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1968-03-07 第58回国会 衆議院 法務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年三月七日(火曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 永田 亮一君    理事 大竹 太郎君 理事 田中伊三次君    理事 濱野 清吾君 理事 猪俣 浩三君    理事 神近 市子君       鍛冶 良作君    瀬戸山三男君       千葉 三郎君    中馬 辰猪君       馬場 元治君    中谷 鉄也君       成田 知巳君    岡沢 完治君       山田 太郎君    林  百郎君  出席政府委員         法務政務次官  進藤 一馬君  委員外出席者         法務大臣官房司         法法制調査部長 川島 一郎君         最高裁判所事務         総局総務局長  寺田 治郎君         専  門  員 福山 忠義君     ————————————— 三月七日  委員岡田春夫君、西村榮一君及び谷口善太郎君  辞任につき、その補欠として中谷鉄也君、岡澤  完治君及び林百郎君が議長指名委員に選任  された。 同日  委員中谷鉄也君及び岡沢完治辞任につき、そ  の補欠として岡田春夫君及び西村榮一君が議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内  閣提出第五三号)      ————◇—————
  2. 永田亮一

    永田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、これを許します。大竹太郎君。
  3. 大竹太郎

    大竹委員 まず第一にお聞きいたしたいのでありますが、申し上げるまでもなく、裁判が非常におくれるというような問題、また家庭裁判所における少年事件の取り扱いその他にはなかなか行き届かない点があるというような問題、その他、御承知のように、執行官法が施行されるについては、裁判所事務官相当増員をして、いままで執達吏が保管をしていた金銭その他を裁判所において保管をする体制に順次移行していくというような問題等々から、相当この裁判官調査官あるいは書記官事務官等増員ということがはかられなければならないわけでありますが、一面、御承知のように、国家財政硬直化というようなことから、各省の部局はもちろんのこと、また人員その他についてもできるだけ圧縮をして減らしていこうという面もあるわけだと思います。それにいたしましても、いままで申し上げましたような裁判所要請というようなものから見ますと、判事増員が十二名、それから書記官調査官、それから一般職員を入れて、裁判官以外の職員が十三人しか増員していないというようなことからいたしますと、ある意味においては非常に心細い気もするわけでありますが、ことしの予算要求にあたっての裁判所側のいわゆる大蔵省に対する増員要求というようなものと比較検討して、ことしの増員というものをまずひとつ御説明をいただきたいというふうに思うわけであります。
  4. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 ただいま大竹委員からお尋ねのございました裁判所増員数が不十分ではないかというお話の点、これはまことにごもっともな点でございます。当初内閣に対してどの程度の数を要求したかというお話の点につきましては、当初出しましたものでは五百名ばかりを要求いたしておったわけであります。そうして最終的にこの法案の上では、いま御審議いただいております判事裁判官十二名、一般職員十三名、計二十五名というところに落ちついたわけでございます。ただ、ことしの定員関係は、非常に特殊な環境にございます。いま大竹委員お話の中にもその問題が出てまいりましたので、ちょっとその点について補足して、ふえんして御説明さしていただきたいと考えるわけでございます。  まず一つには、いま大竹委員お話にもございました、いわゆる財政硬直化その他に伴う国家公務員定員の縮減ということが、予算要求の後になっていろいろ問題になってまいったという点との関連でございます。この点につきましては、これまたつとに御承知のとおり、閣議で御決定になりました中には、裁判所あるいは国会職員については触れておいでになりませんし、また私どものほうに正式の文書等でその点についての御要請を受けたこともないわけであります。ただ、内閣からさような御要請を受けるかどうかということは別問題といたしまして、私どもとしてもやはり国家公務員であり、ことばがあるいは過ぎるかもしれませんが、要するに税金で養われておるところの人間であるという意味におきましては、国家財政全体ということを全然無視して考えるわけにもまいらないわけでございます。もっとも、いま大竹委員お話にもございましたとおり、裁判は現在非常におくれておるというお話がいろいろあるわけでございまして、おそらく国民の方々も裁判所が多数の職員をかかえ過ぎておるというお気持ちはお持ちになっておらないであろう、むしろ裁判所職員が不足しておって、裁判をもっと早くやれというお気持ちのほうが強いであろう、かように確信いたしておるわけでございますので、そういう意味からいえば、裁判部門において職員を減らすということは、私どもとしては考えられないことでございます。ただ、私どもの機構の中にも、裁判部門といわゆる司法行政部門とございます。司法行政部門と申しますのは、たとえばいろいろ人事的なことをやったり、あるいはお金の計算をしたり、あるいはその他報告をとったりというような裏仕事でございます。そういう司法行政の面におきましては、これはある程度やはり一つ行政として、行政管理庁等でいろいろおっしゃっておることを準用と申しますか、そういう精神にかんがみて、われわれも反省すべき問題があり得るのじゃないかということが一つあるわけでございます。端的に申し上げますれば、たとえば報告事項の整理というようなことが行政のほうでうたわれておりますことは、われわれにもやはり考えていい問題を含んでおるというのが一点でございます。  それからもう一点、これがことしの非常に特殊の事情でございますが、いま大竹委員お話にもございましたように、ことしの中ごろからいわゆる反則金制度というものが始まるわけでございます。私どもは、この制度として反則金制度というものには若干の疑義も持っておらないわけではなかったのでございますけれども、しかしながら、国会の御決定によりましてそういう制度が始まるということになりますれば、そういう制度を前提として裁判手続がどういうふうになっていくかということは、これはもうすぐ始まる問題でございますので、当然考えなければならない。そういう点からまいりますと、これはいろいろ計算のしかたによっても違いますけれども、現在、いわゆる道路交通法違反事件としてまいっております事件、大まかにいって四百万件と申しますが、それがまず百五十万件程度にはなるであろうということがいわれておるわけでございます。残りの二百五十万件に近いものが、警察で処理されることになるわけでございます。その制度の当否は別といたしまして、実際においてさようなことになりますと、つまり裁判所受件が相当大幅に減るということになるわけでございます。ただ、この点につきましても、減ります受件は非常に簡単な事件でございまして、裁判所のほうへ残ってまいります百五十万件というのが非常にむずかしい事件でございますから、そう半分以下になるから職員を半分以下にできるというものではございません。それはとうていそうはまいりません。しかしながら、ともかくも二百五十万件近いものが減るという見通しのもとにおいては、その職員というものはいわばほかのほうに定員転換をする。必ずしも当該職員を移動させるという意味ではございませんが、定員上は定員転換をするということも、やはり当然考えるべき問題である。そういうところから、たとえば、いずれあとお尋ねがあろうと思いますが、執行関係事務官というようなものにつきましても、増員要求をいたしましたら、これは反則金関係でいわば縮減されます定員をもって充てるというような考え方でなってまいったわけでございます。そういう意味では、私どもとしては、本年の増員は、実質的には百人近いものというふうに理解いたしておるわけでございます。ただ、それが定員法にあらわれます限度では二十五人というふうになってまいっておる、かように御理解いただきたいわけでございます。
