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1968-04-16 第58回国会 衆議院 物価問題等に関する特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月十六日(火曜日)    午前十時四十一分開議     —————————————  出席委員    委員長 八百板 正君    理事 小笠 公韶君 理事 金子 一平君    理事 砂田 重民君 理事 唐橋  東君    理事 武部  文君 理事 和田 耕作君       青木 正久君    広川シズエ君       村山 達雄君    山下 元利君       伊賀 定盛君    有島 重武君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     山田 精一君         経済企画庁国民         生活局長    八塚 陽介君         厚生省社会局長 今村  譲君  委員外出席者         経済企画庁国民         生活局消費者行         政課長     岩田 幸基君         厚生省環境衛生         局食品衛生課長 野津  聖君         厚生省環境衛生         局乳肉衛生課長 神林 三男君         厚生省環境衛生         局食品化学課長 小高 愛親君         農林省農林経済         局参事官    内村 良英君         農林省農政局植         物防疫課長   安尾  俊君         通商産業省企業         局消費経済課長 谷村 昭一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  消費者保護基本法案砂田重民君外二十四名提  出、衆法第二一号)      ————◇—————
  2. 八百板正

    ○八百板委員長 これより会議を開きます。  消費者保護基本法案を議題といたします。  前日に引き続き質疑を行ないます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。武部文
  3. 武部文

    武部委員 昨日砂田委員のほうから各関係法についていろいろ質問がありましたので、できるだけ重複を避けたいと思います。  関係法令質問に入ります前に公取委員長にお尋ねいたしたいのですが、何回か申し上げるように、当委員会再販の規制問題について、長い期間かかっていろいろ公取見解等をただしてきたわけであります。去る二月二十九日、当委員会で、再販新法提出することを見送ったということについて、私は公取の今後における具体的な方針についてただしたわけでありますが、その際に山田委員長は、再販許容品目を大幅に整理をして、さらに再販行為が許される品目についてもその監視をきびしくしたい、そのことが一昨年の物懇提案趣旨に沿うものであると同時に、一般消費者の期待にも十分こたえることができるという趣旨答弁をされたわけであります。その後当委員会においては、再販問題については二月二十九日の委員長答弁を最後にして、この問題は一応公取態度を見守っておったわけでありますが、今日この再販の洗い直し、整理の問題についてはどうなっておるのか。当時の発言によれば、大体一月あれば四千種にのぼる商品の流い直しはできる、こういう発言があったのでありますが、その点をちょっと最初にお伺いをいたします。
  4. 山田精一

    山田政府委員 お答えを申し上げます。  約一カ月の予定をもって目途といたしまして洗い直しの作業を急いでまいりましたのでございますが、その後多少予期しなかった事態が出てまいりました。一つは、外国系の有力な企業が、化粧品でございますが、出てまいりますことがきまりましたこと、それから輸入が、これも化粧品でございますが、自由化せられますこと、それから第三には、御承知のように化粧品小売り業界におきまして、自分たちの死活問題であるという声が強く出てまいりましたことがございまして、私どもといたしましては、零細なる小売り業者保護も明らかに一つ法益でございますので、それらの点を新しく勘案いたしまして十分慎重に検討をいたしてまいりたい、かように思いましたために、結論を出しますのが多少おくれて今日に至っておるわけでございます。
  5. 武部文

    武部委員 十一日の日に公取委員長新聞記者会見をされて、いま申し述べられたような趣旨のことを発表されておることを承知いたしております。少なくともこの再販新法問題が取り上げられた際に、またその論議過程を通じて、外国有力商品が入ってくるだろうということを私どもも予測をしておったのです。さらには、自由化の問題についてもそういう動きが政府部内にあった。第三点の小売り業界の死活問題だとおっしゃるけれども、少なくともこの再販新法が出る過程で、これはすでに一年も前から、こうした問題についての、たとえば新法が出た場合、あるいは再販の二十四条の二が消滅した場合、さらには洗い直しをして商品の大多数がなくなった場合、小売り業者にどういう影響が出、メーカーにどういう影響が出る、こういうことはいままでに当然わかっておったことだと思うのです。それがことさらいまの段階において、少なくとも一カ月の期間があればとおっしゃったけれども、すでに洗い直しというものは、去年のあの再販新法提出を見送られた以後、このような努力は当然公取内部で行なわれておったと私どもは想像しておったわけであります。突然このようなことが出た背後に私はいろいろなことを想像するわけです。それはあくまでも想像でありますが、ここでこの際お伺いしておきたいことは、委員長の言われたその新聞記者との発表の中で私ちょっと意外に思うのですが、産業構造審議会——通産大臣諮問機関であります産業構造審議会意見を徴するとか、はかるとか、新聞の書き方はまちまちでありますけれども、そういうことが出ておるわけです。私ちょっと意外に思うのでありまして、これは一体何のことなのか、そういうお考えがほんとうにあるのか、まずこれが一点。  それから第二の点は、業界紙でありますが、業界紙によると、自民党政調会からこの再販の規制に関して慎重を期するような申し入れがあった、したがって、自民党態度待ちだというようなことも業界紙にはっきり書いてある。少なくともいままでの論議過程では、このような政党の問題というのは一つも出ていなかった。これは与党といわず野党といわず、そうしたことについての発言は皆無であったわけであります。あくまでも公正取引委員会が、公正取引委員会としての立場から、そのような物懇提案を生かすためにそういう努力をしてこられたと私ども思っておったわけですが、これは業界紙ですから真偽のほどは不明でございますけれども、こういうことが次々と出ておる。このことについてひとつ公取委員長見解をお聞きしたい。
  6. 山田精一

    山田政府委員 最初産業構造審議会のことでございますが、私、新聞記者から質問を受けましたときにことばが足りなかったのでございまして、これは、産業構造審議会流通部会ですでに御意見が出ておるような点もあるのでということを申しましたのが、あたかも公正取引委員会産業構造審議会流通部会諮問をするというふうな誤解を受けましたが、これは全く私のことばの足りなかった点で、申しわけないと存じております。  そのほか、流通部門利害、特に零細な小売り業者利害に関することは、公正取引委員会が直接所管をいたしておることではございませんので、関係方面の御意見虚心たんかいに十分承りまして、その上で意思決定をいたしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  7. 武部文

    武部委員 十二日の発表によると、これは十一日の記者会見でありますが、特に化粧品業界を主にした内容発表になっておるようであります。私どもが当委員会でいろいろ問いただした中には、医家向け薬品の問題ですね、特に医薬品の問題について、これは千二、三百商品あるようですが、このことについてもたいへんこれは問題だ。公取の洗い直しの対象には、最初はむしろ化粧品よりも医家向け薬品をどうするとか、こういうようなことが具体的に出ておったことを私は指摘したことを覚えておるのでありますが、そのようなことには全然触れておられない。たまたま私どものところにも、確かに化粧品小売り業界のほうから、たいへんきびしく、自分たちの生存にこれは問題があるという大々的な反対運動があることも承知をしております。ところが、この医薬品のほうはうんともすんとも——これは私ども承知するところではない。同時に触れておられるのは、もう化粧品業界のことだけしか触れておられない。したがって、六品目、四千商品にのぼる再販指定商品全部について、いまおっしゃったような見解でおられるのかどうか。
  8. 山田精一

    山田政府委員 むろん医薬品につきましても、その流通部門に及ぼしますところの利害関係につきましては、関係方面の御意見を十分承りました上で決定いたしてまいりたい、かように考えております。
  9. 武部文

    武部委員 少なくともこの再販問題については、一年有余にわたっていろいろ論議をしてきたところでありまして、私どもの具体的な方針は、二十四条の二の削除にあることはいままで何回も述べてきたところでありまして、同時に、それが困難であれば——二十四条の二の削除、それが基本的な方針でありました。それができなければ、新法によって取り締まることはできないだろう。そういうところを経て今日公取が全商品について洗い直しすることによって、現行法でも十分効果をあげることができるというそのことばを信じて、少なくとも私ども公取の現状を見守ってきたわけであります。洗い直し、洗い直しとおっしゃるけれども、あまり洗ってばかりおって、すり切れてしまって、全然なくなってしまうじゃないか、こういうことすら考えられるのであります。したがって、少なくとも私が最初申し上げるように、外国輸入商品の問題とか自由化の問題とか、それから小売り業界リベート、マージンの問題、そうしたことについては、もうすでに私はわかっておったと思うのです。こういうことは一体いつごろまでに目安をつけるお考えなのか、ひとつその辺を——もうこ段階で当分とかできるだけ早くとかいうことは、私どもとしては承知できぬわけです。したがって、この際はっきりと、いまの段階でいつごろどういう形をとりたいと公取は思っておられるのか。いろいろ業界新聞なりその他で曲げて伝えられる、そういう傾向が非常に強いので、長い期間この委員会で問題になったことですから、この際はっきりとした公取態度をお示しいただきたい。
  10. 山田精一

    山田政府委員 私ども内部作業だけでございますと、大体の目安を申し上げることができるかと存じますのでございますが、直接私ども所管でないところの流通部門等につきましては、ただいま申し上げましたごとく、関係方面の御意見を十分拝聴いたしました上で決定をいたしたい、かように考えますので、ただいまの段階におきましてはできるだけ早くいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  11. 武部文

    武部委員 流通部門のことをおっしゃり、関係部門とおっしゃるけれども流通部門といい、関係方面というのはどこのことでしょうか。
  12. 山田精一

    山田政府委員 主として流通部門を担当されますところのお役所でございます。
  13. 武部文

    武部委員 具体的にはどこでしょう。
  14. 山田精一

    山田政府委員 通産省の御関係、たとえば中小企業庁でございますとか、医薬品でございますれば厚生省の御意見も十分承ってまいりたい、かように考えております。
  15. 武部文

    武部委員 このことであまり時間をとりたくないのですが、もうこのことは何べんも前から言っておるように、去年の新法提案が見送られた際に、厚生省がどういう態度をとった、通産省がどういう態度をとったということも、私ども指摘をしたはずであります。ですから、厚生省なり通産省というものが、この再販新法提出なり洗い直しについてどういう見解を持っておるかということは、もうわかっておったはずなんです。私どもさえわかっておるのですから、そういうことをいまの段階で、ことさらに厚生省なりあるいは通産省なりの意向を求めなければならなくなったという理由が、ちょっと私にはのみ込めないのでありますが、もう一ぺんひとつ。
  16. 山田精一

