつきましては、私、任命早々でございますが、いろいろ耳にはいたしております。特に生産者の意向というものをどういうふうに米価に反映すべきか、また消費者の意向ももちろんであります。したがいまして、これらはこの委員会におきましてもすでにもうお取り上げになり、委員長の手元で、党と党の間でも十分検討しなければならぬ。したがって、私も党の機関とも相談し、政府全体とも相談して、できるだけ御回答ができるようにひとつ急いでみたい、こういう考えで今日はおる次第であります。
  256. 北山愛郎

    ○北山委員 いまの米審の問題は、当然生産者代表、消費者代表を参加させないような米価審議会というものはないのですよ、国会議員はともかくとして。生産者代表、消費者代表を入れないようなそういう米価審議会は認められないし、農業団体もそのことは全面的な反対をしておるわけであります。その点は十分考えて、そしてこの米審のほかに米価懇談会みたいなものをつくったって、これは屋上屋ですよ。問題を混乱させるだけですよ。思い切って新しい構想で、やはり生産者、消費者の意見を十分取り入れるという形で私はこの米審の構想を考えるべきだ、こう思うのですが、この際総理からこれについての見解をお聞きしたい。
  257. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま農林大臣が詳しく所見を御説明しております。これは就任早々ではありますが、私も十分農林大臣に注意をして、そしてただいまのような意見をまとめたものでございますから、その農林大臣答弁で御了承いただきたいと思います。
  258. 北山愛郎

    ○北山委員 時間がありませんから集中的に申し上げますと、私は食管というものを見直してもらいたいと思うのです。いろいろ政府の仕事もあるけれども、ただ赤字が出ているから悪いんだ、二千億も税金を使っているから悪いんだ、そういう考え方を改めてもらいたいと思う。農業政策の中でも食管ほど役に立っておるものはないと思うのです。これがあるために日本の米の生産が確保されているのです。米というのは、印刷機で印刷すれば出るというものじゃないです。なるほど今度の予算を見ても、一万円札、五千円札たくさん刷るらしいですけれども、一万円札は十三円一銭でできる。五千円札は十二円十六銭、千円札は六円二十二銭。刷れば出るんですよ。出るけれども、米というものは一粒一粒が一年かからなければできないのですよ。しかも、いま農民が働く条件というのは悪いのです。いわゆる三ちゃん農業、お年寄りと婦人方で米の生産に従事しているわけです。それで日本の米の生産というは確保されているのです。それの大黒柱になっているのが食管制度なんです。ですから、二千億、三千億は安いものですよ。むしろ農林予算六千億の中でそれ以外の、よその予算のほうが問題があるくらいなものです。たとえばビート砂糖をやってみては失敗して、何十億の損をしているでしょう。そういうふうに予算のむだづかいをしている。それから見るならば、なるほど食管会計では赤字はあるけれども、これほど国民経済と国民の生活にとって大事な、効果をあげているものはないと私は思う。しかも米の需給、食糧の需給というのは重大な問題ですよ。  私は、この際ちょっと聞いておきたいのですが、いろいろ日本の周辺も騒がしいし、国内では地震その他の災害も起きている。いざというときに戦車や大砲があったって何にもならぬですよ。食糧ですよ。だから、災害基本法というものが今度はできたんだけれども一体万一の場合の食糧の備蓄あるいは衣料品の備蓄、生活必需品の備蓄を政府がやっていますか。それを答、えていただきたい。
  259. 田中龍夫

    田中国務大臣 災害対策基本法によりまして本部を設け、また各町村にも各種の計画をいたしておる次第でございまして、ただいまの米穀の具体的な備蓄の問題につきましては、担当の者からお答えいたさせます。(「担当の者はいないよ」と呼ぶ者あり)——あまりこまかいことまで申し上げたくございませんでしたのであれでございますが、災害対策基本法の防災計画と並びましてこの対策本部を設け、さらにまた農林関係におきましても、農村施設の災害あるいは天災の融資、そういうふうないろいろな措置をとっておる次第でございます。  備蓄の具体的な計数、あるいはまたどういうふうなことになっておりますかは、私詳細は存じませんので、これは御遠慮申し上げます。
  260. 北山愛郎

    ○北山委員 私は答弁が不十分だとは思いません。しかし、政府のそういう意味の防災計画が不十分なんです。というか、ほとんど考えていないんじゃないかと私は思うのです。それならば、食糧にしろ、単に米といわず、乾パンでも何でも、ある程度のものはやはり用意しておくべきなんです。薬だってそうです。衣料品だってそうですよ。そうしてこれを配置をする。そしてそういう計画を持っていなければならぬ。そういう配慮がない。そういう頭がやはり米についての——まあ安いものがあれば外国から買ってもいいやというような安易な考え方になるわけです。  私は、時間が経過していますから、もう締めくくりますけれども、最後に、食管については慎重に考えてもらいたいと思う。そんな中立委員だの何だのといって、金の計算のようなものでこの食糧問題というものは考えてもらっちゃ困る。だから、やはりいま食管が堅持しているあの二つの原則ですね、家計を守るということと再生産を確保するということ、こういう原則に従って、やはり赤字が出ても、これだけの役に立った赤字だという気持ちでこの食管問題に取っ組んでもらわないといけない。いろいろこれを論議すれば時間がかかりますから、締めくくりにそういうことを要望して、これに対する総理答弁を求めたいと思う。
  261. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま北山君からの御意見しごくもっともであります。ただいま私も十分拝聴して、今後の施策の上にそれを取り入れるようにくふうする、こういうことを申し上げてお答えといたします。
  262. 井出一太郎

    井出委員長 次に、田中武夫君。
  263. 田中武夫

    田中(武)委員 私は、世界経済に関連する諸問題について、総理以下にお尋ねいたしたいのでありますけれども、率直にひとつお答えを願いたい。私も審議には協力したいと思いますので、あまりだらだらとしたり、あるいは歯にきぬを着せるような答弁でなく、ほんとうの腹からの答弁をお願いいたします。  そこで、まずお伺いいたしますが、ここ十六日間は、いわゆる倉石暴言によって国会空白状態を続けました。その間、総理自民党というからの中で、あるいは佐藤体制のからの中で決断を渋ったわけであります。その間に、国内外の情勢は大きく流動しております。加藤委員は国内の問題を若干、災害等を取り上げられました。そこで私は、国際間の流動の問題について、この十六日間の激動を政府はどのように受けとめ、あるいは総理はどのように把握をしておられますか、お伺いいたします。
  264. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 率直にお答えいたしますが、ただいまこの十六日間にどんなことが起きたか、こういうことですが、お尋ねの、何かもっと具体的にここが聞きたいということをおっしゃっていただくと、私たいへんお答えがしやすいのであります。よろしくお願いいたします。
  265. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは具体的にお伺いいたします。  まず、ベトナムですが、解放戦線のいわゆる攻撃によって大きく戦局が変わっております。そのことによって、アメリカは最初予定してなかった一万五百人という軍隊をあわてて送るという、あるいはまた、きのう、きょうの新聞を見ますと、なお十万人ぐらいは増兵するかもしれないというようなこともいわれておる。一方、ドル防衛の問題とは、これは大きく食い違ってくるわけなんです。言うならば、ジョンソンはアメリカの国内においてハト派からももちろんのこと、タカ派からも見放された、追い詰められた、先ほど総理は、きょうの夕刊の早刷りのを出されたようですが、私は、それは追い詰められたジョンソンの一つのあらわれじゃないかと思うのです。そういうような中にあって、なお総理はジョンソンとの約束を守り、そうしていままでの態度をくずさずにドル防衛あるいはベトナムに対して協力を続けていかれるのかどうか。さらに朝鮮におきましては、三十八度線を境に相当険悪な空気が出ております。そこで韓国は、もしも北鮮側からの攻撃等々があるとするならば、日本に対して派兵を要求する、こういうことを韓国はいっております。こういうような点、どのように受けとめて、どのように対処しようと考えておられますか。
  266. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お尋ねになりました点が具体的でありますので、私もお答えがしやすいのであります。  御承知のように、いまのベトナムのいわゆるテト攻撃と申しますか、旧正月を機会に全面蜂起した、この状態はたいへん心配をいたしたのであります。しかし、この軍事的な成果はベトコン側にあがらないで、順次これが鎮静を見た。まあ大体私どもが予想したような結果になりました。しかし、第二波があり、またその次にも第三波が行なわれようとしておる。またこれを機会に北爆自身もたいへん激化してまいりました。エンタープライズは、日本海から南に配置される、そこらにもやはり爆撃を一そう激しいものにしているものがあろうかと思いますし、あるいはB52の問題もありますし、私は、一時鎮静するかと思われただけに、ただいまの状態はよほど混乱を増しておる、かように思います。またアメリカ自身も増兵する、こういう状態であります。したがいましてその点では私どももいかがなるかとたいへん憂慮しておるのでございますが、しかし在外公館などからこちらにいろいろ情報を伝えております。私がそれらのものを総合してみますると、ベトナムにおいての一面の戦闘激化があるにかかわらず、国連をはじめとしての和平への努力が次々に展開されておる。したがいましてこういうものがあるいは一つのきっかけになりまして、この激化した戦いがあるいは急速に和平への道をたどる、こういうこともありはしないか。あるいはこれはただ単なるまぼろしかもわかりませんが、私どももそこに一つの期待を持つわけでありまして、こういう意味からも日本の和平交渉、こういうものも一そう和平への努力——交渉とは申しませんが、努力をこういう際にこそすべきじゃないか、かように思いまして、在外使臣等を通じてただいまそういう事態の把握をすると同時に、和平への実りがあるようにただいま努力をしておる次第でございます。  また、ただいまお話しになりました三十八度線の韓国の問題でありますが、これは一時日本海におきましてたいへん急を伝えるような情勢でございました。しかしただいま申し上げますように、エンタープライズがすでにベトナム海域に移ったということ、あるいはまたその他の航空母艦なども次々に休養するとかあるいは修理に入るとか等で、またアメリカの配備も減少しておりますが、同時にまたソ連の軍艦などもその基地に順次帰っておるようでありまして、一時のような緊張感はだんだん薄らいだ、私はかように実は思っておるわけでありまして、その点ではほっとしておる次第であります。しかしながら最終的な結果を生じておらないのでありますから、ただいまのアメリカと北鮮との交渉、さらに韓国との交渉などが円満に成果をあげて、そうしてこの問題が最終的解決を見る、これを心から実は望んでおるような次第であります。アメリカの立場についていろいろの批判がございますが、その批判は二の次にいたしまして、いずれにしてもただいまの戦争状態が一日も早く終息すること、それに私どもは全力を注ぐべきじゃないか、かように思っております。  私は昨年十月アメリカを訪問いたしまして、ジョンソンと意見を交換いたしましたが、その意見交換のおもなるものは、和平、これが一日も早く招来されること、そういう意味の和平、これが招来されることについての日本のお手伝いというか、それは日本立場においてそういう点を努力するという約束でございますので、これは今日の状況におきましてもその点では変わらない、かように御了承いただきます。
  267. 田中武夫

