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1968-04-04 第58回国会 衆議院 物価問題等に関する特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月四日(木曜日)    午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 八百板 正君    理事 小笠 公韶君 理事 砂田 重民君    理事 唐橋  東君 理事 武部  文君    理事 和田 耕作君       青木 正久君    佐藤 文生君       中山 マサ君    広川シズエ君       伊賀 定盛君    村山 喜一君       有島 重武君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君  出席政府委員         経済企画庁国民         生活局長    八塚 陽介君  委員外出席者         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部長 黒住 忠行君         運輸省鉄道監督         局民営鉄道部長 山口 真弘君         運輸省自動車局         総務課長    富樫 勘七君     ――――――――――――― 三月二十二日  公共料金値上げ反対等に関する請願川上貫  一君紹介)(第二九八〇号)  同(松本善明紹介)(第二九八一号) 四月一日  公共料金値上げ反対等に関する請願川上貫  一君紹介)(第三二七六号)  同(谷口善太郎紹介)(第三二七七号)  同(田代文久紹介)(第三二七八号)  同外一件(林百郎君紹介)(第三二七九号)  同(松本善明紹介)(第三二八〇号)  物価値上げ反対等に関する請願勝間田清一君  紹介)(第三三二七号)  同(勝間田清一紹介)(第三三六三号)  同(勝間田清一紹介)(第三三九七号)  同(勝間田清一紹介)(第三四二二号)  公共料金値上げ反対等に関する請願松本善明  君紹介)(第三三二八号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月二十一日  公共料金値上げ反対に関する陳情書  (第一五四  号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  物価問題等に関する件      ――――◇―――――
  2. 八百板正

    ○八百板委員長 これより会議を開きます。  物価問題等に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。武部文君。
  3. 武部文

    武部委員 きょうは運輸大臣の御出席をお願いしたわけですが、参議院のほうの関係があって出席できないということでございます。国鉄通勤通学定期料値上げの問題について、いろいろその前に問いただしたかったわけでありますけれども、残念ながら委員会を開会することが不可能でありまして、結果的には実施になったわけでありますが、これから具体的な問題について、二、三点運輸省見解をただしておきたいと思います。  三月十二日に、物価安定推進会議が、公共料金安定化についてという提言政府にいたしました。その中で、国鉄基本運賃、その他国鉄合理化、こうしたことについて非常にページを費やして提言をしておるわけでありますが、この物価安定推進会議提言について、たとえば、経営再建特別委員会を設置すべきではないかというような具体的な提言がありますが、運輸省はこうしたことについてどのように考えておるのか、また、この提言をどのように生かそうとしておるのか、最初にそれをお伺いしておきます。
  4. 黒住忠行

    黒住説明員 三月十二日に、物価安定推進会議総合部会で、公共料金安定化につきましての提言がございました。したがいまして、この提案の全体につきましては、これを当然尊重すべきものと考えております。前から国鉄問題、特に財政問題は非常に重要な段階に来ておりますので、運輸大臣といたしましては、各界有識者の御意見を尊重いたしまして、今後の施策を樹立しなければならないという考え方から、国鉄財政再建推進会議というものを近く設置いたしまして、審議をお願いするというようなことで準備を進めておる次第でございます。  一方、この物価安定推進会議の御提案の中におきましても、経営再建特別委員会の設置ということで御指摘がございました。したがいまして、その関係の調整につきましては、いま経済企画庁をはじめ関係各省と協議しておる次第でございまして、われわれは、すみやかにこの国鉄財政再建推進会議を開きまして、各界有識者の御意見を拝聴し、今後におきますところの国鉄財政再建に関する施策を確立していきたい、そういうふうに考えておる次第でございます。
  5. 武部文

    武部委員 話は前後いたしますが、国鉄当局遠距離逓減制廃止考えている。現在の運賃遠距離逓減制ですが、遠距離逓減制廃止考え検討しておるという報道が、相当大きくされておるわけであります。このことは非常に大きな問題でありますが、運輸省としてはこれについてどういうふうに考えておられるか。
  6. 黒住忠行

    黒住説明員 御承知のように、現在旅客及び貨物につきまして遠距離逓減制度が採用されております。たとえば、旅客におきましては、四百一キロメートルからはおおむね四百キロメートルまでの賃率の半分というふうなことで、そしてまた貨物につきましても、百キロ単位で遠距離逓減制を実施しておるところでございます。  運賃制度の今後における検討事項といたしましては、この遠距離逓減制ということが議題にのぼるのは当然かと思いますけれども、現在の国鉄の運営におきましては、他の交通機関、たとえばバスであるとか飛行機であるとか、それとの関係につきましても相当慎重を期さなければなりませんので、遠距離逓減制の問題は今後の検討の問題でございますけれども、単純に遠距離逓減制廃止するということでは現実的でございませんので、現在の内容的なものを、さらに内容的に検討をしたらどうかというふうに考えます。たとえば旅客につきましては、四十一年三月に改正いたしました場合に、それ以前におきましては三百キロメートルまでを一つ区切りといたしておりましたが、四十一年の三月からは四百キロメートルを一つ区切りといたしておる、そういうふうに内容的に若干の改正をいたしておりますが、将来に向かっての遠距離逓減制廃止するというふうなことは、これは非常に重要な問題でございますので慎重を期さなければならないというふうに考えております。  なお、こういうふうな問題につきましても、先ほど申し上げました会議におきましていろいろ御意見を承るというふうにして、慎重を期していきたいというふうに思っております。
  7. 武部文

    武部委員 そうすると、いま報道されておる遠距離逓減制廃止の問題については、これは国鉄段階で一応の具体的な案は出ていない。ただ、問題は、公共料金安定化というこの物価安定推進会議提言の中に、基本運賃は上げるべきでない、これははっきりありますね。それで、いまおっしゃったように、現実基本運賃を上げることは、だれが見ても困難だと思うのです。たとえば一等の運賃を上げれば、飛行機とのつり合いがとれませんよ。二等運賃を上げれば、バスとの関係がだめなんです。貨物運賃を上げれば、トラックとの関係がある。したがって、基本運賃を上げることは現実に困難だということは、だれでもわかるのです。したがって、これから先、国鉄運賃を上げる方向はどこにねらいをつけるかというと、遠距離逓減制廃止か、またぞろ通勤通学定期割引率を引き下げるか、この方法しかないと、われわれがしろうとで考えても思うのです。したがって、遠距離逓減制廃止ということはたいへん重要なことなんだが、基本運賃の引き上げをやるべきでないという物価安定推進会議のこの意見と関連して、どういうふうにお考えですか。
  8. 黒住忠行

    黒住説明員 いま御指摘のとおりに、国鉄財政問題は運賃だけでもって解決できない現実であります。それは、ほかの交通機関との関係を十分考慮しなければならぬということでございまして、運賃問題につきましても、あるいはほかの施策につきましてこれを総合的に考えなければならぬのでございまして、基本運賃につきまして特にこの物価安定推進会議からも御指摘がございました。したがいまして、今後におきましては、もう少し総合的な財政再建の問題として問題を把握していきたい。その一環として運賃検討したいというふうに考えている次第であります。
  9. 武部文

    武部委員 時間の関係で先に進みます。  四月一日に、私鉄大手十四社が通勤通学運賃割引率改定申請をいたしました。これについて運輸大臣は認めない、こういう発言をしておられますが、鉄道監督局長は、この二月の初めに非常に微妙な言い方をしておられるわけですね。私どもの承知しておるところでは、私鉄経営はまちまちであって一がいに言えない、場合によっては秋ごろに申請を認めなければならないようなケースが出るかもしらぬ、運輸大臣年内認可しない、そういう方針をとっておる、したがって、値上げ認可は来年早々に持ち越されることになるだろう、こういうことが報道されておるわけです。私鉄申請年内、年度内、こういうふうに二つの区別があるわけですね。それから、いまの監督局長のこの報道から見ると、あるいは一部のケースには認めなければならぬかもしらぬ、こういうような非常にまちまちの見解にとれるわけです。したがって、運輸大臣予算委員会等ではっきり明言をしておるようですが、この際、運輸省としては、いわゆる四十三年度は絶対上げないということをこの場ではっきりと確約できますか。
  10. 山口真弘