    山田政府委員 零細な小売り業者保護、これも明らかに二十四条の二の守っておりますところの法益一つであると心得ますので、その角度からの判定というものは、やはり直接所管をしておられますところの官庁の御意見虚心たんかいに承りました上できめてまいりたい、かように考えておるわけであります。
  17. 武部文

    武部委員 それではこれで終わりますが、私どもも、零細な小売り業者がこの再販の洗い直しによってつぶれてしまうとか、経営が成り立たないとか、そういうことに賛成をしておるのではないのであります。少なくとも、この再販行為によって、メーカーがばく大な利潤を得ておる、そうして値段をむしろこれによってつり上げておる。このことが物懇提案内容なんですよ、はっきり言って。物懇提案小売り業者のことを言っておるのじゃない。明らかにメーカーの不当な利潤追求の場にこれがなっておる、したがって、この再検討をする必要があるというのが、一昨年の物懇提案趣旨なんです。したがって、いまおっしゃっておることは、この物懇提案趣旨にはない。そのことによってそういう事態が起きる、その原因は一体どこにあるのか。そのことの探求をして、再販行為によって一体だれがもうけておるのか、だれが利潤を追求しておるのかという具体的内容というものを、公取自身がもっと明らかにして、そうしてその場から、零細企業についてはかくかくの——われわれとしては洗い直すことによってリベートとか、それから利潤追求が上のほうにあるのだということを、公取としてははっきりといままで私は示しておったと思うのです。それをことさらにいま、零細企業のことだけをお取り上げになる。メーカーのことについては一つも言ってない。むしろメーカー側はこのことについて沈黙しておるのです。はっきり言って。私は、そこに非常に具体的な複雑な内容を持っておると思うのです。したがって、きょうはこの再販の問題をこの委員会で取り上げることに実はなっておらないわけでありますが、先ほど申し上げるような産業構造審議会というようなことも見て非常に不可解だったので、冒頭に公取見解をただしたわけであります。いずれこれは、あらためてこの問題だけにしぼってひとつ論議をしてみたいと思いますから、きょうはこのことはこれで終わりたいと思います。  そこで、最初公取のほうに質問をいたしましたので、続いて、昨日砂田君のほうから、不当景品類不当表示防止法関係について、地方公共団体不当表示に関して処分請求が行なわれるように新たに法文を設けたらどうだ、こういう趣旨発言がありました。委員長は前向きに検討したい、こうおっしゃったわけです。このことは、国民生活審議会が四十一年十一月四日に総理大臣に対して答申をした文章に、はっきり記載されております。その文章によりますと、「不当景品類及び不当表示防止法監視機能地方においても強化するため、地方公共団体の長が公正取引委員会に対して、不当な景品類および表示について必要な処分を求めうるよう法令改正その他の措置を検討する必要がある。」こういう答申であります。きのうの答弁によりますと前向きに検討したいとおっしゃておるが、もうすでに四十一年十一月四日にこの答申が出ておるわけです。したがって、昨日提案をされました基本法精神から言うならば、この地方公共団体責務である、消費者保護基本法第三条、地方公共団体責務の中にこれは当然入るべきだと思うわけですが、そういう具体的に国民生活審議会答申もあることですから、法令改正をお考えになる気持ちはあるかないか、ここではっきりしていただきたい。
  18. 山田精一

    山田政府委員 昨日申し上げましたごとく、十分前向きに検討をいたしてまいりたいと考えておる次第でございます。  ただ、私ども役所は、まだ何と申しましても非常に手薄であるものでございますから、すぐにこの処分請求権に切りかえまして、その運用がはたして円滑にまいるかどうかという点を多少危惧いたしますので、その点、人員の拡充とにらみ合わせまして十分検討をいたしてまいりたいと考えます。それまでは、昨日も申し上げましたごとく、事実上地方公共団体との御連絡を密接にいたしまして、できるだけこのような案件を処理いたしてまいりたい、かように考えております。
  19. 武部文

    武部委員 わかりました、定員の関係等もございましょうから。ただ、ここでお聞きしたいことは、この答申精神に基づいて法の改正意思はある、そういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  20. 山田精一

    山田政府委員 方向はそちらのほうに前向きに検討をいたしてまいりたい、かように考えております。
  21. 武部文

    武部委員 次に、きのうも問題になりました公正競争規約の問題であります。  いまの答弁では、この義務づけるということが困難だ。しかし、現実には、正直者ばかを見ないというようなことになっておるというような、きのうもちょっと答弁があって私聞いておったのですが、少しわかりにくかったのであります。きょうは、私ちょっと資料をいただいておるのでありますが、例のかん詰め公正競争規約の案、あるいは施行規則に記載する事項等、非常に詳細なものが出ておるようであります。何回か、これこそ洗い直しをした上で、公正取引委員会はこれを公聴会にかけて施行する、実施するという方向のようでありまして、けっこうなことでございますが、いまのアウトサイダーの問題が出ておったのですが、この業者競争規約のこれに従うことも自由であるし、従わないことも自由であるというこのことについては、やはりちょっと危惧があるのです。したがって、正直者ばかを見ないということを、きのうちょっと私わかりにくかったので、この際もうちょっと明らかにしていただきたい。
  22. 山田精一

    山田政府委員 ただいま御指摘食品かん詰め表示につきましては、近々、来月の上旬ころになりますかと思いますが、公聴会を開きまして認定をいたしたいと考えておるわけでございます。  内容は、大体におきまして内容物を容易に判別できるような品名で示しますこと、これが一つでございます。それから二つには、使用いたしました原材料を多いもの順に示しますこと。それから三番目には、肉または魚と野菜の混合いたしました食品につきましては、混合割合を示すこと。四番目には、内容の量目を示すこと。かようなことを公正競争規約におきまして取りきめることになっておるわけでございます。アウトサイダーができるだけ出ませんで、全員がこれに加入してくれることを私どもといたしましては希望いたしておるのでございますが、もしもかりにアウトサイダーが出たといたしましても、それらのアウトサイダーが、ただいま申しましたような表示をいたしておらなかった場合、これをどういたすかということだろうと思いますが、そういうようなことが実際問題として提起されました場合におきまして、私どもがそれを不当な表示であるかどうかということを判断いたします場合の一つの大きな資料といたしまして、業界における大部分業者公正競争規約として表示をいたしております場合には、それが正常なる業界商慣習である、かように解釈をいたしてまいって自然であろうと思います。したがいまして、アウトサイダーであってその表示をいたさなかったもの、たとえばニューコンビーフということだけが書いてございまして、馬肉を使ったということの表示がないような場合におきましては、大部分業者ニューコンビーフというところに馬肉使用ということを併記いたしておりますのが正常な商慣習である場合においては、これを怠って表示をしなかった業者は正常な商慣習に反しまして、消費者に対しまして誤認をさせるような不当な表示をいたしたという不当性が出てまいる。かようなことで取り締まってまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  23. 武部文

    武部委員 公取見解はわかりましたが、これは公正競争規約不当景品類の十条ですね。このことについては、きのう砂田君の発言もあったように、私たち与党とは大体同じ意見を持っておるのです。したがって、公正競争規約というものは、当然消費者を守るためにはこの改正を義務づける、法改正というものが必要じゃないかという見解を持っておるわけですが、残念ながらこの点については公取意見と私どもの場合とは食い違うようであります。したがって、きょうは見解だけを求めておく程度にしておきたい。あとでまた公取の問題が出るかもしれませんので、もうちょっといていただきたいと思います。  次は、食品衛生法関係であります。  飛び飛びになって恐縮ですが、食品衛生法の十二条、「公衆衛生危害を及ぼす虞がある虚偽の標示」は禁止をしておる。それに違反した場合には六カ月の懲役、五千円以下の罰金、こういうのがありますね。問題になっておることは、公衆衛生、きのうも話があったとおり衛生面だけで危害を及ぼすということが出ておるわけであります。消費者保護立場から言うと、不正なまたは不当な表示、そうしたことを信用して買った者が損害を受けた場合に、賠償義務というものは全然ない。したがって、そういうものをこの食品衛生法の中に盛り込むというような考え方が厚生省の中にありますかどうか、それをちょっと聞いておきたいと思います。
  24. 野津聖

    野津説明員 お答えいたします。  御指摘ございましたように、現在の食品衛生法は、公衆衛生の見地から標示を義務づけているという形になっているわけでございます。そのために危害が及ぼされたという場合には、行政法的な立場から申しますと行政処分という形が一つございますし、また別の意味で、それはほかの法律で刑法あるいは民法によります損害賠償等の形で補償されるということになると考えております。
  25. 武部文

    武部委員 そうすると、民法等損害賠償請求があり得るから、いまのところ法令改正意思はない。こういう条文をたとえば入れる、不正または不当な表示を信用して損害を受けた者が、損害賠償請求法律の中に入れるという意思は、いまのところないと伺ってよろしいですか。
  26. 野津聖

    野津説明員 現在のところ、そういうふうに御了解いただいてけっこうでございます。
  27. 武部文

    武部委員 残留農薬、三月二十一日の食品衛生調査会答申でこのことがいろいろ取りざたをされておるわけでありまして、これは厚生大臣諮問機関でありますが、農薬安全許容量の問題が出ました。五農薬食品について、安全許容量というものをはっきりされたわけですね。そこで、この農薬問題はたいへん重要な問題でありまして、WHOでもこのことについて相当権威のある報告が出ておる。したがって、五農薬食品ということになったけれども、一体この食品衛生調査会では、幾らぐらいの品目について調査をした結果これだけが一応出たのか。その点をひとつ最初にお伺いしたい。
  28. 小高愛親

    小高説明員 お答えを申し上げます。  私どもでは、昭和三十九年から残留農薬実態調査というものを行なっております。これは全国の生産地あるいは市場におきまして、実際の農作物をとらえまして、その中の農薬残留量を分析試験しまして、その実態調査したわけであります。そして現在のところ、大体一品目につきまして二カ年これを行なうという計画のもとに続行しておりますが、現在まとまっておりますのが三十九年度、四十年度に行ないましたものでございます。これは当初の予算の関係上、ただいま御指摘の四品目の結果がまとまりまして、それに基づきまして食品衛生調査会諮問いたしまして、残留許容量決定をしていただいたわけでございます。
  29. 武部文

