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1968-03-15 第58回国会 衆議院 法務委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年三月十五日(金曜日)    午後一時十六分開議  出席委員    委員長 永田 亮一君    理事 大竹 太郎君 理事 田中伊三次君    理事 高橋 英吉君 理事 濱野 清吾君    理事 猪俣 浩三君 理事 神近 市子君       大坪 保雄君    鍛冶 良作君       鯨岡 兵輔君    瀬戸山三男君       千葉 三郎君    中馬 辰猪君       中谷 鉄也君    岡沢 完治君       山田 太郎君  出席国務大臣         法 務 大 臣 赤間 文三君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君  出席政府委員         法務政務次官  進藤 一馬君         法務省刑事局長 川井 英良君         公安調査庁長官 吉河 光貞君         文部省大学学術         局長      宮地  茂君  委員外出席者         警察庁保安局防         犯少年課長   本庄  務君         警察庁警備局警         備課長     三井  脩君         専  門  員 福山 忠義君     ————————————— 三月十五日  委員綱島正興君、中村梅吉君、佐々木更三君及  び西村榮一辞任につき、その補欠として大坪  保雄君、鯨岡兵輔君、中谷鉄也君及び岡沢完治  君が議長指名委員に選任された。 同日  委員大坪保雄君、鯨岡兵輔君、中谷鉄也君及び  岡沢完治辞任につき、その補欠として綱島正  興君、中村梅吉君、佐々木更三君及び西村榮一  君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務行政及び検察行政に関する件      ————◇—————
  2. 永田亮一

    永田委員長 これより会議を開きます。  法務行政に関する件、検察行政に関する件、人権の擁護に関する件、及び裁判所の司法行政に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。中谷鉄也君。
  3. 中谷鉄也

    中谷委員 破防法の問題について、長官に若干の事実関係を明確にするためにお尋ねをいたしたいと思います。他の委員会においてもすでに質疑されておりますが、あらためて検討対象となっている三派全学連とは何か、この点についてお答えをいただきたいと思います。
  4. 吉河光貞

    吉河政府委員 お答え申し上げます。御質問の三派全学連と申しまするのは、いわゆる三派全学連といわれている俗称ございまして、正確には全学連でございます。これは秋山勝行君が本部の執行委員長としてその代表となっている全学連をさすものでございます。
  5. 中谷鉄也

    中谷委員 三派全学連、いわゆる三派とは具体的には何をさすのか、すでに常識と相なっておりまするけれども、事は破防法検討の問題にかかわりますので、お答えをいただきたいと思います。
  6. 吉河光貞

    吉河政府委員 いわゆる三派といわれるゆえんは、この全学連中核派社学同社青解放派という大きな三つ集団、実質的にこの集団によってつくられていると申しまするか、この集団指導されている組織である——もっともこの三派に限らないのでございまして、このほかにも小さな集団は入っております。社学同ML派、それから第四インター派というようなものも参加しておるわけでございますが、これらを入れれば、正確には五派と申しますか、諸派と申しますか、そのうち大きな集団は、ただいま申し上げました中核派、並びに社学同派社青解放派、この三つ集団でございます。
  7. 中谷鉄也

    中谷委員 あとでお尋ねをいたしますが、そうすると、破防法適用対象となっている構成員ですね、適用対象になる団体構成員とは、三派以外の、たとえば、長官がおあげになったML派なども構成員ということになるのかどうか。重ねてお尋ねいたしまするけれども、一体規制対象となるとして検討しようとしておる団体全学連である。そういたしますと、三派以外の全学連を構成しているその他の団体も、全学連構成員である以上、規制対象としての団体構成員として理解しておられるわけでございますか。
  8. 吉河光貞

    吉河政府委員 お答えいたします。全学連と申しますのは、全国学生自治会連合でございまして、これは諸大学における学生自治会というものを全国的に連合させた組織としまして、その構成単位学生自治会であるということが、この名前のとおりうたわれているわけでございます。ただいま申しましたように、いわゆる三派と称するものは、三派全学連という組織のもとにおきましては、構成員ではございません、構成単位ではございません。
  9. 中谷鉄也

    中谷委員 では重ねてお尋ねをいたします。同じ質問の繰り返しになりますけれども、これは破防法適用の御検討にあたりまして、団体範囲確定構成員範囲確定等の実務上きわめて困難な問題を伴うであろうということが想像されるわけですけれども、重ねて、現在破防法適用検討対象としておられる団体というのは、どんなものなのか、もう一度お答えいただきたいと思います。
  10. 吉河光貞

    吉河政府委員 調査並びに検討の具体的な内容について申し上げることはなるべく差し控えたいと思いますが、現在調査並びに検討対象といたしておりますのは、主として三派全学連でございます。
  11. 中谷鉄也

    中谷委員 長官に対するお尋ねがかなり続きますが、大臣がお見えになりましたので、質問を中断をいたしまして、大臣お尋ねをいたしたいと思います。  全学連三派に対する破防法適用可否等をめぐりまして、伝えられるところによりますと、関係閣僚の協議が行なわれるということでございます。なおそうしてその関係閣僚の中には文部大臣がお入りになっておられますが、この破防法適用検討をめぐっての関係閣僚会議の中で、文部大臣のお立場から、三派全学連に対する破防法適用についてはどのような意見をお持ちになっておられるか、この点についてお尋ねをいたしたいと思います。
  12. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 破防法適用に関する問題について関係閣僚懇談会が持たれるというふうなことは、新聞承知いたしておるわけであります。実はまだ私が参加しての閣僚懇談会というものは開かれたことはございませんので、そのように御了承願いたいと思います。
  13. 中谷鉄也

    中谷委員 近く開かれるというふうに新聞等が報じているわけです。したがいまして、破防法適用検討する問題について文部大臣としてはどのような御見解をお持ちかという点について、お答えをいただきたいと思います。
  14. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 この問題につきましては、他の委員会においても御質問がございまして、私の現在の心境をお話し申し上げたわけでございますが、御承知のように、だんだんと三派全学連行動が計画的に、また継続的に看過することのできない状態を呈してまいりましたので、各方面から破防法適用をすべし、こういったような御意見もかなり出ているように伺うのでございます。私は、所管仕事ではございませんが、学生に関する問題であることは間違いございませんので、このような御意見に対しまして深い関心を持っておりますが、私といたしましては、破防法適用の問題については慎重な態度をもってこれを検討していかなければならぬと思います。現在の三派全学連のあの状況を見ましたときには、破防法適用という声が起こるのも無理からぬ、こういうふうな実情ではないかと思うのでございますけれども、私の立場といたしましては、この問題につきましてはほんとうに慎重に検討を加えた上で結論を出したい、このように考えております。  同時に問題は、破防法適用もさることながら、現在のあの学生運動を逸脱しました暴力運動に対しまして、学生を扱っております大学、あるいはまたこれと関連を持っております文教行政を担当する者といたしまして、やはり教育の場におけるもっともっと積極的な努力とくふうがなされなければならぬ。少なくとも私の立場においてまず第一に考えなければならぬ問題は、この種の立場に立っての努力ということではないかと思うのでございまして、破防法の問題は十分慎重に考えたいと存じますけれども、私の直接所管をいたしておる方面における努力をさらに積極的に進めまして、大学当局の真剣なくふうと努力によりまして事態の改善を少しでもはかってまいりたい、こういうつもりで現におるわけでございます。そのように御了承願いたいと思います。
  15. 中谷鉄也

    中谷委員 重ねて御所見を承りたいと思います。大学当局のくふうと努力、そのようなものに対するところの文部大臣指導、こういう趣旨の御答弁があったと承りましたが、さらにその点を一歩進めて、どのような点についてどのように指導あるいは配慮されるか、これらの点についてお答えをいただきたいと思います。
  16. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 三派全学連のあのような、世間ではいわばトロツキストとかなんとか言っておるようでありますが、あのような行動に出るに至りました原因というものは、いろいろあろうかと思います。きわめて複雑であり、広範であり、多岐にわたるものと思うのでございますけれども、決して大学だけの問題でもない。また、政府においても十分考えなければならぬ点があるということは、当然だと思うのであります。しかし、この問題はかなり時間のかかる問題だと考えなければなりませんが、当面この問題を放任するということ、これは大学としては許されないことだと思いますので、それに対しまして、それぞれの大学実情もあろうかと思いますが、各大学当局責任を持って大学の適正な管理運営をはかっていく。同時に、三派全学連に所属しておる学生の数というものは、御承知のようにきわめて少ないのであります。大多数の学生からいえばほんの一握りの学生が参加しておるという状況でございますので、多くの学生たちがもっと自分たち学園という問題について関心を寄せ、その正常な姿における学園の確立ということに積極的に参加して、たとえば自治会等の場合におきましても、ただこれを傍観視することじゃなくて、積極的に自治会活動にも参加して、民主的に自治会が運営せられるような努力も必要ではないかと思います。同時に学校側といたしましても、つまらない不平不満が場合によっては大きなことになってくるということもございますので、やはり学生との接触ということについては、従来以上に一そう積極的にやってもらいたい。最近の状況を見ますと、かなり大学側もその点については努力してまいってきたように思うのでありますが、あれだけ大ぜいの学生をかかえていることでございますから、なかなか接触すると申しましても思うにまかせない点もあると思いますけれども、やはりだんだんと小さなグループをつくるとか、あるいはゼミナールというようなものを通じまして、学生との接触を深めていかなくちゃならぬということについては、かなり考えてもらえるようになったか、かようにも存じております。いずれにいたしましても、教育の場でございますから、人と人との接触ということが何と申しましても大切なことだと存じますので、私は大学側が、ただ暴力学生のために学園がじゅうりんせられることをそのままに放置するというようなことでなくて、勇断をもってこの学生諸君に対して対処する、しかも心の底にあたたかい愛情をもってこの人たちを導いていくというふうな気持ちで、もっともっと積極的にひとつ接触してもらって、あのような、少なくとも大学生としてあるまじき理性を忘れ、知性を忘れ、暴力行動に移っておるというふうな事態だけは、何とか食いとめるように努力してもらいたいものと存じております。
  17. 中谷鉄也

    中谷委員 大臣の御答弁の中に、いわゆる三派系全学連学生の最近の行為のよってきたる原因等はきわめて複雑なものがあって、直ちにいまその問題について答えを出すわけにはいかないという御答弁があったと承りました。こういう問題については、文部当局すでに十分御研究、御調査いただいていることは当然ですが、われわれの立場からいたしましても、たとえば従来、先鋭化した学生運動というのは、いわゆる発展途上国に見られる現象であって、いわゆる先進国においてこのような先鋭化した学生運動というものはあまり見られないんだということを聞き及んでおります。世界の状況を見てみますると、先進国において、ひとり日本のみならず、先鋭化した学生運動が起こってきている。さらにまた共産圏ポーランド等においても、そのような学生運動が起こっているということを聞き及んでおります。したがいまして、深く複雑な問題についてお掘り下げをいただけるようでありますけれども、当面、大臣として、なぜ安保の六〇年の際にも行なわれなかったような現在の三派全学連諸君行動というものが行なわれているのだろうか、これらの問題について、ひとつ大臣の現在における御所見を承れれば幸いだと思います。
  18. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 三派全学連学生たちは、私は、特別な政治的意図を持って、特別な政治的目標に向かって動いておるものと見るわけであります。私の見方が間違っているかどうか存じませんが、そういう方向に向かって進んでおる。その方向に向かって進む過程において、あらゆるきっかけ、あらゆる問題をとらえて運動活発化をはかっていく、勢力の拡大化をはかっていく。そしてまた一面においては、その目的を達成するために必要な素地をつくっていく。こういうふうな心持ちで指導せられておるものと、かように私は思うわけであります。すべての参加学生がそうであるということは言い切れないにしましても、これを指導しておる諸君方針目標というものは、その辺にあるのではないか、かように存じております。
  19. 中谷鉄也

