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1968-04-23 第58回国会 衆議院 農林水産委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月二十三日(火曜日)    午前十時四十七分開議  出席委員    委員長 足立 篤郎君    理事 鹿野 彦吉君 理事 草野一郎平君    理事 熊谷 義雄君 理事 坂村 吉正君    理事 森田重次郎君 理事 石田 宥全君    理事 角屋堅次郎君 理事 稲富 稜人君       小澤 太郎君    小山 長規君       田澤 吉郎君    田中 正巳君       中村 寅太君    中山 榮一君      三ツ林弥太郎君    湊  徹郎君       赤路 友藏君    井上  泉君       伊賀 定盛君    兒玉 末男君       佐々栄三郎君    實川 清之君       柴田 健治君    西宮  弘君       美濃 政市君    中村 時雄君       樋上 新一君  出席政府委員         行政管理庁行政         監察局長    諸永  直君         農林政務次官  安倍晋太郎君         水産庁長官   久宗  高君  委員外出席者         参  考  人         (全国さんま漁         業協会理事)  伊藤佐十郎君         参  考  人         (全国漁業協同         組合連合会常務         理事)     池尻 文二君         参  考  人         (水産評論家) 宮城雄太郎君        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 四月十八日  委員赤路友藏辞任につき、その補欠として太  田一夫君が議長指名委員に選任された。 同日  委員太田一夫辞任につき、その補欠として赤  路友藏君が議長指名委員に選任された。 同月十九日  委員柴田健治辞任につき、その補欠として栗  林三郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員栗林三郎辞任につき、その補欠として柴  田健治君が議長指名委員に選任された。 同月二十二日  委員長谷川四郎君及び赤路友藏辞任につき、  その補欠として石田博英君及び柳田秀一君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員石田博英君及び柳田秀一辞任につき、そ  の補欠として長谷川四郎君及び赤路友藏君が議  長の指名委員に選任された。 同月二十三日  委員赤路友藏君及び工藤良平辞任につき、そ  の補欠として柳田秀一君及び井上泉君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員井上泉君及び柳田秀一辞任につき、その  補欠として工藤良平君及び赤路友藏君が議長の  指名委員に選任された。     ————————————— 四月十八日  学校給食の用に供する牛乳の供給等に関する特  別措置法案伊賀定盛君外十二名提出衆法第  二四号) 同日  中国産食肉の輸入禁止解除に関する請願(岡本  隆一君紹介)(第四一五四号)  同(阪上安太郎紹介)(第四二五二号)  同(加藤清二紹介)(第四三一六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  魚価安定基金解散に関する法律案内閣提出  第九〇号)      ————◇—————
  2. 足立篤郎

    足立委員長 これより会議を開きます。  魚価安定基金解散に関する法律案を議題といたします。  本日は、本案について参考人より意見を聴取することといたします。  御出席参考人は、全国さんま漁業協会理事伊藤佐十郎君、全国漁業協同組合連合会常務理事池尻文二君及び水産評論家宮城雄太郎君、以上三名の方々でございます。  参考人方々には、御多用中にもかかわらず本委員会に御出席くださいまして、まことにありがとうございます。  ただいま本委員会におきましては、魚価安定基金解散に関する法律案を審査いたしておりますが、本案について、参考人方々から忌慣のない御意見をお聞かせいただきたいと存じます。  なお、はなはだかってでございますが、時間の都合等もありますので、参考人からの御意見開陳は、お一人二十分程度にお願いいたします。  議事の順序につきましては、まず参考人各位から御意見をお述べいただいた後、委員各位より参考人の御意見に対して質疑をしていただくことといたします。  まず、池尻参考人にお願いいたします。池尻参考人
  3. 池尻文二

    池尻参考人 私は、全漁連常務理事をしております池尻でございます。当委員会におかれましては、日ごろ沿岸漁業並びに中小漁業施策に関しまして一方ならぬ御配慮を賜わっておりまして、この点、全漁連といたしましても深く感謝申し上げる次第でございます。  本日は、魚価安定基金解散に関する法律案について、参考人として若干意見を申し述べたいと存じます。  御承知のとおり、魚価安定基金昭和三十六年に、当時サンマその他の多獲性魚類生産及び流通をめぐる諸事情の推移にかんがみまして、漁業生産調整組合水産業協同組合等が、これらの多獲性魚価格安定のため、自主的に行なう調整等事業につき助成することを目的として、資本金約一億六千万円、そのうち政府出資八千万円でございますが、その特殊法人として設立されたものでございます。つまり、季節的に一地域に集中して水揚げされるアジサバサンマ等々の多獲性魚類の、いわゆる大漁貧乏を食いとめるために、当該漁業者生産調整組合法に基づく調整組合を組織いたしまして、漁業者が自主的に行なう生産調整事業に対し、所要の助成をする措置、並びに一方におきましては、豊漁生産地では市場処理能力をこえて水揚げが行なわれますと、どうしても一これが生鮮食料としては供給できないという事態になり、これを結局魚かす生産に向けざるを得ないというような場合、またこのような状態のときには、当然に主要水揚げ港におきましては魚かす生産量もふえることになって、ために魚かすの相場も下がるということが通常予想されますので、このような場合には、漁業協同組合あるいはその連合会等魚かすを一時調整保管し、一定期間これを市場から隔離をいたしまして、市況の値上がりを待って販売することによって、結果的にサンマ一定価格、つまり基準価格を維持させるという効果をねらい、そのときに、漁協等調整保管をするに要する保管経費の一部を交付金として交付するという、いわば大漁貧乏対策を、一つ生産それ自体の面から、そして一つ魚かす流通の面に着目をいたしまして克服しようとする、最小限度救済対策を法制化したものでございます。法制的には何もサンマだけが対象ではなく、その他の多獲性魚類もこの政策対象になり得ることになっていたわけでございましたが、現実的には、御承知のとおりサンマという漁業は、大体いわゆる秋から初冬にかけての限られた二、三カ月のシーズンに漁獲されるということ、及びサンマ漁場関係でどうしても北海道、三陸といった水域に水揚げが限定されるという性格を持ち、このことが他の魚種以上に豊漁貧乏可能性をより多く有するであろうということから、結局はサンマ漁業者だけがこの法制の対象になろうという意欲を持って、生産調整組合の組織もつくり、基金出資にも応じたと私は理解しているわけでありまして、他の漁業、たとえばアジサバ等は、サンマに比較いたしまして漁場、漁期が全国的な広がりを持っており、あるいは操業も周年であるということから、サンマ漁業者ほど何もみずからの金まで出して、出資までしてこの政策に乗ろうとする切実性を感じなかったのではないかと私は想像しておる次第でございます。その意味では、この基金は多獲性魚類生産者全体にとりましては、すでに制度創設の時点いでも必ずしも魅力のあるものとして受け取られてなかったと私は思うのでございます。  ところが、そのサンマでさえも、近年は御承知のとおり、その漁獲量が漁海況の変動等により大幅に減少してまいり、最近ではサンマは多獲性大衆魚という名から受ける印象よりは、むしろよりきわめて貴重な魚となってしまった感があるのでございまして、このような生産状況変化と、それからその後水揚げ地における生産地冷蔵庫建設等にも国の助成がなされるなどして、冷凍保管能力も逐次増大をしてまいり、また加工業発達等によりまして水揚げ地における処理能力も逐次増大し、かたがた輸送手段等発達によりまして、さらにその傾向拍車がかけられているといった環境改善等のために、かつて見られました大漁貧乏によってサンマ価格暴落をして、漁価安定基金機能が活用されるという事態も少なくなり、いわば火事に備えてせっかくポンプを用意いたしましたが、一向に火事が起こりそうにもなく、したがってポンプの使い道がないという、もちろんそのポンプもさびついて、はたしてその機能がよいかどうかわからないという問題は一面ございますけれども、そういったようなことになって、このたび行政機構簡素化の一環として解散の方針が決定せられ、今国会にその法案が上程されるに至りましたことは、まことにやむを得ないところと存ずるのでございます。  しかしながら、もともと漁業生産は本質的に変動性を有するものであり、ましてや多獲性魚類漁獲は時期的に、地域的に集中するという制約を受けているものである限り、これらの魚価安定対策そのものまで、基金解散を承認するからといって、これを野放しにしてよいなどと考えているものでないことは当然でありまして、基金の廃止もまたやむを得ないということを申し上げるのは、当然により強力な魚価安定対策が講じられるということを前提にしていることは申し上げるまでもないことでございます。確かに、最近水揚げ地における冷凍保管輸送施設等処理能力は往年に比べて相当整備をされてまいりましたが、これらの施設の増加も、基本的には商業ベースにおける採算で動いていることを考えますときに、おのずから魚価対策という公共的使命を果たすのには限界がありますので、現にイカサバスケソウダラ等の多獲性魚は、昨年におきましても局地的に大量貧乏事態を惹起しております。また、最近におけるスケソウダラのごときは、北洋底びきによる漁獲高が飛躍的にふえてまいりまして、すでに百二十万トンの漁獲量といわれておりまして、その価格の低落は慢性化の心配さえあると考えられるのでございます。  そしてその反面、今回の漁業白書が指摘をいたしてりおますように、わが国水産物消費需要はきわめて旺盛でございまして、現に生産共給需要に追いつかないという傾向にあり、この需給関係外国水産物輸入拍車をかけている状態であり、さらに、今後の趨勢と見通しにいたしましても、わが国国民一人当たり動物たん白質摂取量の現状及びわが国地理的環境のもとにおける畜産業成長の度合いの限度から見まして、ますます水産物によるたん白食糧の代替の必要性は、超長期的展望ではいざ知らず、少なくともここ当分は、著しくその重要性を持つという情勢が続くと思うわけでございます。なぜならば、わが国欧米先進国並み国民一人当たりたん白摂取量に追いつくためには、少なくともまだ現在の約二倍以上のたん白摂取量を必要とするからであります。  このような客観的情勢のもとにおきまして、水産物流通において、もし産地漁業者魚価暴落に悩み、遠隔の加工業者原料魚入手難と高値に、そして一般消費者大衆には一向魚が安くならないという事能が存在するとするならば、どうしてもこの矛盾を解決する方向で、新しい観点からの対策が総合的に検討され、そして国の重要なる施策としてより体系的な価格安定策が講ぜられるべきが至当であると考えるわけでございまして、その意味におきましては、政府としても今後に講ずべき対策構想をあらかじめ用意しておき、今回の魚価安定基金解散に踏み切るべきが至当であったと考える次第でございます。同じ生鮮食料品である農産物に対して、きわめて強力な対策が実施せられていることを彼我較量いたしますとき、特にその感を深くするものでございます。  目下、私ども全漁連内部におきましても、本日ここに参考人として御出席伊藤さんを中心にいたしまして、特別の検討機構を設けまして、あらゆる角度から対策検討中でございまして、問題が問題だけにいまだ結論、成案は得ておりませんので、現段階全漁連といたしまして結論めいたことは申し上げられませんが、その検討の中で、私は私なりに感じていることを申し上げるならば、今回魚価安定基金解散いたしましても、その助成対象の一方の機能である漁業生産調整組合機能は、最小限最終的な防衛策として残るであろうと考えます。もちろん先述しましたように、全体的には水産物生産供給需要に対して不足している時代でございますから、これを積極的に活用する背景にはございませんが、どうしても時期的に、局地的に大漁貧乏状態に対処するためには、最小限漁業者のとる自衛施策として、これを否定することはできないと思うからでございます。  それから私は、さきに農産物価格支持制度を羨望すると申しましたし、また私ども内部におきましても、何らかの形での魚の価格支持を要望する意見相当にあるわけでございまするが、しかしながら水産物の場合に、直ちに農産物における価格支持方式を単純に機械的に適用しようといたしましても、なかなか実現できにくいという問題が、実はこの魚価安定対策を考えていく場合の一番の悩みかと思う次第でございます。つまり、水産物の特性から見まして、刻々の鮮度の変化によって価格変化する性格を持った鮮魚形態のものを、一定価格で買い上げたり、補給金を交付したりして、価格そのものにストレートでタッチしていくという制度は、とても実現が困難だと考えられるからであります。たとえば、イカならイカが値段が下がりつつあっても、ときならずしてまた回復をして高くなるという、いわゆる価格サークル変動やフレがなかなか予測できないし、また慢性的に値が下がったままでどうにもならないという状態の魚は、実はその生産量がある一定量を越したら、それに見合って需要がついていけない、つまり消費がないというもので、このようなものを消費需要とは無関係に買い上げても、また価格支持をいたしましても、どうにもならないという性格を基本的に持っているからでございます。たとえば、現在のスケソウダラがある一定量生産量を上回る状態がもし続くとすれば、この例になるわけでありまして、それには別の消費を開発しない限り、最終的な、根本的な解決がつかないと考えられるからであります。  そこで、魚価安定というこのきわめてむずかしい問題を今後政策的に解決していくためには、先述いたしました漁業生産調整機能最低線に置きながら、基本的には鮮魚形態ではない、比較的品質変化しにくい冷凍品並び加工品形態のものを飛躍的に増加させることとあわせて、適切な調整保管機能を起点としながら、水産物利用配分動向に応じつつ、生産地から消費地に至るまでの生産消費流通、全般にわたって総合的な対策を樹立する以外に、方途はないという結論になるのではないかと思われます。  たとえば、今後水産物商品形態といたしましては、現在でもすでに三八%という数字を示しておりますが、冷凍魚の比率が今後ますます高まってくると思われるわけであります。つまり、今後は生産地仕向け段階におきましても、冷凍の占める比重が飛躍的に増加するであろうということ、それから生鮮消費における冷凍魚比重がますます大きくななるであろうということ、それから加工形態消費が一そう促進されるであろう、以上の三点が著しい特徴として認められるわけでございますから、この新しい傾向に即して、当然に魚価安定に果たすべき冷蔵庫機能をどのように考えていくかという問題が、構造的な見地から把握されねばならないと思うのでございます。  そこで、私は今後の構造といたしまして、冷凍魚ストックポイントとしては、消費地における冷蔵庫を主体として考え、一方生産地におきましては、今後ますます発達する水産加工業のための利用及び今後増大の予想される冷凍魚最小限保管利用に必要な程度の規模の、能率のよい冷蔵庫を新設することによって、可能な限り既存冷蔵庫稼働向上をはかる方向で考え、個々の冷蔵庫保管能力だけを拡大しても、漁況の状態によっては、経営採算割れという経済上のリスクの問題を考える必要がありますので、主要生産地におきましては、むしろそこの地帯冷蔵庫群漁獲増大のときに対処し得るように、共同して別に保管冷蔵庫を共有し、これに豊漁時における調整保管機能を果たさせるのも一策かと考えるわけでございます。つまり平常レベルでは、水産物利用配分動向に応じて稼働率向上させながら、豊漁時にも調整保管機能を各冷蔵庫が分担し得る体制を考える必要があるからであります。そして産地体制といたしましては、凍結を含む加工のにない手としての役割りを主眼とし、特に流通改善、将来の需要動向に即し、前処理コンシューマーズパック等の新しい商品形態処理加工を推進していくと同時に、かすり身等中間生産物あるいは塩干等の低次加工かん詰め等高次加工適地対策として振興していく。それから将来における産地労働力の逼迫を予想いたしまして、冷凍品品質向上の要請に対処し、市場保蔵処理加工等流通分野近代化省力化をはかるため、水揚げの集中する地帯におきましては、施設近代化省力機械の導入、共同利用施設の設置をはからせるため、たとえば一定適地を指定いたしまして、産地流通加工基地等建設構想を持って、冷蔵、凍結加工輸送施設等を総合的、重点的に設置し、この基地中心として規格の統一、前処理体制の促進、販売体制改善整備等をはからしめるといった体制を積極的に推進する必要があるのではないでしょうか。  そして消費地におきましては、当然時代趨勢といたしまして、今後ますます冷凍魚あるいは冷凍食品形態商品流通が促進されてくると思います。また、現に促進されつつございます。そのことは、現在の末端流通処理形態を好むと好まざるにかかわらず変えてくる必然性を持っていると思量されるわけでございまして、このことは、ことばをかえて言えば、水産物完全商品化時代に入りつつあるということでございますので、必然的にそれに合った水産物流通機構の問題が提起されるでありましょう。現在、国の補助を受けて私ども全漁連市場卸売り人、そして消費地冷蔵庫共同運営冷凍水産物流通改善事業、つまり冷凍魚生産地で製造し、それを消費地冷蔵庫保管をして、水産物価格の高騰のときに放出するといった機能を、二年前から東京、大阪において実施しておりまするが、系統団体市場消費地冷蔵庫の合作の仕組みの矛盾等、運営上いろいろと問題を持っておることも事実でございます。しかしながら私どもは、将来の、先述いたしました水産物流通関係動向をにらみながら、それに至る道程として、冷凍水産物流通改善事業の改善すべき点は改善しつつ、これをさらに六大都市等に拡大するなりして、先ほど述べました新しい体制がえをした生産地と連携をして、一つ流通経路をつくり上げることも一提言かと思う次第でございます。  このように、一連の対策を考えるにあたりましては、私ども漁協系統におきましても、共販体制のより一そうの整備、あるいは系統冷蔵庫網相互運営等努力をしなければならないことは当然でありますが、この対策にはかなり思い切った投資助成を必要とするかと思われます。たとえば、商業ベースで動いておる冷蔵庫機能に対し、あるいは調整保管といった公共的機能を与えることがある場合、そのリスクの負担をいかにするかという問題、加工団地を構成するに必要な投資並びに近代化施設についての助成、あるいは新規製品を研究開発するにあたっての手厚い援助措置等々、この際思い切って既存補助事業の再編とも相まって、これが推進につとめる必要があろうかと思います。  いろいろと意見を申し述べましたが、魚価安定の対策はどうしてもある局部的な、そして瞬間タッチの政策ではどうしてもきめ手にならない点を指摘し、勢い、その対策は総合的かつ体系的なものでなければならないと考えるわけでございまして、魚価安定基金解散されるこの機会を好機といたしまして、新しい情勢に対応した水産物価格安定対策が真剣に検討され、実現されるように御要望をいたしまして、意見開陳を終ります。(拍手)
  4. 足立篤郎