  5. 大竹太郎

    大竹委員 次に、裁判官増員の問題について一、二お聞きしたいのでありますが、提案理由説明によりますと、高等裁判所における裁判官地方裁判所における借地訟事件のための増員合わせて十二人ということになっておりますが、この高等裁判所のほうが何人、それから地方裁判所借地訟事件のほうで何人という内訳をお聞かせいただきたいと思います。  次に、高等裁判所のほうでございますが、前回の特別国会におきましても、たしか高等裁判所裁判官増員していると思うのでありまして、そのときにいろいろ高等裁判所における訴訟事件受理件数及び処理実情等について御説明をいただいたのでありますが、たしかこの前も十分の増員でなかった記憶もあるのでありますが、その後の実情についてお聞かせいただきたいと思います。
  6. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 まず、判事増員高裁地裁のどちらで何名増員になるかという点のお尋ねでございますが、お手元に法務省のほうから裁判所職員定員法の一部を改正する法律案参考資料というものをお届けいたしておると思います。実質的に私どものほうで資料を準備いたしたものでございますので、私から説明させていただきたいと存じます。  それの三ページに「下級裁判所裁判官定員・現在員等」というのがございます。その高裁の欄のところの現定員が二百五十四となっておりまして、その一番下の行に改正後の定員二百六十三となっております。すなわち高裁において九人の増員ということでございます。それから地裁のほうでございますが、判事八百二となっておりますのが、改正後の定員八百五となっております。三人の増員でございます。合計十二人ということでございまして、これは非常に不十分でございますが、充員等関係で考えまして、この程度の数というふうに考えたわけでございます。  それから先般来高裁のほうに裁判官増員をしていただきました。その実情及びそれの効果というお話でございますが、これはいまから二年前の昭和四十一年度定員法で、高裁判事二十七人の増員をしていただいたわけでございます。これは過去の裁判官増員の沿革から申しましても、かなり大幅な増員に当たっております。数としては二十七人でわずかなようでございますが、裁判官というものはなかなか一朝一夕に養成できるものではございませんので、そういう点では、二十七人というのは相当大幅な増員ができたわけでございます。これはたまたまこの年度判事補資格者等が多かった、充員源が恵まれておったということも関係しておるわけでございますが、そういうことで四十一年度に二十七人の増員がございました。昨年度、現在まだその年度中でございますが、四十二年度におきましては、いろいろ充員等関係地裁のほうに重点を置きました関係から、高裁判事増員はなかったわけでございます。ゼロでございます。そうしてこのたび四十三年度において、九人の増員という経過になっておるわけでございます。  そこで、その事件処理状況でございますが、まず受件数の移動につきましては、お手元資料の八ページに、高等裁判所民事刑事受件数というものが出ております。これに基づきましてごく概略を申し上げますと、まず民事におきましては、訴訟事件は上から四行目のところに出ておる数字でございまして、三十九年の一万四十一件から四十年に若干減りまして、四十一年に一万三百九十七件と、また少しふえておるわけでございます。ただ、この資料をつくります当時は、まだ四十二年の件数が出ておりませんでしたのでここに書き入れてございませんが、その後判明いたしましたところでは、四十二年は一万百八十五件ということで、また若干減っておる。大体横ばいから漸増というのが、高裁民事受件実情でございます。それから刑事のほうは下から三行目にございますが、三十九年度は一万二千四十六件、四十年度一万二千三百四十五件、それから四十一年度一万一千九百二十二件で、四十二年度におきましては一万四百九十七件ということで、これも大体横ばいから漸減ということでございます。大まかに申し上げまして、高裁では、民事は大体横ばいであるけれども、少しずつふえぎみである、刑事のほうは大体横ばいであるけれども、少しずつ減りぎみであるというのが、新受件数実情でございます。  そこで、それの処理の実態でございますが、それにつきましては、お手元資料の一二ページに審理期間がございます。この平均審理期間の一番上の欄の二つが高裁でございますが、四十一年度におきましては民事が十七・七カ月、刑事が六・四カ月となっております。この審理期間も大体横ばいでございますが、四十一年、コンマ以下ではございますが、少し延びぎみであるということでございます。実は私どももこの統計をつくりまして、四十一年に二十七人という高裁判事のかなり大幅な増員をしたにもかかわらず、わずかではあるけれども延びぎみであるということはきわめて問題であるということで、その内容をいろいろ調査してみたわけでございます。そういたしましたところが、一つには、四十一年と申しましても、司法年度会計年度が若干ずれております。その関係もあります。しかし、おもな点は、増員になりましたために、かなり古い事件に力を入れて処理をした。ここに出ております平均審理期間は、既済事件平均審理期間でございます。つまりいわば、ことばは妥当でございませんが、たまっておりました古い事件をこの際一気に片づけたということが、この審理期間漸増につながっておるようでございます。その証拠と申し上げましてはなんでございますが、たとえば民事事件で申しますと、未済平均審理期間はかなり短くなっておるわけでございます。実はこの表にそれが出ておらないわけでございますが、未済のほうの平均審理期間は、四十年は十七・六月でございましたのが、四十一年には十六・七月と、一月近く短くなっております。と申しますのは、古い事件を一挙に片づけたために、既済事件平均審理期間にあらわれてきた、かような関係のようでございます。それから刑事事件関係におきましても、これは未済件数が、ここに出ておりませんが、四十年には五千八百件ぐらいありました未済事件が、四十年末には五千二百件、さらに昨年末には四千五百件、この三年間でかなり大幅に未済事件が減っておるわけでございます。こういう点が、先ほど定員法改正で二十七人の増員をしていただきましたことの影響として出てまいっておる、そういう意味では、審理期間漸減し、未済事件漸減の方向にはあると申し上げて差しつかえないであろうと思います。ただしかしながら、これではまだ非常に不十分でございますので、今後とも増員努力をしてまいらなければならない、かように考えておるわけでございます。
  7. 大竹太郎

    大竹委員 いま詳細に説明をいただいたのでありますが、この三ページの表を見て感じたのでありますが、ここで十二人が増加した。しかし、一面、この欠員の欄を見ますと、長官判事で三十一人、判事補が十四人、簡裁判事が二十九人の欠員合計すると七十四人の欠員になるようでありますが、これは昭和四十二年十二月一日ということでございますが、この欠員増員を比較してみますと、増員ももちろん必要でありますけれども、考えようによっては、欠員——給源その他の問題、それからほかの職と違いまして、いつでも採用するというわけにもまいらぬかとも思いますが、この欠員を減らす努力をすることがむしろ大事であり、そして裁判の迅速その他には大切だと思うのでありますが、この欠員は十二月一日の状況でありまして、これはいつの時点をとってもこういうことになっておるのでありますか。また、これの補充は一体どういうようなことになっておるのでありますか、それをお聞きいたします。