    山口説明員 お答え申し上げます。  この四月一日に、私鉄大手十四社から運賃値上げ申請が、各陸運局を経由いたしまして運輸大臣に提出をされました。それで、運賃値上げ申請があった場合の取り扱い方をどうするかということにつきまして、先般国会におきまして大臣からもいろいろと意見の表明があったわけでございますが、これにつきましては、私どもといたしましては、申請が出ましたものはこれを審理いたさなければならぬということは当然のことでございます。ただ、申請につきましては、その収支内容あるいは工事の規模その他につきまして、十分会社の実情、経理内容、それから、ただいまこれを処理することが適当かどうかというようなこと、かりに認めるとすれば一体どの程度のものを認めることが適当であるかどうかというような各種の問題につきまして、十分詳しく内容を審査した上でこれを運輸審議会にかけ、その上で大臣決定をする、こういうことになろうかと思います。
  11. 武部文

    武部委員 そうすると、大臣はしきりに申請を認めないとか言っておるけれども事務当局のあなた方の意見を聞くと、具体的に個々のケースが違うから十分調べた上で結論を出すべきである、こういうことですね。そうすると、運輸大臣の言っておることは事務当局見解と違うのじゃないですか。あなた方は、個々具体的に調べて、あるいは上げるものが出るかもしらぬ、それは運輸審議会にかけるべきだ、こうおっしゃる。運輸大臣のほうは、年内とか年度内とかは絶対に認めない、上げない、こういうことを言っておる。その間に食い違いがありはしませんか。
  12. 山口真弘

    山口説明員 申請のございましたものにつきまして、この内容を十分に慎重に審査するということは、これは事務当局として当然のことであろうかと思います。その十分に審査いたしました結論に基づきまして、当該事案をいつ処理するかどうかということにつきましては、決定者であるところの大臣がこれを決定をする、こういうことでございます。
  13. 武部文

    武部委員 これは、大臣政治的に処理されるわけですから、ここにおられないのにとやかく言ってもしようがないので、この問題は後ほどに譲ります。  そこで、私が少しお聞きしたいのは運輸審議会のことです。いまもお話がございましたが、運輸審議会あり方に非常に疑問を持つのであります。といいますのは、この間通勤通学定期について公聴会が開かれました。公聴会が開かれた日にちは三月十五日です。四月一日から値上げをしようというのに三月十五日に公聴会を開くというようなことは、だれが考えても少しおかしいじゃないか。新聞に投書があったので私それを見ますと、国民の中にもおかしいと言っておる人があるのです。少なくとも予算編成の前に国民の各階層の声を聞いて、それを政治の場に生かす、そのことが公聴会の当然の原則でなければならぬ。それを四月一日から実施すると予算も何もちゃんと組んでしまっておいて、わずか十五日前に公聴会を開いて——そこでは反対意見が非常に強かった。これは新聞の報ずるところであります。賛成よりも反対が強かった。しかし、ただ単に開いたというだけでこの公聴会は終わってしまっておるし、何らその意思は反映されてない。こういう審議会公聴会あり方が一体妥当と思っておられるのかどうか、これをひとつお聞きしたい。
  14. 黒住忠行

    黒住説明員 この運輸審議会は、法律に基づきまして委員七人をもって組織しておりますが、このやり方につきましては、やはり法律で規定されておるのでございます。したがいまして、法律に従って運輸審議会は自主的に運営されるわけでございます。  今回につきましては、国鉄定期改定につきましては一月の二十五日に運輸大臣から運輸審議会諮問をいたしておりまして、運輸審議会諮問を受けましたら直ちに所定の手続を経て審議を継続してまいったわけでございますが、公聴会というのは事実を探求するというところに主眼があるわけでございまして、賛否の数によってきめるという考え方でなくて、公聴会によりまして各関係者の、事実を中心としたいろいろの御意見を承りまして、審議に反映をしていくということでございます。したがいまして、今回につきましても、法律の規定する手続に従いまして慎重に審議が行なわれたものと思っている次第でございます。
  15. 武部文

    武部委員 運輸省の人にはたいへん失礼ですけれども企画庁長官の時間の関係がありますので、最初にそちらのほうへかわらしていただいて、ちょっとお待ちいただきたい。  企画庁長官にお伺いいたします。  最初一つだけお伺いをして御見解を聞きたいのでありますが、前からこの物価委員会で、物価指数のことについて、いろいろ私どもの疑問の点について企画庁見解なりをただしたことが何回かございました。ことに消費者米価の一四・四%が家計に幾らはね返るのか、あるいは消費者物価値上げが四・一とか四・五とか四八とかいうが、これがいまの生活実態と非常にかけ離れておるというようなことについての見解を求めたわけです。宮澤長官の答弁によれば、当然総理府統計局の発表であって、いまの段階では総理府統計局数字を信用し、それを唯一のよりどころにしておるのだという話がございました。総理府統計局消費者物価指数の取り扱い、これも四十年に変わっておるというような話がありまして、それが必ずしも生活の中に正しくあらわれた数字ではないかもしらぬというような意味の発言もございました。ごく最近、各消費団体婦人団体の中から、やはりこの点について相当の疑問が出ておるわけであります。政府の言う四・五がかりに四二におさまったとか、あるいは宮澤さんがしょっちゅうおっしゃるように、今年度は四・八だとかいわれるけれども、しかし、現実生活実感からほど遠いんだというような意見が非常に出ておるのであります。したがって、そういう面から、四・五とか四・八とかいう数字物価考えておるところの政府政治姿勢についても、やはり不信感というものが出ておるのではないかと思われる点もあります。  そこで、具体的に次のような点について、一つ消費者物価現状を皆さんのほうで御調査になってあらわしてみたらどうだろうかと思うのですが、その点御意見を伺いたい。というのは、「現金実収入五分位階級別勤労者世帯年間・一カ月平均収支」というのがございますけれども、これは企画庁調査局資料によったものです。これを見ますと、かりに四十一年度に例をとると五階級に分かれておるわけです。たとえば一階級は三万二千円程度、二階級は五万三千円、三階級は六万八千円、四階級は八万六千円、五階級は十四万一千円、これで稼働人員も全部出ておりまして、勤労者世帯がこれだけの階層に分けてありますけれども、これが物価値上がりでどの程度のものが出ておるだろうかということを、この五階層の中に分けて出すことが困難だろうか。そうすれば、大体五つの階級に分けておるところの勤労者階級の中に占める物価値上がりというものが、このくらいあるんだという具体的な数字が出てきはしないか。そうでないと、総理府の四・五とか四・八という数字では、さっきから何べんも言うように、生活実態実感とかけ離れてしまって全然出てこない、こういうことを私は考えておるわけですが、これについて何かお考えはございませんか。
  16. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御指摘の点は、非常に適切なサゼスチョンだと思います。一般に、消費者物価の上昇が数字でとらえられたものと実感と合わないということには、幾つかの理由があると思います。一つは、買うほうはどうしても買う頻度の高いものを一番身近に感じるわけでございますから、生鮮食料品のようなものはほとんど毎日買いますので、それが一割とか一割五分とか上昇いたしますと、非常に物価が上がったという感じがするわけでございます。しかし、それらのものおのおのウエートを持っておりますので、頻度の多いものがウエートが高いということに必ずしもなりません。しかし、生活実感ではウエートというものはなかなかつかみにくいものでございますから、しょっちゅう買うものが動きますと、どうしても全体がその程度動いたような印象を持ちやすい。これはそれに関する限り、理論的には解明のできる問題であります。  しかし、武部委員の述べられましたことは、実はその問題ではなくて、所得層をかりに五分位の階層で分けたとしたときに、詰めてしまえばエンゲル係数の問題になると思いますけれどもエンゲル係数が高い階層ほど、生活に直接関係のある食べものの上がりの持つウエートが大きい、こういうことになるはずでありますから、それで、それを標準世帯で平均化してしまうということになれば、その特定階層の持っている印象と違ったものが出てくる、こういうことを言っておられると思います。私はそのとおりだと思うのでございます。  そこで、それならば五分位階層ごとマーケットバスケットおのおの別々に出していく。そうなりますと、おのおの特定の品物の持っているウェートが違うことになるはずでございます。そういう指数のとり方は、これはむろん理論的には当然できなければなりませんが、さあ実際にそういう統計がとれるかということになりますと、結局これは人の数と手間との問題であろうと思うのでございます。問題がそういうところに存在しておることは、私は確かにおっしゃるとおりだと思います。何かそれを実行可能な方法でやれるだろうかということは、統計局と私どものほうでもう少し研究をさせていただきたい、こう思っております。御指摘の問題は、確かに私はいい問題だと思います。
  17. 武部文