    足立委員長 ありがとうございました。  次に、伊藤参考人からお願いいたします。伊藤参考人
  5. 伊藤佐十郎

    伊藤参考人 昭和三十六年に法律第百二十九号をもちまして、魚価安定基金法が成立いたしましたが、これはわが国漁業に最も重要な地位を占めている多獲性魚が毎年毎年地域的、季節的に集中いたしまして、そのために魚価暴落いたしますから、いわゆる大漁貧乏ということが繰り返されてまいりました。この漁業経営者不安定要因が慢性的に存在しているのを緩和する、あるいはできるならば解消したいというねらいをもって、漁業経営の安定のためにこの法律が生まれたものと私どもは了解しております。  時あたかもサンマ漁の一斉解禁の直前、八月の公布でございましたので、全国さんま漁業調整組合の行なう調整等事業に関する助成をまず開始されるということになりましたのも、けだし当然の成り行きであったと存じます。  しかしわれわれは、当然にその後対象魚種あるいは対象漁業の種類がだんだん拡大されまして、逐次この基金に対する関係出資、あるいは政府出資に見合うところの地方公共団体あるいは民間の出資もそれぞれ増額されて、漁業経営の安定には大きく貢献するであろうことを御期待申し上げておったわけであります。しかるに、自来六年有半、イカサバスケソウ等の多獲性の魚は一つ対象魚種としては追加いたされませんでしたし、当初の政府出資八千万円を含む一億六千四百十万円そのままの基金量でもって解散直前まで推移したということは、まことに遺憾千万に存ずる次第であります。  しかしこれは、ここで私は責任論を振り回すつもりはございません。必ずしも農林省あるいは水産庁当局の怠慢とも思いませんし、また、反面われわれとしたしましても、農業における米価闘争のような、漁民の要求を組織する努力に足りない点のあったことも、深く反省しなければならないと考えております。それにも増して政策を掲げて公約をしていただいたのが、サンマだけでも年産百億内外の生産高でございますが、その百億の魚価安定対策に八千万円を一ぺん投資すれば、それで効果があがるかのような考え方というのは、おそらくこれは錯覚ではなかったかと思うのであります。これについては財政当局といえども魚価の安定はしかく安易なものとはまさかお考えになっていなかったであろうと私は想像したします。よく考えてみますと、こういうはんぱな政策が行なわれ、そのまま放置されるというようなきらいのありますのは、主務省よりは何か別のところに、漸進的な積極政策さえもセーブするような矛盾が伏在しているのではないかということを憂えるものであります。大漁貧乏は今日なお厳然たる事実として存在しておりますし、漁業経営は決して安定したとは申せません。このときにあたって、行政簡素化の名のもとに、当面政府一般会計あるいは財政投融資等にも直接の影響もなさそうな、いわばミクロ的な存在にすぎないこの魚価安定基金を、まっ先に解散しなければならないということにつきましては、私いささか疑問を差しはさむものであります。  もちろん、臨時行政調査会ですかの先生方の業績について、私は一般的にはこれを高く評価しておりますが、何となく財政当局行政管理当局との圧縮作用によって、水産行政水準がまるで根底からく、ずれてしまうような懸念を感じまして、何ともすなおにこの解散に対する法律を認める気持ちには、容易になれなかったのでございます。しかしながら、いろいろと諸般の情勢を考えてみますと、これもまたやむを得ないと思います。  この行政簡素化にあたって、第一次案として五つの団体、法人等が指定を受けましたが、そのうち二つは水産でございます。この基金と、もう一つ漁業協同組合整備基金でございます。他の三つのものは、団体そのもの、法人そのものはなくなりましても、事業は何らかの形で統合され、継続される形のものでございまして、水産の二つだけは名実ともに姿を消すということになっておりますのも、何となく不均衡のような感じがいたしております。しかもその出資ばかりではなく、基金の運用による果実の大半も、これを国庫に帰属せしめられるということを伺っておるのでありますが、これでは何か約束が違うんじゃないかというような感じを、率直に感ずるのであります。私はそういう意味で、個人的にはどうも釈然といたしませんけれども、本日はさんま漁業協会の理事として、組織の統一的な見解を要約して申し述べなければならない立場でございます。  すなわち、最近における流通事情等の変化によりまして、基金がその機能を十分に発揮できなかったことからこのようなことに相なりましたので、本法案の上程されるに至りました事情はよくわかります。これはまことにやむを得ないものとして、この解散を承認せざるを得ないという立場をとるものでございます。しかしながら、多獲性魚漁獲が時期的、地域的に集中するという制約から、一時的な過剰生産の現象は依然としてあとを断っておりません。したがって、魚価対策基金解散後といえどもきわめて重要であり、この対策を軽視することは断じて計されないと存ずる次第であります。現に昨年も、イカサバスケソウ等につきましては、明らかに魚価暴落の現象があらわれ、漁業経営の面にも非常な好ましからざる状態があらわれておりますし、先ほど池尻参考人が申し上げましたように、加工の面においても一般消費者の面においても、相当大きな矛盾が顕在しているわけであります。同じ食料品である農産物、畜産物に対して、現に行なわれているような強力な対策が、水産においてもとられなければならぬと思いますが、この問題に対しては、むしろ今後にかかっているというような感じがいたすわけでございます。  本法案を御指摘いただくにあたりまして、私どもの希望といたしましては、基金解散することを契機といたしまして、基金法成立当時、すなわち昭和三十六年、時の衆議院農林水産委員会魚価安定基金法案の審議のおりに、自民、社会、民社三派の同意によって採択されました水産物価格の安定方策の確立に関する決議の御趣旨を私は思い出すのでありますが、これは七年も前のお話でございますけれども、その当時からお認めをいただいております調整保管なり、金融対策なり、流通改善なり、各般の諸施策をどうか総合的に強力に実施していただくように、そのために必要な法制上、財政上の特段の御配慮をお願いしたいと要望する次第でございます。このことは、先般全漁連、全さんま以下七団体の代表者が、連署をもってそれぞれ陳情申し上げました要旨とおおむね一致するものでございます。  最後に私は、二、三の点について私見をつけ加えさしていただきたいと思います。  基金解散の後に、水産物価格の安定対策についてどうするかということにつきましては、水産庁のほうでもいろいろ御心配をいただいておるようでございますが、われわれ民間におきましても、委員会を設けまして鋭意研究を重ねております。成案を得次第あらためて御検討をわずらわすことになろうかと思います。  次に、仄聞するところによりますと、この基金解散にあたりまして、剰余財産の処分についてでございますが、基金の運用による大半の果実を国庫に帰属せしめて、さんま団体に対して何かその一部を交付なさり、あとは適当にやれというようなふうに伺うのでございますけれども、私の伺ったところがどの程度に真実か、まだわかりませんけれども、四千万円そこそこの果実のうち半分以上、約八分の五ぐらいのものは、出資金と同時に国庫に帰属するというふうにうわさされているわけでございます。この基金が机一つに電話一本、よくある町のブローカーの事務所のようなものだといってマスコミにあげつらわれるような、節約をあえてして生まれました果実が四千万でございます。私は寡聞にして、かくのごとき節約を続けてきた公団も公社もほかには存じ上げません。それを魚価対策を全面的に取りやめて、果実までも大半こうして吸い上げるということについては、何となく私どもは不満でございます。私、個人として率直な感懐を申し上げることを許していただけるならば、それほど果実が必要であるならば、のしをつけて全額差し上げてもいいとさえ思いますけれども、しかしそれでは浪花節的になりますし、組織の代表者としては、それもいたしかねる実情でございます。  最後に、わが国漁業経営安定のためには、魚価対策も必要でございますけれども、それと並行いたしまして、どうしても一つお願いいたしたいことがございます。それは、先国会におきまして漁業災害補償法の改正案を御決定いただきました。また、それに必要なる予算措置も講じていただいたわけでございます。おかげさまをもちまして、政府保険による強力な裏づけのある共済事業が発足することができましたことは、われわれ漁民にとりましてまことに感謝感激にたえない次第でございます。ただ、この共済事業というのは漁業経営の安定上不可欠の要件ではございますが、ただいまのところ操業日も浅く、特に養殖共済のしょい込みのために、漁共連及び各県の共済組合はただいま四苦八苦の状態でございます。先国会におきまして私、参考人として当時この問題についても触れたわけでございますが、どうかこういうものもさらに強く育成していただきまして、価格対策と共済事業の充実と両面から、わが国漁業経営がますます向上し発展するような経営の安定策をお願いいたしたいと存ずる次第でございます。  とにかく、少なくとも年産七百万トン、金額にしても六千億をこえる水産物の問題でございます。魚ということではなしに、国の大きな立場における食糧政策の一環として、これらの問題についてさらにさらに十分な御検討をいただくと同時に、私どももできだけの勉強はいたしたいと思っております。よろしくお願いいたしたいと思います。  以上で終わります。(拍手)
  6. 足立篤郎

