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1968-04-12 第58回国会 衆議院 文教委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月十二日(金曜日)    午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 高見 三郎君    理事 臼井 莊一君 理事 久保田藤麿君    理事 坂田 道太君 理事 谷川 和穗君    理事 西岡 武夫君 理事 小林 信一君    理事 長谷川正三君 理事 鈴木  一君       有田 喜一君    稻葉  修君       久野 忠治君    河野 洋平君       周東 英雄君    高橋 英吉君       床次 徳二君    橋本龍太郎君       広川シズエ君    渡辺  肇君       唐橋  東君    川村 継義君       小松  幹君    斉藤 正男君       原   茂君    有島 重武君       山田 太郎君  出席国務大臣         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君  出席政府委員         文部政務次官  久保田円次君         文部大臣官房長 岩間英太郎君         文部大臣官房会         計課長     井内慶次郎君         文部省大学学術         局長      宮地  茂君         文部省体育局長 赤石 清悦君  委員外出席者         日本学術会議事         務局長     鵜飼肥佐男君         参  考  人         (日本学術会議         会長)     朝永振一郎君         参  考  人         (学術審議会会         長         日本学術振興会         会長)     茅  誠司君         参  考  人         (日本学術振興         会理事)    岡野  澄君         専  門  員 田中  彰君     ————————————— 四月十二日  委員稻葉修君、松村謙三君及び矢野絢也君辞任  につき、その補欠として橋本龍太郎君、高橋英  吉君及び山田太郎君が議長指名委員に選任  された。 同日  委員橋本龍太郎君辞任につき、その補欠として  稻葉修君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 四月十日  学校教育法の一部を改正する法律案反対に関す  る請願楢崎弥之助紹介)(第三七三七号)  外国人学校法案反対に関する請願楢崎弥之助  君紹介)(第三七三八号)  教育公務員特例法の一部を改正する法律案反対  に関する請願楢崎弥之助紹介)(第三七三  九号)  外国人学校制度創設反対に関する請願(林百郎  君紹介)(第三八八三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  国立学校設置法の一部を改正する法律案(内閣  提出第八号)  文教行政基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 高見三郎

    高見委員長 これより会議を開きます。  国立学校設置法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  この際、井内会計課長より発言を求められております。これを許します。井内君。
  3. 井内慶次郎

    井内政府委員 先日の文教委員会におきまして、川村委員から御指摘のありました文理学部改組につきまして、あらためて御説明申し上げます。  従来、予算上は、学部を分離して整備するものと、学部名称文理学部のまま学科その他の内容整備をはかるものとを含んで、単に文理学部改組という表現をいたしておりました。一方、国立学校設置法の改正を要するものは、学部を分離する場合だけでありますので、御指摘のように誤解を生ずる点もあったかと存じます。御指摘のあった点につきましては、予算の技術的な点につきましても一検討し、改善をはかりたいと存じますので、御了承をいただきたいと存じます。
  4. 高見三郎

    高見委員長 本日御出席をお願いいたしております参考人は、学術審議会会長日本学術振興会会長茅誠司君、日本学術会議会長朝永振一郎君、以上両君の方でございます。  この際、委員会を代表いたしまして、一言ごあいさつを申し上げます。  両参考人にはお忙しいところ出席をいただきまして、まことにありがとうございました。何とぞ本案について忌憚のない御意見をお述べくださいますようお願いいたします。  なお、参考人の御意見委員からの質疑に対するお答えでお述べいただくようにいたしたいと存じますので、さよう御了承をいただきます。  質疑の通告がありますので、これを許します。唐橋東君。
  5. 唐橋東

    唐橋委員 私の質問は、ただいま審議されております法律案関係しまして、大学の生命ともいうべき研究費取り扱いについてお伺いするわけでございますが、文部省側への質問に入る前に参考人方々に、いま申しました研究費取り扱い経過等に対する御意見をお伺いするわけでございます。  ほんとう先生方お忙しいところ急にお願いいたしまして申しわけございません。また、いま申しましたように研究費配分等でございますので、質問が申しわけないような点にも触れるかとも存じますので、前もって御了承をお願いしたいと思います。  なお、順序は、一番最初に日本学術会議、二番目に日本学術振興会関係、次に学術審議会関係、こういうような順序でお伺いしたいと思うわけでございます。よろしくお願いいたします。  第一に、ほんとうお忙しいところ申しわけないのですが、朝永先生にお伺いいたしますことは、概論的の問題といたしまして、近時どの方面でも、大学研究に対して、新聞論調その他で、またまた官僚統制というかあるいは政治的な力が科学研究の面に強く浸透して、研究の自由が何か狭められていくのではないか、研究政治の志向する方向に引きつけられていくのではないかというような論調がしばしば見えるようでございます。日本全体の科学者の代表としての位置におられます先生は、これらの傾向に対する問題についてどのようにとらえられているのか、概論的なことでございますが、ひとつお伺いしたいと思うわけでございます。
  6. 朝永振一郎

    朝永参考人 ただいまたいへんむずかしい御質問がございまして、どういうふうにお答えしてよろしいか、御満足のいくようなお答えができるかどうか自信があんまりございませんですが……。と申しますのは、この問題は非常に複雑な問題でございまして、学者の中にもいろいろな考えの方がございまして、非常に危機意識を強く持っておられる方もございますし、現在のところそういう心配はないというふうに思っておられる方もございますので、これは私一人が日本学者全部の気持ちを代弁するということはたいへん困難でございます。もちろん現在そうであるかないか別といたしまして、そういうことがもし将来でも起こるとすれば、これはたいへん困ったことだということは、これは日本科学者全部の共通の考え方であろうと思うのでございます。これ以上私に答えろとおっしゃってもちょっとお答えする——もしかして日本じゅう学者意見を私一人に述べろとおっしゃっても、どういうふうに申し上げていいかちょっとわかりませんので、その点お察しいただきたいと思います。
  7. 唐橋東

    唐橋委員 それでは具体的な事項といたしまして次にお伺いしたいのは、日本学術会議から十二月二十日付で文部大臣あてに、御承知のように今度の研究費配分等に関連いたしまして、審査委員選考方法審査のしかたについて根本的な疑義を持つという回答が出されておりますが、あの根本的な疑義というような点はどのような点で議論されておりましたか。一番問題とされておるような点をお聞きしたいわけでございます。
  8. 朝永振一郎

