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1968-04-05 第58回国会 衆議院 法務委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月五日(金曜日)    午前十時二十二分開議  出席委員   委員長 永田 亮一君    理事 大竹 太郎君 理事 田中伊三次君    理事 高橋 英吉君 理事 中垣 國男君    理事 濱野 清吾君 理事 猪俣 浩三君    理事 神近 市子君       鍛冶 良作君    瀨戸山三男君       中馬 辰猪君    枝村 要作君       中谷 鉄也君    山田 太郎君       松本 善明君    松野 幸泰君  出席国務大臣         法 務 大 臣 赤間 文三君  出席政府委員         警察庁刑事局長 内海  倫君         防衛庁人事局長 麻生  茂君         法務省刑事局長 川井 英良君         法務省人権擁護         局長      堀内 恒雄君         法務省入国管理         局長      中川  進君         外務省国際連合         局長      重光  晶君  委員外出席者         最高裁判所事務         総局民事局長  菅野 啓蔵君         専  門  員 福山 忠義君     ――――――――――――― 四月五日  委員岡田春夫君、佐々木更三君及び松本善明君  辞任につき、その補欠として枝村要作君、中谷  鉄也君及び川上貫一君が議長の指名委員に選  任された。 同日  委員枝村要作君及び中谷鉄也辞任につき、そ  の補欠として岡田春夫君及び佐々木更三君が議  長の指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  裁判所司法行政に関する件  法務行政に関する件  検察行政に関する件  人権擁護に関する件      ――――◇―――――
  2. 永田亮一

    永田委員長 これより会議を開きます。  法務行政に関する件、検察行政に関する件、人権擁護に関する件、及び裁判所司法行政に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。猪俣浩三君。
  3. 猪俣浩三

    猪俣委員 私は最初お断わり申し上げることは、実はきょうは懲罰委員会があって、同僚穂積君の事案でありまするので、そちらへも参らなければなりませんがために、十時からというので十時に来たのですけれども一、大臣が御出席がおそいために質問時間が短くなってしまいました。そこで、ある程度の質問は留保することにいたしまして、第一にお尋ねいたしたいことは、最近判決になりました青梅事件事案についてであります。事件そのもの内容についてはいまここでいろいろ申し上げることはないのですが、ただ、全国的に、あるいは世界的に有名になりました松川事件とはなはだ経過が相似ておる。どういうところが似ておるか。一つはある人間自白もととして事件が広がっておった。その自白が全く脅迫せられ、無理やりに自白せられたものであるということで、事件全般が成り立たなくなった。もう一つは、諏訪メモなる新しい証拠検事が隠しておった。それが最高裁で発見せられまして、それがきっかけで全証拠がくずれてきた。相手がいずれも共産党員であり、労働組合員、非常に共通な点があります。青梅事件もまた、相手共産党員社会党員労働組合員、しかも一人の人間自白もとにして大検挙が行なわれ、そしてしかも運転日誌という鉄道に備えつけている重要な日誌が、故意か過失かそのまま埋もれておった。それが発見されて、最高裁の問題となって差し戻しになった。そうして全員ことごとく無罪ということに相なった。しかも一判決を見まするならば、自白というものに非常に重きを置いて事件全般検察庁がでっち上げたところが、その自白というものがでたらめであるということが判決指摘せられておる。懲役四年が二人、三年が二人、二年が二人というように、松川事件に次ぐ十人からの重罪犯人がことごとく無罪に相なった。これはわが国検察権のためには、はなはだ憂慮せざるを得ないことだと思うのであります。しかもことしは世界人権宣言年に当たっておる。その際にかような判決が公表せられるということは、恥辱でなければならない。その意味におきまして、私は法務当局に二、三の質問をしたいと思うのです。  まず私は、新聞記事やその他いろいろの世評でなしに、判決それ自体に基づきましてお尋ねをしたいと思うのです。判決全文がまだ手に入りませんが、東京高等裁判所刑事二部の要旨だけが手に入っておりまするので、主としてこの自白に関する部分について一体どういうふうに判決が表示されておるか。これは法務当局もお読みになったと思いまするけれども、参考のために読み上げてみますと、われわれはなはだ意外なんであります。「捜査段階における供述の推移の跡を検討してみると、捜査の当初から最後に一審判決の認定にそう自白にいたるまで共犯関係首謀者、犯行の動機その他についておよそ異常と思われるほどいくたびか相互に矛盾する供述の変転を重ねていること、」が一点。「(2)この供述変更について何ら首肯するに足りる説明がなされていないこと、(3)供述内容からみても明らかに客観的事実に反する虚構の事実も含まれ、単に忘れていたとか記憶違いであったというような理由説明のつかないものが多いこと、(4)供述者全員がほぼ同じころに同じような供述変更をしていること、(4)二月一九日事件貨車暴走事件の重要な証拠となった現場写真について、一審法廷警察官自分で撮影したと証言したが、当審での証拠調の結果そうでないことが判明した、これは一例に過ぎないが、警察官に不信を抱かせるもとである、(5)本件被告人らは取調べに当った警察官暴行の事実を訴え警察官法廷での証言でこれを否定しているが、必ずしも一概に信用できないこと、(6)捜査段階における自白はおよそ二ケ月以上にわたる勾留の間になされ、主要な自白最初起訴後に行われているが、検察官取調についても、警察取調がこれに先行し、又検察官取調後も警察取調が継続し、被告人らの勾留はその間代用監獄である警察署留置場でなされていたこと、(7)その他諸般の状況からみて、二月一九日事件だけでなく、これを含めた五つの列車妨害事件全部についての自白信用性疑いがもたれ、ことに捜査段階における自白についてはその任意性にも疑がある。本件は結局犯罪を証明するに足る証拠はない。」という結論であって、これは捜査当局に対する裁判所爆弾的判決だと申さなければなりません。  そこで、私がお尋ねすることは、これは確かにこの自白強要せられたことを、判決自体が裏づけておる。被告らの訴えるところの取り調べ状況というものは、多数の警官が取り囲んでどなったりこづいたりしながらの取り調べ、これが七名、長時間、真夜中までにわたって連日連夜くたくたになっても許されぬ取り調べが七名、殴打、足でける、頭髪を引き回しての取り調べ七名、コンクリートや板の間に長時間正座させての尋問三名、長時間腕立てふせを強制し、できなくなると殴打、足げをする尋問、これが一人、かどのついたたるきを敷いた上に正座させ、太ももとすねの間にも同様のたるきをはさみ込み、上から固い皮ぐつで力一ぱい踏みつける取り調べワク締めと称するもの、これが二人、水を入れた一升びんの口に細ひもを結び、その細ひも両手で握らせてびんを胸の高さまで持ち上げさせ、びんが下がると殴打する取り調べ、これが二人、二尺くらいのたるき棒を両手を伸ばして指でささえさせ、疲れて落とすと殴打する取り調べ、これはたるき責めという、これは一人、柱を抱かせて両手錠をかけてこづく取り調べ、これが一人、かような取り調べ状況法廷に明らかにされた。もちろん警察官は否認いたしましたけれども裁判所はこれを認めておる。そこで私は、検察当局法務大臣にお尋ねしたいのですが、もちろん今日かような拷問的取り調べが許されるはずはないのであるが、これはいますでに判決でもうたわれておる。被告らの訴えも実に切実であります。これに対して、一体いわゆる刑法の百九十五条ですか、特別公務員暴行陵虐罪、まさにこれに該当するものであるが、どういうお取り調べをなさったのか。これは最高裁判所ですでに認められ、そして破棄差し戻しになった。最高裁判所が認めた理由も、こういう自白に無理がある、どうも拷問的自白をさした疑いがあるということで差し戻された。それを高等裁判所が受けて、これを認めて無罪にしたのです。それが事実争うべからざる裁判所のすでに判定が出ている。これに対して捜査当局はいかなる処置をとられたか、お聞きしたいのであります。これは法務大臣でも刑事局長でもけっこうでございます。
  4. 川井英良

    川井政府委員 ただいま御指摘のように、東京高等裁判所無罪判決がなされたことは、たいへん遺憾なことだと思います。遺憾と申しますのは、検察官有罪を確信いたしまして起訴したにもかかわらず、裁判所の断定と相反したという点におきまして、残念なことだと思います。そこで問題は、ただいまの自白強要の点でございますが、最高裁判所判決指摘されましたのは、御存じのように、二月十九日の貨車流しの事件につきまして、四両の貨車が一度に流れたのか、あるいは検察官主張のように、二両ずつに分割されて切り離されて流れたのかどうかという点について、必ずしも証拠が十分でないということが指摘されまして差し戻しに相なったわけでございますが、高等裁判所におきましてさらに慎重な審理がなされました結果、先ほど御指摘のような判決と相なったわけでございます。そこで高等裁判所は、この検察官主張のように二両ずつに切り離されて流されたというようなことについては、これを認める証拠がないということで検察官主張を全面的に退けたのでございますが、そのほかに、前の一審、二審で有罪判決がなされているところでございまして、その重要な証拠になりましたのは、被告人らの自白と、これに沿うような若干の資料でございますが、その自白につきまして、ただいま質問の中で御指摘がございましたようないろいろな点をあげまして、この自白については内容信用性がない、なおその信用性だけではなくて、任意性についても疑いを持たれるというようなことが、判決指摘されたわけでございます。私どもこの判決全文ができておりませんで裁判所のほうに催促しておりますけれども、まだ全文ができるまでには若干時間がかかるようでございますので、判決全文ができましたら、それに基づいてその御指摘のあった点について検討をしてみたいと思っております。  なお、検察庁としましては、この判決まだ確定しておりませんので、その取り扱いについて目下慎重に検討中であるという報告を受けております。
  5. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、局長の御意見では、自白信用性任意性について、裁判所はそれをとらないで、この自白が無効として全員無罪にした。根本はその自白信憑性にあるのですが、これは判決で否定している。それに対してあなたは、そうじゃないのだ、判決は間違いだという頭ですか。全文でなくったって、テキストはちゃんと出ている。こういう内容、ただ全文じゃないけれども、重要な部分は全部出ている。これは判決文なんですよ。これについて判決を疑うのですか、どうですか。
  6. 川井英良