    足立委員長 ありがとうございました。  次に、宮城参考人にお願いいたします。宮城参考人
  7. 宮城雄太郎

    ○宮城参考人 私は、魚価安定基金存廃の問題に先立ちまして、若干の見解を申し上げておく必要があるのであります。  それは三十六年に魚価安定基金法並びに漁業生産調整組合法の両案の御審議の際に、参考人として本委員会においておおむね次のような公述をいたしております。漁業者はその漁獲物を食品として生産し、それが公正な価格において販売されることにより、再生産を可能とする経営の安定を望んでいるのであって、非食品たる魚かすの支持価格において救済されることを望んでいるのではないということを申し上げました。この場合、私の用いましたる公正なる価格形成とは、ある種の魚類がはなはだしく価格がダウンしたならば、単なる生産活動の一時停止または最低価格的な歯どめによりこの漁業を救済するというのではなくて、流通構造全般の問題として取り上げるべきであるということを申し上げたつもりであります。そのためには、国家資金の相当なる裏づけが必要でありましょう。よって、農業における価格支持政策に照応して、このような魚価安定対策の強力なる推進を要望したのでございました。この見解につきましては、その後の社会事情の変化水産物需給並びに消費性向の変化にもかかわらず、私の認識にはいささかの変わりもないのであります。  なぜならば、御承知のように漁業は常に自然的な影響を受け安く、その生産性は常に左右され、あるときは需要をこえる豊漁に恵まれると思えば、あるときには生産費を償い得ない不漁に見舞われるという変動の常ならざる産業であります。かかる宿命的性格にもかかわらず、漁業消費者との対応においては、でき得る限り平均的価格において国民需要にこたえることが、食品産業としての使命であるからであります。  政府は、いわゆる漁業白書において、漁獲物の処理施設の充実等に力を尽くしていると記載されておりますが、現実にはその施策が十全に遂行されているとは私は考えないのであります。たとえば、昨年の北海道におけるホッケやスケソウの大幅値下がり、秋田県においては箱代にもならないようなハタハタ魚価暴落等の現象は、常にどこかで、あるいは何かの漁業で起きているのであります。それが局地的であり、小生産者間の問題であるがために、かつてのサンマ大漁時におけるような、政策対象として中央で問題にならないだけなのであります。  かかる政策的な偏向は、常に大資本企業の要求の陰に中小企業の要望が黙殺されているという現実の中に、私はその片りんをうかがうことができるのであります。そのことは、特殊法人の整理に関し、昨年八月十日の朝日新聞の社説が、整理統合してもさしたる影響のないもので、問題にはなっていても、抵抗が強かったり政治的圧力のあったと思われる、いわゆる大型法人は避けたきらいが強いといみじくも指摘していることと、一脈相通ずるものがあるような感がいたします。  それはともあれ、極言いたしますなれば、漁業における価格政策並びに流通構造の改善施策は未確立であり、むしろ漁獲流通対策魚価高現象に依存していると言っても過言ではありません。このことが、魚価定定基金法並びに漁業生産調整組合法成立の際の本委員会の決議を十分に生かすことができなかった。したがって、これが今回の事態の遠因と相なったものと言っては言い過ぎなのでありましょうか。  申し上げるまでもなく、魚価安定基金法は、漁業生産調整組合法とセットして成立したものであります。したがって本質的には、現在ある六つの漁業調整組合は当然魚価安定基金の構成員として加入させ、基金規模の拡大のため強力なる行政指導が行なわるべきであったはずであります。もちろん、法文上のたてまえは強制加入ではないのでありますが、しかし生産調整組合が設立されるということは、従事する漁業者が常に大漁貧乏の危機感を持っていたからであります。まき網の主要対象魚種であるアジサバの九年間の魚価の足取りを見ますと、平均価格変動的でありますし、サバの場合は、九年前から見ますると漁獲高が二・一倍にふえております。したがって、キロ当たり単価は二割五分の低下を示しているのであります。これを、生鮮魚介類の消費価格が七年間に八割一分の値上がりをしたことと対比してみまするなれば、サバに関する限りは、ある意味においては一種の大漁貧乏的現象を呈しているとも言えないことばないのであります。  さて問題は、このような現象のはらみがちな生産調整組合をどのように活用するかであります。昭和四十三年度において沿岸漁業等について講じようとする施策の中に、「水産物流通の合理化」の一項に、「漁業生産調整組合法に基づく漁業者の自主的な生産調整事業について、その円滑な実施のため、ひきつづき必要な指導を行なう。」と記載しておりまするが、この場合の円滑なる実施とはいかなる内容を持つものでありましょうか。昭和四十一年度の漁業の総生産高は七百十万トンをこえているとはいえ、拡大した国内需要に応じ得ないのが現状であります。とするならば、漁業生産調整組合性格は、法制定当時とは大いに異なってくるはずであります。  そもそも魚価安定基金は、農畜水産業の所得政策の一環として、当時の魚価事情に対応しようとしたものであったことは言うまでもありません。したがって、その後の水産物需給関係変化魚価の騰貴の傾向の中においては、当時と異なった様相を呈していることは言うまでもないのであります。それゆえに調整組合の任務の一つであった、漁港の処理能力を越えた生産状況が顕現した場合、その漁獲努力を抑制することはもはやその意味を失い、むしろ増産されたものをいかに適正に流通せしむるかに重点が移されつつあるのが現状でありましょう。  さて、いま一つ所得政策との関連において見のがし得ない点は、漁業災害補償法の制定並びにその改正によって、漁業経営は曲がりなりにも所得保障の道が開けてきたことであります。まだまだ不十分であるとしても、この制度と貯蔵能力の拡大が、漁業生産調整組合並びにサンマだけを対象とした魚価安定基金を、一そう影の薄いものとしたことは争えない現実であります。しかし中小漁業においては、漁業収入の増加にもかかわらず、漁業支出は各漁船階層ともに増加し、その増加額が漁業収入の増加額を上回り、漁業所得が減少するという結果に相なっていると、最近の農林省の漁業経済調査報告は指摘しているのであります。  さらに考慮を要する点は、漁業はともすれば過当競争におちいりやすい体質を持っている点であります。そのために、技術革新に対応し、漁獲努力を集中的に強化することがしばしば見られるのであります。その給果、漁業者は借り入れ資本に依存する度合いがはなはだしく、五十トン階層以上の漁船経営者の自己資本率は、平均いたしまして三〇%前後でありまして、企業体質の不健全性を示すものと言っていいでありましょう。資本の有機構成の低さは、すなわち何らかの物的障害に当面する場合、たちまちその経済的破綻につながりやすい危険性を持っているのであります。それゆえにこそ全漁連等の七団体は、ただいま伊藤参考人が申されましたように、魚価安定基金解散はやむを得ないとしつつも、水産物価格安定対策に関する陳情書において、今後の水産物価格安定対策が強力に実施されるための法制上、財政上特段の配慮を要望していることは、もっともしごくなことであります。  ともあれ、国民生活に不可欠な動物性たん白食品の六割は、水産物の供給によるという日本の特殊な食生活の環境からいたしましても、産業的地位はたとえ低くても、水産業に課せられたる使命はきわめて重要であります。それがとかく軽視されがちなことは、私ども関係者にとって常に不満とするところであります。魚価安定基金解散に関する法律案の第七条において、「残余財産を分配した後において、なお剰余を生じたときは、基金の目的に類似する目的のためにその剰余財産の全部又は一部を処分することができる。」と規定されておりまするから、どのような方法においてか魚価安定政策をお進めになるのでありましょうが、これについては後に意見を申し上げるつもりであります。  さて、その前提として触れておかなければならない点は、業界並びに政府の御見解と私の立論の差であります。業界の有力なる見解を要約いたしますると、漁業災害補償制度の充実、漁業生産調整組合の活用、コールドチェーンの拡大といった方向生産者消費者のためになる魚価安定策を推進せよ、こう述べておられるのでありまするが、今後の水産物流通機構の改善並びに魚価安定制度を考えます場合に大切なことば、次元の異なる問題を混同してはならないという厳格なる分析が必要であるということであります。  第一に、漁業災害補償制度は、漁業の再生産を補償するという点においては、前にも触れましたように、確かに漁業経営の安全弁的役割りを持っていることは否定することができません。しかしそれは魚価安定、すなわち公正なる価格形成のもとで、生産から消費に至る過程を合理化するという効用は持ち得ないのであります。したがって、魚価安定を漁民のふところ勘定の面から考えまするならば、同じ効用を持っているように見えても、実は次元の違う問題であると理解していただきたいのであります。  第二に、コールドチェーンについて申し上げますが、現在進行中の低温流通がコールドチェーン・システムかどうかにつきましては、多大の疑問を私は持っております。現在コールドチェーンなる用語が、魚価安定のキーポイントのように喧伝されておりまするけれども、それが実際の効用を発揮するまでには、漁港における処理能力消費地における配分施設、適正流通のための情報、輸送施設の充実等々に要する巨大なる財政投融資なくしては、真実のコールドチェーンの実現は不可能なのであります。かりに現行のシステムを合理的に改善するならば、一歩その本質に近づくとしても、私は幾つかの矛盾と問題点のあることを指摘せざるを得ません。本国会に提出されておりまする沿岸漁業等について講じようとする施策の中には、「冷凍魚協会に助成し、移動展示車を使用する等により小売業者および消費者に対する冷凍魚の普及を推進する。」と述べております。公述人はその効果を否定するものではありません。しかしながら、次のような矛盾をはらんでいることも現実であります。それは、現在九百をこえるSA級冷蔵冷凍施設を、その保管規模から見まするならば、多くは大手の漁業資本または冷蔵資本の手にあるといってよいのであります。しかも、これらの大手業者が投資効率をあげ得る要諦は、多獲性水産物価格下落のときに買い入れ、相場の上昇したときにこれを放出するという、従来の商習慣をそのまま踏襲しているのであります。これは商業取引上の経済法則といってもよいでありましょう。その観点から見まするならば、コールドチェーン方式はいまだ未確立であって、現行の状況の中では、魚価安定が、生産から消費に至る一貫した相互利益を生み出すためには、現実の矛盾的側面を十分に検討してかかる必要があるのであります。  このような構造的矛盾に対応するためには、私は沿岸漁業構造対策事業として、漁協並びに漁協連合会において施設されました水産物貯蔵設備を、現在のごとく個々分散的に経営するのではなくて、漁業協同組合系統が一体となって有機的に運用することができるよう検討すべきであると考えるのであります。率直に申し上げまして、そのような体制は全くでき上がっているとは思えません。そのために、せっかく施設をされた冷蔵冷凍施設が遊休化しているという実例を、私は各地において見ております。しかもその反面、近傍の漁港冷蔵庫は満庫し、豊漁時に対処し得ないというふしぎなる現象する呈しているのであります。これは漁協系統の一体化が未確立であるからではありますが、それを可能にする施策を、政府及び漁協系統全体の中において速急に検討さるべきことを意味するのではないでありましょうか。  さて私は、いまの漁業は、魚価高にささえられる一般的現象の中において、なおかつどこかで生産費を償い得ない大漁貧乏が存在すると申し上げました。この漁業に避けがたい宿命の克服のためには、小手先の安定策を、畜産等の例にならってやっても、なかなか効果はあがるものではありません。したがって、漁業の構造的変化に対応した長期的な魚価安定対策が考えられなければなりません。と申しましても財政硬直化の今日、その財源を政府予算にのみ依存することはできますまい。  そこで、考えらるべき若干の財源造成の問題について、二、三指摘してみたいと思うのであります。  その第一は、年間六百億円をこえる輸入水産物から差益利潤の一部を国庫に納入せしめ、これを魚価安定財源の一部にすることであります。もうからない仕事であるなれば、大商社が競争的に国外水産物輸入しようはずはありません。しかも、国内需要はさらに旺盛となり、供給はこれに追随し得ないのでありますから、高物価現象の中においての輸入増大するとともに、超過利潤率もまた高くなるはずであります。  第二の財源として考えられます点は、国費によって開発されたる漁場、主としてそれは海外漁場でありますが、それに展開操業する漁業者からは、一定率の賦課金を徴収する。これは受益の一部国家還元であり、漁業者にこれを均てんせしめる、いわゆる漁価安定対策ないしは流通構造の変化に対応するための費用といたすべきであります。  第三は、北洋への転換底びきトロールのごとく、遠隔漁場への転換を理由として、大規模の増トンが認められておるのでありますが、これは一種の恩恵的措置でありますから、これからもまた一定率の許可料を納付せしめる制度検討すべきでありましょう。  第四は、国外漁場からの持ち帰り水産物に対する賦課金徴収であります。現在国内に搬入される水産物は、輸出分を差し引きまして十三万六千九百トンになっておりますが、主としてそれは高締魚ないしは中級魚であって、沿岸漁業者の生産物と競合関係にあります。と同時に、一般的漁業利潤率よりも、内地操業の漁業よりも高い利益率を生じているものと想像して間違いないのであります。したがって、その差益の一部を納付させることは、その企業の大きさからいっても無理な注文ではないはずであります。  第五は、局地的に起こりやすい魚価暴落に対しては、その地域の知事がこれに対処し得るような制度を確立し、その救済資金と同額またはそれ以上の国庫助成の道を開くことであります。  このような方法において魚価安定対策を強力に推進することは、決して無理な方法とは私は考えないのであります。しかも、このように差益利潤により、不安定な状況に置かれている漁業者の救済措置並びに生産者にも消費者にも双方に利益する流動体制をつくり上げることは、社会正義の上から申しましても当然考慮さるべき政治的配慮であると信ずるのであります。と同時に、安定基金の消滅によって、いわばやもめになった漁業生産調整組合の、その性格変化に即応して、これをさらに安定的に一歩前進せしめ得る費用とするということが、先ほど五点にわたって申しました賦課金制度のねらいであります。  最後に重ねて申しますが、短期現象に振り回されていては、長期的な漁業の産業としての位置づけはできません。数年後には水産物の国内需要は二百万トンの供給不足を生ずるものと推算されております。したがって、政府は、長期的展望に立つ増産対策を確立すべきであり、予想される漁獲努力の拡大とその流通対策に一そう抜本的な措置を講ぜられんことを、安定基金解散がやむを得ないという状態に相なった代策として、さらにさらに強力に御検討相ならんことを希望いたしまして、参考人としての公述を終わります。(拍手)
  8. 足立篤郎

    足立委員長 ありがとうございました。  これにて参考人の御意見開陳は一応終わりました。
  9. 足立篤郎

    足立委員長 質疑の申し出がありますので、これを許します。角屋堅次郎君。
  10. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 きょうはお三方の参考人に来ていただきまして、貴重な御意見を賜わりました機会に、二、三参考人方々にお尋ねをいたしたいと思うのでございます。  魚価安定基金の廃止に関する法案の審議にあたりましての考えは、私、伊藤さんの考えと同じような気持ちを実は持っておるわけであります。と申ますのは、三十六年の例のこの法案審議の段階で、私の名前で社会党から、水産物価格の安定等に関する法律案というのを並行審議で出しておりまして、当時、政府案とわが党案についてたくさんの参考人をお呼びしました。その中に全漁連から片柳さんに来ていただいたり、きょうお見えになっております宮城先生に来ていただいたりして、参考人としての御意見をお伺いいたしましたところ、社会党案は理想案としてまことにけっこうである、しかしながら、一歩前進としての政府案を通していただきたい、おおむね、ことばは五十歩百歩でありますけれども、そういうところに大体参考人の御意見がございました。そこで、与党の諸君も珍しく社会党案が非常にいいという評価もされましたので、先ほど伊藤さんが言われたように、自民、社会、民社三党共同で、政府案はきわめて不十分だという認識がございましたので、さらに総合対策検討しながら、法制的、財政的な措置をこれから講じていく必要がある、御承知のようにこういう経過になったわけであります。  ところが、率直に言って政府のその後の——これはいずれこれからの議論でやることでありますけれども魚価安定対策にほとんど見るべきものなし。やせ馬のような姿のままで今日まで来て、特殊法人の廃止というのに籍口して、魚価安定基金の廃止だけやっていく。ちょうどこれは、当時全漁連参考人の片柳さんも言ったように、この両法案は一体であるということを言っておったが、夫婦の、家内を離縁して男やもめだけ残す。そうすると、この調整組合のほうだけでは十分な機能を果たし得ないという状態のまま、一体これから重要な魚価安定をどうしていくのかという、そういうところに迫られておると思うのです。  つい数日前、行政管理庁から、昭和四十三年四月ということで、「中小漁業に関する行政監察結果に基づく勧告」というものが出ておりまして、水産資源の開発および維持についてあるいは漁業調整について、漁港の維持管理について、構造改善事業の実施状況について、改良普及事業整備について、漁業信用基金協会について、中小漁業近代化について、冷凍水産物流通改善事業について、漁船の海難防止について等々について、実態調査に基づいての勧告がなされております。これは政府部内において痛い点もあります。あるいは関係業界としても、この勧告の中では、内容を十分検討されて、受けとめなければならぬ問題を幾つか含んでおります。  まず冒頭に、私は、全漁連池尻さんのほうにお伺いしたいわけですが、行政管理庁の「中小漁業に関する行政監察結果に基づく勧告」これはまだ出たばかりでありますけれども、業界としてもこの内容を十分検討されて、この勧告に対する見解、あるいは勧告を受けて立つべきであろう、こういうふうなことをやられることが望ましい、こういうふうに私は思っておるわけです。内容の問題については、私はここで議論しょうとは思いません。しかし、内容の中に触れておる点では、これからの水産政策を考えるにあたって、重要な問題の提起がなされておると考えております。内容すべてについて、これで十分であるとは必ずしも私は思いませんけれども、非常に重要な指摘がなされて、また、水産政策上の重要な問題も含んでおる。したがって、この際政府自身としては、これに基づいて関係各省とも善処しなければならぬが、関係業界としても内容を検討されて、これに対してどういう見解を持つかということを出されることは、国会が水産政策全般の審議を進めるにあたって非常に重要なことである、こう考えておりますので、この問題の今後の受けとめ方についてどういうふうにお考えになるか、まず冒頭にお伺いしたい。
  11. 池尻文二