    武部委員 日本では、一体農薬使用量はどのくらいですか。
  30. 安尾俊

    ○安尾説明員 四十二年度で約六百億にのぼっております。
  31. 武部文

    武部委員 六百億、これは世界で一番か二番ぐらいの農薬使用量というふうに理解してよろしいですね。
  32. 安尾俊

    ○安尾説明員 総量から申しますと、アメリカが一番でございますが、単位面積当り使用量から申しますと、世界で一番でございます。
  33. 武部文

    武部委員 WHOは、昭和三十八年に、ある程度以上の農薬を体内に入れてはならぬという許容一日摂取量、そういうものを十五種類の農薬決定をしたはずですが、そうすると、この昭和三十八年のWHOの十五種類の農薬、これは今度日本のいまの食品衛生調査会が出した答申の五農薬の中に当然入っておりますね。
  34. 小高愛親

    小高説明員 一九六三年のFAO、WHO合同専門委員会の報告に入っている農薬もありますし、それからこの報告に入っていないものもございます。たとえば砒素、鉛のようなものにつきましてはこの報告には入っておりませんけれども、今回の許容量には入れております。
  35. 武部文

    武部委員 そういたしますと、昭和三十八年のWHOの十五種類、許容一日摂取量——この十五種類については、今後も政府としては検討する意思はおありでありますか。
  36. 小高愛親

    小高説明員 もちろんございます。
  37. 武部文

    武部委員 問題になるのは、リンゴ、ブドー、トマト、キュウリ、この四食品ですね。これに類するものはまだほかにあるわけですね。それを今回四食品だけに限ったということ、そのことがちょとわかりにくいのです。もう少し説明してください。
  38. 小高愛親

    小高説明員 残留農薬許容量を設定いたしますには、考え方として基本的なものは、御指摘のように、いわゆる安全量というものを越えないという考え方が一つございます。それからもう一つ、安全量を越えなくても、できるだけそういった残留の少ないものを認めていくというために、実態が安全量よりはるかに下であれば、その実態をもってとどめるという考え方がございます。したがいまして、現在調査をいたしますということは、実態調査いたしまして、それらが、現在のところいずれも安全量よりも下回っているものと考えられますが、それでもその実態に即して、安全量よりはるかに低いレベルで許容量を押えていきたい、こういうような考え方をしております。したがいまして、先ほどから言っております三十九年度からの実態調査というのがまとまりましたものが、この四品目でございます。この四品目につきまして許容量を設定いたしましたので、今後、その調査の結果がまとまり次第その品目を追加していく予定になっております。
  39. 武部文

    武部委員 先ほど農薬の単位面積当たりの使用量世界で一番だということの説明がございました。金額にして約六百億、これは調査してみますとどんどんふえておるのですね。ですから、日本の農薬使用量というものは、まだまだ拡大の一途をたどると思うのです。したがって、いま残留農薬というものは、食品の中においては、これはもう非常な重要問題だと思うのです。たまたま五農薬食品について許容量の決定をされたわけでありますが、今後この食品品目について、これは拡大をするという方針ですが、できるだけ急いでやらなければいかぬと思うのです。  そこで、私がお伺いしたいのは、このことについて厚生省はどういう方法で——これは告示ですか。厚生省は告示でこれをするわけですか。
  40. 小高愛親

    小高説明員 これは、告示に「食品、添加物等の規格基準」というものがございます。その中の食品の規格の一条項として規定していくわけでございます。
  41. 武部文

    武部委員 そうすると、この検査ですね。先ほど言うように、リンゴやトマトやキュウリやブドウ、これは抜き取り検査以外に方法はありませんね。そういたしますと、出回ってしまってから抜き取り検査をしてみて、初めて残留農薬がどうだこうだということになるのですね。ですから、これは非常に問題が多いと思うのです。私が聞きたいのは、厚生省はおそらくいまの告示でおやりになると思うのですが、これを抜き取り検査をする、そういう人は、地方においてはどういう人がやるのですか。
  42. 小高愛親

    小高説明員 地方におきましては、都道府県に食品衛生監視員、これは全国の約八百二十カ所の保健所に配置されております。これは、御存じのとおり、兼務を入れて約五千人でありますが、それが第一線において食品衛生を監視しております。この場合には、その食品衛生監視員が生産地あるいは市場におきまして収去いたしまして、その収去いたしたものを、都道府県にまた衛生研究所という施設がございます。そこで化学分析を行なう設備もございますし、人員もおりますので、その衛生研究所におきまして分析試験を行なうわけであります。
  43. 武部文

    武部委員 食品衛生監視員、保健所の配置人員は、正確には、定員からいうと五千九十七名という食品衛生監視員、これは各地の保健所の配置人員、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  44. 野津聖

    野津説明員 現在、国及び都道府県に配置されております食品衛生監視員の数は五千九十八名でございます。
  45. 武部文

    武部委員 この人がすべて残留農薬のことをやっているわけではないのです。ほかにもたくさん仕事があるわけでして、そういう面から見ると、いささか心もとない気がするわけであります。したがって、定員問題については、またあらためて私どもとしては取り上げなければならぬというふうに考えます。  この際、農林省にお尋ねをいたしますが、この農薬の安全使用基準をどういうふうにして末端まで周知をする考えか、それを聞かしてもらいたい。
  46. 安尾俊

    ○安尾説明員 今般厚生省でおきめになられました農薬残留許容量に対応いたしまして、農林省は農薬の安全使用基準というものを定め、去る三月三十日付で事務次官名で関係方面に通達するとともに、都道府県並びに関係団体を招集いたしまして、趣旨の徹底をはかっております。  それから、先生御指摘のように、この農薬の安全使用基準は、違反しないように農家に趣旨を徹底させることが必要でございまして、これにつきましては、都道府県におきまして各県の実態に即応した防除基準の作成あるいは農薬安全使用に関する資料の配布、また病害虫防除所というものが旧郡単位に一カ所ずつございますが、ここに一万八百名おります病害虫防除員など、末端の指導者を招集いたしまして講習会を開きまして、農家の農薬安全の適正使用を行なうように指導しております。  それからなお、指導の強化とともに末端の共同防除組織を育成いたしまして、防除の適正化をはかるとともに、農薬の安全使用基準を守らせるようにしていきたい、こういうふうに考えております。  なお、今回対象になりました農薬につきましては、その安全使用基準に即しました使用方法を製品に表示させて販売するように措置いたしております。
  47. 武部文

    武部委員 防除員の数は一万八百名ということをおっしゃったわけです。これではとてもほかの仕事から考えても足らないと思うのですが、農業改良普及員というものがおりますね。そういうものを使って、こうした問題についての具体的な実効をあげるというようなことはお考えになっていないのですか。
  48. 安尾俊

    ○安尾説明員 御指摘のように、もちろん改良普及員も防除指導に携わっておりますので、普及員も防除員とともにこの農薬安全使用の指導に当たっていただく予定でございます。
  49. 武部文

    武部委員 一万八百名の中には、農業改良普及員はもちろん入っておりませんね。
  50. 安尾俊

    ○安尾説明員 はい。
  51. 武部文

    武部委員 わかりました。  次に、抗生物質の問題でございます。これは非常に専門的なことで、私どもあまりわかりませんのでお聞きをいたしたいのでありますが、FDA、アメリカの食品医薬品局が出したアメリカでの抗生物質の使用を全面的に禁止するという提案、これが大々的に取り上げられたわけであります。それでいろいろ法律を見てみるわけですが、まずその前にお伺いをしたいのは、日本では大体この抗生物質がどの程度使われておるのか。たとえば飼料の中に占める割合とか、あるいは動物が注射をされるとか、そういうようなことが具体的な例でありますけれども、日本での使用は、アメリカの使用量と比べてどの程度のものなのか、これをひとつ最初にお伺いしたい。
  52. 安尾俊

    ○安尾説明員 担当の者が来ておりませんので、いま飼料に含まれます抗生物質の割合等についてはわかりかねますので、後ほど調べましてお答えいたします。
  53. 武部文

    武部委員 わかりました。それでは後ほどでけっこうです。  そこで、厚生省にお伺いをいたしたいのでありますが、食品衛生法食品成分規格ですね。食品には抗生物質を残留させてはならぬという規定、私だいぶさがしてみたのでありますが、見当たらぬのでありまして、ちょっと教えていただけませんか。
  54. 野津聖

    野津説明員 食品衛生法の第七条に基づきまして、「食品、添加物等の規格基準」というのがきまってございます。これは厚生省告示で出ているわけでございます。その告示の中に、「第一 食品」「A 食品一般の成分規格」となっておりまして、その中に2といたしまして「食品は、抗生物質を含有してはならない。」ということになっておるわけでございます。
  55. 武部文

    武部委員 厚生省としては、アメリカでこういうことが大々的に取り上げられて、たとえば抗生物質の入った飼料を食べた動物、それをまた食べれば人体に影響を与えるとか、いろいろなことをいわれておりますね。それから抗生物質を飼料にまぜれば発育が非常に早くなるので、こういうために抗生物質を非常に利用する業者が出てくる。こういうようなことがいわれておりますが、厚生省としては、いまアメリカでこういう問題になったことが、日本の中ではどのように私どもとしては理解をしていいか、これはアメリカだけのことであって日本には関係ない、そういうことは日本では起きていない、必要もない、こういうふうにお考えでしょうか。
  56. 神林三男

    ○神林説明員 お答えいたします。  日本の飼料の中に含まれるのは、農林省のほうでは十から二十PPMということをいわれております。一九六三年に発行されましたWHOの抗生物質の食品あるいはえさに関する公衆衛生の見地からの専門委員会発表によりますと、大体十あるいは二十PPMでございますと肉には残存しない。これが、一つオーダーが上がりまして二百PPMぐらいになると肉に残存してくるという発表が出ておりまして、日本では現在の使用量ならば肉には残存しないということが言えると思います。それからアメリカのほうでは、これもやはりWHO資料でございますが、成長促進剤としては大体最高五十PPM、それからこれはもちろんえさの中に入れるわけでございますが、治療用あるいは疾病予防用としては二百から千PPMぐらい入れているようでございます。したがって、日本と非常に実情が違いまして、今般問題になりましたのは、この治療用あるいは疾病予防用の二百から千PPMというのがおそらく問題になったのではないかと私たちは推測しておるわけでございますが、推測だけではどうにもなりませんから、至急この辺を正確に知るべく目下FDAに照会中でございます。  それからなお、日本のほうにおいても大体最高二十というような状況でございますが、公衆衛生の見地から危害防止のために、農林省の畜産局なんかとよく連絡をいたしまして措置いたしたい。なお、抗生物質全般につきましては、食品衛生調査会の中に抗生物質の特別部会がありますから、そういうところともよく連絡をいたしまして、そして態度決定していきたいと考えております。
  57. 武部文