    川井政府委員 この権威のある判決を疑うつもりは毛頭ございません。ただ、この判決がまだ確定しておりませんで、示された要綱について検討がなされ、さらに近く全文が手交されるということに相なっているようでございますので、検察庁としましては、その全文についてしさいな検討をして態度をきめたい、こういう報告を受けておりますので、私ども法務当局の立場としまして、今日この判決につきまして、これが正当であるとか、これが不当であるとかいうふうなはっきりした見解を示すことは適当でない、こういうふうに考えている段階でございます。
  7. 猪俣浩三

    猪俣委員 私は判決に対して批判をせいという意味ではないのですが、とにかく最高裁判所差し戻しになって、第二審でこういう判決が出た以上は、自白強要した疑いが十分あるわけです、警察官が。つまり刑法の百九十五条の疑いが十分あるわけですよ。また、裁判所判決全部信用しなくても、とにかく嫌疑だけは出てきている第二審の判決ですよ。判決でこういう自白を全く拒否している。こういう四年も五年も懲役を食うことを好きこのんで言う者はありませんよ。常識上明らかなことだ。そうすると、すでに自白強要が行なわれたことは明らかだ。それを強要が行なわれたかどうか、最後の判断はできないにしても、強要が行なわれたじゃないかという疑いを持つことは、すでにこの段階で、なければならぬと思う。裁判所判決が出ているじゃありませんか。それについて疑いがあったら、嫌疑があったら、すぐ取り調べを始め安ければいけない。私は、それをお尋ねしているのです。いままでいろいろ訴えられたけれども判決が出るまでは、われわれもその点について法務当局に聞いておらぬ。しかし、すでにもう第二審の判決が出ている。全部自白というものは拒否されている。そうすると、こういう自白をなさしめた警察官に対して、いわゆる刑法百九十五条の特別公務員陵虐罪に当たる疑いだけはできたろうと思うのです。その疑いもまだないとおっしゃるのかどうか、そこをお尋ねします。
  8. 川井英良

    川井政府委員 最初にお読み上げになりました数点の自白についての問題点の中で、「本件被告人らは取調べに当った警察官暴行の事実を訴え警察官法廷での証言でこれを否定しているが、必ずしも一概に信用できないこと、」この点が、ただいま御指摘の点について最も重要なポイントだと思います。そこで、概括的にはこの判決は、裁判所は否定しておる。警察官証言を一がいには信用できない、こういっておられますので、疑いを持ったということはこれで一応明らかだと思いますけれども、御指摘のように、刑法の百九十五条というふうな容疑として検察官当該警察官について捜査を開始するというためには、私はこれだけでは不十分だと思うのです。やはり全文が、この点についての詳細な判示が示されまして、またそれに沿うようないろいろな、先ほど一部お読み上げになりましたけれども、そのような資料も提供されまして、それらを総合した上でもって犯罪容疑があるということになれば、これは捜査に着手しなければならないと思いますが、今日、これだけでは直ちに捜査権を発動するというのは、私はちょっと早計ではなかろうか、こう思いますので、全文の入手を待った上で、こういうふうに申し上げたわけでございます。
  9. 猪俣浩三

    猪俣委員 ぼくらはそういう考えが間違っておると思うのだが、普通人犯罪について、そういう態度をあなた方とられますか、嫌疑をかける際に。一審、二審で有罪で、懲役四年が何人、三年が何人と、重刑に処せられておる。それが最高裁判所差し戻しになって、もう一ぺん第二審裁判所判決したのがこれなんだ。しかもこれは自白任意性信憑性を全部疑ったために、これはくずれた。ほかに何もあれはないんです。自白だけにたよってやったんです。新聞なんかでも、各新聞がみな論評しておる、自白をあまり重んじて事を断じては間違いが起こるということを論じているのは、その点なんだ。自白だけですよ。それが根本的にくずれてしまって、全部無罪にしたんでしょう。そうしてみれば、その自白というものがどうしてなされたということは、もう十分被告訴えに耳を傾ける時期じゃないかと私は思うのですよ。一審、二審がこれだけの有罪にしたのを、これが全部また差し戻しになって、第二審でもらて全部くつがえって無罪になった。しかもそれは自白そのもの信用ができないからというんです。そうすれば、これは自白に対して、そこに何らかの圧力がかがり、暴力がかかり、誘導がかかった、常識じゃありませんか。もうすでにそれに対しては捜査を始むべきで、ぼくはおそ過ぎると思うのだ。裁判の途中で捜査を始めなければならない。いわんや判決が今日明白に出た以上、そうして一斉に都下の新聞が全部、自白重きを置く裁判は非常に重大な過失を犯すおそれがある――いまの刑事訴訟法からいったって、自白というものの証拠価値というものは、非常に低下しているはずです。あなたも御存じのとおりだ。その自白に非常に重きを置いた検察官、及びそれに重きを置いて裁判をした裁判官も問題だと思うが、とにかく今度は正しく自白が評価されて、ことごとくこれが無罪になってしまった。そうすれば、もうすでに、いかなる警察官がどんなことをやったか、被告はことごとく具体的に訴えているのだ。さっき私が読み上げたとおり、具体的に訴えているのです。それに対して、あなたは、捜査はまだ始めない――判決全文だって、それは前後のいろいろのことがありましょうが、意味するところはいま私が読んだところだ。それだけではまだできないというようなことは、詭弁だと思うのだ。そうすると、判決全文が出たら、直ちに捜査を始めますか。
  10. 川井英良

    川井政府委員 近代刑事訴訟法もとにおいて自白強要するというようなことがあってならないことは、ただいま御指摘のとおりでありまして、私どもも一全く同じ考え方でございます。ただ、本件につきましては、同じことを繰り返すようなことになりますが、先ほど申し上げましたように、これだけの判示というだけでは、直ちに犯罪容疑があるものとして捜査に着手するということは、私、検察官といたしましても困難ではなかろうかと思うわけでございまして、やはりもう少しかなり具体的な証拠というふうなものがなければ、捜査に着手するということにはならないのではないか、こう思いますので、もう少し具体的な資料の出るまで待っていただきたい、待ちたい、こういうふうに思います。
  11. 猪俣浩三

    猪俣委員 これ以上あなたと押し問答してもしょうがないと思うのだが、法務大臣にお尋ねしますが、これは先ほど申しましたように、松川事件と非常に似ておる。それはいずれも自白重きを置いた起訴をやり、自白重きを置いた裁判をやった結果ですが、懲役になるようなことを、そういう自白を本人が好んでする道理がない。そこで、いまの刑事訴訟法は、自白というものに対して非常にその証拠力を弱めておる。そういうところへこの自白重きを置いた起訴をやるということに一つ間違いがあると思うのでありますが、それがすでに最高裁判所へいき、高等裁判所までいって判決になって出ている以上、私は、自白重きを置く起訴というものに対して、一般の新聞が論調に示すがごとく、慎重にやらなければならぬと思う。法務大臣の御意見を承りたい。
  12. 赤間文三

    赤間国務大臣 私は、刑事局長の言うたように考えております。大体お述べになりましたように、この事件は、承ると自白信用性などについての疑いがあるという点について、これはやはり自白についてはすべての捜査官が謙虚に反省をする、今後の犯罪捜査においてもそのような疑いを持たれぬような取り調べを行なうというように十分注意すべきであるという点については、私はそういう感じをとくと持っておりまするが、ただいま刑事局長が言うた趣旨に私は同感でございます。本判決をまだ裁判所が作成もせられておらないときに、確定もしてないときに、これについての捜査をまた始めるということについては、私は刑事局長と同じ考えを持ち、も一つとそういうものこそ、これこそ慎重にやることが大事である、かように考えております。
  13. 猪俣浩三

    猪俣委員 時間がありませんから、あなたといま議論しておられない。いまのあなたの意見には、大いに私は反論があるのだが、省略します。  いま一つ、先ほど読みました判決の中に、ある警察官偽証をやっていることが出ている。二月十九日事件貨車暴走事件の重要な証拠となった現場写真について、一審法廷警察官自分で撮影したと証言したが、それが高等裁判所での証拠調べの結果、うそであったということが明らかになった、これは偽証罪だと思います。これに対しては一体捜査したのかしないのか、どうなんです、刑事局長
  14. 川井英良