    池尻参考人 御指摘の行管の勧告は、新聞で拝見をした程度でございまして、詳細を踏まえておりませんけれども、従来の行管の勧告からいたしますと数歩前進しておりまするし、その勧告のカテゴリーもまたきわめて微に入り細にわたったものである、こういうふうに理解しております。つまり、中小漁業並びに沿岸漁業施策として、かなり骨格的な問題についての要点を指摘しておるように受けとめております。  現在まで、いろいろな施策水産にも行なわれてまいりましたけれども、要は、きわめてまだまだ羅列的と申しまするか、いま御審議の魚価安定基金の実態もそのとおりでございまするが、柱といたしまして、いわゆる地についてないというものが非常に多うございます。行管が指摘しておりまする金融の面、あるいは生産対策の面、あるいは流通の面におきましても、たとえば流通改善事業対策、これは私が先刻御披露申し上げましたが、これ一つとりましても、そのこと自体は非常にアップ・ツー・デートの問題でございまするけれども、実態はいろいろの矛盾を持っておりまして、これは水産庁御当局も十分知っていらっしゃいまするし、これを今後どういうふうに現在の時勢に合うようなかっこうで流通の問題として根をはやしていくかという問題には、全漁連のみならず、その間の卸売り人、あるいは冷凍業者、あるいは加工業者その他を含めまして、いろいろ構造的な議論をしていかなければならぬ問題を現実私どももかかえておるわけでございまして、その意味におきましては、この問題に対しましては一つ一つ前向きに対処いたしてまいりたい、かように考えているやさきでございます。
  12. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 伊藤さんにはちょっとお伺いしたいのですが、魚価安定基金が廃止になりまして、漁業調整組合のほうは残るわけですね。これは一朝有事の際に伝家の宝刀として、それなりに役立つという見解もあるわけですけれども、そこで先ほども、剰余財産の処分問題で、国に入れるあるいは入れないという問題についてのお話がございましたが、これは魚価安定基金の廃止の法案の中で、第七条第一項の規定によって、「基金の目的に類似する目的のためにその剰余財産の全部又は一部を処分することができる。」云々の条項とも関連することですけれども魚価安定基金が廃止をされて、あとに残る調整組合である程度の可能な財源的裏づけもして、どの程度役割りを果たせるというふうに考えるのか、あるいは、廃止になることがもうやむを得ざる現実の姿であるとすれば、これから本格的な法制的、財政的な裏づけがくるまで、魚価安定のために、この残った調整組合を通じてどういう役割りを少なくとも果たしていきたいというふうにお考えなのか、そのことを、剰余財産の処分問題も含めて御意見を出していただきたい。
  13. 伊藤佐十郎

    伊藤参考人 ただいまのお尋ねの件でございまするが、実は、私ども本来、宮城さんのおっしゃるとおり、セットでスタートしたものが、片方だけ消えるわけでございまして、多少あわてた経過もございますが、何ぶんにもサンマだけ考えますと、利用配分の推移を見ても、冷凍依存度が七〇%をこしております。そういうふうになりますと、セットでスタートした当時とは情勢もだいぶ変わっておりますし、ただ単に出漁の制限であるとか、生産の規制であるとかということだけではおさまらない事態になりましたので、サンマ漁業者といたしましては、法律による調整組合のほかに、全く同じ参加メンバーをもってさんま漁業協会というものをつくっております。これは、新しく情勢変化に対応するために、法律による調整機能以外の事業も当然やらざるを得ないというところで、二重組織と申せるかどうかわかりませんが、そういう形で準備をいたしております。  それから、先ほど私がちょっと触れました運用の果実の問題、剰余財産の問題でございますが、私どもは、剰余財産だけでなく、今後も、魚価安定対策に対する民間出資が当然ふえるものと覚悟をいたしまして、一漁期幾らというふうな漁獲高に対する一定のパーセンテージをもって、そのための用意を続けてまいったわけであります。したがいまして、もしほかの業種とも一緒になってこれが拡大されるということになれば、すでに出資いたしましたもののほかに、応分の追加出資に応ずるような心がまえでおりました。ところが、今度解散になりまして、出資金は返され、それから剰余財産の一部も、類似業務のためにということでお下げ渡しをいただくということになりますというと、私どもといたしましては、これはもう慎重に考えて、戻ってくる出資及び剰余財産を含めまして、まず第一に考えますことは、これを散逸しないようにして積み立てるということであります。ただし、出資金のほうは次の用途までは積み立てるということになりますが、剰余財産のことにつきましては、これは直ちに運用を開始さるべき性質のものだと思っておりますので、同じ交付される中でも、ちょっと性格が違うと思います。  それをどのような形で実施するかということにつきましては、私も不勉強で、まだよく法人としての決定的な要領は御報告いたしかねますが、いまさしあたり問題になっておりますのは、当初サンマの資源については、有力な専門の筋から、何ら懸念がないのである、乱獲によって資源が枯渇するなんということは考えなくてもいいというように伺っておりましたけれども、最近、六十万トンまで数えたものが二十万トン程度に低下してきたということになりまして、資源も、言うがごとく楽観はできないのではないか。そうすると、従来やっておりました漁場の範囲以外に新しいサンマの魚群の探検ということも前から話題になっておりますし、とりあえず漁期前からの漁場調査ということがまず第一に必要になってくる。最初は生産をセーブするための目的で出発したわけでありますが、最近は、生産需要に追いつかないというような需給関係になってまいりますと、生産を増強するために新しい漁場へも発展しなくちゃならないという要請が出てまいりましたので、漁場調査に対しては国にもお願いいたしますけれどもサンマ漁業者団体自体としても、相当本腰になってこれと取り組まなくちゃならないということは、もう決定的でございます。  先般も、関係の人たちが平塚かどこかへ集まりまして、サンマ漁場調査についての具体的な話し合いをいたしておりますが、そういうような趣旨において、戻ってくる出資金は次の総合対策のために用意して積み立て、足らなければもっとみんなで拠出をしてもやろうという気がまえでございますし、それから剰余財産につきましては、ただいま申し上げるような形で、これを有効に生産のために使わしていただきたい、こういうような気持ちのように考えております。ただしこれは、その調整組合を代表する者の責任ある回答としては申しかねます。情勢はそのようでございます。
  14. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 宮城先生に一点だけ。先ほど魚価安定基金の廃止あるいは調整組合が残るという問題に関連して、やはり重要な水産物価格安定対策、特に大衆性多獲魚の価格安定から発足をしてきたわけでありますが、これが必ずしも十分な体制をつくり得ずして、今日魚価安定基金の廃止という事態にきた。しかしそれにもかかわらず、魚価安定対策というのは、今後長期的に非常に重要な問題であるという点から、そのための対象をどういう範囲にし、どういう機構でどういうふうに運営するかという点については別としても、やはりそれなりの財源を確保しなければならぬ。大蔵省は、最近価格安定ということには非常にシブチンであって、政府も、必ずしもそういう点について十分な対策を講じたとは言えない。しかし、第一次産業の農林漁業を見渡した場合に、いろんな形で価格安定対策をやっておる。それをそのまま水産に、必ずしも全部が全部導入するわけにはいかぬでしょう。しかし、そういうところからやはり学ぶべき点があるという点で、たとえば資本漁業関係、あるいは今日、四十一年度で六百億をこえておる海外からの水産物輸入で一%、それが差益金としてもし入るという期待ができれば、これだけで六億という期待が可能になる。そうであるかどうかというのは、検討を十分しなければならぬが、さらにその他ボーナス・トンその他の問題に対する点、いろんな点で、私はこれは非常に新しい、検討すべき問題提示だというふうにも思われるわけですけれども政府は三十六年以来一億六千四百十万のうちせいぜい八千万出資しただけで、あとはもうそのままであったという点から見ても、幾つかの方策を考えてみると、ある程度の財源を得るということは、そう極端な、無理なくふうが可能であろうというふうに私も見ているわけです。したがって今日時点で、三十六年代におほめにあずかった水産物価格の安定に関する法律案というのは、やはり最近の水産物の国内における需給状況、あるいは輸入の増高等々から見て、今日情勢でどういうふうにすべきであるかというのは、見直してみなければならぬというふうに私自身も思っております。  そこで、宮城さんの言われるような、財源をある程度検討の結果、可能なものを取り入れてやる場合に、どういう構構を対象に考えてやったらいいのかという点で、もしある程度のお考えがあれば、ひとつこの機会にお伺いしたいと思います。
  15. 宮城雄太郎

    ○宮城参考人 お答えいたします。  御承知のように、特殊法人の整理がいまや課題になっておるときでありますから、本来から申しまするならば、魚価安定基金が初期に構想したような形における基金制度が好ましいのではありまするが、おそらくこれはなかなか可能性がないものと考えるのが現実であろうかと思います。  そこで、各種の漁業ないしは輸入水産物の差益金を徴収することによって魚価安定と、私はこう申し上げておるのではない。要するに、生産から流通を通じて双方が利益する、流通構造の改善のための費用という用語を使ったわけであります。したがいまして、このような形において国家が徴収いたしまする賦課金ないしは許可料のごときは、一種の特別会計的措置、用途を明示する特別会計の法制的な措置が必要なのではなかろうかと考えておるのであります。たとえば揮発油税の場合に、漁港関連道路に対してこれを利用するというふうな形において運用されておりまするが、そのような政治配慮に似た形で特別会計の設定、そしてそれが必ず漁業の安定及び流通組織の改善に役立つものとしてのみ利用する、こういう方法論を一応考えておるのでありまして、具体的にいかなる基金にすべきかという点につきましては、これはむしろこの委員会並びに水産御当局において、詳細なる御検討の上においてお立てになるべきことなんであって、評論家たる私は、一つのアイデアを示したにすぎないのであります。
  16. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 最後に、池尻さんに戻りましてもう一度お伺いしたいのですが、価格安定の問題も、国会では、宮城先生お話しのように、私自身も当の問題については、今日情勢で見直したいというふうに考えております。そこで、行政管理庁の勧告の問題にも触れましたけれども漁場の開発、維持、培養問題という点で、団体側でもそうですし、私どもでも検討しておる問題に、漁場の開発、整備というふうなことで積極的な方策を、立法的措置も講じながらやっていく問題が、一つ課題として残されております。  その際に、私は単に漁場の開発、改良ばかりでなしに、それに見合う陸上の関連施設というものも、法体系の中に含めて考えてはどうかというふうに思っておるわけでありますが、同時に、この間農林漁業金融公庫法の一部改正の議論をいたしましたが、新しい課題の問題としては、農業近代化資金に見合うような水産近代化資金というものが、今後に果たすべき役割りはどういうスケールのものであろうかという点についても、速急に検討し、実現の方向にいかなければならぬ問題を含んでおる等々考えておるわけですが、この際簡潔に、今後、来年の通常国会等を目ざして、法制的、財政的に見て、水産業の振興の立場から考えておるポイント的な問題について、御意見をお聞きしておきたいと思います。
  17. 池尻文二

    池尻参考人 漁業を取り巻く環境が、御承知のとおりきわめて、需要消費というものに生産が追いつかないという事態でございます。超長期的にはいざ知らず、ここ当分続くであろうということを踏まえますと、私ども従来まで、非常にミゼラブルといわれておりました沿岸漁業にも、その点には、時代的には非常に大きな夢と申しますか、希望というものを持ち得る素地だけはできた、かように考えております。したがいましてそういう漁業というものを、今後公害だとかあるいは水質汚濁だとか、その他いろいろな漁場の条件を悪化させるという問題を排除しながら、かたがたこういう漁業国としての日本の沿岸漁業というものを長期的に育てるという意味におきまして、特に水産基盤の造成という見地に立ちまして、でき得れば長期的なそういう沿岸漁業生産対策というような意味を踏まえました法制というものが、必ず必要になってくるのではないか、かように考えております。
  18. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 時間の関係もありますので、これで質問を終わらせていただきます。御三方、ありがとうございました。
  19. 足立篤郎

    足立委員長 以上で、参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々には、御多用中にもかかわらず長時間にわたり貴重な御意見をお聞かせいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚くお礼を申し上げます。(拍手)  本会議散会後再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時十一分休憩      ————◇—————    午後三時四十五分開議
  20. 足立篤郎

    足立委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前に引き続き質疑を行ないます。伊賀定盛君。
  21. 伊賀定盛

