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1968-04-16 第58回国会 衆議院 本会議 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月十六日(火曜日)     —————————————   昭和四十三年四月十六日    午後二時 本会議     ————————————— ○本日の会議に付した案件  永年在職議員黒田寿男君に対し、院議をもつ   て功労表彰することとし、表彰文議長に   一任するの件(議長発議)  西村農林大臣農業基本法に基づく昭和四十二   年度年次報告及び昭和四十三年度農業施策に   ついての発言及び農地法の一部を改正する法   律案内閣提出)及び農業協同組合法の一部   を改正する法律案内閣提出)の趣旨説明並   びに質疑  国立病院特別会計法の一部を改正する法律案   (内閣提出)  農林漁業金融公庫法及び農業信用保証保険法の   一部を改正する法律案内閣提出)    午後二時九分開議
  2. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————  永年在職議員表彰の件
  3. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) おはかりいたします。  本院議員として在職二十五年に達せられました黒田寿男君に対し、先例により、院議をもってその功労表彰いたしたいと存じます。(拍手表彰文議長に一任ぜられたいと存じます。これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  ここに議長の手元において起草いたしました文案があります。これを朗読いたします。  議員黒田寿男君は衆議院議員に当選すること十一回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた  よつて衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもつてこれを表彰する   〔拍手〕  この贈呈方議長において取り計らいます。  この際、黒田寿男君から発言を求められております。これを許します。黒田寿男君。   〔黒田寿男登壇
  5. 黒田寿男