    中谷委員 破防法適用条件等をめぐりまして、私といたしましても重大な関心を持ちました。そのような意味で、破防法制定当時の会議録等をも検討をしてまいりました。そういたしますと、当時の国務大臣であった木村大臣佐藤委員質問について、次のようなことをお答えになっておられます。「とかく学生は、私は常に言うのでありますが、レジスタンスを持っております。私も長年の間学生の生活をして来た一人であります。十分に学生の心理は把握しておるつもりであります。」「このレジスタンス気分がなければ、子供は発達しないのであります。」こういう趣旨の御答弁を私拝見したのでございます。そこで、先ほど大臣の御所見を承りましたけれども、世間に、三派系全学連諸君に対して、暴徒である、こういう評価がされております。なるほど端的に申しまして、暴力行為を行なっている暴徒であると言われてもやむを得ないような面がある。しかし同時に、三派系全学連諸君は、学生としての身分を持っている。といたしますと、文部大臣に私はお尋ねをいたしまするけれども、教育の場において、あたたかくというふうに先ほど御答弁をいただいたと思いますが、愛情をもってという御答弁があったと思いまするけれども、暴徒というきめつけをする前に、三派系全学連諸君学生としての身分を持っている。これに対して少なくとも教育の場に引き戻す、そのような努力をする。逆に言うと、暴徒というきめつけを単に安易にすることは、私は教育の放棄だ、このように考えますが、いかがでございましょうか。
  20. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 現に三派系の学生たち目標としておるところ、またその目標達成のためにいろいろのことをやっておるわけでございますが、そういう実態から申しますと、いわば治安の問題と申しますか、そういう面からこれを取り上げられてもやむを得ないようなことをやってきておる。そのままにしておけば、日本の社会の治安は乱れるばかりということにもなりましょう。また、そのために善良な市民にずいぶん迷惑もかけている。また、学内におきましても、不正不当な行為に出まして、自分大学のいわゆる大学自治の点においてこれを危うからしめる、脅かす、こういうような行動をしてはばからない。また、よその大学学生がやってきまして、そして他の大学の大掌管理さえ脅かしておるというような状況でございます。このような事態は、何としてもその存在を認めるわけにはいかないというような事態ではないかと思います。そういう意味において、治安関係の面からいろいろ対策が講ぜられることも、これはやむを得ないことと思うのでありますが、先ほど申しましたように、本来学生でございます。したがって、この学生たちがはたして大学の言いなりになるものかならぬものか、そこらの点は問題があるにせよ、大学側としましては、教育立場においてこれを学園に引き戻していく、そして正常な、理性ある、知性ある学生としての行動をやらせるようにする。不平不満はだれしもあることであります。レジスタンス気分も若い人にはもちろんあると思います。あると思いますけれども、それをいかにして表現するかというような問題になってくれば、現在のような姿において表現することは許されない。特にそれが大学生である場合においてはなおさらのことである、かように考えますので、私は破防法適用もさることながら、やはり文教立場において、もっともっと努力しなければならぬということを痛感しておるということを申し上げたわけでございます。
  21. 中谷鉄也

    中谷委員 次に、次のような点をお尋ねをいたします。破防法適用については、はたして破防法適用をするに足るほうに該当するのかどうかという検討の問題と、いま一つは、有力な意見として、破防法適用実効があるのかという問題が論議されております。そうして私は、実効があるかどうかという問題は、主として治安対策、ということばは私は必ずしも好みませんけれども、いわゆる治安の面から実効があるかどうかという点で検討されていると思うのです。大臣お尋ねをいたしたいのは、三派糸全学連団体が、破防法規制対象になったということ、そのことは教育の場に、大学の場に一そう混乱を巻き起こす危険性を包蔵していないだろうか。そのことは、実効という問題からいうと、教育面においてはむしろ非常にマイナスの面があらわれてくるのではないかということを私は一つ問題点として考えますが、大臣の御所見はいかがでございましょうか。
  22. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 破防法適用することが法律上正しいかどうかという問題は、これはもちろんそれぞれこれを所管せられるところにおいて十分検討した上で、法律上問題がないという事態を踏んまえての話というふうに私は思うのでございまして、それがなくて、ただやみくもに破防法適用するというふうなことを言うべきではないと私は思うのであります。  それから実効ありやいなや、あるいはまたその効果がプラス面に作用するかマイナスに作用するかというような問題は、大いに検討を要する問題ではないかと考えております。私は一がいには言えないと思いますけれども、この破防法適用することによって、三派全学連なるものがいかなる正体のものであるかというようなことは、少なくとも公の立場において明らかにせられるということはいえるだろうと思いますし、世間人たちも、これによって全学連に対する認識というものも高まってくるものと思うのであります。そういうことは、同時に、学内におきましても、やはり全学連というものに対してどう対処するかというふうなものの考えをきめる場合には、大いに参考になることではないか、かようにも思いますけれども、一面においてまた、あなたの御指摘になるような意味において、これがマイナスの作用をするということがあっては遺憾なことであります。そういうふうなことがいろいろございますので、私どもとしましては、この問題について慎重に検討したいと申し上げておるわけであります。
  23. 中谷鉄也

    中谷委員 政府委員の方に、最初に一点だけお尋ねをしておきたいと思います。いわゆる羽田事件以後関係学生停学退学等処分を受けた学生の数等について、突然の質問で恐縮でございますが、もし大学別人員処分内容等がおわかりのようでございましたら、この機会にお答えをいただきたいと思います。
  24. 宮地茂

    宮地政府委員 お尋ねでございますが、第一次羽田事件以後第二次羽田佐世保の問題、近くは成田空港、いろいろ学生の本分にもとるような暴力的行為をいたしております。これにつきましては、大学といたしましても非常に責任を感じまして、これらの処置を含めまして、学生問題についていろいろ学内検討をいたしております。ただ、お尋ねの数字的にこれを示せということでごさいますが、率直に申し上げまして、大学としてはほおかむりで逃げようという気はございませんが、結論を先に申し上げますと、数でお示しするだけの学校数なり学生数なりは出ておりません。もちろん退学停学、訓告、いろいろ方法はございますが、ごくわずかの学校でいたしておりますけれども、これもそれをもってすでに終わったということではございませんで、部分的な段階でございます。以上で、御質問お答えしたことにならないかと思いますが、御了承いただきたいと思います。
  25. 中谷鉄也

    中谷委員 大臣に、最後に一点だけお尋ねをいたしておきたいと思います。文教委員会等においてはすでに何回か質疑があった問題であろうと思いますが、いわゆる羽田事件等関連をいたしまして刑事処分、すなわち起訴の処分を受けた学生に対しての奨学金打ち切り可否をめぐりましてかなり論議されたわけでありますが、これらの問題についていろいろな見解はすでに出尽くしていると思いますが、はたして奨学金を打ち切るというようなことがいいのかどうか、いわゆる教育の問題としてどうなんだろうか、これらについて、ひとつ大臣お答えをいただきたいと思います。
  26. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 日本育英会奨学資金の問題だと存じますが、私は結論的に申し上げますれば、日本育英会のとった処置は間違っていない、このように存じております。日本育英会におきましては、御承知のように、それぞれ奨学金を出す場合、あるいはこれを停止する場合、廃止する場合というふうなことについて、一つの基準を持って仕事をいたしておるわけでありますが、その中に、やはり羽田あるいは佐世保等事件に出ました学生行動がどうあるかということになりますと、育英奨学金をむしろ停止するなりあるいは廃止するのに相当した行為である、こういうふうな判断が出てくるわけであります。御承知のように、この育英奨学金というものは、やはり国民の税金から出ておるわけであります。しかも、すべての学生に行き渡っておるものでもございません。この人なら学業もできるし、健康もいいし、素行もよろしい、そしてまたお気の毒ながら家計が豊かでない、こういうような人たちを選抜して奨学金を出しているわけでありますから、いわば非常に大事な資金なのであります。そういう大事な資金を出しておる人たちが、あのように警察取り締まり対象になってくる、はなはだしきに至っては破防法というような問題まで云々せられるような行為までやっておる。こういう学生に対して奨学金を出すということが、はたして育英奨学の金を最も有効に使ったことになるのかということになりますと、大いに異論があるわけであります。育英会といたしましては、その規定の定めるところによって、あるいは停止あるいは打ち切り方針をとり、そのことについて各大学意見も求めて、そして最終的に処分を決定する、こういう手続をとっておりますので、私は、育英会のとった手続はあれでよろしいのではないか、これをみだりにまたうやむやにしておくということは、一般学生に対する関係におきましても決して感心したことではない、かように考えております。
  27. 中谷鉄也

    中谷委員 育英会奨学金打ち切りについては、次のような意見が出されております。すなわち、刑事事件処分というのは、必ずしも確定的なものではない。そこで育英会奨学金打ち切りは、かりに教育の問題として考えるならば、大学処分に基づいて育英会奨学金打ち切りなどということの措置があってしかるべきではなかろうか。教育の場ということで考えるならば、かりに起訴されても大学処分対象にならない場合もあるだろうし、また起訴されなくても、大学においては当然退学処分というような処分をする場合もあるだろう。ことに本来、大学学生との関係において、教育の問題として見るならば、大学処分を見る中でその問題は処置さるべき問題であるという、要するに起訴されたイコール奨学金打ち切りいう措置についてのかなりの反論、批判があったように私は存じておりますが、この点についてはいかがでございましょうか。
  28. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私は、育英奨学金が、このお金を受ける学生に対して要求しておる倫理的要素というものは、かなり高いものだと思うのであります。したがって、あるいは刑事処分であるとかあるいは大学処分で、あるとかいうものと必ずしも一致しなくてもいいのじゃないかと思います。その人のやったことが客観的に見て育英奨学にふさわしくないというような行動をとりました場合には、これに対する刑事処分がどうであろうか、あるいは大学処分がどうなのかということと直接関連をさせて考える必要はない。もっと育英資金というものは、倫理性の高いものじゃないか、このように私は思うのであります。育英会にいたしましても、本来ならば個々のケースということになると思うのでありますが、関係する大学がたくさんあるのであります。したがって、関係する学生が大ぜいおりますので、育英会のほうで、こういう場合にはこうと、一つ方針といいますか、考え方を定めて、こういうやり方でやりたいと思うが、大学側意見はどうか、こういうふうに聞いておるわけであります。これは全国にわたっておる問題でもありますし、各大学で取り扱いがまちまちになってもおかしな結果になりますので、一応考え方をきめて、それに対する各大学意見を聞きたい、こういうふうな処置をとったわけであります。それに対する大学意見が出て、初めて育英会としてはそれぞれの処分を決定していく、こういう段取りのように伺っておりますので、これはあのような場合におきましては、やはりそういう処置をとらざるを得なかったのではなかろうかと私は聞いておるわけであります。
  29. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 ついでに、この際文部大臣に承りたいと思うのですが、先ほど来、承っておりますると、文部大臣としては破防法の問題よりも、対象学生でありますから、学生の善導ということが何よりも大事だとの御意見のようです。まことにそのとおりだと思います。文部大臣は、直接学生指導される身分ではございませんから、やはり学生ですから、学校を通じておやりにならなければならないと思います。そこで問題は、あなたのほうで十分指導できるように、学校のほうで条件が整っておるかどうか、これが私は問題だと思いますので、承りたいのです。  第一番に聞きたいことは、全学連全学連と言いますが、全学連というのは、学生の連合体という意味です。学生である以上、学籍がなければなりません。その学籍が十分調べられておりませんが、これが第一番。これは学校そのものから言いますと、私の学校の生徒は何月何日にここへ出てこういうことをした、こういうことを学校はりっぱに調べておりまするかどうか、この点をひとつ、まず聞きたいと思います。
  30. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 非常に数多くの学生を預かっておるわけでございますし、またわれわれの時代とは違いまして、いわゆるマスプロという時代であります。大学としましても、学部学科によって違いはあるかもしれませんが、学生の出欠を一々届けておるわけではないと思います。したがって、学生行動を全部常に把握しておるかどうかということになりますと、これはなかなかむずかしい問題でございます。その辺を大学学生課あたりでは苦労いたしておるところだ、かように存じております。何と申しましても、きちんきちんと日々の行動というようなものを把握するということは、いまの大学ではなかなか容易なことでない。ただ、いろいろな行動をやりました場合の警察その他との連絡は、きわめて緊密に行なわれておるようでございますから、出かけた学生がだれか、あるいは検挙された学生がだれだれと、そういうようなことになりますと、大学に一応わかっているものと心得ております。
  31. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 実際問題としては容易ではございますまいが、学校学生を預かったのですからね。容易でなくても、学籍がなければならない。第一に、その学籍に載っておる生徒が、どのような行動をしておるかは、困難であっても、私は調べなければいかぬと思う。またそれをやらなくては、学生の善導ということは不可能でございます。ですから、困難であっても、これはどうあってもやっておらなければならぬことでございまするから、少なくともこれだけの、何万人の者が出ておるか知りませんが、学籍のない者は、これはしかたがございませんが、学籍がありまする以上は、どこそこの学校の生徒はどれだけ、どこそこの学生が幾らおる、それが第一点。それからその学生がどういうことをしたか、これまでよく調べなければならぬ義務があると思う。また、あなた方はそれを通じて善導せられる以上は、それを調べておけと言われるだけの私は権利もあれば、責任もあるものだと思いますが、この点はいかがでございましょう。
  32. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 おっしゃるとおりだろうと思います。ただ、いま申しましたように、何万とおる学生のその日その日の行動を一々把握するということは、なかなか容易ではないということを申し上げただけのことでありますから、問題とせられておる学生たち行動については、各大学ともその状況を把握することに極力努力しておるわけであります。また、われわれとしましても、連絡することがあればどんどん連絡いたしますし、また学生のそういう行動について、大学に善処してほしいということをしょっちゅう言っておるわけであります。そういうことで、大学によりますと、問題を起こしそうな学生について、あるいは家庭と連絡をとって、あなたのむすこさんはこういうことをやっておるというような、こういう心配があるということまで心配している大学もあるのであります。いろいろ手を尽くしておるわけであります。これは、お話の御趣旨はそのとおりであります。われわれとしては、もちろんその方向に向かってさらに一そう努力をいたしますが、各大学が懸命の努力をするようにいたしたいと思います。
  33. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 大臣にはそれだけの御意見を聞いてたくさんですが、事務当局に——私のいま申し上げましたことをやっておられるか知りませんが、厳重にひとつやっていただきたい。われわれも機会がありましたら、できるだけその状況を研究したいと思っておりますので、またこの次の機会に申し上げたいと思いますから、それらのデータと申しますか、できるだけひとつ正確にして明確なるものをおつくりくださることをお願いいたしておきます。
  34. 永田亮一