    田中(武)委員 この十六日の間に英国も重大な発表をしておると思うのです。七一年から、東南アジアから兵を撤退さす。それと同時に、核を持たない、核兵器を持たない。言うならば、アメリカと同じアングロサクソンの連携の上にある英国ですらそのような声明をしておるわけなのです。私は、先ほどちょっと触れましたが、ジョンソンは国内においてハト派あるいはタカ派からも追い詰められてきておる。言うならば、アメリカは政治的に軍事的にベトナムの戦況の変化によってその威信を失墜しておる。しかも予定していなかった一万五百人という軍隊を急速派遣する。さらに続いて徴兵を強化して増兵をはかる。これはおそらくドル防衛とは両立しないのであります。ますますドルの危機を深めると思います。したがって、経済的にもアメリカはその威信を失墜しつつあります。この状態に対して、政府総理はどう受け取め、どのように事態の把握をしておられるのか、こう伺っておるわけであります。
  268. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまベトナム戦争が激化している、一面でドル防衛という問題が起きていることは御指摘のとおりであります。この二つがからみ合っている、お互いに影響している、かように思える節がないでもございません。   〔委員長退席、小川(半)委員長代理着席〕 しかし、その二つのものはそれぞれの目的を持っておるのでありますから、ベトナム戦争をやめたらドル防衛ができる、あるいはドル防衛のためにベトナム戦争をやめろとか、こういうものでは必ずしもないだろうと私は思います。しかし、このベトナムに戦費を特に使っておる、その出費は一体どの程度だ、あるいは十五億ドル前後ではないか、かようにいわれておりますから、ただいまのドル防衛に対しまして、これは非常に大きな要素であることは先ほどもお答えしたとおりであります。しかし、ただいまドル防衛という観点だけからベトナム問題を云々するわけにも実はいかないのがアメリカの実情ではないだろうかと思います。  また、ジョンソン大統領の置かれておる立場についての田中君の御批判でございますけれども、私は、友邦の大統領としてたいへん苦しい立場にあるだろうという、それについては私は同情しておりますけれども、ただいまのような批判は差し控えさしていただきます。
  269. 田中武夫

    田中(武)委員 言うならば、アメリカの六八年はドル防衛とベトナムで年があけたと思います。そうして元日早々ジョンソン大統領は、ドル防衛についての五項目、そして三十億ドルの国際収支の改善、それを受けてロストウが日本へ参りまして、総理その他に会いました。この点につきましても、あとでまたホノルルの問題につきましてお伺いいたしますが、あまりお隠しにならずにほんとうのことを言っていただきたいと思うのです。ロストウに会われたときに、一体どのような話が出て、総理のほうからはどのような答えをし、何か注文をつけられたことがありますか。
  270. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ロストウが正月早々日本を訪問いたしましたのは、ジョンソン大統領がアメリカで発言し、新しいドル防衛対策を立てた。その点の理解を深める、また日本でこういう点について理解して、また日本自身も協力できることがあればと、こういうことで実は来たのだと思います。しかし、具体的に何々をしてくれろと、こういうような注文は実はございませんでした。しかし私は、このロストウの説明によりまして、いろいろアメリカが苦しんでおる、たとえば、ただいま言われるようなベトナムの戦争を片一方で遂行しながら、他の方法でドルの問題を解決しようとしている、そういう認識十分理解ができたといいますか、この説明でよくわかった、私は、まあ賛成するしないは別として、そういう状態にアメリカがあることはわかりました。そうして同時にまた、当時問題になりましたのが、ボーダータックス等の問題もロストウからいろいろ説明をしております。したがって、アメリカが何らかの処置をとるのではないか、かように思いましたが、これは実はたいへんなことだ、かようなボーダータックス類似の、あるいは課徴金その他を設けるというようなことがあれば、それこそアメリカのかねての自由貿易あるいはケネディラウンド等々の一連の政策から逆行するものだ、こういうことで、その点では私は率直に私ども考えを披露したわけであります。したがいまして、このロストウは一体どういうっもりで来たのか、こういうことを、一部で心配いたしますように、私自身も、ただアメリカがとったその態度について、日本のわれわれが理解するためにわざわざ特使を派遣してくれた、かように考えますと、たいへん丁寧な処置であった、かように実は思うのでありまして、私はその点をその当時率直に、ただいま私がこの席で申しますような私の所感を表明したはずでございます。したがいまして、いろいろうわきされておりますが、私はロストウと特に特別な問題で約束したこともございません。ただ、アメリカ自身が採用した政策というものについて深い理解ができた、かように思っております。
  271. 田中武夫

    田中(武)委員 そのときに五つのいわゆるドル防衛の項目について説明をし、日本に対して三億ドルの協力を求められた、これはもう新聞その他常識になっておるのです。具体的なそんな話は出なかったのですか。
  272. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 簡単に答えますが、ございません。
  273. 田中武夫

    田中(武)委員 その後、一月の二十三日からホノルルで日米貿易経済合同委員会の小委員会が開かれました。このことにつきましても前の加藤委員質問いたしました。事の性質上、重複する点もございますが、重ねてお伺いいたしますが、本会議あるいは先ほどの御答弁等を聞いておりますと、これは特定のことをきめたのではなしに、お互い認識を深めるためのフリートーキングをしたにすぎないのだ、こう言われておりますが、しかしそのホノルル会議によって日本が三億何千万ドルかの責任を負うた、詳しく何で幾ら、何で幾らということも、新聞にも出ておりますが、私も持っております。これは何も日本の新聞だけじゃない、世界の新聞が書いておるんですよ。それをただ口先だけでごまかそうとせられるのは、私は、総理として十分に国民に答えておる態度ではないと思うのです。もしも総理なり大蔵大臣の言われているようなことであるとするならば、ここへ出席した人を呼んできなさい。しかも予備会談においては外務省あるいは通産省から行った人をのけて、大蔵省から行った人とそれからアメリカの財務省の人とが秘密会談をやっておる。外務省あるいは通産省の人さえ入れなかったのですよ。それでお互い認識を深めるという作業であるならば、なぜ外務省あるいは通産省から行った人も全部でフリートーキングをしないのか。お隠しにならずにこっくり言いなざい。いかがです。
  274. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 大蔵大臣からお答えするほうがあるいは適当かと思いますが、ただいまの続きでございますから、私、便宜上お答えいたします。  ホノルルの会談は、どうしてあれが計画されたか。これは申すまでもなく、昨年日米閣僚の経済合同委員会がございました。その際に、閣僚同士がこうして話しすることはたいへん両国のために有効だけれども、もう一つ下の事務当局の会議が必要だ。そうして常時連絡を緊密にすることが望ましい、こういう話がありまして、両国の大臣諸公が、今度はひとつそれでは事務当局の会議も持とうではないか、こういうのが昨年の日米経済合同委員会の結果でございます。そうして開かれたのがただいまの問題になっておるホノルルの会議であります。したがいまして、この成立の経過からお考えになると、ただいまのような特殊なものでないことはおわかりだと思います。これをしも強弁しておると言われれば、私は、これは何をか申しません。これは強弁ではございません。当時もうすでに、事務レベルの話をすることがぜひ必要だ、かようにいわれております。したがって、その状態でホノルルの会議が持たれたということであります。また、お考えになりましても、事務当局の強力な官僚組織とは申しましても、二国間の取りきめの問題について、これは事務当局のレベルでものごとがきまるはずがございません。こういうことで、閣僚自身が無視されるようなものではない。だから、これらのことをお考えになって、十分御理解をいただきたいと思います。ことに、午前中大蔵大臣からお答えをいたしましたように、お互いに国際収支の赤字の国が相互で話し合って、一体どういう協力ができるか、やっぱり国際収支の黒字の国をこの会合、この話の中に持ち込んで、そうして協力させなければ十分の効果があがらないじゃないか、かような事務当局の情勢分析をしたというお話がございました。そのとおりだと思っております。この点はいまの大臣レベルでなくて、その下のレベルでございますし、そうしてこれが別にロストウが来た結果開かれたものでないこと、これはひとつ御理解をいただきたいと思います。だから、ただいま申し上げるように、それぞれの目的は別でございますから、これを一緒に混淆しないようにお願いします。
  275. 田中武夫

    田中(武)委員 ドル危機といいますかドル不安は、何もことしの一月一日突如として起こったんじゃないのです。もう十年も前から続いておるわけです。なるほどホノルル会議は昨年の閣僚会議に続いて行なわれたものであることは理解いたしております。しかし、その間の事情の変更もあるだろうし、そういう言い方をされるなら、むしろ去年の閣僚会議のときに何らかの宿題を負って帰った。それを事務的に話し合うのがホノルル会議であったとも考えられるわけです。  それじゃ具体的に伺いますが、たとえばユーロダラーの取り入れ、これが二億四千万ドル、このように新聞は報じております。それを裏づけるように、その後ユーロダラーの取り入れが盛んに行なわれておる。それからドル起債をマルク起債へかえることが五千万ドル、こういうふうに報道されておる。それを裏書きするように、ホノルル会議が終わった五日後にマルク起債をやったじゃないですか。あるいは武器の購入とか短期預金を長期にかえるとかということが約一千万ドルとか、ちゃんと各紙が全部報道しておるのですよ。しかもその後の動きはそれを裏書きするようなことばかりじゃないですか。それがホノルル会議とは無関係であったとおっしゃるのですか。   〔小川(半)委員長代理退席、委員長着席〕
  276. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのお話でお答えいたしますが、ホノルル会議が何らかドル防衛のための直接の結論でも出すかのような感じでお尋ねになるから、そういうものでないということを申し上げたのであります。しかし昨年末、りっぱな、強力なる国際通貨、そういうものを考えようじゃないか、これはIMFを中心にして一つの動きがあり、これがすでにリオにおける各国の決議ともなり、またそれに引き続いての欧州における会合等も行なわれておる。一連のものが、ポンド危機をめぐり、さらにそれに関連するドルの防衛という、そういう立場から国際通貨の問題が議題になっておること、これはもうお説のとおりであります。しかしてこのことは、いわゆるポンド危機といわれておる、そのときから発生したものではなくて、その以前からこういう問題をめぐって国際的に一つの態度がきめられつつあった、かように理解いただきたいのであります。したがいまして、私どもが日米間でいろいろ話をいたしますと、必ず問題はそういうところへいく、あるいは欧州の会議を持てば、やはりドルを強化する、あるいはポンドはどうする、こういうような問題が必ず議論になるわけであります。したがって自由主義陣営の国際間においての昨年の国際金融で問題になりますのは、ただいまのような新しい制度、それを一体どうしたらいいか、こういうことであったと思います。これはその会議に直接出ております大蔵大臣から詳しく説明をしていただく、これをお聞き取りいただきたいと思います。
  277. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いま総理が言われたとおりでございまして、御承知のように、マルク債の発行は昨日いたしました。ちょうどハワイ会談があったあとでございますので、おっしゃられるように、あそこで話がきまったからやったというふうにお考えになっているようでございますが、そうじゅございませんで、あれは昨年の夏、私がIMFの総会に出席したときにドイツの関係者と相談をして、今日まで準備しておって、ようやくこれが実現したということでございます。結局、日本は金融先をアメリカ一本とするのでなくて、これを将来欧州に転換していく必要があるといろことを私どもは早くからわれわれの方針としてとっておりましたので、そういう傾向がいまいろいろ出てまいっておりますが、ハワイ会談のときに、そこで相談したからこういうふうなことをしているというのではございませんで、当然こういう問題も会談のときには議題として出ましたので、日本はいまこういうことを考えておるんだこいうことは申しました。それは結局、やはり米国の負担を軽くする一つのことじゃないか、結果としてはそうなるんじゃないかというようなことは、日本としてもいろいろお話ししたことはございますが、その会談によって日本がユーロダラー何億ドルどう転換するとかなんとか、そういう約束をしたとか、そういうような性質の会談では絶対ございませんでした。
  278. 田中武夫

