○竹入義勝君
佐藤総理は、施政方針
演説において、核兵器の絶滅を念願し、みずからもあえてこれを保有せず、その持ち込みも許さない
決意であると強調いたしました。しかし、日米首脳
会談以後、つかれたように自主
防衛論を鼓吹し、核アレルギー解消をたくらむなど、その他一連の
総理のふるまいは、これが欺瞞であることを余すところなく裏づけているのであります。私は、公明党を代表し、
国民がひとしく憂慮している核について
質問をいたしたいと思うものであります。それは、これからの
日本の内政、外交のすべての将来を決定する最重要問題だからであり、平和か再
軍備かの岐路に立つ問題だからであります。
まず、最初に、エンタープライズの寄港問題について伺いたい。
政府は、核弾頭が持ち込まれる場合は、事前通告があるはずで、
アメリカが核は持っていないと言っているから核はないとして寄港を強行しました。核持ち込みの深刻な
国民の疑惑に対し、たったこれだけの
説明で一体どれほどの説得力を持っていると
総理は
考えておられるか、まことに無
責任といわざるを得ないのであります。(
拍手)たとえ核を持っていても、わざわざ持っておりますと言うはずはないではありませんか。
元来
アメリカでは、
アメリカの
国内法である原子力法で、原子力の軍事利用に関する情報、つまり核兵器の装備や所在についての情報は厳重な機密事項とされ、公表されておりません。みだりに公表すれば、原子力法第二二四条によって死刑もしくは終身禁錮等の極刑に処せられるのであります。日米間には、核兵器の機密情報提供に関する協定はないはずであります。それゆえ
アメリカ側としては、
日本に入国する軍隊、軍艦等が核装備をしている、このことを公表できないのであります。したがって、
アメリカが核兵器の所在や装備を明示して、
日本と事前協議を行なうということは、理論上あり得ないことなのであります。
総理はこのことを御存じないはずはありますまい。
承知の上で、一方的な
アメリカの核抜き通告をみずからも信ずるふりをして
国民に信じ込ませようとすることは、正常の人のよくなし得るところではないと思うのであります。まさに欺瞞の最たるものではないかと思うのであります。(
拍手)この点について、納得のいく
説明を求めるものであります。
次に伺いたいことは、
総理の言う、核持ち込みを許さない核とは、一体何を意味するか、核の定義について明確にしていただきたいのであります。
御
承知のとおり、核兵器は、核兵器体系と称せられる近代科学の粋を尽くしたそれぞれの部門より成立していることは、すでに御存じのとおりであります。すなわち、大別いたしますと、核弾頭、運搬手段、さらに発射と安全統御のための通信、計算機器による指揮系統、訓練された兵員によって構成されているものであります。すなわち、核弾頭は、ただそれだけでは、今日の核戦略上、効果的な働きをなし得ないのであり、核とは一連の核兵器体系全体をさしていわれるものであり、この程度の常識は
総理ならずともおわかりのことと思うのであります。たとえば核軍縮が運搬手段のコントロールを基準としていることも、明らかにこれを物語っているのであります。
ここで大事なことは、核弾頭の持ち込みは、その発見と識別が困難であり、隠密裏の持ち込みが容易かつ手軽であるのに比べて、その反対に運搬手段その他は発見と識別が容易であり、隠密裏の持ち込みが困難であるということであります。
総理の言う核とは、核弾頭だけを意味しているのか、あるいは核兵器体系すべての持ち込みを意味しているのか、率直に伺いたいのであります。
総理は、核とは核弾頭であることを強調し、運搬手段等の兵器体系から
国民の目をそらそうとしておられる。核弾頭が持ち込まれていないから安心だとの錯覚を
国民に植えつけようとするトリックであります。現在
わが国は、事実上、核兵器体系が持ち込まれているといわざるを得ない
状況にあります。
たとえば、一九五九年四月、当時の