    朝永参考人 ただいまの御質問でございますが、昨年の十二月二十日でございますか、いまおっしゃいましたとおりの申し入れ文部大臣あてにいたしました。それはここにございますので、ちょっと御説明申し上げたいと思いますが、これは実は科学研究費補助金という制度がございまして、大学その他研究所等におきまして、国立大学あるいは国立研究所では経常的な研究費をいただいているわけであります。それはそれぞれの教官が自由に使えるというものでございますが、そのほかに科学研究費補助金というのがございます。この経常的な研究費ではまかなえないような、まかなうのにいろいろ困難があるようなそういうものについて、方々先生方がこういう研究をやりたいという申請を文部省のほうにいたしまして、そうしてそれをいろいろ審査いたしまして配分をする、そういう制度がございます。それの審査方法、あるいはもう少し一般的に研究費をいろいろカテゴリーに分けるとか、いろいろそういうことが問題になりまして、文部省のほうで、昨年の初めごろから何とかもう少しうまく改善できないであろうか、いろいろいままでのやり方批判もございまして、そういう点を改善しようというので、その改善策をどうするかというのをお隣におられます茅さんが会長をしておられる学術審議会、これは文部大臣諮問機関でございますが、そこに諮問されまして、そして答申がまとまったわけでございます。その途中の段階でいろいろ学術会議のほうから意見を述べまして、相当な部分取り入れていただいたわけでありますけれども、最後にどうしても一致しない点が一つ一まあ一つではないのでございますけれども、非常に基本的な問題で一つありましたわけであります。それは審査方法でございます。これは詳しく申し上げますと非常に時間がかかりますのでざっと申し上げまして、もし御理解いただけなければ、私からでも茅先生からでもどちらからでもあとお答えすることにいたしますが、要するに、いままではどういう審査方法をとったかと申しますと、この審査仕事は、文部省の中にあります研究費配分——いままでは学術奨励審議会というものの中に研究費配分委員会というのがつくられて、そこで審査していたわけでございます。この配分委員会審査をするところの審査委員、いままでは百二十名定員でございましたが、それを学術会議にその候補者推薦文部省から依頼が参りまして、そして定数の倍の推薦をいたしておりました。そのときに順位をつけまして推薦をしたわけでございます。そしてその順位を尊重するという、そういう慣行でずっときたわけでございます。  ところが、この新しい審査方法は、詳しく申し上げますと非常に複雑でございますけれども、要するにいままでの百二十名に相当する審査委員——相当するとわれわれは考えております審査委員を五十ないし六十名にする、そしてそのほかに予備的な審査をする審査委員を相当多数委嘱する、全体が約四百人というそういう構想でございます。いままでも百二十人の審査委員だけでは審査できませんので、いろいろ学会等にも協力委員、そういうようなものを非公式におつくわになって、そして百二十人の審査委員予備審査のようなことをやってきたという、そういう非公式な慣行がございましたわけで、それを正式にしたというふうに私どもは受け取っているわけでございます。  それはまあそれであれでございますけれども学術会議といたしましては、いま荘での百二十名に相当する六十名の審査委員学術会議候補者推薦を依頼されて、そして学術会議順位をつけてそれを尊重するというやり方をしていただきたい、そう考えたわけでございます。しかし、この審議会のほうで答申になりました考え方は、全体の四百名の定数の一倍半か二倍の候補者学術会議推薦を依頼する、そしてその中のどなたを五十ないし六十の審査委員にするかということは文部省審議会で相談してきめる、そういうようになったわけでございます。その理由は、これは茅先生が御説明になったほうがよろしいかと存じますが、私どもが理解する範囲では、この科学研究費というものの予算文部省が取って、そこで適正な配分をする責任があるのだから、したがってこれは文部大臣責任になるので、その責任の所在を明確にする必要がある。そういうわけで六十人あるいは五十人の、これは第二段審査委員というふうになっておりますが、その第二段審査委員をいまのような文部省責任においてきめたいのだということでございました。それに対して私ども考え方は、文部大臣がこの研究費の適正な配分責任を負っておられるということ、これは当然なことでございますが、適正な配分というのが、こういう学術研究費配分である以上は、やはり学者意見を十分いれてやっていただきたい。もちろん、学術審議会には茅さんをはじめすぐれた学者がおられますから、そこで間違ったことをおやりになるとは私たち思っておりませんけれども学術会議といたしましては、いままで学界と連絡し、十分協議いたしましてその意見をくみ入れて審査委員推薦をしておりましたのが、学術会議の手を離れる。あと六十人の第二段審査委員をおきめいただくのを白い紙でほかの方におまかせいたしましょうということで、はたして多くの学者に対する学術会議責任を果たすといえるであろうか、そういう疑問を持った、それがここに疑義があるということの意味でございます。これを読んでみますと、いろいろ書いてございますけれども、いまの「審査委員の推せん方法については、日本学術会議発足の当初から、日本学術の正しい進展のために、最も有効であると考えられる慣行をつくってきたのであり、それを大幅に改変することは極めて大きな影響を日本学術研究全体に及ぼすことになると考えます。」そういうわけで、その点に「根本的な疑義を持たざるを得ません。」そういうふうに申したわけでございます。そこで本会議といたしましては、いろいろそういう歴史的な経緯を振り返り、現在の方式の成立の意義を検討し、しかしなお改善すべきことがあるかもしれないわけですから、今後のあり方についての意見十分学会考え方等もくみ上げて検討したい。そういうわけで、結局、結論を申しますと、今年度四十三年度はいままでの方式でやってほしい。ただし、いままでの方式と申しますのは、この審査の点についてだけでございまして、いろいろ審議会でお出しになった科研費改善すべき点でわれわれのもっともと考えられる点がございますが、そういうことはもちろん新しい方式でやっていただいてけっこうでございますが、ただ審査委員推薦の件、審査やり方等については一応この四十三年度は新方式を急いで実施しないでほしい、そういうことを申し入れたのがこの十二月二十日の申し入れでございます。
  9. 唐橋東

    唐橋委員 要点は了解できましたが、いまお話ありましたような点で、途中で茅先生調停案が一応出されてあった、こういうような経過もあるわけでございますので、この間において調停案趣旨というようなものが、茅先生、どういうような点にあったのか、お伺いしたい。
  10. 茅誠司

    茅参考人 ただいま朝永参考人から事情の御説明がありましたそのとおりでございます。  そこで、ただ私申し上げたいと思いますのは、昨年の十二月一日に学術審議会科学研究費補助金配分に関する答申が出ております。その中には、ただいま朝永参考人のおっしゃったようなことは触れておらないのでございます。学術会議推薦を依頼するということになっておりまして、従来どおりの順位をつけた推薦学術会議にお願いする、あるいは第二次の審査委員をやはり順位をつけてお願いするということ等は書いてございませんので、そうなさいましても答申趣旨には何ら変更はないわけであります。そこで、私ども学術会議からそういうお申し入れがあったのを非常に重視しまして、何とか科学研究費という研究者の食糧にもひとしいそれを適正にかつ時期を失せずに配分できないものかという立場から、学術会議で一番問題にされました点をどうしたら取り除けるかという点で、四十三年度の場合に限って、四十四年度以降ゆっくりと相談するとして、四十三年度に限って順位をつけていただく。第一次の審査委員にしましても、第二次の審査委員にしましても、学術会議順位をおつけくだすってけっこうです。それを学術審議会文部省から相談を受けた場合には尊重いたしますというのが、私の調停者としての調停案でございまして、学術審議会委員の一同もその点は大体了解したと思います。そういう意味で私としましては疑義を持たれた点を、とにかくその答申範囲内において取り除いたわけでございますから、おそらく受け入れていただけるだろうという確信を持ったのですが、残念ながらそれが受け入れられなかった。そういう点につきまして調停者でありました私としては、非常に責任を感じておる次第であります。
  11. 唐橋東

    唐橋委員 ありがとうございました。  次の質問でありますが、日本学術振興会事業の中で中心的な仕事といたしまして、日米科学協力研究事業というのがございます。それについては振興会のほうからもお聞きしたいのでございますが、朝永先生のほうからお聞きしたいのは、このような学術の国際的な協力事業について、当然日本学術会議としても正式に討議され、この上に立って研究が毎年進められており、その結果の取り扱い等についても、まあ研究の結果の正しいルールというのですか、私はよくわかりませんが、そういう研究結果の発表やその他について、どういうような形によって発表されておるのでございますか、要は学術振興会事業の中に含まれておる日米科学協力研究事業に対して、学術会議としてはどんな関係を持っておりますかということをお聞きしたいわけであります。
  12. 朝永振一郎

    朝永参考人 これも私からお答えしたほうがいいのか、振興会会長茅先生からお答えになったほうがいいのかちょっとわかりませんですが、この日米科学協力事業と申しますのは、これは御承知かと思いますが、池田総理ケネディ大統領と会談をされましたときに、日本アメリカ科学上の協力をしようという話をつけてこられたわけでございます。したがいまして、この仕事は、どういう研究を取り上げるかということで、日米科学協力委員会というものが外務省のほうにできたわけでございます。そこで日米協力するのにふさわしいいろいろな研究テーマというものを協議いたしまして、これはかなり大ワクのものでございますが、それを実施する作業を振興会がやる。そういうわけで振興会はその大きなテーマを実際もう少し具体的に作業して、予算をどこへつけるというようなことを振興会でおやりになる、そういうように私は了解しております。  それで、いまの学術会議日米協力に対するいろいろな意見あるいは批判というものはどういう形で反映されるかと申しますと、非常に大きなワクをきめるのは、やはり外務省における日米科学協力委員会でございますので、かつては私もそこにメンバーの一人として入っておりましたが、学術会議会長仕事が非常にふえてまいりますので、そういう事情がありまして、現在では、学術会議の中に国際交流委員会という委員会がございまして、そこの方に入っていただくという形をとっております。そして学術会議は、いろいろ外国と学問的な協力をするときに、幾つかの原則というようなものをつくって政府申し入れたことがございます。そして、それからはずれないようにその辺でチェックしていただく、そういう形でやっております。
  13. 唐橋東

    唐橋委員 ありがとうございました。  それでは次にお伺いしたいのは、御承知のように昨年の国会で非常に問題になりまして、国民に非常なショックを与え、政治あり方としても、あるいはまた日本学者良心としても非常な問題になりましたあのアメリカ軍事費からの援助という問題でございますが、学術会議といたしましても、その後統一見解というようなものもおまとめになって、これに対処されたようでございますが、私がいまここでお伺いしたいことは、あの経過の中で、現在に至るまでの間、国民ほんとうに知りたいというような点を考えてみますと、その後どのように処置されているのだろうか、あの問題に対しての学術会議の態度というものについては了解できる、統一見解の中にも、深く反省して今後このような事態が起こらないように慎重にしたい、こういうような見解が発表されておると思うのですが、それならば、その後の対策はどうなのか。特に重要な研究として取り上げられていたものが、今度研究費はそれでは軍のほうからもらわない、こういうことになったならば継続されていくだろうか、継続されていくとすれば、その際の研究費というようなものは、それならばやはり国内からのルートで、国費あるいはその他の研究費というルートで継続されていくのか、あるいはまた、それを打ち切ってしまうのか、このような点が現在の段階では一番お聞きしたい、知りたい、こういうようなことだろうと思います。したがって、私はこの状態について文部省に要求してみたいと考えたのですが、実は文部省に要求すれば、文部省側のほうでどういう研究実態だというようなことになるとすれば、これまた研究に対する文部省の介入というようなおそれもなきにしもあらず、こういうふうに考えましたので、学術会議のほうから、これは当然学者責任と申しますか、良心と申しますか、その後の経過等国民の前に明らかにすべきではないだろうか、そしてその用意は学術会議としてどうなんだろうか、こういうような点をお聞きしたいわけでございます。  要は、あの問題の結末をつけた経過並びに現在においてはどうなのだ、こういう点をお聞きしたいわけでございます。
  14. 朝永振一郎