  35. 岡沢完治

    岡沢委員 せっかく文部大臣がおられますので、中谷委員質問関連して、私が八日に質問したときに大臣がおりませんでしたので、二、三点だけお尋ねいたしたいと思います。  それは三派系全学連のような学生が生まれた背景につきまして、もちろんいろいろな原因は考えられますけれども、具体的に私が指摘する点についてお答えいただきたいと思います。たとえば、最近新聞紙上等で報じられます高校の卒業式に答辞を読みかえるというような学生の存在でもわかりますように、いわゆる高校における偏向教育と申しますか、高校教育の影響とこの三派系学生の存在との結びつきについて、大臣はいかがお考えになりますか。  それからもう一つ日本の現在の大学制度の大筋は、入学は非常にむずかしい。ところが、たいていの大学は、卒業についてはそれほどきびしい態度をとっておらない。入学即卒業というような印象を学生に与え、世間も学力ではなしに、その大学に入ったかどうかということで評価するというような風潮がある。現に大学の運営もそのように行なわれているということと、この三派系全学連学生諸君行動とは、私は関係があるような感じがするのでございますが、その点について何か文部大臣としてお考えの点があれば、お答えいただきたいと思います。
  36. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 先ほど私は、この問題にはいろいろな複雑な、あるいは広い原因があるというふうに申し上げましたわけございますが、大学における教育指導の面におきまして、大学当局として、ひいてはわれわれとしまして考えなければならぬ点が多々あるものと存じます。もう少し大学教育指導が徹底しておれば、あるいはあのような暴走をしないでも済むのじゃなかろうかとも考えられます。そういうこともありますし、同時に、お話にも出てまいりました高等学校段階における教育の面におきましても、いろいろ問題とすべき事象もあるように聞くのであります。これは単に高等学校だけの問題でもないと、実は私は思います。結局は小学校、中学校、高等学校、すべての教育を通じて考えなければならぬものがある。その点をもっと究明してみる必要もあろうかと存じます。と同時に、三派系の全学連と申しましても、そのメンバーの全部が同じような一様なものともあながちいえない点もありはしないか。多くの学生は、大体大学生の中でも教養部と申しますか、前期に属しておる若い学生が多いのであります。こういう点から考えますると、その若い諸君が、三派系の指導者がいろいろやっておりますようないろんな問題についての深い理解と正しい判断を持って行動しているかどうかというふうな点についても、問題がありはしないか。同時に、高等学校を出て初めて大学に入った、大学に入ったけれども、その大学は想像したようなものでなかった、こういうふうなことからくる一種の不平、不満というふうなものが、あの過激な運動のほうに引っぱり込まれる一つの要素をなしておる、こういう点も決してないとはいえないと思うのであります。そこらを考えてみますと、やはり学校教育全体を通じて検討も必要でありますし、またいわゆる教養部のあり方等についても、これは大学側も私どものほうもさらに改善の余地があれば改善していかなければならぬ、こういうことも考えられるわけであります。いずれにしましても、今日のあの学生諸君が三年生となり四年生となったときには一体どうなるのかといえば、必ずしもいまやっておる諸君が全部がおしまいまでそっちへいくものとも思いませんけれども、私があげましたようないろいろな原因について、われわれももっと掘り下げて研究をして、それに対処する道を発見していかなければならぬ、かように考えます。高等学校段階における一部の学生がかなりこのごろ偏向してきたというようなことは、事実として認めざるを得ない状況にあると思いますので、決して大学だけの問題に限ってこれを処理するわけにもいかないと存じます。
  37. 岡沢完治

    岡沢委員 最後に一点だけでございますけれども、いま大臣からも御答弁がございましたが、教養学部の学生が多い、また三分の一くらいは未成年者であるというふうにも、この間お聞きいたしました。おっしゃるとおり、私の過去を考えましても、あの年齢からいえば、いわゆる善意かもしれませんが、独善偏向の思想にこり固まるという危険性が多い、あるいはヒロイズムに走っておるという点もあろうかと思います。大臣はその道の権威者でもあり、慎重な御答弁ではございましたけれども、すでに山崎という学生自身が死んでおります。あるいはこの短い期間の運動で一生を誤る学生も、多数出るのではないか。社会的な被害は別といたしまして、学生自身の将来を考えましても、この際き然たる態度が大学教育者として必要ではないか。なるほど慎重に考えていただいて、諸般の制度等を検討したいというお気持ちはわかりますけれども、参加している学生諸君にとっては、もう一瞬一瞬がかけがえのない大事な時間であり、一瞬を誤ることによって一生を誤る学生も出てくるのではないか。そういたしますと、やはりもう教育者としてのき然たる態度が、ぜひ必要な段階ではないか。破防法適用等は、もちろん所管が違いますから、文部大臣お尋ねする気持ちはございませんけれども、文部大臣のお仕事としても、あるいはお立場からも、特に三派学生の過半数が国立大学生であることから考えても、この際単なる慎重な態度でなくて、学生指導について思い切った教育者としての立場を鮮明にしていただいて——もちろん学問の自由とか大学の自治とかの限界はございますけれども、特に大臣のもとにございます国立大学の学長等を通じて、この際従来の優柔不断の態度を改めていただくべき時期が来ているのではないかと思います。意見を申し上げて、質問を終わります。
  38. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私は、先ほども申しましたように、問題の関係するところは非常に深くかつ広いということでございますが、その問題はかなり時間をかけて解決していかなければならない問題が多いのであります。そうかといって、当面これをただながめておるという状態では相すまない話で、したがって、学生に対して——もちろん学生指導の任に当たる者として、問題の底に深い愛情をたたえておらなければならぬことは申すまでもないことでありますけれども、やはり勇断をもって、あなたのおっしゃるようなき然たる態度をもって学生指導に当たってもらいたい、こういうような心持ちで各学長諸君にもぜひひとつ懸命な努力をしてほしい。  私は、よけいなことを申し上げるようでございますけれども、大学の自治というものは尊重すべき大原則だと思うのであります。その大学の自治ということは、始終学校側からいわれておる。おりながら、はたして大学の自治が今日守られておるのかどうかということについて、疑問を発せざるを得ないような事態が随所にあらわれてきておるわけであります。したがって、大学の自治というものが尊重すべき大原則であるとするならば、まず大学みずからがこれを守る、これを確立するという方向努力してほしいということを言っておるのであります。これはひとり教官だけの問題でもございません。大学学生諸君も一緒になりまして、りっぱな大学自治を完成するようにやっていかなければならぬ。今日の三派全学連諸君行動は、この大学自治をむしろ危うくするものである。ひいては世間大学に対する信頼を落とすものであります。懸命の努力大学の当事者としてはやってほしい。われわれはこれに対するできるだけの協力は惜しまないというような態度でもって奮起を促しておるような状況でございますし、どうか皆さんにおかれましても、お願いでございますが、大学の各当事者あるいはまた一般の学生に対しまして、もっと鼓舞激励をしていただきまし——ただ、ときには三派全学連諸君に対して甘やかし過ぎておるのじゃなかろうかというふうな批判も起こってくるわけでございます。きびしいところはきびしくやってもらい、しかも一般学生自分たちの手でりっぱな学園をつくり上げるというような気分を起こすように、叱咤激励あるいは鼓舞激励をぜひお願いしたい、かように存じまして、お答えといたします。
  39. 中谷鉄也

    中谷委員 法務大臣お尋ねをいたします。もう何回かこの問題についてはお尋ねをしたわけですが、三派系全学連に対して破防法適用するかどうかの問題で、大臣新聞等の報道を拝見いたしますと、何か非常に積極的な姿勢をお示しになっているようにも承るし、また大臣委員会における御答弁を拝見いたしますと、きわめて慎重のようにもお伺いできる。重ねまして、この破防法適用というきわめて重大な問題について、大臣のこの問題を処理されるお心がまえ、態度等について、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  40. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答え申し上げます。破防法は非常に重要な法律で、これは法律の性質上非常に慎重に取り扱うべきものであることは、御承知のとおりであります。私は、破防法につきましては慎重な態度でこれを取り扱うということは、初めからそのつもりで勉強しております。なおまたこの間起こりました羽田の第一事件あるいは第二事件にいたしましても、佐世保事件にいたしましても、成田空港の事件にいたしましても、また王子の事件にいたしましても、よくこれを見てみますと、非常に社会に対する破壊的な行為であると私は思っておるのであります。こういう法律を犯して社会を破壊する行為というようなものは、今日のような民主主義の国で、しかも日本のような法治主義の国においては、私はこれは許すことのできない事件である、こういうふうに考えております。そういう点からいたしまして、現在におきまして、私は非常な慎重な態度をもって、破防法適用するめどをもって、目下慎重に研究をいたしておる次第でございます。
  41. 中谷鉄也

    中谷委員 重ねてこの問題についてもお尋ねをしておきたいと思います。破防法適用にあたっての該当条文、これは法に明定されておりますが、四条の二のリであるということは、すでに何回か答弁をいただきました。そこで大臣の御答弁をいただきたいのは、少し本日は四条の二のリだとするならばどういうことになるのかという点について大臣の御見解を承りたいのですが、まず最初に四条の二はイないしヌの十項目に相分かれておる。そうして前提としての目的は「政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対する」という目的を必要とするということは、これまた法の明定するところでございます。そこで一応適用をめどとしてという、その対象となっている三派全学連の四条の二の目的、政治上の目的、これは一体どういうものなのか。これは適用の基本的なワクでございますので、条文にひとつ即しつつ御答弁をいただきたいと思います。
  42. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 条文はもちろんのこと、あらゆる面からこれは慎重に検討しておるというのは、そういう意味でございまして、各条文に適合するかどうか、なおまたこれについての利害得失なり影響なり、あらゆる面を私は目下慎重に検討して、適用をめどとして研究をいたしておるということをさきに御答弁を申し上げたのであります。いまお尋ねの条項につきましては、政府委員から答弁をさせることにいたします。
  43. 吉河光貞

    吉河政府委員 御質問のとおり四条第一項二号リは、冒頭の「政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対する目的をもって、」という目的が必要であることは、御指摘のとおりでございます。しからば、三派全学連の第一次羽田事件並びに第二次羽田事件、それから佐世保事件におけるこの暴力活動の政治上の目的の内容は何であるか、これは実は調査に属する問題でございまして、証拠をもって立証すべき事実に当たると考えておるわけでございますが、まだこれを発表する段階には至っておりません。
  44. 中谷鉄也

