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1968-04-24 第58回国会 衆議院 文教委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月二十四日(水曜日)    午前十時四十九分開議  出席委員    委員長 高見 三郎君    理事 久保田藤麿君 理事 坂田 道太君    理事 谷川 和穗君 理事 西岡 武夫君    理事 小林 信一君 理事 長谷川正三君    理事 鈴木  一君       有田 喜一君    稻葉  修君       久野 忠治君    河野 洋平君       周東 英雄君    高橋 英吉君       床次 徳二君    中村庸一郎君       広川シズエ君    箕輪  登君       山口 敏夫君    渡辺  肇君       大原  亨君    唐橋  東君       川村 継義君    斉藤 正男君       山崎 始男君    有島 重武君  出席国務大臣         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君  出席政府委員         文部政務次官  久保田円次君         文部大臣官房長 岩間英太郎君         文部省初等教育         局長      天城  勲君         文部省大学学術         局長      宮地  茂君         文部省体育局長 赤石 清悦君         文化財保護委員         会事務局長   福原 匡彦君         農林省畜産局長 岡田 覚夫君         食糧庁次長   田中  勉君 委員外出席者         厚生省環境衛生         局食品衛生課長 野津  聖君         参  考  人         (日本学校給食         会理事長)   清水 康平君         専  門  員 田中  彰君     ――――――――――――― 四月二十三日  委員藤波孝生君、渡辺肇君及び有島重武君辞任  につき、その補欠として辻寛一君、中尾栄一君  及び山田太郎君が議長指名委員に選任され  た。 同日  委員辻寛一君及び中尾栄一辞任につき、その  補欠として藤波孝生君及び渡辺肇君が議長の指  名で委員に選任された。 同月二十四日  委員周東英雄君、藤波孝生君、唐橋東君、原茂  君及び山田太郎辞任につき、その補欠として  箕輪登君、山口敏夫君、井上普方君、大原亨君  及び有島重武君が議長指名委員に選任され  た。 同日  委員箕輪登君、山口敏夫君及び井上普方辞任  につき、その補欠として周東英雄君、藤波孝生  君及び唐橋東君が議長指名委員に選任され  た。     ――――――――――――― 四月十九日  教育公務員特例法の一部を改正する法律案(内  閣提出第六一号) 同月二十三日  人口急増地域義務教育施設整備に対する特別  措置に関する請願大野潔紹介)(第四三四  九号)  公立義務教育学校学級定員引下げ等に関す  る請願井出一太郎紹介)(第四四一七号)  同(小川平二紹介)(第四四一八号)  同(小沢貞孝紹介)(第四四一九号)  同(吉川久衛紹介)(第四四二〇号)  同(小坂善太郎紹介)(第四四二一号)  同(下平正一紹介)(第四四二二号)  同(中澤茂一紹介)(第四四二三号)  同(羽田武嗣郎紹介)(第四四二四号)  同(林百郎君紹介)(第四四二五号)  同(原茂紹介)(第四四二六号)  同(平等文成紹介)(第四四二七号)  外国人学校法案反対に関する請願受田新吉君  紹介)(第四五二〇号)  教育公務員特例法の一部を改正する法律案反対  に関する請願受田新吉紹介)(第四五二一  号)  学校教育法の一部を改正する法律案反対に関す  る請願受田新吉紹介)(第四五二二号)  は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  教育公務員特例法の一部を改正する法律案(内  閣提出第六一号)  文教行政基本施策に関する件      ――――◇―――――
  2. 高見三郎

    高見委員長 これより会議を開きます。  教育公務員特例法の一部を改正する法律案を議題といたします。
  3. 高見三郎

    高見委員長 本案について、政府より提案理由説明を聴取いたします。灘尾文部大臣
  4. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 このたび、政府から提出いたしました教育公務員特例法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  政府におきましては、教育重要性にかんがみ、これに携わる教員給与につきまして、かねてから特に留意してきたところでありますが、このたび国立及び公立小学校中学校高等学校等教員について、その勤務態様特殊性を考慮し、これに当分の間、特別手当を支給する等の措置を講ずるため、この法律案を提出したものであります。  次に法律案概要について申し上げます。  第一は、国立小学校中学校高等学校並びに盲学校聾学校及び養護学校小学部中学部及び高等部教員には、その勤務態様特殊性に基づき、教職特別手当を支給することとし、これに伴いこの手当の支給を受ける者には、超過勤務手当及び休日給を支給しないことといたしました。教職特別手当の額は、俸給月額並びにこれに対する調整手当及び暫定手当月額合計額の百分の四に相当する額といたしております。  なお、俸給特別調整額を受ける者には、この手当を支給しないこととし、教職特別手当に関し必要な事項人事院規則で定めることといたしております。  第二は、国立学校教員に支給される教職特別手当に関する事項は、人事院勧告にかかる事項とし、一般職職員給与に関する法律に定める給与と同様に、人事院の研究、勧告対象といたしております。  第三は、公立学校教育公務員給与種類及び額は、国立学校教育公務員給与種類及び額を基準として支給されることとなっているため、今回、国立小学校中学校高等学校等教員教職特別手当が支給されることにより、公立のこれらの学校教員に対しても教職特別手当が支給されることとなることに伴い、これらの教員については、時間外の勤務等に対する割り増し賃金の支払いを定める労働基準法規定は適用しないこととすること、公務のために臨時の必要がある場合においては、時間外の勤務を命ずることができることとすること等所要規定整備しようとするものであります。なお、時間外の勤務を命ずる場合においては、教員の健康及び福祉を害しないように考慮しなければならないことといたしております。  以上の措置は、いずれも当分の間の措置として行なうものでありますので、教育公務員特例法の附則の部分の改正によることといたしました。  第四は、市町村立小学校中学校等教員に支給されることとなる教職特別手当は、これらの教員にかかる他の給与と同様に都道府県の負担する給与とし、国庫負担対象とする等関係法律について、所要規定整備をはかりました。  第五は、この法律は、昭和四十四年一月一日から施行することといたしました。  以上がこの法律案提案理由及び内容であります。何とぞ十分御審議の上、すみやかに御賛成くださるようお願い申し上げます。
  5. 高見三郎

    高見委員長 以上で提案理由説明は終わりました。      ――――◇―――――
  6. 高見三郎

    高見委員長 次に、文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  この際、おはかりいたします。  日本学校給食会に関する問題について、本日、日本学校給食会理事長清水康平君を参考人として、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 高見三郎

    高見委員長 御異議なしと認め、さよう決定しました。     ―――――――――――――
  8. 高見三郎

    高見委員長 質疑の通告がありますので、これを許します。小林信一君。  小林君にちょっと申し上げますが、まだ清水理事長見えておりませんので、当局のほうに御質問願います。
  9. 小林信一

    小林委員 前回、この問題が世間に知れたときに、私は大臣にこの問題についてお伺いをしたわけですが、早急のことであってまだ調査中というふうなお話がございましたので、適切な調査と御処置をお願いした。問題は単に一給食会だけの問題でなく、一般父兄あるいは給食を受ける児童生徒にも問題が及ぶことであるからということで、一応大臣の御意向を承りながらお願いをしておったわけでありますが、この給食会仕事を見ますと、単に保管料だけの問題ではなく、輸入する価格決定の問題、あるいは不適格品が出てくる場合の問題、あるいはいままでもそういう問題がたくさんありましたが横流しの問題、こういうふうにこの給食脱脂粉乳をめぐります学校給食会仕事の中には、こうした問題が出れば疑念を持つものが非常に多いわけなんです。したがって、この経緯については一般の関心というのは非常に重大だと思うわけですが、きょうはその後の御調査をなさった経緯内容を詳しくまず御説明をお願いしたいと思います。
  10. 赤石清悦

    赤石政府委員 それでは私からお答え申し上げます。  御承知のように、まだ正式に取り調べが完了しまして起訴になったという段階になっておりませんので、まだ私ども、必ずしも詳細に知っておると申し上げかねるわけでございますが、およそ知り得たことを申しますと、四月の十一日に給食会物資課次長小松三郎警視庁刑事部捜査二課に取り調べを受けまして、同日午後九時収賄容疑で逮捕されたのでございます。  現在のところ、容疑事実といたしましては、脱脂粉乳倉庫への保管委託輸入商社指定入札等に関して、謝礼として金額若干万円を昭和四十年秋ごろから受け取っておった、これは報道でございますが、受け取っておったといわれておるのでございます。したがいまして、その容疑内容といたしましては、収賄として日本学校給食会物資課次長小松三郎贈賄といたしまして、倉庫業者東横倉庫株式会社常務取締役の大西、営業部長の女池、常盤倉庫株式会社営業課長渡辺、さらに輸入商社側といたしまして、贈賄三井物産株式会社小網株式会社東食、兼松江商野村貿易安宅産業、それぞれの担当課長部長取り調べを受けておる、こういう事態でございます。  こういう事態が何がゆえに起きたかにつきましては、なお学校給食会をして調査せしめるとともに、私どもとしても今後かような事態が発生せざるように基本的に調査をいたしたいと思っておりますが、現在までのところ、法律もしくは業務方法書業務細則等の条項に基づいて一応正確にやっている、こういうふうになっているのでございますが、しかしながら、人間のいたすことでございますので、どういう点でこういう事態を発生しておったかということは、やはり厳正に私どもとしても将来のために調査いたさなければならないと考えておりますが、まだ司直の手において取り調べている最中でございますので、私どもの口からまだ申し上げる段階に至っておりません。  大体、現在までの状況はさようなことでございます。
  11. 小林信一

    小林委員 もう少し、収賄の行なわれた事実、そういうものについて文部省調査をしたものを知らしてもらいたいと思います。
  12. 赤石清悦

    赤石政府委員 大体原因を正確にお伝えするということ、どういうことに関連しておったかということは、多少の推測も加わるかと思いますが、倉庫業者の場合は二十三社を指定しております。これは農林省の指導でやっております。倉庫業者、これは従来の慣例、従来の実績、それから会社の事業実績等を勘案しましてきめる、こういうたてまえにおいてきめまして、従来の実績がございます二十三社をきめているのでございます。これに対しまして、寄託数量あるいは保管料それから時期等につきまして、倉庫業の場合は競争入札でございませんで、業務方法書によりまして、それらの中から保管余力、それから希望等によりまして、各社希望をとりまして、かつ、それらの社が年間において不公平のないようにというふうな配慮のもとに具体的にきめる。こういうふうな仕組みになっておりまして、従来この点に何ら問題ないはずだと思い込んでおったのでございますが、これらに関連しまして、何らかの犯罪容疑があったとみなされる点がございます。  それから脱脂粉乳外国からの輸入にあたりまして、これは通産省のほうできめております資格のあるもの、七社でございますが、具体的に申しますと、三菱、東食野村貿易、兼松江商三井物産小網安宅産業でございます。これらは通産省のきめます資格を持っているもので、従来実績を持っておるものが主でございます。大体学校給食会発足以来ずっと実績を持っておるものでございますが、これらの七社に対しまして、その輸入数量を上期、下期に分けまして、年を通じますと七、八回になるようでございますけれども、その回ごと競争入札を行なわせているのでございます。これは業務方法書なり業務細則に従いまして、学校給食会としては適正に法規の命ずるところに従ってやっておったはずでございます。しかし、この間にも何か小松犯罪事実を犯したというふうな容疑を抱かせるのでございます。そこにどのような原因があるか、これはまだ詳細に調べておりませんが、これらの数量価格その他において何らかやはりそういう非難すべき事実が介在しておったのではなかろうかと想像されるのでございます。  現在のところ、以上、倉庫業者輸入業者につきましての犯罪容疑とわれわれは聞いておるのでございまして、いわゆる世上いわれます脱脂粉乳横流しについて取り調べを受けておるという事実につきましては、私どもはまだ聞いておらないのでございます。このいわゆる脱脂粉乳横流しもしくは払い下げをめぐってのいろいろな問題につきましては、世上いわれますが、過去において脱脂粉乳のこうした事例にかんがみまして、法規改正もしくはその後の監督の適正、厳重化等によりまして、こういうものはまずまずないものと信じておったわけでございます。現在のところどのように取り調べておりますか、いままでのところそのようなことは聞いておらないのでございます。
  13. 小林信一

    小林委員 新聞では、一応捜査対象とした保管料をめぐっての不正問題を取り上げておるわけですが、先ほど私が申しましたように、この脱脂粉乳を扱う仕事は非常に複雑であります。輸入価格の問題、輸送料の問題、それからその後の処置、こういうような保管料をめぐって一応新聞等報道せられておるような行跡が、たとえそれは個人でありましても、そういうふうなことが給食会にあるとするならば、ぼくらは全部の問題に疑いをかけなければならぬわけです。そういう者の存在する中で、あの脱脂粉乳というものは全国何百万の子供たちにこれが飲まされておるということを考えれば、私どもは徹底的にここで問題を究明して、今後そういう疑惑というものは、全然こういうものにはないのだというようにしなければならぬと思うのです。  そこで、いま一応収賄のアウトラインにつきましてはお話があったのですが、われわれがよく認識しなければならぬのは、先ほど局長の言われた保管料等は、あるいは輸入の場合もそうであるかもしれませんが、回り持ち順番制である、こういうことが新聞に見えておりました。倉庫保管回り持ち順番制である、これは事実そういうふうな形になっておるのだと思います。ところが、警察の捜査の中では、指定をされるときにまずわいろを取る、それから今度は保管決定をされるとまたわいろを取る。しかも、そういう利益を与えるというときだけでなくて、毎月毎月きまって各社からわいろを取っておる。もしそのわいろがおくれるような場合には、新聞では上納金といっておりますが、上納金がおくれるような場合には、この小松という人は、各社に向かって、あなたのところはまだきておりませんよというような強要を、ごく自然の形でしておる。あるいは額が少ない、一万、二万というふうな額であるとする場合には、このような少額をもらってもしかたがないから、君のところでひとつ何か株に投資して、そうして少し大きなものにしてくれ、この新聞等で報ぜられておる一部の事実を見ましても、紊乱の極に達しておる。これが給食会内部実情だと私は考えざるを得ないわけです。この前も申しましたように、大臣あるいは監督の任に当たる局長、それから給食会理事長である清水さん、私はそれぞれをよく存じ上げておりますが、そういうふうなりっぱな人たちがついておって、給食脱脂粉乳をめぐる給食会内部というものは全くもう手のつけられないような乱脈な状態に入っておる。これはもうそういうりっぱな人たちが上司についておりながら、これがいかんともしがたいというならば、何か私はその根本に重大なものがひそんでおるのではないかと思うのです。  そこで次にお聞きいたしますが、この給食会職員構成、これを清水理事長からでもけっこうですが、お聞きしたいと思うのです。  ついでに、清水理事長おいでになりましたから、この事件全貌を、一応体育局長のほうからお伺いをいたしましたが、この際国民にその事件全貌を明らかにするつもりでお話し願いたいと思います。もちろん、その中には理事長のお考えをいろいろ述べていただいてもけっこうだと私は思います。
  14. 高見三郎

    高見委員長 清水参考人に申し上げます。  お忙しいところを御出席いただきましてたいへんありがとう存じます。どうぞ御意見委員からの質疑に対するお答えでお述べいただくようにいたしたいと存じますので、さよう御了承願います。清水参考人
  15. 清水康平

    清水参考人 私、日本学校給食会理事長清水康平でございます。  このたび日本学校給食会職員収賄容疑で逮捕されるという不祥事件が突発いたしました。まことに遺憾のきわみでございます。この容疑事実の問題につきましては、ただいま捜査当局におきまして徹底的に調査されておりますので、その結果を待ちませんと、私からはっきり申し上げることができないことは遺憾しごくでございます。しかし、一部新聞等報道を見ますると、正常の人では考えられないようなことが、もし事実であったとしたならばこういうことが一体あったのであろうかというくらいの容疑のようでございまして、日本学校給食会最高責任者である理事長私の監督不行き届き、私の不明不徳のところは深くおわびをいたす次第でございます。私どもといたしましては、このようなことが二度とないように全役員、全職員、自粛自戒いたしまして、心を新たにいたしまして、事務組織その他を検討し、もしそこに改善するところがあるとしたならば、どういうふうに改善したらいいであろうかということも検討いたしておる次第でございまして、二度とこういうことのないように万全の措置をとってまいる決意でございます。こういう問題を起こしましたことをあらためて心からおわびいたす次第でございます。  犯罪容疑の事実は、先ほど申し上げましたとおり、捜査の結果を待たなければわかりませんが、一部の新聞によりますと、ただいま小林先生から御質問があったのでございますが、たとえばこういうようなことが書いてございました。日本学校給食会外国からのスキムミルク輸入する指定業者指定しておるんだ、それを自由に増減できる、それを小松が一人できめておったというような点がございましたが、現在やっております実情を申し上げますと――決して私はその職員をかはうとかなんとかいう問題ではありません。現在事実やっていることを申し上げますると、日本学校給食会業務方法書というのがありますが、その細則に、外国脱脂ミルク買い入れという章がございまして、その買い入れ方法輸入者競争に付するものとなっております。それから違う条文に、それならば輸入者資格はどうかということになりますと、その輸入者資格は通商産業省が輸入発表に定める申請者資格とする。こういうことになっておるわけでございます。それで、この輸入発表に定める申請者資格とはそれならばどういうことになっておるかと申し上げますると、年に一度または二度通産省公報でもって、その学校給食用脱脂粉乳輸入割り当てについての輸入発表がございます。それによりますると、その申請者資格といたしまして、前期に基づいて輸入割り当てを受け、これにより日本学校給食用物資輸入した実績を有する者であって云々ということになっております。前期学校給食用脱脂粉乳輸入実績を有するということになりますと、これはもう私たちもわかりますし、通産省もわかっておりますし、輸入業者もわかっておるのでございまして、それが先ほどお話がございましたように輸入業者が七社になっておるわけであります。これは日本学校給食会が始まりました三十年以降から実績があるものですから、そのまま私どものほうはその資格として、その人を呼びまして説明会を開いて、そしてやっておるわけでございます。そしてその場合、業者に、おまえのところは何千トン持ってこい、おまえのところは千トン持ってこい、こう言って割り当てるというのじゃございません。実情を申し上げますると、たとえばずっと長い間アメリカのCCC、当初は余剰農産物であったのでございますが、これをたとえば年間契約で、かりに四万トン買いますと、月別に二千トンとか三千トンとか五千トンとかをきめます。そうすると、説明会におきまして四千トンなら四千トンをアメリカ五大湖から、何月積みでどういう品物を、価格幾らで、一ポンド幾ら説明しまして、それを輸送してもらいたいということで説明会を開くわけでありまして、当初から価格数量もわかっておるのでございます。それに応じまして、その資格を有する七社は計算をいたしまして、説明会後数日後、入札日入札見積書を持ってきてこれを入札に付する。そして一番安い価格、われわれがっくりましたところの予定価格よりも低くてそのうちで一番低いものが落札する。こうなりますと、落札者はわれわれの発行しました発注書を持ちまして、銀行の証明書を持って通産省へ参りますると、そこで初めて外貨資金割り当てを受けるということになっておるのでございます。  それから先ほどの御質問にございましたが、倉庫業者はどうするかというと、倉庫業者はこういうふうにして指定しておるわけでございます。学校給食用スキムミルク寄託の問題でございますが、これは倉庫業者は、倉庫指定は毎年度で、毎年あらかじめ指定いたしておるわけでございます。現在は東京、横浜、神戸を入れまして、二十三の指定倉庫指定しております。これは毎年やるわけでございます。それで指定倉庫指定する場合の要件がございます。たとえば、おおむね次の各号に掲げる要件を具備しなければいけないというふうに書いてありまして、一号、二号、いろいろな要件がございます。従来学校給食ミルクを取り扱った経験があるかないかとか、倉庫の構造が堅牢で機械設備等があるかないかというような、指定倉庫要件がございます。それを頭へ入れまして、倉庫業者が毎年申請してまいりますので、これを毎年あらためてそういう要件を頭へ入れて指定しておるわけでございます。  それならば今度は、外国からスキムミルクを運んでまいりますが、それをどういうふうに寄託するか、保管を頼むかということになるわけでございます。それはやはり規定がございまして、寄託をしようとする場合におきましては、そのつどその寄託しようとする数量、たとえば二千トン入ってくるということになるとその二千トソという数量と、それから倉庫はもう指定してありまするから、どのくらい預けるかという数量とその倉庫状況を勘案いたします。これは規定がございますが、倉庫状況等を勘案してと書いてありまして、そしていろいろ折衝するわけですが、その倉庫が詰まっておったりあいておったりいろいろするわけです。そして詰まっているところは少なくし、あいているところは多くするということがあり得ると思います。倉庫の現状を把握いたしまして、そして指定しました二十三社のうちを選んで寄託する、こういうことになっております。この点におきましては、あからさまに申し上げますと、一つの自由裁量権の問題があろうかと思います。自由裁量というのは、いろいろ状況を判断をして入れる。その辺実情を申しますると、これは物資課でやりまして、そしてこの担当の理事、それからもう一人の理事、それから私のほうへまいるのでございますけれども、そういう倉庫状況によりまして多い少ないがあり得るわけです。しかし、これではいかぬので、どうして少なくなったかということを実は二年ばかり前から、これこれこういうわけでこの倉庫は多い、これこれこういうところで少なくなったということを横に、その結論よりも論理と経過を書くように指導したわけでございます。そこで、これではどういうものか、やはり指定した以上は、とにかくその当初は少なかったり多かったりするかもしれぬけれども、これは四十一年の終わりごろだったと思いますが、幹部会を開きまして、やはりこれは指定した以上は年間を通じて、当初はばらばらであっても、年間を通じて大体の数量は同じようにしたらどうであろうかということまでいたしておるわけでございます。以上が、この輸入業者指定との関係を申し上げたわけでございます。  でございますから、倉庫へ入れる場合におきましては、これは申し上げましたとおり、指定だけしまして、どれくらい入れるかということは競争入札じゃないのです。これはやはり規程の第十五条に基づきまして随意契約になるわけです。これはどうしてそうなるかと申しますと、この立法が昭和三十年にできたのでございまするが、寄託料というものは一致いたしております。高い安いじゃなくて、寄託料というのはもう一致いたしておるわけでございます。たとえば寄託料は運輸省で定めたというか認可したものでございまして、普通倉庫保管料率表というものがございます。そして貨物の種類がたくさん、六十か七十ありまするが、その中にいろいろありまして、スキムミルクの該当があるわけです。それでスキムミルク保管料というものは、従価率と従量率を出しまして、それを寄託価格にかけまして出ておりまするので、具体的に入れる場合に競争入札にしていない、随意契約ということになっておるのはおそらくそういう点からきているのじゃなかろうか。寄託料が同じでございます。そういう意味合いから、入れる場合には指名競争入札にはなっておりませんという実情だけを御報告申し上げたわけでございます。  それから、ちょっと長くなりましたけれども、ただいま小林先生から、こういう事件が発生いたしますると日本学校給食会内部が一体どうなっているのだ、紊乱しているのじゃないかというように思うというようなお話がございました。こういう不祥事件を起こしまして各方面に御迷惑をおかけし、特に本会の信用を失墜せしめたということは、担当者としてまことに申しわけないのでございますが、しかし、その収賄容疑とは別に、日本学校給食会の運営が本来の使命に違背しておったとか、あるいは日本学校給食会の経理が不正であったとかいうようなことは絶対ない、私はさように確信いたしております。決してこれは毎年会計検査院が調べるとか、文部省の会計と一緒に調べておるとか、日本学校給食会の監事さんがそう言っているとかいう意味でなくて、また、部下を信頼しておるというような精神論ばかりでなく、私は日本学校給食会の運営そのものが不正があったとか、あるいは本来の使命に反しておるというようなことは絶対ないということを確信いたしておるのでございます。  しかし、この問題で世間に本会の信用を失墜せしめたということはまことに申しわけないのでございまして、長くなりますけれども、私は、日本学校給食会自体としてどこに一体そういうすき間があるかないか、もしあるとしたならばどういうふうに改善したらいいであろうかということを考えまして、日本学校給食会の運営改善検討委員というものを全役員、全課長に命じまして、検討いたしておるところでございます。  しかし、私は率直に申し上げまして、このよって来たった原因と申しますか素因というものは、反省いたしますると、やはり何といたしましても同一人を同一職種にあまり長く置くということはいけない。なるほど世帯は少ないのでございますけれども、やっている仕事は非常に複雑であり多岐でございますので、同一人を同一職種に長く置くということはまずいのではなかろうか、これは直ちに改善せねばならぬのじゃないだろうか。その他、長くなって恐縮でございますが、われわれといたしましては、われわれ職員が特殊法人に基づく特殊の身分を持っておりますので、いままで新規採用、これはあまりないのでございますけれども、ぽつぽつありますが、新規採用の際には宣誓をせしむるとか、あるいは職員の研修というようなことをやるべきではなかったろうか。あるいは事務的の面から見ましても、物の面と金の面がございますので、相互牽制、チェックということを今後よほどまじめに考えていかなければいけない。分化、分担せしめると同時に、責任を感ぜしめていかなければならないのじゃないだろうか、かように思っておる次第であります。  小林先生の御質問にあるいは逸脱したことがあるかもしれませんが、今日までの経緯を申し上げ深くおわびをいたし、今後こういうことのないように万全の措置をとってまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  16. 小林信一