アメリカ太平洋軍司令官フエルト大将の
アメリカ上院外交委員会の証言には、
アメリカと
日本、台湾、韓国との同盟の
目的は、中共の全面戦争を
抑制することに重点が置かれている、もし全面戦争が起こったら、
日本からインド洋にかけて
アメリカ太平洋軍は有効適切に戦う、第七艦隊と第五戦術空軍、第十三戦術空軍及びグアムの第三戦略空軍は核兵器で武装されているといわれております。これはきわめて重要な発言であります。
アメリカ第五空軍のF105戦闘機は核搭載機であり、立川、横田、三沢などを基地としていることは常識であります。あるいは横須賀、佐世保に第七艦隊が寄港していることも周知のとおりであります。先ほどの証言から見ても、府中に司令部を持つ第五空軍その他
アメリカの核戦略海空軍の行動範囲内に
日本が重要な意味を持って組み込まれていることは明らかであり、核兵器が持ち込まれていることは疑うことができないのであります。(
拍手)あるいは、
総理は、それらの海空軍は
日本にいるときは核弾頭を持っていないと強弁されるでありましょう。しかし、この強弁が児戯にひとしいナンセンスであることは、
さきの証言に照らしても明らかであり、
国民のだれしもが疑惑を持っているところであります。百歩譲って、そうであったとしても、運搬手段、指揮系統、兵器などの、弾頭を除く核兵器体系のすべては持ち込み済みであり、いわば半ば以上の核持ち込みは完了というべきでありましょう。(
拍手)
さらに続けて、あなたの核の持ち込みを許さないとの
決意が欺瞞であるとの例証を申し上げたい。
すなわち、
総理の言う非核原則の
ことばどおりにいけば、沖縄返還の条件あるいは方式というものは、核基地は絶対に認められないということでなければならない。あなたは、沖縄返還の条件については、今日の段階では申し上げられない、白紙の
状態であると言っておられるが、それは核の搬入、核基地の存在を否定できないということであります。沖縄の核つき返還を断固として否定しない限り、あなたの非核方針はまっかな偽りであります。(
拍手)さらに非核方針に立つ限り、沖縄は白紙ではあり得ないはずであります。少なくとも核については断固とした方針、すなわち核の撤去ということがなければならないのであります。
総理の非核方針と沖縄返還方式は明らかに二律背反の矛盾におちいるのであります。いずれにせよ、沖縄返還の条件として核基地は絶対認めないと
国民の前に明言されるべきでありますが、
総理の所見はいかがでありましょうか。
昨日のニュースによれば、横須賀港に従来からあった原子力潜水艦寄港に備えた放射能自動測定装置とは別に、大規模の増設
計画があるとのことでありますが、これはエンタープライズをはじめとする
アメリカ原子力艦艇の横須賀入港を想定し、それに備えようとするものであると報道されております。
総理は、先日の佐世保の教訓にもかかわらず、エンタープライズの横須賀入港を将来強行されるつもりなのかどうか、この際伺っておきたいのであります。もしもそのような
国民の意思を踏みにじり、核持ち込みをあえてする暴挙があるならば、私
どもには重大な
決意があることをこの際申し添えておく次第であります。(
拍手)
原子力艦艇の反復寄港によって核兵器アレルギーをなしくずし的に解消しようとする
総理の意図は明白であります。
総理は、施政方針
演説において、核エネルギーの平和利用の推進を強調しております。この核の平和利用に関する限り、何の異論も持っているものではありません。願わくは、民主、公開、平和の三原則に基づき、巨大科学の時代に立ちおくれのないことを期すべきであります。しかし、
総理の核の平和利用の提唱がはたして何をねらっているのか。すでに
国内には核エネルギーの開発が行なわれ、
国民の核の平和利用に対するアレルギーは存在しません。だからいま、
国民の核アレルギーは、核の軍事利用に対するものであります。
総理は平和利用にこと寄せて、核の軍事利用に反発する