    伊賀委員 前回に引き続きまして、魚価安定基金解散に関する法律案についての質疑を続行いたします。  前回産地、すなわち価格が形成される場としての産地を、具体的に取り上げて御質問申し上げたのでありますが、きょうはこれらを統合しまして、きょう午前中の団体の代表者の方々から、全漁連池尻さんのことばでありましたか、加工団地という表現があったのでありますが、私はこれをもう少し広い意味で、水産団地といった表現をしてみたいと思うのであります。というのは、先日来申し上げておりますように、元来水産行政というのは、豊富な魚を安定的な価格消費者にコンスタントに供給していくというのが使命でありますから、それらに関連するもろもろの問題を先般申し上げたわけでありますが、これらを総合的に、本来の水産行政の使命を果たさせるためにはいろんな問題が出てくるわけですが、特に指摘したいと思いますのは産地、すなわち漁獲物が水揚げされてそこでせり市にかけられる、あるいは加工される、そして消費地に運搬されていくわけです。その産地で問題になりますのが、一つ環境衛生という立場から考えまして、たとえば汚物処理、それがそのまま海中にほったらかされたり、あるいは川に流されたりしてウジがわいたというような問題、あるいは全国どこへ行きましても、漁村というのは非常に密集しておりまして、建て込んでおりまして、したがって、これは全国どこでも同じ傾向だと思いますが、特にトラホームなんという目の病気がたいへん流行しております。私ども兵庫県の例をとりましても、目のお医者さんは漁村で開業したら絶対もうかるといわれるほどであります。あるいはまた住宅と加工場が混在をしておるというような、環境面から見た欠陥というようなことが指摘されようかと思うのであります。したがって、これを一口に言いますと、いわゆる環境衛生面からくる公害といったような表現になろうかと思うのであります。  もう一つは、労務対策といった面から考えましても、これもきょうの全漁連池尻さんの発言にもあったように思うのでありますが、最近は都市と農漁村との所得の格差とか環境面から見ても、だんだんと農漁村地域に若い労働力が減少しつつあるわけであります。したがって、こうした水産もしくは加工方面に若い労働力を確保するといった面から考えましても、あるいはまた特に加工場なんかの場合には、同様に若い労働力がだんだんと減少しまして、女子労働、なかんずく若い女子労働でなしに、主婦労働が中心になりつつあるのが現状であります。したがって、主婦がそうした加工場に通勤をするといった場合には、当然やはり保育所かあるいは一時的な子供を預かることろ、託児所といったようなものを設置する必要もあろうかと思うのであります。あるいはまた労務対策として、たとえば雇用条件、具体的に申し上げますと、失業保険の適用でありますとか、退職金制度であるとか、労災保険でありますとかいったようなこと等を総合的に考えまして、この際水産団地というようなものを総合的に考える必要があるのではないかと思うのであります。  たとえば、最近山村振興法といった総合的なことが、企画庁の所管で行なわれております。したがって、そうした水産団地を形成するために、総合的に、山村振興法といったような単独立法で思い切った施策をする必要があるのではないか。魚を持って漁港に入ってくる、それをせりにかける。普通の鉄鋼団地とかいうようなものなら、かなり遠いところに運搬していってそこで加工等を施してもいいわけでありますけれども、何ぶんにもなまものですから、なるべく漁港に近いほうがいいわけであります。一例をあげますと、漁港の近くに埋め立てをして、そしてそのせり市のすぐ近くにそのまま加工団地というものができ上がる、その横にはまた保育園等の施設を設置するといったような構想でやる必要があろうかと思うのでありますが、これらについて、長官の考え方を承りたいと思います。
  22. 安倍晋太郎

    ○安倍政府委員 補足して長官から説明させますが、漁業関係に従事しておられる方が住んでおられるところにつきましては、環境衛生が非常におくれておるという点につきましては、私も各地を見ておりまして痛感をいたしております。臭気の問題にいたしましても、あるいは住宅関係に対するいろいろな公害等の問題も、水産関係では相当起こっておるのではないかと思うわけであります。また、主婦の労働がだんだんと強化されておる実情でございまして、いまおっしゃいましたような保育施設等の必要性も、各地で強調されておる実情でございます。そういう点の総合的な環境衛生対策あるいは住宅対策等につきましては、もちろん市町村、地方公共団体あるいは国というものと一緒になって、ある程度対策を進めていかなければならない段階にきておるわけでありまして、今後ともこうした漁業地域の環境衛生対策等につきましては、政府としては積極的にやるべき時期にきておると私は思っております。  そういうことで、これからはいろいろの政策の面につきましても、今後とも特段の配慮を払っていかなければならないと考えておるような次第であります。  そういう面から、いまおっしゃいましたようなことにつきましては、私も非常に同感を覚えておる次第です。補足的には長官から説明させます。
  23. 久宗高

    ○久宗政府委員 政務次官からお答えしたことに尽きるわけでございますが、特に加工関係も含めました団地という考え方について、若干申し上げます。  御承知のとおり、漁村におきます一般的な衛生問題といたしましては、非常にレベルが低いわけであります。私どもも御担当の各省にお願いいたしまして、各省でも、御報告申し上げておりますような一連の環境に対する衛生その他に関します施策も進めていただいておるわけでございます。御質問は、さような一般的な漁村ではなくて、相当中心地と申しますか、加工流通中心的な施設の集まるところで、さような施設をもう少し総合的に組み立ててみたらどうだろうか。それに関連いたしまして主婦労働の問題でございますとか、あるいは一般の労務者の環境をよくするような施設を同時に考えたらどうかという御質問のように承ったわけでございます。  確かに、いま御指摘のような問題があるわけでございまして、従来私どもも、産地におきますいろいろな処理加工の高度化のための一連の施設について助成いたしましたり、あるいは低利資金を融通したりしてまいったわけであります。農林省といたしましては、食品加工全般につきまして、ただいま農林省といたしましての考え方をまとめつつあるわけでありまして、そのようなものの一環といたしまして、団地にいたしました場合のいろんなメリットを考えておるわけでございます。  具体的なものといたしましては、私もまだ詳しく存じませんけれども、公害防止事業団におきましてやはり同様な発想がございまして、これはもちろん試験的な問題でございますけれども、たとえば、加工いたしました場合に非常ににおいの出るようなものの処理も含めまして、団地的な処理というようなことが試みとして実行されておるように聞いておるわけでございます。ただ、これはやはり加工が比較的密集しております場合にそういうことが取り上げられるわけでございまして、ばらばらにございました場合はなかなかむずかしいのではないだろうか。したがって、どこでも団地化できるという問題では必ずしもないと思うわけでございます。いずれにいたしましても、団地的な処理を頭に置いた一連の施策が、総合的に動くような形というものが望ましいわけでございますので、さらに検討させていただきたいと思います。
  24. 伊賀定盛

    伊賀委員 いま政務次官からも同感だという御弁答をいただいたのですが、どうでしょうか、これから検討ということですか。それともある程度構想がまとまっておるのか。あるいは内部的にすでに水産内部ではそうした構想についての検討を終わって、あとは法案整備とか、関係官庁との横の連携とかいうことでまだ具体化していないというのか。これから何もかも始めようというのか。特にこの間長官の御答弁にもありましたが、今度の総合資金制度の中で、産地市場が法の中では適用範囲に入っているけれども、具体的にはこれが対象にはしないんだというのは、総合的ないろいろな考え方がありますから、こういう御答弁が先般あったわけであります。したがって、やはりそういう総合的な、ただいま御答弁があり、私から御質問いたしましたような、そういうものが具体的にあるので、今回の総合資金制度からはずしたということなんでしょうか。
  25. 久宗高

    ○久宗政府委員 水産団地と申しました場合に、御提唱なさる方はいろんなイメージを持っておられるわけで、それぞれ違うわけであります。したがって、ある施策としてこれが水産団地ということは、もちろんまだきまっていないわけでございます。私がこの前申し上げましたのは、そういうものを役所でつくりますと、水産団地という何か固まってしまったもの、固定観念というものができまして、そういう形で施策をおろしました場合に、はたして実際に合うかどうかという問題が一つございます。それから現に動いておりますものは、やはり相当中心地でいろいろばらばらにあることの不便から、むしろ非常に具体的なものといたしまして、地元にそういう案が熟してくるのが普通でございますので、現在のところ私どもといたしましては、水産団地というものを何か政策として打ち出して、その結果においては、非常に型にはめるかっこうになるおそれがございますので、むしろそういう形でないほうがよろしいんではないかという感じを持っておるわけでございます。そこで、多少水産団地ということばにこだわって御説明したわけでございますが、ただ、御質問の御趣旨のように、それぞれの施設が有機的な関連を持つように、特に衛生問題なんかも含めてやろうとすれば、水産庁のみならず他の関係機関との協調なしにはできないわけでございますので、それを総合的に考えろという御趣旨は私は全く同感でございます。ただ、それをある政策でおろそうといたしますと、現実と非常に遊離する場合もございますし、このような衛生問題まで含めましたものは、その土地の実情に即して考えるべきだと思いますので、いまのところ、水産団地という形の政策を打ち出す用意はしておらないわけでございます。  ただ、前回も申し上げましたように、私どもといたしましては、漁港施設の新しい計画に取り組まなければならぬ段階にきておるわけでございますから、今年度予算で御承認いただきましたものの中にも、それに伴います調査費までいただいているわけでございます。したがいまして、その場合には狭い意味の漁港だけではなくて、もう少し背後地なりあるいはただいま御指摘を受けましたような衛生上とかあるいは労働関係までも含めた一つの計画にもしできるならば、非常に望ましいんではないかということで、大急ぎでそこの勉強を始めようということを考えておるわけでございます。  なお、御質問にございました産地市場と今度の融資との関係でございますが、これは必ずしも御質問のような意味ではずしておるわけではございませんで、前回申し上げましたように、当然制度の上では組み入れてはあるわけでございますが、これにつきましては、やはり産地市場のあり方というものにつきましての指導計画がきまりまして、それに伴って融資が行なわれるわけでございますので、これを確立いたしますのには相当に時間がかかるわけでございますので、本年度のワクには入れていないわけでございます。  なお、産地市場につきましては、単に施設の問題ではなくて、どなたがこれを運用するかといったような問題が、産地市場機能と関連いたしまして相当問題であるはずでございますし、昨年来御討議いただきまして実施に移しております協同組合の合併にいたしましても、まだ緒についたばかりでございますので、これらの去就ともあわせて考えていきたいということに尽きるわけでございます。
  26. 伊賀定盛

    伊賀委員 私も、何も水産団地ということばに拘泥するものではありません。中小漁業とか遠洋漁業とかいったような形で、海の上の施策については単独立法が、おのおの基本法的な性格のものはすでに出ているわけであります。しかし、これを陸に持ってきてからのそうした振興法といいますか、そういうものがありませんので、何も水産団地という表現を使う必要はないけれども、というて地元から計画が出たといいましても、地元からかりに出ましても、やはり根拠法規がなければ予算は組めません。したがって、再度申し上げますけれども、たとえば山村振興法なんというのは、これはかなり総合的な意味があるわけで、林道でもやるし町村道でもやるし、建物も建てられるし、みぞの改修もできるといったようなことで、山村振興法というものはかなり総合性を持っておるわけです。したがって、そういう意味からいいますと水産団地というような表現でなしに、むしろ漁村、つまり村ということばが——村でなしにりっぱな市が中心の場合もありますから、必ずしも村ということに拘泥する必要もないのですけれども、いわば漁民がその生活を営む場を、しかも陸地ですね、陸の中心的な基地、これを総合的に振興する。その場合には、たとえば融資がどの程度とかあるいは補助金がどの程度とか考える場合には、こうこうこういうものがあるといったようなある程度のモデルといいますか、構想といいますか、そういうものがなければ、地元からあがってくればとおっしゃいますけれども、実際問題としてはその対象にはなり得ないというようなことがあろうと思うのであります。  そういう意味で、もしそういう構想がございませんというならば、たとえば、先般も申しましたけれども産地市場問題協議会というものを昭和三十六年に設置した。もっとも、これもこの間御答弁がありましたように、強力な機関ではありませんから、せいぜい参考意見程度にとどまったようですが、もしないとするならば、あるいは農林省内部だけで、水産内部だけでそうした結論を得にくいとするならば、やはり農林大臣の諮問機関というような強力な一つの諮問機関というようなものも設置して、早急に漁村の振興のための総合的な施策を打ち出す段階に来ておるのではないか。山村にしてしかり、農村においてしかり、いま農業振興地域なんというのが論議されておるのは御承知のとおりですし、山村は山村で振興が出ておる。ところが、ひとり漁村が検討の必要がありますというだけにとどまっておるというのでは、あまりにもおそきに失するという感じがするわけであります。したがって、単に構想というだけでなしに具体的にやってもらいたいと思うわけです。そういう意味で、もう一度政務次官の決意をお聞きしておきたいと思います。
  27. 安倍晋太郎

    ○安倍政府委員 伊賀委員が先ほどからおっしゃいましたように、いわゆる漁業関係における、特に沿岸漁業等における陸のほうが施策がおくれておる、海のほうにつきましては沿岸漁業等振興法などがありましていろいろと施策を講じているわけですが、陸のほうの環境衛生の面とかあるいはまた住宅等の面につきまして、だいぶおくれておるのは事実であろうと思うわけであります。そういうことから、先ほどから長官も答弁をいたしておるように、地方公共団体、国の協力の中で、いろいろとそうした対策は個別的には進めておるわけですが、しかし、ただいまおっしゃったような総合的な、計画的な進め方というのは、まだなされていないというのが現状であろうと思うわけであります。そういう点につきましては私も同感でございますし、いま検討をいたしておりますが、今後ともさらにひとつこれを進めて、漁村におけるそうした環境整備といった面につきまして、農林省としても積極的な姿勢で取り組んでいきたい、こういうふうに考えておる次第であります。
  28. 伊賀定盛

    伊賀委員 それから関連をいたしまして、きょう午前中に角屋委員から、参考人に対する質問という形で提起された問題ですけれども、きのう、二十二日付で行官庁から中小漁業に対する勧告が出たようであります。なかなか膨大な中身のようでありますから、いま直ちにこれを一つ一つ取り上げて云々というわけにはまいらないかと思いますけれども、いままでの勧告とは違った形で、かなり思い切ったメスが入っておるように新聞なんかでは書いておるようであります。私はそれをまだ全文を具体的に読んでおりませんからわかりませんけれども、これはやはり今回の魚価の安定の問題ともからんでまいりますから、次官並びに長官のこの勧告に対する態度といいますか、決意といいますか、そのようなものをひとつ承っておきたいと思います。
  29. 安倍晋太郎

    ○安倍政府委員 内容につきましては、長官から補足説明をさせていただきますが、この五月末までに、農林省として行管の意見に対する報告をすることになっているわけでありまして、いわゆる中小漁業あるいは沿岸漁業について、漁場の調査、開発ということをもっと積極的にやるべきだということは、私も、これはいろいろの施策を進めておりますが、さらにひとつ農林省部内においても十分検討して、前向きの形で立案、喜処しなければならないと思います。遠洋漁業等につきましては、御存じのような調査費等も取っておるわけでございますが、やはり近海漁業あるいは沿岸漁業についても、さらにひとつ積極的な姿勢で取り組んでいかなければならぬと思っております。
  30. 久宗高

    ○久宗政府委員 勧告が出まして、まだ詳しいものを全部精密に読んでおりませんので、この段階で申し上げるのもいかがかと思うわけでございますが、昨年来ずっと監査を受けまして、いろいろやりとりしてまいりましたものがああいう形でまとまったわけでありまして、率直に申しまして、たいへん私どものやっております仕事の内容を御理解いただきまして、いろいろ示唆に富んだ御意見を出していただいたというふうに思っておるわけでございます。  総じて申しまして、非常に急速な変化を遂げたいろいろな条件に対して、水産行政が必ずしもそれにうまく適合していないではないかという点を、相当掘り下げて御指摘になったような感じがありまして、私どもも思い当たるところが非常に多いわけでございまして、なお詳細に検討いたしまして、その線に沿った改善につとめてまいりたい、かように考えております。
  31. 伊賀定盛

