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1968-07-20 第58回国会 衆議院 農林水産委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年七月二十日(土曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長代理理事 鹿野 彦吉君    理事 草野一郎平君 理事 熊谷 義雄君    理事 坂村 吉正君 理事 森田重次郎君    理事 石田 宥全君 理事 角屋堅次郎君    理事 稲富 稜人君       小澤 太郎君    小山 長規君       佐々木秀世君    白浜 仁吉君       田澤 吉郎君    田中 正巳君       中村 寅太君   三ツ林弥太郎君       湊  徹郎君    赤路 友藏君       伊賀 定盛君    工藤 良平君       兒玉 末男君    佐々栄三郎君       實川 清之君    柴田 健治君       西宮  弘君    美濃 政市君       森  義視君    神田 大作君       中村 時雄君    樋上 新一君  出席国務大臣         農 林 大 臣 西村 直己君  委員外出席者         農林政務次官  安倍晋太郎君         農林大臣官房長 大和田啓気君         農林省農地局長 中野 和仁君         食糧庁次長   田中  勉君         参  考  人         (全日本労働総         同盟書記長兼         政治福祉局長) 下田 喜造君         参  考  人         (主婦連合会副         会長)     春野 鶴子君         参  考  人         (日本労働組合         総評議会政治福         祉局長)    安恒 良一君        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件(米価問題)      ————◇—————
  2. 鹿野彦吉

    鹿野委員長代理 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  本日は、昨日に続き、米価問題について参考人より意見を聴取いたします。
  3. 角屋堅次郎

    角屋委員 ちょっと委員長にお伺いかたがた、私どもの考えておることを述べたいと思います。  御承知の、重大な今年度の生産者米価消費者米価問題について、きのうから国会の衆議院の農林水産委員会として、この問題の審議に真剣に取り組んでおるわけでございます。  ことしは、米審の場合、御承知のように、私ども意見に反して国会議員除外生産者代表除外消費者代表除外という異例な事態が出てまいりました。私どもは、米審の構成は、民主的な立場からいっても再編成する必要があるということを、いまでも堅持しながら主張しておるわけでございますが、しかし今日、二十二日から、私どもから言わせれば御用米審が開催されようとする。であるとすれば、特に国会野党側立場とすれば、やはり国会で十分議論する必要がある。  そのためには、生産者代表消費者代表、あるいは米審、食管問題で意見を述べておるような関係団体、こういうものを広く参考人としてお呼びをして、それらの人の御意見も承って国会としての議論を十分しよう、そういうことで、実は財政制度審議会、これは大蔵大臣諮問機関で、私どもからすれば、本来そこまで介入すべきでないような食管制度その他の問題にまで触れて意見を述べておる。だから、それについても参考人として呼ばなければならぬ。さらに経済団体の中では、呼ぶことに予定しておりました経済同友会、これは日本農業のビジョンについても提言をされておりますし、また米価、食管問題についても、ことしの生産者消費者米価、食管問題についても意見を述べておられる。きょうの新聞を見ると、米審を前にしてさらに共同声明等を出しておられる。そういうこと等もあって経済同友会出席を、本日の参考人として呼ぶことを理事会でも決定しておりました。しかるところ、本日の出席ができないというような話をしておるわけでありますが、一体委員長としてどういう手配をされておるのか、この点についてお伺いをいたしたいと思います。
  4. 鹿野彦吉

    鹿野委員長代理 委員長としてお答えいたします。  経済同友会は、日本経済においてきわめて重要なる存在でございますので、経済同友会方々の御意見を当委員会において承りますことは、現時点において特に参考になることと思いましたので、理事会意思決定に基づいて、極力事務当局をして懇請させたのでございますが、ついに御出席を得られなかったのでございます。同友会の方々は、いずれも御多忙のこととは存じますが、国会審議の重要さから考えますと、まことに遺憾のことと存ずる次第でございます。  本日御出席参考人方々は、全日本労働同盟書記長政治福祉局長下田喜造君、主婦連合会会長春野鶴子君及び日本労働組合評議会政治福祉局長安恒良一君でございます。参考人方々には、御多用中にもかかわらず本委員会に御出席くださいまして、まことにありがとうございます。ただいま本委員会におきましては、米価問題につきまして調査いたしておりますが、本問題につきまして、参考人方々の忌憚のない御意見をお聞かせいただきたいと存じます。  なお、はなはだかってではございますが、参考人各位からの御意見開陳は、お一人おおむね二十分程度にお願いすることとし、そのあとに各委員からの質疑があればこれにお答えいただくこととお願いしたいのでございます。  御意見開陳は、春野参考人安恒参考人下田参考人の順序でお願いいたします。  まず、春野参考人にお願いいたします。春野参考人
  5. 春野鶴子

    春野参考人 主婦連合会の副会長をいたしております春野でございます。  米価問題について、本日この場所を得まして、この期における米価決定あるいは配給制度等についての私ども考え方を申し上げることができ、かつまた、なかなかお目にかかることのできない皆さま方に十分聞いていただけることを、私はうれしく存じます。消費者団体意見等は、毎年毎年犬の遠ぼえではないだろうか、こういうひがみもときおり持つことさえあったのでございます。お手元に同じプリントを差し上げてございますので、時間もたいへん短うございますから、朗読いたしますことを省略して、朗読かつ御説明を加えて進めさせていただきます。  物価の安定を公約された佐藤内閣は、今年すでに国鉄、私鉄授業料保険料などの公共料金値上げを断行されました。次いでたばこ、お酒の値上げもされました。さらに麦の値上げによってメリケン粉、パン、うどん、そば類、また水道料私鉄値上げどもはかられております。生産者皆さま方においては、たしか参議院選挙中であったと思いますが、大会が開かれまして、それらについても数百の国会議員皆さま方がお出かけになりましたようですし、かつ福田幹事長あるいは佐藤総理におきましても、食管法基本には触れないとか堅持する、そういう公約をしておられました。  ところが、私どもから言わせると、今回のそれのみに限らず、一般国民に対しては、物価の安定ということを組閣以来から公約されているはずでございます。この点を十分御考慮に入れていただきたい。もちろん米価を含めてのことでございますが、物価の安定、物価問題というのが、生産者米価あるいは消費者米価あり方次第によって非常に大きく左右される。残念ながらその要素を持っておるわけでございます。この点ぜひ深く、国民すべてに公約をされました物価の安定、これを正面から取り組んでいただくということを、お忘れいただいては困ると思うのでございます。  主婦連合会でも、先ごろ、半年にかけていろんな調査をいたしましたわけでございますが、このおりにも、約二万人近くの都民皆さま方から、何をおいても高い物価、これを除去していただきたいという意見がはっきりと寄せられているわけでごいます。この上米価引き上げられますと、諸物価が一斉にはね上がる。最近では農家方々でさえ、生産者米価上昇よりも物価の安定を望むという方々がふえております。この際、生産者団体の異様な圧力に屈することなく、願わくは両米価を据え置かれて、時代に合わないと思います食管法の再検討を急がれてはいかがであろうか、こう思う次第でございます。  以前には、主婦連合会等消費者団体の反対で、生産者米価等値上げが押えられた、こういう御意見を寄せられる方が多うございました。けれども最近は、大富農の方々はいざ知らず、これらは約二五%といわれておりますが、あと七五%の多くの中以下の生産者方々が、多少生産者米価引き上げによって収入がふえる、その収入で一年間大部分消費生活を繰り返してごらんになりますと、結局は、物価の安定ということが、よほど農家の家計にとりましても有利であるということをおつかみになったと私は信じております。消費者生産者いずれにとりましても、物価の安定ということがどれほど求めらてているか、この点重々おくみ取りいただきたいと思うのでございます。  なお、国民生活白書等では、まことに日本極楽のようなよい面のみ、繁栄の面のみが浮き彫りにされておりますけれども、しかし、都会の者もあるいは農家大部分方々も決して極楽に酔っておられない、発展繁栄に酔っておれない貧しい諸問題を家庭の中にはかかえ込んでおります。特に都会消費者たちは、いまだに住宅を持たない者がたくさんおりますし、収入の低い中以下のところでは、食費が収入の半分にも及ぼうという状態から脱し切れないでいるわけでございます。  特にこの面で強調いたしたいのは、こいねがわくは今年度においては両米価を据え置いていただいて、じっくりとひとつ食管法の再検討基本の問題と取り組んでいただきたい。このことが第一の願いでございます。  一の点は、だれが見ましても、ただいまお米があり余り、古くてまずいお米が配給されております。私ども苦情の窓口にも、毎日のように都民皆さま方から苦情が持ち込まれてまいっておりますが、たぶんこれは農薬のせいもありましょうか、あるいは倉庫等に置かれました場合の殺菌剤、そういう条件もあろうかと思うのですが、お米が古くてまずい、あるいはくさいという苦情が非常にふえております。その上、消費者米価値上げを前提にされたかのようなことで生産者米価引き上げがなされようとしているのは、どうも私どもには納得がいかないのでございます。多くの矛盾つくり出しておりますこの食管法の再検討等をそのまま置き去りにして、なおかつ生産者消費者米価を同時に決定するとか、あるいはスライド制に切りかえるとかいうふうな方向をおとりになるということは、私ども反対せざるを得ないのでございます。  農村発展は、私どもといえどもこいねがうところでございますけれども、この数年来、十年近い状況を拝見いたしますと、生産者米価値上げということのみが中心になって、基本的な総合的な農業対策、そういう点が相当怠ってこられたのではないか、そのように見えるのです。幸いお米が相当豊かになってきた、また将来も続くであろうというこの時点に立ちまして、願わくは農村発展を、米価のみに依存するという従来のあり方から、困難ではございましょうけれども総合的な農業対策基本的なところに方向を見出していただきたい、手をつけていただきたい、そのように思います。  三十五年の十月でございました。私ども池田総理にお目にかかりました。当時、所得倍増計画等で高らかな政策に乗り出しておられました池田さんでございました。しろうとの考えであったかもしれませんけれども都市工業発展ということが異様に進む、その陰に高い物価が出てくる。あわせて農村皆さま方が、農村発展ということに希望を失われて、大切な農村そのものを捨てて都市工業方面に走られないだろうか、農村がこのゆえに荒廃するのではないだろうかということまで池田総理に申し上げたことがございました。当時池田さんは、農業基本法等の配置もしていることだし心配はない、こういう御返事でございましたけれども、拝見しました約十年近いこの間、基本的な農村発展対策が力強く進められたというふうには、私どもには見られないのでございます。  第三の点は、早場米奨励金や無制限買い入れ、こういうことはもうおやめになってもよろしいのではないか、このように見えるわけでございます。いずれにいたしましても、しあわせなことにお米が余る、過剰であるというときを迎えておりますので、外米輸入がいろいろな事情で相当量入っておるようでございますけれども、お米の取り扱いが全く他の商品と同様自由なことになりましたときには、また外米等輸入をいたしましても、質なり価格なりの自由な選択を、私ども消費者に与えられていいと思うのです。だが、いまも質のいい外米はお値段も安くけっこうですけれども、内地産米、国内でできるお米が過剰であるという状態のときは外米輸入を減少して、過剰な内地産米による需給、これを根幹にし、ただし質の向上をぜひお考えいただきたい。  現在、食生活の変化がものすごい状態を見せております。聞くところによりますと、パンの伸び、それからまたインスタントラーメン、こういうものが三十億食分もつくられ、売られている。それだけお米を食べないでいるわけでございます。なおまた、十キロの配給量にかかわらず六・三キロ、最近は、御調査になればいかがかと思いますが、六・三キロという食べ量が、もっと減っているのではないかとさえ私ども思っております。  商品生産は、生産流通商業部門、そして消費者、こう結びつくわけでございますが、お米の場合は、いろいろ事情はあるといたしましても、生産者皆さま方がただただ政府に売り渡せばいい、質よりも量という傾向に走られて、肝心のお米を食べる消費者消費動向、お米に対する消費動向、そういう点をじかにおつかみになろうとしない。中間で遮断されている。こういうところにお互いの無理解さ、あるいは反目も出てまいりましたでしょうし、なお、おつくりになる方も、食べる消費者があってこそ互恵繁栄をしていくわけでございます。ところが、米に限ってはこの点がはなはだしく中間に大きな壁があって、売り渡しが済めばそれでよろしい。こういう点で消費者主食に対する、あるいはお米に対する消費動向、この点をあまりおつかみになっていない。こういう点はものをおつくりになるお立場として、ぜひ消費者消費動向というものはじかにおつかみいただきたい。また、議員皆さま方におきましてもこういう点くれぐれも、時代の流れでありましょうか、あるいは嗜好の変化でありましょうか、あるいは主食もあわせて食料品多種多様化というようなことも、ぜひ御調査をいただきたいと思うのでございます。  元来私どもは、お米というものは非常によい食品でありますし、日本独得の大切なものだと思っておりますが、あいにくこのほうに対する消費が予想以上に減っていく、これからも減るかもしれない。こういう点、私どもも黙って見ているわけにはまいらないのです。  これはちょっとつけ足しになりますけれども、非常に質のいい日本のお米は、パリだとかアメリカあるいは欧州各国に心ある人たちが持ってまいりまして、それを玄米等で食べることによって健康なり云々なり、こういう運動が最近は相当な勢いで伸びつつあるということもあるのでございます。ぜひとも質の向上という方向をたどっていただきたいと願わずにおれないのでございます。  第四点の、政府の買い上げは一定量にとどめられて、品質等級産地、そういうものを表示いたしました小袋販売、これを自由化され、配給米とそれから自由米との間に品質価格競争原理を取り入れていただいてもいいときにきているのではないか、このように思うのです。私ども、お米が一般商品と同様の原理が取り入れられると急に申し上げるわけではございませんけれども価格といい、品質といい、どちらかといえば消費者の意向というものはあんまり今日まで取り入れられませんで、いわば一方的な押しつけ、その範囲内であれを買いましょうか、これにしましょうかという程度でございました。  もう一つ中間にお米屋さんという媒体がございます。そこで相当ごまかされたり、あるいは思うような選択買いができない。せっかくきめられましたお米の値段も乱される、あるいはよいお米が米屋さんまでまいりましても、それは相当高いやみ米値段で売られる、いろいろな乱れもここにあるわけでございます。これから先たどっていく方向としては、そこらの商品と同じように見るというわけではございませんけれども、少なくとも主食でございますから、お米そのものにも品質等級産地など明らかに表示した小袋販売が自由にでき、また配給米とも見合いながら自由な選択において買うことができ、あわせてまた販売生産の面でも品質向上、一種のいい意味競争原理がいい意味刺激剤になってほしい、そのようにもう申し上げてもよろしいのではないか、こう思っております。  最後に、当然これからすぐ考えられますことは、新米古米ということが出てまいります。これは適当にまぜ合って配給されたほうがいいか、それが正しく行なわれればけっこうかとは思いますけれども、あまりにも格差がついてまいります。品質も量も相当なものだと思うのです。そういう場合、古米のほうは願わくは相当な値下げをして販売されるということであれば、新米のみに消費動向がいくのではなくて、一番難問になりますであろう古米が相当さばけていくのではないか、こういうふうに思う次第でございます。  大体以上でございます。(拍手)
  6. 鹿野彦吉

