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1968-03-29 第58回国会 衆議院 法務委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年三月二十九日(金曜日)    午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 永田 亮一君    理事 大竹 太郎君 理事 濱野 清吾君    理事 猪俣 浩三君 理事 佐々木良作君       阿部 喜元君    大坪 保雄君       鍛冶 良作君    桂木 鉄夫君       河本 敏夫君    菅波  茂君       田中 角榮君    千葉 三郎君       中馬 辰猪君    中尾 栄一君       中村 梅吉君    馬場 元治君       古屋  亨君    岡田 春夫君       中井徳次郎君    中谷 鉄也君       成田 知巳君    横山 利秋君       岡沢 完治君    山田 太郎君       松本 善明君  出席国務大臣         法 務 大 臣 赤間 文三君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)木村 俊夫君  出席政府委員         防衛施設庁長官 山上 信重君         防衛施設庁施設         部長      鐘江 士郎君         法務政務次官  進藤 一馬君         法務省刑事局長 川井 英良君         法務省人権擁護         局長      堀内 恒雄君         法務省入国管理         局長      中川  進君         公安調査庁長官 吉河 光貞君         外務省国際連合         局長      重光  晶君         通商産業省化学         工業局長    吉光  久君  委員外出席者         専  門  員 福山 忠義君     ————————————— 三月二十九日  委員瀬戸山三男君、綱島正興君、中村梅吉君、  福田赳夫君、村上勇君、山手滿男君、河野密君、  佐々木更三君、堂森芳夫君及び西村榮一辞任  につき、その補欠として中尾栄一君、大坪保雄  君、阿部喜元君、菅波茂君、桂木鉄夫君、古屋  亨君、中井徳次郎君、中谷鉄也君、横山利秋君  及び岡沢完治君が議長指名委員に選任され  た。 同日  委員阿部喜元君、大坪保雄君、桂木鉄夫君、菅  波茂君、中尾栄一君、古屋亨君、中井徳次郎君、  中谷鉄也君、横山利秋君及び岡沢完治辞任に  つき、その補欠として中村梅吉君、綱島正興君、  村上勇君、福田赳夫君、瀬戸山三男君、山手滿  男君、河野密君、佐々木更三君、堂森芳夫君及  び西村榮一君が議長指名委員に選任され  た。     ————————————— 本日の会議に付した案件  刑法の一部を改正する法律案内閣提出、第五  十五回国会閣法第九四号)  法務行政に関する件  検察行政に関する件  人権擁護に関する件      ————◇—————
  2. 永田亮一

    永田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出刑法の一部を改正する法律案を議題として、前回に引き続き、質疑を行ないます。  質疑申し出がありますので、これを許します。松本善明君。
  3. 松本善明

    松本(善)委員 いままでの質疑に引き続いてお聞きしますが、前の委員会刑事局長にお尋ねした結果、法務省の出しました資料でも、業務過失致死傷の単純一罪の場合には二年半に達する者がないということをお認めいただきましたけれども、きょうお聞きしたいのは、法務省が言っておりますいわゆる悪質なものという酒酔い事件あるいはひき逃げスピード違反、こういうような事件はそれぞれ併合罪加重をされますので、そういう点では普通の業務過失致死傷よりも重く処罰をされるという結果になっているということをお認めになるかどうかということを刑事局長に伺いたいと思います。当然のことであるけれども、いかがでしょう。
  4. 川井英良

    川井政府委員 大体そういう傾向にあると思います。
  5. 松本善明

    松本(善)委員 そういたしますと、いまの御答弁によれば、業務過失致死傷の中でいわゆる悪質というものは、単純一罪の場合よりは常に重く処断されるという結果になっているということを刑事局長は認めたことになるのではないかと思います。  さらに質問を進めますと、先日の委員会刑事局長が言われました悪質な過失という問題について、いわゆる酒酔い運転の場合には酒に酔ったということ自身が、これは過失になるのだという趣旨答弁をされました。それでもうちょっとはっきりさせておきたいわけですけれども、そうすると酒に酔って業務過失致死傷を起こしました場合には、法律上はいわゆる科刑上一罪、観念的競合ということで、併合罪としてではなく法務省としては扱っておるのかどうか、この点をお聞きしたいと思います。
  6. 川井英良

    川井政府委員 前の答弁をちょっと補足させていただきますが、たとえば先年非常に騒がれました猿投の事故なんというのはおそらくそういう酒酔いとかひき逃げというものを伴わないむしろ業務過失だけが中心になる事故ではないかというふうに考えますので、過去におきましてもまた将来におきましても、必ずしも悪質な併合罪を伴うものばかりでなくて、業務過失だけでもって非常にまた重大なものが起き得る可能性はあることだと思います。ただ悪質とは何をいうかということに対しまして、一般的に酒酔い運転とか無免許運転とか、あるいは著しい無謀な運転粗暴運転というようなものを悪質運転という範疇で私どもはとらまえておりますということを答弁してまいりましたので、酒酔いとか無免許でなくても、著しい粗暴運転という範疇の中では、必ずしも併合罪にならなくても、そのものだけでもって非常な悪質なものもあり得るのではないかということを申し上げなければならないと思います。  それからあとのほうは酒酔いの場合の科刑上の問題でございますが、いろいろ学説の面では争いもあるようでございますけれども、いままで取り扱ってまいりました実務裁判例の面では、ただいまおあげになりましたような場合におきましても併合罪として認定しているのが多いようであります。
  7. 松本善明

    松本(善)委員 そういたしますと、先日論議をいたしましたいわゆる法務省が悪質と言っているのは、酒酔いの場合にいたしましても、ひき逃げの場合にいたしましても、その他の場合にいたしましても、それぞれ業務過失致死傷事件と一緒になった場合、やはり重く処罰をされる。過失そのものを悪質というふうに評価をしていくというのはやはりおかしいのではないか。先日の刑事局長答弁していた点と多少違うのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  8. 川井英良

    川井政府委員 この酒酔いの場合には、すべて併合罪になっているだけではありませんで、酒酔いの場合におきましても、内容によりまして、観念的狂暴に認めた裁判例もあるようでございます。したがいまして、まだ必ずしも裁判例が確立されておりませんし、また将来かようなものにつきましては、すべて併合罪というふうな裁判例が確立したといたしましても、私はやはり併合罪加重した上での処断刑、その処断刑範囲内における言い渡し刑というふうなものの裁判実態に着目いたしますと、このような業務過失の二百十一条違反におきましては、併合罪加重をした上で刑が盛られているという事態が出てまいりましたけれども、その他の一般刑法犯の場合におきましては、併合罪加重した上での処断刑範囲内でもって本来の重しとされた刑罰法定刑よりは上回るような言い渡し刑というものはもう非常に少ないのではないか、ほとんどないと言ってもいいのではないかというふうな気が私はするわけでございまして、この辺のところは理論裁判実態との何と申しましょうか、食い違いといいましょうか、そういうふうな現象が長い裁判実態において見られているわけでございまして、やはり科刑上の一罪ということはございますけれども、この刑法実態のあり方としてはやはり本来の罪を重しとし、またその罪の法定刑範囲内においてこれをまかなっていくというふうな実態に着目いたしますならば、やはり今回の改正というものはそれなりに十分な理由があるというふうに考えておるものであります。
  9. 松本善明

    松本(善)委員 私の言いますのは、いまのような事例過失犯加重ということで考えるのではなくて、それぞれの酒酔いでありますとか、ひき逃げというところでものを考えるべきであるということを言っているのですけれども質問としては別の質問をしたいと思います。  業務過失致死傷事件増加道交法事件の急激な増加ということで問題になりますのは、単に注意義務の問題ではなくて、人間注意能力の問題、一体人間はどこまで注意ができるのか、ここでの法務省答弁を聞いておりますと、人間は無限に注意ができるのだ、それを刺激をして事故をなくすのだという考え方が前提になっているような感じがいたしますけれども、しかし実際には労働科学のほうでは、そういうものではないということが明らかになってきております。人間注意能力には限度がある、この点について法務省はどういうような検討をされたかということをお聞きしたいと思います。
  10. 川井英良

    川井政府委員 人間注意能力が無限であるというふうには私も考えておりません。やはり注意能力には限度があると思います。さらに最近のような非常に騒がしい、騒然とした過密都市の中において車両を運転するというふうな業態を例にとって考えてみますと、昨日も御指摘がございましたように、その注意能力は、時と場合によりましてますます大きく限定をされることが容易に予想することができると思います。  そこで問題は、申し上げるまでもないことでございますけれども法律上二百十一条を適用するにあたりまして、どの程度の注意能力を具体的なケースの場合に必要とするかというその判定、さらに、必要とした場合に、それが法律上の過失であるということを認定する場合の注意能力というものは、あるいは注意力というものは、さらにまた限定されたものでなければならないというふうに思うわけでございまして、常に客観的に定められたこの注意能力というものをもとにいたしまして、そうして具体的なケースの場合に、どれだけの注意能力がなければならないのに、その注意能力を失ったから過失になった、こういうふうな機械的な運用理論的にも立ちませんし、また実際の運用におきましても、そういうふうなことはしていないわけでございます。御承知のように、現在期待可能性理論も、最近刑法分野におきまして幅広く論じられるとともに実際の運用面におきましても適用を見ている例がかなり出てきているわけでございまして、そういうふうな考え方というふうなものも、この種の注意能力を測定する場合においては大いに参考になる考え方ではないかというふうに思われるわけでございます。この種の事件過失の認定におきましては、一般の常識的な社会的な意味における注意能力限定以上に、法律的な意味におけるさらにそれを上回った注意能力限定というものが当然に考えられなければならない、私はかように考えております。
  11. 松本善明

    松本(善)委員 この委員会審議の中で、法務省が言っておりましたのは、刑法犯業務過失致死傷がすでに大半を占めるようになっているということであります。この指摘は、このほかの場合にも非常に多く、前回委員会参考人指摘の中にも一億総犯罪というようなことばが出てまいりました、こういう道交法違反あるいは過失致死傷事件が非常に多くなってきているということは、これはいわゆる過失犯社会的非難を受けるということが非常に少なくなってきている。むしろ業務過失致死傷あるいは道交法違反というのは、運転免許を持っている者にとってはあり得ることなんだ、これを皆無にすることはむしろ不可能なんだ、こういうような認識がずっと広がってきている。これは刑事処罰ではものごとが解決しない。本来の刑罰としての意味が失われてきているということの証明ではないかと思います。これについて法務省はどのように考えているのかということを聞きたいと思います。
  12. 川井英良

    川井政府委員 過失犯が非常に多くなりまして、このままでいけば一億総前科ということにならないかというようなお話でありますが、私もそういうふうな話が出ていることを承知しております。これは主として道路交通法違反事件罰金を受ける人が非常に多くなったということ、最近の統計でいきますと年間におよそ五百万、道路交通法違反をすべて罰金で処理するということになりますと、好むと好まざるとにかかわらず毎年五百万ずつ前科者ができる。前科は大体四年たてば一応抹消することになっておりますが、それまでの問に四年間で二千万という前科者道交法違反だけで生ずるというようなことで、一億総前科ということになるではないかというふうな反響がいろいろ出てきたと思うわけでございます。これにつきましては、御承知のように、今年七月一日から道交法改正によってその約七割ぐらいが反則金でまかなわれるということになりましたので、残りの三割ぐらいが検察庁に送られてくる事件。その中のまた大体六割か七割が公判請求をされるということになりますので、その点におきましては前科を持った人が車の運転に対して非常に激減をするということに相なってまいりますので、一応一つの大きな政策が打ち出されたということが言えると思います。  問題は、人身事故を起こした場合の事件でございますけれども、これも逐年著しい急増を示しておりまして、昨年度の四十二年度におきましては、四十四万人というものを検察庁では受理いたしております。そのうちの約大体七割が起訴されますので、大体三十万弱というふうなものにつきまして、おそらく罰金ないしは禁錮刑というふうなものが出るわけでございます。これはたいへん大きな数字ではございますけれども道交法の五百万に比べますと、まだかなり小さい数字ではないかと思うわけでございまして、なるべくこういうふうなことを、あらゆる施策の推進によりまして少なくするということに、政府全体として全力をあげておりますので、この人身事故というふうなものがいままでのような趨勢をもってますます天井知らずに伸びていくというふうには一応考えられませんので、何とかこの辺でもっておさめたい、こういうふうに考えております。  それから人命尊重ということで、過失犯の中にも物件に対して損傷を生ずる過失犯と、人命に対して損傷を生ずる過失犯というふうなものがございますが、私は、同じ過失犯でございましても、人命に対して直接影響を与えるような過失犯につきましては、これはもうあらゆる方法を講じまして、その災害を防ぐということが人間の英知ではないかというふうに考えております。もとよりこの法律だけでもってそれが防げるわけではありませんけれども、少なくともこれがきわめて有力な対策であるということを信じておるものであります。
  13. 松本善明

    松本(善)委員 私の聞いておりますのは、もう少し申しますと、反則金制度をつくったからといって、その社会実態というのはなくなるわけではないわけです。私の聞いております中心の問題は、過失犯というのが国民一般から見まして、なるほどあの人たちは不注意だ、これは犯罪として処罰しなくちゃいかぬ、こういうような特別の注意義務違反をしたというふうに感じられる状態なしには、過失犯として処罰をしても、刑事政策上の効果は全くあがらない。逆に気の毒だったんだというような状態国民一般が見ているような道交法違反あるいは業務過失致死傷というふうな状態は、これはもう刑事処罰対象の問題ではないのだ。もっとほかのことを考えなければ——刑事処罰というのは、ほんとうにごく一部の、国民一般から見ても特に非難すべきものであるというふうな場合に、処罰ということ、刑事犯ということが考えられるべきである。これが刑法犯大半を占めてきたということは、むしろ逆にこれを処罰で解決するというのは間違いだということの証明ではないのか。先ほど、この委員会刑事局長は、業務過失致死傷がたくさん出てきているから処罰なんだと言うけれども、むしろこれは逆なんです。この事態を見た場合には、これはもう刑事処罰対象の問題として考えるべきではなくて、これは安全対策というようなことをやって、ほんとう刑事犯として処罰をするものだけが刑事犯として対象になるように、そこのところを真剣に考えるということが刑事政策中心ではないかと思うのです。その点についての意見を聞いておるわけです。
  14. 川井英良

    川井政府委員 いろいろ御意見のあることは承知いたしておりますけれども、私どもといたしましては、やはりこの事態に対処いたしまして、刑罰をもって処理をしなければならない分野がかなり残っておるというふうに考えております。
  15. 松本善明

    松本(善)委員 それでは、別の質問をしたいと思いますが、昨日の新聞でも出ておりましたけれどもひき逃げについての非常に悲惨な例が報道をされております。この法務省の作成いたしました資料の中で議論をいたしましても、たとえば三年以上の場合の事件の八件のうち五件が逃走であります。二年半以上の二十九件のうち、無免許、飲酒の場合ですけれども、十九件が逃走、こういう逃走の例が非常にふえておる。このことを法務省はどう見るかということです。これは運転手の中でもいろいろいわれております。タクシーに乗ってもそういう話が出ます。この刑罰が重くなっていくことによって、むしろひき逃げというのはふえる。これは昨日参考人指摘をしております。これはむしろ非常に逆効果である、非常に遺憾な、矛盾矛盾を生んでおるという事態ではないか。一つ方向だけで頭を固めて何でもこういうことが起これば処罰だというふうに考えるのではなくて、やはりこの根本的対策について抜本的なものを真剣に考えなければならないと思いますけれども法務省ではどう考えておりますか。お聞きしたいと思います。
  16. 川井英良

    川井政府委員 御指摘のような刑罰だけではなくて、その他の抜本的な総合施策について十二分な対策政府として講ずるということにつきましては全く同感でございます。
  17. 松本善明

    松本(善)委員 法務大臣にお聞きしておきますが、いまのひき逃げの問題というのは、これからも社会問題として非常に大事な問題になろうかと思います。私たちはいま申しましたように、刑罰を重くするということの方向は、それをむしろ助長する。真剣にこういうことをなくそうということであるならば、むしろ全く政府考えておるのと考え方を変えて、抜本的に交通事故を、あるいはひき逃げというような悲惨な事態をなくすための対策をしなければならぬ。私は、刑法の改悪であると思いますけれども、これはそれに何の対策にもならないばかりか、それを助長するということになると思いますが、法務大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  18. 赤間文三

    赤間国務大臣 交通事故を少なくするためには、あらゆる総合的施策を講じなければならぬということは、これはもうあなたと同じ考えを持っております。ただ刑を重くすることがひき逃げを逆に多くするようなことになりはしないかという考えは、私はそう考えません。刑が前よりも少し重くなれば、ひき逃げのほうは減るものだ、上が重くなれば、ひき逃げの件数は少なくなるはずだと私は思います。
  19. 松本善明

    松本(善)委員 それでは法務大臣お聞きしておきますが、最近になってひき逃げは前よりもはるかにふえてきております。法務省の報告をしておる事例でもずっとふえてきております。なぜひき逃げがふえてきたというふうに法務大臣はお考えですか。
  20. 赤間文三

    赤間国務大臣 それは、一がい原因は申し上げにくいと私は思うのであります。やはりそういう交通事故をやった人の性格から、逃げてみようというようなのがあらわれてくる場合があります。どういう客観的な事実によってひき逃げが多くなったかという原因については、調べてみなければ、一がいには私は言いにくい問題である、かように思います。
  21. 松本善明

    松本(善)委員 そういうようなことについても、いま調べてみなければ言えないというようなことで法務省がこの法案を提案しておるということについて、私はたいへん遺憾だと思います。そういうような交通事故原因、あるいはひき逃げ原因、そういうようなものについて科学的な検討をし、その原因はどこにあるか、それはどういうふうにしたらなくなるかということを、あらゆる面から総合的に検討して、そうして初めてこういうものを提案してくるのが当然ではないか。法務大臣のいまのお話はきわめて遺憾であるということを指摘して、私は質問を終わります。
  22. 赤間文三

    赤間国務大臣 私は、あなたと全然所感を異にしております。刑法改正によって、ひき逃げは減るものである、かように私は確信しております。
  23. 永田亮一

  24. 岡沢完治

    岡沢委員 私は、一点だけお尋ねしたいのでございますけれども、すでにこの問題について論じ尽くされた論点ではあるわけですが、本改正案が通りました場合に、特に交通労働者として心配しておりますのは、提案理由におっしゃるように、重大悪質な事犯に対する上限引き上げではなしに、業務過失致死事件一般の求刑なり科刑引き上げられる結果をもたらすのではないかという点でございます。昨日来のずっと引き続いての質問に対しても、その点については大臣刑事局長はじめすべての答弁者の方々から、そういうことはないという趣旨の御答弁をいただいております。しかし、やはりまだその懸念はわれわれの脳裏から去りませんし、交通労働者心配であることは厳然たる事実だろうと思います。昨日の参考人の御意見、特に刑法学者であります滝川先生の御意見なんかでも、裁判官でも検察官でもないですから、その点については当然の答えではありますけれども、結局は裁判官検察官の良心にまつとかあるいは運用にまつということになっておるわけでございます。そういう点で、重ねて蛇足的なお願いかもしれませんけれども大臣、次官、局長が御言明になったところをより確認する意味で、当然、この改正案が通りました場合に、その運用の基準と申しますか、解釈等第一線実務家に御指示なされると私は思うのです。具体的には、きのうの刑事局長の御答弁でも、改正案が通った後に、できるだけ早い機会に検事正あるいは次席検事あるいは刑事部長会同を開いて、その趣旨徹底するという御答弁がございました。口頭でそういう御指示をなさるということももちろん必要でございますが、われわれから見ますと、その会同の記録というのは公開はされないと思いますし、それだけにやはり心配があるわけでございますので、文書をもって第一線実務家に、本改正案のねらいは提案理由のとおりであって、悪質重大な事犯に対する上限引き上げにすぎないのだ、科刑一般引き上げでないということを徹底していただくような御用意があるかどうか、その点を確かめたいと思います。
  25. 川井英良

    川井政府委員 法律案が通りますと、その趣旨徹底を部内にはかるために、必ず法律案内容とその審議の経過、それから国会における審議の過程において問題になった重要なる問題点というふうなものにつきまして詳細な解説を付し、あわせてこの運用の方針について運用通達を流すというのが私どもの役所の慣例に相なっておりますので、本件は基本法典の中でも最も重要な刑法改正であり、また最もたくさん事件のある法案でございますので、申し上げるまでもなく、当然文書によりあるいは口頭により、あらゆる方法でもって趣旨徹底をはかるつもりでございます。
  26. 岡沢完治

    岡沢委員 いまの刑事局長の御答弁でよくわかりましたが、口頭はもとより文書においても第一線実務家徹底するように、通達等で配慮いただくということでございますね。——終わります。
  27. 永田亮一

    永田委員長 これにて本案に対する質疑を終了するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  28. 永田亮一

    永田委員長 御異議なしと認めます。よって、本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  29. 永田亮一

