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和田委員 きょう、物価問題の特別
委員会に
消費者保護基本法が初めて正式に上提されたわけでございます。本来、長官のお時間が許せば、午前中の
砂田委員の
趣旨説明あるいは
武部委員の
補足説明に次ぎまして、この
消費者行政の中心の
役割りを持っておられる
経済企画庁長官から、この
法律についての決意と申しますか、そういうものをひとつぜひとも承っておきたいということだったのですけれ
ども、お時間の都合でこの時間になったわけでございます。
物価問題特別
委員会では、昨年の九月以来ちょうど八カ月にわたりまして、この
消費者保護基本法の問題について検討してまいりました。特に
理事懇談会をひんぱんに開きましてこの問題を検討してまいったわけでございますけれ
ども、ようやく本日正式に議員立法として上程をするという運びになったわけでございます。
宮澤長官は、
経済企画庁長官といたしまして、現在でも
消費者行政についての
各省の総合調整あるいは推進の任に当たられる責任者でございます。また、いまここで、
基本法で予定されておる
消費者保護会議、これが中心の一つの
行政主体になるわけですけれ
ども、この
会議でも
総理大臣を補佐してこの法を推進していく
役割りにあるわけでございますので、そういうお
立場の長官に要望申し上げるわけでございます。
よく
基本法というものがこの数年前から中小
企業基本法あるいは農業
基本法というようにできてまいりました。また昨年は公害
基本法というものができてまいりました。またこのあとでもいろいろと
基本法の策定が予想されておるわけでございますけれ
ども、
基本法はつくっても何もしないんだ、あるいは具体的なことができないので、
国民への申しわけのために
基本法をつくるんだと、いろいろきびしい御批判もいただくわけでございます。これも、火のないところは煙は立たぬということですから、こういう
基本法の取り扱いについて若干中身のない形式的なものになりがちだと思うのですけれ
ども、この問題について特に私が長官に御決意をお聞かせいただきたいと思いますのは、つまり、昨年の公害法とよく似た性格のものだと思いますけれ
ども、明治以来、戦後でもそうですけれ
ども、
行政あるいは政治の一つの
基準というものが、
生産者中心と申しますか、資本活動中心と申しますか、そういうふうな
立場でいろいろな
法律がきめられ、
行政の指導が行なわれておる。これはある意味で当然のことだったと思います。おくれた、あるいは急速に復興しなければならない日本にとって当然の一つの態度だったと思いますし、また相当の効果をあげてきたと思いますけれ
ども、特にここ数年来、
経済の飛躍的な拡大という問題を契機にして、あるいは都市問題、都市化というような問題を契機にして、
国民の
生活問題、
消費者生活問題が非常に緊急な要事になってきたという
段階だと思うのですが、これは単に
消費者としての
国民を守ってあげなければならないというのではなくて、国の重要な
生産そのもの、あるいは資本活動そのもの、国の全体の
行動そのものから見て、
消費者の
利益をはからなければ
生産活動自体ができないというような
段階に来ておるということだと思うのです。したがって、今後のいろいろな
施策をはかる場合にも、その判断の第一義的な
基準に
消費者の
立場というものを
考えなければならないような状態に来ているということですね。いままでであれば、そういう問題が出たときには、善処いたします。あるいは至急に相談して検討いたします。というような、二義、三義あるいは四義、五義というふうなランキングの
基準だったものが、一義的な
基準になってこなければならない、こういうふうな状態で
消費者保護基本法というものができるわけだと思うのです。したがって、そういうふうなお気持ちでぜひともこの問題に取りかかっていただきたい。
特に物価の問題なんかでもそういうふうな感じがするわけなのです。たとえば、
各省が
公共料金を次から次へとお上げになっておられる。運輸省にしましても、あるいは厚生省その他の省にしましても、値上げをしなければならない理由を拝聴しますと、しごくもっともな理由を持っておられる。酒、たばこの問題にしましても、
政府の全般的な
行政の
立場から――こう言ってはおかしいのですけれ
ども、当然の理由のようなものもわかるのですけれ
ども、しかしそういうふうな個別的な
立場から見れば当然であっても、国全体の政治の
立場から見れば、そういうふうに上げていくことが不適当だというような判断にもなってくるわけなんです。
消費者という
立場から、そういうふうな総合的な判断をなさる場合も、こういうようなことを第一義的な一つの標準としてお
考えをいただくような手がかりとして、私
どもはこの
基本法の
提案をしているわけでございます。この点についての企画庁長官のお気持ちをお聞かせいただきたいと思うのです。
特に、その次の問題は、けさ
砂田委員あるいは
武部委員からの
趣旨説明の中に、この
法案のいろいろの
問題点を指摘されたわけでございますけれ
ども、とりわけ私がここで特に長官にお願いしたいことは、先ほど申し上げたように、
行政の
姿勢あるいは判断の
基準というものが二次的なものから一次的なものへ変わっていくという切りかえどきの一つの重要な意味を持つ
基本法でございますので、特にこれを推進する任務をお持ちになる長官が、その
消費者行政というものを運用する
組織なり運営というものについて、特に実効のあるものをお
考えいただきたいという気持ちが非常に強いのです。特にいままでの
消費者団体の幾つか名前の出ておる、いろいろ活動なさっておる方々に、この
基本法に対するいろんな
意見を聞きましても、このような
意見を出しておられる。つまり一つの問題は、閣議の中にインナーキャビネットとして