    田中(武)委員 そういう御答弁を受けると、もう話の根本は去年の九月のワシントン会議できまって、そしてそれを事務レベルでどのように実施するかこいうことをホノルルできめたんだという新聞その他の報道が当たっておるということでしょう。そうじゃないですか。
  279. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 そこまで御質問があるのでしたらお答えいたしますが、もっと前からドイツ債の交渉を始めておりまして、去年リオへ行ったときに、前からいわれておる問題については大体情勢はこうなってきたんだということから、いろいろお話をしたのでございまして、すでにその前から話はしてあったのでございますから、この間の日米会談からこの問題が始まったというようなことは絶対ございません。
  280. 田中武夫

    田中(武)委員 たとえば一億マルクの起債を発行した、これなんかは前から話があったとしても、具体的に、いつ、どのように、どういうかっこうでやるか、こういうことはホノルルで話があったんでしょう。隠す必要ないじゃないですか。だから金利の不利をも、あえて一億マルクの起債を発行したんじゃないのですか。こんなことで時間をとりたくないのですが、率直に言ってくださいよ。
  281. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ドイツ債の発行は、率直に言ってハワイ会談とは全く無関係でございます。
  282. 田中武夫

    田中(武)委員 たとえばホノルル会議で、アメリカは日本に対してガリオア、エロアの三億六千万ドルですか、言うことを聞かなければこれを要求するとか、繰り上げ請求するとか、あるいは金利平衡税で日本免除になっている、これが一億ドルほどあるそうですか、それをとるとか、こういうことでおどかされたのと違うのですか。あなた出ていないのだから、出ていた人に一ぺんよく聞いてごらんなさいよ。どうです。
  283. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 会談の状態は逐一報告を受けておりますので、私は全部存じておりますが、いまおっしゃられたようなことは全くございません。
  284. 田中武夫

    田中(武)委員 全くなかった、これはほんとうに国民の前にはっきり言われるわけですね。  それでは、やはり同じく言われておる中に、武器の購入が一千万ドルですか、これは防衛庁のほうで調べてみますと、本年度が六百万ドルを購入したのでしょう。そして四十三年度で七千万ドルの購入を考えておるといわれておる。ちょうど一千万ドル多いじゃありませんか。それともこの七千万ドルをこえてまで、一千万ドルを買わされることになっておるのですか。防衛庁長官一体何をどれだけ買うのですか。七千万ドルには……。
  285. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 お答え申し上げます。  本年度は六千万ドルでございます。明年度は七千万ドルでございます。これはすべて既定計画どおりでございまして、別段ホノルル会議の関係でふえたわけではござ、ません。一千万ドルは、既定計画で七千万ドルということに相なっておるわけでございます。  それから、総額はおそらく四億ドルぐらいになるでございましょうが、これも昨年の当初と一昨年の暮れに国防会議並びに閣議決定によって策定されました二兆三千四百億円、上下幅二百五十億円、そのうちの武器の調達が一兆円でございまするが、そのうち約千五百億円、これが米国からの買い入れでございまして、既定計画どおりでございます。内容は主としてナイキ、ホーク、あるいはその他のものでございましても部品等で米国に発注しなければならないもの、これだけでございます。
  286. 田中武夫

    田中(武)委員 次期の主力ジェット戦闘機FXは、三次防では二機買うという契約でしたね。二機ですか、二機を上回って買うのですか。
  287. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 国内で生産いたしたい、こういうことでございまして、さしあたり二機ということは、五年以内に考えてはおりまするが、どういう形にいたしますか、すべて国内で生産いたしたい。しかしながら、ライセンス生産でございまして、向こうの特許、向こうのノーハウ等を買い込みまして、わが国で国産をいたしたい、こういうわけでございます。
  288. 田中武夫

    田中(武)委員 防衛庁長官、このFXの購入をめぐって、すでに商社あたり、あるいは向こうから直接販売組当者といいますか、猛烈な競争をしておるということが伝えられておるのですよ。二機だけ買ってあと国産化する、間違いありませんか。私が聞いているところでは、六十機買う、うち二機をことし三次防中で買う。ところが、それを繰り上げるということで、売り込みが盛んに行なわれておるでしょう。否定しますか。また、防衛庁も、その調査をするために、早目にことしの六月ごろにでも、人を派遣しようということを考えておるということもいわれておるのですが、その点どうなんですか。
  289. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 二機を購入するというのではございませんで、ライセンス生産で五年以内に、昭和四十六年度の終わりまでに、すなわち暦年で申せば昭和四十七年三月三十一日までに二機を取得いたしたい。つまり国産で生産して、取得をするというのは防衛庁で取得するわけでございます。それから量産に入るのはその次の関係でございまして、全額は、三次防の範囲内ではきわめて小額でございます。  それから、田中委員の御質問のうちの、次期戦闘機をめぐって各種の運動が行なわれておるということは、私は全然存じません。ただ、しかしながら、不正なることは断じて許さない、そしてまた国民の期待に沿う要撃能力を持っておるものを選ぶ、これだけのことは明瞭に申し上げ得ます。
  290. 田中武夫

    田中(武)委員 長官、あなたは知らないだけなんです。あるいは知っておって知らないと言っておるのかもわからぬ。現にそういう猛烈な売り込み運動が続けられておるということは、これはみな国民知っていますよ。そして、二機をライセンスによって買う。  そういうことであるなら、では七千万ドルの本年度の購入の武器は、一体何が幾ら、何が幾らなんです。
  291. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 七千万ドルの内容につきましては、政府委員、装備局長をして答弁せしめます。
  292. 蒲谷友芳

    ○蒲谷政府委員 ただいまの、四十二年度の六千万ドルと四十三年度の七千万ドルでございますけれども、概算の計算をしておりますが、大体が、航空機で四十二年度には千三百万ドルを買っておりますが、来年度は104等の生産が終わりますので、約二百万ドルぐらい減るのではないかと考えております。あと、艦艇、弾薬につきましては、大体平年ベースと同じものでございます。ふえますのは、ナイキ、ホークで、大体千三百万ドルぐらいふえるのではないか。それが航空機の購入と差し引きで、大体一千万ドルぐらいふえるという計算でございます。
  293. 田中武夫

    田中(武)委員 詳しいことはまたあとで専門家がお伺いすると思いますが、先ほど来の答弁で大蔵大臣は、アメリカから買う武器は、日本でできないもの、それを買うのだ、こうおっしゃいましたね。すべてそうなんですか。あなた先ほどそういう答弁をしたでしょう。
  294. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私の言いましたのは、三次防でアメリカから買うべきものと国産で調達すべきものと、もう計画ではっきり数字まできまっておりますので、この計画に沿った執行をするということを言ったわけでございます。
  295. 田中武夫

    田中(武)委員 アメリカから買うべきものは日本でできないもの、それを買うのは当然だというような先ほど答弁じゃなかったですか。そうでしょう。だから、もう一度、必ずそうですかと尋ねておるのですよ。
  296. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 防衛計画の中で、アメリカから調達すべきものと国産で調達すべきものをきめまして、もっぱらアメリカから買うべきものは国産でできないものということでございます。
  297. 田中武夫

    田中(武)委員 だから、結局は日本にできないものを買うのだ、そういうことなんですね。
  298. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 大体そうでございます。当面できないから買っても、国産が進んでいけば、先にいっては買わないというような年次計画を立てて、購入数量とか購入金額をきめておる、これは計画でございます。
  299. 田中武夫

    田中(武)委員 武器購入なんかあまり深く入ると、われわれが買うことを認めたように思いますが、そうじゃないのですがね。国内でできているものは、あるいはできるものは、絶対買わぬですね。
  300. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 お答え申し上げます。  この七千万ドルの内容等はいま装備局長お答え申し上げましたが、国産でできないものあるいは国産で著しく不利なるもの、ケース・バイ・ケースできめますけれども、大体において日本の技術も非常に進歩いたしておりますから、全然不可能というわけではございませんが、著しく不利であるとか、あるいは不可能とかいうものでございます。たとえばナイキのほうで言えば、ミサイルは日本で国産いたします。しかしながらレーダーあるいはランチャー、これはFMSで外国から購入いたします。ホークは全部ライセンスで日本で国産するわけでございます。すなわちレーダーから始まりましてミサイルに至るまで日本で国産いたしますが、しかしライセンス料を払うというわけで、そのライセンス料が七千万ドルの中に入っておるわけでございます。
  301. 田中武夫

    田中(武)委員 大蔵大臣防衛庁長官とは、ちょっと答えのニュアンスが違っておったのですね。大蔵大臣は絶対に日本にできないものを買う、防衛庁長官はそれにプラス著しく不利なもの、これをあげたのですが、これは担当の防衛庁長官の答えのほうが正しいと見ていいですね。
  302. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 長官の答弁のほうが正しいと思います。   〔発言する者あり〕
  303. 田中武夫