  8. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 ただいまの大竹委員お話の点はまことにごもっともな点でございまして、毎回定員法の御審議をいただきます際に、いろいろ御説明を申し上げる関係に当たっておる最も問題の点でございます。  いま大竹委員からも十二月一日ということを繰り返し御指摘ございましたように、ちょうど定員法の御審議をいただきます際につくります資料時点が、十二月、一月というような欠員の比較的多い時期に当たりますために、欠員をかかえながらなおかつ増員をするのはおかしいという御疑問なり御指摘は、まことにごもっともな関係になるわけでございます。これまた、いま大竹委員から御指摘のございましたように、裁判官というのは随時採用するということがきわめて困難でございます。むろん全然不可能ではございませんし、実際にもございます。たとえば弁護士から来ていただく、あるいは検察官から来ていただくというような場合には、これは六月に来ていただいたり八月に来ていただいたり、随時来ていただけるわけでございますが、大部分の者は、やはり司法試験に合格しまして司法修習を終えて来る判事補、その判事補が十年の任期をたちましてなってまいります判事、こういうことになりますので、いわばその卒業時期と申しますか、判事補から判事に任官する時期というのが、すべて三月末から四月の初めということになるわけでございます。したがいまして、その四月の中旬ぐらいの時点におきましては、この欠員は全部埋まるという関係になるわけでございますが、それからまた一年間に退職その他がございますと、欠員ができてまいる、そうして十二月の時点でかなり大きな欠員をかかえるということになるわけでございます。こういう抽象的な点は大竹委員のつとに御承知の問題でありますが、それならば本年の増員関係はどうなるのかという関係でございますけれども、これは現在判事に三十一人の欠員がございますが、これからあと三月までの時点——いますでに三月になっておりますが、三月の末か四月の初めころまでの時点にまだ三十人くらいの退職者がございまして、結局判事欠員が六十人前後になる関係になっておるわけでございます。そしてその上に十二人の増員をしていただく、つまり七十人くらいということになるわけでございます。それでその給源でございますけれども判事補から判事になります資格を持っております者は、三月末でやはり約七十人くらいございまして、これをもって大部分充当する。その不足の部分と申しますか、余りを検察官なり弁護士から来ていただく方で埋めるということで、いまのところ、その人数についての充員見通しを持っておるわけでございます。そういうふうにしてあきました判事補のほうの欠員、現在は十四名でございますが、この上にさらに七十人近い者が判事になりますので、判事補欠員は八十人前後になるわけでございますが、幸いにして本年度司法研修所を卒業します者は、かなり多くの者が裁判官を希望しておるようでございます。これまた例年御心配をいただいておる問題でございますが、現在の時点におきまして、大体九十人近い裁判官志望者がおられます。これは例年から見ますと、かなり高い数字でございます。そういう関係で、判事補なり簡裁判事充員につきましても、本年度の場合はある程度自信を持って申し上げられるというような実情になるわけでございます。
  9. 大竹太郎

    大竹委員 次に、地裁のほうの判事増員についてお聞きしたいのでありますが、この説明書にもございますように、たしか一昨年借地法改正借地借家の非訟事件制度が新たにできたわけでありますが、これについて三人増員ができたという先ほどのお話でありますけれども、現在員が七百九十一名ということになっておりますが、この非訟事件を担当される判事というものは、地方によってはそれだけを担当するということもないと思いますけれども、その実情は一体どうなっておるのかということを、まずお聞かせを願いたいと思います。
  10. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 非訟事件に関するお尋ねでございますので、まず統計的な数字を申し上げたいと思いますが、お手元資料の一三ページ、借地訟事件の新受・既済未済件数表がございます。これは六月に制度が発足しましてから十一月までの半年間の計数でございます。その後十二月の計数もわかっておりますが、ちょうど六月から十一月というと半年分でございますので、これを二倍すれば一年分がわかるという意味では、あるいはこのほうがおわかりやすいかと思われるのであります。その件数でまいりますと、合計受件数が五百十件ということになっておるわけでございます。したがいまして、これを二倍いたしますと、一年間の新受が千件になるわけでございます。この千件という件数は、私ども見通しから比べると、非常に少ない数字でございます。昨年の予算折衝の段階でも、いろいろ私どもは私どもとして見通しを立て、また内閣なり大蔵省におかれてもいろいろ見通しをお立てになりましたわけでございます。そうしていろいろやりまして、最終的に増員基礎になるものとしては、審判事件が二千七百件くらい年間あるだろう、これも非常に腰だめ的な数字であったわけでございますが、とにかく三千件近いものは出るであろうという見通しで、増員等の配慮をお願したわけでございますが、実質的にはこういうふうにかなり少ないわけでございます。ただしかしながら、この数字制度の発足のきわめて初期のものでございまして、今後次第にこういう制度の存在が国民一般に理解されるに伴いまして、漸増してまいるのではないか、かように考えるわけでございます。  その裁判官の担当は、いま大竹委員の御指摘のとおり、東京では専属でやっておりますけれども、大阪でもいろいろそういう話もございましたが、現在のところ、まだ事件が少ないものですから専属でいたしておりませんので、専任の裁判官がこれに従事するということを申し上げるわけにはまいらないわけでございますが、ただ増員要求についての基礎となった件数から見ると非常に少ない。したがって、またこれが四十三年の増員のときにも響いてきておる、かような関係になるわけでございます。
  11. 大竹太郎

    大竹委員 最初の予想よりも非常に少なかったということでありますが、つい二、三日前の新聞でも、高裁においてこの問題だけで何か御会同をされて、一口にいえば、非常に便利なこの法律のPRが足らぬのじゃないか、もう少し趣旨を徹底して、この制度を利用するようにしたいという趣旨お話もあったやに新聞等で見ておるわけであります。これは非常にいい制度だと思いますが、ただそこで非常に問題なのは、いまこれは直接刑法には関係ありませんけれども、非常に練達たんのう判事をこれに充てなければいけないという問題と、いま一つは、この制度が新たに採用しました鑑定委員の人選、それから鑑定委員をどういうように運用するかということが非常に大きな問題であり、そしてまたこの制度を生かす大切なかなめだというふうに思っておりますが、ついででありますから、この鑑定委員人数、あるいはどういうような職業の人を選んでおるのか。どういう年配の人を選んでおるのか。それからこの半年間の運営がどういうようになっているか。これはまだこの制度が発足してからわずかでありますので、十分な御調査ができていないと思いますが、この際ひとつお聞きしておきたいと思います。
  12. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 ただいま大竹委員からお話のございました点は、所管といたしましては民事局長所管になるわけでございますが、いま大竹委員からもお話がございましたとおり、実は最高裁判所では、一昨日この問題についての全国の民事裁判官の、この事件担当の裁判官の会同を開きまして、そしてそれの運用等につきましていろいろ協議をいたしました。その会同のあと始末、整理等もいたしておりますので、きょう参っておりませんので、私がかわって御説明申し上げます。あるいは不十分な点があれば、御了承いただきたいと思います。  いま御指摘のございましたように、この制度ができました当時、鑑定委員というものが非常に重要な役割りをなすものであるということが各方面からも指摘され、また私どももさように理解したわけでございます。そこで、それにつきまして、まず最高裁判所では、制度の発足に先立ちまして、鑑定委員規則という一つ最高裁判所の規則をつくりまして、これで適格者あるいは不適格者ということについての非常に大まかな一つの基準を定めた、さらに選任についてのいろいろな手続き等も定めたわけでございます。そうしてその規則に基づきまして、さらに最高裁判所から通達を出しまして、その通達によりまして、たとえば一例を申し上げますと、弁護士さんを鑑定委員に選ぶ場合には、弁護士会の意見を十分に聞いて、委員の方を推薦していただく、その推薦によってやる、こういうふうなこまかい手続きをさらに通達できめたわけでございます。  そういうやり方で慎重を期してやってまいっているつもりでございますが、現在の大体のところを申し上げますと、鑑定委員は大体四千人くらいいるわけでございます。そうしてこれがごく大まかに分けて、三種類になるわけでございます。