    朝永参考人 この問題につきまして、学術会議としてどういうことをあれしたか、御承知でございますが、研究費の問題と、もう一つは、研究費ではなくて、国際会議を開くときのいろいろな費用を軍のほうに援助を求めたという二つの問題がございますので、これは分けて申し上げたほうがよろしいかと思います。  この問題が起こりました発端は国際会議のほうでございまして、一九六六年の九月に半導体国際会議というのが日本で開かれまして、この費用が十分でございませんので、アメリカ陸軍極東研究開発局というところから主催団体補助金をもらった、そういうことでございます。学術会議といたしましては、この前、昨年でしたか、この問題で国会のほうに呼ばれたときに申し上げましたが、学術会議といたしまして直接関係のあるのは、この国際会議の経費の問題でございます。学術会議国際会議を開くための予算政府からいただいております。そうして毎年幾つかの会議日本で開いているわけでございますが、それだけでは十分ではないので、学術会議が主催できないで後援という形をとる会議幾つかございまして、昨年までは、この後援をするについて、その会議の学問の意義と、それからその主催団体がしっかりしたものであるかどうかということで後援するかしないかということをきめていただいて、そうしてその主催団体が信頼のできるものであるという前提のもとに、あといろいろこまかく学術会議として介入することはむしろ避けたほうがいいという考え方であれしたわけでございますが、一九六六年にこういう事件が起こりましたので、これからは後援の場合に、やはりもう少し慎重にやる必要がある。幸いにして学術会議主催でいままでやってまいりました国際会議では、こういう事態は、いままで調べましたが、一つもなかったということでほっとしたわけでございますけれども後援のほうではこういうようなことが現にあった。それ以後後援を引き受ける場合に、やはりこういうことをしないようにという注意をいたしまして、そのあと会計等についても、いままでは向こうにまかせ切りだったのですが、少なくともそのつどいろいろ経過の途中で報告をするようにということで後援をするということにいたしました。そしてこの後援するかしないかをきめるのは、七つの部のそれぞれの専門分野後援するかしないかお考えいただいて、そうして運営審議会で決定する、そういうやり方をとることにしたわけでございます。  それから、もう一つ研究費の問題でございますが、研究費の問題は、直接研究費あるいは大学等の管理の問題に学術会議自身が口を出すわけにもまいりませんという事情がございます。ただ、学術会議としては、やはり日本研究者にこういうことは十分慎重に注意してやってほしいということを希望するわけでございますので、そういう日本の全国の科学者に訴える声明を出しました。これ以上——いままで向こうで金をもらって研究していたのを打ち切られ、それをやめた場合に、あとどうして研究するようにしたか、あるいは文部省のほうから研究費が出たであろうかとか、あるいは日本の民間のいろいろな研究補助の財団等ございますが、そういうところから出ているかどうか、そういうことを学術会議として調査するということは、これも学術会議のちょっと能力の範囲外の問題——そういうことを一応考えたことはございます。しかし、ちょっと範囲外の問題であるし、正確にやることはむずかしいのじゃなかろうか。特に学術会議の会員の方がどういうふうになさったかというようなことを調査することはできますけれども、それぞれの科学者に、どういうふうにしたかということを調べるというのも、いろいろデリケートな問題がございますので、そこまではやれない。これはやはり個々の学者の良識の問題、結局はそうなるわけなので、その良識に訴えようというので、声明することにとどめたわけでございます。
  15. 唐橋東

    唐橋委員 わかりました。  もう一点だけなんですが、これは先生からだけでなく、もし事務局に一緒においでになった方がありましたら、その方でけっこうなんですが、この前の朝日新聞に、潮見先生学術会議委員方々の出張関係の場合の計数を発表されておるので、これを見て私も非常にがく然としたわけでございますが、先生が実働日数一年間に二十日以上である。それに対してたった二千九百十五円だ、こういうことです。これはほうっておけない、こんなような気持ちを持って、驚いてこの記事を読んだわけでございますけれども、この原因は回数がオーバーしたためにできているんですか。それとも、都内在住と都外という、こういう規定は各省庁ともみんな一緒なはずなんですが、どういうところにこういう欠陥があらわれたのか、ひとつ具体的にお伺いしたいと思います。
  16. 鵜飼肥佐男

    ○鵜飼説明員 ただいまの御質問お答えを申し上げますが、朝日新聞に掲載されております潮見先生のあの額というのは、事実そのようなものであります。と申しますのは、これは俗にいいますところの都内出張でございまして、これは旅費法で一応きまっておりまして、各省みな官庁関係は一緒だと思うのでございます。内容を申し上げますと、都内出張の場合には、非常にこまかくなりますが、八キロメートル以上十六キロメートル未満の場合、あるいは五時間以上八時間未満の場合には幾ら差し上げる、あるいは十六キロメートル以上、八時間をこえる場合には幾らという一つの定額がございます。それで学術会議の場合を申し上げますと、以上の旅費法の規定、それから政令がございます。それから総理府所管の取り扱い規則がございますが、その場合に、その定額と申しますのは、会長、副会長、それから学術会議の会員の場合には七百円でございまして、先ほど申し上げました八キロ以上十六キロ未満、それから時間が五時間以上八時間未満の場合にはその三分の一でございますから二百三十三円、それから先ほど申し上げました十六キロメートル以上または引き続き八時間以上の場合には二分の一に相当する額を払うということになっておりまして、それがちょうど七百円の半額、こういうことになっておりまして、これはほんとうの都内でおいでをいただくいわゆる旅費でございます。  以上のように相なっております。
  17. 唐橋東

    唐橋委員 わかりました。この点についてはあと政府関係からもお伺いしたいと思います。朝永先生、ありがとうございました。  では次に、日本学術振興会茅先生のほうにお伺いしたいと思うのですが、日本学術振興会の設立については、去年あの法案の審議の際にいろいろ議論がございまして、一つは、学術研究を代表する日本学術会議と密接な連絡をとってほしい、こういう点と、もう一つは、研究資金などの配分日本学術行政を政府の思いのままにしないようにしたい、この二つが一番論議され、心配されたような点でございます。それ以来、あの法案が通りまして、私の手元にも、設立委員方々の名簿、役職員の方々の名簿、評議員の方々の名簿、予算及び事業計画等をいただいておるわけでございますが、具体的に、これは先生からでなくとも、一緒においでになった係の方でけっこうでございますが、いつ設立認可になって、予算及び事業計画の認可はいつ得てあったのか。     —————————————
  18. 高見三郎

    高見委員長 この際、おはかりいたします。  本案について、本日、日本学術振興会理事岡野澄君を参考人として、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  19. 高見三郎

    高見委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  20. 高見三郎

  21. 岡野澄

    ○岡野参考人 日本学術振興会につきましては、その設立委員会文部省が招集されたわけでございます。昨年の九月の二十日に設立委員会を開いて、昨年の九月二十一日に登記をいたしまして成立したわけでございます。
  22. 唐橋東

    唐橋委員 四十二年度の予算及び事業計画の認可はいつです。
  23. 岡野澄

    ○岡野参考人 十一月十三日付をもって事業計画の認可を文部大臣からいただいております。
  24. 唐橋東

    唐橋委員 第一回の評議員会は三月二十九日に開かれたということを聞いておるのですが、間違いございませんか。また評議員会のメンバーを見てみましても、非常に忙しい第一線の方々でございますので、御出席などはなかなかたいへんだと思うのですが、その場合の出席状態など、失礼ですがどうでございますか。
  25. 岡野澄

    ○岡野参考人 学術振興会の評議員は文部大臣が任命することになっておりまして、現在十四名の方にお願いしておりまして、第一回の評議員会は御指摘のとおり三月二十九日に開催いたしました。
  26. 唐橋東

    唐橋委員 出席の状態は、失礼ですけれども……。
  27. 岡野澄

    ○岡野参考人 十四人中七名の御出席をいただきました。
  28. 唐橋東

    唐橋委員 そうしますと、四十二年度の予算は評議員会にかけないで認可をしていただいたわけですね。
  29. 岡野澄

    ○岡野参考人 実は評議員の任命が、文部省で非常に慎重な人選をなすったようでございまして、任命が行なわれましたのがたしか十一月二十五日の日付だと思います。評議員の任命がかなりおくれまして、かつまた本会が成立しましたのが年度の途中でございます。事業そのものは旧財団から引き継ぎをいたしました事業がほとんどでございまして、そういう創立時の特殊事情で実は四十二年度に限りまして三月に評議会を開きまして御承認を受けたというような状況でございまして、ただ今後は毎年定例的に二月、三月または六月、二回開くことにいたしております。
  30. 唐橋東