    田中(武)委員 いまあちらで大原君も言っていますが、昔の答弁とは違う。しかしこのことばかりをやっておれませんので、あとで専門家も質問をする予定ですから、次にいきたいと思いますが、私は決算委員を兼ねております。したがって、ここで約束せられたことと違うことが行なわれた場合には、先ほどのだれかの答弁じゃありませんが、決算でやりましょう。  次に、総理にお伺いします。先ほど来、加藤理事質問に対して、中期債は買いません、こういう答弁をされたと思います。前の臨時国会では、成田、北山両委員質問に対して、当面は買わない、国際収支の関係がいまのような場合じゃ買わない、しかし改善せられたら買うというようなニュアンスのある答弁をなされておりますが、その点あらためてお伺いいたします。
  304. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 国際収支がよほど改善されて、そういう際に持つというのは、これは別に問題はないだろうと思います。ただいまの状態、とにかく二十億ドルを下回るというそういう状況、また先行きもたいへん暗い先行き、流動性を欠くような処置はとらない、かように御理解いただきます。
  305. 田中武夫

    田中(武)委員 国際収支が改善せられたら、こういうことですが、じゃ改善せられるという時期といいますか、あるいはそのときの国際収支の実態はどのような面をお考えになっていますか。
  306. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 相当私どもの保有外貨がふえるということを一応想像しております。したがってただいまの状態では、その時期がこの一、二年の間に来ると、かように思いません。
  307. 田中武夫

    田中(武)委員 宮澤長官にお伺いしますが、先日の経済演説の中で、来年度の国際収支の見通しは三億五千ドルの赤、ところが本年は一月の末で五億七千万ドルの赤になっておるのですね。巷間伝えられるところでは七億ドルの赤字を出すであろうと言われておる。それを改善するためには輸出を伸ばさなければならない、こういう演説をしておられる。輸出の問題についてはあとで伺いますが、国際収支の見通しはいまどのように持っておられますか。それから、この国際収支が黒になるのは一体いつごろなのか、どういう見通しを持っておられますか。
  308. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 昨年の暮れから正月にかけまして、明年度の経済の見通しをいたしました。そのときにただいま仰せられましたような数字を出したわけであります。それで、この一月、二月、三月、私どもの願っておるように経済が動き出すかどうかということをかなり関心を持って見ておりますが、まだ徴候とまでは申し上げませんが、ややそういう空気が出てきたように思っております。したがって、ます明年度一五%程度の輸出の増をするということは、努力は要りますが、私は不可能ではない、こう考えております。他方で資本収支につきましては、今年に入りましてから多少、私どもが思っておりましたよりも調子がいいと申しますか、資本の流入が多少よけいにあるように思っております。
  309. 田中武夫

    田中(武)委員 しかし、結局はユーロダラーを取り入れたとかなんとかいうことで、借金によってつじつまを合わしているじゃないですか。借金政策によってつじつまを合わして、やや改善せられた、こう言っておられるのと違いますか。借りた金は払わねばいかぬのですよ。
  310. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ですから、いわゆる貿易収支につきましては努力は要りますが、私どもの思っておることは達成が不可能ではない。そのほかに資本収支についてそういうことが起こっておる。これは借金であろうとおっしゃれば、まさしくそうでございます。
  311. 田中武夫

    田中(武)委員 貿易の問題は後ほど伺います。  そこで、国際収支はそういろ状態である。では現在の外貨準備はどの程度でありますか。十九億七千二百万ドルというようにいって、二十億ドルだと言われておったのが二十億を切っておる、こう言われておりますが、間違いありませんか。
  312. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 一月末十九億七千二百万ドルでございます。
  313. 田中武夫

    田中(武)委員 大蔵大臣、先ほどの加藤委員質問でも、あるいはいままでも、外貨準備についてはその内容を明らかにしない、こういうことになっておりますということですが、どこでなったのです。そういう禁止をするところの法律がありますか。いつからそうしたのです。従来からの慣例によるというだけじゃ困るのです。内容を明らかにしたらどこが困るのです。その根拠はどうです。
  314. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これはやはり国益に関する問題で、世界各国とも、この内容を明らかにしないというのが慣例になっております。たとえばいま言ったような預金のようなものにしましても、証券類にしましても、各国がそれを幾ら持っておるという内訳というものは、これが公表されますといろんなところに影響を持つものでございますので、各国とも、国益というところからこれを発表しないのが通例でございます。
  315. 田中武夫

    田中(武)委員 たとえばこの委員会を秘密会議にすれば言われますか。秘密会議にすれば。どうです。
  316. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 秘密会議にしても、これは差し控えるべき性質のものだと思います。   〔「そのとおり」と呼ぶ者あり〕
  317. 田中武夫

    田中(武)委員 そのとおりとおっしゃっていますが、どうも私は納得がいかないのです。  それでは、外貨準備を構成する中において内容、明らかにしてもいいものと悪いのにひとつ振り分けてみたいと思います。  金保有はいかがです。
  318. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これはよろしゅうございます。
  319. 田中武夫

    田中(武)委員 次に、IMFの出資は、これもいいですね。
  320. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これはもうよろしゅうございます。
  321. 田中武夫

    田中(武)委員 そういたしますと、結局各種債券購入残、その内容、そういう点が言えないわけですか。  もう一つ、これは私もよくわからぬのですが、大蔵大臣勘定というのがあるはずですね。MOFとかいうのですね。これは秘密事項ですか。政府手持ちの外貨を大蔵大臣の名で外国の銀行に預金する、この内容も明らかにできないのですか。
  322. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 たとえばTBで運営している本のが幾らあるとか、預金がどれくらいあるとか、こういうことは言いますが、預金の内容、どこに幾ら預金してあるというような内容は、従来から言わないことになっております。
  323. 田中武夫

    田中(武)委員 それじゃ、どこに幾らは聞きません。いわゆるMOF勘定、大蔵大臣勘定は幾らありますか。銀行が二つでも三つでもよろしい。一々聞きません。幾らありますか。
  324. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 大体、金を除いた残り十四億三千万ドルの、証券で運営するのと預金で運営しているのが、大体半々と思っていただけば間違いございません。
  325. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると、七億ドル、七億ドルと見ていいのですね。大体そう見ていいですね。
  326. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 大体そうでございます。
  327. 田中武夫

    田中(武)委員 その七億ドルのうちで、あるいはMOF勘定を入れると十四億のうちで、すぐに動かせるところのいわゆる流動性のあるもの、長期債等々でいわゆる硬直しているもの、この割合はどうです。
  328. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 財務省証券で運営しているものは、これは証券類は売ろうと思えばすぐ売れるものでございますから、これは大体流動性が一番高いと思っていいと思います。
  329. 田中武夫

    田中(武)委員 だから、それじゃ流動性のある外貨はいま幾らありますか。そうしてアメリカなりに凍結せられておると言うと言い過ぎかもしれませんが、現に動かされないものと分けてください。
  330. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 先ほど加藤さんに答弁したときのように、預金はなるたけ満期が来るのを平準化して、いつでも流動性を持たせられるように気をつけて運営しておりますので、この預金のうちの半分は流動性を持ったもの、半年以内に半分は満期が来ますので、これが半分、それからTBのほうは、これは全額即時引き出せるものでございますから、これは全部流動性を持ったものということは言えようと思います。
  331. 田中武夫

    田中(武)委員 わかっておるのですよ。しかし、国益に反するというなら、私も伏せておきましょう。しかしながら、ここで私が言いたいことは、外貨の天井が低い。しかもその中において、流動性を持たないものが多い。したがって、財政硬直といわれておるけれども、外貨準備においても硬直しておる、このことだけは言えると思いますが、承認しますか。
  332. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いま言いましたように、流動性を持ったものを計算しますと、ほとんど大半流動性を持っておるということが言えようと思いますので、そういう意味におきましては、日本準備通貨が決して硬直しておるというふうには考えません。
  333. 田中武夫

    田中(武)委員 どうもあまりはっきりおっしゃらないようですが、これ以上追及すると国益に反するということになると、私も考えねばならない。  そこで、総理にお伺いいたしますが、総理、外貨準備というものは、大体私は基準というものがあるだろうと思うのです。よくいわれておるのは、輸入総額の三分の一くらいは必要だ、あるいは少なくとも四分の一は必要だといわれている。現在の日本の輸入総額は、百二十億ドル近い。そうすると、少なくとも三十億ドルは必要である。しかもそのうち少なくとも三分の一以上は命保有でなくちゃいけない、これが常識だろうと思うのです。日本の外貨準備内における金保有の率は、後進国以下なんです。先進国は大体七五%まで持っておるところがある。後進国でも三〇%は持っておるはずですよ。日本は一六・五%じゃありませんか。もっとあるか。大体そんなものでしょう。一八%と言うが、これは天井が下がったからちょっと率がふえておるのですよ。一八%でもよろしい。後進国が三〇%ですからね、それ以下じゃないですか。それに対して、総理一体こういう状態がいいと思われるのか。  それから、これはちょっとむずかしいことだと思うのですが、外貨準備の下限、これ以上下がれば、円の為替相場が維持できないという下限はどこか。上限と下限はどうお考えになっておりますか。及びその中における金保有の比率——いつか総理はやはり三十億ドルは必要だ、こういうようなことを言われたと思うのです。大蔵大臣でなくて総理考え方を伺います。
  334. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 外貨保有というのは、これはたいへんむずかしい。適当だと申しましても、なかなかふやすことが困難であります。ただいま言われますように、日本の場合にどの程度か。多ければ多いほどいいという、それだけでなしに、大体どんなところだろう。それはいま田中君が言われるように、三十億ドル程度は持ちたいような気がします。これはもうそのとおりでいいと思います。  また、金の保有の問題についてですが、これはちょっと考え方——私は必ずしも三分の一持たなければならぬ、かように思わない。申すまでもなく、通貨の信用というものは、これは金保有というだけできまるわけでもありませんし、その国の生産力というか、そういうものが大きく働く、かように私考えておりますので、ただいま金保有一体幾らがいいか、これは学者によっていろいろな議論をすると思います。だから、いまお尋ねになりますように、下限として、その下限は一体幾らかというような説も、必ず出ると思います。しかし、私はもっと通貨の信用力というものはやはりその国の持つ生産力じゃないか、かように思いますので、金だけで云々することはどうかと思います。ちょっと専門になりますから、その辺の議論は私ちょっと困るように思います。
  335. 田中武夫