    鹿野委員長代理 次は安恒参考人にお願いいたします。安恒参考人
  7. 安恒良一

    安恒参考人 日本労働組合評議会政治福祉局長安恒であります。  私は、まず米価問題について御意見を申し上げる前に、米価物価という関係は非常に重大な問題でありますから、議員各位先生方にこの問題について私どもの見解を申し述べてみたいと思います。  御承知のように、今日の国民の最も関心のある事項と申しますものは、何といっても物価問題であります。過ぐる参議院選挙におきしまても、各与党野党を通じて、また佐藤政府といたしましても、物価安定ということを大きく国民に約束をされて戦われました。これは過ぐる参議院選挙だけではありませんで、ここ数年来の選挙その他におきましてもこのことが明らかにされているわけであります。  ところが、具体的に物価がどうなっているかということでありますが、このような政府与党国民に対する公約にもかかわらず、物価は実際に年々上昇いたしております。大体ことしでも、約六ないし七%くらいの物価上昇があるのではないだろうかということをわれわれは考えるわけであります。そうして国民は、政府に対しまして抜本的な物価安定のための具体策を強く要望し、それが実行について実は強く期待をしているところであります。  しかしながら、国民生活、それから社会生活の面から今日の現状を見ますと、いわゆる高度経済成長政策、そういう政策の裏にはきわめて多くのひずみができてきていると思います。御承知のように公害問題である、交通事故の問題である、労働災害の多発の問題である、それから保健衛生住宅等々例をあげればいとまがないのでありますが、いわゆる高度経済成長政策の中で、こういう問題が物価とともに大きい問題として起こってきているのであります。私たち消費者ないし労働者立場からまいりますならば、池田内閣佐藤内閣と続けられましたところの高度経済成長政策というものは、いわゆる独占資本中心にした多くの優遇政策が進められてきているところに、数々の国民生活社会生活に起こっている矛盾点を引き出しているものだというふうに考えています。高度経済成長政策というものは、国民ひとしく先進諸国並み生活水準向上させるというところに大きなねらいがあるのではないかと思います。また、そういうような政策でないならば、その政策国民のためになった、もしくは国の政策として成功したということはいえないのではないかというふうに考えてまいります。  しかし、現実国民生活実態というのは、率直に申し上げまして、貧富の差というものがますます激しくなっているのではないだろうか。そして物価騰貴というものは、国民にとって将来への生活設計に大きな暗い影を与えているのではないかというふうに私どもは考えております。ですから、青年希望を与えるとか夢を与える、こういうことがよく政治政策として言われます。しかし、現実政治というものは、ほんとうに国民青年に対して夢や希望を与えているようになっているだろうかどうかということを考えますと、むしろ、国民といたしましては今日の政治に対する不信、こういうものが多く増大をしていると思います。特にこの物価政策の面においてであります。でありますから、国会議員先生方は真に国民代表という角度から、いわゆる物価問題について抜本的な、具体的な政策をお示しをお願いしたい、そしてそれに基づく政治を実行していただきたいと考えるものであります。  でありますから米価問題というものも、私どもはどうしても中心的には物価問題との関係において考えざるを得ないのであります。もちろん、米価決定というものは今日の物価体系の中では非常な重要な地位を占めておりますし、私は、本日消費者労働者立場からこの問題について意見開陳するわけであります。  まず、最初米価問題について申し上げたい点は、独占物価公共料金、それから消費者米価は、物価安定のために絶対に値上げをしてはならないというふうに考えております。むしろ、日本物価安定対策のためには、以上申し上げましたものについては前向きの姿勢において、政治として値下げ方向に問題が進められるべきではないだろうかというふうに考えておるわけであります。  そこで、消費者米価を絶対に上げてはならない、こういうことになりますと、おのずから問題になってまいりますのは、いろいろ生産者米価消費者米価関係食管制度の問題、配給制度問題等に問題を触れざるを得ません。  まず最初に、食管制度の問題について私ども考え方を申し上げてみたいと思います。食管制度赤字が続いている、そして将来もやはり赤字が続いていくだろう、そしてこれが日本国家財政の中で一つの大きな問題になるであろう、こういうことはすでに数年前から予測をされ、それぞれ各界から指摘をされたところでありまして、ことしに始まった問題ではないのであります。これがためにわれわれといたしまして主張いたしておりましたことは、農業政策全般にわたって政府として再検討をお願いをしたい。  まず、農業政策の第一の根幹をなしますのは、生産農民の生活安定の問題があります。それから生産意欲向上させるということ。それから今日の経済流通機構の中において以上の問題を達成をするためには、やはり価格によるところの補償制度の安定、こういうようなことを考えなければならぬのじゃないか。よく世間に豊作貧乏であるとか、出かせぎをしてやっと農民皆さん方が生計を食いつないでいっている、こういうようなことが指摘をされておりますが、私どもは、まずこの問題について十分に取り組んでもらいたい、こういうことを数年来主張してきているところであります。  そこで、そういうふうに考えてまいりますと、ことしの生産者米価問題についてでありますが、私どもは、やはり都市労働者農民皆さん方労働に対する評価というものは同じでなければならないと思います。そういう意味からまいりますならば、今日生産者米価農民皆さん引き上げ要求を出されているということは当然のことであろう。でありますから私どもは、やはり農民皆さん方納得のいく価格補償というものを国が考えるべきであろう。でありますので、私どもはまず、この米価というものについては、国会の場において決定をされるのが至当ではないだろうかというふうに考えております。  そこで、次は現行の食管制度についてでありますが、私どもは、やはり現行食管制度というものについては、これを堅持していってもらいたいということを考えておるわけであります。まず、現行の食管制度というものは、御承知のように二重米価制度を堅持する。これは御承知のように、米というものが国民基本的な食糧という意味で、それの安定供給というものが国民生活に対して非常な大きな役割りを果たしているわけでありますから、たとえば、ことしはすでに四カ月分ぐらい昨年度米を持ち越している、こういうようなこと等から、食管制度について再検討という声が起こっておりますが、私どもはこのことについて反対であります。  なぜかと申し上げますならば、昨年度におきましても約三十五万トンの外国米を輸入して食糧制度等が維持をされておる。こういうこと等を考えてまいりますと、やはり二重米価制度を堅持していって国民基本的食糧である米を確保していくということについては、今日の日本経済の中において、また、日本国民の生活の中においてもきわめて重大な問題だと思います。  そこで問題になりますのは、そういうふうにものごとを考えてまいりますと、その赤字の問題をどうするのか、負担増大をどうするのか、こういうことが大きな問題になってまいります。  まず私どもは、食管会計の赤字というものの中身について検討してみますと、約四割は政府国民に食糧を供給するため当然必要ないわゆる行政経費であります。特に事務、人件費、それからこれに匹敵するほどの金利等、当然一般会計からまかなわれるべきものについて、これを食管の赤字として取り扱われているところに問題があるというふうに思います。  それからいま一つは、これは私が申し上げましたように基本的な問題といたしまして、この食管会計の負担増大の原因は、やはり今日までとってこられた政府農業政策の欠陥、経済政策の欠陥、と同時に、いわゆる物価が数年来ずっと引き続いて上がっておるというインフレ政策、こういうものが私どもはやはり食管会計の負担を増大させるところの一つの大きな原因だろうと思います。ですから、そういうものを基本的に解決することなく、特に食管会計の赤字消費者に肩がわりしていくということでは、みずからの行政責任の欠陥を国民に転嫁するというやり方にほかならないというふうに考えるわけであります。  食管の問題については、以上のような考え方を私たちは持っております。  それから、その次には米価審議会の問題について意見を申し上げなければなりません。御承知のように、近日中に政府皆さん方は、中立米審と称する米価審議会において本年度生産者米価について審議が進められるというふうに聞いております。しかし、この各審議委員の名簿を見せていただきますと、政府関係の多くの審議委員を兼務されている諸先生方が非常に多いということ、もしくはマスコミ関係団体の諸先生方が非常に多いということであります。しかし、この米価審議会というものは、生産者米価審議すると同時に消費者米価についても審議をしていく、もしくは現行の食管会計制度そのものについても意見を述べる、こういうふうにマスコミ等においてはいろいろ報道されておるわけでありますが、そういう問題を審議する審議会に、国民代表であるところの国会議員、それから生産者代表消費者代表、こういう者を一切除外した審議会において、これがいわゆる中立米審であるというふうにわれわれはものごとを見ないのであります。私たちは、非常にことばが悪くて失礼でありますが、政府御用米審であるというふうにこの点については見なければならないと思います。  そこで、これだけ米の問題が国民の間において大きな問題になり、政府といたしましても、また国会といたしましても重大な問題になっております今日におきましては、すみやかに米審を改組いたしまして、真に国民各層の代表を網羅した米価審議会においてこれらの問題が審議をされることを、私たちは強く要望をいたすものであります。  それから、あとまだほかに、いわゆる古い米の問題であるとか、それから早場米の奨励金の問題であるとか、こういうような問題等があります。しかし、私どもは、これらの問題について一つ一つ述べるのには、制限時間が十五分ないし二十分ということでありますから、こまかく述べる時間を持っておりません。ただ、私たちは、この点について簡単に申し上げますなれば、今日、四カ月分の国民のいわゆる食糧、古い米が余っておるということは本年度においては事実でありますから、私たちは、やはりできるだけ米をおいしく食べる、米の管理を十分にする、こういうような観点から考えましても、こういう古い米のいわゆる管理について、政府は十分な注意を払うべきである。それがために倉庫等が要ればどんどんつくっていくべきであろう、こういうふうにこれらの問題は考えますし、それから早場米の奨励金につきましては、私たちは、やはり基本米価に組み入れるべきであろう、こういうふうにこの問題は思っているということを簡単に申し上げておきたいと思います。  そこで、最後にもう一ぺん私どもが強調申し上げたい点は、いわゆる消費者としての立場から、ことし御承知のように、平年度におきまして一千億の減税ということが政府政策として行なわれたわけであります。しかし、現実面での酒、たばこ、それから公共料金等の諸物価の値上がり、こういうもの等を考えてまいりますと、私たち国民にとりましては、実質的には逆に増税になったというふうに考えておるわけであります。  昨年は、御承知のように消費者米価が一四・四%値上げをされました。これを私ども労働組合におきまして家計調査をいたしましたところ、大体五人家族でこれだけの消費者米価値上げというものは、年間に一万円ぐらいの支出増になるのであります。もしもことし消費者米価値上げをされるということになれば、四年間連続して消費者米価値上げをされるということになるわけであります。そういう角度から考えまして、私どもは、消費者米価値上げには絶対反対をすると同時に、万が一ことしもそういうような政治が行なわれるということであれば、国民の一員として、国民と一緒になって、いわゆる消費者米価値上げについての反対の数々のデモンストレーションを起こさざるを得ないのではないか、そういうふうに問題を考えているところであります。  でありますから、政府は、何といっても公約の最大のものは物価抑制、物価安定、こういうことにありますから、本年度の消費者米価については、絶対にこれを据え置きをする、こういうことをひとつ御決定を願うように強くお願いをするわけであります。でないと、すでに便乗値上げということで、消費者米価値上げされれば、それに相前後してあらゆる料金等が上げられる、こういうような今日の経済情勢にあるのでありますから、私どもはこの点を強く要望いたしまして、米価問題に対する総評としての見解を終わりにしたいと思います。(拍手)
  8. 鹿野彦吉

    鹿野委員長代理 次に下田参考人にお願いいたします。下田参考人
  9. 下田喜造

    下田参考人 本日は、消費者である私たちの意見を聞いていただく機会を設けられたことを、厚く御礼を申し上げます。  米審が、私ども消費者代表を締め出されましたので、この機会に、与えられた時間で、できるだけわれわれの意のあるところを申し添えたいと思います。  さて、昨今、お米ができ過ぎているのに、米の値が上がるのは納得できないという声が大きくなっています。私は、このような声の中には、何か農家人たちにその責任があるような響きのある節をうかがうのですが、もしそのような考え方の人がいるとするならば、まことにもって不届き千万な話だと思うのであります。  大蔵省の一部では、米の買い入れ制限や、生産者米価の二分割価格制を実施しようという意見があるといわれていますが、このような意見を聞くと、何だまた金庫番の意見かと腹が立ってしかたがありません。どうして今日お米が余る結果を生じたのか、それはだれの責任なのかを考えるべきではないでしょうか。単に帳じりだけを考えるような頭番さんには、安心してお店はまかせられませんし、そんな番頭さんではお店の繁盛どころか、衰退の一途をたどる結果になるでしょう。  私は、食管会計の赤字が今日危殆に瀕するまでに至ったといわれる問題点をめぐって、次の三点にしぼって指摘をしたいと思います。  その第一は、米をつくれ、つくれと増産の叫び声をあげたのは、一体だれなのでしょうかということであります。政府の増産連動にこたえて私たち消費者の口を豊かにしてくれたのは、農家人たちです。それを、いまになって、米が余っているから買わない、財政危機だからこの際食管をやめようというがごとき場当たり的意見には、全く腹立たしさを覚えてなりません。  お米の消費量が、昨年や今年になって急に減ってきたわけではありません。少なくとも四、五年前からこの減少傾向が顕著になっていました。一方生産量は、農家の努力と農業科学者や指導者の尽力によって、年々反収は増加してきました。また、農家が米作中心主義になってきたのは、お米をつくるととが農家の家計にとって一番安定するからではありませんか。他の酪農、畜産や蔬菜、園芸などの産物価格が安定せず、常に豊作貧乏に悩まされてきたので、消費構造の変化におかまいなく、農家の家計安定のために農家は米づくりに精を出してきたのです。採算ベースに合った畜産、酪農や蔬菜、園芸業を成立させるためには、多くの土地や資金を必要としますが、現在の農家には、この土地や資金が乏しいのではないでしょうか。だから、政府の増産運動と相まってお米づくり中心となってきたのです。それを、つくり過ぎはひとり農家の責任のごとく、いまさら、つくった米を政府は必要分だけ買う、残りは自由販売というような小手先細工、場当たり的な糊塗策に憤りを感じます。  政府は、なぜすなおに農政の失敗を認め、その解決策を国民に示して協力を求めないのでしょうか。政府と農林関係議員米価をめぐってかみ合ったとか、圧力をかけたとかかけないとか、仄聞することがしばしばあります。その結果は、農政を忘れた政治米価によってわが国の農政が行なわれてきたとさえいわれています。  私たち労働組合や使用者の間でも、毎年賃上げ交渉が行なわれます。賃上げは企業の収益を食っています。だから今日では、常識的な労使関係の間では、先行き見通し、経営計画や産業政策生産向上について、頭を日夜痛めて努力をしているのです。それを怠ると。石炭産業のようになると歴史が教えています。  労使の間では、常にこのような努力が積み重ねられているのに、政府や自民党が農政についてなぜ、根本的な方策を講じることなく、当面を糊塗するだけの指導しかしなかったのか、私は大いなる不満を抱いています。  第二に、昨年わが国の輸出が年間百十二億ドルに対し、農林水産物輸入は輸出額の実に三六%、四十二億ドルに及び、年々増加の傾向を示している点です。また、国内米価格はカリフォルニア米価格の二倍も高いこと、さらに酪農、畜産物についても、コスト競争のできるものが少ない点を重視しなければなりません。これは、消費構造が変化してきたのに国内生産がそれに対応せず、その大部分輸入に仰いできたこと、零細農家、兼業農家が多く、生産性が低く、コスト高だということです。私はすべての農産物を自国でまかなうべきだと申し上げるのではありません。しかし、わが国は貿易立国として、このように消費する産物をいたずらに輸入にたよるということは国家的な損失であり、しかも、農業における生産能力がないならばともかく、農政の実よろしければきっと成果を見るべきものまでも輸入に仰ぐことに、強い不満を抱くのであります。  農業経営の基本は土地にあると存じます。それにもかかわらず、年々耕作面積は減少しています。一方では、水田は増加をしています。そして、お米をつくることがことが不適当と思われる地まで水田がつくられ、北海道の東にまで水田が広がっています。酪農に適した土地は酪農に開発すべきであります。われわれの英知と勇断をもってわが愛する国土を効率よく利用することが、私たちや、私たちの子孫の幸福に役立つのではないでしょうか。それを指導、援助、実践することが政府の責任ではないでしょうか。  第三の問題は、このように水田が増加し、お米が増産されてきましたが、はたしてそれで農家の家計が豊かになってきたのでしょうか。私は、農家収入がふえ、豊かになってきたから生産者米価を上げなくてよいという考え方には直ちに賛成できません。生産者米価は、限界農家の反収を基礎にしてはじき出しているようですが、はたしてこれら限界農家やそれ以下の人たちの生活が豊かになってきたのでしょうか。都会ではかぎっ子ということが問題になっていますが、農村ではもっとひどいててなし子がふえています。また、兼業農家がふえている点をどう見るべきでありましょうか。  出かせぎによって農家には潤いがなくなり、人間性は失われ、これはまさに人道問題ではありませんか。それでも農家の出かせぎはふえているのです。それは農家が豊かでない証左です。しかも、この出かせぎ労働者や兼業農家人たちの職場の地位は、決して安定していません。加えてその労働条件は高くありません。それどころか、兼業農家や出かせぎ労働者労働条件が、一般労働者労働条件の足を引っぱっている作用をしています。つまり、これは低賃金、低労働条件政策を形成するものです。いまや後進国のように、農業従事者を産業予備軍的な地位に置くような政策は、国家の繁栄に役立つどころか、むしろ害毒を流す結果を招来いたしましょう。  現に、一昨年、失業保険法改正案を政府は提出しましたが、国会でつぶされました。それは、かねての念願であった五人未満の事業所に働く人たちまで失業保険をこの際適用しようというすばらしいものでありました。しかし、これを成立させるために、一方で政府は、出かせぎ労働者を失業保険から締め出そうという案がありましたので、与党野党議員が、これに反対をしたのです。すなわち、失業保険が農政の矛盾を補っていたところへ、農政の改革なしに失業保険だけを打ち切ろうとしたから 農林関係関係の深い議員方々中心になって反対をしたのです。その結果は、いまだに五人未満事業所の労働者は、失業保険の適用を受けるに至っていないのであります。  このように、農家人たちは失業保険を活用しなければならないほど豊かでないのです。冷害がやってきたら、北海道はまた米が取れなくなるでしょう。少しずつの水田で、低い生産性、高いコストで苦しんでいる農家、これを補うために、人間性や家庭を捨てても長期の出かせぎに行く人々や、どっちつかずの兼業農家を救うときが来ているのではないでしょうか。それなくして米価の根本的解決策はないと思うのであります。  そこで、私は、全日本労働同盟代表して、次の建設的な提言をしたいと思います。  その根幹とするところは、政府はこの際、五年ないし七年の間に、農業の基盤をつくり変えることです。つまり、米づくりに向く土地に米を、酪農、畜産、蔬菜、園芸などに向く土地はそれに開発、転換をはかり、かつ集中、集約すべきであります。しかも、これらの消費動向の長期見通しの上に立ち、かつ国際価格と競争できる基盤をつくり上げなければなりません。そのためには、農業の基本である土地の開発、生産向上の要諦である農地の集約化をはかる必要があります。都会近郊の土地は工業用地に向けられても、わが国土には、まだまだ農地開発に向けられる余地が多く残されているといわれています。要は、これに集中的に投資する資金が必要なのではありませんか。私は、この際政府が農業構造改革のために思い切った財政投資を行ない、必要によって、たとえば公債を発行してでもやるべきだと提言する次第であります。  そのために、政府はわが国の英知を集中し、たとえば農業基盤開発整備を目的とした委員会を中央、地方にわたって設置し、来年からといわず今年から農業近代化に着手すべきでありましょう。もし政府が勇断をもってこれらの農業の近代化をはかる素地を固めるとするならば、その実効果があがる数年の間、最低線の消費者米価を上げても耐え忍んでくれというならば、私たちはがまんをしなければならないでしょう。しかし、今日のように、政府の態度に見られるような米価基本問題を解決する体制をつくらないままに、当面する食管会計の赤字解消、はたまた総合予算主義の堅持ということだけで、消費者米価値上げするようなどろなわ式には絶対反対であります。もうこの辺で当面を糊塗する愚策はやめて、ほんとうに農家人たち国民、国家のために役立つ農政を実行してもらいたいと思うのであります。  農業基盤整備に着手すれば、転業、離農、離村の方々、当面困難にぶち当たる方々を多く生じるでありましょう。これらの方々には、政府は積極的な援助を講じるべきであります。そのようなためになら税金を幾ら使っても、国民は必ず深い理解と納得をするでありましょう。単に米価値上げに賛成するか反対するか、食管会計是か非かというのではなくて、今日こそ抜本的な農業の構造改善、近代化を講ずるときでありましょう。大蔵省も農林省も食糧庁も経済企画庁もセクト主義を排して、与党野党も党派の利害を乗り越えて、はたまた農家消費者も、国をあげてわが農業の発展と安定、ひいては国民、国家の繁栄のために、利己心を捨てて抜本的な農政の確立と推進のために取り組んでいただきたいと思考する次第であります。私たちも、及ばずながらその立場から取り組む覚悟であります。  以上、私が申し上げましたように、当面する食管制度米価決定、原価構成の問題点など、物価問題につながる重要な米価問題のこまかい点についても指摘していきたいところでございますが、私ども消費者立場として、物価問題はきわめて重要な関心を示すところであります。しかもこの物価問題で、農林水産物のわれわれの生活上に占める比重は非常に大きいものがあります。それだけに、その農林水産物の物価安定をはかるためには、基本的な農業改善をはかり、近代化をはかることが、ほんとうに物価問題の解決につながることとわれわれは理解するからであります。  したがって、この委員会及び貴院を通じて、われわれの生活の最大の問題である物価問題、ひいてはその根幹である農政問題に、適切なる御指導をお願いする次第であります。貴院の御処置と御研さんを、切に希求する次第であります。  御清聴ありがとうございました。(拍手)
  10. 鹿野彦吉

    鹿野委員長代理 以上で、参考人の御意見開陳は一応終わりました。     —————————————
  11. 鹿野彦吉

    鹿野委員長代理 つきましては、参考人各位に対して質疑の申し出がありますので、順次これを許します。まず工藤良平君。
  12. 工藤良平

    ○工藤委員 私は、春野鶴子先生にお伺いをいたしたいと思いますが、この文章にもありますように、米がたいへん余って、古くてまずいお米が配給されているということでございます。確かに、昨年のお米につきましては、史上最高の生産高があったわけでございますが、この点、過去五、六年の米の需給関係から見ました内地米の手持ち米というのを、どのように御理解なさっているか、その点をまずお伺いをいたしたいと思います。
  13. 春野鶴子

    春野参考人 農林省でございませんので、前から残っているお米が、新聞等でいわれている程度に、二、三カ月分現在残っている、この上この秋の収穫、買い上げがありますと、ある新聞では、約六カ月分は十分である、あるいは一年間は倉庫に詰まりっぱなし、こういうふうにいわれるわけで、私ども実際にあれはしておりません。しかし、私どもが実際に会として調査いたしましたり、あるいは苦情の窓口に持ち込まれてまいります都民方々の動向、それから、私どもも配給を受けていただいているわけですが、どういうふうな配分であるか。これは大体配給米品質価格がきめられておりますので、それに従って受け取っているわけですけれども、ときにはそのお米屋さん等のやりくりのしかたによって、意外に消費者のほうが古くてまずい——古いのではないだろうか、あまりまず過ぎる、それからくさいということですね。こういう現象がしばしば見られるということを、ここに指摘しているわけでございます。
  14. 工藤良平

