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1968-05-09 第58回国会 衆議院 法務委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年五月九日(木曜日)    午前十時五十分開議  出席委員    委員長 永田 亮一君    理事 大竹 太郎君 理事 田中伊三次君    理事 高橋 英吉君 理事 濱野 清吾君    理事 猪俣 浩三君 理事 神近 市子君       鍛冶 良作君    河本 敏夫君       千葉 三郎君    中馬 辰猪君       馬場 元治君    岡田 春夫君       河野  密君    岡沢 完治君       小川新一郎君    林  百郎君  委員外出席者         議     員 猪俣 浩三君         議     員 神近 市子君         法務省刑事局総         務課長     伊藤 栄樹君         専  門  員 福山 忠義君     ————————————— 五月八日  委員中野明辞任につき、その補欠として山田  太郎君が議長指名委員に選任された。 同月九日  委員西村榮一君及び山田太郎辞任につき、そ  の補欠として岡津完治君及び小川新一郎君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員岡澤完治辞任につき、その補欠として西  村榮一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  死刑確定判決を受けた者に対する再審臨時  特例に関する法律案神近市子君外七名提出、  衆法第三号)      ————◇—————
  2. 永田亮一

    永田委員長 これより会議を開きます。  神近市子君外七名提出死刑確定判決を受けた者に対する再審臨時特例に関する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。大竹太郎君。
  3. 大竹太郎

    大竹委員 前回の委員会の際に、資料提出を求めておいたのでありますが、もし準備ができておりましたならば、まず提出をさせていただきたいと思います。
  4. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 書面をおつくりする時間的余裕がちょっとございませんでしたので、とりあえず口頭お答えさしていただきたいと思います。  御要求がございました第一点は、昭和二十年以前に起訴され、死刑確定判決を受けた者で、確定から執行までに要した期間の最も長いものは、何年何月を要しているか、こういう点を調べるようにという御要求であったと存じますが、これにつきましては、まことに残念でございますが、戦時中の空襲によりまして、司法省の資料が全部焼失いたしておりますために、的確なお答えができないのでございまして、ごかんべんを願いたいと思います。  御要求のございました第二は、主として戦後のことでございますが、一審で死刑判決が言い渡されたが、上訴によって審理の結果無罪となった事例はどうかということでございました。とりあえず調査いたしますと、昭和三十年以降におきましては、一件だけございます。それは強盗殺人等という罪名起訴されました方でありますが、一審が千葉地裁松戸支部死刑となりましたが、二審、東京高等裁判所でさらに審理の結果、原判決破棄強盗殺人等の点については無罪、もっともほかに業務上横領の余罪がございましたので、それで執行猶予裁判がなされております。これが一件でございます。さらに、その前に起訴になりましたものを見てみますと、御承知のいわゆる松川事件がございます。これは一審が福島地裁死刑、二審が仙台高裁原判決破棄の上、四名について死刑、一名について無期懲役上告の結果、最高裁ですべてについて原判決破棄仙台高裁差し戻しになりまして、差し戻し後の仙台高裁におきまして、第一審判決を破棄して全員無罪言い渡しがございました。これに対する上告審も、最高裁におきまして上告棄却となりまして、五名につきまして無罪確定しております。それから第三番目には、いわゆる幸浦事件といわれるものでございまして、第一審は静岡地方裁判所浜松支部強盗殺人等によって死刑判決がございまして、二審は東京高等裁判所控訴棄却上告審最高裁判所におきまして原判決破棄東京高裁差し戻し差し戻し後の東京高裁におきまして、原判決破棄強盗殺人の点については無罪という裁判がなされ、これに対する再上告の結果、最高裁上告が棄却されまして、無罪確定しております。最後に第四番目でございますが、いわゆる二俣事件といわれるものでございまして、やはり強盗殺人等罪名で、第一審は静岡地裁浜松支部死刑言い渡しがあり、二審は東京高裁控訴棄却でございます。上告審最高裁判所におきまして原判決破棄静岡地裁差し戻し裁判がございまして、差し戻し後の静岡地裁における第一審、やり直しの第一審裁判の結果、強盗殺人等につきまして無罪、もっとも余罪でございます窃盗について執行猶予判決がございました。これに対する控訴審控訴棄却ということで、結局主たる訴因でございました強盗殺人につきましては、無罪裁判確定するに至っております。  さしあたり調べましたところ、この四件がございますので、御報告申し上げておきます。
  5. 大竹太郎