    永田委員長 これより討論に入ります。  討論申し出がありますので、これを許します。中谷鉄也君。
  30. 中谷鉄也

    中谷委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、本案に対して、反対の討論を行なわんとするものであります。  以下、若干その理由を申し上げます。  一万三千九百人に及ぶ死者、五十一万八千人に及ぶ負傷者、しかもこれら交通事故被害者は増加の一途をたどっております。まさに交通戦争といわなければなりません。これらの事態に対しまして、たとえば交通安全基本法とその他関係法律の整備立案について、劣悪な労働条件のもとに苦しむ交通労働者の労働条件の向上と労働環境の整備について、さらに道路の整備、安全施設の拡充について、その他自賠保険額の引き上げを含む自動車保険の抜本的改正について、救急医療態勢と救急医療機関の拡充について、被害者補償の確保と後遺症対策について、さらにまた受刑者処遇、精神病と運転免許、自動車教習所のあり方等について、これらが交通事故防止の具体的な課題であり、抜本的な対策である。したがって、これらの事実を今日まで指摘し続けてまいりました。  しかるに、政府は、以上のような交通事故の抜本的原因の規制を怠り、罰則強化の懲役刑の付加を内容とする本件、刑法一部改正法案を提出したのであります。本末転倒といわなければなりません。  すなわち、第一、威嚇によって事態は解決いたしません。刑の引き上げと、交通事故の減少との間には、何ら相関関係はないと思われます。刑を引き上げ、被害者感情を充足するという見方も、私たちは直ちに納得することはできません。それはたとえば、フランス刑法が三月以上二年以下の拘禁を法定しながら、自動車保険額においては、三千万円を上回る金額を法定しておることにこそ生命尊重、人間の尊重のあり方を見るべきであります。  さらに、第二に、本改正は、刑法の基本原理に対する大きな修正を含むものであります。すなわち業務過失致死傷罪について懲役刑を付加するということは、現在刑法準備草案が審議されておる中において、早々に、きわめて軽率にこのような改正案が提案されたという批判を受けざるを得ないのであります。私たちは、このような改正について、百歩譲って、この改正が当面の緊急事態の解決に対処しなければならないというならば、むしろ道交法改正をもってこの事態に対処すべきであるということを指摘いたしてまいりましたのも、まさに刑法の基本原理の修正を含むという重大な内容を本改正案が持っているからでございます。  次に、第三点、現在業務過失致死傷罪の拡大解釈により医師、看護婦、調理士、美容師、理容師等、あらゆる業務に従事する人が不当に処罰されることに多大の危険と不安を感じている今日、本改正は、これらの傾向に一そうの拍車をかけるものといわざるを得ません。  さらに本改正について、たとえば業務過失業務上と一般のそれとに区別することに、きわめて不合理な不均衡を生ずるものであることを指摘しなければならないのであります。  以上の諸点により、本法案に対して、反対を表明するものであります。
  31. 永田亮一

    永田委員長 大竹太郎君。
  32. 大竹太郎

    ○大竹委員 私は、自由民主党を代表して、本案に賛成の意見を申し述べたいと存じます。  最近における交通事故とこれに伴う死傷者数の増加は、まことに著しいものがありまして、たとえば四十二年度においては、実に三十八分に一人の死者、四十八秒に一人の負傷者を出している実情にあるのであります。しかもこれら交通事犯のうちには、酒酔い運転、無免許運転、高速度運転等に基因するものが続出しており、これらのうちには、傷害、傷害致死等のいわゆる故意犯とほとんど紙一重の悪質重大なものさえ二、三にとどまらないのでありまして、まさに自動車は走る凶器であるといわれるゆえんもここにあると思うのであります。このような悪質重大な交通事犯に対し、今日ほど社会的非難が高っているときはないのでありまして、これを防止するために、ある程度厳罰をもって臨むべきであるとするのが今日の国民の世論であり、要請であることは、昨日の参考人意見に徴しても明らかなところであると考えるのであります。本案はまさに世論にこたえ、刑法第二百十一条の刑を引き上げ、それによって自動車運転等の危険な業務に従事する者に対し、より慎重な注意を喚起するものであると考えるのであります。  次に、第四十五条後段の併合罪改正についてでありますが、最近における刑事裁判の実情を見ますると、罰金刑以下の裁判を受けた者が多く、特に道路交通法違反事件において顕著であります。そのため、刑事審判の手続等が複雑化し、混乱を来たしているばかりでなく、裁判の実際においても無用な手数を要しており、その改廃はかねて問題とされていたのでありまして、今回の改正はまさに時宜を得た妥当な措置と考えるのであります。  よって、私は、本改正案に賛成の意を表する次第でございます。
  33. 永田亮一

  34. 岡沢完治

    岡沢委員 民主社会党を代表いたしまして、以下述べます希望意見を述べ、また、あとで採択されます附帯決議を順守していただくということを条件にいたしまして、賛成の意見を述べたいと思います。  本法案趣旨等につきましては、もう論じ尽くされましたから省きますけれども、先ほども質問で確認さしていただきましたように、本改正案の成立によって一番懸念されますところは、本案趣旨に反して一般業務過失致死傷事件科刑引き上げられるという結果をもたらすおそれがあることであろうと思います。この点につきましては、その運営においてぜひ万全を期していただきたいということが一点。  それから現在の交通事情等考えますと、事故発生の原因は必ずしも運転者のみにはない、むしろ逆に使用者あるいは管理者等、運転者以外の責任によって事故が起こされるということもきわめて多数を占めると思います。また、道路と車のアンバランス、高度経済成長の欠陥のもたらすいわば悲劇という面もございまして、ある意味では、運転者は加害者であるよりも被害者であるという場合等にもぜひ留意していただきたい。また法の執行者はもちろん専門家ではございますけれども、被害の結果の重大さのみに観点が移りまして、いやしくも世論にある意味では迎合し過ぎて、過失のない者が訴追を受けるというようなことのないように、いわゆる一般善良な運転者の権益擁護についてもこの際特に慎重な配慮をお願いしたい。  もう一点、政府はこの金のかからない本法の改正をもって交通事故防止対策なれりというような考え方をかりそめにもすることのないように。申し上げるまでもなしに、きのうは総理まで来ていただいて各党から質問をいたした次第でありますけれども人命尊重の立場から交通環境の整備、交通教育の普及徹底交通労働者の労働環境の向上等、総合的な交通安全施策の強力な推進を特にこの際政府に要請したい。そして何よりもこの加害者である運転者を罰するということよりも、国民の願いは交通事故の防止であり、またその被害者の救済であろう、このような点につきましても論じ尽くされましたけれども、損害保険の額の向上等含めまして、ぜひ政府検討をお願いいたしたい。  あわせまして、たとえば先ほども述べました善良な運転者の保護という問題とも関連するのでありますが、特殊な交通労働の従事者であります、たとえば海上における事故の責任追及等につきましては、海上交通の特殊性——海上にはもちろん道路はございません。また陸上におけるように、車と人あるいは電車と人というような問題ではなしに、船と船という専門的なもの同士の事故であるという特殊性にかんがみまして、従来も慣例上こういう海上交通事故につきましては、海難審判先行の慣行がございますし、これは法律に義務づけられておりませんけれども、このいい慣行はぜひ尊重するという面も御配慮いただきまして、善良な運転者が責任以上の過酷な訴追を受けることのないように御要望申し上げまして、討論を終わります。
  35. 永田亮一

    永田委員長 山田太郎君。
  36. 山田太郎

    ○山田(太)委員 私は公明党を代表して、刑法の一部を改正する本法律案に対し、附帯決議を条件として賛成の意見を述べるものであります。  本法案が、長年月にわたって慎重に審議されてきたことは、本法案の重要性を端的に物語るものであります。  わが党は、人命尊重の立場から、人命軽視の風潮に警鐘を与える一助となり、交通事故に対する人身事故への注意を喚起するとともに幾ぶんなりとも交通事故防止の一環となることを期待しております。しかし、刑罰の強化のみが人命を守れるとの甘い考えは毛頭ありません。したがって、本法案成立後の施行にあたっては、その適用は特に慎重でなくてはならないことは当然であります。  政府は、人命尊重を第一とし、また本法案事故防止の一環であるがゆえにも、慎重に事態の重要性を認識して、交通安全対策に対する総合的施策を早急に講ずるとともに、労働条件の改善にも努力することが必要である。また現在の施策では、過去の事例から見ても、とうていおぼつかない状態である。これに対し抜本的機構、計画、予算措置を具体的に実施すべきであります。  と同時に、刑罰権の実現に当たる検察官裁判官が、いたずらに重い刑を加えて事故を防止しようとするがごとき態度に出てはならない。このたびの刑法運用は、あくまでも適正に行なわれることを強く強調して、本法案に対し賛成の討論を終わります。
  37. 永田亮一

  38. 松本善明

    松本(善)委員 私は、日本共産党を代表いたしまして、本法案に反対の意見を表明するものであります。  わが党は、この悪質なものの処罰について、それを全く否定をするものではもちろんありませんけれども、しかしながらこの法案に反対いたしますのは、交通安全対策で最も緊急なのは処罰に求めるべきではなくて、交通労働者の労働条件の向上それから交通安全対策の整備、ここにこそ緊急性があると思うからであります。国鉄や地下鉄その他の軌道では、ATSのような自動停止装置の採用がなされてきたと同じように、道路交通につきましても分離交通状態、歩行者と車が分離をして交通する歩道橋を整備をしますとか、あるいはガードレールを整備するとかいうような状態ができますならば、交通事故が一挙に激減をするであろうということははっきりしております。この分野に予算がまだ十分に出されていない。ほんとう人命の尊重ということを考えますならば、この分野に多くの予算をつぎ込んで、そうして直ちにこの交通事故を防止するというための対策を講ずべきである。この交通事故原因は、多くの人が指摘をしておりますように、無計画な自動車の増加にあります。一台当たりの事故数が激減をしているということからもこのことは証明をされているというふうに思います。そういう意味で、この交通事故の真犯人は、私たちの党では、自民党の交通政策にある、佐藤内閣の交通政策にあるというふうに考えております。だから、いまこの段階でこの法案を提案してくるということは、言うなればその真犯人がどこにあるかということをごまかすことになる、そういう意味で私どもはこの法案に反対なのであります。  法務省の提案をしております提案理由を見ましても、業務過失致死傷事件の単純一罪が二年六カ月に達しておりません。上限に達しておりません。また併合罪について加重をすべき場合においても、これも上限に達しておりません。法務省の提案が事実に反しているということは、この審議の中でも明らかになってまいりました。また過失犯処罰について、わが国の刑法上もっと慎重な考慮を払わなければならないということはたびたび指摘されたとおりであります。この点についても問題があります。  そのような考えで、わが党はこの法案に反対でありますけれども、この際に、これから提案されるでありましょう附帯決議について一言申しておきます。  わが党は、この附帯決議について反対であります。その理由は、この重点の一つは悪質重大な事犯を厳重に処罰するという本法の改正趣旨徹底するように、これが多くのところに広がらないようにということを一つ趣旨にしております。しかし、これはまさにこの法案に対する反対理由であります。いままでの実務の経験からいたしても、このような附帯決議をつけましても、この法案が成立しました場合には全体に影響するであろうということは、この審議の中で法務省の認めてきたことであります。この附帯決議の重要な一つ問題点そのものが、この法案に対する反対理由を明白に物語っているというふうにいわなければなりません。  もう一つは、この附帯決議のもう一つの大きな柱であります交通事故防止対策の緊急性の問題、これを真剣に考えますならば、刑法ではなく、安全対策のために直ちに予算を組むべきである。この附帯決議のもう一つの柱もまた、この刑法の一部改悪に対する反対理由を明白に物語っているというふうに考えざるを得ません。  そういう意味で、このような附帯決議をつけますことは、本法の悪い点、これをいささかも直すものではない、むしろこの法案の性質を欺瞞するという結果にならざるを得ない、このような考えから、わが党は法案並びに附帯決議に反対をするものであります。
  39. 永田亮一

    永田委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決いたします。  内閣提出刑法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  40. 永田亮一

    永田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。     —————————————
  41. 永田亮一

    永田委員長 本案に対し、横山利秋君外五名から、自由民主党、日本社会党、民主社会党、公明党の四派共同提案にかかる附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  この際、この動議について、提出者に趣旨の説明を求めます。横山利秋君。
  42. 横山利秋

    横山委員 私は、自由民主党、日本社会党、民主社会党、公明党の四派共同提案にかかる刑法の一部を改正する法律案に対する附帯決議につきまして、四派を代表いたしまして、その趣旨の説明をいたします。  まず、案文を朗読いたします。    刑法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)  一 刑法第二百十一条の法定刑の引上げは、高速度交通機関の運行に従事する者等の権益に重大な影響を及ぼすおそれのあるものであるから、この改正規定の施行に当たって、政府、なかんずく検察並びに警察当局は、酩酊運転、無免許運転、危険な高速度運転等のいわゆる無謀運転による悪質重大な事犯を厳重に処罰するとの本法改正趣旨にもとり、業務上並びに重過失致死傷事件の求刑の引上げ等により一般的に科刑が重くなる結果をもたらすがごときことのないようにその運用について万全を期するとともに、事故発生についての使用者、管理者等の運転者以外の者の責任にも留意し、いやしくも過失のない者が訴追をうけることのないよう一般善良な運転者等の権益の擁護について慎重な配慮をなされるよう期待する。  二 政府は、本法の改正交通事故防止対策の一環にすぎないことを考え、この際、人命尊重の立場から、交通環境の整備、交通教育の普及徹底交通労働者の労働環境の向上等、総合的交通安全施策の強力な推進には特段の努力をすべきである。  三 交通事犯等の刑事事件により起訴され、休職となり、あるいは給与、恩給、退職金等について不利益な措置をうけ、後日に無罪となった場合、その救済について法改正を含む適当な措置を講ずべきである。  四 過失犯の短期自由刑の仮釈放手続の迅速化を検討すべきである。  五 交通事故に関する判決中賠償等の実行がなされずいわゆる、から判決となる事実が多いのにかんがみ、被害者救済の措置を検討すべきである。  六 交通事故に関する裁判、示談等について公正な国民の相談機構がいまなお不十分なるにかんがみ、すみやかに機構や予算等の充実整備をすべきである。  七 交通事故についての救急医療については、全国的に区々にわたり、また整備が十分でないから、経常費を含む国庫負担によりすみやかに強化すべきである。  八 交通科学の研究については、一元化し研究センター(仮称)のもとに総合的な研究、調査対策を講ずるよう検討すべきである。  九 国民の生命と財産を安全かつ円滑に輸送するには、関係交通運輸労働者の要員確保と労働条件は、密接不可分の関係にある、よつてそれらの労働条件の維持、改善指導に努力し、特に自動車運転者の長時間労働、刺激的ノルマ制賃金体系をすみやかに是正し、労働省が示達した「自動車運転者の労働時間等の改善基準」に関する通達(四二、二、九通達)の趣旨徹底して生かすよう配慮すること。  十 最近の交通事故による死傷者頻出と、人命軽視の風潮に対処するため、人命尊重の見地から緊急かつ抜本的に強力な交通安全施策を推進するとともに、現行の自動車損害賠償保険の責任保険額の引上げによる被害者救済対策等の措置をすみやかに講ずべきである。  十一 本法の成立に当たり、捜査当局は、とくに海上における事故の取扱いについて、海難審判先行の慣行を尊重するよう格別に配慮されたい。    右決議する。 以上であります。何とぞ各位の御賛成をお願いいたします。  理由を若干申し上げます。この刑法の一部改正法案が本委員会に提案されまして以来、実に四国会の長期にわたりまして、この間委員会はもちろん、与野党との交渉、院外、またほかのあらゆる場面において討議がされてまいりましたが、必ずしも、まだいまなお十分とは言えない点を感じています。  それはなぜか。法務行政の専門家であるわれわれ与野党諸君が、ともに一致して考えましたことは、この附帯決議の趣旨にもあらわれてありますように、刑罰加重することのみが事故の減少にならぬということであります。それにもかかわらず、政府施策はきわめて不十分で、人が死ななければ陸橋ができない、ガードレールができない、国民会議の運営もきわめて形式的であり、労働過重や経営責任の問題について、政府の怠慢がある。また政府には、とかく人間感情を利用して、刑法改正をもって問題をそらそうとした点をほのかに見ざるを得ないのであります。ここに、共産党を除く与野党一致の長文の附帯決議を提案をいたしましたゆえんもまたそこにあるのであります。その長文の附帯決議の基盤になっておりますことは、党によって賛否いろいろありますけれども政府にこれらについて猛省を促したい点にあります。反対の立場に立つ社会党と賛成の立場に立つ他の各党との附帯決議は、まさにその意味では呉越同舟の立場ではあります。しかし、ともに一致して今後この決議を互いに協力して推進をするという点にあります。この各項目は、総理府をはじめ各省各庁にわたる内容を含んでいます。しかしながら法務大臣に特に要請をいたしたいのは、この決議の遂行実施に法務大臣として責任を持ってもらいたいのであります。総理府をはじめ、あらゆる各省庁にこの趣旨徹底し、他省の問題として放置することを私どもは許さないつもりであります。先ほども共産党から御意見がございましたが、われわれ法務委員の責任として、この附帯決議が完全に迅速に遂行ができるよう、私ども自身としても今後これを推進したいと考え、その趣旨をもって附帯決議を提案をいたした次第であります。
  43. 永田亮一

    永田委員長 本動議について採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  44. 永田亮一

    永田委員長 起立多数。よって、本案に附帯決議を付するに決しました。  ただいまの附帯決議について、赤間法務大臣より発言を求められておりますので、これを許します。赤間法務大臣
  45. 赤間文三

    赤間国務大臣 ただいまの附帯決議の趣旨は了承をいたしました。その趣旨を体しまして、その実現に十分な努力をいたしたいと存じます。     —————————————
  46. 永田亮一

    永田委員長 ただいま可決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  47. 永田亮一

    永田委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。     ————————————— 〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  48. 永田亮一

    永田委員長 続いて、法務行政に関する件、検察行政に関する件及び人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑申し出がありますので、これを順次許します。濱野清吾君。
  49. 濱野清吾

    ○濱野委員 法務大臣に簡単にお尋ねしておきます。簡単に明快にお答えを願いたいと思います。  法務大臣は就任以来、非常に熱意を込めて法秩序を維持すると述べられ、就任の際の大臣のごあいさつを拝聴しまして、私ども非常に心強く考えておったわけであります。法治国家でありますから、法務大臣の立場というものは当然だといえば当然でありますが、私どもは民情をよく察していらっしゃる法務大臣がそのあいさつのうちに特に強調をされたわけでありますから、満幅の信頼を持っております。  そこで簡潔にお尋ねしますが、東京のまん中で三派全学連という非常に強い集団デモをやっているものがあり、一再ならず、昨晩で五回目でございます。この五回目のことは新聞ですでに御承知でありましょうが、都内の朝日、毎日、読売、東京、これらを法秩序を維持する大臣がごらんになって、今日ただいまどういう御感懐をお持ちになっているか、簡潔にひとつお答えをお願いいたします。
  50. 赤間文三

    赤間国務大臣 王子における三派全学連の行動はまことに遺憾でございます。われわれ当局といたしましては厳正な取り締まりを行なわなければならぬ。今後関係当局協力をいたしまして、あらゆる現行法規を活用いたしまして、より有効適正な対策を立ててこういう事犯が起こらないように全力を尽していきたい、かように考えております。
  51. 濱野清吾

    ○濱野委員 りっぱなお答えでございますが、現行法規のどれを将来適用しようと考えていらっしゃるのですか。将来の適用されている法規は、私も新聞紙上その他においてよく承知しております。もっと適用する法律がございますか。あるとすればどういう法規でございますか。
  52. 赤間文三

    赤間国務大臣 現在は御承知のように公務執行妨害あるいは兇器準備集合罪、こういう法規が適用をせられておるのであります。こういう現在適用せられておる法規も、私は将来厳重な法秩序のためにさらにこれの徹底をはかっていく。なおまた、その行動のいかんによりましては、現行の刑法を許す刑罰というものの適用もひとつ十分やっていかなければならぬのじゃないかと考えております。たとえて申しますと、またそのやり方いかんによりましては、将来傷害罪というふうなものも考えられますし、なおまた多数で暴動的なことを続けてやるならば、あるいは一種の騒擾罪というようなものも考えられると思います。私は、現行刑法の許す範囲内において最も適切な効果のある治安対策について十分な研究をして、治安の上で遺憾なきを期していきたい、かように考えております。
  53. 濱野清吾

    ○濱野委員 大臣では無理ですから刑事局長、治安の維持のためにああした問題については、わが国には既成の法律で国民が承認しているりっぱな法律がたくさんあるはずでありますが、たとえば、あるとすればどういう法律がい大臣の申しましたとおりの適用範囲内にあるか、その点をひとつお答え願います。
  54. 川井英良

    川井政府委員 先般から行なわれております学生の暴力行動に対しまして、治安当局といたしましていろいろ研究をいたしておりますが、私は、問題は刑事的な面からは二つあると思います。一つは、何と申しましても警備対策の改善強化ということが重要だと思います。それでもってまかなえなくて不幸にして大きな騒ぎになったという場合に、初めて私どもの刑事罰則の適用の強化という問題が出てくると思います。今日まで公務執行妨害とか凶器準備集合罪、そういう法律を適用してかなりのものをまかなってきたつもりでございますけれども、さらにまた事態を見きわめまして、先ほど大臣が申し上げましたように、場合によっては騒擾罪の適用というふうなことも十分考えていい事態ではないかというふうに思っております。騒擾罪の適用は前にもしばしば行ないましたけれども、いかなる事態においても行なわれるというわけではございません。その事態事態によりまして、騒擾罪の条件が充足されるというような場合に初めてこの罰条が適用になるということでございますので、事態事態をよく見きわめまして、現行法を十分活用いたしまして万全の措置をとっていきたい、こういう覚悟であります。
  55. 濱野清吾