    黒田寿男君 ただいまは、私の本院二十五年在職に対し、御丁重な表彰の御決議をいただきまして、感謝にたえません。(拍手)  私が初当選いたしましたときは、わが国の古い軍国主義中国東北地方に対する侵略をすでに終え、さらにこれを大陸の奥深くエスカレートさせようとしていた時期でありました。国内では、私の初当選の直後、二・二六事件が起こり、戒厳令がしかれ、議会の正門には銃剣を持った兵隊が直立しておりました。その間をくぐり抜けて初登院しました際の印象は、いまもなお脳裏にあざやかに残っております。  当時のわが国は、一方において、労働者農民経済的窮迫の底にあり、他方、財界、政界の上層部は腐敗堕落し、軍部は大独占資本と結託してファッショ弾圧政治を強行しつつありました。私は、初めて立候補しましたとき、中国への侵略戦争気分の大きな波の拡大されていく中で、帝国主義侵略戦争反対ファッショ政治反対のスローガンで選挙戦を戦いました。隣国たる中国に当時台頭しつつあった民族解放運動を深く理解し、わが国支配勢力中国侵略に反対して戦うことが、われわれ社会主義勢力の責務であると確信していたからであります。(拍手)しかし、当時、議会の大勢は軍国主義ファシズムに圧倒せられ、われわれの勢力ははなはだ弱小でありましたので、昭和十二年夏、侵略戦争全面戦争発展し、その約半年の後には、ついに私は反戦分子として、国会議員の現職のまま検挙投獄せられてしまいました。以後、運動の自由を奪われましたまま、終戦の日を迎えたのであります。  戦後の最初の総選挙議席を回復し、新憲法制定の際には、憲法特別委員会委員として審議に参加いたしました。帝国議会は新国会に生まれかわりました。その後のことは、諸君の熟知せられるところであります。  往時を回顧し、現状を思うとき、はなはだ遺憾にたえませんのは、敗戦後二十有余年を経過するも、今日なお日中両国間の国交は回復せられず、国際法的には戦争継続の状態にあることであります。日中国交回復は、わが国外交の最大の課題であり、日中両国八億人民の友好、団結は、アジアと全世界の平和の基礎であります。私は、国会議員としての一般的任務遂行社会党議員としての特別の任務遂行とともに、日中間のこの未解決の最大問題を解決して、両国人民共通の利益と幸福をもたらすために、諸君と協力して最善の努力を尽くす決意であります。(拍手)  今日、表彰を受けましたが、私は何らそのことに値するものでないということをよく自覚しております。その私が、今日まで永年にわたり、本院に議席を保持し続け得ましたことは、諸君の御友情と選挙民多数の御支援のたまものと信じ、心から深く感謝の意を表する次第であります。  これをもちまして、謝辞とさせていただきます。(拍手)      ————◇—————  西村農林大臣農業基本法に基づく昭和四十二年度年次報告及び昭和四十三年度農業施策についての発言並びに農地法の一部を改正する法律案内閣提出)及び農業協同組合法の一部を改正する法律案内閣提出)の趣旨説明
  6. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) この際、農業基本法に基づく昭和四十二年度年次報告及び昭和四十三年度農業施策についての農林大臣発言を許し、あわせて、内閣提出農地法の一部を改正する法律案、及び農業協同組合法の一部を改正する法律案について、趣旨説明を求めます。農林大臣西村直己君。   〔国務大臣西村直己登壇
  7. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 昭和四十二年度農業動向に関する年次報告及び昭和四十三年度において講じようとする農業施策につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、昭和四十二年度農業動向に関する年次報告について申し上げます。  四十一年から四十二年の半ばにかけてのわが国経済景気上昇過程をたどったのでありますが、このような状況のもとで、四十一年度における農業生産性及び農業従事者生活水準は、前年度に引き続き上昇し、他産業との格差もやや縮小を見たのであります。しかしながら、このような格差縮小には、農産物価格上昇に負うところが少なくないのであり、また、生活水準上昇も、依然として兼業化進展に伴う農外所得増加に負うところが大きいのでありまして、生産性向上がなお一そう強く要請される次第であります。  近年、その伸びが停滞しております農業生産につきましては、米の生産の回復や野菜、果実などの増産等により、四十一年には上昇に転じ、四十二年におきましても、米の記録的な豊作を中心にかなりの伸長を示しております。他方食料需要内容変化を伴いながら増大しており、農産物輸入も引き続き増加する傾向にあります。  次に、農業経営動向について見ますと、農業就業人口は、四十一年度には、前年度より三・九%減少して千六十五万人となり、農家戸数も四十一年十二月現在で五百五十万戸に減少いたしました。このような傾向の中で、兼業農家農家数全体の七〇%に達しております。他方農業に専念し、農業所得だけで勤労者並み生活水準を享受している農家も一部に育ちつつありますが、なお経営規模拡大への道には険しいものがあるのであります。このように生産性の高い農家がその数を着実に増加し、農産物供給に占める割合を高めていくという動きも、現在のところなお微弱でありまして、構造政策の推進が一そう急務であることを痛感する次第であります。  以上が第一部の概要であります。  次に、第二部、農業に関して講じた施策は、昭和四十一年度を中心といたしまして、おおむね農業基本法第二条に掲げる施策の項目に従って述べたものであります。  最後に、昭和四十三年度において講じようとする農業施策について申し上げます。  ただいま御説明いたしました農業動向にかんがみますとき、農業近代化を一そう促進することがきわめて重要であることは申すまでもありません。よって政府は、農業基本法の定めるところにより、農業生産性及び農業従事者生活水準向上をはかるため、同法の定める施策を着実に具体化することを基本的態度として、農業施策を講ずることといたしております。  特に、農業構造改善につきましては、生産性が高く経営規模の大きい自立経営や、効率の高い生産組織を育成しつつ、わが国農業体質を強化改善するため、農地流動化の促進、総合資金制度新設協業等集団的生産組織の助長、農業地帯保全振興対策等をはじめとする一連の施策を充実することといたしております。  以上、昭和四十二年度農業動向に関する年次報告及び昭和四十三年度において講じようとする農業施策につき、その概要を御説明した次第であります。  次に、農地法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。  戦後の農地改革によりまして、広範に自作農が創設され、これによってわが国農業生産力は画期的な発展を遂げ、農民経済的社会的地位向上をもたらしたのみならず、戦後における日本経済復興繁栄に大きな寄与をしたことはあらためて申し上げるまでもありません。農地改革諸立法を承継して制定された現行農地法は、このような農地改革の成果を維持するという社会的に大きな使命を有するものであります。  しかしながら、ひるがえってわが国農業現状を見ますと、国民経済高度成長農業就業人口の急速な減少兼業化をもたらし、その過程を通じて農業生産選択的拡大農業機械化が進んだとは申しますものの、経営規模はなお零細であり、このため、生産性向上をはかるにもおのずから限界があることを否定し得ない実情にあります。したがいまして、農業生産性を高め、国民食糧の安定的な供給農業従事者所得増大をはかるという農政基本目標を実現するためには、農地がより生産性の高い経営によって効率的に利用されるように、その流動化を促進することが肝要であり、そのためには農地制度は新しい時代の農業の要請にこたえ得るものでなければならないと考えるのであります。  政府といたしましては、このような観点から検討を加え、当面する課題にこたえるため、農地法改正をいたすこととした次第でございます。  次に、この法律案の主要な内容について御説明申し上げます。  第一は、農地等権利移動制限についての改正であります。まず、近年における農業技術進歩等にかんがみまして、本人またはその家族がみずから農作業を行ならのであれば、上限面積制限雇用労働力制限を設けないこととし、また、第二種兼業農家経営面積上昇に照応して、下限面積制限を五十アールに引き上げ、できるだけ農地農業に専念する農家により効率的に利用されるよう配慮したのであります。  第二に、集団的生産組織の育成と土地効率的利用に資するため、農業生産法人要件実情に即して緩和することとし、その法人役員の過半が農地提供者であり、かつ、農作業に常時従事するものでなければならない旨の要件を課して、従来の借入地面積制限雇用労働力制限等は廃止することといたしております。また、農業生産法人構成員当該法人農地を貸した場合には、その小作地所有面積制限をしないこととし、農業協同組合組合員農業協同組合に対し農業経営委託を行なう場合にも、同様の措置をいたしております。  第三は、小作地所有制限の緩和についてでありますが、農業をやめて住所を他へ移した場合に、従来住んでいた市町村所有していた農地につきましては、在村の場合と同様に小作地所有を認めることといたしております。これは、いわゆる旧地主制の復活を意味するものではございません。他産業に従事しようとする農家が他の市町村住所を移しやすくし、農地効率的な利用を確保しようとするためのものであります。  第四は、農地等賃貸借の解約、更新拒絶等についての規制を緩和することとし、十年以上の期間の定めのある賃貸借または水田裏作賃貸借について、その更新をしない場合及びおよそすべての賃貸借について合意により解約する場合には、許可を要しないことといたしておるのであります。  第五は、小作料最高額統制制度を廃止することといたしております。これは、雇用の機会の増大した現在では、当事者の自由な契約にゆだねても、戦前のような高額の小作料が発出する余地は、一般的にはないものと判断されるからであります。  しかし、現に存する小作地につきましては、小作農の経営に急激な変化を与えることを避けるため、なお十年をこえない範囲内において政令で定める日までは、小作料統制を続けることといたしております。  以上の改正により、他産業に従事する者がその所有する農地農業に専念する農業者に貸しやすくなり、その結果、専業農家規模拡大集団的生産組織発展が一そう促進され、土地効率的利用に資することとなると考えるのであります。  第六は、草地利用権設定制度新設であります。これは、畜産物需要増加に対応して、飼料の生産基盤拡大強化をはかるため、未利用里山等につきまして、市町村または農業協同組合共同利用施設として草地造成をする必要がある場合に、それが国土資源利用という総合的見地から妥当とされるときは、一定の手続のもとに草地利用権を設定することにつき、所有者等に協議を求め、これがととのわないときには都道府県知事の裁定を受けることができる制度であります。  以上申し上げました趣旨に基づきまして農地法改正するにあたって、農地法目的土地農業上の効率的な利用をはかるためその利用関係を調整することを追加することといたしております。  以上が農地法の一部を改正する法律案趣旨でございます。  次に、農業協同組合法の一部を改正する法律案について、その趣旨を簡単に御説明いたします。  農業協同組合は、農業生産力の増進と農民経済的社会的地位向上をはかることを目的とする農民協同組織として、昭和二十二年に発足して以来、わが国経済及び農業の歩みとともに発展してまいりました。  しかしながら、近年におきまする農業及び農業協同組合をめぐる諸情勢変化には著しいものがあると考えられるのであります。  すなわち、近年におきまする経済高度成長を背景として、農業生産選択的拡大機械化進展など、農業近代化動きが見られまする反面、兼業化が進み、経営規模はなお零細であり、農業生産面の一部には楽観を許さないきざしもあらわれております。このような事態に対処して、農業構造改善農業生産維持増大をはかるためには、個々の農家経営規模拡大を進めることとあわせて、協業など生産の集団的な組織を育成することも、またきわめて重要なことになっているのであります。  また、農業協同組合自体につきましても、組合をめぐる諸情勢に対処し得るよう、国が昭和三十六年以来進めてまいりました農協合併進展の結果、組合規模拡大し、その経営基盤が充実しつつありますが、合併後における組合組織管理面事業運営面などにつきまして、なお改善を要する点も少なくなく、また、系統組織運営面におきましても、解決を要する問題が生じてきております。  このような情勢の中で、農民協同組織であります農業協同組合が、その役割りをよりよく果たすためには、組合員及びその役職員の自主的な努力にまつところが大きいのでありますが、制度面において改善を要する点もありますので、今回農業協同組合法改正を提案する次第であります。  以下、この法案の要旨を御説明申し上げます。  改正の第一点は、集団的生産組織に関連する制度面改善措置であります。  その内容といたしましては、まず農業協同組合組合員から委託を受けて行なう農業経営事業を認めることであります。近年、組合がトラクターなどの機械施設を保有し、組合員から農作業委託を受ける例が全国各地に見られますが、就業構造変化機械化進展に伴い、さらに農業経営自体組合委託するような必要が生じつつありますので、組合がこのような組合員の要望にこたえて、その農業経営を受託し、組合が合理的な形で農業経営を行ない得る道を開こうとするものであります。  次に、農業経営を行なう農事組合法人につきまして、その経営合理化就業事情変化に対応して、組合員資格及び員外従事者に関する制限を緩和して、経営安定向上をはかるとともに、設立の円滑化に資そうとするものであります。  改正の第二点は、農協合併進展による農業協同組合規模変化に対処するための措置であります。  まず、総代会制度を整備することであります。合併の結果、組合規模が大きくなったため、総会の開催ないし運営に困難を生じている組合がふえておりますので、このような状況にある組合につきまして、その円滑な管理運営を確保するためには、総代会制度をより一そう活用し得る道を開く必要があると考えられるのであります。このため、総代会の権限を拡大し、役員選挙または選任及び定款変更決議につきましても、総代会において行ない得るようにするとともに、これに伴い、総代の定数の最低限度を引き上げようとするものであります。また、組合の解散及び合併につきましても、総代会において議決をし、さらに、組合員の直接投票による賛成を得ることによっても、これを行ない得ることとしております。  次は、農業協同組合連合会会員につきまして、一会員一票制の特例を設けることであります。合併進展に伴い、連合会会員であります農業協同組合規模に相当の格差を生じ、従来の一会員一票制では、実質的な平等が確保されがたい実情も見られるようになってきておりますので、今回、連合会会員に対しまして、その組合員の数に基づいて、二個以上の議決権及び選挙権を与えることができることとしようとするものであります。なお、中央会につきましても、これと同趣旨措置を講ずることとしております。  以上のほか、農業協同組合事業運営現状にかんがみまして、信用事業につきまして、貸し付けに関する規定の整備を行なうとともに、信用事業を行なう農業協同組合連合会が行なう指定金融機関業務代理を、間接構成員のためにも行ない得ることとする等の措置を講ずることといたしております。  以上が農業協同組合法の一部を改正する法律案趣旨でございます。(拍手)      ————◇—————  農業基本法に基づく昭和四十二年度年次報告及び昭和四十三年度農業施策についての発言並びに農地法の一部を改正する法律案内閣提出)及び農業協同組合法の一部を改正する法律案内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
  8. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) ただいまの年次報告等についての発言及び二法律案趣旨説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。美濃政市君。   〔美濃政市登壇
  9. 美濃政市