第一の種類が不動産の取引についての専門家、たとえば鑑定士でありますとか、建築士でありますとか、あるいは土地家屋調査士でありますとか、不動産の取引のほうの専門家、これが約千四百名ほど、三〇数%でございます。次に法律の専門家、これは弁護士さんでございますが、これが千二百名くらい、約三〇%ばかりでございます。それからそのほかにその他の学識経験者、これが千六百名くらいで三五%というような数字になっております。大まかに分けて、この三種類ともにほぼ同じくらいの数でございます。そうして具体的に鑑定委員会を構成いたします場合には、原則としましてそれぞれの種類から一人ずつ出ていただく。つまり法律の専門家と不動産の専門家という組み合わせで鑑定委員会をつくって鑑定委員会の運用に当たるわけでございます。  この鑑定の結果でございますが、これは実はこの審理事件の中にも取り下げ等で終わってしまうものもかなりございまして、そういうものについては鑑定に付しておりませんが、最終的に認容の裁判をする場合には、必ず鑑定委員会の意見を聞いてやっているわけでございます。その鑑定委員会の仕事は、大体平均して一月くらいで終わっておるのでございます。そうしてそれに基づきまして裁判が行なわれます場合に、いわゆる認容の裁判、つまり内容のある裁判をします場合には、大体三カ月から四カ月くらいが平均の所要期間でございまして、一般民事事件に比べますと、かなり迅速に行なわれておると思います。取り下げ等の事件も含めまして平均をとりますと、二カ月くらいの審理期間ということになっているわけでございます。ただ、非常にむずかしいのは、鑑定委員会として、たとえば借地権の価額というものの鑑定は簡単でございますけれども、その借地権の価額を、たとえば賃貸人が買い受けを求めた場合に、そのいろいろ値上がり利益というようなものをどういう比率で借地人に帰属させるか、あるいは賃貸人に帰属させるか。全部支払ってしまうと、賃貸人は非常に損でございます。そうかといって全部賃貸人の利益になるようなこともおかしいじゃないか。その辺のところに法律問題と申しますか、あるいは経験則と申しますか、非常にむずかしい問題がありまして、そういうところが、いわば論議の対象になりつつある問題のように理解しているわけでございます。
  13. 大竹太郎

    大竹委員 次に、判事以外の職員について若干お聞きしたいのでありますが、この説明書を見ますと、書記官家庭裁判所調査官事務官及び庁舎の管理職員、合わせて十三名増加するということになっておりますが、そのまず内訳をお聞きいたします。
  14. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 この関係は非常に複雑でございます。まず書記官でございますが、書記官は一方で二十人くらいの増の要素、それから他方で十三人の減の要素というものがございますので、結局において七人の増ということでございます。それから家裁の調査官は二十人、これはただの増でございます。それから事務官等につきましては、一方で二十人の増の要素、他方で六十四の減の要素がございますので、差し引きいたしまして四十四の減というのが出てまいっておるわけでございます。それから、いわゆる行政職(二)表の職員、これは三十人の増、こういう数字になるわけでございます。その内容は、先ほど来申し上げましたお手元資料の四ページの右端のところに出ておるわけでございますが、ただ、これはいわばそういう計算をいたしました最終的な増減の答えだけを出しておるわけでございます。これは、いま私ども申し上げましたいろいろ複雑な要素の計算をいたしました答えだけが出ておるわけでございます。
  15. 大竹太郎

    大竹委員 最近少年事件が非常にふえてきて、調査官相当増員しなければいけないということでありまして、いまお聞きすれば、調査官は一番たくさんの二十人が増加されているということでありまして、非常にけっこうなのでありますが、それにしても、私ども聞くのは、まだまだ事件調査に追われて十分な機能が発揮できないということを聞くのでありますが、現状では調査官が担当している件数は一人あたり一体どのくらいになっているものか、その他、今度増加すればどういうことになるのか、今後の見通しというようなものを、この際お聞かせ願っておきたいと思います。
  16. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 まず、家庭裁判所事件件数でございますが、これはお手許の資料の十一ページにございます。家事と少年に分かれておりますが、一々読み上げることを省略させていただきますけれども、これは家事のほうは漸減というような数字でございます。三十九年から四十一年までの間ではそれほど顕著ではございませんが、たとえば二十九年当時は三十四万件もございまして、それから比べますとかなり減っておるという関係でございます。それに対して少年事件のほうは、これも大体横ばいではございますが、漸増、ときにはかなり大幅な増ということになっております。特にふえておりますのは、道路交通違反の事件の、比較的軽微な事件でございますが、そういうような事件がふえておるわけでございます。ただ、四十二年度は、ここに出ておりませんが、四十一年よりは若干減っておるようでございます。  ところで、調査官のほうでございますが、調査官の数はお手元資料の先ほどの四ページのところの上から三行目のところにございまして、千三百七十四が千三百九十四に二十人増ということでございます。これも七、八年前に比べますと、二百人ばかりもふえておるわけでございますから、数の点では、ある程度事件もふえ、調査官もふやしていただいておる点もあるわけでございます。ただ、若干事件の増に追いつきません面がありますのと、さらに内容的にもっと立ち入った調査がしたいという点にいまだ十分ならざるものがあるというのが、家庭裁判所のいまの悩みでございます。ただ、一人あたりの件数という点になりますと、これは少年事件については一応全部調査官が担当するわけでございますが、家事事件は、きわめて簡単なものもございます関係で、全部調査をやるわけではございませんで、大体三分の一くらいなものが調査官の手にかかるわけでございます。そういう関係で、その意味での件数自体はさほど多くはない。家事の関係では、審判、調停を合わせましても、年間二百五、六十件というものでございます。そう大きな数でもないのではないかと思うわけでございます。これに対しまして、少年のほうでございますが、少年のほうは一般の保護事件と交通事件とに分かれておりますが、交通事件につきましては、三百件近いものを担当いたしておるわけでございますし、それに対しまして、一般の保護事件は、その一割あまりになるわけでございます。そのようにそれぞれ事件の種類によって若干違いますが、私どもが今期増員をお願いしました一番の中心は、少年の資質、性格、素質というものについてもう少し心理学その他の面から立ち入った調査をして処分を妥当にしたいというのが眼目でございます。
  17. 大竹太郎

    大竹委員 調査官の件をお聞きしたのでありますが、私ども承知しているところによりますと、もちろんこの調査官を今後もできるだけもっとふやしていかなければならないと思いますが、裁判所裁判官そのものも、どうも家庭裁判所のほうが手薄というか、悪く言えば片手間にやっていらっしゃるというような面もあるように思うのでありまして、たとえば専任の所長がいらっしゃらぬところが相当あるのじゃないか。また、裁判官にしても地方裁判所と兼務していらっしゃるのも相当あるのじゃないかというようなことも、知っておるわけでありますが、たとえば三ページに家裁の判事判事補という数が出ておりますが、これはもちろん兼任、ダブっていることはないのだろうと思いますが、所長がないところ、あるいは兼務していらっしゃる判事というものは、一体どういう数になっておるものか。