    小林委員 前のほうの経緯はわかりましたが、私がいま特にお願いしました給食会職員構成、これがいまお話を聞く中からもやはり非常に重大な問題になりはしないかと思うのですが、その点お聞きしたいと思うのです。
  17. 清水康平

    清水参考人 どうも失礼いたしました。  職員構成を申しますると、理事長を補佐する意味合いにおきまして常務理事が二人ございます。それから常任監事が一人ございます。それで常務理事の二人は分担をいたしておりまして、一人の常務理事は物資関係、一人の常務理事は庶務会計を分担いたしておるわけでございます。常務理事の一人には、もし理事長に事故あった場合にはこれを代理せしめるという意味であらかじめ指定している人がございます。それは現在は物資を担当している常務理事ではなく会計庶務をつかさどっている理事でございます。  それで、物資担当の常務理事のもとには物資課がございます。物資課は課長以下十一人でございまして、その中に係が二つございまして、買い入れ係、それから輸送係というものがございます。それから物資担当以外の常務理事のもとには総務課と会計課がございまして、総務課は定員が九人、会計は十四人になっておりまして、総務課は庶務係、普及係という業務になっており、会計課は業務経理と物資経理というように分かれております。総務課の定員は九人、会計課が十四人、物資が十一人でございまするから、職員は全部で三十四人ということに相なっております。
  18. 小林信一

    小林委員 それよりも文部省からどういう人が、農林省からどういう人が、あるいは前の財団法人時代のどういう人が出ているか、私は、こういう中の組織でなくて人間の配分、そういう構成を聞こうとしているのです。
  19. 清水康平

    清水参考人 特殊法人日本学校給食会は、御承知のとおり昭和三十年の十月から発足いたしておるわけでございますが、その前から財団法人日本学校給食会というのがございました。特殊法人日本学校給食会は、財団法人日本学校給食会の権利義務を継承して成り立った特殊法人でございます。したがいまして、その当時の人員も日本学校給食会に行っておったわけでございます。容疑者として逮捕された者は、昭和二十七年財団法人当時からおりました。それからずっと今日に至っておるわけでございます。  それから日本学校給食会が発足後の役員の構成を申し上げますると、役員のうちの理事長ともう一人の常務理事は長く文部省にお世話になった者でございます。あとのもう一人の物資関係の常務理事と常任監事は農林省出身の方でございます。  それから事務職員の構成を申し上げますると、財団法人から引き継いだ者が相当おるわけでございますが、これは民間から来た人があったし、それから新しく採った人もございますし、それから農林省におった人もございますし、文部省の人もおる、こういうことになっております。
  20. 小林信一

    小林委員 私は、ここら辺に今度のような問題の起きてきた一つの原因があると考えるわけです。清水さんを前に置いてまことに申しわけないのですが、文部省のお役人さんの隠居所にでも考えられていたり、あるいは農林省のほうの同じような退職後の生活を保持するというのか、そんなような形でもって文部省も見、農林省も見ておるのではないか。清水さんのようなほんとうに私ども信頼するに足る人が行っておるのをそう申しては失礼ですが、文部省農林省は、これほど重大な問題でありながら人事問題を形式的に考えておって、実権というものは従来の財団法人時代の人間に握られておる。この財団法人時代から考えますと、学校給食会というふうなものに新しく発足というのではなくて、前の仕事を継承したようなものなんですが、そのときに大体三十億でしたか、突然文部省が意表をつかれたような形でもって予算が出され、そして学校給食会というものが始まったわけです。いま考えてみれば、そういうところにも私どもが疑念を持たなければならない。業者が、自分たちのやっておる仕事をもっと安定させ、将来性のあるものにするために政治を動かして国から予算を出させて、学校給食というような形の中でそういう利権の安定をはかるというような形にもいまさらながら考えられるのではないか。だからあの当時、私どもは、学校給食会でなくて学校給食法にのっとってその中でこういう金を出したらどうか、こういう意見も出したことがあるのですが、しかし、政府当局学校給食会を非常に強調されて発足したわけです。しかし、いまの人間構成を考えてみれば、文部省農林省というところから人が出され、しかも文部大臣監督権というものは相当各条項にわたってきびしく規定されておるわけです。しかも文部大臣は農林大臣と協議をしなければならぬというふうな、非常に形式的には整備されておりながら今回のような問題が生まれておる点を考えれば、この人的構成というものが昔から全然改められておらない。そうして当時の財団法人時代のしきたり、慣習というものが残って今回のような問題が起きたのではないかとも想像されるわけですが、この点について、大臣がおりませんから局長のほうからでもお伺いしたいのですが、一体この小松という人は三井物産の出身だそうですが、そのとおりですか。
  21. 赤石清悦

    赤石政府委員 御指摘のとおり三井物産につとめたことがございます。しかし、学校給食会に入ります直前の会社は極東物産株式会社となっております。  それからただいまのお話でございますが、いろいろ御指摘のように、前の財団法人から特殊法人に切りかわった場合、服務関係はすっかり切りかわるというたてまえでございます。しかしながら、御指摘のような従来財団法人当時からいた人たちにこの辺の心がまえの転換といったようなことについて、いまから考えますと、あるいは御指摘のような点もあったのではなかろうかというふうなことも、今後の反省材料の一つだと私どもは考えておるところでございます。
  22. 小林信一

    小林委員 清水さん、理事長の見解はどうですか。
  23. 清水康平

    清水参考人 いま、お話がございましたが、私自身のことは、これは第三者から御批判があると思いますが、たとえば物資を担当しておる常務理事は、多年農林省の食糧庁の経理部長、総務部長をやっておりました。米、麦の需給関係をいたしておったわけでございます。その方面のベテランでございます。この理事の言われるには、数量、金額は少ないが、食糧庁の内容とやり方は全く同じだ。というところでもって、気のつくところは逐次私どもと相談をいたして改善をいたしております。他の理事についても同じでございます。職員につきましても私は信頼いたして仕事をいたしております。というのは、決して仕事をまかしておるという意味ではございません。信頼して、そして指導もいたしておるわけでございますが、いま、今日までの経緯を考えてみまするというと、やはりスペシャリストとして迎えた者といえども、これを同じところに長く置いたというところに、そこに一つのすき間があったのではなかろうか、かように思うわけでございまして、その点、深く私どもの不明をおわびする次第でございます。
  24. 小林信一

    小林委員 私どもは、今回のこの問題が起きた内容を聞いてまいりまして、一番遺憾に思っておる点は、入札をさせますその事前に、予定価格というものをどこでだれがやるか、これもお聞きしたいのですが、予定価格がつくられる。ところが、これが必ず漏れてしまうというところに不正問題が起きておったというふうに私どもは解釈しているのですが、いま清水理事長の話を聞けば、信頼される部下であるし、そして各理事は誠意これに当たっておる。しかも、その専門家がそろっておるというふうに言われますけれども、そういう抜け穴というものをつくっておったのでは、幾らあなた方が正しい経営をなさっておっても、これは何にもならぬわけなんですよ。これがいまのように、表面はあなた方が一生懸命本来あるべき姿に直して、そして運営、経営に当たろうとしても、そういう者が存在する限り、この給食会の不正というものは防げないわけなんですが、この点があげられておりますが、理事長はそういう点については何か考えられる点はございませんか。
  25. 清水康平

    清水参考人 いまの入札価格とおっしゃいますと、脱脂粉乳のことだろうと思いますが、脱脂粉乳予定価格は課長が中心としてつくります。もちろん課長補佐も、いろいろ為替状況がどうであるとか情報をつかみまして、課長を中心にして次長、係長がきめます。そして、大体それは入札の前からわかっておりまするが、入札は大体午後二時でございますので、その日になってつくるというのが普通でございます。なるべくまぎわになってつくるというのが私どもの指導でございまして、課長のところで検討いたしまして、それを常務理事のところで、指導によって常務理事がまた検討します。それから次の常務理事のところへまいりまして、そして私のところへまいりまして、説明を聞きまして、よしということになると、それを私どものほうで封印いたしまして、大体それが十二時ごろになったり、一時ごろになったりいたしますが、二時までに間に合うようにこれをつくりまして、封印をいたしまして、それを物資課長が保管をし、開札の際にこれを開いて見るということになっておるわけでございます。  いま入札が漏れているかいないかというお話がございましたが、これも捜査当局の調べを待たなければ何とも言えませんけれども、私は入札が漏れるというようなことは考えておりませんでした。いまもそういうことはあり得ないと思っておりますが、しかし、こういうものが出てきたので、本人がどう言ったかわかりませんけれども、私はそんなことが一体あっていいものかと、いまも思っておる次第でございます。
  26. 小林信一

    小林委員 それは課長のところでそういう予定価格決定される場合には、もちろん次長の小松という人間もおそらく介在するし、そうしてこれがおそらく上司はめくら判を押すんだという形になっておれば、それはもうどんなにその日にしようと、あるいは時間が短かろうと、自分たちがそういう腹でいる以上は、幾日でも前にそういうふうなことは秘密に流すこともできるわけなんですよ。そういう点が今度の問題で非常に明らかになっておるわけなんですが、文部省等は、こういう問題につきましては別に問題視しておらなかったのですか。そういう点は常に考慮しておるべきところだと思うのですが、どうですか。
  27. 赤石清悦

    赤石政府委員 御承知のように特殊法人は、役所で行なうべきものを、その事業の特殊性格に基つき、ちゃんとした責任者を配して、そこに大体仕事をゆだねておる。しかし、文部省としては――どこの省でも同じでございますが、それが適正に行なわれるために、文部省が定款、寄付行為、あるいは業務方法書業務細則等、業務を行ないますこまかい点につきまして、文部大臣の承認をとって、その条項に従って行なう限りにおいては、万々間違いがあるまい。こういう前提で理事長以下におまかせしておる、こういうことでございます。  したがいまして、今日まで非常に事こまかにこうした競争入札につきましても、他のいろいろな法令の趣旨を参酌いたしましてでき上がっております。したがって、適正に行なわれておると考えますので、私どもはかような事態が今日突如として起こってまいったということは、まことに意外であったのでございます。したがいまして、これがどうしてこういうふうに起こったかということにつきましては、従来、たいへん不敏なわけでございますけれども予想していなかったケースと考えます。まことに申しわけございませんでした。
  28. 小林信一

    小林委員 それは大体落札をする――とこの会社がどれだけというような統計から見ても、どうもここのところが多いじゃないか、あるいはここが少ないじゃないかというふうなことがわかると思うのですよ。こういう統計の面から考えても、一応そういう疑念を持つことが、これが監督官庁の責任でもあり、あるいは理事長の重大な責任だと思うのです。だからそういう詳細な最近の落札状況というものを数字的に見せてもらわなければ、私たちには判断がつきませんが、この小松という人間が新聞等報道されておる収賄の事実というものを見ると、もうめちゃくちゃだ。幾ら理事長が部下を信頼するといっても、これが事実とすれば、これぐらいめちゃくちゃな人間はないわけですよ。これは人間的にも何か異常ではないかとも考えられるようなものなんです。そういう人たちが平然としてその収賄事件を続けておるとすれば、この脱脂粉乳の落札の問題にも私どもは一応疑惑を持たざるを得ないわけなんです。そういう中から、いまちょうど十二時近くになりますが、全国の児童、生徒がその粉乳をいま飲んでいるわけなんです。しかも粉乳というのは、栄養価はあるのかもしれませんけれども、そんなにおいしいものではありません。それを、各学校の先生たちあるいは給食を担当する栄養士、そういう人たちは、どうしたら子供たちに喜んで飲んでもらえるかということで、ジュースを入れたりあるいはココアを入れたりして、飲ませようと苦心をしているわけなんですよ。しかもこれに対する父兄の負担軽減という問題も、いま一番目に見えているのは給食費の問題なんです。そういうふうに給食費については非常に神経をとがらしているやさきに、こういう人間が介在してやっている仕事ならば、このミルクの価格というものも一体妥当であるかどうかということも疑わざるを得ないわけなんです。ひいてはその監督の任に当たっております文部省、文部大臣が、これに対しては一体どういう責任を負っておるのか。この給食会法を見てみますと、あらゆるところに、文部大臣の認可とか、あるいは文部大臣の許可を得なければならぬとか、あるいは報告、検査をしなければならないとか、いろいろな条章が非常にきびしく規制されておる。ところが、そういうふしだらな者が内在をするについては、これは勢い文部省、文部大臣の責任が私は追及されなければならぬと思うのですよ。一体文部省は、文部大臣の責任において、こういう問題について、たとえば第二十八条の「報告及び検査」という条項がありますが、最近それをやったことがありますか、どうか。
  29. 赤石清悦

    赤石政府委員 一般的に監督権のございますことは、ただいま先生の御指摘のような点で非常に広範にわたっております。役員の任命権、それから兼職する場合等における許可、あるいはまたいろいろな面における監督権、それからまた学校給食用物資の指定、報告等、それぞれ条項に従いまして、一般的な監督権の行使を行なっておるところでございます。ただいま御指摘の法律の条文によります立ち入り検査、これは最終的な、どうしても法律のたてまえで立ち入り検査しなければならないということを保障するための規定でございまして、文部省と特殊法人の関係でございますると、そうような条項をまたずしても、必要とあらば理事長に来てもらってもいろいろ聞ける。こういったことでございますから、その条項に従って特に立ち入り調査するということはやったことはございません。しかし、これは文書によるのみならず、口頭その他いろいろな面でしばしば学校給食会から報告を徴しておるところでございます。今回の事例にあたって、どのようなことになるかにつきましては、大臣もおられませんので、私からとやかく申し上げられないと思いますが、もちろん文部省が、学校給食会のこの事件について指導監督上の何らかの責任ということもあるいはあり得るのかもしれません。その辺、大臣もおられませんので、私からとやかく申し上げるのを差し控えさしていただきたいと思います。
  30. 小林信一

    小林委員 いま局長から、立ち入り検査はしてはいない、しかし理事長を呼んだり、あるいは報告を求めたりして、十分監督はしておる。こういうお話でございますが、しかし、こういう事態が明白になって、ほんとうに責任を負った報告を求めたり、理事長と話をしておったかどうかというこの点について、次官から、文部省の責任の立場から、はたして自分の責任を果たしておったかどうか、私はひとつ明白に答えていただきたいと思うのです。
  31. 久保田円次

    ○久保田政府委員 小林先生の御質問でございますが、まず、今回の事件でございますけれども学校給食用の物資を適正円滑に供給する責めにある特殊法人日本学校給食会職員収賄容疑で逮捕されるという不測の事件が生じたことは、非常に残念でございます。  そこで、日本学校給食会は、日本学校給食会法、昭和三十年法律第百四十八号に基づき設立された特殊法人であり、同会は法律第二十六条により文部大臣監督するものとされております。すなわち、同会の役員及び評議員は文部大臣が任命するものとし、同会は事業計画、予算及び決算について文部大臣の認可を受けなければならないほか、文部大臣は同会にその業務に関し監督上必要な命令を発することができ、またその業務の状況等について報告及び検査させる等のことができるものとされております。  そこで、大臣がおりませんけれども、いままでのいろいろの状況報告、それから検査、これは小林先生が言われる、具体的にそういうふうな問題について踏み込んで実際やっているかどうか、こういうふうな点については、初めてのケースでございまするので、今後におきましてはこの点は十分留意をいたしまして、文部省といたしましても学校給食会に向かいまして監督指導する考えでございます。
  32. 小林信一

    小林委員 私の聞いたのはそんな問題じゃありませんよ。一体こうなって文部省は責任を果たしたと思っているのか、まことにそういう点は果たしておりませんというのか、その点を私はお聞きしているのです。
  33. 久保田円次

    ○久保田政府委員 御質問の要旨につきましては、遺憾の点が多々あります。したがって、今後は十分問題のないように注意をする考えであります。
  34. 小林信一

    小林委員 第二十一条に、「学校給食用物資の買入れ、売渡しその他供給の契約に関する事項」、二として、「学校給食用物資の輸送、保管、加工等に関する事項」、これは文部大臣の認可を受けなければならない。だから、最終の責任というものは文部大臣にあるわけなんですよね。したがって、こういうふうな問題が出たということは、ただ責任を果たしておりませんというだけでなくて、一体どこにその問題があったかということを、やはり文部省としてはこの際考えなければならぬと思うのです。私は、いま第一番にあげましたものは、この給食会職員構成でありますが、ほんとうに給食会が発足するには、もっと文部省が、その法案を提案した責任からいっても、十分そういう疑惑の生まれないよう、かかる多額な金を使う場所でございますので、そういう点は遺憾のないようもう従来から気をつけなければならなかったのです。ところが、いまのような事実を見ますというと、全然文部省学校給食会に対しては責任を感じておらなかったと言われても私は差しつかえないと思うのです。こういうことは単に国の予算という問題でなく、これが関係する国民全体に大きな責任を負わなければならぬと思うのです。  そこで次に、厚生省の食品衛生課長さんがお見えになっておりますのでお伺いいたしますが、この脱脂粉乳は、至るところから最近は買われておるようでございますが、あるものはケープタウンを回ってきておるような、非常に遠距離のところを通ってきておるものもある。あるいはパナマ運河を通過するものもある。これは各会社の自由でございましょうが、そういう長期間船倉に積まれ、それから赤道を通ってくるというふうなことがございまして、不適格品というものが出てくるのじゃないかと思いますが、そういう検査には立ち会っておられるかどうか、まずお伺いいたします。
  35. 野津聖

    ○野津説明員 現在、食品衛生法に基づきまして輸入します食品につきましては、届け出をするようになっております。その中で必要なものにつきましては検査を行ないまして、その検査の結果不合格になりましたものは輸入させないと、こういうふうな方式、あるいはものによりましては廃棄あるいは用途外の使用、食品以外の使用に振り向ける、こういうふうな措置を現在とっておるわけでございます。
  36. 小林信一

    小林委員 最近の検査状況というふうなものがそこにございますか。
  37. 野津聖

    ○野津説明員 私どものほうで一応統計をとっておりますのは、学校給食用の粉乳として分けておりませんで、全般的な粉乳といたしましての輸入状況、それから不合格の状況というものがわかっておるわけでございますが、過去五年にわたりまして数値を申し上げてみたいと思います。  昭和三十八年度には百件の輸入がございまして、輸入数量は十三万三千四百八十一トンでございます。そのうち検査をいたしました五十二件につきまして不合格の件数が二十四件出ておりまして、その数量は千三百六十トンになっております。昭和三十九年度におきましては百八件の輸入がございまして、輸入数量は六万七千七百七十四トンでございます。検査いたしましたのがそのうち四十二件について検査いたしまして、不合格となりましたのが三十件でございます。その数量は二千二十四トンでございます。昭和四十年度におきましては八十五件の輸入が行なわれまして、輸入数量は四万四千八百二十七トンでございまして、そのうち六件につきまして検査をいたしまして、不合格の件数が一件、そしてそれが一トンでございます。それから昭和四十一年度におきましては二百七十六件の輸入がございました。総トン数が六万八千八百九十六トンでございます。そのうち三十件につきまして検査をいたしまして、不合格の件数が二件、数量は二百六十一トンでございます。昨年度四十二年度では二百九十二件輸入がございまして、総トン数が七万九千二百五十三トン、十件につきまして検査をいたしまして、不合格の件数が一件、総トン数が四十七トンとなっておるわけでございます。
  38. 小林信一

    小林委員 そうすると、それは全体を扱ったものであって、この学校給食会が扱ったものは特別その中から幾らということはまだ言えないというわけですね。そこでいまのその不合格というのは、これは用途外使用をすぐに認められるものかどうか、お伺いいたします。
  39. 野津聖

    ○野津説明員 不合格になります原因といたしましていろいろあるわけでございまして、そのいわゆる不衛生な状態になりました状態によりまして、あるものは廃棄をさせる、あるものは積み戻しをさせます。それから違反品の内容状況によりましては、これを加工原料に回したり、あるいは食用外の用途に向ける、こういうふうないろいろなその状態に応じましての措置をとっておるわけでございます。
  40. 小林信一