    美濃政市君 私は、ただいま説明のありました農業動向並びに施策に関する基本的な問題につきまして、日本社会党を代表して、総理並びに関係大臣の所見をたださんとするものであります。  農業基本法制定以来、この報告は毎年行なわれてきたのでありますが、そのつど抽象的な言いわけ報告に終始しており、現況の把握についてはきわめて不十分なものであります。その反面、施策の効果については、過大評価傾向が見受けられることは遺憾とするところであります。  従来、わが国農業は、集約、小規模手労働の農法を農政基本として農業構造が形成されてきました。特に、敗戦後のわが国経済復興は、農業がその主たる役割りを果たしたのであります。昭和三十年以降、ガット協定やこれに基づく貿易の自由化等国際情勢から、農業基本法を制定し、その構造政策では、農業の形態を零細農耕と非難し、本年まで七年間積極的に離農政策を進め、戸数五十万戸、就業者四百万人余の離農を促進したのであります。その結果、都市人口過密化となり、非生産部門就業者増大し、商品流通及びサービス部門就業人口は、健全な社会構成適正率を上回るに至ったと判断をいたします。したがって、その体質は、中小零細企業大半であり、必然として起こる過当競争は、卸売り物価上昇に比較し、小売り物価上昇は高い比率となって、物価高の一要因となっておるのであります。また、この現況では、今後とも倒産の続出も避けられないという宿命になっていると考えるのであります。  昭和四十三年度において講じようとする施策の概説においては、「非農業部門の旺盛な雇用需要は、農業就業人口の急速な減少をもたらしつつある。」といっており、政府都市労働不足を強調しておりますが、この実態は長期的な安定雇用ではなく、臨時的な低賃金求人不足の対象であり、しかも非生産部門がその大半であることに注意をしなければなりません。  農産物流通も、必然的に中間機構増大し、その段階は複雑多岐となり、その構成も過大となりまして、生産者価格消費者価格の値幅は年々増大し、農産物消費者価格高騰要因となっておるのであります。農業内部兼業が高まり、深刻な人手不足となって、生産は鈍化から減産へと移行してきたのであります。  反面、農産物需要は、年々増加をしてまいりました。加えて国民食糧に対する要求は、高度な品質と種類の多様化であります。この要求を受けて、生産を担当する農業条件は、機械化を進めようと計画をいたしましても、わが国特殊条件である海洋性気象がもたらす高度な空中湿度と雨量、さらに農地の狭隘と起伏等条件は、諸外国模倣による機械化では、全作業工程の省力は不可能であり、固有の条件に合致する機械化を必要とするものでありますから、当面、わが国農業機械化には限界のあることを認識しなければなりません。  以上の現実を無視した農業政策は、農民から経営の自信と、職業的魅力を奪ったも同然であります。青年は後継者としてとどまる希望を失い、新規卒業者農業にとどまった人員は、六万人となり、極端に補充率の低下を来たしてきたのであります。さらにその内容は、今回の白書で分析されておりますが、男子四万人、女子二万人でありますから、農業後継者が、その配偶者を求め得ない条件で補充されておる地域社会の出現、及びこのような農業忌避思想が高まってきたことは、農政の欠陥であり、政府に強く反省を求めると同時に、政策の転換を要求してやまない悲惨な現状であります。これが後継者対策は、単に学校教育だけで解消のできる問題ではありません。このような現状から、今日農業就業者大半中高年齢者あるいは主婦労働が主体となり、兼業化率は年々増加し、生産性向上は見る影もなく、特に自由化した品目の中には、たとえば大豆のごとく、昭和三十年は自給率四〇%を確保していたものが、昭和四十二年に至っては八%に減少するという、生産放棄のやむなきに至った作物も数多いのであります。生産は減退する反面、需要増加は当然輸入依存率を高めることとなり、豊葦原瑞穂の国も、いまや世界屈指農産物輸入国に転落をしたのであります。  その結果、国際収支の悪化、物価の危機、財政の硬直化となり、今日の国民生活の不安は、経済成長政策がもたらした繁栄の貧困といわざるを得ないのでありまして、農業政策失敗一大要因であり、離農を進めても安定雇用条件はなく、いたずらに社会保障のない不安定な消費労働にうごめいておる現況は、農民は生かすべからず、殺すべからずといった徳川封建農政の延長よりもさらに残酷な、しぼれるだけしぼってあとは死になさいという農政と断ぜざるを得ません。  以上申し上げてまいりました分析を、総理大臣はどのようにお考えになっておるか、お伺いいたしたいのであります。  次に、当面する諸問題についてであります。  その第一は、政府が講じようとする政策についてであります。  農業構造政策は、すでに申し上げましたように、わが国立地条件に合致した全体産業との調和と、合理性のある独自の創造が不可欠の要件でありまして、外国模倣や極端な方針は失敗をすると考えるのであります。したがって、構造政策就業人口の位置づけは、全体的な展望と周到な計画に基づくものでなければなりません。  昭和三十七年以降、政府農業構造改善事業を実施してまいりました。これは各地域の主幹作物を対象として、自立経営の標準を定め、改善事業を実施し、これをモデルとして農民を刺激し、経営改善の促進をはかるという目的によるものでありました。しかるに、昨年八月、政府は新たに構造政策を発表いたしました。この計画は、現在五百五十万戸に減少した農家戸数を、さらに百三十万戸の離農を促進して、昭和六十年までに四百二十万戸になるであろうというものであります。農業の二重構造の解消を基調とした農基法政策を放棄して、より具体的な離農政策を進めようとするものであり、付属参考統計表では、二種兼業農家は現在四一・八%が五六・六%に増加するであろう、三六・八%の一種兼業は三〇%に減少する、特に専業農家は二一・五%から一三・四%に減少するであろうと予測をしておりますが、これは、主として専業農家を対象とする離農の促進を進めようとするものであります。専業農家の構造は、現在まで実施した構造改善事業の標準を大幅に引き上げて、大型化を計画し、これに即応せしめるような農地法改正しようというのであります。特に、農地は、従来とってきた生産手段資産としての位置づけを破棄し、地代確保の資産という制度に改悪しようというのであります。この政策を進める反面、価格政策やその制度は後退しようとしておるのでありますが、現実を無視したこの政策は、一そう農業生産を破壊に追い込むものであると断ぜざるを得ないのであります。ネコの目が変わるように、二年か三年ごとに構造政策を変更し、農民を刺激すれば、農民は投資意欲も勤労意欲もなくなり、農政に対する不信感は高まるのみであります。しかも、国際環境を口実に、独占奉仕の体制を進め、みずからの責任を回避する政府の態度は、許されないと考えます。反省を求めると同時に、無謀な政策の変更を行なうよう、その再検討を要求するものであります。  農業政策基本は、基盤の整備、開発の促進、流通の抜本的改善と、再生産確保可能な価格政策をもって農民所得を補償するとともに、農民資本による一貫した農産物加工体系の促進をはかり、少なくとも現在時点をもって農業人口都市に流出し、都市過密化し、非生産部門就業人口がさらに増大する反面、農村は過疎化するという現象が起きないように、その防止につとめ、均衡と調和のとれた、わが国の実態に合致する独自の発想に基づく社会開発を進めることが必要であり、いたずらに農業就業人口減少せしめて、非生産就業部門人口増大する政策をとることは、許されないのであります。農林大臣は、昨年八月、この構造政策を進める談話を発表しておりますが、この中で、ケネディラウンドや特恵関税等を理由として、農業の保護政策の緩和が問題とされておると表明しておりますが、佐藤内閣の貧困な農政の中で、何をさして保護政策と考えておられるか、また、だれがそれを問題としておるのか。文書をもって行なわれた公式表明でありますから、この際明らかにしていただきたいのであります。(拍手)  第二にお伺いいたしたいのは、食管制度の改悪であります。  農産物生産が減退する中で、米の生産は回復し、四十一年は自給率九五%、四十二年は全国的な豊作条件も加わって、一〇〇%を超過する収穫量に達したことは、喜びとするところであります。しかるに、政府は、農民の労をねぎらうことなく、この生産を敵視し、制度の改悪をして、生産を減退せしめる意図をもって、米作農民を奴隷的に支配せんとすることは、わが党はもとより、米作農民はとうてい理解することのできない暴挙であります。どうして改悪をしなければならないのか。特に米価審議会委員構成については了解することのできないものであります。自給の確保ができれば輸入制限すべきであると思います。将来、国民の主食が投機の対象となるような制度の後退は、断じて許されないと思うのであります。  質問いたしたい第三は、計画生産の樹立であります。  申し上げるまでもなく、農産物は消費の弾力性に欠けた商品であります。政府は、選択的拡大を表看板として指導の責任を回避しております。その結果、生産過剰となった場合は市価は大暴落をして、経営収支は破壊されるのであります。生産が減退すれば暴騰するという非近代的な悪循環を繰り返し、安定した生産供給が阻害されておるのであります。他方、このような原因から累積する農家負債は、農産物の価格高騰の要因ともなっております。近代的生産と流通は計画生産を基調とすべきであり、無責任な選択的拡大は改むべきであると思います。  最後に、本年度の輸出のうち十五億ドル程度は、直接間接のベトナム戦争の特需に依存しておると考えます。アメリカのドル防衛は、国際経済協定を無視した輸入制限や課徴金等の方法をとろうとしております。さらにこれからは、後進国の工業開発も進むでありましょうが、いずれの要素をとってみても、将来のわが国経済にはきびしいものであります。外務大臣はさきの所信表明の中で、自給経済失敗すると表明しておりますが、私は、自給を無視した経済こそ経済の危機をさらに深刻化すると思います。特に、国家の主権を維持する第一の要件は、食糧の自給確保が先決であることを銘記すべきであると思います。  以上の諸点に対する御見解を求めて、私の質問を終わります。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇
  10. 佐藤榮作