  18. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 ただいま大竹委員お話のございました点も、裁判所としてもつとに検討し、いろいろくふうしておる問題の一つでございます。  まず、その専任所長の問題でございますが、これも部内でもいろいろ議論のありました問題で、ある意味では現在でもある問題でございます。たとえば東京とか大阪のようなところに専任所長を置くことについては、何びとにも異論がございません。しかし、小さな裁判所、たとえば鳥取であるとか大津であるとかいうようなところで、はたして専任所長のほうがうまくいくのか、兼任のほうがうまくいくのか、やはりその組織の規模によっては、かえって一人の所長が双方の事件のぐあいを見ながら、また裁判官の適格、適性等を考えながらあんばいしたほうがいいのかという点、なかなかむずかしい点がございます。しかし、まあきわめて一般的に言えば、やはり専任所長がいて、そうして一〇〇%責任を持って家裁の育成あるいは家裁の事件処理に熱中するということが非常にいいということについて、だんだん部内の意見も有力になりつつあるわけでございます。そういう関係から、三年ほど前から専任所長のところをふやすという施策を始めたわけでございます。これは内閣及び国会の御協力を得まして予算的措置を逐次やってまいっておるわけでございまして、数年前まで十四庁でございましたのが、一年に一庁ずつふやしまして現在十六庁になっておりますが、昭和四十三年度、いま国会で御審議いただいております四十三年度予算におきましても、一庁ふやす。いまのところ大体静岡を予定しておるわけでございますが、静岡を専任所長庁にしようということで予算が計上されているわけでございます。そういうことで、現在これが実現いたしますれば、十七庁になる。逐次大きなところにはそういう方向で施策してまいりたいというのが、現在の方針でございます。ただ、一挙にいたしますことはいろいろ施策の面その他について問題がございますので、漸進的にまいることを御了承いただきたいわけでございます。  それから次に、一般裁判官の問題でございますが、これはお手元資料で先ほど大竹委員から御指摘のございましたとおりの数でございますが、これまた小さな裁判所、ことに典型的なのは、乙号支部というようなものになりますと、これは一人しか配置いたしませんから、家裁の判事が配置になりましても、当然地裁の仕事もする。そのかわりに、逆に地裁裁判官定員を配置いたしますれば、それは家裁の仕事もするということでございます。そこで、ここで定員に出しております判事判事補合わせまして三百四十一人おりますが、そのままで家裁の仕事をしておるかというお話になれば、それはかなり地裁の仕事も手伝っているということになりますが、逆にまた、地裁定員判事は家裁のほうを手伝っておるわけでございますので、そういう意味では、お互いにもちつもたれつでやっておるというのが、実情でございます。
  19. 大竹太郎

    大竹委員 次に、ほかの、特に事務官の問題でありますが、先ほどお聞きしますと、書記官は七人増員になる。事務官は、交通事件その他の面でいま余ると言っちゃ変でありますけれども、手があく人を回すということになるのだろうと思いますが、先ほどもちょっと触れましたけれども執行官法ができたときには、一時になかなか書記官をそう増員するわけにいかないから、たしか三年間でいままで執達吏が保管していた金銭その他の保管裁判所がやるように移すということになっていたかと思うのでありますが、もちろんいま手のあいた人をそのほうへ回すのであろうと思いますが、一体、いままで執行官がやっていた金銭保管その他をやる事務官は差しつかえないのだろうと思いますが、そのほうの三年間でやれる見通しがあるのでありますか。順調にそのほうは進んでおるかどうかということを最後にお伺いしたい。
  20. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 まず、件数から御説明申し上げたいと思いますが、お手元資料の十五ページのところに、執行官関係の金銭出納の回数が出ております。これは、昨年の国会事務官二十人の増員をこの関係で認めていただきまして、それをここに書いてありますような各庁に配置したわけでございます。なお、そのほかに、いま大竹委員からお話のございました、手のすいているところではすいている者がやるべきではないかという御意見、まことにごもっともで、私どももさような方針でやっております。したがいまして、ここに出ておりませんところでも、たとえて申し上げますと、甲府の都留支部でありますとか、あるいは山口の萩支部でありますとか、たくさんございますが、そういう支部に当たりますような各庁では、これは従来の職員努力で十分まかなえますので、やっておるわけでございます。ただ、増員を必要といたします庁としては、若干、本庁がかなりございますので、これのうち、まずいろいろな準備等の整いました十庁について、昨年二十人の増員を配置いたしまして、実際にやりました実績がかように出ておるわけでございます。この実績は、当初、私どもが予定しておりました件数とはさほど大きな開きはないわけでございますけれども、何ぶんまだやり始めましてから期間が短いために、予想どおりの件数になってまいるかどうかということについて、的確な資料がつかめないわけでございます。おそらく四十四年度予算の際には、かなりはっきりした数字が出てまいると思います。すでに一年余りの実績でございますから出てまいると思いますし、そうなりますれば、どの程度増員を必要とするかということについても的確につかめるかと思いますが、本年のところは、まだ十分な資料が得られませんでしたので、四十二年度と同様、一応二十人執行官の関係では増員という含みでこの定員法はでき上がっておるわけでございます。したがいまして、大体一人ないし三人くらいずつ配置いたしますと、九庁か十庁くらいに配置できる。そうなりますと、全部合わせまして、本庁だけで二十庁ぐらいになるわけでございます。まだ、あと二十庁余り残るわけでございますが、これは四十四年度なり、あるいはもう一、二年かかるかと思いますが、そのくらいの見通しで何とか実現したい、かように考えておるわけでございます。
  21. 大竹太郎

    大竹委員 質問を終わります。
  22. 永田亮一

    永田委員長 猪俣浩三君。
  23. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 裁判のスピード化ということが非常に国民要請になっておりまして、これをどうするかということは、臨時司法制度調査会でも非常に大きな問題になったわけでありますが、結局において、いろいろ方法はありましても、現在の裁判官の数が非常に足りない。裁判官がなまけているかというと、なかなかもってこれは非常な過労をするくらいの事務があるわけでございます。ところが、裁判官の有資格者というのは、これはなかなか厳重な国家試験を経てこないとできませんので、そこで、私はお尋ねすることは、裁判官の数を非常にふやすという意味において、事務系統に裁判官資格のある者を使うことがいかがであろうかと思う立場からお尋ねいたしますが、最高裁判所職員行政事務をやっていらっしゃる方で裁判官資格者、判検事の資格者が一体何名で、どういう仕事をやっておられるか、それをお聞きいたします。
  24. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 最高裁判所の事務総局には、猪俣委員指摘のとおりの裁判官の有資格者がおります。これは大体三十数人というところでございます。時点によって若干の違いがございますが、三十二名ぐらいということでお考えいただきたいと思います。そうしてその仕事でございますが、まず、事務総長、事務次長は御承知のとおりでございます。それから、各局の局長でございます。その局は、総務局——私、総務局長でございますが、総務局、それから人事局、経理局、民事局、刑事局、行政局、家庭局、こういうような局がございます。その中にさらに課がありまして、その課長が有資格者でございます。そのほかに、若干局付として局についておる者がおるわけでございます。一応大まかなところそういうところでございます。
  25. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そういういわゆる裁判行政事務ですが、そういう事務にやはり有資格者を使わなければならぬ、有資格者を充てなければならぬ何か必要性があるのかどうか。できるならば、そういうものは長い間事務官をやっておりました練達たんのうの人を充てる。そうすると、その人も、働いておればそのうちには昇格して課長なら課長になれるという将来の希望も出てまいります。だから、そういう人を充てて、資格者は第一線の公判廷に出すということが、裁判官の不足の際の道としては、そういう方針がいいのじゃないかと思うのですが、この裁判官が足りない、しかも裁判官というのはなかなか急造ができないという立場において、そういう裁判行政事務までに裁判官資格がある者を使うということは、私は不経済じゃないかと思うのですが、使わなければならない何か裁判所内部の必要性があるのかどうか。それを前線に出して、判事なら公判判事にして、そうしてあと練達たんのう事務官をもって充てるということをすることが、何か支障を生ずるのかどうか、そういうことについて、ざっくばらんのお話を承りたいと思います。