    川井政府委員 今日、捜査していないと思います。これは、メーデー騒擾事件なんかにつきましても、御承知のように、その過程におきまして偽証罪が出てまいりまして、警察官偽証罪として処理をいたしております。したがいまして、明確に偽証をしたというふうな証拠がそろいますれば、そういうふうなことについて取り調べをすることにいささかもやぶさかではないと思います。ただ、詳しいことを必ずしも報告を受けておりませんけれども、一審で、たくさんの証拠写真がございますので、自分がとったと思っていたのが、あとでいろいろ調べてみたらどうも他の警察官が写したものであったというようなことはかなりある例でございますので、ほんとうに犯意をもっての偽証か、結果においてそういうふうな証拠が食い違ったものかどうかという点につきましては、これは十分の捜査をしなければならない、こう思います。
  15. 猪俣浩三

    猪俣委員 法の前には平等でなければならぬことは憲法に示すところですが、あのメーデー事件も、弁護団からわいわい騒ぎ立てて、やっと検察当局偽証罪みたいにした。検事に有利な証言をすれば、偽証でも何でもない、見のがしておいて、被告に有利に証言すると、すぐ偽証罪だ、ちょっと来い。証言が終わると、法廷から出るやいなや、ちょっと来いと引っぱる。それほど厳格にやっておる。ところが検事に有利に証言したものは、はたからわいわい言わなければなかなか捜査しない。これは判決でちゃんと言うているじゃありませんか。裁判の結果なんです。それでもまだ捜査のあれができない。もうすでに第二審、高等裁判所では偽証したと、こういうように判決しているじゃないですか。もう起訴せられる以前に裁判所判定を下しておる。それを捜査するというようなことは、当然のことじゃないですか。それでもまだ捜査ができない。これは私どもはわけがわからぬのです。時間がないからこれはおあずけにして、あとでまたやります。  それからもう一つ検事証拠開示の問題がありますが、これも今回、さっき言ったように諏訪メモが出なかったと同じように有力な証拠を出さなかった、運転日誌というものを出さなかった、こういうところにも、この事件全体がぐらつく根底をなしておる。これはいつも問題になっておるのですが、検事自分の手持ちの都合のいいものは出し、自分都合の悪いものは隠してしまう。検事は公益の代表者なんです。こういうばかげたことをやってはいけない。それをみんなやっておる。まあこの問題はこの次にします。法務省に対する質問はこれで終わります。  今度は入管局長及び外務省にお尋ねします。まず外務省に第一にお尋ねしたいことは、ことしは世界人権宣言の二十周年記念で、政府でも四百万円の予算を組んで盛大なる行事をやられることはけっこうなことだと思うのです。そこで世界人権宣言なるものの法的性格、これは国際法として、条約として日本憲法の規定より準拠すべきものであるか、ただ単なる何か規範的な意味のものであるのか、どう理解されておるのか、外務省の御見解を承りたい。
  16. 重光晶

    重光政府委員 世界人権宣言と御指摘になりましたものは、国連の総会の決議でございます。したがって、純法律的にいいますならば、加盟国を法律的に縛るという性格のものではございません。ただ道義的勧告と申しますか、そういう性格のものでございます。
  17. 猪俣浩三

    猪俣委員 もう宣言が発せられてから二十年、わが国も忠実なる国連国家の一員でありますから、もうすでに慣習法として成立したと見られませんか。法的拘束力はないのですか。
  18. 重光晶

    重光政府委員 世界人権宣言に書いてある内容につきましては、もちろん日本憲法のたてまえからいって当然のこととわれわれは考えておりますし、そういう意味では、その内容は先生おっしゃいましたように慣習法になっておると考えることもできると思います。ただ、人権宣言そのものの文章にわりあい抽象的なことが書いてあること、これは先生御存じのとおりであります。したがいまして、それの法的効果というものはどういうことであるかということになると、法律上いろいろ疑問があると思います。しかし、国際法上、国際連合の総会の決議という形式から申しますと、法的効果はない、こういうふうに申すほかないと思います。
  19. 猪俣浩三

    猪俣委員 時間がありませんので、これはまた後日に、もう少し難民に関する条約等につきましても、御説を承りたいと思います。留保いたしておきますが、入管局長にお尋ねいたします。  これは朝日新聞の「声」の欄に投書されておる一橋大学の大平教授の意見、この方は国際法の大家であります。どうかというと、いつも自民党側推薦の公述人として出て来ている人で、なお、私がやっております政治亡命に対する裁判においても、入管から二人、学者の関係で国際法の学者、それから私ども原告から二人出しているが、入管が申請した国際法の学者の二人のうちの一人が、この大平さんです。この人が、しかし、先般行なわれました柳文郷の台湾独立青年連盟の強制送還について非常に不審を抱いている。そこでこれも難民問題としていろいろ御説を承らねばならぬ点が多々あるのですが、時間が実はないのですが、ただここに大平さんは「わが逃亡犯罪人引渡法(昭和二八年法律六八号)の第二条二号に定める政治犯罪人不引渡の原則に違反すると言わねばならない。」といっている。これはどういうふうに解釈なさるか。
  20. 中川進

    ○中川(進)政府委員 お答えいたします。ただいま御指摘の政治犯罪人の不引き渡しに関することでございますが、これは私どもは次のように考えます。すなわち、本人が台湾におきまして政治犯罪を犯して日本に来ているというのでありましたならば、まさにこの条項に触れるかと思うのでございますが、この柳文郷に関しましてはこの法律の適用はない、かように考えているわけでございます。
  21. 猪俣浩三

    猪俣委員 これも議論は省きますが、これはこの前言うたように、裁判所の救済を受けられないようなやり方でもって送還された。四十三年三月二十六日午後五時に急に収容して、翌日の朝九時には羽田の空港で乗せてしまった。二十七日の午前八時に東京地裁に仮処分の申請を弁護団がやったのであります。そして裁判所から入管に対してこういう申請書が出ているからということを告示しているにかかわらず、強制的に送還してしまったということです。これははなはだ問題が多い。裁判所で正当な手続をしても間に合わぬような方法で急に返してしまう。こういう独立青年連盟に属する人間は、まだ相当いるわけです。彼らの間に非常に恐慌を起こしています。こういうことは、私は日本の国民の信頼を高めるゆえんではないと思うのです。懲罰委員会で催促しておりますので、しょうがありません、これは留保しておきますが、よく考えておいてください。この難民問題については、あなたとぼくはやらなければならぬので、お考え願っておきたい。  人権擁護局長が出ていらっしゃるが、一言だけ、この前からお頼みしてきました博多の井上教授に関する問題ですが、博多における人権じゅうりん問題、これを井上教授が人権擁護局へ訴えられておるのですが、これはどういうふうになっておりますか、その中間報告……。
  22. 堀内恒雄

    ○堀内政府委員 お尋ねの件につきましては、福岡法務局に調査をさせております。そして福岡法務局におきましては、申告者であります九州大学法学部の井上正治教授からも一事実関係につきまして事情をお尋ねいたしておりまして、なお法律的な見解その他意見を伺っております。また、福岡県の警察当局からも、当日の警備状況に関する資料の提出を求めておりまして、その他事情の説明を求めますほか、現在までに学生、新聞記者、一般の目撃者など関係者合計三十五名ほどから事情を聴取いたしております。現在までの調査の状況は、そのような結果でございます。これらの結果につきまして、まだ結論を出すまでには至っておりません。
  23. 猪俣浩三

    猪俣委員 これもまた詳しくあとでお尋ねすることといたしまして、これで私失礼いたします。
  24. 永田亮一

  25. 中谷鉄也

    中谷委員 大臣十一時十分に御退席になるようでございますので、簡単に二、三点お尋ねをいたしたいと思います。  昨年十一月以来、三派全学連に対する破防法適用の問題については、当委員会においてしばしば大臣の見解をただしましたが、近く治安関係の閣僚の打ち合わせ会があると聞き及んでおりますが、そういう段階で大臣はどのような意見をお述べになりますか、この点をお尋ねをいたします。  同時に、きわめて慎重にということを従来御答弁になっておられたわけですが、そういう慎重な討議の中から、いわゆる三派全学連に対して破防法を適用することのメリットとデメリット、要するに利害得失、このような問題について現在どのような点を御検討になっておられるか、この点をひとつ最初にお伺いをいたしたいと思います。
  26. 赤間文三

    赤間国務大臣 治安閣僚懇談会をやる予定でおります。これは治安全体についての懇談をやるのでございまして、どういうことがこの会議で問題になるということは、まだきまっておりません。したがって、どういうことをこの会議で話し合うかということを申し上げるわけにはまいらないと思います。  それから破防法につきましては、前から言いましたように、これは重要な法律でございますから、政府としてはすこぶる慎重にこれを取り計らっていこうという考えに変わりはございません。適用をめどとして事実関係、法律関係、あらゆる面から慎重な調査をやっておる、こういう考え方でございます。
  27. 中谷鉄也

    中谷委員 かなり御検討になる時間が長かったわけですけれども、要するに、この段階においては破防法適用の利害得失、メリットとデメリットというふうな表現が正しいかどうかは別として、そのような問題について大臣の心証はかなり固まってきておるのではないかと思いますが、そういう点についてお答えをいただきたいというのが、最初質問でございました。  なお、この機会に続けてお尋ねをいたしますけれども、最高検察庁の会同等の中では、いわゆる騒乱罪の適用というふうなことが論議されておりまするけれども、この点についての大臣の見解を承りたい。
  28. 赤間文三