    小林委員 理事長にお尋ねいたしますが、こういう用途外の決定を受けたものの処理、そういうものはどういうふうに処理されておりますか。
  41. 清水康平

    清水参考人 日本学校給食会輸入しました脱脂粉乳は、学校給食用としての脱脂粉乳でございます。しかし、食品衛生法それから文部省で定めている品質規格、文部省令の関係がありますので、規定によりますと公的検査機関を経るということになっております。その公的検査機関の検査によりますと、中には日本学校給食用物資としては不適格品である、こう認定せられるものがあるわけでございます。そういたしますと、これはやはり規程にもございますが、その場合には処分をしなければならぬ。処分をする場合には、用途外指定ー用途外というのは、学校給食用で入れたものですから、これを用途外指定の申請を出して用途外の許可を得て、そして処分をしなさい、その場合には処分をする前に文部大臣の承認を経て処分をしなさいという規定でございます。しかし、私どもといたしましては、今日まで農林省の通達に基づきまして向こうの推薦団体がございます。この推薦団体にこれを売ってもらいたい。われわれといたしましては最初に農林省と接触いたしまして、こういう数量をいつ払い下げたらいいかということを折衝いたしまして、向こうが何月の下句によろしい、こういうことになりますと、文部大臣に今度は数量についてこれを売り渡すということの承認を経てから、その農林省推薦の団体に競争入札で売り渡しておるわけでございます。
  42. 小林信一

    小林委員 重ね重ね申し上げるようですが、保管料をめぐってこういう問題が起きるようであれば、そこにも私どもはまた疑問を持たなければならぬと思うのです。というのは、学校給食用脱脂ミルクの不適格品として烙印を押されたものを、非常に業者競争してほしがっておると思うのです。これはかつて横流し等が行なわれたとき、元来がこれは飼料なんですから、だから飼料としてほしいところがたくさんある。したがって、不適格品というものは、この用途外使用に決定されたものは、そういうところからの希望というものが非常にあると思うのです。これもやはりこういう収賄対象になりやすいものですが、食糧庁の次長さんがおいでになっておりますか。――いま厚生省の食品衛生課長さんからお話を聞いたのですが、相当な不適格品が出たわけですね。用途がえとしてこれが飼料等に使われることがあるわけなんですが、かつてそういう問題を通してやはり不正事件があったわけですよ。いまお話理事長さんから聞きますと、その処理等は農林省との話し合いの中で処理をするというのですが、こういう点で疑問点がいままであったかなかったかという点を私はお聞きしたいわけです。
  43. 田中勉

    田中(勉)政府委員 お尋ねいただきましたのですが、私、食糧庁ということで出てきておるわけでありますので、脱脂粉乳のことにつきまして、給食会法との関係におきましては畜産局の所管になっておりますので、非常に恐縮でございますけれども、ちょっと私では答弁できないわけでございます。御了承いただきたいと思います。
  44. 小林信一

    小林委員 そういう点に文部省のほうでは用心をされておるかどうか、おそらくそういうところにもしょっちゅう気をつけておらなければならぬ点が多いと思うのですよ。
  45. 赤石清悦

    赤石政府委員 御指摘のように、学校給食会が発足してから一番関係者にとってショッキングな事件としては、この脱脂粉乳横流し事件でございました。過去に二、三の事例がございました。そこで、そういう好ましくないケースを今後どうかしてなくしようということが、文部省のみならず、学校給食会の一つの大きな努力目標でございました。そこで、いまいろいろのことがなされておると思いますが、地方において処分できるようなことがございましたから地方が横流しをしたという事例がございましたので、地方ではこういう処分はできない、学校給食会一本でやる、しかも文部省の厳重な監督のもとでやる、こういうふうに改めるとか、それから、もちろん地方の学校等にまいりましたものが何らかの理由で流れるようなケースも予想せられなければなりません。そこで、こういうような事例のないように、学校給食会はもちろん、教育関係者にたびたび通知を発しまして、学校給食全般の品位に響くような問題のないようにということは一番気を使ってきた点でございます。ただ不適品、不合格品なり事故品なりが発生いたしますことは、食品衛生法上の観点からもさようでございますが、特に栄養を考える学校給食でございます。食べ、飲む学童の問題でございますので、特に学校給食会をして不適格なものを子供に飲ませるようなことがないように――過去においていろいろな不適格品があって世上を騒がしたことがございます。そこで、こういうことのないように、その品質検査については念を入れてやるように指導してまいりましたし、学校給食会もそのような意向でおやりになっておるようでございます。したがいまして、どうしてもやはり現状におきましてはこうした不合格品と申しますか、不適格品数量が残念ながら出るということはいたしかたのないことでございます。  そこで、出た以上は、これを世人の納得するような方法で処分するということにつきましても、いろいろこまかく基準をきめまして、この基準にのっとって学校給食会が適正にやるように指導もしてまいりましたし、学校給食会もずいぶんこの点については注意してまいったはずでございます。したがいまして、一番最初に申し上げましたとおり、こうしたことに関する横流しはないのではないかと私どもいまもって信用しておるところでございますが、ただ、これらに関連しまして、個人的に何か事故を起こしていたかどうか、この問題まで絶無だというふうに言い切れるかどうか、その辺はまだ今後のいろいろな調べなり何なりによって明らかになっていくのではないかと考えております。  ざっと申しまして、この不適格品の処分については、大体いままでこのような考え方で進めてまいりました。今後もこれを大いに注意してまいらなければならぬことであると考えております。
  46. 川村継義

    ○川村委員 ちょっと関連。脱脂粉乳輸入され、倉庫保管される、食品衛生法によって品質検査をやるというお話が先ほどあった。いまあなたのお話を聞いていると、食品衛生法によるものもあるけれども、大事な給食であるから、給食会をして品質検査は特に厳重に注意する。そういうふうにやらせるように指導もしておるし、これからやりたい、こういうお話がありましたね。学校給食会みずからの手でこの品質検査をやっているのですか。それは業務方法書に書いてありますか。
  47. 赤石清悦

    赤石政府委員 御承知のように、食品衛生法によりますと、厚生省がすべてのものについて専門家をもって全部やるということになっておらないのでございます。これはあとで厚生省の課長からお答えしたほうがいいと思いますが、全部にわたってできない。そのうちのある程度は任意というようなたてまてになっております。学校給食の場合それが一〇%くらいになっているようでございますが、残りの九〇%につきましては、従来厚生省系の品質検査、直接の係官の品質検査が行なわれておりません。そこで文部省といたしましては、厚生省の監督下にございます乳業技術協会という、特殊なこういう検査機関がございます。これは公的機関とわれわれ考えております。こうした公的な検査機関に対して学校給食会が依頼して、そこの品質検査によってその品質を検査するように、こういうふうに指導しておりますし、きまりもそうなっております。決して学校給食会職員がみずから行なうというたてまえにはなっておりません。
  48. 川村継義

    ○川村委員 そのあとのほうの検査、それはどういう法的根拠に基づいているか、もう一ぺん説明してください。
  49. 赤石清悦

    赤石政府委員 学校給食会法の第三条によりまして、学校給食用物資ということをはっきり定義いたしております。読ませていただきますと、「「学校給食用物資」とは、学校給食の用に供する食品その他の物資で文部大臣指定するものをいう。」、いわゆる指定行為、指定物資と呼んでおります。これが現在脱脂粉乳になっておりますが、この脱脂粉乳指定いたします場合、それを受けまして、この指定物資を、「日本学校給食会法第三条第二項に規定する学校給食用物資は、次に掲げる乾燥脱脂ミルクとする。」と規定しまして、その第一号に国産品、第二号が輸入品でございます。その輸入品に「輸入品については、乳及び乳製品の成分規格等に関する厚生省令」、これが食品衛生法の施行省令でございますが、これに規定する脱脂粉乳であって、その成分規格は別表それぞれに該当するもの、こういう規定になっております。
  50. 川村継義

    ○川村委員 ちょっと誤解しておられる。私が聞いておるのは、脱脂粉乳の品質検査は厚生省の食品衛生法に基づいて検査が行なわれるものだと理解をしておった。ところが、それでなくて別途の機関で学校給食会が委託をして品質検査をするとおっしゃるから、その法的根拠は何だ。
  51. 赤石清悦

    赤石政府委員 あとで厚生省の方にお答えいただきますが、先ほど申しましたように食品衛生法では厚生省の食品衛生監視員という存在がありまして、特別の専門家がございますが、これが、いろんな事情がございますでしょう、全部のものに当たりましてみずから検査することができない。それをサンプル的に一部についてやる、こういうことしか行なわれておりませんので、学校給食用物資につきましては、きわめて事柄が重要でございますから、それをほっておくわけにまいりませんから、その食品衛生法の規定にのっとって、学校給食会が厚生省系統の乳業技術協会に委託して、その専門的な判断にゆだねている、こういうことでございます。
  52. 川村継義

    ○川村委員 そうすると、やはり検査をする根本の法律は食品衛生法ですね。そうでしょう。
  53. 野津聖

    ○野津説明員 食品衛生法に基づきましての検査は、これは厚生大臣及び都道府県知事が必要と認めた場合に、報告を求め、あるいは臨検し、あるいは収去を行ない、指示を行なうということが食品衛生法のたてまえでありまして、これにつきましては、食品衛生法といたしましては、必要と認めた場合あるいは公衆衛生の見地から必要な場合というふうな条件がついておるわけであります。ですから、いま文部省のほうで御答弁ございましたように、自主的な検査につきましては食品衛生法に基づいた検査というふうには私どもは考えられないわけでございます。
  54. 川村継義

    ○川村委員 そうすると局長、何の法律に基づいて畜産検査機関に脱脂粉乳検査をしてくれ、こう依頼しておるのですかと私は聞いておるのですよ。
  55. 赤石清悦

    赤石政府委員 先ほどから申し上げておるわけでございますが、根拠と申しますれば、学校給食会法の第三条で文部大臣指定する物資というのがございます。その文部大臣指定する物資として現在は乾燥脱脂ミルク指定をされておる。しかし、この乾燥脱脂ミルクの中には輸入品がございます。その輸入品の中には非常に適格品でないものがある。そういう観点で、それが食品衛生法の立場から全部にわたって検査をしていただくならば、それにもちろんゆだねてよろしいわけでございます。その結果によってより分けていけばよろしいわけでございますが、全部にわたって行なわれていないので、文部省が自主的に――学童給食でございますから、品質検査をせずにそのまま学童の口に入るということになるならば、きわめて事柄が重大である。そこでこれはぜひ自主的に検査をしてやるようにと、こういう趣旨から、昭和三十年の文部省告示で、その乾燥脱脂ミルクのうちの輸入品については、便宜食品衛生法の施行省令になっております乳及び乳製品の成分規格等に関する厚生省令を拝借と申しますか、それに準拠いたしまして、自主的でございますが食品衛生法と同じような検査をしている、こういうことでございます。
  56. 川村継義

    ○川村委員 大事な学校給食用だから御趣旨はわかりますけれども、その辺の法的根拠がはっきりしないのにそういう検査をゆだねるということは、悪いことは起こらぬとは思うけれども、すぐいろいろ巷間うわさされる横流し事件等にひっかかってくるものが心配される。だから私はそれをお聞きしたわけです。  そこで食品衛生課長にこの際ちょっとお尋ねしておきます。またあとで私はお聞きしたいと思いますが、先ほどあなたがお示しになりました五年間輸入件数、トン数、それから抽出検査の件数、不良トン数、こういうものの中には脱脂粉乳についてはわからぬ、こうおっしゃいましたね。ということは、いまの検査方法になっておるからわからぬとおっしゃったのだと私いまようやくわかった。私は当初申し上げましたように、あなたのほうから品質検査をなさるものだと思っておった。だからして、脱脂粉乳についてはどれだけの不良品があった、こういうことはちゃんと一目りょう然、その資料は明らかでなければならぬと思っておった。ところが、わからぬとおっしゃるのは、いまのような検査方法があるからさっきのあなたの数量の中にはそれが明示できない、つかまえることができない、こういうことに解釈できますね。
  57. 野津聖

    ○野津説明員 粉乳の輸入総件数につきましては先ほど申し上げました数字でありまして、その中で脱脂粉乳がどれだけあった、あるいは学校給食用脱脂粉乳がどれだけあったということは、私どものほうでは分離しておらないものでございますので、それは分けることはできないと申し上げたわけでございます。
  58. 小林信一

    小林委員 最後に、私は厚生省の食品衛生課長さんからも、それから農林省の食糧庁の次長さんからも――いまのような問題は、今後こういう問題があれば相当自粛してなくなるではありましょうが、問題が問題だけに、要するに教育という問題に与えることから非常に私は重要だと思うのですよ。そこで厚生省のほうの検査の中にも不良品というものはたくさん出てくる、またあるいは故意にそういうふうなものをつくって横流しするとかあるいは不正とかというものも出てくるわけなんですが、それよりももっと重大な問題は、いま川村先生から質問がなされたように非常に不適格品が出てくる。元来これは外国では飼料ですね。それを日本では、非常に栄養がある、子供にどうしても飲ませなければならぬというような、そういう非常に矛盾のある品物が取り扱われておるわけなんですが、厚生省の立場として、こういうものを今後も永久に持続させるべきであるかどうか、できるならば生牛乳に転換をさせるべきであるというような御意見がおそらくあると思うのですが、その御意見を聞き、それから食糧庁のほうでは、やはりこういうような問題の起きる、しかも外国の飼料である、子供たちに聞かしてもあんまり感心しない問題を長く取り扱うよりも、農林省の責任においてもっと生牛乳を完全に供給するような配慮が私はほしいのですが、その点につきまして現状どうかというふうな点からお二人の御意見をこの際承りたいのです。
  59. 野津聖

    ○野津説明員 私のほうでは、いわゆる食品が不衛生であるということを排除するということで仕事をいたしているわけでございまして、直接の所管でございませんので、学校給食の場合に脱脂粉乳を生乳に切りかえたほうがいいのではないかということに対しましては、所管柄お答えするのは非常にむずかしい問題ではないかというふうに考えておるわけでございますが、厚生省の職員という立場から申し上げますと、できるだけ完全な栄養が学校給食として与えられるということが望ましいのではないかというふうには考えているわけでございます。
  60. 田中勉

    田中(勉)政府委員 いまお話のございました点、私食糧庁の立場でございまして、脱脂粉乳直接の関連の局ではございませんが、先生のお話もございましたけれども農林省といたしまして畜産局に御趣旨のほどをよくお伝えをして、そしてなお、何といたしましても畜産行政、酪農製品の価格安定、こういう問題と非常に関連する問題でもございますので、十分畜産局に御趣旨のほどを伝えまして、農林省として文部省ともまた今後十分協議して、その辺の改善をはかっていくように努力をいたしたい、こういうように考えております。
  61. 小林信一

    小林委員 あなたにその問題をお聞きすることは筋違いかもしれませんが、第三十一条に農林大臣の権限として、業務その他運営について報告を受ける、要するに文部大臣と同じような責任を持っておられるところでございますので、お聞きしたのです。  最後に文部大臣にお伺いをしますが、先ほど来内容をいろいろとお聞きいたしますと、単にこの保管料の問題だけでなくて、あるとは言わないけれども、おそらくこういうような紊乱の極に達しておる、不正事件が起きておるようでは、脱脂粉乳そのものの入札あるいは不適格品の処理その他、学校給食会がいたします業務というものは非常に複雑でございますので、そういう中にもそういう容疑がありはしないかという意見まで実は聞かされたわけでありまして、最近の教育に関係する仕事の中でこれくらい不愉快な問題はないと思うのです。したがって、教育に及ぼす影響も私は重大だと思う。先ほど文部次官が大臣にかわって答弁されましたけれども大臣は重大な責任を負っておる。この学校給食会法に規定されておるものでは責任があるわけなんです。しかし、そういう責任が十分果たされておらなかった、全然果たされておらなかったという言に尽きる。こういうふうに私は申し上げたのですが、これにつきまして大臣の御所見を承って、終わりたいと思います。
  62. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 お答えいたします。  日本学校給食会に対する監督は文部大臣の責任であるということは申すまでもないことでございます。このような、ことに教育に関係のある団体の中から不始末をしでかしたということで司直の手をわずらわしておるということはいかにも残念にも思いますし、ことにこれが教育関係団体であるということを考えましたときに、私もその責任につきましてほんとうに申しわけないと存じておるような次第でございます。  今回の事件については、関係当局の手で十分お調べを願うことになるわけでございますが、われわれといたしましても、従来の監督が不行き届きの点があったということは、こういう事件が起こります以上認めざるを得ないのでございます。したがいまして、ただ単に倉庫保管というような問題だけでなくて、やはり業務の取り扱い全般にわたりまして、文部省としましてもさらに行き届いた監督に関する措置を講じてまいらなければならぬと思います。給食会それ自体においても、しっかりとひとついろいろな間違いの起こらないような業務のやり方をやってもらうために十分研究もしてもらいたいと思いますが、文部省も同時に、そのようなことにつきましてさらに努力をいたしてまいりたいと思います。  いずれにしましても、かような不始末を生じたということにつきましては、文部大臣としてその責任を痛感いたしておる次第であります。今後十分監督を適正にいたしましてあやまちを繰り返さないように、給食会の役職員はもちろんのこと、われわれといたしましても戒めてまいりたいと存じます。どうぞ御了承願いたいと存じます。
  63. 小林信一

    小林委員 学校給食会に関係をする問題についての質問はこれで終わりますが、あと続けてやりましょうか、どういたしましょうか。
  64. 高見三郎

    高見委員長 ちょっと速記をやめて。   〔速記中止〕
  65. 高見三郎

    高見委員長 速記を始めて。  午後二時から再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時三十七分休憩      ――――◇―――――    午後二時二十四分開議
  66. 高見三郎

    高見委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。川村継義君。
  67. 川村継義

    ○川村委員 午前中、小林委員から学校給食会法の問題について質疑がございましたが、そのとき理事長のお考えも、大臣の所見も承ったのでありますけれども、私、小林委員質問に関連をしてもう少しお尋ねをしておきたいと思います。  私が申し上げるまでもございません。学校給食法の第一条、この法律の目的を私はずっとかみしめて読んでいるわけです。今日学校給食というものは、学校教育の中において、ただミルクを飲ませる、そういうような問題でなくて、教育という立場からして実に重要な位置を占めておるのが学校給食である、私はそう理解をしております。これはおそらく理事長さんも否定はなさらないと思います。さらには学校給食法の第二条に、学校給食の目標が明らかにしてございます。これも御存じのことであります。いまも申し上げましたように、私は、特に今日の学校教育において教科の指導にまさるものが保健教育である、こういうように実は考えておる者の一人でございます。そういう意味で学校給食というものが実に大きな教育上の使命をになっておるし、教育的位置を占めておる、こう考えているわけであります。  今日、学校給食のいろいろの父兄の負担というのも問題になっております。また、学校給食を実施される現場の学校給食従業員あるいは学校の先生方のその苦労というものも実に大きなものがございます。これは案外皆さん方は御存じないかもしれぬと私は推測しておるのであります。たとえばその一例を申さしていただきますならば、学校給食をやる場合に、学校給食従業員の方々が学校に配置をされます。ところが、これは原則は市町村の職員の身分を持っております。そうして、これらの給与等の財源は地方交付税で見てあります。ところが、御存じでございましょうけれども小学校の場合を見てみても、その地方交付税で見られる場合の基準財政需要額の算定におきましては、標準施設十八学級でございますが、十八学級に給食従業員の皆さん方は三名ということが実は算定されるわけであります。標準施設の十八学級というのは、生徒数にして八百十人、この生徒に対して、三人の給食に従事する方々がいかに苦労なさるかということはおわかりいただけると思う。だから三人ではとてもやっていけません。やっていけませんから、市町村は余分に、あるいは五人なり六人なりの給食に従事する方々を置いております。ところが、市町村が、そんなのは交付税にもないのだ、算定されていないのだということになると、まことに残念ですけれども、PTAの負担で、PTAの事務員として採用して、そうして給食に従事させておる、問題の多い方法でありますが、こういうことも行なわれております。学校の先生方にも、ちゃんと給食係の先生方がおります。学校の先生方は、大体ならば昼休みには四十五分なり一時間の休憩時間がなければならぬ、これは基準法の示すところであります。ところが、ほとんど給食指導の時間にそれは充てられて、生徒と一緒に、この第二条に示しておるところの目的を達成するために実は先生方は努力しているわけであります。  こういうことを一、二考えてまいりましても、日本学校給食会の中に、今度捜索を受けるというようなああいう事件を起こしたということは、まことに重大であると言わざるを得ないと思います。おそらく理事長もそういう点は十分お考え下さっておるとは思いますが、午前中の御発言にもございましたように、徹底的にそのやり方を変えるべきは変えるということでやっていただかなければたいへんなことになるのではないか。しょっぱなから大臣にいろいろ申し上げてたいへん恐縮でございますけれども、いま私たちが非常に気をつけなければならぬ問題が幾つか出ておる。学校給食会の問題、あるいは福岡教育大学の入学汚職の問題、北九州の人事異動にまつわる汚職問題、熊本県の人事異動にまつわる増収賄の問題等々幾つかの問題が提起されております。学校給食の問題につきましても、これまで幾たびか黒いうわさが地方等には実は流れておった。そういう事実もあるわけであります。こういうときに、私たちがやはり教育というものを考える場合には、文教行政のあり方というものを特にその衝に当たっておられます文部省全体として考えていただかなければならぬのではないか。ただ単に、ある問題のあるような法律だけで教育は正しくなると考えたら大間違いではないかと私は考えておるわけであります。  そこで、まず理事長に初めにお尋ねいたしますけれども、午前中小林委員質問に対してお答えがあった面でございますが、米国CCCから購入をされてくるところの脱脂粉乳について、貿易商社が七社扱っておる。こういうことでございまして、理事長のおことばによりますと、数量価格はすでに契約をされておる。ところが貿易商社に渡ってくるときに競争入札をやることになっておる、こういうお話があったと記憶いたします。速記録を十分読んでおりませんけれども。一体貿易商社で競争入札をやるというのは、何を入札するのでございますか。
  68. 清水康平

    清水参考人 競争入札で主としてやりまする競争内容は、たとえば脱脂粉乳価格はFOB幾らときまっておりまして、ただ換算率の問題があるかと思いますが、輸送費それから本船荷役、はしけ料、蔵入れ料、それからユーザンスの間猶予がありますので、代金をかわって払ってもらうというようなことが競争内容になっておると思うのでございます。
  69. 川村継義

    ○川村委員 これはどうもまだ私、はっきりいたしません。怪奇ということばは当たりませんけれども、非常に複雑ですね。そこでわれわれしろうとにはよくわかりませんが、業務方法書にはおそらくその手順は示してあると思いますが、そこでいまの点についてもう少しお尋ねいたします。これは理事長からでもよろしゅうございますが、局長からでもお答えいただきたいと思います。脱脂粉乳輸入については、学校給食会が、買い付けを年間幾ら必要とするということを文部省と相談をいたしますね。   〔委員長退席、久保田(藤)委員長代理着席〕 文部省はそれを外務省を通じて、日本の米国大使館を通じて米国のCCCと数量価格の折衝をする。そうしてそれができ上がったところで、年間の売買契約を米国CCCと日本学校給食会がやる。こういう手順にまずなっていくのでございましょうか。その点を少し説明していただきたい。
  70. 清水康平