消費者保護会議をつくる計画のようだけれ
ども、これはいままでどおりの申しわけのものじゃないのか。一つも他の省に対して権限を持って
勧告をする、あるいは推進をするようなものがないのじゃないか、したがって、こういう
基本法をつくる場合には、そういうふうな意味を持った
消費者委員会というもの、つまり公共
取引委員会のような、そういう性格の
行政機関を置かなければならないのじゃないか、こういう御
意見があると思うのです。こういう御
意見は、現在、私は、それをすぐそういう形のものをつくることが適当だとは思っておりません。おりませんけれ
ども、そういう感じが重要な
消費者団体の中から真剣に出てくるということは、ぜひともお
考え願わなければならない問題だと思うのです。実際に、現在の
段階で
消費者行政を進める場合に、たとえば
経済企画庁が他の役所に対しての
勧告権を持つとか、あるいは強制的な
提案権を持つとかいうような権限を持つよりは、むしろ保護
会議というところで実効のあるような総合
行政をしたほうがいいというふうな
意見もあると思います。したがって、そういうふうなことを至急に求めるわけではないのですけれ
どもそういうふうに
国民が求めておる、つまり実効のあるような
行政の運用という面について、ぜひともひとつお
考えをしていただかなければならぬじゃないか、こういう感じがしてならないのでごございます。
また、これは中央官庁の総合
行政だけではなくて、最近地方の六大都市
関係の市長さんから、
消費者行政という新しい角度の
行政について、国と地方の公共団体とのそれぞれの任命分担についての明確な一つの
基準がほしいのだというような要望がございます。熱心にこの問題を
考える地方の
行政団体の首長は、おそらくそういうふうな問題を
考えてこられると思いますけれ
ども、要するにこれを第二の問題として、
消費者保護基本法というものを実効があるように運営するために、中央官庁における、あるいは中央と地方の
行政的な連絡について遺憾のない
措置をぜひともひとつお願いをしたいものだというふうに思うわけでございます。
それから第三点といたしまして、この
基本法の中にこれはよく世間でも問題にされておりますのに、「(
消費者の役割)」ということばを入れております。「(
消費者の役割)」ということは、二、三の新聞では、これは
政府は何もしないのに
消費者にお説教をするものだというような感じで受け取られておるのが実情ではないかと思います。最近では少し変わってこられたようですけれ
ども、しかし、この
基本法に私
どもがこの問題を入れましたのは、そうではないのでございまして、全くそれとは逆の
立場から「(
消費者の役割)」という項目を入れたのでございます。御案内のとおり「(国の
責務)」、あるいは「(
地方公共団体の
責務)」、あるいは「(
事業者の
責務)」ということばをつけ加えたのに対しまして、「(
消費者の役割)」という違ったことばでもって
消費者、つまり
国民のこの問題のつかまえ方を表現したつもりなのですけれ
ども、これが誤解されて、何も国がしないのに何か
国民だけに説教するんだ、そんなものは無用のことだというような御
意見すらあったようなんですけれ
ども、私
どもの気持ちというのは、それと全く逆の気持ちなんです。つまり
消費者に王さまといわれておる。その王さまとしての力を発揮できるような自主的な
国民の
組織、運動というものを奨励していく、そのための適当な
措置を講じなければならない、こういうのが私
どものほんとうの気持ちなのでございます。これは各党とも了承された気持ちなのでございます。たとえば、
消費者の
組織といえば、
生活協同組合という非常に重要な、大事な
組織がございます。あるいはまた、
消費者協会あるいは
消費者科学センター、いろいろな名前で呼ばれておるところの、
消費者に正しい
選択ができるような援助をする、そういう
機関もございますし、あるいは主婦連とか地婦連のようないろいろな
国民が持っておる
政府の政策に対する要望や反対や活発な意思を表明する
機関もある。その他いろいろな
消費者団体があるわけでございますけれ
ども、こういう団体にはひとしく重要な
役割りを今後とも果たしてもらわなければならないし、また公正な自主的な
行動によって、
政府あるいは
事業者の
責務と公正な
消費者行政についての
監視役になってもらわなければならない、あるいは促進役になってもらわなければならない、こういうふうな
人たちあるいは団体を、この
法律に基づいて今後推し進めていくような
役割りを果たさせたいというのが、私
ども提案者の気持ちであるわけでございます。したがって、今後こういう
各省の
関係の
法律の場合にも、私はいろいろ質問をしたいと思うのですけれ
ども、こういう
国民の自主的な運動、特に
消費者協同組合という先進国のどこにもある、
消費者みずからが自分の
立場を守るための強力な一つの運動というもの、あるいは
組織というものを、官庁としても、もっと積極的に理解をし、進めていくような
措置が必要ではないか、こういうことについて長官のお気持ちをひとつお聞かせをいただきたい、こういうように思うわけでございます。
以上の点に加えまして、現在
砂田委員らが、この
消費者基本法の
実施に伴う
既存の各
法律の点検を行なっている最中でございますけれ
ども、こういうようなことにつきましても、今後私
ども基本法に照らしての
法律の
問題点を具体的に指摘いたしまして、適当な方法で、この
基本法の附帯決議なり、あるいは単独の決議なりで出してまいりたいと思っておるわけでございます。こういうことについての長官の今後の熱意のある、実効のある運用を御期待申し上げたいわけでございます。ひとつ長官のお気持ちを表明していただければありがたいと思います。これで私の質問を終わります。