○浜田光人君 私は、
日本社会党を代表して、ただいま提案されました
行政機関の
職員の
定員に関する
法律案に対して、
質問を行ないます。
本
法案は、表面のみを見ますと、各省
定員の設置法上の
規定を解除し、各省の
定員をプールすることによって、国家
公務員の
定員総数を一本にくくり、各省
定員を
政令定員として、人事の弾力的、機動的、合理的運用をはかるという、一見すこぶる単純な
法案のように見えるのでありますが、しかし、現在、
政府・与党の進める諸政策、特に
憲法を否定するかのごとき発言、さらに軍備拡張をほのめかす発言等々、あるいは核に関する政策に見られるごとく、きわめて反動的で、本音とたてまえが全く相反し、その中に包含するものはきわめて陰険で、巧妙にして悪質な深いたくらみのあることがうかがえるのであります。(
拍手)
その第一は、
財政硬直化の名のもとに、三カ年間に五%の人員
削減を行なうという、いわゆる二万五千二百余名の首切りであります。
現在、国家
公務員の総
定員は、
政府統計によっても明らかなとおり、世界の主要資本主義国と比べても最も少なく、そのため、
公務員一人当たりの人口比は、フランスが四十六人、イギリスが五十三人、アメリカが七十八人、
日本が百十人となっているのであります。最近六カ年間における国家
公務員全体の
定員増加十万八千百三十九名の五三%は自衛隊と五現業の
職員で占めており、立法、司法、
行政公務員の増加は、国立学校の増員を除けば、二万人にすぎないのであります。それにもかかわらず、
政府は、その点については一言も触れておりません。
財政硬直化の主たる原因は人件費にありとしているのでありますが、自衛隊と五現業を含んでも、人件費は、一般会計と特別会計の支出総額の一〇%程度にすぎず、自衛隊と五現業を除けば、その四ないし五%にすぎないと見られることから、
財政硬直化の真の原因は、長年にわたる
政府・自民党の放漫にして乱雑きわまりなき
財政、公債政策の行き詰まり、物価政策の失敗にあることは周知の事実であります。(
拍手)これは、みずからの政策の失敗の結果を、何の罪もない
公務員に、ひいては
国民に転嫁せんとするものにほかなりません。
このような状況にもかかわらず、本
法案を提案するそのねらいは、国家
公務員法第七十八条に、「官制若しくは
定員の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合」は、本人の意に反する降任及び免職ができるとなっていることから、法によらず
政令によって、いとも簡単に
公務員の首切りを行なおうとするところにあるに相違ないといわなければなりません。(
拍手)
第二には、反動政策並びに反動
行政を
推進しようとするたくらみをうちに秘めているということであります。
政府資料によると、三年間五%
削減の中身を見ますと、各省別の増減に著しいアンバランスがあり、また省によっては五%近い
削減を受ける部門と、逆に四%近い増員が行なわれる部門とがあります。特に全体として総
定員の
削減をはかりながら、
自衛官〇・三五%、検察官一・六%、公安
職員〇・四%、局長以上の
高級官僚などの指定職八%などに見られるごとく、
政府・自民党の反動
行政が必要とする部門が著しく増強されているのであります。他方、
国民への
行政サービスの
中心となる技能労務
職員については、四千名に及ぶ
削減を行なおうとしているところから見ても、
政府のいう
定員削減がどのような
意味を持つかは、おのずから明らかであります。
加えて、これまで各省の
定員は、各省設置法によって、国の最高
機関である国会の場で決定してきたのでありますが、それを
政令によってきめようとするのは、このような
国民への
行政サービスの切り捨て、反動
行政部門の強化に拍車をかけるものであります。(
拍手)たとえば、国防教育を
推進しようとするならば、それに必要な文部
定員の増員を自由に行ない、さらにまた、自主防衛云々等について情宣活動を行なおうとすれば、
内閣広報室員あるいは自衛隊における、いわゆるせびろ組等をいとも簡単に増加させることができるようにするのが最大のねらいであります。(
拍手)
第三には、さらに重大であるのは、
内閣が国の最高
機関としての国会の
審議権を冒涜し、国会の権限を縮小し、逆に
内閣の権限の拡大をねらっていることであります。
由来、
行政は、公共性をその本質とするものでありますから、
政府は、
国民に対し、
行政の現状を常に明らかにする義務があるのであり、また、主権者たる
国民の意向が
行政の具体的
方向となって
実現するためにも、立法や予算と同様、
行政組織の
規模ないし
機構、機能について、
国民がこれを客観的に把握できる
制度にしておく義務があるのであります。これは、
行政費用が
国民の税金によってまかなわれていることの当然の帰結であり、国家
公務員の
定員を
法律によって規制すべしとする根本的
理由でありまして、これらは国家
行政組織法が明確に
規定するところであります。
しかるに、本
法案がねらいとする国家
行政組織法第十九条の
定員に関する条項の
削減は、単に
定員についてのみの
改正にとどまらず、国会の
審議の及ばぬ
行政権力の場において、
行政の
機構、
規模、機能全般について、一方的に改悪することができるという結果をもたらすのであります。なぜならば、
行政の
機構、
規模、機能を具体的に保障しているのは、国家
公務員の人員、質、配置であるからであります。