国民の核アレルギーの解消こそねらいであると断定しても、決して言い過ぎではありますまい。(
拍手)核の平和利用に対する
総理の
ことばの空虚さを申し上げたい。
わが国の実情は、たとえば原子物理学など、多くの分野において高度の水準を誇りながらも、反面、
政府の学者への待遇、研究環境の充実あるいは向上への冷淡さは、貴重な頭脳の海外流出を招いているのであります。このような皮肉な
事態にありながら、科学技術の進歩に投ぜられる
政府の
予算は、わずかに七百二十五億余円の科学技術振興費を計上しているにすぎないのであります。ちなみに
西ドイツの科学技術振興費は、四十二
年度予算において四・五%を占めております。
わが国においては、四十三
年度にわずか一・二六%を計上しているにすぎないのであります。研究環境の整備
改善、特にあなたの強調する核の平和利用推進のための
予算措置は、まことに微々たるものにすぎないのであります。これが
総理の施政方針
演説にいう「核エネルギーの平和利用にこん身の努力を払う」、また昨日の
答弁の、「核の平和利用は最重点国策として取り組む」と言われた
内容であります。このことは、他方では、核拡散防止条約案において
わが国の原子力平和利用がはなはだしく制約を受けるおそれがあるにもかかわらず、
政府がこれを取り除くための真剣な努力を払っていない点をあわせて見ても、結局、あなたの言う核の平和利用への努力の
決意は、事実の上で否定されているのであります。要するに、
総理は、核アレルギーを解消するという名目のもとに、核兵器アレルギーを解消する意図であるとしか
考えられないのであります。(
拍手)私がここで申し上げたいことは、
国民が持つ核アレルギーは、核兵器アレルギーであり、いわば私たちが第二次
世界大戦の広島と長崎の血で色どられた反核兵器意識、これを、あなたは、なしくずしに解消しようとしておられるのであります。中国の核の脅威を強調し、それに対する
アメリカの核のかさの有効性をことさらに
宣伝し、エンタープライズの入港を強行し、そして、実体なき誇大な核の平和利用を鼓吹する、これら一連の事柄は、私たち
国民に核兵器を公然と認めさせようとするあなたの野心が、あまりにも露骨であります。
事実を正確に申し上げるならば、核の実質的な持ち込みはすでに完了済みであり、安保体制とは、
日本に核を持ち込む核安保であります。ただ、
アメリカと
日本政府の間に残された作業は、核の認知にすぎないという重大な
事態であると思うが、
総理の確たる
答弁を求めるものであります。(
拍手)
さて、六〇年安保のときに、このような安保のもとでは、私たちが全然知らないうちに、いやおうなしに戦争に巻き込まれてしまうとの
国民の不安に対し、当時の岸首相は、これを否定し、事前協議の制度によって、
国民や
日本政府の関知しないうちにそのようなことにはならないと
説明したのであります。
政府の言い分によれば、この事前協議こそ、六〇年安保の
最大のメリットであるということでございました。このような事前協議の制度の趣旨から、
政府の果たすべき
責任は、
アメリカに対してその解釈をよりきびしく、より厳重な
方向に守っていくということに帰するのであります。しかし、自来、数多くの事例に対する
政府の
答弁は、この事前協議の骨抜き
対策に終始し、ついに史上
最大、最強の第七艦隊の主戦力エンタープライズの寄港すら事前協議の対象にならないとする、いわば無限大にひとしい骨抜き解釈に至ったのであります。この事前協議の形骸化の
政治責任はきわめて重大であります。
二十九日の
政府内の事前協議の統一
見解によれば、戦闘作戦行動とは、米軍が安保条約で供与されている
わが国領水内の施設、区域から出る時点で戦闘命令を受けている場合をさすとあります。これはおそらく、エンタープライズの場合、施設、区域内で戦闘命令を受けることなくベトナム沖に、