    清水参考人 四十年度以前は主としてアメリカから入れておったわけでございますが、四十一年度以降はアメリカが一部、そのほかフランス、カナダ、ニュージーランドとなっております。四十二年度はアメリカからは一トンも買うことができませんでした。でありまするからして、グローバルにフランス、カナダ、ニュージーランド、ベルギーというようなところから買っておったわけでございます。  そこで、たとえば四十三年度に脱脂粉乳はどのくらい必要だろうかどうかということは、日本学校給食会では、わかるようでほんとうはわかりません。と申しますのは、小学校中学校の新入生の数とか卒業生とか、あるいは牛乳に切りかえる量とかいろいろございますし、しかも小学校中学校脱脂粉乳の量が違っておる関係で、文部省と協議をして、当該年度に脱脂粉乳はどのくらい要るという総ワクをきめていただくわけでございます。その総ワクをきめられますると――これは私から申し上げるのはちょっとどうかと思いまするが、やはり文部省農林省とも御相談の上、場合によっては外貨資金割り当ての関係もございまするので通産省とも御相談の上、脱脂粉乳は当該年度総ワクこのくらい必要であるという通知がございます。それに基づきまして、日本学校給食会は、現在の手持ち量とか次年度の需要量等も文部省から聞きまして、それを勘案いたしまして文部省と協議の上、年間の総輸入量を決定いたしておる次第でございます。  きまりましてからアメリカのCCC、これは何と申しますか、商品金融公社とでも申しますか、そういうようなところと直接折衝することもございますし、その範囲内において日本学校給食会が、政府機関または政府に準ずる機関と直接折衝するわけでございます。それで、どういう機関と折衝するかと申しますと、規程にもございますが、文部大臣文部省指定した相手方あるいは日本学校給食会理事長が適当と思った相手方については文部大臣の承認を得てその人と折衝する、そして年間の買い付け数量価格その他を契約する、こういうことに相なっておるのでございます。
  71. 川村継義

    ○川村委員 そうすると、先ほどの競争入札でありますけれども、大体数量と購入価格はきまっておる。ところが、競争入札をしなければならぬのは運般費である。まあ船で持ってくる場合もありましょうねえ。そういうもののために競争入札をする。ちょっと何かこう不可解なんですよ。運般費などは各社によって全部違うのですか。
  72. 清水康平

    清水参考人 お答えします。たとえばCCCとの契約では、年間かりに三万トンといたしますと、こういう品質規格のもの、こういうパッキングのものを、何年産のものを一ポンド幾らということで契約をいたすわけでございます。したがって月別に、たとえば五大湖から脱脂粉乳を四千トン入れるというような場合におきまして、入札をする場合には、四千トンを五大湖から何月に入れたい、FOB価格は一ポンド幾らであります、それをいつの幾日までに横浜なら横浜に運んでもらいたい、こういって説明会を開くわけでございます。説明会で商社がそれを聞きますと、本社へ帰りまして計算をするわけですが、そのFOB価格の換算率でありますとか、輸送費――輸送費は、五大湖幾らとか、ヨーロッパは幾らとか、大体同盟でもってきまっておるようでございますが、それもやはり換算率が出てくるだろうと思います。それから本船からはしけへおろす費用でありますとか、はしけから蔵入れするまでの費用でありますとか、それからユーザンスの間、向こうにLCを開設してかわって代金を払うのでございますので、そのための利子であるとか手数料であるとかというようなものが競争入札対象になる、かように承知いたしておる次第でございます。
  73. 川村継義

    ○川村委員 いま理事長からお話しいただきましたことは、業務方法書にその手続というようなものが明記してございますか、あるいは別途の何かの規則をお持ちでございますか。
  74. 清水康平

    清水参考人 業務方法書の第三条には、ただいま申しましたように、日本学校給食会買い入れに関する契約をする場合は、その相手方は文部大臣が指示する者または理事長が適当と認めた者であらかじめ文部大臣の承認を受けた者、その契約書は記名押印しなければいかぬ、ただし、外国語をもってする契約の場合は、国際上の慣例をもってしなければならぬというようなことがございます。そうしてその契約をする場合には、契約の目的でありますとか物資の名称、品質及び数量、契約の金額、代金の決済、物資の授受に関する事項というようなことが契約書作成の内容になっております。
  75. 川村継義

    ○川村委員 理事長、私がいまお尋ねしましたのは、実は私が承知しておる輸入の手続が、いま理事長から御説明いただきましたものと少し違っておったように思いましたのでお聞きしたわけです。きょうでなくてもいいですから、いずれ近いうちに業務方法書をぜひ見せていただきたいと思います。  そこで、その次にお尋ねをいたしますが、これはあまり上にさかのぼったら恐縮ですから、昭和三十八年度、三十九年度、四十年度、四十一年度、四十二年度の学校給食用脱脂粉乳の取り扱い数量、これがおわかりでしたら、それを教えていただきたいと思います。
  76. 清水康平

    清水参考人 お答え申し上げます。三十七年度からのことを申し上げますと、輸入数量は三十七年度は四万九千百九トン、三十八年度は七万八百十一トン、三十九年度は六万四千百二十五トン、四十年度は五万一千七百九十八トン、四十一年度は四万七千二十三トン、四十二年度は三万八千八百九十八トンということに相なっております。
  77. 川村継義

    ○川村委員 いまお示しのように、昨年度は三万八千八百九十八トン、四十一年度は四万七千二十三トン、そういう大体の数量輸入をされております。その中で、午前中にもちょっと私関連でお尋ねをしましたが、いわゆる不合格品、学校給食用として不適当である、よって学校給食用に回さなかった数量、これをいまの年次別にあわせてお聞かせいただきたい。
  78. 清水康平

    清水参考人 三十八年度におきましては、不合格数量が四千九百六十三トン、三十九年度は千七百五十一トン、四十年度は二千八百六十五トン、四十一年度は二千八百七十トン、四十二年度は二千十トンということになっております。
  79. 川村継義

    ○川村委員 今度問題となっておりますものでいろいろ疑惑を持たれておるのは、実はその辺にもあるのじゃないか。私たちは、皆さん方が学校給食にまずいものは十分検査をして、お与えくださることだろうと信じております。   〔久保田(藤)委員長代理退席、委員長着席〕 ところが、先般の新聞にも指摘されましたように、文部省学校給食課の統計では、四十年までは払い下げミルクのうち加工用は飼料用の一割程度だったものが、加工業界の需要がふえ始めた四十一年を境に加工用が急増、飼料用をしのぐなど不審な事情もあり、払い下げに不正があるのではないかと疑惑を持たれておる。いまお示しのあったこの数量も、輸入数量に比べて相当大きいわけです。二千十トンであるとか二千八百トンであるとか、こういう数量の不良品としてのけられたものは、どういう使途に回っておりますか。これは飼料としてぶち込まれておるのか、あるいはミルク牛乳の原料として回されておるのか、その辺の行き先を御存じですか。
  80. 清水康平

    清水参考人 脱脂粉乳の検査は、午前中にもお話がございましたとおり、厚生省の国立衛生試験所が受け持っておられるわけであります。しかし、都合によりまして省略されまするというと、今度は日本学校給食会といたしましては、昭和三十年に文部省告示で、学校給食用物資というものは脱脂粉乳であるけれども、その告示でこれこれこういう品質のものでなければならない、こういう告示があるわけでございます。したがいまして、日本学校給食会といたしましては、公的な試験機関でありまするところの厚生省、または農林省と厚生省の共管でありますところの財団法人日本乳業技術協会に検査をしてもらうのは当然でございます。そこで検査の結果によりまするというと、大部分は、これは学校給食用物資として適品である、この部分は食品加工用として適品である、この部分は飼料として適品である、こういう検査結果が出てまいるわけでございます。私どもといたしましては、そのオーソライズされた権威ある検査機関の結果はあくまでも尊重しなければなりません。  そこで、そういうような不適品の処分はどうするかと申しますと、これは業務方法書細則にございますが、その場合には、これは文部大臣の承認を得てしなければならない、こうなっておるわけでございます。それで、日本学校給食会といたしましては、特に飼料の例を申し上げますと、これはどういうところへ売っていいのか、これはなかなかむずかしい問題でございます。ところが、農林省のいわゆる飼料政策と申しますか、農林省の通達がございまして、飼料を売却する場合には、これこれこういう団体に売却するようにという通達がございます。そこで私どもといたしましては、飼料なり加工品が出まするというと、数量と売却の時期をいつごろにしたらいいであろうかということを打ち合わせまして、その指示が出ますると、これに基づきまして、文部大臣の承認を経てそういう団体に売却いたすわけであります。しかし、売却する場合に、学校給食用物資として輸入したものでございますから、規定に基づきまして用途がえ使用の申請を税関に出しまして、その承認を得て、そしてそれを売り渡すということに相なっておるわけでございます。
  81. 赤石清悦

    赤石政府委員 御質問の点に私から若干お答えいたしますが、新聞報道文部省統計課の資料によれば、食品加工用が昭和四十一年からふえておるということでございます。この点に関連しまして、確かに昭和四十一年がふえておりますが、これは私どもこう解釈させていただいております。先ほども理事長からお話がありましたように、昭和四十一年、アメリカ脱脂粉乳の供給事情が非常に事情変更をしまして、アメリカからの入手が困難である。結局、ベルギーとニュージーランドからこれを手に入れる、こういうことに相なったのでございますが、何ぶんにもニュージーランド、それからベルギーは、日本との従来買い付けの経験がございませんので、梱包にかなりロスがあるという状態がありまして――梱包にロスがあるということは、つまりこれは飼料用よりもむしろ食品加工用に回るケースのほうが多いわけであります。こういう結果として、昭和四十一年度には食品加工用が品質検査の結果ふえた、こういうように理解しております。
  82. 川村継義

    ○川村委員 いまのお答えで非常に注意をいただかなければならぬと思いますことは、国民自体もそうです、私もやはりやり方について疑惑がなかなか解けないものがあります。というのは、学校給食会は、輸入したところの脱脂粉乳を相当大きく、いわゆる不良品だとして回す。不良品だとして用途がえをやる。こういうことによって学校給食会は利ざやをかせいでおるのではないかというあらぬうわささえ、いいですか、あらぬうわさですよ。そういううわささえ巷間に流れた時期がある。それもあります。もちろん、入ってきた物を検査する、とんでもないものを学校給食に回してもらっては困りますけれども、先ほどもちょっと新聞の指摘したことばでありますけれども、今日、町を歩いてみても、駅頭に立ってみても、ミルクが入っているのか入っていないのかわからぬようなミルク牛乳とか、色ものの牛乳とか、ミルクの名前を冠したところの飲み物がはんらんをしておる。これはどれくらい入っておるかわかりませんが、みな脱脂粉乳なのである。そういうようなもので大きく加工業者が利益をあげている。そういうほうに回されるものの中に、大部分学校給食用として輸入された脱脂粉乳があるということがいわれておるのであります。  そこで、いまお聞きしたように、毎年度二千八百トンとか、昨年は二千十トンということでありますが、これは理事長のことばをそのまま信用いたしますが、やはり相当多量の用途がえをしなければならぬ。給食用としては不良であるというような検査を受けなければならぬということになる。もちろん毎年三万八千トンであるとか、四万七千トンであるとか、五万一千トンであるとか、それまできっちり学校給食用の必要数量として押えて輸入するということは、これは困難でありましょう。あなたの初めのおことばどおり困難でありましょう。しかし、そうかといって、学校給食用として輸入するにあたっては、相当その買い付け先において厳選されることも必要ではないか、一体そういう手続をしたのか。ところが、どうも入ってくると、二千八百トン、二千十トンというような用途がえが出るということについては、この輸入そのものにやはり用途がえを一つのねらいとして輸入しておるのではないか、こういう疑惑が出てきておる。これは理事長、これの輸入手続についてはよほど慎重にしていただかなければならぬのではないか。こういうことになりますと、やはり輸入業者等々の余分の利益を誘い出す。それがさっき言った事務官のああいう汚職にもつながる原因をはらんでおるのではないかと私たちは推測せざるを得ないのであります。こういう幾つかの問題があると思うのです。その点は、いまここで私検査官じゃありませんから、とやかく言うわけではありませんけれども、とにかく学校給食重要性をお考えいただいて、また、学校給食会の持っておる業務の使命というものをお考えいただきまして、こういう点にもう一度メスを入れて、ひとつ検討を願いたいということであります。  そこで重ねてお尋ねいたしますけれども、先ほど七社が大体やった実績があるというのですが、輸入したこの七社の毎年受け持った輸入割り当てトン数はおわかりでございますか。毎年はたいへんでしょうから、四十、四十一、四十二、四十三年度くらい、一番たくさん入れたところをずっと名前を並べてみてください。
  83. 清水康平

    清水参考人 四十年度におきまして一番多く入れた、一番多く受け持った落札商社はこれは二万一千五百六十七トンでございまして、商社名を申し上げると三菱商事でございます。それから四十一年度において輸入商社で一番多くトン数を入れましたところは野村貿易でございます。数量は一万五百三十九トンでございます。それから四十二年度におきまして一番多く入れました商社は小網でございまして、トン数は七千六十七トンでございます。
  84. 川村継義

    ○川村委員 私は、その各年度の少なくとも五年間くらいにわたった七社のその割り当て輸入した数量、その順位、そういうものを実は知りたいんです。しかし、まあきょうはもう時間があれですから聞きませんけれども、これはひとつ表にしてあとで見せていただきたい。  今度の事件の一つの疑惑となっておるのも、この割り当ての順番というか、何かそういうものが指摘されておりますね。そういうものがどうもわれわれは、この七社の輸入にあたって、先ほどあなたは競争入札というようなおことばがありましたが、そうでなくて、裏では七社の談合が行なわれておるのじゃないか、こういう見方さえしております。そこを何という事務官でしたか、調べられておる物資係の事務官の人がうまいぐあいに動かして、ああいう収賄という嫌疑を受けることになったのではないか。これは私が申し上げるまでもございませんけれども、もしもこういうことを七社が実績をもとにしてうまいぐあいにころがして輸入割り当ての談合的な行為をやってきたというならば、これは刑法の九十六条ノ三に該当する大事件であります。そこで、こういう点についても実は理事長としてよほど気をつけていただかねばならぬことですね。通産省のちゃんと登録されたといいますか、通産省が、実績を持っておるというか、そういう商社の中から競争入札させたというのだけれども、この七社がほとんど順繰りにこういう輸入割り当てを受けてきておる。実績ということだけでは、これはやはり輸入の適正な運営はできないのじゃないか。これはひいては学校給食会そのものの経理面にも相当響いてくる問題であろうと思います。こういうところに理事長としては、今日まであまりにも、学校給食会では間違いがないであろうというようなあなたのりっぱなお人柄が、実はこういう問題に職員をして深入りせしめたという原因をつくっているのではないか。そこでこの輸入割り当て等については再度メスを入れていただく必要がある、私はそう考えているわけです。  農林省畜産局長御苦労さんでしたが、ちょっとお尋ねをいたします。  ことし畜産振興事業団に交付するために、私の記憶違いかしれませんけれども、大体百億ほどの金が出ておりますね、数字が違っておったら教えてください。この畜産振興事業団に交付される必要な経費というものは、一つは学校給食用の牛乳供給事業の補助金であり、もう一つは加工原料乳の生産者補給交付金、こういうものであると思うのですが、ひとつ局長、あなたのほうから少しその中身を御説明いただいて、この学校給食の牛乳、これは生牛乳と関係があると思うのですが、それらの関係を説明していただけませんか。
  85. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 ただいま御質問の点でございますが、畜産振興事業団に交付をいたしておりますものは、四十二年度約八十五億二千五百万ということでございまして、そのうち学校給食供給事業といたしまして六十五億、それから加工原料乳生産者補給金その他それに関連いたします業務委託費あるいは一般管理費等といたしまして二十億二千五百万円、こういうことになっておるわけでございます。
  86. 川村継義

    ○川村委員 学校給食用の牛乳供給のやつはことしは百五十五万石でしたかね。
  87. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 四十二年度といたしましては百三十万石ということになっております。四十三年度が百六十万石ということになっておるわけでございます。
  88. 川村継義

    ○川村委員 四十三年度が百六十万石でしたね。実はたいへん文部省、それから農林省も御努力をいただいて生乳の学校給食がだんだん伸びてきた。私たちはたいへん喜んでおります。これが日本の酪農振興にもつながるものであろうと期待をするし、学校の生徒、児童に生牛乳を給食用として与える、これはりっぱな栄養、あるいはからだをつくっていくたいへんいいことだと思っている。ところで先ほど小林委員からも御質問があったと思うのでありますが、もう少しこれを前進させて生牛乳に切りかえるということについては、どんなところに困難がございますか。脱脂粉乳輸入ということがなくなると学校給食会が吹っ飛んでしまうから、これはだめだということになりますか。ひとつ農林省の立場から率直な見解を聞かしてください。
  89. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 先生御承知のように、学校給食目標というものがございまして、四十五年度で生乳に切りかえる、こういうふうなことになっております。したがいまして、その目標に向かって毎年努力をいたしておるわけでございますが、需給事情もございます。そういうふうな点も考慮いたしまして、毎年予算におきまして当該年度の供給数量というふうなものをきめておるわけでございますが、目標がございますので、その目標に向かって努力をいたしておるわけでございます。
  90. 川村継義

    ○川村委員 ここでいろいろ酪農政策のことを聞いてもどうかと思いますが、実はもう少し具体的にお話を聞きたいと思いますので、学校給食に扱っておる――これは学校給食会も扱っておるわけですが、小麦粉、これは農林省から放出されると思いますが、実は学校給食用の小麦粉が、これは法的にはきちっとなっています。ところが、どうもやはり余分に出ていってほかに回る、こういうようなうわさがあるのですよ。これは私がそうかと言ったって、そうだとおっしゃることはないのですけれども農林省としてこれは非常に考えていただかなければならない問題だと思うのですが、あなたのほうではそういう気づかいをなさったことだとか、あるいは現状は何か心配するような状況があるか、何かお気づきありませんか。
  91. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 はなはだ恐縮でございますけれども、小麦粉の関係は食糧庁で所管をいたしておりまして、私のほうでは直接タッチいたしておりませんので、その辺の事情については存じませんので、お話がありました点は食糧庁長官によくお伝えをいたします。
  92. 川村継義

    ○川村委員 食糧庁の次長さんお帰りでしたね。  それでは大体この辺で、私の学校給食会に対してぜひ要望といいますか注文をしておきたいようなことは、おもなるものはそれくらいにしておきますが、文部省局長さんきょう来ておりますが、これもさっきちょっと御質問あったかと思いますけれども学校給食会法の二十七条、ここにはちゃんと文部大臣監督命令規定がありますね。小林先生からも御質問があったようでありますが、局長、これはあなたのほうが主管ですが、学校給食会に対して、適宜こういうような業務に関して必要な監督処置はとってこられましたか。十年間何にもやっていないのじゃありませんか。
  93. 赤石清悦

    赤石政府委員 これは非常に法律的に申し上げることをお許しいただきたいと思いますが、この二十七条は、法律の条文をもって、相手方が口頭その他でもって話がつかないような場合、はっきりと法律上の根拠でもって、こうしたまえ、こういうふうにするような条文のたてまえでございます。  そこで、さような意味における監督命令の行使といったようなことは実はないようでございますが、しかし、御承知のように、特殊法人は、任命権その他からして絶えず各方面で指導監督の機会がございます。つまり、この二十七条の監督命令を発動する必要のないくらい学校給食会と緊密な連携をとり従来まで指導してきたとわれわれは考えておるわけでございます。これは法律解釈を申し上げているわけでございます。
  94. 川村継義

    ○川村委員 法律の解釈はあなたのおっしゃるとおりだと思います。しかし、やはり学校給食会、これはあやまちがないたろうということで――法は法として、やはり毎年毎年実際上の注意、監督というか、そういうことが十分行なわれておったならば、おそらく今度のような問題は起こらぬのじゃないかという気がわれわれはします。そういう点で、ひとつ文部省としても、これはやはり理事長同様に大きな責任を感じてもらわねばならぬ。  私は、農林省の人が帰っても、大臣じゃありませんから言いますけれども、三十一条には農林大臣の権限も規定してある。おそらく農林大臣なんというのは、こんな条文があるとは知らぬのじゃないかと思うのです。これは理事長さんなんかに聞いたら悪いけれども、先ほど私この法文解釈を聞いた。これは脱脂粉乳のことでありませんと、こう言った。ところが、これはそうじゃないのですね。脱脂粉乳であろうが小麦紛であろうが、農林大臣の権限がそこに書いてある。農林省の関心というものもぞんざいである。そういうことが必要だということを言うことは、ほんとうは残念なんですよ。しかし、こういう事態が起こると、ちゃんとやるべきことを、当局監督の地位にある方々がやらないというところにあやまちが起こるということもある。これは特に文部省のこういう外郭団体といわれるようなものについては、その理事長さんや理事さんが、あるいは昔の同僚であったり、あるいは先輩であったりするからといって、ぞんざいにしてはいかぬということを私は言いたいのです。そういうところにやはり一つの文部行政の問題点が存在するのではないかと私は指摘をしておきたいと思います。  当初申し上げましたように、学校給食会の業務というものは、特に教育上――これは商売人じゃないですから、教育上重要な使命を帯びているのですから、ひとつこの際徹底的に究明すべきは究明して、午前中のおことばにもありましたように、再びこのようなことが起こらないように、あえて言うならば、ひとつ再建をはかってもらわなければならない。  理事長さん、たいへん失礼なことをお聞きするようでございますけれども理事長さんは、理事長に御就任なさいましていま何年におなりでございますか。
  95. 清水康平

    清水参考人 私は三十八年の十月一日に任命せられまして今日に至っております。
  96. 川村継義

    ○川村委員 学校給食会法律ができてから、これは三十年にできたと思いますが、ずいぶんあと御就任でありますから、いろいろ前の財団法人の時代からのくされというものも続いておるのじゃないか、それを一挙にメスを入れられなかったというやはり何かがあるのですか。この際ひとつ理事長の力で立て直していただくことを強く実はお願いをしておきたいと思います。  時間もだいぶ過ぎましたので、私の関連した質問はこれで終わります。
  97. 高見三郎

    高見委員長 参考人には長時間にわたり御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  質疑を続行いたします。小林信一君。
  98. 小林信一

    小林委員 まず、初中局長にお尋ねいたします。  昨年の十月二十六日全国一斉に行なわれました、教職員人事院勧告に対してこれを完全に実施してもらいたいという要求と、これがいれられない情勢に対する抵抗から、先生方は賜暇闘争と言っておりますが、とにかくストライキに入ったことがございますが、これに対しまして、私はその問題を取り上げるのでなく、その後の処置についてお聞きいたします。各府県のこれらに対する処罰というものが大体出そろったように私は見受けますが、非常に軽重がある。これは各府県の自主性でやったからこういう形になったのか、まずお伺いいたします。
  99. 天城勲