    武部委員 はい、わかりました。  そこで次は、きのうも問題になったことですが、ちょっとはっきりしておきたいので聞くわけですが、ズルチンについてはWHOでは結論が出ていない、こういうことを言われましたですね。それからアメリカでは何か発ガンの危険性があるとかいうようなことで取りやめた、日本では禁止をしていない、しかし、現実にこの問題については禁止の方向検討したいというような意味の発言があったのですが、当委員会で実は一ぺんこのことが問題になったことがありましたね。前の運輸大臣がズルチン協会の顧問をしておるではないかというようなことまで出たのですよ。それで私ども初めて知ったわけですが、ズルチンが何で日本で禁止されないかというようなことに何かこれは結びつくようにも思ったけれども、それはそれで終わってしまったわけですが、ズルチンがなぜ日本で禁止されないか。ドイツとオーストリアはやっておるというお話でございましたが、きのうの砂田委員の御質問お答えになったのですが、ズルチンは禁止するという方向で御検討中というふうに理解してよろしいですか。
  58. 小高愛親

    小高説明員 はい、ただいま禁止の方向検討いたしております。
  59. 武部文

    武部委員 次に、食品添加物の関係ですが、添加物の標示のしかたが非常にわかりにくい。それから添加物についての検査、こうしたことについては、各地の保健所の配置人員、食品衛生監視員の方がおやりになると思うのですが、大体この食品添加物についての調査をする基準が政令で定めてあると思うのです。そういうことは大体どの程度おやりになっておりますか。
  60. 野津聖

    野津説明員 お答えいたします。  政令で食品衛生監視員が監視をいたします回数というのが、営業許可になります対象となっております施設について、一応回数がきめてあるわけでございます。したがいまして、現在営業許可の対象になっております約百二十八万件ございます施設につきましては、回数がきめられております。しかし、そのほかに営業許可を要しない、たとえば集団給食施設等があるわけでございますが、その分につきまして、やはりこれも百二十四万件ほどあるわけでございまして、合計しますと約二百五十三万件くらいの施設があるわけでございます。それに対しまして現在、法定監視回数で割り戻しますと、約二割程度しか監視が行なわれていないという現状があるわけでございます。そのほかに、業務といたしましては、一般的な食品に対します収去検査というのも実施いたしておるわけでございまして、非常に過重な仕事をやっておるというのが現状でございます。
  61. 武部文

    武部委員 お聞きいたしますと、いま問題になっているのは——食品添加物は非常に重要なんです。これについでの監視が、法定基準の大体二割程度しか実際やられておらない。これは非常に大事なことだと思うのです。私もいろいろ調べてみておるわけですが、この食品添加物の少なくとも法定で定められた程度の回数というものは、ぜひとも実施してもらわなければならぬ、こういう点を強く感じておるわけですが、これは定員との関係があることですから、先ほど申し上げたような点で将来の問題として私ども検討してみたいと思います。  そこでもう一つ、話は前後いたしますが、タール系の色素のこともきのう問題になっておりました。それで、まだ十四種類認めておるというお話がございましたが、これはどうでしょう。このタール糸の色素というものは、もう有毒として禁止されるべきものだというふうに私どもは理解をするわけですが、十四種類残っておるということはどういうことでしょうか。
  62. 小高愛親

    小高説明員 私どもも、大体仰せのような方向でタール色素は対処しておるわけでございます。そしてこのものにつきましては、安全性の基準というものを他の添加物よりもさらに一段ときびしくいたしまして、できるだけこの品目をしぼっていくという方針で臨んでおるわけであります。現在、世界じゅうのいずれかの国で使われておりますタール色素というものは七十一品目ございます。そして、それらのうちからそれぞれの国が、多いもので三十以上のものもございます。一番少ないのがアメリカの九品目でございますが、たとえばイギリス二十四品目、デンマークでは三十三品目、それから少ないところでフランスが十四品目、西ドイツが十二品目、それからEECでは共通の規定を持っておりますが、これが十六品目、かように諸外国においても現在なおかなり多種類の食用タール色素が残っておる現状でございます。わが国としても、今後もこの問題については、できるだけこれを減らしていくという方向検討を続けてまいりたい、かように考えております。
  63. 武部文

    武部委員 方向はわかりました。  そこで、今度は輸入食品監視のことについて、きのうも話がございましたので、私はもう少し具体的にお伺いをいたしたいのであります。  この輸入食品の中の有毒食品が相当出回っておる。それが輸入監視の目をかすめて国内に流れ込んで、摘発をされた例がある。そこで、きのうお話があった十の港に十九人の監視員がおるということで、港も全部調べてみたわけでありますが、この十の港で輸入食品の許可申請というのは、一年間に一体どのくらいでございますか。
  64. 野津聖

    野津説明員 大体年間で十二万件ほどございます。
  65. 武部文

    武部委員 その十二万件中、化学、細菌とかあるいは異物混入の検査とか、そういうようなものをおやりになった、十二万件中の件数というものはどのくらいになりましょうか、パーセンテージはどのくらいになりましょうか。
  66. 野津聖

    野津説明員 約七千件について調べまして、パーセンテージにいたしますと六%になっております。
  67. 武部文

    武部委員 十二万件中七千件だけを検査して、あとは書類検査でフリーパス、こういうことですか。
  68. 野津聖

    野津説明員 現在輸入されます食品につきましては、食品衛生法の十六条の二によりまして、輸入の際に届け出をするということが原則になっているわけでございます。その届け出の際に、いろいろ問題がありそうなもの、あるいは重点的にこちらから指示しておりますものにつきまして収去検査をやって、その結果違反品が発見されましたときには輸入を禁止、あるいは廃棄させるというふうな方法をとっているわけでございまして、一応書類的に、いままでの経験上だいじょうぶと思われるものにつきましては、これは書類で処理をしている。しかも届け出制というような制度があるわけでございますので、非常にむずかしい問題がそこに残ってくるということでございます。
  69. 武部文

    武部委員 この間の報道によりますと、たまたま横浜のことが出ておったのですが、横浜ではこの監視員が四人おりますね。そこで一年間に取り扱った許可申請の件数が約四万二千件、そのうちで九百十七件について検査をした、そのうちで五分の一が有害食品だった。この検査したパーセンテージは、横浜では二%にしかならないのです。四万二千件について九百十七件しかやっていないわけですからわずかに二%、あとは書面審査に基づいて大体フリーパスという形になるでしょう。これは一体人員が足りないためにこれしかできぬのか、人員さえあればもっともっとどんどんやる、もちろんそうだろうと思うのですが、一体十九人で十の港で年間十二万件にのぼる輸入食品監視というようなことは、実際厚生省としてどうお考えになっておりましょうか。
  70. 野津聖

    野津説明員 現在の体制といたしましては、人数も少ないというような体制もございますけれども、主として根っこにございますのは、現在の法制上、輸入をします際には許可を必要とするというふうなことではございませんで、輸入の際に届け出をするということに、現在の食品衛生法ではなっているわけでございます。したがいまして、これが届け出さえすればその中に違反品がなければ一応許可される、あるいは書面上整備されておれば許可されるというふうな状態になっておりますものですから、今後の方向といたしましては、ある一定の食品につきましては、あるいは厚生大臣の定める食品について、これは輸入の許可制をとるというふうなことを考えているわけでございます。
  71. 武部文

    武部委員 わかりました。許可制でなしに届け出制だ、したがってそういうことしかできぬ。  それでは、輸入食品にJASマークを適用するというようなことはお考えになりませんか。
  72. 内村良英

    ○内村説明員 御説明申し上げるまでもなく、JASは任意にこれをつけるということになっておりまして、JASに対する、そういう規格を受けることに対する需要があるかどうかということをまず検討しなければならないわけでございます。そこで、輸入食品の場合には、現在のところ彼らの持っておりますブランドを主として売ろうという動きがございまして、いまのところあまりJASマークをつけたいという需要はございません。しかしながら、輸入食品が必ずしも全部いい製品というわけではございませんので、今後消費者保護の観点から、輸入食品をJASマークに加えるということについても検討を加えてみたい、こう考えておるわけでございます。
  73. 武部文

    武部委員 さっきの厚生省答弁、もうちょっとはっきりしていただきたいのですが、輸入食品について、許可でなく届け出制、これは厚生大臣の指定するものについては許可ということも考えてみたい、検討してみたい、このように理解してよろしいですか。
  74. 野津聖

    野津説明員 将来の方向といたしまして、そういうふうな体制をとっていきたいと考えております。
  75. 武部文

    武部委員 標示関係について、かん詰めとかサラダ油の標示方法についてちょっとお伺いしたい。  前にもここでちょっと問題になったことがありまして、きのう砂田委員のほうからラーメンの日付の問題が出されたわけです。私もあれを見たわけですが、判で押してあります。そこで、これはいろいろ異論もあると思いますが、たとえばサラダ油の製造年月日に七七一八という番号がある。七七一八というのは、一九六七年七月十八日ということだそうでございますが、ちょっとこれではわからぬ。かん詰めの類に至っては、なおさらわからぬ。たとえばMOYLという記号がある。MOは、ミカンで、Yは全糖シロップつきで、Lは大粒、こういうことだそうです。それからその次には製造工場名が書いてあって、その下に五Y一〇と書いてあるが、五は一九六五年、Yが十一月、一〇が十日、それで一九六五年十一月十日につくったものだ、こういうことです。それでいろいろ調べてみると、これはハム、ソーセージも大体同じ方法をとっておりますが、これではちょっと見ても何のことやらわからぬと思うのです。大体かん詰め等の標示については、どういう方法をおとりになっておるのですか。
  76. 野津聖

    野津説明員 標示の基準が食品衛生法の第十一条に規定されておるわけでございまして、これも先ほど御指摘ございましたように、公衆衛生の見地から必要な場合には標示の基準を定めることができるということになっておるわけでございます。そうしまして、その中でかん詰め等に対する標示の規格がきめられておるわけでございまして、ある部分につきましては略語を認めるというふうな、特に製造年月日あるいは製造場所につきましては、現在まで略語を認めるというふうなことになっておるわけでございます。ただ、私ども現在検討しております方向といたしましては、やはり消費者の選択の自由を保護する、あるいは消費者保護というような見方から、これは読みやすい形での標示にすべきではないかということで現在検討はいたしておるわけでございます。
  77. 武部文