    ○工藤委員 もちろん、専門家ではございませんので、一般的な消費者の感じからの御発言だと、私はそのように理解をいたしているわけであります。しかし、お米が余る、余るということは、ただ、昨年の非常に大豊作であったということ、過去三十六年以降の統計を見ましても、三十八、三十九、四十、四十一年といった年は、相当な外国食糧を輸入しておりますけれども、しかし、内地米の手持ちというものは、極端に言いますと、数万トンにしかすぎなかったという危険な状態であった。しかし、このことを農林省は国民には知らせなかった。知らせるということは、食糧危機という非常に重大な問題を提起する、こういう立場から、この問題を出さなかったわけであります。  ところが、昨年の大豊作によりまして、あたかも米がたいへん余ったような感じを与えている。これはやはり消費者にとりましても、たいへん重要な問題だと私は思うのです。特に、昨年の干害あるいは一昨年の北海道の冷害等を見ましても、農家がその冷害や干害にあったときに、みずから食べる保有米を実は買わなければならないという悲惨な状態というものがあった。これは何を意味するかといいますと、現在の食糧管理法が、やはりすべて政府に売らなければならないという規定のもとに、農民がみずからの犠牲の上に立ってそういう措置をとってきたという、こういう歴史的な経緯というものを私たちはいま見落としてはならない。そのことを消費者としてどのように理解をするか。それはやはりこれからの食糧管理の上において、消費者がまず理解をしてあげなければならないたいへん重要な問題だ。昨年一年の豊作によって、あるいはことしどの程度の米がとれるかもわからないという見通しの上に立っての論議を、やはり私たちはしていく必要があるのではないか。このことについて、具体的な内容はよろしゅうございますが、基本的にまずお考えを聞いておきたいと思います。
  15. 春野鶴子

    春野参考人 先生のおっしゃるとおりでございまして、私ども現在の時点で、これから先日本のお米のとれ高が、もう全然手放しで安心していいように、内地産米が豊作また豊作が続くという断定的なことも言えないわけです。しかし、幸いにして——従来もいろいろな波がございましたね。消費者も、あるとさはおびえたこともございます。あるいはときには突っ走った方が、少々買いだめをするというようなときもあったわけです。しかし、幸か不幸か、とにかく米作中心ということが続き、かつ、生産者米価引き上げということで、毎年毎年年中行事の異様な興奮状態がかもし出される。いま先生が御説明になったような、落ちついたいままでの歴史的見方、これからこうであろうかというような真実の情報を、生産者も、特に消費者のほうがそしゃくしていくためには、私は情報提供がはなはだしく十分でなかったと思うのです。それはいま急にある省が、さあ余った余ったと新聞にある意図があって書き立てられているとは言いませんけれども、しかし、消費者も異様なまでの興奮状態の中で生産者米価値上げ、そうしてまた引き続く消費者米価値上げ、この時期が過ぎますと、けろっと米のことが終わってしまうんですね。そういうような状態をぜひひとつ脱却していただきたい。きわめて冷静公正に、いままでの歴史的背景、それから、これから先の冷静な見通し、またそれに対する対策、そういうことを引き続き生産者にも消費国民一般にも正確に御提示願い、かつまた、私どもが見た目にも、農村を背景にしてお出になりました方々も相当おありですけれど、その方々も、消費者消費の動向あるいは価格から受ける影響、そういう全体的なことについては万般の御配慮を請いたい。私ども少しひがんでいる点があるかもしれません。  消費者というのは星の数ほど全国におりますけれども、まとまって、ある時期、ある種の相当数の代表をお出しして、自分たちの申し上げたいことを十分伝達する、発表する、そういうことにはなはだしく欠けているのでございます。したがって、いまおっしゃいましたようなこれまでの歴史、これからの見通し、それから価格等についてのその取りきめについても、国会先生方が与野党を問わず、何よりも何よりも農民を愛するごとく、何よりも何よりもまた消費者に対する万般の御配慮のもとに、実に冷静公正にきめられていくというふうなことを私は望みたい、こう思っております。
  16. 工藤良平

    ○工藤委員 そういう意味であるとするならば、この前段に書いてありますように、確かになるべくうまいお米をたくさん食べさせてやりたい、これは、私は本来の食糧行政の行き方だと思うのです。農民も、いままでそういう意味で一生懸命米をつくってきた。たまたま昨年の豊作によって、いま大きな局面に到達をしているわけなんですけれども、私は、現行の食糧管理法の中でなお改善すべき事項がたくさんあると思います。これはもちろん食糧庁の責任において、政府の責任においてやらなければならない。それは生産者のためであり、消費者のためである。こういう考え方の上に立つならば、やはり食糧管理法の重要な前提であるところの二重価格制というものを、消費者立場からもやはり主張していく、そこで政府に改善を迫るということは、私は、当然の方法ではないだろうか、こういうように思うわけであります。  ただ、この主張の中で、私、非常に矛盾に感じますのは、この第四番目の、政府の買い上げを一定量にとどめて、あと品質の等級とか、あるいは産地、そういう表示によって自由米との競争をさしていったらどうであろう、こういうような御主張なんでございますが、これは、それでは、現在売られておる消費者米価というものと生産者米価というものの関連は、一体どうなっているんだろうか、あるいは、自由に流れておるお米の価格の動向というものはどうなっているんだろうか、そういう点を踏まえてこのようなお考え方を出していられるのかどうか、その点をひとつお聞きをしたいと思うのです。
  17. 春野鶴子

    春野参考人 第四点は、いままで長く続いてまいりました食管法を踏まえての、今日まで続いてきた生産者米の買い上げ、それからそれがお米屋さん等を通じて消費者が受け取るあり方ですね、これをできるだけ規則を守って、きめられたとおりに正しく買い、正しく売られる、こういうことで私どもきたわけです。  ところが、いつしか、どういうかげんか存じませんが、実際上は、配給店ですらその配給のしかたの規則の守り方が乱れ、それからある地区等においては、もう配給店あるやなしや、やみ米というものが多く、そのやみ米屋さんがどういうお値段をおつけになるか知りませんけれども、ある年は高く、最近は、ずっとやみ米のほうが配給米よりも下回って、しかも、持ち込まれる品質についてはおいしいというふうな、そういう現状のほうが先にあちらこちらであらわれてきている。  私どもは、現在までにおいては、食管法という規則を国民は守らなければいけない、そういうたてまえできております。いわゆる善良なる消費者ということできているはずなんです。ところが、事実、どういうわけかくずれつつあるわけですね。そういう点をむしろ私どもはふしぎに思っている一人であって、事実、米審等におりましたときに、配給米の量と、それから、おそらくやみ米に流れているであろう量、そういうことも御質問申し上げて、数値など伺ったことがございますが、私どもは、そういうことがもう現行の食管法実施の中で、数年前から、まじめに守っていくほうがおかしいくらいに乱れた実情が出てきている、それをふしぎに思っている一人でございます。この四点を出しましたのは、こういうふうな願いをわれわれがもう持ってもいいんじゃないか。それで、そういう方向に向かって、つまり、ある種の自由化といいましょうか、現在までは食管法というものをたてまえにしたきんきらきんのワクにはまったあり方できているはずなんです。しかし、どこかではくずれておりますけれども……。そうだとするならば、これからもこいねがわくは豊作が続いてほしいし、続くであろう。そうすると、豊富になったお米というものをめぐっての消費者の自由選択、そういうようなこと、そしてまた価格の上でも、売り方の上でも、ある程度の自由競争の原理が、いい意味の刺激を与えてもらって、そして、消費者はいままで押しつけられ押しつけられの価格であり、品質であり、買い方でありました。だとするならば、もうこれから先行き消費者の持つ選択の自由、そういうことが相当取り入れられてもよろしいのではないか、こういう主張でございます。
  18. 工藤良平

    ○工藤委員 時間がございませんから、最後に、私、ちょっといま試算をしてみたわけでありますが、この四番の主張でまいりますと、現在、昨年産の米が一万九千五百二十一円、平均でございます。それが消費者に一万九千六円で売られているわけでありますね。ところが、この自由米流通状況の実勢価格を見ますと、生産地で一万八千三百五十五円、これは百五十キロ当たりであります。そうして消費地におけるいわゆるやみ米といわれる流通実勢価格を見ますと、二万二千六百七円、こういうことになるわけでありますね。そういたしますと、これはもちろん、政府価格というのはおそらく三等建て値でありましょう。そういたしますと、実際に自由米を認めるということになりますと、おそらく一、二等のたいへんいい米が自由米として流れるということになりますと、おそらくさらにこの値段というものは開いていくのではないか。そういたしますと、実際問題として自由米というものを許した場合には、消費者は当然高い米を買わなければならないということは、現在のもうほとんど大部分を統制しておる今日でさえもこのような実態でありますから、そういう点を十分に考えて、この自由米というものを私たちは検討しなければ、たいへん重大な状態に陥るのではないか。むしろこの主張というものは財政当局の考えることであって、消費者というものは、現在の統制の中でできるだけうまい米をおれたちに食わしてくれ、こういう主張のほうが最も正しいのではないか、そういうように私は思うわけでありまして、ぜひこの四番の問題については、もう少し勉強していただきまして、主婦連の方々にも宣伝をしていただきたい、こういうことを申し上げまして、私の質問を終わります。
  19. 鹿野彦吉

  20. 角屋堅次郎

    角屋委員 せっかく参考人方々がおいでの機会でありますので、敬意を表しまして、私からも数点お伺いをいたしたいと思います。  特に、本日参考人で御出席春野さん、安恒さんは、私ども一緒に米審の中で、ともにこの重要な問題を議論してきた間柄であります。私がお聞きするまでもなく、相当程度のことは十分踏んまえておられる方々でありますし、また、きのうお呼びした生産者代表の中でも、安井さんあるいは中原さん、これもいずれも米価審議会の中で一緒にやってきた仲であります。  きのう、きょう、参考人を呼んで皆さんから御意見を承るという、こういうやり方をやりながら、私が実感として考えましたのは、この質疑のやりとりだけにならざるを得ない。本来ならば、いろいろな階層の人の出ておるところで、Aの意見が出ればBの意見が述べられる、こういうやはり民主的な運営の中で大切な国民食糧の問題が議論をされる、こういう機会をはずしたということは、たいへんな間違いだと私は思う。そういう点で、ことしのいわゆる中立米審、われわれから言うと御用米審と言っているのは、個人的に見解がどうあろうと、いわゆる国会野党側も言い、あるいは生産者代表消費者代表も言っておる意見を無視して米審構成をするということであるならば、これはやはり御用米審といわざるを得ない。そういう形の中で、米価問題のみならず、いわゆる農林省設置法の中あるいは米価審議会令から見ても、本来予定されていない食管問題までやろうという。一体それは越権行為じゃないかという実感を私どもは持って、政府与党に追及も行なってまいりました。たいへん皆さま優秀な方々参考人として呼んで、米審の中で意見を述べる機会を失なわしたということは間違いだ、こういうふうに率直に言って思っておるわけです。  国会米価を議論し、さらに、私どもの要請からいくならば、米価は最終的に国会できめるということにしていただけるならば、あえて国会議員米審に入るまでもないだろうという気持ちはありますけれども、まず春野さん、それから、先ほどお話が安恒さんからありましたけれども、同じ意見だと思いますが、お二人から、一体ことしの米審構成というものについてどう受けとめておられるのか、あるいは今後に対する希望はどうなのかという点を、私は率直に聞かしてもらいたいと思うのです。この点は春野さんと安恒さん——先ほど安恒さんは御意見がありましたけれども、同じことでありますが、お二方から御意見をまずお伺いしたいと思います。
  21. 春野鶴子

    春野参考人 米価審議会の目的、たてまえからすれば、従来構成されておりましたように、あるいはもっと広い範囲からでも代表が出て、十分論議を尽くすべきだ、そう思っております。これは原則だと思うのです。  ただ、私も二年ほど末席を汚したわけですけれども、私などのような経験の浅い、白紙の立場で、消費者代表ではございますけれども、議論等の雰囲気、そういう点でふなれな者から見た二年間の米審あり方、こういう経験から感想を申し述べますと、あのまま続いても、結局、答申を求められるけれども答申は出ないのだろうと思うのですね。異様なまでの雰囲気の中で、最後の大詰めにきますと、しょせんかみ合わない御意見方々意見開陳されて、そして一本の答申をということですから、ほんとうは論議を尽くして、いずれにしろ一本にということが理想なんでしょうけれども、これは、私などの未経験、ふなれな者の観測かもしれませんけれども、もう初めからかみ合わないものが、幾つか大きい流れで、対立といいましょうか、そういうのがあるように思うのですね。ですから、答申を求められて答申が出ない、そういうことが二度ぐらい続いたわけですね。  私は、いまのあり方が決していい姿とは思わない。思いませんけれども、いままでの繰り返しということで、またぞろあれだけ精力を費やして討議するにもかかわらず答申が出ないというのであれば、いまの姿がとてもいい姿だ、すっきりしてそのほうがいい、われわれの意見もあれにまかしておいていいとは思いません。けれども、一度やってごらんになったらいいと思う。そしてその姿を、全国の皆様方もまたわれわれも十分直視して、そしてこれはやはりいけないんだ、あるいはその結果の是々非々というものを十分見るべきだ。これで固定するわけではないでしょうし、私は一つの試みだ、そんなふうな程度に思っているというわけです。
  22. 安恒良一

    安恒参考人 私は、この米審の構成については、いわゆる消費者生産者、その他各界の代表を加えたものでやはりやるべきだということを言いましたから、これは重複しますから申し上げません。  ただ、いま春野参考人からも言われましたように、たまたま私が米審委員をしているときに、答申が出なかったという事実はあります。しかし私は、これは運営のしかただろうと思います。というのは、私は、たとえば中央医療協議会の委員をしています。ここでは、全く米審以上に利害関係が相対立する議論があります。しかし、中央医療協議会においては、常に国民の生命と健康を守るという角度において一致をしているわけであります。でありますから、私は、政府の運営のしかたにやはり問題があるのじゃないか。ですから、米審の場合におきましても、生産者代表消費者代表、その他学識経験者等々各界の代表で、いま少し米審の中で議論をうんとやる。そして議論をうんとやっていけば、一致点を見出すことができるだろう。  そのときに特に考えねばならぬことは、米審以外の場においてすでに米価等が決定をされて、それを押しつけようとすると一致をしない。最近、中央医療協が非常にうまくいっているというのは、東畑というりっぱな会長をいただいているほかに、政府みずからが、医療費問題はこれはたいへんな問題だ、へたに政府与党が口出しをするとかえって大きなやけどをする、こういう角度から中央医療協議会にすべてをまかせる。そこで十分議論をしたものを答申でもらえば、それを政府政治としてやるというふうな態度をとられるから、中央医療協議会が、たいへん困難な中にもかわらずに一致点を見出しています。  でありますから米審の場合にも、各界の代表を網羅して十分意見を戦わせると同時に、そこで決定されたことをやはり政府与党が尊重していく、こういう立場が貫かれれば、いわゆる答申ができないなどということはないと思いますので、そういう角度から米審を運営され、各界の代表を加えていただきたいということをお願いしたいと思います。
  23. 角屋堅次郎

    角屋委員 いま両参考人からお話がありましたが、私は二年間の経験で、むしろ安恒さんのお考えのような点を思っておるのです。答申というのに政府一つの理由をつけ、また、春野さんも触れられたのですけれども、これは御承知生産者代表消費者代表あるいはその他の方々等を含めて、生産者米価問題を議論する、あるいは消費者米価問題を議論する。その場合に、たとえば、春野さんも御承知のように、生産者米価問題では試算というだけでも三つ出てくる。こういう出し方をして一本答申をということは、これはなかなか困難な問題なんです。指数化に賛成な者もおる。積み上げ方式に賛成な者もおる。新たな算定方式の主張もある。そういうものを、委員会の全体としての英知と、そしてお互いの集約への努力ということを短時日の間にやろうと思っても、至難な場合があるのですね。だから私は、従来の形式の中で答申が出なかったということだけを非難の理由にして、ああいう米審構成に切りかえるというのは、基本的に間違っておると思う。だから、これはそういう構成の中でやる場合に、どうしても一致点を見出せぬ場合には、答申の形式としてこういうやり方をやるというのは、運営の問題としても可能であるということであって、私は無答申を理由にして、トライとしてこういうやり方も、本年度は認めるかのごとき考え方というのは、少し経験を持っておられる御意見としては、受け取りがたいという感じが率直に言ってするのです。これは運営の問題がやはりあると思います。  そしてまた、私の率直な意見からいえば、無答申ということに政府が責任を転嫁しながら、なおかつ一緒にやっておった仲間の中で、九人ばかりはことしの二十二名の中の委員に入れておる。終始一貫をしない。しかもこの諸君は、全部指数化方式賛成論者であるというふうなことを考えてくると、政府の意図は何かということについて疑わざるを得ない。これは私はこれ以上言いません。  だから私は、本来生産者代表消費者代表は、国民のお互いの重要な食糧問題を議論する米審の舞台というものに、はっきり正座敷として入れてもらいたいというのが正しい主張である。またそれでなければならぬ、運営の問題については改めればよろしい、こう思っております。  次に、春野さんの意見の中で、今日大蔵省あるいは経済企画庁等が言っておるのと軌を一にするような意見がたまたま出てまいりましたが、一つは両米価の据え置き問題、あるいは配給米自由米の併用というような考え方。そこで私は、やはりこの前提になるのは、これからの日本の米を中心にした食糧の需給見通しというものをどう考えるかということが基本であると思う。先ほどの質問者からもありましたように、ことしの異常事態を非常に誇大に宣伝して、そして食糧は現在も余っておるし、将来もだぶつくであろうというふうな近視眼的な見方は誤りであろう、こう思っておるのです。  春野さんにお聞きしたいのだが、一体、国際的な食糧の十年、十五年というふうな需給見通しについて、権威ある機関がどういうことをいっておられるか、これはまあ聞かれるまでもなく、十分われわれが議論したところだから御承知だと思うのですが、それはどうですか。
  24. 春野鶴子