日本海に出動することは、事前協議の対象外であるとしております。しからば、空母より北爆のため航空機が発進して初めて戦闘行為になると解釈してよろしいかどうか、この点、しかと承っておきたいのであります。(
拍手)
もしもそうであるならば、たとえていえば、軍艦は発砲するまでは戦闘行為にならず、極論すれば、ポラリス型原潜の場合、核ミサイル発射のキーを押すまではすべて戦闘行為ではないと推論されるが、この点についてはどうなのか、この点も伺っておきたいと思うのであります。
さらに、艦艇が
日本の領海外に出てから戦闘命令を受けた場合も対象とならないとしておりますが、極端にいえば、三海里離れた目に見える場所でいかなる戦闘行為、たとえば艦砲射撃、核ミサイルの発射、核爆雷の投下などの戦闘行為が自由であるとすれば、これは実に重大な許しがたい
事態であるといわざるを得ないのであります。つまり、領海三海里を一歩でも出た水域、いわゆる公海上に原子力艦隊が陣どりいかなる戦闘行為が開始されても、また、その被害が領土、領海、領空内に及ぶ
事態になっても、安保条約の義務により、
わが国はこれを黙認し、協力せざるを得ないとすれば、事実上の
国内基地の自由使用であり、核持ち込みでもあり、さらに
日本が戦争の場となり、事前協議の歯どめは全く有名無実となるではありませんか。(
拍手)この場合、
日本政府はどう対処されるか、
総理の具体的な
見解を承りたいのであります。(
拍手)これは要するに、有名無実になり果てた事前協議は、単に歯どめがありますとの
国民に対する欺瞞、
宣伝の手段としか思えないのであります。
さらに、統一
見解によれば、エンタープライズの原子力艦隊は、幾つものグループに分かれているうちの
一つのグループにすぎない、単なるタスクグループであるとし、事前協議の対象となる重要な配備の変更には該当しないと
説明しております。ところが、問題のエンタープライズの艦長は、現に記者会見において、みずからの機動部隊をワン・タスクフォースであると言明したではありませんか。この原子力艦隊がタスクフォースかどうかという
アメリカ艦隊の編成上の呼び名の問題は、実はそれほど
本質的な問題ではないかもしれないのであります。というのは、安保条約上事前協議の対象となる重要な配備の変更とは、地上一個師団以上及びそれに相当する海空軍部隊を対象とするとされてきたのであります。その戦力の規模から見て、
世界最大の原子力空母といわれるエンタープライズを含む第一機動部隊が、地上一個師団にも相当しないとは何人も信ぜられないところであります。(
拍手)この艦隊が第七十七タスクフォースのうちの一グループであるとするならば、事前協議の対象をタスクフォースの単位にきめること自体が不合理なのであります。
日本の
政府が、第七艦隊の
日本への寄港について、事前協議の対象となるべき艦隊の単位をことさらに対象外とすることは、米軍の
日本基地の自由使用に協力することであり、事前協議制度をみずから進んで骨抜きにしようとするものにほかならないと思うのでありますが、この点
総理の
見解を伺いたいのであります。(
拍手)
次に、ポラリス潜水艦についてであります。木村官房長官は、一月二十四日付の読売
新聞の
座談会において、「ポラリスとエンタープライズとは、どう違うのか。核を持っていないことがはっきりすれば、ポラリスでも別扱いはしない。」と述べているのであります。しかし、第四十八国会
予算委員会において、椎名外務
大臣は、「ポラリス潜水艦は常時核弾頭を装備しており、これが核弾頭を取りはずして行動することは常識では
考えられない。ポラリスは約二ヵ月間どこにも立ち寄らずに行動し、そのこと自体が戦略的意味を持つものであるから、弾頭の部分だけ取りはずしてポラリス潜水艦が行動するということは、実際問題として絶対あり得ない。」との海原
政府委員の
答弁を肯定し、重ねて「核弾頭をはずして入港することはあり得ない。核兵器をつけたまま入港する場合しか