    唐橋委員 そうしますと、発足当時の年であったので評議員の任命がおくれたために、当然かけるべき予算及び事業計画は評議員会に事後承認を得た、こういうことでございますか。——多少具体的な事項に入りまして、流動研究員等審査委員の選任はどのような方法でされておりますか。同時に、この場合学術会議等の選任の場合の関係は、ルールとして確立しておるわけですか。
  31. 岡野澄

    ○岡野参考人 今回の流動研究員等審査委員の人選につきましては、朝永会長並びに学術会議の代表の方二名、茅会長とお打ち合わせをいたしまして、十分御意見を徴しまして任命したものでございます。
  32. 唐橋東

    唐橋委員 研究資金の配分方式はどのようにされておるのですか。
  33. 岡野澄

    ○岡野参考人 学術振興会は、研究費は実は予算的に持っておりませんので、私どもでいたしておる大きな事業といたしましては、博士課程終了後の優秀な学徒に奨学金を出しております。研究費というよりはむしろ生活費でございます。それを支出いたしております。その選考を流動研究員等審査会でいたしておるということでございます。
  34. 唐橋東

    唐橋委員 次にお伺いいたしますことは、日米科学協力研究事業というのがございますが、この共同研究の取り組み方でございますが、四十二年度予算及び事業概要と四十三年度予算事業概要を見てみますと、金額の増はございますが項目は同じでございます。この科学協力に関する日米科学委員会で決定されたものが、そのままこの事業の中に組み入れられてくる、こういうことでございますか。
  35. 岡野澄

    ○岡野参考人 日米科学協力事業は、先ほど朝永先生からもお話しになりましたように、日米科学協力委員会政府に勧告いたしました事項の範囲内で、その研究の実施を学術振興会補助金をもって行なっておるというわけでございまして、総体科学協力事業としては二億円の予算でございましたが、節約がありまして、むしろ予算が節約分だけ削減されておるわけでございます。  実施状況でございますが、これはたとえば日米両国でどういう研究をしたらいいかということが原則的にその科学協力委員会のほうできまっておりまして、たとえば日米双方でやるのはやはり太平洋の問題が一番適当ではないかということで、太平洋の地球科学あるいは太平洋の動植物学というような大きなワクがございまして、その範囲内で個々の学者がやりたいということを実は募っております。その審査は、事業委員会というのが置かれておりまして、専門の学者がそれを審査してアメリカ側にも対応する学者がおるというようなことで、これはと思われるようなものについて研究費を出しておるという仕組みでございます。
  36. 唐橋東

    唐橋委員 ありがとうございました。  それで今度は学術審議会関係についてお伺いしたいのですが、先ほどお伺いしましたように、学術奨励審議会が昨年の六月でありますか改組になりまして、四百二十名以内の委員が三十名になった。こういうふうに改組されたのでございますが、改組の理由等につきましてはあとで大臣にお伺いしますが、先ほど朝永先生からもこの審議会学術会議経過等をお聞きしたのでございますが、具体的にお伺いしたいことは、私の手元にもございますが、この三十名の委員方々は全く現在の学界と財界の一流の方々で、非常に御多忙の方だと思います。この方々のおそらく現在の仕事は、いわば肩書きというようなものは四つ、五つくらいは普通じゃないか、こういう方々だと推察しますが、この方々が、先ほど申しましたように研究費配分委員の選出等に対する答申を出された、こういうことで、実はこの答申の内容は、私から申し上げるまでもなしに、今後の日本大学研究所ほんとうに大切な研究費配分あるいは審査委員の選任、こういうような方向をきめるものであり、非常に重大な答申であった。こう考えるわけでございますが、この答申ができるまでの間、名簿を見てみますと二十九人でございますが、二十九人の方々は、この重大な答申を、失礼でございますが、このお忙しい方々が何回ぐらいお集まりになってなされただろうか、こう考えるわけでございますが、原案は文部省がつくり、そしてこの方々が審議をなされた、こういうようなことなのですか。それとも初めからやはりこの委員方々が全部何回も回数を重ねてこの重大な答申案をおつくりになったのか、その辺のところをひとつ具体的にお伺いしたいと思います。
  37. 茅誠司

    茅参考人 お答え申します。  この学術審議会が発足しましたのは九月の二十日でございますが、その前に学術奨励審議会、私がやはり会長をしておりましたが、その中にやはり研究費の問題を取り扱う分科会をつくりまして、これはちょうど足かけ二年、その分科会で専門委員を置きまして詳しく討論してまいりまして、そうして昨年の末に至りまして一応の中間報告を総会に提出しましたので、それを世間に公表して世間の批判を待つ、そして学術会議のほうにもそれを提出しましてその御批判を受けたわけです。そういう処理をしまして現在のものができた。これは私、何回小委員会が集まりましたか知りませんが、これは非常にたびたび集まって、それから、文部省の原案があってじゃなくて、おそらくその小委員会自体が研究費のエキスパートでございますから、そこでやられたと私は確信しております。
  38. 唐橋東

    唐橋委員 わかりました。  ただもう一つ、くどいようですがお伺いしたいのは、この答申案を出せば——まあ製作の過程においても学術会議等の意見も十分入っているとは思いますが、正式に学術会議にこの答申案が回され、ここで十分検討されて、そうして最終的には文部省がその内容を決定する、こういうような手続等も、答申されたあと経過等は、やはり学術会議に今度回って、そしてそれが文部省へいくんだ、こういうような一応の予想のもとにされたのですか。それともまた、単に大臣に答申すれば、もうこれは大臣がどうしようと、他の各方面の意向をとろうととるまいと、それは大臣のかってだ。こういうふうな——ちょっと質問の要旨がおかしいのですけれども、実際のところは、答申されてもやはり学術会議あたりから十分意向が出てくるだろう、こういうような考え方の中で委員方々答申されていたのではないかとも推定されるのでございますから、その辺のところを、ちょっと質問が変なんですが、率直にお伺いしたいのです。
  39. 茅誠司

    茅参考人 お答え申します。  中間答申案が出まして、それを学術会議のほうにお見せいたしまして、学術会議では、やはり研究費委員会がございまして、そこで慎重に検討していただきまして、非常にこまかいリストをいただきました。異論、こうしたい、こうしたいというそれを検討しました結果、先ほど朝永参考人もおっしゃいましたように、大体その点は、その学術会議の要望に応じて修正をいたしました。ただ一点、審査委員の選考に対して第一次審査委員学術会議推薦を得るという点は同じでありますが、それに順位をつけるかどうかという点、それから第二次審査委員は、これは自分の審議会のことですから自分の審議会のほうでそれを選びたい。その推薦された方々並びに審議会のメンバーの中から選ぶということを言ったわけでございまして、その点が折り合わなかった。これは最後の総会の席に、朝永参考人学術顧問という資格でおられまして、非常に長い御意見をお述べになりまして十分御意見を伺ったのですが、その点だけは折り合わなかった。しかし、その席でも出ましたが、学術審議会の中の研究費配分委員会を、学術会議の考えておられるとおり、一分の違いもなくメンバーまできめてしまうというのであれば、研究費配分学術会議でされたらどうかという委員の意向さえあったくらいでありまして、われわれの学術審議会のほうにもそれだけの自主性は持たせたいという考えで、その点は総会におきましてやむなしという態度で文部省答申した、こういう次第でございます。
  40. 唐橋東

    唐橋委員 わかりました。参考人方々どうもありがとうございました。
  41. 高見三郎

    高見委員長 各参考人に対する御質疑はほかにございませんか——西岡武夫君。
  42. 西岡武夫

    ○西岡委員 唐橋委員の御質疑に関連いたしまして、科学研究費配分問題について、二、三点朝永先生にお尋ねをいたしたいと思います。  先ほど朝永先生からお話があったわけでありますが、これまでの最も有効であると考えられる慣行、これをやはり引き続いて受け継いでやっていったらいいというお話であったのですが、その朝永先生がおっしゃいますこれまで最も有効であったと考えられる慣行自体、それを実行してきていろいろな問題点が出てきた。それは朝永先生としてもいろいろな弊害があったことはお認めになられるわけでしょうか。その点伺っておきます。
  43. 朝永振一郎

    朝永参考人 いままでいろいろ弊害と申しますか、方々で御批判があったことは事実でございます。これは学者の側からも御批判がありましたし、おそらく文部省あたり、お役所のほうも、いままでのやり方を改めたほうがいいというお考えがあったかと思うのです。ですから、そういう点について今度審議会のほうでお出しになりました改善案の中でもっともだと思われる点、確かにこれでいままでよりよくなるであろうと思われる点が多々あるわけでございます。ですから、何が何でも今度の答申が全部いけないというふうには考えておりません。確かにいままでよりすっきりした点がございます。そういう点で、いままでの慣行が一番いいと申しましたのは、そういう点まで前のやり方を固執しているわけではございません。確かによくなった点は改めていい。ただ、われわれが非常に重要に考えますことは、審査委員推薦の件で、いままで定員の倍推薦いたしまして、そして順位をつけましてそれを尊重していただく。尊重という意味はそのとおりしろということではございませんで、いろいろな観点から実現できないこともございましょうから、それはそういうことをしちやいけないという意味ではございませんで、そういうときには理由を示してくだされば、それがもっともな理由であれば納得しよう、そういうのがいままでの慣行だったわけです。それで今度もそういうやり方は変えないでいただきたい、そういうことでございます。
  44. 西岡武夫