    中谷委員 調査はほぼ完了した。その点について大臣に報告をし、現在検討中である。そこで、だとすると、いまわれわれが論議しているのは、破防法適用が正しいかどうか、あらゆる角度から検討しなければならない。とすると、たとえば政治上の主義あるいは政治上の施策、このいずれを推進する目的で、あるいはまた支持し、反対する目的でということも、今国会において、本委員会において検討、分析をしなければならない問題だと思うのです。ただ、それらの破防法の問題というのは、すぐれて法律的な問題、きわめて法律的な厳格を要する問題、その前提として法務委員会委員として適用可否、是否を論議するということは、また国政に参加する者としての義務だと思う。その点について、一番大まかな三派全学連の目的が何かということについてお答えがいただけないという点については、はたしていかがなものであろうか。たとえば詳しい証拠標目、供述調書、証拠物、そのようなものを示せと言っているのじゃない。大まかな問題についてということを私は指摘している。いかがでございましょう。
  45. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 これは私が最初に申し上げましたように、適用をめどに目下あらゆる面から調査研究をいたしておるのでありまして、何をどういうふうに調査しておるか、何はどういうふうな考えを持っておるということは、私が調査が完了をしておると言うたことによってそういうような御質問があったと思いますが、私が再検討をいま命じてやっておる。慎重を要するものでありますので、一応の調査があっても、さらに再検討をし、実際並びに法律上の問題、影響の問題、あらゆる面から検討をいたしておりまするので、具体的なものを、まだ調査中に属する部分も相当ありまするので、お答えすることは遠慮したいと考えております。
  46. 中谷鉄也

    中谷委員 法務委員会等において、何月何日だれがつかまったか、そのつかまった勾留事実は何か、これについては、当然お答えがあります。したがって、いやしくもこの法務委員会において四条の二のリでございますというだけで、四条の二のリに該当する勾留事実や逮捕状の記載事実に該当すると思われる、そのような事実についてもお話しがない。ただ、おっしゃっていることは何でしょうか、羽田学生があばれた、王子で学生がたいへんな迷惑をかけた、こういうことは、そういう事実が破防法の四条一項二のリにどのようにそれを集約するのかという問題なんです。この点について何か見解を異にする委員の方がおられるようだけれども、重ねて申し上げるけれども、証拠の標目を示せとか、供述調書の内容を言えとか、証拠物の種類を言えとかいうのを、私は言っているのじゃない。言うてみれば、二のリだということは、条文だけでしょう。二のリというのは、条文だけでございますね。二のリの裏となるところの事実について、証拠があるとかないとかということまで私は言っているのじゃない。その事実についてさえも言えないということは、一体どういうことなんでしょうか。調査が完了してないので、二のリであるかどうか、海のものとも山のものともわかりません、まだそこまで私のほうはいきません、四条一項の二のリと言いましたけれども、それもはっきりしませんというなら、いいですよ。あなたのほうの捜査権や調査権を何ら侵しているわけじゃない。この点について、そういうふうなことでわれわれが破防法適用可否について審議ができるかどうか、重ねて大臣の御答弁をいただきたい。
  47. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 私は、いよいよ破防法をここに提出するということは一切申してない。いま破防法適用するかどうか、適用をめどとしてあらゆる角度から破防法の研究をいたしております。法律のみならず、実際についても、あらゆる面を研究しておるということを申し上げておるのでありますから、その点誤解のないようにお願いを申し上げたいと思うのであります。
  48. 中谷鉄也

    中谷委員 重ねてお尋ねをいたしますけれども、じゃ大臣、こういうことはいかがでしょうか。いわゆるその捜査の内容調査内容、たとえば何月何日その人が自白して、その調書がどうなっているかというふうなことについて、法務委員会の審議の限界というものはあるでしょう。ただしかし、防衛庁の一佐が一体どんな事実でつかまっているのですかという場合について、法務委員会で勾留事実は言いませんか。言わざるを得ない。二のリに該当するとするならば——そういうふうに条文を言われた。それに該当すると思われておる事実は、一体どういう事実を想定しておられるのか。具体的に何月何日のどんな事実を想定しておられるのか。それらの裏の証拠、証拠との結びつきを答えていただきたいと言っているのではないわけなんです。そこまで言えない。そうすると、この委員会において論議をするのは、四条一項の二号のリが正しいとかいうふうな、条文の解釈をこの委員会はするということになるのですか。たとえば自衛隊の一佐が逮捕された。秘密保護法の条文について論議をするだけでとどまるのですか。
  49. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 私は、別に破防法を議会に提出するとか、御審議を願うとか、そういう意味じゃない。破防法というものが現に十何年前からある。それを適用するかどうかということをあらゆる面から法務当局としては調査を申し上げております、こういうことを言っておるのでありまして、その点ひとつ御了解を願いたい。どういう証拠があるとか、どういう証拠がまだとれていないとか、どういう証拠は目下入手をしておるとか、どういう証拠はなかなか手に入らぬとかいうようなことは、申し上げることが適当でないということで、あらゆる面から準備をしておるということでございますから、どうか誤解のないようにお願い申し上げます。
  50. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 ちょっと関連して。いまの問題は、これはまた中谷委員から質問があるでしょうが、私は法の解釈の問題につきまして御所見を承りたい。  と申しますのは、現に第一線に働いております検事の中に、法の解釈について、われわれがさような意味でこの法はできたんじゃないといって国会の審議録を提出して検事の考えに対して反駁いたしますと、いや、国会でどういう意味法律ができても、できた以上はわれわれの解釈でやるんだということを法廷で公言した検事がいる。これは相当ばかな検事だと思うから、私は徹底的にやったのであります。そこで、一体破防法なんという画期的な法律、御存じのように、これの成立のために、われわれもその当時法務委員の一員として、ずいぶんこれは慎重に審議したのでありまして、審議の経過はよく知っておるわけであります。これはまた議事録にもよく出ております。そこで、この破防法適用なさるに際して、大臣あるいは公安調査庁長官もあるが、第一線に働く警察官及び検察官、こういう人間がこの法律の各条文を解釈するについて、いま言ったように、国会の審議、どういうふうな政府委員答弁があったか、そんなことはかまわぬ、われわれはわれわれ司法部の解釈でやるんだというような態度をとったのでは、これは民主政治もへちまもない。警察ファッショ、検察ファッショになる。前線で働いている連中の中にはそういう頭が相当あるから、これは私は大いに指導していただかなければならぬと思って、この質問をする。と申しますのは、いままでできました、たとえば総理大臣が異議の申し立てを乱発いたしました行政事件訴訟法の第二十七条なんかも、当時の速記録に、当時の大臣その他政府委員が詳細に答弁しておることと全く反対なことをやっておる。これは立法府をはなはだないがしろにした話で、国会は国の最高機関ではありませんか。そこの審議したことをてんでじゅうりんしている。また兇器準備集合罪、これなんかも、自民党の諸君から社会党、民社党、各党全員の賛成で附帯決議ができている。どうもこれから見ると、先般の兇器準備集合罪を適用されたなんというのは、はなはだ当時の政府委員答弁と食い違っておるやり方をやっておるとわれわれは思う。その意味において、中谷君がその当時の模様をいろいろ聞いているんだが、あなたは捜査中でまだ答弁できないと言っているわけだが、どうも法の乱用のおそれが十分ある。そこで、この法の解釈——論理解釈、文理解釈、いろいろありましょうが、民主政治の今日においては、憲法に最高の国家機関といわれます国会における議員の発言、政府委員答弁、そういうものに非常に重点を置くということは、当然のことなんです。それを検事が自分の頭でかってに便宜上組み立てた論理で押していくということになるならば、この法務委員会等でわれわれが熱心に審議したことは、何もならない。附帯決議をつけたことも、何もならない。その意味において、この破壊活動防止法を適用なさるについて、私はあなた方の意見を聞きたい。ことに公安調査庁長官吉河氏は、この破防法のできた当時の政府委員として審議に臨まれているはずなんです。法務大臣はその当時何をやっていっしゃったかわからぬが、しかし速記録を見ればよくわかる。当時の法務大臣木村篤太郎はいかなる答弁をしているか、あるいは吉河氏がどういう答弁をしているか、よくしさいに——吉河氏も当時はいまよりもあまりえらくないから、そう一々答弁していないかもしれないけれども、しかしちゃんと出て、審議は聞いているはずなんです。そこで、この破防法適用するに際して、国会における議員の発言、政府委員答弁、その他国会の審議の模様について、十分しんしゃくされてこの破防法適用するものなりやいなや、この点について法務大臣並びに吉河長官の御所見を承りたい。
  51. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えを申し上げます。法律を正しく解するためには、最高の国会においてどういう質疑が行なわれたかというような、それが成立に至る点について十分な勉強をして、法本来の精神にもとらぬようにやれという御注意でございますが、これは全然私同感でございます。ただ私は、さきに兇器準備集合罪について何かわれわれがどうも適用について慎重でないかのような御発言のように拝聴したのでありまするが、これは私は非常に慎重に判例その他で正しい適用をやったものと考えております。これは単にわれわれがやった前のたとえば早稲田の事件とか清水谷の事件とかいうような過去の事例を見ましても、そういうものに照らしてみても、決して一人よがりでなくて、われわれは正しいあれをした、こういうふうに考えて、この点は猪俣委員と考えがちょっと私は違います。要するに、十分この国会における審議その他について調べて、遺憾のなきを期せいということについては全然同感でありまして、特に慎重を要する破防法などにつきましては、格段の勉強をしていきたい、大臣としてはそういうふうに考えております。御了承願います。
  52. 吉河光貞

    吉河政府委員 ただいま大臣から御答弁のとおりでございます。
  53. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると、当時の法務大臣あるいは当時の政府委員が議員の質問に対して答えたその精神を尊重して法の解釈をやる、大臣は違うけれども、それと全く別な解釈はとらぬ、そう承っていいわけですね。当時の法務大臣がちゃんと質問に答えて答弁しているんだ。その大臣答弁と同じ精神で法の解釈をやる、こう承ってよろしいか。
  54. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えをいたします。そういう当時のおい立ちを十分尊重して法律を執行していきたい、かように考えております。
  55. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると、さっき兇器準備集合罪については猪俣委員意見が違うというようなことをおっしゃったが、はっきりしなかったんだが、どういうところなんだ。私が言うのは、この兇器準備集合罪は、当時の政府党である人からも提案があり、各野党全員が賛成の上で委員会でも本会議でも附帯決議ができているのだ。その附帯決議のできた理由、それからこの法律をつくるに至りました動機、そういうものを明らかにこの委員会で審議されて、あらゆるものが出ておる。兇器とは何をいうかは、日本における有名な刑法学者三人も公聴会に呼んで、兇器の定義もほぼ出ておる。そういうものを参考にするならば、いかなる団体にいかなる行動があったときに兇器準備集合罪を適用すべきであるかは明らかになっておるにもかかわらず、今回のような適用を持ったとするならば、これは当時の法務大臣の答えと相当違っておる。まああなたそこまで勉強しているかどうかわからぬけれども、違っているですよ。よく検討してごらんなさい。今回も破壊活動防止法なんていうことを、私は政府はやらぬと思うのだ。それほど——がそろっておるとは思いません。そんな、三派全学連破防法適用してどうなりますか、あなた。ただ、まあ何とか威勢のいいことを言うて威嚇しようという、刑法の予防政策みたいなものからきているかと思うのですが、これをおつくりになるとは思わぬけれども、しかし、なかなか自民党にも勇ましい、われわれから言うと——がいるんですから……。ですから、あんたがそれに抵抗する意思があるならば、この国会の審議というものを第一に考えてやんなされば、たやすくできることなんだ。破防法適用の条件というものは、国会で明らかになっていますよ。しぼりにしぼられてこれはでき上がった。相当の大法律として、われわれも実に汗だくになって審議をやった。だから、それをまず大臣がよく腹に入れていただきたい。吉河君は、当時政府委員で出ていたんだから、よくわかるはずだ。幾ら大臣がかわったって、考えを変えちゃいかぬと思うんだ。やはり政府委員としての責任がある。そうするならば、乱暴なことはできないと思う。破防法適用する意思があるかないかまだはっきりしないのでありますが、適用されちゃ終わりですから、適用する前にその点を十分留意されていただきたい。また適用されぬでいただきたい。適用するにしても、適用しないにしても、国会の審議を重点に置いてやってもらわぬと、ファッショ政治になります。これは私は赤間法務大臣に対する老婆心として申し上げておりますから、親切なことばなんであります。あなたを詰問する意思はちっともない。どうか扇動者の宣伝に乗って国家百年の大計を誤らざらんことを切にお願いしまして、私の質問打ち切ります。
  56. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 いろいろと老婆心から御注意をいただいたことは、十分ひとつ守ります。ただ、自民党に——が多いとかなんとかいうようなおことばは、お取り消しになったほうがいいと思いますが、いかがでございますか。(発言する者あり)委員長で適当に不穏当なところがあったら取り消すというふうにしていただくわけにいきませんか。     〔発言するものあり〕
  57. 永田亮一