    田中(武)委員 金万能だという、金本位制に帰れというドゴールの説は、私はとらないとしても、現在の少なくとも資本主義社会における国際間の最終的決済は、やはり金なんですよ。最終的には金ですよ。もし金を否定せられるならば、IMFはドルと金に結ばれた体制なんですよ。ここで私はあえて宮澤さんに議論をふっかけたりあるいはことばじりをとらえようとは思いませんが、わが党八木委員の本会議における質問に対して、あなたお答えになったですね。より社会主義経済といいますか、より統制経済を考えておられる八木さんとしては、金に執着せられるとはどうかと思います、こういう意味の発言をしておられます。もちろんわれわれは社会主義社会になった場合には、金についてはそんなに重くは考えません。しかし、現在ではやはり金の果たす役割りというものは、相当あると思うのです。もし金を否定せられるなら、IMF体制をあなたは否定せられたことになりますが、どうです。ドルと金に足場を置いたところの体制じゃないですか。もっと言うならば、IMF体制ができたのは、かつてアメリカが膨大化といいますか、世界にぐんと突き出たところの三百億ドルという金を持っておった。そして戦後西欧諸国等々もドル不足をしておった。そこでドルとこれを中心に金に結ぶるところの体制として、もっと強く言うなら、アメリカの世界経済支配の一つの体制として、IMFができたんじゃないですか。あなたがもし金を否定し、あるいは総理が金についてそんなに関心を持っておられないということは、IMF四条の否定なんですよ。そうじゃないですか。いかがです。総理と両方だ。
  336. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 どうも現在比較的貧乏でございますから、その負け惜しみに理屈を言っているようにお聞きになるのかもしれませんが、そうじゃありませんで、私は、やはり世界の経済の成長というものが新産金の増加量に制約されるなどということは、おくれた考えだと思います。IMFができたのはいまおっしゃったようなことでありましょうが、私の言っていることが間違っていない証拠には、やはりCRUといったようなものをみんなして考えなければならなくなっているわけでありますから、急に明日金から離脱できるとは思いませんけれども、しかし、人間の知恵というのは、やはりそういう信用を創造していくというほうに向かっていると思っております。
  337. 田中武夫

    田中(武)委員 いわゆる経済の伸びあるいは貿易の伸びと新産金とが歩調が合わない、だからそれにかわる信用ということで、信用通貨ということが論議せられておることも知っております。しかし、現在すぐにそろいうことはできないわけたんです。たとえばIMFの危機だともいわれておる。そこで考えたのが特別引き出し権、SDRなんです。これにいたしましても、やはり最終的には金とつながっておるじゃないですか。したがって、現体制において金を否定することは私はできないと思います。将来命にかわるといいますか、新しい通貨制度ということは、論議になりましょう。しかし、八木質問に対してばかにしたような答弁は何ですか。ここで取り消せとかなんとか言いません。しかし、あなた少しは経済理論にたけておるかと思って、あまり高姿勢な答弁をするものじゃないですよ。ひとつじっくりと四つに組んでみましょうか。どうです。  総理はどうなんです。IMF体制を否定するのか。SDRが発足するとしても、一、二年先ですよ。しかも、それは各国に金の価格を維持するという義務を負わしておるじゃないですか。そういう点はいかがなんです。現体制を否定せられないんでしょう。そうしたら、金についてもっと考えるべきですよ。どうです。
  338. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この点では、田中君と意見が同じようです。私は金を否定はしておりません。金万能だとは言わない。したがって、ただいま言われるように、IMF体制、昨年日本もこの決議に参加し、これを推進しておるのでございます。したがいまして、ただいま極端な議論はいたさない。日本がただいま三億五千万ドル程度か、わずかな金を持っておるということは、これはたいへん恥ずかしい次第であります。
  339. 田中武夫

    田中(武)委員 それじゃ、宮澤さんひとつ。あなたの答弁いかんによって、私はこれからの質問態度を変えます。
  340. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 まあ確かに、あしたから金と別れられるわけではございません。世界のたくさんの人がまだ金を信じておりますし、またそういう御質問でもございますから、それはもう少しあったほうがよろしいと思います。
  341. 田中武夫

    田中(武)委員 そういたしますと、八木委員に対する答弁は、取り消せとは言いません、少し勇み足であったことは認めますね。
  342. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それはいわゆるポンドの危機とかドルの危機とかいうことが、ことにドルの危機の場合、私は、少し誇張してわが国考えられておって、それでわが国の通貨体制があぶないというようなことを国民があまり思われることは、その事実に合っていない、そういうことは、国民各位があまりむやみに御心配になる必要はないのだということを実は申したかったのでありまして、多少表現において失礼に当たったとすれば、私は八木委員に申しわけなく思っています。けれども、私の本意はそういう意味でございます。
  343. 田中武夫

    田中(武)委員 その点はそのくらいにしておきますが、だからこそ、日本は金の密輸天国になっているのですよ。最近、金は金でも、違う金さんのことは別として、社会面にも出ておるのは、汚職と金の密輸が一番多いんですよ。これに対してどのように考えておられるのか。  そこで、まず法務大臣にお伺いいたしますが、去年の予算委員会において、当時の田中法務大臣との間に、私は一つの約束をしました。すなわち、密輸金は刑法十九条によって没収する、それを刑事訴訟法四百何条ですか、見たらわかりますが、それによって検事が処分するとなっておる。ところが、一面貴金属特別会計があって、政府払い下げの貴金属はすべて特別会計を通るとなっておる。ところが、競売をしたんですね。そこへ、そのやり方は不法ではないけれども、妥当を欠いたら改めますと、田中さんは言ったわけですよ。ところが、去年の秋に大阪で、やはり同じ競売にしていますね。そういう事実について、前任の法務大臣が約束をしたことを、後任の法務大臣、いかが考えますか。
  344. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えを申し上げます。  裁判の結果、没収の言い渡しがありました金地金は、これまでお述べになりましたように、検察庁で一般競争入札の方法によって売却の手続をとったのであります。御承知のように、近時非常に密輸の数量もふえてまいりましたし、また、前の国会田中議員からいろいろ御指摘もございましたので、その取り扱いにつきましては、大蔵当局といろいろと打ち合わせをいたしまして、今後におきましては、お述べになりました貴金属の特別会計に売り渡すというような方法にいたしたいと考えておりまして、近く所要の訓令を全国の各検察庁に出したいと考えて、改めたいと考えております。御了承を願いたいと思います。
  345. 田中武夫

    田中(武)委員 これはあなたの責任か、前任者の法学博士の責任か知りませんが、現に田中法務大臣は、改めますと一年前に約束したのですよ。それをまだ改めずに、去年の秋やっておるのですよ。そしていま法務大臣は、そのような訓令を近く出しますと言っておるのでしょう。総理、どうなんです。予算委員会で閣僚が約束したことが、一年間行なわれていないのですよ。それについてどう思います。現に約束したことをまだやっていないのですよ。そして違法の処分をやっておるのですよ。違法ですよ。政府の貴金属特別会計法第一条をごらんなさい。いや、法律のことは私はあなたより詳しいから、法律論でこれからやろうというならそれでいきますが、きょうはそういうことはできるだけ突かぬつもりだったんですよ。貴金属特別会計法第一条を見てごらんなさい。
  346. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまそういう事実を指摘されまして、私、総理といたしまして、よくこの事態を調べまして、また約束したことがあり、またそうすべきが法の命ずるところであれば、これは実施しなければならぬと思いますから、さらに十分督励してみたいと思います。
  347. 田中武夫

    田中(武)委員 調べなくても、もうやっておるのですよ。やっちゃっておるのです。だから、いまさら調査も何もないのです。これは私これ以上こだわりません。金についてはいろいろと聞きたい点がありますが、時間の関係もあるし、去年も金だけやったんで、あれは金よりほか知らぬかと思われますからやりませんが、閣僚が約束したことが一年間も放置せられたということについては、総理、十分考えてもらわなければいけないと思います。そういう理論でいくならば、先ほど来北山委員質問によっていろいろと出てきたように、幾らここで閣僚が約束してもできない。できなければ、それは決算に行ってやってくださいというようなことじゃ、通らぬですよ。総理、もう一ぺんはっきりと言ってください。
  348. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 よくわかりました。
  349. 田中武夫

    田中(武)委員 そこで、ついでに大蔵大臣にお伺いしておきますが、いま日本は国際的に債権国なんですか、債務国なんですか。これは債権債務がとんとんだというような説もあるし、一たん債務国になったが、また債権国になるだろうということもあるが、外資法の四条には、定期的にその状態について閣議に報告しなければいかぬということになっておりますね。報告していますか、閣議へ。一番最近に報告をせられました報告の資料を出していただきたい。
  350. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これは先ほどの問題と同じように、英国、米国、この二つの国は発表しておりますが、そのほかの世界の各国は、やはりいろいろ国益の問題とからんで、この問題は公表しないのが例になっておる。御了承願います。
  351. 田中武夫

    田中(武)委員 外資法四条の一項ではっきりしているんですよ。ここではともかく、それはあとで議論しましょう。閣議に報告することになっているでしょう、定期的に。そのあなたが覚えがないということは、結局していないということなんですよ。法律違反なんです。
  352. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 閣議には提出しております。
  353. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣、どうです、その法律には閣議に報告することになっておるんですよ。ところが、ほかの大臣どうです、みんなお聞きになりましたか。一人ずつ順に聞きましょうか。大蔵大臣が閣議で報告せんならぬことを一々官僚に聞かなければならぬというのは、これは情けないね。私は最初に言ったように、ごねるなら幾らでもごねますよ。しかし、協力態度で進むと言っておるんだ。このかっこうは、北山さんのときにも醜態を演じたが、これは何です。
  354. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いま聞いて答えたというわけじゃございませんで、閣議の報告はちゃんとしております。
  355. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると、この四条二項による報告は年に一回するのですか、二回するのですか、四半期ごとにするのですか、いかがです。
  356. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 年一回ということになっております。
  357. 田中武夫

    田中(武)委員 何月に行ないます。——大蔵大臣、笑いごとじゃないですよ。先ほど来北山委員質問でも、法律に従った手続なり法をとってないことが明らかになったんですよ。それは憲法でもくそ食らえという閣僚もおるのですから、法律はくそ食らえという人がおったってふしぎではないと思うけれども、いいですか、外資法の四条二項にちゃんと書いてあるんですよ。それを年に一回だ、それも政府委員から聞いていつやるともわからぬ、これは法律どおりやっていないという証拠ですよ。総理、どうです。あなた聞かれたことありますか。
  358. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 各年末現在を五月ごろに報告するということになっております。
  359. 田中武夫

    田中(武)委員 これはある銀行がやるとか、それが経済誌に出るとかということで、国際的バランスというのが出ておるんですよ。じゃ年末にやるとするならば、一番近いのは昨年末にやった。内容は発表できないということ、これも私は了承できないけれども、一応それは一歩譲ったとして、債権国だったのか、債務国だったのか、これはわかるでしょう。
  360. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 一昨年の年末ごろはちょっと債権国になりましたが、いまは債権債務の関係では、債務のほうが少し多くなっておるバランスだろうと思います。
  361. 田中武夫