    伊賀委員 以上で大体総括的なものを終わりまして、今度の今度は、法案に直接触れてみたいと思うのであります。  その一つは、今回魚価安定基金法が廃止になるわけですが、これは午前中の参考人のおことばをかりますと、宮城参考人のことばによりますと、結局公社、公団の廃止が行監委から勧告をされたけれども、抵抗の弱いものが整理の対象になったのだ、実際にそれの必要性のいかんにかかわらずという表現があったわけでありますが、私どもも何かそういう感じがしてならないのであります。もしほんとうに必要であるとするならば、これもきょう午前中の参考人のお三人ともに力説をしておられましたけれども、この基金法が廃止されるならば、当然それにかわる——この基金法制定のときにも、実際漁業を担当しておられる各種団体の代表者の方々参考人としての議事録等を拝見いたしますと、決してこれが魚価安定の完全なものじゃないのだ、不満足なんだ、十分じゃないけれども、まあ一歩前進だという受けとめ方で、しかもそれに対して三党、自民、社会、民社の共同提案による、より強い価格安定方策を講ずべしという決議があるほどでありますから、したがって、これが廃止されるからには当然それにかわる、それ以上に強力な価格安定対策というものが用意されておらなければならないのに、そうしたものが用意されないままに、これが廃止せざるを得ないということは、これは日本の漁民の立場から見て、まことに遺憾しごくな事柄であろうかと思うのであります。そういう意味で、この基金が廃止されたということについての、まあ参考人のことばによりますと、抵抗が弱かったから廃止されたのだということですがそこら辺についての、長官の御決意なり御感想を承りたいと思います。
  32. 久宗高

    ○久宗政府委員 公社、公団の整理の問題につきましてはいろいろな経緯もございまして、いろいろな御批判があり得ると思うのでございます。たまたまその一環といたしまして、魚価安定基金が問題になったわけでございます。いまの抵抗云々の問題は、これはもう第三者の御批判にまかせる以外にないと思います。私どもといたしましてはさような問題にかかわりませず、魚価安定基金が、本日参考人からお話のございましたようないろいろな経緯を経てできたわけでございますけれども、事情の変更がございますし、また、いまのような形で処理してまいりますのが、限定されましたサンマ自体についても適当であるかどうかということは、根本的にやはり反省してみる必要があるだろうというふうに考えまして、たまたま公社、公団の整理と関連をいたしまして問題になりましたので、この廃止に踏み切ったわけでございます。  なお、その際いろいろ御議論いただきまして附帯決議がついておりまして、これについての実行状態につきましても、個別にはいろいろ御答弁もできるわけでございますが、要するに、それが総合的でなかったという点におきましては、総合的な効果を十分あげていないという点は否定できないわけでございますので、やはりもう少し本格的にこの問題については取り組まなければいかぬということで、昨年来この廃止問題が起こりましてから、部内におきましても鋭意検討したわけでございますが、残念ながらまだそれをしぼり切れませんで、対案という形のものが出せないまま一応の廃止ということにならざるを得なかったわけでございまして、この点まことに残念に思いますし、申しわけないことと思っておるわけなのでございます。  ただ、部内におきましては、昨年来現業から切り離しまして、この流通問題につきまして根本的な検討が必要であるということで、相当広範な検討を実はやっておるわけでございまして、まだそれが全部組み立てられないわけでございます。これはこの前御質問にございましたような、たとえば漁港も含めました漁村計画とか、そういったものとも関連する問題になりますので、それを全部組み立てて御提示するまでのところに、実はまだ固まらないわけでございますので、はなはだ中途はんぱな形になるわけでございますが、私どもといたしましては、たまたま魚価安定基金の廃止問題として取り上げられました経緯から考えまして、しばしば問題になります流通問題なり価格政策の問題につきまして、御指摘のような総合的な対策にもう一歩突っ込みたいということで、いませっかく勉強中でございますので、その点をお含みおきいただきたいと、こう思っております。
  33. 伊賀定盛

    伊賀委員 これも午前中に指摘されたことなんですけれども、ほかの整理される団体は、名称は変わるけれども、中身はそのままほかの団体に引き継ぐとかいったような形で残るのに、ひとりこの基金だけは名実ともになくなるということを、午前中の参考人が指摘しておられたわけです。ここら辺にもやはり、どう言いますか、水産行政の立ちおくれというものが非常に強くうかがわれるわけであります。  すでに行監委から指摘されておりますものに、漁業協同組合整備基金を四十六年度までに廃止せよということが指摘されておるわけであります。そうすると今回の魚価安定基金の轍が、この漁業協同組合整備基金にも同じようなことが繰り返されるのではなかろうかという不安が残ります。あるいはまた、今回の行監委の勧奨はこの程度でありますけれども、まだまだしかし行監委の勧告がこれで終わったわけではないのでありますから、今後の進展いかんによっては、さらに水産関係の公社、公団等の廃止を勧告される可能性もあると思います。したがいまして、今後再びこういうことのないように、十分にひとつ配慮をいただきたいと思うのでありますが、これも、次官の決意をあわせて伺いたいと思います。
  34. 安倍晋太郎

    ○安倍政府委員 今度基金が廃止されて、何も残らないじゃないかというふうな御意見があるわけでございますが、それも一つの実情から見れば、そういうことも言えるのじゃないかと思います。魚価安定対策につきましては、先ほど長官も説明をいたしましたように、総合的にいろいろと施策は講じております。また四十三年度予算等におきましても、流通関係等において積極的な姿勢はとっておるわけでございますが、しかし、さらに根本的に魚価安定対策というものに取り組んで、総合的な政策を打ち出していくことが絶対に必要であると考えるわけで、この点についてはいまから十分研究をし、業界その他からもいろいろ政策面での意見を聞きながら検討を加えていきたい、そうして総合的な施策を確立していきたい、こういうふうに考えております。
  35. 久宗高

    ○久宗政府委員 政務次官のお答えで尽きていると思いますが、ただ、誤解があってはいけませんので、二つお述べになりましたあとの整備基金でございますが、これは非常な役に立ちまして、この基金によりましてそれぞれの組合が整備をしたわけでございます。これはある時限が参りますと当然になくなるというものでございますので、何か政策があってそれをやめさせるという問題ではございません。これは二番目にお話の出た基金のことでございます。  それから、いまの魚価安定基金そのものにつきましては、私ども価格政策そのものはもちろん必要だと思うのでございます。当面、サンマにつきましてああいう機能をしておりますけれども、これにつきましてはいろいろな限界がございますので、ああいう形で続けていくのをやめて、もっと本格的なものを考えていくということで、いま政務次官が申し上げたお考えと同様でございます。
  36. 伊賀定盛

    伊賀委員 この問題は、後ほどの剰余財産の処分のところで、もう一度関連して触れてみたいと思います。  次は「調整組合法との関連で、私の先般の質問の冒頭にもちょっと触れたのでありまするが、きょうの参考人全国さんま漁業協会の伊藤さんからも発言をされておったように思うのでありますけれども、これは何回も申し上げておりますように、元来、十分な魚を安く安定的にコンスタントに消費者に提供するというのが本来の趣旨であり、しかも需要と供給から見ましても、日本の国内の漁獲物が国内の供給を満たすだけ漁獲されていないときに、なおこの調整組合というようなものを——もちろん調整組合の持っておる別の意味といいますか、分野というもののお話がありましたけれども、しかし、一方においてそうした全体的な配慮から見て、この調整組合法を存続させる必要があるかどうかという疑問が、どうしても私には解けないわけであります。そこら辺について、ひとつもう一度御答弁をいただきたいと思います。
  37. 久宗高

    ○久宗政府委員 この前お答えしたことの繰り返しになるわけでございますが、確かにサンマをかりに頭に置きますと、調整組合がございまして、その場合に、一部の組合員だけに負担がかかるのを何らかの形で調整しなければいかぬということから、この基金のような形が必要になってくるわけでございます。御承知のとおり、調整組合そのものにおきましては自主的に定時、 つまり時をきめての休漁でございますとか、あるいは価格の低落時におきましては、一斉に陸揚げをみんなやめてしまう、こういうような行き方もとれるわけでございます。ただ、一部の組合員に対します陸揚げの停止といったような問題が起こりました場合には、そこのところの調整をいたしますのに、何らかの国の関与なり、本来の基金で考えておりましたような形が必要であるということだと思うのでございます。ただ実際には、漁獲を調整いたしますために、いまの調整組合というものは、かりに基金がございませんでも、私どもは必要だろうというふうに考えるわけでございます。基金がなくなれば、調整組合も要らないのではないかということにはならないというふうに思います。
  38. 伊賀定盛

    伊賀委員 一部の組合員に損害を与えるということ、確かにそれはそのとおりなんですが、その一部の組合員に損害を与えるというのは、たとえば陸揚げされたときの加工能力の問題でありますとか、あるいは輸送の問題でありますとかいうような外的な要因が、むしろ一部の組合員に損害を与える結果になっておるので、そうした外的な要因というものを解決していけば、当然そうしたものは必要ないわけであります。ですから、そういう外的な要因が解決されていない現状で、いま直ちに廃止せよというのは無理かもしれません。けれども、元来そうした外的要因が整備されるならば必要ない問題でありますから、できるだけひとつそうした要因を一つ一つ取り除くことに努力をしてもらいまして、できるだけやはりこの調整組合法なんというものも早く廃止すべきだと私は思うのです。どうでしょうか。
  39. 久宗高

    ○久宗政府委員 いろいろな施設その他が完備いたしました場合にも、漁業性格から、私はやはりこのようなものが要るのではないかというふうに思うのです。つまり、物的な施設が非常に整ってその運用がうまくいけば、多獲性魚、特に回遊性の魚族につきまして、調整組合のようなものは要らないのではないかということにはちょっとなりそうもない、こういうものはやはり要るというふうに考えるわけでございます。もちろんその場合、定時休漁でございますとか、あるいは一斉に陸揚げをしないといったようなことのないようなうまい組み合わせができればよろしいわけでございますが、現実の問題といたしましては、漁業生産関係におきましては、特別な魚種につきましては、やはりこのような生産調整機能というものは、必然的に伴わざるを得ないというふうに考えるわけでございまして、いまこれを廃止するということは考えておりません。
  40. 伊賀定盛

    伊賀委員 これは、議論をいたしますといろいろな方面にわたってまいります。というのは、午前中の参考人意見を聞いておりまして、これは伊藤さんですか、価格支持を行なう場合に農産物とは違うのだ、こういう御指摘がありました。農産物よりも困難だという表現はなかったのですけれども、むしろ困難だというふうなニュアンスに私は受け取ったのですが、そうではなしに、農産物よりも水産物のほうが価格管理というような面ではむしろやりやすいのだという感じを私は持つのであります。ですから、いま長官のおっしゃることもわからぬわけじゃないのですけれども、やはり長官も農産物とは違うのだ、そしてこういうものが必要なんだということですね。だけれども、私はこの面ではちょっと見解が違いますので、これは時間をかけて話し合いをしてみなければわからぬと思うのでありますが、要するところ、長官は本質的にそうしたものが必要だという立場に立っておるようであります。それとてもサンマだけでなしに、水産漁獲物全般の強力な価格支持といいますか、価格保証というようなものが必要なのでありますから、そういうものの一環として考えるべきことである。したがって、早急に全般的な水産物価格支持政策というものが出てくるならば、いまの調整法というものも同時にその一環として、廃止するとかせぬとかいうことも含めてお考えになるわけでしょうね。
  41. 久宗高

    ○久宗政府委員 ちょっと御質問の趣旨がうまく受け取れないのですが、いずれにいたしましても総合的に対処しろとおっしゃる中に、このような調整的な機能が当然に入ってくるだろうと私は思っております。
  42. 伊賀定盛

    伊賀委員 これはあとでまた時間をかけて質問をさしていただきます。  次は、剰余財産の処分の問題でありますが、この剰余財産の処分は、大体構想ができておると思うのでありますが、具体的にどういう構想をお持ちでしょうか。
  43. 久宗高

    ○久宗政府委員 残余財産の処分でございますが、出資者に対します出資相当額が約一億六千万円でございまして、これは魚価安定基金法の第四十三条の規定によりまして、各出資者に返戻することにいたしております。そのあとなお残ることが予想されます財産が約四千万円でございます。この処分につきましては、その一部、一応千五百万円を予定いたしておりますが、これは従来基金が行なってまいりました事業と同種の事業を行なうことを予定いたしまして自主的に設立いたします公益法人、これは全国さんま漁業協会を考えておるわけでございますが、これに寄付することといたしまして、残余は国庫に帰属するということに考えておるわけでございます。
  44. 伊賀定盛

    伊賀委員 千五百万を社団法人さんま漁業協会に、出資というか寄付というか知りませんけれども残して、あとは国庫へ帰属させるというのは、どういう基準でこの数字が出たのですか。
  45. 久宗高

    ○久宗政府委員 率直に申しまして、もともとこの基金は、残余財産が出るということを予定しておらなかったわけでございます。たまたま漁海況があのようなことでございまして、こういう経緯で解散ということになりましたので、出資しました額を限度といたしまして、先ほどのような返戻をいたしまして、残余財産についての規定が実はないわけでございますので、ここでの考え方といたしましては、いま類似の仕事をいたしますものに千五百万円と申しましたのは、今後自主的な協会が、今日までやりましたのとほぼ同じような仕事をいたします場合に必要な資金、これは出資金との関連におきまして返戻されたものを引きまして、その差がちょうど千五百万円見当になりますので、これをそれに寄付いたしまして、つまり基金がなくなりましても、かりにサンマにつきまして若干の問題が起こりました場合に、ある程度の対応ができますようにということを念願いたしまして、寄付をしようということにしたわけでございます。
  46. 伊賀定盛

    伊賀委員 先ほど来からしばしば御指摘がありますように、特に大衆魚の場合には、今後より強力な価格対策が必要だということを御指摘になっておられるのですから、何も二千五百万ですか、そんなものを国庫に帰属せぬでも、そのまま次の制度ができるまでむしろこうした団体に管理をさせて、次の段階に移らせるほうがいいのと違うのですか。もうすでにこれは大蔵省等とも話し合いのついた線でございますか。
  47. 久宗高