    永田委員長 ただいまの発言中不穏当の言辞がありましたら、速記録を取り調べた上、委員長において適当に処置いたします。
  58. 中谷鉄也

    中谷委員 条文の問題について、それの対応する事実関係について、先ほど猪俣委員質疑の前に若干見解を述べましたが、端的に申しまして、一昨日の自治大臣答弁、本日の文部大臣答弁等、全体の趨勢として、破防法の問題についてはこの段階においてはそのような事実関係について調査中ということで御答弁がないということであれば、むしろそれはそれとして私のほうはある意味ではけっこうだと思います。そういうことで、これ以上私のほうからその問題についてお尋ねしません。質問を変えます。  前回、警察庁のほうに資料の要求をさしてありました。いかが相なっているでしょうか。なお、公安調査庁についてもお願いをいたしました。この点についていかが相なっているでしょうか。まず御答弁をいただきたいと思います。
  59. 三井脩

    ○三井説明員 先週、資料の提出方についてお話がございました。多岐にわたっておりますので、私のほうで検討を加えております。なお、あのときに、警備警察に関する規則等々というようなお話でありまして、警備警察に関するというのはどういう意味であるのかというような点につきましても、速記録等を調べまして、御質問趣旨全体の中から御趣旨に沿うようにいま検討を加えておる段階でございます。本日もそのために午前中検討いたしておりましたが、よく調査の上資料を提出するように努力いたしたいと存じます。
  60. 吉河光貞

    吉河政府委員 中谷先生から資料の提出をお聞きしたのは長谷次長でありまして、その資料については目下準備中だと思いますが、きょうまだ私の手元には渡っておりませんので、たいへん申しわけありませんが、よろしくお願いいたします。
  61. 中谷鉄也

    中谷委員 では、私の本日の質疑はこれで終わりますが、資料要求をいたしましたけれども、警察庁はこの問題についてさっぱり音さたがない。おそらくきょうはそんなことだろうと思ったわけなんですが、警備警察のあり方、実態については、十分検討することが法務委員としての責任であると思いますので、これらについては、ひとつ特に警察庁においての協力を私のほうから強く要望をしておきます。実は本日資料要求のための質問原稿を用意してまいりましたけれども、前回の資料について御整理中だということでございますので、時間の関係もありますので本日はこの程度にしておきますが、なお、刑事局それから最高裁判所もおいでいただいたのですけれども、これらの点については特に御協力を要望しておきます。
  62. 永田亮一

  63. 岡沢完治

    岡沢委員 最初に、法務省の刑事局長さんにお尋ねいたしますが、昭和二十七年に破防法が成立いたしまして以後、破防法適用された事例がごさいましたら、この際明らかにしていただきたいと思います。
  64. 川井英良

    ○川井政府委員 破防法の罰則を適用したものが、今日まで合計五件ございます。そのうちの四件は、三十八条二項二号の文書領布という案件でございます。残りの一件は四十条の事件でございまして、例の三無事件といわれておる事件でございます。
  65. 岡沢完治

    岡沢委員 この際、法務大臣吉河長官の両方にお尋ねしたいのでありますが、先ほど来中谷委員との質疑を通じまして、破防法のいわゆる十一条の請求はだれがするのかわからないような態度を、私は見受けたのであります。法務大臣御自身が慎重に検討しておるというようなお答えもございました。新聞紙上等報ぜられているところによりますと、昨夜も、官房長官を中心に法務大臣、あるいは警察庁長官吉河長官、大津内閣調査室長まで御参加になって、この破防法適用問題を御検討になっておられる。私は、破防法十一条の解釈としては、公安調査庁長官のみがその権限と責任を持っておられると思うわけでありますけれども、この適用について、先ほど来の大臣の御答弁は、あたかも御自分が最後の決断をお下しになるというような前提での御答弁としか受け取れないお答えがございました。また、新聞に報ぜられますその他の動きにつきましても、いかにも内閣が、あるいは場合によると自民党がその適用可否を決せられるような動きさえ感じられるのでありまして、この際、破防法適用の請求について、ことに十一条の請求について、だれがいつどのように判断をされるのか、その辺の点をお二人からお答えいただきたいと思います。
  66. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えを申し上げます。破防法適用を提訴いたしますのは、いまお述べになりましたように、公安審査委員会に対しまして公安調査庁の長官がやるようになっております。しかしながら、御承知のように、長官に法務大臣の下というわけでもないですけれども、管轄のところにおるわけなのであります。それで、私は法務大臣として、私の所管に属しておりまする公安調査庁等を指揮監督していくという、御承知のような立場にあるのであります。この破防法につきましては、長官はもちろんのこと、われわれも十分これを慎重の上にも慎重を期する。なおまたあやまちのないように、法制局の長官も出てもらって研究を願い、また警察関係の者にも出てもらって、法規上、実際上の点を検討願う。なおまた検察庁の人にも出てもらって、これをあらゆる角度から——この条文はもちろんのこと、実際の取り扱い並びに影響等についても、あらゆる面からあやまちのないように慎重審議をやっておるのでございますが、提訴する人は、公安調査庁の長官が提訴をする、こういうふうにお述べになりましたとおりでございます。
  67. 吉河光貞

    吉河政府委員 ただいま大臣がお述べになりましたとおりでございまして、破防法十一条には破壊団体規制の問題は、「公安調査庁長官の請求があった場合にのみ行う。」と規定されておりまして、請求をするのは私であります。私の権限でやるわけであります。同時に私の責任でもございます。規制の請求は重大な行政措置でございまして、法務大臣の監督のもとに置かれている私といたしましては、法務行政全般のお立場から私に対して御指導があるということは、当然のことであると考えております。また政府治安行政全般の立場から、あらゆる角度から御意見を求めてこれを検討する、私の独断専行ではなくて、政府部内であらゆる御意見を拝聴して、これを熟慮判断するというのが、私の責任でもあろうかと考えておる次第であります。
  68. 岡沢完治

    岡沢委員 私には納得できない点があります。それならば、法務省の一局として公安調査局があってしかるべきなんだ。わざわざ独立の機関にしたというのは、そうではなしに、この法律が単なる党派とかあるいは時の政府の意向によって片寄った運営がなされないということを保障するために、私は公安調査庁という独立の官庁を設けられた意味があろうかと思います。また、第十一条の解釈からいたしましても、先ほどの大臣の御答弁にいたしましても、長官答弁にいたしましても、大臣その他の方の意を体して、ただ名前だけは自分でやるのだと聞き取れるのようなお答えもございました。私は、確かに行政機関の一環として、慎重に御審議をなさる、慎重に活動について御検討なさる、そのために大臣意見を聞かれるというのは当然かもしれません、あるいは報告をなさるというのも当然かもしれませんが、この十一条の請求の適否、するかしないかという最後の責任と権限は長官の独自の判断でなさるべきではないかと考えるのでございますが、いかがでございましょうか。
  69. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 政府委員から詳細お答え申し上げます。
  70. 吉河光貞

    吉河政府委員 公安調査庁は、規制のための調査並びに規制を一体的に遂行することを任務とする国家の機関でございます。これは独立した機関と旧すよりも、外局として法務大臣の御監督を受ける立場になっておりまして、やはり公安審査委員会とは立場が違う役所でございます。また私どもは、ただいまは政府の一機関としてのお立場を申し上げておるのでございまして、党は政治のお立場でございますから、党の方面からのいろいろな御要望に対しては、これは政治の問題で、私どもは政治の問題としてこの問題を解決すべき立場にはおりません。かようなことでございますから、御了承願いたいと思います。
  71. 岡沢完治

    岡沢委員 私は、やはり条文の解釈としても、あるいは公安調査庁の性格からいっても、その点は納得できないので、質問を保留し、いずれ法制局長官にも来ていただいて尋ねたいと思いますけれども、私の心配いたしますのは、先ほどの猪俣委員とは違った意味で、法律が成立した以上、私は、法の解釈は正しい法理念に従って、あるいは法の専門家の立場からなされるべきだというふうに考えております。それだけに、この第十一条の規定からいたしましても、公安調査庁長官が、私は各種の、単に内閣だけではなしに、一般の世論の動向その他も御検討になり、あるいはその効果等も御検討になって判断されるのがしかるべきかと思いますけれども、具体的には、現在の内閣は政党内閣であり、赤間法務大臣も自民党員であられるわけでございます。こういう場合に、その大臣の指揮監督をあたかも受けるような立場でこの請求の成否を決するという御答弁であるならば、私は破防法が泣くんじゃないか。これは国民に大きな疑惑を生ますもとになると思いますし、そういうおそれがあればこそ、ただいまの中谷委員、猪俣委員等の御心配の向きも出てくるのではないか。私はそうではなしに、やはり法解釈あるいはまた法の適用については、党利党略ではなしに、あくまでも法の要請によって法の構成要件その他をお考えになって、もちろんこの法律につきましては、第二条の拡大解釈を戒める規定もございます、また基本的人権に関する重大な法律であることはもちろんでございますけれども、しかもなおそういうことを踏まえた上で、やはり独自の判断で御請求になり、その適否については公安審査委員会が、おっしゃったように、独立の機関として、これは第五条に従って結論を出すわけでございますから、少なくとも私は、請求については公安調査庁の長官が最終的には自分責任と権限でやるのだということを明言していただかない限り、国民は納得しないのではないかと考えるのでございますけれども、重ねて長官のほうの御意見を承りたいと思います。
  72. 吉河光貞

    吉河政府委員 ただいま御指摘のとおりでございます。
  73. 岡沢完治

    岡沢委員 そう言われますと先ほどと違うような感じが私はするのでございますが、この問題はこのくらいにしておきまして、最後に法務大臣お尋ねをいたします。  いわゆる法の権威あるいは法の支配ということばがよく使われます。また法務大臣は、その意味におきまして政府における法の最後の判断者であり、また最後の締めくくりをなさるお立場におられますから、大臣は法の権威、法の支配についてどういうふうに解釈をしているか、お聞かせいただきたいと思います。
  74. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 法の支配についてでございますが、私は、日本国民は官民を問わず、すべての国民が法の精神を十二分に理解をしてこれを守り抜くということが法の支配である、こういうふうに解釈をいたしております。なおまた、たとえば法律は悪法というような法律も間にあるかもしれませんが、私は、悪法であっても、これは厳としてその法律が存在をしておる限りは、それを改め、廃するまでは、やはりその法律に従っていくということが、民主主義の本義じゃないか、こういうことも考えておる。それで、この法律を無視する、法律を破壊するというような者は、これは私は善良な国民とは言いにくい。法務省としては、法秩序の維持という点から、あくまで法律を守っていくというふうに私は心がけていかなければならぬ、かように考えております。
  75. 岡沢完治

    岡沢委員 私も大体大臣と同じ趣旨に解したいと思っておりますし、ことに近代民主政治の基礎は、力にかわるに法の支配にあると考えております。その場合に、現に法律が存在し、しかも破防法の場合でも、先ほど申し上げました二条の制約がございます、附帯決議等もございますけれども、そういう拡大解釈でなくとも、法違反あるいは法の構成要件に該当するという事案があります場合に、それをそのまま放置しておくのが法治主義の精神であるかどうか、私は非常な疑問を持つわけでありますが、その点について、重ねて法の権威と結びつけて大臣見解を聞きたいと思います。
  76. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 率直に申し上げますが、国家の重要な法律を無視してあるいは暴行をやる、あるいは破壊活動をやるということは、全然好ましくないものでございまして、私は、法治国においては法をあくまで順奉していくようにするのが私たちの責務である、かように考えております。ただ、三派全学連に対して破防法適用するかどうかということは、猪俣議員からもいろいろと老婆心からありがたい御注意をいただきましたが、これは重要な法律でございまするので、十分あらゆる面からこれを研究して、遺憾のないような取り扱いをするということも、この破防法の性質からやはり当然じゃないかということで、私としましては一生懸命にこれの研究をいたしております。原則といたしましては、もう法律を守るというのが法治国の義務でもあるし、民主主義は法律を守ることによって初めて安泰である。もし、法を、秩序を破って平気でおる者は、とりもなおさず民主主義を破壊するものであると言うても過言でない。原則としては私はさように考えて、あくまでも法律の番人として法律の順奉ということに全力を尽くしていきたい、私はかように考えておりまするが、いま言いましたように、破防法のような重要なものについては、これが運用についてよくあらゆる面から人の意見も聞くし、法律の解釈も十分し、なおまたそれのおい立ち、できたときの先輩各位のお骨折り等も勘案して、十分あらゆる面からこれを研究して遺憾なきを期していきたい、そのような考え方をもって研究をいたしておると御了承願いたいと思います。
  77. 岡沢完治