    赤間国務大臣 検察当局で、三派全学連等に対する治安問題につきましては、十分な研究が行なわれておるのでございますが、私は、まだその結果を十二分に承ってはおらぬわけでございます。ただ申し上げたいことは、政府としましては、ああいう三派全学連のあの好ましくない活動についてどういう罪を適用したらいいとかいうようなことは、具体的には考えてないのでございます。治安当局が治安の確保の上から有効適切なるものをやるというふうに考えておるのであります。政治的にどういう罪を適用したらいいとか悪いとかいうようなことは、これはあまり法務大臣としては考えない。ただ、一国の治安が完全に守られることについては、捜査当局あるいは検察当局みんな力を合わせてやってもらいたいという強い希望を持っております。どういう罪を適用するかどうかということは、捜査当局が独自の立場からやるということが望ましい、またそうあってほしい、かように私は考えております。
  29. 中谷鉄也

    中谷委員 もう一度お尋ねしますけれども、すでに破防法適用については、法律的にも、技術的にも、実行の面からも非常にむずかしいということが伝えられております。そういうような中で、それらの点も含めて破防法の適用をめどとしてということであるけれども、かりにそういうふうな法律的、技術的あるいは事実認定、実行の面においての困難と混乱が生ずるということであれば、むしろ破防法の適用はしないということも、治安当局の立場からも私は言えるのではないかと思うのです。重ねてお尋ねいたしますけれども法務大臣考えておられる破防法適用のメリット、デメリット、こういうのは一体どういうものなのか、これは慎重に御検討になっておられるのだから、ひとつこの機会にお答えをいただきたい。
  30. 赤間文三

    赤間国務大臣 破防法適用につきましては、たびたび申し上げまするように、私は破防法を適用することを目途といたして研究するという態度をとって、あらゆる面からそれの検討を続けておるのが現況でございます。別に考えが変わってきたということは、私自身にはありません。あくまで慎重にこの重要な法律は検討すべきものであるという信念を初めから終始一貫持っており、現在でもこれが検討というものをやっております。
  31. 中谷鉄也

    中谷委員 関連と申しますか、次の質疑者から若干の時間をいただいての質問ですから、簡単にいたしておきますけれども、大臣の答弁は私はおかしいと思うのです。と申しますのは、破防法の適用をめどとして検討しているとおっしゃる。だから、結局それの利害得失、適用すべきか、すべからざるかという点について、どういう諸点を判断事項として、また判断すべきものとして現在お持ちになっておられますか、こういうことを私はお尋ねをした。そうすると、その点についてお答えがなくて、破防法適用をめどとしてということをおっしゃると、破防法の適用がどんな理由でという、その適用しなければならない理由が列挙されない限りは、法務大臣は破防法の適用についてきわめて慎重だとは言っておられるけれども、どうも熱心だという印象だけが出てくる。そして伝えるところによると、どうもそういうことをおっしゃっているのは法務大臣だけのようであって、というふうなことも勘ぐりたくなってくる。したがって、私は、もうすでにこの段階なんですから、やはり破防法適用については、こういうふうな利害得失があった、したがって、こういうふうな点を判断しておるのだ、こういう点が判断事項になるのだということを、率直におっしゃったほうがいいのじゃないかと思うのです。ただ気持ちだけ、破防法適用をめどとするのだという目的というか、希望というか、そういう方向だけをお出しになっても、方向に伴うところのいろいろな前提となる事実について、どの点を判断をするのだということが出てこないと、私は若干問題があるのじゃないかと思います。これが一つ、これはお答えをいただきたい。  なお、この機会に私お尋ねをいたしておきますが、去る日、王子野戦病院のデモで死者が出ました。こういうふうな問題について、やはり法務大臣というのは、治安をとにかくあずかるという立場と、そしてもう一つは人権を守るという二つのお仕事があると、私は思うのです。どういうことがあっても、やはりそういう死人を出すというふうなことは、原因はいかようともあれ、こういうことは絶対に避けねばならないことだと思うのです。ひとつそういう点について、私は法務大臣としての御所見を承りたい。きょうは特にこういうふうなデモについて、警察、三派全学連、この両者に対するところの、大臣としての、こういう最もふしあわせなできごとを避けるための御所見を私は承りたい。  と同時に、私はひとつこの機会に希望をしておきたいと思うのです。いろいろな点について慎重に御検討になっておられるわけです。大臣自身は法務省当局、それから検察庁等からいろいろな点についての御報告を受けておられると思う。しかし、ひとつこういうふうな実態について直接ごらんになる、たとえば王子野戦のデモ等についてごらんになる――いろいろな群衆の流れも最近出てまいりました。あるいは学生自身のデモについても、テレビに直接映らないいろいろな動きもあります。警察の動きについても、警察自身についていろいろ改善すべき点もある。こういうふうなものについて、こういう死者が出るというようなふしあわせな事態を防ぐという意味、いま一つは治安の責任者という立場から、実地に臨んでこういうデモ自身をごらんになる、こういうことで、いまだかつてない破防法の適用を前向きにといいますか、めどとして検討しておられる中においては、そういうようなものをごらんになることがむしろいいのじゃないか。直接臨まれることが真相の把握になるとは限らないと思いますけれども、こういうふうな点についての大臣の見解を、私は承っておきたいと思います。
  32. 赤間文三

    赤間国務大臣 破防法についてどういう点を研究し、またどういう利害得失があるか、そういうことについての考えを申し述べよということですが、破防法は、とにかくどこに行きましてもなかなか重要な法律でございますので、これはもう徹底的に慎重にやる。たとえば法律の適用の面から見ても遺憾のないように、それから実際の事実問題においても破防法に適合するかどうか、それからその利害得失とか、あるいはこれが訴訟になったときの問題とか、あらゆる面を十二分に、証拠その他あらゆる面から検討をいたしておるようなもので、とにかくこの問題につきましては、さきに言いましたように、適用をめどにあらゆる面から検討をやるという考えでおります。ただ、法務大臣一人じゃないかというお話でありますが、私一人じゃなくて、それを希望している人もたくさんあるように私は考えております。これはひとつ徹底的に研究をし、遺憾のないような方法を講じようということで、縦横無尽にその研究をやっておるというのがあれであります。  次に、王子のときに死者が出たということについての、デモその他の感想を言えという。まあとにかく露骨に言いますと、事情のいかんを問わず、死者が出るなんということは、今日の時勢から見れば、実にもう残念しごくでございます。目下関係当局においてその原因というものを極力調査中である、また厳重なる調査をせよと私は言っておるのでございます。それで、このデモその他についての法務大臣考えからいえば、私は、日本の秩序を保つ、社会の秩序を保つというのが、私に課せられた問題、憲法の番人で、法秩序の維持というのが、私の職務だと考えております。とにかく事柄のいかんを問わず、暴力によって法律を無視してやるというようなことは、これは全く今日の時勢に合わぬのみならず、一番好ましくないもので、そういうことは、今日の民主主義の時代においては、私はむしょうに残念なことに考えております。われわれがみんな自由に活動をしていくということは、やはり一つのルール――民主主義のルールのもとにおいて、法律に従って生活をして、人に迷惑をかけぬというのが、今日のわれわれの文化国家、民主国家としてのものじゃないか。それを暴力によって、法律はどうあろうとおれはやるのだなんというのは、これこそ日本の民主主義を破壊するものであって、これはもうあらゆる面から非難をせらるべき性質のものである。社会秩序を大いに保っていく、法秩序を保っていくということを、私としては全国にあらゆる機会をつかまえて徹底をさせることが、民主主義を育てていくのに一番大事なものじゃないか、私はかような考え方を法務大臣としては持っておるのであります。どうかしますと、いやそれは原因を与えたから暴力、破壊活動が起こったのだからとかなんとかいう方もあるようですが、私は絶対にそういうことを考えておりません。日本の民主主義を守り、育てていくためには、いかなる原因によっても、いかなることがあっても、暴力によってそれを処置するということは、すべてがこれを好ましくないことだとして民主主義を擁護することが、正しい行き方であるのじゃないか、かように私は考えておるのであります。それは、まずもとから言いますと、私は、そういういろいろな事柄が起こらないようにすることに全力を尽くすのが第一、起こらぬようにまずやる。しかしながら、そういうような社会の秩序を乱すような暴力があるとすれば、これはみんなの力によって暴力を抑止するということが、今日の時勢において一番望ましい事柄ではないか、かように私は考えておる次第でございます。それで、治安のもととしては、なるべくいろいろな事件が起こらぬようにやり、またもし意に反して起こったならば、断固としてそういう暴力破壊活動行為が再び起こらぬような措置をとっていくということが、国としてはもう当然必要じゃないか、かように私は信じておる次第でございます。  以上で私の考えを、抽象的でございますけれども、お答えを申し上げました。
  33. 中谷鉄也