    武部委員 それでは、きょうは時間の関係がありますので、このことはまた後日に譲って、消費者物価指数の原則的な問題についてもいろいろ質疑をやってみたいと思います。  きょうは、実はNHKの会長の御出席を要求したわけでありますが、御都合があって出席できないということです。きょう私がなぜこのことを申し上げるかといいますと、受信料の問題です。私どもとしては、受信料の問題は物価相当影響を与えるし、今後大きな問題になるだろうというように考えたからでありまして、以下このNHK受信料のことについて、少し見解を賜わりたいと思うのであります。  本年の一月十三日の閣議で、NHK受信料は、予算国会が承認すればそれで自動的に料金がきまる、これが放送法のたてまえになっておる、そういうことではこの問題について政府として発言できぬじゃないか、したがって、公共料金であるNHK受信料をきめる方法としては不適当ではないか、したがって、放送法を改正して認可料金としたらどうだろうかというような意見が出た。閣議としても受信料あり方検討しようじゃないかというような意見が出たということが報道されておるわけでありますが、これについてひとつ長官見解最初に聞いておきたい。
  18. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういう議論がございましたことは仰せのとおりであります。  私の考えておりますことは、たとえば個人の企業であれば、私企業であれば有価証券報告書というようなものが提出されまして、それによりまして経理内容を詳細に関係者は知ることができるわけでございます。それから、国の予算は詳細に国会で御審議いただいておりますし、公社、公団についても相当詳しい資料国会にも提出いたしております。したがって、これらについては十分に国民がその内容を知ることができるわけでございます。NHK予算の場合には、聴視料がすでに七百億をこえるということで、国民にとりましては、ほとんどこれを払っておるわけでございますから、NHK経理内容をもう少し詳細に知る権利があると私は思います。また、私ども国民から政治を負託されておる者としては、やはり同様にその経理内容を知る義務があるとも考えるわけでございます。しかし、現実には、NHK経理関係の詳細な資料監督官庁に知らされていないのみならず、国会に提出された資料もはなはだ簡単なものであります。したがって、経理内容現状では私ども知ることができないのであって、聴視料そのものが適正であるかどうかという判断もできないというのが現状でございますから、いわば国民にとって、税金ではございませんけれども、かなりそれに近い広範な数の国民が取られる聴視料でありますので、もう少し経理国民が知れるような仕組みあり方で、聴視料が適正であるかどうか判断できるような仕組みが必要ではないか、こう考えておるわけでございます。
  19. 武部文

    武部委員 私も逓信委員会出席をしておりまして、この資料をもらったわけであります。膨大なことは膨大だけれども、これは非常に簡単な資料になっておりますが、これを見るだけでも、私は、聴視料NHK経理の面で非常に疑問を持つわけです。というのは、あとで私申し上げますが、長官もいろいろ言っておられるし、郵政大臣自身が、このカラーテレビ受信料百五十円の値上げについて意見書をおつくりになった。ところが、この意見書が、二回にわたって自民党の政調会通信部会でクレームをつけられたという事実があります。少なくとも監督官庁大臣がつくった意見書政調会通信部会で二へんも送り返されるというようなことは、私どもが聞いておってもまことに不可解である。これはいろいろ事情がありましょう。そのことは党の事情ですからそれ以上申し上げませんが、この内容を見ると、四十一年度末でNHKの長期の借り入れというのは五十三億円しかありませんね。資本金としては五百億、一年に百億ずつふえていますよ。去年とおととしとで二百億。三十九、四十年度で百億ずつ。ですから、いま五百億。減価償却に至っては、四十一年度の決算で百二億。七百五十二億の収入があるのに、百二億という減価償却は一四%に当たります。それから、四十一年度決算剰余金は十七億八千万円。ところが、償却前の利益を計算しますと、資本の支出も充当されるわけですから、実に百九十二億二千万円、収入の二八%が償却利益です。約二百億、収入の三割という膨大な利益公共事業で計上しておるところは、ほかに私はないと思うんです。こういうことが、このNHK予算を見ても読み取れるわけです。  そこへもってきて、これは逓信委員会の論議ですからここで再現したくはありませんが、百五十円のカラーテレビ値上げをする、白黒は十五円値下げする。しかし、現実にこれからのカラーテレビ普及度合いを見ると、五年後には五百六十万台ということをNHKは言っていますね。もういまから五百六十万台の百五十円分をちゃんと先取りして取っておる。こういう形のもので白黒を十五円下げたって、そんなことは理屈にならぬと思います。  いま私が申し述べたような減価償却なりあるいは償却前の利益計上、資本金の五百億になった経過あるいは借り入れ金の返済、こうしたことを見ると、全くもって私は理解に苦しむのです。そこへもってきて郵政大臣意見書などというものは、何のことはない、二へんも書きかえられている。これは一体どういうことなのか、私は非常に不可解に思うのです。二月二日に宮澤長官がこういうことについて若干の意見を言われたという報道もあって、私ども全くだというふうに考えたわけですが、ひとつもう少し詳しくお述べいただけませんか。
  20. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私がNHK経理がずさんであると申したように、ごく一部でありましたが報道されておりますけれども、私は実はそう申したのではございませんで、ずさんであるかないか、そういうことを判断するための資料が何人にも与えられていない現状では、そういう判断すらできない、こういう制度は改められなければならないということを申したわけでございます。したがって、与えられた資料が非常に少のうございますから、経理について詳細な批評をすることはできませんけれども、ただいま言われましたようなこと、ことに与えられただけのわずかな資料で見ましても、相当に余裕のある経理であるということだけは、私は間違いなく申せるように思います。会計検査院は当然NHK経理の監査をしておられるでありましょうが、これは経理に不正があるかないかということを検査しておるのであって、経営が適切であるかないかということは会計検査院の検査の対象ではないのでございますから、やはり何とか、お互いにこの経理を判断する基礎資料、共通の資料を持って議論したいものだというふうに思っております。  郵政大臣意見書をめぐってのこまかい動きははっきり存じませんけれども、いずれにいたしましても、議論をするもとの資料がないということから、意見の違いなどが起こっておるのではないだろうかというふうに感ずるわけでございます。
  21. 武部文