    岡沢委員 次の質問者の神近委員がまだお見えでないようでございますから、もう一点だけ公安調査庁長官にお聞かせいただきたいと思います。  ただいまの法務大臣の御答弁趣旨は私もよくわかるのでありますが、この委員会における八日の質問で、長官はお見えでございませんでしたので、長谷次長が御出席いただいた場合に明らかにされたことでございますけれども、三派系全学連諸君行動の被害といいますか、実害というのは、反復継続して——新聞等で、また長官は御職務柄十分御承知のことであります。現に良民が目をつぶされたり、住宅に土足で入り込まれたり、あるいはまた警察官、学生自身もたいへんな数の死傷者を出し、一般市民がたいへんな迷惑、経済的にも心身的にも現に被害を受けておることは、これはもう否定できない客観的な事実であろうと思うのでございます。しかもまた、さらにこの二十日にも第三次の行動を考えておるというような報道もございます。こういう場合に、慎重審議ももちろんけっこうでございます。あらゆる角度から検討なさる、私も必ずしも反対ではございませんけれども、しかし、もうその段階と申しますか、昨年来の引き続く反復継続的な、計画的な学生諸君行動については、先ほどの文部大臣に要求したとまた違った意味で、文部大臣教育者として、公安の維持の責にあたられる法務大臣あるいは公安調査庁長官は別の角度から、私は勇断を下さるべき時期がきているのではないか。むしろ、そうでなければ職務上の怠慢というようなそしりを受けてもやむを得ないのではないか。私は破防法の悪い面も十分に承知はいたしますけれども、しかし、法律解釈の立場から、あるいは法律家の立場からいたしますと、現に法があり、それに該当する行為があり、しかも単なる公安の秩序が乱されるというおそれだけでなく、現にその被害が続発しておるという事態に即して、なお慎重審議というのは、私は、国民の立場からしても、あるいは当該学生のためにもよろしくないという意見を持つものでございまして、私の意見が間違いなれば、大臣からでも、公安調査庁長官からでもお答えをいただければと思います。
  78. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 まことにごりっぱな御意見に私は拝聴しております。ただ、この問題が非常に重要な問題であるから、われわれとしましては念を入れた上にも念を入れて適否を、適用するかどうかを研究することが、また私どもに課せられたつとめとも考えまして、現在におきましては、この破防法適用することを目途としていろいろなものについての研究を進めておる、こういう状態でございますので御了承をいただきたいと思います。
  79. 岡沢完治

    岡沢委員 終わります。
  80. 永田亮一

    永田委員長 神近市子君。
  81. 神近市子

    ○神近委員 きょうは佐世保問題に関連してと申し上げておきましたけれども、いろいろ問題は出尽くしたようですから、きょうは基地の売春婦の状態について少しお伺いをしたいと思います。  三年あとに大阪で博覧会が開かれるということで、いま大阪ではたくさんの女の人が集会を持って、そしてこの博覧会場の周辺にたくさんの連れ込み宿がまたできやしないかということで、決議をしておられるようです。それで、大臣のお手元にその決議案を持って陳情に見えたのでしょうか、ちょっとそれをお伺いいたします。
  82. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えを申し上げます。その決議文はまだ拝見いたしておりません。
  83. 神近市子

    ○神近委員 この前のときに人権問題のことで、佐世保の保健所がアメリカの帰休兵のために証明書を出しているという問題をちょっと申しましたら、それは厚生省の管轄でございますから返答ができませんというふうな変なお返事だったのですけれど、これは私が御質問したのは、何も保健所の問題だからじゃないのです。一体こういうことで、保健所が女の人の証明書のようなものを出すということ、このことが売春を奨励するような結果になっているのじゃないかということで、これは売春防止法の第五条の一項三号に当たりはしないかというようなことを考えたのですけれども、この点はいかがですか。証明書を出して、この女はこの病気はありませんというような証明でしょう。そうすると、保健所が、あるいは政府機関の一つが売春を勧めているというようなことになって、その第三号に当たるのではないかと私は考えるのですが、それはどういうことでしょう。
  84. 川井英良

    ○川井政府委員 ただいま御指摘のようなことがあったということは、新聞で拝見いたしまして、私、場合によれば刑法の強要罪に当たるようなことがあったのではなかろうかという心配を持ちましたので、所轄の検察庁に連絡をして、実情調査した上で報告してほしいということを実は連絡したわけでございます。この問題について私からはいままで答弁を申し上げておりませんけれども、その当時私が調べた状況では、検察庁ないしは警察が刑法の問題として処理するような実態ではないという旨の報告があり、また私もさように判断いたしました。しかしながら、法務省には御案内のとおり人権擁護局がありまして、一般的に人権擁護についての事務を所管いたしておりますので、私のほうからも非公式に人権擁護のほうに、こういうふうな事実があるようだ、関係方面と連絡をとって適当な処置をとられたほうがいいだろうというふうなことを、事務的に連絡をいたしました。したがいまして、このあとでほかの委員会でしばしばこの問題が出まして、法務大臣並びに人権擁護局長からそれについての一応の取り扱いについての御説明は、実はなされたわけでございます。そこで問題は、私ども直接所管の局ではございませんので、それ以上詳しくは調べておりませんけれども、事態の処理といたしましては、やはり厚生省ないしは人権擁護局というふうなところが適当な措置を迅速に進めるということが最も適切な方法ではなかろうか、こういうふうな感じを持っているわけでございます。  そこで最後に、売春防止法の五条に当たるのじゃないか、こういう御質問だと思いまするけれども、これは私どもは、いままでの調べでは、ただそういうふうな接客婦に対していろいろ局部その他の健康診断をしたということで、強制的にやったものではない——やったものだというふうないろいろ実情が出てまいりませんので、それだけの事実をもってしては、直ちに売春防止法の五条三号の容疑というふうなものは、そのままではまだ出てこないのではなかろうかというふうな所感を持っております。
  85. 神近市子

    ○神近委員 私どものところには、しょっちゅういろんな投書が参ります。そして私が一番非難されるのは、売春防止法をつくったのはおまえじゃないかというようなおしかりを受けるのです。それはごもっともと思われるところもあるのです。この間参議院の方が三人佐世保調査に行かれまして、私も、同行の前の日に聞いたものですから、急に支度ができなくて行けなかったのですけれども、いろいろその状態を聞かせてくださったのです。いま人権擁護局長は、これは労働法の問題であるとかあるいは人権擁護の圏外であるとかいうふうなことをおっしゃるのですけれども、どうもその点が……。私のところに投書が来ているのは、なるほどなあと思うような——これは無名の人でしたが、六法全書なんか半分くらいにしてもいいじゃないかというような意見、遊んでいる、何の役にも立たない法律がたくさんある。だからこんな厚ぼったいものをつくらなくても、もうちょっと簡単にやったらいいじゃないかというような御意見、それから私のところに一番来ますのは、売春防止法なんかあってなきがごときもので、こういうものの必要があるか。私どもは、猪俣先生もよく御存じですけれども、この売春防止法というのには賛成でなかったのです。禁止法のほうがいい。最初の禁止法は、社会党を中心にして提案して、そしてそのときに、いまあそこにおいでになるもとの議長の清瀬一郎さん、それから星島さん、それからなくなりましたけれども宮沢胤勇という方ですか、こういう方々十七名の御賛成を得て、そして提案したのです。そのうちに業者の買収運動が非常に盛んになって、そしてとうとうこれは禁止法はやめ、それで売春対策審議会をつくってその上でということで、いまの防止法ができたのです。禁止法と防止法の一番大きな違いは、対象になった男を罰しないということなんです。いまの実態でいきますと、男を罰しない。ここに警察庁の人の報告がありますけれども、防止法だものですから、男の人権にさわってはならない。だから、連れ込み宿に行きますと、あれはやるんだなというときには、それについていって、そしてその周囲でくず屋のようなまねをしながら、その用が済んで人が出てくるまで待たなくてはならない。これはやりにくくてどうにもならないということ。両方だったら、行くところがあれば、ちゃんとそこへ入ったあとついていって検挙することができる。だけれども、用が済んであと出てきたところでなければ、女を引っぱることができない。そういうような、まあ非常に矛盾というか、禁止法と違うところが出てくる。相手は罰しられないのですから……。周旋した者は罰せられますよ。場所を提供した者も罰せられますよ。だけれども、相手になる者は罰しないというのですから、だからのうのうといまもうたいへんな勢いでこれが広がっている。特に基地がひどいようですけれども、東京や大阪のような大都会では、これが行なわれています。このことについて、この相手を罰する、買ったほうも罰せられるということにしなければというのが、いまの第一点であります。この点では、法務大臣はこの実態をどういうようにお考えになりますか。
  86. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えを申し上げます。先生が売春防止法の成立に非常な御功労があって、非常に権威者であるというふうに敬意を表しておるのでありますが、いまの売春防止法が、いまお述べになりましたように、女だけが罰せられて男は罰せられないという点でございますが、私はこれもあまり研究が足りませんのであれですが、何かこう男女同権とかなんとか戦後はやかましいのであれば、これは男も女も同じように処罰することが売春防止の目的を達するのには必要じゃないか、こういうふうに私個人は先生と同じような考え方を持っております。女だけを罰するというのは、何か少し片手落ちのような気がいたします。
  87. 神近市子

    ○神近委員 この実態は——いま破防法学生さんのことがたいへん問題になりましたけれども、この実態を見まして、非常に驚くべきことがあるのです。私のところに十九歳になる高校生の投書が来ました。それには同じ十九歳の者を百人アンケートをとってみた。よほどこれは変わった学生さんだと見えますが、そうしたところが、九十二人まではともかくいまの赤線、隠れ赤線をさがして、そしてそこに行っている。それと同時に、家族あるいは知り合いの女の子、それから驚いたことには、私は動物学者をおたずねしてこのことを聞きましたけれども、動物を使うと書いてあるのですよ。動物を使う者が何人、あるいは家族——家族といっても、雇い人か姉妹らしいのですけれども、姉か妹のようなところ……。そういうような状態で、このアンケートが来ています。お医者さまに聞きますと、大体動物を使うのは犬が一番多いそうですけれども、私も自分の知らない世界のことなんでたまげて、それをいろいろ相談して、実態を聞いて歩いたのですけれども、私どもはそういうところに立ち入る機会がない。ですから、片一方ではそういう変な性のはけ口を求める、片一方ではいまの破防法の問題になっているような実情、ともかく持っている自分のものを発散させるというようなもの、それがあるのですが、いろいろ読んで見ますと、原始民族にはこんなようなことはないのです。これは日本のいまの一つの現象です。こういうことを考えますと、いまおっしゃるように、非常に不完全な売春防止法なんというものをかかえて、対策は持っていますというような顔をしていることは、私はどうも納得できないと思うのです。週刊誌だの何だの私のところにえらく来るのは、赤線を復活しろ、いまの状態では隠れ売春ばかりで、監督のしょうがないじゃないかというような投書なんです。私は、どうしてもそれにこたえるためには、両罰、買った者も罰せられるという一項を加えなければならないと思うのですけれども、この点はいかがでございますか。
  88. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 この売春の問題は、非常に人間なり社会にとって重大なことでございますが、いろいろ意見もある点があると思いますので、政府委員から詳しくひとつ答弁をさせてみたいと思います。
  89. 川井英良

    ○川井政府委員 御心配の御趣旨並びに不安というふうなものについては、私どももよく了解できるわけでございますが、売春の実態というものは、われわれとして、売春防止法違反の事件として処理する場合においては、第一線の警察官が直接タッチいたしておりますので、警察方面にお聞きくださりますと、その事件を通じての実態というものが非常に詳しくわかるのではないかと思うわけでございます。私どもの所管といたしましては、先ほど申し上げましたように、警察から事件が送られてくる、そのわずかの事件を検察官が取り調べしまして、その結果が法務省のほうに報告になるということと、それから御指摘になりました人権擁護との関係でもって取り扱ったものが人権擁護局のほうに報告になるというふうなものが、集約されまして法務大臣の手元にいくということでございますので、法務大臣といたしましては先ほどお答えがございましたけれども、私らも含めまして、法務省の事務当局としましても、売春の実態につきましては必ずしも詳しくないわけでございます。ただ、売春防止法という法律は、厚生省と私のほうの共同の所管のようなかっこうで国会の関係に相なっておりますので、そういう面におきましては、純然たる法律の解釈とか、あるいは運用の仕方とか、あるいは将来の立法、改正というふうな問題につきましては、教えていただきましたような実態にかんがみまして、そのつど適切な立法的な措置を講じていくということが私どもの役目でございまして、そういうふうな観点から、先般も大臣の指示を受けて、事務当局といたしまして、実態に即応して、実態にタッチをして、各官庁から十分な資料説明を受けて、そしてあるべき売春防止の実態について的確な法制の整備に遺憾なきを期せという指示を受けておりますので、そういうふうな観点からも間接的な努力はいたしておりますけれども、具体的なものにつきましては、役所の所管の上で、かなり不十分な点があるということは、一応御了解を賜わっておきたいと思います。
  90. 神近市子