    ○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 美濃君の御意見拝聴いたしましたが、私に対するお尋ねは、高度経済成長下における農業をいかに見るか、こういうことでございます。  お答えをいたします。御指摘になりましたように、高度経済成長下におきまして、農業はこれについていけない、おくれておる、そういうことで、御指摘になりましたよらな幾多の欠陥を実はあらわしております。もともと、古来から農は国本だ、かようにいわれております。今日におきましてもやはり農は国のもとであります。したがいまして、この農業を、経済成長におくれをとらないよう各種の改善をはかっていくこと、これが、かつての農業基本法、皆さま方が御制定になりました農業基本法の命ずるところであります。その方向に向かって、いわゆる農業近代化効率化をはかっていく。これをもっと平たく申すならば、生産性を高めるばかりでなく、産業としての農業を育成していく。そこに農業所得増大があり、また、農業従事者の福祉の向上があると思います。かくして初めて魅力のある農業として、産業として、これが発達するのでございます。いろいろ御指摘になりましたように、後継者を確保することも困難だ、かように言われまするが、魅力のある農業として初めて後継者も獲得し得ることになるだろうと思いますし、また、都市集中の傾向はありましても、生産性の高まることによりまして、産業としてのりっぱな農業がここに現出するのであります。これは農業基本法の命ずるところであります。われわれはその方向に向かって、さらに努力を続けるつもりであります。(拍手)   〔国務大臣西村直己登壇
  11. 西村直己

    国務大臣西村直己君) いろいろ御意見はありましたが、確かに、おっしゃるように、日本の農業を取り巻く諸情勢は、きびしいもののあることは、私も受け取ります。それは国際環境におきましても、それから同時に国内におきましても、先ほど白書で御報告申し上げましたように、必ずしも自立育成、いわゆる農業だけで食える——農家外の兼業も相当ふえております。そこで政府といたしましては、この現実を踏まえながら、できる限り、中核としての自立経営農家を育成すると同時に、兼業あるいは零細農を切り捨てるという考えはございません。むしろ、協業助長をしながらやっていく。そうして大事な生産基盤としての農村というものを全体的に盛り上げていく、こういう考えでございます。  そこで、大事なことは、土地基盤と申しますか、構造政策中心になります規模拡大、それにはいろいろな手段もございますが、特に中心になりますところの農地流動化、これも今回は国会におきまして御審議を願って、農地効率的な利用というものを、法改正をすることによってつとめておるわけでございます。農業におきましては、われわれは、これからも生産、価格、構造におきまして、できるだけ妥当な政策を進めてまいりたいと思います。  なお、主要食糧の問題につきましては、これは何と申しましても国民の大事な食糧でございますから、安定確保ということが大事でございます。したがって、これらの諸制度の取り扱いにおきましても、慎重に配慮をしてまいりたい考えでございます。(拍手)   〔国務大臣水田三喜男君登壇
  12. 水田三喜男

    国務大臣(水田三喜男君) 経済成長につれて、農業中心とする第一次産業部門の就業人口の比重が低下していくことは、これは諸外国にも見られる一般的な現象でございまして、また、需要構造の変化によって輸入依存度が高まることも、それ自体、農業政策失敗というわけにはまいらないと存じます。  近年、いわゆる農家所得がふえて、都市に対する農家所得格差が非常に縮小しているということは、非常にいいことと存じます。しかし、問題は、農家所得がふえるということではなくて、農業所得の水準をいかにして向上させるかということが、これからの農政問題の中心課題であると存じます。そういたしますと、何としても農業基盤の整備、それから構造の改善近代化の促進、このことが、これから最も重要な農業に対する施策ではないかと考えております。(拍手)   〔国務大臣三木武夫君登壇
  13. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) どこの国でも、今日、自給自足経済によってやっていける国はない。もうどこにもない。ことに日本のような資源の乏しい国においては、どうしても、貿易、資本、技術の積極的な国際交流を通じて経済発展をはかるより方法はない。ただ、美濃君の言われるように、米のごとき主要食糧に対する安定的な供給を確保するということは、御指摘のとおり必要だと思います。しかし、近時国民の食生活に変化が起こって、あるいは小麦であるとか大豆であるとか飼料作物などは輸入増大し、将来においてもこの輸入というものは、やはりますます増大傾向にあると思いますから、したがって、私は、自給自足経済という一つのプリンシプルとしてそういうことを考えるべきではない。米、農産物などに対しては、いろいろな角度から考える必要があっても、自給自足の経済ということは日本の発展を阻害するものである、こういう考えでございます。(拍手)     —————————————
  14. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) 稲富稜人君。   〔稲富稜人君登壇
  15. 稲富稜人