    武部委員 こうしたことから、すべてメーカー本位のもので、消費者のためのものじゃないということは、先ほど私が申し上げたことでわかると思うのです。MOYLなんて書いてあっても何のことかわからぬので、そういう意味からいくと、消費者が一目りょう然にわかるような、そういう符号ではない品名、あるいは製造年月日等についても——きのうのラーメンじゃありませんけれども、あれを見たって、何のことか私はわからぬと思うのです。Yと書いてありましたが、そういうこと、あるいは字の大きさですが、何か字を大きくすると面積をとってどうだとか、いろいろな事情があるというようなことを聞きました。  それからもう一つ、いまのは製造年月日とかあれですが、たとえばBFCというのは牛肉の味つけということ、それからHFCは馬肉の味つけ、BHFCは牛馬肉混合味つけ、ちょっと英語で書いても、私がいま言ったように、BFCといったってわからぬと思います。これが牛の肉だということはわからぬ。そういう点について、やはり製造過程とか、それから行政監視の点から見て識別可能、それから買う者が一目りょう然わかる、こういうものでなければ実際問題としては実用向きではないので、したがって、この点については、もう抜本的に変えるというお考えと解してよろしゅうございますか。
  78. 内村良英

    ○内村説明員 お答え申し上げます。  ただいまの点につきましては、品目ごとの実情に即しまして規格改正または行政指導上の問題として検討いたしまして、今後実施可能なものから逐次改善をはかるようにしたいと考えております。
  79. 武部文

    武部委員 公取はどうお考えですか。
  80. 山田精一

    山田政府委員 先ほど申し上げましたかん詰め公正競争規約におきましては、ただいま御指摘のございました馬肉を使用いたしましたものは、何ポイント以上の肉太の字で馬肉使用と書かなければならない。また牛肉を二割以上——馬肉が主体ではございますが、牛肉を二割以上使っておりますものについては、馬肉牛肉使用ということを表示させるように、これはまだ認定手続が済んでおりませんが、案といたしましては、さように考えております。
  81. 武部文

    武部委員 厚生、農林、公取意見はわかりましたが、大体消費者の側から言うと、これは非常に重要な問題でございます。私もサラダ油を見て、さっきの七七一八ということは、最初はどうしてもわからなかった。それからいろいろ聞いてみたら、六七年七月十八日ということがわかったわけです。そういう点から見て、十月がOで、十一月がYで、十二月がXというような符号のしかたではだめだと思います。したがって、これは公取、厚生あるいは農林といったところで十分御相談なさって、早急に消費者保護立場から統一ある方針を立てていただきたい、このように要望しておきたいと思います。  時間が参りましたので、私は次の機会に残ったものを譲りますが、もう一つ、せっかくおいでになりましたので、通産省に割賦販売についてお伺いしておきたいと思います。  前の国会でも割賦販売の問題について、三つか四つの点で問題があって流れた経過も聞いております。今度また割賦販売の改正法案が出たわけであります。  それで三十六年の五月三十日の法制定時に、「政府は、本法施行にあたり、一般小売商業者ならびに消費者の利益擁護の立場から、次の事項につき、特別の考慮をはらうべきである。」こういう附帯決議がなされまして、「割賦販売審議会の委員のなかに、一般小売商業者ならびに消費者の代表をそれぞれ任命すること。」こういうふうに三十六年五月三十日の法律制定時に附帯決議がされておりますが、割賦販売審議会の委員に消費者の代表が加わっておりましょうか。
  82. 谷村昭一

    ○谷村説明員 割賦販売審議会には消費者代表が二名入っております。消費科学連合会の代表と日本生活協同組合連合会の代表でございます。
  83. 武部文

    武部委員 いろいろ問題がこの割賦販売にはあるようでございますが、前の三点か四点の項目についての話し合いがほぼついてお出しになったということでありまして、その点では大体私どもも了解できるわけでありますが、お伺いしたいのは、割賦購入あっせん、第三十条、証票の譲渡禁止は、「業として、」を削除して、何人もできない旨に改める必要はないかという意見を持っておりますが、第三十条、証票の譲渡禁止を何人もできないというふうに変える必要はないか。
  84. 谷村昭一

    ○谷村説明員 いまの件につきましては、たまたま個人的に譲り受けるというようなケースも想定されておりますので、何人もという文句にはなっておりませんが、しかし、業としてこれを譲り受けるという者については禁止されておるわけでございます。
  85. 武部文

    武部委員 ですから、いまおっしゃったように、かってにできるということでは困りますから、何人もできないというふうにこれを改めたほうがいいのではないかという見解を持っているわけですが、これについて通産省はどうでしょうか。お考えがあるかないかだけ聞いておけばいいのです。
  86. 谷村昭一

    ○谷村説明員 現在のところでは、特にそういう考え方は持っておりません。法律的には現状で十分でなかろうかと考えておるわけでございます。
  87. 武部文

    武部委員 きょうは本会議関係で、次の委員会の時間の設定があるそうであります。割賦販売法は、消費護保護立場から言うとだいぶ問題点がございまして、一応法案がかかっておりますが、私どものほうとしては、これについていろいろたくさんの提案を持っております。したがって、かりに商工委員会のほうで法案が通るにいたしましても、消費者保護基本法との関係から、将来の法改正というようなこともぜひお願いをしたいということもありますが、先ほど申し上げたように時間の関係もありますので、次回十八日にひとつ譲らしていただきたいと思います。  以上で、私の質問を終わります。
  88. 八百板正

    ○八百板委員長 和田耕作君。
  89. 和田耕作

    ○和田委員 最初に経済企画庁の方にお伺いしたいと思いますが、昨日もちょっと申し上げたのですけれども、この基本法ができますといろいろな重要な仕事が経済企画庁にかかってくるわけです。国民生活局は、現在どういう編成でどういう仕事をしておられるか、ちょっとお伺いいたします。
  90. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 私どもの局は、ただいま局長一名、参事官二名ということで、三つの課から成り立っております。一つは国民生活課でございまして、これは主として——たとえば具体的な最近の仕事と申しますと、国民生活審議会から二十年後の国民生活のビジョンというような答申がございましたが、そういう意味で、やや長期的な生活のあり方ということを所管する課でございます。それから次に、消費行政課というのがございます。先ほど来消費者行政というのはどういう範囲を考えるかというお話がございましたが、これが主として消費者保護基本法に関連する仕事を担当する課になろうかと思います。それから第三に、物価政策課というのがございます。これは物価政策についての読んで字のとおりのような課でございます。
  91. 和田耕作

    ○和田委員 この基本法に、国が消費者保護に関してやるべき事項という項目があるのですけれども、この中に、最初から西までの危害の防止だとか、計量だとか、規格だとか、表示とかいう項目は、各省の関係法律を改正していくということになるわけですが、第五に価格の問題がありますね。公正かつ自由な競争を確保する、あるいは公共料金に対しての気がまえ、こういうような問題を考えました場合に、現在たとえば公共料金の問題で経済企画庁はどのような相談を受けておりますか。
  92. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 公共料金につきましては、それぞれ、たとえば米価につきましては米価審議会で云々とか、あるいは運賃につきましては運輸省の運輸審議会でどうこうとか、それぞれ各公共料金につきまして、国の約束と申しますか、法令に基づく手続があるわけでございます。ただ、それはそれで当然国全体の物価政策について考慮をされて、各省がそれぞれの約束に従っておきめになるわけでございますけれども、現在のような物価の状況では、やはりもう一度国全体の段階で見直す必要があるというようなことで、主たる公共料金につきましては、臨時物価対策閣僚協議会というところで付議をする。つまり各省が、法律で一省だけできめていいというものでありましても、そういう閣議決定で設けました臨時物価対策閣僚協議会にかけるという約束になっております。その事務と申しますか、庶務を経済企画庁がやる。元来経済企画庁の仕事のやり方は、各省間の総合調整ということでございますが、必ずしもそういう閣僚協議会云々の約束がなくても、私ども積極的にいろいろ意見を申し上げるということはあり得るわけでございますが、いまのような閣議決定でもって設けました閣僚協議会というものを通すという約束の上で、われわれがタッチをして相談にあずかっておるということでございます。
  93. 和田耕作

    ○和田委員 最近の物価は、各省の公共料金とそれに類似した料金の決定につきましては、理由はよくわかるけれども、そういう理由で上げられると、国民生活全体から見て不適当な問題になるというようなことばかりです。したがって、そういうふうなことで、いままで数年間の政府の公共料金の引き上げの問題については非常にお困りになっておると思う。上げたくないけれども上げなければしようがないということで、そういう問題について、こういう基本法ができる機会に、国全体からのチェック、つまり企画庁の全体的な国民的な立場からの発言を強めるための何らかの措置が必要だとは思わないですか。
  94. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 昨日も私どもの長官のほうから、あるいは有島先生の御質問に対するお答えであったかと思いますが、物価政策は、何と申しましても、国民経済のいわばある意味では象徴のようなものでございますし、うまくやっていくためには、あらゆる政策がそれを頭に置いてやらなければならないという性質のものでございますから、今回の消費者保護基本法に直に組み込まれてないというように私どもも承っておりますが、いずれにいたしましても、私どもがかなり強力に、物価政策について、いわばある特定の部門だけではなくて、もう少し総合的な観点から意見も言い、あるいはチェックもするということは、これは必要ではございますが、ただ、現在の状況を申し上げますと、必ずしも法律的にそういう制度がなくとも、いまのような物価の状況でございますと、各省ともやはり企画庁に相談をせざるを得ないというような状況になっております。もちろん内々は、相談をするのはたいへんいろいろの文句が出てどうもいやだという気持ちがあるかもわかりませんけれども、世の中がどうもそれを許さないというような状況でございますので、現在のやり方で特にわれわれの発言がしにくいとか、あるいはわれわれのいろいろな意見が各省に考慮されないということは、あまりないように感じております。われわれが意見を申しましても、なかなか採用してもらえないことも多々ございますけれども、これはむしろ、いわばそれぞれの事情なりあるいは観点の相違で、結果においてそういうことになる場合もございます。全体の客観的な状況からいいますと、関係各省もわれわれの意見について——あるいはわれわれのほうもかなり隔意なく意見を言っておるという状況でございます。
  95. 和田耕作