    春野参考人 専門家でございませんので、数を踏まえてどうこうということは申し上げられませんけれども、ある方面では、非常に安心はできない、日本を取り巻く周辺の国々では食糧は充足していない、むしろ危機がくるのではないか。そういうことに備えても、日本の食糧増産ということは十分、現在以上に固めておかなければいけないという論も承ります。かと思うと、それほど神経質に考えなくとも、経済の交流、物資の交流というのは世界的に、日本の国のみの自給というよりも、国際的に広く市場の交流が自由だし、激しいし、また世界が近いのであるから、何もかも国内の産物で自給を確保していかなければいけない、そう固執しなくてもいいのではないか、このような二つの考え方があるように私は思うのです。  そこで、私どもとしてはどちらも、Aに賛成、いや絶対Bであろうというふうなことは、実は思っていないのです。そういうことを両方総合して、どちらもおっしゃることに権威ある筋でございましょうから、論拠はありましょうし、そういう、習うならば両極端の御意見を両方に承りつつ、自分たちもその間を勘案しながら考えている。私ども自身で、もうこれだから心配ないでしょうとか、あるいは危機説があるから日本のほうの農政についてもこうだろうとかいうふうな、学説的な論拠を踏まえたそれは持っておりません。ただそういう、いま申し上げたような考え方を相当強く両方から聞かされている、こういうことでございます。  それから、ちょっとさっきの米審の問題で、二つばかり落っことしちゃったのでつけ加えますけれども、今度のような米審の改編ということが、年頭あたりから相当出てまいりましたですね。私は、そのときに二つはっきり申し上げたわけです。  一つは、米審で、御承知のように先生方も徹夜近く——私とももまつ正直だから大いにきゃんぎゃんやりましたね。それはそれだけで、答申の出る出ないということももちろんございますけれども、結局そこでさせておいて、ほかで米価がすぱっときめられる。これには私、非常な不満を感じました。これが一つ。  それから、いまのような米審に切りかえられようというときに、私は新聞等を通じてでございますけれども、このことを申し上げたのです。いまのようになるのはまあある一つの試みとしてやむを得ないとしても、その米審、中立米審だけで事をきめてしまわれるということははなはだ不満である。それでとういう運営なりあり方で——今度の米審あり方が異例なのですから、そこでさっさと結論を出して、これが結論でありますというふうなことは避けてほしい、あるところまできたら、それを関係の深い生産者団体、それから消費者団体のほうにぜひ時間をかけてはかってほしいということですね。これを注文つけたのは事実でございます。
  25. 角屋堅次郎

    角屋委員 春野さんは米審におられて、国際的な需給見通しについて抽象的なお話をされて、私どうかと思うのですが、これは食糧庁から出しておる資料で、「世界各国における米穀の輸出入の状況」というのがあります。私は数字はこまかく言いませんけれども輸入の中では日本はなかなか大手筋なんですね。セイロンあるいは香港、あるいはインド、それから日本、南ベトナム、あるいはヨーロッパのEEC、こういうところがありますけれども、その他アジア方面、東南アジア方面では、各国ともに大なり小なり相当なものを入れております。そういう点から、アジア経済研究所では、一九七〇年のアジアにおける米の不足状況は五百万トンになるだろう、あるいは一九七五年では八百万トンになるだろう。もちろん、これは生活の向上ということも考えなければならぬ。飢餓食糧の状態ではいけないということがあるだろうと思います。そして輸出のほうを見ると、大口はビルマ、中国、タイ、アメリカなんですね。それぞれ各国の状況も判断をしなければならないというふうに見てくると、FAO等のこれから十年、十五年の食糧の需給見通しを見ても、やはり不足ぎみになっていくというのが大勢として観測されておるわけですね。  そういう点から見て、一年間のいわゆる一つ状態で誇大に過剰宣伝をするというのは、私は間違いであるというふうに思うのですね。その点は、やはり消費者である春野さんらの場合でも認めていただかないと、かつてジープ供出、強権供出の中で、非常に出血した供出をやってきた農民諸君の気持ち、そしていわゆる三ちゃん農業から二ちゃん、一ちゃんといわれる中で、あなたは御婦人だから、特に主婦農業といわれる姿の中で、主人を出かせぎに送り出して、そして苦労してやっておる、そういう生産者の現状。しかも、その中でわが国の食糧をささえてきておるというその状態を抜きにして、一挙に両米価ストップ論というのは、御婦人の立場として、農村婦人のことを考えられるといかがかという感じがしないでもない。  それと同時に、やはり長期展望に立つ場合はどうなるかわかりませんけれども、太平洋ベルト地帯に人口が集中していくだろう。そこでは美田も壊廃していくだろう。そして、新しい開田をするという場合は、傾斜その他の問題もあって、そう過大な毛のを水田として望むことはむずかしいというふうなことを考えてまいりますと、米の過剰論というのは、将来までなまやさしく考えられるかどうかということには、大いに疑問があるというふうに見てくると、最近の米過剰論は、非常にためにする意図が入っておると思わざるを得ない。そういう国際的な判断、あるいは日本のこれからの米を中心にした生産の判断というものを考えてみて、先ほどの御意見は、非常にゆるやかな、大蔵、経済企画庁ベースのような御意見のように私は思えたのだが、それでいけると思うんですか。
  26. 春野鶴子

    春野参考人 私が、きょうここにプリントしてあれいたしましたことは、新聞等を見てつづったものではないのです。お米とは、主婦連合会の私に限らず、大ぜいの者が非常に関心を持って取り組んできておりますので、かねがねこうではないかしらというふうなことを考えておりましたことをつづり、かつ役員会にはかり、これは極端だろうか、あまりに消費者のほうの利己主義ではないだろうかというふうなことを十分はかった上出したのですが、たまたま各省のほうとある面で一致しただけで、新聞を見てつづったものではないのです。  これは、角屋さんのようにごく専門的に精通されたお立場から、相当な論拠を踏まえてのことかというふうに突っ込まれますと、ややたじたじでございますけれども、私ども自身、消費者という立場から見た、いままでの生産者米価のきめられ方、あるいは一種の喧騒曲、それから米審あり方、そういうものを生活の中で体験し、かつ、あるときは末席を汚した等のそういう感想、それから私どもの役員の中、会員の中でも農家出身は多うございます。それから御親類も持っております。都市消費生活向上程度、それからまた貧窮程度、あわせて農村皆さま方の生活内容の向上程度、そういうふうなことをいろいろつづり合わせて、そしてこういう程度のことを消費者としても望んでよろしいのではなかろうか、こういうことでございます。それは御了承をいただきたい。
  27. 角屋堅次郎

    角屋委員 さっきの、今日の過剰論の問題で、質問じゃなくて私が触れておきたいのは、政府の買い入れ比率というのが上昇してきておるのですね。たとえば、三十五年のときの政府の内地米の買い入れ率というのは四四・九%ですよ。ですから、かりにその状態であるとするならば、千三百万トンのときといえども、買い入れ率五〇%とすれば、これは六百五十万トンしか買い入れないのですよ。だから、去年の千四百四十五万トンのときに九百八十四万トン入ったというのは、これは買い入れ率が六七・八%で相当高いですね。だから、そういう政府に入ってくる量だけで、非常にだぶついているような感じというのは誤りであって、日本の内地米の総生産量の問題はどうかということを踏まえて考えないと、買い入れ率に大きな変化がきておるということがあることをやはり指摘しておかなければならぬと思う。私は、全国的な組織を持っておられる労働組合の代表の総評と同盟から、やはり消費者のことも踏まえ、また生産者のことも踏まえ、そして食管制度の問題、あるいは生産者米価消費者米価の問題について、単に労働者立場ばかりでなしに、同じ苦悩の状態にあるといいますか、同じ額に汗して働いている農民立場も踏まえた御意見のあったことを、非常に傾聴したわけです。  そこで、お二人とも農政に対する提言ということを、特に下田さんのほうからなされました。その機会に、食管問題にも触れられましたが、私は農政に対する注文、その前提として、今日まで政府与党といいますか、特に政権を担当しておる政府が、農政に一体どれだけのことをやってきたのか。これは農林予算の問題、あるいは財政投融資における農林関係の金融に占めておる比率、あるいは高度経済成長の中で、非常に立ちおくれを示している農業に対してどういう手を打ってきたか等々考えてみると、先ほど下田さんからもお話がありましたけれども、やはり農政に対して、国に財政力のゆとりが出てきたというなら、本腰を入れて産業間の格差是正をやるべきではないか。そのことは、いわゆる財界の諸君の一部が言っておるように、価格政策から構造政策への転換ということではない。それは、やはり価格政策を土台として踏まえながら、構造政策の正しい方向というものを着実にやっていくということであろうと思うわけですけれども、この点について、安恒さんと下田さんからさらに御意見をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  28. 下田喜造

    下田参考人 角屋先生のおっしゃるとおりでございまして、私どもは、単に米の値段を安定させる、あるいは安くする、そういうことの小手先細工で構造問題を取り上げるとたいへんなことになると思います。この際、各産業が著しい成功をおさめておりますように、農業の近代化を構造的にはかっていくということを優先させることが、逆に価格安定につながり、農家の安定につながっていくのではないか。そういうことをこの際思い切ってやったらどうか。  それ以上はもう触れなくてもいいのですけれども、ただ、そういうことをお題目を並べるのではなくて、政府がほんとうにこの際農業改善なり、構造改善なり、近代化なりはかるのなら、私ども消費者の一員としても、消費者米価が多少上がるぞといわれても、そのときはがまんをすべきじゃないか。いまのような状態のままで  西村農相も総合農政を発表されておるようでございますが、それも閣議で、何だかどこかへ吹っ飛んだような様子のようでありますし、大蔵省は、例年財政投融資はなさらぬようでございますし、今回も、二五%どまりの要求にしぼるということで画一的になさっておるようでございます。その辺から見ましても、ほんとうに政府の姿勢に疑いの目を持たざるを得ないのです。だが私は、政府を単に非難したくはございません。この辺で、ほんとうに国家のために、農政のために考えてくれという、まあ最後のお願いのような気持ちで、実は御意見を申し上げる次第であります。
  29. 鹿野彦吉

    鹿野委員長代理 下田参考人におかれては、所用があって時間がありませんそうでございますので、どうぞ。たいへん御苦労さまでございました。(拍手)
  30. 安恒良一

    安恒参考人 私は、まず最初に、いま春野さんとの間にいろいろなやりとりがありましたけれども、私たちは消費者立場からいって、日本人の基本的食糧である米というものは、やはりわが国の生産によってこれは充当されるべく、農業政策というものを行なわれるべきだというふうに考えています。そういうような意味からいうと、私も米審委員の一人をしておりまして、これからの世界の食糧事情というものについて、農林省その他からいただいた統計その他を見ましても、世界的に米の不足という問題が大きな問題になるということを考えますと、どうしても米の生産確保ということについては十分考えなければならぬ。米は食べなくてもパンやその他を食べればいいじゃないか、こういういわゆる食生活の改良という意見もありますが、私は、日本人の米に対するなじみの度合いというものを考えると、そう簡単に、米が不足をしたから他の食糧へ切りかえていくというように、日本人の食生活というものはまだまだなっていない、こういうふうに考えます。  そういう意味から考えてくると、なるほど戦後あれだけ荒廃をした日本が、今日工業国として生産性においては、重化学工業においては世界の一位から三位に入っている。国民総所得が世界の三位である、こういうような実情であります。しかし、国民一人当たりの所得ということになると二十一位になっている。このゆがみというのはどこにあるかというと、率直に申し上げまして労働者の低賃金の問題、それから農村皆さん方の、いわゆる非常な低労働条件に問題があるというふうにぼくたちは考えています。  そういうふうに考えてまいりますと、やはりこの高度経済成長政策時代において、財投をはじめとする国の財政支出というものは、重化学工業等を中心にして国の財政支出がなされたことは現実であります。そのときに大きな問題が忘れられておった。それは何かというと、国民基本的食糧を確保する農業政策に対するところの、国のこれを成長せしめるための財投をはじめとする保護政策といいますか、もしくは具体的な政治政策というものが欠けておった。それが今日の農業問題の一つ基本になっていると思います。  でありますから、農業政策と同時に価格問題として、たとえば、毎年毎年生産者米価が上がる、それが今度はリンクして消費者米価にはね返ってくる、これは物価の観点からいってもどこかで断ち切らなければならぬという御意見がありますが、私は、なぜ生産者米価を上げなければならないのかということについて考えると、一つは、高度経済成長政策時代において、農業に対する投資というものが見送られてきた。こういうところに一つの問題があると思います。いま一つの問題は、やはり米の問題一つをとらえてみましても、たとえば、稲作に必要な肥料の問題であるとか、その他私たちは物財費ということをいておりますが、そういうものに対する価格政策というものは何ら操作されていない。肥料をはじめとする必要なものはどんどん値上がりをしていく。これをほうっておいて、生産者米価だけを問題にとらえることに問題があります。  それから、流通機構の問題においても非常に大きな問題がある。これもやはりほうっておいて、生産者米価を押えようとするところに問題があるわけでありますから、私は、農業問題といたしましては、先生からも指摘をされましたように、まず本格的な土地の改良の問題、それから農業の基盤整備の問題等生産性を向上せしめるための施策について、やはり国の行政として、政治としてこれをまずやっていくべきであろう。そうして、いま生産者米価を上げていかなければならぬのは、やはり生産者農民皆さん方労働力を都会労働者と同じように評価して、この面からの値上がりというものは、これはやむを得ないものである。  あとの問題といたしましては、たとえば、インフレ政策をやめて米作に必要な物財を下げていく、もしくは流通機構を改善していく、こういう面が両々相まっていく中で、問題は解決していくと思います。  そういう意味で、農業政策について今日まで非常に怠ってきておったことが、今日の生産者米価消費者米価との相関連になっているわけでありますから、さきの意見の中にも申し上げましたように、自分たちの農業政策基本的な誤りを国民に転嫁する、こういうやり方であれば、私は政治ではない思といます。一方において赤字が出れば、その赤字を受益者負担ということで国民に持たせるということであれば、これは先生方には失礼でありますが、極端なことを言わしていただきますと、だれでもできることじゃないだろうか。政治というものはそういうものじゃないだろうと考えますので、以上のようなことを申し上げておきたいと思います。
  31. 角屋堅次郎

    角屋委員 これで終わります。ありがとうございました。
  32. 鹿野彦吉

    鹿野委員長代理 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々には、御多用中のところ長時間にわたり御出席いただきまして、まことにありがとうございました。委員会代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手)  なお、当委員会は午後一時三十分に再開することにいたし、これにて休憩いたします。    午後零時三十一分休憩      ————◇—————    午後一時三十四分開議
  33. 鹿野彦吉

    鹿野委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。まず森田重次郎君。
  34. 森田重次郎

    ○森田委員 時間を非常に制約されておりますので、簡単に私のほうから意見を申し述べて、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。  けさの読売新聞を見ますと、こういう記事が出ております。「農政推進会議が発足、総合農政検討」というので、「農林省は十九日、省内に大口事務次官を議長とする農政推進会議を作り、午後三時から初会合を開いた。これは去る十三日、西村農相が臨時省議を招集し、食糧管理制度の改善をはじめ米作以外の野菜、果実、畜産などを強化し、流通機構も近代化するという「総合農政」の検討を指示したのに応じたものである。八月から基本的な路線を検討し、四十四年予算にはその結果を反映させる意向である。」と、こう出ております。ほんとうはこれは一問一答で進めたほうが明瞭になると思いますけれども、いま申し上げましたとおり時間の関係があるので、要点だけ私のほうから……。  もし、この記事のとおりだとすると、食糧管理制度の改善、これが米作に関係したことになります。しかし、それ以外の野菜、果実、畜産、流通機構の近代化、これだけやって総合農政だということになると、これははたして総合という名に値するかどうか、私は非常に大きい疑問に思うのです。なぜかなれば、いま一番問題になっているのは、ここに出ている食糧管理制度の御検討をなさるというのでありますが、これは米がとれたあとの処理方法に関する事務の規定なのであって、われわれの考えていることは、米の値をあまり上げてはいけないという一つの見方があるわけであります。しかし、いろいろの要素を積み上げれば、やはり米価を上げなければならないというところにいくというのが、現時点における現実なんです。そうなると、一体米の生産費をどうして下げるかということが、米の対策としてはきわあて重要な観点ではないか。これが私の考えている点なんです。  それにはどうするかというと、これは合理化するしかない。合理化というと機械化ということ、機械化ということならば、機械の使用できるような土地改良、基盤整備、まあいままで構造改善と称してやっておりますあれですね。これを思い切って予算をうんと取って、全国的に実行するということが根底にならない限りは、私はやはり米を中心とした農政の上から考えてみて、大きいねらいが失われていて、総合という名に値しない、こう実は考えるのであります。  これは、もし大臣も私の見解と同じように、その点も含めているのだということになれば、もう私、質問する必要も何にもない。ただ、この中には出ておりませんので、それではどうも大きい政治的な焦点を逸しているのではあるまいかということなんです。私は、今後農地法が出たりいろいろの農業上の法案なども出るでしょうから、その際にはいまの問題を徹底的に質問してみたいと考えて、いささか用意もいたしておるのでありますが、問題は、この総合対策の具体的な対象としてこれが取り上げられていないということです。しかも、来年度の予算にこれが計上されるというその下調べだということになりますと、これはどうも私らのちょっと納得のできないような線になるように思われますので、老婆心かもしれませんが、いまの点をひとつ御献策申し上げたい。こういうのであります。これに対して大臣の御所見を承りたいと思います。
  35. 西村直己

    ○西村国務大臣 お答えいたします。  一口に申しますと、あなたのおっしゃることとほとんど基本は変わっておりません。と申しますのは、実は私、就任いたしまして、いろいろ農政も多少勉強させていただきました。それから諸般の状況下にかんがみまして、農政において展開していくべきこと、また、すでに国会等を通して御審議をお願いしておること、たとえば、昨年は構造政策というものをひとつ推進しよう、しかし、御審議の過程においていろいろな御議論もありまして、成案を得たものもあります。得ないものもございます。そこいらも一つありますが、同時に生産対策というものを、たとえば長期の需給見通し等をしっかり立てる、これも急いでやりたいと思う。それから同時に、いまの需要に合わせたいわゆる生産対策というものを進めていく。需要構造が、御存じのとおりいろいろ変化をしておる。たとえば畜産部門、あるいは果樹、野菜、こういうような部門もあります。これは当然でございます。それはいままでも言っておることでございましょう。言っておることであっても、正しいことであれば推進していっていいわけでありますから、そういう事柄。  それから同時に、生産対策以外に、農林省としては流通、加工、こういう面も非常にございます。食品加工、いろんな問題もございます。さらに根底には、さっき申しましたようなその近代化なり構造政策なりすべてを進める場合における土地政策の問題、言いかえれば、国土の高度利用と申しますか総合的な利用の中においての農政のあり方、当然これは山地を利用し、あるいは埋め立てをどういうふうにする、その中においてどういうふうな生産地形成をやっていくか。  それからもう一つは、経営の問題につきましても、単に構造政策だけではなくて、経営をめぐる諸問題としては後継者問題もございます。あるいは環境づくりの問題もございます。あるいは農村全体としての振興地域の問題もございます。こういった諸般のものを含めて私どもは総合政策、したがってまた当然その中で一つ米という問題もあります。米につきましても、増産もいいが、同時に質的改善もしなければならぬ段階にきた。そうなると、食管というものにつきましても、やがてはこれに対して検討を加えていいのじゃないか。結論はどういうふうになるかわからぬけれども検討は加えていいのじゃないか。そうして、これの中でもって今度は必要な財源というものを農政のためには国家投資として、あるいは国家の経費として相当確保していきたい、こういうような所信をこの間述べまして、そうしてこれらのためには、いわゆる各局、各庁が一緒になって協力し合わなければならない。縦割り行政だけではなくて、横の連携がなければいかないというようなことがございます。たとえば林野庁も協力してもらいたい、農地局も協力してもらいたい、あるいは園芸局も協力し合っていくというようなところから初めて前進するんだ。  こういうふうな形で私は考え方をまとめまして、そうしてそのまとめ役としては、米価の問題でも済みましたならばひとつ具体的に、来年の予算編成もその第一歩でございましょう。従来のを受け継ぎながら第一歩になる。続いてそうして重ねていくならば、厚みのある農政、総合的な観点に立つ農政、こんなふうな考え方のもとに所信を述べたわけであります。したがって、そういう意見から申しますと、土地基盤整備などというものはきわめて重要な事柄であることは当然だ、こういう所信でございます。
  36. 森田重次郎