    中谷委員 大臣、実はこういうことなんです。対話のできるとかできないとかということは別にしまして、要するに何かそういうふうな、治安当局のそういういま大臣が述べられたような考え方が、いつまでたっても結局こういうふうなデモのエスカレーション現象を起こしていると思うのです。したがって、一体どうなんだろうということから、基本的に問題を一ぺん見てみようじゃないか、私自身も最近深刻にそういうふうな気持ちになっているわけなんです。そこで、だから私が大臣に申し上げたのは、原因をつくったからけしからぬというようなことを言うのはけしからぬというふうなこの委員会のお席での話、もちろん大臣の御見解として承っておきまするけれども、実際に目の前で、たとえば群衆が警察官になぐられているという場面もあるわけなんです。あるいはまた、群衆が警察官をなぐりつけているという場面もあるわけなんです。そういうようなものを、治安を守るというお仕事を大臣はすると同時に、憲法の番人としての人権を守るというお仕事を大臣がされる、そういうような意味からひとつ直接にその大臣の目と感覚でごらんになったらどうだろうかということを、私は申し上げるわけです。というのは、今度八日にまた王子野戦についてのそういう集会デモがありますけれども、私自身も冷静にこの問題についてこれを直視して、そうして問題は、要するにこのようなエスカレーションした状態においてそういうものをなくするということについての努力をしなければならぬということを考えている大臣御自身が、そういうことについてひとつ現場にお臨みになるつもりはありませんかということなんです。
  34. 赤間文三

    赤間国務大臣 いい御忠告のようにも思います。機会を見て、ひとつ現場を視察することもけっこうに考えます。機会がありましたら、ひとつ現場を見たいと考えております。
  35. 中谷鉄也

    中谷委員 終わります。
  36. 濱野清吾

    ○濱野委員 関連してちょっと。  ただいま中谷君のほうから現場の視察をする考えがないかという質問について、機会があればというような御答弁で、私はまことにけっこうだと思います。さらに二十九日に私が大臣に失礼なことを申し上げましたが、実際問題としましては、現場を見てくれませんと、あの状況をはっきりつかむことができません。三十一日にもテレビでアメリカの西部劇をごらんになるような感じで見ておりましたのでは、治安の責任を持つ法務大臣としてはどうかと思うということを申し上げましたが、ただいま同僚の中谷君からそういう御意見がございましたので、少なくとも治安関係、この法秩序を維持する法務大臣、赤澤国家公安委員長、この両君だけにはあの実際の状況をぜひ見てもらいたい。見ませんと、あの感じは出てまいりません。つい佐世保事件当時は、警察官の行き過ぎということを人権擁護の立場から法務委員会等において議論されましたけれども、今日ただいまの警察官の行動というものは、決して私は行き過ぎではなかったと思います。人権擁護に言論をかりてそして警察官の警備の行き過ぎということを論議することは、他に一種の目的があるのではないかと考えておりましたが、いよいよ王子事件第一波から第六波までの実際を私ども一視察いたしますと、いよいよ行き過ぎではなかったということを確信できるわけであります。法規の命ずるところ、あるいは警備当局の訓令によるものであると思いますが、実際問題として警備を担当している第一線の警察官は、極端なことばで言えば、手は縛られている、足は縛られている、そして生命、身体を守るものはわずかにあのたて一つである、あるいは投石を防止する網一つである、こういう状態において、あの暴力デモを一体どうして防止することができるか、あの暴動を防止することができるかということを考えますと、私は国家権力をもって天下の良民の治安を維持することはなかなか容易でないと、実はあらためて新たなる感懐を持ったわけであります。こうした感懐を持つのは、たとえそれがどういう人であろうと、実際あの暴力デモの実態を見なければ、これは感じられない深刻なものだと思います。ですから、私どもは、自分の住んでいる町でありますから、一波、二波、三波、四波――四波からあのデモの様相が変わってまいりましたが、五波、そしてまたやろうとした一つは中止になったようでありますが、七日か八日にまたやるそうでありますから、これは事務当局の局長さん方も、あるいは治安の最高責任を持つ閣僚諸君も、ことに法務大臣と赤澤大臣とは、けがをしないように、同時にまた警察官に護衛されて行けばそれは攻撃の目標になりますから、私服で覆面でもしてお出かけになられるように、特にこの機会に忠告をいたします。  それからもう一つこの機会に申し上げておきますが、二十九日にすべてのことは申し上げましたが、私はこの一日のデモを見ましても、治安に対する措置は用意周到な調査あるいはまた検討が必要でありますが、敏速果敢に行なわなければあとにしこりが残ってくる、またあとにいろいろな影響が出てくる。これは治安の維持の立場にあるそれぞれの方々が心していただかなければ、弊害をあとに続々と残すことになろうかと思います。ですから、政府もそれを考えて――私の町などはもはや無警察状態である。警察の力があっても、それが及ばない状態である。政府は何をしているか、こういうようなことで、政府を担当している自民党の党員は、もう外に出るとおしかりを受けるような状態であります。私はイギリスやフランス、あるいは西独、アメリカ、カナダあたりのこうしたデモのことをいろいろ調査しているのでありますが、今回の学生デモのような類型はあまり見られません。日本に初めて起きたああしたデモというものは、むしろ将来に記録すべき大事件だと思います。でありますから、私は、あの暴力デモをチェックする法律がたくさんあるのでありますから、その犯罪内容性格を十分見きわめて、しかも敏速に、果敢に、勇敢に処理するように切にこの機会にお願いをいたします。  わが党といたしましては、破防法の適用を総務会で決議しております。ひとり破防法ばかりではありません。およそ、七日、八日には第六回目ないし七回目のああしたデモを繰り返すだろうが、しかし、あのままに放置しておけば、それは九回、十回、二十回――しかもわれわれの知るところにおいては、わが国の大学が百以上に及んでああした運動が展開されておるようでありますから、ますます勢いをつける結果にもなろうかと考えます。思想の対策であり、伝染病の対策よりはむしろやっかいなしろものであるということが考えられ、しかも伝染病と同じように、その措置を誤ればこれはだんだんエスカレートするということは必至でありますから、ひとつ当局の勇断を望む。  きのうの新聞でしたか、警察当局が騒乱罪を適用することに踏み切ったというようなことが出ておりますが、こういう情報が新聞等に出てまいりますと、三派全学連の過激派の指導者はどういう態度に出るか、実は七日、八日のデモを十分注意して見ておるのでありますが、私は、いよいよ政府がやるんだということになれば、あの人たちに一つの変化が起きることは当然だと思うのです。少くなくともやじ馬というような種類のものはなくなるでしょう。実はああいうデモなどをいろいろ調査してみますと、町内の人は少ないのであります。しかも官公署の職員までそのデモに参加して、そして当局もその措置をとられているようでございますが、こうした性格のものは、何回も申し上げますけれども、早いほうがよろしい。どんどん感染していくし、どんどん発展していく、私はそういうふうに痛感するのでありますから、さらにこの機会に大臣に、閣僚会議をやりましたならば、その点も十分私ども意見として発言してもらいたい。何といってもあなたが法秩序維持の最高責任者でありますし、他の閣僚もむろん責任を負うべきでありますけれども、あなたが一等大事な人でございますから、東京のどさなかにこんな現象が十回も一二十回も起きたのでは、何が文明社会でありますか、何が法治国家でありますか、何が政府でありますかと言いたいのです、実際は。治安の責任を持てないという国は、文化国家にはございません。どこにもないのです。佐藤内閣はだいぶ腹がしっかりしてきたようでありますから、大臣がこれを補佐して、治安維持の責任を内閣が思い切って引き受けて、果断な措置をひとつお願いする、こういうふうにしたいのであります。お願いします。
  37. 赤間文三

    赤間国務大臣 お話しの点よくわかりました。十分配慮するようにいたしたいと思います。
  38. 永田亮一

  39. 枝村要作

    枝村委員 私は、山口県の防府市で起きました、自衛隊の隊員の暴行によって一人の青年を死に至らしめた、こういう事件について関係当局に質問したいのであります。  いまからいろいろ関係者に聞いていくわけでありますが、その前に、私の入手いたしました資料によって一応その事件の概要を申し上げてみたいと思います。  これは昨年の十一月十八日の夜起きました。防府にある航空自衛隊の南基地正門前の路上で引き起こされました。同基地正門前の飲食店「南風」で食事をしておりました防府市中関の労働者大下満さん、当時二十歳でございますが、自衛隊の隊員の日ごろの傍若無人の態度に対する怒りを一ぱい飲みながらぶちまけておりましたところに、同じく同店で酒を飲んでいた同基地管理隊員の今林仁空士長、これは二十三歳でありますが、このほか二、三人の自衛隊員が、いわゆる民間人のくせにことばがひど過ぎるぞというような言いがかりをつけて突然大下さんを路上に引きずり出して、そしてなぐるけるの暴行を加えたのであります。今林らは大下さんが失神したのを見ますと、同店のコップに水を入れてきて数回顔にかけ、道路の向かいにある基地の中に逃げ込んだ。そのあと現場に通りかかりました市民が大下さんのそういう倒れておる状態を見まして、すぐ大下さんを自宅まで連れて帰りました。ところが、大下さんは非常に激しい苦痛を訴えるものでありますから、近くの岡村病院で診療を受け、その数日後切開手術を同病院で行ないましたところ、自衛隊員の暴行によって腸が裂けて内臓出血しておることが判明いたしました。大下さんは直ちに県立防府中央病院に移されて加療を続けましたが、ついに腸の裂傷が原因で、十二月十五日の朝、全身が骨と皮になるようなみじめな状態で衰弱してなくなった、こういうのが概況であります。警察はそれに対して、防府署長が言ったことによれば、この事件を十一月二十八日ごろ知った、そこで捜査を始めておる、こういうことを当時言っております。そこで、二月二十二日に本人を逮捕いたしました。しかし二、三日して直ちに釈放したそうであります。その後これが送検されたか、あるいは起訴、不起訴、どういう処分が行なわれたかということについては、私は知りません。そういうのが、いま私の手に入りました大体の状況であります。  そこでお尋ねしたいのは、いま私が申し上げましたような情報が事実であるかどうか。もし私がいま言ったことに対して相違がある部面があるならば、警察当局としてひとつそれを正すという形でお答えを願いたいと思います。
  40. 内海倫