    大竹委員 戦前資料がなくて、判決確定から死刑執行までの相当期間かかったもの等の資料がないそうでありますが、もちろん現在の再審臨時特例に関する法律案が示しております昭和二十七年以後ということになりますと、相当期間は短いのでありますけれども、この二十七年四月二十八日以降死刑判決を受けて現在まだ執行されていないもので、相当期間のかかっているものがありますか。もしそこでわかっておれば、お答えをいただきたいと思います。
  6. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 たとえば昭和三十三年に確定したようなもので、現在未執行のものがございます。昭和三十五年ごろ確定したもので、未執行のものが相当数ございます。
  7. 大竹太郎

    大竹委員 それではいま一つ資料を出していただきたいと思うのですが、これはやはり戦前ですから記録はないかと思いますが、戦前からずっと引き続いて現在まで、再審請求がなされて、それが採用された案件というものは、どういうことになっておりますか。それはおわかりになっておりますか。
  8. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 戦前関係はちょっと手元に持っておりませんので、後旦調査の上お答え申し上げますが、とりあえず昭和三十一年から昭和四十年までの十年間の数字手元に持っておりますので、口頭で申し上げておきます。  再審請求人員、それからこれに対して再審開始決定があって、再審開始決定がございますと、審理やり直しがございまして、有罪無罪判決があらためて下されるわけでございますが、再審請求人員は、昭和三十一年が百二十七名、それから三十二年が百一名、三十三年が八十七名、三十四年が九十一名、三十五年が八十二名、三十六年が七十名、三十七年が八十四名、三十八年が八十二名、三十九年が七十五名、四十年が七十名となっております。  これに対しまして、再審開始決定がありました人員並びに再審請求に対します再審開始決定のありました百分比、これを申し上げてまいりますと、次のとおりでございます。  昭和三十一年が十五名、比率にいたしまして約一二%、三十二年が二十一名、比率にいたしまして約二一%、三十三年が十一名、比率にいたしまして約一三%、三十四年が十四名、約一五%、三十五年が七名、約九%、三十六年が六名、約九%、三十七年が九名、約一一%、三十八年が十一名、約一三%、三十九年が五名、約七%、四十年が九名、約一三%、こうなっております。  これに対して、再審の結果無罪になりました者の数字並びに再審開始決定になりました者に対する無罪言い渡し人員百分比を続いて申し上げてみますと、次のとおりでございます。  三十一年が五名、三三%、三十二年六名、二九%、三十三年三名、二七%、三十四年十一名、七九%、三十五年四名、五七%、三十六年八名、一三三%——これは百分比が一〇〇を上回っておりますのは、前年からの継続事件について無罪言い渡しがあったものと思われるのでございます。三十七年六名、六七%、三十八年十名、九一%、三十九年六名、一二〇%、この一〇〇%をこえておるものも、先ほど申したと同じ理由だと思われます。四十年七名、七八%。  数字をずらずらと申し上げましたので、御理解いただきにくかったかと思いますが、後日書面にして御提出申し上げたいと思います。
  9. 大竹太郎

    大竹委員 いま三十一年から四十年までのものをお聞かせいただいたのですが、現在問題になっております再審臨時特例に関する法律案期間を区切っております昭和二十年九月二日から昭和二十七年四月二十八日までの分も、いまのようにしてお調べをいただいて、提出いただきたいと思います。  それでは提案者のほうへ御質問いたしたいと思いますが、この昭和二十年九月二日から昭和二十七年四月二十八日までを区切ってあるわけでありまして、しかもこの期間は、日本敗戦の結果、いわゆる日本アメリカ占領下にあった時期ということになっておることは申し上げるまでもないことであります。それで、この法案期間を区切って出した理由といたしまして、その期間にあっては、日本裁判権法律上も制限を受けておった時期になっておるということと、この期間の中の昭和二十四年から刑事訴訟法改正になったということもあわせてその理由に書いてあるわけでありますが、この刑事訴訟法が変わって、ことに証拠法についてのいろいろな新しい規定ができたわけでありますので、この点についての裁判の上においていろいろな困難な問題があり、また裁判官自身もこれになれておらなかったということでいろいろな問題があると思いますし、その点はある程度わかるわけでありますけれども占領下にあったということだけで非常に古い伝統とあれを持っておる日本裁判というものがゆがめられたということは、どうも納得できないのでありまして、いまのことからいたしまして、この期限を新刑事訴訟法が施行になった当初の時期と一致させるということのほうが、むしろこの法案提案される趣旨からいってうなずけるのではないかという節もあるわけでありますが、特に占領下にあって裁判がゆがめられたというような実例とでも申しますか、そういうようなものについて、何か根拠があるのでしょうか。それらについてお聞かせをいただきたいと思います。
  10. 神近市子