    ○神近委員 これは、国民性というか、国の歴史に大きな関係があるのです。西欧諸国はキリスト教の伝統が非常に強い。一夫一婦ということが伝統ですよ。ところが、日本は、徳川中期くらいからこの売春が始まっている。平家の白拍子が一番最初だといいますけれども、ともかくも、その後徳川末期くらいから吉原をつくるとかいろいろなことがあって、日本には一夫一婦という考え方がないのです。それが西欧と東洋との——仏教には、この貞操ということについての条項はありませんよ。これは禁欲ということは強く教えてあるけれども、この男女間の道徳というものは触れてない。それが今日の考え方の格差をでかしていると思うのですけれども、一番ここで心配されることは、スピロヘータというものであります。これはだれかこのスピロヘータの解釈を説明してくださることができる方がありますか、お役人の中に。——わからなければいいです。これはばい菌ではないというのが、私にはわからないところなんです。スピロヘータ、これが非常な猛毒を含んでいる。それで、一昨年の正月に千葉大学の先生が御発表になったときに、この病気が非常に日本に広がってきて、そしていま長崎、佐世保を中心にしたこの早期顕症梅毒とかなんとかいう——スピロヘータとはおっしゃらなかったのですけれども、これが非常に強烈な勢いで広がって、もう横須賀あるいは東京にも入っている。それで、これが広がりようが非常に早いということ、それから猛毒を含んでいるということが、民族の将来がどうなるか——一昨年の正月に、千葉大学の篤学な先生が、人口の一五%ぐらいにこれが入っている。そのほかに、それから時が二年近く過ぎていますから、これは三〇%とか、そういうところに広がっているんじゃないか。そして、これを広がらせるのは青年でないのです。中年の、財産をつくり、地位をつくり、お金のある豊かな、そう言っちゃ悪いけれど、先生方のような地位の方々が一番たくさんそういう機会をつくっていらっしゃると書いてあるのです。これは私が言っているんじゃないのですよ。ここにちゃんと報告があるのです。久布白落実という人、キリスト教信者でありますから、この問題では非常に神経を使って、アメリカ大使館だの、座間の居留地だの、広島だの、あるいは岩国だのというようなところを、方々調べて歩いていらっしゃるのです。このおそろしいスピロヘータの広がりというものが、日本民族を——それはあの方々は神という頭があるからお考えにならないのですけれども、私はそれを翻訳すると、民族の将来、民族のあしたはどうなるか、ひょっとしたら、そういうことを非常に悪い状態で想像しなければならない、こういうことなんです。ですから、どうしても今日のこの売春の状態を何とかしていただかなくちゃならぬ。私は、いま法務大臣が、やはり両罰のほうがよかろうというお考えに傾かれたということを、たいへんうれしく思って、そうして報告してあげようと思うのですけれども、いままでこの難関がどうしても突破できなかったのです。ひとつこの際、民族のあしたを考えれば、何とか悪い風習をやめさせる。そしてそれには一番に効果のあるところの両罰主義、これをアメリカのニューヨーク法あるいはサンフランシスコ法を参考にごらんになって、ひとつ改善というほうに向かっていただきたいというのが、私のいろいろの御質問なんですけれども、ひとつこの点で強くお考えを願いたいと思います。
  91. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 非常な研究をされて、非常に私重大なことに考えております。特にこれをほっておいて、民族の将来にぬぐうべからざる悪弊がくるということになると、重大な問題でございます。ひとつ先生の御趣旨に沿うように十分努力をしていきたいと考えておりますので、御了承願います。
  92. 神近市子

    ○神近委員 この連れ込み宿は、佐世保には何だか一万軒とかあるということを聞きましたけれど、その次はトルコぶろであります。これはどこにも広がっていっているようですけれど、このトルコぶろができたときに、私はもう国会に出ておりましたかおりませんでしたかちょっと記憶がないのですけれど、銀座に初めてトルコぶろというものができたときに、ちょっと見に来いといわれて見に行ったことがあったのです。そのときは、ああいいもんだな、非常に健康な状態で、男の人が昼間疲れて、ちょっと時間があればここへ来ておふろに入って、そしてマッサージをしてもらえる、なるほどこれは健康ないいところだなといって、私は自分では興味がないものですから行ったことはなかったのですけれど、とにかく店を見せていただいた。そのときは猪俣先生も御一緒じゃなかったかと思うのですがね。それで、さきの国会で参議院に売防法の改正案が出たときに、私はいろいろ御質問して、いまの石井議長が法務大臣であったときにお尋ねしたのですけれど、そのときに、トルコぶろが総理官邸の二百メートル以内のところにできるという問題があったのですよ。それで、外国の人も来るだろうし、いろいろな人の見えるところにトルコぶろをつくるということは、一体どういうことを意味するか、総理官邸は尾崎会館の方角にでも移したらどうかということを、私はおすすめしたのです。そうしたらこれが問題になって、そして結局それは取りやめになったのですけれど、あのときの事情は御存じですか。簡単に規制することができた。公共建設物の二百メートル以内の距離でしたか、それにはトルコぶろは許可してはならないという条文ができたのですけれど、そのことはどなたか御存じですか。
  93. 本庄務

    ○本庄説明員 お答えいたします。トルコぶろにつきましては、御承知のように、四十一年に、各種の弊害が出てまいりましたので議員立法で法律改正がなされまして、一定の地域における制限、あるいは特定の場合における行政処分、こういった規制がなされておるのでございます。
  94. 神近市子

    ○神近委員 昨年の一月ですか、池袋かいわいの百万石という系統のトルコぶろ三軒をあなた方が手入れをなさって、そして一年数ヵ月に一億の利益をあげていたということがここに書いてあるのですけれど、その事件は法務省は御存じないでしょうね。これは警視庁の保安課がやったのですか、それとも警察庁のほうで御指示なさったのですか、どちらですか。
  95. 本庄務

    ○本庄説明員 池袋の百万石というトルコぶろにつきましては警視庁のほうで検挙をしたようでございますが、まだ詳細な報告が入っておりませんので、わかりましたらまたお伝えいたします。
  96. 神近市子

    ○神近委員 これは私実によくやったと思うのです。私のところに、本郷の駒込署あたりの管轄のトルコぶろの実態を、インテリの人らしくて非常に明細に投書してきたのです。そしてその中の一番の売れっ子は一日にお客を何人とるとか、あるいは毎日二人ぐらい予約があるとか、非常に詳しく、名前もその女のアパートも書いてきたので、私、弁護士の方でしたか、党の方にいろいろ事情を聞きますと、警視庁の保安課の課長さんに一人非常にいい人がいる、その人のところに持っていけと言われて、実はそこへ持っていった。そして、第二の投書が来て、何もしないじゃないかというので、私はちょっと気づかっておりましたところが、向こうから電話で調査結果の報告があった。実はきょうトルコぶろの実態を明らかにするにはその方に来ていただいたほうがいいと思ったのですけれど、ゆうべ御相談にあずかったときに私が名刺をちょっとさがし出せなかったものですから、この希望の方を指摘することができなかったのです。これは中国人の資本家ということで、一つ大きな問題を投げて調査したらしいのですけれど、中国人ではなかった。日本人ではあったけれど、ともかくも一年と半くらいの間に一億の利益をあげていたというようなことを考えれば、ほかのトルコぶろがわあっとこのもうけ仕事に入っていくということが、よく理解できるのです。これはどういうことかというと、大体個室をやめさせさえすればトルコぶろの不健康な性格がなくなるということを言う方があるのです。私は、今日のトルコぶろは知らないので何とも言えないのですけれど、悪い方面ばかりを盛んにやるトルコぶろをもう少し強く規制するというようなお気持ちはありませんか。
  97. 本庄務

    ○本庄説明員 先ほどお答えいたしましたように、四十一年の風俗営業取締法の改正によりまして、個室つき浴場、いわゆるトルコぶろにつきまして、売春行為あるいはわいせつ行為が行なわれにくいようにかなり改正されまして、その後おいおいよくなっておるのでございます。完全な密室というものを設けないように、いろいろ条例上の制限を各府県で設けております。なお、最近の実情等をよく調べまして、さらに一段と規制する必要があると思われるようでありますならば、先生の御趣旨に従いまして検討をいたしたいと思います。
  98. 神近市子

    ○神近委員 もうこれだけトルコぶろが売春宿だということがはっきりわかったのですから、規制する必要があるかないかなんという問題じゃないじゃありませんか。少なくも個室だけは禁じたほうがよくないかというのが私の考えで、このキリスト教の御婦人方も、その点をしきりに見て歩いたりあるいは聞いて歩いたりしている。ふろ屋のナかに個室があって、そしてそこで一ふろ浴びてというようなところに魅力があるということを問題にしているので、これは案外公共建設物の周囲は何百メートル離れなければというふうな規制ができるなら——個室というものの性格は、これは何も必要ないのだから、女と男のふろを別々にすれはいいのですから——たいがい女はそんなところに入りには行きませんよ。みんな男の人ですよ。そうですね。いま何を読んでも、女がトルコぶろに入りに行って問題になっていないのですから、男の人ばかりだから、私はその点では、早くこの個室をよすようにすれば、みんなの気風が非常に変わってくると思います。あそこに行けばという腹があるから、みんなぞろぞろ行って、そして誓い子供はお金がない、それで犯罪を犯して、ひったくりだの強盗だのということをやる、こういうことになるのですよ。やはり目ざすところの戸を閉じなければならない。これはなるべく早く個室というものをみんなやめさせるというふうに踏み切るほうがいいと思うのですけれど、その覚悟、やろという腹がありますか。
  99. 本庄務

    ○本庄説明員 先ほども申し上げましたように、四十一年までは完全な個室、いわゆる密室ともいうべき状態であったのでございますが、四十一年の法改正以後は、各府県の条例におきまして、たとえば外から透視し得るような窓を設けるというふうな、いろいろな規制もいたしまして、完全な密室というものを設けないような措置をとっております。その結果、その後の状況はかなり好転しておるわけでございますが、しかし、率直に申しまして、トルコぶろにおける売春等の行為がなくなったということは、残念ながら申せない状態でございます。したがいまして、常時厳重な取り締まりをいたしておるわけでございます。取り締まりでまだ絶滅というところまではいっておりませんが、できるだけ努力をいたしまして、そういう状態に持っていきたいと考えております。なお、現在の規制でもまだ手ぬるい、いわゆる個室的なものを完全になくせという御意見に対しましては、十分検討させていただきました上で結論を出したいと考えております。
  100. 神近市子

    ○神近委員 そしてもう一つのこの特色は、佐世保の場合もそうですけれど、この女の子が未成年者が非常に多いのです。未成年者のほうが業者も喜ぶそうです、それは息が長いから。年とった者をたくさんかかえるよりも、十六、七歳くらいから、ねえさんか何かの名前で戸籍を借りて、そして年齢を偽ってやっているというのが実態なんです。こんなことも調査すればできますね。調査を厳密にして、たとえば戸籍の出たところにだれだれがいるかということを突きとめれば、これはできるはずであります。  それからもう一つ困ることは、これが暴力団をたくさん養っているのです。暴力団につかまると、暴力団の指示であそこに行け、ここをやめろ、佐世保がいけなければ岩国に行け、岩国がいけなければ横須賀に行けというふうに、暴力団がうしろについて回っている。これは非常に困る。女にとっても不幸なことだし、それから日本全体にとっても困ることではないかというように私は考えるのですけれど、これは大臣どういうふうにお考えになりますか。これは、暴力団に引き回されるような状態に女の子がなるということは、日本の経済がこれだけの進歩を遂げているのに、この下層階級に回るところの配分が非常に低いというところに、一つの大きな原因があると思うのです。だから、いま農家の土地問題についても非常に憂慮する意見が出てきていまずけれど、零細農家の女の子が一人立ちするということには、これはからだを売るよりほかに何も生活の方法を知らないのですよ。そういうところで出てきて、あああれは十六かな、十七かなというくらいで暴力団につかまって、おまえはここに来い——何だか報告されたものを読むと、一軒の家に三人も五人もかかえている暴力団がいるのですね。そして狭い家の中でかってな女と寝て、そしてそれを見聞させておくというふうな、私どもが想像できないような実態があるらしいのです。こういうことを考えれば、両罰主義に踏み切って、そして売春というものはどうしてもできないのだということが、私は間接的影響が非常に大きいと思うのです。このことについても、ひとつ暴力団との結びつきということで、いま破防法の問題がたいへん出ていましたけれど、大臣はこれはあり得るとお考えになるか。そしてあり得るなら、この実態はだれか御調査の方が御存じのはずであります。大阪あるいは基地——この報告を見ますと、座間あたりにもあるような気がします。それで、この状態が事実だと考えれば、暴力団のさしがねで女がからだを売って働かなければならないという事実について、大臣はこれに対する療法はどういうようにしたらいいだろうとお考えになりますか。
  101. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 お答えを申し上げます。暴力団のさしがねで女の方がからだを売って歩かなければならぬというのは、これは非常に好ましくない。ひとつ徹底的に暴力団のほうを警察と連絡をとって取り締まりをやって、そういうことがないようにしなければいけない、かように私は考えております。
  102. 神近市子