    武部委員 これは逓信委員会でございませんので、これ以上のことはなかなか論議もしにくいわけですが、私は四月一日の午後七時三十分のNHKのテレビを見ておりました。そうしたら、「みなさんとNHK」という番組が出てきまして、そこに出たのは、前田会長と男女二人の評論家と称する方でした。それを三十分間見ておりますと、四月一日からカラーテレビが上がったことの理由づけを、三十分間そのテレビを通して一生懸命やっておられるんですよ。  私は、言われることをいろいろ書いてみましたが、一日十時間カラーテレビの放送をする、五年後には十五時間にしたい、こういうようなことですよ。このことについても、郵政大臣はたしかクレームをつけたはずです。大体、一日十時間とか十何時間とかをNHKが一方的に放送するのだ、金は高くなければいかぬという、そんなことはおかしい、国民が一番希望する番組を放送すべきではないかということを言っていました。これにはいろいろ意見もありましょう。意見もありましょうが、五年後には十五時間にする。したがって、いまの経費を逆算すると百五十八円になる。百五十八円になるけれども、百五十円にまけておくというような言い方ですよ。まけておきました。八円おまけになったようです。  問題は、NHKは、国鉄や電電公社と異なって、国民全体のものだということを非常に強調されておりました。国鉄や電電は国民のものじゃないという言い方ですけれども、私はこれもちょっと不可解です。  それから借り入れ金をして運営をしておるのだ。いまあなたのおっしゃること、われわれの言ったこととちょっと違うのですよ。そして、放送債券を発行しておるのだ、こういうことです。放送債券を発行されておりますが、放送債券の発行は、残高は四十一年度末で二百三十四億ですよ。放送法によると、発行額の十分の一を積み立てることになっている。これにもいろいろ郵政省の行政指導の面があったというようなことを言っておりますけれども現実には、放送法の十分の一という、そういうことじゃない、三分の一の八十四億円が積み立てになっているのです。  こういう余裕しゃくしゃくたる経理内容です。長官の言われたとおりですよ。そうして借り入れ金の金額も調べてみましたが、あなたがおっしゃるのと同じことです。私ども指摘したいことは。非常に余裕しゃくしゃくの経理をしておる。にもかかわらず、放送法の中で、予算を通せばぽんと上がるような仕組みになっている。これには私はやっぱり問題があると思う。そういう見解を述べられた宮津長官発言について、NHKの会長はどういうことを言ったか。私はこれが非常にかちんときたから、ぜひきょうおいでいただきたいと思ったのです。政府としては、ぜひひとつ今後のNHKあり方について、はっきりした見解をこれから立てていただきたい。  三月十三日の逓信委員会の席上で、自民党の委員から、宮津さんのさっきおっしゃったような、NHK経理が非常にわかりにくい——ずさんということばは、報道にあったことそのまま言ったのだから、そのずさんということばは当たらぬかもしれませんが、しかし、内容は大体似たり寄ったりで、新聞報道どれを見ても、それからいまお聞きしたことを見ても同じことなんですが、前田会長は、この宮津さんの発言について、こういうことを言っておるのです。簡単ですから議事録を読みます。  経済企画庁長官あるいは経済企画庁がいろいろ批評をしておるのを承っている。「巷間伝えられ、あるいは新聞報道、記者会見等における経済企画庁考え方は、根本的に、NHKがいかなる法体制の中で、いかなることを目標として存在を認められている企業体であるかということについての御認識は、ほとんどお持ちでないのじゃないかというのが第一点」、「第二点は、NHK経理の計数的分析が、第一点と関連して、全く事業会社の分析と同じ方式をとっている、したがって、これも私にとっては問題にならない御批評ではないかというように感じます。」こういうことをはっきり言われたのですよ。  ですから、あなたのいまおっしゃったことについて、全くこれは全然指摘は当たっておらぬ、一体企画庁NHKを何と見ておるか、認識がゼロだということをはっきり言われたのです。私は、たいへんなことをおっしゃるが、これはひとつ一ぺんお二人から聞いてみたいと思って、きょうぜひ出席をしていただいてお聞きをしたかったわけですが、残念ながら片一方しかおいでになりません。しかし、現実にこういう批評は、あのカラーテレビ受信料値上げをめぐっての逓信委員会のやりとりの中で、はっきりと議事録に載っておるのですよ。こういう点についてどうお考えでしょうか。
  22. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど御指摘になりましたように、四十一年度の決算で見ますと、放送債券の残高のほぼ三分の一が減債用放資として積み立てられております。これはそのような規則及び行政指導のもとに行なわれておるのでありますから、そのことに私は異議を申し立てておるのではございません。私の申したいことは、規則によろうと指導によろうと、とにかく長期債券の現在高の三分の一も積み立て得る会計というものは余裕のある会計である、これだけを申しておけば私は足りると思っておるわけであります。  それからなお、同じ年度の決算によりますと、当期資産充当金七十億余り、当期剰余金十七億、資産充当金というのは何のことかわかりませんが、とにかくこれだけの金が余ったということには違いありませんし、数年の間に増資を二百億ほどしたということも事実であります。でありますから、非常に余裕のある会計であるということは、おそらくNHKの会長も御異議がないのではなかろうか。それから、長期に残ります資産については、料金収入でやるのではなくて、一ぺん借り入れ金を起こしてやるというのが、これは公企業であろうと私企業であろうと、企業運営の原則であろうと思います。私企業でない、国民全体のものであるという主張であれば、国民全体のものであればその経理国民に公開する義務がある、私はそう思います。
  23. 武部文

    武部委員 先ほどもちょっと触れましたが、物価安定推進会議公共料金安定化、この提言の中にも、公共料金決定の原則として長期低利の借り入れ、出資等によることとすべきだ、こういう提言があります。ですから、料金引き上げが必要であると主張する向きもあるが、本来、料金決定はそういうふうにすべきであるという提言がありますね。したがって、何でもかんでも料金を上げてやっていくということは誤りだという、物価安定推進会議提言もあるわけですよ。ですから、先ほどから何回かやりとりするように、私どもが見ただけでも、NHK経理というものはたいへん余裕のある内容を含んでおる。それはおそらく郵政大臣もそう見てああいう意見書になって、一応原文を私も知っておりますが、出たのだろう、こう思うのです。しかし、現実にいま私が読み上げたこの前田会長の発言についてはちょっと触れられていませんが、その気持ちもわからぬじゃないですけれども、私はあれを聞いておって、何で知らぬ者がくちばしをはさむかという態度がありありと見えたのです。それでこれはおかしい、私ども発言する機会もちょうどなかったので、残念ながらその機会を逸してしまったわけですが、いろいろ調べてみると、NHK受信料というものはあるいはCPIにもある程度影響があると思うのです。十五円下がったからといって、たいして影響がないとは言えぬと思うのです。将来のカラーテレビの普及台数等から見れば、そういうNHK受信料決定あり方、たとえば公聴会一つ考えても、全然公聴会なんというものはないのです。そういうような点について、ひとつ政府側としても御検討をいただくことはできないものだろうか。いずれこれは来年のことになりますから、検討の期間はあろうと思いますが、この点についてはどうお考えでしょうか。
  24. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 冒頭に申し上げましたように、いろいろな議論は、おそらくはNHK経理に関する資料がほとんど公開されていないということから起こっておると思います。競争関係にあり、かつ秘密を重んじる私企業でさえも、有価証券報告書では相当詳細なことを報告しなければならないのでありますから、何ゆえにNHKがその経理を公開することをはばかるのか、私にはその理由が全く納得がいかないわけであります。したがって、NHKはすべからく経理を公開して、それによってこのたびの料金値上げが必要なら必要であるという説明をすべきである。そのもとのことが欠けておるということについては、私ども、確かに何らかの処置をとる必要があるというふうに考えております。
  25. 武部文