  26. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 まことにごもっともなお話でございます。この点は、ときどき国会でも御質問なり御忠告を受ける問題でございます。また、私ども自体としても、仰せのとおりに考えて、いろいろ施策をやってまいっておるわけでございます。また、今後ともやりたいと考えておるわけでございますが、二、三の点から、いまの猪俣委員お話については私どもの考え方を申し上げたいと思います。  まず、一体必要性があるかどうかという点でございまして、これは必要性がいわば絶対的にあるところと、それほどではないところ、それから全然ないところとあると思います。まず、絶対的にあるところと申しますのは、たとえば先ほど来大竹委員お話の中に出てまいりましたように、借地事件のいろいろな問題で法律ができました場合に、これはかなりの程度に最高裁の規則に委任されるわけでございます。たとえば借地事件につきましても、その手続規則というものをつくることになるわけでございます。これはやはり裁判の経験のある者でございませんと、なかなか実際の手続がむずかしいし、最高裁判所に規則制定権を与えられておる趣旨も、いわば裁判の実務をやっておる者がやるということで、最終的には最高裁裁判官会議でおきめいただくわけでございますが、その下案を準備するにつきましても、やはり有資格者でないとなかなかむずかしいのではないかと考えるわけでございます。それから、ものによりましてはそれほどの必要性がないというようなところから、当初は有資格者でやりまして、その後いわば無資格者ということばはあまり感心いたしませんが、ともかく有資格者以外の者を充ててまいったというポストも一、二ございます。たとえば、経理局の厚生管理官というようなものは、有資格者であった時期もございますが、現在は事務官出身の優秀な方がそれに当たっておられるわけでございます。事務総局の機構の外ではございますが、たとえば図書館長というようなものも、かつては有資格者でございましたが、現在はそうではございません。そういうようなポストも一、二ございます。それから、当初から有資格者をもって充てる必要のほとんどなかったようなポストは、これは充てていないわけでございます。たとえば経理局の用度課長でありますとか監査課長でありますとか、あるいは私どものほうの統計課長であるとかいうようなものは、これは大体無資格者といいますか、一般事務官の人にやってもらっておるわけでございます。そういうようないろいろな方法が一つと、それから次に、お話しのとおり、少しでもこういう有資格者を現場に出すという意味から、現在ではかなりの程度に兼務をやっておるわけでございます。これはおそらく猪俣委員つとに御承知と存じますが、局長クラスでは民事局長行政局長を兼ねておるという程度でございますけれども、課長段階になりますと、ほとんどの課が課長の兼務ということで、有資格者を減らしておるわけでございます。発足当時なりそれ以後数年間は、課長がかなりの数おった時期もございますが、それもいろんな形で兼務してまいりまして、そして一人でやる。ただ、何と申しましても、民事の中でも訴訟、執行とかあるいは調停とか分かれておりますので、課を一つにすることはなかなかむずかしいのでございますが、課は分かれておりましても、課長の兼務でやればそれだけ資格者が少なくて済む、そういうような方法もとっておるわけでございます。そういうようないろいろな方法をとっておりますけれども、現在のところ、やはり三十人ばかりの者はどうもそれ以上に減らしにくい実情でございます。ただしかしながら、今後とも御趣旨に沿って、できる限り事務官で代替し得るポストは、そういうふうにするということについては検討してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  27. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 ただいまは最高裁判所についてお尋ねしたのですが、東京はじめ各高等裁判所その他の裁判所におきまして、公判廷に出ないで、主として裁判行政事務をやるような有資格者がありますか、ありませんか。
  28. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 これは地方裁判所家庭裁判所には全然ございませんが、高等裁判所の事務局長は、従来有資格者ということになっております。ただ、それが法廷に出ますか出ませんかという点は、おのずから庁舎の規模その他によっても違うわけでございまして、たとえば高松のような小さなところでは、事務局長も法廷に出る例が多いようでございます。東京などでは、実際問題として出ていない例になっておるわけでございます。
  29. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 東京あたりの局長クラスは、やはり有資格者でなければならぬ必要の度の高いものなんですか。
  30. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 この点もきわめてデリケートな問題を含んでおるわけでございますが、現在裁判官の人事と申しますか、これは最高裁でやっておるわけでございますが、それについていろいろ管内の実情その他についての調査、あるいは連絡、あるいは最高裁の指示の伝達その他の関係で、裁判官の人事の関係高裁にもかなりあるわけでございます。これはむろん高裁長官がおられるわけでございまして、それが補佐します場合に、戦前はたとえばいわゆる控訴院の上席部長というような人がかなりそういうことをやっておったようにも聞いておるわけでございますけれども、現在は裁判長はすべて裁判に専念されるたてまえになっておりますので、そのお取り次ぎをしたり、長官の命を受けていろいろやりますについて、やはり裁判官の人事となりますと、かなり有資格者でないとデリケートな問題を含んでおるという場合があるわけでございます。そういうことで、やはり高裁は、ちょっとまだいまの時点では、一般事務官の代替はむずかしいのじゃないか。地裁、家裁についてはさようなことはございませんで、全部事務官になっております。そういうような実情でございます。
  31. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それから最高裁判所調査官は、現在何名くらいおるわけですか。
  32. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 この最高裁調査官も、これはときによって少しずつ違いますが、いま二十数名おるわけでございます。民、刑に分かれておりますし、若干行政の専門の者もございますが、三十名近い、二十名をこえる数でございます。
  33. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうしますと、判事は十五人だから、一人の判事について一・五人ぐらい調査官がついておるという形になるわけですね。
  34. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 まあ比例的に申しますとそういうことかと思いますが、ただこれはアメリカの制度のように、特定の裁判官に特定の調査官がつくというシステムをとっておりませんで、いわばプール制と申しますか、行政調査官行政調査官室というような一つのグループになっておりますので、そういうような意味では、数字的にいえばお話のようなことでございますが、必ずしも一人に何人つくというようなことではございません。
  35. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 最初は最高裁判所の各判事専属した調査官があったようですが、改められたようです。これはけっこうだと思うのですが、そうすると、調査官なるものは、専門専門の調査官というものがあることになるわけですね。その専門は、一体大体どういう専門に分かれておりますか。