    ○稲富稜人君 私は、民主社会党を代表いたしまして、この際、昭和四十二年度農業動向に関する年次報告並びに昭和四十三年度において講じようとする農業施策に関して、若干の質問を行ないたいと思います。(拍手)  農業白書並びに農業施策文書の提出は、農業基本法制定以来、今回で七回に及んでおりますが、私が毎回これを通読して感じますことは、これは単なる官僚的作文にすぎないのであって、これによって農業に運命をかけた全国の農民の心情に訴え、彼らをして感奮興起せしめる何らの気魄も政策も全くくみ取ることのできないということであります。私は、ここでこの白書の枝葉末節の内容について議論するつもりはありませんが、ただ、この機会を利用して、最近における農業基本的姿勢はいかにあるべきであるかにつき、総理並びに農林大臣の忌憚のない御見解を伺っておきたいと存ずるのであります。  今日、私たちが政府施策を拝見して最も憂慮にたえないものは、政府は、一体、日本経済の中において農業をいかように位置づけされようとしておられるか、その御意図が一向にはっきりしないということであります。  いまや日本経済は、国民の勤勉と努力によって確かに発展の方向にあり、国民生活の水準も上昇を示しております。しかし、世界の政治経済情勢は、ようやく安定から激動の時代へ突入しようとする状態の中で、政府は、日本経済の一環である農業を全体としてどちらの方向へ引っぱっていこうとされているのであるか、すなわち、拡大縮小か、前進か後退か、私をして端的に言わしめるならば、政府は、わが農業の撤退作戦をひそかに指導されているのではなかろうかとさえ感ぜられてならないのであります。(拍手)  私たちが大局的立場において今日の農業動向を観察いたしますると、明らかに底辺において相つながっている二つの問題点を発見するのであります。  その一つは、農業人口減少農地の壊廃、作付面積の減少兼業農家増大であります。他の一つは、農業生産をはるかに上回る食糧需要増大食糧農産物輸入の激増であります。  農業基本法制定の究極の目的は、申すまでもなく、農民所得や生活が他の産業分野で働く人々と均衡がとれるような諸般の施策を国に義務づけたものであります。今日、幸いにして、農家所得は伸び、生活水準格差縮小してまいりました。しかしながら、それは政府農業基本法を忠実かつ熱心に実行した結果ではないのであります。政府は、米価の引き上げにも抵抗してまいりましたにもかかわらず、全国農民の正当な生存権を守るための要求にやむなく屈せざるを得なかったのであります。かくして、農産物価格は過去七年間に六〇%余上昇いたしました。それによって、農民の他産業従事者との間の所得の開きは、かろうじて若干の改善を見たのであります。しかしながら、その農家所得増大をもたらした最大の理由は、兼業収入の増加であります。兼業農家の割合は、すでに八〇%をこえたといわれておるのであります。  一方、農業就業人口は激減を続けております。総理府統計局の最近の発表によりますると九百六十六万人、総就業人口に対する割合は一九・三%ということであります。この分で進みますると、ここ十カ年を出ずしてわが農業人口は五百万人、総就業人口に対する割合は一〇%の線にまで減少するでありましょう。これは世界の歴史にもまれに見る超スピードであります。これらの流出人口は、当然二次部門、三次部門で働くことになりますから、わが国産業構造は、労働構成に関する限りは高度化したということができましょう。しかしながら、私たちは、このような趨勢を全く手放しで喜ぶわけにはまいらないのであります。それには二つの理由があります。  第一点は、農業人口減少農家戸数減少に結びつくことができないということであります。農業白書によりますると、現在の農業戸数は五百五十万戸、うち兼業農家は八割であります。したがって、農業人口が五百万人に減ると仮定いたしましても、兼業農家の脱農政策が伴わない場合には、農家戸数は引き続き四百万戸から五百万戸の間ということになり、わが農業経営の実態は、依然として明治以来の相も変わらぬ小農、零細経営の域を出ないということになるのであります。(拍手)  そこで、私の心配する第二点は、このような農業構造わが国食糧事情に与える深刻な影響であります。世間には、金さえあれば食糧は国外から買ってこられるのではないかというような成金根性の暴論を吐く者も少なくないのであります。しかし、今日の世界が直面している二つの大きな危険は、戦争と飢餓の恐怖であります。さらに最近には、これにドル、ポンド及び円の危機が加わりました。あの強大な経済力を誇るアメリカでさえ、ベトナム戦争に手を焼き、ドル防衛に狂奔せざるを得ない情勢に追い込まれているのであります。後進国家の貧困と飢餓に基づく政治不安が、いつ何どき暴力革命に転化するかわからないこの時期において、しかも、アメリカの食糧ストックは底をつき、共産圏諸国家は常時数百万トンの食糧輸入を余儀なくせられている状況を目前にして、総輸入額の二四%、二十三億ドルにも達する食糧農産物輸入に貴重なる外貨を支出せざるを得ない今日のわが国の実態を、総理はいかなる感触でごらんになっておるのであるか、お伺いしたいと思うのであります。近い将来に、金はあっても農林物資の輸入は恵うようにならないというような事態が到来しないとは、だれが保証いたすことができましょうか。政府がこういった情勢を深刻に認識し、食糧自給の方向へ政策転換を断行し、有効適切な措置を講ぜられない限り、農林物資の輸入圧力が日一日と深刻化することは火を見るより明らかなことであります。  前に述べましたように、わが国農業生産を担当する農業人口並びに農業生産の場である耕地の利用率は、量及び質の両面において急速に低下ないしは悪化していることを農業白書は繰り返して述べておるのであります。今日、いわゆる裏作はほとんど放棄せられております。一方、水産物の水揚げ高も、七百万トンの線で完全に頭打ち状態であります。さらに、生活の近代化に伴い、畜産物需要増大に著しいものがありますが、これまた生産は伸び悩みの状態にありまして、年々輸入増は顕著であります。脱脂粉乳、バター等の指定乳製品の輸入は、すでに四十万トンにのぼっているのであります。わが国食糧需給は、その実態を洗ってみれば、以上述べましたごとく、きわめて危険な綱渡りをしているのでありまして、それが端的に食糧自給率の低下となってあらわれているのであります。農業白書には、昭和四十一年度の食糧自給率は八一%であったと記載されておりますが、この数字には、かなり問題があります。  第一には、食糧自給率の計算にあたっては、飼料の輸入額と畜産物の国内生産額は、ともに除外されておりますが、飼料の輸入がストップいたしますると、鶏卵、鶏肉、豚肉、牛乳等の生産は、一瞬のうちに崩壊する危険を蔵しているのであります。  第二には、政府発表の数字は価格計算に基づいておりますが、これをカロリーによって計算いたしますると、わが国食糧自給率は、おそらく六五%前後であろうというのが、専門家筋の見方であるのであります。  今日のイギリスの経済的逆境は、そもそも何に基因するとお考えになっておりますか。その原因は、一つには、間違いなく、食糧農業政策失敗にあったといわなければならないのであります。農業人口実に四%、食糧自給率四五%、この異常な産業構成が、ばく大な食糧輸入を余儀なくさせ、それが圧迫材料となって、工業原材料の輸入が停とんする。さらに生産性の高い重化学工業の振興を妨げる、輸出不振、経済の低成長、国際収支の慢性赤字、財政不健全、ポンドの弱体化、こういった悪循環が、イギリス経済を窮地に追い込みました。今日日本が、このイギリスの轍を踏むことはないとだれが断言し得ましょうか。農業人口は五百万人、その多くは老人や婦人であります。農家戸数は五百万戸、その多くは兼業農家であります。日本人の食糧の過半を外国に依存し、外貨収入の半分以上を食糧のために支払う、こういった最悪の事態の到来を日本の農業の将来に予測することは、取り越し苦労もはなはだしいと何人が断言し得ましょうか。私は、わが国民経済国民生活の前途に、ひそかなる不安を感じているものであります。その徴候は随所にあらわれております。現に、総輸入の四分の一は、食糧農産物の慢性的な輸入に充当されております。食糧輸入硬直化し、わが国経済の構造的な部分をなしております。国際収支の安定性は常時脅かされ、外貨準備は先進諸国間では最低であります。早晩、それが経済成長を制約し、国民生活向上を阻害する要因となるのであります。私が、冒頭において、いまこそ日本経済の中における農業の位置づけを明確にし、その向かうべき方向を確立しなければならないと訴えましたゆえんのものは、そのためでございます。  巷間伝えるところによりますると、総理は、日本の農家はオール兼業化に向かうべきものと信じておられるとのことであります。兼業農家をつくることに血道を上げることは、低生産性農業に片足をかけた低賃金労働者を確保するためであります。よって、財界や経済界は大いに賛成しても、しかし、それでは農政不在といわなければならないのであります。(拍手生産者代表、消費者代表を米審から追放した倉石前農林大臣、西村現農林大臣の方針は、まさに低米価、低賃金の資本家的発想そのものでありまして、農家のオール兼業化論と一脈相通ずるものがあると考えられまするが、総理はいかにお考えでございますか。承りたいと思います。(拍手)  農林省は、昨年構造政策基本方針を決定いたしました。今次の農業白書におきましても、構造改善の急務なるを説いております。すでに過去十年にわたって、農林省は構造改善事業を実施し、すでに二千億円に近い犠牲を農民にしいております。しかるに、前述しましたように、わが国農業構造にはほとんど見るべき質的向上の成果をあげていないのであります。それは、歴代自民党内閣に、日本農業の将来に関する明確なビジョンがなく、安易な政策で日々を糊塗してきたからであると申しましても決して過言ではないのであります。(拍手)  いまや、都市文化の影響は、日本列島の津々浦々の農山村にまで浸透しております。今後、漫然とした安上がり農政、他力本願農政に終始しておりますると、早かれおそかれ日本の農業はオール兼業化どころか、オール蒸発のうき目を見ることは、きわめて明瞭であります。  かくのごとき理由にかんがみ、私は、危機を迎えつつある日本農業の防衛と発展のために、数点の積極的提案をいたし、これに対し総理並びに農林大臣の御答弁をわずらわしたいと存ずる次第であります。  第一点、日本農業体質を強化するには、農業生産基盤拡大する以外にありません。そのためには、やはり公共投資あるいは財政投融資の画期的な増額が必要であります。そこで政府としては最小限度五兆円を目途として、今後十カ年間にわたり、毎年五千億程度の追加投資をなし、これによって農用地を最小限現在の二倍程度に拡大する必要があると考えますが、政府にその勇気はないかということをお尋ねしたいと思うのであります。(拍手)  第二点、兼業農家対策を兼ねた農業構造政策を真剣に考慮すべき時期が到来していると思うのであります。  その対策の一つとして最も重要なものは農地法改正であります。しかし、それは政府政策が、すでに述べましたように、農用地の開発を軸として、積極的かつ前向きの政策転換を行なうことが条件であります。その上で、現行法の精神である自作農主義は堅持し、しかも耕作者の権利はこれを強く擁護しつつ、小作料もできるだけ低位に維持することが必要であります。その理由は、農業人口の急減による農業生産力の低下を防止しながら、あわせて農業経営者の経営規模拡大を可能とする方向をこの際確立することが絶対不可欠だと信ずるからであります。  対策の第二は、農村における社会保障政策の確立であります。特に農民年金制度の創設によって、単なる救貧政策ではない、農業の構造改革につながる社会政策の全面的展開が、この際急務であると信ずるのであります。農民が人間として尊重される政策が確立されないで、どうして苦しい農作業に執着することができましょうか。政府は真剣に考慮せられたいのであります。  最後に第三点、農産物価格政策、特に米価政策には、農民所得向上対策としては一定の限度があることを私も認めております。しかし、性急に低米価政策をとることには絶対反対せざるを得ません。何ゆえならば、農業構造政策がその効果を発揮し、農業生産性向上がほんとうに実現する以前に、現行の食管制度の根幹をくずせば、日本農業は一気に衰亡に向かうからであります。したがって、政府としては、長期政策の一環として、長期計画に基づき、農業者自体が米価を決定する仕組みを整備しながら、徐々に現行制度の改廃に進む方策を検討することが賢明であると思うのであります。  そこで、当面の問題といたしましては、当面の米審構成の問題についても、政府はかたくなな態度を捨てて、一たん白紙に戻して、あらためて出直しをはかるべきであると思うのでございまするが、これに対する総理の明快なる御答弁を求めまして、私の質問を終わる次第でございます。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇
  16. 佐藤榮作