    ○天城政府委員 最初に概要をちょっと申し上げたいと思います。  約十四万人の方々がいわゆる一〇・二六のストに参加したわけでございますが、その後の各府県の処置でございますけれども、二十六都府県三指定都市におきまして二万四千二百七十九人の方が懲戒処分の対象になっております。そのほか文書訓告等が二十七都府県三指定都市におきまして九万六千百五十四人というのが概要でございます。それからこの処分の内容につきまして、各県の扱いが違いがあることは御指摘のとおり各県のそれぞれの判断、事情によるものと思う次第でございます。
  100. 小林信一

    小林委員 その間、文部省としてこれに指導を与えたことはございませんか。
  101. 天城勲

    ○天城政府委員 このいわゆる一〇・二六ストをめぐりまして、私たち事前に違法行為にわたらないようにということについて指導はいたしました。それにもかかわらずこういう事件が起きたわけでございますが、その後につきましては、違法な行為については法律に即して厳正に処置するようにということを一般的に指導したことはございます。
  102. 小林信一

    小林委員 こういう違法な行為については、ということについてまた問題があるわけなんですが、もしそういうことが違法であって好ましくないとするならば、人事院勧告文部省も先頭に立って完全に実施するような、そういう施策をするということが一番問題であるわけなんで、そういう当然のつつましい要求に対して、自分たちの生活を守るためにこういう行動をとらなければならなかったということは、私は非常に悲しいことだと思うのです。これに対する処罰という問題も、そういう点からすれば、はたしてこれがあっていいものかどうか、こういう点も論議をしなければならぬわけでありますが、私の調べましたものはまだよほど以前のものであって、全部ではないのですが、各府県の処罰というものが非常に軽重がある。その府県のいろいろな事情によるかもしれませんけれども、そこに一つの問題もあるし、文部省は、いまのお話では、指導しない、こういうふうなお話ですが、私の聞くところでは、文部省はこういうふうにやれ、ああいうふうにやれとは言わなかったかもしれぬけれども、やらないところについては督促をするような、そういう行動はあったと思うのですが、どうですか。
  103. 天城勲

    ○天城政府委員 これは先ほど申しましたように、事前に教職員に口重するように要望いたしましたし、この事件が起きてからは、法律に即して厳正な処置をするようにということは各府県に申しました。各府県につきまして、どの県がどのような処置をしろとかいう具体的な、あるいは教育委員会の権限で決定すべきものについて具体的な指導をするということについては私たち従来もいたしておりませんし、この四十二年の場合もいたしておりません。ただ、全体としてこの事件の報告は求めておりますし、報告に基づいて、要するに時間内にストをした場合には厳正な処置をするようにということは申しております。
  104. 小林信一

    小林委員 そこで、私は一つ問題を提示するのですが、各府県にいろいろな事情があると思うのですが、山梨県では、一昨年この人事院勧告を完全に実施してほしいという要求をした場合に、先生方の決意からして、もしこれが完全に実施されないようならばストライキもあえて行なうという態度を表明したときに、特に山梨県が各府県よりもいろいろな点で待遇が低いのですよ。そういう点が県側に考慮されたのでしょう、幾月にさかのぼって実施するというような、これは国が定めることであっても、県としてしかるべく措置するという約束がなされたからストライキは行なわなかったわけです。ところが、これが知事がかわったために履行されなかった。したがって、山梨県の先生たち五千人はだまされたわけです。たとえ知事がかわっても、あるいは教育委員がかわりましても、そのことは教育長もよく知っておるし、あるいはその他の関係者がよく知っておるわけです。だが知事がかわったためにそういう約束を守ることができない。これはだれが聞いても先生たちがおこるのは当然だと思うのですよ。そういう中で行なった一つの抗議も、全国の問題と同じように取り扱われておる。とにかく前年度かたい約束をされて、あなた方の給与というのは非常に低い、何とか県がこれを善処する、相当額まで明示されて、そうして思いとどまり、その後いつそれが是正されるか待っておったのですが、ついに知事がかわったということでもってそれが履行されない。これも耐え忍べというなら、これは別問題ですが、とにかく行政というものが続いておる以上、山梨県の五千人の先生方は、何らかそういう措置に対して抗議をしなければならぬ。加えて、ことしの人事院勧告勧告どおりに履行されない、こういう一つの政治に対する不信もあるわけですが、そういうものも考慮されずに、いま局長は、そういうことについて干渉したことはないとは言うけれども、報告を求めれば、これはいまの行政の実情からすれば督促をされていることと同じことなんです。文部省へ忠誠を尽くすためにも、かなり山梨県でも無理をして最近処罰が決定をされたように見られます。もしそういう事実があったとするならば、これは大臣として指導監督、指導助言をする立場からしてどう考えるか。この際、その点について、局長また大臣御両所からお聞きしておきたいと思うのです。
  105. 天城勲

    ○天城政府委員 いま御質問にございましたように、山梨県の給与に関する当局職員団体との話し合いについて、事前にどういう話があって、過去どういうこどがあったかということについて、私たちつまびらかにいたしておりませんし、また今回の処置について、そのことを特に取り上げたり議論の中に含めているわけではございません。これは御存じのとおり、給与のあり方につきましてはいろいろな御意見もございますし、また職員団体の御不満もあるかもしれませんが、それらにつきましては公務員として許された方法によってその意思は表明できるわけでございまして、法に禁止されたいわゆるストに該当するような行為はしないでほしいということを事前に文部大臣の名において指導したわけでございます。しかし、結果的にはこういう事態が起きたものですから、これにつきましては、やはり厳正な秩序を維持するという面では法の規定に従って適切に処置をしてほしいということは指導したわけでございます。その結果山梨県の御判断によってやった。御質問のようにこれはごく最近でございますが、四月になりましてから報告を受けたわけでございまして、いろいろな事情は各県ともあろうかと思っておりますが、結果的には、法秩序の違反に対して秩序を維持するための処置をする、これはもう法の命ずるところでございます。したがって、各県がそれぞれの御判断によってなさったわけでございまして、どこどこの県にこれこれの処置をせいというような指示は私たち出しておりません。
  106. 小林信一

    小林委員 確かに違法行為があった場合これを処罰する、これは当然のことだと思うのですが、そういう理論からこういう問題を進めていけば、人事院勧告が完全実施されない――おそらくもうことしも一般労働者の給与問題が問題視されまして、順次各労働者の給与というものが改善されて、これに準じて人事院勧告がおそらく五月また考えられて、七月ごろ勧告されるのじゃないかと思うのです。ストライキは不当であるからというだけの態度でもって進んでいったら、毎年毎年この闘争というものは、抗議というものはきびしくなっていくのじゃないか。きびしくなっていったらますます厳罰で臨め、こういうような態度であるとするならば、これはますます世の中の治安というものを混乱させるだけだと私は思うのですよ。まして、いま山梨県の事実を申し上げたのですが、一ぺん約束してそれが履行されない、そういうものに対しても一つの抗議がなされる。しかし、これが中央からは同じようにみなされて、そして、こうせいああせいという具体的な指令は出さなかったかもしらぬけれども、督促をするような、報告をせよというようなものが出されてきておる。何らそこに教職員の実態というものを考慮せずに、ただ一律にそういう違法行為をした者は処罰するだけでもって進むような行政では、私はますます混乱をするのじゃないか、こう思うわけであります。近くまたことしの勧告もなされる、それに対する政府の態度もまた決定されなければならぬ、こういう事態に対して、いろいろこの問題について深く考えて論議をしていくことができませんので、それだけ私は申し上げるのですが、大臣の御所見を承りたいと思います。
  107. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 教職員の処遇の改善ということは、御本人たちはもちろんのことでありますが、われわれとしましても常に心がけていかなければならぬ事柄であろうと思うのであります。したがって、人事院勧告につきましても、政府としましてはできるだけこれを尊重してやっていくというのが政府として当然考えなければならないことであろうかと、さように存じておる次第であります。そういう問題につきまして、教職員の諸君が合理的な、秩序の立った手段方法によりましてその要望せられるところを披瀝せられることは何ら差しつかえないことでございます。それをとやかく言う必要はもちろんないと思います。ただ、やはり公務員のことでございますので、法律的な秩序だけはぜひ守ってそれぞれの権利を行使をしてもらいたい、かように私ども一般的に申せば考えておるわけであります。  山梨県の問題は、実はいま伺うのが初めてでございますので、その具体的な問題についてとかくの判断を下すということは差し控えたいと存じますけれども、しかし、いずれにいたしましても、約束はお互いに守っていくということ、これは当然のことではないかと私は思っております。その約束が実行し得る約束であるか実行し得ない約束であるかという問題はあるかと思いますけれども一般的に申しまして約束したことはやはりその実現のために努力するということは当然のことだと私は思います。したがって、山梨県がどういうふうなことでどうなったのか、いま伺ったのが初めてでございますけれども、山梨県としてはその約束の実現のために誠意を持って努力するという態度はほしいものだ、私はさようにも存じております。そういたしましても、やはり山梨県がうそを言ったとか約束を破ったとか、もしそういうことであるとするならば、御不満もきわめてごもっともだ、こう思うわけでございますが、その御不満の表現の方法としましては、やはり秩序だけはぜひ守って、教育界の信頼を失墜することのないように、お互いに教育者として世間の人たちから尊敬せられる立場におるわけでございますので、そういう点はよくお考えの上でそれぞれの要望をひとつ適切に表現してやっていっていただきたい。要は、私は、決してただ法でもって臨むのが能ではない、お互いがやはりどこかに一つの信頼関係を持って進んでいくということが一番望ましいことであろうかと思うのであります。そういう点につきましてはわれわれも注意しなければなりませんけれども、関係の当事者としましても、約束を破ったとか破らなかったとか、こういうふうなけんかだけはひとつやらずに、お互いに協力して目的の達成のために進んでいくという気持でやっていただきたいと思うのであります。文部省の先ほど来申しておりますことは、要するに秩序だけはひとつ守って、そしてそれぞれの権利を主張していただきたい、こういうことでございますので、ひとつ御了承いただきたいと思います。
  108. 小林信一

    小林委員 重ねて申し上げて失礼になるかもしれませんが、秩序は守ってほしい、それはそのとおりでございまして、これは何ら返すことばはないのでございます。しかし、いま山梨県の実情を申し上げれば、まあ知事は実際関係あるといえば関係あるし、ないといえばないで逃げられるわけなんですよ。それが前年、山梨県の実情というものは非常に不遇な状態に置かれているからこの際是正しようではないか、そういう点でことしは皆さんもそういう点は慎んでもらいたい。もちろん、ただ人事院勧告だけということでなくして、それぞれの県が特殊な要求をしていると思うですよ。その特殊な要求に対して、善処する。ところが、それがたまたま教育委員会であったということで、教育委員会は約束しておることを確認しながらも、新しい知事にそれを進言することができない。また、教職員の皆さんが知事と直接交渉を持っても、私残念ながらそういうことは知らないというような状態から、どこへも問題を持っていくところがない。そういう人たちが自分たちに対する不信行為に対して抗議をする、抵抗をするというふうな形は一体どうすればいいのか。穏便にそういう行為はせずにがまんしていれば何とかして見てくれるというふうなことは、いまの情勢の中では全然考えられない。やはり何か行動に訴える以外にない、こういう形になるわけなんですよ。そういう場合に、一番心配をしてくれるのは私は文部省じゃないかと思うのですが、残念ながら局長もそれは知らない、大臣はもちろんこれは御存じないのも当然だと思うのですが、そういう形になったらこれはどこへ不満をぶつけることになるのか。今回の確かに十月二十六日行ないました行為に対るるところの処罰というものは、これは一応受けなければならぬかもしれませんが、そういう経緯の中でもって受ける人たちは、決していまの大臣のおっしゃるようにおとなしくしていることはできないと私は思うのです。初めて知ったというならば、文部省の一応の責任として山梨県の事実をもう一ぺん聞きただしてもらいたいと思うのです。そしてこの問題はもっともっと深く掘り下げていかなければならない問題でございますので、先ほどちょっと数字は述べられましたけれども、最近のこの全国の処罰状況というものを私どもに資料として出していただきたい。これをお願いをしまして次へ移らしていただきます。  次は、各大学の、これは国立公立、私立全部でございますが、これは大学局長にお尋ねしたいのですが、医学部のストライキがありました。なお、それに加えて国家試験の受験拒否がなされておるところもあるし、あるいは卒業試験を受けないところもある。それに関連をして各学年が授業を放棄したり、あるいは受験をしなかったり、いろいろな問題が起きておるわけですが、これらに対して大体全国の何%ぐらいの学生がこういう行動に出ておるか、できたら詳しく聞きたいのですが、一応概括を説明してもらって、そしてこれに対して文部省はいまどういう態度を持たれているか。医師法の改正というものがこの間、国会で審議を続けておりますが、これは一応こういう人たちの意向に沿って取り上げられた問題だとも思いますが、しかし、これだけで必ずしも学生諸君は十分としておらない。まことに現在の情勢というものは一般父兄に、また社会に不安を与えておるわけなんですが、この点を、文部省としてつかんでおられる点を御説明願いたいと思います。
  109. 宮地茂

    ○宮地政府委員 お尋ねの件でございますが、医師の国家試験のボイコットと、それから卒業試験を受けない、こういった二つの問題が事件として中心的になっておるわけです。  まず、国家試験のボイコットのほうでございますが、四十一年三月以来続いておりまして、ことしの三月に行なわれました国家試験の受験者数も、これは一応推定でございますが、受験有資格者、これは卒業したすぐの人ではなくて、卒業して、まだ医師法が改正になっておりませんので、卒業して一年のインターンを終わったという、そういう方を一応受験有資格者と考えますと、それを大幅に下回ります千百六十五名であったというふうに聞いております。受験有資格者総数が大体三千二百名ばかりと考えられますので、それの三六%ないし三七%程度の者しか国家試験の受験をしなかったということでございます。国家試験ボイコットの理由といたしましては、いわゆるインターン制度の廃止要求が従来からあげられておりました。ところが、御承知のように昨年の秋以降は、国会に現在提出されて御審議されております医師法の一部改正法案、これによります新たな臨床研修制度の創設、これにからんでの反対運動の趣旨が強かったように考えられます。  そのほかに医学部の在学生が、医学部学生として最後に行ないます卒業試験、これをボイコットしたり、あるいは授業放棄、こういうものも行なわれたわけでありますが、これは三月の時点におきまして多くのものが順次解決いたしましたが、現在国立大学でなお紛争中のものは東京大学、東京医科歯科大学、京都大学、その三大学になっておるようでございます。これらの紛争にかかります学生等の要求は多少ずつ大学によって異なるようでごもざいますが、ほぼ共通した要求がございまして、おもなものを申し上げますと、医師法改正に関連いたしまして臨床研修医の制度が創設されようとしておりますが、臨床研修を受ける場所なり数なりというものは、大体自分たち希望する大学ないし希望する指定病院で臨床研修を受けるようにすべきである、その数もほぼ同じでございます。それから、そこで行なわれます研修の方法といたしましては、臨床研修医の団体、これは学生ですと医学連、それから卒業した者では青医連、いろいろな医学生の団体ができておりますが、そういった団体と大学当局の間のいわば協約といったようなもので、カリキュラムを組んでやってほしいというような、そういうこともございまして、医師法の改正に対しては大学の教授会が反対をするように反対声明を出してほしい、出すべきだ、こういったようなことでございます。また、そのほか医局の封建制であるとか、あるいは国立大学の付属病院にも大ぜいおりまして問題になっておりますいわゆる無給医局員の問題、それから研修中における待遇とか身分とか、こういったいろいろな関連したものがございます。こういうことでいろいろ、先ほど申しましたような国立の三大学ではまだ卒業試験もいたしませず、いわゆる学生のストライキといったようなことが続いております。  まあ私ども、これにはいろいろな理由もございますし、学生が申しますことはすべて何もいけないのだというふうにも考えません。中には、伝えられるような医局の封建制というものが、学生の言うとおりではなくても、長い歴史的な経緯から、そういうふうに感じられがちな形態も絶無ではないと思いますし、また今度の医師法改正に伴いまして、研修をする者に対して、文部省では診療の協力謝金ということで予算を組んでおりますが、月一万五千円、これは必ずしもそれで適当だとも思っておりません。できればもう少しよくしたいという気持ちもございます。そういったようなことで、医学生が騒ぐのは、とにかく医学生だけが悪いのだということではなくて、私どもも大いに今後努力しなければならぬ問題も認めてはおりますので、今後とも努力したい、こういうふうに考えております。しかし、要求に掲げられております、とりわけ臨床研修のカリキュラムのやり方、こういうものは研修生がその大学と協定を結んでやるんだとか、あるいは自分らがつくって、その時間割りどおりに大学では教えればよいんだといったような考え方には賛成ができないところでございます。  以上のようなことが概要でございますが、何としましても、理由はともあれ、卒業試験を受けないとか、あるいは東京大学のように、医学部の一年生に入ってきた者が、入ったとたんに授業を受けないでストライキをするとかというようなことは、これはきわめて遺憾な、非常にアブノーマルな状態だと思います。こういうことにつきましては、大学のほうでも、医学部長、病院長等もいろいろ検討もしておられるようでございますし、また、先ほど来申しましたように、私どもとしても今後検討すべき問題もあろうかと思います。しかし、だからといって、ストライキをしてみずから授業を放棄するんだとかというようなことについては、これはもういい年をした学生ですから、もっと真剣に考えて、自分らの要望が通らなければその他のことはみな悪いのだというような態度は改めてほしいものだ、私らとしてはそういう態度は許されないことだというふうに考えております。  以上でございます。
  110. 小林信一

    小林委員 確かにおっしゃるとおりですよ。有資格者が国家試験を受けない、どこにも当たっていくところはないわけなんです。国家的に考えれば医者の数がふえないというだけなんです。ふえなければ現在のお医者さんが得をするわけなんで、そんなにその試験を受けないことが自分に対して得になるなんということは考えておらぬ。そういうように打算的に考えれば、いま局長の言うように、いい年をしたやからだ、こういうふうになるかもしれませんが、私はそんな甘いものではないと思うのです。とにかくこの行為というものは初めて政府を動かしたのです。インターン制度を何とか改革するという医師法の改正というものは、何が何といったって、学生がああいう行動に出たから法律改正というものが出たと思うのですよ。やはりいい年をしたんじゃないんです。おとなが気づかない、政治が無関心でいる医者の社会というものを、あの若い人たちが改革しようという意向を立てたからあそこまで私は出てきたと思うのですよ。局長は、そんな子供扱いをしているような考えを持っているから、ほんとうにこういう問題が解決しないと思うのです。いま問題は、文部省の関係よりも厚生省の関係のほうがやらなければならぬことは多いのです。しかし、犠牲になっているのは文部省じゃないかと思うのです。だから文部省がいまのような態度でなくて、もっと積極的に、同じ政府の間柄でございますから、そういう医者の社会というものを十分検討して、学生たちが喜んで勉強できるような体制をつくるということは、文部省にも与えられておる責任だと思う。ことに大学局長がいまのような考えでおられたら、学生諸君があるいは国会へまた請願にでも来やしないかと思う。いままでのお話を聞いていますと、学生の気持ちもよくわかるという局長の話で、だいぶこの局長はわかるなと思っておった。ところが、あとのいい年をしたという、そういう軽率な考えをしていたんでは世の中はよくならないと思うのです。結局、当面の責任を負っておるあなた方ができなくて、あの学生がストライキをしたり、あるいは東大の卒業式もできないというような問題が出てきて、あなた方も世間も見直した、自分の足元を見直したという形になったのが私は現在じゃないかと思う。  もっと私が話を聞いた、実情を探った事実を申し上げれば、各大学の中には大体同じようなケースでもってありますが、これは私立の学校に多い。途中でもって学校側が生徒を説得して、そして学校側について授業を受けた生徒がある。それから、それに反対をして最後まで戦った学生がある。ところが、戦った学生が学校側からきわめて冷酷に扱われるから、一部の学生の中には、全学連の手はもちろんそういう中で伸びてきます。学生が学校側に説得をされて、学校側へついた者は優遇される、しかしそうでない者は冷遇される。その冷遇される者の中で、しかたがないとがまんしている人間もあるけれども、もっと積極的に抗議をしようという形で全学連の中にその人たちがどんどん入っていっている。これが大体私立学校あたりの医学生の態度なんですよ。それが非常に混乱をし、行く者はどんどん突っ走って行くというような情勢なんです。そういう情勢でも、いまのようなのんきなかまえでもっておられるならば、私はこの問題はまだまだ簡単には解決できないんじゃないかと思うのです。そこで文部省の態度というものはわかりました。何かこう人ごとのように考え、あるいはストライキをやっておる、あるいは卒業試験も受けないという人たちも子供扱いにされておるのでは、私はらちがあかないと思うのです。  先ほど医者の世界の封建制という問題が出されましたが、この封建制というふうなものについて学生は非常に真剣に考えているのですよ。テレビでも「白い巨塔」などということで医者の世界というものはずいぶん報道されて、いまの社会の中で一番封建的なものは医者の世界だというぐらいに一般人たちが認識をしてきたわけなんです。しかし、それがだれにも改革されない、われわれ学生が改革をしなければならぬというふうに立ち上がっているやに私どもは聞くわけですが、その封建制、ことに医局の中の封建制、こういうものに対して文部省はどういうふうに掌握されておりますか。
  111. 宮地茂

    ○宮地政府委員 お答えいたします前に、先ほど私、いい年をしてとちょっとことばがすべりましたが、大体大学にも入り、相当な教養も積み、判断力もできておる学生という意味で申しました。失礼いたしました。  いまお尋ねの点でございますが、医局が封建的であるという声があることは私どもも聞いております。ところで、そのようにいわれますことをいろいろ私どもなりに考え、また関係者からもお聞きしたりして感じますのは、要するに医学特に臨床医学の教育研究は、ほかの分野の学問に比べまして、特に密接な子弟関係あるいは信頼関係をもととした長期にわたる研修によってよりすぐれた成果が得られる。いわゆる最近のことばではマン・ツー・マンの教育とでも申すのでしょうか、そういったような特別に子弟間の非常に密接な関係によって真に医学の体得が、特に臨床医学では効果があるといったような面から、長い歴史的な経緯もありまして、そういったことが場合によりましては必要以上に医局におきます人間関係を拘束するようなことにもなりかねない。こういったようなことで医局に封建的な性格を生み出す傾向も生ずる場合もあるんじゃないか。大体このように考えておりますが、こういう問題につきましては、長い歴史的な経緯もございますし、また、そういった密接な子弟関係がよいほうに伸びていきますれば、これは非常によい結果も得られることになろうかと思います。これは大学当事者もそういったようなことにつきまして謙虚に反省をしておられる面もございますし、私どもといたしましては、その問題や、あるいは無給医局員の問題、その他大学の付属病院が現在では一般国立病院、市中病院とあまり異ならない、何か程度のいいりっぱな先生がおられるとか、あるいは施設、設備が大規模ですぐれておるといったのが国立大学付属病院であるかのごとく、客観的な点にだけ特色を持っておるような考え方をする向きもありますし、外部でもそのように思われておるところもある。こういうようなことで、そうではなくて、教育研究機関としての大学の付属病院の性格というものをもっと掘り下げて検討し、あわせていろんな問題を検討したい、このように考えまして、近々そういう関係者の会議等も持ちながら、今後りっぱな医局、りっぱな医師養成のできる大学病院、医局、こういうものに育てていきたい、こういうふうに考えております。
  112. 小林信一

