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猪俣議員 これは
前提といたしまして、この一条の
思想的根底には
死刑廃止論があるわけでございます。ただし、現在
死刑問題につきましては
法務省の
法制審議会が論議を重ねておりますので、
議員立法は少し早きに失すると
考えまして、
死刑廃止の
議論は前面に出さなかったのでありますが、
思想的背景はそこにあるわけであります。これが、この
死刑囚だけに
適用して、他の一般の犯罪についてはこの
再審の
適用をしないという
理由になっておるわけであります。
御
質問の
昭和二十年九月二日から二十七年四月二十八日というのは、
日本が
アメリカによって
占領せられ、支配せられたときでありまして、これが第一点の特徴であり、
外国の軍隊が入り込んで、
外国の権力によって支配せられている場合において、
ほんとうにわれわれの人権が完全に擁護せられたかどうか、非常に疑問があるわけでございます。そういう特殊の
事情がこの
期間にあるわけでありまして、それが第一点であります。第二点といたしましては、
大竹君も
御存じのように、
刑事訴訟法が改正せられまして、ことに
証拠法が徹底的に改正せられて、
アメリカ流の
証拠法になってきました。これは在来の
証拠方法でやっておりました、ことに権利を擁護する
立場の
弁護士なんかには、非常に熟練ができなくて戸惑った。いまの司法研修所を出た連中は
相当熟練してきましたけれ
ども、当時
弁護士会で講師を雇って、新
証拠法の
やり方についてだいぶ講義なんかしたのでありますが、何十年も頭にしみ込んでおったその
やり方が頭についておりますので、法廷に出て
弁護士は
相当まごついた
実情であります。したがって、やはり
訴訟技術上人権擁護に欠くるところがあったとわれわれは思われる。これがやはりこの
期間を限りました
一つの
理由になるわけでありまして、そういうような
状態であります。いま
一つは、ここにいま七人の人があると申されましたけれ
ども、これらの人々の公判における審理の模様を検討いたしますと、非常に
共通の部分が多いのでありまして、ひとつは
本人の
最初の
自白に非常に重点を置いたか、あるいは
本人が
最初から徹頭徹尾
自白をしないにかかわらず、なおこれを断罪せられたか、いずれにしても非常に
物的証拠が乏しいのです。まあ常識的に見て、
黒白相半ばするような疑問の
事件が、
共通的にあると思うのです。大体この七人についての
実情を私
ども調べたのでありますが、これはあるいは二十年も監獄につながれております
帝銀事件の
平沢貞通をはじめといたしまして、非常に
物的証拠が少ない。こういう点もやはり影響いたしまして、
確定判決が出たにかかわらず、
歴代の
法務大臣は
死刑執行にちゅうちょされておるのだろうと私は思うのであります。そういうふう
左共通の点があるのでありまして、これは
再審請求も何べんもやったじゃないかということになりますけれ
ども、現行の
再審制度は、
大竹君も
御存じのように、非常に
間口が狭くて、
再審が成立するということは
至難中の
至難のような
状態でありまするので、この門戸を開いて、これらの
特殊事情を勘案して、もう一ぺん
再審の
恩恵に浴さしたい、そういう
意味でこの第一条というものはできたものであります。