    ○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 稻富君にお答えいたします。  高度経済成長下におきまして農業生産性を高めるために、ただいまちょうど農業構造改善の経過の途中にある、かように私考えております。したがいまして、いろいろの状態が農業界に現出しております。一方におきましては、いわゆる専業農家、この近代化機械化等が進んでまいりまして、生産性も非常に伸びておる喜ぶべき現象もございます。しかしながら、反面におきまして、労働力の流出、これは都会に主としてでございますが、また、土地、耕地の、御指摘になりましたように、利用の低下の問題もあります。まあ、そういう観点から、農業生産も落ち、また農家の収入も下がっておる、こういう社会問題、政治問題を引き起こしておる、かようにも、御指摘になりましたとおり、私も見るのであります。このただいま申すような生産が落ちてきた結果は、これをまかなうための輸入増加となり、あるいは自給率の低下、こういうことにもなるのであります。  そこで、この食糧政策あるいは農業政策基本といたしましては、食糧の安定的かつ効率的な供給を確保する、こういうことが農政の重大課題である、かように私どもは考えております。この意味におきまして、農業基本法が制定され、同時に構造改善政策、これと積極的に取り組んでおるのであります。これが幸いにして成功いたしますれば、いまの専業農家に見るように、農業所得はふえていくということになります。現実といたしましては、兼業農家が非常にふえておるのでありますので、いわゆるオール兼業化論を私はとるものではありませんが、兼業農家の多いこの状況から、やはり農家収入がふえること、これにもわれわれは意を用いなければならないと思います。農業所得をふやすことと同時に、農家所得をふやすこと、その二つを考えなければならない、かように思っております。そういう意味で、地方における新しい工業あるいは生産工場等の誘致もいたしておるような次第であります。  そこで、このわが国農業は、一体自給か安定か、あるいは前進か後進か、こういうような疑問を投げかけられましたが、もちろんただいま申しますように、自給率を高めるというような政策を今日とるわけにはなかなかまいりません。しかし、私が申しておりますように、安定供給、同時にまた効率的な食糧確保、こういう努力はせなければならない。そうして生産性向上し、産業としての農業をここに確立するということ、ここに魅力のある農業ができるのだと私は確信しております。そうして農業従事者の福祉の向上をはかっていく。そのためには、農業基本法の命ずる各種の総合的な施策を実施するということだと思います。  いろいろ具体的に提案をされましたが、要するに、農政を推進するにあたりましては、農業体質を強いものにして、そうして競争力を強化していく、ここに力を集中していかなければならないと思います。そこで、稻富君から、土地基盤の整備に思い切った予算を投入しろ、こういうお話がございました。土地基盤の整備、これは私どももすでに採用しておることでありますが、ただいま言われましたような、十カ年間五兆円——ちょっとただいまの状態では、これにすぐ賛成の意を表するわけにもいかない、もう少し検討しなければならないように思います。  さらに、また、農地法改正等につきましても具体的に御意見を述べられましたが、これは十分ひとつ検討していくつもりでございます。  社会保障政策の問題にも触れられました。これまた、農民年金等、なまはんかなものではなしに、積極性を持ったものを考えろ、こういう御意見でございますので、そういう意味で、その御意見は御意見としてこれをひとつ私どもの今後の参考にさしていただきたいと思います。  同時にまた、米審のあり方、価格政策から米審のあり方についてお触れになりました。ただいま米審についてはすでに政府の方針を定めておりますが、この問題については各党の間でも話し合いがあるように伺っております。私は、こういう点で十分に生産者の意向が尊重されるような、これは米審の委員になるばかりが尊重というわけでもありませんので、そういう点についてもよく考えていただきたいと思います。  また、ただいまこれらの諸点について詳しい御意見をお述べになりましたので、それらの点について私がお答えをしなかった点は、これからの政策の実施にあたりまして参考にさしていただきます。お願いをいたします。(拍手)   〔国務大臣西村直己登壇
  17. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 稻富さんにお答え申し上げます。  大体、総理からお答えがあったようでありますから、要約して申し上げますが、特に農業をどう進めてまいるかという点について、稻富さんも、一番中心生産基盤の強化であると言われる。私どもとしても、公共投資について、土地改良長期計画というのを御存じのとおり持っております。現在が十カ年計画で、四十年から四十九年に対して二兆六千億円、これを五千億円ぐらいやったらどらかということでありますが、私どもとしても、ただ、金ももちろん必要であるが、同時に、どうしたらこの効率をあげていけるかということに腐心をしてみたいと思うのであります。  それから、農地法改正につきましても、ただいま総理からお話がありましたのでありますが、私どもは、もちろんこの近代化の一つといたしまして、構造改善の一環として公共投資を進めます。かたわら、やはり農地が、現実的にいろいろな賃貸借その他の少し制限を緩和することによって、ほんとうに農業をやるところへ効率的に使われていく、こういうような趣旨でございますので、農地法そのものの精神を阻害しない範囲内において今回の改正案をつくったのであります。  それから、年金の問題、農民年金につきましては、農林省内部におきまして、あるいは民間に委嘱して、農民年金問題研究会に近く結論も出ます。また、厚生省側におきましても国民年金審議会がありまして、専門部会を設けておられますので、できるだけ早く成案を得て、実施のほうへ推進してまいりたいと思うのであります。  以上が私の答弁の補足でございます。(拍手)     —————————————
  18. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) 石田宥全君。   〔石田宥全君登壇
  19. 石田宥全

    ○石田宥全君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま提案されました農地法及び農協法改正案に関し、若干の質問をいたします。  昭和三十六年政府・自民党の強行採決によって成立いたしました農業基本法をもって、政府与党は、農業発展繁栄への道であるとし、われわれは、衰微、衰退への道であり、農民生活を不安におとしいれるものであると指摘してまいったのでありますが、政府はこれをいかに評価するか。所得格差は前にも増して拡大し、また、構造政策上して規模拡大をはかり、二・五ヘクタール農家百万戸の数字的目標を掲げ、昭和三十七年に農地法を改悪して、これを遂行しようとしたのでありますが、われわれが指摘したとおり挫折し、失敗したのであります。  また、選択的拡大政策によって麦の作付を抑制したために、昨年は四百万トン以上の輸入麦に依存することとなり、畜産のごときは膨大なる外国飼料の上に若干の伸びを示したのでありますが、中心課題であります酪農は停滞し、苦悩の種となり、食肉もまた多量に輸入に依存しなければならないこととなり、わが国食糧自給度を著しく低下せしめ、これが今日の財政硬直化の大きな要因をなすに至ったのであります。  一面、専業農家減少し、兼業農家は半年以上も夫婦別れをして出かせぎをしなければならない事態が生じていることは重大な社会問題であり、かつ、人道上の問題でありまして、まさに昭和の残酷物語といわざるを得ないのであります。(拍手)  政府は、謙虚に農業基本法失敗を認め、その反省の上に立って今後の農政を進めるべきであると思うが、佐藤総理の所見を伺いたいと思うのであります。  農地法とその運営のいかんは、農業基本課題であるとともに、土地価格に影響し、国民生活に及ぼす影響はきわめて深刻であります。政府は、かつて封建的土地制度と高率な現物小作料の搾取のもとにあった農民の、文字どおり血と牢獄の犠牲によってかちえた自作農主義を放棄せんとしているが、わが国農業立地条件を無視し、農村、農業を混乱におとしいれるのみならず、土地ブローカーの暗躍を容認し、生産手段たる農地を投機の対象となし、さらに価格を暴騰せしめ、農業経営を困難ならしめる以外の何ものでもありません。小作料制限の撤廃は、農地法違反の明白である委託経営を合法化するばかりでなく、高率小作料の追認以外のものではありません。賃貸借緩和による農地流動化がはたして経営規模拡大につながるかどうかは、三十七年の農地法改悪と農地の信託制度が全然実効をあげ得なかった事実にかんがみて、全くナンセンスであるといわざるを得ないのであります。  そこで質問の第一は、食糧の自給度は低下の一途をたどっているのであるが、これに対する基本的な見解を伺いたいのであります。  第二は、小作料、固定資産税、農地価格の値上がりは農業破壊への道であると思うのでありますが、どう考えておるか。  第三は、十アール当たり六十万円、七十万円の水田を買い求めて規模拡大し、あるいは五〇%以上の賃借をして採算がとれるかどうか、実態に即して答弁をいただきたいと思うのであります。  第四は、賃借によって規模拡大し、それに合わせた施設をしても、所有権移転など返還を迫られるとすれば無効投資となると思うが、政府にいかなる対策ありやを伺いたい。  第五は、残存小作地など十年以上の小作地は、これを収益還元方式によって評価し、自作地とすべきであると思うが、どうか。  第六は、政府は、農地法をざる法化して、土地ブローカーの営利の対象としたために、土地価格の暴騰を招来したのであるが、不在地主を認め、その面積を拡大する結果ははかり知るべからざるものがあると考えられるのであるが、ブローカー介入を排除し得る方策があるかどうか。  第七は、今日の農民機械化貧乏対策として、農機具サービスセンターをつくり、農民に賃借利用の道を講ずべきであると思うが、所信を伺いたい。  第八は、草地造成並びに土地改良費の全額国庫負担による基盤整備こそが、国土保全と土地の有効利用の最善の施策であると考えるのでありますが、その所見をお尋ねいたします。  次に、農協法についてでありますが、同法第八条の趣旨を無視して、営利団体的性格が強く、中央機関は官僚化し、役員農民貴族であるとの声が強く、いたずらに資金吸い上げパイプとなり、関連産業利用されて、農民搾取の役割りを果たしているとの批判もあるが、政府は、農協を真に農民のための組織たらしむる立場から、農協の民主化をはかるよう指導、監督に自信を持って当たるべきであると思うのでありますが、所見を伺って、私の質問を終わります。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇
  20. 佐藤榮作