    ○和田委員 しかし、不当表示あるいは不良品によって消費者損害を受ける、そのことに対しての損害賠償の措置について何か新しい罰則とか、そういうものが必要じゃないかという武部委員からの質問があったのですが、目新しいそういうことをやるあれはないというお答えだったように思うのですけれども、これは私どもは、当然何らかの損害補償についての確実な一つの対策が必要だと思う。こういう問題を役所のほうで必要だと思うようになるのは、やはり消費者の声がもっと拡大していって、公正な声が組織化されなければならないということなんですね。だから、いまの関係法律の改正の問題でも、正しい消費者の世論が高まってこなければならないわけなんです。それがないと、議論をしても、いろいろ利害関係もあることですから、なかなか達成できないということになるわけです。したがって(6)の項目ですね、「消費者が自主性をもって健全な消費生活を」云云の、この自主的な消費者の運動を促進していく問題と、それから消費者が知識を持つ問題、この問題を強力に進めていくということが非常に重要なことになるわけです。実はこれなしにはほとんど重要な問題はやっていけないということになるわけなんですが、といって、これはたいへんな仕事になると思うのですけれども、現在の企画庁の消費者行政課でこの仕事がやっていけるかどうか、その問題についての所見を伺いたい。
  96. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 私も先ほど来の御質疑を承っておりまして、やはり役所のほうのいろいろな監視体制というものはもちろん充実をしていかなければならないわけでございますが、いま先生のおっしゃいましたように、やはりきわめて多種類の、無数といっていいような品物あるいはどんどん変わっていく商品、役務等に対して、ほんとうにそういう問題点を指摘し、問題を提起するというのは、やはり消費者の側からの行動というものがなければならないのだということを感じたわけでございます。そういう意味におきまして、確かにいま先生のおっしゃいましたように、消費者の方のいわば活動の促進、あるいは消費者の方々にいろいろな経路を通じて知識を提供するということは、非常に必要なわけでございます。したがいまして、私どもも、逆に申しますと、確かにおっしゃいますように、わが企画庁の消費者行政課だけでは、端的に申しまして、すべてそういう任務をまかしておいてくれというような陣容その他になっておりません。むしろいろいろな機会に関係各省にもそういう啓発活動をお願いをいたしますし、それから、もちろん一般的な報道関係のいろいろな御活動というものが当然なければならないわけでございます。ただ、私どもといたしまして、たとえば消費者モニターというようなものも、従来の通常の行政の概念からいたしますと、意識的に消費者のそういう文句を発掘してもらっては困るというような性質の活動、施策であろうかと思いますが、私どもとしては、そういうことでむしろ積極的に消費者の方々の、いわばもやもやと胸の中にあるものにできるだけ火をつけて、そしてわれわれのほうにはね返らしてもらいたい、そしてそれに対してそれぞれ役所のほうも対応していくというようなこともやっておるわけでございます。そういう意味で、確かに、お話がありましたように、私どものほうでそのような重要な、あるいは範囲の広い問題を全部片づけるというわけにはまいらないかと思いますが、これは私どものほうも関係各省といろいろ御相談をし、そういう線に沿っていきたいと思います。
  97. 和田耕作

    ○和田委員 特にこの問題は、関係各省と申しましても、性質からいって、やはり中心の企画庁のほうでほとんど責任を持ってやらなければできないようなことになる問題なんで、いま消費者行政課というのは、人数は何人くらいですか。
  98. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 十三名でございます。
  99. 和田耕作

    ○和田委員 それは働ける人ですか。
  100. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 課長を入れまして、役人が十三名でやっております。
  101. 和田耕作

    ○和田委員 一人前に働ける人が十三名おるというわけですね。
  102. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 企画庁の職員構成は、わりに一人前の人が集まっておる構成になっております。
  103. 和田耕作

    ○和田委員 つまり、この基本法は新しいたち法律であるから、行政の基本的な立場を変えていくというてこになる基本法ですね。したがって、そういうPRとか、あるいはこの趣旨を説明をしていく、国民の新しい消費者としての組織をしていく、たいへんな仕事だと思うのですね。そういう点に対してはあまりに手薄な感じ——それだけではなくて、またあとに苦情処理についての指導もあるだろうし、あるいは消費者組織の問題もあるだろうし、あるいは消費者保護会議の事務もある。ほかにたくさん仕事があるわけです。こういうような問題について、企画庁としてそういう問題の受け入れ態勢があるかどうか、非常に心もとない、失礼ですが、私どもそういう感じがするのです。したがって、そういうことについて、企画庁のそういうふうな陣容をもっと拡大していく、あるいは他のところを削ってもそういうところを拡大していくということが必要じゃないかと思うのですが、その点どうお考えになりますか。
  104. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 御承知のように、企画庁の仕事のやり方は、具体的な法律をあまりかかえておりません。関係各省を、連絡し、あるいは意見を言いながらそれぞれ動かしていくという仕事の性質、仕事のやり方になっておるわけでございます。確かに、この基本法そのものは、私どもが最も大きく受け持つ役所でございますから、この精神に基づいて絶えず関係各省の行政と連絡をしていくということでございますから、必ずしもいわば一つ法律を施行するためにこういう人数が要るというふうには、やや具体的な法律を施行するのと違いまして、ならないかと思いますが、私どものほうもなお、新しくこういう法律ができまして、昨日も長官が意識革命ということを言っておりましたが、単に意識だけの問題ではなくて、やはり具体的な行動もそれ相当に重加されてくるというふうには考えておりますので、できるだけ現有勢力をフルに使いますとともに、今後仕事の進展に応じて、いま御指摘のような点も検討はいたしたいと思っております。
  105. 和田耕作

    ○和田委員 いまの問題だけでなくて、その次の問題として、現在地方公共団体にある消費者行政についての事務は、きわめてばらばらなわけですね。比較的進んでおるところもあるし、ほとんど緒についてないところもある。こういう基本法ができますと、各府県あるいは市の消費者行政の体制というものが、大体同じような歩調でずっと上がってこなければならないというような場合に、そういう仕事をやる企画庁の仕事はたいへんだと思うのです。つまり中央各官庁との連絡の仕事だけでなくて、地方の自治体との連絡の仕事もある。こういう新しい仕事を組織していく仕事の幅なり内容なりというものを、もっと深刻に受け取る必要があるのじゃないかということですね。どうせ法律ができても、まあまあという気持じゃ、これはいままでの基本法と同じように絶対だめなんです。そうでなくて、この法律をやるためには、各省間の連絡もあり、推進もあると同時に、もっと大きな事務的な仕事、各ばらばらの地方の行政機関との連絡、調整、指導という問題、これはたいへんな仕事だと思うのですよ。つまりそういうような問題をもっと真剣に行政の組織として受けとめていくということが必要じゃないかと思うのです。ぜひともひとつその問題をお考えいただきたいと思うのです。必要があれば私はこの委員会でも——これはしょっちゅう話題になっていることですけれども、企画庁自体がその気にならないと、この委員会で何ぼやれやれと言ったって何ということはないわけですから、ひとつこの問題を真剣に、拡充についてお考えいただきたいと思うわけです。  企画庁の組織の問題はまだあるのですけれども、時間がございませんので、他の機会に譲りたいと思います。  次に、厚生省の生活協同組合の関係を御質問いたしたいと思います。  いまも触れましたけれども、やはり日本における消費者行政がようやく国に対してやってもらうというような、あるいはやるべきだという形で問題が提起されてきておるのですけれども、ほんとう言ったらこれは消費者自体の問題なんですね。消費者の自主的な一つの運動があって声が強力になって、これに国がついていかざるを得ない。これが民主的な先進国の歩んでいる道なんです。そういうふうな面から見ますると、いろいろと消費者の組織はありますけれども、やはり基本組織というものは、消費者みずからが自分たちの生活を守っていくための生活協同組合的な動きが強力な刺激にならないと、商取引機構の改善、合理化の問題も刺激にならないし、いろいろな価格の問題でも公正な運動が起こってこないということじゃないかと思うわけです。したがって、生活協同組合というものは、民主的な先進国においては例外なしに強力なものがあるのです。イギリスでも北欧諸国でもそうです。しかし、日本にはないのですね。極端にいうと、ないと言ってもいいくらいの弱さなんだ。厚生省ではそういう課を設けてやっておられるようですけれども、なぜ日本ではこの運動がいままでのように発展しないのか、このことについてお聞かせいただきたいと思います。
  106. 今村譲

    ○今村政府委員 お答え申し上げます。  一番根本問題のお尋ねでございますが、実はいまお話に出ましたように、昭和二十九年——だいぶ古いのですけれども、私、スカンジナビアを生協の問題で半年ずっと回ってきたわけですが、つくづく思いましたことは、三点ぐらいあると思います。  ということは、非常に言いにくいことでありますけれども、日本では、向こうの人方と違って、生活合理化でぎりぎり一ぱい利用していくという気持ちが、わりに薄いのじゃないかというのが実感でございました。要するに、変な話でありますが、宵越しの金は持たぬとか、あるいはムード派でその場で物を買ってしまうとか、あるいは義理人情でその近所の知ったおばさんから買ってしまうとか、そういう非常にムード的なものが一つ。それからその底には、やはり経済生活というものに対する合理的な考察が、向こうの人方より非常に少ないのじゃないかというふうな気がするわけです。これはイギリスのCWSにしても、フィンランドのSOKとかOTKとか、ものすごい大きな、日本でいえば三井、三菱に匹敵するのではないかと思われるくらいの、生産から流通まで持った組織があるわけです。その点が一つ。  第二の点は、日本の過剰人口というのをつくづく考えました。フィンランドは、日本国土の八割ぐらいのところに人口四百五十万ぐらいおる。したがって、流通過程に人間をさくよりも、いかにして森林労働者とか労働者を獲得するかということの問題、したがって、消費流通過程において人なんかさかない。村なら村で日をきめてみんな注文して町に買いにいく。そういうふうな、必然的に、やむにやまれない過程において共同的なものをしいられておるというかっこうが一つあると思います。その点、日本におきましては、人口過剰という問題もあると思いますが、中小企業が非常に多い。したがって、その中小企業が、それぞれに全部必死に自由競争というかっこうでありますだけにマージンが薄いということで、その辺が生活協同組合も一つの新しい方式として中小企業と戦って、それよりももっと経済的に国民が得をする経済合理性があるのだというところにいくまでには、なかなかむずかしい。そういうふうな中小企業との競合問題が一つある。  第三点におきましては、これまたこんなことを言っていいのかどうかわかりませんが、この法ができますとき、賀川先生などがおられました。結局、指導者というものが生協のあり方について十分理解して、それを全国民にPRしていくという、向こうでいえばキリスト教みたいな、一つのコミュニティーの全体の生活を守ろうというみんなの気持ち、それが自然に入ってくるわけですが、日本の場合にはそれがなくて、ハイカラな、外国からの輸入品みたいなかっこうで受け取られる傾向が相当あるのではないか。たとえば賀川先生の、例の灘の前身でありますような市街地購買組合というふうなもののときには、それこそ信念をかけてやった。それは、ぎりぎり、経済合理性というものを組合員に還元するのだ、そういう思想があったと思うのです。その辺が、やはり、たくさんおられますけれども、まだ指導的な立場にある人が非常に数が少ない。したがって、これはいいものだ、ひとつやってみようという程度で始めて、なかなか経済的にうまくいかない。それではやめたと簡単につぶしてしまうという組合がいままでたくさんございました。その辺の指導というふうな問題あるいは中小企業の問題、あるいは国民全体がというふうな問題、その辺の三点に尽きるのではないかという気がいたします。
  107. 和田耕作