    ○森田委員 非常にたくさんの御答弁をいただいたわけでありますが、私はそれはそれでけっこうでございますし、そのとおりお進め願いたいと思いますが、ただ、農林省の農政を見ていますと、盛りだくさんでございまして、どれが一体重点なのかということが必ずしも明確になっていないように私らは考えるのです。そのうちの最も重点的なものは、いま申し上げた基盤整備、この問題などを非常に強く価値的に判断されて、思い切った予算をこれに投入してもらう。そうすると、米価の問題などもおのずから解決することになるはずだ、こういう意味でその点を強く取り上げていただきたいということを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  37. 鹿野彦吉

    鹿野委員長代理 次は西宮弘君。
  38. 西宮弘

    ○西宮委員 農林大臣がお見えになりましたので、農林大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  実は、私はいまの内閣には農林大臣がいないのではないかと思っておったわけでございます。水田三喜男さんあるいは宮澤喜一さんなどが兼任をしておられるのではないかと思っておったのでありますが、きょう専任大臣がおられるということを見ましてたいへんに安心をいたしました。ただしかし、まだ安心できない問題がたくさんありますので、逐次お尋ねをしたいと思います。その前に、私は実はこの前、時間の関係で中途でやめてしまいましたので、一言だけ米審の問題についてお尋ねをしたいのでありますが、簡明にお答えいただきたいと思います。  米審が、農相の諮問に応じて答申する事項は、米価その他の主要食糧の価格決定事項に限られる。しかし、食糧管理制度についても建議できる。こういうことで、さらにその建議については  建議と申しますか、これらについては尊重するという答えをしておるようでありますが、これは、いわゆるその建議についても尊重する、こういう意味であるかどうかをお尋ねします。
  39. 西村直己

    ○西村国務大臣 御存じのとおり、もう申し上げるまでもなく、米価審議会は農林省設置法によって権限がきめられておる。正確でございませんが、主要食糧の価格決定基本、こういう事項を調査審議する。したがって、価格から入って基本価格決定基本でございますから、したがって価格そのもの。価格決定基本ということになると、今日ありますところのあるいは管理制度というものに触れてまいる、この触れてまいることについては私どもは拒否はできない、こういうことを統一見解として発表いたしております。  同時に、建議ということは、その価格基本に関連して建議ができるということになっておりますから、それで建議する。そうして建議があった場合におきましては、もちろん私ども政府として御委嘱した審議会でありますから、尊重に値するような答申が得られるのではないか。したがって答申は尊重いたしたい。その上でもって今度は具体的にどうするか、政府案をどうするかは、それはその検討の上できめなければならぬ、こういうことであります。
  40. 西宮弘

    ○西宮委員 時間かありませんから、簡単にお答えを願いたいのです。私の質問は、諮問をして答申があった、それを尊重するのは当然です。そうではなしに、彼らが建議したものを尊重するのか、この一点。
  41. 西村直己

    ○西村国務大臣 建議は、建議のいかんによりましょう。建議を、全部建議どおり実行するという意味じゃありません。建議を受け取って——せっかく建議をなさる以上は、それは尊重する姿勢において検討を加えて、そうしてまた、ほかの面からもいろいろな意見が出ると思います。そういうようないろいろなものの中から、もし改善案が得られればよろしい、得られなければ得られない、こういう結論を出したい。
  42. 西宮弘

    ○西宮委員 建議というのは、食糧管理制度について建議ができるといっておる。だから、食糧管理制度について建議をしてきたならば、これを尊重するのかということです。
  43. 西村直己

    ○西村国務大臣 政府は、国会に法律案等を出すなり、あるいは行政の指針等は立てるわけです。その責任がございます。したがって、それはそれなりに一つの建議としては尊重されても、それを検討して、それがはたして実行すべきものなりやいなやというような判定は、私どもの責任でやるわけであります。
  44. 西宮弘

    ○西宮委員 簡単にお願いしたい。  それじゃ事務当局でけっこうだけれども、その価格管理制度について建議ができる、この根拠は何ですか。どうも大臣は長くて困るから、事務当局のほうで答えてください。
  45. 西村直己

    ○西村国務大臣 これは、価格決定基本に関して調査審議し、かつ建議ができるという権限を持っておりますから、基本に関連して建議があった場合、それは政府が一応受け取る、こういうことでございます。
  46. 西宮弘

    ○西宮委員 大臣が統一見解として発表しておるのは、食糧管理制度について建議ができる、こういうことですよ。だから、いわゆる食管制度の改廃、こういう問題について建議ができる。その根拠は何ですかということです。
  47. 西村直己

    ○西村国務大臣 これは、価格決定基本に関連して食管制度に触れてきた場合に建議をしてくる、こういうことであります。
  48. 西宮弘

    ○西宮委員 米価審議会令には——おそらくこれを根拠としておると思う。審議会令には、これこれ「及びこれに関し必要と認める事項を農林大臣に建議する。」こういう一項目があるけれども、その基礎法であります農林省設置法、この中にはそういうものは全然ないんですよ。農林省設置法は、「米価審議会は、米価その他主要食糧の価格決定に関する基本事項を調査審議することを目的とする」とあるだけで、それ以外の事項はない。審議会令のほうで、政令のほうで初めてこういうものをくっつけてきた。これは明らかに基本法で拘束されている。その範囲をこえて、こういうものを建議するという権限がそもそもない。したがって、それを尊重するなんということは全くあり得ない。はっきりさしてください。
  49. 西村直己

    ○西村国務大臣 私どもは、この解釈の問題でありますが、「価格決定に関する基本事項を調査審議する」、したがって、その際に申し上げたのでありますが、政府のほうからはそういうことは別に諮問はいたしません。しかし、調査審議の結果、建議というようなことがあれば、価格基本に関しての建議として管理制度に触れてくることについての建議、これはあり得ると思います。
  50. 西宮弘

    ○西宮委員 だから、それは価格基本方針について、たとえば指数化方式がいいとか悪いとか、そういうことで建議することはけっこうですよ。そうではなく、農林大臣が統一見解として言っているのは、食糧管理制度について建議ができる、こういうことを言っているから問題なので、私は、全くそういう権限はないと思う。これは、どこからどう考えてみても、そういう建議ができる権限は絶対にないですよ。いわんや、これを尊重するなんということはあり得ない。それじゃ、時間がたつからやむを得ない。  それでは、たとえば昭和三十八年の秋の国会に、政府は臨時食糧管理制度調査会、こういう法律を提案しようとしたわけです。沿革的にいうならば、昭和三十六年の七月に、河野農林大臣が就任をして、いわゆる河野構想を発表して、それに基づいて米穀管理制度懇談会というのができました。ただし、農林大臣の諮問機関ではありまするけれども、これは非公式なので、したがって、これを切りかえて臨時食糧管理制度調査会、こういう法案をつくって、これについて定数なり、あるいは審議事項なり、あるいは期間なり、こういうものをすべて決定して提案する準備をした。ただし、まだ食管制度についていろいろ問題がありましたために、政治的な配慮からついに提案はされなかったけれども、もしそういうことができるならば、こういう法律をあえて出す必要なんて全くないじゃないですか。
  51. 西村直己

    ○西村国務大臣 御存じのとおり、食管制度というものは非常に幅の大きい、また、影響するところが大きいわけで、また御存じのとおり、食管制度の一部には価格面もあります。しかし、同時に生産面の問題もあります。あるいは構造面と申しますか、流通面と申しますか、そういう面もあります。したがって、私ども価格基本から入ってきて、そういうことについての意見が出る、建議が出るということは認めてもいいんじゃないか、こういう解釈です。
  52. 西宮弘

    ○西宮委員 かりに、何かに関連して意見が出てくる。出てきたとしても、それは、この審議会に与えられた権限に基づいた意見ではないんですよ。この権限は、あくまでもいわゆる価格決定基本に関する事項に限定されている。それだから、あなた方はその諮問をしないじゃないですか。もしそれもできるならば、当然諮問して答申を求めてもいいじゃないですか。諮問ができないとみずからそれを限定しておいて、今度は、向こうから出てくるのは御自由だ、こういうばかなことがありますか。それ以外に、それ以上にわたって諮問ができないというのは、この法律に許されておりまする審議会の権限は、これに限定をされているからなんです。そのことを政府はちゃんと認めて、認めた上で、今度向こうから出てくるものはやむを得ない、こういう受け取り方は絶対にあり得ないと思う。これは全く法律無視ですよ。もし、こういうことで審議会に食糧管理制度についても建議ができる、こういう権限を与え、かつこれを尊重するというようなことになったならば、もう法律は全然否定されてしまって存在の意義は全くなくなってしまう。そのことを特に明確にしておきたいと思う。このことを私は厳重に、絶対にいまの政府の態度を承認できないので、これからも繰り返しこの問題は追及していきたいと思う。  続いて、これは意見だけを申し上げて終わりにいたしますが、この前は、あの委員の中にマスコミ関係者が非常に多い、こういうことを申しましたけれども、いままでの政府委員会の中では、多いところで二名、少ないところで一名、しかも、大半の委員会はマスコミ関係者は入っておらないわけです。私は、これは明らかに何らかの意図をもって任命したにほかならない、こういうことを断定できると思うのだ。こんなばかばかしい委員会の構成なんというのは、日本委員会にはどこにもないのですから、こういうばかなことが許される道理はないと思うのだ。ただ、私は一つだけ、ある学者の意見を紹介して終わりにいたします。  これは大学の教授ですが、全体としてはむしろ自民党の立場で主張しておるのですが、その中で、マスコミ関係者についてだけ、こういう意見を言っている。「多数の言論人が審議会の委員になるのは考えものではないか。私は一般論としてジャーナリストは政府審議会に参加すべきではないと思う。ロンドンタイムズやニューヨークタイムズの記者が政府委員になったという話は聞いたことがない。大衆の代弁をするのがジャーナリストだ。それが政府に牛耳られてはどこまで、職責が果たせるか。「社会のボクタク」といわれる新聞人は、あくまで民衆の側に立つべきで、ジャーナリズムという形式を通じて意見や所見を世論として出してほしい。審議会のかけ引きに巻き込まれてはボクタクの純粋性が保てないのではなかろうか。」こういうことをいっているので、これは当然に考えてもらい、当然これを改組してもらわなければならぬと思うが、その際にもう一つ、「今回の米価審議委員の任命はその内容及び手続きにおいて十分なる配慮を欠いているので、この際少なくとも生産者及び消費者代表を加える様再検討すべきである。」これは自民党を中心にして各党が一致をしてきめた意見なんでありますから、あなたは政府ですから自民党の直接の責任者ではないけれども、その際には、これは十分に尊重してもらわなければならぬ。というのは、国会議員はあるいははずすかもしらぬという意味でしょう。しかし、少なくとも生産者及び消費者代表を加えるよう再検討すべきである、こういうことをいっているので、その際はこのことも十分考えてもらいたいと思います。
  53. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 ちょっと関連で。  ただいまの農林大臣の答弁ですが、米価審議会の権限は、条文で明白になっているわけです。これは、価格についての根本的な問題についてと限られているわけです。きのう大蔵大臣並びに経済企画庁長官が出席されまして、ここでは、食管制度に関する問題については、法律の改正がなければ動かすことはできないし、動かす意思はないということを言明しております。いまの農林大臣の答弁では、この点がきわめてあいまいでありまして、食管制度そのものの根本的な問題、それから価格の根本的な問題というものを混同されております。この点は混同してはならないのであって、やはり食管制度というものは、食管法というものは、これはやはり堅持しなければならない。法改正なくして、いかなる建議があろうとも、これを動かすということは、行政府が立法府を侵すことになる、行政府と立法府のこのたてまえをくずすことになるのであって、きわめて重要であろうと思うので、きのうの大蔵大臣、経済企画庁長官の答弁と食い違いがありますから、これを明らかにした上で、今後の質問を進めていただきたい。
  54. 西村直己

    ○西村国務大臣 私も、大蔵大臣あるいは経済企画庁長官と同じように、現行食管法というものは、これは法律でありますから、これを政府が守っていくことは当然で、もしこれが改変という意見が固まる場合には、これは当然国会の御審議、成立を経て、初めてそういうことになるわけであります。
  55. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 それは常識的にはそうなんですね。ところが、さっき西宮委員の質問に対しては、その点が明確でなかったわけですよ。だから、行政府の権限というものは限られておるのであって、法律の改正なしにはできない。ところがそれを、米価審議会において建議があればこれを尊重する、こういうことになってまいりますと、混同するのです。ですから、そういうことを言われたことに対して、西宮委員から追及されておるわけですから、そういう意見が出されておったとすれば、ここでやはり取り消しをしていただきたい。——取り消しをしていただきたい。
  56. 西村直己

    ○西村国務大臣 私は、別に間違ってないと思うのであります。と申しますのは、価格基本食管法価格の問題にも相当触れております。したがって、価格基本から食管に関する意見が出てきたということはかまわないと思います。ただし、これはあくまでも諮問機関一つ意見でありまして、したがって、将来これを政府が、かりに取り上げるかどうか、取り上げた場合でも、どういうふうにいくか、また、他の機関がどういう意見を出すか、それらが整ったときに初めて食管の改正という政府の意思がきまるのであって、それまでは、政府の意思というものはきまるわけはないわけであります。
  57. 西宮弘

    ○西宮委員 そういたしますと、食管制度が変えられなければ、法律を変えなければ、いまの食管法を変えなければ、いまの制度に対してどんな建議があろうとも、食管法を改正しなければ現行どおり、従来どおり食管法を守っていくということに、はっきりわれわれは了解しておいてよろしいですか。
  58. 西村直己

    ○西村国務大臣 当然、行政府としては食管法が現在あるのでございますから、したがって、当面一米価は現行の食管法に基づいて決定されていく、これは間違いない事実でございます。
  59. 西宮弘

    ○西宮委員 私は、この問題はさらに回を重ねて徹底的に追及したいということを言ったのでありますが、特にこの問題は重要問題でありますから、私は、それじゃ時間をさいてむしろこの問題を専門にあれしてもいいと思うのです。それならば私は、政府の統一見解として新聞を通じて発表された、あれは取り消してもらいたいと思うのですね。私は、どこで食管制度について建議ができるか、その食管制度について建議ができるという根拠はどこにあるのかということを聞きたい。
  60. 西村直己

    ○西村国務大臣 それは私ども、農林省設置法に基づく米価審議会に与えられた権限、基本に関して調査審議する、そしてそれに必要なる建議を行なう、こうなっております。価格基本というところから入ってきた場合の建議、これについては当然建議はできる、こういう解釈をしております。
  61. 西宮弘

    ○西宮委員 あくまでも価格決定に関する基本事項なんですよ。だから、たとえば何とか指数化方式がいいとかなんとかいうものを建議していただく、これはあくまでも彼らの権限内の事項ですよ。しかし、あなたが言っているのは、統一見解として述べているのは、食管制度について建議することができる、こういう根拠がどこにありますか。価格決定に関する重要事項なんだから、あくまでも価格決定に限定さるべきですよ。食管制度そのものの改変について建議するなんということはとうていできませんよ。歴史的に見ても、さっき私が申し上げたように、その問題を審議するためには、あるいは非公式な懇談会をつくる、あるいは正式の法律をつくる、こういうことで準備をされた経緯もある。それはできないことを承知の上だからですよ。もう一ぺんはっきりしてください。
  62. 西村直己

    ○西村国務大臣 御存じのとおり、価格基本となっております。そうすると、食管法の中では、価格の問題というのはたくさんの重要事項が関連してまいるわけです。だから、関連して食糧管理の問題に触れてくる建議、これはあってしかるべきだと私は思うのであります。
  63. 西宮弘

    ○西宮委員 食管制度の問題ですよ。食管制度の問題が価格決定の重要事項、基本事項という問題の中でいろいろ論議をされるでしょう。論議の過程で論議はされるだろうけれども、それは建議ができるという根拠は絶対ない。これはおそらく審議会令のほうを基礎にしているのだろうと思うのだけれども、その令は、法律五十三条があるので、法律五十三条に明らかに拘束をされているので、そんなことができる道理は絶対にないと思う。
  64. 西村直己

    ○西村国務大臣 現在の米価決定は現行の食糧管理法でやる、これは間違いない事実であります。ただ、現行食糧管理法に対しての将来に対する考え方というものについては、なるほど生産の面から入る意見もあってしかるべきでしょう。あるいは流通その他の面から入る面もあってしかるべきでしょう。しかし、価格というものも食糧管理法の中にはっきり大きな関連のあることであります。価格基本ということになりますと、そういう面からそういうことについのて意見が出てくることは、これはあり得るのじゃないかという解釈であります。
  65. 西宮弘

    ○西宮委員 それでは伺いますけれども政府のほうが諮問をする事項は、米価その他主要食糧の価格決定事項に限られると、政府のほうでみずから限定をしたのはどういうわけですか。
  66. 西村直己

    ○西村国務大臣 私は、建議と諮問との性格の違いだと思います。政府のほうからは、米の価格について今回諮問をする。しかし審議会そのものが、審議会令なり設置法の精神に基づいて価格決定基本について自由な意見を言って、それを建議として出してくる、これはあり得ると思うのであります。
  67. 西宮弘

    ○西宮委員 自由な意見を述べることは、言論の自由ですからけっこうですよ。しかし、その意見は権限のない意見なんだ。それは要するに、いわば二十二名の私人の集まりとして、私人の団体がそういう意見を述べることは一向かまわない。それだけのものですよ。それならばなぜあなたのほうでは——そのときの事情を申し上げましょうか。前にあの二十二名を委嘱したときには、あのときの大臣は、あなた方に毎月一回ずつ会を開いて食管制度をやってもらうんだということで頼んだわけですよ。しかし、そういう問題が一向に諮問されないから、二十二名の委員は憤慨して突き上げてきたわけです。それに対する答弁ですよ。だから、もしそれができるならば、あなたのほうから堂々と諮問したらいいじゃないですか。価格に関する限りは私のほうからも諮問いたします、価格に関連して食管制度に及ぶ問題は諮問いたします、こう諮問して一向差しつかえないじゃないですか。なぜそれをやらないのですか。
  68. 西村直己

    ○西村国務大臣 私どものほうは、当面の米価についての諮問をするのでありますが、しかし、審議会令によりまして価格基本について建議をするという場合に、基本に入っていけば管理制度にも触れてまいり、その建議でも触れていいのじゃないかと私どもは思います。
  69. 西宮弘