    ○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 石田宥全君にお答えいたします。  私に対しては、農業基本法は成功か失敗か、こういうお尋ねであります。私どもは、農業基本法の定むる生産政策、さらにまたその価格政策あるいは構造改善政策、これにのっとりまして、ただいま農業の構造改善過程の中にございます。先ほど稻富君にお答えしたとおりであります。したがいまして、もらしばらく時間をかしていだだかないと、十分の評価はできないように思います。成立の当初からこの問題に反対である社会党の方々が、ただいま、もうすでにこれは失敗だ、かように言われることは、これは私は社会党としてはわからないではありませんが、政府の政治というものはさような意味のものではございませんので、私どもは、さらに今日のこの状況のもとにおけるわれわれの政策を、農業基本法が示しておるその方向でさらにこれを充実さしていくつもりでございます。(拍手)   〔国務大臣西村直己登壇
  21. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 再々食糧の自給度の問題が出てきましたが、現在食糧の自給度は、総合自給度では確かに八一%、これが昭和四十一年でございます。ただ、これを個別に見ますと、米のごときは九四、五%になっておりますし、また、ものによりまして、鶏卵その他一〇〇%をこえているものもございます。ただし問題は、飼料については確かに問題はございます。そこで、われわれとしては、粗飼料等の増産等におきましても、できる限り努力をしてまいるつもりでございます。特にこの需要供給の関係におきましては、生活事情が変わり、また向上したために、需要も非常に旺盛である。もちろん供給につきましても相当伸びた面もあるのでありますが、これらをよく勘案しながら、私どもとしても、今後も自給率向上努力をしてまいりたいと思うのでございます。  それから、農地法改正につきまして、小作料統制の撤廃によって小作料等が上がるのではないかというような御意見が出ました。小作料につきましては、今日雇用の機会が非常に増大した現在、戦前のような高率な小作料が発生するという基盤はないとわれわれは判断するのであります。  それから、農地の価格につきましても、もちろん特殊なところはございますが、基本的には、農地生産力あるいは農産物価格等によってきまるのでございます。そこで、われわれとしまして、今回の法改正につきましても、投機的な土地取得、これはもちろん依然として認めているわけではありません。したがって、本法の改正によって価格が上がるというようなことは考えておらないわけでありまして、むしろ農地流動化促進によって、規模拡大を私どもははかってまいりたいと思います。それから、特に大事なことは、たとえば賃貸借をした場合におきましても、賃貸借でもって所有権が動いた場合におきましても、これらに対しては十分これに対して対抗するようないろいろな措置も考えられるのでありまして、われわれは農地法のことによって弊害が出たとは思わないのであります。  それから、最後に、農協の問題であります。農協が、先ほど申し上げましたように、確かに農協本来の農民のための協同組織の使命を果たし得るように、また時代に即した活動ができますように、今後とも法改正とともに指導あるいは監督を加えてまいりたい覚悟でございます。(拍手)   〔国務大臣赤澤正道君登壇
  22. 赤澤正道

    国務大臣(赤澤正道君) 固定資産税についてのお尋ねがありましたので、お答えします。  現在、農地以外の土地については、負担調整の措置を講じながら、昭和三十九年度に行なったいわゆる新評価による負担額に漸次近づけようといたしておりますが、特に農地につきましては、農業の本質にかんがみまして、その税負担を従前の税額どおりに据え置くことといたしております。したがいまして、今回の農地法改正によりまして、直ちに固定資産税の負担が増加することはないと考えますので、御了承をお願いいたします。(拍手
  23. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————  国立病院特別会計法の一部を改正する法律案   (内閣提出
  24. 山村新治郎

    ○山村新治郎君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。  この際、内閣提出国立病院特別会計法の一部を改正する法律案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  25. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) 山村新治郎君の動議に御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  26. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) 御異議なしと認めます。  国立病院特別会計法の一部を改正する法律案を議題といたします。     —————————————
  27. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) 委員長の報告を求めます。大蔵委員長田村元君。     —————————————   〔報告書は本号末尾に掲載〕     —————————————   〔田村元君登壇
  28. 田村元

    ○田村元君 ただいま議題となりました国立病院特別会計法の一部を改正する法律案につきまして、大蔵委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。  この法律案は、従来一般会計で行なってまいりました国立療養所の経理を国立病院特別会計に移すことにより、その経理を明確にいたしますとともに、国立療養所本来の使命であります結核等の医療を確保強化することに加え、成人病等の長期慢性疾患、重症心身障害、交通災害の後遺症等、最近急増しております新たな医療需要にも積極的にこたえるため、その施設の整備を計画的に促進し、あわせて経営円滑化をはかろうとするものであります。  なお、国立療養所のうち、らい療養所につきましては、その特殊性にかんがみ、引き続き一般会計において経理することといたしております。  次に、この法律案のおもな内容を申し上げますと、新たに国立療養所にかかわる経理を国立病院特別会計において行なうことといたしましたことに伴い、同会計を病院勘定及び療養所勘定に区分するほか、療養所勘定においても、施設費を支弁するため必要があるときは、借り入れ金をすることができることといたしております。  また、各勘定相互間の資産の移動に関し必要な規定を設ける等、所要の規定の整備をはかることといたしております。  なお、本案につきましては、三月二十六日内閣修正が行なわれましたが、その内容は、昭和四十三年度において暫定予算が施行されることとなりましたことに伴い、暫定予算の期間中に行なわれる収入、支出等の整理に関し所要の規定を設けることといたしたものであります。  以上がこの法律案概要でありますが、本案につきましては、慎重に審査を行ないました結果、本日、質疑を終了し、討論に入りましたところ、自由民主党を代表して山下元利君は賛成の旨を、日本社会党を代表して只松祐治君は反対の旨を、民主社会党を代表して竹本孫一君は賛成の旨を、また公明党を代表して広沢直樹君は反対の旨を、それぞれ述べられたのであります。  次いで、採決いたしましたところ、本案は多数をもって原案のとおり可決となりました。  なお、本案に対しましては、自由民主党及び民主社会党の両党共同提案による附帯決議を多数をもって付すべきものと決しました。  附帯決議の要旨は、特殊医療に対する施策の充実と国、地方を通ずる所要財源の確保につとめること、国立療養所の経営に伴う収支差額については、所要額を一般会計から繰り入れ、独立採算制をとらないこと、医師、看護婦等の職員の充足とその処遇改善並びに医療、給食、看護等の内容、特に患者食糧費の改善につとめること、いわゆる二割引き制度の廃止及び基準加算の実施にあたっては患者負担が増大しないよう措置すること、土地処分にあたっては、公共の福祉に貢献する用途への転用を優先するよう特別の配慮を行なうこと等七項目にわたるものでありまして、これに対し、水田大蔵大臣より、十分関係省と協議し、趣旨を体して善処する旨の発言がありました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  29. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) 討論の通告があります。これを許します。神門至馬夫君。   〔神門至馬夫君登壇
  30. 神門至馬夫