    ○濱野委員 刑事局長のお考えでは騒擾罪を適用する、大体そういう御意見らしいのでありますけれども、その他にはございませんか。
  56. 川井英良

    川井政府委員 まあ私、所管が刑法ないしは刑罰法令の分野でございますので、現行法上あるものといたしましてはそういうふうなものが一応考えられる罰条だと思います。  なお、御承知のとおり、破防法の中にもずいぶんたくさんの罰則がございますが、場合によりますれば破防法の中に規定されております罰則というようなものも将来適用になる場面というものが考えられると思います。
  57. 濱野清吾

    ○濱野委員 ただいまのお話で法務当局のお考えはよくわかりました。警備の充足というようなお話でありますが、警備の充足とはどういうふうに了解してよろしのか。予算を盛って警官を増員するとか、その他いろいろございましょう。しかし、さしあたり局長考え方でよろしゅうございますが、どういうことをお考えになっていらっしゃいますか。今日ああした警備事態を現実に見て、しかも全学連の反復した集団暴力を、しかも東京のただ中に行なわれておる、その警備体制というものはどこまで一体考えられるか、また考えているのか。法務大臣もよく聞いておいてください。ちょっとお考えがありましたらそのめどをひとつお話し願いたいと思います。
  58. 川井英良

    川井政府委員 御承知のとおり警備はもっぱら警察庁が所管し、実施に当たっておりますので、私たちの立場から警備の問題について具体的にいろいろ意見を述べることは必ずしも適当でないと思いますけれども、警備の対策とそれから刑事処分とが有機的に一体になって初めて有効な効果を発揮するのじゃないか、そういう意味合いにおきまして、一面において警備対策の改善強化ということは私どもの希望でございます。
  59. 濱野清吾

    ○濱野委員 そこで、国務大臣としての法務大臣に聞くのでありますけれども、今日の警備体制というようなものが、ああした暴力デモについては完全な警備体制ではない、私どもはそう思うのです。過般、いまの警視総監は非常にすぐれた経験者であって、人格者であって、社会党、保守党ともに信頼を持っている警視総監でありますが、この警視総監が、もはや警備は限界にきている、ですから、王子病院の問題につきましては何とか善処してもらいたいということをそれぞれの機関にみずから出て訴えたということがありますが、このことは承知していらっしゃいますか。
  60. 赤間文三

    赤間国務大臣 私はやはり警察の警備体制を完ぺきにやっていくということは一番大事なことに考えております。いまの警察ではすでに限度にきておるということは、私はまだ承知をいたしておりません。私はまだ警備体制をさらに強化することができるのじゃないかと考えております。
  61. 濱野清吾

    ○濱野委員 限度にきているということは考えていない、さらに警備体制を強化することが可能だ、おかしいじゃないですか、一国の治安を維持する警備体制というものが限度にきているとは思われぬけれども、さらに警備体制を強化する、これは一体どういうことですか。私は一国の治安を維持する場合に、警備体制に多くの予算を盛り、多くの警官を用いるようなことをしないことが理想的な国家であり社会であると思うのです。ところがその今日の現状に対して、限度にはきていない、しかし強化することを考える、必要だ、これは大きな矛盾じゃございませんか。現に帝都の治安維持の責任を持っている警視総監がそれぞれの機関に、どうにもしようがない、何とかしてもらいたいと訴えているじゃありませんか。警備体制が万全である、充足しておるというが、ああいうふうに昼間から夜の十一時あるいは朝の一時ごろまで、あの暴力行動を継続して行なっておる、この警備というものはもはや限界にきている、そう現場の責任者が考えたから、それぞれの機関に訴えたんでございましょう。そうお考えになりませんか。限界にきていないとおっしゃるのですか。これはどうも私どもにはちょっと理解のできない問題でございます。どうお考えですか。あなたはごらんになったでしょう。この新聞を見て国務大臣としてどうお考えですか。どういう感懐ですか。
  62. 赤間文三

    赤間国務大臣 限界にきているという解釈が、私はこういう騒動と申しますか暴挙に対しまして、さらに徹底的に取り締まりをやる能力がまだある、こういう意味で限界にきておらぬということを申しました。さきにも言いましたように、いま公務執行妨害とか、あるいは凶器準備集合罪などでやっておりますけれども、必要があり、また条件が適合し、いろいろな研究をして、これが適切だと思うならば、あるいは騒擾罪というようなものでも、私は警察において警察当局がそれを適当と認め、または検察当局が適当と認めるならば、そういう施策もやれるのではないか、またやることが必要である場合が考えられる、そういう意味で、私はいまの力が限界にきている、警備が限界にきているということについては、まだ限界にきておるということについて十分に承っていない、こういう意味のことを申し上げたのであります。その辺を御了承願います。
  63. 濱野清吾

    ○濱野委員 警視総監が、しかも外交機関にまで訴えたという事実を承知しておりますか。
  64. 赤間文三

    赤間国務大臣 警備治安の問題は非常に重大でございまするので、特にわれわれ関係者は今日まで二回ほどこのいろいろな治安問題について研究討議をいたしまして、あらゆる面につきましていろいろな意見の交換をいたしておるのであります。日本の国の治安をどうすればいまよりももっとよく保てるかどうかというようなことについては、警察当局並びに国家公安委員長あたりとは緊密な連絡をいたしております。
  65. 濱野清吾

    ○濱野委員 いま二回にわたって研究討議したということは、およそ閣議の話し合いだと私は想像しますけれども、研究討議しているうちにどんどんとこうした暴力デモが発展していくというような、この姿をあなた方はどう見ますか。国の治安の維持はまず法秩序からです。究極においてあなたの責任なんです。そうお考えになりませんか。そうお考えにならないとするならば、そして検討をした、協議をしたということだけで済まされるならば、一体政府の治安の責任をどうするか。しかもあなたは当面の責任者なんです。どう考えているか。この乱れた治安を、しかも東京のただ中で昼間から夜までこうした暴力デモが行なわれているこの事実を、協議、討議で済まされますか。治安維持ができない政府というものはどこの国にもございませんよ。それは未開発の国ならともかくも、日本のような民度の高いこの国の治安がこのままでいいのですか。あなた方は新聞を見ても、テレビを見ても、ただたいへんなことだと、西部劇でもごらんになっているような感じで受け取りになっているのじゃございませんか。どうなんです。
  66. 赤間文三

    赤間国務大臣 お述べになることはよくわかりました。私は法務大臣として非常に責任を感じて、こういう事件の起こることをだれよりも遺憾に考えておる次第でございます。この国内の治安を何とかして保たなければならぬということは、もう終始頭から去ったことはないのであります。そのためにいろいろな方策を考え、実行のできるものから実行していこうということを考えておる次第でございます。決してこれを平気で見ておるという考えでありません。徹底的に治安の維持についてはひとつ全力を尽くしていく。なおまた皆さん方の知恵も借りて、これについては全力を尽くしてこれをやっていかなければならぬ、かように私は考えております。
  67. 濱野清吾

    ○濱野委員 いかにこうしたなまの問題について内閣で協議しなさっても、あるいは検討しなさっても、協議、検討だけでは解決せぬのです。口説や演説だけではこうした問題は解決せぬです。ほんとうに責任を感ずる者は身を挺してこの問題の解決にあたるべきです。行動が伴わない演説やあいさつは何ら価値がない、意味がない、それほど国民はばかじゃない。私はこの問題については、法務大臣の立場から真剣に考えて、真剣に検討し、すみやかに具体的な対策を講ぜられることを望みます。  赤間さん、文明国といわれる国でこんな治安の乱れた国はございませんよ。なるほどアメリカあたりは、きょうあたりは人種の問題で騒いでおりますけれども、これとは全然違います。あなたは佐藤内閣のうちでも当面の責任者なんです。あなたが一番熱心に、親切に手を打っていかなければならぬのです。あなたは先ほどから警備の充実とか、あるいはずいぶん努力しますとかいうことを連発しておりますが、警備体制はすでにあれに対処するだけの力はない。私は自分の選挙区であり自分の住んでいる町ですから、今日第五波に至るまでの実態を私どもはこの目で見ている。罪のない市民がシャッターをおろして店じまいをする。ガラスを割られる。戸袋をぶちこわされる。そして土足で入られる。あらゆる損害をこうむっているのです。何らかかわりのない市民です。この気持ちになっていただけませんか。痛さもつらさも感じないのですか。しかも当面の法務大臣として、現にあなたのおっしゃるように、警備は限界にきているとも言い、きていないとも言っている。どっちともとれることばをあなた方はお答えをしているのでありますが、現場を見たら、警察官はすでに、俗なことばで言えば、へこたれ切っているのです。なぐられっぱなしなのです。打たれっぱなしなのです。このまま続けていったらどうなるのです。どんなに警官を増強しても、私はああした治安を乱しているような行動については、警備体制を充実すればいいというものだけでは解決できないと思うのです。第一線の警官はすでに士気が阻喪している。言いにくいことだけれども、確かに阻喪している。たての陰に隠れて縮まっている。たてをかついで逃げている。このさまを見て、治安体制を強化すれば、それでああした集団暴行を押さえることができるとお考えですか。たいへんな間違いです。親身になってひとつ法務大臣考えてやってください。  もう一つ私はお尋ねいたします。この問題についてはいろいろな法律を適用することも考えているようでありますが、しかしこの問題に適用する法律は、適用してその効果のあるやなしや、こういうことが論議されているようであります。ある法律を適用するとするならば、政治的な配慮が必要だとおっしゃっているようであります。その政治的な配慮とは一体どういうことなのか。時の政権を持ったものがこの法律を適用するとこれは都合が悪いという法律が日本にあるのですか。この法律を適用すれば、これは政府当局にとっても都合がいいからという法律が特にあるのですか。これは新聞に報道されていることでありますから、あなたも御承知でありましょう。この法律を適用するについては政治的な配慮を十分考えなければいかぬということをおっしゃっている。どうなんです。権力を持ったものがこの法律を適用することが得策である、そのことが利益である、そのことが都合がいいというような、そういう解釈のできる法律が幾つあるのです、日本には。そういう態度でいいのですか。少なくとも私は、他の閣僚諸君はともかくとして、法務大臣はまさかそうはお考えになっていまいと思うのでありますが、このことはどうでしょう。
  68. 赤間文三

    赤間国務大臣 法の適用について政治的な配慮があるというふうなことを、私は全然考えたことはありません。言ったこともありません。私は一国の治安というものは何よりも大事であるので、政治的とかそういうことでなくて、治安を保つことが何より大事と考えておりますので、政治的配慮とか、そういうふうなことは私は全然考えたこともなければ申し上げたこともありません。全力をあげてひとつあなたの御熱意のあるように、私も日本の法秩序を保つことに全力を尽くしていきたい、ただそれだけ考えている、御了承をお願いします。
  69. 濱野清吾

    ○濱野委員 国会質疑応答は、了承などというそういうものじゃない。ことに法務委員会はあいまいなことばを使わないことになっている。政治的な配慮ということは言ったことがないというならけっこうでございます。これはあなたに敬意を表します。しかし都内の一流新聞は筆をそれえてそれを書いている。これはおよそ二十日前あたりの日刊新聞が全部書いている。政府部内にそういう意見があるに違いない。私はそういうところにいろいろな疑いが生じてくると思うのです。ひとりこればかりではなしに、都合のいいときには法律を適用する、政権を持ったものに都合のいいときには。あるいは都合の悪いときには法律の適用を変えていく、そういうものじゃないでしょう。それを新聞紙に堂々と二回にわたって発表されているのでありますから、そういう閣僚があるに違いないのです。どうも近ごろ自民党の政権は、非常にりっぱな強いことを言うかと思うと、党員の苦々しく思うほどすぐに腰折れをしてしまう。一体どういうことなんですか。きょうは官房長官もいますからよく聞いておいてもらいたい。正しいことは正しいのではないですか。それは社会党や自民党のそれぞれの立場から政策は違うでありましょうが、社会党の主張することは、社会党の哲学から見れば、正しいことは正しいといって勇敢に主張しておるじゃありませんか。わが党の政府は何です。非常に大きなことを言ったかと思うと、りっぱなことを言ってくれたかと思うと、すぐによたよたになってしまう。それで一体国民に信をつなぐことができますか。私はこんなことを言いたくない。言いたくないけれども、継続して、反復して、しかも昼間、日中から夜に至るまでこういう集団暴力が行なわれる。これを考え合わせると、そうしてこれに対する対策としての政府部内の意向をそんたくすると、これまた演説はするけれども答弁はりっぱではあるけれども、説明はわかったようなことを言うけれども、了解ということになってしまうのだ。社会党の諸君だって双手をあげて賛成ではありますまい。社会党は元来平和革命を企図しているのでありますから、私はそういうことにあなた方がほんとうに勇気を出したらどうですかというのです。警備陣営はまさにへこたれている。西部劇でもごらんになるように、見ているときには愉快だ、やっているなということでしょう。私はそれでは法務大臣の責任は果たせないと思うのであります。ここに東京新聞がございます。「ヤジ馬も投石、警官隊大弱り」と書いてある。それはそういうふうになってきました。私が警官隊、警備陣営というものはへこたれているという失礼なことばを使っているけれども、これは冗談じゃない。「警官隊大弱り」、どうして弱っているかということはあなたにまだよくわからないかもしれない。端的に言えば、警視総監がそれぞれの機関に対しまして王子病院の移転を訴えている。この事実をもっても、内容は説明せぬでもおわかりだろうと思う。「おまわりを殺せ無責任な”暴徒”の群衆」と、こうある。ですからこれは真剣に考えてくださるようにお願いします。官房長官もお願いします。逃げ回っていないで、官房長官なんです、内閣の担当なんですから、王子病院の問題をどう対処するのか、こういうことについて真剣に考えてもらいたいと思う。これは全学連ばかりではございません。もはや昭和四十年からあすこのあの場所に王子病院、アメリカの病院を建設することについては反対している。区議会の決議、これは党派を超越して全員一致で決議している。この決議は自治法によって再三再四政府当局にも上申されているはずです。そうして町の諸君も、あれは文教地区でありますから、ここに病院を持ってこられては困るといって、全学連以外の一般の市民は区議会の機関を通じての決議として請願し、あるいは法規上の手続をとっているはずであります。原因をただせば四十五万、板橋五十万、百万近くの人々はあの場所に病院を持ってこられては困るということで、昭和四十年前後から運動しているじゃありませんか。そうして今日ではこうした暴力デモの全学連と一緒になって、そうして町ぐるみ運動に発展してきたのではありませんか。官房長官は政治家でありますから、昔の役人官房長官ではないのでありますから、この辺の事情はよくおわかりでしょう。目的は違っております。全学連の目標とするところは思想的な、政治的な一面のあることはこれは言うまでもない。しかし百万近くの板橋、北区の住民は、そういう政治的な思想的な運動ではないのです。それがたまたま一つに合流して、そうして片方は角棒を持ち、石塊を持ち、やっとこを持ってあばれ回る、片方は羊のように、そうして陳情、請願をやっている。それがだんだん東京の、すなわち城北部に発展してきている。これが将来わが党の言っている安保条約にどう影響するか、これは官房長官わかるでしょう。わからなくちゃならぬはずなんです。これがわからないで国際政治とかあるいは政治とか行政とかいうことは、これはまことに噴飯事なんです。こういう見えすいたことはわかっているはずではありませんか。官房長官、これはどうするのです。
  70. 木村俊夫

    ○木村(俊)国務大臣 私はもうこの問題は、単に条約上の権利義務だけで片づけられない問題だと考えております。そこで条約上の関係から申しますと、御承知のとおり、提供された施設地域内の用途の変更でございますから、これはとやかく言う筋のものではございません、しかし私はこの問題に関連しての地元の住民の非常に純粋な反対等、よくわかっております。先般政府部内でも、特に総理みずから私に指示いたしましたのは、現在もうすでにきまったこの四月三十日の時点を前にして、すぐこれをとやかく言うことは現実の問題としてはできないが、将来の日米長い間の政治的な問題を考えましても、これは将来ある時期に、あるいはできるだけ早い機会にしかるべきところへ移転してもらいたいというのが政府の意思でございます。ただそれまで住民の方々に何もせずにお待ち願いたいとは言えません。それまでの範囲内におけるできるだけの改善といいますか、たとえばヘリコプターの問題あるいはそれに伴う騒音をどうすれば少なくできるか、あるいは伝染病患者を持ってくるということについての住民の不安の解消、またその付近において日本の住民の方々に、もし交通事故とかそういう急患がございましたら、そういう急患についてもひとつ考えてもらいたいというようなことを含めての申出をいたしたい、こう考えております。
  71. 濱野清吾

    ○濱野委員 官房長官の考え、それは政府考えとして了承いたします。  それに関連して、防衛庁の施設庁長官、おいでになっていますか。引っこんでいないで前に出てください。  在日米軍の地位協定について、何回かいろいろな米軍の施設等につきましては、あなた方、いろいろな面で折衝していらっしゃると思うけれども、いま問題になっております、そして全学連がああしたデモを反復してやっている問題の王子病院が、もとはアメリカの地図部隊の駐留していたところでございましたね。それをどういう経緯で病院ということに変更されたのか。その経緯をひとつ説明してもらいたい。そして、あなたは北区区議会が超党派的に、あの土地を開放すべし、あの周辺は文教地区である——こういうようなことを知っておったのか、知っておらなかったのか。その点をお答え願いたい。
  72. 山上信重

    ○山上(信)政府委員 お答え申し上げます。キャンプ王子でございますが、これは先生御承知のように、旧陸軍東京砲兵廠あとでございまして、昭和二十年に米軍に接収せられましてから、提供施設として引き続いて現在に至っておるわけでございます。三十六年にキャンプ王子という名称に変わりまして、当時陸軍地図局が使用しておったのでございますが、四十一年に地図局は閉鎖されまして、その後は朝霞の営繕部倉庫として使用されておったのでございます。それと前後いたしまして、昭和四十年の末に米政府から外務省を通じ、キャンプ王子に病院を開設するという連絡がございました。その後、四十一年の末ごろから、王子に病院の改装と申しますか、あそこはあいている施設がございますので、それを改装して病院にするというので改装工事に着手いたされまして、最近に至ってこれが完成を見たというふうな経緯になっておるのでございます。その間におきまして、北区の地元から、王子の地図局が閉鎖されるということであるから、これを開放してほしいという要望があったことは私も承知いたしております。私、昨年暮れに就任いたしたのでございますが、報告によって承知いたしております。これにつきましては、米軍としては、当時からそういった施設が、現在部隊がおり、またそういった病院を開設するというような意図もおありだったと思いますが、開放ということについては、なかなかむずかしいというように、そういう米側の意図であるということを伺っておる次第でございます。最近に至りまして、これが建設工事を見ましたので、四月末を目途として病院を設置するというような連絡が私のほうにきておる次第でございます。
  73. 濱野清吾

    ○濱野委員 あなたは最近御転任になったそうでございますから、お尋ねするのは無理かと思いますが、全般的なことで聞きます。  一体、安保条約、それに関連したる在日米軍の地位協定——わがほうの政府は、米軍の御都合ばかりうかがっているのですか。協定というものは、もう米軍が一つの軍命令を出したつもりで、あなた方は協定というものを見ていらっしゃいますか。それが一つ。  それでしたら、この地図部隊を病院に使用目的を変更するというような場合、それが適当であるかどうかという問題について、日本政府は一言も言えないという立場なんですか。それが二つ。  それから第三は、一体病院というようなものは、どういう環境を必要とするかということを防衛庁当局はお考えになったことがございますか。米軍にとっても、あるいは日本人の平明なる考え方から見ても、病院という好ましい環境は、一体どういうところにあるのか。それが第四。  それに関連して、一体東京のただ中で、しかも教育機関のたくさんあるところで、人口が非常に稠密であって、都営住宅をはじめとして、ほんとうに市民のことを考えれば、大きな影響があるということ、反対だということを一体あなた方は予測しなかったのか、またそういうことを予測しても、相手が米軍であるから、これは向こうがやるといえば、そのとおりにならざるを得ないという性質のものであるかどうか、その点について具体的にどういう交渉をやったのか、これを拝聴したい。
  74. 山上信重