    ○西岡委員 そうすると、今度の改善案に、最終的にそれではどうしてもいけないんだということになった最後の理由と申しますか、そのポイントというのは、いまの推薦順位の問題だけでございますか。
  45. 朝永振一郎

    朝永参考人 この順位の問題のほかにも幾つ学術会議として考え直していただきたい点がもちろんございます。ただ、そういうことをこまかく申しますとたいへん時間がかかりますから、特に重大だと思われる審査委員の問題だけを取り上げておるわけであります。それで、私どもはそれをなぜ重要視するかと申しますと、そもそも科学研究費というのは——学問にはいろいろな性格がございますし、研究方法もいろいろでございます。それから非常に金のかかるものもございますし、あまりかからないものもございましょう。それから使い方も、専門あるいは学問の性質によりましていろいろあるわけでございます。どういうふうに使ったら一番有効であるか、経常研究費というのは非常に画一的に金額等きまっておりますし、ただその使い方については、そのもらった大学先生方が自由に使えるという意味では画一ではないのでございますけれども、金額等は実験講座幾ら、非実験講座幾らというように非常に画一的になっておるわけでございます。それを補うためにたいへん役に立ったものでございます。したがいまして、これを配分する、あるいはそれのカテゴリーをいろいろきめるというような場合に、学問の性格、研究方法等を十分知った上でやりませんと、せっかくの研究費が十分役に立たないということがあるわけでございます。それで、いままでも、そういう意味でこの配分をきめるのには、その現場の研究状況をよく知っておられる方々、その学問のこまかい性格の違いその他をよく知っておられる方々の御意見を十分くみ上げる必要があるというので、いろいろな学会等意見を聞いて、そしてそれによって学術会議が適当に調整いたしまして推薦したわけでございます。  ところが、今度のやむ方になりますと、学術会議に全体の六百人ないし八百人の推薦は依頼されますけれども、その中のどなたを採用していただくか、それからどなたを第二段審査委員にするかというようなことは学術会議の手を離れると申しますか、審議会のほうにゆだねられるわけでございます。それで先ほど申しましたように、もちろんこの審議会は非常に優れた先生方三十人で構成されておられるわけでございますから、そこでそういうことを十分お考えになるとは、学術会議としてそうは思いますけれども、そうかといって、先ほど申しましたように白紙でそこへおまかせして責任を果たせるかどうか、そういう疑問を持ったわけでございます。そういうわけで、そういう点で学会等が今度のやり方をどう考えるかというようなことももう少し学術会議としていろいろ意見を聞いてみたい、そういうことでああいう十二月のような申し入れをしたわけでございます。
  46. 西岡武夫

    ○西岡委員 この問題につきましては、もう少し詳しく先生の御意見、お話を承りたいと思いますが、時間の関係もありますので、最後に一点だけ、もう一度先生のお考えを承りたいと思います。  審査委員の選び方の基本的なやり方として、定数を上回る委員推薦をするという方式でやっておられるとすれば、順位をつけてその順位のとおりにしなければだめであると、その中で言われるとすれば、定数を上回る委員推薦すること自体が変でこなことになるというふうに私感ずるわけでありますが、その点を先生はどういうふうにお考えになりますか。
  47. 朝永振一郎

    朝永参考人 先ほど私申し上げたと思うのですけれども学術会議の言うとおりにしろということは考えておりません。いろいろな面で御検討になりまして、もう順位を変えるほうがいいというお考えであることがあり得るわけでございます。ただ、そのときに、こういうわけでこうしますよという理由を言っていただきたいと思います。そうすれば、私どもはそうこちらで、以上の順位推薦してきたのが採用されなかったのはけしからぬということを申し上げるつもりではいないわけでございます。
  48. 高見三郎

    高見委員長 参考人各位には長時間にわたり御出席をいただきましてまことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  質疑を続行いたします。唐橋東君。
  49. 唐橋東

    唐橋委員 大臣にお伺いをいたしますが、質問の第一は、原則的と申しましょうか、基本的姿勢と申しましょうか、政治科学、この問題に対処していこうとする立場を持っておられる大臣の考え方をお伺いするわけでございます。  私からくどくど申し上げるまでもなく、大臣は御経歴の上からも、戦前も戦後も十分体験されてきておりますのでよく御承知と思いますが、戦争前における学術研究会議が非常に御用機関的な性格であった。それが日本学術会議ができてからは、やはり学者自体が選出し、そしてその機関としての位置、任務というようなものも法律上明らかにされている。そこに考えられておるものは何かといえば、学問が政治から独立していこう。科学というものの考え方、立場とでも申しましょうか、論理とでも申しましょうか、そういう科学の立場と政治の立場というものを対等に法的にも位置づけ、そしてあの日本学術会議法という法律を見てみても、むしろ科学の独立というか優位というものを確立しておる。ここに日本の戦後の科学の発展というものと、いままで考えられなかった学界の民主化というものが大きく進展したと思うのでございますが、要は日本文教行政の最高責任者であられる大臣が、この大学研究あるいは全体として科学の立場というものの独立性といいますか、そういうものに対処していく基本的な姿勢ということこそが一番重要であり、基本的なものであろうと私は考えるわけでございます。したがいまして、これに対する大臣の所見をまずお伺いしておきたいのでございます。
  50. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 一国の政治行政の発展を願っておる立場におきまして、私は科学を尊重し、科学の進歩発展が非常に大きな役割りを果たしてまいるものであるということは、これは当然のことと思います。戦後の日本政治行政の上におきまして、科学尊重という精神は脈々として流れておる。そのような心持ちで、私は、わが国の科学の水準の向上、その発展というものを期待してやみません。
  51. 唐橋東

    唐橋委員 まあ、科学を尊重していくという大臣のお考えは当然だと思いますが、次にお伺いしたいことは、あらゆる新聞論調あるいはその他の科学雑誌等を見てみても、近時どの方面からも、またまた政治科学の上に立って、そして一番科学として用心しなければならない官僚統制、そういう傾向が強くなってきておるのではないか、こういうような議論が各方面に燃え上がっておることは、大臣自身も私以上におわかりだと思いますが、これらの一つ論調に対しては、どのように大臣としてはとらえていらっしゃるか伺いたい。
  52. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 御指摘になりましたような議論が新聞、雑誌等、そういうものにあらわれておることは、私もときどき拝見するのであります。ただ私は、あるいはことばじりをとらえるというつもりは毛頭ございませんけれども科学を尊重し、科学の水準の向上発展をはかっていくのも政治の大きな任務ではなかろうかと思うのです。したがって、科学政治というものとを離して考えるわけにはいかないと思うのであります。政治の面におきまして科学尊重の精神があってこそ、初めてわが国の科学水準の向上発展も期待し得るのではなかろうか、これはひとつ別のものとしてお考え願わないようにお願い申し上げたいと思うのであります。と同時に、科学の面におきまして、いろいろなその面からの御要求なり御要望なりというふうなものも、政治を実際に移して、行政を実際に考えます場合、もちろんこれを尊重してまいらなければならぬと思いますけれども、実際行政をやります場合には、必ずしも科学者の皆さん方が御要望なさるとおりには、すぐに実現するというわけにもまいらない。そこにやはり制約もあることでございますし、あるいはまた、その間必要上選択もしなければならぬというようなこともあり得ることと、かように考えますけれども、基本的には、日本の発展のためにも、何と申しましても科学の発展ということが非常に大事なことでありますから、これを尊重するという精神においては、私ども決して科学を支配して、そしてその正常な発展を妨げるというふうな心持ちは毛頭持っておらないつもりであります。
  53. 唐橋東