    ○久宗政府委員 私どもも、初めはいろいろなふうに迷ったわけでございまして、こんな経緯で漁業者からも金を出していただき、県からも国からも出していただきましてこの基金制度を運用いたしてまいりましたところが、漁況がああいう状況で幕を締めるわけでございます。しかし、次に何からの施策に金が要るだろうから、国も出すべきだし、民間でもそういうものができればそれを使っていきたいという気持ちがあるわけでございます。さような意味から申しますと、残余財産につきましては、これを散逸しないように適当な方法があればというふうに考えたわけでございまして、法律そのものがいまのように出資限度とした処理にはっきりなっておりますので、出資関係につきましては、ただいま御説明いたしましたような返し方をいたしまして、残余財産につきましては、これは全額、たとえば類似をした機能に持たしておくということも一つの考え方でございますが、一応ここでは、利子部分に寄与した額を頭に置きまして、同時にいままでの経験から申しまして、必要だと思われる程度の仕事をしていくのにどのくらい金が要るかというめどと関連いたしまして、その分に限定いたしまして、あとは国に返したわけでございます。率直に申しまして水産当局といたしましては、たまたまこの漁価安定基金ではこのような運用でございましたけれども、かりに本格的な魚価安定施策が出てまいりました場合には、相当の金が要るだろうと考えるのであります。そのような場合に、このような残余財産の処分で、漁業関係者に、多少これでもって措置がすでにできておったというようなことを言われたくないという気持ちもございまして、要るものは要る、返すものは返すというようにはっきりして処理したいということから、かような措置を考えたわけでございます。  なお、大蔵省とはいろいろな折衝をいたしたわけでございますが、かような場合の財産処分につきましてはこういう問題が初めてでございますので、さような意味におきまして、魚価安定基金処理という個別問題と他の問題ともからむわけでございますので、私どもといたたしましてはいま申しましたように、一応いまの事業を続けていくのに必要な部分だけをとりまして、あとは全部きれいに返してしまう、要るのはまた別にとるという考え方に徹したわけでございます。
  48. 伊賀定盛

    伊賀委員 この問題につきましては、すでにこれも午前中に全さんまの伊藤さんからですか、全国さんま漁業協会か何かのところで委員会を持って、そして価格対策については検討しておりますというようなお話もあったようでありますから、ひとつこうした団体等とも十分に連携を保って、一日も早く強力な魚価安定方策というものを打ち出していただきたいと思うのであります。  最後に、先ほども触れましたけれども、三十六年のこの法案審議にあたっての附帯決議を読んでみますと、大体中心は強力な消費拡大方策を講じろ、それから魚価支持機構というものを推進しろ、それから漁民所得向上の方策を検討しろ、こういうものに尽きるように思うのであります。ところがその後、あるいはこの審議を通してみましても、どうも積極的な姿勢がない。むしろ積極的というよりも消極的なんですね。たとえば、いまの基金制度の廃止にしましても、これは消極的だという一つの証左にもなろうかと思うのであります。あるいはまた、きのう出ました行官庁の勧告を見ましても、やはり同じような趣旨が指摘されておるわけであります。  御承知のように、国際的にも非常に流動しつつある状況、国内水産業においてしかりあるいは国内の経済状況においてしかり、まさに流動でなしに急動しつつある今日、水産行政がだいぶ立ちおくれておるんじゃないかという感じが率直にするわけであります。そういう意味で、いままで論議いたしましたものを総括して、今後の強力な水産行政全般についてでありますけれども、ほんとうを言いましたら、ここら辺で魚価対策について大臣の決意でもお聞きしておきたいと思いますけれども、政務次官から強い決意を伺いまして、私の質問をこの辺で終わりたいと思います。
  49. 安倍晋太郎

    ○安倍政府委員 附帯決議につきましては、伊賀委員のおっしゃいましたように、いわゆる大漁貧乏を積極的に克服する策として、消費の拡大をやれ、あるいは魚価安定の支持機構を確立すべきである、また漁民の所得向上対策等を講ずべきであるという内容のものであったわけでございますが、政府といたしましても、伊賀委員御存じのごとく、今日までこれらにつきましてはいろいろと対策を講じてきておるわけでございます。しかし、いずれにしても、 まだこれらの点については、十分な施策であるとはもちろん申されないのが今日の現状ではないかと思うわけであります。構造改善事業だとかあるいは漁業共済事業等もやっておりますし、その他の予算措置等もとっておりますが、十分でないわけでありますから、これにつきましては、さらに御意見等も十分尊重いたしまして、魚価安定をはかるために、あるいは漁民の所得向上を行なうために、これから総合的に積極的な立場でひとつ早急に取り組んで、これが対策あるいは法律案等をまた国会に御提出して御審議を賜わりたいと思っております。
  50. 足立篤郎

  51. 井上泉

    井上(泉)委員 私は、もうおそくなりましたので、それにまた飛び入りの委員でございますので、きわめて簡単に幾つかの点を質問いたしたいと思います。  魚価安定基金解散に関する法律案がたまたま出て、きょう審議をされておるわけですが、この法案ができた当初において、私、高知県ですが、高知県ではそうだぶしの原料のメジカをぜひこの中に入れてもらいたいというような運動を県会でも議決をして、漁民はこれを非常に渇望しておったわけですが、その渇望しておった魚価安定基金が、そういうメジカ類も入らないうちにもう廃止になってくるということ、これを水産庁としては——いま伊賀君の質問の中でも、行政監理委員会からの提言というか、勧告があったからやったのではない、むしろ行政監理委員会の勧告は従的なものだ、こういうふうに説明をされたのでありまするが、そのことはやはりそのとおり確認をしておってよろしいものかどうか、伺いたいと思います。
  52. 久宗高

    ○久宗政府委員 魚価安定基金につきましての臨時行政調査会その他の最初の御提案は、魚価安定基金は非常に不十分なので、ずっとここまで議論してまいりましたように、もっと総合的な対策を考えろという問題の提示であったわけでございます。しかしながら、具体的には、魚価安定基金そのものをそのままの形でふくらましました場合に、直ちに全体の魚価安定に通ずるかどうかという点には、法的にも相当問題がございますので、私どもといたしましては、少なくともいまのような形の魚価安定基金は、一応これで終止符を打ちまして、もっと本格的な取り組みをいたしたいということで踏み切りをいたしたわけでございます。
  53. 井上泉

    井上(泉)委員 それで、この魚価安定基金対象の魚は主としてサンマであったわけですが、こういうようなものが、漁獲が非常に減ったということも大きな原因です。つまり、この安定基金対象にした魚類の漁獲が非常に減って、対象とする必要がなくなったというようなことも大きな理由だと考えられるわけですが、この減った原因について、水産庁として何かお考えになっておる点があればお聞かせ願いたいと思います。
  54. 久宗高

    ○久宗政府委員 サンマ資源の問題につきましては、議論がいろいろあったわけでございます。特に魚価安定基金ができました当時、その直前あたりには相当大きな漁がありまして、いわゆる大漁貧乏の問題が出ましたので、たまたまこういう基金必要性が問題になり、これができますととたんに漁がずっと減ってまいりまして、発動する分野がなくなってしまったというようなことでございますが、これにつきましては、学者の間でもいろいろな議論がございまして、ここでは詳しいことは省略いたしますけれども一つには、率直に申しまして、まだ十分な解明がされていないということだと思います。しかし、幾つか指摘されております問題は、資源が大きな周期を持って増減しておるということでございます。それからもう一つは、資源の周期的な変動の山に当たります期間には、いわゆる大型魚と中型魚とがともにかなりの量で漁獲されるわけでございますが、近年は大型魚と中型魚が隔年に、つまり年を隔てましておもな漁獲対象になっておるわけでございまして、隔年のおもな漁獲対象は、過去とほぼ同様の漁獲量を示している点などから考えまして、資源の減少によりまして漁獲の影響が起こったというよりは、何らかの自然的な要因によって起こったのではないかということが、一般的にいわれておるわけでございます。しかしながら、こういう問題につきましても、いわゆる純然たる資源論のほかに経済問題が入ってくるわけでございますので、日本の沿岸近くに寄っておりますいわゆるサンマの系統につきましては、日本でもソ連側でも若干の漁獲をしておりますので、それとの関連といったことにつきましても、もっと解明すべきことがあるのではないかという問題が提起されておるわけであります。
  55. 井上泉

    井上(泉)委員 非常に丁寧な御答弁で恐縮ですが、できるだけひとつ簡潔に御答弁を願いたいと思います。  それでは行政管理庁にお尋ねいたすわけですが、たまたま魚価安定基金解散に関する法律案が国会で審議されておるときに、中小漁業に関するこの勧告がなされたわけです。非常にタイミングが合っておる、せっかく漁民が、不十分とはいいながらもこういうふうな基金制度がある、かすかながらもこれには期待を寄せておったことには間違いないわけです。きょうの参考人も全部、そういうふうなことについては、残念だがいたし方ないというようなことを述べられておるわけですが、私は、こういう法案を審議するのにタイミングを合わして中小漁業に関する勧告を出したのじゃないか、こういうように勘ぐるわけですが、行政管理庁としては、この基金が廃止をされることにおいて、管理庁の言うことを聞いてくれたということで満足感を覚えておるのじゃないかと私は思うのですが、その満足感を覚えておることの前提に立って、私は、この勧告の内容について若干お尋ねをしたいと思うわけです。  一つは、こういうふうな水産資源の開発及び維持についてという問題の中で、漁場の保全ということ、これについてどうすべきかということについての勧告があってしかるべきじゃないか。この法律は大体中小漁業者が対象ですから、やはり沿岸漁業あるいは近海漁業、これをやっておるのはほとんど中小漁業者ですが、そういう中小漁業者に対する一つの、漁場を保全するということについて、行政管理庁として水産庁に勧告すべき何ものもなかったかどうか、その点についての管理庁の御意見を承りたい。
  56. 諸永直

    ○諸永政府委員 お答え申し上げます。  具体的に、どういう漁場を維持あるいは開発すべきであるかということに直接触れておりませんが、この勧告の中で、漁業周辺の水質の汚濁に関しまして、一応水質保全法によります水質基準の設定の促進、それから水質保全法によっても救済し得ない水産資源上重要な水域の汚濁の対策としましては水産資源保護法の活用をはかるべし、こういう勧告をいたしておるわけであります。
  57. 井上泉

    井上(泉)委員 私もそれを見たわけです。なるほどこれは沿岸漁業の発展のためには、いま局長の言われたような条項があるわけですけれども、今日日本の漁場という中で、特に重要な漁場として指摘をすると、伊豆七島の近海、いわゆる新島の周辺というものは、関係府県十一県の漁民があそこで漁労に従事しておる。このことは、行政管理庁としても当然私は調査をされておると思うわけです。何も防衛庁に気がねをしての発言をなされる必要はないと思うのですが、そういうふうな東京都あるいは横浜という一番の消費地をかかえておる、そして日本としての最優秀な漁場といわれる地域の保全というようなものについては、やはり重大な関心を払うべきではないか。そういう点が、射爆場としてあの付近の漁場が荒らされるというようなことについては、これは非常に私どもは反対をせざるを得ないわけです。しかし、そのことにここで触れるわけではないわけですけれども、そういう漁場というものを守る姿勢があるならば、私は行政管理庁としてもあるいは水産庁としても、そういう国民水産資源を供給しておる重要な漁場は、これはこの対象から除くべきであるとかいうような態度があってしかるべきだと思うのです。そういう態度を表明せよとかどうとかいうことではないのですけれども、そういう特別重要な漁場の保全については、単にこの沿岸漁業の水質汚濁の法律では何もならぬわけですから、そういう点について、私はせっかくこういう勧告をされるなら、何かもっとそういう漁場の保全についての勧告があってしかるべきだと思うわけなので、その点について管理庁の御意見、あわせて水産庁の御意見を承りたいと思います。
  58. 諸永直

    ○諸永政府委員 今回の中小漁業に関する監察は、対象府県の選定が、その県の生産量中心といたしましたために、関東地方では千葉県のみを対象といたしました。したがいまして、御指摘の新島を中心とする資源問題を取り上げなかったわけでございますが、今後は、御指摘の趣旨に従いまして、そういう対象につきましても十分注意をいたしたいと思います。
  59. 久宗高

    ○久宗政府委員 漁場水産の一番基礎でございますので、漁場を保全してまいるにつきましては、あらゆる努力をいたしてまいりたいと考えております。
  60. 井上泉

    井上(泉)委員 私は、だんだん中小漁業というものが衰退をしておる原因は、漁場が荒らされてきておるところにあると思うので、いま行政管理庁が千葉県のみを対象にされたということですから、いま一歩突き進んで、その伊豆七島の付近で操業しておる関係府県がどれくらいあって、それからの漁獲がどれくらいあって、それが東京都あるいは横浜などの大消費地に対してどういうものを供給しておるとかいうようなことを調査をされますならば、私はこの新島の付近の漁場というものが、日本の漁業にとっていかに大切であるかという御理解がいくと思うのです。この新島周辺の漁場というものがどれだけの役割りを果たしておるのか、その点をひとつ水産庁の長官から御答弁を願いたいと思います。
  61. 久宗高

    ○久宗政府委員 先ほどの御質問は、一般の漁場についてのお尋ねかと思いましたので、簡単にお答えしたのでございますが、具体的な新島周辺の問題でございますれば、これは私どもといたしましては相当な影響が見込まれると考えておるわけでございます。本問題につきましては、政府部内におきまして慎重な検討が必要だろうというふうに考えておるわけでございます。  なお、同漁場のデータでございますが、現在示されております具体的な漁場についての計算は、関係府県なりその漁獲量ということになりますと、これは精密な調査が必要でございますので、私どもがいままで調べておりますのは、現在この部分が射撃区域となるというその数字ではございませんで、あの島の周辺の海域におきます一般的な数字で申し上げますと、船にいたしまして約三千隻の漁船が関連を持っております。約二十万トン近い魚があの周辺海域においては問題になるわけでございまして、魚種といたしましてはサバ、カツオ、アジといったようなものが中心でございます。
  62. 井上泉

    井上(泉)委員 政務次官もいまお聞きになったとおり、約二十万トン、これはいつの数字か、私は最近の数字だと思うわけですが、関係の漁民に聞きますと、関係府県が十一府県あって、大体三十万トンの漁獲をあげ、それがカツオとかアジとかサバとかの大衆魚で、これが東京都周辺の地域の国民に新鮮な食料品を供給し、そして価格の面においても、大消費地をかかえておる関係で非常に安定した漁場となっておるということをよく理解をしていただいて、いま行政管理庁が調査をされてないと言われておるのでありますけれども水産庁として、なおもこういう新島の周辺の漁場について、その漁場の果たしておる役割りというものを詳細に調査をし、その漁場がいつまでも保存されるように対策を講ずるべきだと思うわけなので、その点、ひとつ政務次官としての御見解を承っておきたいと思います。
  63. 安倍晋太郎

    ○安倍政府委員 農林省、水産庁は、もちろん漁民の利益を守る立場に立つわけでございますから、やはりそうした面で、積極的に漁場を確保していくということは当然であろうと思うわけで、この新島の問題につきましても、漁獲あるいは漁場等に相当影響があるということになれば、水産庁としても積極的にこれを調査して、そして漁民に対する影響が少ないように、積極的な対策を講じていくべきであると考えております。
  64. 井上泉