  36. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 これは大体三つに分かれておりまして、民事刑事とそれから行政という、大まかに分けてそういうことになります。
  37. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 これももちろん有資格者でやる必要はあると思いますけれども、やはり二十数名の人が必要なものか。これをやはり前線に出すことができないのか。非常に優秀な判事調査官になっておられるようですが、全国の有数な裁判所にこれは配属できないものか。どうしてもやはり二十数名要るものかどうか。その御見解を承りたいのです。
  38. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 ただいまの猪俣委員お話は、まことにごもっともな点でございます。私どもとしても、これはまずそれほど老練な裁判官である必要はないのじゃないか。つまりいわば補助職でございますから、若くても優秀でさえあればいいのじゃないかということで、絶えずそういうような面から検討をし、指導をやってまいっておるわけでございます。御指摘のとおり、中には裁判長クラスの人も現在いる実情でございます。こういう点はできる限り優秀な若手をもって充てるということに、常日ごろ心がけてまいっておるわけでございます。  それから数の点なり必要性の点でございますが、これは何と申しましても、いま最高裁判所裁判官が十五人で、非常に多くの事件処理しておられる。その処理そのものは裁判官の御責任でございますが、それについては、最終の判断でございますから、どうしても従来の判例、学説というものの調査を相当にする必要があるわけでございます。この点については、少なくとも戦前の大審院と顕著に違うという点として自負を持って申し上げられると思いますけれども、戦前は意識せざる判例変更、すなわち過去にそういう判例があったことを十分認識しないで判例を変更するという場合が、絶無ではなかったようでございます。これは正確には記憶しておりませんが、そういうような感じを受ける場合があったわけでございますが、これは大審院の判事五人でやっておられたということの一つのあらわれでございます。それに対しまして、現在は調査官室でかなりの資料を持ち、そして組織を持ち、そして準備をいたしますので、こういう判例が前にある、あるいは学説にこういうものがあるということは、十二分に裁判官手元にいっておるわけでございます。猪俣委員もよく御承知の、たとえば先般の不法行為の事件につきましても、画期的な判例変更が行なわれました。この場合なんかも、相当周到な資料を集めまして、そうしてそれに基づいて検討した結果、判例変更になったわけでございますが、こういう場合における調査の充実を期するためには、やはりある程度法律専門家がおりませんと、十分にはまいらない。これは必ずしも有資格者には限りませんで、たとえば海難関係ということになればそちらの専門家、あるいは特許関係になればそちらの専門家も同時に必要だろうと思いますが、一般的には裁判の経験のあると申しますか、法律的な専門家と申しますか、そういうものがやりますことが、裁判官調査の負担を軽減し、判例の適正を期するゆえんである、いまのところかように考えておるわけでございます。
  39. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 最高裁判所裁判調査官裁判だという風評が一時あったようでありますが、調査官はやはりある程度必要だと思うのですが、ただこれはいつも私が申し上げるのですが、どうも世界の最高裁判所のあり方を視察すると、日本のように人数の少ない裁判所は珍しい。ドイツのごときは、私どもが視察に行ったときに九十八人いたのだが、もう四、五人ふやさなければならないということを言っておりました。もう五、六年前ですから、あるいは現在百何十名になっているかもしれない。アメリカの連邦裁判所は九人になっておりますが、これは機能が日本の最高裁判所と違うわけです。各州に最高裁判所があって、みんな九人か十五人おりますから、アメリカ全州においてはたいへんな数になると思う。フランス、イタリアだって非常に多い。日本の最高裁判所だけは十五人、これを三十名にすべきであるということを、かつて当法務委員会が特別調査したときにそういう意見を出したのですが、どういうわけだか、これに最も反対したのが最高裁判所自身なんです。その当時は、非常に事件がふくそうして渋滞しておりました。その打開策としてそういう結論が出たわけですが、これは反対にあってとうとう現在になっているわけです。ところが現在でも、最高裁判所にいってから事件が相当に長引いておる。結局判事が足りないんじゃないかとぼくは思うのですけれども、この議論はかつて大いにやったことですから、いま事務総長もおいでにならぬときにそういうことを申し上げてもあれですが、ただ私どもは、どうして最高裁判所がこれに反対なさるか、反対の理由は実はあまりぴりっとこないんです。  そこで、これは最高裁判所の内部でいろいろ御検討なさっておることだと思いますが、なお先ほど私ども申しました調査官の数、それから裁判行政に携わる人たちの数、そういうものをひっくるめて御検討願って、そうして裁判のスピード化ということをひとつ徹底的に御考慮願いたい。これは臨時司法制度調査会で非常に問題になりましたが、なかなかめんどうな問題だと思うのですが、一つ大蔵省の無理解もあると思うのです。何か裁判所に金を出すことは、大蔵省は伝統的に渋る。無理解なんです。裁判権とか司法権というものに対して無理解で、商業とか工業に金を出すのは目に見えるが、裁判というのはどうかというと、司法修習生の修習制度さえ、あんなものはむだだ、みんな弁護士になっちゃう、政府が金をかけて育成したらみんな弁護士になっちゃうと言う大蔵省の高級官僚があるのは、これは実に理解せざるもはなはだしいし、これは大蔵省の官吏からして教育してかからないと容易でない。これは大蔵省に対しては裁判所も無力で、大臣も出ておりませんので、予算獲得に無力だということになる。そこで内部で調整していただくよりしようがないのですが、元来が司法修習生は裁判官になることをどうも好まない、非常に弁護士の希望者が多いという現況、この点につきまして、臨時司法制度調査会では相当論議があったのですが、これについて、どういうわけでこういう現状が起こるのか、あなたの意見を聞きたいと思います。
  40. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 猪俣委員は司法制度の問題の権威であられますので、先ほど来のお話も、すべて私どもごもっともという気持ちで伺っておることばかりでございます。ただ、予算の点で一言だけ私どもの従来の施策について申し上げさせていただきたいのは、臨時司法制度調査会の意見によりまして、いろいろな施策がある程度は行なわれてきたわけでございます。臨時司法制度調査会の意見そのものが、訴訟促進の唯一の方法ではなくて、ほかの方法をもあわせてやれという指摘になっておるわけでございまして、そのあわせてやるべき事項をかなり掲げておるわけでございます。その中には予算を伴うものもかなりあるわけでございまして、その一番代表的な例が、先般来よく新聞等で出ました、いわゆる宅調廃止の研究費と申しますか、一億八千万の予算を計上することができたわけでございます。金額は一億八千万というふうにきわめてわずかでございますけれども、言うに足りないほどの額でございますが、ただこれは庁費として毎年、つまりいわば永久に続く予算でございます。そういうことによって相当裁判官室が充実してまいっておることは、猪俣委員におかれても、裁判官室お出入りの際にごらんいただいておることと思うわけでございます。その他、たとえば最高裁裁判官退職金の問題でございますとか、あるいは営繕関係でありますとか、そういう点について、ここにおいでになります田中先生が法務大臣のときにも、いろいろ側面から御援助いただいたりいたしまして、歴代の法務大臣のお力添えもあって、不十分ではありまますけれども、そういうふうに戦前に比べればかなり改善されてまいりつつあるという点は、ひとつ御了承いただきたい。しかし、決してこれで満足はいたしておりませんで、今後とも努力したい、かように考えるわけでございます。  