    ○内海政府委員 お答えを申し上げます。事件の起こりましたのが十一月の十八日午後十時半ごろ、場所はただいまお話のありました防府市の「南風」という飲食店の前、被害を受けましたのは岩田建設の労働者である大下満、被害を与えましたのが航空自衛隊の第一航空教育隊に所属する空士長今林仁。どういうふうなことでこういう傷害事件が起きたかということでございますけれども警察におきましてはこの事件を認知いたしまして以来、そこで一緒に食事をしておったりあるいはそこに同席しておったような人、さらに経営者の大田文子さん等、相当数の人からいろいろ当時の状況を聴取いたしました。また、被害者である大下さんのほうについても十分調べたわけですけれども、これは本人からは供述はとれなくて、同人の母親という方を立ち会いとしまして、いろいろ聞けるだけのことは聞いております。それらをいろいろ総合いたしまして、どういうふうな状態で傷害事件が起こったかということでありますけれども、この傷害事件の当事者である自衛隊の今林とそれから被害者である大下さんが、たまたま時を同じくしてこの「南風」で顔を会わせた。もちろん顔見知りの仲ではないと思います。大下さんが今林に対し、自衛隊は腰抜けだというふうなことを言ったようであります。そこで今林がたいへん立腹をした。そうして同店の前の路上で大下君の顔面をげんこつで、手拳で二回くらいなぐりつけ、さらに倒れた大下君の腹部を一、二回くつばきのままけりつけた。その結果、肝臓破裂、腹腔内出血、当時の医師の診断では、全治一カ月を要する傷害、こういう診断による傷害を与えた。ところが、その後大下君が十二月二十九日の朝六時二十分ごろ、その後の鑑定書によりますと、こういうふうな傷害を原因として入院の上死亡した、こういうふうに警察側では見まして、当初警察は傷害事件としてこれを検察庁のほうに送致いたしました。ところが、十二月の十五日に大下君が死亡をいたしましたので、警察におきましては、この死亡という事実によって傷害致死の容疑といたしまして、直ちに監察解剖、司法解剖、それの許可状を請求いたしまして、山口大学において鑑定解剖を実施してもらいました。すでに事件は送致済みでございますので、検察庁のほうに二月の三日に鑑定書が山口大学のほうから正式に提出されましたので、直ちに山口地方検察庁のほうにこの関係の書類を追送いたした次第でございます。この追送によりまして、山口地検におきましては、傷害致死罪として処断をするように起訴をいたしたということを聞いております。なお、警察のほうは、十二月の十五日に傷害事件として山口地検のほうに送致をいたしました。  以上が、私どものほうの山口県警察から報告を徴しました概要でございます。
  41. 枝村要作

    枝村委員 私が調べたのとあまり変わりがないようでございますが、もう一度確認いたしますが、死因は結局山大から解剖の結果を監察書にして警察にいってきた。これによっても明らかにされておると思いますけれども、先ほど言いましたように、やはり暴行を受けた、それが原因でなくなったということを警察当局も確認しておる、こういうふうに見てもよろしゅうございますか。
  42. 内海倫

    ○内海政府委員 一応鑑定書のごく概要を申し上げますと、「この死因は肺炎並びに腹膜炎による病死であるが、原発の腹膜炎は膵臓の所見、さらにその周囲の癒着の程度よりして、外傷により生じたものではないかと思料される」云々、その他「本屍には前記手術による創傷及び腰部の褥創のほか、損傷や出血を認めなかったが、もし本屍の上腹部に損傷があったとすれば、これは有刃の鋭器によるものではなくて、鈍体が作用したものではないかと思料される。」これは非常に学術的な表現でございますが、結局この鑑定書の示すところは、その前に受けた傷害というものが、この直接の死因となったすい臓炎、腹膜炎を引き起こしたものであり、結局それが原因であるということを鑑定しておるものと考えます。
  43. 枝村要作

    枝村委員 そうすれば、やはりなぐられたことが原因で死に至らしめたということであると思います。そこで、警察はいろいろな認知をして以後手を打ったといってはおるのですけれども、大下さんを直接病床で尋問したと思うのですそ。うすれば、これがどういうひどい傷を受けておるか。しかもその当時は、もうすでに岡村病院で手術したあとだと思うのです。ですから、当然その重大性を考えなければならないと思うのです。いろいろ供述その他をとって送検はしたとは言っておりますけれども、犯人本人に対する何らの措置もせられていない。ですから、その周囲の世間一般の人たちは、事件が十一月の十八日に起きて、そうして二月の段階に入りまして地元の人たちが騒ぎ出し、地元の新聞がこれを書き立てる、それからようやく腰を上げて、とうとうそういう世間の騒ぎにこたえ切れずに、二月二十二日に逮捕する、こういうようになったんだというように見られているのです。あなた方から言わせれば、それはそういうことはないといって返答するかもしれませんけれども、どうもその間のいろいろのもみ消し工作とかいうものが行なわれておることをいろいろ考えますと、法を守る、法秩序の維持をすべき当局が、人一人殺したという事件に対してそのようななまぬるい態度をとったことに対して、どうも私どもは不可解でならぬのであります。もう一度そういうことを聞いてみたってしかたがありませんけれども、どうもそういうことからして、相手が一般人でありませんので、いわゆる自衛隊の隊員、しかもこれは憲兵だそうでありますが、そういう立場にある。それと酒の上のいざこごというようなことから、一般の人たち、特に公安事件に対する警察当局のきびしいまでの態度ということから判断して比較してみますと、非常に手ぬるい、温情的な、あるいはできるならばこれは示談か何かで済ましてやるべきだというような基本的な考え方が、やはりあったのではないかというように邪推、推察されてもしかたがない、こういうふうに私どもは思うわけです。一たん逮捕したのでありますが、処分保留のままに結局釈放したのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  44. 内海倫

    ○内海政府委員 ただいまの御質問に対して、くどいようですけれども警察側のこの事件に対処した考え方並びに実際に対処しました措置を申し上げ、さらに御質問の点にお答えを申し上げたいと思います。  先ほども申しましたように、この事件は十一月十八日に発生いたしております。警察におきましては、これは自衛隊員でありましょうとも、一般人でありましょうとも、あるいは職業が何でありましょうとも、そういう点については何ら差別すべきものでもありません。したがって、自衛隊員であるがゆえにこれをかばう、これをどうこうしようというふうなことは、警察においては別段考えておりません。本件におきましては、私どもの山口県警察本部から聞いております報告によりますれば、そういう点はきわめて厳正な態度をとっております。そこで申し上げてみますと、事件は十一月十八日に起こっておりますけれども警察側がこの事実を承知いたしましたのは十一月二十五日、したがって、約一週間後でございますが、被害者の実兄の大下頼夫さん外二名の方が防府警察署の中ノ関駐在所を訪れてきまして、私の弟が十一月十八日こうこうこういうことで自衛隊員になぐられ、けられて腹が痛み始め、「南風」に居合わせた客の単車で自宅まで運ばれたが、さらに十九日に岡村病院に入院した、こういうふうな連絡あるいは報告、事実の通報ということが行なわれ、さらにこれはどういう意味か私よくわかりませんけれども、本署のほうには報告しないでくれ、こういうふうなお話があったようでありますが、駐在所員は、事実があればこれは刑事事件として処理しなければいけませんということを大下さんに告げて、そして大下さんからいろいろ事情を聞いたようであります。そこで、駐在所の所員は十一月二十六、二十七日の両日岡村医院、それから「南風」及び自衛隊等についていろいろ聞き込みをいたしましたところ、まさしくそういう傷害事件があったということが確認されましたので、十一月二十八日に防府警察署のほうに報告をいたしました。そこで、防府警察署のほうで捜査を開始いたしまして、その報告を受けた日に即日、十一月二十八日の三時ごろに岡村医院におもむきまして、被害者の大下さんの母親の大下マスエさん立ち会いのもとに岡村医師から事情を聴取しました。これは負傷の状況、こういうふうなものを聞きますとともに、その岡村医師から手術後三日しか経過しておらないということで、当人が痛みを訴えるということで調書の作成ということは不可能である、こういうことで、本人のいろいろ述べるものを警察官がメモをして帰りました。その後、そのメモに基づいて調書を作成しようとして連絡いたしましたところ、十一月三十日に、岡村医院のほうから治療経過が思わしくなく、完全看護のため県立中央病院に転院するようにいたした、こういうことで、警察の係長は今度は中央病院のほうに行きまして被害者の容体を聞きましたところ、からだが衰弱しておるので調書作成は無理である、こういうことで調書作成はできませんでした。そこで容体が悪いということを確認して帰ったわけであります。他方、警察といたしましては、大下さんの被害を受けた事実をしっかりと固めますために、先ほども申しましたように、いろいろな人の聞き込みをいたしました。参考人として正式に事情を聴取いたしました半面、加害者が今林であるということは、十一月二十七日に判明をさせております。そこで、十二月四日には飲食店の経営者の大田さん、それから十二月五日には航空自衛隊の一緒に行っておりました幸君という隊員、十二月八日にやはり「南風」におりましたお客さんで衣料商の藤本さん、同じく「南風」のお客さんである白井さん、それから十二月八日さらに本人今林の上司である一等航空曹の西本氏、さらに十二月十一日に被害者を家まで単車で送った公務員の柏さん、こういう方たちについて当時の状況等を逐一聞きまして、そして今林が間違いなく先ほど申し述べたような傷害事件容疑者であるということを確認し、その証拠に基づいて十二月八日今林を防府警察署に出頭させて取り調べをいたしました。取り調べましたところ、本人はその犯罪の事実を全部認めるということ、それからいろいろ御意見はあろうと思いますが、自衛隊の規律の中におる者でありまして、また諸般の状況から逃亡のおそれも認められませんでした。また、氏名その他についても全部正しく自供いたしております。こういうふうなことで、特にこれを逮捕しておく必要が認められなかったので、取り調べの後これを帰した、こういうことでございます。十二月十五日に傷害事件として山口地検に書類を送致いたした。ここまでが警察の措置でございます。以下は検察庁のほうの措置になるわけでございますが、先ほども申しましたように、十二月の二十五日に大下君が死亡したということで中央病院の当直医師から連絡がありましたので、しかも、どうも死亡の原因が結局前に起こった傷害にあるというふうに考えられましたので、防府署におきましては、直ちに今度は傷害致死容疑ということで鑑定処分許可状を請求いたしまして、先ほども申しましたように山口大学で鑑定嘱託による解剖が行なわれた、これが十二月の二十五日でございます。ただ、鑑定書は二月の三日に作成されて警察のほうに提出されましたので、それを直ちに地方検察庁のほうに追送いたしました。私どもの聞いておりますところでは、山口地検では、私どものほうから追送しました鑑定書をよく調べ、二月二十二日に傷害致死事件として今林を逮捕、二十四日傷害致死事件被疑者としてこれを起訴し、二月二十八日に裁判所の棄却により身柄を釈放したということを、地方検察庁のほうから警察庁のほうは聞き及んでおるわけであります。  以上のような経過でございまして、警察といたしましては、犯罪捜査として尽くさなければならない措置は、必要な限度において十分尽くしておると思います。また、自衛隊員であるがゆえに特にこれを軽く見るとか、ましていわんや犯罪の事実についていささかでもこの事実を曲げるというふうなことのない厳正な措置が警察段階におきましても一行なわれ、また検察庁におかれましても、その措置が十分行なわれておるように私は感ずるのでございます。以上、たいへん長くなりましたけれども一、経過を御報告いたしました。
  45. 枝村要作