    田中(武)委員 年に一回必ず報告していますね。総理、間違いなく聞いていますか。実際忘れておるんじゃないですか。ちょっとあなたからはっきりと、去年の十二月にどういう報告を受けたか、ここで言ってください、閣議に報告するんだから。総理、あなた報告を受けた、報告を受けましたか。しかし、その中で数字は発表できぬなら、一応あれしましょう。しかし、債権国になったとか、債務国になったとか、状態がいいとか悪いとかいうことは、あんた覚えていられるはず。言ってください、ここで。
  362. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 おととしの年末分を昨年五月ごろに報告しましたし、四十二年度の年末現在の分は、これから報告することでございまするが、まだ報告してございません。
  363. 田中武夫

    田中(武)委員 閣議に年末に報告するんでしょう。さっきそない言ったじゃないの、自分でそない言うたじゃないの。
  364. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 歴年において年末の分を翌年の五月ごろに報告する……。
  365. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると、去年の五月に一昨年の年末の状態を報告を受けた、そのときは債権国だった、しかし最近は債務国になった、そういうことは認められるわけですね。もう数字まで言いません。そこのエコノミストに書いておるですよ。それじゃもう一度、時間の関係もあるので、一つ一つ何々勘定はどうなっているか、何々はどうなっているか聞きましょうか。——それなら言ってあげましょうか。一九六七年の六月、資産の部と負債の部でどういうことになっておるか言いましょうか。これを言うことは国益に反しますか。一つか二つだけならいいでしょう。じゃ資産の部の長期資産は幾らですか、一九六七年六月現在で。それから短期資産は幾らですか。短期と長期の関係、それが負債の部においても長期負債と短期負債、言いかえるならば、全体のバランスシートもさることながら、短期資産と短期負債との関係がさしあたって重要なんです。数字を私持っているのですが、いかがですか。その関係はどういうことになっておるか、それでよろしいわ。
  366. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それは民間の銀行で計算して発表したり、いろいろ出ておりますが、政府のとは違います。これは評価が非常にむずかしいので、評価のしかたによってはこの数字が違いますので、したがって、一般に出ておるのと、私どもが閣議へ報告するのとは、いろいろ数字が違っておりますので、これはやはりその関係を一々公表することは差し控えたいと思います。
  367. 田中武夫

    田中(武)委員 大蔵大臣、銀行がいろいろ試算したやつが経済雑誌等に出るのですね。あなたは銀行を監督しておられるのです。国益に反するようなことを推定でやることはまかりならぬと言うたらどうです。それなら、少なくとも短期の負債と短期の債権とはどういう関係になっておるのかくらいは言わなくては……。直ちにそれは国際収支に、外貨準備につながるのですよ。短期のやつ。あるのですが、どうです。——じゃどっちが多いんだ。多いか少ないかくらいは言えるでしょう——ちょっと待てよ。総理、閣議で報告するときはどうなんです。バランスシートを出して、資産の部はこうだ、負債の部はこうなんだ、項目であげて済むんじゃないですか。それを一つ一つ耳打ちしてもらわなければやれないというのは、大蔵大臣不勉強ですよ。
  368. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いま言ったように、評価が非常にむずかしゅうございますが、大体いろいろなところから発表されたり何かするものを見ましても、中心は、日本の債権債務が八十数億ドルというところを中心のバランスが、いろいろ発表されておるようでございます。評価によって、そこらを中心にいろいろ考えられたらいいんじゃないかと思いますが、政府はそこをどう評価しておるということは差し控えさせていただきます。
  369. 田中武夫

    田中(武)委員 いろいろ民間で発表せられるが、それで御推測願ったらいいじゃないかでは、国会審議として適当な答弁とは思いません。少なくとも短期の資産と負債とでどちらが多いのか、これくらいは言えるでしょう。総理、大体あなたの閣僚がこのような答弁して、あなたはいいんですか。
  370. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 短期資産負債では、外貨準備と為銀の負債との差はプラス十億ドルということでございます。
  371. 田中武夫

    田中(武)委員 十億ドルのマイナスといいますか、がある。それで一応きょうのところは終わりましよう。  次に、飛ばしまして貿易問題に入りたいと思います。  そこで、宮澤長官にお伺いしますが、あなた先ほども、また財政経済演説でも、輸出を一五%、金額にして二十億ドルふやす、そうして国際収支を来年度末は三億五千万ドルの赤字にとめるんだ、こう言われた。先ほど、これは相当努力が要る、こういうことですが、努力だけではないと思います。それを達成するところの目標に対しての障害となるものを一つ一つこれからあげていきますが、まず最初に、いろんな、たとえばアメリカの輸入課徴金の問題、あるいは輸入制限の問題、これも聞きます。それから中国問題あるいは対ソ連、あるいは東欧の貿易、こうずっと並べて、一つ一つあなたの目標達成に対する障害物をあげますが、ひとつその前にもう一度、どのような努力をして一五%、二十億ドルをふやそうとしておるのか、お伺いします。
  372. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 一五%ということを考えました根拠は、大体明年度の世界貿易の伸びを六%ないし七彩、そういう想定をいたしまして、わが国のそれに対する弾性値を二・二とか二・三とか、その辺を考えたわけでございます。この弾性値の達成は、従来わが国の場合、どうしても内需が旺盛なときには輸出が出にくいという傾向がございますが、明年度は私どもかなり内需は押えられるというふうに考えておりますので、勢い輸出に向かう流れが大きくなるであろう、自然の勢いが国内にできてくることを願っておるわけでありますが、それと、国際的にアメリカ、ドイツ、フランスは六七年と違いまして六八年はかなり経済成長をいたすというふうにおのおのが見ておりますから、したがって、二・三という弾性値あるいは六ないし七%という世界貿易の伸びはさして無理ではない、そういうふうな考え方をしたわけでございます。
  373. 田中武夫

    田中(武)委員 まず第一にお伺いしますのは、いま現にニューデリーで交渉といいますか、会議が進められておるいわゆる新特恵です。これは直ちにあすから影響のあるものではありませんが、新特恵については、どういうような考え方の上に立っていまのような計算をせられたのか。さらに、椎名通産大臣は、何語で演説をせられたか知らないが、ニューデリーで演説をしておられます。どういうことを言われたのか、簡単でよろしい、日本語でここで言ってください。
  374. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 南北問題を重視しておる、それで、世界の繁栄はこの南北問題の解決なしには達成されないものという基本的な考え方を持っている、しかし、日本は国内において生産性の低い中小企業であるとかあるいは第一次産業、そういうものを持っておるので、他の先進国並みに十分の力を発揮することがおのずから制約を受けるという状況にある、しかしながら、そういう基本的の認識に基づいてできるだけの努力をする、そういう点を強調いたしました。
  375. 田中武夫

    田中(武)委員 宮澤さん、新特恵はあすからすぐに効力を発生せぬとは思いますが、それはあなたの積み重ねの計算の中では計算に入れておるのですか、入れていないのですか。入れておるとすれば、どういう入れ方をしておるのか。
  376. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 新特恵は、早くても発効するのは一九七〇年ごろと考えておりますので、明年度は一応勘定しておりません。
  377. 田中武夫

    田中(武)委員 そこで通産大臣は、この南北問題で、私は南の主張もよくわかる。そのことがやはりうまくいかなければ、これは国際的な資本主義社会の危機だと思います。しかし、それといまから私の申し上げることとはまた別な観点に立つわけですが、新特恵とガットの精神、互恵平等あるいは関税引き下げのこの精神からいって、新特恵という問題はガットのワクの中では処理できない問題であろうと思います。南の要求は聞かねばならないと私は思います。しかし、現在あるガット協定からいうならば、その精神違反。何なら一条一条、条文を押えて伺ってもよろしい。したがって、南北問題の解決、新特恵の解決ということは、現在のガット体制の中では相矛盾したものが出てくるのです。いかがですか。
  378. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 自由平等、互恵無差別はガットのたてまえ。しかし、ガットの新章に書いてありますが、発展途上国に対しては特別な配慮を払っておりまして、また実際の例に見ましても、豪州が実施した対発展途上国の特恵がガットによって承認されたという事例がございます。そこで、発展途上国のための一般的な、かつ暫定的な特恵は、最恵国待遇の例外として承認されるということをわれわれは考えております。
  379. 田中武夫

    田中(武)委員 再建途上国というか、後進国に対するガットの例外規定のあることは知っております。しかし、それは特定国間の——これが数国であってもかまいません。国家群であってもよろしい。結ばれるところの一般的なものあるいは例外的なものです。いま言われておるのはそうじゃないでしょう。全先進国対全後進国あるいは発展途上国との間です。だから、ガットのいっている例外ではないのですよ。ガットのいっているのは、特定の間のAあるいはB、あるいは特にいままでの植民地関係とかあるいはいろんなそういった関係のもとにできておるものを認めるという例外規定、それからいま言ったように特定国間のものは例外として認めておるわけですよ。あなた、ガットの条文一々知っておるのですか。何なら時間をいただいて一々やりましょうか。ガット精神では解決しませんよ。いかがです。
  380. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 一々条文の問題については一向弱いのですが、しかし、発展途上国のための一般的かつ暫定的な、つまり普遍的なそういう特恵は、結局最恵国待遇の例外として承認されるもの、かように思っております。
  381. 田中武夫