    ○山上(信)政府委員 日米安保条約並びにそれに伴う地位協定に基づきまして施設を提供いたします場合には、日米問でそれぞれ個々の施設について提供の可否その他を論議してきめるわけでございまして、したがいまして、一方的に米側が要求したからできるというような性質のものではないと存じております。ただ、この病院の当該王子キャンプにつきましては、先ほど申し上げましたように、米軍にすでに一般提供施設として提供しておる施設でございます。したがいまして、米側といたしましては、従来このような施設につきまして内容をいろいろ変更したり、あるいは内部を整備したり、用い方を変えるというようなことにつきましては、いわゆる地位協定第三条一項に基づく管理権としてできるということに了解されておる次第でございます。病院を持ってくるということも、そういった前提に立って米側が考えたことと、私たちとしても想像をしておる次第でございます。  ところで、この病院の施設についてはどういうことであるかということでございますが、当時王子に病院を移設したいということにつきまして話がございましたころも、なるべくならばほかの地域が好ましいのではないかということは、われわれの事務レベルにおいては多少そういうことも考えたのでございまするが、またそういう話をしたこともございますが、米軍としてはこの地域に施設もあり、他に適当な施設もないので、ぜひここにしたいということで設置の進行が行なわれたというふうに承知いたしております。今日そういうふうな病院があの地区にあってはたしていいかどうかということでございまするが、これにつきましては、病院の環境というものは、それはでき得る限り平静な環境であり、いろいろ騒がしいことがないということが望ましいということは言うまでもないと存じます。町中に病院があるということは、これは普通の病院でございますれば町中にあるということもあろうと思います。ただそういう環境が騒がしくなるということは非常に好ましいことではなかろうというふうに考えてはおります。ただ、現在までの状況はさような次第でございますので、御了承願いたいと思います。
  75. 濱野清吾

    ○濱野委員 私はいまさらあなたにいろいろなことをお尋ねしてもしかたのないことだとは考えますけれども、一体あなた方は米軍に対して卑屈になっているのじゃないですか、非常に卑屈になったのじゃないですか、アンダードックになっているのじゃないですかどうも施設庁は従来いろいろな問題を引き起こして、いろいろな委員会で問題になりますが、米軍をそんなにおそれることはないでしょう。一億の人間がいるのですから。大体あなた方は使用目的の変更のときに十分米軍の理解を得、当方の考え方を開陳して、そうして変更すべきじゃなかったのですか。米軍に対しては、あくまでもあなた方は命これ従うというような、やっかい者扱いにして、手を触れないほうが無難だというような考えを持っているのじゃないですか、それはどうなんです。どうも施設庁は、防衛庁といえば日本の陸海空の役所ですから、アメリカの陸海空軍に対しましては、一つの親しみを感ずると同時に、卑屈になっているのじゃないか。従来の富士の問題でも何でもそうなんだ。どうなんです。そうでないとすれば十分理を尽くして、こういう使用目的を変更するような場合には、あなたのほうから、米軍にとっても好ましいことではないでしょうという強い意見が生まれるべきだと思うのです。それから地元は非常に迷惑なんだ。自治法による議決を持ってわれわれのところに来ているのです。だから日米の将来を考えてくれるならば、この場合他に敷地を求めてもらいたい、これが地図部隊同様の事務を行なうところならばそういう議論はできないかもしれぬが、病院なんですからね。米軍だってあそこが好ましいとは考えておらぬでしょう。米軍はどうしていけないというのです。ここが一番患者の療養のためには適当の地である、こうお考えになるのですか。大体防衛庁は国民に対して親切心が足りないのじゃないかと思うのです。ほんとうにあなたが政治あるいは行政を行なおうとするならば、あそこへ持ってくることは、当然地元としても、東京都としてもこれは好ましいところではない、ことに病院それ自体の環境としていいところじゃない、これはアメリカにお話ししても通る話じゃなかったのか、この点どうなんです。これはまた将来どうするのです。
  76. 山上信重

    ○山上(信)政府委員 たいへん対米接衝についての態度について御批判をいただいたわけでありますが、私どもといたしましては、主張すべきことは主張いたすつもりでおりまするし、そういう考えでおります。なおこの病院につきましては、今日米軍がすでに二年にわたってそういった計画のもとに設置の準備を進め、そしてここに開設ということになっておるのでございます。したがって、この病院に対しましては、これができましても周囲の方々に御迷惑のかからないような、ただいま官房長官がおっしゃったような、騒音の問題であるとかあるいは伝染病あるいは検疫の問題、その他外部に影響を与えるようなことにつきまして、十分に米側に善処を求めるということを少なくとも当面の措置としていたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  77. 濱野清吾

    ○濱野委員 そのことは官房長官が政府を代表して答弁しているからよけいなことだ。あなた方のいままでの事務の運用過程について、卑屈じゃないのかというのです。アメリカには一言も言えないで、そうしてわが国民がどんな迷惑やどんな不安になっても、あなた方の交渉というものはただことばの上の交渉だ。ほんとうに熱意がない。熱意があればこんな問題は解決するでしょう、こんな事理明白な施設ですから、病院施設なんですから。私はこの点まことに残念だ。アメリカには親切であるかもしらぬが、あなた方は日本国民には不親切である、そういうことである。それがどういうように発展するかおわかりでしょう。あなたには痛くもかゆくもないかもしれぬが、私はそう感じとっている。だからこの問題は、官房長官が政府を代表してお答えになりましたけれども、現実の問題で真剣にやってもらいたい。これはたいへんな問題を引き起こしますよ。百万の人間が動きますよ。あなた方が不親切であってこうした施設についてはどうすればよいかというようなことをお考えにならずに、ただ一ぺんの事務的処理が、こんな大きな社会問題を引き起こし、政治問題を引き起こす。しかも現に継続している。これを見た場合に、あなた方の責任は一体どう考えているんです。協定があるからしかたがない、アメリカの言うとおりになったんだ、それで済まされるものではございますまい。どうです。一人の役所の責任者がなまけていたとは言わないけれども、わが国民に不親切であるという結果がどういうふうに生まれてくるか。近ごろマイホームということばがありますが、役人のエゴイストでは行政はできないと思います。われわれはそういうことはひとつお許しを願いたい、通り過ぎればそれでよろしい、自分の都合だ、こういうような観念でこういう性質の一しかも大きな問題に発展する可能性というものは、その当時からわかっていたんでしょう。何も百万の板橋区や北区の区民がいまさら全学連と一緒になって反対運動を起こしたくて起こしているのではない。もともと根がある。あなた方のほうには自治法による意見書が出ているはずなんだ。あなた方はそんなものは弊履のごとく考えていらっしゃる。それが国の大きな問題を引き起こすもとなんだ、どうなんです。あなた方はここに来て、とにかく幾ら質疑応答をされても一時間で過ぎるのだというようなお考え方では困りますよ。真剣にやってもらわなければ、こういう問題は次々と出ると思うのです。全学連の問題はあなた方の役所ではありませんが、その種をまいたのはあなた方が日本国民に対して不親切であり、行政の立場から十分検討しなかったからである。第三には、アメリカという兵隊さんにアンダードッグの立場をとっている。卑屈になっている。言うべきことも言わないで、あるいは都合によればゴルフなどに行っているやつもあるかもしれない。私はそれでは国民はやりきれないと思うのです。
  78. 木村俊夫

    ○木村(俊)国務大臣 私別に防衛施設庁を弁護するわけではございませんが、どういう経過になっておるか私も知らないのでありますが、確かに防衛施設庁としては、防衛分科会でそれ相当の申し入れをしておられます。ただ、それが届かなかったという点は努力の不足かもしれません。しかしながら、今後の問題としては、これは既成区域内の用途の変更だからいまさら許可は要らないということでなしに、私どもとしましては、あくまで日米友好体制というものを堅持したい。堅持したいためにこそ、日米友好の長い関係を傷つけないように、お互いに遠慮なく言うべきことは言うということが必要だろうと思いますので、今回の問題は問題といたしまして、今後こういう問題の処置につきましては、政府部内でよく注意して、こういうことが起こらないようにしたいと思います。
  79. 濱野清吾

    ○濱野委員 官房長官が政府を代表して言うのでありますから、この程度にいたしますけれども、官房長官、この問題は普通起きている問題とは違いますよ。この場合、私は申し上げることを慎むけれども、よほど真剣に考えてくれないと党の運命にもかかわりますよ。むろん佐藤内閣だけの問題じゃない。佐藤内閣なんというのは問題じゃないのだ。われわれは党員であるがゆえに心配している。こんなことを言いたくないけれども、どうも政府は言うことは盛んだがやることは優秀不断である。党員としては心外にたえない。だから、これは正式のところで記録に残しておく。法務大臣、治安の問題についてはこれ以上あなたにお問いをいたしませんけれども、十分考えてやってください。勇気を出してください。
  80. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 関連。先ほどから承っておりますと、法務大臣刑事局長も、今後かようなことのないように全力を注ぎます、いろいろ研究して方策を構じたいと思います、こういう御返事ですが、これは夕べ全学連がこういうことを起こしたからというので、濱野君が新聞を出してこういうことを言っている。これはどうするかといえば、あなた方の答弁でいいのだが、これは根が深いのですよ。まだまだあるけれども、去年の羽田事件からだんだんエスカレートしてこういうえらいことになっている。四、五日前に、佐賀のある大学では、発煙筒を大学の中に持ち込んだということまで起こってきた。いま始まっているのなら、これから研究して大いにやりますもいい。大いにやってくださいとわれわれは言いたいのですが、もうここまできているのに、これから大いにやろうと思う、これはいろいろ研究してやろうと思いますでは、どうもそれではわれわれは安心しておれないのです。いままで研究しなかったのですか。研究したのだがこうなったのですか。この点をひとつ承っておきたいと思います。
  81. 赤間文三

    赤間国務大臣 いままで検察当局としても警察としても、これについて冷淡であったとかなまけたとかいうことは絶対ない。公務執行妨害、それから凶器準備集合罪で、できるだけの努力をいたしてまいってきておる。厳正な法律の適用ということはやってきているのに、ただ傍観しておるかのごとく思われるということは、われわれ治安当局としては何か非常に残念なような気がいたします。法の許す範囲内において、法の適用については適正な運営をやってきておりまして、こういうものにつきましては相当逮捕もするし、また起訴するに足る資料のあるものは思い切って起訴をやるということで、治安については一生懸命努力をいたしておるのであります。そういう点からいたしまして、今後においてもさらにくふうもするし、この現状もよく見て、ひとつそういう事件が起こらないような方向に全力を尽くしていきたい、私はこういうふうなことを申し上げておるのであります。何か、ああいう事件があるのに手をこまねいたり、何にも知らないでほうっておるかのごときふうにとられるということは、検察当局としても、警察としても非常に残念がるであろう。やはりこういう法秩序維持については全力を尽くしてきておると私は考えておるのでありますが、それでは十分でないと考えておりますので、さらにくふうをし、いろいろな方策を構じてこういうことを絶滅するような方向に進めたい、こういうふうな考え方をわれわれは持っておるのであります。何か十分ひとつ皆さまの方のお考えを教えていただきますならば、私どももそれを参考にし、さらにまた努力をしていきたいと思います。私は、一国の治安は、さきにお述べになりましたことに同く同感で、徹底的に治安維持をはかれという御熱意のあるところは十分了解しております。今日の日本の産業にしても何にしても、治安が保てたから発展したのであって、治安が保てなくて乱れるというようなことになったらたいへんなことだということはよくわかっております。さらに研究するというのは、さらにくふうをして撲滅についての方策というものを絶えず研究をしていこうということに御了解を願いたいと思います。
  82. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私はあなたのほうでやっておらぬというのではない。やっておるだろうが、だんだん悪化してきておる、これは何としてでもとめなければならぬということは言わぬでもわかっておると思うが、これから大いに研究します、大いにやるつもりでございますと言うから、いままでどうしていたのかということになるのです。刑事局長、先ほど騒擾罪も考えておるというのは、私らは前から、何ゆえ騒擾罪を適用されないのだろうかと言ったことがあるが、いまお考えになったのですか、前から考えておったがやらなかったのか、これを聞きたい。それと同時に、こんなことを言っておって、考えるのはけっこうだが、ほんとうに治安が保てるでしょうか、治める確信があるかどうか、それを承りたいから私はこのことを言うんですが、どうですか。
  83. 川井英良

    川井政府委員 騒擾罪の適用については、もちろん常時前から考えていたことでございまして、騒擾罪の適用と申しましても、御説明するまでもないことだと思いますけれども、過去においていろいろ運用してみた結果、その構成要件の解釈なり、具体的な騒擾の実態というようなものに即しまして十分な証拠が集まるとか、事態の推移を見きわめまして、見込みあるものについてこれを適用するというふうな方針できたわけでございますので、いままでの事態は、外形的に見ますと騒擾の要件を満たしておるようでありますけれども、私ども専門的な立場から見ますと必ずしもその適用に踏み切ることはいままでできなかったという状況でございますので、今後のそれぞれの事態に即しまして、そういう条件に当てはまり、かつそれを適用することが最もよろしいというような判断に立てば、いつでもそれを適用してやるということにつきましては、検察庁におきましても異論のないところでございます。
  84. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 われわれは外部におるんですから、これを適用しなさいとか、こうしなさいとか、そんなことは言わない。おっしゃったから、それならなぜいままでやらなかったのかと言うんですが、いずれにしても、これは断固として治めてもらわなければいかぬ、日に日にエスカレートしている、こういう点だけを申し上げます。そうしてこれならやれるという方針を立てて、できるものならわれわれにも聞かせていただきたい。われわれだけではなく国民を安心させてもらいたい。  それから、先ほど警備体制を充実することによってやれると言われましたが、警備体制については、これも具体的に何かお話しになっておるのですかどうですか。あなた方警備体制の話をしたと言われるのだが、しても効果がないのですか、それともまだそこまでいっていないのですか、どちらですか。警備体制に対しては、必要があるとすればどういうことが必要なのか、どのようにやっておられるか、ついでに聞いておきたいと思います。
  85. 赤間文三

    赤間国務大臣 その警備体制の強化方とか、いまお述べになりました騒擾罪のような問題、あるいはあらゆる面からわれわれはたびたび寄りまして、治安の問題の研究をかねて協議をいたしておるような次第でございます。やはりケース・バイ・ケース、それから動き方、あらゆるものを見まして遺憾のないような方法を講ずる。ただ、いまお述べになりました断固として治安の確保に当たれということは、非常にごもっともなことで、今後御趣旨に沿うように全力を尽くしていきたいかように考えます。
  86. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 われわれは、こうしなさい、ああしなさいとは決して申しませんが、いずれにしても、とにかくいかなることがあってもこの騒擾の世界をひとつ鎮静してもらわなくちゃいかぬと思いますから、その点を申し上げます。これは一つ確固たる方針ができましたら、でき得るならば、この委員会であろうと何であろうと、明らかにして、国民に安心を与えてもらうことをお願いします。
  87. 濱野清吾

    ○濱野委員 最後に官房長官にお伺いします。  政府の王子病院の移転についての考え方はよくわかりました。できるだけ外交機関を動かして、それから施設庁のほうも御協力を願って、すみやかに移転の措置をとってもらいたい。これは何も全学連が騒いだから、それだからあの移転、あそこを開放してくれと言うのじゃありません。その以前に百万の人たちが、あそこを開放してやってくれということを政府当局にさんざんお願いしてあるはずです。これは成規の手続を経てやっているのですから、そんなことに懸念する必要はない、官房長官それは約束してください。これは国家のためですよ。日米関係のためにもお願いします。  それからもう一つは、その間における暫定措置として、閣議でいろいろ論議されて、そして官房長官もだいぶ協力しているようでありますが、たとえば伝染病予防に関する問題、もう一つは騒音防止の問題、もう一つは風紀の問題、これは口ではすみやかに解決できるような相談も協定もできるでしょう。しかし実質的にはなかなか容易ではない。日本の専門家が患者のところで診察をしても、いろいろと医者の見解も遠ってくるだろうし、いろいろな手当ても違ってくるだろうと思う。しかしないよりはいい。ですからこの点も十分心して対処してもらいたい。  もう一つはヘリコプターの問題でありますが、重病患者を輸送するのだからというようなことが新聞に出ておりましたが、その重病患者がどの程度であるかよくわかりませんけれども、アメリカのいろいろな装備、設備から考えれば、どこから運んでくるかよくわかりませんけれども、日本の道路面で、この交通のふくそうした土地で自動車などで運べば、これは患者の健康やあるいは病態に非常に大きな影響のあることは必至だと思う。ですからこれはなかなかアメリカとしてもやめられまいと思うけれども、できるだけひとつやめるようにしてもらいたい。荒川の上空を飛んで市民に騒音というようなものを与えないような配慮をするということが新聞に出ておりましたが、それも一つ方法でありましょう。しかし荒川の河川上を飛んでも、やっぱり市内に入らなければ病院に入れないのでありますから、ですから最善の措置をひとつ官房長官とってもらいたい。  それからもう一つは風紀の問題であります。これが一番困っちゃうのですね。アメリカの傷病兵はいずれも若い人たちでしょう。若い人たちが傷ついて来るのでありましょうから、若いエネルギーは生理的本能の解決場所というものを当然考えます。終戦直後に赤羽工兵隊並びに被服本廠等にアメリカの一連隊が入ったときがある。いまだから申し上げますけれども、この兵隊さんのエネルギーですが、兵隊さんが殺伐な戦場でいろいろな不自由を感じたことを、赤羽地区の、いまの病院の裏のほうでありますが、ここでもっぱらしておりました。良家の婦女子が姦せられた。人妻も姦せられた。われわれは終戦直後にそれを体験しておりました。これは関係のない人たちはそうでもなかろうと考えるでしょうけれども、風紀の問題だけはやっかいな問題になります。だからこれを善処すると言ってみても、とんでもないむずかしさが実は内在しているわけです。ですから板橋区、北区の住民はそういう経験を占領された当時にしているのですから、風紀の問題は日本人が解決するとおっしゃっても、なかなか容易ではない。ことに赤坂や銀座あたりでは日本でも女性みずから風紀を乱す者がいるわけですから、おまえさんのほうでも注意をしろということが出るかもしれませんよ。こういう問題はなかなか容易な問題ではないのです。ですから結局一刻も早く王子病院は、病院にふさわしい環境の土地を見つけて移転する。新聞を見ると十億円ぐらいな経費がかかっている。しかしあの市内のまん中のあれだけの敷地を開放すれば五十億や百億には売れるのでありますから、富士山のすそ野の環境のいいところへつくるとか、あるいは反対のないところを買収してつくれば、財政の問題は何とか解決する問題でございましょう。官房長官、そう思いませんか。予算措置でできる問題です。残る問題は政府の誠意であります。ああいった性質のものをあそこへ置いて、東京都民に不安を与え、しかもそれが全学連の運動などと呼応してどう発展するかというようなことを考えれば、官房長官、賢明な政治家ですからこれ以上言うまでもございますまい。どうぞひとつ真剣に取り組んでやってくださるよう切に望みます。
  88. 木村俊夫

    ○木村(俊)国務大臣 申すまでもなく、政府においてはそういう趣旨に基づいて最善の努力をしたいと思います。先ほど予算委員会でも総理みずから野党の方の質問にはっきりそう言っております。
  89. 永田亮一

