○横山利秋君 私は、
日本社会党を代表して、
政府提出の
昭和四十三
年度一般会計予算をはじめ各
予算に対して
反対、
北山愛郎君外十三名
提出にかかる
編成替えを求める
動議に
賛成し、以下その
理由を述べて、同僚
諸君に訴えたいと思います。(
拍手)
われわれは、毎
年度予算の重要な
審議に参加してまいりましたが、本年ほどさまざまな問題が起こり、また本年ほど
予算案の中に
日本の歴史的な問題が提起された年はないと痛感するのであります。
その第一は、倉石前
農林大臣の憲法無視の発言から起こった十数日の空白でありました。私は、全野党の一致結束した戦いによって、閣僚が憲法を守るべき条項を定めた憲法第九十九条を議会が再確認し得たことを心から喜ぶものであります。(
拍手)しかしながら、この問題の本質は、倉石個人にあることもちろんでありますが、実は
佐藤内閣並びに自由民主党の体質に根ざしていることは疑いをいれない問題であります。(
拍手)すなわち、憲法改悪を心に秘めながら、それを当面は聖洞化し、時期来たりなば衣を脱ぎ捨てるのではないかとは、
国民のひとしく不安としているところであります。この際、わが党が
国民を通じて
政府・与党に対決を迫っておりますように、参議院選挙を通じ護憲か改憲かの
態度を明らかにして、
国民に信を問うことが倉石問題の本質を明らかにする根本である。
政府・与党は、いさぎよくこの挑戦に応ずべきだと痛感する次第であります。(
拍手)
第二は、
予算審議を通じて明らかにされた
防衛庁内部の汚職である。また
予算運用の乱脈である。また軍需産業に対し、過去五年に将官百六十四名という驚くべき大量天下り人事による
防衛庁と防衛産業の結託の疑惑である。さらに
防衛庁内部における憲法、国際法、
安保条約を無視した
演習や、あるいは日米協定や核研究や毒ガス研究の疑いであります。(
拍手)
防衛庁長官
自身が、
予算委員会で、
防衛庁は百鬼昼行の疑いがあると言明されましたように、もはや
防衛庁は深い黒い霧に包まれている。
国民の血税を
一般会計四千二百二十億、債務
負担行為など千七百九十六億、合計六千億を使って国の安全を守るというべき
防衛庁が、まさに
日本の政治を腐敗させる温床となりつつあることは言語道断といわなければなりません。(
拍手)
予算審議の最中に
防衛庁の高官が自殺をする、あるいは逮捕されるがごときは、この
予算案の背景がいかにどろと霧に包まれているかを証明するものといわなければならぬのであります。(
拍手)
第三は、
財政硬直化から始まり、次いで深刻な
ドル不安の上に立ったこの
予算案が、危険な対米
経済協力の坂の上から
経済混乱の谷底へ転落していく可能性のあることであります。
ドル不安は、ベトナムのどろ沼の中から始まっている。そこから足を抜かなければ解決できないことは、だれの目にも明らかである。それにもかかわらず、
佐藤内閣は、
アメリカのベトナム
政策を支持するがゆえに、
ドルの
価値維持に
協力しなければならぬ羽目にみずからを追い込んでおる。今後、米国の要請にこたえて、次々と、債権引き受け、
兵器購入、
輸入課徴金、東南アジア、ベトナム援助の肩がわりを引き受けざるを得ず、いまや、
ドルは
ドル経済史上未曾有の深刻な
危機に立っているが、それにもかかわらず、
政府は耳をおおって無為無策に終始して、
ドルと無理心中をさせられる
日本経済の
危機が始まっているのであります。(
拍手)それとともに、安保体制のしがらみは、日米間に軍事
政策と
経済政策が一体化、一心同体となってきましたし、
中小企業や庶民の生活に具体的なしわ寄せを与える結果となってまいりました。
第四は、一方で
物価をつり上げ、他方で驚くべき
間接税、酒、たばこ、定期割引などの大
増税をしようとしていることが
予算の重要な骨格となっていることであります。
皮肉にも佐藤
総理は、池田
内閣当時、その
高度成長政策を非難して世に問うた人である。その人が
総理になって以来、
政策は改められない、いな、むしろ
物価は歴年その当時以上にウナギのぼりになっているではありませんか。明
年度は、四・八%の消費者
物価の値上がりを
政府は見込んでいる。
予算委員会で
総理大臣は、四・八%は
政府としてこれにぜひとどめる
政策目標であると明言すると、すぐそのあとで
経済企画庁長官が、十月ごろの
消費者米価の値上がりは見込んでいないと言うのであります。したがって、他の授業料、
交通料金、環境衛生料金から家賃や動物園、博物館に至るものを含め、金融機関やその他の調査機関が指摘しておりますように、おそらく六%以上の物