    田中(武)委員 違うのですよ。それは、いままでにあるものと、あるいはガットが考えたのとは違うのですよ、いま問題になっておる南北問題の新特恵というのは。世界における全先進国が全発展途上国に対する特恵なんですよ。ガットの例外規定とは違うのですよ。法制局長官にでも聞こうか。しかし、ここで法律論になるとまた長くなるが、違うのですよ。——それじゃいいです。  結論を申し上げます。私が言わんとするのは、まず、現在の世界経済、このリーダーとしてアメリカが君臨しておる。その一つはIMF体制であります。その一つはガットです。ところが、もういろいろ言わなくてもわかると思いますが、絶対的な金保有、ドル不足の上に立ってでき上がった通貨体制、これがいまや危機に瀕しておって、だから、SDRといったような、特別引き出し権というようなものを考えざるを得ないところへきておる。しかも、アメリカの現在持っておる金は百八十億ドル程度なんです。西欧諸国、EECその他が持っておるドル債権は、公的、民間合わすと三百億ドルですよ。最後の一オンスまでかえると、こう書っておるけれども、結論を言います。いまやアメリカは、国際通貨としてのドルをアメリカ自身においてコントロールする権能といいますか、管理権を失った。むしろ、その管理はEEC諸国に移っておる。まさにIMFは西側からEEC諸国によってくずされんとしており、またそれがいまの問題です。そしてもう一つのガットは、南から問題が出てきておる。それを解決するのは、現在のガットだけでは解決できません。したがって、いまやアメリカが世界経済指導という両方の手の一つであるIMF体制、一方のガットはすでに崩壊せねばならないし、これからの世界経済に対しては、それを打ち破って変えていかなくちゃならない、これははっきりしておるのですよ。これは総理に聞いたほうがいいと思いますが、総理、そういうことに対してどう考えられ、それに対してどのように日本政府としては考えておられますか。またどうしようと思うか。
  382. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いろいろドル不安というような話が出ております。ただいま田中君はそういう立場に立っていろいろ問題を解明されたのではないかと思います。しかし、ただいまの国際通貨としてのドルの信用を維持しようとするアメリカ自身も、たいへん強くその点で絶対にこれを支持していくというあらゆる努力をする、そういう態度を示しております。ただいまの状況で、ただいま直ちに田中君が言われたような不安な状態が出る、かように私解釈しておりません。ただいまの国際通貨、また国際経済に及ぼす影響などを考えて、せっかくいまその信用を維持しようとするその努力、そのやさきでございますので、私どももこれに協力しよう、かように考えております。
  383. 田中武夫

    田中(武)委員 もちろん、その土台はドル不安、ドル危機というところから出ていますが、私がお伺いしたいのは、IMF体制、国際通貨基金体制がすでに現在に合わなくなっておる。また、南北問題を解決するためには、ガットの範囲内ではできないのだ、そういう時代がきているということなんです。もう時間がないので一々言いませんが、西欧諸国が持っておるドル債権は三百億ドルですよ。アメリカの持っている金保有は百十八億ドル程度です。最後の一オンスまでかえる決意を持っておるというけれども、英国、西ドイツ、フランス、こうあげてくると、みんなアメリカ、ジョンソンの特別教書によるところのドル防衛に全部あげて協力いたしますとは言っていないんですよ。現に日本でも三億ドルを要求せられて、それに対して解決を出していないんでしょう。そう答えられたんでしょう。そうするならば、一番協力するであろう心中体制を持つ日本にしてしかり、フランスは拒否した、西ドイツは態度保留、イギリスまたしかり、イタリア等もそうです。もっと端的に言うなら、アメリカさんのベトナム道楽のおつき合いはこれ以上はごめんだ、こういう考え方なんです。そう言われたって、IMF体制とガット体制について、将来どうあるべきか、どうすべきかと政府として考えておられるか、それを聞いておるのです。
  384. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この点は、私、先ほど大蔵大臣が昨年のIMF総会にも出てまいりましたので、その事情を十分お聞き取りいただくのがいいかと思います。また、欧州においてのこの問題をめぐってのそれぞれの大蔵大臣の会合を持たれた。その際も大蔵大臣は出かけておりますので、それらからお聞き取りをいただきたいと思います。  一部で非常に不安だという見方をする向きがあります。先ほど田中君のお尋ねのうちにも、金体制というものについて最初いろいろお話しになりました。またただいまも、負債、その点から見て、引き出し権を完全に行使すれば百十八億ドルの金はなくなるじゃないかというようなお話がございますが、しかし、私は、国際通貨体制は金だけの問題じゃないということを先ほど来申しておりますので、これらの点で御了承いただきたいと思います。
  385. 田中武夫

    田中(武)委員 閣僚中で一番経済通、いかがでしょう。ひとつ第三の通貨の問題でも議論しますか。IMF体制、ガット体制はどう考える、将来いかにあるべきか。どうです。
  386. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いまガットのお話がございましたので、これは私その場におりましたから申し上げるわけでございますが、この特恵がガットの考え方と相いれないとおっしゃいましたのは、実はガットの出発いたしましたころにはそのとおりであったのであります。すべてハンディキャップなしで勝負をやろうというのがガットの精神であったわけでございます。ところが、一九六三年に御承知のようにUNCTADの総会が開かれまして、それを契機にしてガットのほうで、私どもがいままでのやり方ではどうもこの南北問題は解決できないというふうに実際内々でお互いに合意をいたしました。そこで、そのときを機に、ガットは特恵というものを認めるというふうに考え方を変えたわけであります。それは、基準にいたします条文はたしか二十五条でございます。ここでみんながそういうふうに考えればいいということになっておるのでございますから、そこでそう考えようということになったわけでございます。この点はこの三、四年来の顕著なガットの考え方の変化であるというふうに、私自分でたまたまその場におりましたので考えております。  それから、あとのほうの問題は、もしそのようにドルが不安な通貨であるということにするならば、どこかの国が自分の国の通貨をキー・カレンシーに出さなければ理屈が合わないわけであります。しかし、そんならフランスがフランをキー・カレンシーに出すかといえば、決して出そうとはいたしませんし、ドイツもいたしません。そうすれば、交易を決済するのに一々金を現送するかというようなことになれば、そんなことはだれも考えないことでありますから、それならばSDRのような新しいものを考えようということになってくるのであって、この考え方はやはり前向きの考え方で、私は、わが国がそれを支持していっていいのだというふうに考えます。
  387. 田中武夫

    田中(武)委員 二十五条の五項でしょう。しかし、それはお互いにそうしようと言うたことだから、これは協定だから、まあそれでいいかと思いますが、私は、IMF協定にしろあるいはガット協定にしろ、これは時代に合うように改正をすべきじゃないか。私はすべていま指摘しておるのではないのです。そういうことを結論として持っておるのですが、時間がないので結論を先に言ったわけです。条約の解釈ですから、それは関係者が寄ってそうしましょうと言えば、そうなるかもしれないが、条約というものは、協定は、やはり先ほどいつか総理の言われたように、声明なり申し合わせで本文は変えるものではないですよ。だから、そういうことに沿うて手入れをしなければならぬじゃないかというのが私の結論なのです。結論を先に言ったわけですが、二十五条五項くらいは私も知っています。しかし、これはそうじゃないのですよ、ほんとうの解釈は。国際私法を解釈する基準に照らして一ぺんやりましょうか。だから、そういうことでなくて、私は、現体制を是認するかしないかは別として、少なくとも現在ある二つの協定はそのままではもう着物がからだに合わなくなってきておる。それを指摘しておるのです。もう総理からお答えを願って、次にいきます。
  388. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 IMF体制がくずれるということは考えておりませんが、いまおっしゃるように、EECの実力というものが相当できてきましたので、このEECが拒否権を発動したらこのいろいろのものがやれない。たとえばこの特別引き出し権の問題にしましても、これを発動させることができないというような力をEECが得たいということを中心に、このIMFの協定の改革問題が起こっておることは事実でございます。結局、この三月中に、理事会において成案を得るということで、いまこの問題をやっておる最中でございまして、IMFはそういう意味で、協定の若干の変更ということはあるかもしれませんが、協力体制というものはいま少しもくずれていないということは言えると思います。
  389. 田中武夫

    田中(武)委員 協力体制、またやると時間がかかりますからおきますが、私の主張はわかりましたね。からだが伸びてきたんだから、状態が変かったんだから、いままでの着物じゃ間に合わぬ。それでなかったら南北問題も片づかないし、国際通貨協定自体も、これはほんとうにいまはピンチですよ。SDRといったって、これが根本的解決でないことはあなたもわかっているでしょう。それくらいにしておきましょう。  次に、日本の貿易を妨げるものとして、アメリカの輸入制限と輸入課徴金の問題があります。これはだいぶん論議せられたので、私はあまり触れませんが、先ほどの答弁では、アメリカはおそらく輸入制限なんかやらないだろう、こういうようなことになったんですよ。ところが、外務大臣、外務省の予算に、このアメリカの輸入制限運動を阻止する予算として三億六千二百万万というのがあがっておるんですよ。これはやはり輸入制限があるという上に立ったのじゃないですか。そういう保護貿易にならないだろうと信ずるなんていうことであったら、これはちょっとおかしくなりますよ。それから、課徴金についても、まだはっきりしないとかどうとか言っておりますが、現に下田大使をして口上書を持っていかしたんでないですか。あるいはまた、閣僚級の人を派遣するとも言っておるのですよ。そういうことも伝えられておるわけですよ。下田大使をして口上書を持っていかしたんでしょう。それとアメリカの輸入制限に対する外交的、何といいますか、対策予算も出ておるのですから、ひとつ三木さん、お願いします。
  390. 三木武夫

    ○三木国務大臣 去年の六月のケネディラウンドの妥結以来、アメリカに保護貿易主義的な動きが出てきたことは御承知のとおりであります。ことに今年はアメリカの選挙年になっている。そういうことで、われわれが九月にアメリカに参りましたときも、総理が十一月に行かれたときも、これは全くケネディラウンドの精神に違反するものである、そういう保護貿易的な動きは、そういうことをして世界貿易の縮小を招き、アメリカは従来の主張と矛盾するではないか、非常な強い主張をいたしました。ラスク長官も、私に対して、政府は、これはもう絶対に阻止したいという意図であるということを明らかにしました。また、ジョンソン大統領も、自分の在任中はそういうことはやらせないつもりであるという強い表現の演説をしたことは御承知のとおりでございます。これは去年の輸入制限運動に対するアメリカ政府日本政府との、これに対して対処した模様を申し上げたのでありますが、また今年になってドル防衛に関連してロストウ氏が来たときにも、総理大臣から、国境調整税ですか、あるいは輸入課徴金、これは困るということを強くロストウ氏にも日本政府の意図を申し述べたし、下田大使に対して、アメリカ政府に対しても、強く日本政府の主張を申し入れておるわけでございます。したがって、これはもう油断はならないのであります。絶対に、日本政府がこういうふうに言っておって、アメリカもまたこの日本政府の意図をくんで、これをあきらめたと断定はいたせないのであります。警戒を要するのでありますので、われわれとしても、今後アメリカの動きに対して十分注目をして、必要な外交的な機関を通じて適宜な処置はとらなければならぬと考えております。
  391. 田中武夫