    唐橋委員 大臣のお考えのとおりになっておれば、しばしば各方面から出てくる、また官僚統制の傾向が強くなるのじゃないかというような危惧の問題は出てこないと思うのでございますが、ただ御承知のように、やはり現在は政党政治でございます。政党はやはり一つの政策を持っておる。そういう基本的なかまえがあると思います。同時に、科学は政党的なものから離れて、理想的な立場を持っておる。こういうような中で文部大臣としてすべき任務というものは、やはり政党の一つの政策的なものも、当然それは大きく要素にはなっているが、その政党の政策的なものがあまりに目前の科学へ大きな力が及ぶ、こういうことになってくるからこそ、いまのような危惧の念が各地に出てくるのではないか。したがって、文部大臣としての任務は、このような政党政治の中で政党が持つ一つの政策、その政策が、現在の科学体制の中で、学者一つの要求の中で消化していく場合に、学者良心を大切にし、そして科学の独立というものを、尊厳を侵さないように守っていく、こういう任務こそが大臣として非常に政党政治の中における大きなものではないか、いわゆる政党政治から——逆論から言いますれば、政党政治の中における科学の政策的なものを強く学界に要望するよりは、むしろ文部大臣の任務としては、そういうものをあまりに強くいかないように守ってやっていく。ここに真の科学の尊重というものが出てくるのではないかということを私は平素考えておるわけでございますが、そういう政党政治的な政策の中における文部大臣あり方というものに対して、所見をひとつお伺いしたいと思います。
  54. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 どの政党にしましても、それぞれ適切と考える政策を立てて、それを実際行政の上に移していくということが政治の行き方だろうと思うのです。その間に処して、先ほど来申しておりますように、科学あるいは科学技術と申しましょうか、そういったものの分野がおくれておれば、それだけその国の政治はおくれてくるというわけにもなりますので、いかなる政党にもせよ、その政策を推進してまいります場合に、基本的に科学を尊重するという態度を見失ってはいけないということは、私はお話しのとおりだろうと思います。ただ現実問題としまして、予算の制約でありますとか、また特にどの面を今日の日本としては重点を置かなくちゃならぬとか、そういう選択の問題はあろうかと思う。その選択の問題については、あるいは政党ごとに所見を異にするということもあり得るかと思うのでございます。同時に、実際科学に従事しておられる方々からごらんになりまして、そういう選択のしかたについて、いろいろ御意見もあり得ることと私は思うのであります。これを現実政治の上から申しますと、私はある意味においてはやむを得ないことだと思います。やむを得ないことでありますが、それをもって直ちに政党が政策をもって特定の科学をどうするとかこうするとかいうふうに受け取られては、実はわれわれとしましても困るのであります。基本的な精神におきましては、唐橋さんのおっしゃったことについては何の異存もございませんけれども、そういう精神のもとに現実に政策を立て、あるいは行政をやっていきます場合に、そこにいろいろな選択に迫られる。その結果、個々の科学者から申せば、いろいろ御意見が生じてくることもあり得ると思うのでございます。  いずれにしましても、学問の自由ということは何よりも大事なことであります。その学問の自由を政党が制約するということは、これは憲法上から申しましても、もちろん許されないことであります。そういう基本的な問題については、私は唐橋さんと所見は違っておるとは思っておりませんけれども、現実問題としてあらわれてくるところによっていろいろ学者の間にも御意見があろう、それがまたあるいは官僚が統制するのだというような御批判となってあらわれてくるようなこともあり得ると思います。私どもの気持ちはひとつ御了解をいただきたいと思います。
  55. 唐橋東

    唐橋委員 わかりました。そして、その現実の中でどうしてもやはり私たちは、いま大臣が科学を尊重していこう、いわばいま各地で論調として出ておる科学一つの優位性を弱体化していこう、こういうふうな傾向はないようにしたいというお気持ちもわかりますが、どうしても具体的な事例の中から官僚統制的な方向を心配していくものがあらわれてきておるわけでございます。したがって、具体的に二、三お伺いするわけでございますが、学術奨励審議会改組して三十人の委員にし、そしてそれは前からそういう研究体制に対する諮問をしておる、こういうことでございますけれども、急に急いで学術振興に関する当面の基本的な施策というものの結論をなぜ出してきたか、あまりにも急ぎ過ぎていたのではないのか、こういうことなんです。具体的にいえば、いままでの四百人を急速に三十人にしてこの結論を急いだ、これはあとでもう少し他の事例と見比べた場合、そういう疑問が出てくるわけですが、これに対してはどんなふうにお考えですか。
  56. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私も前の時代のことはよく存じませんけれども、必ずしも急に、急いできわめて短期間の間にものをきめて、そしてそれをやったというふうには考えておらないのでございます。学術審議会のできる前からこの種の問題につきましてはいろいろ検討もなされておった。そしてまた学術審議会は、前の学術奨励審議会ですか、そういうところでやっておりましたものを受け継いで検討を続けてきた、こういうふうに伺っておるのであります。ただ問題は、科学研究費の問題について、私どもとしましては、申すまでもないことでございますか、またその点でわれわれ自身も満足もいたしておりませんけれども、この科学研究費というものをもつともっと充実したものにする、あるいは増額するというふうな努力をまず行政としては考えていかなくてはならないということが一つございます。それと同時に、これの配分方法の問題について、もしいろいろな批判があり、改善をする余地があれば、これを改善していくのが当然行政の任務としてやっていかなければならない問題だと思うのであります。今回の問題は、科学を尊重するとか、科学を軽視するとか、そういうふうな性質の問題ではなくして、予算をいかにして有効に適切に配分していくかという観点からこの問題をとらえて、そうしていろいろ御審議を願いました答申に基づいて、これがよりよい配分方法であるという考えのもとに改善を加えたという事柄であるというふうにひとつ御了解をいただきたいと思うのであります。
  57. 唐橋東

    唐橋委員 大臣のお気持ちはわかるのですが、一月二十九日に文部省から委員推薦依頼を学術会議のほうに出しているわけでございます。その委員推薦の内容を見てみますと、これは文部省案ですと各部に分かれておりまして、このとおりにひとつ推薦してくれないか、こういうのが出ておるわけです。しかもその前には、先ほど参考人からも意見がありましたように、選考については根本的に疑義があるのだ、煮詰めていけば、委員の選任であり、それは一切白紙でない限りは了承しないのだ、こういうような点は、文部省は把握されていると思うのです。それを文書でこのとおりに推薦してくれないか。そうして学術会議というのは御承知のように大きな組織ですから、ほとんど時間的にも不可能だと思うのです。そういう時間的にも非常に困難な状態の中で推薦を依頼して、そうしてことしは従来どおりやってくれ、こういうたった一年のものを、しかたがないからということで、今度学術会議意見を取り入れないで、いわば、新聞論調を見てもここが一番重要になっていると思うのですが、日本学術会議を浮き上がらせようと故意にしたのではないかということが、新聞論調の中でも一番問題点として指摘されておるわけでございます。私も、経過をずっと聞いていきますと、やはり文部省としてここに多少無理がある、こんなような点を十分感じ、ことばは悪いのでございますが、ここに官僚統制という考え方を当然学者に与えていく大きな原因を文部省はつくっておると、こう言わざるを得ないわけでございますが、この経過等について、ひとつ局長のほうからでも一御説明を願いたいと思います。
  58. 宮地茂

    ○宮地政府委員 先ほど大臣からも御答弁がございましたが、昨年の十二月一日に答申になりました研究費配分についての改善策は、実は一昨年から学術将励審議会で検討しておられたものでございます。したがって、十二月一日まで期間的にも実質的に一年審議しておられます。また、その間先ほど参考人がおっしゃいましたような中間答申も出されました。それから、学術会議側と学術審議会側で十分話し合われました。茅先生朝永先生のお話をお聞きいただいておわかりいただけたと思うのですが、茅先生としまして、答申を出されるまで学術会議と十分話し合って、ただ一点、審査委員推薦方式という、その順位をつけるというその点だけになった。しかし、その順位をつけることも、茅調停によって実質的には審議会のほうへ順位をつけてきなさいというようなことも言った。ただ、学術会議が全部きめてしまわないで、学術会議のお気持ちもくみますが、学術審議会としては、ただ取り次ぐだけというのではなくて、その順位を出されたものをきめるぐらいな余地は学術審議会の権能にまかしてもらいたい。そういう考えで、ただその一点が折り合いませんでしたということを先ほどおっしゃっておられます。これは調停案も出されまして、そういう経緯をとっておりますので、私ども無理無理これを押しつけたということではございませんし、それから昨年十二月二十日に、先ほどおっしゃいました朝永先生がこの問題について文部大臣申し入れをなさいましたのは、先生がおっしゃいますように時間的に間に合わない、早いということではなくて、推薦方式についての根本的疑義があるということが焦点でございました。参考人が去られたあとで、そういうことをいろいろ申しますと、私がまたかってなことを言うととられてもいけませんし、弁解がましくなりますのであまり申しませんけれども、一応朝永会長、茅会長、いろいろお話しになりましたことが両者のあれでございますし、いま唐橋先生おっしゃいますような、何か文部省だけが急いだということではございません。ただ、最終的には、もう一年待ったらどうだということになっておりますので、もう一年あれになりますが、先ほど大臣が答えられましたが、先ほどお二人の参考人がおっしゃいましたように、従来の弊害は十分認めるのだ、ただ問題は、推薦方式だけではないにしても、しぼられたのはそこだということでございますので、茅調停がそこまで出ておりますし、人事についての運用のことを文部大臣が一方的にやるつもりもございませんが、やはり学術審議会なり、文部大臣が、任命権者としてそのくらいのゆとりはという気もいたしますし、でございますので、先生には急いでおるように見えるかもしれませんが、私どもは十分念を入れてやったつもりでございます。  それから、予算も五十億つきましたし、いわゆる四百人の審査委員予算もついております。予算案は参議院で御審議中でございますが、いま御審議いただいております予算の中身は、この改善案をもとにして組まれております。  そういうことで、従来の弊害も認められ、予算もそういうことでございますので、私どもは、ぜひこれを今年度から実施して、科学者に一刻も早くこの研究費を適正に配分したいというのが念願でございます。
  59. 唐橋東