    武部委員 和田委員のほうから長官に質問があるそうですから、ちょっと私は休憩します。
  26. 八百板正

    ○八百板委員長 和田耕作君。
  27. 和田耕作

    ○和田委員 突然の御質問で、格別な資料なんかは要らないと思いますが、宮澤長官は、昨年の春に、牛乳価格について農林省の行政指導をはずされて、自由価格にしたわけですね。その後約一年間の状態をごらんになって、大体見通しどおりの満足するような価格の動きをしているとお思いになっておられるかどうか、この問題をまず御質問いたします。
  28. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 昨年、いわゆる市乳の価格が事実問題として上がったわけでございまして、この点、私はいまだに残念なことだと思っております。ただ、これをめぐって、本委員会での御審議の結果もあり、非常に各方面でいろいろな議論が行なわれるようになりました。消費者も啓発され、また生産者、加工業者もそれによって啓発を受けたわけでありまして、昨年の場合、消費者価格が多少の値上がりをしたことは残念なことではございましたが、しかし、これから国民全体が得た教訓、実物教育というものは、私は非常に貴重なものであったというふうに考えております。
  29. 和田耕作

    ○和田委員 この一年間の牛乳価格の問題は、価格問題について非常に重大な示唆を持っておるんじゃないかという感じが、私はしてならないのです。つまり行政指導という状態をはずして、そうして自由な競争下における価格形成、こういうふうなことを物価問題懇談会でも宮澤長官はおっしゃっておられるのですけれども、はたしてこのことが、実際上いい効果になってあらわれてくるかどうかという問題ですね。私は、何か政府物価問題についての行政責任を、自然な一つの市場価格の形成というメカニズムに転嫁しておる、そういう感じがないのかどうかということが、危ぶまれてしかたがないのです。たとえば、いま問題になっております再販制度の問題で、最近公取がいろいろな品目を大整理しようとなさっておられるようですけれども、この結果、はたして、価格そのものもそうですけれども、取引問題について、効果があがるような結果になるという見通しがあるかどうか。つまり、再販していくには、いろいろ問題はあってもそれなりの理由がある。その理由が残っているものを、何らの対策なしにはずして、はたして予想どおりの結果が得られるかどうか、こういう問題はどういうようにお考えになるでしょうか。
  30. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これはやはり考え方の問題であろうと思いますが、私どもは、一般論として、経済は市場経済でいくのが望ましいというふうに考えておるわけでございます。それは、一つには、それによって自然な需給関係が生まれる。供給が非常に少ないために価格が上昇すれば、おのずから供給者があらわれるというこの法則が、需給関係を好転させる基本だというふうに考えるからでございます。もう一つは、かりにいろいろな製品について行政指導なりあるいはある程度の統制なりが行なわれたときに、それが非常に賢く、かつ行き届いて行なわれれば、これは経済運営の一つの法だと思いますけれども現実には、なかなかそれがまんべんなく、賢く行なわれませんで、むしろ自然な需給関係をゆがめるような結果になりやすい。やはりこれは行政なり何なりの能力を越える場合がしばしばある、こう考えるものでありますから、基本的には、市場経済の原則に合わせたほうがいい、こういう考え方、これはその人その人の考え方であろうと思いますが、私どもはそういうふうに考えてきております。  そこで、今度の再販価格維持制度の問題でございますが、この再販価格維持契約ということ、そのことは本来の市場経済の原則には合っていないわけでございます。しかし、守るべき法益があるということで独禁法が例外を認めておるわけでございますが、この運用は、やはりできるだけきびしい条件のもとに行なわれなければならないと思います。現在指定を受けている品目は、もうすでに十何年前に指定されたままになっておるのでありますから、その間の経済情勢の変化で、本来もっと早く再検討なさるべきものであったと思うのでございますが、今度公正取引委員会が再検討をして、そうして最小限の条件を満たしておるものだけを残す、それ以外のものは再販契約を認めないという態度に出ようとしておられますことは、私どもの思想からいうと非常にけっこうなこと、歓迎すべきことだ、こう思っております。
  31. 和田耕作

    ○和田委員 再販制度の該当品目をできるだけ少なくしていく、きびしく内容を点検していくというその方針に、私は異議を申し立てておるわけではない。ただ、先ほど申し上げたように、はずしたままで政府が何もしないという状態で公正な価格形成というものが期待できるか、したがって、特に何らかの対策が必要ではないかということを考えながら御質問申し上げているわけですけれども、たとえば、一つの例として薬の問題を考えた場合に、現在医療制度の抜本対策が論議せられております。有力な意見として医薬分業という考え方が出ておるわけですね。いろいろ御批判もあるのですけれども、非常に有力な意見でそういうものが出ておる。医薬分業を考えた場合に、そういう制度のもとで薬屋さんが自由に薬の価格競争をする。この薬屋さんは何ぼだ、この薬屋さんは何ぽだ、みな違うという状態で医薬分業というものができるかどうか。医薬分業という制度は一つの大衆福祉のために必要だ、また正しい医療制度に必要だということがある。そういう大切な制度、医薬分業制度が、自由な価格形成のもとでできるか。これは一つの例なんですけれども、今後そういう国民生活を守るためのいろいろな施策が必要になるわけですね。こういったものは古い自由競争的なものにチェックしていかなければならない、国の権力が関与していかなければならない、そういうふうな問題がいろいろな形で出てくると思うのですね。こういうことが予想されるときに、自由な競争ということだけを言っているということになると、この価格問題のむずかしさに、政府が直接行政責任をとるという前を向いた公正な態度を回避して、自由な価格条件にまかせればいいじゃないか、これが一番自然にりっぱな価格がきまっていくじゃないかという、そういう責任のがれの感じが私はしてならないのだけれども、こういう問題を現在の基本的なお考えとしてどういうふうにお考えですか。
  32. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 確かに、全く市場経済だけで経済がやれるというふうには、いまのこの世の中では私ども考えておりません。やはり国民生活あるいは国民経済の非常に基本になる部分については、ある程度行政が介入したほうがいいということは、現実に私どもがそういうふうに認識しておるように思います。たとえば、現在のままでございましたら主食などがそうなっておりますし、それから、いわゆる公益事業についてもそういうことが行なわれおりますし、鉄道、通信等もさようでございます。ですから、非常に基礎的な部門については、現実に行政が介入をしておるし、またそれが必要であろうと思いますが、しかし、私どもの思想は、なるべくそういう範囲は狭いほうがいい、行政にはおのずからその能力の限界というものがございますから、これが一番賢い、最も効率的な方法で行なわれるという保証は、しばしばないように思うのでございます。ですから、基礎部門にだけ限って行政が介入していくという、非常に限定的な考え方をしております。しかし、全く野放図で、いわゆるレッセフェールでいいのだということは、もういまの時代には申せないのではないかというふうに認識しております。
  33. 和田耕作