    田中(武)委員 先ほど加藤委員に対して総理答弁せられたのと若干ニュアンスが違っておると思います。しかし、私は三木さんのほうが率直に言われたと思う。ここでアメリカの輸入制限阻止運動費として三億六千二百万円というのがあがっておる。たぶん訴訟費用とかそういうものだと思うのです。ということは、アメリカが保護貿易の姿勢はくずさないと頭から信じるということはうそだということを物語っておると思います。  次に、日中貿易についてもお伺いしたいのですが、もう時間もきましたので簡単に聞きます。  日中貿易に関してます問題になるのは、LT貿易、これは自民党の二人の議員が行って、政治三原則を承認した。しかし、LTの基本からくずれて、一年ごとの更新になった。そしていま品目について具体的な話が進んでいる。そう言っていますね。与党の内部の議員が行って、政治三原則を承認した上に立って交渉が進められた。それをいつまでも総理は、政経分離、こう書っていいのか。  それから、吉田書簡の問題、ココムの問題があるのです。ココムの問題につきましては、私は昨年商工委員会でそれを明らかにいたしましたように、ココムというものは条約でも何でもないわけなんです。国民をそのまま縛る権能は持たないわけなんです。それに対して、文書による質問をいたしました。それに対しての答弁が、外国貿易管理法をもってお答えになった。その別表甲を見ると、これは共産圏だけと違う。いろいろ書いてあるのです。したがって、時間がありませんからかためてお伺いします。  LTについてどう考えるか。吉田書簡はケース・バイ・ケースであるなんと言わずに、LT自体をこういう状態に追い込んだのは、吉田書簡による日立造船所のプラント契約がキャンセルになったからです。ココムについては緩和を考えておられるようですが、アメリカはむしろ強化しようとしておる。ここでもう一つはっきりしたいのは、ココム、ココムとおっしゃるが、ココム自体は、国民に何ら制限するところの機能を持たない、法律でもなければ条約でもない、それだけを確認しておきます。いかがです。
  392. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 御指摘のとおり、ココムは自由圏の諸国が相談する場でございまして、まあ一種の委員会でありますから、その決定は、直接には拘束いたしません。大体その意思を尊重して、貿易管理令を使って、そして規制をしておる、それが真相でございます。
  393. 三木武夫

    ○三木国務大臣 LT貿易については、われわれもまだ新聞紙上でいろいろ承知する程度でございますから、いずれ、自民党の党員が行っておるのでありますから、帰ってきて詳細に事情を聞きたいと思っております。  吉田書簡に対しては、これは吉田書簡というものが両国間の取りきめのごとき性質を持つものではない。したがって、これによってこれを緩和するとか、吉田書簡を取り消すとかいう性質のものだとは考えておりません。したがって、そういう具体的な事象が起こった場合に、その具体的な事象ごとに輸銀使用の問題は検討いたしたいというのが政府態度でございます。
  394. 田中武夫

    田中(武)委員 時間がないので急ぎます。  実は、このあと日ソ貿易、対東欧貿易等々積み上げてきて、最後に貿易構造の改善といいますか、これを提案したかったのです。ところが、時間がないのでもう飛びますが、先日、民社党の曾祢さんの質問に対してお答えになったと思うのですが、アメリカ依存、依存といっておるけれども、三〇%だ、こう言っておるのです。それじゃ共産圏はどうか、その他の地区と見た場合には、うんと違うわけなんです。輸入課徴金の問題等に関連して報復手段をとるというようなこともいわれておる。私は、アメリカに強く出たらいいと思うのですよ。たとえば鉄鉱石、綿花、大豆、これは中国やソ連で買おうと思ったらいつでも買えるのですよ。あるいは七億の人民を持つあの中国を、あのままほうっておいていいのか。しかもココムだハチの頭だといっておるうちに、西欧諸国ほどんどん売っておるじゃないですか。いま中国の輸入を分析した場合、対共産圏は三分の一、自由国から三分の二を買っておる。その大部分は西欧諸国なんです。しかも肥料、鉄鋼、一々数字をあげて聞く予定でありましたが、去年あたりはどんどん数字が伸びておるわけです。日本は肥料も鉄鋼も余っておるのでず。どうするのですか。それから東欧諸国にもそれはいろいろあります。三木さんは昨年回ってこられましたが、たとえばチェコのようにどんどんと発展しておるところがある。そういうところについての貿易に対する、まあ見本市を開くようなことも言われておる。どんどんもっとやるべきではないか。こまかいことは申し上げませんが、貿易の構造改善について考えてもらわなければいけない、こういう提案をしておきますが、いかがでしょう。
  395. 三木武夫

    ○三木国務大臣 貿易を、田中さんの言われるように、ある一カ所に集中するよりも、貿易というものはできるだけ広く各地域の間に拡大していく貿易構造のほうが好ましいと思っております。したがって、そういう意味で、われわれとしてもいろんな方法を通じて各地域の貿易拡大につとめておる次第であります。構造としては御説のとおりだと思います。
  396. 田中武夫

    田中(武)委員 そこで、簡単にかけ足しますが、円防衛の問題、円をどう維持するか、先ほど北山委員からも、APのロンドン通信として、円が切り下げられるのじゃないか、これはマルを取るほうの計算か、ほんとうの為替レートの計算か、どっちか的確な情報をつかんでおりませんが、そういうこともいわれておるからこそしゃんとしてもらわなければいけないと思う。私ふしぎだと思うのは、為替レートが一ドル三百六十円とこういわれておる。ところが、香港とかバンコクとかチューリッヒ等では自由相場が立って、三百六十円以上でないとドルとかえられないのですね。一ドル買うためには三百八十円とか四百円近く出さなければいけないのです。これはどういうわけなのか。  それからもう一つ、円の内に対する価値、つまり通貨価値ですね。これは対商品とかいろんなものになるわけなんですが、これは経済成長とか物価値上げとかいろんな問題と関連すると思うのです。円防衛について、為替レートとしての円防衛、同時に国内通貨としての円の面があると思うのです。簡単でいいです。またあらためて機会を見て聞きますが、円防衛についてどのような決意を持っておられますか。そういうような情報が乱れ飛んでおるという中だけに、総理からきちっとした御答弁をひとつ伺います。
  397. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 円についていろいろのうわさがあるとか、ことに今日はそういうことがうわさされております。しかし、私自身、一切さような計画を持っておりません。どうか皆さんも、心配なしに、円を守るというその政府態度を支持していただきたいと思います。ただいま円がやみで一体幾らになるか、こういうようなお話をされておりますが、りっぱな為替相場があるのでございますから、やみでということは、円が外国に持ち出されておるという、そういう証拠じゃないかと思います。持ち出されておる、そういうことは慎まなければなりませんし、また厳に取り締まらなければならない、かように私は思っております。  国内においての物価の問題については、政府はかねてから物価の安定をはかる、こういうことで取り組んで、これが最大の私どもに課せられた使命だ、かように考えております。そういう意味においてまだ十分の効果があがっておりません。円自身が国内におきましてもりっぱな通貨であるように、その価値が維持されるように、この上とも努力するつもりであります。  国際的な問題は、これは私全然関係しておりませんし、さような計画を持っていないことを、この機会にはっきり申し上げておきます。
  398. 田中武夫

    田中(武)委員 時間が来たという赤いランプもつきました。ここで無理に十分や十五分延ばしてみても何てことはないと思います。私一番最初に言ったように、審議には協力するという立場ですから、これで終わりたいと思います。横になるならどこにでも横になるだけの自信はあったわけです。法律論に引っ張り込むなら上四方固めで、びくとも動かぬように押え込むだけの自信を持っておりますが、最後に総理に、私、一つの提案をいたします。総理、いいですか、最後に一つの提案をして終わりたいと思うのです。  私、冒頭に申し上げましたように、いまジョンソンの立場はほんとうに追い詰められておると思うのです。先ほど申し上げましたように、経済的にもドル危機、そして軍事的、政治的にはベトナムにおけるあの状態、しかしアメリカ大統領としての彼のメンツもありましょう。また次に控える選挙もありましょう。そこで総理、昨年秋、親交をあたためられた佐藤総理として、いま、言うならばわらをもっかみたいような心境にジョンソンはあるのではないか。メンツは立てなくちゃいけないが、ドル防衛も、実はもっと資料をもってやろうと思ったのですが、可能とは言いがたい。ベトナムもまたしかり。そこで、わらでもつかむという気持ちで、だれか中に入ってもらう人があればまかそうじゃないかという気持ちになっておるんじゃないかと思う。仲裁は時の氏神と申します。佐藤総理、意を決して、いまここでひとつジョンソンの追い詰められた立場を有利にしてあげるためにも、親交をあたためて共同声明をせられた仲のよい佐藤さんが、時の氏神となって、ベトナムに対してこうやりなさい、こうしたらいかがでしょうか、ドル防衛はこうだ、何といったってベトナム戦争とドル防衛は二兎を追うことであって、結局一兎をも得ず、こういう結論で、相反する二つの問題をかかえて苦慮しておるのですよ。ひとつその辺のところを、わらをもつかむような心境にあろうと思うジョンソンに対して、時の氏神となる気持ちはあるかないか、お伺いします。
  399. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの御意見は、私、昨年ジョンソン大統領と会って、そしていろいろ話し合った仲でありますだけに、私にもたいへんぴんと伝わるものがございます。しかしながら、ただいまのベトナム問題というものは、相手方もある問題でございます。私がジョンソン大統領と話し合っただけでベトナム問題が解決するものでもありません、北の諸君の考え方もございますから。したがいまして、ただいま私どもがフリーハンドをもってこの問題に臨んでおる、そのことを国民の皆さんも十分理解していただきたいと思います。私はベトナム問題については、日本自身がいわゆる軍事的介入をしておらない。また、もちろん立場は自由主義陣営の一員でございますから、アメリカに対しても何でも言える立場にあること、これは御指摘のとおりであります。しかし、私ども、なかなか北側に対して十分な話がつかない。これを何かいいってはないだろうか。あるいはソ連に対して、またその他の東欧諸国等を通じましても北側にいろいろ呼びかけておる。国連のウ・タント事務総長を通じましても、それらの意向は率直に表明しておるわけであります。こういう点も国民の皆さんから御理解をいただいて、一方的な行動だけはしないんだという日本立場を、十分ひとつ理解してもらいたいと思います。  ただいまその他の、ドル防衛その他についての田中君の御意見は、私拝聴いたしまして、今後の私が何かするというような場合には、そのことを思い起こす、かように御理解をいただきたいと思います。ありがとうございました。
  400. 田中武夫

    田中(武)委員 最後にもう一言言うだけです。  重ねて総理、タイミングをはずすようなことのないようにして、時の氏神たれと再提案をして終わります。
  401. 井出一太郎

    井出委員長 これにて田中君の質疑は終了いたしました。
  402. 井出一太郎

    井出委員長 この際、参考人出頭要求の件についておはかりいたします。  昭和四十三年度総予算審査に関し、来たる二十六日午前十一時に税制調査会会長代理松隈秀雄君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  403. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  次回は、来たる二十六日午前十時より委員会開会し、総括質疑を行ないます。  本日は、これにて散会いたします。    午後六時二十二分散会