    神近議員 その点では相当時期がずれていて、たとえば福岡事件のような場合には、中途で刑事訴訟法、それから新憲法というようなものになって、そしてそれにやはり当事者が、役人の側でもおなれにならない、古い刑事訴訟法のやり方でやったということ、いろいろ読んで見ますと、憲法も変わったし、刑事訴訟法も変わったけれどなんというようなことで、やはり自白ということが中心になって審理が行なわれておるというような事態が起こっております。ですから、この間ちょっとそのことに触れましたけれども駐留軍のほうは、平和条約ができると同時に、ほとんど戦時中の外国人裁判やり直している。結局具体的に言えば、いまこれを再審にかけるということは、そういう駐留軍の一年の暫定法と見合った事態ではなかろうか、当然やらなければならないことではなかろうか、私どもはそういうふうに感じます。
  11. 大竹太郎

    大竹委員 いまの御議論からいたしますと、旧刑訴法による裁判というものは自白によるという意味からいたしますと、昭和二十年九月二日以後から問題にするのはおかしいのでありまして、それ以前のものはなお問題にしなければいけないと私は思うのでありますし、また外部からの圧力とでもいいますか、そういうものを考えた場合に、もちろん占領軍というようなもの、これは非常な力を持っておったことは申し上げるまでもないのでありますけれども日本戦時体制とでも申しますか、入って以後の日本のあり方、ものの考え方というようなものを考えますと、戦時中における裁判というようなものについても、相当考えさせられる面もないわけではないと私は思うのであります。そういうような面からいたしまして、ことに占領以後を問題にされる以上は、やはり占領軍圧力裁判相当影響を及ぼしたということを具体的に御説明を願わないと、ちょっと——もちろん抽象的にはわからぬわけではございませんけれども、ちょっと納得しかねる面があるのでありますが、それを何か具体的に御説明願えないでしょうか。
  12. 神近市子

    神近議員 戦争中の裁判という具体的事案を持っておりませんけれども、大体この戦時中の事案というものは、軍の意思が強く反映して、そして処理されているということは言えると思うのです。そして駐留軍戦争中の自分たち外国人裁判やり直したということは、やはり戦時中に自分たちの友人あるいは国人日本裁判で不当な扱いを受けたということからやり直しをやったということが感じられます。それじゃ、どうしてこの事案だけをやり直しをするのか。その後、死刑確定した人で死刑になった人もあります。ところが、この人たちだけがいままでほっておかれた、あるいは処理できなかったというのは、自分たち再審——平沢貞通なんていう人は十何回——十三回ですか、再審を願い出ている。そのほかの人も相当再審を願い出ている。そしていろいろ事案を見ると、この人たち無罪、誤判というか、誤審によっての犠牲者だというようなことが一般に強く頭にきて、そしていままで処理できなかったということも事実だと思います。十五年もあるいは十七年も、この再審を何回も願い出たということは、相当関係者の中に実態が暗黙のうちにはわかっているんじゃないか。そして法規の上では再審を願わなければならないような状態に置かれている、こういうことが、いま御指摘になったような変な事態が生まれてきたんじゃないかと私は考え、信じております。これは具体的にもっと事例を出せとおっしゃれば、出すことができると思うのです。
  13. 猪俣浩三