    ○和田委員 そういうお気持ちはよくわかりますし、宮澤長官のそういう態度も間違いではないと思いますけれども、つまり、そういう態度で行政指導をなさっていくときに、実際やる方がそういう問題を理解されない場合もあると思います。  そこで、もう一つの問題は、つまり再販の問題でも、これをはずしっぱなしでなくて、どうすればよいかという問題なんですけれども、やはりこれは重要な国民生活に影響のあるものについては、もっと政府が責任をとる形で、価格の安定をはかるために、何らかの形で、メーカーの段階である一つの幅を設けてチェックしていく、チェックのしかたというものは、政府が直接やるか、あるいはもっと公正な機関を考えるか、いろいろあると思いますけれども、そういうことを考える時期に来ているのではないか、このことを私は申し上げたいのです。つまりコストというのがございます。コストをめぐってのある一つの範囲を考えるいろいろな要素、問題がございます。そういう問題の幅をつけての何らかの将来の価格の基準になるようなものを示唆していく、そういう方法でないと物価の安定は期せられないという感じがしてならない。  一つの証拠は、最近、いろいろな重要産業を中心に寡占化の傾向が最も顕著になってまいりました。ほとんど独占に近いような形が出てくる。しかし、鉄鋼にしても何にしても、寡占価格を政府がいままで何とか下げてもらいたいと言っておっても、下げられる保証は全然ないですね。といって公取の罰則にかからない方法で寡占価格は形成されていく。しかし、それに対して政府は何らの方法を持たない。政府のおっしゃることは、できるだけ自由な競争条件を確保するようにする。しかし、実際に寡占価格に対して効果のあるチェックができていない。こういうような問題を考えますときに、自由な取引条件、確かにそういうことは最大限といいますか、必要ですけれども現実に寡占価格の問題にしても——再販の問題はちょっと内容が違いますけれども、そういうふうなことで政府がもっと前向きに出て、メーカーの段階でチェックしなければならない時期に来ているのじゃないかということを申し上げているわけなんであります。そういうことについての基本的な考えでけっこうですけれども、お考えを伺いたいと思います。
  34. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 たとえば公益事業につきましては、その料金算定の際に適正な利潤、俗にフェア・リターンと申しておりますが、これを政府としては行政できめておるわけでありまして、それ以上のものは必要がないという考え方でやっております。が、同じようなことをコストの形成において少し広い領域でやるかどうかということについて、たとえば医薬品については、これは直接公衆の衛生に関係がございますから、そういう観点からコストに立ち入っていくということはあるいは一つ考え方かもしれませんが、むしろそういうことをしていきますと、新しい製品の開発、これはもう、少しでも先にやれば、しばらくの間相当大きな利益があるわけでございます。そういったようなものをとめるような結果になりはしないだろうかというほうを私どもはやはり重く考えるものでございますから、非常な乱売があって製品が粗悪になって、国民生活に害があるというのでない限りは、自由にしておいたほうがいいのではないかという気持ちを持っております。  それで、確かに寡占状態になりますと、数少ない業界で価格の協定が行なわれる危険が相当ございます。鉄なども、過去においてどうも身がってな動きをしたことが確かにあると思いますし、私はいまの鋼板価格というものは高過ぎると思っております。ですから、そういう行政指導は必要でございましょうし、何よりも、やはり寡占状態になっていった場合には、不公正な競争の制限がないかどうか、これは公正取引の問題でございますが、そのほうからの監視は非常に厳重にしていく必要がある、こう思っております。
  35. 和田耕作

    ○和田委員 公正取引委員会法律に基づいて厳重に監視をしていく、これは非常にけっこうでありますが、監視するだけで、将来どういうふうにしたらいいかということを考えるどころじゃないわけですね。その問題は、特に宮澤長官、私ども物価の問題を考えた場合に、たとえばこういうところでいろいろ質問したいことがたくさんありますけれども、どうしてもこれを何とかしょうという意欲が、正直に申し上げてなかなか起こってこない。それは、物価の問題については手詰まりになっているという感じがするのですね。政府はいろいろおっしゃっておられる、総理もおっしゃっておられるけれども、実行することは、公共料金なんかいい例ですけれども、なかなか押えられない。また、一般の価格にしてもうまくいかない。自由な競争条件さえうまくできれば、あるいは生産性が向上すれば物価はうまくいくのだという答えだけで、効果のある物価の抑制というか、あるいは公正な物価というか、安定した物価というか、そういうような状態はなかなか出てこないという感じがするのです。何かいままで、経済学者もそうなんですけれども、自由な取引条件、競争条件さえ整えば日本の物価は安定できるんだ、この考え方をあまり政治的に利用し過ぎるのではないか。私は、牛乳なんかの問題は、むしろ率直に申し上げて、自由な競争条件にするよりは、あるいは公正な行政指導のほうがよかったのではないかという感じさえするのです。ああいう重要な国民生活についている問題は。そういうような問題は、自由なあれにしたほうがいいという一般の世論みたいなものに押されて行政指導をはずして、その対策をとらない。そういうことは、政府がとるべきはずの問題まで責任を転嫁するという感じがするわけなんです。そういう問題、これは具体的な問題ではないのですけれども、全般の一つ物価対策の問題としてぜひとも御考慮いただきたい。いまの牛乳なんかの問題は、この一年間の例を見てまさしくそう思うのです。自由にしてよかったかどうかということですね。
  36. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御指摘になっておられることは、私にも実はよくわかっております。福祉国家において国家の行政が立ち入るべき限界といったような問題、ことにその物資が生活の非常に必需品であるときには、そういう問題が確かにあると思います。また従来、ときとして、これはもう問題を自由にしてしまったほうがわずらわしさが少ないというような気持ちを持ちやすいということは実は事実でございますから、その辺のことは今後ともよく気をつけてまいります。
  37. 和田耕作

    ○和田委員 特に一般の問題でも、たとえば暴風雨とか災害で何千人の人が死にますと新聞は大きく書きますけれども、あれはしかたがないんだ、自然になるんだからしようがないという感じがあるのです。人殺しでは、一人人殺しをすればたいへんなことになる。こういう問題は、政府が自分の責任になる問題まで、これは自然の状態にまかしたほうがいいんだという——これはちょっと問題は違いますけれども、共通した感じがするのです。問題の困難さに辟易して、政府がもっと積極的にとるべき責任をとらないで、もっともらしい経済理論みたいなものにあれしていく、そういうようなことのないように、これは宮澤長官以外に適任者はないと思うのでありますから、ぜひともそういうことを御要望申し上げて、質問を終わります。
  38. 八百板正