  90. 岡沢完治

    岡沢委員 まだ同僚議員も官房長官に対する質問を待っておられるようでございますから、簡単にと思いますけれども、ぜひこの際聞いておきたいことを二、三点お願いしたいと思います。  先ほど与党の先輩委員からかなりきびしい追求がございまして、私は王子の野戦病院事件も含めて全学連問題全体を、この際感情に走らないで、冷静に御一緒に考えてみる立場から申し上げたいと思います。  昭和三十五年六月十七日、例の第一次安保闘争の直後に朝日、毎日等、日本の七大新聞が「暴力を排し議会主議を守れ」という共同宣言を発しております。そのことばは「民主主義は言論をもって争わるべきものである。その理由のいかんを問わず、またいかなる政治的難局に立とうと、暴力を用いて事を運ばんとすることは、断じて許さるべきではない。」こういうことをうたっております。言うまでもなく近代民主国家の基礎は力にかわるに法の支配であります。この法の支配を否定しては私は民主国家における要件、国内治安の維持も社会秩序の維持も不可能だと考えるのであります。この意味から、国家も国民も政府国会も法の無視、法秩序の破壊は神経質過ぎるくらいの配慮が必要だと私は考えております。そういう意味から、ここに例の三派系全学連の委員長であります秋山さんが四十二年の十月九日に新聞発表している記事があります。われわれは現体制を認めないからその法律も認めない、間違った体制をこわすためには実力行使は正しい、またことしの一月三十日の日比谷におきます全学連佐世保闘争報告大集会で、やはり秋山委員長は、大衆には当然武装の権利がある、大衆が誤った代表者を武器をもって倒すのに何の気がねが要る、一九七〇年にはもっと武器を持つべきであるということを公言しているわけです。彼が委員長のもとに統一されております三派系全学連の行動は、私がここで申し上げるまでもございません。また一般市民の被害——警察官はもとよりでございますけれども、あの被害の物的、人的な数字等につきましても、先般来法務委員会でも私自身も質問してきたところであります。私は、ここまで参りますと、自民党の委員の方の発言とは違った意味からも、どうしても現在のこの状態を放置すべきではないという感じを持つものでございます。  それと関連いたしまして、私はこの際御一緒に考えてみたいのは、この事件の背景について、先般来も教育的な見地からあるいは政治的な配慮から指摘さしてもらった点もありますけれども、きょうは特にマスコミのこれに対する影響ということを御一緒に考えるべき段階にきているのではないか。先般来の委員会で明らかになりましたように、三派系全学連の学生諸君の大多数は教養学部の学生であり、しかも年齢的には、三分の一は未成年者であります。しかもきのううちの麻生国対副委員長あるいは受田議員団長等が視察された報告によりますと、高校生で女性が多数これに参加しているというような実態があるようであります。そういたしますと、私は、彼らがいかに善意であり、あるいはまた動機に同情すべきものがございましても、いわば判断力のない彼らの行動は独善偏向からきた結果である、こういうものをきびしく正してやる、正しく指導してやる、勇気を持って正しい方向に善導するということは、これは国民の一人としての義務ではないかという感じを持つわけでございます。もちろん報道関係の方々には報道の自由あるいは取材の自由がございます。またこれも憲法上きわめて大事な基本的権利であるということは私も承知いたしております。しかし私自身の過去の経験からいたしましても、やはり若いときには物的な欲はございませんけれども、英雄主義といいますかヒロイズムといいますか、あるいは自分自身の独善に基づく間違った意味での勇気がございます。これはやはり私ども人間としての先輩の立場から、正しく指導してやるということ自体が、学生自身のためにも、もちろん社会秩序の維持とかあるいは地域住民の被害を守るという意味からも必要ではないか、そういう点から私は、新聞、テレビをはじめマスコミの方々があまりに彼らを英雄的な扱いをして報道されるところにも一半の責任があるという感じがいたします。聞くところによりますと、警備当局なんかも、どこで衝突が起こるかということはテレビ局に聞けば一番よくわかる、学生諸君はあらかじめテレビ局に、ここでやるということを報告して、やはりそのとおりちゃんとそこで衝突が起こるということを考えましても、逆に彼らにマスコミが利用されておるというような面もなきにしもあらず、また彼ら自身の行動も、ある意味ではショー的なあるいは英雄主義的な感情が背景にあるということを指摘できるのではないかと私は考えるのであります。  この際私は、過去の二・二六事件から大東亜戦争に至る日本の失敗、あるいはナチスの失敗を考えましても、日本人がやはり民主的な訓練の不足する点は否定できない。ややもすれば感情に走って付和雷同的な性格を否定できない。先ほど濱野委員指摘されましたような米軍野戦病院の問題につきましては、あそこに設置するということも原因の大きな条件になっておるような気もいたしますけれども、しかし一連の全学連の学生諸君の行動を見ますと、やはりそれ以外に理由考えざるを得ない。そういう点で、私はこの際冷静に客観的に、あるいはまた勇気を持って、間違いは間違いである、暴力は民主主義の敵であるということをはっきり、特に内閣においてもPRの組織も予算も持っておられるわけでありますから、先ほど申しました取材の自由あるいは報道の自由に反しない限りにおいて、やはりもう考えるべき時期がきているのではないか。また大学の自治とか学生の自治ということを彼らは言いますけれども、現実に卒業式におけるあの行動を見ましても、学生の自治も、学生の中の二〇%以下の数の学生が全学を支配する、ほんとう意味での自治でも何でもない。もちろん大学の自治、学問、研究の自由とは何の関係もない彼らの行動です。こういうものに対して、私は日本の知識人も勇気がないと思いますが、やはりその先頭に立つ内閣なり政府なりがもう少しはっきりした態度をこの際お示しになる時期がきているのではないかというふうに感ずるわけであります。そういう意味から、文部大臣はおられませんけれども、内閣を代表される立場で、官房長官からも、ぜひ大学の教育問題についても——この間、大学の学生のあり方について、学校制度のあり方とも関連して文部大臣にも質問いたしておりますが、ぜひ中学校、高校教育も含めて、教育のあり方あるいは教育者のあり方等、特に全学連の諸君の中で過半数は国立大学の学生が占めておるということを考えても、ぜひこの点御検討いただきたい。そしてまた国民に対する秩序、法を守る意識、法の権威に対する挑戦についての断固たる国民の自覚を要請するという態度が私は憲法上必要ではないかという感じがいまいたすのでありますので、これらの点について官房長官の御所見を伺いたいと思います。
  91. 木村俊夫

    ○木村(俊)国務大臣 いまお話の出ました三派系全学連の一連の暴力事件につきましては、いまお話のあったとおり、これは治安の問題としてのとらえ方あるいは教育問題としてのとらえ方、いろいろ問題がございます。その中で治安の問題につきましては、先ほど法務大臣からお答えになりましたとおり、政府といたしましても、暴力は絶対許せない、その動機、目的のいかんを問わず、暴力に対しては断固たる態度をもって臨む、これが政府の治安の方針でございます。しかしながら、また一面におきまして、この三派系のみならず、全学連全体の問題といたしましては、やはり教育そのものにも相当責任があるのではないか、ことに大学の管理の問題に至りますと、私ども政府の側から見ましてもまだまだ不十分な点がある、しかしながら、直ちにそれを私ども政府のほうから大学管理について政治的容喙を入れるというまだ時期ではない、しかしながら、大学自治のいまの状態がこのままでみずからそれをこわすような状態に追いやられては、むしろ大学自治を守る政府の方針からいってたいへん困難な事情になりますので、いまそういう文教政策といたしましても事態を静観しておるところでございます。  先ほどこれに対する破防法の適用の問題でいろいろ御質疑等がございました。私どもは決して一定の法律要件を備えた事件に対して法律を適用しないということは、これは法の許すところでもございませんし、またそういう中で法の適用が左右されてはならないと思います。やはり法の目的といいますのは、法の適用が効果を全うするということもたいへん大きな要素ではなかろうかと思うのでございます。私がこの一連の事件をじっと見ておりまして、やや感じますのは、いま岡澤委員がおっしゃいましたように、ある時期までは相当市民感情がこれに対して追随しておったような時期もございました。しかしながら、成田事件、王子事件一つの契機といたしまして、きょうの新聞でも見ますと、都民、国民感情が彼らの暴力を許さないというような、ある意味での社会的隔離の現象もついに出ておりまして、きわめて私ども注目しておるところでございます。したがいまして、法の効果を全からしめるためには、やはり世論の支持、先ほどお話がありましたように、ただ一般国民の国民感情のみならず、報道、世論というものも非常にこういう問題には大きな影響を持つようでございます。そういう面から見ましても、三派系全学連に対する世間と申しますか、世論というものの見方が正しくなってきたということはわれわれも痛感いたしております。今後私どもは破防法につきましては、これを適用する方向においてあくまで検討するということで現在は進んでおるわけであります。
  92. 岡沢完治

    岡沢委員 終わります。
  93. 永田亮一

    永田委員長 岡田春夫君。
  94. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 時間もだいぶたっておりますので、私も簡単に伺ってまいりますから、大臣のほうでも簡単明瞭にお答えをいただきたいと思います。  きょう私の取り上げるのは、綱紀粛正の問題であります。  最初に、法務大臣に伺ってまいりたいと思いますが これは昨日法務省からどういう点を質問するかというような点がございましたので、簡単ではございましたけれども質問問題点を提起いたしてございますので、法務大臣はお答えいただけると思います。  北海道小樽市新光町一二〇織田恵水という人が昨年、すなわち昭和四十二年七月十八日に東京都千代田区永田町ホテル・ニュージャパンの中にある株式会社日本物商、その代表取締役——この人は現在代議士であって、政務次官の職にある人であります。同僚でございますので、私はあえて名前は申し上げません。この人を相手どって詐欺事件として訴え、そしてその告訴状が東京地検にすでに出されているはずでございまして、それは受理をされているはずでございますが、まず最初に法務大臣からこの経過をお伺いしたいと思います。
  95. 赤間文三

    赤間国務大臣 お尋ねの事件は、御指摘のとおりでございます。昨年の七月二十日に東京地検において告訴を受理をいたしております。目下調査中である、かように私報告を受けておる次第でございます。
  96. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 いま大臣の御答弁のとおりに、昨年の七月の二十日に東京地検で受理をいたしまして、たしか私の知っておるのでは、特捜部の長山検事が担当いたしまして、その後捜査に入っているはずであります。ところが、こういう事件であり、現職の代議士であるという関係からといっても、八カ月もその後捜査があまり進捗しておらないということについては、これはあとでいろいろ伺ってまいりますが、捜査の進捗がたいへんおくれているという事情は、どういう点にあるのでありますか。
  97. 赤間文三

    赤間国務大臣 東京地検におきましては、告訴人側からいろいろと事情を聞きますとともに、また被告訴人やその他の関係者を取り調べて、さらに関係証拠書類の提出を求めてこれを検討するなど、この真相を究明することに非常に努力しておるように私は聞いておるのでございます。しかし、その告訴状において共犯者とされておる本件の重要な参考人が、事件の直後から所在が不明となっておる。そういうために、事案の内容が、参考人がなかなか見つからない、不明のために調べにくいということ、それからまた一方においては、事件内容が、御承知のように相当複雑でございますので、真相を把握することに非常に困難を感じておるというふうに私は承って、まだ結論を出すには至っていないように承知をいたしております。しかしながら、お述べになりましたように相当日にちもたっております。今後できるだけ方法を尽くして捜査の徹底を期していきたい。すみやかな適正な処理が行なわれることと考えております。
  98. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 捜査は進めているという話ですが、私の知っている限りでは、捜査は進んでおらない。告訴人を呼んでこの告訴した経過その他について取り調べるというのは、特にこういう詐欺事件の場合においては通例になっているわけであります。ところが、告訴人に対してもまだ調べておりません。あなたは告訴人は調べたとお話しになりましたが、これは調べておりませんが、もし調べたとあなたが御答弁になるなら、何月の何日どこでお調べになったか。刑事局長でもけっこうです。
  99. 川井英良

    川井政府委員 大臣がい答弁されましたのは、告訴人側から事情を聞いた、こういうことで、告訴人その人じゃございません。
  100. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは非常に明らかになってまいりましたが、告訴人側であって、告訴人それ自体ではない。それが必ずしも違法であるということではございませんけれども、こういう事件であり、相手が現職の代議士であるということになるならば、この告訴事件に関連をして、はたしてこの訴状が妥当なものであるか、真偽の問題についても告訴人に対して調べるのがほんとうだと思うのだが、これをことさら調べなかったという事情は、一体どういうところにあるのですか。
  101. 川井英良

    川井政府委員 捜査中の具体的な案件でございますので、私ども法務省といたしましてあまりこまかく内容に立ち入って検討はまだいたしておりませんけれども、もちろんこの告訴人につきまして、代理人として弁護人がつきまして、告訴状を取りまとめて、むしろ弁護人のほうがよく事情を承知しておられるのではないかということで、告訴人側の弁護人から詳細な事情を聴取した、こういうような報告を受けております。
  102. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 弁護人から聴取されたそうでありますが、ところが、この事件に関連のある株式会社日本物商の重役である人、私の聞いておるのでは大賀栄という人については、昨年の暮れに調べているようであります。告訴人側の関係は弁護人からお調べになったので、それでこれは事件として立つということで受理をされてお調べになっておられるのだろうと思うのですが、被告訴人はまだお調べになっておらないはずでございますが、この点はどうですか。
  103. 川井英良

    川井政府委員 被告訴人の側が二人になっておりまして、先ほど申し上げたとおり、一人は初めから所在不明にして取り調べが全然できないということでございますし、もう一人の被告訴人につきましては、詳細な上申書をまず徴取して検討しておる、こういうことでございます。
  104. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 私は告訴状を持っておりますが、刑事局長はお調べいただきたいと思いますが、被告訴人は二名ではありません、一名でございます。これは名前を申し上げてもよろしいのでございますけれども、現職の代議士の方だけが被告訴人になっているのであって、二名ではありません。一名の人が重要な関係人として先ほど法務大臣は御答弁になりましたけれども、重要な関係人の関係については行くえ不明であったとしても、被告訴人は一名であるということはあなた確認されますか。
  105. 川井英良

    川井政府委員 正確を欠きました。そのとおりでございます。しかし、内容は、逃亡の参考人と共謀の上で犯したということに相なっておりますので、実態におきましては二人共謀ということに相なろうかと思います。
  106. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 共謀という点のいま答弁がございました。しかし、これはあとで伺ってまいります。  これは木村官房長官にお伺いをしたいと思うのですが、政務次官の任命は言うまでもなく内閣の責任であります。内閣は、この代議士を政務次官に任命したとき、すでにこの人物は詐欺事件として告訴が行なわれ、そして受理をされて、その訴状は東京地検にあったわけであります。そうすると、政府は、この事実の上に立って政務次官を任命されたということになるのでございますか。あるいはこれについて、官房長官として、政府の任免権の問題、この点から見て、この事実についてどのようにお考えになりますか。
  107. 木村俊夫

    ○木村(俊)国務大臣 もとより政務次官の任命は内閣の責任でございます。しかしながら、その際に私どもが選考の方針といたしますのは、もちろん種々の条件もございますが、いまだそういう刑事事件において刑の執行その他前科がないこと、また現在執行中でないこと等を目標に選考いたすことは、御承知のとおりでございます。当時この事件については私どもはそれを存じなかったということが事実でございます。
  108. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それは御存じであったかどうかはともかくとして、この事件は八カ月もたっているわけですよ。しかも、これを起訴するかどうかというようなことについては、現在まだ未定の段階だ、そういう中において政務次官に就任をした。これは実は考えようによると、先ほど自民党の濱野委員から御質問がありましたように、政治的な配慮というのがこういうところにあるのじゃないかとわれわれは疑いたくなる。こういう点について、何か政治的な圧力とかそういうものがあったのじゃないかということまで私は考えるわけです。ここら辺について、もう一度御見解を伺っておきたいと思います。
  109. 木村俊夫

    ○木村(俊)国務大臣 いまのお話のような政治的圧力は、毛頭ございません。
  110. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 これは捜査当局のほうに伺っておきたいと思いますが、八カ月も延びているということは、何か相手が現職の代議士である、しかもこの現職の代議士のうしろには政界の最有力者というものがいる、こういうような関係でこのように延びているということ、それからまた告訴人自身もまだ調べておらないというようなこと、これは、私は捜査上通例のことではないというように感じるのですが、それらの点を考えると、何か政治的な圧力があったために、八カ月間もこの事件については捜査をしないでそのままに置いておったのじゃないか、こういうような感じもいたすのでありますが、どうですか。
  111. 川井英良

    川井政府委員 政治的な圧力というようなことはもちろんございません。先ほど申し上げたとおり、犯罪の成否について欠くことのできない重要な証人が取り調べができないということが、おくれている主たる原因だと考えます。
  112. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 先ほどから重要な証人がいないということを理由にしておられますが、しかし、そういうことは不可能なことではない、それがどこにいるかということを調べることは、困難じゃないのじゃないか。どうなんですか、それじゃそれぞれの手配をされておられるのですか。
  113. 川井英良

    川井政府委員 昨日御連絡を受けまして、東京地検について照会したところ、おくれている主たる原因は、きわめて重要な、犯罪の成否に欠くことのできない、どうしても調べなければならない証人が行くえ不明で、所在がわからない、こういうことが主たる理由である、こういう報告を受けております。
  114. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 その重要な関係人というのが行くえ不明なら、警察を通じて手続をとって捜査するような手続をとっているのですか。
  115. 川井英良

    川井政府委員 捜査機関でありますから、手を尽くして捜査をしていると思います。
  116. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 そんなことはないはずです。行くえはそんなに不明じゃないはずです。これはあとで私名前を出してまいりますが、もう一人の重要な参考人というか、重要な関係者というのは、もう一人の代表取締役大竹雄二という人です。この人は東京のかいわいにいるはずですよ。もしなんならあとで御参考までに場所は申し上げてもいいですよ。あなたのほうは、そういう警察関係を通じてこの人を捜査していないのじゃないですか。そういうところにも政治的な圧力があるんじゃありませんか。
  117. 川井英良

    川井政府委員 私は、その重要参考人が容易に手に入るところにいるとは、全くこのケースについて知りませんでした。そういうことでありますれば、さらにまた地検についてその点を照会してみたいと思っております。
  118. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 これは大臣、重要な点です。単なる照会だけでは困るのです。重要な関係人ならば、それぞれしかるべき措置をとって、その人の居どころを確かめて調べる、そういうことの努力をされる御意思はございますかどうですか。
  119. 赤間文三

    赤間国務大臣 私個々の捜査とか、そういうことにタッチする考えは持っておりません。しかし、お話を聞いてみて、なるべく事件をすみやかに処置をするということは当然のことで、必要な人間は捜査の関係者がさがして、早くこれを処理していくというのが、私は当然のことである。なおまた私は、捜査とかそういうものに政治的な配慮とか圧力とかを絶対に加えるべきものじゃない、かように信じております。
  120. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 このままで終わってはいけないので、事件内容に触れておきませんと、いかに重大であるかということがおわかりいただけないと思うのですが、この訴状によりますと、告訴人の織田恵水という人は、株式会社日本物商の代表取締役の一人であるただいま問題になりました大竹雄二という人から、昭和四十年の八月ごろ同社の事務室においてこのように持ちかけられた。内容は、日本の対フィリピン賠償の一環として、日本物商はフィリピン政府にセメント六十万トンを輸出する納入権を獲得したが、その保証金として日本銀行に一億円を預託した関係上、資金繰りに困難をしているので融資をしてもらいたい、そしてその返済は、その翌年の昭和四十一年四月に代金の支払いがあるから弁済すると持ちかけられた。これに対して告訴人は、昭和四十年九月以降四回にわたり合計四千百八十一万五千余円を融資した。しかるに、このような融資後において、告訴人から再三その期限が参りましたので返済の要求をしたにもかかわらず、約手の書きかえその他の手段を使って弁済の期限を引き延ばしてその後に至っておる。このように弁済をされないということでありますので、この金員について騙取されたものとして、詐欺事件として告訴したと訴状には載っております。こういう経過はどうなのですか。刑事局長これはこういうようになっているはずであります。
  121. 川井英良

    川井政府委員 たぶん内容はそうだと思いますが、告訴を受けますと、告訴状は、御承知のとおり、捜査書類ということになるわけでございます。したがいまして、私のほうの側から告訴状の内容についてここでもってそれを全面的に明らかにするということは、遠慮さしていただきたいと思います。
  122. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 私は、ここに訴状の写しがありますから、そのとおりに申し上げたので、何もでたらめ言っておるのじゃありません。これは重大なことで、国際的な関係もあるわけであります。と申しますのは、このあと続いてまいりますが、告訴人は、この弁済が行なわれないために、昭和四十一年九月に上京して株式会社日本物商に弁済を要求したところ、同社の代表取締役から、このような説明があって、一通の英文コピーが手渡された、こうなっております。それは比国公共事業省からアントニオ・リベロへ支払われるセメント六十万トンの代金支払いのためにフィリピン・ナショナル銀行が開設した信用状、LCの写しであるという英文のコピーが一通手渡された。ところが、この英文のコピーが手渡されたことによって、告訴人は、このLCがあるからもうしばらく待ってくださいと頼まれて、それでなるほどというのでその弁済の期限を延期した。ところが、この英文のコピーというものがにせのコピーであるということが明らかになった。にせのコピー、ここにあります。私は、どうしてにせのコピーかというと、この点を簡単に申し上げてまいりますが、セメント六十万トンは、比国の公共事業省に納入するためのものであることは間違いない。しかし、輸出の契約は、フィリピン人アントニオ・リベロと三井物産株式会社との契約であって、アントニオ・リベロと株式会社日本物商との契約のものではない。これは事実である。もう一つは、このLC、信用状ですね、この信用状の本物は、したがって三井物産にある。告訴人に手渡されたところの英文のコピーは、これは三井物産にあるものと内容が違うものである。そこで、告訴人に手渡された信用状英文コピーの内容はどうなっているかというと、信用状の番号はS−六六一六五二号、信用状の日付は一九六六年九月五日、信用状のあて先はニューヨークのマンハッタン銀行、失効期限は一九六八年十二月三十一日、同文書の署名は責任者のイニシャルだけが署名されている。これが告訴人に手渡された信用状のコピーの内容である。これに対して三井物産にある本物の信用状は、信用状番号は同一番号のS−六六一六五二号、信用状の日付は同一日付の一九六六年九月五日、あて先は、先ほどにせのほうはニューヨークだと申しましたが、これはあて先は香港の東京銀行になっている。失効期限は一九六八年の六月三十日になっている。この点も違う。署名は責任者のフルネームが署名してある。そこで、同一の日付に発行され、しかも信用状の番号が全く同じのもの、これが二通あるということになるわけであります。しかも、そのうちの一通は三井物産に現在あって、それが本物である。もう一通がにせものであって、そのにせものがいわゆるコピーされて告訴人に渡し与えられたということになる。こういうことになりますと、まず第一に、株式会社日本物商は本物にあらざる、すなわちにせの信用状のコピーを告訴人に提示をしてこれを手渡した。それによって告訴人を欺いて弁済の猶予の期間をとった。   〔委員長退席、大竹委員長代理着席〕  もう一つ重要な点は、告訴状のとおり、もし外国の銀行が出した信用状が偽造されて使われたのだとするならば、これは国際信用上まことに重大な悪質事件であるといわなければならないことです。そこで国際関係でもこれは絶対無視するわけにいかないわけです。これほど重大な事件が八カ月もそのまま置かれているということは、これはまことに重大である。先ほどからもお話しのように、一人の関係者がいないということでこのような国際上の重大事件がそのままになっているということは、まことにこれは重大と言わなければならないわけであります。これについては、これは特に法務大臣から、これほど国際的な重大な問題について八カ月もそのまま置いてあるというようなことは、われわれとしては了解するわけにはまいりません。この点について明確な御答弁を願いたいと思います。
  123. 赤間文三