    小林委員 若い人たちをつかまえて、いい年をしてというならば、いまの御説明から伺えば、文部省は象牙の塔にこもっておってきわめてのんびりしておると私は言いたいのです。首を振ったってそうですよ。それから、密接な子弟関係というものは非常によい結果を生む、それは事実だ。しかし、それがいま災いをしておるのです。これは私が説明しなくてもわかると思うのです。六年の課程を経て、そして博士号をとるということが一番の目的でしょう。その医局へ九割は入るわけでしょう。その医局へ入った九割は無給でしょう。その無給の医局員をどういうふうに扱っているか。それを考える場合に、いま全国の病院の系列というものはどうなっておるか。東大だとかあるいは慶応だとか特殊な学校が大体大きな系列をつくっておる。そして地方の日赤なんという病院、あるいは一般私立の病院でもそうですが、その無給医局員を大量に受け入れて、そして給料なしでもって働かせるのですから、こんな安いお医者さんはないわけです。そして自分のところの病院にはこれこれの先生がいるんだという、病院経営の大きな要素をなしておるわけなんです。無給医局員で入って、そこで勉強するならとにかくですが、全国的に張られておる病院の系列の中に配られて、そこで勉強するといいながら、一応病院の経営の要員になっておるわけです。しかもその関係はどういう関係かといいますと、みな子弟関係ということよりも親分子分の関係になっておって、一応東大病院だとか慶応病院だとか何々病院だとか、そういうところの教授と常に深い関係を持っておらなければ、その安い無給の先生というものを自分の病院に仰ぐことができない。こういう一般病院の経営の問題から、それから教授を中心としたいわゆる医師会の権力者、そういうものの関連の中に六年間耐え忍ばなければ一人前の医者になれない。あなたはいま密接な子弟関係と言うけれども、いまこの医局に入っておる人たちは決してそんな気持ちは持っておらない。それは教授の見込みのいい二、三の医局員というものはありがたがっているかもしれぬけれども、隠忍自重だ。そうして六年間教授のごきげんをそこなわないように、あの映画に出てくるように、院長が患者を見回るときには、そのあとに金魚のうんこみたいにぞろぞろぞろぞろとついてくる。また映画でも特にそれを取り上げておる。ああしなければ教授にテーマをもらえない。自分自身がテーマをつくって博士号をとるのではない。そういう中から、いよいよ最後に認められていくとテーマが与えられる。そうして博士号をとる段取りになってくるのだ。これが医局の実態なんですよ。それをあなたは密接な子弟関係の中に臨床医学というものが完成されるのだとおっしゃっておるけれども、そういう面ばかり見ておるならば、これは全く文部省というのは象牙の塔に立てこもっておって、世の中とは遮断された世界に住んでおる、こう言っても私は差しつかえないと思う。だからこそ、それに対するところの改革の気持ちから学生諸君というものが――これはちっとも得になりませんよ。自分が授業放棄して何の得もありっこない、国家試験を受けなくて何の得もありっこない。しかし、そうすることによって世論がこれを何とかしてくれはしないかというような気持ちだと私は考えておる。そういう医者の社会を、厚生省の仕事になるかもしれぬけれども、それを文部省が考えない以上、ますますこの各大学の医学部を中心とした混乱というものは絶えないと思うのです。ところが、新聞等でもって見ておりますと、東大の入学式がどうだ、卒業式がどうだというときには、この医局の医学生の動きというものを全学連と同等視し、また同等視させて、そして改善されなければならない社会問題というものを何ら取り上げない。私はそう思いますが、どうですか。
  113. 宮地茂

    ○宮地政府委員 もともと無給医局員が発生しました経緯は、これは初めから大学を卒業して、もちろん医者としては医学博士という学位をとりたいという気持ちの人もいましょうが、博士号をとるのはこれはあとから結果的に出ることであって、大学を出ても、もう少し臨床をやりたい、そういうような純粋にもっと研さんを積みたいという気持ちから始まった者もおろうかと思いますが、ともかくそういうことを目ざして入局をしたというのが、沿革的にはやはりそういう形であったようでございます。ところが、大学病院といたしましては、そういうことで入ってきた勉強する研修生ではあるが、やはり大学病院のあり方というものがはっきり確立されておらないために、一般の患者も大ぜい大学病院はよいところだということで押しかけてくる、大学病院にはその押しかけてくる患者をさばくだけの診療科の教官もいない。こういうようなことから、便利がよいという安易な気持ちで研修中のいわゆる無給医局員と称される人々を診療要員的に使った、こういうことが今日無給医局員の問題を生むに至った経緯であろうと思います。したがいまして、私どもといたしましてできますこと、またすべきことは、せっかく研修をしようという学生を診療の要員として利用するということはよくない。したがって、やはり大学病院として何人の診療患者に対してはどのぐらいな診療科の教官がおるべきであるといったような教員組織も十分に考える必要がありましょうし、その他大学病院というものはこういうものだということをいろいろ検討して確立する必要があろうかと思います。そういう点をひとつ努力していきたい。と同時に、今日のような姿の無給医局員ということは何としてもこれはよくないと思います。したがいまして、研修をする、しかしながら御本人も少しは診療要員としてやることによって自分の臨床医学が進んでいくのだというようなことであれば、診療の協力謝金というものも差し上げるべきであろう。そうじゃなくて、診療には従事したくない、もっぱら勉強だけしたいのだということであれば、これは大学院の学生とは違いますけれども、謝金とか何とかいうものを差し上げるのではなくて、十分に研修の目的が達成できるようにすべきであろう。こういうような考え方から、私どもとしましては、わずかでございますが、無給医局員に対する協力謝金というものを四十二年度から始めましたし、また四十三年度も大体――無給医局員といわれますものの中にはいろんな実態があるわけです。それで大体大学としていわゆる診療要員として予定できる者は少なくとも一週間のうち三日ぐらいは診療に従事できるという者でないと、一日、二日診療に従事する、あるいは次の週にはしない、そういった者では初めから計画ができないということで、一応予算的にも週三日以上診療に従事するいわゆる無給医局員には診療のための協力謝金というものを昨年以上に予算を計上しておるというのが、実態でございます。したがいまして、小林先生のおっしゃるお気持ちは十分わかりますが、私どもとしてすべきことは率直に反省して、十分ではございませんが昨年から手をつけてやっていっておるという状況でございます。
  114. 小林信一

    小林委員 きょう私が質問をする一番大事なところはそこなんですよ。無給医局員の不満またはその医局の封建的なもの、そういうもので、せっかく研修しようと思ってもほんとうの研修にならない。結局博士号をとるための隠忍の期間であるというようなものをだれが打破するか、だれがこれを改革するか。この際、それは厚生省の仕事になるかもしれませんけれども、擁しておる学生諸君の問題は文部省がしょっておるわけなんです。したがって、文部省はもっと積極的にいまのような、こうも考えておる、ああも考えておるでなくて、具体的なものを、こうあらねばならぬというふうな、そういうものをしっかり持っていただいて、たといそれがいまここで完成しなくとも、そういう方面に文部省は向いているというところを見せることが私は必要だと思うのです。いまの局長お話の、こうも考えております、ああも考えております――考えている程度ではだめなんです。そこに不満がいま出ているわけなんです。私は、いま謝金の問題も出されましたけれども、謝金を幾ら出してくれたって、やはり研修するにはほんとうに指導してくれる先生というものが必要なんです。だからあの人たちの要望の中にあるのです。りっぱな教育病院を建てていただきたい、教育をする病院を建ててもらいたい。いまのままでは結局自分たちが何か労力奉仕をしたり、がまんをするところに医局員としての機関というものがつくられる。もっと希望のあるものにしてもらいたい。それを文部省としても私は積極的にくふう検討して、そうして善処すべきではないかと思うのです。  局長に申し上げたいけれども、大体学校へ残ってお医者さんで教授になるということは、これは一番の大きな希望らしいのです。しかし、あの「白い巨塔」の中で示しておるように、教授になれなかったら、これは一生すってしまう、中途で助教授のところへとまったのではすってしまう。ということは、開業医になれば、うまくやれば月五十万も百万もかせげる。ところが、単にあそこで先生をしておったのでは、これはもう給与というものはごく低いのですから、これをやっておってはとても損なんです。しかし、教授になれば、これは給料以上に入ってくるものが非常に多い。したがって開業医になるのと同じようになる。しかも社会的な地位は高まる。だから教授になるという見込みがつけば、助教授にもなり、助手にもなる。しかし、見込みが立たなければやめてしまう。これがいまの医局の人たちを指導する指導体制なんですよ。ほんとうに自分が教育病院の教授として、院長として、これからの若い学生を教授してやろうという人も中にはあるかもしれませんけれども、それがいま医師界を構成しておる実態だと思うのです。だから、もっとこういう人たちの収入というものも多くしてやる中で、そうしてりっぱに若い医師を育てる、そういう希望が持てる教育病院のようなものを、これは厚生省と文部省がほんとうに連携の中で考えていかなければならぬ問題だと私は思うのです。謝金の一万五千や、こんなことは人をばかにしている、おそらく学生諸君からはかえって反対を受けるのじゃないかと思うのです。したがって、ただインターン制度の改正という問題よりも、もっと焦点として文部省がつかむものは、この封建的な医局の改革、医局にかわるべき研修機関というものをつくってほしいということがいまの学生諸君の希望じゃないかと思うのです。そういう問題についてはどうですか。
  115. 宮地茂

    ○宮地政府委員 いろいろ今回の医師法の改正につきまして、いま小林先生のおっしゃいましたような質疑が衆参の社労委員会でも出ております。ところで、先ほど文部省としてやることは申し上げましたが、特に先生からの研修のための教育病院というお話でございますが、私ども厚生省と十分に協力してやっていくつもりでもおりまするし、今日までやってきましたが、やはり文部省として直接に受け持つべき分野は、医学部を卒業させるまでにできる限りよい医者として社会に立てるような教育を現在の六カ年間でやっていくということ、りっぱに卒業させるというところが、文部省として直接に責任を負うところだろうと思います。それから医師の免状を持ちましてより一そうりっぱな医師になるということは、いわば医師としての一種の現職教育的なもので、医療行政の観点からこれは厚生省が責任を持たれる、文部省はそれに協力するというかっこうであるべきであろう。こういうふうに考えますが、それは一応別としまして、ともかく医学部を卒業しましても、国立大学の付属病院あるいは公私立大学の付属病院におきまして臨床研修をする医師、それにつきましては、大学の付属病院としての機能でございますので、その点は文部省としても十分責任を持ち、厚生省とも相談して、りっぱにやっていくべきであろう、理屈めきますがそういうふうに考えます。したがいまして、医学部を卒業して医師免許を持った人の独立をした教育研究病院ですか、そういうようなことは、協力はいたしますが、それは一応厚生省が責任を持たれるべき問題と思いますので、私がいま文部省として、医学部を卒業をした学生に対する医師の研修病院を云々することは、ちょっと適当でないと思いますので、差し控えたいと思います。
  116. 小林信一

    小林委員 大臣にお伺いいたします。  大臣には申しわけないかもしれませんが、医師法の改正が今回政府から出されて、検討中であります。これは私は、おとなの怠慢、社会の無関心というふうなもので医者の世界というものが放置されておる、その中に希望を失いつつある若い人たちが、何とか改革をしようということで、それは行為は先ほどの問題と同じように違法かもしれません。しかし、そうせざるを得なくなって立ち上がったところに、政府も動いた、社会も関心を示した。それが今回の医師法改正であるというぐらいに、いままでこの医者の世界というものはきわめて封建的なものに見捨てられておったような気がいたします。そういう中で、いま各大学の学生諸君が問題を起こしておる。その問題もなかなか――いま局長の話では、東大と京大と医科歯科、この三つの大学だと、こう言っておるけれども、これはやはり日本の医科大学の先頭を切るものでありますよ。そしてこの問題は、またいろんな問題でもって全国の大学に累を及ぼしていくと思う。私は最初、どれくらい全国の医学生がこの問題に関係したか聞いたんですが、残念ながらその点は局長から説明がなかった。だが私は、かなりの高い率で参画をしておると思うのです。そしてその人たちが一斉に言うことは、インターン制度の改革と同時に、この医局の改革、医局にかわるべき何ものかを欲しておると思うのです。しかしそれが、私は具体的にもっと文部省が、学校を卒業した者の将来にこういうふうなものがあるべきであるというようなものを何か明示してもらいたい、こう言ったら、局長は、それは厚生省の仕事であって、文部省はそれに協力するというような印象を私は受けた。それじゃ、自分たちが責任を負っておるいまの大学で勉強する医学生諸君に対して何も問題解決をしてやることはできないと思うのです。やはり文部省が、たとえ他省の責任の管轄の問題であっても、私は出すべきだと思う。局長にそういうことが言えないとすれば、私は大臣には言えると思うのです。どうですか。
  117. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 今回の医学生のいろいろな問題が起こっております発端は、御指摘のようにインターン制度をめぐっての問題であったかと思うわけであります。これにつきましては、その対策としてこの国会に法案を提出いたしまして御審議を願っておるところでありますが、いろいろ御検討の末、衆議院においては若干の修正も行なわれてきたように承知いたしておるわけでございますが、インターン制度に関する一つの対案としてこのような制度を政府としましては御審議を願っておるわけでございますので、すみやかなその成立を私どもといたしましては希望をいたしておるところでございます。問題は、これからの大学を卒業した諸君の勉強の仕組みをどういうふうにやっていくかというところにあろうかと思いますけれども、さしあたっては、今度の法律案規定いたしておりますような方式によって大学卒業後の医学生諸君の研修の場を提供しようといたしておるわけでございますので、その線に沿って進めていかなければなるまい、かように考えております。  ただ、私はこの際つけ加えて申し上げますけれども、先ほど来お話しになりました大学病院等の医局の問題でございますが、長い間の伝統といえば伝統だと思いますけれども、むしろ長い問のしきたりの上から、いわば因襲とでも申すべきものがよどんでおる、こういうのがあるいは大学病院内の医局の姿ではないか、かようにも私も実は感ずるのでありまして、この点はぜひ改革をしなければならぬと考えます。現在の状態は、ただ単に大学の医局の問題だけでなくて、日本の医業全体にわたっての大きな問題のあるいは一部をなすものではないか、かようにも考えるわけでございますが、ともあれ、われわれとしましては、医学教育というものが、国民の医療を進めていきます上において、あるいはいわゆる社会保障の道を進めていきます上において、非常に大きな関係を持つものでございますので、医学教育というものの改善をはかり、充実をはかっていくということには重大な関心を向けてまいらなければならない、さように存じておる一人でございます。大学の医局の内容等につきましては、遺憾ながら相手が大学でありますがゆえに、かえって文部省の者が十分に立ち入ってかれこれ申すというふうなことをしないで長い間過ぎてきた、こういう点もあろうかと思います。しかし、いま申し上げたように、私どもも積年の因襲というふうなものを感ぜざるを得ないのであります。この改革のためには、文部省も決してそれを等閑視する気はもちろんないのであります。りっぱな医者をつくり上げていくという立場におきまして、大学と十分話し合いをしながら改善の道に向かって進んでまいりたいと存じております。  なお、大学病院のあり方全体を考えてみましても、はたして今日の大学病院がいわゆる医学教育のための大学病院であるのかどうなのか、こういう点についてもさらに検討を要するものがあると存じますので、私は文部省の諸君に対しましても、現在の大学の付属病院のあり方ということを取り上げて、ひとつその改善の方途を見出してもらいたいということを常に申しておりますが、特に今回のようにいろいろ問題を起こしておる際でもございますので、なお一そうこの方向のことにつきましては勉強をしてもらいたいものと思っております。ただ単なる大病院というのでは相すまぬと思うのでありまして、ほんとうに日本の医学を進めていく上においてお役に立つりっぱな病院として、教育機関たる病院としてその機能を十分に発揮するような方向で、因襲があればこれを除去することにつとめまして前進をしてもらいたいと思うのでございます。そのような考え方をしておるということを申し上げておきたいと思うのでございます。
  118. 小林信一

    小林委員 私は、国立学校設置法の一部改正のときにも、あの法案そのものに関係をしても実は申し上げたかったのですが、いまのお話を聞いておりまして、なおさらこの問題について文部省にお考えをしていただきたい点があるのですが、それは先ほど局長は、学生は学校にいる間しっかり勉強すればいいのだ、そのことを文部省は一生懸命努力すればいい。それから大臣お話の中では、大学のことについては直接文部省としては手を加えることはできない。これはいろいろ問題もある点でございますが、そういう中から文部省というのは非常に時代を考えることに怠りがあるのではないかと思うのです。教育なんですから、きょうの社会だけでなく、もっと将来の社会をも予想して考えていかなければ、ほんとうの文教行政ではないと思うのです。何かいまの医学生の問題にしても、自分たちの責任じゃないような風が見えるんですが、あなた方の怠慢からこういう問題が起きているくらいに考えても、私は決して行き過ぎじゃないと思う。あの国立学校設置法の問題のときに私はこういうことを聞きたかった。これはどの局長でしたか、そういうことを言ったのですが、その学校が要請しなければ云々というくらいに、学部の設置とかあるいは学部の拡充とかいうふうな問題は、すべてそれは文部省の最初から意図することじゃないというような意向を聞いたし、また実際やっておることを見ましてもそういうふうに私には受け取れるのですが、時代の将来とか、きょうは次にどうあらなければならぬか、次に対する備えというふうなものから、文部省というものはそういう大学を設置し、あるいは学部を置くというふうなことについてもっと積極的な考慮、善処というものをすべきだと私は思うのですが、そういう点はいまのお二人の話からむずかしいのですか。
  119. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私が申し上げましたのは従来の経緯を申し上げたわけでございます。いわゆる大学自治ということで、大学のことについてあまり文部省がとやかくの指図をしたり何か言いますと、直ちに問題を起こすような空気というものがずっと今日までございました。そういう意味で、自然大学についてかれこれと文部省が指図がましいことをすることを避けてきたということがあろうかと思います。決して文部省がいわゆる悪い意味の大学の自治を侵害するとか干渉するとかいうふうなことは、もちろんなすべきことでないことは前々から申し上げているとおりでありますが、しかし、日本の学術の進歩のために、あるいはいまの問題でいえば医学の進歩のために文部省が重大な関心を持つこと、これは当然のことと思うのでございます。したがって、やはりそういう意味におきましては、大学の内容を充実してまいりますとか、あるいは必要に応じては大学をつくっていきますとか、あるいはまたその施設設備を整備していきますとか、こういうことに文部省が怠慢であってはならぬということは、これはもう御指摘のとおりであります。そういう意味におきましては常に研究もしてまいらなければなりませんし、また大学制度そのものにつきましても、いろいろと現に検討しようというところでございますので、そういう意味で決して消極的な気持ちではございません。ただ、また一面から申しますと、現在の日本の大学の姿は、率直に申し上げまして、一つの大きな計画でも持ってこれを推進していく、こういうことがなし得るかどうか、こういう点につきましてはなおひとつ検討をしなければならないということはあろうかと思います。現にあります大学をもっともっとやはり改善し、充実していかなければならない大きな課題を控えていることでもございますし、また、一方的に文部省で増設とか新設とかいうことをやろうとしましても、これまた簡単にいける問題でもございませんから、いろいろな事情を勘案しながら、やはり必要に応じて文部省としては具体化していくという態度を現状においてはとらざるを得ないのじゃなかろうか。また、社会の需要ということも変化することでありますから、社会の需要という問題を常に頭に置いてこれを充足するための意欲というものも文部省が持たなければならぬことも当然のことだと思うのであります。いずれにしましても、いま具体的に計画を持って進むというところまではきておらぬと思いますけれども、学問、学術の振興のために消極的であってはならぬことは申すまでもないことでありますので、そういう意味におきましては、私どもとしまして、御鞭撻によりまして一そうまた努力もしてまいりたいと存じております。先ほど来申しておりますことは、やはり大学と十分意思の疎通をはかり、連絡をし、指摘すべき点は指摘し、改善してもらわなければならぬ点は改善する、文部省もそれに対しまして必要な協力は惜しみなくやっていく、こういうふうなことで進めてまいりたいと存ずる次第でございます。
  120. 小林信一

    小林委員 局長にお伺いいたしますが、文部省がことしの、昭和四十三年度の予算を要求する場合には、全国で七つくらいの学部をふやす計画で予算を要求されたと思いましたが、そうでしたか。
  121. 宮地茂

    ○宮地政府委員 先般この委員会で御審議いただきました国立学校設置法では、いわゆる文理学部の改組で、千葉と愛媛の文理学部を二つの学部に拡充するというのを御審議いただきましたが、そのほかに、文部省といたしましては、当初大蔵省に要求いたしましたのは六学部でございます。
  122. 小林信一

    小林委員 その学部は、文部省がこの大学にはこの学部をふやしてやろうという、文部省のほうの意図から出ているのか。地方の大学のほうから、ぜひおれのところには商学部をふやしてもらいたいというふうなものが集まってくる、その中から文部省が取捨選択をして、ことしはこうやってやろうというのか。つまり積極的に学部をふやすような意図か、地方からの要請に基づいてそれを取捨選択するような態度であるか。私は、ここがいまの大臣お話の具体的な問題になってくると思うのですよ。これをひとつお聞かせ願いたいのです。
  123. 宮地茂