    枝村委員 大体わかりました。  しかし、先ほどちょっと言うたのですけれども、やはり非常に強い暴力行為を行なって、そして当時あなた方が調べられたときには、よもや死ぬとはお考えにならなかったかもしれませんけれども、岡村病院の診断結果を見ますれば、これは明らかに重傷だということがいえるのです。そういう事件に対して、いま言ったような取り調べだけで、しかも本人を拘束せずに任意で調べていくというようなやり方では、多くの人が疑いを持つのは無理もありません。しかも、その間に、地元の、航空自衛隊に対する協力会とかなんとかあるそうでありますが、その会長をしております市会議員が中心になりまして、いろいろもみ消し工作をやっておる、こういう事情も加えて、どうも警察は普通の問題とは差別的な取り扱いをして、寛大だ、こういうふうに見られてもしかたがない、そういう状況があったように私ども思うわけであります。死亡してから後、検察当局が一時的ではありましても逮捕したのでありますが、これでも結局それまでに至る間――十一月に起きて二月ですから、非常に長い間問題を放置しておったということが、先ほどからいろいろ質問しておりますような私の質問の背景となってあらわれてきた、このように思うわけであります。  そこで、今度は防衛庁にお伺いするのですけれども、いま言いました、市会議員を中に入れていろいろ工作が行なわれたということでありますが、これに対して地元の自衛隊の当局として、あの人はかってにやったんだというような御答弁はできまいと思う。何かやはり連絡をとりながらそういう工作を生前においてやったのではないかというように私は見ます。その点、あなたのほうでお調べになりましたことについて説明していただきたいと思います。
  46. 麻生茂

    ○麻生政府委員 先ほど先生から御質問ありましたことで、当時の事情につきまして私のほうで把握しておることで少し違っているのではないかと思う点を、この際事実をはっきりさせるという意味でつけ加えておきたいと思います。  先ほど今林士長が水をひっかけて逃げ去るようにして隊内に帰った、こういうお話であったわけでございますが、私のほうで聞き及んでおるのは、今林士長が一回足で腹部をけったことは間違いないわけでありますが、その後コップに水を入れてきて、これを飲め、こう言ったようであります。そしてもう一度自分は「南風」に入っておりましたところ、大下さんが自分で「南風」の部屋に入ってきて座敷にすわった。先ほど御説明のありましたように、この事故が起きましたのが十時半ごろでございましたので、帰営時間も迫っておったので急いで帰ったということでございまして、その与えた傷がたいしたものではないという意識でどうも行動しておったように見受けられるわけであります。  それからこの事件の当初被害者のほうから、むしろいままでの被害者の行為等から、家族とともに警察に届けないようにしてほしいという依頼があったようでございます。そして今林士長に口どめして金銭的な示談をしようじゃないかという話があったというふうに、私のほうとしては実は話を聞いておるわけでございます。したがいまして、部隊のほうとしてもこれを知りましたのは、先ほど警察庁の刑事局長から話がありましたように、被害者が腹痛を訴えて岡村医院に入院した。そこで、医院から部隊のほうに連絡がありましたので、だれかけんかしたのではないかということで調べましたら、本人が申し出てきたというのが、部隊としてこの事件を探知した端緒になったわけでございます。したがいまして、われわれとしては十一月二十日から懲戒の事犯が発生いたしたものと認めまして、これに基づいての調査をやって、十二月十三日今林士長に対して懲戒処分をやっておるわけでございます。  いまお話のありました示談の問題ということにつきましては、私のほうで報告を聞いております点は、むしろ大下さんのほうからある人が依頼を受けて自衛隊に申し入れがあったというふうな報告を実は二月の終わりのころ受けておるわけでありまして、それ以後別にはっきりした報告を受けておりませんので、どういうぐあいになっておるか、現在のところつまびらかにいたしておりません。
  47. 枝村要作

    枝村委員 あなた調査したらわかるのですが、大下さん一家は本人の満さんの岩田建設につとめておるこの報酬でささえられておるのですから、家庭的には非常に苦しいわけなんですね。それともう一つは、本人も酒を飲んでおって口論したことなんですから、できれば示談で事は済ませたいというふうに最初は思っておったことは事実なんです。ところが、そのやり方ですね。そういう市会議員を通じたり、あるいはいろいろの今林自身のおわびの――病院訪問とかいうのもありましたけれども、本人から言わせれば、どうも態度そのものが反省の色が一つもない、こういうのが、最初のそういう示談で済まそうかという気持ちをやはりなくしていったのではないかというふうに思うのです。まああなた方から言わせれば、周囲の人たちが騒いだものだからそういうふうになったというふうに言われるかもしれませんけれども、本人がやはりその気にならぬ、いわゆるこれを示談でなく、告訴してでも戦う、訴える、こういう気持ちが中心でありますから、そういうふうにさせた原因は、いま言いましたような当局ですね、それから本人のそういう反省の色のないいろいろな言動に対して怒りを感じたんだというように、私どもは見ておるわけであります。   〔委員長退席、大竹委員長代理着席〕 それから本人も、もちろん自分が死ぬるなんて思いもせぬだったのでしょうけれども、いま考えれば、本人自身も死んでも死に切れないことであったというように、われわれ思います。そこで、今林に対する懲戒処分を十二月十三日にやったと言っているのですが、それはどういう内容ですか。
  48. 麻生茂

    ○麻生政府委員 十一月の二十日に本事件を部隊としては知りましたので、さっそく懲戒についての調査をいたしたわけでございます。そして調査報告書が十一月の二十四日にできておるわけでございます。その結果に基づきまして、十二月の十三日、処分をしたわけでありますが、当初私のほうで、この懲戒処分をやるときにあたりまして、岡村医院の診断書――二十日の日に部隊側で岡村医院にお聞きして知ったことは、「七日間の安静治療を要する。上腹部抵抗を証明するが、血圧正常で、排ガスあり、流動物をとることもできる。」というような診断書であったように部隊側は聞いておるようであります。そうした事実をもとにいたしまして、停職五日の処分、要するに傷害を与えたということで停職五日の処分にいたしておるわけでございます。これは、五日にしました理由は、今林士長は別に酒に酔っておったわけではありませんのです。ただ食事をするために入っておったわけでございます。被害者の大下さんが酒に酔って、先ほど刑事局長さんからもお話がありましたように、自衛隊は腰抜けだというような、こういうような悪口をいわれて口論になりまして、大下さんから、それじゃ外へ出ろ、こう言われて同店の表へ出て、先ほど刑事局長さんからお話がありましたような事態に発展したというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、ある意味では今林さんが挑発を受けたというような点もあるわけでございまして、そうした点、それから今林士長がふだんの勤務がまじめであったというような点、全体を総合いたしまして停職五日という処分にいたしたわけでございます。
  49. 枝村要作