    赤間国務大臣 法務大臣といたしましては、個個の事件につきましては指揮監督をいたしてはおりません。全般についての問題については検事総長に方針その他を授けること、またいろいろと全体のものはやりますが、個々の事件につきましては、これを指揮したりいろいろするという方法は、いままでとっておりません。ただ、私はいま聞いて、重要な問題でもあるし、できるだけこれが早く処理ができるようにありたい、かように私は考えておるわけであります。
  124. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 これはいま法務大臣だって重大だということはおわかりいただいたように、これはもし個々の指揮はやっておらないとおっしゃるならば、検事総長に御出席願いまして、私は具体的に伺ってまいらなければなりませんが、少なくともこれは国際関係上重大な問題であります。これは木村官房長官もお聞きいただきたいのですが、フィリピンのナショナル銀行というのは、向こうの中央銀行であります。中央銀行で開設をしたLCというものが偽造されているということになれば、これは国際信用ばかりではありません、国家問の問題としてきわめて重大な問題である。これについて、単にそういう点については法務大臣から一々指揮はいたしておりませんというような程度で済ませ、そうして私が、そうでございますかと言って納得するわけにはまいりません。これは政治問題としても重大でございますので、特に官房長官に伺っておきたいと思います。
  125. 木村俊夫

    ○木村(俊)国務大臣 いま法務大臣からお答えいたしましたとおり、現在まだ捜査中の事件でもございます。政府としてはこの全容がはっきり確実になりました上で、その政治的影響等も考慮したいと思います。
  126. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 官房長官が予算委員会から呼ばれているようでございますので、私はただいまの御答弁ではまだ納得いたしかねます。しかし、これは留保いたしまして、もう少し進めてまいりたいと思います。  もう一つ重要なことは、この訴状によりますと、単に商取引の関係の詐欺事件というだけではない、このうしろには重大な政治的な背景があるとはっきり言っています。この訴状の中には、このように書いてあります。被告訴人は、佐藤総理の実兄である岸元首相の肉親関係にあり、被告訴人は岸元総理が何かと便宜をはかってくれていることを暗に誇示していた。現に、昭和四十年の暮れ、岸信介が現首相の特使としてフィリピン大統領就任祝賀式の参列のためにフィリピンに渡ったときに、本件セメントに関し——名前があるのだが、大体皆さんもうおわかりだろうと思うから言いますが、安倍のために便宜をはかってくれたし、本件詐欺が追及されたときは、岸信介の秘書らがその防壁の役目をつとめるなどのことがあったと、訴状の写しに書いてあります。事実、私調べました。岸元総理は、フィリピン・マルコス大統領就任式の日本特派大使として昭和四十年十二月二十九日、スカンジナビア航空でフィリピンに渡っております。その際に、被告訴人はその正式随員として同一飛行機に乗って随行したことは間違いないと思いますが、この点は官房長官、どうですか。
  127. 木村俊夫

    ○木村(俊)国務大臣 私は正確な記憶を持っておりませんが、たぶんその時期であったろうと思います。
  128. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 ところが、この同一飛行機の中には、株式会社日本物商の他の代表取締役、先ほどから問題になっている大竹雄二、またもう一人、この会社の重役である中沢高一郎が同乗している。そしてフィリピンに到着後も、岸元総理らと行動をともにしたという事実があります。それは、もしお調べになるなら、当時のフィリピン大使館をお調べになったらわかるはずです。そのときに、当時の日本の大使が岸元総理に何を言ったかということも私は知っておりますが、ここでは申げ上げません。また、岸元総理はフィリピンに滞在中、特派大使の任務でありながら、被告訴人のために便宜をはかったと告訴状に書いてあるのは、先ほど申し上げたとおりである。そうすると、これはかつての荒船事件と同じことになるじゃありませんか。荒船事件と同じように、業者のものと、特派大使の資格を持ちながら同じ飛行機で一緒に行って向こうで便宜をはかったということは、これは政治的に許されないことであります。こういう点について、官房長官は、綱紀の粛正上どのようにお考えになりますか。
  129. 木村俊夫

    ○木村(俊)国務大臣 いま承ったところでは、告訴状の内容についての事実をお述べになっていますけれども、私ども、まだその事実について何ら確証は持っておりません。それは申し上げる限りではないと思います。
  130. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 これで終わります。この訴状の中に書証がありますが、その第七号によると、アントニオ・リベロから出された日本物商との間の債権譲渡契約書というのがあります。この債権譲渡契約書は英文でございますが、この英文を日本文に直して読んでみますと、一部省略をいたしますが、このように書いてあります。   〔大竹委員長代理退席、委員長着席〕 「フィリピン政府に対して日本産セメント六十万トンを供給する私の契約に関し、」——私というのはリベロであります。「その締結と履行につき、すでになされ、また将来なさるべき日本物商の尽力にかんがみ、私が日本物商に対し十万米ドルの報酬として支払うことを確約いたします。」しかもまた、「この文書の作成により、従前私より大竹雄二及び安倍某」——安倍某としておきましょう。「大賀栄各氏にあててなされたすべての確約、申し合わせば失効したことをここに確認いたします。」このような債権譲渡契約が行なわれて、これによってリベロから十万米ドル、すなわち邦貨に直して三千六百万円、この金が日本物商に渡される確約が行なわれた。しかもこの確約は、先ほどから申し上げているように、リベロと三井物産の間に契約をなされた問題について、そのリベロが今度は日本物商に対してこのような利権を、一二千六百万円の金を払う、この辺にたいへん疑惑があるわけであります。いわゆるリベートの問題としてたいへん疑惑があるわけであります。このような黒い疑惑をこのままにしておくわけにはもちろんまいりませんし、特にこれに関連をいたしまして、先ほど申し上げたように、岸元総理が特派大使として派遣されてこの問題に関連があるなどと訴状に書いてあるようなことであるならば、これは政治的には絶対に許すわけにはいかないわけであります。綱紀粛正をやらなければならない立場にある官房長官に、政府を代表して、これに関する御見解をお伺いいたしたいと思います。
  131. 木村俊夫

    ○木村(俊)国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、いまお述べになりましたことは告訴状に基づく事実の内容でございますから、いま捜査当局でせっかく公正にこれを捜査しておる最中でございます。全容が明るみになりました上でないと、私の意見は申し上げかねます。
  132. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 ただいまの御答弁では、私は納得いたしかねます。綱紀粛正の問題がこれほど叫ばれているときに、いまのような答弁で、ああそうですがと言うわけにはまいりません。しかし、少なくとも私がここで申し上げたいことは、訴状が出されて、担当検事がきまって、それから八カ月間もそのままおかれて、しかも内容においては国際的な詐欺事件である。しかも、特派大使という政府の代表の岸元総理に関連があるといわれている事件である。これほどの事件を八カ月もそのままおいておくということは、私は絶対に納得するわけにはまいりません。しかもこの告訴人のように、四千百数万円という膨大な金をまだ払ってもらえないために犠牲になっている人がいる。先ほど濱野さんも言われましたように、政府がふらふらしているから、こういうことになるのです。法治国家として、三派全学連の問題その他の問題も先ほど言われておりましたけれども、これほど善良なる国民が犠牲になって泣いているこういう問題について、このままほうっておくわけにはわれわれとしてはまいりませんし、政治的にも、また法律的にも、重大な問題でございます。これに対して、取り調べの問題を含めて、今後どのようにされるのか、これについての見解を最後に官房長官に伺って、予算委員会で待っているようでございますから、官房長官は向こうへおいでをいただきたいと思います。
  133. 木村俊夫

    ○木村(俊)国務大臣 たびたび申し上げますとおり、これは捜査中の事件でございますから、政府の立場でこれに対する意見は申し上げないほうがいいと思います。
  134. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 法務大臣、これほど重大な事件ですから、捜査は急いでもらわないと、一々個々の指揮を云々とか、政治的な圧力を加えないとかいうことをお話しになって、抽象的なお話でありますが、これは国家間においても重大な問題であります。これはやはり徹底的に捜査されることを私は強く要望いたしたいと思いますが、法務大臣の見解を伺いたいと思います。
  135. 赤間文三

    赤間国務大臣 法務大臣としましては、個々の問題につきまして指揮するとかあるいはどうするというような、指揮権めいたようなことをやった覚えは一度もありません。将来におきましても、個々の問題についてどうしたらいい、こうしたらいいということは、私はいたさない方針であります。ただ、いまお述べになりましたような重要な事件につきましては、なるべくすみやかに事が処理せられることを法務大臣としては希望いたしておりますが、個々の問題につきまして指揮するということは、私はいたさない考えであります。御了承願います。
  136. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 関連。これは、いま刑事局長の説明によれば、被告発人が上申書を出しておる、それだから調べないんだ——そういうことないでしょう。これだけの大詐欺事件だ。上申書だけで済まされる道理はないですよ。しかも被告発人が来ておるじゃありませんか。その共犯者がいないということであるなら、なおさら現在おるところの人を調べるということが、捜査の常道なんだ。上申書だけで本人を調べないなんて、ほかの問題でそういうことをやりますか。どういうわけで上申書だけで調べないのですか、その点についてはっきり言ってください。
  137. 川井英良

    川井政府委員 こまかい内容につきましては私はまだ承知をしておりませんが、とりあえず聞いたところによりますと、その告訴の内容趣旨が、実行行為者は、そのAというか、所在不明の人となっているようでございます。したがいまして、いろいろ捜査には常道もあり、定石もございますけれども、とにかく何といたしましても重要な参考人がいないならば、所在捜査を尽くして、そしてそれを手に入れて、迅速に厳正な結論が出ることが望ましいことは、私も全く同感でありまして、申すまでもないことでございますので、最高検察庁を通じまして本日のこの御要望の趣旨を伝えて、本件につきまして捜査が迅速に、公正な判断が出るように処置いたしたいと思います。
  138. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 実行行為者がとにかく所在不明と称する、これも、私どもは捜査を積極的にやっておらぬのだと思うよりしかたがない、これだけ国際的な重大犯、しかも、その背景には相当の実力者が控えておるという事件、綱紀粛正の意味においても検察庁が献身して全力をあげなければならぬ。今日、八カ月もたって所在が不明だ。ところが、被告発人は所在不明じゃないでしょう。政務次官をしているじゃないですか。それに対しては上申書で済ましておる。そうすると、その実行行為者というものがつかまらぬ限りにおいては、被告発人の調べもしないのだということになれば、これは何か政治的背景が、力が加わっておると思うよりしかたがないじゃないですか。そういうことに対して、どうもわれわれはなはだ不審にたえないのだ。八カ月ですよ。ほかのことならば全力をあげて調べるでしょう。また、所在不明なんということもあり得ない。そんなことなら、日本の警察官は全く無能だといわなければならぬ。デモなんかについては根掘り葉掘り取り調べている。それもいいが、こういう重大犯人こそ徹底的に捜査をやるべきだ。その捜査を尽くしておらぬと思うが、尽くしておるならば、せめて現在住所のわかっておる——被告発人一人なんだ。その人間を、てまえがってな理由をくっつけて、上申書なるものを取って、それで事を済ましている。これでは、みんな犯罪をやったやつは、上申書を出して事を済ませますよ。これはほかのことと違うのだ。国際的な詐欺事件、大がかりな詐欺事件、しかも被害金額四千百数万円のものを、これに対して八カ月も上申書だけで済ましている。共同行為者がいない。そんな堂々めぐりをやっていれば、これは結局うやむやに済ましてしまうという意図だということになるじゃありませんか。あなた方検察も実際わからぬならば、検事総長に委員会に出てもらって、具体的に聞くよりしょうがないのです。  それから法務大臣、あなたに個々の指揮権はないことははっきりしておるが、しかし、検察行政の最高責任者として、こういう問題について検事から詳細なる報告を聞くととに、また検事総長に対して徹底的にこれを捜査せよという指揮権はあるはずなんだ。そういうことについて、何も存じません、何も私は関係ありませんというように聞こえるのですが、これに対してあなたの態度はどうなんですか。
  139. 赤間文三

    赤間国務大臣 私は、検察のあり方、方針とか、そういうことにつきましては、非常な密接なる指揮、指導ということはやっておりますが、個々の事件につきましては、私は検察当局を信頼をいたしまして、あまりタッチをしない、正確にまた厳正にやってくれ。私がタッチするということになると、また変な政治力が加わったのじゃないかと誤解を受けてもつまらぬと思うので、私はあくまで検察というものはほんとうに公正に妥当に、政治力にもよらず、力にもよらず、正しい国民のために働きをしてくれるものと信じておりまするので、個々の問題につきましては、私は指導をしたりいろいろすることを遠慮いたしておるというのが現状でございます。
  140. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 あなたがそういうことを言うことに対して、実はわれわれ幾多の事例を持っておるが、いまは時間がありませんし、あなたは法務大臣になりたての方ですから、詳しく言っても、これはどうも無理だと思うのです。あなたの意気込み大いに壮としますから、そのあれでやってもらいたいけれども、都合のいいときは指揮はしないし、都合の悪いときは大いに指揮権を発動するような、そういうことを実際にやってきておるのですよ。幾多の事例があるわけだ。しかし、それをあなたにただしてもしかたがないと思うが、具体的のことは指揮もしないし、聞いておらぬというなら、われわれ、検事総長に出てもらって、その事の真相を聞きたいと思うが、それに対してあなた反対しませんか。
  141. 赤間文三

    赤間国務大臣 別に反対も何もいたしません。——反対は私個人はいたしませんが、いま承りますと、一回も出たことがないそうでございます。出たことが一回もないそうですから、私はその点はここで研究することにさしていただきたい。
  142. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 事務官僚が、一回も出たことないという、でたらめな知恵をつけるからいけない。造船疑獄のときに、佐藤検事総長はちゃんと出てきた。しかも、あの指揮権発動は、はなはだ検事の士気を低下さして、司法権の活動に非常に影響がありましたと、はっきり委員会で証言しているじゃありませんか。それをとらえて、私は、本会議で、時の吉田総裁、緒方副総裁に対して質問しているのです。だから、検事総長が出た事例がないと、おまえさん何を言われる。そんな勘違いな、間違ったことを言っちゃだめだよ。だから、法務大臣、官僚に動かされずに……。そういう事例があるのです。現にこの国会へちゃんと出ているのですよ。私が質問しているのだ。検事総長は私に誘導尋問されたなんという、これは冗談で言うたことがあるのだが、出て、やっておるのです。だから、こういう問題については、法務大臣なり刑事局長が責任ある答弁できないとすれば、検事総長を呼ぶよりしかたがないのです。検事総長はやはり法務大臣の指揮下にある人ですから、あなたが拒否すると問題が起こってくる。だから、いま聞いたのです。刑事局長、へたに要らぬことを言わぬほうがいい。
  143. 赤間文三

    赤間国務大臣 その問題は、とくと研究をいたして御返事を申し上げます。
  144. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 もう一点、これは保全経済会の事件につきまして、時の法務大臣にとくと私は注文したのだが、そのままになっている。一体名士といわれる人間が、いろいろの会に、やれ顧問でござる、参与でござる、こういう名前を出しておる。保全経済会に出ても、天下の名士がずっと並んでおる。いなかの純朴な人は、ああこういう偉い人がこの顧問であり、参与であるのだから、これはまあ心配がなかろうということで、みなその保全経済会なんというのに預金したわけなんですよ。そして彼らは顧問料とかなんとか称するのを幾らかずつみんなもらっているのだ。ところが、事が起こって、保全経済会それ自身に検察庁のメスが入るようになると、おれは何も関係ない、あれは名前をちょっと借りられただけで何も知らぬ、名前を貸しただけで私は何も知らぬ、みんなそう言って逃げちゃう。大体自民党の政治家が多いのだ。ほとんど大部分だ。それは、大臣やったとかなんとかいう肩書きがつくし……。われわれは一生やったって大臣の肩書きはつきやしない。肩書きのある者をいなかの者は喜ぶから、ああこの人は元大臣をやった人だとみんな信用して、みんなインチキなそういう金融機関に入会する。それがために自殺した人が全国に相当あった。あのとき私は、こういう一たん名前を出した人は、何らかの責任を負うような法制化をせなけりゃならぬじゃないか。その人を信用し、これだけの害毒が流されておるとするならば、おれは名前を貸しただけで、何も内容を知らぬ、そういうことで何の責任も負わぬということはこれは非常に不都合じゃないか。だから、こういうことを取り締まる何か法案法務省考えてもらえぬかということを私は言うた。ところが、その後何のあれもない。今日また、この岡田君の質問した事件も、まさにそれなんだ。現代日本における最高の実力者といわれる人を背景にして、その人の肉親が会社の代表者となって活動している。信用しますよ。ことにフィリピンの賠償問題なんていうのは、岸信介氏お得意の場なんだ。たいへんこの問題で問題を起こして、私もこれを予算委員会質問したこともある。そういう状態でこういう事件が起こった。すでに安倍という人の名前が出ている。私は知りませんけれども、この人がいま最高責任者として追及せられている。彼が、全然関係なかった、おれは名前を貸しただけだというようなことじゃ済まされないと思うのだ。その会社の代表取締役じゃありませんか。代表取締役なんというのは、印鑑でも偽造しなければ登記ができないはずです。ちゃんと登記されている以上は、彼がそれれに対する重要な関係者であることは明らかです。これに対して徹底的な追及をしなければ、政界の粛正——いま全学連の問題、われわれは彼らの行動に決して賛成しません。しかし、これはただこれを厳重に処罰するというようなことでおさまりません。学校の教育の問題もいろいろあるが、それ以上に、社会教育です。政治の混乱、腐敗、こういうことが若い者をかき立てる、そういうことに思いをいたすならば、諸君がおそれる全学連を静める意味においても、こういう汚職があったら徹底的に追及をするという心がまえをしなければいかぬと思うのですけれども法務大臣、いまそう言えば、おれは検察官は一向指図しないのだ、こう言うて逃げられる。そうすると、しかたがないから、ここに検事総長を呼びますと言うと、あなたはこの委員会に検事総長が出ることを研究すると言うのだが、さっきは賛成するようなことを言って、刑事局長があれすると研究する、こう変わったのですが、研究することは必要と思いますが、しかし、反対せずしてもらいたいのだ。答弁してください。
  145. 赤間文三

    赤間国務大臣 検事総長を呼ぶかどうかは、前例が非常に少ないようでありますし、特に検察事務についてとやかくいろいろな方面から言うことが、いい場面もあれば悪い場面もあるかもしれません。前例が少ないために、この問題につきましては十分ひとつ研究をして御返事をすることの御了解をお願いします。
  146. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 委員長質問を求めませんから、意見を申し述べてこれで終わります。  この問題、ただいま私取り上げましたように、きわめて重大な問題ですが、政府答弁には私は納得がいたしかねます。特にいまの検事総長の問題につきましても、法務大臣の御答弁はいま三回にわたって変更されております。最初は、検事総長が出席することには反対をいたしませんと答弁された。二回目は、そういう前例がないそうでございます。第三回目は、そういう例は少ないそうであります、あるけれども少ないそうであります。すこれは一体どれがほんとうか、私は少なくともわからない。(赤間国務大臣「最後のがほんとうです。」と呼ぶ)法務大臣、それは不規則発言でお話しにならぬほうがいい。正式にやはり——あなたも参議院議員ですし、そして委員長もやられた方ですから、まさか不規則発言で、やじ馬根性で御答弁になるのじゃないだろうと思うから、はっきり御答弁になったほうがいいと思いますけれども、私はこの法務委員長でしばらくぶりで発言するのですから、あまり強いことを言っておりませんよ。しかし、あなたがそういう不規則発言でおやりになるなら、まだもう一時間ぐらいやりましょうか。やってもよろしいですけれども、しかし、少なくともそういう点は私は言いませんけれども、そういう答弁においても正確を欠く答弁をしておられる。しかも、先ほどからの御答弁を伺っておりますと、私はたいへん納得のできない点が少なくありません。これほど重大な問題について、私はもっともっと今後の委員会において明らかにしてまいりたいと思います。特に、これについては検察当局がどのようにお調べになるか、その状況によっては、私はこの点をもう少し質問をさしていただきたいと考えております。  それからもう一点の重要な点は、これは真偽のほどは私はわかりませんけれども、えてしてこういう詐欺事件の場合で金銭関係が伴っているような場合においては、初め刑事事件で告訴があったものが、だんだん日にちがたつうちにこれが民事のような扱いになって、最後は当事者間で和解をさして話がまとまるという、そういうふうな傾向も少なくないように聞いております。私は今度の事件に関しては、単にその和解だけで解決のできる問題ではないと思います。これは国際問題が関連をいたしておりますから、こういう点はやはりはっきりしておいていただきませんと、刑事事件である限りにおいては、たとえば告訴人が告訴をいたさなくとも、こういう事件については詐欺容疑として検察当局が取り上げることもできるわけであります。  こういう点等を含みまして、今後検察当局がどのような捜査をされるか。並びに先ほどの御答弁ではきわめて私は不満足でございますので、これらの点については発言を留保いたしまして、きょうは意見だけを申し述べまして、私の発言を終わらしていただきます。
  147. 永田亮一