    ○宮地政府委員 学部をつくります場合の基本的な考え方は、先ほど大臣がお答えになられたとおりですが、大学の学部をつくります場合、予算時期に大学が要求してきたものを取り上げておるのは事実でございます。しかしながら、文部省といたしましては、ただ大学が要望するからということだけを条件にしておるわけではございませんで、社会的な需要とか、あるいはその地域の特殊性、あるいは国立大学全体の学部の配置状況、あるいは当該大学におけるその他の学部の状況、こういったようなものを総合的に考えますが、何と申しましても、大学がつくりたくないという気持ちを持っておるところへ、いま私が申し上げましたような見地から、おまえのところはつくれといっても、これはうまくいきませんので、したがって、学校が要求するものでないとつくらないのかというお尋ねがよく出るのはそこのところだと思うのです。したがいまして、大学が要求しなければつくらないということではなくて、つくるときには先ほど申した理由がある。しかしながら、それにプラスして大学も御要望になっていないと、一方的につくれと言ってもうまくいかぬだろう、こういうことでやっておるわけでございます。これは山梨大学の経済学部とか、あるいは三重大学の工学部とか、確かに私ども先般四十三年度の予算要求の際に大蔵省と折衝したのは事実でございます。これを出します場合には、いろいろと、以上申しましたような見地から、その他にも要求はございましたけれども、先ほど申しました六学部を要求したということでございます。ただ国の財政上の理由等で遺憾ながら実現を見なかった。しかしながら、文部省としては、来年度以降もそっくりそのまま行なうかどうかは別として、一応原則としましては、ことし落ちたからもうやめたんだという姿勢ではなくて、来年度以降も続けていきたい、こういうふうに考えております。
  124. 小林信一

    小林委員 委員長、だいぶつらいようですが、もう少しお願いします。  いまの局長の言い分、局長はなかなか話のしようがうまいんですが、あなたは自分ではうまく言っているつもりかもしらぬけれども、やはり印象は、文部省というところはやはり消極的だ、こういう印象を受けざるを得ないのです。つくってやろうと思っても、その学校がつくってもらいたくないというような場合にはどうすることもできない、そんなばかなことは聞かれませんよ。たいがいどこの大学でも、一生懸命おれのところに何の学部をつくってくれ、そういうふうな要求の中で文部省というものはあぐらをかいて、逐次ふやすようなかっこうをとっているだけで、決して一つの長期的な計画を立てるとか、目標を立てるとかいうふうなものじゃないと思う。私は昨年、剱木文部大臣に五十五国会で、大体いまの経済情勢というものはどういうふうにこれから進展するか、これに対してどういう見解をとって、教育の面ではどういう責任を負うつもりか、こう言ったら、剱木さんはこう言いましたよ。来年度の予算の中では、科学技術を進展させるために最大の予算を取ります、そしてそれに沿うように施設を充実いたしますと、こう言ったのです。何か学部の設置あたりにそういう傾向が見えるかと思ったら何も出てこない。そして私の知る限りでは、最初文部省が予定を立てた学部の増設は決して文部省から出ているものじゃないのです。みんな地方から長年かかって、ことしは私のところの何々学部をお願いいたします、そういう中で並べた六つであります。決してその中に、日本の将来を見通して、かくなければならぬという教育的な責任から考えたものはないのですよ。いま技術革新という問題がどれくらい重大であるか、これは私が申し上げなくても、あなたが文部行政を担当していて十分わかるはずなんです。そして、その学問とか技術の面で日本がどういう状態にさらされておるか。外国からいろいろな研究費が出されてきて、それに学者諸君がみすみす誘われて研究する。アメリカではどういう体制をとっているか。これからのいわゆる資本の自由化というふうな世界の傾向に対して、アメリカは学問の基礎というものを――基礎的な学問というものはアメリカに置いて、そして資本を日本に投資すると同時に、その技術面だけを日本に持ってくる。あるいはEECにおいてもそういうふうな計画をしておる。いま一番おくれておるのは、私は技術そのものもおくれておると思うが、最も問題なのは、いかに日本の基礎的な学問というものを確立するかということが、単に日本の学術だけの問題ではなく、日本の経済の問題として非常に重大だと思うのですよ。技術革新という問題は、業者は相当に叫んでおります。いろいろな点に、私ども、こういうところに技術革新というものが考えられておるな、と思うのですが、それはやはり文部省に私は一番大きなしわ寄せがくると思うのです。そういう中で、私は去年特に剱木さんに話をし、剱木さんもそれに同意をされて、その技術革新の面ではどこに重点を置くか、と言ったら、それは農業と中小企業、こういうふうにはっきり言っております。こんなに経済成長政策という中で、農業とか中小企業は技術革新の中で取り残されておりますよ。そんなことは文部省の知ったことじゃない、学生は学校の中で勉強すればいい、その勉強することに文部省は力を入れていればいいのだというような、そういう文部省の態度では、今日の日本のほんとうに経済的な安定とか、あるいは産業の格差をなくして日本の経済をほんとうに順調な姿でもって伸ばしてやるということはできないと思うのです。  そういう中で、一番最初にこれではならぬと考えたのが、私は医学生じゃないかと思うのです。その医学生の騒ぎに、とうとう踏み切って医師法の改正というものが出てきた、私はこんなに判断しているのです。もっと先を見越して果敢な対策をとらなければ、文部省は一体何をしておったのだということを将来批判されるのじゃないかと私は思うのです。したがって、学部などの問題も、もっと積極的に文部省が考えるべきだと私は思う。そしていま学生が騒いでいる問題も、重ね重ねで申しわけありませんけれども、おとなげない学生の態度だなんて考えずに、あの人たちの中からもっと文部省が反省するものを私はほしいと思うのです。大臣からそれと同じような御意見を承ったのですが、それは単に大学にいろいろと考えをいたすということでなく、実際いまの私どもには直接関係がないといえばそれまでかもしれませんけれども、何か私には、いまの農村のあり方や中小企業のあり方を見れば、非常にほかの産業と格差が生じておる。その中に住んでいる人たちは一体どうなるのだ、そこの技術革新をはかってやるのは、これは機械化を促進すればいいというふうな問題じゃないと思うのです。やはり農村に新しい農業の技術革新をするような人間というものをつくる、そういう配慮が文部省に必要じゃないかと思うのです。中小企業は、融資の問題と、いかにして労働力を確保するかというふうな社会問題だけでなく、中小企業に人を得るという技術の革新を与えられる、そういう道を開くということが文部省になければならぬと思うのです。  今度の医学校の生徒の問題は、幸いにしてたいていお医者さんの子弟が多い。だから、そんなに生活には困らないのです。だから、これも局長にお聞きしたがったのですが、もしあなたが何か考えておるなら聞かせてもらいたいが、最近の医科大学の入学金はべらぼうなものでしょう。そんなものは、これはやはり問題ですが、どこから生まれてくるかといえば、医者の子弟が多い。医者は一代でもって終わりたくない、自分の子供を医者に育てて、うちを継がせたい、きわめてこれは一般的な問題だと思うのですが、そういうことで金は幾らでも出す。話に聞きますと、もう成績が悪くてとても入学できない者も、何百万、何千万という金を持っていけば入れてくれるという、そういう腐敗堕落したものも、あなた方は知らぬかもしれぬが、学生諸君が知っているのです。そういう中から出てくる声なんですよ。そういう大学の体制の中から学生諸君がああも抗議ができるのです。国家試験も受けない。これも一応生活が安定しているからできるわけです。しかし、あの人たちも、すぐあしたから職について自活の道を講じなければならぬとすれば、あんな問題は起こさない。起こさなければ、いまの医者の社会というものは、背のままの封建的なものがさらに持続していくのです。決して厚生省、文部省も、政府も考えてくれなかったと思うのです。私は、その点では皆さんがあの学生諸君に感謝すべきだと思うのです。その行為についてはとがめても、そうした原動力になった点については私は感謝してもいいと思うのです。その感謝の中からもっと皆さんが責任を感じて、あの問題を解決すると同時に、それと同じような状況というものが日本にはたくさんある。それを教育の面で解決していくのが私は文部省じゃないかと思って、特につけ加えて申し上げたのです。  以上で終わります。
  125. 高見三郎

  126. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 たいへんお疲れのようですが、なお時間をいただきまして質問をさしていただきます。  昨年度の定例国会以来、各国会におきましても、文化財保護に関する小委員会が設置されて、その対策をいろいろ検討してまいりました。本国会におきましても、去る三月六日に、本委員会において文化財保護に関する小委員会が設置されまして、中村庸一郎先生が小委員長指名をされたわけでありますが、残念ながら、その後今日まで一度も委員会を開くに至っておりません。伺いますと、中村小委員長には最近御子息がなくなられたという御不幸がありましたそうで、心から哀悼の意を表しますが、しかし委員会が開かれなかったことは小委員長の責任ではなくて、本委員会全体の運営の中でやはりその場をつくる責任があろうと思いますので、高見文教委員長に特にお願いを申し上げまして、中村小委員長と十分お打ち合わせの上、連体あけでもけっこうでありますから、ぜひ正式に小委員会を開いていただきたいということをまず冒頭にお願いを申し上げます。  しかし、小委員会を待っておりますいとまのないような文化財保護に関する緊急事態が各所に発生しておるように伺っておりますので、なかなか全部をここで取り上げるいとまはないと思いますが、数点にわたりまして簡潔に質問を申し上げますので、的確な御答弁をお願いし、あわせて善処方を要望したいと思います。  第一にお伺いいたしますのは、横浜市金沢区にございます称名寺史跡、金沢文庫、この一円の貴重な文化遺産に対する保護の問題についてであります。これはすでに史跡に指定されている部分もありますが、最近その周辺に宅地造成等が非常に進められて景観が一変し、また、史跡として指定された部分も、将来とうてい保存に耐えないような事態になるのではないかということが学者や地元の方々によって指摘されまして、大きく社会問題化していると伺っております。  そこでまず第一にお伺いしたいのは、この金沢文庫、称名寺史跡というものは日本の中世、鎌倉時代における貴重な文化遺産であって、いま平城宮や藤原宮の問題等が大きく取り上げられておりますが、こうした古い時代に次ぎまして、中世の史跡としてはどうしてもこれは保護、保存すべきものであると考えますけれども、その文化的価値についてどういう御判断をお持ちであるかということをまずお伺いしたいと思います。
  127. 福原匡彦

    ○福原政府委員 お答え申し上げます。  史跡の称名寺につきましては、ただいま長谷川先生からお話がございましたように、これは北条実時が金沢文庫を創立いたしまして、その金沢文庫が現地に残っておりました。その中にたくさんの国宝、重要文化財がございます。そういう意味におきまして、お寺としてももとよりでございますけれども、重要文化財を所蔵しておるという意味におきましても、史跡としても非常に重要なものだと考えております。
  128. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 大体いま私が申し上げた程度の御答弁だったと思うのですが、もうちょっと詳しく、文化遺産としてどういう点が非常に大切であるとお考えなのか、その認識がまず問題でありまして、それがはっきりしておりませんと、その認識の度合いによって当然その保護対策の規模というものも変わってくるので、もう少し詳しい御説明がいただければ幸いだと思います。
  129. 福原匡彦

    ○福原政府委員 私ども、文化財保護の立場からこの称名寺の史跡に対しておりますので、これだけ独立して、ただいま長谷川先生から御質問いただきまして、専門家でございませんので十分にお答えできないかと思います。むしろ長谷川先生のこれからの御質問によってお答えしようかと思っていたわけでございますけれども、おそらく現在その史跡として指定しておりますのは称名寺の内界でございます。内界でございますから、外界というものがあったはずなんでございますけれども、私ども聞いてみますと、外界につきましては、寺の勢力の消長などがございまして変化があったようであります。結界図というものが残っておりまして、それに内界は非常にはっきりした線で示されておりますので、それに基づきまして大正十一年に指定しております。その内界を指定しておりますことから、今回の称名寺の周囲の破壊という問題が起こってまいったわけである、こういうふうに考えておるわけでございます。  その史跡と周囲の景観との問題、私どものとらえ方としてはそういうとらえ方をしているわけでございますけれども、史跡というものは、歴史的にそこに寺が置かれたということには、やはりその位置が選ばれる。その選ばれるには景観を当然含めて、そこに北条実時が隠遁して、金沢文庫というものをつくったというふうに考えられるわけでございますので、ある程度景観というものを含めて保護されることが望ましいと考えるわけでございます。ただ、残念なことに、その史跡に指定いたしますときに、内界という形で指定いたしましたために、その周囲、これは称名寺のお寺が持っていたものでございまして、それでやや安心していたこともあろうかと思いますけれども、その史跡指定地外の寺領の部分を、お寺が戦後になりまして売り払うということが起こって、そのお寺の土地でなくなったということが、今度の問題のもとになっているわけでございます。そこまでお答えするとちょっと先ばしるかもしれませんけれども、私ども、ぎりぎり現在のところでは、文化財保護委員会として現在守れるものは史跡指定の範囲内でございますけれども、これが地元との話し合い、あるいはお寺から買い受けました西武鉄道との話し合いによりまして、若干でもこれが現在の指定地の外に広がるということができれば、その点が、指定などいたしまして保護できるということは考えているわけでございますけれども、西武がその裏山を宅地造成をするという計画を出しましたのが一昨年の八月でございまして、それから二年近くたっているわけでございます。その間、これは宅地造成の許可の権限は横浜市が持っておりますので、横浜市のほうでいろいろ指導してくださいまして、西武との話し合いで史跡指定地よりは若干広くこれが宅地造成から免れるという状態までまいっているわけでございます。ただ時間的に――これは宅地造成につきましてはこれに定められた基準を満たしておりますと許可しなければならないというようなことにもなっておりまして、最近になりまして、市の議会が、現在まで話し合いのつきました部分を宅地造成外にするということで、残りの部分についてはある程度やむを得ないというような結論を市の議会の常任委員会で出されたようであります。まだ市長の態度が保留されているようでございますけれども、その市の議会の了解によりますと、海岸側の日向山でございますが、日向山などはある程度稜線が――ある程度と申しますか、相当削平されてしまいまして、稜線が低くなってくる、稜線が保持できないというような結果が生まれてまいります。これが私ども、称名寺の価値から見まして、そこまで完全になければならないではないかということにつきましては、やや一般的な考え方で申し上げましたけれども、史跡というものは景観と一体にこれが守られればそれにこしたことはないという考えは持っておりますので、その線で現在までも県、市のほうに働きかけてまいりました。ただ、現在の私どもの権限ではなかなかそれ以上に出れませんので、たいへん残念でございますけれども、残された市長の断と申しますか、に御期待を申し上げ、あるいは市が現在以上に史跡指定については追加できるような情勢にお話を進めていただければ、私どもとしてはそれにおこたえする用意があるわけでございます。  先生の御質問に直接お答えにならないのは恐縮でございますが……。
  130. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 いま伺いまして、先ほど小林先生が大学局長に対して御批判をなさいましたが、非常に何か同様な感じを持つわけです。つまり、文化財保護に一番責任を持っている文化財保護委員会事務局としてどうもたいへん消極的な姿勢じゃないか。市にまかす、市のほうに期待するというようなおことばであって、これは非常に重要だからぜひ史跡指定を広げる、あるいはとりあえず県に仮指定をさせて、そしてあとで国のほうでさらにそれを完全な保存のほうへ持っていくというような積極的な姿勢が見られないように伺いましたが、ただおことばの最後に、市のほうがさらに進んだ考えをお持ちになればそれに協力するにやぶさかでない。こういうおことばがあったので、そこにやや積極的な姿勢が出てきたんではないかというふうにも思いますけれども、その点がたいへん私は心細いという気がいたします。文化財保護については年々前進はしてきていると思います。従来はいわば点の史跡指定保護というようなところから、だんだんもう少し面の方向に進む。議員立法でできました、あとでできました例の古都保存法などもそういう方向に一歩進めていると思いますが、これはしかし私ども、たいへんどうもざる法で、ほんとうの成果はあがっていないというように思いますが、いずれにせよ、最初に私が質問した、これが一体残すべき中世の非常に大事な文化的要素を多面的に持っているということをもう少し事務当局も、専門家でないといっても、その基礎認識をしっかりしていただかなければ、当然保護のための努力ということは出てこないのじゃないか、そういう点で私はぜひもうちょっと積極的な御研究をしていただきたい、こう思います。  それから経過についてでありますが、当初確かにお話のように、このお寺がおそらく中世に建てられた当時は非常に大きな規模でなされた。それがいろいろな時代の変遷を経て、今日はむしろ最小限度に縮められている、こう言ってもいいのじゃないか。その内容だけを指定しておるということにも、いまから考えれば非常に消極的な面があったのではないか。さっきお話しのように、すでに結界図というものが明らかになっておるということであると、全体のこの称名寺の結構というものは明らかになっているわけでありますから、こちらのほうに実時の墓だけを指定して、こちらのほうは金沢文庫を指定して、それから建物のごく狭い範囲を指定して、こういう断片的なことであるからこういう問題が起こってくるので、これは思い切ってやはり文化遺産全体としてこれだけを残さなければならないということを積極的に考えませんと、後世の笑いものに私はなるんじゃないかと思います。特に景観を残すというようなことについても、伺いますと実にナンセンスなことを考える。つまり景観というんだから立って見たところがあればいいのだ、まるで芝居の舞台装置のように、山がかいてあるけれども、薄っぺらな、こっち側から見れば山に見える、うしろから見たらただの板だ、こんなような残し方を考えているらしい。そんなことで決して保存にならないのです。たちまちこれは土砂が崩壊すると、むしろ非常な危険が伴うし、あるいは水源がかれて、非常に大切な庭園も――ここには庭園がそっくり残っているというのですが、その水はかれる。そういうことは少し考えればわれわれしろうとでもわかることなんです。それを苦しまぎれに、そういったいま多少拡張するとしても、その程度のことしか市の責任では考えられない。そういう場合に、大きい立場から卓見のある指導をするのが文化財保護委員会、国の責任じゃないかと思う。国のほうで、かつて市がその気になれば補助金を出してあげましょうといった時期があったらしいのです。ところが、その当時なかなかそこまでいかなかった。最近は市も地元も非常に熱心になってきたけれども、今度は逆に国が、もうそれは地方自治体まかせというような姿勢のために、思い切って県がこの指定の仮指定をして、史跡の拡張をするということもできないという、これが私は現状のように聞いておる。そういう点についてもう少し積極的なひとつ御答弁をいただきたいと思うのです。
  131. 福原匡彦

    ○福原政府委員 ただいまお話しのように、国と県と市の多少熱の入れる時期の食い違いのようなものがあるいはあったかもしれないと思います。これは私考えておりますのは、県、市とはよくこのことについて話しておりますし、私どもお話に見えたときに、国としては補助金という形で買い上げに対処しておりますので、直接こちらから、国のほうとして先に買い上げるといいましても、これは実現できない問題でございますので、市のほうでそういうことについて御準備ができれば、私ども計画順序を変えてでも何とかこれにおこたえをしたいというような気持ちをお話ししているわけでございます。何かそういうふうに今後機運が熟してまいりますればたいへんしあわせだと存じます。ただいまの現状と申しますのは、やや私ども市議会のそういった態度から見て心配な状態でございますので、何かここに急速にでもそうした機運が動けば非常にありがたい、こういうふうに考えております。
  132. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 お寺としても、この土地を売った話に関連するのですが、当時西武は、これは児童遊園地にする、したがって方々破壊するような心配はない、むしろこの地帯を手入れをよくして、そして自然を完全に保護する中で子供の遊び道具等を置く程度にするということで売ったというように聞いております。ところが、それは買うときの口実であって、いつの間にかこれを宅地に造成して、お金をもうけようというのがどうも西武の計画のようであります。これについては、最近相当方々からこの保存についての声があがっておりますので、西武としてもいろいろ考えなければならないときがきていると思いますが、この面でもやはり文部省なり文化財保護委員会の積極的な指導というものが必要だと思うのですが、そういう点について何か具体的な手をお打ちになったことがありますか。
  133. 福原匡彦

    ○福原政府委員 お寺と西武との売買のときの様子はちょっと存じませんけれども昭和二十九年に売却したという記録が残っておりますけれども、その後の開発の状況から見て、おそらく西武はここを宅地にしたいという、こういう希望を持ったのだろうと思います。西武に対して私ども直接話し合いをしたことはございません。私どもとしては県、市のほうにずっと話をしておる、こういう状態でございます。
  134. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 私は、この前の予算委員会一般質問でも、文化財保護の問題について取り上げまして、大蔵大臣質問いたしました。大蔵大臣も文化財保護には特に理解があるつもりだと大みえを切られたわけです。しかし、実際は予算はそれほどまだ多く組まれてないから、いつも予算とにらみ合わせて仕事が消極的にならざるを得ないのじゃないかという事情はお察しいたしますが、平城宮であるとか、藤原宮であるとか、あるいは難波宮であるとか、こういう直接日本の皇室等に関連あるところについては、これもなかなか多くの民間の運動等が陰にあったのですけれども、比較的政府としては積極的に取り組んでいただいておると思うのですが、鎌倉は直接皇室との関係がないということで軽視されるのかどうか知りませんが、文化的な価値とか、あるいは学問上の値打ちというものからいきますと、これはやはり非常に重要視されなければならないし、あとになってもうなくなってからでは取り返しのつかないものでありますから、そういう意味では、いまのような消極的姿勢でなく、せっかく市と県が協力して景観だけは残そうという方向に踏み切ったと聞いておりますが、ただその内容を聞いてみると、なお先ほど私が申し上げたとおり、芝居の舞台をつくるような、たいへん薄っペらと申しては失礼ですけれども、これは県や市の財政能力の問題と関連すると思うのですが、そういうことになってきておるようですから、この際、せっかくそういう機運が動いておるのですから、文化財保護委員会はもう少し積極的に乗り出して、せっかく動いたその機運を画竜点睛して、ひとつりっぱなものにしていただきたい。これについて保護委員会から何か責任ある方が実際現地をごらんになったことがありますか。
  135. 福原匡彦

    ○福原政府委員 私、就任して間もなく、昨年の秋でございましたが、現地を見てまいりました。ただ、その時点におきましては、市のほうと西武との話し合いの最中でございまして、私どもとしてはできるだけそれが広く残ることを期待していたわけであります。その間、私どもとしては、景観の関係は古都保存法のほうである程度守れる面もございますので、これがたまたま鎌倉市でなくて、横浜市のほうに所属しておりますために、古都保存法の指定の区域が一段落したときにある程度また拡大されるやに伺っておりますので、そういったことも考えたりしたこともございました。ただ、現在の時点ではそういうことも間に合わないようでございますので、文化財保護委員会として何とか地元のほうに御協力を申し上げて、少しでも――ただいま長谷川先生も芝居の書き割りのようだとおっしゃいましたけれども、そこまでもいっていない。いまの市の結論を見ますと、金沢山、稲荷山のほうは何とかそこまでいっておりますけれども、日向山につきましては半分から三分の一程度、これが削られるようでございます。これがもう少しでも残るように私どもとしても努力していきたい、こういうふうに考えております。
  136. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 それでは、この点については御努力を心から期待を申し上げて、次の機会にはいい御報告をいただきたいと思います。  次に、これは私が二、三年前に本委員会で取り上げたことのある武蔵国分寺の保存についてでございますが、これは史跡指定の場所がいつの間にか土地会社に売られておって住宅が立ち始めたという時点で指摘をいたしまして、急遽それ以上の宅地造成や住宅建設は差しとめて、そして国が八割の援助をしてこれを逐次買い上げて史跡公園にする、こういう方針が立てられたということでたいへん喜んでおったのでありますが、その後、この買い上げ予算が少ないこともあろうと思いますが、当初三年くらいの計画でというふうに承っておりましたが、もう四年以上になると思いますが、ほとんどはかばかしく進んでいない。またぽつりぽつりそこの地内に建物が立ち始まっておる。一体これはどういうことなんだというのがその土地の住民の方々の声であります。私も、これは一体行き先はどうなるのか非常に不安になってきたのですけれども、この史跡公園として残すという方向について具体的にどの程度進んできておるのか。いま私が指摘した現状変更がぽつりぽつり無断でなされているというような事態を承知しているのかどうか。しているとすれば、それについてどういう手をお打ちになっておるか。今後の見通しはどういうふうにお考えになっておるか。  もう一つは、武蔵野西線があそこを通ることになっておりますが、すでに現在ある鉄道のところを使ってやるというふうに聞いておりますが、それにしても、それが拡張されれば当然現状変更になってくるのじゃないかと思いますが、それらにつきまして総括的にひとつお答えをいただきたい。
  137. 福原匡彦