    猪俣議員 この占領中の混乱状態というものは、大竹さんもよく御存じのように、裁判所なんかも焼けてしまっておったというような状態、いまの答弁を見ても、記録が全部焼けてしまった、答弁ができないというような説明員答弁もあったようです。終戦直後は、社会全般が非常に混乱しておった。こういう社会全般混乱しておったときに、ほんとうに厳正公平な裁判というものは行なわれるかどうか。これはもうすでに抽象的に考えても、結論が出ておると思うのです。しかも、その背後に、占領軍なるものが非常に強力に日本を支配しておった。この刑事訴訟法改正案をつくるときに、起訴状一本主義というのは、どうも日本の現在の弁護士事務所の実力からすると非常に無理があるということで、われわれGHQにたびたび交渉に行ったのでありますが、断固として許さないというような事例から見まして、これはあらゆる裁判にもGHQ関係しておりまして、これは具体的に述べるといろいろありますが、とにかく直接本件に関係のありまするような事件を言いますならば、九州におきます西武雄あるいは石井健治郎という人間が中国人を殺したという事件がある。この西武雄石井健治郎死刑囚になりましたが、この教戒師をつとめたのが古川泰竜という人であります。ところが、この人が教戒師をやっておってこの両人に接してだんだん事情を聞きますると、そこに非常に無理な裁判がある。これは裁判昭和二十二年ですから、起訴はそのずっと前になる。まさに占領直後の事件であります。そこでこの古川氏が「白と黒との間」という本を書いておりました。一度大竹さんお読みくださいますると、私どもの具体的な事情——その本のことを一々ここで申し上げる時間がありませんが、胸を打たれるものがあるかと思うのであります。その他いろいろありますが、結局当時の社会混乱状態占領軍支配下にあったということ、それだから、検事においても、判事においても、弁護士においても、正常な立場において公平、厳正な、冷静な判断ができなかったということは、想像に余りあると思います。なお、帝銀事件につきましても、あれは昭和二十三年の事件でありますが、これなんかはアメリカのCIAなんかが関係した色彩が非常に濃厚でありますし、裁判についても相当干渉した点があるわけであります。いま具体的に一々これを申し上げませんけれども、この帝銀事件平沢のいろいろの記録を読んでみますると、はなはだ疑問が起こる。これは犯罪後二十年間、有罪確定してから十数年間、死刑執行せられない一つの印象を、法務大臣に与えておると思うのであります。これも占領期間中、本法の範囲内に入る事件であります。こういうような例は他にも多々あるわけでありまするから、そこで、私どもはやはり限時法にする以上、何かの区切りを置かなければならない。どこで区切るかということになりますと、占領中ということから、それから平和条約が発効して日本が独立したということ、もちろんその前にもあとにも同じようなことが多々ありましょうが、そうすると限時法でなくなりまするので、限時法としてごく範囲を狭めまして、やむを得ざるものだけに適用するという、再審制度の全くわずかな部分についてのみいまこの立法をしておるわけでありまするから、その起点として、占領の始まったときからということが妥当じゃないかと思います。
  14. 大竹太郎

    大竹委員 まあ敗戦、そして占領下ということにおいて、非常な混乱があり、裁判手続その他においても、記録がなくなったというようなことから見ましても、非常に行き届かなかった点があることは認めざるを得ないと思いますし、もちろん占領軍日本のあらゆる面において干渉、とでも申しますか、いろいろのことをやったということも認めざるを得ないと思うのであります。しかし、裁判の結果そのものについて、この前も申し上げたように、黒のものを白にやれというようなところまで干渉したかどうかというようなことについては、なかなかうなずけない面もあるわけであります。それからこの間猪俣先生が疑わしきは罰せずという原則もおっしゃったのですが、疑わしきは罰せずという原則は、何も戦後に始まった原則ではないと私は思うのでありまして、これは戦前以来貫いてきている原則と私は思うのであります。そういう面から考えますと、どちらかといえば、この混乱時代において証拠収集その他が十分でなかったという意味からいいますれば、かえって灰色の事件はその当時は多かったんじゃないかということさえ、私は考えられるわけであります。その点については、どうお考えになりますか。
  15. 猪俣浩三

    猪俣議員 いろいろ御意見もあると思いますが、私どもは、限時法として期間を定めるのには、やはり占領直後ということがもっとも妥当性がある、そしてこれはわれわれが考えるのみならず、日本政府自身考えまして、昨日申しましたように、昭和二十七年に、平和条約が発効しますと、平和条約の実施に伴う刑事判決の再審査等に関する法律なるものを出しまして、そうして占領中におきまする連合国人が受けた有罪判決に対して、平和条約発効の日から一年間に限りゆるやかな条件再審を認めよう、こういう法律がすでにできておるわけです。日本政府自身も、やはりわれわれの処置したようなことを認められて、これは政府自身提案における法律が、しかも衆参両院賛成の上にこれが法律として実現をしておる。これは連合国人だけについて行なわれたのでありますが、同じ論理が日本人に適用されない道理はない、そういう意味におきましても、すでにこういう法律があって、そして占領中の裁判についての、混乱から来るところの厳正公平な裁判ができたかどうかに対する疑いから、こういう法律が特にこれは国会を通過したのでありますから、やはり同様な趣旨で、私どもこれを日本人自身有罪判決のうち死刑確定した者だけに用いよう、こういうのでありまするから、どうぞ御了承をいただきたいと存じます。   〔発言する者あり〕
  16. 永田亮一