    永田委員長 猪俣浩三君。
  148. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 関連質問で時間をとりましたから、本質問はなるべく簡単にいたします。これは入国管理局長にお尋ねします。  二、三日前の新聞には大々的に、台湾人の柳という人を強制送還をやられた、これを奪還せんとして羽田が血に塗れたという記事が出ておりました。私がお尋ねしたいのは、柳という人物は正式に日本に入国してきて、そうしてわが国の東京教育大学に入学して、これを卒業して修士の課程までも終了した人間であります。ところが、パスポートの期限が切れておったことは事実なんであります。ただし、滞在期限が切れたが、期限更新の手続をしなかったのも、彼がいまの台湾の中国政権を認めないことから起こってきたことであります。  これはあとといたしまして、この送還のしかたがはなはだ乱暴であると思うのです。私は先般来政治亡命についての質問をやっている際にこういうことが起こってきたので、一体いつこの柳を入管では強制逮捕せられて、いつこれを送還する手続をとられたか、それをひとつ御説明願います。
  149. 中川進

    ○中川(進)政府委員 お答えいたします。  この柳文郷なる者は、日本へ参りましたのは昭和三十七年十一月でございまして、日本で学校へ行くという留学生ビザを持って参ったのであります。先生お述べになりましたごとく、四十二年の三月東京教育大学の修士課程を終了いしました。そこで、四十二年の四月二十日以降は日本における滞在の根拠を失って、不法滞在になっておるのでございます。私どもといたしましては、四十三年の二月十二日に、法務省内における裁決諮問委員会で退去というようにきめまして、大臣の裁決を得、三月二十六日に退去命令を発して、三月二十七日に羽田から送還した、こういうことになっております。
  150. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 昭和四十三年三月二十六日の午後四時後ごろ申請人のこの柳の身柄を拘束した、そうして午後六時ごろ関係者にその旨の通知をやった。この間二時間。そうしたところがもうすぐ、翌日の夜中午前零時ごろの飛行機で台湾に帰す、そのときにはすでに、もう計画を立てて、そうして午前九時半の飛行機に乗せてしまった。こういう実に間髪を入れざる送還のしかたをやった。  この人は台湾独立運動をやっている人でありますが、台湾には独立運動なんかやる者に対してどういう処罰の法規があるかを入管では御検討なさったのだろうか。
  151. 中川進

    ○中川(進)政府委員 まず最初の経過の点でございますが、確かに本人が横浜の収容所に出頭いたしましたのは三月二十六日の午後おそくでございます。しかしこれは本人がたまたまおそく参ったからでございまして、私どもといたしましてはむしろ朝、通例は午前十時か十一時までに来るのが通例でございます。私どもといたしましても、朝早くあらわれることを実は期待しておったのでございます。もっとも何時に出頭しろとまでは申しておりませんので、本人が特別手続を怠ったとかなんとかいう問題はございませんが、それが結果的には、本人があらわれてしかも収容して、そして退去強制を申し渡して実際に出発するまでの時間というものが非常に短くなったということななったのでございます。  それから、台湾に帰って本人にいかなる運命が待っておるかということは、私どもといたしましても最も当初から心配しておるところでございます。もちろん私どもといたしましては、入国管理令というものの執行をまかされております関係から、この管理令に違反する者に対しては、あくまでその違反行為を排除するということを行なうべき義務がございます。しかしながら何ぶんにも、違反を犯している人もみんな人の子でございまして、私どもといたしましてはあくまでその処理はできるだけ人道的な見地に従いまして、それにもとらないようにつとめておるのでございますが、それとともにまた、人道にもとらない限りはできるだけ法に違反した状態は排除するということにつとめるのが義務かと存じます。この柳文郷氏につきましても、この点はなはだ私どもといたしましては心配でございましたので、台湾に帰りましても万一その人の生命身体の自由というものが侵されることがないようにということについて、十分な確信を持つべく努力をしたのでございます。  実は昨年の暮れに、同じ台湾の独立運動を日本でやっております郭錫麟という男がございまして、これを帰しました。これも今回とほぼ同じように退去強制として帰したのでございます。そこでこの人が一体台湾に帰りましたあとでどういうような運命にあうかということをわれわれは刮目して見ておったのでございます。ところがこの人は、御承知のごとく、数年前に日本へ参りまして、そして今回と同じような退去強制を受けて、台湾へ帰れば自分は銃殺される、殺されるということをおそれまして、鹿児島の沖で送還船から飛び込んだ。台湾に帰るくらいなら日本の水で死にたいというので水の中へ飛び込んだ。ところが幸か不幸か水泳ができましたので鹿児島に泳ぎ着いて、もう一ぺん日本へ帰ってきてまたつかまったというような、私どもから言えば筋金入りの運動者でございます。その人を帰してみましたところが、いま申しましたように、台湾へ帰ったあとは再び、郭錫麟でございますが、かくしゃくとして、まあその年でもございませんが、とにかく元気にやっておる、こういう状態でございます。  それからまた、中華民国政府とも、私ども在京の大使館を通じましていろいろ彼らの意向も聞いてみたのでございますが、陳大使みずから私どものところに参りまして、台湾独立運動に従事したからといって、これを受け入れた後における台湾政府の扱いが非人道的であるとか身体生命の自由を奪うということは絶対あり得ない、これは私が自分で保障するということを大使も申しますし、それから大使館からも入国管理局にあてまして一書を入れまして同様の趣旨を述べております。すなわち、台湾独立運動に従事した人といえども帰った後はその身体生命の自由は侵さないということを申し述べております。  そのようないろいろの保障、それからまた昨年に帰りました私どもから見ました場合におけるこの筋金入りと称される人の処遇等の実例、そういうものを勘案いたしました結果、本人を帰しましても生命身体の自由を侵されない、しかも日本におきましてはとにかく入管令違反行為の不法滞在者が一人減るということでございましたので送ったのでございまして、現に本人が台湾に一昨日でございますか飛行場へ着きましたときは、ちゃんと中国大使館が確約いたしましたごとく、両親がここに出迎えまして、そしてちゃんと両親の手に本人は渡しておるのでございます。そういうわけでございますから、特に非人道的な扱いをしたということにはならない、かように考えております。
  152. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 私はただいまのあなたのその説明についても疑念があるのです。台湾には懲治反乱条令というものがあって、その第二条第一項によればみんな死刑になる事案です。こちらと妙な約束をして引き取った状態はそうやっておるかもしれぬが、いつかはこういう裁判にかけるのじゃないかと思われる。あなた方は彼らの行為をどれだけ一体調査なさっておるかわからぬのだが、彼らも外交辞令をもってやった以上は自分は当分そういう仮装をやるかもしれぬけれども、とにかくりっぱな法律違反なんだ。かってにそれを外交官がこの法律を適用しないなんと言ったっても、司法府が検挙すればこの懲治反乱条令によれば明白に死刑される規定になっている。そこに非常に危険性がある。私は先般金東希という朝鮮の脱走兵士を北朝鮮に送られたことについて入国管理局の決断をほめたばっかりだ。はなはだ今度は遺憾に思うのです。というのは、これは実は行政処分取り消しの訴えが弁護士から起こされて、そして引き続いて行政処分執行停止決定申請というものも東京地方裁判所へ出されている。ただし二十六日の午後の話で、そうして夜中に送還が決定したという形のものだから、二十七日にこれを急いで出したわけです。聞きたいことは、わざわざ裁判所から裁判長があなたに連絡をとって、いまこういう訴訟が起こっているからこの審決がなされるまでは待てないかというて、裁判長から入国管理局に、裁判の出ていること、ただ早朝であるためにまだ合議ができないが、問もなくどちらかに決定するからそれまで待って送還してもらいたいというふうにお願いというか要請というかしてあるにかかわらず、まるでそれを無視して送還してしもうた。そうして羽田においてまことにむごたらしいことが起こってきた。この点とにかく日本の裁判制度というものは相当発達している。それは外国人といえども裁判に救済を頼んで、裁判所が受理して審議の結果まで待ってから送還してもおそくないのではないか。裁判所からそういう勧告があるにもかかわらず無理やり乗せてしまった。一体台湾政府がそんなに強く要求したのですか。日本の裁判所の勧告よりも外国政府の要求のほうが大切なのですか。一日か二日裁判所の決定が出るまでの間待たせて日本の国益に何か反するのですか。日本の裁判所を尊重することが国益じゃありませんか。台湾政府のどういう要請があったのです。裁判所の勧告まで押し切って送ったということについては、どういう要請があったのですか。それほど強く要請する人間を台湾が引き取った以上はただで済ませるはずははないじゃありませんか。その点はどうなのですか。
  153. 中川進

    ○中川(進)政府委員 ただいまの裁判所からの訴訟受理の通報でございますが、これは正確には十時二十分に私どものところに連絡があったのでございますが、飛行機はすでに九時二十分にたってしまいました関係で、この裁判所からのそういう通知が間に合わなかったということでございます。   〔委員長退席、大竹委員長代理着席〕 それからその次に、なぜそんなに急いだかという点でございますが、これは先生も御記憶だと思いますが、昨年の八月の下旬にやはり同じような、張と林という人でございますが、この人に対しまして退去強制をいたしました際に、この台湾独立運動に従事する青年たちが東京入国管理事務所の前でハンストをやりまして非常な騒ぎになったことがございます。結局、本件はそういうようなこともあり、また実体的には裁判所から送還の執行停止決定が出ましたので、いまでもそのままになっておりますが、そういうようなことが起こらないということを私どもとしては希望いたしましたので、このように迅速な処置をとった次第でございます。
  154. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 前にそういうふうに裁判所の執行停止が出ておったので、そこであなた方は、今度はそういう裁判所の介入を許さぬような時間をはかって、そうして手続が間に合わぬようにして送還をしなければならない理由は一体どこにあるのですか。私はそれを聞いているのです。前に裁判所がそういうふうに介入してきて執行停止になった例があるのだから、今度はそれを拒否する意味において四時に逮捕して、そうして翌日にもう送ってしまう。それでは裁判所の判断を仰ぐ時間がないですよ。あなた方はまた裁判所が介入しては困るということでこういう送還の手続をやられた、これは私ははなはだ遺憾なことだと思う。なぜ日本の裁判をおそれるのか、はなはだ奇怪だと思うのです。その理由はどういうわけですか。
  155. 中川進

    ○中川(進)政府委員 私どもは決して裁判をおそれるとか、それから裁判所を忌避するとかいうつもりはございません。ただ偶然に飛行機が早くたちまして、裁判所が決定までまいりませんが、そういう訴えを受理したという通報をいただきましたのが飛行機がたったあとになっただけでございます。
  156. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 私は難民問題をずっと連続してもっと審議したいと思いますが、とにかくきょうはお昼抜きでやっておりまして、ほかの委員の方の質問もあるので留保いたしまして、これ以上の私の長広舌はやめて、これで終わりたいと思います。
  157. 大竹太郎

    ○大竹委員長代理 岡沢完治君。
  158. 岡沢完治

    岡沢委員 いまの猪俣委員質問に関連するのでございますが、柳事件について若干補足して聞いてみたいと思います。この事件で十名ほど現行犯逮捕で、航空法違反、公務執行妨害に問われておるようでございますが、その方々のその後の措置はどうなっておりますか。
  159. 中川進

    ○中川(進)政府委員 その点は警察なり刑事局のほうでございまして、私のほうでは、現在どうなっておるか不明でございます。
  160. 岡沢完治

    岡沢委員 尊敬する中川局長のおことばでありますけれども、私はこの事件できょう質問するということを通告してあるわけです。幾ら関係当局が警察、検察庁であろうとも、やはり柳の送還に関連して起こった事件であるのに、入管の方々は全然無関心である。私は非常に無責任なというか、誠意について遺憾な感じがいたします。私が陳情を受けました範囲では、この柳さんは飛行機に乗るときに舌をかんだそうでありますが、いま写真を見せられましたので、お元気なようで安心しましたけれども、そういう事実を知っておられるのかどうか。また飛行機の乗員名簿には載ってなかったというふうに聞いておりますが、その辺を明らかにしていただきたいと思います。
  161. 中川進

    ○中川(進)政府委員 最初の点でございますが、羽田で騒擾を起こしました十名が現在どこでどうしておるかということは、さっそく調査いたしましてお答えさせていただきます。それから第二の、飛行機の乗員名簿にこの人たちが載っておったかどうかも実は私存じませんので、調査いたしますからしばらく御猶予願いたいと思います。
  162. 岡沢完治

    岡沢委員 舌の点はどうですか。
  163. 中川進

    ○中川(進)政府委員 失礼いたしました。舌をかみ切ったとかかみ切ろうとしたということは私は何かで聞きましたけれどもほんとうにそうであったかどうかということはまだ確認しておりません。
  164. 岡沢完治

    岡沢委員 ほんとうに私は言いたくありませんけれども、あまりにも誠意がないのじゃないか。異国の日本で勉強している人に対して、いかにある程度の法律違反の行為があるにしましても、私はその態度はどうしても納得できない。しかも、局長は外交官の御出身であるのに、台湾の方々に対してこういう態度をとるとはどういうわけか。台湾でなくても国際関係を考えた場合に、人間としても私はどうも妥当な行為だという感じがいたしません。ちょうちょうすることは避けますけれども、アメリカの人に対する態度が卑屈過ぎることについては、先ほど野戦病院事件に関連して与党の濱野委員からも御指摘がございました。また米軍の軍人の妻の交通事故に対する処置の不適切についても、予算委員会また本委員会においても指摘されたところであります。私は、アメリカあるいは白人に対しては非常に卑屈な態度をとる、一方、同じアジア、アフリカの人々、むしろ台湾とか朝鮮とか、日本の歴史において迷惑をかけた人々に対しては過酷過ぎるのじゃないかということを、私の弁護士としての実務を通じ、また国会に出させていただいた以後の入管の態度を通じて痛感するのです。やはりそういう点はあくまでも公平に、しかも国際的な道義とヒューマニズムに基づいた処置をおとりになるべきじゃないか。法を厳正に守るということは私も人に負けない態度で要求したいとは思いますけれども、しかしそれは必ずしも人間性に反してまでとか、あるいは不公平な態度をとれというわけでは決してないわけなので、いまの私の質問に対していずれも全く誠意のある御回答がないわけでございます。  そこで、これはまだおとといの事件であります。しかも一方、本人は死ぬか生きるか、結果として助かったようでございますけれども、気持ちとしては、おそらく殺されるかもしれぬという気持ちだったと思います。またそれを助けに行った者も逮捕、勾留されておる。こういう事実について一切何の関心も示しておられない。われわれが質問すると予告をしているのに、一切それの調査もしていないと言っておられる。法務大臣おられますが、法務大臣だって検察の最高責任者でありますから、法務行政の責任者でありますから御存じであろうと思います。刑事局長がおられませんのでこれ以上追及いたしませんけれども、たとえばアメリカの軍人の事件であればもっともっと慎重なあるいは執拗過ぎるくらいの誠意を示されるのに、こういう場合に全く無関心だということについては私は非常に残念な感じがいたします。先ほど本人の身柄について、中華民国の大使の身柄確保についての確認を得たということをおっしゃいましたが、具体的に、いつ、どこで、どういう方法で確認されたのか、特にそれは一般的な問題なのか、この柳さんに関連して大使に確認をとられたのか、明らかにしていただきたいと思います。
  165. 中川進

    ○中川(進)政府委員 私どもといたしましては、入国管理行政を行ないますについて特にアメリカ人だからどう、台湾人ないし朝鮮人だからどうということは、そういう差別はしておらないつもりでございます。できるだけ厳正に、かつ公平に法を執行させていただいておるつもりでございます。ただ、もし私どものやり方で、実際はそうじゃない、けしからぬじゃないかということがございましたならば幾らでも御叱正をいただきまして、私どもが間違っておりましたならば訂正させていただき、またこの法の運用につきましては今後とも十分慎重にやっていきたい、かように存じます。  それから、最後の点でございますが、ちょっといま日取りは忘れましたが、二月の初旬でありましたか、これも必要でございましたら日時は帰りまして調べますが、二月の上旬に陳大使が私のところへ参りまして、そうしてただいま申しましたように、台湾独立運動に携わったということだけで国民政府はこれに対して、生命、身体に危害を加えることはしないから、オーバーステーになっている者はどうぞ安心して帰してくれという話がございました。それから、特定の柳文郷個人をさして帰せとか、そのために柳文郷の命は保証したとか、そういう個人をさしてどうこうという話は全然ございませんでした。これは私どものほうでいわば自主的に——いまオーバーステーになっているたくさんの人がおります。この台湾独立関係でもオーバーステーになっている人が十五、六名おりますが、その中で最も、何と申しますか係累がない、つまり妻子がおりません、そういうふうな身柄であるというような点を考慮いたしまして、たまたまこの人を今度送り帰したのでございまして、特に中国大使からあれを帰してくれという指名があったということは全然ございません。
  166. 岡沢完治

    岡沢委員 いまのその陳大使の確認の話は結局は話なんですね。文書の覚え書きか何かそういうものが交換されたかどうか。拘束力について、われわれのほうで、たとえば台湾政府にもしこの柳さんが将来訴追されるというような場合に、大使のお約束は彼の弁護資料になるのかどうかという、その辺の問題が一つと、それから先ほどの写真でございます。これは非常にうれしいニュースでありますが、これは間違いなしに彼の写真であるか、入手経路等について明らかにしていただきたいと思います。
  167. 中川進

    ○中川(進)政府委員 先ほどから申し上げますように、大使が私のところで確約したのみならず、書きものが入っておりまして、書きものは、もしなんでございましたら、私のオフィスにございますからいつでも持ってまいりますが、ちょっと日付をこれまたいま覚えておりませんが、大体二月の初めごろであったと思います。  それから次に、この写真の入手経路でございますが、きのう——おとといでしたか、中国の陳大使自体が持って帰りましたので……。
  168. 岡沢完治

    岡沢委員 時間の関係でこれで終わりますけれども、必要があれば質問を留保させていただき、今後また引き続いて場合によったらこの委員会で聞かしていただくということにして質問を終わります。
  169. 大竹太郎

    ○大竹委員長代理 中井徳次郎君。
  170. 中井徳次郎

    ○中井委員 だいぶん時間がたちまして、委員はじめ政府関係の皆さんに御迷惑をかけますが、簡単に三十分ばかりお尋ねをいたしたいと思います。公安調査庁は……。
  171. 大竹太郎

    ○大竹委員長代理 公安調査庁長官が見えております。
  172. 中井徳次郎

    ○中井委員 大臣が五十分に予算委員会ということでありますから、最初に大臣に伺っておきますが、公安調査庁と法務省との関係は、先ほどあなたは、検察庁に対しては一般的なことは言えるけれども、個々の指導はいたさない、こういうことでありましたが、その点については公安調査庁と法務大臣との関係はどんなふうでございますか。
  173. 赤間文三

    赤間国務大臣 公安調査庁と法務大臣との関係は、御承知のように公安調査庁は外局ではありますが、法務大臣の指揮監督に属するというので、その点は非常に検察庁なんかと趣を異にしている、かように考えております。
  174. 中井徳次郎

    ○中井委員 検察庁より公安調査庁というのは非常に政治的な要素が多いと思いまするから、ある意味におきましては具体的な件名その他事件については指揮監督をすることが大いにあり得る、こういうふうに了解してよろしゅうございますか。
  175. 赤間文三

    赤間国務大臣 いまお述べになりました、指揮監督が及ぶということであります。
  176. 中井徳次郎

    ○中井委員 実は具体的な件を中心に伺いたいのでありますが、去る二月の二十二日に三重県の地方公安調査局、こういうものがあるわけですね。この局員が県下の上野市というところに参りまして公安調査局の局員として行動をとりました件についてお尋ねをいたしたいのでありますが、その前に、大体公安調査局というのは局員がどれくらいおりまして、そうして各県にどういう配置になっておるか、ちょっと伺わしていただきたい。
  177. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 お答え申し上げます。  三重地方公安調査局といわれる役所は、局員の数は大体十五名前後ではないか——はっきり申し上げないで失礼でございますが、局長以下十五名前後ではないかと思っております。
  178. 中井徳次郎

    ○中井委員 公安調査庁は全体で定員は何名ですか。
  179. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 二千名余りでございまして、そのうち公安調査官というものは全体で千七百名です。
  180. 中井徳次郎

    ○中井委員 いまちょっと聞きまして、膨大な人員に驚きましたが、三重県にそういうものがありますと、それからすぐ東京につながるのか、あるいは中間で、名古屋と大阪とかいうものに中間の組織があるのかどうか、それを伺っておきたい。
  181. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 三重の地方公安調査局は、名古屋にございます公安調査局の管轄下に入っておりまして、それを経て私ども本庁のほうへ結んでいるというような関係になっております。
  182. 中井徳次郎