    ○八百板委員長 関連質問の申し出がありますので、この際、これを許します。村山喜一君。
  39. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 宮澤長官にお尋ねいたします。  最近、私たちの宿舎あるいは会館のあたりに、全国粧業新聞というのですか、お化粧のほうの新聞ですが、毎日のように大量の新聞が配達されます。その中を見てみると、全国の化粧品の小売り店の人たちが、連日公取に押しかけて、再販規制のあり方について陳情しておられる。あるいは各党に対して、再販規制を中止するということになればわれわれはめしが食えない、こういうことで猛烈な運動が始まっているようであります。この問題は、いま公取が責任を持って再販の洗い直しをやっておられる。そうしてどこかに限界を置いて、これ以下の価格については規制を現状のとおりにする、これ以上ははずす、承るところによれば、千円くらいのところで限界線を引いてやろうとしておられるように聞くのであります。ところが、あれはたしかマックスファクターだったと思いますが、大蔵省と通産省に外資導入の許可申請が出て、外資系関係の会社、子会社の日本に対する設置を許可された。これはこれから日本に化粧品が自由に入ってきて、それぞれの系列を伝わりながら販売が進められていくことになる。そのときに外資系の諸君の言うのには、日本のような再販規制によって化粧品の価格が非常につり上げられているところには、外資系はきわめて進出をするのに条件が整っている、絶好の日本進出のチャンスを迎えたといって片一方においては喜んでおる。片一方においては、メーカーの手に踊らされて全粧連の諸君が、小売り店の諸君が連日のように、再販規制をゆるめてはだめだといって陳情これつとめている。私はこの姿を見まして、このままでいくならば、日本の化粧関係のメーカーはもちろん、卸、小売り店の諸君はその自由化のあらしの中に巻き込まれていきながら、しかも結果的には、外国の化粧品に弱い日本人でございますし、値段も安いとくれば、そちらのほうに市場を占有されるような事態になる、私はそういうようなことをおそれているわけです。だから、現在の姿というものは、それは表現の自由、行動の自由は憲法によって保障されているのですから、けっこうなことではございますけれども、しかし、それが結果的にどういうような事態を招来するかということを考えますと、きわめて危惧の念にたえないわけであります。したがいまして、再販をやらなければ食えないような、そういう小売りの状態というものが既成事実として積み重なってきているところに、今日の物価構造の上におけるゆがみが出てきていると私は思うのでございますが、そういうような構造に対しまして、公取がせっかく中正な判断を下してやろうというものが、なかなか思うようにいかないというような現状が生まれてくるとするならば、これは物価についての最高の責任者であります宮澤長官としても、こういうようなものに対しましてき然たる態度をとっていただかなければならないかと思いますが、大臣の御所見はいかがでございますか。再販規制に関連をする問題でございますので、お伺いをいたしたい。
  40. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 従来、再販が相当の品目について認められておりました一つの理由として、小売り店の経営がそれをやめると非常に困難になる、しかもその結果は、再販の品目は日常使われるものということでございますので、非常に必要な必需品が、利益がないということで小売り店が店に置かない、その結果は消費者が不便をこうむる、こういうような論理があったわけでございます。私は、それが全部間違っているとは思っておりませんけれども、しかし、こう十何年も同じ現状であるはずはないわけでありますから、今度公正取引委員会相当の整理を将来しようとしておるわけであります。それについて小売り店が自分たちの生活問題であるというふうにほんとうに考えておるのか、あるいはその系列の頂点にあるメーカーの意を受けて動いておるのであるか、その点は、私は必ずしもはっきりいたさないように思うのでございます。でありますから、今度公取がいわゆる洗い直しをやるということになりましたら、メーカーの中には、従来の価格をある程度下げますからひとつそういうことをしないでくれといったような動きも、実際にはあったようにも思います。これは逆を申しますと、従来の再販価格維持契約というものが、それだけ不必要な利潤なり利益なりを関係者のために固定化しておったということになるのではなかろうかとも思います。したがって、私どもは、公正取引委員会が当初の所信に従っていわゆる洗い直しをやってくれるものと考えておりますし、またそれを歓迎するものでありまして、その結果、いわゆる薬屋さんが立ち行かないなんということには、とてもならないだろうと私は考えております。
  41. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 関連でありますからこれでやめますが、とにかく消費者は、小売り店から買わなければならないのじゃございません。最近の流通革命の時代に、ヨーロッパなりあるいはその他の国々の状態を見てみれば、通信販売なりその他のいろいろな形における販売の変化、ビッグストアを中心にするような動きは当然の勢いとして出てきているわけです。だから、そういうように固定的に問題をとらえていきますと、確かに影響はありましょうが、消費者の利益から考えた場合には、きわめて不都合な結果になることを私たちはおそれるのであります。しかも事態が発展をしていく過程の中では、外資系が日本にどしどし進出をして、日本のメーカーも太刀打ちができないような事態さえ将来生まれてくる。そういうような状況がもう目前に迫っている中で、再販をそのまま守りなさいというような運動を、それも全粧連が中心になってやるのだったら一つの理屈も成り立ちましょうが、どうも陰にはメーカーが踊っているような気がしてならないわけであります。そういうようなものについては、これからも国民生活を守るという立場から、厳重にひとつ御注意をお願いをしておきたい。
  42. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私の見ておりますところも、ただいま仰せられましたこととかなり似ております。また、小売り店の側も、何十年も同じ店、同じ経営ができるという時代ではございません。近代化ということも当然考えなければならないことでございますから、十分消費者の利益が守られるようにこれからも配意してまいるつもりでございます。
  43. 武部文

    武部委員 運輸省の人には中断しておってたいへん恐縮でございましたが、あと少しばかり質問をいたしたいと思います。  先ほど私鉄十四社の通勤通学定期値上げ申請のことについていろいろ御答弁がございましたが、運輸大臣国会における答弁と事務当局のとは、政治的な問題もあろうと思いますので若干違うようであります。しかし、このことは、たいへん大きな影響が将来の物価問題にございますので、またの機会に運輸大臣の明確な見解を承ることにして、その問題はおきます。  そこでもう一つ運輸審議会が今回の値上げの問題について答申をしたその際に、国鉄定期については将来も再検討をすべきだ、同時に、定期のいまの割引率というものには何ら根拠がない、したがって、あの答申なりさらには吾孫子会長の談話等を見ると、再引き上げというよりも割引率の引き下げをさらにやるべきだ、こういうような意見が付されておるわけですが、運輸省当局としてはこの問題を将来どう取り扱おうとしておるのか、まずこれをお聞きしたい。
  44. 黒住忠行

    黒住説明員 今回の定期改定につきましては、たとえば通勤の一カ月定期は、従来六七・六%の割引でございましたものを五二・九%に引き下げたわけでございまして、いわゆる法定限度でありますところの五〇%に非常に近づいてきたわけでございます。したがいまして、実際問題といたしましても、割引率を法定までにかりに改正いたしましても、金額的にはたいしたものにはならないということがございます。  それから、さらに法定の一カ月五〇%、六カ月六〇%というものを改正するかどうかということは、もちろんこれは法律改正にも触れる点でございますし、非常に慎重を期さなければならぬ問題でございますので、現在これらの改正を直ちに考えるというふうな段階ではもちろんございません。将来、運賃問題等について、総合的に検討するチャンス等がありますれば検討はしなければならぬかと思いますけれども、現在直ちにこれを改正する云々ということは考えてございません。
  45. 武部文

    武部委員 ちょっとお尋ねしますが、この四月一日から通学定期割引率の変更があったわけですが、その前の、やらないときは何%だったのですか。
  46. 黒住忠行

    黒住説明員 通学定期につきましては、一カ月は従来は最低が七六・七%の割引きでございまして、最高が九一・四%でございます。それを平均いたしまして八六・九%の割引きでございましたものを、今回の改定によりましては最低が六六・七%、最高が八八%で、平均は八一・八%の割引率でございます。
  47. 武部文

    武部委員 大体平均して八七ですね。それで、私はこういう新聞の投書を見たのです。これは十七歳の女子高校生ですが、まことに高校生らしく計算をしておるのですよ。あなた方の言っておる数字が間違っておるということを彼女は言わんとしておるのですよ。この高校生は、一カ月八百二十円ですから、三鷹から立川まで通っておる高校生のようです。それを見ますと、夏休みの講習を受けるために学校へ十日間行く分を含めて、定期を一年間買うと約一万円だというのです。しかし、一年間学校へ行く日数を計算してみたら、春休み、夏休み、冬休み、試験休み、日曜、祭日、よう休みもあるものだが、それを引くと二百三十日学校に行っておるのですよ。かりにこれをあなた方国鉄の普通料金で計算すると、往復で百二十円、切符乗車で二万七千円です。この計算でいくならば、実質的には六二%の割引きだというのです。あなた方は八七%を割引きしておると大宣伝しておるが、これは数字の上で誤りだ、いかにも大幅な割引きをしておるというようなことを国鉄は言っておるが、現実には自分たちは六二%の割引きなんだという投書を十七歳の女子高校生がしておるのであって、ははあなるほど、こういう計算もあるものか、こう私も思ったのですよ。  それで問題は、あなた方のほうとしては、運輸審議会の答申によると、さらにどんどんと下げて五〇%まで持っていこうとしておるのですね。前の大橋さんのときに、この委員会でそういう答弁があったのです。ところが、大臣もかわったので、この答申の中にはそういうような気配も見られるが、現実にはこのことは、定期運賃通学通勤については、割引率の引き上げというようなことは考えていないというふうにいまの段階で解釈してよろしいですか。
  48. 黒住忠行