    ○西宮委員 この問題は、いま申し上げたように、委員を任命した当時の経緯からいうとこれをやらせる、これをやってもらうんだということで任命しているわけですよ。ところが、それをやれない。政府は諮問をしないということに非常に憤慨をして突き上げてきた。だけれども、もしそれができるならば政府のほうから大いに諮問をして、皆さんにぜひやってもらいたいと言っていいじゃないですか。あるいは前の国会、三十八年のときみたいに、そういう法律案などを出す必要なしにやっていいじゃないですか。
  70. 西村直己

    ○西村国務大臣 同じ答えになりますが、私のほうといたしましては、審議会令に基づきまして諮問をいたすと同時に、価格基本に関連して食管制度というものに触れて——消費者米価なりあるいは生産者米価というもののいろいろの柱が立っております。そういうことに関連して、食管の問題についての建議が出てくるということはあり得るのだという解釈であります。
  71. 西宮弘

    ○西宮委員 いまの大臣の答弁は、審議会令に基づいて云々というわけだったが、私は、審議会令がすでに問題だと思う。なぜならば、これは法律の範囲を越えているわけですよ。法律からはみ出している。そういうのを根拠にして、審議会令を基礎にしてといういまの大臣の答弁だったけれども、法律のほうではそういうことはいってないんだ。あくまでも価格に関する重要事項ということに限定しているわけなんだ。令のほうは、いま言われたように「及びこれに関連し必要と認める事項を農林大臣に建議する。」こういうことになっているものだから、大臣はそれを根拠にしたのだといういまの答弁だったけれども、法律のほうにはそういうことはいってないわけですよ。だから、審議会令がその法律からはみ出している。法律を無視している。そういうものを基礎にしてこの重大な食管制度を建議する。  時間ばかりとってしようがないけれども、繰り返して申し上げますが、それは意見を述べるのは、言論の自由ですからけっこうですよ。けっこうだけれども、それはあくまでも権限に基づかざる意見開陳なんだから、そこははっきりと区別をして、要するに、言いかえるならば、二十二名の私人のグループがそういう意見を出してきたということに尽きるのだから、その区別は明確にしておいてもらわなければ困る。どうですか。
  72. 西村直己

    ○西村国務大臣 お答えは、同じ答えを繰り返して相すまぬのでありますが、私どもは、米価審議会令に基づきまして価格決定、その決定基本に関して調査審議する、したがってそれに関連して建議をする、そういうふうに受け取っておるわけであります。
  73. 西宮弘

    ○西宮委員 全く同じことを繰り返しているだけで、何の進展もありませんから、私はあらためて別な機会に、この問題は十分に追及したいと思います。しかし、ここで政府の統一見解として述べておることは明らかに法律違反なんだから、そのことは十分に銘記しておいてもらいたいと思います。  さらに、時間がありませんけれども、私はさっき、農林大臣はおいでですかというようなたいへん失礼な言い方をしたのでありますが、それは要するに、たとえば財政制度審議会等が実にかってな議論を堂々とぶちまけているわけですね。こういうことが許されるのかどうか。私は、財政制度審議会そのものの性格なり権限からいっても、これはとうていできないことだと思うのだけれども、それは第二の問題にしても、そういうところで、たとえば米の買い上げは制限をするとか、あるいはそれができないならば値上げは一切認めないとか、こういうようなことを議論しておるのだけれども、こういう議論を聞いておって、大臣はこの問題については、あえて抵抗したりそういうことはされないのですか。大臣は、そっちのほうでそういうかってな議論をされておるのに、憤慨しないのですか。
  74. 西村直己

    ○西村国務大臣 私は、憤慨したり喜んだりしません。事態をきわめて冷静に見つめております。
  75. 西宮弘

    ○西宮委員 大臣は、事態を冷静に見ながら、出てきた意見を集めて態度をきめると、こういうことだろうと思うのだ、いまの答弁の意味は。しかし、これは農林大臣としてまことに無責任だと思う。私は、たとえば財政制度審議会あるいは物価安定推進会議、あるいはまた米価審議会、そういうものでいろんな意見を出さして、その上で、そういう意見が出てきたから、われわれとしては不本意だけれどもやむを得ない、こういうことで食管の改正に持ち込もうと、こういう意図だと思うのですけれども、これは所管大臣としてまことに無責任な態度だと思う。  たとえば、かつての河野農林大臣などは、昭和三十六年七月に農林大臣に就任すると、第一回目の記者会見で食管制度の改正を提案したわけです。あるいは意思の表明をしたわけであります。私は、むしろ河野大臣のほうが、そういう責任を明確にするという点ではりっぱだったと思う。いまの大臣は、あっちこっちからいろんな意見を出さして、たとえばこの前も申し上げたように、米審そのものだってもう出る意見はきまっているのです、そういう意見の持ち主だけを集めたのだから。そうしてそういうものをあっちこっちから出さして、あとはみんなに押されてついにやむを得ない、こういうことで持ち込もうという腹であるということがよくわかる。私どもは、そういう点はまことに遺憾千万だと思う。  特に、今度の財政制度審議会その他を通して、たとえば、米をつくっておる農家が全く悪者扱いを受けているわけですね。まるで必要でないよけいな米をつくって、そのためにまずい米を食わされるというようなことで、何か米をつくっている農家が、あたかも悪者であるかのような扱いを受けている。そういうことに対して、農林大臣はお考えは何もないのですか。私は時間がありませんから——それじゃ一応いまの点について、大臣の感想を聞かしてください。
  76. 西村直己

    ○西村国務大臣 私は農林大臣でございますから、所管の責任を通して農政の推進をはかりたい。したがって、その意味におきましても、総合農政の展開というものをはっきり皆さんの前に示しておるわけであります。
  77. 西宮弘

    ○西宮委員 それでは一つだけお尋ねをいたしますが、食糧の増産という点についてはどういうふうにお考えですか。
  78. 西村直己

    ○西村国務大臣 この間申し上げました中におきましても、食糧というものは増産すべきである、そうして需要に即した食糧増産をはかりたい、こういうことをはっきり申しておりますし、自給度等につきましても、早急の間にひとつ、三十七年以来つくりました食糧需給が変わってきておりますので、それを早く明確にきちっとしたい、こういうことを督励しておるわけであります。
  79. 西宮弘

    ○西宮委員 それでは、少なくとも生産されたものは買い上げ制限をするとか、そんなばかなことは、全く考慮外ですね。
  80. 西村直己

    ○西村国務大臣 少なくとも現在の段階におきましては、現行食管法に基づいてやる、こういうことを申し上げておるのであります。
  81. 西宮弘

    ○西宮委員 それでは、少なくともいままでそういう議論が行なわれているわけです。買い上げ制限をしろというような議論が行なわれているわけです。こういう意見に対して、私は、大臣が何らの抵抗をしないということにはなはだ不満だということをさっき申し上げたんだけれども、そういう意見が行なわれているのに対して、大臣は、当然農林大臣としての見解を表明して、そういう意見に駁論すべきだと思うのだけれども、それをやってないとしたら、それは大臣の怠慢ではないですか。
  82. 西村直己

    ○西村国務大臣 現在の時点におきまして、将来の食糧管理、特に米の管理のあり方については、いろいろな意見が出るのは当然でありましょう。また、いろいろな意見が各界から出てしかるべきだと私は思います。ただし、私としましては、農政の責任者といたしまして、現在の時点におきましては、現行の食管法があるのでありますから、それを一応やっていく。そうして、やがていろいろな意見が出てきた場合において、事態に即応して総合農政の中でこれを検討してまいりたい、こういう考えであります。
  83. 西宮弘

    ○西宮委員 それでは、いま買い上げ制限などはしない、こういうことを言われたんだけれども、さらにいま横行している議論は、生産制限をすべきだ、財政関係等ではそういう意見まで行なわれているわけですよ。生産制限もやるべきだ、そういう意見が横行しているのだけれども、そういう考えは全くないわけですね。
  84. 西村直己

    ○西村国務大臣 私は、総合農政の展開という思想の中におきましても、食糧というものを全体的に見詰めて、それから需要の変化というものもよく見て、それから同時に、これは生産する人も消費というものの動向をながめつつやっていくということも必要であります。そういうような中において総合農政というものを展開したい。そうして、さしあたりは現行食管法というものがあるのでございますから、それによって当面の米価等は扱ってまいりたい、こういうことでございます。
  85. 西宮弘

    ○西宮委員 すでに、たとえばついこの問の国会においても、大いに食糧の増産をしなければならぬということは、大臣の所信表明の中にもうたわれていることです。あるいは閣議で決定をされたいわゆる土地改良の長期計画という中には、昭和五十年までに水田六万ヘクタール、あるいはつぶれるやつまで、それに代替するやつを加えれば十三万ヘクタール、そういう開田をしていかなければならぬということがうたわれ、かつ、その裏づけをなす財政なり金融なりのいろいろな措置が講ぜられておる。そういうことが閣議で決定されて堂々と実施をされている。そのさ中において、生産は制限すべきであるというような議論が行なわれる。大臣は、いわゆる総合農政の中で検討をする、こういうお話だったけれども、そういうことになると、たとえばいまのうたわれた開田計画、これなども場合によったらばやめる、抑制する、こういうことに変わることもあり得るわけですか。
  86. 西村直己

    ○西村国務大臣 私どもはいま、御存じのとおり、先ほど来申し上げているように、需要の動向に即応した食糧を考えてまいらなければいかぬ。たとえば、具体的に簡単に申しますと、やはり国民としては質のよい米をほしがっております。そういう点も十分に勘案しながら、ただ単なる増産というだけにとらわれずに、むしろ量から質へという面も十分に考慮しながら今後再検討を加えてまいりたい、こういう思想であります。
  87. 西宮弘

    ○西宮委員 了得はしませんけれども、ついこの間の国会で、そういう食糧の増産政策について堂々と所信を表明され、さらにその裏づけをなすいろいろな政策を推進しているわけです。そのさなかにああいう議論が横行している。生産制限までしよう、あるいはいまでさえすでに余っているんだから、いまあるやつをもっと減らさなければいかぬ、こういう議論さえも行なわれているわけですね。私は全く言語道断だと思う。大臣は、ぜひともそういうのに対して強く抵抗し、あるいはまた、そういう意見に対して大臣の責任において弁駁してもらいたいと思う。  私は、もう一言だけ価格の問題について申し上げたいと思うのでありますが、いかにも価格が上がってくるから困る、こういうことで、あるいは両米価の凍結論であるとか、そういうことが盛んに出ておるわけです。大臣は就任必ずしも長くないので、ぜひとも大臣に御認識を得ておいてもらいたいと思うことは、農民は好んで価格引き上げを求あているのではないのですよ。その証拠には、きのうもちょっと出ましたけれども、私は、実はこのことを繰り返し繰り返し言っているのだけれども、昭和二十八年に日本米価は初めて一万円米価になりました。それからまるまる七年間、三十五年までは一銭一厘上がっておらないのですよ。厳密に言うならば、昭和二十八年の米価を全部下回ってきているのです、七年間は。しかし、その間に物価は一割四分上がっている。もしその程度物価上昇ならば、農民はその物価上昇生産性の向上ということで補いながら、苦しいながらもがまんをして、米価値上げを要求せずにきたんだろうと思う。がまんをしてきたんだろうと思う。ところが、昭和三十五年の経済政策の転換によって、あれから急激な物価上昇に転化したわけです。それがためにやむを得ず、それに追いつかなければならぬというので、初めて米価引き上げ運動、あるいは米価引き上げを実施されてきた。このことは大臣十分銘記しておいていただきたいと思う。決して農民が好きこのんであれしたのではない。もしあの程度物価上昇が今日までなお続いてきたならば、あの当時、昭和二十八年一万六百八十二円という米価だったけれども、あの程度米価で苦しいながらもがまんをしてきたのではなかろうかと私は想像するんですよ。それが、農民とは何の縁もゆかりもない、農民の責任とは何の関係もない経済政策の転換によって物価が上がり、したがって米価を上げざるを得ない、こういう事態に追い込まれたのだということを、十分御承知願いたいと思います。  大臣は、食管会計の赤字は何年から出始まったと思いますか。
  88. 西村直己

    ○西村国務大臣 数字の問題でございますから、専門職のほうからお答えいたさせます。
  89. 西宮弘

    ○西宮委員 大臣も次官もお答えできないならば、私のほうから申し上げますが、昭和二十七年からです。  それではもう一つお尋ねをいたしますが、いわゆる二重価格制度、つまり生産者には生産費を補償する価格を支払い、消費者には家計安定の消費者米価をきめる、こういう決定をしたのは何年ですか。
  90. 西村直己

    ○西村国務大臣 生産費補償方式を取り入れたのは、たしか三十五年だと覚えております。
  91. 西宮弘

    ○西宮委員 私のお尋ねは、食管法の三条と四条に、いわゆる生産者米価消費者米価をそれぞれ第二項で決定しましたね。それは何年ですか。事務当局でけっこうです。——事務当局のほうからでもお答えがないから私から申し上げますが、それは昭和二十七年です。  それじゃ大臣にお尋ねをいたしますが、たいへん失礼な質問で恐縮でありますが、昭和二十七年というのは、日本の歴史でどういう年でありましたか。
  92. 西村直己

    ○西村国務大臣 私も記憶は十分でありませんが、事柄は米に関しての御質問だろうと思いますが、おそらく作柄のよくなかった年だと思います。
  93. 西宮弘

    ○西宮委員 私が日本の歴史についてと申し上げたのは、昭和二十七年は講和条約の成立をした年なんです。これは、大臣は笑っているけれども、きわめて重大なんですよ。それまではGHQの管理のもとで、いわゆるジープ供出、ピストル供出というものが行なわれておった。したがって、進駐軍が去ったあとに、日本政府日本政府独自の政策でやらなければならぬということになりまして、その年からあの法律の中に三条、四条の第二項を加えて、生産者には再生産が確保できる米価消費者には家計の安定ができる米価、こういうことを決定して、それで生産の増強をはかった。したがって、それに刺激をされて、昭和三十年以来の豊作が今日続いているわけです。したがって、この政策にもし狂いがくるならば、それは前のときと全く同じになってしまう。さっき申し上げた、昭和二十八年に一万円米価になったというのはこのためなんですよ。日本は独立をして、いままでのようなジープ供出、ピストル供出ができなくなったためにこういうことになったのです。だから、その大方針をぜひ貫徹をしてもらわなければならぬ。  それに対していま、あるいは生産制限をするとか、買い上げ制限をするとか、そういう議論が白昼堂々と横行している。それに対して所管の大臣が何の抵抗もしないで、むしろ、そういう意見がたくさん出てきたら、それを見た上で大いに研究しましょう、こういうような態度でおるということは、われわれにとってみると、所管の農林大臣として、われわれが最もたよりにしておる農林大臣として、まことに残念しごくだと思う。ひとつそういう点について大臣の基本的な姿勢を伺って、時間もありませんから終わりにいたしたいと思います。  私は、たとえば今回突如、米価値段もいわゆる平均生産費にする、こういうようなことを盛んに大蔵省なりあるいは経済企画庁などが唱え出してきているわけですよ。もうことしの作付はすでに終わってしまった。あるいは、開田なんという仕事は毎年毎年現に進行している。みんな今日までの米価を基礎にして、あるいは開田をしたり作付をしたりしてきているのです。もしここで米価基本的な原則が、たとえば平均反収によって計算をする、平均生産費によって計算をする、こういうようなことに変わるならば、いままで政府のやり方を信頼してきた農民は、全く立ち往生してしまわなければならぬ。これはまことに重大千万だと思うのですね。時間もありませんから、その一点だけ伺いましょう。いわゆる米価算定の基礎に、たとえば平均生産費をとる、こういうようなことを言っている官庁があるのだけれども、大臣はそういう考えは毛頭持っておりません、こういうことならば、その点だけ明確にしてもらいます。
  94. 西村直己

    ○西村国務大臣 おそらく、それは経企庁あたりの一つ意見だろうと思います。そこで、それらは、需給の実勢を今回の生産者米価決定等にどう反映するかの一つ意見のあらわれになってきているのじゃないか。ことしは、御存じのとおりいろいろ、需給の状況とか環境が変わっていることが事実であることはいなめない。しかし、同時に生産者生産意欲、同時に消費者家計の安定という、いわゆる現行食管法の運用、適用、これも当然のことであります。その中においてどういう形、どういう方式で決定するか、これはただいま検討中でございます。
  95. 西宮弘

    ○西宮委員 これで終わりにいたしますが、私が最後にお尋ねをしたいわゆる平均生産費の問題、それにしようと言っている企画庁その他の意見、これはもうあと二、三日で諮問が出るわけだけれども、その中には、そういうものは取り入れないということはもうすでに明確ですね。
  96. 西村直己

    ○西村国務大臣 先ほど申し上げましたように、それらは検討中であります。はっきり申し上げますと、現行食管法に基づく行き方をとることはこれは間違いありません。  ただ問題は、現行食管法の中でどういうような方式をとるか。たとえば、それは計算方式の問題になってまいります。そこいらをよく政府部内におきまして、再生産の確保、こういうことについての意見統一をはかってまいりたいと思います。
  97. 西宮弘

    ○西宮委員 いわゆる計算方式の問題には違いありませんけれども、これなどは全く基本的な問題なんですよ。つまり、企画庁などの言い分によれば、この方式をとればいままでの米価でも高過ぎたんだ、いままでの米価も下げなければならない、こういうことを言っているわけです。ただし、政治情勢として下げることは困難でしょうというようなことを言っているけれども、むしろ下げなければならないのが本来なんだ、こういうことまで公言をしているわけですよ。ことしについていえば、すでに作付が終わったんだし、あるいは来年度以降についても、それを前提にして開田その他が行なわれて、みんな百姓が一生懸命やっている。そういうときに、全くの根本、基本に触れる問題について、もうあと二、三日で答申をするといういまの時点で、まだきまっておらないというのはおかしと思うのです。その点だけ明確にしてください、終わりにしますから。
  98. 西村直己

    ○西村国務大臣 いずれにしましても、諮問し、いわゆる試算方式等は当然出てまいるわけでありますから、それまでに十分私らは私らの立場においての意見をきめて、政府間の統一をはかって、諮問あるいは試算方式あるいは試算の内容を出すつもりでございます。
  99. 西宮弘

    ○西宮委員 それでは、くどいようですけれども政府間で意見を調整するというんだけれども、農林大臣としてはあくまでもこれを堅持されますね。
  100. 西村直己

    ○西村国務大臣 需給の実勢をどう反映させるかということについては、これも一つ意見であります。したがって、われわれはこれらも参考にしながら、最終的な意見を出したいと思っております。
  101. 西宮弘

    ○西宮委員 端的に、前置きを抜きにして、この問題一点について、農林大臣は従来の方式を堅持する、こういうことを明確にしてもらいたいと思います。
  102. 西村直己

    ○西村国務大臣 私のはっきり言えますことは、経企庁での両米価据え置き論あるいは平均値をとって値下げをする、こういうようなことはあり得ることはない、あり得ないと思います。また、あるべきではないと思います。ただし、それ以上の事柄につきましては、十分関係省の間で、農林省は農林省の立場においての考え方もいずれその中に織り込みながら、政府としての意見を出してまいりたいと思います。
  103. 西宮弘