    唐橋委員 そこだけをとらえていると、そんなような説明になるのです。しかし、一つは性格からきているわけです。御承知のように、今度三十人でしたか、この審議会文部大臣諮問機関ですから、先ほど参考人から聞いたように、二十九人の中で半数くらいしかなかなかやれない。何回も、十七回でしたね、とにかく審議をした。もう何回も審議を慎重に、前から受け継いでやった。こういうのですが、これはあくまでも文部大臣諮問機関である。この性格は基本的にあるわけでしょう。そして他方、いわゆる日本学術会議は、私から申し上げるまでもなく重大な位置を占めておる。しかも、煮詰まっていったときにどうだかというと、いま私たちが参考人局長から聞いたように、多少日時さえかければ氷解していくのじゃないか、こういう一年なら一年、もう少しそれじゃ検討しよう、ことしだけ待ってくれ、こういうような日本学術会議からの申し入れを待っておれない、ここに一つ大きな疑問が出てくるわけです。と同時に、これもそうでございますが、日本学術振興会を成立させました後に、やはり官僚統制の問題が出ました。日本学術振興会法が成立したとたんに、いままで四百人の学術奨励審議会改組して三十人にしている。それはともかく、文部大臣諮問機関だ。こんなような全体の中からどうしてもそういう官僚統制の方向を強く進められているということを、受け取る側のほうは、私は当然だと思うのですよ。それを当然でないんだ、こういう反論は、私は出てこないと思うのですよ。いまの学術振興会法が成立したとたんに、いままで四百人の学術奨励審議会を今度三十人に改組をして、そしてその審議会答申が優先になって、いわゆる学術会議意見が今度何か煮詰まった場合に、非常に問題の焦点がわかってきたのに、そして一年間、ことしは従来どおりやってくれないか、こういうことさえやはりいれられないとしていけば、文部省があまりに強過ぎるというこの意向を持つのは当然じゃないですか。
  60. 宮地茂

    ○宮地政府委員 誤解がありますといけませんので一言申し上げますが、実は従来学術奨励審議会というのがありましたときに、すでに科学研究費配分の小委員会はあったわけなんで、そこで委員は数百名といまおっしゃいましたが、今度も学術審議会科研費委員会は四百名になるわけなんですから、従来よりは人数は多くなるわけです。それで従来も審議会でやっておったわけです。そういう点では一つも変わりはございません。  それから、特殊法人学術振興会とこの審議会、あまり弁解しますと時間が長くなりますから、先生のおっしゃるような関連は、これはそのときの法律の日時等をお調べいただけば、そういう関係がございませんので、一応申し上げておきます。
  61. 唐橋東

    唐橋委員 いや、四百名の方が審議会のほうにもいるということは私も知っています。しかし、一番中心になるものが、いまのように学術奨励審議会学術審議会にした。こういう点は、日時はあれでしょう、去年の三十名にしたのはやはりいまの日本学術振興会法ができてからでしょう。何か日時が私の違いですか、学術審議会改組したのは四十二年の六月でないですか。そうすれば、日本学術振興会法が一応成立の見通しが立ったときにやったのでしょう。
  62. 宮地茂

    ○宮地政府委員 実は、従来学術奨励審議会時代に科学研究費配分委員会がございました。その定数は百二十一でございます。今度の学術審議会——従来の学術奨励審議会と申しますのは、いわゆる総会の委員がいませんで、すべて分科会で、それが六つ、七つあったわけであります。それを今度は、総会に当たるものをつくって、その下に従来とほぼ同じ分科会はあるわけでございます。前は分科会の定員は百二十一であった。今度の学術審議会の親審議会は三十人でございますが、従来の奨励審議会分科会に当たります科研費分科会は四百になるわけです。ですから、従来百二十一であったのがその三倍以上になるわけでございます。親審議会ができたというだけで、従来は親審議会がなくて直接分科会であった、今度は親審議会の下に四百人の分科会ができる、そういう関係でございます。
  63. 唐橋東

    唐橋委員 大臣が参議院の予算委員会のほうに行かれるということなので、大臣に関係することだけを先にお伺いしたいのですが、前の国会で非常に問題になりまして、先ほど参考人からお聞きいたしましたが、米陸軍の極東研究開発局からの研究資金の問題については、これはいまさら申し上げるまでもなく、ほんとうに大きな問題と私たちも受け取り、国民もまた大きなショックを受けたと思うのでございますが、その後文部省としては、それらについては申請を出させるんだ、こういうような方式をとられ、そしてお聞きしてみますと、本件は四十二年度には一件もうない。こういうようなことなんですが、私は、そこで疑問に思うのは、先ほどやはり朝永先生にお聞きしたように、継続的な研究——旅費やその他は別ですよ、継続的な研究というものは、やはり学問の一つの重要性から見て、当然行なわれている。そういう場合に、それらの問題に対して今度どういうように処置されたのか。あるいは国立大学にはなかったとしても、他の研究機関あるいは私立大学等においてはどうなのか。先ほども申し上げたのですが、そういう問題について文部省が直接調査に入るということは私は好んでおりません。しかし、他の機関がやり得ないことで政府機関としてやり得ることは、極東研究開発局からの支出状態は政府機関は直接聞ける。ほかの機関は、たとえば大学が全体を聞くわけにいかないでしょう。政府機関であるから、四十二年度国全体として、私立大学や他の研究機関等を含めて今度金が出ているのかどうかということを当然つかむべき責任を持っておると思うのでございます。  要は、時間もございませんので、この種の問題についてお伺いして、さらにもう一つ質問の条項をつけ加えて申し上げ、一括御答弁を願いたいのですが、あの問題の中で一番大きな問題は特許、著作権条項だと思うのです。研究の成果が、この補助をもらったものは特許権も著作権もすべてアメリカ側にあるのだ、こういう条項が前回の国会においては非常に中心的な議論となったのです。そうしますと、もう日時がたっておる現在ですから、それらのものをずっと文部省としては明らかにされて、そしてこの辺ではっきりと国民の前にこの種の問題を取り扱った結果を公表すべき時期ではないのか、そういう義務的なものを文部省は持っておるという考えさえもあるのでございますが、それらに対してひとつ明らかにしていただきたいわけでございます。
  64. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 大学における研究は、研究者の良識と自主的判断にまつべきものであろうかと思うのであります。大学の教育と研究が阻害されることがない限り、原則としてそれに干渉すべきものではないと思っております。したがいまして、米軍関係のいわれております資金の受け入れの問題につきましても、それぞれの大学が教育と研究に支障があるかないか、それを自主的に検討して受け入れの可否を判断すべきものであろうかと思います。国立大学につきましては、外部からの研究資金の受け入れにつきましては、これをすべて国の会計に受け入れる、公費として受け入れまして公費として処理する手続をとらせることにいたしております。その場合には文部大臣の承認を受けることにいたしておるのであります。公私立の大学に対しましては、そのような手続上の関係もございませんので、大学の判断にゆだねることが適当である、かように考えておる次第であります。  お尋ねになりました特許の関係その他につきましては、ひとつ政府委員からお答えすることをお許し願いたいと思います。
  65. 宮地茂

    ○宮地政府委員 いまの大臣の御説明に補足いたします。  従来の、これは国内の奨学寄付金あるいは受託研究費ももちろんそうでございますが、とりわけ外国からの受託研究あるいは奨学寄付金、こういう受け入れにつきまして問題になりますのは、その中身と同時に、技術的な問題といたしましては、これに特許権とかあるいは工業所有権、こういったような権利がつくものであるかどうかということが一つの問題になるわけでございます。いま先生指摘アメリカ陸軍極東研究開発局、この問題につきましては、アメリカ極東研究開発局から、たとえばある大学研究者に奨学寄付金が入ります場合に、その奨学寄付金で研究した結果特許を生ずる場合、そのときはアメリカにその特許権は属するのだ、あるいはアメリカに承継させるのだ、自動的にそういうふうになっておるものにつきましては、これは受け入れてはいけないということにいたしております。ただ、初めから自動的に外国のほうに特許権が承継されるということになっていない場合、これは個々のケースでございますが、したがって、そういうような場合に、これは絶対にそういう特許等の生ずる研究ではないというようなものにつきましては——これはもちろん研究の内容によろうと思います。最近のことですから、軍に協力するような、直接軍事目的のための研究といったようなことについてはいろいろ議論のあるところですが、そういう内容上の問題ももちろん検討する必要がございますが、特許の問題につきましては、私どもとしては、そういう条件のつかないものということで受け入れさしております。
  66. 唐橋東