    ○中井委員 事件はさっき申しましたように、去る二月の二十二日に、あなたの指揮下にありまするところの三重の公安調査局の第一課の赤工彰宏外三名、これが上野市の市役所に行きまして——上野市の市役所といいますのは非常に広いモダンな建物であります。ありまするのは、市民に直結いたします税務課から、戸籍から建築、土木そういうものが全部一堂に会している。そのまん中に参りまして書類を広げて調査を始めた。市民がたくさん出入りいたしますから、一体あなた方何を調べているのだということになったのであります。そういたしましたら、公安調査局から来て、破壊活動防止法に従って公安調査庁長官の命令で調べておるのだ。何だ、戸籍を調べている。そして戸籍だけならいいのですが、戸籍を調べて、その名簿を見ますると、赤ん坊だとか——公民権がある、ないどころじゃありません、親戚とかそういうものを全部人の見ている前で調べているということになりまして、これはたいへんじゃないかというので庁内大騒ぎになった。この事件局長さんもすでに御案内だと思いますが、それに対して局としてはどういう処理をされたのか。それをまず伺っておきたいと思います。
  183. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 お答え申し上げます。  実は、私この報告を最初に聞きましたのは、二月の二十三日の事件があってから数日後でありまして、ごく簡単な報告が参りました。そこで本庁におきまして総務部長に命じまして、事件の真相を至急に調査するようにということを命じたわけでございます。たいへん申しわけない次第でありますが、取りまぎれて調査の終了がおくれておりますので、大体の筋は承知しておりますが、これからいろいろ御質問がございましてお答えのできないような点がございましたならば、なお後日さらに調査を進めましてお答え申し上げたい、かように考えております。
  184. 中井徳次郎

    ○中井委員 いま、まだ何も具体的な報告はないのですか。
  185. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 ごく概括的なことを、報告を聞いておる程度でございます。
  186. 中井徳次郎

    ○中井委員 その報告に、公安調査庁は悪かったと書いてありましたか、どうですか。
  187. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 このたびの公安調査官の行動は違法な行為ではないというふうに考えておりまして、なお、事案の真相につきましてはいろいろこまかいこともあるだろうと思いますが、詳細な取り調べを待ってということで、まだ全体についてどうこうという措置は最終的にきめておりません。
  188. 中井徳次郎

    ○中井委員 驚くべきことでございまして、あなたはどうお考えになるか。たとえば、調べました人数は百六名でありますが、その中に社会党員がたくさん入っている。また部落解放関係の同盟の人たちも入っておる。それから二十年前の——二十年前ですよ、二十年前の共産党員も入っています。まことにどうも調査がずさんで、しかも厚かましくて、何かおろかしくて、ずうずうしくて、頭が悪くて、というふうな、これの連続なのです。それで調査の途中で一ぺん問題になって、市長室へ、その人たちを市会議長その他の人たちでいって連れてまいりまして、市長の目の前で、たいへん申しわけのないことをいたしました、あやまりますと言って一礼出している。これは事実です。私は写真を持っている。それがあなたのところへ報告がこずに、それで合法的であったとは、一体何ごとでございますか、これは。市長は別に共産党ではありませんし、社会党でもありません。社会党でもないと私はあえて言いますが、それが市長さえ発言をしております、こんなこと調べてどうするのです、あんたは、と。それで、まことに相済みません、と言っておって、本部への報告は違法でなかったとは、一体どういうことですか。
  189. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 この調査の筋は、日本共産党関係の調査でありまして、日本共産党員である疑いのある方々につきまして、個人確定のためにいろいろな調査をした。この疑いと申しましてもいろいろな程度のものもあると思いますが、しかし、その疑いについては何らかの根拠がある、こういう疑いがある方につきましては、その後も引き続き党員として御活動になっているかどうかというようなところまで、だんだん調べていくわけでございます。あるいはこれはかつては党員ではあったが、その後離脱されているような点に帰着する場合もある。しかし、三重地方公安調査局で調べましたのは、一応相当な根拠をもって日本共産党員であるという容疑のある方につきまして、その名前のとおりの人物がいるかいないかという個人確定のための調査をやったということでございます。ところが、たまたまその調査をするために住民台帳を閲覧いたしまして、本人の本籍とか、住所とか、氏名とか、年齢、家族などを書いてあることを書き写しておった。これは家族のことがたいへん問題になっておるようでございますが、やはりこの調査のためには、その一応の家族関係ということも承知するということは、これは行き過ぎたことでもないのじゃないだろうかと考えております。家族関係自体を調査の対象としてどうこうというのではなくて、あくまでその個人の確定のための調査である。それがだいぶほかの一般の方の目についたようでございまして、七十人ほどの方が押しかけてまいりまして、この調査官を取り囲んでいろいろと抗議される。張籠という局長がこれを聞きまして、現場へまいりましていろいろと弁明し、話し合いを進める。なかなか話し合いがつかないというので、事態をおさめるために張籠局長が何かわび状のようなものを書いたということになっておりますが、この張籠局長がはたしてどういう動機からそういうようなわび状を公務員として相手方に出したのかということの当否につきましても、厳重に調査を進めているようなわけでありまして、聞くところによりますと、どうも真意でそういうわび状を書いたのではない、これは事態を何といってもまるくおさめたいというようなつもりで書いたのだというようなことを本人が申しているというようなことを聞き及んでいるわけでございます。
  190. 中井徳次郎

    ○中井委員 どうもあなたのところまで、東京まで届く間に名古屋でひっかかったり何かして、それはだいぶゆがめられています。それから私は、共産党を調べるということに社会党の立場から賛成じゃない。賛成じゃないが、百歩も二百歩も譲って、あなた方がそれをやっているというなら、そのことについても問答がありますよ。最初来た連中は、共産党が破防法適用の団体であるというようなことを言って、だんだんそのうちにそのおそれがあるとかなんとかいうことに言い直している。ずっとありますよ、五時間、六時間。それにいたしましても、百歩も二百歩も譲っても、そんなに大きな広場の中にがやがやと来て、そんなことを調査をして、第一あなた方のほんとうの目的の実効があがっていると思っているんですかということが一つ。  それからあなたの答弁の中で、私は聞き捨てならぬことを聞いたのですが、かつてそういうものにあった人を調べておる。それには根拠がある。そのとおりでしょう。具体的に言うと、私のごく近くにも、そういう人があるわけです。おそらく二十年前だな。それをいまもう一ぺんチェックをするということは、一体二十年間公安調査局というのは何もしなかった。その人物について、社会党のれっきとした党員として、県本部の執行委員を長年やっておりますし、明々白々で、地方新聞なりローカルの三重版というものを見れば、朝日、毎日、どんどん載っている人物です。それを何調べるんですか、わざわざ市役所まで来て。ですから、市民はそういうふうには受け取っておりません。これは中井代議士に対するいやがらせじゃないか。あの人は去年十一月にソ連へ行って、社会党の代表で何か仕事をしてきたから、あの人も少しそういうふうになった。共産党に入ったのかもしれぬ。近所の者から調べてみようということじゃないかというふうな話まで出ておる。よろしゅうございますか。そういうふうなことについて、あなたどう思いますか。二十年間ほうっておいた。私ども社会党は、党員になりますためには、その前に自民党の党員であった人、共産党の党員であった人、そういう人については、統制委員会というものにちゃんとかけて、東京まで書類をあげて、そして党籍を与えております。何も共産党だけじゃありません。自民党だってほかの党だって、みんなそれをやっておるわけです。そういうことも知らずに、二十年前の書類——二十年前の書類ということにつきましては、もっと言いましょう。その男は昔赤間さんの御出身の大阪にあった天王寺師範におりまして、いまのちょうど全学連みたいなものです。昔の東大の新人会みたいなもの。あなた、吉河さんも昔入っておった。そういうところに一、二年おりまして、それから郷里に引き上げてきて、社会党へ入って十数年。確かに二十年前には、占領時代にはそういうことがあったでしょう。それを私は否定はしません。しかし、それを二十年もほっておくという。それで二千人もたくさん人を使うて、三重県に十五人の人を置いて、何しておるんですか。そんなのは人を一人も使わずに、わしに電話かけてみなさい。すぐに返事してあげる。何をしておるんですか、一体公安調査庁は。私は、それについて非常な不愉快さを感じるのです。そんなことで、公安調査庁というものをこしらえて何の役に立っているか。じゃましておるだけだ。日本の民主化のじゃまをあなた方はしておるだけだ、こう言わざるを得ない。何をしておるか、一向わけがわかりやしない。どうです。あなた、それで、下から出てきた書類は、悪いと書いてないとは一体どういうことですか。こんなもの市民投票にでもしてください。九十五対三くらいで公安調査庁の負けだ。だめですよ。どうです。
  191. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 この調査は、中井先生をいやがらせるようなそんな目的でやったことではございませんので、この点は了解願いたいと思います。  また、調査の内容につきまして、いろいろ御指摘があって、何をぼやぼやしておるかというようなおしかりを賜わったわけでございますが、具体的な内容につきまして、私まだ詳しい報告を聞いておりませんし、申し上げません。ただ、調査をするについては、やはり十分に確たる証拠のあるものを取り上げ、しかも一般社会に御迷惑のかからないようなやり方で進めていくということにつきましては、今後十分指導を厳重にしていきたいと考えております。
  192. 中井徳次郎

    ○中井委員 大臣、時間ですから最後に一つ。ぼくはきのう、これに関連する法律をずっと読んでみた。破壊活動防止法の三条にこういうことが書いてあるんだ。なかなかよくできているんだ。「この法律による規制及び規制のための調査は、第一条に規定する目的を達成するために必要な最小限度においてのみ行うべきであって、いやしくも権限を逸脱して、思想、信教、集会、結社、表現及び学問の自由並びに勤労者の団結し、及び団体行動をする権利その他日本国憲法の保障する国民の自由と権利を、不当に制限するようなことがあってはならない。」はっきり書いてあるのですね。明らかにこれに違反です。それだのに、長官のところへはまだそれの報告はない。ああ言えばこう言う、こう言えばああ言うで何とか時をかせごう。私はこの事件がありましたときに、すぐ質問しようと思ったのです。しかし、それはまあ立場もあるだろうからというので、一カ月しんぼうした。ちょうどもう一カ月。それできょうお尋ねすると、まだ調べてない。そういうことでは困ります。長官、どういうことですか。この事件はいま私が説明したことに絶対間違いありません。山の中の人口五、六万の都市の市役所で、モダンで、町で一番きれいなところへ喜んで出入りしている、そのまん中へ四人で出かけていって、こういうことをやらかす。調査の対象の中に、私の秘書が入っております。昔天王寺師範で、ちょっと全学連みたいなもので——終戦のどさくさです。そういうようなばかばかしいことを二十年もほうっておいて、調べるとは一体何を調べるのか。関西弁で言うと、ばかばかしうて問題にならぬ。大臣、これについてどうお考えになりますか。あなたのお考えだけを伺って、どうぞ行ってください。
  193. 赤間文三

    赤間国務大臣 破防法については、非常に重大な、非常に慎重な法律であり、われわれが破防法を扱うについては、いまお読みになりましたところ、この辺が一番大事なところじゃないかと私は考えております。いまお述べになりました三重地方の問題でありますが、これは実はいま初めて先生から聞きましたのですが、どうも調べるにしても何にしても、よくひとつ皆さん方の気持ちを悪くせぬように、しかもその調べも効果があがって——徒労になるような方法はあまり好ましくない。やはりこれは知恵を出して、効果があがって、みんなが気持ちよくされるというような方法をとくと考えてやるべきものであると、私は考えております。いまお述べになりましたようなやり方は、やり方としては非常に拙劣な(「違法だ」と呼ぶ者あり)——違法ですか、とにかく、いずれにしてもあまり好ましくないように思います。なお、まだ公安調査庁からも話は一つも聞いておりません。いずれひとつ、どういうことか、真相をすっかり聞いてみたいと思います。
  194. 中井徳次郎

    ○中井委員 いまのお話にも多少触れておって、ちょっと私の満足する答弁じゃありませんが、明らかに破防法第三条違反だと私は思います、そういう調査のしかたは。それをはっきりしてもらいたい。それから大臣、至急ひとつ公安調査庁から調査の資料をとって、この問題について判断を下してもらいたいというふうに思います。したがいまして、またあと一月ほどしましたら、この委員会はいつも金曜日だそうですが、二週間ばかり金曜日どうも差しつかえがございますので、四月十九日がちょうど金曜日であります。そのときにもう一度お尋ねします。あなた方調査してないというのだから、調査をされて……。それまで大臣に対する質問は、これで保留さしていただきます。どうもありがとうございました。  ちょっとあと長官に伺います。それであなた方がそういう調査を基礎にして、この法律の中に警察やら検察庁とも密接な関係をとって事務を進めていくということがございますが、アメリカとの関係はどういうふうになさっておりますか。
  195. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 アメリカとの関係はございません。
  196. 中井徳次郎

    ○中井委員 しかし、問い合わせか何かがありますと、警察や検察庁を通じてやる、こういうことになるのですか。直接のなにはございませんか、文書の交換その他。これは非常に重要なことですから、ちょっとお尋ねします。
  197. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 外国の機関の方が日本を訪問されますと、私どもの役所へ視察でお見えになることがございます。そういうようなときには外国の方ともいろいろお話し合いをしますが、外国との情報連絡ということは、外務省にしぼって、外務省を通じてやっております。また、私どもの調査は私どもの役所でやるわけでございまして、外国の機関とは関係ございません。
  198. 中井徳次郎

    ○中井委員 そういたしますと、報告書とかそういうものは、検察庁とか、警察庁とか、外務省とか、そういうところへは出されるわけですか。
  199. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 私どもの所管事務を進めていく上で私どもが収集し得た情報、調査資料というようなものは、関係治安機関その他から御照会があれば、差しつかえない限度で御回答します。
  200. 中井徳次郎

    ○中井委員 そこで三重県の公安調査局というのは非常に怠慢であって、二十年前の名簿をまだ持っていて、今度はこれを整理しようか、こういうことだということになりますと、私は勘ぐりたくなる事件一つ起こっておるのです。それはどういうことかと申しますと、社会党の県会議員を三期やりまして、この間の総選挙のときには社会党の公認候補として立候補して次点で落選をして、いま次の選挙の準備をいたしております山口茂夫という、現職は社会党の県本部の副委員長でございます。その男が先般来沖繩を見学したいというので申し込みました。その男が団長になって十二人申し込みました——十一人であったか二人であったか、あとの十一人は全部許可がおりましたが、その男だけノーというてまいりました。沖繩の民政府からノーというてきた。原因はどう考えてもわからない。その男は、かつて去年かおととしアメリカにも海外視察に行っておる。ホワイトハウスの中にも入って、県会議員団かなにかで入って話をして帰ってきております。沖繩にはだめだ。どうしてもわからないから、私はいまアメリカと交渉をしております。二、三日前のことでありますから、交渉しておりますが、どうもその男も、かつてレッドパージの時代に、三重県の教職員組合の委員長か副委員長をしておりまして、当人は共産党ではありませんけれども、共産党あるいはそのシンパの諸君がたくさんレッドパージにあいましたので、自分だけとどまるわけにいかないというて、えらい男気を出しましてやめた男なんです。そういう履歴はあります。それ以外にはないのです。だから、おそらく三重県の公安調査局にはそういう記事がそのまま二十年残っておって、その男がいま県会議員であるのか、代議士の候補に出た男であるのか、何であるのかはさっぱり書類はない。その事実だけが二十年あって、あれまだ共産党やでというようなことで置いてある、こう思わざるを得ないのですが、その辺のところについて、私はあまりにこっけいだから尋ねるのです。この事件は、全部非常にこっけいな事件です。御存じかもしれませんが、私ども伊賀の上野というところは、忍術の本場でございますが、日本の情報官がたくさん出ているのです。事実現在でも出ております。ですから、こういうしろうとみたいな、子供みたいなことを言われると、何というて話をしたらいいのか、あほらしくなって、あほらしくなったということが先に立って、そんな者に月給やるのがもったいなくてしょうがない。ほんとうに国費の乱費だと思うのです。ほんとうに国費の乱費で、二十年間何をしておったかと思います。どうですか、その辺のところについて。長官、これは私は責任者を処罰をしてもらわないとおさまらぬ。そんなのんきな二十年も昔の名簿をそのままほっておいて、生きているのか死んでいるのかわかりゃせんという。それで調べたのは百六名だそうでありますが、上野には私は共産党はもっとたくさんおると思います。社会党だって百人ぐらいおるのですから。そんなとんちんかんなことをしゃべって、共産党でない人を調べて、肝心の共産党はちょっとも入っていないということは、私は調べることそのものに反対ですけれども、百歩も二百歩も譲っても、なおかつこのようなばかげたことが、国家の機関の中で、しかも情報機関で行なわれているということについては、非常な私は、実は冗談のようにしておりますが、ふんまんの情を持っている。まことにどうもだらけきっているというような実は感じなんです。こんな公安調査庁なら、さっさとやめたほうがいい。幾ら国のためになるかどうかしらないが、吉河さん一人がんばったって、そんなものではだめだと思うのですが、いかがですか。
  201. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 ただいま御質問の山口茂夫という方でございますが、この方について、私どもは何か照合めいたことについて回答をしたという事実はございません。地方の公安局ですね、地方の出先がそういうようなことをいろいろ他の治安機関に照会で出すというようなことはしない。そういうことは本庁で取り扱うというたてまえになっておりまして、山口さんの件を私ども本庁で取扱った覚えはないのでございます。なお、ただいまのような御質問もございますので、この点も十分調査をしてお答えいたしたいと思います。先ほども申し上げましたが、二十年前の古傷を洗うような間の抜けた調査をいまやっているじゃないかと、たいへんきついおしかりでございますが、何か団体等規正令の届け出記録が残っていた、あるいはその他何らかの根拠でもあって、いろいろな方について個人確定の調査を進めたと申しますが、これはやはり容疑にはいろいろな種類がございまして、洗っていって消えていく容疑もございます、それからまた洗っていって濃くなる容疑もございまして、まだまだこの方を党員であると認定しているという筋合いのものではないと、私は聞いております。  なお、いろいろおしかりをこうむりました、そういうことについていろいろ注意の至らない点につきましては、今後十分注意して指導していきたいと考えております。
  202. 中井徳次郎

    ○中井委員 容疑なんということばを使うと、私はぞっとするのですがね。一体何事ですか。私がさっきから言うておるのは、百歩も二百歩も譲っても怠慢きわまるものであるということを言うておるわけだ。それは二十年もそのまま書類を置いておいたんですから、容疑もくそもない。そんなものは調べたら一分間でわかることなんです。それをものものしく持って歩いて何ですか。旅費かせぎですかね、県庁の所在地から一番遠いところだから、というふうなことでしょうかね。どこから考えても、何とも判断がつかないのですがね。その辺のところを私は四月十九日の金曜日にもう一ぺん大臣とあなたに来てもらって聞きますから、それまであなた厳格に調べておいてください。しかし、いずれにしましてもあまりばかばかしくて、こんなものでは、もう自民党の皆さんが考えても、公安調査庁なんというものは置く必要がないという判断になりはせぬかと私は思うのですがね。いかがですか。
  203. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 御指摘の点につきましては、十分に調査をいたしておくことにいたします。しかし、調査の内容を私のほうからこの席を通じまして積極的にすべて申し上げるというようなことが、あるいはできない方もあるかと考える筋もございますので、その点も十分お含みおき願いたいと考えます。大筋といたしまして、もっと能率的なことをやるようにというおしかりでございますが、この点につきましては十分に反省いたしたいと思います。
  204. 中井徳次郎

    ○中井委員 最後にですが、十九日にあらためて聞きますけれども、いまの答弁の中でも、まだあなた方不勉強ですね。根本は、調査をしにきた連中というものが、何も勉強しておらぬ。実際に反対だろうが、賛成だろうが、マルクスの本なんか読んでみたらどうだろうか。何も勉強しておらぬというふうなこと。あなたのその御答弁の中には、社会党の代議士の秘書のうちにもあるいは共産党の隠れた党員がおるかもしれぬ、それは自民党の秘書の中にもおるかもしれぬ、そういうことは昔からしょっちゅう言われていることでありますし、私ども、事実あるなしとは別に、そういう話があるということについては知らぬわけではありません。しかし、私が代議士をやっておって、自分の秘書に自民党の党員を使おうと、共産党の党員を使おうと、民社党の党員を使おうと、公明党の党員を使おうと、それは自由であります。しかしながら、まあ常識的に考えて、やはり社会党の党員、あるいは無所属で党籍はなくともそういう関係の人、こうなるのがあたりまえでありまして、あなたの心配されているようなレアケースなんというものは、それこそ高度のあなた方の活動範囲に属すべきものであって、そういうものをそんな市役所に来てわかるものじゃないのです。そうでしょう。ですから、私はどうも、どこから考えても、とんちんかんで、不勉強で、何ともならぬ集団、あなた自身が局長になってたいへん困っているのじゃないですか、部下にそんなやつがたくさんおるので。月給を取るだけで。そういうことをきょう私は申し上げておるのです。十九日までに詳細にひとつ調べていただいて、そうしてやはり悪いことは悪かったとはっきりさせませんと前進できませんし、あなた方の仕事をたとえ私が容認するにいたしましても、何ともとてもそんなメンバーでは問題にならぬ、こういうことでありますから、どうぞひとつ十九日までにもう一回精査をして、しっかりと答弁できるようにしていただきたいと思います。きょうはこれで終わります。
  205. 大竹太郎

    ○大竹委員長代理 本日は、これにて散会いたします。    午後三時五分散会