    黒住説明員 法律的には、一カ月につきましては五〇%、それから六カ月につきましては六〇%という法定限度がございます。したがいまして、法律改正を要せずしてそれまでは改定ができるわけでございますけれども、実際問題といたしまして、通勤につきましては今回の五二・九%まで割引率を引き下げております。また通学につきましては、家庭負担というようなこともございまして、今回の改定の場合におきましても、運輸大臣の御指示等がございまして、中学生、小学生は据え置きにする、それから高校生につきましても、改定後のものを一割引きするというふうな措置を考慮してやっているわけでございます。将来につきましては、これらの改定ということは、実質的にも金額的にも——金額的にはそれほどの増収にもなりませんし、影響ということを相当考えなければなりませんので、将来慎重を期さなければならぬ点かと思います。  それから、先ほど仰せられました点でありますが、現在の定期は一カ月と三カ月と六カ月とございまして、休み等を考慮する場合におきましては、一カ月定期を買うという方法ももちろんあるわけでございます。一応定期の計算につきましては、一カ月の場合は六十往復、三十日往復するという前提で計算をいたしておりますので、先ほど申し上げましたような計算になるのでございます。諸外国等におきましては、一週間で、たとえば日曜日は通用しないというふうな定期を発行して、そのかわり割引きを考慮するという方法はございますけれども、これらの制度を採用していいかどうかにつきましては今後の検討問題でございます。学生等は、日曜日にも学校に行って運動するというふうな場合もございますが、一応現在の計算では、三十日ということで六十往復を基準としております。六カ月の定期を買えば割引率は非常に高いというわけでございまして、たとえば六カ月の定期の場合におきましては最低が七〇%で、最高が八九・二%、今回の改定によりましてもそういうふうなことでございますので、その人の利用の態様に応じて一カ月、三カ月、六カ月を選ぶわけでございますから、制度といたしましては三つに分かれておるような次第でございます。
  49. 武部文

    武部委員 まあいいです。いいですけれども、さっき私の言った計算——やはり高校生はそういう目であなた方を見ているんですよ。だから、一カ月買えるなんと言ったって無理なんです。やはり六カ月とかなんとか買うようになる。ですから、そういう計算が出てくるので、将来のことについてはまたの機会に譲りましょう。  そこで、もう一つお聞きしておきたいのは、国鉄旅客は一人当たり床面積が〇・三平方メートルですか、それは何という法律ですか。
  50. 黒住忠行

    黒住説明員 いまの点は、おそらく客車の定員のことだと思います。客車の定員につきましては、鉄道営業法がございまして、その第一条に、車両の構造等を規程によって定めるべしという規定がございます。その営業法の規定に基づきまして、たとえば国有鉄道につきましては日本国有鉄道建設規程という省令がございます。この八十条に「客室ノ床面積ハ旅客定員一人二付〇・三平方米以上タルコトヲ要ス」という規定がございます。それから、私鉄におきましては地方鉄道建設規程というものに規定されております。なお、新幹線等につきましては、また別の省令でもって規定をされているような次第でございます。
  51. 武部文

    武部委員 本来言うならば、〇・三平方をあなた方はちゃんと守って、それでもって運賃を取っておるのでしょう。私は、いまここで中央線のラッシュのことなんかを例に出してあなた方に言ったってしようがないんだが、ただ、女子高校生はこういうことを言っているんですよ。利用者が車中で本でも読めるようになってから値上げしてくれと言っているんですよ。利用者はやはりそういうことを言う。それでいろいろ調べてみると、〇・三平方、ちゃんとそれだけのものを確保しなければならぬという法律があるんですよ。鉄道営業法にちゃんとあるけれども現実に守られておらぬ。お金だけはどんどん上げるということは——そのことについてはあなたに言ってもしようがないから、次のときにまたひとつ論争することにいたして、最後に、標準運賃の点について伺いたい。   これは前回の国会でいろいろ問題になったのですが、バスの標準運賃については、全国を十五ブロックに分けて標準運賃を一応きめて、大体二月の終わりごろまでにきまるだろうということだったのですが、いまの進展状況をお聞かせいただきたい。
  52. 富樫勘七

    ○富樫説明員 ただいまの先生の御質問でございますけれども、目下は企画庁と事務折衝中でございまして、まだ結論は出されておりません。
  53. 武部文

    武部委員 そうすると、十五ブロックに分けることは決定しておるが、具体的にその適正な原価、これはきまっていないということですね。
  54. 富樫勘七

    ○富樫説明員 ただいまの十五ブロックという点につきましても、まだそのブロック数につきましては検討中でございます。
  55. 武部文

    武部委員 そうすると、これから先、運輸省考え方は、適正な原価の上に適正な利潤を加えてそれを運賃とするというのでしょう、そういうことですか。
  56. 富樫勘七

    ○富樫説明員 ただいまのお話につきまして、ちょっと補足さしていただきたいわけでございます。  先生がおっしゃっております十五ブロックというのは、まだ確定いたしておりませんで、現在までのところ、この標準運賃制度を導入するにつきましては、標準原価ということと、それから適正利潤ということと、二つの要素をかみ合わせまして考えていきたいということになっておるわけでございます。この標準運賃制度そのものの考えは、御存じのように昨年の九月六日に臨時物価対策閣僚協議会というので、今後乗り合いバス運賃値上げを処理する場合には、一定の地域ごとに地域内事業者の実績原価というものを基礎にいたしまして、その地域におきまして能率的経営を行なうために必要な原価というものを考えて、これを標準原価と考えていく。この標準原価をもとにしまして、さらに利潤というものにつきまして、一般の経済界で考えられております市場金利の問題であるとか資本の利子率等を勘案いたしまして、資本に対する利子相当額を適正利潤と考えるという一応の概念を固めておりまして、それではその適正利潤というのはパーセンテージで示すと幾らくらいになるのかというような点が、まだ企画庁との間で協議中でございます。そういうことになっております。
  57. 武部文

    武部委員 そうしますと、いまのバスの標準運賃制度あり方からいくと、同一地域同一運賃の原則が決定をしてしまう、こういうことになりはしないかと思うのです。そこで、企画庁はかねがね、その同一地域でも企業の努力次第によっては、これは競争原理の線から言うとその運賃において差があってもいい、そういうことを私どもにしばしば言っておったのですが、その点から見ると、あなたのほうは同一地域同一運賃という原則がきまってしまう、そうすると、企画庁のものの考え方と違いはしないかという考え方が出てくるが、その点はどうですか。
  58. 富樫勘七

    ○富樫説明員 ただいまのお話の当該地域内において定めます実績原価と申しますのは、それぞれの各企業ごとに出されてまいります実績ということになるわけでございまして、一つの地域について同じようになるということではないと思うわけでございます。各社ごとでやることになっておるわけでございまして、その地域につきまして標準的な原価を定める。たとえば燃料代であるとかあるいは施設としての車両の購入であるとか、その他不動産の購入であるとか、経営をしてまいります上で必要となる原価を一応標準原価として定めてまいりますが、それを尺度にいたしまして各事業主体ごとの実績というものも見まして、これを実績原価と称することになっております。この実績原価と標準原価との関係を見まして、それぞれに運賃を上げる場合の要否を算定いたしたいということになっておるわけでございます。この部分から申しますと、実際的に結果が出てまいりますのは、各社についてはそれぞれの企業の経営努力が反映するようにするということになっておるわけであります。したがって、一つの地域について一律になるというようなことは必ずしも出てこないと思うわけでございます。
  59. 武部文

    武部委員 ちょっと私はわからないのですが、この標準運賃制度というのは、いままでいろいろと発表されたところから見ると、むしろあなたのおっしゃっているのと逆で、同一地域の中にA、B、Cというバス会社があったとします。この三つは、ほとんど同じ適正な原価、適正な利潤という名目で同じ運賃になってしまって、かりに若干の開きがあっても、差があるということはごく一部そういうことがあらわれるだけであって、むしろ同一地域で同一運賃ということがねらいでおやりになったのではないか、私は前からの説明を聞いておってそう思っておったのですが、違うのですか。
  60. 富樫勘七

    ○富樫説明員 要するに、私どものほうで説明が足りなかったと思いますのでもう一度申し上げますが、標準化するのは原価のほうでございまして、運賃のほうではないのだということを御認識いただきたいと思います。
  61. 武部文

    武部委員 わかりました。そういう説明ならわかりましたので、またそれは、まだはっきり十五ブロックの問題もきまっていないようですし、企画庁との話し合いもあるようです。これは前国会からいろいろ問題にしたところですから、またの機会に質問をし、運輸省見解を承りたい。  時間がたちましたので、私の質問はこれで終わります。
  62. 八百板正

    ○八百板委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時十五分散会