    ○西宮委員 それでは、いまのは要するに、いま私の質問したような、いわゆる平均生産費をとるというようなことはあり得ない、それ以外の問題についていろいろ検討される。たとえば、積み上げ方式とかいろんなそういう方式等がありましょうけれども、これはいろいろ検討の余地がありましょうが、少なくともその点だけは明確だ。その点というのは、いわゆる平均生産費はとらない、こういうことだけは明確ですか。
  104. 西村直己

    ○西村国務大臣 繰り返して申しますが、一部では据え置き論が出ております。これは私どもとしてはとるべきではない、こういう意見でございます。それからもう一つは、平均生産費でやるというと下がる、こういうことは当然あり得べきことではないという考えでございます。
  105. 西宮弘

    ○西宮委員 それでは、ほんとうにこれで最後にいたしますが、いわゆる据え置きは、消費者米価はあくまでも据え置いてもらわなければならない。これはあとの人に続いて質問してもらいますが、その点を明確にしておいてもらいたいと思います。  それではこれで終わります。
  106. 鹿野彦吉

    鹿野委員長代理 次は美濃政市君。
  107. 美濃政市

    ○美濃委員 時間があまりないようですから、単純に質問いたしますから、明快にお答えをいただきたいと思うのです。  大臣はしばしば、米の供給は超過となってきた。これは一時的な現象ではない、こう言っておるのですが、どういう観点に立ってこういうことを表明されるかを、まずお伺いいたしたいと思います。
  108. 西村直己

    ○西村国務大臣 長い目でまいりますと、これは御存じのとおり、ああいう農産物につきましては、いろいろな条件というものがあり得るでありましょうが、最近の、いわゆるここしばらくの間の需給というものについては、現状をそう変わることはないであろう、こういう判定は、ただいま私はしておるわけであります。言いかえますれば、ことしの出来秋で二百六十五万トンぐらいのものが持ち越されるであろう。かりに平均作というようなものであっても千三百万トンは確保できるであろう。一方におきまして需要のほうでございますが、需要のほうは、人口は多少伸びておりますけれども、戸々当たりの消費というものが減りかげんである。こういうところから、やはり需給の実情というものは、ここしばらくはいまの状況と急激に変わってまいる、こういうふうなことはない、こういう判断をいたしておるわけでございます。  なお、数字等につきましては、あるいは事務当局のほうからお答えいたします。
  109. 美濃政市

    ○美濃委員 この需給の中で、かなり輸入をされておるのですが、農林大臣としては、米の輸入についてどうお考えですか。
  110. 西村直己

    ○西村国務大臣 従来、米というものは、食管法に基づきまして、国民主食として安定供給、そのために必要な輸入をしてまいりまして、それにてバランスをとってまいっておる。過去の実績等は、事務的に数字で御報告さしていいのでありますが、しかし、最近におきましてはきわめて需給が緩和されておる。したがって、非常に輸入が制限されておる。  ただし輸入の中でも、加工用、原料用と申しますか、そういうものは食用でございませんで、直接加工あるいは原料用になるわけでございます。それを別途といたしましても、昨年、今年度にかけましては、非常に輸入というものは制限をされてきている、こういう状況であります。
  111. 美濃政市

    ○美濃委員 ことしの予算の中でどれだけ輸入しようとしておるのか。予算金額は出ておりますが、量はどうか。それと、どの国からどれだけ買うという計画になっておるか。
  112. 西村直己

    ○西村国務大臣 予算の計画は三十三万トン。それから、実際の今日までの輸入実績は二十七万トンだと思います。
  113. 美濃政市

    ○美濃委員 原料用といいますけれども、しかし米が余るようになってくると、生産量が上がってきますと、加工用でも日本の米は使えるはずです。どうしてそれを輸入するかというところに、私は大きな問題があると思うのです。加工用といいますけれども、純然たる加工用かどうかという限界は、私どもの判断では、大臣が言うように、これは加工用だと、輸入米というものはそう単純な考え方にならないわけです。やはり外貨も大切なわけですから、生産量で間に合う範囲においては、加工用も国内産米を使うべきである、こう思うわけですが、なぜ要らぬものを買うかということです。
  114. 西村直己

    ○西村国務大臣 たとえば、三十三万トンを予定しておりますうちでも、準内地米が十八万五千トン、こういうふうになっておりますし、準内地米の中でも、これはほとんど全部通商政策の上から入れておるわけでございます。中共から十三万トン、台湾から五・五万トン。たとえば中共のお米のごときは、私どもは、どうしてもこの際入れたくはないのだ、量をしぼりたいと思いますけれども、どうしても中共側の強い要望があって、今年度も十万トンを入れたわけでございます。
  115. 美濃政市

    ○美濃委員 それが私どもでは理解ができないことなんです。その要請があることはわかるが、国内産米が食管会計で二百六十五万トンぐらい余るというのだから、要請があるから買うというのはわからないわけです。どうしてそういうものを買って、片や、先ほどもお話があったように、国内産の米作農民を、米が余るといって敵視するような表現は、私どもはもう腹に据えかねておるわけです、最近の情勢というものは。なぜ、まじめに米をつくっておる農民を、余るといって敵視するような表現をするか。これはけしからぬと思うのです。これは思想問題にもなってくると思います。これは、何ぼ政府が道徳だとか何だとか言ったって、こういう食い違ったすれ違いの表現をすると、国民の思想は悪化すると思うのです。なぜ、米が余るといって国内産米を敵視するような表現をするのか。
  116. 西村直己

    ○西村国務大臣 加工用とは、御存じのとおり、そのままみそ、しょうゆに使うとか、こういうようなものでございます。したがって、従来からも、それは一定のものをきちっと直ちにそれに使っていく。それからもう一つは、中共のお米も、シャオチャン米でいい準内地米です。  ただ問題は、内地において相当需給緩和がされているときであるから、他のものに振りかえられるならば望ましいのでありますが、中共としては、これを買ってくれなければ中共貿易というものはお話に乗れないという強い要請が、当時中共との民間貿易をなさる方々にありまして、そこで、今年度はシャオチャン米を中心に十万トンを入れる。ただし、これも質のいいものは、いわゆる徳用上米と申しまして、そういうものに十分使える米であることは間違いないのであります。
  117. 美濃政市

    ○美濃委員 たとえば、外米輸入しないで国内産米を充当していくということになると、食管会計の赤字等にも重大な影響が私は起きてくると思うわけです。それは、今回出してもらった資料を見ても、在庫量がふえる。在庫量がふえるなら、繰り返しますが、国内産米をなぜ加工用に使わないのか。良質米ですから使えぬということはないと思うのです。輸入米以上に国内産米は質がいいのでありますから、それを使わないところに、たとえば食管会計の赤字等についても、輸入米は加工用として優先的に消費していきますから、そういう関係で、それを国内産米で充足すれば、ことしも二百六十五万トンという米は残らないのです。残るから、端境期に残るという米は、長期的に保管と金利がかかります。そうすると、異常な食管の赤字というものが派生するわけです。  たとえば、四十年は、食管の普通経費、いわゆる逆ざやという売買差損は別といたしまして、経費関係は八百八億円も出ておるわけですね。それが昭和四十三年度の見込みは一千三百四十億。五百億円も経費が増加する。この五百億円が全部だとは言いません。これは事務人件費も上がっておるでしょうから、その五百億が全部だとは言わぬが、その大宗をなす赤字の増加というものは、いわゆる外米輸入による需給操作上から発生していると言っても私は間違いないと思うのです。入れないで、国内産米でこれを充足したらこういうことにならないと思う。その点は、いま言ったように、どうしても要請があれば国内産米は敵視して、国内の米づくり農民を、いま盛んに論議されているように何か敵視をしても、あるいは国内産米に圧力をかけて生産量を減産させてでも、輸入は続けるというのですか。どうなんですか、そこは。
  118. 西村直己

    ○西村国務大臣 たとえば加工用の砕け米とか、あるいはみそ、しょうゆの原料価格が非常に安い。それをみそ、しょうゆに使って初めて今日のみそ、しょうゆの一つ価格というものができているわけです。これを内地米へ急激に転化すれば、今度はみそ、しょうゆの値上げという問題にまた転化してくる、こういうような問題がございます。  それから、もちろん私どもは、準内地米等においてもできるだけ減らしたいけれども、しかし、全体の額から申しますと準内地米は十八万トン余でございます。一方四十二年の生産量は千四百五十万トンですから、全体から見れば小さな準内地米の輸入量でございます。
  119. 美濃政市

    ○美濃委員 この問題は、きょうは時間がありませんから、きょうで質問が終わったということには受け取らぬようにしてもらいたいと思います。この問題は、やはり日本経済上重大な問題だと思います。それから、はたして加工用にどう使われておるかということも、今後検討したいと思っております。  次に、もう一問お伺いしたいのですが、大臣は、しばしば量より質ということを言っております。きょうも言っておるわけです。しかし、米の質というものが、こういう米価決定時点において、大臣が言うように軽々としてできるものかどうか。日本の米質というものは、こういう差し迫った米価決定する時点で、あなたが言うように軽々として表現するような問題であるかどうか。どういうことを考えてそんなことを言っているのか、これをひとつ伺っておきたい。
  120. 西村直己

    ○西村国務大臣 農業の性格から申しまして、私は長期でなければいかぬと思います。また農民というものは、安定の中から前進をしていただくということが大事だと思います。これは当然のことであります。また自然条件の制約もあります。土地条件の制約もございますが、しかし私としては、これだけの需給緩和の中において、しかも国民としては良質の米をほしいという強い要望もまた流れておる時期でございます。また農民方々も、良質の米を売ることによって、かえって所得の向上を見るというような方法があり得るならば、質の向上ということは訴えられてしかるべきだ。  しかし、今日現在、これをすぐあしたに実行できるという意味でなくて、方向としてそういう方向は望まれてしかるべきじゃないか、こう考えるのであります。
  121. 美濃政市

    ○美濃委員 これは申し上げておきますが、日本のいまの米の質は、日本人に向く食味としては——先ほどお話がありましたように、輸入米といっても、輸入米は質は非常に落ちるわけですから、日本人の食味に向く米質としてはかなり完成されていると思うのです。それからまた米の持つ性能、質をよくするということは、これは原則として大体晩生種になりますから、そうすると、現在つくっておる米の質を変えるということは、将来の方向もけっこうですけれども、そうたやすい、口先で言うようななまやさしいものでないと思うのです。しかも、こういう制度とか価格を論議しておるときに、いままで長い歴史でこれまでの質の米を試験研究の中でつくっておるわけですから、それをいま軽々として言うということは私はどうかと思います。  将来の方向とこう言うけれども、何かこの問題も、私どもはすなおに将来の方向と聞き取れぬわけですよ。いわゆる国内産米の敵視の表現の一環である、こういう受け取り方になるわけですね、いまの時点で質、質と言うことは。この問題が落ちついたあとでもっとゆっくり話しするんだったら、すなおに聞けるかもしれませんけれども、そう簡単な問題でありません。日本の米の質をさらによくするということは、これはよほど検討しないと、今度はいもちなどの病害とか、気象に対する対応性を失いますから、そういう点が問題があるわけですよ。そう政治発言で言うような簡単なものじゃないということを申し上げておきまして、私の質問はきょうは終わります。
  122. 鹿野彦吉

    鹿野委員長代理 次は稲富稜人君
  123. 稲富稜人

    ○稲富委員 大臣も忙しいようでございますから、二、三の点だけお尋ねしたいと思いますが、特に私、大臣にこの機会にお尋ねしたいと思いますことは、二十二日に米審が開かれて、これに諮問をされるようでございますので、その諮問に関する前提といたしまして、二、三の点を質問したいと思うのであります。  もちろん私たちは、今回政府でいわれておりますいわゆる中立米審というもののあり方につきましては、食糧管理法のたてまえから申し上げましても、生産者代表消費者代表というものが加わることが最も妥当である。かように考えます。これを特に除外された米審というものは、現在の食糧管理法から申し上げましても実に遺憾な状態にある、かようにわれわれ考えるのでございますが、これに対して農林大臣は、前の大臣が決定されたことでございますから、それに対していろいろ言いたくないだろうと思いますけれども、これは基本的な考え方としてどうお考えになっておるか、もしも大臣の気持ちを率直に承ることができますならば、この機会にひとつ率直な考え方を承りたいと思います。
  124. 西村直己

    ○西村国務大臣 前回の委員会でも申し上げましたが、米審の構成につきまして、ことしは新しい構成をすでに発令し、それを私が引き継いでおるわけでありまして、これにつきまして非常な熱心な御意見が、予算委員会等におきまして、また農林水産委員会等におきましてかわされておったことも事実でありますし、また、各党間でもいろいろな御意見を交換されたのであります。したがって、私どもは、各党間におきましての一つの結論が得られれば、それにもよくよってみたいという考えもありましたが、ついに得られませんでした。したがって、米審の構成につきまして、従来の経緯から、おそらくああいう形が出たというふうに私も引き継いでおります。無答申が続いたということからきたと思います。  そこで、私は二つの考え方があると思います。一米価審議会が、利害関係方々が加わってやるのも一つの行き方、また、別にそうでない立場から意見を出すというのも一つの行き方、両論があったと私は思うのであります。経緯は、そういう経緯のもとに今日米価審議会が開かれんとしておるのであります。
  125. 稲富稜人

    ○稲富委員 それで、米審あり方に対しては、いい悪いということは、なかなか大臣としてもこの際言いにくいだろうと思うのでございますが、ただ、ここで米審に諮問され、米審からいろいろこれに対する答申が出ると思うのでございますが、御承知のごとく、農林省設置法の五十三条によりましても、「米価審議会は、米価その他主要食糧の価格決定に関する基本事項を調査審議する」とあって、価格決定ということが最も基本的な問題であるということを、十分ひとつ頭に入れて運営をされることが最も必要である、かように考えておりますが、大臣のこれに対するお考えを承りたい。
  126. 西村直己

    ○西村国務大臣 もちろん私どもは、設置法あるいは審議会令ですか、それに基づいて運営をしてまいりたいと思います。
  127. 稲富稜人

    ○稲富委員 ここでまず大臣にお尋ねしたいと思いますことは、本年度の米価決定する時期に参っているのでございますが、これに対しまして、すでに企画庁あるいは大蔵省その他より、いろいろ大臣のもこに進言をされたということも新聞に報道されております。あるいは大臣のところに進言せぬといたしましても、ほかの機関を通じましていろいろ発表されております。あるいは経済同友会その他も、米価決定に対していろいろな意見をやられていると思うのでございます。  しかし私たちは、こういうような閣内のいろいろな意見であろうと、あるいは閣外のいろいろな意見であろうと、こういうことがある中における本年度の米価決定に対しまして、まず私が大臣の気持ちを聞きたいと思うことは、所管の農林大臣として、そういうようないかなる意見があろうとも、農林大臣はき然として、農林大臣の態度をもってこれに対処してきめられるということが当然行なわれなくちゃいけない、かように考えます。それで私は、これに対する農林大臣としてのき然たる態度、決意のほどをまず承りたいと思うのであります。
  128. 西村直己

    ○西村国務大臣 生産者米価、いずれは消費者米価決定しなければなりませんが、食管法に基づきます再生産の確保ということが、生産者にとっては大事な問題であります。消費者にとっては家計の安定。それからいま一つは、同時に今年度の米価をめぐる他の要因というものも、私どもは一応は見詰めなければならぬと思います。  一つは、総合予算主義を政府としてはとっておる。しかし、これは農林大臣直接の問題ではございません。あくまでも財政の観点から出ておるが、政府の一員としてはそれも一応は考えてまいりたい。それから、生産者米価消費者米価はそれぞれの方式によってきめられますけれども、両者が関連するということも大事な点ではあろうと思うのであります。それからいま一つは、需給の緩和という一応の情勢があるという事実は事実であることもすなおに受け取りつつ、その中でもって再生産意欲というものを阻害しないような形、これも考えていかなければならぬ、これが考えであります。いろいろはでな意見が出ますことは、ある意味では参考になりますが、ある意味では、私どもは迷惑な面もあるわけでございます。
  129. 稲富稜人

    ○稲富委員 いま大臣のこれに対する意見を聞いたのでございます。なお先刻の西宮委員の質問に対しましても、大臣は、食管制度の問題に対していろいろ論議する中においても、本年度米価決定に対しては、食管法という法律があるから、食管法に基づいてやらなければいけないのだ、こういう決意のほどを承りました。当然であると思うのでございます。  それで私は、ただいまも話があったのでございますが、食管法の中において、生産者米価決定する最も必要なことは第三条に示してあります。「米穀ノ再生産ヲ確保スルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」これが食管法できめられました米価決定に対する最も重要な、基本的な問題でなければいけないと思うのでございます。少なくとも農林大臣が本年度米価決定されるにあたりましては、この食管法第三条の二項にきめております、すなわち「米穀ノ再生産ヲ確保スルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」というこの基本的な考え方というものは、どこまでも尊重し、この基本的な考え方にのっとって生産者米価決定するということは忘れてはならないし、尊重されなければいけない、かように考えますが、いかがでございますか。
  130. 西村直己

    ○西村国務大臣 再生産確保は、もう当然のことだと思います。
  131. 稲富稜人

    ○稲富委員 私は、その点は大臣もはっきりしておりますので安堵したのでございます。  ここで大臣に一つお尋ねしたいと思いますことは、先般大臣は、総合農政の確立をするということを表明されました。私は、こういうことは当然のことであって、いままで−わが国の農政は、あまりに総合的な農政の確立のなかったところに非常な欠陥があった、かように考えます。そういう中から、今日米価だけを取り上げて、そうして高いの安いの、こういうような議論をするところに、私は総合的な日本農政の欠点があったと思うのであります。そういう点から私たちは、今日農林大臣が、将来の日本のビジョンとしての総合農政を確立するということは、これは最も必要であると思いますが、これを、本年度の米価といかにも関係があるがごとく、また、米価とくっつけてこれを表明されるところに、私たちは何だか、これは農林大臣の米価の問題に対する意図があるのではないかとさえも疑われるのであります。もしもそうであるとするならば最も遺憾なことであって、私たちは、将来においては日本農政をこういう方向に持っていくのだというビジョンを立てながらも、本年度米価に対しましては、農民が次期生産を確保する米価決定するという、切り離した考えで米価問題は決定される、これが農林大臣としての当然の役目である、かように考えますが、いかがでございますか。
  132. 西村直己

    ○西村国務大臣 私は、総合農政を展開するにあたりまして、御存じのとおり農林大臣でございます。したがって、農政に対する一つ基本的な考え方というものを持つべきである、これは当然だと思います。  そこで、私としては、長期の展望に立っての農政というものを、一応所管というものを持っておりますから出しまして指示を与えました。と同時に、それでは米というものに全然解れない農政というものはあり得るか。やはり米価あるいは米というものについて触れなければ、米は大きな農政の中のシェアであります。ですから、これによって米価を抑制するとかしないとかという問題ではなくて、全体の農政の中において、将来米並びにその他の食糧はどうあるべきかという考え方を述べたのでございます。
  133. 稲富稜人