    ○和田委員 ごもっともなんです。つまり、いまの三点とも、現在の日本では急速に改革を要求されておる。もっと科学的な生活をしなければならないというのは、非常にテンポの早い技術革新によって、いやおうなしに迫られておる問題ですね。人手が余っているという問題だって、最近ではもう人手が不足しているというのは今後ますますふえる。その問題を考えましても、つまり生活協同組合、ああいう形そのままのものじゃないのです。日本には中小企業、零細な商店街があるのですから、そことの関係で二つとも組織された形のタイアップの姿が私は考えられるのですが、いずれにしても、日本においても生活協同組合をつくらなければならない、特に物価の問題を考えましても、消費者がある程度組織されて消費者としてのデモンストレーションのできるのはそれ以外にないし、また、そういう力なしには、商取引機構の問題でも物価の問題でも、強力に推進していく足場がないわけですね。いま物価問題を解決するためにも、こういう強力な国民の消費者としての組織化というものが、必要な時期になっているわけですね。こういうふうなことですから、この基本法というものは、つまり民主的なそういうものができることを予想しておるという、これははっきりそういう気持ちがあると思うのですね。したがって、いま申されたいろいろな困難な原因はわかりますけれども、私は、一つの重要な要素が落とされておるのは、この問題は品物を扱う、あるいは金を扱うことですから、信用のある機関でないとなかなか預ける気持ちにならない、組合員になる気持ちにならないということだろうと思うのですね。昭和初年に各地域で生活協同組合が起こってきたときにも軒並みつぶれていったのは、やっている人が、これは指導者の問題ではありますけれども、使い込んでしまうとかいうことで信用がなくなって、自然崩壊をしてしまうという結果が多いですね。この問題を考えますと、いまの生活協同組合の法律を拝見しますと、せんだっていろいろ灘の現在やっておる数少ない人たちの話を聞きましても、いま県単位ですね、県を越えちゃいけないという規定がありますね。あの法律の規定は、当然変えなければならぬじゃないかという感じがするのです。たとえば神戸の灘であれば、大阪とか京都付近へ当然伸びてもいいし、またそういう必要があれば、そういうふうなものが全国的に足を伸ばしていってもいいじゃないか。ヨーロッパのそういう発達した協同組合というものは、何も地区的な単位もないですね。全国的な強力なものを持っている。しかもこれは商品の扱いだけではなくて、保険もやっているし、銀行のようなこともやっているし、あるいはメーカーのようなこともやっているというふうなことで、強力なものになっているわけですね。したがって、現在の協同組合法の中には地域的な限定、これは各地域の自主性というものを地方自治の関係で重んずるということはわかりますけれども、そういう問題を越えて、消費者としての組織の急速な発展が必要な現段階においては、この生活協同組合のあの項目だけは撤廃したらどうか。地域を越えてやらす、信用のあるものはどこへ出張っていってもできるということですね。まあどこまでもいくということはないでしょう。関西地方とか、あるいは関東、東京なら神奈川とか千葉とか埼玉、あの付近とか名古屋付近だとか、こういうようなことになると思いますけれども、こういうふうなことのもっと自由な活動ができるような、信用のある組織が伸びられるような、そういう法改正をする必要が私はあると思うのですが、どうなんですか。
  108. 今村譲

    ○今村政府委員 お答え申し上げます。  いまおっしゃいますように、灘の実況を田中さんと涌井さんとよく議論したことがございます。ただ、いまの法律では、職域によるものは全国的に伸びていくものがありますが、区域は都道府県を単位とするというふうにはっきり書いてあります。あの当時、終戦直後の状況ではやはり生活と生活の結びつきだ、地域共同体だという思想で、せいぜい市あるいは町村、あるいは伸びても県という単位が一つの限界であろう、それ以上になりますと、一つの、いまおっしゃったように資本、信用というのにまかせてということでは、その地域に密着した生活の合理化というものはむずかしいのじゃないか、こういうふうな議論が大体まとまりまして、そういうふうな条文になったと思うのであります。したがって、いまおっしゃいますように地域地域のものを尊重して、大阪は大阪で、京都は京都で、それぞれのものを伸ばしていきたいという気持ちはあっただろうと思います。ただ、最近のように、いわゆる東京の首都圏とか、それから近畿圏とか、それから交通事情も全然違ってくる、しかも大都市集中というのは非常なテンポだということになりますと、この問題も再検討せなければいかぬのじゃないかという気はいたしております。ただ、問題は、そのほかにいろいろな行政をひっくるめまして、知事の認可権とか、何とか認可権といったような、一般的な、いわゆる大都市集中に基づくものとのかみ合いもありますので、実はお話に出ました灘生協が大阪へ来るというのも現状ではどうにもならぬ、やはりその地域、灘の一連のものとしてそれぞれの生協をつくったらどうだろうか、それは精神的にはぴったり底のほうでは一本になっているというかっこうで、というふうな話を実は申し上げたことがございます。ただ、いまお話しになりましたように、やはり交通事情とか人口移動とか、全部状況が変わってきている最中でありますので、ひとつこの問題は十分に検討してみたいと思います。やはりその地域地域のものは、なるべく育てていきたいという気持ちも十分持っております。
  109. 和田耕作

    ○和田委員 いろいろ理想論がありますけれども、実際いままでやってみて発展してない、できてもつぶれておるというこの事実がやはり物語っているわけであって、地方地方の自主性というものは大事だし、運用としては非常に重要ですから、もっと広域化して考えてみる必要がある。また、いまの職域関係の生協でも、そういうものが広くなってきますと地域との連絡もとりやすくなってくる。もともと職域のものが地域に影響を与えて出てくるものが多いですから、あの地域の生協にしましても、職域であって地域へ広がってくるというのが多いわけですから、その二つが関連する場合にもそういう問題も考えてみる。何しろこれは信用のあるものでないと預けはしませんよ、お金やいろいろなものを。そういうことを特に感じますので、ぜひひとつ御検討いただきたいと思うのです。  それから、これはあけすけに申し上げて、小売り商の問題といろいろ対抗関係に立つ要素があるのです。この問題は非常にむずかしい問題だと思うのです。  この問題を解決するにはいろいろなアイデアがあるのじゃないか、たとえば小売り商のいろいろな連合した近代化組織と地域のそういう組合との、そういうものとしての接触のしかたというものはあるのじゃないか。組合自身が品物を扱うのではなくても、近代化されてきた小売り商の連合に品物を扱わす形で、二つを調整していく方法もあるのじゃないかと思うんですね。これはいままでの純粋な生活協同組合というものじゃないのですけれども、そういうものにあまりこだわる必要はないと思うのです。ただ必要なことは、国民が消費者として組織される、そして重要なイニシアチブを持って合理的な配給問題に発言をする、国のあれに発言をするということなのですから、あまり従来の生活協同組合の原形にとらわれなくてもいいと思うのです。特に小売り商の問題等はそういうことを考えてみる必要があると思うのですけれども、いずれにしても、そういうふうな少し従来のワクを越えて新しい段階消費者の基本組織としてひとつお考え願いたい、法律改正の場合もそういう点を考慮していただきたいと思うのです。  次に、企画庁とそれから公取の方に、これは私自身も自信があって申し上げているのじゃないのですけれども、この基本法にもありますが、公正かつ自由な競争の条件という項目がございます。物懇提案でも自由な競争という問題を非常に強調しておられるし、あるいは国内と国際価格とを同じレベルへ持っていきたいというような考え方もある。自由な一つの価格形成というものを強調されておる、これが現在の日本の価格政策の根本になっておるわけですね。この問題と、しかし現実におそらく日本の価格の場から言いますと、半分以上の影響力を持っているのは公共料金とか、あるいは政府の許可あるいは認可によって価格をきめていく、重要なこういうふうなことをきめているわけですね。これが価格問題に影響している要素というのは非常に大きい、半分以上だと私は思うのですけれども、自由な競争とは別にそういうものがあるわけですね。許可あるいは認可によって価格をきめていく。この二つの問題が、現在どのようにバランスがとられておるのかということ、これは非常に理論的な問題になって恐縮なんですけれども、こういう問題を、価格を扱う方としてどういうふうにお考えになっておられるのかということですね。
  110. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 いわばたいへん基本的な、あるいはむずかしい問題でございまして、必ずしもいますぐ的確なお答えができないと思います。ただ、国民生活の中で、公共料金とその他の商品、役務の価格とどちらがどういうふうに多いかといえば、やはり公共料金以外のものが量的には多いと思います。あるいは取引の回数からいっても多いと思います。ただ、公共料金は、いわば政府の政策の表現になりますから、そういう意味で、政策的な影響としては公共料金が非常に大きいのでございます。そこで、現在の物価政策の一番問題は何かというようなところから考えていくといたしますと、私ども考え方は、いまお話しになりましたように、自由な競争市場というものがあらゆる部門でつくられていく。特に大企業なりそういうものの製品に対して、そういうふうな状況が望ましいということが第一点で、それに対して、元来非常に多数の零細な生産者なり販売業者が扱っておりますものは、通常の場合は自由競争に近い状況でございますが、制度的にはいろいろな制限がありまして、必ずしも自由競争になっておりませんが、やはりこの点につきましても、他のものとのかね合いで、できるだけ自由競争が望ましいというのが基本的な態度でございます。  そこで、しからば公共料金は自由競争の中でどういうことであるかという点から言いますならば、公共料金は、自由競争が自然的にあるいは社会的にできない企業について、いわば自由競争にかわって自由競争が行なわれるような状況を想定して政府がきめるということでございますが、そういう意味では、やはり公共料金も自由競争の状態を頭に置いてきめていくのが一つの行き方である。ただ、公共料金の場合は、さらにその他のいろんな政策的な配慮が入りますから、一義的に、いま申し上げましたようなことだけではいかないと思うのです。考え方の一つの基礎としては、絶えず自由競争というものを頭に置きながら、自由な競争ありせばどういう姿になるだろうというような形で考えていかなければいけないのじゃないかというふうにも思うわけでございます。どうも問題に対してあまり的確なお答えができてないと思いますが、今後いろいろ御指摘がありましたら、さらに勉強していきたいと思います。
  111. 山田精一