それから裁判官の志望の問題でございますが、これは御指摘の臨時司法制度調査会の際にも問題になりましたし、その後私どもがいろいろ日本弁護士連合会とお話し合いをいたしております過程でも問題になりました。また、最高裁で現に開いております司法修習運営諮問委員会の席上でも、問題になっております。そういう関係から、司法研修所でもアンケートをとったことがございますし、伺うところでは、日弁連でもアンケートをおとりになったことがあるようでございます。それらのものをいろいろ総合し、また私どもが個人的に聞いておりますことをあわせますと、結局大きな点は二つになるようでございます。一つは、職務の内容なり職場環境という問題で、弁護士は自由であるということが決定的なものでございます。それからもう一つは、転任問題を含む待遇の問題でございます。待遇と申しましても、初任給においてさほどの差があるわけではないかもしれませんけれども、つまり、先行きの待遇といいますか、給与といいますか、収入といいますか、そういう点でございます。大きく分けて、そういう二つの点で裁判所の職場環境について反省すべき点も多々あろうと思いますが、しかし、これはどういうふうにいたしましても、やはり裁判所一つの機構であります以上は、機構の中の人間として一つの制限的なものがある。それに対して弁護士さんは、特に自分で一人でやっておいでになるような場合は、全く御自由な立場でございます。そういうようなことがあるわけでございます。私どもの立場からいえば、少なくとも裁判に関する限りは、たとえ裁判長であろうと、説得して、自分の意見を通せるという点で、非常に自由な立場にあろうとは思っておりますけれども、しかし、やはり日常の行動その他については制約があるという点。それからあとで申し上げました待遇の問題、その中には転任が相当ある、そうしてまた住居が必ずしも十分に得られないというような問題、あるいは子供の教育の問題というような問題がからんできておるようでございます。ただ、先ほど大竹委員お話についても申し上げましたように、本年の場合は幸いにしてわりあいに多くの人が裁判官を志望してくれるようでございますので、こういう状態でまいりますれば、今後の見通しは明るいのではないか、かように考えておるわけでございます。
  41. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 もう一、二点お尋ねいたします。やはり裁判のスピード化と関係があるのですが、これは裁判官会議でもひとつあなたから問題点として出していただきたいと思うのですけれども、相当難解な訴訟事件については、なるべく判事を更迭したくないわけです。さらばというて、一生その場所にくぎづけもできませんけれども、同じ東京都内、たとえば地方裁判所から高等裁判所にお移りになったような場合においては、やはり難解な大きな事件については、同じ東京なんだから、その担当した事件を終末をつけていただく。実は鹿地亘君の電波法違反事件を東京地方裁判所の一審でやりましたが、判決まぎわになって、判事高等裁判所へ転勤させられたのでございます。その裁判長は、高等裁判所裁判長になりながら、この事件についてわざわざ地方裁判所へ出てきて結審をされ、判決をされたのです。私はこれはこういうふうにやっていただくといいと思うのですが、いま、地方ですが、奈良の五条の裁判所で山林の境界問題で非常にむずかしい事件がある。この事件は、証拠調べが終わり、判決まぎわになると判事が転任する。そうするとまた初めからやって、五人くらいかわっちゃって、とにかくもう五、六年たつけれども、まだらちがあかぬのです。判決がめんどうなものだから、いいかげんになるとすらっとほかへ転勤しちゃう。置きみやげを置いてまた転勤しちゃう。そうすると、また初めからやっておるのですよ。こういうことでは、これはいかに判事の数をふやしても、裁判のスピード化にならぬのですね。さればというて、ある事件のために大阪から東京まで出張してきてかつて東京で取り扱っておった事件をやるといっても、それは無理だと思うのですけれども、とにかくそれほどの距離でないところにおいては、自分が引き受けた事件をある程度結末をつけるというようなことでやっていただかぬと、これは自分自身の弁護士で取り扱った事件を基準に言うことは何かちょっとはばかりますけれども、そうしないと具体性が出てこないので……。ある離婚事件の損害賠償事件、これは簡単な事件なんですが、五人ぐらいかわっちゃって、示談をすすめる、示談がうまくいかない、いよいよ結審というときになると判事がかわるので、もうらちがあかぬのです。これも五、六年ですが、一審でさっぱり進まない。こういうことでなしに、私は、裁判官はやはり引き受けた事件についてはできる限りその事件の結末をつけていただく。また転勤先に大きな事件をかかえ込んで、あるいは無理かもしれませんが、判決まぎわになってはかわられたのでは、いつまでたっても結末がつかぬという現象を起こしているわけでして、実に判事の更迭が激し過ぎるのですね。それは、もうちょっと裁判行政として、判事というのは、特殊の人が場所が変わらぬでも、たとえばいなかの小さい裁判所でも、そこにきちっとまじめにつとめた人は、俸給も上がれば出世もさしてやるようにしてやらぬと、いかぬのではないかと私は思うのです。何か出世するにはいいところ、いいところと移っていかぬと出世しないというようなやり方がありますと、やはり判事といえども人間ですから、いいところに移ってしまう。いなかの裁判所から東京といえばすぐ飛びついてしまう。どんな事件もほっぽらかしてきてしまう。そうすると、置きみやげにしてこられたら、もう困っちゃうのですね。また初めからやっておる。これを何とかひとつ、裁判官会議にでもかけて、根本的な対策を立てていただきたい。判事が数多くあるならばこういうやりくりまでしないでいいのでしょうけれども、いま限られた判事で、何としてもスピード化ということが国民の要望です。いまのような裁判では、ほとんど意味がないのです。これも私は体験からきているわけですが、私の子供が自動車でひかれた事件なんか、十三年かかってしまいました。これではとても救済なんかなりやしません。貨幣価値まで違ってしまいますから、十三年前の十万円といまの十万円じゃ、まるで問題にならない。これは損害賠償になりませんよ。そういうふうな遅延した場合においては、裁判所で損害賠償していただきたいと私は思うのだ。まるで貨幣価値が変わっちゃうのだ。とにかく、最も国民の要望するのは裁判のスピード化ですから、これに対して何らかのくふうを——そのスピート化をはかるのには、人員の要請もありますが、いま裁判の継続性といいますか、事実審理の継続性といいますか、そういうことも少し勘案していただいて、そうして一つ事件についてはやはり結末をつけるという考え方を判事さんが持ってもらいたい。これは極端かしらぬが、めんどうな事件というと逃げる判事が多いのです。それをまたどんどんと許されて異動をさしておるというようなことでは、これは私はいかぬと思う。根本対策を立てていただきたい。  それで、これは要望として申し上げておきますが、ことに選挙違反事件です。これは法律には百日裁判となっているのだけれども、これは選挙制度委員会には提唱されていることだと思いますけれども、いますぐ御答弁にならぬでも、当委員会に出していただきたいことは、一体選挙違反事件はどのくらいかかっているのか。百日というのは法律要請でしょうが、そのとおりにやって判決が出ているのがどのくらいで、平均大体どのくらい選挙違反はかかっているのか。これはもう次の選挙まで裁判を引っぱっているのだから、何もそれは制裁になりませんわ。そしてまた、裁判の中途に解散になって、やり直しということになってきている。有名無実みたいになっています。これはまあ弁護士も悪いわけです。なるべく引っぱって期限一ぱいつとめさせようとする。裁判所だけ責められない、これは弁護士も悪いのですが、しかし、裁判所が職権をもって、百日と法律に規定があるのですから、もう少しスピード化をはかっていただきたい。これは実情がどうなっているか、最近の統計を出していただきたい。これは私、定員法にからみまする要望として申し上げておきます。  時間もまいりましたから、たくさんありますけれども、この程度で終わりたいと思います。
  42. 永田亮一

    永田委員長 本日の議事はこの程度にとどめ、次回は明八日午前十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午前十一時五十九分散会