    唐橋委員 あと二、三質問が残っておりますが、だいぶ時間に食い込みましたから別の機会に譲ることにいたしまして、私の質問はこれで終わります。
  67. 高見三郎

    高見委員長 有島重武君。
  68. 有島重武

    ○有島委員 大臣お急ぎのようなので、簡単にいたします。  国立学校設置法の一部を改正する法律案についてでございますが、これは大学改組についての問題でございますので、現在の大学が、学校教育法の五十二条に、大学学術の中心である、広く知識を授ける、深く専門の学芸を教授し研究する、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的としているとありますが、現在の大学がこのような目的を果たしておるかどうか、その点について大臣の御所見を承っておきたい。
  69. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 学校教育法の五十二条でございますか、それに大学設置の目的が書かれておるわけでございます。各大学におきましても、また設置者であるわれわれといたしましても、この目的達成のために努力しなければならぬことは当然のことでございます。はたしていまの大学がこの条項を完全に満足させるだけのことをやっておるかどうかということの御質問でございますが、やはり大学にいたしましても、まだまだ充実し、まだまだ向上してまいらなければならない余地はもちろんあるものと私どもは考えておる次第でございます。目標の達成に向かって常に努力もしてきておりますし、また、それ相当な成果はあげておるとは思いますけれども、さらに一そうこの目標に近づくように努力をしなければならない状態にあろうかと思います。特にことばを飾って言うわけにまいりません。現在の大学の状態から考えましたときに、学生の指導教育、そういう点におきまして非常な決心を持って真剣に努力をしなければならない要素が多々あるということは、まことに申しわけないことでございますけれども認めざるを得ないのでありまして、その改善のためにさらに一そうの努力をいたしてまいりたい。そういうふうな状況にあろうかと考えております。
  70. 有島重武

    ○有島委員 いまの大臣のお答え、そこの目的に向かって努力をしていくというお答えでございますけれども、このたびのこの法改正もそうした一環として受け取っていきたいというふうに私は思っておるのでございますけれども、この法案の提案の理由書に「千葉大学及び愛媛大学文理学部改組して学部を増設するとともに、茨城大学ほか三大学大学院を設置する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である」。まあ、法律の出し方というものはこういう出し方をするのかもしれませんけれども、必要があるから、だからやると、こう言われますと、こういうふうに改組していく必要は確かにあるかもしれないけれども、それ以前に、もっともっといろいろな打つべき手があるんじゃないかという点を考えざるを得ないのです。これは学校当事者の側にも、また学生の側にも、父兄の側にもいろいろな問題があると思うのでございますけれども、きょうは時間がありませんから、ただ要望にとどめます。この改組をしたところはやはり新しい息吹きを持って始まっていくと思うのです。せっかく改組したものは、おそらく教授陣といい、設備といい、まだまだいろいろな不備な点があると思いますけれども、これが一つの今後の大学あり方の強力な推進力となっていくように特に配慮をしていただきたい。その点を、私どももこの改組にあたってしっかりと見守ってまいりたいと思います。  以上を要望いたしまして終わります。
  71. 高見三郎

    高見委員長 ほかに御質疑はありませんか。−ないようでございますので、本案に対する質疑はこれにて終了いたしました。     —————————————
  72. 高見三郎

    高見委員長 ただいま委員長の手元に、谷川和穗君外三名より、自由民主党、日本社会党、民主社会党及び公明党の四派共同提案にかかる本案に対する修正案が提出されております。提出者から趣旨説明を聴取いたします。谷川和穗君。
  73. 谷川和穗

    ○谷川委員 私は、ただいま議題となっておりまする国立学校設置法の一部を改正する法律案に対しまして、自由民主党、日本社会党、民主社会党及び公明党共同提案にかかる修正案の説明を申し上げたいと存じます。  修正案の趣旨につきましては、お手元に配付いたしておりまする案文の朗読をもって説明にかえさせていただきます。    国立学校設置法の一部を改正する法律案に対する修正案   国立学校設置法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。   附則第一項を次のように改める。  1 この法律は、公布の日から施行し、昭和四十三年四月一日から適用する。   附則第二項中「この法律の施行の際現に」を「昭和四十三年三月三十一日に」に改める。 以上でございます。  何とぞ委員各位の御賛成をお願いいたします。
  74. 高見三郎

    高見委員長 これにて修正案の趣旨説明は終わりました。     —————————————
  75. 高見三郎

    高見委員長 これより本案及び修正案について討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  まず、谷川和穗君外三名提出の修正案について、採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  76. 高見三郎

    高見委員長 起立総員。よって、本修正案は可決されました。  次に、ただいま修正に決しました部分を除いて、原案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  77. 高見三郎

    高見委員長 起立総員。よって、修正部分を除いて原案のとおり決しました。  これにて、国立学校設置法の一部を改正する法律案は修正議決いたしました。  なお、本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  78. 高見三郎

    高見委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  79. 高見三郎

    高見委員長 文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  日本学校給食会の問題について質疑の通告があります。これを許します。小林信一君。
  80. 小林信一

    ○小林委員 大臣お急ぎのようでございますので簡単に申し上げますが、これは昨日からきょうにかけて、テレビ、新聞等できわめて大きく取り扱われておる問題でありますが、どの行政機関にあってもならないことなんですが、特に文部行政にあってはならない重大な問題であります。学校給食会に不正の問題が起きておりますが、これについて、われわれはこの際、文部大臣から、その真相がおわかりであれば、この委員会を通して国民にお知らせ願いたい。
  81. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 特殊法人学校給食会の職員が収賄容疑でもって逮捕せられたという報道を、実は私も最初に新聞で知ったようなことでございます。いかにも残念であり、また申しわけないことと存じております。特にまた教育関係の団体の中からそういう事態を生じたということは、返す返すも遺憾であり、申しわけないと存じております。この上は関係当局の手によって十分にひとつお取り調べも願いたい、このような心境でおるわけでございます。いずれにいたしましても、かような事態を発生いたしましたにつきまして、文部省としましても、監督上皆様方におわびを申し上げなければならぬと存じております。将来またそのような事態が再び発生することのないように十分留意してまいりたい、かように存じております。  事件の内容等については、まだ私もつまびらかにいたしておりませんので、政府委員のほうからでもお聞き取りを願えればありがたいと存じます。
  82. 小林信一

    ○小林委員 まことに残念なことでございまして、おそらくきょう給食は全国に行なわれており、それに携わる方たち、また給食を受ける生徒、児童、こういう人たち、また父兄も、おそらくきょうの給食を通して、この新聞の問題を考えておると思うのですが、教育行政の権威を失うような問題でありますので、この際そういう人たちの気持ちを代表して、私は文部省に一言申し上げたいのです。  学校給食の問題は、体位向上、食生活の改善あるいは給食をともにするという中から大きな教育の成果をあげて、父兄は相当な犠牲を払いながらもこの問題には協力をし、その完全な実施を強く要望しながらいま続けられておると思うのです。しかし、まだまだ学校給食法に示すこの給食に対する国の施策というふうなものも十分でない、これからだと思うところが多分にあります。しかも、最近のこの物価高の中でどうして父兄の負担を軽減しながら給食の使命というものを果たしていくか、この点は実際にそれに携わっている人の苦心している点なんです。また、この脱脂ミルクにつきましても、栄養価値は十分認めながらも、どうして子供たちにもつと親しんで飲ませるかということについては、私たちも各学校に参りまして、先生方の非常に苦心しておる姿に全く感激しておるものであります。そういうように大ぜいの人たちの協力の中で学校給食が進められておる。ところが、従来もこの脱脂ミルクにつきましては問題がありました。そのときも、今後こういうことがないようにと、国会でも文部省に強い要望があったと私は記憶しております。衝に当たられる文部大臣は清廉潔白の方であることは私どもも認めます。また体育局長も、私たち長年存じておりまして、その点全くこの局長のもとにこういう問題が起きるとは思われない。また学校給食会の理事長、この方も私どもよく知っております。それこそ曲がったことなんかできない人だと信頼しておる方たちです。こういうふうに大臣をはじめその衝に当たっておる人たちがみんな、きょうの新聞にあるように、学校給食に黒い手が、というようなことは予想できないことでありますが、やはり行政のどこかに欠陥があるからこういう問題が起きるわけでありまして、日本学校給食会法の第二十八条には、りっぱに、そういうことが起きないように常に監督しあるいは調査をするということが述べられておりますが、そういう点に何か手落ちがあったのではないかと私は思うのです。とにかくこういうところに問題が起きることは非常に重大だと思うのです。このことについて私は文部行政のあり方について申し上げたいことがあるのですが、とにかくきょうの給食に関係する人たちは、普通の官庁にある汚職とか疑獄とかいう問題以外に相当な深い関心の中でながめておると思うのです。どうか今後こういうことがないように、この問題を通して徹底的にその事理を明らかにするとともに正しい処断をしていただきたく、この際私は希望を申し上げて、私の御質問を終わります。
  83. 高見三郎

    高見委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十三分散会