    ○神門至馬夫君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました国立病院特別会計法の一部を改正する法律案に対して、反対の討論を行ないます。(拍手)  佐藤総理がこの壇上より「小骨一本も抜きません」と国民に約束をいたしましたあの有名なことばがありますが、いま国民の間では、うそつきの代名詞にそのことばが使われているのであります。(拍手)すなわち、第五十五特別国会の第一の任務は、政治資金規正法を成立さして、長期自民党政権による積年の病弊をなおし、失われた国民の信頼を回復することにあったのであります。全国民の期待にもかかわらず、政治資金規正法は、現在いまもって国会に提案さえされておらないのであります。佐藤総理の「小骨一本も抜きません」というあのことばが、まっかなうそであったことに対する国民の強い憤りと不信のあらわれなのであります。(拍手)  みずからの病気の手当てさえよくできない佐藤内閣が、国民のために国立療養所を特別会計に移行するなどと言ってみたところで、しょせん、だれも信用しないのは、しごく当然といわわざるを得ないのであります。(拍手)あまつさえ、すでに前例がある。昭和二十四年に国立病院が特別会計に移されましたときにも、政府は、今度と全く同じ理由の説明と約束をしたのであります。しかし、今日、国民はまんまとだまされたことを知っているのであります。国民大衆は、この法律案の反国民的本質を鋭敏にはだで感じておるからこそ、それが五十二万人という膨大な反対署名となったのであります。(拍手)  今日、国立療養所を特別会計に移管することは、佐藤内閣の社会保障後退の象徴的なあらわれであります。国立療養所という、結核や成人病、重症心身障害、筋萎縮症など、国が積極的に援護の手を差し伸べなければ生きていけない患者に対して、受益者負担という冷酷無比な政策を押しつけようとする政府のこの基本姿勢に対して、強く反対の態度を表明するものであります。(拍手)  国立療養所の特別会計移管は、政府の誤った経済財政運営失敗によってもたらされた財政危機を国民生活にしわ寄せをし、その犠牲において乗り切ろうとする政策の一環なのであります。さきに国民健康保険の国民負担を強引に引き上げ、さらに一連の公共料金の値上げを行ない、いままた、不幸な国民の療養を脅かそうとしていることは、断じて許すことができないのであります。(拍手)  第二に、国立療養所の特別会計移管は、次の三つの重大な危険を持っていることを指摘しなければなりません。  その一つは、国立療養所が戦後から今日まで果たしてきた公的医療機関としての特質が失われることであります。医療費二割引きの制度は、その特質からとられた措置であったのに、これが廃止され、逆に基本料金が徴収されることによって、新たに入院する者で現在の六百四十円が千百五十円となり、入院中の者であっても九百二十円になるのであります。さらに、国立病院の例でも明らかなように、高級な差額ベッドの増設となって、保障されなければならない医療の場から、これら不幸な人々を締め出す結果となり、長期療養患者に対する国の責任の放棄であるといわざるを得ないのであります。(拍手)  その二つは、地方財政、各種保険財政を圧迫することであります。現在、入療患者四万二千名のうち六二%が生活保護法、結核予防法の適用を受ける公費負担患者であって、そのらち二割を地方自治体が負担しておるのであります。医療費二割引き制度を廃止し、各種基準料金を徴収することは、当然地方財政、各種保険財政にはね返ってくるのであります。一方、生活保護法、結核予防法、精神衛生法に対する国の締めつけによって、地方自治体はその適用人員の削減を行なわざるを得なくなり、二重、三重に弱い患者を締めつける、まさに非人道的制度といわなくてはならないのであります。(拍手)  その三つは、収支のバランスを目的とするところから、労働条件の強化を招くこととなり、患者に対する医療サービスが低下することになることであります。また、国立療養所の縮小整理によって、これまでの僻地医療の役割りを放棄することとなるとともに、施策のやり方によっては、二万三千百人の医療労働者に対する人員整理が予想されるのであります。  第三には、従来どおり、一般会計で国立療養所の会計を運営することを強く要望するものでありますが、御承知のように、昨日をもって昭和四十三年度予算は成立したのであります。本特別会計法案は悪法であるがゆえに、国民的反対によって、予算成立前に肝心の本法案が成立しないという、前代未聞の重大な事態を招くに至ったのであります。その責任はあげて政府・自民党にあります。(拍手政府は、患者や医療労働者に対して、いささかのしわ寄せもしないよう、早急に措置すべきであることを強く警告し、要求するものであります。(拍手)  第四には、さらに重要なことは、本特別会計法案は、社会保障制度議会設置法第二条第二項に明らかに違反するものであります。大蔵省当局が、これをただ単なる会計制度上の問題として片づけようとする態度は、いみじくも社会保障に対する政府の軽視を余すところなく露呈したものであります。もし、かりに違法でないとしても、政府がかってに制度基本にかかわる問題を軽々に改変することは、設置法の設立の趣旨に反するばかりでなく。民主政治の否定であります。(拍手政府当局はその非を率直にわびるとともに、本法案を撤回して、あらためて制度議会にかけることを要求するものであります。(拍手)  最後に申し上げなければならないことは、今回の改正案に伴って生じた重大な政治責任についてであります。  佐藤内閣は、昨年十一月の日米共同声明以来、その反動性を隠そうともせず、倉石問題に見られる憲法否定、防衛問題に見られるあらわな軍国主義、汚職による政治不信など、重大な失態を重ね、国民からきびしい批判を受けてきたのであります。そしてついに年度内に予算成立をなし得ないばかりか、国民こぞって反対する本特別会計法案を強行しようとして予算執行の空白を生むという歴代内閣最大の失態を重ねたのであります。(拍手)予算執行の空白によって、国立療養所の職員や患者に犠牲を負わすことは絶対に許されません。政府は、わが党の正しい要求を認めるとともに、直ちにその全責任において、本国立病院特別会計法改正案を撤回し、しかるべき措置をされることを強く要求して、反対討論を終わるものであります。(拍手
  31. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。  本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  32. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) 起立多数。よって、本案は委員報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  農林漁業金融公庫法及び農業信用保証保険法   の一部を改正する法律案内閣提出
  33. 山村新治郎

    ○山村新治郎君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。  この際、内閣提出農林漁業金融公庫法及び農業信用保証保険法の一部を改正する法律案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  34. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) 山村新治郎君の動議に御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  35. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) 御異議なしと認めます。  農林漁業金融公庫法及び農業信用保証保険法の一部を改正する法律案を議題といたします。     —————————————
  36. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) 委員長の報告を求めます。農林水産委員長足立篤郎君。     —————————————   〔報告書は本号末尾に掲載〕   〔足立篤郎君登壇
  37. 足立篤郎

    ○足立篤郎君 ただいま議題となりました農林漁業金融公庫法及び農業信用保証保険法の一部を改正する法律案につきまして、農林水産委員会における審査の経過及び結果につき御報告申し上げます。  本案は、最近における農業動向に即応し、農畜水産物等、生鮮食料品の流通改善を含め、農業近代化のための諸施策を推進するため、農林漁業金融公庫の融資制度として新たに総合資金融通制度並びに卸売り市場近代化資金融通制度を設け、総合資金制度に関連する運転資金の債務保証等について農業信用保険協会が保険を行なうことができるよう改正しようとするものであります。  本案は、去る三月十九日提出され、四月二日から引き続き熱心な質疑が行なわれましたが、この間、卸売り市場関係及び金融関係の参考人から意見を聴取する等、慎重審議を行なったのであります。  かくて、本日、質疑を終了し、採決を行ないました結果、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと議決された次第であります。  なお、本案には、農業金融は系統金融と制度金融が有機的な関連を保持しつつ運営すべきであること等の趣旨の附帯決議が全会一致で付されていることを申し添えます。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  38. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) 採決いたします。  本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  39. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) 起立多数。よって、本案は委員報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————
  40. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) 本日は、これにて散会いたします。    午後四時三分散会      ————◇—————  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         外 務 大 臣 三木 武夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         農 林 大 臣 西村 直己君         自 治 大 臣 赤澤 正道君      ————◇—————