    ○稲富委員 本年度米価決定に対しては、一方には、日本農政のビジョンというものをここに打ち出して日本農業に対する希望を持たせる、こういうことは必要でございます。しかしながら、それだからといって、ことしの米価に手心を加えるとか、それだからことしの米価を安くするというような誤解を招くことは、私たちは最も戒めなくてはいけないと私は思う。そういう意味から私たちは、本年度米価決定と総合農政を確立するというビジョンとは、おのずから別個の問題として打ち出さなくちゃいけないのじゃないかと思う。それを、この機会にこれを言われると、いかにも見るほうではそれを混同してしまう。  もちろん、将来の日本の農政を確立するために、米価というものが無視できないものであるということはわかります。しかしながら、いまの時期にそれを言って、いかにも本年度米価にそれが影響するような感覚を持たれるということは、私は最も遺憾であると思う。この点をひとつはっきりしておかなければ、私は、将来の西村農政を確立する上からいっても大きな問題になると思いますので、この点を、十分ひとつ大臣の意のあるところを承っておきたいと思う。
  134. 西村直己

    ○西村国務大臣 私の農政は、たとえば前大臣が構造政策をいろいろ立てて、そして、御存じのとおり国会にも提案いたしました。しかし、農政は構造政策だけではない。生産対策あるいは消費流通価格また基盤づくり、特に基盤づくり等については大きな問題があると思うのであります。それらを含めまして、しかも長期にわたっての展開というのは、私の代だけでできることではないでありましょう。だから農政というものは、先ほど申し上げるように、時間をかけていかなければ、農民自体にも御迷惑をかける。農民自体も長期の見通しの中でやってもらわなければ困る。そうしてその中で、米というものを除く必要もなし、また除いてはいけない。こういう中から出るのでありますから、切り離すといえば確かに切り離して出しております。  ただ、たまたまそういう時期に当たるものを、それじゃ延ばしたらいいじゃないかという議論は、これは考え方の相違だと私は思います。むしろ各省から、かってなと言っては失礼でありますが、いろいろな御意見が出ている最中に、農政はかくあるべきだという姿勢をはっきりさせるほうがいいという考え方も、私はあり得ると思うのであります。
  135. 稲富稜人

    ○稲富委員 それで、ここではっきりしていただきたいことは、その長期総合計画を立てられることはけっこうでございますが、それを本年度米価決定するに対しての考え方に及ぼして安くする、こういうような考え方はないということを、まずはっきり明言していただきたいと思います。
  136. 西村直己

    ○西村国務大臣 この総合農政によって今年度の米価を安くするとか、そういうような近視眼的な考えはないのであります。  ただ、今年度の米もまた来年の米も、ずっと連続してまいるものでございます。ことし米をつくった、来年は転換する、そういうようなことでなく、ことし米をつくったものが来年の状況はどうあるべきかということを、関連して考えなければならぬという意味で米の問題も取り上げておるわけでございます。
  137. 稲富稜人

    ○稲富委員 こうなんですよ。従来日本には、ほんとうに農民の安心し得るような農政はなかったのです。われわれはしばしばこれに対して、政府はもっと積極的な農政に取り組めと言ってきた。ところが、ほとんどこれはないがしろにされておった。ただ、本年度の米価決定するに際して、あるいはまた後にお尋ねしたいと思いますが、たとえば古米がだぶついている。少なくとも農林大臣は、本年度米価決定するに対して、いままでの古米がたくさんだぶついておるから、本年度米価を安くしなくちゃいけないなどということを、お考えにはなっていないだろうと思うのでございます。なぜならば、そういうような状態になってきたということは、従来の日本の農政の貧困からきていることなんです。それで、それを農民に転嫁するようなことは、よもや農林大臣としてはお考えにはならないだろうと思いますが、まずこの問題を承りたいと思います。
  138. 西村直己

    ○西村国務大臣 私といたしましては、確かに米がたくさん余っているということは、一面から考えれば国の強みであり、同時にまた、農民が今日までしし営々としてこれだけのものをつくるような基盤づくりをやってきてくれた努力、これに対しても感謝しなければならぬ。  ただ、現実にある古米、これがスムーズに流れるようなことも考えていかなければいけないという観点も、経済の中においては当然考えていかなければならぬ。そこいらは需給の実勢を考える。たとえば、消費が減退し過ぎてしまってはたいへんだということも考えつつ、しかも生産意欲は落とさないように、こういうふうな組み合わせのもとにやってまいりたいので、古米が多いから、ただいたずらに、いわんや米をつくり過ぎたのはけしからぬというような印象を与えることは、農林大臣としてはとるべきではない。むしろ考え方によれば、米を背中にうんとしょっていることは、ある意味では国の強みであるとさえ考えてもよろしい面もあると私は思います。
  139. 稲富稜人

    ○稲富委員 それで、一般にはこう言われている。古米がだぶついているのに、米が高くなるとはけしからぬじゃないか。しかもそう言われているときに、一方に農林大臣は日本の総合農政の確立だと言う。こういうように古米がたくさんできたということは、いかにも農民つくり過ぎて迷惑したようなことを一緒に言われることが、本年度米価決定に対して、あるいは世論がこれに乗じて、何とかして米価を高くしないようにしようというような材料になっている、こういう姿がたくさんあるわけです。  そういう点を総合いたしまして、私は本年度米価決定と、いわゆる農林大臣の言われる日本の総合農政の確立とは、切り離した問題であるということを、まずはっきりされる必要があるし、さらにこういう古米が残っているということは、いま大臣の言われたように、決してこれは迷惑しておるものじゃないのだ、この点をまず明らかになすって本年度米価決定する、こういうことに立たなければならぬが、これを混同されて一般に考えられておる。われわれが消費者意見を聞きましても、消費者は、生産者米価が上がれば消費者米価が上がるのだ、古米があるのに米が高くなるのは何事だ、こういうようなその表面にあらわれた現象だけをとらえて反対するという動きがあるということは、これは、農林大臣がただいま言われたように、農林省としてのPRも非常に足りなかったと思う。この点を農林省といたしましては、われわれはこういうことをやったのだ、悪いことはやっていないのだ、本年度の米価は別個に立てるのだ、こういうことをなぜ農林省は早く踏み切らないかということを、われわれは農林省に言いたいのです。  私が冒頭に言ったように、あなたが農林大臣なんです。農民が今日信頼しているのはあなただけなんです。農林大臣は農民の側に立って、そうして日本の農政を確立し、農民が安心して農業の経営をやっていけるようにすることがあなたの役目なんです。こうすることによって農民は農林大臣を信頼し、農業に希望を持てることになってくる。それがごっちゃになっていろいろな反対材料になるから、この点は別個に確立すべきであるということを、私が強く要望しているのはそれがためなんです。そういう点、農林大臣の意のあるところを、農民が安心し得るような、またそういう誤解を解く意味において、あなたの考え方をはっきり承りたいと思います。
  140. 西村直己

    ○西村国務大臣 農林大臣といたしましては、米の再生産を確保する、これは当然のことでございましょう。また、現行食管法を運用して今回の米価決定に当たる、これも当然でございましょう。ただ、ことしの米というものは、当然来年にも再来年にもその姿勢というものは続きましょう。そこで、長期展望の中においてこれを生かしていくように、他の作物等にも生かしていけるような形にしていく。しかも長期の中でないと、きょう言ったからあしたというわけにいかない。それが一つ。  いま一つは、私はもちろん農林大臣でありますから、農民立場を十分考えていかなければならぬと思います。同時に私は、消費者米価決定する責任もあり、消費者に対して食糧を供給する立場も持っておるということも、また私の職責の範囲内であるということをつけ加えなければならぬのであります。
  141. 稲富稜人

    ○稲富委員 いま農林大臣は、もちろん消費者のことを考えるとおっしゃいますが、私たちは、この食糧管理法からいって、生産者米価を上げれば直ちに消費者米価に影響するのだ、こういうような感じが非常に強いと思うのです。つまり、食管法の四条と三条において、生産者米価決定消費者米価決定というのはおのずから異なっている。ただいま言いましたように、生産者米価決定というものは、再生産を確保するということを旨としてこれを定めなければいけない。しかしながら、消費者米価決定に対しては、「消費者ノ家計ヲ安定セシムルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」となっている。消費者の家計を安定せしめるためには、生産者米価というものは影響しなくていい。ほかのすべての物価が上がってくるならば、そのすべての物価が上がった中で消費者米価決定するというならば、消費者の家計を安定せしめるためには、あるいは消費者米価というものはもっと下げなくちゃいけないことになってくる。ここに、すなわち消費者米価決定の基準というのはあるわけなんです。  だから、生産者米価をつくって、消費者米価というものは別個に、消費者の家計を安定せしめることを旨としてこれを定めるということが食管法のたてまえなんですよ。それを大臣みずからが、生産者米価を上げれば消費者米価も上げなければいかぬのじゃなかろうか、こういうことを考えられるということは、食管法のほんとうの趣旨というものを、どう解釈なさっているかということさえわれわれは言いたくなってくる。消費者米価生産者米価というものは、おのずから別個な立場においてこれを決定されていくべきものであるとわれわれは考えるのでありますが、どうでございますか。
  142. 西村直己

    ○西村国務大臣 その条文のとおり、生産者米価は再生産確保、消費者米価消費家計の安定、確かにその一つの基準をもってきめます。しかし、両者が無縁なものかというと、「其ノ他ノの経済事情を参酌シ」と書いて関連を持たしてあるわけであります。そして、全体を国民経済の運行の中でという精神のもとにこれをつかみ上げていかなければならぬ。そういう意味から関連はあると、こういうふうに絶えず申し上げております。
  143. 稲富稜人

    ○稲富委員 それは「其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シ」と書いてありますよ。しかしながら、結論は消費者の家計を安定せしめるということが結論でなくちゃいけないと私は思う。生産者の場合は、再生産を確保することを旨とすることが結論でなければならない。再生産を旨とするためにいろいろな経済事情を参酌しなければいけない、消費者価格の場合は、消費者の家計を安定せしめるためにいろいろな経済事情を参酌しなければいけない、これがこの法のほんとうの精神である、私はかように考える。これをごっちゃに考えて、そういう状態があるがゆえに、生産者米価決定するのに際しましても、経済事情を参酌しなければいけないから考えてやるということは、あなた方の解釈が非常に間違っていると私は思う。どうです。
  144. 西村直己

    ○西村国務大臣 食糧管理法の第一条が一番の最終目的になると思います。それには「国民食糧ノ確保及国民経済ノ安定ヲ図ル為食糧ヲ管理」とある。そこに中心を置きながら、再生産確保と消費者家計の安定、そのためにはその他の経済事情を両方ともよくしんしゃくしながら——だから、その「旨トシテ」ということは、われわれはそこに到達しなければならぬが、全然切り離して、これは無縁のものだというわけにもいかない、こう解釈しております。
  145. 稲富稜人

    ○稲富委員 それは法律の問題になりますが、そうなりますと「国民経済ノ安定ヲ図ル」ということがもとなんです。国民経済の安定をはかるためには、やはり生産者の場合は、米の再生産を確保することが一番安定をはかれることになるし、消費者の場合は、消費者の家計を安定せしめることが国民経済の安定をはかるということになってくるのであって、その上に立脚してすべての問題は考えなくちゃいけないと私は思う。その基本がいけないと私は思う。この点を議論しておりますと法律論になりますし、時間も来ますから……。  要するに、私どもはこういう点を考えて、しかも一面には古米がだぶついておるから、本年度米価決定に対してはこれをやらないようにしろ、こういうことが言われる。あるいはまた食糧庁長官の先日来の発表を見ましても、本年度の米は全部買わないのだ、希望があったら買ってもいいということを言っている。こういうようなでたらめな、無責任な放言をなさることは、戒めなければいけないことだと思う。しかもこれに対しては、御承知のとおり、「米穀ノ生産者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ生産シタル米穀ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノヲ政府ニ売渡スベシ」となっている。法律でこうきめておって、今度は都合が悪いから言うたものだけ買うぞ。農民が売りたくないときに強制的に買っておいて、こういうことを朝令暮改というのです。こういうことのないように親切にやることが、これは大臣の役目であり、そのもとにおいて行政を進める者の役目であると私は思う。  こういうようなことを、そのときの場合によって解釈を変更し、いたずらに農民に不安を与えるということは、しかも、これを外部の人が言ったならともかくも、農林省の食糧庁長官が、厳然たる法で決定しておる問題の解釈を変更するということは、農林省が農民の不信を買う重大な問題だと私は思う。どうかこういう点は農林大臣として、あなたの意のあるところがあるならば、省内においてもこういう言動に対しては十分慎んで、ひとつ厳然たる農林省としての態度で進んでいただきたいと思います。いかがですか。
  146. 西村直己

    ○西村国務大臣 これは、法律解釈論の問題だと思うのであります。おそらくその問題は、その場におきまする質問に対しての説明だろうと思うのであります。言いかえますると、第三条の「其ノ生産シタル米穀ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノヲ政府ニ売渡スベシ」これは農民としては一つの義務になっておる。それに対してできるかということで、法理的にはそういうような考え方が成り立つというような説明があったのじゃないか。  しかし、それじゃそこに出てきたものが、自由流通が直ちにできるかというと、他のいろいろな制約があるのじゃないかと私は思うのであります。したがって、政府としてはそういうものをまだいま統一してきめているわけではありませんが、一応たてまえとしてはそういうたてまえになっておって、義務制であって売り付ける権利ではないのだ、こういうような意味で、そういう説明が出たのではないかと私は思うのであります。
  147. 稲富稜人

    ○稲富委員 それは非常におかしいですよ。これは第三条に、「米穀ノ生産者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ生産シタル米穀ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノヲ政府ニ売渡スベシ」ということで、生産農民は義務づけられているんですよ。農民が義務づけられておるならば、これに対しては政府は応ずることがまた政府の義務なんですよ。ところが、義務づけられた農民にその義務を果たさせて、今度はその命令した政府は、これに対していかにも買わないでいいような言辞を弄するということ、こういうことを朝令暮改というんですよ。こういう問題について、あなたのほうはひとつ厳然たる態度で進まれるべきだ。もしもそういうことを食糧庁長官が言って、それが間違いであったというならば、大臣としてそれに対する考え方をはっきりして、取り消してもらいたいと思います。
  148. 西村直己

    ○西村国務大臣 この問題は、自由米を直ちにことし実行するのかどうかということで、非常に強い印象をいろいろな方面で与えて、その中において論議が行なわれたからそういうような誤解を生じた。だから、先ほど申し上げましたように、制限買い付けとかそういうことは今年度においてはない。  ただ、現行の食管法の解釈において、はたしてそれじゃ絶対に制限買い付けばできない、こういうふうに解釈するわけにはいかないのじゃないか。たとえば義務を与えて、命令をもって出すものは政府は買わなければならぬ、こう書いてあるのであって、命令をしないものに対して政府が買わなければならぬ義務まで負っているかというと、そうではございません、こういう答弁も成り立つという解釈ではないかと私は思います。
  149. 稲富稜人

    ○稲富委員 大臣、これは質疑応答で言ったことじゃないんですよ。そういうことを食糧庁長官が声明しているんですよ。それは間違いなんです。大臣が、それは間違いだから、この際そういうことはやらないんだということを、はっきり言われればいいわけです。この点が非常に農民に不安を与えております。その点を、あえてあなたが食糧庁長官のかわりに弁解される必要はございませんから、農林大臣として、そういうことを食糧庁長官が言ったかもしらぬけれども政府はそうした方針に立っていないんだということをはっきり言明されて、あなたのほうは義務があるんだということをはっきりしてもらえば、それでいいわけです。
  150. 西村直己

    ○西村国務大臣 私の見解を申し上げますと、食糧管理法第三条第一項の規定によると、生産者は、その生産した米穀で、命令で定めるものを政府に売り渡す義務があるとされている。しかし、これは法律上無制限に買い入れを要求しているものではないと思うが、食糧管理法の従来の運用の経緯とか、生産者がこれから受けているいろいろな現実の利益というものがあります。そこで、米の管理に改善を加える日が来た場合でも、十分その点は、米穀の再生産の確保がはかり得るような仕組みを考えなければならぬ、こういうような前提に立っている、こう思うのであります。  だから、もう絶対に無制限買い入れだと割り切るわけにもいかぬ。一応命令で義務を与えるのであります。そして義務を与えたものは応じなければならぬ、こうなっています。しかし、農民はほかに売っちゃならぬという規定もありますから、将来かりにそういう事態が起こった場合も、どういう流通秩序を立てるかという将来まだ残る問題があるのではないか、こういう意味で説明があったというふうに解釈しておるわけであります。
  151. 稲富稜人

    ○稲富委員 どうもその点はっきりしませんが、非常に時間が超過いたしておりますので、ただ結論として私、申し上げたいと思いますのは、いよいよ米審が開かれるというとき、いろいろな雑音もありますが、どうかひとつ農林大臣は、農林大臣としてのき然たる態度で、しかも、農民の次期生産を確保するということをもって米価決定するのだ、こういう立場において御決定をいただきますように強く要望いたしまして、私の質問は一応これをもって終わることといたします。
  152. 鹿野彦吉

    鹿野委員長代理 この際、角屋君より資料の要求につき発言を求められております。これを許します。角屋堅次郎君。
  153. 角屋堅次郎

    角屋委員 農林省のほうに、二十三日の米価審議をするために、資料要求を一部しておきたいと思います。  一つは、食糧庁の御承知の昭和四十二年七月十一日、昨年の四十二年米価審議委員要求資料その二の一、各種試算として算出をいたしました資料要求の前提条件がございます。これは田中次長十分御承知のとおりです。それは、もちろん昨年の諮問に対する資料要求で一から十二まで出ておりますが、このうちで二以降の問題について、積み上げ計算方式、八〇%バルクライン方式、労働の賃金の問題で、製造業三十人規模以上、百人規模以上あるいは五人規模以上、こういうような点の男女込み、男子等に分けた要求が御承知のように出ております。これに対して、去年は十二項目にわたって各種試算が出されました。この場合に、ことし私どものほうから要求するのは、御承知の積み上げ方式については、その一とその二の試算が出ました。このうちの各種試算は、その一で出ておりますけれども、要求としてはその二、しかも政府決定をする場合に、生産向上のメリットについて導入をしておる等々のことを織り込んだ新積み上げ方式のほうの前提条件に立って、労賃その他の部分は、去年と同じような方式において価格の算出を資料として出していただきたい、これが第一点であります。  それからもう一つは、昨日も宮澤経済企画庁長官から、時間が十分ございませんでしたが、いわゆる限界反収か、平均反収かということで、宮澤長官のほうから、平均反収の方向考え方が出されました。この際私は、鹿児島大学の助教授の梶井功氏の、全国農業新聞に出ました四十三年六月二十一日の、米価と農政という数字を根拠にして若干やりましたけれども、この際二十三日までに、いわゆる一シグマを除いて限界反収、この場合のいわゆる生産量に対するシェア問題、あるいはカバー率問題、こういうふうな点について、平均反収、限界反収の場合に、近時の年次をとってどういうふうな形になるか、これについても数字として出してもらいたい。私は、きのうの宮澤長官の九八%という根拠はきわめておかしい、こういう問題指摘だけをしておきましたが、これはぜひ資料として出してもらいたい。  以上二点であります。
  154. 鹿野彦吉

    鹿野委員長代理 次回は来たる二十三日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十五分散会