価値上がりとなるでありましょう。したがって、五分五厘の郵便貯金や銀行の預金をしても、
物価のほうが高くなっていくのであります。
予算委員会で指摘いたしましたように、最近では、預金をしても損、借りたほうが得という思想が広がりつつある。庶民は、預金や生命保険の掛け金をして、結局、物
価値上がりで損をする、大
企業は、借りた金を物
価値上がりを利用して、いながらにして得をするという時代に入ろうとしている。(
拍手)貯蓄と金利と
物価の悪循環が始まる要素は、まさにこの四十三
年度予算の根底となっていると思うのであります。(
拍手)
第五は、この明
年度予算は、戦後最大という
ことばがさらに更新される
中小企業の不渡り
倒産に対して、何らの根本施策を用意してないことであります。
中小企業庁みずからが認めるように、
中小企業は、今日、流通革命、人手不足、
金融引き締め、
特恵関税、
ドル防衛から開放
経済等の波を受けて、まさに
中小企業存立の基盤をゆり動かされるまでに立ち至っているのであります。これに対して、この
予算は何をしようとしているのでありましょうか。冷酷きわまる放任
予算である。農民もまた同じでありまして、
米価審議会からの農民代表追い出しの
政府の意図は明白である。低
米価で農民と消費者をけんかさして、食管法を骨抜きにしようとする悪質なものといわなければならぬのであります。(
拍手)
第六は、エンタープライズやB52の沖繩常駐、また、プエブロをめぐる極東
情勢の緊迫した
情勢について、
予算委員会をはじめ、
国会で、
総理以下の示した
態度であります。
佐世保の市民が示した
態度、沖繩全県民の燃え上がるような常駐
反対、プエブロ事件による漁民の不安等は、すべて
政府の対米一辺倒の施策に対する非難の集中的なあらわれであります。(
拍手)それにもかかわらず、エンプラ寄港を認め、B52の常駐を許し、プエブロでは
アメリカをかばって失態を演じた
佐藤内閣は、
中国貿易に対しても頑迷な
方針を依然としてとり続けておる。野党一致の核三原則の提案についても、
理由にならぬ
理由をあげて、みずからの言明に責任をとろうとしない。核
兵器をつくらず、持たず、持ち込まずと言明しながら、
安保条約にこと寄せて決議を拒否するゆえんのものは、沖繩を含め、核
兵器をある時期に持ち込もうとする
総理の秘められた野心があるにほかならないと考えざるを得ないのであります。(
拍手)
佐藤内閣のこのような危険な右寄り
政策については、
国民の批判が集まりつつある。また革新勢力ばかりではない。与党内部からほうはいとした批判がある。そして、それは近い将来において爆発し、
総理自身骨身にこたえなくてはならないときがぐるに違いありません。(
拍手)
以上の諸点は、
予算案審議の中で明らかにされた諸点でありますが、今後さらに各
委員会の
審議の中で、
ドル依存と
軍事化、
大衆生活圧迫の戦後最悪の
予算の全容が、余すところなく
国民の前に明らかにされるでありましょう。
その意味からも、
北山愛郎君外十三名の
社会党が
提出しておりまするところの
政府案
撤回、
編成替えを求める
動議に
賛成の意見をいささか申し述べたいと思う。
その基本となるのは、この激動する内外の
情勢を正しく把握するとともに、働く
国民の名において、誤った
経済財政
政策を根本的に転換することを要求し、きわめて具体的、建設的であります。
その重点の第一は、
危機に立つ
国際収支の
改善策であります。
政府の安易無策、しかも、くずれいく
ドルに
協力の立場をもってしては、円を守り、
経済のこの
危機を乗り切ることは不可能であります。
輸入を誘発する割合の高い大
企業の
設備投資抑制は厳重に行なうべきであり、特
兵器の
輸入などは断じて直ちに停止しなければならないことは当然であります。(
拍手)
アメリカに
輸入課徴金の陳情をするよりも、断固たる
態度で交渉をすべきであります。この際、
吉田書簡の廃棄を宣言し、
ドル依存の
貿易構造から中ソを含む
社会主義貿易を全力をあげて
拡大すること、
海外経済協力は、先ほども話がありましたように、真に後進国の社会開発と住民福祉の向上を正しく見詰め、そのルートの上でなされるように着実に行なうことが生きた
協力となるのであります。
第二は、
防衛庁予算の大削減は、けだし当然のことであり、腐敗と汚職、
予算乱用等の疑惑に包まれた
防衛庁は大粛正を断行すること、人事を刷新すること、財政の弾力性を取り戻すためにも思い切った削減をすることは、
国民の強く期待するところであると確信してはばからないのであります。(
拍手)
第三の、国、