    永田委員長 ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止
  17. 永田亮一

    永田委員長 速記を始めてください。
  18. 大竹太郎

    大竹委員 それではう一問だけお聞きをして、きょうは時間もあれでありますのでやめたいと思いますが、この法案提出趣旨説明のときに、この法案死刑廃止の理論を底に秘めているのだという意味の御説明があったのでありますが、一面またいろいろ審議を進めている過程におきまして、現在のこの日本再審規定といいますか、制度が厳格に過ぎるから、もう少しこの条件を緩和するべきじゃないかという意味もあるように受け取れるのでありますが、その点についてのお考えをお聞かせ願います。
  19. 猪俣浩三

    猪俣議員 先般の大竹委員の御質問で、死刑確定犯人だけに限らず、そのほかの犯罪人についても、占領中の裁判は不公正だというならば、同じく再審の道を開くべきことが公平じゃないか。ごもっともな御議論だと思うのであります。それに対しまする答弁といたしまして、実はこれは背景に、思想的根拠としては死刑廃止論というヒューマニズムの考えから出た根本思想があるのだ。それだから、回復不能の死刑囚とその他の犯罪者とは区別しているのだ。大体国家の力で人の生命をとるということ自身に対しては、非常に疑問がある。諸外国におきましても、ドイツ、イギリスあるいはアメリカの大部分州等死刑廃止の国が相当ある。そういう点から考えても、せめて死刑囚に対しては、念にも念を入れた調べをさせることが人道主義にかなったことじゃないか。われわれいま死刑問題については法制審議会議論中でありまするがゆえに、それまでもここに織り込むのではないけれども、そういう思想的根拠に立って死刑だけ特に他の犯罪と区別したのであるという答弁をしたわけでありまするから、やはり同じくさように御了承いただきたいと思うわけであります。ただ、いま思想的根底に対する死刑論、時間がありますれば死刑廃止是か非かまでここに議論しなければならぬのでありますけれども、時間がありませんので、ただそういう思想的根底があるということだけ申し上げておく次第です。
  20. 神近市子

    神近議員 これは死刑廃止論につながるのではないかというようなお考えのようでありますが、この間どこかの大学の先生方死刑廃止の討論をやっていらっしゃった。アメリカでは九州、それからかなりの国が——イギリスまで暫定的にこれを廃止している。それでは治安が保たれるかどうかということが問題でしょうけれども治安には一向さしつかえないというような結論が出ているというふうなことを言っていらしたようでした。それで私どもも、治安にさしつかえがないならば、本来ならこの死刑というものがなくなるように人道的に考えられなければならないと思うのです。だけれども、これはまた非常に長い論議を要することで、特に日本国民一般が、この間のアンケートをとった結果として、廃止論は三割、それから存続論が七割という結果が出ているので、この論議は急激に望ましい結論の出ることはなかなかできないだろう。私どもはそういうようなことを考えて、そしてこの暫定法というものは特別の理由があって出したものでありますから、その長い論議を要するものは、国民賛成を得るまでにはまだかなりの時間を要する。こういうことで、もしそれが非あるいは是というような答えが出るならば、二段がまえにして、それはあとでまた論議をしていただくべきではないか。私どもは、こういうような考えでこの暫定法を出したわけでございます。
  21. 大竹太郎

    大竹委員 最後に一問だけ御質問を申し上げ、資料提出をしていただくことにしてきょうの質問を終わりたいと思いますが、これはやはり現在の日本再審制度の基本の問題につながると思うのであります。そういうような面から見まして、もちろん法務省のほうでもいろいろな機関を通じて御研究になっているということでありますが、できますればこういう機会に、諸外国再審制度についての関係条文だけでもよろしゅうございますから、ひとつ参考資料として御提出を願うことにして、きょうの質問をこれで終わりたいと思います。
  22. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 御指摘資料は用意がございますので、すみやかに提出したいと思います。
  23. 神近市子

    神近議員 御存じのように、衆議院で暫定的な再審制度小委員会というものが行なわれて、そのときのものを読んでみると、非常にたくさん案件は出ているのです。そして日弁連あたりで非常にこの再審制度の緩和ということを望んでいられて、そしていま参考人の中にお願いした後藤弁護士なんという方は、非常にはっきりした再審法というものの構想を持っていらっしゃるようでございます。ぜひ参考人が見えたときにその点もはっきりと御質問願って、そして本案の成立に御協力を願いたいと思います。
  24. 永田亮一

    永田委員長 本日は、これにて散会いたします。    午前十一時五十一分散会