    枝村委員 それは十二月十三日のことですから、まだ大下さんは死んでおらぬときであります。そういうときの懲戒処分が停職五日ということなんですが、あとからも質問しますが、結果的にはああいうふうになくなられたのですね。これは大きな事件です。傷害致死とはいいながら、やはり殺人行為とひとしき結果になっているのですから、そういう大きな罪を犯した今林に対して、その後、一回処分したのであるから、またあらためて処分をし直すというのもどうかと思いますけれども、厳罰に処するという、こういうお気持ちはいまのところないわけですか。
  50. 麻生茂

    ○麻生政府委員 今林士長は、この事件に対しまして非常に責任を感じまして、十一月の二十七日ごろに辞意を表明したわけでありますが、もう少し事態を見きわめてということで慰留されたようなかっこうになっておるわけでございます。しかし、刑事事件として起訴されるという事態にまで発展し、裁判も、きょう第一回公判が開かれるのじゃないかと思いますが、そうした点を考えまして、進んで退職を申し出ました。したがいまして、四月二日に依願退職になっております。
  51. 枝村要作

    枝村委員 確かにあなたが言われたように、大下さんが酒を飲んでいわゆる事件発生の原因をつくった飲食店での発言は、腰抜けだなんだと言ったことはどうか知りませんけれども、自衛隊がとにかく横暴だということで相当攻撃をしたそうですね。これは私ども認めます。それでそういうことになったのですけれども、ところがよく調査してみますと、単にいわゆる偶発的に起きた問題、人と人との単なる関係において発生した事件でないということがわかってくるわけであります。その点についてあなたのほうもいろいろ第三者あたりからの忠告やその他の意見も十分聴取していらっしゃると思いますけれども、私のほうで調べたところでは、どうも平生から自衛隊の人たちのふるまいが、一般の人たちを見下げたような状態がしばしばある。たとえばさっきもちょっと言いましたように、一般の人たちを民間人というように呼んでおる。これは昔軍隊が一般の国民に対して地方人というようなそういう名前を使って、おれたちは一段上のところで国防の任に当たっておるんだという、そういう意識が支配しておりました。兵隊というものは偉いんだ、そういうのが、自衛隊の中にも非常に蔓延してきたのではないかと思う。単にそれは今林という人だけの問題に限らず、そういうのが防府自衛隊――よその自衛隊のことは私わかりませんけれども、自衛隊の中に非常に流れておる。ですから、その付近の人たちは一様に言っていますよ。自衛隊が最近非常に横着になった。そしてたとえば学校に行く通路――これは地元民の利害関係に属するのですけれども、通路も自衛隊専用にして、小学生は遠回りをして冬の寒い日などは学校に通っておる。それから昔にさかのぼれば、その地域の土地を二足三文で取り上げられて、それが結局自衛隊に回されて今日に至っておる。こういう利害関係も相錯交いたしまして、しかも自衛隊の隊員の最近の言動がきわめて前より――前は確かにおとなしかったというのですけれども、ちょっと横暴になった。そういうのが周囲の環境としてあった中で、大下さんは平生からやはり自衛隊に対してそういう意味の感情、憎しみを持っておったようであります。それが酒を飲んだところで、偶発でなくしてそういうやつが出てきた。そうして事件が発生したというのでありまするから、これは防衛庁関係の皆さん幹部が、そういう風潮に対しては今後相当戒めていかなければ、この種の事件は根絶しないことになるのではないかというように私どもは見るわけであります。しかも、自衛隊の関係の事件が、これだけではなくして、同じ隊でその後また明らかにされた事件があります。これはあなたも知っていらっしゃいますように、川合武彦二佐ですね。この人が昨年の九月十三日に、当時の下宿先である防府市新道で普通乗用車で帰る途中、同市の新田の県道で、同じく同市の下新田の会社員村田敏夫さんをはねて、左足の骨折などの四カ月の重傷を負わした。ところが、これを自分ははっきり現認しておりながら、そのまま逃げてしまった。しかも巧妙に、これは悪質なんですけれども、車のバックミラーがこわれておりますが、これを隠すために二、三日人目のつかぬところに車を隠して、さらに知っている人に頼んで浜松のほうまでその車を回送させて、自動車工場で修理させておる。そういうたくらみ、悪質な事件を起こしておる。しかし、本人もついにこれを隠し切れずに、本人が自首して出たのかなんかわかりませんけれども、これによって明るみに出された。本人はもちろん停職処分ということで、その後どうなったか知りませんけれども、そういう程度の処分をされた。こういう事件も同じ時期に発生しておるのですから、先ほど言いましたように、ますます一般の市民の人たちは自衛隊に対する不信感、これがやはり出てきておるというのであります。ですから、何回も言うようですけれども、いまのような空気そのものをやはり変えていくためには――幹部の人たちがいまのような問題を放置しておくと、それを助長するようになる、このように私は思います。もう時間がありませんから、実は私の一方的な話になるわけでありますが、さらに私どもは大きな立場でこれを見た場合、もう少し深い原因があるように思うのです。それは何かと言えば、やはりいまの政府の姿勢のような気がします。法務大臣がおりませんから質問できませんけれども、どうも最近の佐藤さんのやり方、特に愛国心、国防精神を養えという、こういう考え方が非常にPRされております。そしていまのベトナムの侵略戦争を、支持はしていないとおっしゃいますけれども、やはり加担しておる。それから北爆も支持する、こういう政治姿勢ですね。戦争政策を進めていくような佐藤内閣の態度、施政方針というものが、自衛隊の中に先ほど言ったような風潮――一般の国民とは格別な存在であって、国防任務のために遂行しておるのだ、こういうふうに、本人たちは知らないけれども、知らず知らずのうちに突き進んでいっている一つの大きな要因をなしておるように私は思うのであります。私どもは、もちろん自衛隊というものを社会党は認めませんけれども、しかし、先ほど言いましたように、だから、認めないからこういう問題はという、こういう取り扱い方はいたしませんから、重ねて言うようでありますけれども、ひとつ規律だけはぴしっとやる。やはり兵隊であれば、その意味では、昔のようなきびしい態度に幹部は隊内を指導していく。そしてもしこういう不祥事件が起きた場合には、依願退職とかそういうことでなくて、あるいは懲戒免職――停職でごまかすということでなくて、やはりきちっと厳罰に処していく。そのことが、やはりそうでないという印象を国民に与える、防府の地域における住民に対していまのような悪感情を少しでもぬぐい去っていくことの役に立つのではないか、このように私ども考えておるのです。  最後に、そういうことをした地元のいわゆる防府自衛隊の当局は、やはり一般市民に対して何らかの形で悪かったという、そういう意思の表示をすべきである。それから二番目には、この補償問題はどう片がついておるか知りませんけれども、やはり自衛隊の問題として取り扱った場合には、自衛隊当局が責任をもって遺族に対する生活保障を十分見てやるべきだ、このように思いますので、ひとつ質問というよりは、強く要求しておきたいと思います。そういうことを申し上げまして、時間もまいりましたので、私の質問をここで終わるわけでありますが、だれか代表して所信を表明してもらいたいと思います。
  52. 麻生茂

    ○麻生政府委員 自衛隊は国民全体の自衛隊であるわけでございまして、国民の正しい理解と協力によってこれを育成、建設してまいりたいと思っております。自衛隊におきまして、規律は――昔の軍隊におきましては、軍紀は軍隊の命脈である、こういわれたわけでございまして、厳正なる規律の保持ということにつきましては、今後もさらに一そうあらゆる努力を続けまして、真に国民から信頼される、国民の付託にこたえる自衛隊というものを育成していくようにしてまいりたいと思っております。  なお、先ほど防府の基地の問題について御質問がございましたが、昭和四十二年の八月までは、基地内の建造物配置の関係で、小学校の生徒が通学するにあたりまして百五十メートルから二百メートル程度回り道をしておったようでございますが、現在は基地内の道路を使用いたしまして中ノ関地区から小中学校に通学するのを許しておるわけでございまして、一番最短のコースになっておるというふうに聞いております。また、道路の使用の制限は、朝の六時から二十四時の間は、時速二十五キロ以下、歩行者あるいは自動二輪車は通行が自由になっておる。それから軽四輪車以上は、官舎の居住者と自衛隊に用事のある者に限って通行を許可しておるというような状況になっておるわけでありまして、一般の周囲の地元の人々あるいは地域社会の人の十分な御協力を得て、自衛隊というものは育成、発展さしていかなければならぬわけでございまして、十分自衛隊としてできるだけの配慮はしてきておるのではないかというふうに考えております。また、今後もその点については十分配慮をしていきたいと思っております。  それから先ほど川合二佐についての御質問がありましたが、これにつきましては、たしか二十日の停職処分にするとともに――これはやめさせました。厳重な態度をもって自衛隊としてはやってきたつもりであります。
  53. 枝村要作

    枝村委員 終わります。
  54. 大竹太郎

    ○大竹委員長 次回は、来たる九日午前十時より理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後零時二十七分散会