    山田政府委員 ただいま御指摘の問題は、理論的にも非常にむずかしい問題があると存じます。私ども独禁法を運用いたしてまいりますものの立場から申しますれば、むろん、公正にして自由な競争によって、マーケットメカニズムを通じまして価格が形成せられていくことをできるだけ守ってまいりたい、こういう気持ちを強く持っておるわけでございます。しかし、ただいま国民生活局長からお話がございましたように、私の考えでは、大きく申しまして二つの例外があるかと存じます。  一つの例外は、ただいま御指摘のございました、法律によりあるいは国または地方公共団体意思によって価格が形成せられる場合でございます。これは、ただいまお話のございましたように、公正にして自由な競争にまかせますことが取引の性質上むずかしいものであるか、あるいはかりに可能といたしましても、それにまかせるよりもさらに次元の高い国益があって規制をしなければならない、この場合だけに限定していただきたいものと、私どもといたしましては考えておるわけでございます。  それから第二の例外といたしましては、御承知のように、独禁法の適用除外になっております法律がたくさん、たしか四十でございますかあるわけでございまして、たとえば中小企業等の一部におきまして、価格の形成をひとり競争原理によらないできめ得る分野がございます。これはおそらく、そういう業界の利益を守りますことが、さらに大きな国益である場合に行なわれておるものと思うのでございまして、直接所管をしておられます役所から私どもは御協議を受けまして、そのつど御相談に応じておるわけでございますが、これもできるだけ少ない、必要最小限度にとどめていただきたいという気持ちを強く持っておるわけでございます。現在適用除外を認めております法律の数が少し多いような気持ちもいたしますので、十分検討いたしてまいりたいと思います。  それから最後に申し上げたいことは、公正にして自由な競争にまかせて価格形成が行なわれておるたてまえの領域において、どうも競争が何らかの事情によって十分行なわれておらない分野もあるのではないか。これがおそらく、いま外国においても大きな問題になっております管理価格の問題であろうかと存じますが、これにつきましては、私ども役所といたしましては、十分調査研究をいたしましてこれに対処いたしてまいりまして、競争原理を十二分に発揮をさせてまいりたい、かような考えでおります。
  112. 和田耕作

    ○和田委員 いま最後に申された問題が特に重要だと私どもは思いますけれども、公正な自由競争という問題は、政府は価格政策として言っておるし、基本法でも公正な自由な条件というものは非常に重視しているわけです。ただ、この問題だけを取り上げてまいりますと、そうしてこの問題プラスアルファという形で公共的な料金のきめ方という問題を考えますと、非常に不当な状態が出てくるんじゃないか。いまおっしゃった寡占価格の問題もそうですけれども、あるいは先ほど武部委員が取り上げられた再販制度の問題でも、現在山田公取委員長はたいへん困っておられる、困っておられることは言外によくわかります。これは公然とした再販品目のほかに、やみ再販という問題がありますね。もっと幅広く、深く流れるやみ再販、つまり自由な競争にまかすという形で、実際はやみ再販になっておるということですね。それが自由な競争条件にまかしておるのだから政府は責任がないんだ、目に余るものはそれはやるでしょうけれども、そういうふうな意味の責任のがれになる可能性が非常に多いですね。自由な条件をつくるのが一番いいんだ、したがって政府はそうするんだ。しかし、実際は自由な取引条件なんか、どこにもないですね。寡占価格があり、あるいはやみ再販がある、その他いろいろなそういう類似行為がたくさんある。しかし、自由だから何も責任がないのだ、こういうことですね。たとえば去年の牛乳の問題でもそれと似た問題がある。農林省は、自由な価格形成にまかしたほうがいいという判断で行政指導をはずした。ところが、まかした結果は、牛乳価格が下がる気配は一つもない。実際牛乳の販売店については、大メーカーの息のかかった小売り業者の系列がずっと入ってきておる。いろいろな問題があるわけですね。あるいは不況カルテル、いろいろな形で例外行為が出てくる。  こういうように考えますと、自由な価格形成というものを限界なしに、この原則に従って価格の指導をしていくのだということになると、実際において行政の責任のがれになる可能性が出てくる。この基本法にしましても、確かに、公正な自由な価格形成の状況をつくり上げていく基本として重要だと思います。思いますけれども、今度それと並んで、同時に、そういうふうなもとの組織なり価格決定の裏にメスを入れていかなければならない。ところが、再販の問題というものは、先ほどの小売り商だけに被害が及ぶようなかっこうでなく、メーカー段階で何らかの形で国が責任をとって、コストに見合った公正な価格をつくることについてのある種の指導というものがあってしかるべきなんです。そういうことをおやりにならないで、再販をやるとかやらぬとかいうふうな問題だけに目をあれしてしまうというところに焦点があるのじゃないか。いずれにしても、そういう消費者保護基本法という問題のところで、消費者自体の立場から価格の問題も、流通機構の問題も、あるいは安全、すべての商品の公正な取引という問題をながめてみますと、違った目で見る必要があるのではないか。特に再販なんかの問題を考えますと、非常にむずかしい問題です。実際の問題として、先ほど公取委員長がおっしゃった三つほどの条件、これは武部さんが質問するのはあたりまえだと思いますね。あたりまえだけれども、現実に小売り商のあれがある。これももっともな点がある。それを対策もなしにはずしてどうなるのだというもっともな御意見、こういうふうになるわけで、結局のところは、メーカーのところでもっと合理的なチェックができないかどうか、そういう問題はどういうふうにお考えなんでしょうか。
  113. 山田精一

    山田政府委員 私どもは、公正にして自由な競争によって価格が形成されることを目途といたしまして努力しておりますが、ただ、それは決して口頭禅に終わることなく、やはり経済の基盤においてそういうような競争条件が確保されることを常に見守った上で、自由な価格形成というものを維持するようにいたしていかなければならない、かように考えております。
  114. 和田耕作

    ○和田委員 そういう条件ができないという見通しに立てばどうなんですか。現実において寡占その他の問題でできているかどうか。大部分の問題で——あるいはやみ再販の問題でも……。
  115. 山田精一

    山田政府委員 やみ再販の場合には、私どもといたしましてはこれを厳重に規制してまいりたいと考えております。  それから競争条件が実際上むずかしいというような業界は、私ども十分調査をいたしまして、関係の官庁とも十分お打ち合わせをいたしまして、何らかの方法で競争条件が確保できるように十分努力をいたしてまいりたい、かように考えております。
  116. 八百板正

    ○八百板委員長 関連質問の申し出がありますので、これを許します。小笠公韶君
  117. 小笠公韶

    ○小笠委員 ちょうど最も重要なところへ来たようですが、経済の動向、企業の動向を見ますと、近代工業というものは順次寡占体制になっていく、流通部門におきましても順次大型化するという形、それは結局そういう寡占への進行過程、そういうような場合に管理価格が出てくるという問題。そこで、管理価格の場合、御調査して何らかの手を打つという御答弁だけれども、現行独占禁止法で可能かどうかという法律論がある。こういう時代の変化に伴って、独占禁止法をその意味において見直すという考え方があるかどうか、それだけ一点聞いておきたいと思います。
  118. 山田精一

    山田政府委員 ただいま寡占の御指摘がございましたが、わが国の現状を見ておりますと、競争的の寡占と協調的の寡占とがあるようでございます。競争的寡占も相当たくさんあるようでございまして、この分野におきましては、やはり競争原理による価格形成というものも可能であろうと考えております。協調的寡占になりました場合にいかがいたすかということでございますが、これは非常にむずかしい問題でございまして、今後私ども検討していかなければならない一番大きな課題であろうかと思います。管理価格という御指摘がございましたが、管理価格にも直ちに現在の独禁法に触れます管理価格と、それから触れがたい、触れない管理価格とがございます。今後経済の動向その他を十分よく検討いたしまして、どうしてもこれを規制する必要があります場合には法律改正検討いたしてまいりたい、かように存じております。
  119. 小笠公韶

    ○小笠委員 お答え、それでけっこうなんですが、ただ日本経済の動向を考えますと、特に技術発展の関係から考えますと、そういう最も大事なところがいまの法制でカバーし得ないのであります。ドイツの独占禁止法、いわゆるカルテルのあれは五十何条あるような考え方、いわゆる消費者なり国民大衆を守っていくという形においてもう一ぺん振り返る段階に来ておるのではないかという感じをしみじみ持つのです。そういう意味で、現行の独占禁止法を運用するだけで十分だというお考えが、ともかく少し支配的になり過ぎておると思う。もう少し考え直してみる、再検討の余地があるのではないか、そこに初めて国民的指導の立場がとれるのである、こういう感じを禁じ得ないものですから、ぜひひとつお願い申し上げたいと思います。
  120. 和田耕作

    ○和田委員 いまの御意見、非常に重要な意見だと思いますけれども、とにかく価格の問題についても、そして価格の裏になっておる経済組織の動向の問題についても、ちょうど消費者保護基本法ができたのを機会にして、いままでの通説に見えるような考え方を一ぺん白紙にして考え直してみる必要があるのではないか、そういうふうなデータ、重要な項目がたくさん出てきておるのではないかと私は思うのです。私どももこういうものをつくる責任がございますから、ひとつ今後とも大いに要望していきたいと思います。  なお、法律の問題で二、三点ありますけれども、時間がありませんから他の機会に譲りたいと思います。どうもありがとうございました。
  121. 八百板正

    ○八百板委員長 次回は明後十八日、木曜日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十八分散会