行政に対し、国会の
審議を無用とするこのような
政府の意図は、ひいては問答無用の
行政を
国民に押しつけるものにほかならないと断言せざるを得ないのであります。(
拍手)
第四に、国家
公務員の
基本的権利の侵害であります。
本
法案が国家
公務員本人の意に反する免職、
配置転換を、
法律によってではなく、閣議決定による
政令によって行なうことを定めていることは、これまで述べたとおりであります。ところで、本
法案の
対象となる一般職の国家
公務員は、
政府のたび重なる労働法改悪によって、労働者でありながら、
労働基本権たる
団体交渉権を剥奪されているのでありますが、そのような状態の中で、一方的な免職、
配置転換命令に対し、これら
公務員はどのような手段によって
憲法二十八条、ひいては二十五条に保障される労働者の権利、
国民の権利を主張することを許されるのでありましょうか。
吉田内閣以来今日に至るまで、
政府・自民党によって労働者としてのその権利を奪われてきた国家
公務員に対し、
国民としての権利、生存権までも放棄せよというのが本
法案のねらいであります。
以上述べましたとおり、本
法案は、
国民が求め、さらに
臨時行政調査会が
答申した
行政改革の
方向とは似ても似つかぬ
方向にゆがめられていることが明らかであります。真に
国民の
立場に立った
行政改革とは、何より平和、
民主主義、
国民福祉のための
行政改革、
憲法擁護とその積極的実践のための
行政改革でなければならないのは申すまでもありません。(
拍手)
政府の言う
行政改革、すなわち一省一局
削減と五%
削減、総
定員制の中身がこれに全く逆行するものであることもまた明らかであります。
以上のごとき観点から、
総理大臣並びに
関係閣僚に対して、次の点につき
質問いたします。
第一に、
総理にお尋ねいたします。三十九年十一月の
臨時行政調査会の
答申以来三年余りの間、
政府は、
答申は尊重すると繰り返すのみで、
答申に沿った何らの具体策も講じなかったではないか。しかるに、今回にわかに一局
削減と人員
整理を伴う総
定員制を規制づけているが、真の
行政改革の
基本的なあり方をどのように
考えておられるのか。また、
昭和二十四年に、第二次
吉田内閣は
行政改革を唱えておきながら大
規模な人員
整理のみを行なったのであるが、今回もこれと同様、強制的
配置転換に伴う合法的
行政整理が
目的ではないのか、お伺いいたします。
第二に、大蔵
大臣にお尋ねいたします。このたびの
政府の
行政改革の
方針は、
財政硬直化を
理由とする大蔵当局の強い要請によると聞き及んでいるのでありますが、一般職国家
公務員の五%、二万数千人を三年にわたって
削減したところで、これに相当する人件費はジェット戦闘機数機分の費用程度にすぎないと思われるのでありますが、
経済の専門家たる大蔵
大臣は、これにより
財政硬直化が打開できると本気で
考えているのかどうかをお伺いいたします。(
拍手)
第三に、
労働大臣にお尋ねいたしますが、
団体交渉権のない国家
公務員の免職、
配置転換が
政令で行なわれようとするときに、これら
公務員の
憲法に保障された
労働基本権、生存権を労働
行政の観点からどのように保障するのであるか。もしこの
法案を制定するとするならば、まず争議権、
団体交渉権を国家
公務員に認め、彼らにみずからを守る
体制を与えてから制定すべきではないかと思うが、所信のほどをお伺いいたします。
第四に、
行政管理庁長官にお尋ねいたします。第三十八回国会における国家
行政組織法等の一部を
改正する
法律案の提案
理由の
説明において、当時の小沢
国務大臣は「
定員というものは、本来組織の
規模を示す尺度であり、
行政機関の
規模は、
機構と
職員の
定員により規制されるべきものでありますから、従来のように
定員のみを切り離して
規定することは適当でないと思われますので、各
省庁等の必要とする具体的な
定員については、従来規制の
対象としていなかった特別職の
職員をあわせて、それぞれ当該
省庁等の設置法に
規定するようにいたしますとともに、
行政機関職員定員法を廃止し、これに伴い関連
法律に所要の
改正を行なうものであります。」と述べておりますが、わずか七年の間に
政府の政策が百八十度転換するのはいかなる
理由によるものであるのか、お伺いし、さらに、今回の総
定員制が
行政サービスの改善を
実現するという
理由はいかにお
考えになっておるのか、お尋ねいたします。(
拍手)
最後に、
総理にお尋ねいたします。一方では
行政改革と称した権力
政治、片やネコの目のように変わる政策、さらに本音とたてまえの違う今日の
政治のもとで、汚職、腐敗はますます増加し、それに基因した
政治全体への
国民の不信感は、ぬぐい去るどころか、ますます拡大するのではないかと思うが、これに対して佐藤
総理はいかに
考えているのか。
さらにもう一点、十九世紀以前の国家は、
国民に対しその自由を
制約する警察国家たる性格を持っており、
国民は常に安上がり
政府を望んでいたのであります。しかるに、今日の国家の使命は
国民の福祉の向上にあり、自民党自身も福祉国家の建設を口にしておるほどであります。二十世紀後半の今日において、単にかつての安上がり
政府のみを
考えることは、世界の大勢を知らず、福祉
行政を放棄したものと断定して、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣佐藤榮作君
登壇〕