    ○福原政府委員 武蔵国分寺跡につきましては、仰せのとおりこれを史跡公園にするという計画で、地元の買収に対しまして国から補助を出し始めましたのが四十年度からでございますので、四十二年度まで三年間、まず尼寺跡のほうから買い上げを始めまして、ただ予算が非常に少のうございますので、三年間でまだ尼寺の半分にも至っておりません。買い上げの必要地が一万四千平米でございます。そのうち六千二百平米という程度の買い上げでございます。本年度は昨年の繰り延べの予算と、さらに昨年度以上の予算を用意しておりますので、本年度、三千平米以上のものはさらに買い上げる予定でございます。まず尼寺跡を買収いたしまして、これを史跡公園として利用したい、こういうふうに考えておるわけでございます。僧寺のほうはこれより大きいわけでございますけれども、まず尼寺跡につきましては、国分寺市あるいは東京都におきましても、これを史跡公園の計画に事業決定をしているように伺っております。   〔委員長退席、久保田(藤)委員長代理着席〕 予算総額の中でやっておりますので、ややテンポがおそうございますけれども、補助金の中では、たしかこれは一、二位くらいの補助金を出しているわけでございます。それにしてもたいへんおくれて申しわけないと思います。僧寺跡につきましては一部国有地もございますが、四十三年度の予算は尼寺を中心といたしますが、一部僧寺あとにつきましても、緊急を要するところは若干買い上げも始めたいというふうに考えております。これもだんだん予算をふやしてまいりまして、僧寺跡も史跡公園として利用してまいりたい。これは初め考えました公園計画をそのまま続けているわけでございます。  その後無断現状変更等があったではないかというお話でございました。これはたしか十二月の文化財小委員会で先生から御指摘ございまして、あのときたしか二軒ございました。あの二軒が依然としていままだ問題が片づいておりません。その理由はあのとき申し上げたかと思いますけれども、立ちのいてもらうための買収費について食い違いがございまして、話がまとまらないという状態でございます。その二軒だけがいまだに継続しておりますが、それ以外には無断現状変更は起こっていないというふうに私は承知しております。  それに武蔵西線の複線化の問題が起こりました。これも先生御指摘のとおりでございますが、これは尼寺跡の西側に平均一・五メートルの拡幅工事の計画を持っているようでございます。これにつきましては、現在鉄道建設公団と協議中でございまして、できるだけ史跡を保護できるような形で話し合いを進めてまいりたいというふうに考えております。  今後の保存につきまして、先ほど来申し上げましたように、尼寺跡、僧寺跡、無断現状変更などが今後も起こりかねないところでございますので、できるだけ早く公園計画というものを実現するように私ども努力してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  138. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 せっかく御努力をいただいているようですから、これは了解をいたしますが、一体今後何年かかって史跡公園を完成する見通しですか。
  139. 福原匡彦

    ○福原政府委員 実は私ども、国分寺につきましては東京都にも中に入っていただいて、東京都からもこの整備について御援助いただきたいと思っているわけであります。国分寺の財政状況からいってもたいへんなことだと思いますので、国と都の援助によりまして、そうした三者の協力によりまして、何年後と言われても非常にむずかしゅうございますが、私どもとして予算もできるだけ努力いたしまして、できるだけ早くと申し上げる以上にはいま申し上げられないと思いますけれども、何とか完成してまいりたいと、こういうふうに考えております。
  140. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 それではこれはひとつ御期待を申し上げ、都のほうにも、私の都のほうの出身ですから、美濃部知事などにこの間会いましたときにも、都の文化財保護対策は貧弱であるということを指摘して要請はしておりますが、何といっても文化財保護委員会の指導性の問題ですから、御善処を願いたいと思います。  それでは三番目に移らしていただきまして、これもまた、いま破壊がどんどん進んでいるので――たいへん年間もたっておりまして、どうも見たところ委員会の成立もおぼつかなくなってきておるようですから、次に回してもいいのですけれども、もうしばらく目をつぶりまして続けさしていただきます。  大阪の和泉市、それから堺市等にかけての一帯に弥生式遺跡がずっと分布しておって、非常に広大なものが残っておって、いわゆる四大遺跡といわれているそうでありますが、その地帯がいまどんどん破壊されているというふうに聞いております。その四つというのは、池上弥生遺跡、四ツ池の遺跡、観音寺山遺跡、惣ノ池遺跡、これは信太山遺跡ともいっておるようです。観音寺山遺跡は三井不動産、惣ノ池遺跡、信太山遺跡は日本住宅公団、四ツ池の遺跡は第二阪和国道のところに当たっている。こういうようなことで、いずれも非常な破壊が進んでおるというふうに聞いております。地元あるいは考古学者等が、また地元は市議会等も先頭になってこの保存には立ち上がっているように聞いておりますけれども、一向はかばかしく成果があがっておらない。実は私、昨年の十一月に休みの日を利用して行きまして、一とおり大ざっぱにその辺を見てまいりました。まことにむざんな破壊が進んでいる状況も一部見てまいりましたけれども、これらについてどういうふうに対処しようとされているのか、その点をお伺いいたします。
  141. 福原匡彦

    ○福原政府委員 和泉市周辺の弥生式の遺跡につきましては、これは相当広い範囲にわたりまして弥生式遺跡の出土を見ております。ただいま最初にお話しのございました池上遺跡でございますが、池上遺跡、四ツ池遺跡、まずこれは第二阪和国道の予定地に含まれているということでございまして、昨年の一月に大阪府の教育委員会が分布調査いたしまして、遺跡の範囲を確認をいたしました。その後、最近になりまして、その取り扱いにつきまして建設省と大阪府の教育委員会、それから関西在住の研究者の間で話し合いがございました。その結果、ここは万博に間に合わせるということで道路を急いでおるようでございますが、来年の五月まで、その調査費を建設省で負担して調査をしようということに相なって、ただいまその具体案を練っておるようでございます。これはできればそこをよけてもらえると一番よろしいわけでございますが、何か伺いますと、そこ以外に道路が通りにくい。相当広い範囲にわたる遺跡のようでございますので、私ども何とか完全な記録を残すというようなことで、ここはやむを得ないのではないかというような気持ちを持っておりますが、これはただ地元のほうでいろいろ話し合いが進んでおりますので、その結果を待ってまいりたいと思います。   〔久保田(藤)委員長代理退席、委員長着席〕 四ツ池の遺跡は、その阪和国道の続きにまたちょうどぶつかるところにあるようでございます。ここは学校が建ったりいたしておりまして、中心部がすでに破壊されているようでございますけれども、ここも池上遺跡に準じまして何とか話し合いを進めてまいる。調査対象としては、池上遺跡、四ツ池遺跡、両方を対象にいたしまして、建設省としては十分な調査をするようにというような用意をしておるようであります。  それから観音寺山の遺跡でございますけれども、これは三井不動産の宅地造成の対象になっておりまして、その関係で大阪府の教育委員会と和泉市の教育委員会が指導いたしまして、地元の研究者の団体がことしの二月から三月にかけまして発掘調査を行ないました。その結果、四十カ所以上住居跡が発見されました。その四十カ所以上の住居跡の中で、大型の住居跡を含みます十数カ所を何とか緑地帯として住宅地の公園のような形でこれを残してもらえないかということで、現在大阪府教育委員会調査団、それから三井不動産の間で話し合いを取り進めております。  それからもう一つが惣ノ池、信太山でございますか、これは住宅公団の団地造成によります関係でございますけれども昭和四十年の暮れから四十一年の四月まで調査団が発掘を行ないまして、これは住宅公団が一部保存をしてよろしいということで話し合いに入ったわけでございますけれども調査団のほうが、これは完全に保存したいということで、話し合いがつかずに、公団の用地買収も進行しないまま現在話がとんざしている。こういうふうに聞いておりますが、最近の情勢がちょっとわかりません。現在私、そのように聞いているということでございます。
  142. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 状況は概略わかりました。そこでこれに対してどういうふうに文化財保護委員会としては対処するお考えですか。その点をもうちょっと聞かしてください。
  143. 福原匡彦

    ○福原政府委員 あちこちにわたりますので、多少ずつニュアンスが違います。原則といたしまして、住宅の団地につきましては、先ほど観音寺山のときに申し上げましたように、できるだけその遺跡を緑地帯の中に取り入れてもらって、なるべく多くこれを残す。これは住宅としてもそういうところが必要なわけでございますので、そういうことで話し合いを続けたい、こういうふうに考えております。  道路の問題が一番難物なのでございます。これはよけてもらえば一番よろしいわけでございますが、よけられない場合、何とか登呂のように高架にしてこれを通すとか、そういういろいろな方法がございますので、そういった方法があれば、できるだけそういった方法によってこわさないように進めるよう指導しているわけでございます。おもに地元のほうでそういう線に沿って極力努力をしておりますので、その結果を聞きながら私どもとしてそれに対処しているわけでございます。
  144. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 どうもいまの御答弁では私は不十分ではないかというふうに考えられます。と申しますのは、この遺跡は、一部ですけれども、だんだん発掘が進むに従って弥生時代の文化といいますか、そういうものの一番中心地であった、住居跡の大きな中心地であったということが明らかにされておるようです。古代国家というものがどういうふうなものであったかということを研究する上にも非常に貴重なものであって、全体を総合的に全部保存するか保存しないか別として、少なくとも完全な調査をしてみないと、いろいろな問題をほんとうに総合的に探求することができない、そういう地帯であるということが調査すればするほどいま明らかになっている。縦穴住居跡としても日本最大のものではないかというふうにいわれているということも聞いております。したがって、これはやはり文化財保護委員会として、平城宮跡と同じように、十分ひとつ学問上の価値というものを認めて、それをそっくりそのまま全部残すということはできないにしても、まず第一条件として完全な調査ができるようにしなければいけない。  一つ一つ申し上げますと、いわゆる原因者負担という原則が流れておりますので、たとえば観音寺山遺跡は、三井不動産がここに住宅を建てようとしているので、そこから調査費が出て調査団が調査をする。すると何となくこの関係が、三井に雇われて調査しているという関係になる。したがって、三井の予算とか、三井の都合というものにどうしても学者といえども左右される傾向が出るのは、客観的に見てそういうことはやむを得ないと思うのですね。したがって、そういう点についてやはり防波堤になって、もっと高い立場から完全な調査ができるようにしてやる責任が、私は文化財保護委員会にあると思う。しかもここは市民運動も非常に高まっておりますし、市議会等も保存の決議をしているし、あるいは買い戻せというような運動も市に起こっているように聞いております。したがって、そういう面を十分ひとつ今後一そうきめこまかく調査をされ、指導をされて悔いを残さないようにしていただきたい。  それから信太山の惣ノ池の遺跡については、日本住宅公団ですが、これも私は町田の経験があるのですが、結局緑地にして残す残すといいながら、ほんのていさいだけ残して、実際は保存の名に値しないような結果にしてしまうということがある。住宅公団の建設の設計を大きく変更して、そうしてはっきり残したというのならいいのですけれども、そういうふうにいかないのですね。口先ではうまいことを言っておっても、なかなかそういかない。だから私は、これは場合によっては文化財保護委員会なり、三井不動産なり、住宅公団なり、民間のほうは簡単にいかないかもしれませんが、責任者にも来ていただいてその見解をただしたい、こう思っているのですけれども、ひとつとりあえず文化財保護委員会のほうで積極的な指導をしていただきたいと思います。  それからこの池上の弥生式遺跡と四ツ池の遺跡は、いまお話しのように第二阪和国道の予定地になっている。いまのところどうも変更ができそうもないので、これも調査して記録を保存するのだというようなお話ですが、これがどこへ行っても全国的に行なわれている形式なんです。つまり事前調査をして、そうしてここを道路にしては不適当であるかないか、それを調査するのが事前調査というもののはずなんです。そして遺跡があればそれをよけて設計するというのが、これが文化財保護を優先さした要請であれば政府は当然そうすべきだ。ところが、いまのは全部違う。道路の予定が先に立ってしまって、そうしてそこにあるかもしれないから調査する。そして何か遺跡があれば記録保存をし、出土品をどっかに保存して、計画はまず変えない。これは全然さか立ちしているのですよ。そういう関係をもうちょっと、有力な灘尾文部大臣がいま幸い閣僚でaから、政府部内でも強くひとつ指導していただきたい。こういうさか立ちな文化財保護のやり方では、必ず日本の行政というものが何と文化的に見て程度の低いものであったかということを、後世に私は笑われることになると思う。ですから、こういう点は根本的にひとつ考え直してもらいたいと思う。  いまのようなおざなりにただ――しかも伺いますと、私憤慨しておるのは、これは建設省が所管しておるわけですから、この道路は一億数千万円の調査費を出しておるのですね。なるほど調査費としては豊富なようです。ところが、いま関西にいる学者を総動員をしても、わずかの期間を区切ってそれだけの金で調査しろと言われても、なかなかこれにこたえられるかどうかわからないと言っております。ですから、金を出してやるというのにその程度の調査しかできなかったのだから、あとはしようがないじゃないか、そして強引にそこは道路にしてしまう。こういうやり方がここにも露骨に私はあらわれておるのではないか、こういうふうに思いますので、ひとつ弱腰にならずに、文化財保護、しかもこういう非常に広大な地域に見事に残っている古代国家のいろいろな生活様式等が、あるいは政治の仕組み等もおそらくそういう中から研究すればするほどこれから明らかになっていくという素材を持っている地帯だというふうに考えられますから、十分そういう文化的価値というものを認識されまして、強力な指導をしていただきたい。これはいずれもいま危機に瀕しておりますので、緊急を要しますので、私、時間をとって質問を申し上げたわけでありますから、よろしくお願いしたいと思います。この点について事務局長並びに大臣から御答弁をいただきたいと思います。
  145. 福原匡彦

    ○福原政府委員 私どもできるだけやっているつもりでございますけれども、まだいろいろ至りませんので、御指摘をいただいた点十分に今後配意してまいりたいと思います。  ただいまのお話の中で、道路がきまってから調査をする、あるいは幾ら分布調査をやっても、それによって別に道路が変わらないじゃないかという御指摘でございました。この点につきましては、私が文化財保護委員会に参ります前から、前任者の努力によりまして、道路公団その他と話をしておりまして、あらかじめ縦貫道でございますとか、あるいは鉄道で申しますと新幹線でありますとか、そういう大きい計画が立ちました場合には、各都道府県に分布調査の予算を回しまして、それによってどうしてもここはよけてほしいというところは個々によけてまいりました。全部が全部分布調査してそこがこわされているということだけではなしに、分布調査によっては若干は遺跡は守られておるというふうに私は聞いております。ただ、この池上遺跡その他につきましては、ただいま長谷川先生のお話によりまして、実は不勉強でございまして、お話の点は総合的にこれをつかまえるべきだということについて私十分把握しておりませんでしたが、この点、文化財保護委員会といたしまして、専門家の方にもよく御意見伺いまして、今後できるだけの努力をしてまいりたいと存じております。
  146. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 先ほど来いろいろなケースについてのお話伺いまして、私ども非常に教えられた心持ちがいたしております。御承知のように、だんだんといわゆる地方の開発あるいは社会開発というふうなものが進んでまいりますにつれまして、文化財との間にいろいろな矛盾を感じさせられておるわけでございます。しかも文化財のほうの仕事がより高い次元で従来取り扱われておれば、あるいはまた問題の解決のしかたも違ってくるかと思うのでございますが、残念ながら、従来文化財の仕事が日本の行政あるいは政治の上で占めておる地位というものが決して十分ではないと存じます。そこで関係者がいろいろ嘆きを見るわけだと存じますが、御指摘の点は、私どもに対する一つの大きな御注意であり、同時にまた激励のおことばとも伺うのであります。私としても文化行政、ことにまた文化保護行政というものの一そうの向上をはかってまいりたいという気持ちもございますので、不十分な点も多々あろうかと存じますが、調査等につきましても、御指摘になりました問題についてさらによく文化財のほうでも調査をしてもらいましょうし、一般的に申しまして、この種の行政を御協力のもとにもつと高い地位に上げていくという努力をひとつやらしていただきたいと存じます。
  147. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 時間がだんだんたっておりますので、この問題につきましてはいまの大臣の御所見に大きくひとつ御期待を申し上げるということで一応とどめまして、ちょっとほかの問題について経過を伺いたいと思います。  それは平城宮の保存について、これまた私も予算委員会でも質問しましたし、その後参議院でも取り上げられまして、だいぶん大きく進歩したと申しますか、進んだように伺っておりますし、それから藤原宮についても、先般の文教委員会でも視察したところでありますが、あの百六十五号線の問題はその後どうなっておるか、簡単でけっこうですから、これは経過をひとつお知らせ願いたいと思います。
  148. 福原匡彦

    ○福原政府委員 お答えの前に御礼を申し上げたいと思いますが、平城宮跡のバイパスの問題につきましては、文教委員会の先生方の皆さんのお骨折りによりまして、おかげさまで平城宮跡の中をバイパスが通らないということになりました。現在建設局におきましてほかの路線を検討中でございます。(拍手)これは厚く御礼を申し上げたいと存じます。  それから藤原宮跡でございますが、これは昨年来調査を続行しておりまして、一応バイパスの、あれは百六十五号線のバイパスでありますが、バイパスの予定があり、それは市で買収もされているわけでございますけれども、発掘調査の結果によってバイパス路線は変えてもいい、こういう話でございました。私ども昨年来の調査によりまして、最近新聞にも出ましたが、これもまだ確定ではございませんが、藤原宮の北東部とみなされるところが一応出てまいりました。近く専門家の方に集まってもらってそれを確認をする手はずになっております。それにいたしましても、まだ宮域全体が出ていません。ただ地元のほうはバイパス路線を急いでいるようでございまして、ある時期で推定でいいから示してくれ、それによって路線を変更したい、こういうような申し出もございました。これはおかげによって建設省もそのつもりのようでございますので、私ども、ことしの作付のころまでの時点で、できるだけの調査の結果によります推定をいたしまして、新しい路線に変更してもらおう、こういうふうに考えております。
  149. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 この二つについてはたいへん明るい御答弁だったのでうれしく思います。ぜひひとつ完全な方向に保存が進みますようにせっかく御努力を願いたいと思います。  最後に一つ、妙なことをお尋ねするわけでありますが、これは灘尾文部大臣の地元の問題なので恐縮でございますが、最近文化財として指定されております広島城趾の中に旧本丸が復元されていると聞いておりますが、これ以外に日清戦争当時建設された旧大本営を復元するという御計画があるというように聞いておりまして、これが広島として大きな社会問題となっているというふうに伺っております。こういう旧城趾に、昔城としてあった本丸などを復元するということは、これは現状変更も認められてあちらこちらで城が復元しているということは聞きますが、明治以来城跡は全国各地で師団司令部とか、こういう軍事施設があったと思いますが、そういうようなものを復元aることを、そういう現状変更を許可した前例がありますかどうですか。それからこの広島の問題については御存じですか。まだ知らないのですか。もしそういうようなものが出てきた場合にはどういうふうに対処するおつもりですか。それを伺います。
  150. 福原匡彦

    ○福原政府委員 広島市の大本営の復元につきましては、これは私ども新聞その他で承知しておりますが、具体的に私どもに現状変更としての申請は出ておりません。  それで、出てきたらどうするかというお話でございます。私どもの現在まで城の復元等に対してとっております態度といたしましては、戦後城があちこち焼失いたしましたので、復元したいという希望は出てまいりましたけれども、歴史的に見て非常に正確な図面が残っているとか、そういったところについてそれに基づいて設計されたもの、これは地元の住民感情としてぜひそこにほしいという場合には、これは若干現状変更を認めてまいっております。そうした歴史的にこれを確実に復元しにくいものにつきましては、一応現状変更を認めてきていない。これが私どもの態度でございます。  大本営の跡につきましてこれを復元したいという希望が出てきたらどうかという問題でございますが、これは大本営を復元することがいいとか悪いとかいうことではなくて、もし私どもに出てまいりました場合には、これは歴史的にそれが正確であるかどうかという見地からこれを検討することになろうかと存じております。
  151. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 これが社会問題となっているということをちょっと申し上げましたが、大本営というものが民俗文化の上からも、芸術的な価値の見地からも歴史的価値があるということで、いま言ったように正確な資料等があって残すというなら別でございますけれども、単に明治百年ということに結びつけてやるのは、広島が、原爆の洗礼を受けた平和都市として非常に日本国民の新たな関心を持たれ、また世界中から関心を持たれている都市であるところに、何か平和都市イメージというものをこわして、また軍都としてのかつての広島を復元するというようなことにつながるのではないかということを、各方面で非常に心配をされていると聞いております。  まあ原爆ドームの保存などにつきましては、前浜井市長が先頭に立ちまして、全国民の浄財を集めてあの保存事業を行なったのでありますけれども、今回は六千万円以上のお金を市の予算か何かをとりましてやるということも仄聞しておるのですが、一体そういうことがほんとうに進行しているのかどうか。いまのところ現状変更等の申し出はないというお話でありますが、高い政治的な立場から文部大臣の御所見、仮定のことについては言えないということであればそれでもけっこうでございますけれども、あるいは大臣の地元のことでもありますので、具体的なことを御存じであればこれに対するお考えを伺いたいと思います。
  152. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 広島で明治百年ということについての記念事業についていろいろ計画があることと思うのでありますが、その中に旧大本営跡に復元と申しますか、正確なことはよく存じませんけれども、そういうものをつくりたいという声があることは、私も承知をいたしております。ただしかし、これは広島市民の市民感情といろ問題もございましょうし、また市の理事者としましても賢明な判断をすべきことであろうかと存じますが、具体的に詳細な話はまだ私伺っておりません。そういう話があるということは聞いております。
  153. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 大臣の御答弁で、大臣のお考えを何かお察しができるような気がいたしますので、きょうはこの程度にとどめたいと思います。
  154. 高見三郎

    高見委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十五分散会