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朝永参考人 ただいまの御
質問でございますが、昨年の十二月二十日でございますか、いまおっしゃいましたとおりの
申し入れを
文部大臣あてにいたしました。それはここにございますので、ちょっと御
説明申し上げたいと思いますが、これは実は
科学研究費補助金という
制度がございまして、
大学その他
研究所等におきまして、
国立大学あるいは
国立の
研究所では経常的な
研究費をいただいているわけであります。それはそれぞれの教官が自由に使えるというものでございますが、そのほかに
科学研究費補助金というのがございます。この経常的な
研究費ではまかなえないような、まかなうのにいろいろ困難があるようなそういうものについて、
方々の
先生方がこういう
研究をやりたいという申請を
文部省のほうにいたしまして、そうしてそれをいろいろ
審査いたしまして
配分をする、そういう
制度がございます。それの
審査の
方法、あるいはもう少し一般的に
研究費をいろいろカテゴリーに分けるとか、いろいろそういうことが問題になりまして、
文部省のほうで、昨年の初めごろから何とかもう少しうまく
改善できないであろうか、いろいろいままでの
やり方に
批判もございまして、そういう点を
改善しようというので、その
改善策をどうするかというのをお隣におられます茅さんが
会長をしておられる
学術審議会、これは
文部大臣の
諮問機関でございますが、そこに諮問されまして、そして
答申がまとまったわけでございます。その途中の
段階でいろいろ
学術会議のほうから
意見を述べまして、相当な部分取り入れていただいたわけでありますけれ
ども、最後にどうしても一致しない点が
一つ一まあ
一つではないのでございますけれ
ども、非常に基本的な問題で
一つありましたわけであります。それは
審査の
方法でございます。これは詳しく申し上げますと非常に時間がかかりますのでざっと申し上げまして、もし御理解いただけなければ、私からでも
茅先生からでもどちらからでも
あとで
お答えすることにいたしますが、要するに、いままではどういう
審査の
方法をとったかと申しますと、この
審査の
仕事は、
文部省の中にあります
研究費の
配分——いままでは
学術奨励審議会というものの中に
研究費の
配分委員会というのがつくられて、そこで
審査していたわけでございます。この
配分委員会で
審査をするところの
審査委員、いままでは百二十名定員でございましたが、それを
学術会議にその
候補者の
推薦を
文部省から依頼が参りまして、そして
定数の倍の
推薦をいたしておりました。そのときに
順位をつけまして
推薦をしたわけでございます。そしてその
順位を尊重するという、そういう
慣行でずっときたわけでございます。
ところが、この新しい
審査の
方法は、詳しく申し上げますと非常に複雑でございますけれ
ども、要するにいままでの百二十名に相当する
審査委員を
——相当するとわれわれは考えております
審査委員を五十ないし六十名にする、そしてそのほかに予備的な
審査をする
審査委員を相当多数委嘱する、全体が約四百人というそういう構想でございます。いままでも百二十人の
審査委員だけでは
審査できませんので、いろいろ
学会等にも
協力委員、そういうようなものを非公式におつくわになって、そして百二十人の
審査委員の
予備審査のようなことをやってきたという、そういう非公式な
慣行がございましたわけで、それを正式にしたというふうに私
どもは受け取っているわけでございます。
それはまあそれであれでございますけれ
ども、
学術会議といたしましては、いま荘での百二十名に相当する六十名の
審査委員も
学術会議に
候補者の
推薦を依頼されて、そして
学術会議が
順位をつけてそれを尊重するという
やり方をしていただきたい、そう考えたわけでございます。しかし、この
審議会のほうで
答申になりました
考え方は、全体の四百名の
定数の一倍半か二倍の
候補者を
学術会議に
推薦を依頼する、そしてその中のどなたを五十ないし六十の
審査委員にするかということは
文部省が
審議会で相談してきめる、そういうようになったわけでございます。その理由は、これは
茅先生が御
説明になったほうがよろしいかと存じますが、私
どもが理解する
範囲では、この
科学研究費というものの
予算は
文部省が取って、そこで適正な
配分をする
責任があるのだから、したがってこれは
文部大臣の
責任になるので、その
責任の所在を明確にする必要がある。そういうわけで六十人あるいは五十人の、これは第二段
審査委員というふうになっておりますが、その第二段
審査委員をいまのような
文部省の
責任においてきめたいのだということでございました。それに対して私
どもの
考え方は、
文部大臣がこの
研究費の適正な
配分に
責任を負っておられるということ、これは当然なことでございますが、適正な
配分というのが、こういう
学術研究費の
配分である以上は、やはり
学者の
意見を十分いれてやっていただきたい。もちろん、
学術審議会には茅さんをはじめすぐれた
学者がおられますから、そこで間違ったことをおやりになるとは私たち思っておりませんけれ
ども、
学術会議といたしましては、いままで学界と連絡し、十分協議いたしましてその
意見をくみ入れて
審査委員の
推薦をしておりましたのが、
学術会議の手を離れる。
あと六十人の第二段
審査委員をおきめいただくのを白い紙でほかの方におまかせいたしましょうということで、はたして多くの
学者に対する
学術会議の
責任を果たすといえるであろうか、そういう疑問を持った、それがここに
疑義があるということの
意味でございます。これを読んでみますと、いろいろ書いてございますけれ
ども、いまの「
審査委員の推せん
方法については、
日本学術会議発足の当初から、
日本の
学術の正しい進展のために、最も有効であると考えられる
慣行をつくってきたのであり、それを大幅に改変することは極めて大きな影響を
日本の
学術の
研究全体に及ぼすことになると考えます。」そういうわけで、その点に「根本的な
疑義を持たざるを得ません。」そういうふうに申したわけでございます。そこで本
会議といたしましては、いろいろそういう歴史的な経緯を振り返り、現在の
方式の成立の
意義を検討し、しかしなお
改善すべきことがあるかもしれないわけですから、今後の
あり方についての
意見を
十分学会の
考え方等もくみ上げて検討したい。そういうわけで、結局、結論を申しますと、今年度四十三年度はいままでの
方式でやってほしい。ただし、いままでの
方式と申しますのは、この
審査の点についてだけでございまして、いろいろ
審議会でお出しになった
科研費の
改善すべき点でわれわれのもっともと考えられる点がございますが、そういうことはもちろん新しい
方式でやっていただいてけっこうでございますが、ただ
審査委員の
推薦の件、
審査の
やり方等については一応この四十三年度は新
方式を急いで実施しないでほしい、そういうことを
申し入れたのがこの十二月二十日の
申し入れでございます。