    ○神近委員 これはいまの売防法で幾らでも規制することはできるのですよ。何条ですか、いまちょっとここに六法全書を持ってきていませんけれど、幾らでもこれを規制することができる、それによって利益を受けた者はみんな罰せられることになっているのだから。だけれど、それをあえて発動しようとなさらぬのは、まあ売春なんていったって昔からあることだからしかたがない、それをいまぎゃあぎゃあ女どもが言ったところでというようなお考えがあなた方にあるのでしょう。そしてまた次には、そういうことを言っては悪いかもしれないけれど、お金がたっぷりどこからか入るというようなことがある。そうすると、一ぱい飲みにいって次にはというようなことが自分の前途に描かれるというようなことも、お役人の頭にあるのじゃないかというようなことが考えられます。だってこれを読んでごらんなさい。一ぱい飲んで買うという人は、大体において地位が安定して、お金が多少ゆっくりできて、家庭ではちゃんと奥さんが子供を預かって安定した生活をしている人だ。それは想像できるのですよ。それで私は、これをフルに解釈すれば、かなりいまの状態を救うことができる。それをあえてなさらないのはお役人の責任で、法律なんかあってもなくても同じことじゃないかという、私のところにくる投書を裏書きしているように考えられるのです。ひとつその点で、決してそうではないけれど、どこに障害があるか、これを完全に実施することのできないなにはどこにあるか。そして両罰主義、そして両罰主義、それからもう一つ大きなものは、これはあとで大臣に読みものを取り寄せて差し上げますけれど、この改革案の中で最も大事なことは、女を依頼した人ですね、ちょっと今夜はひとつ女を連れて来てくれ、そういうような依頼をした人についての二十万くらいの罰金、これをこの女の人たちは案の中に望んでいるのです。いままではあっせんした者、宿を貸した者、これを連れてきた者、こういう者だけを罰していたけれど、今度はひとつ女を連れて来いと言った人が二十万くらいの罰金——これはちょっと痛いと思うのですけれど、実行が可能だと考えますか。これは大臣よりも下の方々が、法制局あたりの方々がよくおわかりじゃないか、これは可能だろうとお考えになりますかどうか。
  103. 本庄務

    ○本庄説明員 いわゆる両罰の問題、それから罰金の問題につきましては、法務省のほうの関係かと思いますから、そういうほうからお答えがあると思いますが、私どものほうの関係といたしましては、先ほど売春の取り締まりをやる役人は、本腰を入れてやる気持ちがあるのかどうか、そういうふうな御趣旨の御質問だったように承ったのでございますが、売春の取り締まりをやる役人といたしましては、いろいろあるわけでございますが、とりあえず末端の第一線といたしましては、警察官でございますので、警察の面につきましてだけお答えを申し上げたいと思います。  売春の取り締まりにつきましては、警察庁をはじめ各都道府県警察におきましても、法律に従いまして厳重な取り締まりを実施いたしておりますし、また今後も続けていくつもりでございます。ちなみに参考までに去年四十二年の一年間の売春関係事犯の警察における総検挙件数を申し上げますと、一万二千二百四件ございます。検挙人員が一万三百二十七人でございます。この中身はいろいろございます。この一万二千件という件数で決して私たちは満足しているわけではございませんので、今後さらに売春取り締まりにつきましては、力を傾注してまいりたいと思っております。  ただ、どういう点に障害があるのかという御質問がございましたが、実は捜査の面、取り締まりの面におきまして、いろいろむずかしい点がございます。と申しますのは、先方もいろんな手を考えまして、りこうなというか、あるいは悪質な手口でやってくるわけでございます。私たちもそれに対応いたしまして、それを上回る捜査方法、取り締まり手段を考えておるわけでございますが、抽象的なお話を申し上げますよりも、困難を示す一つの例を申し上げますと、たとえばある旅館あるいは風俗営業がどうも売春の容疑がある、いろいろ聞き込みとか投書等からも、どうも売春宿らしい。しかし、そういう投書とか聞き込みだけでは、踏み込むというわけにはまいりません。したがいまして、そのまわりを相当期間張り込むようなことをいたしまして、そこから出て来るお客らしき者に、道路のものかげで呼びとめて、いろいろ事情を聞く。これは参考人として聞くわけでごさいますが、警察へ引っぱっていくということはできないわけでございます。丁重に協力を求めて、もよりの派出所にでも来ていただいて、いろいろ事情をお聞きするというわけでございます。しかし、これはあくまでも任意でございますから、本人が拒否した場合には、もちろん成功いたしませんし、またその求めに応じて派出所等へ来られた方でありましても、売春の事実について、つまり自分の売春の事実についてすらすらと供述をされるということは、これはきわめてレアケースでございます。そういうわけで、かりに百人そういう人をさがしたといたしましても、そのうちから証拠となるような供述の得られるものは、はたして一つあるか、二つあるか、こういったような、考えようによっては、非常にむだとも言える、あるいはまた非常に困難な努力を重ねておるわけでございます。これはほんの一例として申し上げたわけでございますが、それ以外にも、いろいろ売春取り締まりにつきましては、一般の犯罪捜査と違った困難性もございます。たとえば、いわゆる売春婦、これは私たちのほうでは被害婦女子と言っておりますが、これらにつきましても、実はあまり被害意識がないわけでございます。したがいまして、そういう方から供述を得るということも、これもきわめて困難でございます。そういったことを克服いたしまして、昨年は一万二千件の件数をあげておるわけでございますが、そういう困難があるといたしましても、それに打ちかってなおかつことしも努力を続けてまいりたいと考えております。よろしくお願いいたす次第でございます。
  104. 神近市子

    ○神近委員 いまの警察の骨折りが非常にきびしいということは、連れ込みがあったならば、それが済んで出るまで変装して、そこへしゃがんでいなければならない。警察の人の人権擁護を考えれば、片方はぬくぬくと何かやっている、片方はどこかの軒下か何かに、雪の降る日でも、寒い日でも立っていなければならない。これは矛盾だと考えるのですけれども、それからそのほかに、いまあなたがおっしゃったのでふっと思い出したけれど、犯罪の実証をつかむためには、ごみ屋のような風をしてごみ箱を探るというようなこともあるらしいですね。そうして、それに使われた用具が出てくることによってその店をしぼるというようなこと、これは逃げられるかもしれないし、逃げられないで、経営者が頭が悪ければ吐くということもあるだろうと思うのです。  そういういまの実態なので、この博覧会を前にした大阪の人たちの不安ということもわかります。三年の間にはたくさんの労務者が全国から集まってきて、そうしてこれには道徳もなければ法律もないのだから、飲み屋があれば飲みに行く、また金があれば飲みに行くし、また女がいればつかまえるということ、これが博覧会のおみやげとして残ったら困るというので、大阪の人はだいへん心配をして、ここにこの法の改正の要点を書いたものを持ってこられたのです。いろいろありますけれど、一番強いところは、買う人、両罰主義にこれを変えなければならないということであります。私は、大臣に要請書を一組お届けしようと思いますから、ぜひひとつ——これは大阪の万国博覧会のことを考えても、日本が世界の人に笑われて、ああ日本は何と言ったって、経済的には三番目かもしれないけれども、東洋の野蛮国の一つだなということを言わさないためにも、まあキリスト教を主張するのではありませんけれど、そのモラルというものは、やはり人間生活の一つの目安として私はいいと思うのです、この伝統というものは。それも非常にくずれていますけれども、いまはね。  それでもう一つのきめ手は、旅館に入ったときに、これはイギリスの法律がそうですけれど、女と男が旅館なり泊まり屋に入るときに、夫婦だというようなちゃんと立証するものがなければ入れなかった——いまはそれがあるかどうか知りませんが、かつては入れなかった。これは御存じですか。そしてそれをそのまま写し取るというわけにもいかないでしょうけれど、ある程度こういう乱暴な売春を規制するためには、なるほどというようなことが考えられる。これは大臣、旅館法になりますけれども、規制するためにはこれも一つの考え方ではないかと思うのですけれど、いかがですか。
  105. 川井英良

    ○川井政府委員 旅館の問題でございますが、こういうふうな方法も、一つの方法かと存じますけれども、それにはそれでまた別な弊害も生じてくることが考えられますので、法務省としましては、旅館業法の改正問題になってくると思いまするけれども、それらにつきまして、また御趣旨のあるところを所管の省のほうへお伝えしてみたい、こう思います。
  106. 神近市子

    ○神近委員 去年の国会に、参議院で、大体こういうような趣旨を織り込んだ改正案が出たんです。それから私どもも、これを通したほうが——前の禁止法に類するものですけれども、今日の情勢下に、去年はもう十年たっておりましたから、ちょっとも実績を上げないで、かえってしょっちゅう裏をかかれているというような事態の前では、やはり両罰主義がいいのじゃないかということを考えて、法務大臣に御相談したのですけれども、参議院から回ってこなかったように思います。今度も参議院に出すようなふうですけれども、もし出た場合には、大臣は、これをあらためてもう一ぺん、世界博覧会等と考え合わせて、考え直していいというお考えがあるかどうか、ちょっとその点を伺わせていただきます。石井さんは、その点は非常にはっきりしておりました。法制局長官も、そのときとは違うようですけれども、売春状態の様相の非常に悪いのは、これは現実の行政のあり方が悪いからだ、こういうようなことを言って、それではその行政を直すのかどうかというところには、御返事がなかったように思うです。私は、民族の長い将来を考えて、ばい菌の蔓延ということ——いま三〇%くらいの人がもしかかっているとしたら、これがわあっと国民全体に広がるのは、そんなに長いことではない。これはどうしても早く手を打たなければならないと考えて、皆さんはおかしげな質問をするとお考えになるでしょうけれども、私どもの子孫のあしたのことを考えれば、これはぜひひとつ取り上げていただきたいと思うのです。この点について、大臣のお考えを承りたいと思います。
  107. 赤間文三

    ○赤間国務大臣 閣係当局ともひとつ十分連絡をとりまして、実現ができるように、前向きに検討していきたい、かように考えております。
  108. 神近市子

    ○神近委員 ひょっとしたら、破防法ほどはでではないけれども、私どもの民族のあしたには非常に大きな影響を持っている。私の質問は急支度であまり十分でなかったかもしれませんが、ひとつ民族全体の問題として考えて——この収賄が起こるのも、女の人たちが非常に大きく介在しています。これは私が自分で創作したのではないからおこらないでいただきたいのですけれども、金もできる、身分もできる、家族も安定しているという場合には、男の興味はいつでも女がいないかということです。そして、どこかへ行って一ぱい飲んで踊ってもらってもいいだろうが、いろいろして、そしてそのあとがそこに落ち込むということは、これはもう定石のようであります。最近盛んに各省で摘発されているところの汚職あるいは収賄、こういうものの原因が、どうもここらにあるように思うのです。今日はゴルフとかいうことが出ていますけれども、いままではほとんどがこの飲み屋、あるいはこういう旅館、あるいは酒店だったということを考えれば、民族全体として考えるときには、これは非常によく考えてもいいことではないかと思います。これはひとつぜひ、お役人たちも、何だ、あいつが出てきて何か言っているが、おれたちの知ることではないという調子でなくて、ほんとうに日本の行政も立法もきれいなものにして、民族の健康な成長を願うということになれば、どうしてもここから始めなくちゃならぬということをお考えになって、ひとつ御研究をお願いいたします。
  109. 永田亮一

    永田委員長 次回は、来たる十九日午前十時より理事会、理事会散会後に委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時七分散会