考えられない。そういう場合は事前協議の対象になり、これを強行して入ろうとする場合は、それを許さない。」と答えておられます。また、去る一月十八日、本院
内閣委員会で、増田
防衛庁長官は、「ポラリスが核弾頭を抜いてきた場合でも事前協議の対象となる。
日本政府としては、核三原則に照らして事前協議を申し出るべきである。」と
答弁しているのであります。先ほどの木村官房長官の発言の真意は那辺にあるのか、
答弁願いたい。このような木村発言は、かつての椎名発言に比べ大幅の後退をしているものであり、これはポラリス潜水艦寄港の事前協議を避ける地ならしをしているものとしか
考えられない。この際、
政府は、ポラリス潜水艦の
日本寄港については当然事前協議の対象であり、かつ、いかなる場合も断固この寄港を拒否する
決意である旨を
国民の前に明らかにするとともに、進んで
アメリカ側にもこの旨を通告しておくべきであると
考えるが、
総理の所信を承りたいのであります。(
拍手)
かつてのシードラゴンをはじめとする原子力潜水艦の入港、原子力空母エンタープライズの入港、その背景にある核アレルギー解消論、これら一連の事柄の指向するところは、ポラリス潜水艦の
日本寄港、沖縄の核つき返還、そうして究極的に核兵器の持ち込みによる
わが国の核基地化の完成であると
国民は危惧しているのであります。かつて、
総理は、日米首脳
会談後の記者会見において、
わが国の安全にとって核のかさの重要性を強調されました。
総理が
日本の安全のために必要であると
考えられた核のかさとはいかなるものか、その意義をはっきりと本日は伺いたいのであります。(
拍手)
いわゆる核抑止力には、相互の恐怖の均衡、つまり、やったらやられるとの相互の判断、双方の行動に自重と慎重な態度をとらしめているものであると判断いたしております。しかし、抑止力が効果を持つ相手なら、その抑止力は有効性を持つと言えるかもわかりません。しかし、その抑止力がくずれたとき、つまり、きかない相手があらわれたとき、双方の心理的な抑止力に期待できず、たとえば迎撃ミサイル網のごとく、物理的な防御力としての核兵器の使用が
考えられるとされているのであります。
総理と
ジョンソン大統領は、
日米共同声明において、中共の核の脅威についての双方の合意を表明しておられるのであります。それは、日米安保体制は中共の核に対し、最初から心理的な抑止効果を期待し得ないとの判断が根底となり、その基本的な
考えの上に立って、中共の核の脅威についての
日米共同声明の合意となってあらわれたと思うが、
総理の所見を伺いたいのであります。
そこで、六五年一月、佐藤・ジョンソン
会談において、いかなる攻撃に対しても、
アメリカはいかなる兵器を使ってでも
日本を守ると言っており、また、六六年七月、国防長官マクナマラは、「日米安保は、適切ないかなる兵器をもってしても、つまり、核攻撃に対するものであろうと、他のいかなる攻撃に対するものであろうと、
日本の
防衛のため使用する兵器の性格には何ら
制限はない」という意味、すなわち、核攻撃には核兵器をもって対抗することを明らかにしております。これは、日米安保条約は、核には核をもって対抗するということであり、しかも、極東の現
情勢から見て、核を使用することもあることを意味し、核安保以外の何ものでもないといわざるを得ないのであります。不幸にして、核には核の
事態が
現実となったとき、
日本人が全部死滅した後に相手をたたく抑止力、つまり、やられてからやってくれるものなのか、あるいは飛来する核爆撃機や核ミサイルが私たちの頭上で爆発する前に防御してくれる核抑止力、つまり、やられる前に防いでくれるものなのか、明確にお示しを願いたいのであります。(
拍手)言うまでもなく、私たちが核のちりと消え去った後に、幾ら
アメリカが核を使って攻撃を加えても、私たちの安全保障にはならないのであります。あなたの強調される
アメリカの核のかさとは、このように、はなはだたよりないかさなのか、この点はいかがでありましょうか、