    井上(泉)委員 それと、私はこの勧告の中で一番大切な点が一つまだ抜けておるのではないかと思うのです。この沿岸漁業に限らず、日本の中小漁業近海漁業が不振をしておる原因の一つには、漁業の従事者に対する身分の安定がない。そういう点で漁労に従事する人がだんだん減ってきている、そういうことがあるわけなのですが、そういうふうな漁業従事者についての対策というものがなされていない。これは漁業法にも書いてあるとおり、「漁業者及び漁業従事者を主体とする漁業調整機構の運用によって」云々とあって、「漁業生産力を発展させ、あわせて漁業の民主化を図る」こう書いてあるのですけれども、現実に、今日漁民の生活の安定をはかるような対策がほとんどなされていないと思うわけです。そういう点について漁民の生活実態、つまりほんとうに漁業に従事する人の実態についての行政監察の内容というものが、この中に盛られていないわけですが、そのことは別に監察しなかったのかどうか、その点についての管理庁の答弁を求めると同時に、水産庁のほうからも、こういう漁民に対する安定した対策というものについては、どういうふうなお考えを持って行政指導をなされておるのか、御答弁を承りたいと思います。
  65. 諸永直

    ○諸永政府委員 二十トン未満の漁船の雇用者の給与形態につきまして、指導監督を一そう徹底するようにということを、労働省に勧告いたしております。
  66. 安倍晋太郎

    ○安倍政府委員 行政管理庁からの勧告については、農林省としても非常に適切な面がたくさんあると思いまして、これは積極的な研究をして、ひとつ五月の末までには回答することになっておるわけであります。漁民対策あるいは沿岸漁業に対する対策につきましては、御存じのように沿岸漁業等振興法も成立をいたしまして、その後政府としてもいろいろと施策を進め、漁民の所得が向上するとか、あるいは新漁場を確保する、あるいは養殖漁業の融資あるいは補助金、そうした面でいろいろと積極的に進めておるわけでございますが、しかし、現状は必ずしもわれわれが期待しているような状況にないわけですから、さらにひとつこの点につきましては、積極的な沿岸漁業対策をやらなければならないと思います。
  67. 井上泉

    井上(泉)委員 雇用関係にいたしましてもあるいはその他の労働慣行にいたしましても、漁民の労働条件というものは非常に不安定なので、いま政務次官がお述べになられたような態度をひとつ早急に実現してもらいたい。週刊誌ではないけれども、大臣は高級ホテルの一等客であって、政務次官は二等客である、ホテルだから内閣がかわればまたかわっていく、こういうふうなことがいわれるわけですが、そういうことではなしに、やはり漁民に対する労働政策はかくあるべきだ、日本の漁業を守るためにはかくあるべきだということを、ひとつ早急に検討をしていただきたいと思うのです。  それから、この勧告の中で、漁業をしていく上において、漁業調整の問題はきわめて大切なことだと思うわけです。漁場の保存と同時に、漁業調整ということは大事な問題だと思うわけです。ところで、大事なこの問題に対して、一昨日の地方の各新聞では、大海区制を開始するというような意味の記事が載っておったわけです。それでありますので、高知県とか、あるいはまた和歌山とか、徳島とか、鹿児島とかいうような地域におきましては大ろうばいをして、私の手元にも何通かの電報が漁連からきておるわけです。「行管勧告中大海区制採用を見ましたが、本県漁民に与える影響は大きいので、実現反対について一そうの御尽力をお願いします 高知県漁連会長」とか、あるいはそれぞれの組合長から何通かきておる。これは私だけではない。前の農林政務次官をされておった自民党の仮谷さんのところにも来ておると思うわけです。そういうことで私はびっくりしましたが、勧告を見てみると、「大海区制等、将来の調整のあり方について」こう書いてあるわけです。書いてあるわけですが、この行管の勧告の大海区制に対する真意というものはどこにあるか、あわせて水産庁は、この勧告に「大海区制等、将来の調整のあり方について」と書いてあるが、この大海区制についてはどういうふうな見解をとっておられるのか、御答弁を願いたいと思います。
  68. 久宗高

    ○久宗政府委員 新聞で若干誤解をしておられるように思いますので、私のほうから先に答えさせていただきたいと思います。  昨年来、行政管理庁といろいろやりとりをしてまいりまして、こういう形にまとまったわけでございますが、行政管理庁で言っておられますのはまさに筋でございまして、まき網のような漁業について、その性格から見て、相当広い海域が必要であるということをいっておられるのだと思います。私のほうといたしましても、まき網のような漁業性格から考えまして、先般の許可の一斉更新におきましても八ブロックに分けまして、この大海区制を取り入れたわけでございます。しかし、現実には沿岸漁業と他の漁業との調整の問題が具体的にあるわけでございまして、地域の操業の実態等をよく見まして、実際には許可の条件で、大海区制の中におきましてさらに狭い水域を指定しているわけでございます。これは何と申しましても、かりに方向としては相当大きな区域が必要であるといたしましても、現実には海の上のことでございますので、その場合におきます他の漁業との関連等十分考慮いたしまして、地元の御納得がいくような形で調整していくのが、どうしても海の上のことでございますから必要なんでございます。  そこで、あるいは行政管理庁のほうからの勧告の中に、その問題がものの考え方の筋として出ておりますので、直ちにそれが採用されて、制限がいきなりなくなってしまうのではないかといったような、現地の漁民の方の御心配だろうと思うのでありますが、私どもとしては、時間をかけましてもやはりよく御納得をいただいて、そして調整をしていくというのがたてまえでございまして、いきなり何の準備もなしに、ぱっと大海区制にしてしまうというようなことは考えておりません。  ただ、行政管理庁でも御指摘のように、そういう調整に便々とひまをとって、そしてぐずぐずしているためにかえって問題がこじれているものが非常に多い。こういう点につきましては、中央の官庁としてはもっと積極的に御納得のいく説明をするなり指導をするなりしたらよかろうという御注意でございまして、これもよくわかるわけでございます。繰り返しますように、今度の勧告を契機といたしまして、いきなりすぐ、いわゆる無制限な大海区制にぽんと踏み切ってしまうというような乱暴なことは考えておらぬわけでございますので、御心配のないようにしていただきたいし、さらに私どもといたしましては、それに関しますいろいろな関係者の御意見というものを十分聞きながら調整していく考えがございますので、この点を明らかにしておきたいと思います。
  69. 諸永直

    ○諸永政府委員 ただいま水産庁長官からお答えがありましたのとほんとうに同趣旨でございます。この勧告の文にも書いておきましたように、「大海区制等、将来の調整のあり方について検討を加えるとともに」ということでございまして、将来の調整のあり方として、たとえば大海区制等ということで、大海区制をとるということが唯一の方法であるとは考えておりません。したがいまして、ただいま水産庁長官のお答えのとおり、現地の実態を勘案して、現地の実情に即した紛争解決の方法を至急とっていただきたい、こういう趣旨でございます。
  70. 井上泉

    井上(泉)委員 真意は了解をしたわけですけれども、私はやはり役所としては注意をしていただかなくてはならぬ。いかに漁民というものが敏感であるかということです。ただ新聞で大海区制の採用ということが出ると、あれほど——昨年度漁業権の更新をやった際も、この大海区制というようなものについては、十分地元で話し合って云々というようなことが論議されて、別な大海区制の問題について、関係の漁民がそれについては安心をしておったわけです。それで今度こういうふうな問題をやるときはどう出てくるんだろう、抜き打ちに出てくることはないんだろう、こういうふうに思っておったわけですが、いまの長官やあるいは行政管理庁の御答弁によって理解はするわけです。私自身は理解をするわけですけれども、やはり漁業調整上この海区の問題は避けることができない問題だと思うのです。大海区制の問題にしろその他の区域の問題にしろ、この海区制という問題については、漁業の調整上避けることのできない問題だと思うが、あえて大海区制というふうに表面に打ち出すのは、これは大海区制をやれ、実施を促進せよ、こういうように管理庁から水産庁に勧告したものではないか。「等」ということによってごまかしておるけれども、実際は大海区制だ、こういうような受け取り方をするわけです。  いまお二人の方の答弁によりますと、それほど心配することのない発言であるわけですけれども、これは勧告の字句の訂正をして「大海区制等」とは書かずに、「海区制等」ということで、大という字をのけるわけにはいかぬですか。
  71. 久宗高

    ○久宗政府委員 御指摘のように、大海区制ということばで何か一つの観念がそれぞれできるわけでございますけれども、しかし、実際には関係の漁民の方はこのいきさつはよく御存じでございまして、大海区制ということで反対反対というお話もございましたけれども、現実に私どもがやっておりますのは、こまかい調整をいたしまして処理をいたしておるわけでございますので、むしろそういう誤解を避けていただいて、こまかい具体的な調整についてのお話し合いをしたほうが適当であろうかと思います。ことばを避けましても当然問題は出てくるわけでございますので、そのほうが適当ではないかと思います。
  72. 井上泉

    井上(泉)委員 それではこういうように確認をします。いま長官が答弁をされたように、「大海区制等」と勧告の文章にはなっておるけれども、これは地元との話し合い、関係漁民との間の話し合いもつかないのに、そのまま大海区制とかいうようなことを推し進める意図というものは、水産庁のほうとしてもないし、あるいは行政管理庁のほうとしても、大海区制を中心に推し進めていけ、こういうふうに勧告をしたものでない、こう確認をしておいてよろしいかどうかということを、最後に御返事を承りたいと思います。
  73. 諸永直

    ○諸永政府委員 先生の御発言のとおりでございます。
  74. 久宗高

    ○久宗政府委員 私の御説明したとおりであります。
  75. 井上泉

    井上(泉)委員 それでは私は、まだその他水産関係については幾つかの質問をいたしたいと思うわけですが、こういうふうに、ささやかでありましても一つ法律をつくるときには、まことにけっこうな明文で法律をつくっておるわけです。ところが、法律効果があがらないような状態が出たからこれを廃止するということになりましたならば、やはりそれに対する代償というものは、伊賀委員も質問をされておりましたように、こういう安定基金解散についての法律を出すというときには、やはり何といいましても魚価が安定をするということが漁民にとっては不可欠な要件なので、これについて政府としての態度というものを表明していただかないと、漁民としては、ほんとうに水産行政が漁民のものとは縁遠い。どんどん輸入水産物で日本の沿岸漁業は荒らされてしまう。さらにはまた近海漁場は、アメリカ軍の演習場になったり、自衛隊の演習場になったりしてしまう。こういうような不安を持つけなので、政務次官としてこの辺の漁民の不安に対する、魚価安定に対する今後の施策について、伊賀委員にもお答えになったことですが、私としてももう一回ひとつ見解を承って、私の質問を終わりたいと思います。
  76. 安倍晋太郎

    ○安倍政府委員 この問題につきまして、先ほどの伊賀委員に対してもお答えをいたしたのでありますが、この魚価安定基金が廃止されまして、さらに後に、われわれは積極的に魚価安定対策あるいは漁民の所得向上のための対策、あるいは環境衛生関係に対する対策等、総合的にひとつ積極的な姿勢で進めて、そうしていずれ国会の御審議も経なければならない、こういうふうに考えておるわけであります。
  77. 足立篤郎

    足立委員長 関連質問の申し出がありますので、赤路友蔵君に一問だけ許します。
  78. 赤路友藏

    赤路委員 行管のほうからお見えになっておりますので、ちょっと行管のほうへ申し上げておきたいのですが、行管のほうは行管のほうとして、それぞれの立場があって勧告されたことだと思います。勧告するときにはその立場を十分調査し、その影響等を考えておられると思うのですが、この定安基金法は、先ほどもちょっとありましたが、生産調整組合法と二人三脚で出た法律なんです。これはばらばらで出たのじゃないのです。非常にサンマがたくさんとれて、価格が落ちてどうにもこうにもならぬ。そこでどうするかということで、生産調整を行なう。生産調整を行なった場合、それは出るべき船が操業に出ないわけですから、その面に対して安定基金をもって少しでも補償の形をとろう、こういうので、二人三脚でできたものです。だから、安定基金だけぽんとはずしてしまいますと、あと一本立ちで立っているようなかっこうになるわけです。私もこの安定基金制度というものが、サンマ漁ならサンマ漁というものをとって考えてみまして、十分でなかったと考えます。十分ではなかったが、ゼロでなかったこともまた事実なんです。ゼロではなかった、しかし十分ではなかったわけであります。今度生産調整組合法だけになりますと、漁況の変化というものはわかりませんから、ことしのサンマ漁期になってうんととれたときは、先ほど来長官のほうから何か残余のものがあるからそれでまかなうようなお話があったようでありますし、それから早急に総合的な対策を立てる、こういうようなこともございました。しかし、この総合対策というのは、なかなかそう早急にことしのやつに間に合う、あるいはひょっとしたら来年度のものに間に合うかどうかということすらもちょっとどうかと思う。先ほどの伊賀君の質問の中にも、生産調整組合法を一体どうするのだということがあった。長官の答弁では、それはそれなりに役に立つであろう、率直に言えばこういう答弁でした。そうでしょう。それはそのとおりなんです。しかし、長官のおっしゃるその答弁は、あまりにもその考え方が安易でないか。もっと突っ込んで言えば、行政庁としてはそれは逃げた、こういうことを言わざるを得ないわけです。この調整組合法は、業者にかってに生産調整をしなさいということなんです。もう一つの柱といいますか、二人三脚であった片方がとれてしまったのだから、そこのところはやはりよほど考えていただかなければならぬ。十分ではなかったがゼロではなかったのだ。それだけにあと万一と申しますか、豊漁の場合これにどう対処するかということは、この際真剣になって考えていただきたいと思う。  何か井上君のほうから、漁獲の減退云々というような話がありましたが、もう専門であれでしょうが、私がいまうろ覚えではっきり覚えておりませんが、サンマ状態をずっと見てみますと、明治の初期から大体十五年周期で山坂ができておるようです。ところが、三十年から三十一年へかけてだったと思いますが、この周期的なものがくずれて、そして非常に変則的なものになってきておる。そういうサンマの従来の周期説というものが、全然適合しないような形になってきておるということ。したがって、いままで安定基金制度ができてから、むしろサンマはずっと漁獲が減退している。しかし、いつまでもそういう状態であるということではないわけですから、私がここで申し上げたいことは、そういうような二人三脚で出たものの一つを、たとえそれが不十分であったにしてもとったのだから、それに対応するようなものが、いやもっとそれ以上のものが、早急にこの際考えられるべきでないか。それがおくれますと、また問題が出てくる可能性がありますので、そういう点だけを一点申し上げておきたかったわけです。これは私は答弁を求めません。そういう事態にある、こういうことであります。
  79. 足立篤郎

    足立委員長 次回は明二十四日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十六分散会