地方にわたる大
企業、大口
所得者、不労
所得者中心の毎年一兆円に達するであろう税の特別
措置を大
整理し、税を安く、公平に、わかりやすくすることは、ただに財政のためのみならず、納税者の理解と
協力を得、また、徴税の第一線にある職員の
諸君の仕事をやりやすくするゆえんでありまして、積年の問題であり、これを要望する声は天に満ち、地に満ちているのであります。(
拍手)
第四は、生活の安定こそ政治の最終目的であるとの観点に立ち、万難を排して公共料金の値上がりをとどめ、独占価格や地価の値上がりを押える総合的な
物価安定策を優先実行しなければなりません。公取を
強化し、下がるべき独占価格を放置しているものは調査し、引き下げるべきであります。
かくして、税や
防衛費によって捻出した財源は、
赤字国債の解消とともに、
住宅、
交通、社会保障、
教育、
中小企業など、今日まで犠牲を受けた民生の安定に指向することこそ
国民の最も要望するものであります。
第五に、私どもは、まやかしの
総合予算主義に
反対をいたします。なぜなら、財政法そのものが本来
総合予算主義によるものであって、今日までの
政府のやり方が間違っているのです。必要不可欠の
補正予算は当然上程さるべきであって、
政府がこの
予算を通じて賃金と
米価を押えつけようとしている陰謀は、許されないことであります。
また
予算の仕組みは、今日複雑にして、乱用や逸脱、
国民の目をごまかすやり方が随所にあることは、すでに各方面の指摘されたところであり、この際、憲法、財政法の規定するところに従い、
国会を通じ、わかりやすく
国民に公開されるという原則は、全く私どもは
賛成をするところであります。
私は、以上、
予算に
反対する
理由とわが党の主張を明らかにしてまいりました。いまや
ドル不安は世界にみなぎり、他方、
ベトナム戦争における
アメリカの勝利を考える人は、おそらく世界じゅう一人もおりますまい。(
拍手)
アメリカの公定歩合の引き上げ、金の交換法の廃止、金取引の停止や国際
会議の急遽招集など、
ドルの国際金融は
混乱の極に達しようとしています。
ドル不安の
原因は、
アメリカの年間七兆円に達する
ベトナム戦費にあることは言うまでもない。
アメリカ国民の
税金や、
日本をはじめ諸国を道連れにして、できもしないベトナムの民族独立闘争を押えつけようとしていることに
原因があることは、世界周知の事実ではありませんか。(
拍手)
ジョンソン大統領との蜜月旅行を楽しんだ佐藤
総理は、秋の大統領選挙の展望をよく分析なさるがいい。当てごとともっこは前からはずれるといいますが、
アメリカの政治
情勢は急変する。ベトナムと
ドルによって、ジョンソン政権の土台がくずされようとしている。したがって、次の会談の機会はないのではなかろうかと考えるときに、
総理のなすべきことは、
社会党提案を受け入れるほかにないではありませんか。(
拍手)
四十三
年度予算の骨格がつくられ始めたのは昨年の秋ごろでありますが、ここ数カ月の世界の動きは激動を重ね、しかもわれわれ
社会党の指摘し予見したとおりになっている。まだ、つい先月の暮れに、
総理は、
予算委員会で、
ドル不安はそう心配したことはないと思うし、私どもは
ドル維持に
協力すると、みえを切ったやさきのことであります。
政府の甘い見方を通り越して、
情勢の推移はきびしく、
貿易収支も困難、
物価の
見通しも上回る、景気回復の展望はますます暗い、不渡り
倒産が大きくなるなど、
経済見通しは音を立ててくずれ始めている。その上に立つこの
予算案は、まさに砂上の楼閣であると断定してはばからないのであります。(
拍手)
昭和四十三
年度予算五兆八千百八十五億九千八百四十五万四千円。これをごろ合わせでいきます。と、「イヤイヤゴーハクヤシイヨ」となる。つまり、いやいや行くのはくやしいよとなる。これは、この
予算によって強引に平和と生活を侵されている働く
国民の気持ちが、いやいや行くのはくやしいよと、思いがけなくもにじみ出たのでございましょう。(
拍手)
しかし、近づく参議院選挙において、
国民諸君は、必ずやこのくやしさを、民主政治、伝家の宝刀である一票をもって、
政府・与党に報いるでありましょう。すでに、世論調査によると、三月の
佐藤内閣の支持率は、二月に引き続き、二回連続して大幅に低下し、二八・五%となりました。驚くなかれ、百人のうち七十二人までは、
佐藤内閣を支持していないのであります。(
拍手)そしてこの
予算案は、
佐藤内閣終えんの道に通ずることを予見し、私の
政府案
反対、
社会党案
賛成の
討論を終わる次第であります。(
拍手)