国民の前に明らかにしていただきたいのであります。(
拍手)いや、そうではない、
日本上空で爆発する前にこれを阻止するかさだと
総理が言われるのであれば、具体的にどの線で防御してくれるのか、戦略論に基づき、
国民の納得する
説明をしてもらいたいのであります。
私たちの判断によれば、いかにあなたが強弁されようとも、あなたの信頼する核のかさは、私たちがやられてからやり返してくれるものにすぎないのであります。いわば、太平洋戦略体制に組み込まれた
日本列島は、
アメリカの最前線基地と言えるのではないか。私は
総理にあえて申し上げたい。いたずらに核のかさから、
わが国の安全にとって有効であるなどとの幻想を
国民にばらまき、欺瞞することをやめよと言いたいのであります。
日本国民がすべて死滅してからやり返してくれる、これが安保の限界であります。
日本の安全にとって、やられてからやり返してもらうようなことよりも、危険な保障にたよることよりも、やられないような緊張緩和への努力を払うことこそ、最も重要であるといわなければならないのであります。(
拍手)しかし、中国封じ込め
政策を大方針とする
アメリカのアジア
政策に追随する限り、日米安保が、
佐藤総理の説くように、長期堅持される限り、
わが国は中国にとって常に
アメリカと同様敵国として仮想され、われわれは常に核の脅威がつきまとい、
日本海は常に波立っているのであります。このゆえに、私たちは、危険な核安保を解消し、完全中立への道を目ざすことこそ、国家百年の大計であると確信するものであります。(
拍手)
以上、私は、核をめぐる諸問題について、いろいろと
お尋ねをいたしました。今日、私たち
国民にとって、核の問題は避けてはならない
課題であります。しかし、この
課題の取り組み方は、あなたが
国民より疑惑を持たれているような、
わが国の核基地、核安保の道では絶対にないはずであります。
世界でただ
一つの核被爆国であり、また、
世界に誇る平和憲法の中に、あなたがいみじくも施政方針
演説で申し述べられた、核兵器の絶滅を念願し、みずからもあえてこれを保有せず、その持ち込みも許さないとの
決意を文字どおり忠実に、厳粛に履行することであります。
私は、ここで、
総理に真情をもって訴えたい。あなたは、昨日の
答弁において、非核宣言について、「私は非核三原則をしばしば発表している。したがって、このような決議をする必要はない」と、にべもなくこれを拒否されました。また、施政方針
演説の
決意が事実上の非核宣言であると言われるかもしれない。しかし、国権の最高機関であるこの国会において、
国民に対し、全
世界に対し、
わが国の平和憲法の精神に照らし、私たちは断じて核をつくらない、持たない、持ち込ませないと、非核宣言の決議こそ、
わが国民の良心の凝集であると思うのであります。(
拍手)くしくも、この非核方針は与野党が一致したものであります。私は、あえて、自民党の総裁たる
総理に対し、この非核宣言に本院の多数党たる自民党を率いて参加される意思を表明されるべきであると思うが、御意見を伺いたいのであります。(
拍手)
最後に、
政治資金規正法の改正について伺いたいのであります。
政治資金規正法の改正案の本国会提出は既定のこととされておりますが、従来の経過から見て、提出時期、その改正
内容等、
国民は激しい憤りとともに強い関心を持って見守っております。
総理演説に、ほんの申しわけ程度につけ加えられた
政治姿勢の表明は、
政治資金規正法改正問題への不信を一そうつのらせているともいうべきであります。
総理は、この問題について、現在までの
世論無視の態度を捨てて、かつ然その
責任ある
決意を
国民に表明すべきであり、私はそれを強く要求するものであります。(
拍手)
以上をもって、私の代表
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣佐藤榮作君
登壇〕